第181回 放送倫理検証委員会

第181回–2023年3月

ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

第181回放送倫理検証委員会は3月10日に千代田放送会館会議室で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の準備状況や、2月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年3月10日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

委員会の活動とラジオの番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するために初めて開かれるラジオ局との意見交換会について、先月に続き主要な議題や議事の進行などについて議論を行った。

2. 2月に寄せられた視聴者意見を議論

2月に寄せられた視聴者意見のうち、「平成を彩った美女たちの今に迫る」という企画や「タレント、飲食業店員の容姿に対する出演者の査定発言」などに、「ルッキズムではないか」という批判的な指摘があったことが報告された。また生放送のバラエティー番組で、一連の広域強盗事件を指示した疑いのある「ルフィ」と名乗る容疑者が日本に送還される機上で逮捕されたことについて、番組独自のテロップで「速報“ルフィ”逮捕」と表示し、そのことを司会がシリアスな口調で繰り返してスタジオ観覧者の笑いを誘ったことに対し、「被害者がいるのに不謹慎だ」などの意見が複数寄せられたことなどが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

第314回放送と人権等権利に関する委員会

第314回 – 2023年3月

議事の詳細

日時
2023年3月14日(火)  午後4時 ~ 午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、前回委員会での申立人・被申立人双方へのヒアリングを踏まえ、今後の方針などについて幅広く議論した。

2. 2022年度申立て報告

年度末にあたり、2022年度の申立て状況全般について、事務局から報告した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

2023年度委員会日程などを確認した。

以上

第254回 放送と青少年に関する委員会

第254回-2023年2月

視聴者からの意見について…など

2023年2月28日、第254回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
まず、1月後半から2月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見については、クイズ・バラエティー番組や、子ども向け特撮ドラマに関して報告されました。
2月の中高生モニターリポートのテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」でした。
最後に次回3月28日(火)の定例委員会冒頭で開くオンラインによる「中高生モニター会議」など今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2023年2月28日(火) 午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
2023年度の委員会開催日程などについて
中高生モニター会議の開催を含む今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

1月後半から2月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
クイズ・バラエティー番組で、急降下させた小型機の機内でインコが飛べるかどうかの実験をしたところ、「命を軽く見ているし、小動物には何をしてもよいと子どもに思わせてしまう」などの視聴者意見がありました。委員からは「『動物を扱うときには注意しよう』と確認する必要はあるが、このシーンが即虐待に当たるというのは難しいのではないか」等の意見が出されました。議論の結果、「討論」に進むことはありませんでした。
子ども向け特撮ドラマで悪役が、歩道橋の上で母親から乳母車を奪い、階段上から投げ落とすシーンがあり、その乳母車が異空間に吸い込まれ、その後の安否がわからないまま、放送が終了したことに対し、「不安を覚えた子どもの感情を救わないまま終わったのは問題だ」などの意見が寄せられました。担当委員は「一般的には、悪い行為があれば正義の味方が最後は解決してくれるという展開が期待されるが、この回はそれがない。解決されないということで、子どもが不安に思うのは当然あるだろう」と指摘しました。別の委員は「このシリーズでは、悪役もめったに死なない。問題のシーンで赤ちゃんが死ぬかもとハラハラする視聴者は、子どもを含めていないはずだという前提で制作されているのだろう」と述べ、また、「時代の変化の中で、アニメなど子ども向けの番組の演出や背景が変化してきていることをどう考えるか一般的に議論することは大切だと思うが、今回のこの番組を個別に取り上げる必要はないだろう」という見方も示され、「討論」には至りませんでした。

中高生モニター報告について

2月のテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」で、24人のモニターから報告がありました。課題とした番組は、2022年民間放送連盟賞[テレビエンターテインメント]最優秀『やったぜ!じいちゃん』(CBCテレビ)です。
生まれつきの脳性マヒで身体が不自由な愛知県の舟橋一男さん(74歳)を取り上げた番組です。印刷業を営みながら生き生きと暮らす舟橋さんの思いや家族とのかかわりを、CBCテレビが50年前に撮影した映像を交えて伝えています。
モニターからは「50年前も今も変わらずに明るく生きる姿にパワーをもらった」、「家族や周りの人が支えてくれるからこそ自分が生きていられることに改めて感謝した」「無意識のうちに偏見を持っていないか、ちゃんと自分を見つめ直さないといけない」などの感想が寄せられました。
「自由記述」では、「久しぶりにドキュメンタリーを見たが、人の温かさに触れられるいいものだと実感した」、「テレビ番組には間やゆったりとしたテンポがあってこその良さもあるので何でも倍速にして見てはもったいない」などの感想や意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『TV70年!蔵出し映像まつり』(NHK総合)に4人から、『東大王2Hスペシャル』(TBSテレビ)に3人から、感想が寄せられました。

◆モニター報告より◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

  • 一男さんはたとえできることが周りの人と違っても、(妻の)瑞枝さんへの信頼のもと自分なりの生き方で胸を張って日々を過ごしているのが伝わってきました。一男さんと支えている周囲の方との間には上下関係というものはなく、お互いに一緒の幸せを共有しているのは素敵だなと思いました。瑞枝さんが一男さんの言葉を聞き取っている様子を最初から最後までカットせず見せていて、私も徐々に一男さんの表情、口の動き、手の動き、目の力の入り方などをじっと見るようになりました。人とコミュニケーションをするということは、こういうことなのだと実感しました。今は昔に比べて障がいのある方に対する理解が進みつつあるとはいえ、表に出ない形で偏見や差別の目があるというのは私も感じます。障がいのある方からそうしたことへの意見を聞くことはあまりないため、テレビを通してでも知ることができたのは良かったと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 障がいがあっても大丈夫な世の中、何でもできる世の中にしようとしていることに心を打たれた。(50年前の)旅行の様子を見ていると、周りの人たちが必ずしも優しく受け入れてくれるわけではないんだな、と考えさせられた。当時の映像はモザイク処理がされていないので、周りの人たちがどう思っているのかがよくわかった。(中学2年・女子・山形)

  • 心に刺さるシーンは多々あったが、その中でも「人間は年をとったら必ず不自由になる」と一男さんが言っていたのが印象に残った。このドキュメンタリーは、不思議と「かわいそう」と思わない番組だった。それは、パソコンを通して自らの思いを綴ったり、車いすではあっても積極的に外出したりする一男さんのパワフルな姿が映し出されていたからだと思う。不自由ななかでもいきいきと過ごしている一男さん、末永く人生を楽しんでほしいと心から願える番組だった。
    (高校1年・男子・東京)

  • 50年前に放送された番組では、障がい者の方々の旅行に対する周りの人の目線が今ではありえないくらい生々しく、ありのままに放送されていることに驚いた。昨今の出来事として神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」事件で被害者の多くの方の実名が公表されないということも取り上げていた。それは今もなお残る偏見、差別、また私たちがふだん実感しない社会の中に埋め込まれている不都合による面もあると思う。私たちと同じように考え、働き、そして人生を楽しむ尊厳ある人間の一人であるということを決して忘れてはならないと感じた。(高校1年・男子・愛知)

  • 私たちは障がい者とひとくくりにして見てしまうけれど、家族からすれば障がいがあることも普通のことで、娘や孫たちも自然に受け入れ、家族にとって笑顔の可愛らしいただのおじいちゃんなんだなと、自分が先入観を持って見ていたことを反省しました。50年前の景色は障がい者の人にとってもっと生活することが大変そうだと映像を見て感じました。その中で強い意志を持って生きているおじいちゃんの「不自由になっても楽しく生きられる社会にしていきたいと思っています」という言葉が心に残りました。(高校2年・女子・岩手)

  • (舟橋さんが)50年前の映像を見るシーンではとても笑顔が多く、悲しみで感動するのではなく笑いで感動することができたシーンだと思いました。今までこのようなドキュメンタリー番組はあまり見たことがなかったので新鮮でしたが、とても見やすく、障がい者の方に対するイメージもかなり変わった番組でした。(中学2年・女子・山形)

  • この番組からは「障がいを描く」という枠組みにとらわれないおおらかさと温かさも感じました。特に印象的だったのは、一男さんが瑞枝さんと桜が咲く公園に散歩に行く場面です。瑞枝さんが「昔は障がい者用のトイレがなかった」と言っていて思わずはっとしました。この番組は、あくまで舟橋一男さんという方にフォーカスし、「脳性マヒのある障がい者」とくくらないところに好感がもてます。様々な形の番組を通して障がいに対する正しい見方と理解が広まっていくといいと思います。(高校2年・女子・東京)

  • (重い障がいのある人は)常に介護を必要として施設に入っていたりずっと家にいたりしていると思っていました。その認識は間違っていて改めるべきだと感じました。障がいのある人への世の中の考え方を変えるには、学校の授業で用いたりテレビなどのメディアで話題にしたりして、どのような病気なのか、その人はどのようなことがつらいのか、嬉しいのかなどの知識を持つべきだと思います。今回はじめて民放連賞の存在を知りました。もっと宣伝したり再放送をしたりして、いいテレビ番組を多くの人に知ってほしいと思いました。(高校2年・男子・福岡)

  • 家族や身の周りの人々が支えてくれているからこそ、自分が生きていられることに改めて感謝した。「人の温かさ」「人の支え」の大切さがよく伝わった。私は今、何不自由なく暮らしているが、実は多くの人に支えられ、いつも守られながら生きていることに気づいた。一男さんのように、周りの人たちへの感謝を忘れずに毎日を過ごしたいと思った。瑞枝さんたちのように、大切な人を支え、誰でも対等に、同じように接することができる温かい人になりたいと心から思った。(中学2年・女子・鹿児島)

  • 50年前に放送された番組を見た一男さんは「優しい目線、厳しく残忍な目線、立ち去る人の姿を風景の一部として捉えていることに今回、はじめて気づきました。今はぼかしをかけるため他者の目を見ることができず残念です」と個人史に書かれていました。その話を聞いたときに、その方のすべての気持ちや苦しさは理解できなくとも、「知る」という行為が一番大切だということに気づきました。番組を視聴した後に『ワンダー 君は太陽』という映画を観ました。そこで重なったのは瑞枝さんでした。お互いにとってなくてはならない存在であるのが画面上から伝わって来ました。守り、理解してくれる人がいるからこそ私たちは生きていけるのだと実感しました。 今回、ドキュメンタリー番組と映画を通して本当のメディアの使い方はこれなのでないかと思いました。“自分が普通”という考え方ではなく世の中には様々な人が生きていることを発信して伝えていくことが、テレビやエンタメが力を入れなければならないことなのです。(高校2年・女子・千葉)

  • 「津久井やまゆり園」事件のことや優生思想の話は聞いていてとてもつらく、なぜそういった考え方が残っているのか疑問に思ったと同時に、無意識のうちに偏見を持っていないかちゃんと自分を見つめなおさないといけないなと気が引き締まりました。50年前の番組映像を見て「障がい者を見る目」に着目されたことが驚きでもありましたが、今よりも厳しい目線が多かった時代に楽しく過ごす姿や、それを見ている家族もすごく楽しそうで、障がいの有無に関係なく楽しい時間を過ごすことはできるし、それを誰かが隔てることはないのだと感じました。私も一瞬一瞬を楽しんで家族、とくに祖父母との時間をもっと大切にしたいなと思いました。(中学3年・女子・群馬)

  • 障がいというものを知らずに生きる私たちの視線は障がいのある方々にとってはつらいことであって、他人が決めた普通というしばりにしばられないで生きることのできる社会に少しでも近づくことを願っています。この番組を見て、私も含めたくさんの人のこれからの自分の人生を生きる活力になったと思うし、前向きに考えることができました。人間には、一人ひとり自由があり、人権があり、くくりなどなく、みんなが自分の生き方をすること、戦争などはなんの意味もなく誰かが悲しむ。一男さんの生き方がそんなことを訴えているのかと思いました。想像以上に考えさせられることが多く、自分自身の生きる活力にもなりました。(中学3年・男子・北海道)

  • メインテーマでもある(50年前に制作された)当時のドキュメンタリーを(舟橋さんと)見るというイベントが、テレビ取材だからこそ実現したことなのかなと思いました。50年前の(舟橋さんに注がれる)つめたい視線と、逆に今の温かく支えている家族の様子が対照的で学びにもなりました。(中学3年・女子・千葉)

  • 本人からでる言葉を中心に展開されていて生々しさというか、カメラを感じずに見ることができるドキュメンタリーの良さを感じました。全体として自然だったからこそ、孫への質問に制作の介入を感じてしまって残念でした。50年というところで取材の理由はわかるのですが、加賀の旅行は非常に短く、最後の野球観戦が最もタイトルに沿ってはいるものの、文脈が不自然だしあまりにも短かすぎるかなと。(高校1年・男子・埼玉)

  • 50年前の映像も出てきて、(障がい者に対する)扱いや周りの健常者の視線を(今と)比較することができました。番組のなかで舟橋さんが「今では周りの人々の顔がプライバシー保護の観点からぼかされているが、見えていた頃は良い資料だった」と言っていて、いろいろな視点から物事を見ることの大切さを感じました。もう少し孫とのかかわりの映像があったら、もっとタイトルを表現している感じで良くなっていたと思います。(中学1年・女子・千葉)

  • 50年前の番組(の映像)に衝撃を受けた。今では想像できないほど赤裸々に障がい者をとりまく社会を撮影していて、50年後である今、あの映像とどれだけ変わったものがあるだろうと、少し苦しくなった。50年前も今も変わらずに明るく生きる舟橋さんの姿にはパワーをもらった。舟橋さんのように常に問いかける姿勢を忘れずに自身も問い続けていきたいなと感じた。(高校2年・女子・埼玉)

  • 一男さんがいつも笑って生活しているのは、これまで社会を変えようとしっかりと自分の意見を持ち、逃げずに行動してきたからだと感じました。しかし、自分には(50年前の映像にあった)一男さんたちのもとから立ち去る人々のような気持ちがどこかにあったような気がして、このように全力で生き抜いている人がいることを知り、とても情けない気持ちになりました。これからは、障がい者の方に敬意を持ち、優生思想などの問題に自分ができることがないか考えてみようと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 一男さんの行動力や努力はすさまじいものだと実感しました。また、私の偏見である障がい者だからできないという考えを、障がい者だからこそできることがあるという考え方に変わりました。昔の番組の映像を見て(一男さんが)言っていた「周りの目が厳しいときもあれば優しいときもある」という趣旨のことは確かにそうだと思います。そこは今も昔も変わっていないように思いました。すぐには難しいとは思いますが、そうした人たちをより尊重できる人が増えていけばよいと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • (障がい者に対する)自分の今までの考えは本当にただの偏見であったと思い知らされました。また、このご夫妻の強さに感動しました。一男さんの苦労は計り知れないですが、妻の瑞枝さんの苦労も大変なものだったと思います。二人で散歩をするシーンで、世の中はまだまだ障がい者の人に厳しいところがあるのだと気づかされました。(高校2年・女子・広島)

【自由記述】

  • 久しぶりにドキュメンタリーを見ましたが、人の温かさに触れられるいいものだと実感しました。(高校2年・女子・広島)

  • 私のクラスではニッポン放送のオールナイトニッポン55周年企画の話題で盛り上がっている。ラジオはテレビより影響力が小さいかもしれないが、個々の熱量は大きいメディアだと感じる。(高校1年・男子・愛知)

  • 若者は本当にテレビ離れなのか、という新聞記事を読んだ。確かに同年代の友だちもリアルタイムで見ている子は少ないが、TVerなどのアプリやサブスクなどを使っていたりする。テレビ離れというのは物理的なものではないかと感じる。(中学1年・女子・千葉)

  • 最近のテレビやラジオ番組は、「これだけで○○」とか「たったこの○○」など端的にまとめようとする。このまま端的にまとまった世界になれば、人間は思考というものをやめてしまうのではないかと思います。(中学2年・男子・山形)

  • テレビの放送に関することではないが、最近テレビ番組を1.5倍速や2倍速で見る人が増えていると聞いた。テレビ番組には、間やゆったりとしたテンポがあってこその良さもあるため、何でも倍速にしてはもったいない気がする。(中学2年・女子・鹿児島)

  • バラエティー番組の討論中に誰かが話そうとすると仕掛け人がそれをさえぎって話し始めるというドッキリのようなものを見かけた。正直、体を張ったりするものよりも嫌な気分になった。誰かが本気で嫌に思うドッキリはやめたほうがいいと思う。(中学2年・女子・山形)

  • 最近は「人を傷つけない」番組が多いと思います。例えばドッキリなどではなくチャレンジゲームだったり、ゲームで負けても罰ゲームなどがなくなっているように思います。一方トーク番組などで司会者の方が、特定の人が言ったことを全否定するような場面があり、少し不快に感じました。(中学1年・男子・山形)

  • BPOホームページの「青少年へのおすすめ番組」には、かなり似たラインナップの番組が紹介されているようにも感じました。番組内容にプラスして「どのような点が青少年におすすめなのか」も紹介されていると、より興味をもってもらいやすいのではないかと思います。(高校2年・女子・東京)

  • 「青少年へのおすすめ番組」の欄にも関係するのですが、地方(局制作)番組を関東地方で放送することや配信することはできないのでしょうか。テーマや取り上げる内容が気になるものがあるのに見られないのは悔しい限りです。(高校2年・女子・千葉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『TV70年!蔵出し映像まつり』(NHK総合)
    • 歴史の教科書で見る志賀直哉や松本清張といった偉人が出演していて驚きました。テレビは偉大なことを成し遂げた人たちのことばを話し方込みで記録できるツールとしてこれからも活躍してほしいです。(高校2年・男子・福岡)
    • 私が生まれていない頃の貴重な映像が残っていて、その時代を生きていた両親と話が盛り上がって楽しく見ることができました。こういう番組を定期的にやって欲しいと思いました。昔、花嫁、花婿探しの番組があり、募集している人の電話番号をテレビで載せていたことが今の時代では考えられずすごいなと思いました。社会の変化とともにテレビが変化していく様子を見ることができて面白かったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『東大王2Hスペシャル』(TBSテレビ)
    クイズのほかにもちょっとした観光地紹介があり面白かったです。一対一の早押しバトルが再開されて東大王のすごさがまたわかりました。(中学2年・女子・東京)

◆委員のコメント◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想について】

  • 全体的にダイバーシティやインクルージョン(多様性や個々人の尊重など)といった教育をしっかり受けている世代だという印象を持った。障がい者に対する知識としてはきちんと持っているところに、改めて映像で見せつけられた感想なのだろうと思う。

  • 障がい者の視点に立ってみると自分が気づいていない差別があるのではないか、「普通」とは何かと自身に問いかけている感想があった。無意識のうちに偏見をもっていないかという深い洞察をしたことが伝わってきた。

  • 舟橋さんと周りの人たちとの関係について「上下関係はなく一緒の幸せを共有していて素敵だ」と書いたくれたモニターがいた。番組のメッセージが伝わっているのだろうと思った。

  • 障がい者に対する周囲の目というのは昔も今も変わっていないのではないかという感想があった。制作者のメッセージをおさえた感想だと思った。

  • かつては、障がい者に対する周りの視線がそのまま放送されていたが、いまは、その部分は直接は表現されていない。昔は差別的なことがあったが、いまはそれがないと思いこまないことも大事だと思う。

  • この番組を見て、「すばらしい」「素敵だ」と思う裏には、教育によって、偏見を持たないようにすることを学んできたこともあるのではないだろうかと思う。
    表に出せば非難されるから表には出さないが、いまも偏見はある。そのことに気づかないままにされているような気もして、自分自身とても考えさせられる番組だった。

  • 障がい者を取り上げた番組などへの感想は、とかく昔は大変だったが今は良くなったというものになりがちだ。今から10年後に同じような放送をしたら、10年前は大変だったと言われるように社会が大きく(よりよく)変わってほしい。

【自由記述について】

  • 複数のモニターが、トーク番組などの中で他人の意見を否定したり話をさえぎったりする場面を見たとして、目に見えないいじめのようで不快だという指摘をしていて気になった。

2023年度の委員会開催日程などについて

2023年度の委員会開催日程や中高生モニターの月別テーマなどを確認しました。

中高生モニター会議を含む今後の予定について

次回は、3月28日(火)に定例委員会を開催します。
当日は、中高生モニターを対象とする在京テレビ局の「オンライン館内見学会」と「中高生モニター会議」を開催する予定です。

以上

2023年2月に視聴者から寄せられた意見

2023年2月に視聴者から寄せられた意見

生放送中のバラエティー番組でのニュース速報の扱い方、トルコ地震の救助現場からの中継リポートなどに意見が寄せられました。

2023年2月にBPOに寄せられた意見は 1,369 件で、先月から 238 件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 80% 電話 19% 郵便・FAX 計1% 
男女別は男性45%、女性17%で、世代別では40歳代25%、30歳代22%、50歳代20%、60歳以上17%、20歳代10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、2月の送付件数は454件、43事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

生放送中のバラエティー番組でのニュース速報の扱い方、トルコ地震の救助現場からの中継リポートなどに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は28件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は73件で、前月から42件減少しました。
今月は「表現・演出」が30件、「性的表現」が16件、それに「要望・提言」が11件、
「暴力・殺人・残虐シーン」が4件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 高速道路上にスピード抑制のために設けられた段差をめぐる問題を扱っていた。元々はルーレット族の暴走行為を抑止するためのものだが、逆にジャンプの高さを競う遊び場と化しているという。遊ぶ人たちが使う“ジャンプ台”という呼び名を用い、暴走ぶりを見せるなど、番組自体が野次馬化していた。好奇心をあおられ、まねをする者が必ず出ると思う。

  • 福岡県の老舗温泉旅館で基準値の3,700倍ものレジオネラ菌が検出された問題について、なぜか静岡県熱海市で街頭インタビュー取材をしていた。全く関係のない熱海市に風評被害を与えかねないと感じた。

  • ゲノム編集の安全性について説明した「専門家」が、ゲノム編集をビジネスに生かしている企業の関係者であることが示されなかった。公平な第三者的な見解であるかのような印象を視聴者に与えてしまわないか。

  • ひき逃げ事件の容疑者の足取りを解説する際、容疑者宅周辺を上空からの写真で指し示したことは行き過ぎだと感じた。画像から場所を特定される可能性がある。テレビはこうした画像をもっと慎重に扱うべきだ。

  • トルコ地震の救助現場からの生中継で、記者のリポートが救助活動の妨げになっているように見えた。リポート中に「あ、今も『静かにしてください』という声がありました」と状況を伝えながら、声を潜めて報告を続け、スタジオも「もう一言だけ」と質問していた。もし自分や家族が被災した場合、報道のために救助活動が妨害されるかもしれないと心配になった。

  • エネルギー価格高騰の特集で、その番組を放送している局自身の子会社が出資する再生エネルギー中心の電力小売り事業者を取り上げ、「資源価格が上がっている今こそ再生エネルギーに舵を切るチャンス」という発言を紹介していた。問題はないのか。

  • 情報番組などで特定の家電量販店や商品を大きく、詳しく取り上げ、「最新型」「破格の安さ」などと褒めちぎる企画がある。メーカーや店にとってはありがたいことだろうが、こうした放送が公正な競争を阻むこともあり得る。紹介される店は大型店が多く街の小さな店は太刀打ちできない。CM効果の大きい企画を番組として放送することに問題はないのか。

  • 朝の情報番組のニュース部分で、BGM、効果音を使ってより怖い印象を与えようとしている意図を感じる。ニュースをフラットに伝えていないと思う。

【バラエティー・教養】

  • 昼の生放送のバラエティー番組で容疑者逮捕のニュース速報テロップが出た際、出演タレントが「皆さん、ルフィが逮捕されました」とふざけた調子でくり返し、笑いを取っていた。人が亡くなっている事件をこのように扱うことはモラルに反する。

  • うその芸能ゴシップで人をどれだけ喫煙所に留めておけるかという企画で、「○○が自宅で大麻を栽培していた」といった架空のうわさ話を、実際のタレント名や局名を使って語らせていた。この番組は大好きで毎週見ているが、今回の企画は当事者の名誉を毀損しかねず、やりすぎだと思った。

  • 大食いタレントが力士らと大食い競争。食品ロス削減、持続可能性が叫ばれる中、ひどすぎる。食材になる家畜の命、育てる段階での環境への負荷などに考えが及ばないのだろうか。

  • 芸能人が電動工具で陶器を削っていたが、保護めがねを使用していなかった。注意喚起もなく放送するのはいかがなものか。番組を見た人間がまねて万一ケガをするようなことになれば誰が責任を負うのだろうか。視聴者に影響を与えるメディアなのに安全を簡単に考え過ぎだと思う。

  • 「我慢対決」などタバコの企画が続いた。内容はともかく喫煙シーンが延々と流れるのは問題だ。キー局がタバコの宣伝をしているようなもの。問題なのではないか。

  • 芸能人ママの子育て風景として、赤ちゃんを胸の前に抱っこして揚げ物をしたり刃物を使ったりする様子が紹介された。子育て経験の浅い母親がまねをしてしまうと危険だ。影響力が大きいので配慮してほしい。

  • 「動物と対話できる」という人を取り上げ、「天国にいった愛犬からのメッセージが生前の映像で分かる」といったエピソードを紹介していた。明らかに非科学的。商売としてやっている人を放送で紹介することは霊感商法を助長しているように感じる。

  • 強盗殺人事件への関与が取りざたされている人物と、10年以上前とはいえ接点を持っていたタレントは、被害者遺族の気持ちを考えたら番組に出演させるべきではない。

  • バッティングセンターで時速160kmの軟球を日本刀の居合斬りで真っ二つにする人物を紹介していた。ナレーションによると「バッティングセンターでいつもボールを叩き斬っている」。日常から真剣を振り回しているのであれば銃刀法違反だし、撮影のための行動だったのであれば「やらせ」、軽く表現しても過剰演出だ。

  • 平日昼に生放送されるバラエティー番組に、2つの家族がスタジオで「豪華景品をかけて競う」というコーナーがある。学校があるはずの子どもを毎週参加させているのはおかしい。

【ラジオ】

  • パーソナリティーが、話題のニュースに関連する人物の発言について、ニュースと何ら関係のないその人物の体形に言及しながら非難していた。リスナーがその人物を特定することができる表現で、聞くに堪えなかった。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 子ども向け特撮ドラマで、悪役のキャラクターが、歩道橋を渡っている母親から赤ちゃんの乗った乳母車を奪って階段上から落とすシーンがあった。乳母車は落下しきる前に異空間に吸い込まれてしまい、赤ちゃんの安否が不明のままその回は終了。そのシーンを見て不安を覚えた子どもの感情がその回のうちに救われなかったのは問題だろう。

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、女性アイドルグループがくす玉を割ったら、おもちゃの虫が無数に降ってきた。個々の虫は『G』マークで隠されていたが、隠さなければ放送できない内容を流すのは常軌を逸していて不愉快だった。

  • 同じ番組で、男性芸人が突然、プロレスのバックドロップを受けるドッキリがあった。安全を確かめて撮影しているのだろうが、一歩間違えればけがをしそうで不快。中高生がまねして事故を誘発しそうだった。

【「性的表現」に関する意見】

  • チャンネルを変えたら、男性芸人とその恋人の女性アイドルが温泉宿の湯船に入って濃厚なキスをするシーンだった。子どもも見るので、このような性的表現はテレビではやめてもらいたい。

  • 子どもたちが古い時代劇(の再放送)をなぜ見るのか気になって画面をのぞいたら、上半身裸の女性が映っていた。こうしたシーンは毎回あるようだ。いまのテレビに合っていないのではないか。少なくとも、子どもが見る夕方の時間に放送すべきではない。

【「要望・提言」】

  • 公立中学校の教員をしている。受験を控えた生徒が「学歴が全てではないのはわかっているが、クイズ番組で出身大学が表示されて『すごい!』となると、学歴が必要なんだ、学歴が有利に働くんだと感じる」という。クイズ番組がすべて悪いとは言わないが、もう少し配慮があるとよいと思う。

2023年2月14日

「ペットサロン経営者からの申立て」通知・公表の概要

[通知]
2023年2月14日午後1時からBPO会議室において、曽我部真裕委員長と事案を担当した鈴木秀美委員長代行、野村裕委員、少数意見を書いた二関辰郎委員長代行が出席して、委員会決定を通知した。申立人本人と、被申立人の日本テレビからは取締役執行役員ら4人が出席した。
曽我部委員長がまず、本件放送に人権侵害は認められず、放送倫理上も問題があるとまでは言えないと委員会の判断を示したあと、今回は、当事者への直接取材が実現しないまま放送したことについて、直接取材の重要性を認識するよう求める要望が付いたこと、さらに、放送倫理上問題があるとする少数意見が付いたことを伝えた。
申立人の「犬を虐待死させたと印象付け、事実に反する放送で名誉を侵害された」とする主張については、放送内容そのものは申立人の社会的評価を低下させるものだが、公共性・公益目的性・真実相当性が認められるため、人権侵害は認められなかったと述べた。
また、申立人本人に直接取材しなかったことについては、当事者への直接取材は大原則だが例外もあり、本件では、直接取材実現に向けた申入れ、ホームページに掲載された申立人のコメント紹介、複数の関係者からの取材内容などの諸事情を総合的に評価すると「放送倫理上の問題があるとまでは言えない」との判断に至ったことを説明した。ただし、この点については、日本テレビに対して直接取材の重要性をあらためて認識して今後の番組制作に当たるよう求める要望が付いたこと、さらに、3人の委員が「放送倫理上問題あり」とする少数意見を付記したことを改めて説明した。
続いて野村委員が、「委員の間でなかなか意見がまとまらず激しい議論の末、多数意見に落ち着いた」と委員会の審理では白熱した議論が展開されたことを伝えた。
鈴木委員長代行は、委員会決定の法律的な部分を、委員長の説明とは言葉を変えて、かみ砕いた表現で双方に伝えた。
続いて、少数意見を書いた二関委員長代行がその内容を説明した。二関委員長代行は、人権侵害がないという結論は多数意見と同じだが、放送倫理上の問題についての結論は異なり、本件を直接取材がなくても許される例外ケースと認めて良いかどうか検討した、と述べた。日本テレビは「特段放送を急ぐ事情はなかった」と言いながら、直接取材を申し入れた後、実質半日程度しか待たずに放送している。放送時点で、申立人が取材を拒否したと判断できる事情があったとも言えない。また、多数意見は「複数の関係者から迫真的な告白を含む取材をしていた」とするが、シャンプーに居合わせた関係者は犬の死亡について自分たちも非難されかねず、責任を他者に転嫁したい動機がある立場だったと言えなくもない。さらに、日本テレビの取材を受けた関係者は、申立人と相対する犬の飼い主から辿り着いた関係者で、別ルートの関係者への取材は行われていない。そうした事情を考慮すれば、本件が、直接取材がなくても許される例外ケースとは認められない。したがって、放送倫理上の問題があるという結論に至ったと述べた。
この決定を受け申立人は「犬を虐待したということだけはありえないです」と訴えた上で、委員会の審理に対し「ありがとうございました」と述べた。
日本テレビは「要望と少数意見を真摯に受け止めます。少数意見が3委員になったことも重く受け止めます」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見し、委員会決定を公表した。放送局と新聞社など合わせて22社から32人が出席した。テレビカメラの取材は当該局の日本テレビが代表取材を行った。曽我部委員長はパワーポイントを使って報道陣に決定の内容を説明した。この中で曽我部委員長は「申立人への直接取材がなされなかったことが、放送倫理上どう評価されるのかが論点だった」と述べ、この部分を丁寧に説明した。
野村委員は、直接取材がなくても許される例外ケースについては、委員の間でも考え方に幅があったとした上で、「一般的にはどういったことが考慮要素になるのか深く議論し、本件に即して今回の多数意見に至った」と説明した。
鈴木委員長代行は「日本テレビは2021年の1月26日に取材を始めて、28日の朝に放送した。私たちが一番気にしたのは、この時間経過の中で本人取材はできなかったのか、ということだ」と述べた。
二関委員長代行は「直接取材がなくても許される例外ケースについて、例外のあてはめのところで多数意見と少数意見が分かれた」と述べ、「例外はあくまでも例外。あまり緩く認めたら原則と例外がひっくり返ってしまうこともあり得る。多数意見は緩すぎるのではないか」と放送倫理上の問題ありとした少数意見を説明した。

<質疑応答>
(質問)
日本テレビの受け止めは?
(曽我部委員長)
少数意見を含めて委員会の指摘を重く受けとめて番組作りに活かしていきたい、というコメントがあった。

(質問)
申立人にコンタクトを取ってから半日しか待たなかった。それが例えば1日、2日待てば、レスポンスがなくても、十分尽くしたと言えるのか。コロナ禍であっても、直接、取材に行くべきだったと言うのか。今回のケースでどこまでやったら取材が尽くせたと言えるのか。
(曽我部委員長)
なかなか難しいところで、単純に時間だけではない。諸事情を考えるべき。他のアプローチも、諸事情を考えて、できることはやったと言えるかどうかという個別判断になってくると思う。

(質問)
局として半日しか待てない事情があったのか。
(曽我部委員長)
日本テレビ側は、実際のところは放送時間との関係があったと思う。ただ、日本テレビは「その日に放送しないといけないという差し迫った事情はない」と説明しているので、両面あったのかなと思う。
(野村委員)
コロナに言及があったので誤解のないように申し上げるが、ここでいう直接取材というのは、対面という意味での直接ではない。遠隔の方法でも、動画での通話とか電話でもよかった。それらを含めた直接取材という意味。直接会わなければいけないという意味ではないという点を補足しておく。
(曽我部委員長)
一般論として、リモート取材と直接対面での取材、あるいは現地を見ての取材とは違うかと思うが、今回はそこまで意識されていない。直接取材と言うのはリモートでも構わないという認識だった。

(質問)
本人取材が免除されるかどうかの論点、多数意見と少数意見で一番評価が分かれたのはどこか。
(曽我部委員長)
多数意見は、他の取材で確度の高い情報が得られていたことを重視した。しかし、本人に言い分を述べる機会を設定するということと、他でちゃんと取材ができているということは別の話という考え方もできる。そのあたりが少数意見と多数意見の一番大きな考え方の違いかと思う。

(質問)
多数意見は、他の取材で補完し得るという立場で、少数意見は、本人取材には代えられないということか。
(曽我部委員長)
端的に言うとそういうことになる。

(質問)
「問題があるとまでは言えない」という結論で会見を開く理由は。
(曽我部委員長)
BPOの活動についての透明性の確保、また活動を広く知ってもらうために、結論に関わらず会見は行う。

(質問)
今回の少数意見は10分の3ということだが、これまでは6対4みたいなことはあったのか。
(曽我部委員長)
私の記憶では、6対4ということは記憶になく、3人の少数意見というのは比較的多いという印象だ。そういう意味では意見が割れたケースの1つだと思う。
(事務局)
少数意見の人数は、前回の77号が少数意見2人、76号も少数意見は2人だった。
(曽我部委員長)
少数意見が2人というのはあるが、3人はかなり珍しいと思う。

(質問)
申立人の反応は。
(曽我部委員長)
申立人にとっては望ましい結論ではなかったが、冷静に受け止めていただいたと思う。おっしゃっていたことは「とにかく真実を伝えたかった。虐待はしていないということを伝えたかった」ということ。直接取材がなかったことに関しては、申立て以前の日本テレビとの交渉でも謝罪を求めたが得られず残念だったと。あと、少数意見については評価されていた。

以上

第313回放送と人権等権利に関する委員会

第313回 – 2023年2月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2023年2月21日(火)午後2時~午後8時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」ヒアリング及び審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方への合計5時間のヒアリングを行った。終了後、本件の論点を踏まえ審理を続けた。

2. 委員会決定第78号「ペットサロン経営者からの申立て」通知・公表報告

2月14日に行われた「ペットサロン経営者からの申立て」に関する委員会決定の通知・公表について、事務局から報告を行った。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

2023年度委員会開催日程案が事務局から提案され了承した。

以上

第180回 放送倫理検証委員会

第180回–2023年2月

ラジオ局との意見交換会の議題などを議論

第180回放送倫理検証委員会は2月10日にオンライン会議形式で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の企画や、1月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年2月10日(金)午後5時~午後6時30分
場所
オンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会の議題などを議論

委員会の活動とラジオ局の番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するための初めてのラジオ局との意見交換会について、主要な議題や議事の進行などについて議論を行った。

2. 1月に寄せられた視聴者意見を議論

1月に寄せられた視聴者意見のうち、情報番組内のコーナー企画で番組ディレクターがガムを噛みながら生中継し批判的意見が殺到した件や、クイズ番組において無重力状態でインコやメダカの実験を行ったのは動物虐待だとする意見が多数寄せられたこと、またバラエティー番組で取り上げられた県の水道事業に関する内容が事実と異なり、県民に動揺や不安を与えたという意見などを事務局が報告し、議論した。

以上

2022年度 第78号

「ペットサロン経営者からの申立て」に関する委員会決定

2023年2月14日 放送局:日本テレビ

見解:要望あり(少数意見付記)
対象となったのは、日本テレビが2021年1月28日に放送した『スッキリ』。ペットサロンで預かっていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題について放送した。この放送に対し経営者は、虐待死させたかのように印象付け名誉を侵害したとして申立てを行った。局側は名誉を侵害していないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまで言えないと判断した。そのうえで、日本テレビに対して、経営者への直接取材実現にむけてもう一歩の努力がなされるべき事案であり、直接取材の重要性をあらためて認識して今後の番組制作にあたるよう要望した。

【決定の概要】

本件は、日本テレビが2021年1月28日に放送した情報番組『スッキリ』が、同月12日にペットサロンでシェパード犬がシャンプーを受けた後に死亡した件を取り上げたことに対し、申立人が、自らが犬を虐待死させたと印象付けるもので、事実に反する放送により名誉を侵害されたとして、申立てを行った事案である。
本件放送では、同日、申立人が経営するペットサロンにおいて、犬の首輪を手すり(シンクの金具)に付けた状態で約2時間にわたり押さえつけてシャンプーした後、犬が動物病院に運ばれたが死亡したこと、従業員に対し、逆らえば「辞めてもいい」などと述べる日頃の申立人の発言等が関係者のインタビューを交えて紹介される。飼い主は、申立人から犬は事故で死亡したと説明されたが、シャンプーに同席した学生は虐待があったと教えてくれたと語る。この間、「愛犬急死 経営者“虐待”シャンプー?」など画面に表示されている。これに続くスタジオトークでは、コメンテーター等からほぼ一方的に申立人を非難する発言が相次いだ。
本件について、委員会は、名誉権侵害の問題に加えて、申立人への直接取材が実現しないまま放送されたことの放送倫理上の問題について、概要、以下のとおり判断した。
まず、本件放送では申立人の氏名等が匿名化されていたが、SNS上で拡散されていた情報が取材の端緒であったとの背景もあり、申立人及びペットサロンの特定は容易であったと判断する。
本件放送を見て、一般的な視聴者はシャンプー行為の中で「虐待」があり、犬の死亡原因になったと認識すると考えられ、本件放送は申立人の社会的評価を低下させる。
そこで次に、本件放送について、日本テレビに真実性の抗弁または相当性の抗弁が認められるかが問題となる。
ここで「虐待」の中核となるのは、犬の首輪を手すりに付けた状態でシンク内に伏せをさせて、約2時間にわたり犬を押さえつけながらシャンプーし、犬の頭にシャワーを繰り返しかけたこと及びこれにより犬が死亡したこと(因果関係)と捉えられる。
この点につき、申立人は、シャンプー行為の一部を途中から手伝ったに過ぎなかったなどと述べている。これに対し、日本テレビは、上記のような放送内容について、ペットサロン関係者ら及び飼い主等から放送内容全般につき矛盾のない取材結果が得られていたとして詳細に説明した。その内容に格別の不審はなく、放送で示された各事実があると日本テレビが信じたことについて、少なくとも、相当の理由があったと判断される。
以上より、本件放送は申立人に対する人権侵害に当たらない。
次に、委員会は、本件放送に当たって、日本テレビが、申立人の言い分を直接取材し得ないまま放送に踏み切ったことにつき、放送倫理上の問題を検討した。
委員会はこれまで、取材・報道に当たっては、原則として、報道対象者に報道の意図を明らかにしてその弁明を聞くことが必要であると指摘してきた。
他方、速報性も重要な要素の一つであり、対象者が直接取材に応じるまでの間は一切放送・報道できないとの結論は妥当でなく、例えば、真摯な申入れをしたが接触できない、応じてもらえない場合、適切な代替措置が講じられた場合(当事者が当該対象事実について公表したプレスリリース等の掲載や、その他の方法による本人主張・反論の十分な紹介)、緊急性がある場合、本人に対する取材が実現せずとも確度の高い取材ができている場合などは、これら内容を含めた諸事情を総合考慮して、本人取材を不要とする余地があると解される。
本件で、日本テレビは、申立人に取材を申し入れたほか、申立人の携帯電話にも2度電話をかけた(取材経緯・時系列の詳細は「Ⅱ.委員会の判断」参照)。また、民事紛争の一方当事者の主張に依拠した放送には慎重である必要があるが、申立人と共にシャンプー行為に当たった従業員らを含むペットサロン関係者5名から迫真的な告白を含む取材をしていた。また、ホームページに掲載された申立人の謝罪・反論コメントのほぼ全文を本件放送で紹介しており、直接取材の全面的な代替とはならずとも、一定の意義を認め得る。
本件放送は、「シャンプー行為に起因して、犬が死亡した」との事実に加えて、ペットのしつけに関する申立人の信念に対する批判も含む、申立人の社会的評価を低下させる内容であったので、本来、直接取材が要請される事案としてもう一歩の努力がなされることが望ましかったが、その上で、委員会は、以上に列挙した要素を含む諸事情を総合的に評価したとき、申立人に対する直接取材が実現しなかったことをもって、放送倫理上の問題があるとまでは言えないと判断する。
結論として、委員会は、本件放送には人権侵害は認められず、また、放送倫理上の問題があるとまでは言えないと判断する。
ただし、本事案が、直接取材を実現すべくもう一歩の努力がなされることが望ましい事案であったことを踏まえて、委員会は、日本テレビに対し、対象者に対する直接取材の重要性をあらためて認識して今後の番組制作に当たることを要望する。

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2023年2月14日 第78号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第78号

申立人
福岡県在住のペットサロン経営者
被申立人
日本テレビ放送網
苦情の対象となった番組
『スッキリ』
放送日
2021年1月28日
放送時間
8時~10時25分のうち8時33分から8時55分までの22分間

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1. 放送の概要と申立ての経緯
  • 2. 本件放送の内容
  • 3. 論点

II.委員会の判断

  • 1.匿名化・モザイク処理について
  • 2.本件放送による社会的評価の低下について
  • 3.本件放送による名誉毀損の成否について
  • 4.放送倫理上の問題点の検討

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2023年2月14日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2023年2月14日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2023年1月に視聴者から寄せられた意見

2023年1月に視聴者から寄せられた意見

番組内での動物の扱い、新型コロナウイルス感染症を想起させるような「医療ギャグドラマ」、いわゆる「ドッキリ」番組などに意見が寄せられました。

2023年1月にBPOに寄せられた意見は 1,607件で、先月から 258 件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 85% 電話 14% 郵便・FAX 計1% 
男女別は男性38%、女性22%で、世代別では30歳代25%、40歳代24%、50歳代19%、
20歳代13%、60歳以上13%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、1月の送付件数は766件、39事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

番組内での動物の扱い、新型コロナウイルス感染症を想起させるような「医療ギャグドラマ」、いわゆる「ドッキリ」番組などに意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は19件、CMについては14件でした。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は115件で、前月から25件減少しました。
今月は「表現・演出」が29件、「動物」が18件、それに「暴力・殺人・残虐シーン」と「いじめ・虐待」が12件ずつと、続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 連続強盗のニュースで、ハンマーで質店内を荒らす犯人の顔にモザイクが施されていた。犯人はまだ分かっていない。モザイクは必要なのか。

  • 「高齢者は集団自決すべき」などの発言を繰り返して騒がれている人物をコメンテーターとして起用しているのはいかがなものか。

  • ネパール旅客機墜落事故を伝える中で「乗客がライブ配信していた映像を入手した」として墜落直前の機内の映像を何度も放送していた。窓から景色を撮影していたアングルが突然乱れ、機内の炎が映っていた。大勢の乗客の最後の瞬間であろう映像を何度も流すのはよくない。

  • 荒れた成人式や新成人の問題行動が毎年報道される。報道が騒ぎを抑止する力になるならともかく、逆に一部の者を煽る結果になっているように思える。

【バラエティー・教養】

  • 高級住宅街にある豪邸を紹介するコーナーで、室内の様子はもちろん、家の外観、住人の顔なども放送されていた。連続強盗事件はまだ解決していない。危機感が足りないと思う。住人が承諾していても慎重になった方がいいと思う。

  • 新たなアレルギー検査として“遅延型IgG食物アレルギー検査”を紹介していたが、この検査については日本アレルギー学会が「食物アレルギーの原因食品の診断法としては推奨しない」との見解を示しており、放送すべきではない。

  • 私のパートナーと同じ多重人格障害を持つ方のドキュメンタリーだと思って共感しながら見ていたところ、ドキュメンタリーに似せたフィクションだと分かった。病気をエンターテインメントに利用されたことで裏切られた、侮辱されたと感じている。

  • 番組中に出演者が訪問した先が、番組のはじめに提供社として表示された企業の店舗で、商品の特徴や価格などを紹介していた。この部分が番組本編なのかCMなのか判然としなかった。もし広告なのであれば途中から見た人は広告だと分からないだろう。ステルスマーケティングのようだと感じた。

  • バラエティー番組で正解発表の前に使われていたMCの着物姿の画像が、亡くなられた方に着せる「左前」。新年早々、縁起が悪い画像でびっくりした。時々あるのでチェックしてほしい。

  • 「土壌に蛍光塗料をまいたら木は光るのか」という実験を、周囲に畑などがある場所で行っていた。人間や動植物に影響を及ぼさないか不安になった。

  • 全国ネットの番組だが名古屋では冒頭30分が放送されず「スゴい声優50人」のはずが43人しか紹介されなかった。タイトルと放送内容が違う。再放送してほしい。

  • ゴールデン帯の全国ネットの番組なのに、地元山形では番組終了の数分前にコマーシャル、ニュースに切り替わり、終わってしまった。最後まで放送してほしい。

  • インコが無重力下で飛べるか、動物に詳しいわけでもないタレントが「実験」。結果として虐待になってしまうおそれはないのか。動物を家族に迎えている私としてはとても不快だった。

  • 番組内で数年前の人気ドラマを扱った際、ドラマ放送当時に大手芸能事務所に所属していた主演俳優の映像だけが不自然にカットされていた。この番組だけの問題ではなく、テレビ界全体の問題だと思う。どうにかならないのか。

  • スイカ割りで「誤って人間の頭を強打した」と誤認させるドッキリ。「人をあやめたのか」とパニックになっているターゲットを見てスタジオの出演者がゲラゲラ笑っているのは異様。また、人の生死に関わるドッキリはよくない。

  • 画面右上の「○○まで○秒」と予告するカウントダウンが終わったと思えばCM。視聴者をだましている。何度も繰り返すのでストレスがたまるし、バカにされている気になる。

  • 毎週、大御所タレントが特定の若手出演者をターゲットにして、全身にペンキをかけたり、何度も水をかけたりする。文句が言えない人を苦しめて楽しむ弱い者いじめの典型的な姿。元々は大御所タレントが好きだったのに残念。

  • 産後半年の出演者に登山を「サプライズプレゼント」。医師から産後1年は運動を控えるように言われているので出演者の体調が気になった。

【ドラマ・アニメ】

  • 「パロディ」「フィクション」のドラマとはいうが、ワクチンに関する陰謀論のような主張が終始なされている。その出演者、スタッフはネット上で新型コロナウイルスについて反ワクチン論を展開している。視聴者に事実を誤認させるような内容が3か月間放送され続ける事態は看過できない。

  • 子どもも見る長寿アニメ番組で成人の日を扱った際、ある女性の晴れ着姿を見た主人公たちが「げっ、すごいのが出てきたね」などとその容姿を否定的に評するシーンがあった。もう少し配慮のある内容にした方がいいと思う。

  • 岡本太郎の世界を「昔の特撮番組」風に仕立てた番組が年始にまとめて再放送された。制作の技術を褒めたい。リアリティがあり斬新でユニークだった。息子たちが夢中になって見て、岡本太郎の作品に興味を持ち、学んだりもしていた。大阪万博の話題で珍しく息子たちと祖父との会話も弾み楽しい正月になった。

【ラジオ】

  • 特定の政党をPRする番組を一般の番組と同じように放送している。番組名はその党の都道府県本部のサイトにあるキャッチフレーズと同じ。ゲストは2か月後に迫った地方議会選挙の、その党公認の予定候補者。内容はインタビュー形式での候補者の経歴や人となりの紹介。問題ではないのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、スイカ割りのはずがうっかり人の頭をたたいて殺してしまう設定があった。仕掛けられた者が殺人者呼ばわりされるのを笑いにするのは精神衛生上よろしくない。子どもがこういう悪質ないたずらをしてもよいのだと解釈しかねない。

  • 子ども向け特撮ドラマで、正義のヒーローが複数で怪人の学校に乗り込んで大暴れする。丸腰の怪人に暴行し、校舎から突き落としていた。これではどちらが悪者かわからない。見ていて非常に腹立たしく、子どもに見せられるものではないと思った。

  • 夕方のローカル情報番組で、出演者の気象予報士が、右手で持った自身に似せた雪だるまを左手で上から一撃して粉々にする演出があった。その人の人間性はわからないが、驚愕した。子どもには見せるのではなかったと後悔した。

【「動物」に関する意見】

  • クイズ・バラエティー番組で、「インコは無重力状態で飛べるか?」との出題があり、小型機を急降下させた機内でインコを放す実験をした。命を軽く見ているし、小動物には何をしてもよいと子どもに思わせてしまう。

  • インコは環境の変化や音など、些細なことでもストレスを感じやすく弱ってしまう動物。実験は動物虐待ではないかと感じた。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • アニメで残虐な描写が未就学児も視聴可能な夕方の時間帯に放送された。主人公が味方を救出するために、自分の搭乗・操縦するロボットの手で生身の人間である敵を圧殺。腕や血液などが吹き飛ぶが、救出に成功した主人公は楽しそうな表情を浮かべる。未成年の情操の発達に悪い影響を与えないか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 新春バラエティー番組のコントで、男性ピン芸人の顔に点火したろうそくのロウが垂らされた。ロウが本物ならひどい火傷になるし、子どもが見たらいじめで真似しかねない内容だった。男性芸人は大丈夫だったろうか。

第253回 放送と青少年に関する委員会

第253回-2023年1月

視聴者からの意見について…など

2023年1月24日、第253回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会ではまず、2022年12月後半から1月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について報告がありました。なかには、連続アニメ番組の終盤のシーンについて、「主人公の乗った戦闘ロボットの巨大な手で敵の人間を押しつぶす描写があり、不適切と考える」「小学生の子どもと見ていたが、あまりにショッキングなシーンに言葉を失った」などがありました。
1月の中高生モニターリポートのテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」でした。モニターからは大晦日の大型音楽特番について、「例年に比べ若者向けの曲が増えたように感じました。私や妹はそれがとても嬉しかったのですが、その一方で父や母は知らない曲ばかりになっていると少し残念そうでした」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。また岡山・高松地区の放送局との意見交換会などの今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2023年1月24日(火)午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
岡山・高松地区の放送局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

12月後半から1月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
連続アニメ番組の終盤のシーンについて、視聴者から「主人公の乗った戦闘ロボットの巨大な手で敵の人間を押しつぶす描写があり、その際に鮮血が広がり、つぶされた人間から分離した腕がヒロインに当たった。常軌を逸した不適切な描写と考える」「小学生の子どもと見ていたが、あまりにショッキングなシーンに自分も子どもも唖然とするばかりで言葉を失った」「放送時や予告時に残虐な映像に関する告知がなかった。この時間(日曜午後5時から)の放送としては、非常に不適切な映像表現だと考える」などの意見が寄せられました。
担当委員は、「分離した腕が宙を舞うところでは鮮血の色を暗い色に変えているが、日曜の5時に家族で見るシーンではないだろう」との見方を示し、別の委員は「このシリーズは、わりあいほのぼのとした展開だったが、急に残虐なシーンが出てきたので、視聴者がびっくりしたところが大きいのではないか」と指摘しました。「小さい子どもは怖いかもしれない。ただ、つぶされた人間自体は描かず、飛び散る血を暗い色にしているなど、一定程度配慮された表現になっている」との意見も出されました。
また、特別支援学級向けの学校放送番組で、マスクを上手につけられない子どもを怪人のキャラクターにたとえて、主人公がマスクのつけ方を丁寧に教える展開に対して、「マスクをしない=悪、であるかのような間違った印象を子どもに植え付けるような番組だ」や「事情があってマスクができない子どもへのいじめを助長する内容」などの批判の声が多くあったことについて担当委員から、「マスクに慣れていない小さい子どもに、どうしたら少しずつ慣れさせていくかがテーマなので、基本的に問題はない。『無理しないでください』という趣旨のテロップもあり、十分な配慮があった」との報告がありました。
その他に、大きな議論はなくこの1ヵ月の視聴者意見の中で「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

1月のテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」で、25人から合計18番組(テレビ16・ラジオ2)への報告がありました。複数のモニターが取り上げていたのは2番組で、『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に8人が、『逃走中~大みそかSPお台場大決戦!~』(フジテレビ)に2人が感想を寄せています。
「自由記述」では、「テレビの良いところには家族とゆっくり過ごせる空間自体を作ってくれることもあると再認識しました」など、年末年始に家族と一緒にテレビを見たというモニターからの声が多く届きました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『クイズ!丸をつけるだけ』(NHK総合)に5人が、『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)と『もうひとつの千と千尋の神隠し~舞台化、200日の記録~』(NHK BSプレミアム)にそれぞれ3人が感想を寄せています。

◆モニター報告より◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『ゴールデンラヴィット!』(TBSテレビ)
    終始爆笑しながら早送りやスキップをすることなく見続けられました。コント番組や漫才番組は苦手でめったに見ないのですが、この番組のように純粋な笑いを届けてくれる番組は好きです。過去の放送の面白かったところを切り取ってランキングにしていたので、全体を通して「面白い」が凝縮されていたと思います。ただ、毎日『ラヴィット!』を見てはいないので、芸人の方がおそらくいつものノリでボケていることを理解しにくいシーンがありました。それぞれの芸人の方の性格などをあらかじめ知っておくとより楽しめると思うので、番組の冒頭に出演者の紹介や番組の内容を軽く説明していただけると嬉しいです。
    (高校1年・男子・兵庫)

  • 『二宮ん家』(フジテレビ)
    ランキング上位3名の名前を出し、その情報だけで何のランキングなのかを当てるというゲームがあり、少しずつ答えに近づいていくところが面白かった。また、視聴者も一緒に考えられるので楽しかった。二宮さんと他の方との掛け合いもよく、何度も笑顔になれた。ゲームもランキングもテンポよく進んでいくので飽きずに見ることができたと思う。出演者の方々がリラックスした状態で参加していて、とても自然体だった。(高校1年・女子・栃木)

  • 『COOL JAPAN新春スペシャル2023 世界が驚いた これぞニッポンのNEWS』(NHK BS1)
    “在日外国人”が驚いたニュースなので日本人にはない考え方で物ごとを捉えたりしていて、同じ日本のニュースでもこんなにも(受け止め方が)違うのかなと驚いた。普段の番組では日本語でしゃべっているところには英語字幕がついているが、今回のスペシャルな新春版ではついていなかったのでつけるべきだと思った。字幕により英語を学んでいる視聴者もナチュラルな言い回しなどを学ぶことができるし、外国人の視聴者も理解することができる。(中学1年・女子・千葉)

  • 『芸能人格付けチェック!2023お正月スペシャル』(朝日放送テレビ)
    いつも出演者のコメントや心境をナレーションが面白く盛り上げていて、見ていてとても楽しいと思いました。また、音楽のチェックなどでは、視聴者も一緒に考えることができ、サイトからの参加もできて、とても飽きさせない工夫がされていると感じました。合奏の曲をクラシックだけでなくポップスのようなみんなが知っている曲にすると、さらに違いを比べやすくなると思います。(中学1年・男子・山形)

  • 『笑アセろ正月SP☆100秒後にジュニア&小峠を笑わせろ!☆チョコプラ』(TBSテレビ)
    この番組は即興ショートコントと大喜利、小噺の3つのコーナーに分かれているのだが、特にコントが面白く感じた。「架空のスターになる」というお題を聞いてから100秒以内に衣装を選び、審査員の前に移動してコントをするというものだった。KOC(キングオブコント)などの普段のコントでは見られない、即興であるがゆえのコント上の設定の粗さから生まれる笑いがとても新鮮で面白く、それにコメントする千原ジュニアもうまく芸人たちの良さを引き出していて面白かった。(高校1年・男子・愛知)

  • 『逃走中~大みそかSPお台場大決戦!~』(フジテレビ)
    • 様々なジャンルの芸能人がお金をかけた極限状態でいるので、素が出ていて普通のバラエティーよりも面白いです。別のスタジオからたまに中継で芸能人たちがツッコミを入れるのも新しくて良かったです。(中学2年・女子・東京)
    • 番組と連動したTwitter企画やdボタンを押すと出演者のデータを確認できるシステムがあり、とても工夫されていて面白かったです。最終的に一番果敢にミッションに取り組んでいた方が逃走に成功していて視聴者側としてもスカッとしました。しかし参加者が多い分、ほかの方を気遣わない発言をされている方もいて不快でした。そして何より他局の番組のパロディが目立ちました。(中学3年・女子・千葉)

  • 『第48回 ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』(ニッポン放送)
    3年連続パーソナリティを務めているSixTONES を目当てに毎年聴いています。このようなチャリティ・キャンペーンをアイドルなどがやるということは、若者を中心に幅広く影響があると思います。「生朗読」や「演奏」は、盲導犬や聴こえない世界、見えない世界、全盲の方とのコラボなど目が不自由な方の存在を実感するとともに、生放送を生かしたメールなどは実際につながっているようなとても素晴らしい番組だと思います。(高校3年・女子・茨城)

  • 『第73回 NHK紅白歌合戦』(NHK総合)
    • 今年は若者を意識してかK-POPやアニメソング、TikTokなどで流行した曲が多く見られた気がする。曲と曲の間の企画が面白く、ずっと見ていられた。個人的には、K-POPの曲は日本語ではなく元の韓国語の歌詞のほうが良いと思う。ファンもそっちのほうが見る気になると思う。(中学2年・女子・山形)
    • 出場歌手の方々の年代にあまり偏りが少なかったように思います。アーティストの曲順も、比較的色々な世代がずっと見ていることができる形に収まっていたように感じました。ただ、もう少し曲の余韻にひたる時間があってもよかったのではないかと感じました。曲が終わってすぐに次の企画の説明やVTRが入ってしまうと、せっかくのパフォーマンスへの感動が薄れてしまうように思います。また、男性歌手を白組、女性歌手を紅組に分けて行われることに少し違和感を覚えています。個人的には、例えば、歌手の方の性別に関係なく、その年その年でランダムに紅組、白組を分けるなど、「紅白歌合戦」の醍醐味は残す形で、柔軟に対応していってもよいのではないかと感じました。(高校2年・女子・東京)

    • 若手のアイドルやアーティストが多く豪華で、若い世代の私は大いに楽しく視聴した。その反面、昔から親しまれている歌手の出場者や時間が少なかったように感じた。若い世代に多く視聴してもらうために工夫をしていることは分かるが、年配の世代の方や長くこの番組を見続けている人たちはもの足りなく感じることがあるかもしれないと思った。大みそかの日本を楽しませ、和やかな気持ちにさせてくれるこの番組は、ぜひとも私たち若い世代が年を重ねても続いていてほしいと思う。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 例年に比べ流行のK-POPやアニメ映画の歌など若者向けの曲が増えたように感じました。私や妹はそれがとても嬉しかったのですが、その一方で父や母は知らない曲ばかりになっていると少し残念そうでした。紅白歌合戦は幅広い年代の人に見られている番組だと思うので、若者向けばかりの曲にしてしまうと番組を楽しめない人も多く出てくるのではないかと思いました。この番組に対して、ジェンダー問題のことを考えて紅組と白組に分けるのをやめようという意見をよく聞くのですが、紅組白組のどちらが勝つかも楽しみにしながら観ているので、組分けはやめないでほしいと思っています。(高校2年・女子・広島)

  • 『やっぱそれ、よくないと思う。』(テレビ朝日)
    普段あまりYouTubeを積極的に見るほうではなく、こういったストリーマーが投稿している動画はほとんど見ることがない。この作品で描かれた動画企画も現実世界の企画と同じで迷惑だと思われるところと紙一重だと感じた。ただ彼らなりに追い詰められた末の企画だったということが描かれていて、現実世界のストリーマーもそうだったのかもしれないなと思った。もちろん、だからといって何でもしていいかといわれたらそういうわけでもないし、難しいラインだなと感じた。(中学3年・女子・群馬)

  • 『第31回 埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』(テレビ埼玉)
    ネット上で話題になっていたので見たが、普段とは違う埼玉の市長や知事らが歌を熱唱する姿はとても面白い。ギャップ萌えというか、シュールな光景を見ることができた番組だった。ただ、世代的に仕方ないが、歌う曲がどうしても若者が知らない曲が多く、少々つまらないところがあったのが気になった。来年出演する首長や社長さんは、もう少し幅広い世代が楽しめるような曲を練習して臨んでいただければ、もっと面白くなるかもしれない。(高校1年・男子・東京)

  • 『クイズ☆正解は一年後』(TBSテレビ)
    「インスタ指名手配犯」という企画がありました。ある一般女性が番組公式Instagramアカウントに1年間定期的に投稿し、投稿写真をヒントに女性の居場所を特定して“逮捕”した時期の早さを競う企画なのですが、思わず「これはスゴい!!」と声が出ました。バラエティー的に面白いのはもちろんですが、一方でSNS時代の怖さも感じました。今回、指名手配犯となった方は番組スタッフと話し合いながら投稿していたと思いますが、SNSで身元が特定できてしまうということに改めて気を引き締めていきたいと思いました。この番組のように視聴者参加型で楽しめる、ドキドキしたりワクワクしたり、感情の揺れ動きを感じられる番組は現在少ないなと思いました。ゴールデンタイムの『クイズ☆正解は一年後』もぜひ見てみたいです。(高校2年・女子・千葉)

  • 『あたらしいテレビ2023』(NHK総合)
    NHK以外の放送局の職員の方を招いたり、コンテンツについての話までされていたりと、自由なところにNHKを感じました。HPに番組内で言及されていなかったお勧めのコンテンツも載っていて、放送以外でも楽しむことができました。その一方で軸が少しぶれていたようにも感じます。テレビ放送以外の配信などにも言及していましたし、インタビューではその方の職業や生活に焦点を当てていて、テレビの定義がテレビ放送ではなくてデバイスなのかなと思ってしまいました。配信コンテンツ等に触れるだけでなく、そこからテレビ放送への関連がもっと強くあるとよいのかなと思いました。(高校1年・男子・埼玉)

  • 『終わらない歌を歌おう 2022-2023』(エフエム東京)
    今回のパーソナリティのお二人のときに『SCHOOL OF LOCK!』をよく聴いていたので、久々にお二人のトークが聴けてとても楽しかったです。リスナーの方々と電話で話しながらの進行でしたが、そのトークも含めて『SCHOOL OF LOCK!』を普段聴いていない方にも面白い話だったと思います。(高校1年・男子・滋賀)

  • 『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送テレビ)
    今年もコロナの影響で親戚同士集まることはできなかったが、家族でこの番組を見て「世の中には様々な人がいるね」と話し、2023年を生きていく元気をもらうことができました。様々な人の様々な問題を解決しているこの番組は、多くの人に元気を与えていると思います。これからも、笑いあり、涙ありの番組を続けてほしいです。(中学2年・男子・山形)

【自由記述】

  • 普段長い時間座ってテレビを見ることが少ないので、お正月に家族や親戚とゆっくりしながらテレビを眺めているのはある意味新鮮な体験でした。そして、テレビの良いところには家族とゆっくり過ごせるような空間自体を作ってくれていることもあると再認識しました。最近はライフスタイルも変わり、放送の届け方もより個人にフォーカスを当てられていますが、「人とシェアできるコンテンツ」というテレビの強みも忘れないでいただきたいなと思います。昨年はたくさんの楽しいコンテンツを作っていただきありがとうございました。今年も良い放送をしていただけることを期待しています。(高校1年・男子・兵庫)

  • 最近、番組の放送中にSNS上で感想をつぶやく方を非常に多く見かけます。今は、家族とテレビを見ながら感想を話したり、一人でじっとテレビを見たりするのではなく、「自分の想いを色んな人に伝えたい」「色んな人と共感し合いながらテレビを見たい」という方が多いのかなと思いました。年末に放送された『SASUKE』でも、放送中につぶやかれたTwitterでの感想が画面に表示されるなど、SNSを使った番組の楽しみ方が増えているように思います。手元でSNSをチェックしていなくても色んな方のつぶやきを見ることができ、「ひとりで見ているわけではない」「今、この瞬間同じように笑ったり驚いたりしながらこの番組をみていらっしゃる方がたくさんいるのだな」と感じることができ、とてもよかったです。SNSを活用した番組がもっと増えても良いのかなと感じました。(高校2年・女子・東京)

  • 年末に再放送のドラマの一気見と題して、初回から最終話まで一気に放送されることが多い。今はオンラインの動画サービスがあるため見たいものを見たい時に見ることができる。(ドラマの一気見放送は)そうしたサービスを使うことを促しているように感じる。一気見を行っている局が多いため見たいものがなく、よりテレビ離れを加速させているようだ。(中学1年・女子・千葉)

  • 最近、夜7時頃からの番組でスペシャルが多く、11時頃までやっている番組もあるため、遅くまでテレビを見られない自分のような人は最後まで番組を見られないことがあります。もう少し細かく番組を分けて、区切りをつけることで見やすくなると思います。(中学1年・男子・山形)

  • 最近『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)を毎週見ています。教養系の番組は途中でクイズが入ってきて集中して番組を見ることが出来ずいつも飽きてしまうことが多かったのですが、MCのカズレーザーさんと専門家が講義のような形で対話している姿があまり見ない形で珍しく、面白いと思いました。他の出演者の方は視聴者の素朴な疑問を代弁してくれているような感じがあり、視聴者のことも置いていかない番組だと思いました。SNSでは自然と自分の興味のある情報ばかり受け取ってしまいがちですが、自分が今まで知らなかった事、気に留めていなかった事を知ることも面白いなと、この番組を見て改めて気づきました。(高校2年・女子・岩手)

  • 年末年始は特番が増え、お笑い番組も増えるので、お笑いが好きな私にとってはとてもうれしい時期です。毎年大みそかにやっていた『笑ってはいけない』という番組が好きだったので、なくなってしまったのが残念です。いつかまた復活してほしいです。(高校2年・女子・広島)

  • チャリティ歌謡祭で、司会者の方が出演者に「ブラウン管の皆さんに一言」と問うシーンがあった。これが「テレビを見ているみなさんへ」という意味とは思わず(家族に教えてもらった)、世代を感じる体験だった。(高校1年・男子・東京)

  • 冬休み明け、クラスの子との間で話題に上がったのは、やはり年末年始のテレビ番組の話でした。年末の風物詩、紅白歌合戦は全員と言っていいほど多くの人が見ているため話題に上がりやすかったです。また、「年明けのときには何を見ていたか」ということも話しましたが、ジャニーズカウントダウンを見ている人が多いように感じました。年末年始は、番組のスペシャルなどが多いため、私の大好きな時期です。(高校2年・女子・千葉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『もうひとつの千と千尋の神隠し〜舞台化、200日の記録〜』(NHK BSプレミアム)
    ジブリの作品を舞台化するということで難しい部分が多くあったと思いますが、「アニメだから」と怠らずに、人の手で舞台を作り上げていった貴重な流れを拝見することができ、本当にありがたいです。裏側を描く番組が、私にはとても勉強になるため、毎回力が入ります。(高校2年・女子・千葉)

  • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)
    久しぶりに見た『ちびまる子ちゃん』はとても面白かった!私が生まれる前から30年以上も続いている長寿番組は今の時代なかなかないので貴重だと改めて感じられた。(高校3年・女子・神奈川)

  • 『プロフェッショナル仕事の流儀 YOSHIKIスペシャル』(NHK総合)
    • 最も印象的だったのは「必ず、努力すると努力したぶんだけ良くなる」という言葉でした。YOSHIKIさんが紡ぎ出す音楽は、持って生まれた才能だけで創り上げられるものではなく、たゆまぬ努力で創り出されたものだったのだと改めて気がつきました。番組の構成からも「生きることをあきらめないことの大切さ」を感じました。構成、語り、全てを含めて、本当に素敵な番組でした。(高校2年・女子・東京)
    • YOSHIKIさんの音楽に対する思いやこれまでの苦悩、孤独さを知ることができました。本物のYOSHIKIとは何かを多忙な生活を送っている中で探していました。密着するうえで、番組スタッフと出演者の信頼関係が大切だと感じました。(高校2年・男子・福岡)

  • 『超無敵クラス』(日本テレビ)
    「国内留学」というものを初めて知った。自分と同じ高校生が親元を離れて暮らす、ということをしていて驚いた。また、国内留学生が留学先として選ぶ久米島は自然が豊かでとても優しい人が多かった印象だ。意外と知らない高校生のことや日本のことを知ることができ、とても勉強になった。同じ高校生としてよい刺激をもらった。(高校1年・女子・栃木)

  • 『クイズ!丸をつけるだけ』(NHK総合)
    • 答え方は丸をつけるだけだから小学生の弟、幼稚園児の妹も解くことが出来て家族と楽しむことができました。こんな番組が増えるといいなと思います。(中学2年・男子・山形)
    • シンプルな内容で、誰でも楽しめると思いました。また、丸をつけるだけなのに、しっかりクイズの中身が濃く、とてもすっきりする問題が多かったので、レギュラー化してほしいと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 楽しく学ぶ!世界動画ニュースSP』(テレビ朝日)
    • 役者の演技ではなく、一般人の普段の何気ない日常から国や世代の特徴を捉えているのが良いと思いました。動画に出てくる人の素のリアクションを通して学びを得られる構成になっていて、ただ動画を観賞するのではなくそこから自分の学びにつなげられたと思います。同系統の番組に見られるようにSNSの動画を紹介してスタジオのゲストが「可愛いですね〜」「すごいですね〜」だけのコメントで終わるのではなく、この番組のようにしっかりとしたコンセプトを持っていると“テレビのコンテンツ”としてうまく変換できているなと感じます。(高校1年・男子・兵庫)
    • 出演者に芸人やアイドルだけでなくメディアの有識者を呼んでいて、新しい視点で解説しているので面白かったです。SNSから動画を引っ張ってきて載せる動画まとめ系番組が最近はいろいろな局で多く放送されていますが、この番組は世界各国のCM、ドッキリなどの動画も紹介し、そこからお国柄やその国の社会問題も読み解いていて、動画をただ見て驚いたり感動したりするだけではない自然に考えさせられる面白さがあって毎週見てみたいと思いました。(高校2年・女子・岩手)

◆委員のコメント◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『紅白歌合戦』について、K-POPやアニメソングが多くて楽しめたという感想があった。動画配信サービスでも若者に人気の曲が入っていると言われていたので、制作者の狙いというのは若い人たちに届いているのだなと思った。K-POPファンとしては韓国語で歌ったらいいのに、という意見にはなるほどと思った。

  • 紅白については一方で、中学生のモニターが、若者の歌が多くて高齢者の歌が少ないのではないかと書いていて、その配慮がありがたいというか、こういう気持ちになる若い人もいるのだなと面白く読ませてもらった。

  • 男女を紅白に分けて行うことについて違和感を覚えるという声はこの頃よく聞く。モニターが一例として、性別とは関係なく、その年その年で運動会のようにランダムに分けてもいいのではと提案してくれていたのが興味深かった。一方で、やはり紅白に分けたほうがいいという意見もあり、いろいろな見方があるようだ。

【自由記述について】

  • 年末は再放送のドラマが一気見と題して放送されることが多く、オンラインサービスの利用を促しているようだというモニターの声があったが、この指摘はかなり鋭いと思った。確かに動画配信サービスのCMもたくさん流れるので、そのように感じるのだろう。テレビ離れを加速させるともあったが、おそらくこのような編成をしているのは諸刃の剣だと言いたいのだろう。長時間であっても見る人は見る一方、チャンネル選択の視野に入らない人も出てしまうので、それでいいのかという疑問ではないかと思った。

  • 「人とシェアできるコンテンツというテレビの強みを忘れないで」という声があった。テレビは人と空間をシェアできるコンテンツだという、とてもいい感想だと思う。

  • 『カズレーザーと学ぶ。』という番組について、素朴な疑問を取り上げてくれるのがいいという感想があった。中高生モニター報告では、こうした知的好奇心をくすぐるような番組を評価する声が結構多い印象がある。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『ちびまる子ちゃん』を見たモニターから、自分が生まれる前から続いている長寿番組は貴重だという声があった。我々のように昭和から見てきた『サザエさん』だと若い人には少し行き過ぎてしまうのかもしれないが、『ちびまる子ちゃん』からは何となくつながった郷愁のようなものを感じ取っているのかもしれない。

意見交換会について

2月9日に開催予定の岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、当日のスケジュールや話し合うテーマなどを確認しました。

今後の予定について

次回は、2月28日(火)に定例委員会を開催します。

以上

2022年12月2日

北海道の放送局と意見交換

放送人権委員会の「意見交換会」が2022年12月2日に北海道札幌市で開催された。北海道での開催は2014年以来8年ぶりで、委員会から曽我部真裕委員長をはじめ10人の委員全員(二関辰郎委員長代行はリモート)が参加、北海道のラジオ、テレビ局9社からは編成、報道、コンプライアンスの担当者など39人が出席し、3時間余りにわたって活発に意見交換が行われた。

会議ではまず、曽我部委員長が、「BPOは国が作った組織ではなく、放送業界が自主的に設立した第三者機関で、今日ではBPOに象徴される放送局の自主・自律が、ネットコンテンツとは異なる放送の価値の源であるという認識が高まっていると感じている。最近の放送局の経営をめぐる環境の大きな変化の中で、放送にはそれだけの価値があるということをこれまで以上に強く示していくことが求められている。放送の価値の一つは、間違いなく放送局が放送倫理に裏付けされた安心安全な番組コンテンツを提供していくということであり、そういう意味で放送倫理の重要性はますます高まっている」と、あいさつした。
続けて植村統括調査役が、放送人権委員会が他の2つの委員会と異なる点は、申立制であるとした上で、申立てから委員会決定までの審理の流れをBPOホームページの記載に沿って丁寧に説明した。

意見交換会は二部構成で行われた。第一部は、まず「少年法改正と実名報道」と題して、廣田委員が2022年4月に少年法が改正された経緯と、特定少年の実名報道について解説した。次に曽我部委員長が第76号「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」に関する委員会決定を説明した後、委員会決定とは結論が異なる少数意見について、二関委員長代行と國森委員がそれぞれ理由を述べた。第二部では、第77号「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」に関する委員会決定について、起草を担当した水野委員、鈴木委員長代行が解説した後、少数意見を書いた二関委員長代行と斉藤委員がその理由を説明した。最後は2022年4月に北海道知床半島沖で起きた観光船沈没事故について、北海道放送の磯田報道部長がVTRを交えて苦労した遺族取材やメディアスクラムの問題などを報告し、丹羽、野村、松田の各委員がそれぞれ見解を述べた。

◆第一部
◎「少年法改正と実名報道」解説と質疑応答

●廣田智子委員
少年法とは、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする法律で、「少年」とは、少年法では「20歳に満たない者」とされています。2022年4月には民法も改正されて18歳で成年となりましたが、これまで同様、犯罪を犯す者たちもいて、未だ未成熟で成長途上にあって更生が期待できるということから、少年法にいう少年は20歳に満たない者のままで改正されませんでした。
しかし、他の法律では、18歳、19歳は責任ある立場となっていますから、少年法は18歳、19歳を特定少年として、17歳以下の少年とは異なる扱いをすることになりました。
どこが異なるかというと、特定少年は原則、逆送事件が増え、逆送後は20歳以上の者と原則同様に扱われます。これが厳罰化と言われるものです。原則逆送事件にどのような事件が増えたかというと、改正前は故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件に限られていましたが、改正後はこれに死刑、無期または短期1年以上の懲役、禁錮にあたる罪の事件が加わりました。たとえば、強盗、強盗致傷、強制性交、放火、組織的詐欺罪など、被害者が死亡していなくても原則逆送になり、検察官に送致されることになります。そして、検察官は原則として起訴しなければならず、特定少年は公開の刑事法廷で刑事裁判を受け、無罪とならない限り、刑罰を科せられることになりました。
次の改正点は、この起訴の段階で、特定少年の推知報道禁止が解除されたことです。改正前は、少年法61条で、少年の氏名、顔写真などの報道は禁止されていましたが、特定少年のときに犯した罪により起訴された場合、この推知報道禁止が解除されました。起訴段階の検察の事件広報で氏名が発表されることになり、改正からすでに8カ月が経ちましたが、氏名は発表されたり、されなかったりしています。
検察において、そのような運用がされているのは、この法改正には衆参両院の付帯決議があるからです。決議には、逆送されたとしても事案の内容や報道の公共性の程度にはさまざまなものがあり、インターネットの掲載で半永久的に情報を閲覧できるので、特定少年の健全な育成や更生の妨げにならないよう十分配慮しなければならないと記載されています。この付帯決議を受けて、最高検が各地検に事務連絡で、この決議内容を踏まえた事件広報をせよとして、氏名の公表をする場合の基準を示しています。「犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻な事案では、社会の正当な関心に応えるという観点から氏名の公表を検討せよ。典型は裁判員裁判事件である」としたため、事案によって公表される場合と、されない場合があるわけです。
では、検察が氏名を公表した場合、報道はどうだったのか。2021年10月、山梨県甲府市で、当時19歳の男が後輩の女子生徒の両親を殺害、妹にも重傷を負わせ、住宅に火をつけた放火殺人事件で、甲府地検は法改正後の2022年4月8日、初めて起訴時に氏名を公表しました。報道について、テレビはNHKと在京キー5局がいずれも氏名を報じ、民放の多くは顔写真も放送しました。紙面で匿名にしたのは私が調べた限り、東京新聞、河北新報、琉球新報の3社でした。インターネットでは、氏名は有料・無料配信で異なる扱いがされたり、顔写真についても一部の新聞社で、紙面とは異なる扱いがされました。地元局、地元紙について見てみると、山梨放送とテレビ山梨は、どちらも当日のニュース番組で氏名と顔写真を報道し、その理由も放送しています。また、山梨日日新聞は実名で報じたうえで「本紙見解」という形で、社内での意見交換の内容などを伝える記事を併せて掲載し、論説記事も実名報道に関してでした。
このように、報道の特徴としては、実名・匿名の判断の説明のほか、判断に至る悩みや社内外での議論について賛成・反対両方の意見を報じています。この他、紙面・放送とウェブサイト、さらにウェブサイトでも有料・無料で異なる扱いをしているという点が特徴として挙げられます。
私がその後の逆送起訴事件を報道などから調べた結果、2件目の氏名公表となったのは、2022年3月に大阪府寝屋川市で起きた強盗致死事件でした。こちらは報道が分かれ、調べる限りNHK、読売、産経、日経の4社が、放送・紙面・ウェブとも実名。朝日、毎日は紙面・ウェブとも匿名でした。また、在阪民放では、読売テレビ、MBSが放送は実名、ウェブは匿名という扱いでした。あくまで私が報道などから調べたものですが、2022年12月段階で、19件の特定少年の逆送起訴があり、検察が氏名公表したのが10件、非公表が9件でした。その理由は、諸般の事情を踏まえてといった抽象的なものが多く、結局よくわからないというものになっています。この点は、報道の実名・匿名の説明でも同様と言えます。
公表か非公表かを見てきましたが、山梨放火殺人事件の新聞報道では、「初の実名解禁」という見出しもありました。法務省も「実名報道解禁」と表現しているのですが、実名報道解禁なのでしょうか。なぜ、少年事件はこれまで実名報道をしてこなかったのか。そもそも少年法61条はどのような規定なのか。少年法61条違反が問われた裁判例から見ていきたいと思います。
実は、ほとんど裁判例がないのですが、1998年、大阪府堺市で、シンナー中毒の19歳少年が5歳児を殺害のうえ、その母親と女子高校生にも重傷を負わせた事件で、雑誌『新潮45』が、事件直後に実名、写真掲載の詳細なルポを掲載したことをめぐり、被疑者の少年が、プライバシー権、肖像権、名誉権、実名で報道されない権利を侵害されたとして訴えを起こしました。一審の大阪地裁は、少年法61条は、少年の利益や更生について優越的地位を与えたものであって、それを上回る特段の公益上の必要性があって、手段方法がやむを得ない場合でなければ賠償責任を負うとして、出版社側に250万円の賠償を命じましたが、二審の大阪高裁は一転、一審とは逆の判断を示しました。その判決内容は、61条は罰則がなく、推知報道しないことを社会の自主規制に委ねたものであり、表現行為が社会の正当な関心事であり、その表現内容、方法が不当でない場合は違法性を欠くとして、この記事にそれらを認めて、一審判決を取り消しました。少年が上告を取り下げたために確定し、最高裁の判断はされていません。
ほぼ同じ時期に、集団によるリンチ殺人、長良川事件について、被告人の1人が『週刊文春』の実名をもじった仮名の記事について提訴した件では、名古屋地裁は、大阪地裁と同様の考えで30万円の損害賠償を認めました。名古屋高裁はこれに加え、少年法61条は、少年の成長発達過程において、健全に成長するための権利を保障したものと判断し、出版社側の控訴を棄却しました。
この件では、仮名記事が推知報道にあたるかどうかも争点でしたが、最高裁は、少年法が禁じる推知報道にあたるかどうかは、この記事によって不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知できるかどうかで判断すべきであって、本件仮名の記事は推知報道にあたらないと判断し、61条については、それがどういう条項であるのか、直接判断はしませんでした。結局、名誉毀損、プライバシー侵害について、通常の判断方法で判断せよとされ、最終的に少年の敗訴となりました。
これらはインターネットが普及する前の裁判例であって、少年を知らない一般市民が実名を知っても永遠に記憶しているとも思えないであるとか、情報の伝達範囲が限られているとされており、このインターネットが発達した現代において、同じ結論になるかはわからないところもあります。最高裁が少年法61条について直接判断したものはなく、高裁の判断も分かれていますが、実名を報じたとしても直ちに違法な名誉権やプライバシー権の侵害になるわけではなく、表現の自由、報道の自由との調整が必要と考えられます。
それなのに、なぜ、これまで新聞、通信社、放送は実名で報じてこなかったのか。新聞協会の方針は1958年からずっと同じで、61条は罰則がなく自主的規制に待とうという趣旨だという考えのもと自主規制し、例外的に少年保護より社会的利益の擁護が強く優先する特殊な場合は、氏名や写真の掲載をすることがあるとしてきました。放送も同様だと思います。自律的判断で報じてこなかったのであって、単に少年法61条が禁じているから報じなかったわけではないと思います。
では、改正で18歳、19歳が61条の対象から外れ、検察が氏名を発表したらどうするか、報道機関はより一層重い自律的判断を迫られていると思います。特定少年の実名報道について、社会の意見は、少年の更生という目的は同じでも考え方が真っ向から対立しており、賛成意見の中には、処罰感情や社会的制裁の観点から賛成とする人もいます。
報道機関の実名・匿名の選択は、このどちらかの意見によるものなのでしょうか、そうではないと思います。どちらの意見も大切ですが、報道は当事者の利益に従うものではないし、当事者の利益に沿う報道が良い報道というわけではないはずです。報道には、こうした賛成・反対の意見に留まらない意義があって、それがさまざまな立場の市民からの信頼につながるのだと思います。つまり、特定少年の実名・匿名の問題は、なぜ実名で報じるのか、なぜ事件を報じるのか、報道が守ろうとする社会的利益は何かという報道の根本的な存在意義につながる問いであり、それが今、市民によくわからない状況になっていると思います。ですから、それを説明すること、判断のプロセス、議論や悩みを説明することは、とても意味のあることなのです。
いろいろな考えがあると思いますが、山梨日日新聞は「実名を報道することは、社会的制裁を加えたり、処罰感情を満たしたりするためではない。事実を正確に伝え、社会として検証を可能にするために必要な要素だと考えるからである。報道機関が事件を伝えるのは、どんなことがどういう背景で起きたか社会で共有するため、事件に向き合って、問題を探り、教訓として、再発防止に知恵を出し合って、安心安全な社会づくりに役立てる。取材報道を通じて、読者の知る権利に応えるとともに、罪を犯した人を排除せず、傷付いた被害者、遺族を温かく見守る社会を目指し、記者一人ひとりが不断の努力を重ねなければならない」と報じています。
この実名報道の目的が、逆に言えば、実名報道をする基準にもなるかもしれません。こういうことは、報道機関の皆さんからしたら当たり前のことかもしれませんが、私も含め、言ってもらわないとわからないのです。判断のプロセス、議論や悩みについては、放送の場合、時間の制約などもあるので、ウェブサイトを使うという手法は良いと思います。
MBSが、寝屋川事件について「特定少年を実名で語る」というタイトルで、警察担当、司法担当、報道編集長の目線という3つのコラム(※参考)を、それぞれの方たちが実名、顔写真を出して、ウェブサイトに掲載していますが、それぞれの立場での事件への接し方、実名・匿名の考え方、悩みなどが率直に書かれています。司法担当記者の「実名報道によって、若くして道を踏み外してしまった人の、その後の人生まで左右してしまってよいのか。もし正解があるとすれば、これまで以上に取材を丁寧に重ねることしかないのだと思う」といった率直な言葉は心に届き、好感、信頼感を持ちました。報道編集長は今後の課題を挙げ、実名・匿名の判断にあたって、家裁からの情報には、少年の性格、人格面での情報が乏しく、捜査情報をもとにした犯罪内容や罪の大きさという尺度が比重として大きくなる可能性をはらんでいるという指摘をしており、それには、なるほどと思い、改善の必要があるのではないかと、問題の共有ができました。
弁護士会の中でも、実名・匿名について議論することがあり、報道機関は捜査機関の発表を右から左に報道しているだけだという批判を聞くことがあります。しかし、こうした批判に対して、報道機関から発信された記事を示すと、非常に説得力があり、役に立っています。また、もっとも説得力があるのは、取材を尽くした結果の判断であるということだと思います。
事実の正確さは、多くのネット上の言論との一番の違いであり、報道機関の存在意義だと思いますので、取材内容や苦労もできるだけ詳しく伝えていただいたほうがよいと思います。このように、実名か匿名かの説明においては、型どおりのものではなく、報道の現場を視聴者に、社会に伝えるものにしてほしいのです。あと、起訴時に実名報道をした場合には、特にその後の刑事裁判を取材し、報道してほしいと思います。
先ほどの寝屋川事件の判決が10月31日に出ましたが、懲役9年以上15年以下の不定期刑でした。改正で、特定少年には不定期刑は適用しないとなりましたが、経過措置規定により不定期刑にしています。つまり、この少年は、特定少年として扱うか、少年として扱うべきか、境界上の事案だったと言えます。報道によれば、裁判員の1人は、事件を知ったときは極悪な少年なのかと構える部分があったが、裁判の受け答えがとても素直で幼い印象を持ったとの感想を述べたということです。
こうした事実の報道が、少年法の改正が適切だったのか、検証する重要な材料になります。そして、少年の成育歴や反省など、裁判で明らかになった事実から実名報道が正しかったのか、逆送起訴がふさわしかったのかを検証し、論じてほしいと思います。何が少年を犯罪に向かわせたのか、社会に潜む問題を明らかにして、問題提起をしてほしいのです。実名報道について、見せしめ効果で少年犯罪を抑止するとの考えもありますが、真の抑止は問題の解決です。
さらに重要なのが、被害者、遺族支援です。厳しい現状を伝え、精神面、経済面の支援策について問題提起をしていただきたい。実名報道の意義に、被害者感情や制裁を挙げることがありますが、被害は被疑者の実名や顔写真がさらされることで真に回復はしません。こうした報道を特定少年について続けていくのが、実名報道を行った責任ではないかと思います。
改正少年法は、5年後に見直しがあります。改正少年法やその運用に実際に深く接するのは付添人、弁護人となった弁護士はもとより、取材により少年や事件に深く切り込んだ報道機関の皆さんです。検察が公表・非公表を振り分けていいのか。非公表の中に本来、公表すべき事案はなかったのか。検察の公表・非公表の判断基準は適切なのか。公判廷での少年の扱いは適切か。公判廷で明らかになった事実からして、実名・匿名は適切だったのか。原則逆送事件の範囲は適切か。皆さんが取材した事実から、判断材料の提供、問題提供をしていただきたいと思います。
報道機関の皆様には、これまで以上に重い責任、重い判断が課されていると思います。大変だと思いますが、よりよい報道のために頑張っていただきたいと思います。
【※参考】
 https://www.mbs.jp/news/column/scene/article/2022/05/088890.shtml
 https://www.mbs.jp/news/column/scene/article/2022/05/088891.shtml
 https://www.mbs.jp/news/column/scene/article/2022/05/088892.shtml

<質疑応答>

●参加者
特定少年の実名・匿名をめぐる問題は、メディアによって対応が違うことを説明いただきましたが、それによる影響など、何か具体的に把握されていることがありますか。

●廣田委員
対応は各社で違ってよくて、むしろ対応が違ったことで、社会に議論が起きなければいけないと思います。どうしてあの社は実名なのか、なぜ、あの社は氏名を公表しないのか、そこに何があるのかということで議論が起きるべきであり、議論を起こすべきであるのに何の議論も起きていないことが問題なのではないかと、私は思います。

●参加者
テレビ報道とネット記事に関連して、実名・匿名の判断を統一するべきではないかという考え方と、ネット記事は放送よりも閲覧性が高く、検索性も高いので分けて考えるべきという考え方がありますが、この点についてご意見あればお伺いしたいです。

●廣田委員
その2つの考え、どちらでもあり得ることで、事案によって違うかもしれないですし、私はその社で議論を尽くして決めればいいと思います。ただ、全体的な流れから言いますと、ネット上にはデジタル・タトゥーの問題もあり、紙面や放送は実名だけれども、ウェブ上では匿名にするというのが主流ではないかと思います。

●参加者
有料だったら名前が見れるというのは、名前を知るためにお金を払う。つまりは、メディアとしての収入の糧にしているというふうにも見える気がするのですが、いかがお考えでしょうか。

●廣田委員
検索しても引っ掛からないと、かなり閲覧数も変わってきて、その閲覧数を抑えるため、検索に引っ掛からないようにするために有料と無料とを分けていると、聞いたことがあります。ただ、説明の仕方によっては、名前を有料で売るみたいな、取られ方もされると思うので、(新聞社には)きちんと説明してもらうべきだなと、今すごく思いました。

●司会
曽我部委員長、このコーナー全体を通して、何かご意見あればお願いします。

●曽我部真裕委員長
一義的な回答というのはないということです。ただ、法律的に申しますと、実名・匿名の問題は、プライバシーと報道の自由とのバランスの問題でありまして、今までのところ裁判所は、実名を出しても良いという判断をしています。
直近でも、新聞報道で、被疑者の住所の地番まで出したことについて、これはプライバシー侵害ではないか、名誉毀損ではないかという訴えがあったのですが、地番まで表示することは許されるという高裁の判断が確定しています。
事件報道に関しては、法律、純法律的にいうとかなり広く、実名、住所の表記が現状、許されているというのが実際のところだと思います。ただ、プライバシー意識が非常に高まっていますので、5年後、10年後、今のようなバランス感覚で裁判所も判断するとは、私は思っていません。
別な例を挙げますと、少年事件の非常に詳細な記録を引用しながら論文を書いた元家裁の調査官に対して、プライバシーの侵害だと訴訟が提起されたのですが、最高裁はセンシティブな情報が含まれているけれども許されるとの判断を示しました。理由は学術論文だからです。学術論文ですから当然見る人も少ないわけですが、単に見る人が多い、少ないという話ではなく、学術的に必要だ、なので許されるという理屈だったわけです。
ということで、単に有料版で数が少なく閲覧者も少ないから実名、無料で広く見られるから匿名という理由は、理屈として成り立たず、結局のところ、この事件を報じるにあたって、なぜ実名なのかということをしっかり整理していく必要があるということです。

●廣田委員
今、曽我部委員長がおっしゃったように、プライバシー意識の高まりやインターネットによる拡散、デジタル・タトゥーの問題などもあり、多くの弁護士から、なぜ実名でなければいけないの?ってよく聞かれるのですが、やはり名前というのは、非常に重要な要素であると、皆さん同様に私も思います。
日本は、情報開示請求をしても全部黒く塗られてくることが多く、報道機関の報道が記録する役目をずっと担ってきたと思います。私も仕事上でいろいろな調べものをするとき、いつ、どこで、誰が何をしたかまで、すべて報道から情報を得ています。誰もがすぐにアクセスできて、見ることができるという機能を、日本においては報道が担ってきたという側面があるので、常になぜ実名なのかということを意識して発信を続けていただきたいと、しみじみ思いますので、よろしくお願いします。

◎委員会決定の解説 ①

第76号「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」に関して

対象となったのは、2020年5月19日に放送されたフジテレビの『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』。募集によって選ばれた初対面の男女6人が「テラスハウス」と称するシェアハウスで共同生活する様子を映し、スタジオのタレントらがそれにコメントするスタイルのいわゆるリアリティ番組で、NetflixとFOD(フジテレビが運営する動画配信サービス)で配信され、数週間後に地上波で放送されていた。
この番組に出演していたプロレスラーの木村花さんが放送後に亡くなったことについて、同氏の母親が、娘の死は番組の“過剰な演出”がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと委員会に申し立てた。

委員会決定文の起草を担当した曽我部委員長(当時、委員長代行)が、SNS上で誹謗中傷が殺到し、木村花さんが自死するきっかけとなった「コスチューム事件」など、この事案を判断する上でポイントなる内容を時系列で説明した後、3つの論点を提示し解説した。

●曽我部委員長
まず本件の一番大きな論点は、本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害という申立人の主張です。木村さんが自傷行為や病院を受診するなどのきっかけとなったのは、直接的にはネット上の誹謗中傷であり放送局に責任はないように思えますが、申立人は、放送局は誹謗中傷が殺到することを十分に予想でき、放送局にも責任があるという主張です。
これについて、まず大前提として、表現の自由との関係で問題があり、ネット上の誹謗中傷の責任を放送局に帰責するということは、一般論として、なかなか受け入れられないという側面があります。ただし、本件には、特殊性がありまして、何かと申しますと、まずネットフリックスで配信が行われて、そこですでに誹謗中傷が起きていて、かつ、それによって自傷行為という重大な結果を招いてしまっているという事実です。少なくとも、先行する放送ないし配信によって重大な被害が生じている場合、それを認識しながら漫然と実質的に同一の内容を放送するということは、被害が予見可能であるのにあえて放送したという意味において、放送局にも責任があるんじゃないかという考え方です。
これを、本件に当てはめてみると、フジテレビ側は、自宅の訪問、LINEによる体調ケア、医師の紹介など一定のケア対応をしていました。さらに本件放送を行う前にも一定の慎重さを持って判断がなされていたこともわかり、決して漫然と放送したものとは言えず、よって、人権侵害があったとまでは断定できないとの判断になりました。
2つ目の論点は、自己決定権及び人格権、プライバシーの侵害があったかどうかという点です。木村さんとフジテレビ側の間では、「同意書兼誓約書」いわば出演契約書のようなものが結ばれていました。申立人は、これが出演者にとって非常に不利な内容で、制作側の指示で不本意なこともやらざるを得ず、自己決定権、人格権の侵害があったと主張しました。
この主張に対し、委員会は、若者であるとはいえ成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフから出された指示が違法性を帯びることは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような例外的な場合であると、認定しました。そのうえで、本件では、制作スタッフからの強い影響力が及んでいたことは想像に難くないが、例外的な場合にあったとはいえず、よって、自己決定権などの侵害は認められないとの判断をしました。
最後の論点は、放送倫理上の問題です。今回のテラスハウスは、いわゆるリアリティ番組だったわけですが、リアリティ番組の特殊性として、出演者に対する毀誉褒貶を出演者自身が直接引き受けなければならないという構造があります。どういうことかと言いますと、例えばドラマや映画ですと、登場人物がいかに嫌われるようなことをしても、これは演技であるということが視聴者にもわかるわけですが、リアリティ番組の場合は、素の状態でそういうことをしているというふうに見られますので、何か嫌われるようなことをしたときには直接、攻撃が本人にいってしまうということです。
したがって、出演者自身が精神的負担を負うリスクは、フィクション、つまりドラマなどに比べてはるかに高く、放送局はリアリティ番組を制作する以上、出演者の身体的・精神的な健康状態に格段の配慮をすべきであり、そのことは放送倫理の当然の内容であるとしました。しかし、本件では、こうした配慮が欠けていたと判断できることから、放送倫理上問題があったと結論付けました。出演者の健康状態に配慮するということが放送倫理の内容になるという今回の判断は結構、反響が大きいものでした。
その他、リアリティ番組の制作、放送を行うに当たっての放送局側の体制の問題を課題として指摘せざるを得ないと、委員会では判断していまして、フジテレビには自ら定める対策を着実に実施し、再発防止に努めることを要望しました。
さらに、普通は当該局に対してだけ判断を伝えるわけですが、今回は異例ではありますが、放送界全体に対しても、木村さんに起こったような悲劇が二度と起こらないよう、自主的な取り組みを進めていってもらいたいというメッセージを付け加えました。

この後、本件の委員会決定とは結論が異なる「少数意見」をそれぞれ書いた二関委員長代行と國森委員が、その理由を解説した。放送人権委員会の委員会決定における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではなく、その違いは以下に示すとおりである。

補足意見:
委員会決定と結論が同じで、決定の理由付けを補足する観点から書かれたもの
意見 :
委員会決定と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
少数意見:
委員会決定とは結論が異なるもの

<少数意見>
●二関辰郎委員長代行
人権侵害の有無について、多数意見(委員会決定)は無しとしましたが、私は人権侵害については、有りとも無しとも判断せず、本件については放送倫理上の問題があったかどうかのみを判断するのが妥当という立場を採りました。
その理由として、まず、当委員会の運営規則「苦情の取扱い基準」で、放送されていない事項は、原則として取り扱わないとされていることが挙げられます。本件はこの点、放送からは知り得ない事項、たとえば、木村さんがどういった心理状態でいて、それがどのように変化したのかが判断の上で非常に重要な要素になってきますが、ご本人が亡くなっていて事情がよくわからない。また、人の精神的状況のケアにかかわる専門的知見が当委員会にはない。このような場合に結論を出すことは、結局のところ立証責任の問題になり、申立人に不利に働き、事案に即した内容に至れないおそれもあると考えました。
加えて、この問題では、内容的に違法ではない番組を放送することによって法的責任が生じるかという、表現の自由との緊張関係があります。その意味で、事実認定などが困難な状況において、本件は法的問題としては取り上げない方がよいと判断しました。
次に、放送倫理上の問題についてお話します。多数意見は放送倫理上「問題あり」としていますが、私は当委員会の判断区分でより重い「重大な問題あり」としました。何が結論の違う理由なのか、理由づけで多数意見と異なるポイントだけご説明します。
まず、同意書兼誓約書の問題です。同意書兼誓約書を締結したときに十分な説明をしたかという問題も重要ですが、締結した結果生じる、出演者と放送局との関係に着目しました。つまり、放送局は、この契約関係を通じて出演者を管理支配しうる状況を確保しており、そのような強い立場性の反映として、出演者の精神状態に配慮すべき要請が強く働くと考えました。
次のポイントは、未公開動画についてです。多数意見は、この未公開動画の配信について、フジテレビが「視聴者からの木村さんの評価を回復できるのではないかと考えた」との主張は、あながち不当とは言い難いと、積極的要素としてとらえていますが、果たしてそうだろうかというのが私の見解です。
コスチューム事件は、木村さんが命の次に大事だと言っていたコスチュームを洗濯機に置き忘れたことに端を発しており、その意味では木村さん自身にも非があったのに、自分の落ち度を棚に上げて男性出演者に感情をぶつけたことがSNS上で非難される原因だったわけです。
実際、この未公開動画の配信後、木村さんへの批判が増えました。その数日後に本件放送を行ったフジテレビの行為は、木村さんの精神状況に配慮すべき放送局のあるべき姿とはかけ離れたものと言えます。
これらのことから、本件は放送倫理上重大な問題があったと言わざるを得ないのではないかというのが、私の見解です。

●國森康弘委員
私は、本件放送について人権侵害があったと判断し、少数意見を書きました。もちろん多数意見(委員会決定)にも多く賛同する点があり、ここでは意見が異なる主な二点について説明します。
まず、番組制作過程における人権侵害の有無についての私の見解を述べます。木村さんをはじめ出演者は皆、放送局との間で「同意書兼誓約書」を結んでおり、その内容は演出を含む撮影方針に従わざるを得ないような、かつ損害賠償にも触れており、かなりある意味で圧力を感じるようなものとなっていました。それに加えて、今回のような若い出演者は制作側スタッフとの年齢差、業界歴の長さのほか、出演する側と出演させる側といった違いなどから、かなり弱い立場にあったことが見受けられます。
そのような関係性において、スタッフからの提案、指示、要請は半ば強制力を持っており、実際、木村さんは、親しい人や他の出演者に、いろいろスタッフへの不信や不満を打ち明けていました。たとえば、「これも撮る前に○○さんにめちゃ、煽られたからね」「編集では、やっぱり面白いようにいじられますね」「スタッフにも悪意を感じる」「スタッフは信用できない」「これでまた炎上するんだろうな」「炎上して話題になって製作陣は満足かな」などと心情を吐露しています。
以上のことから、木村さんには、自由な意思決定の余地が一定程度、奪われている様子が見受けられること、しかも「真意に基づく言動とは異なる姿」で自分自身が描かれ、その人物像に不満を抱き、かつ、その像によって自身がバッシングの標的になっていることから、自己決定権や人格権の侵害がなかったとは言えないのではないかというふうに考えました。
そして、二つ目は、木村さんの自傷行為後の本件放送についてです。多数意見(委員会決定)では、木村さんへのケアとか再発防止について、「一定の対応がなされたことによって再度の深刻な被害の予見可能性は低下しており、また、一応の慎重さをもって判断がなされたことがうかがえるため、漫然と放送を決定したものとは言えない」との判断を示しています。
ただ私は、漫然とまでは言わなくても、精神的ケアやバッシングの防止についての対応が不十分であったら、それは問題であると思いますし、また放送決定に至った判断材料の吟味が不十分であれば、それも問題であると考えています。確かにネットフリックスの先行配信では、直ちに人権侵害があったとまでは言えないと思いますが、現実にはこの先行配信で沸き起こったバッシングを苦にして、木村さんはリストカットをされており、同居していた友人らは、うつが見られたと話しています。
自傷行為というのは、心の痛みを体の痛みでふたをするものであって、そのふたをする効果を継続的に得るためには、さらに自傷の頻度とか強度を高めていかざるを得なくて、最終的には死をたぐり寄せてしまう傾向にあります。また、うつ病や躁うつ病というのは、心というよりは脳の働きに異常をきたして適切な判断ができなくなる病気であって、死にたいから死ぬのではなくて、死の恐怖よりも苦しみのほうが強くなることで死を求める、そのような病気です。
自傷行為を始め、それを重ね、そして自死に至るまでの間、木村さんは友人だけでなく、制作側スタッフにもLINEでいろいろ苦しい胸の内を明かしていました。「死にたくなってきた」「生きててすみませんてなって」「腹を切って詫びたい」などと連絡しています。これらのSOSを現場だけでなく、より責任ある立場の人たちとも共有しながら速やかに全社的な対応をとるべきではなかったでしょうか。ところが現実には、視聴者やネットユーザーにバッシングの自制を呼びかけることもなく、地上波放送でさらなる誹謗中傷を呼び込むことになったことから、木村さんの孤独感と苦痛を増大させたことは否めず、深刻な再被害の予見可能性はむしろ上がっていたと、私は考えます。
漫然と放送を決定したとは言えないものの、バッシングにさらされ、重大な被害を受けている出演者を守りケアする、若者の心身を預かるという視座において対応が十分でなかったために、木村さんに相当な精神的苦痛を与える形になり、それは一人の生身の人間の許容限度を相当に超えていたと考えられ、木村さんの人権を侵害したと判断するに至りました。
イギリスのように日本の制作現場においても、精神科医をはじめSNS対策専門家、弁護士らが常駐あるいは継続的に立ち会い、助言する体制が望ましいと考えます。それが出演者はもちろん、視聴者そして制作者自身を守ることにつながるからです。

◆第二部
◎委員会決定の解説 ②

第77号「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」に関して

申立ての対象となったのは、NHK宮崎放送局が2020年11月20日に放送したローカルニュース番組『イブニング宮崎』で、同日のトップ項目として、同年3月に宮崎市内で男性2人が死亡した住宅火災の続報を報道した。その内容は、火災は放火殺人事件の疑いが強くなり、容疑者がガソリンをまいて火をつけ住民の男性を殺害し自分も死亡した可能性があるというもので、その原因として2人の間に「何らかの金銭的なトラブル」があったかのように伝えた。これに対し、亡くなった被害者の弟である申立人が「兄にも原因の一端があるような報道は正確ではなく、放送は亡くなった兄の名誉を損なうものだ」として、委員会に申立てを行った。

本件の起草担当者は、水野委員と鈴木委員長代行で、はじめに水野委員が委員会決定文の内容を解説した。

●水野剛也委員
先に結論を述べますと、「三なし」です。人権侵害なし、放送倫理上の問題なし、そして要望もなし、です。しかし、今後の取材活動に関わり、注意しておくべき点として、「トラブル」という言葉は、立場や文脈や視聴の仕方により多様に受け取られる可能性があるため、事件報道の常套句、決まり文句のようなものとして安易に用いることのないよう留意する必要があります。
それでは、まず、人権侵害があったかどうかについて解説します。申立人は事件の被害者の弟で、本件放送により兄の名誉を毀損され、ひいては申立人の人格的利益(遺族としての敬愛追慕の情)をも侵害された、と主張しています。
委員会ではこれまで、故人が誹謗中傷された場合、故人に対する近親者の「敬愛追慕の情の侵害」としてとらえることが可能との判断を示しています。どのように判断するのかというと、本件放送が社会的に妥当な許容限度(受忍限度)を超えているか否かを、客観的、かつ総合的に判断します。総合的判断の要素には、亡くなった兄の社会的評価への影響、放送内容、公共性、公益性、そして取材方法、などがあります。
まず、本件放送が兄の社会的評価を低下させたか否かについてですが、一般的な視聴者の普通の見方をすれば、兄に非があってトラブルになったという放送内容とは受け取れないので、明らかに低下させているわけではない、と考えられます。また「何らかの金銭的なトラブル」という表現についても、申立人の兄、容疑者とも亡くなっていて、複数の捜査関係者から一定の裏付けを取った上で警察の認識として伝えており、不適切とは言えません。そして、2人が死亡した火災が事故ではなく、放火事件である可能性が強まったことを報じる本件放送には、高い公共性があり、その目的にも十分な公益性があることから、許容限度を超えて申立人の敬愛追慕の情を侵害していない、と判断しました。
次に、放送倫理上の問題があったかどうかについて解説します。申立人が問題視しているのは2点です。1点目は「何らかの金銭的なトラブル」という表現について、兄にも非があることを示唆している、と主張しています。しかし、本件放送全体を見れば、兄に何らかの非があったとはっきり伝えているわけでも、強く示唆しているわけでもないので、問題はない、と判断しました。
もう1点、申立人が問題視しているのは「何らかの金銭的トラブル」について、まったく聞いたことがないのに、警察への取材だけで自分に確認せずに放送した、という点です。しかし、すでに述べている通り、兄と容疑者はすでに死亡していること、また複数の捜査関係者への取材で確認し、警察の認識として伝えていることなどから、放送倫理上も問題はない、と判断しました。
以上が決定文の内容の解説ですが、せっかく皆さんと対面でお会いしているので、私見も含め少しお話しさせていただきます。今回、私は実の兄を亡くされた申立人の心情もある程度は汲んで決定文を書きました。結論だけ見ると、申立人の主張をまったく受け入れていないのですが、意外なことに申立人の方は納得というか、満足されているようで、通知公表のときに我々に非常に感謝してくださいました。
結果は申立人の思うようなものでなくても、人権委員会の委員全員がヒアリングで真剣に話を聞き、中には、申立人の話に涙ぐむ委員もいました。彼が十分に自分の主張を伝えることができたという点で、納得していただいたのかなと思います。人権委員会の委員として、もっともやりがいを感じる瞬間です。
次に、報道に携わる方には、被害者の人権、心情にも意識を向けていただきたいです。ヒアリングの場で放送局側は、ガソリンをまいて死亡した容疑者を犯人視しないよう気をつけた、容疑者にも人権がある、という点を繰り返しておっしゃっていましたが、被害を受けて亡くなった方、その遺族の人権については、あまり言及されていませんでした。容疑者の人権ももちろん大事ですが、被害者の人権、遺族の人権・心情も意識すると、よりバランスが取れるのかなと感じた次第です。
また、トラブルという言葉は頻出語ですから、注意喚起はしましたが、この言葉を使うこと自体を躊躇する必要はまったくないと思います。ただ、便利な言葉だけに盲点があって、それぞれの人がレンズ越しに自分の感覚で認識してしまう。人による解釈の多様性に気づきにくい、という盲点があるんだろうと考えます。
最後に、BPOのBPとは何か?とかく放送現場の方々は、BPOは怖い、厳しい、監視機関というようなイメージが強いようです。奥武則前委員長は、BPOのBPは「ブラック・ポリス」または文句ばかり言っているから「ブーイング・ピープル」だと、冗談で言っておられましたが、委員は皆、普通の人です。私たちは、皆さんの話をもっと聞きたいし、皆さんにも私たちの話をもっと聞いてほしい。これからはBPOのBPは「ベスト・パートナー」だと認識してほしいと思います。

●鈴木秀美委員長代行
水野委員とともに起草委員を担当させていただきましたが、この宮崎の案件は、私が2021年4月に、放送人権委員会の委員になって初めて扱うものでした。水野委員からもお話があったとおり、先ほどのあのニュースを見て「これのどこが問題?」と感じた方、結構多いのではないかと思います。かくいう私もそうでした。
ところが、先ほどのお話にありましたとおり「2人の間に何らかの金銭的トラブル」という表現について、私は自分に非がなくてもトラブルに巻き込まれることはあるし、お兄さんの評判を悪くするような報道との認識はなかったのですが、いや、そうではないと受け取る委員もたくさんいて、本当に見方はいろいろで、ニュースで言葉を選ぶのは本当に難しいんだなと、考えさせられました。
この案件を皆さんにもっとよく知っていただくため、私が記者会見のときにお話しした内容をここで紹介させていただきます。申立人である弟さんはもともと、この火事は本当に事故なのか疑いを持っておられました。しかし、警察が事故という前提でこの件を処理しようとしている中で、たった一人で調査を始めたんです。実は弟さん、お兄さんとは長く別々に暮らしていて、あまりお付き合いもなかったそうです。
ところが、お兄さんが亡くなって初めて、自分の兄がどういう人生を送っていたのか知りたいと思って調べ始め、その結果、これは単なる火事ではなく事件ではないかとの疑念を抱き、そしてようやく警察、検察も事件として扱うことになったので、どういう報道がされるのか、すごく期待していたようです。
ところが、期待していたところのニュースとは違っていたことで落胆し、本来は自分に確認してほしいと思っていたことも確認されず、さらに、この「金銭的なトラブル」という言葉で、お兄さんにも非があったのでは?というようなことを一部の人から言われたりもしたそうです。そうした弟さんのいろいろな思いが、申立てをするきっかけになったということを、ぜひご紹介しておきたいと思った次第です。

続いて、委員会決定とは結論が異なる少数意見を書いた二関委員長代行と斉藤委員が、それぞれ、その理由を述べた。

<少数意見>
●二関委員長代行
多数意見(委員会決定)のとおり、「トラブル」という言葉は中立的な表現ですし、本件の全体的な文脈から、申立人の兄に何らかの非があったとはっきり報道しているわけでもない。それはそのとおりなんですが、私には何か引っ掛かったんですね。その引っ掛かりが何なのかと考えたところ、本件放送では、「2人の間に何らかの金銭的なトラブルがあり」という言い回しをしています。単に「トラブル」あるいは「金銭的なトラブル」と言うのではなく、「2人の間に何らかのトラブルがあり」と。こういう言い回しを使うときは、トラブルの存在を両者が認識している場合を指すのではないかと思いました。
この点は後で補足することとしし、まずは判断の枠組み的な話を少しします。
報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについて、BPOは、最高裁判例の考えを踏まえ、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準にしています。本件放送でも、法的判断ではこの基準に従い、人格的利益(遺族の敬愛追慕の情)の侵害にはならないと判断しました。しかし、法的判断とは別に放送倫理上の問題を検討するにあたっては、その基準を用いない方が良い場合があり、本件はそのような場合にあたるのではないかと、考えました。一般視聴者は次々に映し出されては消えていく画面を受動的に視聴し、次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされる立場にあります。他方、放送局は情報をあらかじめ準備して編集のうえ提供する側です。放送倫理の問題を検討するにあたっては、この違いを踏まえるのが妥当な場合があるのではないかと思うのです。放送倫理は、放送局に対する高度な規範ですので、少なくとも法的責任よりは厳しい面があってもいいと理解しています。そのため、一般視聴者の基準とまでは言えなくても、特定少数を超えた相当数の視聴者の視点を基準に、「このように受け止める視聴者もいるだろう」と言える場合には配慮する、より慎重な配慮が求められて然るべきであろうと考えました。
さて、冒頭で触れた内容に戻りますが、本件放送では「2人の間に何らかの金銭的なトラブル」があり、容疑者がガソリンをまいて火をつけ、兄を殺害した疑いが強まったと警察はみているという内容を報じています。人は通常、よほどの理由がなければ、人にガソリンをまいて火をつけるような残酷な行為は行わないのではないでしょうか。行為者がそういう残酷な行為を平気で行なう人物として描かれていれば別かもしれませんが、本件ではそういう紹介はなく、「2人の間に何らかの金銭的なトラブルがあり」と、それが動機であったように報道しています。
そうすると、視聴者の中には、申立人の兄が、金銭をめぐって容疑者からよほど恨みをかうようなことを行ったのではないかと受け止める人もいたのではないか。
これは、冒頭で申し上げたとおり、「2人の間にトラブルがあり」と言う場合は、トラブルの存在を両者が認識している場合が前提で、その一人が一方的に何かひどい目にあう場合は指さないのではないか、そういう問題意識が根底にあります。
このほか、容疑者には住居侵入窃盗後に証拠隠滅のために住居に放火をした同種前科がありました。NHKもこの事実を本件放送前に把握していたことを認めています。前科に触れなかった理由について、NHKは、容疑者が死亡していて弁解の余地がないこと、無罪推定の原則が働くことから犯人視報道をしない観点からであると説明していました。
仮にこの前科の情報がニュースに含まれていたら、申立人の兄に被害者としての落ち度があったか否かに関する視聴者の受けとめ方が変わっていた可能性があったかもしれません。もっとも、どう放送するかは放送局の判断ですし、前科に触れない理由にもっともな部分もありますから、伝えなかったこと自体が悪いというつもりはありません。とはいえ、容疑者の人権に配慮して前科に触れないのであれば、同様に、亡くなっていて説明する機会を持たない申立人の兄の人権にも配慮してもよかったのではないでしょうか。
そのため、少数意見は、根拠も具体的内容も明確ではない「2人の間に何らかの金銭的なトラブルがあり」という表現の使用は控えるのが妥当であり、そのような表現を使った点に放送倫理上の問題があったと考えました。正直、この少数意見の結論は、私自身も少々厳しいかなと思う一方、BPOは国による組織でなく、放送局自身が作った組織です。水野委員からBPOのBPはベストパートナーの略という話がありましたが、厳しいことも言う、耳に痛いことも言う友人こそがベストパートナーではないでしょうか。より良い番組を作ってほしいという観点もあって、こうした意見にしました。

●斉藤とも子委員
私は2021年4月に委員となり、これが初めての審理案件で、ヒアリングも初めてでした。私は一視聴者として、それからもう1つ、取り上げられる、放送されることによって、私生活にどのような影響が及ぶかという点はある程度、実体験もあり、お話できるかなと思っています。
このニュースを見ただけでは最初、私も何の問題も感じませんでした。何も問題なく、そのまま聞いてしまいそうなニュースではあったんですけれども、委員会に申立てがされた後は、お兄さんを亡くされた弟さんの気持ちというものを考えずにはいられませんでした。
「2人の間に何らかの金銭的トラブル」と聞いたときに、確かにそう言われてみると、どちらか片方だけに非があるのではなくて、両方に何か問題があったのかな?ガソリンをつけて焼かれるというのは、余程の何かがあったのかなと思う人もいるだろうなと。そして、もし私の身内がそういう殺され方をして、「2人の間に何らかの金銭的トラブル」という言い方をされたら、すごく傷つくだろうなというふうに思いました。
ヒアリングのときに、弟さんは、事件の真相を知るために自分の仕事を辞めて8カ月、何があったのかということを、いろいろな人に聞き取りに回られていたことがわかりました。NHKによると、「何らかの金銭的トラブル」については、複数の捜査関係者から裏付けが取れているということですけれども、実際どれだけの捜査員がこのことを把握していたのか、それが具体的にどういったことを指すのか、ということははっきりしませんでした。にもかかわらず、この「金銭的トラブル」という言い回しを使う必要性が、私にはよくわからなかったのです。
よく言われる公共性、公益性という言葉が、私はすごく引っ掛かります。この「金銭的トラブル」という言葉を使うことが、公共性と公益性に関係があるのだろうか。私は、「金銭的トラブル」という表現がなくても十分、報道として通用すると思いますし、現に私が知る限り他の報道機関では使われていません。
遺族を傷つける可能性がある言葉は、十分に慎重であってほしいと思います。なぜなら、弟さんは実際に、知人たちからお兄さんにも何か非があったのではないかというふうに言われて、非常に傷ついていますし、この一言によって、その人の人生が変わってしまう可能性もあると思うんですね。
弟さんがNHKの取材を受けたときに、誠意がないように感じた、きちんと聞いてくれていないように感じたということをおっしゃっていたんですね。BPOのNHK側へのヒアリングのときも、自分たちには何も落ち度がないという形で、準備してきた答えをゆるぎなく述べられていると、私は感じてしまいました。自分たちはそんなつもりではなく使った言葉が、ここまで傷つけていたということであれば、これからは考えます、というような相手を思う言葉があればちょっと違ったのかもしれないんですけど。
確かに、「放送倫理上問題あり」との意見は厳しい気もしますが、これを「問題なし」としたら、私は何のためにここにきているのかとも思いました。なので、私的な意見ではありますが、特にこの弟さんのように市井の方の場合、公に弁解もできませんし、放送される言葉の遣い方ひとつで、致命的に傷つくケースがあるということを、どうか心に留めておいていただきたいと思います。

●参加者
決定文本文の中にない事柄も含めていろいろご説明いただき、なるほどそういう背景があったのかと、非常にストンと落ちました。宮崎は他に民放が2局ありますが、2局がこの事件をどう報道したのか。何らかのトラブルという言葉がもし引っ掛かったのだとすれば、それはNHKさんだけが使用した単語だったのか、その辺りのことお分かりならば教えていただきたいと思います。

●水野委員
宮崎の他局の報道については把握をしていません。しかし、申立人は当初、この案件が終わった後に、他局についても申し立てるつもりだと言っていました。したがって、他局の報道についても不満があったと思いますが、自分の気持ちを委員会に受けとめてもらい納得したというか、腑に落ちたようなので、さらなる申し立てをとりやめた経緯があります。

●参加者
委員会に提出した意見書、審理の過程でお話した内容とは変わってくると思いますが、私の印象をお伝えすると、少しわかりにくいニュースが、ご遺族を傷つける結果につながったんじゃないかなと思っています。通常ですと、捜査中の事案の場合、「警察で詳しい経緯を捜査しています」というような形で原稿を締めるところを、被疑者死亡のまま書類送検という一区切りついたことになったので、何らかの結論を持っていかなきゃいけないと考えたのではないかと推測します。
2人の間に何らかの金銭的なトラブルというと、私もこれまで原稿を見る立場でもありましたけど、双方に何らかの落ち度があるというふうに思う方がいるという前提で、その言葉を選んできたので、そういう意味で万全ではなかったと思います。なので、取材者に対し、今回の件を教訓として共有していきたいなというふうに思いますし、特に少数意見で率直なことをお聞かせいただき、すごく役立ちました。ありがとうございました。

●参加者
この案件の書類作成、ヒアリングなど、いろいろ対応にあたりましたが、窓口対応者としては、BPOは、やはり裁判みたいに感じるところがありました。我々としては、「これは放送上問題ない」という前提で話をしていこうと組織で決定し、その決定に基づいて対応にあたってきました。現場のデスクとも何度もやり取りをして、いろいろ話もしましたけれども、ヒアリングの場で委員が感じられたのは、やはりそういう冷たい感じだったので、ちょっといろいろ考えさせられました。でも私が知る限り、現場の人間は事後対応を含め、これで良かったんだろうかと悩みながらやっているのは事実でして、決定をいただいた後も、伝え方は本当にいろいろと考えていかなければいけないと話しているところでありますので、その点少しでもご理解いただけるとありがたく思います。

◎「知床観光船沈没事故における人権と放送」解説と質疑応答

最後は、2022年4月、北海道知床半島沖で起きた観光船沈没事故における人権と放送をテーマとして取り上げた。この事故取材をめぐっては、遺族取材やメディアスクラムなどの問題で、各社が非常に厳しい判断を迫られた。
事故の概要などをまとめたVTR(約4分)の後、北海道放送の磯田雄大報道部長が、取材・放送で直面した課題などについて報告した。

●磯田雄大氏
4月に事故が発生したときは、ニュースデスクをしておりました。今回の知床観光船沈没事故ですが、乗客・乗員26人のうち生存者なしという、最近では異例の大惨事となり、依然6人が行方不明のままです。6月1日に船体を網走港に陸揚げするまで1カ月以上、各社とも知床に取材班を置きましたが、長期取材を通じて、これまでと違う点がいろいろと見えてきました。
過去の被害者が多数発生した事故では、乗客名簿が公開されるケースがありましたが、今回の知床の事故では乗客名簿は公表されませんでした。1985年の日航機の墜落事故では520人の方が亡くなりましたが、このときは、航空会社がすぐに乗客名簿を公開し、報道機関はそれを実名で報じました。また、2000年に北海道の浦河港沖で14人が死亡する漁船転覆事故がありましたが、そのときも海上保安庁と地元の漁協が全員の身元を公表しています。
そうした中で、今回は名簿が公表されなかったわけですが、当初、第一管区海上保安本部は、運航会社の知床遊覧船に名簿を出すよう要請したということです。一方、国土交通省は、連絡がつかない家族がいたため名簿の公表を検討しましたが、2日後にすべての家族と連絡が取れたということで公開しないという考えを示しました。このときの説明は、公益性は高いが、プライバシー保護の観点から公表しないという説明でした。知床遊覧船の桂田社長は、4月27日の記者会見で、家族から名簿が流出しているとの抗議を受けたことを語り、家族が名簿の公開に否定的であることを明らかにしました。しかし、どうも非公式に出回っている名簿があったようで、それを入手して取材をしている報道機関もあったというふうに聞いています。このように、身元が確認された被害者家族の意向を受けて海上保安庁では匿名で発表することを選択しました。
もう1つは、メディアスクラムの問題です。事故発生直後から、家族取材を自粛するよう要請を受けました。その理由は、家族はかなり憔悴しているので取材は自粛してほしいというものでした。こうした中、北海道内の24社は、集団的過熱取材(メディアスクラム)を避けるため節度ある取材を進めること、例えば、代表取材をしたりするなど、誠意をもって協力するというような内容の申し合わせを行いました。
しかし、こうした申し合わせが結ばれたにもかかわらず、家族からの報道批判はありました。事故で息子さんとお孫さんを亡くされた遺族が記者会見を行い「なぜ私達をそっとしておいていただけないのでしょうか。それが報道の使命ですか。絶対に許したくない」と、怒りをあらわにしました。
他の地域で過去に起きた事件では、メディアスクラムを防ぐために記者クラブで協力している例があると聞いています。2019年7月に起きた京都アニメーション放火殺人事件では、新聞社などの記者クラブと民放の記者クラブが話し合って代表取材を決めたということです。ずっと個別取材しない、接触を永遠に控えるというわけではなく、一定の区切りがつくまで、例えば四十九日とか、そういう区切りがつくまでといった内容で、代表取材解除のタイミングもあらためて話し合って決めるというものでした。
このほか、事故で行方不明となっている22歳の男性が、同乗した恋人の女性に船の上でプロポーズする予定だったことがわかり、通夜と告別式の会場で、女性に宛てた手紙が掲示されました。各社がその手紙を撮影して報道したところ、当社やSNS上の書き込みに「プロポーズの手紙を公開するのはどういう神経でやっているのか、はなはだ疑問だ。遺族の許可があったとはいえ、不特定多数に公表するようなものなのか」などの批判や違和感を覚えるなどの意見が寄せられました。被害者のエピソードを取材するというのは、報道機関としては至極あたり前のように思うのですが、視聴者からこのような批判や意見が届くと、報道にあたっては、いろいろなことを考えなければいけない時代になったのかなというふうに思います。
今回の事故取材をめぐっては、さまざまな課題が浮き彫りとなり、これまでやってきた取材手法だけでは立ち行かないと思うと同時に、見直すべき点も多々あったと思う次第です。以上で報告を終えますが、メディアスクラムの問題で、実際に私も批判を受けるようなことがあったのですが、どのように対応することが望ましかったのか、ご意見頂戴できればと思います。

●丹羽美之委員 
今回の事故に関しては、本当に報道現場の皆さん、悩まれることが多かったということがとてもよくわかりました。メディアスクラムの問題については、一律で何か解決策があるわけではないと思います。ただ、ぜひやっていただきたいのが、今回申し合わせを行ったにもかかわらず、うまく機能しなかった原因はどこにあったのかという点と、実効性のある申し合わせをするためには何が必要なのかということを、ぜひ、事後検証していただきたいということです。特にメディアスクラムは初動時、事件・事故が起こった早い段階で起こることが多いと思いますが、申し合わせがそこにどの程度対応できていたのかということも含めてです。磯田さんの報告によると、申し合わせを破ったのはキー局だったのですか?

●磯田氏
キー局というか、私どもの取材班に応援に来てもらっていたキー局の若い記者が、私たちの指示のもと、関係者と思われる方に名刺を差し出したところ、それがたまたま、先程の記者会見を開いてメディアの対応を強く批判されたご遺族の方だったということです。

●丹羽委員 
これもよくあるパターンだと思うのですが、大きな事故・事件であれば、全国から取材応援のため記者が入ってきます。そのときに末端の取材陣にまで、その申し合わせが行き渡らないケースもあるのではないかと思います。そういう意味で言うと、申し合わせをきちんと実効力のあるものにするためには、どういう体制作りが必要なのか、北海道モデルみたいなものが、今回の件を教訓にうまく作り出せるといいのかなと思います。
もうひとつは、そういう制度整備だけではうまくいかないところがあると思っていまして、それは報道の文化とか、記者の職業規範の問題です。現場の記者は、ライバル社に負けるな、特オチするなというプレッシャーを掛けられる一方で、メディアスクラムには加担するなという真逆のメッセージを出されているわけで、苦悩している記者は結構多いのではないかと思います。
私はドキュメンタリー番組をよく見ますが、ドキュメンタリーは、ニュースの取材が一段落した後から取材が始まるところがあって、ニュースが落としていったものを拾い上げることでドキュメンタリーを作っていくというようなところもあるわけです。そう考えると、特オチを恐れず、しっかり時間をかけて機が熟するのを待って取材をするとか、被害者の方々もあのタイミングではダメだったけれど、もう少し時間が経てば取材に応じてくださるとか、そういうこともあると思います。
すべての人が取材拒否しているわけではなく、この思いを多くの人に聞いてもらいたい、忘れないでほしいと思っている被害者の方、遺族の方もいると思いますから、そういう人たちが心を開きたくなる瞬間まで待つという、取材倫理みたいなものをどう作り上げていくかということも大事なのではないかと思いました。

●野村裕委員 
磯田さんの報告を聞いて申し上げたいのは、まずメディアスクラムがなぜ起きるのかということです。メディアがスクラムを組んでいるだけではなく、そこには視聴者スクラムというか、視聴者側も見たがっている、だからそれに応える、応えたいという大きな力が働いているように思います。
しかし、ただ視聴者の欲求に応えていれば良いという問題ではなく、メディアスクラム対策としては、今後は取材の中身もさることながら、放送の分量みたいなところも意識する必要があるのではないかと思います。放送量すなわち尺が長ければ、当然、厚めの取材をしてたくさんの映像を撮る必要が出てくるでしょうし、またどんどん続報を打っていくという方針ならば、追加取材のための新規映像を撮らなければいけなくなるからです。
一方で、いまメディアに求められているのは、個々のニュースについて、それだけの放送量、扱いを視聴者が本当に求めているのかという冷静な判断ではないでしょうか。視聴率に惑わされないケースバイケースの試行錯誤、積み重ねが、新たなテレビの文化につながっていくのではないかと思います。
「されど視聴率」であることも重々わかりますが、その上で、「今、このニュースばかりを扱っているけれども、あの件もきちんと報道しておくべきじゃないか」みたいな、そういう大局的判断を日頃から意識することが、メディアスクラム対策につながるのではないかと思いました。

●松田美佐委員 
今回の事故の被害者家族への取材ですが、私、個人的には、すぐに本当に伝える必要があったのかなというふうに見ていました。もちろん、視聴者にこの悲惨な事故の詳細や、巻き込まれた方の人となりを伝え、再発防止に向けて世論に働きかけていくということがとても重要であることはわかるんですけれども。
でも、そのために、被害者のご遺族に負担を強いることがあっていいのかということですよね。これまでは、それがある意味、マスメディアの社会的役割としてあったんですけれども、どうもそれが受け入れられなくなってきているということです。
インターネットの普及により、情報の自己コントロール権、自分で自分の情報をコントロールする権利というようなことがよく言われていますが、それ以上に私たちは今、外から強いられるのではなく、以前に比べ自分で何でも選択できる幅が広がり、それが当たり前となっている社会にいるということです。
そういう時代なのに、何か事件・事故が起きたら、否応なしにいきなり巻き込まれ、時間をくれないし、選択の余地も与えてもらえない、そういうところに、マスメディアに対する抵抗があるのだと思います。普段、自分の意思で状況を選択して動いている人なら、訳が分からないまま入り込んでこられることに一層、反発するのではないでしょうか。
社会全体が変容しつつある今の時代において、知る権利にきちんと応えていくということは当然あるにしても、その知る権利への応え方もかなり変わってきていることを再認識した上で、視聴者および事件・事故の被害者家族にも納得してもらえる報道の在り方を、一緒に考えていければなというふうに思っています。

●司会
ありがとうございました。予定の時間を過ぎておりまして、ここでそろそろ終わりという形にさせていただきたいと思います。本日は、長時間にわたる意見交換会にご参加いただき、誠にありがとうございました。本日の議論を、ぜひ、今後の番組作りに生かしていただければと思います。

以上

第312回放送と人権等権利に関する委員会

第312回 – 2023年1月

「ペットサロン経営者からの申立て」委員会決定を通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2023年1月17日(火)午後4時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、これまでの審理をもとにまとめた決定文の最終案が起草委員から示され議論し、委員会決定として了承した。その結果、2月中に通知・公表を行うことになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、ヒアリングに向けて論点や質問項目などを最終的に確認した。次回委員会でヒアリングを行うことになった。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

「判断ガイド2023」の原稿作成状況について、事務局から報告した。

以上

第179回 放送倫理検証委員会

第179回–2023年1月

ラジオ局と初めての意見交換会開催へ

第179回放送倫理検証委員会は1月13日に千代田放送会館で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の企画や、12月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年1月13日(金)午後5時~午後7時分
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会開催の企画を議論

委員会の活動とラジオ局の番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するために、これまで開催実績のなかったラジオ局との意見交換会を開催する企画を検討していたが、今般、正式に開催することを決め、詳細を議論した。

2. 12月に寄せられた視聴者意見を議論

クイズ番組で、答えを間違えたり時間切れになったりすると出演者が5メートル下のクッションに落下するゲームの安全性、1軒の近隣住宅からの苦情で長野市が公園を廃止する件についての論調や取材した際の住民のプライバシーへの配慮、難病で聴力を失った男性を軸としたドラマのセリフや演技ならびに字幕の表現などについて意見が寄せられたことを事務局が報告し、議論した。

以上

2022年12月に視聴者から寄せられた意見

2022年12月に視聴者から寄せられた意見

特定の出演者への執拗な「いじり」や高齢者の「珍解答」を笑う演出、「心霊現象」の扱い方などに意見が寄せられました。

2022年12月にBPOに寄せられた意見は1,349件で、先月から122件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話17%、郵便・FAX1%。
男女別は男性42%、女性17%で、世代別では40歳代28%、30歳代24%、50歳代17%、60歳以上16%、20歳代10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、12月の送付件数は464件、37事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から16件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

特定の出演者への執拗な「いじり」や高齢者の「珍解答」を笑う演出、番組での「心霊現象」の扱い方などに意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は28件、CMについては14件でした。

青少年に関する意見

12月中に青少年委員会に寄せられた意見は140件で、前月から78件増加しました。
今月は「表現・演出」が45件、「差別・偏見」が28件、「いじめ・虐待」が27件、それに「性的表現」が7件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • ひき逃げの疑いで男が逮捕されたニュースで「容疑者の自宅にあった車の破損部分と現場で見つかった部品が一致した」と伝える際に、容疑者宅の車庫などの映像が使われ、映像からは小さな子どもがいる様子などがうかがわれた。罰せられるべきは犯人のみであって家族ではない。面白半分に映像から容疑者宅を割り出す人が出てくるのではないか。

  • 引退を表明している現職市長を番組に呼び、これまでの市政の施策などを紹介していたが、市長は引退後に政党を立ち上げると明言している。市政の問題点などを指摘することなく賞賛するだけの番組はいかがなものか。

  • 情報番組で年末ジャンボ宝くじを特集。スタジオに一万円の札束10億円分を積み上げ、「人気の売り場」などを紹介。CMは「年末ジャンボ」。放送局としてどうかと思う。最近、商品やサービスを取り上げ、ほめる番組が多すぎる。広告との区別がない。

  • 長野市の“公園廃止騒動”では、苦情を寄せた人を一方的に悪者と決めつけるような報道が多いように感じる。その影響か、苦情を寄せた個人が特定されSNS上で誹謗中傷が行われている。

【バラエティー・教養】

  • 出演者がクイズの答えを間違えると床が抜けて5メートル落下。女性タレントが腰椎を圧迫骨折した先日の事故を受けて、テレビ業界は安全対策に乗り出し、危険な演出を排除するのかと思っていたら、まだこんなことをやっている。クッションがある、スタッフが予行演習をしたというのは甘い。「1メートルは一命取る」のであれば5メートルは殺人級。テレビ局は安全対策の基本ルールなどをきちんと策定しているのか。

  • タレントがチームを組んで「鬼」役と戦うゲームで、鬼が油圧ショベルのバケットの中に隠れていた。作業中であれば法規上、人は乗れない。ゲームとはいえ建設業に携わる者として見過ごせない。人命に関わるような誤解を招きかねないので絶対にやめてほしい。

  • 番組で取り上げた飲食店のオリジナル料理として、鶏肉を表面だけお湯にくぐらせ「中がレアな状態になるよう湯通し」して、ほぼ生の状態で「なめろう」風にする料理を紹介し、アナウンサーが「おいしい」と食べていた。鶏肉の生食は食中毒の危険性が高いとしてやめるように指導する自治体・保健所が多い。注意喚起もなしにわざわざ生食に近い料理を紹介するのはいかがかと思う。

  • 大手回転寿司チェーンの特集で、養殖のブリを「寒ブリ」と紹介していた。有数の水揚げ地である地元では天然ものであること、重量など一定の基準を満たすものだけを「寒ブリ」として市場に出している。大手チェーンの言うまま養殖ものを「寒ブリ」と放送されては消費者の誤解、地元ブランドのイメージダウンが心配。無責任ではないのか。

  • 「神が見える」という8歳の子どもを取材して寺の住職や「霊媒師」に会わせ、「本当に神が見えていると思う」「母も子も霊力を持っている」などのコメントを放送。過去に仏具を壊したことの影響、霊的なメッセージが子どもに移るなどのエピソードは、霊感商法を想起させる。世の中には霊感というものを信じ込んでしまう人が少なからずいてカルトに利用されるのだ。定かでない霊的な内容の放送は控えてほしい。

  • 新型コロナワクチンの陰謀論などに警鐘を鳴らし、エビデンスが必要、ファクトチェックなどと言っているメディアが、バラエティー番組では「心霊・UFO」と言った非科学的なものを扱っている。違和感があるし、説得力がない。

  • タレントが電動バイクで旅し、充電させてもらいながら人々と触れ合う番組。時折、一時停止しない、ウインカーを点滅させていない、片手運転で沿道の人に手を振るなど、交通法規に違反している場面が放送される。視聴者が「問題ない」と誤解しないか心配だ。好きな番組なので、きちんとルールを守ってほしい。

  • バラエティー番組で紹介した鍋料理店が、ラー油を有名ブランドのバッグで取った型に流し込んで固め、バッグそのものの形で提供していた。当該ブランド側の許可を得ているなどの説明は一切なかった。放送していいものとは思えない。面白ければ何でも放送するという姿勢は変えてほしい。

  • 架空の深夜番組の映像を作り、それが「視聴者が録画・保管していた1985年放送の映像」であるかのように番組内で紹介していた。最後に「深夜番組は架空のもの」というテロップが表示されてはいたが、深夜番組の名をネットで検索すると外部のオンライン百科事典でヒットし、あたかもこの深夜番組が実在していたかのように出演者、スタッフ、番組内のコーナーなどが詳細に説明されている。制作陣が宣伝のために外部のオンライン百科事典を巻き込んだのであれば、問題ではないのか。

  • 海外のハプニング映像を集めて「おマヌケ」と題して放送していたが、他人に迷惑をかけるような行為や犯罪行為の映像があり、単純に「おマヌケ」と表現するのは適切ではないと感じた。こうした映像をネットに投稿したり視聴したりしている人たちは喜ぶかもしれないが、家族視聴も多いであろう時間帯。「良くない行為」はそのように注意喚起してほしい。

  • レギュラー放送で特定の1人の出演者にだけ試食をさせない演出がある番組。年末の特番でも、試食する人を決めるサイコロは明らかにその1人に不利なように細工され、たとえ試食できる目のサイコロが見つかっても、他の出演者が蹴って目を変えるなどしていた。演出だとしてもこれは公開いじめだ。笑いをとりたいのだろうが、見ていて不快だしあまりにかわいそうで笑えない。子どもたちも見ているゴールデンタイムの放送でやってほしくなかった。

  • 1人だけ試食させないという「仲間外れ」を楽しいもの、面白いものとして扱う番組制作者の姿勢に疑問を感じる。

  • お年寄りたちにクイズを出題し「迷・珍解答に爆笑」するという番組。お年寄りを笑いものにしていいのかと考えると笑えない。いい笑いではない。

  • マスクをつけたくないという子どもの意思をヒーローの敵役「怪人」に見立てていた。様々な事情からマスクをつけられない子どもに対する差別を助長するだけだ。こうした演出は是認できない。

  • 女性の応募者がある男性タレントに好かれればアイドルデビューできるという企画。応募者本人たちの自由意思とはいえ不快感を覚えた。女の子たちが好きでもない男性にアプローチしたり、体を触らせたりする。女性は実力とは別の方法で夢をつかむ必要があるように見えて気持ちが悪かった。時代錯誤。

  • グルメ番組などの食事シーンで「ガブッ」という効果音が頻繁に使われる。番組側は面白いと考えているのかもしれないが、不快なのでやめてほしい。日本人は食事のときに音を立てないことを美徳としてきたのではないか。

  • ゴールデンタイムの全国放送のバラエティー番組。事前に「年間優勝者発表」と大々的に宣伝され、楽しみにしていたが、地元局では、肝心な最後の数分間がローカルニュースに切り替わり見られなかった。非常に残念。同様のことが以前のスペシャル放送でもあった。キー局はこうした状況をどのように考えているのだろうか。

  • さまざまな分野で活躍した女性の生涯を若手女優がドキュメンタリーとして取材し、またドラマとして演じている。女優が真剣に取材している姿は好感が持てた。名前や功績は知っていても、今まで知らなかったその女性の苦労の部分もよく描かれているので勉強にもなった。また企画してほしい。

【ラジオ】

  • ローカルFM局が今年、県内の小中学校、高校で行ってきた「校内放送」企画を再編集し、一般リスナー向け特番として放送した。ふだんはその学校の児童・生徒たちしか知らないイベントを一般に紹介していて、とても好感が持てた。「校内放送」ならではのハプニングやアクシデントを、番組パーソナリティと子どもたち、先生とが力を合わせて乗り越える様子がうかがえてとても良かった。素晴らしい取り組みだと思う。今後も継続してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 子ども向けバラエティー番組で、魚のマアジで剥製を作る企画があった。出演者はカラフルな絵の具を塗って楽しそうに作業していたが、食べ物を遊びに使うこと、命ある魚を遊びに使うことが倫理的になじめず、いやな気持ちになった。

  • 子ども向け特撮ドラマで、運転免許の路上教習中のヒロインが敵役の人をはねて走り去るシーンがあった。子ども向け番組で、ひき逃げを放送してもいいのだろうか。

  • バラエティー番組で、「館長がカンチョー」というドッキリ企画があった。カンチョー遊びは一時期、子どもの社会問題になった。番組テロップで「絶対にマネしないで」と注意していたが、子どもは絶対にマネするだろう。危ないことなら「企画するな」と思う。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • 特別支援学級向けの番組で「マスクをつけよう」と題して、マスクをしない人を悪者扱いしていて、とても不快に感じた。これでは差別を助長する。さまざまな理由からマスクをできない人がいることを理解させる放送にするべきだと思う。

  • バラエティー番組で「運動神経の悪い芸人」を特集した。運動神経は個々人の能力であり、個性でもある。それを笑いものにするのは非常に不愉快だ。学校の体育の時間に子どもが差別的な行為を受ける温床にもなるので注意してほしい。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組の和牛ステーキ試食コーナーで、50人の出演者が一斉にインチキのサイコロを振って、特定の男性芸人だけが試食できないようにした。出演者全員でひとりだけを仲間外れにするのはいじめに見えた。芸人本人が事前に承知していたとしても、いじめで笑いを取る演出は不快であるし、やめてもらいたい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夜10時からのバラエティー番組を子どもと見ていたら、お笑い芸人と若い女性タレントの濃厚なキスシーンが流れてきた。ご丁寧にもキスの音声までわかるように放送されて家庭内が凍り付いた。深夜帯ならわかるが、子どもが起きているかもしれない時間帯での放送としてはいかがなものか。

第252回 放送と青少年に関する委員会

第252回-2022年12月

ドイツの自主規制機関FSFとオンラインで国際交流…など

2022年12月19日、第252回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。うち1人はオンラインによる出席でした。
定例の委員会に先立って、青少年委員会とドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会が開かれ、それぞれの青少年保護への取り組みが紹介され、意見交換しました。
11月後半から12月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見には、バラエティー番組のドッキリ企画で男性芸人に本人にだけ聞こえる合図の音を聞かせて池に背広のまま5回も飛び込ませたことについて「本人が憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不愉快極まりない」などがありました。
12月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。モニターからは朝の情報番組を取り上げた報告が多く、いくつかの番組の伝え方について比較した報告が複数寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。また2月に開催予定の岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、事務局から経過報告がありました。

議事の詳細

日時
2022年12月19日(月)午後4時30分~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
ドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、吉永みち子委員
オンライン出席:山縣文治委員

ドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会

青少年委員会とドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとの交流会が約1時間40分、現地とオンラインで結んで行われ、それぞれの青少年保護への取り組みが紹介され、意見交換しました。
交流会はBPO大日向理事長の「お互いに直面する課題や経験について現場レベルで交流し、ともに目指す放送の自主自律に役立つことを期待します」というメッセージとともに和やかにに始まりました。
まず、榊原委員長が青少年委員会の役割と「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について英語でプレゼンテーションを行いました。FSFから見解の発表について質問があり、榊原委員長と緑川副委員長は「見解の発表のみならず、制作者らに委員会の考えを理解してもらうため、意見交換の場を作った」と紹介し、「私たちの考えは制作現場にも伝わり、番組作りにも反映され始めているように感じる」と回答しました。
FSFからはドイツの放送で青少年保護の課題となっている犯罪記録ドラマ「True Crime」への取り組みが紹介されました。衝撃的なシーンが多く、子どもたちには刺激が強い内容で、FSFではこれをどのようにレーティングに反映するべきか検討しており、実際に12~15歳の子どもたちの意見を聞く調査を実施したとの報告がありました。榊原委員長からの「調査結果をどのように生かすのか」との質問に対し、FSFは「検証を行うための要素を洗い出すためにも、True Crimeドラマがどのような害を及ぼしうるのか学ばなければならない」と答えました。また、緑川副委員長からの「放送を規制してもネットで視聴できてしまうのではないか」との質問には、「ネットコンテンツに対する自主規制もあって、今のところネットの方が抑制的だ」との回答がありました。別室で議論を聞いていた委員からは「BPOの中高生モニターには18歳の人までいる。番組を視聴できる世代にも意見を聞くとよいのではないか」といった調査検討の進め方に対する意見も出るなど交流会らしい内容が続きました。
最後に榊原委員長が「実りの多い交流でした。是非また行いたい」と述べると、FSFのミカット所長も「大変興味深い内容でした。ぜひ続けましょう」と応じて時間となりました。

視聴者からの意見について

11月後半から12月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画でにせの刑事ドラマの撮影現場を設けて大御所俳優と共演した男性ピン芸人に本人にだけ聞こえる合図の音を聞かせて、背広のまま池に5回も飛び込むNGを出させたことについて「本人が大御所俳優に恐縮して憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不愉快極まりない」「子どもが見ている時間帯の番組なので、いじめを助長するのではないか」などの意見が寄せられました。担当委員から「本当のドッキリに見える子どもがいるかもしれないが、大人の目から見ると出演者はみんな(ドッキリの演出だと)わかっているように作られている感じがする。大御所俳優も最後には『さっきは怒って悪かったね』とフォローをしていた」として、全体としてみるとこれ以上の検討を要するとは考えないとの報告がありました。
報道番組の女性リポーターがマンホール内爆発事故の現場近くにある保育園で退園してきた子どもに対し母親の前で短いインタビューをしたことが「不適切だ」と視聴者意見で指摘された点について、担当委員は「迎えの母親にインタビューの承諾を得ており、子どもへの質問にも相当性があった」として「とくに問題にはならない」との見方を示しました。
また、バラエティー番組全般に対して、「番組の中で『いじめ』ではなく、『いじる』という言葉が使われるようになった。しかし、『いじる』と言いながら、いじめているように見える場合がある。こうした言葉の言い換えは子どもたちに悪影響がある」という視聴者意見がありました。担当委員は「たしかに、いじめと『いじる』の言葉の境界が曖昧になり、鈍感になっていくおそれがあるように思う」として、「テレビ制作者は言葉の使い方にしっかりとアンテナを張って敏感であることが大切だと思う」と指摘しました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

12月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」で、合わせて17番組(テレビ16・ラジオ1)への報告がありました。朝の情報番組を取り上げたモニターが多く、いくつかの番組の伝え方を比較した報告も複数寄せられました。
このうち、『めざましテレビ』(フジテレビ)には「番組で知ったエンタメのことを学校などで話題にする」という感想が、『報道ステーション』(テレビ朝日)には「ひとつひとつのニュースを深く掘り下げていてとてもわかりやすい」といった感想が寄せられていました。
「自由記述」では、「何も知らないとテレビの内容をそのまま事実だと思ってしまうので、自分でもファクトチェックをすることが大切だ」、「ネット配信の番組を見ることが多くなったが、テレビは家族とコミュニケーションをとる良い機会になる」などの声が寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『BS1スペシャル 脱北ユーチューバー』(NHK BS1)に3人が、『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)、『サザエさん』(フジテレビ)にそれぞれ2人が感想を寄せています。

◆モニター報告より◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 『めざましテレビ』(フジテレビ)
    • 毎朝見ている番組です。毎日の国内・海外のニュースも見ていますが、エンタメのニュースや最新のトレンド特集、人気俳優の出演などが多く、どちらかというとこちらをメインに見ることも多いです。周りでこの番組を見ている人が多く、番組で知ったエンタメのことを学校などで話題にすることもよくあります。朝から暗いニュースばかりでニュース番組を見るのもつらいこともあるので、エンタメ要素が強く少しでも明るいニュースを見られるのはとても嬉しいです。この番組のMCやアナウンサーは笑顔も多く、朝から元気をもらえるように思えます。(高校2年・女子・広島)
    • 朝はおもにこの番組を見ていて、とても良いニュース番組だと思う。6時半頃、7時頃の最新のニュースコーナーについては見出しを見ただけで内容が推測しやすく、「もっと詳しく知りたい」と思わせるような工夫をしているなと思った。報道以外にも「めざましじゃんけん」や「占い」、グルメや化粧品の紹介など、視聴者が楽しんで見られるようなコーナーを多く設けていると思う。(中学2年・女子・鹿児島)
  • 『news every.』(日本テレビ)
    • この番組では、その日のニュースがスライドで図やイラストなどを用いながら詳しく紹介されています。毎日番組の全部を見ているわけではなく、「気になるミダシ」や「今日コレ」などのコーナーごとに視聴しています。Twitterを使うことが多くなり、テレビでニュースをチェックすることが以前よりも少なくなりました。あえて報道番組を視聴しているのは、幅広いジャンルのニュースを知ることができるというメリットに加えて、アナウンサーやコメンテーターの掛け合いや人間味のあるコメントを聞くことができるからです。とくに私が『news every.』を選んで視聴しているのは、番組の分かりやすさや扱うニュースジャンルの広さに加えて、メインキャスターの藤井貴彦アナウンサーの存在も大きいです。(高校2年・女子・東京)
    • コロナの感染者数などが以前より報道されなくなったと思います。感染者が増えているのも事実なので報道するべきところは今後もきちんと報道してほしいですが、明るいニュースも積極的に報道してほしいなと思いました。地方の伝統的なものを紹介するコーナーがあり、意識的に調べなければ知ることができないようなものを紹介していて面白かったです。今はいつでも知りたいことを調べられますが、自分が関心を持って見ていないジャンルのものは知りにくくなったなと感じていたので、こうしてテレビで知ることができる機会があるのはいいなと思いました。(中学3年・女子・群馬)
  • 『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)
    毎週コメンテーターが変わる番組は、取材内容や企画の趣旨に沿ってキャスティングされることが多いので、より専門性の高い内容になっていると思う。ファスト映画を取り上げた回では、司会の三谷幸喜さんが映画監督をしているということもあり面白い見解を聞くことができた。(中学3年・女子・千葉)

  • 『おはよう日本』(NHK総合)
    小学生の頃から毎朝ごはんを食べながら見ている。小学生では7時台、中学生では6時台、高校生になってからは5時台と、見る時間が生活に合わせて早まっていることに気がついた。以前見ていたコーナーは、今は全く見る機会がないし、高校生になったばかりのときは「こんなコーナーあったかな?」と思うことがあった。それは制作側がその時間帯に起きて見ている人が多い世代に向けて番組を構成しているということだ、というのを実感するきっかけだった。(高校2年・女子・埼玉)

  • 『newsイット!』(フジテレビ)
    • 祖父といつも見ているのでこの番組にした。意外と色々な種類のニュースを扱っているし、分かりやすいまとめ方で放送されていたと思う。見ているだけでは分からないこともあり、せっかくスタジオに専門家がいるのであれば、TwitterやLINE、インスタグラムなどを活用して直接質問できるようにしたほうがいいと思った。誹謗中傷されているサッカー選手がいるというニュースは、ニュースとして出す必要があるか気になった。(中学2年・女子・山形)
    • 水泳教室の送迎バスの車内に男子児童が取り残されたニュースで、GPSを活用することで命を落とさず児童を守ることができると示してくれたと思います。悲しいニュースが多い中で、悲しいニュースがあったという事実だけを報道するのではなく、そのような悲しいニュースが二度と起こらないようにするための対策方法などを多く報道するほうが大切なのではないかと考えます。「そんなことがあったのか」「悲しいな」と思うのではなく、ニュースを見て「自分たちもこうしよう」「自分の仕事場で提案してみよう」と考えられるようなニュースが増えることを願います。(高校3年・女子・茨城)
  • 『ゴゴスマ』(CBCテレビ)
    朝と夜とのニュースの取り扱い、番組の進め方の違いに気づくことが出来ました。①~見出しの力~取り上げるニュースがコロコロと変化する情報番組では見出しは必須です。画面右上を見るだけでどのようなニュースを取り上げているのか理解することができます。情報番組は同じニュースを扱っていてもテロップ、字幕の使い方で大きく印象が異なります。ニュースを日常的に見ていたら、学校の新聞を書く時などに大いに活用できると思いました。 ②~昼は朝よりもVTRが少なめ?~各ニュースを10 分程でまとめていますが、朝よりもVTRが少ない気がします。朝の情報番組はVTRで番組が進んでいるような気がしますが、昼の番組はどちらかというとコメンテーターの話の流れで進んでいるように思いました。速報が入りやすいため放送内容を変更しやすいようVTRを少なめにしているのかなと思いました。ニュースの内容だけでなく、取り上げ方や仕組みを考えられたため、またこうして番組 を視聴したいと思いました。(高校2年・女子・千葉)

  • 『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)
    全体的にわかりやすくニュースが紹介されていていました。専門的な用語も丁寧に説明されていて面白かったです。ただ、表題となっているニュース(アリババ創業者に関するもの)について、経済において重要な人物であっても住居を報道するほどの価値があるようには感じませんでした。モザイクをかけてまで家の周辺を撮影する必要はあるのかなと思いました。(高校1年・男子・埼玉)

  • 『ZIP!』(日本テレビ)
    サッカーワールドカップのシーズンで、日本の選手のすごさや日本の強さがサッカーのルールを知らない私でも理解できるくらい分かりやすく解説されていて、今大会のサッカー観戦をさらに楽しむことができました。一方でその話題ばかりで日常のニュースが少なく、その内容があまり深く掘り下げられなかったことが気になりました。4年に一回の特別な時期で注目度が高かったからこそ長い時間を使って取り上げられたと思いますが、朝の忙しい支度時間の合間にニュースを見ている私は、前日に起きた出来事や注目されている事をある程度詳しく知りたかったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『THE TIME,』(TBSテレビ)、『おはよう朝日です』(朝日放送テレビ)、『ZIP!』(日本テレビ)、『めざましテレビ』(フジテレビ)
    『THE TIME,』は、特に6時台は次々と項目が切り替わり、短い時間でたくさんの情報を得られます。ニュースの取り上げ方は、出来事を端的に分かりやすく伝えていると感じました。内容に応じてナレーションの抑揚が強くつけられていたり、テロップがバラエティー番組並みに凝られていたりと、頭がよく働いていない状態でも視聴者に情報が入りやすいようにしている工夫がみられ、朝に見るニュースとしては良い取り組みだなと思いました。『おはよう朝日です』は、テレビの向こう側でニュースを話題に出演者同士で会話しているような印象を受けました。全体を通して口調が柔らかく、緩く、楽しく、ゆったりと情報を伝えているなと感じ、ニュースを身近な視点で考えられるような工夫がされていると思いました。『ZIP!』は、ニュース・報道・情報番組というよりほぼバラエティー番組で、ところどころフラッシュニュースが入っている印象を受けました。6時半台のニュースの解説的なコーナーでは、新聞の活字をベースにそのニュースが日常生活にどう影響するのかをたっぷり時間をかけて伝えていて、しっかりとテレビの前に座って目と耳を傾けて理解しようとすればたくさんの情報を得られると思いました。『めざましテレビ』はVTR中心の構成で淡々と情報を伝えているという印象を受けました。この4つの番組のなかでは画面やナレーションが最も分かりやすく、それぞれの情報の中で何が重要なのかがしっかり分かるようになっていると思いました。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『報道ステーション』(テレビ朝日)
    2~3項目のニュースと特集という、報道するトピックとしては少なめでした。しかし、一つ一つのニュースを深く掘り下げていてとてもわかりやすかったです。特に羽生善治九段のインタビューでは、将棋界とAIの関わり方の歴史のようなものにもふれていて、単に個人のインタビューではなく将棋界まで話を広げていて面白かったです。政府が防衛費を増税によって増額しようとしている内容に関して、どうして防衛費を増やす必要があるのか知りたかったです。(高校2年・男子・福岡)

  • 『石塚元章 ニュースマン!!』(CBCラジオ)
    ラジオでニュース番組を聴くことはあまりなかったが、この番組では意外とわかりやすくニュースを理解することができ、このような形態の番組もとても面白いなと感じた。この番組のパーソナリティーの石塚さんをたまにお昼の情報番組で見るが、そこで見せる顔とは少し違うよりおちゃめな一面も聴くことができて驚いた。また途中のコーナーの内容も教養系ではあるものの、硬すぎず柔らかすぎずといったちょうどいい塩梅で上手に作っているなと感じた。AMラジオで朝番組ということもあってか放送内容がかなり高齢者向けに作られているように感じ、若者からは聴かれづらいのではと感じた。このような楽しみながらニュースに接することができる番組が増えるといいと思った。(高校1年・男子・愛知)

  • 『サンデーステーション』(テレビ朝日)
    日曜夜9時からの放送となっているが、日曜日はもともとニュース番組が少ないということも相まって、家族で夜のバラエティーを見てからその日の出来事をさっと一時間で振り返るという流れができるよい番組だと思う。今回は物価高で苦労する学校給食現場などが特集されていた。これもそうだが、せっかく家族で集まって見ることができる時間のため、食卓で話題に上るようなテーマを増やしてもよいのではと思う。(高校1年・男子・東京)

  • 『スッキリ』(日本テレビ)
    番組が終わってしまうと聞いて、とても残念に思いました。これからの3カ月間で見たい『スッキリ』として、ニュースを今まで通り深く濃く取り上げてほしいです。『スッキリ』の良いところはニュースの質だと思います。番組の終わりになるとエンタメ系のコーナーが多くなるのではないかと思うのですが、最後までニュースコーナーできちんと深く議論し視聴者に届けてほしいです。2つ目は、今までの司会のアナウンサーやコメンテーターに出演していただきたいです。(中学2年・女子・東京)

  • 『Nスタ』(TBSテレビ)
    番組が始まってすぐにニュースを紹介していて、気になる情報をたっぷりと報道していると感じました。また、CM明けからすぐにニュースに入っているところも、続けて見やすい工夫がなされていると思いました。さらに、全体の半分以上が明るいニュースであることも強みではないかと思います。一方で、ニュースを表示するときなどに使われる細かい演出(動き)が多く、シンプルにしたほうが見やすいと感じました。また、VTR受けのスタジオや専門家の解説がもっとあると共感しやすいと思います。(中学1年・男子・山形)

【自由記述】

  • 最近テレビを見る機会が減り、代わりにネットで配信されている番組を見ることが多くなりました。このレポートのためにテレビを見ると、やはりネットの番組にはないテレビの魅力を感じることができた気がします。テレビをつけていると、家族とコミュニケーションをとる良い機会になるなと思いました。(高校2年・女子・広島)

  • 偏向報道についてSNSでも様々な議論が飛び交っているが、何も知らないとテレビの内容をそのまま事実だと思ってしまうので、自分でもファクトチェックをすることが大切だと思った。(中学3年・女子・千葉)

  • 近年いじめなどの問題が深刻になって、バラエティー番組などのコメントが非常につまらない。確かにひどいコメントはどうかと思うが、人を傷つけないコメントをしようとして思ってもいないコメントをするのではうそをついたことになってしまう。こんな偽りだらけの世界になってもいいものか、と思った。(中学2年・男子・山形)

  • テレビで放送されたものがYouTubeで見られることで、現代の情報入手の簡単さを改めて認識しました。昔放映されたものもテレビ各局が公式に配信していているため調べものも便利で、テレビ離れが進んでいると言われる若者がテレビに関心を持つきっかけになると思います。(中学1年・女子・千葉)

  • バラエティー番組の企画は面白いのに、罰ゲームの内容がひどいと思ってしまった。けがをした人もいるので、まずは出演者を気遣うことが大切だと思った。(中学2年・女子・山形)

  • 小学生のときに見た『ピカイア!』というNHKEテレのアニメのおかげで古生代の生物に興味を持つようになり、高校生になって学校の勉強に役立って助かっています。あまり話したことのなかった同級生ともそのアニメを見ていた共通点のおかげで話がはずみました。小さいころに見たテレビ番組が与える影響は大きいと思うし、子どもの興味を自然に惹きつけ、プラスで学びになる番組がこれからも放送されると良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)
    芸人の方が持ち前の芸を披露しながら楽しく過ごしている姿といかだ作りなどの場面で必死になっている姿のギャップが魅力的だなと思いました。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『BS1スペシャル 脱北ユーチューバー』(NHK BS1)
    • 一人一人が自分の出身国の自由を求め、偏見をなくしてほしいという思いのもと活動しているのがわかった。YouTubeという自分の考えを世界に発信できる機関を利用し、脱北者の自由を訴える人々の存在に驚き、関心をもった。(中学2年・女子・鹿児島)
    • 個人のドキュメンタリーとしての側面が強く、敷居が低くて楽しく見ることができました。ユーチューバーというポップな存在から脱北者を描いているのがとても新鮮で興味深かったです。(高校1年・男子・埼玉)

◆委員のコメント◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • Twitterを使うようになってテレビでニュースをチェックすることが少なくなったという声があった。SNSのお知らせからニュースに飛ぶということはあり、確かにそうだなと改めて思った。ただモニターはSNSで早く情報を得ることができる一方で、ジャンルが偏ってしまうとも書いていて、そうしたメリットとデメリットをきちんと考えているのだなと思った。

  • テレビをつけていると家族とコミュニケーションをとるよい機会になるという感想があったが、やはりネットは一人で見てしまうことが多く、家でテレビがついていると家族と話すことができるという利点もあるのかなと思った。

  • ニュースというと今は主にストレートニュースのことを指すようで、ニュース番組はほとんどが情報番組という位置付けになり、報道と情報が一体化しているように思う。また、報道する視点やトーンというものが、放送局や番組によって以前よりはっきりしてきたように感じている。

意見交換会について

2月9日(木)開催予定の岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、当日話し合うテーマを再度、検討しました。

今後の予定について

次回は1月24日(火)に定例委員会を開催します。

以上

2022年12月26日

2022年 12月26日

年末年始のBPO業務について

BPOでは、2022年度年末年始の業務対応を次のとおりといたしますので、お知らせいたします。

  • 通常業務は、年内は12月28日(水)まで、新年は1月4日(水)からといたします。
  • 12月29日(木)~1月3日(火)は、視聴者応対電話、放送人権委員会の相談電話を含め、
    業務を休止します。
  • 業務休止期間中、郵便物の受領と、メール、ファクスの受信は行いますが、対応は原則として業務再開後となります。

2022年11月2日

宮城・山形地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会を開催

宮城・山形地区のテレビ・ラジオ12局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、2022年11月2日、仙台市内で開催された。放送局側の参加者は12局40人、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、西土彰一郎委員、米倉律委員の8人が出席した。放送倫理検証委員会が新型コロナ感染拡大のため開催を控えていた地方での意見交換会を開くのは、2020年2月の大阪地区での開催以来2年9か月ぶりのことである。

開会にあたり、小町谷委員長が「意見交換会は研修会でも勉強会でもなく、参加者が互いに意見を活発に交換していただく会であり、BPOをよく知ってもらう機会だ。委員にとっては、地方局が抱えている問題点や悩みを教えていただく会でもある。実りの多い意義のある会にしたい」と挨拶した。

意見交換会の前半では、これまでに公表した委員会決定を踏まえ、「政治的公平性」と「番組と広告の境目」の2つのテーマについて、担当委員が説明するとともに質疑応答を行った。

「政治的公平性~委員長談話から」

冒頭、小町谷委員長がBPOおよび放送倫理検証委員会の設立の経緯や「審理」と「審議」の違いなどについて解説した。その上で「BPO放送倫理検証委員会とは何かと思ったときには、『委員会決定第1号』を読んでもらうと理解が進む。そこには『倫理は、外部から押しつけられるものではなく、内発的に生まれ、自律的に実践することによって鍛えられるものである』とあり、委員会の役割として『放送界が放送倫理と番組の質的向上のたゆまぬ努力をかさね、多様・多彩な放送活動をより自由に行うよう促すこと――委員会がめざすのは、この一点である』」と宣言していることに改めて言及した。
その上で小町谷委員長は、2022年6月に出された毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話を踏まえ「政治的公平性」について講演を行った。この中で委員長は、同番組には日本維新の会の橋下元代表、松井大阪市長、吉村大阪府知事の3人がそろって出演し、会の政策については多く語られたが、異なる視点があまり示されておらず、委員会は政治的公平性を損なっていると判断したと、経緯を説明した。一方で、政治的公平性についての意見書を公表すると、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する足かせになるのではないかということを懸念し、また放送後、(当該放送局の)番組審議会で厳しい意見が出され、社内チームによる調査がきちんとなされるなど、自主・自律的に事後対応が行われたことも考慮し、審理・審議入りはしなかったと述べた。
また視聴率を重視して、話題性のある面白い発言をする政治家がキャスティングされると、党派的に偏りが生じ、情報にも偏りが出る恐れがあること、異なる視点が提示されないと、1党派の政策が一方的、肯定的に放送されるきらいがあるなどの問題点が垣間見えたと述べ、政治的公平性を真剣に議論する努力を欠いた番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者であることを懸念し、委員長談話を公表したと述べた。
続いてこれまでに公表された選挙報道に関する委員会決定などに触れ、「特に参議院選挙では、その地域の候補者だけを取り上げたために、地方局の番組が審議入りすることが多い。放送局が独断で比例代表制の設定している選挙区域とは異なる区切りを設定して放送することは、選挙の公平・公正性を害し、選挙制度そのものをゆがめることになる」として注意を促した。
最後に小町谷委員長は、「放送倫理検証委員会は放送法改正の問題をきっかけに設立された。このため政府の動きは常に意識し、政治に向き合うことを余儀なくされている。だからこそ政治的公平性や選挙報道のような民主主義に直結する報道、放送については敏感にならざるを得ない。一方で政治についての意見を表明すればするほど、放送現場を窮屈にさせることになることも懸念している。多様な放送、よい番組が生まれるためにも、委員会は常に抑制的でなければならないと考えている」と締めくくった。
参加者からは「知事や市長等政治家の発言については、一方的にならないよう、公平・公正のバランスを考えているが、例えば、告示1か月を切ったあたりに、対立候補との接戦が見込まれるようなタイミングでコロナウイルスの感染爆発が起きたり、行政側の対応を追及しなければならない場合には、(現職の)出演自体を相当悩むと思う」という意見があった。
これに対し大石委員は「選挙とそれ以外の時は区分する必要があるが、すべて平等に取り上げるのではなく、その問題が重要だという強い認識があれば、掘り下げて報道することこそ放送ジャーナリズムの役割だ。それが『質的公正』である。選挙期間中でも、選挙関連報道が常に優先されるべきというわけではない。緊急事態が生じた場合には、関連情報を伝え、地域の人達の安全を優先するという判断を行うべき」と答えた。
また、長嶋委員は「放送局側は自ら忖度したり、萎縮したりして、党の政策などに切り込むことを怠っているのではないか。もっと党の主張などについては深く伝えないと視聴者は選択することもできない。メディアの役割を自覚し、外部からのさまざまな圧力は局側がポリシーをもって突っぱねてほしい」と述べた。
他の参加者からは、民放連放送基準(12)に関連し、「社員アナウンサーが参議院選挙に向けて立候補の準備をしていたが、出馬宣言前に他のテレビ局で報道されてしまったため、民放連等にも確認しながら、そのアナウンサーの録音番組・生放送を急遽差し替えたり取りやめた。予定していたお別れの挨拶番組もできず、結構大変だった。その後は、フリーの出演者でも選挙に出るかもしれないという報道が出た時点で本人の出演を止めるということにしている」という事例が報告された。

「番組と広告の境目について」

番組と広告をめぐる問題についてこれまで委員会が公表した2つの委員会決定(第30号、第36号)および委員長談話(2020年)を振り返り、事案の問題点と教訓、番組と広告の境目をめぐる問題を判断するための枠組み、枠組みの中で留意すべき視点などについて西土委員が講演した。
同委員は、放送倫理検証委員会の役割はガイドラインの策定を行うことではなく、民放連放送基準や各局の番組基準などを判断基準として、第三者としての視点から番組を検証し、判断することにあると強調した。
そして、番組と広告の境目を検証するための基準は、民放連放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」と民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(2017年)であり、特に後者は番組と広告の境目を判断するための枠組みを示していると述べた。「留意事項」では特に留意すべき事項として3点を挙げているが、これはあくまで例示であり、実際の運用にあたっては視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを総合的に判断する必要があり、そのための視点の一つは局による番組の位置づけが視聴者に理解されているかどうかであると指摘した。また、番組内の個別の要素・場面をとりあげて倫理違反を見出すのではなく、視聴後感において番組全体が広告放送であるとの印象を残すか否かがより重要だと述べた。その上で、総合的判断を行うためのポイントは、なぜ視聴者に広告放送であるとの誤解を招いてはならないかということを常に考えることだと述べ、番組と広告の線引きの判断に迷ったら、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」に記されている「『番組』は視聴者からの信頼を前提として放送されている。ところが『番組』の中に『広告』の要素が混在し、『番組』と『広告』の識別が困難になれば、視聴者の商品・サービスに対する判断を誤らせ、ひいては放送事業者に対する信頼や、番組の内容に対する信頼が損なわれてしまうのではないか」という原点に立ち戻ってほしいと訴えた。そして、緊張感をもって一線を画す日々の作業を記録し、検証することを積み重ねていけば、問題が起きた場合にも説明することができ、何よりも視聴者の信頼に応えることができると述べた。
続いて、高田委員長代行は「番組はあらゆるものから独立して、放送局、放送人が自らの判断で、役に立つ、有益である情報を視聴者に対して伝えることだ。その意味で、番組制作者が忠誠を第一に誓っているのは視聴者。広告は広告主から対価を得て作られており、第一に忠誠を誓うのは広告主。民放番組では両方とも必要であり、だからこそ、これは広告、これは番組だときちんとわかるように放送すること、視聴者目線に立って考えるというシンプルなことが強く求められているのではないか」と述べた。
参加局からは「ローカル局にとって、1社提供の番組は(営業的に)非常に大きい。長野放送の問題などが立て続けにあったとき、一時的に1社提供の番組を自粛した時期もあった。しかし制作現場と営業の間を編成、考査などがつないで何ができるかを詰める作業を繰り返し行うことで色々な問題を克服し、1社提供の番組が実現できた」という報告もあった。

後半は「委員と語ろう」と題して、参加局に対する事前アンケートで関心の高かったジェンダー表現について意見を交わした。

「ジェンダー表現」

アンケートには以下のような回答が寄せられた。

  • 「原稿で、どこまで性別に言及するのかいつも悩んでいる。30代の女性医師、容疑者の男・・・。絶えずデスクと記者が議論、話し合いをしている」

  • 「水着や浴衣の今年のトレンドをリポーターが紹介。どうしても女性ものが華やかで、たくさん飾ってある。男物を扱わなくていいの?って誰かが言ったら、ワンカット紹介して。本質的にこれ、どうなのかなって思いながら仕事をしている」

これらの回答に対して、まず岸本委員長代行が作家や番組出演者としての経験を披露し、「共通する大前提は、性別を言う必要がない場面では言わないということだ。エッセイでは、話の流れに支障がなければ、女性店員と書くところを店員、スタッフなどに置き換える。店員の様子を思い浮かべて欲しいときは、女性ということは書かず、例えばつけ睫毛や髪の長さなど外見で表現する。ラジオでは、縁側でおばあさんがネコと日向ぼっこと言うべきところを縁側でお年寄りがとか、おじいさんあるいはおばあさんでしょうかと両論併記的な言い方をしている。テレビには映像があるので、男性、女性と言う必要がないことが多いと感じている。ただ、容疑者が逃走中のときは、男、女と言うのは視聴者にとって重要な情報だと思う」と述べた。
小町谷委員長は参考になればと断ったうえで「女性医師、女性弁護士、女流作家などの言い方があるが、そうしたプロフェッションの人は自身が『女性の~』とは思っていない。プロフェッションの自尊心を傷つけるジェンダーの使い方はやめた方がよいと思う。私は弁護士であり女性弁護士とは思っていない」とコメントした。
また、米倉委員は「放送局はオールドメディアという言われ方をしているが、それは旧来の価値観を保持しているメディアと見られているということだ。どのような表現をするかはケースバイケースで対処せざるを得ないが、考えなければならないのはジェンダーバランスだけではなく、ダイバーシティについて意識的であるということだ。常に変化していく表現については、職場内での議論を含め日常的に試行錯誤していかなければならない時代に来ている」と述べた。
高田委員長代行は「差別問題は特定の言葉を使わなければいいとか、危ない言葉に触れなければいいという発想になりがちだが、虐げられている立場の人、その人がどういう境遇だったかという現実の問題にどれだけ制作者が向き合ってきたかどうかが問われているし、今後も問われる」と発言した。
井桁委員は「放送における小さな言葉の言い間違いやうっかりミスなどと、国や自治体がマイノリティーを虐げるような政策を打ち出したり、政治家が明らかな差別的意識に基づく発言することを一緒くたにして議論することには違和感がある。放送には大きな影響力があり、差別的な用語や表現に注意することは大事だが、どうしてもケアレスミスは残ってしまう。問題のある言葉をゼロにするために、内部で言葉の意味を一つ一つチェックすることを自己目的化させることなく、より本質的に問題のある施策・姿勢をしっかりと検証する方向により注力してほしい」と述べた。

参加者からは、「いわゆる専業主婦の取材をする際、何も考えずに台所仕事の様子を撮影しがちだが、本当にそれでよいのかを考えるようになった。私たちの中には古くからのジェンダーバイアスのようなものがあり、原稿でも映像でも、それをどう払拭していくか考えなければならない時代だと感じている」という意見があった。

最後に参加局を代表して、仙台放送柳沢剛番組審議室長が「放送局の自主・自律を図るため、視聴者の信頼を得るため、できることを突き詰めていきたい。視聴者・スポンサー・放送局の『三方良し』を目指し、今日の議論を宮城・山形の各局が現場にフィードバックしていければと思う」と挨拶した。

終了後参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 今年6月に出された委員長談話が指摘する「視聴率重視から生じる懸念」については、意味は十分理解するが、多くの人が関心を持つ「人」や「事柄」を取り上げることで、政治について関心を持ってもらったり、投票率の向上に寄与したりという効果もあるのではないかと思う。「質的公平性」をどう考え、どう実現していくかが課題だ。

  • 委員から「番組か広告かの問題について、ローカル局がなぜ大騒ぎしたのかわからない」との感想があった。テレビ・ラジオが広告としての媒体価値を落とすなか、ローカル局ではコスト削減を優先し、ともすれば手を抜いた安易な作業に流れがちである。一つ間違えれば自局も同じことになっていたかもしれないという危機感が多くの局にあったと思う。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とならないよう、制作の現場でよく考え大いに悩むことが重要と再認識した。

  • BPOという組織に、あまりポジティブな印象を持っていなかったが、委員の方々の顔を見ることができて正直少し安心した。委員の中にも色んな職業・立場の人がおり、みんなが個々の意見をぶつけながら結論を導き出しているのだと、会話を聞いて改めて認識した。
  • 意見交換会は、BPOが「向こう側」の存在ではなく、「こちら側」で一緒に試行錯誤する存在であるということ、また「こちら側」では、各局がそれぞれ共通の悩みを抱える同志でもあるということを知る大切な機会だと思う。

以上

第311回放送と人権等権利に関する委員会

第311回 – 2022年12月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年12月20日(火)午後3時~午後6時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー”ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、再修正された決定文草案について各委員が意見を述べ、概ね意見の一致をみた。次回委員会で最終的に文案を点検することになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、ヒアリングに向けて論点や質問項目を検討した。また、社会通念上許容できる範囲を探るため、BPOに寄せられたバラエティー番組での下ネタやセクハラについての視聴者意見を情報共有した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

12月2日に札幌で開催された北海道意見交換会の事後アンケートなどについて事務局から報告した。

以上

2023年度「中高生モニター」募集のお知らせ

2023年度「中高生モニター」募集のお知らせ

募集は締切ました。

BPO・放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、2023年度「中高生モニター」を下記の要領で募集します。モニターには、毎月1回、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組をテーマに、率直な意見や感想を送ってもらいます。報告は、青少年委員会の議論の参考となり、各放送局にも送られます。任期は1年です。

 応募要領

  • 【任期】 2023年4月~2024年3月

  • 【応募条件】

    • (1) 上記の任期中、中学1年生から、高校3年生までであること

    • (2) 保護者の同意を得ていること

    • (3) テレビやラジオに関心があり、月1回放送に関する意見を報告できること

  • 【募集人員】 30人程度

  • 【応募方法】
    • 専用の応募用紙に氏名・住所・年齢・学校名・電話番号・メールアドレス(ある方)・「モニター応募の理由」など必要事項をお書きいただき、必ず保護者が署名および押印を行ったうえで、以下の宛先までご郵送ください。
      応募用紙(PDF形式)は、ここをクリックしてプリントアウトしてください。

    • ※いただいた個人情報は、モニター申し込みに関する受付確認やモニター運営業務のために利用いたします。ご本人の同意なく目的外で利用したり、第三者に開示したりすることはありません。

  • 【応募締切】 2023年1月25日(水)※当日消印有効

  • 【あて先】

    〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館7階
    BPO・青少年委員会 中高生モニター係

  • 【採用決定】
    採否については、2023年3月下旬までにご連絡します。

  • 【報告への謝礼】
    月々のリポート提出者には、毎月図書カード1000円分をお送りします。

  • 【報告の公表】
    毎月送っていただくモニター報告は、BPO会員の各放送局に送られるとともに、『BPO報告』ならびにBPOウェブサイトに概要を公表します。


以上

「中高生モニター制度」について

このたび、2023年度「中高生モニター」を募集するにあたり、制度のご説明をさせていただきます。

放送倫理・番組向上機構[BPO]の放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、青少年の育成に資する放送の在り方について、一般視聴者から寄せられる意見などをもとに話し合いをしています。しかし、一般視聴者から寄せられる意見を年代別に分類すると、青少年からの意見が大変少ないのが現状です。そこで、青少年のテレビ・ラジオに関する考え方や、番組に対する意見を知り、より良い番組作りにつなげるため、2006年4月「中高生モニター制度」を設けました。
毎年、全国の中高生30人前後をモニターに選出し、月に一度、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組について、率直な意見や感想を報告してもらっています。中高生モニターのみなさんの「声」は、概要をBPO報告等に掲載するほか、当該放送局にもお送りし、制作現場に伝えられ、番組作りの参考にしていただいています。

つきましては、上記趣旨をご理解の上、ご協力をお願いいたします。

第178回 放送倫理検証委員会

第178回–2022年12月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

第178回放送倫理検証委員会は12月9日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
また、11月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年12月9日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見(委員会決定第43号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を全国の放送局に周知徹底した上で、再発防止を徹底する勉強会を200回以上実施していることや、放送倫理検証委員会の委員を招いて研修会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、全国の放送局に番組やコンテンツの正確さやリスクについてチェックする「コンテンツ品質管理責任者」を新たに配置したこと、「複眼的試写」の対象となる番組を拡大し、より明確なルールを設けたこと、ニュース企画用に「取材・制作の確認シート」のチェック項目を一部変更した「ニュースの確認シート」を新たに導入したこと、職員のジャーナリストとしての再教育にも不断に取り組んでいくことなどが報告されている。
委員からは、再発防止策が充実した内容になっている、ジャーナリスト教育等に触れている点を非常に興味深く拝見したなどの意見が出され、報告を了承し、公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 11月に寄せられた視聴者意見を議論

ラジオ番組で俳優の急死を伝える際に違法薬物を使用していたかのような発言をパーソナリティーが繰り返していたこと、バラエティー番組の落とし穴企画の収録中にタレントが腰椎を圧迫骨折したこと、ドキュメンタリー番組で料理店の料理人を店長と紹介するなどの誤りがあったことなどを事務局が報告し、議論した。

以上

2022年11月に視聴者から寄せられた意見

2022年11月に視聴者から寄せられた意見

著名な料理人たちがファミリーレストランの現行メニューの「合否」を判定するバラエティー番組の企画などに多くの意見が寄せられました。

2022年11月にBPOに寄せられた意見は1,471件で、先月から558件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話16%、郵便・FAX1%。
男女別は男性41%、女性15%で、世代別では40歳代28%、30歳代22%、50歳代18%、60歳以上13%、20歳代13%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、11月の送付件数は532件、37事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から13件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

著名な料理人たちがファミリーレストランの現行メニューの「合否」を判定する企画、出演タレントが腰椎を圧迫骨折したという落とし穴企画などに多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は40件、CMについては11件でした。

青少年に関する意見

11月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から61件減少しました。
今月は「表現・演出」が26件、「いじめ・虐待」が13件、それに「性的表現」が6件、「言葉」が4件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • ラジオ番組で女優の訃報を伝える際、あたかも彼女が違法薬物を使用していたかのような発言をパーソナリティーが繰り返していた。明確な根拠は一切示されず、憶測の域を出ない内容。こんなことが許されるのか大変疑問。

  • 違法薬物の使用を疑うような発言から5日たって、パーソナリティーから「新聞記事の意味を取り違えていた」との釈明があった。故人が犯罪者であったかのような発言がこの説明で許されるのか。

  • 給食時の黙食廃止について「黙食には慣れた。廃止は感染拡大に繋がらないか心配」と答えた男子中学生の静止画像をスタジオで示し、出演者が「こういう慎重な人がいるから普通の生活に戻らない」と発言。この男子生徒がいじめに遭わないか心配になった。軽率な番組制作だと思う。

  • 情報番組で「学校健診での上半身脱衣」を取り上げていた。医師による盗撮の事例などを挙げ、出演者たちはおおむね「脱衣に反対」。「健診での脱衣は不必要なのに行われている」との印象を受ける内容だった。しかし着衣だと、聴診器に服が擦れる音で心疾患のサインを聴き逃したり、側弯症の発見が遅れたりする可能性がある。病気や虐待の兆候を見逃さないためには脱衣が最善のはず。医師の意見もきちんと放送するべきだと思う。

  • 報道での効果音やBGMは芸能やスポーツ以外では禁止してほしい。事実を正確に伝えるべきなのに、効果音やBGMを多用することで視聴者に与える印象を著しく左右していることは間違いないと思う。

【バラエティー・教養】

  • タレントがバラエティー番組の落とし穴企画で腰椎を圧迫骨折したとのこと。建築業界では「1メートルは一命取る」と言われる。「落下は1メートルであっても死ぬ可能性があるから油断するな」という意味だ。今回、落とし穴は1メートル以上だったそうで危機管理が全然ダメだ。落とし穴企画は各局でやっている。他人事だと思わず対策を考えるべき。

  • 落とし穴企画は事故防止の専門家などが監修した上で撮影しているのだろうか。

  • ファミリーレストランのロングセラー人気メニューを著名な料理人たちが「不合格」と判定。出演した料理人がネットで「批判を誇張する演出は残念」と書いている。事実を歪曲する恣意的な編集がされたのではないだろうか。

  • 番組でファミリーレストランのロングセラー人気メニューを「不合格」と判定した料理人たちがネット上で批判されている。専門家の意見が視聴者の感情によってねじ伏せられかねない状況に危機感を覚える。プロの評価が素人と異なるのは仕方のないことだ。番組側は料理人たちをこの状況から守ってほしい。

  • 偽の刑事ドラマ撮影現場で超指向性スピーカーからターゲットにだけ誤った合図が聞こえてNGを連発、"大御所俳優"がいら立つというドッキリ。体を張るお笑い芸人とはいえ、理由も分からず何度も池に飛び込まされ、"大御所俳優"に叱られる様子を見るのは気分が良いものではない。肉体的にも精神的にも出演者にもっと配慮するべきだと思う。

  • 長時間にわたって人を苦しめて、スタジオ出演者やスタッフがそれを見て笑うような番組を流すことはやめてほしい。人が苦しんでいる姿を面白いと思うような子どもが出てくるのではないかと心配。

  • バラエティー番組で、アゴが長いことをネタにしているタレント専用のマウスシールドを作り、その形や大きさを笑っていた。これを笑いにする制作者の「いじめの香り」を感じ不快になる。私は顎変形症で手術するまで彼と同じような顔の形だった。この病気の人は多くが好奇の目にさらされ、辛い思いをしている。病名のつくような外見を笑いにしないでほしい。

  • ドキュメンタリー番組を見て素晴らしい話だと感銘を受けたが、他のメディアの報道によって番組の内容がうそで自分がだまされていたと知り、憤りを感じる。「誤り」にしては不自然。美談をねつ造したのではないのか。問い合わせても曖昧な内容の返信しかない。

  • 物価高で生活が苦しい人、食べ物にありつけない人がたくさんいる。それでも大食い番組を放送するのはどんな神経なのか。「政府は貧困対策を」などとどの口が言っているのか。

  • 悪路、野生動物の襲撃など命の危険がある通学路を通る海外の子どもたちのドキュメントを見た出演者が「なんだ、ただ学校に行っただけじゃないか」などとコメント。実際の感想なのか演出なのか知らないが、こんな発言は絶対に良くないと思う。「教育をみんなに」などテレビ業界の"SDGs"のアピールはやっぱりうわべだけだったんだなと思った。

  • 温泉盗撮組織を取り上げた際、イメージ映像の女性が温泉の湯船に長い髪を浸して入浴していた。髪を縛るなどしてお湯に髪をつけない衛生的な配慮がなく不快だ。このような公衆道徳に反する表現を許さないでほしい。昨今、温泉や公衆浴場でこうした行為を見かけることが増えたと感じる。今回の映像はそうした行為を肯定することになってしまう。

  • タレントたちに時事問題を解説する番組で「日本の税収が減った」と伝えていたが、税収は増えていて2022年度の一般会計税収は68兆円余りと過去最高の見通し。きちんとファクトチェックしているのか。

  • バラエティー番組で山中の川のそばにローションと入浴剤を混ぜて偽物の露天風呂を作り、タレントが入浴していた。この溶液が周辺の環境に拡散しないように防いでいる様子はなく、また収録後にこの溶液をどう処理したのか説明はなかった。番組内で説明が必要だったと思う。

  • 番組で過去のテレビドラマを扱った際、放送当時は大手芸能事務所に所属していて後に退所した主演タレントの映像だけが一切放送されなかった。事情は分からないが視聴者としては大きな違和感を覚え、まだこんなことをあからさまにするのかと落胆した。

  • 私は視覚障がい者。点字での投稿が可能だという文芸のラジオ番組に、啓発の意味であえて点字での投稿を続けていたところ、1年近くたってから番組担当者から連絡があり「点字の翻訳が締め切りに間に合わない。点字で投稿するならば、誰かに訳してもらい点字に添えて投稿してほしい」と言われた。そうであれば「点字投稿不可」と明記すべきだし、1年も放置せずすぐに連絡すべきではないか。このような対応は納得しかねる。

  • コンプライアンスが厳しくてやりたいことが表現できないと話す芸能人がいるが、コンプライアンスを言い訳にして放送する側・演じる側が自主規制をしているようにしか思えない。テレビは影響力が大きいのである程度の規制は仕方がない。しかし、本当に表現したいことがあるなら多少の批判は受け入れて放送すればいいと思う。賛同する視聴者もたくさんいるだろう。時代に合わなくなった自分の芸を自覚せず、コンプライアンスのせいにしているのは見苦しい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、男性芸人の体の大事なところにドッジボールを投げて、わざと当てるドッキリをやっていた。これはけがをするし、大変な痛みだろう。何より子どもがまねたら大変なことになると思う。

  • バラエティー番組の罰ゲームで、男性芸人を4歳の子どもたちが取り囲んで、たたいたり蹴ったりするものがあった。演出する大人が子どもたちに指示して暴力を振るわせるのは心理的な虐待だろう。やめてもらいたい。

  • 子ども向け特撮ドラマで、出演者がほかの出演者に向けて消火器を噴射していたが、子どもがまねをしたら危険ではないのか。

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、女性芸人の30歳の誕生日を祝うと称して、背後から大声で急に「コラッ」と叫ぶことを合計30回続けた。リラックスした状態や食事中にも怒鳴っていて、本人は「食べているものが一瞬、のどに張り付いた」という。かなり危険な行為で、子どもがまねしたら窒息につながりかねない。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 偽の刑事ドラマ撮影で男性芸人に、共演する大御所俳優の前で5回連続してNGを出させるドッキリがあった。仕掛けた側は成功するたびに喜んでいたが、ゴールデン帯の番組で子どもが見ているので、いじめを助長するのではないか。

  • このドッキリは超音波を使ってにせの合図を男性芸人だけに送り、5回も誤って池に飛び込ませたもの。本人が憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不快極まりない。「ここまで人を追い詰めて笑ってもよいのだ」と考える若者や子どもが出てしまうことが懸念される。

【「性的表現」に関する意見】

  • 人気女性俳優が主演する連続ドラマで、男性俳優とのかなり濃厚なラブシーンがあった。夜10時台の放送なので中高生も見ている。彼らには、刺激が強すぎるのではないか。

【「言葉」に関する意見】

  • クイズバラエティー番組で出演者が、「歩く辞書」という本来、ほめ言葉についてばかにした発言をした。知識を提供する番組が「歩く辞書」をばかにするのはよくない。若い人が「歩く辞書」を格好の悪いものだと誤解してしまう。

第251回 放送と青少年に関する委員会

第251回-2022年11月

中高生モニターからのリポートについて…など

2022年11月22日、第251回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。うち2人はオンラインによる出席でした。
10月後半から11月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見には、子ども向け特撮ドラマについて「警察の留置場で主人公がけんかするなど、こんなにひどい正義のヒーローは見たことない」「ラーメンを手づかみで食べるなど、食べ物を粗末に扱う行為がある」などがありました。
11月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近聴いたラジオ番組について」でした。
深夜の人気長寿番組について多くの報告があり、「親近感が持てて、とても聴きやすかった」などの好意的な意見がありました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また岡山・高松地区の放送局との意見交換会や中高生モニター会議の開催について、事務局から報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2022年11月22日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
岡山・高松地区の放送局との意見交換会について
中高生モニター会議の開催について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員
オンライン出席:沢井佳子委員、髙橋聡美委員

視聴者からの意見について

10月後半から11月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
子ども向け特撮ドラマに対して視聴者から、「警察の留置場で主人公がけんかするなど、こんなひどい正義のヒーローは見たことない」「ピーナッツは誤嚥の危険性があるのに、飛ばして口でキャッチするゲームのシーンがある」「ラーメンを手づかみで食べるなど、食べ物を粗末に扱う行為がある」などの意見が寄せられました。
担当委員から、「けんかは留置場での言い争いで、ピーナッツを飛ばすのも、よくある遊びのひとつだと思う。手づかみでラーメンを食べたのは、人格を乗っ取られた状態での行為を表わしたもので、表現や演出の範囲内だろう」として「いずれも問題ない」と報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、男性芸人を背後から動けないようにして、彼の股間にドッジボールを投げて当てたことに視聴者から、「体の大事なところに故意に球を当てて笑いをとるのはいかがなものか。笑えれば暴力が許されるのか」などの意見がありました。担当委員は「見ていて気持ちのよい映像ではないが、いままでもあった演出なのでは」との見方を示しました。
また、深夜帯のアニメで残虐なシーンや性的なシーンが見られることに視聴者から意見が寄せられたことについて別の委員から、「制作者側が放送時間帯を遅くしており、(子どもや青少年が視聴しにくいよう)それなりの配慮をしているといえるのではないか」、「テレビ局は時間帯に配慮し、つぎの段階として、家庭ではルールを作って子どもにテレビ視聴させるという方向を進めてもらうのがよい」という意見が出されました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

11月のテーマは「最近聴いたラジオ番組について」で、全部で15番組への報告がありました。このうち複数のモニターが取り上げたのはいずれもニッポン放送の番組で、『オールナイトニッポン』と『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』にそれぞれ3人が、『オールナイトニッポン0』に2人が感想を寄せています。聴き方はリアルタイムが5人で、そのほかはタイムフリーアプリなどを利用していました。
「自由記述」では、普段あまりラジオを聴かないというモニターから「テレビにはない良さを発見した」「親近感があり新鮮だった」などの声が多く寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)を6人が、『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)と『太田光のつぶやき英語』(NHK Eテレ)をそれぞれ3人が取り上げています。

◆モニター報告より◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • 『世界の快適音楽セレクション』(NHK FM)
    両親がラジオ好きなので家や車の中でよくラジオは流れているけれど、自分では全くと言っていいほど聴かないのですすめられた番組を聴いてみた。流れてきたのはどれも聴いたことのなかった曲で、J-POPからジャズ、民族系の音楽とジャンルも幅広く、とても面白かった。今はスマホが普及して音楽ストリーミングサービスで音楽を楽しむことができる。でも、それでは新たなジャンルの音楽と出会ったり、普段聴かない音楽を聴いて改めて自分の“好き”を再確認したりする機会はとても少なくなってしまうのかなと思った。音楽ストリーミングサービスが当たり前な今だからこそ、ラジオはとても新鮮に思えるし面白いものだと思った。きっと同年代の人たちも同じように感じる人は少なくないと思ったので、学校の友達にもラジオについて話してみようと思った。(高校2年・女子・埼玉)

  • 『ヒコロヒーのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
    この番組の良かった点として第一に挙げられるのは、ヒコロヒーさんのしゃべり方の良さだと思いました。彼女の声質はとても低く落ち着いていて、しゃべりのテンポは少し早めの小気味よい速さで、聴いていてとても落ち着く良いしゃべりだなと思いました。近年ラジオは人気が少し復調してきたと聞いたことがありますが、依然、私の周りでは日常的に聴いている人は少なく、地元のラジオ局の名前を知らないという人もいます。深夜ラジオはよく怖いという印象を聞くこともあります。より若手の芸人さんなどを起用して若者のリスナーが増えるといいと思います。(高校1年・男子・愛知)

  • 『朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
    胃腸の弱い朝井さんと純粋キャラの加藤さん。6年前の放送が蘇るようなスタートに、復活ラジオの面白さを感じた。人として分かると共感してしまうような、クリエイターだからこそ話せる話ばかりで面白かった。人間くさい飾らない部分が2人のトークには詰まっていた。(高校3年・男子・千葉)

  • 『ミルクボーイの火曜日やないか!』(ABCラジオ)
    パーソナリティとリスナーの距離がかなり近い印象を最初に受けました。普段、動画ばかりを見ているのですが、ラジオはラジオなりの魅力があると思いました。ミルクボーイがリスナーからのコメントを拾い、そこからいろんなお話を展開する構成でした。そこでの話の広げ方が本当にリスナーとミルクボーイが会話をしているようなやりとりで、とても親近感が湧きました。ミルクボーイをテレビとネットでしか見たことがなく、漫才をしたり他の芸人の方とトークをしたりしているイメージしかなかったので、ある意味“ミルクボーイ”とは別の、“駒場さんと内海さんの人間味”を感じられたと思います。久しぶりに人の作ったコンテンツで親近感を覚える不思議な感覚になったので、今後もradikoなどでラジオを聴いていきたいと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ』(エフエム山形)
    普段からよく聴いている番組なのですが、月曜から木曜まで個性豊かなパーソナリティで、飽きずにとても楽しめる番組だと思います。ボーカロイドを重視しているのですが、あまりボカロ曲を聴かない自分にもとても聴きやすく、工夫されていると思います。流す曲はボカロ中心なのですが、ボカロに関係のないコーナーも多く、どの世代でも聴きやすいです。(中学1年・男子・山形)

  • 『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)
    テレビにはないラジオの良さを発見することができました。映像がない分、人の声に注目し、感情やその場の雰囲気を注意深く読み取ることができる。リスナーからのメッセージについてのトークが多く、親近感を得ることができる。そして、テレビであまり取り上げられないマイナーな情報もニュースもいいとこ取りで聴くことができることです。(中学1年・千葉・女子)

  • 『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
    • オードリーの2人のトーク力のすごさを改めて感じる番組だと思います。2時間あるのですが、2人のトークは毎週ひたすら聴いていても全く飽きないです。深夜ラジオ独特の、深夜だからこそ笑えるというようなテンションが色濃く出ていてとても好きです。他の曜日のオールナイトニッポンもよく聴くのですが、パーソナリティによってコーナーやお便りの感じも全く違い、どの曜日の番組もとても楽しみにしています。(高校2年・女子・広島)
    • オードリーの2人がひたすら話していて面白かったです。普段、ボケ役が春日さんでツッコミ役が若林さんなのですが、ラジオでは役割が逆になっているところが新鮮で面白いです。テレビでは話さないようなマネージャーの話だったり最近の趣味や家族の話だったりと、プライベートな話を聴くことができてよかったです。(高校2年・男子・福岡)
  • 『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
    あまりラジオを聴く習慣がなくて家にもラジオがなく、今はアプリ等でスマホで聴くことはできますが、なかなか聴くタイミングがありませんでした。いざ聴いてみると、むしろテレビよりも近い距離感でびっくりしました。他愛のない話やおすすめ映画の話を聴いたりと、どこか友達のような感覚でとても聴きやすかったです。今回は選んで聴きましたが、流したままにして聴いてみるのも楽しそうだなと思いました。またラジオを聴いてみたいです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『クリープパイプ 尾崎世界観 声にしがみついて』(エフエム山形)
    レポートを書くにあたって初めて聴いたのですが、番組の雰囲気がゆるく、トークが面白かったのでこれからも聴こうと思います。放送時間が30分と短めで聴きやすかったです。「芸能人だとこういうところで困る」というエピソードでは、意外なところで支障が出ていることに驚きました。(中学2年・山形・女子)

  • 『宮下草薙の15分』(文化放送)
    ラジオをしっかり聴くのは初めてだったので少し抵抗感がありましたが、いざ聴いてみると音声だけというのは想像をするのでテレビとは違う楽しみ方ができました。宮下さんと草薙さんの会話に間がないので飽きもこなかったです。(中学2年・女子・東京)

  • 『中学生の基礎英語 レベル2』(NHKラジオ第2、NHK FM)
    この番組はいくつものコーナーに分けて確実に表現をマスターできるように構成されていると思う。1日15分ずつという短くても充実した時間で英語を学べるのでとてもよい。出演者の方の発音もすごく聞き取りやすく、1日ごとに変わるストーリーは設定が細かくて場面の情景や雰囲気までがしっかりと読み取れる。楽しみながら確実に英語表現を習得できる効率的なこの番組をこれからも聴き続けたいと思う。(中学2年・鹿児島・女子)

  • 『JET STREAM』(エフエム東京)
    福山さんの語りや選曲が深夜にぴったりだと思いました。「作家が描く世界への旅」というエッセイを福山さんが朗読し、その内容に関係する音楽を流すコーナーがあるのですが、個人的には朗読ではなく番組オリジナルの語り(その土地を旅する内容)のほうがタイムリーな上に「旅している」イメージが強く湧くような気がします。例えば、世界各地の絶景を収めた写真集や旅行記を、文字と写真ではなく声と音楽で表現している、そんな番組になってほしいと思います。(高校1年・男子・滋賀)

  • 『yamaman presents MUSIC SaLaD』(ベイエフエム)
    2年半ほど聴き続けているが、リスナーの世代が幅広い番組だと思う。昼12時から1時間という聴きやすさからか、メッセージテーマがいつもフリーだからなのか、祝日になると10代からのメールがたくさん寄せられる。「ひとことメッセージ」のようなDJとリスナーを近づける内容が、さまざまな世代に愛される理由だと思った。(高校1年・男子・東京)

  • 『HiHiJetsのラジオだじぇっつ!』(InterFM897)
    グループの平均年齢が20歳と普段話す機会がない年代のため、自分の世界観が広がることが番組の魅力です。語彙力豊かなメンバーが、言葉にできない想いを代わりに言葉にしてくれるため、一人でイライラするよりも効果的なストレス発散方法です。ペアが変わると同じコーナーでも雰囲気や流れている空気感が変化します。価値観や面白いと感じるポイントが自分と同じ人を探すのも楽しみです。ジャニーズ内の曲に限らずメンバーが好きな曲が流れるところも魅力です。このコーナーで紹介されて大好きな曲になったものも数多くあります。この番組は私だけでなく母も楽しく聴いています。年代、性別関係なく、これから伝説になるHiHi Jetsの初冠ラジオ番組が多くの人に届くことを願います。(高校2年・女子・千葉)

  • 『飯田浩司のOK! CoZy up!』(ニッポン放送)
    ラジオに関してはあまり頻繁に聴く訳ではないが、このラジオ番組は父親の影響もあり、少なくない頻度で聴いている。印象としては、ラジオならではで、比較的制約のない中、出演者が気軽に意見を話している。一方その弊害として番組内で偏った意見が多くなりやすくなっている印象も受ける。この番組もゲストは保守色が強いコメンテーターがほとんどである。そうなると当然番組内で扱われる話題にも偏りが生まれる訳であり、そこがラジオの欠点なのかもしれないと考える。(高校3年・男子・東京)

  • 『鈴木愛理のEasy To Smile』(エフエム岩手)
    モデルとして活躍している姿、歌って踊っているアーティストとしての姿が印象的な方でした。ラジオでしゃべっている姿は想像ができなくて、こんなに明るくてポジティブな方なんだなと驚いたし、女友達と話しているような感覚になりました。いつもラジオの最後にする深呼吸の時間と「たくさん笑えますように」というおまじないのような言葉が、笑っている姿が素敵な彼女を表しているようで好きな部分です。(高校2年・女子・岩手)

  • 『SixTONESのオールナイトニッポン サタデースペシャル』(ニッポン放送)
    • 音声しか聞こえないラジオで「シガーボックス」にチャレンジするという企画は前代未聞でしたが、後日インスタグラムのストーリーで実際に「シガーボックス」にチャレンジしていた1回目の挑戦の姿を見ることができたので、映像がないと伝わらない部分も解決されていたように思います。様々なSNSを活用しながら楽しめるという面では、今回の企画はとても面白かったです。私はSixTONESの音楽やメンバーの皆さんの唯一無二の関係性に魅了されたファンでもあるので、SixTONESの音楽もメンバーの皆さんの軽やかな会話も楽しむことができるラジオをこれからも楽しみにしています。リアルタイムで聴くことがラジオ番組の醍醐味であることはもちろんですが、アーカイブで聴いても楽しめる番組という作り方も、新たな、ひとつのラジオの形として良いのではないかと思いました。(高校2年・女子・東京)
    • シングル発売とかけた企画が意外と共感できた。話の内容の濃さとスピード感が聴く人を飽きさせないのだと思った。くだけている感じが深夜ラジオという感じで、聴いていてとても楽しい気持ちになった。近況を話してくれるので、メンバーが近くにいるように感じた。(中学2年・女子・山形)

【自由記述】

  • 聴いてみてラジオの良さを改めて認識することができました。映像がないので作業の片手間に聴くことができたり生放送の番組が多かったりと、テレビにはない良さを持っているなと思いました。(高校2年・女子・広島)

  • ラジオ初心者のためお門違いかもしれないのですが、完全にラジオ(放送)の様子が見えないのは少し寂しいので、YouTubeやニコニコ動画などでその様子を見せてほしいなと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 最近の番組はドッキリや罰ゲームなどの内容が少なく、全体的にマイルドな企画が増えていると感じます。ただ、それでテレビの面白さが失われてしまうと意味がないので、新しい楽しさがあればいいいと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 拷問や残虐な殺人、尺の長い暴力シーンがある場合は、視聴者が事前に「視聴しない判断」ができるようにするべきだと思います。放送前にテロップをいれたり、番組の概要を紹介する文章の中に注意喚起の文言を入れたりする配慮があるとより安心して視聴することができるのではないでしょうか。(高校2年・女子・東京)

  • ハロウィーンの報道の中で、記者が顔などの外見のみで「外国人」と断定しているような様子が見受けられました。日本での多民族への排他性や人種差別を問題視する報道をするのであれば、こうした表現は分断を起こすのみで不適切だと思います。(高校1年・男子・埼玉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『世界は教科書でできている』(NHK総合)
    学校の教科書に載っていることや習ったことを身の回りに生かせるようになっていて、とても良い番組だと思いました。(中学1年・男子・岩手)

  • 『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)
    • 知らなかった昭和や平成の常識を知ることができて、とても勉強になりました。昔の常識や今昔比べなどが多かったので、もっと専門的なランキングや調査もしてほしいです。(中学1年・男子・山形)
    • 最近見た中で最も夢中になった番組です。普段、周りの大人に理解してもらえないことや、自分が周りの大人を理解できずにもやもやしていることを楽しくデータで紹介していて、ギスギスしがちな世代間ギャップを理解するきっかけになりそうだと思いました。(高校1年・男子・兵庫)
    • 家族で一緒に楽しむことができました。母の若い頃の話やエピソードを聞くきっかけにもなりました。今は「Z世代」などと若者だけを括って取り上げることが多いですが、両親が生きてきた時代がどんな時代だったのかを知り、今の時代とのギャップがどれほど大きいのかを知ること、家族でこの番組を視聴して世代間のギャップを少しでも埋めることは、これからいろいろな世代と触れ合うことになる10代の学生にとってとても大切だと思います。(高校2年・女子・東京)
  • 太田光のつぶやき英語』(NHK Eテレ)
    この番組の強みは、私たちのような中高生が国際的な時事問題を太田光さんのコミカルな会話や番組中の洗練されたBGM、SNSを多用した分かりやすい解説によって肩肘張らずに学べる点にあると思います。気になった点としては、番組中に説明される英単語に専門的なものも多く、中高生が英語を学ぶ上ではレベルが高すぎるものがあるのではと思った点です。(高校1年・男子・愛知)

  • 『ボクらの時代』(フジテレビ)
    映画の原作者と出演している俳優がしっかり話しているのがすごく新鮮でした。私がよく見るような座談会などの番組は大体進行の方がいますが、この番組にはいないので、ある程度テーマはありますが自由に話されている感じも新鮮で面白かったです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『チコちゃんに叱られる!』(NHK 総合)
    身近にあるものの意外な秘密に驚かされています。知らなかったものの意外な正体やなぜそうなのかという理由が分かるのはもちろん、VTRやゲストの会話がとても面白くてよい番組なので、ご長寿番組になればいいなと思います。(中学2年・女子・山形)

◆委員のコメント◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • ラジオの放送中の様子を動画で見てみたいという感想があったが、この世代の人たちはやはり映像を見たい世代なのかなという印象を持った。

  • ラジオは身近に感じられるというモニターが多いが、パーソナリティとリスナーとの間の相互的なメッセージのやりとりが、そうした親近感を生むのだろうと思う。

  • 若い世代の人たちは、動画サイトの切り抜きやSNSをセットで見ながらといような、私たちが考えている音声トークだけのラジオとは違った楽しみ方をしているのだろうと思った。

  • ジャニーズファンのリスナーは、ラジオで彼らの話を聴くことでより親近感を覚えているようで、テレビで見るのとは違う距離感を楽しんでいるのだろう。

  • ラジオ番組への感想を尋ねると、パーソナリティへの共感や感想、テレビと比較した媒体の評価になりがちなところがある。パーソナリティが身近に感じられるだけに、その背景にある番組の構成や番組がどう作られているかを想像しにくいのかもしれないと思った。

  • ストリーミングサービスだと好きなものしかお薦めされないという意見があったが、最近は大学生もそうしたテーマを研究する人が多く、同じような気づきをモニターが持っているのは興味深い。ラジオ番組の制作者は、まさしくこうした気づきを若い人に持ってもらいたいのだと思う。各ラジオ放送局は学校への出前授業などに力を入れており、必ずしもラジオが身近でない若者にどうやって気づきを持ってもらうかが、ラジオの大きな課題だと思う。

  • 親からすすめられた番組を聴いたというモニターが目立つが、親の影響はかなり大きいと感じた。ラジオほどではないがテレビにもその傾向はあり、テレビの将来をも予見しているのかもしれないと思った。

【自由記述について】

  • ニュースについて、外見だけで外国人と断定するのはどうかという意見があったが、確かに一見しただけで外国人などと言ってしまうこともあり、自分の反省を込めて考えさせられる指摘だった。

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、当日話し合うテーマの候補について検討しました。

中高生モニター会議について

中高生モニター会議を今年度内にオンラインで開催することが事務局から報告されました。

今後の予定について

次回は、12月19日(月)に定例委員会を開催します。

以上

第177回 放送倫理検証委員会

第177回–2022年11月

10月に寄せられた視聴者意見を議論

第177回放送倫理検証委員会は11月11日に千代田放送会館で開催され、10月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年11月11日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 10月に寄せられた視聴者意見を議論

民放局の報道情報番組に出演するコメンテーターが、安倍晋三元首相の国葬について大手広告代理店が関与したという趣旨の事実でない発言をしたことに対する当該放送局の対応、および他の民放局の報道番組が、同氏への「デジタル献花」に旧統一教会が影響している可能性を報じたことに多数の意見が寄せられたことを事務局が報告し、議論したが、討議に入るべき事案にはあたらないとの意見が大勢を占めた。

以上

第310回放送と人権等権利に関する委員会

第310回 – 2022年11月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年11月15日(火)午後4時~午後9時15分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽の事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、修正された決定文草案について各委員が意見を述べ、白熱した議論が展開された。次回委員会でさらに文案を練り検討していくことになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、厚労省指針や裁判例からハラスメント認定方法を委員会として情報共有した上で、審理の進め方や判断方法についての基本的な考え方を議論した。

3.「判断ガイド2023」進捗状況報告

来年発行予定の「判断ガイド2023」について事務局から進捗状況を報告した。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

5. その他

12月に札幌で開催される意見交換会の進行など細かい点について、事務局から説明した。

以上

2022年10月に視聴者から寄せられた意見

2022年10月に視聴者から寄せられた意見

国葬についての情報番組コメンテーターの発言、元首相へのデジタル献花と統一教会の関係についての報道番組の伝え方、ドラマでの残酷な"拷問"の描写などに多くの意見が寄せられました。

2022年10月にBPOに寄せられた意見は2,029件で、先月から162件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性45%、女性17%で、世代別では40歳代27%、30歳代22%、50歳代20%、60歳以上16%、20歳代10%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、10月の送付件数は988件、43事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

9月に引き続いて、元首相の国葬についての情報番組コメンテーターの発言に関して多くの意見が寄せられました。また、元首相へのデジタル献花に旧統一教会が関与しているかのような報道番組の報じ方についての疑問の声もありました。ドラマの"拷問"の描写が残酷という意見も目立ちました。
ラジオに関する意見は26件、CMについては16件でした。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は123件で、前月から61件増加しました。
今月は「暴力・殺人・残虐シーン」が51件、「性的表現」が33件、それに「表現・演出」が19件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 国葬についての情報番組コメンテーターの発言に関して。メディアは公人の失言は厳しく批判しておきながら、身内の場合は処分が甘く納得しがたい。コメンテーターも公人ではないのか。

  • 問題視すべきは「政治的意図がにおわないように制作者としては考える」という部分。制作者が政治的意図を持って制作することが日常的に行われているのではないのか。放送法違反ではないのか。

  • このコメンテーターの歯切れ良い公平かつ平等なコメントが大好きで毎朝楽しみにしていた。間違ったコメントは残念だったが、放送での謝罪と反省コメントは立派だったと思う。

  • 元首相へのデジタル献花を特集した報道番組で、あたかも、旧統一教会が組織的にデジタル献花に関わっているかのような見出しテロップが出ていたが、最終的には「関係は確認できない」という内容だった。であればそもそも報じる必要がなかったのではないか。

  • ソウルの群集事故で亡くなった方の出身地などの情報を報じ、さらに遺族にも取材。遺族の気持ちを考えるといたたまれない。また、放送を見てしまったことで自分までもがそうした行為に加担してしまったようで、非常に心苦しい。

  • 情報番組で夫婦間のモラハラ問題を特集していたが、夫によるモラハラにばかり焦点が当てられ、偏っているように感じた。妻によるモラハラや子どもの"連れ去り"があることについても伝えるなど、バランスに配慮してほしかった。

  • 報道番組が、地元・静岡県の台風被害のフェイク画像を作成してインターネットに投稿した人物のインタビューを放送した。出演者は「悪意のないケース」とコメント。AIを用いたフェイク画像の作り方を実演して紹介し、模倣犯への意識が低いように見受けられる。熊本地震の際にデマを拡散した人物が逮捕されたケースなどに触れることもなし。なぜこれを企画して放送したのか理解に苦しむ。

  • 納骨堂の経営破綻のニュースが各局で大きく扱われたことで、無関係の自分の会社に不安になった顧客らからの問合せが続いて業務に支障をきたしている。室内墓の経営・管理に関わる寺や会社は少なくない。他社がとばっちりを受けないように、また顧客らが余計な心配をしなくて済むように、今回のケースはその特異性を説明しつつ伝えるべきだったと思う。

  • マイナンバーカードへの一本化に反対している人についてコメンテーターが「所得隠しとかやましいことがある人」などと決めつけていて、発言が偏っていると感じた。証明写真を撮りに行ったり暗証番号を更新したりなど、数年ごとに必要な手続きが難しい病人、高齢者、認知症の人たちのことも理解すべき。

  • たまたま地元のラジオ番組で聞いた"育児特集"。リスナーから寄せられた悩みについて専門家とパーソナリティーが考え提言するという趣旨で、私も深く考えさせられる内容だった。なるべく多くのリスナーの声を聞くという姿勢もうかがわれ、地元びいきかもしれないが地域に寄り添った内容で「こころ」が温かくなった。

【バラエティー・教養】

  • 北関東から東北地方で広く食べられている、生の味噌を塗ったおにぎりを番組で取り上げた際に、「気持ちわるい」「食べたくない」などという否定的なインタビューやコメントが紹介され、スタジオの出演者によるフォローも不十分だったと感じた。故郷の食文化を否定されたようで悲しい気持ちになった。

  • 番組内のDIY企画で、崖上の家のベランダのフェンス際に収納付きのベンチを設置した。子どもがベンチに立って転落するおそれがあり、とても危険だと思った。テレビ番組ではむしろ事故を防ぐためにフェンスのそばに足がかりとなる物を置かないよう呼びかけるべきだと思う。

  • 大食い番組には呆れる。食べるものに困っている人がいて、子ども食堂を開いて応援している人もいる。食べ物をムダ食いしていばれる時代だと思っているのか。大食いは芸なのか。

【ドラマ】

  • 残虐な"拷問"シーンを放送するのであれば、注意喚起のテロップなどで事前に告知して、子どもや見たくない人への衝撃を回避すべきだ。

  • 私は中途失聴者。ドラマで描かれている中途失聴者のケースであれば全く歪みのない発音で普通に話せるはず。中途失聴者は明瞭な発音で話せるため「本当は聞こえているのでは」などと誤解され、サポートを得られにくい。このドラマは現実の中途失聴者の生きにくさにつながる誤解を広げている。

【その他】

  • 深夜アニメで銃による大量殺人のシーンをアップテンポの曲に合わせてショーのように描いていた。殺す側、殺される側ともダンスを踊っているかのように動き、大勢が血を吹き出しながら死んでいく。人の死を軽視した演出は、多くの人間が見るテレビというメディアには合わないと思う。

  • CMになると急にテレビの音量が上がるので慌ててリモコンを操作する。CMが終わり番組になると音量が下がり聞きづらくなる。1時間に何度も音量を上げ下げしなければならず煩わしい。何とか改善できないだろうか。

  • いまだに、「結果はCMのあとで」というような昔ながらの演出手法が使われている。こうした手法に対して若い人は「テレビはかったるい時代遅れのメディア」という印象を抱くのではないだろうか。制作者の発想が古き良き時代のままで、時代に合っていないように感じる。

青少年に関する意見

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 平日夜10時から放送の男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマは、内容がグロテスクで子どもには見せたくない。正直、気分の悪くなるドラマだ。描写がとても見ていられない。

  • このサスペンスドラマは番組冒頭から残虐なシーンが出てきて、その後も何度か残虐な拷問シーンがあり、見ていられなかった。子どもに見せられるものではないし、模倣犯が出たり、犯罪につながったりしてしまうのではないか心配だ。

  • このサスペンスドラマには損壊された遺体のシーンが登場する。残忍な拷問によって惨殺された遺体の損壊部分をはっきりと表現していて、大人の私が見ても吐き気を催す描写だった。主役である男性アイドルのファンたちなど青少年が見た場合、心的外傷を受けるレベルといってもいいだろう。

【「性的表現」に関する意見】

  • 女性高校教師が男子生徒に言い寄るシーンがある連続ドラマで、この生徒役の俳優の実年齢が17歳であるのに濡れ場を想起させるシーンが撮影されていた。未成年者を撮影することに配慮がまったく見られない印象だ。現実と虚構の区別をつけ、現実で問題となる行為は慎むべきだと思う。

  • 連続ドラマで主役の少年と女性高校教師のベッドシーンがあった。そのシーン自体に問題となる描写はなかったが、少年役の俳優は未成年で、このようなシーンのある作品に起用するドラマ制作会社や放送局には放送倫理上の問題があると思う。

  • 深夜のアニメ番組で、モザイクがかけられているが、女性登場人物が性的にいたぶられているシーンを放送していた。深夜なら何を流してもよいというのだろうか。青少年に非常に有害な番組だ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 日曜日のバラエティー番組を子どもと楽しく見ていたら、サンタクロースの正体をバラしていた。夜中で幼い子どもが寝ている時間帯ならわかるが、クリスマスやサンタについては世界中の大人がデリケートに話しているものだ。配慮に欠けているのではないか。

  • ヒーローものの特撮ドラマで、主人公たちが犯罪を起こして警察に捕まったり、独房でけんかしたりしていた。こんなひどい正義の味方は見たことがない。こんなヒーローが子どもたちに受けているのだろうか。ふざけすぎで不愉快だ。

第250回 放送と青少年に関する委員会

第250回-2022年10月

視聴者からの意見について…など

2022年10月25日、第250回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
9月前半から10月中旬までの1か月半の間に寄せられた視聴者意見には、男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマについて、「内容がグロテスクで子どもには見せたくない」「残酷なシーンを想像させ、見ていて不愉快だ」などがありました。
中高生モニターリポートは9月と10月の2か月分を扱いました。
9月のテーマは「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」で、記者が主役の報道バラエティー番組に「ニュースの取材をする記者に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました」などの報告がありました。
10月のテーマは「最近見たドラマについて」で、音のない世界で再会した男女が織りなす切なくも温かいラブストーリーのドラマを6人の中高生モニターが取り上げ、「メッセージ性のあるドラマだ」「“音”へのこだわりが感じられた」などの感想が寄せられました
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また岡山・高松地区の放送局との意見交換会開催予定について、事務局から経過報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2022年10月25日(火)午後4時30分~午後6時45分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
岡山・高松地区の放送局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

9月前半から10月中旬までの1か月半の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマに対して視聴者から、「内容がグロテスクで子どもには見せたくない。気分の悪くなるドラマだ」「残酷なシーンを想像させるところが多くあり、見ていて不愉快だし、犯罪を誘発や挑発させるドラマのように思う」などの厳しい意見が寄せられました。
これについて担当委員から「初回放送の開始直後に、下着姿の女性が椅子にくくりつけられて脅かされ、拷問の恐怖におののく場面が1分ぐらい続いた。猟奇殺人がテーマなので、演出家からすると猟奇性とか怪奇性を出すための手法ということだと思う。カメラワークやライトの使い方も同様で、恐ろしさを誇示するような効果をもたらしている」と報告がありました。
別の委員からは「これを嫌だと思う人がたくさんいるが、好きな人もいるわけで、いろいろな受け止め方があってもいいのではないかなという気がする」という意見や、「拷問のシーンの表現は恐怖感を掻き立てる間接的な手法によっており、また、猟奇的な殺人を肯定的に描いているのではなく、そのシーンに関わっていく主人公の心の動きや苦しさなどの原因のひとつとしての位置づけとなっていることなどを考えると、ただちに問題性を指摘するところまではいかないのではないかと思う」という意見が出されました。
また、別の連続ドラマについて視聴者から、「17歳の男性俳優が成人女優との性行為を思わせるシーンを撮影されている。未成年である17歳には不適切な内容ではないか」「児童ポルノに該当するのではないか、未成年に対する性加害ではないかなど非常に不安になる」などの意見が出されたことについて、担当委員から「強烈な性行為が行われているということはなく、布団の中で2人がいろいろな会話をやりとりしていた場面だった」という報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、CMビデオ撮影中の男性アイドルグループのメンバーに水に溶ける衣装を着せ、頭上から大量の水を落として全裸にしたことに対して、視聴者から「公衆の面前で全裸にさせられるのは人間の尊厳を損なうものだ」「子どもの教育の面やこの男性へのセクハラの面でとても許される行為とは思えず不快だった」などの意見がありました。
担当委員からは「下品なことは間違いない」としながらも、本人はドッキリ企画として承知し了解をした上での反応だと考えられるので、「とくに強く意見すべきものではない」との意見がありました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

10月の委員会では、9月と10月の2カ月分のモニター報告について話し合いました。
9月のテーマは「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」で、モニターからはジャンルも様々なすべて異なる合計20番組(テレビ19・ラジオ1)の報告がありました。
『有働由美子とフカボリ記者』(日本テレビ)に「ニュースの取材をする記者に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました。」、『美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室』(NHK Eテレ)に「この番組を視聴すると『悩んでいるのは自分だけではない。精一杯生きている人がいるのなら、強く生きよう』と自分の心に炎がともります。」、『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)に「私と同じくらいの年齢のリスナーばかりで、悩みの内容はどれもこれも『あ、すごく分かる』と共感できる。」など、印象に残った理由についての報告がありました。
「自由記述」では、「事件を伝えるニュースで、衝撃的なシーンばかりが強調されていて疑問を感じる」という意見が複数寄せられました。

◆モニター報告(9月分)より◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 『はなしちゃお!~性と生の学問~』(NHK Eテレ)
      性的な内容をまじめに取り上げているのが衝撃的でした。テレビで扱うのはタブーのように感じていたので新鮮でした。ラジオでは積極的に取り上げられているテーマなので、こうした番組を通してラジオとテレビの表現の不自由さの差が埋まっていけばいいなと思います。内容も学問として面白いものでした。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『有働由美子とフカボリ記者』(日本テレビ)
      ニュースの取材をする「記者」に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました。現地で取材をしていてわかったこと、気づいたこと、感じ取ったことなど取材のプロだからこそ発見できることもありました。なぜ今までこのような番組が少なかったのだろうと思うほど内容が非常に興味深く、普段のニュースでは腑に落ちなかった「なぜ?どうして?」という部分がより詳しく理解できました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『日曜劇場「オールドルーキー」』(TBSテレビ)
      これまでスポーツ選手が引退したあとのことなど全く考えたことがありませんでした。このドラマを見て、すべての人の人生がうまくいってるわけではないのだなと痛感しました。なりたい仕事がたくさんあって絞り込むことができませんが、今無理に決めずゆっくり考えていいのだと、将来のことを考えるきっかけにもなりました。(中学2年・男子・山形)

    • 『美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室』(NHK Eテレ)
      日々のモヤモヤに寄り添ってくれる番組として視聴しています。美輪さんは相談者のお話に耳を傾け、思いを受け取ったうえで愛のあることばをおっしゃっていました。テレビの前の私までホッと腑に落ちた感覚になりました。この番組を視聴すると「悩んでいるのは自分だけではない。精一杯生きている人がいるのなら、強く生きよう」と自分の心に炎がともります。(高校2年・女子・千葉)

    • 『24時間テレビ45 ~愛は地球を救う~』(日本テレビ)
      24時間テレビの良いところは、番組で取り上げる話題の中に災害・戦争・病気などといった重いものが含まれていても、その中にエンターテインメント要素を入れることで見やすくし、より多くの人に情報を届けようとしているところです。扱われている内容が同じでも、ふだん放送されている報道番組やドキュメンタリー番組は見ようと思わないと見ないため、視聴者が最初に抱く「見たい」という気持ちをエンターテインメント要素の方に向けているのはとても良いなと思います。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『日曜劇場「マイファミリー」』(TBSテレビ)
      ドラマ全体を通してさまざまな「ファミリー」を感じました。家族はもちろん、友人、自分の会社などすべてに絆や思い入れがあって大切にしていくべきであり、それらに愛情を持てるようになりたいと思いました。役者のみなさんの細かい表情や映像の美しさもすばらしく、夢中で見てしまいました。(高校2年・男子・福岡)

    • 『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)
      最もほこるべき点は、幅広い立場の人々が意見を表明できる点であると思う。出演者の幅が広い欠点としては、議論の土台となる部分に意見の食い違いがあって堂々巡りになることや、議論というより口げんかの延長線上のような事態が挙げられると思う。しかし、このような幅広い意見の人々がいないと左右の立場を超えて取り組まないといけない問題を考えることができないので必要だと思う。ただ、もう少しストレスなく見られるようにならないものかと思う。(高校1年・男子・愛知)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)
      私と同じくらいの年齢のリスナーばかりで、悩みの内容はどれもこれも「あ、すごく分かる」と共感できる。日頃のちょっとしたモヤモヤに対処する方法を教えてくれるので、とてもありがたい番組だと思う。豪華なゲストの方々がよく出演するので、毎日どんな話が聞けるかわくわくしながら聴いている。(中学2年・女子・山形)

    • 『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)
      自分が見ているドラマについて専門家の感想や意見が聞けるのがとても面白く、勉強にもなっています。自分とは別の視点からの意見が聞けたときは、より発見があります。もう少し出演者の年代の幅を広げると、もっと面白くなるのではないかと思います。自分と同世代の学生などはどう感じているのか、いま出ている方々と若い世代との対談を聞いてみたいです。(中学2年・女子・東京)

    • 『世界一受けたい授業』(日本テレビ)
      さまざまなジャンルを取り上げて講義してくれるので、たくさんの情報が得られてためになる。大切なポイントをクイズ形式にして楽しむ要素を加えたり、イラストを用いたりしてわかりやすく説明していて良いと思った。日本における貧困問題やヤングケアラーの実態など、今起きているさまざまな問題を新しく知ることができた。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『土曜プレミアム・まっちゃんねる「IPPON女子グランプリ」』(フジテレビ)
      女性出演者だけということもあって男性回答者には答えられないお題ばかりだったが、ふだん見ることができない雰囲気で面白かった。しかし、審査員のコメントには「女性らしい」という文言が多く、違和感があった。“女性”を強調されると、女性の中では大喜利が得意だけど男性にはかなわない、という印象を持ってしまう。(中学3年・女子・千葉)

    • 『ブリティッシュ・ベイクオフ』(NHK Eテレ)
      いちばんの魅力はコンテストに挑戦するアマチュアベイカーの方が非常に多彩であることだと思います。人種、年代、バックグラウンド、職業などが全員バラバラで見ていてとても面白いです。アクシデントが起こった際に審査員が挑戦者に手を差し伸べる場面もあり、審査員のジャッジを楽しむだけではない温かな雰囲気も魅力だと思います。挑戦者が焼いていたマカロンがくっついてしまったとき、司会の方が「きっと味は文句なしよ」と軽やかに話していたシーンは、とても記憶に残っています。(高校2年・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 最近、事件のニュースで物々しい犯行の映像が流されることが多いと思います。私より年下の子はかなり怖さを感じるのではないかと思う映像もあり、少し配慮されるようになってほしいと思います。(中学3年・女子・群馬)

    • 渋谷で母娘が刺されてけがをした事件の報道で、ニュースの概要を知りたいのに衝撃的なシーンばかりが強調されることには疑問を感じ、被害者の母娘にも配慮がされていないように思います。「モザイクをかけて音声を加工したから流しても大丈夫」ではなく、「モザイクをかけて音声を加工してまで流さなければならない映像なのか」を考えていただきたいです。(高校2年・女子・東京)

    • 最近のテレビ番組はSNSで”いいね”が多かった動物の動画を集めた番組やカラオケ番組など、一般の人を頼る企画が多いように感じる。「視聴者参加型」ではなく「視聴者に頼りきり」なのは問題だと思う。(中学3年・女子・千葉)

    • 最近テレビで「これはSDGsに関連する」という話が多く出てきます。SDGsを意識することはいいことだと思いますが、何もかもSDGsに関連させていてはTVやラジオが面白くありません。何もかもSDGsに当てはめるのはいかがなものかと思います。(中学2年・男子・山形)

    • 最近、妹とテレビのリモコンを奪いあうケンカがなくなったことに気づきました。見逃し配信アプリでリアルタイム配信が始まってスマホがテレビと同じ役割を果たすようになり、家族それぞれが見たい番組をスマホでみるようになりました。アプリで見たほうがCMなどの広告もテレビより短く、倍速視聴もできるので私たちの世代のニーズに合っているのかもしれません。(高校2年・女子・岩手)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『歴史デリバリー』(NHK Eテレ)
      ・歴史上の資料をもとに考えながら見ることができるので、楽しみながら勉強できます。クラスメイトにもすすめたところ「面白かった」という感想をもらいました。(中学1年・女子・千葉)
      ・コントも混ぜて歴史が紹介されるので覚えやすくて良かった。授業で前に習ったところだったが、なぜそうなったのかがよく分からなかったので、この番組だと楽しく学べて良いと思った。(中学2年・女子・山形)

    • 『ザ・ドキュメント「もやい 福島に吹く風」』(関西テレビ)
      福島での原発事故を自分や仲間の「表現」によって伝承している人を取り上げていました。自分たちの表現が社会にどんな影響を与えるのか、どんな変化を起こすのかを深く考えて行動している人がいる中で、私たちもその思いを受け取りにいく必要性を感じました。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『知ってる!!知らない!? 愛知おやつ100菓』(テレビ愛知)
      このような地元への大量の取材の蓄積をもとに作られる番組は、ユーチューバーの動画や世界同時の動画配信サービスでは実現しえないと思うので、テレビ局にはその強みを生かした番組作りを大切にしてほしいなと思いました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『THE 無人島 未知の離島で〇〇見つけました!』(テレビ東京)
      その島で実際に生活していた人がいたというリアルさを画面越しに目撃できて面白かったです。とくに歴史的な発見は、教科書に載っていた出来事をより生々しく「実際にあった出来事」として感じるきっかけになりました。ひとつの島の紹介が終わるごとに文字で「まとめ」が表示されたところも、とても分かりやすかったです。(高校2年・女子・東京)

    • 『アイ・アム・冒険少年 2時間スペシャル』(TBSテレビ)
      芸人さんたちが楽しみながら一生懸命汗を流して汚れを落とし、落としづらい汚れには四苦八苦しながらも工夫を凝らして最後まであきらめずきれいにしている姿がかっこよかったです。終始、掃除はかっこよくやりがいがあることだと思わせてくれる番組だったと思います(高校2年・女子・岩手)

◆委員のコメント◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 性をテーマにしたNHK Eテレの番組を挙げたモニターは自由記述で「民放には性に開放的なイメージがありません」と書いていた。テレビで性を扱うことについて比較的おとなは、民放がとても配慮してNHKは攻めているという印象を持つが、今は若い人たちも同様な捉え方をするのだなと新鮮な驚きがあった。

    • 何もかもSDGsに当てはめるのはいかがなものかという意見があったが、なるほどと思う指摘だった。

    • 女性出演者だけで行われた大喜利で、審査員から「女性らしい」というコメントが多く違和感があったという指摘があった。まさに今のジェンダーの問題に関心をもって疑問を示した意見だと思う。

  • 【自由記述について】

    • 渋谷で母親と娘が少女に刺された事件の報道について意見があった。モニターは、モザイクをかけて音声を加工してまで流さなければならない映像だったのだろうかと、社会にも自分にも問いかけていて、しっかり考えてくれていることが印象に残った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 地元のお菓子を90分間で100個紹介する番組について、テレビの強みを生かした番組だと評価する感想があった。確かにあまりYouTubeにはないタイプの番組で、このようなすみ分けは重要だし、テレビに愛着がある若い人たちはそうした点を意識して評価しているのだろう。

10月のテーマは「最近見たドラマについて」で、モニターからは合わせて11番組の報告がありました。
このうち6人が取り上げた『silent』(フジテレビ)には「メッセージ性のあるドラマだ」「“音”へのこだわりが感じられた」などの感想が寄せられました。  
そのほか、複数のモニターが『連続テレビ小説「舞いあがれ!」』(NHK総合)と『監察医 朝顔 2022スペシャル』(フジテレビ)を挙げています。
「自由記述」では、「ふだんドラマを見ないが、ドラマのよさを再認識した」という声が複数寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」の『ゲームゲノム』(NHK総合)には、複数のモニターから「ゲームに対する見方が変わった」といった感想が届いています。

◆モニター報告(10月分)より◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『日曜劇場「アトムの童」』(TBSテレビ)
      ゲームに焦点を当てているのが新鮮だと思いました。親しみやすいテーマと、大企業と中小企業の技術とプライドという対比が極めてシンプルで、全体を通して分かりやすかったです。身近なテーマだからこそ、作品内のゲームや製品が物語の展開や設定のリアリティーを左右してしまうと思うので、今後の流れが気になります。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『監察医 朝顔 2022スペシャル』(フジテレビ)
      ・数ある医療系のドラマでも監察医というのが珍しく、「こんな職業もあるんだ!」と、今まで全然知らなかった職業のことを知るきっかけにもなりました。亡くなった方の想いや家族の愛が丁寧に描かれていて、とても優しい気持ちになれるドラマでした。(高校2年・女子・広島)
      ・温かい涙がこぼれるような素敵なドラマでした。コミカルなシーンとシリアスなシーンのバランスが良く、子ども目線で描かれるからこそ現れるリアリティーや認知症患者の家族が抱える葛藤、痛みが感じられました。解剖のシーンも臓器や血液などが生々しく映されず、視聴しやすかったです。ヒューマンドラマ、ホームドラマの側面も強く、法医学教室や刑事の面々もコミカルなキャラクターが多いので安心して楽しむことができました。(高校2年・女子・東京)

    • 『よるおびドラマ「差出人は、誰ですか?」』(TBSテレビ)
      第一話の15分だけの放送でこんなにもハラハラドキドキさせられたのは驚きでした。主人公を演じている女優はオーディションで選ばれた方で、とても学生のようでナチュラルで尊敬します。一目見た瞬間からとりこになりました。(中学1年・女子・千葉)

    • 『silent』(フジテレビ)
      ・すごく「音」へのこだわりが感じられ、聞こえないということがより一層重く感じました。音楽の使い方や演出が映画のようで、一話見ただけで満足感がありました。当事者にならないかぎり全部理解することはできないだろうけど、エンタメとして楽しめるだけではなく、ドラマを通して何か自分にとってプラスの学びがある作品になるとうれしいです。(中学3年・女子・群馬)
      ・とても感動したというのが率直な感想です。最も印象的だったのは、手話教室の講師が「人が良さそうですもんね」と言われたことに対して「(略)やさしい、思いやりがある、絶対いい人なんだろうなって勝手に思い込むんですよ」と発言したことです。障がい者をかわいそうと思うのも健常者の勝手なことで、同じ一個人として接する必要性を改めて感じました。(高校2年・男子・福岡)
      ・この物語は音がテーマで、重要なポイントになっているのだと思いました。有線イヤホンを片方ずつ分け合ってスピッツ(の曲)を聴くなど、主人公たちの高校生活が今の高校生とは少し違うので憧れました。登場人物の苦悩、葛藤がたくさん描かれていて全体的に重く暗い雰囲気のある演出・内容なので、登場人物が少しでも希望を持てる明るい終わり方になるといいなと思いました。手話教室の先生のシーンのように、障がい者や、関わる人への偏見についても伝えていて、ただのラブストーリーではなくメッセージ性もあるドラマだと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK 総合)
      星新一の作品が好きで小学生の時から読んでいたのですが、映像で見てみると現実の残酷さや人間の愚かさなどが鮮明に映し出されていて面白かったです。
      誰も見ていないところで何かをしたら、たとえそれが良いことであれ誰も知らないのですから皮肉なものだなと思いました。(中学2年・女子・山形)

    • 『親愛なる僕へ殺意を込めて』(フジテレビ)
      登場人物同士の関係性が気になるドラマでした。緊迫感のある音楽やホラーの要素が入っているからこそ、早く次が見たくなります。ナレーションがたくさん入っているので細かい状況が分かり、ドラマの中に入ったような感じで視聴できました。(中学2年・女子・山形)

  • 【自由記述】

    • めったにドラマを見ることはありませんが、このリポートをきっかけにドラマを見ました。ドラマには続きを早く見たくなってしまうほど自分にハマるものがあるのだと初めて気づきました。自分の中に新しいエンターテインメントができたぐらいの感動を覚えています。(高校1年・男子・兵庫)

    • 最近ドラマを全然見ておらず、久しぶりにドラマを見ました。本や漫画では感じられない登場人物の表情、感情を感じることができ、改めてドラマの良さを感じることが出来ました。(高校2年・女子・広島)

    • 何となく(NHKの)朝ドラに出てくる主人公が女性であることが多い気がする。男性が主人公の作品が少ないので、もう少し増やしてほしいと思う。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 視聴率を基準に番組を評価する風潮が早く変わってほしいです。私を含めて周りの多くの人がリアルタイムでテレビを見ていなくても、見逃し配信やリアルタイム配信で見たりしています。見逃し配信はたまたま見ている人が含まれる視聴率とは違い、意識してその番組を見るので、そうした見逃し配信も加味して評価されてほしいです。(中学3年・女子・群馬)

    • ドラマを見ていて制作している裏側がとても気になります。メイキングや放送直前番組で撮影の裏側などが流れることがありますが、裏側がピックアップされているものはないと思います。放送できる範囲で構いませんが、どのようにドラマが完成していくのか(原作、脚本の決定から撮影の日程、ロケ場所の確保など)を知りたいです。(高校2年・女子・千葉)

    • NHK Eテレには英語番組が多く、見ていてとても楽しいです。特に、日本人に足りていないナチュラルな英語のフレーズが紹介されている『太田光のつぶやき英語』や『キソ英語を学んでみたら世界とつながった。』などの番組がお気に入りです。このような番組がもっと増えてほしいです。(中学1年・女子・千葉)

    • 埼玉県の美味しいうどんを紹介する情報番組のコーナーで、お店のうどんをキャンピングカーで食べ、撮影するという方法がとられていました。ありそうだけどこれまでになかった新しい方法で良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 最近はドラマが似たジャンルのものばかり放送されているように感じます。話の展開が一気にひっくり返るような、意外性のあるドラマを見てみたいです。(中学2年・女子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ゲームゲノム』(NHK総合)
      ・この番組を見て、ゲームもすばらしい文化のひとつであることがよく分かりました。今回取り上げられたゲームだけをみても、その内容から受け取ってほしい願いや制作者が伝えたいメッセージがあることを知り、ゲームの世界は深いなと感じました。ゲームに対する見方が変わりました。(高校1年・男子・兵庫)
      ・ゲームをすることは教育的によくないと言われることがありますが逆で、人間について考えるきっかけとなったり、人生の糧になったりするものもあると思いました。(高校2年・男子・福岡)

    • 『60秒で学べるNews』(テレビ東京)
      普段のニュースだと分からない出来事を専門家が60秒で専門家が説明し、議論する形でまた60秒で説明していくという流れが、とてもスピーディーでありながら、簡潔で分かりやすいです。(中学2年・女子・東京)

    • 『理想的本箱 君だけのブックガイド』(NHK Eテレ)
      あらすじからもう一歩内容に踏み込んで紹介されていますが、ネタバレになり過ぎることもなく「読んでみたい」と思わせる絶妙なあんばいでした。視聴者の好みにもよると思いますが、個人的には出演者の方が話されたことばの中でキーワードになるところをテロップで文字に起こしても良いのかなと思いました。(高校2年・女子・東京)

    • 『こどもスマイルテレビ~こども記者編~』(TOKYO MX)
      小学生が浄水場やダムを取材してVTRにまとめていたが、撮影・編集・ナレーションまで子どもたちがやっていてすごいと思った。また、うらやましくも思った。東京の水はもちろん、テレビ番組がどう作られているかを体感できるよい経験だと思う。(高校1年・男子・東京)

    • 『サスティな!』(フジテレビ)
      SDGsについて紹介するバラエティーというのは新鮮な感じがしました。内容も面白く、ふだんの生活に新しい視点を取り入れさせてくれるものでしたが、「SDGsってとっつきにくそう」という印象をどう払拭(ふっしょく)するか難しいところだと思います。(高校1年・男子・滋賀)

◆委員のコメント◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『silent』(フジテレビ)への感想が多かったが、ストーリーそのものへの感動とともに、実生活の中で障害がある人のことを理解したいという気持ちが相まって、とても興味深く見られているのではないかと思った。

    • 視聴率を基準に評価する風潮に疑問を呈する意見があった。確かに、今放送中の人気ドラマが何百万回もオンデマンドで再生されていることを考えると、視聴率が示すリアルタイムの視聴と(実際の見られ方は)違うのだろうと思う。

  • 【自由記述について】

    • 番組制作の裏側が知りたいという声があった。最近の若い人たちは制作者への関心や制作の裏側を知りたいというニーズがとても強いと感じる。映画監督が映画の公開後に撮影日記を出版して情報公開をするように、そうしたニーズにネットなどで応えることがテレビの魅力を高め、テレビに関心を持つ若年層を増やすことにつながるのではないか。

    • NHK Eテレで放送される英語番組が楽しいので増えてほしいという声があった。英語が得意ではないお笑い芸人が少しずつうまくなっていくようなところが視聴者には共感できるのだろうと思う。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 最近の話題について専門家がスピーディーに解説する番組に「分かりやすい」という感想があった。別のモニターも朝ドラの一週間のまとめ放送を評価していたが、やはり最近の若い人たちは長い番組より短いものが見やすいのだろうと思った。

意見交換会について

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について事務局から、来年(2023年)2月9日(木)に岡山市内の会場で開催する予定であることが報告されました。

今後の予定について

次回は、11月22日(火)に定例委員会を開催します。

以上

第309回放送と人権等権利に関する委員会

第309回 – 2022年10月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年10月18日(火)午後4時~午後8時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを踏まえた決定文草案を受けて、活発に議論が行われた。次回委員会でさらに文案を検討していくこととなった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、提出された書面を確認し、委員から質問が出された。今後の方向性などを議論していくこととなった。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

4. その他

12月に札幌で開催される意見交換会の内容について、事務局から報告した。

以上

第176回 放送倫理検証委員会

第176回–2022年10月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見に対する報道について報告

第176回放送倫理検証委員会は10月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、テレビ、新聞がどう報じたのか報告された。
また、9月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年10月14日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表について報告

委員会は9月9日、NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。今回の委員会では、NHKを含めテレビ、新聞がどのように報じたのかが報告された。これに関連して、総務省がNHKに対して行政指導を行ったことについて議論したところ、多くの委員から行政指導がなされたことについて懸念が示された。委員会は、番組内容に関する行政指導としては、2015年のNHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"に対する文書による厳重注意以来の指導になること、委員会は「『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見」(委員会決定第23号)において、放送法5条は放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではなく、「放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明らかにしたものなのである。したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。」との意見を表明していることを再度確認した。その上で、今回の行政指導は、NHKの報告書提出から約半年を経てなされたものであり、放送局が自主的にその原因を調査し再発防止策を検討して問題を是正すること自体が脅かされたとまではいえないこと等を踏まえて、委員会として意見を表明することはしないものの、委員会が議論を行ったことを公表することにより、今後も総務省の行政指導に対しては注視していくことを明らかにすることとした。

2. 9月に寄せられた視聴者意見を議論

9月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の国葬報道・特別番組に対してさまざまな意見があったことや、民放番組のコメンテーターが、国葬に大手広告代理店が関与したという趣旨の事実に基づかない発言をし、訂正・謝罪に至ったことに対する批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告した。

以上

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、「大手広告代理店が入っている」と発言、翌日「事実ではなかった」と訂正して謝罪。両放送回に多くの意見が寄せられました。

9月にBPOに寄せられた意見は1,867件で、先月から319件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性42%、女性19%で、世代別では40歳代25%、50歳代22%、30歳代20%、60歳以上15%、20歳代12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、9月の送付件数は944件、59事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から28件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。しかし翌日「同広告代理店は関わっていなかった」と訂正、謝罪しました。この発言と訂正に多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から9件減少しました。
今月は「表現・演出」が16件、「要望・提言」が11件、「性的表現」が9件、それに「報道・情報」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。会場で故人を悼んだ人の尊厳を著しく傷つけるような発言だ。国葬には反対意見も多かったので個人の意見を封じる必要はないとは思うが、誤った情報を発信するような番組には再発防止を強く求める必要があると思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について、翌日、当該情報番組で「関わっていなかった」と訂正、謝罪した。公にデマを拡散したのに「一言謝罪して終わり」では、ネットで陰謀論を発言したり誹謗中傷したりしている人たちと変わらない。テレビの影響力は大きい。訂正を見逃してデマを信じたままの視聴者もいる。厳しく対応すべきだと思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について。内容に責任を持つことが前提での「報道の自由」ではないのか。それ相応の責任を取ってもらいたい。

  • 日本武道館での国葬の司会者が放送局のアナウンサー。報道機関の職員が国の側に立って仕事をすべきではないと思う。

  • テレビ全局が国葬反対の意見ばかり放送している。私は違った意見も知りたい。多方面からの意見を知って自身の考えを見つめたいからだ。それが放送の役目ではないだろうか。

  • 2世信者も含めて旧統一教会の被害者は今もたくさんいる。メディアが報じなかった「空白の30年」がなければ被害に遭わなかったかもしれない人がいる。メディアの責任は重大。継続して報道する義務がある。「政治家を責め過ぎている」という意見もあるが、政治家が広告塔になったことは重大。

  • 私たち家族は世界平和統一家庭連合の現役信者。普通に納税し生活している。番組で元信者の証言などが取り上げられ、教団の解散を求められているように感じた。教団がすべて否定されることで、自分たちが国家から否定され人権もないと感じる。番組は元信者の精神的苦痛を伝えているが、普通に信仰している私や子どもたちも人間関係が難しくなるといった状況に追い込まれていることを知ってほしい。子どもたちの未来は平等。公平な報道をお願いしたい。

  • 園児バス置き去り事件で、幼稚園全体を責める報道が多いのが心配。幼稚園は財政的に厳しく人手不足を解消できない。労働条件の改善も難しく優秀な人材からどんどんやめていく。事件の背景としてこの点を指摘する番組は皆無。テレビは正しい報道ができる、信用に値するメディアなのか。園長、園の責任だけを問うていては、いつまでたっても問題は解決しない。

  • 政治討論番組での与党幹部の「左翼的な過激団体と共産党との関係がずっと言われてきた」という発言について、放送局はきちんと検証し対応すべきだと思う。根拠に乏しい内容を放送してしまうことを厳に避けるべき。そうしなければ「言った者勝ち」になってしまう。

  • 近隣トラブルの果てに男が隣家の住民男性と殴り合い、刃物で刺した事件。防犯カメラに記録された「殴る」「刺す」動作、衣服についた血などの鮮明な映像が放送された。こうした映像を、子どもも見るテレビで流さなくてはいけないのか。とても不適切だと思う。

【バラエティー・教養】

  • 今問題になっている旧統一教会への入信のきっかけは、占い、霊視などによって不安をあおったりだましたりすること。心霊番組や占い番組は、ありもしない霊や予知などに市民権を与えていて問題だ。

  • バラエティー番組で芸人に企画内容を伝えずに目隠しをし、身体を拘束して鍵をかけ、通りかかった人(娯楽施設の入場者)に助けてもらえるまで長時間放置。人権を侵害していると思う。

  • ラジオのトーク番組で男性タレントが裸になり、陰部に墨汁をつけて視聴者プレゼントのTシャツに文字を書く様子を女性タレントが細かく説明していた。内容も表現も下品極まりない。途中で気分が悪くなり聴くのをやめた。ラジオ番組を汚さないでほしい。

  • 番組で大家族の夕食の風景を紹介していた。家族9人分の夕食をパートから帰宅した母親が一人で用意し、夫や子どもは一切手伝わない。こうした状況が一般的なことであるかのようにテレビで扱われると「女性が家族のために奉仕するのは当たり前」という印象を与え、男女共同参画やダイバーシティの推進が阻害される。これを見た子どもの教育にも良くない影響を与えると思う。

  • 出演した芸能人が、"猫島"で猫を管理する女性に独身かどうかたずね、独身と分かると、猫より自分の人生の管理をという主旨の発言。結婚は個人の自由、こんな発言はありえないと思う。制作側が「面白い」と思ってカットしなかったのであれば、その倫理観も疑う。クセのある芸能人の魅力があってこその番組であることは理解しているが、この発言はあまりにもデリカシーに欠ける。

  • 「中毒性のある食品」と紹介していた料理の名前が「麻薬卵」。軽々しい名前のつけ方、紹介の仕方で非常に残念。このネーミングの妥当性を問うような報道なら理解できるが、メディア側がこの名前を積極的に使うのはいかがか。

【その他】

  • テレビで放送した映画に、児童相談所の対応ルールを誤解させ、現実の虐待などの問題の解決を困難にしかねない内容があった。劇場公開時にすでに指摘されて分かっていた問題。放送時に、誤解を広めないような対応をすべきだった。

  • 点描で原画が作成されたアニメの映像を見た直後、目がチカチカし、目の奥の痛み、頭痛がしばらく続いた。強い光の点滅はないが“光感受性発作”と同じようなことが起きたのだと思う。テレビで放送する場合は注意してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、素人の成人男女が無人島でサバイバル生活する外国のリアリティー番組を紹介したが、仲違いした女性が男性に「あんた、身体が臭いわ!」との暴言を吐き、それが日本語音声と字幕で出た。視聴者で、とくに体臭が気になる若者が傷つくのでは、と思った。

  • バラエティー番組の企画で、お笑い芸人が目隠しされた状態で、お化け屋敷に長時間放置された。これはパニック障害の発症を誘発するもので、見ているだけでつらくなった。

【「要望・提言」】

  • 過去の性加害が問題化した男性俳優が連続ドラマに引き続き出演している。示談で済んだといっても加害者本人が認めていることだ。子供たちになぜ出演を続けているのか説明できない人物は、降板させるべきだ。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、人気男性アイドルにCMビデオ撮影と偽り、水に溶ける衣装を着せて、頭上から大量の水を落として全裸にしてしまうドッキリがあった。正直、ドッキリとは思えず笑えなかった。不快で嫌な気持ちになった。

  • 男性アイドルがドッキリと称して全裸にさせられたが、公衆の面前で秘部(局部)を無理やりさらさせる行為は、人間の尊厳を損なうものではないだろうか。子供が学校などで真似たら、直ちにいじめと認定されるような行為だろう。

  • 男性アイドルが全裸にされるドッキリは、教育的な面や男性へのセクハラの面からみても、とても許される行為とは思えず、不快でした。全裸で笑いを取るというのは理解できません。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 通園バスの中に置き去りにされた園児が死亡した幼稚園(認定こども園)の近隣住民で、小学生の親です。過熱した報道に、子供たちが不安がっています。子供たちへの取材のせいで、保護者が下校時の小学生に付き添っているのを知っていますか。園長の自宅を報道したために、ユーチューバーが訪れたことを知っていますか。園長や園の関係者でない親族に何かあったら、責任を取れるのでしょうか。

2022年10月3日

2022年 10月3日

BPO事務局の対応について

BPOは、新型コロナウイルスの感染防止対策に留意しつつ、視聴者電話の受付時間を通常に戻しました。
電話の受付時間は、平日、10時から12時までと13時から17時までです。
なお、今後の感染状況によっては、受付時間の短縮や受付の休止をすることがあります。

第249回 放送と青少年に関する委員会

第249回-2022年9月

視聴者からの意見について…など

2022年9月13日、第249回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました(うち2人はオンラインによる出席)。
7月後半から8月末までの1カ月半の間に寄せられた視聴者意見には、1歳8カ月の幼児に初めて「おつかい」を体験させた番組について、「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきではない」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などがありました。
8月の中高生モニターリポートのテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。、モニターからは戦争関連番組の視聴により、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、戦争への恐怖と平和の尊さを再認識したなどの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また事務局から、民放連の「放送基準」の改正(2023年4月施行予定)について説明がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、10月25日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年9月13日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室(オンライン併用)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
民放連「放送基準」の改正について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

7月後半から8月末までに寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
幼児が初めて「おつかい」を体験する様子を紹介するバラエティー番組で「(最年少)記録更新」と題し、母親らが見守る中、1歳8カ月の男児に、少し離れた隣家に回覧板、また別の家には菓子を届けさせたことについて、視聴者から「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきでない。真似をして子どもに行かせる親御さんがいると思う」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などの意見が寄せられました。
委員からは「1回だけでなく何度も行かせたことが、視聴者には不評だったかもしれない」「最年少記録という視聴者を煽るようなタイトルもどうかなと思われる」との意見があり、一方で別の委員からは「幼児の周辺で大人のスタッフが見守っていることが分かるように放送されており、安全に配慮していることを視聴者に見せる演出になっていた」と評価する声もありました。
別のバラエティー番組のコーナー企画で、浴槽内に電流を流すサービスを提供している香川県の銭湯に男性アイドルグループのメンバーらを入れ、電流を流したところ、視聴者から「電気を流されて痛がる様子が、いじめに見える」「子どもが見ていて、番組の真似をする可能性が高いので、とても笑えない」などの意見がありました。
委員からは「電気ビリビリ風呂は、通常の浴場で使われているものなので倫理的には問題ないと思ったが、繰り返し笑いを取ろうとしているところが、視聴者には不快だったのだろう」との意見がありました。
また、心霊現象などの体験談をドラマ化して構成したバラエティー番組のスタジオパートに子どもたちを出演させたことに、視聴者から「発育過程の子どもにオカルト現象を現実のものとして信用させるのは控えるべきだ」との指摘がありました。
委員からは「出演した子どもはみな、実績のある子役たちで、怖がっている顔も演技であるのは明らかだ」として問題にはならない旨の考えが示されました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

8月のテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、モニターからは合わせて15の番組について報告がありました。
このうち『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)を6人が取り上げ、「戦争体験者の話は実感を持って聞くことができた」「人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った」といった感想が寄せられました。
そのほかの番組にも「被爆者の高齢化が進んでいるので次は私たちが伝えていく番だと思う」「私たち若い世代ができることを考える良い機会になった」などの声が届きました。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、番組を通して平和のありがたさを改めて感じたというモニターが多く、「当たり前のように過ごしている今の生活が当たり前ではないと実感した」「”戦争は遠い過去の話ではない”という制作者のメッセージが伝わってきた」などの感想が寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリー)について】

    • 『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)
      ・番組を見終わって戦争の恐ろしさ、悲しさを感じた。戦禍を生き抜く大変さを知ったと同時に、今がどれだけ幸せかを知った。戦禍の人々は自分のことしか考えられなくなり、人が変わってしまったという。人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った。もう誰もつらい思いをしないよう、戦争の記憶を若い世代に伝え続けることが大切だと思う。(高校1年・女子・栃木)
      ・戦争体験者の家族や生活といった背景をじっくりと伝えていたので実感を持って話を聞くことができました。一番心に残ったのは「戦争が人の心を変えた」という戦争体験者の声です。戦争体験者を悲しく見るだけではなく、たくましく生きてきたことを伝えていたのも良かったです。(高校1年・男子・兵庫)
      ・普段当たり前のように過ごしている生活は当たり前ではないし、飲める水があること、食べるものがあること、安心して過ごせる場所があることは本当に幸せなことだし、日々感謝して生きていかなければならないと思った。当時何があって人々がどんな思いだったのか、貴重な当事者の言葉を大切にし、感謝しながら次の世界に語り継ぐことが私たちのすべきことだし使命だと思う。(高校3年・女子・茨城)

    • 『特集ドラマ「アイドル」』(NHK総合)
      ・真っ先に思い浮かんだのが現在も続いているロシアによるウクライナ侵攻のことです。このドラマを見て、戦争をしてもいいことは本当に一つもないと思いました。自分の国でも同じようなことが起きてたくさんの人が犠牲になった過去があるからこそ、世界に戦争の恐ろしさを伝えていくことが大事だと思いました。(高校2年・女子・岩手)
      ・戦時中にアイドルが存在したことにすごく驚きました。いつの時代にも娯楽は求められていたのだと知り、親近感を持って見ることができました。前線へ向かわなければならない人たちの恐怖や葛藤は計り知れません。改めて戦争は繰り返してはいけないし、戦場に向かう選択肢しかなかった人たちのことや被害を忘れてはいけないと思いました。(中学3年・女子・群馬)

    • 『NNNドキュメント’22 「侵略リピート」』(日本テレビ)
      中国戦線に関する話では、戦争時には人が死んでもすぐに忘れてしまったりする特殊な心理について述べられ、当時の非人道的な行いが起こされた心理環境がいかに異常だったかが分かりました。番組の途中で、ロシアによるウクライナ侵攻の映像などが流れ、「戦争は遠い過去の話ではない」という制作者のメッセージが伝わってきました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑』(NHK BS1)
      日本とアメリカとの板挟みになったイサム・ノグチに焦点を当てることで、当時の在米日本人の扱い、戦後の日本でのアメリカ人の扱いなどの問題を取り上げていたのが斬新で面白かった。戦争イコール悲惨で命を奪うものという単一的な価値観ではなく、付随する課題を報じるものが増えれば、ほかの番組も面白くなるのかなと思った。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『NNNドキュメント’22「禎子さんの折り鶴~千羽になったら願いが叶うんよ」』(日本テレビ)
      被爆者の高齢化が進んでいるということは、次は私たちが伝えていく番だと思います。唯一の被爆国に住んでいるからこそ「二度と戦争はしてはならない」ということをしっかりと心に留めておきたいと思いました。(中学2年・女子・山口)

    • 『仲間由紀恵・黒島結菜 沖縄戦“記憶”の旅路』(NHK総合)
      “沖縄戦”の実状や奪われた日常を改めて見て「他人事ではない」と思いました。遺骨や遺品が見つからない人が多く、人々の記憶だけでなく戦争の爪痕もなくなってきていることを知り、また戦争が起きるのではないかという不安を感じました。(中学1年・男子・山形)

    • 『長崎原爆の日 被爆から77年のリアル』(NHK総合)
      今、ウクライナ情勢で核の脅威を目の当たりにすることが多い。被爆者の平均年齢が84歳であることを知り、とても驚いた。刻々と近づく「被爆者なき時代」のため、私たち若い世代ができることを考える良い機会になった。私たちには、被爆者の強い思いを継ぐ役割が任せられているのだと考えさせられた。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『セイコグラム ~転生したら戦時中の中学生だった件~』(NHK総合)
      スマホの画面のような見せ方のドラマで、とても新しい形だと思いました。インスタグラムという若者に身近なツールとテレビを掛け合わせる方法は、戦争関連のように、見るのを少しためらってしまうようなテーマの番組をより見やすくするのではないかと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 今年は終戦関連の番組が少なかったように思います。これまで学校で習うような表面的な部分しか知らなかったので、番組を通して当時の人々の暮らしを知ることができて良かったです。(中学3年・女子・群馬)

    • 去年に引き続き通常の報道番組の中で戦争関連の特集を組んでいる放送局が多く、そのぶん多くの人に情報が伝わったと思います。戦争の話題のように視聴者が深く考えて行動に移してこそ意味をなす報道は、一度に時間をかけることも大切だと思います。現状では、多くの人に情報を届けることと、しっかりした中身の濃い情報を伝えることのバランスが取れていないように感じます。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ニュー試』(NHK Eテレ)
      各国の先進的な取り組みを知ることができ、大学進学を目指す身としてとても勉強になった。番組内で模試を考える時間が十分にあって自分でも考えることができ、とても面白かった。(高校1年・男子・愛知)

    • 『Zボイス 私たちの声を聞いて 18歳 夏 参院選』(NHK BS1)
      政治がどこか遠くで行われているイメージを持っていましたが、政治家の判断によって私も日常生活の中で影響を受けてきた一人なのだと思いました。そのことをしっかり受け止めて行動している同世代の方々を見て、私も将来を担っていく社会の一員として政治に関心を持とうと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『チョコプラのぶらり溶接の旅』(テレビ東京)
      再利用が注目されている中で、廃材を使って人のために物を作るという取り組みはとても良いと思います。チョコプラの時々面白いやり取りに楽しませてもらえる番組でした。(中学2年・女子・山口)

◆委員のコメント◆

  • 【終戦関連番組の感想について】

    • 被爆者の平均年齢が高いことを知って驚いたという感想があったが、そのぐらい戦争のリアリティーがないのだろうかと思った。とはいえ、被爆者の思いを伝える役割は自分たちにあると考えたということで、番組からいろいろなことを深く受け取ってくれたのだと思う。ほかにも、これからは私たちが伝えていく番だというとてもいいメッセージが届いていて、感受性豊かに受け止めたモニターが多かったようだ。

    • ウクライナ情勢が連日のように報道される一方で、戦争を実感する機会が少なくなっているという感想を複数のモニターが述べていて考えさせられた。

    • SNSやタイムスリップを取り入れるなど、各番組がどうやって戦争に対するリアリティーを若い人たちに持ってもらうかに知恵を絞っていることが、モニターの報告からよく分かった。

    • 戦争体験者の証言を制作者が意味づけたりあらかじめ文脈を作ったりせず、あくまで個人の生活史に終始して伝えるのが今のドキュメンタリーらしい作りで、時間をかけて人物を丸ごと紹介するところにモニターも好感を持っているようだ。

    • 若い人たちは生々しい戦争の描写などを避ける傾向があるようで、出演しているタレントたちと一緒に理解を進めていくといった、アプローチの仕方の工夫が必要なのだろうと思った。

  • 【自由記述について】

    • 温かいご飯を食べられたりお風呂に入ったりできるなど、当たり前のことが実は当たり前ではないということを書いてくれたモニターが多かった。やはりウクライナで現実に戦争が起き、難民が大変な思いをしていることが報じられていることが、想像をよりリアルにしているのだろうと思った。

    • バラエティー番組について意見を寄せてくれたモニターが複数いた。ウェブサイトに公開している6月の意見交換会の報告も読んでもらい、BPOの役割などを知ってもらえればと思う。

    • 衝撃映像が流れる前に、安心してご覧くださいというテロップが表示されたので安心して見られたという声があり、興味深い感想だった。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 生き物の不思議な姿や行動に着目した番組『へんてこ生物アカデミー』(NHK総合)で、大学生が新しい生態を発見したことが印象的だったと書いてくれた高校生のモニターが、大学の研究費の少なさなど日本の現状についてさまざまな問題提起をしていて感心させられた。

民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要報告がありました。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。

以上

第175回 放送倫理検証委員会

第175回–2022年9月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

第175回放送倫理検証委員会は9月9日にオンライン形式で開催された。
委員会が9月9日に行ったNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から様子が報告された。
山梨放送が第26回参議院選挙期間中の7月2日に候補者が出演する番組『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送したこと、およびBS朝日が同選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』を放送し、それぞれに候補者が出演していたことについて討議を行った。
第26回参議院議員選挙の投票日当日に、フジテレビが、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組を放送したことについて討議を行った。

議事の詳細

日時
2022年9月9日(金)午後5時~午後6時15分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHKBS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、番組と局のホームページで公表し謝罪した。委員会は放送倫理違反の疑いがあるとして2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。委員会は9月9日、当該局に対し意見書の通知を行い、続いて意見書の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。同日に開催された9月の委員会では、委員会決定を伝えたNHKのニュース番組を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. 参議院選挙期間中に立候補者が出演した3番組について討議

委員会は、参議院選挙期間中に立候補者の出演番組を放送した以下の3番組について討議を行った。
① 山梨放送『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』
山梨放送は第26回参議院選挙期間中である7月2日、『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送し、西郷隆盛の玄孫(やしゃご)である西郷隆太郎氏を取り上げた。同氏は6月6日、日本維新の会から比例代表候補として立候補表明をしていた。当該番組は他系列の放送局が1月8日に放送したものを購入して放送したものだった。
放送後、候補者の宣伝になるような番組を放送するのは山梨放送が応援しているようで大きな問題だという内容の視聴者意見がBPOに寄せられた。これを受けて委員会では、当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、購入先の放送局から出演者リストを受けとった5月時点では西郷氏は立候補を表明しておらず、リストにもその記載はなかったという。また番組の素材チェックは公示2日前の6月20日に行われたが、同氏がいわゆるタレント候補ではなかったため担当者は立候補表明をしていたことに気づかず、そのまま放送した。
当該放送局は再発防止策として、購入番組は選挙期間中および公示1か月前からこれまでの担当者のほかに編成部員を加え二重の確認を行う、番組購入の際のチェック体制を一層強化することなどを挙げている。
② BS朝日『暴れん坊将軍Ⅱ』
③ BS朝日『新・科捜研の女3』
BS朝日は第26回参議院選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』をそれぞれ放送した。
いずれも他局から番組を購入して再放送したもので『新・科捜研の女3』には候補者の石井苗子氏(日本維新の会・比例代表)、『暴れん坊将軍Ⅱ』には三原じゅん子氏(自由民主党・神奈川選挙区)がそれぞれ出演していた。
『暴れん坊将軍Ⅱ』は約40年前の1983年制作で、三原氏は素性を隠し市井にまぎれる将軍に、ある出来事を契機に恋心を抱く町娘の役。『新・科捜研の女3』は約15年前の2006年の制作で、石井氏は質店の社長だが、裏で金融業を営んでいて、融資先とのトラブルで殺害されるという役。三原氏および石井氏は、共に準主役であった。
BPOにはBS朝日から「参議院選挙候補者が選挙期間中に出演していた」旨の自主的な報告があり、また、視聴者からも「過去の出演とはいえ、公職選挙法に違反するのではないか」という意見が寄せられたため、委員会は当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書には、出演者チェックやプレビューは購入時の4月のみで、放送直前には再度のプレビューを行わなかったこと、また、三原じゅん子氏は当時「三原順子」で芸能活動していたことをチェックの担当者が認識しておらず名前を見逃したこと、石井氏については番組資料の出演者リストの中に名前がなかったことなどが記載されていた。
また、再発防止策として、番組プレビューを購入時ではなく番組編成2週間前に行うことや、少なくとも選挙の公示・告示の1カ月前から内容・出演者が選挙期間にふさわしい作品かどうかを編成担当らが複数回確認する等が示されている。

上記の3番組は、委員会が過去に公表した3つの意見書で取り上げた問題を含んでいる。委員会は、2012年12月2日決定第9号「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」において、参議院選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組について、放送倫理違反があるとは判断しなかったが、原因について出演者のチェックが行き届かなかったという単純なミスであることや選挙に対する関心の低さについて指摘をしている。
また、2013年4月には、知事選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』について、委員長談話を出し、参議院選挙の年であることに注意喚起も行っていたが、直後の参議院議員選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組があったため、委員会は、事態を重く見て、2014年1月8日第17号決定「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」において、視聴者に与える印象の程度は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれのある程度にまで達していることや選挙に対する全社的な意識づけの不足があった点も踏まえて放送倫理違反があると判断している。
さらに、2017年2月7日 第25号委員会決定「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」においても、再放送された番組に候補者が出演していた1番組について審議を行っている(放送倫理違反とは判断していない)。
以上の意見書を踏まえて今回討議した3番組のうち、番組①は、候補者が番組の中で国のために働きたいなどの発言をし国政に出る気持ちが察せられたものの、放送に至る経緯をみれば、当該局に不注意があり、選挙と結びつける意図があったとは思われないこと、候補者がタレントでなかったことなどの事実が確認でき、番組②と③は選挙とは全く関係のない番組であることを踏まえて、いずれの番組も他の候補者との間で実質的には公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまでは達しているとまではいえないと考えられた。そして、いずれの放送局においても再発防止策がとられていることから、委員会は、その実効性に期待することとして、討議を終了した。
もっとも、参議院議員選挙のたびに、候補者が出演している再放送番組の放送が繰り返されることについて、委員から「いたちごっこ」になっているとして憂慮する声が相次ぎ、担当者のミスで終わらせるのではなく、出演者の名前を会社のシステムに登録しておくなどの仕組みによって防止できる可能性があること、放送番組は出演者にとっては利用価値のあるものであることを留意すべきであること、再放送であってもチェックには念を入れるべきであることなどの意見が出され、議事概要で改めて注意を喚起すべきであるとの結論で一致した。

3. 視聴者から「投票行動に多大な影響を与える」という意見が寄せられたフジテレビ『日曜報道THE PRIME』について討議

フジテレビは、第26回参議院議員選挙の投票日の7月10日(日)7時30分~8時55分に、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、7月8日応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組『安倍晋三元首相を悼む…安倍氏の軌跡と日本の今後』を放送した。放送後、同番組について、視聴者からBPOに「実質的に特定の政党に投票を呼びかけるもので、公職選挙法に違反するのではないか」「放送法第4条、政治的に公平であることへの違反だ。投票行動に多大な影響を与える」といった意見が寄せられた。これを受けて委員会は、フジテレビに報告書と番組DVDの提出を求め、番組内容について討議した。
本件番組は、安倍元首相と所縁の深い3人の識者をコメンテーターとしてスタジオに招き、前半は、映像やコメンテーターが語るエピソードを通じて、安倍元首相の安全保障政策や外交政策の成果や功績について伝えた。後半は、銃撃事件の状況と警備上の問題点を専門家の解説を交えて伝え、選挙戦最終日を迎えた各党の同事件の受け止めを紹介し、最後に、コメンテーターが今後の日本はどうあるべきかについて語って終了した。
委員からは「自民党に直接つながることではないにしても、選挙の当日に、安倍元首相の功績や国際社会での評価を伝えることは、特定の政党の功績や評価を放送しているのと同じだと、視聴者に受け取られかねない」「番組の最後で、コメンテーターが、安倍氏の志を継いで憲法改正を岸田政権にやらせましょうと特定の政党へ投票を呼び掛けるに等しい内容の発言をしている。キャスティングの段階で、そういった発言が予期される場合、司会者や局側がどういう風にコントロールするのかを考えておくべきだ。番組制作のあり方に問題があったのではないか」という意見があった。
一方で「安倍元首相の襲撃事件を選挙前に報道した他の番組と比較して偏りがあるといえるだろうか」「特定の政党に投票を促すと認められる明示的な発言があったとまではいえないのではないか」「この番組が実際に投票行動を左右したかどうかを認定することは難しいのではないか」「銃撃事件のインパクトを考えると、週に1回編成されている番組が、その週を逃すと時期を逸するという気持ちになるのは分からなくもない。かなりレアな出来事に関して投票日当日に報道したということであれば、再発性は低いのではないか」という声があがった。
その上で、当該番組のみを取り上げて政治的な内容の番組に踏み込み具体的な判断を示すと、その判断が拡大解釈を招き、今後放送局が政治問題を伝えるにあたっての足かせになる恐れがあることに加え、当該番組が選挙についての報道・評論に関する番組とはいいがたく、他党の代表者の映像も含まれており、放送基準に照らして選挙の公正さや政治的公平性の問題として取り上げることは困難であるとして、本件番組については、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象とはしないとの結論に至った。

4. 8月に寄せられた視聴者意見を議論

8月に寄せられた視聴者意見のうち、ワイドショー番組などで旧統一教会に関連する様々な報道についての多様な意見や、情報番組で福島原発の処理水放出に関するコメンテーターの発言に対して批判的意見が寄せられたこと、宗教法人による悪質な霊感商法が社会問題となる中、霊能力者を自称する人物を番組出演させるのは不適切ではないかという意見があったことなどを事務局が報告した。

以上

第308回放送と人権等権利に関する委員会

第308回 – 2022年9月

「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2022年9月20日(火)午後3時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリング及び審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを行った。特に犬の死亡の経緯について詳しく話を聞いた。終了後、本件の論点を踏まえ審理を続け、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を確認した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3.「判断ガイド2023」体裁について

2023年発行予定の「判断ガイド2023」のウェブ上での体裁などについて、事務局から報告した。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年9月9日

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は9月9日午後1時30分からBPOで行われた。委員会から小町谷委員長、
高田委員長代行、西土委員、井桁委員の4人が出席し、NHKからは専任局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から、NHKの報告等は字幕が誤っていたというトーンでまとめられているが、委員会は字幕の付け間違えという考えは取っていない。考えていただきたいのは、本件放送が視聴者に何を伝えたかということだ。五輪反対デモは確固たる信念を持った者が集まって行われているのではなく、主催者が金銭で参加者を組織的に動員し、主催者の意向に沿って行動させているという誤った印象を視聴者に与えることとなったと考える。なぜ、このような事態が起きたのか。委員会は取材、編集、試写の各段階に問題があると判断するに至ったとし、委員会決定に沿って問題点を説明した。
井桁委員は、重大な放送倫理違反と判断した理由について、単なる過失を超えていること、放送の影響が大きかったことの2点を挙げて説明した。コロナ禍での五輪開催という、国民の議論を二分するような大きなイベントに関して、その反対デモという一方当事者の信用や評価を傷つける結果となったことは否定できないと述べた。
高田委員長代行は、男性が五輪反対デモには行かないんだと繰り返して発言しているのにもかかわらず、なぜ、行くかもしれないといったようなことが番組のメインとして扱われることになったのか。一種の思い込みの暴走みたいなものに、なぜストップが掛けられなかったのか、非常に残念であり、疑問だと述べた。
西土委員は、国民が知りたいと思う社会的出来事に対する放送人の関心があって初めて、放送人の行動を規律する放送倫理が活きてくると思う。しかし、本件放送関係者はデモに対する関心が薄く、放送倫理違反に至ったということになる。本件放送は放送倫理の適用の在り方を検討する以前の問題を提起しているのではないか。その意味で、放送倫理を意識する上での条件を見直すべきことを問いかけているように思うと述べた。
これに対してNHKは、「指摘を真摯に受け止める」「取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の信頼に応えられる番組を制作してまいりたい」と述べた。

その後、午後2時30分からオンライン形式による記者会見を開き、委員会決定を公表した。記者会見には57社118人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、本件放送が視聴者に何を伝えたのか、何が問題だったのか、委員会決定に沿って説明し、放送倫理基本綱領及びNHK放送ガイドラインに基づき、重大な放送倫理違反があったと判断したと述べた。そして、従来、委員会が取り上げる事案は経験の少ないスタッフが関わるものが多かったが、最近は他局も含め、中堅スタッフが中心になったケースが散見される。中堅スタッフに何らかの問題があるとすると、若手スタッフの育成を担うことができないということになる。すると、全体として、放送の質が下がっていく可能性があり非常に危惧するところだ。そういうことのないよう、ぜひ、取材の基本である事実確認を改めて徹底していただきたいと述べた。
続いて井桁委員は、本件放送は悪意に基づくものではないかという憶測を呼んでしまったことも否定できない。1つのイベントに対する意見を、一方的におとしめるような悪意があったのかもしれないと思われてしまった。そのように視聴者に誤信させてしまったという影響も無視できないと考えていると述べた。
高田委員長代行は、一番印象に残っているのは、ヒアリングの際に現場スタッフの方のほぼ全員がデモとか、いわゆる社会的活動に関心がないということを、あっけらかんと語っていたことだ。もともと関心がない、だから深く考えなかったと繰り返していた。放送番組を作る側の感度、意識の低さというか、そういう部分も今回の問題の背景にあったのではないかと思うと述べた。
西土委員は、ある研究者の言葉(※)を借りるなら、「あるテーマのための集会に自らの身体を投入するという判断には、相当の決意」が必要なはずだ。五輪反対デモのように、政府の政策に、ある意味で反対する。そのために「自らの身体を人々の前に投入することは、何らかの損害を被るリスクを高める」と私も思う。リスクがあるにも関わらず、あえて声を出している人々の尊厳を傷つける結果となってしまった重大さをNHKは噛みしめていただきたいと述べた。
記者からは、委員会決定の付言:字幕問題に限定されるべきではなかった、について質問が重なった。「NHKが字幕問題に収れんしてしまった原因をどう考えるのか」という問いに対して小町谷委員長は、「まず、委員会は放送局の自律を支援するという立場にある。委員会が報告書の提出を依頼する前からNHKは報告書の準備を進めていた。そういう自律的な動きは尊重したい。ただ、委員会はNHKの報告書とは違う視点で本件を見たということだ。NHKの報告書がどうしてそうなったのか、私たちはそれを追及する立場にはない」と答えた。
「単なる字幕の付け間違いという問題ではないということだが、どういう問題だと認識しているのか」という質問に対して高田委員長代行は、「NHKの報告書と委員会決定を見比べるとわかると思うが、NHKの報告書には、五輪反対デモについての発言ではないものを、五輪反対デモのものとして編集したとか、そういったところは強く書かれていない。あるいは、男性は2時間ほどの取材の中で、カメラが回っている取材の中では、一貫して五輪反対デモには関心がない、自分は行かないということを言い続けたというところはNHKの報告書からは十分に読み取ることができない。しかし、委員会は検証の結果、そういう判断をしたということだ」と述べた。
その他の質問は、事実関係の確認に関するものが多かった。

(※)毛利透「集会の自由―あるいは身体のメッセージ性について」毛利編集『人権Ⅱ』(信山社、2022年)244頁以下

以上

第43号

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見

2022年9月9日 放送局:NHK

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。

2022年9月9日 第43号委員会決定

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目 次

2022年9月9日 決定の通知と公表

通知は、2022年9月9日午後1時30分からBPOで行われた。
また公表の記者会見は、午後2時30分からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には57社118人の参加があった。詳細はこちら。

2022年12月9日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第43号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2022年12月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

全文pdf

目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などに意見が寄せられました。

2022年8月にBPOに寄せられた意見は1,548件で、先月から1,195件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール81%、電話17%、郵便・FAX各1%。
男女別は男性44%、女性17%で、世代別では40歳代27%、50歳代22%、30歳代21%、60歳以上14%、20歳代11%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、8月の送付件数は618件、54事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などについての意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は27件、CMについては15件でした。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は71件で、前月から68件減少しました。
今月は「表現・演出」が17件、「要望・提言」が10件、「性的表現」と「編成」が、それぞれ6件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる報道について。法令違反や反社会的行動があれば当然批判されるべきだが、エスカレートする報道に影響されて、信教の自由を尊重してきた視聴者の気持ちに、いささかでも変化が生じないかと心配。

  • 旧統一教会の記者会見について。さまざまな問題が指摘されている教団の主張を、生中継でそのまま放送したことに若干の懸念を持った。「教団の言い分」であることを明示して視聴者の注意を喚起してもよかったのではないか。また、脱会したばかりの元信者に影響を及ぼすのではないかと気になった。

  • 旧統一教会問題の追及を継続してもらいたい。政治家との癒着によって、旧統一教会のさまざまな問題が放置されていたのであれば許しがたいと感じる。

  • ある政治家を名指しして、事務所のスタッフに旧統一教会の関係者がいると、コメンテーターが発言していた。事務所スタッフの人数は限られているだろうから特定は不可能ではあるまい。信仰はきわめてセンシティブな個人情報であり、番組で暴露しようとする言動は不適切かと思う。

  • 家庭連合の仲間は報道によって仕事に行きづらくなり、学校でイジメにあい、あるいは人間関係が崩壊するなどしている。ワイドショーなどでの出演者の誤った発言による不利益の責任は誰が取るのか。

  • 旧統一教会の反社会的な活動はもちろん報じるべきだが、安倍元首相が被害者であるということを忘れてはならない。また、旧統一教会の構成員にも日本国民である限り参政権は認められている。報道各社が「報道の自由」を濫用していると感じる。

  • 東京渋谷区で起きた女子中学生による殺人未遂事件で、被害者が路上に倒れている映像が繰り返し放送された。現場映像の重要性は理解できるが、刺された直後の映像を何度も見ていると恐怖心や不安が募るし、被害者やその関係者の心情を傷つけるのではないかとも思う。事件に遭遇した一般の人がスマホなどで撮影した映像、特に視聴者への刺激が強い映像の使用については冷静、慎重であってほしい。

  • 自治体の指定した避難場所が自宅より氾濫箇所に近かったり、避難場所まで行く手段がなかったりなど、どのように行動すべきか迷うことがある。被災現場のローカル局は、地元の地形や道路事情などに詳しいはず。「避難してください」という呼びかけを繰り返すだけでなく、安全な場所はどこか、利用できる移動手段は何かといった、実際の避難行動に役立つ具体的できめ細かな情報を伝えてほしい。

  • ラジオの情報番組のコメンテーターが新型コロナ政策に関する東京都知事の発言について「バカじゃないの」、「人間のクズだね」などと侮辱していた。パーソナリティーの制止などもなし。番組中で行き過ぎたコメントなどがあればフォロー、修正するのがパーソナリティーや制作者の役割だと思う。

  • 情報番組のコメンテーターが福島第一原発の処理水海洋放出について「環境に与える影響が非常に大きい」と発言したことに驚いた。この問題についてはIAEAが国際基準に照らして問題はないという結論を出している。IAEAの見解に反論するのであれば科学的根拠をしっかり示して主張すべきだし、そうではなくて科学とは異なる観点から論じたかったのであれば、もう少し丁寧に言葉を尽くして説明すればよかったと思う。

  • 内閣改造の際、大臣に内定したと分かった人の名を、ひとりずつ速報する必要はあるのだろうか。ちょうどその時間帯に、記録的短時間大雨情報など警戒が呼びかけられている地方があった。組閣速報により気象情報への注意がそれてしまうのではないかと気になった。

  • 「使用済みのマスクを売ります」という女性を取材していた。コロナ禍での生活の実情を映し出した企画だったが、売る側の女性だけではなく、買う側の男性を追跡して取材すれば、さらに問題を掘り下げることができたと思う。買い手がいるから売買が成立するという側面にも触れてほしかった。

【バラエティー・教養】

  • 旧統一教会関連の報道でいわゆる霊感商法が取り沙汰される中、"心霊現象"を扱うバラエティー番組に、過去に相談者の不安をあおったとして損害賠償命令を受けている"霊能力者"を起用し続けているのは不適切。この人物は自身のウェブサイトで番組出演を自分の宣伝のように利用している。放送局が被害の一因を作ってはいないか。

  • 建設重機でビールのジョッキをつかんで人の前に置いたり、焼肉をつかんで人の口元まで近づけたりしていた。ビールや焼肉を提供される側の出演者にはヘルメットなし。安全管理の意識が低すぎるように思う。

  • 制限時間以内に止めないと小麦粉の入った風船が破裂して粉まみれになる装置の作り方と破裂の様子を紹介していた。粉塵爆発の可能性がある大変危険な装置ではないのか。

  • アニメのキャラクター「妖怪人間」に似た人がいるという視聴者の情報に基づいて、その人物を捜すという企画。人の容姿を好奇心の対象にする発想に違和感を覚えた。また、捜し当てた当該人物に取材の同意を得る際に、「妖怪人間」と表現していることなど企画の細部をきちんと説明したのか疑問が残った。その点についてもう少し具体的な説明を番組内で行ってもよかったと思う。

  • カルガモ親子の"引っ越し"に密着、という企画を放送していた。カメラマンをはじめスタッフが大勢で追いかけたことは、カルガモにとって大きなストレスになったのではないかと思った。カルガモはパニックを起こしていたかもしれない。離れたところから静かに見守るべきだと考えるが、もし、今回の番組のような形で密着するのであれば、子カルガモが溝に落ちたときには助けてやるなどしてもよかったのではないだろうか。

【ドラマ】

  • ドラマで、反社会的勢力から不当な要求を受けている被害者を、弁護士が「なすすべがない」と突き放し、その後被害者が警察に相談したかどうかは描かれなかった。また、いわゆるねずみ講に加担してしまった登場人物が、契約解除の申し出を拒否され、その場で暴力に訴えるなど、トラブルに遭った時の対処の仕方について、視聴者を惑わせる可能性があるのではないかと心配になった。また、結婚相手とその家族の経歴や資産状況を細かく調査したという、いわゆる"身上調査"について、当たり前のことのように描かれていたことに違和感を覚えた。

【その他】

  • 夏休み中は、子どもが普段より遅くまでテレビを見ている。美容整形などのCMの放送については、夏休み期間という事情を考慮してほしい。

  • 地方でテレビを見ていると、全国ネットの番組が最後まで放送されずに終わってしまうことがよくある。できれば最後の部分も見たい。何とかならないだろうか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、昭和の時代の実写映像の中に教師がパンツ一枚の生徒を背後から竹製の物差しでたたくシーンがあり、「愛のムチ」と紹介された。未成年者に対する暴行でしかない映像を扱うにあたっての配慮が不十分だ。

  • バスや鉄道を乗り継ぐバラエティー番組で、自転車で走行中に「止まれ」の標識が見えるのに一時停止しなかったり、安全確認しないまま横断歩道を渡ったりする場面があった。子供が視聴する時間帯の放送で、堂々と交通法規に違反するのはいかがなものか。

  • バラエティー番組で「熱さ我慢対決」として、蒸し器から出したてで熱々のメガネや帽子、Tシャツをいかに素早く身に着けるかを競わせていた。芸人たちが熱さに耐えながらやる様子を面白がる趣旨だ。子供が真似するかどうかは別にしても、何らかの悪影響があるだろう

【「要望・提言」】

  • 週末を使ったチャリティー放送に、私の孫たちは毎年のように、貯金しては寄付している。集まった金額は公表されるが、使途の詳細は明かされない。募金したお金がどこにどう使われているのかを明確に出してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夜8時からのバラエティー番組でお笑い芸人にドッキリを仕掛けるコーナーがあり、下着姿のセクシーな女性が喘ぎ声を上げながら悶えるシーンが、繰り返し放送された。子供もまだ起きている時間帯に、このような内容は非常に不適切だと感じた。

  • 朝の情報番組の中で男性芸人が、おすすめの商品をフリップに手書きして紹介する際に、著名な清涼飲料の商品名(アルファベット)を、ボケでわざと一文字間違えて、アダルトサイトの名称を書き、ネタにした。夏休み中で、子供も見ている時間帯に流す内容ではなく、不適切なものだ。よく考えてほしい。

【「編成」に関する意見】

  • 23時台放送の連続ドラマを、まだ夏休み中なので遅い時間まで起きて家族で見ていたら、突然怖い映像が連続してあり、わが子がショックで夜眠れなかった。23時台でも起きている未成年者は多いので、このような映像のドラマは夜中にやってもらいたい。

2022年6月28日

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する『見解』をテーマにした「意見交換会」内容報告 & 事後アンケート調査結果報告

◆概要◆

青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を2022年6月28日、千代田放送会館2階ホールで開催しました。在京・在阪の放送局およびNHKには来場してもらい、全国の加盟社にはオンラインで同時配信しました。
放送局の参加社は、会場の在京・在阪局が12社39人、全国の加盟社のオンライン参加が105社で、アカウント数は230でした。
委員会からは榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員の8人全員が出席しました。

最初に榊原委員長から、「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。この『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーについての見解』を作成するにあたり、まとめ役をしてきました。この意見交換会では『見解』をまとめるに至るまでには様々な考え方があったことをお話ししたいと思います」と挨拶がありました。

続いて同じく榊原委員長から今回の『見解』の趣旨や、『見解』を出すに至った経緯などについて説明が、そして起草担当委員から補足説明がありました。

○榊原委員長
まずどのような経過でこの『見解』を公表したのかについて簡単にお話しします。
会場の皆さんの中には昨年11月に在京局の関係者を招いて開催した勉強会・意見交換会に参加された方もいらっしゃるでしょう。この時の意見交換会はまさに『見解』の議論の過程のひとつでした。実際にこのような『見解』になるかどうかまだ分からなかったのですが、こういうテーマを議論しようとなってもう1年近く経っていると思います。
どうしてそれが、私たちの委員会で検討する俎上に上がったかについて、簡単に経緯をお話しします。
まず、これは青少年委員会、あるいはBPO全体もそうなのですが、その性質に関わっている点があります。私たちは「視聴者からの意見」というモニターを行っています。視聴者から届く様々な意見がきっかけとなって、私たちははじめて活動を起こします。私たちは「視聴者からの意見」と離れたところで課題を見つけることは基本的にしません。「視聴者からの意見」の数や内容という一定の基準を作って、委員会の俎上に上げるプロセスをとっていて、全てが「視聴者からの意見」でスタートするのです。
BPOは民放連とNHKが、いわば、皆さんが作った第三者機関で、放送を見た誰もが意見を寄せることができます。BPOはその窓口です。
今回の『見解』に対してニュースやインターネット等で様々な意見や批判があるのは承知しています。しかし、その中の多くの方が誤解しています。BPOが検閲や規制をする機関であるかのような言い方をされ、それが一般の視聴者だけでなく、ニュース記事を書く記者の中にも全くの誤解を基に書いている方がいることはとても残念に思います。
BPOは政府の干渉から放送の自由を守るための仕組みとして、皆さんが作ったものであることを、ぜひ思い返してください。
それから、BPOは政府などの機関と違います。(その決定は)法律とも違います。今回公表した『見解』にも、法的あるいは道義的な規制力はありません。視聴者から寄せられた意見についてどう考えたらよいのかを、エビデンスに基づいて解釈して皆さんにお返しする役割であることを理解してください。
もうひとつの経緯として、BPOは今回とほぼ同じ内容の見解や意見をこれまでに3回出しています。青少年委員会からは2000年に「バラエティー系番組に対する見解」、2007年に「『出演者の心身に加えられる暴力』に関する見解」を、また放送倫理検証委員会から2009年に「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を出していて、決して今回が初めてではありません。
『見解』について事前に皆さんから寄せられた質問の中には「痛みの定義とは何か、ガイドラインを示せないか」という趣旨のもがありましたが、BPO青少年委員会の性質とは相容れないものです。私たちは基準やガイドラインを示したり、こうすべきだと言ったりするような委員会ではありません。この『見解』は、「視聴者からこんな意見が来ているが、これにはこういう意味があるのではないか、今後番組を制作するときにぜひ念頭に置いて制作していただきたい」という思いから作ったものです。
「規制をかけるのは何事か」という意見もありますが、私たちには規制をするような権限はありませんし、BPOはそういうために作られたのではないということは確認しておきたいと思います。
この後は『見解』の起草を担当した各委員から補足説明をしてもらった後、質疑応答に移りたいと思います。

○髙橋委員
私はおもに子どもの自殺問題に関して活動していて、いじめに関することと自殺に関することはリンクする部分があると考えています。2013年に「いじめ防止対策推進法」ができて以来、この10年でいじめに関する社会的な情勢がかなり変化してきました。そんな中、番組がいじめを助長することにならないかという視点は欠かせないと思っています。
加えて、今は子どもたちが動画を撮ってそれをSNSに投稿できる時代です。ちょっとしたドッキリの仕掛けであればまねできてしまい、それをSNSで拡散できる時代であると感じます。下手をするとYouTubeなどの投稿動画のほうが悪質な場合が多いです。(映像が) 子どもに与える影響が時代とともに変わってきていると思います。

○沢井委員
私たちは今回の『見解』を科学的なエビデンスに基づいたものにしようと考えました。テレビ放送は70年の歴史があり、番組が視聴者に与える影響についての研究は蓄積され、そのメタ分析から共通項が見出せます。映像で攻撃的な行為を見たり、それを周りが平然と見ている様子を視聴したりすることで、その模倣が生じることを報告する論文が多くあります。
今回の『見解』の新しい点は、痛み苦しんでいる人を傍観的に見ている、あるいはワイプの中で人の苦痛を笑いながら見ている番組が近年増えているという指摘です。「痛みがあってはいけないのか?」という議論もありますが、心理的・肉体的な苦痛を味わっている様子が演じられていたものだとしても、その様子を周辺が見て笑っているという、「潜在的な攻撃性が模倣される可能性」が、今回の問題点です。
「人を殴る場面がテレビ番組、例えばドラマなどにもあるのに、なぜそれについて言わないのか」との意見がありますが、フィクションという枠組みが明確なものは、5歳の子どもでも「ああ、こういう物語か」と分かります。今回は、痛みを受けた人を遠巻きに見て笑うという多重構造のバラエティーが問題ではないかと言っているのです。
『見解』の中で具体的な例を2つ挙げました。下着の例と、3メートルの深い落とし穴に6時間落としたままにしておく企画です。この2例にふだんの10倍の数の視聴者意見が来ました。私たちは視聴者が感じる不快をただ代弁するのではなくて、なぜそれを不快と思う人がいるのか、なぜここで共感性の問題を問わなくてはいけないのかということを、科学的なデータを基に説明する必要があると思いました。視聴者意見の代弁というより、それに対して解釈を加えながら説明する。そして、問題点を指摘し、もう少し違う視点で面白いものを開発できないかという提案の気持ちも込めて、この『見解』を書きました。

○緑川副委員長
私の仕事は弁護士ですが、弁護士の仕事は紛争が生じたときに生じた事実に法律や規範を適用して結論を導いていきます。ですから、何か問題が起こったときにはどうしても、法律はどうなっているのだろう、ルールはどうなっているのだろう、規範はどうなっているのだろうと考え始めて、そこに対して生じている事実がどのように当てはまるのかという思考で仕事をしています。
しかし青少年委員会で、テレビ放送が青少年にどういう影響を与えるのかを考えるときには、BPOの例えば放送人権委員会のように特定の表現が人権を侵害しているのか、放送倫理に違反しているのかというような思考方法とは違ってきます。そこには、これ以上やったら青少年に悪影響を与えると、私たちが当てはめられるようなきっちりとしたルールがあるわけではありません。やっていいルール、やってはいけないルールがあるわけではないのです。
私自身も子どものころは、「8時だヨ!全員集合」を毎週のお楽しみとして見ていた世代で、テレビで子どもによい影響を与えないと言われている番組を見ることが実際子どもにどのくらい影響を与えているのか、説得力のあることなのかと思っていたところがありました。
青少年委員会に入って、毎月届く視聴者意見を見ていると、誰かに痛みを与え、それを笑っているバラエティー番組に対する視聴者意見が毎月一定数、継続して来ていることが分かりました。番組制作者、また私たち第三者機関の委員は、青少年に対する影響というものが説得力のある科学的な根拠を持ったものなのかどうかを、きちんと考えなければ、調べなければ、確認しなければいけないと思うようになりました。
委員長からも「毎回こういう意見が来ている。一度考えてみたほうがよいのではないか」という示唆があり、青少年に対する影響、子どもに対する影響というのが科学的にどういうふうに研究されているのか、科学的な根拠を確認したいという意見も申し上げて、今回の検討が始まりました。発達心理学や小児科医という子どもについての専門家が多くいる中で、時間をかけて世界的な知見について説明を受けて今回の『見解』になりました。
私たちは、こういう研究があることをテレビ番組の制作者の方々とも共有をして、その中で今のこの時代、公共性を持っているテレビとしてこれからどう表現を工夫していくべきかを一緒に考えていきたいと捉えています。
BPOが『見解』などによって、結果的に番組制作者に不自由さをもたらしてしまうのではという意見もあります。青少年に影響があると思えば、この表現はやめておいたほうがよいのではという発想が出てきますが、表現の内容も方法も無限にある中で、今のこの時代や社会において工夫を凝らしていい番組を作っていくということを、私たちも一緒に考えていきたいと思っている次第です。

主な質疑応答の内容は以下のとおりです。

Q:痛みを伴うバラエティーに関して、痛みの判断基準はどこまでがOKでどこまでがNGなのでしょうか。制作者側の物差しになるようなガイドラインは作れないのでしょうか。

A:(榊原委員長)私たちは「ガイドラインを作成してここまではいいですよ」と判断するような立場ではありません。基本的には視聴者である青少年が「本人が苦痛を感じている」「すごく痛そうだ」と思うかどうかです。その痛みは演技である可能性もあると思います。しかし、それを見て「これはちょっとすごく痛そうだ」あるいは「苦痛だ」という「苦悩」、そういう表現が、私たちがここでいう「痛み」になります。
格闘技やドラマの中にも暴力シーンが出てきますが、流れの中、ルールの中でやっているのだということが予見できるものは、表面的に「痛い」と見えても今回対象としたものではありません。
それからもう一点。ただストレートに見るだけではなくて、スタジオにいる人たちがその場面を見て嘲笑している、楽しがっている。この2つのことが同時に見られるということが、私が(『見解』の中で)ミラーニューロンという脳科学の話を出しましたが、子どもたちの中で「これは何なんだろう」と、つまり人が苦しがっているとしか見えないのに、周りにいる人がこんなに笑っている。それをリアリティーショーとして見た場合、何度も何度も見る過程の中で、子どもたちの中には、例えば実生活で他人が苦しみを味わっていても、それを傍観するような姿勢につながる可能性があるということです。
ですから、判断基準というのは書かれたものはありません。表現、演出は皆さんの専門ですので、そこはきちんと見ていただいて、例えば「小学生ぐらいの子どもがこれを見たらどう思うだろうか」というように想像力を働かせて、皆さんの中で判断してもらいたいと思います。

Q:芸人が覚悟を持って臨む“お約束的な”痛みを伴う笑いは明るくおおらかな気持ちで見ることができますが、一方でいわゆるドッキリのように本人が予期せず痛みを受ける姿を笑うような番組には不快感を覚えます。これらをひとくくりにせず分類するような動きはありますか。

A:(榊原委員長)覚悟を持って、明るくおおらかな笑いの気持ちで見ることができるような演出・演技というのはたくさんあると思います。私たちが審議に入ったところで、社会的には大みそか恒例の人気番組に対して向けられたのではないかと言われました。私たちには青天の霹靂でした。今回の審議入りの際に、あの番組については視聴者から批判的な意見は来ていませんし、私たちもあの番組のことは全然対象に考えていませんでした。あの番組はある程度のルールの下で行われている、ゲームと言うと怒られますが、それは子どもにも分かります。小学生の間でもとても人気のある番組で、私たちは審議する段階でこの番組のことは対象として考えていなかったというのが事実です。

(沢井委員)分類してはどうかという点に関しましては、これは作り手の方が分類をなさってもよいのかなと思います。それなりの基準というものを、制作の方がそれぞれに企画の助けとしてお作りになればよいと思います。
拷問のような、「自分ではどうにもできない状態で苦しむもの」が、今までの視聴者の意見においては、非常に不快を持って受け取られる傾向にあります。
痛みがあっても、出演者が挑戦して、乗り越えていくとか、何かを獲得していくとか、メダルを取るとか…という場合では、視聴者は共感を持って見ますし、応援したくなります。例えば『SASUKE』の海外版『THE NINJA WARRIORS』は非常に人気があります。チャレンジする姿は痛そうで辛そうですが、罰ゲームはひとつもない番組です。ゴールまでたどり着けるか否かを競うだけで、ルールも明確です。苦しみがあってもそれが共感になるという構成で、国際的にも評価されている番組です。
日本のバラエティー番組は罰ゲームが多過ぎると思います。なぜこれほどまでに罰を与えなればいけないのか疑問です。輝かしい競争というものがあれば、そこで競い合う姿を見て、誰かを応援するということだけで、視聴者はハラハラドキドキしながらも面白いわけです。

Q:行為の見た目とは違い、被行為者が受ける痛みがほとんどないような場合も見た目が痛そうだからよろしくないという判断になるのでしょうか。お笑い芸人の突っ込みもその部類に入ると思いますが。

A:(榊原委員長)被行為者の受ける痛みがほとんどないような場合でも視聴者にはその場面からしか情報は入りません。特に年齢が小さい子どもには、そこに見えることが全てです。実際には痛みがなくても、明らかに痛みが起こっているように見える演出があった場合、さらにそれを周りの人たちが笑うような場面があった場合、子どもたちによい影響を与えないと思います。
お笑い芸人の突っ込みは、それが芸として成り立っている場合、文脈の中でやっているということが見る側にも明らかです。ひとつの芸として痛い思いをされて、それがまた受けるというような芸が確立している場合には、みんな「来るぞ」という感じで見るわけですから、それは見る側にとって先ほど言った大きな心の痛みにはならない。ただ、同じように2人でやっている場合でも全く予想のつかないところで本当にパンチを喰らわせてしまったときなどで、本当にそれが痛かった場合はリアルに見えると思いますし、この間の線引きだと思います。
お笑い芸人のよく確立された突っ込み芸について、私たちはこれが痛みを伴うことを笑うという対象になるとは最初から考えておりませんでした。

Q:関西には伝統芸能と言ってもよい吉本新喜劇があります。暴力シーンがたびたび出てきます。何かというと棒のようなものや灰皿やお盆で叩いたり、女性の芸人さんを壁に投げ飛ばしてぶつけて目が回るようなしぐさをする場面が頻繁にあります。関西では子どものころからなじみのある芸なので一定の理解をしてお約束事と受け止めますが、いかがでしょうか?

A:(榊原委員長)痛みを伴うことを笑いとするということに該当する番組はどういうものがどのくらいの数があるのかを、数年にわたって見ていますが、吉本新喜劇が視聴者意見で批判的なものとして寄せられたことはほとんどありません。見る方は分かっているのではないかと思います。上からたらいが落ちてきたりするのは芸の流れの中であることは、みんなから理解されていると思います。もちろん私たちも吉本新喜劇が該当するという考えは最初からありませんでした。

Q:先日、亡くなられた人気芸人の熱湯風呂やアツアツおでんのような芸は、痛みを伴うバラエティーの対象にならないと考えてよろしいのでしょうか。

A:(緑川副委員長)
ご本人の芸は有名ですし、今までの説明や質疑応答でもお話ししたとおり、今回の委員会の『見解』が対象にしているものでないことはご理解いただけたのではないかと思います。
今回の『見解』の4ページに、他人の心身の痛みを周囲の人が笑うことを視聴することの意味ということで、今回の『見解』の趣旨を特徴づけていることをご理解いただけるのではないかと思います。文脈があり、見ている人たちが気持ちよく笑える演芸とか芸とか技術とか、そういう域に達している笑いの中に痛みがあるということを問題にしているのではなく、そこを人が嫌がって避けようと思っていて、避けたいのに羽交い絞めにして痛みを与え、そのことをさらに周りで嘲笑していることが、科学的には子どもによい影響を与えないということがあるのではないかということを、一定程度考えて番組制作をしていくためのひとつの情報というか、そういうことがあるのだということを共有していきたいという趣旨で作った『見解』です。そういう観点から番組制作に役立てていただければと思います。

Q:痛みを伴うバラエティーというくくり自体が広過ぎるので、もう少しテーマを絞られたほうがよかったのではないかと思ったのですが…。

A ;  (榊原委員長)どういう名前(『見解』のタイトル)にしようかということは確かに話し合いました。今回はひとつの番組ではなくて、とてもたくさんの種類がある中で共通点がある批判というかコメントが多かったので、番組名を挙げるのではなくて全体的に扱おうということで、この名前に決めました。
昨年11月に在京局の皆さんと意見交換したときにも、「少し広過ぎるのではないか」という同様の意見が出ました。ただ、実際に議論をする中で、私たちの一番の骨子は本当に苦しんで苦痛に見えるところを周りで笑っているというところ、その中で例えば共感性の発達などによくないだろうということが、だんだんと焦点化されてきた経過がございます。誤解を呼ぶような可能性があったかなという点ではおっしゃるとおりだと思っています。

Q:今は、ものすごい多様性の世の中で、YouTubeもあれば漫画もある、映画もある、いろんなものがあり、子どもたちも同様にこの多様性の中で生きています。小学生と高校生だと考え方も違うと思いますし、実際に番組を子どもが見て、いじめといったところに本当にどれだけリンクしているのかというのが我々には分からないところがありますので、そういうことも教えてほしいと思いますが。

A:(髙橋委員)いじめに関することで報道等に関連するデータはないのですが、少なくとも惨事報道や自殺に関する報道に関しては、心理的な影響があるということが、今までの東日本大震災や9.11のテロのときの研究で分かっています。私自身もこのお笑いのことだけではなくて自死に関する報道に関しても、これは子どもたちにどういう影響があるのかを見ているところですが、バラエティーに限らず報道全般の問題だと思います。
今回この議題が上がったのは、BPOの側からではなく、視聴者からいろいろな意見が届いたからです。それを取り上げて、視聴者と番組制作者との間で私たちは調整をしながら、これをどういうふうに持っていったらよいかを一緒に考えていく立場だと思っています。この番組は駄目とかそういうことではなくて、みんなで一緒に考えていくというスタンスです。

(沢井委員)子どものいじめについてその影響がすぐに出るかどうかですが、放送番組を見てから3か月後かもしれないし、5年後かもしれません。攻撃的な番組ばかりを見ていた、罰ゲームばかり見ていたこと…等々が影響する可能性や因果関係をすぐに見ることは難しいです。
子どものSOSの電話の話し相手をしているボランティアによると、「テレビ番組の罰ゲームをまねした強烈ないじめを受け、死にたいと言ってきた小中学生が複数いる」とのことでした。なかなか表に出ない話ですが、ある程度の数があるだろうと予想されます。

Q:本日、お話しいただいたような痛みを伴うバラエティーの痛みの真意について、BPOから直接、記者や芸人さんに向けて発信していただけたらありがたいのですが…。

A:(榊原委員長)意見交換会という形で私たちの考えを正直に申し上げたのは、それを皆さんの中できちんと分かっていただければよいのではないかと思ったからです。私たちは、「いや、この番組は違う、これは違う」ということを申し上げるべき立場ではないと思っています。つまり、BPOがこう考えているということによって、私たちは皆さんに考えていただきたいということで、一般的な問題の投げかけをしたと思っています。
皆さんにはこの『見解』を作るときには大みそかの番組のことが頭になかったことも申し上げましたし、亡くなられた人気芸人の芸についての視聴者からの意見も来ていないことも申し上げましたので、皆さんにはもうそれが伝わっていると思います。その辺で皆さんの中で確信として持っていっていただくことで、言い方としては、「いや、この間そういう意見交換会があって、どうもBPOはそうじゃないみたいだ」など、これは皆さんの解釈で言っていただくことは自由だと思うのですが、私たちがこの番組は私たちにとってよろしい、よろしくないということを言う、そういう立場ではないということです。
この『見解』は一般の視聴者にも公表されていますが、主に民放とNHKという実際に番組を制作する側に読んでいただきたくて作ったのが本音です。皆さん、確信を持った上でこれならできるという形で自信を持って番組を作っていただきたいと思います。

(緑川副委員長)今の関連でこの『見解』を出した後で批判的な意見がBPOに届いたり、ネットで書かれていたという報告を受けています。私も拝見して気になった点として、青少年に悪影響を与えるという根拠を示していないという意見がありましたが、『見解』の全文をお読みいただければ、根拠を示していることがお分かりになると思ったことがあります。
また、例えば罰ゲームでも私たちは今回の『見解』で問題にしたような、人が困っているところを嘲笑してさらに困らせるみたいな、そういうところは本文を読んでいただければ理解してもらえると思って『見解』を作りました。しかし、題名の『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』というのは、幅広に解釈できるタイトルだったことをそのとき改めて思いました。タイトルが衝撃的に印象に残って、全文を確認されないまま今までやってきた、受け入れられてきたはずの芸もできなくなってしまうのではないかという批判につながったのではないかとも思いました。
もちろん今日おいでくださった皆さんは十分に理解していただいていると思いますが、テレビ局、制作をされている皆さんにはぜひ、現場の方々にも全文を、BPOのウェブサイトにも出ていますから、読んでいただきたいと思います。これをかいつまんで報道された部分だけを読むことでは、私たち委員会が伝えたかった真意や根拠としたエビデンスがあるというところまで、なかなか理解してもらえないことも誤解につながっているのかなと思います。批判的意見の中には、「根拠を示せ」というものが多くあったのですが、やはり批判をするときには原典に当たってから確認をした上でということも必要なのだろうなと改めて思いましたので、制作現場の方々には読んでいただきたいと思います。
これを読むことによって、罰ゲームは全部駄目なのかとか、芸の範疇だったら全部いいのかとか、そういう単純なことではなく、子どもに対して共感性の発達に影響を与えることがあるのを知っているのと知らないのとでは、どういう番組を作ろうかというとき、みんなで作り上げていくとき、ひとつの参考情報になるのではないかと思います。

Q:ドラマは流れや予見などストーリーがあるから影響はないが、バラエティーはそうではないから影響があると断じられているのがずっと腑に落ちません。バラエティーにも流れや予見はありますし、きちんと台本も書いています。構成も作っていますし、そもそもドッキリ番組はタイトルにドッキリと付いています。なので、視聴者もドッキリを見るつもりでドッキリを見ているので、なぜバラエティーだけそこを断じて悪い影響と言ってしまうのかが極めて腑に落ちません。また芸人がいろいろドッキリを仕掛けられたときに、それをワイプなどで嘲笑されていると書いてあります。お笑い芸人がドッキリを仕掛けられて全力でリアクションをして、それをワイプなどで笑われるという行為は、ばかにされているのではなくて、最大の賛辞であると思うのですが、いかがしょうか。お笑い芸人はそういうところで笑いを生み出して、それをスタジオのMCやゲストが笑うということが一番の喜びで、それを職業にされている方であって、ドラマの中で俳優さんが名演技をして、それを見てスタジオのみんなが泣くのと同様だと思います。そこだけなぜばかにして笑われると断じてしまうのかと思っていて、バラエティーのほうはこの『見解』を読む限りでは強めに批判されているような気がしてなりませんがいかがでしょうか。

A:(榊原委員長)とても線引きが難しいことを言っていらっしゃると思います。ドラマの中で暴力場面がある場合には、もちろん多少は物理的な痛みを感じると思うのですが、やはりドラマというのは作られた話であると思われているわけです。ところが、バラエティーの中でリアリティーショーとして、あるいはドッキリという名前がついていても、ドッキリということ自体は、全部作られたものであったとしても、暴力などを受ける人が知らないところでやるからドッキリは面白いわけです。ですから、先ほど言いましたように芸の一部になっていて、次にここでたらいが落ちてくるよ、ここでお湯の中に落ちるよというのは、もうストーリーがそこで見えるわけです。ドッキリといっても、ドッキリという言葉の中にこれはドッキリをかけられている人は知らないぞというようなリアリティーを作り出していっています。そこがドラマと違うところです。ドッキリとついているから、もちろん大人で見ている人は分かりますよ、ドッキリだから。けれども、実際それは(子どもにとっては)、ドッキリとついているということは、仕掛けられたほうの人は知らないのではないかなというようなリアリティーを作り出しているわけです。それが非常に今技術的にうまくなっていますので、私たちが見ても「おお、これは」というようなのがまさにリアリティーになっているわけです。そこがドラマの間との薄い点ですが、線引きです。
それからもうひとつ、私たちはもちろん芸人さんが命をかけている、あるいは芸としてやっているということは理解していますし、尊敬しています。しかし、私たちはそれを見た視聴者がどう思うかということが全てのスタートです。芸人の間で、芸人同士あるいは作り手との間で、きちんと分かっていること自体が分かっていても、できたものを見る人間、特に年齢の小さい人にとって、例えばすごく苦しそうに見えるような、それもドッキリを知らないところでされたのだと、こういう形になります。ですから、ドッキリはかけられる人が来ることが分かったら全然面白くない。あれはストーリー上知らないことになっていると。それをどんどん作り込みの中で本当にそれらしくしていくわけです。
小学生ぐらいの子どもはそのようなことについては見分けられない可能性があります。その辺のところの小さい線引きは難しいところですが、皆さんにも理解してもらいたいと思っています。

Q:見ているほうが苦痛に感じるか感じないかが重要だと言っていましたが、ドラマも一緒だと思います。なぜドラマだけはストーリーを知っているからこのシーンは影響がないと断言できるのか。ドラマも見たシーンが暴力的だったら、その全部のストーリーを知っているか知らないかにかかわらず影響は大きいと思います。なぜドラマは大丈夫でバラエティーはダメなのですか。

A:(榊原委員長)これは理解力によると思うのですが、ドラマというのは作られたお話だということはかなり小さい子どもでも分かります。しかし、ドッキリでリアリティーショーに作られているところになると、そこは子どもでは分からないと思います。そこで私たちはドラマとは少し分けています。
ただ、もう少し突っ込んで言いますと、この『見解』の中にも書いてありますが、暴力場面自体が小さい子どもにとっては別にリアリティーであろうとドラマであろうと格闘技であろうと、あまりよろしくないというデータは出ております。

Q:痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関してですが、これは痛みを伴うシーンを笑っているという構図を対象にしているということでよろしいですか。痛みを伴うシーンに対して笑うということに対する何か実験だとかデータはあるのかどうかを教えていただきたいのですが。

A:(榊原委員長)  『見解』4ページにございます。これは小さい子どもが共感性ということを発達させる過程にミラーニューロンというものが関係していて、ある他人が苦しい目に遭ったときに自分もそれと同じように感じる部分が脳にあります。その他人を、例えば慰めるとか止めるというところを見て共感性が発達するということが今、脳科学や発達心理学の中で言われています。生まれたばかりの人間の赤ん坊に共感性というのはないと言われています。それがやがて、どういう具合にして自分ではなくて他人が転んで痛くて泣いているところに助けに行ったりするのかということは、実はそういう周りの体験をたくさん見る中で共感性が発達するからだとされています。

Q:他人の心身の痛みを笑うというのと嘲笑するというのでは大分違うと思うのですが、その笑いが嘲笑であるかどうかというのを我々が判断していかねばならないのは非常に悩ましいです。判断基準を我々が考えていくということですと、今回の番組についてもこれは嘲笑ではないからOKだという判断が出る可能性もあるなと、制作者側としては思うのですが。

A:(榊原委員長)  番組の中では分からないのですが、嘲笑と笑いの差というのはやはり状況の中で作られます。他人が明らかに苦しんでいる、泣いているのを笑うのはどんな笑いであっても嘲笑になります。やはり文脈の中で言うしかないですね。痛いことを笑うというのが人間の本質にとって本当に楽しい、心が解放される笑いなのかということの、ある意味ではかなり哲学的な問いになると思いますが、嘲笑と笑いというのはそういうことで厳密に分けることはできないと思っています。

Q:今回対象にしているのは嘲笑であるということですよね。そのときの判断について、我々は日々視聴者からの意見に少数であっても考えねばならないというケースが出てくるのですが、我々の一番の悩みどころはそれを数で判断していいものなのかというところです。その辺はどうお考えでしょうか。

A:(榊原委員長)自由に意見が寄せられたものを数で判断するのは難しいですね。もちろんある期間にどのぐらい来ているかということで総体的な数、これはサンプリングと同じことになると思いますが、そういう意味ではある程度数が多いときと少ないとき、またある番組にたくさん来ているときというのはあります。私たちには常に一定のたくさんの意見が届くわけですから、それが増えていることはある程度、つまり数が反映されていると判断して、こういう議論をしているわけです。ひとつだけあったからそれをやるということはまず基本的にいたしません。ある番組について、ある一定の数が来たというのをまずスタート地点として議論することを私たちのルールにしています。

最後に副委員長と委員長から閉会の挨拶をいただきました。

○緑川副委員長
今日は、長時間にわたってご参加いただき、ありがとうございました。オンラインで視聴していただいた方々も本当にありがとうございました。
今日は私たちが公表したこの『見解』についての説明と、質問に対しての回答をいたしました。『見解』を公表したときに記者会見をすぐにできなかったことを指摘されましたが、今後の参考にさせていただきます。今日は委員のほうからもだいぶ踏み込んだお話をさせてもらい、様々な質問にご説明する機会を持てて本当によかったと思っています。
ずっとコロナがあって、なかなかこういう機会を持つことができなかったわけですが、「視聴者とテレビ局をつなげる回路」ということが青少年委員会の目的とされていますので、今後はできるだけこのような機会を設けてお話をさせていただきたいと改めて思いました。

○榊原委員長
皆さん、最後までいろいろなご意見、ご質問をいただきまして、ありがとうございました。
私たちの表現の仕方などによって誤解が生じたというところについては、今後考えていかねばならないと思っています。ただ、BPOの立ち位置というのを皆さんにしっかり、当事者として知っていただきたいと思います。視聴者から寄せられる意見の中には、私たちは規制する立場ではないのにもかかわらず、「もっと規制を」と要望される方がいます。それから、世の中には放送というものに対してBPOのような第三者機関ではないものを作るべきだという意見もあることは知っていただきたいと思います。
私たちは、より多くの視聴者が楽しんでもらえるテレビ番組を作るにはどうしたらよいかという点では、皆さんと同じ方向を向いているつもりです。今回の『見解』の私たちの発表の仕方というのが誤解を生じてしまったかもしれないということは真摯に受けとめ反省いたしますが、そういう気持ちで活動していることだけはご理解いただけたらと思います。皆さんそれぞれの局に帰られたら、今回の『見解』はBPOのウェブサイトにも掲載されていますので、特に制作に関わる方には「こういうのが載っているのでよく読んでほしい」ということと、今日いろいろお話ししたことを皆さんの中で解釈してもらって、こういう意味なのだということを局の皆さんに伝えていただいて、番組をよくすることに今後いっそう精進してもらえたらと思っています。
本日は最後までありがとうございました。

質疑応答を中心におよそ1時間半にわたって行われた意見交換会は、青少年委員会が公表した『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』について、あらためて理解を深めてもらうよい機会となりました。

【参考資料】
◇BPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー番組」に関する見解
(2022年4月15日)〈見解全文 PDF〉
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/youth/request/20220415_youth_kenkai.pdf

〇BPO青少年委員会「バラエティー系番組に対する見解」
(2000年11月29日) 
https://www.BPO.gr.jp/?p=5111

〇BPO青少年委員会「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解について
(2007年10月23日)
https://www.BPO.gr.jp/?p=5152

〇BPO放送倫理検証委員会「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」
(2009年11月17日)
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2009/07/dec/0.pdf

事後アンケート(概要)

  • (1)開催日時、開催形式について
    • ウェブ配信はありがたい。金曜日以外で、もう少し早い時間帯が参加しやすい。
    • 委員(壇上から)と参加者が対面形式だったため、対立しているように見えた。
    • バラエティーを制作する機会は少ないが、できれば対面で参加したかった。
  • (2)委員会の説明、意見交換について
    • 委員の説明は分かりやすく、「見解」の内容・背景を多角的に理解できた。
    • 委員に真摯に対応してもらい、考えを直接聞けたことは有意義だった。
    • BPOに対して「職員室の先生」のようなイメージを抱いていたが、闊達な意見交換が展開されていて、健全でいいことだと思った。
    • 子どもに悪影響を与えかねないという根拠のデータを詳しく聞きたかった。
    • 見解だけ読めば誤解を与えかねないものだった。公表前に(または公表時に)説明会や記者会見を開くべきだった。
    • 広がった誤解を解くためにも、今回の記録を残して各社で共有するべきだ。
    • 委員会が児童の脳の発達の視点で話していたのに対し、放送局側はプロとしての芸人の仕事への干渉という点で話をしていたため、双方の溝があまり埋まらなかったと感じた。痛みを伴う行為が一律にダメなわけではないとの回答を得られたことは、実りがあった。
    • もっと意見交換と質疑に時間を割いてほしかった。他社の意見を聞きたかった。
  • (3)気づいた点、要望、今後取り上げてほしいテーマ等
    • 定期的に委員の方々と意見交換できる場があればうれしい。
    • 委員会での議論のプロセスが分かるような意見交換会にしてもらえると有意義だと思う。
    • 今後見解を出すときは、誤解を生まないためにも会見を開いたほうがいい。
    • BPOは検閲機関ではなく放送局が自ら律するための機関であるという基本的な理解を含め、今回のような機会を継続して意見交換を重ねていく必要性を感じた。

以上

第174回 放送倫理検証委員会

第174回–2022年8月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議
9月に委員会決定を通知・公表へ

第174放送倫理検証委員会は8月22日にオンライン形式で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、了承が得られたため、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

議事の詳細

日時
2022年8月22日(月)午後5時~午後7時30分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から7月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。その結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

2. 7月に寄せられた視聴者意見を議論

7月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の銃撃事件を伝えたニュースや特別番組の内容、参院選特番でのコメンテーターと候補者とのやり取り、参院選候補者の出演した番組などについて、批判的な意見が寄せられたことを事務局が報告した。

以上

第307回放送と人権等権利に関する委員会

第307回 – 2022年8月

「少年法改正と実名報道」4月の少年法改正に伴う実名報道についての現状を共有…など

議事の詳細

日時
2022年8月16日(火)午後4時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」第1会議室(オンライン開催)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から所定の書面すべてが提出されたのを受けて、論点を整理し、ヒアリングのための質問項目を絞り込み、次回委員会でヒアリングすることを決めた。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3. 民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要を報告した。

4.「少年法改正と実名報道」

廣田智子委員から、2022年4月施行の少年法改正に伴う「特定少年」の実名報道解禁の現況が報告された。今後起こりうる放送での実名報道に対する人権侵害の申立てに備え、少年法改正の概要と4月以降の「特定少年」実名報道の実状、過去の少年刑事事件での実名報道に起因する名誉毀損案件の裁判例など、多岐にわたり詳細に伝えられた。

5. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、さまざまな観点から多数の意見が寄せられました。

2022年7月にBPOに寄せられた意見は2,743件で、先月から1,038件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール85%、 電話14%、 郵便・FAX計1%
男女別は男性37%、 女性18%で、世代別では30歳代25%、40歳代24%、50歳代20%、20歳代16%、60歳以上10%、 10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、7月の送付件数は1,431件、49事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から40件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、映像・音声の使い方、参院選への影響、政治家と宗教団体との関係の報じ方などさまざまな観点から多数の意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は55件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は139件で、前月から55件増加しました。
今月は「表現・演出」が54件、「報道・情報」が44件、「要望・提言」が10件、「いじめ・虐待」が6件と、続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 安倍元首相銃撃の瞬間の映像を流すのはやめてほしい。旗に隠れているだけでまさにその瞬間の映像だったのでゾッとした。配慮に欠ける。

  • 銃撃の瞬間はすなわち殺害の瞬間。映像が相当にショッキングで動悸がおさまらない。インターネットで流れているのは知っていて、あえて見ないようにしていたが、テレビで何の前触れもなく流されたら自衛できない。

  • 元首相の冥福を祈る気持ちは私も同じだが参院選の投票日は二日後に迫っている。夜まで安倍氏の経歴を紹介したり過去の映像を流したりすることは自民党を利することになる。選挙の「公平性」は決してないがしろにすべきではない。

  • 参院選の投票前日に元首相銃撃の特集を放送した。意図はどうあれ特定政党の宣伝になってしまう。公平を保つために放送は選挙終了後にすべきではなかったのか。

  • 元首銃撃事件に使用された自作の銃の構造を、CGなどを用いて詳しく解説していた。見た人がまねて銃を作ることができるほどの再現性だと感じた。こうした情報の取り扱いには十分に配慮すべき。

  • 元首相銃撃事件の容疑者の供述として「元首相が教団と関わりがあると思い込んで」などと、実際には関わりがなかったかのような内容が報道されているが、現実には元首相が教団の関連団体にビデオメッセージを送っていたことが分かっている。これに対し全国霊感商法対策弁護士連絡会は抗議している。「一方的な思い込みによる犯行」と受け取られるような報道は止めるべきだ。

  • 情報番組のMCが「宗教の問題とまったく関係がない元首相に刃が向いた」と発言した。「まったく関係がない」と断じるなら相応の根拠を示すべきだ。

  • 野党幹部が教団の名称変更の経緯などに疑義を呈したことについて、情報番組の出演者が「パフォーマンスっぽいと思ってしまう」。事実とかけ離れた発言で不適切。

  • ラジオでアニメ主題歌を特集したが、うち1曲は参院選に立候補している漫画家の代表作であるアニメのものだった。作品のタイトルを紹介すればすぐにその作者の名前が連想されるため、意図していなくても候補者の宣伝になると思う。選挙期間中にこのような曲を流すのは不適切だ。

  • 開票特番の出演者がある党首へのインタビューで個人的な恨みを晴らしているように感じた。

  • ある局のいくつもの報道・情報番組に出演しているコメンテーターを選挙期間中、出演させなかったということは、その局がこの人物を特定の政党の関係者とみなしている証だと思う。普段、この局はその人物の考えを放送しているということになるのではないか。

  • 情報番組でタレントが新型コロナ感染症について「死者がいる以上、相応の対応が必要という議論があるが、それはほかの病気も同じ」と述べた上で「もはやコロナは心の病気だと思っている」と発言した。私の家族は今、自宅療養中で激しい咳などの症状に苦しんでいる。家庭内で介助や感染対策をしている人たちに冷や水を浴びせるような許しがたい発言だ。また、この発言が感染者やその家族への偏見を呼び起こさないか不安。

【バラエティー・教養】

  • 流行の先端を行くような中高生が体を張って希少な川魚を探したり、山越えの自転車通学について行ったり、また歴史や生物に造詣の深い若者の興味深い話に耳を傾けたり。彼らの姿は「今どきの若者」に対するイメージを大きく改善してくれる。ターゲットにしていると思われる若者の視聴者がいろいろなことに関心を持つきっかけとなることを期待したい。

  • 飲食店でシカの肉の「表面をさっとゆがいたレアなもも刺し」を食べるシーンを紹介した。ジビエの生食は食中毒で死亡するリスクがある。番組は「生食は問題ない」という誤解を視聴者に与える。

  • 揚げパスタ1本を折らないように相手の喉に入れ、入れられる方はむせないように我慢するというゲーム。「マネするなよ」というメッセージはあったが、事故につながる危ないものだと感じた。出演者のケガが心配になる演出はありえないと思う。

  • バラエティー番組の「24時間プラスチックに触らず生活できるか!?」という企画で、マスクの不織布にプラスチックが含まれているという理由で、出演タレントが友人とカラオケを楽しむという閉鎖空間でもスカーフで代用させていた。この時期 タレントの安全のためにもマスクは着用させるべきだったのではないか。放送の際に「安全の観点から例外」とすればいいだけ。何が何でもダメというのは人権侵害ではないか。

  • 世界の「面白動画」を見せるという番組。AIやディープフェイクなどの怖さを教えている身として、「つくられた映像」が十分な検証なしに、あたかも真実であるかのように放送されるのは問題があると考える。今後、編集画像で様々なニュースやインタビューがつくられてしまわぬよう危機感を持った方がいい。

  • 「霊的な現象」や「霊能力」としてさまざまな現象を紹介していた。これらの存在を積極的に肯定していると受け取られる内容を、影響力の強いテレビで放送するのは問題ではないか。長年にわたり社会問題となっている霊感商法等を助長し、さらなる被害者を生む結果とならないか心配だ。特に青少年に与える影響は大きいと思う。

  • 私は自閉症や吃音(きつおん)を持つ子どもたちと関わっている。番組で吃音の芸人が「帰れ、と言われて何分で帰るか」というドッキリのターゲットになっていた。ビデオで芸人の言動を見ているスタジオの出演者が「変なやつ」と発言、ナレーションではこの芸人のことを「奇人」と表現していた。同じ症状がある子どもたちが見たらどう思うだろうか。病気を笑うような内容は放送しないでほしい。

  • 仕掛け人である人気の女性天気キャスターがターゲットの芸人に「自分はあなたのファン、一緒に写真を」と依頼するが、芸人が近づくと「近いんだよ!てめえ」などと大声でののしり始める。人が怒鳴られる様子を見て笑うという神経が考えられない。

  • 「47都道府県○○スポットを一挙公開」というので、自分の地元にもスポットライトが当たるのかと楽しみにして見たが、実際に取り上げられたのは10県程度で地元は登場せず。裏切られた気分だ。自分のワクワクを返してほしい。

  • ロケ現場を自由に使ってスケートボードの技を競う企画で、植え込みの縁を滑走する選択をした人が何度も挑戦し、植え込みの植物をひどく痛めていた。見ていてとても不快だし、まねをする子どもが出てくると考えるとゾッとする。

  • パーソナリティーが紹介する楽曲について繰り返し「ばかみたいな曲」と評し、また歌い手を貶(おとし)めるような発言をしていた。大変不快だった。

【ドラマ】

  • ドラマで、幼少期に父親から受けたDVのトラウマを克服させるという目的で、仲間が本人の了承を得てわざと長時間、小突き回し、罵詈雑言を浴びせて耐えさせるというシーンがあった。「トラウマやPTSDは根性で治る、本人の努力で克服できる」といった誤った認識を植え付ける描写であり、不適切だと感じた。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組内の子ども番組を模したコーナーで、男女がヤクザ系の言葉を入れた唄を歌っていて、出演者の子どもたちが怖がっていた。教育上の問題があると思う。

  • 幼児が「おつかい」を初めて体験する番組で、1歳8カ月の男の子が少し離れたお隣さんに回覧板を届ける内容を放送した。子どもの発達の個人差について不安を煽る内容であり、出演する子どもには年齢制限を設けてほしいと思った。

  • ドッキリを扱う番組で、銭湯の浴槽に電気を流して痛がる様子を放送したが、いじめに見える。浴槽から出るのを妨害する役の人もいて、完全にいじめだと思った。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 安倍元首相が銃撃された直後のニュースで、現場を見ていた高校生とみられる女性2人にインタビューしていたが、顔と制服がそのまま放送されていた。インタビューするのはよいが、顔と制服は隠すべきではないか。

  • 銃撃の様子を目撃し、インタビューに答えた高校生とみられる女性は今後、自責の感情に苛まれます。目撃者のPTSDはあとから遅れて発症します。目撃直後に無遠慮にマイクを向けるのは二次加害です。必要なのはメンタルケアです。

  • 安倍元首相の銃撃のニュース。子どもが学校から帰宅する時間なのに、銃声音が入った映像や元首相が倒れて出血している映像を流す必要がありますか。子どもたちが目にしてしまい、すぐにテレビを消しました。

【要望・提言】

  • 各局で夕方の時間帯に、連続殺人などのドラマが再放送されている。「再放送するな」とはいわないが、子どもたちが夏休みに入っているのだから、内容を考えて放送してほしい。殺人を扱ったドラマが子どもたちに悪影響を及ぼすのではないかと危惧している。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組に、吃音症を持った芸人が出演した。その症状を見て、笑いを誘うような表現があり、吃音症の当事者として不適切だと思った。当事者のほとんどが子どものころに吃音が原因でいじめに遭っており、今回の表現はそうしたいじめの状況を助長するものだと思う。

第248回 放送と青少年に関する委員会

第248回-2022年7月

視聴者からの意見について…など

2022年7月26日、第248回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催しました。
欠席の榊原洋一委員長をのぞく7人の委員が出席し、進行は緑川副委員長が代行しました。
6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見には、安倍元首相銃撃直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の顔出しでのインタビューで目撃情報を繰り返し放送したことについて、配慮が必要だったのではないか、などの意見がありました。
7月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たドラマについて」で、様々なジャンルのドラマに対する興味深い意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
最後に今後の予定について話し合い、8月の委員会は休会となりました。
次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

議事の詳細

日時
2022年7月26日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
安倍元首相が銃撃された直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の目撃情報についてのインタビューを顔出しで約1時間30分の間に計5回繰り返し放送したことに対して、「インタビューするのはよいが、(高校の)制服と顔は隠すべきではないか」「プライバシー保護のため、口元だけのアップやモザイク処理で顔を隠してあげてほしかった」「PTSDは遅れて発症します。目撃直後にマイクを向けるのは二次加害です」などの意見が寄せられました。
委員からは「とても正確に答えていて、この目撃情報によって何が起こったのか、だいぶ分かった」「本人や保護者の承諾を得るなどの配慮は必要だと考えるが、このインタビューに報道する価値があったことは間違いない。繰り返しの問題も評価は難しいが、事件の重大性や速報性を考えると、局の判断としてはやむを得なかっただろう」との意見がありました。
また、バラエティー番組の中の幼児向け番組を模したコーナーで、子どもたちの前でヤクザの風体をした男女の芸人が、番組スタッフ役の芸人に暴行する真似を見せ、高金利を表すことばを織り込んだ唄を披露したことに対し、「(出演者の)子どもの前で、暴力を振るったり借金の唄を歌ったりするのはいけないと思う」「その場にいた子どもたちが怖がっています。教育上、問題がある」などの意見が寄せられました。
委員からは「あそこに子どもを呼ぶ必要があったのか。大人(の芸人)に子どもの格好をさせてもよかったのではないか」「(劇団所属の子どもを使うという)舞台裏の事情はどうあれ、親の目からみればあまり良い演出とは思えない」などの意見が出されました。
同じバラエティー番組の別のコーナーで、揚げた細い棒状のパスタを、口を開けた芸人の喉に差し入れて、うまく飲み込むのを競わせていたことに対し、「(子どもが真似しないよう)注意の文言を入れても、常識的に考えて、やっていいネタではないと思います」という意見が寄せられました。
委員からは、「パスタを飲み込ませるのは危ないと思う」「危険な行為で、(それを見た)子どもが、許されることだと思ってしまう可能性がある」との意見がありました。
その他特に議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

7月のテーマは「最近見たドラマについて」でした。モニターからはさまざまなジャンルのドラマ、計22(テレビ21・ラジオ1)番組について報告がありました。
番組への感想では『ラジエーションハウス』(フジテレビ)に「これまで描かれていなかった職種に焦点をあてた斬新な医療ドラマだった」、『過保護のカホコ』(日本テレビ)に「世の中には計り知れない家族の形があると実感した」といった感想が寄せられました。
複数のモニターが取り上げた番組は、『鎌倉殿の13人』(NHK総合)、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)、『ナンバMG5』(フジテレビ)でした。
「自由記述」では、安倍元首相が銃撃された事件の報道について多くの意見が寄せられました。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『未来への10カウント』(テレビ朝日)
      部員一人一人が問題や悩みを抱えながらも精一杯生き抜く姿にとても感動しました。番組の中にあった「最初からあきらめてんじゃねえよ。自分で勝手に限界を作るな」というセリフは受験生の自分にとって、とても胸を打たれるものがありました。改めて一生懸命やることの大切さ、素晴らしさを教えてもらったドラマです。(高校3年・女子・茨城)

    • 『FMシアター』(NHK‐FM)
      ラジオドラマを聴くのは2回目だが、なかなか新鮮だった。テレビとは違い、出演者の息づかいや話すことば一つ一つの迫力が耳から伝わってきた。コロナ禍で浮かび上がった人間模様にスポットをあてた内容だったが、話に引き込まれる構成だった。ただ、途中から聴いた人や話の整理のためにナレーションを加えてほしいと思った。(高校1年・男子・東京)

    • 『ファイトソング』(TBSテレビ)
      登場する一人一人の人物像が愛おしく、個性豊かな中でバランスが取れているので見ていて居心地がよく、大好きでした。最終話では、番組のタイトルとオープニングで流れる曲に、ドラマのストーリーとのつながりがあってとても感動しました。(中学2年・女子・東京)

    • 『初恋の悪魔』(日本テレビ)
      科学捜査などの職業を主人公とするドラマはあったが、この番組は総務課職員たちを主人公にするなど斬新な発想が多くてとても面白かった。模型を作るシーンやイラストなどの演出も現実味があって良かった。(高校1・男子・埼玉)

    • 『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京)
      もともと原作のファンですが、主人公の名言はそのままで、その人間味が原作よりもリアルに映し出されていました。現実はこんなに単純で優しいものではないなと感じられる部分もありましたが、このドラマが描くようなもっと温かい言葉があふれる社会になるといいのにと思いました。終始すごく穏やかで幸せな気持ちで見られるドラマで、毎週の楽しみでした。(高2・女子・岩手)

    • 『過保護のカホコ』(日本テレビ)
      小学校6年生のときも視聴していましたが、見直すと感じることも見る部分も少し変化した気がします。以前は主人公の衣装や部屋の雑貨類までまねしていましたが、今は少し違うところに惹かれます。ドラマの中だけの話ではなく、世の中には計り知れない家族の形があるのだと実感しました。生まれてきた環境や家族のことで悩み苦しんでいる人がいると思うと、私にも何かできることがあるのではないかと考えるきっかけになりました。(高2・女子・千葉)

    • 『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)
      見ていてとても爽快で面白いです。最後には関係が悪くなっていた家族を仲直りさせるなど、感動できる部分もあっていいです。ドラマの途中には普段使えるような家事の知識を教えてくれる時間があり、内容が面白いだけでなく見ていてためになりました。また、続編を映画化ではなく舞台化するのも新しくて面白い取り組みだなと思いました。(高2・女子・広島)

    • 『再雇用警察官4』(テレビ東京)
      全体的にドキドキするシーンと見入ってしまうシーン、何も感情が湧いてこないシーンが周期的に構成されていてとても面白かったです。ストーリーの進め方が刑事ドラマでありがちな「真犯人は誰だ?」的なものではなく、出てきた人全員がつながっている点に爽快感を覚えました。終盤にかけて登場人物の感情がはっきりしていくのも印象的でした。(高1・男子・兵庫)

    • 『ラジエーションハウス』(フジテレビ)
      従来の医療ドラマで描かれることがなかった職種に焦点があてられたドラマで、斬新だった。放射線技師の職務内容だけでなく、病院内でのポジションや医師との関係性が興味深い。ふだんあまりフィーチャーされることがない職業について知ることができ、月9ドラマにふさわしいテーマだったと思う。(高3・女子・東京)

    • 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)
      戦や勢力争い、後継者争いなど話が入り組んでいる場面でも理解しやすい。時々コメディー要素もあって飽きずに見ることができる。出演者は多いが、一人一人に個性があって役名を覚えることができた。このドラマのおかげで鎌倉時代についてだけだが詳しくなり、北条義時についても詳しく知ることができた。(高1・女子・栃木)

    • 『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)
      原作の本を持っていたのでドラマと比べてみたところ、登場人物のセリフや展開の多くが原作そのままで、作品へのリスペクトが感じられました。視聴者の人気投票で作品をドラマ化したりレギュラー化やアニメ化をしたりして、この企画がもっと発展してほしいです。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『ナンバMG5』(フジテレビ)
      予告を見たときは「今の時代にヤンキーのドラマやって大丈夫なの?」とか「怖そうだな」などと思っていたが、いざ見てみると私が知っている昔のワルなヤンキーとは違い、とても明るく家族みんな仲がいい楽しそうなヤンキー一家で安心した。演技の面では、特攻服に金髪のヤンキー役と普通の高校生学ラン黒髪役を口調も含めてしっかり演じ分けていてすごいと思った。(高校3年・女子・神奈川)

    • 『私のエレガンス』(BSテレビ東京)
      ファッションアイテムの歴史やオシャレについての知識だけでなく、自己肯定感も引き上げてくれるような素敵なドラマでした。この半年ほど暗いニュースがテレビで流れることが多く、温かい気持ちになるほっこりしたドラマがもう少しゴールデンの時間帯に増えても良いように感じました。2時間の単発のドラマだと比較的視聴しやすいので、そういったものがもっと増えてもいいのかなと思います。(高2・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 番組やVTRに出てくる出演者の名前を紹介するテロップについて、ジェンダーレスなこの時代に、男性は青、女性はピンクというように色を分けるのはどうかと思いました。(中学2年・女子・東京)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、撃たれた瞬間の映像を何度も流したり、血を流して倒れている画像をずっと出したりするのはどうなのかと思いました。また、銃の作成方法をわざわざ解説することで模倣犯が出てきたらどうするのだろうと思いました。(高校2年・女子・広島)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、「銃声が鳴ります」などと視聴者が不快に感じないよう配慮していてすばらしいと思いました。(高校2年・男子・福岡)

    • 安倍元首相が銃撃された事件で、SNS上で出回っていた銃撃の瞬間の映像をテレビでも流していたことに疑問を感じた。コメンテーターが「ネットから離れることも自己防衛につながる」と言っていたが、こういう方が増えてほしいと思った。(中学3年・女子・千葉)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『笑わない数学』(NHK総合)
      素数の面白さ、不思議さを知ることができた。手計算で素数を見つけなければならなかったと思うとオイラーやガウスのすごさが分かる。私たちがふだん使っている数学の裏側を知ることは楽しい。同時に昔の数学者への感謝の気持ちも浮かんでくる。(高校1年・女子・栃木)

◆委員のコメント◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • モニターが大好きだというドラマについて「アクションはかっこよくて好きだが、血や傷口をあまり映さないほうが安心して見られる」という感想があった。今の若い人たちはテレビに刺激を求めるというより、安心して見たいというのが一つの思いなのだろうかと感じた。

    • モニターによって評価はやや分かれたが、いわゆるヤンキードラマを複数が取り上げていて根強い人気を感じた。バブル時代の話やノスタルジックな部分も描かれ、2000年代がピークだったコンテンツだが、一周回って今の若い人たちに新鮮に映っているのではないか。

  • 【自由記述について】

    • テロップの名前が男女で色分けされていることへの意見があった。視聴者意見にも性差別的な表現や女性蔑視に対する批判はあるが、中学生が少し違う角度からこのような違和感を指摘することに感心した。こうした見方はこれから若い人たちのふつうの感覚になっていくのだろうし、制作者にも知ってもらいたい。

    • 安倍元首相の銃撃事件の報道で、銃声音が流れることを事前に告知したことを評価する声があった。ドラマでは暴力シーンなどを演出の一部として楽しむ一方、ショッキングな報道に対して警戒する感性があるようで、こうした点は丁寧に考えていく必要があるのだろうと思った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 数学の奥深さを伝える番組に多くのモニターから感想が寄せられ、「大学教授ではなく芸人さんが解説するので身構えずリラックスして見られた」というコメントがあった。このようなジャンルでも説明上手な芸人さんが重要な役割を果たしているのだなと感じた。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。
また、8月の青少年委員会は休会になることを確認しました。次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

以上

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究」

青少年のメディア・リテラシー育成は放送局にとって、ますます重要な課題となっています。この調査研究は、青少年のメディア・リテラシー育成に関しての各放送局の取り組みについてアンケート調査と聞き取り調査を行い、その実態を明らかにするとともに今後の在り方を展望することを目的に2019年~2021年の3年間にわたり実施されました。

調査内容

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究
【WEB版PDF】pdf

◆目次◆

※WEB版は、掲載用に一部編集しています。

調査研究報告会

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

年次報告会に先立って3年間にわたり行った調査研究の結果を、中心となってまとめてきた中橋雄委員と飯田豊氏(立命館大学産業社会学部准教授)が説明しました。

pdf当日使用されたパワーポイントデータ(PDF)

日 時: 2022年3月16日(水) 午後1時45分~2時45分
場 所: 千代田放送会館(オンライン開催)

■報告者:
中橋 雄(なかはし ゆう)
【青少年委員会委員】
1975年生まれ。日本大学文理学部教育学科教授。関西大学大学院総合情報学研究科博士課程後期課程修了・博士(情報学)。株式会社博報堂、福山大学、独立行政法人メディア教育開発センター、武蔵大学に勤務した経歴をもつ。専門分野は、メディア・リテラシー論教育の情報化に関する実践研究、教育工学。著書に、『メディア・リテラシー論(単著)』『メディアプロデュースの世界(編著)』『映像メディアのつくり方(共著)』など。

飯田 豊(いいだ ゆたか)
1979年生まれ。広島県出身。立命館大学産業社会学部准教授。専門分野はメディア論、メディア技術史、文化社会学。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。メディアの技術的な成り立ちを踏まえて、これからのあり方を構想することに関心があり、歴史的な分析と実践的な活動の両方に取り組んでいる。著書に『テレビが見世物だったころ』、『メディア論の地層』、『新版 メディア論』(放送大学教材、共著)などがある。

第306回放送と人権等権利に関する委員会

第306回 – 2022年7月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年7月19日(火)午後4時~午後7時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

2. 審理要請案件「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

3.「判断ガイド2023」について

来年2023年を目途に制作される「判断ガイド2023」について、事務局からウェブ化を図りたいことなど計画を説明した。体裁などにも委員会の賛同を得て、実務編集作業を進めることとなった。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

5. その他

今年12月に開催予定の札幌での意見交換会について、事務局から概略を説明した。

以上

2022年7月25日

2022年 7月25日

感染症対策に伴う視聴者電話応対業務について

BPOは、新型コロナウイルス感染症対策のため、次の業務対応といたします。

  • 当分の間、視聴者からの電話応対時間を短縮します。
    視聴者意見電話受付時間 平日 10:30~12:00 および 13:00~16:30
  • 郵便物とメール、ファクスは通常通り受け付けます。
  • なお、今後の感染状況によっては、電話受付を休止することがあります。

2022年7月19日

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、7月19日の第306回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
 申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
 被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
 申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 7月19日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
 なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第173回 放送倫理検証委員会

第173回–2022年7月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第173回放送倫理検証委員会は7月8日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年7月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から6月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再び、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 6月に寄せられた視聴者意見を議論

6月に寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組で参院選に向けた党首討論がなされた際の司会役の進行や、情報番組で前日の緊急地震速報を繰り返し使用したことに批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告したが、踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

参院選の選挙報道のあり方や、いわゆる「ドッキリ」で陰口を言うように仕向けてそれを本人に聞かせる企画などに意見が寄せられました。

2022年6月にBPOに寄せられた意見は1,705件で、先月から550件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性45%、女性18%で、世代別では40歳代28%、50歳代21%、30歳代20%、60歳以上13%、20歳代11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、6月の送付件数は675件、57事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から26件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

参院選を前に選挙報道のあり方についての意見が目立ったほか、陰口を引き出して本人に聞かせる、出演者の私物を本人に無断で「視聴者プレゼント」にするといったバラエティー番組の企画などに意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は51件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は84件で、前月から35件減少しました。
今月は「表現・演出」が24件、「低俗、モラルに反する」が11件、「いじめ・虐待」も11件で、「言葉」が5件、と続きました。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 参院選の目立った特番がなく、有権者が投票先を選択する上で必要な情報が、投票日より前に十分に報道されているとは思えない。各局、ゴールデンタイムに各党の政策の違い、与党の公約の達成状況などを伝える特番を放送してほしい。

  • 投票日前はさほど選挙を取り上げていない。放送業界が投票率を上げる努力をしないのは役割放棄ではないのか。放送業界の努力に期待している。

  • 党首討論で特定の政党の発言が「テーマから逸脱している」として司会者に遮られた。まだ到底「逸脱している」とは思えない段階だった。暴走を止めるために仕方がなかったとしても判断が早すぎると感じた。

  • 党首討論で司会者が党首の発言を制止していた。発言を終了させる権利はどこからきているのだろうか。

  • ネットの「底辺の仕事ランキング」という記事に批判が殺到し、その記事が削除された騒動を取り上げていた。信頼性のはっきりしない記事に基づいて取材、放送すること自体が職業差別を助長することになる。そのことを分かっていて取り上げたのであれば人の道に外れているし、分からずに取り上げたのなら能力不足。

  • 交通トラブルに起因する暴行事件の映像について。「被害者」とされる男性が明らかに挑発していて、「加害者」が悪いとは思えなかった。挑発した「被害者」の顔は隠されていたが「加害者」はそのままで名前も放送され納得がいかなかった。

  • 朝の情報番組で前日の地震について伝えた際、取材中に緊急地震速報の警報音が鳴っている場面を2度も放送した。テロップでは「昨日の速報音」と表示されたようだが、私は出勤準備をしていたので画面は見ておらず、大変驚いた。追い討ちをかけるように2度目が流され、生きた心地がしなかった。命の危険を知らせる音をこんなにポンポンと流すというのはいかがなものか。わざわざこの部分を流す必要はあったのか。

  • 猛暑、電力ひっ迫で日本中が節電に腐心しているが、そのニュースを伝える出演者はきちんとスーツを着て汗もかいていない。どれほどスタジオの冷房を効かせているのか。ネクタイ姿で「節電を」と言っても視聴者には響かない。冷房を弱め、半袖シャツ姿でニュースを読んでも礼儀に反することはない。考え方を改めるべきだ。

  • スーパーの節電を伝えるリポーターがタンクトップ姿だった。店の紹介には失礼でふさわしくない。暑くてももう少しきちんとした服装をすべきだ。

【番組全般・その他】

  • 国会議員のいわゆる「パパ活」疑惑を取り上げた際、それを楽しいこと、良いことと若者に思わせかねない部分があった。実際には性被害を受ける女性も多い。推奨される行為ではないということも強調すべきではないだろうか。

  • 情報番組中、「ランドセルが重い」という話題でMCが「タブレット端末があるのになぜ教科書を別に持たないといけないのか。今は書籍や漫画もタブレットで読めるのに遅れている」と発言した。学習端末によるいじめが報告され、私の子供が通う中学校の保護者の間にも心配する声がある。視力、学力が紙ベースの時より下がったという報告もある。ネットの無料漫画も年齢制限がないなど心配。自宅待機もなくなり学習端末を持つメリットが感じられない。番組としてもう少し思慮深い発言が聞きたかった。

  • 摂食障害を経験した元アスリートが、医師に入院と競技生活の休止を勧められたが、実家暮らしのまま、競技も続けながら病気を克服したと語っていた。苦しんでいる人たちの役に立ちたいという気持ちは素晴らしいが、この部分は残念。命に関わることであり、番組は「危険なので皆さんはまねをしないでください」と付け加えるべきだったと思う。

  • 芸能人の闘病体験の再現ドラマ。医師から「股関節に負担をかけないよう杖を使って」と指示された芸能人が、妻を心配させまいと「杖を使うがカッコイイものにする」と伝える。妻は「杖が『かっこいい』なんてダサい。病気を受け入れている感がある」。芸能人本人はこれを「励まし」と受け止めて杖を使わなかったというが、医師の指示に反する行動であり、また病気を受け入れて戦っておられる方々や杖を使用する方々に対して大変失礼。

  • 肥満の子ども2人とその父親が大量の食材を買い、調理して食べる様子を紹介するシリーズ。朝食にコンビニサイズの4倍だという巨大おにぎりとバナナ6本(1人分)を食べて「爆睡」していた。子どもたちが糖尿病になってないか心配になった。こうした様子をスタジオの芸能人が笑いながら見ている。いいのだろうか。

  • いわゆる「ドッキリ」で、タ―ゲットのタレント数人が囲んでいるテーブルから突然、天板を突き破って仕掛け人が飛び出し、ターゲットたちがいすから転がり落ちていた。1人は心配になるほど腰を強打していた。所属事務所が事前に了承していたとしても、実際の反応までは予測できない。以前にも同様の場面を目にしたことがあり、問題が多いと感じた。

  • 芸人数人に犬の着ぐるみを着せて「大型犬コンテスト」。MCが「吠えまねでカラオケ」「お題のことばを吠え声で」など課題を指示して採点、罰ゲームは「尻の嗅ぎ合い」や「ドッグラン」。その態度にも何かしら難癖をつけてさらなる罰ゲームを課し、笑いをとろうとしていた。全員が合意の上での演出とは推察されるが、それでもなお学校のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと思う。以前から続くシリーズだが、今回はさすがに笑って見られなかった。

  • MCであるベテラン芸人が、ゲストでVTRを見て感想を述べる役割のお笑い芸人2人の顔に、番組冒頭で多量の墨汁をかけ、2人は汚れた顔のまま2時間出演した。かけられる側もあらかじめ承知しているとは思われるが、子どもが見た場合は誤解し、いじめを助長すると思う。また、人に痛みや不快感、驚きなどを与え、それを嘲笑する演出は、仮に出演者の同意があるとしても不快に感じる。

  • いわゆる「ドッキリ」。他人をだましてまで陰口を引き出して本人に聞かせ、それを面白いと思って放送する感覚はおかしいと思う。とても不快だった。

  • 陰口を本人に聞かせる企画で、仕掛け人役が中座した後の陰口は聞いていられないほどひどかった。仕掛け人役がふびんでとても悲しかった。人の心をどう考えているのだろうか。

  • 陰口を本人に聞かせる企画は出演者たちの今後の関係性にも影響するように見え、一ファンとして心配。

  • 「自分が二度見したことは」と質問された出演者が「たぶん、路上生活を始めた初日の人」と答え、その様子を滑稽なものとして笑いながら紹介していた。路上生活者をあざ笑うなどありえない。ほかの出演者やスタッフも笑っていた。この編集を許し放送したテレビ局の人権感覚を疑う。

  • 出演芸能人の私物を自宅から勝手に持ち出して本人の承諾なく「視聴者プレゼント」。本気で嫌がっているように見える。そのように演じているだけだとしても非常に不快だ。司会者が「マネージャーさんに協力してもらいました」と説明していたが、マネージャーが盗んだということなのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 歌手や歌のうまい芸能人が、曲のサビ部分を歌って、1音でもミスすると失格、それを10曲連続で成功すると100万円もらえる番組で、司会者らが歌っている人をバカにする発言や暴言ばかりで、ほんとに耳障り、不快だ。そのひどい発言を笑い、全員で演者を攻撃ばかりしている様子はいじめとしか受け取れない。子ども達が真似し、いじめを助長する。
  • オムニバスドラマの2話目で、銀座の金持ちの頭に網をかぶせて捕獲する場面がある。人間の金持ちを家畜のように飼う内容で、道徳・人権に反していて差別的だ。人身売買を促進する内容で見ていて非常に不快だった。子ども達にも悪影響を及ぼすと思う。

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組の「2時間スペシャル」で、外来種を美味しくいただくとして、沖縄のタイワンハブを探すため、廃墟のような空き家の中に勝手に入りヘビを探していた。家主に確認したとのテロップ記載はない。子どもが真似したら困るし、不法侵入が疑われて不快な内容だった。
  • 大型犬コンテストと称して、芸人5人ほどに犬のような模様のタイツを着せ、犬の吠え真似でクイズに答えさせ、その解答が気に入らないと、罰ゲームとして懸命に遠吠えさせたり、犬の恰好で必死に走らせたりしていた。実際は、仲間内の芸人が合意のもと、やっていると推察されるが、それでも学生のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと考える。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • お笑いタレントが、子どもに走り方を指導し、最後には、そのタレントを落とし穴に落として笑いにするドッキリがあった。子どもに演技させてまで、指導を踏みにじる場面を笑いにしたことと、それを見た子どもが、指導をあざ笑うことが面白いと受け取ることが、心配だ。

【「言葉」に関する意見】

  • 天気予報のコーナーで、女性キャスターが気象予報士と楽しそうに父の日について喋っていたが、親がいない子どももいる。気遣いがなさすぎてお手本になっていない。赤ちゃんポストを知らないキャスターなのか、そんなわけない。ニュース番組でそんなことをいうのは、いかがなものか。

第247回 放送と青少年に関する委員会

第247回-2022年6月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会を開催…など

6月28日、青少年委員会が4月に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について、加盟各社との意見交換会をオンライン併用で開催しました。
意見交換会終了後に第247回青少年委員会を開き、8人の委員全員が出席しました。
視聴者からの意見(5月後半から6月前半)では、マナー講師が番組スタッフにテーブルマナーを厳しく指導する内容のバラエティー番組や、新型コロナのワクチン接種を連想させる設定の子ども向け特撮ドラマなどに多くの視聴者意見が寄せられました。
中高生モニターの6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターからの報告について議論しました。
次回は、7月26日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年6月28日(火)午後4時00分~午後7時00分
場所
千代田放送会館ホール
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会

2022年6月28日、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマに、青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を開催しました。バラエティー番組の制作が多い在京・在阪の放送局およびNHKには千代田放送会館に来場いただき、全国の加盟社にはオンラインで配信しました。
委員会からは委員全員が出席し、各委員の紹介のあと、今回の『見解』の趣旨や、見解を出すに至った経緯などを榊原委員長が説明しました。
そして、事前に各局から受けた質問に委員がそれぞれの考えを述べたのに続き、会場の参加者と直接質疑応答を行い、およそ1時間半にわたって意見交換をしました。 
青少年委員会の基本的な立場や考え方についても、あらためて理解を深めてもらう機会になりました。

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
女性マナー講師がスパルタ式にテーブルマナーを番組スタッフに指導したクイズ形式のバラエティー番組の内容に対し、「弱いものに対する高圧的な態度は不快だ」といった意見が寄せられました。
委員からは「同じ文脈の中で『今度はよくできました』とほめてもいるので問題はない」との意見がありました。
子ども向けの人気特撮ヒーロードラマで新型コロナワクチン接種の危険性を揶揄したような内容に対し、「現在の(政府の)ワクチン政策に反対する考えや、ワクチンに対する恐怖を子どもに植え付ける」などの意見が寄せられました。
妻の機嫌を損ねないような気配りを語り合うトーク番組で、脳科学者の「みなさん(夫)は寄生虫」という発言に対し、「夫への侮辱・差別だ」「妻の要求は全て正しく、夫に対してのモラハラ・パワハラは笑いごととして看過されるべきと勘違いする危険性がある」などの意見が寄せられました。
歌のうまいタレントに音を外さずにカラオケを歌いきったら100万円ブレゼントという企画で、MCのお笑い芸人が挑戦者に暴言を浴びせ続ける内容に対して、「いじめを助長する」「暴言をヒートアップさせ、大変不快だ」との意見がありました。
速く走れない小学生にお笑いタレントが長期ロケで秘訣を伝授するというニセ密着番組のフィナーレで、頑張った小学生に走り寄るタレントを落とし穴に落とすドッキリの内容に対して、「人の善意を弄び過ぎ」「小学生をだます側に起用するのは不快だ」との意見が寄せられました。
委員からは、「子どもにだます役割を負わせるという点では非常に後味の悪い番組」「子役の子たちならば許容範囲ではないか」との意見が出されました。
その他は特に議論もなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」で、モニターからは合わせて24番組への報告がありました。
このうちトークやクイズを中心とした番組には「自分自身を見つめ直すきっかけになっている」「人間力を高めることができる」などの感想が届きました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢についてもっと放送してほしいという声などが寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たバラエティー番組について】

    • 『人間観察バラエティモニタリング』(TBSテレビ)
      一般人をターゲットにしているため、「一般的な考え方」「一般的な行範囲」などが共感できて楽しく、家族全員が夕食を食べながら感情移入する良い機会になると思う。個性豊かなレギュラーのみなさんが、感想や意見を面白おかしく次々とテンポよく述べていく様子は見ていて飽きない。ときには考えさせられることもあり、いろいろな面で自分と重ねて考える機会になる良い番組だ。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)
      笑えるような話から、あまり考えてこなかったけど案外深い話までさまざまなジャンルの話を聞くことができます。ドッキリ企画やクイズ番組など、企画があらかじめ用意されているバラエティー番組ももちろん面白いですが、誰が話すかを決める酒瓶ルーレットと円卓だけで笑いを起こさせるというのは、やはり芸人さんの腕だなと毎回感じています。このようなトークバラエティーは今のテレビにあまりないように感じます。この番組は「唯一無二だから見たくなる」そんな力があるのではないでしょうか?番組で気になったトークテーマは、友達や家族にも話して意見を聞くようにして2段階で楽しんでいます。 (お酒を飲まない高校生も視聴していることを伝えたい)(高校2・女子・千葉)

    • 『しゃべくり007』(日本テレビ)
      この番組ではドッキリを含むロケなどはほとんど行われず、しゃべくりメンバーのみなさんとゲストの方の純粋なトークや即興コントなどで僕たち視聴者を笑わせてくれます。痛みを伴っているかもしれない行動は、ときおり行われるジャングルパニックと呼ばれるものがありますが、あれはお互いの信頼のもとで成り立っているように思うので、視聴者としてまったく不快な気持ちにはなりません。(高校3年・男子・東京)

    • 『THE グレートアンサー』(毎日放送)
      冒頭の「テレビ画面にかじりついて必死に問題を解く必要はありません!」というセリフに衝撃を受けました。問題を解いている方々の思考法を見ているだけで、気がつくと賢くなったような気持ちになりました。どの問題も観察力や、目の前のことだけでなく周りに気配りができているかをみるもので、真のトップは勉強だけではないのだなあと思いました。次はぜひゴールデン帯で放送していただきたいです。ただのクイズ番組ではなく、人間力を高めることができるのも良いポイントだと思いました。(中学3年・女子・千葉)

    • 『キョコロヒー』(テレビ朝日)
      この番組のように出演者が毎回あまり変わらないトークバラエティーは、コーナーも含めてあまり代わり映えがないように思えるかもしれません。しかし、そのぶん毎回安定した面白さがあり、視聴者としても安心感があるなと思います。たくさんの方が出ている番組もいいのですが、この番組のようにゆるく、リラックスして見られる番組に出会えて本当にうれしく思います。(中学2年・女子・東京)

    • 『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)
      キー局や在阪局にできないような、いい意味でのB級感や手づくり感が出ていてとてもいいなと思いました。ほかの地方局が制作した番組もキー局とはまったく違う味を出しているので、もっとローカル番組を見たい!と思い、地方局間でもっと柔軟に番組を融通しあったりできたらいいのにと思いました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
      お祭りに芸人さんが参加する企画では一緒にその土地の情報をPRしていて、街を知るきっかけになっていいと思いました。祭りの定義などを改めながら企画のノリなどをそのまま残していて、昔から見ていたひとも楽しめると思います。(中学1年・男子・山形)

    • 『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)
      「自衛隊メシ」についての特集番組は何度も見たことがありますが、この番組のように陸・海・空それぞれから給養員の方をゲストに呼ぶという企画は見たことがありませんでした。3人の料理隊員の方が一堂に会することで、それぞれの特色が明確に分かり、とても面白かったです。空自の料理についてお話してくださった方が「日本一元気な、ご飯をいっぱい食べてくれる人にご飯を作りたい」という理由で給養員になったという言葉にはとても感動しました。「やりがい」をいちばん大切にして仕事を選ぶという姿勢を、将来進む道や仕事を決めるときに思い出したいです。(高校2年・女子・東京)

    • 『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京)
      毎回気になったゲームを取り上げてくれ家族と楽しく見ています。「負けた人に罰ゲーム」などということがないのでいつも安心して見られます。食についても毎回紹介してくれるのでご飯を食べている時の会話がとても面白いです。(中学2年・女子・山形)

    • 『100カメ』(NHK)
      大河ドラマの制作現場に密着していた。戦いのシーンは主役の武将を見ることが多いですが、エキストラや動物の撮影と演出にもこだわっていて、ときには別撮りの映像を使うことで映像の効率とクオリティを上げていることが分かりました。作品を見るだけでは知ることができない裏方の努力が見られる部分もこの番組の醍醐味です。(高校3年・男子・千葉)

    • 『むっちゃリサーチ!関西リアルコスパ』(毎日放送)
      商品の値段だけではなくほかの要素も加えた“コスパ”から紹介しているところに独自性が出ていて面白かったです。番組内のコーナーを明確に分けていたことで情報が錯そうせず、変に間延びしている感覚がなくて見やすかったです。すでにある商品データだけを使って計算するのではなく、番組が独自に実験しているのも面白かったです。ランキングが絡む番組の多くは、順位の結果がコーナーの終盤に発表されると思いますが、それが見ていてストレスが溜まる原因になっているのではないかと考えます。もしランキングの結果をコーナーの初めのほうで発表した場合、今までのようなランキングの結果がいつ発表されるかを注意し続ける見方から、ランキングの結果を知ってリラックスしたうえで商品の詳細な情報に耳を傾けられるような見方に変わるのではないかと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【自由記述】

    • ここ2、3年の動物系バラエティー番組のほとんどがインターネットで話題になった短い動画を引用しているのが気になる。コロナウイルスの流行初期はそのような形式の番組が増えたことにも違和感を覚えなかったが、規制緩和が進むいま、このようなジャンルの番組はもとの形に戻っていく必要があると考える。動物の面白い動画や人気の動画はスマートフォン等で手軽に閲覧でき、テレビという媒体を通すメリットがないからである。テレビ局の強味を生かし、高価な資料映像の放送や一般人の立ち入りのできない場所の取材などを行なってほしい。(高校3年・女子・東京)

    • 最近あまりウクライナのことが言われなくなりましたが、今どういう状況なのかを知りたいです。(中学2年・女子・山口)

    • ロシアのウクライナ侵攻から3か月以上経っていますが、最近はこれについてのニュースが少ないように感じます。テレビで見ないと、政治関連のニュースはあまり情報が入ってこないので、定期的に報道していただきたいです。(中学2年・女子・山形)

    • 最近、情報番組等で出演者がコメントする際、批判がないようにと慎重に言葉を選び、誰でも思うようなコメントは多いです。同じような意見ばかりだと、人は同じような考えになってしまいます。このようではメディアとしての意義が失われてしまいます。より多くの意見を多くの人に知ってもらうのがメディアなのではないか、と家族と話をしました。(中学2年・男子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ロッチと子羊』(NHK Eテレ)
      面白くて30分一気に見終わりました。登場した哲学者の著書や解説書などの紹介があると、興味を持った人がより学びやすくなるのではと思います。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『激レア動物タイムズ』(テレビ東京)
      このような動物を扱う番組はいろいろあると思うが、空港探知犬など社会において動物が重要な役割をはたしていると気づかされた。こうした番組は、動物の殺処分などへの意識を啓発するという意味でも価値があると思う。(高校3年・男子・東京)

◆委員のコメント◆

  • 【バラエティー番組の感想について】

    • トーク番組での話題について地方在住の観点から感想があった。テレビは依然、とくに青少年にとって世界とつながる重要な窓口になっていて、自分の住んでいる地域の価値について考え直す契機にもなっているのだなと思った。

    • 人気が高まっているeスポーツやゲーム番組の青少年の見方がうかがえた。一時期は地上波から消えたゲーム番組だが、ネットのゲーム実況動画との差別化を図りながら、いまのテレビバラエティーらしい仕上がりになっているという印象を受けた。

    • ランキングの結果を初めのほうで発表してもいいのではという意見があった。「ランキングはCMの後で」という考えで固まっている制作者が“そうかもね”と思うような、そもそも的な感想だった。

    • 「世界の果てまでイッテQ!」についての感想は、番組の新しい模索が若い視聴者に受け入れられているのだなと思えるコメントだった。祭り企画を立て直した番組制作者の皆さんに、個人的には敬意を表したいと思う。

  • 【自由記述について】

    • 海外の衝撃映像を紹介する番組について、家族の中でも好みが分かれるという感想があった。とても鋭い分析で、動画投稿サイトにあるものをテレビにも求めるのか、それともネットにはないものをテレビに求めるかの違いなのかと思う。

    • ネットで話題になった動画を引用する手法に対し、それでいいのかという意見があった一方、いま流行っているいわゆるバズりものの特集を評価する声もあり、とても対照的な受け止めだと思った。

今後の予定について

地方局との意見交換会について、次回以降に対象地域と日程を具体的に詰めていくことになりました。

以上

第305回放送と人権等権利に関する委員会

第305回 – 2022年6月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年6月21日(火)午後4時~午後6時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1. 審理要請案件「ペットサロン経営者からの申立て」

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
今回の委員会では、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

2. その他

事務局から最新の申立て状況や「自殺報道」に対する視聴者意見、「民放連放送基準」改正について説明した。

以上

2022年6月21日

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、6月21日の第305回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
 この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
 これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
 3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 6月21日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。