第34号

NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見

2020年3月31日 放送局:NHK

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは2019年5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。委員会は9月、利用客が会社関係者でないこと等の確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性がうかがわれるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきた。
委員会は、放送倫理基本綱領の「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」、NHK「放送ガイドライン」の「NHKのニュースや番組は正確でなければならない」との規定に照らすと、出演者が本物の利用客ではなかった点、また、出演者が会社関係者だったのにその関係を明らかにしていなかった点において、放送の内容は正確ではなく、したがって、NHKが適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した。

2020年3月31日 第34号委員会決定

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目 次

2020年3月31日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年3月31日午後1時30分からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から都市センターホテル会議室で公表の記者会見が行われた。記者会見には、19社30人が出席した。
詳細はこちら。

2020年7月10日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第34号に対して、当該のNHKから対応と取り組み状況をまとめた報告書が2020年7月1日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

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目 次

  • 1. 委員会決定についての放送対応
  • 2. 委員会決定の放送現場への周知
  • 3. 経営委員会・国際放送番組審議会への報告
  • 4.「Inside Lens」制作関係者などの受け止めや意識の変化
  • 5. 再発防止の取り組み
  • 6. おわりに

第279回放送と人権等権利に関する委員会

第279回 – 2020年3月

「訴訟報道に関する元市議からの申立て」を審理
委員会決定を4月に通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2020年3月17日(火)午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、松田委員、水野委員

1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫元死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱っており、父親の死が利用されて名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、生放送の制約の中で複数の執行情報等を分かりやすく伝えたもので、人権侵害には当たらないなどと反論している。
今委員会では、担当委員から決定文の草案が提出されて意見交換を行った。これらの意見を踏まえて修正案を作成し、次回委員会で引き続き検討することとした。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉が19年4月11日の『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張した。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。テレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実として、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、前回審理を受けて修正された決定文案を委員長が説明し、続けて文全体の詳細な確認が行われた。同時に委員の意見交換も行われ、若干の修正を加えたうえで、決定内容は委員会で承認され、4月に通知・公表することになった。

3.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理

札幌テレビは、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入し、北海道庁での申請手続きをする様子などを放送した。この放送に対して取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。
これに対して札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものであり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会では、ヒアリング開催に向けて手続きを進める方針が確認され、起草担当委員が論点と質問項目の検討に入ることになった。ただ、実施時期については、新型コロナウイルスの感染拡大という状況を見極めながら決めることとなった。

4.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理

必要な書面を待っている状態のため実質的な審理は行われなかった。
フジテレビは2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を放送した。放送は、近所の進学塾の生徒たちが大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えていることに、周辺住民から苦情が出て、行政が規制を始めたことを紹介したもので、番組では、周辺住民のインタビューが流された。
この放送でインタビューに答えた女性から、突然マイクを向けられ質問された、一度も目撃したことがなく理解に苦しむ内容なのに、誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。

5. その他

  • 運営規則改正について報告
    改正が理事会で承認されたことを受け、改正内容の送付による会員社への通知、ウェブサイト掲載による告知を経て、4月1日から施行することが報告された。

  • 新型コロナウイルスに関連した報告
    新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、事務局の対応や委員会運営上の留意点等、事務局より説明があった。

以上

第147回 放送倫理検証委員会

第147回–2020年3月

北海道放送『今日ドキッ!』について審議 4月に委員会決定を通知・公表へ

第147回放送倫理検証委員会は3月13日に開催された。
委員会が昨年12月10日に通知・公表した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、再発防止に向けての取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、意見書で指摘した課題に対し適切な対応が行われているとして、了承し公表することにした。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の再々修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、4月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
番組で取り上げている特定企業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員から意見書の原案が示された。

1. 読売テレビ『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見への対応報告を了承

昨年12月10日に通知・公表した、読売テレビのローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』「迷ってナンボ!大阪・夜の十三」に関する意見(委員会決定第31号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。報告書には、再発防止に向けて「人権研修会」を新設したことやBPO委員を招いて実施した勉強会の様子、その後の全社的な意識の変化についてなどが詳細に記されている。委員からは「番組のコンテンツ力やテレビのブランド価値を高める『攻めのコンプライアンス』ができればと思うというアンケートの感想に、前向きな姿勢であるとの印象を受けた」「良い番組づくりにはお金と人が必要だなどとする勉強会での社長の決意表明に感銘を受けた」「再発防止を図る取り組みや今後の改革に期待する」といった感想が述べられ、意見書で指摘した課題に対し適切な対応が行われているとして、当該報告を了承し公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

2. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について審議、4月に通知・公表へ

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカル情報番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本来の選挙区の区切りとは異なった報道を行うことで有権者の投票行動をゆがめたのではないか、また特定候補者だけを取り上げ他の比例代表候補者や政党を報道しなかったことは選挙の公平・公正性を害しており放送倫理違反となる可能性があるとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りし、議論を重ねてきた。今回の委員会では、担当委員から示された意見書の再々修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、4月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. スーパーの買い物客密着企画で不適切な演出を行った『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換が行われた。

4. 海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組企画で不適切な演出を行ったTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、昨年12月の委員会で審議入りした。この日の委員会では、意見書の原案が示された。次回委員会には、意見書の修正案が提出される予定である。

以上

2020年3月24日

放送人権委員会、運営規則の一部改正

BPOが今年度行った認知度調査において、BPOを知る人が70%と大幅に増える一方、組織の設立趣旨や活動内容などについて理解が深まっていない実態が浮かび上がった。こうした状況の中で、放送人権委員会に届く申立ても、提出件数が増加し内容が複雑化する傾向がみられることから、委員会において申立ての扱いについて検討が重ねられた。
委員会の議論では、申立てが審理要請案件として委員会に諮られた際、委員会の議論の末、審理入りをしないと決定するには運営規則第5条「苦情の取り扱い基準」に明文規定がないこと等が指摘された。こうした状況を改善するべく委員会において議論され、第278回委員会で「苦情の取り扱い基準」の改正案をまとめ議決した。その後、規約に基づき、理事会で改正が承認された。改正内容は、3月中旬に会員社に対して文書をもって通知されたほか、一般にはBPOのウェブサイトに3月24日より掲載し告知される。改正した運営規則は4月1日から施行する。
この改正は、申し立ての要件に新たに制限を加えるものではなく、これまでどおり権利の侵害を受けたという人から申立てを受け付け、そのうえで審理入りするかどうか委員会が議論し判断するが、改正は委員会の判断の拠り所を明確にしたもの。新年度から施行するこの改正は、4月1日以降に事務局に届いた申し立てから適用する。(改正規則の全文はこちら)pdf

以上

2020年2月14日

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」に関する委員会決定の通知・公表

[通知]
2020年2月14日(金)午後1時からBPO会議室において、奥武則委員長と、事案を担当した市川正司委員長代行と水野剛也委員が出席して、委員会決定を通知した。申立人と、被申立人のテレビ東京からは報道局長ら3人が出席した。
奥委員長が決定文にそって説明し、結論について「プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もない。しかし、要望はある」とした上で、「アレフの動向を伝えたテレビ東京の番組には、全体としては公共性・公益性があると考える。だが、アレフが団体規制法の観察対象だからといって、申立人個人の人権を侵害してよいということにはならない。個人のプライバシー保護を徹底させることは、放送の目的と何ら矛盾することではなく、両立しうることであり、それは本件ニュースにもあてはまる。今回、申立人の音声の一部が加工されないまま放送されたことを、テレビ東京は編集上のミスであり単なる不体裁と説明しているが、これをプライバシー保護に関わる問題と受け止め、ボカシの濃さや音声加工についての技術的な処理の問題、事前のチェック体制など段取りの問題、プライバシー保護に対する関係者の意識の問題など、種々の観点から再発防止に向けた取り組みを強めることを要望する」と述べた。
続いて、市川委員長代行が補足説明し、「権利侵害はなく、放送倫理上の問題もないという結論となったが、結論に至った過程はテレビ東京の主張とは少し違う。委員会は、一部の人にとってではあるが、”申立人と特定はできた”という前提に立ち、個人のプライバシーがテーマとなるととらえて議論を進めてきた。テレビ東京には、議論の過程をよく理解し、放送局内のプライバシー保護の意識をさらに深めてほしい。番組全体の公益性・公共性があっても、そこに登場する人物のプライバシーをできるだけ保護するという問題は切り分けて対応してもらいたい」と発言。
水野委員は、「決定文をよく読めば、私たちの言いたいことは理解してもらえると思う。委員会の要望や付記された意見を心に留めてほしい」とテレビ東京への期待を述べた。
決定を受け、申立人は「自分の主張を一定程度くみ取ってもらえたと感じている」と発言。一方、テレビ東京は「決定文を熟読し、指摘された点を真摯に受け止め、今後の放送に生かしていきたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして、委員会決定を公表した。21社32人が取材した。テレビカメラの取材は、当該局のテレビ東京が行った。
まず、奥委員長が判断部分を中心に、「要望あり」の見解となった決定を説明した。続いて、市川委員長代行と水野委員が補足的な説明をした。

その後の主な質疑応答は、大要以下のとおり。

(質問)
テレビ東京は、2014年にアレフを巡る報道で放送人権委員会からプライバシーの問題で「放送倫理上の問題あり」と指摘されたにもかかわらず、今回、同じような事案が起きた。テレビ東京がどの程度、前回と今回のことを深刻に受け止めているか、疑問が残る。前回の事案を踏まえて、委員会が今回「要望あり」とした点について、ポイントを教えてほしい。
(奥委員長)
放送人権委員会決定第52号は、さまざまな点で明らかにアレフ信者のプライバシーへの配慮を欠いたとして「放送倫理上の問題あり」とした。今回の事案とは、問題の質が違うと思う。ただ、同じプライバシーについて、過去に問題となったことがあったことは事実であり、その点は指摘し、考えてもらいたいというのが要望の趣旨だ。
(市川委員長代行)
前回の番組は、青年信者の内心に迫った内容で、放送により明らかになった事実の質が今回とはかなり違う。また今回は、前回とは違い、編集上のミスによって起こったことだ。教団に対して突っ込んで取材することの必要性は委員会も高く評価している。ただ、一般信者のプライバシーを守ると決めたのならば、徹底してもらいたい。その切り分けが中途半端だったいう点は通底する問題かもしれないが、テレビ東京がまったく反省しておらず、再び問題を起こした、というふうにはとらえていない。
既にテレビ東京でも取り組みを行っていると聞いているが、今回の問題をとらえなおして、放送局内で勉強してもらいたい。本日、テレビ東京からも、多くのスタッフで問題意識を共有する考えだという発言があったので、期待している。

以上

2020年2月13日

TBSテレビ『消えた天才』映像早回しに関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、2月13日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、岸本葉子委員の3人が出席し、TBSテレビからはスポーツ局担当の取締役ら4人が出席した。
神田委員長は委員会決定について、「今回の放送は、1993年に出されている『放送番組の倫理の向上について』と題する提言と民放連の放送基準(32)に抵触し、過剰な演出であるとして放送倫理違反があったと判断した」と説明した。続いて、岸本委員が「意見書の立場は、個人に責めを帰するのではなくその人がどうしてそうするに至ったか背景や構造的な問題がないかを探り学ぼうというものである。現在の技術環境に合わせたチェックの仕組みを構築するのはすぐにできることではなく、そうした状況にあっては個々人のモラルによるところが大きい」と述べた。続いて、鈴木委員長代行が「今回のように当該局が自ら問題のありかを探って公表するケースはそう多くはない。あるスタッフがプロデューサーに問題を報告してから公表まで1週間であり、ものすごいスピード感である。報告しなければいけないと思ったスタッフの感覚は健全であり、こうした感覚は今後いろいろなことに生きる」と述べた。これに対して、TBSテレビは「番組作りというのは、小さいかもしれないけれど、一個一個の判断の連続で最後に番組になっていくものなので、その判断が技術革新の便利さゆえに、安易になってはいけないということを教えていただいた。技術は進歩するが、立ち止まって番組作りのプロセスの中で、作り手が何を大事に、何を伝えるかということをきちんと踏まえて作れるような制作者のリテラシーアップと、番組を通じての視聴者への還元にこれから努めていきたいと思う」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社39人が出席した。
はじめに神田委員長が意見書に沿って、委員会の判断、番組の詳細、背景と問題点等を説明した後、「意見書の最後の段落に『技術革新が下げた心理的なハードルは、個々人のモラルによって押し上げ、保たなければならない状況にある』と書いている。『モラル』は『放送倫理』に置き換えることが可能であり、あらゆる放送局で妥当する普遍的な課題をつきつけている。各局各人に放送倫理に基づく対応を自主自律の下で検討してもらい、再発がないようにと強く願っている」と述べた。続いて岸本委員が「意見書に四つの背景と問題点を書いた。特に後の二つ(「技術革新と心理的ハードルの低下」「チェックの仕組みの限界」)は局や部署を問わず放送に携わる人が共有する課題だと思っている。今回の特徴は、問題が内部での気付きによって発覚し、すみやかに調査を開始したことである。違和感を感じたことを上司に上げる勇気が今回の特筆すべき自主自律的な対応につながった。こうした気づきとそれを口にして、問題の共有・解決につなげていく力学が働いたことをとても頼もしく思っている」と述べた。鈴木委員長代行は「ヒアリングで、早回しにかかわった人たちに悪意はまったくなく、むしろ"消えた天才"に対して、こんなにすごかったんだとつい強調したいためにこういう行為に走ったと改めて確認できた。組織的に確立された手法が継承されているわけではないということがわかった。スポーツ局内では、スピードを変える加工は悪い意味ではなく日常的に行われていた。スポーツ中継のリプレイでの早送りやスローモーションなどは、視聴者も了解しているから手法として認められているが、今回はまさかここで速めているとは思わないところで行われた。視聴者との約束を超えた映像加工であり、過剰な演出であると言わざるを得なかった。技術的に可能になればなんでもやっていいわけではなく、やっていいことと悪いことを当該局だけでなく広く放送の現場の人に考え”てほしい」と述べた。

記者会見での主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: (意見)当該局の自主自律的な対応を今回のような形で意見書で評価して盛り込んでもらえると、委員会がこういう対応を自主自律的なこととして受け止めていることがよくわかる。
A: 意見書の中でも常に当該局の自主自律的な姿勢は適切に評価するように努めている。審議入りした案件だけではなく、討議入りするかどうか、また、討議から審議入りするかどうかのステージにおいても自主自律的な取り組みをしているかどうかを重視している。討議入りした案件について審議入りするか否かの基準については、2009年7月に川端前委員長が委員長コメントを出している。ひとつは放送倫理違反の程度の大小、もうひとつは自主自律的な取り組みをしているかを勘案して審議入りするかどうかを判断するとしている。審議入りした案件において、放送倫理違反があるとしても、局の事後的対応の評価を明らかにして、すべての局に自主自律的な姿勢の重要性と大切さを伝えていきたいと思っている。(神田委員長)
   
Q: 審議入りの経緯を改めて聞きたい。どういうきっかけでBPOに伝わったのか。元々野球の投手の件を調べた結果、ほかの3件が明らかになったのか。
A: 元々当該局が4件を公表した。それを基にBPOに報告書を提出してもらった。その時点で局の一連の対応はわかっていたが、もうひとつの審議入りの条件である、放送倫理違反の程度が重いか軽いかについて、委員会としては、初めてのケースであるし、こういう手法で早回しが行われたことに驚きがあり、事後対応はよいけれども審議入りせざるを得ないと判断した。技術革新の問題には、当該局だけではなく広く放送界に警鐘を鳴らすテーマがあるのではないかと考えて審議入りした。(鈴木委員長代行)

以上

第222回 放送と青少年に関する委員会

第222回-2020年2月

視聴者からの意見について…など

2020年2月25日、第222回青少年委員会をBPO第1会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、1月16日から2月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
人間・悪魔・天使などが同居する架空の世界の風俗店を男性主人公が渡り歩く深夜のアニメ番組について、「性的なアニメで、子どもが見たらどうするのか」「ただ下品で過激であるだけでなく、女性をモノ化している」などの意見が、先月に引き続いて寄せられました。また、この番組が一部で放送中止なったことなども受け、今委員会でも議論しました。その結果、次回委員会で全委員が番組を視聴し、「討論」することになりました。
2月の中高生モニターのリポートのテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想で、課題番組は、2019年度民放連賞〔青少年向け番組〕最優秀受賞作品『ハイスクールは水族館!!』(南海放送制作)でした。モニターからは、「高校生があそこまで一つのことに熱中して、ある人は世界初の試みを、ある人は研究に励み、さらには答えをつきとめてしまう等、その積極性や情熱にとても刺激を受けた。…よく環境問題について考えたりするときに、一中学生の私には何もできない、とどこか思っていたけれど、自分のしたいことをまっすぐに突きつめて、その結果周りの人の心を動かしているこの高校生たちを見て、大切なのは強い意志と発信していくことであると学んだ」、「街の人が釣った魚を持ってきたシーンも心に残りました。街全体がこの水族館をよくなるように思っているのに、心が温かくなりました。豪雨にも負けないで毎日、学校に来ている子もいたことに感動しました」「番組の中で生徒さんの魚に対する愛情が垣間見える場面が多々ありました。生徒さんたちが自分たちで考えて行動できるのはその課題に対して興味があるからだと思いました。私はこういう環境こそが未来を担う若者に必要な自分で考える力を身につける絶好の場なのかもしれないと思いました」「生き物の世話をしている場面や、一人の生徒の一日の仕事などにも焦点を当ててほしかった。あくまでも学生の部活動なので、普段どういった生活を送っているのかも紹介したほうが、親近感がわいたのではないかと思う。また、生徒が飼育している生物の説明がもう少しあれば、もっと生き物にも興味が生まれただろう」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は、3月24日に定例の委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2020年2月25日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

架空の世界の風俗店を男性主人公が渡り歩く深夜のアニメに対して、「深夜帯とはいえ未成年の目に触れる危険性も高く、性風俗店を肯定的に描いたり倫理上問題がある」「地上波での放送に危機感を覚える。未成年も予約しての視聴が可能だ」などとの意見が先月に引き続き、今月も寄せられました。また、一部の放送局で放送が中止になったことも受け、今委員会でも議論を行いました。
委員からは、「肯定的に売買春を描いているという点は気になる」「青少年委員会としては、深夜かなり遅い時間に放送しているということを踏まえて意見を考えないといけないだろう」「子どもが見る可能性のあるアニメという観点からすれば、深夜帯の放送であっても踏み込んで考えてもいいのではないか」「売買春といってもSFであり、見ても別にいやらしいといった感じではない」などといった意見が出されました。この件に関しては、次回委員会で全委員が番組を視聴し、「討論」することになりました。

<継続「討論」案件について>
一人の男性お笑い芸人が女性アイドルグループのプロデュースをするというバラエティー番組の企画において、お笑い芸人が選ぶ側の立場を利用して、選ばれる側の若い女性に好き放題振る舞うような演出に対して、「世の中を知らない若い女の子が見れば、権力がある人には媚を売らないといけないと思うだろう」「未成年の女性を食い物にしたような内容で不快になった」「女性がバカにされているよう。子どもたちや若者の本当に頑張りたい子が見ていてつらいのではないか」などとの意見が寄せられた番組の「討論」が引き続き行われました。
委員からは、「リアリティショーに見せかけたバラエティー。そのリアリティショーに見せることで視聴する青少年、特に小さい子どもが世の中というのはこういうところなんだと考えてしまうような可能性があるのではないか」との意見があった一方、「番組の捉え方は多様だし、この企画を放送した時点で、このような流れになるということを視聴者は分かっていて、それを共有していた」などの意見も出されました。議論の結果、この件は「審議」には進まないが、「委員長コメント」を出すことになりました。

委員会の議論を受け、榊原委員長から、次のような「委員長コメント」が出されました。「委員長コメント」とは、「審議」には進まないが、青少年委員会の委員長として、特に注意してもらいたい点、配慮してほしい点などを述べたものです。

2020年3月9日

「リアリティショーを模したセクハラ・パワハラ場面を含むバラエティー番組」に関する委員長コメント

放送と青少年に関する委員会
委員長 榊原 洋一

一般女性のアイドル歌手候補者のオーディション審査過程で、プロデューサーの役割を担った男性お笑い芸人が、候補者に対してセクハラ・パワハラを行う場面をリアリティショーとして見せる連続バラエティー番組が、昨年放送された。

アイドル候補者は初回放送スタート時点では番組の意図を知らされていない未成年を含む一般人であり、途中で番組の性質について知らされたものの、選抜されるためにセクハラ・パワハラ行為を我慢しなくてはならないというリアリティショーとして番組は進行した。そのため青少年の視聴者が、このようなセクハラ・パワハラの経験を強要される現実があるのだ、と思い込むなどの悪影響を及ぼすとして、視聴者から多くの批判的意見が寄せられた。

視聴者からの多数の批判的意見を受けて、青少年委員会ではこの番組6本をすべて視聴し「討論」の対象とした。

視聴者にリアリティショー番組のようにみえるバラエティーという制作手法はユニークであり視聴者だけでなく、制作者の間でも評判になったと仄聞する。しかし前述のように多くの視聴者には、一般参加者(アイドル歌手候補者)にオーディション審査過程でお笑い芸人によるセクハラ・パワハラが行われたと見え、それが批判的な視聴者意見につながった、と考える。

6回の番組進行を視聴すると、後半ではセクハラ・パワハラを続けたお笑い芸人のプロデューサーが、最後に罰を受けるという勧善懲悪のエンディングであった。とはいえ、お笑い芸人のプロデューサーへの処遇は、CD購入者の数で決定されるというリアリティショーの形は最後まで維持されており、青少年の視聴者はこの番組をフィクションとは見ない可能性がある。

大人や年長の青年は、こうしたリアリティショーを模したバラエティー番組の、リアルと作り込まれたシナリオの微妙なバランスを理解できるかもしれないが、特に年少の視聴者が、実社会のオーディションなどにおいて、このようなセクハラ・パワハラが行われているという社会のイメージを形成する可能性がある。こうした現象は「ミーンワールドシンドローム」(mean world syndrome:悪意に満ちた世界の意 注:アメリカ小児科学会リポート”Policy Statement―Media Violence”より)と呼ばれ、青少年の世界観に悪影響を与えるものとして知られている。特に本番組を視聴した子どもに、自分たちが将来大人になって生きていく実社会は、パワハラやセクハラを我慢しなければよい職が得られない場所である、という誤った観念を植え付けてしまう危険性があるのである。

セクハラ・パワハラに対する問題意識が広く社会的通念として確立しつつあるなかで、青少年への影響を考慮し、番組の中にセクハラ・パワハラを容認するような内容が含まれないよう、番組制作者は十分に注意されたい。

以上

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした2月のテーマは、「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」でした。課題の番組は、2019年度民放連賞〔青少年向け番組〕最優秀受賞作品『ハイスクールは水族館!!』(南海放送制作)で、愛媛県立長浜高等学校の「水族館部」を3年にわたって取材したものです。「水族館部」は全国的にも珍しく、部員の生徒たちは主体的に魚の世話や研究に打ち込んでいます。困難に直面しても決して諦めることはありません。そんな生徒たちが運営する「長高水族館」は地元の人たちに愛され、月に一度の開館日には多くのお客さんで賑わいます。生徒たちと地域の強い結びつき、好きなことをとことん突き詰めようとする前向きな姿勢が全編を通して伝わってくる番組でした。今回は、全部で27人のモニターから報告がありました。
寄せられた感想には、「やりたいことに向かって努力する姿がとても輝いていた」「自分と同年代の人が自ら考えて行動する姿に刺激を受けた」「自分も一つひとつの壁を乗り越えていきたい」という内容が多く、モニターたちが画面に映る同年代の姿に親近感を覚え、また、自分を重ね合わせ、共感しながら視聴した様子がうかがえました。「地元」という視点から、「郷土愛に憧れを感じた」「自分たちの世代が地域活性化に一役買えると実感した」という声や、「テレビの役割として、地域のニュースを伝え、地域の伝統や歴史を継承していくことが大事だと思う」という意見もありました。他にも、放送局への要望として、「自分たちと年齢の近い人たちの取り組みや、努力している姿を紹介するような番組をもっとたくさん制作してほしい」という思いを綴ったモニターが少なくありませんでした。
いつもと同様に、「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。
「自由記述」では、新型コロナウイルスの報道に関連する内容を記述したモニターが5人いました。また、ドラマやバラエティー番組について、似た設定やテーマの番組が増えていることへの疑問が寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では『欽ちゃん&香取慎吾の第97回全日本仮装大賞』(日本テレビ)に4人が、『あいつ今何してる&そこの〇〇止まりなさい。 3時間合体スペシャル』(テレビ朝日)と『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)にそれぞれ2人が感想を寄せています。

◆委員の感想◆

  • 【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

    • 番組から自分のことを省みたモニターが多かった。同じ年代の子がここまでやっているのに自分は十分にできているとは言えない状況にある、彼らの活動を見ながら自分が何もできていないということに気づいて見習わなければならないと思ったというようなことが書かれていた。同世代の姿から自分の状況というものが浮き彫りになり、それに対して考えることがあったのだろうと感じた。

    • モニターの中に、「一中学生の私には何もできないとどこか思っていたけれども、自分のしたいことをまっすぐに突き詰めて、その結果、周りの心を動かしている長浜高校の生徒を見て、大切なのは強い意志と発信していくことであると学んだ」と書いた人がいた。番組を見たことで、自分でも何かできるという勇気と希望のかけらみたいなものをつかんだというのが良かった。

    • 多くのモニターから、最初はみんな見たくなかったけれども見たら面白かったという素直な感想が寄せられた。ドキュメンタリーの一つの魅力というか、発見させていくという力があったんだと思った。

    • 高校生ぐらいになるともう少し冷めた感じで番組を視聴するのかと思ったら、純粋に、同世代の頑張る姿にやっぱり惹きつけられのだと知り、そのことに感動した。

    • 番組を見て、「生徒の生活にもうちょっと密着したほうがよかったんじゃないか」とか「生物の紹介にも時間を使ったほうがよかったのではないか」というような、番組を良かったと感じたうえでの意見を書いてくれた人がいた。これはぜひ制作者に伝えたいと思った。

    • ドキュメンタリーは全般的に敷居が高いということが言われるが、見たくなかったけど見てみたら面白かったというのでは番組としてはダメ。見てみようと思わせるにはどうしたらいいのか、その辺が課題だと思う。

  • 【自由記述】

    • ドラマについて「どうして似たようなテーマになってしまうのか?」という質問があったが、会議でそのときのトレンドやテレビマンたちが共有している常識、それまでのドラマの流れなどを考慮すると、どうしても似たような志向になってしまうのかなというふうに思う。特に今期は、医療ものとミステリーものにばかり集中してしまっている。別に医療じゃなくてもいいようなドラマで、設定だけが医者というのが多くて、ちょっとその辺がどうなんだろうというふうに疑問を感じる。

    • 新型コロナウイルス関連のニュースが増えていて、何だか同じことをずっと放送しているようなのがちょっと気に入らないというようなことが書いてあった。やっぱり子どもたちからすると同じことをずっとやられることに対して疑問がわくのかな、と思った。しかし、視聴者みんながずっとテレビを見ているわけじゃないから見たときに最新の情報が手に入ったほうがいい。そういうことが若い世代にはあまり認識されないのかなと感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

    • 長浜高校の生徒たちの魚への愛情が表情や魚の飼育の丁寧さなどから、ありありと伝わってきて、見ていてとても楽しかったです。そして、自分たちで実験を重ねて、クラゲから刺されないようにするクリームを作って商品化するなど、一つのことにそこまで熱意を持って接するということが、私にはあまり無かったので、本当に見習いたいと思いました。(東京・中学1年・女子)

    • 私と2、3歳しか年の差のない高校生が、あそこまで一つのことに熱中して、ある人は世界初の試みを、ある人は研究に励み、さらには答えを突き止めてしまうなど、その積極性や情熱にとても刺激を受けた。特にクラゲに刺されないクリームをお姉さんの研究成果を継ぎ、会社と共同で商品化までさせたことに衝撃を受けた。部員それぞれが多くの努力を積んでいて、強い意志を持っていて、だからこそ活動が多くの人に認められているのだと思う。良く環境問題について考えたりするときに、一中学生の私には何もできない…、とどこか思っていたけれど、自分のしたいことをまっすぐに突き詰めて、その結果周りの人の心を動かしている長浜高校の生徒を見て、大切なのは強い意志と、発信していくことであると学んだ。(東京・中学2年・女子)

    • 地元の人から魚をもらったり、地元の人を高校に招待し魚を見てもらったり、ぼくの中学校は地元の人との交流があまりないので羨ましく思いました。(東京・中学2年・男子)

    • 一つの高校を中心に、一度なくなってしまった町の水族館を再び…!という強い願いがとても上手に切り取られていて、でもそれもレンズ越しだからきっともっと長浜高校の生徒たちが思っていることは強くて熱いのだろうなと思えるようなドキュメンタリーに出会ったのはとても久しぶりだったので、すごくテンションが上がりました!(福岡・中学2年・女子)

    • 生徒の成長や魚への思い、地域の人の優しさが伝わる面白い番組でした。(北海道・中学2年・女子)

    • 街の人が釣った魚を持ってきたシーンも心に残りました。街全体がこの水族館がよくなるように思っているのに、心が温かくなりました。豪雨にも負けないで毎日、学校に来ている子もいたことに感動しました。そうやってみんなで支え合っているから、水族館部がみんなに慕われるのだと思いました。(兵庫・中学3年・女子)

    • この活動は水族館がある長浜の町を愛していなければできないことであると思うし、その郷土愛を高校生が持つことができる長浜の町は素敵だと感じます。私自身、地元のことは授業を通して知ったことの知識だけで、もっと地元のことを知りたいと思いました。私たちの世代が地域を活発にさせることのできる力を持っていることを実感しました。私も春から高校に進学し、新たな生活になります。水族館部で紹介されていた高校生のようになにか自分の得意な分野で、興味のある分野で夢中になれるものを見つけていきたいです。地元でなくても、全く知らない会ったことのない人でも、同世代が頑張っている姿、努力している姿をもっと画面越しで見る機会があるといいなとこの番組を通して感じました。そのような番組があればまた見てみたいです。(福岡・中学3年・女子)

    • 私はすごいなと思いました。生徒さんたちは魚が好きでこの部活に入部したそうです。番組の中でも生徒さんの魚に対する愛情が垣間見える場面が多々ありました。生徒さんたちが自分たちで考えて行動できるのはその課題に対して興味があるからだと思いました。私はこういう環境こそが未来を担う若者に必要な自分で考える力を身に付ける絶好の場なのかもしれないと思いました。あと、水族館部は地域にとても密着していました。地域の温かさがあるからこそ水族館部はより良い活動ができるのかもしれないと思いました。(鳥取・中学3年・女子)

    • 今まであらゆることを中途半端にしてきた私だが、何かに真剣に取り組み、やり通すことで、貴重な経験と達成感を得たい、と触発された。一般の同年代のそういった努力と活動を、同年代が見ることは、大人にやりなさい、頑張りなさいと駆り立てられるよりも、素直に背中を押されると感じた。災害に遭ってもめげずに一度も休まず水族館を公開し続けてきた長高水族館部のように、一つひとつの山を乗り越えていきたい。(東京・高校1年・女子)

    • 出てくる生徒たちが私と同年代だったこともあり、全然知らない高校生たちでしたが、遠くに住んでいる友達のような親近感がわき、引き込まれるように40分の番組を視聴しました。彼らの「目標」や「やりたいこと」に向かって一心不乱に努力する姿はとても輝いており、私の日々の活力にもなりました。(神奈川・高校1年・女子)

    • 全体を通して見やすかったうえに面白かった。しかしながら、生き物の世話をしている場面や、一人の生徒の一日の仕事などにも焦点を当ててほしかった。あくまでも学生の部活動なので、普段どういった生活を送っているのかも紹介した方が、親近感がわいたのではないかと思う。また、生徒が飼育している生物の紹介も少なかった。もう少し説明があれば、もっと生き物にも興味が生まれただろう。(東京・高校1年・男子)

    • 私は愛媛県に住んでいるので、長浜高校の水族館のことや国際学生科学技術フェアでの入賞などの活躍はもちろん知っていたのですが、西日本豪雨の後もずっとやっていたことやもともと町営長浜水族館があったことなどは知らなかったので、この番組を通して地元のことをさらに学べました。テレビの重要な役割である、地域のニュースを伝え、地域の伝統や歴史を継承していくという役割をも果たしている、よい番組だと思いました。(愛媛・高校2年・女子)

    • 個人的にはトミーのハマチショーが一番印象に残りました。見に来た人を喜ばせるために一年の歳月を掛けて訓練し、見事成功したのは素晴らしいと思いました。本当に見習いたいと思うばかりです。私も地域に目を向けて、自分にできることは何かを模索したいと思いました。(石川・高校2年・男子)

    • 地元と、魚に対する愛が素敵だなあと感じました。先生が主となっているのではなく、生徒が積極的に魚の生態や習性を知っていて、一般の人に公開するときの説明や、ショーなどの工夫が、本当に魚が好きだからこそできることだと思います。けれど、好きだからと言ってここまでこなせる人はなかなかいないので本当にすごいと思いました。(石川・高校2年・女子)

    • ファーストインプレッションとしては、正直あまり面白そうだなとは期待していませんでした。ですが、見てみると想像をはるかに上回る面白さに気づけば家族全員で見入ってしまいました。(広島・高校2年・男子)

    • 私がこの番組を見て考えさせられたのは、日本教育の未来形でした。番組を見たとき、これから抱えていく問題をどうしたら解決へ導けるのか、参考になるような気がします。教育において無意識に自主自学の精神が育てられていること、よく分かりました。また、それぞれ自ら課題を見つけ解決する思いの中に、プラス地元を愛する気持ちが強くあることにも感動しました。私も小学校が統廃合しています。そのときの寂しさや地域の方の落胆ぶりから、子どもながら何とかしたいという思いがあり、その部分は重ねて見ていました。この番組は、これからの日本で大切になってくるものが詰まっているにもかかわらず、重さや暗さがないので、フラットに見られてよかったです。本当に必要な学びのあり方、学校と地域の密接で温かい繋がりは幹の太い学生を育てていることなど、素晴らしいと思います。私はこの番組を見てもっともっといろいろなことにチャレンジしてもよかったのではないか、できたのではないかと振り返ることができました。このようにいろいろな取り組みをしている学校を紹介する番組は少ないと思うので、増えるといいなと思いました。(奈良・高校3年・男子)

    • 高校生にとって大人や社会との壁はとても大きなものであり、何か言っても受け入れられてもらえなかったりして自分の夢や希望をあきらめてしまうことが多いです。しかし、長浜高校のある地域や学校の大人たちは、子どもの主体性を重視して、決して否定せず、背中を押すように応援してくださっていました。私自身もいろいろなことにチャレンジしていきたいと思いました。(東京・高校3年・女子)

    • 最も強く印象に残ったシーンは、豪雨後からの部員の姿です。自分よりもまず魚を心配し、一般公開までの限られた時間でもめげずに準備に取り組む姿勢からは「魚への強い愛情」が伝わってきました。見に来てくれたお客さんがハマチショーを見て笑顔になったシーンで思わず涙が出そうになりました。一度実際に訪れたいなとも思いました。(佐賀・高校3年・女子)

  • 【自由記述】

    • 最近、番組名に『東大~』とつくものが多いなと感じます。”東大”がつくと興味を持つ人が増えるという計算なのかなと思います。実際に私もつい見てしまうことが多いです。(兵庫・中学1年・女子)

    • 今期のドラマは医療系の作品が多いです。また、日テレ系の『知らなくていいコト』とTBS系の『テセウスの船』はどちらのドラマも主人公の父親が無差別殺人犯ということがストーリーの軸になっています。まとめると、今期のドラマは局を超えてかぶっている部分が多いと思いました。それぞれのドラマは面白くて続けてみているものもありますが、なぜこのようにかぶってしまうことがあるのでしょうか?(鳥取・中学3年・女子)

    • 最近、コロナウイルスによる肺炎のニュースが毎日報道されています。17時のニュース、19時のニュース、21時のニュースと何回も「〇〇人の感染が確認」などと聞くと、さっきのニュースから増えているのか、そのままなのかがよく分からなくなるので、「〇時時点で」のように伝えていただけるともっと良いと思います。(神奈川・高校1年・女子)

    • コロナウイルス関連のニュースが増えている。とても大事なニュースであるため、毎日進展があるごとに報道がなされているのは必要なことだと思う。だが意味がないのではと思えるペースで報道をするのは理解できない。例えば1,2時間に1回のペースでクルーズ船やホテルの中継映像を映しているときだ。具体的な進展がないにもかかわらず、やみくもに話題になっている現場を映すのは適切ではないと思える。何度も報道を見ることで、視聴者に誤ったイメージや認識を刷り込みかねないためだ。(東京・高校1年・男子)

    • 『NHKスペシャル 車中の人々 駐車場の片隅で』(NHK 総合)衝撃的でした。車で生活している人がこんなにも沢山いて、本当は家に住みたいけれども住めないなどさまざまな理由を抱えた人々の現実に、心が痛みました。同時に、今回のNHKの取材によってこの問題が深刻であったことが分かり、メディアによる独自取材や発信することの重要性を感じました。(東京・高校3年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『欽ちゃん&香取慎吾の第97回全日本仮装大賞』(日本テレビ放送網)今まで何回も見てきましたが、そのときそのときの流行のものが出てくるのが面白いな、と思いました。今回はタピオカを題材にしたものが多くありました。(兵庫・中学1年・女子)

    • 『欽ちゃん&香取慎吾の第97回全日本仮装大賞』(日本テレビ放送網)母が、昔からある番組で大好きなので毎年見ています。今のテレビ番組では少ない、昭和の雰囲気がとてもある番組で私にとっては新しく新鮮な、母にとっては懐かしい番組でした。仮装大賞は笑える番組なだけではなく、心温まる番組だと思います。アナログなモノマネの様子や、家族で一体感のある演技をしたり、子どもたちが一生懸命仮装を披露する姿にいつも心が和んでいます。今の時代にはあまりない、優しい笑いの番組でとても好きです。(東京・高校3年・女子)

    • 『あいつ今何してる&そこのOO止まりなさい。3時間合体スペシャル』(テレビ朝日)普通の人にはない経験を持つデヴィ夫人が登場したことで、普段の『あいつ今何してる』とは一風違った雰囲気だった。いかにもスペシャルらしい内容で面白かった。(東京・高校1年・男子)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビジョン)この番組は毎週見ています。いろいろなことに子どもがチャレンジする姿に毎週感動しています。(広島・高校2年・男子)

    • 『サンドイッチマンが認知症とガチで向き合ってみましたTV』(CBCテレビ)誤解や先入観で接することは当事者や支える人たちを含め、誰にとってもよいことではないと思います。サンドイッチマンがVR体験をした映像は衝撃的ではありましたが、認知症の人に無理強いはよくないことだと思いました。(愛知・中学2年・女子)

調査研究について

担当の中橋委員より、調査研究(「青少年のメディアリテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関して、放送局へのヒアリングなど予備調査の進捗状況について報告がありました。

今後の予定について

  • 2月15日に開催された学校の先生方と青少年委員会委員との意見交換会について参加委員から感想を聞き、総括しました。

以上

第278回放送と人権等権利に関する委員会

第278回 – 2020年2月

「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など

議事の詳細

日時
2020年2月18日(火)午後3時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案 ヒアリングと審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の執行情報などを分かりやすく伝えたものであり、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、申立人と被申立人にそれぞれヒアリングを行った。
申立人は、フリップやシールを使って執行情報を伝えたことや出演者の発言などについて、見せ物として面白く見せようとする意図が感じられ、人命を扱う報道という意識に欠けている、などと訴えた。
フジテレビは、死刑執行をショー化する意図はなく、執行情報を伝えた方法や表現には必要性、相当性があり、放送倫理上の配慮も十分行った、などと説明した。
ヒアリングに続いて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることとなった。

2.「訴訟報道に関する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉が昨年4月11日の『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」と、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張している。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。またテレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実として、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、決定文の修正案について審理を行った。起草担当委員が前回の審理の内容を踏まえどのように修正を加えたかを説明し、続いて論点の各ポイントについて意見を出し合った。この議論を元に、さらに決定文の修正を行い、次回委員会で改めて審理することになった。

3.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理

札幌テレビ(STV)は、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。この放送に対して、取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出した。
一方の札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会までに双方からの書面が整い、委員会では通常どおりヒアリング開催に向けて手続きを進める方針が示された。しかし、手続きを進めるうえで確認すべき事項が指摘され、事務局において確認の上、次回委員会で改めて検討することになった。

4.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理

今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
今事案は、フジテレビが2019年8月30日の『とくダネ!』で放送した都内の公園で大縄跳びが禁止された話題に対するもの。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介した。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。
この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。

5.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」通知公表の報告

この事案に関する委員会決定第71号は2月14日に申立人と被申立人であるテレビ東京に対して通知され、通知後に記者会見を行い公表された。その報告とともに、委員会決定についてテレビ東京が報道した放送内容が紹介された。

6. その他

委員会運営規則に関する議論
運営規則の改正に関して委員会は、「苦情の取り扱い基準」を中心に検討を進めてきた。議論の焦点は、委員会として取り扱う事案について、これまでどおり委員会の審理を経てその都度決定することを前提としながら、委員会が審理対象としない決定をすることができるような明文規定を設けることにあった。第274回委員会から5回にわたる議論の結果、今委員会で委員会としての改正案がまとまり、これを決議した。今後改正案は、3月初めの理事会に諮られ、承認を得たうえで年次報告会で会員社に報告、ウェブサイト掲載などで一般に告知し、新年度から施行する予定。

以上

2020年2月に視聴者から寄せられた意見

2020年2月に視聴者から寄せられた意見

中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは、日本国内でも感染が広がっている。それに関する政府の対応、感染者の状況、生活用品の不足などを報じた番組への意見が多く寄せられた。

2020年2月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,464件で、先月と比較して252件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール76%、電話22%、郵便 1%、FAX 1%。
男女別は男性68%、女性31%、不明1%で、世代別では40歳代29%、30歳代23%、50歳代18%、60歳以上16%、20歳12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。2月の通知数は延べ758件【56局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、26件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは、日本国内でも感染が広がっている。それに関する政府の対応、感染者の状況、生活用品の不足などを報じた番組への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は65件、CMについては31件あった。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は83件で、前月から35件減少した。
今月は「表現・演出」が31件、「動物」が11件、「いじめ・虐待」と「その他」が6件、「低俗、モラル」と「報道・情報」が5件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 新型コロナウイルスについて、「中国野菜が品薄になる」という内容で、東京豊洲市場関係者からのコメントを報じ、その後、「在庫が尽きれば国産野菜が品薄になる」とコメント。その報道に、輸入量や生産量などの量的データは一切なく、市場関係者の意見を世の中の事実のように報道していた。これでは、「野菜がなくなるから少しでも早く買いに走れ」と言っているようなものだ。また、マスクに関しては、「中国では在庫がなくなり、日本でも品薄状態になっている」ということだけを報じ、ウイルスに対するマスクの有用性などにはほとんど触れず、ただ市民の不安をあおるだけの報道を繰り返していた。報道を裏付けるデータの提示が必要だと思う。市民を守るどころか、不安をあおるだけの報道姿勢には疑問が残る。

  • 報道が政府方針に批判的な内容に偏重しており、国民の不安を必要以上にあおっている。例えば、マスクがない、トイレットペーパーもないなど。そのため、さらに買い占めに走る人が増え、生活を脅かす事態となっている。このままだと、ウイルスではなく、マスコミによって日本が破壊される。バランスの取れた報道が必要だ。

  • 新型コロナウイルスについて、現状を把握するため報道番組にチャンネルを合わせても、声高に叫ばれているのは政府への批判ばかり。政府から出された受診の目安、働き方や外出に関する広報など、公式に出された重要な情報は一瞬しか扱わない。専門家やコメンテーターの憶測を大々的に伝え、「もしもこうなったらこんなに大変な事になる」と視聴者の不安をあおるのみ。可能性を予測して対応策を講じるのは重要だが、全く根拠に乏しい情報しか伝えないのは、報道としての役割を無責任に放棄している。むやみに不安、風評被害、行政への不満をあおり、これが果たして視聴者にとってプラスになるのか。正確で冷静な情報提供を切に求めたい。

【番組全般・その他】

  • 昼の番組を見た。新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船の乗客へのインタビューで、司会者やコメンテーターが、不満やネガティブな意見を何とか引き出そうと誘導していた。一方、インタビューに対応していた乗客の方はとても良識があり、他の乗客への気配りや乗務員の対応への感謝を終始述べていた。不安をあおろうとするマスコミと、現場でポジティブに対応しようとする人との対比が印象に残った。

  • 特集として、新型コロナウイルスを取り上げていた。対応策や治療薬などが明確になっていない状況で、国民に対して、「それほど怖がる必要はない」といった安易なメッセージを流すのは適切なのか。しかも、放送は録画されたもので、日ごと大きく変動している状況のもと、国民の生命にかかわる事柄を安易なアプローチで放送し、「安易な安心」を報じることに問題はないのか。これを受けて警戒を解く人たちが増え、ウイルスの感染拡大の一因とならないことを願っている。

  • 新型コロナウイルスの患者対応で、命懸けで医療業務にあたっている医師をもっと応援してほしい。現場では必死で事態を収拾させようと頑張っている。彼らにも家族がいて、逃げ出したい気持ちもあるはずだ。しかし報道されるのは政府の対応への批判ばかりで、実際に身をささげて作業している人たちが報われない。今できることは、現場の医師を信じて応援することだと思う。

  • 関西地方の番組を見た。服装のコーディネート企画で登場した、普段あまり女性らしい服装をしない一般女性に、母親の希望から、無理やり説得するような形で、女性らしい服装をしてもらう内容。ジェンダー観が多様化する中で、本人のあまり希望しない服装をさせるのは不適切に感じた。また、自分らしくいることも尊重されていいのに、女性らしさを持つことが当たり前のように扱われていることに疑問が残った。個性に対する尊厳に欠ける内容は控えてほしい。この放送局は、情報番組におけるLGBTへの視点を欠いたロケ以降、コンプライアンスが一向に改善されていない。

【ラジオ】

  • 最近、気になるのが、ラジオ番組での飲食だ。テレビと同じように飲み食いをして、ただ単に「おいしい、おいしい」の連呼では何も伝わらない。言葉でうまく表現するパーソナリティーもいないわけではないが、ごく少数であり、大方は食欲を満たして終わりである。伝えようという気概が全く感じられない。食べ方も汚く、そしゃく音が耳障りで雑音でしかない。言葉で勝負するはずのアナウンサーや芸人が、食べてはしゃいで終わりである。ラジオの特性を理解していないのではないか。もっとラジオならではの、”しゃべり”で伝えることにこだわってほしい。

青少年に関する意見

【「動物」に関する意見】

  • バラエティー番組で、"亀を持って走ると失禁するか"を検証する企画があったが、明らかな動物虐待だと思う。出演者が笑って眺めており、とても不快になった。教育上もよろしくないのではないか。

【「報道・情報」に関する意見】

  • ワイドショーは、新型コロナウイルスの不安をあおり続けている。学校が休みになり子どもが家にいる。ただでさえ友だちに会えず不安がっているというのに、さらに不安ばかりが増すような放送をしないでほしい。

【「要望・提言」】

  • 新型コロナウイルスの影響で、学校が休みになってしまった。子どもが家にいる時間が長いので、夏休みや冬休みに放送するような子ども向け番組の放送をしてほしい。

第146回 放送倫理検証委員会

第146回–2020年2月

NHK国際放送『Inside Lens』委員会決定を通知・公表へ

第146回送倫理検証委員会は2月14日に開催された。
1月24日と2月13日にそれぞれ通知と公表の記者会見をした関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、3月にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の原案が提出され、意見交換が行われた。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の修正案が提出され、これに基づいて意見交換が行われた。
参議院比例代表選挙に立候補予定の特定候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換を行った。
番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員からヒアリングの結果が報告され、意見書の構成案が示された。
宿泊施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがなく、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員であることが判明したNHK総合テレビ『おはよう日本』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、放送倫理に照らして問題がある放送であるが、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分であると言わざるを得ないものの事前に一定の確認作業が行われていたこと等の事情を総合的に考慮して、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

議事の詳細

日時
2020年2月14日(金)午後3時~午後9時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員

1. 関西テレビ「『胸いっぱいサミット!』収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見」とTBSテレビ「『消えた天才』映像早回しに関する意見」の通知・公表について報告

関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』は、2019年4月6日など2回の放送の中で、韓国人の気質について、コメンテーターである作家の「手首切るブスみたいなもんなんですよ」という発言をそのまま放送した。また、TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』は、2019年8月11日など3回の放送の際、野球のリトルリーグなど4件の映像で早回し加工を行った。委員会はいずれも放送倫理に違反するものと判断し、『胸いっぱいサミット!』については1月24日、『消えた天才』については2月13日に、それぞれ当該放送局への通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などの模様を報告したあと、委員会決定を伝えた双方の放送局のニュースを視聴した。

2. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議、3月にも通知・公表へ

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。委員会は9月、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りを決めた。この日の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、3月にも当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。

3. スーパーの買い物客密着企画で不適切な演出を行ったテレビ朝日『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りし、当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングが行われた。今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。

4. 海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組企画で不適切な演出を行ったTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送の『今日ドキッ!』について審議

北海道放送は参議院選挙公示前日の2019年7月3日、夕方のローカル情報番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。委員会は9月、比例代表制度では自分の住む都道府県に関わりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本来の選挙区の区切りとは異なった報道を行うことで有権者の投票行動をゆがめたのではないか、また特定候補者だけを取り上げ他の比例代表候補者や政党を報道しなかったことは選挙の公平・公正性を害しており放送倫理違反となる可能性があるとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が提出され意見交換が行われ、次回も引き続き審議することになった。

6. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、委員会は12月から審議を続けている。この日の委員会では、担当委員から1月以降に行われたヒアリングの結果が報告されるとともに、意見書の構成案が示された。次回委員会には、意見書の原案が提出される予定である。

7. 番組で紹介した宿泊施設の利用客が関係者だったNHK総合テレビの『おはよう日本』を討議

NHK総合テレビが2019年12月9日に放送した『おはよう日本』における午前6時台のコーナー「おはBiz」で、約4分間にわたり、"キャビン型ホテル"と呼ばれる宿泊施設が紹介された。その中で、施設を時々利用する客として登場した男性が、実際には一度も利用したことがない上に、施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことが視聴者の指摘で明らかになった。NHKは、同月26日に当該番組およびホームページで説明を行うとともにお詫びした。取材・制作担当者は、複数回メーカー社員本人の確認作業を行ったが、勤務先や宿泊施設に対するチェックが十分ではなかったと説明している。このため、委員会では、当該放送局から提出された報告書と番組の同録DVDをもとに討議した。
委員会は、同局において、同種の事案が審議中であるにもかかわらず、看板番組の一つであるニュース番組において、過去に利用したことがないのに時々利用している客として紹介し、また、当該男性がその施設にシューズなどを提供しているメーカーの社員だったことを見抜けなかったことは、事実と異なる内容の放送であり、放送倫理に照らして問題があるとの厳しい意見が出された。他方で、比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないこと、不十分ながらも事前に一定の確認作業が行われていたこと、再発防止策が導入され、今後徹底を図ることとされていること等の事情を踏まえ、当該局に注意喚起を促す厳しい意見が出たことを議事録に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

  • 過去に利用したことがないにもかかわらず、時々利用している客として紹介し、結果的に利害関係者を取り上げるなど事実に反する内容の放送になっている。現在審議中の当該局の他番組と同様の事態が、看板番組の一つであるニュース番組において再発したことは極めて遺憾である。

  • 当該客の属性等について事前に一定の確認作業は行われている。嘘をついている本人に何度確認したところで見破ることは難しい。もっとも、紹介された利用客をインターネットで検索した際、同姓同名のSNSアカウントを発見するなどシューズメーカーの社員である可能性が出てきた時点で、より慎重に確認すべきだった。

  • 比較的短時間の放送であったこと、宿泊施設の紹介内容自体に虚偽があるわけではないことなどからすれば、対象となる問題が必ずしも大きいわけではなく、審議入りするまでには至らないのではないか。

  • 当該局の他番組で起きた問題を受けて作成された「取材・制作の確認シート」をこのコーナーでも導入の検討をしている段階だったというが、導入されていたら今回のことは起こらなかっただろうか。企業のサービスを紹介する際に利害関係者から利用者の紹介を受けることを当面禁止したり、取材協力者に対して利害関係者ではないかを確認するための「出演承諾書」を交わす措置を取るなど、一定の自主的・自律的な事後対応がなされ、今後徹底が図られることに期待したいが、利害関係の有無の確認の難しさが問われている。

  • 「取材・制作の確認シート」を導入して安心するのではなく、記者のスキルや見極める目を高めていくことが重要なのではないか。それは一朝一夕には難しいけれども、より本質的なところから対処してほしい。

以上