第104回 放送と人権等権利に関する委員会

第104回 – 2005年9月

審理事案「喫茶店廃業報道」のヒアリングと審理

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理…など

審理事案「喫茶店廃業報道」のヒアリングと審理

事案は、兵庫県内でたこ焼き屋を営んでいた女性からの申立てで、「本年5月9日放送の毎日放送のニュース番組で、私の嫌がらせで喫茶店が潰れたと放送された。一方的取材で構成された番組で、はなから私を犯罪者扱いにしている」というもの。9月の委員会では申立人・被申立人双方を東京に招いてそれぞれ別個にヒアリングを行った。

申立人は意見陳述の中で「このトラブルは(喫茶店主と私の)路上駐車枠の取り合いが原因と思う。放送後、毎日放送に抗議したが全く取り合ってくれなかった。私にも落度があったが、私の言い分を直接聞こうとはせず隠しカメラや隠しテープを使うなど陰険なやり方で許せない。この番組は放送局と喫茶店主による私に対する魔女裁判だ」と訴えた。

一方、被申立人の毎日放送は「喫茶店主から当番組宛にメールを貰い、取材を始めた。県警や行政機関、付近住民などを1か月余りかけて取材した。毎日放送としては十分にきちんと取材して放送したと思っている。通常なら当事者から直接話しを聞くのが原則だが、今回は本人のナマの声・本音を聞くために隠し撮り等の手段をとった。ケースによっては許される手法ではないか。喫茶店が廃業したのは経営者が(申立人の言動に)恐怖を感じたことが一番の原因だと思う」と述べた。

ヒアリングの後審理に移り、起草委員会がまとめた草案を中心に意見を交わした。その結果「決定」原案を10月初旬を目途にまとめ、本事案の「委員会決定」の通知・公表を10月18日の委員会開催日に行なうことになった。

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理

本事案は、〈消える高齢者の財産〉というタイトルのドキュメンタリーの中で”孤独老人相手の新商売”(ただうなずくだけで2時間1万円)として紹介された東京在住の男性が、この放送(2005年6月14日・テレビ東京)により名誉を毀損されたと苦情を申し立てたもの。前回の委員会で審理入りが決まった。

9月の委員会では、申立人からの申立書、被申立人からの答弁書をもとに、実質審理に入り、各委員からこの新商売の実態や、放送による申立人への影響等について意見交換がなされた。

申立人が被申立人による答弁書の事実関係について反論書を提出したいと言っていることから、委員会では、反論書とそれに対する再答弁書の提出を待って、次回再度審理を重ねることになった。

『放送人権委員会判断基準2005』の編集作業について

放送人権委員会事務局から制作中の『放送人権委員会判断基準2005』の編集状況について説明があった。

本委員会前に配布した第一稿について、監修の右崎正博委員をはじめ各委員から意見等がよせられ、事務局ではこれを受けて、9月末までに再度のチェックを依頼した。

この新しい『放送人権委員会判断基準2005』については、10月上旬に第2稿を作成し、さらに検討を加えた上で、中旬を目途に製本化することになった。

「意見交換会(地方)」について

事務局から、年内に予定されている「放送人権委員会委員と東北地区の放送局のBPO連絡責任者等との意見交換会」の開催について説明。開催日について各委員のスケジュール等を調整した結果、11月29日(火)に仙台で開催することになった。

地方での開催は、大阪、名古屋、福岡、札幌、広島に続いて6回目で、東京での開催を含めると10回目となる。

苦情対応状況報告[8月]

2005年8月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(21件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・16件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

その他

最後に、次回放送人権委員会は、事案「喫茶店廃業報道」の「委員会決定」の通知を10月18日の委員会開催日の午後2時から行うこととし、また、その公表の記者会見で『放送人権委員会判断基準2005』刊行の発表もあわせて行なうことになった。その後の午後4時から通常の委員会を開くことを決め、閉会した。

以上