第179回 放送と青少年に関する委員会

第179回–2016年3月13日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年3月13日に第179回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず、2月16日から2月29日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、3月の中高生モニター報告、調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会に先立ちテレビ朝日プレゼンテーションルームで26人の中高生モニターを集めて「中高生モニター会議」を開催しました。(詳細はこちら。)後日、報告書を関係各所に配布する予定です。
次回は4月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年3月13日(日) 午後4時30分~午後7時10分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 「じゃんけんで勝った人が他の人の分も含めて支払いをする企画で、ルールを無視して特定の人が勝つまでじゃんけんを続けていたが、学校のいじめを象徴している。見ていて不愉快だった」という視聴者意見について、委員からは「まさにルール無視だが、エンターテインメントのうちだと考えられる。"学校のいじめの象徴”という言葉は気になるが、特定の人だけではなく他の人も買わされていたので、これ以上の議論は必要ない」という意見がありました。

  • 「レギュラー出演者になれるかどうかを視聴者からの投票で決めた企画は、いじめのようだ」「深夜帯のアニメではあるが、パロディーと下ネタはやり過ぎだ」などの視聴者意見について議論しましたが、特に問題はないとなりました。

  • 「子ども向けアニメで"ベテラン女性社員”に対する差別的表現があった」「私服のセンスを競う企画で、"農業従事者の服装センス”を揶揄する表現があった。職業差別ではないか」など、差別を指摘する視聴者意見について、委員からは「どの範囲が差別になるのかなかなか難しい問題だ。形式的に言葉だけを問題にするのではなく、前後の文脈で判断する必要がある。ただ、常に言われた側の立場になって考えてみる必要があるだろう」などの意見がありました。

中高生モニター報告について

3月の中高生モニター報告は、「この1年間の感想」というテーマで、「地方在住の人はできれば、地方局制作の番組についても触れてください」と設定して書いてもらい、30人から報告がありました。
12回にわたる報告の中で一番印象に残っているテーマは、9月の「"見たい、作りたい番組”とはどんな内容ですか」という番組企画だったという意見がありました。「一番印象に残っていることは、実際にモニターである私たちが、番組を考えるという課題です。その時のテレビ局の方々からの批評が強烈でした。テレビ局の方たちが番組を作る時にどのようなことを考えてやっているのかが、とてもよく分かったという一方で、テレビを見るのは素人の私たちなので、一つくらい採用して、一つの企画としてやってみるのも面白かったのではと考えてみたりもしました」(東京・高校2年男子)。「毎月出されるテーマの中で一番考えさせられたのが9月のテーマです。私は朝忙しい人でも見られる報道番組を企画しました。客観的に見ても理解しやすく時間の無い人でも見ることができるように内容の濃い番組を構成することに努力しました」(埼玉・中学3年男子)。
12月のテーマ、日本民間放送連盟賞 2015年 特別表彰部門 〔青少年向け番組〕で最優秀となったテレビ山梨制作の『ウッティ発!アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ集落再生人』を視聴した感想を書いたことが一番心に残ったという報告もありました。「正直なところ番組を見る前は田舎在住の人に関するドキュメンタリーなんて面白くなさそうだなという先入観が少しありました。しかし番組を見てみると目標に向かって様々な人と共に一生懸命努力を積み重ねていくご夫婦の姿に心打たれ、すごく感動しました」(埼玉・高校1年男子)。「自分が住んでいる山梨県の放送局が制作した番組だということだったが、この会社の存在はこの時まで知らなかった。とはいえ、非常に見応えのある番組でこれからはもっと自分の住む県の企業や放送局が作った番組に目を向けていこうという気持ちにさせてくれた」(山梨・高校2年男子)。
他に地方局制作の番組に関しても支持する複数の意見が寄せられました。『いっちゃん☆KNB』(北日本放送)…「この番組は、地域のイベントの紹介やグルメリポートなどを含んだニュース番組だ。地域の楽しい催しや面白い話と、大事な情報の伝達と、どちらもいい加減になることなく伝えられていて、見やすく分かりやすい。地域のことをよりよく伝えようとしているのが視聴者に分かる良い番組だと思う」(富山・中学1年男子)。『TEGE2~てゲてゲ~』(南日本放送)…「アナウンサーやコメンテーターがバリバリの方言で番組を進めていることに初めは違和感を覚えたが、それでこそローカルだ!キー局の全国放送には出せない色を持っていて、方言が強みになっている」(鹿児島・中学3年女子)。
1年間の中高生モニターの活動を通じて放送の見方が変わり、ひいては、自分自身の物事を考える視点が広がったという報告も多く寄せられました。「最近では制作者の気持ちも汲み取りながら番組を分析するようになった。また視聴する番組の幅が広がったことで、今まで知り得なかった知識を得たり新たな発見をした」(岩手・高校2年女子)。「今は番組が楽しい、つまらないだけでなく、制作した人たちにはどんな意図や工夫があるのかなど様々な観点から見ることができ、それによりテレビの深さを知った。テレビはとても大きな力を持っており、報道内容や出演者の発言が社会に及ぼす影響は計り知れない。だからこそ、このBPOという組織があり、テレビ局が暴走しないようにする大切な役割を担っているのだと思う」(埼玉・中学2年女子)。「この1年、モニターとしての経験をすることによって自分の好きなテレビについて、ただ面白さの有無だけでなく、深く掘り下げて考えてみる時間を持てて、とても楽しかった。テレビは"日本の社会の鏡”のような面がある。その時代、その瞬間で最もホットな情報媒体の一つであるからだ。縛りに縛られて疲れ果てている今の日本、だからこそ、もっと縛りのないストレスフリーな活気あるテレビが今必要だと思う」(神奈川・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】今回の報告で目立ったのはラジオ番組、地方発の番組についての言及が多かったこと。ローカル局の旅番組などの人気番組やラジオ番組に関する意見などを面白く読んだ。

  • (岐阜・高校2年男子)名古屋テレビ制作の『名古屋行き最終列車』。30分の中に様々なストーリーが織り込まれたドラマで、知っているところばかりが出て、とても楽しむことができた。1つだけ改善してほしいことがある。深夜0時20分からという放送時間帯だ。リアルタイムで視聴する人のみを対象にしてはいないだろうが、多くの人を対象にするのなら時間帯を見直し、事前に名古屋鉄道の駅や電車内にポスターを掲示するなどできないか。

  • (兵庫・中学1年女子)『よしもと新喜劇』(毎日放送)。東京と大阪のテレビ番組では少しカラーが違う。その中で私が一番好きなのは、この番組だ。親戚が集まった時もお茶の間を囲んでいつも見ている。この劇のセットはとても手がこんでいて、どの角度でもお客さんが見やすく、分かりやすいようないろんな工夫がされている。とにかく面白いので、全国放送にしてほしいと思う。

  • (千葉・中学3年女子)私は最近、ラジオを聞く面白さに目覚め、毎晩聞いている。ラジオでは当然音声のみなので、ごまかすことができない。ラジオ番組で面白く話す人は相当実力があるのだと思う。
  • (岐阜・高校2年男子)インターネット配信サービスや何かをしながら聞くことができるなどといった利点を活かしてテレビよりも"距離が近い”番組を作ることができれば、ラジオを聞く人が大幅に減少することはなくなるのではないか。

●【委員の感想】この1年間のモニターとしての活動から、いろいろなことが学べ、作り手の側から考えるようになった、様々な立場からテレビ番組を見るようになったなど、メディアリテラシーを学習した様子がうかがえる報告が多かった。

  • (千葉・中学3年女子)この1年、ずいぶんとテレビの見方が変わった。最初はその番組が面白いかどうかで評価していたが、最近は番組制作に携わる人のことも考えるようになった。また、ここが面白い、これが気分を悪くさせるなどという指摘に加えて、そこに自分の意見も具体的に加えることができるようになった。1年間の経験で、あらゆる観点から物事を見るということを一番学んだと思う。

  • (新潟・高校2年女子)この1年はBPOの中高生モニターという立場で、制作者と視聴者との間にいる気分で、双方の気持ちを考える1年だった。適当に回したチャンネルでさえも、批評心を忘れずに鑑賞するような1年でもあった。

  • (岩手・高校2年女子)1年間モニターを務めてみて、批判することは簡単だが称賛することは容易でないと感じるようになった。悪いところは目につくし自分に嫌な影響を与えるためなくしてほしいと声をあげるが、良い点は変える必要がないから改めて発信しないことが多い。これは番組に限らず、世の中の多くのことに共通して言えることだと思う。きっと世間の大半の人は「良」と感じていることでも、外に出さなければ、少数の可視化された「悪」が目立ってしまうのだ。

●【委員の感想】1年間モニターを務めてみてメディアリテラシーに対する理解度が上がった、国語の点数が良くなったという報告が5件以上あった。中高生モニター制度に関してもしっかりした意見を述べている。

  • (愛知・高校2男子)この中高生モニター制度は政治や教育などと共に、社会で大きな影響を持つ「報道・メディア」について我々中高生世代の意見を大人がしっかりと取り入れようとする貴重なものだと思う。今後もこの制度をしっかりと維持し、中高生世代が報道やメディアのあり方について深く考え、素直な意見を述べる姿勢をもっと広めるよう工夫してほしい。そして、自分もその取り組みに協力したい。

●【委員の感想】自分の将来の夢を語り、その実現にモニターとしての活動が役に立った、と書いているモニターがいた。1年毎月モニターの報告を読んでいくと、中高生の能力が伸びることが実感できた。是非この報告を教育者、学校の先生方に見てほしいと思う。

  • (長崎・高校1年女子)私がこのモニターに応募したのには一つの大きな理由がある。できるだけたくさんの人に自分の考えやそれを基に書き上げた文章を見て感じてほしいという理由だ。私の将来の夢は、読んでくれたすべての人の心に寄り添い友だちとなる本を作ることであり、このモニターとしての経験が私とその夢との距離を縮めてくれた。

調査研究について

  • 青少年とテレビ調査:"青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討”(仮)をテーマにした、調査研究のスケジュール案の報告が菅原委員からありました。また、お茶の水女子大学に協力していただくことも決まりました。

  • 10月30日に立命館守山高校での意見交換会の時に行った、高校1・2年生267名を対象にした「メディアと高校生の考え方に関するアンケート調査」の中間報告が菅原委員から以下のとおりありました。

    • :『芸能人格付けチェック大予選会』を見て倫理的問題を感じている生徒は少なく、面白いと評価する生徒が大部分を占める。また、不快感について、個人的に感じた生徒は非常に少ないが、人によっては不快を感じることもあるだろうとする生徒は半数近くいた。

    • :SNSの利用時間が、平日・休日ともに女子の方が有意に長いことが認められた。

    • :およそ8割の生徒が、家族と一緒にテレビを見ることがあると回答している。また女子の方が親とのテレビの共有度が高いことが示された。

    • :政治・社会問題に関する情報収集行動について、テレビのニュースを見ているのは52.8%でインターネットの40.1%より多かった。

    • :メディアの情報の信頼性については、新聞>テレビ>ラジオ>雑誌>インターネットの順であった。

今後の予定について

  • 6月8日に新潟でNHKを含む在新潟テレビ・ラジオ7局との意見交換会を開催することが決まりました。
  • 9月に広島で意見交換会を開催することが決まりました。
  • 10月に大分で留学生との意見交換会を開催することが決まりました。
  • "青少年へのおすすめ番組”について中高生モニターを使った活用方法が話し合われました。
  • 地方局のメディアリテラシー活動を注目していきたいという意見が出ました。

その他

  • 川端裕人委員が3月末で退任し、4月から中橋雄・武蔵大学社会学部教授が委員に就任することになりました。

【中高生モニター会議 2016年3月13日 テレビ朝日にて】

青少年委員会では、全国の中高生から放送に関する意見を聞く「中高生モニター制度」を行っています。これは、BPOに寄せられる青少年対象の視聴者意見のうち10代からの意見が大変少ないことから、2006年から始めています。2015年度は32人のモニターから、毎月意見を送ってもらいBPO報告などで公表しました。
その活動の一環として、3月13日に中高生モニターと放送局の方と青少年委員会委員がお互いに意見を交わす場として、「中高生モニター会議」をテレビ朝日プレゼンテーションルームで開催しました。今回は、全国から26人の中高生モニターと、7人の委員、テレビ朝日から『サンデー!スクランブル』の関係者などが参加しました。
午前11時から菅原ますみ委員の司会で始まり、まず、7人の委員、中高生モニター、テレビ朝日関係者の順で参加者の自己紹介が行われました。そのあと、生放送中の『サンデー!スクランブル』のスタジオやニューススタジオ、テレビ朝日社内を見学しました。
午後0時30分からは、再びプレゼンテーションルームに戻り、意見交換を行いました。
放送全般についてモニターからは、「今までは視聴者という視点でしかテレビを見ることがなかったが、制作者はどういうことを考えて番組を作っているのか考えるようになった。制作者側と視聴者側との2つの視点からテレビを見ることができるようになった」「番組を中立的に見る、客観的に見るという視点が、放送の公平とか中立を守るために大切だと思った」「私は宮城県に住んでいる。3月11日には他の地域でも5年たった震災について報道されたが、被災地側からすると5分でも10分でも良いので毎日被災地について取り扱ってほしいと思う」などの意見が出ました。委員からは「モニターの皆さんには、視点を変えてみれば、同じ物事でも全然景色が変わったり、見えることが違ってくることをこの1年間で実感してもらえて良かった」「昔はわりとテレビの中で、若い世代の新しい価値観や新しい生き方のようなものが提示されていて、それが良いなと思った。しかし残念ながら時代の流れの中で、今はテレビにそれほどの力がなくなってきた。もう一度、テレビが生き方や価値観を示せるようになればと思う」などの話が出ました。
情報番組についてモニターからは、「朝の番組は、知りたい時事的な問題よりゴシップとか芸能的なネタが多くなってきている」「学校で話すネタがほしいので芸能ネタをよく見ている」「朝の時間帯はバタバタしているのにエンターテインメントがどんどん多くなって、逆に夜は情報が多くなっている。これを逆にした方が良いのではないか」「震災時、僕の住んでいる青森にも津波は来ていたけれど、全国のニュースでは岩手、宮城、福島の話ばかりだ。取材する地域格差みたいなものを感じる」「新聞では"天声人語"や"春秋"というコーナーが1面にあるが、テレビでもそういった企画をやってもらえないだろうか」「被害者の遺族や友だちに話を聞く時に、事件や事故があってすごく辛くて悲しいのにそれを考慮しないでテレビや新聞の方が取材するのを見ていると、なんで相手の気持ちになって考えてあげないのだろうかと思う」などの意見が出ました。テレビ朝日の出席者からは、「震災復興については、夕方のニュースで定期的に取り上げようとしています。伝えようという気持ちは皆さんと一緒です。しかし十分ではないかもしれません。青森県の話はその通りだと思います。どうしても被災地というと宮城、福島、岩手がメインになってしまいます。それ以外の被災地に対する視点が、ともすると抜け落ちていたかもしれません」という話が出ました。
午後1時40分からは、先ほどまで『サンデー!スクランブル』の司会をしていた下平さやかアナウンサー、平石直之アナウンサーと、太田伸プロデューサーが参加しました。下平アナウンサーはアナウンサーの仕事について、「私がお話している時に、テレビの前では皆さんが聞いてくださっているということで、気持ちを共有できるという面白さがあります。一方で不正確なことを言ってはいけないという緊張感もあります」。平石アナウンサーは、「正確に、間違えないように、分かりやすくお伝えすること。そして見ている人の気持ちに、どこまで寄り添えるかを考えています。実は、アナウンサーの仕事で大切なことは時間の管理で、そのことにものすごくエネルギーを割いています」。太田プロデューサーは、「プロデューサーは番組のまとめ役です。『サンデー!スクランブル』は、生放送のニュースワイドショーで、事件の背景を探りながら、色々なものを全部突っ込んで面白い順に出していくテレビの特性によく合った番組です」などの話が出ました。
その後、中高生は4つのグループに分かれ、そこに委員と下平アナウンサー、平石アナウンサーなども参加して、情報番組の企画を考え、次のように発表しました。

  • A班は『ニュースとあるく』です。最初にニュースを放送してから旅番組を始めます。紹介する地域出身のゲストが地域のイベントやその地で頑張っている人を紹介します。テレビが見られない人のために、ラジオでも同時に放送します。
  • B班は、日々のニュースの中から分からない、難しい単語を説明する『ニュースの参考書』を企画しました。放送時間は水曜日と土曜日の22時からです。水曜日は週の真ん中だから、土曜日は明日も休みだから夜更かししても大丈夫だと思いました。
  • C班は地方活性化の力になりたいと、『うちの県にも来てくれ』という番組を考えました。工芸品や食とかイベントや景色を紹介します。毎日リレー方式で日本各地を紹介します。
  • D班は、『人生を豊かにする番組』を考えました。受験には役立たないだろうけど、人生を考えた時に大事になる情報を盛り込みます。例えばホームレスの方のお話を聞いたりして色々な生き方があることを伝えていきたいです。

4時間半に及ぶ会議の後、汐見稔幸委員長は「BPOは放送番組向上のための組織です。なかでも特に青少年委員会は視聴者の皆さんと放送局をもっと太いパイプで繋ごうということに力を注いでいます。それは、良い番組とは実は視聴者が作るものだからです。良い視聴者がいると良い番組ができていくのです。次の世代を担っていく若い人たちがどういうテレビ番組を良い番組だと思っているのか、どういう番組を作ってほしいと願っているのか、その声が放送局に届くことによって、番組は向上していくのだと思います。中高生モニターの皆さん、テレビ朝日の皆さん、今日は本当にありがとうございました」と語り、「中高生モニター会議」を締めくくりました。

第178回 放送と青少年に関する委員会

第178回–2016年2月23日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年2月23日に第178回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、1月16日から2月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、2月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は3月13日に中高生モニター会議と定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年2月23日(火) 午後4時30分~午後7時10分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 男性アイドルグループの解散問題、女性タレントの不倫騒動、元プロ野球選手の覚せい剤所持容疑での逮捕、などに関して視聴者からの意見が集まりました。委員からは「世の中に潜在的な不安があるので、刺激的な話題に過激に反応してしまう傾向があるのではないか」「週刊誌に出ていたSNSの個人情報を放送で紹介することの是非は、放送倫理上の論点の一つだ」「覚せい剤の使用方法を説明する場合、子どもに好奇心を持たせないように、表現方法の工夫が必要だ」などの意見が出ましたが、今後の動向に注意することとし、現段階ではこれ以上の議論は必要ないということになりました。

中高生モニター報告について

2月の中高生モニターは、「この1ヶ月程の間に見た番組の感想(バラエティー・クイズ・音楽)」というテーマで書いてもらい、27人から報告がありました。
新しい内容のクイズ番組を評価する報告を寄せてくれたモニターがいました。『優しい人なら解ける クイズやさしいね』(フジテレビ)…「この番組は学力や年齢の差に関係なく見ることができる。人の優しい気持ちや思いやりから生まれた行動が問題として出題されているので、うちでは一番年齢の低い弟がよく答えを当てる。心がポカポカ温まる内容で今までにない新しいクイズ番組だ」(埼玉・中学2年女子)。
音楽番組にも高い評価がありました。『Love music』(フジテレビ)…「生でアーティストの音楽を聴く観客の感動がこちらにも伝わってきて、自分も会場にいるかのように一体となって音を感じることができる。視覚的にも視聴者を飽きさせない作りになっている。アーティストやライブの雰囲気を一番に見せる究極のシンプル。これこそ今の音楽番組に必要なものではないか」(長崎・高校1年女子)。『亀田音楽専門学校』(NHK Eテレ)…「J-POPを分析してその魅力を分かりやすく楽しく講義する視点が素晴らしい。亀田さんの語り口と女子アナとの掛け合いも好印象だ」(東京・中学3年男子)。
人気のバラエティー番組にも意見が寄せられました。『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ)…「胸キュンスカッとのコーナーが大好き。中高生世代の恋愛体験談をドラマ仕立てで紹介する内容で、毎回胸をときめかせながら姉と一緒にキャーキャー叫んでいます」(神奈川・中学1年女子)。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)…「世界の話題の動画を再現してみるという企画はひとひねりしてあって、ロッチ中岡さんの真面目に取り組む姿勢がなぜか余計に笑える。この番組で汚い場面や痛そうな場面が時々あるがなぜか下品に感じない。出ているタレントさんの清潔感とスタッフのセンスなのかなと思う」(福岡・中学1年女子)。『ポケモンの家あつまる?』(テレビ東京)…「私には小1と小4の兄弟がいます。この番組は小1から中1までが楽しく見ることができる番組です。日曜日の朝8時から始まる番組なので、休みの日にまったりできます。レギュラー陣の選択もピカイチです」(兵庫・中学1年女子)。
一方、批判意見もありました。『有吉ゼミSP~潔癖男大集合&真冬の激辛祭り&新企画古民家カフェ作りが始動!』(日本テレビ)…「出演者が制限時間内に激辛料理を完食できるかを競い合うという内容だった。最近のテレビ番組では"体を張って罰ゲーム"といった企画が多いが、健康や安全まで侵すとはいかがなものか。そんなことで視聴率を取ろうとする最近のテレビ局は視聴者をなめすぎ、馬鹿にしすぎだ」(滋賀・高校2年女子)。
放送全般に関する意見もありました。「この1年、モニターを務めて分かったのは、テレビという媒体の影響力の大きさだ。インターネットで情報を得られる今でも、僕たちの年代でも興味のあるニュースはやはりテレビで見てしまう。もっとも放送内容が真実なのか首を傾げることも多々ある。これからは、テレビが変わることを期待するより、見る側の視聴者が賢く、必要な情報は何か、真実は何かよく見極めながらテレビと付き合っていかなければならないと思った」(東京・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】1年弱、問題意識を持ってテレビを見ていると、中高生の内面に自然とメディアリテラシーが育まれるものだ。テレビを見る側の視点から離れて作る側の視点でも考えたり、あるいはその番組が社会に与える影響まで推し量るなど、メディアのあり方を深く考えるようになっている。

  • (愛知・高校2年男子)タレントが番組内で不適切な発言をしてインターネットで炎上、バッシングを受けることがあるが、番組の編集段階などでしっかりと検証してほしい。出演者や事務所を含め様々な問題があるだろうが、やはりテレビ局には最終的に放送する責任を自覚し毅然とした態度で健全な番組制作をしてほしい。

  • (長崎・高校1年女子)以前に比べて、似たり寄ったりな全国放送のバラエティーが減った気がする。それぞれ自分の個性を存分に発揮できる内容を考えて番組を作ってくれているのだろうと感じる。私自身も"今日は何を見よう"と迷うことも多くなった。

●【委員の感想】世代の違う家族が集まって一緒に見て話題にできる番組を支持する報告が見られた。

  • (岩手・高校2年女子)『1周回って知らない話』(日本テレビ/テレビ岩手)。若い世代にとっては新たな情報で、40代以上の人にとっては懐かしい話として家族みんなで楽しく見ることができる内容だ。見終わった後も家族で会話を広げられる。

●【委員の感想】今回の報告の中に私の知らない番組がいくつも挙がっており、とても面白く読むことができた。制作者が新企画に挑戦する意気込みが、青少年にもしっかり受け止められているようだ。

  • (埼玉・中学3年男子)『沸騰ワード10』(日本テレビ)。この番組は今とても流行している言葉について、10のワードをもとに特集しています。ここで紹介された絶景ホテルにぜひ行ってみたいと思いました。

  • (宮城・中学3年女子)『あのニュースで得する人損する人』(日本テレビ/宮城テレビ)。毎週家族で見ながら、"ほんと?やってみよう!"とマネしてやってみています。この番組は日常生活で得する役に立つことを教えてくれるので、とても良い番組だと思います。司会者も説得力があります。

●【委員の感想】質のいいドラマの再放送が少なくなっていることが残念だという報告や、大好きなドラマを見逃したら放送後一定期間パソコンなどで見られる方法があるのはとてもよい、という意見もあった。

  • (鹿児島・中学3年女子)ここ数年の間に、各テレビ局で平日の夕方に過去のドラマや今放送中のドラマの前週分などの再放送をしなくなっているが、私は、それはとても寂しいことだと思う。ドラマを削った分が全て情報番組になっているが、同じような内容を繰り返し放送しているだけならば、過去の懐かしいドラマを放送した方がいいと思う。

  • (宮崎・高校1年女子)NHKの『あさが来た』は毎日見ている大好きなドラマだ。何度かBSで再放送してくれるのはとても嬉しい。また、民放のドラマやバラエティー番組などを見逃したら1週間無料でスマートフォンやパソコンで見ることができる。持ち運びができ、どこででも見られ、CMが少なく短時間で見ることができる。

●【委員の感想】自由記述欄に読み応えのある意見が多かった。

  • (兵庫・中学1年女子)NHK Eテレには優れた5分番組が数多くある。その番組内容は様々で、『Eテレ 0655』のようなセンスの良い番組や『ガールズクラフト』のような私たち女子中高生向けの番組、『まいにちスクスク』のような子育てに悩むお母さん向けの番組などジャンルも様々。5分番組でありながら、視聴者の気持ちをつかむ内容の濃さに驚かされる。5分間に賭ける番組を作っている人たちの知恵と工夫がとても感じられる。

  • (埼玉・中学2年女子)『池上彰緊急スペシャル!』(フジテレビ)。いわゆる「イスラム国」についての内容になった時、出演しているタレントたちが、自分が危ない立場に立たされると心配して発言を控えると思った。しかし、みんながしっかりした発言をしたので、すごいなあと思った。視聴者目線で恐れず発言していたので共感できた。

今後の予定について

  • 3月13日(日)にテレビ朝日の協力を得て開催する「中高生モニター会議」について最終的な企画案が事務局から提出され、内容の検討を行いました。

  • 来年度の中高生モニター約30人の募集についての報告が事務局からありました。今年度より少し多い応募者があり、3月中に決定し本人に通知することにしています。なお、来年度は中学1年生から高校3年生までに募集の枠を広げています。

  • 6月8日(水)にNHKを含む在新潟テレビ・ラジオ7局との意見交換会を開催することが決まりました。

  • 秋に留学生との意見交換会を開催することが決まりました。

第177回 放送と青少年に関する委員会

第177回–2016年1月26日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年1月26日に第177回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。6人の委員が出席しました。まず、12月16日から1月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、1月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は2月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年1月26日(火) 午後4時30分~午後6時40分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 「深夜に生放送されたテレビ番組に子どもが電話で出演していたが、違和感を覚える」という視聴者意見について、委員からは「深夜帯における児童の視聴や番組への参加に関しては、法律的な問題というよりも、視聴環境や家庭環境の問題でもあるので、保護者側にも配慮をお願いしたいところだ」という意見がありました。
    〔参考〕「青少年と放送」問題への対応について 日本民間放送連盟 放送基準審議会(1999年6月17日)
    5.放送時間帯の配慮 (抜粋)なお、21時以降および休日の児童および青少年の視聴については、その保護者の方々にも一定の責任を担うことをお願いしたい。

  • 「大晦日恒例のバラエティー番組は、不適切な内容や暴力的内容の度が過ぎている」という視聴者意見について、委員からは「今回の放送内容には、特に問題は感じなかった。子どもたちの場合、内なる攻撃的エネルギーがテレビを見ることで代りに消化されスカッとした感情を抱くようになることもある。もちろん程度問題だが、大人の理解も必要だ」という意見がありました。

  • 「滑舌の悪さや吃音を笑いのネタにしていた。これらは生まれついての身体的な問題の場合が多い。そのような人たちをバカにしているように感じた」という視聴者意見について、委員からは「身体的な問題を揶揄してはいけない。苦しんでいる人たちへの配慮がほしかった」という意見がありました。

中高生モニター報告について

1月の中高生モニターは、「年末年始番組を見た感想」というテーマで書いてもらい26人から報告がありました。
ただ漫然と進行する内容を批判する意見が寄せられました。「年末年始は、とにかくダラダラ進むバラエティー番組が多いのが気になる。いつものお笑い芸人さんがどのチャンネルにも出ていて魅力的な番組が少なかった」(神奈川・中学1年女子)。
定番の特別番組に対する厳しい意見もありました。『アメトーーク!! 5時間SP』(テレビ朝日)…「毎年同じような企画をやっていて、飽きる。好評な企画以外は別の企画にするべき」(石川・中学1年男子)。「運動神経の悪い芸人を笑う企画は、所詮、人の能力の欠如を笑っているだけで、あまりレベルの高い笑いではないと思う。全体的に、今回は期待よりも面白くなかった」(新潟・高校2年女子)。『絶対に笑ってはいけない名探偵24時!』(日本テレビ)…「鬼ごっこの終わり方や内容が毎年ほとんど同じなので別のパターンも考えてほしい。有名人への扱いが少しひどいと思う。罰もきつすぎるのがあるので考えた方がいいと思う。放送時間も日付が変わるまでには終わってほしい」(千葉・中学1年男子)。
『紅白歌合戦』(NHK)にも批判がありました。「歌手のジャンルが偏り過ぎ、トリの2人の歌手の選考にも疑問があった。1年の締めくくりという大晦日でここまで面白みのない番組を見るのは非常に残念だった」(千葉・中学3年女子)。「歌の時にステージの上にとにかく人が多すぎる。騒がしいし目がチカチカする。細川たかしさんの演歌の時のバックダンサーの踊りがふざけすぎている、と祖母が怒っていた」(福岡・中学2年女子)。
一方で、丁寧に作られた企画には賛辞が寄せられました。『2015伝言SJCみやぎ年末スペシャル!』(東日本放送)…「番組を通じて改めて2015年の宮城県の出来事を思い出した。視聴者から寄せられた大切な人への温かいメッセージの紹介もとても良かった。震災から5年、皆明るい未来に向けて進み続けており、仙台市も、うみの森水族館や地下鉄東西線を作り震災前に等しい観光客を呼び込もうとしていることを知った」(宮城・中学3年女子)。『坊ちゃん』(フジテレビ)…「長い小説を的確に解釈して簡潔にまとめて、セリフやセットも忠実に再現できる番組制作者の腕には驚かされた」(山梨・高校2年男子)。『赤めだか』(TBSテレビ)…「昭和の温かみのある雰囲気と平成に通ずる人間の本質の愛しさを感じる作品だった。ストーリーも面白かったが配役も絶妙で最後の最後まで楽しめた」(神奈川・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】モニターの意見の中に、報告を書く経験を積み重ねるうちに、テレビ番組を違った角度や離れた位置から見ることができるようになった、という内容を読み、とても嬉しく思った。中高生で自主的にそういう意識が持てるのは素晴らしい。

  • (埼玉・中学2年女子)中高生モニターになり、テレビを見る時、視聴者目線で見るのと、制作側であるテレビ局側から見てみるのと、双方からの意識を持って見ることを心がけると、気づいたことがたくさんあった。

  • (千葉・中学3年女子)私は、『箱根駅伝』(日本テレビ)の中継をずっと見ていた。改めてよく解説を聞いていると解説者の「プロ魂」のようなものを感じた。普段は面白いかどうかで評価していたが、番組制作に携わっている人を考えると、違う視点からテレビを見るのも面白いかもしれないと思った。

●【委員の感想】今の中高生が『紅白歌合戦』(NHK)に多くの期待を抱いて見ているということが意外だった。ただし、批判意見と改善提案は、それぞれ実に多様な意見が出され、番組の見方や期待する内容のばらつきを感じた。

  • (鹿児島・中学3年女子)さすがと思える貫禄の番組セットだったが、出場歌手の選考に疑問を持った。仮の出演者一覧を公開して、視聴者に票をいれてもらうのはどうか。

  • (東京・中学3年男子)紅白を録画しながら、ザッピングしていろいろな番組を見ていた。すべての年代が共通して楽しめるものが少なく、見たいところだけ見るようになってしまう。いっそのこと前半は子どもから若者向け、後半はシニア向けとバッサリ分けて2部構成にしてしまってはどうだろうか。

●【委員の感想】放送に携わる人たちが持たなければならない倫理観を厳しく追及している報告があった。

  • (愛知・高校2年男子)テレビ局のアナウンサーが逮捕された報道を目にした。特に報道番組など公正が求められ内容を信頼している番組の出演者が罪を犯すのは非常に残念というより、まるで人間不信に陥りそうな恐ろしい感覚になった。

●【委員の感想】意欲的な企画の番組を見て大変優れた感想を述べたモニターがいた。

  • (岩手・高校2年女子)『新春テレビ放談2016』(NHK) 。1年間に放送された中で面白かった番組をジャンル別にランキングし、そのヒットの理由などをパネリストが分析するという番組。NHKで主に民放の番組を取り上げ討論している様子は不思議で少し違和感があった。しかしテレビよりも魅力的なものが増えてきた中で存在を保つには何か新味やインパクトが必要で、規制で固められている現代ではなかなか難しい。批判や違和感があってもすぐに規制に走るのではなく、長期的に見守ったり、見る番組の選択を視聴者に任せたりすることも必要だ。

●【委員の感想】東日本大震災の被災者の中にはとてもテレビ番組を笑って楽しめない心境の人々もまだ多くいる。中高生がそういう人々の思いを推し量り洞察の深い報告を書いている。被災地の中高生の心の中を慮り我々も心に留めておかねばならない。

  • (宮城・中学3年女子)『2015伝言SJCみやぎ年末スペシャル!』(東日本放送)。出演した日本の女性レゲエ歌手lecca(レッカ)の仙台三桜高校の学生に対する思いや歌声に感動した。この番組で、県下の復興の最新の様子がとてもよく分かって、仙台市の新設された地下鉄にも是非とも乗りたくなった。宮城県の住民への温かい応援メッセージが一杯のこの番組が2016年にも放送されることを期待している。

今後の予定について

  • 3月13日(日)にテレビ朝日の協力を得て開催する中高生モニター会議について企画案が事務局から提出され、内容の検討を行いました。

  • 来年度の中高生モニター約30人の募集が始まった報告が事務局からありました。来年度は中学1年生から高校3年生までに募集の枠を広げました。募集の締切りは2月19日(金)です。

その他

  • 来年度の青少年委員会の日程や意見交換会開催について話し合いました。

第176回 放送と青少年に関する委員会

第176回–2015年12月22日

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』の「委員会の考え」公表について報告…など

12月22日に第176回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、12月9日に公表した『ざっくりハイタッチ』の「委員会の考え」について事務局から事後報告があり、関連して日本民間放送連盟放送基準などについての確認が行われました。次に、11月16日から12月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、12月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は1月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年12月22日(火) 午後4時30分~午後7時20分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』について(報告等)

●12月9日に公表したテレビ東京「『ざっくりハイタッチ』赤ちゃん育児教室に関する"委員会の考え"」について、事務局からテレビ東京の事後対応などの報告と、関連する日本民間放送連盟(以下民放連)放送基準(18)の解説文にある、いわゆる「午後5時~9時」問題について以下のような説明がありました。
1998年12月に、郵政省(現総務省)放送行政局長の私的懇談会として設置された「青少年と放送に関する調査研究会」が7つの提言を行い、5番目に「放送時間帯の配慮」が謳われ「放送事業者自身が自主的に放送時間帯の設定を行うことが適当である」としました。
民放連は1999年1月に放送基準を改正し「(18)放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する」を付け加えました。
同時に郵政省・NHK・民放連共同で「青少年と放送に関する専門家会合」を発足させ協議し、1999年6月に取りまとめを公表しました。その中で「昨今の中学・高校生については、視聴時間帯が大人と大差ない実情にあり、さらにビデオ録画視聴も普及している状況から、時間帯の設定だけでは青少年の保護が十分ではなく、それ以外の時間帯へも放送事業者が、十分に配慮していくことが求められる」「児童・青少年が安心して視聴できる具体的な時間帯として17時~21時を定めることとする」としました。
これを受け1999年6月に民放連放送基準審議会が『「青少年と放送」問題への対応について』を公表し、民放連放送基準の新設条文(18)を順守徹底することと、具体的時間帯の設定として(18)の解説に「テレビでは午後5時~9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」を付け加えることにしました。
このように「午後5時~9時」問題は、単にその時間だけ「とりわけ児童の視聴に十分配慮する」のではなく、「青少年と放送に関する専門家会合」の取りまとめにあるように「時間帯の設定だけでは青少年の保護が十分ではなく、それ以外の時間帯へも各放送事業者が、十分配慮していくことが求められ」ています。
なお、NHKでは、「放送ガイドライン2015」 2 "放送の基本的な姿勢"の (4) 品位と節度【性】の項目に「青少年が視聴する時間帯などに十分留意する」とあり、NHK国内番組基準(制定 昭和34年7月21日、改正 平成10年5月26日)第11項 "表現"では「8 放送の内容や表現については、受信者の生活時間との関係を十分に考慮する」となっています。

これまでに青少年委員会は、青少年の視聴時間帯に関して以下のような「見解」などを公表しています。

◇「バラエティー系番組に対する見解」(2000年11月29日)で「最近は生活習慣の変化により11時台でも小中学生がテレビを見ており、まして子どもに人気のあるネプチューンによる番組となると一層の配慮が必要である」

◇『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』に関する委員会の考え(2014年3月10日)「『民放連・放送基準審議会「青少年と放送」問題への対応について』(1999年6月17日)(中略)においては、"17時~21時に放送する番組については、児童および青少年、とりわけ児童の視聴に十分、配慮する"としていますが、その前提として、"放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する"(民放連・放送基準第18条)を順守徹底することが求められています。
これは、各時間帯に応じて段階的に児童および青少年の視聴に十分な配慮が必要であることを意味し、21時を過ぎれば、児童および青少年の視聴に配慮する必要がなくなるわけではないことを十分に認識していただきたいと思います」

◇ "深夜帯番組の性的表現"に関する「委員長コメント」(2015年1月8日)「深夜であるからある程度の大胆な性的表現も許されるという規定は、実はない。民放連・放送基準の第18条には『放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する』とあり、解説に"テレビでは、午後5時~9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する"とあるが、これは、午後5時~9時以外は大胆な性的表現は許されるということを意味していない。要するに深夜帯の番組での性的表現については、制作者がこれまでの慣行で、それ以外の時間帯よりも基準を緩和してもよいと理解し放送していると思われる。
私自身は、そうした形で、深夜帯の番組は、それ以外の時間帯よりも性的表現の基準を緩めて適用することすべてをダメだと考えているわけではない。(中略)深夜帯の番組における性的表現についての基準が明確な形では存在しないことが背景にある。しかし、だからといってそうした基準を多様な関係者の議論を経ることなく拙速に作成しても、それがわが国のテレビ番組の内容を向上させる方策になるとは考えにくい。(中略)放送の公共的責任についての自覚を持った上で、該当局だけでなく、各局においても、深夜帯番組における性的表現のあり方について速やかに議論を行っていただくようお願いすることにした」

視聴者意見について

  • 子ども向けアニメ番組で「親として子どもに見せたくない不快な表現があった」という視聴者意見について、委員からは、「親の深読みだろう。制作者も十分配慮していると思う」という意見が出ました。
  • 「猟奇的な暴力シーンが多く驚いた」という視聴者意見のドラマについて、委員からは「主人公が縛られ、いたぶられていたが、全体のメッセージ性との関連で暴力を助長しているとは感じられなかった」という意見が出ました。
  • 「BPOホームページなどに出た視聴者からの意見を読んで、それをBPO青少年委員会の考えだと勘違いしている人がいるようだ。言論の自由の立場から意見を表明するのは大切なことだが、青少年委員会がこれまで公表している『見解』や『委員長コメント』『委員会の考え』などをしっかり読んで真意をくみ取ってほしい」という意見が出ました。

中高生モニター報告について

12月の中高生モニターは、「日本民間放送連盟賞 2015年 特別表彰部門 〔青少年向け番組〕入選番組の感想」というテーマで書いてもらい31人から報告がありました。
今回受賞した番組は、テレビ山梨が制作し、2015年5月27日(水)20:00~20:45に放送された『ウッティ発!アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ集落再生人』です。
この番組は、少子高齢化が進む山梨県三郷町山保を舞台にしています。この地域はかつて国内シェア85%を占めた桑の品種「一瀬桑」の発祥の地。縁もゆかりもないこの集落に飛び込んだ韓国人ハン・ソンミンさんと妻の楠三貴さんは、使いみちのなくなった一瀬桑を利用した「桑の葉茶」で集落を活性化させ、若者を増やしたいと努力してきました。この夫婦の奮闘の4年間を追いかけたドキュメンタリーです。
今回は、中学3年生以上のモニターが大変詳しいリポートを書いてくれました。「どこの村でも今問題の少子高齢化と後継者の減少問題を柔らかくかつ真正面から取り上げていた。学べることが多く含まれていて全く飽きなかった」(鹿児島・中学3年女子)。「番組に描かれた地域の問題は首都圏にいる私たちにはなかなか接する機会がありません。是非、より多くの人にこの映像を見ていただきたいと思える素晴らしい内容でした」(神奈川・高校2年女子)。「山梨県の高校生モニターとして責任感を感じながら視聴した。地域密着型山梨発のベンチャー企業は聞いたことがなく目新しさ、新鮮味もあった。テレビ山梨のさらに面白い番組作りを期待している」(山梨・高校2年男子)。
ローカル番組を全国放送してほしいという意見も多数ありました。「このような良き番組が一ローカル番組として終わるのはもったいない。年に一回、地域で放送されたローカル番組の中で面白かったものに投票してもらい、最多得票番組を全国放送するということは可能だろうか」(長崎・高校1年女子)。「地方放送局の制作番組もすぐれたものは全国放送する~放送局は、1つの"流行"や人気となった番組に便乗するだけでなく、多くの人に意図せず容易に大切なメッセージが伝わる番組を大切にするというスタンスを忘れないでほしい」(岐阜・高校2年男子)。
中学生のモニターの中には、番組に登場した中学3年生に自分の生活を投影して報告を書いてくれた人がたくさんいました。「僕は自分と同じ年齢の長田君に注目して番組を見ました。未来をシンプルに語った彼ですが、僕は高校受験を目の前にして将来に対する夢と不安を抱えています。地方に住む青少年のためにももっと国を挙げての根本的な政策や事業での改善が必要ではないでしょうか」(東京・中学3年男子)。「農業に興味を持って手伝っている中学生を、凄くて大変大人だと感じました。都会の中学生だとあのような行動や発言をできる人はめったにいないと思います」(神奈川・中学1年女子)。
他方、批判も寄せられました。「良質で真面目な番組だからこそ、単なる娯楽としてテレビを楽しむ視聴者層を取り込むのはなかなか難しいだろう。シリーズ枠内ではあるが単発ドキュメンタリーは非常に難しい挑戦だと思う」(愛知・高校2年男子)。「日常でバラエティー番組などを見る人にとってはちょっとゆる過ぎる内容では。ハンさんのような人を紹介すべきとは思うが視聴率とのバランスが難しいのではないか」(大阪・高校1年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】今回の報告は1つの番組を見た感想というテーマで書いてもらっただけに、中高生モニターの日頃の読書量や物に向き合う姿勢が反映されていたと思う。非常に素晴らしい深い見方をしているモニターもいた。

  • (鹿児島・中学3年女子)ハンさんは日本人ではないが、とても日本人らしい人で、それがテレビを通して伝わってきた。4年という長い期間、ある人だけに焦点を当て続けることができるのは、地方局ならではだと思った。

●【委員の感想】今の中高生が意外にも過疎化している地方と都会のギャップを認識し身近な問題として受け止めていることがよくわかった。番組のメッセージもしっかり伝わっているようだ。

  • (長崎・高校1年女子)休日のお昼過ぎにドラマの再放送があるくらいだから、ローカル番組を全国で放送することは決して不可能なことではないと思う。これにより視聴者がその地域への関心や興味を持ち、実際に訪れたり移住したりすることで、過疎化や高齢化などその地域が抱える問題の解決にも十二分に役に立つはずだ。全国に情報を届けることができるテレビだからこそできる試みだ。テレビが日本全体を活性化する。それができるようになった日本は、きっと明るい。
  • (宮崎・高校1年女子)ハンさんのおかげで、集落が活性化し、これから若者が増えるのではないか。この番組を見て、これから私は"誰かのために"何かをしたいと思った。新しいことが見えてきて、今までやっていたことがさらに楽しく感じるかもしれない。最後にハンさんが言っていた。「この世を動かす力は"希望"である」と。

●【委員の感想】4回も見たモニターがいた。報告内容も大変濃い中身で、今の中高生の中にはしっかりした考えを持っている子どもたちも多いのだと心強く思った。

  • (青森・中学3年男子)まさか普段あまり見ないドキュメンタリー番組を4回も繰り返し見るとは思わなかった。見終わったあと、本当に素晴らしいという感想しか出てこなかった。良い所の1点目は、ハンさんと桑の生産者が腹を割って行った会議の風景を撮影できていたこと。しかもカメラが会議の邪魔になっていなかった。2点目は、運動会の入場シーン。小学生の入場と老人クラブの入場を対比することによって一目で少子高齢化の様子が分かるという構成には、本当に驚いた。僕はこのようなドキュメンタリーがもっと見たい。

●【委員の感想】番組のPRやプロモーションの方法、放送枠まで提案しているモニターもいた。

  • (愛知・高校2年男子)この番組名が、新聞に載ったりテレビで予告放送された時、どれほどの視聴者の心をつかめるだろうかと考えた。例えば、この番組をテレビドラマ化し、人気のタレントを出演させ、その後に"モチーフとなった実話"としてこのドキュメンタリーが放送されるとか、毎週放送される週末夜の報道番組の特集などで扱われるのであれば視聴者ももっと入りやすいのではないか。

●【委員の感想】今回の自由記述欄の中にハッとさせられる意見があった。放送局としても今後意識し検討すべき事柄だと思う。

  • (東京・中学3年男子)高齢者の犯罪報道が最近多い。お年寄りの中には認知症の影響などで、気性が激しくなったり異常な行動をしてしまったりするケースもあるだろう。未成年は実名報道しないのだから、高齢の犯罪者も罪が軽い場合は実名報道しないよう放送局が自主規制するとか、高齢化社会の日本ではもう少しお年寄りの犯罪報道も考えた方がいいのではないか。

今後の予定について

  • 3月13日(日)開催の中高生モニター会議について企画案が事務局から提出され、内容の検討が行われました。担当は菅原委員と決まりました。なお、今回はテレビ朝日の協力を得て行う予定です。
  • 来年度の中高生モニター約30人を1月20日から募集することにしました。

その他

  • 今年度の調査研究について菅原委員から、先日行われた立命館守山高校での意見交換会のアンケートを基に、調査研究の基礎データを今年度中にまとめるとの報告がありました。
  • 12月11日に放送人権委員会が通知・公表した「出家詐欺報道に対する申し立て」について、事務局から説明がありました。
  • 民放連の「青少年に見てもらいたい番組」と、青少年委員会の「青少年へのおすすめ番組」について、事務局から説明がありました。

第175回 放送と青少年に関する委員会

第175回–2015年11月24日

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』の審議「委員会の考え」を公表することで審議を終了…など

11月24日に第175回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、前回から継続の1事案について審議しました。次に、10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、11月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
なお委員会に先立ち、在京7社25人と委員との「インターネット情報の取り扱いについて」をテーマにした意見交換会・勉強会を開催しました。【詳細はこちら
次回は12月22日に定例委員会を開催します

議事の詳細

日時
2015年11月24日(火) 午後4時30分~午後6時20分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』の審議

●「"赤ちゃん育児教室"と題し、芸人がおむつ着用で寝転がり、そのおむつを脱がせたり(画像処理はしてある)、セクシー女優がローションで刺激させ男性器を反応させたりしていた。こんな下品なことを公共の電波で流すことはひどい。育児とは苦労の連続であり、子育てとエロ・下品を結びつけないでほしい」という視聴者意見があった『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京、9月12日25時15分から30分間)について前回審議入りし、当該局に11月9日付で質問状を送り回答を求めました。今回、11月18日付で提出された「回答書」を基に審議しました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 深夜番組での仲間内の悪ふざけだ。視聴率も高くなく青少年に悪い影響を与えるとも思われない。相当程度に下品ではあるが、「表現の自由」を考えた時に価値判断にかかわることに関しては謙抑的でありたい。これ以上段階を進める必要はない。
  • 過去の類似シーンに関する “青少年委員会の指摘"を全く知らなかったのは問題だ。
  • なぜこのような番組が作られたのかそのプロセスを知りたいと思った。かなり多くの人が録画視聴しているという現状を考えれば、深夜だから許されるとは一概に言えない。社内での議論を深め具体的な行動を示してくれれば、これ以上審議の必要はない。
  • 類似事例が過去にあったのに、考査担当者が失念していたというのは脱力感を覚える。
  • 局側の担当者が何人いてその責任体制がどうなっているのかがよく分からない。
  • 品が有る無しに関しては個々人の受け取り方だ。制作に携わったプロダクションの人たちが、これまでの"青少年委員会の指摘"を共有していなかったことと、現場は何でもやりたいもので、それを管理する立場にある人が歯止めをかけられなかったところに問題がある。
  • 番組制作における当該局のイニシアチブが弱いのではないか。番組制作のプロセスに考えるべき点がある。

審議の結果、「委員会の考え」を公表することで審議を終了することにしました。【詳細はこちら

視聴者意見について

●ドッキリ番組で「X線検査のためのバリウムにウオツカを入れて飲ませていた」という視聴者意見について話し合いました。「もし本当にウオツカが入っていたら医療関係者は許可しないはずだ。逆にウオツカが入っていなかったとすれば番組制作上問題がある」「医学的な問題もあるが、視聴者にはウオツカ入りのバリウムを飲んだように見える。見ている人たちがどう思うかが問題だ」などの意見が出ましたが"ボーダーライン上の演出だ"として討論には入らないことにしました。

中高生モニター報告について

11月の中高生モニターは、「この半年の間に見た番組の感想(ドラマ・アニメ)」というテーマで書いてもらい26人から報告がありました。
連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)に関して複数のモニターから、とても面白く、毎朝楽しみに見ているという報告が寄せられました。「実在の人物のストーリーだから歴史の勉強にもなるし役者さんの演技もうまいから、毎朝学校へ行く前にとても楽しく見ている」(東京・中学1年女子)。「お互いを思いあう主人公姉妹の気持ちがとてもよく表されていて、それぞれの未来を信じ奮闘する姉妹の今後を楽しみに期待して毎日見ている」(京都・中学2年男子)。
また、人気ドラマを支持する意見も寄せられました。『下町ロケット』(TBSテレビ)…「見ていてとても頑張ろうという気持ちになれる。夢に向かって大きな壁に果敢にぶつかっていく姿は本当にかっこいい。日本を支えてきた中小企業の未来について真剣に考えてみるいい機会になると思う」(神奈川・高校2年女子)。『科捜研の女』(テレビ朝日)…「科学捜査をテーマにしたいつ見ても面白い番組。専門的な内容も頻繁に登場するが、図やCGなどを使って丁寧に説明されている。全体を通して分かりやすく飽きさせないような多くの工夫が伝わってくる完成度の高い番組」(岐阜・高校2年男子)。
アニメに関しても温かい報告が寄せられました。『ちびまるこちゃん』(フジテレビ)…「日曜日の夕方は何となく嫌な気分になるけれど、この番組を見ている間は、楽しくいやされます。これからもずーっと見たいアニメです」(宮城・中学3年女子)。『Free!』(新潟放送)…「素晴らしい特徴がいくつかある。まず、スポーツアニメなのに人間関係や絆に焦点を当てている点。次に映像の美しさ。このアニメを見ると他のアニメが見られなくなるほど美しい。次にキャラクターの描き方。細かく性格が設定されていて人間味があり、いとおしい。とにかく演出が素晴らしく、カメラのアングルや焦点の当て方、小物の色や花言葉使い、BGMに至るまで登場人物の心情をあらわす工夫に満ちている」(新潟・高校2年女子)。
今回は自由記述欄で、最近の報道内容を受けて、BPOの活動やテレビ番組全般に関する意見を書いてくれたモニターもたくさんいました。「新聞の一面トップにBPOのことが載っていたので、僕もモニターとして興味深く読んだ。政府・与党が介入したことに対するBPO側からの意見がこれだけ大きくとりあげられたのは今回が初めてではないか。僕たち世代がテレビから受ける影響はとても大きい。だから、番組制作者は今後も圧力に屈せず放送の自由と自律を守ってほしいし、もちろん過度な演出で事実を歪曲させたり個人を傷つけたりすることのないようにしてほしい」(東京・中学3年男子)。「この前『学校へ行こう』(TBSテレビ)を家族みんなで見た。とにかく面白かった。昔はいい意味でむちゃくちゃな番組が許されていたことを羨ましく思う。だんだんテレビの内容が安全面とか規制とかを気にし過ぎてつまらなくなってきている。私は昔のような新鮮味があって斬新な番組が見たい」(埼玉・中学2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

【委員の感想】ドラマ、アニメがテーマということで、強く支持する意見がある一方で手厳しい批判も見られた。

  • (埼玉・中学2年女子)『恋仲』(フジテレビ)。王道ラブストーリーで確かに私たちと同年代の女子が好きなドラマではあったが、展開や結末がありきたりで新鮮味が感じられないとも思った。大体の内容が読める展開だった。
  • (愛知・高校2年男子)『花燃ゆ』(NHK)。吉田松陰の死後は、残念ながら現代的な脚色が強い感じがして、見ていてわくわくする場面がだんだん減ってしまった。替わって主人公となった吉田松陰の妹、久坂美和が有名でないから資料が少なく脚本家による演出が強くなってしまうのだろうか。また構成はといえば、例年同じで、頭に1分ほどの導入部、次にオーケストラによるオープニングとスタッフクレジット、それからドラマ本体、終わりが次回予告、最後に関連する名所・史跡案内で終わる。大河ドラマの歴史が長い分、番組の流れがテンプレート化しているようで、進歩を感じさせない。

【委員の感想】今回はほとんどの報告をとても楽しく読んだ。自由記述欄にも読みごたえのある意見が多数あった。

  • (神奈川・中学1年女子)最近、ネットの動画をそのまま紹介する番組が多くなってきている。なかには、いかにも「これは嘘でしょ…」というような物を本物であるかのごとく紹介している場合もある。公のテレビ番組という立場からは、取り上げるネタは果たして視聴者皆に見せることに適しているのかどうか考えてもらいたい。
  • (神奈川・高校2年女子)現在どの時間帯に何を放送するかの大枠は決まっているようですが、これを取っ払ってみてはどうでしょう。たとえば、17時から19時の枠はどこもイブニングニュースショーをやっています。テレビ離れなんて言われることもありますが全くそんなことはないと思います。ただ、見たいものが見られる時間にやっていないから、テレビ以外のものへ興味が行ってしまうのです。時代に合わせて今までのものを変えるという流行り(はやり)な感じは、私は正直苦手ですし何でもかんでも変えることはないと思います。でも、従来の決まったものを壊していくというのも嫌いではないです。

●【委員の感想】ドラマ番組を温かく評する一方で、テレビ番組制作現場の"ゆるみ"を鋭く指摘している報告には、ハッとさせられた。

  • (福岡・中学2年女子)『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(フジテレビ/テレビ西日本)。好きなアニメの実写化だったので不安な気持ちで見たが意外に良かった。身近な他の人の感想も良かったというものが多かった。俳優陣の熱演が良かったと思う。全員名前も知らない新人の俳優だったが一生懸命さが伝わってきて感動した。今のテレビは同じ人ばかりで見る気がしない。1週間のうち何度も同じ司会者、同じ俳優、バラエティーのゲストもいつも同じ人。見飽きた。

●【委員の感想】マルチデバイスと連動した、新しいシステムを含んだ番組を挙げたモニターもいた。

  • (神奈川・高校2年女子)『HiGH&LOW』(日本テレビ)。今季のドラマでまだ三話しか放送されていないが、映像のクオリティーが高くアクションもとても迫力があって面白い。また、Instagramと連動しているという新しい企画でもあり、携帯を眺めながらドラマを見る、というのがとても楽しくていい。

●【委員の感想】物語の展開を長い時間をかけて、じっくり丁寧に見たいというモニターがいた。潜在的にそういう欲求を持っている視聴者は多いのではないか。

  • (長崎・高校1年女子)ドラマやアニメなど、昔は1クールに収まらないものも多くあったという。今は、NHKの朝ドラを残して、他の局のドラマはすべて1クールである。朝ドラの視聴率が毎回高いのは、やはり主人公の人生を子どもの頃から追うことができるし、一人一人の生き方をクローズアップできるため、視聴者である私たちも主人公たちに親近感が湧くからだと思う。1クールのドラマは、物語の初めから結末までの展開が目まぐるしく、主人公については掘り下げることができるが、他の人物についてのストーリーがほんの少ししかないので、身近に感じることができず、あまり登場人物たちが迎えるその後への興味がそそられない。また、現在でも、人気のある作品は間を空けて続編が放送される場合もあるが、あまりに時間が空きすぎているため、もともと見ていた視聴者をリピーターとして確保できないのである。

今後の予定について

  • 10月30日に、立命館守山高校の1年生と2年生およそ300人と、青少年委員会から汐見委員長、最相副委員長、稲増委員、朝日放送からテレビ制作・ラジオ・報道担当者とアナウンサーが参加して「青少年との意見交換会(立命館守山)」を開催しました。司会を担当した稲増委員は、「高校生と放送局と青少年委員の三者による意見交換は、初めての試みであり良かったと思う。バラエティー制作者の話は説得力があって面白かった。高校生にいきなり放送について意見を語らせるのはちょっと難しかったかもしれない。今後はもっと少人数での対話でも良いかもしれない」、最相委員は「ラジオを聴いている人がほとんどいなかったのはショックだった。ラジオはリスナーや出演者が番組とともに成長していくものだ。ラジオの良さをもっと知ってほしい」、汐見委員長は「タブレットを使いながらの意見交換というとても貴重な体験ができた。今後もメディアリテラシー構築の一環として続けていきたい」とそれぞれ感想を述べました。【詳細はこちら

その他

  • 11月6日に検証委員会が通知・公表した「NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見」についての報告とその後の反響について事務局から説明がありました。

第174回 放送と青少年に関する委員会

第174回–2015年10月27日

テレビ東京『ざっくりハイタッチ』の"芸人のおむつ交換の企画"など審議入り…など

10月27日に第174回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。5人の委員が出席しました。まず、9月16日から10月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論し審議入りすることを決めました。そのほか、10月の中高生モニター報告、調査研究、今後の予定について話し合いました。
次回は11月24日に在京局との意見交換会・勉強会と定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年10月27日(火) 午後4時30分~午後6時45分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員

視聴者意見について

●「"赤ちゃん育児教室"と題し、芸人がおむつ着用で寝転がり、そのおむつを脱がせたり(画像処理はしてある)、セクシー女優がローションで刺激させ男性器を反応させたりしていた。こんな下品なことを公共の電波で流すことはひどい。育児とは苦労の連続であり、子育てとエロ・下品を結びつけないでほしい」という視聴者意見があった『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京、9月12日25時15分から30分間)について委員全員が番組を視聴し討論しました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 深夜の時間帯ではあるが、人気芸人が出ているだけに、録画やネットで子どもたちが見ることもあるだろう。子育てを愚弄しているとは感じなかったが、不快感が残る。女性のマッサージのシーンは性的な問題があると思う。
  • やり過ぎとしか言いようがない。テレビ局は面白ければ良いと考えているのだろうか。子どもたちのいじめにも繋がる可能性がある。
  • 不快で、下品な番組だと思った。しかし青少年委員会で主観的な判断部分の線引きができるかどうかは難しい問題だ。ただ、社会的に悪影響があると考えるなら何らかの形で注意を促す必要はあると思う。
  • 芸人同士のおふざけをテレビで放送する場合、テレビ局がどれだけコントロールできているのか。また、このような内容の番組を放送することは放送局のイメージダウンに繋がると思うが、どのような経緯で企画・制作・放送されたのか聞いてみたい。
  • このような放送を続けていると、やがては公権力が介入し自由な番組作りができなくなる恐れもある。以前「中年男性のおむつ交換シーン」に関して"委員会の考え"を公表しているが、その時よりひどい内容になっている。当該放送局は青少年委員会のこれまでの審議をどう捉えていたのだろうか。聞いてみる必要がある。

討論の結果、審議入りし質問状を当該放送局に送って回答を求め、次回委員会から実質審議に入ることにしました。

●「ぬいぐるみのウサギを幼児が殴るアニメがあった。子どもが怖がっていた」という視聴者意見があったアニメ番組について話し合いましたが、全体として問題はないと判断しました。

中高生モニター報告について

今回は、9月と10月の中高生モニター報告を掲載しています。
まず、9月の中高生モニター報告は、「番組企画を考えてください」というテーマで書いてもらい29人から報告がありました。様々な企画を中高生ならではの視点から考えてくれました。
今回目立ったのは、TwitterやLINEなどSNSを駆使して多くの情報を取り、双方向で視聴者が生で参加できる番組が見てみたい、という意見でした。「『双方向クイズ クイズタイムトラベラー』…視聴者も参加できる「双方向番組」である。少し前まではよく放送していた双方向番組だが、なぜか今はあまり企画がない。私は放送されたら是非見るし、参加する」(鹿児島・中学3年女子)。「『朝の15分ニュース -LIVE ライブ-』…TwitterなどのSNSと連携して、視聴者の意見をリアルタイムで番組制作サイドに届けられるようにすることで、番組の良い点、悪い点を次回の放送に活かしていくような番組」(埼玉・中学3年男子)。「『家族みんなで!世界のテーマパーク巡り』…毎週、家族で楽しめる世界のテーマパークを巡り、有名な所から、そうでない所まで幅広く紹介する。また、毎回Dボタンを使って視聴者参加型クイズを行う。赤青黄緑の四択で、一番投票数の多かった答えを視聴者の答えとし、その正解数で泊まるホテルのランクが決まる」(千葉・中学2年女子)。
また、大変ユニークな企画も寄せられました。「『これって、何のためにあるの?~モノの表記編~』…私が作ってみたい番組は、ジュースや牛乳、お菓子の袋などに記入されている"表記"についてです。それぞれ違う表記を集めてその意味を映像と共に伝えていくという内容です。家族で一緒に見て楽しめる番組がいいです」(兵庫・中学1年女子)。「『Hello, World!』…Android やIOSのモバイルアプリ開発やWebサービス、映像編集やゲーム開発などを学べる番組があるといい。アプリなどの作り方を伝えるだけでなく、視聴者が作ったオリジナル作品を番組内で紹介したり、必要に応じて素材を番組ホームページで配布したりするなどして、オリジナルの作品を作りやすくする」(岐阜・高校2年男子)。「『動画の裏側』…いつも見ている動画がどんな機材を使い、どのような工夫をして動画を撮影しているのかを、細かな説明つきで教えてくれる番組。いつも見ている動画が、用意や撮影にどれだけ苦労しているのか、どれだけの費用が掛かっているのかを知りたくなったのでこういう番組を考えた」(千葉・中学1年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

【委員の感想】いい企画がたくさんあった。とても面白く読んだ。昭和の歌手とそのヒット曲を振り返ることによって昭和という時代を表現する企画などは秀逸だった。

  • (東京・中学3年男子)タイトル:『天国からの歌声~(1)村下孝蔵』
    内容:既に亡くなった昭和の歌手をヒット曲と共に振り返る音楽&トーク番組。
    司会:TBS安住伸一郎アナウンサー。ゲスト:取り上げる歌手ゆかりの著名人。
    "昭和の歌"の素晴らしさをこれからの世代に知ってほしいと思ってこの番組を考えた。間延びしないよう30分番組として、歌の持つ魅力をストレートに伝えたい。

【委員の感想】インターネットの世界の裏側に入り込む企画がとても良かった。全体的に、子どもたちがとても新鮮な視点を持っていることが分かった。

  • (千葉・中学1年男子)タイトル:『動画の裏側』
    対象は小中高校生。放送時間帯は19時から20時。キャスターはHIKAKIN、SEIKIN、はじめしゃちょー~。
    いつも見ている動画の作成現場に踏み込み、内情を明らかにする番組。10分程度の動画にどれくらいの撮影時間がかかっているのかを4択クイズで視聴者が予想するコーナーも作る。この3人はユーチューバの中でもメジャーで小学生にも人気がある。

●【委員の感想】大多数の「普通」の人の生活が見たい、平均的な姿を紹介してほしい、という中高生ならではの等身大の企画が目立った。若い世代の悩みを生放送で募集して番組に参加させる企画や、学校を舞台にした企画などが複数寄せられた。

  • (東京・中学1年女子)タイトル:『内村さんの学校訪問!』
    対象は学生。放送日時は日曜日の正午から。キャスターは内村光良など。
    内村さんが色々な学校(小、中、高校、大学、専門学校、教習所など)に来て、一日生徒になってみんなと一緒に授業を受けたり遊んだりする。学校の特徴や面白い部活などを紹介する番組。

●【委員の感想】大学のゼミで毎週番組企画を学生に作らせているが、それと比べて遜色ない優れた企画が多かった。なかでも生活の実体験から出た小さな発見、物の"表記"を取り上げるという中学1年生の企画は素晴らしい。

  • (兵庫・中学1年女子)タイトル:『これって、何のためにあるの?~モノの表記編~』
    品々の特徴によって書き方の印刷表示が異なるため、それぞれ違う表記を集めてその意味を映像と共に伝えていくことによってその大切さが分かるバラエティー番組。

●【委員の感想】正直に言って一つも見たい番組はない。番組の制作企画を現場でやっていた経験からすると、どれも実現するのが難しい企画ばかり。実際に番組にするには高いハードルがありそう。

●【委員の感想】次にテレビを支える人材を発掘する番組企画には心ひかれた。テレビ離れの中、視聴者にも加わってもらい才能ある人材を発掘するという発想は面白い。

  • (青森・中学3年男子)タイトル:『ニュー・スター発掘隊』
    10代から30代を対象とする。放送日時は19時から20時。キャスターは、くりぃむしちゅう、ナインティナイン、ネプチューンなど。
    若手の芸人さんやミュージシャンに自分の発表をしてもらい、プロから講評を受ける。1年に1度最優秀をとった人たちを集めてチャンピオンを選ぶ。この選考には視聴者にも加わってもらい、視聴者のニーズにあった人を発掘する。

●【委員の感想】多くの中高生が、参加型、双方向の番組を求めているようだ。自分たちが考えていることを発信して社会を作っていく道具としてテレビを見ているのではないか。情報を一方的に送る送り手としてのマスメディアと受けるだけの受け手としての視聴者の関係から、個々人がインターネットで自分の考えを発信する社会に移行し、また、その先の世代の社会におけるテレビというマスメディアのあり方を示唆し、問いかけているように感じた。

■モニターの企画書に対する在京局の現場の方から届いたコメント

・(神奈川・高校2年女子)タイトル:『キョウカイのキョウカイ線』

キャスター他:(MC)華丸大吉さん、南キャン山里さん、小藪さん。(レギュラーゲスト)坂上忍、有吉弘行、アンタッチャブル山崎、バカリズム、おぎやはぎ小木。
番組内容:バラエティー。
日本に数多くある「○○協会」(日本コナモン"粉物"協会、日本ツインテール協会など)を調査し、その協会のディープな世界に触れる。最後に出演者に、この協会は必要か必要でないのかの境界線をひいてもらう。

日本テレビ 制作局チーフ・プロデューサーの感想 (担当番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』)

ハイレベルな企画が多く驚きました。実用性のある番組、ショートコンテンツを意識した番組など、テレビ番組に「情報」「双方向性」を求める傾向がありました。『キョウカイのキョウカイ線』は、コンセプトが非常に明確で、深夜の時間帯で即見たいですね。企画には、実際の「情報」に基づくものと、「フィクション」の2つに大別されますが、コント要素のある、無から作り上げるバラエティー企画も是非考えていただきたいジャンルです。

TBSテレビ 制作局制作一部プロデューサーの感想

民放制作者はよく「身の回り5m以内のモノに視聴率はある」といいます。映像編集やアプリといった中高生にとって「手の届く範囲の好奇心」を取り上げた企画が多数ありましたが、なかでも商品表示の意味を探る企画は身近な意外性という視点が秀逸でした。一方で手の届く現実ばかり描きがちな昨今のテレビですが、自戒の念も込めて、次世代を担う皆さんには、是非「手の届かない未知の世界」にワクワクするような企画も期待したいですね

・(長崎・高校1年女子)タイトル:『わらいっぱつ!!!』

夜11時以降の30分番組。1回につき、4組の一発屋(NEXTブレイクもしくはまだ無名)or素人・中堅・大物の過去ネタを拾うのも可!。1組目から視聴者のネット、Twitter投票開始。4組目終了後、みんなの「見たい!」が一番多く集まった人のネタを最後にもう一度見せる。芸人がのびのびと芸人らしくあることのできる番組。

フジテレビ 編成制作局バラエティ制作センタープロデューサーの感想(担当番組『ネプリーグ』『バイキング』)

今回、皆さんが求めている番組の多くは、「視聴者がリアルに参加できる番組」「視聴者も参加できる"双方向番組"」「出演者が一般人のリアルな番組」「Twitterなどで視聴している人たちがどんどん参加して、意見の言える番組」「Twitter やFacebookなどのSNSを活用し参加する番組」であり、テレビは見るためだけのものではなく、自ら参加し共に作るものだと考えているんだなと、改めて実感しました。数年前にはなかったSNSをうまく使いながらのテレビ視聴が中心になっている番組こそが、中高生の皆さんにはごく自然で当たり前の風景であることも再認識し、新たな番組作りへの意欲が湧いてきました。また『わらいっぱつ!!!』は、とてもシンプルでありながら笑いや芸人さんに対する愛が伺え、もう一度原点に返っての番組作りは大切だと思いました。実際今ネタ番組が見直され、始まっています。その中で新しい切り口がみなさんの新鮮味あふれる発想と情熱で見つけられると、素敵な新しい番組の誕生になると思いました。

・(神奈川・中学1年女子)タイトル:『ティーンリアル』

双方向で視聴者がリアルに参加できる番組が見てみたい。生放送の番組内で、若い世代の悩みや質問などをリアルタイムで募集して、電話やTwitterなどで視聴している人たちがどんどん参加して、意見の言える番組が面白いと思う。大人が作り上げた番組内容ではなく、今を生きている若い世代の生の声が聞けると思う。

NHK 制作局青少年・教育番組部チーフ・プロデューサーの感想(担当番組『Rの法則』など)

企画書を拝見し、みなさんがテレビを通じて「ためになる情報を得たい」「家族と楽しく時間を過ごしたい」と思っていることが、まず強く伝わりました。それはテレビ本来が持つ役割を的確につかんでいることを意味します。それを踏まえ、それぞれ企画した見せ方には工夫があり、感心させられました。特に『動画の裏側』『ティーンリアル』『かぞくみんなで!世界のテーマパーク巡り』『クイズタイムトラベラー』『わらいっぱつ!!!』など、データ放送やSNS を用いた双方向の演出企画は、これからのテレビの可能性をより深く考えていると思います。

・(愛知・高校2年男子)タイトル:『みんなでつくる学校』

ツマラナイ、メンドクサイことも多い「授業」。どうすれば、もっと楽しく面白く、そして価値のある学びができるものとなるか。中高生が自由な発想で楽しく学べる「理想の授業」を企画し、学校の先生に提案する。学校の先生と生徒が一体となって授業を企画し実際に行う。従来の講義型形式にとらわれず、もっと生徒が参加して楽しいと感じることができるような授業を生み出す。その事例を学校の先生には今後の授業づくりに活かしてもらう。

・(山梨・高校2年男子)タイトル:『今日の百科事典』

番組のコンセプトは"人生を豊かにする5分間"。毎日日替わりで様々な分野の教養をテーマとして取り上げ、各分野の専門家にその概要を説明してもらうというもの。放送時間帯はゴールデンタイム終盤の5分程度(『世界の車窓から』のようなイメージ)。内容は大人から子どもまでその分野の知識が全くない人やこれから勉強しようとしている中高生にも、わかりやすいものとし、全年齢を視聴対象とする。

テレビ東京 制作局プロデューサーの感想

企画書の中に「家族みんなで!世界のテーマパーク巡り」「みんなでつくる学校」など「みんなで」番組作りに参加していく番組が多数入っていたのが印象的でした。SNS全盛時代に、中高生の皆さんにも同じ時間と体験を多くの人と共有するツールとして、テレビを認めていただいているのかもしれない、と可能性を感じました。「ティーンリアル」や「クイズタイムトラベラー」も面白くなりそうな企画ですね。また、日頃長時間の番組ばかり作っている身としては「今日の百科事典」のような高品質なミニ番組を作ってお届けすることは、一つの夢でもあります。テレビ版の"春秋""天声人語"というアイディアはとてもよいと思います。

テレビ朝日 総合編成局制作1部 統括担当部長の感想

中高生の皆さんから提案された企画を見てまず思うのは、プロである現役テレビマンから提出される企画と根本的にほぼ変わらないなあ!ということです。若手のタレントさんが何かを調べたり、だれかを手伝ったり、いわゆる"汗をかく"企画を複数の方が提案されていました。こういったものが古くもならなければ、飽きられもしないのがテレビの本質です。我々が中高生だった時には考えもつかなかった点は、ネットの動画やSNSを使用した双方向性のある企画などです。新しいものを追い求めるのは、若者とテレビの常でこれもまた一つのテレビの本質であるのかもしれません。何をすれば"だれもまだみたことが無い"企画になるのか?永遠のテーマです。しかし、そういう企画は何らかの問題があるから放送されなかったはず。中高生のみなさんには自由な発想で思いついた斬新な企画が"なにをクリアすれば実際かたちになるのか?"を考えてほしい。テレビに限らず、将来皆さんがかかわる仕事のほとんどがそんな発明の積み重ねでできているのかもしれません。

10月の中高生モニター報告は、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」
というテーマでリポートを書いてもらい27人から報告がありました。
好きな番組に対する暖かい報告がいくつかありました。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)…「司会のウッチャンが明るく面白くしゃべってくれるのが、僕の好きなところです。こういう子どもが見ても面白いと思える情報・報道番組がこの先増えていったらいいなと思いました」(千葉・中学1年男子)。『NHKスペシャル"ジョーズ"の謎に挑む~追跡!巨大ザメ~』(NHK)…「この番組には、本当にドキドキわくわくさせられた。まるで映画を見ているような迫力を感じた」(兵庫・中学1年女子)。『情熱大陸』(毎日放送)…「私はこの番組が大好きです。今まで知らなかった職業、知識、情報などをこの番組を通して知ることができます。視野がとても広がります。将来のことについても考えるようになりました」(埼玉・中学2年女子)。『密着 市川染五郎in Las Vegas』(NHK) …「伝統芸能と最新の技術の融合を目指して奮闘する姿がすごかった。最初は失敗が多くそれでもあきらめずに挑戦し、最後、大成功で拍手喝采を浴びたところは鳥肌が立った」(福岡・中学2年女子)。『U-doki』(宮崎放送)…「地元のニュース情報番組。エンタメ、グルメ、トレンド、天気などたくさんの内容が満載です。私は"ヒューマン"という宮崎出身で県外の様々な業界で活躍されている方を紹介するコーナーが地方の番組ならではの企画で、とてもいいなと思います。土曜日の夕方、家族でホッとできる時間を作ってくれるこの番組が大好きです」(宮崎・高校1年女子)。
一方で、今回も、番組内容に対する厳しい意見が寄せられました。「『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)とか、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)とか、『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)などは、下品であるだけでなく、"イジメ助長番組だ"と、みんな言っています。こんな愚劣な番組を恥ずかしくもなく放送する大人の学力低下は極めて深刻です」(富山・中学1年男子)。『ZIP!』(日本テレビ)…「私はスタジオの出演者が異常に多いところが気になる。何のためにいるのかよく理解できない。こんなに人をスタジオに集めて出演料を払っているのであれば、その経費をロケに回すなどしてより豪華な番組にした方がいいと思う」(千葉・中学3年女子)。
また、安易な制作姿勢への意見も寄せられました。「最近、YouTubeなどに投稿された動画を集めた番組をあちこちのテレビ局でやっている。投稿された動画に頼るのではなく、自分たちで企画し制作した番組がもっと見たい」(千葉・中学2年女子)。「秋の番組改編時の特番で気になったのは、仰天映像や恐怖映像などの動画を寄せ集めて、スタジオでタレントが見ながらコメントする番組が多かったことです。YouTubeなどに一般人が投稿したような映像を頼りに番組を作るのはちょっと手抜きな感じがします」(東京・中学3年男子)。
『バース・デイ』(TBSテレビ)…「フィギュアスケート選手の浅田真央さんについての短いドキュメンタリー。こんなに内容が薄くてつまらない番組は見たことがありません。他の番組からとってきた映像をつなげただけで、しかもその映像を繰り返し放送しているだけでした」(神奈川・高校1年女子)

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】最近の報告を読むと、モニターの文章や見方に個性がはっきり出てきたように思う。かなり激しい意見を寄せてくるモニターもいる。

  • (富山・中学1年男子)『サンデーモーニング』(TBSテレビ/チューリップテレビ)に対して「反日に偏向した悪質な報道番組だ」と言う友だちが多い。日本の情報番組の一部は政治的なプロパガンダの場になっているのではないか。平成生まれの日本人が世界で不当な不名誉を背負わないように、まともな番組を制作してほしい。

●【委員の感想】マニアックな番組をまじめに真正面から視聴している。いい報告を寄せてくれている。

  • (岩手・高校2年女子)『ニッポン戦後サブカルチャー史II』(NHK Eテレ)。他の番組には見られない構成で、視聴者自身も出演する受講生の一員になった感覚で見ることができ、自分の考えを持ちやすくなる。風間俊介さんら受講生として出演する3名が、ただ講義を聞くだけでなくしっかり意見を持っていることもこの番組の重要な要素だ。

●【委員の感想】私も大変鋭い見方をしているモニターが多いと感心した。番組を分析するだけでなく、陥りやすい危険性にも触れている。

  • (愛知・高校2年男子)『クローズアップ現代』(NHK)。この番組で重要なのは狙いの設定とキャスターの専門家に対する問いの投げかけ方である。毎回はっきり決められた具体的ねらい、質問は視聴者に分かりやすくしかもねらいに沿うよう工夫されている。その一方でこれら2つの要素は危険性もはらむ。抽象的な質問→具体的な質問→全体をまとめた抽象的な質問という流れで行く構成は、方向性がずれてしまった場合、何が言いたいのかがかすんでしまう。同時に、例えば政治的なことに番組を利用できるようになり、公平性が確保できなくなる恐れも出てくるのではないか。

●【委員の感想】番組の中にはきちんと数字の意味が把握できてないニュースを流していたり、間違った統計の数字を比較したりしていることがあるが、内容の矛盾点をしっかり指摘する報告があり、頼もしいなと感じた。

  • (岐阜・高校2年男子)『ほっとイブニングぎふ』(NHK)。岐阜県内の地域別「田園型交通事故」発生件数を紹介していた。単純にその数のみを比較していたのには疑問を呈したい。その地域の自動車の登録台数に対する交通事故発生率を比較するなどの方法をとらないと正しい結論には行き着かないはず。統計データなどの数値を使って説明する時は1つだけの要因でなく、考え得る全ての要因を勘案して説明を導き出すべきではないか。

●【委員の感想】番組内の表示方法や音声の大きさに対して意見があった。

  • (長崎・高校1年女子)『ZIP!』(日本テレビ/長崎国際テレビ)は、白と黄色を基調にしたテロップが見づらい。誰にとっても見やすい、ユニバーサルデザインのような番組作りを皆で追及してみては?
  • (滋賀・高校2年女子)最近の番組はどれも効果音やナレーターやトークの声が大きく、いろいろな色を使ったテロップが表示されていて、番組を見ても疲れがとれた気がしない。もっとのんびり楽しく見られる番組を作ってほしい。

●【委員の感想】遺跡に大きな関心を持っているモニターが、関連した番組を比較し感想を述べている。

●【委員の感想】回を追うごとにモニターの見方が鋭くなり、深く掘り下げた内容の報告が多くなった。

  • (東京・中学3年男子)ドキュメンタリー番組は圧倒的にNHKで放送されるものが、内容が濃く面白い。なかでも気に入っているのが『地球ドラマチック』です。しかし残念なことにこれは日本のテレビ局が制作したものではないのです。『世界ふしぎ発見!』(TBSテレビ)はテーマによっては面白いが、クイズのやり取りなどの時間が長く掘り下げ方が弱い。かといって『世界遺産』(TBSテレビ)のようだと美しい映像がメインなので、環境ビデオのようにさらっと流してしまう。『NHKスペシャル』は回によって政治や社会問題などがテーマの時も多く堅苦しいイメージで毎回見る気にはなれない。1つのテーマでじっくり取材した、見応えがあって楽しめる番組を作ってほしい。

●【委員の感想】自由記述欄にも、もっともな意見が見られた。

  • (鹿児島・中学3年女子)有名人の結婚の話題をどの局も大げさに引っ張り過ぎではないか。もっと重要である情報を厳選して視聴者に提供してほしい。

調査研究について

  • 調査担当の菅原委員から次回調査のテーマ「青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討」について、調査方法、スケジュール等の説明がありました。2015年度は予備調査、2016年度に調査の質的検討、2017年度に全国調査を行ない、討論・検討を経て報告書を作成することにしました。

今後の予定について

  • 10月23日に開催された関東独立放送局研修会に講師として参加した最相葉月副委員長から、当日の報告がありました。
  • 10月30日に開催する「青少年との意見交換会(立命館守山)」について事務局から説明がありました。今回は立命館守山高校の1年生と2年生およそ300人と、朝日放送からテレビ制作・ラジオ・報道担当者とアナウンサー、汐見委員長、最相副委員長、稲増委員が参加しての意見交換会で、多くの現役高校生を対象にした初めての意見交換会になります。
  • 11月24日に開催する「青少年委員会委員と在京局担当者との意見交換会・勉強会」の進捗状況などについて事務局から説明がありました。テーマは前回に引き続き「インターネット情報の取り扱いについて」です。当日は、立教大学社会学部メディア社会学科准教授の砂川浩慶氏にご講演いただいた後、砂川講師を交えて、委員と各放送局の担当者が意見交換する予定です。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」(11月分)について、事務局から報告がありました。

第173回 放送と青少年に関する委員会

第173回–2015年9月29日

男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について、当該放送局からの資料提出を受け、これ以上の討論は必要ないとの結論に至り、討論終了…など

9月29日に第173回青少年委員会を、RKB毎日放送の会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、7月16日から9月15日までに寄せられた視聴者意見について討論しました。そのほか、8月、9月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会の後、NHKを含む福岡の放送局9局の関係者41人と"子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について"などをテーマに意見交換会を開催しました。
次回は10月27日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年9月29日(火) 正午~午後2時00分
場所
RKB毎日放送第6会議室
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

● "ロシアンルーレット"と称して、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくというマジック企画の、男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について、当該放送局からの資料提出を受け、これ以上の討論は必要ないとの結論に至り、討論終了としました。委員から、「今回の件はやり過ぎであったことは間違いないが、ギリギリの線で冒険をしようという"チャレンジ精神"は評価したい」との意見がありました。

●「海外の少年が関わる事件で、その様子を少年自身が動画サイトに投稿した。それを番組で紹介した時に、顔や名前をそのまま出していた。問題ではないか」との視聴者意見に関して、委員からは「国内で罪を犯した少年は顔を隠すが、海外の事件では顔や名前を出す場合もある。海外の出来事を、日本の放送でどのように取り扱うのか丁寧に議論する必要がある」との意見がありました。

●放送前にSNSで「街でスカウトしたちょっとムチな女子高生に、番組ディレクターが愛のムチを打つ番組です」などと告知した番組に対し、視聴者から「出演者や視聴した子どもたちを傷つけ、すべての女性をバカにしたものだ」などの意見がありました。委員から「番組内容に問題はないが、告知の方法に工夫が必要ではなかったか」などの意見がありました。

●その他、委員から「芸人を痛めつけ笑いを取る番組について、出演者同士の一定の約束事はあるのだろうが、見ていておふざけの度が過ぎているように感じる時がある。制作者と視聴者の間に感覚のズレがあるのではないか」などの意見がありました。

中高生モニター報告について

8月の中高生モニターは、「テレビ局が薦める『青少年へのおすすめ番組』視聴の感想」というテーマで書いてもらい、26人から報告がありました。『青少年へのおすすめ番組』は、毎月テレビ局が、自社で放送する青少年に見てもらいたい番組を自主的に選んで、BPOの公式ホームページ上に掲載しているものです。
『戦後70年特別番組 櫻井翔&池上彰 教科書で学べない戦争』(日本テレビ)については、10人のモニターが感想を寄せてくれました。「教科書よりもテレビの映像と音声で分かりやすく戦争について知ることができました。70年前の戦争は両親も知らないので一緒にテレビを見て、とても勉強になりました。私は櫻井君も池上さんも好きな上に、クイズ方式で進められたので、とても楽しく学べました」(宮城・中学3年女子)。「戦争関係の番組は悲惨な内容が多そうだし難しそうだし見るのを避けていた。でも、嵐の櫻井君が司会なので大丈夫かなと思い見てみる気になった。」(福岡・中学2年女子)。「司会の2人の人選からして若者向けに作っているかなと思い見てみた。お金をかけて制作しているという印象が一番残った。特攻船を実際に再現する、櫻井君が戦地で遺骨を探す旅をするなど。それはそれですごいが、逆に戦争の怖さが伝わってこなかった。また〈若者=戦争に関して無知〉という図式を前提にしているのも疑問。一般の若者がもっと参加し、学んだり議論できるような番組内容にするとか、テーマを絞り込んで二度と戦争を起こしてはいけないという強いメッセージを残すような作りの方が良かったのでは」(東京・中学3年男子)。
『所さんの世界のビックリ村!』(テレビ東京)には、賛否両論が集まりました。「地球のすごさ、過酷さを再発見できた。世界中の見聞を身近に、気軽に、しかも多数の人に広げられるのはテレビならではと、実感した」(埼玉・中学3年男子)。「2時間は長すぎて途中で飽きた。所さんがもっと面白いことをたくさん話すのかと思って見たが、そうでもなく残念」(東京・中学1年女子)。「私的には好みの番組だったが、CMの長さと多さにはうんざり。チャンネルを変えてしまった人もいるのでは」(兵庫・中学1年女子)。
地方局制作の番組についての報告も寄せられました。『部活応援プロジェクト しゃかりき』(テレビ神奈川)…「取材した学校の部員のありのままの姿がのぞけるのは楽しいが、内容が時系列順に淡々と進み過ぎ。もっと感動するところ、面白いところに特化して編集した方が見応えがあり、キー局にも対抗できるのでは」(埼玉・高校1年男子)。『第45回北海道中学校バスケットボール大会』(テレビ北海道)…「各学校のことをよく調べていて試合中も選手のコメントやチームの特色を紹介していた。また解説も分かりやすくバスケの試合を初めて見た僕でも楽しめた。ただ、決勝戦だけの放送だったので、大会の好プレー集などをやればもっと面白いかなと思った」(北海道・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】「なんでこんな番組をおすすめするんだ」と厳しい意見を書いているモニターもいたが、何本かの番組から選ぶ、というふうに、報告にある程度の枠をはめられると、いつもの月より深く番組を見ているのがよく分かった。総体的に作り手の情報をしっかり受け止めている報告が多かったと思う。個別でいえば、8月という月だけに終戦や特攻隊などに関する番組、またローカル局制作の地方の学校の部活に関する番組がおすすめ番組リストに挙げられていたが、作り手の意図をよくモニターが汲み取り、読み応えある報告を書いていた。

  • (福岡・中学2年女子)『戦後70年特別番組 櫻井翔&池上彰 教科書で学べない戦争』(日本テレビ/福岡放送)。戦争中の生活や音楽、食生活にも触れており、戦地に向かう兵隊さんの笑顔のフィルムなど、今まで遠い昔の話と思ってイメージできなかった戦時中の日本人が私たちと変わらない普通の人たちだったんだなと正直驚きました。戦争を体験した人が高齢になり亡くなっていく中、真実を知る人の生の言葉が聞けるのはもう最後になるのかもしれない、と思うと若い人たちにもできるだけ見てもらえる番組を作ってもらいたいです。

  • (神奈川・高校1年女子)『部活応援プロジェクトしゃかりき』(テレビ神奈川)。部長1人が後輩を引っ張っていき、活躍するということで、周りの人へのインタビューも交えながらとても分かりやすかった。地元の高校の部活動がクローズアップされるので、高校を選ぶにあたってもとてもいい番組だと思った。

●【委員の感想】7月の報告の後、モニターへは番組を褒めるだけでなく、どんどん批判してほしいと言ったが、さっそく効果が表れたようだ。

  • (埼玉・高校1年男子)独立局制作の番組は、内容や話題は面白そうなのに、いざ実際に見るとなぜか物足りなさを感じる。一方、キー局はひな壇やグルメなど見飽きたと感じるくらい内容は同じものばかりである。

  • (山梨・高校2年男子)先日、某テレビ局の番組内でテレビ業界の危機をテーマに芸人が議論するコーナーがあり、僕もファンであるTEDが掛け合わされた企画だったので、まじめに討論するのかと思ったら、プレゼンの終盤でどの芸人も必ずふざけてオチを作っていました。純粋にがっかりしました。バラエティー番組とはいえTEDを扱う以上は真剣な討論、プレゼンを見せてほしかったです。[事務局注:TEDとはアメリカの非営利団体。TEDトークと呼ばれるあらゆる分野における最先端の人々のプレゼンテーションの動画を世界に無料配信している。2012年4月からはNHK Eテレの『スーパープレゼンテーション』で、その動画講義のいくつかを日本語字幕付きで放送し、講義内容で印象に残る英文の紹介や、講義の効果的なやり方を解説している]

●【委員の感想】テレビ局側は真摯に中高生の批判を受け止めると同時に、どういうものを現在中高生が求めているのか是非、毎月の中高生モニター報告から読み取ってほしい。

  • (埼玉・中学1年女子)テレビ局自身が推薦する青少年へのおすすめ番組はどれも面白そうでなくて、選ぶのに困った。同じジャンルの番組がいくつもあったので、もっと番組のバリエーションを増やしてほしい。

  • (神奈川・中学2年男子)夏休みの番組はフジテレビの『FNS27時間テレビ』などありましたが、時間の無駄です。内容をもっと考えて制作してほしいです。ただ、時間を埋めている番組にしか思えません。なかでも車を破壊するなんて、あってはならないことです。恥ずかしいです。

●【委員の感想】数人のモニターが、長い間テレビに出演しているベテランのタレントを手厳しく批判している。

  • (京都・高校2年男子)『高校野球100年の真実~心揺さぶる真夏のストーリー』(朝日放送)。僕は司会をやったタレントが好きではない。この人は滑舌が悪いので話の内容が聞き取りにくいし、話す内容があまり面白くない。たくさん司会をできる人はいると思うが、なぜこの人に決めたのかが理解できない。日曜の『サンデーモーニング』(TBS/毎日放送)の司会者も滑舌が悪く、コメンテーターや解説者の話を聞く時に、次に言うことを考えているのか、話を聞いていない様子で適当に相づちだけしているように見える時がある。

意見交換会(守山)について

  • 10月30日に立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)で開催する、高校生と放送局担当者と青少年委員会委員の三者による意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。この意見交換会は、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。

  • 高校1年生と2年生およそ320人、朝日放送のテレビ制作、報道、ラジオ制作の各担当者とアナウンサー、それに青少年委員会から汐見委員長、最相副委員長、稲増委員が参加します。司会は稲増委員と朝日放送のアナウンサーが担当します。

調査研究について

  • 調査担当の菅原委員から提案のあった「青少年のテレビに対する行動・意識の形成とその関連要因に関する横断的検討」を軸に、検討を始めることにしました。

今後の予定について

  • 11月24日に"インターネット情報の取り扱いについて"をテーマに今年度2回目の在京テレビ局との「意見交換会・勉強会」を開催します。内容について話し合われ、今回は研究者の講演を交え、川端委員が司会をすることになりました。

第172回 放送と青少年に関する委員会

第172回–2015年7月28日

紙袋10個に1つだけ五寸釘 手のひらで押しつぶす"ロシアンルーレット"の深夜番組について討論…など

7月28日に第172回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、6月16日から7月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、7月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会の前に、在京7局の関係者14人と"インターネット情報の取り扱いについて"をテーマに意見交換会・勉強会を開催しました。【概要はこちら】
8月の委員会は休会とし、次回は9月29日に定例委員会と福岡地区の放送局との意見交換会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年7月28日(火) 午後6時30分~午後8時40分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●「"ロシアンルーレット"と称して、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくという企画でした。番組は"本気・真剣勝負"とうたっており、もし失敗しても怪我をすることのないようトリックが用意されていたとしても、視聴者には分かりません。小中高生などが真似したり、いじめに発展したりすることが想像される内容です。次回予告によれば、更に過激度を増し、釘をナイフに換えて挑戦するとのことでした」との視聴者意見があった男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について2週分を視聴した上で討論しました。なお2週目では「予定していた内容とは変更してお送りしております」のスーパーが入りナイフでの挑戦は無く、「先週は種も仕掛けもある純粋なマジック」との説明が有りました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 見る人が見れば仕掛けがあることは想像つくが、1週目の番組内では一切説明がなかった。真に受けた子どもたちもいたのではないか。

  • なぜマジックであることの説明を1週目の番組内でしなかったのだろう。

  • 「次週はナイフで挑戦」と予告していながら、次の週は内容を変更して放送していた。その理由が知りたい。

  • ゲーム自体に大きな危険性をはらんでいる。この番組を見て真似をしたり、いじめの手段に使われたりするかもしれないことを制作者はどれだけ意識していたのだろうか。

討論の結果、当該放送局に資料の提出をお願いすることとし、次回の委員会で引き続き討論することにしました。

中高生モニター報告について

7月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組の感想(バラエティー・クイズ・音楽)」というテーマで書いてもらいました。今回は24人から報告がありました。
人気の音楽番組に対して複数の意見が集まりました。『ミュージックステーション』(テレビ朝日)…「何十年と続いている番組だけあって、学校でも話題に上がることが多く、毎週楽しみにしているのは私だけではないはずだ。この番組は毎回生放送という強みもある」(岩手・高校2年女子)。「私自身、また、家族や友人も毎週楽しみにしています。音楽は人の気持ちを動かす素晴らしいものだと思います。これからも、舞台演出などを含めて視聴者がより臨場感を楽しめる音楽番組の制作を楽しみにしています」(山梨・高校2年男子)。『THE MUSIC DAY』(日本テレビ)…「見ていてとても楽しく、家族と一緒に歌ったり、踊ったりのパーティー状態にまでなりました。この番組では、データ放送によってできるゲームやスタンプラリー、番組内のクイズなど盛りだくさんで、視聴者が飽きないよう工夫されていました」(兵庫・中学1年女子)。
バラエティー番組に関しても熱い支持が寄せられました。『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)…「この番組は様々なジャンルをまんべんなく紹介し、VTRやその後のトークも、短かすぎず長すぎずの丁度いい長さでバランスがいい番組だと思います。トークの内容も毎回笑い転げるほど面白く今までの番組で一番笑った番組です」(滋賀・高校2年女子)。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)…「この番組は芸能人が様々な企画で無茶ぶりをする番組です。特に私は森三中の<温泉同好会>のコーナーが好きです。体当たりする内容が、最近のスタジオでしゃべってばっかりの企画より面白いです。この番組はいわゆる"寝技"が得意で、中味を考えている人がすごいと思います」(富山・中学1年男子)。
一方で批判も寄せられました。「バラエティー番組では今年度に入ってから雑学番組が乱立している感じがします。『林先生が驚く初耳学』(毎日放送)、『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』(テレビ朝日)、『この差って何ですか?』(TBSテレビ)など。ゴールデンの時間帯のものはあたりさわりのないテーマが多くなってしまい、興味を引くような中身にはなりえません」(東京・中学3年男子)。
自由記述欄は、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」というテーマを設定しました。「視聴者が参加できる番組がもっと増えてほしいと思います。いつも決まった芸能人だけでなく視聴者自身が参加できる方法として、データ放送だけでなく番組に直接参加し、みんなで番組を作り上げていくことができるといいと思います」(岐阜・高校2年男子)。「最近よく視聴率が高かった、低かったと報道していますが、そこまでして視聴率にこだわる必要があるのか疑問に感じます。大事なのは番組の内容ではないでしょうか」(滋賀・高校2年女子)。「NHKの朝ドラが『あまちゃん』以来、僕たちのような中高生にも人気です。でも最近気になるのは民放各局が"朝ドラ役者"に頼りすぎることです。朝ドラの放送が終わるとすぐにバラエティーやドラマにひっぱりだこになります。話題性だけでなく、もっと中身にこだわった民放ならではのテレビ番組を期待しています」(東京・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】バラエティー番組の"いじり"の行き過ぎを憂慮する意見が複数寄せられた。

  • (兵庫・中学1年女子)最近、リアクション芸人などの"いじり"がきつい。ドッキリなどの企画では命に危険がある場合もあり「これはやりすぎだろ」と思ったことも多々あった。
  • (千葉・中学2年女子)テレビを見ていて、先輩芸人が後輩芸人に対して明らかに嫌っている態度をしているのが見られました。裏ではあるかもしれませんが、それを表に出すのはどうかと思いました。
  • (愛知・高校2年男子)『笑点』(日本テレビ/中京テレビ)大喜利の中でメンバーを中傷する発言や公平ではない評価が行われたりするのが、ある意味この番組の良さで、見ている方にも"愛のあるイジメ"であることが伝わってくるのだけれど、初めて見る人には不快感を持たせるのかもしれない。ネタとして扱った後の事後処理やフォローをきちんとしてほしい。それが番組の印象向上につながると思うし子どもも気持ちよく見られるはずだ。

●【委員の感想】家族みんなで見られる番組を支持している意見が散見した。

  • (神奈川・中学2年男子)『水曜歌謡祭』(フジテレビ)昔活躍していたアーティストと現役アーティストとの融合が素晴らしい。平成生まれの私には昭和の歌が大変興味深く、歌詞のギャップも刺激がある。老若男女、家族で見たい番組だ。
  • (埼玉・中学2年女子)『ミュージックステーション』(テレビ朝日)最新の曲だけでなくいろんなテーマで昔の曲も紹介するので、母が私に曲を説明してくれたり、懐かしそうに口ずさんだりして会話が弾む。年齢が違う家族で見ても、全員が楽しめるのでいつも家族で見ている。

●【委員の感想】自由記述欄で、制作現場では当たり前に行われていることに問題意識をもつモニターがいた。

  • (鹿児島・中学3年女子)ワイドショーで同じ内容を何度も放送し過ぎるのはどうかと思う。同じ映像、同じナレーション、同じテロップ。どの局でも、どの番組でも似たような内容だと飽きてしまうので、同じニュースでも違う映像にするなどの工夫をしてほしい。
  • (神奈川・高校1年女子)今度始まるドラマの『デスノート』(日本テレビ)で登場人物の設定が原作と全く違うと聞いてとても不思議に思った。この番組は前に映画化されて、とても人気があったので、何でまたドラマ化するのかと疑問を抱いていたが、設定まで変えてしまうのは間違っていると思う。

●【委員の感想】人気番組を強く支持しながら一方で問題点を鋭く指摘している報告があった。

  • (愛知・高校1年男子)『月曜から夜ふかし』(日本テレビ/中京テレビ)番組内の面白い"いじり"が癖になります。しかし、同じ人を何度も出演させて(スタジオだけでなく、VTR内やロケ場面などで)しまうことが多々あり、やめてほしいと思う。飽きがくるし一種の思考停止だ、とも思うからだ。もっと考えたキャスティングが必要だと思う。

調査研究について

  • 調査担当の菅原委員の提案を基に、今後の調査について話し合いました。

今後の予定について

  • 9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、「子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮」「インターネット情報の取り扱いについて」などを中心テーマに話し合うことにしました。
  • 10月30日に立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)で開催する高校生と青少年委員会委員と放送局の三者による意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。この意見交換会は、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。

その他

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催した意見交換会について、報告がありました。【概要はこちら】

第171回 放送と青少年に関する委員会

第171回–2015年6月23日

視聴者意見について「討論」案件なし
「インターネット情報の取り扱い」テーマに、在京テレビ局と意見交換会・勉強会開催へ…など

6月23日に第171回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、5月16日から6月15日までに寄せられた視聴者意見を基に話し合いましたが、討論案件はありませんでした。そのほか、6月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
次回は7月28日に定例委員会と在京局との意見交換会・勉強会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年6月23日(火) 午後4時30分~午後7時45分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●討論案件はありませんでした。
委員間で「報道等において刺激の強い映像(とくにインターネットで公開されている動画)を使用することによる影響と、"知らせる"ことのバランスをどう考えるか」「バラエティー番組などの"いじめ""いじり"や"いじられる芸"などの子どもへの影響をどう考えるか」「コマーシャルの影響」などについて話し合いました。

中高生モニター報告について

6月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組の感想(ドラマ・アニメ)」というテーマで書いてもらいました。今回は27人から報告がありました。
人気のドラマに対して複数の意見が集まりました。『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ)…「この番組だけは録画してでも毎週家族全員で見ています。それぞれの登場人物に共感するところがあるので全員で面白く見られるのだと思います。家族で犯人を推理するのも楽しかったです」(福岡・中学2年女子)。『天皇の料理番』(TBSテレビ)…「未熟で周りの厚意もくみ取れなかった主人公が、努力に努力を重ねてどんどん道を切り開いていく姿に、見ていて自分ももう少し頑張ってみようという気持ちになれる」(神奈川・高校2年女子)。『アルジャーノンに花束を』(TBSテレビ)…「知能が高くなった主人公は、喜ぶと同時に、世の中への絶望や失望感を抱くことにもなる。科学は一歩間違えれば多くの悲劇を生む恐ろしいものだということを認識することができた」(長崎・高校1年女子)。
アニメ番組に関しても意見が集中しました。『銀魂』(テレビ東京)…「この番組は、漫画では伝わり切れない描写を映像を使って余りなく表現している。深夜に放送するような大人向けのアニメが増えていくなかで、これは子どもから大人まで楽しむことができる」(東京・高校2年男子)。「この番組を見ていると学校での嫌なことや悩んだことを忘れるくらいゲラゲラと笑える。兄弟と、たまに母とも一緒に笑える。これからも、このように面白さ、バカバカしさを追及していく番組があり続けてくれることを願う」(埼玉・中学2年女子)。長寿アニメ番組にも熱い支持が寄せられました。『名探偵コナン』(読売テレビ)…「放送20年目だけあってストーリーも面白く、大好きです。これからも長く続けてほしいと思います」(東京・中学3年男子)。『サザエさん』(フジテレビ)…「サザエさんの家族の構成がステキだなあ~と思いながらいつも見ています。3世代で大きな家に住んでいることがとても羨ましいです」(宮城・中学3年女子)。
自由記述欄は、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」というテーマを設定しました。番組を別のアプリと連動しながら活用している例が寄せられました。『プレ基礎英語』(NHK Eテレ)…「言葉が画像と共に表示され楽しく英語の予習復習ができる。ホームページにアクセスして見ることもできるので、ノートにまとめられるから手軽だ」(兵庫・中学1年女子)。「ニュースやドキュメンタリーを視聴しながらタブレット端末を頻繁に使用している。テレビ局には是非"おもいがけない情報に出会う"、そんな"新たな発見"ができる番組を制作してほしい」(岐阜・高校2年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】ドラマ・アニメというテーマなので、書きやすかったのか、青少年らしい報告内容が多く、とても楽しく読んだ。

●【委員の感想】「番組を家族みんなで見て話題にしている」ということを数人のモニターが書いており、家族の絆を強める役割を果たしているのではと感じた。

  • (東京・中学3年男子)『まれ』(NHK)を録画して、毎日母と見ています。現代ものなので、僕たち中学生でも興味を持って見られます。
  • (大阪・高校1年男子)『天皇の料理番』(TBSテレビ)家族全員で見られる内容で、家族で楽しみだね、と話す機会があるのも良い。昭和時代のセットもすごく興味をひかれる。まだ話は序盤なのでこれからも楽しみだ。

●【委員の感想】BPOのホームページを見て「青少年へのおすすめ番組」を見た感想をよせてくれたモニターがいた。

  • (東京・高校1年男子)BPOホームページ上の「青少年へのおすすめ番組」で紹介されていた関西テレビの『じゅんいちダビッドソンのミラノで伸びシロ見つけました』を見ました。とても面白かったです。夜遅いので普段だと見ない時間帯ですが、このように紹介されていると見ることができて、しばらく家族でもその番組の話をしました。

●【委員の感想】成人の視聴者から内容を批判されるアニメ番組が逆に強く支持されていて、中高生のきちんとした判断力を場合によっては信じた方がいいのかなとも思った。

  • (埼玉・高校1年男子)『銀魂』(テレビ東京)このアニメ番組には適度な性的表現(いわゆる下ネタ)が何回か使われてそれが僕には面白く感じた。こういう表現について大人が心配する気持ちも分かるが、あまりにも品がないものでなければ、普段の僕たちぐらいの男子の会話はそのような内容で盛り上がっている場合も多く、このネタで不快に感じる人は少なく、楽しく見られる内容だと思う。

●【委員の感想】好きなジャンルの番組に対しての意見だけに、非常に的を射た評価をしているモニターが多い。

  • (新潟・高校2年女子)『プチプチ・アニメ 森のレシオ』(NHK Eテレ)第一印象はすごくオシャレなアニメだということだ。細かいところまで完璧に作られていて美術だけでも飽きずに見ていられる。また5分という時間をゆったり使っていることにも驚かされた。日本人特有の"間"での笑いのとり方が非常に上手で、その長さも心地よい。

●【委員の感想】自由記述欄で、鋭い指摘をしている報告があった。

  • (東京・中学3年男子)東京MXテレビで平日の夕方、過去の名作アニメの再放送をやっているのでついつい見るのですが、その時気になるのがいわゆる"放送禁止用語"です。僕は放送当時のまま放送している東京MXテレビを支持します。例えば『みなしごハッチ』の"みなしご"という言葉は今では公共のメディアではあまり使わないようですが、日本語として辞書に載っているような言葉は、必要以上に隠すべきではないと思います。

●【委員の感想】「番組宣伝と再放送が多すぎる」という意見があった。

  • (東京・高校1年男子)最近テレビを見ていて抱く違和感としては、番組宣伝と再放送が多いことだ。時間帯によっては番宣が非常に長く退屈してしまうこともある。あまり楽しくない番組宣伝を多くやるくらいであれば、前の番組の時間を延ばすとか、天気予報などの情報を伝える時間にしてほしい。

在京テレビ局との意見交換会・勉強会について

  • 「インターネット情報の取り扱いについて」をテーマに、NHKを含む在京テレビ局との「意見交換会・勉強会」を、7月28日に開催することにしました。「インターネット上の映像使用について各局はどのような対応をしているのか」「インターネット情報の検証体制」などについて話し合うことにしています。

中高生との意見交換会(守山)について

  • 中高生と青少年委員会委員と放送局の三者による意見交換会を10月30日に立命館守山中学校・高等学校で開催することにしました。これは、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。

調査研究について

  • 2014年度『「中高生の生活とテレビ」に関する調査』の報告書が完成し、加盟社と関係部署に送付しました。

  • 調査担当の菅原委員の提案を基に、今後の調査の方向性について意見が交わされました。

今後の予定について

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催する意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。

  • 9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」の活用方法について、意見が交わされました。

  • 9月8日に予定していた委員会を休会とすることにしました。

第170回 放送と青少年に関する委員会

第170回–2015年5月26日

ネットの"キス動画"を紹介した番組について討論、審議入りせず…など

5月26日に第170回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、4月16日から5月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、5月の中高生モニター報告、新規の調査研究について、今後の予定について話し合いました。
次回は6月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年5月26日(火) 午後4時30分~午後7時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●「日曜夜の情報番組で、中高生の間で、キス動画をネット上に公開することが人気を集めているという話題を取り上げていたが、ネットの怖さや問題点に深く触れることなく興味本位に扱った内容で、未成年への悪影響が心配だ」などの視聴者意見があった番組について、全委員が番組を視聴した上で討論しました。
委員からは次のような意見が出ました。

  • 若い人たちの生態を好意的に紹介しようと思ったのだろうが、興味本位に流れていて、映像を公開することの危険性など、ネットリテラシー的視点が欠けている中で番組を作っているのが問題だ。映像もしつこく不愉快なコーナーであると感じた。
  • 映像をアップした後、ずっと残ってしまうなどの問題にあまり触れられていないのが気になった。若者たちはテレビを信頼しているので、この放送を見てアップ数が増えるのが心配だ。番組を作る側の良識を問いたい。
  • ネットについてあまりに無知で無防備だと思った。映像のアップに対する危険性を伝えないで放送することにより、さらに危険が拡散することに思いが至らないのだろうか。ネットの世界が、使い方によってはどれほどの恐ろしさを秘めているか、親の世代も認識できていないのではないか。
  • 投稿した女性の父親が映像を見て理解を示すシーンがあったが、カメラで収録している前では、なかなか本音は言えないものだ。世の中の父親はあれだけ理解を示すだろうか。
  • 世の中の一部の変わった部分を拡大して見せているだけで、なぜこれを紹介する必要があるのかが説明されていない。
  • 例えば、「NHK放送ガイドライン 2015」の"6.インターネット"には「インターネットの世界には、さまざまなリスクや問題も潜んでいる。いったんネット上に情報が流出すれば、複製されて一気に広がり、不適切な内容や誤った情報であっても完全に消すことはできない。こうしたインターネットの特性を十分に理解したうえで利用しなければならない」とあるが、投稿した若者がそこまで理解しているとは思えないし、制作側もあまりに無邪気に作ってしまっているのではないか。
  • 動画投稿する若者は、自己承認欲求が満たされるのだろうが、リスクをどれだけ認識しているのか。ああいった行動に出る若者はごく一部で、それが若者を代表する姿ではない。
  • このコーナーはコンテンツをネットに求めていて、ネット動画ありきで構成されている。テレビの作り方が逆転している。

討論の結果、審議入りについて全員一致の判断には至らず、この件に関して審議に入らないことにしました。しかし汐見委員長は「公共性の強い放送局のあり方として、ネット情報の取り扱いについてどのような問題があるのか、放送局の人たちと一緒に話し合ってみたい」と述べ、近いうちに勉強会を開きたい意向を示しました。

中高生モニター報告について

5月の中高生モニターは、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」というテーマでリポートを書いてもらいました。今回は29人から報告がありました。
毎日見ている情報番組に対する賛辞がたくさん寄せられました。『ZIP!』(日本テレビ)。「この番組を見たら元気が出て今日も頑張ろうという気持ちになる。面白いコーナーがいっぱいあるし、学校で友達とその日の放送について話すことができるからだ」(宮崎・高校1年女子)。『す・またん!』(読売テレビ)。「とてもゆるい会話のやりとりが、朝のせわしい感じとかけ離れていてほっこりします。わかりやすい解説が聞けるので、新聞を読まなくても情報がとれます。このゆる~い番組がもっとゆる~く続いてほしいです」(兵庫・中学1年女子)。ドキュメンタリーに関する報告も多くありました。『クローズアップ現代』(NHK)。「毎回取り上げる問題の要因をあらゆる面から見られるのが好きなところです。ピックアップされる問題が高校生の私にも、親の世代にも、興味が持てるような内容なのでいつも家族で自分の考えを言い合いながら見ています。選挙権が18歳からになるので、このように家族で社会問題を共有できる番組が増えたらいいなと思います」(神奈川・高校2年女子)。『情熱大陸』(毎日放送)。「番組の構成が、そのジャンルについて何も知らない人でも分かるように工夫されている。また、その道を極めた人にかなり長い期間にわたり密着しているので、とても内容の濃い30分だと思った」(埼玉・中学3年男子)。『歴史秘話ヒストリア』(NHK)。「再現ドラマが分かりやすく、扱っているテーマの知名度も高いため、多くの人が楽しめると思う。この番組は歴史の"根拠"がしっかり放送されている。歴史に限らず情報を伝えることを目的としたジャンルの番組では、根拠をしっかりと確認し、根拠と共にその情報を伝えてほしい」(岐阜・高校2年男子)。報道番組に対しての提言がありました。『週刊ニュース深読み』(NHK)。「若者は報道番組に対して真面目とか、つまらないというイメージを強く持っている人が多いようだ。若い世代も参加しやすく、分かりやすく、見ていて興味を持つことができる報道があれば、若者の社会に対する意識は向上するのではないか。この番組をはじめ報道番組には、もっと若い世代に見てもらえるような工夫をしてほしいと思う」(愛知・高校2年男子)。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。英語の勉強を目的にラジオやテレビの英語番組に接しているモニターが複数いました。『基礎英語』(NHKラジオ第2放送)。「中学生になってから英語のラジオを聞き始めました。15分の短い時間だから忙しくても簡単に聞けるし、発音練習や書く練習をするので楽しく勉強ができます」(東京・中学1年女子)。『ワールドニュース』(NHK  BS1)。「日本だけでなく他国のニュースが見られるところ、日本語の吹き替えも合わせて聞けるところが良い。NHKならではの番組だと思うので、これからも是非続けてほしい」(滋賀・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】中高生ながら、しっかりした意見を述べている報告が目立った。番組内容について様々な危惧を中高生なりに抱いていることを制作現場は意識してほしい。

  • (富山・中学1年男子)『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ/富山テレビ)の中のデブエットというコーナーで、映画の宣伝をしたいタレントに無理やり食べさせ続ける内容がありました。この番組に限らず、バラエティーは下品でくだらない番組が多くゲストに対して失礼な扱いをしています。MCにも、ちゃんと勉強して作法を分かっていて正しい日本語が話せる人を起用してください。
  • (千葉・中学3年女子)『ヒルナンデス』(日本テレビ)には幅広い年代の人が楽しめるコーナーや企画が多く、内容も充実し、昼休みにふさわしいくつろぎながら見られる構成だ。しかし、東京近郊の店に関する「食レポ」が多すぎる。全国放送なのだから、もっと全国各地のグルメを紹介すべきではないか。

●【委員の感想】家族が一緒に見て時間を共有する手段としてのテレビの役割を強調している報告があった。

  • (兵庫・中学2年女子)家でテレビを家族みんなで見る機会が減ってきています。でも私は番組の内容について父や母の意見も聞きたいです。なので、私は家族みんなで見ることができる番組が増えるといいなと思っています。

●【委員の感想】テレビ番組には純粋に真実を教えてほしい、偏らない報道をしてほしいと訴えている報告があった。

  • (神奈川・中学1年女子)報道番組での「やらせ」を疑わせる出来事がニュースで取り上げられていました。色々なことを発信するテレビには、嘘でなく本当のことを知らせてほしいと思いました。私だったら、まだ子どもなのですべてのことを信じてしまいそうです。
  • (滋賀・高校2年女子)最近、ニュースの報じ方が偏っているように感じます。黙々と政府が行っていることを紹介していてそのことに対する反論があまりなく、まるで政府の言いなりになっているように見えます。もう一度報道のありかたを見直すべきだと思います。

●【委員の感想】手早く簡単にわかりやすい情報をとりたい、と述べているモニターが複数いた。

  • (東京・中学3年男子)私はTBSの情報番組が好きでよく見ています。なぜなら誰にでもわかりやすくかつ政治的や思想的に偏りなく伝える努力をしているからです。『Nスタ』(TBSテレビ)のコーナー「3コマ・ニュース」はその代表です。3コマのパネルにまとめることでコンパクトに最新のニュースが把握できていいと思います。

●【委員の感想】自由記述欄に鋭い指摘が多く見られた。

  • (埼玉・高校1年男子)最近様々なジャンルの番組が全部トーク番組に近づいているように思う。野球を見たくて見る野球中継で、解説者の解説よりジャニーズの人の思い出話の方が長いとか、音楽番組なのに歌手がほとんど歌わないとか、旅番組で美しい景色が見たいのにタレントのおしゃべりばかりとか、それぞれの番組が全部トーク番組に近づいている気がして違和感がある。

調査研究について

  • 2014年度の「中高生の生活とテレビに関する調査」について、報告書の完成はデータ部分の微調整があり6月初旬になると事務局から報告がありました。

  • 調査担当の菅原委員から、今後の調査の企画、目的、仮説の立て方や実施方法、結果の発信方法についての提案があり、制作者と青少年をつなぐ視点の調査や、中高生モニターを含めた調査などについて意見を交わしました。

今後の予定について

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催する意見交換会について、事前打ち合わせの概要が事務局から報告されました。9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、また中高生との意見交換会についての準備状況が報告されました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」の活用について、汐見委員長から提案がありました。

第169回 放送と青少年に関する委員会

第169回–2015年4月28日

"ネット情報の取り扱い"に関する「委員長コメント」を公表…など

4月28日に第169回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。新任の4人を含め7人の委員全員が出席しました。まず、汐見委員長が新しい副委員長に最相委員を指名し、そのあと3月1日から4月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。4月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告について話し合った他、2015年度事業計画案の承認、事務局からBPOと青少年委員会の業務についての説明などがありました。
次回は5月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年4月28日(火) 午後4時30分~午後7時40分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員(新任)、大平健委員(新任)、川端裕人委員、菅原ますみ委員(新任)、緑川由香委員(新任)

視聴者意見について

●「日曜夜の情報番組で、凄惨な映像や事故の映像などを多く扱うサイトの特集をしていた。まだ子どもも起きている時間であるのに刺激が強すぎる」「引用した動画は放送許容範囲だと思うが、興味を持った子どもがサイトにアクセスする可能性が高く、看過できない」などの視聴者意見があった番組について討論しました。論点として「ネット映像をテレビで紹介すること」「放送した映像が青少年に与える影響」について話し合いました。
委員からは次のような意見が出ました。

  • 刺激的な映像は、見たくない人は見なければ良いというが、テレビの地上波は見たくなくても目に入ってしまう媒体であることを制作する側は理解する必要がある。
  • 刺激が強く不快感を抱く人が多いであろう映像で人を引き付けようとする場合など、制作者側は、なぜその映像を選んで放送したのかその背景や状況を説明し、立場を明確にする必要がある。
  • 子どもたちへの影響については、色々な条件があり、テレビだけの影響を考えるのは無理がある。
  • このようなサイトを紹介すれば、たとえ映像を放送しなくても見たい人は見てしまうだろう。すべての情報をシャットアウトすることは出来ないし、無菌状態で育てばそれで良いのかというとそうではない。難しい問題だ。
  • ついにこのサイトがテレビで紹介されたかという気持ちだ。子どもたちはテレビの情報がネットの情報より良心的で信じて良いものだと思っている。そのテレビがこのサイトを紹介することは、テレビがお墨付きを与えることになってしまう。民放連放送基準「第8章表現上の配慮(43)放送内容は、放送時間に応じて視聴者の生活状況を考慮し、不快な感じを与えないようにする。(46)人心に動揺や不安を与えるおそれのある内容のものは慎重に取り扱う。」などとの関係性を事前に議論したのだろうか。
  • 番組の企画としてこのサイトを紹介するのは当然だと思う。ただもう少し映像の取捨選択をしたら良かったのではないか。
  • このサイトを紹介すること自体は評価して良く、それなりの配慮は感じた。ただ、放送局側が何を伝えたかったのか分かりづらい。放送局内部でテレビの公共性についてどれ程議論したのか知りたい。
  • 制作現場では日々葛藤しながら番組制作を行っている。今回もこのサイトの主催者の意見を出していた。これが放送局側の考え方を示しているのではないか。
  • テレビは画像で伝えるものだ。写真が入手できない時にはネットの映像を使うだろう。今後ネット映像の使用についてのルールを業界全体で考えていく必要があるのではないか。

討論の結果、審議には進まないことにしましたが、汐見委員長は次のような「委員長コメント」を公表しました。

2015年4月28日

"ネット情報の取り扱い"に関する
「委員長コメント」

放送と青少年に関する委員会
委員長 汐見 稔幸

一般人が知り得ないような現場情報、特にその場にいた人間でないとつかみ得ないような情報をそのまま映像で流すことをミッションとしているインターネット上のサイトがある。その内容が戦争、虐待、人権無視、大災害など、平凡な日常生活を送っている人間には思わず目を背けたくなるような残虐なあるいは悲惨な事件や事故、出来事を、そのまま映像を伴って配信していることが多いのでとかく話題になっているのだが、日曜日の情報番組で、このサイトの流す情報のいくつかを紹介する企画があった。それを見た視聴者から、青少年が見る可能性のある時間帯であり、批判や懸念が多く寄せられたが、今回の放送については、映像をそのまま放送したのではなく、一定の取捨選択や配慮をしているので、課題はあるものの審議入りはしないという判断をした。
しかし、この番組はテレビという公共のための放送システムがこれから抱く可能性のある問題を先取りして示していたように思う。
メディアの発展は、これまで一般人が知り得なかった情報をわかりやすく大量に伝えることを可能にしてきた。他方で、世界では今あちこちで貧困と格差の拡大、局地戦争、人権無視の暴力や殺戮、テロ、深刻な環境破壊問題等々が起こっていて、それらの最前線の具体的事実についてはそのほとんどを私たちは知らないでいるという現実がある。そのため、その最前線の事実を、たとえそれがどんなに悲惨なものであっても、つかみ、伝えることが大事だと考える人が出てくる。なぜならそれが世界の現実だから、ということである。そしてそれを、私的に利用できるネットで公開しようとするようになるのも必然である。そうなればこうした情報も瞬時に世界を飛び回ってしまう。
公共的な責任を背負っている地上波のテレビメディアも、その周辺でこうした情報空間が広がっていくと、その現実を無視することができなくなっていく可能性がある。今回のようなネットメディアの情報をテレビが紹介したり、それに触発されて新たに番組を制作したりすることもこれから増えていくことが予想される。テレビ局の情報収集力は限られているが、ネット情報には、たとえそれが吟味されたものでないにしても、無限といってよいほどの収集力と提供力があるからである。しかし、その場合、テレビ局の独自性と責任性はどこにあると考えるべきか。このことはこれから大事な問題となっていくだろう。おそらく各局ともこの問題をめぐって自問自答を繰り返していく必要があると思う。こうした課題については、いずれ自由に意見交換する場を設けたい。
また、刺激的な情報が含まれる映像を放送する場合には、放送局側がどういう意図で放送することにしたのかを、まず丁寧に説明する方が視聴者に対して親切ではないか、という意見が青少年委員会で出たことも記しておきたい。
いずれにしても、今回の問題はこれからのテレビのあり方を考える際の大事な論点を示していると各放送局に受け取っていただきたいと思っている。

以上

中高生モニター報告について

2015年度は、全国の応募者の中から32人に中高生モニターをお願いすることにしました。
初回の4月は、「好きなテレビかラジオの番組を一つあげて、その番組の好きなところ、良いと思うところを具体的に報告してください」というテーマで書いてもらいました。32人のモニター全員から報告が寄せられました。
長い間続いている人気のバラエティー番組を支持する意見が目立ちました。『世界一受けたい授業』(日本テレビ)「生活の中で役に立つ豆知識や有名人の生き様などを紹介していて、とても役にたち、芸人がおもしろくしてくれるので楽しく見ることができる。芸人のネタが度を越えてふざけていないところが良い」(富山・中学1年男子)。『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)「事例を紹介する人が熱を入れて説明すればするほど、マツコ・デラックスが冷めた口調で突っ込むので、その対比がおもしろい。お年寄りから小学生まで一緒に楽しめる番組だ」(兵庫・中学1年女子)。
地方放送局制作の番組についての報告もありました。『どさんこワイド179』「視聴者目線の優しい番組で、内容もニュース、スポーツ、エンタメなどがバランスよく配置されており視聴者と北海道を大切にしている番組だ」(北海道・中学3年男子)。『土曜ワラッター』(青森放送)「番組全体が遊び心に満ちていて、常にリスナーとの距離が近く、リスナーが関わる企画が多い。他のラジオ局でもこういう企画に挑戦してほしい。今後も青森県内外のたくさんのリスナーをたくさん笑わせてほしい」(青森・中学3年男子)。
新しい形の番組への関心も高いようです。『NEWS WEB』(NHK)「視聴者がtwitterのハッシュタグを利用して、取り扱われるニュースや番組に対して意見や質問をつぶやくことができる。一般人、特にtwitterをよく利用する若者世代の声が多く反映され、視聴者が一緒に作っていることを感じさせる番組」(愛知・高校2年男子)。
一方、番組への手厳しい批判も寄せられました。「最近ニュースの読み違いや字幕の間違いが多すぎる。たくさんの人が見るのだから、もう少し自分の仕事に責任を持ってほしい」(千葉・中学2年女子)。「最近は、ゴールデンタイムでも、放送に適さない言葉や下ネタがよく使われるのは問題だ。深夜なら理解はしようと思うが、ゴールデンで多用するのは止めてほしい」(鹿児島・中学3年女子)。「人を叩くことがおもしろいとでも思っているのだろうか。番組を作る側や出演者は、叩かれる方の気持ちや視聴者がどう思うか、もう一度考え直す必要がある」(千葉・中学3年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】非常に成熟したしっかりした意見を皆書いてくれていて感心した。特にインターネットとのかかわりについての意見や、これからの番組の作り方への厳しい要望を述べた意見が印象に残った。

  • (愛知・高校2年男子)『NEWS WEB』(NHK)放送中つぶやいた意見や質問が評価されたり、さらに議論ができたりすることで自分の肯定感を高めることができ、かつニュース・身近な出来事に関心を持つようになれた。一方で、一般的に子どものテレビ離れが進んでいると言われるが、その代わりに偏った情報をSNSなどから仕入れ、それが拡散して誤解を広めているような状況があり、よくないと思う。

  • (山梨・高校2年男子)今後は100人視聴者がいれば100人全員に支持される番組を1個作るのではなく、制作費が許される範囲で10人に支持される番組を10個、あるいは1人に支持される番組を100個作ろうとする動きがこれまで以上に必要になると考える。新聞と同様、ターゲットを絞るという意味で娯楽向けと教養向けというコンテンツの明確な2極化は避けられないと思う。

●【委員の感想】楽しい番組を親子一緒に見て、癒される、というテレビの原点はいまだに変わっていないようだ。

  • (東京・中学3年男子)僕が一番好きで家族と毎週欠かさず見ている番組は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)です。いつも父と母と3人で心の底から笑って楽しめます。余り激しい無理な企画でなく、日曜日の夜ほっと一息付けて家族と笑って「明日からまた一週間頑張ろう」と思える楽しい企画だけで充分だと思います。

●【委員の感想】情報番組への興味が高いようだ。バラエティー番組であっても情報収集のできる番組の人気が高い。知りたい要求を充たしてくれるものを求めているように感じた。

●【委員の感想】モニターになり、テレビ番組をしっかり見ていると自然に中高生たちはメディアリテラシーを日々学んでいっているように思う。教えられるのではなく自分から意識的に学ぶことで、身についていくことは大変に良いと思う。

●【委員の感想】好きな番組は海外の情報を扱ったものが多かった。報告を読むと、海外のことを知ると同時にそれによって、自分たちのアイデンティティーを確認したいという欲求が強いように思った。

  • (福岡・中学2年女子)『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京/TVQ九州放送)この番組は日本に来る外国人の気持ちがわかるのでためになります。外国人がこんなに日本を好きになってくれているんだと分かって自分も日本人で良かったと思いました。それにいろんな国の文化を知ることができる良い番組だと思います。

●【委員の感想】非常に分析力が高く、番組に対する視線も鋭い報告が多かった。

  • (東京・中学3年男子)最近の民放夕方7時台から8時台のテレビはつまらない番組が増えたように思う。ネットが普及している今では、「今更」と思うような内容も多く見る気が起こらない。もっと本職の芸や芝居、スポーツなどでひきつける番組を作ってほしい。
  • (滋賀・高校2年女子)バラエティーなどのトークショーなどで同じ芸人ばかり出たり、お笑い番組などでネタをする芸人が同じ人ばかりなのをやめてほしい。はやりの芸人だけでなく、どの年代でも楽しめるように出演者を選ぶべきだと思う。

調査研究について

  • 2014年度の「中高生の生活とテレビに関する調査」について、5月中に報告書を完成させる予定であると事務局から報告がありました。

  • 新年度からの調査研究の担当は菅原委員に決まりました。

今後の予定について

  • 意見交換会を7月3日に愛媛県松山市で、9月29日に福岡市で開催することにしました。

その他

  • 2015年度青少年委員会事業計画が承認されました。