第133回 放送と人権等権利に関する委員会

第133回 – 2008年3月

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案…など

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案

福島県いわき市の木材加工会社の社長が、隠し撮りの放送(2007年12月5日)により人権を侵害されたという申立てについて、133回委員会で、その社長と当該局・福島テレビの関係者から個別にヒアリングを行った。

この中で社長は、「産業廃棄物を自社の敷地に不法投棄していたことは事実で反省もしている。しかし隠しカメラで、雑談と思わせインタビューされ、これを逮捕当日のニュースに使われたのは納得できない」と申立てに至った理由を語った。その上で社長は、「地元の同業者は産業廃棄物の扱いに疎いところがあったが、今回の逮捕によって皆で研究していこうという機運も出ている」と語ると共に、放送人権委員会に申し立てし、このヒアリングに出て話が出来たことで、福島テレビに対する怒りの気持ちも、ずいぶん落ち着いてきたと率直に語った。

一方福島テレビ側は、「悪質な産廃不法投棄事件であるが、社長はインタビューに応じてくれなかった。しかも逮捕も間近であり、なぜ不法投棄を続けていたかを報道するためには隠し撮りもやむを得なかった。従って申立人への人権侵害などに当たるものではない」と主張した。しかし「隠し撮りの放送により社長が不愉快になった気持ちは十分理解できる。その気持ちも重く受け止め、こうした取材については今後も十分慎重に対応したい」という考えを明らかにした。

この考えの表明を受け、委員会で改めて申立人に聞いたところ、「相手の気持ちも分かったので、これ以上争う積もりはない」として苦情申立てを取り下げることとなった。 (解決 2008年3月18日)

委員会審理及びヒアリングを行った上での仲介・斡旋の成立は今回が初めてのケースとなる。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案

本事案は、今年1月に「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、NHKを相手取って申し立てたもので、「昨年1月放送の『ニュースウオッチ9』で、2001年放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは,公平原則に照らして到底許されるものではない。また、公平原則を逸脱した部分は、正確な報道を行うという放送倫理にも違反していた」と申し立てている。

これに対しNHKは、「判決について報じる場合は、裁判所による客観的な判断であるから原告や被告の言い分を付さずとも基本的に公平の観点で問題はない。また、申立人の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

3月の委員会では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、及びNHKからの「答弁書」「再答弁書」等の資料を基に審理を行った結果、申立人、被申立人それぞれの言い分を確認する意味でも、次の委員会では双方を招いてヒアリングを行うこととした。

審理要請事案「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」

群馬県在住の行政書士会幹部から申立てがあった上記事案について、4月の委員会から審理入りすることを決定した。

行政書士会幹部は、昨年12月に放送されたエフエム群馬のニュース番組で、「速報性にとらわれ、十分な取材を行っていない為に『真実』が伝えられず、名誉を毀損された」として、謝罪と訂正放送を求めている。

これに対しエフエム群馬は「報道は県議会の、質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものである。本件報道は重要事項についての事実確認を行ったうえで報道したものであり、真実でない事項の放送はしていない。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論している。

委員会では、申立書および当該局の見解、当該ニュース原稿などに基づき検討した結果、審理対象とすることを決定した。

仲介・斡旋解決事案

「無理やりインタビュー・放送に抗議」

事務局から、仲介・斡旋解決事案として下記内容を委員会に報告し、了承を得た。

「取材を拒否したのに無理やりインタビューされた上放送された。テレビ局に抗議し謝罪を求めたが誠意ある対応を示さない」と、宮城県在住の商店従業員が委員会に苦情を訴えてきた。

抗議の内容は、「2月にテレビ局から、深夜番組の恋愛応援企画コーナー(バレンタインデーに女性がチョコレートを渡すのを応援するもの)での取材要請があったが、はっきり断った。にもかかわらずテレビ局は女性と共に待ち伏せし、仕事を終えて店を出たところで無理やりインタビューされ、取材を断っている場面を放送(2008年2月21日)された」というもの。

放送後の抗議に対し、テレビ局は「匿名、モザイクにしたので名誉毀損には当たらない」と釈明し、「迷惑をかけたとしたらすまない」との意向を示したが、商店従業員は「まったく誠意が感じられない対応だ」として、放送人権委員会へ訴えた。

放送人権委員会事務局では、「商店従業員は放送された人の気持ちを考慮した誠意ある謝罪を求めている」とテレビ局に伝え、話し合うよう要請していた。その結果商店従業員から、「2度の話し合いの末、このような取材の再発防止などをテレビ局が約束してくれたので了解した」との連絡を受けた。またテレビ局からも、同日「円満解決した」との報告があった。(解決 2月29日)

苦情概要

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[10件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・1件

『放送人権委員会判断基準2008』 第2稿

右崎正博委員の監修を受けた第2稿について、委員会で出された意見・チェック等を加味した上で、今後最終的な第3稿が整理されることとなった。

4月中旬までに発行の予定だが、これまでの10年余りの間に扱った26事案35件の決定の中で打ち出した100項目にも上る判断基準が、企画、取材、編集、放送などのカテゴリーに分類されている。あらたに「政治論評の自由」、「バラエティー番組と人権侵害」などの範疇も加わった。

編集完了後は、4000部を印刷し、BPO加盟各社や放送関係者に一定部数を配布するほか、社員教育などで多めの入手を希望する社には、実費(一冊600円)で購入していただく予定。また、放送研究者や一般視聴者からの購入希望にも応じることにしている。

次回委員会を4月8日に開くことを決め、閉会した。

以上

第132回 放送と人権等権利に関する委員会

第132回 – 2008年2月

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」

審理要請事案「高裁判決報道の公平・公正問題」…など

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」

福島県いわき市の木材加工会社の社長から、「07年12月5日、工場から出たオガクズなどの産業廃棄物を工場内敷地に不法に投棄していたとして逮捕されたが、その報道にあたり、事前に隠し撮りされていた自分の映像や音声を使われ人権を侵害された」とする申し立てがあった。

これに対し当該局の福島テレビは、「福島県では産業廃棄物の不法投棄が跡を絶たず、最近は企業ぐるみの犯行が増加傾向にある。今回の事件は企業トップの関与が指摘されたケースで、その実態を報道することは社会的要請も高いと判断した」として、「違法でも人権侵害でもない」と反論している。

放送人権委員会では、提出された「申立書」、及び局側からの「対応の経緯と見解」などの資料、局から提出された放送番組の同録DVDを視聴し検討した結果、本事案について審理に入ることを決めた。

この後、各委員から「隠し撮りの必要性はどの程度あったか」「業者の不法投棄の認識はどうだったのか」など意見が出され、次回3月の委員会で、申立人、被申立人をそれぞれ個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。

審理要請事案「高裁判決報道の公平・公正問題」

1月25日、「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表から 「07年1月29日放送のNHK報道番組 『ニュースウオッチ9 』 で、01年1月放送のETV2001シリーズ 『戦争をどう裁くか』 について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは,公平原則に照らして到底許されるものではない。また、公平原則を逸脱した部分は、正確な報道を行うという放送倫理にも違反していた」として、謝罪と訂正放送を求める申し立てがあった。

これに対しNHKは、「本件申立ては『裁判で係争中の事案』に該当し、放送人権委員会運営規則の定めからして、審理の対象にならないことは明らかである。また、判決についての原告側の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

放送人権委員会では、申立人から提出された「申立書」、及びNHKからの「回答書」等の資料を慎重に検討し、さらに提出された同録テープを視聴した結果、「争われているのは『ニュースウオッチ9』であって、『裁判で係争中の事案』には該当しない」として、次回3月委員会から実質審理に入ることを決めた。

苦情概要

●人権等に関する苦情

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[10件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

「BRC判断基準2008」の編集進捗状況

4月初旬発行の予定で、作業が進められており、右崎委員の監修の下、編集の整理・調整が行われていることが、事務局より報告された。

その他

新年度の委員会開催日について

4月からの新年度の委員会開催日について、各委員のスケジュールや都合等を聞いた結果、「原則、従来どおりの第3火曜日で、午後4時から開会」を申し合わせた。

関係者から事情を聞くヒアリング等が予定される場合は開会時間を早める他、4月の委員会は都合により1週間早めて4月8日開催となった。

次回委員会を3月18日に開くことを決め、閉会した。

以上

第131回 放送と人権等権利に関する委員会

第131回 – 2008年1月

新たな申立て案件

判断基準・改訂版の編集進捗状況…など

新たな申立て案件

1月15日、東北地方の会社社長から事件報道に関して苦情の申立てがあった件について、事務局から報告。

申立人は、ニュース報道で、取材を拒否したにもかかわらず、隠しカメラで撮られた映像や音声が使用され 、権利を侵害されたと訴えている。

委員会では、当該局に事実関係と見解を問い合わせたうえ、次回委員会で本案件を審理事案とするか否 か協議することになった。

人権等に関する苦情

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

● 人権関連の苦情[11件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・・・・・ 6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・・・・・ 5件

判断基準・改訂版の編集進捗状況

事務局から「判断基準2008」の編集作業の進捗状況について、中間報告を行った。「判断基準2005」発行以 来の約3年間に新たに決定が下された10事案の委員会判断からポイントとなる判断部分を抜き出して一覧 にした資料を提出した。政治報道の論評の自由、バラエティー番組における名誉毀損、ラ・テ欄表記の適切 な表現などが新しい判断基準として追加される。

「放送人権委員会判断基準2008」は、1997年の放送人権委員会発足以来の11年間に下された26事案35件の決定で打ち出された 判断を総まとめしたものとなり、取材・編集・放送などのカテゴリー別に分類・整理された判断基準は、あわせ て90項目ほどになると見られる。4月を目途に発刊の予定。

放送人権委員会の運営等について意見交換

委員会運営の問題点や新年度に向けての課題等について意見交換を行った。
まず、事務局から次のような現状と運営上の問題点を提示した。

  • 放送人権委員会が設立されて10年経つが、BPOと放送人権委員会の関係も多くの人は理解していないと思われる。放送人権委員会という名称が分かりづらいという声もある。
  • 委員会決定における人格権侵害に関わる法律的な判断基準は明確でも、放送倫理上の問題に対する判断基準はわかり難いという意見もある。
  • 書面提出を中心とした現在の苦情申立て審理の手続きは、弁護士など代理人を立てない個人の申立人には難しすぎる面がある。

これに対し委員からは、1の現状については

・「たとえば”映倫”の名前は、何をしているかはよく解らなくても、すぐ覚えられるが<放送と人権等権利に関する委員会>では、なかなか覚えられない。放送人権委員会というアルファベットの略称もなんとかならないか」等の意見が出た。

また2の問題については

・「名誉侵害は”救済の論理”であり、放送倫理は”放送のあり方”の問題である。救済の論理と放送のあり方は次元を異にするが、我々はその両方にまたがって議論している。

・「裁判所は権利侵害で終わり。放送人権委員会にもほとんどの人が権利救済を求めてくるが、我々は放送のあり方としてどうかということも考え、局に言うべきことは言わなければならない」等の考えが示された。

さらに3については

・「放送人権委員会の敷居が高いのではないかという問題には、できるだけ苦情申立ての手続きを簡単にするべきではないか」等の考えが出された。

今後も、引き続いて放送人権委員会の運営上改善すべきところ等について議論を続けることになった。

次回委員会を、2月19日に開くことを決め、閉会した。

以上

第130回 放送と人権等権利に関する委員会

第130回 – 2007年12月

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会10周年フォーラムの報告…など

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会では、本年7月、運営規則に「集団的過熱取材(メディア・スクラム)」に対応する条項を明文化し、また、このところ事件渦中の人物やその家族から過熱取材による被害の救済を求めてくる例が増えてきているため、12月の委員会にテレビ朝日取締役で民放連報道小委員長の渡辺興二郎氏とNHK報道局社会部長の柳辰哉氏を招き、メディア・スクラムへの対応策等について意見を交換した。

まず渡辺氏が「2001年初頭に集団的過熱取材への批判が急速に強まり、民放連会員各社は、過熱取材による被害防止のために各社共通の留意点を現場取材者に徹底させるなどの対応を取るべきであるとの認識に達し、放送局の枠を超えて解決策を取ってきた」と述べ、在京キー5局が持ち回りで幹事を務める等の対応体制を具体的に説明した。

続いてNHKの柳氏が、取り囲み取材や通夜・葬儀、静穏が求められる場所での取材等についてまとめられた新聞協会編集委員会の見解を説明、また、「メディア・スクラム対応は、しっかり取材するためのものである。人々の信頼を失うと取材がしにくくなるからだ」との考えを示したうえで、対応策として「1.早めの対応、2.現場を見る、3.社会人としてのマナーを守れ、を徹底しようとしている」と述べた。

これに対し委員側からは、「メディア・スクラム発生の可能性にどう対応するか」「公人の場合は対応を区別して考えるとしているが、具体的にはどう区別するのか」等の質問があり、渡辺・柳両氏から「この6年間メディア・スクラム対応をやってきて、今は相当迅速に動けるようになった」「公人は違うというだけで区別するのは危険だと思う」「BPO・放送人権委員会に寄せられる情報をできるだけいただき、それを現場取材に生かしていきたい」等々の発言があった。

放送人権委員会事務局からは、最近の例として、守屋防衛省前次官の家族から「集団的過熱取材による報道被害の訴え」があったことは民放連の対応幹事社とNHKに伝えたが、委員会として善処を要望する事態までには至らなかったことを報告した。

放送人権委員会10周年フォーラムの報告

放送人権委員会事務局から、去る12月5日(水)に開催された「放送人権委員会10周年フォーラム」の概要、反応、アンケート結果などについて報告した。

フォーラムには、民放120名、NHK31名など239名が参加、コンプライアンス担当や編成担当を中心に、報道・情報の制作現場の人も集まった。なお取材のテレビカメラは、5社・6台。

竹田稔放送人権委員会委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」に続き、三宅弘放送人権委員会委員のコーディネートで「放送倫理」をメインテーマにパネルディスカッションが行われた。ジャーナリストの江川紹子さん、読売新聞の鈴木嘉一さんらをパネリストとし、これまで放送人権委員会が審理して来た事例を中心に、取材・編集・OAのそれぞれの段階での問題を討議、会場からの声もたくさん出され、活発な意見交換が行われた。その中では、取材における隠しカメラ・隠しマイク、編集・OAでのモザイク・顔を映さないインタビューの多用などについて、その妥当性や問題点が指摘され、参加者の関心も高かった。

参加者のアンケート結果では、「具体的な事例をベースにしたフォーラムで、分かりやすく有益だった」と言う声が多く、この種のフォーラムを年に1度は開いて欲しいという要望が多く寄せられた。

なおこの日の委員会で放送人権委員会委員から、「内容的にも充実していて良かった」という声と共に、「視聴者・市民と放送局の間に立つ第三者機関のBPOであるので、フォーラムにも市民が参加しても良かったのではないか」という意見もあった。

「グリーンピア南紀再生事業の報道」事案の通知・公表報告

和歌山県那智勝浦町にあるグリーンピア南紀の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが、読売テレビの報道番組で事実と異なる報道をされ名誉を毀損され、プライバシーを侵害されたと権利侵害を申立てていた事案で、委員会は「名誉毀損にもプライバシー侵害にもあたらない」という判断を下した。12月4日、その「決定」を申立人、被申立人双方に対し通知し、マスコミに公表した。その模様とその後の放送対応について事務局から下記報告を行った。

  • 通知・公表には、竹田委員長と起草委員を務めた五代委員長代行、三宅委員が出席、記者会見にはメディア側からは24社41人が集まり、テレビカメラ6台が入った。
  • 決定通知を受けた申立人の代理人は「人権尊重の観点からの問題提起に何の配慮もなされていない」と決定に不満を表明する見解を出した。一方、読売テレビは「極めて妥当な見解である」とのコメントを発表した。

また、委員会は、当該局読売テレビの、この決定についての当日夕方のニュースを視聴した。
2007年度に、委員会が「決定」を出した事案はこれで5件で、過去最多となっている。

仲介・斡旋解決事案と苦情概要

●「松茸の産地偽装疑惑報道」事案の仲介・斡旋解決

11月、ある地方の松茸販売業者から「当店は、この地方でただ一店、産地表示して松茸を売っているのに、朝早くからアポイントもなく押しかけてきた記者に最初から結論ありきの態度で長時間取材され、中国・韓国産の松茸をあたかも当地方産と偽装して販売しているように報道された。当該局に抗議すると『間違った放送はしていない』の一点張りだった」と苦情を申し立ててきた。

放送人権委員会事務局では、当該局に対し「申立人は、地元商工会や観光協会との関係を一番問題にしている」と伝えた。

これを受けて局の番組責任者が申立人を訪れて話しあった。その結果、「産地偽装についてはそれぞれ言い分があったが、”アポなし長時間取材”等についてはお詫びした。申立人は当方の誠意を認めて和解に応じ、解決書を取り交わした」との報告があった。

また申立人に確認すると「局の責任者が商工会・観光協会にも事情を説明してくれた。お陰で円満に解決することができた」ということであった。(放送11月 解決12月)

●人権等に関する苦情

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

放送法改正案について

12月11日衆院本会議を通過した放送法改正案について、審議経過などを事務局が報告した。

この中で、12月4日の衆院総務委員会にはBPOの飽戸弘理事長が民放連会長やNHK会長らとともに参考人として招かれ質疑が行われたこと、また13日にはBPOの放送倫理検証委員会の川端和治委員長が参院総務委員会に招致されたことが紹介された。

また、放送法改正案が衆院を通過した際には、BPOに関連して「放送の不偏不党、真実及び自律が十分確保されるよう、BPOの効果的な活動等関係者の不断の取り組みに期待するとともに、政府においては、関係者の意向も踏まえつつ、その取り組みに資する環境の整備について検討を行うこと」という付帯決議が行われているが、この点に関してBPOとして何らかの意思表示をすべきではないかと言う意見があった。

しかし、当面は、参院での審議の成り行きを見守ることになった。

次回委員会を、1月15日に開くことを決め、閉会した。

以上

第129回 放送と人権等権利に関する委員会

第129回 – 2007年11月

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理…など

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

放送人権委員会事務局は、防衛省の守屋前事務次官の家族から、11月14日夕方自宅前での過熱した取材による報道被害の訴えが寄せられたため、緊急に民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社に対し善処を求めたことを11月の委員会に報告した。

以下報告内容。前事務次官の家族の一人がBPOに訴えてきた苦情は「このところ、テレビ・新聞・雑誌各社の過熱取材により生活を脅かされている。事件には関係のない自分までカメラに追い回される。私道では各社カメラが勝手な場所取りを行うなど、周辺住民にも多大の迷惑を及ぼしており、家族や周辺住民にとって耐えられない状況が続いている。何とかしてもらえないか」というもの。

放送人権委員会の運営規則(07年7月改正)は、第5条3項に【放送関係者による重大な権利侵害等を伴う取材活動・放送がなされ、これが継続中であって、かつ緊急に対応する必要があると認めたときは、本人または利害関係人の申立てにより、委員会は、放送事業者または所属の関係者に対し、その事態を解消するために必要な措置を取るよう要望することができる】と定めている。

放送人権委員会事務局では、上記規則に従い、直ちに民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社(テレビ朝日)に対し、まずこの家族の苦情申立ての概要を伝え、善処方を要請した。担当幹事社であるテレビ朝日の報道局次長は、14日の午後5時に関係各社に対し、放送人権委員会事務局から受けた家族の苦情概要を伝えるとともに、「改めて節度ある取材について協力されるように」との文書を送信、15日には局次長自身が現場を見回った後、「本日は問題ない」と放送人権委員会に報告してきた。

16日午前に放送人権委員会の調査役が現地を視察したところ、現場は、すでに静かで落ち着いており、ゴミの散乱もなかった。同日昼過ぎには苦情を申し立てていた家族から電話があり、「その後は概ね静かになった。感謝している」旨、伝えてきた。

放送人権委員会では、2006年5月に秋田で起きた「連続児童遺体発見事件」に関して「取材対象者に対するいわゆる集団的過熱取材はいかなる場合にも慎むべきことである。真相の究明を急ぐあまり過熱取材に陥り、取材対象者のプライバシーを侵害することのないよう、節度を持って取材に当るよう要望する」との委員長名の文書を関係各社に送付している。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理

和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道番組(5月26日、6月2日放送)で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案の最終審理が行われた。

本事案は、これまでにヒアリングを含め4回の委員会と1回の起草委員会で審理が行われているが、11月の委員会では、起草委員会で検討された「委員会決定」の草案をもとに審理を行い「委員会決定」案が了承された。

申立人・被申立人に対する「委員会決定」の通知とマスコミに対する発表は、12月4日に行われることになった。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の通知・公表の報告

11月12日に行われた標記事案に対する「委員会決定」の通知・公表の模様を11月委員会で事務局から報告した。

また、この委員会決定がメディアにどう扱われたかを調査した「放送対応と関連新聞記事」についても委員会で報告された。被申立人の毎日放送は、通知当日に当該ニュース番組「VOICE」の中で決定要旨を伝えた。委員会で、その録画を視聴した。また在京キー局の中では3局がこのニュースを伝えた。一方新聞報道では、東京地区では3社が、大阪地区では4社が関連記事を掲載した。

苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[5件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情) ・・・ 5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情) ・・・ 0件

その他

次回12月18日の委員会では、新たな事案の審理が無い場合には、メディア・スクラムが発生した際のテレビ各局間の対応組織の運用の実情について、NHK、民間放送連盟から担当者を招き説明を聞くことになった。

第128回 放送と人権等権利に関する委員会

第128回 – 2007年10月

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案のヒアリングと審理

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理…など

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案のヒアリングと審理

“グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナー蒋暁松氏が「読売テレビの報道により、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案について、放送人権委員会は10月の定例委員会で、申立人・被申立人の双方を個別に招きヒアリングを行った。

申立人の代理人は、「ボアオは土地・建物の賃貸借期間の10年が過ぎれば、勝手に転売できる」とのキャスター発言や「それを狙っている」とのゲストのコメントは、明らかな誤解であり、名誉を著しく傷つけられたと主張した。また、自宅周辺の撮影取材で、家族のプライバシーが侵害されたと訴えた。
被申立人の読売テレビは、「キャスター、ゲストの発言は、事実関係を踏まえて意見を述べたもので、名誉毀損にはあたらない。撮影した建物は、会社と自宅を兼ねたものであり呼び鈴も同一であった。自宅であることは番組では一切報道していない」と主張した。

委員会は、ヒアリングの後、審理を行い、11月初めに起草委員会を開き起草案を作成し、次回11月の委員会では、その案をもとに更に審理を行うことになった。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長らが「大阪市の償還金補助問題を取り上げた毎日放送の報道は、解放同盟やそのリーダー個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

9月の委員会でのヒアリングを受けて、10月5日には起草委員会が開かれ、「委員会決定」の起草委員会草案作りが行われたが、本委員会では、起草委草案をタタキ台に、「本件報道による名誉権侵害の成否」や「表現の仕方及び取材のあり方」などについて意見を交わした。

その結果、「委員会決定」案について大筋意見がまとまり、構成の修正や字句・文言の手直しなどを経て、11月12日(月)午後に「委員会決定の通知・公表」を行うことになった。

苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[6件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・3件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・3件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

放送人権委員会は今年、発足10周年を迎えた。これを記念し、12月5日(水)に「放送人権委員会10周年フォーラム」を、全国都市会館(東京千代田区平河町2-4-2)で開催することにしているが、これまでにその内容や出席者の顔ぶれがほぼ固まり、10月の委員会に報告された。

報告内容は下記の通り。

  • タイトルは「放送と人権~放送倫理の確立を目指して~」。
  • フォーラムでは、まず、放送人権委員会の竹田稔委員長による「放送による人格権侵害と放送倫理」をテーマとした基調講演があり、次いでパネルディスカッションとなる。
  • パネリストには、ジャーナリストの江川紹子さん、読売新聞編集委員の鈴木嘉一さんをはじめ、放送局側からも加わって頂く。コーディネーターは放送人権委員会委員でもある弁護士の三宅弘さんが担当する。
  • 放送による人権侵害や放送倫理をめぐる問題については、BPOにも視聴者から多くの意見や批判が寄せられている。このためフォーラムには、全国の放送局のコンプライアンス担当だけでなく制作現場の人達にも出席してもらい、人権を守る放送、放送倫理の確立、放送の自主・自律のため具体的で実りのある意見交換を行う。

10月委員会は、次回委員会を11月20日に開くことを決め閉会した。

以上

第127回 放送と人権等権利に関する委員会

第127回 – 2007年9月

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理…など

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長らが「大阪市の償還金補助に関する毎日放送の報道は、特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダー個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

委員会では、申立人・被申立人双方から直接言い分を聞くヒアリングが行われた。この席で、申立人の解放同盟大阪府連の書記長は、「この報道によって、市から2倍の補助金を受け取っていると勘違いされ、大学や福祉施設の関係者それに学生らに説明しなければならない状況になった」と被害を被った実態を述べた。

一方、被申立人の毎日放送は、「放送全体を通して市の杜撰さを伝える方法として2倍という表現をとった。大阪府連書記長という肩書きは、代表例として取り上げたもので、公的存在である以上許されるのではないか」と述べた。

ヒアリングの後、更に審理を続け、10月5日に起草委員会を開いて本事案の問題点等を整理し、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることになった。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理

“グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道により、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案について、放送人権委員会は委員会で前回に次いで審理を続けた。

その結果、「報道が事実に基づいて行われたかどうか」、また「自宅周辺での取材がプライバシーの侵害にあたるかどうか」などについて、10月の委員会で申立人・被申立人の双方を個別に招きヒアリングを行うことを決めた。

「エステ店医師法違反事件報道」事案 当該局の改善報告

上記事案の委員会決定(6月26日)を受けて、当該局の日本テレビは8月28日放送人権委員会宛に「委員会決定を受けての取り組みについて」という文書を提出した。

この中で日本テレビは、「取材・報道指針の中の無断撮影・無断録音(隠し撮り)の項において、無断撮影・無断録音(隠し撮り)素材の放送での扱いに関する基準について、素材の使用に際しては十分な検討を行うとの基準を、新たに設ける改定を行った」としている。

苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[14件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

事務局が下記の準備状況を報告し、了承された。

1.「BPO放送法研究会」のスタート

BPOの各委員会の委員有志を核にメンバー構成した放送法研究会の第1回会合を、9月25日に開くことになった。放送評論家の松田浩氏が「電波三法の制定とその変質」をテーマに講演し、そのあと質疑、討論を行うことにしている。20余人の参加を見込んでいる。

2.「放送人権委員会フォーラム」の開催

「放送と人権~放送倫理の確立を目指して~」をテーマに、放送人権委員会10周年を記念するフォーラムを12月5日(水)に開催することになった。会場は東京・千代田区平河町の全国都市会館。全国の放送局の編成・考査・危機管理担当者や制作・報道担当者等300人を対象に、「放送と人権」「放送倫理」について基調講演とパネルディスカッションを予定している。基調講演は、放送人権委員会委員長で弁護士の竹田稔氏による「放送による人格権侵害と放送倫理」、パネルディスカッションでは、取材・編集・OAの各段階での放送倫理などについて具体的な論議を進めたいと考えている。なおパネリストとしては、ジャーナリストの江川紹子氏、読売新聞編集委員の鈴木嘉一氏、それに放送人権委員会委員や放送局側の代表も参加する予定。

3.「放送人権委員会判断基準」改訂版の発行

放送人権委員会は、2005年11月に「放送人権委員会判断基準2005」を発刊したが、その後審理事案も増え、新たな判断内容も加わったことから改訂版を発行することにした。改訂2008年版に掲載される判断基準は、26事案35件となる予定で、2005年版より10事案10件増えることになる。
事務局から「参考資料として、新たなマスコミ関連判例も載せ、より使い勝手の良いものにしたい」と説明し、委員会はこうした編集方針を了承、監修を右崎正博委員が担当することになった。来年3月の発行を目途としている。

9月委員会は、次回委員会を10月16日に開くことを決め閉会した。

以上

第126回 放送と人権等権利に関する委員会

第126回 – 2007年8月

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

「広島ドッグパーク関連報道」事案の総括…など

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人が「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道は、特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダーである個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

8月の委員会では、申立人から提出された「反論書」とそれに対する毎日放送からの「再答弁書」それに事務局でまとめた「論点対比」などを基に審理を行った。

この中では「当該番組で放送された部落解放同盟幹部の肩書きで、個人名が視聴者に特定されるか」「番組は、解放同盟関係の法人と償還金補助とのかかわりを伝えていて、法人幹部の個人を対象にしていないのではないか」「それなら肩書きを放送する理由はないのではないか」「肩書きによって個人が特定されるか否かは番組が放送された地域との相関関係で捉える必要がある」「大阪市側の手続きの遅れから2年分の補助金が一度に支給されたのを2倍支給されていたと表現した点は妥当だったか」「肩書きまで放送しながら直接取材しなかった点に問題はなかったか」等の意見が交わされた。

放送人権委員会では、更に審理を続ける一方、9月の委員会では申立人と被申立人をそれぞれ個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の総括

上記事案については、8月3日に「委員会決定」を通知・公表した。

8月委員会では、大阪市に出向いて申立人の動物愛護団体代表に「決定」内容を通知した模様を担当調査役から報告した。

また、「委員会決定」の放送対応では、在京キー局の5社が「決定」内容を伝え、新聞3社が翌日の朝刊で記事を掲載したことが報告された。

委員会では、この後、被申立人の朝日放送が「委員会決定」の主旨を伝えたニュースのVTRを視聴した。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理

本事案は、和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの朝の報道番組(5月26日、6月2日放送)で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てたもので、当該局は、「取材した事実と公的な資料に基づいて公正な報道をしており、名誉権を侵害していないし、プライバシーの侵害もしていない」と反論している。

8月委員会では、申立人から提出された「申立書」、「反論書」、被申立人から提出された「答弁書」、「再答弁書」に基づき、双方の主張を整理して審理を進めた。

次回9月委員会でも引き続き審理を進め、10月委員会で双方から直接事情を聞くヒアリングを行うことを決めた。

苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次の通り。

◆人権関連の苦情[28件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・16件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

1997年にスタートした放送人権委員会は、今年で設立10周年を迎えた。その記念イベント2件が8月の委員会で了承された。

1.「BPO放送法研究会」

総務省が放送法に行政処分条項を新設する動きを見せる一方、総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が”放送・通信の法体系の一本化を目指すべき”との中間とりまとめを発表するなど、放送法を巡る動きが顕在化してきたことから、放送活動を包括的に規定している放送法の今日的諸問題を考察・論考していこうとBPOの各委員会の委員有志を核に企画したもので、第1回研究会を9月25日に千代田区紀尾井町の千代田放送会館で開くことになった。事務局としては1~2か月に1回程度の割合で講師を招くなどして研究会を開き、その成果を適当な時期に取りまとめて刊行物にすることなどを考えている。

2.「放送人権委員会フォーラム」

12月上旬を目途に「放送による人権侵害と放送倫理」(仮題)をテーマに、全国の放送局の考査・危機管理担当者や制作・報道担当者等300人を対象にフォーラムを開催する。基調講演とパネルディスカッションを予定していて、パネリストには放送人権委員会委員や放送局側の代表、ジャーナリスト等から人選する考え。

新委員の山田健太氏が初参加となる次回委員会を、9月18日に行うことを決めて、8月委員会は閉会した。

以上

第125回 放送と人権等権利に関する委員会

第125回 – 2007年7月

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「朝日放送のニュース情報番組『ムーブ!』において、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てていたもの。

本委員会で、起草委員会でまとめた委員会決定草案について意見を交わした。一部加筆修正を含め、詰めの検討を重ねた結果、「本件番組の一連の放送については、何れも名誉毀損や信用毀損はないし、その放送及びそのための取材活動において、放送倫理違反もない」との「委員会決定」案を全員一致で了承した。

「委員会決定」は、8月3日に申立人、被申立人に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の総括

上記2事案については、6月26日に「委員会決定」を「通知・公表」したが、それに対する当該局を含む放送局側の対応や関連新聞記事について事務局から報告があった。

今回は2事案あわせての公表とあって、放送と新聞の対応は、”放送倫理違反”と指摘された「エステ店」事案については在京テレビ6局が伝え、新聞6社も記事を掲載したが、”問題なし”となった「ラ・テ欄」事案について報道したのはテレビ3局、新聞3社だった。ただ、「ラテ欄の表記についても、放送局は適正な言葉、品位ある表現をすべきだ」との委員会の要望を掲載したところもあった。

委員会では、それぞれ当該局から提出された「委員会決定」に関する当日のニュースの放送内容を視聴した。「エステ店」事案については「通知」から3か月以内に当該局が対応策等や取り組み方を報告する事になっている。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人が「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道は、解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダーである個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

これに対し、毎日放送は「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したもので、補助金受給施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。報道には、公益性・公共性があり、また、申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではない」と反論している。

放送人権委員会では7月の委員会から本事案について本格的な審理に入り、申立人・被申立人双方から提出された「申立書」と「答弁書」を基に意見を交わした。

次回8月の委員会では、申立・被申立双方に「反論書」と「再答弁書」の提出を求め、それをもとに審理を続けることになった。

審理要請案件

  • 「貸金業協会からの訴え」案件
    関東地区の貸金業協会が「東京キー局の朝番組で誤った事実を報道され著しく不利益を被った」と苦情を申し立てていた案件は、7月の委員会で協議の結果、審理対象外となった。
    当該貸金業協会は、「貸金業者の金利はグレーゾーンではなく違法ゾーンだ、とのコメンテーターの発言は、勝手な思い込みによる情報であり、視聴者に誤った印象を与えた」と主張し、局に対し謝罪と訂正放送を求めていたが、局側は、「今回のコメンテーター(弁護士)の発言は、最高裁判決等を踏まえ法律専門家としての見解を示したもので、訂正すべき必要はない」と反論していた。
    放送人権委員会の運営規則は、「苦情を申し立てることができる者は、放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めているが、7月施行の改正で「ただし団体からの申立てについては、委員会において団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは取り扱うことができる」との条文が新設された。しかしながら本件申立てをしている当該協会は自らその利益擁護のために社会に対し啓蒙・宣伝等の主張をなしうる立場にある団体であることなどから、委員会では「本件申立ては、例外的に審理をする必要性が高いとはいえない」と判断、全会一致で当案件を審理対象外とした。
  • 「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」案件
    和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーから「5月と6月の2回にわたって讀賣テレビの朝の情報番組で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、プライバシーが侵害された」とする申し立てがあった。
    これに対し読売テレビ、「取材した事実と公的な資料に基づいて公正な報道をしており、名誉権を侵害していないし、プライバシーの侵害もしていない」と反論している。
    放送人権委員会では、提出された「申立書」及び局側からの「対応経緯と見解」等の資料を慎重に検討、また局から提出された放送番組の同録DVDを視聴した結果、次回8月委員会から本事案について審理に入ることを決めた。

苦情概要

  • 「”ラジオ番組で誹謗中傷された”との訴え」について
    以前放送局に所属していた元女性アナウンサーが「当該局のラジオ番組で、男性アナウンサーの嘘の発言によって誹謗中傷された」として「局の謝罪と発言したアナウンサー本人の反省のことば」などを求めて、7月放送人権委員会に苦情を申し立てた。
    放送人権委員会事務局では、双方に対し「話し合いの余地があるのではないか」と交渉を続けるよう勧めていたところ、当該局より「話合いの結果、このほど全面的に解決した」との報告があった。
    また、女性のブログにも「すべて解決した」と書かれていたことから、本件は、放送人権委員会の審理をまたず円満解決したものとして委員会に報告、了承された。

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次の通り。

◆人権関連の苦情[18件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・18件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・0件

その他

事務局から、参議院選挙を前に、社民党から選挙報道が公正・公平に行われるよう、BPOでも監視するようにとの申し入れがあったことや、10月をめどに放送人権委員会委員を1名増員できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会を8月21日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上

第124回 放送と人権等権利に関する委員会

第124回 – 2007年6月

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「11月から12月にかけて放送された朝日放送の報道番組『ムーヴ!』で、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によってあたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てたもので、これに対し朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングが行われ、”募金収入の内訳や使途がどのようになっているのか””コメンテーターの発言はどのような根拠に基づいているのか”などについて質疑が行われた。

ヒアリングの後、審理が続けられ、起草委員がこれまでの審理内容を踏まえた素案作りに入ることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理

本事案は、東京都在住のエステ店経営者が「私が医師法違反で送検されたことを伝えた日本テレビのニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えたもの。

放送人権委員会は本事案の「委員会決定」案について6月の委員会で最終審理を行った。その結果、「本件放送は、記者がその身分を隠して行った隠しカメラ、隠しマイクによる取材を基に放送することが不可欠であったとは言い難いものがあることに加えて、申立人個人の報道に重点を置き過ぎ、行き過ぎた懲罰的内容になってしまった点において、放送倫理違反があったというべきである」との「委員会決定」案を委員全員一致で了承した。

この「委員会決定」は、6月26日に申立人、被申立人双方に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の最終審理

本事案は、ルーマニア人セラピストが、テレビ朝日に対し、「バラエティー番組に出演した際、ラ・テ欄で”バツイチ”と表記されるなど名誉・プライバシーを侵害された。また、子どもに対する過剰な演出もあり、放送倫理に違反している」などと申し立てたもの。

放送人権委員会は、起草委員会での検討結果を踏まえ、6月の委員会で最終審理を行った結果、「番組に家族ぐるみで出演し、自ら離婚の事情を語ったりしており、名誉・プライバシーの違法な侵害があったとは認められない。ラ・テ欄表記や子どもたちに対する演出等についても放送倫理に反するとまではいえないと判断する」との「委員会決定」を全員一致で了承した。

また、放送人権委員会はこの決定の中で、ラ・テ欄の表記も放送内容と一体との判断を示し、放送局に対しいっそう「適正な言葉」と「品位ある表現」を用いるよう要望した。この「決定」も、6月26日に「通知・公表」されることになった。

審理要請案件

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」案件

6月、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人から連名で下記のような苦情申立があった。

「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道で、部落解放同盟やそのリーダーである個人が関係している福祉法人をことさらに強調して、新たな”闇の補助金支出”の疑いがある、とされた。償還金補助を受けてきた施設は約50あるが、解放同盟や人権協会に関係する者が役員をしているのは、その4分の1に過ぎない。しかし当該報道では解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与え、解放同盟やそのリーダーである個人の悪いイメージを広め、その名誉権を著しく侵害することになった」

この苦情申立てに対し、毎日放送では「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したものであり、補助金を受給した福祉施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。この報道は、公益目的・公共性を有するものであり、また、そもそも申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではなかった」と反論している。

放送人権委員会では「苦情申立書」及び局側から提出された「事案の経緯と当社の見解」の2書面を慎重に検討し、また当該報道の同録テープを視聴の上、次回委員会から本事案について本格的に審理を始めることを決めた。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

その他

村井専務理事より、放送人権委員会運営規則改正の7月1日から施行に伴い体制強化を図るため、調査役を1名増員することになったこと、新委員の1名増員については10月をめどに実施できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会は7月17日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上

第123回 放送と人権等権利に関する委員会

第123回 – 2007年5月

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理…など

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理

北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立てがあった事案は、4月委員会から実質的な審理に入ったが、5月の委員会ではヒアリングを行い、申立人と被申立人・テレビ朝日の双方から直接主張を聞いた。

申立人は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等の表現で家庭の事情が書かれた。放送内容が当初説明を受けた企画意図と違っていた」と苦情を訴えた。これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について放送で紹介することは、申立人は事前に了承していた。大自然の中で生活する家族を描くという番組企画は一貫して変わっていない」などと反論した。

ヒアリングの後、さらに審理を行った結果、起草委員会で委員会決定の草案をまとめ、それを基に次回委員会でさらに審理を続けることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理

本件事案は、東京都町田市のエステ店経営者が「医師法違反で送検されたニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えているもので、これに対し、被申立人・日本テレビは「報道内容は、公益を図るものであり、事実を誤まりなく伝えている」と反論している。

本件事案について放送人権委員会は、前回の委員会でのヒアリングを受けて、5月7日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に当たった。

5月の委員会では、この起草委員会での検討作業が報告され、「委員会決定」の原案取りまとめに向けて意見が交わされた。

その結果、「決定」案の細部の文言等について更に検討・修正を図ることになり、6月委員会で最終的な審理を行うことを決めた。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、朝日放送に対して苦情を申し立てたもので、申立人は「11月から12月にかけて放送された報道番組『ムーヴ!』において犬たちを救済する我々の活動が、一方的な偏見報道及び憶測報道によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と訴えている。

これに対し被申立人・朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているのかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

放送人権委員会は2月の委員会で審理入りを決定した後、3回にわたって実質的な審理を行ってきた。特に5月の委員会では、コメンテーターの発言内容や取材のあり方等、多岐にわたるそれぞれの論点を整理し審理を行った。

その結果、6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングを行い、それぞれの主張を直接聞くことにした。

更に、このヒアリングを受けて6月29日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることにした。

審理要請案件

「誤表記で人権侵害の訴え」

2月に北朝鮮を訪れた都内の男性から「平壌観光をした際に撮影した映像をキー局に提供したところ、それが<平壌の最新映像>として放送されたが、自分の会話部分に”記者”と誤って字幕表示された。これによって報道関係者との疑惑を持たれ、その後の訪朝が許されなくなるという被害を被った。これは人権侵害・名誉毀損であり、局には謝罪と訂正等を要求しているが、誠意ある回答がないので放送人権委員会に審理を要請したい」との苦情申立てがあった。当該局に問い合わせると「慰謝料を請求されており、話し合いは進んでいない」という。

5月の委員会でこの申立ての取り扱いを協議したところ、「放送人権委員会が法に基づいた強制調査権を持たない自主的苦情処理機関であることに鑑み、金銭要求を伴う案件については本委員会で審理すべきものとは認められない。(現行運営規則には明記されていないが、7月施行の改正運営規則には明記)」ということで委員全員の意見が一致、<審理対象外>と決定した旨を苦情申立人に文書で通知することになった。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[12件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・2件

その他

村井専務理事より、放送倫理検証委員会の発足に伴い、NHK、民放連から体制強化のため委員・スタッフの人員増を含む予算の増額が認められたこと等の報告があった。

次回委員会は、6月19日(火)に、「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングを審理に先立って行うことを決め、閉会した。

以上

第122回 放送と人権等権利に関する委員会

第122回 – 2007年4月

「エステ店医師法違反事件報道」事案のヒアリングと審理

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理…など

「エステ店医師法違反事件報道」事案のヒアリングと審理

本事案は、東京都町田市のエステ店経営者が「医師法違反で送検されたニュースの中で、盗撮映像が使われ、私が極悪人の如く報道された。また、個人の人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えているもので、これに対し、日本テレビは「報道内容は、医師法違反という重大な犯罪容疑に関する情報であって、公益を図るものであり、事実を誤りなく伝えている」と反論している。

4月の委員会では、申立人・被申立人双方を個別に招いてヒアリングが行われ、”医師法違反で書類送検”という事実の受け止め方や、店内撮影時の許諾の有無などについて質疑が行われた。

ヒアリングの後、当該VTRを再度視聴し審理を続けた。

その結果、この日の審理内容を踏まえて、起草委員が「委員会決定」の素案作りに着手し、5月上旬の連休明けに起草委員会を開いて「決定案」の検討を進めることになった。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、朝日放送に対して苦情を申し立てたもので、その内容は、「11月から12月にかけて、11回にわたって放送された報道番組『ムーヴ』において犬たちを救済する我々の活動が、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」というもの。

これに対し朝日放送は、「募金の集め方、使い方を検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

放送人権委員会は2月の委員会で審理入りを決定し3月、4月の委員会で審理を行ってきたが、双方の主張があまりにも多岐にわたっていることから、次回の委員会では、論点を数点にしぼって、さらに検討を重ねることとした。

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の審理

北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立てがあった事案は、4月委員会から実質的な審理に入った。

この事案で、申立人の女性は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等の表現で家庭の事情が書かれ、また、放送内容が当初企画意図の説明の趣旨と違っていた」と訴えている。

これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について紹介することは、事前に了承してもらっていた。現夫もインタビュー取材に応じている。取材前の打合せで番組の企画意図については十分説明している」と反論している。

今回の審理では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、テレビ朝日側から提出された「答弁書」「再答弁書」をもとに、論点を整理して検討した。

次回の委員会では、ヒアリングを行い、双方から直接主張を聞くことになった。

審理要請案件

「都知事選候補ドクター・中松氏の苦情申立て」案件

4月2日、都知事選候補であるドクター・中松氏からファックスで「4月1日放送のキー局の情報番組で、吉田・石原・浅野・黒川4氏のみを出演させ、選挙運動に関する放送をした。これは公職選挙法及び放送法違反である。また、申立人ドクター・中松を排除したことにより、視聴者に中松はマイナーであるという誤解を与えた。世間の常識に反する捏造をしたことは”BPO違反”である」と、苦情を申し立ててきた。

この審理要請に対し放送人権委員会では、投票日が迫っていることから、次の委員会を待たずに、委員長起草の回答案を基に持ち回り協議を行った結果、「申立人が提出した文書を検討すると、申立ての内容は、選挙の公正に関するものであり、名誉・プライバシー等の権利侵害に関する苦情ではない。したがって、当委員会の運営規則に照らし、当委員会が審理すべき案件とは認められない」ということで委員全員の意見が一致し、翌3日に中松氏にその旨を文書で通知した。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[19件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・7件

その他

村井専務理事より、番組委員会を発展的に解消した新委員会を、4月末、遅くとも5月初めに立ち上げるべく作業委員会で準備を進めているとの報告があった。

次回委員会は、5月15日(火)に、「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングを審理に先立って行うことを決め、閉会した。

以上