第145回 放送と人権等権利に関する委員会

第145回 – 2009年3月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

2月の苦情概要 ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理を行い、「委員会決定」(案)を大筋で了承した。同事案の通知・公表は3月30日に行われることとなった。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年3月17日(火)午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた昨年7月のテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理を先月に引き続き行い、起草委員会が起草した「委員会決定」(案)を一部修正のうえ、大筋で了承した。後日、持ち回り委員会で文案を確認し、最終的に了承・決定することとなった。また、「委員会決定」(案)の結論についてその理由を追加・補足する「補足意見」と、結論も理由も異なる「少数意見」とが盛り込まれることも合わせて了承された。
これに伴い、「委員会決定」の当事者に対する通知と、通知の後の記者発表(公表)は、3月30日(月)午後に行われることとなった。
野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして名誉と信用を毀損されたとし、訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」と反論している。(3月30日に通知・公表された「委員会決定」第39号の全文についてはこちらから)。

2月の苦情概要

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・14件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・37件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 竹田委員長、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、中沢委員の5人の委員は、3月度の委員会をもって任期満了により退任することが事務局より報告された。
  • 次回委員会は4月21日(火)に開かれることとなった。

以上

第144回 放送と人権等権利に関する委員会

第144回 – 2009年2月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

1月の苦情概要 ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理が行われ、「委員会決定」を取りまとめるための起草委員を決めた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年2月17日(火) 午後4時~5時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた昨年7月のテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理を、先月に引き続き行った。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして、訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

当日は、前回の委員会で実施した野中氏とテレビ朝日に対するヒアリングをふまえ、報道によって野中氏の名誉が毀損されたかどうかについて各委員が意見を出し合い、詰めの審理を行った。

その結果、起草委員を決め、次回委員会では、起草委員会がまとめた「委員会決定(案)」について検討することとなった。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・9件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・28件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は3月17日(火)に開かれることとなった

以上

第143回 放送と人権等権利に関する委員会

第143回 – 2009年1月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案について、申立人、被申立人双方に対するヒアリングが行われた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年1月20日(火)午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えたテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理で、ヒアリングを実施した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容」などとして訂正と謝罪の放送を求めている。これに対しテレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

ヒアリングは野中氏、テレビ朝日双方に対して各1時間行われた。この中で野中氏は「横領されたのは、土地改良の補助金ではなく河川改修の土地代金だった。しかし、報道は私の映像をわざと出して、全土連が土地改良の予算獲得に努力した結果、横領事件が起きたかのように受け止められる内容だった。視聴者に分かるように名誉回復を図るため審理をお願いした。」と述べた。テレビ朝日側は「農業関連の公金の一部が横領されたという報道事実について、特段問題はなかったと認識している。政治と農業の関わりについても問題提起をしたかった。横領事件と野中会長個人を関連づけようとしたものではなく、野中会長の名誉・信用と肖像権を侵害したとは考えていない。」と述べた。

ヒアリングを受けて審理を続行し、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうか、補助金について十分な取材・報道がされたかどうかなどを中心に意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について

2003年3月に決定が出された「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」事案について、2009年1月7日、被申立人NHKから申立人米山リサ氏にどう対応したかについての報告書が当委員会に提出された。 一方米山氏からは、裁判の過程において重要情報が提示されたとして、委員会でどのような対応をとられるのか考えを聞かせてほしい等の要望が書かれた書面が委員会に届き、委員会で意見交換した。

NHKは2008年6月、この番組についての訴訟が最高裁判決で終結したのを待って、同月、「委員会決定」で指摘された編集の行き過ぎ等について米山氏に謝罪したことなどを報告書で述べている。なお、NHKは、2003年8月に「委員会の決定に対する取り組み状況」の報告をしていたが、米山氏への対応は、裁判が継続中であることを理由に保留していた。

なお米山氏が、本申立ての審理の際、欠かせない重要情報が提示されていなかったとして、委員会に新たな対応をする考えがあるかと尋ねている点について協議したが、当委員会では、既に申立てに対する決定をした事案であり、現段階では、これ以上本件に関与しないとの結論に達した。

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局からの報告

昨年12月3日に「委員会決定」の通知・公表が行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局である中国放送(RCC)からその後の取り組みについて報告があった。
本事案の「委員会決定」は、当該局に対して決定を受けての改善や対応等を求めたものではないが、RCCからは1月15日付で「委員会決定後の取り組みについて」と題する以下の書面が寄せられた。
事務局より報告し、了承された。

平成21年1月15日

放送と人権等権利に関する委員会
委員長 竹田 稔 様

株式会社中国放送
執行役員総務局長 原森 勝成

「委員会決定」後の取り組みについて(報告)

この度、貴委員会から12月3日付け「委員会決定」通知を受け、当社では下記の取り組みを行いましたのでご報告いたします。

2008年12月3日(水)

  • BPOでの決定を受けて 夕方のテレビ番組「イブニング・ニュース広島」で決定内容についてニュース報道しました。
  • 東京で決定文書を受け取った報道センター長が、現地から報道センター社員全員に対し、「今後も県民の知る権利に応えるために、権力の監視を続け、公正、公平、正確に、そして放送倫理に即して、当社報道に関わるもの全員で報道にさらなる力を注いでいきましょう」(要旨)とのメールを送りました。
  • 報道センターのキャップ会議にてニュースデスクがニュースキャスターおよび記者クラブキャップに上記メール内容等を伝えて、今後も引き続き、人権に配慮しつつも政治に対する取材、特に調査報道に力を注ぐことを確認しました。

12月4日(木)

  • 当社部長以上が出席する幹部会(「一木会」)にてBPOの決定内容について報道センター長が報告。今後も取材にあたっては人権に配慮しつつ、報道機関として権力の監視を続けること等を報告。これに対し、社長から、これまで通りの報道姿勢を継続するよう激励を受けました。
  • 報道センターで働く社内外の全スタッフにBPOの決定の全文をメールに添付して送付し、今後の取材にあたっての糧にするように伝えました。

12月9日(火)

  • 放送倫理向上委員会(委員長 取締役テレビ局長)を開催。今回の決定を受け、ホームページ上での配信期間に問題はないのか、社員や番組のブログが人権に配慮した表現になっているかなど、さらなるチェック体制の必要性について議論しました。

12月11日(木)

  • 広報部長から全社員に一斉メールで放送人権委員会の委員会決定のアドレスを送り、全社員に閲覧を促しました。

以上

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・60件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 意見交換会[中部]のアンケート結果を報告
    昨年11月11日、名古屋で開催された放送人権委員会委員との意見交換会[中部]に関するアンケート結果について事務局から報告した。

    アンケートは、意見交換会に出席した52名全員を対象に行ったが、そのうち約6割に当たる31名から回答が寄せられた。

    主な内容としては、「掘り下げた内容の議論がなされ有意義であった」、あるいは「有益であった」との感想が23件、「毎年開催してもらいたい」「開催回数をもっと増やして欲しい」との積極的な意見が4件、また、「具体的なニュース映像等を利用すればさらに分かりやすかったのではないか」との意見も6件寄せられた。

  • 次回委員会は2月17日(火)に開かれることとなった。
  • BPO年次報告会が3月26日(木)に開かれることが決まり、事務局長から報告した。

以上

第142回 放送と人権等権利に関する委員会

第142回 – 2008年12月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始 ……など

12月3日に行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表に関する報告が事務局よりあった。また、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理が始まった。

議事の詳細

日時
2008 (平成) 年12 月16 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

放送人権委員会が、委員会発足後初めて、「放送と通信」をテーマに審理を行い、また、公人の疑惑追及報道についても検討した上記事案の「委員会決定」の通知・公表が12月3日(水)に行われ、事務局より以下のような報告があった。(委員会決定の内容はこちら)

「委員会決定」の通知は12月3日午後、申立人と被申立人が同席して行われた。申立人である元広島県議会議員3名のうち2名が広島より上京し、一方の被申立人側も中国放送報道センター長ら2名が出席した。
本事案では、中国放送によるテレビ実名報道のインターネット配信を「放送と同視できるか、どうか」について審理が行われたが、竹田委員長は、「本件報道の動画・音声配信が停止され、文字情報のみの配信となった時点において放送と同視できる状態ではなくなった。したがって、名誉権の侵害を訴えた本事案の実質審理には入らない」とする決定内容を通知した。

通知を受けて申立人は「事実上の門前払いで残念だ。実質審理に入ってほしかった。局は文字情報による配信についても責任を負うべきだ」とする感想を述べた。一方、被申立人は「弊社の主張が認められたものと思う。今後とも国民の知る権利のために尽力していきたい」とするコメントを出した。

通知終了後、午後3時から竹田委員長のほか、起草委員を務めた堀野委員長代行と三宅委員、及び多数意見と同じ結論ながら、理由が異なるとして「意見」を執筆した山田委員の4名が出席して記者会見を行い、「委員会決定」の内容を公表した。会見には27社・53名の記者が集まり、テレビカメラ6台が入った。
記者との質疑では、「文字だから同視しないとのことだが、本件ネット配信で伝えている事実はテレビ放送と同じではないのか」、「放送がネットに掲載された場合、BPOとしては今後も個別にやっていくのか」等の質問が出た。これに対し各委員は、「本件においてはもともと動画と音声を伴うテレビ放送が、文字のみの配信となったことから同視できないという結論になった。あくまでもオリジナルであるかどうか、その違いがポイントだ」、「今回の事案は、問題提起のケースだった。当委員会としては、放送と通信の現状を踏まえながら運営規則の弾力的な運用を具体的な事案によって判断していきたい。BPO全体としてどう対応するかは今後の課題だ」等と答えた。

会見を受け、当該局である中国放送は、当日夕方のローカルニュース番組「イブニングニュース広島」内で、決定内容と双方の当事者のコメントを伝えた。在京民放テレビキー局は、いずれも当日夕方から翌朝にかけてのニュース番組や情報番組内で全国ニュースとして伝えた。
また、新聞各紙は地元・広島を含め、翌日の朝刊社会面等で一斉に報じた。

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた今年7月23日のテレビ朝日「報道ステーション」の放送により、名誉・信用を毀損されたと、全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が申し立てた事案の審理を開始した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして、テレビ朝日に対し訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は「見解」で「報道内容に基本的な間違いはなく、報道内容は野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

前回の委員会後、テレビ朝日の「答弁書」、野中氏の「反論書」とこれに対するテレビ朝日の「再答弁書」が提出された。

この日の委員会では事務局が双方の主張の概要を説明した後、補助金の実態が正確に取材・報道されているかどうかや、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうかを中心に意見を出し合った。
次回1月20日(火)の委員会では、双方からヒアリングを実施することになった。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・61件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は2009年1月20日(火)に開かれることとなった。

以上

第141回 放送と人権等権利に関する委員会

第141回 – 2008年11月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「徳島・土地改良区横領事件報道」 審理入り決定 ……など

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の「委員会決定」起草案が了承され、来る12月3日(水)に決定の通知・公表が行われることとなった。 また、野中広務氏が名誉侵害等を訴えた「徳島・土地改良区横領事件報道」の審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2008 (平成20) 年11 月18 日(火) 午後4時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙において藤田知事の後援会組織等から裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議会議員3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の「委員会決定」起草案について審理を行った。
その結果、内容を一部修正のうえ了承し、来る12月3日(水)に、申立人、被申立人の双方に対し「委員会決定」を通知した後、記者会見を行い、その内容を公表することとなった。
本事案では、RCCが上記テレビ報道の内容を文字情報として自社ホームページ上に掲載し、申立人らがこれによる被害の継続を訴えたことから、「インターネットでの文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうか」を判断の対象として慎重に審理が行われてきた。当委員会が、「放送と通信」というテーマを俎上に審理した初めてのケースとなった。

審理要請案件「徳島・土地改良区横領事件報道」 審理入り決定

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えたニュース報道で、名誉・信用を毀損されたとする全国土地改良事業団体連合会会長の野中広務氏からの申立書を10月20日に受理した。今年7月23日のテレビ朝日「報道ステーション」での放送で、これまで当事者間で話し合いが重ねられてきたが、決着しなかった。
委員会は、野中氏の「申立書」とテレビ朝日から提出された「交渉経過と見解」および放送同録ビデオをもとに検討した結果、審理入りすることを決定した。
野中氏は「申立書」で「横領事件の対象が補助金であったという前提が基本的に間違っている誤報」であり、「申立人が政治力で膨大かつ不要な事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容」などとして訂正と謝罪の放送を求めている。これに対して、テレビ朝日は「見解」で「日本の農政の構造上の問題はないのか、問題提起をしようとしたのが放送の趣旨である」、「報道内容に基本的な間違いはなく、報道内容は野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。次回12月16日(火)の委員会から審理に入る。

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・9件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・121件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 中部地区「意見交換会」について事務局から報告
    11月11日に名古屋で開催された「放送人権委員会委員との意見交換会[中部]」について事務局から、その概要等について報告を行った。
    意見交換会には中部地区のラジオ、テレビ局26社から、報道・制作現場の関係者を中心に52名の出席があった。取材も新聞社4社、テレビカメラ6台が入った。
    冒頭、竹田委員長が「放送倫理について」と題する基調講演を行い、続いて上野統括調査役が、最近の放送人権委員会の活動報告を行った。この後、今回のテーマである「取材放送のあり方」、特に「隠し撮り」「匿名映像等の多用」の問題について意見交換を行った内容を報告し、最後に、名古屋の局のニュースで放送された「意見交換会」の模様を視聴した
  • 次回委員会は12月16日(火)に開くことを決め、閉会した。

以上

第140回 放送と人権等権利に関する委員会

第140回 – 2008年10月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案について、「委員会決定」起草案の検討、協議が行われた。 また、「元祖いちご大福報道」をめぐる審理要請案件は、討議の結果、審理対象外となった。

議事の詳細

日時
2008 (平成20) 年 10月21 日(火) 午後4時~7時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、
中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については先月、起草委員会が発足し「委員会決定」をとりまとめるための作業が進められてきたが、今月の委員会では、委員会決定起草案についての検討、協議が行われた。その結果、起草案の内容をさらに吟味したうえ、来月の委員会で改めて検討することとなった。
本件審理では、RCCが上記テレビ報道の内容を文字情報として自社ホームページ上に掲載し、申立人らがこれによる被害の継続を訴えているところから、「文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうか」を審理の対象として、これまで長時間にわたり熱心な議論が交わされてきた。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、2回にわたって審議を行った結果、当案件を審理対象外と決定した。この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子屋が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組で、”いちご大福の元祖は三重県の和菓子屋”と紹介されたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張し、訂正・謝罪放送を要求していた。
委員会では、双方から提出された文書・資料をもとに討議したが、多数の和菓子業者が元祖を名乗っている現状の中で、限られた資料に基づいて誰がいちご大福の元祖であるかを認定するのは困難であり、このような事案について当委員会が審理し、人権侵害の有無を判断することは相当ではないなどとして、審理の対象とはしないことを決定した。

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が起した裁判の高裁判決報告

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が、毎日放送を相手取って損害賠償を求めた裁判の控訴審判決(大阪高裁9月10日)について、事務局から報告した。
二審では、名誉毀損は認めなかったものの、隠しマイク・カメラによる取材で「みだりに自己の容貌・容態を撮影・公表されない自由と発言を録音・公表されない人格的利益」を侵害されたと認め、10万円の支払いを命じた。
一審では、名誉毀損を認め、人格的利益の侵害も認めており、40万円の支払いを命じていた。なお、放送人権委員会は、2005年10月「名誉毀損には当たらないが、隠しカメラ・隠しマイクの使用が不可欠とは認められない」として、放送倫理違反の見解を出している。(委員会決定第26号をご参照下さい)

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • TBS報道現場視察と番組スタッフとの意見交換会
    放送人権委員会では去る10月14日(火)、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52~18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
    意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。
  • 次回委員会は11月18日(火)に開かれることとなった。

以上

第139回 放送と人権等権利に関する委員会

第139回 – 2008年9月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えで、先月に引き続き、ネット配信とテレビ報道との同視問題をめぐり、審理が行われた。
また、先に放送人権委員会決定が公表された2事案について、 当該局のその後の対応に関する報告があった。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年9月16日(火)午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については、当委員会運営規則に定められた申立の期間要件(「原則として放送のあった日から3ヶ月以内に放送事業者に申立てられ、かつ、1年以内に委員会に申立てられたもの」)を満たしていないものの、RCCが実名報道の内容を、インターネットの同社ホームページ上に「藤田県政の闇」と題するバナーを置き、本年6月まで文字情報の形で掲載してきた事実があり、申立人らがこれによる被害の継続を訴えていること等から、「文字情報による配信行為をテレビ報道と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とする」こととなったもの。
先月の委員会後に、申立人からは、被申立人(中国放送)の「答弁書」に対する「反論書」、中国放送からは「反論書」に対する「再答弁書」が、それぞれ新たに提出された。
中国放送はこれまで、実名報道の動画に関しては昨年4月に削除し、それ以後は文字情報のみによる配信となっていたと説明してきたが、申立人は「反論書」において、「中国放送ホームページにアクセスして映像データを入手できる状態がその後も継続し、現時点でもその状態が続いている」とし、「テレビ放送とネット配信とを同視できることは当然かと考える」と主張した。
これに対し、中国放送は「これまで述べて来た通り、実名報道した4回分の映像データについては、既に昨年4月の時点で配信を終え削除している。その後、本年6月にバナー、7月には特集ページも削除しており、現在はホームページにアクセスして閲覧することは不可能である」とした上、申立人の主張に対しては、「裏金問題に関心のあると思われる人が、特殊な条件下において当社のサーバーに保存している動画ファイルにアクセスし、閲覧している状態と言わざるを得ない」と反論した。
また、文字情報でのネット配信に関連し、申立人は、「放送と配信との間には、選挙絡みの裏金が県議に授受された事実の有無にかかわる中心的かつ重要な事実内容に同一性が認められる」こと、また、「テレビ放送とネット配信は一体のものとして報道されており、このことはホームページ上のバナーを一連の報道タイトルと同じ『藤田県政の闇』と統一していることからも明らかである」とし、テレビ報道とネット配信とが同視できると主張した。
これに対し、中国放送は、「映像・音声・テロップ・ナレーション・解説等の複合的表現方法で成立しているテレビ報道とまったく同じ情報を、インターネットにアクセスした人が文字情報だけから得ることはできない」とし、さらに、「申立人ら代理人らの指摘の通り、テレビ放送が直接家庭の茶の間に侵入し、即時かつ同時に動画や音声を伴う映像を通じて視聴される点で、他のメディアには見られない強烈なインパクトを及ぼす」のに対し、「インターネットによる配信は、閲覧者が自らの意志でバナー等をクリックして該当ページを開き、内容を閲覧するものであること、その際、内容も十分検討でき、また、何度でもアクセスして内容を確認できることからも、放送とは根本的に異なる」と反論した。
双方の主張を踏まえ、この日の委員会では長時間にわたり各委員の間で突っ込んだ議論が交わされた。最終結論については次回に持ち越しとなったものの、委員会決定を取りまとめる為の起草委員会を発足させることが決まり、今後、起草作業の中でもさらに検討が加えられることとなった。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、委員会の審理の対象とするか否かについて審議を始めた。
この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子店が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組の中で、”いちご大福の元祖は東海地方の和菓子屋”との紹介をしたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張している。
委員会では、双方から提出された資料を踏まえて審議した後、次回委員会で議論を集約することになった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の当該局対応

去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案に関する第36号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるNHKは9月3日、委員会宛に「委員会決定に対するNHKの対応について」と題する文書を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。 (NHKの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第36号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の当該局対応

去る7月1日に通知・公表された「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の第37号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるエフエム群馬は9月16日、委員会宛に「委員会決定の取り組み状況について(ご報告)」と題する文書と、これを機会に新しく製作した「エフエム群馬 報道・編集ハンドブック 2008年版」を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。
竹田委員長は、「委員会決定を活かすべく、エフエム群馬は、真摯に、熱心に取り組んでくれている。対応としては申し分ない。」と感想を述べた。
なお9月25日付で、改訂版が寄せられた。
(エフエム群馬の報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第37号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
(個人又は直接の関係人からの要請)

人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・65件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

「意見交換会(中部)」を11月に開催
放送人権委員会委員と会員各社との「意見交換会」を、今年は11月11日に、中部地区会員社を対象に名古屋で開くことになった。放送人権委員会委員と各局関係者が、「放送における人権・倫理問題」を論じ合うもので、東京地区での意見交換会を含め、今年で12回目の開催となる。
次回委員会は10月21日(火)に開かれることとなった。

以上

第138回 放送と人権等権利に関する委員会

第138回 – 2008年8月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理 実質審理開始

仲介・斡旋解決事案 ……など

中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えについて、今月から実質審理が始まった。また、九州の民放テレビ局で起きた「誤報」に関する仲介・斡旋解決事案の報告等が行われた。

議事の詳細

日時
2008 年8 月19 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、 崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理 実質審理開始

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」についての実質審理が始まった。

本事案については、当委員会運営規則に定められた申立の期間要件(原則として放送のあった日から3ヶ月以内に当該局に申立てられ、かつ、当委員会に対し、1年以内に申立てられたもの)を過ぎているものの、RCCが一連の実名報道の内容をインターネットの同社ホームページ上に本年6月まで文字情報の形で掲載してきた事実があること、自社ホームページでの配信行為はRCCの主体的意思の表明と見られること等から、先月の委員会で、「文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とする」ことを決定、今月からその実質的な審理が開始されたもの。

委員会では、申立人から提出された「申立書」「申立補充書」、及び関連資料、被申立人であるRCCから提出された「答弁書」、及び関連資料等をもとに、「同視できるか、どうか」について各委員の間で活発な議論が交わされた。しかし、この日は結論を得るまでには至らなかった。
このため、申立人から8月末に提出される、「答弁書」への「反論書」、及び、反論書に対して、被申立人から「再答弁書」提出の意向があればその提出を待ち、これらをもとに9月の委員会でさらに議論を深めることとなった。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記案件が報告され、了承された。

『亡くなった家族を生きているように間違って放送された』と抗議

九州の民放テレビ局が、「スーパーマーケット前で、じゃんけんで勝つと品物が安く買えるゲーム」(VTR撮影)を行い、夕方の情報番組内で放送した。(08年6月26日) 放送後、ゲームの参加者(申立人)から、「家族構成は祖父母、両親、子供4人」と字幕入りで放送されたため、取引先や知人から「祖父母は、まだ生きているのか」「前に香典をおくったが・・・」などと疑惑の目で見られたり、不審に思われたりして迷惑を受けたとして、局に対し、訂正と謝罪をしてほしいとの抗議がなされた。
実際は、両親に子供6人の8人家族であったのを、取材者が聞き間違えたか、思い込みによって誤報となったもの。

抗議に対し、局側は電話で事実を間違えたことを詫びたが、謝罪文(申立人が知人に説明するため、局側が間違えたことを証明する文書)の提出を拒み、また、自宅へ謝罪に来てほしいとの要請についても断ったため、放送人権委員会への相談となった。

事務局からの事情聴取に対し、申立人は「訂正・謝罪は求めない」「慰謝料等も求めない」と述べていたこともあり、局に対し、「誤報で迷惑を掛けたのは事実であり、電話だけでなく自宅に出向いて謝罪し誠意を示すのもひとつの解決法ではないか」と勧めたところ、部長でもあるプロデュサーが申立人宅に出向いてお詫びした。申立人は「早い段階で誠意を見せてほしかった」と言いつつもこれを了承し、一転解決となった。申立人は、局が誠意を持って謝罪したことを評価し、謝罪文は要求しなかった。

放送から約1ヵ月後の7月に解決となったが、局側は「これまでの対応と今後の対策」を盛り込んだ説明・報告書を放送人権委員会委員長宛て送付、その中で「間違って放送したことは事実であり、直ちに訪問して謝罪すべきだった」と反省している。

7月の苦情概要

審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・9件
(個人又は直接の関係人からの要請)
人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・158件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は9月16日(火)に開かれることとなった。

以上

第137回 放送と人権等権利に関する委員会

第137回 – 2008年7月

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告 ……など

第137回委員会では、中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えについて、審理入りするかどうかを検討した結果、審理入りが決定した。また、7月1日に行われた「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表についての報告、「アブラボウズをクエとして販売した疑惑追跡報道」についての仲介・斡旋解決の報告等が行われた。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年7月15日(火)午後4時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構〔BPO〕第1会議室
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

中国放送(RCC)は、2006年10月19日以降、夕方のニュース番組『イブニングニュース広島』内で、「特集 藤田県政の闇 知事選裏金疑惑」と題する特集を継続的に放送し、この中で、「藤田知事後援会の政治資金規正法違反事件に関連し、広島地検の取調べを受けた知事の元秘書が、1997年の県知事選挙の際、15名の県会議員に裏金を渡したと供述、このうち現職議員の名前がRCCの独自取材で判明」として、2006年11月から2007年4月にかけ、4回にわたり、計11名の現職県議(当時)の実名を報道した。また、その放送内容をインターネットの同社ホームページ上に掲載した。

これに対し、実名報道されたうちの元県議A氏は、その放送から6ヵ月後に「事実無根の報道により名誉を毀損された」としてRCCに対し抗議し、謝罪等を要求した。しかし、RCCは「選挙にかかわる金銭授受の問題は大きな社会問題となっていたことから、広く県民に報道することが公益にかなうと判断した。報道は真実であると信じるに足る根拠に基づいてなされたものであり、公平を期すため、実名を公表された本人にも取材し、そのコメントも伝えている」などと回答、謝罪を拒否した。

放送からほぼ1年後の本年4月、実名を公表されたA氏を含む元県議3名が申立人となり、「事実無根の報道により名誉を著しく毀損され、申立人のうちの2名が県議選に落選するなど大きな被害を受けた」として、名誉権侵害を訴える申立書を当委員会に提出した。委員会では本事案について審理入りするかどうかの検討を行った結果、RCCが一連の報道内容をインターネットの同社ホームページ上に本年6月まで継続して掲載してきた事実があること等から、これを放送と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とすることを決定した。

本事案の本格的審理は、8月の第138回委員会より開始される。

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告

放送倫理違反との決定されたが承認された「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表の模様と当該局の対応などについて事務局から次の報告があった。

委員会決定の通知は、7月1日(火)申立人と被申立人のエフエム群馬に対し、個々に行われた。

委員会決定に対し申立人は、「自分の主張をもう少し認めてほしかったが、妥当な内容だと思う」と述べ、被申立人側は「放送倫理違反の指摘を真摯に受け止め、今後取材には十分気を付け、公正・公平な報道を心掛ける。これをきっかけに、ニュースの扱いについて反省し、より信頼される報道を心していきたい」と語った。

続いて15時から、委員会決定の内容を公表した。記者会見には竹田委員長と起草委員が出席、メディア側からは27社40人が集まり、テレビカメラ6台が入った。

記者との質疑では、「書類送検や不起訴のニュースでは、多くの場合、相手の言い分を聞くことなく伝えている。今回のケースでは何が違うのか、なぜこの報道がダメだと言うのか」という質問が多かった。これに対し委員からは、「原則は双方に取材し報道すべきだが、通常の書類送検や起訴なら当事者の言い分を取材しなくても放送倫理違反にならない場合もあるだろう。しかし今回のケースは単純な事件の報道ではない。1年以上も前に不起訴になっているもので、それが県議会という場で取り上げられたということから、群馬県行政書士会内部の複雑な背景事情がうかがわれる。それにもかかわらず、一方の当事者に全く取材をしないまま放送したのは問題だった」との説明があった。

この決定を受けたエフエム群馬の決定日当日の放送対応は次のとおり。

  • 「EVENIN’(イブニン)」内ニュースコーナー 18:03頃(1分15秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 19:55(4分45秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 20:55(4分45秒)

一方、在京テレビ局は、発表当日の夕方~夜、及び翌日朝のニュース番組で、30秒~1分35秒この決定について放送した。東京では新聞各紙が翌日の社会面で報じた。

以上の説明の後、エフエム群馬より送られてきた、特別番組(上記 3)を委員会で聴取した。

仲介・斡旋解決

事務局より下記案件が報告され、了承された。

「アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道」

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。

流通ルートから“偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。

放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。

放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・10件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・250件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8月19日(火)に開かれることとなった。

以上

第136回 放送と人権等権利に関する委員会

第136回 – 2008年6月

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告 ……など

第136回委員会では、「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の、委員会決定起草案を審議し、一部修正のうえ了承、7月1日、通知・公表することが決まった。また去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の委員会決定について報告があった。さらに、バラエティー番組を巡る苦情申立てがあり、当該局との話し合いを勧めた結果、双方が合意した仲介・斡旋事案が報告された。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年6月17日(火)午後4時~8時
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承

群馬県行政書士会の幹部からの「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、これまで2回の委員会審理が行われたが、今日の委員会ではそのまとめである委員会決定文について、起草委員会が提出した起草案を検討した。

放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行なわないとの考えを明らかにした」と伝えたもの。

この放送について申立人は、「エフエム群馬の放送内容は事実と全く違う。自分になんの取材をしないまま、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。エフエム群馬に対し、放送法4条に基づく訂正放送と謝罪を求めたい」と主張していた。

これに対しエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」などと反論していた。

双方のヒアリングも行った結果、先の委員会では、「ニュース放送で伝えられている内容は一応事実であると考えられるから、名誉侵害とまでは言えない。しかし、申立人の名誉に関わる問題であるのに、申立人に対し全く取材をしないまま放送したことは、放送倫理に違反したものと言わざるを得ない」との方向が出されていた。

委員会には、その方向に沿う起草案が示され、表現その他を巡り意見交換が行われた。

「放送倫理違反」の内容をどのように表現するかという議論では、「エフエム群馬に確かに落ち度はあったが、全国のエフエムラジオ局の中でも数少ない報道部を持って取材・報道している局であり、今回の委員会決定で報道活動を萎縮させないような表現にしたい」という趣旨の発言もあった。

また申立人が求める、放送法4条に基づく訂正放送についても議論された。事務局の調べでは、これまで決定を出してきた36件の事案の中で、訂正放送が必要かどうかの判断をしているケースも多いが、訂正放送を勧告した例はなかった。このことから、当委員会は自主的な判断として訂正放送を求める勧告も出せることを前提に審理をしているのであり、あえて放送法4条に基づく訂正放送について検討する必要は無いとの意見で一致した。

以上のような議論を経て、表現や字句の修正などを加えた委員会決定の草案が全会一致で了承され、この決定の通知・公表を7月1日に行うこととなった。

(委員会決定の内容はこちら)

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告

「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK総合テレビ『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではなく、放送倫理にも違反していた」と申立てていた事案で、委員会は6月10日、午前10時から申立人、被申立人双方に対し決定を通知し、11時記者会見を開き公表した。

(委員会決定の内容はこちら)

この委員会の通知・公表(記者会見)、及びこの決定公表に関するマスコミの対応などについて事務局から次のような報告があった。

この通知について、申立人側は「公平・公正を欠いた放送であったということを認めていただいて、とてもうれしく思います」と表明し、被申立人のNHKは「今回の決定を尊重して、公平・公正な放送に努めてまいります」と述べた。

記者会見では竹田委員長が「委員会決定」について説明し、「昨年7月の運営規則改正後の初めての公平・公正を欠く放送についての判断である。また、この決定は一般的な判決報道の基準を示したものでなく、放送事業者自身が当該裁判の一方の当事者であるという特殊性のある事案であることに留意してもらいたい」と述べた。右崎委員は「公平・公正についての最初の事案であることから、時間をかけ、当事者の意見を良く聞いたうえで慎重に判断したものである」と述べ、武田委員は「今回はあくまでも特殊なケースではあるが、このようなケースを積み重ねることによって、公平・公正の概念が規定されてくるのではないか」と指摘した。

記者からは、「この事案の元となった最高裁の判決が明後日(6/12)に出るが、判決を意識しての今日の決定となったのか。また、この決定が判決に影響を与えるものなのか」との質問があった。これに対して竹田委員長は「判決が6/12に出ることは承知しているが、本事案は通常の手続きにのっとって決定に至ったもので、判決と本日の決定とは直接関係はない。また本件は判決報道に係る報道のあり方についての決定であって、元になった判決に影響を与えるものではない」と答えた。

この記者会見を受け、その直後の昼のニュースでフジテレビが伝えたほか、多くの局は夕方のニュースでこの決定とNHKの反応などを伝えた。また当該局であるNHKは、「NHK7時のニュース」及び当該番組の「ニュースウオッチ9」で伝えた。さらに、新聞も多くがその日の夕刊で、かなりの紙面を割いて伝え、この事案への関心の高さをうかがわせた。

仲介・斡旋解決

事務局より下記の報告をし、了承された。

「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情

中国地方に住む男性から、「4月全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。

当委員会で、当該局に事実関係の確認ならびに男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で、和解が成立し、5月に全国ネットで同番組の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む圏域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。

当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認めお詫び放送に踏み切ったもの。

なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・133件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

「BRC」から「放送人権委員会」へ

事務局から下記の件を報告し、了承を得た。

5月のBPO理事会で、「放送と人権等権利に関する委員会」の略称について、7月1日より、略称を「放送人権委員会」とし、BRCは使わないことを決めた。BRCとBPOの区別が分かりにくいなどの意見に配慮したもの。

次回委員会を7月15日に開くことを決め、閉会した。

以上

第135回 放送と人権等権利に関する委員会

第135回 – 2008年5月

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理 …..など

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

群馬県行政書士会の幹部から、「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、申立人、被申立人を個々に招いてヒアリングを行い、そのあと審理した。

放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行わない考えを明らかにした」と伝えたもの。

ヒアリングで、申立人は「エフエム群馬の放送内容は事実とは全く違う。自分になんの取材をしないまま、県議会の委員会で取り上げられたからと言って、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。真実を探る努力を怠ったことから、真実でない放送をされ、名誉侵害を受けたので、放送法4条に基づきエフエム群馬に対し訂正放送と謝罪を求めたい」と主張した。

これに対し被申立人のエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論した。

ヒアリングを受けて委員会では、この事案を名誉侵害や放送倫理の面などから審理を行い、起草委員にその内容のとりまとめを委託した。次の委員会ではそのとりまとめを受けて最終的な判断を決定する方向となった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理

本事案は、「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたNHK教育テレビ・ETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではないし、放送倫理にも違反していた」と訴えているもの。これに対しNHKは「判決について報じる場合は、裁判所による客観的な判断であるから原告や被告の言い分を付さずとも基本的に公平の観点で問題はない。また、申立人の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

5月の委員会では、5月13日に開かれた「起草委員会」で検討された内容が報告され、「委員会決定」原案取りまとめに向けて意見が交わされた。

その結果、「決定」案の細部の文言等について、さらに各委員の意見を集約して6月3日に起草委員会を開き、最終的な取りまとめ作業を行うこととした。

宗教団体からの審理要請案件  審理対象外を通告へ

本案件は、在京の民間放送局が、2007年9月報道番組で宗教団体への潜入取材レポートを行ったことをめぐって、隠しカメラ・隠しマイクの対象となった宗教団体および団体幹部から、名誉毀損等の権利侵害ならびに公平・公正に関する放送倫理違反とする二つの申立てがなされた。

2007年7月放送人権委員会は運営規則を改正し、条件付きながらも「団体からの申立て」も受理することとし、また、「公平・公正の苦情」についても訴えることができることとした。これを受けての団体からの本格的な審理要請案件であり、委員会では、審理入りするかどうかについて慎重な議論を行った。その結果下記のような結論に達し、それぞれの申立人に通知することになった。

まず、個人からの申立てについては、「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」などとして、放送人権委員会の運営規則第5条(1)、(2)の規定に定める苦情申立てを受理する基準に該当しないと判断した。

また、団体からの申立てについては、「申立てを受理するかどうかについては、団体としての、規模、組織、社会的性格などを考慮する必要がある。潜入取材に関して申立人が放送中止を求める仮処分申請を東京地方裁判所に出し、却下の決定を受けており、申立人は、本件放送による名誉・信用の侵害については、司法による権利救済を求めることが可能な団体であると解され、司法による救済とは別に、放送人権委員会における救済の必要性が高いなど、審理対象とすることが相当であるとは認められない(放送人権委員会運営規則第5条(6)による)。さらに「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」(放送人権委員会運営規則第5条(2)による)などとして、上記とあわせ、本件申立ては審理の対象外とすることと判断した。

* 放送人権委員会の運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)

  • 名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関するものを原則とする。
  • 公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者からの書面による申立てがあった場合は、委員会の判断で取り扱うことができる。
  • 団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。

苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。

◆人権関連の苦情

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談(個人又は直接の関係人からの要請)・・・8件
  • 人権一般の苦情や批判(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)・・・144件

* 今年度より、一般視聴者からの苦情や批判の集計に当たっては、従来の人権侵害の枠に止めることなく、放送倫理を問うものまで含めることとした。

『放送人権委員会判断基準2008』 発刊

事務局から、『放送人権委員会判断基準2008』の編集・印刷が完了し、5月16日発刊したことを報告した。全加盟各社等に配布し、さらに購入の要望があるところには、実費の1冊600円で頒布することにしているが、すでに、テレビ局や日弁連等から注文が来ていることを合わせて説明した。

次回委員会を6月17日に開くことを決め、閉会した。

以上

第134回 放送と人権等権利に関する委員会

第134回 – 2008年4月

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  起草委員会が草案作成へ

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  5月委員会でヒアリング ……など

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  起草委員会が草案作成へ

本事案は、今年1月に「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送の『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして到底許されるものではないし、放送倫理にも違反している」と申し立てているもの。

4月の委員会では申立人、被申立人双方から、個別に直接主張を聞くヒアリングを行った。

この席で申立人側は「NHKは報道機関でありながら、裁判の当事者としてのNHKと一体化していて、客観的な報道を行っていない、判決の本質をゆがめて伝えている」と訴えた。

一方、被申立人のNHKは「当事者としての判断はなく、判決についてより淡々と伝えることに気を配ったものである」と述べた。

ヒアリングの後、更に審理を行い、5月13日に起草委員会を開いて、委員会決定の草案作成の作業を進めることにした。

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  5月委員会でヒアリング

群馬県行政書士会の幹部から、「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」と申立てがあり、委員会で審理された。放送は昨年 12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の運営を巡る対立により、この幹部が傷害の疑いで書類送検され、その後不起訴になった」などと伝えたもの。

これについて申立人は、「事実関係は全く違う。自分になんの取材をしないまま、県議会の委員会で取り上げられたからと言って、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない」として、エフエム群馬に対し訂正放送と謝罪を求めている。

これに対しエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、重要事項についての事実確認を行ったうえで報道しており、真実でない事項の放送はしていない。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論している。

委員会では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、及びエフエム群馬からの「答弁書」「再答弁書」等の資料を基に審理を行った結果、申立人、被申立人それぞれの言い分を確認する意味でも、次の委員会では双方を招いてヒアリングを行うことにした。

苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり

◆人権関連の苦情[9件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・0件

次回委員会を5月20日に開くことを決め、閉会した。

以上