第135回 放送と青少年に関する委員会

第135回 – 2012年7月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて

第135回青少年委員会は7月24日に開催され、6月16日から7月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、7月に寄せられた中高生モニター報告について審議したほか、今年度の委員会活動等について委員間で討議した。 また、境真理子副委員長の退任(2012年7月31日付)に伴い、委員長が加藤理委員を新副委員長に指名した。加藤委員は2012年8月1日付で副委員長に就任する。

議事の詳細

日時
2012年7月24日(火) 午後4時30分~6時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員、(欠席)川端委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けた結果、バラエティー2番組を委員全員が視聴して、審議した。審議対象とした理由は、強者が弱者をいじめたりさげすんだりするような番組が、いじめを許容する社会的風潮の醸成につながっているのではないか、という点を視野に入れて、広く議論するためである。また、報道取材に関する視聴者意見についても審議した。
前回委員会で議論した「子役の起用」については、NHKを含む在京キー局から子役起用の現状についての報告資料が寄せられ、今後、委員会で議論を重ねていくこととなった。

(1)TBSテレビ『タカトシの時間ですよ!』(7月4日放送)について
【視聴者からの主な意見】

  • 大津いじめ自殺事件が連日話題となっている最中に、いくらいじられキャラの芸人のお通夜でエピソードトークする内容だったが、あまりにも人の命を軽視したもので不愉快だった。(20代、女性)
  • まさに”葬式ごっこ”だった。いじめ問題で、以前取り沙汰されたこともまだ記憶に新しい。深夜の番組とはいえ、面白がって扱ってよいテーマではない。(30代、女性、埼玉)

【委員の主な意見】

  • 内容は、お笑いタレントをいじめているものではないが、”お葬式ごっこ”で笑いを求めるという企画には強い疑問を感じる。
  • 放送時間帯を含めて、何ら違和感を感じなかった。「死」は軽々しく笑いにできる問題ではないが、それを”ブラックな笑い”にできる社会こそ健全だと思う。
  • 大人が「死」を軽々しく扱っているからこのような企画が考えられたのではないかと思うが、子どもにも「死」が軽々しく受け止められないかと危惧する。
  • リアクション芸人を上手に取り上げていて大変よくできた番組だと思う。この芸人を知っている人ならば、この芸人をいじめているとは誰も思わないのではないか。視聴者には、この番組で出演者を貶めているかどうかを、よく見極めてほしい。
  • 大津のいじめ自殺事件については、当日の全国紙で取り上げられていたこともあり、番組の中身よりも編成の配慮が必要ではなかったか。

(2)フジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした。』(7月12日放送)について

【視聴者からの主な意見】

  • 「男気じゃんけん」はいじめを助長するようで非常に問題がある。特に、司会者の一人がほかの出演者の財布を抜き取って、それをゲスト俳優の持ち物に入れ、最初は「盗んだことを認めれば殴らない」と言っておきながら、無理やり盗んだと認めさせると、罰としてバットで殴っていた。こういう内容を見ると子どもが真似をする。(40代、女性、富山)
  • 分別ある大人が見れば、ふざけていると理解できるかもしれないが、小中学生など子どもが見て真似をすれば、それは”いじめ”以外の何物でもないのでは。(30代、男性、福岡)

これらの視聴者意見をもとに、委員間で審議した結果、特段問題視するものではないという意見が大勢を占め、各委員の意見をBPO報告とBPOホームページに掲載することとした。

【委員の主な意見】

  • 仲間うちだけで盛り上がって楽しんでいる番組で、面白いとは感じられない。
  • “男気”を売り物に、”ケツバット”をしたり、足蹴りしたりする行為が男気だとする演出は、ステレオタイプで工夫が足りないと思う。
  • いじめに対する想像力を社会が失っているという危惧の思いが深い。表現を規制したいとは全く考えないが、ただ、いじめられた経験のある子どもにとってはつらいものだという想像力を制作者が働かせることも大切だと思う。

(3)報道取材に関する視聴者意見について

【視聴者からの主な意見】

  • 小学校校長をしています。先週、うちの学校の1~2年生5、6人が、小学校前の路上で男性芸人に焼き芋をもらい、その様子をテレビカメラが撮影していました。そして子どもたちに「出演承諾書」を書かせていたそうです。低学年の子どもに「承諾書」を書かせること自体許せない行為です。その後、制作者側から、(1)子どもたちの映像は使わない、(2)子どもたちに承諾書を書かせたことへの謝罪などの返事をもらいましたが、気づかなければどのようになったのか心配です。(50代、女性、東京)
  • いじめ自殺事件のあった学校に通う子を持つ保護者です。連日の報道により、学校の周りに各局の取材陣が多く集まっています。報道陣が多く部活動に集中できなくなっています。取材するなとは言いませんが、もう少し節度ある形をとっていただくことはできないでしょうか。子どもに心理的影響が出ないか心配です。(40代、女性、滋賀)

【委員の主な意見】

  • まだこんな取材が行われていることに驚いた。子どもたちを取材撮影する場合には、保護者や学校の承諾が必要だと思う。それを子どもたちだけに承諾書を書かせてよしとする取材方法については改めるよう、放送局は徹底して指導する必要がある。
  • 事件の真相を伝えるために、子どもへのインタビューは絶対に慎むべきとは言わないが、子どもたちの人権と、日常生活に支障をきたさないよう十分配慮してほしい。
  • 今回、大津いじめ自殺事件をはじめ、各地でいじめによる事件・事故報道が続いている。青少年委員会では、2002年3月に「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」、2005年12月に「『児童殺傷事件等の報道』についての要望」を公表しており、各放送局に、児童・生徒へのインタビューには慎重を期すよう重ねて要望したい。

中高生モニターについて

7月は、「こんな番組が見たい・作ってみたい」という「ドラマ・アニメ番組」の企画をたててもらった。また、今回から<自由記述欄>を設け、直近に見た放送に関しての意見や感想を自由に書いてもらうことにした。
今回は31人からの報告があった。期末試験と重なったことや、「ドラマの制作ってなんとなく自分がイメージしていたよりもずっと難しいと感じた」という感想があったように、中高生モニターの苦労した様子がうかがえた。
ドラマの企画を考えた人が多く、アニメ企画は4本、原作のある作品の企画は10本だった。その内漫画の原作は3本にとどまった。
内容的には、同世代を主人公にした学園ものが目立ったが、警察もののオリジナルドラマ、東日本大震災を扱ったドラマの企画、人気番組を合体させる話など、ユニークな企画も集まった。

【委員の所感】

  • 改めて小学生から大学生までをターゲットにした番組が、あらゆるジャンルにわたってほとんど編成されていないのだと実感した。
  • 東京中心の番組作りや演出のパターン化への疑問・批判にも共感した。
  • 女子高のいじめを扱った企画がありリアルな感じがして面白かった。
  • 中学生や高校生は、テレビというものの中に自分が参画できてないという意識があって、自分たちのことをもっと取り上げてほしいと思っていると感じた。
  • 大震災を支える人の立場からドラマ化したいという企画は鋭いなあと思った。
  • 放送局側は、若者たちの感覚を、どれだけつかんで作っているのか気になった。
  • 社会の変化がどんどん速くなっている時代に、どういう番組を若者が求めているかをつかむ回路を放送局はどれだけ持っているのか考えさせられた。
  • 一生懸命オリジナルドラマを考えていて、楽しかっただろうなと思った。
  • 本当にあったら面白いなあというオリジナルが結構あってワクワクした。
  • 「キラキラネーム」のアイディアとか、「らくらくフォン」の話など、すごく面白い企画があった。
  • 大人のために子供が番組を作る「立場逆転」のアイディアは大変面白いと思った。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

◆企画1.『NEXT×TARGET』 (東京・中学3年女子)

【ねらい】
現代の女子中高生の心の中を学園ドラマを通して描き、先生、保護者の意識を高めるとともに、生徒自身がこんなことに直面しても簡単に心折れない主人公Aのような人になって欲しいと思います。いじめによる自殺が増えている今、1vs6でも負けないAの演技で、精いっぱい勇気を全国の中高生に与えてほしいと思いました。

【内容】
時はクラス替えをしたばかりの春。女子校に通う中2のAは中1の頃から憧れていたBと同じクラスになり、新しい友達と7人グループでの中2生活が幕を開けた。その中には一番一緒にいたくて話をしたいBも。どうしたら仲良くなれるだろうか…ただただBの行動にAの胸は揺らぎ続け、日々を過ごしていた。3学期。グループの様子は一転。以前から上手くいっていなかったCとA。Cはとっかえひっかえターゲットを作り、仲間と共にその子を省く。そのターゲットはとうとうAにまわってきた。原因がわからずあたふたとするAに降りかかる、黒幕Cのメール・ブログの謎。平気な顔して部活で接してくるD、大丈夫だよ、とメールをくれるが学校ではしれーっとしているE(Eは一学期Cのターゲットになっていて悩みを聞いてあげたのに…)、親切な裏に何かを秘めるF…。本当にみんなCを信じているの??黙ってないで原因を教えて!!叫びたくなるA。先生もなかなか向き合おうとしない。Aはどうするっ!?このまま中3へもつれ込むのか!?クラス替えは?AとBはどうなる??それぞれの誕生日、夏休み、文化祭、運動会、バレンタイン…様々な行事を通して、複雑な気持ちのまま過ぎていく7人の1年を描いた青春ストーリー☆

◆企画2.『玄米せんせいの弁当箱』 (静岡・中学3年男子)

【ねらい】
人気コミック誌で連載された作品。「食べることは生きること」人生における食の重要性や相手のことを想って料理を作るなど、「食」について考える。視聴対象は、特に「両親が共働きで、一人でご飯を食べている人」「部活や塾などで帰りが遅い人」「一人暮らしをしている人」など。そういう人たちに、家族みんなでご飯を食べることの大切さを伝えるのが狙い。

【内容】
国木田大学農学部にやってきた一人の講師が、食べる喜びを学生たちに教える話。その講師は、大学構内に畑を作ったり、玉ねぎの皮を使った学食のメニューを提案したりする。学生たちとの授業を通して、食の大切さを視聴者に訴える。主役の玄米せんせい役は、草彅剛さん。

【フジテレビ編成部ドラマ・アニメ担当者の感想】

皆様の企画、大変楽しく拝読しました。多くに共通しているのが「好きが高じて」考えられている点です。私が制作者として最も大事に思うのは「なぜ、今、この話を見せたいか」です。例えば『NEXT×TARGET』や『玄米せんせいの弁当箱』は「今だからこそ伝えたい」という意図が明確です。しかし、いじめを題材にした「GTO」や「黒い女教師」が放送中です。あなたの作品の売りは何ですか。そこまで掘り下げて考えれば、より面白い企画が出てくると思いました。

◆企画3.『First Name』 (長野・中学2年女子)

【ねらい】
キラキラネームの人が大人になって自分の名前に悩むことが多いと思いました。だから、その名前に込めた両親の願いや素晴らしさに気づいて欲しいと思いました。

【内容】
このドラマの主人公(前田敦子さん)もキラキラネームで、悩んでいます。高校生ぐらい。自分の名前が嫌いで、過去に戻って違う名前で人生を送ってみることにします。主人公は「普通の名前になったからもっと人生が楽しくなるはず」と思っていましたが、キラキラネームだった時よりもつまらない人生になってしまいます。そんな時に、両親が自分の名前(キラキラネームの方)に込めた願いを知ります。主人公は自分の名前の素晴らしさに、改めて気づき、名前をもう一度過去に行ってもとのキラキラネームに戻します。そして、自分の名前が大好きになり幸せな人生を送っていく話です。

【日本テレビ制作局ドラマプロデューサーの感想】

興味深くユニークな内容で、読んでいて新鮮で楽しかったです。全体的な印象で言うと、「自分が好きな系統や原作をドラマとして見てみたい」という内容が大半だった気がします。しかし、その中でも、はっきりとテーマ性を持って「こう見てほしい」と書いていたものも沢山あり、それが非常に驚きでした。中学生や高校生の子達が、自分たちが想うことを吟味し、発信したいテーマを明確に据えて伝えようとしている。制作側の「目」をちゃんと持っているのだと。制作側も視聴者の「目」をちゃんと持たねばならないな、と改めて実感させられました。また、中高生ならではのワードも新鮮でした。読み方がわかりづらい今どきのオシャレな名前のことを「キラキラネーム」と言うのですね。

◆企画4.『ぼくのやり過ぎコンシェルジュ』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
*無意識に口に出したことが、そのまま現実になってしまうのは、良いことなのか悪いことなのか?*「つながる」ことの大切さと、「いつもつながっている」ことの怖さ。*ケータイ頼みでなく、自分で思いを伝えることの大切さを主人公が学んでゆく。

【内容】
ぼくはさえない高校2年生。小学生の時におばあちゃんからもらった通話とメールしか出来ない「らくらくホン」をいまだに使っている。仲間は、今はやりの「しゃべるケータイ」を使いこなしていて、うらやましくてしょうがない。そんなある日、ぼくのケータイが突然人格を持って動き始めた!好きな女の子を見て「かわいいなァ」とつぶやくと、その子に熱烈な告白メールを送りつけたり、「あれほしいなァ」とつぶやくと、勝手にネット通販で買ってしまったり。画面には変な男の顔が映っていて「僕はあなたのコンシェルジュです。何でも望みをかなえてあげましょう。」と言っている...ぼくの生活はいったいどうなるんだ!?コンシェルジュ役は堺雅人さん。『リーガル・ハイ』で演じたようなアクの強い役作りをしてもらいたい。

◆企画5.『Again World(アゲインワールド)』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
ちょっとした出来事や判断によって運命が大きく変わることや、自分の人生は誰でもない自分だけのオリジナルであることなどを考えさせる物語。大人が、10代や20代の悩みや思いに少しでも寄り添うことが出来たら良いと思います。

【内容】
日本は最先端の技術開発に成功し。世界最大の先進国として成り立っていた。そんな都内に住む高校生・秋山亮は、先月、恋人であった大平美星を亡くしたばかりであった。亮は美星を追って自殺を図り屋上から飛び降りる。しかし、目を開いた底は、「死」ではなく「生き地獄」であった。そこは現在の日本。しかし技術開発に失敗し外国の植民地として成り立っていた。そこから亮の冒険が始まる!!
☆この世界は、タイムスリップではなく、2つの世界が同時進行している設定です。

◆企画6.『平等ゲーム』 (神奈川・中学3年女子)

【ねらい・内容】
『平等ゲーム』とは、桂望実さんが書いた小説です。「鷹の島」という名の島は、「1600人、全員平等」の島で、仕事は抽選、住居はタダであり、究極のユートピアである。その島で生まれ育った主人公は、鷹の島が夢の社会であることを信じて疑わない。鷹の島に住みたい人は抽選で決めるのだが、主人公はその移住権を得た人の所へ訪問するという仕事をしていた。そして、本土(私達の社会)の人の話を聞いたり、本土で生活をしていくうちに「平等」というものが、そんなに良いものなのかを考えさせられる。そして、最後には、抽選で決まる人生ではなく、本土のように自分の努力や行動によって人生を切り開いてゆく決断をした。

【TBSテレビドラマ制作部プロデューサーの感想】

今回は、原作があるものにしろ、オリジナルのものにせよ、さすが中高生ならではの感性で、「今」をとらえた企画が多いと感じました。大人になって自分のキラキラネームに悩む主人公や、技術開発力で世界最大の先進国として成功している日本と、技術開発に失敗したあげく外国の植民地となっている日本がパラレルワールドになっている設定、ユートピアとたたえられる「全員が平等の島」の存在をきっかけに、主人公が平等とはそんなに良いものなのかを問うていく、などなど。中でも、仲間たちの「しゃべる携帯」がうらやましくてたまらない高校生の、通話とメールしかできない古い携帯が、ある日突然、主人公の「つぶやき」を勝手にメールして相手に伝えたり発注したりし始める、という設定は、今の情報社会の怖さにもつながる、広がりのあるおもしろい企画だと思いました。

◆企画7.『2人の間の壁』 (東京・中学1年女子)【ねらい】

ねらいは人のことを先入観で捉えたり、勝手に印象付けたりせずに、相手の内面性をじっくりとみてほしいというメッセージです。

【内容】
テーマとなるのは国際結婚です。主なストーリーとしては、日本人女性と韓国人男性のカップルがいます。2人は3年ほどの交際を経て、結婚という段階にまできました。2人はお互いをよく理解し、男性の方の職場が日本にあるため日本語も話せ、生活にはなんの不自由もありません。結婚したら、日本で生活すると話はまとまっています。2人は着々と結婚の話を進めていきましたが、彼女の両親は決して認めませんでした。彼女も結婚という現実的な話を進めていく中で文化の違いなどを感じ、一時関係はこじれてしまいます。しかし、彼女の両親も男性と共に時間を過ごすことで、先入観ではなく内面に目を向けていくことで彼の魅力に気が付いていきます。

◆企画8.『「三毛猫ホームズの推理」×「妖怪人間ベム」』 (神奈川・中学2年男子)

【ねらい・内容】
人気があった番組をコラボさせたら面白さが増すと考え、『三毛猫ホームズの推理』と『妖怪人間ベム』をコラボさせたドラマを作りたいと思いました。放送時間は土曜日21時です。土曜日の夜は家族みんなで見ることが出来るからです。視聴対象は小学校高学年からお年寄りまで、幅広い世代を対象とします。出演者には、「三毛猫」の片山義太郎(相葉雅紀)、片山ヒロシ(藤木直人)、片山晴美(大政絢)、「妖怪」のベム(亀梨和也)、ベラ(杏)、ベロ(鈴木福)。明るい義太郎と暗いベム。でも「誰かを助けたい」という思いを持つ部分は一緒だと思いました。この2人が一緒になることで、義太郎とベムが、実は同じ考えの持ち主だということをみんなに知って欲しいのです。

【テレビ東京ドラマ制作室プロデューサー(『鈴木先生』『モテキ』ほか担当)の感想】

まず第一に、ターゲットが明確で、見る人の立場に自分を置き換えて、きっちりと考えられた企画が多い印象を受けました。特に、私たちがとらわれがちな出演者のギャラや行政といったことを無視したキャスティングなどには、なるほどと思うところがある。また、中学校・高校で起きていることや、現代社会を生きている”当事者意識”を大切にしたオリジナル企画は、中高生が訴えたい熱いものを感じた。
全体的には、3.11の影響もあるのか、夢や希望のある”明るい話”の企画が多く、今、テレビに求められているものが、中高生が企画を考える過程で浮彫りになったのではないかと推察する。
『2人の間の壁』はテーマが明確で、『First Name』は視点が面白く、『「三毛猫ホームズの推理」×「妖怪人間ベム」』は、日テレさんに是非実現させて欲しい(笑)

【テレビ東京アニメ制作部長の感想】

今回アニメの企画がドラマに比べ極端に少なく、そもそも今の中高生にアニメはどのように受け入れられているのか、あれこれ考え込んでしまいました。この世代の心に強く響く作品を我々は提供できているのだろうか?放送時間帯についてはどうか?等々・・。自由記述欄に「千と千尋の神隠し」のテレビ放映を見た中学生のコメントがありましたが、小学生で見たときには気づかなかった視点の記述がとても興味深く、作品と視聴者との向き合い方は斯くありたいものだとしみじみ感じました。

◆企画9.『僕が見た東日本題震災』単発ドラマ (宮城・中学2年男子)

【ねらい・内容】
震災時の僕の先生たちの実際の話です。実際の苦労や苦悩を知って欲しいです。僕は小学6年生。卒業式の練習を終えた直後の揺れでした。僕は母の迎えが早かったので、引き渡しの1回目で下校しました。僕が通っていた小学校は宮城県で1番のマンモス校です。海から5km。海寄りの隣の小学校は仙台で一番大きな被害が出た小学校です。震災から2日後の13日になって友達の事が心配になったのと、情報が欲しくて小学校に行きました。小学校は凄かったです!体育館も全教室も校庭も全てが避難者でいっぱいで、お世話をしていたのは先生たちでした。「先生は自宅に帰られたのですか」と聞いたら「家族とは連絡を取っただけで帰っては居ません」とか「状況を見に帰ってすぐ戻ってきました」「着替えを取りに行っただけ」と言っていました。ほとんどの先生が学校で寝泊りをし、中にはあの日から帰っていない先生もいると聞き大変驚きました。先生たちも被災者です。僕ら家族と同様に辛さや不安がいっぱいだったはずなのに、いつでも笑顔で、見ず知らずの被災者の対応をしていた先生たちの忍耐力はすごいと感じました。日にちも場所も規模も大きく変わったけれど、僕たちをきちんと卒業式で送り出してもくれました。僕は感謝でいっぱいです。教職と言う職業にも魅力を抱き始めたのも震災での先生達からです。そんなに頑張っていたのにも関わらず今までメディアには被災者を支えていた側ではなく、被災者のほうが多く取り上げられていました。今回僕は被災者支援の素晴らしさを伝えたい、知って欲しいと思い、単発ドラマ・スペシャルドラマという形で提案させて頂きます。

【テレビ朝日編成制作局制作二部プロデューサーの感想】

“キラキラネーム”や東日本大震災、鉄道に国際結婚、いじめの問題など、多岐にわたるテーマを持つ企画があり、とても興味深く拝見しました。まだまだドラマとして取り上げるべきテーマが多くあるのだと改めて感じました。ただ、それをドラマに仕上げていくには、魅力的な主人公が必要です。見る人が心を寄せることのできる主人公、それは誰なのか。そして彼・彼女はどこに向かい、何を成し遂げるのか。そしてそれは見る人にどんな希望を与えるのか?…是非一度考えてみてください。それを見つけることができた時、そのテーマはドラマの企画として羽ばたけるのだと思います。そしていつか、その主人公と、あなたと共に一緒にドラマを作りましょう!楽しみにしています。

◆企画10.『フルスイング』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
とある中学校の野球部が、全国大会に行こうとする話。全国の野球少年たちに、野球のおもしろさをもっと知ってほしい。

【内容】
ドラマでありながら、ノンフィクションのように実際の野球部の練習を追いながら、勝ち進んでいくドラマを作る。よくある弱小野球部が考えられないような大勝を手にするのではなく、地道な努力と現在のインターネット社会の情報収集機能を使って、相手中学の情報を集めたり、転校生を入部させたりして、スパイ活動までする。感動を追及するのではなく、淡々とすぎていく中に、野球の面白さを見出したい。サッカーとの違いをとくに説きたい。

◆企画11.『ShortStory~立場逆転~』 (神奈川・中学1年女子)

【ねらい・内容】
この『ShortStory~立場逆転~』略してSSのコンセプトは「子供による大人のためのドラマ」です。普段「大人によるドラマ」をテレビで観ています。しかし今の子供に同じようなことをやらせてみると、また新たな発見がうまれるのではないでしょうか。ドラマは毎回1話で完結のショートストーリーです。脚本家、監督、演出家、カメラマンなど様々な仕事を募集して全国から選ばれた子供たちが分担された仕事をします。今はドラマ番組で視聴率の低迷で打ち切りになってしまう番組が多いです。そこで新世代にも活躍の場を広げていって、若い人たちの斬新なアイディアを取り入れて視聴者にも喜んでもらえる番組にしたらどうでしょうか?募集の対象年齢は小学生から高校生までがいいと思っています。

【NHKドラマ番組部チーフプロデューサー】

皆さんの気持ちがこもったドラマ・アニメの企画文、読ませていただきました。まず企画の幅の広さに驚きました。学園ものから時代劇、SF、恋愛ものからミステリまで、およそありとあらゆるジャンルのものがあり、中高生の皆さんの興味の幅の広さが伺えます。すべての企画に「面白いものが見たい!」という熱い気持ちが感じられて心強く思いましたが、その一方で「今のドラマはつまらない」という不満が端々に匂い、制作現場にいる者としては、もっともっと力を尽くさねばならないと痛感しました。

【自由記述欄】

今回から中高生モニター報告に<自由記述欄>を設け、直近に見た放送に関しての意見や感想を自由に書いてもらうこととした。主な意見・感想は、以下のとおり。

  • どの放送局も結局はやっていることが同じだ。もう少し工夫があっても良いのではないか。
  • ニュースなどの全国ネットの枠で、東京の視点だけではなく地方の視点も取り入れたほうが良いと思う。
  • 役者の役割が定まりすぎている気がする。役者の新しい可能性を見出すためにも意外な人選というのがもっと必要だと思う。
  • NHKで浅井忠を取り上げた番組を見たが、モノ作り、クリエーションにまつわる番組が大好きな僕にとっては地味ながら嬉しい番組だった。
  • 久しぶりにジブリ映画の『千と千尋の神隠し』をテレビで見たが、小学生の時は、ただ見ていただけだったが、今回は、人間の汚い所を出すと豚になったり、意志が強いと人の心も動かせるんだと、色々考えながら見られて楽しめた。

第185回 放送と人権等権利に関する委員会

第185回 – 2012年7月

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理

「南三陸町津波被災遺族からの申立て」事案~申立て取り下げ

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」~審理入り決定

「無許可スナック摘発報道への申立て」~審理入り決定

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理が行われ、委員会からの和解による解決の打診について、双方とも受け入れる意向を示した。2件の審理要請案件について審議し、いずれも審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年7月17日(火) 午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理

本事案はフジテレビが1月9日(月・祝)の『情報プレゼンター とくダネ!』で放送した企画『ブーム発掘!エピソード・ゼロ(2)身近なモノが…知られざる街の芸術家編』について、番組に登場したストローアートの作家が「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」として謝罪などを求めているもの。フジテレビは「演出方法を明確に説明せず、申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている」として、放送でのお詫び案を示しメールで交渉を重ねてきたが、決着しなかった。
今月の委員会では、申立人、フジテレビ双方に個別にヒアリングを行った。
申立人は「スタッフにストローアートの作品を預けたら、放送では、生け花のように数本でひとつの作品として見せるヤシの木がバラバラにされ飲み物に挿して出されていた。作品を勝手に崩すのは人権侵害と思う。趣味の域というスタジオでのキャスター発言は、趣味を芸術より下のものと軽視するような発言だ。私にとってストローアートは芸術でもあり趣味でもあり、作りやすくする工夫とオリジナルな作品に一生懸命取り組んできた。情報番組として残念で、もっと入念に取材、調査をして番組作りをしてほしい」などと述べた。
フジテレビからは情報制作局の担当者ら5人が出席し、「企画には申立人からの要望も盛り込んでいるが、ヤシの木に関する演出については申立人の了解を得ておらず不適切だったと考える。不快な思いをさせたことは反省しており、お詫びしたい。スタジオで気に入った作品を選んでもらった演出は、作品についての様々な評価や価値観を提供し視聴者と共有できる有効な手法で、キャスター発言を含め申立人やストローアートを軽んじたり、評価を下げる不適切なものとは考えていない。企画全体から受ける印象としては、ストローアート本来の魅力を十分伝えていると考える」などと述べた。
ヒアリングを受けて委員会は、フジテレビがお詫びの意思を表明し、これまで数度にわたり謝罪案を提示してきた経緯等を踏まえ、双方に対し和解による解決を打診した。これに対し申立人は、委員会が仲介してくれるなら、と提案を受け入れ、フジテレビも和解に応じる意向を示した。
これにより委員会は今後、和解による解決に向け具体的な作業を進めることになった。

「南三陸町津波被災遺族からの申立て」事案~申立て取り下げ

本事案は、NHKが本年3月10日に放送した『NHKスペシャル「もっと高いところへ~高台移転南三陸町の苦闘~」』に対し、津波の犠牲となった町職員の遺族から「番組で肉親の最期の姿を見て大きな衝撃と苦痛を受けた。亡くなる直前の写真であれば全遺族の了解を得るか、得られなければモザイクをかける等の配慮が当然ではないか」として、NHKに謝罪等を求め申立てがあったもの。6月の委員会で審理入りが決まった。
その後、申立人とNHKとの間で話し合いが行われ、その結果、申立人より申立てを取り下げたいとする書面が、実質審理前の7月5日付で委員会宛て提出された。
この日の委員会で申立ての取り下げを了承し、本事案の実質審理を行わないことを決めた。

審理要請案件2件~審理入り決定

1.「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」

上記申立てについて審理入りが決まった。
対象となった番組は、フジテレビの『ニュースJAPAN』。昨年10月5日と6日の2回にわたって「イレッサの真実」と題し、肺がん治療薬イレッサをめぐる問題について報道した。
この報道に対し、番組で長期取材を受けその発言も紹介されている男性から、人権を侵害されたとの申立書が本年5月に提出された。申立書の中で申立人は、「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理基本綱領に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシー等を侵害された」として、フジテレビに対し謝罪と放送内容の訂正を求めている。
これに対しフジテレビは、「番組は肺がん治療に関し、様々な立場から多様な意見が存在することを、新薬イレッサを例に報道したもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはない。放送倫理に抵触する部分もなく、申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない」との見解を示し、全面的に反論している。
委員会では、双方から出された書面、番組同録DVD及び関連資料をもとに審議した結果、本件申立ては委員会運営規則第5条に照らし、要件を満たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会より実質審理を行う。

2.「無許可スナック摘発報道への申立て」

上記申立てについて審理入りが決まった。
対象となった番組は、テレビ神奈川が本年4月11日夜放送した『tvkNEWS930』。番組では、神奈川県警が無許可営業のスナックを風営法違反容疑で摘発する現場を取材し、1分強のニュースとして放送した。
この報道に対し女性経営者と家族から人権侵害を訴える申立書が提出された。申立人は「略式命令の軽微な罰金刑にもかかわらず、映像では顔のアップ、実名と年齢、店と自宅の住所まで放送したのはプライバシーをあまりにも公開し過ぎ」と主張している。また放送から1か月以上もの間、ネット上でこのニュースの動画が再生できる環境にあったとし、この点でもプライバシーや肖像権の侵害、名誉毀損にもなるとしており、テレビ神奈川に対して謝罪放送とそのホームページへの掲載を求めている。
これに対しテレビ神奈川は、局の見解で「通常の実名報道原則に基づき放送した」としたうえ、「報道される側の基本的人権についても十分慎重に検討した。無届け営業を現場で否定しなかったため、当人の顔のボカシは入れずに放送した」と主張している。また動画の取扱いについては、5月18日の申立人からの電話により、Facebook動画及びtwitterテキストが削除されていないことに気付き、動画ファイル自体及び元データを削除したとしている。
委員会では、双方から出された書面、番組同録DVD及び関連資料をもとに審議した結果、本件申立ては委員会運営規則第5条に照らし、要件を満たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会から実質審理に入る。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・6件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・14件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8月21日(火)に開かれることになった。

以上

第62回 放送倫理検証委員会

第62回 – 2012年7月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』 …..など

第62回放送倫理検証委員会は7月13日に開催された。
「宅配の水」の利用客として登場した女性が、宅配水メーカーの経営者の親族だったことが判明した日本テレビの報道番組『news every.』は、2回目の審議が行われた。1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちが、なぜ繰り返されたのかを中心に検証した意見書の修正案が了承され、7月中に通知・公表を行うことになった。
日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』の新聞の番組欄や番組内のテロップなどで、話題となっている占い師が出演するかのように告知しながら別の占い師が出演した事案についても、前回に続いて討議した。その結果、視聴者の信頼への裏切りという、放送倫理の根本に関するところで問題があるとして審議入りを決めた。
また、フジテレビ『めざましテレビ』の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、電話セールスのトラブルは局側の演出よるものだった等の不適切な取材・表現があった事案について討議。取り扱いについては次回委員会で結論をだすことになった。

議事の詳細

日時
2012年7月13日(金) 午後5時~9時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議案
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

4月25日に放送された原発事故後の「飲み水の安全性」の特集企画の中で、「宅配の水」の利用者として紹介された女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの経営者の親族(会長の三女で社長の妹)で執行役員の妻であり、大株主でもあったことが判明した事案。
2回目の審議で、担当委員から、1年余り前の「ペットビジネス」事案と類似した過ちがなぜ繰り返されたのかについて、分析・検証した意見書の修正案が委員会に提出された。
意見交換の結果、若干の補足を加えることでこの修正案は了承され、7月中に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

告知とは別の「占い師」が出演した日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』

日本テレビは5月4日のゴールデンタイムに、深夜のレギュラー番組『芸能★BANG+!』を『芸能★BANG ザ・ゴールデン』として2時間放送した。この放送では、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動を大きく取り上げた。新聞の番組欄での告知や番組内のスーパー、ナレーションでは、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように表示したが、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の女性占い師だったという事案。
前回の委員会の後、日本テレビは委員会に対して、追加の資料として『芸能★BANG ザ・ゴールデン』問題の反省をもとにした全社的な取り組みを示すとともに、別紙として、経営トップからの社員への指示、その後開かれた研修会での社員の意見などを報告した。
委員会はこれらをもとに、前回に引き続いての継続討議を行った。バラエティ-番組の演出をめぐる放送倫理が問題となったこの事案の扱い方の難しさを中心に長時間に渡る討議がなされた。そして、視聴者からの信頼という放送倫理の根本を裏切っていることから、審議に入らざるを得ないという結論に達し、次回の委員会で審議を行うことになった。

【委員の主な意見】

  • 前回の討議でもあったが、具体的に放送基準などの何に当たるかというのは非常に難しい。
  • 要するに視聴者に対してフェアでないということ、視聴者を大事にしていないということで、まさに倫理の問題だと思う。
  • 今回のケースは、制作者の意図に反して「誤解」された事案ではなく意図的に視聴者の「誤解」を狙った「虚偽」だと考える。
  • ここまでレベルの低い案件はBPOが審議する前に局の内部で対応し、けじめをつければよい。委員会がわざわざ意見を述べるほどの奥行きのない事案だと思う
  • 本来は、本当にタレントと同居していた占い師の出演がだめになった段階で、この企画は占い師の登場を前提としないで、霊能者や占い師に騙されてお金を取られた出演者のトーク番組に変えてしまえばよかった。問題の占い師は出演しないことになったのに、変えられないまま最後まで行ってしまったとしか取りようがない
  • このケースが誤解をねらった確信犯ではなく、視聴者がそのように受け取るとは考えなかったというならば、コミュニケーション能力の低い制作者で、それだけで失格だ。

不適切な取材・表現があったフジテレビの『めざましテレビ』

問題となったのは6月6日放送の「無料サービスの落とし穴」という企画コーナーで、ディレクターが実際に化粧品会社の無料サンプルに応募、その後かかってきた電話が36分間も続いたと放送したが、実は電話のやりとりの大部分は番組側が意図的に質問を重ねて会話を引き伸ばしていたという事案。また無料カットサービスを受けた美容室では、客になってくれた女性にマイクをつけ美容師との会話を録音した。
当該局は6月13日の同番組内でお詫びコメントを放送。7月9日には検証委員会に自主的に報告書を提出した。そのなかで、あたかも一方的な勧誘が長く続いたようになった点、さらに隠し撮り・隠し録音について社内規定に沿った許諾手続がとられなかったことに問題があったと自ら認めた。取材先にも直接陳謝したという。委員会は様々な角度から意見を出し合ったが、取り扱いは次回委員会で結論を出すことにした。

【委員の主な意見】

  • こちら側で質問を作って、結果的にできた36分を証拠に、ひっぱり電話が向こうからあったように表現する部分は悪質。
  • サンプルを送るだけだから、先方はセールストークをする理由はほとんどない。それを迷惑電話がくるという企画に合わせて撮ろうとするからむりやり引き伸ばすことになる。
  • モザイクが一般化し、水際で隠せばなんでもOKという雰囲気が怖い。
  • 原則、盗聴はするなと局の内規にあるが、なぜそのような内規があるのかを理解していないから、これは例外だと思いこむ。
  • 技術がよくなり、いまは秘密の意識なしに音が録れてしまう。
  • 放送局であることを明かさずに取材することは多いので、隠し録音が「いけない」と言われると逆に萎縮する懸念がある。
  • 自分の企画にはめこむ形で隠し撮りを利用しているが、これが一般化して隠し撮り自体がタブーだという流れになることは危険。そうなると表玄関からしか取材できなくなり、撮れるものも撮れなくなる。

以上