2014年10月

中部地区「意見交換会」を名古屋で開催

放送人権委員会は、10月7日に中部地区の放送業者との意見交換会を名古屋市で開催した。中部地区での開催は6年ぶりで、御嶽山の噴火、前日の台風と慌ただしい取材・報道と重なったが、31局から88人が出席し、意見交換会の出席者としてはこれまでで最も多くなった。委員会からは、三宅弘委員長ら委員8人とBPOの飽戸弘理事長らが出席した(委員1名は台風による交通への影響で欠席)。委員、役員の紹介に続いて、三好晴海専務理事がBPOと委員会の役割や意義をビデオを交えて説明し、刊行した『放送人権委員会 判断ガイド2014』の紹介をしてから意見交換に入った。前半は今年6月に「委員長談話」として公表した「顏なしインタビュー等についての要望」、後半は「大阪市長選関連報道への申立て」と「宗教団体会員からの申立て」の「委員会決定」を取り上げ、予定を超える3時間20分にわたって意見を交わした。主な内容は以下のとおり。

◆三宅委員長 基調報告◆

『判断ガイド』に少し触れながら、お話をさせていただきたいと思います。私が9年前に委員になって最初に判断をしたのは、2ページの「若手政治家志望者からの訴え」です。
それ以降の「委員会決定」を見ますと、「放送倫理違反」、「重大な放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」とありますが、「人権侵害」と判断した決定は私が委員になる前の「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」のあとはありません。先ほどのBPOの紹介ビデオで「委員会は人権侵害を判断する」と言っていますけれども、実際にはほとんど放送倫理の問題を取り上げてきたということがお分かりいただけると思います。
ただ、「放送倫理違反」と言ったり「放送倫理上問題あり」と言ったりして、各局から分かりにくいというご意見がありましたので、「放送倫理上問題あり」に統一し、4ページにあるようなグラデーションを定めました。「人権侵害」と「放送倫理上重大な問題あり」が「勧告」、一番下の「問題なし」と表現や放送後の対応等について局に「要望」するというのは「見解」です。「勧告」はいわばクロ、「問題なし」と「要望」はシロといいますか、セーフの範ちゅうに入るわけですが、その間に「放送倫理上問題あり」の「見解」というのがあります。「放送倫理上問題あり」は灰色、グレーですね、最近の申立てはグレーというのが多い、このグレーをどう判断するのか、非常に悩ましい問題が多々あるわけです。
『判断ガイド』の104ページに、「放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」というのは、何をもって判断しているかというポイントとして、「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」、「真実に迫る努力」、「表現の適切さ」、「誠実な姿勢と対応」の5つを挙げております。これはどこから来るかというと、「放送倫理基本綱領」や民放連の「報道指針」、NHKの「放送ガイドライン2011」に書かれている倫理規範を参考にしながら判断しているということです。委員会はあくまで局側で作っていただいたものによって判断をしているというところを、ご考慮いただきたいと思っております。
お手元の資料にございますように、「大津いじめ事件報道に対する申立て」は2012年7月5日と6日のフジテレビの『スーパーニュース』内で各1回、大津市の中学生いじめ事件の報道に際して加害者として民事訴訟を起こされている少年の氏名を含む映像を放送したという事案です。民事訴訟の準備書面が放送され、少年の氏名が瞬間的に画面に出るのです。テレビは大体真ん中を見ますから、瞬間的に1秒、2秒弱見るだけでは分からないんですね。どこに出ているか、ちょうど画面左上の端っこですね、静止画像にして見ると少年の名前が出ていて、そこだけ消す処理を誤った。それがインターネットにアップされて少年の名前が広まったということで、ヒートアップする現象の中でどう判断するか迫られたわけです。
ここでは、新しいメディア状況の中で放送倫理上の問題が出てくる。最近は重要なニュースは各社のホームページに映像が出ます。わたしどもの判断は放送番組、放送された番組が対象ですが、これまでの審理を通じてホームページにアップされた期間は同じように審理対象になるという判断が大体固まっていますので、ニュースをホームページに載せると申立ての可能性が広がるという認識を持って対応していただくことが必要かなと考えています。

◆「顔なしインタビュー等についての要望」について◆

三宅委員長
「顔なしインタビュー等についての要望」について、作成の経緯とわたしどもとして何を言いたいのか、ご説明をしてまいりたいと思います。
「大阪市長選関連報道への申立て」は「まずは朝日放送のスクープです」から始まって、ポイントになるのは、ちょうど真ん中あたりの内部告発者のインタビュー「正直恐怖を覚えますね。やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」の部分です。このインタビューは右肩後ろ側から撮っているいわゆる顔なし映像ですね。この事案を判断するにあたって、今指摘したスクープという強い表現と、「やくざと言ってもいいくらいの団体」というコメント、論評ですね。そして、申立人の大阪市交通局の労働組合は非常に人数も多いし、どうしたものかと。後ほど説明があると思いますが、これを判断しました。
もう一つ「宗教団体会員からの申立て」、きょうのアンケートの中で、大体どこの場所のどの高校に通ってA市内の国立大学に進学する人間の特定はあまり難しいことではないと、ドキッとしたという回答があったんですけれども、ボカシのかけ方が弱いですから、卒業式の時に4人の友人と写真を撮っている映像が出てくるんですが、脇の2人の女性の着物の柄が大体分かりますから、あの時誰それと撮った自分があの着物を着ていたということで特定されてしまう可能性がある。我々の判断は可能性の判断でいきますので、そういう問題が出てくる。なおかつ、アレフ脱会のカウンセリングを受け思春期の悩み等から信仰に至ったことを話す状況を、カウンセラーのみの了承のもとで隠し録音し音声を変えたうえで放送した。プライバシー侵害との兼ね合いが一つ問題になりました。
意見交換会では、ここ数年毎回顔なしインタビューについてどう考えるかということで、意見交換をさせていただいて、だいぶ機も熟してきたと考え、今回委員長談話を出させていただいたということです。

I.情報の自由な伝達と名誉・プライバシーの保護など

内容に入りますが、「I」は、取材・放送の自由のなかで、特にプライバシー、名誉、肖像など他人に知られたくない個人の法益、権利利益を保護していくということとの調整、そういう原則的な部分を書いています。
冒頭の文章は、私がかつて法廷でメモが取れないと訴えたアメリカ人弁護士の裁判の代理人を務め、最高裁の判決でもらった一文を引用しました。「個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく」と、自己実現と呼ばれていますが、表現の自由の非常に重要な趣旨の一つです。後半部分は「民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保を実効あるものとするため」、これは自己統治といわれる表現の自由のもう一つの重要な要素、趣旨の部分が、まさに放送関係者が担っている役割のバックボーンとしてあるということを、まずはっきりさせていただくことがよいだろうと考えたわけです。
ちょうど2003年にBPOが発足するころ、個人情報保護法が「治安維持法以来の悪法である」とメディア全体が反対した中で制定された経過があります。その個人情報保護法の1条には高度情報通信社会におけるというような一文があり、「大津いじめ事件報道に対する申立て」の決定では「新しいメディア状況」と書きましたが、そういう社会状況の変化の中で、とりわけ「他人に知られたくない個人のプライバシー、名誉、肖像などみだりに侵害されることのないよう保護すること」の必要性と自由な情報の伝達との適正な調整を図るという点が、日々放送や取材にあたっていただく基本的な考え方のベースにあるのではないかということを明らかにしたわけです。

II.安易な顏なしインタビューが行われていないか

そのような基本的な考え方をふまえて問題提起をした部分です。「知る権利に奉仕する取材・報道の自由の観点」、これは冒頭の「I」のところの第1文を受けているところですが、「取材・放送にあたり、放送倫理における事実の正確性、客観性、真実に迫る努力などを順守するために、顔出しインタビューを原則」とする。この事実の正確性、客観性、真実に迫る努力というのは、先ほどの『判断ガイド』の中に整理して書いた放送倫理の基本的な部分だということをふまえていただければと思います。
この委員長談話を出すにあたって、在京のキー局の報道マニュアルの中で顔出しインタビューと顔なしインタビューをどういうふうに使い分けているのか、わたしどもは見させていただきました。各局では顔出しインタビューを原則とし、例外として顔なしを認める場合についてルールを定めていることを確認したわけです。さらに、海外のデータを集めたわけですが、ドキュメンタリーとかニュースを見ると、正面から語っている映像が非常に多くボカシはほとんど入っていないということで、ボカシを日本の社会現象として見るべきなのかどうか、少し気になったところです。例外として顔なしインタビューをするにあたって、国際通信社傘下の映像配信会社が理由を付記したうえで配信したりするケースもあり、また法務部と社内複数の関係部局の承諾も義務付けているというようなところもあり、例外の顔なしには非常に制約がかかっているということを見させていただきました。
「とりわけ、地域の出来事について、周辺住民のインタビューをする際に、特に匿名にしなければならない具体的な理由が見当たらないにもかかわらず、安易に、顔なしインタビューが行われてはいないだろうか」という部分ですが、今年1月に1週間、夕方の在京キー局のニュース情報番組を全て録画してチェックをする作業をしました。時間の関係であまり詳しくはご説明できませんが、場合によっては同じ人がある局では顔が出ているけれど、ほかの局では顔なしになっているというようなものもありまして、事案だけではなく、局側の対応によっても様々なケースがあると分かりました。どうしても顔を隠さなきゃいけない理由はないんじゃないかというものがかなり散見されました。犯罪報道の場合ですと、加害者に関わるような証言というものは、もちろんボカシを入れたり顔なしの映像にするということは当然あると思いますが、もう少し事案の内容によって検討すべき要素があるのではないかという問題提起をしました。

III.安易なボカシ、モザイク、顏なし映像はテレビ媒体の信頼低下を追認していないか

バラエティー番組では色を変えてホワーッとした感じでボカシをかけた顔なしがありますが、それに報道情報番組も引きずられているんじゃないかという警告を発したわけです。

IV.取材・放送にあたり委員会が考える留意点

先ほどの放送倫理のあり方をふまえ、一つ目に「真実性担保の努力を」として「安易な顔なしインタビューを避けて、可能な限り発言の真実性を担保するため、検証可能な映像を確保することなどの努力を行うことが大切ではないか」というところを出しました。先ほどの「大阪市長選」の「やくざと言っていいくらいの団体」と言う内部告発者の映像は顔なしで後ろから撮影され、彼が提供した「回収リスト」も自分でねつ造したものだったが、それについて裏付け取材もされていなかった。そういうところから、本人が語っている映像を撮っているときに、もしも「正面からちょっと撮りましょう」と言っていたら、そういうごまかし、ねつ造が防げはしなかっただろうかということも考えなきゃいけないということで、この点を一つ目に考えたわけです。
それから、事件現場の限られた時間内で、どうしても顔なしインタビューになってしまうと現場の方からは言われるわけですね。現にこの談話について「よく言っていただいた」という声と、現場のほうから「それじゃあ、取材、なかなかできないですよ」とか「現場感覚からズレているんじゃないですか」というようなご意見もいただきました。
それはそれとして、できる限り「取材対象者と最大限の意思疎通を」図っていただいて、できる限り顔出しを原則とする基本的なスタンスを考えていただきたい。
もちろん、「放送倫理基本綱領」にありますが、「情報源の秘匿は基本的倫理」も確認もしなきゃいけない。じゃあ、どっちを向いてどう判断すればいいのか、それは現場で考えていただくというのがこの委員長談話ですので、考えるべき筋道と考えるべきポイントを明らかにして、日々の取材の中で、その場その場で考えていただくという趣旨です。
それから放送のあり方ということで、先ほどの「大津いじめ事件」にありますように、「デジタル化時代の放送に対し、インターネットなどを用いた無断での二次的利用等が起こりうる可能性を十分に斟酌したボカシ・モザイク処理の要件を確立すべきである」という点で、新しいメディア状況に対応した留意点を特に考えていただく必要があるでしょうと。
「プライバシー保護は徹底的に」と。「中途半端なボカシ・モザイク処理は憶測を呼ぶなどかえって逆効果になりうることに留意すべき」ではないかと。できる限り真実に迫る取材をしていただきますが、放送に当たってプライバシーを保護するとなったら、もう思い切ってボカシをきっちり入れてもらうということもありうると。さっき言いましたように「宗教団体会員からの申立て」では本人のボカシの入れ方がちょっと弱い、周辺の友だちのボカシも弱いんじゃないかと。「大津いじめ事件」では、例えばいじめのあった学校全体はかなりボカシが入って、ある程度学校というイメージがあって、それから窓や校舎をアップにしたボカシのない映像が出たりする。その辺のボカシの入れ方とか特定されないような工夫は、かなりきっちりされていたんじゃないかというのが私の個人的な感想です。
そういうことをふまえて、場合によっては「放送段階で使わない勇気を」ということもあっていいのでは。いい映像が撮れると、「ぜひ使いたい」という話にもなりますが、プライバシー、名誉、肖像権の保護を考えると、場合によってはその映像を使わないという決断もされてもよろしいのではないかという点です。
それから「映像処理や匿名の説明を」のところは議論もあります。理由を注記すると、かえってボカシを推進することになりはしないかというご意見もあると思いますが、これは私の現場感覚で言うと、長年政府の情報公開の制度化を求めて、その運用の改善を求めてきた立場からすると、やはり「原則公開、例外非公開」。この原則と例外の立場をはっきりしたほうがいいという点からすると、映像処理や匿名の理由の説明を工夫してみるということも、これから各局で考えていただくべきところではないかということです。
今日のアンケートを見ますと、まだ社内ルールのないところもございますが、ぜひ「局内議論の活性化と具体的行動を」と、問題提起型の委員長談話という趣旨で書かせていただきました。

V.行き過ぎた"社会の匿名化"に注意を促す

先ほど言いましたように、個人情報保護法ができてから、警察取材が非常にやりにくくなったとか、顔なしを求める市民が非常に増えた、個人情報保護法はなかったほうがいいんじゃないかというような議論もあります。さらに特定秘密保護法ができて、政府が秘密指定したものはおそらく情報公開でも出ないし、リークを求めると、それ自体で処罰される可能性があり、取材・報道が非常に萎縮する、一方、政府自体はこれから共通番号という鍵を持って情報を全て集約する。政府はきっちり情報を持っているけれども、一般市民は無防備で、なおかつボカシのある社会を望むということになると、冒頭で述べた、社会全体が人と人が互いに知り合って意見を交換する中で人格を高め、民主政治を発展させるという趣旨から遠のいていくのではないかということも考えまして、最後に「行き過ぎた"社会の匿名化"に注意を促す」という点を市民にも向けたメッセージにしたいということで、テレビ局関係者のみならず取材対象となる市民の方々にも信頼関係に基づく十分な意思疎通というものを考えていただきたいという談話にいたしました。

林委員
委員長からご説明がありましたように、私どもで今年の1月の2週目の13日からの週の夕方のニュース情報番組の全てをかなり詳しく精査してみました。委員長談話はこの調査に基づいております。1月13日の週は神奈川県の相模原で小学校5年生の女の子が行方不明になるという事件がありました。このような犯罪報道には、顔なし映像が使われることが多いので、この事件を事例に考えてみました。
お手元に1枚の紙をお配りしました。書かれているのは、女の子がまだ見つからなかった時の12日、13日に放送された近所の方のインタビューのコメントです。「1 早く無事に見つかってほしいです」、「2 無事に見つかってくれればいいなと思ってんだけど」、「3 一日も早く見つけてあげたいと思ってね」、「4 とにかく心配で、一日も早くっていう気持ちです」、「5 親御さんの気持ち、考えると、やっぱり、何て言っていいのか」。このコメントには、実は「顔出し」と「顔なし」があります。答えは、1番と5番が顏なしです。コメントだけ取り出しますと、なぜ顔なしだったのか、理由が分かりません。特に1番と2番のコメントはほとんど同じ意味なのに、1番を顔なしにしているということは、判断としてどうなのかなと思っています。
もう一つ、気づいたのは、顔を出してもいい方は、複数の局で同じようなコメントをして使われているんですね。ですから、顔を出していいという方に取材が集中してしまう、そういう現象も起こるわけです。
さらに、夕方のニュース情報番組全体の調査で明らかになったことは、目玉として、だいたい20分ぐらいの調査報道というんですか、独自取材のニュースがあります。たとえば、リフォーム・トラブルとか結婚詐欺とかが、その週にはありました。こういう話題では、なかなか顔を出してくださる方がいないというのは分かりますが、この類のニュースですと全編、ほぼ全員に最初から最後までボカシがかかっている例が散見されました。顔の部分に赤や黄色の風船がバーッと飛んでいるボカシの画面を見ると(笑)、ちょっと気持ち悪い気がします。好奇心をそそられるテーマでもありますが、報道の責任とのバランスを考えてほしい。
以上、夕方のニュースを素材に、テレビの信頼と報道のあり方について問題提起したいと思いました。

名古屋のテレビ各局の発言
A社 取材を受ける人にとってみると、顔を出して発言していい人もいるし、顔はできれば出してほしくないけれども質問には答えてもいい人、いろんなケースがあるということです。その都度いろんなケースがあるということですから、その辺は記者の力量でもあり、制約された時間の中でどこまで頑張って取材するかということにもなってくるかと思うんですけれども、現場で日々いろいろ悩みながらやっているというのが現状かなと思います。
B社 日本の国民性みたいなところもあって、理由は分からないですけれども、コメントの内容如何に関わらず、顔を出したくないという人は出したくない。それと記者の誘導というか、最初の話の持って行き方ですね。多分、若い記者はかなり控えめに「まあ顔なしでもいいですけど」と言うようなことがあるかもしれません。それは、僕らの教育の行き届かないところだと思うんですけれども、基本的にはそういうのを説得して、顔出しでコメントを取る指導はしているつもりです。ただ、顔は勘弁してと言う人ほど、またいいコメントを言っている場合もあるし(笑)、その辺なかなか難しいかなと私自身は思います。
C社 常々気になっていたことでもありましたので、弊社内でニュース部門の記者とカメラマンがどういう認識でいるのかアンケート調査を行いました。やはり以前に比べて顔出しを嫌がる人が増えている、つまり、10年、20年前に比べると、「顔は出さないでほしい」と言われる可能性が高くなっていると感じている者が多いということが読み取れました。その理由はなかなか難しいんですけれども、やはり、インターネットやSNSの発達によって、自分の画像が思わぬところで拡散するのではないかというようなことへの懸念が一つあるのではないかと。もう一つは、昔に比べるとメディアを見る目が厳しくなっている、冷たいというか理解が少ないというか、漠とした感触ですけれども持っております。そういったことがメディアに自分の顔を晒すことへの抵抗感として表れているのではないかなという気もしております。
今年上半期の弊社のニュース映像2,647本のうち、46本顔なしインタビューがありました。一般の住民の方を顔なしで撮ったものが46本のうち15本ありまして、その15本中12本は明確に顔出しを申し込んだにもかかわらず、拒まれたものでした。また2本はいずれも殺人事件に関する近所の住民のインタビューで、やむなく顔切りにしたということで、安易に顏なしが行われたというケースは感じられませんでした。
D社 御嶽山の噴火で、私たちは遺族の方、周りの方々の取材に入りますが、まず誰も受けてくれない。「遺族の気持ちを考えろ」とか「何を聞きたいんだ」みたいな形でだいたい追い払われる。いろいろ聞いていくと、話していただける方はいるんですが、そういう方はいろんなリスクを負われることになる。顔出しで話した場合に、「あの人は顔を出してどんなふうにしゃべった」とか「こういうことをしゃべった」とか近所で言われる可能性があるかもしれないですし、ネットなどに悪意を持って使われるケースもあるのではないかと。「顔は出せないけれども、お話します」と言われれば、その前提で取材をする。聞けることがあるのであれば、取材しないよりも伝えることのほうに意味があるのではないかと考えるケースが非常に多く、悩みながら、それでも声を拾いたいと努力をしています。
E社 「宗教団体会員からの申立て」は、非常に踏み込んだ内容の番組だと勇気に感嘆したんですね。もちろん安易なボカシは如何なものかというものに関しては、私もそのとおりだと思いますが、委員会の判断はボカシが甘いんじゃないかと逆に出ていますよね、そういうことがあると、特にニュースなどの現場判断においては、「ちょっと危ないから、もうこれはボカシをかけちゃおうぜ」ということになりかねないとも感じるんです。そこは矛盾というのか難しい問題だと感じております。
G社 社内のガイドラインは「取材相手の権利保護が必要と判断される場合を除き、顔出しを基本とする」という形で明記し、徹底してやるよう指導しているつもりですが、実際には本当に吟味しなければいけないケースがかなりあります。
例えば今回の御嶽山の噴火の場合で言いますと、原則として取材相手の権利保護については本来あまり考える必要はないケースだとは思うのですが、でも、放送に出ている部分では顔出しになっていないケースがあります。一つは、自分が生き長らえたことに対する負い目を感じている方がいらっしゃって、親子で御嶽山に行ってお子さんを亡くして自分だけ帰ってきたとか、グループで行って助けることができず自分は生きて戻ってきている、そういう人は、なかなか顔は出せないけれども話せる話はあると。逆に、先週土曜日に御嶽山の噴火を緊急に放送しましたが、同じように仲間と行って助かった人が出てきました。この人は顔出しはOKで、その代わり名前は伏せてほしいと。ネット社会の中で検索されて嫌がらせを受けたりするケースがあるんですけれども、この人のように自分の思いをやっぱりきちんと伝えたいので、顔を出して取材を受けたいという方もいらっしゃったことは、ちょっと付け加えておきたいと思います。

大石委員
皆さんのお話を伺って、本当にいろいろと苦労なさっている、悩んでいらっしゃることがよく伝わってきました。私も写真家として、顔出しの写真を撮らなければならないことがほとんどですけれども、どうしてもダメといわれる時は、やはり話し合いをしたり、何日も通ったりとか、やはりある種の努力はせざるを得ない、相手が分かってくれなければ、こちらは写真を撮れない、写真が撮れなければ、どんなに立派なことを言っても何もならないわけですね、私の仕事は。
テレビも映像が勝負だと思うんです。写真と違って音がありますから、そこはちょっと羨ましい部分でもあるんですけれども、やはり映像が勝負ですから、顔が撮れなければどうするかというところを、もう少し考えてもいいんじゃないかという気がしますね。私もどうしても拒否された時は、真正面の顔がたとえ撮れなくても、その人だということがある程度は伝わるような映像、私の場合は写真を撮るように努力したりします。テレビと写真、初対面の人たちに向き合って報道するということにおいては変わらないわけですから、皆さんの苦労は私の苦労でもあるんですけれども、もう一歩を踏み込んで考えなければならないと思います。被写体の人権を尊重するにしても、外国と日本はどうしてこんなに違うのかと、今もあらためて感じながらご意見を聞いていました。

会場からの発言
私は今視聴者対応をやっております。昔は「何で顔を出さないんだ」みたいな意見が来たんですが、逆に今は「どうして顔を出すんだ」、「あんなふうに晒してしまっていいのか」というような意見が結構来るようになっている。やっぱり空気と言いますか、世の中全体が匿名社会に傾いてしまった上に、それを我々が"受け入れる"というところが変わってきている。世の中の雰囲気、顔なしが普通だとまでは言いませんが、個人情報とかプライバシーとかが取り沙汰されて、意識が変わっているような感じは視聴者対応をしていても感じられるところです。

坂井委員長代行
ここ10年以上ですけれど、インターネット上の誹謗中傷の相談がすごくあります。どんどん拡散してしまいますし、消えて無くならない。例えば「2ちゃんねる」の問題が昔よくありました。相手を実名で特定して自分は匿名で発信する。ある意味で非常に卑怯な、自分の発言には責任を持たないで人を傷つけるという行動なわけですね。
委員長談話にもありますけれども、取材対象者を実名、顔出し放送するということは、その発言内容に責任を持ってもらうという部分が、やっぱり一番大事なわけです。なかなか発言が取れないからと言って顔出しをやめたり実名をやめたりして話をさせてしまった結果の、悪い例が大阪市長選の話だったりするわけです。報道の信頼を得ていく、メディアの信頼を得ていくという意味では、取材を受ける人の発言の信頼性を確保するというのは当たり前の根っこの話で、それを忘れてほしくないですね。

◆「大阪市長選関連報道への申立て」事案について◆

意見交換に先立ち、放送された当該ニュース番組を参加者全員で視聴し、冒頭、決定文の起草を担当した小山委員と曽我部委員から概要と判断のポイント説明があった。

小山委員
今、ご覧いただきましたが、2種類のカードが出て来ました。一つが紹介カードで、これは知人を紹介してほしいというもの。それからもう一つが回収カードで、こちらの方が実は虚偽だったものです。今回のスクープはその回収カードが見つかったということで取り上げた訳ですが、先ほど顔なしでインタビューに応じていた人物がそれをねつ造していた。それが後で明らかになります。
おそらく皆さんもどうして委員会がこういう判断をしたのかということよりも、どうしてこのような放送がされてしまったのかのほうにご関心があるかと思います。いくつか補足しますと、組合側にまったく裏付け取材せずに放送した背景には、一つは市議会議員からの情報提供であったということ。それから、先ほどのカードをねつ造した人物ですが、これまでも局側に情報を提供していたようで、その限りでは信頼できる情報だったと。ですから信頼できる情報提供者だということで、今回も真実だろうと思い込んでいたということです。
それから、そのカードの存在自体はもっと早くから局はキャッチして、局によりますと、要するにギリギリになって組合側に取材を行ったと。そうしたところ、取材することが結果としてできなくなったということを言っておりました。さらに、この放送のあと素直に局側として訂正あるいは謝罪をすればいいのにと思いますが、その後始末という点では不十分だったと委員会は考えました。
あとは皆さん方のご質問を受けて、いろいろご説明できる点があればご説明したいと思います。その前に、一緒に起草を担当した曽我部委員から補足をしていただきます。

曽我部委員
私も基本的に、ご質問等ございましたらその中でお答えするという形にしたいと思いますが、その前にこの事案を委員会が判断するときに、念頭においていた裁判所の判例がありますのでご紹介します。
『判断ガイド』をお持ちと思いますが、一つは74ページに「所沢ダイオキシン報道事件」があります。これは、報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかという点についても、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断するのが相当であるとあります。これは本件にどう関係するのか。ご覧いただいたように、形式的には疑惑があるという表現ですね。局側は、あくまでも疑惑を報じたのだと主張していました。しかし全体、ご覧いただくと、皆様どう思われたでしょうか。スクープですということが強調され、あるいは回収リストそのものは本物であるという前提で報道しています。さらにやくざとか、議員の発言もあります。あれも疑惑が本当であるという前提であるかのような発言に見えるわけです。こういったところを総合的に見ると、一般の視聴者はあのニュースは何を言っているのか、疑惑を疑惑として伝えているのか、それとも疑惑というよりはもっと断定して報道しているのかについては、大方ご判断いただけるのではないかと思います。
それともう一つ、疑惑を疑惑と報道しているという点についてです。疑惑だから確実でなくてもよいではないのかという話に仮になったとした場合に、これについても『判断ガイド』の80ページに、1968年の最高裁の判断があります。決定とありますが、さしあたり判決と同じ意味であるとご理解いただければと思います。この決定は非常に著名ですが、要するに人の噂であるから真偽は別にしてという表現を用いて名誉を毀損したというときに何を立証するのか、噂があるということを立証すればいいのか、それともその噂の本体が本当であると立証すればいいのかが争点になったわけですが、最高裁は、いや、噂だといったときに、その噂が実際にあるということじゃなくて、噂の中身を立証しなければいけないとしたわけです。今の疑惑の話に置き換えて考えると、疑惑を疑惑として報道したときに、そういう疑惑がありますよということを立証するだけでは実は不十分であって、その疑惑は単なる疑惑ではなくて真実、あるいは真実相当であるということを立証しなければいけないと読める最高裁の判断です。
すると疑惑報道というものは一切できないのかという話になりますが、この点なかなか微妙で、この決定は大変古い判断であるし、この事件の事案そのものは、きちんとした報道機関の一応根拠のある疑惑報道とか、そういう筋のいい事案での判断ではなく、怪文書の類の事案ですので、やはり報道機関がきちんと疑惑報道した場合にこういう判断になるのかは、やや疑問ですが、一般にはこういう噂、あるいは疑惑を伝えた場合に何を立証すべきなのかという点に関しては、その疑惑の存在ではなくて中身の存在だということになっているということです。
今回の決定は疑惑であるならば疑惑として、一般人にもそういう疑惑であるということをはっきりさせるようにと。そして疑惑であったとしても、一定のレベルの裏付けが必要だと判断していますが、それはこのご紹介した2件の最高裁の判断を念頭において判断したものです。

■質疑応答

Q この件は先ほどの顔なしインタビューのことでも触れていましたが、この内部告発者が顔なしになっていること自体に、ここにも一定の問題があるとお考えなのでしょうか。

三宅委員長
先ほどのケース、顔出し、顏なしでいえば、例えば犯罪報道にかかわる周辺住民からの意見、感想を述べてもらう場合とか、内部告発者の放送自体について、この決定の中でそれが悪いという判断は触れていませんので、基本的に内部告発者の保護という観点からは映像自体はあれでよかったと考えて、委員会では議論を進めています。ただ問題は、かなりていねいにコメントをとる機会の設定をされていますが、裏取りがちゃんとされてないということからねつ造ということを見破れなかった点において、取材上の手落ちがあるのではないかと思いますので、放送のレベルと取材のレベルにおける真実性の担保の努力という観点からはもう少し何がしかの工夫とか、裏取りの取材をした上でその辺の経過をよく聞いてみるとか、取材のあり方が本来求められていたのではないかと考えているところです。

曽我部委員
事前にいただいたアンケートで、組合側にコメントをとっていないところに非常に問題があるとお書きいただいたご意見が多かったと思います。その中で、逆にコメントをとっていれば放送して問題なかったのか、というご意見もありましたが、実は委員会決定の通知公表のときに、記者の方とのやりとりがありまして、小山委員が、組合を取材すると回収リストは自分たちが作成したのではないという答えが返ってきただろうと回答されています。実際、他局もリストと称するものを入手して組合に取材したところ、それは本物ではないということを言われたので放送しなかったということがありました。回収リスト自体も不自然な点は結構あったわけですね。例えば組合であるにもかかわらず管理職の名前が載っているとか、不自然な点があったわけで、これは取材をすればおそらくこの回収リストが本物ではないということはおそらくわかっただろうという事案だったということかと思います。

事務局
事前アンケートをご紹介します。「取材の進め方、番組の進行には問題があったと思いますが、ただBPOに提出した当該局の取り組みの報告書の内容についてまで、改めてBPOのホームページに委員会の決定の趣旨を理解していないと公表する必要があったのかどうかについては疑問です」こういう声がありますが。

奥委員長代行
このアンケートに書かれた方の疑問は、おそらく極めて異例だろうということだと思います。私もBPOの委員になって長くはないのですが、こういう形で改めて書いたというのは、たぶんなかったのではないかと思います。簡単に言うと、我々が一生懸命議論して、こういう決定を出したのにもかかわらず、ちゃんと理解されてなかったという思いが残ったんですね。報告書は、番組には公共性、公益性があったけれども、ちょっと言葉遣いがひどかったよ、ごめんなさい、と言っているだけなんですね。そういうことを我々は言ったわけではないので、そこのところを理解していないので、やっぱりこれには一言言っておく必要がありますよということで、あえてああいう形で載せたということであります。

三宅委員長
私の最終判断でホームページにアップされたことになりますので、一言コメントしておきますが、この『判断ガイド』の430ページ、先ほどのグラデーションですと放送倫理上の重大な問題ありです。勧告ですから、灰色じゃなくて黒ということです。人権侵害と同視できるレベルという点です。委員会は特に以下の4点から本件放送に放送倫理上の重大な問題があると判断したということで、申立人に対する取材のあり方ということでは、回収リストが本物かどうかを含め申立人を取材してその言い分を放送することは取材の基本ではなかったかと。その辺について今後のスクープ報道における取材や表現のあり方について考えください、というのが431ページの末尾にあります。
それから断定的報道のレベルのところでも、一般視聴者には申立人が市長選挙への協力を組合員に強要したことが事実であると認識されるという、そこの断定的な表現、これがまさに表現のあり方として改善の余地はあるんではないかという議論を局内でやっていただきたかったという点です。
同じように内部告発者のやくざという発言ということで、回収リストが本物と決めつけられなかった疑惑の段階では引用を控えるべきではなかったのか。
それから、続報のあり方で、これがねつ造だということがわかった後、かなり詳細に続報しているから、申立人の労働組合の社会的評価はかなり回復しているじゃないかという言い方が出て来ますが、これについても、すみやかに取り消し、または訂正して、続報や訂正すべき情報についての放送のあり方について具体的にこうすべきだったというのが、まさに決定の内容です。この4点について考えていただくということが、決定をしかと読んでいただくと出て来るだろうと思ったのですが、いや、スクープとやくざの点だけちょっと問題だったというニュアンスの報告書の冒頭の表現だったものですから。
我々も意見交換会を直にやって、理解をされているということはわかったのですが、わかった以上は報告書もそれなりの形で変えていただくべきではなかったのかと。報告書を読んだ委員全体の意見からすると、意見交換をした委員のようには委員会全体ではならなかった。この報告書の内容について、これでいいかどうかについて、もう1回委員会で議論をして最終的にこちらもコメントを出したいという経過があったということです。
ですから決定文は決定文として、勧告ですからやはり社内でしっかり受け止めていただいて、その対応をしていただきたかった。もし現場に対応されるときは、決定が出て、決定もらって、それで真摯に受け止め、今後改善しますと放送で言うだけじゃなくて、社内でいろいろ議論を尽くしていただいて報告をいただきたい、という点がこちらの感想、対応であったということを付け加えさせていただきます。

◆「宗教団体会員からの申立て」事案について◆

本事案については、1時間番組を10分程度に編集することについて許諾をいただき、事務局で編集したものを参加者全員で視聴してから意見交換に入った。冒頭、起草を担当した市川委員から概要とポイントの解説があった。

市川委員
まず本件全体の判断枠組ということで大きく分けると、プライバシー権、肖像権を侵害するかという権利侵害の問題と、放送倫理上の問題はあったかという2つを検討しています。
本件ではここが一つ大きな論点になるかと思いますが、放送で申立人と特定可能か、あるいは判例等では同定という言葉を使いますが、同定可能かということです。ボカシのかかっている、顏だけから見ると必ずしもわからない。ただ、かなり薄いボカシで、周りの人たちが映っている。一緒にいる友人、しかも卒業式だというのは見るとだいたいわかるのですが、この卒業式で一緒にいる友人の特徴的衣服のわかるボカシ。それからナレーションで今年の春、A市内の国立大学を卒業して市内で就職したと。申立人が卒業した大学の雑観を映すと、大学名は出て来ませんが学部の門柱が出て来ます。すると、どこの大学かという特定が客観的には可能になります。あと、○○地方に住む家族ということ。それから出身地の駅ビルの名前等が入った背景等が出て来る。(「○○」と「A市」部分は当委員会決定では非公開としています。)そういったものを順繰りに追って見ていくと、結局、当人の周囲の人たち、大学の友人であるとか、職場の人であるとか、あるいは将来、彼と出会って、彼の属性を知っていく人からは特定が可能になるということになります。一般の視聴者から見ると、すべての人からは特定ができるわけではないんですが、こういう場合、判例等ではその周囲の方、それから将来、彼とその人と知り合う方が特定できる場合には不特定多数の人が知りうる、特定しうるという状態にあるという認定をしていて、この決定でも同じような枠組で考えています。ということで、本件は諸事情を組み合わせてしまうと特定できるという点の問題を指摘しています。
次に、この特定された方のプライバシーに立ち入ったというプライバシー権侵害の問題になる。それで公共性、公益性の観点からこの放送が許容されるのかということが問題になります。この点は公共性、公益性の程度の問題と、それから侵害の程度、どういう内容であるかとか、どういう対応で放送しているのかとか、そういった比較考量ということになってきます。いずれかが重ければいずれかが軽くなるというか、程度が下がるという、そういう関係になります。
委員会では、本件放送部分が対象としたのは内心の深い部分の人にもっとも知られたくない事柄の一つであるから、こういう特定しうる状況下で承諾なく放送するのは、いかに公共性が認められているとしてもプライバシー侵害に当たるのではないか。これが一つの意見です。もう一つは、カウンセリングの冒頭の部分、15秒程度の本人の発言です。カウンセリング自体は1分程度の発言で。その中で出てきたのはアレフに対する自分の見方を述べる部分だったので、具体的な事実の吐露があったとまでは言えないのではないかと。しかも放送目的に直結するものであった。
つまり若者がなぜアレフに向かうのかっていうのを明らかにするという観点から考えると、公共性、公益性、それに直結する内容で、あまり深い部分のプライバシーまでは立ち入っていないのではないかということで、プライバシー侵害まではいかないというご意見もありました。
他方では、高校時代に友人関係がうまくいってなくて、この信仰が非常に自分の心の中にストンと入って来たという心情というのは、それはそれで彼にとってみれば大事な、かなり内心の深いところにある問題ではないかということでプライバシー権侵害とは言えるのではないかという議論もありました。
結論としてはその点で両者一致した結論を得ることはできなかったので、プライバシー権侵害についての結論は出さなかったし、プライバシー権侵害とまでは本件の決定では言ってはおりません。ただ問題点としては、こういう議論をしたということを触れております。
次に放送倫理上の問題点があるかどうか。特定可能性への配慮ということで、プライバシーにかかわる事実を明らかにするものだったので、ボカシや肉声の変換という配慮だけではなくて、特定しうる情報をどの範囲でどのように明らかにするかについて、より慎重に配慮すべきだったし可能ではなかったかと。こういう意見を述べて、一つの問題点を指摘しています。
次にカウンセリングの隠し録音と信書の撮影朗読の問題点。やはり放送倫理上の問題としては行き過ぎている、踏み込み過ぎているのではないかというところで意見の一致を見たというところであります。
最後に、団体としての取材拒否、両親の承諾との関係について、当該局としてはアレフという団体からは頻繁に取材拒否をされていた。幹部も絶対に取材に応じないというスタンスだったと。そういう中ではこういう手法もやむを得なかったと。それからご両親の承諾を得ていた。しかし、成人のこの申立人についていかに両親が承諾していても、これは別の問題だろうと。そういう理解の下で放送倫理上問題ありという結論になったわけです。
この見解では高い公共性、公益性と言っていますが、委員会としても評価しております。ただ、そうはいってもやはり踏み込んではいけない領域というのはやはりあるだろうと。そこのバランスは絶えず考えていかなければいけない。当該局の方はなかなかそこの点のご理解がいただけてなかったのかなというふうに感じていまして、局全体としてもやはり一度立ち止まってですね。その担当者あるいはその上のチェックする方が別の視点から立ち止まって考えて、はたしてこれはバランスがとれているんだろうかということは考えていただきたかったなと思いました。

■質疑応答

Q 映像表現等のことで専門家の法律の先生もいらっしゃるのでお聴きしたいのですが、もし本人の特定ができないような処理をした上であれば、隠し録音の内容、あるいは両親への手紙を使用したケースはプライバシーの侵害に当たるのかどうか、それから、それは放送倫理上はどうかという点、この辺をお伺いしたい。

三宅委員長
小山さんと曽我部さんにあとで補足してもらいたいと事前に言っておきますが、たぶん特定されないとしてもカウンセリングの核心部分とか、実際の手紙を映像で出すということは、本人が特定されないとしてもやっぱり権利侵害になるという議論はたぶん一つあると思うんです。ただ、この委員会で議論をしていたときは、そうはいってもまさにそこが核心部分で、なぜ若者がそこに入るのかっていうときに、隠し録音の内容とですね、手紙の内容「すべての魂は否定できなくて」って、あの辺のところがやっぱりキーじゃないか、肝じゃないかということで、あれを抜いて放送がはたして成り立つのかという議論も一方にあってですね、非常にこれをプライバシー侵害として一本の意見にまとめることは基本的にできなかったので、おそらくそこは委員の中でも意見が分かれる部分もあると思います。

小山委員
まず、その当人だとまったくわからないようになっていた場合にはプライバシーではないと思うんですね。ただ例えば名誉毀損を考えた場合に、名誉毀損とは別に名誉感情の侵害があります。名誉毀損は社会的評価の低下ですけども、名誉感情は自分が侮辱されたとか、そんな感じの感情です。それに近いような形でプライバシーではないけども、何か自分が大事にしているものが暴露されたということで、それは人格的利益の一つということはできるんではないかなと。

曽我部委員
まず特定できない場合、これはプライバシーと呼ぶかどうかは別として、やっぱり自分の思想・良心の深い部分について公表されたというような場合については法的責任が発生する場合は十分ありうると思います。普通のプライバシーは自分の私的な事柄が人に知られて、それに対して社会的なリアクションがあって精神的苦痛を受けるというような構造ですけど、この場合、自分の思想・信条が外に出たのは誰にもわからない、自分だけの問題になるので、普通のプライバシー侵害とは構造が違います。広い意味でいうと両方プライバシーでしょうが、通常のプライバシーとは少し違うので、ネーミングとしても別なものになる可能性あるとは思いますが、いずれにしても法的な問題にはなるかと思います。普通の私的な事柄であれば、特定できないようにすれば法的責任は生じないと思いますが、例外的にそういう内心の深い内容のようなものであれば、今、申し上げたようなことになると思いますので、それにともなって放送倫理の観点からも、放送するだけの必然性のあることなのかをお考えいただくということだろうと思います。

奥委員長代行
確かに問題は公共性、公益性と権利侵害のつまりバランスですね。比較考量の問題としてこの番組に対する判断があったわけですが、私が委員会の中で強く言ったのは公共性とか公益性っていうものはどっか宙に浮いてあるわけではないということでした。この番組に即して言えばアレフという現に団体規制法の観察対象になっている団体があって、かつてこれはオウム真理教だったわけですけれども、かつてオウム真理教が若者たち、それも、かなり学歴の高い若者たちを集めた状況がある。今また同じような状況が起こっている。一体これはどうしてだろうか。そこに踏み込んで1時間のドキュメンタリー番組を作ったわけですね。私はそこに公共性と公益性があるのであって、そうした意味での公共性、公益性というものと権利侵害をバランスの中で考えざるを得ないだろうと思いました。
さきほど委員長がおっしゃってくれましたけれども、なんで若者がアレフに惹かれちゃうかという内心に迫らないと、この番組における公共性、公益性は達成することはできないわけですよね。そこに踏み込んだという部分があるんであって、それを名誉毀損だとかプライバシーっていうところで切ってしまうと、そもそもこの番組は成立しないだろうと思っているんですね。にもかかわらずこういう形の決定になったのは、ちゃんとモザイクをかけなかったとか、もっとちゃんと本人かどうかわからないようにすればよかったというのが私の考えです。委員会は決して法律論議だけをしているわけではないということを少し補足的にお話ししておきます。

坂井委員長代行
実はこの番組作った方たちは、ちゃんとプライバシー保護、同定ができないようにしたというふうに断言しておられるんですね。ちゃんとモザイクなりボカシなり、それから匿名なり、本人が特定できないようにすべきだという点については局も委員会も一致しているんです。それについて局は十分やりましたというのに対して委員会はこれじゃダメだろうということで、今、奥代行が言ったようにそこはちゃんとやらなきゃダメじゃないのかと、そういう話だということをご理解いただければと思います。

Q 私も非常に目指すべき意義の高い番組だと思うんですが、ヒアリングの中で制作者の方、申立人に対して取材の申入れをしなかった理由はなんだって答えているのでしょうか? なぜ申入れをしなかったのでしょうか?

事務局
番組のプロデューサーからは、本人に取材を申し込めばアレフが必ずつぶしにかかってくる、それは絶対避けたかったという一点。もう一つはご両親から本人には知らせないでほしいということがあって、本人に取材しなかったという説明はプロデューサーからありました。

◆飽戸理事長から締め括りのあいさつ◆

今日の議論を伺っていて一番気になったのはやはり視聴者がここ10年、20年の間に大きく変わってきているということ。視聴者のカルチャーが大きく変化しているという点だと思います。局の方からも取材拒否が多いとか、視聴者の態度が厳しくなっているというお話がありました。これは他の分野でもそうなんですね。プライバシー意識、権利意識が高くなって、世論調査なんかでも拒否が激増しています。そういうこともあって、視聴者の皆さんのテレビに対する態度も大変厳しくなっている。10年、20年前だったらバラエティー番組でもフリーパスだったようなのが最近は苦情が殺到するようなことが起こっているわけです。
そういう意味でも視聴者のカルチャーに常に配慮しながら番組を作っていただきたい。
これだけ各局の皆さん、熱心に真剣に番組を作ってくださっているわけですが、BPOに年間2万件ほどの意見がずっとここ数年寄せられており、そのほとんどは苦情なんですね。なかでも一番困るのは、BPOは放送局の味方だ。だからいくらBPOに苦情を言っても番組は変わらない。
もっとBPOは番組を厳しく監視して、厳しく罰してくれという意見が相変わらず来るんですね。BPOは番組を監視して処罰する、そういう機関ではないんですね。あくまで放送事業者の自主・自律的改革・改善を支援する組織としてのBPOの役割をしっかりと伝えていくということが我々の責務でもありますが、皆さんの側もそういう視聴者が厳しくなっているという状況に対応するような番組作りにぜひ力を入れていただきたいと思います。
我々も先ほどもありました辛口の応援団としてこれからも努力していきたいと思いますので、今後もご支援いただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

以上

第214回放送と人権等権利に関する委員会

第214回 – 2014年11月

散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
「大阪府議からの申立て」2件審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」案の検討に入った。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を始めた。「大阪府議からの申立て」2件を審理要請案件として検討し、いずれも審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年11月18日(火)午後4時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、双方からの書面やヒアリングの結果をもとに起草された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて担当委員が説明し、各委員が意見を述べた。結論の方向性を確認しつつ記述等を議論したが、次回委員会で修正案を審理することになった。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
前回の委員会で審理入りが決まり、今月の委員会から審理を始めた。TBSテレビは委員会に提出した答弁書で「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。委員会では、事務局が放送内容の概要や申立人が指摘する問題点を説明し意見を交わした。

3.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』。番組は、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げ、山本府議本人のインタビューを含め、大阪府交野市の地元関係者らを取材し、それをまとめたVTRを放送するとともに、スタジオでコメンテーターが山本府議の言動についてコメントした。
この放送について山本府議は翌12日に日本テレビに対し、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことが人権侵害にあたると抗議し、番組内で謝罪、訂正するよう求めたが、日本テレビはこれを拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出し、テリー伊藤氏の発言は「侮辱罪」にあたると訴え、改めて同氏による番組内での発言撤回と謝罪を求めた。申立書では、テリー伊藤氏のコメントにより、twitterやブログに多数の「キモイ」を含む誹謗中傷が寄せられ、精神的な負担が生じたほか、連日多数の電話が寄せられ、府議としての活動に支障が生じたと主張している。
これに対し日本テレビは11月5日に委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「元々山本府議に対して『キモい』と感じたのは中学生であり、そう感じさせた一連の行為を山本府議本人も不適切だと自認している中で、今回のテリー伊藤氏のコメントが侮辱罪にあたるという山本府議の主張には正直、当惑せざるを得ない」と述べた。また「当該コメントは視聴者に対して、公職にある山本府議の行為には大変、問題があり、中学生の気持ちはよくわかるという論評をなげかけたにすぎず、報道内容の公共性、報道目的の公益性に鑑みれば当然、違法性はない」と主張。さらに、「『スッキリ!!』の放送以前にすでに山本議員の不適切な行為は、テレビ・新聞各社で広く報道されており、本番組の放送が主たる原因となって、山本府議の社会的な名誉が低下したことはない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

4.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。番組では、お笑いタレント「おぎやはぎ」の矢作兼氏と小木博明氏がオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになり、その経緯が多くのメディアにより伝えられる中で、テリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言、それに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申立てた一連の事態について、矢作氏が小木氏に説明するという形でトークが展開された。
この放送について山本府議は9月8日、TBSラジオに対し「キモイという発言に侮辱されたと感じた」として番組内での謝罪を求めたが、同社は「社会事象についてのコメント」として、拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出、その中で「思いついたことはキモイだね。完全に」、「キモイと思ったもんはキモイでいいんでしょ」等の発言は、「全人格を否定し、侮辱罪にあたる可能性が高く、精神的な苦痛を味わった」と訴えている。また、「インターネット上に『キモイ』という中傷の文言が溢れ、信用やイメージを著しく損なった」と主張している。
これに対しTBSラジオ&コミュ二ケーションズは11月10日、「経緯と見解」書面を委員会に提出、この中で「今回の放送は、大阪府議という公人である山本議員の行為及び、それに付随した一連の社会事象へのコメントが主眼であり、小木氏の『キモイ』という発言は、あくまで山本議員の不適切な行為に向けられている。同議員の人格に向けられたものではないし、ましてや全人格を否定する個人攻撃ではまったくありえない」として、侮辱罪にはあたらないと主張している。
同社はさらに、「公人の名誉権が過度に強調されることは、民主主義の基盤を揺るがすことにもつながりかねないという視点からも、今回の放送について謝罪放送やその他の方法による謝罪を行うことはできない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

5.その他

  • 委員会が今年度予定している系列単位の意見交換会を、2015年2月24日に、高松で開催することを決めた。対象は日本テレビ系列の在四国4局。

  • 次回委員会は12月16日に開かれる。

以上

第87回 放送倫理検証委員会

第87回–2014年11月

佐村河内守氏が"別人に作曲依頼"を審理

川内原発報道で事実誤認と不適切な編集
テレビ朝日の『報道ステーション』を審議…など

第87回放送倫理検証委員会は11月14日に開催された。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案について、各局の報告書をもとに、問題発覚後の対応のあり方などをめぐって意見交換した。
テレビ朝日の『報道ステーション』が放送した九州電力川内原子力発電所に関するニュースに、事実誤認と不適切な編集があったとして審議入りした事案は、担当委員から当該局へのヒアリングの概要の報告が行われた。

議事の詳細

日時
2014年11月14日(金)午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、藤田委員、升味委員

1.「全聾の作曲家」と称していた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案を審理

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案について、問題発覚後の対応のあり方などをめぐって、各局から提出された報告書をもとに意見を交換した。審理の対象になった7番組を放送した5局に対しては、

  • (1) 問題発覚直後の視聴者に向けた対応について
  • (2) その後の視聴者に向けた対応について
  • (3) 視聴者の反応について
  • (4) 番組協力者への対応について
  • (5) 番組審議会への報告について
  • (6) 番組に対する自己検証について
  • (7) 再発防止のための取り組みについて
  • (8) 上記の取り組みに対する自己評価について

の8項目について、それぞれの番組内容に応じた具体的な質問を設定し、報告を求めた。その結果、すべての局から詳細な報告書が提出され、問題発覚後の各放送局の対応については事実関係がほぼ明らかになった。これまでの調査で各番組の制作過程についても事実関係は明らかになっているが、そのすべてで誤った情報が流され、多くの視聴者に誤解を与えた事案であることを考えると、なぜそのような事態に至ったのか、視聴者への説明責任を果たし誤解を解消するために必要なことは何なのかについて、更なる検証が必要との意見も多く、委員会は、次回も審理を継続する。

2.川内原発をめぐる原子力規制委員会の報道に事実誤認と不適切な編集があったテレビ朝日の『報道ステーション』を審議

テレビ朝日の『報道ステーション』で、原子力規制委員会が九州電力川内原発について新規制基準に適合していると正式に認めたニュースを伝えた際に、事実誤認や不適切な編集があったことが明らかになり、委員会は前回、国民の関心が高いニュースで2つの間違いをしたのは小さな問題とは言えないとして、審議入りを決めた。
当該番組の担当ディレクターやプロデューサーをはじめ、取材担当記者、報道局幹部などあわせて11人を対象にしたヒアリングが10月末に実施され、担当委員からその概要が報告された。「なぜ、印象操作と疑われるような編集がされてしまったのか」「急きょ予定にない項目の放送を決めたため、放送時間が迫る中、分業で作業したことが誤った放送につながっているが、どうすれば良かったのか」「放送前のプロデューサーや記者のチェックは、どうなっていたのか」などの論点について、意見が交わされたほか、当該局で既に実施されている再発防止策の報告も行われた。
今回の審議をふまえて、次回委員会には、担当委員が意見書の原案を提出し、さらに議論を深めることになった。

以上

2014年11月18日

「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)審理入り決定

放送人権委員会は11月18日の第214回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。番組では、お笑いタレント「おぎやはぎ」の矢作兼氏と小木博明氏がオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになり、その経緯が多くのメディアにより伝えられる中で、テリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言、それに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申立てた一連の事態について、矢作氏が小木氏に説明するという形でトークが展開された。
この放送について山本府議は9月8日、TBSラジオに対し「キモイという発言に侮辱されたと感じた」として番組内での謝罪を求めたが、同社は「社会事象についてのコメント」として、拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出、その中で「思いついたことはキモイだね。完全に」、「キモイと思ったもんはキモイでいいんでしょ」等の発言は、「全人格を否定し、侮辱罪にあたる可能性が高く、精神的な苦痛を味わった」と訴えている。また、「インターネット上に『キモイ』という中傷の文言が溢れ、信用やイメージを著しく損なった」と主張している。
これに対しTBSラジオ&コミュ二ケーションズは11月10日、「経緯と見解」書面を委員会に提出、この中で「今回の放送は、大阪府議という公人である山本議員の行為及び、それに付随した一連の社会事象へのコメントが主眼であり、小木氏の『キモイ』という発言は、あくまで山本議員の不適切な行為に向けられている。同議員の人格に向けられたものではないし、ましてや全人格を否定する個人攻撃ではまったくありえない」として、侮辱罪にはあたらないと主張している。
同社はさらに、「公人の名誉権が過度に強調されることは、民主主義の基盤を揺るがすことにもつながりかねないという視点からも、今回の放送について謝罪放送やその他の方法による謝罪を行うことはできない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2014年11月18日

「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)審理入り決定

放送人権委員会は11月18日の第214回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』。番組は、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げ、山本府議本人のインタビューを含め、大阪府交野市の地元関係者らを取材し、それをまとめたVTRを放送するとともに、スタジオでコメンテーターが山本府議の言動についてコメントした。
この放送について山本府議は翌12日に日本テレビに対し、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことが人権侵害にあたると抗議し、番組内で謝罪、訂正するよう求めたが、日本テレビはこれを拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出し、テリー伊藤氏の発言は「侮辱罪」にあたると訴え、改めて同氏による番組内での発言撤回と謝罪を求めた。申立書では、テリー伊藤氏のコメントにより、twitterやブログに多数の「キモイ」を含む誹謗中傷が寄せられ、精神的な負担が生じたほか、連日多数の電話が寄せられ、府議としての活動に支障が生じたと主張している。
これに対し日本テレビは11月5日に委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「元々山本府議に対して『キモい』と感じたのは中学生であり、そう感じさせた一連の行為を山本府議本人も不適切だと自認している中で、今回のテリー伊藤氏のコメントが侮辱罪にあたるという山本府議の主張には正直、当惑せざるを得ない」と述べた。また「当該コメントは視聴者に対して、公職にある山本府議の行為には大変、問題があり、中学生の気持ちはよくわかるという論評をなげかけたにすぎず、報道内容の公共性、報道目的の公益性に鑑みれば当然、違法性はない」と主張。さらに、「『スッキリ!!』の放送以前にすでに山本議員の不適切な行為は、テレビ・新聞各社で広く報道されており、本番組の放送が主たる原因となって、山本府議の社会的な名誉が低下したことはない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2014年10月に視聴者から寄せられた意見

2014年10月に視聴者から寄せられた意見

女性閣僚2人の辞任報道で一方的に政権を批判するばかりの姿勢は如何なものかといった声や、屋外でのリポートなど大型台風の取材のあり方や放送に疑問の声が寄せられた。

2014年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,261件で、先月と比較して40件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール67%、電話30%、FAX2%、手紙ほか1%。
男女別は男性70%、女性26%、不明4%で、世代別では30歳代27%、40歳代25%、50歳代19%、20歳代15%、60歳以上11%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は569件【39局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、18件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

第2次安倍改造内閣の女性閣僚2人が早くも辞任したが、一方的に政権を批判するばかりの姿勢は如何なものかといった声が寄せられた。
大型台風が続けて週末の日本列島を縦断したが、取材のあり方や放送に疑問の声が寄せられた。
エボラ出血熱の感染が世界中に広がっているが、有効なワクチンも発見されていない現状で、むやみに煽り立てるのは不謹慎だという声があった。
安易に間違いをし、訂正を繰り返す情報番組に対して、現場に緊張感が足りないのではないのかという意見が寄せられた。
ラジオに関する意見は47件、CMについては39件あった。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は114件で、前月から24件増加した。
今月は、「性的表現」に関する意見が26件と最も多かった。次に「低俗・モラルに反する」が17件、「編成」が14件、「いじめ」が9件、「言葉」が8件、「暴力・殺人・残虐シーン」が6件と続いた。「その他」は10件あった。
「性的表現」については、関東圏の独立局などで深夜に放送している音楽バラエティー番組で男性お笑いタレント同士が裸で行った行為について、「深夜番組とはいえ"限度"を超えている」など、複数の意見が寄せられた。
また、いわゆる「どっきり企画」で、男性お笑いタレントが裸になるシーンについても、「低俗・モラルに反する」との意見が複数寄せられるなど、男性の裸に関する意見が目立った。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 2人の女性大臣の辞任の報道が、偏向的だった。両大臣が辞任し、告訴され、今後は検察の調査の段階に入ったにもかかわらず、それだけでは飽き足らず野党は、国会審議を任命責任追及の場に利用している。土砂災害などに関する重要な法案の審議を止めて、国会を空転させる始末だ。国民の一人として野党の行動には大変怒りを覚える。その状況をきちんと紹介することもなく、安倍政権の緩みだなどと決めつけ、しかも海外の安倍政権に懐疑的な記事だけを紹介して「海外から信用されない政権は云々」等と伝えている。こうした報道は、一方的で気持ち悪さを感じた。

  • 大臣の不祥事に関して、「SMバーに政治活動費を支出していた」などとことのほか強調し、大臣がとんでもない悪事を犯し、鬼の首をとったように一方的に責めたてていた。聴いていてとても不愉快だった。大臣には確かに大きな落ち度があるが、それを茶化すようにSMバーのみを強調するのは、不適切だ。

  • 政権の閣僚の問題を取り扱った時、名を伏せた政治家の数々のコメントがテロップ付きで流された。色々な報道番組でも度々使われる手法だが、このような手法は大変問題がある。番組制作者の思惑で、内容の歪曲でも捏造でも何でもできる。不自然なコメントも結構あり、信頼感がない。事実の正確性・客観性が担保できない、真偽のわからない他者によるコメントは、安易に使うべきではない。

  • 台風や大雨の情報を、アナウンサーがヘルメットを被り、屋外からリポートする様子を放送する必要があるのか。雨や風の激しさは、カメラが映す海の波や木の揺れ方で十分伝わる。カメラをまわしている時だけ屋外にいることは分かるが、アナウンサーやリポーターを危険に晒すのは如何なものか。早く避難させてあげるべきだと腹がたつ。視聴者には「外出は控えて下さい」「早めに避難して下さい」などと注意を促すのに、矛盾している。

  • 台風が上陸するたびにでてくるL字画面についてだが、非常に邪魔だ。台風情報の必要性は否定しないが、折角地デジになったのだからデータ放送に送るなど、工夫できないのか。

  • 台風により、JR西日本が運行中止にした件を取り上げ「市民の足なのに、なぜこのような決断をしたのか」「徐行運転でも良かったのではないか」等と非難していた。台風が来る前に「史上最大級の台風が来る」とマスコミが大騒ぎしたことも、この決断を促した要因だと言える。にもかかわらず、台風が通り過ぎて被害が少ないとわかった途端、批判するテレビ局の姿勢は腹立たしい。被害が少ないとはいえ、犠牲者も出ているのだ。

  • 「日本にエボラ出血熱が上陸したら」というシミュレーションを放送した。ある日父親の具合が悪くなり、夕食で残したカレーを子どもに食べてもらったり、医師に診てもらった時に唾を吐いてしまったり、通勤中嘔吐した時に電車の手すりに触ってしまったりと、感染が拡大していく様子が描かれていた。描かれ方がリアルすぎて、あたかも今、エボラが上陸しているかのような恐怖感を覚えた。「専門家の意見をもとに制作」という注意書きのテロップが出てはいるが、ドラマ仕立てになりすぎていて、制作側の「いやらしい」意図が垣間見える。エボラの恐怖と対策に対し、きちんとナレーションを適宜入れていくならまだしも、何の解決策も提示しないままドラマを描く手法は納得がいかない。むやみに煽るべきではない。

  • エボラ出血熱を扱うコーナーで、「(2次感染が確認された)欧州から帰国した」と話したゲストに対し、「近くには寄りたくない」と席を離す行為があった。笑いを取るためのジョークのつもりだろうが、感染症患者を差別する極めて許しがたい行為だ。エボラ出血熱は日本にとっても対岸の火事ではない。ことさら恐怖をあおるのではなく、何が危険で、どう対処すればいいのか、きちんと放送してほしい。

  • 「御嶽山噴火」のニュースの中で、各局とも「心肺停止」という言葉を使っている。しかしこの言葉では、蘇生の可能性があるかのように聞こえてしまう。放送局に問い合わせたところ「警察発表によるもの」との回答だったが、納得できない。死亡が明らかであれば、他の言葉を使った方が良いのではないか。

  • 御嶽山噴火被害者への取材の仕方に疑問を感じた。結婚間近だったカップルの息子の父親に向けてインタビューしている様子が映された。息子が行方不明の父親が必死にインタビューに答えて涙を流す姿。それでも無理に質問を浴びせる取材陣は無神経だ。昔からだが、被災や被害に遭遇した人たちに対して、プライバシーへの配慮が足りない取材がとても多い。個人が悲しみに暮れ、涙を流して言葉に詰まっている時でも、無理に答えさせようとする取材陣。無神経で非常識だ。悲しんでいる状況で答えることも辛い心境なのに、無理に取材することは絶対に止めてほしい。このようなインタビューは必要ない。

  • 日本人3人がノーベル物理学賞受賞と報道している。しかし1人はアメリカ国籍であり、日本人ではない。それをないがしろにして日本人と言ってはばからないマスコミの人権感覚は、他の人権に対する考え方にも鈍感であるということだ。正確には日系アメリカ人だ。世界の報道では、日本人3人ではない。日本は二重国籍を認めていない。国籍を変えることは、当事者にとってかなりな決意を持つわけなのに、マスコミはそういう思いも無視してノーベル賞ではしゃぎまくっている。

  • 事件の容疑者が逮捕されても、冤罪や不起訴、無罪判決の可能性があるので、すぐに実名報道をすることは危険だ。その人が無罪であっても、いったん流出してしまった情報はネット上で拡散し、歯止めが効かなくなる。凶悪犯罪は別として、比較的軽い犯罪の場合は、判決が出るまでは実名報道を控えるべきだ。メディアがその指針となるようなルールを整え、ネット社会に対応すべきだ。

  • 「記事訂正問題」に関連して、あまりにその新聞社へのバッシングが多い。出演者全員が「潰れてしまえ」とでも言わんばかりの発言をしており、その姿は面白がっているようにも見える。偏った内容は世論のミスリードを招きかねない。公平・公正な放送を望む。

  • 男性歌手の愛人だった女性の覚せい剤取締法違反事件の公判の様子を詳細に報道していたが、女性は社会的地位があったわけではない。「歌手の愛人」だった一般人に過ぎない。この人物の覚せい剤取締法違反の公判の様子を詳細に報道することに何の価値があるのか。まして2人の間に性的関係があったかなどということは社会的に何の意味もなく、報道する価値など全くない。

  • 大学生がイスラム国へ戦闘員として参加しようとしていた、との報道があった。その求人チラシが秋葉原にあったのだが、その時「アニメ・ゲームで有名な」と話していた。このような表現ではあたかも「アニメやゲームを嗜む人が、イスラム国に対して肯定的」と捉える人が出てしまう。このような報道の仕方は、不適切ではないか。ただ「秋葉原にある古書店の店頭に提示されていた求人広告を見て」と報道すればいいだけの話ではないのか。

  • 「大学を休学中の大学生らが"イスラム国"に戦闘員として加わるためシリアに渡航する計画を立て、警視庁の事情聴取を受けた」というニュースを受け、コメンテーターが「参加する自由が認められてもいい。日本から応募ができないのなら国外ルートで応募することもできる。海外で戦闘員になった人もいる」と述べた。これは、テロ行為を肯定する過激思想であり、倫理に反する問題発言だ。しかし、スタジオではあまり否定もせず、そのまま番組は進行した。若者に強い影響力を持つコメンテーターの発言は、多くの青少年に悪影響を与える。司会者が何らかのフォローをするべきだった。

  • 「新幹線おめでとう!」といって新幹線50周年を報道していた。経済効果とか良いことしか言わず、沿線沿いに住む人間が、深夜の踏み固めや草刈の振動や音によって睡眠を妨害され、長年、迷惑していることを伝えることは一切しない。公害といっても過言でないのに、見向きもしない。少数だから切り捨てているのか。これが本当に公正な報道なのか、怒りを覚える。

  • 噴火が起きれば、「予知できなかったのか」と批難し、災害で人が亡くなれば、「未然に防げなかったのか」と言う。事件が起きれば、「もっと早く対策できなかったのか」などと言い募るマスコミにはもううんざりだ。「正義の味方」にでもなったつもりか。誰かを悪者にしなければ気が済まないのか。現場にヘリで真っ先に駆けつけたり、打ちひしがれた人たちに無神経にカメラやマイクを向けたり、マスコミの「正義」とはいったい何なのか。自分たちは安全で、何も傷つかない高いところから言いたいことを言う。「いったいどうなっているんでしょうかね」―それは、被害者の葬式に物見遊山感覚でズカズカ乗り込んでいくマスコミに対して投げつけたい言葉である。

  • 阪神タイガースがクライマックスシリーズを制し、日本シリーズ進出を果たしたことを取り上げていたが、道頓堀川への飛び込みのことを真っ先に取り上げていた。川への飛び込みは行政が厳しく規制する危険な行為であるのに、煽っているとしか思えない。阪神タイガースの日本シリーズ進出=道頓堀川への飛び込みという、短絡的な発想はやめるべきではないか。

  • 川内原発の再稼働の状況を報道していた。はじめに御嶽山の噴火の映像からはじまり、南九州における巨大噴火のイラスト、つぎは住民説明会で反対意見を紹介していた。あげくのはてに「住民の説明に対応していない」と断定した。一方的な見方で視聴者を洗脳しているとしか思えない。

  • 在特会と大阪市長の対談を取り上げた。私はインターネットでノーカットの対談の様子を確認している。在特会会長が「お前」を言ったことは何度も流れたが、大阪市長も同じように「お前」と言ったことは、ほぼカットされていた。編集の仕方が公平中立でない。これは放送局としての信頼を失墜し兼ねない危険な行為だ。

  • "地震予知は可能かどうか"というコーナーで、地震予知の研究者を登場させ、予測を発表していた。地震予知は確立された研究技術ではない。テレビは影響力が大きく、ことさら恐怖をあおることは風評被害以外の何ものでもない。番組内では、「あくまでもこの研究者によれば」や「諸説ある」などと繰り返していたが、そんなことで免責されるわけはない。また「諸説ある」というなら、反対意見も同時に紹介すべきだ。不確かで一方的な放送はやめてほしい。

【番組全般・その他】

  • この番組は間違いが多すぎる。毎日のように訂正が入る。今日はお店に関する情報を流していたが、結果的にその情報は間違いで、後半に訂正を出していた。間違わない努力はしないのか。訂正を最後に流せばそれでいいとでも思っているのだろうか。

  • 動物に関連する特集がよく放送されるが、正直なところ、理科の授業でやるようなことが多い。BSで放送されていた番組(海外のテレビ局制作)では、寒い地域に多く生息する狼と、暖かい地域に生息する虎の身体のつくりの違いを詳しく解説するために、X線で体を撮影したり、口から内視鏡を入れて胃や腸の内部を撮影したりと、かなり詳しく、分かりやすく生態や身体のつくりの違いを解説してくれていて、興味深かった。こういう風に、学校ではやらないようなことも放送してほしい。

  • お笑い芸人と女性タレントの水泳大会が行われていた。プール上に浮かべたマットの上で相撲をしていたが、公開リンチみたいに見えた。ベテラン芸人が対戦相手に首を絞められ、顔を赤くしていた。内容は面白かったが、危険な行為でもある。怪我でもしたらどうするのか。

  • 競馬の番組だが、出演者のトーク中にスタッフの高笑いが入り、耳障りだ。視聴者の中にはレースでスッて、がっかりしている人もいる。そのような時に馬鹿笑いを聞かされるのはたまらない。バラエティーやお笑い番組でスタッフの笑い声が入ることは番組の性質上かまわないが、競馬は一応スポーツであり、お金も絡むシビアな世界だ。もっと真剣にやってもらいたい。

  • ある医師に関して放送していた。主張にはさまざまな通常の医療とは異なる事柄が含まれており、批判の対象となっている。番組ではその事実に触れることはなく、持ち上げているような印象を受けた。科学の世界では多くの意見がある。その中で根拠もなく、いわゆる相場の逆張り的な主張で耳目を集め、利を得ているのが彼であると思う。その人物を、特定のテレビ番組が肯定し、宣伝するということは大きな問題ではないか。

  • 私はがん患者だ。去年肺転移を経験し、手術を受けた。癌を見つけても「癌もどき」と称し、手術や治療を一切しない「放置療法」というのが放送された。この番組によって、がん告知をされた患者が戸惑うのではないのか。治療は患者と主治医が決めることだが、放置療法などといういい加減なことを放送したことに、憤りさえ感じる。がんを甘く見ないでほしい。一生懸命に研究している他の医師に対しても失礼な内容だ。一人の患者として、とても傷ついた。

  • 出演者だけが楽しむ番組はもううんざりだ。ギャラだけでなく、クイズで勝ち残ると賞金が出るというシステムは視聴者向けの番組ではない。タレントが参加するリレーでは、誰が勝つかを他のタレントが賭け、そこでも賞金が発生するというギャンブルのような不愉快なゲームもあった。出演者だけで楽しむことを放送する必要があるのか。芸能人は高いギャラを貰っているのに、クイズは賞金だらけで、一般人への嫌みなのかと思う。

  • 芸能人にドッキリを仕掛けて笑いをとる企画だが、危険な内容であった。陸上競技で、芸人がゴールした途端、目の前で爆破させてみたり、熱湯が入った鍋を持たせてローションを塗った上をわざと走らせたりした。度が過ぎていて、笑うどころか不快感を覚えた。

  • レースの中で試合結果に大きく影響を及ぼす事故が起きた。しかし、事故の内容がひどかったのか、そのシーンは丸々カットされた。そのため優勝者のインタビューが意味のわからない内容になっている。生放送ではないので、字幕を入れるなど対処できたのではないだろうか。

  • ドッキリの域ではなくイジメとしか思えなかった。立場の弱い若手芸人をいたぶっている。お笑い芸人にとってはこのような番組でも出てナンボのところも理解しているが、今回の番組は見ていてあまりにもひど過ぎるし、逆らえない格下の芸能人に対して、一方的に容赦ない攻撃や精神的苦痛を与えることは如何なものか。あのような番組はイジメを助長するように思えた。

  • 「芸能人のCMのギャラ」について、クイズ形式で説明していた。番組によれば「20歳そこらの若手芸能人が、年間計1億円~4億円前後のCM出演料を稼いでいる」とのことだった。一般人が一生必死に働いても、これほどの金額は稼げない。全てを含めた金額であることは理解しているが、一般視聴者の感覚からあまりにかけ離れた内容は不愉快だ。

  • 番組内の天気予報を、アイドルが読んでいることに違和感を持つ。なぜ気象予報士ではなくアイドルが読む必要があるのか。アナウンサーならまだしも、気象予報士の資格も持たないアイドルが台本を渡され、天気を伝えるのではなく、ただ読むだけの天気予報など価値がない。天気予報というより「アイドルを映すためのコーナー」でしかない。ニュースを扱う番組で場違いだ。

  • 以前から、「ご当地問題を取り上げる」という趣旨で、日本各地の都市を取り上げては揶揄するといったことをしてきたが、私の出身地もこれまで度々取り上げられては揶揄され、不快だ。なかでも他都市の人々へのインタビューVTRで彼らに散々悪口を言われるシーンを見た後、番組MCが「自分も昔から嫌い」という論調でこき下ろし、スタジオ内の観客がそれを見て大笑いする様子を見ていると、出身地を人から聞かれることも嫌になるほどだ。一方的なネガティブキャンペーンに終始し、「ここの市民は皆お高く留まっていて他都市を下に見ている。実際は大したところじゃないのに」といった内容や、都市の多様な面、人々の意見、歴史や経緯などには一切触れず、いい所など一つもないといわんばかりの構成には疑問が残る。

  • お笑い芸人の出演番組が多い。ひな壇に芸人が何人も並んでトークをする番組をよく見かける。せっかく良いテーマであってもくだらないギャグで茶化して面白がったり、また、医者などが出演する番組ではゲストに偉そうな態度をとり、目上の人に対する言葉遣いも出来ていない芸人の司会者がいたりする。そもそもお笑い芸人はお笑いを披露する場所が他にあるはずだ。番組に起用することはやめてほしい。

  • "結婚式のお金のカラクリをバラす"というコーナーがあった。私は元ブライダル業界の者だが、その放送内容に納得が出来ない。「プランナーはお客様の見積もりを引き上げることばかり考えている」や「持込のアイテムに対して多額の持込料を請求している」「リサイクルショップで1万円で売っているドレスを高額でレンタルしている」など、そういった事実がある式場もあるかもしれないが、すべてがそうではない。この番組を見た限りでは、ほとんどの式場がそうであるといっているようだった。持込料に関しても、式場側にもその料金を頂く形にしなければならない事情がある。まるで、ブライダル業界自体が悪徳業者であるかのように放送され、必死に働いているプランナーやその他ブライダル業界の方々にかなり失礼な内容だった。

  • 外国で撮影した一部を紹介していた。女性芸人が上半身裸(胸も露出)になり、ペイントアートのような状態で公園へ出た。「私を食べて」と、公園にいる子ども達に声をかけるが、逃げられる。また、女性芸人に対して「ババア」等のアナウンスやテロップが何回も出る。侮辱の言葉を頻繁に聞くので不快だ。女性に対して侮辱的な言葉をテロップやアナウンス等で流すことはやめるべきだ。そして芸人に対して無理難題なロケをさせる「いじめ」のようなことは今すぐやめるべきだ。

  • 「おかえりスペシャル」と銘打ち放送されていたが、そもそも社会・倫理的に不倫問題で自粛していた女性タレントを出演させることは如何なものか。彼女だけではなく、不貞行為をしながら反省をしたらすぐ復帰できる芸能界の体質そのものは、一般社会に良い影響を与えるとは思えない。不貞行為以外も薬物使用など、社会通念上罰せられるべき人間は出演させないという厳しい基準の必要性を感じる。

  • ドラフト会議当日に、一部の放送局で指名選手(指名漏れもあるが)をピックアップする様子が放送されている。プロを目指す選手を追うというコンセプトは大変素晴らしいし、色々な人生を歩む選手を特集する点は評価出来る。しかし司会者やゲストが時折、耳障りな質問や笑い声、また明らかにどうでもいいプライベートな質問をぶつけることは、もう少し改善するべきだ。

【ラジオ】

  • 中継で、女性蔑視的発言をリポーターの男性がしていた。「本日は台風の後ということで風が強く、ミニスカートを穿いている女性が押さえて歩いている。男性は外に出よう。何故ならばお手軽な風俗状態であるから」という内容だった。深夜枠の放送なら多少の性的表現もあるかと思うが、老人や子どもが聞いている時間帯に、このような放送をしていた。以前も似たような不快な性的表現をしたことがあるリポーターなので、これからも発言することが考えられる。楽しい放送をすることは良いが、限度を考えていただきたい。

  • コメンテーターの女性が、御嶽山の救助に向かう自衛隊の捜索が天候不良のため中止になったことにふれて発言していた。様々な意見はあるだろうが、集団的自衛権と絡めて話をしていた。政権を批判したいだけの魂胆がみえみえで、精神の下劣さを感じた。

  • AV女優たちをゲストに呼んで、疑似SEX行為をしているという内容をラジオで放送していいのか。AV女優との会話も低俗で、深夜の放送だから許される内容ではない。性の隠語を何度も連呼して不快極まりない。誰でも聞くことが出来るラジオで、極めて不快な内容の番組は聞きたくない。

【CM】

  • ゲーム制作会社のCMが不快だ。以前は不倫を助長するかのようないかがわしい内容だったが、最近は、妖怪と女性との恋愛ゲームになっている。このCMも前回同様、アニメだが非常にいやらしく、下品なCMだ。なぜこの会社のCMが規制されないのか不思議でならない。

  • CMに、巨乳の外人女性が出ている。胸の大きさばかりが強調されており、女性蔑視にも受け取れる。また、女性に色気がありすぎて気持ちが悪い。確かこの女性は、下着のCMにも出ていたように思う。コーヒーのCMキャラクターとして合わないのではないか。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 音楽バラエティー番組で、男性お笑いタレント同士が裸で抱き合ったり、卑猥な行為を繰り返していた。深夜番組とはいえ"限度"を超えている。音楽バラエティー番組と称しているため、放送内容を知らずに見てしまう青少年がいるのではないかと危惧している。

  • ランドセルを背負った、体操着姿の女子中学生が「ツイスターゲーム」をしていた。子どもを性的対象として扱っているように感じる。

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • 芸能人をターゲットにした、いわゆる「どっきり企画」で、小便小僧から水を出してターゲットにかけたり、溶ける下着を履かせた男性お笑いタレントを水中に落として裸にさせるシーンがあった。下品で不快だ。子どもがこのような企画をまねするおそれもあるので、やめてほしい。

  • 子どもに人気がある番組に、刺青を入れたタレントが当該部位を隠さずに出演していた。子どもへの影響を考慮して、映像処理などの配慮をすべきではないか。

【「編成」に関する意見】

  • 夜遅い時間帯に放送されている音楽番組のMCに幼い子どもが起用されている。生放送ではないが、夜遅い時間帯の番組に子どもが出演することには違和感がある。

【「いじめ」に関する意見】

  • バラエティー番組で、司会者のお笑いタレントが若手のお笑いタレントを騙してブランドショップに連れて行き、高額商品を強引に買わせていた。いじめのように感じる。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 深夜に放送されているアニメ番組の過激な格闘シーンなどで、薄墨のような色合いに修正していることがあるが、過剰な対応ではないだろうか。青少年に見せたくないのであれば、視聴制限などの方法を考えるべきである。見たい人にも配慮してほしい。

【「危険行為」に関する意見】

  • 中学生が主人公のアニメ番組で、自転車を2人乗りして坂道を蛇行するシーンがあった。アニメ番組とはいえ、子どもがまねするおそれもある。危険なシーンは放送してほしくない。

第163回 放送と青少年に関する委員会

第163回–2014年10月28日

深夜帯に放送された4コマ漫画原作の連続ドラマについて
審議入りしないが、かかえるテーマについて議論は継続…など

第163回青少年委員会を、10月28日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。まず、9月16日から10月15日までに寄せられた視聴者意見から、新たに2案件について討論に入ることを決め、継続討論1案件についての討論も行いました。その他、10月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告、11月25日開催の在京放送局との意見交換会・勉強会、2015年2月の山梨での意見交換会などについて話し合いました。
次回は11月25日に定例委員会と在京局との意見交換会・勉強会を開催します。

議事の詳細

日時
2014年10月28日(火) 午後4時30分~午後7時10分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

  • 「ゴキブリの交尾の模様をAV俳優に演じさせた映像を流していた。深夜の放送ではあるが下品この上ない」などの視聴者意見があった、近畿圏で深夜に放送されたローカル番組について、討論入りし映像を確認することにしました。

  • 「若手男性芸人が裸で抱き合ったりわいせつな行為を繰り返していた。深夜番組とはいえ"限度"を超えている」などの視聴者意見があった、関東圏の独立局などで深夜に放送している音楽バラエティー番組について、討論入りし映像を確認することにしました。

  • 前回の委員会に引き続き、深夜の時間帯に放送されている4コマ漫画を原作とする連続ドラマについて、新たに第10話から第12話までを全委員が視聴した上で討論しました。委員からは、「コメディータッチのお色気番組とはいえ、地上波でアダルトビデオと見間違うような内容が放送されるのは問題がある。深夜だから良いとは思わない」「2001年7月19日付の民放連・放送基準審議会の『「番組情報の事前表示」に関する考え方について』では、"午後11時以降の番組については、主として保護者が児童・青少年の視聴について責任を負う時間帯と考え、原則として事前表示は行わないこととする"となっているが、児童・青少年の視聴の可能性を考えた時に、深夜の番組とはいえ何らかの事前表示があっても良いのではないか」などの厳しい意見が出されました。一方「番組で描かれる性の主体はあくまでも女性であり"卑わい""下品"な感じを受けない」「深夜であることを考えれば、この程度の性的表現では傷ついたり被害をこうむったりする人がいないのではないか。許容される範囲だと思う」「第1話から第3話までについては、問題がある個所はあったが審議入りせず、引き続き関心を持って注目していくことにした。今回も問題個所は散見するが、審議入りせずに委員の中で"性的表現"などについて議論を深めていくのが良いのではないか」などの意見もあり、審議入りしないことにしました。しかし、今回取り上げた番組の討論の過程で提起された「深夜番組における性的表現のあり方」や「地上波における性的表現が青少年に与える影響」の問題は、青少年委員会で検討すべき大切なテーマであることを確認。当該番組も題材の一つと位置づけながら、今後、議論を続けていくことにしました。

中高生モニター報告について

10月の中高生モニターは、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」というテーマでリポートを書いてもらいました。今回は26人から報告がありました。
全国で放送されている毎日のニュース関連番組に対して数多く支持する報告が寄せられました。「『news every.』(日本テレビ)。この番組のいいところは2つ、一つ目は楽しい、面白いコーナーがあることです。二つ目は、「木原さ~ん、そらジロー!」の天気予報コーナーで、ちびっ子たちの笑顔が見られることです。またキャスターたちは危険な災害時でも落ち着いた表情や口調で注意を呼び掛けていて、視聴者に安全かつ冷静な行動をしてもらえるよう話しているのではないかと思います」(神奈川・中学1年男子)。「私は、朝のニュース番組はいつも『ZIP!』(日本テレビ)だ。友達との会話がはずむ。毎回芸能ニュースのコーナーがあるし、とても楽しい雰囲気と面白い企画ばかりで見ていて飽きない。一日の放送内に話題が多くつめこまれていて、毎日見たい!と思う」(東京・中学2年女子)。「『ニュース 7』(NHK)。昔からニュースといえばこの番組を見るのが我が家の習慣です。安心と信頼を寄せています。ニュースも正確で分かりやすい口調で伝えられ聞いていてとても心地よいです。客観的にニュースを伝えてくれるので耳からすんなりと頭に入るのだろうかと思います」(神奈川・高校2年女子)。
一方、地方局のニュース情報番組にも熱い賛辞が寄せられました。「『おはよう朝日です』(朝日放送)。この番組は普段から朝起きるとお父さんが見ていて私もよく見ています。浦川さんや喜多さんを中心に素晴らしい出演者が出ておられ、とてもお気に入りです」(大阪・中学3年女子)。「私が見た番組は『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)です。私が見る情報番組はこれ位です。この番組は、アナウンサーも関西弁で、関西人の私には親近感が湧き、印象に残ります」(滋賀・中学1年女子)。
また丁寧に作られたドキュメンタリーに感銘を受けたという報告も目立ちました。「『カンブリア宮殿』(テレビ東京)。この番組はドキュメンタリーの中で一番いいと思う。どの回もとても深く広く出演者に話を聞いて筋立てており、こんないい話を1時間でできることはすごいと思う。DVD化したら私は買いたいです。この番組は今後の自分の人生に大きく役立つであろうと思います」(福岡・高校1年男子)。「『情熱大陸』(毎日放送)。本当に起こったことを放送するこの番組などのドキュメンタリーが私は大好きです。面白くて興味深い真実もあれば、目をそむけたくなる真実もあります。しかし、そのまま、ありのままを私たちにこれからも放送で伝えてほしいと思います」(岡山・高校1年女子)。「『特報首都圏 御嶽山噴火の衝撃』(NHK)を見た。発生からわずか1週間でこれだけ優れた番組を制作できるのはさすがだ。噴火前後の御嶽山の状況が、手に取るようにわかった」(東京・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】自由記述欄で、新聞を購読していないので番組表を見られず、どんな番組があるのかわからない、という記述がいくつかあり、テレビの見方が大きく変わってきているという気がした。

  • (秋田・中学2年女子)うちは新聞を購読していないので番組表を見るチャンスがない。口コミで番組の評判が耳に入る以外は番組の宣伝情報を知るすべがないのだ。
  • (愛知・高校2年女子)新聞をとるのをやめたらテレビ欄を見る習慣がなくなり、テレビを見る回数が減った。

●【委員の感想】青少年がどういう番組を見たいかというと、社会事象の背景や実情を知ることのできる内容を求めているようだ。

  • (青森・中学1年女子)『クローズアップ現代:防犯カメラの落とし穴~相次ぐ誤認逮捕』(NHK)世間から見れば正義の味方"警察"ですが、この誤認逮捕について知ると警察に対しての見方が少し変わるのではないかと思いました。
  • (東京・中学2年女子)『報道ステーション』(テレビ朝日)でシンクロナイズドスイミングの女子日本代表がアジア大会で銀メダルを獲得したというニュースをとても興味深く見た。というのも、番組の中で、その選手のメダル獲得に至るまでの努力の模様を描いたドキュメンタリーが放送され、結果だけを見るのでなく、その背景を見ることができたので、大変見応えがあった。

●【委員の感想】非常に厳しい番組批判があり、中高生の見方を面白く思った。

  • (秋田・中学2年女子)『情熱大陸:学習塾塾長 坪田 信貴』(毎日放送/秋田テレビ)テスト中の生徒の表情の密着は不要でした。エレベーターの中の生徒にコメントをもらうシーンも不要でした。そこまで生徒を取り上げず、先生を取り上げてほしかったです。また、塾講師の先生が塾長先生に叱られているところより褒められているところを見たかったです。テレビではやはり見ることによって元気が出るシーンを見たいからです。

●【委員の感想】CM作りを授業で取り上げている学校があるとは知らず、テレビ映像を理解させるためにもいい試みだと思った。

  • (東京・中学2年女子)私は、学校の授業で学校の良さを伝えるCM作りというのをやった。文字の大きさ、フレーム、写真など、決めることが一杯あり大変悩んだ。短時間に伝えたい情報をつめこむことは容易ではないこともよく分かった。これからは、表現の工夫などを意識してCMを見ていきたいと思った。

●【委員の感想】一人の思考で解説されるのではなく多角的な考えが聞きたいという意見はとても大事だと思った。

  • (東京・高校1年男子)『サンデーモーニング』(TBSテレビ)この番組では解説者が多くいるので1つの話題に対しても様々な意見を聞くことができ、しかもそれぞれの専門家の独自の目線で見た意見なので、とても参考になる。多数の見方を比較できるこうした取り組みを多くの番組で取り入れていってほしい。

●【委員の感想】ノーベル賞受賞の報道内容に対する意見には賛同した。

  • (東京・中学3年女子)ニュースでは肝心のノーベル賞をとった研究内容については申し訳程度の解説で、後はもっぱら受賞者の方々の昔話だとか卒業文集などでした。受賞者の過去はどうでもいいので、「他の科学者が諦めていく中、研究を続けた理由」とか「発見までの苦労」などについてもっと詳細に聞きたいと思いました。

調査・研究について

  • 「中高生の生活とテレビに関する調査(仮)」について、中高生のアンケート調査の集計作業が終了した報告がありました。

今後の予定について

  • 11月25日(火)に開催予定の「在京局との意見交換・勉強会」について、準備状況が事務局から報告されました。

  • 2015年2月に予定している山梨での意見交換会の準備状況が事務局から報告されました。

  • 北陸地方で放送されている青少年向け番組の視察に委員が行くことが決まりました。

その他

  • 民放連放送基準の改訂について事務局から説明がありました。