第261回-2023年10月
視聴者からの意見について… など
2023年10月24日、第261回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、9月後半から10月前半までの約1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
10月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
また芸能事務所創業者の性加害問題について、前回に引き続き意見交換しました。
最後に今後の予定について確認しました。
視聴者からの意見について
9月後半から10月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から、「この間の意見は、芸能事務所創業者(故人)の性加害問題に関するものが大半だった。9月後半は、同事務所所属のタレントを番組に出演させることや、性加害を連想させるような番組タイトルを続けることへの批判が多かった。10月前半は、『所属タレントは加害者ではない』として、これを擁護する意見も増えてきていた」と報告がありました。
性加害問題に関連して昼のバラエティー番組で、「芸能事務所経営者がハワイで豪遊」との週刊誌報道をそのまま紹介したところ、「偏向報道だ」とする視聴者意見が寄せられたことについて担当委員は、「番組がみずから取材して『豪遊』としたのではなく、週刊誌の記事や見出しを持ってきただけだった」として、番組側の事実のとらえ方が問題だったという見方を示しました。
しかし、これ以上の議論になる番組はなく、「討論」に進むことはありませんでした。
中高生モニター報告について
10月のテーマは「最近見たバラエティー番組について②」で、モニターからは合わせて22番組への報告がありました。トークバラエティーをはじめ、教養バラエティーやドキュメントバラエティー、ゲームやクイズ、旅企画など、多彩な番組に関する報告が集まりました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『笑わない数学』(NHK総合)に7人から、『日曜日の初耳学』(毎日放送)に4人から、『サスティな!』(フジテレビ)と『朝メシまで。』(テレビ朝日)にそれぞれ3人から、報告がありました。
◆モニター報告より◆
【最近見たバラエティー番組について】
- 『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)
家庭や個人の病気、深刻な家族状況などはあまり知る経験がないので、様々な人生について、この番組を通して知ることができました。悪性リンパ腫になったという23歳の女性は、たとえ病気でも深く思いこまずに明るく笑顔でいて、とても尊敬できる人だと思いました。(中学1年・女子・千葉)
- 『バナナサンド』(TBSテレビ)
「歌詞イス取りゲーム」は、少し大変そうだけど自分のペースでゲームができるし、ふつうのイス取りゲームより頭に良さそうで楽しそうだし、学校でもできそうです。子どもがすぐにマネできるあそびがたくさんあっていいなと思いました。(中学1年・女子・島根)
- 『プレバト』(毎日放送)
私は特に俳句コーナーが好きです。俳人の夏井いつき先生が、出演者の俳句の添削で、バッサリと、ずばっと言うところが痛快でおもしろいです。当たり障りない発言を意識してしまう時代ですが、夏井先生のユーモアと愛に満ちた辛口な添削は、見ていて心地よいです。(中学1年・女子・福岡)
- 『わが家の給料広げてみた』(テレビ朝日)
金額が多いか少ないかを語るのではなく、どんな思いが詰まっているかに注目しているところが魅力的だと思った。僕自身は、普段わからない親の姿に触れることができ、純粋に「親に感謝するべきなんだな」と思った。(中学2年・男子・東京)
- 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)
「0円食堂」の企画は、食品ロスの改善や地産地消をしていて、面白いだけでなくSDGsの勉強になります。様々な地域を盛り上げていくという考え方は素敵だと思います。ただ、毎回おなじ人が出演していて新鮮さに欠けるので、いろいろなジャンルのゲストに出てほしいです。(中学2年・女子・愛知)
- 『オールスター感謝祭』(TBSテレビ)
はじめから盛りだくさんのクイズや企画があり、おもしろかった。100人分の焼肉弁当をかけて戦うコーナーでは、解答者だけでなくドラマスタッフも団扇などを持って一緒に応援している様子から、それぞれの作品のスタッフの仲の良さが感じられて、ドラマを見るのが一層楽しみになった。(中学2年・女子・東京)
- 『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(フジテレビ)
ランキングを予想しての投票は新鮮だったので、自分も盛り上がって楽しかったです。画面のイラストやスタジオのセットが、すごく可愛くて好きです。(中学2年・女子・栃木)
- 『小泉孝太郎&ムロツヨシ 自由気ままに2人旅』(フジテレビ)
バラエティー番組は、人を“いじる”ことで笑いをとることがよくあるしそれも面白いが、それをせずに視聴者を笑わせることができる出演者の2人は、本当にすごいと思う。(中学3年・女子・滋賀県)
- 『所さん!事件ですよ』(NHK総合)
今まで観光地には人が来れば来るほどいいと思っていたけれど、オーバーツーリズムで混み合う富士山の山頂や、世界遺産に登録されているがゆえに汚れているベネチアを見て、これが日本と世界の実情なのだと思った。問題提起するような番組をこれからも作ってほしい。(中学3年・女子・広島)
- 『超無敵クラス』(日本テレビ)
若者の視点で社会が見られて面白いし、未来を切り開く行動をもっと自分もしていかなければならないと感じます。それは簡単なことではないので、好きを極めている人はすごいと思いました。(高校1年・男子・群馬)
- 『アメトーーク!』(テレビ朝日)
「ビビリ1グランプリ」を見た。「ビビリロード選手権」では様々な人のビビリを次々に見ることができて、全く飽きなかった。また、映像に対するスタジオからのツッコミをしっかり放送しているところも、面白くていいなと思った。(高校1年・女子・北海道)
- 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
ニワトリの鳴き声など、誰もが楽しめる祭りの話題でした。外国の良さや人情を知ることができるとても良い企画だと思います。昔は、危険な祭りの話題で、体を張って体力と根性で笑いを届けていましたが、これからは見るほうも安心して楽しめる祭りを放送してほしいです。(高校2年・男子・山形)
- 『世界一受けたい授業』(日本テレビ)
今年の都道府県魅力度ランキングの結果を発表していたが、県が生み出した、全く聞いたことない新しい取り組みが多く紹介されていて面白かった。ただ、下位の県の紹介が多くなくて、違和感が残った。ランキング40位台だと紹介することは、その県のイメージを大きく下げることになるので、「この結果ではあるがこんなに魅力がある」と紹介して、イメージを引き上げてほしいと思った。(高校2年・女子・愛知)
- 『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)
水ダウは、現行のテレビ番組の中でも、ひときわ目立つ異質な番組で、それは恐らく視聴者が良い意味で置いて行かれる番組だからだと思います。どんな内容なのかいつもワクワクするし、どの企画も今まで見たことのない斬新で面白い素晴らしいものだと思います。構成作家を調べたところ、若手の作家さんがいたり数人でやっていたりして、興味深いと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
- 『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)
自分から好んで見る内容ではないからこそ、テレビでこのような知らない世界を見ることができて、とても興味深かったです。現実とは思えない異国の現状を知ることができる、教育的な良い番組だと思います。(高校3年・女子・北海道)
- 『ジャンクSPORT』(フジテレビ)
ゲストの恥ずかしい一面を晒すことになっても本人がそれを嫌がることなく、ゲストへの「いじめ」とならないような“笑い”になっているので、楽しく見ることができます。アスリートは引退が早く、ゲストが途切れることはないと思うので、長く続いてほしいです。(高校3年・女子・京都)
【自由記述】
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「確実に“優しい”人」「確実に“ノリだと分かる悪口”を言える人」は安心してみていられる。そういう人をもっと増やしてほしい。また、芸能人とはいえ、人としての気持ちもあるし限界もあるから、笑いの対象として見るだけではなく、ひとりの人間だと考えてほしい。(中学2年・女子・福井)
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番組でよく「特別に許可を得て〇〇しております」と小さく書いてあるが、そのシーンの冒頭のみで、途中から消えている。途中から番組を見た人は勘違いすることがあるのではと思うが、注意書きがずっと書いてあるのも気になる。(高校2年・男子・山形)
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朝のワイドショー番組のエンタメコーナーを見ていると、いくつかの局で、エンタメコーナーがかぶっている。なぜ同じコーナーの時間をそろえているのか、不思議に思う。(高校1年・女子・茨城)
- 最近は見逃し配信の視聴者が増えてきて、深夜番組の視聴者獲得チャンスも増えてきた。クオリティの保証をしていかなければならないと思う。(中学2年・男子・埼玉)
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テレビはリアルタイム視聴が基本ですが、帰宅時間が遅くてもどうしても見たい番組は、見逃し配信サービスを利用しています。働いている人もリアルタイム視聴は難しいので「テレビのリアル放送は必要ないかも」「テレビがなくても困らないのではないか」と疑問が生じました。ただ「災害時にはテレビはあった方がいいのかも」と、なかなか難しい問題だと思います。(高校3年・女子・京都)
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芸能事務所の性加害問題の報道について、子どもが見ている昼・夜の番組で(特に土日の昼)、生々しい証言をそのままの表現で報道するのは適切ではないと思う。(高校3年・女子・北海道)
【青少年へのおすすめ番組】
- 『笑わない数学』(NHK総合)
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数学には興味があまりわかないのですが、今回の説明で、少しわかったような気になりました。視聴後にネットで「非ユークリッド幾何学」を検索したり、「非ユークリッド幾何学」が成り立つ異世界が世の中には存在するのではないかと想像したりして、無色だった数学のイメージに少し色が加わりました。(中学1年・女子・福岡)
- パンサー尾形さんの、問いかけるような話し方がわかりやすく、話が入ってきやすかった。(中学2年・女子・東京)
- 『日曜日の初耳学』(毎日放送)
インタビュアーの林修さんがゲストと1対1で話すところが、他のバラエティーとは違って、面白いけれど深い感じがして、とても好きです。(高校1年・女子・京都)
- 『サスティな!』(フジテレビ)
SDGsをバラエティー感覚で楽しく学べました。17の目標のアイコンを一緒に出すといいと思いました。(中学1年・女子・島根)
- 『朝メシまで。』(テレビ朝日)
高級列車の整備員や農家など、自分の身の回りの生活の中に、そうやって支えてくださる方がいるおかげで生きられるという、当たり前だけど忘れがちなことを改めて確認できてよかったです。また、大人の弁当を見たとき、意外と小食だなと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
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『ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールD 日本×アルゼンチン』(J SPORT)
父が高校までラグビーをやっていて、その影響で私も試合を見るようになり、一緒に応援しています。ラグビーはマイナーな競技かと思ったので、友達に「面白いから見たほうがいい」と紹介したところ、見てくれた友だちもいて盛り上がりました。(中学3年・女子・福岡)
◆委員のコメント◆
【最近見たバラエティー番組について】
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『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)の企画について、出演者の人権や体調を心配しているという意見があったが、“優しい笑い”に慣れた若年層の見方だと思う。
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『世界一受けたい授業』(日本テレビ)について「原因不明の事件や現象の解決策として、諸説ではなく、最も有力な説を1つだけ説明していたので満足できた」という感想があった。物事を多角的に紹介する番組が多いと思うが、一つだけだから満足したという視点は独特だと感じた。
【自由記述について】
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『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(フジテレビ)について「最近見つけて面白かった番組」だとモニターが報告していた。この番組は放送3年目を迎え、お笑い界でトップクラスの芸人2組が出演しているにもかかわらず、番組の存在自体が今まで中学2年生に届いていなかったという事実は、もったいなくもあるし深刻でもある。少し前までは、新聞やネットのテレビ欄を眺めながら何となく番組を認識していた可能性もあったろうが、もう今の中学生はそのような状況にないのだということに、改めて気づかされた。
- 「平日の夜に長時間テレビを見る時間はとれないので、2~3時間スペシャルのバラエティー番組は、学生は視聴しにくいのでは」という意見があったが、今はこういった考え方が主流なのだと思う。
- 芸能事務所の性加害問題について「所属タレントの仕事にまで影響が及ぶのは違う気がするし、とても残念だ」という感想があったが、若年層の間ではわりとメジャーな受け止め方だと思う。テレビで報道されているトーンとは一線を画して、社会の分断を感じるところではある。
【青少年へのおすすめ番組について】
- 『笑わない数学』(NHK総合)を取り上げたモニターが多く、このような番組が興味を集めることに驚いた。
- 『もやもやパラダイム』(NHK Eテレ)をはじめ、『わが家の給料広げてみた』(テレビ朝日)など、給料の話題に興味を持つモニターが多かった。
芸能事務所創業者の性加害問題について
芸能事務所の創業者(故人)が、所属する多数の未成年のタレントに性加害を繰り返していた問題について、BPO、あるいは青少年委員会としてできることはないかとの観点から、前回に引き続いて意見交換しました。
ある委員は、「この問題が長い期間かけて起きてきたことを考えると、(BPOが)きちんとした企画を長いスパンで考えることも必要だろう。子どもの人権、とりわけ男の子を性加害からどうしたら守れたのかを考えなければならない」と述べました。複数の在京テレビ局が検証番組を放送したことを受けて別の委員は、「報道してこなかったのは『当時(1980~90年代)は、男性の性被害について意識が弱かったから』としているものが多く見られたが、当時の児童福祉法でも18歳未満の子どもに性的なことをすれば処罰の対象だった。そこに焦点を当てた検証はあまり見られなかった。児童虐待の観点で真剣に考えるべきだということを言うべきだ」としました。
またほかの委員は、「この巨大な性加害が何十年も放置されてきた背景には、放送局がビジネスをやるうえで、ここ(当該の芸能事務所)とことを構えるのは損だという構造的な問題があった。忖度が生まれた背景まで切り込まないと、また同じ轍(てつ)を踏むことになるが、具体的に何をやるべきなのか」と指摘しました。
こうした議論を経て、ひきつづき次回も本件の議論を続けることになりました。
今後の予定について
11月22日(水)に石川県金沢市で開催する地元放送局との意見交換会で議論するテーマなどを確認しました。
次回は11月28日(火)に定例委員会を開催します。
以上