第195回-2017年9月26日
視聴者からの意見について…など
2017年9月26日、第195回青少年委員会をBPO会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず7月16日から9月15日までの2か月間に寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
視聴者意見に関しては、「暴力を助長する」などの視聴者意見を受けて前回委員会で討論した結果、「連続ドラマの初回であり、今後の放送も見守りたい」と判断したドラマについて今回の委員会で確認したところ、改めて検討し直す必要はないと結論し、これ以上討論しないこととなりました。
また、小学生が伝統行事の遠泳に挑むにあたって厳しい指導を受ける姿を追った情報バラエティー番組の企画に対して「虐待以外の何ものでもない」などの視聴者意見が寄せられましたが、委員からは「虐待という指摘は当てはまらないと思う」などの意見が出されました。ただ、その番組宣伝に対しては、「激しいシーンばかりを切り取っており、制作者が番組自体に込めた思いとの間にずれを感じた」と、工夫を求める声も上がりました。
中高生モニターについては7月に開催された中高生モニター会議の模様を紹介したNHKの番組を視聴した後、モニターから寄せられた8月9月の2か月分のリポートについて意見が交わされました。
調査研究については、「青少年のメディア利用に関する調査」の調査票を全国50地点から抽出した2000人に対して発送したことが報告されました。
次回は10月24日に静岡市で定例委員会を開催します。
視聴者からの意見について
高校を舞台にした連続ドラマで、高校生同士の「殴り合い」のシーンなどが放送されたことに対し、「暴力を助長しているようで、不愉快だ」「子どものいじめを助長するような残酷シーンがあり、気分が悪くなった」「高校生が起きている時間帯に放送することは考え直してほしい」などの視聴者意見が多数寄せられ、前回の委員会では、委員がこの番組を視聴したうえで討論しました。その結果、委員会としては、連続ドラマの初回であり、今後の放送を見守りたいということになりました。それを受けて、今回の委員会では、討論が継続されましたが、委員からは「その後の放送では、暴力的なシーンもあったが、演出上の工夫ができていたと思う」「視聴者意見の件数も収束している」などの意見が出され、これ以上、討論する必要はないということになりました。
情報バラエティー番組で、ある小学校の遠泳の伝統行事に挑む子どもたちと指導する教師を描いたドキュメント企画について、「体罰やパワハラともとれるような行為を美化している」「小学生への度を超えた暴力的な指導を放送していた」などの意見が寄せられました。これに対し、委員からは、「全体として一つひとつの行動に対して教育的配慮が行き届いていたので、虐待という指摘は全く当てはまらないと思う。むしろ感動的なドキュメンタリーであった」「番組宣伝では、断片的に厳しいシーンだけが切り取られていて、番組とは、ちょっとずれているかなという感じもした」などの意見が出されました。この番組については、これ以上話し合う必要はないとなりました。
中高生モニター報告について
今回は8月分と9月分の中高生モニター報告が議論されました。
【8月分】
まず8月分ですが、34人の中高生モニターにお願いしたテーマは、「夏休みに見た番組の感想」です。他に「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄にも多くの意見が寄せられました。8月には全部で32人から報告がありました。
『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)、『コード・ブルー』(フジテレビ)にそれぞれ3人から、戦争関連の『NHKスペシャル』(NHK総合)に4人から報告がありました。
戦争関連の番組について「戦争の醜さと恐ろしさを感じた」「事実を知ることが大事だと思った」「過去・歴史を忘れぬよう、このような特集・ドキュメンタリーを増やしてほしい」という感想や意見が寄せられました。
あるバラエティー番組について「『色白VS色黒SP』と題し、出演者たちが肌の色をネタに笑っていました。私はその光景を見て本当に2017年なのか?と感じました」などと指摘したリポートに対し、委員からは「鋭い視点だと思った。知らないうちに差別してしまっていることがあるかもしれないという気づきを与えてくれている」という感想が述べられました。
また自由記述では、低視聴率がインターネットなどで話題になっているドラマについて「(このドラマを)毎週楽しみに見ている。今は何でもすぐネットで騒がれるので、出演者や制作者も大変だと思う」との考察がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『1942年のプレイボール』(NHK総合)について「戦争や当時の日本兵、国民の様子について改めて考えさせられた」「"お国のために"という考えがよく分からない」など、3人が取り上げました。
◆委員の感想◆
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【夏休みに見た番組の感想】について
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戦争をテーマにした番組を視聴したモニターが複数いた。番組を見たモニターたちが、戦争について深く考えていることが分かり、よかった。
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『ココがズレてる健常者2 障害者100人がモノ申す』(NHK Eテレ)を見て、とても高い評価をしている報告があった。障害者を取り上げるということに関しては、誤解や偏見が生じる可能性もあって、制作者も悩んでいると思う。このリポートを寄せたモニターは、障害のある人について、新しい物の見方とか考え方を身につけることができたようでよかったと思う。
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『NHKスペシャル 列島誕生 ジオ・ジャパン』(NHK総合)を見て「地学っておもしろい!と感じた」というモニターがいた。知的好奇心を刺激してくれる番組の良さを伝えてくれている。
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『真夏のお笑い夜通しフェスどぅっかん!どぅっかん!』(NHK総合)について「長い休みの時にこんな放送をやってもらえると嬉しい。夜更かしをしても寝坊をしても、あまり罪の意識がないから」という感想があった。夏休みならではの楽しみだと感じた。
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『昭和vs平成 アニメ&特撮&マンガ ヒーロー・ヒロイントップ20』(フジテレビ)を家族みんなで一緒に見て、「一家団欒!」を楽しんだという報告は、家族で話題を共有できる番組の良さを述べてくれていると思う。
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『部活応援プロジェクト しゃかりき』(テレビ神奈川)を旅先の神奈川で偶然見て、「自分が住んでいる県のテレビ局にも、部活動を応援する番組を制作してほしい」という感想を述べた報告があった。さりげない意見ではあるが、中高生の関心事が番組のテーマになることが、実は少なかったということに気づかせてくれる。ちょっと考えさせられる視点があるような気がする。
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【自由記述】について
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「山の日に県内の2つの放送局が同じように立山から中継をしていた。どちらも同じような作りで、(立山の魅力を放送するのならば)もっと他県に向けて放送できる方がよいと思う」という意見を「確かにそうだな」と思いながら読んだ。ローカル局は地域に暮らす人のために放送しているわけだが、外に向けての放送という役割を考えると、できることはまだまだあるのかもしれないという気もして、ローカル局の役割の可能性を指摘した良い視点だったと思った。
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『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)について「24時間通しの生放送はブラック労働ではないか?」という意見があった。番組が始まった当初は、24時間通しで放送することがひとつの感動だったが、今の時代は「ブラック」と言われてしまう。しかしこれが今の子どもたちの感覚なのかなということを感じた。
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バラエティー番組で「色白VS色黒SP」ということで肌の色をネタに笑っていたことに怒りを覚えたという報告を読んで、今の社会の中で外見の違いなどをネタに安易に笑いあうことへの疑問を呈した鋭い視点だと思った。知らないうちに差別してしまっていることがあるかもしれないという気づきを与えてくれている。
◆モニターからの報告◆
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【夏休みに見た番組の感想】について
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『NHKスペシャル 戦慄の記録インパール』(NHK総合) 戦争の残酷さ、悲惨さがよく分かりました。実際にインパール作戦に従事した人が答える生々しいインタビューにショックを受けました。(兵庫・中学2年・男子)
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『ココがズレてる健常者2 障害者100人がモノ申す』(NHK総合) この番組はたまたま見た番組だったが、見て良かったと思える番組でした。聴覚障害者の方がもっと話したい!と手話で訴えていたり、視覚障害者の方がやっぱりイケメンがいい!と楽しそうに話していたり、障害者も健常者も本音で話していてとても興味深かったです。(鹿児島・中学2年・女子)
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『NHKスペシャル 列島誕生 ジオ・ジャパン』(NHK総合) この番組を見て地学っておもしろい!と感じた。地学はこんなにワクワクする教科だったのだと嬉しくなった。今までどちらかというと地学は退屈で苦手だったので、この番組を見ることができてよかった。いつか自分で和歌山の一枚岩を見に行きたいと思った。(千葉・中学2年・女子)
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『真夏のお笑い夜通しフェスどぅっかん!どぅっかん!』(NHK総合) 長い休みの時に、こんな生放送のお笑いの番組をやってもらえると嬉しい。夜更かしをしても寝坊をしても、あんまり罪の意識がないから。登場している芸人さんたちも、僕が名前を聞いたことのないような若手の人から安心して見られるベテランの人まで幅広くて良かった。NHKは固い番組のイメージがどうしても強かったけれど、この番組はスタジオの雰囲気もタイトルも、POPな色とデザインだった。(富山・中学2年・男子)
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『コード・ブルー ドクターヘリ救命救急』(フジテレビ) 若いフェローが成長していく姿や治療・手術のシーンのリアルな描写がこのドラマらしさだと思います。今作から脚本家が変わったこともあってか、要らない恋愛要素が増えた気がします。またずいぶん前の話の患者をだらだらと登場させている所も、らしくないと思いました。感情面や恋愛面の主張が強すぎると、本来のコード・ブルーらしさが消えてしまうのではないかと思います。(東京・中学3年・女子)
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『NHKスペシャル 731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~』(NHK総合) 戦争の醜さと恐ろしさを感じた。人体実験の証言を聞いていて、正直気持ち悪くなった。戦争により、人々は人間らしさ、思いやりを忘れて、同じ人間をなんとも惨い方法で傷つけることを知り、おぞましいと思った。また、人の命を救うためにいる医者が人を苦しめ、殺していたことに驚いた。(東京・高校1年・女子)
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『昭和vs平成 アニメ&特撮&マンガ ヒーロー・ヒロイントップ20』(東海テレビ/フジテレビ) 番組の進行は昭和、平成世代別に統計をとったヒーローとヒロインのランキングが交互に発表されていくものでした。この番組を家族みんなで見ながら楽しくおしゃべりをしました。まさに一家団欒!の言葉がふさわしいなと思いました。テレビは番組を見て面白いと感じたり、新しい発見をして楽しむ娯楽や情報収集の手段として活躍するだけではないのだと思います。テレビが提供する話題をもとに交流が深まり、人と人との絆を深めてくれるものだと思いました。(愛知・高校2年・女子)
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『部活応援プロジェクト しゃかりき』(テレビ神奈川) この番組は旅行先で見ました。部活動をしている神奈川県の中高生を応援する番組です。今回は、テレビをつけてEPG(電子番組表)を見ていた時に偶然この番組を見つけ、興味を持ったので見ました。高校のアーチェリー部を取材していました。自分の学校にはアーチェリー部が無いので「どんな活動をするのだろう」と思いながら見ました。所々で解説が入っているので、その部活動を知らない人でも分かりやすいと思いました。取材をするスタッフさんの質問が上手く、取材される高校生の自然な感じを引き出していると思い、お互い良い関係が築けているとも思いました。自分が住んでいる県ではこのような番組を毎週放送しているテレビ局はないので「自分が住んでいる県のテレビ局にも、部活動生を応援する番組を制作してほしい」と思いました。(愛媛・高校2年・男子)
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【自由記述】
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『セシルのもくろみ』(鹿児島テレビ/フジテレビ)を毎週楽しみに見ています。キャストも良いし、ストーリーも面白いし、カメラアングルやファッションやエンディングもいいなと思います。でも「視聴率が悪い」というネットニュースが出ていて、今は何でもすぐにネットで騒がれるので、出演者や制作スタッフさんも大変だろうなぁと思います。(鹿児島・中学2年・女子)
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富山県では、「山の日」に2つのテレビ局が同じように立山から中継をしていた。山の日だし、富山には素晴らしい立山連峰があるので放送するのは分かるけれど、どちらも似たような作りで、また、富山県民に向けてだけじゃなくて、もっと他県に向けて放送できる方が良いと思った。(富山・中学2年・男子)
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『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ) 過労死とか、ライフワークバランスなどが今、真剣に論議されている中で、24時間ぶっ通しの放送というのは、まさに過労ではないかと思いますが、24時間ぶっ通す必要性はあるのでしょうか。12時間ずつ2日連続での合計24時間とか、あるいは、24時間というフレーズは、合言葉的に残すとしても、実際24時間という時間数をずっと放送にあてる必要性がいまいち分かりません。休み時間というか、バイタルタイムを置くことで、視聴者も休めるし、番組内容について 視聴者各自が自分の中の課題などと照らしあわせる時間、そして睡眠時間にあてたらどうでしょうか。(石川・中学3年・男子)
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『ナカイの窓』で「色白VS色黒SP」と題し出演者たちが肌の色をネタに笑っていました。私はその光景を見て本当に2017年なのか?と感じ、呆れと怒りを覚えました。もしかしたら、テレビ制作者は、純粋に面白いと思って作り、視聴者は日本に住む人だから肌の色を笑いにしても大丈夫と思ったのかもしれません。彼らは、この放送を見て傷ついたり不愉快になったりする視聴者のことを考える力はなかったのでしょうか。彼らの考える視聴者とは誰でしょうか。確かに日本は他国に比べ移民も少なく、社会の多様性という観点では認識が足りないと言えます。しかし、その固定化された価値観を変えていくことがマスメディアの一つの役割だと考えます。グローバル化の流れの中で、オリンピックも控えているのに、テレビがこの状況であることが残念です。視野を広げて、想像力を働かせて、思いやる心を持ってほしいです。(東京・高校3年・女子)
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【青少年へのおすすめ番組について】
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『池上彰の戦争を考えるSP第9弾「特攻」とはなんだったのか』(テレビ東京) 特攻で戦死していった若い人たちの個人名と笑顔の写真とともに手紙を紹介していました。検閲された手紙にはお国の為に喜んでと書いてありましたが、実際は、軍人である前に一人の人間として家族を愛しながら死を覚悟していく様子を感じました。戦争がいかに悲惨であるか、戦争を知らない僕たちはもっと知って、後世に伝えていかなくてはならないと思いました。(神奈川・中学1年・男子)
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『第72回全国花火大会実況中継』(岐阜放送) 花火師さんの思いを知ることができて、また岐阜の歴史を伝えてくれていて良かった。毎年、身近に見ている花火がこんなにも多くの人が思いを込めて作ってくれている大きな花火大会だと知ることができて良かった(岐阜・中学2年・男子)
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『1942年のプレイボール』(NHK総合) 「お国のために」という考え方がよく分かりません。戦争のない今の時代が、ずっと続いてほしいです。(宮城・中学3年・男子)
【9月分】
9月分として34人の中高生モニターにお願いしたテーマは、「最近見た報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」です。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄にも多くのリポートが寄せられました。9月には全部で27人から報告がありました。
「報道・情報・ドキュメンタリー番組の感想」では、複数の番組についてリポートを書いてくれたモニターがいたこともあり、報道番組について13人、情報番組については4人、ドキュメンタリー番組について11人から報告がありました。北朝鮮のミサイル発射やJアラートについて5人が報告しています。また『グッド!モーニング』(テレビ朝日)について報告してくれたモニターが2人いましたが、ともに林修先生の「ことば検定」のコーナーにふれています。『NNNドキュメント"なぜアメリカ人はヒロシマに?核の脅威高まる中で"』(日本テレビ)についての報告も2件あり「戦争の悲惨さや恐ろしさが後世に伝わるのはとてもよいこと」「番組を見て、真珠湾と広島をしっかり見たいと思った」という感想が寄せられました。その他、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)を3人、『ドキュメント72時間』(NHK総合)を2人が報告しています。
また自由記述では、生放送のバラエティー番組でインタビューの内容が取り違えられていた原因を「制作側の連係ミス」と後日謝罪したことについて、「(制作側の連係ミスによる誤放送が)テレビ局の信頼を失うことにつながる」と指摘したモニターがいました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~』(NHK Eテレ)について3人が、『第37回全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ)と『サザエさん』(フジテレビ)については2人が取り上げました。
◆委員の感想◆
◆モニターからの報告◆
調査研究について
調査研究については、「青少年のメディア利用に関する調査」の調査票を9月19日に全国50地点から抽出した2000人に対して発送したことや、BPOのホームページに調査の概要を掲示したことなどが報告されました。
また、調査結果に関して放送局の関係者から意見聴取する会を開くことを決定し、日程を調整しました。
今後の予定について
今後の日程を次のとおり確認しました。10月24日、静岡市にて意見交換会(静岡地区)及び10月度の委員会。2018年2月24日、BPO会議室にて教師たちとの意見交換会。
その他
8月8日、東海テレビ(名古屋市)が開催したメディアリテラシー企画『夏休み!みんなのテレビスクール』に講師として参加した中橋雄委員からその模様が報告されました。