第197回 放送と人権等権利に関する委員会

第197回 – 2013年5月

大津いじめ事件報道事案のヒアリングと審理
大阪市長選関連報道事案の審理・・・など。

「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案のヒアリングが行われ、申立人、被申立人から詳しく事情を聞いた。「大阪市長選関連報道への申立て」事案の審理を行い、ヒアリングに向けて論点と質問事項について検討した。

議事の詳細

日時
2013年5月21日(火)午後3時~7時5分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

本事案は、フジテレビが2012年7月5日と6日の『スーパーニュース』において、大津市でいじめを受けて自殺した中学生の両親が起した民事訴訟の口頭弁論を前に、原告側準備書面の内容を報道した際、加害者とされる少年の実名部分にモザイク処理の施されていない映像が放送され、少年の名前を読み取れる静止画像がインターネット上に流出したとして、少年と母親が放送によるプライバシーの侵害を訴え、申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人、被申立人から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聞いた。
ヒアリング後も審理が行われた。

2.「大阪市長選関連報道への申立て」事案の審理

本事案は、朝日放送が2012年2月の『ABCニュース』(午前11時台)において、「大阪市交通局の労働組合が、去年の大阪市長選挙で現職市長の支援に協力しなければ、不利益があると職員を脅すように指示していた疑いが、独自の取材で明らかになりました」との前説で伝えたニュースについて、交通労組と組合員が名誉や信用を毀損されたとして謝罪等を求めて申し立てたもの。大阪維新の会の市議会議員に内部告発者から持ち込まれたリストに基づくスクープ報道だったが、その後リストは内部告発者自身によるねつ造だったことが分かった。
朝日放送は「疑惑が出たこと自体視聴者に知らせるべきニュースであり、弊社を含むすべての報道機関が第一報として報道している。労組が関与していなかったことは続報で明らかにしている」等と主張している。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて担当委員が作成した論点と質問事項について検討した。その結果、若干の修正をしたうえで次回6月の委員会で申立人と朝日放送にヒアリングを実施することを決めた。

3.「宗教団体会員からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ東京が2012年12月30日に放送した報道番組「あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~」において、番組で紹介された男性が、個人情報を公表されたうえ、何の断りもなく公道で盗撮された容姿・姿態が放送されるなどプライバシーが侵害されたとして、謝罪と今後二度と当該番組を放送しないと誓約するよう求めて申し立てたもの。
この日の委員会では、これまでに提出された文書を基に事務局から双方の主張の概要を説明した。本格的な議論は書面がすべて出そろう次回以降に行うこととなった。

4.その他

 1.放送人権委員会委員と関西地区BPO加盟放送事業者との意見交換会が、10月29日に開かれることが決まった。
 2.次回委員会は6月18日(火)に開かれることとなった。

以上

第71回 放送倫理検証委員会

第71回 – 2013年5月

映像の偽装が発覚して審議入りした関西テレビの
『スーパーニュースアンカー』、ヒアリング結果を報告

選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビの
バラエティー番組、「委員長コメント」を公表

第71回放送倫理検証委員会は5月10日に開催された。
関西テレビの報道番組で、情報提供者の映像の偽装が明らかになり、前回委員会で審議入りした事案。担当委員からヒアリングの結果が報告され、意見交換が行われた。その結果、事実関係はほぼ判明し論点も整理できたとして、次回委員会までに担当委員が意見書原案を作成、委員会の場でさらに議論を深めることになった。
フジテレビのバラエティー番組で、選挙期間中の現職知事の映像が約10秒間放送された事案に関連して、全放送局に選挙の公平・公正性に万全を期すよう要請する「委員長コメント」が、4月26日、BPOのホームページに公表されたことが報告された。

議事の詳細

日時
2013年5月10日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、小出委員、是枝委員、斎藤委員、渋谷委員、升味委員、森委員

1.映像の偽装が発覚して審議入りした関西テレビの『スーパーニュースアンカー』、ヒアリング結果を報告

関西テレビのローカル報道番組『スーパーニュースアンカー』の特集企画で、大阪市職員の兼業について証言する情報提供者の映像として放送されたものが、実際には取材スタッフを使った偽装映像であったうえに、新聞報道で発覚するまで3か月余りもその事実を視聴者に説明していなかったとして、前回の委員会で審議入りした事案。
当該局の担当記者・カメラマン・撮影助手・編集マンなど取材から放送に至る担当者のほか、事情が判明したあと対応策を協議した報道局幹部、さらに広報やコンプライアンスの担当者など、あわせて14人を対象に16時間にのぼるヒアリングを実施したことが、担当委員から報告された。
「なぜ問題の映像が撮影されたのか?」「なぜ社内のチェックが機能せず放送されてしまったのか?」「なぜ視聴者に対する速やかな説明がされなかったのか?」などを中心に、詳細で具体的な説明が行われた。また、当該局で6年前に起きた「あるある問題」の反省や教訓が、生かされているかどうかについての報告もあり、委員の間で活発な質疑や意見交換が展開された。
その結果、事実関係はほぼ明らかになり論点も整理できたとして、次回委員会までに担当委員が意見書原案を作成、委員会の場でさらに議論を深めることになった。

2.選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』、「委員長コメント」を公表

千葉県知事選挙(2月28日告示・3月17日投票)さなかの3月7日、フジテレビのバラエティー番組『VS嵐』で、森田知事の映像が約10秒間放送された事案。前回の委員会で、審議入りはしないものの各局に対する注意喚起を兼ねて「委員長コメント」を公表することを決めたが、4月26日、BPO放送倫理検証委員会のホームページにアップされた。
この委員長コメントは、『VS嵐』の事案で浮き彫りになった問題点をあらためて指摘した上で、全放送局に対して「選挙の公平・公正性を守るという意識を高めること」と「選挙の公平・公正性を守るために必要なチェックの仕組みがきちんと構築されているかどうかを再点検すること」を要請するもの。委員会では、事務局から公表の事実と新聞報道など委員長コメントへの反響が報告された。

以上

2013年4月

首都圏放送事業者との意見交換会を開催

放送人権委員会は4月16日、首都圏の放送事業者との意見交換会を東京・千代田区の千代田放送会館2階ホールで開催した。この日は第196回放送人権委員会が同会館7階BPO会議室で開かれ、意見交換会はそれに続いての開催となった。三宅委員長ら9人の委員全員と首都圏の民放、NHKの12社および日本民間放送連盟から計25人が参加し、最近の「委員会決定」をテーマに2時間余りにわたって活発な議論を行った。
各事案の「決定」の判断のポイントや事件報道の公共性・公益性、ニュース映像と人権、放送局の編集権、「意見」、「少数意見」の位置付け等について多くの質問や意見が出された。

意見交換をした「決定」

意見交換会での各委員の主な発言は以下のとおり(発言内のページ数は各決定文のもの)。

Q.第47号事案、なぜ「重大な問題あり」か

三宅委員長:本件は、かなり「エステ店医師法違反事件報道」(2007年6月)との類似性を考えました。このエステ店報道のときは決定について特に異論は出ませんでした。エステ店を放送倫理違反で「見解」にしたことと、今回の判断で「放送倫理上重大な問題あり」で「勧告」というのと、私も結構微妙なところだなとは思っていました。そのエステ店の判断が、きょうのような意見交換の場を何度か持ってきたけれど、生かされているのかというような「時の経過」と、それから、当時私どもが判断したときの放送倫理についての判断基準と、その後検証委員会もできて、放送倫理がかなり強く叫ばれるようになって、放送倫理に求められる水準っていうのは、かなり高くなっているんじゃないかなということ。最後に言うと、今回の映像が鮮明に私に焼き付いています。
私としては、今回は、「放送倫理上重大な問題あり」でもやむを得ないなという感じがしたんです。今回は周りにぼかしを入れたものですから、すごいアップで出てきた。周りの人の人権侵害を防ぐという趣旨のぼかしが、かえって本人をアップにさせて、かつ何々区の何々の誰それっていうのが出て、実際それで特定されて、申立人家族の生活にも大きな影響が出た。そういう結果まで出ていますから、その被害のレベルからいっても、やむを得ない結果だったんだろうなと判断して、「勧告」の重大性というところをつけたのです。

奥委員長代行:私はまだ委員ではありませんでしたから、エステ店の事案はくわしい内容は知りませんが、書類送検だったということですね。今回は20日間ほど拘留されて、略式命令の罰金です。この点は、決定を発表したときにも質問がありましたが、では、どの程度の犯罪ならば、どの程度の放送の仕方が許容できるかという線引きの問題ですね。これは大変重要な問題ですが、どこかに「線」があるというものではないと思います。ニュースが流れたその影響といったことまで含めて、柔軟かつプロフェッショナルな感覚で、その都度その都度、判断していくしかないんだと私は思っています。要するに、例えば懲役何年だったらここまでやっていいよといった問題ではないんです。
軽微か軽微じゃないかという問題は、もちろん罰金50万円が軽微な犯罪といえるのかどうかについては、委員会の中でも議論がありました。しかし、風営法違反といっても事案はいっぱいあるわけで、無許可営業というのは、届け出を怠っていたということですね。これは、1分9秒のニュース中で当事者のアップを含めていろんな表情が映っている映像を37秒も流すに値するものではなかったというふうに我々は判断しました。

市川委員:微罪かどうかということに関して言うと、いわゆる殺人強盗と比べれば、これはまあ軽い犯罪であると。だからと言って、公共性・公益性がないとは私は思わないので、それを素材として採用すること自体はなんら問題だとは思っておりませんが、やはりその中で取り扱い方によっては、非常に重大な制裁的な報道になってしまうということになりますので、その点で、本件はやはり問題があるのではないかなと判断しました。
それで、なぜかなり重いのかというニュアンスなんですけれども、10ページに「本件放送はすでにみたように、繰り返し4回申立人の映像を流した」とあります。顔を大写しにしたものや質問に戸惑いつつ答える場面があるのですが、その外側はぼかしていて、顔だけがすごくリアルに出てくる。しかも、捜査員が質問をしているところを、非常に困惑しつつ戸惑いながら答えている場面があるんですね。それを全部音も録り、顔も表情もリアルに撮っている。その姿というのは、やはり見られている側からすれば、おそらくたいへん恥ずかしいし、困惑しているだろうなっていうことは非常に強く感じる場面で、通常のその連行の場面を、いわゆる殺人犯なんかが連行場面で顔を出して映像を撮られているよりも、さらに細かくその本人の状況が撮られているというところが、私の印象としては、非常にやりすぎているのではないかなというところを強く感じました。そこらが先ほどの重いか軽いか、倫理違反の程度のところにも影響しているんではないかなというふうに、私は個人的には思っています。

Q.地域メディアにとって「罰金50万円の犯罪」のニュース性とは

三宅委員長:地域のメディアとして罰金50万円程度の犯罪について放送してはいけないという判断ではありません。問題はそのとらえ方でして、私も1分9秒のこの放送を何度も見て、このスナックの女性経営者はお店を開く時の食品衛生法の営業許可と、それから風俗営業法の営業許可を、どうも混同しているように見えたんですね。それで、警鐘報道として放送するのであれば、一言アナウンサーが食品衛生法の許可と風俗営業法の許可を混同しているんじゃないか、それとあれは違いますよということを、1分9秒の中でもきっちり言うと、見ている視聴者としては、ああこれは違うんだということが分かると思うんですよね。
地域メディアにおける警鐘報道の意義として、現場の記者がこういうのを撮って来たときに、デスクがそれをどういうふうに構成して、1分9秒の中でどの部分でどういうふうに使うかっていうところを、検証しながら番組の質を保っていく。こういう、作業として本来あるべきところが、放送の流れの中で欠けてたんじゃないかなという点を、ここで指摘したというふうに読んでいただけると有り難いと思っております。

奥委員長代行:決定文の7ページですね、真ん中あたりを読んでいただけると、今の問題はほぼ解決できるのではないかと思います。「日々さまざまな出来事が起こる。『ニュース』としてテレビで放送されるのはそのごくごく一部である。何を『ニュース』にするか(何を『ニュース』にしないか)の判断はもっぱら報道機関として当該テレビ局の裁量にまかされる。いわば『選ぶ自由』である。(中略)被申立人が現場での取材と県警からの正式発表を得て本事案を『ニュース』として選択・放送したこと自体は不当とは言えない」。こういうふうに書いています。

Q.「微罪は報道せず定着」は疑問

(注:決定文11ページの「報道による社会的制裁が刑事罰を大きく上回ることが考えられる微罪については報道しないといった考え方も定着している」との表現についての質問)

奥委員長代行:この20年ほどを考えても、放送界を含む報道機関全体では、社会的制裁を伴うような報道について、どのような報道をしたらいいのかについていろいろと議論が続いています。その結果、報道の具体的な仕方もかなり変わってきていると思います。
まず出典について質問がありましたが、これは特にどこかに出典があって、こういうカギ括弧にしたということではなくて、文章の流れの中で、言っていることを分かりやすくということで、カギ括弧にしたものです。
また、微罪という言葉ですが、これははっきりとした定義があるわけではないので、必ずしも適切な使い方ではなかったのかなと思っています。警察の用語では、起訴しない、警察署の中で帰っていいよ、というケースを微罪処分というように使っているようですけど、ここで微罪といったのは、そういう限定的な意味ではありません。
次に、定着しているか、定着していないかっていう問題は、これはある種の価値判断で、委員の中でいろいろ議論する中で、放送界の現場などにも詳しい方がいらっしゃって、犯人視報道しないとか、無罪推定原則といったことと関係して、こういう形に今やなっているという意見がありました。ですから、定着してないよと言われれば、そうですかと、それは残念ですというふうに言わざるを得ないのですけれども、ここでこういう表現を使って、こういうふうに書いたのは、そういう流れです。

坂井委員長代行:定着しているかどうかを議論しても結論は出ません。私はそんなにおかしくないと思っているので、意見が違うということになろうかと思います。ただ私はもう25年以上こういう報道と人権の問題にずっと携わっていますけれども、確実に現場は変わって来ているという実感はあります。ご指摘いただいた決定文の表現が一つの判断基準として定義付けられているのかどうかといったら、決定では別にそういう書き方はしていませんし、内容としては私としては違和感はないけれども、違う意見の方がいてもそれはそれでおかしくはないというふうに思います。

三宅委員長:微罪のところをどうだったかという話ですけども、今回のスナックのケースは、当該局はああいうケースで1分9秒放送したんですけども、他の1局はもっと短く、匿名だったんですね。それで、新聞記事は全くなかったんです。
エステ店の事案でも、当該局は何回か繰り返し放送したけれど、他の局の放送はなくて。新聞記事は1社が1段のベタ記事で、匿名だったんです。ですから、微罪についてどこまで報道するかについて、あまり放送しないという考え方も定着しているという表現は、あながち、そういう事例を踏まえれば間違いではないということを私も判断したので、ここのところについて文章の削除はしなかった。それは、エステ店と今回の放送の具体的事実を比べて検討して、ここまでの表現は許されるだろうっていうことで書いたということはご理解いただければと思います。

Q.林委員の「意見」と編集権について(「BPOは放送局の編集権にも立ち入るのか」という質問について)

林委員:BPOは、放送事業者の「編集権」に介入するのか、という批判をいろいろなところから聞いております。この「編集権」という言葉は、戦後、日本のマスメディアが定義してきたものですので、私自身が使うのは抵抗がありますので、より一般的な「編集の独立」という言い方で代えさせていただきますけれども、私はBPOの制度において編集の独立はしっかりと担保されているというふうに思っております。編集の独立を尊重するからこそ、BPOがある、BPOはそういう制度としてスタートしたという合意は、ここに座っている全員がシェアしている。だからこうして一緒に集っているのではないですか。まずそれが第一点です。
第二点目に、BPOができた経緯を思い出していただきたい。現在、放送局側のニュースの価値判断は、いろんな意味で社会との齟齬を生んでいる、生んできたということ。それらは、社会問題にまで発展し、メディア不信を呼び、そして、さらには政府の検閲さえ招きかねない。そういう認識のもとでBPOが設立されたわけです。そうしたなかで例えばこうした申し立てが出てきた時に、私たちはヒアリングをしながら、多角的に検討を重ね、その結果、こういう判断を私たちはしましたと申し上げているわけです。
それについてどうするか、私は、いろいろと反省していただきたいことがありますけれども、強制することはできないのです。けれども、それをこんどは、皆さん方が放送局に持ち帰って、その独立した編集権の中で議論をしていただいて、新たに現代の中での「公共性」を定義していただいて、そしてニュースの価値判断を見直していただく。私は時代や社会状況に左右されない、永遠に更新されないニュースの価値判断などあり得ないと思うんですね。

坂井委員長代行:編集権の問題についてご意見をいただいたんですけれども、お話に出た法律実務の現状ではどうかについて、弁護士の立場から述べさせていただきます。まず、法律の分野でも編集権という言葉は使います。判決にも出てきますし、準備書面にも書きます。ですからその点については、法律実務でもこの言葉は出て来るという前提をお伝えしておきます。
次に、「編集権に口を出すのか」というお話ですが、そのお気持ちも理解できると感じる反面、過敏な反応だなと感じるときもあります。ただ編集権ももちろん万能ではないということをご理解いただきたいと思います。「どう作るか」についてBPOが口を出すつもりはないと私は理解しています。特に人権委員会はそういう委員会ではないと思っています。ただ編集権があるからといって、人権侵害、名誉毀損やプライバシー侵害、肖像権侵害等をやっていいということは、皆さんももともとお考えではないはずで、そういう意味で編集権といったって外縁はある、限界はある。それを超えたら、それは違いますよということを言うのが、我々の委員会の立場なのです。その限りでは編集権万能じゃないから、やりすぎですよと、これは超えちゃってますねということは言わせていただきます。
さらに、いわば人権侵害のもうちょっと手前の、放送倫理の問題も扱うという規約になってますので、人権侵害にならなくても、放送倫理上これは問題でしょうと、それは編集権があるからOKという限界を超えちゃってますよという限りで、人権委員会は口を出すべきだと私は考えています。

Q.公共性と人権侵害

林委員:公共性がないニュースだから、(放送倫理の問題ではなく)人権侵害になるのではないかというご質問だったと受け止めます。その点については、配布資料にある「判断のグラデーション」のところをご覧いただきたいんです。「勧告」の中に、「人権侵害」というのが一つ、そして「放送倫理上重大な問題あり」というのがあって、これらは一つずつ別々の判断です。法律的な言葉で、法に触れるような人権侵害があるかないかということを判断するもの、それと、「放送倫理上問題があるかないか」ということの判断は、法律論ではカバーしきれないところがあり、双方は分けて判断するというのが、こちらでの分け方だということです。
ですから、公共性に関して申し上げますのは、これは別に、真実性やプライバシーとのコンフリクトではありません。今回の場合、「放送倫理上重大な問題あり」という結論については、私も多数意見と同じですが、あえて議論として「公共性」という言葉についてテーマにして意見を書いたということです。私自身は法律家ではありませんので、「公共性・公益性」という言葉を、刑法をもとに議論する観点とは異なる、社会学の立場から全く違う観点から議論をしてきたわけです。

小山委員:おそらく林委員は、公共性や公益性という言葉を、名誉毀損やプライバシー侵害を正当化する事由になるかどうかという、いわゆる法律論の意味で使っているわけではないと思います。ですから、別に公共性がないといったらからといって、それが即座に不法行為になる、いわゆる人権侵害になるという、そういった論理的な関係にはないのだろうと思います。要するに、法学的な議論をやっているわけではなくて、さきほどのお話にあったように、社会学的な意味における公共性・公益性という、これまた伝統的な議論の枠組みでのご意見だろうと理解しています。だから私も、補足意見の中で、法的な議論としてはこうなんですよ、ということを簡単に書かせていただいたわけです。

坂井委員長代行:(公共性・公益性について)どんな議論だったのかというご質問なので、弁護士としてどんなふうにそこのことを考え、議論したかを、ぜひお話しておきたいと思います。
皆さんに言うまでもないんですけれども、名誉毀損について刑法230条の2で違法性阻却の規定がある。あれは刑事罰についての違法性阻却です。でもそれがそのまま民事上の違法論に横滑りの形で認められてきたっていうのは、今更言うまでもない話だと思います。それで、起訴されてない犯罪について報道するのは公共性ありと書いてあるわけですよね、刑法230条の2で。ですから、この件はまさにそういう事案なので、名誉毀損にあたる違法かどうかというレベルの話になったら、これは公共性ありとして違法性が阻却されると言わざるを得ないというのが、法律家である私の考えです。ただ、あの規定そのものは、刑事的な違法かどうかの規定ですし、それを横滑りさせたのは、民事上の違法かどうかの議論で、その限りで最高裁はずっともう確定して判断をしているのです。その点、私が林委員の意見について、そういう議論もありだなと思っているのは、ここでは放送倫理上の問題として公共性はどうなのかっていう議論をしているのだと考えられますから、それについて最高裁は何も判断していないので、それとは別の議論があってもいいんじゃないかと私は思うのです。要するに、放送倫理の問題としては、そこは刑法230条の2や判例理論で全部割り切れるわけではないので、その意味において公共性の内実はいったい何なのかという議論は、私は有意義だと思っています。

Q.決定の法的結論に戸惑いも

三宅委員長:その戸惑いの点ですけれども、「放送と人権等権利に関する委員会」の運営規則の5条1項の1号というのは、「名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、及び、これらに係る放送倫理違反に関するものを原則とする」ということで、名誉、プライバシーの人権侵害のほうがまず主にあったんです。それで、私が最初委員に入った頃は、ほぼ名誉侵害等を中心に判断していたんですけれども、最近は、明らかな人権侵害のケースというのは社内で処理されて、この委員会に来ないんじゃないかなって感覚があるぐらい、実は難しい放送倫理の問題が来るようになってるのです。
先例もだいぶ重なってきて、「これは問題あり」と局が判断した場合は、すぐ謝りに行かれて、この委員会に来るまでに解決されてるんじゃないかと思いたいぐらい、放送倫理の微妙なものが上がってくるようなりました。私は委員会に参加して7年目ですけど、初年度、2年の頃と今では扱っている案件がちょっと違うんです。そういう意味で、「放送倫理だけやるのが人権委員会じゃないか」と最近の決定例をベースにお考えになると、そういうご理解にもなるのかもしれないのですが、元々は人権侵害と人権侵害に関連する放送倫理というものを扱うというのがこの委員会の持ち場なので、そこは戸惑わないでほしいというところがあります。

Q.ヒアリングでの代理人同席は可能か

三宅委員長:ヒアリングに代理人を出していいのかどうかという質問ですが、局側でお出しになるのであれば、全然構いません。最近は申立書が非常に書きやすくなったので、本人申立てが多くなってきたのですが、3年ぐらい前のころは、弁護士が申立てした法律論の書面ばかり出てきたようなケースがありました。そういうのもこれからもまだあり得ることですから、それに対して将来訴訟になることも見越してですね、この申立ての段階で主張すべきところ、それから、相手方に基本的に書類も渡りますし、訴訟になり得ることもありますから、そこはそれで対応していただく。将来、万が一の訴訟っていうのをお気になさる場合は、そういうふうな対応していただければと思っております。

Q.「補足意見」、「少数意見」の意味と付け方

三宅委員長:本論と「意見」、「補足意見」のところですが、最近のケースでは意見が分かれました。やはり放送倫理っていうのは時と共に流れて、ある程度のコアな部分はコアな部分で残っていますけれど、人によって微妙に違うので、放送倫理のところは、今回の「イレッサ」も、「国家試験」も、委員会の中では結構ハードな議論をしました。意見をまとめるのに3回ぐらい委員会を重ねてようやくまとめたところです。委員会としては、「問題あり」であっても、なるべく放送の自由を守りながら萎縮しないような形でコメントしていく。しかし、倫理上の問題を考えるときに、「ここまでは(いわなくても)と…」というのと、「いや、これはもうちょっと強めにいうべきだ」というようなところで意見が分かれました。今日のご意見は今後なるべく「意見」を少なくしてほしいということかもしれませんが、スタイルとしては今回の「イレッサ」と「国家試験」のように放送倫理のところで真っ二つに意見が分かれるのはあり得るということで、これから委員会の中で、今日あったご意見も考えながら、なるべくわかりやすい形にしたいとは思っています。

三宅委員長:テレビ神奈川のケースをお聞きして、「意見」と「補足意見」の違いがわからないということがあったので、今回の「イレッサ」と「国家試験」では、結論は同じだけど異なる理由という「意見」とか、「結論について意見として補充している部分は」という修飾語を付けてわかるようにしようということ、そういうような形で、工夫はしています。
委員の議論を踏まえて、何らかの工夫ができると良いかなと思っています。

Q.現場にとって決定文は難しい

三宅委員長:テレビ神奈川のケースは、なるべくわかりやすい形で書こうということで、記載の仕方を随分工夫したんです。が、「イレッサ」の申立て代理人には弁護士がついて来られて、こちらとしては、一言も問題を指摘されることのないような文章にすることに努めました。
それから、「国家試験」のほうは申立人本人が弁護士です。ヒアリングの後もどんどん書面が来るようなケースで、放送人権委員会自体が裁判で訴えられることもあり得るという、そこまで私も気を付けていたのです。だから、起案については普段よりも2回ぐらい多くやりまして、その分、読んでわかりにくいと言われるかもしれないなと思いながら、旧来型の難しい書き方にしてしまいました。今後はもう少し工夫をして決定を書けるケースをなるべく多くしたいと思いますけど、今回はなかなかそこのところが非常に難しかった。
ただ、以前の決定文には「決定の概要」はなかったんです。「決定の概要」だけまず読んでもらって、なるべくわかるようにということで工夫して書いてるので、私が思うに、将来的に分厚い参考資料とは別に、「決定の概要」の部分だけをならべるようなもので、現場でそれだけ読んでもらえれば、ある程度決定の内容がわかるというような工夫をしないといけないかなって考えているんです。ご意見を色々伺って今後の参考にしたいと思います。
今回は事案自体が「イレッサ」の場合は判決も絡んでる非常に難しいケースでしたし、もう一つ「国家試験」のほうも、弁護士が大学で授業する時の授業のあり方で、試験問題を解説するようなことをやって良いのかどうかという微妙なケースだったんです。その辺大きく見ていただければ、多数意見のほうは放送倫理上の問題とまでは言えないという形です。そこをザックリ理解していただければと思ってやっていました。
ただ、委員会の中で意見は完全に割れましたから、割れた以上、それを一本化するっていうのはできません。今回はどうも議論の中を見ていると、非常に難しく、放送倫理上問題ありか、そこまでいかないけども、という難しいところの判断を我々は迫られてるんだなという感じでした。

坂井委員長代行:BPOの役割っていうのは、おっしゃるところはもちろんあると思うんです。ただ、BPO規約を見ていただくとわかるんですが、4条の(2)で、放送倫理検証委員会のほうは「放送倫理を高め、放送番組の質を向上させるため、放送番組の取材・制作のあり方や番組内容などに関する問題の審議」をするっていうことですが、同条の(3)で定められている放送と人権等権利に関する委員会のほうは、「個別の放送番組に関する放送法令または番組基準に関わる重大な苦情、特に人権等の権利侵害に関する苦情の審理」をする委員会ということなんです。その結果、おっしゃる趣旨(BPOは番組向上のための機構では?)に資するようにやりたいとは思いますが、私達の委員会の役割としては申立てがあった番組について問題があったかどうかを審理するという形で活動する以外ないということはご理解いただければありがたいと思います。

以上

2013年4月に視聴者から寄せられた意見

2013年4月に視聴者から寄せられた意見

淡路島での地震で、電話取材が配慮に欠ける、ニュースの扱いが小さいなどの批判意見。ボストンのテロで、爆弾の造り方の詳細報道に疑問の声。ドラマでは設定が性的に過激すぎるといった声も寄せられた。

2013年4月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,271件で、先月と比較して30件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話23%、FAX3%、手紙ほか2%。
男女別は男性66%、女性31%、不明3%で、世代別では30歳代30%、40歳代26%、20歳代17%、50歳代17%、60歳以上8%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。4月の通知数は523件【46局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

4月の視聴者意見は1,271件と先月より30件増えた。
北朝鮮の挑発的行動が連日起き、朝鮮半島をめぐる地政学的リスクがかってないほど高まったが、その伝え方に関して、様々な意見が寄せられた。
黒田日銀総裁の「異次元」金融緩和策が発表されたが、安易にアベノミクスという言葉を使うべきではないといった声が寄せられた。
地震が淡路をはじめ全国で多発したが、配慮に欠ける電話取材など、報道のあり方ついて批判があった。
ボストンで爆発テロがあったが、爆弾の造り方を詳細に紹介する報道の姿勢に、疑問の声が多く上がった。
バラエティー番組では、食べ物を無駄に使った番組に対して、如何なものかといった批判のメールが多数寄せられ、ドラマでは設定が性的に過激すぎるといった声も寄せられた。
ラジオに関する意見は26件、CMについては58件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は120件で、前月より16件増加した。
今月は「性的表現に関する意見」が23件、次いで「低俗、モラルに反する意見」が21件、「いじめ・虐待に関する意見」が19件と続いた。
「性的表現に関する意見」では、ゴールデンタイムのバラエティー番組で"不倫"や"性生活"について取り上げることや、22時台のドラマの内容だけでなく、その番宣スポットについても、子どもの視聴に考慮して欲しいとの意見が寄せられている。
また、報道・情報番組において暴風雪で父親を亡くした少女へのインタビューを放送したことや、子役の使い方への意見が複数寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 北朝鮮のミサイル関連のニュースだが、日本政府が迎撃ミサイルを設置したり、警戒している状況なのに、韓国旅行は安全と受け取れる放送をしている。むやみに不安感をあおる必要はないが、不測の事態が起こる可能性があるのに、安全と感じさせる放送に違和感を覚えた。北朝鮮と緊張状態にある今はリスクがあり、安全と受け取れる放送は控えてほしい。

  • 「北朝鮮ミサイル発射」に備えて、防衛省に配備された迎撃システム「PAC3」の映像が生中継された。日本の国防にかかわる映像を安易に放送していいのか。朝霞・習志野などに配備されているとの発言もあり、映像も含めて、日本の国防情報は放送するべきではない。

  • 「アベノミクスがこんなところに影響」と、市役所の停電騒動を取り上げ、「アベノミクスのせいで銅価格が上昇し、泥棒が銅線を盗もうと切断したため、停電した」と報じていた。どう考えても悪いのは泥棒なのに、なぜ安倍首相のせいにするのだろうか。銅線の盗難は何年も前から世界各地で発生している。そのことに触れないと公正な報道とはいえない。何でもかんでも現政権の政策を悪い方へつなげたいという意図があるとしか思えない。

  • 「アベノミクス」という言葉を多用しているが、高齢者にはよくわからない。日本語の意味も表記するべきだ。何でも「アベノミクス」で片づけられると、ごまかされているような気がする。

  • ニュース番組が、アベノミクスで景気が回復しているとして、富裕層がデパートで高級品を買いあさったり、マンションが売れ切れたり、豪華な旅行の計画をしていると特集している。これらの人は、最近の株高で儲けた人が多いなどとして、株への投資を煽る報道まである。一部の富裕層は確かに、消費を増やしているのかも知れない。しかし、そんなニュースを毎日見せられたら、年金生活で細々と暮らしているお年寄りや、ワーキングプアの人はどのように感じるだろうか。マスコミは、景気が悪いといえば景気の悪い特集ばかり報道し、景気が回復すると景気の良い話ばかりを特集する。しかし報道の本当の役割はそれらの「流れ」から取り残された、声なき声を拾うことにあるはずだ。

  • 大きな地震があり、役場に電話をかけて状況を確認していた。相手が対応で大変な時間帯であるにもかかわらず、アナウンサーが色々と質問をしていた。忙しい現場のことを考えて、端的に質問をするべきだ。

  • 早朝、大きな地震があったが、相変わらず配慮に欠けたマスコミの報道が目立った。地震直後の役場や事業所への無神経な電話取材。事務所には電話が鳴り響き、情報をまとめている最中だというのに「状況はいかがですか」「被害の連絡は入っていますか」など、無神経にも程がある。取材やコメントは一段落してからでもいいのではないか。落ち着いた行動を呼びかけるとか、現地放送局とのやりとりで進めるなど、優先させることはいくらでもあるだろう。

  • ゴルフ中継を見ていた。この日の5時33分に淡路島を震源とする震度6弱の地震が起きて、岡山は震度3、香川県は震度5の地震が起きていたのに、途中少しの臨時ニュースをはさんだだけで、ゴルフを延々と流し続けた。岡山・香川でも地震の影響を受けているのに、地元の局は、途中でも切り替えて地震情報を放送してほしかった。ずっとゴルフを流しているということは、どういう神経をしているのか。被害は少なかったから良かったようなものの、これからも緊急の事態が起こった時でも、ゴルフ中継を優先するのか。

  • 淡路島の地震の時、最新の情報がほしくてテレビ局をいろいろ見比べた。特別番組を放送する局、下側に字幕が出続けている局など、対応は様々だった。しかしある局は、「ゴルフ中継」をのんきに放送し続けていた。地震・津波発生時における報道の重要性というものをまったく無視した対応で、放送局として如何なものか。

  • 阪神・淡路大震災で多くのマスコミがヘリを飛ばし、その爆音で家屋の下で助けを求める人の声がかき消されてしまったことは有名な話だが、それ以降、報道姿勢は何ら変わっていない。被災地や被災者を見世物にし、BGMつきで「お涙頂戴物語」に仕立て上げる。確かに「震災を語り継ぐ」ことは大事だ。しかし、被災地が望んでいることは、あんな残し方ではない。このような報道しかできないのなら、むしろやらないでほしい。書籍があるし、語り部だっている。視聴率のネタにしか考えていないのだろうか。視聴者から寄せられた多くの意見を、もっとマスコミは真摯に受け止めるべきではないのか。

  • 三宅島で震度5強の地震があったことを受け、番組のなかで三宅島の群発地震を取り上げた。気象庁も解説者も「火山活動とは関係ない」と言っているにもかかわらず、三宅島からの中継でも、それとなく火山活動と関連づけようしていた。司会者は常に冷静に対応すべきなのに、率先して島民や視聴者の不安を暗に煽っていた。

  • ボストン・マラソン同時爆発事件だが、相も変わらず興味本位の報道である。圧力鍋を使った爆弾の作り方など詳細に報道する必要はないのに、専門家まで呼んで解説する始末だった。爆弾の作り方はインターネットで分かることかも知れないが、あれでは世の中の人たちにいらない知恵をつけるようなものではないか。亡くなった人の生前のプライバシーを暴きたて、お涙頂戴にしていることも相変わらずだ。

  • ボストン・マラソン同時爆発事件のニュースで爆弾の作り方を解説する番組が多いことに驚く。中には参考となるサイトのURLが分かる状態で放送した上に、丁寧に解説までつける始末だった。以前、硫化水素自殺の件で作り方などを放送し、それを真似して硫化水素による自殺が激増したことを忘れたのだろうか。空き巣の手口を放送し、空き巣が増えたことを忘れたのだろうか。模倣されるかも知れないと、報道各社で論議していないのだろうか。

  • 関東地方の強風を取り上げたニュースで、子ども達にインタビューをしていたのだが、今にも転びそうで見ていられなかった。インタビューをする前に、子ども達を安全な場所に避難させることが、大人の常識ではなかろうか。この番組に限ったことではなく、強風等で避難勧告の出ている地域から中継したりすることは、住民たちの意識を逆に低くしてしまう要因にもなりかねない。

  • 北海道の吹雪が原因で、親が子を抱き寒さを凌いで子どもだけが生き残った事故があった。各局が群がるように、生き延びた子にズケズケとインタビューをしている。あれは如何なものか。亡くなってからそんなに時間も経っていないのに、どうして、そっとしてあげられないのか。どうして子どもの心を踏みにじる行為をするのか。大体の子どもは親の死に関して、受け止めることは出来ない。

  • ニュース番組などでは、インタビュー映像を加工したり、文章を繋げたりして、放送している。放送に携わる方々は「報道の自由、視聴者に分かり易くするため」と言うかもしれないが、インタビューを「加工された人」の「言論」は軽んじていいのだろうか。

  • 番組中に愛知・稲沢市立てこもり事件を生LIVEで放送し、警察が考えているだろう作戦を生放送でペラペラと喋っていた。スマホを持っているかも知れない犯人に、それをリアルタイムで知らせることはどうかと思う。

  • 靖国神社参拝について報道していた。この件についての報道姿勢に憤りを感じる。コメンテーターが「北朝鮮問題で中国、韓国と協力すべき問題があるときにこんなことをやるなんて。中国、韓国とのFTAを控えた重要な時期なのに」と発言していたが、靖国参拝を否定する一方的な報道だ。そもそも世界の例を見ても英霊に参拝することは自然なことだ。隣国側の方が挑発的な行為を行っていると思う。

【番組全般・その他】

  • 整形依存症の女性を取り上げていたが、手術の様子やグロテスクな外観、その精神性、全てが気持ち悪かった。美容整形医にも疑問を感じた。精神的に常軌を逸している「患者」に対し、リスクを説明する責務以外に、医療従事者としてのフォローはしているのだろうか。そんな「患者」をバラエティー番組に引っ張り出してきて見せ物にすることは異常だ。美容整形手術は、肉体的にも精神的にも金銭的にもトラブルが多い。危険性のあるものを番組で取り上げるべきではない。

  • 整形モンスターというタイトルを見てびっくりした。生身の人を「モンスター」と言っていいのだろうか。スタジオにいた出演者が「命に影響してもいいというのか」「キレイだけど美しくはない」と本人の目の前で切り捨てることは、同じ日本人として恥ずかしくなった。見ていて救いがなく、息苦しくなった。整形手術を受けた人を失格者として見下し、「モンスター」と化け物にしている。テレビに出たことが彼女の新たなトラウマにならないかと心配だ。

  • 女性タレントグループに時速165kmのマシュマロを口で受け止めさせていた。それを笑って見ている他の出演者もおかしいのではないか。"お笑い芸人=イジメて良い人種"という誤解、勘違いだ。

  • 色々なバラエティー番組で、"セクシー系"と呼ばれる女性タレントらが、一年中下着と区別がつかない衣装を着てテレビに出演している。これは視聴者、特に青少年のモラルの低下につながる。これから暑くなれば、肌の露出が多い洋服を着る出演者が増えてくる。テレビに出る以上、出演者は青少年への影響も考慮し、無駄な露出は極力控えて頂くようお願いしたい。

  • 私の住んでいる地方では、テレビ画面の片隅にある局の「ウォーターマーク」が大きい。例えば、4月1日から始まった新番組の宣伝なのか、画面右上に番組の文字が大きく出ている。また他の局では、変な生き物のマークが出ている。番組に集中できず、目ざわりだ。出さなければならないのであれば、もっと小さいマークにしてほしい。他の地域のことはわからないが、「ウォーターマーク」そのもののあり方について一考願いたい。

  • 動物が経営する喫茶店を描いたアニメが3月で終了し、残念である。「ロハス」をテーマとした番組で登場人物に癒やされるばかりでなく、友情や家族愛、望郷の念を描いた場面もあり、今を生きる現代人が忘れがちなものを思い起こさせてくれる、自信をもって人に薦められる番組であった。続編の放送を期待したい。

  • 何故24時過ぎの時間を「25時」や「26時」などと言うのか。「土曜26時」を「日曜午前2時」と言ったら、「頭がおかしい」と言われた。日付が変わっている以上は「日曜」と言っても何もおかしくない。日本語として考えておかしなことを言っていないのにバカにされる。時間軸を24時区切りにすることはできないのか。

  • 芸能人がホテルで過ごす様子を隠し撮りしたところを放送していた。最近、隠し撮りするものをよく見かけるが、倫理上良くない。見るたびに不快になる。他にも芸能人の自宅の様子を隠し撮りしたりする場面も見かける。プライベート空間に立ち入りすぎる隠し撮りは、人格権の侵害につながる。規定を作った方が良いのではないか。

  • テレビ画面上で見られる各局の番組表だが、現在どこの誰が作ったものなのか表示されていない。キー局が作ったものなのか、系列局が作ったものなのか、明示してもらいたい。

  • 巨大なお好み焼きを作るという内容が放送されていた。何気なく見ていたが、その内容があまりにひどかった。通常のお好み焼きのサイズの6000倍のものを作るという企画だったが、挙げ句の果てには生地の水分量を間違えたとかで作り直しをし、6000倍の食材を無駄にする内容だった。たくさんの芸人が参加していたが、見ていて気分が悪くなった。世の中には満足にご飯を食べられない子どもがたくさんいる。このような内容のものがまかり通ることはあってはならない。

  • クレーン車で人を吊ることは禁止されているのではないですか。大量の食べ物をネタにすることもやめた方がいいのではないですか。6000倍のお好み焼きは、一人で3枚食べても2000人必要です。そんなに現場に人はいるのですか。「残りはスタッフでおいしく食べました」と言っていますが、本当とは思えません。

  • 通信販売やテレビショッピングが多すぎる。通販は他のCMと違って、強引な手法で視聴者を引きつけ、その場で購入させるキャッチセールスに似ている。放送局はあざとい通販に加担するべきではない。

  • 「どの番組が」ということではなくて、どうしてお笑い芸人や、オカマやニューハーフなどといった、男なのか女なのか分らない人達がたくさん出てくるのか。視聴者がそれを本当に望んでいるのか。また、わけの分らないカタカナを用いて、ひたすら差別用語を作り出しては番組を作っている。ただ面白ければいいのだろうか。

  • "ちょっとエッチな大人の恋愛ドラマ"ということだが、中年の独身女性が、若い男性を飲み屋や合コン会場のトイレに誘い、行為をするという考えられない設定が放送された。あまりに安易な設定で、コメディドラマなので、なおさら不快な気持ちになった。22時台のドラマで、若い方をターゲットにしているドラマなら、もう少し節度があっても良いのではないか。

  • 春と秋、年末年始のみだった長時間特番が最近では1年中やっている。しかも長時間特番の放送時間は長すぎる上、中身は薄く、同じ事務所所属の芸能人ばかりの内輪話だ。衝撃映像といっても同じ映像の使い回しだ。どのチャンネルに替えても同じ内容でマンネリ化している。長時間特番の影響で、後続の深夜のニュース・スポーツニュースや深夜の番組が繰り下げられる。視聴率対策だろうが、長時間特番のレギュラー化は止めていただきたい。

  • ツイッターなどで、視聴者の声を番組に同時進行で反映させる番組が増えてきたが、客観性は疑問だ。試みは斬新だが、ネットを頻繁に使う層に限られるため、世論を客観的に反映しないという決定的な陥穽がある。組織的世論操作に利用される恐れが高く、客観性を担保する放送基準策定と各局の遵守は必須だ。憲法改正、消費税、社会保障、雇用、TPP、教育などで組織的書き込み工作があり得るから、注意が必要だ。

  • 女子スケート選手に対するコメンテーターの発言は、放送の公共性を著しく欠いていた。主観的な好悪での物言い、表層的な見地からの決めつけは、一般人の井戸端会議ならいいかもしれないが、公共の電波を使っての発言としては、如何なものか。マスコミは個人攻撃の場でも、揶揄する場でもない。

  • 人混みの観光地で芸能人4、5人が歩きながら箸と茶碗でご飯を食べていた。転んだらどうするのか。何かの拍子に箸で子どもの目を突くようなことがないと言い切れるのか。箸や棒を口に入れて歩くな、と躾ける立場の大人の行為とは思えない。礼儀作法もここまで落ちるものだろうか。本当に情けなく、怒りがこみ上げてきた。

  • 両腕がどんどん巨大化する女性の映像が番組の冒頭に流されました。世界に約500例しかない難病で、体の一部が大きくなる病に侵されている人の映像でした。その人は苦しみながらも、かすかな希望を持って生きています。このシーンをほかの巨大なものとして放送された「怪物・巨大ダコを追え」や「大きなスケートボード」などと横並びに流していいものでしょうか。小学生の二人の子どもに、この映像をどう説明したらいいのでしょうか。小中学校で、イジメの事件が連日報道される昨今、身体的な特徴が少しでもあればイジメの対象になる。こんな「イジメ」「差別」を助長しかねない映像を流していいのでしょうか。

  • 今期のドラマには色々なところで生々しいいじめシーンや犯罪に近い暴力シーンが数多く放送されています。人気の俳優や女優が出演していることもあり、真似をするようなことが起こりそうで、とても心配です。いじめを紹介するような放送の仕方に疑問を感じます。

  • AD一人をプールや海へ突き落として笑い者にしている点に、疑問を覚えた。稼働中の電源機材と共に背中から不自然な体勢で落水させ、命の危険を感じさせるものだった。何より、特定の個人に対するこのように暴力的な行為は、「いじめ」を彷彿とさせる内容であり、それを笑い者にして視聴者の笑いを得ようとする行為もまた、「いじめ」の助長につながるのではないのか。

【ラジオ】

  • DJが「歯並びが悪い人は口が臭そう」などと、人を見た目で判断する発言をしていました。その事にコンプレックスを持つ方がいます。このDJは過激な発言が多く、起用し続ける局の姿勢にも疑問があります。

  • 出演者が食べ物を食べながらしゃべることがあります。音をさせながら話すのを聞くのは、かなり不快ですし、公共のマナーとしても良くないことです。番組内では出演者が道徳やマナーについて語っていますが、矛盾しています。

  • 日頃から、下ネタや卑猥な発言が多いが、リスナー宅にかけた電話に、たまたま子どもが出た。しかし、パーソナリティーは面白がって電話を続行し、子どもに卑猥だと思われることを言わせようとした。幸い子どもは答えなかったが、親の承諾もなく子どもを番組に出し、卑猥な発言を強要するのに驚いた。子どものトラウマになったらどうするのだ。

【CM】

  • ある会社のCMだが、テレビ番組との音量の差がありすぎて不快である。家族の体調が悪く、テレビの音量を小さくして見ているにもかかわらず、大きな音が流れてストレスを感じている。CMは見たくなくても強制的に見させられているものなのに、視聴者を不快にすることは、如何なものか。強く改善を求める。

  • 子ども向けの番組が始まるので、小学校1年の子と10分程前から見ていたところ、ホラー映画のCMが2度放送された、子どもは怖がり、大人が見ても気持ち悪いと思った。心に傷を受けかねない。子どもが目にする可能性がある時間に、刺激のある映像を放送するのは、悪質ではないか。

青少年に関する意見

【性的表現に関する意見】

  • バラエティー番組の中の夫婦のダブル不倫の話題で、性生活について取り上げられていた。夜の遅い時間なら分かるが、小さい子どもがまだ起きているゴールデンタイムにわざわざ取り上げなくてもいいのではないか。

  • 番組を見てもらおうと宣伝を流すことは理解できる。しかし、このドラマは性についての内容が多いらしく宣伝でもベッドシーンが流れる。番組内ならまだ分かるが、勝手に流れる宣伝にベッドシーンを入れることはいかがなものか。宣伝は選ぶことも出来ないし、子どもが見ることを考えた内容にしてほしい。これからますます過激な内容が放送されるのかと思うとヒヤヒヤする。

【いじめ・虐待に関する意見】

  • 最近のモノマネ番組は、された側の事を考えていない。良いところを真似るならいいが、本人が言わないようなことややらないようなこと、本人が嫌がることをするのは、モノマネではなく嫌がらせだ。子どものいじめなどの問題で、相手が嫌がることをするのが、問題になっている。どうせやるなら、ちゃんとしたモノマネをして認められるべきだ。

  • アイドルグループの学力テストをバラエティー化していたが、番組内容は、学校の雰囲気作りをした中で、バカのランキングもして、バカをつるしあげるような企画であった。似たようなことを現実の世界でもやってみようと思わせる内容であり、憤りを感じた。子ども達に誤解させる恐れがあり、このような番組内容は、いじめを助長する。

  • イジメを題材にしたドラマだった。私は学生時代に5年間イジメを受けていた。過去に傷を負い、大人になっても傷を思い出すことは多々ある。極力忘れようとしているのに、まさかテレビドラマで、ここまでフラッシュバックさせられるとは思わなかった。こんなものを流しても、イジメなど減ることなどない。現実は甘くないと伝えたいのか。これが現実だと伝えたいのか。そんなことをテレビドラマで表現しないでほしい。

【報道・情報に関する意見】

  • 吹雪でお父さんが亡くなってから3ヵ月も経っていないのに、9歳の女の子にインタビューをしていた。自分をかばって父親が死ぬという異常事態を経験した子に対して配慮がなさすぎる。不愉快だった。

【表現・演出に関する意見】

  • 子役の女の子が芸人を殴ったり、ののしったり罵声を浴びせたりという内容だった。いくら企画とはいえ、子どもにこういうことをさせるのはおかしいし、面白いを超えて不快。こんな時間(注:深夜2時過ぎからの放送)に子どもを出すべきではない。この子自体にも問題はあると思うが、夜中に子どもを出すことはやめてほしい。

第144回 放送と青少年に関する委員会

第144回–2013年4月

視聴者意見について
中高生モニターについて
今年度の青少年委員会活動について

第144回青少年委員会は、4月23日(火)に委員全員が出席し開催されました。第143回の委員会からの継続事案のバラエティー番組についてと、3月11日から4月15日までに寄せられた視聴者意見について討論しました。中高生モニター報告については、意見の取りまとめ方法など運用面の変更と、4月の報告について話し合いました。また、2013年度の活動として、調査研究や、地方での意見交換会の準備進捗状況が報告されました。

議事の詳細

日時
2013年4月23日(火) 午後4時30分~7時30分
場所
「放送倫理番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

次の4点について討論しました。

  • 「外車を無理やり買わせた」「女子アナがゲストを無視していた。いじめを助長する」「女子アナのゲストに対する罵声が不愉快」などの視聴者意見があった21時台のバラエティー番組について討論しました。委員からは「最近のバラエティーは、"ボケて""突っ込んで"そこで終わってしまい、そこから救いのある"フォロー"が無いため、いじめのような印象を与える雑な作りになってしまっている」という意見がありました。また、「目に余るほど悪質とは思わない」という意見の一方、「芸人だからまだ許されることを、視聴者と同じ立ち位置にいるべきアナウンサーがやることによって、子どもたちは一般の人たちもやって良いという感覚になり、悪いことでも一般化されてしまう恐れがある」「ニュースで子どものいじめに関して伝えることもあるアナウンサーが、出演者を無視して結果的にいじめている。報道する場合の立ち位置が難しくなるのではないか」などの意見も出ました。討論の結果、審議入りはしないが、局として女性アナウンサーをどう位置づけるのかなどについて、引き続き関心を持って対応することにしました。

  • 血液型を扱う22時台の4月からの新番組について、今回は審議入りしないものの、2004年12月に青少年委員会が出した『「血液型を扱う番組」に対する要望』に照らして、いじめに繋がるなどの社会的影響を与えないか継続的に注視してゆくことにしました。

  • 結婚を目指すアラフォー女性が主人公の22時台のドラマで「性的表現が過激だ」「余りにも不道徳な内容だ」という視聴者意見を基に討論しましたが、今回は問題視する程の内容ではないと判断し、審議入りはしないことにしました。

  • 深夜時間帯の放送で、子役がタレントを「キレ」させる為に暴言を吐いた番組について、討論しました。委員からは「録画とはいえ深夜の番組に子役を使うことは、一度考えてみる必要があるのではないか」「"キレる"ことを推奨することが不愉快」という意見が出ましたが、今後の様子を見ることにして、今回は審議入りしないことにしました。

その他次の点について話し合いました。

  • ラジオ放送の下ネタに関する意見が継続的に寄せられているため、今後注視してゆくことにしました。

  • 北海道の暴風雪で父親を亡くした少女へのインタビューを放送した番組について、取材時の少女への留意事項などを放送局に確認し、次回の委員会で討論することにしました。

中高生モニターについて

4月は、新しく決まった18都道府県31人(中学生18人高校生13人)のモニターに、好きなテレビラジオ番組を選んで、「好きなところ」「良いと思うところ」を具体的に書いてもらい29人から報告が届きました。
ラジオ番組3本を含む26本の番組について報告があり、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)に4人、『ネプ&イモトの世界番付』(日本テレビ)に2人から意見が集まった他は、別々の番組についての報告でした。NHKが7番組、日本テレビが5番組、フジテレビテレビ朝日が3番組などとなっています。ほとんどがバラエティー番組を選び、情報系が2番組、ドキュメンタリーは1番組、アニメも1番組で、ドラマはありませんでした。
好きな理由として「下品ではないのでご飯の時も安心して見られる」「家族そろって見ることができる」「中高生の本音を取り入れていてとても共感できる」「にぎやかなので見ている自分も楽しくなってくる」「笑いと感動のバランスが素晴らしい」「視聴者参加型の番組なので良い」などの意見が報告されています。
<自由記述欄>は、放送について日ごろ思っていることを自由に書いてもらいました。「食べ物を粗末に扱う番組をまだやっているのは信じられない」「バラエティーでの罰ゲーム的なキスはやめてほしい」「ドラマで、不倫、離婚、犯罪などをまるでカッコイイことのように取り上げているのは不愉快だ」「新聞のテレビ欄に異様に"!"が多く目障り」などの意見が寄せられています。
同時に中高生モニターを対象に「テレビラジオ視聴状況アンケート」を行ないました。それによれば、一日に2時間以上テレビを視聴する人が7割を超え、ジャンルは報道情報番組に次いでバラエティー番組が多く、一人より家族で視聴する傾向にあり、録画視聴が多く、7割を超える人がテレビ視聴時に不快な経験があり、7割の人がラジオを聴くことがあると答えています。
なお「今月のキラ★報告」選考は、できるだけ多くのモニターの視点を取り上げるため、当面取りやめることにしました。

【中高生モニターリポートの主な意見と委員の感想】

●【委員の感想】今の中高生は、出演者とスタッフの仲が良かったり、フリマでの買い物など、ホンワカとした日常生活の雰囲気が感じられる番組を好んで見ているように感じました。

  • (北海道・高校1年男子)僕の好きなテレビ番組は、『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)です。芸人とアナウンサーが街を歩き、街の細かな面白い部分を見つけたり、気になった店を覗いてみたり、買ったおもちゃを公園や喫茶店で試してみたりするというシンプルな番組内容なのですが、ときに腹を抱えて笑うほど面白く、よく見ています。どこに面白さがあるのかを考えてみたところ、一番は「出演者スタッフの仲の良さ」だと思います。テレビで見ていても仲の良さが伝わってきて、見ていて気持ちがいいです。最近、視聴者でさえ「安さ」を感じてしまう番組や、「演出」がうるさい番組が多くあるように感じますが、この番組を見て、番組は予算や演出が全てではなく、作りようによっては予算や演出が少なくても面白い番組はできるのだなと思いました。

  • (佐賀・高校1年女子)私が好きな番組は『Rの法則』(NHK)です。この番組は中高生の本音を取り入れていて、私たちの世代にとって、とても共感できることやためになることを放送しているので好きです。話題の芸能人をゲストに呼んで(たとえばゴールデンボンバーなど)その芸能人に関することを深く教えてくれていたので面白いなあと思いました。モデルの女の子がフリマで買い物をしている回も意外な一面で面白かったし、フリマにもかわいい服があることや出品者とのやりとりも知ることができました。

●【委員の感想】「大人の頑張り」や「挨拶」など、テレビのこういうところを見ているんだと指摘した意見は、実はこれこそ中高生の思いであると感じました。

  • (神奈川・中学1年女子)私が好きな番組は『アイアンシェフ』(フジテレビ)です。一つの食材がシェフの手によって色鮮やかな料理へと変わります。鉄人にひるまず、一生懸命戦う挑戦者「ノミニー」たちの姿は勇ましく、勇気がわきます。大人が何か一つのことに対して全力で頑張る姿を取り上げ、放送しているテレビを見かけたことはあまりありません。私たち子どもにとって、このような番組はとても新鮮です。ほかのバラエティー番組やアニメでは得ることのできない面白さや感動があり、何度も見たくなります。

  • (東京・高校1年女子)私が好きなテレビ番組は『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)です。この番組の好きな点は、構えずに気軽に楽しめる点です。深夜に放送しているということもあり演出などがうるさくなく、かといってつまらないわけでもない。寝る前のちょっとした時間に疲れることなく見られるところが好きです。番組の最後に必ず「おやすみなさい」という言葉が出て終わるということも好きな点の一つです。家族に対して寝る前にこういった挨拶をするのは当たり前のことですが、テレビの画面上で見ることは、よく考えてみるとあまりないのではないかと思います。このように、些細なことにまで気を配れているからこそ、見ていて楽しい番組を制作することが出来るのではないかと思います。

●【委員の感想】リポートを読んでいて二つのキーワードを見つけました。一つは旺盛な「知識欲」。「世界のさまざまな文化」や「めったに入れない工場の実態」などへの興味関心です。もう一つは「ひるまず挑戦する」です。テレビは時間空間を越えていろいろな世界に連れて行ってくれます。番組が何かを始めるきっかけになったり、何かを満たしてくれると素晴らしいですね。

  • (愛媛・中学1年女子)私が好きな番組は『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)です。理由は二つあります。一つ目は、身近な所で役に立つことを楽しく、詳しく知ることができるからです。TOKIOの皆さんが畑で作物を育てたりしている時に説明が入るので「なるほどー」といつも思って見ています。二つ目は、いろんなことに挑戦している所です。雪玉はどこまで大きくなるかに挑戦している時は、クレーンまで出して「スケールが大きいな」と思いました。私も挑戦するのが大好きなので「どうなるのかな?」という気持ちは共感できます。

  • (鳥取・中学2年男子)僕は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)を小学校の頃から見ています。いつも日曜午後8時には家中に笑い声が響き渡っています。この番組の魅力は、何といっても世界を舞台にしているところです。世界の祭りや、珍獣ハンター、温泉同好会などの芸人さんが体当たりで挑む企画の中で、ナレーションの面白いツッコミが炸裂し、思わず笑ってしまいます。中でも、鳥取県民のイモトアヤコさんが担当している、珍獣ハンターイモトが僕は大好きです。同じ鳥取県民なので応援しているということもありますが、ジャングルに出かけて行って苦手なヘビに触り、虫を食べ、動物に出合う。このように、いつも全力で諦めずに頑張っているイモトさんを見て感心させられます

  • (東京・中学3年男子)私は『シルシルミシルさんデー』(テレビ朝日)が好きです。良いと思うのはナレーターの毒舌です。毒舌といっても、悪意のあるものや暴力的なものではなく、ツッコミができる、笑える内容なので、くりぃむしちゅーの上田さんをネタにしながらも、出演者たちの楽しい会話で番組が盛り上がり、見ていてとても楽しくなります。次に、何と言っても、普通ではめったに入れない工場に潜入し、見たこともない機械を紹介したり、企業秘密のギリギリのところまで迫ったりするところが、見ていてワクワクします。

●【委員の感想】自分は全くそう思わないのですが、中高生がここまでポジティブに見ていて、違う感じ方をしていることに関して、厳粛に受け止めなければいけないと思いました。

  • (島根・中学3年男子)『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)は、長く続いている番組ですが、新鮮なアイディアや企画の多さ等、とにかく中身が濃い番組なので好きです。さらに、近年のバラエティー番組は体で笑いをとるものが多い中、単純に口で笑いをとろうとしているし、毎回違う内容のため 飽きません。好きなコーナーは「男気ジャンケン」「とんねるずを泊めよう」「買うシリーズ」で、それぞれの各コーナーが番組化できるのではないかと思うほど中身が濃く、日々進化しているような感じです。僕は勉強などで忙しくても、この番組だけは欠かさず見るほど好きな番組になりました。

●【委員の感想】番組は企画がとても大切で、「見ている側は企画の面白さを見ているんだ」という意見は鋭い指摘だと思いました。

  • (新潟・中学3年男子)私の好きなテレビ番組は『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)です。今年3月で放送開始25年を迎えた長寿番組です。この番組が何故これほど長く人気なのか、考えてみるとそれは「企画力」にあると思います。今のテレビ番組は出演者に頼りすぎるが故に企画が陳腐化していると思います。しかし『探偵!ナイトスクープ』は出演者頼りではなく、企画で勝負していることが分ります。また、この番組は「笑い」と「感動」のバランスが素晴らしいと思います。

●【委員の感想】自由記述欄の意見を読んでいて、「中高生はこんなことは面白いとは思っていないんだよ」ということを制作者にもっと伝えたいと思いました。

  • (秋田・中学2年女子)バラエティーでの罰ゲーム的なキスは止めてほしいと思います。男同士でのキスや、空気やノリでのキスは、見ていて不愉快です。

  • (山形・中学2年女子)夜の番組は、お笑いの中年男性がいやらしすぎるなと思うことを平気でいうので、不愉快になる時があります。

  • (東京・中学3年男子)テレビ番組で私が不愉快に思うことは、ドラマで、殺人事件のような人の死をネタにするものが多いことと、不倫、離婚、犯罪などをまるでカッコイイことのように取り上げていることです。

  • (岐阜・高校1年男子)テレビをつければ、マツコさんや有吉さんがよく出ていますが、言葉遣いが汚いです。『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)なども、人権無視のところがあります。言葉遣いについては、もっと厳しくしていくほうがいいと思います。

今年度の青少年委員会活動について

2013年度の活動として、調査研究や、地方での意見交換会の準備進捗状況が報告されました。