2015年12月9日

『ざっくりハイタッチ』(2015年9月12日放送)

2015年12月9日 放送局:テレビ東京

2015年9月12日25時15分から25時45分までテレビ東京で放送された『ざっくりハイタッチ』~赤ちゃん育児教室~について第174回青少年委員会で審議入りし、回答要請を行ないました。第175回青少年委員会でテレビ東京からの回答書を基に審議を行い「委員会の考え」をまとめ審議を終了することにしました。以下に経緯を含めて公表します。

<委員会の考え>

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2015年12月9日

テレビ東京
『ざっくりハイタッチ』赤ちゃん育児教室企画に関する
「委員会の考え」

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

 BPO青少年委員会は、視聴者意見が寄せられたテレビ東京『ざっくりハイタッチ』~赤ちゃん育児教室~(2015年9月12日25時15分~25時45分放送)について10月27日開催の第174回青少年委員会において審議に入ることを決定し、テレビ東京に11月9日付で「ご回答のお願い」とする回答要請を行いました。そして11月24日開催の第175回青少年委員会において、テレビ東京より11月18日付で提出された「回答書」に基づき審議を行った結果、さらなる意見交換は行わずに「委員会の考え」を公表することで審議を終了することにしました。

 テレビ東京の『ざっくりハイタッチ』~赤ちゃん育児教室~は、芸人の第一子誕生をきっかけに、他の芸人たちが今後経験するであろう育児を学ぶというバラエティー企画です。画像処理はされているものの、芸人が赤ちゃん役となり下半身をあらわにしておむつを交換したり、女優がおむつ姿の芸人のボディマッサージを行い男性器を反応させたりした点について、視聴者から「下品なことを公共の電波で流すことはひどい」などの意見が寄せられました。こうした演出は日本民間放送連盟・放送基準(以下「放送基準」)に抵触する可能性を含んでいて、性的な刺激も強く、委員からも「不快で下品」「いじめのヒントを与える可能性は否定できない」「深夜とはいえ地上波の公共性をどう考えているのか」などの厳しい意見が出ました。
 放送基準 第3章 児童および青少年への配慮 (18)には「放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する」と規定され、解説には「テレビでは、午後5時~9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する」といういわゆる"5時~9時規定"があります。制作者はこれを念頭に深夜帯ならば基準を緩めてもよいと判断し、制作・放送している可能性があります。今回もテレビ東京からは、「番組審査部による考査も深夜番組であるとの認識から通常より緩み、放送するに至った」との回答がありましたが、青少年委員会は、この規定は午後5時~9時以外であれば性的表現などの基準を緩めてよいということを言っているわけではないと考えています。
 最近は中高生も録画機器を使って、深夜帯の番組を録画して見ている傾向があることも分かっています。2015年6月1日に青少年委員会が公表した「『中高生の生活とテレビ』に関する調査」では、有効回答数2993件のうち半数以上がリアルタイムより録画視聴が多いと回答しており、録画視聴者の中では、深夜帯の番組の録画率がそれ以外の時間帯より上昇していることが明らかになっています。もはや深夜帯番組だから青少年のことは考慮しなくてよいという時代ではなくなりつつあるのです。
 もちろん、青少年委員会は、放送基準 第8章 表現上の配慮 (43)に「放送内容は、放送時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする」とあるように、深夜帯の番組も、昼間や夕方などの時間帯とまったく同様に判断しなければならないと考えているわけではありません。また、どの時間帯であれ、性的表現などに厳密な線引きを行うことは、本来自由であるはずの創造の現場を萎縮させ、表現の自由をゆがめることにつながりかねないと考え、性的表現などについての形式的な基準設定を行うことには肯定的ではありません。しかし、2015年1月18日付「"深夜帯番組の性的表現"に関する『委員長コメント』」で指摘したように、「ときに視聴者が嫌悪するような行き過ぎた内容になっていたり、人権侵害や公序良俗にもとる内容になっているのに、そのことに番組制作者が気付かないでいるのではないか」と危惧した事態が広がると、権力的な統制を求める世論を高める可能性があり、結果的に制作者が望まない事態になる恐れもあります。番組制作に関わる人たちが、放送基準 第8章 表現上の配慮 (48)「不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける」を心に留め番組制作にあたることを望みます。
 青少年委員会は「下ネタ」のもたらす笑いが視聴者に開放感を与えることがあることを理解していますが、幼児からお年寄り、外国人までがいつでも無料で見られる公共性の高い地上波放送においては、課金システムのメディアとは自ずと表現上の制約に違いがあることを、2014年4月4日に公表した「『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』に関する『委員会の考え』」で指摘しています。この『委員会の考え』は「中年男性のおむつ交換のシーン」にも言及しているのですが、こうした過去の類似事案についての『委員会の考え』を、制作担当者のみならず、番組審査担当者でさえも「失念していた」「議論の俎上に上らなかった」ことは、放送倫理と番組向上の視点から残念で遺憾と言わざるをえません。
 今回、私たちが懸念したのは、これだけでなく、放送局の主体性の問題もありました。出演者はいずれも著名な実力派の芸人であり、プロデューサー以外は演出担当者もディレクターも構成作家も外部の制作会社の人々でした。番組制作においては一般的な方法の一つですが、外部の企画や制作方針に対して放送局の発言力が弱まっている状況があるのではないかという疑問が強くありました。今回、青少年委員会が番組の企画・制作・放送に至るプロセスを確認したのはそのためです。
 昨今は製作委員会方式のように放送局の関与が限られているケースもあり、それが番組作りの可能性を広げる起爆剤になっているとも思われますが、どのような方法で制作されたものであっても、番組内容や放送時間帯を決めるのは放送局であり、最終的な放送責任は放送局にあることを再度、確認していただきたいというのが青少年委員会委員の共通の思いです。
 なお、今回の審議を受けて、テレビ東京ではBPOの3委員会すべての審議事案の一覧表を作成して社内への配布、周知を行い、社内外およそ150人の制作担当者を集め、VTRを見ながらの研修を行ったとの報告がありました。真摯な対応に感謝します。各局においては、深夜帯番組の表現についてさらに議論を深めていただくようお願いします。

以上

<青少年委員会からの質問>

2015年11月9日

ご回答のお願い

 日頃よりBPOの活動にご協力のほど、感謝申しあげます。
 さて今般、貴社の番組『ざっくりハイタッチ』~赤ちゃん育児教室~(2015年9月12日25時15分~25時45分放送)の中で男性芸人が行った複数の行為に対して視聴者意見があり、それを受けて委員会で番組を視聴し討論した結果、本番組を「審議対象とする」ことになりました。
 つきましては、11月17日までに以下の質問に対して貴社の考えを書面でご回答願います。
 なお、質問およびご回答は、「BPO報告」やBPOホームページ等で公表いたしますので、ご承知おきください。

    1. 『ざっくりハイタッチ』~赤ちゃん育児教室~は、どのような経緯で企画・制作・放送されたのかをくわしくお聞かせください。

    2. 男性芸人が下半身を露出する場面(おしめ交換、女優によるマッサージなど)の演出について、制作者の側でどのような議論が行われたのかについてお聞かせください。

    3. 上記の演出について社内でどこまで情報が共有されていたかについてお教えください。その際、考査部門の判断はどうであったかについてもお聞かせください。

    4. 当該番組は放送直後から11月9日現在も動画サイトでの視聴が可能になっていますが、貴社はどのように対応されているのかお聞かせください。

    5. 青少年委員会では「下ネタ」を扱うバラエティー番組と放送の公共性について、「『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』に関する委員会の考え」および「"深夜帯番組の性的表現"に関する委員長コメント」を発表しております。この「委員会の考え」「委員長コメント」について、貴社の意見、またどのように社内共有されていたのかをお聞かせください。

    6. 放送の公共性について貴社の考えをお聞かせください。

【参考】

『絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時!』に関する「委員会の考え」2014年4月4日 (抜粋)
 青少年委員会は、現代の日本でのバラエティー番組がもつ意味の大きさ、その重要性についてはよく理解しているつもりです。日々笑いを提供し続けることの苦労についても十分想像できますし、新たな笑いの創出のために快や不快、上品下品の境目で仕事をするということも分かっているつもりです。「下ネタ」も時と場合によっては見る者を開放的にし、豊かな笑いをもたらすでしょう。社会を風刺する毒のある表現が、視聴者の憂さ晴らしになることもあると思います。こうした番組づくりのために民放連の放送基準等を杓子定規にあてはめるつもりはありません。それは本来「なんでもあり」のバラエティー番組の萎縮につながりかねません。
 とはいえ、いつでもどこでも誰もが無料で視聴できる公共の地上波放送と、入場料が必要な映画や舞台、CS放送などの有料チャンネルとではメディアの特性が異なり、表現上の制約にも違いがあるということについては、制作側としてけじめをつけていていただきたいということは改めて願わざるを得ません。社会のグローバル化が進む中、幼児からお年寄り、外国人まで多様な視聴者が見る公共性の高い地上波放送においては、課金システムのメディア以上の配慮が必要であることはいうまでもありません。

"深夜帯番組の性的表現"に関する「委員長コメント」2015年1月8日 (抜粋)
 最近の深夜帯番組の性的表現に対して視聴者からも委員会からも強い批判や懸念があることを受け止めていただくことを前提に、放送の公共的責任についての自覚を持った上で、該当局だけでなく、各局においても、深夜帯番組における性的表現のあり方について速やかに議論を行っていただくようお願いすることにした。

以上

<テレビ東京からの回答>

2015年11月18日

放送倫理・番組向上機構【BPO】
放送と青少年に関する委員会
委員長   汐見 稔幸 様

株式会社テレビ東京
制作局 CP制作チームプロデューサー
金子 優
編成局 番組審査部長
大岡 優一郎

貴質問書に対する回答書

 謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を
賜り、厚く御礼を申し上げます。
 弊社といたしましては、『ざっくりハイタッチ』(2015年9月12日放送)に対す
る今般の貴委員会からのご指摘を大変重く受け止めていることをまず、お伝えした
く存じます。社内での度重なる議論も経た今、当番組には不快な思いを抱く視聴者
がいたであろうことは否定できないと考えるに至りました。ひとえに、深夜1時過
ぎから放送する番組であったことで制作基準、審査基準を緩めてしまったからに他
なりません。我々としては同じような逸脱を起こさないよう、早急に対策を講じま
した。今月初め、社内外の制作者を集めて今回の番組を見直しながら問題点を洗い
出す研修会を開いた他、各番組制作現場に対しては放送基準の読み直し、貴機構で
過去に審議された事案についての再確認、またチェック体制の強化を図ったところ
です。これらの作業を通じ、今一度立ち止まって番組制作というものと真摯に向き
合い直さねばならないことを一同、痛感しましたが、誤解を恐れずに言えば、我々
は今回の貴委員会からのご指摘をその良い契機として捉え、今後、よりよい番組作
りに邁進していく所存です。
 貴委員会より頂きました6つのご質問につきまして、以下にお答えいたします。

1.番組の企画・制作・放送経緯
 そもそもは、番組にレギュラー出演している芸人の一人にまもなく第一子が誕
生するとの情報を受け、話題性もあり、未経験者が多いゆえに不慣れな「育児」
というものを芸人たちに実践させることで何か面白い発見があるかもしれないと
の考えから始まりました。本番組は制作会社の協力の下、弊社が局制作をしてい
るものですが、その定例会議の席上、制作会社の演出担当者と構成作家から、「赤
ちゃん育児企画」というものをやってみたらどうだろうかという提案が出されま
した。そこで、演出担当者と制作会社の番組担当ディレクターが当芸人に同様の
提案をし、相談したところ、当企画を進めていくことが決定された次第です。
あくまでも「育児教室」というテーマではあるものの、制作現場としましては、バラエティ番組である以上、そこから多くの「笑い」を生み出すような様々な演
出も必要不可欠であろうとの思いから、出演者が赤ん坊になりきり、様々なリア
クションをしやすくなるようにと考えました。
 7月14日、演出担当者、担当ディレクター、弊社プロデューサーの立会いの下
に臨んだ収録ではやや逸脱した部分もありましたが、それは編集作業でカットで
きると考えました。ゆえに、編集作業に移る前に、プロデューサーや演出担当者
が入念に収録VTRをチェックし、芸人たちが馬鹿馬鹿しさを演じることで「笑い」
を呼び起こすであろうと思われたバラエティ要素の強い部分は最大限に尊重しな
がらも、多くの人が不快に感じるであろうシーンについては、カットすることに
しました。いわゆる「画角」や「カット割り」などと呼ばれる手法で編集作業を
行うように努めたのですが、出演者たちのやりとりの上でどうしてもカットでき
ないと思われたブロック、あるいは多少「暴走気味」と思われる可能性があった
としても、ある種の「笑い」を呼ぶためにはカットするには忍びないと思われる
ブロックがありました。それらを残す際、悩んだうえにとった手法がイラストに
よって部分的な処理を行うという対応でした。番組審査部による考査も深夜番組
であるとの認識から通常よりも緩み、放送するに至った次第です。

2.制作者の間での議論
 我々、制作者の間では、「育児教室」というテーマの中、同期同士であったり、
コンビの相方であったりして照れくささを感じる関係性もあるような芸人たちに
対し、赤ん坊というものを演じさせ、完全になりきらせるところから一定の面白
さ、すなわち何らかの「笑い」が引き出せるのではないかとの前提から、様々な
演出上の議論を行いました。もちろん、芸人たちに下半身を露出させた状態で番
組を進行してもらおうというこだわりがあったはずもなく、あくまでも「笑い」
を生み出すような演出になることを想定し、芸人が赤ん坊役を演じることで様々
なリアクションをとりやすいかと考え、おしめを着けてもらった次第です。
 その際、過去に類似の番組があり、貴委員会からもそれに対する「考え」が出
されていた事実については、我々制作者一同の頭の中から抜け落ちており、議論
の俎上に上らなかったことは正直に認めざるを得ません。ただ、芸人である以上
は笑いをとろうという意識から、収録の際の振る舞いに何かしらの行き過ぎが生
じる可能性があることはある程度想定していた中でも、芸人たちの下半身が映っ
てしまっては放送できなくなると考え、我々としては「画作り」の工夫について
慎重に議論を行い、そのためのリハーサルを何度も行ったのは事実です。
 収録後、VTRのプレビューを重ね、編集の際にも色々と考慮をしたうえで
多くの部分を削除したのですが、貴委員会のご指摘の通り、十分とは言えず、視
聴者が不快と感じても仕方がないシーンを残す結果となってしまいました。また、
女優が出てきて、いきなり芸人にマッサージをするという演出については、出演
芸人へのサプライズとして企画しましたが、そこから何かの「笑い」に転化でき
ればよいとの考えから行いました。これらは、あくまでも深夜番組であるとの認
識から生じた結果ですが、現時点で冷静に考えれば、視聴者に不快感を与えてし
まったであろうことは否めず、流してはいけないシーンであったと思っています。
それは、社会常識に照らし合わせ、自ずと判断せねばならないことでした。
 また、「マネしないでください」「芸人同士が体をはった赤ちゃん教室です。マネしないでください」などの注意喚起テロップを入れることで、視聴者の印象も緩和されるのではないかとの甘えが我々の中にあったことも否定できません。

3.社内共有
 収録前の7月9日に番組担当プロデューサーから、企画意図と内容について記
したメールが編成部と番組審査部に送付されました。それに対し、番組審査部か
らは「細心の注意・配慮をしながら収録するように」との指摘をしております。
その後、編集したオフラインデータが9月9日に送られてきた際、番組審査部か
らは「前週にすでに『赤ちゃん企画』を放送していることもあり、企画そのもの
を今さら取りやめろとまでは言わないが、タレントが女性に触られて生理的な反
応を示し、そのまま全裸で自らの持ちネタを披露するシーンについては、『全裸は
放送基準に抵触する』『いじめのようで不快である』と思う」と指摘しました。
また、「絶対にマネをしないでください」などの注意喚起テロップも入れるよう
忠告をしました。
 ただ、担当した審査部員も、長年の経験から考査に精通し、過去に貴機構で指
摘された事案について知悉していたものの、昨年、類似の事案が起きた際に貴委
員会から出された厳しい指摘の詳細は失念しており、そうした観点からことさら
強い指摘をするようなことはしませんでした。また、すでに収録が済んでいたこ
とから、何とか番組として成立させたいという判断が働いてしまったのも事実で
す。何よりも、深夜1時15分から始まる深夜番組であったことが指摘を緩くすることに繋がってしまいました。今後は、深夜帯の番組においても日中の番組と同じ基準で審査することを改めて徹底します。

4.動画サイトへの対応
 弊社の公式動画配信サービスでは、当該番組は配信しておりません。現在、インターネットの各種動画サイトに掲載されているものはすべて違法アップロードされたものです。違法アップロードは重大な著作権侵害行為ですから、我々としましては当該番組に限らず、各種動画サイトに対してこれまでも違法動画の削除要請をしてきました。今回のご指摘を受けてから、当該番組の違法アップロードのチェックおよび削除要請を強化しております。
 なお、10月13日に貴委員会からのご指摘を受け、放送を予定していた地方局11局にはすぐさま要請を出し、放送を休止したことはお伝えしておきます。

5.貴委員会の意見・コメントに対する弊社の考え
 バラエティ番組というものの存在と必要性に対する一定の評価、また制作者の
置かれた立場にまでも理解を示す寛容なスタンスに貫かれる一方で、有料放送な
どとは異なる地上波放送としての当然の責務と心構えを説いた貴委員会の通達は、いずれも極めて公正かつ的確なものと認識し、社員一同、十分に納得、理解した
つもりでおりました。当然のように、「委員会の考え」も「委員長コメント」も、
当時の弊社内のBPO連絡担当者から社内メールシステムを通じ、各現場の部長
(プロデューサー)以上に迅速に伝えられ、そこから部会を通じて各部の部員へ
の周知が行われておりました。他の全ての貴機構からの連絡伝達と同様の流れによるものです。
 しかしながら、今回の結果を考えますと、その共有が弊社社員の中で十分に徹
底されていたと言うことは到底できません。
 ゆえに、今回の事案を受け、貴機構設立以来の3委員会全ての審議事案につい
ての一覧表を改めて作成し、社内への配布、周知を行いました。また、再発防止
に向け、11月5日に社内外およそ150人の制作担当者を集め、今回の番組のVT
Rも見せながら議論する研修を開催しました。これまでも、新入社員研修、異動
前後に現場の制作者を集めて行う研修など、様々な場で貴機構に関する勉強会の
時間は十分に設けてきましたが、今後はさらなる充実を図ります。

6.放送の公共性
 多くのメディアが台頭し、「テレビ離れ」などの言葉もしばしば見受けられる
今日でもなお、国民の多くがテレビを最も身近に感じるメディアとして捉えてい
るとの調査結果を知るたびに、テレビが極めて大きな社会的影響力を持つ「公共
性」の高いメディアであるとの自覚を新たにするのは言うまでもありません。
 特にあの東日本大震災の報道以来、我々はそうした「公共性」というものにつ
いて改めて強く考えさせられてきました。現地でその瞬間に何が起きているのか
を遠く離れた人々さえもリアルタイムで理解し、時に人命をも救い、あるいは被
災者への支援や様々な議論を活性化させることにもテレビの映像が少なからず
寄与したことを思えば、放送というものが常に重い社会的責任を伴うのは自明の
ことです。有料テレビなどとは異なり、地上波放送は自らにより厳しいモラルを
課し、業務にあたらねばならないのは当然とも考えます。
 視聴者の生活に一服の清涼を与えるべきバラエティ番組においても、豊かで上
質な真の笑いを提供できるような「公共性」のあるものを創造しようと、日々、
現場のスタッフ間で真剣に話し合い、アイディアをひねり出し、制作にあたって
おります。しかしながら、確かに今回の番組からはそうした観点が欠けており、
視聴者に不快感を与える番組であったと指摘されても仕方がないことと考えてい
ます。しかも、すでに昨年、貴委員会から指摘されていたような形での番組作り
を繰り返したことは、先日の放送倫理検証委員会の委員会決定でも言及されてい
たように、本来ならば自律が保障されているはずの放送局がみすみす外部からの
介入を招き入れることにつながりかねず、それこそ「公共善」を損なう結果を生
んでしまう危険性があるという認識を改めて社員全員で共有致します。
 最後に、これまでも弊社制作現場には「公共性」に鑑みて番組制作に取り組む
意志は当然のように強くあったということだけはご理解頂きたく存じます。弊社
の番組ラインナップをご覧頂ければお分かりのように、経済番組、ヒューマンド
キュメンタリー、芸術番組、情報番組、子供向け人気アニメなどを中心に編成す
る過程で、むしろ我々は視聴者に非常に近い、視聴者の利益になる番組を作るこ
とに専心してきたつもりです。もちろん、そうして作り上げた視聴者からの信頼
もあっという間に損ないかねないことを肝に銘じ、「築城三年、落城一日」の言葉
を改めて胸に刻み込みながら、今後も番組作りに邁進してまいります。その際は、
悪い形での委縮などはしたりせず、新しいことに果敢にチャレンジしながらも、
常に社会常識や放送基準に照らし合わせることを忘れずに、視聴者の期待に応え
ていけるよう努めます。

謹白