第108回 放送と青少年に関する委員会

第108回 – 2010年1月

視聴者意見について

中学生モニター報告 …など

1月26日に開催した第108回青少年委員会では、12月16日~1月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見について審議した。また、来年度からのモニター制度改革について審議したほか、来年度の調査・研究のテーマについて議論した。

議事の詳細

日時
2010年 1月26日(火) 午後4時30分~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員から、寄せられた視聴者意見の概要についての報告を受け審議したが、特に取り上げるべき番組はなかった。

中学生モニター報告

1月のテーマは、年末年始の”特番”を見て「面白かった番組」「面白くなかった番組」で、その番組を見ようと思った理由や、見た結果どこが良かったのか、もしくは何が期待はずれだったのかを報告してもらうもので、30人から率直な意見が寄せられた。

【主なモニター意見】

いちばん意見の多かった番組は『NHK紅白歌合戦』の14件で、そのうち8件が好評、6件が批判的な意見だった。「”紅白”は小さいころから飽きてしまい、つまらないという印象がありましたが、今回は私の大好きな嵐が出場するということや60回記念ということに興味があり最初から最後まで見ました」「今年は僕的には最高の年でした!”こども紅白”という企画では大橋のぞみちゃんと加藤清史郎くんが緊張しながらもしっかり司会しているところに感心しました」「”紅白”には絶対に出ないといわれていた矢沢永吉さんが出演してびっくり。SMAPがマイケル・ジャクソン追悼のために彼の名曲を歌ったり踊ったりしていて久しぶりにドキドキしました」「私はジャニーズのグループがたくさん出るのでうれしいけれど、今年はジャニーズや芸人に頼っているようで、それは歌番組本来の楽しみ方ではなく演芸番組になってしまっていると思いました」「私はジャニーズファンではないので、曲と曲の間にちょこちょこ出てきていたのには少しガッカリ。結局、結果も白組の勝ち。紅組にも素晴らしい方はたくさんいるのに、ずっと白組ばかり勝っているのはこういうことも原因なんじゃないかなと思います」。
次に多く意見が寄せられた番組は日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで大晦日スペシャル!!~絶対に笑ってはいけないホテルマン24時!』の8件で、6件が好評の意見だった。「僕は受験生ですので最後まで見ることはできませんでしたが、久しぶりに腹の底から笑うことができました」「やはりダントツで一番面白かったです。5人のメンバーと”ケツバット”のルールが元祖から変わらずシンプルなところで笑えます。一年の終わりに相応しいかどうかは分かりませんが、十分見応えがありました」「6時間は少し長すぎではないかと思いましたが、この不景気の中、一年を大笑いして越せるというのはとても良いことだと思います」。批判的な意見は2件で「以前はいきなり江頭2:50が出てきて踊りだすなど破天荒な笑いで楽しめましたが、今回は出演している芸人の元奥さんなどが出ていたりして、ここにも内輪ネタの波が来たかと嘆息の思いでした」「後半になるにつけ尻を叩くのを見ていると不愉快になってきました。下品にも程があります。ただ、これは叩かれた芸人さんではなく、作家や演出家の人が悪いと思います。来年から、企画を考え直した方が良いはずです」。
朝日放送の『芸能人格付けチェック!これぞ真の一流品だ!2010お正月スペシャル』には好評の意見6件が寄せられた。「毎年家族そろって見ています。芸能人が高飛車に言っている様子が映し出され、失敗するところがとても面白いです。内容は毎年似たようなものですがそのままでいいと思うし、続けてやってほしい番組です」「GACKTさんが2年連続”一流芸能人”になれるかが気になって見ました。GACKTさんが正解したときのポーズがおかしかったです」。
一方、批判的な意見が多かったのは、通常のバラエティー番組のスペシャル版。『Qさま!!芸能界最強漢字王決定戦3時間SP』(テレビ朝日)には、「3時間、すべて漢字の問題だったのには飽きました。3時間もあるのだから、漢字以外の問題やいつもと違う出題をするなど工夫してほしかったです」。また『SASUKE2010』(TBS)には、「サスケのステージは毎回毎回工夫が凝らされてより難しくなっていて、3rdステージやファイナルステージなどを見ていると手に汗を握る。ただ、前は放映時間が短かったのにお笑い芸人が笑いをとるために出るので、長くて最後まで見切れない。お笑い芸人もきちんと予選を通って出てくるようにすれば…」といった意見が寄せられた。
今年は特に長時間番組が多かったことから、「長すぎる」「2時間くらいに編集してほしかった」「途中で寝てしまった」という意見や、「通常番組の”特番”の場合、ぜひ見てほしいという工夫や熱意に欠けていた」という意見もあった。

【委員の所感】

  • 中学生が面白いと感じた番組が何本かに集中していたことに特徴があった。『芸能人格付けチェック!』や『とんねるずのスポーツ王は俺だ』などは企画が優れており、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日スペシャル!!』は凝った作りで、大人が見ても面白いと感じる番組だった。ただ、多くの中学生が今年の特番を「ムダに時間が長いだけ」と報告してきたことには同感だった。
  • 『NHK紅白歌合戦』が多くの家庭で見られていることが意外で、年越しの夜の家族の風景があまり変わっていないことが印象に残った。また、紅組、白組の投票に参加した中学生がいることも意外だった。
  • 年末の『熱血!地球教室2009~カンボジアで夢と希望の特別授業』(TBS再放送)を見た中学生から「戦争が終わっても地雷など戦争のつめ跡が今でも残っていることや、勉強できることの大切さを学んだ」という報告に感心した。これからはアジアへ目を向ける放送がより重要になると考えられるので、ぜひ放送局にそうした番組を制作してほしい。

【中学生モニター会議】

2009年度後期の中学生モニター会議は、1月10日に東京・紀尾井町の千代田放送会館で開かれた。テーマは、「もし自分がディレクターだったら、『私の見たい番組』『私の作りたい番組』」で、全国から19人の中学生モニターが参加し、7人の委員と熱心に意見交換を行った。会議の内容はまもなく冊子としてまとめ、関係各所に送付する予定。

【2010年度「中高生モニター」募集について】

2006年度から続けている「中学生モニター」を、2010年度から「中高生モニター」に変更して募集を開始した。新しいモニター制度は、枠を中学生から高校2年生まで拡大し、任期もこれまでの半年から1年に変更。毎月のモニター報告も、3~4カ月単位で1つのジャンル(バラエティー番組、情報・報道番組、アニメ・ドラマほか)を取り上げ、意見や感想を報告してもらう。締め切りは2010年3月8日(当日消印有効)。詳細と応募用紙はBPOホームページに掲載している。

調査研究

4委員によるワーキンググループの第1回分科会の経過報告を受け、調査テーマや日程等について審議し、引き続き検討することとした。

2009年12月に視聴者から寄せられた意見

2009年12月に視聴者から寄せられた意見

偽造紙幣を使った詐欺事件の取材方法が不適切だと指摘する意見、天皇と中国副主席との会見関連報道への意見、朝鮮学校が隣接する公園を「不正使用」していることへの抗議活動を伝えた報道への批判意見などがあった。また今月は年末特番を含めバラエティー番組への意見が多かった。

報道関連意見としては、偽造紙幣を使った詐欺事件の取材方法が不適切だと指摘する意見が45件、天皇と中国副主席との会見関連報道への意見が31件、朝鮮学校が隣接する公園を「不正使用」していることへの抗議活動を伝えた報道への批判意見が29件、ほかに、不法入国者に関するキャスターの不適切発言や、富士山で遭難した元F1レーサーに対するインタビューの不適切さを指摘する意見などがあった。

2009年12月に電話・FAX・郵便・EメールでBPOに寄せられた意見は1,475件で、11月と比較して367件減少した。 。意見のアクセス方法の割合は、Eメール65%、電話31%、FAX2%、手紙ほか2%。 男女別は男性67%、女性30%、不明3%で、世代別では30歳代32%、40歳代26%、20歳代19%、50歳代10%、60歳以上10%、10歳代3%の順となっている。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は777件(35局)であった。
またこの他に、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、44件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 人権に関する審理・斡旋の要請・・・・・・・ 3件
    (個人または直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

12月には大きな事件・事故が少なかったため、先月と比べ、事件報道のあり方への意見が大幅に減少した。報道関連意見としては、偽造紙幣を使った詐欺事件の取材方法が不適切だと指摘する意見が45件、天皇と中国副主席との会見関連報道への意見が31件、朝鮮学校が隣接する公園を「不正使用」していることへの抗議活動を伝えた報道への批判意見が29件、ほかに、不法入国者に関するキャスターの不適切発言や、富士山で遭難した元F1レーサーに対するインタビューの不適切さを指摘する意見などがあった。
また、政治関連では、親族からの政治資金の贈与に関する報道で総理を擁護し過ぎるという意見など、鳩山総理関連意見が78件あったが、情報番組のコメンテーターが、総理の秘書の罰金と万引きの罰金を比較して総理を擁護したことにも、多くの意見が寄せられた。「偏向」というキーワード検索で70件、「公平」で57件該当した。意見分類のキーワードで、具体的な報道姿勢を指摘した「不適切な報道」が114件、より広く「報道のあり方」を論じた意見が68件あった。
今月は年末特番を含めバラエティー番組への意見が多く、前月比52件増の216件の意見が寄せられた。マイケル・ジャクソン特集への批判意見が41件、タレントの離婚発表の際、「夫の不倫を容認すべき」という司会者の発言に対する批判意見が32件あったほか、傷害事件で逮捕された芸人を編集でカットせずにそのまま放送したこと、漫才グランプリの敗者復活戦番組のタイトルと放送内容が違うこと、罰ゲームの「熱湯風呂」が危険であること、巨大リップクリームを作る実験で大量の材料を無駄に廃棄したこと、などを批判する意見が寄せられた。他に、ドラマへの意見が30件、スポーツについて29件の意見があった。キーワード検索の「人権」で43件、「いじめ」で55件該当した。番組出演者に関する意見は「不適切な発言」検索で84件と先月より減少したが、「不適格な出演者」検索では119件と増加している。放送局の視聴者・聴取者への応対の関する意見は、今月は29件。ラジオ番組への意見は37件。CMに関する意見は49件であった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は116件で、前月より約50件減少した。
今月は「低俗、モラルに反する」との意見が48件に上った。批判対象となった番組は分散しているが、子ども向け特撮番組の最終回および映画予告について、同番組プロデューサーのインタビューが雑誌掲載されたことを受け、改めて批判的な意見が6件寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 政権交代以前と以降で、報道のされ方が大きく違うことに不信感があります。政策の中身がころころ変わるのを、麻生前政権では「ブレている」と報道していたのに、鳩山政権では「柔軟」だと報道するなど、言葉のイメージで操作しているとしか思えません。今の報道のあり方は世論を偏った方向に誘導しようとしているように受け取れます。日本のために正しく報道がなされることを望んでいます。
  • 「知る権利」や「報道の自由」以前に考えていただきたい。なぜ「強姦殺人」や「強姦致傷」などの言葉が放送されなければいけないのか非常に疑問だ。殺人や致傷という結果に至る過程での「性的暴行」を伝える際は、その被害を受けた女性の心の痛みを考えるべきだ。マスコミがもう一度「レイプ」することは慎むべきだ。
  • 番組のキャスターが民主党幹事長の発言をヤクザ言葉のような「声色」を使って脚色して表現している。批判するにしても、個人の感情でおとしめるのはよくないと思う。
  • 不法入国者が捕まったニュースの際に、キャスターが「不法入国者であっても、勤労者とそうでないものは分けるべきだ。労働力が不足しているわけだし」と伝えた。しかし、不法入国という明確な犯罪が、勤労者だから許されるというのはおかしい。
  • 女子大生殺害事件の報道で、被害者のカラオケの歌声を流していた。なぜ、こんなものまで放送されてしまうのか。おそらく「他局はどこも流していない。流すなら今だ!」という安易な気持ちで放送したのだろう。マスコミの人権侵害は、もはや留まるところを知らない。
  • 鳩山総理の献金問題に絡んで、コメンテーターが「万引きの最高罰金は50万円。だから秘書の罰金30万円はたいしたことではない」と発言した。彼は「総理の脱税は万引きよりも罪が軽い」と断言したわけです。このような非常識な発言は許されない。
  • 元F1レーサーら3名が富士山で遭難し、2名が死亡したニュースを取り上げていた。二人の同僚が目の前で死に、憔悴しきっている人に対する「今振り返ってこの富士登山はいかがでしたか?」という記者団の場を弁えない質問に怒りを覚えた。このようなインタビューを聞く度に思うが、どうして記者団は相手への配慮のない質問ができるのか?

【番組全般・その他】

  • 本格的医療ドラマとPRしているが、医療現場の描き方に疑問がある。全体的に医師の立場が正当化され、医療過誤による犠牲者が訴訟を起こすことが、あたかも悪のように扱われるなど、患者への視点が欠けている。こうした問題は、軽々しくドラマで単純化して描かないでほしい。
  • バラエティー番組で「巨大リップクリームを作る」という企画だったが、熱したミネラルオイル・パラフィン・カンフル・メントールなど多量の原料を無駄にし、地面にばら撒く映像が放送された。リップクリームは薬事法でいう医薬部外品であり、このようなものを大量に廃棄することは土壌汚染にもなる。倫理上も許されない行為である。
  • タレントの離婚話を伝えていた。浮気した夫が一番悪いにもかかわらず、妻である彼女を責め立て、まるで「浮気は公認すべき」という驚きの内容だった。婚姻関係においては、どんな理由があるにせよ不貞行為は裁判で慰謝料を請求されることにもなる。それなのに彼女を笑いものにしていた。見ていて悪質なイジメ番組にしか感じられなかった。法律のプロである弁護士達までもが「夫の浮気くらい我慢しなくちゃ」「浮気しなくちゃいけない状況になった旦那がかわいそうだ」などと発言をしたことに強い憤りを感じた。
  • 特集で偽造紙幣による詐欺を取り上げていたが、番組スタッフがおとり捜査まがいの取材を行ったあげく、詐欺師に国外逃亡されてしまった。犯罪者を発見したら警察に通報するのが一般市民の義務であり、取材と言えども、番組が勝手に捜査を行うなど常識に反している。警察と連携して犯罪の撲滅にあたるのが放送としてのモラルかと思う。結局は、視聴率欲しさに警察に言わず、犯人に逃げられたというのが事実だろう。放送局の社会的モラルの欠如がこの結果を招いたことを自覚して欲しい。
  • アメリカのプロゴルファーの自動車事故について、不倫が原因なのか単なる事故なのか、出演者同士で話が盛り上がっていた。流れとしては「限りなく黒に近い」ということで話が落ち着いたが、その際、女性ゲストが「黒人だけにクロ」と発言していた。これは明らかに人種差別だ。その後、アナウンサーが「先ほど不適切な発言がありました」と番組内で謝罪したが、彼女は「あら、私かしら?ハハハ」と全く反省する様子もなく笑っていた。このような人間は、テレビの出演者として相応しくない。
  • お笑いコンテストの優勝コンビの「やりたいだけコント/せつ子」というコントを放送していた。それは野坂昭如原作・宮崎駿監督のアニメ「火垂るの墓」に登場する節子のセリフをパロディー化したものだった。「火垂るの墓」は戦争中の悲惨極まりない体験を基にした小説でありアニメである。その中に出てくる薄幸の少女の悲しいセリフを茶化して笑いのネタにするなんてとんでもない。そのようなコントに賞を与える企業も、それを放送する放送局も許せない。
  • 「幻の大魚アカメ・四万十川に群れる姿を初撮影」ということで、四国の四万十川の地図を出し、具体的に魚の生態を追っていた。しかし、今後、魚の乱獲や生態系の破壊など、計り知れない影響があると思う。制作者はいかにも「調査です」といった感じで取材を行っていたが、本来「幻」としてそっとしておいた方がよいものを、地図入りでテレビで映していた。なんとも身勝手な取材だ。もっと有意義な取材をおこなうべきである。
  • 連続ドラマですが、最終回に話が終わりませんでした。原作の漫画が終わっていないので仕方ないという意見もあるとは思いますが、ドラマはドラマで終わってほしかったと思います。最近よくドラマの続編が映画になることがありますが、この番組についても、続編をテレビではなく映画で製作するつもりにしか思えません。推理小説の犯人のトリックを「なぁ~んだ」と思って読み終えることはありますが、「犯人を捕まえる事ができませんでした」という小説は読んだ記憶がありません。このドラマは、まさにそのような終わり方なのです。
  • 「女子駅伝」の放送で、レース後に各区間をトップタイムで走った選手を紹介していました。その際、解説者がある選手の名を挙げて「糖尿病である」とコメントしていました。個人の病気について放送で流して良いものかと疑問に思い局に問い合わせたところ、「選手本人及び保護者の事前の同意は確認していない」とのことでした。これは個人情報の扱い方として問題があるのではないでしょうか?
  • イギリスの女性歌手が年末の番組に出演するために来日したが、その際の報道の仕方が失礼だった。「その外見とは裏腹な声」という紹介は、あまりにひどいと思う。容姿と歌声には何の関係もない。また、飛行場に着いたばかりの彼女に「日本はどうですか?」と質問していたが、着いたばかりで何をどう答えろというつもりなのだろう。少しは考えて質問してはどうなのか。さらには「何か歌って下さい!」と要求した報道陣までいて、呆れ果ててしまった。
  • バラエティー番組に、警察に逮捕されたお笑いコンビの容疑者が出演していた。報道によれば「出演部分のカットなどの編集は時間的に難しい」ということで、逮捕前に収録されたことを示すテロップだけを表示していた。だが、それならば放送を取りやめるべきではないか。この容疑者は傷害事件を起こし、被害男性は二ヵ月の重傷とのことだ。軽微な犯罪ではない。ケガをした被害者が苦しむ中、編集が間に合わないというテレビ局側の都合だけで容疑者の笑いが放送されたとすれば不愉快だ。
  • 執行猶予中の元アイドルが覚せい剤で再犯し逮捕されたニュースを見た。これについてコメンテーターが倫理観を問うコメントをしていた。しかし、薬物の怖さは、本人がどう思っていようと中毒症状により薬物を欲するところにある。どうしても私たち素人は、またやらかした程度に思ってしまうが、専門家などの話を聞くと、そんな簡単なことではない。再犯において倫理感だけを問題にするのは、「クスリなんて止めようと思えばいつでも止められる」という浅はかな考えで薬物に手を出す人となんら変わらない。単なる倫理の問題ではない。やめたくてもやめられない薬の怖さをきちんと取り上げるべきだ。

【ラジオ】

  • 川柳のコーナーで、「目も潤み心ワクワク未亡人」という川柳が紹介された。これは、夫を亡くしたばかりの未亡人が、胸躍らせている様子をうたったもので、夫の死を喜んでいる不謹慎な川柳だ。熟年の男はかわいそうなもので、40年以上も家族のために働き続け、やっと定年を迎えたと思ったら「濡れ落ち葉」と呼ばれ、挙句の果ては妻に死を待ち望まれている。こんな不謹慎な川柳は放送すべきでない。
  • 昨日妻が番組を聞いて激怒していました。番組中に女性アナウンサーが「脇の下の体温と女性の大切な部分の体温を測って、その差を報告して欲しい」と、リスナーに呼びかけたそうです。私は医者ですが、あんな所に体温計を入れたら、傷をつけたり病気になってしまいます。女性アナウンサーなのにそんな事も判らないのかと見識を疑います。

【CM】

  • バイクの買取専門店のCMに、「匿名・匿住所でも買い取る」とある。これでは「盗難車でも買い取る」と言っているようなもので、車の窃盗を助長する可能性がある。CMとして不適切である。
  • 教師が教壇から「突然ですが、明日からお休みします」と、生徒に発表する新発売のゲームのCMがある。そのゲームが面白いと言いたいのは分かるが、不謹慎なCMと言わざるを得ない。

【BPOへの意見】

  • ラジオの昼間の番組で、内容が非常にいやらしいものがある。しかし、驚いたことに、この番組の合間にBPOのCMが流れている。BPOが放送倫理を考える機構であるのならば、もっとCMを入れるタイミングを考えるべきだ。
  • 青少年に関する意見

    【低俗、モラルに反する】

    • 先般BPOに苦情が寄せられた子ども向け特撮番組について、番組プロデューサーのインタビューを読んだが、反省がうわべだけであることがわかる。テレビの最終回では本編の後に映画の予告があったが、そこで終わらせずに映画館でないと続きが見られないのは、放送法にも抵触していると思う。
    • あるタレントの離婚に対し、司会者が浮気を肯定する発言をし、他の出演者も同様の意見と感じさせる内容だった。まだ小中学生が見ている時間だ。公共の電波で青少年にこのようなメッセージが届くことは、女性蔑視を助長し、円満な家庭を営む上で障害となるものであり、社会の規範を大きく乱す。
    • 道徳問題をクイズにしていたが、考え方がおかしい。万引きを正当化したり、相手を思いやっていれば何をしても良いような言い方だった。選択肢もおかしく、子どもが見ると混乱すると思った。
    • ある番組で、マンションの一室で、炭火で鶏肉を焼いていた。こんなことをしたら火災報知器が作動するだろう。近所にも非常に迷惑だ。私の子どもは毎週この番組を楽しみにしているが、子どもに「こんなことをしてもいいのだ」と認識されては困る。お笑いだったら何をしてもいいのだろうか。

    【いじめに関する意見】

    • 以前はこの番組を孫と楽しく見ていたが、最近は出演者による馬鹿騒ぎが目に余るようになったため見せていない。例えば、出演者同士が頭を叩いたり、相手をののしり馬鹿にするなどの行為が非常に多い。これを子どもがまねるといじめに繋がってしまう。そのことがとても心配だ。
    • 一人の芸人を集団で物を使って叩いていた。この手の笑いは以前から指摘されているにも拘らず、いまだに続いているようだ。いじめっ子が弱い者いじめをしている状況と変わらない。結局、放送局はBPOのバラエティーに関する意見など気にしていないようだ。

    【性的表現に関する意見】

    • 性行為に関する話題が露骨に扱われており非常に問題だ。男女一人ずつが出演していたが、男性はアナウンサーだった。アナウンサーの職にある者がそうした話題を面白おかしく語るのは、不適切であり品位を欠く。女性は元AV女優らしいが、子どもが聞いてもおかしくない時間帯にそのような人物を出演させること自体が問題だ。
    • 水着姿の女子大生に”花道”を歩かせ、カメラが股間ぎりぎりまで映している。これではストリップ同様である。深夜の番組であっても、子どものモラルを下げることになる。このような放送倫理に反する下品な放送は止めて欲しい。

    【言葉に関する意見】

    • レギュラー出演している若い女性タレントの、目上の人に対するタメ口や料理人に対する言葉遣いがひどい。テレビを見ている子ども達にどう映るだろうか。日本語の乱れが話題になるこのご時世に、目上の人に対する気持ちのなさは不愉快でしかない。

    【危険行為に関する意見】

    • 今は一人っ子が多く兄弟げんかをしないので、子ども達は暴力の加減を知らない。そこに持ってきて格闘技やボクシングなど、暴力を公認する番組が多い。彼らはプロとして訓練されているからスポーツになるが、小学生では大怪我か死亡事故にもなりかねない。格闘技は暴力を賛美し、子どもの暴力を助長していると思う。

    【残虐シーンに関する意見】

    • 超能力を持った少女が母親を殺し、またその母親を生き返らせては殺すということを何度も繰り返していた。深夜アニメと言えども内容が過激で残虐過ぎる。それ以外でも惨殺シーンの連続だった。このアニメには愛など全く感じられず、「気に入らない者は消してしまえばいい」という短絡的発想を子ども達に植え込んでしまう。一日も早く放送を打ち切るべきだ。

    【偏見に関する意見】

    • 放送で「一人っ子はわがままだ」「一人っ子は人となじめない」などと、一人っ子に対して偏見を持った発言をする人がいる。先日はタレントが「一人っ子はわがままだから」と、あるテレビ番組で発言していた。一人っ子というだけで欠陥があるような印象を受けた。「一人っ子=わがまま」と決め付けないでほしい。

    【マナーに関する意見】

    • 目上の人と話す時や室内では帽子は脱ぐべきだ。タレントの帽子を被ったままの態度は腹立たしい。個性やスタイルと言われるかもしれないが、室内で目上の人と話をするのに帽子を被ったままでの姿勢は見るにたえない。目立つことしか考えない者の作る番組が、日本の若者を害していると感じている。

    【CMに関する意見】

    • ここ数年、パチンコCM、特にメーカーのCMが目に余る。パチンコ依存症が社会問題となっており、消費者金融に手を出し、パチンコが原因で自殺する人間がどれほどいるか理解しているのだろうか。家庭内トラブルによる子どもへの影響も計り知れないものがある。一般の人に迷惑がかかっていることを忘れないでほしい。本当に禁止してもらいたい。
    • ギャンブルとアルコールのCMが多い。また、個人ローンと名づけられた消費者金融のCMがやたらと放送されている。孫に見せたい番組でも、CMがこんな有様ではもう見せられない。テレビ局にはスポンサーを選んで欲しい。

    【視聴者意見への反論・同意】

    • 「タレントの乱暴で下品な言葉遣いが非常に不愉快で、孫が真似しないかハラハラした」という視聴者意見があったが、何故その場で注意しないのか。この意見に限らず、パチンコCMやバラエティー番組に対し「子どもが興味を持ちかねない」「悪影響が不安」という意見があまりにも多い。それだけ今の子どもは刺激の多い中で生きているのであり、何でも避けて隠してばかりでは子どものためにならない。むしろあるがままに見せて、その場で言って聞かせることこそ大人の役割だ。
    • 視聴者意見で、何でもかんでも「子どもに悪影響を与える」という理由の番組批判が非常に多い。だが、そうした批判が子どもの世界をかえって狭めていることに気付くべきだ。お笑い番組についても昔は作るほうも見るほうも大らかだった。今は何でも「悪影響がある」などと排除する傾向が強い。批判するだけではなく、その番組の良いところを見つけ、テレビ番組を温かく見守ることも重要ではないか。
    • 「はしの持ち方など、しつけは家庭で教えるべき」という視聴者意見はもっともだが、苦労して教えてもタレントが間違ったはしの持ち方をしていると説得力がなくなる。大御所のタレントには言いにくいかもしれないが、若手のタレントや事務所の関係者にはぜひ注意してほしい。

    第157回 放送と人権等権利に関する委員会

    第157回 – 2010年1月

    「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

    「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理 ……など

    「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の当事者に対するヒアリングと審理が行われた。「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、内容を一部手直しのうえ来月の委員会で再度検討することになった。このほか、「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案で「勧告」を受けたTBSから、「委員会決定」後の対応報告が提出された。

    議事の詳細

    日時
    2010年 1月19日(火) 午後3時~8時
    場所
    「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
    議題
    出席者
    堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

    「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

    この事案は2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
    今月の委員会ではヒアリングとその後の審理を行った。
    ヒアリングで申立人は「最初から最後まで『元気ある温泉地を撮らせてもらいたい、頑張っているところを撮らせてもらいたい』ということだけで、一言も『再生』という言葉は聞かなかった。あるひとつのストーリーがあって、それに私たちが話したことの部分、部分をつなぎ合わせて当てはめたような形の放送になっていると思った。報道番組に結果的に傷つけられた。バラエティー番組とは違ってきちんとしたことを伝えるべき報道番組で、そういう放送をしていいのか」などと述べた。
    フジテレビからは報道局の担当者3人が出席し「口頭の説明や文書によって、企画の意図が正確に伝わっていたことは明らかだと考える。不況に立ち向かい、再生に向かって頑張っている姿を描くという当初の企画意図は放送まで一切変わっていない。頑張った結果、温泉街が活気に溢れているか、宿泊客数が伸びているかについては実際に取材した印象やデータなどをそのまま放送した。ただ、結果的に取材に協力していただいた方々に不愉快な思いをさせてしまったのは残念で、今後より細かい神経の遣い方をしていきたい」などと述べた。
    ヒアリングのあと審理したが、次回2月の委員会でもさらに審理を続けることになった。

    「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

    前回の委員会で「委員会決定」の方向が固まったのを受け、起草委員が「委員会決定」案をまとめた。これを1月7日の起草委員会で検討しこの日の委員会に提出した。
    審理の結果、「委員会決定」案に大筋では異論は出なかったものの、一部内容と表現の手直しが必要との結論となり、来月の委員会で再度修正案を検討することになった。
    本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」などと発言したことについて、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害である」として申立てがあったもの。

    「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

    テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあり、先月の委員会で審理入りが決まった。
    この日の委員会では、これまでに提出された申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」に基づいて、本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。
    放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げ、狭い私道を挟んで住む被害者と加害者の、車による通行をめぐるトラブルが直接の原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量に基づく公図の境界線が曖昧で複雑なことも一因ではないかとしている。
    この放送について申立人は「両親の長年に亘る嫌がらせが殺害の動機との内容は事実ではない。放送は両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
    これに対しテレビ朝日は、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなくまた、謝罪、訂正が必要な事実誤認もなかった」と反論している。

    「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案でTBSから対応報告

    本事案で重大な放送倫理違反があったとして昨年10月30日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、1月12日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。
    (TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第41号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

    12月の苦情概要

    12月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

    • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・3件
      (個人又は直接の関係人からの要請)
    • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・50件
      (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

    その他

    • 来年度の委員会日程について事務局より報告し、定例の委員会を本年度と同じく毎月第3火曜日に開催することで了承された。
    • 3月25日にBPO年次報告会が開かれることになり事務局より報告した。
    • 次回委員会は2 月16 日(火)に開かれることになった。

    以上

    第34回 放送倫理検証委員会

    第34回 – 2010年1月

    「バラエティー番組意見」のブックレット発行について

    貧困ビジネスに対する岡崎市の関与疑惑を伝えたテレビ東京『週刊ニュース新書』 …など

    「バラエティー番組意見」のブックレット発行について

    昨年11月17日に公表した「意見」で委員会は、放送界全体がバラエティー番組に関する議論を深めることが必要であると表明したが、この「意見」を踏まえて、3月11日に民放連が主体となって、バラエティー問題をテーマにしたシンポジウムが開催されることになった。
    一方、委員会は、今後、バラエティー番組に関して議論されるときの参考資料としてブックレットを発行することになり、その内容について意見交換を行った。さまざまなアイデアが出されたが、委員会の「意見」に対する新聞やテレビの報道内容や雑誌などの論評、テレビ各社のさまざまな取り組みを一冊にまとめることにした。

    貧困ビジネスに対する岡崎市の関与疑惑を伝えたテレビ東京『週刊ニュース新書』

    テレビ東京が昨年11月28日の『週刊ニュース新書』で、民間業者の貧困ビジネスに岡崎市が関与している疑いがあると報道した。これに対して岡崎市長が、事実確認が不十分だと抗議した事案。両者間で折衝中であるので委員会としては引き続き推移を見守ることとした。

    偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

    昨年、TBSの『報道特集NEXT』(12月5日)と『イブニングワイド』(12月8日)で偽札詐欺事件が放送された。マイケルと称する外国人が、真っ黒に着色された紙幣(ブラックノート)に特殊な薬品をかけると色が消えてもとの1万円札に戻るので山分けしようともちかけ、日本人男性から薬品代として多額の金銭をだまし取った事件を被害者側から取材した番組である。この事案については、前回の委員会で取材を契機に犯人が国外逃亡したことを非難する視聴者意見が報告された。その後、制作過程で違法な取材が行われたことが明らかになり、TBSはそれぞれの番組で説明しお詫びした。
    それによると、TBSから番組を受注した制作会社のスタッフが、マイケルのアパートに配達された郵便物をポストから抜き取って開封するという違法行為を行っていた。
    委員会は審議入りすることを決め、当該局に対して事実関係の調査報告を求めることにした。

    【主な委員の意見】

    • 犯罪行為をしてはいけないのは当然だが、制作会社の持ち込み企画について、どこまで放送局としてチェックができるのか、責任を持つべきなのかということは難しい問題だ。
    • 違法な取材について委員会が意見を言わなければ、委員会は当然批判を受ける。当該局は制作会社に詳細なヒアリングをしたうえで、委員会に対して正式に調査報告を提出すべきだ。
    • 取材の過程で、「自称マイケル」の本名をつきとめた方法について当該局が制作会社からどういう説明を受け、どう納得したのかを確認する必要がある。
    • 放送局に犯罪者を捕まえる義務はないが、取材中、犯人の面前でトリックを暴いたために犯人が逃亡する結果になった。そのことで視聴者が当該局に対して、事実経過を説明してほしい、という意見を寄せるのは当然だ。
    • 現場はみんなギリギリなことをやっている。違法性が問われかねない取材は確かにあるが、真実を伝えることの社会的利益・公共性に比べれば小さいことだという理屈もある。アメリカの場合、「もしこれが違法だというのだったら私が責任を取る」と編集局長が名乗り出て刑務所に入った例がある。
    • 番組制作を外部に委託する以上、きちんと法令を守ること、犯罪行為に及ばないようにするためのチェック体制を作っておくことが放送局の役目だと思う。要するに監督義務だ。
    • BPOが「お上」のような監視機関になってはいけない。放送局の自主自律を尊重し、この問題についても、まず放送局に対策を考えてもらえばよいと思う。

    連絡事項

    今年のBPO年次報告会は3月25日に開催され、川端委員長がこの1年の活動報告を行うことが報告された。

    以上