第158回 放送倫理検証委員会

第158回–2021年3月

2月の視聴者意見を報告

第158回放送倫理検証委員会は3月12日に開催され、2月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2021年3月12日(金)午後5時~午後7時
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室(千代田放送会館7階)+オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. 2月の視聴者意見の概要

2月の28日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、新型コロナウイルスのワクチン接種のニュースで注射の映像が頻繁に放送されることに対する批判的な意見などが事務局から報告されたが、個別の番組について特に踏み込んだ議論は行われなかった。

以上

第157回 放送倫理検証委員会

第157回–2021年2月

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見と、「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について意見交換

第157回放送倫理検証委員会は2月12日に開催された。
委員会が1月18日に通知・公表したフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表について、委員長と担当委員から詳細が報告された。
委員会が2月10日に通知・公表したフジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。

議事の詳細

日時
2021年2月12日(金)午後3時~午後6時
場所
オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』解答権のないエキストラ補充に関する意見の通知・公表について報告

フジテレビが2018年10月20日から2019年10月26日にかけて放送したクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、委員会は、解答権のないエキストラを出場させていたことは、番組が標ぼうしている「1人対99人」というコンセプトを信頼した多くの視聴者との約束を裏切るものであり、また、NHKと日本民間放送連盟が定めた「放送倫理基本綱領」の「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定に照らし、制作過程の重要な部分を制作者たちが十分に共有していなかった点において、その過程が適正に保たれていなかったと言うべきであるとして、放送倫理違反があったと判断した。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発出を踏まえ、1月18日、当該局への通知は電子メールで行い、公表は委員会決定をBPOのウェブサイトに掲載する形で行い、記者会見の開催は見合わせた。広報を窓口に質問を受け付けたところ、当日数件の確認の連絡が寄せられた。
この日の委員会では、委員会決定を伝えた当該局のニュースを視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の経緯について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. フジテレビ「架空データが含まれた一連の世論調査報道」に関する意見の通知・公表について報告

フジテレビは、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」の一部に架空データが含まれていたとして、2019年5月13日から2020年6月1日にかけて18本のニュース番組で報じた一連の世論調査結果に関する放送を取り消した。世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたって報じたもので、委員会は、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めないとして、本件放送には重大な放送倫理違反があったと判断した。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発出を踏まえ、2月10日、当該局に対する通知および公表の記者会見をオンライン会議システムを使用して行った。
この日の委員会では、委員会決定を伝えた当該局のニュースを視聴し、委員長と担当委員が会見での質疑応答などについて報告した。
通知と公表の概要は、こちら

以上

第156回 放送倫理検証委員会

第156回–2021年1月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送した
フジテレビのニュース番組を審議
2月にも委員会決定を通知公表へ

第156回放送倫理検証委員会は1月15日に開催された。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の修正案が再度示された。意見交換の結果、大筋で了承が得られたため、2月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。

議事の詳細

日時
2021年1月15日(金)午後3時30分~午後7時
場所
オンライン
議題
出席者

神田委員長、岸本委員長代行、升味委員長代行、大石委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員、米倉委員

1. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、昨年6月19日、2019年5月から2020年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、電話調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
昨年8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、フジテレビが架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
前回までの議論を受けて担当委員から再度示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、2月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

以上

第155回 放送倫理検証委員会

第155回–2020年12月

フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議
1月にも委員会決定を通知・公表へ

第155回放送倫理検証委員会は12月11日に開催された。
委員会が4月8日に通知・公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が6月30日に通知・公表した琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が9月2日に通知・公表したテレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の修正案が再度示された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、1月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換を行った。

1. 北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見への対応報告を了承

4月8日に通知・公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見(委員会決定第35号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
対応報告は、通常、通知・公表後3か月をめどに提出されるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で当該局研修の日程が大幅に延期されたため、この時期の提出となった。
報告書には、委員会決定を受けて、全社員・スタッフにその内容を周知したほか、報道制作現場に対してアンケートを実施し、意見書の内容に関する受け止め方を確認したこと、委員会からの問題指摘後すぐに「選挙報道マニュアルの策定」を行うとともに、「報道ゼミナールの定期開催」「編集主幹を新設、メンター制導入などの組織の改善」などの再発防止への取り組みを決め実践していることなどが記されている。
委員からは、「事前に現場アンケートや社内に設けられた検証委員会の報告書に目を通して勉強会に臨んだ。出席者の感想を見ると委員会の思いが伝わっていると感じた」「簡潔にまとめられた報告書ではあるが、局内で十分に議論され、率直な意見交換も行われて再発防止に向けた取り組みを深めている様子がうかがわれる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
北海道放送の対応報告書は、こちら。

2. 北日本放送「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への対応報告を了承

6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(委員会決定第36号)への対応報告が当該放送局である北日本放送から書面で提出された。
報告書には、問題が指摘された後、直ちに番組検証チームを立ち上げて関係者から聞き取った内容を検証し報告書にまとめ、営業活動における放送倫理研修会を自主開催したこと、関係部局が協議して営業系番組の取り扱いルールを明文化したことなどが記されている。また、委員会決定を受けて、機構改革を行い編成業務局内に考査部を新設したこと、検証委員会委員を招いて研修会を開催したことなどが記されている。
委員からは、「何が問題であり、なぜそうなったのかという観点からしっかりと検証した上で、今後の対応策についても極めて明確な方針を出しており、高く評価できる報告書である」「意見書の趣旨をきちんと受け止めている。放送倫理に対する意識の希薄さがあったことを率直に受け止め、再発防止に努める決意がうかがわれる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
北日本放送の対応報告書は、こちら。

3. テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見への対応報告を了承

9月2日に通知・公表したテレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見(委員会決定第38号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内横断的な「放送倫理関連会議」で議論を行い、報道局以外の番組でも同種の事案の発生がないよう問題意識の全社的な浸透を図ったこと、再発防止勉強会や検証委員会の委員を招いて研修会を開催したことが記されている。また再発防止への取り組みとして、スタッフへの指導と環境づくりを行う「放送倫理を遵守するための対策」と、放送前に問題点を洗い出し修正する「放送倫理違反を防ぐための水際対策」を行ってきたことなどが報告されている。
委員からは、「研修会では活発な議論ができた。また再発防止策も大事なポイントを具体的に押さえている」「再発防止策がこの形で実施されるならば、今後は同様の問題が起きないことが期待できる」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告書は、こちら。

4. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」と、番組ホームページ上で公表した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
前回までの議論を受けて担当委員から再度示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、1月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

5. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、電話調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたことや、フジテレビが架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
委員会には、前回の委員会に諮られた意見書の原案に対する議論を踏まえて担当委員が作成した修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

以上

第154回 放送倫理検証委員会

第154回–2020年11月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビのニュース番組を審議

第154回放送倫理検証委員会は11月13日に開催された。
委員会が8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見について、当該放送局から具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
秋田放送または山口放送がそれぞれ制作放送した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関する討議を踏まえ、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」を10月30日にBPOのウェブサイトで公表したことについて報告があった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の再修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換を行った。

1. TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見への対応報告を了承

8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見(委員会決定 第37号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知を行った上で、バラエティ部門の全プロデューサーを対象に書面によるアンケートを行い、それを読み込むことで互いの現状認識や危機感を共有したこと、レギュラーのバラエティ番組ごとに「演出講座」を開いて「許される演出」「許されない演出」とは何かについて意見交換を行い、それぞれの番組が許容できるラインはどこまでかを改めて確認し共有したこと、また、再発防止への取り組みとして、各バラエティ番組に新たにチーフプロデューサー制を導入し、複眼でのチェックを行うようにしたことなどが記されている。
担当委員からは、「『演出講座』は効果的で、良い素材として当該番組担当者以外にも考えてもらい、率直な意見が出ている」ことなどが報告された。委員からは、「アンケート内容は詳細で役に立つと思う。危険の芽は、どこの放送局でも共通しているので、この報告書で今回のような問題が解消していくことを期待したい」「最近のバラエティ番組に関する意見書を通じて、構造的問題が共通していることが窺われるので、当該局に限らず、改めて何らかの形で放送界全体に見解を示すよう検討することが望ましい」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら。

2.「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題する委員長談話について報告

10月の第153回委員会において、秋田放送が制作放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』及び山口放送が制作放送し、秋田放送が山口放送から購入して放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』について、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至ったことを議事概要に掲載した。
また、番組内容が広告放送と誤解される問題に関し、10月30日に委員長談話としてBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、神田委員長から報告がなされ、事務局からは秋田放送と山口放送の議事概要掲載後の対応などが説明された。

3. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」と、番組ホームページ上で公表した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された意見書の修正案を踏まえて担当委員が作成した再修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

4. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、報告書と、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングに基づき担当委員が作成した意見書の原案が示され、意見交換を行った。次回は修正案が提出される予定である。

以上

第153回 放送倫理検証委員会

第153回–2020年10月

番組内容が広告放送と誤解される問題について委員長談話を公表

第153回放送倫理検証委員会は10月9日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待して、報告を了承し公表することにした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にして、合計18回にわたりフジテレビで放送されたニュース番組について、当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関し、委員会はこれまで番組内容が広告と誤解されることに関する問題について合計6回にわたり討議を重ねてきたが、今回の委員会で討議を終了し、審議入りしないこととした。また、民放連加盟各社および民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて共有することが適切であるとして、「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題された委員長談話をBPOのウェブサイトで明らかにすることにした。

1.「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への琉球朝日放送の対応報告を了承

6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(委員会決定第36号)への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出された。
報告書には、委員会決定を受けて、全職員に決定内容を周知し、全社員・スタッフによる番組再検証を実施したこと、再発防止への取り組みとして、「番組制作にあたっては企画提案書を提出して、それを基に様々な人が意見を出し合い、スポンサーとも交渉をして、最終的にスポンサーが納得できないということであれば、見送りもある。売り上げが厳しいから放送倫理違反をしてもいいということはありえない」「放送倫理違反の意見書を受けた意味合いは大きい。今後も定期的に勉強会を開き社員教育を図っていく」などを確認したことが記されている。委員からは「全般的に意見書の主旨は理解されていると感じた」という意見が出され、また、「営業主導が途中から徐々に報道主導になったその境目を整理して書いていただけるとよかった」という意見も出されたが、意見書で指摘した課題に対しては概ね適切な対応がなされており、またコロナ禍で、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後適切な時期に開催されることを期待することとして、当該対応報告を了承し公表することにした。
琉球朝日放送の対応報告書は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された原案を踏まえて担当委員が作成した意見書の修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の原案が提出される予定である。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した(以下「本件番組①」という。2018年2月17日初回放送・同年10月13日再放送)。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という)を番組販売で購入し放送していた。また、山口放送は、本件番組②を2019年5月25日、同月29日に制作放送していた。
なお、山口放送は、本件番組②とは別に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』(以下「本件番組③」という)を制作し、2018年6月2日以降合計4回放送している。本件番組③については、本件番組②との関連性から、念のため一体のものとして検討することが適切であると考え、討議の対象としたが、放送内容が類似していることを踏まえ、討議における議論の対象は本件番組①及び本件番組②のみ(以下「本件番組」と総称する)とした。

本件番組は、その共通点として、弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)の1社提供の単発番組であり、X法律事務所の提供表示がなされ、番組名の前にも「弁護士法人X法律事務所presents」というタイトルが付けられている。また、番組の内容は、X法律事務所の代表弁護士(当時)が自ら出演し、クイズ形式か再現ドラマ形式かの違いはあるものの、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数紹介して解説を加えている。そして、X法律事務所の相談料が原則無料であることを含む基本的な料金体系を説明し、さらに放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧めている。本編の中には中CMがあり、いずれも代表弁護士が登場するX法律事務所のCMである。以上のとおり、本件番組の内容や構成はほぼ共通している。
なお、討議中において、X法律事務所が、2020年6月に破産開始決定を受け、その後、X法律事務所の所属弁護士会が、X法律事務所が回収した過払い金を依頼者の意思に反して流用した疑い等があるとして、同弁護士会の綱紀委員会に対して懲戒処分に向けた調査をするよう求めるという報道に接した。

委員会は2020年5月、両局から提出された報告書及び同録DVDを基に討議し、本件番組はいずれも、総合的に判断すれば、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)の観点から、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。その後の委員会においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供したX法律事務所が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告された。上記の各局に対しては、本件の討議の参考のために、任意の報告を依頼し、報告書と同録DVDの提供を受けた。しかし、各局が番組を制作した時期に幅があり、一部の局においては日本民間放送連盟(民放連)が「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(以下「留意事項」という)を策定した2017年以前に制作・放送された番組もあるなど、番組の制作や考査の在り方について公平に比較検討することが困難であることを踏まえ、両局以外の番組は討議の対象としないこととした。

10月の委員会においても、本件番組について、民放連の放送基準第92条や留意事項に照らし、X法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、また、必要とされる考査をした旨の両局の主張を踏まえても、総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの意見が多数出された。
そして、審議に入るか否かの基準については、委員長談話「TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター「二重行政の現場」』について」(2009年7月17日)において、①対象となる問題が小さく、かつ、②放送局の自主的・自律的な是正措置が適切に行われている場合には、原則として審議の対象としないとされており、本件番組の問題は小さいとは言い難いから、審議入りの基準を満たしているともいえ、実際、審議入りをすべきであるとの意見もあった。
しかしながら、10月の委員会までの、計6回にわたる討議を踏まえ、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、民放連加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。そこで、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとし、また、上記のとおり、同様の番組を制作放送した各局の番組について公平に比較検討することが困難であり、結論として討議の対象としないこととしたこととの均衡も考慮し、本件番組について放送倫理違反の疑いがあるとしても、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないとの結論に至った。
委員長談話は、こちら。

【委員の主な意見】

  • 本件番組はいずれも、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数並べたうえで、X法律事務所の相談料が原則無料であることが説明され、本編の最後ではX法律事務所の基本的な料金体系と併せて、放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧める内容になっていること等からすると、過払金返還請求についての法的知識や手続きに関し、具体的で有益な情報提供をしていると認められる部分があるとしても、全体を通じて視聴すれば、X法律事務所のサービス内容を一方的にPRしているとの印象を否定できないのではないか。また、X法律事務所のサービス内容のみを取り扱う理由は明確とは言えないのではないか。

  • 本編の中にある中CMでは、いずれも代表弁護士が本編と関連するフレーズを語り、無料相談会を告知している。また、本編と中CMが連続して放送されるため、これを連続して視聴することによって、全体としてX法律事務所のサービスの広告効果がさらにもたらされているのではないか(2001年3月14日付にて民放連が作成し、2009年3月18日付にて改訂した「持ち込み番組と関連するCMの取り扱いについて」の第3文参照)。

  • 本件番組②については、本編におけるいずれの相談再現ドラマの中にもX法律事務所の情報が盛り込まれており、また、番組の最後の場面で男性タレントがX法律事務所の名前を挙げて番組が終了していること等も、視聴者に広告放送との誤解を招く事情となっているのではないか。

  • 総合的に判断すれば、本件番組におけるX法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないか。

  • 本件番組に関し、秋田放送は「社員や代理店の勉強会などにより、いま一度、持ち込み番組を含めた社内外の認識確認を行いたい。『視聴者の誤解を招かない内容・演出』のため、今後はもっと全社的な考査機能を高めていかなければならない」との見解を、また、山口放送は「今回いただいた指摘を真摯に受け止め、民放連放送基準第92条及び留意事項、また2019年10月の委員会意見の内容について、改めて社内各所での徹底を図り、『広告放送』との誤解を招かない番組制作・放送に取り組んでいきたい」との見解をそれぞれの報告書において明らかにしている。両局が当該各見解を実質的かつ有効的に深化させる方策を講じることを期待したい。

以上

第152回 放送倫理検証委員会

第152回–2020年9月

解答権のないエキストラで欠員補充していたフジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

第152回放送倫理検証委員会は、8月末に退任した鈴木嘉一委員長代行に替わり新任の米倉律委員が出席して9月11日に開催された。冒頭、神田安積委員長が岸本葉子委員を委員長代行に指名した。
委員会が9月2日に行ったテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の原案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたフジテレビのニュース番組は、前回の委員会で審議入りし、今回の委員会では当該局に対するヒアリングの準備状況が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

1. テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見の通知・公表について報告

テレビ朝日が2019年3月15日に放送したニュース番組『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画について、委員会は主要なエピソードを構成する登場人物のすべてがディレクターの生徒や知人だったうえ、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いており、放送倫理違反があったと判断し、9月2日に当該局に対し、意見書の通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ朝日のニュースを視聴し、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などについて報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された骨子案を踏まえて担当委員が作成した意見書の原案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
前回の委員会では、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者に対して行うヒアリングの準備状況などが報告された。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとし、7月及び8月開催の委員会では、その経過報告を踏まえ、討議を継続していた。
今回の委員会では、これまでの議論を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

以上

第151回 放送倫理検証委員会

第151回–2020年8月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

第151回放送倫理検証委員会は8月7日に開催された。
委員会が8月4日に通知・公表したTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして、5月の委員会で審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、前回の委員会後の経過報告を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。
フジテレビと産経新聞が合同で行った世論調査のデータの一部に架空入力があり、それを基にしたニュースが合計18回放送されたことについて、当該放送局から提出された追加報告書に基づいて前回の委員会に引き続き討議を行い、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり報道されたこと、再委託の経緯自体を把握していなかったチェック体制の不備などを踏まえ、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
抗議デモの解説に使用したアニメ動画の描写が人種差別的であり、偏見があると批判されたNHKの報道番組『これでわかった!世界のいま』について、当該放送局から提供された報告書、追加報告書及び同録DVDを基に討議した。
その結果、当該アニメ動画部分は放送倫理に照らして問題があるが、番組全体としては抗議デモの問題を適時適切に取り上げた番組であると評価しうること、当該局の別の番組が、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できる、当該局による迅速なお詫びや自主的・自律的な再発防止策が取られ、今後その徹底を図るとされていること等を踏まえ、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

1. TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見の通知・公表について報告

TBSテレビが2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画について、委員会はハンターが自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るもので放送倫理違反があったと判断し、8月4日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などを報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では6月末から7月上旬にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリング等に基づき担当委員が作成した意見書の骨子案が示され、意見交換を行った。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組が審議入り

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2500サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。
7月の委員会では、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行ったが、委員からは厳しい意見が相次ぎ、局からの再発防止策等についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてもさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。
今回の委員会では、7月委員会で出された意見に加え、新たに提出された追加報告書を基に討議した。その結果、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとし、7月開催の委員会では、その経過報告を踏まえ、討議を継続していた。
今回の委員会では、その後の経過報告を踏まえて討議を行い、さらに討議を継続することとした。

5. 抗議デモの解説に使用したアニメ動画の描写が人種差別的であり、偏見があると批判されたNHKの報道番組『これでわかった!世界のいま』を討議

NHKは6月7日、報道番組『これでわかった! 世界のいま~拡大する抗議デモ アメリカでいま何が~』で、米国の人種差別抗議デモを取り上げ、その解説に使用したアニメーション動画を放送した。
番組は黒人の男性が警察官に押さえつけられて死亡した事件を紹介し、それをきっかけに人種差別に抗議するデモが全米に拡大していることを伝え、また、アニメ動画において、黒人がおかれた経済的な格差を描き、この格差が黒人の「怒り」の背景であると解説した。しかし、アニメ動画は、屈強な黒人の男性キャラクターなどが経済への不満から暴れているかのように描かれるなど、黒人に対する差別と偏見を助長するもので、実際に行われた人種を越えた平和的なデモとはかけ離れた表現だとして内外から批判が寄せられた。これを受けて当該局は、速やかにホームページやニュースなどで謝罪するとともに、翌週の同番組の冒頭で、番組責任者が経緯を説明するとともに、お詫びと再発防止に向けた取り組みを伝えた。
委員会は、当該局から提出された報告書と同録DVD及び追加報告書を基に討議した。その結果、当該アニメ動画部分は放送倫理に照らして問題があり、そのような放送がなされるに至ったことは残念であるなどの厳しい意見が出された一方で、番組全体としては抗議デモの問題を適時適切に取り上げた番組であると評価しうること、当該局の他の番組において、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できること、当該局による迅速なお詫びがなされ、また、人種問題等を取り扱う際の配慮や認識、動画をツイッターに掲載する際の注意点などについて局内で検討が行われ、国際的に扱いが難しい問題については外国籍や専門家などを活用した多様な視点でのチェックの実施、人種差別やアメリカの法律・メディア、SNSに詳しい専門家を招いた研修の実施などの自主的・自律的な再発防止策が取られ、今後その徹底を図るとされていること等を踏まえ、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

  • アニメ動画の内容については、放送倫理に照らして問題があるといわざるを得ず、また、表情の描き方、口調、声色などいずれにおいてもステレオタイプの表現であって、仮に差別意識や悪意はなかったとしても、そのこと自体、人種差別への問題意識が鈍感になっていることを物語るものであり、むしろ深刻に受け止めざるを得ない。

  • この番組で従前から使い続けている動画キャラクターを今回もそのまま使ったため、そこに慣れや油断があったのではないか。

  • 国際的な人権感覚やアメリカにおける人種差別の実態を知っているはずの国際部担当者が制作の過程を見ていたのに、放送が承認されてしまったことはとても残念である。

  • 約1分20秒のアニメ動画部分に問題があるとしても、約26分にわたる番組全体としては抗議デモの問題やトランプ政権の対応やそれに対する批判を適時適切に取り上げた番組であり、その点ではとても評価できる内容であった。

  • 番組の中で、デモに参加している黒人の女性を丁寧に取材している点が良かった。

  • 7月23日放送のEテレ「バリバラ」が抗議デモと人種差別の問題を取り上げ、その中で、日本にも人種差別の実態があるにもかかわらず、日本のメディアが人種差別の問題に向き合わず、むしろ助長してきた例があること、そして本番組について言及し、その問題点として、アニメ動画の内容が黒人のステレオタイプな暴力的描写であったこと、本番組の解説者が白人警察の立場に立って解説をしたことなどを取り上げていたが、当該局の他の番組において、改めて様々な立場から本番組の問題点を取り上げて制作・放送した姿勢は高く評価できる。

  • 再発防止策の徹底を図るという局の自主的・自律的な対応を評価し、今後の取り組みを期待して見守りたい。

以上

第150回 放送倫理検証委員会

第150回–2020年7月

テレビ朝日『スーパーJチャンネル』を審議
8月下旬以降に委員会決定を通知・公表へ

第150回放送倫理検証委員会は7月10日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
2月13日に通知・公表したTBSテレビの『消えた天才』映像早回しに関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
委員会が3月31日に通知・公表したNHK国際放送の『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告が当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承し公表することにした。
スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人という不適切な演出をしたとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、8月下旬以降に当該放送局への通知と公表を行うことになった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして、5月の委員会で審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組について、同番組を購入して放送した複数の局から提出された報告書及び当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも順次報告を求めることとしたが、その経過報告を踏まえて議論を行い、討議を継続することとした。
フジテレビと産経新聞が合同で行った世論調査のデータの一部に架空入力があり、それを基にしたニュースが合計18回放送されたことについて、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議を行った。委員からは厳しい意見が相次ぎ、再発防止策についての追加報告を待ち、併せてチェック体制などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。

議事の詳細

日時
2020年7月10日(金)午後2時30分~午後6時40分
場所
千代田放送会館会議室およびオンライン
議題
 
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、大石委員、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員

1. 「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」の通知・公表について報告

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!~自分に合った資産形成を考える~』の2つのローカル単発番組について、委員会はいずれの番組も視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていたと認められ放送倫理違反があったと判断し、6月30日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長と担当委員が会見での質疑応答などを報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. TBSテレビ『消えた天才』映像早回しに関する意見への対応報告を了承

2月13日に通知・公表した、TBSテレビの『消えた天才』映像早回し加工に関する意見への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知や6月にBPO委員を招いてリモート形式で実施された研修会の状況等に加え、再発防止への取り組みとして、「放送倫理の向上を図るため、定期的に社内勉強会を行う」「素材段階でのチェックを強化する」「“密室”でのVTRチェックを禁止する」「スタッフを孤立させない組織作りを行う」などが記されている。
担当委員からは、上記研修会の様子や、研修の内容が受け止められて再発防止への取り組みが行われていることなどが報告され、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

3. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見への対応報告を了承

3月31日に通知・公表した、NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見(委員会決定第34号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、今回の問題を受けて2019年6月6日に公表した再発防止策の徹底を、放送に関わる全職員およびNHKの放送系の関連団体に改めて求め、経営委員会・国際放送番組審議会に報告したことが記されている。また、委員会決定を受けた新たな再発防止策として、取材した内容の真実性や利害関係者かどうかの確認などについて、出演者側の承認を取る内容になっている「出演等承諾書」を導入したことなどが記されている。
委員からは、「委員会決定を受けた後の局としての方策についての記載が乏しく、局として意見書を具体的にどう生かそうとしているのか分からなかった」という意見が出された一方、「番組制作に直接関わった人たちが、委員会決定をどう受け止めたのかについて、とても詳しく書かれていることは評価できる」「放送現場では意識や対応の変化が出てきていると書かれている。意見書の内容が伝わり、現場が受け止めているのであれば評価できる」「新型コロナウイルスの流行が本当に落ち着いた時点で、意見交換の機会が持てることを望みたい」などの意見が出され、概ね適切な対応がなされているとして、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告書は、こちら(PDFファイル)

4. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の再修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、8月下旬以降に当該放送局へ通知して公表することになった。

5. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今回の委員会では6月末から7月上旬にかけて当該放送局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の骨子案が提出される見込みである。

6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとした。6月開催の委員会では、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を制作・放送し又は番組を購入して放送した複数の局からも報告を求めることとして、討議を継続していた。
今回の委員会では、その経過報告を踏まえ、さらに討議を継続することとした。

7. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について討議

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月までの14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約17%に当たる約2500サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えて架空データを作成しデータを作成していたとしている。
委員会では、「社会の意見分布を知る一番の手掛かりは世論調査だ。不正な世論調査結果に基づいて18回ものニュースが放送されたことは、その時々の世論に影響を及ぼした可能性を否定できない」「世論調査は国民にとって重要な判断材料であり、不正の有無についてチェックされることなく放送されていたことは深刻な問題だ」「放送、新聞が行うすべての世論調査の信頼性を揺るがす由々しき事態だ」などの厳しい意見が相次ぎ、「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがあるのではないか」との意見も出された。そのうえで、局からの再発防止策についての追加報告を待ち、併せて管理体制、納品されたデータのチェック方法などについてさらに報告を求める必要があるとして、討議を継続することとした。

以上

第149回 放送倫理検証委員会

第149回–2020年6月

生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』を審議

第149回放送倫理検証委員会は6月12日にオンライン会議システムを使用して開催された。
バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意する不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、7月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人という不適切な演出をしたとして審議中のテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させ、前回審議入りしたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局の関係者に対して実施する予定のヒアリングの準備状況が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人一社提供のローカル単発番組を購入して放送した複数の局から提出された報告書を踏まえて引き続き討議を行ったが、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を複数の局が制作・放送し又は番組を購入して放送していることがわかったため、それらの放送局からも順次報告を求めることとし、討議を継続することとした。

1. バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。
この日の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、7月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

2. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。
今回の委員会では、担当委員から意見書のさらなる修正案が示されて意見交換が行われたが、次回も引き続き審議することになった。

3. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
前回の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めたが、今回の委員会では当該放送局の関係者に対して実施する予定のヒアリングの準備状況が報告された。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。その内容は、ある弁護士法人が扱った過払い金などの借金問題の事例に法人の代表がクイズやQ&Aの形式で解説を加えるものであり、番組内において法人の料金体系の説明や県内で開催される無料法律相談の告知もされている。なお、提供は同法人であり、法律相談会の告知CMも放送されている。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送は同年10月19日には、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を番組販売で購入し放送していた。
山口放送は、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を2018年6月2日などに、また、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を2019年5月25日などに制作放送していた。
委員会は5月、両局から提出された報告書を基に討議し、いずれの番組も、取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出されたが、上記番組のうち他の複数の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求めることとして、討議を継続していた。
今回の委員会では、上記の番組のいずれかを購入して放送した他の放送局から提出された報告書も踏まえて引き続き討議したが、当該他の局とは別に、同じ法人が提供する番組を複数の局が制作・放送し又は番組を購入して放送していることがわかったため、それらの放送局からも順次報告を求めることとし、討議を継続することとした。

以上

第148回 放送倫理検証委員会

第148回–2020年5月

琉球朝日放送と北日本放送のローカル2番組を審議
6月にも委員会決定を通知・公表へ

第148回放送倫理検証委員会は5月15日にオンライン会議システムを使用して開催された。
委員会が1月24日に通知・公表した関西テレビの『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告が、当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待し、報告を了承し公表することにした。
3月31日に通知・公表を行ったNHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。また4月8日にメールにて通知し、委員会決定をBPOウェブサイトに掲載して公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見について、委員長から経過の報告がされた。
番組で取り上げている特定企業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、6月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
① 秋田放送が制作放送した『そこが知りたい!過払い金Q&A』、②山口放送が制作放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』、③山口放送が制作放送し、また秋田放送が放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座! PART2』というローカル単発番組について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定等に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書と同録DVDの提出を求め、継続して討議することとした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させていたことが判明したフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われることなどについて意見が出され、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2020年5月15日(金)午後1時~午後4時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)他オンライン
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、大石委員、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員

1. 関西テレビ『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告を了承

1月24日に通知・公表した、関西テレビの『胸いっぱいサミット!収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見(委員会決定第32号)への対応報告が、当該放送局から委員会に対し書面で提出された。また、同局の番組審議会およびオンブズ・カンテレ委員会の議事内容をまとめた「番組審議会議事録」、「オンブズ・カンテレ委員会の見解」もあわせて提出された。
報告書には、再発防止、放送倫理意識向上に向けた「制作局における取り組み」が制作部会で共有され、自社検証番組「カンテレ通信」で審議に至る経緯、決定内容、改善に向けた取り組み等について放送したほか、専門家を招いた「全社的研修会」を3回開催したことなどが記されている。
委員からは、「意見書やオンブズ・カンテレ委員会が指摘しているにもかかわらず、制作現場と局の間にある意見の分断の解消についての言及がないのは残念である」「意見書を受け、制作現場の意識に変化はあったのかについて書いていただけるとよかった」といった意見が出されたが、意見書で指摘した課題に対し概ね適切な対応が行われており、また、新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言のため、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後、適切な時期での開催を期待することとして、当該対応報告を了承し、公表することにした。
 関西テレビの対応報告書はこちら(PDFファイル)

2. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見および北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見の通知・公表について報告

NHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、委員会は放送の内容は正確ではなく、適正な考査も行われなかったとして放送倫理違反があったと判断し、3月31日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が当日の様子を報告した。
また、北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、委員会は有権者に誤解を与え、比例区の投票行動をゆがめた可能性があるなど選挙報道に求められる公正・公平性を害し放送倫理に違反していると判断し、4月8日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下であることを踏まえ、通知はメールで、公表は委員会決定をBPOウェブサイトに掲載する形で行った。この日の委員会では、その経緯について委員長が報告した。

3. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議、6月にも通知・公表へ

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやってきた〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、昨年12月の委員会で審議入りした。この日の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、6月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

4. バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が示されて意見交換が行われた。

6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。その内容は、ある弁護士法人が扱った過払い金などの借金問題の事例に法人の代表がクイズやQ&Aの形式で解説を加えるものであり、番組内において法人の料金体系の説明や県内で開催される無料法律相談の告知もされている。なお、提供は同法人であり、法律相談会の告知CMも放送されている。
この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。
秋田放送では、上記番組を2018年2月17日に初回放送し、その後、同年10月13日に2回目の放送をし、今回は3回目の放送であった。また、上記番組とは別に、2019年10月19日に山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を放送していた。
そして、山口放送では、2018年6月2日、同月15日、2019年5月11日及び同月18日に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を、また、2019年5月25日および同月29日に、上記の『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』をいずれも制作放送していた。
そこで、委員会は秋田放送と山口放送から提出された報告書を基に討議した結果、いずれの番組も日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも、上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求め、継続して討議を行うこととした。

7. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、4月3日、フジテレビは、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ウェブサイト上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
委員会は、当該放送局から提供された報告書と同録DVDを基に討議した結果、委員からは「意欲的な番組であるが、もともと無理があったのではないか」「同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われる。なぜ教訓が生かされなかったのか、再発防止策が生かされていたのか解明する必要がある」などの意見が出され、これまで2017年12月31日から2020年3月7日にかけて放送された番組のうち、レギュラー番組として放送された1回目(2018年10月20日)から25回目(2019年10月26日)までの回について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

以上