2024年10月30日

青森・秋田・岩手3県のテレビ・ラジオ各社との意見交換会を開催

青森・秋田・岩手3県のテレビ局・ラジオ局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、10月30日に盛岡市で開催された。テレビ局・ラジオ局の参加者は16局41人で、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員の6人が出席した。放送倫理検証委員会はこれまでに全国各地で意見交換会を開催してきたが、青森・秋田・岩手の3県での開催は今回が初めてのことである。

冒頭にBPO放送倫理検証委員会の小町谷育子委員長が開会の挨拶を行い「放送倫理検証委員会は2007年に番組のねつ造が批判を浴びた際、国会に提出された放送法の改正案に抗して放送の自由を守るべく、BPOの活動強化のために発足した委員会です。ただ、発足から17年が経ち、当時のことをリアルに覚えておられる方は少なくなり、みなさまにとってBPOは少し遠い存在になってしまっているのではないかと感じています。本日はみなさまと率直な意見交換を行うことでその距離をぐっと縮め、日頃の業務でお悩みの事柄を一緒に考える機会にしたいと存じます」と述べた。

最初のパート『LGBTQ・ジェンダー問題 対応の視点 今日からでもできそうなこと』では、エッセイストの岸本葉子委員長代行が表現者として日頃気を付けていることを紹介した。
視聴者に情報を伝える場合、「2人組の男が逃走中」といった性別が不可欠なことを伝えるときは例外として、必要がない限り性別には言及せず「女優」「女流作家」といった肩書は本人が望まないと使わないと述べた。恋愛や結婚相手の呼称は異性であることを前提とせず「付き合っている人」「パートナー」「お連れ合い様」といった呼び方をしてみてはどうかと紹介した。また「女性レジ係」とは言わず「付けまつげの濃いレジ係」などと描写で情報を補うことで性別の代わりにしたり、「おばあちゃんの知恵」や「女子会のノリ」といった少しリスキーな表現の前に「いわゆる」と一言振ったりすることを提案した。その上で、世の中の感覚や受け取られ方に常にアンテナを張って、自分の考え方のバイアスやスレスレの表現に気づく感覚を養うことが大切だと述べた。
参加者からは「いいか悪いかは別として、ギリギリの所を攻める知恵を働かせるのが制作者のテクニックなのではないか。若い制作者の胸中には表現の自由と配慮とがせめぎ合っているように感じる」という意見が出た。これを受けてラジオ局の番組審議会委員長を務めた経験のある慶應義塾大学名誉教授の大石裕委員が「報道は非常に広範囲の視聴者を対象とするため表現への配慮のハードルを上げざるを得ないが、そうした規準を番組ごとに幾つか設けて、視聴者と対話しながらその場その場でどうするかを決定せざるを得ないのではないか」と述べた。岸本委員長代行は「こういう話をすると『じゃあ何を守ればセーフなんですか』とルールを求める傾向があるが、世間の受け取り方を肌感覚としてキャッチしつつ、自分が表現したいことを成立させる方法を探ることこそ制作者の醍醐味ではないか」と述べた。

次のパート『委員会決定42号を読み解く 視聴者質問の作り上げについての考察』では、この事案を担当した東京都市大学教授の高田昌幸委員長代行が解説した。
ある人気長寿番組が生放送で視聴者からの質問に答えるコーナーを設けていたが、番組のテーマにしっくりくる質問がないと、制作チームのトップがスタッフに質問の作り上げを命じ、自作自演を繰り返していたと経緯を説明した。その背景には、これぐらいは大丈夫じゃないか、他でもやっているだろうという意識があったと指摘。問題発覚後、番組には視聴者から「いつか読んでもらえるんじゃないかと期待して質問を送り続けていたが全部嘘だったんですね」といったメールが多数届いたと紹介した。その上で「SNS全盛時代の昨今、ちょっとでも変なことがあるとすぐ広まりとんでもない落とし穴にはまってしまう。これぐらいいいじゃないかといった業界内の古い常識や視聴者を無視したやり方は、今は全く通用しない」と述べた。
参加者から「自作自演までしてなぜそのコーナーを維持しなければならなかったのか。質問が来ないなら別のコンセプトのコーナーを作るということに何故ならなかったのか」という質問が出た。高田委員長代行は「局内でこの質問コーナーの評判は良く、どんどんやってくれと言われていた。そうしたなかで制作者は、この路線で完璧な番組を作ろうという呪縛から抜け出せなくなったのではないか」と答えた。別の参加者からは「自社のニュース番組にも視聴者の疑問に答えるコーナーがある。毎週質問が来るという状況ではないので、来ないときはディレクターが自分の疑問に基づいた取材をして番組作りをするようにしている。番組の双方向性に過剰に力点を置き、視聴者とつながっていなきゃいけないと思い込んでしまうと問題をはらんでしまうのではないか」と述べた。

意見交換会後半の最初のパート『一般人の映り込み、実名報道における人権・プライバシー保護の在り方について』では、弁護士の井桁大介委員がプライバシー侵害と表現の自由の兼ね合いについて解説した。
日本の法律にはプライバシーの定義がない。裁判例もプライバシーという用語を正面から用いることを避ける傾向にある。プライバシーとは何かについて過去の判例から説明すると▼一般人であれば公開を欲しないであろうこと、▼欲しない他者には開示されたくないことという抽象的な基準となる。状況や文脈で変わってくるため、事前の予測が難しい。例えば裁判例の中には、公道で歩いていたところを無断で撮影された場合にプライバシー侵害を認めた事例や、教育関連業者の委託先が利用者の氏名・性別・生年月日・郵便番号・住所などを漏洩した場合にプライバシー侵害を認めた事例などがあると述べた。また、メディアの撮影の違法性が問われたケースは、▼プライバシー保護の必要性と表現の自由の必要性とを比較考慮し限度を超えているかどうかで判断されており、具体的には、▼相手方の社会的地位や活動内容・場所・目的・対応・必要性等を総合考慮して、一般人基準でこの程度までは我慢すべきだという範囲を超えているかどうかで考えられていると説明した。
実名報道については、実名で報じたから即座に違法ということにはならない。ただ、個人的には、無罪推定の問題も絡んでくることから、罰金もつかないと思われる軽微な事件で実名報道されているケースを目にすると、プライバシー侵害にあたると言われてもおかしくないのではないかと指摘した。その上で、表現や報道は誰かを傷付けることからは避けられないが、誰かを傷付けてでもその放送をする必要があるのかどうかを常に問われており、そのことを意識してほしいと述べた。
参加者から「ヘルメットを被らず自転車に乗っている人の映像を放送するかどうか迷った際、放送したことでその人が誹謗中傷の対象になると、何かしらの責任を問われることになりかねないと懸念を抱き断念した。この判断は正しかったと思うか」という質問が出た。井桁委員は「放送自体に違法性がない場合に、放送がきっかけで誰かが誹謗中傷の被害を受けたとしても、原則としてその責任を放送局が負うことはない」としたうえで、「実際にそういうことがあると寝覚めが悪く悩ましいと思うが、一方で、制作側が少数の抗議する人の意見を想像で先回りして自粛し始めると、行きつくところまで行ってしまうのではないかと危惧する」と答えた。その上で「プライバシーの問題は弁護士10人に聞いたら答えがばらけてしまう程、簡単には結論の出せない問題だ。適正な取材で、公共的な空間における撮影で、社会的に相当な対応で行っている場合は、プライバシー保護より放送、報道の自由の方が勝つと考えていいのではないか。抗議を受けるかどうかではなく、社会的意義のある放送かどうかを自問することが大事だと思う」と述べた。
別の参加者が「一人暮らしのお年寄りが自宅の火災で亡くなったニュースをネットで報じた後、親族から実名報道を取り下げるよう苦情がきた。応じなかったがひと揉めした」と体験談を紹介した。井桁委員は「これも大変難しい問題だと思う。ただ、災害・事件・事故が発生した際、個人情報保護を重視しすぎる社会というのはよろしくないのではないかと私は考えている。社会で情報を共有することが公共圏の維持につながり最終的には公益に資すると考えているからだ」と述べた。小町谷委員長は「アメリカに滞在中、殺人事件を報じたニュースが被害者の名前を伝えていないことがあった。報道の自由が重んじられる国なのにおかしいなとそのときは思ったが、後で被害者の遺族に連絡がついていない段階での自制的な報道だったことを知った。遺族にとって、自分で親族の死を確認する前に、メディアの報道でその死を知るということは辛いことなのではないか。報じるタイミングが遺族感情に影響することはあると思う」と述べた。
高田委員長代行が「京都アニメーション事件で、警察は当初被害者の家族は実名報道を望んでいないとして被害者の氏名を一切明らかにしなかった。ところが地元新聞社が独自に取材を進めた結果、実名で書いてほしいと望む家族が現れた。実名報道の判断を当局に任せきりにするのはよくない」と述べた。また「加害者側の氏名を警察が匿名で発表するケースも増えている。そういう場合は『警察はこの容疑者の氏名を匿名で発表しています』と放送し、実名を公表していないことをきちんと伝えてみてはどうか」と提案した。そして「冤罪もあるので、ニュースで逮捕を報じたら起訴、判決と最後まで報じるべきだ。そうしないと逮捕のときの実名報道で容疑者に極悪人のイメージが定着してしまう」と述べた。これを受けて井桁委員が「身に覚えがないのに逮捕され実名報道されて困っている人はたくさんいる。このことをみなさんが真剣に考えてくれると嬉しい」と述べた。

最後のパート『番組か広告かの見極めについて』では、演出家やテレビ番組のプロデューサーを務める長嶋甲兵委員が解説した。
日本民間放送連盟「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」は、特定の商品・サービスを取り上げる場合、取り上げ方や演出方法によって番組が広告放送だと誤解を招く場合があるとして、▼番組で取り扱う理由・目的が明確となっているか、▼視聴者への有益な情報提供であり、かつ視聴者に対してフェアな内容となっているか、▼特定の企業・団体などから番組制作上、特別な協力を受けた場合にはその旨を番組内で明らかにしているか、以上3点を特に留意すべき事項として例示し、これらのことを総合的に判断する必要があるとしている。
そうは言っても、具体的に何をどうすれば良いのかは示されておらず、対応策は制作現場ごとにそれぞれ考えていかなければならない。工夫の一例として、昨年キー局で放送された番組を例に挙げたい。この番組は、同業界のライバル会社同士が相手の商品やサービスを互いに褒め合う内容で、ライバルだからこそ分かる商品やサービスの凄さを伝えることは視聴者にとって有益な情報になっており面白かった。そういう工夫を色々な形で考え出して番組制作にあたればいいとヒントをもらえるという内容だった。
キー局と地方局とでは置かれている状況が全く違い、例えばキー局だと2つのファミレスを取り上げることができるが、地方局にはそういう余地がないなど、番組の在り方の前提に格差がある。それでもなぜこういう創意工夫を凝らさなければならないかについて、制作者の立場から説明したい。独立した立場で色んな企業を説得し、お金を出してもらって自分たちの作りたい番組を作るというのが放送局のあるべき健全な姿だ。きれいごとだと言われる方もいると思うが、その原則は忘れずに守ってほしい。スポンサーや代理店に対して私はその原則を持ち出し、こういう原則があるからそれは受け入れられないと主張して、独立性を守り制作にあたってきた。今は、お金を出しているところの言うことを聞くのは当たり前だと疑問すら感じていない人が制作現場に増えてきているように感じる。それは、政府の公式見解をそのまま伝えることが当たり前だと思うことと同様に、非常に危険なことだと述べた。
参加者からは「ショッピング情報のコーナーで自局のアナウンサーが商品の使用感を述べる際、できるだけ客観的に感想を述べようとしているが、本数が多くて丁寧にやっていくのは大変だ」といったことや「開店のタイミングに合わせて店の経営者を密着取材した持ち込み番組の考査にあたり、売名行為に近いものを感じたため、編成・総務・営業・報道の社内横断的な考査検証委員会を開催して判断することにした」といった体験談が紹介された。
これを受けて高田委員長代行が「番組か広告放送かの問題で放送倫理違反を問われたある局では、持ち込み番組が放送間際に届いたため考査の担当者が番組を放送前に見ておらず、後日そのことを非常に悔いたケースがあった。私は、番組か広告放送かの問題は、ひとえに考査がきちんと機能しているかどうかに尽きると思っている」と述べた。また、大石委員は「ローカル局の場合、地元の経済界や産業界、様々なところとの結びつきが強いだけにご苦労は多いと思うが、スポンサー側と信頼関係を持ちつつも、信頼関係があるからこそこちらとしてはこの内容で放送したいとご理解いただく努力を、絶え間なく続けざるを得ないのではないか」と述べた。

意見交換会の最後に、地元局の幹事社を務めた岩手めんこいテレビのコンテンツ推進局編成業務部 兼 番組審議室の岩渕博美編成担当部長が閉会の挨拶を行い「今回の意見交換会のテーマは日々悩み向き合っている課題に応えていた。社会が変化し視聴者のニュースや番組に向ける視線は厳しくなっており、少しのことでも騒がれてどうしたものかと悩むケースが増えている。だからと言って委縮してしまっては視聴者の期待に応える番組は作れないと思う。認識をアップデートしてバランスを取りながらより良い放送が届けられるように今後も努力していきたい。有意義な時間だった」と結んだ。

以上

第273回

第273回-2024年11月26日

視聴者からの意見について…など

2024年11月26日、第273回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ7人の委員が出席しました。吉永みち子副委員長は欠席でした。
10月後半から11月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
11月の中高生モニター報告のテーマは「最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年11月26日(火)午後4時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

10月後半から11月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
バラエティー番組の企画で、ピンポン球を上半身はだかの男性芸人に高速で打ち付け、どこまで痛みに耐えられるかを検証したところ、視聴者から「(芸人は)かなり痛がっていて、いじめやリンチを彷彿させる」との意見がありました。また別の企画では、理髪店の洗面台に水を張り「水攻め」と称して、ターゲットの男性芸人の顔を水面に押し付けるドッキリがあり、「子どもが真似したら死につながる」などの意見が寄せられました。
担当委員は「前者の企画は打ち付けた球が弾け散って芸人が悲鳴を上げ、しゃがみこんだところで検証が終わっているが、スタジオゲストのタレントが『(もっと高速で打ち付け当該芸人が)砕け散るのを見たかった』と言って笑い、それを受けた進行役の芸人らも同意して笑う、という流れだった」と述べ、委員会が2022年4月に公表した「『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー』に関する見解」で問題を指摘したとおりの展開だとしました。また「後者の企画は実際に拷問や殺人に用いられるような方法であって、子どもの模倣を誘発する懸念がある」と指摘しました。
ある委員は「模倣という観点からはどちらも可能性がある。前者のピンポン球をたとえばゴルフボールに換えれば危険度は一気に上がる。後者の『水攻め』は大人の宴会芸にあるような印象で、どれだけ顔をつけていられるか、ぎりぎりまで耐えるということを問題と見るかどうかだろう」と述べました。
別の委員は「前者は(球を受ける)芸人が覚悟を決めてやっているのが(視聴者に)分かるが、後者の場合、ターゲットの芸人本人はおそらく事前に了解していると思われるが、視聴者にはそう映らず、不意打ちされたように見えるため残酷に感じられたのではないか」としました。
さらに別の委員は「(番組制作者には)コンプライアンスに挑戦しているところがある。裏返して言えば、制作者は視聴者に対してある種の信頼感を持って、分かる視聴者には分かってもらえるという前提で制作しているが、そこに認識のずれがあるのではないか。(バラエティーを見るうえでの)『お約束がありますよね』という前提で制作者は番組を作っているものの、そこはどうも(多くの視聴者とは)共有されていない気がする」と説明しました。
議論の結果、この番組の問題については引き続き「討論」を進めることになりました。このほかに大きな議論になる番組はありませんでした。

中高生モニター報告について

11月のテーマは「最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について」で、合わせて24番組への報告がありました。
複数のモニターが取り上げた番組は『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』『あしたが変わるトリセツショー』(いずれもNHK総合)、『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)です。
また「自由記述」には今月のテーマに関する意見のほか、選挙関連番組についての意見も寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では『ブラタモリ』(NHK総合)と『がっちりマンデー!!』(TBSテレビ)に6人から、『年に1度 自慢デキる家!絶景&グルメが年イチだけ楽しめる家SP』(テレビ東京)に3人から感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について】

  • 『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK総合)
    • 放送時間が35分と短めで、また途中のクイズ場面でのトークも結構面白く、日中視聴するのにはちょうどいい番組だと思いました。建設費などの値段が分かるからこそ次に訪れた時の“見え方”が変わるのがこの番組の良いところですが、「熱海」の放送回は情報が少なすぎて夕方のニュースの特集に似ていたので、もっと値段を表示してほしかったです。(中学2年・男子・東京)
    • お金の話は固くなりがちだけれど、ゲストの「最近何にお金を使ったのか」についてのトークは身近に感じられて好きだ。(中学3年・男子・東京)

  • 『あしたが変わるトリセツショー』(NHK総合)
    • ホームページにトリセツがまとめられていて、番組が終わった後も確認できていいと思った。「きれいな字がかけるトリセツ」や「身長のトリセツ」なども見てみたい。(中学2年・女子・鳥取)
    • 模型を使った説明、実験、専門家へのインタビューを取り入れていて、また全体的に丁寧なスピード感で説明しているのでわかりやすかった。ゲストが説明映像を見てコメントをするという形は、視聴者もゲストと一緒に説明を聞いているような気持ちで見ることができると思った。(中学3年・女子・長崎)

  • 『ワルイコあつまれ』(NHK総合)
    一番印象に残っているのは「モーツアルトの歴史」です。モーツアルトは幼いころから「神童」と呼ばれていたので莫大な財を残して死んだのだと思っていましたが、モーツアルトの音楽は当時の貴族達にはあまり好かれず最期は貧困の末に35歳で亡くなったという、彼の過去を学ぶことができました。(高校2年・男子・神奈川)

  • 『ブラタモリ』(NHK総合)
    タモリさんは豊かな知識がある方なので、どんどん情報が加えられていくのがよい。また案内人がクイズを出してもタモリさんがすぐに答えてしまうので、他の番組にはないリズム感でよい。羊羹は伏見から全国に広がった名物グルメだと紹介があった。食の歴史を学ぶのは楽しいので、さらに集中して番組を視聴してしまう。(高校2年・女子・青森)

  • 『ダーウィンが来た!』(NHK総合)
    都会で生きる動物を取り上げていて、特に良かったのはペンギンの話題でした。1970年代に船の事故が多発し、重油が漏れ出してペンギンの住処がなくなったというニュースを聞いてむしろ環境問題に興味を持ちました。ペンギンたちを見ながら別の問題にも目を向けられるようになっていて、すごくいい教育番組だと思いました。(高校3年・女子・奈良)

  • 『3か月でマスターするピアノ』(NHK Eテレ)
    初心者と経験者の出演者がいて、バランスが良かったです。また鍵盤と指番号、どこを弾いているのかの印が分かりやすかったです。強弱記号や発想記号(音の表現方法を指示する記号)の意味を解説したあと、アナウンサーの寺田理恵子さんが弾いていましたが、表示通りに弾いている感じが伝わってきませんでした。意味を解説するならしっかりと弾いてお手本を見せてほしいです。(中学1年・男子・山梨)

  • 『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)
    深刻化する海洋プラスチック汚染の話題だった。調査のたびに使う技術を紹介していて、結果を予想しながら視聴することができたし、これからの調査に興味がわいた。市民科学(シチズン・サイエンス)がこれからの研究のキーワードになると紹介されていて、忘れないようにしたい。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『姫とボクはわからないっ』(NHK Eテレ)
    ネットをついつい使いすぎてしまうという“あるある”をドラマで勉強できるところがいいなと思いました。勉強ばかりではなくドラマの要素もしっかりあるため楽しく視聴できました。(中学1年・女子・神奈川)

  • 『クラシックTV』(NHK Eテレ)
    ゲストのセルゲイ・ナカリャコフさんのトランペットは古く、とても大切に使っていることが伝わりました。ゲストの趣味や人柄が伝わるような質問があれば良かったです。また司会の清塚信也さんが明るく楽しい進行をしていて、クラシックの堅苦しいイメージを変えていました。司会者は重要だと思いました。(中学2年・女子・秋田)

  • 『NHK高校講座 世界史探求』(NHK Eテレ)
    出演者の感想が「歴史を学ぶことは大切だと思いました」などといったありきたりなものが多いと感じました。歴史好きな出演者もいる方が刺激になるし面白みも増すと思います。また出演者全員が女性だとジェンダーバランスの観点からも良くないと思いますし、男の子が視聴しにくい(親の前で見るのは恥ずかしいなど)のではないかと思います。(中学3年・女子・東京)

  • 『最後の講義 選「生物学者 福岡伸一」』(NHK Eテレ)
    博士の著書『動的平衡』は昔読んだことがあったが、より新しい動的平衡観を知ることが出来た。我々は「生命の始まり」についても明確な定義をもっておらず、人類全体がこれらを総括して、人生の長さを縮めている傾向があるという議論は衝撃的だった。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『#バズ英語 ~SNSで世界を見よう~』(NHK Eテレ)
    堅苦しい英文法ではなく本場の生きた英語やスラングを学べるのでとても面白いです。英語に対する苦手意識が減って英語を使ってみたいと思い、多くの外国人の方とメッセージで話すようになりました。おかげでテストなどの長文読解に手を付けやすくなりました。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)
    • セクハラを訴える裁判例で、罪の判決基準が裁判官の認識による「平均的な女性の感覚」と紹介されていたが、裁判官が男性である場合と女性である場合では、決して平等とは言えないと思う。今の法のあり方が現状に適応しているのかを視聴者に考えさせる作りがとても良かった。(中学2年・女子・埼玉)
    • 一番興味を持ったのは「立ちながらダイエット」で、運動する時間がない人やあまり運動できない人でも生活の中に取り込みやすいと思いました。新しい気づきを発見するきっかけになるような番組はとてもいいと思います。(高校2年・女子・愛媛)

  • 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)
    毎週楽しみに見ています。「蜂」がテーマの放送回で特に印象に残ったのは、国分太一さんの「しょうがない」という言葉で、長らく育ててきた巣に蜂が住まなくなったのを見ての言葉でした。あえて自然に近いやり方で対策し、失敗したら潔く諦めるといった国分さんの自然との向き合い方は、環境問題とともに生きる若い人たちにぜひ知ってほしいです。(中学3年・男子・千葉)

  • 『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日)
    専門家がデータを並べて話すよりも、この番組のようにクイズ形式で楽しく話してくれたほうが頭に入ってきます。バラエティー番組でありながら雑学を学べる構成がいいと思います。祖母も一緒に三世代で楽しめました。食事の時間も自然と会話が弾むクイズ番組は、ゴールデンタイムにぴったりです。(中学1年・男子・山形)

  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)
    • 国民は直接総理大臣を選べないが政党を選ぶことはできるので、政治について考える必要があるとおもった。自分は現在16歳で投票することはできないが、自分が投票する一票が政治に影響する大きさを理解することができた。(高校1年・男子・長崎)
    • 学校の「公共」の授業でいま政治について勉強している。学習した内容と結び付けながら番組を視聴できたし、親と一緒に議論する良いきっかけにもなった。政治分野に関しては人それぞれ考え方が違うと思うので、池上彰さんとは異なる考え方の人に1~2人出演してもらい、両方の意見を聞いたり討論したりを放送してもおもしろいと思う。(高校2年・女子・東京)

  • 『Live選挙サンデー 超速報SP』(フジテレビ)
    チャンネルを変えながら衆議院選挙関連番組を主に3つ視聴しましたが、石破茂氏のインタビューを他局よりも早く放送すると宣伝していたフジテレビをメインに視聴しました。裏金問題があった議員に“○裏”マークを付けていて、悪いことをした人が相手だとしても悪意を感じました。国の未来や選挙に関心を持てる番組内容にしてほしいです。(中学2年・女子・東京)

  • 『つたえたい~僕たちは感染症時代を生きている~』(フジテレビ)
    新型コロナウイルスや感染症について、私たちが知っていたことの裏側や、この4年間どうなっていたのかなどを知ることができて良かったと思いました。目黒蓮さんが取材した免疫講座は免疫の大切さがよく分かりました。(中学3年・女子・神奈川)

  • 『令和県民教育大学~そうだったのか!学べる県民学~』(フジテレビ)
    バラエティー番組の側面もありちょうどいい教育番組で、みんな自分の住んでいるところが好きなんだと感じた。MCがIPadに追加情報を書き込む手法はいまどきだと思ったが、他の出演者が違う追加情報を望んでもMCが思ったことを書き込むので、情報には各自の主観が入るのだと感じた。(高校3年・男子・東京)

  • 『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京)
    情報がコンパクトにまとめてあり分かりやすかったです。舞台は建設中の高度140mほどのビルでした。工事現場には所々にカメラがあり、赤と白の大きなクレーンはどんな意味で設置してあるのかなど、関心を持ちながら学ぶことができました。(高校3年・女子・熊本)

  • 『堀潤激論サミット』(TOKYO MX)
    最近の自転車ルールの罰則強化は日常生活でとても感じています。特に驚いたのは、高校生の友人がイヤホンをつけて自転車を運転していたところ警察に呼び止められ罰金を受けたことです。身近なところまで罰則が厳しくなっており、恐ろしく感じます。(高校2年・男子・山口)

【自由記述】

  • NHKはよく視聴しますが、平日に高校生向けの講座番組を放送していることを今まで知らなかったので、もっと多くの人に知ってもらうことが大切だと思いました。(高校1年・女子・愛知)

  • 先日衆議院選挙が行われたが、テレビで関連番組が少なかったと感じた。8月に参加した「高校生モニター会議」で、候補者を平等に扱うことを定めた放送法に委員が言及していたが、世間の衆議院選挙への関心の低さは放送法が足かせになっているのではないかと思った。(高校1年・男子・兵庫)

  • 10/27の夜、テレビでは選挙特番か野球しか放送していなかった。正直、特番はNHKが放送して、民放ではニュース速報を画面上に流せばいいのにと思った。このような日こそ、いつもと同じようにバラエティー番組を放送すれば視聴率を取ることができるのではないか。(高校2年・女子・東京)

  • 最近はニュース番組を見ていても番組の意向が加えられているように感じられ、学びたくても学びにくい感じがする。詳しくニュースを解説する教養番組なども活用して物事への理解度を深めたい。(高校2年・女子・東京)

  • 最近のスポーツ番組は大谷選手の話題に片寄っていると思います。野球の魅力をもっと伝えるには日本シリーズの話題がぴったりだったのですが、どこの放送局もワールドシリーズばかりやっていたので、日本のスポーツをもっと発信していくべきだと思います。(中学2年・男子・東京)

  • 『年下彼氏2』(朝日放送テレビ)にハマっているのですが、一話15分のオムニバス形式で簡単に見ることができるし毎話面白いので大好きです。もし『3』があったら全国ネットで放送してほしいです。(中学3年・女子・神奈川)

  • 年末は特番が増えるので楽しみです。『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への旧大手芸能事務所のアーティスト出演が問題視されていますが、その穴埋めとして韓国アイドルグループが出演するのは間違っていると思います。日本の番組なので、もっと日本人歌手を出演させるべきだと思います。(高校3年・女子・栃木)

  • 「マスゴミ」はネットで時々目にする言葉ですが、そもそもなぜマスメディアがこれほど嫌われているのか疑問に思い原因を調べましたが、はっきりとした理由は分かりませんでした。こうした「不確実な情報」から身を守り「確実な情報」を手に入れるためのマスメディアが「不確実な情報」に批判されている。さらに不可解なのは「メディアは何を求められているのか」がわからないことです。変な言葉が蔓延する現代こそ、メディアの質と信頼が求められていると思います。(中学3年・男子・千葉)

  • 青森県と岩手県の放送局には「テレビ局が薦める青少年へのおすすめ番組」をもっと増やしてほしい。地元局が何を薦めているのか知りたいし番組を視聴したい。(高校2年・女子・青森)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『ブラタモリ』(NHK総合)
    数年ぶりに視聴しました。タモリさんが「三差路だ。大好き」とすごく興奮していたのですが、なぜそんなに三差路が大好きなのか理由が分かりませんでした。タモリさんは僕にはわからない様々なものに興味があり、素敵なことだと思いました。(中学1年・男子・山梨)

  • 『がっちりマンデー!!』(TBSテレビ)
    • 「地面」についての知識は全くありませんでしたが、想像以上にお金がかかり、労力もかかる大変な仕事だと知りました。素晴らしい商品の開発にもかなりの時間と努力を費やしたと紹介されていたので、私も何事もすぐに結果を求めないで頑張りたいと思いました。(高校2年・女子・岐阜)
    • 森永卓郎さんが好きで毎週録画している。またMCの加藤浩次さんの、視聴者プレゼントの数を増やすための社長とのやり取りが特に好き。年上の社長を嫌な気持ちにさせず「増やしたい」と思わせる言い方がすごい。(高校3年・男子・東京)

  • 『年に1度 自慢デキる家!絶景&グルメが年イチだけ楽しめる家SP』(テレビ東京)
    初めて知る切り口の番組でよかった。“自慢”というと悪口のような意味に感じるが、本来は違うのかもしれないし誇りに思うのはいいことだと思った。住んでいる地域を誇りに思うことが、番組のタイトルに表現されているのだとわかった。タイトルは制作者からのメッセージだと認識したうえで、これからは番組を選ぼうと思う。(中学3年・男子・東京)

  • 『サポドリ Support Your Dreams』(青森テレビ)
    三沢商業高校の女子バレー部の一生懸命な様子に勇気をもらえた。青春の一ページを垣間みることが出来た。またそろばん音頭を踊りながらスタジオにいるよゐこの有吉晋哉さんと竹内夕己美さんにクイズを出していて面白かった。(高校2年・女子・青森)

  • 『スパイス!!』(日本海テレビ放送)
    「映画の裏側を楽しむ」という特集は、映画を観る前でも後でも楽しめると思いました。「この映画は鳥取県内の本当に色々な場所で撮影されているんです」と紹介した時に、どこで撮影されたのかが分かるマップも一緒にあると良いと思いました。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『新 窓をあけて九州「みんなちがって、みんないい」』(長崎放送)
    自分に自信が持てず苦しんだ時期を乗り越えるためにブレイキンから元気をもらう姿を見て、自分も元気が出た。この気持ちを次世代に受け継いでいこうという思いや、より多くの人に楽しんでもらおうという考えに胸が熱くなった。(高校1年・男子・長崎)

  • 『ナマ・イキVOICE』(鹿児島テレビ)
    さつま町の「神の湯 紫尾温泉」が地元で愛されていることがよく分かった。また学校や郵便局がお店や地域の人々が集まる場に生まれ変わっていて、人とのつながりを大切にしていることが伝わってきた。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『KICK OFF!KAGOSHIMA』(鹿児島放送)
    地域のサッカークラブや高校サッカーなどを取り上げて、地域密着のサッカー番組だと感じました。プロチームのハイライトでは、だれが見ても分かりやすいように一つ一つ解説しておりとても見やすかったです。これからもサッカーを盛り上げてほしいです。(高校2年・男子・山口)

◆委員のコメント◆

【最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について】

  • 「エデュテインメント」という言葉があるが、総じて中高生は「教育番組は面白さがないといけない」と注目しているような感想を持った。

  • 選挙関連番組についての報告もいくつかあったが、選挙関連番組は親と一緒に視聴している中高生が多いと感じた。

  • 高校2年生のモニターから「最近の自転車ルールの罰則強化を恐ろしく感じる」と報告があったが、続けて「自転車を運転中は暇なので、学生にとってイヤホンを使えないのはとてもしんどい」とあった。イヤホンを装着しながらの運転は本当に危ないと思う。一方で、今の子どもたちはタイパを重視したり一つの刺激では満足できなかったりして、いろいろなことを“ながら”でやるのが習慣になっているのだと感じた。

  • 『令和県民教育大学~そうだったのか!学べる県民学~』(フジテレビ)は個人的にとても好きな番組だ。他県の人から勝手なイメージを聞いてそれぞれの県の地図に落とし込むという演出があったが、そもそもその“県(あるいは地域)のイメージ”は結局メディアから得ているものだという点に気づくプロセスには学びの機会がある。また地方局の制作者たちも、キー局からのオーダーに応えていることで地元のイメージを自ら作りあげている面もあり、そこに気づくことにも学びの機会がある。番組を通じていかに学びの機会がつくれるかということで言えば、こういうのも一つのヒントになるし非常にいい番組だと思う。

今後の予定について

次回は2024年12月16日(月)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年11月に視聴者から寄せられた意見

2024年11月に視聴者から寄せられた意見

兵庫県知事選をめぐる各社の報道、情報番組に多数の意見が寄せられました。

2024年11月にBPOに寄せられた意見の総数は2,426件で、先月から101件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 85.6% 電話 13.7% 郵便・FAX 0.7%
男女別は、男性51.6% 女性29.7% 無回答18.6%で、世代別では10代1.7% 20代9.2% 30代20.4% 40代23.2% 50代23.9% 60代10.4% 70歳以上3.1%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。11月の個別送付先は25局で、意見数は866件でした。放送全般に対する意見は301件で、その中から18件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

不信任決議案採択、知事失職を経て11月17日に行われた兵庫県知事選を報じる情報番組、報道番組に対して多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は46件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

2024年11月中に青少年委員会に寄せられた意見は60件で、前月から4件減少しました。
今月は「要望・提言」が27件と最も多く、次いで「表現・演出」が18件で、以下、「報道・情報」などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 17日に行われる兵庫県知事選についての各社の番組。前知事ひとりを集中的に批判していて公平性を欠いていると感じる。個人攻撃、ネガティブキャンペーンのように見える。

  • 17日の兵庫県知事選をめぐるマスコミ各社の報道とネットのサイトやSNS上の情報との隔たりが大きすぎて、何を信じたらいいのか分からなくなってしまう。

  • 兵庫県知事選に向けての新聞・テレビ各社の報道が一方的ではないかと感じている。記者クラブ制度による既得権益を守りたいがためではないかと勘ぐってしまう。

  • 兵庫県知事選の結果を伝える番組。通常の当選報道と比べテンションが低いと感じられる番組がいくつかあった。大手メディアの敗北などという発言もあったが、メディアはいったい何と戦っていたのだろうか。

  • 兵庫県知事選が終わったが、パワハラ疑惑や公益通報の問題についての結論はまだ出ていない。百条委員会も続いている。引き続き詳細な取材と報道を続けてほしい。

  • 兵庫県知事選報道で公益通報制度をめぐる議論があるが、事実関係を整理して問題があるとすればどの点なのかなどを、冷静に客観的に伝えてほしいと思う。また、スタジオの専門家やゲストには異なる意見を述べる人を選びバランスを取ってほしい。

  • 兵庫県知事選をはじめ政治問題についてはキャスターやコメンテーターは発言の真意がきちんと伝わるよう言葉を選んで丁寧に説明してほしいと思う。

  • アメリカ大統領選報道。多くの番組で民主党の候補に勝たせたいかのようなコメントや解説が目立つ。日本全体で応援しているかのように誤解されないかと心配だ。

  • 強盗事件の報道で被害に遭った住宅を上空から撮影したり侵入経路である割れた窓などを映したりするのは必要なことだろうか。再度の被害を招く危険性に注意を払ってほしいと思った。

  • 参議院議員の自宅の火災を撮影した視聴者映像。逃げ遅れた人と思われる姿が映っていてショックだった。ご家族の心情を思うと言葉もない。あの映像を使う必要性が本当にあったのか、もう一度考えてほしい。

  • 参議院議員の自宅の火災。炎のそばで動いている人の映像を使ったことに強い違和感をもった。当事者への配慮がまったく無いし、映像を見た視聴者の心も傷ついたと思う。映像を使用するという判断は軽率だったのではないか。

  • 大物お笑いタレントが裁判を終結させたが、まるで週刊誌記事が事実であったと認めているかのような報じ方をしている番組が多く偏っていると感じた。

  • 性加害報道があった大物タレントが訴訟を取り下げたが、彼を画面で観ることにはまだ抵抗がある。

  • メジャーリーグや兵庫県知事選の話題も結構だが、ほかにも知るべきニュースがたくさんあるはずだ。報道番組、情報番組の構成を再点検してほしい。

  • 世界の衝撃映像やアニマル映像といった、借りものの映像だけに頼ったバラエティーが多すぎると思う。異なる番組で何度も放送された映像も多い。面白くない。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 子どもや若年層が楽しめる番組を充実させてほしい。どこの局も特定の層に向けた番組ばかりの印象だが、それ以外の人も楽しめるようにしてほしい。放送局が積極的に新規層を開拓するべきだ。

  • 高校生をメインに取り上げた番組で、「好きな人に告白」という内容があり、不快感を覚えた。高校生カップルが成立すると手をつなぐ、ハグするという場面が放送された。自分はそのような光景を見るのが苦手なので、多くの人が見る時間帯での放送は避けてほしい。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、クイズに解答できなかった女性アイドルに「ビリビリ椅子」の罰ゲームをやらせていた。嫌がって逃げようとするのを無理やりやらせるのは、もはやハラスメントだろう。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 報道番組で家庭内暴力の生々しい様子の映像が流された。画面をモザイク処理していても、その様子はわかる。子どもたちには見せたくない。暴力の様子は絶対に放送すべきではないと思う。

【「低俗・モラルに反する」】

  • バラエティー番組で、男性トイレに入った芸人を特定の便器に誘導するためごみで使用不能にしたうえで、おしっこに見立てたぬるま湯を全身にかけるドッキリがあった。便器にごみを捨てるなど非常識すぎる。食事中の視聴者もいるだろう。モラルに反する番組だ。

第333回

第333回 – 2024年11月

「警察密着番組に対する申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2024年11月19日(火)午後2時半~午後10時
場所
千代田放送会館7階会議室およびBPO第1会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「警察密着番組に対する申立て」ヒアリングおよび審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを行った。終了後、本件の論点を踏まえて審理を続け、起草委員が委員会決定案の作成に着手することになった。

2.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、起草委員作成の委員会決定案について議論を行った。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

第200回

第200回–2024年11月

毎日放送『ゼニガメ』について審議

第200回放送倫理検証委員会は、11月8日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から意見書の修正案が提示され議論した。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪している。委員会は、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして9月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員からヒアリングの結果報告と意見書の骨子案が提示され議論した。
10月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
10月30日に盛岡市で開催された北東北地区(青森、秋田、岩手)の意見交換会の様子と事後アンケートの集計などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年11月8日(金)午後4時~午後7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げ、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また事後撮影した映像を密着取材したかのように編集して放送した。2回目の審議となる今回の委員会では、前回の委員会で各委員から寄せられた意見や指摘をもとに作成された意見書第2稿(修正案)をもとに詰めの議論をし、最終稿に向けた作業を進めることを確認した。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌7月18日に番組に事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪した。委員会は9月に審議入りし、当該放送局から提出された報告書などを基に議論を重ね、10月に制作スタッフらからのヒアリングを実施した。今月の委員会では、担当委員からヒアリングの結果の報告と意見書の骨子案の説明があった。他の委員からは複数の質問や意見が出され、活発な議論が行われた。今後は意見書の原案の作成を進める。

3. 10月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

10月に寄せられた視聴者・聴取者の意見では、サッカーJ1「町田ゼルビア」側がSNSでの誹謗中傷をめぐって刑事告訴したことを取り上げたニュース番組への批判や衆院選選挙特番で複数の局が、CG画面などで候補者名の近くに「裏金」などの文字を表示したことに対する批判の声が多く寄せられた。
また大手チェーンストアの商品のみを扱った番組について「明らかに広告ではないか」という視聴者意見が寄せられたことを事務局から報告した。

4. 北東北地区意見交換会の報告

放送倫理検証委員会は、2024年10月30日に青森、秋田、岩手の東北3県の放送局を対象に盛岡市で意見交換会を実施した。参加した委員から当日の様子などが報告され、事務局から事後アンケートの集計結果などが説明された。
意見交換会の詳細はこちら

以上

2024年10月に視聴者から寄せられた意見

2024年10月に視聴者から寄せられた意見

衆議院選挙についての報道や開票特番に多くの意見が寄せられました。

2024年10月にBPOに寄せられた意見の総数は2,527件で、先月から334件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 86.9% 電話12.1% 郵便・FAX 1.0%
男女別は、男性 54.9% 女性 25.6% 無回答 19.5%で、世代別では10代 2.2% 20代 13.5% 30代 23.3% 40代 21.2% 50代 16.9% 60代 10.2% 70歳以上 2.9%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。10月の個別送付先は25局で、意見数は835件でした。放送全般に対する意見は269件で、その中から15件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

10月27日に行われた衆議院選挙の事前の報道や開票特番に対して多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は38件、CMについては2件でした。

青少年に関する意見

2024年10月中に青少年委員会に寄せられた意見は64件で、前月から2件増加しました。
今月は「表現・演出」が31件と最も多く、次いで「要望・提言」が25件で、以下、「言葉」「食べ物」などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 衆院選前の各党代表の討論や政策紹介の企画などで、扱われない政党がある。呼ぶ呼ばないの基準を明らかにしてほしいと思った。

  • 多くの開票特番で、政治資金の不記載が問題となった候補者の一部に“裏金”を意味する印を付けていたが、不記載が事実であったとしても顔写真に目立つマークを付けて人を区別する演出はあまり気持ちのいいものではなかった。

  • 事件報道で、被害者の自宅や暮らしの様子、犯行の手口などをこと細かに報道することは、類似犯罪の呼び水にならないだろうか。犯罪抑止のためには刑罰の重さや更生の大変さを強く訴えた方がよいと思う。

  • 「闇バイト」「ホワイト案件」などという言葉を使うと若者の警戒心が薄らぐのではないか。強盗傷害、強盗殺人という重大な犯罪だという意識をしっかりと植えつけるように報道してほしい。

  • 災害の状況を伝えた直後に大食いグルメの企画を放送していた。被災地の人の心情を想像して番組の構成を考えてほしいと思った。

  • 少子化対策としての子ども手当や学校無償化、育休の充実などの政策は大きく取り上げられるが、一方で高齢者の介護、家族によるケアの苦労などの話題は取り上げられることが少ないと感じる。高齢化に伴う諸問題への対応を強く促すような報道をしてほしい。

  • ニュースを伝える際にBGMを付けている番組がある。ニュースの原稿が聞き取りにくくなるのでやめてほしい。

  • 週刊誌報道やSNS上に流れる情報だけで作られているのではないかという番組が多いと思う。テレビ番組もコタツ記事化してゆくのだろうか。

  • 開票特番とプロ野球日本シリーズを1つのチャンネルで同時に放送していたがどちらにも集中できなかった。開票特番はほとんどすべての局で放送しているので日本シリーズをしっかり見せるチャンネルがあってもいいと思った。

  • 時代劇を増やしてほしい。中国や韓国で作られた時代劇は地上波でもBSでも放送されているが、日本で新たな時代劇が作られないのは悲しい。時代劇は子供たちが日本の歴史に親しむ機会にもなる。時代劇の制作と放送を望む。

  • 大手芸能事務所から他の事務所へ移籍したタレントの扱い方が不自然に小さいと感じられる番組がある。

  • ロケバス内での性加害の疑いで書類送検されたお笑いタレントに「メンバー」という呼称を付けるのはおかしいと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、若手芸人の部屋に侵入してエアコンのリモコンを隠して操作できないようにした。夏場のエアコンは熱中症予防に必要で、なければ発症して死亡するリスクがある。放送には不適切な企画だと思う。

  • バラエティー番組のドッキリで、理髪店で洗髪中に芸人の顔面が水の中に押し付けられるシーンがあった。見ていてまったく笑えない。いじめのような行為を、面白おかしく放送しないでほしい。

【「要望・提言」】

  • 特撮ドラマの男性キャラクターが変身する際、腹部を露出させる演出がある。必然性のある演出だろうか。一部の視聴者層に性的な訴求を狙ったものではないのか。肌の露出で男性を性的な見世物にしてよいと、子どもに植え付けるのは大変問題がある。

  • バラエティー番組での芸人によるトークで、ギャンブル好きで芸人仲間から借金しているのをネタにすることがよくある。ギャンブルも借金もネタになるようなものではなく、青少年の教育上、好ましくないと思う。

【「言葉」に関する意見】

  • 特撮ドラマの男性キャラクターに「地獄に落ちろ」というせりふがあった。いくら敵が卑劣だといっても、正義のキャラクターが言ってよい言葉ではないし、子どもへの悪影響が心配される。

【「食べ物」に関する意見】

  • バラエティー番組のドッキリ・コーナーで、ふつうの食べ物に気づかれないように辛みや酸味を加えて、出演者に食べるのを競わせた。食べ物を粗末にしているし、仕掛けられた側が無理に食べているのを見るのは気持ちよいものではなかった。

第272回

第272回-2024年10月22日

視聴者からの意見について…など

2024年10月22日、第272回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ、8人の委員全員が出席しました。
9月後半から10月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
10月の中高生モニター報告のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年10月22日(火)午後4時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、
佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

9月後半から10月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
男性アイドルグループの冠バラエティー番組で、メンバー各自が選んだ服を着て、タレントでモデルの女性審査員らが判定する企画について、視聴者から「審査員の批評が、批評というより悪口や暴言で聞くに堪えないものだった。男性メンバーの人権を侵害する発言もあった」などの意見が寄せられました。
担当委員は「(女性審査員の発言は)必ずしも一方的になされていたものではなく、誹謗(ひぼう)中傷やいじめにつながるものがあるとは思えなかった。あくまで『毒舌キャラ』として仕込まれての発言だというのは、(番組を)見ていてよくわかった」と述べ、この企画に問題はないとしました。別の委員は「2000年代後半くらいから、男性アイドルグループが『お笑い』の領域に本格的に進出してきた。するとアイドルのファン層は、従来の芸人がやる『お笑い』とはやや異なる反応を示すことが見て取れるようになった」と説明しました。
ボーイズラブをテーマにした深夜の連続ドラマで、主人公が子ども時代を回想する際、性暴力とみられるシーンがあったことに視聴者から「番組クレジットに『インティマシー・コーディネーター(注:映画やテレビなどで、俳優らの身体的接触やヌードなどが登場するシーンにおいて、演者側と演出側の意向を調整する職種)』などの名前はなく、子役の男児の精神的ケアが適切に行われたか大変疑わしい」との意見がありました。
担当委員は「いずれも過去の辛い経験が現在の自分に繋がっていることを表す回想シーンであり性暴力を肯定する内容ではなかった。子役の前で成人男性がズボンを下すシーンでは、子役の視線がずっと上を向いて視界に入らないように、別のシーンではやや年長の子役に成人女性が着衣のまま抱きついていたが、そこでとどめているなど、(制作側の)一定の配慮はうかがえた。しかし(視聴者意見にあるように)このような場面で本来は精神的ケアをする専門スタッフを入れて制作すべきであって、そうした視点が非常に大事だと思う」と報告しました。
ある委員は「成人男性がズボンを下すシーンは、映画であれば(男性俳優と子役を)別々のカットで撮影すると思う。(テレビでは)微妙なラインだといえるのではないか」と指摘しました。ほかの委員は「現段階ではインティマシー・コーディネーターの必要性など十分な検討がされているのか不明なことも多く、青少年・未成年者が暴力シーンや性的なシーンに出演する際にどのようなケアが必要なのかということを、委員会の中でもう少し問題整理した上でテレビ局やドラマ制作者との認識の共有を図ったほうがよいのではないか」と提案しました。
この問題は委員会として今後も議論を続けることになりましたが、このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

10月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」で、合わせて22番組への報告がありました。
複数のモニターが取り上げた番組は『それSnow Manにやらせて下さい』『マツコの知らない世界』(いずれもTBSテレビ)、『世界の果てまでイッテQ!』『THE突破ファイル』『月曜から夜ふかし』(いずれも日本テレビ)の5つです。
「自由記述」には番組全般に対する要望が多くありました。
また「青少年へのおすすめ番組」では『がっちりマンデー!!』(TBSテレビ)に8人から、『拝啓 十五の君へ ~30歳になった私からのメッセージ~』(NHK総合)に7人から、『ちびまるこちゃん』(フジテレビ)と『Aぇ!!!!!!ゐこ』(毎日放送)にそれぞれ2人から、感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『阿佐ヶ谷アパートメント』(NHK Eテレ)
    冒頭の“ゆる~い競技”がとてもおもしろかったです。迫力はないもののシュールで、出演者のトークも温かくおもしろかったです。また競技の難易度を下げることで放送内容が身近に感じられたのも良かったです。“憧れのスゴ技”で“バク転”がありましたが、運動が苦手なタブレット純さんが成功に近い体験をしたことで、僕も「やってみたいな」と強く思いました。(高校2年・男子・神奈川)

  • 『それSnow Manにやらせて下さい』(TBSテレビ)
    • 「大型ファッションショーでコーデ対決」回の審査員の声は、女性目線としては納得いくと思うが辛らつな言葉も多かった。それがテレビの醍醐味であって面白くなる要素でもあるが、人間性を否定する言葉は言われた人も視聴者も傷つくため改善してほしい。また審査員が5人もいるなら一斉に「○」「×」のボタンを押して評価すべきだと思った。藤田ニコルさんがトップバッターの重圧で毎回辛そうにしていたのが感じ取れたし、辛口コメントも1番取り上げられて、ファンの批難の矛先が向けられやすくなってしまう事に納得がいかなかった。(中学2年・女子・埼玉)
    • 「ダンス対決」はこれまで知らなかった曲に出会うことがあり、個性豊かな出演者の踊りを見るのはとても楽しいです。テレビの前で一緒に踊ったりリズムに乗ったりできるので、番組に飛び込んだような気持ちで視聴できます。合間にミニゲームを入れたり、メンバーをシャフルしてダンスコラボしたりすると、もっと見やすくなると思います。(中学3年・女子・長崎)
  • 『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)
    「道の駅の世界」の放送回では食べ物が多く紹介されていて、マツコさんが非常においしそうに食べるので、見ている私もおなかが空きました。番組のテンポが良く、所々で挟まれる雑学など日常生活でためになるような内容も多くて、毎週見ていても飽きません。これからも続いてほしいです。(中学3年・男子・千葉)

  • 『ワールド極限ミステリー』(TBSテレビ)
    芸能人による救出劇の話題では再現VTRで当時の状況を伝え、イラストなどで人命救助の適切な対処法も紹介していた。楽しみながら多くの知識を得られて、見る価値のある番組だと思った。またこのようなクオリティーの高い再現VTRやイラストを利用して、緊急時や災害などでの対処法を子どもでもわかるように表現するのも良いと思う。(高校1年・男子・長崎)

  • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
    • 20~30代の出演者は少ないが、若い世代が必ず知っている番組であり続けていることがすごいと思う。番組スタッフやロケで訪れる現地の人たちの様子も映していて、親近感があり気軽に見ることができる。また世界各地の観光地や伝統、言葉を紹介しているので、楽しみながら知識を増やすこともできる。(中学1年・女子・鹿児島)
    • 4年ぶりに手越祐也さんが出演し、イタリアで行われた「立ち漕ぎボートレース」に参加していました。ボートから川に落ちる瞬間に「イェーイ!」というナレーションを聞くことができて、4年前と変わらず懐かしいなと思いながら家族で番組を見て盛り上がりました。(高校3年・女子・栃木)
    • 手越祐也さん復帰の回は、4年前当時のテロップが使われていたりメンバーが涙ながらに復帰を祝っていたりして、出演者や番組スタッフの愛が伝わってきました。また放送後に学校で、普段あまりテレビを視聴しない友達から「久々にテレビの時間に合わせて家族みんなでご飯食べた」と言われました。テレビやラジオが家族団らんの大きなきっかけになっていることを、2024年のいま感じることができてとても幸せでした。(高校3年・女子・奈良)
  • 『THE突破ファイル』(日本テレビ)
    • 「その時どうすればいいのか」を楽しくクイズ形式で紹介していて面白い。麻薬の密輸がどのような手口で行われるのかは見ていてハラハラドキドキした。日常のちょっと困った時に使える豆知識的なコーナーはもっと増やしてほしい。(中学1年・男子・山形)
    • 昔からとても好きでよく視聴しています。出演者の名回答、珍回答がユニークでいつも笑わせられています。身近にあっても知らないことをクイズ形式で回答するスタイルは、多くの人が楽しめると思います。(高校2年・男子・山口)
  • 『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)
    • 唯一、毎週欠かさず見ているバラエティー番組です。インタビューテーマの選定がとても巧妙で、素材を活かす技術の高さや話の引き出し方の上手さ、特定のテーマに絞らないところが強みだと思います。視聴者を飽きさせない工夫がされていて、いつまでも続いてほしい番組です。(中学3年・女子・東京)
    • ツッコミが的確で思わず笑ってしまいました。最近は学校で疲れてしまうことが多かったのですが、そんなことも忘れてしまうくらい楽しかったです。ただ家族と視聴している時、少し過激な表現に空気が凍る時があるので、もう少し控えてほしいとも思います。インタビューを受ける機会が多くある都会は本当に羨ましいです。面白い回答ができる自信はありませんが、私もインタビューを受けてみたいです。(高校1年・女子・岐阜)
  • 『ニノさんとあそぼ』(日本テレビ)
    とにかく「おもしろい」の一言です。バラエティー番組の罰ゲームは最近“痛い系”が多いですが、この番組のように“編集での罰ゲーム”の方が普通に面白いです。家族団らんの時間なので罰ゲームにも配慮してほしいです。また最後のゲストは阿部詩さんでしたが、アスリートは減多にバラエティー番組に出ないので尺が長い方が視聴者的には面白いと思います。(中学2年・男子・東京)

  • 『日テレ系「クイズフェスティバル2024秋」~豪華芸能人が平成の名物クイズに挑戦SP~』(日本テレビ)
    人気俳優・タレントが“おバカな回答”を連発していて、久しぶりに腹を抱えて笑った。最近は知識量を問うばかりのクイズ番組が多く、“おバカ”が光るクイズ番組が少ないと感じている。『クイズ!ヘキサゴン』(フジテレビ)など平成に放送されていたものを視聴したいので、春・夏・秋・冬のドラマが始まる時に制作してほしい。(高校2年・女子・青森)

  • 『世界頂グルメ』(日本テレビ)
    ベトナムが「日本と比べて激安」と紹介されていたためか、画面にはひたすら「日本円で170円」「水1.5Lで60円」などと表記されていたが、現地通貨でも表記する方がいいと思う。なぜなら為替で価格は変わるし、なによりも現地を尊敬することにつながると思うからだ。“激安”と表記すると“安いから行く”ことを助長してしまうと思うが、海外に行くときは相手国を尊重していないと大変失礼だと思う。いま日本に来ている旅行者たちにも、日本での様々な支払いが安いからという理由で来てほしくないと、僕は思う。(高校3年・男子・東京)

  • 『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ)
    少し前に放送された番組とコラボしていて、面白そうだと思い視聴しました。テロップやイラストがなかったり、いつもは見えない「VTR開始まであと〇秒」が見えたりして新鮮でした。(高校3年・女子・熊本)

  • 『帰れマンデー見っけ隊!!』(テレビ朝日)
    サンドウィッチマンの伊達みきおさんが自分自身や家族にお土産を買う姿に親近感を覚えた。また女優の菜々緒さんも役柄できついイメージがあったが、とても前向きで協調性もあり優しい人柄だと思った。バラエティーは芸能人の素顔の魅力を再発見できる。(中学2年・女子・秋田)

  • 『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日)
    昭和の歌謡曲やニュース、道具などが紹介される時があり、とても興味深く勉強になります。最近はクイズ企画が多く、出演者の生活や人間関係を垣間みることができるトークが好きな私としては少し物足りないと感じています。トーク中心で出演者の個性が際立つ番組が見たいです。(高校1年・女子・愛知)

  • 『ネプリーグ』(フジテレビ)
    解きやすいクイズが多くて見続けやすいと思った。難しいクイズや補足情報は現役の塾講師が説明を加えていてためになった。一番好きなのは、塾の社会科の講師が優勝者への賞品についてプレゼンするところだ。視聴者も詳細な情報を知って買ってみたいと考えると思う。(高校2年・女子・東京)

  • 『この世界は1(ワン)ダフル』(フジテレビ)
    ナンバー1だけを紹介するバラエティーはこの番組だけだと思うし、どれもドラマのような話で楽しかった。俳優さんは力が入りすぎていて、そんなギャップもおもしろかった。(中学1年・女子・神奈川)

  • 『ポケモンとどこいく!?』(テレビ東京)
    最近は声優が顔出し出演していることが多く、僕はアニメを見てどの声優かを当てたりするのでうれしい。声優のアフレコを見て他の出演者が「セリフを言うとき表情が変わる」と言っていたが、小学生の頃に音読で「気持ちを込めて」と言われたこととつながった気がした。(中学3年・男子・東京)

  • 『芸能人格付けチェック』(朝日放送テレビ)
    視聴するたびに独創的なチェックを用意していて飽きることがない。弦楽器やロックバンドの見極めでは、プロと大学生・プロと小学生といったように年齢差があってユニークだと思った。格付けマスターが不正解の部屋にわざと入るモーションもいつもより多くて良かった。また昔はGACKTさんが正解を出し続けていたが、今のように全員が平等に正解したり間違えたりを繰り返すほうが良いと思った。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『まいど!ジャーニィ~』(BSフジ)
    9月22日の放送回には外部ゲストがいなかったので、MCのメンバーやみんながラフにやっている感じが伝わってきてとても面白かったです。また8月の夏休み特別編では外ロケをしていましたが、定期的に外ロケの企画を放送してほしいです。(中学3年・女子・神奈川)

【自由記述】

  • 『それSnow Manにやらせて下さい』(TBSテレビ)のファッションショー企画で、出演したタレントが視聴者に向けて後日、「いつになったらバラエティーを見るリテラシーが育つの?」と苦言を呈していた。そのような言葉をタレントに言わせてしまう番組は、改善するべき点があると思う。(高校2年・女子・東京)

  • 『その道のプロが選ぶ本当のNo.1 プロフェッショナルランキング』(TBSテレビ)で、Number-iの平野紫耀さんとDA PUNPのKenzoさんが3位にランクインしているのにも関わらず、その2人だけダンス映像が放送されず不快な気分になりました。ダンスは人によって感じ方が違うものなのでランキングをつけるのは面白くないと思います。(中学3年・女子・神奈川)

  • 私は『24時間テレビ』(日本テレビ)が嫌いです。特に嫌いなのは障がい者に関する特集です。障がい者の実情を伝えて偏見や差別をなくしていくことはとても大切だと思いますが、『24時間テレビ』は障がい者を利用して視聴者の感動を誘っているようにしか見えません。何かに挑戦する企画はわざわざ障がい者でなくてもいいと思います。今のままでは障がい者が見世物になってしまうと思います。(中学3年・女子・東京)

  • 最近は忙しくてテレビやラジオに触れる機会があまりなかったが、バラエティー番組で新ドラマの番宣を多くやっていて、ドラマをいくつか録画した。視聴するのが楽しみだ。(高校1年・男子・兵庫)

  • 僕がドラマ『素晴らしき哉、先生!』(朝日放送)を視聴しなかった理由は、世間では教員が足りず働き方もブラックだと言われているのにこのタイトルが「いかにも先生っていいですよ」と言わんばかりではないか、と感じたからだ。テレビ番組は影響が大きいので、世の中が望むものを制作することもあるのだろうか。(高校3年・男子・東京)

  • 学校の同級生と秋のドラマについて話をした。今期は見たいドラマがあまりなく、各局のおすすめドラマの紹介ページがほしい。(中学2年・女子・埼玉)

  • 最近は原作である漫画や小説があったうえで実写化しているドラマが多いように感じますが、私はオリジナルドラマを見たいです。(高校2年・女子・愛媛)

  • ドラマの劇伴にクラシック音楽が流れていましたが、曲名が分からず改めて聴くことができませんでした。挿入歌や劇伴の曲名をエンドロールや公式サイトに記載してほしいです。(高校1年・女子・愛知)

  • 小中学生が目標や夢に向かってスポーツや資格取得などを頑張る番組を、毎週あるいは毎日放送してほしい。定期的に放送することで、番組を見るたびに「自分も頑張ろう」と思うきっかけになると思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • スポーツ番組の解説について、特定の選手やどちらかのチームに偏った解説をするよりも、試合全体を冷静に解説してくれる人が増えるといいなと思います。荒木大輔さんの大リーグ解説は分かりやすく、先月電話で話をした祖母も同じ意見で嬉しかったです。(中学2年・女子・東京)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『拝啓 十五の君へ ~30歳になった私からのメッセージ~』(NHK総合)
    • 自分はいま16歳で、30歳になった時どのような姿なのか想像もできないが、将来に向けた努力は報われることを示唆しているような番組で元気をもらえた。(高校1年・男子・長崎)
    • いま自分には悩みがある。しかし今回出演した大人たちのように、自分が30歳になった頃に「あの時たくさん悩んでよかった」と言えるような大人になりたいと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『がっちりマンデー!!』(TBSテレビ)
    • スタジオでの会話が商品を冷やかすような表現が多く、信憑性に欠けると感じました。商品の良さが伝わりづらく、ウェブ広告以上テレビショッピング未満だと思いました。(中学2年・女子・東京)
    • 珍しい商品や話題の商品を紹介する番組は多くあるけれど、開発に至った経緯や開発者への直撃インタビューなども含めて1つの商品を丁寧に説明しているところが、他の番組にはない特徴だと思います。また闘病中である経済アナリストの森永卓郎さんが出演していて驚きました。アナリスト視点の感想も聞くことができ、時事的な話題をバラエティー感覚で楽しく学べるので、是非今後も視聴していきたいです。(高校3年・女子・熊本)
  • 『ちびまるこちゃん』(フジテレビ)
    『ちびまる子ちゃん』を見ると「明日から学校か」と憂鬱になってしまいますが、心温まるストーリーを毎週家族で楽しみにしています。(高校3年・女子・栃木)

  • 『Aぇ!!!!!!ゐこ』(毎日放送)
    近畿大学の相撲部の特集で、出演者たちが基礎的な練習を体験したときに「一番難しい」とリアクションしたのが意外だった。相撲部のキャプテンは4人で体当たりしても倒れない体幹を持っていてすごさが伝わってきた。「すり足行進」も迫力満点でプロになることはとても大変だと分かった。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『発見!タカトシランド』(北海道文化放送)
    歩いているところからさらっと番組が始まって、さらっと番組名をいうところがめずらしいと思いました。お笑い芸人がMCをしているのでトークがとてもおもしろかったです。(中学1年・女子・神奈川)

  • 『冨永愛の伝統to未来』(BS日本)
    冨永さんの立ち姿は綺麗だと思いましたが、10月の放送にしては服が夏らしくて季節に合わない気がしました。また足が細くて驚きました。収録は暑い夏だったのかなと思いますが、座った作業が多いので肌の露出は避けてズボンの方が良かったと思います。放送時間は短くてあまり苦痛もなく見る事ができました。僕の住んでいる山梨県の伝統文化も紹介してほしいです。(中学1年・男子・山梨)

◆委員のコメント◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『それSnow Manにやらせて下さい』(TBSテレビ)のファッションショー企画についての報告に“バラエティーを見るリテラシー”という言葉があったが、これは大切なテーマだ。そもそも学校現場でのリテラシー教育ではパソコンやSNSの使い方を学ぶのが主流だし、家庭で学ぶのも難しい。番組制作者は、視聴している子どもたちが“バラエティーを見るリテラシー”を持っていないことを前提に番組を放送するべきだと思う。

  • 「バラエティー番組のファッションチェックは辛口でOK」という考えは、先頃亡くなったタレント・ファッション評論家のピーコさんらの影響だと思うが、一定以上の年齢層では暗黙の了解になっているところがある。しかし若い世代はそうは思わないので、世代によって受け止め方は違うのだと思った。

  • 『日テレ系「クイズフェスティバル2024秋」~豪華芸能人が平成の名物クイズに挑戦SP~』(日本テレビ)と『ネプリーグ』(フジテレビ)を視聴した高校2年生のモニター2名がそれぞれ「最近は知識量を問うばかりのクイズ番組が多い」「解きやすいクイズが多く見続けやすい番組だった」と指摘していて、『東大王』(TBSテレビ)的なクイズ番組には2人とも食傷気味なのかという印象を受けた。昨今の中高生モニターは全般的に「ためになる番組」「役に立つ番組」を求める傾向が強いが、受験を控えた高校2年生がそういう年頃なのか、あるいはクイズ番組の潮目が変わりつつあるのか、今後も注視していきたい。

  • 『この世界は1(ワン)ダフル』(フジテレビ)についての報告があった。最近は学校教育などで運動会の徒競走や通知表がなくなるなど、「競争は必ずしも良くない」という風潮があると感じているが、その中であえてナンバー1を紹介する番組を制作したことは大変良いことだと思う。バドミントンのオグシオペアやバレーボールの大林素子さんの話にもあったが、ナンバー1になるには当然それに相応する努力をしていて、その上での成功体験や喜びを知ることも人生で大切なことだ。

今後の予定について

次回は11月26日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。また、11月28日(木)には鹿児島市内で、鹿児島地区放送局の番組制作者らと意見交換会を行う予定です。

以上

第332回

第332回 – 2024年10月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2024年10月15日(火)午後4時~午後9時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、起草委員から提出された委員会決定案について議論した。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、起草委員作成の「論点と質問項目」案について議論した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

第199回

第199回–2024年10月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

第199回放送倫理検証委員会は、10月11日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』の中で人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反被疑事件に密着し放送したが、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等、複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて討議した結果、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から意見書の原案が提示され議論した。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』の中で、出張買取業者が奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり現金で買い取る様子を紹介したが、実際は買取業者が事前に用意した物であることがわかり、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は議論の結果、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして9月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
TBSテレビが2024年6月19日に放送した『東大王』の特別番組「東大王VS難関中学 関東名門校SP」の中で、「野々村親子と学ぶ 業界No.1!味の素SP」というクイズコーナーが約30分間にわたってあり、視聴者からBPOへ「番組か広告か分かりづらい」という意見が寄せられた。当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
NHKのラジオ国際放送問題について議論した。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
北東北地区(青森、秋田、岩手)で開催する意見交換会の実施要項と事前アンケートの集計などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年10月11日(金)午後4時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げ、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また事後撮影した映像を密着取材したかのように編集して放送した。委員会は7月に審議入りし、関係者からのヒアリングを済ませており、今回は担当委員が作成した意見書の原案をもとに審議した。各委員から様々な意見が出され、議論が交わされたことをうけて第2稿を作成し、次回の委員会で継続審議することを確認した。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は9月に審議入りし、当該放送局から提出された資料に基づき担当委員が議論を重ねた結果、ヒアリングの方向性がほぼ固まってきたことなどが報告された。関係者に対するヒアリングを10月中に行い、次回の委員会までに意見書の骨子案を作成することになった。

3. TBSテレビ『東大王』について討議

TBSテレビは2024年6月19日(水)19時から3時間にわたる『東大王』の特番「東大王VS難関中学 関東名門校SP」を制作。番組は3部構成で、中学受験で出題された問題を東大王チームが解くコーナー、動物園にいる動物を表す難読漢字をクイズにした番組名物の「難問オセロ!」コーナーと続き、最後に「野々村親子と学ぶ業界No.1!味の素SP」と題したクイズコーナーが放送された。
クイズは冷凍ギョーザや中華合わせ調味料など味の素の6商品を紹介して出題する形式で、正解の解説には味の素の社員が登場。画面左上には「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップを表示し、味の素を冷凍食品界の王者と紹介。No.1商品と称する冷凍食品について3題を出題した後、何れも売り上げNo.1と銘打った中華合わせ調味料、和風だし、洋風インスタントスープに関するクイズを出題。クイズに優勝したチームには味の素商品の詰め合わせセットが贈られた。このコーナーの放送尺は約30分間だった。

放送後、BPOに視聴者から「クイズコーナーで味の素の商品に関する問題や解説を長時間にわたって取り上げていた。番組か広告か分かりづらい点、ステマなのかどうか分からない点において番組に疑問を持った」という声が寄せられた。これを受けて委員会は、TBSテレビに対して報告書を求め、10月4日に当該放送局から報告書が提出された。
報告書によると、当該コーナーは商品誕生の試行錯誤が学べる新企画として制作現場が立案したコーナーで、第1弾の明治に続く2回目の放送だった。制作にあたって味の素から対価は受け取っておらず、企画中に検討された企業PRにつながるような内容は全て取り上げず、番組側がクイズにしたいと考えた要素だけで自主的に構成された番組であるとしている。
一方で、放送中26分間にわたり画面左上に「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップが出続けた点や、商品を賞賛するばかりの放送内容を「番組かCMか分かりづらい」と受け止めた視聴者がいた点については、結果的に反省すべき事だとしている。
当該コーナーは、放送後TBSテレビの考査局から「慎重さが求められる事案」との指摘を受けたが、放送前の段階で番組プロデューサー陣は問題があるとは思わず考査部門には相談していない。TBSテレビは、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしている。

委員会は、本事案について10月11日に討議入りを決定。民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照合すると共に、番組か広告放送かの問題で放送倫理違反に問われた過去の委員会決定の事案と本事案とを比較して問題点を整理した。その結果、以下のような厳しい指摘が相次いだ。

  • 視聴者に身近な商品を取り上げれば視聴率につながると、制作現場が警戒心も後ろめたさもなく当たり前に考えていることに本事案の問題の根深さを感じる。

  • 1社提供で番組本編も提供社のことを取り上げているケースは、放送倫理違反であるにしても、視聴者は番組本編も広告だろうという意識で見るので実は影響はそんなに大きくない。むしろ、提供社でもない企業の事を殊更に取り上げる方が、その企業の担当者と何か裏取引があるのではないかという不信感が視聴者に募る。本事案はまさにそういう構成だ。

  • テレビショッピングかと思う程、芸能人らが褒めて美味しい美味しいと繰り返しており、視聴者からは番組か広告か分かりづらくステマかもしれないという意見が届いた。番組で取り上げた企業から対価はもらっておらず、自主的に構成した番組なので問題があるとは思わずそのまま放送したというテレビ局の対応を是認してしまっていいのか。

  • 民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」は、取り上げた企業から対価をもらっていなくても、番組制作や考査にあたっては、視聴者に広告放送であるとの誤解を招く内容・演出になっていないか常に留意する必要があるとしている。だからこそ、これまでの委員会決定で指摘したとおり番組考査が大事なのだが、TBSテレビの報告書を読む限り、制作現場は考査の必要性を全く意識せずに放送に至っており問題だ。

  • 番組か広告放送かの問題を巡って、地方局で放送倫理違反を問われるケースが相次いで以降、全国の地方局は番組と広告の境目を常に意識し苦労している。キー局がその点を全く意識せずに番組を制作しているというのが信じられない。これまで委員会決定を通じてBPOが訴えてきたことがまるで伝わっていない。これまでの委員会決定及び委員長談話の対象は全て地方局の事案であり、放送局間で公平な取扱いをしているのかも気になるところだ。

  • 「味の素」という企業名を書いたテロップが出続けていたり、商品を売上げNo.1と強調し味の素の商品を激賞したりしており、視聴者が広告ではないかと感じるのも致し方ないところがある。

  • 番組か広告放送かの問題で審議入りをして放送倫理違反を問われたある放送局の番組は「おいしさの追求」と銘打って企業の肯定的な側面の紹介に終始していた。本事案も番組コーナーのコンセプトはほぼ同じなので同様に審議入りすべきだ。

こうした厳しい意見が相次いだ一方で、本事案は、番組全編を通して一企業を取り上げているわけではない点や、番組のフォーマットであるクイズ形式に取り上げた企業の商品情報を落とし込んでいる点において、審議入りの判断をするまでには至らないという意見が出た。番組全体ではなく番組の一部で企業の商品やサービスを取り上げたケースにおいても審議入りの対象としてしまうと、キー局はもとより地方局も今後の対応に苦慮するのではないかといった意見も出た。
また、TBSテレビが報告書で、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしていることから、本事案は、今後のTBSテレビの自主的な対応に任せるということで討議を終了し、審議入りは見送った。

4. NHKのラジオ国際放送問題について議論

NHKは、2024年8月19日にラジオ国際放送などの中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが、沖縄県の尖閣諸島の帰属などをめぐって、原稿にはない発言を行った。NHKは9月10日に「ラジオ国際放送問題への対応について」という文書を公表した。また、委員が作成したメモとNHKが公表した文書を資料としてこの問題について議論したが、委員会としてはこれについて取り上げるという判断には至らなかった。

5. 9月の視聴者・聴取者意見を報告

9月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、タレントが80キロ超のチャリティマラソンに挑む番組企画について、台風が接近し影響が懸念されていたにもかかわらずマラソンを中止しなかったことについての批判や、そもそも一人のタレントに80キロ超のマラソンを課す番組企画は無謀だといった声が寄せられた。この他、女性芸人が護身術を学んだ後に痴漢にあった場合どんな反応を見せるかという番組コーナーについて、性犯罪を思い起こさせるような演出は悪ふざけの度が過ぎるといった意見が寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

6. 北東北地区意見交換会の開催について

放送倫理検証委員会は、2024年10月30日に青森、秋田、岩手の東北3県の放送局を対象に盛岡市で意見交換会を実施する。事務局から当日の実施要項や事前アンケートの集計結果を説明した。

以上

第271回

第271回-2024年9月24日

視聴者からの意見について…など

2024年9月24日、第271回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、欠席の榊原洋一委員長を除く7人の委員が出席しました。進行は吉永副委員長が代行しました。
7月後半から9月前半までの2カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
9月の中高生モニター報告のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年9月24日(火)午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

7月後半から9月前半までの2カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
バラエティー番組で、新型コロナが猛威を振るっていた当時にテレビのロケ現場で行われていた厳格な感染対策を揶揄(やゆ)するドッキリ企画を放送したところ、肯定的・好意的な意見も一部あったものの、多くの視聴者から「『感染対策は不要だ』『感染対策をする人々を嘲笑してよい』という誤ったメッセージを伝える懸念を感じた」などの批判的な意見が寄せられました。
担当委員は「この企画を放送してはならないとは言わないが、多くの死者が出た問題であるし、医療関係者や持病を持つ人たちに対しては配慮が欠けていたのだろうと思われる」と報告しました。別の委員は「(当時の)日本では、同調圧力の恐ろしさのようなものを感じていた人もいたわけで、それを笑いの手段として持ってきたことにはそれほど違和感を覚えなかった」と述べました。また、「(感染症にかかりやすい)小児がんの子どもたちがいるところなどは、今でも厳しい感染対策を強いられている。そこを揶揄されたと感じれば反発はあるだろう。この企画自体を非常識とは思わないし、実際に(今から振り返るとその当時は)滑稽な情景が国内にもあった。しかし、それを滑稽な状況として(番組の企画で)演出するには時期が早過ぎたのではないか」という意見も出されました。
西日本のある放送局のニュースサイトで、刑事裁判の判決を伝えるなかで性的暴行の被害者である12歳女子児童の供述調書の内容が掲載されたことについて視聴者から、「あまりに詳細に報じている。本人は苦しい思いをして、裁判のために信頼できる人に打ち明けた事柄だろう。裁判(公判)が公開なのは仕方ないが、その内容をメディアが社会にばらまく必要があるのか。まさにセカンドレイプだ」と厳しい批判が寄せられました。
担当委員は「指摘された内容はキー局のニュースサイトにも掲載されていて、いまでも読める」としたうえで、「本人に直接聞いたわけではなく、供述調書の内容というひとつのクッションが入っているので報じたのかもしれないが、(被害時に)12歳といういちばん難しい年ごろだということも考えると、もう少し想像力を働かせて配慮すべきだったのではないか」と説明しました。ある委員は「いま(キー局のサイトを)見ているが、被告人質問での検察官と被告人のやりとりも採録されている。公開の法廷における発言であったとは言え、女子児童にとってはデリケートな内容を含んでおり、こちらも書き過ぎかと感じる。報じるにあたってもうちょっと配慮があってもよかったのではないか」と述べました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

9月のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、合わせて13番組への報告があり、複数のモニターが取り上げた番組は6つありました。
「青少年へのおすすめ番組」では『第44回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2024』(日本テレビ)に4人から、『サザエさん』(フジテレビ)に3人から、『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)と『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)および『日曜ビッグバラエティ ニッポンの空を守る仕事人【日本全国の空港で激レア映像大公開SP】』(テレビ東京)にそれぞれ2人から、感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 『映像の世紀バタフライエフェクト「オリンピック 聖火と戦火」』(NHK総合)
    パリオリンピック開幕と世界で多くの戦争が起きている現状が重なり、番組タイトルに惹かれた。視聴後はよりオリンピックへの興味が湧いた。開会式には平和・ジェンダー平等などのメッセージを強く込めているように見えたが、同時に他の国で戦争が起こっていることに違和感を覚えた。オリンピックの効果や意義は何かを考える必要があると思った。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『NHKスペシャル「原爆 いのちの塔」』(NHK総合)
    • 原爆の悲惨さをネット配信で世界に広めたりして、核廃絶を訴える番組に変えるべきだと思う。中高生を対象とするならYouTubeでも配信するべきだと思う。また僕は臆病で戦争の番組を夜に見るのは怖いので、明るい時間に放送してほしい。(中学2年・男子・東京)
    • 中高生でも分かりやすい表現や言葉で制作され、映画を見ているようでした。ただ資料の字幕が、白い紙の上に白い文字を使用しており、自分は理解できたけれど祖父母の年代だと見づらいと思います。このテーマの番組は世代を超えて同じものを見る必要があるので、字幕の色や大きさは工夫するべきだと思いました。(中学2年・女子・東京)
    • 番組冒頭に火傷で顔がただれてしまった人の写真が映しだされた。その他にもショッキングな映像があったが、ありのままを知ることができて良かったと思う。漫画「はだしのゲン」で私の原爆に対するイメージが形成されていたが、専門家の客観的な見解やドラマ・映像・写真から現実的な迫力を感じた。(高校2年・女子・青森)
  • 『NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争1944 絶望の空の下で」』(NHK総合)
    たくさんの人の手記が登場し、同じ出来事でも色々な人の思いが交錯していたと分かる一方で、主要人物についてはもう少し掘り下げてほしいと思いました。また場面転換が多く少し混乱してしまいました。(高校1年・女子・愛知)

  • 『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)
    • 私は終戦間際に原子爆弾の被害に遭った長崎で生まれ育ち、平和学習を重ねてきました。社会科の授業で「平和を語り継ぐとき、厳しい表現で伝えるべきか」が話題になったとき、私は「戦争は生ぬるいものではないし、実際に心身ともに傷ついた方も大勢いらっしゃるので、厳しい表現のほうが戦争の実情を知ることができる」と思っていましたが、番組を視聴して考えが変わりました。番組には戦時中の映像やラジオ音声がそのまま使われており、心が痛んだり目を背けてしまったりすることもあり、向き合いたくても向き合いづらい部分もあるのではないかと思いました。戦争の伝え方は、今後考えていきたいことの一つになりました。(中学3年・女子・長崎)
    • 上層部にとって若者兵はあくまでも駒の1つでしかなかったことが伝わってきた。この上層部の態度には強い憤りを感じたが、一億特攻という思想に対して国民のだれも違和感を抱かなかった当時の環境に我々は目を向け、日本人特有の同調圧力といった性質を反省するべきだと思う。(高校1年・男子・兵庫)
    • 特攻を支えていたのは日本人の「精神」であり、アメリカの「数」に対して「精神力」で対抗するのだという意識だったと番組で紹介していて、日本に昔からある「武士道」と似ていると思いました。(高校2年・男子・神奈川)
    • 特攻隊員の紹介が「10月30日、1機目は18歳の加藤さんで、2機目は廣田さん…」「一番端に写っているのが兄…」と、今まで見たことのある映像とは全く違う重いものだった。戦死した人にも人生があったし家族もいて、その一人ひとりに焦点を当てていて余計に心に刺さった。今までこんなにテレビ番組を見るのが辛いと思ったことはないくらいだった。同じ映像でも切り口によって見ている人には違う捉え方になる。これから新しい映像や資料は出てこないだろうけれど、切り口を変えることで後世に響く番組を作ることはできるのだと思った。(高校3年・男子・東京)
  • 『NHKスペシャル「“最後の一人を殺すまで”~サイパン戦 発掘・米軍録音記録~」』(NHK総合)
    戦争の映像を見たことはあったが、今までと違ってずっと重い気分になる番組だった。なぜかというと個人名や肉声があったからだと思う。人が亡くなるニュースは人数で表されるが、一人ひとりにそれまでの人生がある。自分は今までリアルとして捉えていなかったのだと思った。(中学3年・男子・東京)

  • 『クローズアップ現代「終わらない戦争(2) “生きていることが疎ましい” 知られざる戦渦の中絶」』(NHK総合)
    中絶手術は麻酔なしで行われ悲鳴が上がったという相馬医師の手記はとてもリアルで、女性の辛い気持ちが痛いほど胸に刺さりました。戦争にはいろいろな顔があるけれど実は全然知らないので、もっと子どもたちにも教えていくべきだと思いました。戦争系の映像はショックすぎて昨今ではあまり流されませんが、このような戦争があってたくさんの過ちがあり苦しんだ人が大勢いる、その人達がつかみ取った自由の中で今私たちが生きている、という事を忘れてはいけないと思いました。(高校3年・女子・奈良)

  • 『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)
    • タイトルから内容を想像しやすかったです。また主人公と私の年齢が近いので、抱えている悩みに共感しやすかったです。戦争の話はテレビでは聞き飽きたけれど、語り部の話を私も聞いてみたいと思いました。(中学2年・女子・秋田)
    • 私が小学生の時に、戦争について小学校に話をしに来てくれた人がいたが、当時はまだ第二次世界大戦について習っておらず詳細な話の内容も覚えていなかったから、今回ドラマという形でもう1回聞くことができてよかった。ドラマの公演会前の物語部分をもう少し短くした方が、集中して見ることができるなと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争1945⇒2024』(TBSテレビ)
    • 実際に原爆が落とされた映像を見て、こんなにも一瞬で町が変わってしまうのだと思った。昔は飛行機のような形だったけれど、今は小さなドローンが人の命を奪ってしまうことに驚いた。(中学2年・女子・鳥取)
    • 罪のない人達が次々と殺されていき、それでもまだ核を使い続けていることが許せないと思いました。私は戦争をすべきではないと思うし、憲法9条の改正に反対です。改正されると日本も戦争に参加することになり、多くの犠牲者を出して同じ過ちを繰り返してしまうかもしれません。いま世界で戦争が続いているので、この問題をもっと真剣に考えるべきだと思います。(高校1年・女子・岐阜)
  • 『徹子の部屋 「戦争」を忘れない~櫻井翔が聞く黒柳徹子の記憶~』(テレビ朝日)
    黒柳徹子さんが戦争についてゲストに話を聞いた過去のシーンが流れました。30~40年前まで芸能人の中にも当たり前に戦争体験者がいたなんて想像もつきませんでした。淡谷のり子さんの特攻隊のエピソードに黒柳さんも涙している姿が一番印象的でした。過去の映像を見ながら戦争を振り返ることができるのも長寿番組だからこそだと思います。(高校3年・女子・熊本)

  • 『池上彰の戦争を考えるSP2024 ~なぜ、世界から戦争はなくならないのか~』(テレビ東京)
    • どんな理由があろうと戦争は起こしてはいけないものだと思いました。また原爆の被害は、当たれば死に、生き残ってもつらい後遺症に苦しむ、というひどいものです。日本はただ一つの被爆国として非核三原則を推していかないといけないと思いました。(中学1年・男子・山形)
    • 世界から戦争をなくすためには歴史に学び、それはこの先の戦争の危機を予測し戦争を未然に防ぐことにつながるという池上さんの言葉があった。私の周りにいる大人は「戦争の歴史を学びなさい」と言ってはいたが、学んだ後のことまで教えてくれる人はいなかったので、歴史を学ぶことの意味が初めて分かった。(中学1年・女子・鹿児島)
    • 池上彰さんを知っていたので番組を視聴しましたが、私の同級生は池上さんを知らない人が多く、戦争番組には興味がないので1つも見ない人がほとんどです。若者にもっと見てもらった方がいいので、若者に圧倒的な知名度がある人や、中高生がリポートする企画などがあった方がいいと思います。(中学3年・女子・神奈川)
    • 旧日立航空機立川工場変電所の銃痕や現在の防衛省の下にある大本営地下壕跡など、東京都に残る戦争の遺跡を初めて見ました。実際に亡くなった方がいた場所で歴史を述べていて、いつも以上に内容を深く受け止めました。東京裁判についても初めて詳しく知り、もっと学校の授業でも取り上げて深く学ぶべきだと思いました。(高校2年・女子・愛媛)
  • 『託されし人たち ~被爆79年 約束の時~』(テレビ新広島)
    ある家族伝承者の「あの時に聞いておけば良かった、と思うことだらけ」という言葉に、記憶を伝承していく尊さと、避けて通れない難しさがあると痛感した。広島市の伝承者養成の取り組みを知り、また元々太平洋戦争に関心があることも相まって、自分もいつか伝承者になりたいという思いが生まれた。被爆地に限らず自分が住む県や他の地域でも、次世代に語り継ぐ人を養成してほしい。(中学2年・女子・埼玉)

【自由記述】

  • 過去のモニターリポートをウェブサイトで読んで、戦争関連のドラマやドキュメンタリー番組が毎年少ないことに気が付きました。私は、NHKは戦争関連の番組を多く放送しており内容も良いと思いましたが、民放の番組は少なくがっかりしました。消えゆく記憶を残すためには全ての放送局が大々的に放送すべきだと思いました。(高校2年・男子・山口)

  • 大量の終戦番組がどのように保管されているのかとても気になります。これまでの貴重なインタビューなどを“再利用”しないと、いずれ終戦番組を放送できなくなる日がくることは必至です。放送局あるいはどこかにまとめて保管されているのでしょうか。(中学3年・男子・千葉)

  • インターネットの検索サイトで『火垂るの墓』と入力すると、予測変換ワードの一番上に「放送禁止」の言葉が出てくる。子どものうちからアニメーションで戦争について学ぶのは大切だと思うので、ぜひ8月の上旬に放送してほしい。(高校2年・女子・青森)

  • 特に民放のニュース番組で、SNSでバズった記事や投稿を返信(リポストやコメント)つきで紹介するコーナーが最近増えているように思う。SNS上での返信には多くの考え方がありインタビューなどより気軽に取得できるが、テレビよりも身近な立場の人がいることで、自分の考えが知らないうちにコントロールされているような感覚になり怖く感じる。(中学2年・男子・東京)

  • ラジオはコーナーを決めて放送しているけれど、3カ月に1回くらい、いつものコーナーではなくフリートークだけを放送してほしい。ファンは特別感があって嬉しいし、新しいリスナーも番組や出演者について知ることができていいと思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • テレビから得られる情報はフェイクニュースがなく信用されているので、テレビ局がニュースをSNSに投稿してほしい。(高校1年・男子・長崎)

  • 7月に報告したラジオ番組『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』のテレビ版(NHK総合)を視聴した。「親近感がわくラジオ放送」が実現できているのは、1つの机を囲んで3人が座っているからだと思った。テレビ番組を見た後に、この時収録されていたラジオを再び聴くと、3人が話しているところが想像できてとても面白かった。(高校1年・男子・兵庫)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』(NHK総合)
    年を取った田中さんと少年がだんだんと仲を深めていく様子を見て心が温まりました。最近、子どもの騒音問題を度々耳にしますが、田中さんと少年のような関係が築ければいいのになあと思いました。(中学3年・女子・東京)

  • 『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)
    自分と同世代が「死にたい」「生きるのがつらい」と投稿していて驚いた。曲紹介中に都内のLIVE映像があり、「今同じ月を見ている仲間がいる」と思えることで救われるし、同じ時間を生きていることが分かる方法は良いと思った。こんな番組を見たのは初めてだったので来年も見てみようと思う。(高校3年・男子・東京)

  • 『第44回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2024』(日本テレビ)
    • 小田原城や日本一のつり橋でのクイズといった体を張る企画は斬新だと思ったが、クイズ番組の域を超えていてバラエティー色が強すぎた。数少ない人気のクイズ番組なので、今まで通りクイズに特化した番組構成でよかったと思う。(高校1年・男子・兵庫)
    • 1年に1回のこの番組をとても楽しみにしていました。長時間のクイズ番組を見る同世代は少ないと思うので、SixTONESが出演することで若者の視聴率が上がればいいなと思います。途中の体力を使う場面では男性と女性の体力の差を感じ、クイズ番組で必要な演出だったのかについて疑問が残っています。(高校3年・女子・奈良)
  • 『サザエさん』(フジテレビ)
    オープニングで福井県が紹介されていて、自分の住んでいるところが紹介されたら嬉しいだろうなと思った。『ワカメ夢の二階家』ではワカメが「お兄ちゃん(カツオ)とHさん(花沢さん)は結婚するには成績が釣り合わない」と言っていた。はっきり口にするのは違和感があるし、小さい子どもに“結婚の釣り合いの基準になる”と伝えるべきではないと気になった。(中学3年・男子・東京)

  • 『日曜ビッグバラエティ ニッポンの空を守る仕事人【日本全国の空港で激レア映像大公開SP】』(テレビ東京)
    聞いたことがない言葉が沢山出てきたけれど、その都度詳しく紹介していて分かりやすかった。特に税関の仕事が面白かった。今年の1月に飛行機が炎上する事故があったので、今回のような番組を見ると少しでも安心して乗ることができると思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『与次郎駅伝』(秋田テレビ)
    小学生や会社チームの団結がすごかったです。いつもの街並みが、駅伝になると華やかで活気にあふれていてよかったです。(中学2年・女子・秋田)

  • 『新 窓をあけて九州「いのちのバトン」』(長崎放送)
    長崎県諫早市では年間三千頭ほどの猪が駆逐され皮が捨てられるが、それを革小物にしようとする考えがすごいと思った。「命をつなぎたい」という思いを胸に手作業で作っており、尊敬できる働き方だと思った。(高校1年・男子・長崎)

  • 『ナマ・イキVOICE』(鹿児島テレビ放送)
    鹿児島県内の店だけを紹介しているので、気になる店を見つけたときに行きやすい。出演者の移動や実際に食べる姿を見て、自分も食べに行っている気分になれるのが良かった。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『DRAMATIC BASEBALL 2024 巨人 VS 阪神』(BS日本)
    「巨人対阪神の伝統の一戦」とアナウンサーが言っていた。どういう意味なのか分からなかったので調べたら、主にマスコミが対阪神タイガース戦をこう表現していることが分かった。他のチームでは“伝統の一戦”と表現しないので興味深かった。またピッチャーの名前の下に“防御率”“勝”が表示されていたが、野球を知らない人でも楽しめるように分かりやすい説明があると嬉しい。(中学1年・男子・山梨)

◆委員のコメント◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 中学3年生から「厳しい表現では戦争について知ることを避けてしまう人も多くなるので、よりたくさんの人が知るようにもっと優しい表現にするべきだという議論が社会科の授業であった」と報告があった。ドラマや映画ではかなり凄惨なシーンもあるが、ドキュメンタリーの“現実”としての凄惨なシーンは「見たくない」という声が多くなっていると思う。

  • 『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)で特攻隊員の年齢や実名とともにその人生を取り上げていたのは、視聴した高校3年生にとって大きなインパクトがあったようだ。特攻隊員が本当に生きていたことや、戦争の悲惨さを実感できたのだと思う。

  • 『池上彰の戦争を考えるSP2024 ~なぜ、世界から戦争はなくならないのか~』(テレビ東京)のように、歴史を学んで今後の危機を予測したり現在のウクライナでの戦争と比較したりするなど、現代との連続性を強調する番組は若い視聴者からすると取っつきやすいのだろう。一方で『NHKスペシャル「“一億特攻”への道 ~隊員4000人 生と死の記録~」』(NHK総合)のように歴史の検証にしっかり焦点を当てた番組は若者が我が事として捉えにくいという面は否めないのかなと、リポート全体を通して思った。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『#8月31日の夜に。』(NHK Eテレ)について。「9月1日は子どもの自殺が多い」と報道されることがよくあるが、これは1977年~2017年までのデータで、最近のデータは反映されていない。この番組は危機感を煽るような趣旨の番組ではないが、自分が番組制作者と議論するときには「ことさらに“9月1日は~”と煽らないでほしい」と伝えるようにしている。

【その他(終戦・戦争関連番組のこれからについて)】

  • 今の中高生は戦争報道に対して「怖い」「嫌だ」「むごい」など拒否する傾向があるようだが、その一方で残酷さを売りにした映像コンテンツ・ゲームなどに触れる機会も多い。若い世代にとってそのバランスはどうなっているのか気になるところだ。

  • 残酷なシーンのあるコンテンツやゲームに日常的に触れている若者は、戦争報道にはそこまでの拒否反応がないのではないか。戦争報道を「怖い」という若者は、普段から残虐なコンテンツに接触していないと思う。

  • アニメで人の首が飛ぶシーンを見るのは平気な若者でも、ドキュメンタリー番組では「ガチなのはやめて」という感覚なのでは。原爆被害者の映像などにもホラー映画のような怖さを感じてしまうのかもしれない。しかしそういった残虐な出来事が戦争では本当に起きるということも、知っておかなければいけないと思う。

  • 残虐な映像を見た若者が心理的に病んでしまう可能性もあるので、そこは十分に気をつけなければならない。

  • 原爆資料館やひめゆり平和祈念資料館などでも、残虐な映像や展示では社会科見学でも来てもらえないといった悩みを抱えていると聞いた。犠牲者一人ひとりの名前を出してリアリティーを伝えるといった形にトレンドが変化しているようだ。

  • 我々が子どもの頃は、学校教育などでも戦時中の惨い映像を見せられてきたが、怖くても目を背けないで見るべきだという思いもあった。しかしそういった残虐な映像は苦手だという視聴者に配慮して戦争関連番組を制作しなければいけないとなれば、戦争の実態を報じるハードルは今後高くなっていくのだろう。もちろん“ガチの死体”や“人が殺される”ということに拒否反応を持つのは正常だ。子どものころに戦争体験者の言葉から想像する戦争はとても恐ろしかったし、残虐な映像がなくても伝えられることもある。これから先、テレビやラジオの表現のなかで、戦争のリアルさや怖さを青少年にどう伝えていくのかは大きな課題であり、考え続けていくべきテーマだと思う。

今後の予定について

次回は10月22日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年9月に視聴者から寄せられた意見

2024年9月に視聴者から寄せられた意見

自民党総裁選や兵庫県知事をめぐる報道に多くの意見が寄せられました。

2024年9月にBPOに寄せられた意見の総数は2,193件で、先月から1,341件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 85.8% 電話 12.8% 郵便・FAX 1.4%
男女別は、男性 52.1% 女性 26.1% 無回答 21.8%で、世代別では10代 1.7% 20代 10.9 30代 19.7% 40代22.8% 50代 20.4% 60代 13.1% 70歳以上 2.6%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。9月の個別送付先は25局で、意見数は670件でした。放送全般に対する意見は100件で、その中から13件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

自民党総裁選をめぐる報道や兵庫県知事への不信任決議をめぐる報道にさまざまな意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては7件でした。

青少年に関する意見

2024年9月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から23件減少しました。
今月は「要望・提言」が32件と最も多く、次いで「表現・演出」が17件で、以下、「編成」「言葉」などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 自民党総裁選の話題と比べると立憲民主党代表選の取り上げ方が小さいと感じる。同時期に行われるからこそ同様に取り上げてほしいと思う。

  • 自民党総裁選の報道で、特定の候補の扱いが大きかったり、特定の候補に対して批判的なコメントが目立ったりと、全員を公平に取り上げているとは思えなかった。

  • 連日ニュース番組も情報番組も自民党総裁選とメジャーリーグの話題ばかりだ。

  • 兵庫県知事に対する百条委員会や不信任決議案などをめぐる各社の報道内容は一方的な批判が多いと感じている。背景を含めて事実関係を詳しく正確に伝えてほしい。

  • 兵庫県の元幹部が自死したとされる問題に触れコメンテーターから、“追い込んで殺した”という趣旨の発言があり不穏当ではないかと感じた。

  • 毎年恒例の大型チャリティー番組。台風が接近し強風と大雨の予報が出る中で、トラックを周回させてまでマラソンを行う意味があるのだろうか。

  • 大型チャリティー番組のマラソン企画の中で、ランナーである女性タレントの身体を歩道の観客が触っていた。何らかの予防策を立てられないだろうか。

  • 人気タレントの夏休みに密着する番組。SNSでの発言により活動自粛中のタレントが収録現場にはいたはずなのに放送を見たら出演場面がまったく無くて驚いた。

  • 8年前に解散した人気アイドルグループについて、楽曲を使わない、歌唱の映像を使わないなどの不自然な扱いがいまだに続いていると感じる。

  • 「Z世代」などの言葉で若い世代をひとくくりにすることに抵抗感がある。どこかネガティブなニュアンスを感じるし、多様性をうたう時代の発想ではないと思う。

  • 事件のニュースで、目撃者の通報の模様や容疑者の供述内容を声優やアナウンサーに演じさせることが多い。現場の緊迫感や容疑者の言い分の理不尽さを際立たせる目的で行われていると理解するが、一方で、視聴者の怒りの感情や恐怖を煽る結果になっているとも感じる。

  • 各社でドラマのシナリオ大賞を実施しているが、バラエティー番組やアニメなどの企画を公募するコンテストがあってもよいと思う。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • ドラマで子どもが性的虐待を受けるシーンがあり、子役と成人俳優が同じフレーム内で撮影されていた。こうしたシーンはその必要性をよく検討したうえで、子役と成人を別撮りするなど、子役の精神面に配慮して撮影されるべきだ。

  • バラエティー番組で、護身術を習った翌日に暴漢に襲われるというドッキリがあった。夜道で暴漢に抱きつかれる状況は、女性ならだれもが想像する恐怖であり、視聴者にトラウマを与える可能性さえある。こうした影響を考慮した番組作りを心掛けてほしい。

  • ドラマの中で、ヘルメットをかぶらずに自転車を運転するシーンがあった。深夜ドラマだが、子どもたちが見ることもある。悪影響を与えるので、このような演出はやめるべきだ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 高校生を対象にしたクイズ番組で、解答する前に80mの全力疾走が課されたため、先に答えが分かって走り出した女子の参加者が、遅れて走り出した男子に走力で負け、敗退してしまった。男女の体力差を補うよう競技内容が工夫されるべきだ。

  • バラエティー番組のことわざ「七転び八起き」をテーマにしたドッキリで、細身の男性アイドルを転ばせていた。床のシーツをいきなり引っ張る転ばせ方で、危なっかしくて笑えない。危ないことは面白いことではない。

【「編成」に関する意見】

  • 土日の朝9時以降は、子どもたちが水泳や体操などの習い事に出かける時間帯だ。しかし、日曜日の午前9時台に子ども向け特撮ドラマが数年前から放送されている。以前のように、午前9時以前の時間帯に放送すべきだと思う。

【「言葉」に関する意見】

  • 報道番組で、画面右上のタイトルに「“パワハラ知事”迫られる判断」と出ていたが、「パワハラ」は失礼ではないか。マスコミがそろって知事をいじめているようで、子どもには見せられない。

第198回

第198回–2024年9月

毎日放送ローカルバラエティー番組『ゼニガメ』が審議入り

第198回放送倫理検証委員会は、9月13日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から当該放送局の関係者らにヒアリングした結果が報告された。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』の中で、出張買取業者が奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり現金で買い取る様子を紹介したが、実際は買取業者が事前に用意した物であることがわかり、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は議論の結果、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
7月と8月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年9月13日(金)午後4時~午後6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げた。この放送で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また取り上げた会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送するなどして、捜査対象の会社側から「そういう事実はない」と指摘され、そのことを認めている。委員会は、すでに当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したのちに前回7月の委員会で、複数の問題点があるのではないかとして審議入りを決めた。今回の委員会では、テレビ東京や番組制作会社などの関係者からヒアリングした結果を担当委員や事務局から報告した。そしてヒアリングで明らかになった番組制作の工程や背景などが説明され、他の委員からの質疑とともに議論した。今後は意見書の原案の作成を進める。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも、同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した結果、放送倫理上の問題があったのかどうかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。

3. 7月の視聴者・聴取者意見を報告

7月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、東京都知事選挙の投開票があった7月7日に放送された番組が、投票用紙への名前の記入方法や整理券をなくした場合の本人確認に関して誤った情報を伝え、翌週の放送で訂正したことについて多数の批判意見が寄せられたことが事務局から報告された。また、日本時間の同月14日に米国のトランプ前大統領が銃撃されたことを伝えた番組で、出演者が「(トランプ氏にとって)プラスのアピールにもなりかねない」と話したことについて批判する意見が寄せられたことなども報告された。

4. 8月の視聴者・聴取者意見を報告

8月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、バラエティー番組で新型コロナ感染予防対策を茶化して笑いものにしていたことに批判が多数寄せられたことが報告された。また、情報バラエティー番組の司会者がオリンピックのメダリストの容姿を動物に例えるという不適切な発言をしたことについての批判や、ドキュメントバラエティー番組で元首相銃撃事件を再現ドラマ形式で特集したが容疑者を擁護するような内容になっていたとの批判、ラジオ国際放送などの中国語ニュースの中で中国籍の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島は中国の領土などと原稿にはない発言をしたことについての批判が数多く寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

2024年9月13日

毎日放送ローカルバラエティー番組『ゼニガメ』が審議入り

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも、同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した結果、放送倫理上の問題があったのかどうかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。

第331回

第331回 – 2024年9月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2024年9月10日(火)午後3時~午後8時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを行った。終了後、本件の論点を踏まえて審理を続け、担当委員が決定文の起草に着手することになった。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、テレビ東京から提出された再答弁書の概要・ポイント等を担当調査役が説明し、委員からの質問等に対応した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

2024年8月1日

2024年度「高校生モニター会議」

◆概要◆

2024年8月1日、新型コロナの影響で5年ぶりに対面でのモニター会議を開催しました。今回は高校生モニターのみの参加でしたが、モニター会議は委員との交流の場であると同時に自分たちの意見を委員や放送局に直接伝える機会であり、またテレビ局内の見学や意見交換会を通じてメディアリテラシーを涵養(かんよう)する貴重な場でもあります。今後のより有意義なモニター活動に繋げていってもらえればと思います。
当日は、今年度の高校生モニター12名と、BPOからは榊原洋一青少年委員会委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員の5人が日本テレビに集まりました。オリエンテーションを終えたモニターと委員ら参加者は、日本テレビ社屋内の社員食堂でランチを済ませた後、同社の報道フロアとニューススタジオおよびバラエティー番組のスタジオを、同社の社員の説明を聞きながら見学しました。ウッチャンナンチャンの南原清隆さん他が生出演する『ヒルナンデス!』のエンディングをスタジオ内で見ることができ、興味津々といった様子でした。
続いて高校生モニターと番組制作者との意見交換が行われました。今回は日本テレビの『月曜から夜ふかし』の矢野尚子チーフプロデューサー、沢田健介プロデューサー、徐真然プロデューサーと、進行役の菅谷大介アナウンサーにご参加いただき、同番組のミッションや裏話などの興味深い話を聞いた後、質疑応答で盛り上がりました。
後半には高校生モニターと青少年委員会委員との意見交換が行われました。それぞれの自己紹介のあと、「今のテレビと昔のテレビ、どちらが面白いかについて」「放送局にどうしても伝えたいこと」などについて意見交換しました。
本日参加してくれた高校生モニターたちは様々な視点からしっかりとした意見を述べ、高校生としてはとてもハイレベルなモニターたちでした。今後の毎月のBPOへのモニター報告に引き続き期待したいと思います。

第1部 日本テレビ『月曜から夜ふかし』制作者との意見交換会

①制作者 自己紹介

〇矢野尚子チーフプロデューサー(以下、矢野CP)
「この番組は、いま社会で起きていることを、報道以上に奥深くお伝えできる番組だと思っています。私は元々報道志望で日本テレビに入ったんですが、報道局には行けず『ザ!世界仰天ニュース』や『はじめてのおつかい』などいろいろな番組を制作していました。途中から10年間報道の仕事もしたあと、バラエティーに帰ってきてこの番組の担当になりました。報道的視点も織り交ぜながらいい番組ができたらなと思ってやっていますが、報道番組や情報番組などでインタビューしていた人たちとは違う人たちが、『月曜から夜ふかし』には出てきます。「世の中にはこういう人もいるんだな」「いろいろな方の生きざまを見ることができて、そして皆さんすごく楽しく人生を力強く生きているな」ということをお届けできる仕事はとてもやりがいがあるし、視聴者に見てもらって楽しんでいただけたり何か考えるきっかけにしていただけたりしたら、すごくうれしいと思っています。」

○沢田健介プロデューサー(以下、沢田P)
「2011年に日本テレビに入って、今14年目です。生まれは茨城の田舎だったのでテレビがエンターテインメントの全てで、こういう派手なところで働けたらいいなと思ってテレビ業界に入りました。番組を作りたくて入社しましたが、最初は営業に配属されてCM枠をスポンサーに売る仕事を6年間やって、その後バラエティーに異動してきました。『月曜から夜ふかし』を担当して5~6年経ちますが、マツコ・デラックスさんに「おまえはどんな生き方をしてんだ」と、いじられる生活をずっとやっています。マツコさんはテレビで見るのと同じ温度で僕ら制作スタッフにも分け隔てなく話してくれる方で、そんな人と一緒に仕事ができるのは楽しいなと思っています。『月曜から夜ふかし』にはミッションがあると思っていて、「この番組だけはきれいごとを言わないでおこう」と心に決めて、番組独自の角度で物事を切り取っています。番組内では言っていませんが、どんなマイノリティーでも平等に扱おう、ちょっと社会が触れづらい人やわざわざ取り上げないと思われるような人も積極的に取り上げていこう、自分たちの周りにいないようなタイプの人も取り上げていこうと。マイノリティーだからどうとかじゃなくて、どんな人も楽しく生きているということをこの番組は絶対伝えていこう、そこは強い気持ちを持ってやっています。」

〇徐真然プロデューサー(以下、徐P)
「中国・上海出身で2016年に日本に来て、令和元年に日本テレビに入社しました。中国の医大を卒業して研修医として働いていましたが、『月曜から夜ふかし』が好き過ぎて、海を越えて文化を超えてここに座ることになりました。中国にいたときの日本のイメージは「わびさび」とか「桜がめちゃくちゃきれい」とかしかなかったのですが、『月曜から夜ふかし』を見るとみんなトイレにも行きますし、酒をがんがん飲んでいます。日本人にもそういう人がいるんだ、とちょっと安心しました。『月曜から夜ふかし』は人間の素性とか、国籍なき人間性が表れていますので、すごく素敵な番組でぜひ参加したいという思いでいました。」

②番組の紹介、制作の体制について

(徐P)  『月曜から夜ふかし』はご当地番組です。「方言の問題」や「山手線の駅の中で一番降りたことが少ない駅はどれか」などの企画があります。また時期に合わせた「街録」も定番企画になっていて、春はお花見や上京した人へのインタビュー、夏は海辺ニュース、秋は食欲の秋でグルメなどがテーマです。“桐谷さん”など名物素人企画もあります。私の企画では、なぜ『月曜から夜ふかし』が中国人にそんなにウケるのかや、中国の“やばい人”も紹介したいと考えています。
『月曜から夜ふかし』の新しい企画からオンエアまでの流れですが、まず全体会議でディレクター、プロデューサー、リサーチャー、作家が企画を出します。そこで「面白いですね、やりましょう!」となったらロケに入ります。1回のオンエアに関わるスタッフの構成ですが、ディレクター・LDが15~20人、プロデューサーが5~6人います。演出が2人、総合演出が1人です。そこに音効、カメラマン、美術などたくさんの方の力が合わさり、1回のオンエアに関わる潜在的なスタッフは100人ぐらいです。1回のオンエアには大体3つVTRがあって、2つは街録で1つは地方ロケです。『月曜から夜ふかし』の街録は打率が低くてすごくしんどいです。10人声をかけた中で1人ぐらいしか答えてくれませんし、また10人答えてくれたうち1~2人しかオンエアされないときもあります。1回のオンエアで声をかけている人の数は1,000人ぐらいいます。ネット上で「『夜ふかし』本当にラッキーですね。毎回奇跡が起こるんですね」という言葉を見ますが、ラッキーではなく、本当にこつこつ数で勝負しています。つぎに、ロケの素材を編集ソフトで編集する作業は、業界用語でオフラインと呼びます。オフラインでは素材を編集して、そこから“唇”とかテロップ入れ、美術調整などをしてVTRを仕上げて、収録に臨みます。収録は基本的にオンエアの1週間前ですが、収録後に足りない分があれば追撮で人に声をかけて…という作業を繰り返しています。オンエアは月曜日ですが、”ミックス“と呼ばれる作業はオンエア前の金曜日です。ミックスではナレーションなどを最終的にチェックし、その他の微調整も行います。ここまでが一連の作業です。

③他の番組ではやらない『月曜から夜ふかし』ならではの特徴、番組のミッションについて

~VTR視聴~ コーナー企画「視聴者のお悩みを聞いてみた件」

運転免許試験に全然受からない長野県在住の男性(20)に取材。仮免で18回、本免で11回落ちているこの男性から「番組で応援してほしい」とメール投稿があり、その勉強の様子や得意な絵について放送したもの。

(沢田P) これは視聴者投稿企画だったのですが、ディレクターは取材で本人に会ったときに「もしかしたら障害のある人なのかもしれない」と気づきました。そこで一度立ち止まったわけです。試験に落ち続けることに障害の影響も少しはあるかもしれないことを考えると番組では扱えないかもねと、いろいろと議論をしていました。でも、とにかく御本人が番組に出たいと言っていて、そして親御さんも是非この挑戦を番組で取り上げてほしいと言っていると。それを聞いたときにハッとしました。何を僕らは手前で立ち止まっていたのか。何かいけないことでもあるかのような議論をしてしまったけど、そんなのって全く必要なかった。単純に、彼の個性的な才能とか、勉強を一生懸命頑張れる彼の才能に焦点を当てて番組で取り上げようと決めました。こういうことをやれる番組ってそんなに多くはなくて、「マイノリティーだから何だっていうんだ」「みんな違ってみんないいよね」と心に決めている番組だからこそできたことだと思います。この放送で傷ついた人は誰もいないし、彼の様子を見たらむしろ勇気をもらうというか、自分も明日頑張ろうって思える。これが『月曜から夜ふかし』の一番大事にしていることが表れたVTRだと思います。
もう一つ例があります。番組では美容整形も扱っていますが、実はこのジャンルはテレビで扱いにくいと言われています。「美容整形できれいになりました、悩みが解決しました」というと全員が成功すると思われてしまうんですが、二重手術で失明する可能性などいろいろなリスクを抱えているからです。でも弊社の考査部のメンバーと協議をしながら、どうすれば美容整形の良さと怖さが両方伝わって、しかもエンターテインメントとして面白くできるかみたいなことを考え尽くして、番組にずっと協力してくれている“フェフ姉さん”の「韓国の歩き方」という形で放送しました。リスクもエンターテインメントにして詳しく説明するなど、普通では扱いにくいジャンルを『月曜から夜ふかし』で放送できた良い例だと思っています。

④モニターからの質問

Q.(高校3年・女子・熊本) 徐さんへの質問です。日本テレビに入社するのはすごく難しかったと思うし、希望する部署にもなかなか配属されないと思うんですけど、どういう経緯で『月曜から夜ふかし』に携わることになったのですか。
A.(徐P) 当時は日本語も上手ではなかったので、入社面接で内定をもらうために「中国とのビジネスで日本テレビに貢献できます!」と言って内定をいただきました。入社後は研修がたくさんあるのですが、どこに行っても「私、『夜ふかし』が好きです!『夜ふかし』がやりたくて、海を越えて日本に来ました!分かりますよね?『夜ふかし』です!!!」と。『月曜から夜ふかし』は結構大変な番組で、新卒や1年目で配属されることは結構珍しいのですが、私の勢いと本音を見せて、そのまま配属されました。

Q.(高校2年・女子・青森) TikTokやYouTubeショートなどのSNSに番組の“切り取り動画”が無断転載されています。デメリットだけじゃなくて、勝手に宣伝してくれるメリットもあると思いますが、どう考えていますか。
A.(沢田P) SNSで違法に転載されることによって、コンテンツを作った人や出演した人に本来配分されるべきお金が配分されていないことが、僕がプロデューサーとして唯一申し訳なく思い、またモヤモヤしているところです。正直、制作したものはできるだけ多くの人に触れてほしいなと思っていますが、頑張って作った人や出演してくれた人に、たくさん見てもらったことを還元したいと思っています。
(矢野CP) 出演者は「『夜ふかし』なら良いですよ」と言ってくださっていますが、思わぬ形でずっと流れ続けてしまうと、勇気を持って出演したのに不本意なことになってしまいます。私たちもとても心を痛めているし、プラットフォームの方々にもその責任を感じてほしいと思っています。

Q.(高校2年・男子・神奈川) インタビューの難しさと大変さを感じましたが、テロップやマツコさんのリアクションなどでその人の特徴的な部分を面白がることは、本人に許可を得ているのですか。
A.(沢田P) すばらしい質問ですね。番組の放送枠が深夜から夜10時の全国ネットの枠に移動したことによって、見る人が格段に増えました。番組の影響力が上がるとなったときに一番気にしたのは「放送によって悲しい思いをする人がいないこと」です。そこで番組としてやり始めたのは、マツコさんや村上信五さんのリアクション、演出的なテロップやナレーションを編集で入れたら、必ず取材をした方にその内容を相談して、了承いただけたものだけ放送するということです。番組制作スタッフの労力はとても大きいですが、そこまで丁寧にやって放送しています。もちろん「それはさすがにやめてください」と言われることもあります。でもその積み重ねをしているから何とかここまでやってこられている。「悲しい思いをする人がいないこと」を大事にしているので、そうやって番組を作っています。

Q.(高校3年・女子・奈良) いつも中国のコーナーがとても面白いなと思っています。アメリカや他の国でも、とても個性豊かに自由に生きている人がいるので、いろんな国でもロケをされたらいいなと思っています。
A.(徐P) ありがとうございます!次の企画書の中に一番でかいフォントで書きます!
(沢田P) 番組の放送後、中国でびっくりするほどたくさん見られているんです。違法な方法ではあるので、もろ手を挙げて良いとは言えないですが、すごい反響なんです。こういった日本のバラエティーという独自の文化が海外でヒットしてほしいという気持ちは強くあって、その足がかりになれる番組だなとも思っています。ドラマや映画などといったストックコンテンツは海外に出ていきやすいですが、こういったバラエティー番組が海外でヒットする例はあまりないので、今いろいろと考えているところです。

Q.(高校3年・女子・熊本) 私自身、中学生のときに比べてテレビを視聴する回数が減りました。近年“テレビ離れ”という言葉をよく耳にしますが、ここ10年ほどで番組制作に対する思いや視点の変化はありましたか。
A.(沢田P) それは毎日、本当に考えています。2011年に入社したときと比べても、1回の放送に対しての視聴者のリアクションがすごく少なくなってきていて、毎日とても寂しい思いをしています。非常に残念だし何とかしなきゃいけないけど、どうしようもないみたいな思いもあって。こうなってしまった理由は幾らでもありますが、自分たちで何とかしなきゃいけないと、本当にいろんな手を尽くしています。
(徐P) 最近の視聴率は実際にとても低い数値ですが、実は、中国からは日本のコンテンツはそう見えてはいない。日本のコンテンツは国際的な舞台で戦うときに依然として強いんです。クリエイティブな人がたくさんいて、それでも地上波でそんなに膨大な利益を出していないのはすごく残念だと思うし、これからはビジネスモデルを変えていくべきだと思っています。ぜひ楽しみにしてほしいです。
(矢野CP) テレビにしかできないことって絶対あって、報道や災害時の放送、YouTubeでは難しい規模のドキュメンタリー、あとはとにかく面白いものを100人がかりで作るとか。テレビにしかできないものをしっかりと作れば、それは必ず届くと信じています。これからも何が求められるかを考え抜いて、多くの方に「たまにはいいよね」と思ってもらって、そして“たまに”が重なって「何か見ちゃうよね」となるような、視聴者に近いメディアでいられるといいなと思っています。

Q.(高校3年・女子・熊本) さきほど、徐さんがおっしゃっていた「ビジネスモデル」が気になっていますが、今の時点で具体的な展望はありますか。
A.(徐P) 社内にはいろいろな部署がありますが、現状ではまだ、そこで働いている皆さんと何をどこまでできるのか、できないとしたら理由は何なのか、を探っている段階です。
(沢田P) テレビって1億2,000万人に同時に届けられるメディアとしての広告価値があったんですが、それに代わるようなビジネスモデルを今テレビ局は持っていなくて、それをみんなで必死に探しています。例えば映画や、テレビ発のオーディション番組で新しいスターとともに利益をつくっていくなど、多角的に仕掛けていって、どれが未来の基軸になるかを探っているような段階です。

Q.(高校1年・男子・長崎) 単純な質問ですが、番組のネタって切れたりすることありますか。
A.(徐P) もちろん非常にあります。ご当地問題ももう12年もやっていて何もないし、心理テストももうないし。「街行く人のお豆腐グルメ」といった変化球も視野に入れたりしています。
(沢田P) 一番時間をかけているのはそこで、「来週何を放送しよう」「再来週は何を放送しよう」って日々考えています。毎週ネタをつくっています。テレビマンがほかの仕事の人たちと違って一番長けているのは“発想”という部分かもしれません。

⑤委員長から

(榊原委員長) とても印象的だったのは、やはり人手とお金とアイデアのかけ方がSNSとは全然違うというところです。是非アイデアをどんどん出して、中国だけでなく世界中の人がお金を払って見るようなコンテンツを制作してほしいと思いました。

(菅谷アナウンサー) 『月曜から夜ふかし』は非常に人気がありまして、オリンピックのウラでも高視聴率を獲得していて、単純計算にして600万人ぐらいが見ています。東京ドームで1試合野球をやると5万人が見ますが、120試合やってようやく600万人、その数の人が1時間のうちに一斉に見るということです。そんな状況だからこそ、誰もが楽しめる、誰もが傷つかない番組を考えなければいけないのだというところが、今日の3人の話だったと思います。本日はありがとうございました。


第2部 BPO青少年委員と高校生モニターとの意見交換会

【テーマ1】 今のテレビと昔のテレビ、どっちが面白い?

 中高生モニターの毎月の報告の中には「前の番組の方が…」「昔の番組は…」という言葉がよく出てきます。“今”と“昔”で、どちらのテレビの方が面白いと感じているのでしょうか?高校生モニター12人と委員5人に挙手してもらうと…以下の結果となりました。

「今のテレビの方が面白い」…5人、「昔のテレビの方が面白い」…12人

「今のテレビの方が面白い」と思う人の意見

  • (高校2年・男子・神奈川)まず前提として、動画で簡単に自分の見たいものを見ることができる今と、僕が生まれる前のテレビしかなかった昔とでは、面白さの感じ方が違うと思います。それでも、昔よりも出演者の体のことや権利を考えて改善を重ねた結果が、今のテレビだと思っています。最近、学校ぐるみだとか、僕たちの身近なところで撮影する番組が増えてきたので、そういうところで僕は今のテレビが面白いなと感じています。
  • (高校2年・女子・愛媛)昔の番組の再放送と比べると、今の番組の方が全然安心して見られます。さきほど話が出た体についての権利もそうですが、私は争い系や戦争系があまり好きではないので、今の番組の方が安心できるし面白いなと感じます。
  • (榊原委員長) 今の方が断然良いですよ。昔のテレビは14インチが一番オーソドックスだったし、モノクロしかないし、23時になるとテストパターン(試験電波放送)になって番組が終わってしまった。またチャンネル数も少なかった。昭和30年代はそんなもんでした。比べるどころじゃなく、質、量ともに今の番組の方が面白いです。
  • (高校1年・男子・兵庫) SNSやYouTubeが台頭してきたあと、テレビは良い影響も悪い影響も受けているとは思うんですけれど、良い番組が増えたのかなと思っています。例えばオーディション番組は昔あまりなかったなと思うし、SNSでアイドルグループが普及した影響かなと思うので、そういった番組は良い影響を受けていると思います。

「昔のテレビの方が面白い」と思う人の意見

  • (高校3年・女子・奈良) 昔と言っても十数年前、『宝探しアドベンチャー 謎解きバトルTORE!』(日本テレビ)という番組がありましたが、とにかくセットがすごかったイメージがあります。タイムリミットまでにクイズを解かないと壁に挟まれるとか、球を穴の中に入れられないとミイラにされるとか、今考えてみるとあのときの大規模セットはやっぱりテレビにしかできなかったのかなと思います。今の番組は街頭インタビューとかが多くて、そういうのはYouTuberや一般人も最近出ている良いマイクでできますが、あの大規模セットはすごく良かったなと思います。
  • (高校1年・男子・長崎) 僕は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ)がなくなったのが一番寂しかったです。あんな大規模番組が年末にあるのはとても楽しみだったのになくなってしまったから、昔の番組の方が面白かったと思います。
  • (高校2年・女子・青森) やっぱり年越しは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』を見ながら、年を越したタイミングを分からないまま時計見たら「あ、もう年越しているわ」みたいな、そういう年越しが好きでした。笑ったら本当に叩かれるので、やっぱりコンプライアンスとか時代には合っていないのかもしれないけれど、笑いのレベルは高かったのでもう一回見たいなという気持ちはあります。
  • (佐々木委員) 僕は学園モノ(ドラマ)が大好きでした。『これが青春だ』(日本テレビ)とか『青春とはなんだ』(日本テレビ)など、熱血教師の番組があった。それを見て「じゃ、今日は遊ぶか!」みたいに真似をする先生もいて、そういう型破りな先生が大好きで、だから私は学校へ行くのが楽しかったんです。今はそういう番組がなくつまらないかな。陰湿ないじめとかスクールカーストといったテーマが多くて、暗くなっているようにも思います。最近でいうと『ドラゴン桜』(TBSテレビ)のような番組がいっぱいあれば、全国の中高生ももっと頑張れるんじゃないかなと思っています。
  • (高校1年・女子・岐阜) 昔のドラマでは『GTO』(関西テレビ放送)は笑えるところや面白いところが多いです。今のドラマも面白いですが、今ではあまり感じられないことが『GTO』では感じられて面白いです。例えば校内の喫煙シーンがあったりして、何かちょっと不思議な感じがします。
  • (高校3年・女子・栃木) 最近ゴールデンに放送されているバラエティー番組『それSnow Manにやらせてください』(TBSテレビ)について。昔、Paravi(動画配信サービス)で配信されていた頃はメンバーが体を張るような地方ロケが多かったんですが、最近はスタジオのダンス対決とかでちょっと軽く済ませている感じがあって。昔みたいな大規模ロケや、地域の人との交流が増えればいいと思います。
  • (飯田委員) 年越し番組の話がありましたが、僕も個人的には、昔の方がよかったとは思います。若い頃は、大みそかに『絶対に笑ってはいけないシリーズ』を友達の家で見ていましたが、番組自体の面白さの水準は別にして、家族や友人みんなで盛り上がれるという経験がなくなってきたのは確かです。あるいは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の放送翌日、学校に行く電車の中で友達と番組の話題になることが普通でしたが、今はそういう経験があまりないというのが、昔と大きく違うところですね。
  • (吉永副委員長) 私はテレビがない時代、ラジオしかなかった時代を知っています。テレビが初めて「家に来た」とき、すべての情報がテレビから得られるようになったという強烈な印象が残っています。それからしばらく、テレビがすごい試行錯誤をして面白い番組を手探りでたくさん作っていった、そのバイタリティーや面白さを感じていました。もう一つは自由度。昔は本当に不適切極まりないものが平気で放送されていて、『8時だョ!全員集合』(TBSテレビ)にもPTAが毎回文句を言っていましたが、それでもみんな「あれが面白いんだよね」と逆らって見ていたわけです。昔のテレビの方が圧倒的に自由度は高かった。また出演者についても、30年前は何を言っても構わないという「表現の自由」に傾いていた感じがしますが、今は「これを言ったらまずいんじゃないですか」というのがどうしても先にきます。“思いやりの社会”ではしかたないですが、コンテンツの幅がすごく狭くなっている印象です。昔の番組の方がエネルギッシュでした。

昔の“面白さ”と今の“面白さ”、これからの番組で両立できると思いますか?

  • (高校2年・男子・神奈川)  大規模な番組は当然お金がかかるし、視聴率が取れないと元が取れないと思うんですが、そのためにはもう少しテレビの方に興味関心が向けられなければならないと思います。SNS利用者が自由に発言できる今だからこそ、テレビという大勢の人に発信するメディアの自由度が低くなっているんだと思います。最近だと『新しいカギ』(フジテレビ)は本当に見ていて面白くて、「学校かくれんぼ」の企画も大掛かりかつ安全なものだし、こういった番組が増えたらいいんじゃないかと思います。
  • (高校3年・女子・熊本) 視聴者が求めるものと番組が提供したいもののバランスが大切なのかなと思いました。例えば『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)は世界中に出ていくのをコンセプトにした番組なのにコロナの時期はそれを批判されて、国内の企画で従来の番組らしさを追求するのはとても大変だったと思います。でもこの番組に限らずどの番組も、世間の声を受け止めようとし過ぎて臆病になっている感じにもなっていて。世間の声を受け止めてこそ視聴率につながるのかもしれないけれども、あまり受け止め過ぎて本来できていたことができなくなっているんじゃないかなと思います。コンプライアンスとか気にしすぎずに、もう少し踏み込んだことしてもいいんじゃないかと思います。
  • (高校1年・男子・長崎) SNS上だけで有名な人、例えば大掛かりなことをする有名なYouTuberをテレビに出したら、SNSとテレビがどちらも良い関係で発展できるのではないかと思います。
  • (高校3年・女子・奈良) 放送メディアって災害やニュースを伝えるのも大きな役目だと思うんですが、大切な娯楽でもあると思っています。例えば『月曜から夜ふかし』を仕事や学校終わりに見て明日からまた頑張るとか、そういう人がたくさんいると思うんです。例えば20~40代が昔見ていた番組、テレビが娯楽だった時代の番組を再放送やアレンジ放送をして、親子で「昔はこういう番組があったんだよ」という話ができたら、家族団らんにもなって楽しいかなと思います。
  • (池田委員) 様々な視点から意見を出してくれてありがたいです。多くの人が挙げてくれた放送とネットとの連動は大きな課題で模索が続いているところです。SNSやYouTubeをたくさん見ているデジタルネイティブ世代のみなさんから、どんどんアイデアを出してほしいと思っています。

【テーマ2】 放送局にどうしても伝えたいことは?

放送局に対して、こう改善してほしい、こうあってほしい、こう変わってほしいなど、どうしても伝えたいことについて高校生モニターに意見を述べてもらいました。

  • (高校1年・男子・長崎) 最近アニメを見始めたんですが、アニメでは1期・2期があるにも関わらず、テレビでは2期からしか見られないことがあります。テレビでも1期から放送してほしいです。
  • (高校2年・男子・神奈川) インターネットの記事で、番組の収録中に出演者がケガをしたことや、番組への批判が出演者に直接寄せられていることを最近見ました。出演者が自殺してしまったケースも以前あったと記憶しているので、踏み込んだ番組は面白いかもしれないですが出演者への影響も考え続けてほしいです。
  • (高校3年・女子・熊本) 13年前に放送された『家政婦のミタ』(日本テレビ)がとても印象に残っています。リアルタイムで見たときは小さかったのでシリアスな場面にヒヤヒヤしたけれど、最近配信サービスアプリで視聴したときには家族や人としての在り方を考えさせられる番組だと思いました。インターネットで調べて「今の時代にそぐわない」という意見や「暴力的なシーンが多いから地上波では再放送できない」という情報も見ましたが、私のように良いと思っている人に向けた再放送も検討してほしいです。例えば深夜帯にひっそり再放送するなど、何か手を打っていただければなと思います。
  • (高校3年・女子・奈良) まずは食事の時間帯にグロテスクな映像を流さないでほしいです。例えば『世界の果てまでイッテQ!』で急に蛇やカエルが出てきますが、個人的にカエルが苦手なのでワンクッション欲しいなと思います。また私は国際情勢に興味があるんですけれども、昔から続いているパレスチナ問題などでも今は情報がどんどんアップデートされているので、今起きている複雑な国際情勢を簡単に解説してくれる番組を作ってほしいです。
  • (高校2年・男子・山口) 先日、東京都知事選挙がありました。過去最多の56人が立候補しているのをテレビがどのように報道しているのか見ていましたが、本当は56人を平等に報道するべきところを、人気のある4人がピックアップされていてそれ以外には見向きもしない。テレビとしてあまりよくないところが出ていたなとは感じました。テレビで報道されずYouTubeで配信していた人が1~2万票獲得していて、SNSもテレビに負けない強いネットワークなんだとすごく感じました。
  • (BPO事務局長) 選挙というのは誰でも立候補できますし、公職選挙法に基づく“政見放送”では、放送を希望した51人の主張がそのまま放送されました。メディアの役割は、都政を担う可能性のある人の人となりや政策を、限られた時間の中でできるだけ分かりやすく伝えることだと思います。そうすると候補は絞らざるを得ません。一方で、今回の選挙についてはメディアに多くの意見が寄せられましたし、メディアはそこから多くを学ばなければなりません。モニターの皆さんにもどんどん意見を出していただきたいし、そうして出していただいた意見が、テレビの選挙報道を変えていくと思います。
  • (池田委員) 選挙報道について法律の面でお話をすると、放送法では“政治的な公平”が求められています。「公平に放送してください」と法律は謳っています。ただそのときの公平が何を意味するかというと、量の公平ではなくて質の公平なんです。量の公平というと、例えば56人の候補者に全員同じ時間ずつ話をさせろということ。しかし質の公平については、各放送局それぞれの判断に任されています。主な候補者として4人選ぶか6人選ぶか、何をどう議論するのか、ピックアップして何かを語らせるのかは各放送局で考えて判断することなんです。“政治的な公平”とは、質的公平だということを補足しておきますね。
  • (司会・BPO事務局) 選挙報道について、事務局長は放送局の記者の立場で、そして池田委員は弁護士の立場で話してくれましたが、SNSも含めて多くの情報に触れている高校生の皆さんはまた違った感想を持ったかもしれません。「不思議だな」「なぜだろう」と感じたことが、今後の放送を変えるべき“種”になるかもしれないので、これからもいろんな人の話を聞きながら放送に関する考えを深め、私たちに伝えてください。

【本日のまとめ】

(吉永副委員長) この5年間、新型コロナの影響でモニターの皆さんとリアルで対面することがなかったので、今回実現できたとことを大変うれしく思います。「百聞は一見にしかず」と言いますが、放送の現場を実際に見て、これだけ多くの人が必死に放送を作り上げていることを知った後では、また少しテレビとの距離感が変わってくるのかなと思います。『NHK紅白歌合戦』の視聴率が80%で日本国民のほぼ全部が『紅白』を見ていたような“テレビの時代”から、今は視聴率10%取れたら御の字という世界に変わってきて、それが本当に私たちにとって幸せなのかどうかという検証はすごく大事だと思います。ちなみに私は元々新聞業界にいましたが、今は新聞を読んでいない若い人たちがたくさんいて、先日も毎日新聞が富山県内での配送を休止するとの報道にびっくりました。配送していた部数を聞いたら840部だったということですが、他県もそんなに変わらないそうです。新聞業界も危機に瀕しています。新聞社にも社会部もあれば外信部もあるし、紙面には政治面も家庭面も健康面もある。でも総合的に私たちにきちんとした情報を届けてくれる新聞も、あしたの運命はどうなるか分からないよう状況になっています。話は戻って、総合的に情報を伝えるテレビもまた、通信との関わりの中でどうしても厳しい状況になっています。NHKは人口が減れば当然予算も減ります。民間放送においても、企業は「10%しかテレビを見ていないならば、通信の方に広告を出します」という話になりますよね。大きなお金をかけてたくさんの人を使って素晴らしくクオリティーの高い番組を提供したいという気持ちがあっても、物理的に不可能になってしまうということが、これから先あり得るのです。このような状況で、今まで持っていたパワーをどう維持するのかが、放送の世界にとって大きな試練になっていくと思います。皆さんがこれから生きていくうえで、しっかりした情報をたくさん得るということはとても大切です。今の状況がこれから長い人生を生きる皆さんにとって本当に幸せなのか、どうしたら自分たちのきちんと知る権利を確保して間違った判断をしないようにできるのか、を是非考えていってください。このモニターをしてくださったご縁もありますので、これからも放送について、厳しくも温かい愛情のある目線でレポートを送っていただければなと思います。

(榊原委員長) “自由”で“平等”であるということは、“みんな同じということではない”ということです。みなさんが一番見たい番組もそれぞれ違うわけで、「ドラマが見たい」「“ガキ使”が見たい」という欲求が全部満たされるかというと、放送業界のキャパシティーとして時間も人も足りないのが現状です。一方で、現在SNSが流行っているとはいえ、先ほど『月曜から夜ふかし』は毎週600万人が視聴しているという話がありましたが、公共的に情報を流すものとしては現在でもテレビが圧倒的に強いですし、1つの放送局でもそれだけの影響力があります。この影響力というのは、先ほど言った自由や平等、報道の自由やあるいはいろいろな情報を得る権利などに関わった人びとが、鋭意努力した結果だと思うのです。みんなそれぞれ見たいものは違いますが、どのようにバランスをとっていくのかということが重要です。BPOは若い世代の意見を各放送局に届け、ウェブサイトにも載せています。みんながある程度満足し、大きな不満がなく争いもなく、情報を自由に見ることができ、発信する方にも自由度がある。そういう放送を保障していく活動をしていかなくてはいけないと思っています。またモニターの皆さんも、テレビやラジオのモニターではありますが、実際にはこういう大きな国や集団の在り方みたいなものを、ここで垣間見ることができるのかなと思っています。私が若い頃、情報はテレビの報道から入ってくることが多かったのですが、今はインターネットやSNSとどう折り合いをつけていくかという時代です。モニターの皆さんに若い世代を代表して意見を言っていただくことは、現在の番組作りだけでなく、将来成人して社会の構成員になったときにどういった考えを持つかにおいて大変重要です。皆さん個人にとっても、重要な経験になると私は信じています。今日は遠いところからも来ていただいて、本当にありがとうございました。


モニターへの事後アンケートより

【日本テレビ社内見学 について】

  • 『ヒルナンデス!』の生放送中にスタジオに入ったときは、裏で働いている人の多さに驚いた。番組の裏の部分(特にカメラや照明など)を見ることができたことや、自分が興味のあったニュース番組の席に座れたことは、とても良い経験になった。(高校1年・男子・兵庫)
  • まさか生放送中のスタジオに入れるなんて思ってもいなかった。『ヒルナンデス!』のスタジオでは出演者の声が小さくあまり聞こえなかった。音声さんは重要だと身をもって感じた。伊藤遼アナウンサーが、私たちが後ろを通るときに「こんにちは」と言ってくれた。めちゃめちゃ好きになった。(高校2年・女子・青森)

【日本テレビ『月曜から夜ふかし』制作者との意見交換会 について】

  • コンプライアンスが厳しい令和にこの番組が生き残った理由は、相手の気持ちをよく理解することだと分かりました。これは自分にも必要なことで、相手の気持ちを分かっていなければ相手を傷つけてしまう可能性があるので、大切にしていかなければならないと思いました。(高校2年・男子・山口)
  • プロデューサーが一人で一つの番組を担当するものだと思っていましたが、他の方も含めて100人以上という多くの方が携わっており、驚きました。本当に努力の結晶でできている番組だと思います。私の将来の夢の一つに「番組プロデューサー」があります。私はみんなで一つのものを作ることが大好きです。テレビ局で働くこともいいなと思いました。改めて番組プロデューサーという仕事も人々を笑顔にできてすてきだなと感じました。(高校1年・女子・岐阜)

【青少年委員との意見交換会 について】

  • 同世代のモニターからの意見はとても興味深いもので、とても良い刺激になった。“今のテレビ”と“昔のテレビ”の比較では、人によって異なる“面白さ”や“安全・倫理”といったものに対する見解を聞くことができた。自分は「今のテレビの方が面白い」と言ったが、「『ガキ使』が面白かった」「昔のテレビは面白いが過激である」といった意見には納得できた。また、そこに対する委員の先生方の意見が的確で、それぞれの方々が持つ肩書からくる深いものでもあり、テレビに対して一段と興味を持った。(高校1年・男子・兵庫)
  • 話し合うことでテレビにとって大切な部分にはなったのではないかなと思います。特に大きな何かが動くという訳でもないけれど、テレビの本質を再認識することができたんじゃないかなと改めて感じました。(高校2年・女子・愛媛)

以上

2024年8月に視聴者から寄せられた意見

2024年8月に視聴者から寄せられた意見

パリオリンピックについて、出来るだけ多くの種目をテレビで見たい、などの意見が寄せられたました。

8月にBPOに寄せられた意見の総数は3,534件で、先月から652件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 93.4% 電話 6.2% 郵便・FAX 0.5%
男女別は、男性 43.6% 女性 33.8% 無回答 22.6%で、世代別では10代 1.3% 20代 12.9% 30代 24.1% 40代 25.4% 50代 19.6% 60代 8.8% 70歳以上 1.3%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。8月の個別送付先は31局で、意見数は2,139件でした。放送全般に対する意見は136件で、その中から13件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

パリオリンピックについて、できるだけ多くの競技種目を放送してほしい、競技ごとの放送時間を正確に詳しく伝えてほしい、また、オリンピック番組中であっても強い地震の発生などはカットインして伝えてほしい、などさまざまな意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は29件、CMについては6件でした。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は85件で、前月から2件減少しました。
今月は「要望・提言」が60件と最も多く、次いで「表現・演出」が16件で、以下、「編成」「食べ物」などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • パリオリンピック。テレビで放送する競技もあれば放送の無い競技もある。すべての競技を放送してほしいと思う。

  • オリンピックの番組表。日本選手の活躍が期待される競技が書かれていた。その競技を今か今かと楽しみに待っていたが、番組表にはない別の競技を長々と見せられた。番組情報は正確に詳しく伝えてほしい。

  • オリンピック期間中に震度6弱の地震が発生した。オリンピック番組を放送中であっても、カットインして災害の情報を伝えるべきではないか。

  • 情報番組のMCがオリンピックのメダリストの容姿に触れて不適切な発言をした。怒りがこみ上げた。

  • オリンピックが終わりパラリンピックが始まったが競技を中継する番組が少ない。また報道・情報番組での取り上げ方が小さいと感じる。もっと大きく取り上げてもいいのではないか。

  • 台風・大雨のニュースで、外出を控えるよう注意を呼びかけているにもかかわらず、アナウンサーやレポーターが強い雨風にさらされて中継しているのはなぜなのか、理解できない。

  • 元首相に対する銃撃事件をドキュメンタリーに仕立てた番組。内容が容疑者への同情を誘うかのようにも見えたし、いずれ始まるだろう裁判員裁判へ影響があるのではないかと心配になった。

  • ラジオ国際放送などの中国語ニュースの中でスタッフが「尖閣諸島は中国の領土」などと不規則発言をした問題。常習的に行っていなかったかなど徹底的に調査してほしい。

  • バラエティー番組で新型コロナ感染予防対策を茶化して笑いものにしていた。家族や知人を亡くした人や後遺症に苦しんだ人たちが見たらどのような気持ちになっただろうか。

  • 食べ歩きやグルメ紹介などの番組で、リポーターやスタジオの出演者、アナウンサーまでが口の中に食べ物を入れたままコメントをしている。行儀悪い。子どもが真似をしないかと心配になる。

  • ネットの影響なのだろうか、テレビの画面上で様々な色や大きさの文字があふれている。読み取るのに苦労するし、もとの映像を覆い隠してしまっている。災害やニュース速報が画面上部に出ても文字が重なって見にくい。

  • 通販番組でよく「番組終了後30分以内のご注文がお得」と案内するが、同じ内容の番組がキー局だけでなくBSでもローカル局でも流れているようだ。「30分以内」という締切りは本当にあるのだろうかと疑問を感じる。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 新婚夫妻が登場するバラエティー番組で、下ネタや夜の生活の話を面白おかしくする人がいて、子どもが見てしまい気まずくなった。番組で話す内容をよく考慮して制作してほしい。

  • バラエティー番組で、新型コロナ対策を揶揄(やゆ)するドッキリ企画があった。いまでも感染に気をつけながら命を守っている医療現場に対して無神経でふざけた内容だ。「不適切だった」と番組で訂正する必要があるだろう。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 報道番組の「体臭・スメハラ(スメルハラスメント)特集」で、女性アナウンサーが別の人の臭いを嗅いで不快な顔をした。指示されて演出としてやっているのだろうが、こういうことが子どものいじめにつながると思う。

  • バラエティー番組で、歌うときに音程を外した出演者を「改名」と称して魚の名前で呼んでいた。子どもも見る番組なので、これを真似て友達におかしな「あだ名」をつけるかもしれない。不愉快な気分になった。

【「編成」に関する意見】

  • 夜9時前放送の世界の衝撃映像を紹介するバラエティー番組で、人が殺されるシーンが繰り返し流れたが、小学生も見る時間帯だ。このような内容は夜9時以降にすべきではないか。

【「食べ物」に関する意見】

  • バラエティー番組で、大食いタレントをゲストに迎えての企画があり、大きな食材をひと口やふた口で無理やりに食べる場面があった。見ていて嫌悪感を覚えたし、子どもが真似たらどうなるだろうかと思った。

第330回

第330回 – 2024年8月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2024年8月20日(火)午後4時~午後6時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、野村委員、松尾委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、起草準備委員会作成の論点と、ヒアリング時の申立人・被申立人への質問項目をあらためて確認し、ともに承認された。次回委員会で申立人・被申立人双方へのヒアリングを実施する。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトにお詫び文を掲載したほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、テレビ東京の答弁書に対する申立人側の反論書について、その概要・ポイント等を担当調査役が説明し、委員からの質問等に対応した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況等について説明した。

4. その他

意見交換会について、来年2月に開催する方向で準備を始めていることを事務局から報告した。

以上

2024年8月9日

2024年 8月9日

8月13~16日の視聴者意見応対業務について

8月13日(火)から16日(金)までの間、次の対応といたします。

  • 視聴者意見の電話による受け付けを休止します。
  • ウェブサイト、郵便物、ファクスは通常通り受け付けます。

2024年7月に視聴者から寄せられた意見

2024年7月に視聴者から寄せられた意見

東京都知事選挙の投票日当日に、候補者名記入の表記等について誤った内容を放送した番組に対し、多くの意見が寄せられました。

2024年7月にBPOに寄せられた意見の総数は4,186件で、先月から2,342件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 92.7% 電話6.8% 郵便・FAX 0.5%
男女別は、男性 50.0% 女性 29.1% 無回答 20.1%で、世代別では10代 1.3% 20代 10.9% 30代 21.6% 40代 23.7% 50代 23.1% 60代 10.3% 70歳以上 1.7%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。7月の個別送付先は32局で、意見総数は2,565件でした。放送全般に対する意見は167件で、その中から16件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

東京都知事選の投票日当日に、候補者名の漢字かな表記について、また投票所入場券を持参しなかった時の対応について、誤った情報を伝えた番組に対して多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は8件、CMについては18件でした。

青少年に関する意見

2024年7月中に青少年委員会に寄せられた意見は87件で、前月から12件増加しました。
今月は「要望・提言」が32件と最も多く、次いで「表現・演出」が28件、「報道・情報」が9件と続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 東京都知事選当日の午前中の番組で、2つの間違いが放送された。ひとつは候補者名を投票用紙に記入する際の漢字・かな表記についての間違いで、もうひとつは入場整理券を忘れた際にマイナンバーカードなどによる身分証明が必要になるという間違いだ。番組終了までの間にひとつめの表記の間違いについては訂正があったが、もうひとつの方は触れられなかった。何が正しいことなのか十分に伝わっていないのではないかと感じた。

  • 都知事選の投票をめぐり間違いを放送した番組だが、次の放送回で改めてレギュラー出演者のアナウンサーが謝罪していた。アナウンサー任せにせずメインの司会者なり番組の幹部なりが謝罪すべきだったのではないか。

  • 都知事選が終わり報道のあり方に疑問が残った。ほとんどの番組が特定の4人の候補しか紹介しなかった。また投票日前の報道が不十分だと感じた。告示から投票日までの間に候補者の主張を広く知ることが出来るような報道をテレビ・ラジオに期待したい。

  • SNSなどで話題の動画を集めた番組の中で、猫が屋根に飛び移ろうとして失敗し、何度も落ちる映像が放送された。かわいそうで見ていてつらくなった。こうした動画はテレビで放送しなくても良いのではないか。

  • バラエティー番組のクイズコーナーで「織田信長に仕えた初のアフリカ出身の侍の名は」という問題を出していたが、侍という身分を与えられていた史実は確認できないはずだ。放送前に綿密にチェックしてほしかった。

  • 二刀流メジャーリーガーが日本のテレビ局の報道によって自宅の場所を特定され、購入したばかりなのに売却を検討しているとの報道を見た。真偽は不明だが、対象が著名人だとしても秘密にしておきたいことやプライバシーを暴露することの影響がいかに大きいか、テレビはよく考えるべきだ。

  • アメリカの前大統領が演説中に銃撃されたという速報を受けて、スタジオのМCやコメンテーターは、前大統領の無事や安全を気遣うよりも先に、大統領選に有利に働くかもしれないなどという趣旨のコメントしていた。不快だった。

  • 高校生が集団で激辛のチップスを食べて救急搬送された。激辛チャレンジの番組は出演者の胃腸などに大きな影響を及ぼしているのではないかと心配になった。

  • 通販番組などで「送料無料」と安さをアピールしているが、実際には販売元が送料を負担するか販売価格の中に入れ込むかしている。「送料無料」という表現だと、あたかも無料で配送する運送業者が実在するかのように誤解されてしまうのではないか。

  • 子どもの虐待死や交通事故死、災害死といった凄惨なニュースを読み上げたアナウンサーが、次の瞬間には満面の笑顔で嬉しそうにスポーツや芸能ニュースを読み上げるのを見るとモヤモヤする。間に別のニュースを挟む、読み手を変えるなどの工夫があってもいいと思う。

  • テレビ局はコア層を重視していると聞くが、若年層向けの番組よりも若年層の流行を年配者に紹介する番組の方が多いのではないか。また、同じ時間帯に各局とも似た内容の情報番組やバラエティー番組を放送しているが、ターゲットとする層が固定されるとそれ以外の人は見るものがなくなってしまうと思う。もっと多様な番組を放送して視聴者層を広げてほしい。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 昨今は児童ポルノに関する規制が厳しくなっているが、未だに男児の入浴シーンが放送されていることに驚く。女児はだめだが、男児はよいとでもいうのか。大事なところは隠したりぼかしたりしているが、ほぼ全裸の男児を映すのは児童ポルノ以外の何ものでもないだろう。

  • 一般の番組の合間に流れるホラー映画のCMをやめてほしい。昼間にテレビを見ていた子どもがこのCMを見てしまい、怖がってひとりでトイレや寝室に行けなくなった。見ない選択ができるようにしてほしい。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 報道番組で「熱中症予防のため屋外での活動を控えましょう」と呼びかけているが、長時間バラエティー番組では、100kmサバイバルマラソンを放送していた。見ていた子どもに「この人たちは外で走っていいのか」と問われ、答えに窮してしまった。

  • 長時間チャリティー番組のなかの福祉番組に思うところがある。日本では、障害者が「できない」ことにスポットを当て、できなくても暮らせるような福祉を行っている。この番組では、スポ根的で普通の人がしない努力を障害者に課す。過去には感動を与えるつもりか、身体の不自由な子どもをプールに浮かべて、アーティスティックスイミングをさせた。本当に日本の福祉に必要な番組なのか。

【「報道・情報」に関する意見】

  • トランプ前大統領が狙撃されたシーンが生々しすぎる。血が流れるところをそのまま映すのではなく、ぼかしを入れたほうがよいのではないか。子どもも見るので少し配慮が必要だろう。

  • 報道番組で、小1女児が自宅で虐待死した事件に関して、その子の上級生の小学生にインタビューした。友だちを亡くした子どもにマイクを向けた無神経さに不快感を覚えた。

【「編成」に関する意見】

  • 子どもが見たがるディズニー作品などの長編アニメをなぜ、子どもが寝る時間である「夜9時から」放送するのでしょうか。わたし自身、10代の子どもですが、夜9時ごろからだと親に「寝なさい」と言われます。このようなアニメの夜の時間帯での放送について検討をお願いします。

第270回

第270回-2024年7月23日

視聴者からの意見について…など

2024年7月23日、第270回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ、オンライン参加の1人を含む8人の委員全員が出席しました。
6月後半から7月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
7月の中高生モニター報告のテーマは「最近聴いたラジオ番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年7月23日(火)午後5時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、
佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

6月後半から7月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
関東地方向けの報道情報番組で、公立高校の進学校に男女別学がある埼玉県で共学化に向けた議論が本格化していることを特集。視聴者から「男子校への偏見が強く、男女別学が悪者とされるような取材、報道だった」などの意見がありました。担当委員は「(共学化)推進の立場、反対の立場の双方をバランスよく(番組に)取り入れている印象だった。指摘されるような偏向報道とはいえないだろう」とコメントしました。
世界の興味深い映像を集めたバラエティー番組で、中国で猫が階段の上から向かいの建物の屋根に飛び移ろうとして繰り返し失敗する動画を紹介したところ、視聴者から「動物虐待を助長している」という趣旨の意見が寄せられました。担当委員は「放送された映像だけからは直ちに虐待とはいえない。(当該動画の放送されていない部分を指摘した)ネット動画などを知った視聴者からの批判が集中したのではないだろうか」と報告しました。
トーク・バラエティー番組で、後輩芸人に面と向かって自分の芸風を強く揶揄(やゆ)された先輩芸人が、後輩の頭髪をつかんで押し倒すシーンが3回続いたことに、視聴者から「暴力映像を見せられ、不快だった」などの批判的な意見が寄せられました。担当委員は「先輩芸人は言葉による反論だけでは面白くないと感じて行動に移したものの、2回繰り返して後輩の反応をみて、3回目はとくに自らの行動をセーブした印象だ。1回目と2回目は暴力的に見えるので、(視聴者の)批判が来たことは仕方ないだろう。しかし、3回目も含めてこれらは『芸人同士の芸のうち』ではないかと感じた」と説明しました。
ほかの委員から特段の発言はなく、このほかに大きな議論になる番組もありませんでした。「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

7月のテーマは「最近聴いたラジオ番組について」で、モニター全員から合わせて28番組への報告がありました。聴取方法はリアルタイムが13人、アプリ(radiko、NHKラジオ らじる☆らじる)などを利用したタイムフリーが17人でした。複数のモニターが取り上げた番組は『不二家presents Snow Manの素のまんま』(文化放送)で「出演者が話したいように話していて、友達の会話を盗み聞きしているような気持ちで聴きやすかった。会話が編集されているように感じないのもいいなと思った」「スタッフとメンバーの仲の良さが伝わる、穏やかで平和な番組だ」「もっと双方向の番組にすれば、リスナーとの距離感が近くなってより楽しむことができるのでは」といった声が届いています。
「自由記述」には「通学の時間帯にニュース番組を増やしてほしい」「5分番組だと通学時間に聴きやすい」「クラシックの指揮者は個性豊かでおもしろい人が多いので、出演する番組を制作してほしい」「3時間あまりにわたって野球やサッカー、競馬の中継をするのはやめてほしい」「ラジオの番組表をインターネットなどで手軽に見られるようにしてほしい」などの意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『大追跡グローバルヒストリー』(NHK総合)に6人から、『沼にハマってきいてみた ブレイキン沼』(NHK Eテレ)に4人から、『はじめてのおつかい 笑って泣いて 夏の大冒険スペシャル2024』(日本テレビ)に3人から、『羽鳥慎一モーニングショー 夏のゴールデン3時間スペシャル!』(テレビ朝日)と『Aぇ!!!!!!ゐこ』(毎日放送)、『クラスメイトの女の子、全員好きでした』(読売テレビ放送)にそれぞれ2人から、感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • 『さくらひなたロッチの伸びしろラジオ』(NHKラジオ第1)
    初めてラジオを聴きました。テレビとは違い、音声や出演している人のワイワイしている様子がとても楽しかったです。ただ中学生の私は楽しめましたが、弟がいる身からすると小学校中学年くらいにはまだ早い気がします。みんなで楽しめる小さい子向けの番組も作るべきだと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 『梶裕貴のラジオ劇場』(NHKラジオ第1)
    声優が出演している番組なので、アニメに関する話が多いと思いました。ラジオドラマもすごく豪華で、また何本も聴くことができて、すごく満足しました。(中学1年・女子・神奈川)

  • 『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』(NHKラジオ第1)
    推測できない3人の会話にいつも引き込まれるので“声だけ”のメディアであるラジオの特性を生かしている番組だと感じる。またラジオ番組の良さはパーソナリティーのトークセンスに依存しているので、パーソナリティーが1人の番組は日によって内容の充実度に差があるが、この番組は3人で安定した会話ができていると思う。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『東京03の好きにさせるかッ!』(NHKラジオ第1)
    ゲストのや団と東京03の“芸人仲間特有の仲の良さ”を感じられる番組でした。ゲストの面白い話を、東京03の高いトークスキルや笑い声でより一層明るく楽しい雰囲気にしていたので、自分も聴いていて自然と楽しくなりました。芸人たちの日常の話も聴くことができてとても満足しました。(高校2年・男子・神奈川)

  • 『国語辞典サーフィン』(NHKラジオ第1)
    初めて聴いたラジオ番組。普段使っている言葉を改めて知ることは、知らない言葉を知るより好きだ。またパーソナリティーが2人なので会話形式になっていて、一緒にいる感じがしてよかった。(高校3年・男子・東京)

  • 『朗読』(NHKラジオ第1)
    高校の昼放課(昼休み)に聴くことが多いです。音響効果がついていないので、気が散らず、物語の世界に入り込むことができます。自分が知っている文学作品の朗読も聴いてみたいので、作品をリクエストできる制度があってもいいと思います。(高校1年・女子・愛知)

  • 『ボキャブライダー』(NHK ラジオ第2)
    不特定多数の聴取者に向けて、学生でも社会人でも使えるように例文が作られていた。僕にとってのラジオは車に乗っている時に流れてくるものなので、スペルを言ってくれるのは良いと思う。5分だと通学時間に聴けるのでより良いと思った。(中学3年・男子・東京)

  • 『ベストオブクラシック』(NHK FM)
    私は読書や作業をしながらラジオを聴くことが多いです。『ベストオブクラシック』やニュースを選びます。音だけの情報で演奏を聴いているので、息づかいや強弱が伝わりやすくとても勉強になります。radikoで検索するとクラシック音楽の番組が少ないので、指揮者による音楽番組ができないかなと思いました。指揮者は個性豊かでとてもおもしろい方が多いので、きっと楽しい音楽番組ができると思います。(中学2年・女子・東京)

  • 『なかじまみか ことの葉がたり』(青森放送)
    日曜の午後4時半、休日が終わろうとしている時にゆったりとした時間を味わうことができた。お便り紹介最後の「紹介し忘れているものはないかな」という言葉に、すべてを伝えきりたいという意思が伝わってきた。郷土について歌っている歌を流したり、観光農園のブルーベリー狩りをおすすめしたりと、これこそが地元のラジオだという安心感があった。(高校2年・女子・青森)

  • 『まめだすトーク』(秋田放送)
    私の歌の先生でもある声楽家の齋藤琴美さんと生徒の三浦央典さんが出演していました。史典さんは秋田の人々のお世話になり育ててもらったので、その恩返しをするために秋田で活動していきたいと話していました。都会へ出ていく人が多いのに素晴らしいと思いました。(中学2年・女子・秋田)

  • 『パンサー向井の#ふらっと』(TBSラジオ)
    番組の冒頭で話していたプライベートでの出来事の話が、メッセージ募集のテーマに自然につながっていて、さすが芸人さんだと思いました。テレビと違ってラジオのように声だけのほうが、私たちが日々何気なく交わす雑談のように感じられます。また聴取者の声が番組内で頻繁に取り上げられていて、私も応募してみたいと思いました。(中学3年・女子・東京)

  • 『King & Prince 永瀬廉のRadio GARDEN』(文化放送)
    ラジオを聴いたのは初めてだったのですが、ラジオでしか聴けない永瀬廉の低く落ち着いた声は「もっと聴いていたい」と思うくらい聴きやすかったです。スタッフと話している様子から和気あいあいとした現場なんだと分かって、聴いているこちらまで楽しくなりました。(中学3年・女子・神奈川)

  • 『不二家presents Snow Manの素のまんま』(文化放送)
    • もっと双方向型の番組にすれば、リスナーとの距離感が近くなってより楽しむことができるのではないかと思います。(中学3年・女子・長崎)
    • 出演者が話したいように話していて友達の会話を盗み聞きしているような気持ちになり聴きやすかった。会話が編集されているように感じられず、編集もいいなと思った。(高校2年・女子・東京)
    • 番組の最後にメンバーの食レポがあり「好きな芸能人が食べていたスイーツを私も買ってみようかな」という気になります。(高校3年・女子・栃木)
  • 『レコメン!』(文化放送)
    ボーカルダンスユニットのM!LKは知っていましたが、今回出演した吉田仁人は知りませんでした。でも聴いているうちに吉田仁人のことを知っているような感覚がしてきて、それは普段テレビなどでは感じないような感覚でした。話している人の考え方や感じ方を共有したり、感情を深く読み取ったりできるラジオは、すごく興味深いと思いました。(高校2年・女子・愛媛)

  • 『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
    トーク系のラジオを初めて聴きました。普段ハキハキ喋るタレントの声が、ラジオではワントーンくらい低く、逆にそれが耳に入ってきやすく気軽に聴くことができました。地声で話しているのが普段の様子に近い感じがして新鮮でした。(高校3年・女子・熊本)

  • 『ももいろクローバーZのSUZUKIハッピー・クローバー!TOP10』(エフエム東京)
    世代を超えてさまざまな曲を知ることができて良かった。最近「Y2K」という2000年代の物や事柄が流行になっているが、昔の曲を流すことで今の若者の間で人気が出て、その曲を知ってもらう機会にもなると思う。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『ONE MORNING』(エフエム東京)
    テレビ番組では取り上げないような少しマニアックなトピックスを、大学の准教授や出版社の副編集長などが紹介したり分かりやすく説明したりしてくれるため、聴いていておもしろい。(高校2年・女子・東京)

  • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)
    多くのインフルエンサーが先生として出演していて、また夜遅くからの放送なので、学校や部活から帰ってきた多くの中高生から大きな支持を受けているなと感じています。掲示板の投稿を読み上げるコーナーでは、先生である出演者が寄り添い本気で相談にのるところが魅力です。学校の先生や親に言えない悩みを気軽に言える場はなかなかないので、これから先もこの番組で救われる中高生は増えると思います。(高校3年・女子・奈良)

  • 『ビジプロ』(InterFM897)
    ゴミ焼却炉や半導体を設計した乙部信吾氏(株式会社LIGHTz代表取締役)を招いていました。radikoで聴いた日にちょうど東京工業高等専門学校の見学に行っており、自分が進みたい進路が見えてきたような気がして、より一層興味が深まりました。ラジオなので想像しながら、よりリアルな風が感じられました。(中学2年・男子・東京)

  • 『Good Luck!Morning!』(エフエムナックファイブ)
    小学校2年生の時から中学校に入るまでこの番組を聴いていました。朝一番に曲を流してくれるため、一日のモチベーションを上げてくれる気がします。またお天気コーナー(6時台)のウェザーニュースの方の解説がとても分かりやすいです。専門用語よりも一般的に使われる言葉が多い印象です。(中学2年・女子・埼玉)

  • 『BAY SIDE FREEWAY』(ベイエフエム)
    1年ほど毎日楽しく聴いています。昨年の夏にお小遣いで買ったラジオで初めて聴いた番組で、爽やかな雰囲気の聴き心地がよく、それ以来今でも聴いています。勉強しながらラジオを聴くことが多く、疾走感のある曲が流れるとやる気が湧きます。パーソナリティーの進行もテンポがよく飽きずに最後まで楽しめます。またリスナーとの距離の近さも魅力で、コンサートのような一体感が楽しめます。高校生になったら自分も番組に投稿してみたいです。(中学3年・男子・千葉)

  • 『ミュートレック』(山梨放送)
    僕はラジオを聴いたことがありません。天気予報や交通情報が多く、集中して1つの番組を聴くのは慣れていないので大変でした。いろいろなジャンルの曲が流れていて新たな発見があると思いました。また、番組が始まってすぐに“かけつけ3曲”となっていて、3曲終了後には番組開始から9分過ぎていました。そこから番組紹介や挨拶が始まりましたが、僕は遅いと感じました。(中学1年・男子・山梨)

  • 『カトリーナの全部全力!』(CBCラジオ)
    30分という短い時間でしたが、内容の濃い番組だなと感じました。アジサイの話題ではおすすめのアプリやきれいな写真の撮り方について話していたので、時間がある時にぜひ実践したいです。(高校1年・女子・岐阜)

  • 『石川家のフフラジ』(山陰放送)
    夫婦のラジオ番組は聴いたことがなかったので、斬新なアイデアだと思った。半分以上はフリートークなので、夫婦ならではの話があって面白い。夫婦の悩みをリスナーが解決したり、夫婦にまつわる数字クイズ(結婚して何年目?相手の身長は何センチ?)を出したりするなど、もっといろいろなコーナーがあってほしい。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『KRY Morning Up』(山口放送)
    毎朝学校へ行く前に30分程度聴いていますが、とてもさわやかで気持ちが良いです。特にオープニングの曲は朝にぴったりで、また高橋裕アナウンサーが、豆知識や山口県内のほっこりしたニュース、おもしろいニュースなどを紹介してくれるので、家を出る前の30分間にぴったりだと思います。リスナーのメールも一人ずつしっかりと読み、その内容についてもきちんと語っているので、とても良いなと思います。(高校2年・男子・山口)

【自由記述】

  • ラジオの番組表を見る機会が少ないので、テレビやインターネットで手軽に見られるようにしたら良いと思う。「注目の番組」だけでもよいので、自分の住んでいる地域以外の番組を放送したり見逃し放送をしたりしてほしい。(高校1年・男子・長崎)

  • ラジオはアプリで聴くことができるが、“アプリを入れさせる”ための工夫をしないとリスナーは減ると思う。サイトで一回だけ聴ける、アプリで他の地域の番組も聴ける、などのサービスを入れると、聴く人も増えるのではないか。(高校2年・女子・東京)

  • 好きな人もいるので一概には言えないが、ラジオで3時間程にわたって、野球やサッカー、競馬の中継をするのはどうにかしてほしいです…。(中学2年・男子・東京)

  • 『きっちりおじさんのてんやわんやクッキング』(BS朝日)をたまたま見たらとても面白かった。普通の料理番組は、作るものが決まっていたり材料があらかじめ計ってあったりするけれど、この番組では自分で作る料理を決めてから道具や材料を買うので、違う面白さがあった。特に買い物のシーンが面白かった。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『あなたの代わりに見てきます!リア突WEST.』(朝日放送テレビ)は外国の知らなかった一面を見ることができてとても面白いです。ゴールデン帯の番組では見ないような編集も、意外性があってとてもよいです。(高校2年・女子・愛媛)

  • 『THE MUSIC DAY』(日本テレビ)にK-popアイドルがたくさん出ていて、日本のアイドルももっと出してほしいと思いました。他国より自国の出演者のほうが少ないのはおかしいと感じました。(中学3年・女子・神奈川)

  • 見逃し配信サイトを使ってドラマを見ていますが、放送から一週間以内の配信期間では少し短いと感じます。せめて二週間くらいは配信してほしいと思います。(高校3年・女子・栃木)

  • 最近バラエティー番組を面白いと思うことが減ったと感じています。食べ物系の話題が多いし、出演者が同じ人ばかりな気もします。規制が厳しく、なんだかなあと思ってしまいます。もっと視聴者を笑わせたい!!という攻めた番組が見たいです。(高校1年・女子・岐阜)

  • 1991年の普賢岳大火砕流で多くのマスコミ関係者が命を落としたと学校の授業で知り、心が痛んだ。災害が起きると現地を取材している映像を今も見るが、どのような対策を行っているのか気になった。(高校1年・女子・愛知)

  • 連日の都知事選についてのニュースでは4人が主に報道されている。56人すべてが真面目に取り組んでいるようには見受けられないが、広く報道してほしいと思った。(高校2年・女子・青森)

  • 東京都知事選挙ではネットのすごさに驚きました。テレビであまり取り上げられていなかった石丸伸二氏やひまそらあかね氏など、ネットで人気のある人が多く得票し、投票率も前回から5%上がったからです。これからテレビよりネットの方が影響力を持っていくのだろうと思いました。(高校2年・男子・山口)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『大追跡グローバルヒストリー』(NHK総合)
    • 本能寺の変によって九州の政治が荒れ、その結果日本人が外国まで行ったという物語の繋がりがとても面白かった。番組で紹介した日本人のうち一人は、恋をしてメキシコに残る決断をしたと知って、昔の日本人は割と自由人だったんだなと感じた。今より過酷な時代だと思うが、羨ましいと思った。(高校3年・男子・埼玉)
    • 日本史を個人の視点で見るこの番組は、戦いで何人死んだとか“数”でしか表されないところにそれぞれの人生があったことが改めてわかり、重く感じた。(高校3年・男子・東京)
  • 『島根マルチバース伝』(NHK総合)
    若者のリアルを見たかったので視聴しました。ハッピーエンドで終わると思いきや、モヤモヤして結論がハッキリしていないところがリアルだなと思いました。島根県出身の佐野史郎が標準語で話していて、せっかくなら出雲弁で話してほしかったと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 『沼にハマってきいてみた ブレイキン沼』(NHK Eテレ)
    • ダンスを踊ったり見たりすることが好きなので、三重高校の部活の練習量やチームワークの図り方などにもスポットを当ててほしかった。中学生になってから忙しくて番組を見ていなかったが、土曜日に放送していると知って見やすくなったと感じた。(中学2年・女子・埼玉)
    • ブレイキンの技の紹介は、今までニュースで少し見たことがある程度の私にとっては純粋な驚きでした。A-popも全く知らなかったので日本のサブカルチャーの進化に驚きました。番組の取材がとても丁寧で、Lil Kongさんの日々の練習や工夫、競技への愛や思いに胸を打たれました。(中学3年・女子・東京)
  • 『氷上の大移動~チベット・天空の村~』(NHK BS)
    投石して羊の群れを制御するなど、知恵を駆使し大量の羊を放牧する姿がかっこよかった。凍った湖の上で羊を移動させるシーンは美しい湖面が幻想的で、自分と同じ年齢の人も羊をかつぐなどの大変な努力をしていて、自分が小さく見えるとともに、彼らの連帯感と責任感に感動した。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『はじめてのおつかい 笑って泣いて 夏の大冒険スペシャル2024』(日本テレビ)
    • 幼いころから見ています。安全面に対する不安が払拭しきれていないなと思いましたが、何かがあった時にすぐに動けるスタッフがいることを視聴者に伝えると安心して見られると思いました。(高校3年・女子・奈良)
    • 「子どもが頑張っていてかわいい」と思う人もいると思うが、子どもの失敗を“かわいい”扱いにしているのはおかしいと思う。子どもの失敗や転んでいる姿を放映するのは、子どものことを考えているのか。よく今まで続いてきたなと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『東大王「東大王VS難関中学!関東名門校SP」』(TBSテレビ)
    中学受験をする人が私の周りにはあまりいないので「さすが東大を目指す人が多い名門中学校の入試だな」と思うと同時に、教育の地域格差についても考えさせられました。(高校2年・女子・愛媛)

  • 『クラスメイトの女の子、全員好きでした』(読売テレビ)
    • 主人公が変な髪形で最初から面白いなぁと思いました。オープニングで登場人物の紹介がありましたが、読んでいる暇もなく終わってしまったので登場人物が把握できませんでした。僕は野球を見るのが好きなので、あるOBの選手のたとえ話が出てきた時、その選手が頭に浮かびました。こういうちょっとした笑いも良かったです。(中学1年・男子・山梨)
    • 面白いだけではなくてさまざまな要素があって予想しづらく、次回がとても楽しみになる内容でした。「ベルマーク1000枚集めたらキスしてあげる」というところに“昭和”や“中学生の恋愛”を感じました。(高校2年・男子・山口)
  • 『発見!仰天!プレミアもん!!!土曜日はダメよ!』(読売テレビ)
    関西ということもあってか笑いを取るのが非常に上手く、46分があっという間に感じられた。誰かを傷つけることなく純粋に笑いを取る。ちょっと大人になると伝わる、ややブラックなユーモアでニコニコ。そんな笑いの「テレビだからできるかたち」がこの番組にあると思う。(中学3年・男子・千葉)

  • 『都知事選開票特番 選挙FLAG』(TOKYO MX)
    56人全ての候補者の公約を紹介していてすごいと思った。都民参加型のパブリックミーティングで、都民が考える「都政の課題」を話していて、おもしろい企画だと思った。(高校2年・女子・東京)

◆委員のコメント◆

【自由記述について】

  • 高校1年生のモニターから「ラジオの番組表を見る機会が少ないので、テレビやインターネットで気軽に見られるようにしたらいい」という意見があった。これはたぶん多くの若者が感じていて、かつ放送を身近に感じるための最大の障害だと思う。テレビにも通じる話だが新聞離れの影響は甚大で、新聞を購読していなくても昔はテレビ情報誌やYahoo!の番組表などは若い人に見られていたと思うが、今の中高生はわざわざYahoo!の番組表にアクセスすることはほとんどないし、そもそもラテ欄は一覧性があってこそ意味があるのにスマホの特性と非常に相性が悪い。画期的な発明が待たれるところだと感じている。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『大追跡グローバルヒストリー』(NHK総合)に関する報告が多く、こういった知的な番組に高い関心があるのだなと思った。

  • 高校2年生のモニターから『はじめてのおつかい 笑って泣いて 夏の大冒険スペシャル2024』(日本テレビ)に関して「子どもの失敗をかわいいという扱いにしているのはおかしいと思う」という報告があった。こども本人の目線での感想を書いてくれていて、とても新鮮だと感じた。

今後の予定について

8月の委員会は休会とし、次回は9月24日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

第197回

第197回–2024年7月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』が審議入り

第197回放送倫理検証委員会は、7月12日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメの商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表・謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
6月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年7月12日(金)午後5時~午後6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、愛知県警が強制捜査をした人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品に関する不正競争防止法違反の被疑事案を取り上げた。2024年の5月になってテレビ東京は記者会見などで、この放送で「4人が逮捕された」ことは伝えたが、うち「3人が不起訴になった」ことは伝えなかったことを認めた。また放送に登場した会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送したが、番組側はこの事実を確認しておらず、会社側から「そういう事実はない」と指摘されたことも認めている。委員会は、テレビ東京から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したが、複数の問題点があるのではないかという意見が出された。そして放送倫理違反の疑いがあり、取材・編集の各段階について検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、番組関係者らからヒアリング等を行う。なおこの番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 6月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

6月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、東京都知事選の放送をめぐって「特定の候補者の当選を目的とした放送があった」、「小池氏vs蓮舫氏」の対決に注目した報道については「あたかも二人しか立候補していないような放送ではないか」といった意見や、日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』をめぐる日本テレビの報告書について「故人の原作者に罪をなすりつけているようだ」といった意見に加えて、「インターネットの方にこそ多大な前科がある」とするSNSの問題点を指摘する意見があったことを事務局から報告。またクイズ番組で特定の商品に関する取り上げ方をめぐって「番組か広告かわかりづらい」といった視聴者意見についても報告した。

以上

第329回

第329回 – 2024年7月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2024年7月16日(火)午後4時~午後6時半
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26・27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、起草準備委員会作成の論点と、ヒアリング時の申立人・被申立人への質問項目について議論した。今回の議論を踏まえた修正点等を起草委員が整理し、次回委員会で確定させる。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトにお詫び文を掲載したほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、被申立人であるテレビ東京から提出された答弁書の概要・ポイント等を担当調査役が説明し、委員からの質問等に対応した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況等について説明した。

4. その他

事務局から来年1、2月を念頭に意見交換会の準備を進めていることを報告した。

以上

2024年7月12日

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』が審議入り

テレビ東京は2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、愛知県警が強制捜査した人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」の関連商品に関する不正競争防止法違反の疑いがある事案を取り上げた。2024年の5月になってテレビ東京は記者会見などで、この放送で「4人が逮捕された」ことは伝えたが、うち「3人が不起訴になった」ことは伝えなかったと認めている。また放送に登場した会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送したが、番組側はこの事実を確認しておらず、会社側から「そういう事実はない」と指摘されたことも認めている。委員会は、テレビ東京から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したが、複数の問題点があるのではないかという意見が出された。放送倫理違反の疑いがあり、取材・編集の各段階について検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、番組関係者らからヒアリング等を行う。なおこの番組はBPO放送人権委員会でも審理入りが決まっている。

2024年6月に視聴者から寄せられた意見

2024年6月に視聴者から寄せられた意見

東京都知事選に関する報道に対してさまざまな意見が寄せられました。

2024年6月にBPOに寄せられた意見数は1,844件で、先月から166件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 84.8% 電話 14.2% 郵便・FAX計 1.0%
男女別は、男性 59.7% 女性 23.2% 無回答 17.1%で、世代別では10代 1.2% 20代 8.6% 30代 20.0% 40代 21.5% 50代 22.4% 60代 14.9% 70歳以上 3.6%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。6月の個別送付先は38局で、意見総数は592件でした。放送全般に対する意見は180件で、その中から12件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

6月20日告示7月7日投開票の東京都知事選に関する報道に対して、候補の紹介のあり方や出演者のコメントなどを含めてさまざまな意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は29件、CMについては12件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は75件で、前月から15件増加しました。
今月は「要望・提言」が26件と最も多く、次いで「報道・情報」が18件、「表現・演出」が15件と続きました。

意見抜粋

番組全般

  • 選挙報道にあたっては、投票率を上げるために「選挙に行きましょう」「投票しましょう」という呼びかけをしてもよいのではないか。低投票率を嘆いて批判するだけでは改善しない。投票を促すようメディアが積極的に呼びかけてほしい。

  • 都知事選報道。特定の2人の一騎打ちの構図に仕立てた報道が多いように感じる。全員をまんべんなく紹介することは難しいかもしれないが、もう少し工夫ができないものだろうか。

  • 都知事選、ほとんどの番組は50人を超える候補者のうち特定の4人の紹介にとどまり、他の候補には触れていないと思う。ネットを見ればいいと言われるかもしれないが、テレビなどでももっと情報を提供してもよいのではないか。

  • スタジオの出演者が特定の候補者について何らかのコメントをする際には、公平性やバランスに配慮するなどの慎重さが求められるのではないかと感じた。

  • 殺害された高校生の顔写真を何度も繰り返し使用するのはなぜだろうか。加害者側よりも使用の頻度が高いと感じる。死者の名誉は守らなくてもよいのか疑問に感じるし、残された家族の気持ちを思うといたたまれない。

  • 分布を緑色と赤色で分ける図が使われていたが、色覚異常を持つ自分にとっては分かりにくい画面だった。図表などを画面で使う際には、通常の人とは色の見え方が違う人に対する配慮をしていただきたい。

  • 人気ドラマの再放送の一場面で、出演者だった元アイドルグループ5人の顔写真が黒塗りされていた。ひどい。メンバーを傷つけるだけでなく、他の出演者や関係者に対して失礼だと思う。いまだに忖度が続いているのか。

  • 原作者が死亡したドラマについて、当該放送局と出版社の調査結果が公表されたが、改めて第三者機関が検証を行う必要があると感じた。

  • 毎年恒例の大型チャリティー番組の放送決定が発表されたが、昨年明るみになった不祥事についてのお詫びを、番組出演者であるアナウンサーにさせたことについて、局は本当に反省しているのだろうかと違和感を覚えた。

  • インターネットで視聴者や聴取者と交流をすることが可能になった。放送は一方的に情報を伝達する媒体だが、オンライン上でコミュニティーをつくり、交流する場を設けて視聴者・聴取者との連携を図ると面白いと思う。間接的に制作に参加できることで番組に対する熱意や愛情、信頼関係が生まれるだろう。ビジネスとしても成立するのではないか。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、放尿を模した行為をするのは非常に不快だった。子どもが模倣していじめをする可能性がある。いじめを助長するような放送はやめてほしい。

  • 報道番組の企画で入浴を特集し、小学生の男の子の尻に薄いぼかしを入れて放送した。女の子にやったら大騒ぎだが、男児相手なら問題なしとするのは男性軽視であり、「男なら見られてよい」との間違った認識を社会に広めてしまう。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 報道番組で、高齢者による交通事故で友だちがはねられるのを見た6歳女児にインタビューした。心のケアが必要な相手に事故の様子を尋ねるのは酷ではないか。トラウマになるのではないかと思う。

  • 報道情報番組で、公立高校に男女別学がある埼玉県で共学化の議論があることを特集。男子校への偏見が強く、番組では女子校の共学化には触れない。男女別学、共学双方のメリット、デメリットを議論しないので、別学が悪者にされた印象だ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、出演者の先輩芸人が後輩芸人に強く揶揄(やゆ)されたことに立腹して、後輩の髪の毛をつかんで引き倒した。後輩芸人が暴力を受ける様子はとてもかわいそうで不快だった。

【「言葉」に関する意見】

  • 「やばい」(の語源)は江戸時代の犯罪者の隠語だ。いまではだれもがどこでも使うが、かつては時代劇で極悪人が使うイメージがあって、普通の人が使う言葉ではなかった。テレビではせめて、CMやアナウンサーのコメントで連発するのは控えてほしい。

【「食べ物」に関する意見】

  • バラエティー番組で、トレーニング中の俳優や芸人の背中に熱々のおでんを置くドッキリがあった。やけどを負わせる気か。食べ物を粗末にして笑いを取ろうとするのはいかがなものか。

第269回

第269回-2024年6月25日

視聴者からの意見について…など

2024年6月25日、第269回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ、8人の委員全員が出席しました。
5月後半から6月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
6月の中高生モニター報告のテーマは「最近見たドラマについて」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年6月25日(火)午後4時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、
佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
別々のバラエティー番組に、出演者が「鼻フック」で約600キロの軽トラックを引っ張る企画と水をたたえた透明のバケツのなかで息止めの我慢比べをする企画があり、視聴者からそれぞれに批判的な意見が寄せられました。担当委員は「いずれの企画についても(視聴者が)不快感や嫌悪感を抱いたようだ。危険性を懸念する声が多かったが、(特殊な器具を使わないと子どもが)簡単には模倣できるものではないし、危険性についても(制作側が)きちんと計算しているように見受けられた」と報告しました。
夜の報道番組で、高齢者が運転する車に横断歩道ではねられた小学生と相前後して渡っていた6歳女児に、母親付き添いのうえで事故の状況をインタビューし放送したことに、「事故を間近で目撃した女児に話を聞くのは酷ではないか。トラウマになると思う」などの視聴者意見が寄せられました。担当委員は「インタビューの質問に一定の配慮はうかがえたが、事故を目撃した直後だと考えると、『記憶の想起』という懸念は避けられないと思う」と指摘しました。
ある委員は「この女児の発言があって、車が来ていることに気づいた子とそうでない子がいたことがわかった。保護者は『(横断歩道の信号が)青でも、車が突っ込んでくることがあるからね』と注意できるようになる。最低限の報道する意義は保たれていると思った」と述べました。また、「メディアスクラムにならないよう、現場の取材者たちが配慮したとみられる点はよかったと思う」との意見も出されました。
しかし、別の委員は「(事故捜査の必要から)警察が子どもを聴取することがある。(報道機関が子どもに直接取材しないで)警察が事故の経緯を発表すれば十分ではないだろうか」と述べました。この点について委員のひとりは「報道のための一次情報はすごく大事だ。警察を介して二次情報になって出てくるものは『加工』されている場合がある。一次情報の取材と、子どもの保護、とくにトラウマを防ぐこととのバランスを考えるのが大事なのだろうと思う」としました。
このほかには大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たドラマについて」で、28人から合わせて20番組の報告がありました。視聴方法はリアルタイム6人、録画12人、見逃し配信8人、回答なしが2人でした。
「青少年へのおすすめ番組」では『テレビ朝日開局65周年記念 夜の巷を徘徊する 2時間特別編』(テレビ朝日)を最も多い8人が取り上げたほか、『ヴィランの言い分』(NHK Eテレ)、『一流料理人さん!休日食べる激うまメシ教えてください』(テレビ東京)、『ライオンのミライ☆モンスター』(フジテレビ)、『ももいろインフラ―Z』(TOKYO MX)に複数のモニターから感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【最近見たドラマについて】

  • 『連続テレビ小説「虎に翼」』(NHK総合)
    主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)は生理(月のもの)が重く、それにより寝込むという描写があった。今まであまり触れられてこなかった話題なので驚いたが、共感でき嬉しくもあった。また声優を積極的に起用していてとても良いと思った。演技が上手で声も聞き取りやすく、感心するばかりである。(高校2年・女子・青森)

  • 『大河ドラマ「光る君へ」』(NHK総合)
    今回はCGの演出が特によかった。例えば二条の館が燃えているシーンでは、死ぬためにたたずむ藤原定子(高畑充希)のすぐ近くに炎があるような演出で、逃げるよう説得する清少納言(ファーストサマーウイカ)との会話に緊迫感を持たせ、さらに視聴者に臨場感を与えていた。また「枕草子」を読み上げたときは“春はあけぼの~”の場面では桜を、“夏は夜~”の場面では蛍の光を再現して情緒あふれるシーンを演出し、華やかな平安の都を描く『光る君へ』のテーマと一致しているように感じた。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『むこう岸』(NHK総合)
    「ヤングケアラー」という言葉は聞いたことがあるが、詳しくは知らなかったので勉強になった。人生は少しの気づきで変わることが分かった。ドラマの中で、ヤングケアラーは今どのくらいの割合でいるのかが知りたかった。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)
    初回から見ていて短編小説も読んでいます。小説にある不気味さが映像でイメージ通りに演じられていて、制作者が多くの情熱を費やしているんだろうなと思っています。原作者や視聴者が納得できるドラマ作りの工程の難しさや問題点を考えると、時間とお金のバランスが大切なんだろうと家族で話しました。(中学2年・女子・東京)

  • 『正直不動産2』(NHK総合)
    主役だけでなく多くの脇役にもフォーカスを当てており、人それぞれの想いが分かりやすかったです。Z世代の十影健人(板垣瑞生)が正直営業やカスタマーファーストの影響を受け、徐々にお客様に寄り添い成長していく姿にとても感動しました。(高校2年・男子・山口)

  • 『アンチヒーロー』(TBSテレビ)
    • 元々法律に興味がありましたが、我々視聴者側に語りかける番組宣伝動画をYouTube上で見て「ドラマを見てみたい」という興味がわきました。明墨弁護士(長谷川博己)が検察側の不正を暴き、被告人の冤罪を証明していくのは痛快でおもしろかったです。(高校2年・男子・神奈川)
    • 野村萬斎の語りの演技は狂気を感じるものだった。また最後の結末により現実味を持たせるためか、最後の35分がノンストップだった構成はとても良かった。これによりスリルを感じることができた。暗い照明や言葉から怖さを感じる構成になっていた。(高校2年・女子・東京)
  • 『不適切にもほどがある!』(TBSテレビ)
    令和の時代のおかしな点に“昭和のおじさん”だからこそ気付ける、という点が「なるほど」と思えて新鮮でした。私たちが昭和の常識をおかしいと思うように、昭和からタイムスリップした人は令和の常識をおかしいと思う、と私自身考えたことがなかったので、ドラマを通して考えさせられました。深刻な話をしていてもいきなりミュージカルのように歌い出すので、笑いながら軽い気持ちで見ることができるのが良かったです。(中学3年・女子・神奈川)

  • 『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ)
    • 宣伝を見てもあまりそそられなかったのですが、見てみるととてもいいドラマだと気づきました。銀行関係のドラマは若者にとって魅力的でないことが多いので、PRの工夫が必要だと感じました。インサイダー取引が行われていたのですが、経済に興味のない人は専門用語で立ち止まってしまうと思います。専門用語を簡単で一般的な言葉に変えると、より多くの人がストーリーを理解して楽しめるのではないかと思います。(高校3年・女子・奈良)
    • 2015年版(主演・杏)と2024年版(主演・今田美桜)の各1話を見比べました。個人的に気になったのは花咲舞の人物紹介のところで、今作では先輩にミスを注意されたときに「お言葉を返すようですが」というセリフで言い返していたので、わがままで変な正義感を持っている人物のようになってしまってモヤっとしました。一方でとてもいいなと感動したのは、前作で花咲に寄り添う相馬健を演じていた上川隆也が、今作に叔父役でカムバックしたところです。前作で花咲の父役を演じた後に他界された大杉漣への細かい配慮だと思いました。昔からのファンを大切にしているドラマだと思いました。(高校3年・女子・熊本)
  • 『セクシー田中さん』(日本テレビ)
    リアルタイムで視聴していました。ストーリーが分かりやすく結末もはっきりとしていたので、面白く視聴しました。作品の展開の変更については、後から調べると確かに変わっている部分はあったと思いました。テレビ局側は視聴率が取れないと商売として成り立たないのは知っていますが、やはりストーリーについてのすり合わせをしっかりしないと今回のような悲惨な事態になってしまうと思います。しっかり意見共有をして制作してほしいです。(中学3年・男子・千葉)

  • 『特捜9 season7』(テレビ朝日)
    一話完結式なので、もし見られなかった回があっても次の回を見るのに支障がないところが気に入っています。最近の社会問題をテーマにした回ではいろいろなことが学べて考えさせられることが多い反面、間違った知識を取り上げたり誇張した表現をしたりしてしまうと、誤った認識や偏見が広まり、傷つく人が出てしまうのではないかと思いました。(高校1年・女子・愛知)

  • 『Destiny』(テレビ朝日)
    大学時代から35歳の大人までを演じる役者がすばらしいと思いました。最初は「この人が犯人だ」と確信していましたが、物語を進めていくうちにいろいろ考察することができ、多面的な見方をすることができました。ラブサスペンスドラマはこのようなところが見どころの1つだと改めて実感しました。(高校1年・女子・岐阜)

  • 『イップス』(フジテレビ)
    • 篠原涼子とバカリズムのテンポのはやい掛け合いが面白くて、一時間があっという間に過ぎてしまった。トリックの内容が割としっかりしていて、自分が化学で習った簡単な知識だけで理解できる点も面白いと思う。(高校3年・男子・埼玉)
    • 『古畑任三郎』(フジテレビ・1994年~)のように犯人や犯行の様子がはじめに描かれているので、刑事側が犯人にたどりつくまでの過程を見ることができ、通常のミステリードラマとひと味違って面白いです。また一話完結で犯人役に豪華俳優陣が出るので、どんなゲストが出るのか毎週楽しみです。いつもミステリー作家の黒羽ミコ(篠原涼子)が犯人にたどりついてしまうところが特に面白いです。(高校3年・女子・栃木)
  • 『ブルーモーメント』(フジテレビ)
    気象にとても関心があるので、知っている用語が作中に出てくると気持ちが高ぶった。また用語解説もあったので自分の解釈が合っているのか確かめられ、とても勉強になった。こういった専門的なドラマはもっと増えてほしい。(中学2年・女子・埼玉)

  • 『大奥』(フジテレビ)
    見はじめた理由は「歴史が好きだから」と「キャストの中に応援している人がいたから」でしたが、クライマックスに近づくにつれてどんどん面白くなりました。良かったポイントは「登場人物の繊細な心情や人物同士の距離感の変化」で、登場人物にたくさん共感しました。また衣装と装飾の美しさも際立っており、スタッフのこだわりを感じました。(中学3年・女子・長崎)

  • 『君が心をくれたから』(フジテレビ)
    主人公(永野芽郁)とその愛する男性(山田裕貴)の2人が自分の力を信じ、互いに支えあうことをあきらめない姿に元気をもらえた。また撮影場所が長崎で行ったことがある場所だったので、「これほど綺麗に撮れるのか!!」と撮影技術にも感心してしまった。(高校1年・男子・長崎)

  • 『おいハンサム!!2』(東海テレビ)
    ストーリー展開が全体的にゆったりとしていて私たちの日常に近く、ドラマでトラブルが起こると身近に感じられてより没頭してしまいました。お父さん(吉田鋼太郎)の愛のこもった説教は、毎回すべての人に響く言葉だったと思います。一つ残念な点として、シーズン1の方がストーリーは面白かったと思います。シーズン1では、三姉妹それぞれが複雑な恋愛事情や人間関係を抱えていましたが、シーズン2では環境保護などのSDGsにまつわる話題が含まれていました。SDGsはとても大切なトピックではありますが、私としては、姉妹の周りで起きる人間関係のもつれや、恋に悩みながらも家族の愛を受けて生き方を模索する姉妹の姿に魅力を感じていたので、ドラマにまで環境保護を推奨するメッセージを込めないでほしいと思いました。(中学3年・女子・東京)

  • 『アンメット ある脳外科医の日記』(関西テレビ放送)
    ドラマを見るのが初めてだったので60分見るのは大変でした。声が出ない演技やいら立ちをぶつける俳優の演技にはすごく引き込まれました。また手術が決まるシーンの音楽には緊迫感があって、これから手術が始まるんだと予告するような音楽でした。心に残る音楽はドラマには必要だと思いました。(中学1年・男子・山梨)

【自由記述】

  • 恋愛以外の高校生の学校生活を描いたドラマが見たい。(高校1年・男子・兵庫)

  • 最近のドラマは“記憶喪失する”話が多いと感じるので、昔のようにもっと感動したり笑ったりできるようなドラマを是非作ってほしいです。オリジナルの新しい物語が見たいです。(高校1年・女子・岐阜)

  • ドラマは内容に応じて放送時間帯が決まっているのだと思うが、たまに「夜9時に放送してよいのか」「小学生も起きているのでは」と感じることがある。(高校2年・女子・東京)

  • ドラマは連続するものが多いので人気タレントが出演すると多額の費用がかかる。人材育成も踏まえて新しいタレントを多く起用するのも良いと思う。(高校1年・男子・長崎)

  • ニュース番組に、季節の話題などを各地方の方言で伝えるコーナーがあったら地域性が出て良いと思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • 最近のテレビ番組は表現を規制する動きが多すぎると思います。エンタメの表現を規制しすぎてしまうと更にテレビ離れが進んでしまうので、テレビの表現の自由を保護し尊重する動きが進んでほしいと切に思います。(中学3年・女子・東京)

  • 最近はTVerなどの見逃し配信やNetflixなどの有料配信アプリを使って番組を見ることが多く、前日に放送された番組を学校で話題にすることがなくなってきたと感じます。おすすめ番組を紹介したとしても「このアプリで見ることができるから見てほしい」となり、来週を楽しみにするという場面がなくなっています。リアルタイム視聴で一度見てしまえば終わりというより、「何度も見返したい」という気持ちから録画や見逃し配信を選択する人が増加しているのではないかと思います。(高校2年・女子・愛媛)

  • 水原一平氏の報道について。水原氏は確かに犯罪に手を染めたかもしれません。しかし彼にも人権があるはずで、プライベートな部分までメディアに取り上げられてしまうのはかわいそうだと思います。(高校2年・男子・神奈川)

  • 私の好きなバンドが、リリースした楽曲「コロンブス」のMVは文化的な背景に問題があったとして、それを削除しました。帰国子女の友達に聞いて、コロンブスは奴隷商人だったこと、またそれによってアメリカのコロンブス・デーが薄れてきていることを知りました。日本ではアメリカ大陸を発見した偉大な人と習っていたので、世界についてもっと学ばなければいけないと思いました。(高校3年・女子・奈良)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『テレビ朝日開局65周年記念 夜の巷を徘徊する 2時間特別編』(テレビ朝日)
    • ロケ感のない自然な感じに驚きました。話や場所がどんどん進まない感じが、独特で良いなと思いました。他にはないような番組だと思いました。(中学1年・女子・神奈川)
    • マツコ・デラックスが夜の宮島を観光していました。観光紹介は日中の映像が多いので景色が新鮮でした。突然お店やテレビ局を訪問していて、驚いたり興奮したりする人の反応が楽しいです。(中学2年・女子・秋田)
    • 普通の番組ではカットされてしまいそうな旅の中の小さな出来事も生かされていて、そういった編集されすぎていない感じが見ていて疲れず、落ち着いた気持ちで楽しむことができました。(中学3年・女子・東京)
  • 『ライオンのミライ☆モンスター』(フジテレビ)
    • 陸上1500mで、競技歴1年半でU-20世界選手権6位になったミライモンスターの澤田結弥さんを、田中希美選手と並べて「ミライモンスターとモンスター」と伝えていて、番組名も取り込んで上手だと思った。足の速さを分析していて、股関節の可動域が広く歩幅が大きいことが理由らしいので、自分も速く走りたい時には意識したい。(高校3年・男子・東京)
    • 出演者の経歴から実際のレースのシーンまで見られるのがいいと思います。序盤で分かりやすく端的に紹介するのは、視聴者を惹きつけ飽きさせない工夫だと思います。また同一分野の選手を連続して放送するところも、視聴者を離さない魅力だと思います。(高校3年・女子・熊本)
  • 『一流料理人さん!休日食べる激うまメシ教えてください』(テレビ東京)
    僕は番組の途中にCMが入るのが大嫌いなのでテレビはだいたい録画で見ますが、この番組は最初に本編が固まっていて一気に見られるところがいいと思いました。ずっと食事だけでは飽きてしまうので、チョコレートプラネットのトークなどをもっと増やすと飽きずに面白く見られると思います。(中学2年・男子・東京)

  • 『ABCドキュメンタリースペシャル 子どもが欲しい ~#精子提供 私たちの選択~』(朝日放送テレビ)
    自分の精子を提供するのはいけないことだと思いました。また、脅されて強制的に取られる可能性もあると思うので、気をつけたいです。(中学1年・男子・山形)

  • 『ももいろインフラ―Z』(TOKYO MX)
    • 渋谷の地下の貯水施設は実際目にしないし、こういう情報番組でしか知ることができなかったので良かったです。区行政がどういう仕事をしているのか考えもしなかったし知らなかったが、池袋駅利用者を取り込む豊島区の都市計画なども仕事だと知り、面白く感じました。(中学3年・男子・東京)
    • 渋谷に行ったことはありませんが、坂と谷の図面がとても分かりやすかったです。東京のインフラの紹介が中心ですが、47都道府県のインフラを紹介してくれると嬉しいです。(中学1年・男子・山梨)
  • 『第7回NAGASAKIブラス&マーチングフェスティバル』(長崎放送)
    主に中学生・高校生による演奏で、楽しんで見ることができた。上空から見た人の配置などが分かり、実物を見るのとはまた違った楽しみ方をすることができた。(高校1年・男子・長崎)

  • 『KICK OFF! KAGOSHIMA』(鹿児島放送)
    浅野哲也さんが鹿児島ユナイテッドFCの監督に8年ぶりに就任して、J2残留のため意識改革から始めていた。監督が代わるだけで選手たちの意識や練習が変わるので、監督の存在感と影響の大きさを感じた。試合で得点を取れずに終わっても選手たちが向上心を高く持ち続けていてカッコよかった。(中学1年・女子・鹿児島)

◆委員のコメント◆

【最近見たドラマについて】

  • 『連続テレビ小説「虎に翼」』(NHK総合)を視聴した高校2年生から「オープニングタイトルを番組のエンディングあたりに放送した回があり面白く感じた」という報告があった。いま学習の世界では、ある授業の構成が分かりやすいからといっていつも同じように教えると飽きられてしまうという理由から、意外な流れを持ってくるといった“ランダム性”が重視されている。番組制作でもマンネリ化を防ぐためにさまざまな変化球を投げると視聴者に刺さるのだなと思った。

  • 不動産営業や気象関連の仕事を扱うドラマの報告があったが、中学生の「職業体験」の授業などで関わる機会も多くないだろうから、ドラマのテーマとして興味深かっただろう。例えば実際の不動産営業の業務にはドロドロとしたシリアスな場面も多くあるが、ドラマでは笑いも含めた人間ドラマとして描かれていて、明るい気持ちで学ぶことができたのだと思う。このようなテーマの取り上げ方として、ドラマはとても面白いと思う。


【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『ももいろインフラ―Z』を視聴した中学3年生の報告に「渋谷の地下の貯水施設について知ることができてよかった」とあったが、社会インフラやテクニカルなことに興味があるのだと感じた。以前、青少年委員会の調査研究で地方の放送局にヒアリングをした際にも、中高生を対象にした放送局見学では、中継車など放送インフラに関する説明は人気だという声が多くあった。こういった分野に関心のある中高生は多いのだろうと思う。

今後の予定について

次回は7月23日に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。また8月1日に中高生モニターのうち高校生のモニターたちに都内に集まってもらい、委員との意見交換会(高校生モニター会議)を開催することになりました。

以上

第196回

第196回–2024年6月

日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』調査報告書について議論

第196回放送倫理検証委員会は、6月14日に千代田放送会館で開催され、5月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2024年6月14日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 5月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

5月に寄せられた視聴者・聴取者意見について、フックのついたロープを鼻の孔にかけて軽トラックをけん引するバラエティー番組について「企画内容が危険で楽しめなかった」等の意見が多数寄せられたことが報告された。また、警察の捜査に密着取材した番組についての「取材中に逮捕された人がその後不起訴になっているのに、そのことに触れずに番組を放送しており推定無罪の原則に反しているのではないか」といった意見や、路線バスとして使われている車両を貸し切ってグルメスポット等を巡る番組に対して「貸切バスに乗っているのに番組タイトルで路線バスをうたうのはおかしい」「実在しないバス路線をいかにも運行しているかのように扱っている。戸惑う人が出るのではないか」といった意見が寄せられたことが事務局から報告され、議論した。

2. 日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』調査報告書について議論

日本テレビが2023年10月期に放送したドラマ『セクシー田中さん』の原作者が亡くなった事態を受けて設置された社内特別調査チームから、調査報告書が5月31日に公表された。放送されたドラマの内容自体に放送倫理上の問題があるわけではないが、委員会としてはドラマ制作の過程で問題がなかったかどうかについて関心を持ってきた。委員会は、かねてより放送局が自主的・自律的に問題を検討し解決への道を探ることが望ましいと考えており、今回の問題についても、日本テレビの調査を待つこととし、今般公表された調査報告書を議論した。主な意見や感想は以下の通り。

  • この報告書の直後に出た小学館の調査報告書と比較すると、当たり前だが自社寄りの内容になっているという気がするが、今回の問題の理解が深まった。著作者人格権という大がかりな話というよりは、単純に仕事の仕方やサポートが不十分であったことなどが問題だったのではないかという印象を抱いた。
  • 原作者と制作の間の交渉に立つ出版社は、ドラマ制作が漫画の売上げにつながるという利益を有しており、出版社が原作者のライツの代理人としてふさわしいのかという問題にもきちんと取り組む必要があるのではないか。原作者の権利をどう守っていくべきかを議論するきっかけになってほしい。
  • この報告書は、原作者を措いて脚本家をディフェンスしているように読み取れるところがある。
  • 出版社と放送局、原作者と脚本家は、レイヤーが分かれていて、最終的に原作者と脚本家がぶつかり合ってしまったところがあるのではないか。本来ならば、原作者にも脚本家にもエージェントが必要なはずだ。
  • 問題点は「原作に忠実に」という点と、原作が完結していないので「ラストはオリジナル脚本になる」という点で、それをどう扱うかが両者の間で詰め切れておらず、すれ違いがあったことが問題である。
  • 脚本チーム、コアメンバーは、いったいどのような権限を持ち、何をやっていたのかが、報告書を読んでもわからなかった。
  • ドラマ化には改変ありきで進んでいることが問題ではないか。漫画原作の良いところは、絵コンテが出来ているようなもので、キャスティングにも反映しやすい効率的な側面がある。しかしコマ割りや表現は考えに考え抜いて作られているのだから、演出家や脚本家などの現場がそれをちゃんと尊重して制作するという枠組みを作ってほしい。
  • 少女漫画の「キャンディ・キャンディ」について原作者の権利が争われた事件などで、著作者人格権は強く守られているはずなのだが、現場ではいろいろなプレーヤーの立場によって、その捉え方が違うと感じる。
  • 原作者は、当然出版社が自分の利益を代表してテレビ局と交渉してくれるだろうと思っているはずだが、大きな組織の利益に抱え込まれている気がする。
  • 報告書を読んで、つくづく原作者として守りたいものがある場合には、最初にそれを文章で書いて、これが守られなければ、原作の使用許可をいつでも撤回できるとして、判子を押さないとだめだと感じた。
  • 制作チームのフォローアップ体制を構築し、問題事例を継承してもらいたい。
  • 二次元と三次元なので改変は起こるものだが、みだりに変えるのではなく必然性が説明できる改変にするべきだという事を基本の教育としてほしい。
  • ドラマの制作現場の事はよくわからないが、作っていくうちに想定外の展開があったり、演者が関わる事で新しいものが生まれたりと、ある種の生き物のようなところがあると想像できる。最初に契約を作ることは難しいという人がいるが、そういう部分もあるのかもしれない。
  • プロデューサーの優しさだとは思うが、制作者サイドの意見を咀嚼して脚本家に伝えているけれど、生き物であれば、咀嚼をせずに脚本家に対し原作者から出ている厳しい意見をちゃんと伝えるべきではなかったか。
  • 商業的二次利用をする際は、原作者の著作者人格権のもとでするのが原則で、原作者がノーと言えば使えないのだが、報告書ではややあいまいにしていて違和感がある。
  • 不信感がつのってきたところに撮影日程で明らかに虚偽を伝えられて、決定的に信頼関係が損なわれた。報告書の他の事実関係に埋もれてしまっているようだが、これだけ取ればそれこそ倫理的に問題だし、うそをつかずに誠実に対処する事が今後も大事だと思う。
  • 日本のエンターテインメント業界の契約体質が非常に関係している気がして、条件は制作開始前に一定程度枠を決めて書面化しておかないといけないのではないか。
  • ある程度の条件を互いに都合の良い解釈をしている可能性があり、この業界の根本的な問題点のような気がする。

以上

第328回

第328回 – 2024年6月

「警察密着番組に対する申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2024年6月18日(火)午後4時~午後7時半
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1. 審理要請案件「警察密着番組に対する申立て」

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に絡む不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、今回委員会で審理入りするか否かを検討した。
6月18日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

2.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、申立人、被申立人双方の書面が全て出揃い、事務局から双方の主張を整理した対照表について説明を行った。次回委員会では、論点とヒアリング時の質問項目について議論する。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

4. その他

事務局から7月1日付で新任の調査役が着任することが報告された。

以上

2024年6月18日

警察密着番組に対する申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、6月18日の第328回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に絡む不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
 これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
 被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
 申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、今回委員会で審理入りするか否かを検討した。

 6月18日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第268回

第268回-2024年5月28日

中高生モニター報告について…など

2024年5月28日、第268回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ、オンライン参加の1人を含む8人の委員全員が出席しました。
4月後半から5月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
5月の中高生モニター報告のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年5月28日(火)午後4時00分~午後6時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、
佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について、担当の委員から報告がありました。
担当委員は「今回は、特定の番組に意見が集中することはなかった」としたうえで、女子高校生が弁護士となって冤罪の容疑者・被告人を弁護するとの設定の連続ドラマについて、「(視聴者から)痴漢被害者は主に未成年の少女なのに犯罪者の味方をするとは、との批判があった。架空のストーリーで冤罪を扱うテーマにあって過剰に反応している印象だ」と指摘しました。
別の連続ドラマで、知的障害や特別学級というワードに続いて、手術を受ける子どもの母親のせりふに「普通に学校に(通えるように)」とあったことについて、「知的障害や特別学級が普通ではないとあからさまに言っていて不快だ」との意見がありました。担当委員は「発達に特徴のある子どもたちが向き合っている現実を描写する演出は必要だと思う。それがよくないと言って演出すらできなくなると、世の中に本当はあふれている偏見を覆い隠してしまう懸念がある。『こういうことはよくないよね』と気づかせる、社会啓発のために必要なことがあると思う」と述べました。
メンタルヘルスや障害者の問題などを正面から題材にする教養バラエティーで、自傷行為の出血シーンが放送され、「子どもも見る時間帯に不適切だ」との指摘があったことについて、担当委員は「当事者の反応を見ると、『自分もそうだった』など共感するものが多く、否定的な反応は少なかった。むしろ当事者ではない人のほうが不適切に感じたのかもしれない」と説明しました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。今月も30人の中高生モニター全員からの報告があり、複数の番組を視聴した感想が多く見られたほか、令和6年能登半島地震関連報道への意見も寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では『モノマネMONSTER』(日本テレビ)、『君の声が聴きたい presents「ライブ・エール2024」』(NHK総合)、『#バズ英語~SNSで世界をみよう~』(NHK Eテレ)、『世界遺産』(TBSテレビ)、『クイズプレゼンバラエティQさま!!』(テレビ朝日)、『サスティな!』(フジテレビ)、『ドラマ生きとし生けるもの』(テレビ東京)、『ねこ育て いぬ育て(17)』(NHK BS)などに複数のモニターから感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 『日テレNEWS NNN』(日本テレビ)※日本テレビのニュースサイト
    内容が似ているニュース(スポーツ・政治など)が要約されて連続で流れてくるので、あまりニュースを見ない私の頭にも内容がするすると入ってきました。興味のある記事はさらに深く調べたので、短くどんどん放送してくれるのは良いと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 『NHKニュース7』(NHK総合)
    その日の項目が6つピックアップされた画面はパッと見て分かりやすい。【介護保険料また上昇 地域差も】のニュースを見て、母にも介護保険料を払っているのか質問したところ「会社の給料から引かれているが金額は分からない」と言っていた。僕の住んでいる地域の介護保険料を今度調べてみようと思う。介護保険料は金額ごとに色分けしていて良いと思ったが、色が多くて県境が分かりにくかったので、県境は太線にするのがいいと思う。(中学1年・男子・山梨)

  • 『NHK NEWS おはよう日本』(NHK総合)
    最近の能登半島地震に関する報道は、現地の復興状況などをおおむね好意的に伝えるものが多いと感じる一方で、災害によって得られた教訓や、一時期話題になっていた「千葉県東方沖」の地震に関する情報もほぼなくなっています。間もなく震災から半年という節目を迎える今は、被災地以外の地域に向けて「災害への備え」についてテレビを通して問いかけるのが有意義だと思います。(中学3年・男子・千葉)

  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)
    • 印象が強かったのは香川県の父母ヶ浜です。海外のような絶景で「日本にもこういう場所があったのか」と思いました。また商店街をホテルにする計画は、場所の有効活用という点でとてもいいと思います。まさに一石二鳥だと思いました。(中学2年・男子・東京)
    • ニュースの事例をわかりやすくかみ砕いて解説していて良かった。円安のニュースや情報番組を見ると、個人でできることはないのかなと考える。「外国の投資信託などを買うことも円安に絡んでいるのではないか」「日本の成長を応援することが円の価値を高めることになるのではないか」など、一般庶民ができることを知りたい。(中学3年・男子・東京)
    • 「昔→現在→技術革新→課題→解決策→いま私たちにできること」といった構成が分かりやすかった。また番組内のCMが、前半は少なく後半は5分刻みに放送されていた。視聴者を離さない良策だったと思う。(高校1年・男子・長崎)
    • 『ONE MORNING』(エフエム東京)で「日本銀行が為替介入したのではないか」というニュースを聞いたとき、なぜ日銀は為替介入したと発表しなかったのだろうかと疑問に思っていた。しかしこの番組では「どのような狙いがあって発表しなかったのか」を深く分かりやすく解説していたため、以前よりも時事ニュースに興味を持つようになった。ニュースのポジティブな面も取り上げているのでおもしろい。(高校2年・女子・東京)
  • 『DayDay.』/『ZIP!』(日本テレビ)
    『ZIP!』は長時間ですが、内容が度々繰り返されていて、より多くの人に情報を届ける工夫がありました。ニュースは短めで見出しもあり、分かりやすかったです。エンタメとニュースが交互に紹介されていてあきませんでした。『DayDay.』は、『ZIP!』よりゲストや専門家が多く、解説や感想、推測が多いと思いました。また『ZIP!』よりスピード感がなく、問題や事件を深く考える番組だと思いました。事件の相関図が表示されて分かりやすかったです。(中学2年・女子・秋田)

  • 『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)/『サタデーステーション』(テレビ朝日)
    『情報7daysニュースキャスター』では日本のオーバーツーリズムについて司会・キャスター・ゲストが討論しながら情報を共有する流れが楽しかった。バラエティー番組とニュース番組の中間のような感覚で視聴できるため親しみやすかった。『サタデーステーション』では統計的数値を使って真夏日でも地域差があることがよく分かった。情報がまとまっていて時事ニュースを知るには手っ取り早いと感じた。(中学2年・女子・埼玉)

  • 『テレポート山陰』(山陰放送)
    災害時に備蓄食材をおいしく手軽に調理するおすすめアレンジレシピのニュースが参考になった。どういう食材だと調理がしやすく食べやすいかが知りたかった。また、ビニール袋によっては、熱湯に入れると袋が溶けてしまう物もあるので、注意点が書いてあればよかった。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『Nスタ』(TBSテレビ)
    • 「アメリカの刑務所では刑務所内のスーパーで買い物ができる」と説明があったが、賠償金の支払いや借金が残っている受刑者は買い物ができないのか、どこからお金が出ているのかという疑問が残った。受刑者がどのような生活をするのかがざっくりと分かって、映像で見られるのは良いと思った。(中学3年・女子・神奈川)
    • いつも学校から帰宅すると見ています。山あいの住宅を狙った連続強盗事件のニュースを2時間くらいの中で3回ほど見ました。長いニュース番組では、同じ記事や同じ人にインタビューする動画を何度も放送するのはあるあるですが、同じニュースを伝えるときにはより多くの人にインタビューをし、伝え方を少し変えてみるのもアリではないかと思いました。(高校3年・女子・栃木)
  • 『ニュースウォッチ9』(NHK総合)
    一つ一つのニュースをとても詳しく報じていて分かりやすいです。一方でいくつか改善点もあると感じました。一つ目は、反対側の立場にいる人達にもっとスポットライトを当ててほしいということです。値上げを抑えるために生産者が何を工夫しているかなどに注目するとより深く知ることができると思います。二つ目は、SNS等で視聴者の意見を吸い上げることで、もっと親近感の湧く番組になるのではないかと思います。(中学3年・女子・長崎)

  • 『憲法記念日特集 今必要な憲法議論は』(NHK総合)
    各党で議論しているため意見が対立するのは分かるが、正直、議論として成立していない気がした。なぜなら、各党がそれぞれの憲法に対する考え方を述べ合っただけで建設的なものではなかったからだ。例えば各世代の代表者とスタジオで討論してほしかった。一方で『news zero』(日本テレビ)や『報道ステーション』(テレビ朝日)では一般人へのインタビューだけで、憲法改正に賛成あるいは反対いずれかの意見のみに偏っていた。政党と一般人の両方の意見を組み合わせて放送するとよかったと思う。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『ゴゴスマ GO GO!Smile!』(CBCテレビ)
    ニュースの解説が分かりやすく、多くのコメンテーターの意見を聞くことができるのはとても面白いですが、解説をする専門家がいつも同じ人だと思います。一人の専門家が解説・監修するのではなく、たくさんの専門家がかかわれば、公平で偏りのない情報を届けることができるのではないかと思います。(高校1年・女子・愛知)

  • 『WBS(ワールドビジネスサテライト)』(テレビ東京)
    難しい言葉が多く、理解が追いつかないところが多々あった。語句の説明もあったが、やはり難しいところも多かった。そして私が今、世界や日本では何が起こっているのかを知らなすぎるということを改めて実感した。(高校1年・女子・岐阜)

  • 『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)
    さまざまな「円安」に関するニュースを視聴しました。番組では円安に伴うオーバーツーリズムを取り上げていましたが、他番組と違って「県知事」「他の事例を解説できる専門家」「内容を深く理解して自身の意見を述べる人」の3人で課題や対策を話し合っていました。普段ならば知り得ないところまで解説していたため「理解が深まった」と一番強く感じることができました。(高校2年・男子・神奈川)

  • 『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)
    • コメンテーターによる偏りのない意見は、とても納得するとともに勉強になりました。(高校2年・男子・山口)
    • さまざまな視点からニュースを見ることができてとても興味深かったです。表現の仕方として気になったのは、インタビューを厳選して流しているところです。若者に「転職を考えているか」というインタビューではすべて「転職を考えている人」もしくは「独立・家業を継ぐことを考えている人」で、「転職を考えていない人」のインタビューがなく多数派の意見しか聞くことができず残念でした。(高校2年・女子・愛媛)
  • 『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)
    最初のフリートークの話題は初めて見るものが多く、今回の中国・泰山で足をプルプルさせて歩く観光客の様子に腹を抱えて笑った。三谷幸喜氏と安住紳一郎アナウンサーの掛け合いを見たくてこの番組を視聴する人が私を含めてたくさんいると思うので、フリートークの時間をもっと延ばしてほしい。また江の島の話題では、6歳の男の子の家を「観光地に位置している」と紹介していたが、住所をほとんど公開していたので大丈夫かなと思ってしまった。(高校2年・女子・青森)

  • 『報道ステーション』(テレビ朝日)
    • 夜遅い時間にピッタリな進行だった。ニュースを伝える際は解説を丁寧に含めながらも淡々と進めていて、スポーツニュースには熱量や勢いを感じるもののなぜか落ち着いた気持ちで見ることができた。冒頭の豪雨のインタビューは学生が相手だったが、明らかに嫌そうな顔をしているのを放送するのはいかがなものかと思ってしまった。少しでも思いやりが必要ではないか。(高校2年・女子・東京)
    • 冒頭はイラン大統領を乗せたヘリコプターが墜落したニュースで、事故発生現場を近距離で撮影した動画で視聴者を一気に惹きつけることができていたと思います。ただ、動画のあとナレーターが「一体イラン大統領が事故に遭うまで何があったのでしょうか」と言ったのが少し引っかかりました。「ヘリ墜落」という文字をテロップで見た当初は事故を予想していたのに、その表現だと他殺なのかと疑ってしまう人もいるのではないかなと思いました。(高校3年・女子・熊本)
  • 『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日)
    その日にあった事件や一般人が知らない情報を、専門家を招いて分かりやすく解説してくれるところが良いと思う。他局では専門家ではない人やインフルエンサーがコメントすることが多々あり、見識がないコメントが多いのではないかと思うことがある。これらのコメントは世間の人を動かすことができるので、彼らをコメンテーターに抜擢するのは少々危険な気もする。また、ニュース番組は視聴者がサクッとその日の情報を収集できる形式が今の時代にあっているのではないか。そういう意味では『60秒で学べるNews』(テレビ東京)は今の時代にマッチした番組だと思う。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『サスティな!』(フジテレビ)
    僕は日常生活で騒がしいのは苦手なので、普段からテレビを消音に設定して視聴することがある。この番組は録画して2回見たが、最近のテレビは字幕が出るので、2回目は全くの消音で見ても楽しめた。出演者もちょうどいいスピードで話していた。最近のテレビは騒がしかったり話すのが早かったりするが、僕にとってちょうどいい具合だった。(高校3年・男子・東京)

  • 『THE TIME,』(TBSテレビ)
    高校3年生になって、授業で時事問題がよく取り扱われているため、情報番組は見るようにしています。『THE TIME,』ではさまざまなジャンルのニュースを取り上げていてバランスがいいと感じています。ニュースには殺人事件など重いニュースもありますが、事故の起こった様子やドライブレコーダーの映像といった重すぎる情報がなく、朝の情報番組として適切だと思います。(高校3年・女子・奈良)

【自由記述】

  • 私は7時頃に起きて7時30分頃に登校しますが、この30分間のテレビはグルメ探訪やお祭りの紹介が異様に多いです。ロシアによるウクライナ侵攻やハマスの動き、沖縄の米軍基地に関する問題など、興味のある事柄を知ることが出来ず悲しいです。(中学2年・男子・東京)

  • 朝はいつもNHKのラジオニュースで過ごしています。テレビはエンタメなど楽しいニュースが多く遅刻しそうになりました。(中学2年・女子・秋田)

  • 4月10日のラジオ番組『ラフリー!』(山陰放送)に出演していた田中友香理アナウンサーの「子どもの入学式に出席するため、途中まで番組に出演して時間になったら入学式に向かう」という考えがすごいと思った。そのことを受け入れた相方の丸山聡美アナウンサーや会社もすごいと思った。仕事と子育てを両立できて良いと思った。こういう考えが全国に広がるといいと思う。(中学2年・女子・鳥取)

  • 動画配信サービスや見逃し配信が充実しているなか、「ワクワク感」がテレビの唯一無二の良さではないかと最近思います。配信サービスはたくさんのエピソードが配信されていて“一気見”できますが、テレビだと次のエピソードまで一週間ほどあくので、次回を楽しみに一週間頑張ることができます。放送が待ち遠しくて、開始まで秒単位で数えてしまうこともあります。(中学3年・女子・長崎)

  • 最近のニュース番組は視聴者の注目を集めようとし過ぎていると思います。最近だと「大谷翔平選手の結婚」がどの放送局のニュース番組でも大々的に特集され続けていて、反対に戦争や災害に関するニュースは、発生から時間が経つと終わったことかのように放送されなくなります。大谷選手に限らず、芸能人やスポーツ選手の個人的なニュースやスキャンダルが大々的に特集され続けるのは間違っていると思います。(中学3年・女子・東京)

  • 学校の情報の授業で、「普段テレビを見ますか?」という質問に対して「はい」と答えた人が半数を下回ったことにとても驚きました。中高生をメインとした番組コンテンツを増やすことによって若い年齢層がより興味を抱き、テレビを視聴する中高生が増えるのではないかと思います。(高校2年・男子・山口)

  • 『夜明けのラヴィット!』(TBSテレビ)は一週間分の“面白集”を分かりやすくコンパクトに伝えてくれるので、忙しい高校生にとって「お得感のある番組」だと思います。(高校2年・女子・愛媛)

  • ニュース番組の中で扱われる言葉が難しいと感じることが時々ある。dボタンで用語解説などがあると、より学びにつながると思う。(高校2年・女子・東京)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『新 窓をあけて九州』(南日本放送)
    園児たちが自分の願いを大人に伝えるだけでなく、その願いのために自分たちがどんな行動を起こそうかと積極的に考える姿がすばらしい。そして、その行動や考えに協力した先生や地域の方々の姿から、屋久島の中で子ども達が愛されることや絆の深さが伝わった。(中学1年・女子・鹿児島)

  • 『テレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」』(テレビ東京)
    • 不思議感ただようバーのような場面から一転して病院に変わり、旅に出るという場面の急展開に目を引かれました。「殺す前に」「死ぬ前に」行く旅というところが良いと思いました。(中学1年・女子・神奈川)
    • 「生きている」ことが、俳優の言葉によってありありと表現されていて心に刺さった。ただ1話限りなので展開が早く感情移入しにくかった。(中学2年・女子・埼玉)
  • 『もう中の教えて高校生!「池田工業高等学校 建築学科」』(信越放送)
    私は高校で工科系のことを学びたいと思っていたので、同番組のロボコンや測量といった、少しレアな分野にスポットを当ててくれるところがとても良いと思いました。(中学2年・男子・東京)

  • 『君の声が聴きたい presents「ライブ・エール2024」』(NHK総合)
    ラジオと同時に放送されていてすごかったです。色々な世代の歌手が出演していて紅白のようで家族で楽しめました。生放送らしい歌声でよかったです。(中学2年・女子・秋田)
    曲だけでなく、言葉でもエールを送っており、心に残る番組となっていたと思う。(高校1年・男子・長崎)

  • 『ねこ育て いぬ育て(17)』(NHK BS)
    犬が大好きですがペットショップに入れないくらいのアレルギーがあります。散歩している犬を見たり、YouTubeを見たり、犬グッズを見たりして犬欲を満たしています。番組を見て「野犬」の存在を知りました。自分の生活圏には野犬がいないので臆病な性格に驚きました。しかしその臆病さがあったので保護されるまで生き延びられたのかと思うと、胸が少し痛みました。(中学2年・女子・東京)

  • 『#バズ英語~SNSで世界をみよう~』(NHK Eテレ)
    初回から毎週楽しみにしていて、気軽にスラングを知ることができたり、熟語を学べたりすることころが良いと思う。SNSのコメント欄を紹介して間違っているところには訂正が入っているのを見ると、ネイティブの人も完璧ではないのだと思えて、英語に挑戦しやすくなった。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『レギュラーの全国あるある探検隊』(BSよしもと)
    京都府京丹波町は遠くて馴染みがない地域なので「黒豆」のイメージしかなかったが、栗やキャベツも名産品であることを知った。タコ焼きの食レポがうまくて食べたくなった。最初の自己紹介の時間が少し長く感じたので、他のものを紹介してもよいと思う。(高校2年・女子・青森)

◆委員のコメント◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 外国人による犯罪のニュースについて、今インターネット上では「国へ帰れ」などと激しいバッシングが起きているが、中学1年生の報告では「真面目な人もいるのでとても残念」とあった。バランスを持って冷静にニュースを受け止めていると思う。

  • 中学生や高校生の視聴者は、同世代に関するニュースや特集への関心が高いと感じた。

  • 高校2年生のモニターから「インタビューされている人が嫌そうな表情をしていて、少し胸が痛くなった」と報告があった。以前、戦争に関連する番組は残酷なシーンがあるので見たくないという声があったが、似たような意見だと感じる。

  • オーバーツーリズムについて多くのモニターから報告があり、とても関心が高まっていると感じる。


【自由記述について】

  • 中学2年生のモニターから「朝のテレビ番組に関して学校でディベートをした」と報告があった。テレビ番組や新聞などを活用して、自らの論理形成や相手の論理予想について学んだのだろう。報道番組が教育現場で活用されるということは、番組の客観性や中立性、情報の包括性がますます求められてくると思う。

  • 高校2年生のモニターから「中高生をメインとした番組コンテンツを増やしたほうがいい」という報告があったが、この視点は放送局側に欠けていると感じる。購買層向けの番組が多くなる中で中高生向けの番組が少なくなると、その中高生たちは将来も番組を見なくなってしまう。例えばゲーム業界では、ゲームに夢中になった子どもたちが高校生や大学生に成長したときに興味を持つようなコンテンツを開発していき、最終的にはオールジェネレーションで顧客を作っている。放送業界においても、購買力のある人をターゲットにすると同時に、小さい頃から放送に興味を持ってもらい、また子どもたちの視聴を促し続けるようなコンテンツが必要だと思う。

今後の予定について

次回は6月25日に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年5月に視聴者から寄せられた意見

2024年5月に視聴者から寄せられた意見

「共同親権法」の審議・成立のニュースについてさまざまな意見が寄せられました。

2024年5月にBPOに寄せられた意見数は1,678件で、先月から199件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 86.9% 電話 11.6% 郵便・FAX計 1.4%
男女別は、男性 50.8% 女性 27.6%  無回答 21.6%で、世代別では10代 1.8% 20代 14.0% 30代 22.0% 40代 20.1% 50代 21.8% 60代 9.1% 70歳以上 3.3%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付しますが、5月の送付件数は560件、35局でした。放送全般に対する意見は120件で、その中から11件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

共同親権法(改正民法)の国会審議と可決成立のニュースを多くの番組が取り上げ、その内容についてさまざまな意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は15件、CMについては10件でした。

青少年に関する意見

2024年5月中に青少年委員会に寄せられた意見は60件で、前月から8件減少しました。
今月は「表現・演出」が29件と最も多く、次いで「要望・提言」が13件、「報道・情報」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

  • どの局のバラエティー番組も、テーマに沿ったVTRを流した後、スタジオの出演者が感想を言い合うといったおきまりの構成のものばかりで飽きてしまう。編集も似たり寄ったりで新鮮味がない。

  • 報道の自由度が世界70位、G7の中では最低だったという。戦時の報道のあり方を反省して今の放送法、放送業界ができたはずなのに、国民に伝えるべきことを伝えられていないということではないだろうか。重要な政策案件については、国会で議決される前に国民の議論を喚起するような報道を期待したい。

  • 番組ADがタレントに向かって「お金を貸してほしい」とせがむドッキリ企画。ひとの善意を試しているようで不快だし、寸借詐欺の場面を見せられているようでもあり強い違和感を覚えた。

  • 酔って寝込んだタレントを宙づりにして驚かせ嘔吐させていたバラエティー番組。吐しゃ物にモザイクをかけても気持ち悪いし、面白くない。

  • いわゆるCMまたぎでよく使われる「このあとすぐ」という言葉は信用できない。やめてほしい。

  • 高額報酬で共犯者を募る闇バイトが社会問題となっているのに、それをバラエティー番組でドッキリ企画にしていた。闇バイトをお笑いのネタにしようという制作者の感覚に違和感を覚える。

  • 共同親権か単独親権かという問題と面会交流をめぐる問題は分けて考えることができるのではないか。

  • 共同親権問題は異なる立場や主張を尊重して公平に伝えるべきだと思う。

  • 情報番組などで、SNSをはじめとするネット上の情報をそのまま放送にのせているが、真偽不明のものや意図を持って攻撃する内容のものもあるので、ネット情報の利用は慎重に判断した方がいいと思う。

  • 歯の欠けた一般人を集めて運動会などを行うというバラエティーの企画。登場した人は一様に笑顔だったが、視聴者の中には複雑な気持ちになった人もいるのではないだろうか。素直には笑えなかった。

  • 警察密着番組の打ち切りが発表されたが、同様の番組は他社も放送している。これを機に各社が警察密着番組のあり方を確認してはいかがだろうか。警察活動の重要性は十分に理解するが、密着した対象を賛美する内容になる可能性はあると思う。

  • 原作者が亡くなったドラマの制作について当該放送局から調査結果が発表されたが、真相解明のためにはまだ不十分だと感じる。局は記者会見を開くべきだ。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、ターゲットの芸人の体に電気を流して笑うという残酷な内容があった。人をいじめて笑うという構図を当たり前のように放送するのは子どもたちへの悪影響が大きい。

  • メンタルヘルスや障害の問題を題材にする教養バラエティー番組で、自傷行為の出血シーンが放送された。子どもたちが見る時間帯には不適切ではないだろうか。

  • バラエティー番組で、鼻フックで軽トラックを引っ張るという企画を放送したが、鼻をけがする可能性があり、たいへん危険に感じた。子どもも模倣しかねないだろう。

  • 歌謡番組の合間のバラエティー企画で、芸人3人が頭部を覆った透明のバケツに水を満たして息止めのリレーをした。息を我慢する様子を芸人のMCらが笑いながら批評していた。これのどこが楽しいのか理解に苦しむ。

【「要望・提言」】

  • 情報番組のスタジオに高校生を招いて投資を勧める話を聞かせた。投資は良いことばかりではなく、十分な資金と知識があったうえで、自己責任で行うべきもの。未成年に勧めるのは好ましくない。

  • 連続ドラマで、手術を受ける子どもの母親役が「普通に学校に(通えるように)」と言うせりふがあった。知的障害などの特別学級が「普通でない」ことをあからさまにしていて不愉快であり、憤りを感じた。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 医療福祉センター利用中に男児がけがをしたというローカル・ニュース。負傷した男児の顔写真が両目のぼかしだけ入れられて放送された。見ていて気分が悪くなった。これを見た子どもの心にトラウマを与えてしまうのではないかと心配になった。

【「動物」に関する意見】

  • バラエティー番組のトークで、芸人が「(淡水域に生息する)アロワナを海水に入れて殺した」という話をした。それを聞いた別の芸人と俳優がゲラゲラと大笑い。生き物を殺して笑うのは教育的によくない。

第327回

第327回 – 2024年5月

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2024年5月21日(火)午後4時~午後6時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
今回の委員会では、被申立人のサンテレビから提出された書面の概要、ポイント等を事務局から説明した。さらに、この審理案件の今後の大まかなスケジュールについても説明を行った。

2.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

3.その他

事務局から今夏以降、テレビ局見学を予定していることを報告した。

以上

第195回

第195回–2024年5月

4月の視聴者・聴取者意見を報告

第195回放送倫理検証委員会は、5月10日に千代田放送会館で開催され、4月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2024年5月10日(金)午後5時~午後6時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 4月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

4月に寄せられた視聴者・聴取者の意見は1,877件で、通常ベースの数値となった。衆議院東京15区の補欠選挙を伝えた報道番組について、候補者の紹介が公平ではないという意見があったことなどが事務局から報告された。

以上

第267回

第267回-2024年4月23日

視聴者からの意見について… など

2024年4月23日、第267回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ、新たに加わった池田雅子委員を含む8人の委員全員が出席しました。
委員会の冒頭、委員長の指名により、吉永みち子委員が新副委員長に選任されました。
次に3月後半から4月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
4月の中高生モニター報告のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年4月23日(火) 午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
委員長の指名による新副委員長の選任
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、
佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

委員長の指名による新副委員長の選任

緑川由香副委員長の退任に伴い、会議の冒頭、榊原委員長がBPO規約第35条第2項に基づき、吉永みち子委員を新しい副委員長に指名し、同委員が副委員長に選任されました。また、緑川氏の後任の池田雅子新委員が事務局から紹介されました。

視聴者からの意見について

3月後半から4月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
大阪の放送局制作のバラエティー番組で、ある女子大学生とバス通学の女子児童との交流を描く内容が放送された際、その児童の氏名、小学校名、学年、通学に利用するバス会社と路線などの個人情報が明示されたことに対して、視聴者から「保護者や学校の許可を得ていたとしても、小学校名やフルネームを明かす必要性は感じられず、この女子児童に対する制作者の配慮が欠けた放送だった」などの意見がありました。
担当委員は「女子大学生と女の子とのヒューマンなストーリーはよかったと思うが、ここまで細かく個人情報を出す内容でもなかった。女の子の顔の表情を見せるだけで十分で、名前は口頭で『○○ちゃん』と呼ぶ程度がよかったのではないか」と報告しました。
これに対し大阪在住の委員は「関西制作の番組では『どこどこの学校を訪問しました!クラブ活動で頑張った〇〇くんです!』という趣旨の番組はたくさんある。これをやめるとなると、(関西の)テレビ局はすごく困るのではないか」と述べました。
別の委員は「番組制作の現場では、『学校がよいと言った、保護者も本人も了解した』となって、単純に『手続きは踏みましたよ』となる傾向がある。しかし、手続きを踏んだうえで時代状況を慎重に見極めながら、どこまでが必要(な情報)で、どこはなくても大丈夫かを、想像力の問題として判断することが制作側に求められるだろう」と指摘し、ほかにも「最低限の法的な条件は満たされたとしても、プラスアルファでもう少し大きな視点からの配慮が制作側にあってもよかったのではないかと思う」という意見が出されました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

今年度の新しい中高生モニターは30人(中学生15人・高校生15人)で、4月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。30人全員から合わせて27番組への報告があり、さまざまな感想や意見が寄せられました。
複数のモニターが取り上げたのは『それSnow Manにやらせて下さい』(TBSテレビ)、『逃走中 ~ハンターと浅草の相棒~』(フジテレビ)、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)でした。視聴の仕方はリアルタイムが17人、録画が9人、そのほか(見逃し配信などを利用)が3人でした。
モニターには毎月のテーマのほか、放送に関する「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の感想をお願いしています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『新プロジェクトX ~挑戦者たち~「東京スカイツリー 天空の大仕事」』(NHK総合)、『理想的本箱 君だけのブックガイド』(NHK Eテレ)、『はるかなる古代文明』(NHK BS)、『さよなら大好きな場所』(テレビ朝日)、『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)にそれぞれ複数のモニターが感想を寄せています。

◆モニター報告より◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『有吉の壁』(日本テレビ)
    たくさんのお笑い芸人がいろんなネタで笑わせてくれるところが良い。裏話(「実は〇〇でネタを思いついた」「振り返り感想戦」など)をやるのも面白いと思う。番組タイトルに“壁”とあるので「〇人の壁(一つのネタで何人笑わせられるか)」といったチャレンジなどもしてほしい。(中学1年・男子・山形)
  • 『逃走中 ~ハンターと浅草の相棒~』(フジテレビ)
    ハンターに捕まりそうな時のBGMが緊迫した感じでとてもシーンに合っている。ミッションにもほどよく縛りがあって、難易度設定がうまいと感じた。推している芸能人が出ていてとても嬉しかった。(中学3年・男子・東京)
  • 『#バズ英語 ~SNSで世界をみよう~』(NHK Eテレ)
    SNSでいつも見ているインフルエンサーのジョルディ・コアリティックとアモーリ・ギションが紹介されていて親近感を持てた。CRAZYCOCOの英語レッスンは勉強しているように感じなくて楽しかった。ゲストとしてまた登場してほしい。(中学1年・女子・鹿児島)
  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)
    出演者の率直な意見を聞くことができて分かりやすく面白かった。他の番組でもいえることだが、株の話題が出ると「やっていない人は損をする」といった意見が見られるので、自分自身に明確な意見がないとメディアの言いなりになりそうで若干怖いと感じる。また軍事の話題を出すのであれば隣国との関係についても知りたかった。(中学2年・男子・東京)
  • 『新プロジェクトX ~挑戦者たち~』(NHK総合)
    放送時間が1時間半と長く途中で飽きてしまったが、録画で何度も見ると中身が入ってきて、最後にスカイツリーが完成したシーンでは感動して鳥肌が立った。現場の人たちの使命感が一番伝わってきたのは、東日本大震災のときに命懸けでゲイン塔を固定しに行ったシーンだ。全員が「行きます」と答えるのを見たときは心に来るものがあった。(中学2年・男子・東京)
  • 『超ド級!世界のありえない映像大賞』(フジテレビ)
    「まばたき禁止!ハッと息をのむ部門」「思わずにっこり!かわいすぎる部門」などといった部門に分けられていて、内容に期待しながら楽しむことができました。大賞となった映像は父と娘の23年間の記録映像で「この記録は今日までの長い予行練習」という言葉に感動しました。映像に出ていた人のその後も紹介してほしいです。(中学2年・女子・秋田)
  • 『それSnow Manにやらせて下さい』(TBSテレビ)
    • USJへの潜入企画は、立ち入り禁止エリアなど普段知ることのできない裏側を見ることができてとても良かったです。出演者が変装してお忍びでパーク内を回る企画は高揚感やスリルを味わうことができましたが、「〇〇さんですか?」とファンが声をかけると1時間の強制休憩になってしまうルールなので、視聴者もモヤモヤするし、ネット上でも「声をかけるな」「自分勝手だ」と放送終了後に毎回もめるので、そこを改善してほしいです。(中学2年・女子・埼玉)
    • 毎週金曜日のこの時間をいつも楽しみにしています。地元の人々と交流する企画をたくさんやってほしいです。(高校3年・女子・栃木)
  • 『生たまごJOY!』(山陰放送)
    「はじめましてプチ情報」の企画がおもしろかったです。初回の放送は自己紹介があればよかったです。マンスリーゲストへの質問時間ももう少し長いといいなと思いました。またBGMが全体的に少し大きいと思いました。(中学2年・女子・鳥取)
  • 『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)
    自分が知っている曲やオーケストラ楽団ばかりでとてもひきつけられました。世界的に有名な指揮者であるグスターボ・ドゥダメルさんが取り上げられていましたが、彼を生んだ社会音楽活動「エル・システマ」をこの番組で知ることができました。音楽は平和をもたらすねと家族で話しました。(中学2年・女子・東京)
  • 『キントレ』(日本テレビ)
    特殊メイクをした俳優をドラマ等で見たことはあったけれど、実際にメイクをする姿は見たことがないので興味が持てました。メイクをする映像が少なかったのでもう少し詳しく見たいと思いました。また学校の友だちに番組の話をしたら「録画まではしないけれど、テレビをつけたときに放送していたら見たな」と言われたので、学生でもリアルタイムで視聴しやすい午後6~10時の時間帯で放送してほしいです。(中学3年・女子・神奈川)
  • 『THE突破ファイル』(日本テレビ)
    実話の突破劇がたくさん紹介されていて番組の中の世界がリアルに感じられます。視聴者から寄せられる“身近な突破劇”は明日からでも実践できるようなものもありとても親近感が湧きました。空港の税関職員や市役所職員の努力や技術が紹介されていて勉強になったし、さまざまな仕事に思いを馳せることができる番組がもっと増えればいいなと思います。(中学3年・女子・長崎)
  • 『プレバト!!』(毎日放送)
    「丸太アート」ではチェーンソーアーティストがお手本を作ることで製作者に悪い印象を持たなかった。また製作者のミスを笑いのネタにしていたところがよかった。(高校1年・男子・長崎)
  • 『マツコ会議』(日本テレビ)
    マツコ・デラックスが高校生の最新トレンドに必死に追いつこうとしている姿に心を打たれた。選ばれた高校生と対話していたのが面白く、同じ高校生として気づかされることが多かった。またマツコ・デラックスとディレクター陣が自分たちの世代の話をすることでジェネレーションギャップを強調し、全世代に共感を呼ぶ内容となっていておもしろかった。トレンドに関してはスタジオで出演者が体験するものがあるとより良かったと思う。(高校1年・男子・兵庫)
  • 『芸能人格付けチェックBASIC』(朝日放送テレビ)
    「音楽」など視聴者も参加できるチェックでは視聴者も一緒に考えさせ、「味覚」「嗅覚」といった視聴者が参加できないチェックでは視聴者には早い段階で正解を発表するなど、視聴者を楽しませようとする工夫が常にありました。番組内で使用した食材や楽器を詳しく紹介する動画を番組公式SNSに載せれば、より番組を楽しむことができると思います。(高校1年・女子・愛知)
  • 『相席食堂』(朝日放送テレビ)
    熊田曜子がロケをした北海道の然別湖を今まで知らなかったので、然別湖の絶景や氷で作られた建物やワイングラスなど、私にとって驚きの連続でした。観光客に話を聞くよりも、もっとその町の住民に話を聞くなどして交流するほうがいいと思いました。(高校2年・男子・山口)
  • 『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)
    • 白羽忍者の企画で、最初に「白羽の矢が立つ」のことわざの成り立ちについて説明していて勉強になった。ターゲットであるお笑い芸人ではなく白羽忍者が主役であるかのような演出がおもしろかった。(高校2年・女子・東京)
    • 一番面白かったのは「白羽の矢が立つ」ドッキリだ。気持ち悪さもなくものすごく痛そうでもなく、夜7時という時間にちょうど良い、家族で楽しめるドッキリだった。「無限牛乳」ドッキリは着色した水がどんどん出てきて口から吐き出してしまうから食事中に見るのは不快だし、「配膳ロボットの逆襲」ドッキリではひたすら水を浴びせられるのが痛そうで仕方がない。放送時間と視聴者の生活時間を考えて制作してほしい。(高校2年・女子・東京)
  • 『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ)
    一番興味深かったのは、子どもたちだけで不動産屋を経営する話です。学校の授業の“職業体験”では大人が働いているところを少しのぞき見するだけですが、番組では子どもが家の売却や購入の接客などをしていて、子どもだけでもこれだけできるのかと驚いたし、子どもに全てを任せる海外のおおらかさを感じました。この番組では前半で芸人がドッキリにかけられて汚れてしまうことが多く、毎回ドッキリがあるのはあまりいい気持ちになりません。(高校2年・女子・愛媛)
  • 『ラヴィット!』(TBSテレビ)
    クロストークでクスっと笑えるので、前番組の『THE TIME,』(TBSテレビ)の後も引き続き見ようという気持ちになる。マイナーな記念日や出来事からオープニングトークテーマが決められるので学びになる。これまでゲーム対決のときにゲーム内のプレーヤーと出演者を一致させるのが難しかったが、今回の「パワプロホームラン王」企画では一人ずつ映していて見やすかった。(高校2年・女子・青森)
  • 『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)
    毎週月曜が楽しみになるくらいおもしろい番組だと思う。北海道出身の人がゴキブリをカブトムシだと勘違いした話など、出身地ならではの事件が自分の中でお気に入り。昔は遅い時間に放送されていたが、その時のほうがより人間味あふれた話題が多くておもしろかった。(高校3年・男子・埼玉)
  • 『せっかち勉強~知らないとヤバい事~』(日本テレビ)
    「えー」と驚いてもっと詳しく知りたいと思っている間にどんどん番組が進行するため、自分で調べたり人と話したりしてしまう。MCのカズレーザーがひたすらまいていたし放送中もタイマーの音がしていて、ゆっくり紹介してほしいとも思ったが、ダラダラ紹介するより新しい感じの番組でよいと思った。(高校3年・男子・東京)
  • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
    番組後半の宮川大輔さんのパートではお祭りに参加していましたが、今回は危険な場面や見ていて苦しい場面はありませんでした。解説がついていてルールがわかりやすく、種目が終わるごとにランキングの表示があって、家族みんなで盛り上がることができました。宮川さんがチームメイトを全力で応援しているシーンがこの日の放送の中で最も好印象でした。(高校3年・女子・奈良)
  • 『EIGHT-JAM』(テレビ朝日)
    普段はステージ上でキラキラ歌うミュージシャンが淡々と話す姿は新鮮だし、「こういう考えを大切にしている人なのか」という気づきもあり、歌からだけでなくそういうところからそのミュージシャンを好きになれるのでたくさんの発見がある。この番組のおかげで好きなミュージシャンが増えたのでこれからも視聴を続けたい。(高校3年・女子・熊本)

【自由記述】

  • 『Nスタ』(TBSテレビ)のニュース原稿を紙からタブレットに変更したことがテレビで紹介されていて、SDGs達成のための良いアイデアだと思った。全国の放送局で取り入れるといいと思う。(中学2年・女子・鳥取)
  • 日頃からニュースをよく見ますが、各社で報道の仕方や専門家・有識者の見解が少しずつ違うことに最近気づきました。人が変われば意見も変わるのは当たり前だからこそ、ニュースの“専門家の意見”を安易に鵜呑みにしてはいけないと思います。これはネットなどにも通じることなので、どんな情報もまずは一度疑ってかかり、調べ、自分で考えることが大事だと思いました。(中学3年・男子・千葉)
  • テレビはまだ一大メディアとして機能しているが、ラジオへの関心の低下は著しいと思う。学校に手作りラジオを送っている会社と協働するなどして、その魅力を継続的に伝える努力をするべきだと思う。(高校1年・男子・兵庫)
  • 番組の途中で選挙結果や政治家の発言について速報テロップが表示されることがありますが、災害や交通情報など多くの人に関係があり緊急性があるもの以外は気が散ってしまうので、表示するべきではないと思います。(高校1年・女子・愛知)
  • 恋愛ドラマを見ることが多いのですが、話の展開が似ているものが多いと感じるので、コメディー要素やミステリー要素などを取り入れてほしいです。また“二番手”の人がハッピーになる展開も見たいです。(高校1年・女子・岐阜)
  • 新年度は音楽番組が増えた印象ですが、様々な世代が一緒に楽しめるような番組があまりない気がします。私はライブ感にこだわった番組作りが大切だと思います。アーティストの生ステージの迫力は、ジャンルを超えてどの世代にも感動を与えることができるのではないでしょうか。(高校2年・女子・愛媛)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『さよなら大好きな場所』(テレビ朝日)
    • 普段見ている番組ではナレーターは画面に映らないので、番組ナレーターの山時聡真と清原果耶の横顔が映っていて面白いと思った。“さよならカメラ”は一般人が撮影するので映像のブレや乱れもあったが、食事をする人の笑顔やボリュームのある料理の映像に、お店に対する愛を感じた。(中学1年・男子・山梨)
    • 番組冒頭の「あなたの大好きな場所は、今もそこにありますか」という問いかけで一気に番組に引き込まれ、そのまま食い入るように見ました。(中学3年・男子・千葉)
    • その場所を愛する地域の人が撮影者になるので、人の温かみや切なさ、名残惜しさをより感じることができました。一方で大半の視聴者はその場所を全く知らないので「こういう事に苦労したけれど地域の人と乗り越えてきた」など具体的なエピソードをもっと詳しく説明したほうが、その場所をより身近に感じて共感できるのではないかと思いました。(中学3年・女子・東京)
  • 『新プロジェクトX ~挑戦者たち~「東京スカイツリー 天空の大仕事」』(NHK総合)
    視聴し終わって最初に頭に浮かんだ感想は「勉強になった」です。ハードルの高い挑戦を乗り越えたからこそ得られた経験や考えなどを、番組を通して知ることができました。(中学2年・女子・東京)
  • 『理想的本箱 君だけのブックガイド』(NHK Eテレ)
    • 「コジコジに聞いてみた。モヤモヤ問答集」(さくらももこ著)が一番心に残った。コジコジの何気ない一言がすっと心に入ってくる感じがした。(中学1年・女子・神奈川)
    • ピンポイントに対象を絞ることで、より深く的確な本に出会うことができたと思う。3冊という紹介数もちょうどよく素晴らしい番組だった。最後に紹介されていた「コジコジに聞いてみた。モヤモヤ問答集」を紹介する“映像の帯”がとてもコミカルで記憶に残った。(高校1年・男子・兵庫)
  • 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)
    • クイズ形式で知識がスッと入ってきました。郵便局への潜入は、ふくらPとやす子の対話形式でテンポよく楽しく学ぶことができました。またこの2人のロケが見たいです。(中学3年・女子・神奈川)
    • ところどころ胸が詰まるようなボケとツッコミが繰り広げられることもあるが、それ以外の笑いのシーンは面白いと思う。(高校2年・女子・東京)
  • 『スポ魂★ながさき』(長崎文化放送)
    バスケットボールチームの長崎ヴェルカの取材だったが、長崎のチーム目線でとても見やすく応援することができた。(高校1年・男子・長崎)

◆委員のコメント◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 昨年度までの中高生モニターも含めて「裏話のような企画を見たい」という意見が比較的多く見られる。
  • 『#バズ英語 ~SNSで世界をみよう~』(NHK Eテレ)の番組紹介文に「SNSで今の世界を「今」をキャッチアップ」とあった。中学1年生のモニターが録画視聴したと報告したが、若年層が何を見ようか悩んだときに「SNS」「世界」「今」などは惹句(じゃっく)として有効だと思う。
  • 中学の義務教育の中に職業体験に関連する授業があるが、株式投資や宇宙開発について学ぶ機会はとても少ないと感じる。アメリカではティーンエイジャーが株式投資を学び、実際に株取引をすることもあると聞く。『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ)は大変良い刺激になったのだと思う。

【自由記述について】

  • 高校3年生のモニターから、ウクライナ侵攻に関する報道量を減らして欲しくないとの感想とともに「発信する側で役割をわけることが有効かもしれない」「バランスの取れたニュース番組を見たい」と報告があった。テレビ業界全体でバランスを取るべきだという提案かもしれないが、放送局同士でネタを振り分けることは、放送局の独自性・独立性がなくなるので難しい。モニターの気持ちは受け止めつつ“バランスを取る”ことがいかに難しいかはしっかりと伝えたい。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)に多くのモニターから報告があったが、この番組だけでなく今月の報告全体を通して“学びへの意欲が高い”“実践的な情報を求めている”と感じられた。

今後の予定について

次回は5月28日に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年4月に視聴者から寄せられた意見

2024年4月に視聴者から寄せられた意見

動物が登場するバラエティー番組で、犬が別の犬に対して攻撃しようと飛びかかった場面を放送したことに対して意見が寄せられました。

4月にBPOに寄せられた意見数は1,877件で、先月から109件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 86.6% 電話 12.3% 郵便・FAX計 1.0%
男女別は、男性 54.1% 女性 29.1% 無回答 16.8%で、世代別では10代 0.9% 20代 10.9% 30代 21.0% 40代 23.0% 50代 23.0% 60代 10.0% 70歳以上 3.7%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは各局に送付、4月の送付件数は799件、47局でした。
それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、会員社すべてに送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

動物が登場するバラエティー番組で、犬が別の犬に対して攻撃しようと飛びかかった場面を放送したことに対して批判の声が寄せられました。引き続き二刀流メジャーリーガーの話題についても意見が寄せられています。
ラジオに関する意見は32件、CMについては10件でした。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は68件で、前月から4件減少しました。今月は「要望・提言」が27件と最も多く、次いで「表現・演出」が14件、「報道・情報」が8件、「言葉」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

  • 政治資金パーティーをめぐる報道で、〇千万円が処分のボーダーラインとか、〇百万円以下ならおとがめなしなどという解説を何度も聞いた。庶民感覚からするとサラリと口にできるような額ではないと思う。そういう感覚を代弁してくれる解説者やコメンテーターがいてくれればいいのにと感じた。

  • ニュース番組で、事故や爆発など目を引く映像がよく使われるが、「~が〇〇しました」、と見た目をアナウンスするだけで、ひどいときには現場が日本なのか海外なのかさえ分からないこともある。「いつ」「どこで」くらいは最低限文字スーパーででも伝えるべきだろう。

  • 取材や中継のためにヘリコプターを飛ばし、ホバリングなどで長時間同じ場所に滞空することは、地域住民に対する騒音加害だということを認識してほしい。各社で一定のルールは作れないのだろうか。

  • 元通訳の単独犯行だったということがはっきりした。二刀流メジャーリーガー本人にも追及の手が伸びるかのようにコメントしていた出演者や番組はどうするのだろうか。ジャーナリズムは根拠に基づいて事実を伝えることが大前提だ。テレビは週刊誌とは違うということを改めて認識してほしい。

  • 2つの番組を合体して1つのスペシャル番組として放送することがよくある。しかし、合体した2つの番組のうちの片方は毎週見ているが、もう一方の番組には興味が無く見たくない、ということもあるだろう。合体することによって放送局側にはメリットがあるのかもしれないが、なんとなく釈然としない。

  • 芸能事務所創業者による性加害問題のその後を追ったBBCの番組に感銘を受けた。翻って、日本のメディアは何をしているのだろうか。BBCの取材結果をそのまま放送するだけで、自分たちはあの問題の取材を継続しないのだろうか。

  • 動物を登場させるバラエティー番組、特に保護犬や保護猫との生活や交流を描く番組の中で、相性がよくないと見られていた犬2頭を同時にドッグランに放ち、一方がもう一方に、攻撃しようと飛びかかった場面の映像を流していた。ショックを受けた人もいると思う。

  • いわゆる“トー横キッズ”の問題を扱うニュースの中で「800万円稼いだ」などとうそぶく未成年のインタビューを流していた。その言葉が事実かどうか確認を取ったとは思えない。また、やすやすと大金を手にすることが出来るかのような錯覚を子どもたちに植えつける恐れがあるということに思いが至らないのかと思う。

  • 全国ネットの番組なのに、番組のはじめの部分数分間や終わりの部分数分間が、地方では見られないということがよくある。その場合、オープニングタイトルやエンドロールも地方では見られない。関東の人はいいかもしれないが地方の視聴者を軽視していることにならないか。

  • TVerなど見逃し配信でテレビ番組を見られるようになった。地上波で番組を見る理由が薄くなってきていると感じる。生放送である必要がないのではと感じる番組もある。リアルタイムで視聴したい、視聴するメリットがあると思わせる番組を増やしてほしい。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • バラエティー番組で、競馬に賭け続けて約2億円当てた人を紹介。子どもも見る番組であり、ギャンブルに興味のない人に興味を持たせてしまうことには慎重であるべきだ。まして、普通ではない賭け方がたまたま大当たりした事例だ。生活に支障のない範囲で楽しむべきことを言い添えてほしかった。

  • バラエティー番組に限らず、ドラマやアニメにおいても、障害や難病を持つ人への理解を深めるための配慮を願いたい。ごくふつうに出演者や番組の演出に採用して、その存在が当たり前のことであると認識できるようにしてほしい。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、ボウリングのレーンの途中にピンを横に並べ、それらのピンを越えるようにボールを投げて競技させた。高いところからボールが落ちて、レーンを激しく傷める。子どもには決して真似してほしくない行為だった。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 朝の報道・情報番組で、男女の遺体が焼かれて見つかった事件について、遺体の状況を詳細に伝えた。幼稚園児や低学年の小学生も見ている時間帯だ。必要以上に詳細な報道は不要だと思った。

【「言葉」に関する意見】

  • 情報バラエティー番組で、芸人の司会者が現職の総理大臣を2回も「やつ」呼ばわりした。一国の総理に対してひどすぎるのではないか。年長者を「やつ」呼ばわりしてもよいとの印象を子どもが持ってしまうだろう。

【「喫煙・飲酒」に関する意見】

  • 1990年代の社会状況をテーマにしたドラマで、高校生の喫煙シーンが多すぎた。女子高生の喫煙シーンもあったので、いまの高校生に悪影響を与えかねないと思った。

第326回

第326回 – 2024年4月

審理要請案件「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」…など

議事の詳細

日時
2024年4月16日(火) 午後4時 ~ 午後6時半
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.2024年度新任委員あいさつ

2024年度の新任委員として、大谷奈緒子・東洋大学教授と松尾剛行弁護士がそれぞれ就任の挨拶をした。

2.委員長代行指名

曽我部委員長が、退任した二関辰郎委員長代行に代わり、新たに廣田智子委員を委員長代行に指名した。

3.審理要請案件「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」

申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
双方による交渉が不調に終わり、今回委員会で審理入りするか否かを検討した。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

4.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

5.運営規則改正について

前回3月の委員会で決議された運営規則改正案の内容を事務局からあらためて説明し、5月の理事会で諮られることを再確認した。

以上

第194回

第194回–2024年4月

TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見への対応報告を了承

第194回放送倫理検証委員会は、4月12日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2024年1月11日に通知・公表したTBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
ローカルワイド番組でホームレス男性を取材した特集コーナーについて当該放送局から提出された報告書を基に議論した。
3月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。

議事の詳細

日時
2024年4月12日(金)午後5時~午後6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見への対応報告を了承

1月11日に通知公表したTBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見(委員会決定第45号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の公表後、TBSテレビ報道局の全員にBPO意見の全文を周知し、報道の基本倫理の再確認と再発防止に向けた職場での議論を求めたとあり、問題の発覚後、編集主幹と所管するセンター長が各出稿部と6つの報道番組とを個別に回って再発防止ミーティングを開催し、計7回約180人と意見交換を行ったことが記されてある。
そして、新たな教育研修として、報道番組と情報番組でニュースを扱うディレクターとアシスタントディレクター向けの、制作会社のスタッフまで広く対象にした「報道基礎講座」を計8回のべ600人を対象に開催し、新年度以降も、新たに配属されたスタッフに同様の取り組みを実施することや、中堅記者やデスクについては取材や出稿を指揮する立場で必要なことは何かを学ぶ研修を充実させていくと述べられている。
また、今年夏をめどに、調査報道など問題提起型の独自取材に取り組む部署を、取材や危機管理態勢を一層強化する形で新設する予定だとしている。
その上で、現行の「TBS報道倫理ガイドライン」の「情報源の明示と秘匿」の項目を改訂し、取材源の秘匿が必要な取材に際しては、撮影開始前に取材協力者と面会して取材目的や放送のリスクなどを丁寧に説明し信頼関係を構築することや、取材対象者の置かれた立場などについて詳しく情報を収集し、どのような措置を講ずれば取材源の秘匿を守りぬくことができるのか、局側の責任で慎重に判断すると共に、場合によっては取材や放送の断念もいとわないこと、放送後に周辺でどのような反応があったのか、取材対象者に聞き取りを継続的に行い、取材対象者が苦しい立場に追い込まれることのないよう留意することとしている。
これを受けて委員からは、改定された「TBS報道倫理ガイドライン」は具体性に富んでおり充実した内容だといった意見や、改革していこうという熱量が感じられ、オープンでフランクな意見交換がなされているという雰囲気が伝わってくるといった意見、研修が拡充され制作会社のスタッフも対象とされている点や、調査報道ユニットを再編して、今後も社会に問題提起する報道を一層進めていくと結ばれている点など、今回意見書で伝えようとしたことをきちんと受け止めた内容だといった意見が出され、報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. ローカルワイド番組内の特集コーナーについて議論

ローカルワイド番組の特集コーナーで、公園で暮らすホームレス男性を取り上げたところ、ホームレス支援団体などから「男性のプライバシー権や名誉権を侵害している。ホームレスの人々への暴力を助長する」などの抗議があったと当該放送局から報告があり、委員会で議論した。映像には、公園で男性が放尿するシーンや大量のスーツケースを並べている映像を使用。当該放送局は「男性にモザイクをかける配慮をし、プライバシーや名誉権の侵害にはあたらない」としているが、委員からは「ホームレスの社会的問題を取り上げるのに放尿シーンが必要だったのか」「モザイクをかけたとしても、公園には男性以外にホームレスがいないようであり特定されるはずだ」「プライバシーへの理解、SNSへの影響に対する配慮がない」「社会的弱者やマイノリティの人々への配慮が足りないという放送基準の問題はあるのではないか」「取材に応じないから勝手に放送していいのか。もっと丁寧なアクセスが必要」とする意見が出た。一方、「どのシーンを使うかは放送局に判断の余地はある」「排除が全面に出された番組とは一線を画し、インクルージョンの視点は維持されているのではないか」などとする放送の自由への配慮に触れた意見も出て、議論を終えた。

3. 3月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

3月に寄せられた視聴者・聴取者の意見総数は1,768件(前月2,308件)で、意見数は減少している。芸能事務所における性加害問題や特定のお笑いタレント関連の意見が落ち着いてきたのが主な要因。一方で増えているのが米・ドジャースの大谷翔平選手に関する意見で、“過熱報道”への批判や元通訳の違法賭博疑惑に関連して、大谷選手を擁護する声が目立ったことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

2024年4月16日

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、4月16日の第326回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 申立ての対象となったのは、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した夕方ニュース番組『キャッチ+』(キャッチプラス)で、ふるさと納税PR事業のために兵庫県下の地方自治体が出店したアンテナショップで、この自治体の元課長が現職時代に不正行為をはたらいていたという内容の調査報道ニュースを放送した。申立人は元課長で、放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと主張している。
 9月26日放送の前編では、アンテナショップ元店長たちの内部告発をもとに、元課長が代金を支払わずに商品を飲食していたと報道した。9月27日放送の後編では、情報公開で得た資料と元店長たちの証言などをもとに、元課長の指示により、家族や知人に公金で高級牛肉などが送られていたと伝えた。
 申立人の元課長は、放送などでの謝罪、インターネット上での当該ニュース動画の削除などを求めている。
 被申立人のサンテレビは、元課長は電話取材に対し全てを否定したが、発言に具体的根拠はなく、元店長らの証言や伝票のコピーなどの物証からみて、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があるとしている。また、地方自治体の管理職の地位にある公務員が、公金が投入されたアンテナショップで行った不正行為を放送したもので、公共性があり、公益を図る目的で放送したと主張している。
 双方による交渉が不調に終わり、今回委員会で審理入りするか否かを検討した。

 4月16日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第266回

第266回-2024年3月26日

中高生モニター会議の開催… など

2024年3月26日、第266回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
当日は中高生モニター18人によるTBSテレビオンライン見学会と中高生モニター会議に引き続いて通常の委員会が開催されました。
委員会では、2月後半から3月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
3月の中高生モニターリポートのテーマは「この1年間で最も印象に残った番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年3月26日(火) 午後4時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
中高生モニター会議(オンライン) 詳細はこちら
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

2月後半から3月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
バラエティー番組でゲームに負けた罰として、司会の男性芸人の指を瞬間接着剤で接着させて番組を進行させたことに視聴者から「身体に危険な行為で、悪質ないじめのように感じた」などの意見がありました。
担当委員は「周囲の出演者が笑うことで(子どもに)模倣される可能性が高くなるし、使用目的外の使い方なので、商品の注意書きを無視した印象がある」と報告しました。
ある委員は「子どもが模倣する可能性はある。番組を仕切る司会者がやられたことだとしても、それでよいということではない。(委員会として)繰り返しメッセージを出していくことに尽きるだろう」と述べました。
平日昼の情報バラエティー番組の中継コーナーで、赤ちゃんに餅を背負わせる神事を模した「背負い肉」という企画を放送。視聴者から「1歳の赤ちゃんが泣き続け、背負わされた牛肉の重みで仰向けに倒れる場面もあった。ひどい企画だ」などの批判的な意見が寄せられました。
担当委員は「伝統的な神事では、子どもの健康や成長を願うという文脈があって(赤ちゃんが泣き出しても)許されるのだろうが、この場合は本人ではなく、大人の母親が『お肉がほしい』という文脈なので、批判されたのだろう」と指摘しました。
一方、別の委員は「私は虐待とは思えなかった。本人は(中継が始まった周囲の様子に)びっくりして、しかも重いので泣き叫んでしまったが、終わった後に母親が抱きしめていて、(親子の)関係性が悪いようには見えなかった。おそらくリハーサルではうまくできたのだろうが、(番組が)あまりに幼い子を選んでしまったのが失敗だったのだろうと思う」と述べました。
この2番組を含め、これ以上の議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

現モニターが最後となる3月のテーマは「この1年間で最も印象に残った番組について」で、27人のモニターからあわせて25番組への報告が寄せられました。
複数のモニターが挙げたのは『2023ワールドベースボールクラシック 決勝』(テレビ朝日)と『金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」』(TBSテレビ)の2番組で、そのほかにも多岐にわたるジャンルの番組に関する報告が集まりました。また「自由記述」では、1年間のモニター活動で感じた“これからの放送に求めること”に関する記述が目立ちました。
「青少年へのおすすめ番組」では『アイ・アム・冒険少年 3時間スペシャル』(TBSテレビ)に9人から、『発進!ミライクリエイター「第8弾~AIはここまで来てるぞスペシャル~」』(テレビ朝日)と『日曜ビッグバラエティ「密着!JR24時」』(テレビ東京)にそれぞれ3人から、『生中継!第96回アカデミー賞授賞式』(WOWOW)に2人から報告がありました。

◆モニター報告より◆

【この1年で最も印象に残った番組について】

  • 『金曜ロードショー「かがみの孤城」』(日本テレビ)
    いろいろな理由で学校に行くことができない子は身近にも多くいるけれど、理由や心情などは詳しく知らないので、知ることができて良かったです。小説をアニメ化したり映画化したりすると、一部がカットされることが多く情報量が減るので、そのようなことはなくしてほしいです。(中学1年・女子・千葉)
  • 『がっちりマンデー!!』(TBSテレビ)
    3月10日の放送では、ゲストの森永卓郎さんが今の経済のことを教えてくれてとても勉強になったし、今の時期は高校受験の志望校を決めなくてはいけないので、どんな会社があるのかがたくさん分かって参考になりました。(中学1年・女子・島根)
  • 『ワイドナショー』(フジテレビ)
    1月14日の放送では、週刊誌が報じた有名お笑いタレントの性的スキャンダルについて触れていた。時代が違えば今のような状況にならなかったと思うし、また最初は“単なるスキャンダル”と軽く見られていたものの時間の経過とともに対応が変わっていった点も興味深かった。時代とともに世論は変わることを痛感した騒動だった。出演者のコメントで印象に残ったのは「結局この件で一番利益を得るのは週刊誌であり、被害を訴えている女性も、有名お笑いタレントも大きなダメージを受けるだけだ」という趣旨のもの。芸能スキャンダルは何のためにあるんだろう。そしてこの番組を見ている私もこのスキャンダルに加担しているのではないか。ウクライナの戦争や地球規模の大きな環境変化といったさし迫った課題があるのに対し、芸能スキャンダルは何の役に立つのだろう。ただ私自身もこのような文章を書くくらい興味を持っているということも、まぎれもない事実だと思った。(中学1年・女子・福岡)
  • 『女王の教室 第6話』(日本テレビ・2005年制作)
    とても学びのある作品だった。現代でこのドラマと同じようなことが起こったら、教育委員会が会見を開いて謝罪したり保護者に頭を下げたりして、世間は学校や教育委員会の事を叩くだろう。そう考えると昔の環境に憧れる。今の方がもちろん安全だとは思うが、少し過保護すぎる気もする。どちらが良いか悪いかはさておき、教育制度が移り変わっていると実感した。(中学2年・男子・埼玉)
  • 『NHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」』(NHK総合)
    毎年8月になると太平洋戦争関連の番組が放送されるが、日本がどのように海外侵略を進めたのか、またどのように軍部の政権が成立したのかについて注目した番組はほぼない。私たち世代は、戦争は“武力による衝突”といういわば表層だけの存在だと認識しがちなので、この番組のように戦争を新しい視点から描いている番組は非常に重要だと思う。(中学2年・男子・東京)
  • 『あなたはこの衝撃に耐えられる?ワールドドキドキビデオ』(日本テレビ)
    この番組が大好きで、放送されるときは必ず見る。世界の衝撃動画やおもしろ動画を、いかにリアクションせずに見ることができるかに挑戦する番組だが、動画がとても面白く楽しい気分になる。衝撃動画は“間一髪で難を逃れた”ものが多くて安心して見ることができるし、自分も出演者と同じチャレンジをする楽しみ方もできる。もっと放送頻度を増やしてほしい。(中学2年・女子・愛知)
  • 『いちばんすきな花』(フジテレビ)
    プロデューサーの村瀬健さんが手がけたドラマ『silent』がとても好きだったのでこのドラマも視聴していた。映像がとても綺麗で儚い印象だったが、それがストーリーととてもマッチしていた。また主人公4人の境遇や言動は、自分が学校などで体験したことがあるものが多くてとても共感した。主題歌を担当した藤井風さんが最終回のラストシーンに出演する演出も、そのシーンを放送当日に撮影したこともとても驚いた。村瀬さんがこの仕事が好きだからこそこんな素晴らしいシーンが生まれたのだと思い感動した。(中学2年・女子・東京)
  • 『ラヴィット!』(TBSテレビ)
    夏休みや冬休みの朝に番組を見て、それまでひまだった朝がとても楽しくなった。オープニングが一時間にもなっているのに、飽きずに楽しく見ることができるのはすごい。でももう少し本編が長くなってほしいなと思う。(中学2年・女子・栃木)
  • 『厨房のありす』(日本テレビ)
    私はずっと優秀な姉と比べられるのが嫌だったので、自閉症だからといろいろな人から色眼鏡で見られ傷つきながら生きてきた主人公の女の子にとても共感した。このドラマはただのハートフルストーリーではなく、主人公の過去をめぐるミステリー要素や、初めての恋愛要素など、ワクワクドキドキする展開も多くあったところが大きな魅力だと思った。(中学2年・女子・福井)
  • 『有吉弘行の故郷に帰らせていただきます。~地元でもっと驚いちゃったよ~』(中国放送)
    今年で3回目の放送ですが、毎回違う場所に行っているので飽きずに見ることができて毎年の楽しみになっています。広島にゆかりのある人だけが出演するし、有名になって忙しくなった人が毎年広島に帰ってきて番組に出演してくれるのは嬉しいです。(中学3年・男子・広島)
  • 『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情 ~平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』~』(テレビ朝日)
    BPOの「テレビ局が薦める青少年へのおすすめ番組」でこの番組を知りましたが、それぞれ道は違えども強い目標を持っている二人が、お互いに理解し尊敬し合う姿に心を動かされました。分野が違う二人がなぜ親友なのか、どんな一年だったのか、番組名からもドラマに興味がわきました。本人のインタビューで当時の感情や考えていたことを聞いてみたかったです。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『VIVANT』(TBSテレビ)
    劇中に伏線がたくさんあって理解しやすく、とても面白くて毎週日曜日が楽しみだった。豪華な出演者とモンゴルでの撮影がよりリアルさを出していたと思う。また最終的に問題は解決していなくて、ドラマの続編がありそうだと感じた。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『裸のアスリートⅡ「髙橋藍」』(BS-TBS)
    この一年はスポーツ番組をよく見ていました。アスリートというと雲の上の存在のように感じる人も多いと思いますが、ドキュメンタリーで生活の一部分を見ると身近に感じられ「応援しよう!」という気持ちになります。この番組で出会ったたくさんのアスリートの活躍を祈っています。(中学3年・女子・滋賀)
  • 『100カメ「ミュージカル 帝国劇場でSPY×FAMILY」』(NHK総合)
    ミュージカルの裏側を知ることができてとても興味深かった。「評判がいい」と言われるのは、それを裏から支える人がいてこそだと感じた。またミュージカルには子どもが出演していたが、子どものために大人がかけ回る姿はかっこいいと思った。(中学3年・女子・広島)
  • 『★SAPPORO新春スポーツスペシャル 第100回東京箱根間往復大学駅伝競走』(日本テレビ)
    監督や仲間のために選手たちが力を振り絞って走る様子が印象的で、監督の声かけや走り終わった選手のコメントを聞いて、選手について興味が湧きました。ちょうど受験期間で復路は塾の冬期講習中でしたが、頑張っている選手に元気をもらいました。(中学3年・女子・福岡)
  • 『NHKスペシャル「世界に響く歌 日韓POPS新時代」』(NHK総合)
    日韓のポップスがいかにして世界で快進撃を続けているか多角的な視点から描いていて、なぜ世界を熱狂させるのか、どこまで飛躍するのかについて学ぶことができた。NHKスペシャルらしい多くの学びを得ることができた。(高校1年・男子・群馬)
  • 『King&Princeる。』(日本テレビ)
    始まった頃から面白くてずっと見ていて「English Cooking」「どっちが海人でSHOW!」の企画が好きです。出演者同士の思いやりのある会話に感動するし、お互いへのツッコミも面白くて、私が一番好きな番組です!後継番組の『キントレ』(日本テレビ)も、劇団ひとりさんと永瀬廉さんの会話がとても面白く、大好きな企画も復活すると知って楽しみにしています!(高校1年・女子・京都)
  • 『金曜ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」』(TBSテレビ)
    人間が生きていくうえで必要な「サバイバル知識」「人と協力することの大切さ」「普段の日常の大切さ」を学ぶことができ、とても勉強になった。またこのドラマには「他にはない独創性」がある。“タイムスリップする”という世界観をテレビドラマで初めて見たし、未来の地球が“隕石が落ちて人類が滅亡した世界”という設定も自分の想像と大きく違っていて興味を引いた。“新しい”ということはすごいパワーを持っている。これからも見たことなのいような新しい世界観のドラマがたくさん見られたらいいなと思う。(高校1年・女子・北海道)
  • 『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』(TBSテレビ)
    オーディション番組の最終回で、動画配信サービス「Lemino」で前話まで一緒に見ていた友だちと通話しながら番組を見て、とても盛り上がりました。また最終回がテレビ放送だったので、今まで見ていなかった別の友だちも番組を見ていて嬉しかったです。最近あまりオーディション番組を見ない気がしますが、毎週の楽しみになるので、またあったら嬉しいです。(高校1年・女子・茨城)
  • 『2023ワールドベースボールクラシック 決勝』(テレビ朝日)
    • 試合後も各放送局が様々な番組で取り上げていて、特に9回大谷翔平選手がマイク・トラウト選手を空振り三振にとるシーンは何十回とみてきたので印象深い。侍ジャパンの活躍は他のスポーツの日本勢にも刺激を与え盛り上げたと思う。(高校2年・男子・山形)
    • 阪神の優勝よりWBCの印象が強烈で、WBCはリアルタイムですべて見ました。もうこれ以上のスポーツ番組はないのではないかと思えるくらい、毎試合興奮して応援していました。(高校3年・女子・京都)
  • 『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)
    これまで全シリーズ全話を見てきましたが、シリーズが変わるにつれて内容がグレードアップされ非常に面白かったです。ゴールデンタイムということであえて放送に配慮している部分を公開することにより、より安心して見ることができるうえに笑いもとれ、今の時代ならではのやり方だなと思いました。(高校2年・男子・山形)
  • 『金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」』(TBSテレビ)
    • 最近のテレビ業界やコンプラ意識について世間をうまく風刺している素晴らしい作品だと思いました。あまりに窮屈なコンプラ意識に主人公の小川(阿部サダヲ)が違和感をもつという流れは、その多くに思わず共感しました。特に第8話で、不倫したアナウンサーが世論や誹謗中傷によって辞職に追い込まれそうになる流れはさすがに同情しました。不倫はだめだし職業としてのイメージは大事ですが、なぜ世間は自分とは全く無関係な人の人生を左右したがるのだろうと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
    • これまで阪神淡路大震災の起きた日すら知らず関心がなかったが、ドラマ内で出演者が震災で亡くなるエピソードを見て関心を持つようになった。(高校2年・女子・東京)
  • 『それSnow Manにやらせて下さいSP』(TBSテレビ)
    2月23日の放送は「ダンスノ完コピレボリューション」第3弾。学校の授業で創作ダンスを行っていたので、腕の使い方によってしなやかに見えたりあるいはキレのあるダンスに見えたりと、授業内でも取り入れることのできそうな発見ができた。また待機している間の出演者のトークでも、全員が話せるように振るなどしてそれぞれの面白さが伝わる会話だったので、話し合いの場だけでなく日常会話でも今後の参考にしたいなと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『ザ!世界仰天ニュース~福知山線脱線事故はなぜ起こったのか~』(日本テレビ)
    私は2006年生まれだが、そのたった1年前にこんな凄まじい事故が起こっていたことを知らなかった。JR線は毎日通学で利用しているが、身近な会社がこのような事故を起こしていたことが衝撃だった。事故当時の社員の厳しい管理教育体制や、事故当日の様子のCGやニュース映像はとてもインパクトがあった。重大な事故を何年かに一度改めて放送で取り上げることは、同じことを繰り返さないためにも、また事故を経て会社がどう変化しているのかを知るためにも、とても意義のあるものだと思った。(高校2年・女子・愛知)
  • 『ゴールデンラヴィット!』(TBSテレビ)
    番組開始当初から『ラヴィット!』が大好きで、どれも似たり寄ったりでつまらなかった年末に、地上波で面白い放送を見ることができました。“お笑い”だけでなくサンボマスターの歌にも感動しました。またイス取りゲームの時には大勢のスタッフの動きがそのまま映されていて、番組をつくるすべての人の努力を見ることができて感激しました。(高校3年・女子・北海道)

【自由記述】

  • “テレビ離れ”と近年よく言われていますが、テレビという大きなメディアだからこそできる企画や特集(例えば「鉄道密着」など)をどんどん放送してほしいです。コンプライアンスが厳しくなって自由なテレビ制作が難しいのかもしれませんが、なにか一つ“とがった”番組を見てみたいです!(中学3年・男子・神奈川)
  • 最近は「多様性」や「性」についての番組が増えていると感じています。例えば月経に関することなど、今までタブー視されていた話題も取り上げられてきて良い流れだと思います。影響力のあるテレビやラジオで放送することは重要だし、これからも期待しています。また視聴率が低くさまざまなことを言われている番組がありますが、人それぞれ好みがある中で全員に向けた番組を作ることは難しいと感じています。動画配信サービスとも互いに住み分けをして共存できたらいいなと思いました。「どうしたらよくなるのか」「なぜそうなのか」など、さまざまなことを常に考えた一年でした。(高校1年・男子・群馬)
  • 朝の情報番組を毎日見ているが、ここ数年で「Z世代の流行」を取り上げる企画が増えたように感じる。しかし朝はニュースを一切見ない友だちも少なくないし、Z世代である高校生・大学生はその情報をSNSでもっと早く得ている。番組に対して親近感は感じるが、Z世代にとって需要はないのではないか。好きなアイドルが出る番組は絶対に見る!という人も多いので、アイドルに関する話題の方がZ世代を強く惹きつけると思う。(高校2年・女子・愛知)
  • いま一番好きなお笑い芸人は爆笑問題です。今の時代にそぐわないかもしれないけれど、番組の流れを破壊しそうなヒヤヒヤするお笑いが爆笑問題だけになっている気がするからです。もちろん見ていて不快な番組は世間的にいいものではありませんが、そうやって番組の幅を狭めていけばテレビ番組は単調になって、スリルを求める若者はテレビからより離れていきます。万人受けするものなんて多くはつまらないと思います。最近の番組は「懐かしの○○」ばっかりですが、この流れは止まらないのでしょうか。自分は悲しくてしょうがありません。(高校3年・男子・神奈川)
  • 旧大手芸能事務所の問題を受けて、どの放送局も番組編成が変わり、視聴者が求める楽しさがどんどん失われている気がします。スポンサーの顔色をうかがうだけでなく、本当に人気のある番組は続けていくための努力をするべきではないでしょうか。まずは特番からでも復活させるべきです。(高校3年・女子・北海道)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『高校生のじかん』(九州朝日放送)
    よく知っている近隣の高校がクローズアップされていて、本当に地元密着の番組だと感じました。高校生の活躍は素晴らしく、例えばニュースで取り上げられたならばもっと堅苦しい内容に仕上がっていたと思うけれど、サブ司会は現役高校生で終始ほのぼのとしたゆるい感じにまとまっていました。番組のスタイルが違うだけで伝わり方が変化するので面白いです。(中学1年・女子・福岡)
  • 『女性の明日が楽になる!あしたのラク子さん』(朝日放送テレビ)
    女性の体は複雑で自分でもわからないことが多いけれど、大切な体だからこそ、正しいのか分からないインターネットの情報よりテレビの情報のほうが安心できます。映像があると想像しながら見ることができるし、ホームページの情報も便利だと思いました。(中学3年・女子・滋賀)
  • 『生中継!第96回アカデミー賞授賞式』(WOWOW)
    映画が受賞した時に、他の人たちもみんなで拍手してお祝いしている様子がとてもいいなと思った。世界では紛争が起こったりしているけれど、ここでは世界の一体感がみえて世界平和ってこういうことかと思った。(高校1年・女子・北海道)

◆委員のコメント◆

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『アイ・アム・冒険少年 3時間スペシャル』(TBSテレビ)に多くのモニターから報告があったが、サバイバル知識を有名タレントが披露する番組は、例えば災害時の困難を乗り越えるノウハウを学習できる機会になると実感した。
  • 1年間を通して多くのモニターがBPOウェブサイトに掲載された全国の『青少年へのおすすめ番組』のリストを見て、番組ホームページや見逃し配信サービスなども活用しながら、住んでいる地域とは別の地域の番組を視聴し意見を寄せてくれた。それぞれの地域を知る機会にもなったと思う。

【自由記述について】

  • 高校3年生のモニターの報告に「テレビ番組などで『視聴者から頂いた意見等を…』というフレーズを聞くが、どうやってテレビ局に番組への意見を伝えるのかが分からなかったし『わざわざ電話などでテレビ局に意見をいう人はクレーマーだろう』としか思っていなかった。しかし中高生モニター制度に参加して、視聴者からの意見の“聞き方”が分かった気がする。さまざまな意見がBPOを通じてテレビ局などに伝えられていることもわかった」とあった。視聴者の意見はネガティブなものだけではないし、放送局やBPOがそういった多くの意見をどう収集しているのかを、より多くの人に分かりやすく伝える仕組みを構築できると良いだろうと思う。

【その他】

  • 複数のモニターが「今の時代」というキーワードを報告に盛り込んでいたが、“今の時代のテレビ観”は中高生モニターの間でも全然違うと感じた。普段の生活の中でどのような情報に触れているかによってテレビ観は変わるので、今の若い人のテレビ観には相当振れ幅があるのだろうと感じた。

委員の退任について

緑川由香副委員長が3月末で任期満了となり、退任することになりました。3期9年務められました。

今後の予定について

次回は4月23日に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

2024年3月26日

2023年度「中高生モニター会議」

◆TBSテレビオンライン見学会概要◆

BPO中高生モニター18人がTBSテレビオンライン見学会に参加しました。TBSからの生放送スタイルで、スタジオのセットや水素中継車の説明があり、報道局、コンテンツ制作局の仕事や、番組がどのように作られているかについて学びました。

①スタジオ見学と報道局の仕事について

TBSの赤荻歩アナウンサーが、「ラヴィット!」や全国に向けてのニュース番組を放送するNスタジオに参加者を(オンラインで)案内し、セットの裏側やサブ(副調整室)の説明、画像を切り取るクロマキーの実演などを披露してくれました。

次にニュースを担当するTBS報道局員2名から報道局の仕事についての説明がありました。能登半島地震を体験した福井県の中高生モニターとのやりとりでは、その時の様子を語ってもらう場面があり、「(テレビがみんな)報道特番に切り替わったことが嬉しかった」との感想がありました。これに対して報道局員の2人からは「一番大切なのはニュースへの信頼です」「地震などの情報をきちんと正確に早く伝えていく役割をこれからもテレビが果たしていかれるように頑張りたい」との返答がありました。

②水素中継車について

新人のTBS南後杏子アナウンサーがTBS放送センター駐車場から、SDGs活動に貢献する世界初の水素で動く放送中継車「HR-ZERO」を車内の隅々まで紹介してくれました。

この中継車は水素ガスを燃料にしており、燃料電池との化学反応により生み出された電気を使って、車自体と放送機器の両方を動かしているため、排気ガスはゼロであること。また、駅伝中継で活躍するこの中継車は、①走っているランナーにやさしい②低騒音・低振動でとても静か③青色の車体がランナーのいやしになる。そして、水素燃料満タンで走行可能距離は380kmであることなどの説明がありました。

③バラエティー番組作りの舞台裏について

再び赤荻歩アナウンサーがTBSテレビで多くの人気バラエティー番組を手掛ける現役のプロデューサー2人と座談会形式で中高生モニターにバラエティー番組作りの舞台裏について説明があった後、質疑応答の時間がありました。

(中高生モニターからの主な質問とその回答)

Q.「レギュラー番組はどれくらいの準備期間をかけて作られるのですか?」
A.「情報番組は1~2か月掛けて作っているものが多いです」

Q.「ドラマは放送開始のどれくらい前から準備しているのですか?」
A.「早いと1年以上前から作業をして撮り始めているものもあります」
     「海外ロケの大型ドラマは2~3年前から準備します」

Q.「グルメ紹介のバラエティー番組で訪れる地域はどうやって決めますか?」
A.「季節的に視聴者が行きたくなるような場所を放送時期に合わせて逆算して決めます」

Q.「番組の企画はどういうきっかけで思いつくのですか?」
     「面白い番組を作るコツを教えてください」
A.「好きな事や興味のあることを自分の中にストックして(寝かせて)いくと”発酵”して、
        ある時にアイデアとして立ちあがるのではないかと思っています。自分が面白いと思った
        ことを素直に感じることが大事だと思います」
     「自分で見たいやりたい行きたいことを頭をひねって考えて実現させます」

反対にTBS側から「どういうタレントさんを番組で起用しやすいと思うか?」と聞かれた中高生モニターは「自分が見ている番組はお笑い芸人さんが出演していることが多く、お笑い芸人さんが起用しやすいのではないか思っています」と返答しました。

最後に赤荻アナウンサーから「皆さんの想像を超える多くの人たちがたった数秒のために、そして一つの番組のために日々全力でこだわっております。どうしたら難しいニュースを少しでも分かりやすくお伝えできるか、どうしたらワクワク楽しんでもらえるか日々考えております。みなさん、是非ともテレビをたくさん楽しんでいただきたいと思います。これからもテレビをよろしくお願いします」と締めくくりました。

活発な質疑応答があり、あっという間に1時間のオンライン見学会は終了しました。この日の見学会は、参加した中高生モニターたちがテレビ局のプロの仕事に触れる貴重な機会となったと同時に、1年間のモニター活動の最後を飾る素敵な思い出になったことだと思います。

◆中高生モニター会議(意見交換会)概要◆

3月26日にオンラインで中高生モニター会議を開催しました。中高生モニターと委員が交流を深め、この1年間のモニター活動を振り返る意義のある会となりました。会議には全国の中高生モニター18人と、青少年委員会からは榊原洋一委員長以下、8人の委員全員が出席しました。

各自の自己紹介のあと、この1年間をBPOモニターとして活動した中高生からの質問を中心に委員との意見交換がありました。

まず、中高生モニターから「この1年間にさまざまなニュースや報道がありましたが、その中でもいちばん印象的だったものは何ですか」との質問があり、山縣委員から「戦争でいろいろなものを奪われていくウクライナの子どもたちの映像です。これを世界がどう支援していくのか、またその映像を見て間接的に心を痛めている世界の子どもたちへの影響や今後について考え続けたいと思います」と、また髙橋委員からは「私は東日本大震災を仙台で経験しているので、1月に起きた能登のような地震がいつどこで起きるかわからないと強く感じていて、あらためて報道の在り方を考えたところでした」との回答がありました。

また「委員の皆さんが興味を持って見ている番組、好きな番組は何ですか」との質問に対して、吉永委員から「ドラマが面白いと思います。ドラマは昔と比べて撮り方もテーマも変わってきています。毎クール、ドラマの初回放送を全部録画して見ます。2話目まで見るのは半分くらいです。どのドラマが最後まで残るのかなと楽しんでいます。今クールのドラマでは、昭和世代としてあの時代は何だったのだろうという思いも含めて『不適切にもほどがある!』が一番面白いです」との返答が、佐々木委員からは「妻と元気に幸せに暮らせるような番組を録画して一緒に見ながら、コメントが入った時にはそこでいったん止めて喧嘩せずに番組を見ています。それから外国のスパイが日本の状況を知りたいときに真っ先に見るのは昼のバラエティー番組だということを聞いたことがあり、私は毎週、『ひるおび』を録画して全部見ています。若者の考え方もわかるし、今流行っていることもわかるし、とても役に立っています」との回答がありました。この質問をしたモニターからは「世代の違うみなさんの違った視点を知ることができて、とても興味深かったです」との感想がありました。

「委員の皆さんが最近、テレビやラジオを視聴して感じているマスメディアの課題は何だと思いますか?」との質問に、沢井委員は「私は子供向け番組を作っていますが、伝えたい真実にどれだけ正直になれるかだと思います。今起きているマスメディアの問題は、ウソついちゃいましたとか、大げさに言ってしまいました、ということがたくさん起きています。視聴者に嘘だと見透かされやすいテレビというメディアでは、正直に誠実に報道する、真実を見せていくことが大事だと思います」との回答が、また飯田委員からは「今月のモニターレポートに、“視聴者の意見が放送局に届くというのはクレーマーのイメージしかなかったが、モニターをやってみて、それとは違うあり方に気づくことができた一方で、SNSのつぶやきも視聴者の意見ではないのか”、“そのほうが圧倒的に多くて、モニターの意見はすごく少ないというのはどう考えればよいのか”と書いていた方がいました。たしかに、ネットの声をどう評価するか、どう受け止めるかがマスメディアの課題のひとつとして非常に大きいと思います。放送局が大事なニュースだと思っていてもネットではほとんど話題にならなかったり、その逆の場合もあったりします。何をニュースとして取り上げるかの判断基準はSNSの出現によってずいぶん揺らいできていると思います。BPOにも多数、SNSで #BPO案件 として拡散された意見が送られてきます。BPOのあり方も、こうした変化をしっかりフィードバックしながら考えていかねばならないと考えています」との回答があり、質問したモニターからは「第一人者の意見には重みがあるなと感じました」との感想がありました。

続いて「テレビ・ラジオで伝えるニュースと、ネット・週刊誌で伝えるニュースはどう違うのか?」との質問には、BPO事務局から「ネットのニュースは一般的にテレビ局や新聞社が取材したニュースをネット向けにわかりやすく並べ直しているケースが多いと思います。自分でネットのニュースとテレビのニュースを見比べてみてください」との説明がありました。

最後に「テレビと週刊誌は棲み分けをしているのでしょうか?」との質問には吉永委員が「結果的に棲み分けになっている面はあるのかもしれませんね。テレビや新聞ではできないことを週刊誌でやっている。テレビや新聞と週刊誌を合わせて見ることで、表と裏で何が起きているのかがわかると思います。信憑性ということで言うと、ネットや週刊誌はテレビや新聞よりも緩いというか自由というか、許されてしまう幅があるのかなと思います」との説明があり、榊原委員長からは「テレビや新聞の記事にはたくさんの人の手が入っています。それに対してSNSは個人でも自由に書けます。たくさんの人の手が入ることで、良くも悪くも全体的に平準化しますが、比較的安定化するのではないかと個人的に思います。メディア・リテラシーがきっちりしていれば、報道する側が好きなことを言っても聞く側で取捨選択できます。最終的には一人ひとりが判断していくことだと思います」と述べて質疑応答が終わりました。

会議の最後に、榊原委員長と緑川副委員長から以下の一言がありました。

(榊原委員長)
これからの長い人生、間口を広くしてたくさんの情報を取り入れ、生きていっていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

(緑川副委員長)
本日は長時間にわたってモニター会議に参加していただき、お疲れさまでした。私たちもいろいろと勉強になり刺激を受けて、大変良い時間が持てたことに感謝しています。BPOはテレビとラジオに対する第三者機関として活動しています。みなさんはこれから大人になっていきますが、その時にどういう社会になっていくのかは重要なことです。憲法では表現の自由が保障されています。これは私たちがどういう社会を作っていくかについて、みんなで意見を出し合って考えていくために重要な権利として保障されているものです。テレビやラジオは、社会について考えたり、自分の意見をまとめるときに、今、社会がどうなっているのかを伝えてくれる役割を果たすものです。そういう意味でテレビやラジオは私たちが社会について考えていくために必要な情報を得るための大切な基盤であり、信頼できる情報源のひとつです。テレビ離れと言われていますが、ネットやSNSだけでなく、テレビや新聞など様々なチャンネルから、自分に興味がないと思えるようなものでも見てみることを心にとどめて、これからもたくさんテレビを見ていただきたいと思います。

以上

2024年1月31日

福岡・大分の放送局と意見交換

放送人権委員会の「福岡・大分意見交換会」が2024年1月31日に福岡市で開催された。2県の合同開催となったのは、2020年3月に大分市で開催予定だった意見交換会が直前に大分県内でコロナ患者が確認され急遽中止となり、今回の福岡開催に併せて大分の各局にも参加を呼び掛けたためである。福岡での開催は8年ぶりで、委員会から曽我部真裕委員長をはじめ9人の委員全員に加え、大日向雅美理事長と渡辺昌己専務理事が参加した。出席したラジオ、テレビ局は福岡が9局、大分が5局で計14局、人数は45人にのぼり、3時間を超える意見交換が行われた。

●大日向理事長「ジャニーズ問題、なぜ、理事長見解を出したのか」

会議の冒頭あいさつに立ったBPOの大日向理事長はジャニーズ問題に触れて「黒子役である理事長、事務局がなぜ見解を出したか。それは、この問題が、一芸能事務所や放送界だけの問題ではなく日本の社会・文化をどういう方向に持っていくかの試金石だと思ったからだ」とした上で「放送局とBPOが忌憚のない意見交換を行って、新しい日本社会の文化の向上に寄与していきたい」と語った。

●曽我部委員長「BPOは、放送局の規制機関ではない」

続いてあいさつした曽我部委員長は「ネットの存在感が大きくなっても、公共の電波を預かる放送局は特別の使命を持っている。偽情報のあふれる中で、信頼性のある情報を届ける使命だ」と述べました。さらに「こうした使命を果たすために重要なのは、放送局の意識や努力だ。BPOは放送局の規制機関ではない。放送局の自主自律的な努力をサポートする組織だと認識している」と語った。

意見交換会は三部構成で行われた。
第一部は委員会決定第78号「ペットサロン経営者からの申立て」を取り上げ、論点を「直接取材」に絞って議論を進めた。第二部は「コロナ禍の取材、共有と教訓」、第三部は「災害報道と人権」をテーマに意見交換を行った。

<第一部 第78号「ペットサロン経営者からの申立て」>

「直接取材なしでもOA可能なケース」だったのか?

第78号「ペットサロン経営者からの申立て」に関して

申立ての対象は、日本テレビが2021年1月28日に放送した情報番組『スッキリ』で、同月12日に北九州市内のペットサロンでシェパード犬がシャンプーを受けた後に死亡した件を取り上げ、「愛犬急死“押さえつけシャンプー”ペットサロン従業員ら証言」「愛犬急死 経営者“虐待”シャンプー?」などと、サイドスーパーを出しながら放送した。これに対してペットサロンの経営者である申立人が、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として申立てを行った。

この決定の最大のポイントは「当事者への直接取材」である。日本テレビ『スッキリ』は関係者の証言を軸にペットサロン経営者を追及したが、経営者本人への直接取材はなされないままであった。決定文では「放送倫理上の問題があるとまではいえない」と結論付けたが「直接取材の重要性をあらためて認識」するよう要望が加えられた。
決定文には、直接取材が免除されうる例外ケースについての記述があり(下記カッコ内参照)、事前のアンケートではこの部分の読み取り方に多くの質問が寄せられていた。
本編VTRの短縮版(日本テレビ作成)の上映に続いて、決定文の起草を担当した野村委員が解説を行った。野村委員は「申立人への直接取材がないまま放送したことの是非に絞って議論したい」とした上で以下のように解説した。

<野村委員>

●例外が許されないとは言えない

前提として、真実性・相当性の議論の中でどのような取材をしていたのかが直接取材の要否に関わってくる。日本テレビが行った取材を踏まえると、決定では「放送で示された各事実があると日本テレビが信じたことについて、少なくとも相当の理由があった」という表現で、結論としては名誉権の侵害を否定した。
そして、放送倫理上の問題「重大な問題点を指摘する放送内容でありながら、申立人への直接取材をせずに放送に至ったことに問題はないのか」という論点が今日の本題となる。
この点について本決定では、総論として「取材・放送に当たっては、対象となる人物に番組意図を明らかにしてその弁明を聞くことが原則であるが、例外が許されないものとは言えない」としている。そのうえで、例外についてこう記している。

<人権委員会決定第78号16P11行目~>
例えば、真摯な申入れをしたが接触できない、応じてもらえない場合、適切な代替措置が講じられた場合(当事者が当該対象事実について公表したプレスリリース等の掲載や、その他の方法による本人主張・反論の十分な紹介)、緊急性がある場合、本人に対する取材が実現せずとも確度の高い取材ができている場合などは、これら内容を含めた諸事情を総合考慮して、本人取材を不要とする余地があると解される

●例外ケースの記述は限定列挙ではない

このように要素をいくつか挙げた上で、限定した列挙ではないことを示す「など」を付けた。これら以外にも考慮すべき事情がある場合もあるだろう。そして「総合考慮」としているので、列挙したうちのどれかを一つを満たせば良いという意味ではないし、逆に全てを満たさなければいけないという意味でもない。

●取材の経緯が重要になる

担当ディレクターは1月26日にSNS投稿を見て事案を把握し、その日のうちに飼い主を取材し、飼い主が聴き取った学生2名の音声テープを入手した。翌27日にペットサロン店長を取材し、さらに申立人本人への取材も専門学校へ申し入れたが、不在で連絡が取れないという回答を受けたので、折返しの連絡を依頼した。しかし、放送までに折返しの連絡はなく、別途、27日の午後に、申立人の携帯電話にも2回電話したが出なかった。そうした中、27日深夜から28日未明にかけて、専門学校のホームページに謝罪コメントが掲載された。日本テレビは以上の状況のもと、申立人が「取材を拒否した」と判断し、また、ホームページの謝罪コメントを放送することで、申立人への直接取材はしなくても放送に問題はないと判断した。26日にSNSを見てから28日の朝に放送と、ごく短期間のうちに放送に至った事案で、決定では申立人が取材に応じる意思がないと客観的に判断できる状況には至っていなかったと整理した。

●5つの判断要素で「総合考慮」

①民事紛争の対立当事者である飼い主の言い分がベース
②直接取材の申し入れ+本人に2度電話をかけた
③ペットサロン店長、従業員、学生2名に取材済+音声データ。詳細で迫真的な告白を含む確度の高い取材
④謝罪コメントの全文紹介には一定の意義あり。ただし、直接取材を全面的に代替とまでは評価できず
⑤「『しつけ』のための事故死」との申立人の主張も紹介
これらの事情を総合考慮すると、本件において申立人に対する直接取材が実現しなかったことをもって放送倫理上の問題があるとまでは言えない、というのが委員会決定となった。そのうえで、本事案が、直接取材を実現すべくもう一歩の努力がなされることが望ましい事案であったことを踏まえて、委員会は日本テレビに対し、対象者に対する直接取材の重要性を改めて認識して今後の番組制作に当たることを要望するとした。

少数意見「本件は例外に該当しない」

続いて少数意見を書いた3人の委員を代表して二関委員長代行が概要を説明した。

<二関委員長代行>

●どんな人物に描いたかも判断要素

少数意見は「本件は放送倫理上の問題がある」と考えた。
本人取材(=直接取材)の原則に対して例外があるという枠組み自体には反対していないが、「本件はその例外に該当しない」というのが少数意見の立場だ。例外に該当するかを考える際には、<本人をどのように描いたか>という点も考慮すべきだ。こんなに悪い人物だという内容で社会的評価を下げる程度が強いほどそれに応じて本人取材の要請は強くなる。ペットがぐったりして本来心配すべきような場面で「やっと諦めたか。観念したか」と申立人が言ったと番組は伝えている。スタジオシーンでは「こういったペットサロンが世に存在してはいけないんだ」、「事故じゃなくて事件でしょ」とする指摘があった。さらに刑法犯たる動物愛護法の適用可能性にも触れている。ペットのしつけに関する申立人の信念についても公正に紹介しているとは言えない。19分間にわたって申立人を一方的に批判する番組になっている。

●従業員は「虚偽供述の動機」を有していた可能性も

対立当事者間の争いを報じる際には、双方から話を聞くというのがBPOの以前からの判断だ。今回のように、本人取材を省略したうえで、もう片方からの取材結果に確度があると言ってしまって良いか?現場にいた従業員は、犬が死んだのは自分たちのせいではないと言いたい動機、「虚偽供述の動機」を有していた可能性もある。
さらに情報源の問題を指摘しておきたい。複数の取材をしているが、飼い主側、あるいはその紹介の従業員ルートでたどった人だけが取材対象であり、一つの情報源から派生した取材先だけとなっている。

●HPに「事実と異なるコメント拡散」 なぜそこを取材しないのか

ホームページの謝罪コメントは取材に対応して出したものではなく、申立人によると、たまたまその日に弁護士と相談したタイミングで載せただけという。さらにコメントの内容に「事実と異なる内容が一部のSNSで拡散されて(いる)」という言い回しもあって、申立人に事実関係で異なる言い分があることが分かる。そのコメントを見たら、いかなる言い分かを具体的に取材するのが基本ではないか。

<質問>例外項目の記述をどう理解すれば?

続いて参加者からの質問を受け付けた。

<参加者>
直接取材がマストと分かっていても、本人に接触できないケースで放送するか悩む場合もある。そうした時の指標になるかもしれないという意味で、<代替措置><緊急性><確度の高い取材>と、いくつか例外ケースを例示してもらって非常に参考になった。直接取材が免じられる例外項目を記述した意図は?

●明確な例外基準を示したのではない。判断の要素を示した

<曽我部委員長>
あくまで事案に即した判断になる。本決定文の書きぶりも、判断要素について「例えば」と付いている。事前の質問でも「ここに挙がっている要素のどれかがあればOKなのか?」という質問もあったが、そうではない。明確な基準を示したというよりは、今回の事案と関わるような判断の要素を示して、それを総合的に判断したのが今回の決定だ。

●1件1件について、向き合って、考えるしかない

<野村委員>
皆さんに「ここをこうすれば大丈夫です」と言えると安心すると思うが、やはりそれはできない。1件1件について一生懸命考えるしかない。直接取材が実現していない段階で放送する場合には、そのハードルに向き合って、これを乗り越えられるケースであると必ず判断してから放送しないと、こうした申立て事案となってしまう。

●「これさえあれば大丈夫」と思ってはいけない

<二関委員長代行>
多数意見は、「どのようなケースが例外か」に一切触れないと手がかりがないので、「例えば」と例外項目をいくつか挙げたのだと思う。ただし、それが独り歩きして「これさえあれば大丈夫」と思ってはいけない。例外にあたるかどうかの考え方として「自分が似たようなことをされたらどうか?」を考えることが大事。テレビ業界に長くいると放送される側の気持ちから乖離してしまうことがあるのではないか。

<質問>HP全文紹介は直接取材に相当しないのか?

例外ケースの「代替措置」で、HP紹介について質問が出た。

<参加者>
他局に先行される前に放送したいとなったときに、公式のホームページの文言を全文出すということで直接取材に代えることはできないのか?

●番組内容に対応しない、一方通行のコメントだった

<野村委員>
もしも、番組内容に対応して、公式ホームページで取材対象者の考えが全面的に表現されていれば、直接取材に代替しうる場合もあるかもしれない。しかし、本件の放送番組は、①申立人が犬を虐待死させたとの内容に加え、②犬のしつけに関する申立人の日頃からの考え・ポリシーに対する批判に当たる内容も含んでいるところ、ホームページに出たコメントは、①の虐待死と言われた部分に対する申立人のコメントが一方通行で載っているだけであって、②の部分には対応していない。そのため、番組全体に対する申立人のコメントとしては十分ではなく、直接取材に代えることはできないという考え方だ。

●取材意図を明らかにしていない

<二関委員長代行>
取材意図を明らかにしたうえで取材するのが原則だ。ウェブに出ているコメントは、そういったプロセスなしに出ているものなので、直接取材に代わるものではない。

<第二部 コロナ禍取材の問題点 共有と教訓>

コロナ禍、各局の苦悩

第二部は「コロナ禍の取材、共有と教訓」と題して、様々な制約を課されたコロナ禍での取材の問題点を共有して将来につなげようという視点で議論された。前半部分は、アンケートで各局が答えた内容を司会が読み上げ、回答局が説明するスタイルで進んだ。

▲「夜討ち朝駆け自粛で新人記者育成に苦慮」

<参加者>
器用な若手記者はオンライン等の新しい取材ツールを利用していた。夜回り取材を最初の段階で教えてあげられなかったことがどう影響していくのか?将来どういう記者に育っているのか見ていく必要がある。

▲「代表取材」「素材共有」が一気に進んだ

<参加者>
会見等の取材現場が密にならないように安全配慮する必要に迫られ、さらに取材相手からも「代表取材でお願いします」というケースが増えた。各局が同じ取材をするところは代表カメラとなり、5類に下がった現在も、競う必要がない取材は同じ映像で構わないと割り切っている。他局と違いを出したいところに力を入れるという流れだ。

この報告を受けて、曽我部委員長と鈴木委員長代行が次のようにコメントした。

●これからのキーワードは「競争と協調」

<曽我部委員長>
代表取材等が増えたのは直接的にはコロナがきっかけだが、社会の変化や生活様式の変化といった大きなトレンドがコロナ禍で一気に動いたという印象を受けている。夜討ち朝駆けなど「これが取材の王道」とずっと続けてきたが、コロナ禍はそれを立ち止まって考え直すきっかけとなったとも捉えられる。
総務省など放送関係の会議で出てくるキーワードに「競争領域と協調領域」というものがある。何でも競争するのではなく、協力できるところは協力して、それによって余裕が出た部分を独自の取材に充てるというメリハリが今後大事になってくる。

●状況が大変でも、一番大事なところは掴める

<鈴木委員長代行>
「ここは(他局と)違いを出さなきゃ」と皆さんが思われるところがあるはずなので、そこに力を入れていけば、人出不足など大変な状況の中でも、一番大事なところをちゃんと掴んでいける。

ラジオ局の苦悩も報告された。

▲「65歳以上と妊婦はスタジオ入り禁止」もラジオ出演者は高齢者多くて・・
▲ミュージシャン関係者のスタジオ入りも規制したが「大物」は例外となって・・

<参加者>
ラジオはテレビと比べてスタジオが小さく密になりやすいのでいろいろな制限を行った。レギュラーの65歳以上の方もリモート出演にしたり、マイクを引っ張って別室出演にしたりした。アイドルグループが来ればスタジオ入りは代表1人だけ、お付きの人もプロモーター1人だけと制限していたが、映画のキャンペーンで主役の方が来た時には、マネージャー、映画会社の方、スタイリスト等々がぞろぞろ入られて制止できなかった。

リモート取材については「効率的だ」と評価する意見が多かったが、以下のような「現場重視」の声もあった。

▲リモート取材は効率的だが、感染対策を安易な盾にせず、現場に足を運び続ける
▲現場に足を運ぶことが真実性の見極めになる

<参加者>
直接足を運んで、その人がいる生活環境に触れることで得られる情報もある。フェイク画像等があふれる中で、真実性を見極めるためには現場に足を運ぶことは大事な要素だ。

後半は、コロナ禍当時に参加者が疑問に思ったことを報告し委員が意見を述べる形で進行した。

「同調圧力」…我々はちゃんと「ノー」と言えるのだろうか?

<参加者>
マスクにしてもワクチンにしても、科学的に何かしら解明ができている訳ではないが、最大公約数的に打った方がいいであろうと我々も報道してきた。「ワクチンを打ちたくない」という方もいたが、打っていないといろんなところに支障が出てくる。政府が言ったことを国民に伝えていくところの怖さ。戦前にあれだけ「報道機関は右に倣え」だったと言われているのに、このあと我々はちゃんと「ノー」と言えるのだろうか? 他が何と言おうと「これはこうだ」と言えるのか一抹の不安を感じた。

<松田委員>
皆さんはどこでそういう同調圧力を感じたのか知りたい。視聴者の側はテレビを見て「ああ、こんなことが求められているんだ」と感じる。皆さんは、一体どこでそういう雰囲気を察知して何を番組に落とし込んだのか?

<参加者>
私が迷ったのは「コロナが落ち着いた後でもマスクを着けてリポートさせるべきなのか?」という点。状況としてはそんなに密集しておらず、他者との距離も保てている。普通ならマスクは不要と判断するところだが、SNSでクレームが付いたらどう転がっていくか分からないので、まだ形にすらなっていない視聴者感情に判断を左右されたことが多々あった。

●少数意見も紹介して同調圧力を助長しない心掛けを

<曽我部委員長>
日本社会に同調圧力があること自体は、放送局にはどうしようもできないと思う。私が思うのは、1つは「放送局が同調圧力を助長していないか?」ということ。SNSで見つけた一部の意見を番組で取り上げることで本当に火がついてしまうようなことがあった。もう1つは「少数意見をきちんと伝えていく必要がある」ということ。ワクチンについても、打たない自由もあると、しっかり伝えていく。マスクについても、安全な場面では必ずしも着用しなくてもいいんじゃないかと。そういう意見を誰かに言わせることを意識的にやらないといけないと思う。放送法4条では「意見が対立している問題は、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」とある。ワクチンも意見が分かれているテーマなので、少数意見もしっかり伝えていく。そういう形で同調圧力を助長しないことを放送局として心掛けていく問題だ。
SNS上の意見は非常に偏っていることがいろんな調査で明らかになっている。まず、そのことを認識することが大事だ。SNSで言われていることは一部の声に過ぎない。
放送局としては、SNSで指摘されたからといって忖度するのでなく、筋を通していくべきで、必要に応じて説明していけばサイレントマジョリティーは納得する。一時的には炎上しても基本的には理解してもらえる。

●少数派の偏った意見、メディアが扱うことで広がっていく

<松田委員>
メディアの皆さんはSNSをよく見ていると思うが、例えば40代、50代では半数以下しか利用していないし、多くは書き込まない。SNSに日常的によく書き込む人はすごく少数派だ。それをメディアが取り上げることで拡散していく。ツイッター改めXなどはいろんな素材や情報が転がっていて使いやすい部分があるとは思うが、偏っている。少数の人が書いたものをどういう形で扱うのか、メディアの皆さんが扱うことで広げてしまうことに関心を持ってほしい。

感染者のプライバシー、あそこまで報じる必要があったのか?

<参加者>
感染し始めた頃は、県や保健所が感染者の行動履歴を詳しく発表して、我々もその発表に基づいて放送していた。今となって考えれば、果たしてそこまで感染者のプライバシーを放送する必要があったのだろうか?

●この経験を風化させてはいけない

<曽我部委員長>
これは難しい問題だ。初期の頃はコロナがどんな病気か分からず恐怖感も強かったので、当時としてベストな報道がいかなるものかを考えるのが非常に難しかった。今からすれば、ちょっとやり過ぎだったんだろうと思うが、当時はやむを得ない部分もあったかもしれない。ただ、この経験は今後に活かしていくことが非常に大事なので、次に感染症が問題になった時には今回の反省も踏まえて考えていくことになる。メディアの方々はそれぞれ経験値を得たと思うので、風化させることなく、きちんと総括して次の機会の糧にしてほしい。

<事務局からの報告>

第三部に先立って、BPOに寄せられる苦情・意見を踏まえて植村統括調査役が参加局に注意喚起した。

●取材時の「映り込み」に注意

<植村統括調査役>
申立ての前段階としてBPOの人権相談に苦情が寄せられることがあるが、この1年半で3件ほど「映り込み」について苦情が来た。
▲「クマの出没で子どもたちが集団登下校」というニュースで自分の子どもの顔が映った
▲「新学期に登校してきた児童」という映像に自分の子供の服装が映った。特定できる
▲取材対象者の移動の様子を撮影したら、背後を自転車で通り過ぎる女性が映り込んだ。
3件とも共通しているのは「夫からのDVで居場所を知られたくない」というものだ。デジタル化が進んで画像の精度が上がったことに加えて、民生用の小型カメラでも撮影できるので、撮影していること自体分からないケースも増えている。今後もこうしたケースは十二分にあり得るので注意してほしい。

<第三部 災害報道と人権>

このテーマは2023年7月の九州北部豪雨で各局が災害特番を放送したことから設定したものだったが、2024年は元日に能登半島地震が発生し、意見交換会開催の1月31日まで連日災害報道が続くことになってしまった。
災害報道という緊急性に紛れて気付かずに人権を侵害しているケースはないか、災害を報じる当事者として疑問に思うことはないかという角度から議論を進めた。

犠牲者氏名、なぜ非公表なのか?

まず、災害犠牲者名の非公表問題が取り上げられ、4人の委員がいずれも「公表すべき」という立場から意見を述べた。

<参加者>
犠牲者もそうだが、(九州北部豪雨の際に)大分県は安否不明者の氏名を「救助活動等に資する場合のみ公表する」とした。「救助活動に資する、とは何を指すのか?」というやりとりをしたが平行線のままだった。広く氏名が分かっていれば一般の方からの通報にもつながると思うのだが。

●見たことのないおばけを怖がっている

<水野委員>
個人的には、災害であれ事件であれ名前を知りたい。京アニ事件での実名・匿名問題をゼミで議論すると、学生の8~9割は「遺族が望むなら」と匿名を支持する。しかし、「なぜそう思うのか?」と問い詰めていくと、あまり根拠がない。実名を公表することで実態以上に甚大なダメージを受けると過剰に恐れている節がある。見たことがないからこそ余計におばけを怖がるようなものだ。報道機関の方には、実名の意味・意義を踏まえて行政と対峙してほしい。

●民主主義の基本情報。踏ん張らなきゃいけないところだ

<廣田委員>
京アニの話が出たので、事件報道についてであるが、弁護士会の中で、犯罪被害者の支援をしている委員会からは「実名にする意味がない」という厳しい意見がある。実名が出た後の二次被害がひどい、特にインターネットでいろいろ書かれると消すことが難しいという。報道機関の方々には、なぜ実名にするのかをきちんと説明してほしい。内部では議論しているだろうが外に伝わってこない。
報道の現場の方々と話し、いろいろ考え、私の考えは変わっていった。私の個人的考えだが、今は、原則実名だ。ネットが発達して真偽不明の情報が出回るときに、訓練を受けた報道機関がきちんと裏を取って5W1Hを固有名詞を入れて報じて記録することは非常に重要になってきている。「面倒だからやめておこう」「実名を言わなければ言わないで済んでしまう」とやっていったら、後で何が何か分からなくなって事件の検証もできなくなる。5W1Hを正確に報じて記録したものは、民主主義の基本情報だ。踏ん張らなきゃいけないところだ。

●防災の手掛かりとなる情報は共有されるべき

<野村委員>
東日本大震災後、3年間、弁護士として石巻市役所に赴任・常勤して復興事業に従事した。その経験から思うのは、犠牲者の情報は家族がコントロールするものだ、では済まないということだ。家族と一緒に亡くなったのか独りで亡くなったのか、津波の時にどういう避難行動を取っていたのか、といったことは将来の防災につながる話だ。個人にモザイクをかけると具体的な考察がぼやけてしまう。手掛かりになる情報は共有されるべきだ。石川県は家族の了解を公表の条件にしているが、全員の承諾は得られないので一部だけの公表になってしまう。そうなると全体像を掴むという意味では中途半端になって、逆に意味がなくなってしまう。個人的意見としては、実名の公表可否を家族の意思に委ねることはよろしくないと考えている。

●公権力が情報をコントロールしてはいけない

<國森委員>
国とか自治体とか警察とか、そういった公権力が情報をコントロールしてはいけないと思っている。メディアが情報を全部引き出した上で、それをどこまで報道するかをメディア自らが、指針・信念・説明責任を持って判断していかないととても危険な社会になる。遺族はメディアスクラムを含めた取材そのものによる被害、その後のネットパッシングなどによる被害の恐れがあるが、そうした被害を食い止める努力をメディアがすることで当局あるいは社会に対して「ここまでやっているので情報を出して」と言えるようになれば良いと思う。

「土砂災害特別警戒区域」、どう伝えれば?

<参加者>
土砂災害が起きた地域が「土砂災害特別警戒区域」だったケースが多い。視聴者から「そういう区域に住んでいるからダメなんだ」という反応が来るし、災害の専門家もマイクを外すと「本当はここに人が住んじゃダメなんだ」と言う。大雨や台風の場合は被害が予測されるので早期避難を呼びかける事前報道に力を入れているが、犠牲となった方に非難の声がいかないように伝え方に非常に神経を使う。

●悩むことが大切。それは視聴者に伝わる

<斉藤委員>
報道する方たちは本当に悩まれると思う。この問題には正解はないと思う。
同じ言葉で伝えても、AIのニュースでは伝わらないが、リポーター本人が「どう伝えるべきなのか」と悩みながら語った場合、その思いは視聴者に伝わるのではないだろうか。伝える人間が、どう伝えるか悩んでいること自体がすごく大事なことだと思う。テレビは「どういう思いで伝えようとしているのか」ということも伝えてくれる。

●リスクあることを、地域の住民も社会も共有しないといけない

<國森委員>
とても難しい問題だ。東日本大震災の津波でも、どこまで津波が来たのかを皆が強く意識しないといけないし、メディアも伝えていかなければならない。それも踏まえて「ここにはリスクがある」ということは、住んでいる人も含めて社会で共有していかなくてはならないと思う。

●背景にも触れると伝わり方も違うのではないか

<廣田委員>
ずっと昔から住んでいて後から警戒区域の概念ができて指定されたのと、危険だと分かって住み始めたのでは違うのではないか。法律上は、分かって行くと非があるとされることもある。昔から住んでいる場合だったら、背景も踏まえて伝えると伝わり方も違うのでは。「古くからある集落で」というような一言があれば住民への非難の声は出ないのではないか。

●自己責任論、バッシングが起こらない伝え方を

<曽我部委員長>
法律的には警戒区域指定の前か後かで変わるが報道はフェーズが違うと思う。全国の土砂災害警戒特別区域に住んでいる人に危険性を伝える意味で、そういう地域で大きな被害が出ていることを伝えることは非常に重要だ。被害を伝えることに躊躇する必要はないが、他方で実際に住んでいる個々人と結び付けて報道すると自己責任論が出てバッシングにもなりうる。結局は伝え方の問題で先ほど紹介してくれたように住民に配慮しながら伝える方法は大変適切だ。

被災者映像 発災直後は使用可能でも時間経過すればどうなのか?

<参加者>
メディア取材に対する被災者の心情は、発災直後と時間が経過してからでは大きく変わる可能性がある。発災直後に取材に応じてもらった映像を時間が経ってから使う場合はかなり留意が必要なのではないか。

●「肖像権ガイドライン」が参考になる

<曽我部委員長>
以前大阪の朝日放送(ABC)から、阪神大震災のアーカイブをネット上で公開したいという相談を受けた。肖像権問題を含めどういう考え方で臨んでいいのか基準が分からない、ということだったので「デジタルアーカイブ学会」の「肖像権ガイドライン」が参考になるだろうと思い紹介した。
肖像の使用権が許されるかどうかは通常は総合判断で決めるが、このガイドラインでは<被撮影者の社会的地位><被撮影者の活動内容><撮影の場所><撮影の対応>といった要素を点数化する。例えば、公人・政治家であれば許容される方向に働くし、一般人であれば許容されない方向に働く。活動内容も、歴史的な公式行事なら許容の方向で、プライベートな行事なら逆になる。点数を全部足し合わせて、何点ならいけるいけないというガイドラインを作成された。ABCはそれで判断して公開に至った。今後、災害に限らず時間が経った映像を利用する際には参考になるだろう。ABCのサイトは「阪神淡路大震災 激震の記録1995」で検索すればすぐ出てくる。「肖像権ガイドライン」は政府の知財本部などでも資料で出てくるくらいに広まった。参考になると思う。

以上

2024年3月に視聴者から寄せられた意見

2024年3月に視聴者から寄せられた意見

“二刀流”メジャーリーガーの一挙手一投足に注目が集まり、結婚や元通訳の賭博をめぐる報道に多くの意見が寄せられました。

3月にBPOに寄せられた意見数は1,768 件で先月から 540 件減少しました。
意見のアクセス方法は、 ウェブ 87.6% 電話 11.4% 郵便・FAX計 1.0%
男女別(任意回答)は、男性 56.2% 女性 26.1% で、世代別では40歳代 24.2% 50歳代 20.1% 30歳代 23.0% 20歳代 11.5% 60歳代 10.4% 70歳以上 3.7% 10歳代 0.7%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各局に送付、3月の送付件数は669件、47事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から16件を選び、会員社すべてに送りました。。

意見概要

番組全般にわたる意見

“二刀流”メジャーリーガーの活躍と、結婚、元通訳の賭博問題などを報道する各社番組に対して多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は72件で、前月から31件減少しました。
今月は「表現・演出」が29件と最も多く、次いで「要望・提言」が26件、「言葉」が5件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • “二刀流”メジャーリーガーの活躍は素晴らしいし、多くの人が関心を持っていることも分かる。しかし、どのチャンネルでも繰り返し時間を割いて報道しているのを見ると、それ以外の伝えるべきニュースが報道されていないのではないかと心配になってくる。

  • “二刀流”メジャーリーガーの元通訳の賭博問題について、情報番組の司会やコメンテーターが、確かな情報が少ないのに憶測による発言を続けていて、無責任ではないかと思った。

  • 元通訳の親の自宅に取材に行きインタビューを試みたのは行き過ぎた取材ではないかと感じた。

  • ニュースなどで、「政府関係者」や「〇〇党関係者」などというクレジットでコメントが紹介される。本当にそのような発言があったかのどうか、フェイクかもしれないのに真偽を検証する手段が無い。匿名性を守る必要があるのも分かるが、こうした表現方法には検討の余地があるのではないだろうか。

  • ニュースの冒頭でアナウンサーが「今起きていることをすべてお伝えします」と言っていた。それは無理だろう。報道番組で誇張はよくないと感じた。

  • 犯罪の悪質さや重大性にかかわらず、容疑者が画像付き、実名で報道されることに違和感がある。政治家の汚職や大企業の不正、殺人など重大な事件ではそれも妥当だと考えるが、執行猶予や罰金刑が確実視されるケースまで、画像付き実名で報道する必要があるのだろうか。いわゆるデジタルタトゥーを消せない時代の報道のあり方を議論すべきかと思う。

  • 放火事件や窃盗事件、器物損壊事件などの報道で、防犯カメラ映像がよく使われるが、必ずモザイクがかけられていることにいら立ちを覚える。

  • 大物お笑いタレントの性加害疑惑をめぐり、ネット等には週刊誌記事の内容に疑問を投げかける証言が出ているにもかかわらず、テレビの情報番組などでの扱い方が小さいと感じる。

  • 「日本人のガザ地域への関心は薄れている」と、あるコメンテーターが話していたが、それは日本のニュース番組での報道が少ないからではないか。

  • 情報番組のコメンテーターは自分の専門外のことについては発言を慎重にした方がいいと思う。テレビでの発言は、「~だとしたら、」というような仮定を付け加えたとしても、どうしても断定的に聞こえるし、確かな事実として受け止められてしまうこともあるだろう。SNS等で個人の見解を発信するのとは重みが違うということを認識してほしい。

【バラエティー・ドラマ】

  • 薬剤師の業務や責任を軽視して、笑いのネタにしている場面を見た。編集で当該場面をカットしなかった放送局にも責任があると感じる。

  • 牛乳の早飲み競争を装って、チューブをつなぎ途切れることなく牛乳や水を飲ませるドッキリ。吐き出す場面が汚らしく不快だし、食品・飲料を粗末に扱うことに抵抗を感じないのか。制作者の良識を疑う。

  • 激辛チャレンジや大食い競争の参加者を見ていると、さまざまな事情により望まないのに参加させられているのではないかと心配になってくる。パワハラのように見えて素直に笑えない。

  • 2週にわたって同じ内容を放送したバラエティー。申し訳程度に数か所の変更を加えて、“間違い探し”してほしいと呼びかけていたが、毎週番組の視聴を楽しみにしている視聴者を軽く見ているのではないかと腹が立った。

  • 紫式部の人生を描いた歴史ドラマ。登場人物のほとんどが同じ姓なので見ていて混乱する。登場する場面ごとに名前のスーパーを入れていただけないものか。

【その他全般】

  • 午後の国会中継だが、国会の審議が終わらないうちに、あとの番組(ニュースなど)に切り替わってしまい、少数政党の質疑が放送されないことがある。深夜に再放送があるというが起きているのは大変だし、何とかならないものだろうか。

  • 旅番組グルメ番組などで上半身裸の男性の入浴シーンが放送される。気にしすぎだという声があるかもしれないが、番組制作者はジェンダー問題に対して敏感であってほしいと思う。

  • NHKでは手話通訳を付けているニュースをよく見るが民放ではまだまだ少ない。少しずつ拡充してほしいと思う。

  • 放送局が視聴者意見をどのように受け止めて活用しているか、もう少し見えるようになるといいと思う。番組や放送がよりよくなるようにと意見を送っているので、放送局側からフィードバックする機会が少しでも増えればいいと思う。

  • CMの入れ方について。昔はだいたい15分に1回くらいで節度があった。今は番組をチラッと見せたらまたCM。番組を切り刻みすぎだと感じる。なんとかならないものだろうか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 情報バラエティー番組の中継コーナーで「背負い餅」を模した「背負い肉」という赤ちゃん企画があった。番組では赤ちゃんが泣き続け、背負った牛肉の重さで仰向けに倒れる場面もあった。児童虐待にしか見えず、危険で不適切な放送だった。

  • バラエティー番組の「昭和の常識・令和の非常識」というコーナーで、昭和時代の団地の浴室によく装備された「バランス釜」を特集。令和の若者の視点で「古いし今は見ない」「(浴槽が小さくて)風呂に入る意味がない」と音声が流れた。今でも住まいで使用している人がいるのに、ばかにされたような気分で最悪だった。

【「要望・提言」】

  • 車を運転中、路線バスを使った旅番組の撮影に遭遇した。田舎の狭い道を何列にもなって歩いている。車で横を走り抜けようとすると、急に飛び出したり、マイクの付いた長い棒が飛び出たりする。ロケの際には社会的なモラルを守った行動をしてほしい。

【「言葉」に関する意見】

  • 午前の情報バラエティー番組で、若い女性タレントが居酒屋で、酎ハイなどを続けて3杯飲むシーンがあった。朝の番組で流す映像としてはいかがなものか。20歳未満の者の飲酒を誘発したり、アルコール依存症の人などを刺激したりする内容だと思う。

【「食べ物」に関する意見】

  • バラエティー番組のグルメコーナーに出演するタレントたちの食べ方が下手で汚い。そばやうどんをきちんとすすれないし、逆にすすってはいけないパスタをすする人がいる。子どもが模倣するので、出演者にはテーブルマナーを教え込んでほしい。

2024年1月16日

全国の放送局とオンラインで意見交換

放送人権委員会は、加盟放送局との意見交換会を1月16日に東京都内で開催し、ウェビナー参加者を含めて全国から110社、約230人が参加した。委員会からは曽我部真裕委員長をはじめ委員9人全員が会場で出席した。曽我部真裕委員長のあいさつに続き、鈴木秀美委員長代行は「みなさんの意見をうかがえる貴重な機会、率直な意見や質問をいただきたい」と参加者に呼びかけた。廣田智子委員は「人権意識が高まるなかテレビの笑いはどうあるべきか問われている。きょうは一緒に考えたい」、斉藤とも子委員は「(意見交換会で取り上げる)今回の案件は今でも心の中に蓋がのしかかっているような苦しい決定だった」、野村裕委員は「年々いろいろな基準が変化している。前回は大丈夫という判断をしたけれども本当に大丈夫なのかということが、問われているのだと思う」と、各委員からあいさつがあった。

意見交換会は二部形式で行われた。第一部は曽我部委員長が第79号「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」に関する委員会決定を説明し、起草を担当した二関辰郎委員長代行と松田美佐委員が説明を補足した。続いて補足意見を委員長と水野剛也委員が解説した。委員会決定とは結論が異なる少数意見について、國森康弘委員が理由を述べた。また決定通知後の取り組みについて、あいテレビから報告があった。第二部は東京大学理事・副学長で東京大学大学院情報学環教授の林香里氏が「日本の『お笑い』誰に奪われてしまったのか」を演題に講演し社会構造の側面から「ジェンダーと放送業界」について問題点を指摘した。

◆第一部
◎委員会決定第79号「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」の解説

<事案の概要>
申立ての対象はあいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。番組はコメディアン・俳優である男性タレント、愛媛県在住の住職、愛媛県出身で県外在住の女性フリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送を開始した。申立人は、番組内で他の出演者の下ネタや性的な言動で羞恥心を抱かされ、放送を通じて申立人のイメージが損なわれ、人権侵害と放送倫理上の問題が生じたとして委員会に申し立てた。

●曽我部真裕委員長
新年早々、さまざまなことが起こり、とりわけ、被災地の放送局のみなさま方には大変な苦労をなさっていると拝察しております。しかしながら、放送の公共性が、あるいは存在意義が発揮される場面でもあり、ぜひともご尽力を期待したいと思っております。
本件は、人権侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えないという結論です。これは事案の特殊性によるものです。実際には全国の放送局において、考えていただくべきジェンダーの問題が含まれています。委員会決定でも、みなさまに考えいただく材料として、かなり詳しく付言をしました。
きょうの第二部では、このテーマについて、さらに理解を深めるために、ジェンダー平等の問題に詳しい、この委員会の元委員でもある林香里先生にお話しいただきます。ジェンダー、あるいはその他のマイノリティのテレビでの描き方、あるいは、その制作現場での構造問題については、昨年7月に、まさにこの場で開催いたしましたBPO20周年の記念セッションでも、取り上げたわけです。本日重ねてこのテーマを取り上げるのは、その重要性を踏まえてのことです。
本日の議論を、ぜひ各局にお持ち帰りいただいて、議論を各社で深めていただき、さらにこれを実践につなげていただきたいと思っています。前置きが長くなりましたが、本日はよろしくお願いいたします。

論点ですけれども、人権委員会は、人権侵害の有無、それにまつわる放送倫理上の問題の有無というものを判断するというのが任務ですので、本件でもこれらの観点から審理を行いました。
具体的には、申立人が意に反する旨を申告したにもかかわらず、性的な言動を継続したといった事情はあったか、本件放送に許容範囲を超える性的な言動、あるいは申立人の人格の尊厳を否定するような言動があったかという観点で判断したのが一つ目の人権侵害に関してです。倫理上の問題に関しては、性的な表現がどうだったか。そして出演者の健康状態の配慮に欠けた面があったかどうかを検討しました。

本件の特徴として、通常のセクハラとは違うだろうというのが出発点としてありました。つまり、一般の社内、企業内での社員に対するセクハラのようなものとは判断の基準が違うだろうということです。番組内での視聴者に見られるやり取り、意識したやり取りであったということですので、判断基準は異なるのではないかと考えたわけです。
具体的には、判断基準として設定したのは、放送局が、申立人の意に反していたことに気づいていたか、あるいは気づいていなかったとしても、通常の注意を払えば、気づこうと思えば気づくことができたかどうかということ。それから、別な観点ですけれども、深夜バラエティー番組として、社会通念上許容される範囲を超える言動があったかどうか、ということが基準としてあります。

まず一つ目、気づいていたかどうかということですが、結論としては、当時、気づくことは困難であったという認定です。委員会としては、申立人の方が、非常に内心悩み苦しんでおられたということは否定するわけではありませんし、被害者がハラスメント申告するということが難しいということを否定するものではまったくないわけです。
けれども、局の観点からすれば、それに気づくことが困難であったということです。ご本人もそれがわからないように努めていたと言われていたこともあって、こういう認定をしました。

次に人格の尊厳を否定するような言動があったかというところです。
ここは委員の意見も分かれたところです。非常に悪質であったという意見も複数ありましたが、全体として、人格の尊厳を否定するような言動があったとまでは言えないということになりました。

次に、ある時期に、ご本人がプロデューサーとじっくり話しをする機会があって、何年かずっと悩んでいたことを告白するということがありました。そのあとの対応がどうだったかということを、ここでは問題にしております。プロデューサーは、そのご本人から告白があって、ようやく問題の深刻さを認識しました。そのあとは、かなりできることはやったということです。例えば、最終的には番組も終了になったとか、あるいはその終了前の数回、収録もかなり配慮をするという約束をしたということがありました。悩みの告白後の対応については問題があったとまで言えないということです。
以上が、人権侵害に関しての判断です。

次に、放送倫理上の問題です。結論としては、放送倫理上の問題があるとまで言えないとなりました。
まず一番目には、眉をひそめるような内容もあるけれども、深夜バラエティー番組であって、視聴者からの苦情も特に無かったというところで、表現のみを取り上げて放送倫理上問題だということは妥当ではなかろうということです。
二番目は、申立人自身も、外部から悩みが決してわからないようにしていたということです。これは先ほど申し上げた点ですけれども、そういった点を踏まえると、あとから気づけたはずだと評価するのは酷であろうということです。
三番目としては、出演者の身体的精神的な健康状態に配慮すべきことは、放送倫理上求められるわけですけれども、悩みの告白後の対応については、配慮が欠けていたとまでは言えない。結論としては、問題があるとまでは言えない、そういう判断です。

以上、人権侵害も放送倫理上の問題もあったとまで言えないというのが全体の結論です。

最後に、ここが付言、あるいは要望というところですけれども、かなり長めに書いています。
まず一つ目ですけれども、冗談としてでも、言動がくり返されることによって、言われた側が、そういうことを言ってもいい人物だというふうに役割が位置づけられてしまって、そういった立場を背負わされることになります。それが、放送を通じて公開されるということは、非常に酷な立場に追い込むおそれがあるということです。放送局としては、そういった状況を招かないようにする環境整備が望まれます。

二番目は、本件番組で問題となった言動は、一般的な性的話題にとどまらず、申立人自身が性的なことを好むかのように決めつける。つまり、「あなたが」こういうことが好きなんでしょう、「あなたが」という言い方です。一般的な下ネタと、「あなたが」こうなんでしょうというのは、やはり本人に対する影響の度合いが違う。そういう趣旨です。
そういう意味において、本件は非常に悪質な場面を含んでいるという指摘が複数委員から出ています。放送局には、こういった表現を放送することが、今日において果たして適当か否か、よくよくお考えいただきたいという意見が複数ありました。

あいテレビは、申立人は自分に意見があれば、物怖じせずに言う人だと主張しています。これは、申立人の普段の様子を見ていると、言いたいことをオープンに言える人だという、そういう印象を与えると。そういう人なのに言ってこないということは、特に不満がないのだろう。そういうことをおっしゃっているのだと思います。
確かに、普段はそういう面があったとしても、やはり立場の違いがあって、放送局とフリーアナウンサーというのは、構造的に立場が違うことを踏まえて物事を考えるべきではないか、そういうことをこちらで指摘しました。

それから、環境、職場におけるジェンダーバランスの問題です。本件スタッフ、番組のスタッフ、あるいは考査の担当者は、ほぼほぼ男性であったというところで、「行き過ぎなんじゃないか」ということが、なかなか内部から出てこない。そういうことが、あったのではないかというところです。これはいわゆるダイバーシティ、多様性の問題とつながる指摘かと思っております。

本件番組は、二カ月間の放送で用いる番組の収録を一度にまとめて、八回分の放送を一回で撮ることで、かなりタイトなスケジュールでやっていた。そういう中で、出演者間あるいは出演者と制作側のコミュニケーションの機会が非常に限られていたのではないかというところです。もちろん、そういうスケジュール自体を見直すということは必要でしょうし、仮に、ある程度はやむを得ないにしても、そうした場合には、なおさら出演者の思いを積極的にすくい上げるような必要性があるのではないかというところです。
それから、本件の事案、教訓として、降板する覚悟はなくても、悩みを気軽に相談できるような環境や体制を整備していくということが求められるのではないかという要望をしております。

最後ですけれども、これは本件の当事者である局だけではなくて、放送界全体の問題でもあるだろうということです。各局におかれましては、本事案を単に他社の事例と位置づけるのではなくて、自社のことを見直すきっかけにしていただければと思います。

●二関辰郎委員長代行
二つのルートで主に検討しました。一つ目は、人権侵害の判断基準で、申立人の内心がどうだったか、それに、放送局の立場から気づくことができたか、あるいは気づけなかったことに過失はあったか、というルート。もう一つは、表現それ自体の問題の検討。大きく分けるとその二つです。

一つ目のルートについては、(その場で表示したスライドに)「本件の難しさ」と書きました。申立人の主張でも、セクハラ的なことがあったのは収録の場に限られると言っていましたので、映像に映っている部分が問題になる。その意味では判断材料は客観的に残ってはいるのです。ところが、その映像からは分からないわけです。申立人本人も、内心で嫌がっていたことは外から分からないようにしていたと、おっしゃっていました。

しかも、本件の特殊性ということでは、ショーとして見られることを意識したやり取りでのセクハラ等が問題になっている点を指摘できます。たとえば、職場でそういうこと言われたら、それは当然、本人が嫌がるだろうというような言葉が、ショーの中でやり取りされています。こういうこと言われたら普通、嫌ですよねという判断もできない、そういう難しさがありました。

申立人の内心を外から気づけたか。放送局に責任があったか否かを問う委員会の判断においては、放送局の認識というものを、やはりベースにし、認識していたか、あるいは認識できたかという観点から検討することになるだろうということです。申立人が内心では悩んでいたということと、でも、外からは気づけなかったということは両立し得るわけです。その点は果たしてどうだったのかを判断しなければならない難しさがあります。

映像以外の背景事情とか経緯とか、いろいろなところで、申立人側とテレビ局側の主張は、対立していました。双方の主張、あるいはヒアリングで、それぞれ聞いたのですけれども、どちらも特にうそを言っている感じには受けとめられませんでした。その意味で判断が難しく、客観的な証拠とか、あるいは争いがない事実といったものを中心に、多数意見は判断しました。客観的証拠というのは、例えば、映像そのもの、あるいは申立人が当時送信していたメールだったり、ブログだったり、そういうものを中心に判断しています。

委員長の先ほどの説明にもあったとおり、自分の本心を本人が伝えにくかったということは、われわれも配慮したつもりです。言い出さなかったことが悪いなどと、ストレートな結論は出していません。本件では、言い出さなかっただけでなく、むしろ積極的に本人が番組を好意的に評価していたように見える。そういったものが客観的な証拠として残っています。それは、放送局の人とのやり取りにおける多数のメールやライン、あるいは本人のブログといったものです。

決定の中では、少しだけしか紹介してないのですけど、これが相当数あります。それだけ見ると、本人は番組を好意的に評価していたのかなと受けとめられる。放送局の認識をベースにしたときには、そういうふうに受けとめたのも仕方ないかなという状況があります。そうすると、何らかの、そういった好意的評価を打ち消すようなメッセージが、外に何か出されていないことには、放送局の責任を認めるのは難しいのではないかということです。それが、一つ目のルートです。

二つ目。表現それ自体の問題です。先ほども申し上げたとおり、ショーの中のやり取りですから、この表現はちょっと言われたら傷つくだろうという、直ちにストレートな判断はできない難しさがありました。二つ目のルートを、本人の内心を踏まえた一つ目のルートとは別問題として取り上げたので、本人が内心どう思ったかは抜きに、表現そのものの評価ということで検討しました。その際に、BPOが、この表現は「○」、この表現は「×」というふうに評価すること自体、コンテンツに関わることを言うこと自体、そもそも謙抑的であるべきではないかという発想が背景にありました。

いろいろと検討し、本件事案そのものでは、問題ありとはできなかった。「できなかった」と言うと変ですけれども、申立人を救済するという観点から、いろいろ考え、議論をしたのですけれども、このような結論になりました。ただし、申立人と同じような立場に置かれている人はいっぱいいるだろうということから、今回、通常の決定にはないぐらい要望を詳しいものとして、かつ当該局に限らず、放送局全般の問題として詳細に述べたという、そういう取り扱いにしました。

●松田美佐委員
わたくしは起草担当委員の一人として、この委員会決定に同意しております。ただし、個人的には、本件で申立人に向けられ、そして、放送された性的言動は悪質であって、放送を控えるべきだったと考えています。ただ、表現内容だけを取り上げて問題にすることは、表現の自由に対する制約につながり得るために、謙抑的であるべきと考えるがゆえに、委員会決定には賛成するという形です。
これを前提とした上で申し上げたいのは、表現の自由を行使することについて、誰かを傷つけていないのかを、もう少し考えてみるべきであろうと。今回のことで言うならば、あいテレビは、申立人を害している可能性に気がつかなかったと主張されており、委員会も、気づけなかったのだろうというところを認めております。
とはいえ、被申立人、あいテレビ側は、自らの表現で誰かを、今回の件に限らず誰かを傷つける可能性について、どの程度意識をしながら放送をされていたのか。今回の件、傷ついている可能性に気がつかなかった、気にしないでいられたということに疑問を持ちます。さらには、申立人が外部からは悩みが決してわからないように振る舞わなければならなかったことに、そもそも強く疑問を持つというか、そこに問題があると思います。

社会学者のケイン樹里安さんが、「マジョリティというのは、なにかしんどい状況とか差別が目の前にあるときに、それに気づかずにいられる人とか、気にしないでいられる人とか、その場からサッと立ち去れる人たち」と定義しています。別のところでは、マジョリティ特権というのは、「気づかず・知らず・みずからは傷つかずにすませられること」とも言っています。
今回、読み上げるにはあまりにも不快で、私自身が経験してきた嫌なことを思い出すので行いませんが、委員会決定には、具体的にどんな言動があったか書かれております。こういった言動が、個人の人格に対して繰り返し向けられることが、いかにしんどいことであるか、気づくことができず、気がつこうともせず、番組制作が行われている。放送業界が、それが当たり前であると、もし、みなさんが理解しているというのであれば強い憤りを感じます。
放送は、すべての方のためにあると思っています。ならば、マジョリティ特権である、「気づかず・知らず・みずからは傷つかずにすませられること」を常に問い直しながら、番組を制作放送してほしいというふうに思います。そのための体制づくりに取り組んでいただきたいです。

今回の決定には三人の委員から、補足意見と少数意見が出た。補足意見とは、委員会決定と結論は同じで、決定理由を補足する。少数意見は、委員会決定と結論が異なる。

●曽我部委員長
わたくしも補足意見を書きました。放送業界全体の問題として考えていただきたいことを書きました。「放送とジェンダー」に関する近年の状況について情報提供をする趣旨です。内容は第二部の林先生のお話と重なるところもあると思うので、ごく簡単に紹介します。
まず一つ目、番組の内容。テーマ選びや内容に、そのテレビ局の組織体制が影響すると言われています。ジェンダー・ステレオタイプな表現の背景には、「メディアの送り手に女性が少ない」といったことが指摘されています。
二番目です。放送の画面に登場する人物の多様性の問題です。一つ目は、制作者の多様性の問題ですけれども、二つ目は出演者の多様性の話です。これも調査があり、六割が男性、女性四割です。女性は四割なのですが、若い女性に偏っています。
それから、肩書きのある登場人物、たとえば、社長とか、教授とか、そういう人は男性が多くて、街頭インタビューは女性が多い。六割四割というと、そんなに不均等ではないという印象を与えますが、中身も見てみると、かなりバイアスがあることが指摘されています。決定文の22ページに参考文献を書いています。ぜひ、参考文献も含めてご覧いただければと思います。

●水野剛也委員
人の心の内は、外からうかがい知ることはできない。このことを肝に銘じておかない。いくら素晴らしい要望、そして対策がなされても同じような悲劇が起きるのではないか。そう思い、補足意見を書きました。

申立人の精神的な苦痛は極めて深刻です。放送局は、他方でそのことにまったく気付いてなかった。両者のギャップ、乖離、溝の深さ、距離の遠さには戸惑うばかりでした。とくに、局側の驚きようが印象的で、文字どおり、虚を衝かれた、見えてないところから大きな問題が投げつけられたような様子でした。
放送局には、このような誤解があったのではないでしょうか。申立人とは、互いに何でも言い合える深い仲だったと。そう誤解してしまう理由もなくはないのです。申立人は明るくて、前向きで、心から番組を楽しんでいるようにしか見えません。番組内ばかりか、普段やり取りするメール、番組についての宣伝を兼ねた情報発信においても、心の葛藤や辛苦の影さえ見ることができない。プロとして仕事を完遂したい。そう思うがゆえに隠し通してしまった、通せてしまったように見えます。
だからこそ、本件の教訓は、問題などあるわけがないと思ってしまったら、問題が見えるわけがないということではないでしょうか。いくら積極的に組織、環境を改善し、風通しのいい組織にしたとしても、やはり言いにくいことは言いにくいし、言い出せないことは言い出せない。ましてや、本人が、絶対に内心を隠してしまおうと思ってしまったら、どうしようもない。
ならば、常日頃から、このように意識する必要があるのではないでしょうか。
「問題などあるわけがない、わけがない」と。ご静聴ありがとうございました。

●國森康弘委員
委員会ではマイノリティになってしまいましたが、私は人権侵害と判断しました。
同じことが繰り返されないように、その願いも込めて意見を書いています。ジャニーズとか吉本とか、宝塚も含めて、いろんな問題が今、浮き彫りになっています。きょうを機会に、1人でも多くの人といろんなものを共有できればと思っています。

まず、ハラスメントは、自分に悪気がなくても、気づけなくても関係なく、自分の言動が、相手に苦痛や不利益を与えること、尊厳を傷つけることであり、これは人権侵害にあたります。ハラスメントになる要因としては、コミュニケーション不足、無意識の偏見、性別役割の分担意識、不適切な業務量、そして倫理観の欠如というものが広く指摘されています。今回の現場では、そのすべてが満たされてしまったのではないかと見受けられます。
いくつか、申立人に対する表現を挙げるとすると、「世渡り上手、床上手」、「1日中欲しがってる」、「アッチイッテエッチシヨ」などの数々がありました。これら共演者からの言動に加えて、さらに、制作陣によるテロップやイラストが追加されています。特に、ひどかったイラストと思うのは、申立人の顔写真を貼ったその体には、黒色のレオタード、網タイツ、それからSMのムチという、そういうイラストに顔写真が貼ってあるということもありました。
こうしたものがハラスメントに該当すると思っています。私たち委員会の審理の対象期間は、申立てから遡って1年以内ですが、その期間から1カ月外れたところで放送されたものでは、申立人に対して、共演者が、スタッフが用意したハンディカメラを持って、AV女優の名前を呼びながら、脇毛を見せてと言って脇を接写し、それが放送されることもありました。
別の放送では、共演者が申立人のファスナーを下ろして背中を露出させて、それを接写し放送するという場面もありました。ハラスメントどころか、性暴力的な状態だったと思っています。それらを含めて、共演者やスタッフに対する不信が高まり、視聴者からの中傷なりバッシングも増えてきたと、申立人は話していました。

表現の自由というものは、もちろん確かに大切ではあります。しかし、たとえ深夜番組のバラエティーであっても、許されない表現や演出はあると思います。今回の場合だと、申立人が性を売りに世を渡るような人であるみたいに、性的な要素を過度に結びつけて、アナウンサーである申立人のイメージを損なうなど、悪質でした。ましてや、本人の同意や承諾、納得や信頼がない中では、それは一層深刻な被害をもたらしたと言えます。

時代は変化しています。昔は1回の放送で終わっていたものが、今では、放送内容や、出演者への中傷を含む番組への評価が、ネット上を含めて、広く、長く、半永久的に公開されます。そういった点では、一般社会や職場よりもさらに深刻な損害、被害を与えると考えるべきではないでしょうか。

多数意見でも指摘されたとおり、制作現場には、ジェンダーバランスやパワーバランスの不均衡、業務量の多さ、それから意思疎通の不足などがありました。下ネタ、お色気を前提にしながらも、出演契約書も交わすことなく、出演者へのフォローもケアも不十分に見受けられました。そういった意味では、安全配慮の欠如もあったのではないでしょうか。
深刻な悩みや苦痛を申立人が告白したあと、それから申立て後の放送局の姿勢には、気づきや反省や改善の姿勢が見当たりませんでした。このままでは同じことが起きるのではないかと危惧しました。

申立人は、平穏な生活、信用、仕事、収入、多くを失い、多くを諦めながら、申立てに至っています。私は申立人の被害を認識するとともに、人権侵害があったと判断し、同様の被害を生まないことを願って、少数意見を書きました。

今回の事案をきっかけに組織的に改善策をとった、あいテレビから報告があった。

●あいテレビ
弊社は委員会決定の中で、制作現場における数々の問題点について要望を受けました。大きくは、出演者が本当に自分の心を吐露できる、悩みを相談できる環境整備、制作現場のジェンダーバランス、そういったものを指摘いただきました。審理に入った状態のところから、これらのことについて検討、改善を進めました。その中から大きなものを三つ、説明します。

一つ目です。社内体制についてです。23年7月の委員会決定から遡りまして、4月に、従来、編成報道局としていた部署をコンテンツ局に変更いたしました。それまでは1局2部で、局長、編成制作部長、報道部長、管理職3名が男性でしたが、今回1局3部に分けまして、私が女性のコンテンツ局長として着任、制作部長も女性が就任しました。報道部長と編成部長は男性が就任しております。自社制作番組については、私であったり、制作部長であったり、必ず制作部の女性の確認を経て放送に至るという体制になりました。
6月には、開局以来初の女性執行役員として私が就任しております。ただし、こういった幹部への女性登用は、以前から取り組み始めていたことです。去年の秋には、社内のプロジェクトで女性躍進や子育て支援を考えようと、部署を横断するプロジェクトチームが発足しました。これは女性が長く働き続けられる環境を整備し、幹部への女性登用を働きかけるということなど、いろいろな議論をしようというものです。

二つ目です。番組出演者の保護についてです。従来、番組出演者の相談窓口は番組のディレクター、プロデューサーとしていました。23年の4月から、総務部を窓口に加えています。担当者として、男性の部長と、女性の専任部長がおります。ハラスメントが発生した場合は、番組制作のスタッフを通すことなく、そちらの窓口を利用できることを契約書に明記をしております。

三つ目です。これがBPO講演会です。社内体制の見直しや環境整備を進める中で、現場のスタッフにも直接、BPO講師と顔を合わせて、さまざまな意見交換をする場を設けたいということで、昨年10月に、BPOの講師派遣制度を利用しました。
講演会当日は、コンテンツ局のスタッフを中心に30名余りが参加し、曽我部委員長から決定通知のポイントなど、さまざまなことを解説していただきました。そのあと、ジェンダーを意識した番組制作のあり方など、さまざまな意見交換を行いました。
作り手側の一方的な価値観を出演者等に押しつけることはいけない、さまざまな配慮が必要など、たくさん確認事項がありました。たくさんの気づきがありました。

この三点が取り組んでいる大きなものです。完全なものとは思っていません。
引き続き、時代に即した番組制作のあり方ですとか、制作現場のあり方、そういったものを考えていきたいと思っています。みなさまからも引き続き、ご指導をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

■主な質疑応答

Q:申立人がフリーアナウンサーという弱い立場にあり、ジェンダーの問題、男性中心社会であるということはもちろんですが、出演者が芸人やグラビアタレント、さらには男性の局アナなどであっても配慮が必要だと思います。その点いかがですか?

A:これはおっしゃるとおりで、マイノリティだから配慮が要るということではなく、すべての人に配慮が要るわけです。そういう意味では、誰に対しても配慮は必要であるけれども、ただ、とりわけマイノリティの場合、先ほど、松田委員がおっしゃったように、マジョリティが気づきにくいことがあるので、そういうアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)があることを踏まえながら対応しないといけないわけです。
基本的な考え方としては、すべての出演者、あるいは制作スタッフに対して、要するに個人として見るというか、人として見るということが当然、必要だと思います。
(曽我部委員長)

A:民放連が放送基準を改正し今年の4月から施行します。その中では、「出演者の精神的な健康状態にも配慮する」ということで、出演者をとくに属性やら性別、役割とかで区別せず、「出演者」一般に配慮が必要だということを前提にしています。(二関委員長代行)

Q:決定では、深夜時間帯の放送で、放送倫理上問題があると判断するのは控えるのが妥当と指摘されていますけれど、子どもや青少年が視聴する時間帯の放送だった場合は、放送倫理上問題があるという判断になったのでしょうか?

A:こちらはなかなか難しい問題で、いくつかの観点があると思います。ひとつは、今の民放連の基準なども、性的な制限について微妙な書き方をしています。もちろん、子どもや青少年が見ている時間帯に特に配慮が必要なのは当然だけれども、深夜に関しては一定程度、許容されるかのような書きぶりになっています。ですから、時間帯によって、当然、判断基準は変わり得るということはあると思います。というのが一点目です。

他方でということで二点、申し上げます。一つ目は、時間によって切り分けるのは、かなり昔の考え方で、今はいつでもどこでも見られるということです。深夜だからいいということが、昔のような形でストレートに通用するわけではないということです。
もう一つは、きょうのテーマですけれども、そもそも、その性的な内容というものがどこまで今の時代、許されるのかというところです。要するに、通常は女性だと思いますけど、極端に言えば、女性をある種の“物”として見るということに、つながるような内容です。全ての人に配慮が必要で、全ての人を尊重することが求められるという、今の世の中で、そういったものがそもそもどこまで許容されるのか、ということは考えていただ
く必要があると思います。
ただ、他方でさらに言うと、だからと言っても、一切そういうものがダメなのだと一足飛びに私は申し上げるつもりはないのです。けれども、やはり、そこはいろいろ考えていただくことで、従来の延長線上で何も考えずに漫然とやっていくことが許される時代ではないと思っています。(曽我部委員長)

Q:時間帯の話が出ました。そこまで何時に、どの時間帯かって関係なくなっているということですが、プッシュ型メディアのテレビの放送と、プル型メディアの動画配信ではいくらか異なるのではないでしょうか。放送基準42条の放送時間に応じた生活時間という言葉は、その辺りも含んでいるものと理解しています。まったく無視すべきではないにせよ、同列に語れないところがあると思いますが、いかがでしょうか。

A:おっしゃるとおりだと思います。(曽我部委員長)

Q:これはあいテレビさんへの質問です。番組は、先ほども委員から出ましたが、「床上手」、「欲しがっている」など、女性の人格を損ね、性に淫らという印象を与えるものだったと思います。社内で、このような発言は人権侵害に発展しかねないと、個人ベースでも議論するスタッフはいなかったのでしょうか?

A:当時は、番組全体として、いわゆるバーのママと常連との掛け合いということで、大人の会話として、時間帯等々を含めて視聴者に届けても大丈夫という判断のもと、放送していました。もちろん、こうして、「床上手」とか「欲しがっている」とか、言葉を切り取れば、もちろん不愉快で、いろんな思いを持たれる、出演者もそうなのですけれど、視聴者もそう思われるでしょう。
ただ、当時は番組全体を通して、娯楽として番組が成立すると考え、現場のスタッフも「この言葉は」って一言一言に立ち止まること、そういう立ち止まれるチャンスとして気づけなかったということです。今になって、こうして切り取っていろいろ考えてみると、気づけたかもしれないという立場に、今、私どもあいテレビはおります。(あいテレビ)

Q:申立人の女性がプロデューサーに心の内を明かしたのが11月で、BPOに申立てたのが2月。この期間に放送における対処というのは、意見書を読めば伝わるのですけれども、申立人に対して、あいテレビさんはどのような手立てをしていたのか。なぜ、申立てに至ってしまったのかということも含めて、差し支えない範囲で教えていただけたらと思います。

A:私どもが認知したのが2021年11月です。翌年の2022年3月で番組を終了しました。2021年11月以降、私どもから話をしようとしても、代理人を通してほしいと先方から回答がありました。ご指摘にあった私どものフォローは非常に難しかったのが事実です。(あいテレビ)

◆第二部
『日本の「お笑い」――誰に奪われてしまったのか』
(東京大学理事・副学長 東京大学大学院情報学環教授 
林香里氏)

●曽我部委員長
林香里先生は東京大学大学院情報学環の教授で、専門はジャーナリズムとマスメディアです。早くから男性中心のジャーナリズムの構造に対する問題提起をなさっています。私の補足意見でも、先生が最近出された共編著『ジェンダーに学ぶメディア論』を紹介しています。

現在は、東京大学の理事、副学長として、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでおられます。また、2012年度から15年度まで、BPO放送人権委員会の委員をおつとめになり、私もご一緒させていただきました。今回のテーマは、放送業界全体で考えていただく問題だと認識しています。本日、林先生の講演をうかがって、この問題をみなさんに考えていただく機会を持てたというのは大変うれしく思っております。
本日、『日本の「お笑い」――誰に奪われてしまったのか』というタイトルにて、講演をいただきます。

●林香里教授
紹介にあずかりました林香里です。研究分野はメディアジャーナリズム研究で、メディアシステムの国際比較をし、日本のメディアの下部構造、すなわち産業の成り立ちや構造、そして、そこから生まれるコンテンツを研究してきました。
その中で、日本のメディアの最も深刻な問題として挙げられるのが、ダイバーシティの欠如だと考えます。そこには女性の権利の問題も含まれます。また、私自身も、女性としていろいろな苦い経験があります。女性にとってメディアという職場、そしてメディアが生み出すコンテンツ、それぞれに厳しい現実があります。しかし、それは「女性の問題」ではなく、メディア産業全体の問題です。
この被害者の方がこうした形で名乗り出てきてくださったことについて、これをきっかけに将来に向けて、日本の放送産業全体をいかによくしていくかという観点から問題を考えていきたいと思います。

BPO放送人権委員会のみなさまからは、本日本件事案の取り扱いやご判断について、いろいろ説明いただきました。ご説明をうかがっていると、なぜ人権侵害あり、あるいは放送倫理上問題あり
しなかったのかということへの弁解を述べられているように、聞こえました。結局、結論として「問題なしとしたけれども、問題はあった」というのがBPO人権委員会の結論かと思います。

私もBPO人権委員会の委員を務めていました。私が委員だったら、おそらく少数意見を書いて、少なくとも倫理上問題ありと考えていたと思います。ですけれども、その部分は結論であって、今回の場合は、おそらくは、結論はそこまで重要ではなくて、その先の問題をもっと議論したいというのが放送人権委員会のご意思だろうと、解釈します。だから私などをこの場にご招待くださった。それはたいへんありがたいことです。

ただ、そのような見方は、なかなか難しい。やはり結論は結論なのです。放送人権委員会としては、性的嫌がらせの問題や女性の人権よりも、ひたすら、広義の「表現の自由」を抑制しないように、人権委員会の存立意義であるところの「言論・表現の自由」の部分を犠牲にしたくないから、このような結論が出ていると推察します。しかし、それをすることによって、結果的には、世の中のたくさんのマイノリティの人たちを落胆させて、そして結果的には社会の人権感覚を鈍らせてしまっていると感じます。

ただ、それは放送人権委員会の問題もさることながら、日本の放送業界全体の問題でもあります。放送産業は、放送の自由とか表現の自由によって手厚く守られているからこそ、かろうじて、こんなひどいことをしても、「問題なし」という甘い結論になったことを、非常に謙虚に受けとめていただく必要があると思っています。
例えば、今回、放送倫理上の問題があったという結論が出たとしたら、それで放送局や業界が、「ほら、放送人権委員会はまた表現の自由を制限しているじゃないか」という話になったとしたら、それは本当に放送業界、終わっていると私は思うのです。
BPOと放送局の信頼関係もゼロということです。これはそういう話じゃないですよね。やっぱり、いい放送を作るために何をすべきかということを議論しなくてはいけないと思うのです。そういう建設的なマインドセットを、この問題を軸にして考えていただきたいと、まず大枠のところで私は思います。
もし、私が本日、この場で倫理上、何かここはおかしいと言ったとしても、それが放送局への表現の自由への制限ということではないです。ぜひ、そのところを誤解のないようにお願いしたいと思います。

もう一つ言いたかったのは、松田委員が「自分の経験が走馬灯のように思い出される」とおっしゃいましたけど、私もそうです。たくさんの人がそう思っています。声に出ないけれども、こういうことで本当に嫌な気持ちになる人が、たくさんいるわけです。そこも表現の自由とはまた別の意味で、「言論・表現の責任」という観点から問題を考えていただきたいです。

この話をしたのは、放送局はヒアリングのとき、ほとんど反省がないような、「いや、何でも言える子だった」とか、「もうちょっと有名になりたかったんじゃないですか」とか、そんなことを言ったようなことが委員会決定に書いてありました。私は状況を知りませんから、コンテクスト(文脈)はわかりませんけれども、そういう記録が残っているわけです。世間的には「なーんだ。こういう受け答えをするテレビ局でも倫理上問題なし」となってしまう。局はそこを真摯に受けとめてほしいです。そして、次にどういう発信をしてくださるか、期待しています。

また、もう一つ付け加えると、いわゆる「下ネタ」が、いまだに笑いの一つの重要なコンテンツになっていることにも、驚きを禁じえません。ぜひ、いつか、テレビ局が今、どういうふうにバラエティーのコンテンツの在り方を考えているかを知りたいです。
お示ししている毎日新聞の記事にもありますように、「下ネタ=笑い」という非常識な業界の常識があるようですが、女性の芸人だと、必ずこうした下ネタを振られるという現実があるようです。

今回の、委員会決定に書いてある「エッチな話に罪はなし」というテロップや、「下ネタがいいじゃない、やっぱり罪ないよ」と、有名な芸人さんが、おっしゃっているわけです。それはどういうことかというと、下ネタがメインストリーム化しているわけです。2021年の話です。昭和の話じゃないわけです。こういう状況の中で、申立人が名乗り出たというわけです。

先ほど委員長から、日本のテレビ番組を作っている側の人の男女比と、テレビのスクリーン上に出てくる男女比という説明がありましたが、番組ジャンル別でオンスクリーンでの男女比をみると、バラエティーとお笑いでは圧倒的に男性出演者が多い。このデータは、『放送研究と調査』の2022年5月号からのものですが、現状の番組制作現場はこういう状況なわけです。
また、ツイッターで写真が出回っていたのですけれども、お笑いコンテストの審査のとき、審査員は男性で、後ろの観客のほぼ全員が女性でした。こういうイメージがお笑いに定着していることは、記憶しておくべきと思います。

では、画面に出てこない制作者たちはどうか。民放労連の統計では、例えばキー局では女性がやっぱり圧倒的にマイノリティ。地方でも女性役員ゼロの局がたくさんあります。あいテレビさんは、執行役員に女性を入れたと先ほどおっしゃっていましたが、こういうことでもないと変わらないのだとすると、非常に残念です。

実は一つ難しいと思うところもあります。BPOの見解で、先ほど委員長がおっしゃいましたように、ジェンダーバランスが悪く、圧倒的に男性ばかりの職場環境が、こうした番組を生み出す一つの原因じゃないかと、BPOも書いているわけです。
では、放送業界での「女性の視点」って何ですか。女性だったら誰でもいいですか、ということになると思います。男性中心社会で、女性がマイノリティになれば、テレビ局の常勤の女性は、「男性と変わらないような」価値観を身に着けて出世していくわけです。これは私が調査した『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス』という本の一部ですけれども、やはり女性が男性と同じように対当に頑張るためには、男性と同じような価値観で仕事をしていかざるを得ない。
例えば、きょうもBPO放送人権委員会の見解がありまして、放送倫理上問題なしとなっていますけれども、補足意見と少数意見は、いずれも男性委員のみでした。ということは、女性委員がどういうふうにここに関わっているかは見えないわけですね。

では、いったい「女性」が意味するところの内実は何のかと言うと、今回の場合は、女性というだけでなく、女性であって、さらに非正規雇用者だったということが、かなり大きなポイントだと思います。この弱さの重なり、二重の負荷を背負っている現実、これを「インターセクショナリティ」と私たち研究者は呼びます。これはもともとは、黒人の女性が、白人の女性に比べてより過酷な差別を受けているという問題提起から始まった言葉です。例えば日本の場合、女性の非正規雇用者というのは、女性の正規雇用者よりもさらに社会的な待遇が低くて、声を上げる力も機会もない人が多い。この点がやはり大きく問題になっていると思います。

翻って、放送局の主張、意見書によれば、例えば「不快な感じも見受けられなかった」、「編集で全部カットしました」、「本心を隠してきたとは信じがたい」そして、「これまでも良好な関係を築いていたのです。クレームは一件もないです」というふうに、記載されています。
また、BPO人権委員会の結論は、申立人のほうが、そういう素振りを見せていなかったから局には過失はないとして、倫理上問題なしとして、最終的に、「制作現場における構造上の問題としてとらえるのが妥当である」と結論を出しています。

では、ここで言う「構造上の問題」とは何か。きょうのこの会議では、この部分を言語化、共有化して、その後、みなさんがそれぞれの部署に戻って、制作現場の方々に伝え、話し合っていただければと思います。ということで、制作現場の構造上の問題とは何かを考えます。以下、三点あります。

第一に、「マジョリティ側の特権」を考えてほしいと思います。例えば現場で、日本人で、男性で、健常者で、正規雇用で高学歴、これが重なれば重なるほど、特権が増していきます。よく自動ドアの例えというのが言われているのですけども、前に進んでいくときに、こうした特権があればある人ほど、全く気付かずに、真っすぐドアがどんどん開いて、先に進めるのです。
ところが、こうした特権がない人、例えば体に障害がある方は、どこかでドアが自然に開かないとかですね。女性だったら、そこでまた開かないということで、マイノリティ性がある人ほど、先に進まなく、マジョリティにとっては当たり前のことができなくなる。こうした状況が、このマジョリティ特権を持つ人たちと、特権を持たない人たちとの分水嶺だと思います。

では、マジョリティの方々は誰かと言うと、大体、ここにいる人は、みんなマジョリティだと思えばいいです。男性、女性、関係ないと思います。集団の中で発言しても、内容に違和感を持たれづらく、自身も安心感がある。何か言っても、「あの人ちょっとなんかずれているよね」とか、「変わった人だね」とか、「言葉が聞き取りにくいね」とか言われない。つまり、文化や社会背景を共有する人たちが、周りにたくさんいれば、それがマジョリティです。だから、安心して何か発言もできる。

自分の属性を隠さなくてもいい人もマジョリティです。例えば、女性だと経験あると思うのですけど、やっぱり女を出しちゃいけないと思って、とにかく男性と同じように仕事をする。「女を隠す。女を捨てる」と、よく俗語で言うのですけども、それも一つの、このマジョリティの特権を持ってない側がやることです。
さらには、LGBTQの方は、自分の真のジェンダーやセクシュアリティを隠すとかですね。あるいは障害がある人も、「自分はちょっと迷惑になるから」と参加を遠慮するとか、そういうことをするわけです。自分の考えや属性を隠さなくていい人が、マジョリティ側にいることだと思ってください。

このほか、今の職場環境を自然に受けとめることができる人もマジョリティです。テレビ局の職場は労働時間が長いですよね。本当に大変な仕事だと思います。おつかれさまです。
ただ、その職場環境が、どちらかと言うと、自分たちに都合のいい職場のレイアウトだったり、働き方慣行がまかり通ったりしていませんか。最もわかりやすい話ですと、トイレの数です。男性と女性のトイレの数はどうでしょうか。あるいは、ジェンダー中立のトイレはあるでしょうか。
さらに、出勤や勤務時間、例えば小さな子どものお迎えの時間を心配しなければならない人や、介護のために長く休まないといけない人もいると思います。こうした人たちは、労働環境、労働条件をつねに負担に思い、肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。それは、日本のマジョリティの男性たちが、こうしたケアの義務を免除されているから、職場環境や労働条件がそこに合わせてつくられているからなのです。

最後に、マジョリティ側は、正規社員で会社にいる時間も長く、社内にネットワークがあり、いろんな情報アクセスできる。どこの部署の何さんが、あの問題には詳しいとか、あるいは、あの人は以前、こういうこと言っていたよというような情報を持っている。これもマジョリティの強みで、とても重要なことです。なぜならば、いろいろな状況で正確な判断をするためにはたくさんの情報が必要です。情報がないと不安になるし、怖いから何も言えなくなる。自分がいろんなことを知っていると思えば、意見が言えるのです。マジョリティとマイノリティの差というのは、この情報量の差が大きいのです。

本日先ほど、あいテレビの方が、本件の申立てを受けて、三つのことをしたとおっしゃっておられました。女性の執行役員を増やした、相談窓口を作った、そして、BPOの先生方をお招きしたとのこと。でも、それでは足りないです。それ以上に、こうした、自分たちはマジョリティ側にいるという意識のトレーニングをして、私たちがあたりまえに前提としているものは何か。私たちの世界観はどう規定されているかを自覚してほしいです。自分たちがどのように自分たちに有利な環境をつくり、いかにそこにどっぷりとつかっているのかを、もっともっと自覚する必要があると思います。

私は、勤め先がマジョリティの大本山の東京大学ですので、大いに反省するところがあります。そうした意味でも、大学全体でこうしたマジョリティのトレーニングを今年から始めまして、全員に研修を義務づけています。その一つとして、例えば幹部には、全員に演習を通して、自分たちのマジョリティ性を意識してもらっています。
ただし、マジョリティにいること自体がダメだと言っているわけではありません。実際、それは変えられないのです。しかも、それはありがたいことでもあるわけです。だから、そうしたポジションから、マイノリティの人へ何ができるかということを考える。それがマジョリティの責任で、それにはトレーニングが必要です。当たり前にみんながわかることではないのです。
あいテレビにも、ぜひ、こういう研修をやっていただくと良いと思います。いろんな企業がやっています。こちらにいらっしゃる局の中にはすでに実施している局もあるかもしれません。もしやっていたら、このような場でも、のちほど情報共有すればいいかなと思います。どうか考えてみてください。

第二点目として、マジョリティの意識を持つことと同時に、私たちには皆、無意識のバイアスがあるということも自覚すべきだと思います。例えばステレオタイプ、先入観で、「こういう学歴の人はああいう人だ」とか。
あるいは、正常化バイアス。「このぐらいなら大丈夫じゃないか?そんな大きな問題じゃないよ」というようなこと。
このほか、権威バイアス。偉い人の意見は全て正しいと考えがちです。売れている芸人さんが言ったんだから、あれでいいのだとなったりする。
外見バイアス。女性で、優しい感じの人だと、あのくらいなら許してくれるのじゃないかとか。これも無意識のバイアスです。
今回の案件では、男性たちがアナウンサーにこれぐらいなら許してくれるだろうと思っていたら、本人には心ない言葉が胸の奥底に溜まっていて、最終的に非常に傷ついていたということです。こういう状況を作り出した罪も考えてみる必要があると思いました。

最後に、マイクロ・アグレッションという言葉についても言及しておきたいです。
さまざまな偏見の中で、日常的に小さな人権侵害、マイクロ・アグレッションというものが近年脚光を浴びています。「女性だから喜ぶんじゃないか」とか、「いつも明るく振舞っているよ」とかを前提に、立場の弱い人に日常的に言葉を、投げていると、とくに女性などのマイノリティ側は、そのようなステレオタイプの檻に閉じ込められ、閉塞感を抱いて、傷ついたまま放置されがちです。長年にわたってそのような状況に追い詰められた側は、日常の連続性の中で異議申し立てをするチャンスも失い、絶望に追いやられていくことになります。
マイクロ・アグレッションは日常に埋め込まれているだけに、意識をしないと、どんどん組織の中で蓄積していき、集団として差別に鈍感となり、やがて集団的な差別やヘイトスピーチといった大きな問題にもつながっていきます。組織そのものが鈍感になると、誰もあえて異論も唱えなくなる。同調同化作用がますます加速して、成長や軌道修正のチャンスも失われてしまう。クリエイティブが命のテレビ局には、まさに命とりになりかねません。

きょうの話で何をすればいいのかというのを、とても迷いました。ここで、放送人権委員会の判断そのものについて、それが正しかったのかとか、何が足りなかったのかとか、そういうことも細々と指摘することもできたのかと思います。
ただ、そのような話だけでなく、私たち全員で共有したいのは、テレビ局というのは表現で勝負をしている職業だということをまずは念頭に置く。そのうえで、勇気をもってこの案件を申し立ててくれた申立人の勇気と苦労を無駄にすることなく、今後、よりよい表現、おもしろい番組をつくっていくためには、何をしなくてはいけないかということを、BPOとテレビ業界すべてが考える必要があると思います。

何度も申し上げますように、この事案は、女性の問題でもなければ、法学的な表現の自由の問題でもない。これは、テレビ業界が抱える、圧倒的なマジョリティ特権が生む、現状再生産が永遠に続き、先細る日本社会の問題の一端で、人間の想像力や創造力(クリエイティビティ)を削ぐ組織構造や人材育成の問題だということです。
そして、ここにこそ、先程の人権委員会の話に関わってくるのです。つまり、制作現場における構造上の問題。それは単に女性の頭数が少ないというだけではなくて、テレビ業界の歪んだジェンダー構造に象徴される現状維持と再生産、そして業界全体の地盤沈下につながるのです。
本日、この後に、マジョリティの特権が全く意識されていないから、この申立てのような案件が起こったという私の指摘を、ぜひ一度、考えてみてくださればと思います。「林さんはあんなことを言っているけど、うちの局は違うわ」とか、「もうそんなことはとっくの昔からわかっている」ということでもいいです。きょうの話と感想を、帰ったら各社で口に出してまわりの皆さんにお話してみてください。きっと、まわりには黙って我慢しているマイノリティの人がいるはずです。みなさんから、そういう話題を提供すれば、その方たちも思うことがあって、対話が始まるかもしれません。以上が私のきょうの発表です。ありがとうございました。

■主な質疑応答

Q:当事者にとって、こだわらざるを得ない部分、例えばLGBTQ以外にも多様な性があるという主張などでも、ニュースや番組尺の関係、また、あまりに複雑になると、視聴者の理解が追いつかないなどの理由で、簡略化や類型化しなければならない場合があります。全ての表現を取材先が納得するまでやり取りすることは、現実的でないとも思えます。どのような対応が好ましいのか日々悩んでいます。

A:そういうふうに悩んでいらっしゃるのが素晴らしいと思います。そういう方がいることが本当に希望だと思うのです。尺が短い。とくにテレビの場合は、尺が短いから紋切り型にならざるを得ない。それは確かに悩みですけれども、まず、それを意識することが第一歩です。
そして、第二歩目には、一回の放送で全部が解決できないではと思います。少し長いスパンで何ができるかということを考えて番組制作をしていただければと思います。
そして三つ目に、最後ですけども、その人だけでは解決できないと思うんです。例えば、自分はニュース制作していて、紋切り型やっちゃったよな。また、桜の映像とともに若い女性入れちゃったみたいな、そういうのがあると思うんです。でも、それはそれであったとしても、今度は別の番組、例えばドラマの人と話をして、対抗軸をつくってみるとか。これは一つの番組だけで解決することでは到底ありませんから、局内のネットワーク、あるいは番組制作会社同士のネットワークを作って、何らかの体系的取り組みを少しずつでもしていただければと思います。頑張ってください。応援しています。(林教授)

Q:メインターゲットが女性の商品を扱うときに、意図的に「女性のみなさん」と限定した呼びかけをすることはよくやっています。ユニセックスの財布を紹介する際に、女性のみなさんと呼びかけましたが、女性用の商品ではないので、ジェンダーの観点から、呼びかけは、ご覧のみなさまなどにしたほうがいいのでしょうか。

A:たくさん売れるために、みなさまって言ったほうがいいんじゃないですか。女性に限定する必要がある物だったらそうですけども、そうじゃないなら、みなさん使ってくださいと言ったほういいのではないですかね。男性、女性をそこまで意識する必要がどこまであるのでしょうか。性にも多様性があるわけだし、女性だからどうっていう紋切り型を崩すのが面白いところだと思います。お財布、いろんな人が使ってもらったほうがいいと思ったら、「みなさん」と言ったほうがいいと思います。(笑い)
(林教授)

Q:スタッフの制作現場に女性を登用することが問題解決の一つのポイントということは、もっともだと思います。ただ、いろんな問題でそれが適わない場合、どう対処すべきでしょう。女性を配置したら、それで事足りるということでもないと思いますが。

A:例えば、この度、あいテレビに、執行役員に女性の方が就任されて、私、ほんとうに大変だなと思って見ていました。女性にこの案件の反省全部を背負わせますかって。
私も東京大学で管理職をやっていますからよくわかりますけど、女性差別の問題を全部私が担いで、世界の女性のために、解放のためになんてできないです。むしろ男性側が気づいて、開かれた職場とか、開かれたテレビ番組を作ってもらわなくては。さらには、視聴者も巻き込みましょうということは、全員でやらない限りは、こうした女性差別、マイノリティ差別の問題は解決できない。
もちろん、気づきを多くするために女性を増やすのはいいことだと思いますし、私は女性が多くいることが、職場も番組も豊かにすると思います。
けれども、女性を増やすことだけで、そして、その少ない女性たちに、問題を背負わせること。それも気の毒だと思うし、そんな簡単な問題じゃないと思います。
(林教授)

Q:ストーリー性のあるドラマやアニメの中で、LGBTQに関する内容を主題にする場合、「おかま」という名称を使用する是非について、意見をうかがいたい。最終的に、LGBTQの当事者を否定しない内容で、ストーリー上必要なセリフとして、「おかま」というワードを使用することは問題があるのかどうか。また、LGBTQを主題に物語を作る場合、気にしたことがあれば教えてほしいです。

A:全部、私の意見ですからね、みなさんが考えて、そうじゃないと思われれば、みなさんで、話していただければと思いますけれども、「おかま」という言葉は過去に使われてきた言葉で、それで傷ついてきた人がたくさんいると思います。傷ついてしまうから、さっき言ったように、自分の属性を隠す。LGBTQはそのような典型的な社会グループの一つだったと思うんです。
その言葉をもし何かの形で使わなければいけないシチュエーションがあるとしたら、何らかの形で使わざるを得ないっていうことを、しっかりと留保をつけて、限定しない限り、私は使えないと思います。使うと大きな責任が発生するわけです。緊張感と覚悟をもって、どうしても使わなくてはいけない理由を説明すべきです。説明する責任は使う側にあります。
特にテレビは、公益性、公共性がとても重要な価値なわけですから。ぜひ緊張感をもって考えていただければと思います。(林教授)

Q:数年前に、イギリスのBBCで、番組に出演する人たち全員の男女比をなるべく半々にしようという取り組みが始まったときに、批判の声が上がったと聞いたことがあります。例えば専門家のインタビューだったら、その道に一番通じる人に話を聞くべきだと。その以外の人たちにも、適材適所、もっともその道に優れている人を据えるべきで、男女比を均等にすることを目指そうとして、よりよい番組作りが阻害される恐れがあるのではないかという批判があったらしく、調べた限り、人権の立場から明確にそれに反論するインタビューにまだ出合えていなくて、どう思われるか、うかがいます。

A:そういう話もよくありますね。テレビに出演するコメンテーターは、もちろん、うまく解説のできる人、その分野の一番よく問題に精通している専門家が出ることがいいわけです。しかし、現実は、必ずしもそういう判断基準でコメンテーターが選ばれているとは限らないと思います。私も研究者ですから、そういうふうに思います。
どう選ばれているかというと、テレビ局の方が一番よくわかると思うのですが、あそこであの人は前も出ていたとか、時間がないから電話番号が携帯に入っているからとか、惰性や効率で決まっていくわけです。つまり、専門家の選定基準が、現状再生産の、ジェンダーバランスを全く気にしない方法がまずいのです。
惰性で選ぶのではなく、まさに優秀な専門性を基準に、これまであまり声を出していない女性の専門家を意図的に入れることも考えていただきたいと思います。

さらに付け加えるとすれば、声を与えることによって、専門家も伸びていくわけです。
今まで機会がなかったから、女性の専門家もメディアの中で育っていかなかったところがあると思います。
みなさんの公共的な使命の一つに、よい専門家を育てるという観点をお持ちいただければありがたいです。男女含めたいろいろな専門家を育てていただければ、女性の視点とか、マイノリティの視点とか、多様な視点が自然に増えていくわけですから、三方良しで、ぜひそうした形で専門家の選定も考えいただければと私は思います。(林教授)

●曽我部委員長
(講演で使った)放送業界での女性の視点とは、というスライドに、人権委員会の意見がいずれも男性委員によるものだとあります。この趣旨が、わからなかったのですけど。補足いただいてよろしいでしょうか。

●林教授
放送業界に女性が少ないことが問題だという委員会の意見は、女性こそがこうした問題に敏感だというご意見だと受け止めました。翻って、BPO放送人権委員会には女性の委員もおられるのですが、少数意見や補足意見は全員男性で、こうした部分に敏感な女性の意見があってもいいわけですけども、それがない。あるいは、BPOという組織でも女性が声を抑制している(抑圧されている)のかもしれない。そういう意味では、男性、女性ということを組織内の数で考えることが、どこまで適切かなと思います。
ただ、内情が私にはわからないので間違っているのかもしれません。

●曽我部委員長
委員が個別に意見を書くかどうかは完全に個人の自由なので、たまたまこうなったということではあります。女性の視点か、男性の視点かは関係ないということであれば、それはおっしゃるとおりだと思います。

●林教授
はい。組織の中ですと関係のないこともよくある、と申し上げました。

●曽我部委員長
そういう趣旨であれば、了解しました。ありがとうございます。

●林教授
委員会の要望では、放送産業の女性の少なさを強調されてきていると思うのです。そういうことなら、委員会の中でも男性と女性がいるので、女性としての何らか観点がもう少しあってもいいのかなと思ったので指摘しました。
この指摘が適切かどうかは、議論のプロセスはわかりませんので委員会に委ねます。書くか書かないかは、もちろん自由だと思います。けれども、書くこともできるわけなので、そういう意味では、委員会がご指摘されているような「女性の視点」は可視化されていませんでした。

●曽我部委員長
個別意見には出ていないけれども、男女を問わず、全員の意見を自由に出し合って、意見をまとめたということです。

■オンライン意見交換会のまとめ(曽我部委員長)
長時間、みなさまにお付き合いいただきましてありがとうございます。登壇いただきました林先生、それから説明いただいた、あいテレビの方々もどうもありがとうございました。人権委員会は、構造というよりは個別の行為、個別の事案を判断するのがミッションだと認識しております。構造問題を正面から扱うのは難しいという認識がありました。
したがって、今回取り上げた委員会決定の本体では、個別の問題を取り上げ、構造問題は付言のところで扱うにとどまりました。
他方、本日この場で議論すべきは、やはり構造問題だろうということで、本日はそちらになるべくフォーカスするスタンスで、私どもは説明もさせていただいたということです。ただ、その点について、わたくしども特段専門家でもありませんので、林先生には、こういった構造問題をご説明いただきました。
マジョリティが作る特権ですとか、無意識のバイアス(アンコンシャスバイアス)の温存ですとか、マイクロ・アグレッションの問題というようなところにまとめていただいて、われわれが漠然と申し上げていた構造問題というのが可視化されたと思っています。

これは林先生からもありましたし、私も冒頭申し上げたのですけれども、こういう意見交換会の場ですと、その場で話を聞いて「ああ、そうか」とか、「いや、違うんじゃないか」とか、感想はおありかと思います。けれども、大体それで終わってしまうことがあります。あいテレビさんにお邪魔したときも申し上げたのですけれども、講師を呼んで話を聞いて終わりでは、何も生み出さないと思います。
したがって、きょう話をお聞きになった方々はそれぞれ各社にお持ち帰りいただいて、さらに議論をしていただく。議論するだけではなくて、何らかのアクションにつなげていただく。そういうことが大事だと思います。アクションする中で、さらにアドバイスが必要であれば、それぞれ、専門家がいますので、そこに相談するとか、そういう形で今後につなげていっていただきたいと思っております。
本日がその一歩になれば、大変ありがたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

第325回

第325回 – 2024年3月

2023年度申立て状況を報告…など

議事の詳細

日時
2024年3月19日(火) 午後4時 ~ 午後6時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.2023年度申立て状況報告

年度末にあたり、2023年度の申立て状況全般について事務局から報告した。

3.運営規則改正について

現行運営規則に、主にヒアリングなどの実状に合わせた小さな修正を施した事務局案が提案され、議論の結果承認の決議がなされた。この後、5月の理事会で諮られることになる。

4.その他

今年度で退任する委員から挨拶があった。

以上

第193回

第193回–2024年3月

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

第193回放送倫理検証委員会は、3月8日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2023年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
関西テレビが2023年11月3日に放送した『ちまたのジョーシキちゃん』の外食チェーン店のランキングを訂正した事案を討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
2月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。

議事の詳細

日時
2024年3月8日(金)午後5時~午後7時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナウイルス接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

昨年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見(委員会決定第44号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の公表後すぐに、NHKの全役職員にBPO意見の全文を周知し、全国の放送現場で取材・制作に携わる一人ひとりが、再発防止の取り組みを自分事として真摯に受け止め、互いに納得がいくまで議論を尽くす組織へと改善し、視聴者の信頼に応えていくことや、役員・本部部局長などからなる放送倫理委員会を開催し、出席者からは「視聴者の信頼はNHKにとって必要不可欠で、『公共放送人』としての心構えをしっかり浸透させる必要がある」という意見が出たことなどが記されている。また今回の問題では、上司のCL(チーフリード)や編集責任者(編責)がみずからの役割を果たしていなかったことから、上司や編責の権限を明確に定義した。例えば編責は、企画提案の採否やニュースのオーダー、時間配分を決定するだけでなく、すべての項目の取材・制作における品質管理・リスク管理を行うことを明記した。さらにBPOから「ジャーナリズムに関わる感度の底上げが焦眉の課題」と指摘されたことを受け、「公共メディア職員としての使命感、責任感の向上」「新人層から基幹職まで一気通貫した研修カリキュラムの構築」など、成果が一朝一夕に出るものではないという認識の上で「新たなジャーナリズム教育」に取り組むことなどが記されている。
委員からは、これまでと同じような内容が繰り返されている、制作した者と管理する者が1対1で責任を持てば問題は起こっていなかったはずで縦の管理を強化するなどの取組みにどれだけ効果があるのか疑問だという意見もあったが、委員会決定の公表後に取られた措置に対するフィードバックの意見が載っている点を評価する、新しいジャーナリズム教育の実行に注目したい、NHKのニュース報道の質の高さを踏まえれば問題を組織全体の評価につなげることは慎重であるべきだなどの意見が出され、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』について討議

関西テレビは、ローカルバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』(毎週金曜午後7:00~8:00)を制作。2023年11月3日放送のコーナー企画「関西人1万人が選ぶぎょうざがおいしいチェーン店ランキング ベスト10」の中で、大手外食チェーンA社を除外したランキングを放送した。放送後、A社からの指摘を受けて11月24日の番組でお詫びした。
番組は関西での話題や人気施設、有名飲食チェーン店などを取り上げ、ゲストを交えて展開するトークバラエティー番組。おりおりインターネットアンケートの結果をもとにランキングを採用していた。
本放送ではアンケート結果で2位だったA社が除外され、3位以下のチェーン店が繰り上げられ、本来はランク外だった外食チェーンが10位で紹介されていた。
ランキングを捏造したことについて関西テレビは報告書の中で、A社とライバル関係にあった別の大手外食チェーンB社が1位になったことから「同じ番組の同一放送回では同時に取り扱うことができないのではないか」と懸念し、「2位のA社を外すことを、プロデューサーを含む番組全体会議で決定した」旨の説明をしている。
放送後の11月6日、A社からの指摘で社内協議。ランキングのお詫びと訂正をすることを決めたが、A社、B社ともにSNS等による風評被害が出る恐れを懸念しているとして、お詫びは11月24日の番組エンディングロールに直結させた15秒枠で放送。前回放送されたランキングと、A社を2位とした新たなランキングをCGでそれぞれ表示。ナレーションで「ここで関西テレビからお詫びと訂正です。11月3日に放送した『餃子ランキング』の順位に誤りがありました。正しくはこちらです。視聴者ならびに関係者の皆様に訂正し、お詫びいたします」と伝え、ランキングを捏造したことや経緯は一切触れていなかった。(WEBでもお詫び)
関西テレビでは12月8日、第三者委員会である「オンブズ・カンテレ委員会」(2007年の「発掘!あるある大事典Ⅱ」の食品データ改ざん問題を機に設置)を臨時開催。また2024年1月に番組審議会を開いて報告。それぞれの委員からアンケート結果の改ざんについて厳しい意見が寄せられた。

放送倫理検証委員会では2月9日に討議入りを決定。3月8日の討議では、弁護士の委員が委員会規約などを照らして問題点を整理。「本放送が虚偽の疑いがある放送であることは確実」「スポンサーの意向に忖度してアンケートを捏造した行為は放送の自主・自律の根幹を揺るがすという議論になる」との考察を報告した。これまでの委員会では以下のような厳しく指摘する意見が相次いだ。

  • B社に忖度してA社を外したことが問題であるのに、お詫び放送の中でもA社、B社に忖度して経緯を説明しないのは視聴者をばかにしている。
  • 虚偽放送はあきらかで、審議入りか審理入りかのレベルの話だ。悪質性は相当高い。
  • うそのランキングについて視聴者からあまり意見が寄せられていないのは、テレビはこんなもんだと思われているのではないか。
  • 外食産業という消費者、ファミリー層に影響のあることを取り上げているのだから、餃子のランキングにすぎないという問題ではないはずだ。
  • 仮に番組制作に営業がかんでいるとするならば、大きな問題ではないか。
  • 関西テレビはオンブズ・カンテレの存在に甘えている。番組としての自主・自律がない。

ただ一方で、アンケート捏造が構造的、恒常的に行われていた事案とは見受けられないことや、オンブズ・カンテレや番組審議会での厳しい意見を受けて、関西テレビが再発防止に向けた取り組みをしていることから、討議を終了し審議入りは見送った。

3. 2月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

報道番組で芸能事務所創業者から性加害を受けたことを実名告白し、翌月自殺した男性の妻に対するインタビューが放送され、男性が「SNS上で誹謗中傷されたことを苦にしていた」という内容が含まれていたが、誹謗中傷が芸能事務所に所属していたタレントのファンによるものだとは断定されていなかった。ところがテレビ局が同ファンを犯罪者のように扱っているという意見が多数寄せられた。またバラエティー番組が「関西人がイライラする瞬間」というテーマを取り上げ、出演者が「病院から処方箋をもらって薬局に行くと、薬剤師から医師と同じ質問を何度も繰り返しきかれる」「薬剤師には医者への憧れのようなものがある」と発言したことについて、「職業差別だ」「薬剤師を侮辱している」「収録番組であるのにテレビ局はチェックせずに放送した」などと批判する意見が多数届いたことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

2024年2月に視聴者から寄せられた意見

2024年2月に視聴者から寄せられた意見

ドラマ原作者が急死した件の調査は第三者機関が行うべき、裏金のことを自民党の発表通り「還付金」と報道するのはよくない、などの意見が寄せられました。

2月にBPOに寄せられた意見数は2,308 件で先月から 102 件減少しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 88.8% 電話 9.9% 郵便・FAX計 1.3%
男女別(任意回答)は、男性37.1% 女性25.7 % で、世代別では40歳代 29.7% 50歳代 21.5% 30歳代 21.1% 20歳代 11.7% 60歳代 7.6% 70歳以上 3.0% 10歳代 1.2%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、2月の送付件数は1,186件、43事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

テレビドラマの原作者が急死した件の調査は第三者機関が行うべき、ニュースで裏金のことを自民党の発表通り「還付金」と表現するのはよくない、などの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は19件、CMについては14件でした。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は103件で、前月から26件増加しました。
今月は「表現・演出」が40件と最も多く、次いで「要望・提言」が25件、「いじめ・虐待」が10件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 4歳児が薬物中毒で死亡した事件のニュースで、薬剤の名前、致死量、錠剤の場合の個数などを医師が詳細に説明していた。服用中の患者などに自殺の方法を教えることにならないだろうか。

  • ニュースで自民党議員による裏金・キックバックのことを、自民党の発表どおり「還付金」と表現している。自民党側の言い分だけを垂れ流すべきではない。

  • タレントが性的行為を強要した疑惑について、コメンテーターが「(相手が)怖い思いをしたと言っているんだったらシンプルに謝ればいいのではないか」などとコメントしたが、これから裁判で争う内容であって現段階では真偽は不明ではないのか。

  • 火災のニュースで私の父親の名前が「行方不明者」として報じられた。テレビ局に対して実名を伏せるよう要請したところ「報道には火災の被害を防ぐ啓蒙の意味合いも込めている」との回答だったが、家族感情を超越するほどの理由なのだろうか。

  • 多くの男性が締め込み姿で参加する伝統的な祭を生中継した際、スタジオの出演者が「ポロリの可能性ありますね」などと祭りを茶化すような発言をしていた。祭りの関係者や地元の人々を貶めているように感じた。

  • ニュース番組で人が亡くなっている事件の冒頭部分を伝え、「何があったのか」と内容を伏せることでCMを見せるやり方は不謹慎だと思う。

【教養・バラエティー】

  • トークバラエティーの「イライラする時間」ランキングで、出演タレントが調剤薬局で薬剤師に話しかけられる時間を挙げ、「薬剤師に症状を説明しても薬は変わらない」「医師への憧れがあるのではないか」などと発言して笑っていた。患者とのコミュニケーションは薬剤師の重要な業務。放送による影響を考えてほしい。

  • 「小6図工時間いたずら」と題し、ゲームで負けたタレントの親指と人差し指を瞬間接着剤で接着していた。相撲界の暴力問題で「暴行内容」に挙げられている行為だ。夕方、子どもと見たが、悪質な行為でまったく笑えないし、子どもの視聴への配慮も感じられなかった。

  • いわゆる「レアハンバーグ」を出す店を紹介し、赤い部分が残っている状態で食するシーンを放送していた。(病原体は主に肉の表面に付着していて、ひき肉にすると全体にまぶされるため)厚労省も「ひき肉を使った製品は中心部までの加熱が必要です」と呼びかけている。肉の生食を取り上げる場合は注意してほしい。

  • 男性に水に溶ける水着を着せ、性器を露出させて笑いものにする、あるいは男性が大浴場に入浴中にロッカーを改造して開かなくし、全裸のまま動揺する様子を笑うなどの企画。学校では男女を問わず「プライベートゾーンを大切にする」と教育しているのに、テレビは男性を差別している。

  • タレントが自然の中で調理する企画。「山」としか明らかにされていないが、クマの生息が確認されていないエリアなのか説明してほしい。クマがおびき寄せられ、人里に降りてくる原因になったりしないのか。

  • 番組プレゼントの応募方法が、番組指定のキーワード「#(タレント名)干そう」をSNSで拡散するというもので、結果、特定の個人を排除するような言葉がトレンドワードになった。番組の関係者や視聴者以外のSNS利用者から見れば中傷だと思う。

  • 20トンクラスのパワーショベルを用いてワイングラスを積み重ねるという企画で、挑戦するタレントの「特別教育修了証」が紹介されたが、この資格で操縦できるのは3トン未満の機械。誤解が生じるおそれがある。

  • 私たちのイベントの開催間近にテレビ局から生中継したいと要請があった。イベントスタッフの担務など多方面の調整をして対応したが、直前に中止すると連絡があり、放送を見たら別のイベントを生中継していた。

  • 出演者が路線バスで温泉に向かう道中を撮影している車両に偶然乗り合わせた。機材が私の荷物に倒れかかったり、ケーブルが乗客の頭に引っ掛かったりしたが、スタッフからは謝罪がなくマナーが悪いと感じた。

  • 番組の最後の10分間を出演者への予告なしに生放送に切り替え、出演者が自宅に隠された100万円を探す固定カメラの映像を放送。斬新だし、生放送の特性を活かしていてすごいと思った。

  • 「吃音も個性としてがんばりたい」という芸人の思いと「差別を助長する」と危惧する吃音協会の危惧のいずれも否定せず、バラエティーとして笑いもあるすばらしい番組だったが、「お笑いはハンディも武器にできる素晴らしい職業だ」という出演者の意見を多くの人に理解してもらうのは難しいのではないか。

  • 男性として生まれ、現在の自己紹介は「性別はない」。モデルやタレントとして活躍するこの人物をドキュメンタリーで取り上げていた。ジェンダーレスについて差別やヘイトがある中、いい番組だったと思う。

  • 出演者たちが「BPO “ハゲ漫才”について議論」というニュースを受けて議論していた。プロ芸人は自身の身体的特徴を武器に闘っている。「当事者が傷つく」という指摘は的外れではないのか。

  • テレビでいわゆる「ハゲネタ」を見るたびに、嫌な気分になる。番組制作者にはさまざま理由で薄毛になった人がいることを知ってほしい。

  • 私は現在、薄毛の進行にコンプレックスを感じ治療中だが、いわゆる「ハゲ」を「触れてはいけないこと」とされると窮屈に感じると思う。「笑い」を生み出すために「ハゲ」を活用していることは自分のふるまい方の参考にもできると考えている。

【ドラマ】

  • フラット35は投資目的での利用が禁じられているが、不正に利益を得る方法をドラマ内で「裏技」としてかなり詳細に説明していた。まねをする人が出てくるのではないか。

【その他】

  • ドラマの原作者である漫画家が急死した件は、原作者に対する権利侵害やドラマ化による過剰な負担がなかったのかなど、第三者の目で検証してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組の400m競走のコーナーで、負けて脱落した芸人が別の芸人に向かって、短距離走用のスパイクシューズの突起がある側を押し付けた。けがをさせるし、それだけでは済まない。子どもがやっていいことだと誤解する。

  • バラエティー番組の罰ゲームとして、出演者の手の指を瞬間接着剤で接着するのを放送した。いたずらの域を超えて暴行だ。青少年による同様の行為を助長するおそれがある。

【「要望・提言」】

  • 情報番組で結婚を話題にするとき、女性出演者が男性側に厳しい条件を付けることがよくある。今の若者は繊細だから「俺には結婚は無理」となる。テレビ出演者らは、若者、とくに男性の夢を壊さないように気を付けるべきだ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で、芸人8人に「鼻フック」をかけて500mlのペットボトルの負荷に何本まで耐えられるかを競わせた。苦悶の表情を見せる芸人たちを見て笑っている司会の芸人らが、いじめをしているようで不快だった。

【「言葉」に関する意見】

  • バラエティー番組で、頭髪の薄い芸人を茶化して「ハゲ」と何度も言う場面があった。子どもが脱毛症で悩んでいて、親子で傷ついた。小学生もよく見る番組で、容姿をおとしめるハゲという言葉はやめてほしかった。

第265回

第265回-2024年2月27日

視聴者からの意見について… など

2024年2月27日、第265回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、1月後半から2月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
2月の中高生モニターリポートのテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年2月27日(火) 午後4時00分~午後6時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

1月後半から2月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
報道ドキュメンタリー番組で、一家3人を殺傷し、特定少年として逮捕・起訴された被告に死刑判決が下された裁判を特集。判決主文がテレビ画面に速報されたとき、被告の母親に密着取材していたが、部屋には10歳前後とみられる被告の弟あるいは妹が同席していて、その子の反応も放送された(母親と子どもにはぼかしが入り、子どもの音声は加工)ことについて批判的な視聴者意見が寄せられました。
担当委員は「本件を取り上げる重要性は理解するし、きちんと取材もされていたが、あの瞬間に子どもを同席させる必要があっただろうか。仮に、母親が『(子どもと)一緒ならば撮影に応じる』といったとしても、『では、そうしましょう』では、この子を犠牲にして撮影したことにならないか」と指摘しました。
ある委員は「性的な虐待や両親の離婚など、小児期に『逆境体験』を受けると記憶として一生残り、トラウマになるといわれる。アメリカでは、両親や家族が犯罪に関わったり収監されたりすることも逆境体験だとされる。本件の場合、あの子の記憶に残るだろうし、トラウマになりPTSDが起きる可能性がある。あの子には残酷な時間だったと思う」と説明しました。
また別の委員は「犯罪加害者家族の支援活動にも関与しているが、(世論の)加害者批判が高まるので、報道は難しい。(加害者側の)子どもを放送に出すとなると、(その子に対する)二次被害も想定する必要がある。本件では、あの子の将来が心配される」と述べました。
最後に担当委員は「番組が母親を取り上げた意義は大きかったと思うが、そのアプローチの仕方が非常に甘かったと思う」と締めくくり、「討論」に進むことはありませんでした。
頭髪の薄いことを漫才のネタにすることについて、1月の青少年委員会で意見が交わされ、議事概要として公表したことを受けて、当該の漫才コンビを含む出演者らが意見を出し合った情報バラエティー番組について視聴者からさまざまな意見が寄せられました。
担当委員は「バランスのとれたまじめな議論を展開していた。聞いていて『なるほどな』と思えるところもあった」と報告しました。
委員からは「(議事概要を)よく読み込んでもらっている」や「このことを認識してもらっただけでも、(委員会で)取り上げた意味があった」などの声が上がり、「討論」には至りませんでした。

中高生モニター報告について

2月のテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」で、課題とした番組は2023年度日本民間放送連盟賞[青少年向け番組]最優秀『ザ・ドキュメント ウクライナ、9×9の歌 明日をつくる子どもたちへ』(関西テレビ放送)でした。戦禍を逃れて日本で避難生活を送るウクライナ人の母子を取り上げた番組で、小学生の姉弟が言葉や文化の違いに戸惑う様子や母親の思いを伝えています。また、小学校関係者や学習支援プロジェクトを立ち上げた大学教授、翻訳作業を手助けするウクライナ人留学生など、多くの支援者の思いや葛藤を丁寧に描いています。25人のモニターから報告がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)と『「東大王」2時間特別編 学べる世界の映像SP』(TBSテレビ)に4人から、『お別れホスピタル』(NHK総合)と『日曜ビッグバラエティ 必撮仕事人!緊迫カウントダウン』(テレビ東京)に3人から、『アラスカ・大自然の話をしよう~秋冬編~』(NHK Eテレ)と『有吉弘行の故郷に帰らせていただきます。~地元でもっと驚いちゃったよ~』(中国放送)、『なんでだろう?山形深ボリ 幕末の米沢で義をたどる』(山形テレビ)にそれぞれ2人から、報告がありました。

◆モニター報告より◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

  • ウクライナと日本は距離が遠く、日本語は他国からも難しいと思われがちなのに、なぜウクライナからの避難民が日本に来たのか疑問に思いました。日本にも誰かのために行動してくれる人がいて、とてもありがたいなと思いました。自分から行動するには勇気が必要なので「避難民の力になりたい」「助けたい」と先陣を切って行動する人たちをとても尊敬します。(中学1年・女子・千葉)
  • ウクライナの戦争をテレビでよく見るけれど実感はありませんでした。でもウクライナと日本の数字が同じだと知って、戦争は同じ世界で起きていて、私のような子どもも巻き込まれていることを実感しました。この番組や戦争の番組を、戦争をしようとしている人に見せてあげたいです。やっぱり戦争はダメだし、ヤン君たちが安心して生活できたらいいなと思います。またカテリーナさんのお父さんが無事でいるといいなと心から思います。(中学1年・女子・島根)
  • 言語の壁という不安の中で家族を心配するのはとてもつらいです。ウクライナ人が心から休める空間がないと、精神的限界に達してしまうと思いました。(中学2年・男子・埼玉)
  • この番組を視聴して自分の視野の狭さを痛感した。これまでウクライナ戦争に関する情報に積極的に接しているつもりだったが、ほとんどが「国」単位の話であって「人」単位の情報に触れていなかったことに気づいた。言葉の壁以外に教育のレベルまで違うことに驚いたし、避難している子どもが思うように教育を受けられていないことは、将来復興を目指すウクライナにとって大きな問題だと感じた。今日本に避難しているウクライナの子どもたちが、番組のタイトル通りウクライナの明日をつくる。私たちも自分にできることを見つけて彼らを助けることが、ウクライナへの支援になると思った。(中学2年・男子・東京)
  • 「スマホじゃ気持ちは翻訳出来ない」「学校は勉強だけする所ではない」という言葉を聞いて、言語が分からないなかで接することの難しさを感じるとともに、改めて学校とはなんなのかを考えた。ウクライナ人の男の子が「日本の子にもウクライナの言葉を知って欲しい」と言いながら学んだばかりの九九をウクライナ語でまとめていたシーンでは、言葉が通じなくても通じるものはあると感じた。わたしも今後、海外の方と関わる機会があればこの番組を思い出したい。(中学2年・女子・東京)
  • 「戦争から逃げられたからもう安心だ」と思っていたけれど、知らない土地で知らない言葉を話す人たちに囲まれて生活するのはとても大変で、避難してきた人にとっての戦争や戦いは終わっていないのだと感じました。心から戦争がなくなってほしいです。(中学2年・女子・栃木)
  • 番組を視聴して悲しくなったが、ウクライナから避難してきた子の現状を知ることができてとても良かった。また番組で紹介されていた家族はマシな方で、いまだにウクライナ国内にいて逃げることができない人々や、最前線で国のために戦っている人が本当にいるということも改めて実感できた。スーパーなどにあるウクライナへの募金活動に参加したり、今回知ったことを友達に話したりすることも、とても大切な活動の一つなのだと思った。(中学2年・女子・福井)
  • 自分から進んでこのようなテーマの番組を見ようとは思わないので、今回は良い経験になった。ウクライナの人々の日本に来てからの苦労について、この番組を見て初めて知ることができたが、テレビは影響があるのだからもっと大きく取り上げるべきだと思うし、そうすることで苦労している人が暮らしやすくなると思う。(中学3年・男子・広島)
  • 学習を止めないために支援するすべての方々がカッコよく思え、自分もなにかできないかと思うとともに、私もさまざまな人に支えられて学ぶことができているのだと改めて感じました。ウクライナ問題が長期化しているからこそ情報をしっかりキャッチしていきたいし、テレビなどのメディアも情報発信をやめないでほしいと強く感じました。(中学3年・男子・神奈川)
  • ウクライナ戦争によって子どもたちが教育を受けられないことにとても心が痛んだ。教育を受けることは子どもの権利なので、それを奪う戦争はとても恐ろしいものだとあらためて感じた。日本の教育レベルの高さを世界に発信すればいいのではないかと思った。特に九九は日本にしかないことが分かって「これはもったいない!」と思ったので、さらに多言語化すればいいと思う。(中学3年・女子・広島)
  • 私の印象に残ったのはシングルマザーのエフゲニアさんです。子どもと一緒に勉強をするシーンでは、自分も日本語はよくわからないのに子どもを支えようと頑張る様子が印象的でした。またスーパーで買い物をする場面では牛乳の場所を店員に聞いていて、比較的分かりやすい場所に置いてある牛乳の場所すらわからないのは相当不便だろうなと思いました。スーパーでは英語表示がないので、公共交通機関のように英語や有名な言語の表示を取り入れて欲しいと思いました。(中学3年・女子・福岡)
  • 戦争で親子が離れて暮らすのは大変だなと思いました。ウクライナ語と日本語を両方話せる人がいるのはとても心強いだろうなとも思います。一日もはやく戦争が終わってほしいです。(高校1年・女子・京都)
  • 自分の国で戦争がおきてつらい思いも沢山してきているはずなのに、日本で笑って過ごしているウクライナの人々は強くてすごいなと思った。一方で言語が違うだけで思っていることがこんなにも伝わらないのだと分かり、つらい気持ちになった。グローバル化が進んでいる今、英語だけでなくどの言語にも通訳が必要になっているのだなと感じた。日本で話せる人が少なそうな言語にも挑戦してみたいと思った。(高校1年・女子・北海道)
  • ウクライナで戦争が起こっていることはニュースでよく放送されていたので知っていましたが、それによる子どもたちへの影響については見たことも聞いたこともなかったので新鮮でした。今までは翻訳機があるのになぜ他言語を学ぶ必要があるのだろうと疑問に思っていましたが、翻訳機では気持ちが伝わりにくいし心も開きづらいと知り、学ぶことの必要性に気づきました。(高校1年・女子・茨城)
  • 将来教育系の職業を希望する私にとって考えさせられる部分が多かった。子どもたちの学校での様子を見て、自分が先生という立場だったらどう振る舞うのがベストなのか考えた。またスマホの翻訳機能を使っても心のカベを乗り越えることはできないという現状を見て、私も多言語を学び日本に住む他国の子に対して少しでも力になりたいと強く思った。このようなドキュメンタリーを多くの人が見るべきだし、ゴールデンタイムに放送してほしい。(高校2年・男子・山形)
  • 男の子がひとりぼっちでいるシーンがあり、いじめられて仲間外れになっているのではないかと、見る人によっては印象が変わるシーンがありました。テロップ表示などを活用して環境になじめていないことを説明すると良いと思いました。(高校2年・男子・山形)
  • ウクライナ人同士で就活を励まし合うのは、なんだか虚しくなってしまった。また日本の教育とウクライナの教育について考えさせられた。(高校2年・女子・東京)
  • 一番印象に残っているのは、教室に掲示された児童たちの「自分の目標」の欄に「ウクライナ語を話せる自分になりたい」「ヤンくんとしゃべれるようになりたい」と書いてあるのを映したカットだ。先生だけでなく周りの子どもたちもなんとか仲良くなろうと一生懸命に考えているのに、ウクライナの子どもたちがなかなか馴染めないのがこのシーンから伝わってとてももどかしく感じた。その問題を解決するために、教育関係者たちはウクライナ語の九九の歌を作る計画を立てていたが、私は「どうして日本の学習方式にこだわるのだろうか」と疑問に思った。しかし数年、数十年日本で暮らしていく以上、あえて日本流のやり方でなるべく早くまわりの児童と馴染めるようにしてあげたかったのだろう。この歌を作ることがウクライナの子どもたちにとって最善の行動なのかは計画段階では分からないが、迷いなく計画から実行まで迅速に行動していてとても素敵だった。(高校2年・女子・愛知)
  • ウクライナ侵攻・戦争がドキュメンタリー番組をつくれるほどに続いてしまっているということが悲しいです。まずヤンくんと必死にコミュニケーションをとろうとしている大人たちを見て胸が苦しくなりました。こころを伝えられないつらさ、知ることのできないつらさがどれほどのものなのか、自分ではとても想像できないと思いました。また、もし自分がカテリーナさんの立場だったら同郷の子どもたちのためにあそこまで献身できるだろうか、遠い家族が生きていると希望をもつことができるだろうかと、自分と向き合うことができました。たった48分のこの番組で自分は心を動かされました。今後もこのような心に響く番組が増えていったらいいなと思います。(高校3年・男子・神奈川)
  • ウクライナ語の九九動画をみて学習している子の姿を見た母がうれしそうにしていた場面では「本当によかった」と思いました。知らない国にきて子どもが頑張っている姿は親にとって一番の励みになるのだろうと思いました。これは日本の私たちも同じで、私が頑張っていることで親は安心し喜んでいるのだろうと改めて思いました。ただ、日本の学校に通うウクライナ人に支援をしたいと思っても、プライバシー保護の関係からどこに通っているのかさえ言えないのはお粗末な感じがしました。支援したい人や会社とマッチングできないのは何とかすべきです。また、今回紹介されたウクライナ人の家族はその後どうなったのかは気になるところです。(高校3年・女子・京都)

【自由記述】

  • 普段のテレビニュースではウクライナについてよく知ることができないし、どちらかというと戦場の状況についての情報が多いので、今回のような番組を学校などで視聴する機会をつくり、若い世代にくわしく知ってもらえるようにした方が良いと思います。(中学1年・女子・千葉)
  • 『サッカーで紡ぐ“友情”~FCシャフタール・ドネツク対アビスパ福岡~』(BSテレビ東京)で、日本に住んでいるウクライナの子どもたちを試合に招待しているのを見て、スポーツで日本とウクライナがつながることができると分かった。また横浜FCの下部組織にウクライナから来た少年(ゴールキーパー)が加入したことも放送されており、言葉の壁を乗り越えてプロサッカー選手になろうとしている姿を見て感動した。(中学3年・男子・神奈川)
  • ウクライナからの避難民に関する番組は多いが、他の紛争地域の人たちに関する番組が少ないと感じています。また多くの番組が表面的なので、もっとリアルな声を届けてほしいです。避難民だけでなくすべての人も含めて「みえない声」にも光を当て、根底にある問題にも目を向けて、視聴した人の意識を変えて社会を動かす番組が増えてほしいです。(高校1年・男子・群馬)
  • ドキュメンタリー番組を見ると、人それぞれの人生があると深く感じます。また感化されて自分も頑張ろうと思えることもあります。もっとみんながドキュメンタリー番組を見れば、他人の人生に口を出すこともなく互いを尊重できるようになるのかな~と思います。(中学3年・女子・滋賀)
  • テレビで映画を放送しているが、頻繁に放送される作品がある気がする。私は映画館に行く機会があまりないため、人気の映画を何回も放送するのではなく、さまざまなジャンルの映画を放送してくれると嬉しい。(中学2年・女子・愛知)
  • 人気のアニメは夜遅い時間に放送されているため、22時に寝る私は23時からのアニメを見ることができません。もう少し早い時間に放送したら見る人が増えるのではないかと思いました。(中学3年・女子・福岡)
  • 最近テレビドラマの原作者が亡くなった件について、しっかりとした対策が必要だと感じました。例えばBPOなど第三者が調査したり、今後どうしていくべきかを考えたりすることが大切だと思います。作者も視聴者ももっと安心して見ることができるテレビになればいいなと思います。(中学3年・男子・神奈川)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『お別れホスピタル』(NHK総合)
    • 看護師や病院というと、わりと明るいドラマを見ることが多かったので、今回のような現実的な話は内容としては少し重く暗い印象でした。でも病院のリアルな面を垣間見ることができ、また看護師たちも悩みを抱えながら働いているといった臨場感があり、ドラマではあるけれど自分の生活にもつながっているような感覚になりました。(中学1年・女子・福岡)
    • 病院は必ずしも病気を治すためだけに行く場所ではないのだなと思いました。音楽が少ないのもこのドラマの魅力だと思います。(中学3年・女子・滋賀)
  • 『「東大王」2時間特別編 学べる世界の映像SP』(TBSテレビ)
    • 「東大生」というと天才で雲の上の存在みたいなイメージだったけれど、意外と私と同じようなことに興味を持っていることにびっくりしました。(中学1年・女子・島根)
    • 個人的には好きな番組だが東大ブランドの価値を少し下げていると思った。「東大は簡単に入れる」と勘違いする人もいるかもしれない。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)
    • いつも夕食を食べながら見ています。母が小さい頃から放送している番組なのもよいです。昔の風習やアイドルが出てきて面白いと思います。ずっと放送して欲しいアニメです。(中学1年・女子・千葉)
    • 久しぶりに見たが、絵柄や話の雰囲気、主題歌などがあまり変わっておらず、ほほえましい気分になった。まる子とおじいちゃんのやりとりや、日常のささいな出来事を物語にしているところに癒された。(中学2年・女子・愛知)
  • 『日曜ビッグバラエティ 必撮仕事人!緊迫カウントダウン』(テレビ東京)
    タイマーが表示されていることで時間の動きがより伝わってきて、見ている方もヒヤヒヤする番組でとても楽しく見ることができました。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『偉人・敗北からの教訓「第32回」』(BS11イレブン)
    現代に通じる教訓を得ようとする番組でとても貴重で興味深かった。戦国時代の身分社会を現代の縦割り構造に例えているところが見事だった。(中学2年・男子・東京)
  • 『全国ボロいい宿~仰天!人気のワケを聞いてみた~』(北海道放送)
    日本の自然をうまく活用している宿がたくさん出てきて面白かった。よく家族と山にドライブに行くが、営業しているのか分からないような店や建物があるので「実は営業していたりするのかな」と考えるとわくわくした。(高校1年・女子・北海道)
  • 『なんでだろう?山形深ボリ 幕末の米沢で義をたどる』(山形テレビ)
    近藤勇と米沢の人が親戚関係にあり、斬首された頭を買い取って米沢に持ち帰ったこと、みんなの前にさらされた首は実は近藤勇ではないということは初耳だった。まさか山形県にそんなお墓があるとは思わず驚きだった。(高校2年・男子・山形)
  • 『有吉弘行の故郷に帰らせていただきます。~地元でもっと驚いちゃったよ~』(中国放送)
    有名な芸能人が故郷に帰って地元の物を味わっている姿は、何も考えずにずっと見ていられると思いました。アンガールズと有吉弘行のやり取りが面白かったです。(中学3年・男子・広島)
  • 『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で司会をした有吉弘行さんが地元広島に帰ってきてくれたのは純粋にとても嬉しかった。広島のいろいろな名所が出て「ここ知ってる~!」となったので見ていて楽しかった。(中学3年・女子・広島)

◆委員のコメント◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想について】

  • モニターたちの感想を読むと、番組を視聴した中高生のほとんどが「情報を知る(認知・気づき)→心を動かされる(感動)→自分が何をすればいいか考える(行動)」というステップを踏んでいることが分かる。中高生たちの素直な感情と行動を促すよい番組だった。
  • 高校1年生のモニターから「ウクライナの戦争は知っていたが、子どもたちへの影響については見たことも聞いたこともなかったので新鮮だった」と報告があった。避難してきた子どもたちの生活の様子を番組で視聴することによって、その先にある戦争にまで思いが至ってくれたことに安心する一方で、番組で紹介したのはあくまで日本に避難している子どもたちの姿で、実際にウクライナにいる子どもたちはもっと大変な状況にあっていることは想像できていないように感じた。
  • 日本は国際化を目指すといいながら、多くの日本の子どもたちは周りに外国人がいない環境で過ごしている。「外国人が日本に来て暮らすのは大変だ」「日本語が話せないと苦労が大きい」ということに改めて気づいた中高生も多かったようだが、こういった現状を教育の中でも学ぶ機会が増えるべきだと思う。

【自由記述について】

  • 中学3年生のモニターから「放送時間が2~3時間ある番組は、見たい内容ならば嬉しいけれど心惹かれない内容だと部屋にこもってスマホを触ることが多い。1時間くらいの番組を増やして欲しい」という意見が届いた。タイムパフォーマンスの考え方が若い世代に浸透しているのを実感している。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『日曜ビッグバラエティ 必撮仕事人!緊迫カウントダウン』(テレビ東京)を視聴した中学2年生から「将来私が何の職業につくのかはわからないが、その時はその仕事に責任と誇りを持って一生懸命向き合っていこうと思った」と報告があった。働く現場やそこで働く人の思いを紹介する番組は、中高生にとってインパクトが強く「青少年へのおすすめ番組」としてふさわしいと思う。
  • 『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)を視聴した高校2年生から「以前よりも過激ではなくなっているように思いますが、飲み物や食べ物を使ったドッキリで、物を粗末にしたり一口飲んだだけで床にこぼしたりするなど、食品ロスが多いと感じました」という感想が寄せられた。今の中高生にとって、SDGsに関わる教育を踏まえた身近な社会問題に関する感想だと思う。

今後の予定について

次回は3月26日に千代田放送会館BPO第一会議室で、定例委員会を開催します。
当日は、「中高生モニター会議」を開催し、在京テレビ局オンライン見学会と青少年委員会委員とのオンライン意見交換会を行なう予定です。

以上

第324回

第324回 – 2024年2月

「判断ガイド2024」について…など

議事の詳細

日時
2024年2月20日(火) 午後4時 ~ 午後6時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.委員会における審理の進め方について

放送人権委員会の審理の進め方について、運営規則などに改善すべき点がないか検討した。

3.「判断ガイド2024」について

事務局から完成した「判断ガイド2024」について説明した。今回の改訂からBPOウェブサイト上で公開されることも報告した。
「判断ガイド2024」はこちら

4.その他

2024年度の委員会開催日程を確認した。

以上

2023年11月

青少年委員会 金沢地区放送局との意見交換会 概要

青少年委員会は毎年、全国各地でさまざまな形で意見交換会を開催しています。今回は金沢地区の放送局とBPOとの親交を深め、番組向上に役立てることを目的に2023年11月22日午後2時から5時まで、金沢市で意見交換をしました。
BPOからは青少年委員会の榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、吉永みち子委員の6人が参加しました。放送局からはNHK(金沢放送局)、MRO北陸放送、石川テレビ放送、テレビ金沢、北陸朝日放送、エフエム石川の各BPO連絡責任者、編成、制作、報道番組担当者など計15人が参加しました。

《「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解の解説》

BPO青少年委員会が2022年4月に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について榊原委員長が解説しました。

〇榊原委員長
痛みを伴うことを笑いの対象とすること、キーワードとしては「痛み」と「笑い」です。
嘲笑は笑いではありません。嘲笑というのは例えば人が痛い目に遭っているときにワッと笑うことですが、笑いの質として違いがあります。本当に楽しく笑うと頭の中に幸せホルモンが出て、ストレスを解消する働きがあるといいます。しかし、他人が苦しんでいるのを見て、あるいは痛がっているのを見て笑うのは、本当の笑いなのだろうかという観点から考えています。
人は、例えば「苦しんでいる人を何とかしたいな」という気持ちや共感的な力、共感性というのを持っています。医学的に言いますと、その共感性というのは脳の中で他人が苦しんでいるときに何とかしてあげたいという気持ちが自然に湧いてくる能力です。その能力が生まれたばかりの赤ちゃんにはどうもないらしい。(赤ちゃんが)経験を通じて他人に対して共感するのだろうということが脳科学で分かってきています。そのときのキーワードに「ミラーニューロン」があります。ミラーニューロン、鏡の神経ということですが、他人が苦しんでいるのを見ていると、自分も、自分が苦しんだときや、自分がそういう目に遭ったときに感じるのと同じ神経がそれで活性化するということが分かっています。
赤ちゃんの模倣、赤ちゃんがまねをするというのは今から30年ぐらい前に見つかった現象ですが、赤ちゃんが他人の顔を見ていると自分がそれと同じ顔をしたと思われるところが、たとえ経験がなくても、活性化する脳の部分があるということが分かったのです。これがミラーニューロンです。
人間の場合、赤ちゃんでも大人でもそうですが、他人が泣いているところを見ると自分が泣いたときに活動する脳の部分が活動します。それを何度も繰り返して、今度は他人が困っている人を助ける、痛がっている人を助けるのを見ていると、自分も誰かが泣きやむとほっとします。このような他人の行動を鏡に映してやるようなことを繰り返す。その経験を繰り返すことで共感性が出てくると言われています。
これにはきちんとした科学的論文があります。他人の感情をミラーリングする。つまり他人の感情や行動を見ることによって、自分自身がそれと同じ体験をすることができる。このことが、人間が社会性や共感性を持つための一番根本にあるのだということが分かってきました。そのときに脳のどの部分が活性化するか、どこがミラーニューロンか、ということが明らかになってきて、研究が進んでいます。
テレビの場面では、かなりリアリティーを感じる演出になっていますから、本当に痛い場合があって、痛そうにしているのをスタジオで司会者らがそれを笑っているというのを見ることになります。辛い目に遭っている人がいるのに、何か笑っているではないか、ということを1回や2回ではなく何度も繰り返し見ることは、子どもが共感性を発達させることによくないのではないかという事実があったのです。それを基にこの見解を出しました。
他人の苦痛の表情を見ると、自分のミラーニューロン系が、自分が苦痛を感じたときと同じような活動をします。そして苦痛を感じている人を誰かが助けるのを見ると、自分の苦痛のミラーニューロン系が収まり、助ける行動で自分がいい気持ちになります。すると、教えなくても、助けた方がよいのだということがわかり、子どもがそういう場面を見ることで、共感性が育ってくると言われています。
この回路が反対に、他人が苦痛を感じているときに、それを嘲笑する、笑うというのを見ていると、働かないわけです。自分は苦痛を感じているけれど、スタジオの司会者らが結構笑っている、楽しそうにしているというのを見ると、その回路がうまく働かないことが起こるのではないかということです。
私たちはテレビを制作する方に、特に小さい子どもには、このような形で共感性を獲得していく過程があるということを知ってもらって、その知識を番組づくりに活用していただきたいと願って、この見解を出しました。
最後に、笑いにはいろいろな種類があります。「smile」や「laugh」などとてもポジティブな笑いや、嘲笑という英語だと「ridicule」とか「scorn」という言い方をしますが、これは似たような笑いと言いながら意味は違います。(番組制作者は)「みんなに笑いを届けているから」といいますが、ちょっと待ってくださいと。大人はある程度違いが分かりますが、笑いの種類によっては、特に小さい子どもや青少年の立場をじっくりと考えてほしいという気持ちでこの見解を出した次第です。

〇参加者
分かりやすいご説明をありがとうございます。僕らも「smile」と嘲笑の違いというのがなかなか分からないというところがあります。いま聞きながら笑いが定型化している、どこかそこに今の嘲笑と笑いの違いがあるのかなということに気づきました。
委員長が解説されたように(笑いが)パターン化されて、ばらまかれ、それを子どもが何回も見るというところに、テレビの持つ責任というものが出てくるのだろうと思いながら聞かせてもらいました。

《【テーマ1】子ども(小中学生)の『いじめ・自殺』報道について》

まず、地元局の代表社による、ニュース映像を用いた問題提起がありました。それを受けて髙橋委員から「いじめ、自殺報道について」説明があったのち、意見交換しました。

〇代表社の問題提起
石川県内の事例で、2年前にいじめの自殺がありました。金沢の近隣都市で、当時中学1年生の女子生徒がいじめによって自殺したケースです。各局とも、ニュースとして放送しています。弊社の初報のニュース、夕方のオンエアをご覧ください。<映像上映①>

〇髙橋委員
「子どものいじめと自殺の報道について」ということでお話させていただきます。私は全国で子どもたちのSOSの出し方教室や自殺で親を亡くした子どもたちを中心としたグリーフケアをしています。
いじめの認知率の推移について、2022年度のデータが先月(2023年10月)出されました。1,000人当たりの子どもに対してどれぐらいの認知率があるかという推移ですが、上昇しています。初めはいじめという認識がなかったものが、いじめと認識されるようになったことで増えているということもありますが、いずれにしても減ってはいないという状況です。
いじめの認知件数は低年齢ほど多いのですが、自殺の数は年齢が上がるほど多くて、これは逆相関の状況にあります。いじめが多いから自殺が多いというわけではないという状況です。子どもの自殺というのは全然減っておらず横ばい状態です。
問題は自殺の動機についてです。実は子どもの自殺は半数以上が原因不詳となっています。これは遺書が残っていないので分からないということです。遺書が残っているもので警察庁が分析した資料によると、小学校の男女とも原因の1位は家族のしつけ・叱責です。中学生は、男子が学業不振、家族のしつけ・叱責で、女子は親子関係の不和が1位になっており、本当は家庭の中の問題というのが中学生・小学生の自殺の原因の上位を占めています。いじめ問題は社会的な問題ですが、家庭内の問題というのは社会的な問題とは捉えられず、報道されにくいということがあります。子どもの自殺、イコールいじめ案件だけというイメージは、間違ったイメージであることは確かです。
ここで用語の使い分けをしておきます。自殺という言葉と自死という言葉をよく使われると思いますが、自殺対策基本法の中で、自殺対策は自殺対策ですが、遺族支援に関しては自死遺族という言葉を使っています。自殺遺族という言葉ではなくて自死遺族という言葉を使います。
自殺の報道の影響というのがあって、大きく報道されればされるほど自殺率が上がる。そして、その記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がるということが分かっています。その影響は若年者層ほど大きく出ます。そして後追い自殺、その人のことを思って後を追って亡くなる自殺だけではなくて、いわゆる群発自殺と言われるような誘発、もともといろいろとメンタルに問題を抱えていたり悩み事があったりした子どもたちが、それに触発されて自殺することが起きます。これを「ウェルテル効果」と呼んでいます。

WHO(世界保健機関)は自殺報道でしてはならないことを提言という形で提示しています。提言のため拘束力がないので、あとは「報道の自由」と「報道する側の倫理観」みたいなものとの折り合いになると思います。
具体的には… ▼遺体や遺書の写真を掲載したり、自殺の方法を詳しく紹介したり、原因を単純化したりする報道はやめること。例えば、いじめで自殺した、先生に叱られて自殺したということです。▼自殺を美化したりセンセーショナルに報道したり、宗教的・文化的な固定概念を当てはめたりすることはやめる。例えば日本人は自殺が多いとか、キリスト教徒はどうだとか、そういう報道はやめるということ。▼自殺そのものを非難してはならない。これは自殺に対する偏見を助長するからであって、すごく難しいことですが、自死で亡くなった方に対する尊厳は保ちつつ、そしてその自死に対して批判はしない。でも自殺を美化しないということです。
これらがなかなか守られていない国が日本と韓国です。韓国も若いアイドルの自殺が多いのですが、やはりその後に若者が影響を受けることがあって、ここのところはしっかりと報道機関がその都度、考えていかなければならないところだと思います。

逆にやるべきことは何かというと、どこに支援を求めるか正しい情報を提供することをWHOがまず言っています。最近はニュースの最後に相談窓口の電話番号を紹介し、「困った人はこちらに連絡しましょう」と報道されるようになっていますが、私が懸念しているのは「最後にあれをつけたら中身はいいだろう」という感じがすることです。免罪符的に最後に相談窓口を紹介する傾向が見られるかなと、すごく懸念しています。
本当は身近な人に相談してほしいのです。いのちの電話やチャイルドラインは知らない人が応対するので、できれば身近な人に相談を、と考えています。
あとは自殺したことの報道だけではなく、自殺と自殺対策に対しての啓発報道をより多くしてほしいのと、日常生活のストレス対処法や、自殺の希死念慮【事務局注:「消えてなくなりたい」「楽になりたい」などの思考や観念を指す】の対処法などを報道してもらえるとよいと思います。自殺から救われるような報道をしてもらえると、幾らか生きづらい人たちが死なずに済むような道を選べるのかなと、思います。地域に根差したマスコミがいかに地域の資源を紹介するかということが非常に大事だと思っていますので、テレビ・ラジオ含めてそういう報道をしてもらえるとありがたいです。
著名人の自殺を報道する際は特に注意してほしいことがあります。改善されてきていますが、自殺の手段を報道することがあったり、「自宅で亡くなりました」や「クローゼットで見つかりました」という報道をしたりしているので、そこは気をつけてもらいたいところです。また自殺によって遺された家族や友人にインタビューするときには、非常に慎重にしなければなりません。意外と抜け落ちがちですが、メディアの関係者自身がその報道をすることや取材をすることによって、すごく心理的な影響を受けて傷つく体験をしているという観点も忘れてはならないと思います。報道する側にもケアが必要です。

子どもの自殺の原因をいじめだと、一つに絞りがちですが、実際は八方塞がりになってしまった子どもが自殺しています。部活動でうまくいかない子どもが、自宅でも家族関係がうまくいかない、勉強もうまくいかない、友達にもいじめられる、こういう八方塞がりになってしまったときに自殺のリスクが上がります。だから、いじめがあったとしても親に話せるとか、それでも何か夢があるなど、少し逃げ道があるといいのですが、それがなくて幾つか自殺の要因が重なると、リスクが上がってしまいます。
いじめの場合だと、自殺の原因を作った側の子どもに、今度は自殺のリスクが上がってしまうという観点も持っておかなければいけません。いじめ自殺の場合、ずっと裁判が続くことがありますので、加害者とされた子どもや、その加害に少し加担したと思われる子どもたち、それを傍観していた子どもたちも含めて、長い間、傷つく体験を何度も何度もしているという感じがしています。
子どもがいて、学校や地域があって、そこで私は子どもに対して自殺予防教育やSOSの出し方教室というのをやっています。教えているのは「本当に身近な大人に相談してちょうだい」ということです。「あなたたちのことを守りたいと思っている大人がいるから」と伝えています。受け止めてくれる人がいて、社会や地域にどんな資源があるかということを子どもたちがきちんと知っていることが大事だなと思います。
そういう意味では、これをきちんと地元のマスメディアが報じることがすごく大事です。この地域ではどういうことがあって、こういう子どもたちが救われているとか、こういうふうに生きづらさからリカバリーした子どもがいるなど、そういう報道がたくさんあるといいなと思っています。

<意見交換>

〇参加者
自殺の原因について、テレビだといじめということがクローズアップされてしまうのですが、家族(関係による原因)のほうが多いとの話がありましたので、「なるほどな」と思いながら聞いていました。
いじめがあった場合に私たちもいのちの電話という表示をします。いろいろ事情があって、例えば身近な人に相談してくださいといっても自殺の場合はなかなか遺族に取材するというわけにもいかなくて、教育委員会や警察など情報が限られる中で、なかなか詳しい情報は分からないところがあります。放送を通じてできることとできないことがどうしてもあるので、放送でできることはどういうことなのかなと思いながら聞いておりました。

〇髙橋委員
ありがとうございます。

〇代表社の参加者
さきほど見ていただいた映像は、いじめによって教育委員会が動いたということが主なニュースで、自殺といじめ、どちらの社会性が大きいと考えたかというと、いじめの社会性が大きいだろうということで取り上げたものです。たぶん各社のローカルニュースでも、去年1年間で1回も自殺単体でニュースにはしていないのではないかと思います。社会問題化して教育委員会が動いたとか、いじめが原因ということで捜査があったとか、そういう形ではあり得ますが、自殺単体をニュースに取り上げるということはローカルではまずないと思います。

〇吉永委員
子どもの自殺というのは私にしてみると本来驚愕の事件です。小学生・中学生が命を絶つということ自体が、何か社会に対する大きな警鐘を鳴らす一つの行動であって、これを誘発をするからという理由で報じないというのはどうなんだろうと疑問に思います。では、そのときにどう報じたらいいのかというと、特にいじめの場合はやはり学校側や教育委員会の側が隠蔽するという傾向が強いわけで、そこを時間が経ってからではなく、うまく取材をしていくことが大事で、取材しなければならない事案だと思います。ただそれをどのタイミングで出していくのかということには、すごく頭を使わなければいけないところかなと思います。
髙橋委員に質問があって、今の子どもの自殺の数がどんどん増えていることにびっくりしたのですが、これは既遂ですね。その背後に未遂の子どもがどれだけいるだろうかと思うと、社会問題としてもすごく迫ってくる重大な案件かなと思ったのですが。

〇髙橋委員
未遂に関しては推定値ですけれども、既遂の10倍はいると言われています。「死にたい、死にたい」と言っている子どもが増えているのが現実で、チャイルドラインやいのちの電話でも増えています。国はLINE相談窓口などを拡充させていますが、スクールカウンセラーの配置の増員というのをなかなか実行してくれません。目の前にいる人に相談できるような人の配置というのを早くしなければならないと思います。私が「スクールカウンセラーの配置を」と言っているのは、精神科(のカウンセリング)につなげてほしいと思うお子さんほど親御さん(保護者)にその理解がなかったり、お金や時間がなくて精神科に連れていけなかったり、自分が虐待しているからカウンセリングにはつなげたくないという親御さんがいたりするからです。

〇代表社の参加者
さきほど上映したVTRの中でも、「自宅で」という表現を使いました。今思えばそれが自宅であろうがどこであろうが、伝えるべき情報なのかということは、お話を聞いていて反省しました。
私たち報道の立場として、格好いい言葉で言えば真実を突き止めたいという、そういう思いが一方にあって、子どものいじめに関する自殺に関しては、割とぼかすところはぼかして報道しなければいけない。知っている情報もこれは精査して出さなければいけないという、そんなことを今、改めて思ったところです。
さきほども、地元に根差した身近な相談窓口など、そういったものを積極的に報道してほしいというお話がありましたし、それは大変勉強になりました。大きな公の全国レベルのところを紹介して、取りあえずアリバイづくりではありませんが、それをつけ加えればいいだろうと、そんな思いもあったように思いました。そこは地域のローカル放送局だからこそできる、そういう紹介や報道の仕方というのは改めて考えなければいけないと思いました。
この問題に関しては、例えば警察が絡む事件報道などとはまた違うスタンスで報道に臨まなければいけないということを感じました。
全国各地の自殺報道を見ていて、最初から学校名が出るケースもありますが、今回の場合は市の教育委員会は学校名を公表しませんでした。人口は5万人を超える自治体ですが、中学校は2つしかありません。市の教育委員会が学校名を伏せている中で、出すべきなのか、出さないほうがいいのか、迷いがありました。(メディア各社でも校名を)出している社と出していない社が分かれていて、弊社は途中から出すことになりました。自治体によって、教育委員会側の最初の公表の仕方がばらばらなので、いざこういう問題に自分たちが直面すると、どう対応すべきなのかという判断は、なかなかつかないのが現状です。

〇参加者
今の件で弊社は逆の対応、あくまで中学校名は出さないという対応を取りました。いまだにその報道の方針です。理由としては、遺族側には出してほしいという話がありますが、それは遺族側の思いであって、報道のデスクの間で話し合ったのは、同じ中学校の同級生たちが、もしここで名前が急に出てきて報道されたらどう思うかということです。そして、弊社は出さないという結論になりましたが、難しいですね。どこかの局は出していない、どこかの局は出している。新聞もおそらく、出している、出していないという対応が分かれた事例です。均一に線を引いてやれるものではないので難しいな、という感じをずっと持っています。

〇参加者
このニュースに関して私は当時、現場の記者をしていて、映像上映した局がやられた放送の内容と全く同じような形で放送しました。あのときは教育委員会から情報がどんどん出てきて、それを積み重ねてニュースにすると、まさに全く同じ形になりました。私たちも「自宅で」という形で方法について報道しましたが、今改めてそれを見ると、これはやったら駄目だったのではないかということを痛感しました。
当時の私には自殺を誘発するという意識が多少ありましたが、積み重なる情報を出していいかどうか、現場の記者としては事実が取れたというので(原稿に)書きました。それを一歩引いた目線で出すべきかどうかというのを本当に慎重に判断すべきだったと改めて思います。

〇榊原委員長
ありがとうございます。これを金太郎あめのように同じようにやるというのもまた変な話で、報道の自由と、(視聴者の)知る権利、それとそのことが及ぼす影響のバランスの中で、局によって(判断に)差があることは、決して悪いことではないと思います。みんなが悩んでいらっしゃることは、日本の放送をやっている方の良識がいろいろな判断の中に反映しているということだと思います。ほかにはどうでしょうか。

〇参加者
何でこのいじめ問題について報道するかというと、いじめそのものは問題ですが、その中で学校がどう対応したかという大人の問題があったと思っています。このいじめ問題について今年(2023年)、第三者委員会が入っていろいろと調べましたが、第三者委員会と学校側との認識不足というのが結構ありました。大人はどう対応したのか、学校はきちんと認識してしっかり対応したのかというところを検証するのが報道なのかなと思いました。

〇飯田委員
さきほど学校名を出す、出さないという議論になりましたが、今やテレビが報じなかったら子どもたちが知り得ないということでは必ずしもないと思います。自殺の状況次第ではSNSを介して子どもたちの目に触れたり、学校名も公になったりすることもあるでしょう。場合によっては、ネットでどれだけ情報が流通しているのかということも加味しながら、必要に応じて青少年に呼びかけていくということも、公共的ないし公益的なテレビ・ラジオの役割なのではないかと思っています。メディアの環境全体でWHO提言のうち、何を報じて何を報じないでおくべきか、というバランスを取っていくという視点が、これからますます重要になってくると考えます。

〇榊原委員長
髙橋委員の意見を聞きたいのですが、今テレビでやらなくても、SNSなどで、地元の人が「この子がいじめっ子だ」みたいに出たりするようです。そういう世の中になっていますが、何かございますか。

〇髙橋委員
問題は幾つかあります。まず子どもの自殺が起きたときに原因追求にフォーカスが当てられがちですが、原因となった人たちのケアというのも実は必要なのです。それは、いじめがあれば、(いじめた側の)子どもたちがそうですし、それに気づけなかった、あるいは対処できなかった教師たちもそうです。本当に教師人生が覆るほど傷ついているし、深い悲しみの中にいます。まず、そういう人たちをケアすることも大事なのですが、そこのケアはポンと飛ばされて、原因追求になるわけですね。
原因探しや犯人捜しを突き詰めると、再発防止になるかというと、再発防止に直結しないことも結構あります。再発防止というのは、やはりいじめがなくなるようなことを、長期的に考えていかねばなりませんが、「誰々さんがいじめをした」ことを追求するのが再発防止になるわけではありません。その仕組み自体を考えていかなければならないのであって、それ以上もう誰も傷つかないというのが本来の遺族支援というか、自殺が起きた後に私たちがやるべきことなのです。しかし、報道によって傷つく人がたくさんいる、それでまた自殺が相次ぐということになれば、これは自殺予防や、自殺が起きた後の報道としてあるべき姿ではないと私は思っています。
もう一つ。SNSでデマが回るということがあり、さまざまなうわさ話というのがSNSで回りやすい。その中で、テレビやラジオの報道がファクトであるということが大事だと思います。テレビとラジオはきちんとファクトを検証して、報道しているということです。
そこに軸足を持っていないと、例えば周辺の人にインタビューして、「そうらしいですよ」のような声を放送してしまうと、ただのうわさを流すことにしかなりません。何を共有すべきなのか、何のためにこの情報が必要なのかを考えて、ファクトを流していくことを軸足にしてほしい。
私自身、今皆さんとこうやって意見交換して、ここにジレンマを感じるとか、悩むとか、そこを一緒に考えながら、よりよい報道をしていただくことだと思います。みんなが悩む、そして今までの当たり前だったことに対して、疑問を持つということが大事なのかなと改めて思いました。

〇参加者
髙橋委員が話したネット(SNS)ということには、危機感を持っています。例えば、我々はWHOのガイドラインを見ていますし、それに沿って各社やっていると思いますし、沿っていなくても念頭にはあるわけです。
ただ、報道の配慮はできるけれども、なかなかそのケアを考えるところは、我々の仕事ではなくなってしまうのかなと思います。我々は伝えるのが仕事かなと思います。
我々はWHOのガイドラインに沿って名前も出しませんし、中学校の名前も配慮して出さないこともあります。でも一方でネットでは子どもの顔の写真が出ます、名前も出ます、どんないじめ、どんな死に方ということが出るときもあります。実際、加害者側も出てくるという中で、ネットでは「テレビ、ラジオ、新聞というのは、事実を隠しているのではないか」と言われていることもよくあるのです。
こちらがガイドラインに沿っていることで、「テレビは何か隠している」というように思われて、要するに、テレビは選択した事実しか流していないと言われてしまう。別に隠しているわけではないのですが、その辺の怖さというのを今、現場として感じています。
我々はまだ実名報道というのを守っていて、それは事実を担保するために、実名というのは必要だろうということをやっていますが、ネット時代では本当にテレビ報道は真実を伝えているのかと言われてしまう。伝えられているのですが、ネットを経験した人たちから見ると、信頼されないのではないかという、そういう思いがあります。

〇榊原委員長
この辺は、ネット情報に対するリテラシーを国民がどう持つかというところで、かなり変わってくるわけです。例えばSNSで炎上する場合、それのインフルエンサーになっている人というのは、1~2%しかいなくて、ほかの人がそれに雷同しているだけだという事実があるわけですね。それに対して、皆さんが悩みながら報道しているというのは、少なくとも複数の目が入って、どうしようか悩んだ上で出しているのです。だから、ファクトの度合いといいますか、その辺について、国民がだんだん気づくということが今後進めば、SNSの情報と、こういう複数の目が入った放送の間の差みたいなものを、みんなが分かってくると思います。
局によって対応が多少違うというあたりで悩みながらいくというのが、私が聞いていると、むしろ健全といいますか、もう絶対これだというよりは、いろいろ考えて悩んで、多少その差が出るということが重要なのかなと思いました。

《【テーマ2】子どもを対象とするカメラ取材の状況と問題について》

別の代表社によって、カメラ取材映像の紹介を交えながらの問題提起があり、その後、意見交換に移りました。

〇代表社の問題提起
5~6年ぐらい前からでしょうか、学校内で、子どもをテレビのニュースで撮影しようとする際、以前より撮影がしづらくなっています。学校側の要望で、主に子どもの顔の撮影ができませんと言われます。もともとは保護者にそういう要望があって、撮影しづらくなっています。もう一つは、制服や体操服の胸元の名札に名字があって、それが映像に映り込むのを避けるよう学校側から要望されるケースが出てきています。
実際に映像を見ていただきます。<映像上映②>

まずは、2学期の小学校のスタートのニュースです。金沢市の近隣の小学校で取材をしましたが、学校側から顔撮影がNGとありました。しかし、虐待を受けていて、親から逃げているような子どもではなく、親(保護者)の意向でNGですと。広いカットで登校風景を撮影して放送するのはいいですよと学校側から言われました。登校のときは後ろ打ち(子どもたちの背後から撮影)にしたり、広い映像にしたりしました。要は子どもの表情がない(撮影できない)のです。20数年前には、普通に登校して来る風景の中で、子ども同士が楽しく一緒に「久しぶりに会ったね」というような表情をアップで撮って、ごく普通に放送していました。社会的な条件がいろいろと重なって、撮影や放送しづらくなったなと、感じます。
もう一つ紹介します。こちらは対策編に近いところがあります。学校の中でのカメラ取材のとき、胸元にある名札の映り込みについて、感覚としては5~6年前から結構言われるようになりました。子どもの顔と胸元の名札が同じサイズの中に、例えばワンショットの中にあって、顔と名前が一致する映像を見た学校側や保護者から、「何々小学校の○○さんが付きまといに遭うのではないか」という指摘です。住宅地図でも使えば、校区内の○○という名字は、探そうと思えば探せるわけです。こういうことを懸念する学校があります。これは石川県に限らず、隣の福井県でも同じようなことを言われました。
教育委員会から指示があるわけではなく、校長や教頭クラスの管理職の判断でそういう懸念が出されているようです。いつもはうまく名札が見えないような角度にするなどして、かわしていますが、場合によっては学校側と話し合って「(名札部分に)白いテープを貼りましょうか」という提案も、それは少し行き過ぎかなと思いますが、提案することもあります。

ローカル番組に、6年前から始まった子どものクラブ活動を紹介するコーナーがあって、そこである対策をしました。よく見ると子どもたちの胸元に、番組のマスコットをマークにした缶バッジがあります。クラブ活動でかなり動きが激しいところで、もし胸元に名札があると、映像として隠したり、角度を変えて見えなくしたりは相当難しいのですが、胸元に缶バッチをつけることで、名札が隠れて見えません。このコーナーを始めたころから、名札が見えないような対策をしてきましたが、ちょうど2年前から、この缶バッチを作って、つけてもらうことを対策にしています。番組に親しみを持ってもらえるというのも併せて、いわば一石二鳥でやっています。
いずれの場合も、学校側の奥には保護者がいます。保護者と学校側の要望について映像面でどう配慮するのか、先方との話し合いはもちろん、局内でのさまざまな対策、やり方を考えないと、子どもたちの元気のよい姿が放送しづらくなっているという報告でした。

<意見交換>

〇榊原委員長
名札が映されると、何が困るのでしょうか。個人が同定されると困るということだと思いますが、どうして学校の校長らは、そういう判断をするのかという疑問です。

〇参加者
私は小学校で保護者会(の役員)をやっていたので、よく聞いた話ですが、保護者の中に子どもがテレビに映ることをよくないと思っている人は結構います。毎年、春になると多くの学校では、「テレビに映っていいですか」や「校内で作る広報誌にお子さんの顔が写ってもいいですか」という回答用紙がきて、保護者がそれにオーケーかどうかを書きこみます。広報誌にも写りたくないという保護者がいます。広報誌(の印刷)を、白黒だったのをカラー化しようとしたら、「カラーだとよりリアルになるので白黒のままであってほしい。その広報誌がどこかに回ったときに、自分の子どもが誘拐されるかもしれない。不審者につけられるかもしれない」と本気で思っている保護者が多くいます。そういう保護者の声を受けて、すごく慎重になっている学校があります。まったくおおらかな学校ももちろんありますが、厳しい保護者がいるところは、学校側も厳しくなっているなという印象があります。
もう一つ。学校取材のとき、うちの子は映してほしくないという保護者が言う子どもを、その場から外して、大丈夫な子どもだけで撮影できるようにしたことがありました。外された子どもはそんな事情を理解していないので、なぜ自分だけがその場にいられないのかと半泣きになってしまいました。みんなと一緒にインタビューに答えたいのに、先生から「あなたは駄目よ」と言われ半泣きになっている。こんな現状はよろしくないなと実感した記憶があります。
子どもを狙った事件などが増えれば増えるほど、保護者は昔と比べてものすごくデリケートになっているなというのを実感します。だから、その懸念も無視できず、なるべく大丈夫な範囲内で撮影することと、あとは本当に子どもの顔が分からないと駄目なのか、必要性も考えるようにしています。子どもが映らなくてもいいものもあれば、入学式や卒業式に子どもたちの顔は映さないでくれと言われたら、何のために取材に行っているのか分からなくなることもあって、大丈夫な学校に相談を持ちかけたことはあります。

〇榊原委員長
このような状況を薄々は想像していたのですが、校長としては、なるべく問題を起こしたくないし、別に取材に来てくれなくてもいいと考えれば、そうなると思います。どうでしょう、法律的には何かあるのですか。肖像権というのはどうなるのですか、ここに弁護士の先生(緑川副委員長)もいらっしゃいますが。

〇緑川副委員長
(取材対象が)子どもだから、(親権を持つ)保護者の意見があるという話で、そこで難しくなっていることはありますが、基本的には子どもだけの問題ではなく、例えば大人だったとしても、インタビューをしたときに顔を映していいですか、名前を出していいですか、嫌ですと言われたときに出せるかどうかということと、同じようなことなのかなと思って聞いていました。
例えばプライバシーの問題になったときには、そこはプライバシーの利益と、報道する利益の利益衡量ということで、最終的には判断されていくわけです。そうすると、そこで子どもの顔や名前を出すと、それは嫌だと言われても、出して報道するだけの利益があるのかどうかは、その都度考えながら進めることが必要になっていると思います。
特に子どもの誘拐というと、あまり一般的ではないのではないかと思いますが、絶対ないかというと、そうではないことではあります。より問題とされるのは、DVや虐待で支援措置を受けている、それで通っている学校を伏せたい、そのことすら言えないけれども、伏せたいということしか言えない事情がある子どもも今は、結構いると思います。学校側が、確認できない状況のまま映してしまうという可能性があることを気にするというのも、現実問題としてあるでしょう。報道する側は、そういう可能性があるかもしれないということを考えながら、どこまで報道するか検討していくということだと思います。
私が子どもの頃はテレビに出るということは特別なことで、そこで出たくないとか、名前を隠すというのはあまり考えられない時代でしたが、今は個人情報保護法も浸透してきて、どちらかというと「匿名社会を私たちは選んできている」、そういう方向に社会全体が向かっていて、私自身もそういう状況を受け入れていると思えるようになってきています。やはり昔とは違う社会状況というのを前提にしながら、個別、具体的に判断していかなければいけないと思います。
はじめに申し上げた利益衡量というのは、そのときの社会状況を前提にしたところでの利益衡量になりますから、「昔はこうだったのに」と言っても、そこは利益衡量の衡量材料にはなりません。今すこし行き過ぎているのではないか、そこまででなくてもよいのではないかというところで、さらにもう一歩進めて、どうしていくのがよいのかを提案しながら報道を考えていくといいのかなと思いました。
個人的には、入学式の放送では、後ろから映したとしても、別にもうよいのではないかな、前から映さなくても、後ろから入学式の状況を映しても、そのときの様子は報道できるかもしれないと思います。名札の問題をうまく調整していた放送局のやり方は、今の社会状況や、そのときの学校の状況を考えたときには、一つの方法かなと思いました。

〇参加者
僕の取材経験も全く同じで、学校側に「後ろから絶対撮ってくれ」や、インタビューもひどいのは「顔を切ってくれ(顔を映さないでくれ)」みたいな話になって、それは校長や教頭の判断ですから、おおらかな学校もいくつかあるので、そちらにお願いしていくようになります。
小学校の入学式の様子を後ろから撮ってもニュースは成立するのではないかと、お話がありましたが、成立はするでしょうけれども、そこに何のニュース価値があるのかなと思っています。ニュースにしたときは、やはり子どもの喜んでいる顔こそが、僕らはニュースの価値であって、入学式があったということ自体がニュースではないと思っています。もしどこの学校も(子どもの顔を)撮れないのであれば、たぶん取材に行かないのではないか。だからどうしても子どもの笑顔が撮りたい、そこにニュース価値があると、僕は思います。

〇参加者
さきほどDV被害から保護された子どもたちという話がありましたが、僕が聞いたところでは、たとえ顔が映らなくても、その子の持っている持ち物が映るだけでも、その子が特定されるということで、危ない事例があったようです。弊社では、顔を映さないだけではなく、その子の持ち物なども映らないように気をつけることがカメラマンの申し合わせにあるようです。だから、単純に「プライバシーで」というだけではなく、DVや虐待から逃げている母親の息子や娘という状況が、最近すごく多いということを感じています。

《関連の問題提起「子どもが映った放送番組素材のネット配信について」》

〇榊原委員長
次は、関連する事例として、子どもが映った放送番組や素材のネット配信についての問題提起があります。どうぞお願いいたします。

〇参加者から問題提起
古い話ですが2012年に、石川県内の都市にある公園で、屋外のスポーツテストをしていた高校生が、集団で熱中症の症状が出て病院に搬送されました。その一報を受けて記者とカメラマンが取材に行き、当時の状況を女子生徒にインタビューをして放送しました。
その取材内容が東京キー局にも送られ、全国向け放送ではなく、関東ローカルで放送されました。当時はまだネット配信という概念はあまりなかったのですが、放送した内容が、第三者に切り取られて、インターネットにアップされてしまいました。それをきっかけにして、その女子生徒の容姿に対する誹謗中傷が発生して、その生徒がすごく精神的な負担を受けてしまいました。
取材時の状況としては、未成年者のインタビューの際は、できるだけ保護者の同意を得るということでしたので、そこに迎えに来ていた保護者の了解を得た上でのインタビューでした。しかし、保護者としては石川県内だけの放送という認識だったので、そういう事態を受けてお怒りになってしまい、弊社としてはあちこちに削除を依頼する事態になりました。それで大部分は消えたということも含めて、納得してもらいましたが、その当時から弊社では、ネット上のいわゆるニュース映像として子どもの映像が配信されることについて、かなりシビアな対応になりました。つい最近までですが、18歳未満の子どもについては、インタビューも含めて、基本的に配信していませんでした。
だから、さきほどの入学式のニュースなども基本的には配信しないという流れで、2~3年前まではやっていましたが、最近の状況を踏まえて、「明るいニュースで承諾が取れればアップしましょう」となりました。明るいニュース以外の、事件・事故関係の子どもの映像が載ったものについては「ネット配信はなるべく控えましょう」という内規で動いているという状況です。
ただ、それも弊社だけの話であって、同じ系列の他局は全く意識していないというところですし、東京キー局ももちろんそういう意識をしていないということです。子どもが映った映像の場合、地上波だけでなく、ネットにも出されたときの対応について、特に削除が厳しいネットの状況については、頭を悩ませているところがあります。

<意見交換>

〇榊原委員長
確かに放送局のほうからネットに使えるような形で出すと、そこに責任が生じると思いますが、今はそうではなく、ただ普通に放送したものをまた録画してネットに、何の許可もなしで拡散されるという状況になっていると思います。ほかの放送局、あるいは委員から、今の問題についていかがでしょうか。

〇参加者
配信を前提とした報道というよりも、ややPRも兼ねた取材というときに、保護者全員の許諾、何なら誓約書みたいなものを取ったケースがありました。
とくに今、気をつけているのはプールの取材です。プールは女子児童であれば水着、男子児童であれば上半身は裸の場合が多いと思います。キー局から「男子であっても、胸元が見えるようなものは映さないでほしい。今はデジタルタトゥーなどという事例もあって、気をつけてほしい」と言われましたが、プールに入ると子どもは、はしゃいでジャンプしたりするのです。結果的にどうしても胸元が映ってしまう。男子なので気にしない人のほうが多いのですが、大人になったときにこれを見たらどうかとか、これを見て今いろいろな方がいますので、(性加害などの)標的になるというケースも考えられなくないということで、20~30人はいましたが、全員の保護者に、許可を取ってくれということになりました。配信前提のものでしたので、要は全世界に見えるような状態になります。プール教室にお願いして、保護者全員に一筆書いていただきました。これは数年前ですが、今年(2023年)も似たようなことがありました。そこまで苦労して撮るべきなのかな、というぐらいになっているのが実感です。そこまでやっています。

〇代表社の参加者
今、配信の話でありましたが、弊社もローカル番組の配信を始めました。取材先には放送もデジタル配信もありますよと、言うようにはしていますが、どこまで言えるかという問題があります。承諾書の話になってくると、さきほどのお話のように、20人の承諾書を取ることを前例にすると、取材よりも承諾にかかる手間のほうが多くなって、取材するほうが音を上げてしまいます。非常にバランスが難しいし、どこまでそれをやっていくのか、それをルールにすると現場取材が難しくなってしまうと思います。
さきほど参加者が、やはり子どもの表情が一番のニュースだとおっしゃり、確かにそのとおりで、我々も後ろから映すことがいいとは全然思っていません。けれども、学校の外での行動であれば映像取材は構いませんが、学校の児童・生徒が映るとなると学校の意向を聞かざるを得ない。そこが今のネックなのかなと思います。
あと、水着の話が出ていましたが、若い女性記者と話していたら、海開きかな、海で若いお子さんが楽しそうにはしゃいでいる映像を撮ろうと思ったのだそうです。しかし、こういう昨今の問題があって、それは問題かなという自主規制のような形で取材する側が遠慮してしまったということで、それはあまりよくないなと思いながら今お話を聞いておりました。

《【テーマ3】フリートーク》

参加者に、日常の取材活動などを通じて関心を持っているテーマについて、自由に問題提起してもらいました。

(1)「性的少数者である青少年の取材の留意点などについて」

〇参加者の問題提起
実はまだ取材できていないのですが、取材を試みているのは、LGBTQ(性的少数者)の高校生の男子で、学校で男女共用の服装を作ろうという運動をしています。本人は取材にオーケーで、両親もオーケーという状態ですが、ディレクターは取材をして放送するときに、本人と両親は了解しているけれども、実名を出していいのか、仮名みたいな感じで出せばいいのかと結構悩んでいます。LGBTQに関することが、この2~3年で急に話題になってきたので、僕らも過去にあまり事例がありません。ディレクターに対してどう指導していいのか、なかなか思い悩むところがあります。未成年のLGBTQの方に対して取材するときの留意点とか、どうしたらいいのかという事例があれば教えてほしいというところです。

〇髙橋委員
匿名にすることで偏見を助長する可能性もあるのではないでしょうか。偏見とのバランスはすごく難しいなと思っていて、LGBTQだから仮名にしなければならないのか、名前を伏せなければならないのかという議論にもなるので、基本的には本人の同意(に従うべき)なのかなと思います。

〇榊原委員長
私たちは、こうすべきだとか、これが正しいということを言う委員会ではなく、このようにしたらいいのかなと一緒に考えていこうという委員会です。さて、どうしたらいいのかなということですが。

〇吉永委員
ディレクターの方が悩んでいるポイントはどこですか。

〇参加者
悩んでいるというより、もし実名を出したときに、本人はいいと言うけれども、予期せずに(SNSなどが)炎上したらどうしようということです。過剰(な懸念)といえば過剰なのですが、そういう懸念をしているようです。

〇吉永委員
確かにLGBTQの状況は今すごく変わってきていて、日本では過渡期にあるのではないかと思います。この高校生は、匿名の社会の中で実名を出していいと言っているわけで、彼は孤独な戦いをしているわけではなくて、彼の周辺には理解者がいるでしょうし、そこで一緒にやろうという友人が何人かいるのですよね。その姿勢を尊重していかないと世の中が変わっていかないような気がします。
それでも、「何かがあったら」と考えていくと、もう結局やらないほうがいいという話にどうしてもなってしまう。学校がどのくらいの理解を示しているのか、学内的にもどのぐらいの理解がされているのか、どのくらい一緒にやろうという人がいるのか、という校内の雰囲気などをしっかりと総合的に判断した上で、本人の希望に沿うのか、本人を説得して匿名にさせるのか仮名にさせるのかという話になると思います。本人が(実名でと)言っているときに、逆に仮名にしろというのはなかなか難しいことではないか、という気がします。

〇参加者
LGBTQの方の取材の難しさということでは、弊社のディレクターも少し迷っているところがあります。取材しているのはLGBTQの小学生の子どもですが、その子は、小学校低学年で自分の性別に違和感を覚えているようです。本人は何となくそれを自覚しているという状況で、取材を申し込んで話を聞くことができました。本人は何となく取材に前向き、ただ保護者が「成長過程で心が変わるかもしれないので」ということで、取材に少し戸惑っていらっしゃいます。ディレクターとしては保護者が戸惑っている状況なので、さらに踏み込んだ取材をしていいのか、というところで足踏みしている状況です。
性的マイノリティーの人は成人したあと、小さい頃からすごく違和感を覚えていたと語る人が多いと思います。メディアとして、現時点でそういうふうに感じている子どもがいることを報道するのは重要なことだろうと思う反面、保護者の思いとそこを報道するかどうかで葛藤するという部分があります。子どもは成長とともにいろいろと学んで心は変わっていくと思いますが、そういう中で、この性的マイノリティーと自覚している子どもにどこまで接近して取材をしていいのか、また、取材のときにどんなことを配慮するべきなのかというところをすごく迷っている状況が、弊社にもあります。

〇榊原委員長
今のは、一番最先端の問題です。いろいろ摩擦があるようなことについては、ある程度勇気を持って出していく、きちんとした見識を自分たちでまとめて出していく、ということが世の中を変えていくのでしょう。SNSがある、あるいはネットがあると言いながら、こういう放送がとても大きな社会的な影響力を持っているというのも事実だと思います。換言すると、世論を意図的に操作するわけではありませんが、出していくということはある程度勇気を伴います。勇気が要りますが、(社会的に)必要なことだと思っています。

〇沢井委員
ネガティブなことは駄目なのかというと決してそうではなくて、むしろネガティブと思われる事柄に今後社会、環境を変えていくために大事な、今つらいけれどもこれをどうにかしたいという子どもなり保護者なりの意見があると思います。
私が子ども番組を監修するときにいつも考えるのは、国連の「子どもの権利条約」と、その条約の内容を日本の法律として初めて取り入れて、今年(2023年)4月に施行された「こども基本法」です。有名なのが子どもの意見表明権です。子どもにも意見を表明する権利があることと、子どもも社会的な活動に参加することができる、意見を言うだけではなくて、大人と一緒でもいいから、何か社会的活動に参加することができるということです。だからLGBTQの子どもの場合でも、社会をもっと住みやすく、生きづらくないように変えたいという願いを保護者と共に持っているでしょうし、その仲間にもあるでしょう。そういう潮流をメディアは誇張することもなく、「でも、そういう人たちがいますよ」ということは出すべきだと思います。
保護者が戸惑っていらっしゃるのは確かでして、例えば4歳とか5歳、6歳の子どもでは、そこで発達の過程で変化して、あれに顔出ししなければよかったと後で悔やむことがあってはいけないという心配だと思います。ただ、メディアというのは現在の出来事だけではなく、今がどのように積み重なって変わり、歴史となっていったかということを、映像として残すというミッションもあると思います。そうすると縦断的にずっと追っていく場合は、最初は顔出しではなく5歳の何とかちゃんはLGBTQの傾向があって、こういうことを悩んでいますということをずっと追っていく。私の感覚だと10歳を超えたぐらいのときにはもう本気で、そこである程度その子の人生を決めることがもう起きているように思います。10歳か11歳ぐらいのとき、小学校高学年ぐらいのときに、自分はもう意見をきちんと言いたい、顔を出して言いたい、私ではなく僕でいたいというようなことも言いますので、もちろん保護者とも話し合って、私は(放送に)出してもよいのではないかと思います。縦断的に追っていって、ある程度伏せていたことをだんだん開示して、最終的にそれは長編ドキュメンタリーになるかもしれない。それはそれで意味のあることだし、歴史的な映像になると思います。
所詮子どもなのだから、と保護し過ぎてもいけないし、隠すということも一つの偏見を生むことになるので、本当に小さいときは少し保護的であるけれども、それを撮った上で、その子どもの人生ということでドキュメンタリーにする。本当によい番組になるのではないかと思いますし、そういうことがあっていいのではないかと感じます。私は子どもの意見表明というのは顔を出すもので、表情が大事、映像のテレビですから、それはぜひできるだけ顔は撮ってほしいと思います。

(2)「ルッキズムへの配慮について」

〇参加者の問題提起
ルッキズムという言葉ですが、最近その言葉が社会問題として注目されているので取り上げさせてもらいました。見た目で人を判断したり、容姿を理由に差別したりするという意味ですが、実際に放送の中でも少しずつ関わってきます。人を見栄えで評価するのはすごくよくないことで、例えば言葉にすると不細工など、そういった言葉を使ったら駄目なのはもう当たり前の話ですが、逆にイケメンや美女など、人がよい意味で表現してきたものが青少年にとってどんな影響を及ぼすのかとか、成長に対して問題になったりするのかというのが、気になっています。放送の中で今後さらに厳しくなっていくのかなと思います。今後どうやって向き合っていくべきなのかということを、聞いてみたいです。

〇榊原委員長
本当に難しい問題、なかなか言葉というのは、非常にいろいろな意味合いがあるので、ネガティブなことだけじゃなくポジティブなことでもやっぱり言えないと。 
とても難しくなってきている時期なのでしょうが、その辺について何かご意見ございますか。

〇吉永委員
今は「美人アナ」と言っても駄目なんですよね。だからそういうのはちょっと過激な反応。20年近く前、2005年に「人は見た目が9割」(竹内一郎 著 新潮社刊)という本が出ました。そのことで何も問題もなく、みんな結構読んでいたような気がします。見た目が9割と言われたら、それこそ究極のルッキズムだよね。でも当時は、それを笑って違うんじゃないのという人と、そうだよなという人がいて成り立っていた世の中でした。今はものすごく変わったんだなという気がします。
かつてのおおらかさというか、それが全くなくなってしまって、ただネットで容姿をバッシングするというのは、本当に卑劣なやり方だよね。私たちがそれを避けるために、全部やめていってしまうと、逆にそれを認めたことになりはしないかという、非常に複雑な屈服感というか、そういうのがありますね。

〇髙橋委員
ルッキズムの問題は、例えば肥満の人がいたときにそれをいじるなど、そっちだと思います。日本はそういうことに関して、いじる文化は結構あって、それはおおらかといったらおおらかなのかもしれないけれども、アメリカだと、そういうことをやったら結構批判されますね。体型のことをいじるという、そこなのかなと。いいのよりも悪いほうです。

〇吉永委員
それは人によってだから。私は別にデブと言われても、全然傷つかないですけれども、やっぱり傷つく人だっているし、そういう人には言ってはいけないというように、人を見てそう判断をしていくとか、関係性の中で発する言葉を選んでいくというようなことが全くなくなってきているのかなと思います。

〇榊原委員長
関係性の中でというか、文脈の中でどういう意味で言ったかというのはもちろん重要で、「アホとちゃう」と言われたって、大阪の人は何もそれは普通の言葉で言っているわけです。それは「おまえはアホだ」「ばかですね」というのと違うので、その辺の文脈のこともきっちり捉えて、言葉狩りで萎縮することではないだろうと思っています。言葉狩りというのはやる気になれば幾らでもやれますので、文脈としてそういう意味ではないことを、矜持を持って伝えるということが必要になるのかなと思います。

(2)「ラジオ局(FM放送)の立場から」

〇榊原委員長
青少年委員会が委嘱している中高生モニター制度の中高生に、ラジオ番組について尋ねたところ、いろいろな意見があって、とても好評でした。好評というのは2つあって、そういうお題を出すと、「ラジオをほとんど聴いたことがない。初めて聴いた」という人が多い。これは今のラジオの状況かもしれませんが、逆に結構多くの中高生モニターが、「ラジオだとしゃべっている言葉がすごくそばにいて、言葉の持つ雰囲気や、その人の気持ちが身近に感じられる」ということをとてもよかったと言っていました。それから、ラジオを聴くようになったという人もいます。ラジオの持つ意味はいろいろあると思いますが、さきほどから議論にしている、例えば顔を出さないとか、視覚的な情報に対するNGに対して、逆にラジオは乗り越えられる可能性があるということも、今思いました。

〇ラジオ局からの参加者
委員長がお話しいただいた中で、若者がラジオを初めて聴いたというお話がありましたが、私は数年前にあるキャンペーンのため、局の前で鉛筆を配ったのです。そのときに小学校2年生の女の子が学校帰りに赤いランドセルを背負って、「私にもちょうだい」と言うので、「もちろんどうぞ」とあげるとき、聴かないだろうなと思いながら、「ラジオって聴く?」って聞いたのです。そうしたら、「ラジオって何?」と逆に返されました。これは思った以上のショックでした。それくらい家にラジオがないということになるのだと思います。あるのは車の中や、あるいは防災のラジオは持っていても、逃げるときのかばんの中に入れておくのが日常の風景ということなのでしょう。
それから、(中高生モニターが)ラジオを身近に感じるというお話もありましたが、私は前から言っているのは、例えばテレビだと今はあまり言いませんけれども、「お茶の間の皆さん」という言い方がよくありますが、ラジオの場合は「ラジオの前のあなた」なのです。つまり1対1として放送するということが多いのです。そういうこともあって、身近に感じてもらえるのかなと思っています。そういう意味では心に届くこともあるのかなというように思います。
一番初めに委員長から嘲笑は笑いではないというお話がありました。では、いじるということと、いじめ、嘲笑みたいなものの違いの境はどこなのだろうと思っていましたが、それは、地域によっても違うだろうし、人によっても違うだろうし、文脈によっても違うだろうというお話があったので、「なるほどな」と思いました。境というものはここだと区切れないものだと思いました。私も「はげ」と言われても何とも思いません。むしろおいしいと思います。もう自分で言っているのですが。ただ、テレビで、若い女の人に結婚相手についてインタビューをしたときに、はげとデブは嫌だと、全然知らない女性が言ったのです。それに関してはちょっとショック、そういうところですね。
それからテレビの方々は、映像に対しての大変なご苦労とご配慮をされているんだなと思いました。児童の胸にキャラクターの缶バッジをつけることは、ラジオにはとてもないジレンマです。
ネットの話も多くありましたが、放送で倫理を保つことはもちろん必要です。ただこれがネットのニュースの波にのまれるということも最近はあるなと思っています。委員長からファクトの度合いが国民的に広まることが望ましいというお話がありましたし、ペンは剣より強しという言葉があるというお話もされました。このペンをもう全国民が既に持っているんじゃないかと思ったりもしました。
そんなところから最近は、メディアたたきとか、むしろメディアのほうが遅いし薄いしなどの批判で、メディアが弱くなっていく倫理を保っていることが、結局メディアは駄目だという風潮がネットの中ではあるように感じています。ありがとうございました。

〇榊原委員長
時間がちょうど来ましたので、ここで意見交換会を終わりたいと思います。

事後アンケート 概要

意見交換会終了後、参加者全員にアンケートの協力を依頼し、9割以上に当たる14人から回答を得ました。その概要を紹介します。

  • ▼「『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー』に関する見解の解説」について
    • 「見解」が発表された時に一度読んではいたが、改めて「苦しんでいる人を助けずに嘲笑する」ことが「子どもの中に芽生えた共感性の発達を阻害する可能性があることは否めない」ことをテレビ局側は肝に銘じる必要があると感じた。
    • ローカル局では該当するようなコンテンツを制作する機会は少ないものの、番組編成という点では当事者であるため、見解の意図や番組制作のこれからについて関心があった。直接解説をお聞きし、専門的な見解について理解することができた。一方で、地上波放送のふり幅が小さくなる懸念も感じられ、低年齢層の接触率が高まっているネット上やゲーム等の激しいコンテンツに加速度的に意識が向き、なんらかの影響があるのではないかとも思った。
    • 「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出は、それを視聴する青少年の共感性の発達、人間観に影響を与えるという科学的な指摘はとても腑に落ちる部分がありました。弊社の番組でも、出演者どうしの信頼関係の中で「いじる」という展開も過去にありましたが、テレビで放送する際は「関係性」などまったくない状態ですので、常に「他人の心身の痛みを嘲笑する」という表現がないか、しっかり意識しておくことが重要だと感じました。
  • ▼ (テーマ1)「子ども(小中学生)の『いじめ・自殺』報道」の意見交換について
    • 学校や教育委員会の一方的な説明に基づく報道は避けなければならないと思いますが、なかなか家族の声にまでたどりつけず、学校側の言い分を批評するにとどまっているように思います。自殺に関する報道について、詳細を伝えることが周囲に影響を与えることにつながるということを再認識しました。何を伝えるのかを常に考えながら報道していくことが大事なのだと実感しました。
    • とかく自殺の件数に目を奪われがちだが、その陰では未遂者が10倍にも上るという数字の多さに驚いた。いじめに関する自殺については、1つの原因だけではなく家庭内の事情などいくつかの要素が重なることで、最終的に死を選んでしまうという複雑な状況も学びになった。また、相談を受け付ける支援団体のニュース内での告知に関しても、全国規模の団体を紹介するよりも、より地域に身近なところで活動する団体を紹介することが、ローカル局として意義があることも学んだ。今後はこうした地域の支援団体を、映像を通して企画などで広く周知する取材も必要だと感じた。
    • 「被害者やその家族の保護」という観点はもちろんですが、「加害の子どもの保護も必要」という委員の意見に同意します。更に加えるなら無関係でありながら「同じ学校」や「同学年」というだけで疑いの目が向けられる被害もあり得ると感じます。SNSが発達した現代では報道の一部が切り取られて拡散することもありますが、表現の自由や報道の自由を外部から不当に制限されることのないよう自主・自律で配慮する必要があると思いました。
  • ▼ (テーマ2) 「子どもを対象とするカメラ取材の状況と問題」の意見交換について
    • 時代や環境の変化に伴って、子どもの取材は大変、難しくなっているのは事実です。ただ、子どもたちの主張も大事にしてあげたい、とも思います。何を取材して、どう報道したいのか、学校や保護者に伝わるような工夫をし続けるしかないのかな、と思います。
    • テレビが与える影響は大きいので、それにより青少年が傷ついてしまうことはあってはならないことだと思います。ただ、後方からの取材、顔を映さない取材が必要な部分ももちろんありますが、そういった撮影方法が増えていくことで、あれもこれも「子どもの取材は顔を映さない」が当たり前になっても、せっかくの表情やその場の空気が伝わらないように思います。私たち報道する側は、すべてにおいて引いてしまうのではなく、その都度、学校等に何を報道したいか説明し、お互い理解した上で臨んでいきたいと感じました。
    • 実名報道を原則に長年報道でカメラマンとして働いてきたので、個人情報保護法で「匿名社会を選択した」という委員の発言は重く受け止めた。ただ、そんな状況でも実名による将来への記録、実名報道による災害時の安否情報発信もあるという委員の発言もあり現場を指揮する身としては励みになった。各社とも実名匿名の判断をかなり悩みながら取材している状況も聞くことが出来て有益な意見交換になった。
  • ▼ (テーマ3) 「フリートーク」での意見交換について
    • LGBTQやルッキズムなど新たな社会のうねりにどの社も直面していることがよく理解できた。
    • LGBTQの青少年の取材については、本人・両親が了解しているのなら実名で報道しても問題ないという委員からの意見が参考になった。「本人・両親は、LGBTQのことをよく思わない人もいると分かった上で、取材や実名報道を了承している。もし周りからの摩擦があったとしても彼らは覚悟の上で意見を表明しようとしている」と委員が意見を述べていた。私もその意見はその通りと感じ、今後の報道にも参考にさせていただきます。
    • 青少年のLGBTQについての意見交換の中で、子どもの意見表明権についてご意見をいただきました。今後の成長に影響を与えるのではないかと悩むことも大事かもしれませんが、その年齢にしか感じられないことがあり、本人の意思があれば、そこに耳を傾けることも大事なのかもしれないと感じました。
  • ▼ そのほかの意見・感想、BPOや青少年委員会への要望など
    • 対面式での意見交換会が有意義であることはもちろんだが、web形式での意見交換会との併用にすれば、もっと大勢が参加できて良いのではないかと思った。
    • 学校での子どもの匿名取材について、委員には意外だったという印象を受けました。匿名性が進み過ぎたと感じることもあり、今後同じような機会があれば匿名の是非を考えることも意見交換のテーマとして取り上げていただければと思います。
    • 各局同じような悩みを抱えていることを実感し、勉強もさせてもらった大変有意義な意見交換会でした。報道する側には当たり前のことであっても、視聴者の考えや思いと離れていることもあるかと思います。こうした機会に、改めて「何のための報道なのか」を考えることができ、大変良かったです。

以上

2024年1月26日

関西ラジオ局意見交換会を開催

放送倫理検証委員会は2024年1月26日、関西に拠点を置くラジオ局との意見交換会をMBS本社で開催、12局31人が参加した。委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、毛利透委員の6人が出席した。ラジオ局との意見交換会は2023年3月の東海地区に続く2回目。

開会にあたり小町谷委員長は、近年、ラジオの放送内容を問題視する聴取者意見が連続していることに触れ「現場で起きている問題を共有し、放送倫理を一緒に考えていきたい」と話した。自由で寛容なメディアであるラジオで今、何が起きているのか。委員会が抱いた危機感を共有し、ラジオ現場の声に耳をかたむけていきたいという意見交換会の目的を説明した。

ゲストの問題発言の対応「過激トークとの向き合い方」

まずは、ゲストから問題発言が出た時にどう対応していくのか。実際の放送事例をもとに問題点の整理や質疑へ。報告者はMBSラジオ。ニュース解説の中で、北朝鮮ミサイル実験に対する日本の対応について、ゲスト評論家が朝鮮学校の存在をからめた発言をし、関西の人権団体から抗議をうけた。その後、番組内で「朝鮮学校の児童、生徒に対して、配慮の足りない表現がありました」というお詫びコメントを放送。加えて、朝鮮学校の授業を見学するなどして理解を深めていったことを報告した。MBSラジオの番組審議会からは「マスメディアはいったんマイノリティの側にたって考える姿勢が重要」との指摘をうけ、報告者は「現在の朝鮮学校や民族教育に関する知見や知識について、在阪メディアとして決定的に不足していた」との認識を示し「スタッフ、出演者それぞれが感度を高めていくことを一歩ずつ積み重ねるしかない」と総括した。
委員から放送時のアナウンサーの対応への疑問が呈されたところ、参加者から「問題発言があっても、大物ゲストだとアナウンサーの立場は弱い。(発言を)いさめたあと関係がギスギスする。番組の今後のことを考えてしまう」といった現場からの悩みも伝えられた。岸本委員長代行は「年長の人、感度のいい人をつけておいて、アナウンサー任せにしない」といった組織的な対応についての提案がなされた。

あらためて政治的公平性を問いかける「ラジオの現場から」

続いての報告はラジオ大阪で、2023年1月に放送された番組「大阪を前へ!」「兵庫を前へ!」について。内容は特定の政党の議員や立候補予定者をゲストに招き、本人のプロフィールや活動の紹介、友人や支援者による人柄紹介といったもので、一定のフォーマットに沿った15分と30分の番組が計15本放送され、特定政党の議員、関係者計18人が出演した。会場では初回1月12日の放送(6分)が流された。放送後にBPOに視聴者意見として「特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」といった内容が寄せられ、BPOは「政治的公平性についての認識に問題がある」として討議入りを決めた。
このテーマについて弁護士の井桁委員が個人的な意見も交えて、法的・放送倫理的な問題点をレクチャー。冒頭「(この放送が)車の中で流れたらちょっとびっくりするだろうなと思った」と最初に放送を聞いた時の衝撃を語り、「政治的公平性」と「事前運動」の二つの側面からの問題点を指摘していった。まず事前運動については公職選挙法の規律をもとにし、「公示日(告示日)から〇日/〇ヵ月前ならセーフ」といった限定はない」との前提を示し、公示日(告示日)が近づくほど事前運動の可能性が高まっていくと話した。ただし、「選挙に関して放送設備を使うのは、政見放送と経歴放送以外は禁止」として、公選法が放送局に対して「選挙と距離をおくよう厳しく規制している」と言明。こうしたことを踏まえたうえで今回の放送は「事前運動の対象となるような放送だった」と指摘した。
一方、政治的公平性については「量的公平性」ではなく「質的公平性」の重要性を強調。少数意見の尊重、潜在する社会問題の発掘やアジェンダの提示があれば質的公平性は担保されると説明した。加えて「選挙報道で決して委縮してほしくない。みなさまにはアジェンダ設定という重要な役割がある」ことを強調した。

参加者からは、議員がDJの番組や立候補予定者になり得るゲスト出演についての報告があり、小町谷委員長は「いろんな視点を提示しているかどうかが重要になる」と答えた。一方、大石委員はラジオでは「セグメント化(集団)したターゲットを絞った、ある種の甘えがある」と指摘。「特定の視聴者が聴いてくれればいい」という姿勢とは一線を画して「信頼性を獲得し続けてほしい」と話した。

これからも、ともに悩み考える機会を

最後にBPO神田真介事務局長が「BPOではいろんな角度から議論し、悩みながら模索している。これからも現場のみなさんとこういう形で悩みを共有しながら、何ができるだろうか、どうすればいいだろうってことを考える機会を設けていきたい」と結んだ。

以上

第192回

第192回–2024年2月

関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

第192回放送倫理検証委員会は、2月9日に千代田放送会館で開催された。
1月に大阪市で実施した関西地区ラジオ局意見交換会の模様などが、参加した委員から報告された。
次に1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。
最後に自主報告された関西テレビのバラエティー番組の内容について議論され、討議入りして引き続き対応を検討することになった。

議事の詳細

日時
2024年2月9日(金)午後5時~午後7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 関西地区ラジオ局との意見交換会の報告

1月26日に大阪市北区のMBSを会場に意見交換会を開催し、関西地区(大阪、兵庫、京都、滋賀、和歌山)のラジオ局12局から31人が参加した。
出席した委員からは「和やかな雰囲気の中で率直な意見が聞けた」「実際に放送素材を聴いて、みんなで話そうという機運が盛り上がった」という感想や「クライアントが強く出てきた時に、具体的にどうしようかという悩みを抱えている放送局がいくつかあることを知った」といった報告などがあった。
意見交換会の詳細はこちら

2. 1月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

ドラマの脚本をめぐり制作側と見解の違いが生じていたことを明かしたあと自殺したことを受けて、視聴者からさまざまな意見が多数寄せられたことが報告され、議論した。この他、バラエティー番組で沖縄出身のタレントに対して模擬記者会見を行い、方言を使ったら負けというゲームをしたことについて、視聴者からかつて沖縄で行われた、方言を禁止し標準語を話すように教育した同化政策を想起させる、という意見が寄せられたことなどが報告された。

3. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

関西テレビが2023年11月3日に放送したバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』の中で、関西人1万人が選ぶ(ある食品の)おいしい外食チェーン店のランキングを発表した際に、外食チェーン店1店の名前を除外していたことが分かり、11月24日の同番組内で訂正をした。当該放送局からはアンケート結果の順位を変えた経緯や再発防止への取り組みなどについての報告書や、番組審議会で厳しい意見を受けた議事録などが提出された。これを受けて委員会では「根本的なところで視聴者に向き合う、もしくは放送倫理に向き合うことから逃げているのでは」などの当該放送局の対応に疑念を抱く意見が出され、討議入りして問題点を整理した上、議論を継続していくことを決めた。

以上