第136回 – 2008年6月
「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承
「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告 ……など
第136回委員会では、「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の、委員会決定起草案を審議し、一部修正のうえ了承、7月1日、通知・公表することが決まった。また去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の委員会決定について報告があった。さらに、バラエティー番組を巡る苦情申立てがあり、当該局との話し合いを勧めた結果、双方が合意した仲介・斡旋事案が報告された。
「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承
群馬県行政書士会の幹部からの「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、これまで2回の委員会審理が行われたが、今日の委員会ではそのまとめである委員会決定文について、起草委員会が提出した起草案を検討した。
放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行なわないとの考えを明らかにした」と伝えたもの。
この放送について申立人は、「エフエム群馬の放送内容は事実と全く違う。自分になんの取材をしないまま、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。エフエム群馬に対し、放送法4条に基づく訂正放送と謝罪を求めたい」と主張していた。
これに対しエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」などと反論していた。
双方のヒアリングも行った結果、先の委員会では、「ニュース放送で伝えられている内容は一応事実であると考えられるから、名誉侵害とまでは言えない。しかし、申立人の名誉に関わる問題であるのに、申立人に対し全く取材をしないまま放送したことは、放送倫理に違反したものと言わざるを得ない」との方向が出されていた。
委員会には、その方向に沿う起草案が示され、表現その他を巡り意見交換が行われた。
「放送倫理違反」の内容をどのように表現するかという議論では、「エフエム群馬に確かに落ち度はあったが、全国のエフエムラジオ局の中でも数少ない報道部を持って取材・報道している局であり、今回の委員会決定で報道活動を萎縮させないような表現にしたい」という趣旨の発言もあった。
また申立人が求める、放送法4条に基づく訂正放送についても議論された。事務局の調べでは、これまで決定を出してきた36件の事案の中で、訂正放送が必要かどうかの判断をしているケースも多いが、訂正放送を勧告した例はなかった。このことから、当委員会は自主的な判断として訂正放送を求める勧告も出せることを前提に審理をしているのであり、あえて放送法4条に基づく訂正放送について検討する必要は無いとの意見で一致した。
以上のような議論を経て、表現や字句の修正などを加えた委員会決定の草案が全会一致で了承され、この決定の通知・公表を7月1日に行うこととなった。
(委員会決定の内容はこちら)
「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告
「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK総合テレビ『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではなく、放送倫理にも違反していた」と申立てていた事案で、委員会は6月10日、午前10時から申立人、被申立人双方に対し決定を通知し、11時記者会見を開き公表した。
(委員会決定の内容はこちら)
この委員会の通知・公表(記者会見)、及びこの決定公表に関するマスコミの対応などについて事務局から次のような報告があった。
この通知について、申立人側は「公平・公正を欠いた放送であったということを認めていただいて、とてもうれしく思います」と表明し、被申立人のNHKは「今回の決定を尊重して、公平・公正な放送に努めてまいります」と述べた。
記者会見では竹田委員長が「委員会決定」について説明し、「昨年7月の運営規則改正後の初めての公平・公正を欠く放送についての判断である。また、この決定は一般的な判決報道の基準を示したものでなく、放送事業者自身が当該裁判の一方の当事者であるという特殊性のある事案であることに留意してもらいたい」と述べた。右崎委員は「公平・公正についての最初の事案であることから、時間をかけ、当事者の意見を良く聞いたうえで慎重に判断したものである」と述べ、武田委員は「今回はあくまでも特殊なケースではあるが、このようなケースを積み重ねることによって、公平・公正の概念が規定されてくるのではないか」と指摘した。
記者からは、「この事案の元となった最高裁の判決が明後日(6/12)に出るが、判決を意識しての今日の決定となったのか。また、この決定が判決に影響を与えるものなのか」との質問があった。これに対して竹田委員長は「判決が6/12に出ることは承知しているが、本事案は通常の手続きにのっとって決定に至ったもので、判決と本日の決定とは直接関係はない。また本件は判決報道に係る報道のあり方についての決定であって、元になった判決に影響を与えるものではない」と答えた。
この記者会見を受け、その直後の昼のニュースでフジテレビが伝えたほか、多くの局は夕方のニュースでこの決定とNHKの反応などを伝えた。また当該局であるNHKは、「NHK7時のニュース」及び当該番組の「ニュースウオッチ9」で伝えた。さらに、新聞も多くがその日の夕刊で、かなりの紙面を割いて伝え、この事案への関心の高さをうかがわせた。
仲介・斡旋解決
事務局より下記の報告をし、了承された。
「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情
中国地方に住む男性から、「4月全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。
当委員会で、当該局に事実関係の確認ならびに男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で、和解が成立し、5月に全国ネットで同番組の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む圏域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。
当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認めお詫び放送に踏み切ったもの。
なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。
5月の苦情概要
5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
(個人又は直接の関係人からの要請)
- 人権一般の苦情や批判・・・・・・・133件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
「BRC」から「放送人権委員会」へ
事務局から下記の件を報告し、了承を得た。
5月のBPO理事会で、「放送と人権等権利に関する委員会」の略称について、7月1日より、略称を「放送人権委員会」とし、BRCは使わないことを決めた。BRCとBPOの区別が分かりにくいなどの意見に配慮したもの。
次回委員会を7月15日に開くことを決め、閉会した。
以上