第170回 放送と人権等権利に関する委員会

第170回 – 2011年2月

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

委員会運営上の検討課題 ……など

2月8日に行われた「大学病院教授からの訴え」事案の決定通知と公表の模様について事務局より報告した。
放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は、事案審理に関連した事務局による資料収集とその取り扱いについて実質的な議論を行った。

議事の詳細

日時
2011年 2 月15 日(火) 午後4時~6時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

2月8日に行われた本事案の決定通知と記者会見での公表の模様について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。また当該局であるテレビ朝日が決定について報じた番組同録DVDを視聴した。
決定通知は8日午後1時30分より行われた。申立人が大学の職務の都合上、上京できなかったため、申立人に対する通知は担当調査役が現地まで出向いて行った。東京では、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で、堀野委員長と起草委員である小山委員、武田委員の3人が出席し、被申立人であるテレビ朝日および朝日放送からは4人が出席して通知が行われた。
堀野委員長は「番組の意義は評価するものの、申立人のインタビュー映像の使い方と民事裁判の経緯についての紹介の仕方に放送倫理上の問題があった。また表現上配慮に欠ける部分があった」とする決定内容を伝えた。ただし人格権の侵害については否定した。
通知を受けて申立人は「人格権の侵害が認められなかった点には不満が残るが、放送倫理上の問題があるとの決定には満足している」と感想を述べた。
一方被申立人は、番組制作担当者が「7か月にわたる丁寧な審理にお礼を申し上げる。しかし、決定は判決の解釈や臨床試験という表現の問題など編集権にまで踏み込んでおり、制作者個人としては受け入れがたい」と述べた。
これに対して堀野委員長は「正確に伝えているかどうかであり編集権の問題ではない。編集権があるから誤ったことを伝えていいということにはならない」と述べた。
この後、午後3時前から千代田放送会館2階ホールで記者会見を行い、決定内容を公表した。テレビ、新聞等から25社・44人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
会見では堀野委員長が決定の概要を説明し、「社会的事象に切り込もうとした番組の意図は高く評価したい。しかし、裁判所の判断を裏付けとするなら判決の紹介は正確であるべきだ。また申立人のインタビューの使い方には取材目的との間にズレがある。これらの点で放送倫理上問題ありとなった」と述べた。
起草主査を務めた小山委員は「申立人が主張していた実名と映像の使用による人格権の侵害については、申立人が準公人という立場にあること、本件報道は過去の出来事を取り上げているが、現在につながる公共性・公益性があること等から人格権の侵害はないと判断した。また申立人に対する直撃取材の問題についても人格権の侵害はなく放送倫理上の問題もないと判断した」と補足した。
武田委員は「医療という専門家集団を監視することもマスメディアの役割であり、やらなければならない仕事だ。しかし、番組の正義を貫くためにはもう少し方法論を考えてほしい」とコメントした。
記者から、予定より会見が遅れたのは反論等があったからかと質問が出た。
堀野委員長は「編集権にまで口を挟んでいるという意見もあった。われわれは、編集権があっても伝えることは正確に伝えるべきだと述べた」と答えた。
直撃取材の問題点について質問が出た。
堀野委員長は「直撃取材そのものには問題はなかったが、映像が局側の説明する意図とは違った使い方をされているところに問題があった」と述べた。
記者からさらに「直撃取材は最後の手段であり、アリバイ的取材に陥る危険性もある。本件では直撃によって教授の言い分については尽くされた取材ができていたのか」と質問が出た。
堀野委員長は「詳しいやり取りは聞いていないが、放送では教授は身のあることを答えていない」と述べた。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は当面の課題として、事務局による資料の収集・調査について実質的な議論を行った。
放送人権委員会は、申立人、被申立人から提出された書面、資料等に基づく審理を原則としているが、一方で審理の参考とするために、委員会の指示に基づき事務局が資料収集をするケースもある。
この日の委員会では、インターネットや情報公開制度を使った資料収集が容易になった現状において、こうした事務局の資料収集や調査のあり方、委員会審理における用い方等について各委員が様々な角度から意見を述べた。
これらを整理したうえ、次回委員会でさらに議論を深めることになった。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・39件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 2月4日に開かれた第3回BPO事例研究会について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。当日はBPO加盟30社89人が出席し、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の委員会決定をもとに、犯罪被害者とその遺族に対する取材と放送上の配慮について議論した。また昨年秋刊行された『判断ガイド2010』で、放送倫理上の問題を考える目安として示された「事実の正確性」など5項目についての説明が行なわれた。このあと、最近目立って増えている顔なしインタビューの問題についても意見を交わした。
  • 次回委員会は3月15日(火)に開かれることになった。

以上

第169回 放送と人権等権利に関する委員会

第169回 – 2011年1月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

委員会運営上の検討課題 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」第二次案について審理した。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現上の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

議事の詳細

日時
2011年 1月18日(火) 午後4時 ~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

本事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月の審理を受けて修正された「委員会決定」第二次案について審理し、内容や表現について改めて時間をかけて詳細な検討を行った。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の検討課題について事務局より説明した。
インターネット社会の到来や放送と通信との連携、放送に対する視聴者意識の変化等に伴い、委員会運営において新たな検討課題が生じている。
委員会は2007年7月に運営規則の改正を行っているが、こうした状況の変化を受け、改めて運営上の課題について検討を始めることになったもの。
この日は、委員会の指示を受けて事務局がとりまとめた検討事項について説明した。実質的な議論は来月から行われる。

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に2月4日に開かれる「第3回BPO事例研究会」について事務局より説明した。
    当日は、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案をもとに「犯罪被害者とその家族への取材と放送における配慮の必要性」について山田委員が説明し、各局出席者との間で意見を交換する。また三宅委員長代行が、先ごろ発刊された『判断ガイド2010』で、放送倫理について考える目安として設けられた「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」など5つの分類項目について説明するほか、激増する「顔なしインタビュー」の問題についても議論することにしている。
  • 次回委員会は2 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第168回 放送と人権等権利に関する委員会

第168回 – 2010年12月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理した。原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることとなった。2件の審理要請案件について審議した結果、いずれも審理対象外との結論となった。

議事の詳細

日時
2010年12 月21 日(火) 午後3時 ~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月14日の起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。
まず決定の対象となる範囲を整理した後、過去の裁判等を取り上げて申立人の実名や映像を出したことが申立人の人格権に触れるかどうか、申立人への直撃取材や収録したインタビュー素材の扱い方に問題はなかったかどうか、さらに裁判についてのコメントなどに偏った点がなかったかどうかなど、本事案の主な論点について決定内容を詳細に検討した。
この結果、起草委員が原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることになった。

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定

  • 鹿児島県阿久根前市長らからの人権侵害の訴え

    申立人らは、2010年8月29日に放送された在京テレビ局の報道番組において、当時阿久根市長であった竹原申立人が市長の立場で行った専決処分について、リポーターから「専決処分が極めて例外的なこと」「これは明らかに違法です」との発言がなされたことは、重大な人権侵害にあたるとして、局に対して謝罪と訂正を求めた。しかし、話し合いはつかず、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会では、双方から提出された文書等をもとに審議した結果、「放送倫理・番組向上機構の目的や当委員会の任務に鑑み、市長による専決処分という公職者による公権力の行使そのものを対象とした放送部分についての苦情は、委員会が審理対象として取り扱うべき苦情に含まれない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

  • 県知事選立候補予定者からの公平・公正に関する訴え

    沖縄県知事選挙の立候補予定者であった申立人は、沖縄のテレビ局が2010年11月1日に放送した「沖縄県知事選公開討論会」において、同じく立候補予定者であった他の2名を討論者として招き、申立人を招かなかったことについて、申立人を他の2名の立候補予定者と同様に番組に出演させなかったことは、選挙の公正さを害する不公平な取扱いであったとして、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会は、当該局に対して局側の見解提出を要請し、双方から出された文書・資料等をもとに審議した。
    この結果、「当該局が3名の立候補予定者の中から公開討論に招く立候補予定者を絞り込んだ基準そのものは不合理とは認められず、かつ、基準へのあてはめが平等を欠いたことをうかがわせる事情も格別見当たらない。したがって、本件申立ては、『名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関する』苦情(委員会運営規則第5条1項)には当たらず、かつ、委員会が『公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者』(同条2項)からの申立てとして取り扱うべきものとも判断されない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・23件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月7日に札幌で開かれた放送人権委員と北海道地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について、事務局がまとめた資料を配布し報告するとともに、会の模様を放送した地元テレビ局の番組同録DVDを視聴した。
    札幌での開催は2003年10月以来7年ぶり2回目で、加盟9社から62人、一方、委員会側からは委員7人と事務局が出席し、「ジャーナリズムへの信頼向上のために~現場の困難をどう乗り越えるか」を全体テーマに、約3時間にわたってやり取りを交わした。
    また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
    堀野委員長は基調スピーチで、「キバを抜かれたジャーナリズムは無力だが、優しさを欠いたジャーナリズムは凶器と化す」という清水英夫氏の言葉を引用しつつ、「放送はもっと事実を突っ込んでほしい。一方で、視聴者や被取材者との緊張感を欠いて優しさを失くした放送は凶器と化して人権を侵害する。その両面を自覚して仕事をしてほしい」と要望した。
    個別テーマの議論では、特に顔なしやモザイクなど匿名化手法の問題で、各局から顔出しでのインタビューが難しくなっている現状が次々と報告された。記者の若年化に伴い、”顔は個人情報でしょう”といって、対象者と向き合う前に顔を切って撮影して来てしまうという悩みも聞かれた。
    これに対して委員からは「内部告発者の人権擁護やプライバシーの観点から顔を隠す必要がある場合はある。しかし、なんとなく成り行きで隠してしまう場合もあるのではないか。本当に顔なしの必要性や必然性があるケースなのか真剣に議論してほしい」という要望や、「個人情報の保護は万能ではない。事実報道の価値は間違いなくあり、すべてが匿名化したら民主主義社会は成り立たない。両方の価値があってこそバランスが取れるし、どちらが優先するかはケースバイケースだということをちゃんと考えてほしい」とする意見が出された。
  • 今後のICT(情報通信)分野における国民の権利保障のあり方について検討してきた総務省ICTフォーラムの最終会合が12月14日に開かれ、報告書が採択された。そのBPOに関連する事項について事務局より報告した。
  • 次回委員会は2011年1月18日(火)に開かれることになった。

以上

第167回 放送と人権等権利に関する委員会

第167回 – 2010年11月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案でテレビ朝日から対応報告書 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の審理が行われ、「委員会決定」案の起草に入ることが決まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で「放送倫理上問題あり」とされたテレビ朝日から、委員会決定を受けた後の対応報告書が提出された。

議事の詳細

日時
2010年11月16日(火) 午後4時 ~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、先月のヒアリング結果等をもとに、教授への直撃取材やインタビューの扱いについて問題があったかどうか、民事裁判結果や刑事処分についてのコメントに偏りがなかったかどうかを中心に、突っ込んだ意見が交わされた。また教授側に、取材に応じて説明すべき責任がなかったのかどうかについても話し合われた。
審理の結果、起草委員会を開いて「委員会決定」案を作成し、来月の委員会ではこれをもとに詰めの審理を行うことになった。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案でテレビ朝日から対応報告書

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、8月5日に放送倫理上問題あり(見解)の「委員会決定」を受けたテレビ朝日は、決定への対応と取り組みをまとめた報告書を11月4日に委員会に提出した。事務局より報告し了承された。
(報告書全文は、当ホームページ「委員会決定第44号」の「当該局の対応」をご覧ください。)

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・53件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 11月10日に開かれた総務省ICTフォーラムでBPOに対するヒアリングが行われ、今後の取り組みについて説明したことを事務局より報告した。
    ヒアリングにはBPO飽戸理事長らが出席、「放送の自由を守る力は視聴者の信頼にある」という認識の下、放送界の自主的な第三者機関として公平な判断に努め、BPOの活動について一般への周知拡大を図るとともに、放送局に対しても、様々なレベルでの取り組みを通じてより浸透を深めていく考えであると表明した。
  • 次回委員会は12 月21 日(火)に開かれることになった。

以上

第166回 放送と人権等権利に関する委員会

第166回 – 2010年10月

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリング

9月の苦情概要 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリングが行われた。申立人である教授への直撃取材の経緯や医療裁判の判決内容と放送での表現等、本事案の論点について通常よりも長い時間をかけ、双方から詳細な聞き取りを行った。来月の委員会ではこれをもとにさらに議論を深めることになった。

議事の詳細

日時
2010年10月19日(火) 午後3時~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリング

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
今月の委員会では申立人とテレビ朝日・朝日放送に対するヒアリングが行われた。
ヒアリングで申立人の教授は、番組内で取り上げられたケースは5年前に裁判で決着しており、しかも自分はその当事者でもなかったことや、出勤前に自宅近くで強引なインタビューを受けたと述べ、番組内容や取材姿勢を批判した。
これに対して局側は、教授は医師の上司で臨床試験の責任者でもあり、当事者として取材に応じるべき立場にあったことや、インタビューの際もきちんと名乗って行い、取材に問題があったとは考えていないと述べた。また裁判結果等のコメントに関しても、視聴者に少しでも分かり易い表現を選んだ結果、と主張した。
委員会ではこの日のヒアリング内容を整理し、来月の委員会でさらに議論を深めることになった。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・26件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判

その他

  • 9月16日に行われた「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」の通知・公表について報じた、当該局であるTBSテレビの当該番組『報道特集NEXT』など2番組の同録DVDを視聴した。
  • 「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、放送倫理上問題ありの「見解」を受けたテレビ朝日が、10月8日に社内勉強会を開いたことを事務局より報告した。起草委員を務めた山田健太委員を招き、山田委員の報告をもとに決定内容や事件取材のあり方等をめぐって熱心な意見交換が行われた。
  • 次回委員会は11月16日(火)に開かれることになった。

以上

第165回 放送と人権等権利に関する委員会

第165回 – 2010年9月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の審理が行われ、番組で取り上げられた民事裁判の判決や教授への取材方法について、担当委員からの説明とそれに基づく議論が行われた。9月16日に行われた「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局より報告した。委員会終了後、在京地区各社との意見交換会が開かれた。(意見交換会の詳細はシンポジウム・意見交換会の項をご覧ください)

議事の詳細

日時
2010年 9月21日(火) 午後3時~5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
2回目の実質審理となった今回は、番組で取り上げられた民事裁判での地裁と高裁の判決について、症例登録票の扱いや患者に対する説明義務の有無などの争点と判決の解釈について、担当委員から説明が行われた。また取材担当の委員からは、教授への取材方法をめぐって問題点があったかどうか、報告が行われた。さらに「委員会決定」案の起草を行うことになった委員からは、全体的な観点から検討すべき問題点が指摘された。本事案の審理では、メディアの取材行為や医療裁判に関する的確な理解と判断が欠かせないため、このように委員が専門にかかわる分野について分担して問題点の整理を行う、これまでにない方法がとられた。
この日の委員会では、申立人、被申立人から詳しい事情を聞いたうえでさらに議論を深める必要があると判断され、次回委員会でヒアリングを行うことになった。

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告

9月16日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表の概要、および通知・公表を受けての各局の放送対応をまとめた資料を事務局より配付し、報告した。
(決定全文はホームページの「委員会決定」の項、第45号をご覧ください)
通知・公表の概要は以下の通りである。通知は、9月16日午後1時30分よりBPO会議室で、堀野委員長および起草委員を務めた坂井委員と田中委員が出席し、申立人、被申立人が同席する形で行われた。
堀野委員長はまず、「本件放送に名誉や肖像権等の権利侵害はなく、放送倫理違反に当たる点も認められない」とする見解を通知し、「決定の概要」を読み上げた。そのうえで、権利侵害がないと委員会が判断した理由を説明するとともに、「補助的映像であっても、重要なものとして扱う以上は、そこに映されている人たちの肖像や気持ちに事前に十分に配慮してほしかった」と、被申立人に対して要望を述べた。
通知の後、個別に意見や感想を聞いた。
申立人は委員会での審理にお礼を述べた後、「事実関係の認定に不満はない。しかし、それをどう判断するかについては加害者側と被害者側で溝があるというのが率直な感想だ。委員会は社会的に許容される範囲内と判断されたのだと理解した。ただ、11月の放送で、自分たちの活動理念と全く立場を異にする例と一緒に放送されたことは大いに不満である。また、委員会で指摘していただいたが、これだけ映像を使用しながら事前に何の連絡もなかったことは、公共放送としておかしいのではないか」などと述べた。
被申立人は、「事実関係については主張を認めてもらえてありがたく思う。今回の映像使用に関しては、提供映像であったため権利処理に軽率な点があったことは指摘されたとおりである。提供映像を使用する場合、報道だけでなく制作も含め教訓として活かしていきたい」などと述べた。
午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。26社52名が取材に訪れ、テレビカメラ6台が入った。
まず堀野委員長が決定の概要を説明した後、坂井委員から「委員会決定」の流れに沿って詳しく説明した。坂井委員は「企画の意図はよかったが、映像に用いられている人たちの考え方に事前にもっと思いをいたしていれば、申立てを防ぐことも可能だったかもしれない」とコメントした。
田中委員は「テレビで取り上げられる側の期待と公平・公正でありたいと思う局側とのスタンスにはギャップがあるものだが、肖像権処理に問題があって双方のやり取りが増え、複雑になった。全体としてはよい番組だった」と述べた。
記者との質疑応答では、申立人からTBS宛て2010年1月15日付けのFAX文書について質問があった。申立人による番組の企画提案であった旨を答えると、「申立てにある『善意をふみにじる行為』の中にこのことも含まれているのか」と質問が続いた。
坂井委員と堀野委員長が回答し、TBSがこの企画案を断ったことを契機に申立てが行われたこと、素材となる一般の人の期待と現実の番組との間の「ずれ」や、放送される側の期待と局側の考えの「ずれ」が申立ての背景にはあると思われるが、編集権はあくまでも局側にあると判断したこと、企画についての具体的な合意が双方にあれば別だがそれはなかったことなどを説明した。
「TBSはこの機能訓練士に取材をしたのか」という質問が出た。取材をしていない旨を答えると、「なぜ取材をしなかったのか」と重ねて質問があった。
堀野委員長は、「番組のテーマは障害を持つ少女がなぜ普通中学校に進学できないのかを問題提起することにあり、少女の機能獲得のプロセスや方法がメインストリームではないということだった。企画意図を考えると、委員会は機能訓練士を取材しなかったこと自体に問題があるとは判断しなかった。しかし、映像の使用に関連して事前に挨拶はするべきであったと考えた」などと答えた。

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・41件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 8月25日に開かれた総務省ICTフォーラムで、BPOの活動についてのヒアリングが行われた。当日のやり取りの概要を事務局より報告した。
  • 毎年開かれている放送人権委員と各地のBPO加盟放送事業者との意見交換会を、今年は12月7日に札幌で北海道地区の放送事業者を対象に開くことになり、事務局より報告した。
  • 次回委員会は10月19日(火)に開かれることになった。

以上

第164回 放送と人権等権利に関する委員会

第164回 – 2010年8月

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

「大学病院教授からの訴え」事案の審理 ……など

「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、大筋で了承した。先月の委員会で審理入りが決まった「大学病院教授からの訴え」事案の実質審理が始まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局より報告した。

議事の詳細

日時
2010年 8 月17 日(火) 午後3時 ~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女に幼い頃から機能訓練を行っている機能訓練士が肖像権の侵害等を申立てたもの。
今月の委員会では、8月4日の起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。
時間をかけて詳細に検討した結果、決定案は大筋で了承され、起草委員による一部修正作業を経て、持ち回り委員会で検討のうえ最終了承される見通しとなった。

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当なインタビュー取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
委員会は今月から実質審理に入り、教授へのインタビューや番組のコメント等の適切さ、公平・公正性等について議論が交わされた。本事案は番組内容が医療や裁判の専門的な分野に関わっていることから、担当の委員を決めてポイントを整理し、来月さらに本格的な審理を進めていくことになった。
申立人は、「自宅前でのいきなりインタビューは著しい人権侵害であり、内容も一方的な偏向報道である。放送後に自分に対する誹謗中傷の電話やFAXが寄せられ人権を侵害された」として、局側に謝罪と再発防止策の提示を求めている。
これに対してテレビ朝日・朝日放送は、「番組は医療過誤裁判の背景にある医療界の問題を浮かび上がらそうとして企画されたものである」とし、番組内で取り上げられた教授について、「批判への受忍限度を超えるものではない」と謝罪や防止策の提示を否定している。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の通知・公表の報告

8月5日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表の概要、および通知・公表を受けての各局の放送対応や新聞等での反響をまとめた資料を事務局より配付し、報告した。あわせて、テレビ朝日の当該番組『報道ステーション』が決定内容を報じた当日夜の番組同録DVDを視聴した。
(決定内容の詳細は「委員会決定」の項、決定第44号をご参照ください。)
通知・公表の概要は以下のとおりである。
通知は、堀野委員長と起草委員を務めた三宅委員長代行、山田委員が出席して、午後1時30分からBPO会議室で、申立人と被申立人が同席する形で行われた。
堀野委員長は先ず、「放送内容に名誉毀損や敬愛追慕の情の侵害という法的な権利侵害があったとは認められない、しかし、取材、放送のあり方に放送倫理上の問題があった」と述べ、「委員会決定」に沿ってポイントを説明した。決定には山田委員ら2人による「意見」が付けられており、山田委員はその趣旨を説明した。
通知の後、申立人とテレビ朝日から個別に意見や感想を聞いた。
申立人は「事件が起きてから警察への対応などで忙しく、悲しんでいる暇もなかったが、放送を見て、これが倫理的に人間的に正しいのかと感じて怒りがおさまらなかった。倫理面で問題があったという判断をいただけて本当に良かったと思っている」と述べた。
テレビ朝日の報道担当者は「決定は真摯に受け止めたい。この場を借りて、申立人と関係者に対し改めてお詫びしたい。ただ、遺族へのアプローチ、取材は非常に難しい側面があることもご理解いただきたい。これから改めて、犯罪被害者、その遺族の取材にもっと真摯に向き合わなければいけないと思っている」などと述べた。
公表の記者会見は、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで行い、21社48人の出席があった。
まず堀野委員長が決定の概要を伝えた。
続いて、三宅委員長代行は「決定文の『放送倫理上の問題』において、『犯罪被害者報道に関する報道指針等』という1項目を立てた。『事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に節度をもった姿勢で接する』という民放連の報道指針と、犯罪被害者等基本法が求めている『事件の被害者等の名誉または生活の平穏を害することのないよう、十分配慮すること』という努力義務、この視点が放送倫理上問題ありという判断の根拠になっていることを補足しておきたい」と述べた。
山田委員は「意見」について説明し、「1つは被害者遺族の思いと実際の報道にズレがある。放送内容におおよそ間違いはないが、細かい部分で違いがある。もう少し丁寧な取材や報道ができたのではないか。2つ目は、取材段階では張り紙等を見て被害者遺族に対する配慮の姿勢を示しながら、放送では悪者イメージを一方的に作っている。この取材と報道とのギャップを認めざるを得ない。今回の事例をもとに被害者の取材、報道のあり方をさらに検討していただきたい」と述べた。
このあと記者から質問を受けた。
「遺族は、近所の噂、悪口に対する弁明の機会を奪われたと思ったのではないか」という質問が出た。
堀野委員長は「取材で得た内容は、被害者側の積み重ねてきた行動をいくつも具体的に述べている。それに対する被害者遺族側からの弁明は一切聞かれていない。明らかに不公平だったと言わざるを得ない。必ず遺族を取材せよ、と言っているのではない。この事件で、こういう取材の内容を、こういう番組に使うという念頭であれば、当然被害者遺族に対する接触は試みるべきだったろうと、私どもはそう判断した」と答えた。
本件申立ての期間制限に関する質問が出た。
委員長は「『広島県知事選裏金疑惑報道』事案の審理において、放送内容が動画と音声を伴ってネット上で継続して流れている場合には、放送された日から3か月以内に局に申し立てられた苦情を取り扱うとした運営規則は少々きつすぎるのではないか、柔軟に対処しようということで、動画・音声による配信が終わってから3か月以内というような形に初めて解釈し直した。本件の場合も、局に申立てがあった7月時点まで動画・音声を伴って流れていたので、3か月要件は満たしていると判断して審理入りした」と説明した。
「そもそも境界問題の企画の頭に、なぜこの事件を持ってこなければならなかったのか、テレビ朝日には尋ねたのか」という質問があった。
委員長は「広い意味での境界に関するトラブルだから、別に不自然には感じなかったということだった。私どもは、境界線そのものに関する争いでないのに、なぜこの事件を持ってくる必要があったのかと、しかも、その持ってき方が不公平だと。ただ、この点に正面から踏み込むことは番組の作り方に介入することになり、編集の自由の範囲内ということで倫理上の問題は問わなかった」と答えた。

7月の苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・45件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判

その他

次回委員会は9 月21 日(火)に開かれることになった。

以上

第163回 放送と人権等権利に関する委員会

第163回 – 2010年7月

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理 ……など

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理が行われ、「委員会決定」の方向が固まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の「委員会決定」修正案について審理し、大筋で了承を得た。このほか、審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2010年 7 月20日(火) 午後3時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士が肖像権の侵害等を申立てたもの。
今月の委員会では、申立人および被申立人であるTBSに対するヒアリングと、ヒアリングを受けての審理を行った。
申立人は、最も訴えたいこととして「TBSは1回目の放送では申立人らに無断で、申立人らが登場する少女の機能訓練の映像を長々と使用した。2回目の放送では、申立人らにとっては不本意な字幕表記を映像に加えただけだった。しかも、そのように多くの映像を使用しながら、申立人らに対し何ら取材も行わないなど、番組に登場した他の人物と比較すると扱いが軽んじられた」と述べた。
一方、TBSへのヒアリングには報道局の番組担当者ら計4名が出席し、「番組の目的や趣旨から機能訓練の映像は欠かせないものであり、少女の親が撮影した映像であること等から、申立人らが登場しても特に問題はないと判断した。とは言え、申立人からの苦情を受けて、やはり配慮が足りなかった面もあったことは認めて謝罪した。その後のやり取りでは、報道番組である当番組において申立人らの活動の宣伝にならないよう、その点に特に注意して対応した」などと述べた。
ヒアリングの後の審理では、本件報道において申立人が主張している肖像権の侵害があったかどうかを中心に議論した。その結果、「委員会決定」の方向性がほぼ固まり、起草委員が決定案をまとめることになった。
次回8月の委員会で、起草委員会を経て提出される「委員会決定」案の審理を行う。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者の遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、2回目の起草委員会を経て修正された決定案が審理され、大筋で了承された。若干の手直しのうえ、持ち回り委員会により最終了承される運びとなった。また、一部の委員は決定案を支持する立場で「意見」を書く意向を示した。 本事案で申立人は、事実に反する放送内容によって両親に対する敬愛追慕の情や名誉を侵害されたなどとして、謝罪と訂正を求めている。
これに対し、テレビ朝日は、放送内容は虚偽ではなく名誉侵害などの不法行為はないと反論している。

審理要請案件「大学病院教授からの訴え」、審理入り決定

テレビ朝日・朝日放送は2010年2月28日の『サンデープロジェクト』の特集コーナーで「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」を放送した。この番組に対して大学病院の教授から人権侵害等の申立てがあった。
番組は、医療をめぐる裁判では、原告側(患者側)が勝つ割合が一般の民事裁判に比べてはるかに少ないが、これは医療界に根強い隠蔽体質にも原因があるとして、これを告発し続けるある大学病院医師の活動を通して医療界の現状を浮き彫りにしようとするものであった。そして、医師の勤める大学でも、かつて患者が薬の臨床試験をめぐって起こした裁判で、医師の探し出した記録がもとで患者側が勝訴したことや、こうしたことがもとで医師が上司である教授からパワーハラスメントを受けたことを取り上げ、教授に対して直撃インタビューを行っている。
これに対して教授は「拒否したにも関わらず、自宅前でいきなりインタビューされたのは自分に対する著しい人権侵害であり、番組自体も一方的な偏向報道である」として3月にテレビ朝日に対して抗議した。
抗議の後、テレビ朝日と教授との間で2回にわたり文書や電話によるやり取りが交わされたが、話し合いは進展せず、教授は5月末に申立てを行った。直接交渉は申立て後も継続されたものの、結局、解決には至らなかった。
このため、委員会は今月の委員会で双方から提出された文書や番組DVDを基に審議した結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。実質審理は8月の委員会から開始される。
申立人の主張に対して、テレビ朝日・朝日放送は「教授は裁判や医師に対するパワーハラスメントの当事者であり、取材に応じるべき立場にあった。また番組は多角的な取材に基づいた中立・公正なもので、医療界の体質改善に資する方策を提示する目的だった」と主張している。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・35件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8 月17 日(火)に開かれることになった。

以上

第162回 放送と人権等権利に関する委員会

第162回 – 2010年6月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

「機能訓練士からの訴え」事案の審理 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理が行われ、起草委員会から提出された「委員会決定」案について検討した。先月の委員会で審理入りが決まった「機能訓練士からの訴え」事案の実質審理が始まった。このほか、3月に「拉致被害者家族からの訴え」事案で「委員会決定」の通知を受けたテレビ朝日より、その後の取り組みをまとめた報告書が提出された。

議事の詳細

日時
2010年 6月15 日(火)午後4時~8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者の遺族が申し立てたもの。
先月の委員会で「委員会決定」の方向性が決まったのを受け、起草委員会が起草した決定案について審理した。その結果、内容に一部修正が必要との結論となり、起草委員会が修正案を起草したうえで、あらためて来月の委員会に諮ることになった。
本事案で申立人は、事実に反する放送内容によって両親に対する敬愛追慕の情や名誉を侵害されたなどとして、局に対し謝罪と訂正を求めている。
これに対し、テレビ朝日は、放送内容は虚偽ではなく名誉侵害などの不法行為はなかったと反論している。

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士が申し立てたもの。先月の委員会で審理入りが決定し、今月から実質審理に入った。
既に提出されている申立人からの「申立書」に加え、この日の委員会までに新たにTBSからの「答弁書」、「答弁書」に対する申立人からの「反論書」、「反論書」に対する「再答弁書」が提出され、双方の書面が出揃った。
委員会では、提出された書面と資料を基に改めて双方の主張を整理した後、申立人の主張している肖像権の侵害があったかどうか、名誉・信用の毀損についてはどうかなど本事案の主な論点について議論した。
その結果、来月の委員会で申立人および被申立人(TBS)に対するヒアリングを行い、それぞれの主張内容や事実関係について詳しく聞いたうえで、さらに議論を深めることとなった。

「拉致」事案でテレビ朝日から対応報告

「拉致被害者家族からの訴え」事案で去る3月10日、「放送倫理上問題あり」との決定を受けたテレビ朝日は6月9日、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめた報告書を委員会宛て提出した。(報告書全文はホームページの「委員会決定第43号」にある「当該局の対応」の項をご参照ください。)
また、同局では5月28日に坂井眞委員を講師に招き、上記決定についての社内セミナーを開催した。報道局を中心に約70人が出席し、坂井委員による「委員会決定」の説明や局側スタッフとのパネルディスカッションなど、約2時間にわたり率直で活発なやり取りが交わされた。
以上について事務局より報告し、了承された。
委員会の席上、坂井委員は「セミナーでは局の皆さんと本音の議論ができ、大変よかった」と感想を述べた。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・26件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は7月20日(火)に開かれることになった。

以上

第161回 放送と人権等権利に関する委員会

第161回 – 2010年5月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案のヒアリングと審理が行われた。障害を持つ少女の中学入学問題を取り上げたTBSテレビの報道番組について、機能訓練士から肖像権や名誉権等の侵害を訴える申立てがあり、審議の結果、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2010年 5月18日(火) 午後3時~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、まず申立人とテレビ朝日に対するヒアリングを実施した。
申立人側は本人と姉とが出席し、「放送内容は、被害者が加害者に嫌がらせともとれる行為をしていたかのように受け取れるものばかりで、事実でない内容もあった。番組のためなら、だれが傷ついても、たとえ多少の虚偽があっても、それは関係ないことだと言えるのか。今回の事件は、番組で取り上げた境界線問題とは何の関係もなく、ましてや明治時代に作られた公図などは無縁のものである。なぜ私たちの両親が悪者のようにストーリーを作られ、全国的に否定されなければならないのか」と述べた。
一方、テレビ朝日からは『報道ステーション』の担当者ら3人が出席し、「刑事裁判の判決は、被害者が被告人の車の通行妨害をしていたと認め、嫌がらせ行為と言われても仕方がないものだったと指摘している。その点で、放送内容の真実性はある程度裏付けられたと考える。境界トラブルは明治時代に測量された精度の低い公図に一因があるが、放送では相談に応じる第3者機関があることを提示した。ご遺族が精神的苦痛をさらに患ったというのであれば申し訳なく思うが、境界トラブルはあらゆるところで起きていて、悩んでいる人には多少なりとも一助になりえた内容だったと考える」と述べた。
ヒアリングを受けて審理を行い、「委員会決定」の方向性を決めた。起草委員会を開いて決定案を検討し、6月の委員会に諮ることになった。

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定

TBSテレビ(以下、TBS)は2009年4月11日の『報道特集NEXT』で、「車イスの少女が入学できない訳」を放送した。この放送に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士から申立てがあった。
番組は、脳性まひの少女が様々な困難を乗り越えながら普通小学校を卒業したものの、普通中学校への入学を拒否されたことに対し問題提起を行ったもの。
申立人は、「少女の機能訓練の様子を紹介したビデオ映像は、申立人に無断で使用されたもので、肖像権の侵害である。また、リハビリという用語を使ったことで申立人らが医師法違反にも問われかねない。さらに、悪意のある編集により今後の活動に障害を生じ、精神的苦痛や誹謗中傷を受け、名誉を毀損された」と主張している。放送後、局との数回にわたるやり取りを経ても解決しないとして今年3月に申立てを行った。
TBS側も話し合いの余地はないとしたため、委員会は、TBSに対し「交渉の経緯と局の見解」および番組同録DVDの提出を要請し、双方から提出された文書および資料、番組DVDをもとに審理入りするかどうかについて審議した。その結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。6月の委員会から実質審理を開始する。
申立人の主張に対し、TBSは「機能訓練のビデオ映像は少女の両親が申立人の了解を得て撮影したもので、放送に際しては両親の許諾を得た。申立人に断りなく使った点については、放送直後に配慮が足りなかったことを謝罪し、表記や表現については、少女の普通中学校への入学が実現した過程を追跡した2009年11月の放送で訂正している。これらの点については申立人も了解しており、解決済みであると理解している。また、悪意ある編集との主張は、主張の内容自体が判然としない」と反論している。

4 月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・47件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第160回 放送と人権等権利に関する委員会

第160回 – 2010年4月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

3月の苦情概要 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理が行われ、来月の委員会で当事者へのヒアリングを行うことになった。

議事の詳細

日時
2010年 4 月20 日(火) 午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者遺族が申し立てたもの。前回の委員会に引き続いて、審理を行った。
申立人は「両親の長年の嫌がらせが殺害の動機を形成したかのような放送内容は、事実に反する。両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。子供である申立人の名誉も侵害された」と主張し、謝罪と訂正を求めている。これに対し、テレビ朝日は「被害者と加害者の間にトラブルが存在していた。被害者の社会的評価を低下させるとしても放送内容は虚偽ではなく、申立人の両親に対する敬愛追慕の情侵害の不法行為にあたらず、また申立人の名誉侵害もない。謝罪、訂正放送が必要な事実誤認はない」と反論している。
4月の委員会では、犯行の動機などを伝えた放送内容が真実かどうか、申立人側の取材をしなかったことが適切だったかどうかを中心に意見を交わした。また、この特集は前半で事件を取り上げ、後半では境界トラブルが各地で起きているとして、その原因や解決策を伝えているが、こうした構成の仕方をめぐっても意見が出た。
次回、5月の委員会では申立人とテレビ朝日に対するヒアリングを実施し、さらに審理を重ねることになった。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・42件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局より以下の点について報告した。
    BPO飽戸理事長は、3月29日に開かれた総務省の「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」の関係者ヒアリングに出席し、BPOの理念や活動内容について説明した。また委員からの質問にも答えた。
  • 次回委員会は5月18日(火)に開かれることになった。

以上