第154回 放送倫理検証委員会

第154回–2020年11月

データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビのニュース番組を審議

第154回放送倫理検証委員会は11月13日に開催された。
委員会が8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見について、当該放送局から具体的な改善策を含む取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
秋田放送または山口放送がそれぞれ制作放送した弁護士法人1社提供のローカル単発番組に関する討議を踏まえ、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」を10月30日にBPOのウェブサイトで公表したことについて報告があった。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させて欠員補填したとして審議入りした、フジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、担当委員から意見書の再修正案が示され意見交換を行った。
データの一部が架空入力された世論調査結果を基にした放送が合計18回にわたり行われたとして審議入りしたフジテレビのニュース番組について、担当委員から意見書の原案が示され、意見交換を行った。

1. TBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見への対応報告を了承

8月4日に通知・公表したTBSテレビ『クレイジージャーニー』「爬虫類ハンター」企画に関する意見(委員会決定 第37号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の社内周知を行った上で、バラエティ部門の全プロデューサーを対象に書面によるアンケートを行い、それを読み込むことで互いの現状認識や危機感を共有したこと、レギュラーのバラエティ番組ごとに「演出講座」を開いて「許される演出」「許されない演出」とは何かについて意見交換を行い、それぞれの番組が許容できるラインはどこまでかを改めて確認し共有したこと、また、再発防止への取り組みとして、各バラエティ番組に新たにチーフプロデューサー制を導入し、複眼でのチェックを行うようにしたことなどが記されている。
担当委員からは、「『演出講座』は効果的で、良い素材として当該番組担当者以外にも考えてもらい、率直な意見が出ている」ことなどが報告された。委員からは、「アンケート内容は詳細で役に立つと思う。危険の芽は、どこの放送局でも共通しているので、この報告書で今回のような問題が解消していくことを期待したい」「最近のバラエティ番組に関する意見書を通じて、構造的問題が共通していることが窺われるので、当該局に限らず、改めて何らかの形で放送界全体に見解を示すよう検討することが望ましい」などの意見が出され、適切な対応がなされているとして、委員会として報告を了承し、公表することにした。
TBSテレビの対応報告書は、こちら。

2.「番組内容が広告放送と誤解される問題について」と題する委員長談話について報告

10月の第153回委員会において、秋田放送が制作放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』及び山口放送が制作放送し、秋田放送が山口放送から購入して放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』について、放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至ったことを議事概要に掲載した。
また、番組内容が広告放送と誤解される問題に関し、10月30日に委員長談話としてBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、神田委員長から報告がなされ、事務局からは秋田放送と山口放送の議事概要掲載後の対応などが説明された。

3. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について審議

フジテレビは4月3日、クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」と、番組ホームページ上で公表した。
5月の委員会において、レギュラー番組として放送された第1回(2018年10月20日放送)から第25回(2019年10月26日放送)までについて、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、前回の委員会で議論された意見書の修正案を踏まえて担当委員が作成した再修正案が提出され、それに基づいて意見交換を行った。次回は再度修正案が示される予定である。

4. データの一部が架空入力された世論調査結果を放送したフジテレビの一連のニュース番組について審議

フジテレビは、6月19日、昨年5月から今年5月まで14回にわたり合同で行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったため、調査結果と関連する合計18回の放送を取り消し、世論調査は確実な調査方法が確認できるまで休止すると発表した。
フジテレビの報告書によれば、調査を委託した会社の再委託先の会社の社員が、全サンプルの約12.9%に当たる1886サンプルについて、実際には電話をしていないのにもかかわらず、架電済のサンプルの属性と回答内容の一部を変えた架空データを作成したとしている。フジテレビは架空のデータを含む誤った世論調査結果を放送していた。
8月の委員会において、誤った世論調査の結果が合計18回にわたり放送されたこと、当該局が架空データの作成が行われた調査会社への再委託の経緯自体を把握していなかったなどのチェック体制の不備等を踏まえ、上記の合計18回の放送について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。
今回の委員会では、報告書と、9月末から10月初旬にかけて当該局の関係者に対して実施したヒアリングに基づき担当委員が作成した意見書の原案が示され、意見交換を行った。次回は修正案が提出される予定である。

以上

第286回放送と人権等権利に関する委員会

第286回 – 2020年11月

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理、ヒアリング実施を決定…など

議事の詳細

日時
2020年11月17日(火)午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理

フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019 - 2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして、人権侵害があったと申し立てた。これに対してフジテレビは、社内調査によって「人権侵害は認められない」と反論している。
今委員会では、双方から所定の書面がすべて提出されたのを受けて、論点を整理し、ヒアリングのための質問項目を絞り込み、次回委員会の際にヒアリングを行うことを決めた。ただ、当事者の女性が亡くなっているため、番組制作時の様子や放送前後の女性の状況を知る人物にも直接事情を聴くことができるよう、申立人、被申立人に協力を要請することになった。

2. その他

  • 委員会決定第75号「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」に関して、11月16日に行った通知公表について報告があった。

以上

2020年度 第75号

「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」
に関する委員会決定

2020年11月16日 放送局:札幌テレビ放送

見解:問題なし
札幌テレビは2019年4月26日の『どさんこワイド179』で、札幌市内に住む男性が「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づき、一時金を申請する模様を伝えた。
男性は札幌テレビの記者の働きかけで不本意ながら申請をし、これが報道されたことで名誉が毀損された等として、札幌テレビに謝罪と訂正を求めて申立書を提出した。
札幌テレビは、申立人に申請を働きかけたことはなく、取材と報道は公正なものだと反論していた。
委員会は、審理の結果、人権侵害の問題はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。

【決定の概要】

 札幌テレビは、2019年4月26日(金)夕方のニュース『どさんこワイド179』において、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という)に基づく北海道初の一時金支給申請者として、申立人による申請の模様を伝えた(以下「本件放送」という)。
 申立人は、本件放送について、一時金申請を希望していなかった申立人に対し、札幌テレビのA記者が申請するよう働きかけた結果、不本意な申請をすることになり、これを広く報道されたことで名誉が毀損されたなどと人権侵害および放送倫理上の問題があったと主張して、本件申立てを行った。一方、札幌テレビは、信頼関係があったからこそ可能となった放送であり、取材と報道は公正なものと反論した。委員会は、審理のうえ、名誉毀損等の人権侵害はなく、放送倫理上の問題も認められないと判断した。
 申立人は、旧優生保護法に基づいてかつて強制不妊手術を受けた被害者として、国家賠償を求める旧優生保護法被害者訴訟を提起している原告の一人である。
 まず、名誉毀損について、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とすれば、本件放送が報じたのは、新たに成立した一時金支給法に基づいて申立人が申請したという合法的な行為の紹介であり、これによって申立人の社会的評価は低下しない。また、本件放送は、申立人の複雑な心境や悩みまで浮き彫りにし、国に対する批判的なナレーションもまじえるなど申立人のような被害者の立場に寄り添った視点で構成されたものであって、申立人が一時金支給法の内容について批判的見解を有していたことを知る視聴者の観点を前提として検討した場合であっても、やはり社会的評価を低下させるものではない。よって、本件放送による名誉毀損は成立しない。
 次に、放送倫理上の問題について検討した。仮に、報道機関として報道したいと考える内容にあわせるよう事実を歪めたり、本来であれば存在しなかった事実を作出したりすることがあれば、問題がある。本件に即せば、当初の取材意図に固執するあまり、申立人に自己の意思に反して一時金申請を行わせるようA記者が働きかけた事情がもしもあれば、正当な取材活動を逸脱したものとして放送倫理上問題が生じる。また、その際、国家賠償請求訴訟との関連で一時金申請に伴う利害得失について訴訟弁護団の助言を受ける機会を申立人から奪うような言動がA記者にあったとすれば、放送倫理上の問題にかかわるだろう。しかし、文書とヒアリングにおける双方の主張を踏まえると、申立人による一時金申請は、申請が時期的に可能になったことをA記者から伝えられたことを契機としているものの、A記者との電話の後に申立人自ら北海道庁に電話し担当者から一時金支給法と裁判は関係ないとの説明を受けたことを理由として、一時金申請をする意思を抱いたと考えられる。この間A記者が、申立人が弁護団に相談するのを妨げる言動なども認められない。電話翌日の同行取材が決まったのも申立人の方からA記者に電話をかけたことを契機としている。また、申立人は、本件放送によって報じられた一時金申請の後、同年5月に申請を一旦取り下げたものの、2020年2月には、弁護団の助けを借りて再び申請をしている。したがって、これらの事実経過に照らすならば、申立人の意思に反して一時金申請を行わせるようA記者が働きかけて翻意させたとか、訴訟弁護団から助言を受ける機会を奪ったとか、それ以外にも事実を歪めたりありもしない事実を作出したりしたと評価すべき行き過ぎた取材があったとまでは言えないと委員会は判断する。
 よって、放送倫理上の問題も認められない。

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2020年11月16日 第75号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第75号

申立人
札幌市在住の男性
被申立人
札幌テレビ放送株式会社
苦情の対象となった番組
『どさんこワイド179』
放送日時
2019年4月26日(金)
午後3時48分~午後7時00分のうち午後6時54分から約2分間(ローカル)

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.本件放送の内容
  • 3.論点

II.委員会の判断

  • 1.背景となる事情
  • 2.人権侵害の有無
  • 3.放送倫理上の問題

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯と審理経過

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2020年11月16日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2020年11月16日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時から千代田放送会館ホールで公表の記者会見が行われた。
詳細はこちら。

第227回 放送と青少年に関する委員会

第227回-2020年10月

視聴者からの意見について…など

2020年10月27日、第227回青少年委員会をBPO第2会議室で開催し、7人の委員全員が出席しました。
委員会では、まず9月16日から10月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
夜のバラエティー番組において、控室に置かれた手指消毒ボトルから50℃に熱せられたゴマ油が出てくるという芸人相手のドッキリ企画について、「子どもがマネをしたら危ない」「中高生が身近な消毒液を他のものに入れかえたらどうする」などの意見が寄せられました。これについて委員からは、「子どもがマネをしないだろうが、置いてあるものに対して不信感を感じる子どもがいないとも限らない」「“専門家の指導のもと行っている”という表示があるが、具合的にどのような指導なのか気になる」「真面目にコロナに世界中が立ち向かっているときに消毒液を笑いのネタにするのは抵抗感がある」などの意見が出され、次回委員会で「討論」することになりました。
10月の中高生モニターのリポートのテーマは「最近見たドラマについて」でした。26人から報告がありました。
モニターからは、裏社会に伝説を残した極道が、足を洗って専業主夫になって大奮闘するコメディドラマについて、「一人一人のキャラクターを目立たせながら毎回すっきりとした終わりを迎えているので非常に分かりやすく視聴しやすいドラマになっていると思います。極道の世界のシーンもきちんとあるので主夫だけではない主人公の魅力が表現されていると思います。特に効果音がかみ合っているので、お話をより伝わりやすいものにしていると思います。テロップをもっと使ってもコメディー感は減少しないと思います」、資産家の遺産相続をめぐるミステリードラマについて、「私は本を読んでから実写映画やドラマを見ます。ドラマと本では違った面白さがあり、2倍面白く感じられます。最近若者の活字離れが進んでいると聞きます。私は本が原作のドラマや映画を作ることで、本を読む人が増えると思います」、薬剤師を主人公にした医療ドラマについて、「私はこのドラマでいつも感動するシーンがあります。それは最初に主人公のナレーションで入院している患者さんがオープニングソングとともに紹介されていくシーンです。このような始まり方をするドラマを今まで見たことがなかったので新鮮に感じ、これからドラマが始まるのだなという高揚感も高まってきます」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は11月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2020年10月27日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第2会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

夜のバラエティー番組で、新型コロナ対策の手指消毒用ボトルに50℃以上に熱した油を入れ、それを知らずに使用したタレントが熱さに驚き、さらにそのボトルが爆発しタレントが油まみれになるというドッキリ企画に対して、「子どもが見て消毒液は怖いと思うかもしれない。“新しい生活様式”をこのような危険な企画に使うのは問題だ」「中高生などが身近にある消毒液を他の物に入れ替え、違った被害が出たらどうする」「専門家の指導のもと行っているとテロップが出たが、あまりに危険。子どもがマネをしたりイジメに使おうと思ったら恐ろしい」といった意見が寄せられました。
これに対して委員からは、「消毒液を笑いの道具に使ったのは良くないと思う。真面目にコロナに世界中が立ち向かっているときに笑いのネタにするのは抵抗感がある」「危なく見える演出のときに“専門家の指導”という表示を入れているが、どのような専門家なのか。具体的にどのような指導を受けているのか表記してもよいのではないか」「子どもがマネをしないだろうが、置いてあるものに対して不信感を感じる子がいないとも限らない」「見た子どもにボトルから何か熱いものが出たという記憶が残ったとすると、子どもによっては怖がるかもしれない」などの意見が出されました。
この件については、次回委員会で、全委員が番組を視聴し、「討論」することになりました。

中高生モニター報告について

33人の中高生モニターにお願いした10月のテーマは、「最近見たドラマについて」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全部で27人から報告がありました。
「最近見たドラマについて」で複数のモニターから感想が寄せられたのは4番組でした。『極主夫道』(読売テレビ/日本テレビ)を4人が、『NHK連続テレビ小説「エール」』(NHK総合)と『日曜劇場「半沢直樹」』(TBSテレビ)、『ルパンの娘』(フジテレビ)をそれぞれ3人が、『35歳の少女』(日本テレビ)と『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)をそれぞれ2人が取り上げていました。それ以外のモニターは異なる番組について記述し、全部で16番組について報告がありました。
「自由記述」では、放送局に対し、「ドラマのスピンオフが有料配信されることに疑問を持っている」「CM前後の映像が同じでしつこすぎると感じることがある」「番組改編で放送時間などが変わる場合にはもっとアピールしてほしい」などの意見や要望がありました。また、「番組の個性をどう出すかが大事だと思う」という声も寄せられました。
今月は、新型コロナウイルスに関して記述したのは3人でした。そして、芸能人の自殺報道について書いたモニターも2人いました。
「青少年へのおすすめ番組」では、複数のモニターから感想が寄せられたのは5番組でした。『ダーウィンが来た!「敵か味方か?謎の巨大ゾウ」』(NHK総合)を6人が、『アメトーーク!3時間SP』(テレビ朝日)を4人が、『世界一受けたい授業 2時間スペシャル』(日本テレビ)を3人が、『ミライ☆モンスター』(フジテレビ)と『出川哲朗のちょっと電動キックボードで』(テレビ東京)をそれぞれ2人が取り上げていました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『極主夫道』(読売テレビ)もう少しテロップ多用してもいいのではないかという意見があって、とても現代的な印象を受けた。

    • 『ルパンの娘』(フジテレビ)新型コロナウイルスによる新しい生活様式が描かれていて、登場人物の「自粛疲れだな」などのセリフがとても笑えた、と書いたモニターがいた。ある種の共感を覚え、自分の生きる現実の世界でのつらさがドラマによって少し癒やされたのだろうという印象を受けた。

    • 『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)「医療ドラマは暗くなりがちだが、このドラマは明るい気分で見ることができた」と感想を寄せたモニターに共感した。明るい雰囲気の中で、毎回2人ほどの患者さんのドラマを描き、作り切ったという点で、よくできたドラマだったと思う。

    • 『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)漫画家になることを夢見て来日したミャンマーからの留学生が主人公であるこのドラマを見て、ミャンマーの言葉や文化を知ることができるところが面白いと感じてくれたモニターがいた。ミャンマーの留学生の視点で見たら日本がどう見えるかということも考える機会になったようで、興味深く感想を読んだ。

    • 新型コロナウイルスの影響を受け続ける世の中を反映して、コメディー的な仕掛けが、多くのモニターにとても好意的に受け入れられていると感じた。

    • 原作のあるドラマは必ず原作を読んでから見るというモニターが、「ドラマには原作に書かれていないことも描かれるので、ドラマと本とは違った面白さを感じて2倍楽しんでいる」と書いていた。確かに、原作で感じた世界とドラマの世界にはギャップがある。必ず原作を読んでドラマに挑む姿勢、すごいと思った。

    • 最近のドラマの中では様々な職業や職場が描かれている。もしかしたらドラマと現実は少し異なることもあるかもしれないが、子どもたちがいろいろな職業について知るという意味ではそのようなドラマを作ることが大事で、制作者は面白いところに目をつけたという気がしている。

    • 「現実はそうではないけど、そうなるといいな」という内容をドラマで描くことによって、人々の気持ちが変化して現実が少しずつ変わっていく。ドラマはそんな力を持ちうるのではないかと思う。

  • 【自由記述】

    • CM前と明けで内容を繰り返すことについて、「時間稼ぎのような気がしてらない」という意見が来ていた。放送局からすると、ある意味の視聴者サービスで途中から見ても内容が分かるようにという配慮なのだが、視聴者からすると、それが時間稼ぎではないかと思うことがある。だからこそ、このモニターの意見は1つの問題提起であり、放送局には、CM前と明けで本当に内容を繰り返すことがいいのか否かをきちんと検証してもらいたい。

    • 新型コロナウイルスに関して、「現在の1日の感染者数は学校が休校していたころよりも多いのに報道は少なくなっていて、危機感が薄れてきていると感じる」と言うモニターがいて鋭い指摘だと感じた。再放送でもいいから、せめて感染予防の呼びかけを続けるなどの必要があるのではないかという提案、放送局に伝えたい。

    • 注射の映像を流すのは控えてほしいという要望があった。日本の報道はいろいろと、かなり配慮されているが、注射のシーンが気になる人も、気にならない人もいるという中で、放送はどうあるべきかという意見は、興味深い。少数ではあるが、注射の映像を見ただけで意識をなくす人もいる。マイノリティをどう守るか。難しいテーマだが、考えなければいけない。

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ミライ☆モンスター』(フジテレビ)を視聴したモニターが、「今のことだけではなくて未来のことを展望したり、昔を振り返ったりするようなところがメディアとしての意義だろう」という感想を寄せていた。面白い意見だと思い、興味深く感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『極主夫道』(読売テレビ)コント的な要素とキャラ濃い目のキャストで家族と笑いながら見ました。まず、ドラマを見て思ったのは、「母に感謝しよう」ということです。主人公の龍が「主夫(婦)は誰よりも早く起きて、家事して、子どもの世話をして、気づけば深夜0時や」と言ったとき、母のありがたみを実感しました。母は見えないところでたくさんのことをしてくれていて、とても感謝します。(宮城・中学1年・女子)

    • 『極主夫道』(読売テレビ)1人1人のキャラを目立たせながら毎回すっきりとした終わりを迎えているので非常に分かりやすく視聴しやすいドラマになっていると思います。極道の世界のシーンもきちんとあるので主夫だけではない主人公の魅力が表現されていると思います。特に効果音がかみ合っているので、お話をより伝わりやすいものにしていると思います。テロップをもっと使ってもコメディー感は減少しないと思います。(埼玉・中学2年・女子)

    • 『極主夫道』(読売テレビ)原作の漫画でストーリーを読んでいて気になっていた物語が実写化したと聞き、このドラマを視聴しました。近所間のやり取りに「そこにもし元ヤクザの専業主夫がいたら」という普通は遭遇することのない情景がプラスされた特殊な空気がうまく表現されていて、とてもユニークでほかの作品にはない面白さだと思いました。家の外では強い龍が妻の前では弱いなど現代社会のあるあるのような風景も盛り込まれていて思わずクスッと笑ってしまうシーンも多々ありました。また、ところどころに豆知識がちりばめられていて、ケチャップの付いたTシャツのシミを重曹を使って落としていく方法や、タンスの隙間などに入った取りづらいほこりを取る方法など日常の生活でも役立つ情報も組み込まれていてとてもためになることが多くありました。これからどんなストーリーや豆知識が出てくるのか見るほどに楽しみになってくる作品だと感じました。(茨城・高校3年・男子)

    • 『NHK連続テレビ小説「エール」』(NHK総合)毎日楽しみに視聴していますが、ストーリーもついに終戦を迎え、人々に心の変化が表れ、描かれるようになってきました。終戦を機に我に返り、戦争の後悔をする様は、感慨深いものがありました。人の後悔・過ちというものは、視聴者に強く印象を残すものだと思いました。また、戦争によって家々が倒壊したシーンでは、ヒロインのお母さんの歌うシーンがありましたが、歌を用いることによって悲しみが一層伝わってきて、言葉以上に、歌の力に圧倒されました。音楽の力の大きさが伝わってきました。現在のところでは、主人公祐一は戦後まだ音楽家として立ち直れず、音楽との関係を断とうとしています。そこで今後、どのような人が祐一に声をかけ、前を向かせてくれるのか展開が楽しみです。後悔の後に、自分は何ができるのかを考え、行動するところが、ドラマとしても山場だと思うので、それを踏まえ今後も視聴していきたいと思います。(東京・高校2年・女子)

    • 『ルパンの娘』(フジテレビ)面白かったのは、ドラマの中で、いつもだったら家族みんなで泥棒に入るのに、コロナの影響を受けて、父親だけが泥棒に入り、家族はその様子をリモートで見て参加するという場面です。ドラマの世界でも、コロナの現状が反映されていて、母親が「リモートで泥棒に参加なんてしたくないわ」「一体、いつまで自粛していたらいいのよ」とか、祖母が「自粛疲れだな」とか、父親が「自粛明けにふさわしいお宝か」とか言うセリフがあって、とっても笑えました。(長崎・中学1年・女子)

    • 『ルパンの娘』(フジテレビ)私は内容を全然知らなかったのでコメディーものと知らず、始めからネタのオンパレードというような感じで、いろいろなところにツッコミ要素があり、思わず1つ1つ突っ込んでしまいました。時事ネタや分かりやすいネタがあったり、細かいネタも言葉尻にクセが強かったり、挙げきれないほどたくさん詰まっていました。一緒に見ていた母と、これが何のネタだと見つけ合うのも楽しかったです。(千葉・高校1年・女子)

    • 『日曜劇場「半沢直樹」』(TBSテレビ)実際の日本でもこのような事が起きているのではないか、日本の裏世界を風刺しているのではないかと思った。半沢直樹には、自分が出向や解雇されるかもしれないという思いに負けず、悪いことは悪いと訴えられる力があり、すごいと思った。現実世界にも半沢のような人が必要だと思った。政治や証券など、難しいことが多い内容だったが、歌舞伎役者が多く出演していて、歌舞伎の技法を取り入れた演技や、顔芸、面白い台詞などが多く、飽きずに毎週楽しく見ることができた。(長野・中学2年・男子)

    • 『日曜劇場「半沢直樹」』(TBSテレビ)学校の先生が見ているというので見たらすごく面白かった。銀行員として筋を通す半沢がかっこいい。自分もこのような人になれたらいいなと思った。本当にこんな理不尽なことが行われているのか分からないけど、どんな場所でも半沢のように筋を通すなどのモットーを持ちたい。(東京・高校1年・女子)

    • 『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)薬剤師というお仕事がどのような仕事か興味を持ったのでこのドラマを見始めました。このようにドラマから職業を知れることはいいと思います。(岐阜・中学2年・女子)

    • 『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)私はこのドラマでいつも感動するシーンがあります。それは最初に主人公のナレーションで入院している患者さんがオープニングソングとともに紹介されていくシーンです。このような始まり方をするドラマを今まで見たことがなかったので新鮮に感じ、これからドラマが始まるのだなという高揚感も高まっていきます。医療系のドラマはどうしても重くなってしまいがちですが、このドラマは命の大切さを伝えながらも明るい気分で見ることができたように思います。なぜかを考えてみたところ、登場人物のキャラクターに理由があるように思いました。視聴者が親しみを感じられるキャラクターとドラマの内容とのバランスが良いのだと思いました。(東京・高校1年・女子)

    • 『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)ミャンマーの言葉や文化を知ることができる部分がたくさんあって面白いです。主人公がひったくりにあったり、コンビニで立ち読みしている人を見たりして、日本に来る以前に抱いていたイメージとの差に落ち込む場面や「自分の国の良いところは自分で見つけろ」というセリフにハッとさせられました。(宮城・高校3年・女子)

    • 『日曜劇場「危険なビーナス」』(TBSテレビ)私は本を読んでから実写映画やドラマを見ます。ドラマと本では違った面白さがあり、2倍面白く感じられます。最近若者の活字離れが進んでいると聞きます。私は本が原作のドラマや映画を作ることで、本を読む人が増えると思います。(岡山・中学2年・女子)

    • 『火曜ドラマ「この恋あたためますか」』(TBSテレビ)最近のドラマや映画を見ていて感じるのが、コメディー要素が増えてきているということだ。このドラマも面白い掛け合いがあったり、おかしな行動をしたり、思わず笑ってしまう仕掛けが盛りだくさんだった。今の時代は見ていてつらいなー、いやだなーと思う内容よりもコメディーが多く、笑いが多い作品が求められていると感じた。今の世の中はコロナなどにより、大声を出して笑う機会が減ってしまっているように感じる。だからこそ、家の中で大声を出して笑いたいと思うのではないだろうか。また、この作品を見ていて仕事と関連付けている内容のドラマが増えているとも感じた。こうした背景にはキャリア教育の推進があるのだろうか。このドラマもコンビニ運営のために働く、商品を開発する人や、実際に作っている人など多くの人たちの姿が描写されている。これらをみて、僕が「これはうまい」だの「ちょっと高い」だの言っているコンビニの商品たちはこんなにたくさんの人が関わっているのだと知ることができた。(群馬・中学3年・男子)

    • 『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ)今も収束のめどが立たない新型コロナに関連した連続ドラマは私が知る限りは初めてなので、新鮮な気持ちで視聴しました。「テレワーク」「ソーシャルディスタンス」など、コロナ禍で生まれた新しい生活様式の場面も多く取り入れられ、とても共感・親近感がわきました。主人公は身の回りの男性たちを食べ物に例えるのですが、その表現の仕方が独特で単純に面白かったです。放送では、その男性たちの周りに文字で表示させて、その演出も面白さを引き立てていました。主人公が「産業医」というところから、感染予防に関する豆知識(専門家監修の元)など、ちょっとしたミニコーナーなども設けると、視聴者の注目も浴びやすいかなとも思いました。(熊本・高校2年・男子)

    • 『相棒season19』(テレビ朝日)今作で19作品目で昔から人気のあるドラマだと思いました。みんな個性が強く、主役に負けない癖を持っていて魅力的です。主人公の右京さんのとてもうまい紅茶の注ぎ方や特命係のおなじみの名前の木札が昔から変わらずあってとてもなじみ深いと思いました。(秋田・中学2年・男子)

    • 『24 JAPAN』(テレビ朝日)1話が1時間、24話で1日を作っているドラマで、視聴している時間と物語の時間が一致しているので見ていてとても緊張感を感じさせるドラマだった。1話完結のドラマとは全く違う、全話つなげないと最後まで分からないドラマも面白いなと思った。(東京・高校1年・男子)

    • 『ドラマパラビ「だから私はメイクする」』(テレビ東京)もともと原作を知っていたので見始めました。原作を知っているとき、原作のイメージと違うと見るのを断念してしまうのですが、この作品は原作のキラキラした感じを残しつつ現実味をより持たせているのでとても見やすかったです。また、この作品はオムニバス形式で1話ごとに主人公やストーリーが変わるのでどの回から見ても楽しめることも魅力の1つだと思いました。オムニバス形式の作品は1話で完結してしまうので尾を引かないきれいな形で終われるかが重要だと思うのですが、きれいにまとまって終わっていたので後味も良かったです。(愛知・高校1年・女子)

  • 【自由記述】

    • 東京オリンピックが、来年に延期になっていますが、そのころに日本が落ち着いていたとしても、外国はまだ第2波とか来ているので、どうなるのだろうと気になります。テレビでオリンピックの様子が放送されるのが楽しみですが、どうなるのかな…早く、コロナが終息して、いつもの生活が来てほしいです。(長崎・中学1年・女子)

    • ドッキリなどで事故物件や幽霊など、午後6時から10時の時間帯に怖いものはテレビで流さないでほしいです。(山形・中学2年・女子)

    • 新型コロナウイルスについて。現在の1日の感染者数は、学校が休校していた頃よりも多いが、テレビではあまり報道されておらず、危機感が薄れてきていると感じる。せめて感染予防の呼びかけを続けるなどする必要があると思う。(長野・中学2年・男子)

    • ニュースなどで注射の映像を流すのは少し控えてほしいと思いました。注射の映像は人によっては不快に感じる人もいると思います。注射の映像以外にも代用できる映像はないのかなと思いました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 10月になり、番組が改編されています。ニュース番組が延長されたり、人気バラエティー番組がなくなってしまったり、深夜番組が強化されたり。番組が終わってしまうと寂しく感じますが、仕方ないことなので、視聴者も新しい番組編成に慣れていきたいと思います。そして、番組側も放送時間が変わることをもっとアピールしてもらいたいと思います。(愛知・中学2年・女子)

    • 最近のドラマはスピンオフを有料のアプリで配信していて、時によってはそのスピンオフが本編でのカギを握る場合もあって、有料のスピンオフを見ている人と見ていない人との差が出てしまうのではないかと思います。なぜ最近有料配信のスピンオフが増えたのでしょうか。(東京・高校1年・男子)

    • ドラマやバラエティー番組でよく見かけるのが、つながりを分かりやすくするためなのかコマーシャル明けにコマーシャル前の映像を再び流す構成です。全ての番組ではありませんが、時々「もういいよ」と思うくらい前にさかのぼって流すのは時間稼ぎのような気がしてなりません。(東京・高校1年・女子)

    • 最近のドラマはネタ系のものが多いなと思いました。日本のコメディーもとても面白いと思うけど、テンポ感によっては、私はすぐに飽きてしまうものもあるなと感じます。やはりお笑いには間やテンポがつきものだなぁと思いました。また番組によって差をつくることや個性をどう出すかも大事なように思います。(千葉・高校1年・女子)

    • 芸能人の自殺のニュースのことですが、影響の大きな方の自殺についてたくさん報道するのはどうかと思いました。また、たとえ影響が大きくなくてもセンシティブな内容なので扱いを考え直していただきたいです。(神奈川・高校2年・女子)

    • 『日曜劇場「半沢直樹」』(TBSテレビ)を見てから、経済や会社のことについて報道などで見ると、前より少し興味がわくようになりました。(岡山・中学2年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ダーウィンが来た!「敵か味方か?謎の巨大ゾウ」』(NHK総合)ゾウにまつわる興味深い映像がふんだんに使用されていて教育によい番組だと思いました。ナレーションも分かりやすくタイミングが良いのですっと頭に入ってくる感じがしました。豆知識のようなコーナーもあり、その動物に興味を持てるような番組構成になっていていいなと感じました。(埼玉・中学2年・女子)

    • 『ダーウィンが来た!「敵か味方か?謎の巨大ゾウ」』(NHK総合)ゾウがメスだけで群れをなしている、体は一生大きくなり続けるなど、知らないことばかりで勉強になりました。群れに付きまとうオスは、実は遠くからメスの群れを見守っているという理由に驚きました。その姿は印象的でどこか人間と似ていると感じました。人間がゾウたちの住みかを脅かしたりするといった問題にも触れていて、環境問題も考えさせられました。動物たちの生態は発見が多く、とても興味深いのでこの番組は大好きです。(沖縄・中学3年・男子)

    • 『アメトーーク!3時間SP』(テレビ朝日)私は「踊りたくない芸人」という企画が好きで楽しみにしていたが、何回も企画をしていくうちにどんどん出演者たちが上達して、笑うというよりはすごいなぁと思ってしまう方が多かった。それでも面白い部分はたくさんあって、とくに今回から参加した芸人さんが面白かった。運動神経悪い芸人という企画でもそうだが、自分の苦手という個性をあえて出して全力でそれに挑むからこそ私たちも笑ってしまって楽しいのだろうと思った。(東京・高校1年・女子)

    • 『アメトーーク!3時間SP』(テレビ朝日)この番組は家族で見ていました!「踊りたくない芸人」はそれぞれ動きが独特で個性があってすごく面白かったです(笑)『アメトーーク!』は、何となくいつやっているか分からないけど、やっていると「おっ!今やってるんだ!」とレア感を感じていつも見てしまいます。嫌な感じのしない、「芸人」の面白さが出ていておなかを抱えて笑ってしまいます。(千葉・高校1年・女子)

    • 『世界一受けたい授業 2時間スペシャル』(日本テレビ)今回は、発想を変えただけでこんなにも売れた商品を解き明かしてくれる内容となっていました。いいアイデアを思いつくには柔軟な考え方と、自分だけでなくほかの人にも楽しんでもらえるような商品を考えることが重要であることを知りました。(高知・高校3年・男子)

    • 『ミライ☆モンスター』(フジテレビ)自分と同い年の高校生がサッカーに打ち込み、プロを目指す姿は、同い年とは思えないほど大人びて見えました。近い未来活躍すると思われる「金のタマゴ」を紹介する企画は、後にその人が活躍するようになったときにこれが秘蔵映像となったり、現在からこの番組をきっかけに応援が増えたりと、プラスな効果がたくさんあって良いと思いました。今を時めく人に焦点を当てると視聴率は上がるかもしれませんが、未来を時めくであろう人を紹介したり、逆に昔を振り返ってみたりするのも、メディアとして大切なことなのだろうと思いました。(東京・高校2年・女子)

    • 『出川哲朗のちょっと電動キックボードで』(テレビ東京)いつもの電動バイクとどのようなところが違ってくるのだろうと思い視聴しました。見てみると以前の電動バイクの際は充電が切れたとき運ぶのが苦労になっていたのがキックボードに変わったことによって充電場所を探す際にもスムーズに移動ができるように改善がされていてとても良いと思いました。また、車体が小さくなったことで裏道などの道もスムーズに運転でき、新しい発見ができる旅になっていたと思いました。また、このコロナ禍の状態に合わせてキャストの方はフェイスシールドを着用したり、いつもは訪問したお宅に番組のオリジナルシールをプレゼントしているところをオリジナルマスクに変えたり、この時代に合わせて番組が進化しているということが感じられました。(茨城・高校3年・男子)

    • 『テレメンタリー2020 全力!青春ダンス~部活とコロナの300日~』(名古屋テレビ放送)三重高校ダンス部に密着したドキュメンタリー番組です。同じ高校生とは思えないエネルギー、行動力に驚かされました。ダンス部員のみなさんがアポロシアターの舞台に立つという1つの目標に向かって一生懸命努力する姿がとてもまぶしかったです。番組中、コロナウイルスのせいで様々なことができなくなったときもみなさんが前を向いて頑張る姿は多くの人に元気を与えると思いました。(愛知・高校1年・女子)

調査研究について

担当の中橋雄委員より、調査研究(テーマ「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みについて」)に関し、進捗状況について報告がありました。

以上

2020年10月に視聴者から寄せられた意見

2020年10月に視聴者から寄せられた意見

不妊治療に関して不適切な発言をしたタレントへの批判や、幼少女への性的嗜好をネタにした芸人への批判が多く寄せられた。

2020年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,650件で、先月と比較して944件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール84%、電話14%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性35%、女性42%で、世代別では40歳代27%、30歳代25%、50歳代20%、20歳代15%、60歳以上11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は延べ1,882件【59局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、24件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

昼の番組で、不妊治療に関して不適切な発言をしたタレントへの批判や、夜の番組で、幼少女への性的嗜好をネタにした芸人への批判が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は74件、CMについては31件あった。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は110件で、前月から1件増加した。
今月は「表現・演出」が33件、「暴力・殺人・残虐」が17件、「要望・提言」が8件、「いじめ・虐待」と「低俗、モラル」がそれぞれ6件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 新型コロナの報道について、夕方のニュースになると、「今日、東京で新たに新規感染者が○○人確認された」と、いまだに新規感染者のみを報じている。入退院数、検査人数、陽性率は一切報じない。詳しいことはネットで調べればいいと、まるで視聴者に丸投げしているとしか思えない。新規感染者だけでは何の報道にもなっていない。報道機関としての役割を放棄しているように感じる。

【番組全般・その他】

  • ロケ番組において、出演者がマウスシールドやフェイスシールドを付けて収録するケースが多い。特にマウスシールドが目立つが、「ウイルス感染予防の観点からは不合格である」と、多くの専門家から指摘されている。人が少ない場所での収録であれば、出演者のみにリスクが及ぶだけだが、ある程度の街中での収録では、飛沫リスクは避けられない。おそらく顔を見せたいがための対応だろうが、放送では使用しないほうがいい。感染予防にはマスクの有効性がほぼ確立しているのだから、影響力を考え、見本となるよう遵守すべきだ。

  • 昼の番組を見た。次のバスまであまり時間がないなら、飲食店に入らなければいいのに、店の人に急いで作らせた料理に少ししか口をつけずに店を後にするシーンがあった。食べ方も急いでかきこむ感じで、代金は払ったものの最後まできちんと食べないなど、店に失礼だ。見るに堪えないのでチャネルを替えた。この時間帯は多くの世代の人たちが見ている。食事のマナー、食品ロス、店への気配りに欠けるなど、道徳的にどうかと感じた。

  • 芸人が、小児への性犯罪者を仲間であるとし、さらに同じ性的嗜好をもつ自分たちは、世間から虐げられている被害者であるという趣旨の発言をしていた。また、それを出演者一同が笑うという番組の流れだった。実際の被害者たちがどれだけの傷を負っているかの想像力もなく、何気なしにこの番組を見ていた視聴者の中には、これを笑い話のネタにしていいのだと感じる人たちもいることと思う。れっきとした犯罪を、嬉々として笑い話にする内容は、許されることではない。

  • 昼の番組で、不妊の原因についての不適切なコメントがあった。専門的な知識を持たないタレントが、何を根拠に断言できるのか。不妊治療で苦しんでいる女性たちがいることを忘れないでもらいたい。

  • GoToトラベルのおかげで、高級ホテルのエグゼクティブルームが、普段は一泊14万円のところ、特別価格と税金の補助で一泊55,000円になるという話題。「これはお得ですね」と、出演者たちは大喜びしている。一泊55,000円の宿泊ができる人たちに、税金の補助が必要なのか。

  • 夜のニュースで、新型コロナの感染拡大以降、東京・品川駅の朝の通勤風景を流している。いつも、いやだなと思いながら通るのだが、ついに今日、自分の足元が映ってしまった。もし、顔が出ていたらと思うとぞっとする。テレビに映りたくない人の気持ちはどう考えているのか。

  • どこの局も同じ話を一日中繰り返している。それも新型コロナなど、気が滅入る話題ばかりでうんざりする。私は、寝ている時間以外、テレビ画面と向き合っているが、番組があまりにつまらないので、ビデオばかり見ている。何とかしてほしい。

  • BSの番組を見た。町の中華店を訪ね歩く番組だが、今回は、東京都練馬区が舞台。レギュラー出演の芸人とその店の店員は、今年閉園した遊園地「としまえん」の思い出話で盛り上がっていた。都市開発によって消えゆく昔ながらの人情の温かみを、下町のノスタルジーとともに、じんわりと味わうことができた。飲酒を

  • 扱う点で、「青少年には見せるべきではない」という意見もあると思うが、温かい人情に触れることができる番組こそ、青少年に見てもらいたい。近年、放送倫理の劣化が叫ばれているが、このような良質な番組もあることを知ってもらいたい。

【ラジオ】

  • FMの夜7時からの番組は、社会問題や政治などを取り上げる内容だが、一部の常連リスナーによるコメントが、徐々に誹謗中傷化している。いろいろな問題について、異なる意見が交わされることは健全だと思うが、一部のリスナーが、自分と意見が異なる相手に対して、個人攻撃と思われるようなコメントを投稿することが多々見られる。また、ナビゲーターに対して攻撃的なコメントをするリスナーもいる。何年もこの番組を聞いているが、ここ最近、エスカレートしているようで怖い。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 深夜のトーク番組で、アイドルおたくをネタとする芸人が自分はロリコンで応援しているアイドルは14~17歳。自分の仲間がアメリカでGPSを付けられていると面白おかしく話していた。しかしGPSを付けられているということは犯罪者のはずで、このように軽々しく話すことではない。性被害にあってPTSDに苦しむ子どもたちもたくさんいる。性に対する問題意識が低すぎる。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • ドッキリ番組において、男性先輩芸人が男性の後輩に言い寄るという同性間のセクハラ、パワハラを放送していた。男女であればセクハラとして放送できない事を同性であれば笑えるかのように放送するのは、同性間セクハラを矮小化している。また同性愛者=セクハラをするかのような偏見を助長する表現だ。子どもが見る時間帯であり、LGBT当事者の子どもたちへの影響は深刻ではないか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • グロテスクで残忍なシーンが多く、子どもが見ることのできない深夜に放送していたアニメをゴールデンタイムで放送するのはいかがなものか。鬼の首を切り、血しぶきが上がる。子どもに見せていい内容ではない。

【「食べ物」に関する意見】

  • 路線バスを乗り継いで旅をするバラエティー番組でカレー屋を訪問してカレー三食とグラタンを注文。しかし次のバスまでの時間がないからと最初に来た一食を4人でつつき、さっさと店から出て行った。料理も無駄になったし、作ってくれた人への感謝の気持ちもなかった。お金を払えばよいという問題ではない。子どもも見る時間帯なのでこのような企画はやめてほしい。

【「推奨番組」に関する意見】

  • 『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)は、毎回感心やら可愛いやらで楽しませてもらっている。出演者と素晴らしい才能の子どもの会話も楽しく、この子たちは日本の宝だとうれしくなる。視聴者はこのような番組を期待していると思う。

2020年10月14日

「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
に関する委員会決定の通知・公表の概要

[通知]
2020年10月14日午後1時からBPO会議室において、奥武則委員長と、担当した水野剛也委員、紙谷雅子委員が委員会決定を通知した。
申立人本人と、被申立人のフジテレビから本件番組の責任者らが出席した。
はじめに奥委員長が「本件放送に人権侵害、また放送倫理上の問題があったとは判断できない」と結論を伝え、その上で「ただし、申立人のように取材・報道に不慣れな者が予期せず声をかけられる種の街頭インタビューでは、誤解やトラブルを招かぬためにも、放送局名・番組名はもとより、取材の趣旨などを取材に際しては可能な範囲で説明し、かつ撮影した映像等の使用について本人の意向を明確に確認しておくことが望ましい」と結論には注文がついていることを述べた。その後決定文に沿って説明した。まず判断の前提となった申立人と被申立人との対立点が取材の経緯と申立人本人の発言内容の2点であり、この対立点は双方から完全に言い分が異なる主張としてなされている、と指摘した。双方の主張についていずれかが明らかに整合性を欠いていた訳ではなく、委員会としては各種書面やヒアリングの結果「申立人の主張する事実があったとは認定できない」としたと述べた。それらを総合的に判断した結果、「人権侵害、また放送倫理上の問題があったとは判断できない」という結論に至ったと説明した。また、編集のありかたについて、より慎重な姿勢を望む意見が付記されていることも説明した。
水野委員は、「放送人権委員会決定第24号(2004年)を引用しているが、『カメラに向かってインタビューに応じることは放送についても承諾している』とする第24号決定は、SNSの普及や個人情報保護の観点から、現在ではすべての取材に一律に適用できない、とこの決定文に記した。申立人からすれば人権侵害や放送倫理違反が認められなかったことは不本意かもしれないが、今後の街頭インタビューの方法などについて改善が期待できる」と述べた。紙谷委員は「実際の映像を見ると、切り張りされていたり何かがすごく強調されていたりした訳ではない。妥当な部分を編集して放送したと考えた。その上で人格権の侵害があったと判断できない、とした」と述べた。
申立人は「そもそも自分の考えとはまったく反対の意見が放送されたことで申し立てたが、認められなくて不本意だ」と述べた。
被申立人のフジテレビは「我々の考えが理解されたと考えるが、その一方で指摘された取材の在り方については真摯に受け止めたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館ホールで、奥委員長、水野委員、紙谷委員が記者会見を行った。取材したのは22社33人。

(奥委員長)
結論として人権侵害も放送倫理上の問題も認められない。判断のグラデーションとしては「問題なし」に当たる。

(水野委員)
今後のインタビュー取材の在り方において一つの基準となる判断なのではないか。人権委員会の判断としては「問題なし」だが、今後の街頭インタビュー取材についてこの種のトラブルが生じた時の指針となると考えた。

(紙谷委員)
今回の場合、申立人は具体的な人権侵害ではなく「本来ではない自分」を放送されたと主張したので、人格権という観点で審理した。総合して考慮した結果、「人格権の侵害があったと判断することはできない」としたが、結論で述べているように取材時の丁寧な説明が望ましい。

質疑応答の概要は以下のとおり。

(質問)
申立人の年齢は?

(奥委員長)
申立書に年齢を記載する欄がないので把握していない。

(質問)
今後の取材の在り方が変化していくのではないか?

(奥委員長)
基本的なことをしっかりやっていただきたい、ということに尽きる。

以上

委員会決定等について

question
視聴者に番組なのか、広告なのか曖昧な印象を与えないために気をつけることは何ですか?
answer
放送倫理検証委員会は、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らした適正な考査が重要だと指摘しています。
委員会決定の起草に当たった委員の一人は、放送局との意見交換会の場で、「営業発案の番組についてどのように向き合えばよいか」という質問に対して、「一社提供の単発番組は、複数社提供の番組やレギュラー番組に比べてスポンサーの意向が強く反映されやすいが、営業担当者はスポンサーに対して番組と広告の境目の問題について理解してもらうように努めることが重要ではないか」と述べたうえで、「過剰に視聴者を意識する必要もないし、視聴者の意見におびえることもない。自主・自律に基づく放送の自由を主体として、よい番組作りをしてほしい。そのためには担当者一人の判断ではなく、営業、制作現場、編成など社内の多くの部署と協議していき、最終的にしっかりとした考査判断をしていくことが重要」との考えを示しています。
番組と広告について放送倫理検証委員会が出した「意見」や「委員長談話」は以下のとおり。

  • 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見はこちらから
    第30号 2019年10月7日 放送局:長野放送
  • 琉球朝日放送と北日本放送の単発番組に関する意見はこちらから
    第36号 2020年6月30日 放送局:琉球朝日放送・北日本放送
  • 番組内容が広告放送と誤解される問題についての委員長談話はこちらから
    2020年10月30日

委員会決定等について

question
選挙報道で注意することは何ですか?
BPOで何か注意喚起していますか?
answer

放送倫理検証委員会は、委員会決定や委員長コメントなどを通じて、放送局に対し選挙の自由と公正を守り、公平・公正な番組制作を心がけてほしいと繰り返し求めています。
また、放送人権委員会では、委員会決定の中で公正・公平など放送倫理と人権に一層配慮するよう要望しています。

放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会決定 第9号では、「放送局が独断で比例代表選出制度の設定している選挙区域と異なる区切りを設定し、限られた候補者のみを取り上げて放送することは、選挙の公平性・公正性を害し、選挙制度それ自体を歪めることになる」との意見を表明。対象番組は、参院選比例代表の非拘束名簿式の投票の仕組みを報道する際に、放送局が参議院の比例代表制度を正確に理解しないまま、当該放送局が所在する県に関係がある立候補者のみを取り上げたものでした。委員会は、公平・公正な選挙は民主主義の根幹であるとして、選挙にかかわるすべての放送関係者に公平性・公正性の徹底を求めています。

  • 参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見はこちらから
    (放送倫理検証委員会決定 第9号 2010年12月2日)
次は、千葉県知事選挙の期間中に現職知事の映像がバラエティー番組で約10秒間放送された事例。過去の映像を総集編的にまとめて紹介する中に、知事がこの番組に出演したときのものが含まれていました。制作担当者には選挙期間中であることの認識がなく、局内のチェックも機能しませんでした。委員会は、選挙の公平性・公正性に万全を期すよう求めた3年前の意見書の趣旨が徹底されていないとして、審議入りはしないものの、「委員長コメント」を公表し、各局にも注意を喚起することとしました。

  • 委員長コメントはこちらから
    (放送倫理検証委員会 第70回委員会議事概要 2013年4月26日公表)
委員会決定 第17号で審議の対象となったのは、インターネットでの選挙運動解禁についての特集企画で、比例代表選挙立候補予定者だった元大阪府知事の選挙準備活動だけを紹介したニュース番組と、比例代表選挙の候補が著名経済人としてVTR出演している企画を、参議院選挙投票当日の午前中に放送した情報バラエティー番組の2つの番組です。放送と選挙の関係について、委員会は3年前の意見(委員会決定 第9号)や、2013年4月の「委員長コメント」でも注意喚起を呼びかけてきました。それにもかかわらず、選挙にかかわる同様の問題が再び生じたことを、委員会は重く受け止めて、審議を行ってきました。今回の意見で、委員会は、この2つの番組について、選挙の公平性・公正性を損なう放送倫理違反があったと判断。そのうえで、選挙に関する放送倫理違反の問題の再発を防ぐために、放送業界全体において共有してほしい事柄として、「こころの秤(はかり)をイメージしよう」「組織や陣形を整えよう」などの提言を盛り込んでいます。

  • 2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見はこちらから
    (放送倫理検証委員会決定 第17号 2014年1月8日)
また、2016年7月に行われた参議院議員選挙と東京都知事選挙について、視聴者からさまざまな意見が寄せられたことなどから、委員会は、具体的な放送を踏まえながら選挙報道の公平・公正についての考え方を示すのは意味があるとして、選挙報道全般のあり方について審議しました。委員会は、「政治的に公平であること」などを定めている放送法第4条第1項各号の番組編集準則は「倫理規範」だとしたうえで、放送局には「選挙に関する報道と評論の自由」があり、テレビ放送の選挙に関する報道と評論に求められているのは「量的公平」ではなく、政策の内容や問題点など有権者の選択に必要な情報を伝えるために、取材で知り得た事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をするという「質的公平」だと指摘しました。この観点からすると、真の争点に焦点を合わせて、各政党・立候補者の主張の違いとその評価を浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たないことは残念と言わざるをえないとして、「放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされる」ことを期待しています。

  • 2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見はこちらから
    (放送倫理検証委員会決定 第25号 2017年2月7日)
参議院選挙公示の前日、夕方のローカルワイド番組で、比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した事例。委員会は、放送の内容が他の立候補予定者との公平性・公正性を害し放送倫理違反となる可能性があり、制作に当たってこれまで委員会が指摘してきた諸問題が検討された形跡がないなどとして、放送に至った経緯等を検証するために審議入りしました。審議の結果、委員会は、比例代表制度では自分の住む都道府県にかかわりなく立候補者や政党・政治団体に投票できるにもかかわらず、本件放送は公示日の前日に約5分間にわたって特定の立候補予定者のみを取り上げて視聴者に強く印象づけるような編集をし、有権者に誤解を与え比例区の投票行動を歪めた可能性があるとして、選挙報道に求められる公平性・公正性を害したことが、放送倫理に違反していると判断しました。

  • 北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見はこちらから
    (放送倫理検証委員会決定 第35号 2020年4月8日)

放送人権委員会

放送人権委員会は、「山口県議選事前報道」に関する委員会決定 第21号で、放送倫理上問題があったとする見解を公表しました。申立人は2003年4月の県議会議員選挙に立候補した男性。選挙前のニュース番組で放送した統一地方選挙の企画「県議選・なんでも一番」において、申立人が最多立候補者として実名・顔写真付きで「合わせて12回出馬していますが、いずれも当選に至っていません」と紹介されたとして、選挙妨害であり人権を侵害されたと訴えた事案。委員会は、本番組は故意ではないとはいえ、他の登場者に較べ申立人についての構成は明らかにマイナスイメージが強く、立候補予定者の公平な取り扱いについて配慮を欠いたと指摘したうえで、視聴者である有権者に対して不当に予断を与えた可能性もあり、放送倫理上問題があった判断しました。そのうえで、委員会の決定の主旨を放送するとともに、社内に徹底を図り、今後の番組の制作に際しては番組の目的を明確に捉え、公正・公平など放送倫理と人権に一層配慮するよう要望しています。

  • 「山口県議選事前報道」に関する委員会決定はこちらから
    (放送人権委員会決定 第21号 2003年12月12日)

委員会決定等について

question
複数の委員会で同じ番組について議論したことがありますか?
answer
放送倫理検証委員会と放送人権委員会で、これまで同じ番組が取り上げられたケースは4件あります。ただし、それぞれの委員会で独立して審議・審理が行われました。
▼NHK教育『ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか』第2回「問われる戦時性暴力」
▼NHK総合『クローズアップ現代』出家詐欺報道
▼“全聾の天才作曲家”佐村河内守氏を取り上げた番組
▼TOKYO MX『ニュース女子』沖縄の基地問題の特集
委員会決定は、以下のとおり。

放送倫理検証委員会

  • NHK教育テレビ『ETV2001 シリーズ戦争をどう裁くか』第2回「問われる戦時性暴力」に関する意見はこちらから
    第5号 2009年4月28日 放送局:NHK
  • “全聾の天才作曲家” 5局7番組に関する見解はこちらから
    第22号 2015年3月6日 放送局:TBSテレビ、テレビ新広島、テレビ朝日、NHK、日本テレビ
  • NHK総合テレビ『クローズアップ現代』”出家詐欺”報道に関する意見はこちらから
    第23号 2015年11月6日 放送局:NHK
  • 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見はこちらから
    第27号 2017年12月14日 放送局:東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)

放送人権委員会

  • 女性国際戦犯法廷・ 番組出演者の申立てはこちらから
    第20号 2003年3月31日 放送局:NHK
  • 「謝罪会見報道に対する申立て」(TBSテレビ)に関する委員会決定はこちらから
    第55号 2015年11月17日 放送局:TBSテレビ
  • 「大喜利・バラエティー番組への申立て」(フジテレビ)に関する委員会決定はこちらから
    第56号 2015年11月17日 放送局:フジテレビ
  • 「出家詐欺報道に対する申立て」に関する委員会決定はこちらから
    第57号 2015年12月11日 放送局:NHK
  • 「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」に関する委員会決定はこちらから
    第67号 2018年3月8日 放送局:東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)