第213回放送と人権等権利に関する委員会

第213回 – 2014年10月

散骨場計画報道事案のヒアリングと審理
「謝罪会見報道に対する申立て」審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞いた。「謝罪会見報道に対する申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年10月21日(火)午後4時~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングと審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、申立人、被申立人から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聞いた。
この中で申立人は、「顔なし」映像を記者会見の条件とした理由として、人口3万7,000人の熱海市で住民2千7,8百人の反対署名が集まっており、「私の顔が出ていれば、狭い田舎町で更なる事件に発展する可能性もある」と指摘。また、「このような行為は故意に行われたと思わざるを得ない」とも述べ、具体的被害として「テレビで大々的に出てしまい、熱海の町では相当な騒ぎになっている。熱海を騒がしている散骨業者と知れ渡ってしまい、よく話しかけてくれた住民たちも目をそむける。町に食事に出ることもできない。そういう状態は今も続いている」などと訴えた。
被申立人は、編成、報道の責任者や番組担当者ら5人が出席し、「約束に反して顔出ししてしまったことは、担当者の不注意・失念によるもので、故意によるものでは決してない。放送時間に追われる中でモザイクをかけ忘れるというミスであり、最終チェックも十分に行われなかった。取材相手との信義を果たせなかったことを深く反省している。業者社長にはお詫びの申し上げようもない」としたうえで、「二度とこのようなことのないように、再発防止策をすでに取っており、社内での研修会なども行っている」と述べた。
ヒアリング後も審理を行い、担当委員が「委員会決定」文の起草作業に入ることになった。その上で、次回委員会でさらに審理を進める。

2.審理要請案件:「謝罪会見報道に対する申立て」~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、TBSテレビが2014年3月9日に放送した情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。番組は、かつて「全聾の作曲家」として知られていた佐村河内守氏が楽曲の代作問題について謝罪する記者会見を取材し、その模様をまとめたVTRを放送するとともに、出演者によるスタジオトークを生放送で展開した。
この放送に対し、佐村河内氏は8月26日付で申立書を委員会に提出し、番組は「申立人の聴力に関して事実に反する放送を行ったものであり、それにより、申立人が聴覚障害者であるかのように装って記者会見に臨んだとの印象を与えたもので、申立人の名誉を著しく侵害するものであると共に、申立人と同程度の聴覚障害のハンディキャップを持つ者に対しても、社会生活上深刻な悪影響を与えた報道であった」と訴えた。申立書はまた、番組が特定の映像を意図的にカットして「悪意ある編集」を行い、「事実そのものを捻じ曲げて放送した上で、申立人の名誉権を侵害したことになり、本件は極めて重大かつ悪質な人権侵害」と主張している。
これに対してTBSテレビは9月30日付で委員会に提出した「見解」書面の中で、「当番組の放送内容は、放送された時点における重大な社会的関心事で、聴覚障害者に対する誤解や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評」と放送の趣旨を説明。その上で「謝罪会見の綿密な取材と、診断書についての専門家の見解の上で制作しており、『悪意ある編集』などによって申立人に聴覚障害がないと断定したものでもない」として、申立人の名誉を傷付ける放送ではないと主張している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

3.その他

  • 10月7日に名古屋で開かれた地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。

  • 次回委員会は11月18日に開かれる。

以上

2014年9月

札幌で「意見交換会」開催

放送人権委員会は9月4日(木)、札幌で意見交換会を開催した。在札幌9局から54名が参加し、委員会からは三宅 弘委員長、市川正司委員、田中里沙委員が出席した。まず、6月9日に公表された「顔なしインタビュー等についての要望~最近の委員会決定をふまえての委員長談話~」について委員長から基調報告があり、後半では、最近の「委員会決定」をもとに、人権や放送倫理について意見を交わした。午後3時から始まり、終了予定の午後5時30分を越えて、5時50分頃まで熱心な議論が行われた。主な内容は以下のとおり。

◆三宅委員長の基調報告◆

「顔なしインタビュー等についての要望」は、反響を呼んでいまして、ご賛同いただくご意見もあるんですが、どうも現場の方々には、「分かっているけれど、こんなんじゃやっていられない」というような意見が結構あるという話を聞いています。
なぜこういうものをこの時期に出したかというところからお話をさせていただきます。昨年の8月から今年の1月にかけて3件の委員会決定を出しています。一つは、「大津いじめ事件報道に対する申立て」の委員会決定ですが、「放送倫理上問題あり」というもので、放送の中で瞬間的に加害者とされている少年の名前が準備書面の中に出ている。通常の見方では分かりませんが、それがネット上に拡散されて行き、炎上して行くことについて、局がどこまで責任を負うのかが問題になりました。ネット上にアップロードして拡散していくところまでは局の責任は問えないけれども、そういうことを想定して、名前をなぜ消せなかったのかということが問題になったケースです。新しい時代、新しいメディア状況においての放送倫理のあり方を考えなければいけないということがあったわけです。
もう一つは、「大阪市長選関連報道への申立て」です。1分37秒のニュースで、初めに「スクープです」で始まって、「朝日放送が独自に入手した紹介カードの回収リストの件です」という話で進んで、回収リストを提供してくれた内部告発者の「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」ということで、大阪市交通労働組合を批判しているコメントが出たわけです。これは顔がないコメントで、後ろのほうから撮っている映像が出ました。内部告発者ですから、顔なしで撮るというのはやむを得ないと思いますが、顔なしインタビューの用い方ということで少し考える必要もあるのではないかということが話題になりました。
三つ目の「宗教団体会員からの申立て」の問題としては、宗教団体に入会した人の脱会カウンセリングのことと、信仰についての気持ちを書いた両親に宛てた手紙がそのままアップで出て、かなり鮮明にプライバシーの根幹に関わる部分が出ました。
そういう状況の中で、取材を進めて行くということと、名誉やプライバシーを保護するということの調整をどう図るべきかを現場で考えていただく上での指針を明らかにしておいた方が良いのではないかと考えました。実はこのテーマは4年位前から各地の意見交換会を行う際に、いろいろ議論してきました。当時は専修大学のメディア学研究の専門家である山田健太教授が自ら提案されたものをたたき台に議論したわけです。今回はその山田教授のたたき台をベースに約半年議論して詰めたものです。

I.情報の自由な伝達と名誉・プライバシーの保護など

冒頭のところは、かつてアメリカ人の弁護士が「法廷でメモが取れない」ということで裁判をしたところ、最高裁が「メモが取れなかったことは申し訳ない」という判断をした中に、表現の自由というのは何のためにあるのかということが書かれている一節があります。報道関係者にとっても、非常に噛みしめるべき一文であると思いましたので、それをまず冒頭に持ってきました。
表現の自由は、自己が自分の人格形成を発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくという、これはいわゆる自己実現という表現の自由の意味合いが一つあります。他人に知られないままのものより、お互いに他人とコミュニケーションを取ることによって、お互いの人格形成に刺激を与えるということがまず基本だろうということです。後段は「民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保を実効あるものとする」としています。これは自己統治という、民主政治、民主主義国家において自ら表現するためには、まず知らなければいけないということで、ここに知る権利、国民の知る権利という発想が出てくるわけです。この要望には書いてありませんが、最高裁の判例で言えば、博多駅テレビフィルム提出命令事件の中にあるように、取材・報道の自由は知る権利に奉仕するという立場がまず基本にあるということです。
その次に、「高度情報通信社会において、他人に知られたくない個人のプライバシー、名誉、肖像などはみだりに侵害されることのないよう保護することも必要である」とし、情報の自由な伝達と、プライバシーや秘密保護の適正な調整ということが必要で、そこを放送関係者の皆さんが担っているんだという基本的な前提をシンプルな形ですが示しました。
表現の自由、それから知る権利に奉仕する報道・取材の自由というものがまずあって、しかし、その自由を行使することに名誉、プライバシー等の侵害があってはいけないということで調整するということです。

II.安易な顔なしインタビューが行われていないか

放送倫理に関して各局で出されているものの中には、事実の正確性、客観性、真実に迫る努力が放送倫理にとって非常に大事なことだと規範として書かれています。それから考えても、顔出しインタビューを原則とするということははっきり掲げていいだろうと思いました。
海外で見ますと、「国際通信社傘下の映像配信会社が…」というところですが、例外的な顔なしインタビューをするにあたっては、配信する上で理由を付記するというようなことがありましたので、日本ではあまり行われていない例も紹介したわけです。
ただ、理念的なことばかりでも良くないということで、東京の各局の夕方のニュースを顔が出ているものと出ていないもの、どういうところで顔を消しているかというようなことを1週間でしたが統計的に分析しました。ある局では顔が出ているが、ある局では出ていないというものもあり、あまり統一的な運用が行われていないと思いました。それから、刑事事件のニュースではない地域のごくありふれた出来事について周辺住民のインタビューをするのに、「なぜ匿名にしなければいけないのか」というものが多くあることが分かり、これはどういうところから来ているのか議論しました。そこで地域の出来事については、周辺住民のインタビューの際に安易に顔なしインタビューが行われてはいないかという点を問題提起しました。

III.安易なボカシ、モザイク、顔なし映像はテレビ媒体の信頼低下を追認していないか

テレビ画面では一層ボカシやモザイク、顔なしインタビューが日常化していますが、事実を伝えるべき報道・情報番組がこの流れに乗って安易に顔なしインタビュー映像を用いることがいいのかどうかという点で、少し価値判断的なことをここで書きました。

IV.取材、放送にあたり委員会が考える留意点

一つが真実性の担保の努力ということで、顔なしインタビューで映像を撮るときも、誰なのかということが検証可能な映像を確保するという努力も一方では必要なのではないかということです。二つ目は取材の対象者と、なるべく意思疎通をきっちりして、限られた時間であってもお願いをするように努めてもらうということです。最近、報道番組を見ていて、「消費税が10%になったらどうなりますか」というような質問で、皆さん税金のこと、物価が上がっていることについてストレートにいろいろな意見を言っていて、顔がきっちり出ているんですね。各世代、いろいろな立場の方が、こういう意見を持っているんだというのが、はっきり分かります。私は、「基本的に顔を出してやっていただくということを提言してよかった」と思いながら、各局のニュース報道を見ています。三つ目の取材源の秘匿ということは基本的な倫理であり、民放連の報道指針の中に書かれていることです。
次に、放送時においてどう考えるのかということですが、「大津いじめ事件報道に対する申立て」の問題のように、インターネットなどを用いた無断での二次的利用も起きる、そういう状況の下では、ボカシ、モザイク処理も思い切ってやっていただくことがあっていいのではないかということです。中途半端なボカシ、モザイク処理は憶測を呼ぶなど、かえって逆効果になるのではないかということで、「宗教団体会員からの申立て」の決定を踏まえたものも盛り込みました。
また、思い切って放送段階では使わずに、別の映像素材を出すということで、素材を替えることがあってもいいのではないかということを議論しました。
それから、モザイクやボカシの使用、顔なし映像の場合に画面上でその理由を字幕表示してはどうかということです。これはまだあまり行われていないことですが、海外の取扱いを見て、こういうこともあっていいのではないかということです。政府の情報公開制度では、原則情報公開、例外として非公開にするときに、「プライバシーの保護のために非公開にしています」ということで政府は非公開にするわけですが、同様に、なぜそこは黒塗りにするのか、ボカシを入れるのかということを原則公開と例外非公開の立場で考えてもらうということです。それは放送する側、それを受け止める国民サイドでも考えるということがやはり大事ではないかということです。
また、すでにルールのあるところは当然そのルールの徹底を社内で図っていただくし、社内ルールがあまりなくて、「系列局のもので応用しています」というところでは、さらに自前のルールを考えていただきたいということも提言しました。

V.行き過ぎた"社会の匿名化"に注意を促す

やはり基本は人がお互いにさまざまな意見、知識、情報に接して、摂取する機会を持つということの大切さを踏まえながら、あまり行き過ぎないように、プライバシーなどを保護するという、そういうモノの考え方を社会に定着させていく上でも、放送の持っている非常に大きな力というものがありますので、その点を意識しながら日常の仕事をしていただくことがこの社会全体のためになるのではないかということです。放送の使命のようなものについて、最後はちょっとエールを送りたいという気持で提言をまとめました。

私もこのテーマについては4、5年考えてきて、最近の委員会決定を踏まえて、この段階において委員会全体で考えた上で、社会に、また取材放送の関係者に提言をさせていただくことが、日本社会における放送のあり方に一石を投ずることになるのではないかと思っていました。思っていた以上に反響があり、「現場のことが分かっていないんじゃないか」というような話から始まって、たくさんの意見が出て私自身は良かったと思っています。この要望を踏まえて、さらにいろいろなことを現場で考えていただければと思っているところです。

■参加者からの発言■

  • 「なぜ匿名にするのか、なぜモザイクをかけるのかということをいつも現場の中で考えなさい」ということは言っていますが、おろそかになる時があり、今回の談話が出て、改めて考えるきっかけになりました。
    ある局は実名だったり、ある局は匿名だったり、モザイクをかけていたり、いなかったりということがあります。各局、判断してやっている中で、なかなか統一ができない、同じようにできない事情もあります。悩みながら決めているということをご理解いただければと思います。

□三宅委員長:犯罪現場に行って近所の人のコメントを取るということがあります。犯罪報道において周辺住民に被疑者について聞いたりするときは、顔なし、声も変えてということは、当然あっていいと思います。また、内部告発者の問題についても、慎重に扱いつつも真実に迫るという点から、少し検証可能な映像を担保することも考えるという点も必要かと思います。もちろん、それを放送するというわけではありませんが。
日常の、地域の出来事のいろいろなことを放送するのと、犯罪報道では違うと思っていますが、その辺は各局がきめ細かい判断をし、具体的な適用基準を考えていただきたいと思います。あまり事細かに「これはこうすべきだ」という談話にすべきではないと考えたものですから、細かく触れていませんが、是非、社内でいろいろ議論していただきたいと思います。

  • 原則、モザイクは無いほうがいいと思っています。この談話に関しては非常に感銘しました。その一方で、若手の記者などを見ていると、他局でモザイクをかけているし、後で処理すればいいということで意外と考えずに現場で撮ってしまうというケースもあります。取材を受ける方も根拠があって嫌だという方もいらっしゃいますが、なんとなく映るのが嫌だということがあり、十分話をすれば応じてくれる場合もありますが、時間がない時は顔なしでそのまま撮ってきてしまうというケースもあります。

  • 最近、学校現場の取材が非常に難しく、取材を申し込んでも、映っていい生徒、児童と映ってはいけない生徒、児童を分けるのは当然になっています。驚いたのは、運動会の取材なんかでも顔を撮ってくれるなという話があったりします。顔なしの駆けっこというのはどうかと思います。ちゃんと顔の出た取材というのをいかに実現していくかが難しくなっていると日々思っています。
    もう一点あります。私どもの局では地上波で流れたものをそのままネットに上げるんですが、やはりネットに一度出てしまうと、これはほぼ永遠に消えることはありません。その辺で違う配慮をしていかなければいけない時代ではないかと思います。

□三宅委員長:事件なり、いじめの問題なりに関わってくると、その重要な部分については、かなりボカシは入れざるを得ないだろうと思います。ただ、普段の行事の何げないものについてまで、ボカシを入れるかどうかということは考えるべき点だと思います。
ニュースについては、最近、特にインターネットですぐ動画で出ますが、放送人権委員会では、一応テレビで放送されたものが対象になるわけですが、当該局のホームページ上の動画で出ていると、出ている限りにおいて全部対象として考えざるを得ないということで、範囲が広がります。最初のニュースと、ネットで出す時のボカシの入れ方とか、その辺は変えてもいい時代なのかもしれないと思います。ネットニュースをどのように各社の戦略上考えるかによって、「放送人権委員会の対象が広がってもいいから、真実性としてそのまま出す」という社から、少し注意をしてボカシの入れ方等を工夫してみるとか、二次的被害が及ばないように工夫をするということも、これから考えていいことだと思います。

□田中委員:子どもが小学校入学の時に、「メディアの取材が来た時にはお子さんを出していいですか、どうですか?」という書類が配られるということがありました。中学校でもそういうことがあり、全ての小中学校でやっているかどうかは分かりませんが、そういう動きが、結構学校の現場ではあります。

□市川委員:ネットニュースでどう出すかということのお話がありましたが、昔は即時的な、その時の映像を見てプライバシー侵害かどうかということで、ある意味では分かりやすい話だったのですが、「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案のように、その瞬間は肉眼では分かりませんが静止画像にすれば分かってしまう。また、それをネット上に上げれば、より拡散するという技術を誰でも使うことのできる時代になってきているという背景の中で、インタビューを受ける側にも「インタビュー受けて映像が出たことによって、どういうふうに使われていくんだろう?」という漠然とした、おそれみたいなものを持っている方もいるのではないかと思います。そういう意味で非常に難しい時代だと思いますが、そうであればこそ余計に現場でも説得する時に、このニュースがどういうところで使われ、どういう範囲で、例えばネットではどうなるのかも含めて、見晴らしの良い形で説明ができると説得もしやすくなるのではないかと思います。きめ細かい基準作りとか対応というのが、これから必要になってくると感じます。

  • 犯罪現場の近所の方のインタビューとか、事実に迫る内部告発者のインタビューは、匿名でもやむを得ないのではないかということですが、それ以外で、どういう場合に顔なしインタビューの違和感を覚えていらっしゃるのかお聞きします。

□市川委員:例えば誘拐事件で、「あの子はいい子だったのに、心配です」など、非常に漠然とした感想のインタビューなどです。やはりインタビューの中身によってもかなり違うところがあって、近所の方とか同じ町とか同じ市の中の一住民としてのコメントであるのにモザイクをかけているというような場合には、必然性がないのではないかと感じています。

◆決定52号「宗教団体会員からの申立て」について◆

意見交換会後半は、「宗教団体会員からの申立て」事案を議題にした。当事案はテレビ東京が2012年12月30日に放送した報道番組『あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~』において、番組で紹介された男性が、公道での隠し撮影された容姿・姿態が放送されたほか、本人の承諾もなくカウンセリングにおける会話や両親に宛てた手紙の内容が公にされるなどプライバシーを侵害されたなどとして申し立てたもの。委員会は、本件放送の公共性・公益性を高く評価するものであるが、その放送目的を追求するあまり、申立人のプライバシーに対する十分な配慮を欠いた結果となっているとして、放送倫理上問題があると判断した。
「番組の概要」を事務局から説明した後、決定文の起草主査を務めた市川委員から「委員会の判断」の説明があった。同じく起草委員を務めた田中委員からも補足の説明が行われた。

□市川委員の説明□

・本件全体の判断枠組

「判断のグラデーション」がありますが、まずは、一番重い判断として「人権侵害かどうか」というのがあります。私どもとしては、まず人権侵害に当たるかどうかというところを考えることになります。
人権侵害には当たらない、あるいはそこまでの一致点がない、あるいはそれを今回は言う必要がないだろうという判断に至った場合には、「個別の人権侵害には当たらないけれども、放送倫理上問題があるかどうか」ということを次の段階で検討することになります。
この放送倫理上の問題というのは、ある意味では非常に広い捉え方ができるわけですが、この放送人権委員会という名称からも分かるように、放送倫理を全て網羅するということよりも、どちらかというと、この放送倫理を守らないことが将来的には人権侵害に結び付きかねないというような人権侵害との関係、名誉とかプライバシー、あるいは肖像権、それとの関係で問題が生じうるような放送倫理上の問題ということに絞って検討されています。

・プライバシー権等侵害の本件判断枠組

まず、プライバシー権・肖像権を侵害するか、これは要するにプライバシーや肖像権の内容に踏み込んでそれを放映しているのかどうかということが問題となります。
そして、法律上の言い方としては違法性の阻却と言いますが、形式上はプライバシー権侵害になるけれども、それが公共性・公益性の観点から許容されるという場合には、全体としてはプライバシー権侵害にはならないということがあり、プライバシー権・肖像権の場合には、次のステップとして、公共性・公益性の観点から許容されるかということが検討されます。

・プライバシーに立ち入る内容か

プライバシーに立ち入っているのかどうかということですが、本件では2つのところを捉えました。脱会カウンセリングの模様の隠し録音の内容、音声は変えていますが、思春期に悩みがあって、それが信仰によって解決したという、短いのですが、そういう言葉が出てきます。それから両親への私信の映像、朗読が出てきます。この部分は、「プライバシーにかかわるものであり、申立人のプライバシー権を侵害するものではないかとの問題が生じる」としています。

・申立人と特定(同定)可能か

映像という点から行くと、かなり、ボカシの度合いとしては弱い部分があります。顔は隠れていますが、髪型等は分かる。それから卒業式と思われる写真では、その友人の衣装であるとか、そういったものは分かるので、友だちが見れば、「あ、これ、私の着ていた衣装だ」、「卒業式の時のあの衣装だ」というのは、かなり鮮明に記憶にあるところではないかと思います。
「今年春、A市内の国立大学を卒業し、A市内で就職」というナレーションが入っていますが(「A市」は当委員会決定では非公開とした)、申立人が卒業した大学の雑観の映像があり、大学名は出していないんですが、学部の名称が入った門柱を映しています。その門柱はある理系の学部の門柱なんですが、その学部のある大学は特定できると言えばできるということです。また、ナレーションで申立人の実家のある地方名が出て、出身の地方が分かります。そして、その出身地の駅ビル名の入った背景が出てきます。また、よく見ると、実家近くの税務署の映像も、車で通っていく中では出てきたりするということもあります。総合して判断すると、申立人と特定(同定)可能であろうと委員会は考えました。
どの範囲の人が特定できるのかが問題になりますが、いわゆる一般の視聴者の方、全く知らない人から見て特定できるかというと、それはできません。名前は出てきませんので。ただ、申立人の周辺にいる大学時代の友人、あるいは高校時代の友人、今いる職場の知人にとってみると番組全体からは分かるので特定できるということになります。

・プライバシーに立ち入ることを公共性・公益性の観点から許容されるか

次の問題は、プライバシーに立ち入ることを公共性・公益性の観点から許容されるかということです。公共性・公益性という問題と侵害の程度、その何を映し、どういう態様で映したのかということ、放送したのかというところの比較衡量的な部分になってきます。ここは、委員の中で意見が分かれたところであり、「いかに一定の公共性が認められるとしてもプライバシー侵害に当たるのではないか」という意見と、これに対して「そこまでは言えないのではないか」という意見もあったということです。かなり議論をし、その結果、委員会としては、この侵害についての判断はしないということで結論を出しています。

・申立人の特定可能性への配慮

次に、放送倫理上の問題があるのかというのがテーマになります。「申立人の特定可能性への配慮」が一つの論点になるわけですが、これについては、申立人の特定可能性への配慮に欠けるところがあるとしました。「申立人のプライバシーにかかわる事実を明らかにするものであるから、申立人の顔のボカシや肉声の機械的処理による変換という配慮だけでなく、申立人を特定しうる情報をどの範囲で、どのように明らかにするかについて、より慎重な配慮を行うべきであったし、放送目的との関係でもそれは可能であった。」と決定文では言っています。
これは、ボカシの程度の問題もありますが、出身大学であるとか出身の学部であるとかを推測させるような映像、それから出身地を示したりという、そういう情報が果たしてあそこまで必要なのかということに関しては、やや行き過ぎではなかったか、それがあったが故に逆に特定可能性が出てしまったのではないかという判断をしています。

・カウンセリングの隠し録音と両親への信書の撮影・朗読の問題点

次にもう一つの問題として、プライバシーのところでも議論したカウンセリングの隠し録音と両親への信書の撮影・朗読の問題点ということを論じており、「申立人の私生活の領域に深く立ち入るものである」ということで、カウンセリングという場で思春期からの心情を語っている部分、両親に対して信仰に至った経過を書いている部分、これはかなり心の中の深いところを語っている部分なので、そういう意味では私生活の領域に深く立ち入っている、かなり重い部分に入っていると認定しています。

・公共性・公益性により許容されるか

カウンセラーの守秘義務に関する申立人の信頼を裏切らせ、申立人には思いがけず自らの内面を明らかにされる結果となり、両親に対する私信が公開されないことを信頼して信仰に関する感情を記しているのに無断で放映したという点が、態様においても問題が大きいとしました。公共性・公益性は高いけれども、プライバシーへの配慮という面で欠けている部分が大きいということで、放送倫理上問題ありという判断をしました。

・団体としての取材拒否、申立人の両親の承諾との関係

当該局としては、団体としての取材拒否がされていたこと、申立人の両親から承諾を得ていたことをカウンセリングの内容の隠し録音を正当化する根拠として挙げていました。しかし、委員会としては、基本的には、団体と申立人は別個のものであるとし、アレフや申立人以外の信者が取材を拒絶していたからといって、申立人本人に対する取材を申し入れすらしていないということは正当化できないとしました。また、両親が承諾したからといって、申立人は既に成人しており、取材・表現方法の問題は解消されないというのが委員会としての判断です。

以上のような判断過程の下で放送倫理上問題ありという判断をいたしました。決定文では、「個人情報の取扱いに十分注意し、プライバシーを侵すような取扱いをしない」という民間放送連盟の放送基準、それから同連盟報道指針での「名誉、プライバシー、肖像権を尊重する」という指針を示して、放送倫理上の問題を指摘しています。

□田中委員の補足説明□

オウムは何も変わっていないし、若者がまだまだ入信しているという事実に警鐘を鳴らすというもので、非常に感銘を受けた番組の一つでした。
特定可能性の問題でいえば、もう少し配慮があれば良かったと思います。この「もう少し」の線引きがどういうところかということもありますが、周囲の方とか身近な方が見て本人が特定される内容になっていることが問題だったと思います。わからないように、特定できないようにしたと当該局は言っていましたが、数多くの写真が使われ、繋いでいくと、この人ではないかと分かります。その部分を何とかできる方法がなかったのかと思いました。
放送は見た人がどう思うかというところを一義的に考えなければいけないということですので、本人の特定というところに真摯に向き合ってもらうことが本件においては重要だったのではないかと思います。
両親との信頼関係の中で取材が成立していたところもあり、両親は、局と息子である申立人の間で難しい状況に追いやられたのではないかと思いました。

■参加者からの発言■

  • 犯罪者でもない人間に取材申し入れもせず、隠し撮り、隠し録音して、その胸の内を出すという取材方法は、報道のガイドラインをクリアしていないと思います。このような際どい題材の長尺の番組を放送する場合には、オンエアする前に、当然、プロデューサー、その上の管理職、副部長、部長、局長まで事前に見ると思います。そういう作業が行われるはずで、それなりの人間が見れば、危ないんじゃないかとか、問題があるのではないかというような判断がされると思います。事前にそういうことがあったのかどうかを当該局にお聞きになったのかということが、質問の一つです。
    当該局でもきちんと放送前にプレビューが行われていたと思いますが、悪いほうに考えると、危ないところもあるけれども、全体的には非常に社会的に問題を訴えかける番組なので行こうという判断で放送したとすると確信犯だと思います。過去に「勧告」を受けた事例はいくつかありますが、「宗教団体会員からの申立て」事案の場合、気付いていたけれど行ってしまえという、そういう確信犯的なことがもしあったとすれば、この事案の決定が「見解」であって、どうして「勧告」にならないのかという疑問があります。

□市川委員:審理の中で、社内での検討状況と言うか、それを聞くことはあまりしません、出てきたものを内容で判断するというのが基本です。
確信犯かどうかということになると、私は確信犯とまでは言えないのではないかと思っています。担当のプロデューサー達が、アレフの件についてはサリン事件の当時からずっと追いかけていたグループで、今も追いかけています。そういう中で、その団体の危険性や、アレフに今、若い人が入ってきているという、そこに対する警鐘を鳴らさなければいけないという番組の目的があり、担当者の熱意と言いますか、非常に強い情熱と言いますか、そういうものをヒアリングしている中でも強く感じました。恐らく、局内でも、そういったものが強く伝わっていたんではないかと思います。しかし、そこで冷静な判断、違う視点から見て立ち止まって考えるという作業は考えていただかなければいけないことだと思います。
担当者は、高い公共性・公益性というものを非常に強く、ものすごく重いものだと思っていて、これがあれば殆どどんなことでもOKだと思ってしまっているのかも知れません。しかし、そこは違って、仮に重いものであっても、プライバシーの問題として立ち入ってはいけないもの、こちらの方も重いものがあって、そこはバランスを取って考えていただかなければいけないということです。その点の認識を冷静に違うところから見ていただけたら良かったのではないかと思っています。
「勧告」か「見解」かということですが、確信犯だというところまでいっていないということもあり、「見解」ということになっています。

□三宅委員長:公共性とか公益性はかなりあるということですし、担当者もかなり検討をして、この程度のボカシでいいだろうという判断をしたということをヒアリングでも伺いましたが。われわれと見解の違いがありました。例えば、氏名とか生年月日、住所、性別というのは、プライバシーの中の外側の、いわゆる外延情報と言われる部分ですが、思想信条に関わる部分というのはプライバシーの核心部分ですから、そこについての配慮というのは、氏名が公表されるようなレベルとは違うものとして、そこの部分は、それ自体として保護されなければいけないものだという認識を持っていただく必要があります。その辺の温度差がかなりあったわけですが、当該局の担当者も相当に判断しての放送であったという意味で、「見解」にしました。
今回の場合は、判断のグラデーションでは、問題なし・ただし要望ありに留めるか、放送倫理上問題ありにするかという点では、委員全員が放送倫理上の問題として捉えるべきだとしました。ただ、それ以上にプライバシーの侵害として、権利侵害として見るかどうかの点については、意見がまとまりませんでした。

  • 結論部分の「委員会は、アレフの危険性についての疑惑などに関係する調査報道を行う本件放送全体の目的を高く評価し、…」というところで、アレフに危険性があると委員会が決め付けているように思え、高く評価するということは、アレフに人権はないと言ってるように捉えられないでしょうか。

□市川委員:危険性があるという前提の下で決定が書いてあると全く考えていません。当該局としては、アレフに危険性があることは放送の中でいろいろなデータを示しながら言ってるわけですが、そういうことも一つ報道の目的に入っています。あと、そういうアレフに若者が何故入信するのかというのが、もう一つの報道の目的ということになるのですが、「疑惑などに関係する」というのは、番組担当者の放送目的、その意図がこういうことであるということを客観的に述べただけであって、決して疑惑があると私どもが認識しているということはありません。
高い評価というところは、文脈全体を読んでいただければわかるように、アレフの構成員であれば人権はないのかと言うと、決してそうは思っていません。アレフの中でも、いわゆる役員としてより高いレベルでの観察の対象になってる人と、今回の申立人のように一在家信者に過ぎない人と、そこは立場も違うというところもあります。
もう一つ言えば、犯罪報道で、例えば、現に犯罪を犯そうとしている、あるいは、犯しつつあるという中での潜入的な取材などは、ある程度正当化されるとは思いますが、そういうテーマではないというところを考えると、人権あるいは放送倫理の問題として踏み越えているか踏み越えていないかを考えるというのが、この見解の立場だと考えていただければと思います。

  • 両親に寄り添った取材をしていく中で、両親はこの番組を通して息子に戻って来て欲しい、あるいは、自分達が思春期に十分なことをしてあげられなかったという自戒の念があったのではないかと想像します。両親に寄り添った報道という部分に関しては、どのような評価をされたのでしょうか。
    また、両親に届いた手紙を紹介するというシチュエーションは十分ラジオでもあるわけですが、それを放送する時に映像はありませんので、ラジオの場合はどう考えればいいのでしょうか。

□市川委員:両親が取材に応じたのは、息子さんをできれば脱会という方向に向けたいということで、そういう両親の気持ちに寄り添う形で取材していたのだろうということは、推測ですができます。ただ、結果的に、申立人は、この映像の中では、脱会カウンセリングに応ぜず、その後アレフの集会に出たという映像で締めくくられているわけです。そういう意味では、両親の気持ちというのは複雑だったのではないかと思います。両親への対応というのが、ある意味では、取材側と申立人側の引っ張り合いみたいな形になってしまったところがありました。両親は最終的には極めて苦しい立場に追い込まれたのではないかということは、推測ですが、そういうことはあると思います。
手紙については、映像を伴って見せるということは、すごくリアリティを持たせる手法としては強い方法だと思います。カウンセリングの場面も、その場の声をとれたからこそ、リアリティを持って映したいというのはすごくよく分かるのですが、そうであるが故に、より、その人の心情をあからさまにしてしまうという要素があると思います。一般的に手紙を読むことがダメだということにはなりませんが、今回のように、直筆の手紙を撮って読んでいくという手法、手紙の中身も、魂がどうしたとかの記述に及んでるということで、ちょっとこれは行き過ぎではないかというのが判断です。仮定の議論としてラジオで読んだらどうかというのは判断しにくいのですが、絶対ダメだということではないと思っています。

  • 申立人本人に対して取材申し入れを行わなかったという点があるわけですが、全部終わった後で取材グループが思い入れを持って、最後に対峙して欲しかったという気がします。全く最後まで本人に会おうとしなかった、話を聞こうとしなかったのでしょうか。

□市川委員:特段、接触はしていないと伺っています。

◆三宅委員長から締め括りのあいさつ◆

本日は、基調報告をさせていただけた上に、さらに、「宗教団体会員からの申立て」事案の事例分析ということで、放送倫理のあり方についてきめ細かい議論をしているというところはご理解いただけたのではないかと思います。BPOの3つの委員会が独自の立場で、きめ細かい議論をすることによって、放送上の倫理が確立されているという事実は非常に重いものがあると思っております。
BPO自体は政府とは全く離れたところで運営されている、世界的にも珍しい団体ということですが、2009年の6月5日にTBSテレビの『情報7daysニュースキャスター』の問題について総務省が行政指導してから、これでもう5年、放送内容についての指導はありません。これは、私はすごいことだと思います。こういう世界で類を見ない団体であり運営のあり方というのが、これからもきっちりされることによって、公権力の介入を招かない、放送と取材・報道の自由というものの確立にとって非常に大事な役割を果たしていると思いますので、今後とも、こういう意見交換会などを通じて、その辺の認識を共通のものにし、また、いろいろなご意見を伺いながら、私ども委員会の中での運営のあり方を改善して行きたいと思っております。
決定文についても、できる限りわかりやすくということで、従前の決定文の書き方をガラッと変えています。読んでわかっていただけるような形に工夫をしたりするのも、皆さんのご意見を伺ってやっているところです。これからも忌憚のないご意見を伺いながら、放送の自由、取材の自由を守っていく役割を果たしていきたいと思っております。
今日は、いろいろご意見を伺うことができましたので、本当に有意義な時間を持てたと思います。本日はどうもありがとうございました。

以上

第86回 放送倫理検証委員会

第86回–2014年10月

"川内原発報道めぐり事実誤認と不適切な編集"
テレビ朝日『報道ステーション』審議入り…など

第86回放送倫理検証委員会は10月10日に開催された。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案については、審理の対象となった5局7番組のヒアリングが終了し、担当委員から報告が行われた。次回委員会までに、問題発覚後の対応についての報告書を改めて各局に求め、さらに審理を継続する。
テレビ朝日の『報道ステーション』が、九州電力川内原子力発電所の新規制基準適合に関するニュースを9月10日に放送した際、事実誤認と不適切な編集があったと原子力規制委員会から抗議を受け、2日後に同番組内でお詫び放送を行った。当該局からの報告書をもとに討議した結果、国民の関心が高いニュースでこのような間違いをしたのは小さな問題ではないとして、審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2014年10月10日(金)午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、藤田委員、升味委員、森委員

1.「全聾の作曲家」と称していた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案を審理

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼して自己の作品として公表していたことが発覚した事案について、新たに2局2番組に対するヒアリングが行われた。その結果、審理の対象になった以下の5局7番組すべてに対するヒアリングが終了した。

  • TBSテレビ『NEWS23』「音をなくした作曲家 その"闇"と"旋律"」(2008年9月15日)
  • テレビ新広島『いま、ヒロシマが聴こえる・・・』(2009年8月6日)
    <フジテレビを含む多くの系列局が日時を変更して放送>
  • テレビ朝日『ワイド!スクランブル』「被爆二世・全聾の天才作曲家」(2010年8月11日)
  • NHK総合『情報LIVE ただイマ!』「奇跡の作曲家」(2012年11月9日)
  • NHK総合『NHKスペシャル』「魂の旋律~音を失った作曲家~」(2013年3月31日)
  • TBSテレビ『中居正広の金曜日のスマたちへ』
    「音を失った作曲家 佐村河内守の音楽人生とは」(2013年4月26日)
  • 日本テレビ『news every.』「被災地への鎮魂 作曲家・佐村河内守」(2013年6月13日)

担当委員から、新たに実施された2局2番組に対するヒアリングの内容が報告されたあと、今後の審理の進め方について意見交換が行われた。その結果、問題発覚後の各局の対応は、すでに提出された報告書にも一部記載されているが、半年余りの時間が経過していることから、事後の検証の内容、視聴者への説明が十分になされたか、再発防止策がどのように実施されているかなどについて、改めて各局から文書で報告を求めることになった。

2.川内原発をめぐる原子力規制委員会の報道に事実誤認と不適切な編集があったテレビ朝日の報道番組を討議 審議入り決定

テレビ朝日の『報道ステーション』は、原子力規制委員会が九州電力川内原発について新規制基準に適合していると正式に認めたニュースを、9月10日に約8分間放送し、規制委員会の田中委員長の記者会見で、火山の審査基準に関する質疑が集中したことなどを伝えた。放送後、規制委員会からの抗議を受けて社内調査をした結果、竜巻の審査ガイドに関する記者とのやりとりを火山に関するものと取り違えて放送したことと、火山の審査基準をめぐる質疑で田中委員長の回答部分に不適切な編集があったことが判明した。当該局は規制委員会に謝罪するとともに、2日後の同番組内で約5分間訂正とお詫びを行った。
委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議した結果、事後の対応が迅速で的確であったにしても、国民の関心が高いニュースで、2つの間違いをしたのは小さな問題とは言えないとして、審議の対象とすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • 時間に追われていたにしろ、なぜあのように不適切な編集がされ、きちんとチェックもされずに、放送されてしまったのだろうか。

  • 時間に追われているニュースの制作現場では、さまざまなミスや間違いが起こりうる。その際には、事後の対応がどこまで適切に行われたかが重要ではないだろうか。

  • 2日後の訂正・お詫び放送はかなり詳細なもので、評価できるのではないか。

  • 国民が非常に関心をもっている事柄について、このように誤った内容で放送をしてしまったことは、やはり小さな問題とは言えないだろう。委員会は審議の対象とするかどうかについての基準を公表しており、それに照らせば、審議して意見を述べるべき事案と言うことになる。

  • 報告書を読むと、ニュースの制作現場で、分業体制が複雑化していることに驚いた。なぜこうしたことが起きたのかをきちんと検証して、他の放送局に警鐘を鳴らすことも委員会の役割だろう。

以上

2014年10月21日

「謝罪会見報道に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は10月21日開催の第213回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、TBSテレビが2014年3月9日に放送した情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。番組は、かつて「全聾の作曲家」として知られていた佐村河内守氏が楽曲の代作問題について謝罪する記者会見を取材し、その模様をまとめたVTRを放送するとともに、出演者によるスタジオトークを生放送で展開した。
この放送に対し、佐村河内氏は8月26日付で申立書を委員会に提出し、番組は「申立人の聴力に関して事実に反する放送を行ったものであり、それにより、申立人が聴覚障害者であるかのように装って記者会見に臨んだとの印象を与えたもので、申立人の名誉を著しく侵害するものであると共に、申立人と同程度の聴覚障害のハンディキャップを持つ者に対しても、社会生活上深刻な悪影響を与えた報道であった」と訴えた。申立書はまた、番組が特定の映像を意図的にカットして「悪意ある編集」を行い、「事実そのものを捻じ曲げて放送した上で、申立人の名誉権を侵害したことになり、本件は極めて重大かつ悪質な人権侵害」と主張している。
これに対してTBSテレビは9月30日付で委員会に提出した「見解」書面の中で、「当番組の放送内容は、放送された時点における重大な社会的関心事で、聴覚障害者に対する誤解や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評」と放送の趣旨を説明。その上で「謝罪会見の綿密な取材と、診断書についての専門家の見解の上で制作しており、『悪意ある編集』などによって申立人に聴覚障害がないと断定したものでもない」として、申立人の名誉を傷付ける放送ではないと主張した。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2014年10月10日

「テレビ朝日『報道ステーション』の川内原発報道」審議入り決定

放送倫理検証委員会は10月10日の第86回委員会で、テレビ朝日の『報道ステーション』が9月10日、九州電力川内原発の安全審査をめぐり事実と異なる報道をした問題について、審議入りを決めた。
審議入りの理由について、川端和治委員長は「2日後のお詫び放送など、事後の対応は迅速で的確だったが、国民の関心事でもあり小さな事案とは言えない」と述べた。またテレビ朝日がニュース制作の分業態勢がうまくいかなかったと説明しているのを踏まえ、「分業態勢は各局共通であり、問題点を指摘することに意味がある。放送局が同じ過ちを繰り返さないようにアドバイスできないかと考えている」と述べた。

第162回 放送と青少年に関する委員会

第162回–2014年9月30日

深夜帯に放送されている4コマ漫画を原作とする連続ドラマを継続討論に…など

第162回青少年委員会を、9月30日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。まず、8月16日から9月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。その他、9月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告、11月25日開催の在京放送局との意見交換会・勉強会、2015年2月に開催することになった山梨での意見交換会などについて話し合いました。
次回は10月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2014年9月30日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

前回の委員会で、第1話から第3話までについて討論した深夜の時間帯に放送されている4コマ漫画を原作とする連続ドラマについて、新たに第9話を全委員が視聴した上で討論しました。
委員からは、「前回の委員会で第3話までについて審議入りしないことにした。しばらくおとなしい映像だったが、第9話は新たに性的に刺激の強い映像があった。審議入りしなかった影響だろうか。これは地上波で放送して良い内容か疑問を持つ」「たとえ深夜であっても、こういった性的に刺激の強い映像が含まれる番組が放送されることについて改めて考える必要がある」などの意見が出ました。一方「前回視聴した第1話から第3話までと、大きく変わった印象はない。男性視聴者を意識した"卑わい"な性的表現ではないので改めて議論する必要はない」「この番組は女性視聴者を意識した番組作りになっていると感じる。"放送基準 第8章 表現上の配慮(48)不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける"に照らしても、女性が見て"不快"や"卑わい"を感じない描き方をしている」「これまで問題にした性的に過激な番組は、過激なシーンを特に売りにしていたように感じたが、この番組は、全体の文脈を大切にした中での個々のシーンであると感じた」などの意見もありました。結局、今後の放送内容を注視しながら、さらに議論を深めていくことを確認し、継続討論としました。

中高生モニター報告について

9月の中高生モニターは、「番組企画を考えてください」というテーマで書いてもらいました。今回は27人から報告がありました。様々な企画を中高生ならではの視点から考えてくれました。中学生からの企画で目立ったのは、人気のアイドルを中心に据えた企画です。そのアイドルたちが司会をしたり、中心に出演する番組を見たい、という点で一致していました。
「『僕、救世主になります』主人公はジャニーズ系のタレント。天才・運動神経抜群、いつも一人でいる切れ者の男子高校生。主人公の頭脳と体で、いろんな部活を助けるたびに、主人公が、友達を作り人生を深く知っていく学園ドラマです」(滋賀・中学1年女子)。「『VS嵐~ファミリー編~』特別スペシャル版とし、嵐+一般家族+それをサポートする芸人が出演。普通の家族がいつも見ている番組のゲームに参加する。私も番組内のアトラクションをやってみたいなあといつも見ていて思うので、そう思っている人は多いと思う。新鮮な番組になるのでは」(佐賀・中学1年女子)。地方在住のモニターからは、地方の発展に役立つための番組企画が寄せられました。「『広島土砂災害~被災地域を復興させよう』私の自宅の近くには日赤病院などがあり、常時ボランティアを募集していますが、登録している人は高齢の方がほとんどです。今回の広島土砂災害では体力のある中高生の力が必要になるのではと思います。やるべきことは一杯あると思うので、地元のテレビやラジオで被災された方のニーズを発信する番組を継続して作るべきだと思います」(広島・中学2年女子)。「『沖縄県 中高生 生徒会 サミット』沖縄県内の中高生による生徒会活動を取り上げる番組。各校独自の取り組みや悩みなどを発表してもらい、それに対して他校の生徒がアイディアを出したり、アドバイスをしながらより良い学校にするためにはどうすればいいか話し合う」(沖縄・中学2年男子)。また、未来を見据えた企画も複数寄せられました。「『高校生の夢を叶えまshow!』高校生の様々な夢を叶える番組です。俳優や大工の仕事をしてみたい!外国に行きたい!ボランティアをしたい!など。関東の高校生よりも地方の高校生を主役にしたいです」(愛知・高校2年女子)。「『密着!あなたの仕事』内容:若者の未来を応援する番組で、毎週何かの職業についている人に密着し、仕事内容を放送する番組。その職業をめざしている学生が実際その仕事を体験する企画も盛り込む」(愛媛・高校2年男子)。

【委員の主な意見】

  • 珍しいスポーツにスポットを当てる番組企画をおもしろく読んだ。データ放送でクイズを実施し、LINEやTwitterなどからもコメントを投稿できるようにする、というアイディアも出され、今の中高生には、ソーシャルメディアが欠かせないのだと思った。

  • 何人かのモニターが、「似たような企画がいろいろな番組で取り入れられ飽きてしまうことが多い」とか、「番組の企画は飽和状態なのでは」などと書きつつ、「いざ、実際に自分が斬新な企画を考えようと思うとなかなか大変だ」と書いており、番組制作現場の苦労が少しは分かってもらえたのかと、感じた。

  • サブカルチャー、中でも、2種類以上のメディアミックス展開がなされ二次元のもので今はやりのものに限定して紹介する番組の企画はおもしろく読んだ。「"オタク"を名乗るに恥じない教養を身に着けることができる番組」という表現に"オタク"の中高生のプライドが表れているように思った。

  • 『リケジョの好奇心』というタイトルで理系寄りの女子が、こうなったら面白いだろうなというようなことに挑戦していく番組企画には感心した。「身体測定の時体重を軽くするには」とか、「おならを我慢できないときに吸収するシートは作れるか」など具体例も挙げてあり、女子ならではの視点がうまく活かされている内容だと思った。

  • dボタン(データ放送)の存在を知って、大変興味をもち、もっとテレビ画面や企画内容の充実に使うべきだと述べているモニターが数人いたのが印象に残った。

  • 若い人に人気のあるタレントをナレーターやキャスターに採用して日本文化を英語で伝える番組を作り、中高生の見られる時間帯に放送すべきだという提案には一理あると思った。

【モニターの企画書に対する在京局の現場の方から届いたコメント】

◎企画1.『キミの夢を叶えよう!』(宮崎・高校2年女子)

出演者他:司会はお話のうまい芸人さん二人(個人的な意見ではありますが、ブラックマヨネーズのお二人のような方がいいです)。
番組内容:夢を追いかけている人の夢を番組で応援し、叶えてあげよう!という番組です。
昔は、『学校へ行こう!』など学生向けのそのような番組が多かったように思いますが、最近はどうも出演者だけが楽しんでいるように思えてしまいます。そこで、夢を叶えたいと思っている方を毎回募集し、番組に出ていただき、時にはその人の目指している方を番組にお呼びしてお話を聞いたりします。ですが、"やらせ"みたいになってはいけないと思うので、必ず夢が叶うわけではなく、叶わない時もあってよいと思います。夢にも「どんな職業に就きたい」だったり、「誰かに会いたい」だったり様々なものがあると思いますが、夢の大きい小さいに関わらず、どんな人でも出られる、視聴者が身近に思える番組が良いと思います。やはりどうしてもテレビ局側的には話題性のある人に…という思考があると思いますが、小さな夢でも叶えていくことで「夢を持とう!」と思ったり、夢を持っている人にとっても夢を叶えている人を見て、「私も頑張りたい!」と刺激になったらいいなと思います。私の周りにも「夢がない、夢が欲しい」と嘆いている人がたくさんいます。そんな人たちが少しでも夢を持ってもらえるような番組ができたら私はもっとこれからの社会が盛り上がっていくのでは…と思います。

【フジテレビ 編成制作局バラエティ制作センター プロデューサーの感想】

皆さんからの企画書を見て、テレビから"ためになる"情報を得たい、そして発信したい、という気持ちを改めて実感しました。その中で意外だったのは、『密着!あなたの仕事』『高校生の夢を叶えまshow!』『キミの夢を叶えよう!』など、将来の夢の実現に向けて、仕事・職業体験や企業への潜入を扱う企画が多いことでした。皆さんがいかに真面目にテレビのことを考え、テレビに期待を持ち、さらにテレビからまだまだ学びたいという思いがあることが伝わり、とても熱い気持ちになると同時に、夢のある企画書だなと思いました。テレビ番組だからこそ、普段は潜入できない仕事現場に赴き、それを体験し、伝えることができる。実際このような形態の番組はこれまでいくつも作られてきました。それだけ作られてきたということは、視聴者のニーズがそこにあり、それに応えている企画であることに間違いありません。その上で新しい切り口や展開を皆さんの新鮮味あふれる発想で見つけられると、素敵な新しい番組の誕生になると感じました。

【NHK 制作局 青少年・教育番組部 チーフ・プロデューサーの感想】

皆さんからの企画書を見て、話題の人や旬のタレントを起用したいという企画が多いですが、芸人さんを並べたよくあるトークバラエティーではなく、見せ方や中身が具体的に考えられており、テレビのことをよく知っているなと感心しました。また、『高校生の夢を叶えまshow!』『キミの夢を叶えよう!』や『密着!あなたの仕事』など、中高生が自分たちの将来について強い関心と興味を持っていることが分かりました。日頃の番組作りに活かしたいと思います。

◎企画2.『タモリの未知の世界』(東京・高校2年男子)

この番組は、タモリが毎回違うゲストと、あるテーマに関し、とことん議論する番組です。
テーマの選択は、そのゲストにまつわる物事(ゲストがミュージシャンだったら、楽器や音響設備、コンサート時の観客について等々・・・)。タモリは、あらゆる人とのコミュニケーションもとれ、また雑学力が抜きん出ているので、1時間の枠の中でゲストの人格からその人の背景的な話まで踏み込んで聞けるのではないかと思います。場所設定は、周りが白に統一されたスタジオ内で、スタイリッシュっぽく。二人の存在感が伝わり、引き立つと思います。

【日本テレビ 制作局 チーフ・プロデューサーの感想 『世界まる見えテレビ特捜部』『ナカイの窓』など担当】

今回は、中高生に身近な企画が多くありました。そう言えば、最近の地上波タイムテーブルは、中高生が夢中になる番組が少ないように感じられます。反対に、中高生向けのヒット番組が生まれやすい状況、とも言えます。そんな中、『密着!あなたの仕事』は、一見地味な感じがしますが、『ダーツの旅』のように、素人の使い方次第で大化けする可能性のあるいい企画です。また、『タモリの未知の世界』は、想像するだけでワクワクする、イメージしやすい番組でした。

☆自由記述欄1.(東京・高校2年女子)

『おはよう日本』(NHK)を錦織圭選手の決勝戦の際に視聴していたが、得点が左下に逐一表示されていて、何とも言えない違和感を覚えた。試合と全く関係の無いニュースの間も表示されており、まるでスマートフォンの画面を見せられているようで落ち着かなかった。

☆自由記述欄2.(東京・中学2年女子)

視聴率が悪いと打ち切りになると聞きます。最近、『信長のシェフ』(テレビ朝日)が突然終わってしまったのもそのためでしょうか。友達のすすめで見始め、放送のあった翌日は学校で友達とドラマの話で盛り上がっていました。そんな会話ができなくなり悲しいです。ドラマの終わり方もひっかかりました。特に大きな事件もなく、ハッピーエンドなのかそうではないのかが分かりませんでした。よく分からない結末であったことにもがっかりしました。せめて終わり方だけでもきれいに終わってほしいと思いました。残念でした。

☆自由記述欄3.(宮城・高校1年女子)

芸能人だけではなくて、視聴者も番組の企画に挑戦できて、企画に成功すれば視聴者も賞金をもらえることができる番組が見てみたいと思う。今のテレビ、主にバラエティー番組には、「視聴者も番組の企画に挑戦できて、成功すれば賞金をもらえることができる番組」が無いのが、ちょっと残念に思う。dボタンでクイズ番組には参加できるようにはなってきているが、その番組もワンパターンで正直つまらないと感じる。もっと参加できる種類を増やすなど、まだまだ課題は多いといえるだろう。

◎企画3.『ティーンへのおすすめ流行りもの』(大阪・中学3年女子)

中学生~高校生の世代で今流行しているものや注目の人などを教えてほしい。女子はとても流行に敏感なので、これを見れば友達の話にもついていけるし、「あの番組で〇〇が紹介されていたから、今度買いに行こう。」という話も出そうだと思う。私は流行が気になるものの、ファッション雑誌は1度読むと終わってしまうので、あまり買う気にならないし、雑誌の付録もかぶったりしてしまいそうで気がすすまない。そこで、ティーンの人々がハマるようなかわいいセットで情報を伝えてほしい。10分くらいはファッション・持ち物についての情報(女子)、また別に10分くらいで、今注目の人コーナーをやって、男子のファッションも少し扱い、後5分は映画や音楽のランキングや占いなどで、残りはCMなどが良いと思う。相談などを受け付けたり、HPからコメントや流行の情報を番組の担当者に伝えるシステムも作り、その中から次週などの話題を決めると良いと思う。おもしろければ、評判になり、みんなが見る番組になると思う。

【テレビ朝日 編成制作局制作1部 統括担当部長の感想】

全体の講評:中・高生の皆さんからの提案を見てまず思うのは、「テレビを作っている大人側の都合」についての疑問が目につくなぁ、ということです。「なんで錦織選手の全米オープンテニスは得点だけテロップで紹介されたのか?」「楽しみにしていた番組が突然終わる」「視聴者が参加できる番組が少ない」「もっとスマホで番組に参加できるような仕組みを」などなど…。テレビを作っていた大人としての言い分はそれぞれにあるのですが、ネットをはじめとする数年前にはなかったさまざまなメディアがどんどんユーザーフレンドリーな試みを打ち出す中、テレビだけが様々なルールや自主規制で縛られていては中・高生の皆さんにとって面白いものになろうはずもありません。そんな作る側は皆さんに見てもらえるように工夫をし続けています。皆さんに見ていただきたいのはその番組はどういった問題点をクリアしたのか、何がこれまでにない新しい点なのか、そういったことに注意して見てもらえればもっとテレビを面白く見てもらえると思います。

◎企画4.『ハッピー☆スクールライフ』(東京・中学2年女子)

私が企画したい番組は1話完結の学園ドラマです。流すのは週1回で30分のものです。
学園ドラマにしたいのは、やはり、中学生は学園ドラマが好きでよく話題になるからです。特に恋愛系は周りの友達も大好きで盛り上がります。最近は、映画『近距離恋愛』の話でもちきりです。その映画のようなドラマを企画してみたいです。30分というのは、中高生が見やすい手頃な時間だと考えます。部活、学校、塾などで忙しい中高生にとっては必ず見続けることができそうな時間だと思います。また、30分で1話にすることで、内容の詰まったドラマができそうです。

◎企画5.『アニメ日本の歴史・世界の歴史』(東京・中学2年男子)

日本や世界の歴史を子どもも大人も楽しめる本格的なアニメで学べる番組。内容もしっかりしたもので、あまり知られていない話も盛り込まれているとうれしい。小学生の時、マンガ日本の歴史、世界の歴史の本を読みまくった。教科書だとあんまり頭に入ってこないことでもマンガだと、どんどん入っていった。アニメだともっと頭に入るのにと思ってネットで探したけど、なかった。あったら絶対ヒットすると思う。みんなが見る時間に真面目な番組が増えた方がいいと思う。繰り返し再放送したり、DVD販売したら、もっといいと思う。

◎企画6.『週刊これだけ知っ得!』(東京・高校1年女子)

出演者他:『林修の今でしょ!講座』(テレビ朝日)に出演している先生方など
番組内容:1週間に起こった出来事を週末にまとめて、分かりやすく話題の先生方に解説してもらう番組。1週間に起こったことを簡潔にまとめて、日々のワイドショーだけでは理解できないことを教えてもらうことにより、学校での勉強にも役立ち、また社会の常識も得ることができる。

【TBSテレビ 制作局 プロデューサーの感想 『水曜日のダウンタウン』『ガンミ!!』など担当】

テレビ制作の仕事が長くなると、こんな番組がやりたい、見たい、という純粋な思いの合間に、「実現できるか」「視聴率をとれるのか」という打算めいた考え方が入り込んでくるようになります。今回読ませていただいた皆さんの企画は、「見たい」や「知りたい」「参加したい」に溢れていて、番組作りの原点とは何か、を改めて考えさせられました。また、アカデミックな視点を持ったものや、30分程度の時間を想定した企画が多数見られたことが新鮮な驚きでした。

調査・研究について

  • 「中高生の生活とテレビに関する調査(仮)」について、3,000人を超える中高生のアンケート調査が終了し集計作業に入っていると担当委員から報告がありました。

今後の予定について

  • 11月25日(火)に開催予定の「在京局との意見交換・勉強会」について、準備状況が事務局から報告されました。

  • 当初2015年1月に予定していた意見交換会を2月に山梨で開催することを確認し、準備状況が事務局から報告されました。

2014年9月に視聴者から寄せられた意見

2014年9月に視聴者から寄せられた意見

第2次安倍改造内閣発足について、今までの成果をきちんと検証してほしいといった意見。新聞社の記事訂正や誤報、謝罪会見などを扱った番組に対し賛否両論の意見多数。御嶽山の噴火報道で、取材のあり方について様々な意見。

2014年9月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,301件で、先月と比較して36件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール70%、電話28%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性71%、女性26%、不明3%で、世代別では30歳代26%、40歳代25%、20歳代19%、50歳代17%、60歳以上9%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。9月の通知数は688件【43局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

第2次安倍改造内閣が発足したが、今までの成果をきちんと検証してほしいといった意見や、番組のコメンテーターが女性の新閣僚に失礼なコメントをしているなどといった声が寄せられた。
新聞社の記事訂正や誤報、その後の謝罪会見などを扱った番組に対して、自分たちも今まで同じような報道をしてきたのに自省の姿勢が見られないなど、賛否両論さまざまな意見が多数寄せられた。
御嶽山の噴火報道で、取材のあり方について様々な意見が寄せられた。
アニメ問題を扱った番組に対して、多様な趣味を認めない、あまりに偏見的な制作姿勢だという批判的な声が多く集まった。
ラジオに関する意見は41件、CMについては30件あった。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は90件で、前月の141件から大幅に減少した。
今月は、「性的表現」に関する意見が14件と最も多かった。次に「表現・演出」が13件、「言葉」、「暴力・殺人・残虐シーン」がそれぞれ10件、「低俗・モラルに反する」が9件、「編成」が5件と続いた。「その他」は10件あった。
「性的表現」では、音楽番組で人気バンドが歌った曲の歌詞や演出が卑わいであるとの意見が複数寄せられた。
「表現・演出」では、バラエティー番組で料理店を取材した際の、料理についての感想に関する意見が目立った。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 第2次安倍改造内閣が発足した。内閣改造を報じることは良いが、現政権の2年近くの成果をきちんと検証していない。中身のない内閣改造は意味がないと追及するべきだ。デフレは脱却したのか、被災地の復興は進んだのか、原発の再稼働はするのか、公約したことは実現したのか等々、説明を求めるべきだ。少なくとも、現政権に媚びを売る報道はやめていただきたい。

  • 組閣の話題の中で、女性の新閣僚の紹介VTRを見たコメンテーターの一人が「妖怪みたいな人がいた」と述べた。誰とは言っていなかったが、個人を誹謗するコメントだ。司会者や他のコメンテーターも笑っていた。

  • 新聞社の謝罪会見の内容を独自見解で歪曲している。放送局の自己弁護のために、新聞社が誰に何を謝罪しているのかをうやむやにしているとしか思えない。この姿勢のどこに公平性があるのか。今まで記事を利用してきた放送局自身の自戒と改革を求めたい。

  • 新聞社の原発関係の吉田調書、慰安婦問題の吉田証言の誤報に関して検証することは、勇気あることだと思った。政府と違うことを言おうとすると、今のメディアはつぶされるのではないかという危機感がある中で、命を懸けて報道している姿勢には感心する。これからも頑張って真実を伝えてほしい。

  • 新聞社の慰安婦問題の記事訂正について、ある別の新聞は「その時自社はどう報じたか」と検証している。しかしテレビ各局はその間違った記事を長い間垂れ流しておきながら、報道した責任を取ることもなく、検証さえしていない。メディアとしての責任を果たすべきだ。

  • 吉田調書と慰安婦報道での新聞の誤報問題について、取材した記者個人についての報道がないことに違和感がある。新聞社の社長とトップの記者会見のみで、記者個人の記者会見はない。個人を糾弾する報道は見たことがない。しかし、STAP問題の報道では、研究者への過激な報道が行われた。名前と顔写真入りで疑惑を追及し、メディアによるリンチという印象があった。新聞社による不祥事に対しては節度を守り、科学界の不祥事には過激な報道に走る。そのギャップに違和感を覚える。

  • 原発規制委員会とのやり取りを報じたニュースの中で、誤報があったとして謝罪した。その中身は、記者の質問に対して、質問とは違う別の回答をつけるというもので、1つのVTRに数カ所のそうしたミスがあった。単純なミスというより故意に近い悪意ある編集と見るべきだ。この番組は前から再稼働には反対を訴えているが、事実を捻じ曲げてまで再稼働反対に導くことは腹立たしい。

  • 川内原発の記者会見のニュースで、原子力規制委員会の委員長を貶める編集をしていた。司会者が後日「事実誤認と不適切な編集」をお詫びしたが、原発反対の主張に沿うように編集したとしか思えない。世論を誘導し、委員長の名誉を汚す偏向放送だ。

  • 御嶽山噴火に関するマスコミ報道についてだが、震災や広島土砂災害の時も言われたが、報道ヘリが上空を旋回したり、家族へのインタビュー、患者を乗せた救急車の周りに群がるなどの行為があった。もし、自分の家族が災害に遭って同じことをされたらどう思うのか。特に報道ヘリの上空への旋回は、墜落による2次災害、生存者の声が聞こえなくなるなど、大いに危険だ。今までの災害でも問題提起されてきたはずだ。どうしても取材したいのであれば、救助隊にカメラを持たせて映像を提供してもらう方法や、代表取材で十分ではないのか。

  • 御嶽山噴火関連のニュースの中で、ご主人の安否が不明だという女性のインタビュー映像があったのだが、かなり顔に近づいて撮影していることに違和感を覚えた。今にも泣き崩れそうな女性に対して、覗き込むようにして顔の間近までカメラを向けていた。ご主人のことが心配で心を痛めている方に対して、余りにもひどい。見ていて本当に辛く、腹が立った。

  • 御嶽山噴火を伝える報道を各局で取り上げている。テレビ局のリポーターは安全な場所でヘルメットをかぶりきれいな格好をしているが、その後ろを、着のみ着のままの泥だらけの被災者の映像が流れる姿には違和感を覚えるし、不愉快だ。

  • 府議会議員の名刺の携帯電話番号が分かる映像が放送され、いたずら電話が彼に殺到した。個人情報に対してモザイクなどの処理をせず放送したのは不適切だ。なぜそのまま放送したのか、不自然な感じがする。迷惑をかけたことに対して、番組及び放送局は責任を取るべきだ。

  • 国内で発生したデング熱感染についてニュースで取り上げているが、あまり騒いで不安を煽ることはよくない。デング熱に感染しても一定期間を経ると体内に抗体ができ、重症化する心配がなくなると知った。しかしそのことを一般のニュースではほとんど伝えていない。予防することも大切だが、万一感染した場合にはどう対処するかということを中心に、冷静な姿勢で報道するよう心がけてほしい。

  • デング熱について、正しく報道している局は皆無だ。「東京・代々木公園を封鎖したので大丈夫。人から人への感染はない」と報道しているが、厚生労働省は「人から人へは感染しないが、蚊を介して感染は広がっていく」との会見を行っている。各自が蚊に刺されないように予防する必要性を伝えるべきではないか。もっと危機感を持つように注意を促すことが、テレビ局の任務ではないのか。

  • 「小学生の女の子が不審者から貰った飴のようなものを口に含んだところ、意識をなくした」という事件報道の中で、その被害小学生に直接インタビューし、当時のことを直接説明させている映像が放送された。被害小学生の心情に全く配慮していない、このような報道姿勢はあってはならない。被害小学生の心のケア・トラウマの解消を第一に考えるべきではないのか。

  • ある会社の新型スマートフォンが発売され、マスコミのネタになっているが、全体でいえばごく一部の商品だ。それなのに長い時間、機能の説明までして大きく放送している。まるで放送局がPR会社になったかのようだ。

  • 県議会議員の政務活動費不正支出に関する過剰な取材が不快だった。数人で取り囲んでつきまとい、大きな機材をかついで公共の場所で追いかけ回すなど、危険を省みない傍若無人な取材は目を惹いた。これも"報道の自由"という言い訳で許されるのか。逃走する県議に向かって「県民は納得しませんよ」と叫んでいたが、あのような強引な取材こそ納得できない。各番組の出演者は、県議のドタバタを批判していたが、取材も含めてのドタバタ劇に見えた。

  • 神戸小1女児遺体遺棄事件の報道で、不快に思ったことがある。事件の詳細を読み上げる際、人型のイラストが表示され、アナウンサーの音声と共に、どこが切断され、どの部分が見つかっていないかなど、事細かに説明していた。不快で、不謹慎な報道の仕方だ。ご遺族はもちろん、視聴者が不快になる説明は必要ない。残虐な事件が起こると、どのようなやり方でどのような状態で見つかった等の詳細を伝えることが多いが、必要以上の情報を視聴者に伝える行為はおかしい。

【番組全般・その他】

  • 「アニメに規制は必要か?」と題した特集スペシャルだった。この中で、「アニメが好き」という特定の趣味を持つ人々に対し、差別的・偏見的とも取れる一方的な批判がされていた。多様な趣味がある中で、特定の趣味だけを徹底的に批判する構成は異常である。

  • アニメを規制すべきかどうかなど、オタクについての放送だったが、何の根拠も出さずに「アニメオタクから犯罪者が生まれるから規制すべきだ」や「アニメオタクには彼女がいない」など、さも全員がそうであるかのような発言が多く、差別的で気分が悪くなった。番組構成もオタクが悪く見えるようにゲストを選んでいて、公開処刑のようだった。趣味をバカにされて嫌だったし、そういうことは個人の自由だと思う。

  • 「アニメや漫画は規制すべきか?」などをテーマにしていた。私は美少女漫画業界で仕事をしている。そんな私から見て、「アニメや漫画にハマる男は犯罪者予備軍」や「アニメ好きは勉強もできず無職」「自衛隊募集のアニメ絵ポスターで入った人はへこたれる」という決めつけや、「フィギュアが好きな男はおかしい」という発言は短絡的な言い方で、見ていてとても不快だった。私はこの仕事をプライドを持ってやっている。この業界で仕事をしている人間の名誉を傷つけている。この業界に関わり家庭を養っている人間すべての人が、まるで犯罪者予備軍を作っているかの内容で、とても傷ついた。好きな番組だっただけに残念だ。まさか好きな番組を見て傷つくとは夢にも思わなかった。

  • 「シニアとの新つきあい方」だった。若い世代の大多数がシニアの言動にイライラした経験があるという。たとえば「公共の場などでシニアはモタモタしていて困る」など、年を取れば仕方がないことなのに、それを若い世代がツイッター感覚で言いたい放題言っていた。司会者も若いせいか、どうも若い世代に同調しがちで、シニア世代の私は見ていて不愉快だった。それをするなら、今度はシニア視聴者限定の「若い世代にモノ申す」といった特集を組み、井戸端会議感覚で我々にも言いたい放題言わせてほしい。

  • 美味い店を紹介するのはもう飽きたので不味いお店に訪問してみようという趣旨で、こそこそ隠れてひたすら「不味い」「クサイ」と料理を批判して、最終的には店長を出して、店の紹介をするといったものだった。この企画は問題があると思う。人の尊厳を貶めている。こういった趣旨の悪ふざけは真似をする人も出るので控えるべきだ。

  • 暴走族を取り上げていた。その映像はオートバイで爆音を出したり、警察の車に体当たりするものだった。私が住む地域は高速道路やパーキングに近いこともあって、暴走族の抜け道になっている。半年から1年かけて県警の協力のもと取り締まることが出来たばかりである。この放送をきっかけに、また爆音を出し蛇行運転をする暴走族が出始めた。暴走族対策をまた一からやり直しかと思うと腹立たしい限りだ。

  • テニスの男子選手が全米オープンで準優勝したことで大盛り上がりだ。確かに日本人選手が4大大会の決勝に進んだことはものすごい快挙だろう。しかし、同じ大会で車いすテニスの選手たちがシングルス、ダブルスの2冠に輝いたことはほとんど報道されていない。6年後には東京でオリンピック、パラリンピックも行われる。マスコミにはもう少し公平な報道をお願いしたい。

  • 元受刑者が服役中のことを語るという特集があった。罪名の記述はなく、顔も声も隠されることもなく、普通にインタビューに答えていた。年齢様々だったが、どの人も淡々と話し、時折笑いながらインタビューに答える姿が放送され不快だった。元受刑者という立場の人が、なぜ堂々とバラエティー番組のVTRに出演しているのか。服役後だからいいと考えたのか。罪を犯したということは何らかの形で被害に遭った人がいる。被害者がこの番組を見たらどう思うのか。バラエティーの「ネタ」として異色の人のインタビューを放送したのかもしれないが、不愉快だった。

  • 救急医療を特集していた。そのVTRの中の、ある女医の発言にショックを受けた。真偽はともかく、バラエティー要素の多い番組の中で、生死にかかわるような"深刻な病気"の話題を取り上げてほしくない。もっときちんとした番組で扱ってほしい。

  • 男性タレントが、女性の漁師がタコを採った際、タコが体に張り付いた写真を見て「タコがレイプしている」と発言していた。スタジオにいた女性出演者はたしなめるようなことを言っていたが、朝の番組にふさわしくないコメンテーターは勘弁してほしい。

  • インターネット上で行われる「児童買春」の取り引きの実態について取り上げていたが、小学生児童が買春をもちかける際に使われる「隠語」を、番組出演者にクイズ形式で答えさせながら、おもしろおかしく放送していた。放送された番組の雰囲気は、児童買春の危険や撲滅を訴えるものではなく、むしろ助長させる方向性を感じた。また、世界的に有名な「不倫サイト」を取り上げ、日本国内でそのサイトの会員数が「100万人突破した」などと、全く真偽が不明な情報を伝えていた。

  • 特定の女性タレントに向かって「ババア」という名前をつけ、ずっと番組のなかで「ババア」と呼び続けている。「ババア」とは人をバカにした呼び方であり、また年齢の高い女性への侮辱だ。同じ女性として、またその女性タレントと同年代の友人を持つものとして不快である。

  • 沖縄と北海道の出身タレントがご当地自慢で対決するという企画だった。北海道出身の男性芸人が「北海道の人の方が巨乳が多い」と言い出した。番組は北海道と沖縄県のどちらが巨乳が多いのかを検証するために、一般女性への街頭インタビューを行ない、顔にモザイクなどを入れないで放送した。女性が胸のサイズを回答後、顔と胸の横のアップ映像も映し出されていた。女性への配慮がなさすぎる。最近はネットに動画がアップされ、恥ずかしい映像が流れ続けることもある。検証するなら、アンケート結果を発表するだけでも良いのではないか。

  • "不倫ドラマに主婦が共感"というテーマで、ドラマを絡めながら主婦の不倫についてトークしていた。「主婦の不倫の殆どが夫には気づかれない」という話や、視聴者の不倫体験を取り上げるなど、あたかも不倫が普通のことであるかのような展開だった。これに影響されて、不倫行為に罪悪感を持たなくなる人が増えるのではないか。実際には、不倫によって裁判で苦しんだり、自分や家族に悲惨な結果を招いたりする人も少なくない。こうした現実についてももっと言及するべきだ。

  • スポーツはリアルタイムで見たい。現在進行中の複数の試合の映像を編集することが大変なことは理解できるが、余りにもひどい。なぜ生で見られる競技を中継せず、録画した試合を放送するのか。せっかく楽しみにしていたスポーツの大会なのに、見ていてストレスが溜まる。

  • 大量殺人を取り上げ、殺人シーンや"再現VTR"、実際の映像などが多く紹介された。嫌なら見なければ良いのだが、まさかここまでグロテスクな内容だとは思わず見てしまい、凍り付いたままチャンネルを替えることができなかった。番組を見た後は、その凄惨な内容に気分が悪くなってしまった。殺人への興味と助長につながるのではないかと心配になった。

  • 高級料理を食べる合間に、過去の映像をふりかえるという演出があった。その映像のひとつに、男性タレントが屋外に設置された簡易トイレに入った瞬間、トイレが爆破されるシーンがあった。トイレから出てきた彼の姿を見て食事中の私の手が止まった。茶色の汚物にまみれ、ひきつった笑顔のアップ、トイレの部屋の中は飛び散った汚物まみれだった。食事をしながら汚物まみれの姿を見せられる視聴者のことをどう思っているのか。

  • 公共の電波を使って、女性アナウンサーの結婚という、個人的なことを放送していた。単なる社員の結婚を、朝の情報番組で取り上げる必要があるのか。"卒業"と表現しているが、単なる異動ではないのか。周りがちやほやするから、アナウンサーがタレント化するのではないか。アナウンサーという立場を自覚していただきたい。

【ラジオ】

  • 安倍内閣の改造人事で、街の意見として女性の活用をほめる声しか紹介していなかった。そうでない意見も放送するべきだ。多様な角度からの意見がないと、マスコミの意味がない。

  • 街中で見かけた迷惑な人を報告するコーナーがある。最近は、「電車内で座っていた女子高生のパンツが見えていた」や「外で生着替えをしていた」などと、迷惑な人を投稿するというより、お色気系の投稿や単なる会社の上司や先輩に対しての悪口の投稿が多い。明らかに下ネタの投稿が目立つ。

  • サンマ漁の話で「めくらめっぽう」と言っていた。リポートをしていた男性は放送に携わる者ではないので、不見識と責めることはできない面がある。しかし、番組を担当するアナウンサーやキャスターは、表現者だ。しかし訂正をするでもなく、そのまま放置していた。速やかに訂正をし、フォローするのがプロではないのか。十年一日がごとく、漫然と仕事をしているから、不適切表現があっても、プロとして速やかな対応を取れないのでないのか。

  • 各ラジオ局とも夜の時間帯(午後9時くらい~)の番組は、10代の学生をターゲットに絞りすぎているのではないのか。もう少し上の年代の社会人でも楽しめるような番組を作って頂きたい。

【CM】

  • インスタントラーメンのCMで"日本の文化"を伝えたい気持ちは理解できるが、「日本の若者はインスタントラーメンとアイドルが好き、漫画が好き」等、"日本の若者文化=オタク文化"であるかのような作りになっている。これでは、日本の若者=バカばかりということになってしまう。CMによって、日本の若者への間違った印象がつき、世論をミスリードすることにもなる。

  • あるコンビニのCMで、「近くて便利」というキャッチコピーを使っているが、店舗が1件もない鳥取、青森、高知の3県にとっては「遠くて不便」でしかない。「近くて便利」というキャッチコピーは間違っている。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 人気の高いバンドが音楽番組で新曲を披露していたが、性行為を思わせるような歌詞であり、卑わいなしぐさも多かった。若い視聴者も多いと思われる番組なので、子どもたちに悪影響を与えないか心配だ。

  • 盗撮事件などを報道する際に、スカート丈の短い女性の下半身を資料映像として使用しているケースを散見するが、即刻やめるべきだ。青少年への悪い影響が懸念されるほか、顔は映っていないとはいえ、下半身を撮影する行為そのものが盗撮と捉えられかねない。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で料理がおいしくない料理店を取材し、出演者が食事しながら「まずい」「臭い」などと言っていた。店主を嘲笑するような内容であり、出演者に嫌悪感を抱いた。子どもにいじめをしてもいいと言っているようなものだ。

【「言葉」に関する意見】

  • 最近、テロップの脱字や送り仮名の間違いが多いように感じる。子どもが間違って覚えてしまう可能性もあるので、制作時の確認を徹底してほしい。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 「イスラム国」に関する報道で、ジャーナリストなどが殺害される直前の映像が流されることがある。実際に殺害されるシーンではないが、ひざまずかされた人の横に刃物を持った兵士が立っている映像は、その後を想像させ、恐怖を感じる。そのような映像を子どもたちが繰り返し見ることの悪影響を危惧している。報道の重要性は理解しているが、もっと違った伝え方はできないものだろうか。

【「編成」に関する意見】

  • 不倫をテーマにしたドラマが昼間の時間帯に再放送されている。子どもたちが見る可能性のある時間帯に放送すべきではない。深夜に放送すべきだ。また、番組宣伝も昼間の時間帯には頻繁に行わないでほしい。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 神戸の女児遺体遺棄事件の報道で、被害女児の同級生にまでインタビューするのはいかがなものか。ただでさえ、同級生の子どもたちは心に傷を負っており、心のケアが必要な状況だ。近隣の大人へのインタビューにとどめるべきではないか。