2019年8月20日

「訴訟報道に関する元市議からの申立て」審理入り決定

BPO放送人権委員会は、8月20日に開催した第272回委員会で上記申立てについて審理入りを決定した。

テレビ埼玉は、2019年4月11日午後の『News545』内で、元市議が提訴した損害賠償訴訟のニュースを放送した。放送は、「元市議セクハラ訴訟 被害女性職員 請求棄却求める」とタイトルスーパーを表示し、経緯の説明の中で「(議会)第三者委員会が調査をした結果、5つの行為がセクハラやパワハラにあたると認定され、元市議は去年10月に議員を辞職しました」と伝えた。
申立人は、ハラスメントそのものを「身に覚えのないこと」と主張したうえで、「申立人が提訴した裁判であるのに、申立人がセクハラを訴えられたような印象を与え名誉を損なわれた」と訴えた。また、経緯の説明の中で、実際には第三者委員会の認定前に辞職しているのに、「第三者委員会にパワハラを認定されたことから議員を辞職した印象を与え、視聴者に誤解を与えた」などと主張した。そのうえで申立人は、「元市議セクハラ訴訟」という名称をやめることや誤解を与える放送をしたことについて訂正と謝罪等を求めて申し立てた。
これに対してテレビ埼玉は、放送では「被害を訴えた職員を相手取った裁判」と明記していることや、申立人代理人が報道各社に配布した訴状から「セクハラの有無が裁判の争点となると判断した」ことを挙げ、「名誉を損なうとか、放送倫理に反するとは考えていない」と反論している。また、テレビ埼玉は、「言葉の順番が違うことで誤解を招きかねない懸念が残る」と判断し、当該放送のあった日の午後9時半のニュースで修正した内容で放送したほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。

20日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第140回 放送倫理検証委員会

第140回–2019年8月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

第140回放送倫理検証委員会は8月9日に開催された。
出演者の不適切な差別的発言を放送し、前回の委員会で審議入りした関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局社員など番組関係者に対するヒアリングが行われ、その内容について担当委員から報告があった。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送した読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告があり、担当委員から提出された意見書の構成案が示されて意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から提出された意見書案について議論された。

議事の詳細

日時
2019年8月9日(金)午後4時~午後9時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、藤田委員、巻委員

1. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるという意見や、生放送ではなく収録番組であるのに編集作業で発言がカットされなかった点などについて、BPOに多数の批判が寄せられた。
委員会は、民放連の放送基準が人種や性別などによって取り扱いを差別しないとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送された経緯や放送後におわびに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして、前回、審議入りを決めた。
委員会では、担当委員が8月に行った当該放送局や制作会社の担当者に対してのヒアリングの内容が報告された。次回委員会では、意見交換を踏まえた意見書の骨子案が示される予定である。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑う旨の厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
委員会は、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議している。
今回は、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告と意見書の構成案の説明が担当委員から行われ、意見交換した。次回は意見書の原案が提出される予定である。

3. 内容が番組か広告か曖昧だとされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』について審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。
委員会では、前回の議論を受けて担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

以上

2019年7月に視聴者から寄せられた意見

2019年7月に視聴者から寄せられた意見

京都府のアニメ制作会社で発生した放火事件を報じた番組への意見や、お笑い芸人の闇営業問題を扱った番組への批判など。

2019年7月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,338件で、先月と比較して749件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール81%、電話17%、FAX 1%、郵便 1%。
男女別は男性52%、女性47%、不明1%で、世代別では40歳代26%、30歳代24%、50歳代19%、20歳代17%、60歳以上11%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。7月の通知数は延べ1,489件【57局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、25件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

京都府のアニメ制作会社で発生した放火事件は、35人が死亡する大惨事となった。それを報じた番組への意見が多く寄せられた。また、6月に引き続き、お笑い芸人の闇営業問題を扱った番組への批判も多かった。
ラジオに関する意見は57件、CMについては27件あった。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は109件で、前月から48件増加した。
今月は「表現・演出」と「低俗・モラル」がそれぞれ27件、「暴力・殺人・残虐シーン」が19件、「報道・情報」が9件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 京都アニメ放火事件のニュースで、「容疑者は小学校時代にこんなことを書いていた」と文集を紹介していた。これには納得できない。現在の情報であるなら、犯行動機を知る手がかりになるかもしれないが、小学生の頃など、まだ世間がよく分からないし、どんな夢を描くのも自由なはずだ。これを伝えたところでいったい何が解決するというのか。

  • 参議院議員選挙翌日の各局の情報系番組は、選挙の話題よりも、芸人の闇営業の問題ばかりに時間が割かれていた。国政選挙よりも芸能スキャンダルのほうが視聴者の関心が集まるのだろう。若者の政治離れが問題であるように、これでは政治に対する興味や関心が低下する一方だ。国政選挙の話題を疎かにするような報道姿勢は、日本のメディアのレベルが疑われることを考えてもらいたい。

  • 芸人の闇営業問題は、反社会的組織とのつながり、金銭の授受が問題なのに、問題を起こした芸人たちのテレビ会見から、芸人の同僚たちと所属事務所の非難合戦、先輩芸人を巻き込んだ応援合戦の様相を呈してきている。忘れてはならないのは、芸人と反社会的組織との結びつきが絶対にあってはならないことである。これを、芸人と所属事務所のもめごとにすり替えて報道してはならない。基本は反社会的組織との遮断、問題の追求である。

  • 「西日本で大雨の恐れがある」とニュース、天気予報で報道されるが、西日本と言っても範囲が広い。どの地域なのかを限定してほしい。西日本だけでは分かりにくい。西日本で大雨との予報だったが、私が住んでいる四国の瀬戸内側は、全く雨が降らなかった。その際に流れる雨雲レーダーも、局によってさまざまで、どれを信じていいのか分からない。もっと精度を上げて、具体的にどの県、どの地域で大雨の恐れがあるのかを伝えてほしい。

【番組全般・その他】

  • 西日本豪雨を伝えるコーナーで、被害に遭われた方が撮影した映像が流された。インターネット上でかなりの再生回数だという映像は、水がすでに町に広がった状態なのに、撮影者と家族が何度も家に戻るといった内容。家財道具などを2階に上げたいという気持ちは分かるが、この映像を見る限り、「すぐに避難をしなくてもいいのでは…」と誤解を与える可能性がある。アナウンサーが「早めの避難が大事」とコーナーを締めていたが、矛盾にもほどがある。ネットで人気の動画を使いたかっただけとしか思えなかった。

  • 芸人の闇営業問題について、朝番組の司会者が、所属事務所を激しく批判し、「経営陣が変わらないなら自分が辞める」と恫喝するような言い方をしていた。所属事務所に対してどう思おうと自由だが、それを番組の中で興奮して言うべきことだろうか。事務所の人間に直接話せばいいことではないか。同じ事務所の女性芸人も一緒になって批判していた。公共の電波ということを忘れている。この番組の制作スタッフも、これをおかしいとは思わないのだろうか。

  • 話題になっているので初めて見た。衛星画像で山中に建っている一軒家を映し、その後その地域を訪れ、家の所在地を突き止めて訪問する番組だが、見ていて驚いた。一軒家の所在地、家族構成、職業、年齢など、すべての情報がテレビで流されていた。取材された人は、プライバシーや治安の問題に疎く、テレビの取材に喜んで答えてしまったのかもしれないが、テレビ局側は、番組が放送されることで起こりうるリスクを十分に承知しているはずだ。そのリスクを取材される側にしっかり説明していたのだろうか。この一軒家には、太陽光パネルなど高価な設備があり、冬場は誰もいない状況になることが、誰にも分かる放送内容だった。局側が、セキュリティー意識の無警戒さを悪用しているように感じた。

  • 野球中継を見ていると、今やどの番組でも通行人の顔にはモザイクがかかるのに、中継では無遠慮にスタンドに座る客の顔が映る。しかも頻繁に。チケットを買って入場した時点で許諾したことになり、それを暗黙の了解とし、テレビ中継やスポーツニュースなどで映像が使われる。放送されても仕方がないといった勝手なルールがあるようだ。これではあまりにも一方的で、今の時代、まかり通らないのではないか。スタンド全体が映ってしまうのは仕方ないにしても、アップで撮られることが多々ある。私もよく球場で観戦するが、テレビに撮られに行くわけではない。個人情報の取り扱いが厳しくなった今だからこそ、見直してもらいたい。

  • 子どもがおつかいに行く番組は、ほのぼのとして、かわいくてすばらしい。このような番組を見て、若い男女が結婚し、かわいい子どもを育てたいという気持ちにならないものか。すばらしい日本を、子どもたちに引き継ぐためにも、テレビで少子化などと騒いでいるだけでは、若者たちはどうしていいのか分からないだろう。普通に幸せな生活でいいから家庭を持ち、夫婦で子どもを育てる人生を若者たちに導いてやるような番組を作り、それを放送することが、テレビ放送業の使命ではないかと思う。

青少年に関する意見

【「低俗・モラル」に関する意見】

  • ドッキリ企画がテーマのバラエティー番組に、裸の成人男性が逆立ちして、おしりを見せるという低俗な着ぐるみが登場した。ゴールデンタイムに放送しており、小さな子どもたちが集まる場所でロケを行っている。この着ぐるみが制作者の間で問題にならなかったことが信じられない。

  • 深夜のバラエティー番組で、若いアイドルの女の子たちの顔に向かってお笑い芸人がお尻を近づけ、どれだけ我慢できるかという企画を放送していた。アイドルはあからさまに嫌がっていて、見ている私もとても嫌な気持ちになった。セクシャルハラスメントであり、女性軽視的な内容だった。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 敏腕刑事と声紋分析官が連続殺人犯を追う刑事サスペンスドラマについて、暴力的なシーンが多すぎて見るに堪えない。初回で問題提起なのかもしれないが、救いのない終わり方で、嫌悪感しか残らない。こうしたグロテスクな描写が、青少年の目に触れるのは危険だと思う。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で、2歳児を一人でおつかいに出す内容について。常識的に考えて一人でおつかいに出せる年齢ではなく、都市部であれば事故や事件に巻き込まれてもおかしくないと思います。これを放送するのは、影響力を考えれば無責任すぎると思います。

【「言葉」に関する意見】

  • 最近、アナウンサーが「やばい、やばい」と言うが、この表現はいかがなものか。「ハワイやばい」は日本語だろうか。日本全国、年寄りから子どもも聞いている。特に、子どもは何かあれば「やばい、やばい」と言う。これを聞いていると、番組を見るのが嫌になる。

第216回 放送と青少年に関する委員会

第216回-2019年7月

視聴者からの意見について…など

2019年7月23日、第216回青少年委員会をBPO第1会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、まず6月16日から7月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
敏腕刑事と声紋分析官が連続殺人犯を追う刑事サスペンスドラマの初回放送について、「暴力的なシーンが多すぎて見るに堪えない。グロテスクな描写が青少年の目に触れるのは危険だ」「殺人の仕方が激しすぎる。子どもも視聴できる時間帯なので問題ではないか」などの意見が寄せられました。これに対して委員からは、「この番組の放送時間は、子どもの視聴について親が配慮すべき時間帯でないか」「ありありとひどいというのではなく、今から殺害するぞという状況を並べ立てて心理的に怖さを募らせる演出がそのような印象を抱かせたのではないか」などの意見が出されました。
7月の中高生モニターのリポートのテーマは「最近見たバラエティーについて」でした。30人から報告がありました。
世界を舞台に様々な冒険に挑戦するバラエティー番組について、「この番組を見ると『月曜からまた頑張ろう』という気持ちになります。心の底から笑うことで『明日から学校、疲れるな』という気持ちが吹き飛びます。この番組は『チームで作る番組』という感じがします。出演者とスタッフとの間に強い絆があると思います」、芸能界・スポーツ界で活躍した有名人の"今"を紹介するバラエティー番組について、「必然的に自分一人では知らない芸能人が多々いる。しかし、自分の知らない人の人生を母などと話しながら知るのは非常に興味深い。自分のような年の人でも母とコミュニケーションをとって、面白く見ることができた」、日本を訪れる外国人に空港で直撃取材をするバラエティー番組について、「取材された人が大きな目標を持っていたり、はっとするような人生を歩んできたことを知って驚きました。同時に、これからはもっといろんな人を見た目で予測しないで、その人の性格とか、その人の人生について目を向けようと思いました」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
8月は休会とし、次回は9月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2019年7月23日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

敏腕刑事と声紋分析官が連続殺人鬼を追う刑事サスペンスドラマの初回放送に対して、「暴力的なシーンが多すぎて見るに堪えない。グロテスクな描写が青少年の目に触れるのは危険だと思う」「殺人の仕方が激しすぎる。子どもも視聴できる時間帯なので問題ではないか」「女性を撲殺する残虐な殺人シーンが多く、気分が悪い。子どもが見たらと思うとゾッとする」などの意見が寄せられました。これに対し委員からは、「夜の10時からの放送で、子どもの視聴については親が配慮するべき時間帯ではないか」「ありありとひどいというのではなく、今から殺害するぞという状況を並べ立てて心理的に怖さを募らせた演出が、そのような印象を抱かせたのではないか」との意見が出されました。
路線バスに乗って都内を旅するバラエティー番組で、出演者が旅の途中に競艇や競馬をする場面について、「ゴールデンタイムに延々とギャンブルをやっている。子どもやギャンブルで苦しんでいる人がたくさん見ている」「子どもが見ている時間だ。買うのは大人の自由だがギャンブルという性格上、エキサイトしている場面はこの時間帯にふさわしくない」「未成年者が見ている時間帯に賭け事を奨励するかのような放送は如何なものか」などと言った意見が寄せられました。これに対し委員からは、「ギャンブルにのめり込んでいくようなところはギャンブルの悪い面を出してしまっていて、あまり好ましくないのではないか」「競馬中継では生き物の美しさ、真剣さ、そういうものも含めて伝わってくるが、この番組のシーンはお金を無駄にしているオジサンという情報が伝わってくる」「子どもが見てもいい時間に流している番組として、制作側はその辺りは少し配慮をしてもよかったのでは」との意見が出されました。
これらの件に関しては、これ以上話し合う必要ない、となりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした7月のテーマは、「最近見たバラエティーについて」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で30人から報告がありました。
「バラエティーについて」では、複数のモニターが意見を寄せた番組は3番組でした。『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)にそれぞれ3人から、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)に2人から報告がありました。それ以外は、別々の番組を取り上げており、バラエティー番組への興味が幅広いことがうかがえました。
「自由記述」では、「芸人らの闇営業問題で謹慎処分が下されました。私はニュースを見て芸人さんは自分の収入だけを考えて行動しているように感じました。テレビ局や視聴者を裏切ったように感じました」など、この問題について複数のモニターから批判的な意見が寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『音楽の日』(TBSテレビ)を7人が、『はじめてのおつかい 夏の大冒険スペシャル』(日本テレビ)、『コトノハ図鑑』(毎日放送)をそれぞれ2人が取り上げています。『音楽の日』には、亡くなったジャニー喜多川氏へ感謝をこめたメドレーがすばらしかった、などの感想が寄せられました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たバラエティーについて】
    • 『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)のように、最近、ネタを見つけてきては検証するバラエティー番組がはやっているが、作っている人たちに聞くと、本当に地獄のような日々だというから、そんなに世の中に面白いことは転がっていないので、街に取材に行って、面白い人を見つけることは、2週間に一人、二人見つかればいい方だという。そのようなことについて、今回のモニターは、かなり細かく分析していて、中学生でこのようなリテラシーを持っているのかという感じは伝わってきた。

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)について、この番組を見ると、月曜日からまた頑張ろうという気持ちになる、心の底から笑うことで、明日から学校疲れるという気持ちが吹き飛ぶと書いている。最近、BPOでも、放送倫理検証委員会から意見が出されたが、こういうふうに見てくれている子どももいることを制作者に伝えたい。

    • 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)について、日曜日の夜に家族みんなでテレビを見るという。テレビがお茶の間の団らんの一つの要素になっている。まだこういう感じのテレビ視聴を高校2年生がしているのは、ちょっとほっとする感じである。家族とともに見るときに、やはり安心して見られるものは大事だと思う。

  • 【自由記述について】
    • 芸人の闇営業問題について、かなり厳しい意見が寄せられているが、何が問題なのかを考えて言っているのか、という疑問もある。世論をそのまま受け入れて厳しい意見を言うのではなく、問題点を整理して意見を述べるという姿勢を持ってほしい。

    • 最近、ニュース番組でも、情報番組でも、芸人の闇営業問題を盛んに放送しているが、ポイントがはっきりしないまま流れているように感じる。テレビ局も、整理して、視点を明確にして放送することが大切だと思う。

    • 学校でニュース番組を作るというメディアリテラシーの授業について書いてきているが、その事柄をまとめる影響力を感じたというふうに、いろいろな考え方を一つにまとめてしまうことに問題意識を持っているようだ。しかし、むしろ、多分送り手には意図があって、受け手は読み取らないといけない、ということを考えてほしかった。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たバラエティーについて】

    • 『月曜から夜ふかし』(福岡放送/日本テレビ)について、ただひたすらに笑える番組です。たまに(実はけっこう)下ネタもありますが、健全なレベルですし、何よりマツコさんと村上さんのかけ合いが大好きです。カードを2人が選び、そのテーマに沿ってトークを繰り広げ、VTRを見るというスタイルで、シリーズ化されているカードもあるが、バラエティーに富んでいてネタを見つけてくる制作スタッフの方々は着眼点がすごいなと思います。私が好きなシリーズは「街行く人の個人的ニュースを調査した件」。東京の街で、年も性別もばらばらの人にランダムに「個人的ニュース」を尋ねる企画です。(福岡・中学2年・女子)

    • 『Youは何しに日本へ?』(テレビ東京)を見て、いろんな人がいることついて改めて考えてみました。取材された人が大きな目標を持っていたり、はっとするような人生を歩んできたことを知って驚きました。それと同じにこれからはいろんな人を見た目で予測しないで、その人の性格とか、その人の人生についてもっと目を向けてみようと思いました。これから大人になっていくにつれて、たくさんの人に出会うと思います。その時に、このことを心にとどめて関わっていきたいと思いました。(兵庫・中学3年・女子)

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)について、この番組を見ると「月曜からまた頑張ろう!」という気持ちになります。日曜日は次の日からまた1週間が始まるので「明日から学校、疲れるな」という気持ちになるけれど、イッテQを見て心の底から笑うことでその気持ちが吹き飛びます。イッテQは「チームで作る番組」という感じがします。私は出演者と番組スタッフとに間の強い絆があるのではないかと思います。そうでないと過酷な挑戦も乗り越えられないと思います。いろいろなことに挑戦すること、面白いことがたくさんの人に愛される大きな理由だと思います。ですが、この二つは絆がないと成り立たないと思います。(鳥取・中学3年・女子)

    • 『爆報!THEフライデー』(TBSテレビ)について、一言でいえば「母か祖母と共でないと楽しめないバラエティー」であると思う。「芸能人のその後を映す」というのがこの番組の主であるため、必然的に自分一人では知らない芸能人が多々いる。自分の知らない人の人生の遍歴を母などと話しながら知るのは非常に興味深いものである。おそらくターゲットとする年齢層は母のような中高年なのかもしれないが、自分のような年の人でも母とコミュニケーションをとって、面白く見ることができた。(東京・高校1年・男子)

    • 『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日)について、マツコ・デラックスが、主に都内の様々な場所を夜に訪問・見学する内容である。基本的に、出演するのはマツコ・デラックスのみであり、多くてもゲストがもう1人いる程度である。そのため、出演する人物にフォーカスを当てることがなく、土地の特色が分かりやすくまとめられている。また、その街の人に積極的にインタビューを行うので、街の「今」も見られる。さらに、出演しているマツコ・デラックスは関東の地理に詳しく、いろいろな情報を知ることができる。最近の放送では、都内の有名ホテルである椿山荘を取材した回が印象的であった。いろいろな花・樹も綺麗であったが、個人的には三重塔が最も良かった。夜だったので、三重塔がライトアップされていて美しかった。番組の雰囲気・内容はとても良いと思う。しかし、放送時間が深夜なのでリアルタイムで見られないことが残念だ。もう少し早い時間に放送すれば、いろいろな年齢層のファンも増えるのではないかと思った。(東京・高校1年・男子)

    • 『バカリズムの30分ワンカット紀行』(BSテレビ東京)について、この番組は、全国各地を地元の人が紹介するバラエティー。何といっても、この番組の特徴はワンカットである(早回し以外の編集を行わない)ことです。このため、紹介する地元の人々は視聴者が分かるほどにセリフを確認しながら言ったり、言い間違えたりすることもありますが、そのような一生懸命に街の魅力を伝えようとする姿を含めて、この番組の良さとなっています。また、他の番組ではなかなか取り上げられることのない場所のこともこの番組では、知ることができるというのも大きな魅力だと思います。街の人をうまく利用して番組を面白くするというのは、番組制作において重要な点ではないかと考えました。(愛媛・高校2年・女子)

    • 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)について、日曜日の夜は、家族みんなでテレビを見る、という家庭が多いのではないかと思います。私の家もそうです。両親が共働きで、小さい頃は祖母の家で休みの日や放課後を過ごしていました。ご飯を食べ終わってから弟とテレビを見る時間は、今でも変わらないひと時です。この番組は、アイドルグループのTOKIOが、福島に村を作ったり、無人島を一から開拓したり、捨てられる食材を使って料理をしたり、地方の特産品を使ってPR活動をしたりする番組です。私は特に、無人島を開拓する「DASH島」のコーナーが好きです。TOKIOはアイドルグループですが、無人島で知恵を使い、決して特別扱いせずに開拓していく姿を心からすごいと思います。(石川・高校2年・女子)

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)について、私の中でバラエティー番組と言われて一番に頭に思い浮かぶのは、この番組です。放送が開始された2007年から12年間見続けていることもありますし、好みがみんな違う私の家族でも毎週、唯一この番組だけはみんな集まって見ているからです。なぜここまで「イッテQ」は面白いのか、自分なりに考えてみました。一つ目、どのゴールデン番組にもない特徴はすべて海外ロケをしていることです。視聴者は毎回見慣れない映像なので12年放送されても飽きないのだと思いました。二つ目はキャスティングにあると思います。内村光良さんをはじめ、手越祐也さんから芸人そしてモデルまで幅広い層に対応しているところにあると思います。そして三つ目は企画力だと思います。ですが、先日BPOが「祭り企画」に関して意見を発表したようなことになり残念でした。すごく面白く、ためになるコーナーであり個人的にも好きだったので、いろいろ事情はあると思いますが、この企画の復帰を望みます。(広島・高校2年・男子)

    • 『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)について、今回の番組の内容は、ジャーナリストが南アフリカへ行き、貧困問題やアパルトヘイト撤廃後もまだ黒人差別が残っていること、黒人の人々の中でも格差が生じていることを伝えるというものでした。黒人の人々が多く生活する地域でも、それぞれ富裕層、中産階級層、低所得者層が住んでおり、明らかな格差がそこにはありました。貧困から抜け出すには教育を受けることとコネが必要であるとのことでした。また、麻薬のディーラーやギャングの人々の話を聞く場面もありましたが、その仕事をしている理由を聞かれると彼らは全員「家族を養うために仕方なくやっていること」「子どもには自分と同じことをさせたくないこと」「そのために自分がお金を稼いで子どもに教育を受けさせたいということ」を言っていました。この番組を通して、やはり教育は大切なんだということ、また私が教育を受けていることは当たり前ではないということを改めて感じました。格差は日本でも生じているため、こうした社会問題から目を離さず、大学でしっかりといろいろなことを学んで向き合っていきたいと強く思いました。(奈良・高校3年・男子)

  • 【自由記述】

    • 闇営業問題で芸人らに謹慎処分が下されました。この問題でテレビ局側は出演部分のカットや出演見合わせなどの対応に追われました。私は、ニュースを見て芸人さんは自分の収入だけ考えて行動しているように感じました。テレビ局や視聴者を裏切ったように感じました。芸能人はもっと芸能人としての自覚を持ってほしいと私は思いました。テレビは芸能人がいないと番組を作れないし、出演者あってのテレビだと思います。そして、一般人からみると芸能人は憧れであり、中には心の支えになっている人もいます。私も好きな芸能人がいて生きているうちに一度は会いたいです。つまり芸能人の人が思っているより、私たちへの影響力はとても大きいです。だから、もっと自分の仕事にやりがいを感じこれからも頑張ってほしいです。(鳥取・中学3年・男子)

    • 先日、学校の授業で数枚の決められた写真を使いニュース番組を作った。いくつかの班に分かれ発表したが、同じ写真を使用しているのに、内容はどれ一つとして被らなかった。このことより、同じ素材でも受け取り方は全く異なるため、メディアの私情を挟まない情報の重要性と、その異なる見方をまとめる影響力を感じた。(東京・高校1年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『はじめてのおつかい』(日本テレビ)を見ました。私は子ども好きというわけではありませんが、この番組に出てくる子どもたちを見ていると、かわいいな と思ったり、応援したくなります。今回は、兄弟でおつかいに出た弟くんが、初めて言葉をしゃべっておにいちゃんが「にいにっていえるようになったの?」と言っている姿を見て、涙が出ました。(神奈川・高校1年・女子)

    • 『映像の世紀プレミアム第13集 戦場の黙示録』(NHK BSプレミアム)について、中学受験生時、教科書も資料集もめくるページめくるページが目つきの鋭い兵士さんだったり、けがをして倒れている人の山だったりで、怖いと目を思わず目を背けてしまった。高校生になり、この番組を見て、未来を背負う一人の若者として学ばなければいけない日本、世界の歴史の大切な1ページなのだなと強く思いました。(東京・高校1年・女子)

    • 『音楽の日』(TBSテレビ)の一部をリアルタイムで視聴した。見ていた中では、歌手の森山直太朗さんが、長崎の五島列島で歌を披露している場面が最も印象に残った。曇りでありながら、長崎の景色がとても美しかった。また、釜石市の復興スタジアムからの中継も印象に残った。思っていたよりも綺麗に整備されていて、復興が進んでいる様子がよく伝わってきた。(東京・高校1年・男子)

    • 『音楽の日』(TBSテレビ)について、歌手とお客さんが一体となって楽しそうでした。また、ジャニーズの人たちが、ジャニー喜多川さんへ感謝を伝えているシーンはすごく感動しました。(愛知・中学2年・女子)

    • 『コトノハ図鑑』(毎日放送)について、身の回りにあふれている和製英語をその正しい言い方、和製英語となった理由にも触れながら説明していて、とても分かりやすかった。また、逆に和英英語が英語になった例も紹介されており、これはあまり聞いたことがなかったので目からうろこでした。ただ、途中で街の人にインタビューするシーンがあったのですが、たった1人だったので、もう少しあってよいのではないかと思いました。(愛媛・高校2年・女子)

調査研究について

担当の中橋委員より、調査研究(青少年のメディアリテラシー育成に関する放送局の取り組みについて)の進捗状況について報告がありました。

今後の予定について

  • 10月3日に開催される山形県の放送局の方々と青少年委員会委員との意見交換会について、参加委員の確認をしました。

以上