第119回 放送と青少年に関する委員会

第119回 – 2011年1月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第119回青少年委員会は1月25日に開催され、12月14日から1月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基にバラエティー1番組について視聴し審議した。また、1月に寄せられた中高生モニター報告及び来年度の活動計画等についての審議が行われた。

議事の詳細

日時
2011年1月25日(火)  午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

日本テレビ『さんま&SMAP! 美女と野獣のX’masSP』(12月19日放送)について

青少年に人気のアイドルグループが出演する番組の内容について「低俗で下品であり、子どもには見せられない」などの批判意見が視聴者から多数寄せられ、番組を視聴の上審議した。

【委員の主な意見】

  • 当代の人気者を出演させているのに、あれだけ長時間にわたってくだらない内容を放送する局の姿勢が理解できない。もう少しテレビを大事にしてほしい。
  • 視聴者意見からは落胆感がにじみ出ている。さんま&SMAPの出演ということから子どもたちも期待感を持って見ているのに、下ネタばかりで意に反した内容だ。こういう番組がテレビ離れを助長させることに危惧を持つ。
  • BPO・放送倫理検証委員会の「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」にある”内輪受け”の典型のような気がする。スタジオ内の発言 を消音処理し、スタジオ内だけで盛り上がり、視聴者を置き去りにしている。
  • 生番組での悪乗りが行過ぎてしまったのかもしれないが、男同士でキスをするのは、夜の飲み屋など裏の世界で遊びでやるもの。表通りのテレビでやるべきではなく、見ていて不快に感じる人は多いはず。
  • 善意で考えると、今の文化を壊して新しい何かを創造しようと問題提起したのかとも思ったが、放送されたものについて番組制作者がどう総括しているかを聞いてみたい。

以上審議の結果、委員会としては上記各委員の意見をBPO報告及びBPOホームページに掲載することとした。

  • 児童施設に連続してランドセル等のプレゼントが贈られた事実の報道の際、視聴者から児童の顔を出しての取材・放送に批判の意見が寄せられた。この件について一部委員から、「個別の事情はあると思うが、将来的に問題が起きることも考えられ、許諾が得られていたとしてもそのことだけで判断せず、局内で慎重な議論が行われたうえで判断するべき」との意見が出された。

中高生モニターについて

12月~2月は「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。1月のテーマは、最近「面白そうと思って見たドラマ・アニメ」の中から、「期待はずれだった番組」「つまらなかった番組」「嫌いな番組」を選び、何がよくなかったのか、どこがつまらなかったり嫌いだったりしたのか、その理由について率直な意見を書いてもらい、30人から報告が届いた。

【モニターの主な意見】

ドラマについて報告を書いてくれたモニターは17人(男子7人、女子10人)。最も期待はずれだったという番組は『美咲ナンバーワン!!』で、女子4人から意見が寄せられた。「”期待はずれ”という言葉は、この番組にピッタリだった。いくら『ごくせん』のスタッフが再集結したといったって、パクリにもほどがある。というよりも、『ごくせん』そのままだった。1話完結で、しかも同じパターンだから続きも気にならなかった。2話はおそらく見ないだろう」。
「多少は『ごくせん』っぽさが出ると思っていましたが、この番組は、まるっきり『ごくせん』そのものでした。”ヤンキー”たちが新しい担任との絆を深めていくという内容は実に素晴らしくよくできているとは思うのですが、もう少し変えてもいいのにな、と思います。しかし、『ごくせん』を見たことのない人には新しい感覚のドラマとして受け入れられるので、別にいいのかなとも思います。当たり前ですが、ドラマはどの年代をターゲットにしているかで、ガラッと印象は変わっていくということを学びました」。
次に、『Q10(キュート)』については3人から意見が寄せられた。「私が期待はずれだと思った理由は、まずドラマの設定がつまらなかったことです。以前、放送された『絶対彼氏』という番組と一緒で、人間型ロボットが主役という点でかぶっていましたし、このドラマが訴えたいメッセージがまったく無かったのも理由の一つです。制作者からのメッセージが無いのなら、見る意味も作る意味もないと思います。結局、今回視聴率を取れたのは、AKB48の前田敦子さんと佐藤健さんのおかげだと思います」。
「『Q10』は、放送時間が土曜日の夜9時からということもあって中高生の多くが見ていたと思うが、話の内容が無理やりすぎる。ドラマといえど、もっと現実的なストーリーにした方が自分たちとしても共感を覚えやすい。また、学園ものを作るのなら、高校生役なら、演じる人の年齢も現役高校生くらいにして、日ごろ学校生活を送るなかの自然な様子を演技に生かせば、その方がよっぽどいいドラマになると思う」。
そのほか、「『霊能力者 小田霧響子の嘘』が期待はずれでした。タイトル、ストーリーなど放送開始前に見たり聞いたりした情報では、『トリック』のパクリだと思いました。仲間由紀恵さんが石原さとみさんに、阿部寛さんが谷原章介さんということで、ストーリーも奇怪な事件を解決するとのことで、やっぱり同じ局ですし、まあいいかと思って見てみると、そのつまらなさにあきれ果てました。まず”笑い”ということで小ネタを入れたみたいですが、クスリとも面白くないし、スベリ祭り(まくり)です」。
「私が期待はずれだと感じたドラマは『フリーター、家を買う。』である。まずオープニングの映像から異議がある。一話の内容も見る前からこの先がバレバレである。強気で仕事に打ち込む姿が素敵なヒロインと、ダメダメな主人公というのをもう少しオープニングから強調してほしかった。そして肝心の内容だが、家を買ってない。せめて、もう買えるぞ、というところで終わってほしかった」。
「最近見たドラマで非常にがっかりしたものは、『検事・鬼島平八郎』です。レポートを書くときにこのドラマを振り返ってみたら、つまらないコントを毎週見ていたような気持ちになりました。50円を拾って交番に届けるシーンでイラっとしました。それが小学生のやることなら現実味がありますが、この主役は交番の警官が『持って帰っていい』と言っているのに『書類を書いたほうがいい』という。現実にいたら”正義感の強い人”か”めんどうな人だ”と思われるかのどちらかでしょう。それが主人公のキャラクターなのかもしれませんが、その役をいつもバラエティーで破天荒なダウンタウンの浜田雅功さんがやるので笑ってしまった」。
「僕が嫌いなドラマは『韓国ドラマ』です。最近どうしてテレビでは、韓国のドラマばかりやっているのかとても不思議に思います。『韓国ドラマ』はどれも同じような内容で、記憶喪失、御曹司、三角や四角関係のドロドロした人間関係、復讐といった分類に分かれるので、はっきり言ってどこが面白いのか理解できません。それにもかかわらず母は、よく見ていて、韓国語を覚えたとか言って『アラッそ!!でー…』とか訳の分からないことを言っています」。
特定の番組名を挙げず、最近のドラマへの要望も寄せられた。「最近のドラマはつまらないと思う。刑事ドラマや学園ドラマばかりで、家族全員で楽しんで見られるものがあまりないように思う。例えば『渡る世間は鬼ばかり』のような、殺人や暴力のない平和なホームドラマが減ってきて、家族で安心して見られるようなものがあまり見当たらないのがとても残念だ」。
「特定の番組ではありませんが、ドラマについて思うことです。(1)ヒットしたドラマの、PART2やPART3、PART4など、だんだんマンネリ化したり、映画化されたりしてそれも同じで”オチ”が予想通りなのが目立ちます。(2)アイドル頼みのドラマは、せりふの棒読みや下手な演技が目立ちます。もう少し演技力のある人を使ってほしいです。(3)漫画からのドラマ化が多すぎ、漫画のイメージとドラマが合致していなくて、ガッカリすることが多いですね」。
アニメについては11人(男子7人、女子4人)から意見が寄せられた。2人から意見が寄せられた番組は『ONE PIECE』である。「僕は『ONE PIECE』が好きだ。小学校低学年のときに見たのがきっかけだ。しかし、その後習い事を始めたので見ることができなくなってしまった。6年生のとき友人の家で『ONE PIECE』のマンガを読んだ。そこに感動やカッコよさ、面白さを覚えたので全巻を集めた。本当にマンガはすごいと思う。中学生になって久しぶりに放送を見た。面白くないことはなかったが、何か物足りない感じがしたし、戦闘シーンを誇張しすぎだと思う。また、マンガだと自分の好きなペースで好きな時間に読めるが、アニメだと決まったペースで進むので、考える暇がない」。
「SMAPのメンバーや明石家さんまさんが大ファンと言っていたので見ることにしましたが、何回か見ていると、戦った相手が仲間になったり、しつこいくらいの友情の押し付け合いがあったりで、全然面白いとは思えなかったです。売れている本が誰にでも面白いわけではなく、視聴率の高い番組が誰にでも面白いわけではないのでしょうね」。
マンガがアニメ化されてつまらなくなったという意見はほかにも届いている。「『GIANT KILLING』は、他のアニメに比べ絵にとても違和感があり、ストーリーに集中できません。線がやたらと多く感じられ、ゴチャゴチャしています。そのせいか、背景とキャラクターが一体化していて画面全体が見づらく、人の動きがギクシャクして迫力に欠けています」。
「『家庭教師ヒットマンRIBORN!』は、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた原作を読んでいるのですごく好きなのですが、発売されている”キャラソン”がいまいちピンとこなかったし、”キャラ”も原作の方がアニメよりもずっとかっこいいと思います。原作ではあんなに迫力もあって面白かったのに、アニメになると原作のいいところがなくなってしまうのはとても残念です」。
「小学生のとき『バトルスピリッツ』というカードゲームにはまっていました。そのため『バトルスピリッツ 少年激覇ダン』までは中学生になってからも早起きして見ていましたが、『バトルスピリッツ ブレイヴ』に変わったとたん、とてつもなく面白くない、と感じるようになりました。中学生になったことも関係しているとは思いますが、主人公が変わらず、キャラクターもほとんど前作と同じようで、敵の設定が曖昧すぎることが気に入りませんでした」。
「基本的にアニメ・ドラマが好きでジャンルを問わず見る僕ですが、自分が嫌いなアニメが一つだけあります。周りの友だちが見たというので、自分も興味本位で『エヴァンゲリヲン』という映画を見たことがありますが、予想を裏切るもので最初の30分しか見られずあとは寝てしまいました。また、テレビで最初の数話を見たのですが、内容が難しすぎるのと、背景に赤や青の原色が多く使われ目が疲れ、残酷なシーンも多かったので、長く見ているのがイヤになりました」。
「僕が”期待はずれ”と思った番組は『史上最強の弟子ケンイチ』です。僕はこの番組のストーリーが面白そうだと思って見ました。確かに第1話は、内容自体とても面白かったのです。しかし、ある程度物語が進んでくると30分番組のうち殆どが前回のあらすじか、回想シーンです。我々中学生の本分とは勉強であり、限りある時間をアニメに割きすぎる訳にはいきません。制作側が引き伸ばしをするのは、長く見てもらいたいからでしょうか?だとしたら逆効果だと思います」。
そのほか、長く続いている『ドラえもん』と『ちびまる子ちゃん』についても意見が寄せられた。「小学生のころ『ドラえもん』は毎週見ていたが、2005年あたりからまったく見なくなった。理由は2つある。1つは、絵がリニューアルする前の絵とかなり変わっていて、原作のイメージがなくなったように思うからだ。もう1つは交代した声優の声が違いすぎて、どうしても慣れることができないからだ。昔の声優を復活させてとは言わないが、せめて絵はあんなに変えないでくれよと思った」。

【委員の所感】

  • マンガが原作のドラマ化やアニメ化が多すぎるという意見が大半だった。特にアニメについては、主人公などに対するそれぞれの思いが反映されており、『ONE PIECE』の漫画が”面白い”と感ずる声と、アニメ化が”期待はずれ”と感じた意見には納得できるものがある。
  • 『韓国ドラマ』が多すぎるという意見は、大人たちにとっては安心して見ていられるから放送されているのだろうが、中高生たちにとっては”面白くない”という意見は、世代間の感性の差が読みとれる内容だった。
  • アニメについての意見には、かなり”専門性”があるように感じた。特に『史上最強の弟子ケンイチ』について、ストーリーは面白いが、30分のうちの多くが前回のあらすじや回想シーンで、制作者側が引き伸ばしをしているという指摘には、なるほどと思った。

「今月のキラ★報告」(神奈川・中学3年女子)

『ちびまる子ちゃん』を少し懐かしい気持ちで見てみたら、まるで教育番組のような内容になっていて少し残念でした。『ちびまる子ちゃん』のコミックスは全巻持っているほど漫画は好きですが、アニメは面白い要素だけスポンと抜いてしまったのでは、と思うくらいに、もともとの漫画の”良さ”が失われている気がしました。
従来の漫画でも”感動”をテーマにしているんだろうなという回もありましたが、最後は「父と母がケンカした原因が、ダイエット器具を買うか買わないかという、しょうもないものだった」という”オチ”もあったのに、今のアニメは、ストーリーは違いますが大体「お母さん…」とか「お父さん…」とか、まる子が感動(?)して終わりでした。道徳的なものを放映したいと思っているのかも知れませんが、それなら何も『ちびまる子ちゃん』じゃなくても、他に合うアニメがあると思います。
昔は、父・母・私・姉の4人で笑って見て楽しんでいたのに、今は『ちびまる子ちゃん』の終わり方に、照れくささとか気まずさといったようなものが残り、後味が悪いです。姉が今の私くらいのころ笑って見ていたということは、「私」が変わったというより、「アニメ」がだんだん変わってきていると思います。今、『ちびまる子ちゃん』を作っているアニメ制作の人は、もともとの『ちびまる子ちゃん』に愛着がないのでは…と疑ってしまいます。
私は『ちびまる子ちゃん』の面白さや内容、人気に頼って少し道徳をおりまぜるというのなら、どこかに『ちびまる子ちゃん』にしかできない部分が残ると思いますが、今のアニメは、『ちびまる子ちゃん』の人気、絵柄だけを利用しているので、他のアニメと似たり寄ったりになってしまっているような気がします。まったく漫画と同じにするのは無理な所もあるかと思いますが、いったん振り出しに戻って考えてほしい…と思いました。

【委員会の推薦理由】

『ちびまる子ちゃん』が教育番組のような内容に変質し、原作が持っている面白さが失われているという指摘は、子ども向け番組、ひいては子どもの文化が持つある種の避けて通れないジレンマを指摘したものだと思います。子どもの文化を大人はどのように考え、子どもに向けてどのような文化を発信するべきか、そうした重要な問いに関わる内容を含んだレポートとして評価されました。

2011年度中高生モニター募集について

青少年委員会では、放送と青少年のあり方について、一般視聴者だけでなく子どもたちの意見にも耳を傾けたいと2006年度からモニター制度を設けている。このたび、2011年度の募集を1月26日から開始した。3~4カ月単位で1つのジャンル(バラエティー・音楽番組、情報・報道番組、ドラマ・アニメ番組ほか)を取り上げ、意見や感想などを毎月報告してもらう。

2010年12月に視聴者から寄せられた意見

2010年12月に視聴者から寄せられた意見

歌舞伎役者の市川海老蔵が負傷した事件について、視聴者から様々な意見が寄せられた。批判の多くは、事実が明らかでないのに噂や憶測でコメントしているなどというものだが、入院中の海老蔵夫妻の様子を上空から撮影した取材には、盗撮ではないかとの抗議があった。

12月にEメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,396件で、11月と比較して332件増加した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール71%、電話26%、FAX2%、手紙ほか1%。
男女別では男性67%、女性30%、不明3%。
世代別では30歳代31%、40歳代24%、20歳代20%、50歳代11%、60歳以上10%、10歳代4%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は647件[33社]であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、39件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・ 0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

12月の視聴者意見は1396件と先月より332件多かった。メールでの意見が増えたため。
歌舞伎役者の市川海老蔵が深夜の六本木で殴られて負傷した事件について、視聴者から様々な意見が寄せられた。酔ってけんかしたぐらいで大騒ぎするなとの批判もあったが、殴った容疑者が何日も出頭しなかったことや、相手側からも海老蔵に暴行を受けたという主張が流れたりして、報道も過熱した。批判の多くは、事実が明らかでないのに噂や憶測でコメントしているなどというものだが、入院中の海老蔵夫妻の様子を上空から撮影した取材には、盗撮ではないかとの抗議があった。
国会は仙谷官房長官の失言や尖閣ビデオ流出問題などから官房長官ら2閣僚の問責決議案が先月末可決され、与野党の攻防が続いた。年内最終盤には小沢元幹事長の政治倫理審査会への招致をめぐって菅首相と小沢氏の会談が開かれたが物別れに終わった。視聴者からは、国民の暮らしを忘れ政局に明け暮れるのは、報道する側にも問題があるのではとの声が寄せられた。
茨城県取手駅前のバス乗客刺傷事件では、犯人の高校時代の卒業文集の内容が報道され波紋が広がった。テレビドラマの影響を懸念する意見もあった。
人気アイドルグループのクリスマス特番で、下ネタやピー音の連発にひんしゅくだとの声が多かった。大阪道頓堀のたこ焼き屋が市の公有地を不法占拠し続けてきた問題で、ワイドショーの司会者らが擁護するような発言をしたため多くの批判があった。全日本フィギュアスケート選手権の番組ではクイズバラエティーのようなことをせずに、選手の演技をちゃんと見せてほしいとの意見が多数寄せられた。女性タレントがツイッターで暴露した不倫騒動についても、司会者やコメンテーターらの無責任な発言に批判が集中した。
ラジオに関する意見は39件、CMに関する意見は54件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は145件で、前月より約40件増加した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が39件、報道に関する意見が27件、性的表現に関する意見が15件と続いた。低俗・モラルについては、年末のバラエティー特番に対して、卑猥な質問や下品な行為ばかりの内容で極めて低俗だとの批判が7件寄せられた。報道については、12月に成立した東京都の青少年健全育成条例の改正に関し、報道内容が不十分・不適切との批判が複数の番組に対して寄せられた。性的表現については、放送開始前のものも含めアニメに対する批判が目立った。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 市川海老蔵の入院中の映像が放送された。いくら相手が芸能人だとはいえ、ここまでする必要があるのか疑問を感じる。報道の自由があるとはいえ、それを盾にして何をやっても良いのか。屋上とはいえ病院内であり、この映像に関しては盗撮のように思えてならない。芸能人であっても一人の人間だ。取材が過熱することもわかるが、一線を守って取材すべきだ。不特定多数の一般人がいる病院という施設で、このような取材は間違っている。
  • 再現VTRと街頭インタビューなどを使って、市川海老蔵を「極悪人」のように印象付けていた。実際にその場にいた人物でもなく、新聞情報や友達の知り合いから聞いた話などで構成し、「極悪人」にでっち上げていた。事実がわからない段階で、いいかげんな放送はしないでほしい。
  • コメンテーターや芸能記者たちが、まるで市川海老蔵が加害者であるかのように、スポーツ新聞などの情報をもとに連日批判を続けている。警察からの情報はごくわずかで、ほとんどは芸能記者のかき集めた情報だ。記者会見はまるで被疑者に対する検察官のようで、激痛に耐えながら会見に臨む海老蔵に難しい質問を繰り返している。
  • 海老蔵に対するマスコミの報道があまりにもひどい。酒を飲んでトラブルに巻き込まれた海老蔵を擁護する気はないが、なぜ出頭して真実を話そうとしない加害者を擁護するのか。近所の人の意見を聞いたら、「いい子だった」と言うに決まっている。こんなことをやっているから、加害者が調子に乗り、いつまでも出頭しないのではないか。
  • 市川海老蔵の暴行報道に関して「元暴走族リーダー」という表現や放送があるが、たとえ現在無職だとしても「元暴走族…」という表現はいかがなものか。暴走族は商売ではないし、それも「元」とは。たとえば無職の二十歳の人を「元××高校生」とは書かないだろう。昔、暴走族だったからといって、俳優に「元暴走族の××さん」とは言わないだろう。悪意を感じてしまうのは私だけだろうか。
  • 「取手市無差別刺傷事件」を取り上げていた。番組では犯人の同級生へのインタビューを放送していた。 「昔からクラスの中で気持ち悪い人間だった」「何をしでかすか、わからないような人間だった」「クラスで一番根暗だった」等、犯人がいかにも犯罪者の素質があったかのような作り方だった。犯罪は犯罪だが、最初から犯人の人間性を否定するような作り方には疑問を感じた。あれでは学生時代暗かった人間が全て犯罪者になるように見えてしまう。
  • 罪を犯した芸能人の早期復帰を助長するような報道はやめてもらえないか。視聴率を取って点数稼ぎをしたいテレビ局と、罪を犯してもテレビを利用して早く復帰しようとする犯罪者の「利害一致」の仕組みだ。こんな馬鹿なことをやるから、アウトローの人間は罪を犯しても反省せず、異常な行動をたびたび起こす。
  • 事件が起こると犯人の家族およびそこ住む人に取材をするが、それは倫理上許されるのか。犯罪を起こした人は悪いが、その家族に責任はない。その人達の生活権を奪う行為は本当に許されるのか。それは報道の暴力ではないか。BPOでいつも取り上げられるが、解決できないのであればこんな組織はいらないと思う。「倫理」という言葉の意味をよく考えてほしい。
  • 鉄道ニュースの取材で列車に向けストロボを発光しているが、運転士の目の保護の為にストロボを発光しないことは一般のマニアでは当たり前のモラルだ。プロである取材カメラマンはどうしてストロボ等を発光するのか。一般のマニアより技術も優れ、機材も高級な物を使っているはずだ。鉄道会社側の了承をとっているならともかく、脚立や三脚も使わないことがモラルだ。プロの取材カメラマンの撮影モラルを疑わざるを得ない。今度は九州新幹線やはやぶさの営業開始が3月にあるので、業界での申し合わせを期待する。

【番組全般・その他】

  • 生中継できる時間帯にもかかわらず、最初の1時間はクイズバラエティーの形をとった編成で、後半1時間に6人の選手のみ放送した。フィギュアスケートの基礎知識を紹介するための構成だと思うが、放送時間の半分以上を「説明」に割き、視聴者に生の情報を発信しないということは、スポーツ番組として正しい姿なのだろうか。ファンはもちろん、普通にフィギュアスケートを楽しみにしている視聴者にも、不適切な番組構成ではなかっただろうか。
  • 大阪道頓堀のたこ焼き屋台店舗が撤去されることになったことについて特集していたが、その内容があたかも不法占拠を擁護、また市民の声という形で賛美しているように見えた。結局は役所批判につなげていたが、犯罪行為を擁護することは問題なのではないか。放送局はたとえそれがバラエティー色の強いワイドショーであっても、一方に偏ることは良いことではない。
  • 出演者の家に勝手に上がり込み、汚したり壁を傷つけたりしているのを見て嫌悪感を覚えた。この番組に限らず、お笑い番組では出演者の私物を勝手に持ち出したり、壊したりする事が多い。本人たちが面白がっているだけだと思う。自分がされたら嫌な事を、笑ってやっている姿は、とても笑えない。
  • 特にバラエティーで、ピー音を入れた放送はやめてほしい。番組はいったい誰のためのものか。公にはできないことを身内だけで楽しんでいる。それなら最初からその部分を編集でカットすればいい。身内だけの「ここだけ話」なら楽屋でやれ。この番組は生放送にもかかわらず、視聴者には分からないように発言を加工する、いわゆる「かぶせ音」を用意していた。視聴者を馬鹿にするのもいいかげんにしろ。
  • 現在の食文化を駄目にした根源はメディアにある。「視聴率だけ追求」では、日本の食文化が破壊される。私は米を作っているが、箸の持ち方や食べ方も出来ない連中に、物の味が分かるものかと思う。食べ物に関する番組に出演させるなら躾をしてから出してほしい。最低でも箸の躾が出来ていれば良い。

【ラジオ】

  • 小学生のリスナーが失敗談を発表しているのを聞いて驚いた。この番組は下ネタが満載だ。真面目な「テーマ」も下ネタに持って行くし、下ネタばかりが採用される傾向がある。リスナーの子供たちに悪影響だ。時間帯を考慮して、子供が聞いてもいい健全な放送にしてほしい。
  • ニュースのコーナーで、「だめ総理」や「ここまでだめだとは思わなかった」等、やたら上から目線の記事を紹介していたが、あまりにも礼を欠いていると感じた。常識あるラジオ局ならああいった失礼な記事は紹介しないと思う。批判するにしても社会人としての常識をわきまえるべきだ。
  • パーソナリティーの「昔の曲はいいけど、今の曲はわからない」や「いい曲が無い」「詩がわからない」等の発言が多すぎる。ただの懐古趣味のおじいさんだ。今の曲がいいと思っている人がいるから売れるのだ。理解できない自分を恥じるのではなく、自分達の若いころは良かったというのは、傲慢以外の何ものでもない。いい加減にしてほしい。ラジオは全世代のものだ。

【CM】

  • 携帯ゲームの会社が盛んに宣伝をしている。それらのCMは「一部コンテンツは有料」としながらも、執拗に「無料です」と強調している。しかし実際に無料で遊べるのは「ごく一部」のコンテンツに限られ、アイテム、例えば釣りゲームでは釣り具、その他道具を手に入れる際には、課金されるシステムである。CM上の表記を「無料で遊べるのは一部コンテンツです」という表記に変更することを考えてほしい。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 有名グループが出演するので楽しみにしていた特番だが最低だった。男性同士がキスをしたり「クズだと思った芸能人は?」など他人の悪いところを言わせてみたり、とんでもない内容だ。子どもが見ている時間帯の番組に何故こんな番組を作るのか理解できない。バラエティー番組からかけ離れた放送だったと思う。
  • 日付は失念したが「サンタさんは実はパパなんだよ」という発言があった。私は放送を見ていないが、子どもが見ていた。小さな頃から夢を壊さないよう「サンタさんは本当にいるんだよ」と信じさせてきたが、子どもが「テレビで『サンタさんはパパだ』と言っていた。パパとママは嘘つきだね」と言った。なぜ子ども向けの番組で夢を壊すようなことを放送するのか?

【報道に関する意見】

  • 東京都青少年健全育成条例の改正に関する報道だが、不正確で視聴者に誤った知識を与える可能性が高いものが多い。改正内容を正しく伝えていないうえ、漫画家の反対声明の一部のみを恣意的に使用している。今後各局でも報道があると予測されるが、この問題を初めて知る人、詳しくない人に対して、不十分な情報のみを伝えることになれば客観的な報道とは言えず、世論操作になりかねない。
  • ニュース番組で東京都青少年健全育成条例について報道していた。既に出版業界で自主規制しゾーニングされている成人向け漫画が、さも全年齢向けの漫画と隣接して売っているなどと間違った報道をしていた。条例が規制対象としているのは成年向け漫画に留まらず一般の漫画にまで及ぶ。それに気づかず報道することにより、漫画への風当たりや規制を求める声が強まり、漫画文化の衰退へとつながる恐れがある。適切な報道をお願いしたい。

【性的表現に関する意見】

  • 深夜にテレビをつけたところ、偶然アニメで性的なシーンが映り大変驚いた。深夜だからといって、このようなシーンを誰でも見られる地上波で放送していいのか。とても気分が悪くなった。深夜にアニメが多く放送されていることは知っていたが、こんな過激なシーンを許しているのか。子どもはアニメというだけで絵に惹かれがちだ。地上波でこのような内容は許さないでいただきたい。
  • 語学番組で、発音を学ぶシーンで学習とは関係のないダンス風景を挟んでいた。衣装を着た場面ならまだしも、なぜ女性が集団でヌードになるショーのシーンを使う必要があるのか理解できない。どうしても必要なのであれば、映像処理をしてから放送すべきではないか。未成年者への悪影響やダンスショーに対する間違った認識を与えかねない。

【いじめに関する意見】

  • バラエティー番組。人気飲食店の上位メニューをひたすら食べるコーナーで、3人組の芸人のメンバーの1人に対する残り2人の仕打ちがもはや公開いじめで不快だった。いい加減、「いじめといじるは違う」とかいう言い訳はやめるべきではないか?いじめまがいのいじりで笑いを取ろうという低レベルな芸人が増えるのは由々しきことだ。

【暴力・残虐シーンに関する意見】

  • これから放送されるアニメの番組宣伝で、暴力的な場面が強調されていて腹立たしい。子どもが見ている時間帯にも流されているので悪影響も懸念される。一般の番組と違い、番組宣伝はいつ放送されるかわからないので避けようがない。過激なシーンを放送するのであれば、深夜の時間帯にするなど考慮するべきだ。
  • バラエティー番組で、ある歴史上の人物が600人もの女性を殺し、その生き血で若返ろうとした話が実際に殺害に使用された道具などを交えて紹介されていた。あまりにも残虐な話で、背筋が冷たくなった。ちょうど夕食後の時間だったので娘と見ていたが、怖かったようで泣き出してしまい、その後も思い出しては泣いていた。あのような残虐な内容を子どもも見ている時間帯に放送するのはやめてもらいたい。

【危険行為に関する意見】

  • バラエティー番組の予告編で、壁と壁の間に立つ出演者が両方から迫ってくる壁に押しつぶされるシーンがあった。現在、図書館の書架が同じような構造なので、子どもが真似をして遊ぶ可能性が大きい。子どもたちの間で「書架の間に児童を立たせ、両方から書架を接近させて押しつぶす」という危険な遊びが流行ったらどうするのか。予告編で見ただけでぞっとするシーンだった。

【表現・演出に関する意見】

  • 近頃はギャグアニメでさえ、パンチラシーン等に不自然な光による規制が入っている。余りにも過剰な反応で子どもへの説明に困る。パンツは、光で隠すようなテレビで放送出来ないわいせつな表現なのか?見ていて不自然だ。子どもに見せるか見せないかは保護者が決める。過剰な規制は不要だ。

【推奨番組に関する意見】

  • 深夜に連続で放送されたドラマ。タイムスリップした祖父とその息子、孫が生活していくストーリーだが、現代の人間との感覚のズレを楽しく笑ったり涙ぐんだり、考えさせてくれる大変面白い番組だった。昨今忘れかけている「家族愛」を嫌味なく、現代風に上手く映像化していた。深夜ではなく子どもや年配の方々が見る時間帯に放送してほしかった。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 魚を銛で突く行為が「可哀想だ」との意見があった。子どもから見れば可哀想という意見しかないかもしれないが、それを「放送するな」と局に訴えるよりもっと番組の伝えたいことを知るべきではないか。あるいは、かつて人間が自然の中で生きのびる手段の一つとして大昔から行ってきた狩猟であることを、親が子どもに説明することの方が大切ではないか。この番組に限らず、子どもが不快感を示したというだけで番組に難癖をつけることはいかがなものかと思う。
  • 「ドラマが残虐」などの意見について。あくまでドラマはドラマであり、放送前後に「架空の…」などの表示もある。深夜に放送すべきという意見もあるが、番組が深夜枠に移ったら「深夜であっても放送すべきではない」などと意見されるのではないか。何でもテレビのせい、他人のせいにしてしまう考えを改めるべきではないか。
  • 「子どもに有害だと思うなら見せるな」という意見が多いことに驚く。そういう方は低俗な番組が多いことを何とも思わないのか。バラエティー番組がすべて悪いと言っているわけではないし、子どもに限った問題ではない。もちろん笑って楽しめるバラエティー番組は必要だが、いじめや悪口、騒ぐだけの番組などはやはり「見なければ・見せなければよい」という理論では済まされないと思う。

【CMに関する意見】

  • パチンコのCMが多過ぎる。一日中朝から晩までパチンコ台やホールのCMが流れている。パチンコはギャンブル性が高く、風紀もよくない。一日中流されると青少年が興味を持ってしまう。
  • ここ最近パチンコのCMが増えた。面白く可愛い、楽しいCMが多い。18歳以下がやってはいけない遊戯のCMは昼間ではなく夜に放送するべきではないか。子どもが興味を持つアニメなどで構成されているCMを小さな子どもが見入ることに、とても不快感を覚える。

第169回 放送と人権等権利に関する委員会

第169回 – 2011年1月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

委員会運営上の検討課題 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」第二次案について審理した。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現上の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

議事の詳細

日時
2011年 1月18日(火) 午後4時 ~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

本事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月の審理を受けて修正された「委員会決定」第二次案について審理し、内容や表現について改めて時間をかけて詳細な検討を行った。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の検討課題について事務局より説明した。
インターネット社会の到来や放送と通信との連携、放送に対する視聴者意識の変化等に伴い、委員会運営において新たな検討課題が生じている。
委員会は2007年7月に運営規則の改正を行っているが、こうした状況の変化を受け、改めて運営上の課題について検討を始めることになったもの。
この日は、委員会の指示を受けて事務局がとりまとめた検討事項について説明した。実質的な議論は来月から行われる。

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に2月4日に開かれる「第3回BPO事例研究会」について事務局より説明した。
    当日は、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案をもとに「犯罪被害者とその家族への取材と放送における配慮の必要性」について山田委員が説明し、各局出席者との間で意見を交換する。また三宅委員長代行が、先ごろ発刊された『判断ガイド2010』で、放送倫理について考える目安として設けられた「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」など5つの分類項目について説明するほか、激増する「顔なしインタビュー」の問題についても議論することにしている。
  • 次回委員会は2 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第45回 放送倫理検証委員会

第45回 – 2011年1月

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送のバラエティー番組 『イチハチ』…など

第45回放送倫理検証委員会は1月14日に開催された。
フジテレビの『Mr.サンデー』事案では、当該局から提出された詳細な報告書は、今後同様の事案が発生した時の参考にもなるし、ひいては再発防止の効果も期待できると思われるので、委員会としてこの報告書を公表することの可否を照会したところ、当該局の了解が得られた。それを前提に検討した結果、この事案は、問題の性質、影響度、放送後の対応等を総合的に考慮し、当該局の報告書を公表して、討議を終了することにした。
前回の委員会で継続討議にした以下の2つの番組は、取材方法に問題があり、視聴者に誤解を与えるような内容であった。類似した事案であることから、まとめて審議入りすることに決定した。

  • 毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』(10年11月17日放送)
    8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介したが、その中で、ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介された。視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった事案。
  • テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)
    酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。

議事の詳細

日時
2011年 1月14日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、石井委員、香山委員、是枝委員 重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌に関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、街で偶然見つけたかのように放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。
前回の委員会で、当該局から出された社員研修用の詳細な報告書が、単なる監視体制の強化ではなく、現場の自覚と自発的な取り組みを強調していることなどを評価し、これを公表すれば、他の放送局でこうした事案が発生した場合に、調査の方法やあるべき解決策の指針として役立つのではないか、また、この報告書を他局でも研修等の素材とすることで事前に問題点がチェックでき、同種事案の再発防止にも役立つのではないかという意見が多く出された。そこで委員会から公表の可否を照会したところ、当該局から公表の了解が得られた。
委員会では、この事案で問題となった手法が、審議入りを見送ることで今後も安易に使われる可能性があるなど、この事案の持つ問題の性質・広汎性・影響度を考慮するとともに、これまで生じた同様の事案との軽重を比較検討した。この番組が取り上げた月刊女性ファッション誌が付録のバッグの人気でヒットしているという社会現象自体は現実に存在すること、更に当該局から再発防止に有効だと思われる報告書(社内向けで本来非公開)の公表に協力が得られたことなどを総合的に判断したうえで、審議入りしないことを決めた。

【委員の主な意見】

  • 放送により社会に与えた影響が大きいか小さいかという点と、事が起きた後に局がどのように対応したかは大切なポイントだと思う。これまでの事案に照らして、取り上げなくて良いと思う。
  • 当該局の報告書が厚ければ良いのか、そういう判断基準だと誤解されないかという疑問がないわけではない。しかし現場のスタッフが再発防止のために第三者委員会を作って話し合った結果として考えるならば、よく出来ていると思う。現場のディレクターが何を考えてこうなってしまったかが良く分かる。
  • この報告書の水準で各局がやってくれたら、それがどんどんテレビ界に広まってくれたら、委員会としてはありがたい。
  • こういった問題は、「嘘じゃなくて演出の範囲だ。他もやっている」といった反応も予測出来るが、当該局は不適切表現で、やるべき演出方法ではないという認識を示した。こういった真面目な対応は評価できる。
  • 過去の事案で他局から提出された報告書と比較しても、今回は内容的に充実していると思う。そこを評価しないと、「では、どうすればよいのか」という事になってしまう。

【フジテレビ『Mr.サンデー』の社内研修用報告書】

フジテレビから公表する了解が得られた社内研修用の報告書「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2011年2月16日、ホームページ上に公表した。また、BPO報告No.93にも掲載されている。

pdf公表にあたって_- 委員長前文
pdfフジテレビの報告書 - 「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われた毎日放送の
バラエティー番組 『イチハチ』

昨年の11月17日に放送された『イチハチ』で、富豪の女性が九州にあるホテルを買収するために折衝する模様が放送されたが、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと、視聴者から指摘された事案。当該局からの経緯報告書や新たに提出された資料を基に議論を行った結果、放送倫理上の問題があり、より詳しい事実関係を関係者からヒアリングする必要があるとして、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

昨年の11月8日に放送された『月曜プレミア!』で、酵素飲料を飲み、断食と組み合わせた方法でダイエットに成功した女性が紹介されたが、この女性がその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明した事案。当該局からは、前回委員会に提出した経過報告書に次いで、あらためて詳細な内部調査を行った結果をまとめた報告書が提出された。
毎日放送の事案同様、放送倫理上の問題があり、制作プロセスや事実関係の確認が必要だと判断し、2回目の討議の結果、審議入りすることにした。

【上記2事案に関する委員の主な意見】

  • 制作担当者のチェックが甘かったことが原因で、出演者が仕掛けたわけではないのに、番組が出演者の商売として有利に作用するという結果をもたらした。そういう意味では、2つの番組には共通性がある。
  • 個人であれ企業であれ、取材対象者がメディアを有効利用しようという意図を持っている場合があることを否定することはできない。しかしそれはメディア側のチェックの問題だ。
  • 番組制作者は、出演者の取捨選択についてきちんと判断しなければならないが、その能力が劣化しているのではないか。
  • 民放連の放送基準のなかに、宣伝になるようなものは放送してはいけないという項目(37条)があるのに、「結果的に利用されちゃったね、おしまい」というのはおかしい。気が付いた人が調べればすぐに分かるのに、あなた任せが蔓延している。制作担当者が調べるべきところを自分がやってしまうと現場スタッフの士気が下がる、といった遠慮があるのだろうか。

上記2番組について委員会は、バラエティー番組や情報番組などの番組ジャンルを問わず、テーマの取材対象として取り上げるかどうかを吟味するリサーチの段階で、事実関係や情報の精査がおろそかになっているのではないかとの危惧感を抱いた。この2番組については、共通の問題点があり、それが視聴者の信頼を失うことに繋がるのではないかという観点から、今後、一括して審議入りすることとした。

以上