第098回 – 2005年3月
「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理
[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴…など
「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理
NHK名古屋放送局のニュース番組(2005年1月25日放送)について、愛知県の産婦人科医院長から苦情申立てがあった事案。
申立人は「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを実名で報道された。既に改善措置を講じているにもかかわらず、現在も違法行為を行っているかのように報道されたことにより、名誉・信用を毀損され、人権を侵害された」と主張。救済措置として”訂正放送と、公表を前提とした謝罪文”を当該局に要求してる。
これに対し、NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題として認識し、県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して報道した。また、NHKとしては院長から抗議を受けた『コメント内容の間違い』と『改善指導を受けた時期の明示』については、翌26日に修正放送をし、放送上の対応については理解を得られたと認識している。要求については応じられない」としている。
2月の委員会で審理入りが決定された後、申立人から提出された「当該局への要求を明記した『権利侵害申立の補充書』」、これに対する当該局からの「答弁書」、さらに申立人からの「反論書」を基に意見交換した。また、当該局から提出された放送済みテープを視聴し、1時間20分にわたって審理した。
委員会では、「放送の1年2か月前になされた行政指導を時期を明示せずニュース報道で取り上げたことの是非」「医院名を上げての報道と、その公共性・公益性」などが、主な論点となった。
審理の結果、当該局に対し「再答弁書」の提出を求め、4月の委員会で論点整理を行い、5月の委員会で双方にヒアリングを実施する方向で、今後の審理を進めることになった。
[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴
テレビ東京は、情報バラエティー番組[『教えて!ウルトラ実験隊』(2005年1月25日放送)で取り上げた花粉症治療法の企画コーナーで、過剰演出があったとして、自主的に2月1日の同番組内で「訂正・お詫び」の放送をした。
委員会では、放送人権委員会に関わる苦情案件ではないものの、この番組の録画テープを当該局から借り受けて視聴し、訂正放送のあり方について事例研究を行った。
人権に関する苦情対応状況(2月)
2005年2月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。
◆人権関連の苦情〔11件〕
- 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・4件
- 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件
1の案件のうち、「宝石販売報道」(2005年2月3日放送)の苦情申立ては、不適切な取材による誤った報道として、放送人権委員会に「苦情申立書」(3月10日付)が届いたもの。申立人が、法人(株式会社)となっていることから、委員会では協議の結果、放送人権委員会運営規則に基づき、このままでは受理できない旨、申立人に通知することになった。
その他
「けん銃密輸事件報道」案件(2004年10月放送)については、2月の委員会で、放送人権委員会運営規則に基づき、審理対象外とすることを決定したが、事務局から、2月23日付で申立人に対し、飽戸委員長名で「審理対象外決定の回答文」を送付したと報告。
また、3月7日に広島で催した「放送人権委員会委員との意見交換会[中・四国]」について、中国・四国地区の放送局から22局32人が参加し、飽戸委員長をはじめとする7人の放送人権委員会委員と、「放送と人権」「取材のあり方」などをテーマに、具体的な事例を基に、活発な意見交換が行われたことを事務局から報告。参加委員から「有意義であった」との高い評価があった。
最後に、3月24日に開催される「BPO年次報告会」のスケジュールなどを確認、次回放送人権委員会を4月19日午後4時から開くことを決め、閉会した。
以上