第102回 放送倫理検証委員会

第102回–2016年3月

「放送倫理検証委員会」運営規則の一部見直し
 説明会での意見や要望を了承…など

第102回放送倫理検証委員会は3月11日に開催された。
委員会運営規則の一部改正については、加盟社への説明会の内容が報告され、今後の対応について協議した。その結果、すべての加盟社に対して説明会で出された意見の周知を図ったうえで、追加の意見提出も求めることになった。
2007年5月に発足した委員会の10周年にちなんだ事業やイベントを実施するため、4月から作業を本格化することになった。

議事の詳細

日時
2016年3月11日(金)午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.委員会運営規則の一部見直し 説明会での意見や要望を了承

委員会の運営規則を現状に合わせる形で一部見直す問題についての説明会が、加盟社からの要望を受けて、2月24日の事例研究会終了後に開催された。
説明会には約50社から70人が参加し、川端委員長と升味委員長代行も出席して、1時間余り意見交換が行われた。この中で、説明会でのやりとりをすべての加盟社に改めて周知したうえで、追加の意見のあるところからはその提出を求めてほしいとの要望が、加盟社側から出された。
委員会では、説明会の内容が報告され、今後の対応について協議した結果、加盟各社に運営規則改正への理解をさらに深めてもらうため、要望に沿って対応することを了承した。
委員会は、加盟社からの意見や要望を次回に改めて議論し、改正案の議決をめざすこととなった。

2.委員会発足10周年 事業・イベントを実施へ

2007年5月に発足した委員会がことし5月から10年目に入ることから、10周年にちなむ事業やイベントなどができないかについて検討を続けた。
その結果、メディアを取り巻く環境が激しく変化する中で、放送の自主・自律をサポートするため、2016年度内の実施を目標に、シンポジウムや講演会の開催、記念誌の刊行などを企画することとし、4月以降、作業を本格化することにした。

以上

第101回 放送倫理検証委員会

第101回–2016年2月

NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見への対応報告書を了承
委員会運営規則の一部見直し説明会開催と改正案の修正を了承…など

第101回放送倫理検証委員会は2月12日に開催された。
委員会が昨年11月に出したNHK総合の『クローズアップ現代』「"出家詐欺”報道に関する意見」について、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することとした。
委員会運営規則の一部改正案について、加盟社から寄せられた意見を検討し、今後の対応について協議した。その結果、要望の多かった加盟社への説明会を開催すること、意見を参考にして改正案を修正することを了承した。

議事の詳細

日時
2016年2月12日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺”報道に関する意見への対応報告書を了承

昨年11月6日に委員会が通知公表した、NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺”報道に関する意見(委員会決定第23号)への対応報告書が、2月上旬、当該局から委員会に提出された。
報告書には、再発防止に向けて、各地の放送局で17回の勉強会を実施したこと、検証委員会の担当委員を招いて研修会を開催したこと、委員会決定を踏まえた「放送ガイドライン」の増補版を作成したことなどが記されている。そして、「事実に基づき正確に報道するという原点を再確認しながら信頼される番組づくりにあたっていきます。」と結ばれている。
委員会では、匿名取材に関して導入した「チェックシート」が形骸化したり、「チェックシート」の記入が自己目的化したりすることのないよう検証し続けてほしいなどの意見が交わされ、この対応報告書を了承して公表することとした。

2.委員会運営規則の一部見直し  説明会開催と改正案の修正を了承

加盟社に呼びかけていた、運営規則の一部改正案についての意見募集は1月下旬に締め切られ、加盟208社のうち、異論なしも含めて、31社から意見が寄せられた。改正案の内容は、審議や審理に入る前にその適否を議論している「討議」という手続きと、審議の際にも原則的に行っているヒアリングを、運営規則に明文化するというもので、委員会運営の現状に合わせる必要最小限の改正提案になっている。
委員会では、今後の対応について協議した結果、「説明会などの場で、もっと詳しく説明してほしい」との要望が約20社からあったのを受けて、全加盟社を対象に開催する2月24日の事例研究会の終了後、説明会を実施することになった。説明会には、事務局の担当者のほか、川端委員長と升味委員長代行も出席する。
また、意見の中には、「討議の位置づけを明確にしてほしい」とか、「討議段階でもヒアリングが可能と解釈できるのではないか」などの指摘もあった。委員会の現状に適合させるための必要最小限の見直しという、改正の趣旨をより明確にし、加盟社の誤解を払拭するために、そうした意見を参考にして、改正案を一部修正することになった。説明会では、この修正した改正案についても説明する。
こうした状況を踏まえて、今回の委員会で予定されていた改正案の議決は、次回に見送ることになった。

以上

第100回 放送倫理検証委員会

第100回–2016年1月

委員会発足10周年 事業・イベントなど検討開始…など

第100回放送倫理検証委員会は1月8日に開催された。
委員会運営規則の一部改正案が、2015年の年末、加盟各局に送付され、意見募集が始まったことが報告された。
2007年5月に発足した委員会が100回の節目を迎え、5月からは10年目に入ることから、10周年にちなんで何らかの事業やイベントができないか、検討を開始した。

議事の詳細

日時
2016年1月8日(金)午後5時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.委員会運営規則の一部見直し、意見募集始まる

委員会の運営規則の一部見直しについて、前回委員会で了承された改正案を、2015年12月、加盟各局に送付したことが事務局から報告された。
改正案の内容は、審議や審理に入る前にその適否を議論している「討議」という手続きと、審議の際にも原則的に行っているヒアリングを、運営規則に明文化するというもので、委員会運営の現状に合わせる最小限の改正となっている。
委員会運営への理解と認識を深めてもらうため、加盟各局に呼びかけてこの改正案に対する意見募集を1月下旬まで実施し、寄せられた意見を参考に、次回委員会で改正案を議決する予定である。4月からの施行をめざしている。

2.委員会発足10周年 事業・イベント等を検討

2007年5月に発足した委員会が100回の節目を迎えた。この間に公表した委員会決定は、審理による「勧告」が1件、審理による「見解」が2件、審議による「意見」が20件の、合わせて23件にのぼる。また、委員会決定に準じるものとして、提言1件、委員長談話2件、委員長コメント2件を公表してきた。
委員会は、ことし5月から10年目に入ることから、10周年にちなんで何らかの事業やイベントなどができないかの検討を開始した。メディアを取り巻く環境が激しく変化している中で、いま放送が果たすべき使命や役割とは何なのか。委員会では、2016年度内の実施を目標に、シンポジウムや講演会の開催や記念誌刊行などの企画について、引き続き検討することにしている。

以上

第99回 放送倫理検証委員会

第99回–2015年12月

委員会運営規則の一部見直しについて検討…など

第99回放送倫理検証委員会は12月11日に開催された。
委員会運営規則の一部見直しについて、これまでの議論を踏まえて作成された改正案が提出され、意見交換の結果、了承された。今後、加盟各局から意見募集を行い、それを参考に来年(2016年)2月の委員会で正式に議決し、理事会の承認を経て、4月からの施行をめざすことになった。

議事の詳細

日時
2015年12月11日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.委員会運営規則の一部見直し、改正案を了承

委員会の運営規則を現状に即した形に一部見直す問題について、これまでの議論を踏まえて作成された改正案などが、事務局から提出された。
改正案の内容は、審議や審理に入る前にその適否を議論している「討議」と、審議の際にも原則的に行っているヒアリングを、運営規則に明文化するというもので、委員会運営の現状に適合させるための必要最小限の改正にとどめている。
また、この改正との整合性を図るために、BPOと加盟各局が交わしている「放送倫理検証委員会に関する合意書」についても最小限の改訂を行うことが、事務局からあわせて説明された。
意見交換の結果、運営規則の改正案は了承された。委員会運営への理解と認識を深めてもらうため、約1か月間、加盟各局に対してこの改正案についての意見募集を行い、寄せられた意見を参考に、来年2月の委員会で改正案を議決することとなった。その後理事会の承認を受けて、4月からの施行をめざすことにしている。

以上

第98回 放送倫理検証委員会

第98回–2015年11月

NHK総合の『クローズアップ現代』”出家詐欺”報道に関する意見の通知・公表について意見交換…など

第98回放送倫理検証委員会は11月13日に開催された。
11月6日に当該局への通知と公表の記者会見を行った、NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。

議事の詳細

日時
2015年11月13日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見を通知・公表

寺院で「得度」の儀式を受け法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると伝えた、NHK総合テレビの『クローズアップ現代』に関する意見(委員会決定第23号)の通知と公表の記者会見が、11月6日に実施された。
委員会では、当該局の当日のテレビニュースを視聴したあと、委員長と担当委員から、記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。
多くの全国紙が一面で報道するなど、大きな反響があったことについて、「総務省や自民党への批判は、事案に則して当たり前のことを指摘しただけなのに、予想外の反響に率直に驚いている」という声が、多く聞かれた。「番組の取材・制作に関する事実認定や検証についても、きちんと読んでほしい」などの意見も出された。
さらに、事務局からは、意見書に対してこの時点で80件を超える視聴者意見が寄せられ、60件以上は「政府や自民党を批判するのはけしからん」という内容だったが、その一方で、意見書の指摘を応援・激励する意見も十数件あったことが報告された。視聴者意見のほとんどは、通常、番組や放送局、BPOなどに対する苦情・反論・批判で占められており、異例のことである。

2.委員会運営規則の一部見直しについて検討

委員会の運営規則を、現状に即した形に見直す問題について、手続きに関するメモや改正案のたたき台などが、事務局から提出された。
審議や審理に入る前にその適否を議論する「討議」や、審議の際にも原則的に行っているヒアリングについて、運営規則に明文化する必要があるのではないかという議論が行われた。また、BPOと各放送局が交わしている「放送倫理検証委員会に関する合意書」が、運営規則と密接に関連しているため、その調整をどう図るべきかについても、意見が交わされた。
意見交換の結果、運営規則の見直しは、委員会の現状に適合する必要最小限のものにとどめることで一致した。担当委員と事務局とで細部の表現などを修正し、次回委員会で改正案が了承される見通しとなった。
今回の検討は、これまで慣例的に行われてきたものを運営規則に明示し、一段と分かりやすい委員会運営に努めるという意向がまとまったのを受けて、第95回委員会(2015年7月)から議論が続いているものである。

以上

第97回 放送倫理検証委員会

第97回–2015年10月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』ほかを審議…など

第97回放送倫理検証委員会は10月9日に開催された。
NHK総合の『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』の"出家詐欺"報道について、前回委員会の議論を盛り込んだ意見書の修正案が担当委員から提出された。内容や表現をめぐって意見交換が行われた結果、大筋で了解が得られたため、表現を一部手直ししたうえで、11月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。

議事の詳細

日時
2015年10月9日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受け法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介した。
この番組で、多額債務者に"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張しているのに対して、当該局は「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表している。
前回の委員会で意見書原案に対して示された意見や議論を盛り込んだ「修正案」が、担当委員から提出された。"出家詐欺"の相談場面の実態はどのようなものだったのか、取材・制作の手法としてどのような問題点があったのか、2つの番組でいずれも局内のチェックが機能しなかったのはなぜか、などの論点について、詰めの議論が交わされた。また、放送の自主的自律的な是正のあり方についての委員会の考えが的確に織り込まれているかをめぐって意見交換も行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、細部の表現などを手直ししたうえで、11月上旬にも当該局への通知と公表の記者会見をすることになった。

2.委員会運営規則の一部見直しについて検討

審議や審理に入る前にその適否を議論する「討議」についての規程を設けるなど、委員会の運営規則を現状に即した形に一部見直すべきではないかという委員会の意向を受けて、準備作業を始めた事務局から途中経過が報告された。
意見交換の結果、今年度じゅうに作業を終えることをめざして今後本格的な検討に入ること、委員会のなかに相談窓口となる委員を置くことなどが了承された。

以上

第96回 放送倫理検証委員会

第96回–2015年9月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』ほかを審議…など

第96回放送倫理検証委員会は9月11日に開催された。
新たに岸本委員が就任し、今回から出席した。
"出家詐欺"の報道について審議している、NHK総合の『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』について、担当委員から意見書原案が提出された。内容や表現についてさまざまな意見が出され、次回委員会に修正案を提出して、意見の集約を目指すことになった。
韓国での街頭インタビューの翻訳テロップと吹き替え音声が一部違っていたフジテレビの『池上彰 緊急スペシャル!』について、討議を継続した。誤って編集された映像を正しい映像に差し替えた番組が8月末に再放送され、誤りの起こった経緯が的確に分析された報告書も提出されたことから、実質的な訂正放送も行われ、放送の自主的自律的な是正がほぼ完全になされているので審議入りの必要はないと判断した。この報告書は他の放送局の参考にもなることから、当該局の了承を得てホームページなどで公表することになった。
テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』で使用された大阪都構想のニュース映像とそれに付されたテロップ等が、政治的公平性を欠くとして自民党から抗議を受けた事案は、当該局から最終報告書が提出された。局はお詫びをホームページに掲載し、謝罪した政党側から新たな動きもなく、再発防止策もまとまっていることから、討議を終えることになった。

議事の詳細

日時
2015年9月11日(金)午後5時~8時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受け法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介した。
この番組で、多額債務者に"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張しているのに対して、当該局は「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表している。
委員会では、番組関係者へのヒアリングやこれまでの議論を踏まえた意見書原案が、担当委員から提出され、出家による改名の相談場面の取材・制作の手法にどんな問題があったのかなどについて、2時間近い意見交換や議論が行われた。その内容を盛り込んだ修正案を担当委員が作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

2.韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの日韓問題番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議

フジテレビは、6月5日の情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』で、韓国での街頭インタビューのうち、男女2人分あわせて約10秒間にわたって映像の韓国語音声と異なる日本語翻訳テロップと吹き替え音声を放送していたことが分かり、ホームページなどでお詫びした。
委員会は前回の議論で、当該局の報告は、編集上のミスが重なった経緯などが詳細に検証されていると評価する一方で、局が存在すると主張している、日本語翻訳と一致する映像が実際に存在するのかという視聴者の疑問は解消していないなどとして、討議を継続していた。
当該局は8月29日、この番組を首都圏ローカルで再放送し、問題となったインタビューについて、字幕は本放送のまま編集の際誤って選択された映像を正しい映像に差し替え、韓国語が聞き取れる形で紹介した。この音声と字幕が合致することは、委員会が独自に依頼した通訳によって確認された。
委員会は、ミスが起きた経緯の的確な検証や再発防止策が他の放送局の参考になるとして、当該局に報告書の公表への協力を依頼したところ了解が得られ、固有名詞などを修正した公表用の報告書が提出された。
当該局が自主的自律的に行った事実上の訂正放送ともなる再放送により「放送の誤りを放送で正した」ことや、報告書のホームページなどでの公表に同意が得られたことを総合的に判断して、委員会は審議入りしないことを決めた。

【フジテレビ「『池上彰 緊急スペシャル!』の報告書】

フジテレビから公表の了解が得られた「『池上彰 緊急スペシャル!』インタビュー映像誤使用問題に関する検証および再発防止策」は、放送倫理検証委員会の川端委員長の前文を付して、2015年10月6日、ホームページ上に公表した。

pdf 公表にあたって – 委員長前文
pdf フジテレビ – 「『池上彰 緊急スペシャル!』インタビュー映像誤使用問題に関する検証および再発防止策」

3.既得権益問題をめぐる映像使用について政党から抗議を受けたテレビ大阪の情報番組『たかじんNOマネーBLACK』を討議

テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』(5月30日放送)で、在日外国人のゲストのひとりが「日本人は怠け者で既得権益を守りすぎる」と指摘した際に、大阪都構想のニュース映像が流れた。「たとえ社会の発展や活性化につながるものでも」とのナレーション部分に橋下大阪市長の映像が約4秒間、「既得権益のために政治が利用されてしまっているのが今の日本の姿」とのナレーション部分には自民党大阪市会議員団幹事長の映像が約6秒間、テロップとともに使われていた。
自民党側の抗議を受けて、当該局は自社ホームページにお詫び文を掲載し、自民党側に謝罪した。一方、自民党側からは議員団幹事長名で、委員会あてに「政治的公平性を欠く映像使用」だとする文書が届いた。
当該局の最終報告書によると、社内に調査部会を設けて検証した結果、担当ディレクターの思いつきで映像を使ったこと、放送前のチェック段階で疑問を指摘する声が複数あったにもかかわらず修正には至らなかったことなどが判明したという。そして、再発を防ぐため、社内あげての研修会を今秋実施すること、注意が必要な社内情報の共有化を徹底すること、視聴者にお詫びする際のガイドラインを作成することなどを決めた。
委員会は、報告書にはまだ十分とは言えない部分が残るものの、再発防止策がまとまり、お詫びも既になされていて、自民党側から更なる抗議などの動きもないことから、討議を終えることにした。

[委員の主な意見]

  • ゲストの在日外国人が大阪都構想については何も言及していないのに、そのニュース映像を使用し、自民党側を「既得権益にしがみつく怠け者」であるかのように放送したのは、名誉毀損的な表現として問題があった。十分に反省して今後の教訓にしてほしい。
  • 放送前の社内チェックで問題を指摘する声がありながら、なぜそれを反映させることができなかったのか。今後、注意を喚起すべき声が出た時に、それを具体的にどのように共有化するのか。報告書には、まだ十分とは言えない部分もあるので、きちんと議論して詰めてもらいたい。
  • ホームページに掲載されたお詫び文は説明不足で、視聴者や関係者に何を謝っているのかよく分からなかった。なぜそうなったのかをさらに検証してほしいし、このようなお詫び文にすべきだったという実例を、委員会に報告してほしかった。
  • 当該番組は、この問題が発生する前から、6月で終了することが決まっていたということだが、政党から抗議があったから打ち切ったと誤解されるおそれもあるのではないか。その経緯について、報告書にきちんと記載してほしかった。

以上

第95回 放送倫理検証委員会

第95回–2015年7月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議。

韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議。次回も継続…など

第95回放送倫理検証委員会は7月10日に開催された。
放送倫理違反の疑いが濃いとして、審議入りしたNHK総合の『クローズアップ現代』の出家詐欺報道とその基になった『かんさい熱視線』について、追加ヒアリングの結果が報告され、論点整理を行った。
日韓問題を扱ったフジテレビの情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』で、韓国での街頭インタビューの翻訳テロップと吹き替え音声が一部間違っていたことが分かり、後日ホームページなどでお詫びした。委員会は、当該局の報告をもとに討議した結果、さらなる確認や検討が必要だとして、討議を継続することを決めた。
フジテレビの情報番組『とくダネ!』が放送したNPO法人の特集企画をめぐって、放送局とNPO法人の主張が対立している問題を討議した結果、委員会が放送倫理上の観点から取り上げるのは適切ではなく、当事者間で解決を図るべきであるとして、審議の対象とはしないことにした。
テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』で使われた大阪都構想のニュース映像が政治的公平性を欠くと自民党から抗議があり、当該局はホームページでお詫びした。委員会は、当該局の報告書が途中経過の報告であったことから、最終的な報告の提出を求めることとし、討議を継続することになった。

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)では、出家して僧侶となり法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
この中の"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」と客の「多重債務者」が相談している場面について、「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張。これに対して当該局は、「意図的または故意に、架空の場面を作り上げたり演技をさせたりして、事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はなかったが、放送ガイドラインを逸脱する『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表した。
この2番組の取材・制作にあたった記者やディレクターなどのヒアリングは既に実施されていたが、担当委員による追加のヒアリングが継続して行われ、今委員会でその内容が報告された。
そして、相談場面の取材・制作の手法に問題はなかったのか、「過剰な演出」などと結論付けた当該局の判断は妥当なものと言えるのか、などの問題点について意見交換が行われた。その結果、論点はほぼ整理され、意見書の骨格もおおむね固まったとして、次回委員会までに担当委員が意見書の原案を作成することになった。

2.韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの日韓問題番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議

フジテレビは、日韓問題を扱った約2時間の情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』を6月5日に放送した。その中で、韓国人男女2人の約10秒間の街頭インタビューについて、映像から聞き取れる原語とは異なる内容の翻訳テロップと吹き替え音声で紹介されていたことが視聴者からの指摘で判明し、当該局はホームページなどでお詫びした。
委員会への報告書によると、インタビュー映像は通訳によって翻訳され、タイムコードと日本語が書かれた翻訳シートが作られて、担当ディレクターが、そのシートをもとに編集作業を進めた。その際、女性インタビューについては、タイムコードの入力を誤って、別の部分の映像が抜き出されたため、使用予定の翻訳テロップが映像の内容と異なるものとなり、男性インタビューについては、長めに抜き出した映像を短縮する再編集時にミスが重なり、映像と翻訳テロップがずれて合わなくなってしまった、としている。
そのうえ、スタジオ収録や事前の試写などのチェックの際に、翻訳の適切さについての確認をしていなかったため、字幕テロップと吹き替え音声が、映像の発言と異なっていることに誰も気付かず放送に至ったという。報告書には、今後は制作の最終段階の翻訳チェックを基本とするなどの対応策も記載されている。
委員会の討議では、「詳細な分かりやすい報告書で、間違った経緯はよく理解できたが、視聴者への説明責任が十分に果たされているとは言えない」「放送された翻訳部分が、実際の取材テープに本当にあったのかという視聴者の疑問を解消する必要がある」など、さまざまな意見が交わされた。そして、この事案は、さらに確認や検討が必要な点もあるとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 編集上の単純なミスが積み重なった経緯は報告書でよくわかったが、日韓問題のような重いテーマなのに、実際の編集が始まって放送前のチェックまでの間、通訳が全く立ち会っていないというのが信じられない。最終段階でチェックしていれば、起こりえないことではないのか。
  • 経費や時間の制約もあり、こうした事前収録の番組で、通訳が最終チェックに立ち会うことは、ほとんどないのではないか。
  • 番組の制作委託を受けた制作会社の編集やチェック作業の杜撰さは否めないが、当該局のチェック機能の甘さも指摘しなければならないだろう。
  • 当該局は迅速な社内調査をして、詳細な原因分析や的確な対応策をまとめた報告書になっていると思う。この報告書どおりの経緯であれば、改めて審議してヒアリングする必要はないのではないか。
  • 委員会への報告書は確かに分かりやすく、ミスをした原因や背景もきちんと分析されているが、ホームページや広報番組では、十分な説明がされていない。視聴者への説明責任が果たされているとはいえないだろう。
  • 視聴者から寄せられた意見では、放送された翻訳の内容が、取材テープの中に本当にあったのかという疑問が非常に多い。これを解消するためには、何らかの情報開示がもっと必要なのではないか。

3.エコキャップ問題の特集で、取材先のNPO法人から放送倫理上の問題を指摘されたフジテレビの情報番組『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、ワクチン代を寄付するために使うとうたってペットボトルのふたの回収活動をしているNPO法人エコキャップ推進協会が実はワクチン代を寄付していないと、新聞報道で指摘された問題について、「直撃御免 消えたワクチン代の行方」と題した特集企画を4月23日に放送した。
6月中旬になって法人側は、この企画は恣意的な編集をした「虚偽放送」で、放送倫理上の問題があるとして、記者会見で指摘・公表した。法人側は、番組側から「一部のリサイクル業者によるペットボトルのふたの横流し疑惑の追及」という趣旨で取材依頼があったので取材に協力したが、放送ではその問題には一切触れずに、取材した映像を使って法人の「経費問題」だけを伝えており、恣意的な編集による「虚偽放送」だと主張している。
これに対して当該局は、当初から法人側に対して、「経費問題」も含めた取材意図をきちんと伝えていて、「ひっかけ取材」や「恣意的な編集」はないと反論している。
委員会では、両者の資料をもとに討議した結果、この事案は「ひっかけ取材」と言えるかどうかが最大の争点となっているが、どちらの言い分が正しいかを委員会が判断するのは容易ではないうえ、取材意図を事前にどこまで取材先に伝えるかについて、委員会がこの事案で放送倫理上の基準を打ち出すのは、適切とは言えないとの結論になった。そして、問題の解決に向けては、当事者間の話し合いにゆだねるべきだとして議論を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

[委員の主な意見]

  • 法人側は、放送直後に局側に抗議したものの、その後は局側とまったく接触もないまま、今回の公表に至っているようだ。双方が、どうしてもっと率直な話し合いをしなかったのだろうか?
  • 放送では、「疑惑の渦中の協会理事長を直撃」と文字スーパーなどで再三強調しているが、法人側の経費が多額なことを指摘するだけで、具体的にどういう疑惑があるのかの説明は十分とは言えないのではないか。「消えたワクチン代の行方」が不明確な放送内容には、不満が残る。
  • 法人側の経費が多すぎる理由を理事長に確認するインタビューは放送されているので、「虚偽放送」とまでは言えないだろう。
  • 取材の拙さは気になるが、この事案で、委員会が放送倫理上の問題として議論すべきなのは、取材意図を事前にどこまで取材先に伝えるべきかという点に絞られそうな気がする。丁寧に説明するに越したことはないが、テーマによっては、取材意図をつまびらかにできない取材もあるだろう。委員会として、そうした点にまで踏み込んだ基準を打ち出すのは難しいし、特にこの事案でそれを行うのは適切とは言えないのではないか。

4.既得権益問題をめぐる映像使用について政党から抗議を受けたテレビ大阪の情報番組『たかじんNOマネーBLACK』を討議

テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』(5月30日放送)で、「FOOL JAPAN 世界から見たダメダメ日本」と題し、4人の在日外国人ゲストが日本に対して疑問に感じていることを指摘した。
その中の「日本人は怠け者で既得権益を守りすぎる」というパートで、「たとえ社会の発展や活性化につながるものでも」とのナレーション部分にTシャツ姿で街頭演説をする橋下大阪市長の映像を約4秒間、「既得権益のために政治が利用されてしまっているのが今の日本の姿」とのナレーション部分にスーツ姿で街頭演説をする自民党大阪市会議員団幹事長の映像を約6秒間、使用した。
自民党側の抗議を受けて、当該局は「一部誤解を招きかねない、配慮を欠いた表現がありました」と自社ホームページにお詫び文を掲載するとともに、自民党側に謝罪した。一方、自民党側からは議員団幹事長名で、委員会あてに「政治的公平性を欠く映像使用」だとする文書が届いた。
当該局の報告書によると、放送前のチェック段階で、大阪都構想の演説映像の使用に問題はないかという指摘はあったとのことだが、修正までには至らなかったという。また、再発防止策の策定などに向けて、社内の議論は継続中ということだった。委員会は、当該局に対して、最終的な報告書の提出を次回委員会までに求めることにして、討議を継続した。

[委員の主な意見]

  • ゲストの在日外国人が大阪都構想については何も言及していないのに、そのニュース映像を使用したのは制作者の配慮が足りず、編集上問題があるのではないか。
  • ホームページに掲載されたお詫び文は説明不足で、視聴者や関係者に何を謝っているのかよく分からない。
  • この問題について、社内では今も議論を継続しているとのことなので、完成した報告書を見たうえで、改めて検討したい。

5.委員会運営規則の改定について検討

現在委員会は、審議や審理に入る前に、その適否を討議している。しかし討議の手続きは慣例で運用されているため、その手続き規程を設けるなど、現在の委員会運営規則を改定するべきではないか、との意見があり、委員会で検討したところ、その方向で事務局側が検討を進めることとなった。

以上

第94回 放送倫理検証委員会

第94回–2015年6月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』などを審議…など

第94回放送倫理検証委員会は6月12日に開催された。
委員会が今年3月に出した「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」について、当該5局から提出された対応報告書を了承し、公表することとした。
"出家詐欺"の報道に放送倫理違反の疑いが濃いとして、前回審議入りしたNHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)とその基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)について、取材・制作担当者へのヒアリングの結果が報告され、意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2015年6月12日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解への対応報告書を了承

3月6日に委員会が通知公表した、「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」(委員会決定第22号)への対応報告書が、TBSテレビ、テレビ新広島、テレビ朝日、NHK、日本テレビの当該5局から委員会に提出された。
報告書には、委員会決定を受けた後の局内の対応や、放送番組審議会でのやり取り、再発防止に向けた取り組みなどが記載されている。委員会が求めた自己検証などの要望に対しては、自己検証の内容を広報番組で放送したりホームページで公表したりした局、委員会の担当委員を招いて研修会を実施しそれを広報番組で紹介した局など、各局の対応が具体的に報告されていた。
委員会は、5局からの対応報告書をすべて了承して公表することとした。

2."出家詐欺"の追跡報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)では、出家して僧侶となり法名を授けられる「得度」の儀式を受けると家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
この中で、"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」と客の「多重債務者」が相談している場面について、「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張。これに対して当該局は、「意図的または故意に、架空の場面を作り上げたり演技をさせたりして、事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、一方で、放送ガイドラインを逸脱する『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」と結論付けた報告書を公表した。
委員会は、放送倫理に違反する疑いが濃いうえ、委員会として意見を言うことに意味がある事案だとして、前回この2番組を審議の対象とすることを決め、担当委員によるヒアリングが実施された。
当該局のチーフプロデューサー・ディレクター・記者ら11人に対するヒアリングを踏まえて、企画立案から取材・編集・放送に至るまでの経緯が詳細に報告され、現時点での問題点や疑問点などが指摘された。意見交換の結果、ヒアリングの対象者を増やして調査を継続するとともに、論点の整理などを進めることになった。

以上

第93回 放送倫理検証委員会

第93回–2015年5月

"出家詐欺"報道で「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』審議入り…など

第93回放送倫理検証委員会は5月8日に開催された。
委員会が今年2月に出したテレビ朝日の『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することとした。
"出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)について、当該局から最終報告書が提出され意見交換を行った。その結果、放送倫理に違反する疑いが濃く、委員会として意見を言うことに意味がある事案であることで一致し、『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』(2014年4月25日放送 関西ローカル)の2番組を審議の対象とすることになった。

議事の詳細

日時
2015年5月8日(金)午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.テレビ朝日の『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見への対応報告書を了承

2月9日に委員会が通知公表した、テレビ朝日の『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見(委員会決定第21号)への対応報告書が、4月末に、当該局から委員会に提出された。
報告書では、再発防止とより良い報道を目指して、検証委員会の担当委員を招いた勉強会を社内で開催したことや、問題発覚後に策定してすでに実施している再発防止策について、委員会決定後にその実施状況を検証し、必要に応じて見直しをしていることなどが記されている。
委員会では、勉強会の一部が紹介された広報番組も視聴した上で意見交換を行い、この対応報告書を了承して公表することとした。

2."出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』を審議入り

NHK総合の『クローズアップ現代』で2014年5月14日に放送された「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」は、出家して僧侶となり法名を授けられる「得度」の儀式を受けると、家庭裁判所の許可を得て戸籍の氏名のうち名のほうを法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
番組では、宗教関係者や行政の担当者が、不活動宗教法人の対策に苦慮していることや、実際に「ブローカー」と「多重債務者」が相談している隠し撮りの現場などが紹介されたが、その相談シーンは「やらせ取材」だったと週刊誌が告発した。
NHKは、放送で「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではない」などと主張しているため、外部委員を交えた調査委員会を作って関係者の聞き取りを行い、4月28日に最終報告を公表した。当委員会にもその報告書が提出された。
報告書は、「意図的または故意に、架空の場面を作り上げたり演技をさせたりして、事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないと判断したが、一方で、放送ガイドラインを逸脱する『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」と結論付けている。
委員会では、報告書に記載されている「やらせ」と「過剰演出」の区別の適否や、主要な関係者の言い分が異なることをどうとらえるか、などを議論・検討した。また、番組で紹介された"出家詐欺"とされる事件の事実関係をはじめ、番組全体についても意見を交換した。その結果、放送倫理に違反する疑いが濃いことと、委員会として意見を言うことに意味がある内容の事案であることで一致したため、『クローズアップ現代』とその基になった『かんさい熱視線』(2014年4月25日放送 関西ローカル)の2番組を審議の対象とすることになった。

【委員の主な意見】

  • NHKの報告書には違和感を禁じえない。「やらせ」ではないということに終始しているのではないか。「やらせ」の有無の問題だけにとどまらず、どこに番組表現上の問題があったのか、なぜ視聴者に誤解を与えてしまったのかを、きちんと説明していない。
  • NHKが自主的に第三者を交えた調査委員会を立ち上げ、迅速に報告書を作成したこと自体は、評価してもよいのではないか。
  • なぜこうした問題が起きたのか、という基本的な問題意識や説得力ある指摘・言及を、報告書から読み取ることができない。組織・企業風土・職場環境など幅広い観点からの分析が必要ではないだろうか。
  • 報告書を読むと、問題のシーンが「やらせ」かどうかしか調査・検証していないことに疑問を感じる。審議入りして、委員会として言うべき意見を言うことにも意味があるように思われる。
  • 視聴者的な視点から見た時、この番組が伝えようとしていることに対して疑問を感じたところがあった。例えば"出家詐欺"は、水面下で本当に広がっているのだろうか。
  • 当該局の最終報告書が公表された同じ日に、総務省の行政指導が出されたことは、BPOの効果的な活動に期待するという国会の付帯決議の趣旨からしても、いかがなものかと感ずる。

以上

第92回 放送倫理検証委員会

第92回–2015年4月

"出家詐欺"報道で「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』を討議…など

第92回放送倫理検証委員会は4月10日に開催された。
冒頭、BPO規約25条に従い、川端委員長が、退任した小町谷委員長代行の後任に升味委員を指名した。また、新たに中野委員が就任した。
"出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』について、当該局から報告書が提出され意見交換を行った。しかし、この報告書は「中間報告」であり、さらに調査を進めたうえで、まとまり次第最終報告をするということなので、それを待って本格的な議論をすることになった。

議事の詳細

日時
2015年4月10日(金)午後5時~7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』を討議

NHK総合の『クローズアップ現代』で2014年5月14日に放送された「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」は、寺で出家の儀式「得度」を受けると戸籍の下の名前を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
番組では、宗教関係者や行政の担当者が対応に苦慮していることや、実際に「ブローカー」と「多重債務者」が相談している隠し撮りの現場などが紹介されたが、その「ブローカー」と「多重債務者」の相談シーンは「やらせ取材」だったと、ことし3月、週刊誌が告発した。
NHKは、放送で「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではない」などと主張しているため、調査チームが記者や「ブローカー」「多重債務者」への聴き取りを行い、委員会に報告書を提出した。しかし、この報告書の内容は、これまでの聴き取り等の状況や検証のポイントをまとめた「中間報告」的なものであり、NHKは、副会長を委員長とし、3人の外部委員も加えた調査委員会を設置して、「やらせ」の有無、取材制作の進め方、表現の適切さなどについて調査したうえで、最終的な「調査報告書」をとりまとめて公表するという。
委員会では、NHKの最終報告書の提出を待って本格的な議論をすることになった。

【委員の主な意見】

  • 当該番組を視聴し、提出された報告書を読んだだけでも、放送倫理違反ではないかと感じられるところがあった。

  • 問題の場面は、映像も音声も処理されているが、調査報道は、モザイクの後ろに真実があると視聴者に信じてもらえるものでなければならないのではないのか。

  • もともと記者と「多重債務者」が知り合いだとすれば、記者が「多重債務者」を追いかけてインタビューするというのは、過剰演出や虚偽ではないのか。

  • 記者が2人にだまされた可能性もないとは言えないので、慎重できちんとした事実認定が不可欠だろう。

  • この放送の1か月前に、関西ローカルで放送された同じテーマの番組についても、その内容を見たいので、DVD映像と報告書を要請してほしい。

  • 当該局としては、これまでにないほどの態勢で迅速に調査をして、その結果を公表すると言っているのだから、まずはその結果を見て、委員会としてどのように臨むかを決めればいいのではないか。

  • 本当に「ブローカー」だったのかが問題になっているようだが、取材のディテールそのものに放送倫理上の問題が潜んでいるようにも思われるし、制作段階でどのようなチェックが行われていたかも、明確にしてほしい。

以上