第231回放送と人権等権利に関する委員会

第231回 – 2016年3月

自転車事故企画事案、世田谷一家殺害事件特番事案、STAP細胞報道事案の審理、出家詐欺報道事案の対応報告…など

自転車事故企画事案、世田谷一家殺害事件特番事案、STAP細胞報道事案を審理、また出家詐欺報道事案でNHKから提出された対応報告を了承した。

議事の詳細

日時
2016年3月15日(火)午後4時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラエティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前説明が十分でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
ヒアリングを行った前回の委員会後に第1回起草委員会が開かれ、委員会決定文を起草した。今月の委員会では、担当委員から決定文案の説明を受けた後、委員会の判断の結論を取りまとめ、次回委員会でさらに決定文案の審理を続けることになった。

2.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案の審理

対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送を受けて入江氏は、テレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。このため入江氏は、委員会に申立書を提出。「テレビ的な技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びにテレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
これに対しテレビ朝日は、サファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張している。
前回委員会後、申立人から「反論書」が、被申立人から「再答弁書」が提出された。今回の委員会では、事務局がこれまでの双方の主張を取りまとめた資料を基に説明、論点を整理するため起草委員が集まって協議することとなった。

3.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では論点・質問項目案に沿って各委員が意見を述べた。次回委員会ではさらに審理を進める予定。

4.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の対応報告

2015年12月11日に通知・公表された本件「委員会決定」に対し、NHKから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が2016年3月10日付で提出され、委員会は、この報告を了承した。
また、3月3日、NHKにおいて本決定に関して坂井委員長と担当の奥委員長代行、二関委員が出席して研修会が開かれたことを事務局が報告した。当日は約150人が出席し、2時間にわたって質疑応答や意見交換が行われた。

5.その他

  • 2016年度「放送人権委員会」活動計画(案)が事務局から提示され、了承された。
  • 林香里委員が3月末で退任することになった。林委員は4年間委員を務めたが、4月から大学のサバティカル研修のため渡米することになり、任期途中の退任となった。
  • 後任として4月から委員に就任する白波瀬佐和子氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)が専務理事から紹介され、経歴等の説明があった。
  • 次回委員会は4月19日に開かれる。

以上

第230回放送と人権等権利に関する委員会

第230回 – 2016年2月

自転車事故企画事案のヒアリングと審理、
ストーカー事件再現ドラマ、ストーカー事件映像両事案の通知・公表の報告、
謝罪会見報道事案の対応報告、STAP細胞報道事案、世田谷一家殺害事件特番事案の審理…など

自転車事故企画事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。ストーカー事件再現ドラマとストーカー事件映像の2事案の通知・公表について、事務局が概要を報告した。謝罪会見報道事案でTBSテレビから提出された対応報告を了承した。STAP細胞報道事案、世田谷一家殺害事件特番事案を審理した。

議事の詳細

日時
2016年2月16日(火)午後3時~9時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「自転車事故企画に対する申立て」事案のヒアリングと審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
この放送について申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
今月の委員会では、申立人と被申立人のフジテレビからヒアリングを行った。
申立人は代理人の弁護士とともに出席し、「自転車事故の被害の深刻さを訴えたいという説明を受けて出演したが、茶化す番組の冒頭に使われ、たいへん悔しく思っている。番組で母が当たり屋だと明確に言われたわけではないが、私のブログにはお金をもらっているだろうみたいな、罵詈雑言のような形のコメントが来たりして嫌な思いをした。事前に当たり屋のドラマだという一言の説明もなく、お笑いで終わるような番組とは一切聞いていなかった。聞いていれば、もちろん取材はお断りした。ドラマの内容は荒唐無稽としか言いようがない」等と述べた。
フジテレビからは制作担当者ら6人が出席し、「申立人のお母様の事故とドラマの事故の内容は明らかに異なり、番組上も分断されているので、視聴者が申立人は高額な賠償金目当ての当たり屋同様の存在であるという印象を持つことはなく、名誉を毀損したとは考えていない。申立人のインタビューは自転車事故の悲惨さを訴えるために取材したもので、ドラマとは別の部分で使用することから、ドラマに当たり屋が登場することは説明していない。ドラマの内容は取材や資料をもとに蓋然性が高いと判断して再構成したもので、申立人が主張するような虚偽放送ではない」等と述べた。
ヒアリング後の審理で、次回委員会に向けて担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の通知・公表の報告

3.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の通知・公表の報告

両事案に関する「委員会決定」の通知・公表が2月15日に行われ、その概要を事務局から報告し、当該局のフジテレビが決定の内容を伝える番組の同録DVDを視聴した。

4.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の対応報告

2015年11月17日に通知・公表された本件「委員会決定」に対し、TBSテレビから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が2016年2月15日付で提出され、委員会はこの報告を了承した。
なお、本件の委員会勧告に基づいて局が行った放送対応に関し、当該番組でエンドロールの後一旦CMが放送されてからアナウンサーによるコメントの読み上げがなされた点について、多数の委員から、放送対応のタイミングについてより工夫がなされることが好ましかったとの意見が述べられた。
また、2月1日にTBSテレビにおいて本決定に関して坂井委員長と担当の曽我部、林の両委員が出席して研修会が開かれたことを事務局が報告した。当日は140人余が出席し、2時間15分にわたって質疑応答や意見交換が行われた。

5.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では、改めて起草担当委員が提出した論点・質問項目案に沿って各委員が意見を述べた。次回委員会ではさらに審理を進める予定。

6.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案の審理

対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送を受けて入江氏は、テレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。このため入江氏は、委員会に申立書を提出。「テレビ的な技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びにテレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
これに対しテレビ朝日は、サファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張している。
前回委員会で審理入りが決まったのを受けて、テレビ朝日から申立書に対する答弁書が提出された。今回の委員会では事務局が双方の主張をまとめた資料を配付して説明した。

7.その他

  • 2月3日に福岡で開かれた地区別意見交換会(九州・沖縄地区)について、事務局から概要を報告し、その模様を伝える地元局の番組の同録DVDを視聴した。意見交換会には、同地区29局、83人が出席し、約3時間30分にわたって活発な意見交換が行われた。
  • 次回委員会は年3月15日に開かれる。

以上

第229回放送と人権等権利に関する委員会

第229回 – 2016年1月

ストーカー事件再現ドラマ事案の審理、ストーカー事件映像事案の審理、
STAP細胞報道事案の審理、自転車事故企画事案の審理、
世田谷一家殺害事件特番事案の審理入り決定…など

ストーカー事件再現ドラマ事案とストーカー事件映像事案の「委員会決定」案が大筋で了承され、委員長一任となった。その結果、両事案の通知・公表は2月に行われることになった。STAP細胞報道事案、自転車事故企画事案を審理、また「世田谷一家殺害事件特番への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2016年1月19日(火)午後4時~10時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内いじめ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内いじめの「首謀者」とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された音声データや加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、第4回起草委員会を経た「委員会決定」案が提示され、前回委員会以降の修正点等について起草担当委員が説明を行い、各委員から細部にわたるさまざまな意見が述べられた。その結果、一部表現・字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。「委員会決定」の通知・公表は2月に行なわれることになった。

2.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、前の事案と同じフジテレビが2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
この日の委員会では、第2回起草委員会を経た「委員会決定」案が示された。審理の結果、一部表現・字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。「委員会決定」の通知・公表は2月に行なわれることになった。

3.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張している。
今回の委員会では前回に続いて起草担当委員が提出した「論点メモ」に沿って各委員が意見を述べた。その結果、次回委員会までに起草担当委員が、論点とヒアリングに向けた質問項目を整理することになった。次回委員会ではそれをもとにさらに審理を進める予定。

4.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前説明が十分でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて論点と質問項目を審理した。論点については、本件放送による人権侵害はあったのか、放送倫理上の問題として申立人に対する取材前の説明はどうだったのか等を検討し、来月の委員会で申立人とフジテレビからヒアリングをすることになった。

5.審理要請案件:「世田谷一家殺害事件特番への申立て」~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送に対し入江氏は、番組の取材要請の仲介をした人物を介してテレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。その後弁護士とともに7回にわたってテレビ朝日側と話し合いを行い、放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。
このため入江氏は2015年12月14日、委員会に申立書を提出、「テレビ的技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びに(新聞の)ラジオ・テレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
申立人はこの中で、実際の面談において申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」を否定しているにもかかわらず、過剰な演出、恣意的な編集がなされ、「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたと主張。また、実際の面談において申立人は犯人の特定につながる具体的な発言は一切していないにもかかわらず、音声を一部ピー音で伏せるなどの過剰な演出、恣意的な編集により、申立人が殺害された長男の発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的な発言を行ったかのように、事実と異なる報道、公正を欠く放送をされたとして、「これらは、悲しみから再生された申立人の人格そのもの、真摯に築いてきた生き方、すなわち人格権としての名誉権、自己決定権を著しく毀損するもの」と訴えている。
さらに申立人は、テレビ朝日が新聞のラジオ・テレビ欄で「被害者実姉と独占対談」「○○を知らないか?『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」と実際にはない発言を本件番組の目玉として番組宣伝を行ったのは、「放送倫理に著しく違反する」と述べている。
これに対しテレビ朝日は2016年1月14日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張した。
またテレビ朝日は、番組では「妹達には恨まれている節はなかったと感じる。経済的なトラブル、金銭トラブル、男女関係みたいなものなど一切無かったですから。」とサファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。さらに、申立人が被害者長男の「発達障害に関連して犯人の特定につながる具体的発言を行ったかのように事実と異なる報道、公正を欠く放送をされた」と述べていることについては、事件現場が世田谷区上祖師谷であることなどの情報と合わせれば、視聴者による誤った推測で「具体的な場所」が「特定」される可能性があったためで、言葉を伏せたのはそのような誤解が起きないようにという配慮であり、「公正を欠く放送」には当たらないと考えていると主張している。
このほかテレビ朝日は、新聞のラジオ・テレビ欄で「『心当たりがある!』遺体現場を見た姉証言」との表記で番組宣伝等を行ったことに関しては、サファリック氏の「(規制音)へ行ったり、そのような接点は考えられますか?」という質問に対し、申立人が「考えられないでもないですね。」と回答した点を挙げ、番組ではこの発言を新聞ラ・テ欄や番組宣伝等に利用するのに際し、「字数制限の制約の中で表現する上での演出上許容範囲であると思料しており、ご指摘のような『放送倫理に著しく違反している』とは考えていない」としている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

6.その他

  • 2月3日に福岡で開かれる地区別意見交換会(九州・沖縄地区)について、事務局から概要を説明した。
  • 1月13日に行われたテレビ愛知への講師派遣について、事務局が概要を報告した。委員会から坂井眞委員長、同局からは関連会社を含め約30人が参加、最近の委員会決定などを題材に活発な意見交換を行った。
  • 次回委員会は年2月16日に開かれる。

以上

第228回放送と人権等権利に関する委員会

第228回 – 2015年12月

出家詐欺報道事案の通知・公表の報告、ストーカー事件再現ドラマ事案の審理、
ストーカー事件映像事案の審理、STAP細胞報道事案の審理、
自転車事故企画事案の審理、専決処分事案の審理対象外決定…など

出家詐欺報道事案の通知・公表について、事務局が概要を報告した。ストーカー事件再現ドラマ事案とストーカー事件映像事案の「委員会決定」案を検討し、STAP細胞報道事案、自転車事故企画事案を審理した。「専決処分報道に対する申立て」を審理要請案件として検討し、審理対象外と判断した。

議事の詳細

日時
2015年12月15日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

「出家詐欺報道に対する申立て」事案に関する「委員会決定」の通知・公表が12月11日に行われ、事務局がその概要を報告した。そのうえで、当該局であるNHKが決定の内容を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された音声データや加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、第3回起草委員会を経て提出された「委員会決定」案が審理された。前回委員会からの変更点などについて起草担当委員が説明し、各委員から意見が述べられた。この結果、1月に第4回起草委員会を開催し、さらに決定案の検討が行われることとなった。

3.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、前の事案と同じフジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、第1回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」案が検討された。各委員から出されたさまざまな意見を踏まえ、1月に第2回起草委員会を開催して、さらに検討を続けることとなった。

4.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では起草担当委員が提出した「論点メモ」に沿って各委員が意見を述べた。次回委員会ではさらに議論を続け、論点の絞り込みと「委員会決定」の方向性に向けて審理を進める予定。

5.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前説明が十分でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
前回の委員会後、申立人の反論書に対するフジテレビの再答弁書が提出され、今月の委員会では事務局が双方の主張をまとめた資料を提出し説明した。次回委員会では論点の整理に向けて審理をすることになった。

6.審理要請案件:「専決処分報道に対する申立て」

茨城県潮来市の市長が繰り返し行った専決処分と随意契約をめぐる報道に対し、前市長から提出された申立書について、審理要請案件として審理入りの可否を検討した結果、審理対象外と判断した。
本件申立ての対象とされたのは、A局が本年3月に報道番組で放送した特集。
申立人は、この報道は、申立人が茨城県潮来市長だった当時、あたかも鹿児島県阿久根市の元市長のように違法に専決処分を繰り返し、かつ特定のコンサルタント会社と随意契約することで施工業者に損害を与えたかのような「事実と異なる内容が放送され、私の名誉は著しく傷つけられ、多くの市民の信頼を失いました」として、A局による謝罪と訂正を求めて申し立てた。
しかしながら、委員会において放送倫理・番組向上機構[BPO]規約第3条(目的)及び放送と人権等権利に関する委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準に照らして検討した結果、BPOの目的や当委員会の任務に鑑み、市長による専決処分、随意契約という公職者による職務執行そのものを対象とした放送部分についての苦情は、当委員会の審理対象として取り扱うべき苦情に含まれないということで委員全員の意見が一致した。
したがって、本件申立てについては、当委員会の審理対象外と判断した。

7.その他

  • 佐村河内守氏が申し立てた「謝罪会見報道」と「大喜利・バラエティー番組」2事案の「委員会決定」の通知・公表が11月17日に行われたが、事務局がその概要と放送対応、新聞報道をまとめた資料を提出した。また、当該局であるTBSテレビとフジテレビから提出された決定を伝える放送の同録DVDを視聴した。
  • 委員会が11月24日に金沢で開催した系列別意見交換会について、事務局から概要を報告した。同意見交換会には、TBS系列の北信越4局から報道・制作担当を中心に20人が、委員会からは坂井眞委員長、林香里委員、二関辰郎委員が出席、約2時間にわたって最近の委員会決定や地元局が直面した事例などについて活発な意見交換が行われた。
  • 12月に委員会が実施した講師派遣について、事務局が報告した。長崎放送には坂井眞委員長、NHK大分放送局には委員会調査役を派遣、局職員らと委員会活動や放送と人権、放送倫理等について意見交換した。
  • 次回委員会は2016年1月19日に開かれる。

以上

第227回放送と人権等権利に関する委員会

第227回 – 2015年11月

謝罪会見事案、大喜利・バラエティー事案の通知・公表報告、
出家詐欺事案の審理、ストーカー事件再現ドラマ事案の審理、
ストーカー事件映像事案の審理、STAP細胞報道事案の審理、
自転車事故企画事案の審理…など

今月の委員会当日に行われた「謝罪会見報道」と「大喜利・バラエティー」の2事案の通知・公表について、事務局が概要を報告した。出家詐欺報道事案の「委員会決定」修正案が大筋で了承され、委員長一任となった。その結果、通知・公表は12月に行われることになった。ストーカー事件再現ドラマ事案の「委員会決定」案を検討し、ストーカー事件映像事案、STAP細胞報道事案、自転車事故企画事案を審理した。

議事の詳細

日時
2015年11月17日(火)午後4時45分~10時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の通知・公表の報告

佐村河内守氏が申し立てた上記2事案の「委員会決定」の通知・公表が、今月の委員会開会前に行われ、事務局がその概要を報告した。

3.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
この日の委員会では、前回委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、決定案は一部表現、字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。
「委員会決定」の通知・公表は12月に行われることになった。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された音声データや加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、11月5日の第2回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」案の審理が行われ、ストーカー事件の背景と取材などについて意見が交わされた。この結果、第3回起草委員会を開催して、さらに検討を重ねることとなった。

5.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、前事案と同じフジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、名誉毀損と放送倫理上の問題にポイントを絞って審理が行われ、その結果、次回委員会に向けて、担当委員が起草作業に入ることとなった。

6.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では事務局がこれまでの双方の主張をまとめた資料を提出、論点を整理するため起草委員が集まって協議することとなった。次回委員会では、起草委員によって整理された論点をもとに審理を進める予定。

7.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前説明が十分でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
今月の委員会では、申立人から反論書が提出されたことを事務局が報告。これを受けて、フジから再答弁書が提出されることになっており、次回12月の委員会で審理を進める。

8.その他

  • 11月24日(火)に金沢で開かれるTBS系列北信越4局との意見交換会について、事務局から概要を説明した。
  • 今後予定される加盟局への講師派遣について事務局から説明した。
  • 次回委員会は12月15日に開催かれる。

以上

第226回放送と人権等権利に関する委員会

第226回 – 2015年10月

ストーカー事件映像事案のヒアリングと審理、出家詐欺報道事案の審理、ストーカー事件再現ドラマ事案の審理、STAP細胞報道事案の審理、自転車事故企画事案の審理…など

ストーカー事件映像事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。出家詐欺報道事案の「委員会決定」修正案を検討し、ストーカー事件再現ドラマ事案の「委員会決定」案を議論した。STAP細胞報道事案を審理し、自転車事故企画事案の審理に入った。

議事の詳細

日時
2015年10月20日(火)午後3時~8時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案のヒアリングと審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今回の委員会では、申立人と被申立人のフジテレビから個別にヒアリングを行い詳しく事情を聴いた。申立人は冒頭陳述で「放送を見ると、自分が警察で見せられたものと同じ映像が流され、自分であることは間違いないと確信した。これだけのことをしたからには退職は仕方ないとは思うが、事実と違う内容の放送をされ、会社の人たちに無視されたり、あからさまに睨みつけられたりするのは、正直辛いものがあった」と訴えた。また、「誰かの指示を受け、共謀して、いじめやいやがらせをした事実はない」と述べた。さらに申立人自身が行なったストーカー行為として放送された実写映像について、「コンビニで被害者の写真は撮っていない。被害者の車を撮っていた。あからさまな尾行、つけ回し、ずっと後ろを走っていたという事実はない」として、被申立人に対し「事実と違う内容の放送があったことと、個人を特定できる放送をしたことを認めてもらえればいい」と主張した。
一方、フジテレビからは編成担当幹部ら4人が出席し、ストーカー事件に関わる申立人の実写映像を放送したことについて、「視聴者の方が信ぴょう性を感じられるように、そういった情報、ないしは実際の映像を用いている。申立人を描き、申立人を基にした内容であるのは違いないが、申立人を特定する内容ではない。あくまで描写の一部というふうにとらえている」と説明。そのうえで、「申立人自身や申立人が運転している車、会社の駐車場などの映像には十分なマスキングをしていると考えているので、同定はできない」と主張した。また、取材協力者らが放送前に周囲に会社のことが放送される旨流布してしたことについて、「事実、流布が行なわれてしまったことを考えると、確かに、流布されるような人物であったことを見抜くことができなかったことは反省すべきだと思うが、予見することはその時点では非常に難しかった」と述べた。さらに、取材で知り得た事実を他言しない旨の承諾書を取材協力者と取り交わしていたことについては、「取材協力者の方々のプライバシーと安全を守るという意図で承諾書を交わす。安全のために不必要な言論は控えた方が良いですよという意味合いで交わしている」等と説明した。
ヒアリング終了後、委員会は論点に沿って双方の主張を整理しながら議論し、次回も審理を続けることになった。

2.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
今回の委員会には第2回起草委員会を経て修正された「委員会決定」案が提出された。結論部分を中心に審理した結果、ほぼ内容がまとまり、今後細部について検討することになった。

3.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された音声データや加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、第1回起草委員会を経て提示された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて起草担当委員が説明を行い、各委員が意見を述べた。そのうえで、11月初旬に第2回起草委員会を開らき、さらに検討を重ねることになった。

4.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
9月の委員会後、申立人から「反論書」が、被申立人から「再答弁書」が提出された。今回の委員会では、事務局が双方の新たな主張を取りまとめた資料を基に説明した。次回委員会では、論点の整理に向けて審理を進める予定。

5.「自転車事故企画に対する申立て」事案の審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。
同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
これに対してフジテレビは、事前の説明が適切でなかった点は申立人にお詫びしたが、「再構成ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない」とし、この点は視聴者も十分に理解できるので、申立人の名誉と信用を侵害したものではないと主張している。
9月の委員会で審理入りが決まったのを受けて、フジテレビから申立書に対する答弁書が提出された。今回の委員会では事務局が双方の主張をまとめた資料を配付して説明した。

6.その他

  • 次回委員会は11月17日に開催かれる。

以上

第225回放送と人権等権利に関する委員会

第225回 – 2015年10月

「謝罪会見報道」事案、「大喜利・バラエティー番組」事案の審理…など

佐村河内守氏が申し立てた「謝罪会見報道」と「大喜利・バラエティー番組」の2事案を集中的に審理するため、ほぼ3年ぶりに臨時委員会を開催した。その結果、両事案の「委員会決定」案を了承し、通知・公表を11月中旬にも行う運びとなった。

議事の詳細

日時
2015年10月13日(火)午後4時~9時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
委員会では、第4回起草委員会での検討を経て修正された「委員会決定」案を審理し、了承された。これにより、「委員会決定」の通知・公表を11月中旬にも行う運びになった。なお、一部の委員は結論が異なる少数意見を書くことになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
本件の「委員会決定」文はこれまでの検討でほぼ固まっていたが、この日の委員会で最終的に了承された。これにより、前項の「謝罪会見報道」事案とあわせて11月中旬にも「委員会決定」の通知・公表を行う運びになった。

3.その他

  • 10月5日に山形で開催された県単位意見交換会について、事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。
  • 本年度中に開催する地区単位意見交換会(九州・沖縄地区)を2月3日に福岡で開催することが決まった。
  • 次回は10月20日に定例委員会を開催する。

以上

第224回放送と人権等権利に関する委員会

第224回 – 2015年9月

自転車事故企画事案の審理入り決定、
ストーカー事件再現ドラマ事案のヒアリングと審理、
ストーカー事件映像事案の審理、佐村河内氏事案2件の審理、
出家詐欺事案の審理、STAP細胞事案の審理…など

自転車事故企画事案を審理要請案件として改めて検討し、審理入りを決めた。ストーカー事件再現ドラマ事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。ストーカー事件映像事案を審理し、佐村河内守氏が申し立てた2事案の「委員会決定」修正案を検討、STAP細胞報道事案の審理に入った。

議事の詳細

日時
2015年9月15日(火)午後4時~10時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.審理要請案件:「自転車事故企画に対する申立て」

上記申立てについて前回に引き続き審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年2月17日にバラエティー番組『カスペ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」と題する企画コーナー。同コーナーでは冒頭、自転車との衝突事故で母親を亡くした東光宏氏が自転車事故の悲惨さを訴えるインタビューが実名で流れた後、「事実のみを集めたリアルストーリー」として、14歳の息子が自転車事故で小学生にケガをさせた家族の体験を描いた再現ドラマを放送した。再現ドラマは、この家族が「被害者」弁護士との示談交渉の末に1500万円の賠償金を払ったが、実はこの小学生は意図的にぶつかってきた「当たり屋」だったという結末だった。
この放送に対し、インタビューを受けた東氏が7月5日付で委員会に申立書を提出。「私に対する事前取材にあたって、このような当たり屋がドラマのメインとして登場することについて、全く説明がなかった」としたうえで、番組冒頭でコメントした申立人についても、「『実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ』との誤解を視聴者に与えかねない状況にあり、私の名誉ないし信用が害され、犯罪被害者としての尊厳が害された」と訴えた。
申立書はまた、「私のインタビュー映像が、交通犯罪被害者および遺族を愚弄し冒涜する低俗な番組の前ふりに利用された」と主張。1500万円の賠償金について、「交通犯罪の被害者が、あたかも非常識な高額の賠償金を請求しているかのような間違った印象を与えかねない」、「本件番組は勝手な推測に基づく虚偽放送に当たる」等として、放送内容の訂正報道と文書による謝罪および訂正・謝罪のホームページ掲載を求めている。
これを受けてフジテレビは7月24日、本件申立てに対する「経緯と見解」書面を委員会に提出し、申立人のインタビューはあくまで当該コーナーの導入部分で、「自転車事故の悲惨さを実例で示し、視聴者の問題意識を高めた上で再構成ドラマに入り込んでいくことを目的」に放送したと主張した。そのうえで、「ドラマは子供の起こした交通事故をテーマとするものであって、母親を自転車事故で亡くされた申立人の事案とは全く類似性がない。すなわち、再構成ドラマと申立人のインタビューの内容となった母親が被害者となった事件に関連性はなく、登場人物を含む設定の内容も類似性が全くない。『申立人があたかも当たり屋である』という受け取り方を視聴者がするとは全く考えていない。」として、番組による申立人の名誉・信用の侵害はないと述べている。
賠償金額については、「免許を必要とせず、手軽に利用できる自転車が時として甚大な被害を与え、利用者が重大な事故の加害者となり得る」ということを強く視聴者に印象付けるため慰謝料やケガの治療費、逸失利益等を加算して設定したもので、「非常識な」金額ではないと主張している。
またフジテレビは、申立人が「当たり屋」メインのドラマについて事前に説明が全くなかったとしていることについて、担当プロデューサーが申立人に台本の提供を申し入れたが、申立人がこれを断ったため、「結果として説明するタイミングを失った」と釈明している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回定例委員会(10月20日)より実質審理に入る。

2.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案のヒアリングと審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求める申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
この日の委員会では、申立人と被申立人のフジテレビから個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
申立人は、「(被害者側のみの)一方的取材で、ひどい内容の放送だった。私がストーカーをしろなんて指導したことはない。私は首謀者でもなんでもない」と述べるとともに、再現ドラマで申立人とみられる女性がストーカー被害者のロッカーに大量のガラス片を入れたことについて、全く事実でないと主張。また番組が「一部再構成というが、一部がどこまでかテレビを見ている人には分からない。会社の人はテレビで放送されたのだから事実であるという認識を持っている。(番組を見た人から)よくあんなことできるなと言われた。未だに挨拶を返してくれない人もいる。辛いし、悔しかった。本当に精神的苦痛を受けた。家族も同じだった」と訴えた。さらに被害者の取材映像や取材協力者から提供された映像にマスキング・音声加工が施されていたことについては、「(駐車場が)会社の人ならあの場所だって分かる」とする一方、事件が本件番組で放送されることを被害者らが事前に社内で流布したことに触れながらも、再現ドラマを見れば「会社の人は全部、私だって分かると思う」と、番組内容だけでも社内では申立人が特定可能だったと主張した。
一方フジテレビからは編成担当幹部ら4人が出席し、番組は「実際の事件を題材にしているが、それ以外の部分は、登場する方々が特定されないように改編している。その部分には常時『イメージ』というテロップを出しており、視聴者の方は認識できる」と説明。申立人らに取材しなかったことについても、被害者の身の安全・プライバシー保護のため「反対取材は不可能と考えていた」と述べた。また、再現ドラマで申立人とみられる女性を事件の"首謀者"としたことについて、「取材協力者から得た証言や取材内容、取材協力者と申立人の会話を録音したICレコーダーを聴いて判断した」、「100%真実をつきとめることがこの番組の目的ではない。取材をした人の証言に基づいて再構成」したと説明、また申立人がガラス片をロッカーに入れたとした根拠を問われ、「(被害者の)証言だけ」と答えた。このほか、被害者らが放送前に番組内容を社内に流布したことについて、「その事実を加味すれば、(申立人らが)特定されることは当然」としながらも、「放送自体によって人物が特定されることはないという認識で、また情報の流布については非常に予見ができないもの」として、「放送上の責任はない」と主張した。
ヒアリング終了後、委員会はその結果を踏まえて審理し、10月に第1回起草委員会を開くことを決めた。

3.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは前事案と同じ、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かる。車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「ストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張する申立書を委員会に提出した。
これに対しフジテレビは「番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、再度、論点の整理と質問項目の精査が行われ、次回定例委員会でヒアリングを行うことを決定した。

4.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では第3回起草委員会を経て一部修正された「委員会決定」案を審理し、今月初めに行われた担当委員による耳鼻咽喉科の医師への聴き取りの結果が報告された。

5.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、これまでの検討で「委員会決定」案はほぼ固まっていることを確認し、前項の「謝罪会見報道に対する申立て」事案と同日に通知・公表を行う方針を決めた。

6.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
この日の委員会では、双方からの書面やヒアリングの結果をもとに第1回起草委員会を経て提示された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて担当委員が説明し、各委員が意見を述べた。今後、第2回起草委員会を開いてさらに修正した決定案をまとめ、次回委員会に諮ることになった。

7.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は、人権侵害、プライバシー侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」として、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
また、論文に掲載されている画像やグラフに関し、「何らの科学的説明もないまま、『7割以上の不正』があったとする強いイメージを視聴者に与える番組構成は、強い意図をもって申立人らを断罪した」と主張。番組が申立人に無断で実験ノートや電子メールの内容を放送したことについては、著作権侵害やプライバシー侵害、通信の秘密に対する侵害行為にあたると訴えている。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と主張した。
さらに、画像やグラフに関する申立人の主張に対して、「専門家が疑義や不自然な点があると指摘した事実を紹介したに過ぎず、NHKの恣意的な評価が含まれている訳でもない」と反論。申立人の実験ノートや電子メールの内容を放送したことについては、「本件番組において紹介することが極めて重要なものである」として、違法な侵害にはあたらないと述べている。
今月の委員会では事務局が双方の主張を取りまとめた資料を説明した。次回委員会では、申立人の「反論書」、被申立人の「再答弁書」の提出を受けて審理を進める予定。

8.その他

  • 10月5日に山形で開催する県単位意見交換会について、坂井眞委員長、市川正司委員長代行、城戸真亜子委員が出席することや、参加局との事前打合せの状況について事務局から報告した。

  • 系列単位意見交換会を11月24日にTBS系列の北信越4局を対象に金沢で開催することになり、事務局から概要を説明した。同意見交換会には、坂井眞委員長、二関辰郎委員、林香里委員が出席する。

  • 本年度中に福岡で開催する地区単位意見交換会(九州・沖縄地区)について、各委員の日程調整の結果、2月上旬に開催する方向で準備に入ることになった。同意見交換会には9人の委員全員のほか、濱田純一BPO理事長が出席する予定。

  • 次回委員会は10月13日に臨時委員会を開催する。10月は20日の定例委員会と合わせ2回開催となる。

以上

第223回放送と人権等権利に関する委員会

第223回 – 2015年8月

出家詐欺事案のヒアリングと審理、
佐村河内氏事案2件の審理、ストーカー事件2事案の審理、
STAP細胞事案の審理入り決定…など

出家詐欺事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。佐村河内守氏が申し立てた2事案の「委員会決定」案を引き続き検討し、また同じ番組を対象にしたストーカー事件関連2事案を審理した。審理要請案件2件を検討し、STAP細胞報道事案の審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2015年8月18日(火)午後3時~10時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員 (林委員は欠席)

1.「出家詐欺報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
この日の委員会では、申立人と被申立人双方からヒアリングを行った。
申立人は代理人弁護士とともに出席した。申立人は「ブローカーを演じてくれと頼まれたのでやった。ドキュメントではなく、再現映像・資料映像だと思った。軽い気持ちでやった。まして、関西ローカルの番組だと聞いたので。それが、全国放送された。手振り、言い回し、高音になる喋り方などで4、5回会った人なら私だと断定できる」。その結果、仕事を辞めざるを得なくなった等述べた。
被申立人のNHKからは当時の番組担当者ら5人が出席した。NHK側は「インタビューをしてブローカーで間違いないと確信した。話の内容で裏付けをとったという認識だ。覆面インタビューをする際は、必ず本人に安心感を持ってもらうためにモニターを見てもらっている。毎回。とりわけ今回は犯罪すれすれ、犯罪なので、服も着替えてもらうなど、プライバシー保護には最高レベルまで十分配慮した」等述べた。
ヒアリング後も審理を行い、担当委員が「委員会決定」文の起草作業に入ることになった。その上で、次回委員会でさらに審理を進める。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会には第2回起草委員会を経て修正された「委員会決定」案が提出された。結論部分を中心に審理したが、ほぼ内容がまとまり、記述等についてさらに検討することになった。

3.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」案を審理した。大きな修正等はなく、今後細部について検討することになった。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。
番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
今月の委員会では、論点の整理と質問項目の精査が行われ、各委員からさまざまな意見が述べられた。次回委員会でヒアリングを行うことを決定した。

5.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは前事案と同じ、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かると思われ、また車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる内容だった。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「放送前に、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張した。
これに対しフジテレビは「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、事務局が申立人の「反論書」とフジテレビ側から提出された「再答弁書」を基に双方の主張を整理して説明、各委員からは論点整理に向けてさまざまな意見が述べられた。

6.審理要請案件:「STAP細胞報道に対する申立て」

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」で、番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏、笹井芳樹氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は、本年7月10日付で番組による人権侵害、プライバシー侵害等を訴える申立書を委員会に提出。その中で本件番組がタイトルで「不正」と表現し、「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と訴え、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
また申立書は、本件放送では論文に多数の画像やグラフが掲載されているが、「何らの科学的説明もないまま、『7割以上の不正』があったとする強いイメージを視聴者に与える番組構成は、強い意図をもって申立人らを断罪した」と主張。さらに番組が申立人の実験ノートの内容を放送したことについて、「本人に無断でその内容を放送した行為は、明白な著作権侵害行為であり、刑事罰にも該当する」と述べている。
このほか申立書は、(1)「申立人と共著者である笹井氏との間で交わされた電子メールの内容が、両者の同意もなく、完全に無断で公開されたことは完全にプライバシーの侵害であり、また、通信の秘密に対する侵害行為」、(2)申立人の理研からの帰途、番組取材班が「違法な暴力取材」を強行して申立人を負傷させた、(3)本件番組放送直後、論文共著者の笹井氏が自殺した。本件番組と自殺との関係性は不明だが、本件番組が引き金になったのではないかという報道もある。「本件番組による申立人らへの人権侵害を推定させる大きな重要事実と考える」――などと指摘、番組が「人権侵害の限りを尽くしたもの」と主張している。
これに対しNHKは8月5日委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「本件番組は、申立人がES細胞を盗み出したなどと一切断定していない」としたうえで、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と反論した。
また、理研の「研究論文に関する調査委員会」はその調査報告書の中で、「小保方氏が細胞増殖曲線実験とDNAメチル化解析において、データのねつ造という不正行為を行ったことを認定した」と端的に述べており、「このように、STAP論文における不正の存在は所与の事実であって、本件番組のタイトルを『調査報告 STAP細胞 不正の深層』とすることに、何らの問題もないと考える」としている。
NHKはさらに、「実際に、7割以上の画像やグラフについて専門家が疑義や不自然な点があると指摘した事実を紹介したに過ぎず、NHKの恣意的な評価が含まれている訳でもない」と指摘。申立人の実験ノートの内容を放送したことについては、「申立人が、実際にどのように実験を行っていたのかを記した実験ノートの内容は、本件番組において紹介することが極めて重要なものであり、著作権法41条に基づき、適法な行為と考える」と主張している。
そのうえでNHKは、(1)申立人と笹井氏の間の電子メールは、笹井氏が、申立人に対し、画像やグラフの作成に関して具体的な指示を出していたことを裏付けるものであり、申立人の実験ノートと同様に、本件番組において紹介することが極めて重要なもので、「違法なプライバシーの侵害にはあたらない」、(2)今回の申立人に対する直接取材は、報道機関として、可能な限り当事者を取材すべきとの考えから行ったもの。また取材場所も、パブリックスペースにおいてコメントを求めたものであり、直接取材を行ったこと自体は問題がなかったと考えている、(3)申立人が指摘するとおり、本件番組と笹井氏の自殺の関係は不明であり、本件の審理において考慮されるものではないと考える――などとして、本件番組は、「申立人の人権を不当に侵害するものではない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

7.審理要請案件:「自転車事故企画に対する申立て」

自転車事故を取り扱った番組に対する申立書について、委員会運営規則に照らして審理事案とする要件を満たしているかどうか検討した。次回委員会で改めて申立書の取り扱いを検討する。

8.その他

  • 次回委員会は9月15日に開かれる。
  • 増加する事案の審理の迅速化を図るため、10月13日に臨時の委員会を開くことになった。これにより10月は20日の定例委員会と合わせ開催が2回となる。

以上

第222回放送と人権等権利に関する委員会

第222回 – 2015年7月

佐村河内氏事案2件の審理
出家詐欺事案、ストーカー事件2事案の審理…など

佐村河内守氏が申し立てた2事案の「委員会決定」案を検討し、出家詐欺事案を審理。また同じ番組を対象にしたストーカー事件再現ドラマとストーカー事件映像の2事案を審理した。

議事の詳細

日時
2015年7月21日(火)午後4時~10時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
前回の委員会後、「委員会決定」文の起草委員会が開かれ、今月の委員会に決定案が示された。委員会では担当委員の説明をもとに判断と結論の部分を中心に検討が行われ、さらに審理を継続することになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
前回の委員会後、「委員会決定」文の起草委員会が開かれ、今月の委員会に決定案が示された。委員会では担当委員の説明をもとに記述等を検討し、さらに審理を重ねることになった。

3.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
前回の委員会後、申立人から「反論書」、被申立人から「再答弁書」が提出された。この日の委員会では、事務局が双方の主張を取りまとめた資料を基に説明し、ヒアリングに向けて起草委員が作成した論点と質問事項案について検討した。その結果、次回委員会で申立人、被申立人双方にヒアリングを実施することになった。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたと訴える申立書を委員会に提出し、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「本件番組を放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
今月の委員会では、申立人から新たに提出された「反論書」と、フジテレビから提出された「再答弁書」を基に、事務局が双方の主張を改めて説明、そのうえで論点の整理に向けて各委員からさまざまな意見が述べられた。

5.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは前事案と同じ、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。
この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが、会社の駐車場であることが会社の人間が見れば分かると思われ、また車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる内容だった。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴える申立書を委員会に提出。また、「番組の放送前に、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、関係会社にばれてしまったので、会社には置いておけないということで退職せざるを得なくなった」と主張した。
これを受けてフジテレビは「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会から審理に入り、事務局が双方の主張を整理して説明、各委員から、論点整理に向けてさまざまな意見が述べられた。

6.その他

  • 県単位意見交換会を10月5日に山形で開催することになり、事務局から概要を説明した。
  • 系列単位意見交換会を11月下旬にTBS系列の北陸信越4局を対象に開催することになり、事務局から概要を説明した。
  • 7月14日に開かれた第10回「BPO事例研究会」について、参加者のアンケート結果などを基に事務局から報告した。
  • 次回委員会は8月18日に開かれる。

以上

第221回放送と人権等権利に関する委員会

第221回 – 2015年6月

佐村河内氏事案2件の審理
出家詐欺事案、ストーカー再現ドラマ事案の審理
審理要請案件の審理入り決定…など

佐村河内守氏が申し立てた2事案の審理を行い、前回審理入りを決定した出家詐欺とストーカー事件再現ドラマの2事案を審理。さらに審理要請案件を検討し、審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2015年6月16日(火)午後4時~9時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では前回の委員会で行ったヒアリングをふまえ、申立人の診断書の内容が正しく伝えられているかどうか、出演者らの発言に問題がなかったかどうかなど、「委員会決定」の方向性に向けて審理した。その結果、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、前回の委員会で行ったヒアリングをふまえ、申立人は一般市民か公人的立場か、大喜利で取り上げて風刺することの当否を中心に「委員会決定」の方向性に向けて審理した。その結果、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

3.「出家詐欺報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
NHKは「収録した映像と音声は、申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
前回委員会で審理入りが決まり、今月の委員会から審理を始めた。被申立人の「答弁書」の提出を受け、事務局が双方の主張を取りまとめた資料を基に説明し、本件事案の論点の整理に向けて審理した。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたと訴える申立書を4月1日付で委員会に提出し、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
これに対しフジテレビは「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「本件番組を放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
この日の委員会から審理に入り、事務局が双方の主張を対比しながら説明し、各委員からさまざまな意見が述べられた。

5.審理要請案件:「ストーカー事件映像に対する申立て」
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が5月1日、番組による人権侵害を訴える申立書を委員会に提出。この中で、「放送上は全て仮名で特定できないようになっていたが、会社の駐車場であることが会社の人間が見れば分かると思われ、また車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易にわかる内容」だったとするとともに、「会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう。特定されてしまった上に内容が事実と大きく異なる」として訂正を求めている。
また申立書は、「番組の放送前にこの事件の関係者と思われる人が具体的にわが社がテレビに取り上げられ、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、また犯罪行為をしたということが関係会社にもばれてしまったので、会社には置いておけないということで退職せざるを得なくなった」と主張している。
これを受けてフジテレビは5月27日に委員会に提出した本申立てに対する「経緯と見解」書面の中で、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、放送によって人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張している。
またフジテレビは、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人自身も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。
尚、本番組については、この会社の契約社員という女性から、再現ドラマ部分では自分が社内イジメの"首謀者"にされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容だったとして、名誉毀損を訴える申立書が委員会に提出され、5月の第220回委員会で審理入りすることが決まっている。

6.その他

  • 放送局現場視察を6月30日に日本テレビ本社で行うことになり、その日程、内容等について事務局が説明した。
  • 10月に開催する県単位意見交換会(山形)の概要を事務局が説明した。
  • 7月14日に開かれる第10回「BPO事例研究会」の概要を事務局が説明した。
  • 次回委員会は7月21日に開かれる。

以上

第220回放送と人権等権利に関する委員会

第220回 – 2015年5月

審理要請案件2件の審理入り決定
佐村河内事案2件のヒアリングと審理…など

審理要請案件3件を検討し、そのうち2件の審理入りを決定し、1件を審理対象外とした。佐村河内守氏が申し立てた2事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。

議事の詳細

日時
2015年5月19日(火)午後2時30分~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.審理要請案件:「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。登場人物、地名等固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工が施されていた。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたと訴える申立書を4月1日付で委員会に提出し、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
申立書によると、「取材は被害者の一方のみ、加害者の調査は一切していない」とされ、取材を受けたとされる被害者らが放送前に、同社での事件が番組で放送されることを社内で言い回っていたという。その結果、放送前にそれが会社内等に知れ渡り、放送により申立人及び家族が精神的ダメージを受けたとしている。
これに対しフジテレビは4月27日、「経緯と見解」書面を委員会に提出し、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組であり、取材した映像・音声・内容を加工や変更を加えることで、本件番組の放送によって人物が特定されないよう配慮しているから、相手方側の取材を行う必要性がない」と主張している。
そのうえで同社は、「本件番組を放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない。また、申立人が自らの名誉が毀損されたとする原因事実は、本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の中で流布されたことにあると考えられ、本件番組の放送による人権侵害があったとは考えられない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

2.審理要請案件:「農協改革報道に対する申立て」~審理対象外

政府が進める農協改革をめぐる報道に対し、全国の農業協同組合等の組織・事業及び経営の指導や、監査等を行うA会から提出された申立書について、審理要請案件として検討し、以下のとおり審理対象外と判断した。
申立ての対象となったのは、B局が本年2月に放送した情報バラエティー番組。
申立ては、「事前に取材もなかったほか、事実と異なる内容が多く、農業協同組合グループに関して悪いイメージを植え付けられ、著しく名誉を傷つけられた」と主張、文書および放送での謝罪を求めた。
これに対し局側は、「番組が取り上げた内容は、『農協改革』についての『検証』と『論評』であり、関係者や専門家への取材に基づいたもの。A会は明確な根拠をほとんど示すことなく、『事実と異なる』として謝罪を求めているのであり、受け入れることはできない」と反論した。
申立てはA会を代表して同会会長名で提出された。
当委員会は、放送により権利の侵害を受けた個人からの苦情申立てを原則としている。
団体からの苦情申立てについては、例外的に「団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるとき」は取り扱うことができることになっている。
A会が提出した資料等によると、2012年度現在、A会の会員である農業協同組合は、正組合員(461万人)、准組合員(536万人)を合わせた総組合員998万人を擁し、全国の農業協同組合数は2015年1月1日現在694組合に達している。A会はこれら全国の農業協同組合等の運営に関する共通の方針を確立してその普及徹底に務めるために相当に分化された組織によって運営されている。A会が行う、行政や全国的な組織との連携・調整等を含む事業には高度の社会性が認められ、さらに、A会会長による定期的な記者会見など、A会が相当程度の情報発信力を備えていることも認められる。
こうした団体としての規模、組織、社会的性格等に鑑み、上記運営規則に照らして、本件申立ては、当委員会が例外的に救済する必要性が高い事案とは認められないとの判断に至った。
このため委員会では、本件申立てについては、上記のとおり、委員会の審理対象外と判断した。

* 委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)1.(6)において、「苦情を申し立てることができる者は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする。ただし、団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。」と定めています。

3.審理要請案件:「出家詐欺報道に対する申立て」~審理入り決定

対象となったのは、NHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えたもので、出家を斡旋する「ブローカー」が出家により名前を変えることを考えていた「多重債務者」の相談を受けるシーンや、その二人のインタビューなどが放送された。二人とも匿名で、映像は肩から下のみ、または顔にボカシが施され、音声も加工されていた。
この放送に対し、番組内で「ブローカー」として紹介された男性が本年4月21日、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出。その中で、「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない」としたうえで、「申立人には、手の形や手の動き、喋り方に特徴があり、申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」と述べた。その結果、2014年末頃から番組ホームページで番組の動画を閲覧した「父親や友人などからは、『お前ブローカーなんてやっているのか!』といった強い叱責がなされた」として、申立人がブローカーではなかったとする訂正放送を求めている。
さらに申立人は、撮影は「再現映像若しくは資料映像との認識で撮影に応じたもの。申立人は上記問題部分がそもそも放送されるのか、放送されるとして、いつ、どの番組で、どのように放送されるのか、といった点について全く説明を受けていない」と主張している。
これに対しNHKは5月14日に委員会に提出した本申立てに対する「経緯と見解」書面の中で、「十分な裏付けのないまま、番組で申立人を『ブローカー』と断定的に伝えたことは適切ではなかった」としながらも、「申立人は『われわれブローカー』と称するなど、ブローカーとして本件番組の取材に応じており、取材班も申立人がブローカーであると信じていた。申立人は、インタビューの中で、仲介する寺や住職の見つけ方、勧誘の仕方、多重債務者を説得する際の言葉の使い方を詳しく語るなど、ブローカーと信じるに足る要素が多くあった」と反論した。
NHKはまた、記者やディレクターが、取材の趣旨や放送予定も収録前に申立人に伝えていたとするとともに、「収録した映像と音声は申立人のプライバシーに配慮して厳重に加工した上で放送に使用しており、視聴者が申立人を特定することは極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」と主張している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

4.「謝罪会見報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
今月の委員会では、申立人とTBSテレビからそれぞれヒアリングを行った。
申立人は2人の代理人弁護士とともに出席した。申立人側は「ABR検査という科学的な検査結果が出ているにもかかわらず、また感音性難聴という診断結果についても正しく放送せず、あたかも手話通訳が不要であるかのような印象を与える放送だった。限りなく健常者に近いという印象を与えたと感じる。ABR検査によって申立人が一定程度の難聴であることは否定できない事実である。取材を受けた医師は、実際に申立人を診断してコメントしているわけではなく、一般論として診断書のデータに整合しない点があると述べているだけである。申立人側の質問状に対して、医師は記者会見で申立人が手話通訳を使ったことは不合理とは思えないと回答している。医師が自信をもって詐聴の可能性を指摘したのであれば、その根拠を回答するはずだが、それはなく、逆にTBS側に不自然とは伝えていないと答えている。申立人が会見で手話通訳を介さずに回答している場面があるとすれば、それは、それ相応の理由がある。放送されたペンを渡す場面は、2本のペンを示されればどっちを使うかという質問の意図は誰にも分かるし、その前のやりとりで申立人は『細いペンを使う』と答えている。申立人と同じような難聴者に対する偏見や誤解を助長する不当な編集である。最初から申立人たたきの番組構成で、あら探しのように不自然な箇所を探してそれだけを取り上げて報道することに公共性・公益性はないと思う」等述べた。
被申立人のTBSテレビからは番組担当者ら4人が出席した。TBS側は「放送の際、日本の聴覚医学会で一番権威ある医師を取材しコメントをもらっているので、放送後確認をしたが、放送内容に間違いないということだった。医師が言っているのは診断書を見た限りにおいて手話通訳が必要ないということだけで、謝罪会見が不自然だったとは我々も聞いていない。医師から診断書のデータでは詐聴の疑いが考えられると言われ番組で伝えた。感音性難聴という言葉は結果的に使わなかったが、『音が歪んで聞こえる』と申立人が言っていることは伝えているし、少なくとも一切聴覚障害がないという放送はしていない。ペンを渡す場面の映像は、色紙にサインする場面とあわせ聴覚障害を前提とすると不自然なやりとりだと判断して使ったもので、その前段にペンに関するやり取りがあったとしても誤った放送にはなっていないと認識している。番組の最後に、聴覚障害者に誤解が及ばないよう「50dB程度の聴力の方でも手話通訳があると助かるということも実際あるそうです」というコメントを、一番伝わりやすい場所として入れた。この番組は情報バラエティーで、タレントがスタジオで視聴者代表として一種の井戸端会議をするという見え方をしているが、あくまでベースは報道で、きちっとした事実の積み重ねの上での演出という形になっている。謝罪会見は申立人が自らの意思で開いたもので、多くの人の注目を集めた点で公共性も高く公益性もあった。真実性は十分で人権侵害には当たらないと考えている」等述べた。

5.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案のヒアリングと審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
今月の委員会では、前項の「謝罪会見報道に対する申立て」事案と併せてヒアリングを行った。
申立人側は「有名で視聴率の高い番組のお題とされ、障害や風貌を茶化され非常に辱められ傷ついた。一音楽家に過ぎないという趣旨で申立人は一般市民だったが、謝罪会見でテレビ出演は本日が最後で、音楽活動からも退くとはっきり表明しているので、より一般市民性が濃くなったと考える。あくまで正当な社会的関心事であれば、大喜利の対象としていいと思うが、聴覚障害を揶揄することが正当な関心事と言えるだろうかというのが一番の問題である。総理大臣や政治の風刺は許容されると思うが、聴覚障害という人の最もセンシティブな部分をお笑いネタにすることは、番組のあり方として許されるべきではない。特に聴覚障害に関して性的な表現を使った回答が集中している点は悪質性が高いと考える。学校で体の障害や特徴を笑いものにするのはまさにいじめの典型的パターンだと思うが、テレビの人気番組で同じようなことをすると、子どもたちに与える影響はすごく大きい」等述べた。
フジテレビはバラエティー番組の制作責任者ら6人が出席した。フジ側は「申立人は記者会見を開いて確かに一回謝罪したが、社会的には必ずしも納得が得られず、いろいろな批判の対象になることは仕方がないと考える。そういう意味で公人的立場にあったと理解している。風刺による正当な批判表現は人権を侵害しないとか公序良俗に反しない等の一定の条件で認められるべきであり、一連の騒動のイメージを利用し風刺による批判表現を狙いとしてお題を設定することは問題ないと考える。回答としては、正当な批判に主眼をおいた回答と、そうではない回答の多分2種類あると思うが、全体を見渡せば正当な批判の中に入っていると判断している。申立人は社会的弱者ではなく、社会的弱者を批判しているわけではないので、いじめの助長とは考えていない。今回の事案が問題とされると、テレビのお笑いのジャンルから一つの表現手段が奪われかねず、公人的立場の人の不正に対する風刺による正当な批判が許されないことにつながると危惧している」等述べた。

6.その他

  • 今年度中に予定している放送局現場視察に関し、事務局から日程等について説明した。
  • 次回委員会は6月16日に開かれる。

以上

第219回放送と人権等権利に関する委員会

第219回 – 2015年4月

散骨場計画事案の対応報告
大阪府議事案通知・公表の報告
佐村河内事案2件の審理…など

散骨場計画事案で、静岡放送が提出した対応報告を検討し、了承した。また大阪府議事案(TBSラジオ)の通知・公表の模様を事務局から報告。佐村河内守氏が申し立てた2事案について、ヒアリングの論点と質問事項を議論した。

議事の詳細

日時
2015年4月21日(火)午後3時00分~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

4月1日に就任した坂井委員長の下での初の委員会となり、冒頭、新委員長による委員長代行の指名が行われた。坂井委員長は奥武則委員と市川委員を委員長代行に指名し、二人ともこれを受諾した。
引き続き報道機関による資料用撮影が行われ、テレビ・新聞各社から9社が取材に訪れた。

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の対応報告

2015年1月16日に通知・公表された「委員会決定第53号」に対し、静岡放送(SBS)から局としての対応と取り組みをまとめた報告書が4月10日付で提出された。この日の委員会で報告書の内容が検討され、了承された。

2.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の通知・公表

4月14日に行われた本事案に関する「委員会決定」の通知・公表について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。また、当該局であるTBSラジオ&コミュニケーションズが委員会決定について報じた当日の番組の録音と、TBSテレビが放送した番組同録DVDを視聴した。 【詳細はこちら】

3.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて本件事案の論点と申立人と被申立人への質問事項を議論した。論点としては、本件放送が伝えた事実は何か、本件放送の公共性・公益目的をどのように考えるか等を検討した。

4.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて本件事案の論点と申立人と被申立人への質問事項を議論した。論点では、申立人を「お題」で取り上げることの公共性やバラエティー番組の公共性についてどう考えるか等を検討した。

5.その他

  • 放送人権委員会の2014年度中の「苦情対応状況」について、事務局が資料をもとに報告した。同年度中、当事者からの苦情申立てが18件あり、そのうち審理入りしたのが5件(うち審理入り後取下げが1件)、委員会決定の通知・公表が1件あった。また仲介・斡旋による解決が6件あった。

  • 今年度中に予定している放送局現場視察について、各委員の日程調整をした。

  • 次回委員会は5月19日に開かれる。。

以上