第221回放送と人権等権利に関する委員会

第221回 – 2015年6月

佐村河内氏事案2件の審理
出家詐欺事案、ストーカー再現ドラマ事案の審理
審理要請案件の審理入り決定…など

佐村河内守氏が申し立てた2事案の審理を行い、前回審理入りを決定した出家詐欺とストーカー事件再現ドラマの2事案を審理。さらに審理要請案件を検討し、審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2015年6月16日(火)午後4時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では前回の委員会で行ったヒアリングをふまえ、申立人の診断書の内容が正しく伝えられているかどうか、出演者らの発言に問題がなかったかどうかなど、「委員会決定」の方向性に向けて審理した。その結果、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、前回の委員会で行ったヒアリングをふまえ、申立人は一般市民か公人的立場か、大喜利で取り上げて風刺することの当否を中心に「委員会決定」の方向性に向けて審理した。その結果、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

3.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
前回委員会で審理入りが決まり、今月の委員会から審理を始めた。被申立人の「答弁書」の提出を受け、事務局が双方の主張を取りまとめた資料を基に説明し、本件事案の論点の整理に向けて審理した。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたと訴える申立書を4月1日付で委員会に提出し、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
これに対しフジテレビは「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「本件番組を放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
この日の委員会から審理に入り、事務局が双方の主張を対比しながら説明し、各委員からさまざまな意見が述べられた。

5.審理要請案件:「ストーカー事件映像に対する申立て」
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が5月1日、番組による人権侵害を訴える申立書を委員会に提出。この中で、「放送上は全て仮名で特定できないようになっていたが、会社の駐車場であることが会社の人間が見れば分かると思われ、また車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易にわかる内容」だったとするとともに、「会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう。特定されてしまった上に内容が事実と大きく異なる」として訂正を求めている。
また申立書は、「番組の放送前にこの事件の関係者と思われる人が具体的にわが社がテレビに取り上げられ、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、また犯罪行為をしたということが関係会社にもばれてしまったので、会社には置いておけないということで退職せざるを得なくなった」と主張している。
これを受けてフジテレビは5月27日に委員会に提出した本申立てに対する「経緯と見解」書面の中で、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
またフジテレビは、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人自身も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。
尚、本番組については、この会社の契約社員という女性から、再現ドラマ部分では自分が社内イジメの"首謀者"にされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容だったとして、名誉毀損を訴える申立書が委員会に提出され、5月の第220回委員会で審理入りすることが決まっている。

6.その他

  • 放送局現場視察を6月30日に日本テレビ本社で行うことになり、その日程、内容等について事務局が説明した。
  • 10月に開催する県単位意見交換会(山形)の概要を事務局が説明した。
  • 7月14日に開かれる第10回「BPO事例研究会」の概要を事務局が説明した。
  • 次回委員会は7月21日に開かれる。

以上

第94回 放送倫理検証委員会

第94回–2015年6月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』などを審議…など

第94回放送倫理検証委員会は6月12日に開催された。
委員会が今年3月に出した「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」について、当該5局から提出された対応報告書を了承し、公表することとした。
"出家詐欺"の報道に放送倫理違反の疑いが濃いとして、前回審議入りしたNHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)とその基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)について、取材・制作担当者へのヒアリングの結果が報告され、意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2015年6月12日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解への対応報告書を了承

3月6日に委員会が通知公表した、「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」(委員会決定第22号)への対応報告書が、TBSテレビ、テレビ新広島、テレビ朝日、NHK、日本テレビの当該5局から委員会に提出された。
報告書には、委員会決定を受けた後の局内の対応や、放送番組審議会でのやり取り、再発防止に向けた取り組みなどが記載されている。委員会が求めた自己検証などの要望に対しては、自己検証の内容を広報番組で放送したりホームページで公表したりした局、委員会の担当委員を招いて研修会を実施しそれを広報番組で紹介した局など、各局の対応が具体的に報告されていた。
委員会は、5局からの対応報告書をすべて了承して公表することとした。

2."出家詐欺"の追跡報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)では、出家して僧侶となり法名を授けられる「得度」の儀式を受けると家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
この中で、"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」と客の「多重債務者」が相談している場面について、「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張。これに対して当該局は、「意図的または故意に、架空の場面を作り上げたり演技をさせたりして、事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、一方で、放送ガイドラインを逸脱する『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」と結論付けた報告書を公表した。
委員会は、放送倫理に違反する疑いが濃いうえ、委員会として意見を言うことに意味がある事案だとして、前回この2番組を審議の対象とすることを決め、担当委員によるヒアリングが実施された。
当該局のチーフプロデューサー・ディレクター・記者ら11人に対するヒアリングを踏まえて、企画立案から取材・編集・放送に至るまでの経緯が詳細に報告され、現時点での問題点や疑問点などが指摘された。意見交換の結果、ヒアリングの対象者を増やして調査を継続するとともに、論点の整理などを進めることになった。

以上

2015年6月16日

「ストーカー事件映像に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は6月16日の第221回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。
番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イ
ジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供
された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。
登場人物、地名等固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加
害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が5月1日、
番組による人権侵害を訴える申立書を委員会に提出。この中で、「放送上は全て仮名で特定でき
ないようになっていたが、会社の駐車場であることが会社の人間が見れば分かると思われ、また
車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易にわかる内容」だったとするとと
もに「会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう。特定されて
しまった上に内容が事実と大きく異なる」として訂正を求めている。
また申立書は、「番組の放送前にこの事件の関係者と思われる人が具体的にわが社がテレビに取
り上げられ、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、また犯罪
行為をしたということが関係会社にもばれてしまったので、会社には置いておけないということ
で退職せざるを得なくなった」と主張している。
これを受けてフジテレビは5月27日に委員会に提出した本申立てに対する「経緯と見解」書面の
中で、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という
問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所
や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声
を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、
放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送に
より特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
またフジテレビは、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件
番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人自身も
自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

尚、本番組については、この会社の契約社員という女性から、再現ドラマ部分では自分が社内イジメの”首謀者”にされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容だったとして、名誉毀損を訴える申立書が委員会に提出され、5月の第220回委員会で審理入りすることが決まっている。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2015年5月に視聴者から寄せられた意見

2015年5月に視聴者から寄せられた意見

安全保障関連法案の国会審議について、政府批判ばかりの一方的な放送は如何なものか、「事実上の戦争法案」にもっと反対すべきだなど様々な意見。箱根の大涌谷近辺の火山活動活発化のニュースに、風評被害との指摘など。

2015年5月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,844件で、先月と比較して396件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール77%、電話21%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性77%、女性21%、不明2%で、世代別では40歳代30%、30歳代26%、50歳代18%、20歳代16%、60歳以上7%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。5月の通知数は754件【50局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

安全保障関連法案の国会審議が始まったが、政府批判ばかりの一方的な放送は如何なものかといった意見などが寄せられた。
アメリカ議会上下両院合同会議で総理が英語で演説したが、特定の国のリアクションしか紹介していない、などといった意見が寄せられた。
箱根の大涌谷近辺の火山活動活発化のニュースに、地元の商店街の人たちからあまりに煽りすぎではないのかといった、風評被害の指摘があった。
ゆとり世代に関する話題を扱った番組に対し、特定の年代の人を揶揄するものだといった批判が多数寄せられた。
ラジオに関する意見は45件、CMについては34件あった。

青少年に関する意見

5月中に青少年委員会に寄せられた意見は93件で、前月から1件増加した。
今月は、「性的表現」に関する意見が18件と最も多く、次に「表現・演出」が13件、「動物」が10件、「編成」が7件と続いた。
「性的表現」については、日曜夜の情報番組で、若者の間でキス動画を動画投稿サイトに公開することが流行しているとの話題を取り上げたことに対し、「不快」「もっと投稿サイトの危険性に触れるべき」など、多くの意見が寄せられた。
「表現・演出」については、幅広いジャンルの番組の演出方法について、意見が寄せられている。
「動物」については、少年による詐欺未遂事件の報道に際し、被害者が撮影してSNSに投稿した、飼い犬の虐待映像を放送したことに批判的な意見が集中した。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 普段から公平・中立ではないと感じていたが、国会における安保法制に関する放送は、明らかに異常だった。意見が対立するような事案に対して、一方的な報道を行うことは、放送法に違反しているのではないのか。偏った情報を流し、印象を操作するのは偏向報道そのものだ。

  • 今国会で審議されている安全保障法制は「事実上の戦争法案」と報道するべきではないのか。「安全」とか「平和」という言葉をつけてごまかそうとする政府のやることに、マスコミはもっと反対するべきだ。それともまた政府から陰に陽に圧力があるのだろうか。だとしたら、それも含めて報道してほしい。

  • 先日の首相の米議会での演説を取り上げたトピックスの中で、演説内容に対する評価にほとんど言及せず、総理を誹謗中傷するかの如く、英語力や演説原稿のメモをフューチャーするなどに、多くの時間を割いていた。世界情勢不安で危機管理に関心が高まっている昨今、呆れるばかりだ。

  • 首相の米議会での演説のニュースで、中国と韓国の2国の抗議のみを取り上げ、しかも「アジア各国が反論している」と言い切っていた。しかし、インドネシア、マレーシア、フィリピンやパラオ等の他の国や地域のコメントは全く取り上げていない。公平・中立を逸脱している。

  • 政権がやろうとしていることに追随するばかりの報道が増えて残念だ。視聴者は本当のことを知りたいのであって、政権が作る虚像を見たいわけではない。

  • 「箱根・宮ノ下温泉の人通りが火山活動風評被害でこんなに少なくなっている」とのリポートがあった。しかし、誰も歩いていないとして紹介された路地は、火山活動前でも人通りのない路地だ。箱根全体の取り組みとして、過剰報道による風評被害を最小限にとどめようと努力している。このような誤解を招くような報道は控えていただきたい。

  • 箱根の報道は毎日、不安を煽るかのようだ。実際、旅館のキャンセルが相次ぎ、死活問題だ。マスコミは「風評被害のおそれ」や「あまり怖がらなくても」などと述べつつ、「地震の回数が増えている」などと報じている。注意は必要だが、入山規制のレベルをマスコミが上げているのでないだろうか。箱根だけでなく、自然災害の今後の伝え方と、それによる風評被害を考えるべきだ。

  • 大阪都構想の結果に関する報道の中で、司会者が、賛成派の敗因について喋ったあと、手に持っていた指示棒をカメラ(視聴者)に向かって突き出すようにしながら「こういうことを言うと、おかしな反対派から電話が掛かってくるんだ!お前ら、いい加減にしろ!」と暴言を吐いた。視聴者を侮辱する行為だ。苦情の電話をする人のことを「おかしな反対派」とひとくくりにし、レッテルを貼っている。司会者のあるべき姿とはとても思えない。大阪都構想に反対する市民のことをあからさまに貶める発言で、司会者として不適格と言われても仕方がない。

  • 日本礼賛の番組が多すぎる。ちょっと日本の体制を批判すると、「反日」の烙印を押されて、ネットで炎上する事情は理解できるが、現代社会の問題点を指摘することこそ、日本という国家のためになることではないのか。幼児化しているネット世論に迎合しない、硬派で取材力のある番組を見たい。

  • 「やらせ問題」で、ドキュメンタリーはある程度演出をやらなければ作れないと言っていた。嘘がなければ問題ないとも言っていた。しかしこれはメディア側の都合のいい言い分だ。視聴者は作り物だと見ていない。作り物ならドキュメンタリーではない。演出なしの撮りためたものを編集することは分かるが、演出を入れてしまえばそうではない。自己弁護に終始しないでほしい。

  • 来日する外国人観光客が増えているという話題だったが、浅草や渋谷など東京の観光地ばかりを取り上げていた。外国人観光客たちは東京にしか興味がない、と伝えるような内容だった。実際には多くの外国人観光客が京都や奈良、大阪、広島、北海道、九州などにも来ており、彼らは国内の観光地では京都を最も高く評価している。在京の放送局が東京目線で番組制作をし、東京に都合がよいように放送をしているかのようだ。

  • 中国国内の合唱コンクールで可動式の舞台が落ちたというニュースを取り上げていた。舞台の上では多くの生徒たちが合唱をしていたのだが、落ちる瞬間の映像に「一糸乱れぬ様で落ちて行った」とナレーションが入り、同時に茶化すようなコミカルな曲をつけ、落ちたシーンを何度か逆再生していた。重傷者も出ている事故を、面白おかしく編集する放送局の倫理感を疑う。

  • 報道番組全般に対して、各放送局の主張が強すぎることを懸念している。事実のみ正確に報道するべきだ。各放送局の主張が反映された報道番組もどきが大変多い。自重してほしい。

  • 生放送中に東北地方で最大震度5強の地震があり、緊急地震速報が流れた。その後約数10分にわたって他の内容の報道を取りやめて、「繰り返しお伝えします」と何度も放送していた。公共放送の観点からの報道と思われるが、延々と同じ内容を繰り返されると、最初から見ている人は「いい加減にしてください」と言いたくなる。今は字幕放送もできるのだから、音声による放送は10分おきくらいに最新情報を伝えるようにして、あとは字幕放送に任せて他の内容も報道すべきではないのか。

【番組全般・その他】

  • 「ゆとり世代」を取り上げていた。ゆとり世代を馬鹿にした内容で、バラエティー的には面白いのだろうが、偏見に満ちていた。ゆとり世代代表として2人の芸能人が出演していたが、普通ではあり得ない言動が目立った。あまりにも揶揄しすぎだ。ゆとり世代の私としては胸が締め付けられる思いがした。

  • モノマネ芸人が有名人の身内に「オレオレ電話」をしていた。オレオレ詐欺で高齢者をはじめとする多くの方々が被害に遭い、重大な社会問題となっている中で、面白おかしく、このようなお笑い番組のネタにすることは如何なものか。

  • オレオレ詐欺で被害者がこれほど多く、社会問題化しているにもかかわらず、電話の声で人を騙すというお笑い企画を放送していた。笑いと倫理の境界を逸脱している。電話の声で人を騙すという行為は、今や犯罪だ。なぜこのような番組が放送されるのか。高齢者が電話で老後のお金を毎日騙し取られている現状を、この番組担当者は知っているのか。

  • 急増する「中高年ニート」について話していたが、年金不正受給者に結びつけるなど、あまりにも差別的な内容だった。私は親に面倒を見て貰っているが、家事などをやっているので引け目はない。働かない人たちに、あまりにも悪いイメージを植えつけるものだった。

  • 南米や中東、アフリカ諸国等を取り上げる際、距離感を表現するためか「日本の裏側」「地球の裏側」という表現が安易に使われている。惑星に表裏、上下左右はあるのか。差別表現の一つではないか。

  • 「母乳フェチ」や「女性を口説く」「ナンパ」「ED」に関する話題で盛り上がっていた。これはセクシャルハラスメントではないのか。いずれにしても、いつもこの番組は下ネタが多い。男女ネタを放送したいのなら、18禁のCS番組にするか、せめて深夜帯の番組にするべきではないか。ゴールデンタイムで家族で安心して見られる番組ではない。

  • カップルにインタビューし、彼氏の携帯を見せて浮気していないかどうかを調査する企画だった。最初に登場したペアルックのカップルの彼氏は19歳の未成年だったが、インタビューの中で、「中学生の同級生とお酒を飲み行った」という発言があった。未成年の飲酒が問題ないかのように話を展開していた。未成年の飲酒発言があったのに、平然と放送することにびっくりした。

  • 広島のある島が紹介された。外国人の女性が、木陰で休んでいるウサギを無理やり抱き上げていた。島では抱っこは禁止されており、至る所に注意書きが貼ってある。最近、島にもマナーを守らない人が増えているが、呆れと怒りを感じた。放送するときは、きちんとそういった島の規則があることを知らせるべきだ。マスコミの影響力は大きいのだ。

  • 日本に住んでいる国際結婚をしたお宅に訪問して話を聞いたり、その国の食事を食べたりするコーナーが面白い。海外に行き、その文化にふれるのも良いが、日本に住んでいる外国人の生活にふれるほうが子ども達にも身近に感じられる。オリンピックもあることだし、海外の文化の理解にも繋がるよい番組だ。これからも訪問のコーナーも含め、番組を続けてほしい。

  • 出演者による差別的な言動や過激な発言が多すぎる。子ども達がテレビを見ている日曜の昼間に、こんな番組をいつまでも放送していてよいのか。5年後にオリンピックを控えているというのに、日本のイメージダウンにもなりかねない。この番組がきっかけで、外国人に対するヘイトスピーチが起こったり、「ネット右翼」と呼ばれる若者が増加したのかもしれない。日本の政治や海外のお国事情を批評するのは自由だが、差別的な発言や過激な発言は慎むべきだ。

  • 猿がいる無人島の企画で、現地で料理を作る時に猿に材料を食べられるシーンがあった。そういうシーンは面白いのかもしれないが、野生の猿に人間の食べ物の味を覚えさせてしまう。専門家が指導すれば、番組はもっと良いものになるのではないのか。

  • 「中高年のニート」として、母子家庭の親子の特集をしていたが、彼はニートではなく舞台やテレビでも活躍している芸人だ。紹介の仕方があざとく、後半でネタばらしをしていたが、言い訳としか思えない。現実のニートで、その状況から抜けだしたくて苦しんでいる人が大勢いるのにもかかわらず、“ニート=堕落者”という構図を視聴者に印象づけているようにも思える。

  • 「現金を街角に放置し拾われるだろうか」という企画だが、なぜ街角に現金を放置するのか。持っていく人がいても不思議はなく、いろんな人に迷惑が掛かる。視聴率を稼ごうという魂胆が見え見えの下品な番組だ。

  • 情報系の番組で、出演者がお笑い芸人で固められている。特に4月から入れ替わった出演者にそうした傾向が強い。芸人のコメンテーターは面白いのだが、あまりにも多くて食傷気味だ。朝の放送で芸人に「おはよう」と言われ、夜の番組で同じ人に「こんばんは」と言われる。コメンテーターには色々な分野の人をバランスよく配置してほしい。

  • 食べ物や野菜などの健康効果を紹介するコーナーや番組があるが、ほとんどが「○○先生によると」「○○の効果が期待できる」など、放送側の無責任さが目立つ。問題があったら、「○○先生による見解」「効果があるとは言っていない」と逃げようとしているのか。「効果が期待できる」など噂話の延長のような事柄を、ありそうなこととして放送していいのだろうか。

  • 各局で「ゴミ屋敷」の特集を放送していたが、特にこの番組はひどかった。長々とインタビューを放送していたが、不愉快だった。ゴミ屋敷に住む人たちは、普通ではない、精神的に問題のある人が多い。そのような人にインタビューをして、まるで見世物のような感じだった。

  • 「オムライス日本一決定戦」の様子を放送していた。放送では、10種類のオムライスをディレクターが「全部食べて完食、お腹いっぱいだ」としていた。私はその日、偶然その場にいて一部始終を見ていたが、彼は10食のオムライスを全部は食べていなかった。1口ずつだけを食べて、残りはスタッフみんなで食べていた。「悪質なやらせ」とまでは言わないが、この程度の演出なら許されるだろうという甘えに他ならない。見たくはないテレビの裏側を目撃した思いがした。

  • 「葬式で焼きあがったお骨を見て職業病が出てしまった一言とは?」というお題があったが、あまりにも不謹慎だ。先日、私の祖父が亡くなり3日前に祖父の葬儀が行われたばかりだ。私以外にもこのような思いをした方もたくさんいると思う。なぜこのようなお題にしたのか不思議だ。

  • マラソンランナーとして走るかもしれない芸能人発表のやり方にとても憤りを感じている。私の息子は身体障害者だ。毎年24時間マラソンは楽しみのひとつだった。今回も誰が走者なのか期待していた。ところがあの発表のやり方は、まるでいじめで、悪意を感じた。あのような発表の仕方では、指名された人物は断る余地がない。決まった時点での発表では面白味にかけるのか。

  • マラソンランナーに男性のロック歌手が選ばれたが、テレビ局のゴリ押しで断れない状況を作り出していたように見えた。炎天下で24時間マラソンという企画が、どれ程の危険であるのか、テレビ局側は認識しているのだろうか。チャリティー番組というなら、人の命をもっと大切に考えるべきだ。

  • 私は脳神経外科医だ。男性の芸人が屋外で高速回転する椅子に座ったあと、泥沼にかかった一枚板の橋を渡り切れるかという難題に挑戦させられた。彼は泥に落ちてうずくまり、「クラクラする」「寒くて前が見えない」「気持ち悪い」などと訴えており、かなり重症に見えた。その様子を見たスタジオは大爆笑だった。しかし医師として、脳への損傷をきたす前段階の症状を疑った。回転速度がもう少しでも早かったり、回転時間が長いと頭部や呼吸器官を痛める危険性もある。事故にもつながる危険な仕掛けをしてまで番組を作る必要があるのだろうか。

【ラジオ】

  • 沖縄の基地反対に共鳴する9条の会の会員だという聴取者の「総理は怖い人」という手紙を、出演者が読み上げた後、女性アナも「怖い」と発言していた。同じ主義・主張をする出演者がいてもおかしくないが、局アナが安易に賛同するのはルール違反ではないのか。政治家を「怖い」などという個人的な感情で批判したいのなら、個人ブログやインターネット放送でやるべきだ。

  • 男性DJが「ファーストキスはいつだった?」という流れになり、周りにいるスタッフに次々と聞いていた。そして「僕は○才の時にした。相手は誰々さん(フルネーム)で具体的に、どの場所でした」と発言した。得意そうに話している様子が不快だった。DJとして配慮がなさ過ぎるのではないのか。

【CM】

  • 未成年の飲酒が問題とされるのに、未成年に人気のあるタレントがアルコール飲料のCMに起用されることはおかしい。海外ではアルコール飲料のCMに様々な規制があると聞いている。日本はあまりにもずさんでいい加減すぎる。

  • ドラマや映画等のCM中に暴言や暴力シーンがたびたび見受けられる。CMは番組と違い選択ができず、子どもの目にも触れる。このようなシーンを入れるべきではない。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 中高生のカップルが自分たちのキス動画を動画投稿サイトにアップする現象を特集していたが、幼い中高生の顔がインターネット上にキス動画という形で流される危険性を警告するのではなく、むしろ好意的に放送していた。一部、批判的な意見もあったが、「恥を知らないのか」など無難な意見ばかりで、インターネットに潜む危険性についての観点が欠落していたように感じる。

  • バラエティー番組で、男性お笑いタレントが女性お笑いタレントの胸を揉むギャグをしていた。青少年がまねするおそれもある。当該女性お笑いタレントは収録中だったので、自分の感情を押し殺していたように見えた。お笑いタレントだからといって許される行為ではない。

【「動物」に関する意見】

  • 少年がSNSを通じて知り合った会社員に対する詐欺未遂で書類送検された事件の報道に疑問を持った。少年たちは被害者である会社員を恐喝するために、会社員が自らの飼い犬を虐待する映像を撮影・投稿させていたのだが、その虐待映像を放送する必要があったのだろうか。私は極端な動物愛護精神を持っているわけではないが、非常に嫌悪感や不快感を覚えたし、子どもにも悪影響があるのではないかと思う。そもそも虐待動画はニュースの核心部分ではなく、詐欺未遂事件の手口や犯人と被害者の関係性などが注目すべき点ではないのか。

【「編成」に関する意見】

  • 土曜日の深夜に未成年のアイドルが出演するラジオ番組がある。当然、録音放送だとは思うが、当該アイドルのファンは青少年が多いと思われるので、青少年の健全な生活のためにも放送時間をもっと早めてほしい。

【「犯罪の助長」に関する意見】

  • お祭りの会場で「ドローン」を飛ばすと示唆した少年が逮捕された。逮捕前にも同少年に関する報道が行われていたが、これにより、少年が動画をアップしているサイトの視聴回数が増え、当該少年の広告収入を増加させることになってしまったのではないだろうか。逮捕前の報道が、少年の行動を煽る結果になったのではないかと感じる。

第170回 放送と青少年に関する委員会

第170回–2015年5月26日

ネットの"キス動画"を紹介した番組について討論、審議入りせず…など

5月26日に第170回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、4月16日から5月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、5月の中高生モニター報告、新規の調査研究について、今後の予定について話し合いました。
次回は6月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年5月26日(火) 午後4時30分~午後7時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●「日曜夜の情報番組で、中高生の間で、キス動画をネット上に公開することが人気を集めているという話題を取り上げていたが、ネットの怖さや問題点に深く触れることなく興味本位に扱った内容で、未成年への悪影響が心配だ」などの視聴者意見があった番組について、全委員が番組を視聴した上で討論しました。
委員からは次のような意見が出ました。

  • 若い人たちの生態を好意的に紹介しようと思ったのだろうが、興味本位に流れていて、映像を公開することの危険性など、ネットリテラシー的視点が欠けている中で番組を作っているのが問題だ。映像もしつこく不愉快なコーナーであると感じた。
  • 映像をアップした後、ずっと残ってしまうなどの問題にあまり触れられていないのが気になった。若者たちはテレビを信頼しているので、この放送を見てアップ数が増えるのが心配だ。番組を作る側の良識を問いたい。
  • ネットについてあまりに無知で無防備だと思った。映像のアップに対する危険性を伝えないで放送することにより、さらに危険が拡散することに思いが至らないのだろうか。ネットの世界が、使い方によってはどれほどの恐ろしさを秘めているか、親の世代も認識できていないのではないか。
  • 投稿した女性の父親が映像を見て理解を示すシーンがあったが、カメラで収録している前では、なかなか本音は言えないものだ。世の中の父親はあれだけ理解を示すだろうか。
  • 世の中の一部の変わった部分を拡大して見せているだけで、なぜこれを紹介する必要があるのかが説明されていない。
  • 例えば、「NHK放送ガイドライン 2015」の"6.インターネット"には「インターネットの世界には、さまざまなリスクや問題も潜んでいる。いったんネット上に情報が流出すれば、複製されて一気に広がり、不適切な内容や誤った情報であっても完全に消すことはできない。こうしたインターネットの特性を十分に理解したうえで利用しなければならない」とあるが、投稿した若者がそこまで理解しているとは思えないし、制作側もあまりに無邪気に作ってしまっているのではないか。
  • 動画投稿する若者は、自己承認欲求が満たされるのだろうが、リスクをどれだけ認識しているのか。ああいった行動に出る若者はごく一部で、それが若者を代表する姿ではない。
  • このコーナーはコンテンツをネットに求めていて、ネット動画ありきで構成されている。テレビの作り方が逆転している。

討論の結果、審議入りについて全員一致の判断には至らず、この件に関して審議に入らないことにしました。しかし汐見委員長は「公共性の強い放送局のあり方として、ネット情報の取り扱いについてどのような問題があるのか、放送局の人たちと一緒に話し合ってみたい」と述べ、近いうちに勉強会を開きたい意向を示しました。

中高生モニター報告について

5月の中高生モニターは、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」というテーマでリポートを書いてもらいました。今回は29人から報告がありました。
毎日見ている情報番組に対する賛辞がたくさん寄せられました。『ZIP!』(日本テレビ)。「この番組を見たら元気が出て今日も頑張ろうという気持ちになる。面白いコーナーがいっぱいあるし、学校で友達とその日の放送について話すことができるからだ」(宮崎・高校1年女子)。『す・またん!』(読売テレビ)。「とてもゆるい会話のやりとりが、朝のせわしい感じとかけ離れていてほっこりします。わかりやすい解説が聞けるので、新聞を読まなくても情報がとれます。このゆる~い番組がもっとゆる~く続いてほしいです」(兵庫・中学1年女子)。ドキュメンタリーに関する報告も多くありました。『クローズアップ現代』(NHK)。「毎回取り上げる問題の要因をあらゆる面から見られるのが好きなところです。ピックアップされる問題が高校生の私にも、親の世代にも、興味が持てるような内容なのでいつも家族で自分の考えを言い合いながら見ています。選挙権が18歳からになるので、このように家族で社会問題を共有できる番組が増えたらいいなと思います」(神奈川・高校2年女子)。『情熱大陸』(毎日放送)。「番組の構成が、そのジャンルについて何も知らない人でも分かるように工夫されている。また、その道を極めた人にかなり長い期間にわたり密着しているので、とても内容の濃い30分だと思った」(埼玉・中学3年男子)。『歴史秘話ヒストリア』(NHK)。「再現ドラマが分かりやすく、扱っているテーマの知名度も高いため、多くの人が楽しめると思う。この番組は歴史の"根拠"がしっかり放送されている。歴史に限らず情報を伝えることを目的としたジャンルの番組では、根拠をしっかりと確認し、根拠と共にその情報を伝えてほしい」(岐阜・高校2年男子)。報道番組に対しての提言がありました。『週刊ニュース深読み』(NHK)。「若者は報道番組に対して真面目とか、つまらないというイメージを強く持っている人が多いようだ。若い世代も参加しやすく、分かりやすく、見ていて興味を持つことができる報道があれば、若者の社会に対する意識は向上するのではないか。この番組をはじめ報道番組には、もっと若い世代に見てもらえるような工夫をしてほしいと思う」(愛知・高校2年男子)。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。英語の勉強を目的にラジオやテレビの英語番組に接しているモニターが複数いました。『基礎英語』(NHKラジオ第2放送)。「中学生になってから英語のラジオを聞き始めました。15分の短い時間だから忙しくても簡単に聞けるし、発音練習や書く練習をするので楽しく勉強ができます」(東京・中学1年女子)。『ワールドニュース』(NHK  BS1)。「日本だけでなく他国のニュースが見られるところ、日本語の吹き替えも合わせて聞けるところが良い。NHKならではの番組だと思うので、これからも是非続けてほしい」(滋賀・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】中高生ながら、しっかりした意見を述べている報告が目立った。番組内容について様々な危惧を中高生なりに抱いていることを制作現場は意識してほしい。

  • (富山・中学1年男子)『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ/富山テレビ)の中のデブエットというコーナーで、映画の宣伝をしたいタレントに無理やり食べさせ続ける内容がありました。この番組に限らず、バラエティーは下品でくだらない番組が多くゲストに対して失礼な扱いをしています。MCにも、ちゃんと勉強して作法を分かっていて正しい日本語が話せる人を起用してください。
  • (千葉・中学3年女子)『ヒルナンデス』(日本テレビ)には幅広い年代の人が楽しめるコーナーや企画が多く、内容も充実し、昼休みにふさわしいくつろぎながら見られる構成だ。しかし、東京近郊の店に関する「食レポ」が多すぎる。全国放送なのだから、もっと全国各地のグルメを紹介すべきではないか。

●【委員の感想】家族が一緒に見て時間を共有する手段としてのテレビの役割を強調している報告があった。

  • (兵庫・中学2年女子)家でテレビを家族みんなで見る機会が減ってきています。でも私は番組の内容について父や母の意見も聞きたいです。なので、私は家族みんなで見ることができる番組が増えるといいなと思っています。

●【委員の感想】テレビ番組には純粋に真実を教えてほしい、偏らない報道をしてほしいと訴えている報告があった。

  • (神奈川・中学1年女子)報道番組での「やらせ」を疑わせる出来事がニュースで取り上げられていました。色々なことを発信するテレビには、嘘でなく本当のことを知らせてほしいと思いました。私だったら、まだ子どもなのですべてのことを信じてしまいそうです。
  • (滋賀・高校2年女子)最近、ニュースの報じ方が偏っているように感じます。黙々と政府が行っていることを紹介していてそのことに対する反論があまりなく、まるで政府の言いなりになっているように見えます。もう一度報道のありかたを見直すべきだと思います。

●【委員の感想】手早く簡単にわかりやすい情報をとりたい、と述べているモニターが複数いた。

  • (東京・中学3年男子)私はTBSの情報番組が好きでよく見ています。なぜなら誰にでもわかりやすくかつ政治的や思想的に偏りなく伝える努力をしているからです。『Nスタ』(TBSテレビ)のコーナー「3コマ・ニュース」はその代表です。3コマのパネルにまとめることでコンパクトに最新のニュースが把握できていいと思います。

●【委員の感想】自由記述欄に鋭い指摘が多く見られた。

  • (埼玉・高校1年男子)最近様々なジャンルの番組が全部トーク番組に近づいているように思う。野球を見たくて見る野球中継で、解説者の解説よりジャニーズの人の思い出話の方が長いとか、音楽番組なのに歌手がほとんど歌わないとか、旅番組で美しい景色が見たいのにタレントのおしゃべりばかりとか、それぞれの番組が全部トーク番組に近づいている気がして違和感がある。

調査研究について

  • 2014年度の「中高生の生活とテレビに関する調査」について、報告書の完成はデータ部分の微調整があり6月初旬になると事務局から報告がありました。

  • 調査担当の菅原委員から、今後の調査の企画、目的、仮説の立て方や実施方法、結果の発信方法についての提案があり、制作者と青少年をつなぐ視点の調査や、中高生モニターを含めた調査などについて意見を交わしました。

今後の予定について

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催する意見交換会について、事前打ち合わせの概要が事務局から報告されました。9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、また中高生との意見交換会についての準備状況が報告されました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」の活用について、汐見委員長から提案がありました。