委員長談話

番組内容が広告放送と誤解される問題について

2020年10月30日

放送倫理検証委員会
委員長 神田安積

1. はじめに

 委員会は、これまで、「長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見」(2019年10月7日付第30号。以下「決定第30号」という)及び「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(2020年6月30日付第36号。以下「決定第36号」という)において、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)についての基本的な考え方を示してきた。
 そして、①秋田放送が制作し2019年10月26日に放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』(以下「本件番組①」という)及び②山口放送が制作し、秋田放送が山口放送から購入して同年10月19日に放送し、また山口放送においても同年5月25日及び同月29日に放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という。以下、本件番組①・②を「本件番組」と総称する)について、2020年5月の委員会(第148回)以降計6回にわたり本問題に関する討議を重ねてきた。
 討議の過程においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供した弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告され、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、日本民間放送連盟(民放連)加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。
 そこで、10月の委員会(第153回)において、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとした。また、本件番組については放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至った。なお、本件番組に関する討議の詳細は委員会の議事概要に掲載することをもって代えることとする。

2. 委員会からの要望

 民放連の放送基準第92条は、「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない。」と定めている。冒頭にも述べたとおり、委員会は、3局の事案に関する2つの意見書において、本問題に関する基本的な考え方を示してきた。特に、決定第36号では、「番組と広告の違い、その境目を認識し、緊張感を持って一線を画す日々の作業は部署を問わず、すべての民放関係者が肝に銘じるべき根本ではないか」との決定第30号の一文を今一度引用したうえで、「『番組と広告の境目』をめぐる問題の対応策についても、民放連や民放各局の自主的・自律的な精神と姿勢で検討されるよう望みたい」との要望の意を表明した。
 同時に、委員会は、視聴者に広告放送であるとの誤解を招くような内容・演出になっていないかを局が判断する際、民放連が2017年に策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(以下「留意事項」という)において「総合的に判断する必要がある」とされていることを重視し、各意見書における個別的・具体的な判断がいわば新たな一般的な基準として独り歩きし、その結果、番組制作を必要以上に制約することがないように、両意見書において基本的な考え方を示すにとどめてきた。しかし、その結果、両意見書の通知・公表時の記者会見や意見交換会、事例研究会等において、少なからぬ局から、「どのようにすれば広告放送であるとの誤解を招かずに済んだのか」「番組と広告の境目を画するより明確な基準を示してほしい」という質問や要望が出されるに至っている。
 たしかに、留意事項が策定されて既に3年以上が経過しているとはいえ、本問題が短期間にクローズアップされたこともあり、また、民放連の説明によると、留意事項は対価の有無にかかわらず適用されるとのことであり、この点がまだ十分に浸透されていないことにも鑑みれば、問題点の整理や自主的・自律的な対応を講じるために一定の時間的な猶予が必要であると思われる。
 しかし、上記の要望の背景にかかる事情があるとしても、視聴者との約束である放送基準を策定し、また、適切に運用 するのはもとより委員会ではなく、放送事業者や民放連の役割であることからすれば、委員会が上記の要望等に応えることは適切ではない。そもそも委員会は、放送事業者自身がその自由を確保し、その自律を促すための仕組みの中に位置づけられた組織である。また、放送事業者は、放送の自由を生かし、その使命を果たすために、自らの手で放送倫理を具体化し、問題が生じれば、自主的・自律的に方策を講じる責任がある。
 したがって、本問題についても、放送事業者や民放連が、委員会がこれまで示してきた基本的な考え方を参照し、自ら問題点を整理したうえで、自らの手で処方箋を出すことが望ましいものと考える。そして、このような自主的・自律的な取り組みが期待できるのであれば、その成果を待つべきであろう。
 この点に関し、民放連は、2020年3月6日付で、放送基準審議会議長名による「放送基準審議会から放送基準の遵守・徹底のお願い」と題する文書を会員社宛に発出し、その中で「番組と広告の識別」の問題を取り上げて、「番組の企画から放送前の考査まで、社内横断的なしっかりとした体制を構築し、放送の価値向上と収益の確保に尽力していただきたい」と注意喚起し、併せて、「演出や構成などには大いに工夫の余地がある」ことを指摘するとともに、「会員社の皆さまの声に耳を傾けながら、丁寧に対応してまいります」と表明するに至った。この表明からは、留意事項が策定されたときと同様に、同種の事案が今後生じ得ることを前提として、本問題に関する放送局の現場の声を集約しながら、改めてこの問題に向き合う必要があるという民放連の自覚と決意がうかがわれる。
 そこで、委員会は、当面、本問題に対する民放連加盟各社及び民放連の自主的・自律的な取り組みを注視することとしたいと考えるに至った。当然のことながら、この判断は本問題にかかる放送倫理違反の疑いを今後一律に不問に付すことを意味するものではない。
 この結論に至るまでの委員会の議論では、すべての局が必要十分な自主的・自律的な対応を取るとは限らず、中には適切な対応を取らない局が出る可能性もあるのではないか、また、一見対応が取られたように見えても、留意事項に例示された事項をチェックリスト化することをもって十分と考え、様々な要素を踏まえた総合的な検討を怠る局が出るのではないか等の懸念の声が上がったのも事実である。実際、最近の意見交換会等における各局との質疑応答からは、留意事項に例示された基準や3局の事案に関する2つの意見書を形式的にマニュアル化しようとする傾向がうかがえることも否めないところである。
 しかし、番組と広告の識別には、抜け道を探すような後ろ向きの対応が求められているのではない。留意事項にも明記されている「民放の信頼やメディア価値の根幹」を維持・発展させるために、自主的・自律的な「攻めの対応」が求められているのである。そして、判断の当否に迷うことがあれば、本問題の原点に常に立ち返ることが求められる。それは、なぜ番組と広告を識別しなければならないのか、なぜ番組と広告の識別が「民放の信頼やメディア価値の根幹」に関わるのか、を考えることに他ならない。
 「広告」は、商品やサービスを視聴者に対して訴求し、その購買を誘引するために、スポンサーが主体となって制作されるものである。これに対し、「番組」は、放送局が主体となって、独立した立場で内容を吟味して制作しているとの視聴者からの信頼を前提として放送されている。ところが、「番組」の中に「広告」の要素が混在し、「番組」と「広告」の識別が困難になればどうなるか。視聴者の商品・サービスに対する判断を誤らせ、ひいては視聴者の放送事業者に対する信頼や番組の内容に対する信頼が損なわれてしまうのではないか。放送の社会的影響力の大きさ、そして視聴者の保護の観点をも踏まえ、番組と広告との識別の意義の重要性を今一度問い直すべきではないか。そのうえで、各局において、編成・制作・営業・考査がそれぞれの立場から多角的に相互にチェックすることが求められるのではないか。
 このような議論をする中で、委員会は、本問題にはもとより唯一の答えはなく、不断の議論こそが大切であることを痛感させられた。各局においても、制作・放送に携わる一人一人においても、番組と広告を識別しなければならない意義を常に自問自答し、その原点に立ち返る姿勢がない限り、たとえ対応策を講じても問題は再発し、民放の信頼は損なわれ、メディア価値の根幹も傷つき修復が困難になることだろう。
委員会は、民放連加盟各社及び民放連が、番組と広告の識別の意義を踏まえ、現場の声にも耳を傾けながら、留意事項に照らして「総合的に判断する」姿勢を深化させる取り組みを実行することを期待する。そして、今後も本問題に対する自主的・自律的な対応に重大な関心を持ちながら、その取り組みを見守りたい。

以上

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第153回 放送倫理検証委員会

第153回–2020年10月

番組内容が広告放送と誤解される問題について委員長談話を公表

第153回放送倫理検証委員会は10月9日に開催された。
委員会が6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待して、報告を了承し公表することにした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にして、合計18回にわたりフジテレビで放送されたニュース番組について、当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告された。
秋田放送又は山口放送がそれぞれ制作した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関し、委員会はこれまで番組内容が広告と誤解されることに関する問題について合計6回にわたり討議を重ねてきたが、今回の委員会で討議を終了し、審議入りしないこととした。また、民放連加盟各社および民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて共有することが適切であるとして、「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題された委員長談話をBPOのウェブサイトで明らかにすることにした。

1.「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」への琉球朝日放送の対応報告を了承

6月30日に通知・公表した「琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見」(委員会決定第36号)への対応報告が当該放送局である琉球朝日放送から書面で提出された。
報告書には、委員会決定を受けて、全職員に決定内容を周知し、全社員・スタッフによる番組再検証を実施したこと、再発防止への取り組みとして、「番組制作にあたっては企画提案書を提出して、それを基に様々な人が意見を出し合い、スポンサーとも交渉をして、最終的にスポンサーが納得できないということであれば、見送りもある。売り上げが厳しいから放送倫理違反をしてもいいということはありえない」「放送倫理違反の意見書を受けた意味合いは大きい。今後も定期的に勉強会を開き社員教育を図っていく」などを確認したことが記されている。委員からは「全般的に意見書の主旨は理解されていると感じた」という意見が出され、また、「営業主導が途中から徐々に報道主導になったその境目を整理して書いていただけるとよかった」という意見も出されたが、意見書で指摘した課題に対しては概ね適切な対応がなされており、またコロナ禍で、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後適切な時期に開催されることを期待することとして、当該対応報告を了承し公表することにした。
琉球朝日放送の対応報告書は、こちら。

2. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された原案を踏まえて担当委員が作成した意見書の修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

3. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビと産経新聞は、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送及び記事をすべて取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの追加報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済サンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成し、誤った世論調査結果のデータを作成していたとしている。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告された。次回委員会では意見書の原案が提出される予定である。

4. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した(以下「本件番組①」という。2018年2月17日初回放送・同年10月13日再放送)。この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。秋田放送では同年10月19日に、山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という)を番組販売で購入し放送していた。また、山口放送は、本件番組②を2019年5月25日、同月29日に制作放送していた。
なお、山口放送は、本件番組②とは別に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』(以下「本件番組③」という)を制作し、2018年6月2日以降合計4回放送している。本件番組③については、本件番組②との関連性から、念のため一体のものとして検討することが適切であると考え、討議の対象としたが、放送内容が類似していることを踏まえ、討議における議論の対象は本件番組①及び本件番組②のみ(以下「本件番組」と総称する)とした。

本件番組は、その共通点として、弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)の1社提供の単発番組であり、X法律事務所の提供表示がなされ、番組名の前にも「弁護士法人X法律事務所presents」というタイトルが付けられている。また、番組の内容は、X法律事務所の代表弁護士(当時)が自ら出演し、クイズ形式か再現ドラマ形式かの違いはあるものの、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数紹介して解説を加えている。そして、X法律事務所の相談料が原則無料であることを含む基本的な料金体系を説明し、さらに放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧めている。本編の中には中CMがあり、いずれも代表弁護士が登場するX法律事務所のCMである。以上のとおり、本件番組の内容や構成はほぼ共通している。
なお、討議中において、X法律事務所が、2020年6月に破産開始決定を受け、その後、X法律事務所の所属弁護士会が、X法律事務所が回収した過払い金を依頼者の意思に反して流用した疑い等があるとして、同弁護士会の綱紀委員会に対して懲戒処分に向けた調査をするよう求めるという報道に接した。

委員会は2020年5月、両局から提出された報告書及び同録DVDを基に討議し、本件番組はいずれも、総合的に判断すれば、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)の観点から、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。その後の委員会においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供したX法律事務所が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告された。上記の各局に対しては、本件の討議の参考のために、任意の報告を依頼し、報告書と同録DVDの提供を受けた。しかし、各局が番組を制作した時期に幅があり、一部の局においては日本民間放送連盟(民放連)が「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(以下「留意事項」という)を策定した2017年以前に制作・放送された番組もあるなど、番組の制作や考査の在り方について公平に比較検討することが困難であることを踏まえ、両局以外の番組は討議の対象としないこととした。

10月の委員会においても、本件番組について、民放連の放送基準第92条や留意事項に照らし、X法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、また、必要とされる考査をした旨の両局の主張を踏まえても、総合的に判断すれば、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの意見が多数出された。
そして、審議に入るか否かの基準については、委員長談話「TBSテレビ『情報7daysニュースキャスター「二重行政の現場」』について」(2009年7月17日)において、①対象となる問題が小さく、かつ、②放送局の自主的・自律的な是正措置が適切に行われている場合には、原則として審議の対象としないとされており、本件番組の問題は小さいとは言い難いから、審議入りの基準を満たしているともいえ、実際、審議入りをすべきであるとの意見もあった。
しかしながら、10月の委員会までの、計6回にわたる討議を踏まえ、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、民放連加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。そこで、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとし、また、上記のとおり、同様の番組を制作放送した各局の番組について公平に比較検討することが困難であり、結論として討議の対象としないこととしたこととの均衡も考慮し、本件番組について放送倫理違反の疑いがあるとしても、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象としないとの結論に至った。
委員長談話は、こちら。

【委員の主な意見】

  • 本件番組はいずれも、X法律事務所における高額の過払金の回収事例を複数並べたうえで、X法律事務所の相談料が原則無料であることが説明され、本編の最後ではX法律事務所の基本的な料金体系と併せて、放送日時と近接した時期に開催されるX法律事務所の無料相談会を案内して勧める内容になっていること等からすると、過払金返還請求についての法的知識や手続きに関し、具体的で有益な情報提供をしていると認められる部分があるとしても、全体を通じて視聴すれば、X法律事務所のサービス内容を一方的にPRしているとの印象を否定できないのではないか。また、X法律事務所のサービス内容のみを取り扱う理由は明確とは言えないのではないか。

  • 本編の中にある中CMでは、いずれも代表弁護士が本編と関連するフレーズを語り、無料相談会を告知している。また、本編と中CMが連続して放送されるため、これを連続して視聴することによって、全体としてX法律事務所のサービスの広告効果がさらにもたらされているのではないか(2001年3月14日付にて民放連が作成し、2009年3月18日付にて改訂した「持ち込み番組と関連するCMの取り扱いについて」の第3文参照)。

  • 本件番組②については、本編におけるいずれの相談再現ドラマの中にもX法律事務所の情報が盛り込まれており、また、番組の最後の場面で男性タレントがX法律事務所の名前を挙げて番組が終了していること等も、視聴者に広告放送との誤解を招く事情となっているのではないか。

  • 総合的に判断すれば、本件番組におけるX法律事務所の取り上げ方や演出方法は、仮に広告の意図や目的がなかったとしても、視聴者に広告放送であるとの誤解を招きかねず、放送倫理違反の疑いがあるのではないか。

  • 本件番組に関し、秋田放送は「社員や代理店の勉強会などにより、いま一度、持ち込み番組を含めた社内外の認識確認を行いたい。『視聴者の誤解を招かない内容・演出』のため、今後はもっと全社的な考査機能を高めていかなければならない」との見解を、また、山口放送は「今回いただいた指摘を真摯に受け止め、民放連放送基準第92条及び留意事項、また2019年10月の委員会意見の内容について、改めて社内各所での徹底を図り、『広告放送』との誤解を招かない番組制作・放送に取り組んでいきたい」との見解をそれぞれの報告書において明らかにしている。両局が当該各見解を実質的かつ有効的に深化させる方策を講じることを期待したい。

以上

第285回放送と人権等権利に関する委員会

第285回 – 2020年10月

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理開始…など

議事の詳細

日時
2020年10月20日(火)午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」事案、審理

今事案の対象となったのは、札幌テレビが2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性に関する報道で、男性が自宅で申請書類に記入をし、北海道庁で申請手続きをする様子等の場面を放送した。この放送に対して取材された男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示するなど、「一時金申請を希望していなかったのに、記者が申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。これに対して札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ可能となった取材であり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会では、担当委員から決定文の修正案が示され、前回委員会で指摘のあった取材する側と取材される側の関係について更に議論が交わされた。そのうえで委員会は決定を了承し、次回委員会までに通知公表を行うことになった。
今事案は、第276回委員会で審理入りを決め審理を進めてきたが、新型コロナウイルス対策によって審理に遅延があった。

2.「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理

フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019 - 2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと申し立てた。これに対してフジテレビは、社内調査によって「人権侵害は認められない」と反論している。委員会は、第284回委員会で、運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして審理入りの要件を満たしていると判断し、審理を始めることを決めた。今委員会では、これまでに双方から提出されている書面を基に、論点の整理を始め、それに伴い審理を進めるうえで必要な資料の提出を当該局に求めることを決めた。今後、所定の書面がすべて整ったあと、委員会で論点を絞り込む予定。

3. その他

  • 委員会決定第74号「大縄跳び禁止報道に対する申立て」に関して、10月14日に行った通知公表について報告があった。

  • 申立て状況について事務局から報告があり、委員の間で意見が交わされた。

以上

2020年度 第74号

「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
に関する委員会決定

2020年10月14日 放送局:フジテレビ

見解:問題なし
フジテレビは2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された問題を放送した。インタビューに答えた周辺住民女性が、突然マイクを向けられ誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。フジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており、「捏造には該当しない」などと反論した。
委員会決定は、本件放送に、人権侵害、また放送倫理上の問題があったとは判断できない、とした。

【決定の概要】

 2019年8月30日に放送されたフジテレビの『とくダネ!』は、都内の公園で近隣の受験塾の生徒が大縄跳びをしながら歴史上の人物名などを暗唱していることに周辺住民から苦情があり、行政が大縄跳びを禁止する看板を立てたことなどを紹介した。申立人はインタビューを受けた周辺住民の一人で、「本を読んでたりとか、集中して何かをやんなきゃいけない日だったりすると、ちょっとうるさいなと思って」などと答える場面が17秒にわたり放送された。
 申立人は、日没後に犬を連れて公園を散歩中、突然、若い女性に背後から声をかけられ、放送局名・番組名や取材の趣旨を告げられず、撮影許可を明示的に求められぬままインタビューを受け、また大縄跳びは「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに「誘導尋問」され、あたかも迷惑しているかのような発言を「捏造」された、と主張している。「懇意にしている学習塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて、BPO放送と人権等権利に関する委員会に申立書を提出した。
 一方、フジテレビは、取材したディレクターが2度にわたり「フジテレビ、とくダネ!です」と伝え、「(大縄跳びを禁止するという)看板について取材しているのですが」などと断ってからインタビューと撮影を開始したのであり、申立人は撮影・放送(いわゆる「顔出し」を含む)を承諾していた、また「誘導尋問」はしておらず、インタビュー内容も加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」と反論している。
 申立書などの書面とヒアリングを総合して検討した結果、委員会は、撮影・放送それ自体に対する申立人の承諾がなかったとまではいえず、また質問者が本意でない答えを強いるという意味での「誘導尋問」や「捏造」があったと断定することもできないため、本件放送が申立人の肖像権など人格権を不当に侵害したと判断することはできない。同じ理由で、取材交渉を含めたインタビューの手法とその編集方法についても、放送倫理上の問題があったと判断することはできない。
 ただし、本件放送のような、通行人が予期せず声をかけられる種の街頭インタビューの場合、被取材者の大多数は申立人のようにマス・メディアの取材・報道に不慣れであることから、取材者は放送局名・番組名をはじめ、質問の対象・趣旨などを取材に際して可能な範囲で説明し、かつ撮影した映像等の実際の使用についても本人の意向を明確に確認しておくことが望ましい。

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2020年10月14日 第74号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第74号

申立人
東京都内在住 女性
被申立人
株式会社 フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『とくダネ!』
放送日時
2019年8月30日(金)
午前8時~9時50分のうち午前8時13分から8時35分

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.本件放送の内容
  • 3.論点

II.委員会の判断

  • 1.申立人とフジテレビの対立点
    • (1) 取材経緯(承諾の有無)
    • (2) 発言内容(「誘導尋問」と発言の「捏造」)
  • 2.人権侵害
    • (1) 肖像権の侵害
    • (2) 「誘導尋問」と発言の「捏造」による人格権の侵害
  • 3.放送倫理上の問題
    • (1) 取材交渉を含めたインタビューの手法とその編集方法
    • (2) 申立人に対する本件放送後の一連の対応

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯と審理経過

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2020年10月14日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年10月14日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時から千代田放送会館ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

第226回 放送と青少年に関する委員会

第226回-2020年9月

視聴者からの意見について…など

2020年9月29日、第226回青少年委員会をBPO第2会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、まず7月16日から9月15日までの2か月間に寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
報道・情報番組において、コロナ感染者の出た学校を実名で報道したことについて、「未成年者が風評被害を受ける。配慮すべきだ」などの視聴者意見が寄せられました。これに対して、委員からは「学校は行く人が特定されていて、感染者が出たとしても濃厚接触者は追跡できるという状況のときに、公益目的だからという理由だけで学校名を出すことは、少し考えたほうがいい」、また一方で「いじめが起きるとか、学校で問題が起きることは、テレビで学校名が出たからというわけではないと思う」などの意見が出されました。また、著名人の自殺報道について、「有名人の自殺は子どもや若者への影響が大きいので、WHOのガイドラインに沿って報道するべきだ」などの視聴者意見が寄せられました。これに対して、委員からは「詳細な報道ができないから、そこのところはなるべく避けて、最後に命の電話番号を流すという形がパターン化してくるのではないかと懸念している」などの意見が出されました。
8月の中高生モニターのリポートのテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。29人から報告がありました。
モニターからは、太平洋戦争中、原子爆弾の開発に関わった若き科学者を描いたドラマについて、「核兵器がいかにすごく大きな影響を日本に与えたかということが伝わった。この頃の研究者たちの苦悩を感じることができた。しかし、僕には少し違和感があった。『原子爆弾』というものを作り出す行為が美化されているような印象を受けたからだ。日本が『原子爆弾』を作ろうとしていたことが『努力』『青春』などという言葉で言い表されていて、少し疑問を持った」、女性に焦点を当てた終戦スペシャル番組について、「(女優の綾瀬はるかさんがインタビューした内容で)私が印象に残ったのは広島の原爆によって肌がただれてしまった女性の話でした。その女性は綾瀬さんに『今あなたが美しくて嬉しい』と言っていたのが心に残りました。女性が美しくいられるのも平和があってのことなのだと気づきました。写真を手掛かりに丁寧に取材していて、責任をもって番組を作っているのが伝わってきました」などの意見が寄せられました。
また、9月のテーマは「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」でした。27人から報告がありました。
モニターからは、警視庁機動捜査隊を舞台にした刑事ドラマの最終回について、「最後まで展開が予想できず、見入ってしまった。俳優の演技も狂気に満ち溢れていて、怖さを生み出し、作品の世界観に浸ってしまった。また、最後も完ぺきなハッピーエンドにしないところが、面白いと思った。バッドエンドだと悲しく、ハッピーエンドすぎると腑に落ちず、その中間をとったのがいいと思った」、新型コロナウイルス元感染者を追った報道番組について、「なぜこの番組が最も印象に残ったのかというと、コロナがインフルエンザのように1,2週間で回復する病気でないことに気づかせてくれた大きな契機となったからです。これを知るまでは、新型コロナウイルスにはインフルエンザと同様、健康な方にはその後の体調不良は見られないのではないか、と考えていました。しかし、現実はそうではなく、元感染者の3割近くが回復後もいまだに苦しみ続けていることを知り、これからもコロナと共存していかなければならない私たちにとって知らなければならない情報だと感じました。(この番組が放送された)6月から3か月がたち、現在ではワイドショーを中心にもはや、コロナに関する報道が少なくなっています」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は10月27日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2020年9月29日(火)午後4時30分~午後7時15分
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第2会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

バラエティー番組で、お笑いタレントが農家の人に言われるままパイナップルを皮ごと丸かじりさせられるドッキリ企画に対して「皮にはトゲがあって危険だ。子どもがマネをする」「まるでイジメ。子どもに見せられる内容ではない」といった視聴者意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「企画自体が心地よい笑いを提供してくれるようなものではないのかもしれないが、このバラエティー番組はそれで人気を取っているところもあり、それを好む人も一定数いる」「VTRを見ているスタジオの反応が同時に流れるが、そこである程度、それはあり得ないとか、やってはいけない、というようなことが分かるコメントを編集で入れているので、青少年がマネをすることもないだろう」といった意見が出されました。

報道・情報番組において、コロナ感染者の出た学校名を実名で放送したこと
に対して、「未成年者が風評被害を受ける。配慮すべきだ」「実名の必要はあるのか。コロナ差別やクレームが発生したら子どもたちや学校の負担は甚大だ」と言った視聴者意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「地元ではあそこから出たよと分かるだろうが、全国放送することについてはどうなのか。感染拡大しないようなメッセージとして、その地域では十分機能しているので、校名を出したり校舎を映したりすることには課題がある気がする」「飲食店とか病院とか不特定多数の人が行く場所ならば、公表する意味はあると思う。しかし学校は行く人が特定されていて、感染者が出たとしても濃厚接触者は追跡できるという状況のときに、公益目的だからという理由だけで学校名を出すというのは、もう少し考えてもいいのではないか」という意見が出ました。その一方で、「いじめが起きるとか、学校で問題が起きることは、テレビで学校名が出たからというわけではないと思う。地元では既にみんな知っていて、その中でいじめや差別が起きるわけで、実名を出しても変わらないのではないか」との意見も出されました。

報道・情報番組において著名人の自殺報道に関して、「有名人の自殺は子どもや若者への影響が大きいので、WHOのガイドラインに沿って報道すべきだ」「自殺方法などを具体的に放送していた。見ていた子どもが動揺している」
「人格形成の途上にある若い人たちに命を粗末にしないよう伝えてほしい」という視聴者意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「著名人の自殺が増えていて、どのメディア報道も取扱いには注意して報道していると思いうが、続いているので、ガイドラインを形式的にとらえるような報道にならないよう気をつけないといけない」「詳細な報道ができないから、そこのところはなるべく避けて報じて、最後に命の電話番号を流すという形がパターン化してくるのではないかと懸念している」などの意見が出されました。

音楽番組で昭和60年代アイドルのヒット曲が披露されたが、その歌詞の内容について「未成年者の不純異性交遊を匂わす歌詞。倫理的に問題だ」「子どもも起きている時間帯にこんな歌を流すのは教育の観点から良くない」「ヒット当時、世間では大きな問題意識がなかったと思うが、いま問題意識なく流すのはいかがなものか」といった意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「歌詞なので致し方ないのではないか」「当時、こういうものをアイドルが堂々と歌うということに意味があると、中高生にも支持されたということだったのが、三十数年経って、世の中は保守化したということではないのか」「昭和60年代の世相を反映してこういう歌詞が作られたのであって、いま作る音楽にこの作詞は絶対にないような気がする」などの意見が出されました。

これらの件に関しては、これ以上話し合う必要はない、となりました。

中高生モニター報告について

今月は、8月と9月のモニター報告について話し合われました。
33人の中高生モニターにお願いした8月のテーマは、「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全部で29人から報告がありました。
「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」では、複数のモニターから意見が寄せられたのは5番組でした。『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)に7人から、『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら」』(NHK-BS1)に4人から(「青少年へのおすすめ番組」欄での感想と合わせると5人から)、『NHKスペシャル「証言と映像でつづる原爆投下・全記録」』(NHK総合)に3人から、『NHKスペシャル「沖縄 “出口なき”戦場~最後の1か月で何が~」』(NHK総合)と『ドラマ×マンガ「あとかたの街~12歳の少女が見た戦争~」』(NHK-BSプレミアム)にそれぞれ2人から報告がありました。それ以外のモニターは別々の番組を取り上げ、全部で16の番組について感想がありました。多くのモニターが「祖父母など身近な戦争経験者に直接話を聞きたい」と記述し、自分にできることは何かを考えた様子がうかがえました。また、「当時の映像や証言を後世に伝えるためにテレビは大きな役割を担う」と、放送局の存在意義を再確認し、期待を寄せたモニターもいました。また、一部の番組で行われた取り組み(SNSを活用する、漫画と組み合わせる、など)は若い世代の感覚に合っていると好意的に受け入れられていました。
「自由記述」では、6人からコロナ禍での報道や番組制作の仕方に関する意見が寄せられました。そのほか、8月のテーマと関連づけて、「最近は戦争関連の番組が少なくなっていると感じる」と記述したモニターが2人いました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『さよなら!インターハイ ミキと高校生の“校内放送” 』(NHK総合)と『音が出たら負け』(日本テレビ)をそれぞれ4人が、『炎の体育会TVSP』(TBSテレビ)と『THE 名門校 全国すごい学校名鑑』(BSテレビ東京)をそれぞれ3人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

    • 『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)について、モニターたちの感じ方は一様ではなかった。太平洋戦争中に日本が原爆を作ろうとして一生懸命研究していたことに対して、「科学者の若いエネルギー、努力、そういうものを描いた部分が今までの番組とは違って新しかった」と感じるモニターがいた一方で、「原子爆弾を作ろうとしたことを努力や青春と美化してはいけない」と疑問を持ったモニターもいた。このようにそれぞれ印象が違ったということは、原爆を多面的に取り上げた成果なのだと思う。そういう意味で意欲的なドラマだった。

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら』(NHK-BS1)について、当時の人たちの気持ちになってSNSでつぶやくことによって、戦争中の状況を今までよりもリアルに感じることができたとモニターが記述しており、中高生にとって面白い企画だったのだという印象を受けた。ただ、SNSはつぶやくだけじゃなく、相手のリアクションもあるツールなので、そういう視点がもう少し入るとより良かったのではないか。戦争の敵、味方がSNSを通して本音で言い合うような環境が提起されていたら、より面白かっただろうと感じた。

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら』(NHK-BS1)について、SNSと番組を連動させるということが子どもたちの間で話題となって興味がそそられて視聴し、当事者の語りに触れ、様々なことを感じられたようだ。あるモニターが「当時、戦争をしているという意識はあまりなくて、生活があった」という当事者の語りにハッとさせられたと記述していた。気づきにくいところに気づかせたということも有意義であったと思う。

    • 原爆に関する番組を視聴して感想を寄せたモニターが少なくなかったが、やはり、番組の中できちんと原爆について取り上げることが大事である。

    • これまで戦争関連の番組を見る機会がなかなかなかったというモニターもいた。しかしそのような子も視聴して多くを感じ取っていた。若い人に見てもらう工夫をすること、戦争関連番組を制作し続けることが今後も重要だと感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

    • 『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)私がこれまで見ていた戦争のドラマや映画は、戦争の悲惨さを主に伝えていました。「太陽の子」は、戦争に勝つために国民が努力する姿や科学者が純粋に技術開発に取り組む姿が描かれていました。戦争の悲惨さを伝えるだけではなく、当時の雰囲気や価値観などをきちんと描こうとしているところがいいと思いました。(岡山・中学2年・女子)

    • 『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)この頃の研究者たちの苦悩を実際に感じることができた。しかし、僕には少し違和感があった。「原子爆弾」というものを作り出すという行為が美化されているような印象を受けたからだ。日本に原子爆弾を投下したアメリカへの非難の気持ちが今も根強く残っている中、日本が「原子爆弾」を作ろうとしていたということが「努力」「青春」などいう言葉で言い表されていて、少し疑問を持った。(群馬・中学3年・男子)

    • 『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)今までこの時期は戦争特集をしているドキュメント番組を見ることが多かったのですが、今回初めてドラマを視聴しました。すると、ドラマ作品はドキュメント番組と違い登場人物に感情移入ができるので分かりやすく、実感がとても湧きやすかったです。また、モノローグも適度に入れられており当時の様子について詳しく知ることができ、適度に入っているので作品の邪魔も全くしていなかったです。今回いちばん衝撃的だったのは、突然はさまれた原爆の写真です。不意に出てきたことも相まってとても衝撃を受けました。こういった演出もドラマならではでとても印象に残りました。(愛知・高校1年・女子)

    • 『国際共同制作 特集ドラマ「太陽の子」』(NHK総合)主人公の暮らしていた家が、空襲にあった際に火災が延焼しないようにと家を強制的に取り壊され、代わりの家は用意されない、介護が必要な祖父もいるのにいきなりホームレスとなってしまうのに周りの人は「日本万歳」と声を上げながらあっという間に家を取り壊す、という悲しい現実を最初の場面から突き付けられ、この物語にくぎづけとなりました。弟の裕之が軍に帰る矢先に海で自殺を図ろうとするところでは、裕之の軍に戻ることしか許されない現実、でも戦地で死にたくないという思い、その思いを周りの人に伝えたら悲しませてしまう、皆から非国民と冷たい目を向けられ生きていけなくなる、という極限の状態。いっそ自分のタイミングで命を終わらせたいという追い詰められた状況になっていたのではないか、戦争中はこのような心情の、自分と同じような年ごろの人がたくさんいたのではないかと思い、心が痛かった。(茨城・高校3年・男子)

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら』(NHK-BS1)もし、あの時にSNSがあったらというのを考えたこともなかったので面白いと思いました。SNSのコメントを考えている方たちが言っていたけれど、戦争時代と今の時期は似ていると思いました。いつ終わるか分からない、死と隣り合わせの日々を送っている、いつ何が起こるか分からない怖い時間を過ごしてきたんだなと思います。(山形・中学1年・女子)

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら』(NHK-BS1)この番組ではSNSと戦争を絡め、違った切り口で戦争について知識を深めることができました。内容は、戦時時代を生きた3人の方の日記をもとに、広島にゆかりのある高校生や大学生がその時の気持ちを考えてツイッターにツイートするというものでした。当時中学生であった方は現在もご健在で、その方の言葉が印象に残っています。「原爆の日、僕は放射能を浴びただろう。」その方は現在88歳で、今までに何度も癌に侵され、手術をしてきたそうです。昔のことなのに、現在も影響を受けているとなると、いかに戦争が悲惨であったかよく分かります。(愛知・中学2年・女子)

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら』(NHK-BS1)ポップなイラストとSNSという身近な存在が登場するということで、親しみやすそうだと思い、見ることにした。話の中で、「当時戦争しているという意識はあまりない。生活があった。」という言葉にハッとさせられた。なぜなら私は、みんなが戦争の中で恐れながら日々を送っていたのではないかと思っていたからだ。原爆が投下された戦争中も、今も昔もどんな時でも世界中に1人1人がちゃんと生きていて、暮らしているというのが改めて理解できた。8月6日のその時(原爆投下)を迎えた彼らのツイートを見たとき、彼らの日々はこれからも続くのだということに気づき、この取り組みの目的でもある「原爆投下の後に続く生活」というテーマに納得した。過去の事実は絶対に変わらないけれど、こうして戦争を毎年思うことがどれだけ大切なことか知った。(東京・高校1年・女子)

    • 『NHKスペシャル「証言と映像でつづる原爆投下・全記録」』(NHK総合)この番組の中でいちばん印象に残っているのが、絵とともに語られた原爆投下直後の風景だ。原爆はじわじわと人の心と体をむしばんでしまうことを物語っており、その非情さを鮮明に表していました。戦後75年を経て、戦争の悲劇さを自らの体験として次世代に伝えられる人が次第に減っている。それが途絶えたとしても私のように若い世代の人が語り継いでいけるようにしていきたいと強く思いました。(高知・高校3年・男子)

    • 『NHKスペシャル「証言と映像でつづる原爆投下・全記録」』(NHK総合)近年、どんどん原爆を体験した人が亡くなっていかれる中で、このような番組はとても大切だと思う。あのようなことを二度と犯してはならないと当事者の方々は言う。しかし、当事者の方々も永遠に生きることはできない。そのような中で戦争、原爆の悲惨さを訴えるにはこのようにメディアが伝えていくしかないと思う。(千葉・中学1年・男子)

    • 『NHKスペシャル「証言と映像でつづる原爆投下・全記録」』(NHK総合)学校や自分で調べるだけでは知ることができなかった原爆投下までのアメリカ軍の流れや原爆投下後の様子を知ることができました。視点を日本、広島だけに絞らず、アメリカやソビエト側からも見られて、考えが一方向にならないのでいいなと思いました。初めて原爆によって亡くなられた方の写真を見て、血すら出ずに黒こげになって人間が死ぬことが現実に起こるのか、起こってしまったのかと、とても怖くなりました。当時の証言を語れる人が少なくなる中、このようにテレビで学べるのはとてもいいなと思いました。(神奈川・高校2年・女子)

    • 『NHKスペシャル「沖縄 “出口なき”戦場~最後の1か月で何が~」』(NHK総合)太平洋戦争で起こった大規模な沖縄地上戦の最後の1か月に焦点を当て、米、日本両軍、民間人にインタビューしていてとてもリアルな戦争を伝えていて内容も重かった。インタビューの音声には「死」という言葉がかなり多く含まれていて、常に死と隣り合わせだったんだと思い、戦争の怖さを思い知った。(東京・高校1年・男子)

    • 『NHKスペシャル「沖縄 “出口なき”戦場~最後の1か月で何が~」』(NHK総合)番組を見ていちばんの感想は、「あぁ、私は戦争について何も知らないんだ」という後悔だった。当時の様子をそのまま放送しているところに嬉しさを感じた。いくら無残な死体でも、当時を知らない私たちは目に焼きつけ、少しでも戦争の怖さを知るべきだと思う。(東京・中学3年・女子)

    • 『ドラマ×マンガ「あとかたの街~12歳の少女が見た戦争~』(NHK-BSプレミアム)この番組を見て、いちばん最初に感じたのは独特な構成だなということです。普通のドラマかと思いきや、漫画が所々に入ってくるという初めて見る形式で、心が引き付けられました。俳優さんが演じることで躍動感が生まれるというドラマの良さもあり、映像が動かないことで、見ている人たちが自分自身の頭の中で映像を作り上げていくという漫画の良さもありました。戦争というテーマですが、難しくなってしまわないようにストレートに思いを伝える言い回しは、そのまま視聴者にも真っすぐ届いたように思います。(東京・高校1年・女子)

    • 『#あちこちのすずさん』(NHK総合)最初の若者へのインタビューであったように、自ら戦争経験者に聞くのはハードルが高く、聞きづらい事に共感でき、このような戦争のエピソードを見やすくアニメで放送するのは、いい番組構成だと思いました。僕の祖父母も沖縄戦の体験者ですが、こちら側から体験談を聞こうとすることには抵抗があり、同じような気持ちの人も多くいるのではないかと思いました。今は、コロナの影響で家にいる時間が長いのでアニメ番組で子どもが見やすいのでもっと早い時間で放送してもいいと思いました。(沖縄・中学3年・男子)

    • 『NHKスペシャル「渡辺恒雄 戦争と政治~戦後日本の自画像~」』(NHK総合)戦争はビジネスだと思っている人もいたそうです。その話を聞いて、命をかけて戦争に行った人を、金を回すためだけに行かせたと思うと何とも言えない複雑な気持ちでした。(秋田・中学2年・男子)

    • 『にっぽん ぐるり「語りだす被爆建物」』(NHK総合)全体的にナレーションが少なくて見やすい。特に、被害に遭った建物を映すときにナレーションがなくて見やすかった。75年前の出来事で私たちには遠い昔の出来事に思えるが、「声のない叫び」が聞こえてくるような気がした。(宮城・中学1年・女子)

    • 『“ひめゆりの声”を届けたい~戦後75年 生まれ変わる資料館~』(NHK総合)新しくなったひめゆり平和祈念資料館がどのようにして新しくなったのかを紹介していました。学徒隊の方々が作った資料館は長い文章が多く、今の若い人たちには読む気が失せるなどという意見が来ていて、リニューアルで変える点の1つになっていました。長い文章を短めにし、イラストを増やすという案でそれなら分かりやすくて見やすいものになるなと思いました。戦争の事実を伝えるためにはどんどん時代に合わせた伝え方をする必要があるのだなと思いました。もし、この番組の続編となる番組が作られるなら資料館に来た人がどのようなことを思ったのかなどを紹介するコーナーが入ったら嬉しいなと思いました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 『NHKスペシャル 選 ドラマ「東京裁判」』(NHK総合)戦時中の人々の苦悩などではなく戦争が終わった後の「戦争は犯罪であったのか」という問いに取り組んだ東京裁判にフォーカスされていたのでとても興味がわき視聴した。外国人の俳優の方々のセリフもすべて日本語で吹き替えられていたり、ナレーションで詳しく場面説明がされたりと、高校生の私でもとても理解しやすかった。教科書で静止画でしか見たことのない場面をリアルに見ることができた感じがして刺激的だった。こういう作品を学校で見ることができたら良いのに、と思った。(千葉・高校2年・女子)

    • 『“焼き場に立つ少年”を探して』(NHK Eテレ)この番組で取り上げられている“焼場に立つ少年”は、10歳位の男の子で、背中に亡くなってしまった弟か妹を背負ってその子の火葬を待っている。私にも弟がいるが、同じ状況に直面したとき、この少年のように泣くのをこらえているような、何かを耐えているような表情をしていることができるのだろうか、と考えた。そもそも私たちは死というものは遠いもので、あまり深く考えることは少ない。しかしこの時代の子どもたちは死をすぐそばに感じて生きていたのだと考えるととても切ない気持ちになる。この少年のように原爆で親を失い、子どもだけで生き抜いきた人の話も取り上げられていた。中には誹謗中傷に耐えられず自殺してしまった人もいると聞き、戦争が終わってもなお残る被害は大きいのだと感じた。依然として世界各国では地域紛争など、戦時中の日本のような現状が続いている国が少なくない。『焼場に立つ少年』の少年たちのような思いをする子どもがでないよう戦争をなくし、平和に過ごせるようにしていくことがこれからの世界を作っていく私たちの課題である。(長野・高校1年・女子)

    • 『終戦75年スペシャル』(TBSテレビ)2部に渡った編成で様々な体験をした女性をインタビューしていました。前半は女子高生と共にインタビューを見るという内容でした。コロナの影響もあって女子高生の人数が少なく、また、少し居心地が悪そうに見えました。私はもっと活発に意見交換ができるように、高校生はバーチャルで出演にしたり、ツイッターで意見を募集したりした方が良いのではないかと思いました。後半は綾瀬はるかさんがインタビューした内容で、私が印象に残ったのは、広島の原爆によって肌がただれてしまった女性の話でした。何度皮膚を移植しても以前のように戻ることはなく、その女性は綾瀬さんに「今あなたが美しくて嬉しい」と言っていたのが心に残りました。女性が美しくいられるのも平和があってのことなのだと気づきました。写真を手掛かりに丁寧に取材していて、責任をもって番組を作っているのが伝わってきました。(千葉・高校1年・女子)

    • 『戦後75年特別番組 日能研presentsラジオドラマ「青空」』(TBSラジオ)戦争関連の話から目を背けてはいけないと分かっていつつも、自分から進んで番組を視聴することはなかったのですが、このドラマは動物の視点から描かれていて、難しく感じる部分がほとんどなく、登場人物が全員生きて終戦を迎えることができ、クスリと笑えるシーンもあって、子どもでも聞きやすかったです。ラジオドラマを聞くのは初めてでしたが、生きるために盗みをはたらくシーンや「人生20年」というセリフなど、ハッとさせられるところも多く、飽きずに集中することができました。改めて、戦争がない世界を大切に守っていかなければならないという思いが強くなりました。(宮城・高校3年・女子)

  • 【自由記述】

    • 自分たちのような戦争を知らない世代がもっと戦争について知り、後世に伝えていく必要があると感じた。(長野・中学2年・男子)

    • 今年はコロナが大変で戦争に関する話題が薄れていたように思います。戦争に関する話を取り上げる機会を意識して作ってほしいです。(千葉・高校1年・女子)

    • 今年は終戦、原子爆弾投下から75年という節目の年なのに戦争に関連した内容の番組が少なすぎではないか?と思いました。原爆が投下された日にはもともとオリンピックが予定されていたので準備をしていなかったのかなとも思いましたが、もしそうであるならとてもやるせないです。(神奈川・高校2年・女子)

    • 75年という時による記憶の風化、また戦争体験者が高齢化により後世に伝える人が少なくなっているという実情に、新型コロナウイルスという新たな未知の災害が猛威を振るい、以前のような講演会を開けない状況が加わり更なる記憶の風化が起きてしまうのではないかという不安が大きくなっているということも伝えられていて、自分のような年代が戦争中の体験をした人たちからお話を聞ける最後の世代になるのかもしれないと思い、自分も息子などができた際には実際に聞いた話を後世に伝えていかなければならないという責任を改めて感じることができました。(茨城・高校3年・男子)

    • 外出がままならなくなった現在は、テレビの存在が今まで以上に重要で貴重な存在のように思えて、夏休みの今は、結構テレビを見ています。コロナで自宅待機が続いていますが、番組で、いろいろなスポットを紹介してくれたり、また生活が楽しくなるような情報を提供してくれたりするので、思ったほど不便さは感じません。さらに、いちばんの関心事のコロナに関する情報もテレビなしでは、あり得ません。それほどまでに、今の生活にテレビは必需品の1つになっています。(長崎・中学1年・女子)

    • 最近多くの番組が距離をとったりアクリル板を挟んだりしながらも元の撮影形態に戻ってきているように思います。感染者数が日に日に増えているこの状況の中で、対策を緩めて良いのかと少し心配があります。(東京・高校1年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『さよなら!インターハイ ミキと高校生の“校内放送” 』(NHK総合)最後の大会がなくなるのはすごくつらくて悔しいだろうなぁと思いました。こんな時期だからこそできる企画で、今の高校生の思いを聞けたので良かったです。(山形・中学1年・女子)

    • 『さよなら!インターハイ ミキと高校生の“校内放送” 』(NHK総合)私もせっかくの高校生活なのに楽しみだった行事もなくなり、時間がどんどん過ぎていくだけで歯がゆさを感じていました。この番組のような高校生が声をあげる機会を作ることで、また前に向かっていける気持ちになれればいいなと思います。また、校内放送の形式がまるでラジオのようで楽しそうだなと思いました。(千葉・高校1年・女子)

    • 『さよなら!インターハイ ミキと高校生の“校内放送” 』(NHK総合)番組のコンセプト(何をしたいのか)がよく分からなかった。おそらく、中止になったインターハイに関して全国の高校生の思いを共有するような番組だと思うが、番組内では”校内放送”の舞台になった1つの高校(出演者の出身校)に関する話題が多く、その高校に向けるえこひいきのような印象を受けた。インターハイが中止になり、同じようにつらい思いをした全国の高校生はこれを見てどう思うのだろうか。(熊本・高校2年・男子)

    • 『音が出たら負け』(日本テレビ)見ているこちらも息を潜めてしまうほど音のない番組で、テレビなのに音がないなんて斬新で面白いな、と思いました。私も実際体験してみたいな、と思いました。(長野・高校1年・女子)

    • 『音が出たら負け』(日本テレビ)いつも旬な出演者や若い人に人気のインフルエンサーたちが出演するのでいつも楽しみにしている。(東京・高校1年・女子)

    • 『炎の体育会TVSP』(TBSテレビ)生放送の対決はとても見ごたえがありました。(長崎・高校2年・男子)

    • 『炎の体育会TVSP』(TBSテレビ)コロナの影響でプロ野球の試合数が減って地上波で野球を見ることが少なかったので、より一層楽しんで視聴できた。(千葉・高校2年・女子)

    • 『THE 名門校 全国すごい学校名鑑』(BSテレビ東京)都立日比谷高校の校長にカメラが密着し、どのような改革を行ったのかを取材していました。校長先生が自ら動いている姿や生徒さんが多く映っているところから親しみが感じられ、私のような若い世代にも見やすい作りがされていました。また、CMの前後で話題が切り替わるので、頭の切り替えもしやすかったです。CMの前と話題がつながっている時はその内容を忘れてしまうことが多いので、良い演出だなと思いました。(愛知・高校1年・女子)

    • 『BS1スペシャル「1945ひろしまタイムライン もし75年前にSNSがあったら」』(NHK-BS1)この番組の“高校生やスタッフさんが実際に被爆者の方の話を聞いてツイートを作っていく”という形に興味をそそられました。身近なSNSを通して戦争・原爆について考える機会があるということは、私など高校生に向けて特に意味のあることだと思いました。斬新で面白かったです。出演していた高校生たちが被爆者の方に「当時の気持ちがツイートで正しく再現されていない。行軍は憂うつだなんて思っていない」と言われた場面がありました。体験者にしか分かり得ないことがたくさんあるのだとわかりました。「実際に話を聞く」という行為で学ぶことはやはり大切で貴重だなと思いました。私事ですが、私の祖母は戦争体験者であるので、話を聞けるうちにたくさん聞いておこうと思いました。(東京・高校2年・女子)

    • 『サンドのぼんやり~ぬTV』(東北放送)新しくなった東北放送の社屋を探検するという内容で、番組作りの裏側をのぞけたような気持ちになれて楽しかったです。今までも何度かこの番組を見たことがありますが、地元宮城の良いところや人と人との縁が大切にされていて、毎回心が温まります。(宮城・高校3年・女子)

9月のテーマは、「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全部で27人から報告がありました。
「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」で複数のモニターから意見が寄せられたのは、『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)で、6人でした。それ以外のモニターは全員異なる番組を取り上げていました。
「自由記述」では、6人がコロナ禍での番組制作に関連した内容で記述していました。「リモート出演が減って嬉しい」という声がある一方で、「共演者同士、コロナをうつし合うのではないか」という心配の声がありました。また、「遠出しづらい中、旅番組で旅気分を味わい楽しんでいる」という声、「コロナで疲れた心を癒すような番組を作ってほしい」という放送局への要望もありました。そのほか、俳優の薬物所持・逮捕報道について考えをまとめたモニターもいました。
「青少年へのおすすめ番組」では、複数のモニターから意見が寄せられたのは4番組でした。『THE MUSIC DAY 2020』(日本テレビ)を7人が、『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)と『もしもツアーズ』(フジテレビ)をそれぞれ3人が、『B面ベイビー!』(NHK Eテレ)をそれぞれ2人が取り上げていました。

◆委員の感想◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)について、多くのモニターが報告してくれた。対照的な性格の2人が衝突しながら事件を解決していくようなバディものは刑事ドラマとかサスペンスではよくあるパターンだが、このドラマは1回1回の事件の深みがこれまでのドラマとは違っていた。今、現実に起こっていることが内容に取り入れられ、リアリティーがあり、社会的メッセージが大いに含まれていた。それが中高生にもしっかり届いていた。

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)について、あるモニターから「これまで報道で伝えられていても、自分の周りで起こっていることとしてリアルに感じられなかったことが、ドラマ上の脚色はあるとはいえ、きちんと認識できて、自分で調べてみようと思えました」という声が届いた。社会的な関心まで発掘したこのドラマは素晴らしい。

    • 『NHKスペシャル「豪雨災害 いま何が必要か~命を守る“避難スイッチ”~」』(NHK総合)を視聴したモニターが、自分も危険を感じたらすぐに行動して命を守ろうという強いメッセージを番組から受け取ったと感想を寄せた。若い人たちにとって、異常気象は自分たちの未来に関わる大きな問題だ。自分の問題として重く受け止め、この番組を見た人も多かったのではないか。

  • 【自由記述】

    • バラエティー番組の企画内容がどれも似通っているという指摘があった。「バラエティー番組なのだからバラエティーに富んだ番組をもっと見たいです」という意見をぜひ放送局に伝えたい。

    • ドラマやバラエティー番組などの続編を有料コンテンツで放送することに関して、モニターから「サイドストーリーならまだ分かるが、気になる終わり方をして続きは有料コンテンツでしか見られないということが多く、おかしい」という声が届いた。以前も同じような意見が来たと記憶している。テレビ局の事情はわかってはいるが、それでも、このように考える若い視聴者がいることをぜひ伝えたいと思った。

    • 「最近リモートではなくなってきた」「飲食店での撮影は密になることもある」など、最近のコロナ禍での番組の作り方からいろいろと感じ取っているモニターが多く、とても興味深い。

◆モニターからの報告◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)第10話でSNSの脅威が鮮やかに描き出されていた。1人の人物が多数のアカウントでフェイクの動画をアップしたことで、街中の人がその内容を信じ込んでしまう様子が描かれていた。多少の脚色はあるにしろ、私たちが今このような世の中で生きているということに恐怖を感じた。(東京・中学3年・女子)

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)最後まで展開が予想できず、見入ってしまった。俳優の演技も狂気に満ちあふれていて、怖さを生み出し、作品の世界観に浸ってしまった。また、最後も完ぺきなハッピーエンドにしないところが面白いと思った。バッドエンドだと悲しく、ハッピーエンドすぎるとふに落ちず、その中間をとったのがいいと思った。(東京・高校1年・男子)

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)大ヒットした『アンナチュラル』と『逃げ恥』のスタッフがいるという安心感から見る人も多かっただろうなと思う。なんのドラマを見ようか、という時に裏方の人たちで選ぶことがないので、今度からチェックしてみようと思う。(東京・高校1年・女子)

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)あまり身近ではない初動捜査に全力をささげる機動捜査隊の様子が(おそらく)とてもリアルに描かれていて臨場感があり、見ていて引き込まれてしまった。当初の予定より数話分少なくなったそうだが、最終話に向けて決して詰め込んだ感もなく、最終話で主演の2人がマスク姿で登場した時(今のコロナ禍の日本と同じ世界)は、今までコロナ情勢を盛り込んだ作品を見たことがなかったので意外性に驚いた。続編を期待したい。(千葉・高校2年・女子)

    • 『金曜ドラマ「MIU404」』(TBSテレビ)在日外国人の技能実習生の問題を扱っていたことがとても印象に残りました。これまで技能実習生をめぐって、パワハラや長時間勤務などの問題が報道されていましたが、自分の身の回りで起こっていること、という認識があまりできていませんでした。ドラマ上の脚色も少しはあるかもしれませんが、ドラマとして今起きている問題を認識できると、ニュースで知るより関心が湧き、自分で調べてみようと思えました。(神奈川・高校2年・女子)

    • 『NHKスペシャル「豪雨災害 いま何が必要か~命を守る“避難スイッチ”~」』(NHK総合)今まで19回避難して、20回目の避難で家屋の土砂崩れから逃れたという人の話しがあり、ずっと「空振り」だったけど、それは20回目の避難のための「素振り」だったのだと紹介されていました。19回は「本番に向けての素振り」という表現に、私は無駄なことはないのだなと思い、自分も少しでも危険を感じたら、自分の命を守るための最大の努力をしようと思いました。集中豪雨の原因である「地球温暖化」の原因は、地球に住んでいる人間の生活活動によって生じる様々なものが原因と言われており、結局は、自分達人間が災害という形で、しっぺ返しをされているのかもと感じました。地球にも優しい生活様式に変えることが、自分自身の生活や命を守ることに通じるのではと、この番組を見て思いました。(長崎・中学1年・女子)

    • 『駅・空港・街角ピアノ スペシャル』(NHK総合)“音楽とは何か”自分はこれまで吹奏楽部の1人のメンバーとして音楽に携わってきましたが、この答えが出せないまま高校3年まで部活をやってきました。そんな時に偶然この番組の番宣を見かけ録画して見ることにしました。この映像を見て自分は音楽とは目には見えない人と人との絆をつなぐもの、自分の気持ちや思いをその曲を通じて伝える手紙のようなものなのではないのかと考えました。自分もこれからも、高校3年生になり吹奏楽部という部活動を引退した後も、どこかで音楽を通じて人を笑顔にさせたり、励ましたりできるようにしたいと思いました。(茨城・高校3年・男子)

    • 『クローズアップ現代+「新型コロナ 元感染者たちの告白」』(NHK総合)なぜこの番組が最も印象に残ったのかというと、コロナがインフルエンザのように1、2週間で回復する病気ではなかったことに気づかせてくれた大きな契機となったからです。これを知るまでは、新型コロナウイルスにはインフルエンザと同様、健康な方にはその後の体調不良は見られないのではないか、と考えていました。しかし現実はそうではなく、元感染者の3割近くが回復後もいまだに苦しみ続けている人がいることを知り、これからもコロナと共存していかなければいけない私たちにとって知らなければいけない情報だと感じました。(この番組が放送された)6月から約3か月が経ち、現在ではワイドショーを中心にもはや、コロナに関する報道が少なくなっています。(高知・高校3年・男子)

    • 『ソーイング・ビー』(NHK Eテレ)コンテスト出場者が作品を作っているところを映しているだけでなく、その課題の洋服などの歴史を紹介していたり、個人で作る作品を決める時にその出場者がどんなドレスを作っていくのかを図で説明していたりしていてとても分かりやすいです。日本のコンテスト番組ではあまり見ないような部分も多く、海外の番組とは違いが多いのだと思いました。違った点でいうと、ゲスト(モデルや身内)が多く登場したり、司会者と審査員と出場者の距離が近かったり、出場者が審査結果を待つ間のお茶の様子を映していたりしていたという点。日本にはこのような番組があまり多くないので、たまにはこのような番組参加出場者が少なく、長期間に及ぶコンテスト番組をもっとやってもいいような気がしました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 『ファインド・ミー~パリでタイムトラベル~』(NHK Eテレ)毎週リアルタイムで見るほど楽しみにしている番組です。登場人物それぞれに家庭の事情や対人関係などに問題を抱えており、その悩むさまがとてもリアルで、登場人物と年代が重なることもあり毎回共感したり、深く考えさせられたりします。どの登場人物にも共感できるところ、欠点があるので、とても感情移入しやすいところも良いところの1つだと思います。こういったティーン向けのドラマは日本ではあまり制作されない印象があるので、とても貴重な枠だと思います。夜の時間帯に放送されているドラマも面白いのですが、もっと若い人に向けたメッセージ性のあるドラマが増えてもいいのではないかなと思います。(愛知・高校1年・女子)

    • 『報道特集』(TBSテレビ)特集で、公演再開までの東京都交響楽団の取り組み等が紹介されていた。私はこのコーナーを見て驚いたことがいくつかある。1つ目は、楽器ごとの飛沫についての実験結果だ。2つ目は楽器の特性や飛沫実験の結果によって舞台上での感染防止策(アクリル板など)を変えていたということだ。私はすべての奏者の横や前、後ろを仕切ったり距離を取ったりする必要があると考えていた。しかし、もちろん基礎的なものは必要だが、実際にはすべての楽器の前に、すべての角度にアクリル板を置く必要はないし、距離も飛沫の飛びやすさによって調整していた。楽器にも様々な特性があるから一律に定められた距離を取っておけばいいというわけではないのだなと思った。(東京・高校1年・女子)

    • 『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ)今回のテーマである「動く」にとても共感できました。何もしなければ何も変わらない、だからこそ今できることから始めてみようというのは素晴らしいことだと思いました。コロナウイルスの影響で直接会って何かをするということはできないけれど、離れた場所であってもこうして誰かを元気づけることができるというのは今いちばん必要なことなのではないかと感じ、それを視聴者に届けた24時間テレビが最も印象に残っています。(東京・高校1年・女子)

    • 『木曜ドラマ「未解決の女 警視庁文書捜査官」』(テレビ朝日/秋田朝日放送)たまにほかの作品とのコラボがあり、とても面白く、ほかの作品を見てみたくなるような工夫がされていると思いました。(秋田・中学2年・男子)

    • 『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ)塾から疲れて帰ってきてこの番組をうだうだと見るのを楽しみにしています。私がひかれるポイントは、占われる人の様々な人生や経験が見えるところだと思います。占い師の聞き上手話し上手の展開の仕方が聞いているだけで面白いし、言い当てるところは驚きや快感で、見るのが癖になります。言い当てられた過去のつらい出来事も、それで終わりではなくて、占い師にアドバイスをもらいながら自分の内面と向き合って、これからどうしていくかを考えるので、1人1人の話に深みがあるし、人間って面白いなぁと思います。(千葉・高校1年・女子)

    • 『夕方LIVE ゲツキン!』(熊本放送)平日18時台に放送されている報道番組の拡大版で、4日前に熊本で発生した豪雨災害に関連した報道特別番組。中盤では、災害発生前日に取材した映像を発生後の同じ場所の映像と合わせて放送されました。たった一晩の雨でここまで街が変わるんだと、かなりの衝撃を覚えました。その映像には出演の方(被災地域出身)も衝撃だったのか、放送中に涙を流されていて今でも強く印象に残っています。ただ、被災地の今の状況や発災後のドキュメント、かつてのダム建設計画の話題など、被災者以外に現状を伝える分にはとても充実した内容でしたが、被災者に必要なライフライン情報や、ボランティアの情報などが全体的に少ない印象でした。私は実際に被災した身ではないのでわかりませんが、発災4日ではまだそういった情報も必要なのかなとも思いました。(熊本・高校2年・男子)

  • 【自由記述】

    • 最近、テレビで「〇〇できたら100万円!」という企画が多いなと感じます。お金だけではなく、もっと違う方法で出演者に対して褒美を与えた方が新鮮味があって面白いのではないかと思います。バラエティー番組なのだから、バラエティーに富んだ番組がもっと見たいです。(愛知・中学2年・女子)

    • ずっと嫌だなと思っていたことがあり、それはドラマやバラエティー番組などの続編を有料コンテンツで放送することです。サイドストーリーならまだ分かるのですが、わざと続きが気になる終わり方をして、続きは有料でしか見られないということが多々あり、その部分はテレビと有料コンテンツできっちり分けなければいけないのではないかと感じています。(東京・高校1年・女子)

    • 飲食店などでのロケが増えてきたが、密を避けるために出演者同士が距離をあけているのは良いが、とても場を回すのがつらそうに見えてしまう。(千葉・高校2年・女子)

    • 各局が密を避けて収録をされていますが、結局何かの弾みで近くにいることもよく見かけるので、見ていて不安になりました。特に、番組の司会で共演をされていたお笑い芸人の方とアナウンサーが新型コロナウイルスにかかったニュースは、感染が共演によるものなのかは分わかりませんが、テレビ収録は危ないのだろうと、より感じました。(東京・高校2年・女子)

    • 最近バラエティー番組などで、リモートや電話での出演が少なくなって嬉しいです。同じスタジオでトークをしている方が面白いし、いいなぁと思いました。(岡山・中学2年・女子)

    • あまり外出できない状況なので、町を探索する番組やご当地グルメを紹介する番組を視聴して旅行気分を味わっています。マスクを着用しての撮影や中継を活用しての町の人たちとの関わりなど、どの番組も安全に工夫しているため安心して見られるし、改めて日本のことをより知ることができて楽しいと思います。(宮城・高校3年・女子)

    • コロナについて、最近はもうみんな慣れてきて騒ぎも落ち着いたと思います。でも、やっぱりどこかで疲れや心の負担を感じている人は多いと思います。テレビでリフレッシュや、心のケアができればいいなと思います。(千葉・高校1年・女子)

    • 学校でのコロナの話題は薄くなりいつも通りの生活が戻ってきました。もっぱら学校での話題は受験勉強や推薦入試など自分たちの将来に関する話がとても多くなりました。ですが、これから冬になるにつれてインフルエンザやコロナウイルスの再拡大などまた気を付けなくてはいけない日々が待っているのだろうなという不安も学校の中では出てきています。(茨城・高校3年・男子)

    • 芸能人が麻薬で逮捕され、ニュースも多く流れましたが、麻薬の恐ろしさをあまり伝えていないような気がします。本当に必要なことを今注目している時こそ伝えるべきだと思います。(東京・高校1年・男子)

    • 母から、最近は緊急性のないものも速報としてテレビに流れることが多いという話を聞きました。コロナウイルスの感染者数が速報として流れることがあるが、それはニュース番組で報道すればいいのではと言っていました。私も速報が流れてテレビに飛びつくと政治関連の緊急性のない内容であきれた経験があります。緊急性のない内容を速報として流すことは「速報」の価値を落とすことにつながるので不適切ではないかと思います。(愛知・高校1年・女子)

    • 『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』(日本テレビ)芸能人が小学校で習う問題に挑戦する番組で最終問題に挑戦せずにドロップアウトした場合に「わたしは小学5年生より賢くありません」と言うルールがあると知った。このようなルールは小さな子がみた時に誤解しかねないのでやめたほうがよい。せめて、賞金をドロップアウトする場合も問題を解くことはできるようにした方がよい。(千葉・中学1年・男子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『THE MUSIC DAY 2020』(日本テレビ)いろいろなジャンルの曲をグループでまとめて分かりやすくしていると思いました。幅広い年代にもわかるようなたくさんのジャンルがあったと思いました。(秋田・中学2年・男子)

    • 『THE MUSIC DAY 2020』(日本テレビ)8時間の音楽番組を放送してくれて嬉しかった。生放送で元気をもらった。(長崎・高校2年・男子)

    • 『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)「世界の様々な国の人に同じ質問をすればどう返ってくる?」というとてもシンプルなテーマだけれども、意外と手間がかかる番組だと思いました。様々な国出身の外国人ゲストが出ていて、企画の結果がどうしてこうなったのかを考察を交えながら説明していて、より企画がわかりやすく頭に入ってくるなと思いました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 『もしもツアーズ』(フジテレビ)横須賀はよく行っていた場所だったので、番組を見てまた行きたくなった。家族が家にいて夕食を食べている時間帯でもあるので、家族で楽しめる場所を紹介するのはかなりいいんじゃないかなと思った。(東京・高校1年・男子)

    • 『B面ベイビー!』(NHK Eテレ)ファンの視点から魅力が分かりやすく解説されていて、興味を持てました。出演者同士のトークの場面では、教室やタクシー車内など背景がかわいくて、自分も同じ空間にいるかのような感覚になれました。(宮城・高校3年・女子)

調査研究について

担当の中橋雄委員より、調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関し、進捗状況について報告がありました。

以上

2020年9月に視聴者から寄せられた意見

2020年9月に視聴者から寄せられた意見

首相の辞任表明を受けた自民党総裁選、飲酒運転で逮捕された元タレントや亡くなった女優を取り上げた番組等への意見が多かった。

2020年9月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,706件で、先月と比較して202件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性52%、女性28%で、世代別では40歳代27%、30歳代24%、50歳代21%、20歳代13%、60歳以上13%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。9月の通知数は延べ897件【59局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、24件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

首相の辞任表明を受けた自民党総裁選について報じた番組への意見が多く寄せられた。そのほか、飲酒運転で逮捕された元タレントや亡くなった女優を取り上げたワイドショーへの意見も多かった。
ラジオに関する意見は65件、CMについては32件あった。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は109件で、前月から19件増加した。
今月は「表現・演出」が24件、「低俗、モラル」が17件、「その他」が16件、「危険行為」が14件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 新型コロナの報道のあり方について。各放送局の定時ニュースでは、ほとんどの場合、新規感染者の増加数しか報道しない。なぜ完治した人の数を同時に伝えないのか。「今日も感染者が200人を超えました」などのセンセーショナルな表現で、視聴者の不安をあおるだけでいいのだろうか。これだけ聞いていると、いかにも新規の感染者だけがどんどん増えているような印象を与える。不安をあおるだけではなく、真の状況を視聴者が冷静に理解し易いように伝えるのが、メディアの役割ではないのだろうか。

  • 最近の報道番組を見ていると、どの局も同じ話題ばかり。新型コロナが流行すればコロナばかり、台風が来れば台風ばかり、それも首都圏への影響があればすぐに地方を切り捨て、首都圏の情報ばかりだ。偏った意見に集約され、多様な意見は発信しない。自民党総裁選にしても、すでに決定しているような報道が相次いでいる。しばらくしたら一斉に批判するのだろう。報道は世論を形成する。もっと責任を持って、多様な意見を広く伝えてほしい。若い世代は、インターネットでその他の情報を得ることもできるが、それには偏った考え方の場合もある。マスコミ報道以外に情報を取得できる手段を持たない人たちも大勢いることを認識し、制作、発信にあたってほしい。

  • 自民党総裁選について、メディアはひたすら状況を伝えるだけで、前政権がやり残したことへの追及すべき問題について、候補者に聞き、視聴者に伝える姿勢が全く感じられない。一般市民に総裁選の投票権は無い。派閥の駆け引きなど伝えてもらっても無駄なこと。「もう新総裁は決まり」的な雰囲気でまとめている。それよりも、今後取り組むべきことを忖度なく視聴者に伝えたほうがいい。

【番組全般・その他】

  • 台風10号に関して、気象庁のコメントを再三報じているが、あまりにもお粗末だ。「経験したことのない強い台風」「特別警報を発する可能性」「最大限の警戒」など、可能性ではなく、もっと現実に即して、いつ警報を出すのか、台風の経路に予想される住民がどう対応すべきかについて放送してほしい。

  • 緊急ニュースの各大臣の入閣速報が迷惑。数分おきに速報を鳴らし、その度に大臣の話。全く緊急性が感じられない。台風や洪水で、避難の遅れる人たちが出るのは、日頃からどうでもいい速報を流しているからではないか。

  • わざわざニュース速報で、「○○氏が再任」や「○○氏が初入閣へ」と、音付きで何度も速報を流す必要はないと思う。速報は、大雨特別警報など、本当に特別な時だけ流すべきだ。

  • 閉園した遊園地の最後の日にスポットを当てていた。そこには、コロナ禍で迎えた最後の日に、マスクもせずに楽しそうに騒いでいる来園客の姿があった。中高年を中心に、多くの人たちが自らの人生と重ね合わせて閉園を惜しむ姿を描きたかったのかもしれないが、今や人の集まるところでマスクをつけることは常識だ。世の中とのギャップが大きく、違和感があった。

  • 飲酒運転による追突事故を起こした元タレントについて、各局で過去の映像や事象を引き合いに出し、実名・顔出しでの報道を行っている。事故を報じるのは致し方ないとしても、芸能界を引退し、一般人として生活している人への配慮がされていない。ましてや、過去に不起訴になった件や離婚理由について、関連付けて報道するのはいかがなものか。日々、飲酒運転による交通事故が発生している中、交通事故の加害者を実名・顔出しでは報じていない。彼が元芸能人であったことを考慮しても、過去の件を持ち出しての報道は、人権を侵害しているように感じる。

  • 元タレントの逮捕報道について。有名芸能人だったからといって、「○○さん」という呼び方はいかがなものか。あくまで違法行為をして逮捕されたのだから、きちんと一般人と同じように「○○容疑者」の呼び方で報道したほうがいい。報道は公平中立の立場であらねばならない。それをしっかり踏まえてほしい。

  • 亡くなった女優について。各メディアに言えることだが、自殺と思われる報道は慎重になる必要がある。コロナ禍などで不安定な社会、芸能に携わる人たちの自死が相次ぐ中、なおさらそれが当てはまると思う。彼女が訪れていた寿司店へのインタビューでは、店員からの「微笑みがなかった」や「楽しそうではなかった」という証言が引き出されていたが、プライバシーは一体どこにあるのか。これを報じることで、自殺の抑止になるなど、社会に良い影響があるのだろうか。こうした報道のされ方が、芸能界をはじめとする様々な業界にストレスを与え、さらなる悲劇を生むことになるのではないかと危惧している。自殺を取り扱うすべての番組に、もう少し配慮が必要だと思う。

  • 日曜昼の傑作選は、芸人が大量の麺類や超激辛ライスを食べる企画。料理に使用された唐辛子や香辛料は常識を超えている。芸人たちは涙を流しながら無理やり口に運ぶ。食事を堪能する表情は全くなく、どう見ても苦行を強いられている。人間が一度に食事を摂る量には限界があり、胃破裂を引き起こす可能性が高く、医学的に危険である。食品ロス問題が叫ばれる昨今、大量の残飯を生み出すなど時代に逆行した企画で、不快感しか残らない。

  • 見たくない、見せたくない暴力的な映像が流れることがあり、子ども達への影響を懸念している。先日も、朝、テレビをつけると、タクシー車内で運転手が殴られるドライブレコーダーの映像が流れていて、子どもが大変怖がっていた。心理的な影響や、これらの暴力的な映像が常態化して、何とも思わない、当たり前の風景になってしまうのではないか。視聴者からの映像を入手する簡易さと、センセーショナルな映像による視聴率の追求が相まってなのか、近頃、暴力的な映像が垂れ流しされているように感じる。放送による影響を考慮し、人が被害を受けている映像を見ても平気でいられる人間を育てないよう、配慮してもらいたい。

青少年に関する意見

【「低俗、モラルに反する」との意見】

  • 音楽番組で昭和60年代のヒット曲を歌っていたが、歌詞の内容が未成年者の性行為を想起させ卑わいで下品だった。発売当時は世間が大きな問題意識を持っていなかったと思うが、いまこの曲を子どもも見ているゴールデンタイムで放送したのは残念だ。

【「危険行為」に関する意見】

  • ドッキリを仕掛けるバラエティー番組で、手指消毒液の入れ物から熱したゴマ油が噴出。熱さに困惑していると、さらに熱したゴマ油を掛けるという企画をやっていた。加熱した油は危険だ。子どもが平気だと思って料理中に近づいてきたり、マネをしていじめに使ったら恐ろしい。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 子どもの通う小学校の児童一人がコロナの陽性となり、休校となった。これについて朝の情報番組で、学校名と校舎を外から撮った映像が放送されたが、その必要はあるのか。特定する報道の仕方は、コロナ差別やクレームを助長するのではないか。

  • 著名人の自殺に関する報道を控えてほしい。悩みを持つ人々に対して刺激となりかねない。思春期の若者の自殺は、もっとも危惧される死因の一つになっている。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • バラエティー番組の動画を紹介するコーナーで、人が車にはねられたり、銃で撃たれて苦しんだりする様子がモザイクなしで放送されていた。人が死んだわけではないという判断で放送したのかもしれないが、子どもが見てもおかしくない時間帯で普通に流されることに驚いた。もう少し子どもたちに配慮して頂きたい。

【「その他」に関する意見】

  • 子ども向けアニメ番組放送中に、有名人が自殺したニュース速報テロップが表示され、子どもたちが怯えていた。速報性も大事だとは思うが、アニメ番組であることやニュースの内容を考えると、速報テロップの出し方に子どもへの配慮がほしかった。