2012年6月22日

「南三陸町津波被災遺族からの申立て」審理入り決定

放送人権委員会は6月19日の第184回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、NHKが本年3月10日に放送した『NHKスペシャル「もっと高いところへ~高台移転 南三陸町の苦闘~」』。昨年3月11日の東日本大震災の際、町の防災対策庁舎屋上に避難した人たちのうち42人が津波の犠牲となった宮城県南三陸町の事例を取り上げ、屋上での様子を撮った写真、町長や住民へのインタビュー取材等を交え、当時を振り返るとともに、町の高台移転の現状と難しさ、今後の課題について伝えた。
この放送に対し、番組内で使われた屋上での写真に顔と姿が写っていた職員の遺族から「肉親の最期の姿を見て大きな衝撃と苦痛を受けた、亡くなる直前の写真であれば全遺族の了解を得るか、得られなければモザイクをかける等の配慮が当然ではないか」として、NHKに謝罪等を求め、申立てがあったもの。
申立てに対しNHKは、「遺族に対しては、事前の説明も含め可能なかぎり配慮したうえで放送した」等と局側の見解で述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
今後、委員会は、局側から改めて答弁書の提出を求め、来月から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を充たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2012年7月18日

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」審理入り決定

放送人権委員会は7月17日の第185回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

対象となった番組はフジテレビの『 ニュースJAPAN 』で、昨年10月5日と6日の2回、「イレッサの真実」と題し、肺がん治療と新薬をめぐる問題について、肺がん治療薬イレッサのケースを取り上げて報道した。

この報道に対し、番組で長期取材を受けた男性から人権侵害を訴える申立書が委員会宛て提出された。申立人は、「本報道はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠けている。また申立人の発言をその主義主張とは反する使われ方をされ、かつ取材の休憩中の撮影とその映像を放送されたことにより名誉とプライバシーを侵害された」等と主張し、フジテレビに謝罪と放送内容の訂正を求めている。

これに対し、フジテレビは「本番組は肺がん治療に関し様々な立場から多様な意見が存在することを伝えたもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはない。また、申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない」と、局の見解で全面的に反論している。

委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。来月から実質審理を行う。

放送人権委員会の審理入りとは?

委員会は、「放送によって人権を侵害された」等と申し立てられた苦情が、審理要件(※)を充たしていると判断した時、「審理入り」します。
「審理入り」が、ただちに、申立ての対象となった番組に問題があるという判断を意味するものではありません。

(※審理入りに必要な要件については委員会運営規則第5条をご覧ください。)

2012年8月22日

「国家試験の元試験委員からの申立て」審理入り決定

放送人権委員会は8月21日の第186回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組はTBSテレビの『報道特集』。本年2月25日に「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」と題した特集を放送、大学教授で社会福祉士試験委員会副委員長を務めていた申立人が、その著書で社会福祉士資格試験の過去問題を解説し、大学の授業でこれをテキストとして用い、期末試験でも社会福祉士の試験問題と同じ形式で出題していたこと、厚生労働省の調査を受け申立人が試験委員を辞任したこと等を報道した。
この報道に対し申立人は人権侵害を訴え、7月2日付で申立書を提出した。申立書では「本件番組は、申立人がいかにも国家試験の試験問題を漏洩したり、試験委員としての職責に背く行為をしたかのように視聴者に印象付け、その名誉と信用を著しく毀損した」とし、TBSに謝罪と放送の訂正等を求めている。
これに対しTBSは、「報道は、試験委員であった申立人の行為が国家試験の受験生に不公平感を醸成し、公正であるべき国家試験自体への不信の念を生じさせるのではないかと問いかけたものであり、問題漏洩等の疑惑については一切報道していない」と局の見解で反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会以降、実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

委員会は、「放送によって人権を侵害された」等と申し立てられた苦情が、審理要件(※)を充たしていると判断した時、「審理入り」します。
「審理入り」が、ただちに、申立ての対象となった番組に問題があるという判断を意味するものではありません。

(※審理入りに必要な要件については委員会運営規則第5条をご覧ください。)

2012年7月17日

日本テレビ『芸能★BANG ザ・ゴールデン』審議入り決定

放送倫理検証委員会は7月13日の第62回委員会で、上記番組の審議入りを決定した。
対象となった番組は、芸能記者などが出演して芸能情報をバラエティー手法で伝える日本テレビの深夜レギュラー番組『芸能BANG+!』が、5月4日のゴールデンタイムに2時間スペシャルとして放送された、『緊急放送!芸能★BANG占い・離婚・・・渦中のアノ人が記者軍団と激突SP』で、週刊誌などで話題になっている女性タレントと占い師の同居騒動にまつわる話を大きく取り上げた。
新聞の番組欄で、「今夜遂にスタジオへ・・・オセロ中島騒動の占い師が謎の同居生活全貌激白」と告知し番組内ではオープニングから45分以上にわたって同様のスーパー、ナレーションなどを繰り返し、女性タレントと同居していた占い師が出演するかのように放送したが、実際に出演したのはこの占い師と一緒に住んだことのある別の占い師の女性で、放送後、当該局に対して多数の抗議が届いたほか、BPOにも視聴者からの多くの意見が寄せられた。
委員会は、当該局からの報告をもとに討議を行った結果、視聴者の信頼という放送倫理の根本を裏切る放送ではないかとして審議入りを決定し、次回の委員会から審議する。

放送倫理検証委員会の「審議」とは?

委員会は放送倫理上問題があると考えた番組について、取材・制作のあり方や番組内容について、審議をします。委員会は、放送事業者および関係者に対し、番組についての関連資料を求めることができます。審議の結果、委員会は、放送倫理上問題があったかどうかなどを意見としてまとめ、当該局に通知し、公表します。

* 審議については、同委員会「運営規則 第4条」をご覧ください。

2012年7月31日

日本テレビ『news every.』の「飲み水の安全性」報道に関する意見

放送倫理検証委員会は2012年7月31日、日本テレビ『news every.』 「食と放射能 飲み水の安全性」に関する意見を、当該局に通知し、公表した。この番組では、利用者が急増している「宅配の水」の利用者と紹介した人が、実はその宅配水メーカーの親族であった。

意見では、故意ではなかったとはいえ、事実確認を怠った結果として宅配水メーカーに関係ある人に好意的な評価を語らせ、放送に求められる客観性、公平性等の放送倫理に違反したと指摘した。

≪委員会決定はこちら≫

2012年 9月

広島地区各局との意見交換会

放送人権委員会の初めての県単位での意見交換会が、9月14日広島市で開催された。これはこれまでの地方ブロック単位での意見交換会に加えて、少し規模を小さくして委員会の活動をより現場に届きやすくする目的で、今年度から始まったもので、広島市内のホテルの会場には、広島市に本社を置くBPO加盟放送局6社から52人が出席した。出来るだけ現場のスタッフが出やすいよう、開始時間を午後7時半に設定したこともあって、出席者は県警担当や市政担当記者、カメラマン、ディレクターが中心となった。一方委員会側からは、坂井委員長代行、山田委員、林委員、及び事務局が出席した。
意見交換会ではまず各局から要望のあった今年5月に福山市で起きたホテル火災で、警察側が実名の公表を拒み続けている問題が取り上げられ、県警担当の記者から報道各社と県警側との交渉について報告があった。
この後委員会側から、警察の一貫した態度の背景には6年前に制定された犯罪被害者等基本法、およびこれに基づいて策定された犯罪被害者等基本計画があり、この中では実名にするか匿名にするかは原則的に警察当局が判断するという項目があって、当時、放送人権委員会や民放連、日弁連から強い危惧が表明されたことが紹介された。

報道側のスタンスは、実名にするか匿名にするかはあくまで報道側が決めるもので、警察にこれを委ねることは公権力の監視というマスコミの責務の一つを損なうことになるというものだが、委員からは、ではなぜ実名の公表が必要なのか、実名をもとにして何を伝えようとするのかの考えを明確に持っていない限り、警察の壁と向き合えないのではないかという点も指摘された。また、警察が発表しなくても報道側で実名を割り出すという意欲と能力がなければ、実名公表の要求も迫力を欠くのではないかという意見も出された。

次に、報道が犯罪報道などで時に「行き過ぎた懲罰」を加えてしまう結果になる問題をテーマに話し合った。ここでは事務局調査役からこれまで放送人権委員会が取り上げた事例の中からいくつかを紹介し、どこにどういう問題があったかを議論した。
このほか意見交換会では顔なし映像やモザイク使用の問題点、犯罪や災害の被害者と家族、関係者への取材における問題点等についても話し合われた。

次回の県単位の意見交換会は、来年初めにも鹿児島市で開催する予定。

第136回 放送と青少年に関する委員会

第136回 – 2012年9月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて …など

第136回青少年委員会は、8月は休会したため、7月16日から9月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、9月に寄せられた中高生モニター報告と10月のテーマについて審議したほか、これからの委員会活動等について委員間で討論した。
また、委員会終了後、在京テレビキー局6社の連絡責任者と委員間で、青少年委員会活動などについて自由な意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2012年9月25日(火) 午後4時~5時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より2ヵ月間の視聴者意見の概要等の報告を受けた結果、子ども向け番組と情報番組の2番組を委員全員が視聴して討論し、審議対象とすることとなった。また、視聴者意見の多かったバラエティー番組等についても委員間で討論した。

(1)テレビ東京『ポケモンスマッシュ!』(7月22日放送)について

“ゴムパッチン”や”洗濯バサミ”による”罰ゲーム”などは人気の子ども番組だけに行うべきではないという複数の視聴者意見を受けて委員間で討論した結果、”ゴムパッチン”については2008年度に注意喚起した経緯を踏まえて、「審議対象番組とする」という結論に達し、次回委員会に制作担当者の出席を要請して意見交換することとした。

(2)RKB毎日放送『今日感テレビ』(8月20日放送)について

人気アイドルグループの5人の少女が芸能活動を辞めたことを伝えたコーナーで、5人の実名報道を行い、さらに、未確認の”ネット情報”を伝えたことに対する複数の視聴者意見を受けて委員間で討論した結果、「審議対象番組とする」という結論に達し、次回の委員会までに以下の3点について、書面での回答を要請することとした。

  • 制作現場でのコミュニケーションのあり方について
    当初、出所が明らかでない”ネット情報”には言及しないとの確認がありながら、現場リポーターに伝わらなかったことについて、その経緯と今後の対応についてご説明ください。
  • ネット情報の取り扱いについて
    “ネット情報”の取り扱いについて(すべてをダメとするのか、伝え方に十分配慮して放送するのか)、貴社のガイドラインつくりの考え方を含めてお聞かせください。
  • 未成年者の報道について
    直前まで芸能人であった未成年者をどう報道していけばいいのか、実名・顔出しをすべてなしにするのかどうか、一般の未成年者を報道する場合と、過去に芸能人であった未成年者を報道するという特殊な場合と、双方について未成年者の人権に対する貴社のお考えをお聞かせください。

そのほか、視聴者意見の多かった番組について委員間で討論した。「明治の著名人たちを水着の女性たちに”抱かれたくないのは誰?”と質問した番組」については過剰に著名人を神聖視する必要はないのではないか、「外国から嫁いできた女性の依頼でセミを捕って食べた番組」については”食文化の差”の問題ではないか、との結論から、2番組については特段問題視しないこととした。

【視聴者意見の審議過程の変更について】

青少年委員会では視聴者意見に対する委員間の自由な議論の場として「討論」という段階を運用上設け、そこで審議対象とするかどうかの判断をすることとした。「討論」の段階で議論した案件については、その内容を当該放送事業者に伝えるとともに、その概要をBPO報告やホームページに掲載する。また、「討論」の過程では「良い番組」についても委員間で視聴・議論し、公表する。
「討論」の結果「審議」することとなった場合は、必要に応じて制作責任者との意見交換や文書回答などをふまえて委員間で議論し、青少年が視聴する番組の向上に資する”委員会の考え”をまとめる。「審議」のなかで交わされた各委員の発言やその結論については、当該放送事業者に伝えるとともに、BPO報告やホームページに掲載して公表し、放送事業者の自主的検討を要請する。また、「見解」などを公表することもある。

中高生モニターについて

9月は「ニュース・報道番組」を見て、中高生にとって分りやすい番組作りができているか、関心のあるテーマを取り上げているかなどを報告してもらい、30人から報告が寄せられた。
「ふだんから報道番組はほとんど見ない」、「いきなり難しい用語が当たり前のように出てきて分りやすい番組作りはできていない」という厳しい意見も見受けられた。
また、報道番組と情報番組の境界が分りづらくなってきているのか、もっとも多くの意見が寄せられた番組は『ZIP!』(日本テレビ)の7件だった。「ニュースの内容を分りやすく説明している」、「芸能ニュースが学校で話題になる」という一方、「ニュースがだんだんバラエティー番組に近づいている」という指摘もあった。
『報道ステーション』(テレビ朝日)には5件の意見が寄せられ、「世間で話題になっているニュースを分りやすく解説してくれる」という意見の一方、「中学1年の僕のレベルには難しすぎてついてゆけない」などの意見もあった。
NHKの『おはよう日本』や『ニュース7』については、「NHKは他の局と比べて真面目なイメージがある」、「情報が素直に届いて分りやすい」という意見とともに、「『週刊子どもニュース』はなぜなくなってしまったのだろうか」という意見もあった。
一方、地方局制作の『abnステーション』(長野朝日放送)、『VOICE』(毎日放送)、『スーパーニュースアンカー』(関西テレビ)には、好意的な報告が寄せられた。
また、ラジオの『JAM THE WORLD』(J-WAVE)を「無駄がない充実した内容だ」と推薦する意見もあった。報道番組にタレントを使うことについては、賛否両論の意見が寄せられた。
<自由記述>では、テレビに対して「面白い番組がなくなってきた」、「マンネリ化だ」、「テレビからの流行がなくなった」、「バラエティー番組で芸人同士の喧嘩は放送しないでほしい」など厳しい意見が集まる一方、ラジオに関しては「家ではラジオの話題で盛り上がることも結構ある」などの好意的な意見も寄せられた。

【主な意見】

  • 「ニュース番組・報道番組の中で関心のある番組は『ZIP!』と『めざましテレビ』(フジテレビ)だ。二つの番組の共通点は、ニュースの内容がよく伝わりやすいように映像を多く使ったり、分りやすく説明したりしている。一つのことについて簡単に意見を述べているため”この人はこう思っているんだ”と思ったりできるのがよい。しかし、他のニュース番組はパネルを使い分りやすく説明しているものの、難しい内容ですぐチャンネルを変えてしまう。今後ニュース番組を作るならそのようなことを意識して作っていくことがよいと思う。」(神奈川・中学1年女子)
  • 「私は毎朝ニュースを見てから学校に行くのが習慣となっています。普段は『ZIP!』を見ていますが、最近感じるのは、芸能ニュースが多いということです。もちろん、芸能情報が見たい視聴者もいると思いますが、最近はそれが多すぎます。私はニュースがだんだんバラエティー番組やワイドショー番組に近づいてしまっていると思います。学校では世界情勢について学ぶ授業があり、最近はシリアの内戦についてやっています。そこでは外国メディアを通して勉強しますが、クラスメイトも”日本のニュース番組は何でこういうことを教えてくれないのかな”と言っていました。」(東京・高校2年女子)
  • 「『報道ステーション』を時間が合えば見るけれど、僕のレベルには難しいし、最初から説明してくれないので、新聞や朝のニュースなどをよく知らないと”何の話だろう!?”とついて行けないことがあるので、さっと見て終わります。」(静岡・中学1年男子)
  • 「ニュースを見ていると、いきなり難しい用語が”当たり前”のように出てきます。僕の勉強不足もあるのかもしれませんが、難しい単語が出てきたら、キャスターさんにはもっと噛み砕いて伝えてほしいと思います。また、ニュースの背景にある様々な事件を解説する時間も割いてほしいと思います。最近は特に難しいニュースが頻発しているので特にそう思います。」(大阪・高校2年男子)
  • 「僕が”ニュース・報道番組”に求めるものは、その情報を見ている人に正確に詳しく伝えることです。だから、報道番組にドラマやバラエティー番組のような特別な企画性・独自性はあまり必要ないと思います。以前、小学生以下を対象とした『週刊子どもニュース』というものがあり、僕も小学生の時は少し見ていましたが、中学2年の今の僕には少し物足りない感じがします。しかし、新しく中高生向けの報道番組を作ってほしいとは思いません。なぜなら、大人向けに作られた一般の報道番組でも中高生になれば大体理解できるし、分らないことも大人に聞いたり自分で本・新聞などを使って調べることができるからです。また、自分のレベルに合わせた番組ではなく、少しレベルの高い番組を見たほうが、自分の成長にもつながると思います。」(東京・中学2年男子)
  • 「僕は『NEWS ZERO』(日本テレビ)をよく見ています。この番組は、寝る前に見るニュース番組としてぴったりです。また、中高生にニュース番組への関心を持ってもらおうと嵐の櫻井翔さん(月曜日)、モデルの桐谷美玲さん(火曜日)など、中高生から支持を集めるタレントを起用しています。この番組で良いなと思うところは、最初に一日の流れ”24H”、その後詳しいニュース、次に特集など、流れができているところです。例えば、早く寝たい時は”24H”だけをチェックして寝る、など様々な見方ができます。」(大分・中学3年男子)
  • 社会の変化がどんどん速くなっている時代に、どういう番組を若者が求めているかをつかむ回路を放送局はどれだけ持っているのか考えさせられた。
  • 「私は日頃からよく報道番組を見ていますが、ほとんどの番組がたいてい同じような内容を扱っています。私は、それぞれの番組がもっと工夫をしてほしいと思います。最近では報道番組が視聴率をあげるために、タレントを多く起用しています。そのこと自体は番組の知名度アップにもつながっていいと思うのですが、そのタレントがしっかりとニュースを理解していなかった、また出演しているだけでほとんど何もしゃべらないなど違和感が度々あります。あくまで、報道番組の役割は今起きているニュースを視聴者にいち早くそして分りやすく正確に伝えることであり、バラエティーとは違います。最近はその報道番組としての本当の意味合いが薄れてきてしまっているような気がします。」(東京・中学1年女子)
  • 「僕は報道番組などをほとんど見ません。平日はあまり時間がないし、どうせテレビを見るなら笑ったり、楽しい気持ちになれたりするバラエティーなどを見たいと思います。ニュースや報道というのは中高生にとっても、とても大切なことだけれど、自分の意思で見るようにならなければならないと思います。だから、テレビ局はニュースや時代の流れ、政治などに興味を持ってもらえるきっかけとなるような報道色のあるバラエティー番組作りに力をいれてほしいと思いました。」 (静岡・高校2年男子)
  • 「私は政治や社会問題の動きを知りたいから新聞を読む感覚でニュースを見ています。私はニュースは視聴者が普通の生活を送っていては知らないことを知り、判断するためのものだと思っています。”知る”ことよりも”判断する”ことのほうが最終目的なのです。ですからニュースは “知る”ことの手伝いをするだけでなく、”判断する”ことの手伝いもするために、頻繁にではなくてもいいので、1週間に一回ぐらい、なぜニュースになるくらいこの事件は大事なのか、ニュースの意味も知らせてほしいです。」(北海道・中学3年女子)
  • 「『VOICE』と、『スーパーニュースアンカー』をよく見ています。両番組の特集コーナーは、違法駐輪や就活、西成の現状など身近なテーマを取り上げ、両方の立場の意見も伝え、最後に今後の問題点や私たち一人一人が考える課題点を投げかけて締めくくります。私にも分りやすい映像で、ナレーターの方の声のトーンも聞きやすい点が好きです。」  (大阪・高校1年女子)
  • 「9月5日に発生した長野県上田市の浦里小学校火災に関する『abnステーション』の取り扱いについての感想を述べさせていただきます。このニュースは、大正13年に建設された浦里小学校が、『南極大陸』(TBSテレビ)などドラマや映画のロケ地として何度も使われたことで全国放送でも大きく取り扱われていました。しかしその報道内容の大半は、ロケ地として有名な浦里小学校が全焼、というものばかりでした。しかし、今回視聴した『abnステーション』では、さすが地元局だけあって興味本位にロケ地として有名な浦里小学校というフレーズは一切使われず、地元で大切にされ続け愛され続けた浦里小学校、という視点で取材をされていて胸が熱くなりました。元気にランドセルを背負って登校してきた小学生の後姿がとても明るかったけれど、これからのことを思うと何だか複雑な心境になりました。」 (長野・高校1年女子)

【委員の所感】

  • 火事のニュースで、全国ネットに比べて、ローカルでは地元の人たちの視点から報道していた点を評価しているが、素晴らしいと思った。
  • 報道番組と情報番組との違いを、見る側はそんなことに気をつけて見ていないということを、作る側は肝に銘じて作ってほしいと感じた。
  • 今回のリポートの中で、取材中シリアで銃撃されて死亡したジャーナリストの山本美香さんについての報道に、誰も触れていなかったのは残念だった。
  • 報道番組を分りやすくしてほしいが、芸能ニュースなどで面白くする必要はないという意見に同感である。
  • ニュースに興味のある人と、興味のない人と両極端という印象だったが、みなさんのリポートを読むと、一生懸命考えている若者がたくさんいることに安心した。
  • •報道番組と情報番組を区別することは難しいとは思うが、中高生にはもっと国内外のニュースに関心を持って番組を見てもらいたい。

【今月のキラ★報告】 (東京・高校1年男子)

僕は今回『報道ステーション』を見ました。全体的に見ていて分りにくかったのですが、それは番組が悪いというより、自分がニュースを深く掘り下げることなく過ごしているからだと思いました。それと同時に、例えば小学生の頃までよく見ていた『週刊子どもニュース』のような分りやすい番組があるといいと思います。なぜなくなってしまったのだろう、と今さらながら思いました。
僕が良いと思う番組はテレビではなくて、毎週月曜日から金曜日の午後8時から9時50分までJ-WAVEでオンエアされる『JAM THE WORLD』です。政治経済、国際的なニュース、そのほかありとあらゆるテーマなどの興味深い内容を取り上げていて無駄がほとんどない充実した内容で、そしてなにより何かをしながら情報を入手できるということが自分には合っています。そして聞くだけで、情報を手に入れるというより自分で調べたりするきっかけになっています。入浴中や勉強中によく聞いています。また、このラジオ番組のナビゲーターは、メディア側の責任というものを、よく自覚していると思います。
気になったことといえば、報道・情報・ドキュメンタリー番組とはいっても様々ですが、最近あるアイドルグループのメンバーがグループを卒業する、ということをかなり多くの報道番組が取り上げていたことです。これについてはけっこう失望しました。だれがどう思うかは勝手だし、クールジャパンとして評価する面もあるかもしれませんが、明らかにやりすぎ。僕には、なぜあれがトップニュースレベルになるのかが理解できなかった。逆にレディー・ガガが前回来日した時の虹色に染めた髪も、日本ではただの奇抜なレインボーヘアーなどと報道されていましたが、あれに込められたガガからのLGBTの人々に対して、決して開かれているとは言えない日本に対するメッセージだったことを理解している人は少ないと思います。また、それこそ報道するに値するものだったのではないかと思っています。興味深いテーマを扱えば視聴率が良いのかもしれません。しかし大切なのは大切なテーマを分かりやすい構成にする、という工夫です。
最後になってしまいましたが、中高生にも分りやすい番組となるとなかなか難しいものだと思います。なぜならニュースや時事問題に興味のある中高生とそうではない中高生というのは、きっとかなりの差があって、二極化していると勝手ながら予想しています。とりあえず、ニュースを手に入れる方法として、テレビ番組を見るだけではなくJ-WAVE『JAM THE WORLD』を”オススメ”したいです。

【委員会の推薦理由】

報道番組であるにもかかわらず、視聴率を考えて人々が興味を持ちそうなことがらを取り上げすぎる傾向が強いのではないか、という疑問を持ち、報道番組に求められるべきことは、大切なテーマを分りやすい構成にして伝えることではないか、と考えたことが高く評価された。

【自由記述】

  • 「最近のテレビはあまり見る気がしません。マンネリ化が感じられます。全ての番組において、もっと斬新さやインパクトを大事にしてもらいたいです。」
  • 「バラエティー番組などでよく見られる芸能人同士の喧嘩を放送するのをやめてほしい。面白いと思っているのかもしれないが、見ていて不愉快な気分になる。」
  • 「最近はtwitterやfacebookを活用した番組作りが増えていると思います。これからもっと増えていけばいいと思います。」
  • 「CMまたぎが多い気がします。本当におもしろい番組なら、話題の変わり目など区切りがいいところでCMを入れても、続けて見る人が多いはずだと思います。」
  • 「僕はラジオがすごくいいと思います。自分が知らなかったり興味がなかったりしたことでも、自然と耳に入ってきます。僕の家ではかなりの割合でラジオがかかっていて、ラジオの話題で盛り上がることも結構あります。」

2012年度青少年委員会活動について

8月から加藤新副委員長、4月から川端・最相新委員が就任したことから、NHKおよび在京テレビキー局6局の青少年委員会連絡責任者に出席してもらい、各委員との意見交換会を行った。冒頭、汐見委員長から青少年委員会の役割と、新たに委員会審議の運用に段階を設けることを説明した後、フリーディスカッションに入った。主な内容は、青少年へのおすすめ番組の選定方法の変更についての感想や教養系のドキュメンタリーも推薦してほしいこと、青少年や幼児向け番組が減少していることについての意見などが活発に交わされた。

2007年10月23日

「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解について

2007年10月23日
放送と青少年に関する委員会
委員長 本田 和子

青少年委員会では、テレビのバラエティー番組における罰ゲームなどに関し、放送関係者に対応を求める次の見解を発表しました。
今回の見解は、バラエティー番組において「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関し、視聴者の厳しい意見を踏まえ、青少年委員会で慎重に審議を重ねた結果、青少年の人間観・価値観を形成するうえで看過できないこととして、BPO加盟社(NHK、日本民間放送連盟会員の放送事業者)に対し、遺憾の意を表明し今後の対応を求めたものです。

全般的に視聴率が高いとされるバラエティー番組に関して、しばしば、視聴者から批判的見解が寄せられる。その大半は、番組のおおよそは認めながらも、いわゆる「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力」と「性的表現」についてのコメントで、「青少年に与える影響を考慮し、中止あるいは内容の検討を要望する」というものである。

本委員会は、このことをめぐって、以下のような対応を取ることとした。

  • 平成12年に「青少年委員会」から提案された「罰ゲーム」に関する見解を確認し、それに対する制作者側のその後の対応を検討する。
  • 現在放送されている番組中の「罰ゲーム」を検討する。
  • 7月下旬に開催される「中学生モニター会議」において、中学生視聴者の見解を問う。
  • 上記資料を参照して、本委員会の見解を表明する。

委員相互の申し合わせに則り、本委員会としては「罰ゲームに代表される出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関して、以下の見解を表明したいと考える。

見解

現在放送中のテレビのバラエティー番組において、「罰ゲーム」に代表される「出演者の心身に加えられる暴力・性的表現」に関しては、ものによっては若干の減少がみられるが、あるものに関しては時を追うごとに過激化する傾向も見受けられる。このことに関して、本委員会は以下の理由により、遺憾の意を表明し今後の検討を要望したい。

Ⅰ. 平成12年11月委員会見解との対応

平成12年11月、「放送と青少年に関する委員会」は、「バラエティー系番組に対する見解」を表明し、番組中の「暴力表現」や「性描写」に関して、民放連放送基準の条文数ヶ所に抵触し、また、放送基準審議会による平成11年要望の主旨に悖るものとして検討を要請している。

しかし、現在放送中のバラエティー番組の「出演者に加えられる暴力」および「性的表現」に関して、内容と表現に関して若干の改善が認められるものの、必ずしも委員会要望が遵守されているとは言い難く、改めてさらなる検討を要望したいと考える。仮に、委員会要望が繰り返し無視されるとすれば、本委員会と番組制作者との協同作業たるメディアの自浄作用を疑わせる結果を生み、現在進行中のメディアに対する法規制の動きを促進する恐れがあると危惧されるからである。

Ⅱ. 中学生モニターの所見

モニター会議に参加した中学生のなかで、好んで見る番組としてバラエティー番組を挙げた者があったが、それらの者たちは、「出演者をいたぶる」暴力シーンに関して、一様に不快感を表明していた。彼らは、これらの暴力シーンが、「いじめ」等の日常行動に与える直接的な影響は否定しつつも、「人間に対する否定的な扱い」に対して不快感を表明し、さらなる改善を求めたのである。

「暴力シーン」が視聴者の不快感を触発することは、青少年委員会の「青少年へのテレビメディアの影響調査」によっても明らかにされている。

以上の結果を踏まえて、「視聴者の不快感を触発するシーンを、あえて、番組中に挿入する理由」を問い、改善の余地があるものとみて更なる検討を要請したい。

Ⅲ. 「暴力シーンが“いじめ”を誘発するとする視聴者見解」に関して

放送される暴力シーンと、未成年者の「いじめ行動」との直接的な関係に関しては、多くの調査研究があるが、いまだ確定的な結論が見いだされていないというのが現状である。

したがって、放送される番組中の特定シーンと頻発する青少年非行との間に因果関係を特定することは困難ではある。しかし、民放連放送基準にも明文化されているように、「社会の秩序、良い習俗・習慣を乱すような言動は肯定的に取り扱わない」「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」等々の留意事項は、テレビメディアの持つ公共性ゆえに「自らに課した自己規制」であって、軽々に無視すべきではないと考える。

メディアツールの多様化が進む現状にあって、なおかつ、多くの青少年はテレビメディアの公共性を信頼している。そのゆえに、放送されている内容や表現はすべて、「社会的に肯定されている」と受け止められやすい。したがって、人間を徒に弄ぶような画面が不断に彼等の日常に横行して、彼等の深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性もなしとしないので、これらの動きが今後とも増幅されることのないよう一考を促す次第である。

なお、この「見解」を貴局の放送番組審議会へ報告されることを希望する。

以上

2012年3月2日

子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望

PDFファイルはこちらpdf

2012年3月2日
放送倫理・番組向上機構【BPO】
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会は3月2日、東日本大震災報道と子どものPTSD(心的外傷後ストレス障害)等の心理的ストレスとの影響について、1月開催の第129回、および2月開催の第130回委員会で議論を重ねた結果、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を公表いたしました。

2011年3月11日に発災した東日本大震災後、各局が24時間体制で伝えた震災報道は、国民の知る権利に応えるとともに、被災者支援にも大きな力を発揮しました。また起こりうる災害に備えるためにも、今後、この事実を伝え続けるためにも、報道はますます重要になるものと思われます。
私たちは、真実を伝える報道の重要性を尊重しつつも、その一方で、子どもたちの震災ストレスに十分注意し、適切なケアを行う必要があると考えています。震災以後、青少年委員会にも震災報道を視聴することによるストレスについて多くの意見が寄せられてきました。
こうしたことを踏まえ、東日本大震災から間もなく1年を迎えようとする今、青少年委員会では各放送局の自主・自律性を最大限に尊重した上で、以下の3点をお願いすることにいたしました。

  • 震災関連番組内で、映像がもたらすストレスへの注意喚起を望みます。
    青少年委員会は、各局が映像によるストレスへの配慮をしながら震災関連番組を制作してきたことを評価するものです。また、注意喚起を行ってきた番組の存在も十分に承知しております。今後放送される番組内でも、映像によるストレスについての注意喚起が引き続き行われていくことを望みます。
  • 注意喚起は、震災ストレスに関する知識を保護者たちが共有できるように、わかりやすく丁寧なものとすることを望みます。
    注意喚起は、子どもたちを映像によるストレスから守る立場の保護者に向けたメッセージとして効力のあるものでなくてはならないと考えます。番組内で行われる注意喚起のあり方と内容について、各局でさらに十分に協議し、放送されることを望みます。
    震災ストレスに対する啓発のための番組の制作、および情報番組や報道番組内での詳しい解説による保護者たちへの情報提供についてもご検討いただけると幸いです。
  • 特にスポットでの映像の使用には十分な配慮を望みます。
    番組宣伝のためのスポットは、予告なく目に飛び込んでくること、前後の脈絡がない中で映像が切り取られて使用されることなど、受ける衝撃は通常の番組よりも強いものとなることが懸念されます。震災関連番組のスポットで使用する映像に関しては、子どもたちへのストレスを増長する危険性の有無について協議した上で、十分な配慮を望みます。

本委員会では、2002年3月15日に、前年の大阪の児童殺傷事件やアメリカの同時多発テロ報道を契機とした議論をもとに、「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」を発表しました。提言では「テレビ報道が『事実』を伝えるのは、国民の『知る権利』に応えることであり、民主主義社会の発展には欠かせないものである。その伝える内容が暗いものであったり、時にはショッキングな映像であったとしても、『真実』を伝えるために必要であると判断した場合には、それを放送するのはジャーナリズムとして当然である。子どもにとってもニュース・報道番組を視聴することは市民社会の一員として成長していく上で欠かせない。」としています。その上で、子どもをPTSD(心的外傷後ストレス障害)等の心理的ストレスから守るため「刺激的な映像の使用への注意」「『繰り返し』効果がもたらす影響への検討」を求めました。

本委員会は同提言を踏まえ、東日本大震災の報道により、PTSD等子どもたちの被害を拡大させないために、あらためて各放送局に要望することにいたしました。

≪ 参考資料 ≫
BPO青少年委員会「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」2002・3・15
民放連・放送基準審議会「『番組情報の事前表示』に関する考え方について」2001・7・19

以上

2009年11月2日

「青少年への影響を考慮した薬物問題報道についての要望」


PDFファイルはこちらpdf

2009年11月2日
放送倫理・番組向上機構【BPO】
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会は11月2日、青少年と薬物をとりまく社会情勢と、一連の薬物問題報道に対する視聴者からの多数の意見を踏まえ、9月開催の第104回、および10月開催の第105回委員会で議論を重ねた結果、「青少年への影響を考慮した薬物問題報道についての要望」を公表いたしました。

青少年と薬物の現状

警察庁等のデータによると、日本の薬物犯罪は覚せい剤を中心的課題として、大麻事犯の検挙人員は10年前の約2倍に増加しているほか、合成麻薬事犯については押収量が急増しています。また、薬物事犯全体の検挙者数は減少傾向にあるものの、特に青少年については、大麻、MDMA等合成麻薬事犯の検挙人員の6割強を未成年者及び20歳代の若年層が占めており、将来が懸念される事態となっています。
青少年委員会はこうした社会環境を踏まえ、「青少年と薬物」についていかに報道するかは放送事業者にとって重要なテーマのひとつと考えています。

一連の薬物報道について

青少年委員会ではこうした社会的状況と視聴者意見を踏まえ、「青少年と薬物問題」の専門家から現状について意見を聴く機会を設けた上、委員会で審議した結果、各放送局に対し、以下のことを要望することとしました。

  • 啓発
    青少年が薬物の使用に至る主な動機は好奇心であり、薬物被害の本質が知らされていないため、少しくらいなら大丈夫だと思って使用していることが明らかになっています。また、最近は危険な薬物をカタカナやアルファベットで表現することにより、ある種のファッション感覚で安易に薬物に手を染める青少年が増加しているといわれています。こうした傾向を回避するため、各放送局には薬物報道にあたって、単に事件報道にとどまらず、薬物が個人の健康や社会に与える深刻な被害の実態――薬物が時に緩慢な人間破壊の兵器になっている――を正確に伝え、青少年が薬物について考え、使わない選択に導くための番組制作を要望いたします。
  • 表現
    今夏以降の報道のうち、薬物の入手経路、使用方法などの放送上の表現について、「青少年にドラッグや覚せい剤に興味を与えるだけ」などの視聴者意見が届いています。日本民間放送連盟「放送基準」では、第10章の犯罪表現の中で第67条「犯罪の手口を表現する時は、模倣の気持ちを起こさせないように注意する」、第69条「麻薬や覚せい剤などを使用する場面は控え目にし、魅力的に取り扱ってはならない」としています。各放送局は上記放送基準の趣旨を充分に理解した上で番組制作にあたり、青少年に薬物への興味を惹起させるような表現がないよう、極めて慎重な配慮を要望い
  • 多角的報道
    薬物をめぐっては規範意識の向上を含めて、極めて多角的な側面があります。大量の薬物を密輸・密売する犯罪組織が存在しその資金源の一部になっていること、薬物使用者ばかりではなく、その家族までもがいつの間にか犠牲になるような事態が生じていること、薬物使用者の治療と社会復帰への支援が必要なことなど、さまざまな社会問題を総合的に解決しない限り、薬物の根絶という課題は解決することはできません。各放送局には、薬物犯罪を犯した個人に焦点を当てるだけでなく、その背景や影響をふくめて多角的に報道し、薬物問題の解決に向けて取り組まれることを要望いたします。

一連の薬物事件について、各放送局では連日にわたって、まさに過熱ともいえる長時間の報道がなされました。本委員会としても一連の報道についての量及び内容に疑問を抱かざるをえないところです。薬物犯罪の背景にある社会問題への怒りを欠いた報道は、青少年に無用な好奇心を抱かせるだけに終わることがあります。「薬物根絶」へ向けての取り組みは現在、社会的要請であり、本委員会は青少年への影響を考慮した報道がなされるべきと考え、以上3点を各放送局に要望することにいたしました。

以上

2008年4月11日

注意喚起 児童の裸、特に男児の性器を写すことについて

2008年4月11日
放送倫理・番組向上機構(BPO)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
委員長 大日向 雅美

BPOに寄せられる意見の中で、”男児の全裸や性器を写す”ことに対する批判意見が年々急増しています。05年度には6件だったものが、06年度には18件、07年度には42件ありました。

批判意見としては、例えば、「ニュース番組で小学生の強化合宿に密着取材し、小学6年の男児が合宿所で局部丸出しの状態で入浴しているシーンをモザイクやボカシ等の映像処理もなく、そのまま放送していた。仮にこの入浴シーンが動画サイトに投稿された場合、児童に対し局はどのような責任を負うのか」「お笑い芸人のお宅での入浴シーンで6歳と11歳の兄弟の性器が写っていた。その兄と同年齢の私の息子が、『もう6年生になるのに恥ずかしい。それに、学校で馬鹿にされちゃうよ』と言っていた。”男の子は性に開放的であれ”といった考え方も確かにあるが、日本が児童ポルノの発信地と揶揄され、また、男の子が性的な被害に遭うニュースも珍しくなくなってきた昨今、裸体をさらす、イコール男らしさとする保守的な精神論は時代にマッチしないと思う」といった意見が述べられています。

指摘を受けた番組は、性器をことさら大写しにしたものではなく、番組制作側の意図も、裸の映像をおおらかな、家族的シーンとして放送したものであると思われます。しかし、それでもなお、視聴者の中には、映像を見て不快に感じ、画面の悪用を懸念する声があがっていることも事実です。

近年、由々しき傾向として、乳幼児を含むあらゆる年齢の女児と男児の裸体が、インターネットの普及と合成写真を作成する機器の発達で、世界中でポルノ制作のために利用されるなど、児童ポルノの氾濫が国際的現象となっている状況を指摘し、番組内の映像が加工されて児童ポルノとして利用される事態を懸念する声が強まっているのです。

青少年委員会では、こうした視聴者意見の動向に注目するとともに、社会的な”児童ポルノ”に対する考え方も勘案して、昨年11月から5回にわたって、この問題を議論してきました。”児童ポルノ”の撲滅を訴えているグループの代表から現状について意見を聞く機会も持ちました。その結果、一般的に児童ポルノといえば女児と思われがちですが、かなりの割合で男児ポルノが含まれていることが明らかとなりました。日本での数値は正確に把握されてはいませんが、違法・有害情報の発信に関する情報収集と対処を目的として、2006年6月に開設されたインターネット・ホットラインセンターに通報されたサイトの20%弱が男児のものでした。また、昨年7月に神奈川県警に摘発された男児ポルノサイトには1日平均6000件、3年間で684万件のアクセスがあったといいます。視聴者意見にもあるように、もはや男児の全裸が”おおらかさ””ほほえましさ””開放感”だけを表現するものではなくなってきていることを十分に認識する必要があります。とりわけ、大きな影響力をもつテレビ放送にあっては、この認識が欠かせない段階にすでに立ち至っていると判断いたします。

なお、テレビで放送された児童の裸体が、インターネットで悪用されたという確証は得られておりません。しかし、インターネット上に男児を含む児童ポルノが氾濫しているのは事実であり、出会い系サイトや盗撮を利用したものに限らず、児童の様々な映像がモーフィング(合成)され出回っていることからも、テレビで放送された裸体や性器が悪用される可能性は十分にあると考え、対処にあたる必要があります。

一度インターネットに利用されると、その画像は半永久的に残り複製され続けて、児童の成長後に深い心の傷を残すことが懸念されます。また、そうでない場合でも、テレビ画面の中で自分の裸体や性器を写された児童が、後日友だち間でからかいの対象となるなど、著しく羞恥心を感じて傷つくことも考えられます。いずれも児童の人権保障の観点から、十分な配慮すべきことと考えます。

本委員会は、もとより番組制作者の表現の幅を狭めるつもりはありません。しかし、現在の”児童ポルノ”をめぐる状況を憂慮し、民放連放送基準78条にある「全裸は原則として取り扱わない」とする原則を踏まえて、テレビ映像の悪用を予防する観点から、テレビ関係者に注意を喚起するよう求めることといたしました。

以上

2006年10月26日

「少女を性的対象視する番組に関する要望」について

2006年10月26日
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会委員長
本田 和子

青少年委員会では、2006年6月から、少女を性的対象視する番組への視聴者からの厳しい意見を踏まえ、議論を続けてきました。

その結果、児童の人権・福祉の観点からも看過することはできないこととして、2006年10月26日に「少女を性的対象視する番組に関する要望」を公表し、NHK、民放各社に対し配慮を求める要望書を送付しました。

最近のテレビ番組において、幼いエロティシズムの過剰表現を素材とする番組が目立つように思われる。こうした傾向は、少女を性的対象視する風潮を増幅する危険性が高い。
また児童が被害者となる性犯罪が頻発していることから、視聴者からも、このような番組が性犯罪に及ぼす影響を懸念する意見が多数寄せられている。
委員会においても検討を重ねた結果、児童の人権と福祉の観点からも憂慮すべき傾向であり、このまま看過することはできないとの結論に達した。
青少年問題に関する規制強化の動きに対して、放送局の自主自律を堅持するためにも配慮をお願いしたく、下記のとおり要望するものである。

幼い少女に過度に性的な姿態を演じさせ、それを競わせるような番組は、少女を性的対象視するものに他ならない。幼少期から過剰に性的対象視されることは、少女自身の形成途上の自我意識を、肉体や性に固着した皮相な自己関心に陥らせる危険がある。
さらには、本来成人による児童の性的搾取あるいは性的虐待ととらえられるべき、いわゆる“援助交際”を、単なる風俗上の関心のみで扱った情報系番組が散見される。
これらは、いずれも児童の性および性意識の発達に関する権利と福祉の侵害であり、「児童の権利条約第34条」、「児童買春、児童ポルノに係わる行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」に抵触し、さらには、放送界が自主的に定めている「放送基準」や「番組基準」の趣旨に反するものとして危惧の念を禁じえない。
また、仮に当該児童および保護者の同意が得られたとしても、当該番組が出演者のみならず視聴者の上にも及ぼす影響を勘案するとき、同様の懸念を抱かざるを得ない。
よって、本委員会は、今後児童を出演させる番組、および児童を対象とした情報系番組等の制作に関して、上記の法および基準の趣旨を十分に尊重され、出演者および視聴者に対して適切な配慮がなされることを要望する。

[参 考]

「児童の権利に関する条約」

第34条 締約国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護することを約束する。このため、締約国は、特に、次のことを防止するためのすべての適当な国内、二国間及び多数国間の措置をとる。

  • a. 不法な性的な行為を行うことを児童に対して勧誘し又は強制すること。
  • b.売春又は他の不法な性的な業務において児童を搾取的に使用すること。
  • c.わいせつな演技及び物において児童を搾取的に使用すること。

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」

第1条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。

「日本民間放送連盟 放送基準」

  • (4)人身売買および売春・買春は肯定的に取り扱わない。
  • (21)児童を出演させる場合には、児童としてふさわしくないことはさせない。特に報酬または賞品を伴う児童参加番組においては、過度に射幸心を起こさせてはならない。
  • (79)出演者の言葉・動作・姿勢・衣装などによって、卑わいな感じを与えないように注意する。

以上

2005年12月19日

「児童殺傷事件等の報道」についての要望

2005年12月19日
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会では、頻発する児童殺傷事件等の報道に関わる視聴者からの意見を受けて審議をすすめた結果、2005年12月19日に、これらの事件報道について放送関係者に更なる検討、配慮を求める要望を行いました。
青少年委員会は、2002年3月にも「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」を出していますが、今回の要望は、昨今の子どもが関わる事件報道について、BPOに「犯行手口等を詳細に報道しすぎる」「被害者の同級生等へのインタビューは配慮を欠くのではないか」「被害者の文集等の放送は如何なものか」といった視聴者からの意見が寄せられていることを踏まえ、各委員の日頃の番組視聴も基にして審議した結果、上述の意見に関連する事項を主な要望点としています。
また、今回の要望は、特定の番組を指すものではなく、放送界全体への要望となっています。

昨今、頻発する児童殺傷事件等の報道について、BPOに視聴者から厳しい意見が寄せられている。これを受けて、放送と青少年に関する委員会(以下、青少年委員会)は審議をすすめた結果、一部ではいまだ憂慮すべき点が見受けられることから、放送界のさらなる検討、配慮が望ましいとの見解に達した。
青少年委員会は、既に「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」(2002年3月15日)を出しているが、再度、以下のとおり要望を行うこととした。
まず、前回提言にある要望事項を、再確認のために次に引用する。

  • 衝撃的な事件・事故の報道では子どもたちへの影響が大きいことを配慮し、刺激的な映像の使用に関しては、いたずらに不安をあおらないよう慎重に取り扱うべきである。特に子どもが関係する事件では特別の配慮が求められる。
  • 子どもは言葉の理解が不十分なため、映像から大きなインパクトを受け易い特性がある点に留意し、特に「繰り返し効果」のもたらす影響については慎重な検討と配慮が求められる。
  • ニュース番組内、あるいは子ども向け番組で、日常的に、子どもにも分かるニュース解説が放送されることが望ましい。
  • 衝撃的な事件・事故の報道に際しては子どものことを配慮した特別な番組作りも研究、検討に値しよう。また、影響を受けた子どもの心のケアに関して保護者を支援する番組を即座に組めるよう、日頃から専門家チームと連携を図ることが望ましい。

上記提言は、事件・事故報道と視聴者たる子どもとの関係に関する問題把握に基づき、放送関係者に論議と今後の対策を要望したものであった。これらを踏まえて、放送界でも相応の検討や対応がなされてきているが、テレビの報道が、視聴者たる子どもの心性に直接訴え得るメディアであることに留意し、事件報道に関する更なる配慮を望んで止まない。

前回提言に加え、児童殺傷事件等の報道に関して、現委員会が特に検討を求めたい事項を以下に掲げる。

    (1) 「殺傷方法等の詳細な報道」に関して
    凶器・殺傷方法・遺体の損傷状況等を詳細に報道することは、模倣を誘発したり、視聴者たる子どもを脅えさせるおそれがあるなど、子どもへの好ましくない影響が懸念されるので、十分な配慮が必要である。

    (2)「被害児童の家族・友人に対する取材」に関して
    家族や友人等への執拗な取材、特に児童へのインタビューは、悲惨な事件によって打ちひしがれた心をさらに傷つけることにもなりかねず、また、親しい者の死を悼む子どもの心的領域に踏み込む行為でもあるので、慎重を期すよう要望したい。なお、被疑者家族への取材にも一層の配慮が望ましい。

  • (3)「被害児童および未成年被疑者の文章等の放送」に関して
    プライバシーおよび家族の心情への配慮という観点から、これらの放送には、より慎重な扱いが必要と思われる。

以上

2004年12月8日

「血液型を扱う番組」に対する要望

2004年12月8日
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会では2004年6月以降、“非科学的事柄を扱う番組”について検討していましたが、特に“血液型関連番組”に対して多くの視聴者から批判的な意見が寄せられたことから、10月の委員会で、これまでに意見集約した内容を公表することを決定。
11月の委員会で川浦康至委員が起草した原案を基に議論を深め、さらに若干の加筆・修正をした上で、12月8日開催の委員会当日に記者会見を開いて公表しました。

「血液型を扱う番組」が相次ぎ放送されている。それらの番組はいずれも、血液型と本人の性格や病気などとの関係があたかも実証済みであるかのごとく取り上げている。放送と青少年に関する委員会(以下、青少年委員会)にも、この種の番組に対する批判的意見および番組がもたらす深刻な状況が多数寄せられている。

それらの意見に共通するのは、「血液型と性格は本来、関係がないにもかかわらず、番組の中であたかもこの関係に科学的根拠があるかのように装うのはおかしい」というものである。意見の中には、「これまで娯楽番組として見過ごしてきたが、最近の血液型番組はますますエスカレートしており、学校や就職で血液型による差別意識が生じている」と指摘するものもあった。

放送局が血液型をテーマとした番組を作る背景には、血液型に対する一種の固定観念とでもいうべき考え方や見方が広く流布していることがあげられる。

しかし、血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしようもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある。血液型判断に対し、大人は“遊び”と一笑に付すこともできるが、判断能力に長けていない子どもたちの間では必ずしもそういうわけにはいかない。こうした番組に接した子どもたちが、血液型は性格を規定するという固定観念を持ってしまうおそれがある。

また、番組内で血液型実験と称して、児童が被験者として駆り出されるケースが多く、この種の“実験”には人道的に問題があると考えざるを得ない。

実験内で、子どもたちは、ある血液型の保有者の一人として出演、顔もはっきり映し出され、見せ物にされるような作り方になっている。中には子どもたちをだますような実験も含まれており、社会的にみて好ましいとは考えられない。

青少年委員会では、本年6月以降、番組内での“非科学的事柄の扱い”全般について検討してきたが、ことに夏以降、血液型による性格分類などを扱った番組に対する視聴者意見が多く寄せられるようになった。そこで委員会では集中的に「血液型を扱う番組」を取り上げ、いくつかの番組については放送局の見解を求め、公表してきた。その過程で、放送局は「○○と言われています」「個人差があります」「血液型ですべてが決まるわけではありません」「血液型による偏見や相性の決めつけはやめましょう」など、注意を喚起するテロップを流すようになった。しかし、これは弁解の域を出ず、血液型が個々人の特徴を規定するメッセージとして理解されやすい実態は否定できない。

民放連は、放送基準の「第8章 表現上の配慮」54条で、次のように定めている。

(54) 占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。
〔解説〕 現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない。

これらを踏まえ、青少年委員会としては、「血液型を扱う番組」の現状は、この放送基準に抵触するおそれがあると判断する。
青少年委員会は、放送各局に対し、自局の番組基準を遵守し、血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する。
同時に、放送各局は、視聴者から寄せられた意見に真摯に対応し、占い番組や霊感・霊能番組などの非科学的内容の取り扱いについて、青少年への配慮を一段と強められるよう要請したい。

青少年委員会での検討経緯

2004年5月12日 委員会で、今後議論すべきテーマの一つとして、血液型や怪奇・霊能など“非科学的事柄”を番組で扱う場合の子どもに及ぼす影響について議論すべき、という提案が出され、次回以降、検討に入ることを決定。
6月9日 非科学的事柄を扱う番組について、事務局が内容分類および類型などの資料を作成し、これを基に意見交換。
7月14日 6月頃から、“血液型と性格を関連づける番組”に対して、BPOへ視聴者意見が多数、寄せられた。その多くは、「血液型別に優れているか否かなど決められるわけがない。さも科学的・医学的に立証されているかのように放送するのは問題。青少年への影響を考えない姿勢は問題」など、青少年への影響を心配する意見や苦情だった。委員会として、この種の番組を制作した関西テレビ、TBS、テレビ朝日に対して、視聴者の意見に対する局の見解を求めることにした。
9月8日 血液型関連番組は、その後も放送された。委員会では、10月に放送された番組の一部を視聴し、前月に続き意見交換した。協議の結果、委員会の意見を集約した案文を川浦康至委員が作成し、さらに議論することとした。
10月13日 血液型関連番組は、その後も放送された。委員会では、10月に放送された番組の一部を視聴し、前月に続き意見交換した。協議の結果、委員会の意見を集約した案文を川浦康至委員が作成し、さらに議論することとした。
11月10日 川浦委員作成の『「血液型を扱う番組」に対する要望』原案を基に審議し、原案を了承。その後、若干の加筆・修正を加えたうえで、12月に公表することを決定。
12月8日 『「血液型を扱う番組」に対する要望』を記者会見し、公表。

“血液型を扱う番組”に対する主な視聴者意見

〔2004年4月~11月〕

メール 16歳 男性 愛知

科学的に全く根拠がないのに、さも確実にそうであるかのように放送している。一般人にアンケートをとったというデータや実験も、番組に都合よく操作したとしか思えず、とても信用できない。

電話 40歳代 男性 大阪

血液型と性格が科学的な事実であるがごとく放送している。これが事実なら、特定血液型の人たちに対する差別やいじめにつながりかねず、許されるべきことではない。

メール 54歳 女性 栃木

これまで血液型の番組は娯楽と思っていたが、学者が出てきて血液型と性格が科学的裏づけがあるといわれると信じてしまう。テレビの影響は大きい。血液型の番組がどんどんエスカレートしているようで恐ろしい。

メール 28歳 男性 三重

生まれつき備わっていて変えることができない血液型で、性格や行動傾向を特定することは、重大な差別行為に当たる。特に、子どもを使って“実験”を行っていたが、人権上倫理的に非常に問題がある。

電話 40歳代 女性 福岡

B型は悪いものと一方的に決めつけている。子どもが通う学校で「お前はB型だろう」といじめが始まっている。笑い話と言って片づけるわけにはいかない。

メール 17歳 女性 青森

学校で「B型だから」とみんなにいろいろ言われ、心では本当に傷つきました。性格悪い=B型って、いい加減やめろってかんじ。

メール 47歳 男性 長野

幼稚園児が実験対象とされており、彼らの行動があたかも血液型に由来するかのごとく紹介されている。科学的根拠のない性格判断で、子どもの資質が判断されたりしていいものか。

メール 42歳 男性 神奈川

血液型による性格判断の実験で、幼稚園児に対して、内緒の話を守れるかという実験をしていた。人道上許されず、差別を助長するものだ。

メール 25歳 男性 埼玉

番組の最後に、「この番組は差別を助長するものではない」とテロップ表示していたが、番組の内容は明らかに逆であり、許されるものではない。

メール 31歳 女性 愛知

外国では血液型などで性格を決めることはほとんどない。血液型性格診断は信憑性がないのだから、あたかも信憑性があるように放送するのはやめてほしい。

以上

2004年3月19日

「子ども向け番組」についての提言

2004年3月19日
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会では、2003年2月から、大人向け番組が子ども達に与える影響、ではなく、子どもにターゲットを絞った番組についての議論を続けてきました。
子ども番組制作者との意見交換や、番組視聴、海外の状況の調査など、さまざな角度から議論をして、2004年3月19日に、記者会見をして発表しました。

放送と青少年に関する委員会(以下、青少年委員会)は、2000年4月に発足して以来、放送が子どもに与える影響について議論をしてきた。しかし、その多くはおとな向けに作られた番組が、子どもに与える影響を検討するもので、いわゆる“子ども向け”に作られた番組についての議論は十分ではなかった。

そこで、改めて、視聴者を子どもに絞って制作・放送されている番組について、実際にレギュラーで放送されている番組の視聴、外国の子ども向け番組を取り巻く状況の調査、また、子ども番組のプロデューサーから話を聞くなどして、さまざまな角度から議論を続けてきた。

民放連は、1999年6月に「青少年の知識や情操を豊かにする番組を週3時間以上放送すること」を決め、同年10月から民放各局は「青少年向け番組」(2000年春に「青少年に見てもらいたい番組」と名称を変更)を、毎年の番組改編の時期に選定している。

しかし、青少年のためだけに特別に制作された番組は、アニメを含めても数本しかなく、現在の民放各局の対応は、既存の番組に「青少年に見てもらいたい番組」と命名するにとどまっている。

青少年委員会が東京キー5局へ、「青少年に見てもらいたい番組」の選定基準をたずねたアンケートでも、放送局の子ども向け番組に対する明確なビジョンは見えてこなかった。

あるテレビ局は、「1.青少年の数多くに見ていただける時間帯に放送している番組、2.エンターテインメントとして楽しんでいただきながら、知識や教養を高めるために役立つ番組、3.家族や自然、芸術などとの触れ合いを通じて情操を豊かにすることに資する番組」を挙げているが、この回答からは、子どもとおとなの違いをどのように考えて対応しているのか判然としない。

さらに青少年委員会で、放送局が「子ども向け番組」として制作・放送している番組を視聴した結果、子どもの購買欲を刺激するCMを挿入するなど、子ども=消費者とするものや、価値観の多様性を認めない、美醜・善し悪しを押し付けるものも多く認められた。そこには、子どもと正面から向き合い、子どもの成長のために、テレビが何をすべきかという視点が欠けているように感じられた。

NHKは、伝統的に幼児番組というジャンルに力を入れ、専門家とともに「子どもに見せたい番組」を積極的に制作・放送してきた。そのため、子ども向け番組のことはNHKに任せておけばいいという意識が、民放の放送現場に潜在しているのではないだろうか。

民間放送では、スポンサーや視聴率がネックとなってNHKと同様の対応はできないという反論も予想される。しかし、オーストラリアの商業放送では、「(1)6~13歳向けに制作された、楽しめると同時に知的・社会的ニーズを満たす番組を、平日の7時~8時または16時~20時30分の間、あるいは週末や休日の7時~20時30分の間に、週最低5時間放送する。(2)CMで中断されない6歳未満向けの30分番組を平日7時~16時30分の間に毎日放送しなくてはならない」などと監督機関(Australian Broadcasting Authority)により定められている。(NHK放送文化調査研究年報NO.45より)

文化的背景の違いは無視できないが、オーストラリアの事例は、日本の民間放送でも可能な子どもへの配慮として参考になると思われる。

現在、社会の多くの場面で、子どもはおとなと対等な存在だと考えられている。子どもは、未成熟な存在としての特権的な地位を追われ、おとなと同じ成熟した存在として扱われることが少なくない。子どもを消費者として捉えたり、子育ての中で子どもとの対等性を強調するなど、社会が子どもに成熟を強いている。このことが、おとなが子どもにかかわる必要性、つまり、子どもの成長発達に対して本来果たすべき責務を軽減してしまう。子どもをおとなとみなして番組を制作・放送している放送局もこれに加担していると言われても仕方ない。子どもに対する特別の配慮の必要性を放送界は再確認する必要がある。

これまで青少年委員会は、主にテレビ・ラジオが青少年に与える悪い影響について論議し、「見解」や「提言」を発表してきた。しかし、テレビが持つ公共性や、影響力の大きさ、大勢の人が容易に接触できるという特性は、子どもたちが広範囲の知識を身につけ、情操を豊かにするうえで、すばらしい役割を果たすことができると考える。

青少年委員会は、子ども向け番組の充実と、すべての番組に対する子どもへの配慮とは両立し得ると考える。子ども向け番組づくりの経験が少ないために、一般の番組づくりのうえでも子どもへの配慮に欠けるのではないか。そう言わざるを得ない面を指摘したい。子ども向け番組づくりの努力が、すべての番組へのよい刺激となり、子どもに配慮した番組を増加させ、テレビ・ラジオが子どもにとってかけがえのない、よい影響を与えることを期待したい。

以上のことから、委員会は、各放送局が、次のような点を検討されることを望みたい。

青少年委員会での検討経緯

1. 放送局は、その公共性から、子どもの成長発達を促進するための番組を作り放送する社会的責務を有していることを再認識してほしい。
2. 「青少年に見てもらいたい番組」について再検討を行い、なぜ見てほしいと考えるのか、理由を番組ごとに明らかにしてほしい。また、新たに子ども向け番組の制作が増えることを期待したい。さらに、「青少年に見てもらいたい番組」の存在が、一般の視聴者に十分に知られているとは言えない現状から、番組欄へのマーク付けや、番組冒頭でのテロップ表示など、視聴者に向けたアピール手段について考えてほしい。
3. 子ども向け番組の中で、ひとつの価値観だけが、唯一の正しいもの、良いものであるとどもたちが受け取りかねないような表現は避け、多様な価値観や生き方を子どもたちに示すような番組づくりを進めてほしい。また、子ども=消費者という視点から、子どもの購買欲や持っていないことの劣等感をあおるように商品の紹介をしたり、関連グッズをことさらにアピールしたりすることなどないよう、十分な配慮を求めたい。
4. 外部の専門家も加えた、子ども向け番組とその制作者をサポートするシステムを作るなど、 “子どもによい番組”について、多角的に検討をしてほしい。

以上

2002年12月20日

「消費者金融CMに関する見解」について

2002年12月20日

青少年委員会は、2002年9月から消費者金融CMについて、議論をしてきました。 4ヶ月の議論を経て、12月20日に「消費者金融CMに関する見解」として記者会見をして発表しました。
発表後の民放連のコメントや、委員会に寄せられた視聴者の意見などを公表します。
なお、議論の過程に関しては、"議事のあらまし"をご覧下さい。

近年、消費者金融CM(銀行系消費者ローンCMも含む)放送の増加に伴って、放送と青少年に関する委員会(略称:青少年委員会)にもCMへの批判的意見が寄せられている。意見の内容は、CMが「お金がなければ借りればよい」というメッセージを伝えるものであり、誰もがしていることとして安易に借金をする風潮を助長し、子どもや若者の金銭感覚を歪めるのではないか、というものと、そのようなCMを時間帯に関係なく流す放送局の倫理観念への疑問に集約される。

CMの多くは、若者へのアピールを中心に宣伝効果をあげるよう親しみやすく制作されており、音楽は幼児が覚えて口ずさむほどリズミカルに作られている。こうした点から、これらのCMによって青少年が容易に影響を受けるのではないかと懸念される。

なお、新規顧客に関する統計は、20代の若者が約半数(45.6%)を占めていることを示している。(出典:消費者金融連絡会2002年3月期)

青少年委員会では消費者金融CMを取り上げ、委員間の議論に加えて民放連の番組考査専門部会長に直接考えを聞く機会を設けた。委員会としては、放送事業者が、放送文化の向上の一翼を担っていることを自覚し、番組を向上させるよいスポンサーを求めて努力をしていることは十分に理解するものである。

また、深刻化する不況のなか、CM収入なしには存続しえない民放として、消費者金融CMを扱わざるを得ない事情や、CMのスポンサーである消費者金融会社の中には、証券取引所に上場している会社も多くあり、うち3社は日本経済団体連合会の会員であるという現状も認識している。

しかし、青少年委員会としては、放送を通じて青少年に悪影響が危惧される状況を見過ごすことはできない。視聴者から寄せられた意見にも真摯に対応すべきであると考える。

まず、民放連放送基準は、"3章 児童および青少年への配慮"で「放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分、配慮する。」(18)としている。

また、"17章 金融・不動産の広告"では、「金融業の広告で、業者の実態・サービス内容が視聴者の利益に反するものは取り扱わない。」(131→現137)とし、「安易な借り入れを助長するCM表現でないこと」が留意すべき点のひとつにあげられている。さらに、"15章 広告の表現"では、「広告は、わかりやすく適正な言葉と文字を用いるようにする。」(117→現121)と定めている。

これらを踏まえ、青少年委員会としては、消費者金融CMの現状は、放送基準に抵触するおそれがあると判断する。

そこで、以下の3点を民放各社に要望する。

  • 民放連が定めている「児童および青少年の視聴に十分、配慮する時間帯」である17時から21時までの時間帯は消費者金融CMの放送を自粛する。
  • 金利および遅延損害金などについて、もっとわかりやすい表現を用いて明示するなど、借金をすることに伴う責任とリスクについても触れる。
  • 昨今の自己破産および多重債務者の増加を踏まえ、安易な借り入れを助長するような内容ではなく、社会的責任を自覚したCMを放送する。

■民放連・放送基準審議会議長コメント

放送基準のさらなる順守・徹底への要請を含めて大変厳しい内容の見解である。

3点の要望には、民放の公共性と企業経営とのバランスの観点から直ちに受け入れ難いものがあるが、あえて委員会が見解をまとめた意味を重く受け止め、可能な限りその主旨を踏まえて対応策を検討したい。現在、放送基準審議会で消費者金融CMに関するガイドラインを策定中であるので、これがまとまり次第委員会にも説明したい。

日本民間放送連盟 放送基準審議会議長
桑島 久男(名古屋テレビ放送社長)

視聴者からの反響(代表的なもの)

27歳 石川

現在、テレビコマーシャルで大規模な宣伝を繰り返している大手消費者金融業者の多くは、利息制限法に定める利率を超える違法な営業を行っている。このことは、多くの判例が示しているばかりか、消費者金融業者が裁判所に提出した訴状でも違法な金利で契約していることを自ら認めており、もはや議論の余地はない。罰則がないとは言え、消費者の正確な商品知識の無さにつけ込んだ悪質な行為であり、許し難い。テレビで放送されることにより、あたかも合法行為であるかの如く錯覚を起こしており、この影響は軽視できない。時間を区切った自粛では十分な効果が期待できず、全面的な放送禁止若しくは利息制限法による金利が超えていることを消費者に知らせるよう、義務づけるべきである。

男性 千葉

昨今、犯罪が多発しています。私はこれは借金に起因するものが相当あると思っています。委員会が、日ごろ私が感じていたことを民放各社に要望されたことを知り、敬意を表したく筆をとりました。今後益々のご健闘を祈ります。

男性 34歳 東京

「消費者金融CM自粛」の記事を読み私も昨今のはんらんする消費者金融のCMの弊害に心を痛めていたのでこういった良識的な行動を起こしてくれる組織があることを知り思わず感謝の意を述べたくなりました。日本が不景気で荒んでいる社会になった、と1番痛感するのは四六時中流れる消費者金融のCMです。いたいけな可愛らしい店員やほのぼのとした家族愛を描いて一般市民を幻惑する非常に巧妙で悪意を持ったCMで民放には社会的責任や誇りがないのか、と情けなくなります。政治や官僚や知識層による反対意見が出てこないのも疑問でした。いくら広告収入が減っているからといって金払いのいい消費者金融業者に頼る民放には何らかの規制や圧力を行なうべきです。今度はプロ野球にまで進出らしいではないですか。委員会の行動は大変社会性のあるものです。継続な行動を期待します。

男性 35歳 東京

「消費者金融CMに関する見解」を発表したことに敬意を表します。誰かが言ってほしいと思っていました。あらためて、青少年委員会の活動に拍手を送ります。

女性 29歳 北海道

よくぞ言ってくれました、という感じです。最近、サラ金会社はイメージアップに必死なのか、「犬を飼いたいなら、お金を借りてどうぞ購入してください」と、ふざけたCMまで作って、それを苦々しく思って見ていた1人です。 テレビ局各社は、お金儲けのためなら、青少年、大人にとってもよくないCMを流し続けるのでしょうか。それならば、そのようなテレビ局に、政治を批判したり、援助交際を批判したり、あるいは「鈴木宗男」のような人を批判する資格もありませんよね。自分たちが一番、お金のために手段を選んでいないのですから。
私は、パチンコ屋のCMも、時間帯を選んで流すべき、と思っているのですが、その辺はどうお考えでしょうか。とにかく、このような運動をしている会がある、というのを初めて知りました。これからも頑張ってください。応援しています。

男性 18歳 山梨

今回の消費者金融CMに関する見解について。 民放各社への3点の要望で「民放連が定めている「児童および青少年の視聴に十分、配慮する時間帯」である17時から21時までの時間帯は消費者金融CMの放送を自粛する」という項目に対して、現在は生活の習慣の変化で21~24時に小中学生でもテレビを見ている事も多いです。ですから、17~21時ではあまり効果は望めないと思います。
「金利および遅延損害金などについて、もっとわかりやすい表現を用いて明示するなど、借金をすることに伴う責任とリスクについても触れる」という項目に対して、消費者金融には、借りたい時に借りれるというメリットがあるものの、借金が増えると、後の返済が大変になるというデメリットがはらんでいる。ですから、これなら効果はあると思います。
「昨今の自己破産および多重債務者の増加を踏まえ、安易な借り入れを助長するような内容ではなく、社会的責任を自覚したCMを放送する」という項目に対して、お金は楽して手に入れるものではありません。ですからこれなら効果はあると思います。

以上

2002年6月19日

法によるメディア規制に反対し、放送界の自律強化を求める声明

2002年6月19日
放送番組向上協議会
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会では2002年に政府が国会に提出した「個人情報保護法案」と「人権擁護法案」について議論し、“両法案は、表現の自由を脅かすだけではなく、せっかく積み重ねてきた放送界の自律努力を無にするものであり、放送文化の将来性を阻害するものだ”と考えることで認識が一致。同時に、“放送関係者に対しても、これまでの放送のあり方を厳しく点検し、自己規律を一層強めることを要望する”ことに決定。

2002年5月28日に「メディア規制法案に対する反対声明と放送界の自律を求める声明」原案を各委員に送付。6月12日に開催の委員会で原案を承認し、6月19日に記者会見を開いて公表しました。

私たちは、政府提案の個人情報保護法案と人権擁護法案に反対します。両法案とも、表現活動に政府・行政の介入を認めるものであり、放送の自由を抑圧する危険を伴うものと判断します。

放送と青少年に関する委員会は、放送界の自律によって放送文化の向上を図り、青少年の知識と情操を豊かにすることを目的とした第三者機関です。視聴者・市民の放送に対する批判、苦情、要望を公開し、審議し、番組制作者・放送局に自省を促す見解を発表するなど、2000年4月の発足以来、次第にその存在意義が認められつつあると自負しています。

言論表現の自由は、基本的人権の要の位置を占める大切なものです。その自由は市民一人ひとりの権利にかかわり、民主主義を左右する問題です。しかも、歴史が示すようにきわめて脆いものです。多数決原理で単純に是非を決めてよい性質のものではありません。表現の自由をめぐる問題は、社会の自律的な論議を深めるなかで解決すべきものと考えます。

両法案は、表現の自由を脅かすだけでなく、せっかく積み上げてきた私たちの自律の努力を無にするものであり、放送文化の将来性を阻害するものと言わざるを得ません。

私たちは、法によるメディア規制に強く反対します。同時に、この機会に、放送関係者がこれまでの放送のあり方について厳しく総点検し、自己規律を一層強めるよう求めます。

プライバシーへの侵入、集団的過熱取材による人権侵害や性・暴力表現の行き過ぎなど、メディアに対する苦情、批判は根強いものがうかがわれます。国会に未提出の「青少年有害社会環境対策基本法案」を含め一連のメディア規制法案は、このような世論のメディア不信を背景にしており、放送が焦点の一つになっていることは否定できません。

放送界は、人権、青少年に関する第三者機関の設置や各局ごとの自律強化を進め、集団取材対策の具体化にも乗り出しました。しかし、その成果も努力もなお充分とは言えません。放送の公共性や社会的影響力の大きさについてどこまで自覚しているのか、強い疑問を持たざるを得ないような事例も後を絶ちません。この状況が改善されない限り、メディア規制法反対に世論の全面的な理解と同調を得ることは期待できないでしょう。

私たちは、放送界が現状を直視し、大胆な自律強化によって表現の自由を守り、放送文化を創造的に発展させるために、決意を新たにして一層、努力されるよう、要請します。

以上

2002年3月15日

『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言

はじめに

「放送と青少年に関する委員会」は、2001年11月から報道・ニュース番組の衝撃映像と子どもへの 影響などについて、アメリカの同時多発テロ事件後のテレビ放送に関する論文、日本の子どもと保護者、教師などへのアンケート結果なども参考にしながら、議論を重ねてきました。
その結果を、2002年度3月15日に「提言」としてまとめました。

「衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮」についての提言

テレビの事件・事故報道は「事実」であるためのインパクトをもっているので、放送する側の意図を離れて、青少年に大きな心理的影響を与えることがある。このことについては、日頃子どもたちと接することの多い教育関係者やカウンセラーの間で指摘されながら、放送界では広く論議すべき共通の課題として必ずしも重視してこなかった。各放送局の報道ガイドラインなどにも子どもの視聴に十分配慮した規定は少ない。

「放送と青少年に関する委員会」は、発足当初から、この問題に関心を持ってきた。大阪の小学校児童殺傷事件やアメリカ同時多発テロ事件などの重大な事件が続発する時代状況を考え、改めて、衝撃的なテレビニュース・報道番組の子どもへの影響を議論した。

調査、研究データや議論の積み重ねも少なく、結論を出すのは難しい面もあるが、重要な課題なので、あえて放送界に一石を投ずるために、当委員会としては現在の考え方をまとめて「提言」とすることにした。放送関係者は問題提起として受け止めて論議を深めてほしい。

アメリカ同時多発テロ事件を受けて、臨床教育研究所「虹」が教師や親を対象に実施したアンケート調査によると、テレビニュースで飛行機が世界貿易センタービルに激突する瞬間などを見た幼児が「飛行機やヘリコプターを怖がる」「子どもだけでは眠れなくなった」「怖がってトイレへ行けなくなった」などのケースが報告されている。また、親たちの中には「死の重み、命の尊さが分からなくなってしまいそうだ」「刺激に対して鈍感になるのではないか」「戦争をゲーム的に捉えるのでは」などと、子どもの受け止め方に対する不安を抱いた人も多かったという。そして、「ショッキングな映像を繰り返さないでほしい」「子どもたちにも分かる解説のあるニュース番組を増やしてほしい」などの注文も出ている。

テレビ報道が「事実」を伝えるのは、国民の「知る権利」に応えることであり、民主主義社会の発展には欠かせないものである。その伝える内容が暗いものであったり、時にはショッキングな映像であったとしても、「真実」を伝えるために必要であると判断した場合には、それを放送するのはジャーナリズムとして当然である。子どもにとってもニュース・報道番組を視聴することは市民社会の一員として成長していく上で欠かせない。しかし、子どもたちにはニュースの価値についての判断がつきにくく、また、ニュース・報道番組では内容の予測が難しいため、突然飛び込んできた映像にショックを受けることがある。子どものテレビニュース・報道番組の視聴に際し、親子の対話など大人から子どもへの的確な働きかけがあれば、子どもの受けるショックを和らげるばかりでなく、子どもの社会を見る眼を開き、子どもの成長にとっても大きな役割を果たすと考えられる。この点は強調されてよいと思うが、世の中にはさまざまな家庭があり、子どもたちにはさまざまな環境がある。そのため、テレビで報道するにあたっては、子どもの視聴を意識した慎重な配慮、特に子供が関わった事件の報道に際してはPTSD*も含めた配慮が必要になっていると考える。

同時多発テロの起こったアメリカで放送局がどう対応したかを調べた興味深い報告がある。

NHK放送文化研究所の小平さち子主任研究員が「放送研究と調査2001/12」に記しているところによると、早い放送局では、事件当日に“子どもとメディア”の専門家と親を招いて、子どもの心のケアに関する親・教師向けアドバイスを提供する特別番組を緊急放送している。また、数日後ではあるが、子どもを含むすべての視聴者に対する影響を懸念する立場から、米ABCがいち早く飛行機のビルへの激突やビル崩壊の映像は動画として使わないことを決めるなど、各放送局ともショッキングな映像の使用をそれぞれ独自の判断で自粛した。ABCの判断には精神医学の専門家などによるディスカッションが影響を与えたといわれている。また、多くの放送局で、通常の情報番組や特別番組を組んで、子どもが心の安定を保つためにどうしたら良いか、アドバイスする番組を放送した。こうしたアメリカの放送機関による子どもへの対応は、

1.事件を伝える映像・情報が子どもに及ぼす影響への対応
2.メディアの積極的関与としての多様な子ども向けサービスの展開の2点に整理できるという。

同時多発テロの起こった当事国であるアメリカと、遠く離れた日本の放送機関の対応を比較するのは無理があるが、今後日本で起こるさまざまな事件・事故を想定するとき、参考にすべきことも多い。同時多発テロ報道で、日本の放送局でもショッキングな映像の使用を、ある段階から自粛したことは評価できるだろう。しかし、子ども向けのニュース番組としては、小学校高学年から中学生を対象としたNHKの『週刊こどもニュース』、民放では北陸朝日放送をキー局とする『KIDユS NEWS』(27局ネット)など、少ない現状を考えると、いざ大きな事件に遭遇したとき、各放送局は子どもたちに向けて的確な情報を適切に伝えられるだろうか。また、映像によってショックを受けた子ども達をどうケアしたらよいか、親や教師にアドバイスする番組が即座に組めるだろうか。これらの点を含め、早急に検討すべき問題があるのではないかと考える。

以上のような考え方に立ち、委員会では衝撃的な事件・事故の報道について次の点を各放送局で検討されるよう要望したい。厳密には年齢区分に応じた配慮が必要かと思われるが、ここでは一般的、原則的な点に絞った。

*PTSD=Post-traumatic stress disorder(心的外傷後ストレス障害:大災害や戦争などの異常体験をした後に起こるストレス障害)

1.衝撃的な事件・事故の報道では子どもたちへの影響が大きいことを配慮し、刺激的な映像の使用に関しては、いたずらに不安をあおらないよう慎重に取り扱うべきである。特に子どもが関係する事件で
は特別の配慮が求められる。
2.子どもは言葉の理解が不十分なため、映像から大きなインパクトを受け易い特性がある点に留意し、特に「繰り返し効果」のもたらす影響については慎重な検討と配慮が求められる。
3.ニュース番組内、あるいは子ども向け番組で、日常的に、子どもにも分かるニュース解説が放送されることが望ましい。
4.衝撃的な事件・事故の報道に際しては子どものことを配慮した特別な番組作りも研究、検討に値しよう。また、影響を受けた子どもの心のケアに関して保護者を支援する番組を即座に組めるよう、日頃から専門家チームと連携を図ることが望ましい。

●2001年11月(第018回)より

1.講演「青少年のために 各国のテレビはどう取り組んでいるか」

ゲスト:NHK放送文化研究所主任研究員 小平 さち子氏

NHK放送文化研究所の小平と申します。よろしくお願いいたします。

非常に大きなテーマで、委員会が期待されておられる内容の、どのぐらいの部分をカバーできるか分かりませんけれども、これまで私なりに少し調べてきた中から「青少年のために各国のテレビはどう取り組んでいるか」、副題を付けるとすれば、「子どもに及ぼすテレビの影響を巡る各国の動向」ということで、お話しさせていただきます。それぞれの国の放送制度ですとか、子どもとテレビを取り巻く環境、あるいは社会特性の違いによって、取り組みもかなりまちまちのアプローチがありますので、その中のある部分は、もしかしたら日本に取り込めるかもしれないという観点から情報の提供をさせていただきたいと思います。

*子どもとメディアの関係の議論 90年代に入って活発に

ご承知のとおり、20世紀の最後の10年間ほどというのは、多くの国々が子どもとメディアの関係、特にテレビを中心としてですけれども、この問題に集中的に関心を示してまいりました。懸念される影響については具体的にいろいろな形での対応策が議論されてきたと思います。

日本の場合には90年代の後半からそういう議論が活発になりましたが、その前提として日本以外の国々、世界のいろいろな国々の動向を見て、そこから影響を受けた部分というのも大きいかと思います。

そういうことで、きょうはいろいろな国の状況を、全部網羅するのは難しいですし、私の言葉の能力の問題もありますので、第一次的に資料が得られて、自分で読んでわかるという範囲ということで、たまたま全部英語圏になりますが、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアを取り上げます。同じ英語圏と言ってもかなり文化も違い、顕著な差があるということで、この4か国について話をさせていただきたいと思います。

参考資料としましては、いろいろな国の年表ですとか、それから調査結果の抜粋などを準備しておりますのでこれを併せてご覧いただきたいと思います。(資料83~89ページ参照)

早速ですが、資料1は各国の「子どもにふさわしくない番組の放送を認めない時間帯の設定といった、放送時間帯の規制」や「番組のランク付け(レーティング)やテレビ画面へのマーク表示」の実施の有無と具体的内容、「Vチップ制度」に対する姿勢などを示したものです。このテーマでお話したり、書いたりする際、こうした情報を一覧表としてお示しすることを求められることが多いので、昨年末の原稿執筆の際、作成してみたものです。ただし、この表だけではどのような対策を採っているのか全容はわかりませんし、本質を見誤るもとにもなりかねません。具体的になぜこういうことが決められているのかという、その背景を探らないとなかなか本当のところが見えてこない、というのが表を作りながら私自身感じたところです。

ですから、きょうはこの表を細かくご説明するということはいたしません。それぞれの国がどういう背景でそういう対応をしているのか、その辺りの違いについてむしろお話しさせていただきたいと思っております。

*商業放送主導で発展してきたアメリカのテレビ

まずアメリカは、ご承知のとおり、世界各国に議論のきっかけを提供することになりましたVチップ制度というのを世界で最初に、しかも1996年の電気通信法という法律によって導入したという大きな特徴を持っております。

この背景はと申しますと、アメリカのテレビはもともと商業放送主導で発展してきまして、テレビのスタート時点からマイナスの面の影響について、この国の中だけでも非常に大きく議論されてきたということがございます。

その主な内容と言いますのは、暴力描写や性描写の問題、それからコマーシャルが及ぼす影響、この二つが内容的には大きな問題でした。

もう一つは、その裏返しと言いますか、質の高い、しかもバラエティーに富んだ子ども向けの番組がない、このことは非常に問題であるとしてアメリカ自身感じておりました。これはまず、公共放送が始まったのが非常に遅かったこと、それから現在でもやはり商業サービスが主導になっているというような、元々の放送のシステムの性格によるところが大きいと思います。

ですから、アメリカでは議会、それから放送に関する規制監督機関でありますFCC(米連邦通信委員会)、あるいは市民団体、いろいろな形の市民グループが、少しでも子どもにとってのテレビを好ましい環境に向けていこうということで、いろいろ対応策を巡っての議論が60年代、70年代、80年代を通してずっと活発に行われておりました。アメリカは非常に子どもとテレビに関する調査研究が多いのですが、それも全部こういう背景があってのことなのです。

研究の数も多いし、議論も活発だし、市民のグループの運動というのも非常に盛んなのですが、90年代になっても、テレビの状況がなかなかいいほうに改善されていないという現実がありました。

*子ども向け番組充実へ向けての方策

90年代に入ってからは資料2の年表に示されるような変化が起こってきています。「テレビ暴力番組規制法」と「子どもテレビ法」という、この二つの法律が1990年に出てきております。「テレビ暴力番組規制法」というのが、後のVチップを導入するに至る、番組の内容面、番組描写の規制に繋がっていく1996年の法律になります。もう一つは「子どもテレビ法」の制定で、これはいわゆる質の高い、教育的な質の高い番組を放送するように義務づける、そういう流れとして展開をしていきます。

いずれも1990年にそういう法律が持ち上がったところですぐに結果が出るわけではなくて、いろいろ紆余曲折があって、90年代も後半、97年ぐらいになってようやく具体的なシステムが出来上がっているという、そういう経緯がございます。

その一つは、番組のランク付け(レーティング)と画面へのマーク表示、そしてVチップ制度の導入です。これはもうすでにご存じだと思いますので、細かく申し上げませんが、もう一つは年表で、「1997年9月、商業テレビで、子ども向け教育情報番組のマーク表示」という項目がありますが、ここで週最低3時間は子ども向けの教育情報番組を放送しなくてはいけないという、具体的な数量として表れた義務付けが登場ということになっています。こういう形で二つの異なる種類の規制が、90年代のアメリカで同時平行で行われたのです。

*Vチップ、ランク付け・・・新システムの評価

このように新しいシステムとかルールの導入が進んだのですが、その検証も行われています。資料3のグラフは番組ランク付けのシステムがどのくらい認知されているのか、また実際に親が使っているのかどうかということを示していますが、これもアメリカらしくて、新しいシステムを導入すると、すぐそのあとをフォローする調査を行っているのです。その結果によれば、こうしたシステムが予想したほど親達には認知、利用されていないという分析がなされています。その他にも、ランク付けの内容が正確に理解されているとは言えないことを指摘するデータも発表されています。

それから実際にVチップを組み込んだテレビが大きく宣伝されていたようですけれども、そういうテレビが販売されていることも親を含めて一般の人は知らないというデータもあります。お店の人に聞いてみても、そういうテレビを自分の店で売っているということも必ずしもわかっていないような状況もあるようでした。

また、子どもに勧めたい番組として、教育情報番組にマーク表示をするということが、Vチップの考え方とは別に行われてきているのですが、そういうマークがテレビの画面に付けられているということも、必ずしも親たちの間で認識されていない、そういった問題がアメリカの場合にはあるようです。

こういう状況があるのですが、99年にコロラドで高校生の銃乱射事件が起こりまして、またメディアの影響が急にクローズアップされました。この時はテレビというよりはビデオとか、エンターテインメント産業全般が問題になりました。さらに最近ではインターネットの内容の問題なども出てきまして、テレビだけでなく、メディア全般の中身についてもっと規制強化をしなくては、というような声がまた議会の場で起こっているという状況があります。

*急進展するメディアリテラシーの取り組み

アメリカというと、どうしても規制の強化ということが話題になりますけれども、それ以外の部分として、最近はメディアリテラシーの取り組みがあります。アメリカでは70年代からクリティカル・ビューイング・スキルの育成というようなことは言われてきましたし、80年代には市民グループが自衛策として、自分たちが賢い視聴者にならなければ、という動きの中でメディアリテラシーの考え方が出てきておりました。それが90年代になって、こういう具体的な規制の動きが顕著になる中で、やはり本質的にはメディアと正しく付き合っていく力というのを根本的に自分で身に付けておかないと、メディアの変革期にうまく生きていけないという発想の下で、メディアリテラシーへの取り組みに力を注いでいます。そのように私は感じております。

メディアリテラシーというと、カナダが先進国と一般的に言われます。確かにカナダとはアプローチは違うのですけれども、アメリカという国は、規制をかけるときも非常にダイナミックに法律を使って、というようなことをやりますが、市民の立場からメディアに積極的に関わっていこうとするメディアリテラシーの取り組みというのも、非常にダイナミックに展開していると言えます。

また、公共放送のテレビでも、市民と一緒に番組を作っていく、実際に高校生たちをプロが作る番組の中に取り込んでいって、番組制作の体験もさせるし、それを高等学校の授業の単位としても認めるというようなことを積極的にやっています。各地方の公共放送局などでも、放送局を開放して、子どもたちは実際にプロと一緒に話をする機会もあり、番組作りをすることもできるというようなこともどんどん増やしているというようなことがあります。

ケーブルテレビでもそういう例があります。これは私が非常に好きな番組の一つですが、ニッケルオデオンという子ども専門向けのチャンネルでちょうど10年前、湾岸戦争をきっかけに始まった小学生向けのニュースマガジン番組『ニックニュース』というのがあります。大人向けのニュース番組のアンカーパーソンをやっていた女性のジャーナリストが、子ども向けにジャーナリスティックな視点を持った番組がアメリカの中に一つもないというのは残念なことだと考えてスタートさせたのです。湾岸戦争のような重大な社会の状況を子どもたちにきちんと理解できる形で提示する、そういう番組を作ろうということで始まったのですが、この番組ではメディア自身のことも重要なテーマとしてよく取り上げています。テレビの影響力の多様性とかVチップをめぐる議論など含めて。

アメリカの同時多発テロ事件の5日後、この『ニックニュース』が緊急スペシャル番組を放送したということもありまして、その番組のことなども含めて今、ちょうどアメリカの子ども番組を紹介する文章を書いているところです。(『NHK放送研究と調査』12月号)子どもたちに、テレビなどメディアのメカニズムや特性を学ばせながら、重要な情報を入手して自分で考え、議論させることを試みるシリーズなんですね。こういうすばらしい番組があることを、アメリカについては最後にご紹介しておきたいと思います。

*子ども番組に対する厳しい姿勢、商業放送もCMなし―イギリス

これに対してヨーロッパですが、ヨーロッパはアメリカと反対に元々公共放送が主導で発展してきたために、後から出てきた商業放送に対しても、青少年保護を含めた一定の番組基準の遵守というのを義務づけてきた歴史的な背景がございます。

フランスなどでは番組のランク付け、それからランク付けしたものを画面に表示する、マークで表示するというようなことをやっております。アメリカより早い時点で実施してはおりますけれども、Vチップのような強制的なしくみを設けて番組を規制するという考え方には反対の方向をとってきました。(資料1参照)

こうした姿勢が一番顕著な例がイギリスだと思います。イギリスではVチップ制度も取り入れなければ、その前段階としての番組のランク付けというのも取り入れない。というのは、それは全く問題の根本的な解決策にならないという考え方をとっているからなのです。

それでは、なぜイギリスはそういう考え方をとるかといいますと、元々イギリスには公共放送と商業放送と両方ありますけれども、イギリスの商業放送というのはアメリカとか日本で言う商業放送とは全然違いまして、商業放送ではあるけれどもかなり公共的な性格が強いのです。特に子どもの番組に対してはその性格が強くて、子ども番組は商業テレビであっても、間にCMを挟んではいけないことになっていますし、また、公共放送の子ども番組を見ていても商業放送の子ども番組を見ていても、区別がつかないくらい両方とも中身はバラエティーに富んでいるし、描写の問題についても差がない。そういった元々の背景があります。

公共放送、商業放送ともそのことを非常に自負している。そういうアメリカとは全く別な観点から、番組の描写についてはテレビのスタートの段階から厳しい姿勢を保ち続けています。

*90年代 暴力描写に対する関心の背景

だからといって映像描写を巡る問題というのをイギリスは全く抱えていないわけではありません。90年代以降、多チャンネル時代を迎えてということですが、それまでほとんどの番組はイギリス、あるいはヨーロッパの番組だったのが、アメリカの番組が急にたくさん流入してくる中で、非常に神経をとがらせている部分があります。

例えば子ども番組について言えば、アメリカのアニメマンガをイギリスに輸入すれば視聴率が上がるだろうということがあるわけですけれども、それはイギリスのこれまで育ててきた子ども文化を崩すことになりかねない、ということで、80年代いっぱいぐらいまでは、ディズニー以外のアメリカのアニメについては取り入れることに対して非常に厳しい姿勢をとってまいりました。その状況も、90年代の半ば以降少しずつ崩れてはいますけれども、そのぐらい子ども番組に対する元の素地が違うということがございます。

*視聴者との信頼関係で成り立つ“午後9時のルール”とメディア教育

では子どもにとってテレビ番組の状況をよくするためにどういうことをしているかというと、アプローチとして三つの特徴があるかと思います。一つは“午後9時のルール”というふうに言われますけれども、午後の9時前には子どもにとって好ましくないような番組は放送しないという、大前提のルールがあることです。これは1960年に既にあったルールですけれども、こういうものを非常に大事に守っている、しかも放送局が一方的に言ったのではなくて、視聴者もそれを認めて受け入れているということです。

そして第2点として、放送機関と視聴者の信頼関係というのを非常に尊重し、その信頼に基づいて放送局が作っている自主的なガイドラインというものを時代の変化に合わせながら変えていくことをしています。

第3点としては、メディア教育です。これもイギリスは早くから取り組んでいるわけですけれども、メディア教育についても新しい時代に適用する形で展開させて、イギリスの映像文化ですとか、映像産業の発展にも結びつけていく、そういう視点を持っているというのが特徴だと思います。

例えば“午後9時のルール”ですが、これはいろいろな国で、何時を境にして、それ以前は子どもたちが見ているから「番組の描写に気をつけましょう」ということを決めている実態があります。けれどもイギリスの場合には、子どもの保護ということももちろんありますが、安全地帯としての9時という考え方ではなくて、逆に「9時以降には子どもにはふさわしくないけれども、大人にはぜひとも伝えたい、そういう番組も放送します」という、むしろそういうところからの発想の存在というのが重要な特徴だと思います。ですから「今いろいろな問題が起きているから放送時間帯の制限を設けましょう」、ということで出てくる対応策とはまったく観点が違うと思います。

*描写に対する判断基準と管理メカニズム

それから自主ガイドラインについてですが、現在、公共放送のBBCは、「BBCプロデューサーズ・ガイドライン」、商業放送のほうは、放送規制監督機関のITCの番組コードという形で設けられていますけれども、これも社会実態に合わせてどんどん中身を更新してきたというものです。

これもポイントを幾つか私なりに整理してみますと、まず第1に、映像描写の取り扱いの範囲が非常に広いのです。私たちはどうしても“暴力描写”というような単純化した表現をしてしまうのですけれども、イギリスではバイオレンスと言っているときの中身にも、例えば家庭で夫婦げんかをするシーン、それを子どもが見て、どのぐらい恐い状況を感じるのかと、そういう描写まで含めて細かくガイドラインの中に書き込んでいます。

第2にいわゆる暴力描写についても、一律にすべてを排除するということではなくて、ストーリーの展開上必要であったら入れることもあり得るという、そういうアプローチがあります。ですから、文脈上必要なのか、必要でないのかによってそういう描写を認めるかどうかの判断をするという特徴があります。

3点目としてこういうルールというのは、いったん決めたらもう変えないということではなくて、社会の変化に合わせて自主基準というのも変える必要があるという、そういうスタンスをとっております。

さらに4番目のポイントとしましては、こういう描写の問題を自主ガイドラインにしたり、いろいろな規制として考える際に、商業テレビと公共放送が歩調を合わせるということが歴史的に見て特徴としてあります。もともとイギリスの商業テレビの公共性が強かったので、そういうことがやりやすいというのがあるかもしれませんが、資料の年表にありますように(資料4参照)、例えば1980年に公共放送のBBCと商業テレビが共同でガイドラインを発行しています。お互いにすり合わせをしながら、イギリス全体として子どもに向けてのテレビの環境をトータルな形で守っていこうという発想がかなり強かったように思います

*イギリスの自主基準に基づく番組チェック―重視される全体の文脈

いくらガイドラインが立派でも、それに合わせて実際に放送局がきちんと番組を放送していかなければ何もならない、ということが必ず問題になると思います。ちょうど2年前に公共放送と商業テレビ局のいくつかを直接訪問取材したことがございます。その時に、放送局では自主ガイドラインとか番組コードに照らし合わせながら、いろいろなステップでチェックをするメカニズムが細かく設けられているという印象を受けました。

90年代に入って、特にその傾向が見られるようなのですが、たとえば、午後9時以降放送の番組でも、子どもの目に触れることも考慮して、必要に応じて警告表示と呼ばれる、「若干気になる表現を含んでいますので気をつけてください」といったような番組冒頭でのアナウンスを付けるというようなこともなされています。このような時、その描写が適切かどうかという判断基準になるポイントというのは幾つかありまして、まず第1に、いろいろな自主基準の文字面を優先するのではなくて、最終的には公共の利益を優先するというようなアプローチがとられております。

判断に当たっては、最終的には解釈の問題が非常に大きいものですから、全体の文脈の中で判断していくしかない、ということをイギリスのどの放送局の人も言っております。そのための判断材料となるのがガイドラインに書かれている具体的な内容だけれども、結局一つ一つは脈絡の中で決めていくしかないだろうと。

問題となる場面が脈絡上必要なのかどうなのかということの他に、別の表現で言い換えられないかどうかというのがもう一つのポイント。それからそういう描写を提示する長さが適切なのか、次に、見ている人にとっても心構えができる範囲内のインパクトなのかどうか、非常にびっくりさせることなのかどうか、そのようなことも判断の基準に入れているようでした。

それからもう一つは、放送するのが午後9時より前なのか後なのか。これはイギリスの放送局の人は必ず言います。同じ表現でも「夜11時ならいいけれども、9時じゃあちょっと」というように、必ずその問題が出てきます。

それからさきほど言いましたが、事前に「こういう描写が出ます」という告知をしているかどうか、告知をしていれば、そういう映像を出してもいいけれども、それをしないで放送してはいけない、ということがあります。「こういう映像だったら一般の視聴者から苦情が多いかどうか」ということは、特に判断基準として重視はしないという考え方も聞きました。

その描写の部分だけ見ると、かなり問題と思うようなものでも、実際上は放送されているということも多いのですが、それは全体の脈絡の中で見ていれば、この映像は構わないというトータルな判断をイギリスは非常に重要視しているためなのです。

逆に言いますと、イギリスにはベースとしてこういう考え方があるから単純に番組にA、B、Cとランクを付けて、放送するしないというような形がなじまないという感じがいたしました。

全体的に見てイギリスの場合には、外から強制的に加わる力によって設けられるルールに対しては、その実効性をかなり疑問視しているのではないかと思います。元々放送が始まった時にある程度きちんとしたシステムが成り立っていたということがありますけれども、新しいルールを作るときには、視聴者と放送局の側とで社会的に納得できるスタンスをお互いに了解して、放送局はこういうものを出します、見るほうはこういうふうに見ますと。「9時以降は親の責任で子どもに見せます」というような共通の約束事も非常に重視する文化があるのがイギリスだと思いました。

資料5はイギリスの一般の視聴者が現在実施されているルールについてどのように思っているかということを調べたものです。例えば午後9時というのがイギリスにおいてどういう意味合いを持っているか、そうしたルールについての浸透度の高さがうかがえるし、視聴者のほうも視聴者としての責任というのを認識しているということが分かります。視聴者のほうも外からの高圧的なルールをむしろ望んでいないようです。つい最近、この秋に発表された調査報告などを見てみましても、イギリスは“午後9時のルール”というのを一番重要なルールとして認識しているという結果が出ておりました。

*メディア教育への取り組み―映像文化育成の視点

イギリスはメディア教育については長い歴史があるわけですけれども、伝統的なイギリス流のメディア教育というスタンスだけではなくて、90年代に入ってから新しい形で出てきているメディアリテラシーに対する取り組みということについても、新しい視点でやっていかなければいけないと、そういう意味では非常に謙虚な姿勢というものが見えます。アメリカなどから見ると、「イギリスはメディアに関する学習を非常に早くから始めていて、イギリスに学ぶ部分が多い」と言うのですが、イギリスでは、「異なるアプローチのメディア学習の捉えかたも必要」ということで、学習の中に、これまでよりも積極的にメディア制作を取り入れ、次の世代の創り手を育てるという観点も重視しながら、イギリスの新しいメディア教育のあり方を探っている状況があります。

このようにアメリカとイギリスというのは非常に対極的なアプローチを取っていると思いますが、次にカナダとオーストラリアについて簡単にお話をしたいと思います。

*アメリカ製番組の文化的影響を案じてのVチップ開発―カナダ

カナダとオーストラリアは自分の国の文化という視点から子どもとテレビのことを非常に強く考えている国、その代表的な二つの国だというふうに思っております。

カナダと言いますと、最近必ず言われることに、Vチップの技術を開発した国、ということがありますけれども、Vチップ制度という考え方になりますと、アメリカとはまったく違うというのが重要なポイントだと思います。

よく引用されるフレーズなのですが、カナダの放送規制監督機関がそのポリシーとして示していることで、“「暴力描写の問題の解決」について、10パーセントが「業界の自主的な基準の作成」、10パーセントが「Vチップのような新しい技術の開発」、そして残りの80パーセント、―これが一番大事だというふうに言っておりますが、「市民の意識の覚醒とメディアリテラシーなどの教育によって解決をすること」である”と。元々カナダは初めからVチップのような仕組みに頼るということではなくて、メディアリテラシーの育成ということが最初にあって、それ以外の方法もあるのであれば取り入れていこうと、そういうアプローチを採っております。カナダについては資料6の年表もご覧ください。

カナダの場合、子ども番組の状況の大きな特徴と言いますのは、アメリカの番組の影響を非常に気にしているということです。カナダがいくら自分の国の中で好ましい番組を作って放送していても、物理的に隣のアメリカの番組が全部見えてしまう。正式に輸入をしなくても、番組が映ってしまうという状況があるのです。もちろん番組の輸入ということもありますけれども。

カナダの中で番組のランク付けの問題ですとかVチップの導入という議論が行われる時に、カナダが作った番組を心配しているのではなくて、アメリカ製の番組を気にしているのです。

もう一つ、カナダで販売されるテレビの受信機はほとんどがアメリカ製ということがあります。ですからVチップ制度の導入でも、カナダは自分の国にそれを普及させることよりも、アメリカがきちんと自分の国の中での問題を解決して欲しいというのが本音だったのではないかと思われます。カナダは「映像描写の問題を論じるときに、1国の問題としてではなく、世界共通の問題として考えよう」ということを非常に強調いたします。

1993年だったと思うのですが、国際会議の場で、こういうテーマをカナダが提案してディスカッションをしたことがありますけれども、そのときにもカナダの放送規制監督機関の人が一生懸命この点を力説していました。また、アメリカの議会などにカナダのメンバーがロビー活動をしているという話も聞きました。

*メディアと教育の連携が強いカナダのメディア教育

カナダと言えば、すでによく知られていますように、メディアリテラシーの取り組みが早く、学校教育にも浸透しているという特徴があります。しかもそのメディアリテラシーの取り組みの中で放送機関、メディア側と教師、学校教育が非常にうまく結びついているということで注目されています。公共放送だけでなく、商業テレビもケーブルサービスも、それぞれがメディア学習に役立つようなサービスを提供していて、日本やアメリカを含む多くの国々が参考にしようとしているという状況があります。このようなメディア教育のアプローチにも、カナダという国が、自国の社会のテーマ、文化の観点から、テレビなどのメディアが提供する内容に注目しているということがわかります。

*「子ども番組育成」の観点に立つオーストラリア

オーストラリアの場合ですが、自国の文化を重視するということでは、カナダと共通している部分もあるのですが、もう一つ独自のおもしろいシステムというのがあります。オーストラリアではアメリカだけではなくて、イギリスからも番組をかなり輸入して放送している国ですけれども、この国では子ども番組の事前認定と、一定基準量の放送義務付けというのを1979年から実施しております。

番組の視聴制限ですとか、義務付けという言い方をしますと、ネガティブな観点からの番組ランク付けという発想があるかと思いますが、オーストラリアの場合にはそうではなくて、子ども番組の育成のためのルールです。例えば1週間にこれだけの子ども番組を放送しなくてはいけない、というルールをスタートの時点で設けておかないと、オーストラリアの中に好ましい子ども番組は育たないだろうという、そういう発想がかなり早い時期からありました。1979年に、商業テレビ局では、1週間に3時間以上の小学生向け番組と2時間以上の幼児向け番組を放送しなくてはいけないということが決められたのですが、事前に子ども番組としてふさわしいという認定を受けた番組を放送するということなので、かなり厳しいシステムになっていると思います。現在ではこの時間量も増えて、年間390時間、ですから週あたり平均7.5時間となっています。(資料7参照

まず、子ども番組と言いましても、小学生向けに適した番組と、それから幼児向けに適した番組というのをそれぞれ別に基準を設けて、これだけの分量を放送しなければいけない、また実際子どもたちが見るのにふさわしい時間帯に放送しなければいけないというようなことが決まっております。

*オーストラリア文化の重視に基づく子ども番組の育成

もう一つ興味深いのは、オーストラリア製の番組を、ある一定量放送しなくてはいけないということを定めていることです。いくらいい子ども番組だからといっても、それをほかの国から輸入してきた番組だけで埋め合わせてはいけないという、そういう視点がかなり強く入っています。同じ「文化の重視」と言いましても、カナダの場合には子ども番組についてここまで細かいルール付けはありませんから、そういう点でオーストラリアは非常にユニークだと思います。

しかも、厳しいルールを決めたというだけでは、なかなか実効上難しいということがありますので、こういう番組を作っていくために連邦政府がバックアップする形で、子ども向けの番組を作る、あるいは開発研究する財団としてACTF(オーストラリア子どもテレビ財団)を1982年に作っております。実際に子ども向けのいい番組を作るプロデューサーを育成する、あるいはいい案を持っている人には金銭的にもバックアップして番組を作りやすい状況を作っていくというように番組育成の環境作りということにも、オーストラリアは非常に力を入れております。

このオーストラリアの週3時間の子ども番組ルール(今は年間390時間ルールですが)は、アメリカの制度、システムにも影響を及ぼしました。おそらく日本の民放での3時間ルールというのも、直接的にはアメリカで3時間というのが行われているところから取り入れたと思いますけれども、そのアメリカが影響を受けた元は、このオーストラリアだったということです。そしてオーストラリアも元はと言えば、アメリカなどの商業ベースで作られた番組の影響を弱めて、オーストラリアの子ども文化を育てるテレビ番組の発展のためにこのシステムを作り、それが逆輸出という形でアメリカにも影響力を及ぼしているという非常に興味深い関係にあると思います。このオーストラリアの例は、アジアの国々などが本格的に自分の国の力で子ども向け番組を作って普及させていくスタートの段階で、ぜひこういうアイデアを取り入れておきたいということで、関心が集まっているシステムのようです。

オーストラリアは自分の国の文化を大事にする中で子ども番組を育てようという意識が強いので、当然のことながらメディア教育も盛んな国なのですが、私が知る限りではすでに放送番組、特に学校教育の番組の中でメディア教育に役立つ番組というのをかなり体系的に取り入れている国だと思います。

オーストラリアというのは、放送局の規模も小さいですし、それから実際に学校放送のような番組でも、イギリスとかカナダからの輸入番組が非常に多いのですけれども、メディアに関する番組、あるいは子ども向けのニュース番組などは、しっかり自国の文化の中で支えて作っています。そういう発想の中にもメディアに対する考え方というのが表れていると思いました。

非常に駆け足ではございましたが、4か国の例をお話させていただきました。

意見交換

〈委員〉
日本で同じような年表を作ると、どのようなものになるのでしょうか。

〈委員〉
テレビに対する俗悪論議はテレビがスタートした当時から続いているけれども、90年以降は世論の高まり方も違うし、その対応についての議論も全社会的になってきたという感じがするので、日本版年表を作ってみる必要がありそうですね。
〈委員〉
確かTBS発行の「新・調査情報」によくできた年表がありました。
〈委員〉
今日報告された国は子どもに対して何をすべきか、大人の責任をどう果たしていくかという観点が明確で、それが制度に反映しているように思いました。
〈小平〉
以前放送文化研究所の機関誌で原委員長がインタビューにこたえておっしゃった事ですが…。いったい私たちはどういう市民社会を作りたいと思っているのか、子どもたちにどうあってほしいのかという、そこのところの議論がなされないまま、基準を設けるとか、日本の場合はそういうところにいきなり飛んで行ってしまっているみたいなところがあります。ほかの国の番組がたくさん流れ込んできてしまうというような、文化のせめぎ合いっていうのでしょうか、そういうものが顕著な国というのは、そういう意識を持ちやすいという部分があるのかとは思いますが。
〈委員〉
日本の民放ではスポンサーをつけることが重視されているから、子ども番組は売りにくいということで現在のような傾向の番組になっていると思うのですが、イギリスの場合などはどうなのでしょうか。
小平 イギリスでは既存の地上波のチャンネルでは、いわゆるコマーシャルというのは子ども番組自体につけません。そういう意味で子ども番組は商業テレビの中でも特別扱いということです。全体のメカニズムの中で、スポンサーがつかなくて番組が作れない状況にはしないようにしているわけです。
〈委員〉
個々の番組でまかなえなくとも、全体として儲かった部分で社会還元をするという思想があってもいいわけだし、ヨーロッパにはあるのではないかと思う。社会の側がそういう要求を放送局にしていくべきではないだろうか。「子ども向け番組が赤字でも他の部分で補う、それが放送局としての社会的責任であり、義務だ」というくらいの要求を出していかなければいけないし、そうしないと成り立たないでしょう。また、もう少し本気になって評判のいい子ども番組を作れば「視聴率が低くても企業として良心的なイメージを求めたい」という理由でスポンサーがつく可能性も十分あると思います。
ところで文化的状況、社会環境も含めて、どこの国が一番モデルに出来そうですか。
〈小平〉
ちょっとお行儀悪く、つまみ食いになってしまいます。例えば非常にダイナミックに動く、研究にしても状況の変化があると即応して動く、という意味でいえば、そういうエネルギーはアメリカから学ぶことがあると思います。ただ、視聴者と放送局とが共通理解を持った上で、いい番組を放送していく環境やルールを育てる、そういうトータルなシステムから言えば、私はイギリスに学びたい部分が非常に多いです。放送の仕組みで言うと、日本の場合、アメリカよりはイギリスのほうにかなり近い部分もあります。
文化という観点では、もちろん、日本は固有の大切な文化を持っているのですが、テレビ開始当初から、自国制作の番組を放送することが中心だったということもあって、メディアのことを考える時に、オーストラリアやカナダのような形で自国文化を意識するということはなかったですね。ただこれからは、他の国の優れた番組の観点や、メディアに関する学習、教育や、メディア環境づくりのアイデアを取り入れていくという意味でも、この両国に学ぶところは大きいと思います。それぞれの国から刺激を受けられる部分があると思います。
それから具体的に個々の番組ということから見ていますと、今日触れた以外の国も含めて多くのすばらしい例から刺激を受けるということがあります。こういう話をしていくと、どうしてもアメリカの番組というのが悪者になりやすくて、お話をしながら少し気にはなっていたのですが、アメリカの番組の中にもいいものがたくさんあります。どこの国からも学べる部分はあると思います。
90年代後半、「子どもとメディア」をめぐるテーマの中でも、規制のことなどを少し勉強しなければいけないような状況が出てきて、研究対象にしていますが、私自身元々の関心は、どうやったら新しい時代に即したいい番組、おもしろい番組、楽しい番組が開発できるのだろうかというところにあります。さらにそういう番組を制作して、見てもらえるためのトータルな環境を作るためにはどういう番組を制作していったらいいのかという、そういう観点で考え、研究も続けたいと思っております。
〈委員〉
一般成人向けの番組の内容というのは、日本の番組とアメリカやカナダとかを比べてどうなのでしょうか。暴力、セックス表現などのレベルは。
〈小平〉
それはご覧になる方によっていろいろ感じ方やご意見が違うので、暴力度がどこの国が一番強いのかというのは非常に難しくて簡単には言えないですね。例えばヨーロッパやカナダ、オーストラリアにとってアメリカ製番組の描写が批判の対象になりやすいというような傾向がありますが。またヨーロッパの中でもドイツの番組などは、かなり教養的な側面、哲学的要素を感じるといった印象はありますが。
〈委員〉
イギリスの放送機関での番組チェックに関してですが、制作のどの段階でどのようなチェックがされるのかを知りたいのです。また、番組で問題が起きたときの責任についても。
〈小平〉
番組の種類や個々のケースによっても違うようなのですが。例えばドラマのように、まず最初の段階である程度決めておかないと、スタートしてからでは手直しできないという場合には、台本のところで細かく検討するということもありますし、実際に出来上がったものを見てみないと何とも言えないという種類のものについては、オンエア直前の段階のチェックを重視する。これはギリギリどうなのだろう、何も警告アナウンスをしないまま放送した場合に安全だろうか、などと作り手が迷う場合は、そういう相談をするセクションがあって、そこで判断をします。
一律に全部どこかへ持って行ってそこで全部同じ基準で見ていくということではなくて、最終的にはプロデューサーの責任において判断します。その基準になるのが自主基準のガイドラインです。また、それまでの判断事例もファイリングしてあって判例的に参考にしているようです。
苦情処理、苦情を受け付ける部門というのは各放送局にありますし、別途商業テレビの規制監督機関などもあって、そこにも視聴者の声が届くようになっております。そこでどういう審議をして、どういう結果になったかというのは公表されております。苦情がきても放送局として「このスタンスで正しい」ときっぱり言い切って、基本姿勢を貫くことも多いと聞きました。そういうコミュニケーションが成り立つのは大切なことだと思います。
〈委員〉
今後、これからの課題として各国が抱えている大きな問題というのは、どんなものがあるか、ご説明いただければ。
〈小平〉
その辺をもう少し追わなければと思っているのですが、一つには、テレビだけではなくてビデオとかテレビゲーム、一番大きいところでインターネットですね。その中身について、今、かなり議論、話題になってきておりまして、映像メディア全体の問題として子どもとのかかわりを考えなければいけないのではないかと、そういう傾向がいろいろな国で出てきているようです。確かオランダだったと思いますが、すべての映像メディアをある同じ基準で見ていくということが議論されていると聞いています。
〈委員〉
アメリカもこの7月にそういう公聴会があって、すべての映像メディアを同じ基準でレーティングするためのスタンダードを作ることの是非といったことが議論されています。作り手側は反対していますが、NGOとかから「やってください」、「親たちが混乱しています」という動きがあるのですが、オランダもそういう感じなのでしょうか。
〈小平〉
そうですね。テレビ、インターネット、ビデオなどそれぞれ違う基準でいいのか、という考えもあるのだと思います。例えばテレビだけはいい状況になるけれども、テレビゲームのほうはそうではないとか、ということが生じると、一人の子どもにとっての環境をトータルで考えたときには十分ではないのではないかと、そう考える傾向が出てきていると思います。
ただ、現実問題として同じ形でランク付けなどをしていくということがいいのかどうかについては、必ずしもみんながそれを望んでいるようには思えません。
〈委員〉
デジタル化したりしていくと、多分数年後にケーブルとかその他で、全部同じようにアクセスされてしまう可能性があるでしょう。その前にトータルとしての基準を作っておかないとまずいですね。
〈小平〉
インターネットでテレビが見られたり、テレビ画面からまっすぐパソコン場面に行ったりという状況が生まれると、レーティングとか、ラベリングをすることが本当に問題の解決策になるのかどうかということが改めて問題になってくるのだろうと感じております。
〈委員〉
あと、ブロードキャスティングがたかだか10チャンネルで、ケーブルでもたかだか100とか200ですが、インターネットは何万だか、何十万だか分からないほどの量でしかも毎日変わるわけですから、レーティングでいくかどうか。困りますね。インターネットにしてもフィルタリングをしてもすぐ裏をかけるので実際は意味がないし…。
〈委員〉
Vチップは失敗だったと言ってしまっていいですか。
〈小平〉
そうですね。アメリカでの各種調査結果や研究者たちの話を総合的に考え合わせて見ても、この先成功へ向けての見通しは難しいようです。
〈委員〉
調査でも一般の人たちの認知度が低いですね。文部科学省の視察団の報告を聞く限りでも、知られていない。
〈委員〉
民放では事前表示をこの10月から試み始めました。事前表示についてはまだ議論が日本では残っているわけだけれども、この点はどうですか。事前表示はやっぱりやったほうがいいのか、それともあまり効果がないのか、いままでの経験から言えるのかどうかですね。
〈小平〉
イギリスなどでは、放送開始前のアナウンスで事前に情報提供されているということで、見る側の心構えができ、自分で見るか見ないかの判断はできることから、ほかのやり方に比べれば比較的評価は高いようです。
〈委員〉
非常に難しい問題で、感じで話していただければ結構です。各国、文化が違うから価値判断も違うはずですが、いい番組とは何か、悪い番組とは何かについて、価値観がほぼ共通していると言えますか。それともかなり乱れていると言えますか。
〈小平〉
子どもに向けてのいい番組というほうのベースになる基準というのは、ある程度の共通理解があるように思います。子ども向け番組のような国際コンクールなどに参加していますと、確かに文化、背景は違いますけれども、本当にみんながいいと思うものはいいという、文化を越えて理解できる部分があるというのはかなり感じます。
教育番組だけでなくて、エンターテインメント用に作っている番組でも、そういうところで作り手たちが一致している部分というのはかなりあると思います。
それと、さきほどからお話が出ていますスポンサーの問題とか、制作環境面での障害があるために苦労する部分があるけれども、本当は子どもたちに向けこういうものを作ってみたいと意欲を持っている創り手というのは、どこの国にもたくさんいるということも感じています。
〈委員〉
法的規制と自主規制とミックスされたオーストラリアなんかその典型かもしれませんが、その辺はどうお考えですか。実際の問題として自主規制では商業放送である以上、なかなか難しいでしょう。そうすると、ある部分は法的規制が必要にだんだんなってくる、そういう社会的要求になっているのか、やはり法的規制というのはいろいろな意味でまずいから、困難でも自主規制だけでやるべきだということになっていくのか、その辺りどうですか。個人的な感想でいいですが。
〈小平〉
私は自主規制重視のイギリスの場合に注目しているのですが、ここでは外から押しつけられていたルールに自分が合わせなければいけないというのは結果的にうまくいかないというような文化があります。法律であってもそうでなくても、いきなり上から、自分の理解の範囲とか納得の範囲と違うところから下りてきてしまったルールというのは、なかなか根づきにくいのではないかということを感じます。イギリスとアメリカの比較をしたときに感じることの一つですね。
〈委員〉
日本の今の番組を見て、子どもの育成とかから考えて、「やっぱりここは少しルーズすぎる」というふうに感じておられること、いくつかあると思うのですけれども、その辺りどうですか。
〈委員〉
最近、私自身は個々の番組がどうこうというよりも、子どもの生活全体を私たち大人がどういうふうに見ているのか、注意すべきことをしているのか、していないのかということのほうに関心が向いています。社会が子どもをどう見ているかということが、そのときどきの子ども番組を含めてすべての種類の番組の状況にも反映されてしまっている、そんな気がいたします。
作り手は「子どもにとって重要」「子どもに見てほしい」と思って一生懸命作るのだけれども、そうした番組が必ずしも子どもたちには見てもらえていないという状況があるとすれば、そこにある社会的な要因にも目を向ける必要が大きいと思います。もちろん作り手のほうももっと努力して見てもらえる番組を作り、これだけ番組量が多い時代、じょうずにアピールしていくということも必要だろうと思いますが。
〈委員〉
イギリスでは見てほしい番組を子どもが見ているという事実はあるのでしょうか。あるとすれば子どもに対する見方、ポリシーが明確にあるからなのでしょうか。
〈小平〉
日本に比べれば、その傾向は強いと思います。ある程度社会的に育ってきていることがあるかと思います。イギリスの子どもも、いわゆる子ども番組だけを見ているわけではなくて、大人向けバラエティーやコメディーも見るし、以前に比べるとアメリカ製番組に傾斜する傾向も見られますが、それでも子ども向けの人気番組のベストテンをみたときに、子ども向けのニュース番組が必ず顔を出しているというようなことは今でもあります。もともと公共テレビでも商業テレビでも、バラエティーに富んだ番組を子ども向けに放送する基本ポリシーが明確だったという長年の蓄積が、テレビ全体の状況が変わっても、そういうところに表れているのかなと思います。
〈委員〉
青少年委員会に対して、ご意見とか、これまで研究されてきた立場で実際に出来そうな提案などあれば。
〈小平〉
この委員会自体は非常にユニークな組織で、世界で同じ立場にある委員会というのはないと思います。委員会での様々な活動を広くPRしていく、まだ年月が経っていないということもありますけれども、そういうことは、いろいろな機会になされていく意味が大きいのではないかと思います。  積極的に評価したい子ども番組とか、そういう観点での議論というのがあってもいいのかなとも思いますし…。
〈委員〉
小平さんは積極的に今、評価できると思っている子ども向け番組はありますか。三つ四つ挙げてもらえば、それについて議論をするのもいいかと思うのですが。
〈小平〉
そうですね。海外の番組については、ちょうど情報を集めていますので、いくつかのジャンルについてご紹介できると思います。アメリカの例で触れましたが、小学生向けのニュースマガジン番組の他、最近増えている子ども参加型番組も興味深い例があります。日本の番組については、私は放送局の人間でもありますし、議論の対象ということでしたら、中立的な立場で選んでいただくほうがよろしいかと思いますが、一つ言えるとすれば、全国放送の番組だけでなく、地方の放送局で地道な成果をあげている番組も、ぜひ取り上げていただければと思います。
〈委員〉
子ども番組のコンペティションでいいランクを受けていていまも放送されている番組というのはあるでしょうか。子ども向け番組の世界的なコンクールで賞を取った日本の番組とか。1回きりの単発ものでなくレギュラー番組で。この委員会で、世界的に認知されている、いい番組というのを見る必要もあるのかなと思ったのですけれども。
〈小平〉
国際コンクール受賞番組でレギュラー番組となると、学校や幼稚園向けの教育番組とか、『中学生日記』などになるでしょうか。
〈委員〉
民放連賞でも報道部門、とかエンターテインメント部門とか分かれていますが、子ども番組部門というのはないですね。
〈委員〉
委員の間からも積極的に評価できる番組について議論をしようという声もありますので、「国際的にいい番組だと言われているもの、議論してもらいたい、いい番組ではないか」というのがありましたら、事務局のほうに知らせてください。『ニックニュース』も見てみたいですね。今日はありがとうございました。
〈小平〉
よい番組を評価して、応援していくことは、子ども向け番組を育てていくためにとても重要なことだと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

5.「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」について

「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針(案)」に青少年委員会として意見を提出したが10月19日内閣府が正式に発表したので、それを配布し、事務局から変更部分の説明をした。

6.その他

次回の議題については報道番組が子どもに与える影響、殺人現場の映像などのテーマが以前から出ていることでもあり、アメリカ同時多発テロ報道、バスジャック報道などが与える影響についてフリートークをすることになった。

その上で、NHK、各民放局が報道にあたって、アメリカの映像規制の動きをどう考えたか、子どもにどのように配慮しているかについてのアンケートを取ることも考える。

2000年11月29日

バラエティー系番組に対する見解

青少年委員会では5月の委員会から議論を重ねてきたバラエティー系番組について、内容や表現方法など、細部に渡って熱心に意見を交わし最終的に「バラエティー系番組に対する見解」を11月29日に記者会見をして発表しました。

記者会見後、おもにEメールでたくさんの意見が寄せられました。

反響の内容、放送局の対応などを公表します。

2000年11月29日

はじめに

NHKと民放連は、テレビやラジオの番組を制作・放送するに際し、青少年に対して特別な配慮が必要であるという認識に立ち、平成12年4月に「放送と青少年に関する委員会」を発足させた。 委員会は視聴者からの番組に対する意見を受付けているが、その数は11月28日の時点で820件に達した。委員会は毎月、寄せられた視聴者の意見を「放送番組向上協議会月報」とホームページ上で公表するとともに、いくつかの番組については放送局の見解を求めてそれを公表してきた。

NHKと民放連は、テレビやラジオの番組を制作・放送するに際し、青少年に対して特別な配慮が必要であるという認識に立ち、平成12年4月に「放送と青少年に関する委員会」を発足させた。 委員会は視聴者からの番組に対する意見を受付けているが、その数は11月28日の時点で820件に達した。委員会は毎月、寄せられた視聴者の意見を「放送番組向上協議会月報」とホームページ上で公表するとともに、いくつかの番組については放送局の見解を求めてそれを公表してきた。

委員会は視聴者からの苦情・批判のなかに、バラエティー系番組の占める比率が大きいことに注目し、バラエティー系番組のあり方を議論することとした。まず、視聴者からの意見や放送局からの回答などを検討した上で、青少年とのかかわりの深い「暴力表現」や「性描写」の問題があると思われる3番組を選んで視聴した。そのうちの1番組は視聴者から指摘のあったコーナーがなくなったため、残りの2番組、(『めちゃ2イケてるッ!』、『おネプ!』)を取り上げ、具体的に問題点を検討しながらバラエティー系番組のあり方について6回の会合で討議を重ねてきた。その過程で、上記2番組の制作責任者に委員会への出席を要請し、質疑応答も行った。この一連のプロセスを経て、委員会は次のような認識に至った。

1 委員会のテレビ放送の捉え方

委員会は、テレビ放送を次のような特性をもつメディアであると理解している。

テレビは、大勢の人が同時に接触することを前提としているマスメディアであると同時に、誰でも容易に接触可能なメディアである。また、老若男女を問わず、すべての人々の暮らしに深くかかわっているメディアである。

さらに重要なことは、テレビメディアの持つ公共性である。テレビが公共的なメディアである以上、テレビ局は番組制作に当たって、とりわけ、青少年の成長発達に配慮し、知識、情操をともに豊かに育成し、テレビから悪い影響を受けないようにする責任を持つ。テレビの悪影響については、青少年がテレビ番組の好ましくない場面を模倣することが問題だと指摘する意見が多いが、それだけではなく、たとえ模倣しない場合でも、青少年がテレビ番組から深刻な影響を受けることも考えなければならない。青少年はしばしばテレビ放送の内容が、社会的に肯定されたものであると捉え、テレビから社会規範を学習する。つまり、放送内容が青少年の価値観を形成し、行動の基準ともなり得る。そのため、放送局には、品位と責任のある放送を行うことが求められる。

2 具体的な番組について

フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』(土曜 午後7時53分~8時54分)

しりとりゲームをして間違えた人が罰として野武士の集団に襲われ、メッタ打ちにされる「しりとり侍」という企画は、「罰が暴力的でいじめを肯定するような内容」との視聴者からの苦情があった。

番組制作者からは、「七人の侍」を意識した時代劇風の設定で、見るからに安っぽいウレタンの刀を使うなどリアリティーを排していること、また、「まねをしてはいけない」といった趣旨のテロップを入れるなどして、青少年に与える影響については配慮しているとの説明があった。

しかし、画面の中での行動が一種の袋叩きであることは間違いなく、その演出方法に必然性は感じられない。大勢で一人を叩き、仲間で笑いものにする場面はいじめの形にきわめて近いものがあり、こうしたシーンを繰り返し放送することは、暴力やいじめを肯定しているとのメッセージを子どもたちに伝える結果につながると判断せざるを得ない。また、失敗した者がリンチまがいの罰を受けるのは当然だというメッセージが伝わることも考えられる。番組の中でテロップによって視聴者にさまざまな注意を喚起する方法も、弁解さえしておけば不適切な行為も許されるという、間接的メッセージを伝えることになりかねない。特にこの番組が幼児から中学生をコアの視聴者としていることから、その影響は大きいと考えられる。

テレビ朝日『おネプ!』(月曜 午後11時9分~11時54分)

ネプチューンが主に若い女性たちを巴投げで投げる「ネプ投げ」のコーナーについて、「投げられる際に女性の下着や肌が見えるのは不愉快であり、セクシュアルハラスメント、女性蔑視にもつながり、中高生に悪い影響を与えるのが心配だ」との視聴者からの苦情があった。

番組担当者によれば、この番組はネプチューンという3人のタレントのキャラクターを生かしたエンターテインメントであり、祈願成就を希望する団体のところへ出張して願いを聞き、女性を巴投げして幸せを授けるというナンセンスな設定になっている。会場の若い観客が参加して一緒にお祭り騒ぎをする番組で、回を重ねるごとに人気が出て、ついハメをはずすという現状もあり、お色気と下品、笑いと悪影響の微妙な線について迷いがあるという。

委員会は番組視聴の結果、カメラアングルに注目し、投げられる女性の下着がもっとも映りやすい位置からのショットが多用されていることなどから、番組が女性のスカートの中が見え隠れするのを売り物にしていると判断した。こうしたシーンを繰り返し放送することは、「のぞき」を肯定するというメッセージを伝えていることになる。また、投げるのは男性、投げられるのは女性という男女の役割がおおよそ固定されているうえに、女性の肉体への関心を引くような会話が多いことから、女性に対する差別的固定観念を植え付けるという問題点があると考える。

「ネプ投げ」は、映される当事者の同意を前提にしているが、公共性の強いテレビでは、「当事者の同意さえあれば何をしてもよい」ということにはならない。

民放連が定めた「青少年に特に配慮する時間帯」から外れた、夜間11時過ぎに放送される番組ではあるが、番組制作者も認めているように、最近は生活習慣の変化により11時台でも小中学生がテレビを見ており、まして子どもに人気のあるネプチューンによる番組となると一層の配慮が必要である。

3 バラエティー系番組の検討の中から特に強調しておきたいこと

放送の公共性について認識

バラエティー系の番組で問題とされるシーンも、小劇場で特定の客を対象にしたものであれば許されるであろう。しかし、公共性の強いテレビでは、番組全体の文脈から、その表現の必然性が納得されない限り、職場、学校、街中など、多くの人たちが出入りする公共の場所で見せることが社会通念として許されない行為は扱うべきではない。人を笑わせ、楽しませることを目的としたエンターテインメント番組であっても当然公共性の強い制約を受ける。そうした認識に基づき、公衆道徳や社会良識に照らして問題がないか、ほかのさまざまな放送番組を再点検すべきだと考える。

番組基準などの徹底

「NHK・民放連放送倫理基本綱領」「民放連放送基準」や各放送局の「番組基準」等は、放送局が自主的に定めた倫理基準である。放送の公共性を考え、番組制作、放送に当たっての考え方を具体的に書き記しているとも言える。しかし、残念なことに今回のバラエティー系番組をめぐる放送局との話し合いの中からは、こうした倫理基準が各放送現場で具体的に活用されている様子はうかがえなかった。制作会社のスタッフを含め放送に携わる全員に、これらの基準を手掛かりに、放送の公共性についての考えが徹底され、自律規制がなされるよう各放送局の一層の努力を望む。

委員会では、取り上げた2番組が民放局の制作ということから、番組の問題点を民放連放送基準との関係で審議し、次のように判断した。

『めちゃ2イケてるツ!』の「しりとり侍」のように、暴力を是認するようなメッセージを青少年が受け取りかねない場面を繰り返し放送することは、テレビ局が暴力を肯定していることを意味し、「暴力行為は、その目的のいかんを問わず、否定的に取り扱う」(62条→現63条)や「武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない」(19条)に抵触する。また、放送基準審議会からの要望(1999年6月)の「"いじめ"を肯定的に取り扱わないように留意する」という趣旨にも反する。

『おネプ!』の「ネプ投げ」については、「児童及び青少年の人格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する」(15条)、「社会の秩序、良い習俗・習慣を乱すような言動は肯定的に取り扱わない」(25条)、「公衆道徳を尊重し、社会常識に反する言動に共感を起こさせたり、模倣の気持ちを起こさせたりするような取り扱いはしない」(26条)といった規定に抵触する。また「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」(72条→現73条)、「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する」(76条→現78条)、「出演者の言葉・動作・舞踊・姿勢・衣装・色彩・位置などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」(77条→現79条)など、青少年の発達にとって重要な意味を持つ性の取り扱いについての規定にも反している。

放送局の責任体制の確立

委員会と放送局との話し合いのなかで、放送局の主体性に問題があることがうかがえた。放送内容についての責任が放送局にあるのは言うまでもないことであり、各放送局はもう一度、原点に立ち戻って番組の制作・放送に対する自律の責任体制を確立することを要請する。その場合、番組制作がタレントのキャラクターに依存し過ぎる傾向があることや、一人のチーフ・プロデューサーが余りにも多くの番組を抱え、番組の隅々に目が届かなくなっている現実があることを認識し、その面での改善も必要である。問われているのは番組制作の現場だけではない。放送局全体で取り組むべき課題だと考える。

おわりに

今回、委員会は視聴者から苦情の訴えがあったバラエティー系番組の中から2番組を取り上げて、その問題点を検討してきたが、この2番組だけが特に問題と考えてきたわけではない。テレビ各局が青少年への影響を軽視し、公共性を忘れて視聴率競争に走る傾向が全般的に強いことは否定できない。委員会はバラエティー系番組の検討を通じて、青少年のために放送が果たすべき役割について考え方の一端を示し、放送界はもちろんのこと、青少年、保護者、視聴者団体など広く関係者に呼びかけ、議論を巻き起こしたいと考える。この見解をきっかけに、オープンな議論を展開させる中から青少年への配慮が進み、バラエティー番組を含めた質の高い放送文化が視聴者の期待に応えて発展することを委員会は期待する。

以上

放送局の対応

【フジテレビ】

(12年12月22日)

先日、貴委員会によるバラエティー系番組に対する見解公表において、弊社番組『めちゃ2イケてるッ!』につきまして「しりとり侍」のコーナーが「暴力といじめを肯定する内容であり、その影響は大きい」との指摘がなされました。

弊社におきましてはご指摘を真摯に受け止め、制作スタッフと数回にわたる討議を繰り返し、暴力およびいじめについて問題のないよう改善策の検討を重ねてまいりました。 また一方で社内の「TVメディア検討委員会」、「児童・青少年と放送問題検討委員会」、「ジャーナリズムのあり方を考える研究会」といった委員会でも、青少年に対するテレビの影響という観点からさまざまな議論を行ってまいりました。

最終的に、制作スタッフとTVメディア検討委員会で検討を行い、該当コーナーをこのまま継続することは難しいと判断し、今後このコーナーの放送はしないことといたしました。

貴委員会見解にあります1.テレビの公共性の認識、2.倫理規準の遵守、3.放送における責任体制の確立、の3点につきましては、今までにもまして制作現場への徹底をはかってまいる所存でございます。今後ともよりよい番組づくりにつきまして、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

【テレビ朝日】

(12年12月26日)

テレビ朝日のバラエティー番組『おネプ!』内のコーナー企画「ネプ投げ」は、依頼者の願い事をネプチューンが巴投げをして、願い事を叶えてあげる祈願成就の儀式というコンセプトで制作してまいりました。

番組宛にハガキなどで応募してきた団体、大学、商店街、会社など様々な願い事をもったグループの方々とネプチューンとの共演コーナーという形式をとっており、コーナー趣旨なども事前に説明して、あくまでも各団体、グループの意思で会場に来ていただき、出場者はネプチューンとの会話や投げられる行為自体を楽しんでいたと考えておりました。

しかし放送を重ねる中で、「行き過ぎた表現である」と指摘するご意見が、テレビ朝日や「放送と青少年に関する委員会」に寄せられるようになりました。

テレビ朝日では、寄せられたご意見を参考に、審査部長を議長とする番組審査専門部会で議論し、また編成部長を議長とする会議(青少年問題会議)に制作担当者を加えた形でご指摘を受けた部分を含め議論を重ねた結果、様々なご意見のある「ネプ投げ」のコーナーは年内で終了し、新コーナーを開発しようという結論に至っておりました。

今回の「放送と青少年に関する委員会」の見解を重く受けとめ、今後とも視聴者の信頼を損ねないよう、健全な番組作りを心掛けたいと思います。

「バラエティー系番組に対する青少年委員会・見解」 への視聴者の反響のまとめ

(~12月12日)

放送と青少年に関する委員会は、11月29日に「バラエティー系番組に対する見解」を発表したところ、視聴者から大きな反響があった。(その数は12/12現在で568人。)今回の反響の一番の特徴は、インターネット時代を反映するように、Eメールで大勢の若者から意見が寄せられたことである。

意見を寄せた視聴者の年齢別内訳は、10代124人、20代前半(20~2 4歳)203人、20代後半(25~29歳)88人、30代以上115人。不明38人で合計568人。男女比は男性445人に対して女性113人、不明1 0人。20代の男性が全体の約42%となっている。小・中学生も少数ではあるが含まれている。また、在米の人、日本在住の外国人からのメールも届いた。

意見の内容で多いのは、「指摘された番組は青少年に悪影響を与えるとは思えない」「悪いと思ったら見なければいい。親が責任を持って指導すればいい、テレビのせいにするのはおかしい」「好きな番組のコーナーが打ち切られたのが残念」「青少年委員会はお笑い番組についての理解が足りない」「大人の価値観だけで判断しないでほしい」といった意見で、委員会の見解を批判するものが全体のおよそ94%に達している。大半は無記名で、「バカ」「むかつく」といった下品な表現をするものもあって、Eメールによる投稿のもつ"気軽さ"と同時に"無責任さ"も垣間見られた。

若い視聴者からEメールで多くの意見が寄せられた背景には次のような理由があったと思われる。1.YAHOOのトピックスで取り上げられ、そこに連動した記事で青少年委員会のホームページが紹介されたため、パソコンに接する機会の多い世代の関心を引いた。2.委員会の見解は、視聴者から苦情のあった『めちゃ2イケてるッ!』(フジテレビ)、『おネプ!』(テレビ朝日)の一部のコーナー("しりとり侍"と"ネプ投げ")について問題点を指摘するとともに、バラエティー系番組や番組全体のあり方について提言し、広く議論を呼びかけるものであったが、委員会見解発表のニュースをテレビ・ラジオや新聞あるいはインターネットのトピックスで知った若い視聴者が、委員会が放送中止を勧告したと誤解した。3.当該放送局は番組内容を改善するとのコメントを発表しているが、これも放送中止を決めたと受け取られた。4.委員会は放送界の自主的な第三者機関であるが、その役割が十分に理解されていないため、"お上による規制"と受け取られ、反発を招いた。

一方、「よく委員会が見解を出してくれた」といった見解を評価する意見を寄せた視聴者は40人に上っている。30歳を越えた人が多く、番組評価に世代間の差があることがうかがえる。

「委員会見解」に対する意見の内容

[苦情・批判]

・『めちゃ2イケてるッ!』はいじめにつながらないし、『おネプ!』は覗きではない。 132件
・委員会見解は納得がいかない。
・見るか見ないかは個人が判断するもの、子どもの視聴については親が見せないようにすればよい。テレビに責任転嫁するのは間違いだ。親としての責任放棄ではないか。 122件
・くさいものにフタをしても解決しない、判断力をつけさせることが大事。過保護にして青少年が健全に育つのか。
・テレビで悪くなることはない。少年犯罪は家庭、学校、社会に原因がある。
・子どもはバカではない。テレビで影響されない、もっと信じてほしい。
・2番組よりもっと問題にすべき番組がある。(時代劇、サスペンスドラマ、国会中継、アニメ、深夜番組、警察特集番組、ワイドショー、など) 63件
・楽しみを奪うな。テレビは娯楽なのだ。テレビを見る権利を奪うな。大好きなのに
・NHKと民放は違う。 50件
・お笑いをもっと理解して。芸人は体を張って頑張っている。芸人いじめだ。 24件

「しりとり侍」に対して

特定の人に対してではなく、平等に罰が与えられるからいじめではない。
いじめは当人同士の了承なしに行うもの。だからいじめではない。
ルールがあるのだからいいと思う。
テロップで配慮しているではないか。
ストレス解消になる。嫌なことが忘れられる番組。精神安定剤だ。

「ネプ投げ」に対して

深夜だからいいではないか。
好きで投げられているのだからかまわない。
しゃれが通じないのか。バカバカしさを楽しんでいるのに。
こういう番組をなくすと逆に性犯罪が増えると思う。

[委員会に対して]

  • 青少年の意見を聞くべき。アンケートをとるとか。 大人の価値観で決めないでほしい。
  • ジェネレーションギャップを感じる。委員会に若者を入れるべき。
  • 規制反対、批判的意見だけで判断するな。

211件

(意見の中に見られた見解について誤解をしていると思われる表現)

「放送禁止」「放送停止」「検閲」「言論統制」「表現の自由規制」「俗悪番組指定」「強権発動」「圧力をかけて潰した」「番組狩り」「魔女狩り」「数名の私情で打切るな」「教育委員会と関係あるのか」「してほしいのは問題提起であり、結論ではない

[肯定的意見]

  • 我が意を得たりという感じ。
  • やっとこういう組織ができたのかと嬉しい。遅すぎるくらいだ。
  • 自信を持って取り組んでほしい。
  • 今まで放っておいたのが不思議。
  • モグラたたきでなく公平に審議を。
  • テレビは確実に子どもに影響を与えている。がんばってください。
  • 見解に同感
  • 俗悪番組の撲滅を。

41件

[その他]

・罵倒、意味不明など

33件

(1名で複数の意見を述べている場合があるので、件数合計は676件となっています。)

< 参 考 >

10代 124人
20代前半(20~24歳) 203人
10代 124人
20代後半(25~29歳) 88人
30歳以上 115人
不明 38人※
合計 568人

※性別不明者10人を含む

視聴者から寄せられた見解についての代表的な意見

男性 16才 福島

青少年委員会の人数が少なすぎる。しかも頭の堅い人ばかりだ。もっと柔軟な考えができる人を入れるべきだ。青少年委員会に一人は青年を入れるべきだ。

男性 24才 岐阜

青少年に悪影響を与えると色々な批判が多いようですが、本当にそうなのでしょうか?殺人等を扱った番組を見て、自分もまねしてみようと思うものでしょうか?それを見たからといって悪影響を受けたというのは、親や本人のただの言い訳ではないでしょうか?今の人間というのは、そんなにも善悪がつかないのでしょうか?TVと現実の区別もつかないのは、そのこと自体が問題です。

女性Fさん 33才 千葉

いつも、あるいは少年の犯罪が起こる都度、この手の「映像・放送(またはゲームなど)の青少年に対する影響」についての議論がなされますが、一番肝心なことが忘れ去られているのではないでしょうか?それは「子供に一番影響を与えるのは親、周囲の大人」であるという事です。いくらテレビで暴力シーンを目にしようが、しっかりと現実体験を積み重ねている子は、それをマネしようなどとは思いません。家庭でろくなしつけもせず、他人(TVなど)のせいにばかりしている大人こそ、子供に悪影響を与えていると思います。

男性Uさん 22才 北海道

こんな委員会があるとは知りませんでしたが、投稿してくる人の見識を疑ってしまいます。確かに、内容的に行き過ぎのある番組もあるでしょう。ただ、それをいじめを助長するとか、女性蔑視につながるとか、いろいろな理由をつけて批判するのはおかしいと思います。テレビはみんなの物であり、個人の思い通りにならないからといって、この委員会に投稿する自体バカバカしいことだと思います。テレビより影響力のなくなった日本の親に問題があるのであって、きちんとしつけもできない親が、TVに文句をつけてるとしか思えません。過去を振り返るより、これからのTVとの付き合い方を親が子供に指導するべきだと思います。子供にきちんとしたしつけができる親は、TVに文句は言わないでしょう。家庭の問題かもしれませんが、頭の固い大人ばっかりという気がしたので、投稿させていただきました。

男性Wさん 37才 石川

放送が青少年に与える影響は確かに大きい。今回の様に、特定の低俗番組を個別に改善させるのも悪くはない。ただ、根本の問題は、放送局側の意識の低さと家庭で一般常識を教える事が出来ていないことと思う。あの程度の番組なら他にも沢山あるので、単なる見せしめか、この委員会の顔見せ興業程度にしか思えない。モグラ叩きでは無く、抜本策は何かを示して欲しい。

男性 32才 大阪

新聞記事で御会の番組批判を見ましたが、放送時間帯は考慮に入れておられるのでしょうか?『めちゃめちゃ』に関しては確かに子供の見る時間に相当しますので、ご意見ごもっともと思います。しかし、『おネプ』に関してはあの時間に子供にテレビを見せる親に問題があるのではないかと思います。あの時間帯なら他にもAV女優が出ている番組などいくらでもあるのですが、そちらは如何に?

男性Mさん 30才 香川

『めちゃイケ』や『ネプ投げ』にクレームをつけた事について・・・今、情報の山に囲まれた中で生活している青少年といわれる若者達に必要な事は、彼、彼女達を取り巻く色々な犯罪の誘惑や大人のウソなどから彼らを遠ざけたり、見せないようにする事ではなくて世の中には色んな悪やウソや汚い事がたくさんある事実を認めた上で、如何にそれらから身を守るか?という教育なんじゃないでしょうか?あなた方は番組がイジメやのぞきを肯定する!と言っていますが、肯定するもしないも大人の世界でもある事でしょう?番組に文句を付けるよりそんなくだらない番組を観ても影響を受けない教育が必要では?社会に出ればそんなくだらない事がゴロゴロしている事を今の若者はみんな知っているのですから・・・。

女性 55才 神奈川

視聴者からの意見を拝見しましたが、すべて肯定的な意見のみがとりあげられており、委員会に対する反対意見がないのはどういうことなのでしょう。私はこの委員会の存在に反対します。現在の若い方は昔のようにTVからの情報で影響されるほど単純ではありません。インターネットもあれば雑誌もたくさんあります。それにくらべたら、現在TVでやっているような内容はかわいいものです。私も今回の両番組を拝見させてもらいましたが、なんら問題はないと思います。ただのお笑いではないですか。このような番組まで規制されては若い方もかわいそうです。もうすこし頭の柔らかい人を委員に追加されてはどうでしょうか。

男性Mさん 23才 神奈川

暴力も駄目、性的表現も駄目。そして子供たちは暴力の残酷さも知らずに成長して・・・。一部の偏ったビデオや雑誌から得る一種変態的な性を正しいと認識していくんでしょうね。 ただ駄目だ駄目だと言わずにもっと積極的に放送を行うべきだとおもいます。 ただしそれは子供たちの成長に何らかの影響を与えるものと考えながら制作されるべきだとおもう。 性的表現も暴力的な表現も隠すのではなく、正しく放送されるべきだとおもいます。

男性 25才 東京

今回の見解発表について意見があります。"しりとり侍"では間違えたタレントに対する強烈なつっこみが、暴力行為の肯定と取られるのはおかしいと思います。お笑い芸人が相方を殴ったり、ゲームに敗れたタレントが罰ゲームを受けることとどう差異があるのでしょうか。ミスをして罰を受けるということが笑いを増幅すると思います。"ネプ投げ"は放送時間が深夜枠なので、ある程度の表現の自由が認められるべきです。"ネプ投げ"程度の表現が他番組より先に槍玉に挙げられるのはおかしいです。ニュース等のドキュメントで性犯罪の被害者にコメントを求めたり、暴走行為や詐欺の手口等の実態を放送することは、青少年に影響を与えないのでしょうか。今回のように見解が法律のような強制力を持つのなら、以後もっと慎重により深い議論が行われることを希望します。今の基準では放送中の番組の少なくても3割は中止することになってしまいます。

男性Mさん 23才 長野

新聞で『おネプ』の"ネプ投げ"と『めちゃイケ』の"しりとり侍"の中止の記事を見ました。はっきりいって、何でと言う気持ちでいっぱいです。そのコーナーが本当に有害なんでしょうか?"しりとり侍"を例に考えてみれば、確かに間違えたときの罰は凄まじいものがあります。しかし、それがあるからこそ、出演者は真剣に行い、面白さが生まれると思います。また、子ども達がこの"しりとり侍"をして遊んだときのことを考えると、3文字のしりとりを行うことで、頭の中で瞬時にいろんなことを考える練習になるとも考えられる。あるひとつの側面で悪いからと言って、やめろというのはどうだろうか。そんなことを言ったら、例えば教養番組と言われているものにも、伝え方が悪かったり、嘘を言っているものもある。そっちのほうがもっと有害だ。子ども達には、いい物、悪いものを自分で判断できるような力を育てることが重要である。なのに、選択肢を減らしてしまうようなことはどうだろうか。これ以上子供を温室育ちにすることは危険である。こんなことをしていたら、本当に有害なものが来たときに自分で判断できず、それこそ犯罪につながるかもしれない。バラエティー番組を悪く言うのは簡単だが、本当に悪いのはその番組なのか考えてもらいたい。あなた方は頭が硬すぎます。子供はもっと柔らかいですよ。子供はそんなにばかじゃない。

男性 20 才 神奈川

今回の2つの番組共に放送を控えるまでしなくても良いと思う。"ネプ投げ"に関しては、放送時間が23時からなのだから、常識的に考えて子供は見ていないはずである。悪影響を与えると思うなら親が見させなければ良いと思う。何でも他人(テレビ局や学校)のせいにする最近の親には本当に腹が立つ。親が常識ある子供に育てていれば番組を見たところでお笑いとして考えるだろう。"しりとり侍"にしても観たところでいじめが起きるはずはない。今の子供はそんなに馬鹿ではないと思う。馬鹿なのは小学生くらいの子供を持つ親である。

女性Iさん 27才 岐阜

YAHOOでこの委員会の事を知りました。やっと日本にもこのような委員会が設置されたか、という思いです。以前からバラエティー番組の暴力に付いてかなり不満を抱えていました。人が殴られたり蹴られたりするのが「面白い」のでしょうか?人を殴った事がある人はそういう番組を作れても、殴られた事がある人は決してそれを「楽しい笑い」とは思えないと思います。議事の方も少し読ませて頂きましたが、モラルの感覚がまだ完全に発達していない幼児・小学生(中学生)を対象にしている、と局側がはっきり意識しているのに、実際に存在するから暴力も描写していいのではないか、というレベルの問題では無いと思います。善悪の区別が付かない子供に、暴力をしかも「楽しいもの」として見せて、何のフォローもしない事が「子供にとって必要な事」なのでしょうか?(ちなみに「まねをしないで下さい」というテロップがフォローだとは思えません。何故そのテロップが必要なのか理由を説明していないからです。)放送局には、TVが子供に与える影響、というものをもっと真剣に考えて頂きたいと思います。これからもテレビ局側と委員会の活発な討議と、放送内容の向上を望みます。

男性Tさん 53才 神奈川

私は"ネプ投げ"をたまたま2、3度見た事があるだけですが、流石に高尚とは言えなくとも、飛び入りの女性ファンも多く見受けられたなど、貴会が非難するほど低俗な番組とは思えませんでした。ゴールデンタイムのもっともらしい番組の殆んどが、不倫を肯定するどころか推奨ないし常識として扱うかのような構成や、芸術性の乏しいヘアー写真主体の雑誌が少年向け雑誌の隣に置かれて販売されている現実等をもっと問題にすべきと考えます。チョッと辛辣な言い方で言えば、今回の貴会の取り組みは、大蔵省が税金の取り易いサラリーマンを標的に課税するようなやり方と考えます。それほど目くじらを立てる必要は無いと思うのですが。ただし、我が家では、普段は"ネプ投げ"の裏番組を見ているハズなので、2、3回の視聴時以外の時にとんでもない内容があったのなら訂正しお詫びいたします。

女性 38才 静岡

対応が遅いのではないかと思います。マスコミが若者に与える影響は大きく、即効性もあります。バラエティに出演しているタレントの影響力は大きいので、逆に彼等に若者の風潮を変える行動をしてくれたら・・・といつも思います。出演されている方、作っているいる方、みんな子供が出来る年齢になって初めてその悪質さに気が付くのではないでしょうか?

女性Mさん 17才 海外

はじめまして、私は海外に留学中の17歳、高3です。YAHOOのトップの記事を見ていてここのHPにたどり着きました。今回始めてこういう機関があるのを知りました。いろいろ意見を読ましていたただきました。ほとんどの意見が大人からで、青少年からの意見はみあたりませんでした。こちらの委員会かTV局の方にはそうゆう年齢層の苦情はあるのですか?『めちゃイケ』にしても、『おネプ!』にしても見ていて楽しいのだからそのままでいいじゃないですか。すくなくとも私はそう思います。TVなんだからそんなにシリアスに考えなくてもいいと思います。はっきりいって海外のTV番組とくらべると日本のTV番組はくだらないです。これはワイドショーやらも含めて。だからちっちゃいころからT Vのやっていることはシリアスにとったことはありません。日本の青少年すべてがこのような意見ではないのは承知です。しかし少なくとも大人が思っているようにはたして子供達はTV番組を真剣に考えているのでしょうか。娯楽のためのTVなのだから・・・。そうしたらNEWSと天気予報しかみれなくなっちゃうじゃないですか。昼間の番組でもろくなのやってないじゃないですか。番組を作るのは大人。それに対して意見やら苦情をするのは大人、見るのは子供、大人。将来TV番組をつくるのは今TVをみている子供達。子供に悪影響と言う前に、作っている大人が子供を信用した方がいいんじゃないですか?TV番組が子供に悪影響をするっていうことを大人がどうしてわかるのですか?今の意見・苦情を言っている大人も子供のころこういうTVをみてきたんじゃないんですか?今回はいろいろな大人の意見にちょっと納得いかなかったのでメールさせていただきました。長いメールを最後まで読んでいただき光栄です。

男性Wさん 25才 神奈川

非常に楽しみにしていた2番組が打ち切られて非常に不愉快です。善があるから悪もあり、お互いの均衡がとれて世の中が成り立っているのに、ただ一方的なくだらない意見で決定されることに腹が立ちます!!いじめだ犯罪だというのは価値観の問題だし、誰がバラエティー見ていじめと捉えているのでしょうか?そんな事言ったら昔のドリフターズの高木ブーに対するのもいじめにならないのでしょうか??少し過敏になりすぎているのではないでしょうか?要は個人とその親の育て方の問題。マズいものがあれば見なければいい。また見させなければいい。そのためにあれだけのチャンネルがあるわけでしょう??感情的に言わせてもらえば、お前らお笑いのわからないお堅いバカヤローだよ!!大変失礼しました。これは私の心の中の想いです。以上。

男性 34才 長崎

『めちゃイケ』のしりとりコーナーが暴力、子供のいじめにつながる等の意見として問題になっているようだが、私は何も問題を感じない。竹刀やバットで叩いているのでは決してなく、子供が見ても面白いと感じるだけではないか。チャンバラ遊びを知らない子供たちへの教育として逆に良いコーナーと思う。叩くという行動だけを問題としてとやかく言う社会の風潮についてもっと問題視したい。裸で踊れば確かに下品だが、下品も文化。笑える間は問題ない。うけなければ淘汰される。芸人も必死でやっている訳で下品を見たくなければ見なければいいと思う。何でも見せて、自分で判断できる子供を育てなければ良い社会に進まないように思います。規制は悪です。s

女性Iさん 23才 神奈川

"ネプ投げ""しりとり侍"に対する対応を拝見しまして思うところがあり投稿させて頂きました。私は、23歳になり、いつ母親という立場になってもおかしくない年となりました。そして、皆様が今回議論されたバラエティー番組全盛時代に生まれた一人で、毎日かかさず様々な番組を見ていました。でも、様々な番組を見てもいけない事はいけないと幼いながらもわかりますし、親との会話により発見する部分もあり放送しているすべての事をまねするようなことはありませんでした。いけない事をまったく放送しないのが良い効果を生むとは言い切れない部分があると思います。放送している事がまねしてもよい、あるいは良い事か悪い事かは、親である立場の人たちが教えるのがまず先決ではないでしょうか。そして、さまざまなものが放送されず、単調な放送ばかりが続いてしまう今後の番組を恐れています。将来生まれるであろう自分の子供の将来には、さまざまな番組を見て、それについて語る事により世間に対する知識の広い子供にしたいと思っていますので。知らないからすむ事とあえて知る事で語ることにより悟る事。青少年の未来を考えるのであれば、放送を見ることにより家族で語ることで知ることをもうこれ以上締め出さないようにお願いいたします。私自身、バラエティー番組を見ることによりさまざまな事を知ることができましたので。本当によろしくお願いいたします。

男性 25才 東京

今回のバラエティー2番組コーナーを打ち切りに追い込んだこの委員会を非常に腹立たしく思っています!いじめを肯定するだの、のぞきを肯定するだの聞いてるだけでバカバカしい限り。そんなの他に挙げればきりがないですよ!質の高い笑いってなんですか?それだけが必要なのですか?低俗な笑いだってお笑い番組には必要だと思う。番組を楽しみに見ている人のほうが多いのは事実。こんなわからんちんの委員会こそ不必要だと思います。僕と同じ意見の人のほうが圧倒的に多いですよ。

男性Kさん 35才 東京

"ネプ投げ"について。最近、アメリカから表面的なセクシャルハラスメントの概念が輸入されているが、"ネプ投げ"の場合、本人たちが了解し、希望しているのだからこれに当たらない。これを規制することは表現の自由を保障した憲法違反である。セクシャルハラスメントについても、その理念が論じられず女性が下着を見せたり、触られる現象そのものがセクシャルハラスメントだと勘違いされている風潮がある。我々が現在もっとも重要視しなければいけないことは表現の自由を守ることである。あらゆることが簡単に言論統制されることが多すぎる。ただし、"ネプ投げ"自体が良い企画だとは思わない。我々には見ない自由もある。このような企画が市民に広く受け入れられているとしたらその程度の市民なのである。論じるべきはそのことだろう。ただし、"ネプ投げ"がくだらないというならば、99%までの今のテレビ番組が全てくだらない。そのこと自体を改善すべきだ。委員のおえらいさんは木を見て森を見ずという言葉を知らないのか?

男性Kさん 30才 愛知

今回の自主規制はかなり残念です。少数の番組に対する意見により、自分の楽しみが減りました。影響される青少年は多いかもしれない。が、それだけが原因ではないとおもう。もっと親のしつけが問題で責任転嫁にすぎない。少数意見に耳を傾けていたら、TV本来の娯楽もなくなってしまうでないかと心配になります。少々のことでクレームつけるなって!!

男性Iさん 27才 東京

"ネプ投げ"の件について。番組の内容を判断するのは視聴者の判断力によるものだと考えられます。番組を規制するのではなく、個人の判断力を養うことが必要だと思われます。今回、”ネプ投げ”を規制することにより青少年の判断力を養う材料を奪ってしまっているように思います。そういうことが、温室育ちの青少年を増加させる原因と思われます。こんな規制するよりも親や教育者の質の向上を考えるべきだとおもいませんか?結局、こういう問題を審議しているところというのは、教育の現場を知らない方々で行っても意味がないのでは?と思います。青少年にバラエテエィー番組=フィクションだということを理解させるような指導(教育)体制というものをつくるような方針は無いのですか?

男性 22才 北海道

"しりとり侍"について、「暴力やいじめのメッセージを子供に伝える結果になる」と、ありますが人が毎週殺されるサスペンス物の方が暴力を肯定しているし、ゲームに負けてメッタ打ちにされるのは、ルールであり面白くない事を言ってメッタ打ちにする訳ではないので、なぜいじめと結び付くのか分かりません。ルールに従うのは社会人の基本ではないでしょうか? "ネプ投げ"についてもあれをのぞきと関連付ける方がナンセンスだと思う。その会場に来る大体の人はどんなことをするのか知っているはずで、なぜのぞきになるのか理解に苦しむ。もし、放送しないでと言われていたのに放送したら問題だとは思うが、そうではないかぎり改善をもとめるのは問題だと思います。このふたつの企画はすぐには批判される物ではないと思う。自分としては毎週人が殺されたり、犯人に人間性を持たせたりしているサスペンス物の方が青少年に与える影響は大きく危険だと思う。サスペンスをテレビでやることに意味があるのだろうか?過ちを改める勇気のない有識者が多いいので、この国はダメに成って来ているのでしょう。

男性 22才 福岡

"しりとり侍"について、「暴力やいじめのメッセージを子供に伝える結果になる」と、ありますが人が毎週殺されるサスペンス物の方が暴力を肯定しているし、ゲームに負けてメッタ打ちにされるのは、ルールであり面白くない事を言ってメッタ打ちにする訳ではないので、なぜいじめと結び付くのか分かりません。ルールに従うのは社会人の基本ではないでしょうか? "ネプ投げ"についてもあれをのぞきと関連付ける方がナンセンスだと思う。その会場に来る大体の人はどんなことをするのか知っているはずで、なぜのぞきになるのか理解に苦しむ。もし、放送しないでと言われていたのに放送したら問題だとは思うが、そうではないかぎり改善をもとめるのは問題だと思います。このふたつの企画はすぐには批判される物ではないと思う。自分としては毎週人が殺されたり、犯人に人間性を持たせたりしているサスペンス物の方が青少年に与える影響は大きく危険だと思う。サスペンスをテレビでやることに意味があるのだろうか?過ちを改める勇気のない有識者が多いいので、この国はダメに成って来ているのでしょう。

女性Eさん 22才 群馬

新聞やTVで、ネプチューンやナイナイの番組についての委員会としての考え方を拝見しました。賛成することも、反対することもあるのですが、一つ気になったのは、なぜこんなにも神経質になるのだろうかということです。イジメや性的行為について、先走りした考え方を持ちすぎではないでしょうか。ナイナイの"しりとり侍"については、罰ゲームがちょっと大げさかなとは、思っていましたが、昔から、しりとりをして間違えたらシッペとか、可愛い罰ゲームはありました。ましてや"ネプ投げ"がなぜ打ち切りになるのかいまいち納得がいきません。テレビ朝日では、"ネプ投げ"よりも早い時間から、AVなどの放送をする番組もありますし、どうみても、"ネプ投げ"をされる女性が嫌がってやってるようには見えないのです。あんなことまで、イジメの対象とか、性的な問題があるなどと考えている人がいるということだけでも、日本の教育は先走りしすぎて、子供たちに悪い事が見えないようにしすぎて、何が悪い事なのか理解できないようにしているように思えます。私にしてみれば、ワイドショーなどで、イジメや犯罪の手口をしつこいくらいに詳細に説明したり、その犯罪を肯定するかのように、犯罪者の両親の本を出版するほうが、よくないことだと思いますが。もう少し、冷静でおおらかな議事内容、検討内容にしていただきたいと思います。

女性Aさん 14才 シドニー

私は海外で生活してますが、英語と日本語の両方を使うので毎日ストレスがたまってます。でも親の仕事の都合で海外に住んでいるのでどうにもなりません。私のストレス解消法は、『めちゃイケ』を見ることなんです。TVでニュースが放送された夜、親戚がわざわざ私に電話してくれたんです。次の日の朝5時半、こっちではNHKの昨日のニュースが放送されるので見ました。うそでしょー?と思ったんですけど本当だったのでショックでした。その日は学校の授業もまともに聞けなかったです。"しりとり侍"が終わるなんて絶対イヤです。私みたいな人もいるってことを考えてください。

男性Oさん 19才 北海道

今回の"しりとり侍""ネプ投げ"両コーナーの打ち切りについて思ったことがあります。まあ、私も"ネプ投げ"はあんまり好きではないですが、両コーナーも打ち切るほどのことがあるのかと思います。テレビ番組全体に言えることなんですけど、親が子供に見せたくなきゃ、そう言えば良いことなのではないでしょうか?私なんて、小学校まで夜9時になったら布団に入らなきゃいけませんでした。子供に悪影響だと思われるシーンがあったなら、親がそれはダメだよと子供に言えば、小さい子供であるほど素直に聞くと思います。中学生にもなってテレビを見て、たとえば"しりとり侍"をまねするようなら、それはちゃんと親が子供を育ててないんだと思います。あと、今回のことで初めて、この委員会のことを知りました。多分、テレビに対して余り批判が無い人は、この委員会は知らないでしょう。知ってる人は意見のある人だけ、つまり批判の意見しかないのではないでしょうか。しかもそれは、きわめて少数ではないでしょうか。また、そんなに手間にもならないのですから、このHPに掲示板など、視聴者が意見を交し合える場を設置すれば良いと思います。

女性 16才 大分

『めちゃイケ』の"しりとり侍"が打ち切りになったことについてですが、「いじめを肯定するものだから」という意見が出ているみたいですけど、"しりとり侍"が原因で私たち青少年が「いじめをしていい」などということを考えたりすることはないのでは、と思います。もし周りのものに簡単に影響を受けて非常識な行動をとってしまう若い人がいるのなら、周りに影響されない強い心を持った若者が増えるように考えていくことが大事なことだと思います。「まわりのものが悪いから」などと大人たちの意見で青少年から、なにもかも遠ざけてしまうことで、健全な青少年が育つんですか?私はお笑いやバラエティー番組が好きなので、"しりとり侍"の打切りを聞いた時は、とても残念でした。この私の意見もお笑いの好きな人の個人的な意見にすぎないと思いますが、芸人さん達がどれだけ真剣なのか知っているファンには、こんな意見を持つ人が他にもいると思います。

男性 20才 静岡

『めちゃイケ』の"しりとり侍"が打ち切りになったことについてですが、「いじめを肯定するものだから」という意見が出ているみたいですけど、"しりとり侍"が原因で私たち青少年が「いじめをしていい」などということを考えたりすることはないのでは、と思います。もし周りのものに簡単に影響を受けて非常識な行動をとってしまう若い人がいるのなら、周りに影響されない強い心を持った若者が増えるように考えていくことが大事なことだと思います。「まわりのものが悪いから」などと大人たちの意見で青少年から、なにもかも遠ざけてしまうことで、健全な青少年が育つんですか?私はお笑いやバラエティー番組が好きなので、"しりとり侍"の打切りを聞いた時は、とても残念でした。この私の意見もお笑いの好きな人の個人的な意見にすぎないと思いますが、芸人さん達がどれだけ真剣なのか知っているファンには、こんな意見を持つ人が他にもいると思います。(女性 16才 大分) 最近のバラエティーについていろいろご意見があるのは知っています。私はバラエティーが好きなのですが、最近は逆に反応が過剰すぎているのでは?と思っています。念のために書いておきますが、私はバラエティーが好きだから一方的にそういう風におもっているのではありません。暴力シーンや全裸などは。今に始まったことではないと思うのです。確かに昔、いろいろなTVを見て影響されまねのようなことをしたことがあります。しかし今となってはいい思い出です。バラエティー番組をみた次の日には、必ず友達とその話題で盛り上がったのを覚えていますし、今現在でもバラエティー番組の話で盛り上がることもあります。それはレベルが低いことなのでしょうか?これも一種のコミュニケーションであるといってもいいと思うのです。そのように考えたことおありですか?私が思うのは、きつい表現をすると、「見たくなければ見なければいい」です。楽しみにしている人、見たい人もいるのですから。もしくは、好ましくないシーンを放送するのであればその事前に告知するなり警告なりするべきだとおもいます。以上です。

2005年10月

『幸せって何だっけ』フジテレビ

『幸せって何だっけ』に関するフジテレビからの回答

○この女性占い師をメインにした番組を制作する意図

○10月7日放送のスペシャル番組で子供を対象にした企画意図

『幸せってなんだっけ・カズカズの宝話』は、徳光和夫さんを司会に、細木数子さんが視聴者からの人生相談に答えたり、レギュラー陣の時事問題への疑問に対する考え方のヒントを出したり、ゲストとのトーク、料理を楽しみ、その人の人となりを引き出すという構成内容になっています。

番組としては、細木数子さんという数多くの人生への相談の経験者にその世事に対する経験を生かしてコメントしてもらい、悩んでいるのは一人だけではなく希望と勇気をもって生きて欲しいというメッセージを伝えたいと思っております。

細木さんは占いの書籍を多く出版されており、またそのいずれもが大ベストセラーとなっていますが番組中では、あくまでも人生経験を生かして助言をしていただくという趣旨になっております。占いは話の入り口に過ぎない、この番組では人生の知恵について一緒に考えたいとはご本人の弁でもあります。

またその話題は新聞やニュースで取り上げられる身近なものが中心ですが、やはりその中心は家族や、親子に対するものが多いのは事実です。それにより親子のあり方を取り上げたものが放送回数のかなりの部分を占めております。

○局に寄せられている視聴者意見は

局には、さまざまな批判以外に、「感動した」「参考になった」など賞賛の意見も数多く寄せられています。

○青少年委員会に寄せられた意見等をどう受け止めているか。またそれについての社内議論はあったのか

視聴者からの意見は、常に賛成と批判の両論あるものと存じます。そのどちらにも真摯に耳を傾けることが大事であり、今後の番組制作においてその賛否ある意味を意識してゆくことに努めたいと考えます。

番組制作者は、日常的に番組内容について議論を重ね、且つ制作管理者とも、その都度さまざまな議論を重ねた上で番組制作に取り組んでおります。

また、社内の「メディア検討小委員会」において、議論を致します。

○占い師の発言は、「占い」を根拠としたものか否か

細木さんには、世事に対する経験を生かしてコメントをしていただくことで希望と勇気をもってもらいたい、という番組の企画意図に基づいてご出演いただいております。

○「テレビ番組以外の場での彼女の活動や収入を、放送局が結果的に支えることになるのは問題ではないか」という意見に対する局の見解

一般的に、弊社の番組出演機会によって、番組を視聴された多くの方々の認知度に影響があるといえますが、その内容について因果関係を客観的にお示しすることは困難であると存じます。

〔2005年11月10日付〕

2012年8月に視聴者から寄せられた意見

2012年8月に視聴者から寄せられた意見

ロンドンオリンピックに関する意見が多かった。尖閣諸島に香港の活動家が上陸したことや、竹島での韓国大統領の発言など、領土をめぐるニュース報道についての意見も多かった。テレビ局が、韓流ドラマや韓国人アイドルを使いすぎだといった意見もあった。

2012年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,702件で、先月と比較して397件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール73%、電話23%、FAX2%、手紙ほか2%。 男女別は男性68%、女性28%、不明4%で、世代別では330歳代30%、40歳代26%、20歳代22%、50歳代11%、60歳以上7%、10歳代4%の順となっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は666件【41局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、24件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

8月の視聴者意見は1,702件と先月より397件増えた。
ロンドンオリンピックに関する意見が、約150件と多かった。時差の関係から放送が深夜におよび、日本人選手がいつ出てくるか分らないなどの苦情や、芸人やタレントをインタビュアーに使うことへの批判もあった。マラソン中継では、CMが入りすぎて競技の展開が分らないとの不満も多かった。
尖閣諸島に香港の活動家が上陸したことや、竹島での韓国大統領の発言など、領土をめぐるニュース報道についての意見が多かった。テレビ局が、韓流ドラマや韓国人アイドルを使いすぎだといった意見もあった。
恒例の長時間特番では、台風が近づいているのに足が不自由な少女を無理に登山させたなどの批判があった。
ラジオに関しては40件、CMに関する意見は50件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は120件で、前月より35件減少した。
今月は、表現・演出に関する意見が25件、次いで低俗・モラルに反する意見が17件、編成に関する意見が9件と続いた。
夏休みということもあり、子どもがテレビを見る機会が増えたことから、放送する時間帯と内容を考慮するよう望む意見が多く寄せられている。また、事前の告知やタイトルから受けたイメージと、放送されたドラマの内容との違いに戸惑う意見も、複数寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • ロンドンオリンピックで、日本人選手の登場を待っていると、テレビ画面に「もうすぐ」「まもなく」といった字幕が出て、視聴者をさらに待たせる。やめてほしい。実況アナウンサーが「このあと何番目に」と具体的に言ってくれたほうが見やすくていい。字幕で「もうすぐ」などの過剰な演出はいらない。
  • テレビのEPG画面からオリンピックの好きな競技だけを録画したいと思っても、ひとつの枠として記載されている為にできない。その結果、何時間も録画しなければならず、非常に不便だ。競技の放送時間を表示するか、競技ごとに区切って表示してもらいたい。
  • 速報のテロップと効果音が鳴ったので、災害や大きなニュースかとテレビを見たが、「オリンピックのメダル獲得」のニュースだった。ニュースかと思って肝を冷やしたし、そもそもオリンピック中継番組内だったのでテロップの意味はまったくなく、馬鹿にされたような気分になった。メダル獲得は確かに大きなニュースなのだろうが、「ニュース速報」とするには違和感がある。
  • マラソン中継に大量のCMが入っていて不快だ。民放はスポーツ番組をバラエティー番組と同じ感覚で作っているのではないか。マラソンやサッカーなどは刻一刻と状況が変化する競技だ。CMの入れ方が異常で、マラソンがどんな展開をしたのか全然わからない。
  • オリンピックの放送で、芸能人や芸人を起用することに違和感がある。インタビュアーにアイドルグループの芸能人を起用していたが、質問の仕方や内容が素人レベルだ。なぜアナウンサーを起用しないのか。芸能人にインタビューさせるということは、選手に対しても失礼だ。ある芸人は、つまらないコメントに終始し、とても見るに堪えない。また、別の芸人は金メダルを獲得した柔道選手に、「顔が怖い」などの失礼な言葉を投げかけただけでなく、くわえタバコでのやり取りと、見るに堪えない振る舞いだった。
  • オリンピックのメダリストを番組に呼ぶのはいいが、オモチャにするのは如何なものか。日本のテレビでしか通用しないタレントたちの、メダリストに対する敬意のなさ。それほどテレビは偉いのか。真剣勝負の世界に生き、実績をあげたメダリストに対して尊敬の対象であるのに、テレビは馬鹿にすることしか考えていない。
  • 日本人選手の活躍がめざましい。特に、女子選手のひたむきさ、素顔の美しさには心を打たれる。それに引き替え、テレビに出る女性芸能人の姿はどうだろう。容姿はけばけばしく、態度は品がない。オリンピックを機会に、みんなが日本女性本来の美しさを再認識し、テレビ出演者を選ぶ際の参考にしてくれることを願う。
  • 日本人女性ジャーナリストが、シリアで亡くなった。紛争地帯を女性が取材していたことにも驚いたが、女性ならではの視点での取材もあり、一つの国の中の痛ましい現実を私達が知ることが出来ていることを痛感した。日本の倫理観を、そのまま外国に持ち込むことは危険だろうが、人の命の重さに地域や人種、性別や年齢に差があってはならない。安易に外国人ジャーナリストの情報だけに頼れとは言わないが、何度も聞くジャーナリストの悲報は大変悲しい。戦争という不条理の、一つの現実として語り継いでほしいし、悲劇が繰り返されないように願わずにはいられない。
  • 「池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~」を見た。池上彰さんが、日本が戦争に走った背景や戦争反対の思想が消された事実、戦中の暮らし、ユダヤ人と白人の対立が生んだアウシュビッツの悲劇やその収容所の跡地の取材、中東で紛争が絶えない理由や現状などを分かりやすく解説していて、よい番組だった。ゲスト出演していた方もアイドルや女子アナ、女優、タレントと様々な世代の方が出演していたにもかかわらず、番組の雰囲気を崩さないように発言していてよかった。この番組のおかげで視野が広がった。
  • 連日報道されているいじめ事件だが、火のついたタバコを押し付ける”根性焼き”、赤くはれあがった肌に言葉を失った。せめてモザイクをかけるか、もう少し配慮がほしかった。今日一日、チャンネルを替えるたびに、あの痛々しい”根性焼き”の映像を目にしてしまうのではないかとビクビクしてしまった。全ては加害者が悪い。被害者への同情ももちろんある。目にしてショックというか、人間はなんと残酷なのだろうと、とても嫌な気持ちになった。

【番組全般・その他】

  • 韓国大統領の竹島不法入国、天皇陛下侮辱発言、オリンピックサッカーでの政治パフォーマンスと、韓国の日本への非礼ぶりは常軌を逸している。ここまで緊迫した状況であるのに、テレビでは未だに韓国アイドルを出演させ、韓流ドラマを流し続けている。どう考えても異常だ。
  • 地上波・BSともに、韓国のドラマが多すぎる。竹島問題で揺れる中、反日の国のドラマの放送はやめてほしい。日本の昔のドラマの方が社会問題や、恋愛をち密な脚本や俳優の迫真の演技など胸を打つものがあり、考えさせられることが多い。大人も子どもも楽しめる良質なドラマを放送してほしい。
  • 毎年チャリティーをテーマにした長時間番組が放送されているが、そんな単発的なものよりニュース番組の中で定期的に福祉の現状や介護や福祉職で頑張る人たち、困難に負けずにたくましく生きる障害者、社会復帰に向けてリハビリに励む人、東日本大震災から復興に向かう被災地の人々など「頑張っている人」を取り上げてほしい。見た人が勇気や感動を与えられるような番組を放送してほしい。
  • 北海道で深夜に最大震度5の地震が起こった。それなのに生放送の「24時間テレビ」は地震速報をやらずに、お笑い芸人のおふざけをやっていた。生放送なのに地震速報をやらないのはどうしてか。どこかで震度5の地震があった時は、番組を一時中断しても地震速報を流すべきだ。
  • 番組の看板犬が飼い主の不注意で死んでしまった。テレビ局は打ち合わせの段階で飼い主と何度も接触しているだろう。生き物を商品としか思っていない儲け主義の飼い主であることをなぜ見抜けなかったのか。制作者としての能力もモラルも足りないのではないか。テレビ局はひたすら「飼い主が死なせた」というニュアンスを強調し、飼い主だけの責任にしているようだが、生き物を大切にする意識が欠けているという意味では、飼い主もテレビ局も同じだ。
  • 北海道について、嘘や誤解を受けるような表現があった。昼食にとうもろこしの塩ゆでだけを食べることはあり得ない。北海道出身の俳優が、三食とうもろこしを食べると言っていたが、実際にそのようなことは聞いたことがない。以前、美唄のことを放送していた時にも、有名な焼き鳥をシメで蕎麦に入れて食べるという放送があった。美唄に住んでいる兄弟に聞いたところ、そのような食べ方は初めて聞いたと言っていた。また、北海道は標準語に近いイントネーションなので、テレビでやっているような訛りはない。見ていて不愉快だった。
  • 「もらえるものはもろとけ」発言で問題になった芸人がまだ出演しており、不快な思いをした。目立とうと必死でやっていたが、彼を見るだけで嫌な気持ちになる。どうして最近のテレビはモラルが低いのか。謹慎もなく、平然とテレビに出続ける神経が理解できない。出演させ続けるテレビ局に倫理観はないのか。法に触れなければ、何をしてもいいということではない。
  • 出演者二人が顔を突っ込んでぐちゃぐちゃになったケーキについて、「スタッフがおいしくいただきました」とテロップが出ていた。少なくともぐちゃぐちゃになったところを食べているとは思えない。バラエティーでも視聴者向けに出す連絡事項のテロップは真実であるべきではないか。責任逃れのための真実味のないテロップを出すのをやめてほしい。
  • 傾けたアングルの映像は見るに堪えない。歩行を表す撮影でカメラをわざと斜めに動かす表現や、映像を早送りし時間短縮の映像表現なども含め、カメラを左右に振り過ぎだ。アングルをわざと斜めに固定したのもとても見にくい。何の目的でななめアングルを多用するのか理解できない。体幹機能障害3級の僕は、ななめアングルを見ることが堪えられない。めまいが起きる。おしゃれを演出するつもりでななめアングルを多用するのかと思うが、できるだけ水平アングルで撮影してほしい。

【ラジオ】

  • ラジオ各局の「オリンピックハイライト」について。同じ内容の放送を別の局が時間をずらして放送するので2回聴かされ不快である。内容が異なっていればいいが、録音だから同じ内容だ。オリンピックの結果などテレビやインターネットでも入手することができるので、何のありがたみも、有用性も感じられない。この放送自体をやめて、通常通りの放送に戻してほしい。
  • 番組で「女医」をゲストに呼んで性行為の話題を延々と話していた。内容は恥ずかしくて言えない。ゲストの芸人の風俗での体験など、本当に低俗なものだった。あのような放送は、放送コードとして許されるのか。深夜番組とはいえ、公共の電波を使い、このような低俗な放送はやめていただきたい。

【CM】

  • 「ぷっちょ」の新CMが完成したようだが、そのCMの内容が不快だ。AKB48のひとりが歌のお姉さんの役になり、その他のメンバーが子どもの役となっているが、子ども役のメンバーは身体だけ子どもで、メンバーの顔で合成されている。違和感もあり生理的に受け付けない。毎回AKBのプロモーションCMのような出来になっている。
  • 「CookDo」のCMは、出演者が箸の音をカチャカチャさせて食べるときの音もはしたなく、不快だ。これまで他の商品やCMでこのような印象を抱いたことはなかった。演出過剰ではないか。

青少年に関する意見

【表現・演出に関する意見】

  • 過去の世界にタイムスリップした兄妹の冒険ストーリーかと思って見たが、まったく違っていた。近親相姦一歩手前の行為や売春などが露骨に描かれており、題名のイメージとはかけ離れた路線のドラマである。中学・高校生の子どもたちも気まずく感じたようで、じきに一緒には見なくなった。夜遅い時間に放送するならともかく、夏休みの子どもが見るような時間に放送する内容ではない。
  • テレビによく子役が出ているが、番組側がわざとやらせているのか知らないが、大人びたようなコメント等を子役にやらせていて不快だ。子どもに毒舌コメントをさせて何が面白いのか。そもそも子役をテレビに出しすぎだ。特に子役が主役でない場合は出さなくてもいいのではないのか。

【いじめ・虐待に関する意見】

  • 大津いじめ自殺事件以来、報道番組でいじめ問題を取り上げ、再発防止のための検証や議論をしている。しかし、その一方で、同じ放送局のバラエティー番組では、大人数で一人のタレントをいじめて笑い者にしている。いじめられキャラのタレントはそれを「芸」としているかもしれないが、見ている子どもにはそんなことはわからない。いじめが社会問題になっている今、放送局をあげていじめ防止対策に取り組むべきだ。

【暴力・殺人・残虐シーン関する意見】

  • 日曜日の午前中に放送するアニメにしては、暴力的な表現が直接的だ。人の頭を後ろから殴り殺すところや、どす黒い血の色や首がぽっきり折られるシーンなど。もう少し別の見せ方もあるように思う。子どもが対象のアニメのようだが、疑問だ。

【編成に関する意見】

  • 子ども向けのアニメで大津波により甚大な被害を受けるシーンを描いていた。東日本大震災による大津波被害を受けてから、たった1年程度しか経過していないのに、このアニメを放送することは間違っている。被災した子どもたちもこのアニメを見ていた可能性があると考えると、あまりにも酷な話だ。アニメを放送するなとは言わないが、もう少し放送するアニメを考えるべきだ。
  • 8月6日は「広島原爆の日」である。にもかかわらず、朝から各局とも「オリンピック」ばかりだ。若い世代へ「戦争の悲惨さ」を伝えるためにも、各局で特集を組むべきだ。

【報道・情報に関する意見】

  • アイドルグループのメンバー脱退について、その脱退理由が飲酒・喫煙であったとして、まるで犯罪者であるかのように報道された。報道されたメンバー全員が未成年者であり、中には14歳の女子中学生も含まれているにもかかわらず、実名・顔写真を晒されて犯罪者のように報道された。報道された内容に確固たる証拠はなく、単にネット上での噂をあたかも事実であるかのように報道した。地上波の影響力がどれほど大きいものか理解しているのか。

【その他】

  • いじめの助長になるバラエティー番組が多い中、フジテレビ『ほこ×たて』は素晴らしい番組だ。日本は「技術立国」であり、高い技術力と勤勉な日本人の性格で「経済立国」といわれるまでに成長した。その日本の技術を知る機会がないなか、バラエティー番組でそれを紹介するという新しい試みに感動した。日本が豊かな状態も、技術者のおかげだ。技術者の仕事を知るということは、若い世代にも勇気と元気を与えられる。理系離れが問題になっているが、この番組を見て技術者になりたいと思う若者が増えたら、日本もよくなると思う。

2012年6月に視聴者から寄せられた意見

2012年6月に視聴者から寄せられた意見

地下鉄サリン事件以来、17年間にわたって逃亡を続けていた最後のオウム指名手配犯2名が、相次いで逮捕された。大阪心斎橋では白昼通り魔殺人事件が発生、2人が殺された。報道に関連して、防犯カメラや市民提供の映像の扱いについて疑問や意見が寄せられた。

2012年6月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,573件で、先月と比較して202件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話24%、FAX2%、手紙ほか2%。 男女別は男性69%、女性27%、不明4%で、世代別では30歳代31%、40歳代28%、20歳代18%、50歳代14%、60歳以上6%、10歳代3%の順となっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。6月の通知数は676件【44局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、33件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

6月の視聴者意見は1,573件と先月より202件減った。
地下鉄サリン事件以来、17年間にわたって逃亡を続けていた最後のオウム指名手配犯2名が、相次いで逮捕された。大阪心斎橋では白昼通り魔殺人事件が発生、2人が殺された。報道に関連して、防犯カメラや市民提供の映像の扱いについて疑問や意見が寄せられた。国会では消費税増税法案が衆議院を通過、採決に反対した小沢一郎氏らは民主党を離党した。政局本位の報道という批判も多かった。
バラエティー番組について厳しい意見が多かった。バラエティーならなんでも許されるのか。せっかくの料理を食べずに、洋服のポケットやカバンに隠したりしていた。「食べ物を粗末にして、どう笑えというのか、稚拙で笑えない」。出演者全員で、酒の飲み比べをするというのも芸がない。「自由な発想、表現ではなく、単に常識やモラルに欠けているだけだ」などの意見があった。
先月来、視聴者の興味を煽り、むやみに期待させた上で、”登場”させずに裏切るという制作手法が、過剰な演出として問題となったが、今回も”このあと・・・””CMのあと・・・”と字幕を提示しながら、結局来週の話だったりする引っぱり手法に対し、「視聴者を馬鹿にした詐欺的方法だ」と厳しい批判があった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は133件で、前月より9件増加した。
今月は、表現・演出に関する意見が33件、次いで低俗・モラルに反する意見が21件、視聴者意見への反論・同意が11件、編成に関する意見と言葉に関する意見がそれぞれ5件と続いた。
表現・演出に関する意見では、アイドルグループのメンバーに生放送で騒動の内容を尋ねたことへの意見や、食べ物の扱い方について配慮を求める意見が複数あった。
また、言葉遣いに関する意見や、子役の出演について番組内容との適性を考慮してほしいとの意見も寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 消費税増税問題が報道されているが、政局の行方に関する論評ばかりだ。確かに面白いことだろうが、消費税増税の必要性や課税方法、内容などについても含めて報道しないと今の状況ではおかしいのではないか。どのテレビ番組も新聞各紙の取材記事を元にアレンジしながら、面白可笑しくしているとしか思えない。
  • 情報番組にコメンテーターとして出演する人物に、芸能人や芸人を多用して、政治などについて意見を言わせる意味がわからない。テレビ局の意向に沿ったことしか言わない芸能人の意見を、まるで”世論”であるかのように放送している。いつも反対意見の人はおらず、公平な放送とは思えない。せめて、専門的知識のある人を出すべきだ。なぜ浮気を自慢するような芸人に事件や事故、政治について語らせるのか。
  • オウム手配犯の取材で、川崎駅の防犯カメラなどを放送していたが、タクシーの防犯システムのスイッチの位置を放送したことはいかがなものか。タクシートラブルが多い中、防犯システムの存在を知られたくないタクシー会社もあると思う。これでは犯人が車載カメラのついていない車を選んで乗るのではないか。逃走手段をアドバイスしているように感じた。
  • 先日逮捕された菊地直子容疑者の潜伏先周辺からリポートしていた。同容疑者の地元での日常生活について、焼き鳥店の店員が取材に応じていた。リポーターは「菊地容疑者は何を食べていたか?」という質問に続き「タレ?それとも塩で?」と尋ねた。この状況で聞くようなことだろうか。菊地容疑者は殺人カルト教団の広告塔であり、サリン製造にも関わった特別指名手配犯だ。潜伏生活の様子を伝えるのはよいが、「焼き鳥の味付け」を聞いて何になるというのか。いくら何でもふざけており、真剣味に欠ける。
  • AKB48の総選挙は、ファンだけが興味あるものだと思う。彼女たちのための番組をわざわざ特番で生中継する意味がわからない。日本代表のサッカーなど国民全体で興味のあるものならわかるが、若者だけしかほとんど興味のないものを、あたかも「国民の関心事」であるかのように放送するのはおかしい。ニュースで舞台裏を報道したり、特番直前SPなどを放送したりして1日中AKBになっている。
  • 生活保護の話題で、受給そのものが悪いというような報道が多い。私の近所には生活保護受給者が数人いるが、皆それぞれ必要があって受給している。その人達が最近のテレビで受給者が批判されているのを見て、「自分は生活保護が打ち切られるのではないか」と不安がっている。弱い立場の人達をいたずらに不安に陥れることに憤りを感じる。朝の情報番組で「隣人が不正受給しているようだ。行政に報告したいが匿名でも可能か?」という視聴者からの質問を紹介していた。それに対し「匿名でも大丈夫です」という答えだった。番組を挙げて「告げ口」を奨励しているようで、不快極まりない。
  • お笑い芸人の母親らの生活保護不正受給だが、お金を返し、テレビで謝罪すれば許されるというものではない。今回発覚しなかったなら、そのまま受給させ続けていただろう。生活保護そのものに対する信頼を大きく損なった張本人であるから、テレビに出すべきではない。
  • 昔なら常識的なラインがあったと思うが、最近のテレビはそれさえない。お笑い芸人生活保護不正受給の問題で「どうしてこれが問題なのか」という意見を、出演者ほぼ全員がしていた。吉本が株主の制作会社の番組らしいが、公共のテレビで流して良いのだろうか。今回の問題は、それが法的にどうとかいう問題とは違う。有名人のあまりのモラルの低さにあきれた。
  • 「学校の節電対策が難しい」という話の流れの中で、女子高生が学校のトイレで携帯電話を充電するという話をしていた。節電とは何の関係もないばかりか、電気の受給契約者以外の者が、契約者に無断で電気を使用することは窃盗行為に当たる。もしその映像を学校側が確認すれば、彼女たちが学校から何らかの処分を受ける可能性は十分にある。盗電行為の模倣を誘発する結果にもつながる。視聴者に対する配慮、取材対象に対する配慮、社会に対する配慮のいずれをも欠いた放送だ。

【番組全般・その他】

  • 最近のテレビを見ているとあまりにも常識のない番組が多く、テレビ業界への不信感を持つ。どのテレビ局にも倫理観など存在しないようだ。芸能人が反社会的なことをしても、罪を犯しても、テレビ局は弁護士まで連れて来て正当化する。一般社会だとそのような言い訳は通用しない。あまりにも視聴者とかけ離れた感覚ではないか。
  • “ネコババ王決定戦”は、相手にばれないうちに物や食べ物を盗むという企画だった。盗むということ自体がよくないのに、店で注文した食べ物を服やかばんの中に入れて隠す。後でスタッフが食べられる状態でもなく、ただ食べ物を粗末にしているだけだ。店は汚すし、せっかくの食べ物は食べずにグチャグチャにされて本当に失礼なことだ。不愉快でチャンネルを替えた。なぜあれで笑えるのか。
  • 自分の目を疑った。出された食事を洋服のフードの中に詰め込んだり、カバンの中に流し込んだりしていた。子を持つ芸人までもが食べ物を粗末に扱うなんて、親としての神経を疑う。公共の電波で放送して良い内容かどうか、よく考えてほしい。
  • 酒を飲んで酔っ払った芸人がトークをしている。酒を飲んで仕事するなんてあり得ない。バラエティーならなんでも許されるのか。番組最後に、芸人が酔っ払って全裸になり、女性芸人もいる中、前転などして騒いでいた。モザイクがあれば何をやってもいいのか。裸になってしか笑わせることができないような番組はやめてほしい。
  • 楽しく見た。新聞によると、暴飲の助長につながると、視聴者や団体から抗議が殺到しているそうだ。ちょっと古臭い発想だが、メンバー同士がお酒を飲んで本音を話す企画はよかったと思う。新メンバーが涙を流し、酔いに任せて本音を吐露するシーンもよかった。規制してばかりでは、テレビがつまらなくなる。
  • 「芸人が芸人に強制的に高価な商品を買わせる」というコーナーがあるが、そのような無駄遣いをして何になるのだろう。特に、震災で何もかも失った人達がその企画を見たら一体どう感じるだろうか。ちなみに、以前そのコーナーで高価な時計を買った芸人が、母親に生活保護を受けさせていたことが分かり批判された。テレビは、倫理というものを失っているのではないか。
  • 海外を体当たりで体験しようという主旨の番組が多い。内向きになりがちな日本人の目を海外に向けるという点では良いことだと思うが、いくつか気になることがある。お笑い芸人などが内輪のノリをそのまま海外に持っていくことで、現地の人が当惑している。時には笑いをとろうと必死になるあまり、かなり失礼なことをしているケースも見られる。「旅行者一人一人が外交官」という言葉があるが、外国での一人の行動が、他の日本人にも多大な迷惑を及ぼす。よく考えて行動してほしい。
  • 「ワイプ」の小窓が邪魔だ。今のテレビ界の主流なのかもしれないが視聴者にとってはストレスだ。だから「リモコンdボタン」で「ワイプ選択消去システム」を作ってくれとテレビ局に問い合わせているが、一向に動いてくれない。タレントの顔色なんて見たくない。リアクション取ろうと無駄にうるさいし、みんな映りたくて前に出ようと必死に喋っている。見ている側には不愉快でしかない。消せるように「選択制」にしてほしい。
  • 最近のテレビ番組は開始時間も終了時間もまちまちで中途半端なものが多いため、録画する際に不便だ。たとえば番組Aの終了が19時57分、他局の番組Bの開始が19時56分であると、一部重なってしまい、最初の番組が終わるまで後の番組は録画できない。こうした番組同士の重なりは特にゴールデンタイムに多い。視聴率を効果的に稼ぐための手段なのかも知れないが、視聴者の都合も考え、各局が足並みを揃えて番組の開始と終了の時間は合わせるようにしてほしい。
  • デジタル放送になり間もなく1年になる。地震、気象情報やニュース速報等、未だにテロップが流れるが、必要か?番組参加などでdボタン利用などが多くなっている現在、アナログ当時のテロップは不必要ではないか。dボタンで詳細が分かるし、速報として流しても、発生後であれば発生地区の人がテレビで確認出来ないのが実情ではないか。

【ラジオ】

  • 生放送の10時からの聴取者参加型クイズコーナーで、リスナーが「工事現場のクレーンを操縦中」と話し、片手で携帯電話をつなぎ会話していた。「ベテランだからクレーン操縦中であっても電話できる」と豪語し、「現在24メートルの高さまで物を吊り上げ中」とまで話している。電話をやめるなり作業を中断させるなりするのが番組進行者の役目だと思うが、パーソナリティーの発した言葉は「片手間で余裕ですね」だった。たとえ目に見えない相手の言動でも、真偽のほどがわからないのに危険を放置するような言動は相応しくないのではないか。
  • 番組中に下ネタを言ったり、大声で叫んだり、不適切な内容が多い。公共の電波で放送を行うのだから考えて貰いたい。リスナーからの下ネタ投稿を、番組内で放送する。最低なラジオ番組だ。我々、サラリーマンは不祥事を起こすと処分される。彼らにも一度ペナルティーを与えるべきではないか。このまま放置すると日本社会がバカになる。
  • 夕方のラジオ番組だが、下ネタが多い。この日はリスナーの悩み相談で、題材は「セックスレス」だった。いくら性にオープンになった今の世でも、時間帯に節度があっても良いのではないか。会社でFMがBGMになっている場合もある。不愉快な番組だ。

【CM】

  • 問題になった「ぷっちょ」の続編が放送された。CMの最初の部分は前回の実写のままで、後半は粘土でアニメ化したメンバーに差し替えている。これは批判を無視し、馬鹿にした態度だ。視聴者をどういう流れでどの程度にすれば丸め込めるかというものだ。内容はなにも変わっておらず、卑猥で不衛生であり不快である。とても商品を買う気にはならない。
  • 多くの番組で、「このあとすぐ登場」といってCMに入り、CM明けはただの次週の予告で、実際に登場するのは次週であるといった手口が多発している。これは視聴者を欺く行為であり、許されるものではない。

青少年に関する意見

【表現・演出に関する意見】

  • 最近、週刊誌で過去の恋愛報道が出たアイドルグループのメンバーに、「本音を聞く為」と称して”ドッキリ企画”を仕掛けていた。週刊誌で叩かれ、バッシングされ、傷ついているであろう19歳の女の子に、ここまでする必要があるのか。明らかに公開イジメではないか。彼女の特別なファンではないが、非常に腹が立った。今後、視聴率稼ぎのこうした企画はやめるべきだ。
  • 映画番組で、3月から有名な子役がナビゲーターを担当しているが、彼はまだ10歳だ。映画には大人向けの内容の映画もあるのに、10歳の子役からその映画を勧められるということはどうも納得できない。この番組は楽しみにしている番組の一つだ。それなのに、子役のナビゲーターが気になってしまい、気分を損ねてしまう。子ども向けの映画のみのナビゲーターなら、まだ納得もする。
  • 色々な店を紹介する際、芸人が店の人には内緒で店の中を物色し、商品をつまみ食いすることがよくある。大人には演出だと理解できるが、純粋な青少年にはわかりにくい。テレビの影響力を考え、こうした行為は放送するべきではない。

【低俗・モラルに反する意見】

  • 20時台の子どもも楽しめる番組であるのに、最後に男性芸人たちが風俗の話をしていたのが不快だった。「××あたりの店に行った」とか「××マッサージ云々」などと平気で話すのにはあきれた。せっかくの良い番組が台無しだ。子どもが見ているということを忘れないでほしい。

【食べ物に関する意見】

  • 料理ができない若いタレントに、料理ができる人が目隠しして指示をだし、料理を作る番組だった。あからさまに食材を無駄に使って、遊んでいる様を面白おかしく放送していた。子どもが食べ物を投げたりして、食べ物を粗末にする、教育上よくないものだと思う。子供が目にする時間帯に放送していいのか。

【編成に関する意見】

  • 日曜日の朝、子どもが楽しみにしている番組があるが、この日は海外のゴルフ大会を放送していた。致し方ないが、もう少し子どもに配慮したプログラムを組めないものか。土曜日と日曜日の午前中の他局(BSも) の番組編成も、政治の話や通販番組などばかりで、家族で楽しむ番組がないように感じる。

【言葉に関する意見】

  • 最近の子どもたちは、かわいそうだ。民放での子ども向け番組が少ない。関東では民放での朝の子ども向け番組はテレビ東京だけ。でも、他の地方ではEテレだけで、他は全てニュース。もし、自分が今の時代の子どもだったら、間違いなく朝はテレビを見なくなる。それどころか、大人向けの番組ばかりで見たい番組がない。テレビは目先の視聴率競争ばかり。各局で、子ども向け番組の放送をしてほしい。

【その他】

  • 最近BS放送をよく見ているが、民放局でも自然環境や世界の国々のドキュメンタリーを放送するなど、質の高い番組が多い。まさに子どもにとって、うってつけの番組をやっている。子どものいる前では、BS放送にチャンネルを合わせるよう薦めたい。

2003年度声明

視聴率問題に関する三委員長の見解と提言

2003年12月11日

BPO [放送倫理・番組向上機構]
放送と人権等権利に関する委員会委員長 飽 戸  弘
放送と青少年に関する委員会委員長 原  寿 雄
放送番組委員会委員長 木村 尚三郎

日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。

BPOは三つの委員会が視聴者と放送界の透明な回路となり、苦情や批判に対応してきたが、視聴率競争の現状については、かねて疑問視する声が強かった。限定的に利用されるべき視聴率の数字が広告料金の重要な基準として独り歩きし、放送人の良識を疑わせるような過激な視聴率競争をもたらしていることは否定できない。

性、暴力の過剰表現などによる”低俗番組”の横行も、報道やワイドショーなどで起きる人権侵害事件も、視聴率競争から生み出されているものが少なくない。「低視聴率でもよいから良質の番組を出したい」という広告主の要望に対して「局全体の視聴率が低くなるから」などと言って断わることがあるような現状には、広告主の中からも厳しい批判が表明されている。

たしかに視聴率は、視聴の量を測る指標としては、現在入手可能な唯一の客観的データである。しかし、番組の質の評価基準としては不十分であり、また、量の指標としても600サンプルでは±2~3%の誤差を伴っているのに1%の差で一喜一憂するなどは、適切な視聴率の使い方とは言えない。にもかかわらず、現実には視聴率至上主義に走り、番組制作を左右していると言っても過言ではない。今回の事件はその実態の反映と見ることができよう。

事件は、世論のメディア不信と公権力による法的規制が進む情勢のなかで起きている。放送の自由と放送文化の向上を願う放送人は、この機に自律を強め、視聴率問題の歪みを正して世論の信頼を取り戻さなければならない。同時に、放送の社会的使命を再確認し、生き生きとした創造活動によってテレビの可能性を追求し、社会の期待に応えてほしい。

この観点から当面、次の点について提言し、関係者の積極的な論議と具体的な対応を要望する。

  • 過大な視聴率依存を改めるためには、番組の質を測定する視聴質調査も併用して総合的に評価すべきである。NHKと民放各社がこれまで個別に進めてきた視聴質研究を発展させながら、放送界全体としての新たな番組評価基準づくりに向けた対策機関の設置が必要と考える。視聴率制度の再検討は放送の根幹に触れる構造改革と言えるものなので、この対策機関には、広告界、制作会社や専門家、視聴者・市民なども参加することが望ましい。
  • 広告界も新しい評価基準づくりに向けて、積極的な協力を望みたい。広告主・広告会社もまた、放送文化の質に大きな社会的責任を持ち、それを果たすことによって、視聴者・消費者の信頼を得ることができる。
  • 放送人の自律を強める倫理研修などの必要性も改めて強調したい。日本テレビの調査報告書によれば、当のプロデューサーは「視聴率さえ上げれば何をやってもいい、という感覚があった」と述べている。視聴率至上主義は放送現場の倫理観をここまで麻痺させている。また、制作会社との関係のなかでキックバックを生むような土壌があるという批判にどう応えるか。現状を放置したままでは制作現場の倫理強化は望めない。
  • 視聴者・市民には、番組に対する積極的な発言を期待したい。番組を批判、要望、激励することで、視聴者もテレビ改革に参加できる。視聴者も放送文化の担い手であることを訴えたい。
  • 新聞、雑誌の関係者には番組批評を強めてほしい。また、「視聴率ベスト10」などの報道は、視聴率至上主義を増幅する面のあることに留意し、現状の再検討を望みたい。

BPOからの提言・声明・見解

2003年12月11日

「三委員長の見解と提言」 を出すにあたって

BPO[放送倫理・番組向上機構]理事長  清 水 英 夫

BPOは今年7月の発足以来、三委員会(BRC、放送と青少年に関する委員会、放送番組委員会)の独自性と独立性を尊重してきた。同時に、それら委員会に共通する問題や、そのどこにも該当しない問題等の処理に関して、検討を続けてきた。

今回の視聴率問題に関する三委員長の見解と提言は、BPOのあり方に関する一つの方向を示したものと言えるであろう。この提言がまとめられる過程として、各委員会において活発な意見交換が行われた。そして、それら有識者の意見を基に、三委員長による検討がなされ、まとめられたのが今回の見解と提言である。

ただちにわかることは、今回の視聴率問題に関する三委員長の見解が極めて厳しいことである。その背景には、各委員会における委員各位のさまざまな厳しい意見が存在している。そして、それらの意見に共通しているのは、今回の事件が偶発的でもなく、また当該プロデューサー個人の問題でもないという認識である。

放送による人権侵害、低俗番組の横行、青少年に与える番組の悪影響など、BPOの主な関心事の背景には、視聴率至上主義や視聴率即メディア通貨と捉えがちな業界体質の存在があるのではないかと、多くの有識者委員は考えている。その事実を放送界は重く受けとめてほしい。

有識者委員の多くも、放送局経営における視聴率調査の存在理由や、視聴率を番組評価の一手段とすることには否定的ではない。しかし、視聴率を巡る業界の現状は、市民の常識に反し、あまりにも常軌を逸していたと考えざるを得ない。その意味で、今回の事件は放送のあり方を再考するうえで重要な契機にしなければならない。

三委員長は、次のような重要な提言を行っている。

  • 量的な視聴率調査だけでなく、番組の質を測定する視聴質調査の導入も検討すること。
  • 広告界も新しい評価基準づくりに向けて、積極的に協力してほしいこと。
  • 放送人のモラルを高め、自律を強める倫理研修の必要性。
  • 視聴者(市民)の番組に対する積極的な発言を期待する。
  • 新聞や雑誌が視聴率至上主義の増幅に加担しないでほしいこと。

放送を担う人々がこれらの提言の真意を理解され、健全な放送文化の実現と発展のため、総力をあげて取り組まれることを切に希望する。

BPOも、第三者機関としての役割を再認識し、視聴者の声に耳を傾けながら、放送の自律と放送文化の向上のために努力していく所存である。

視聴率問題に関する三委員長の見解と提言

視聴率問題についての中学生アンケート結果

この問題を知っていましたか?(48人中)

事件の第一印象

  • なんでこんな事をしたのかなと思いました。こんな事をしてはいけないと思わなかったのか不思議です。
  • お金を払って視聴率を上げても、心から満足できないだろうなと思った。
  • なんでこんなことで騒ぐのだろうと思った。今までも普通にあった(不正操作が)と無意識のうちに思っていたから。
  • よく意味がわからなかった。ずるい人だと思った。
  • ひきょう。残念な気持ち。
  • 第一印象へぇーっ。視聴率が低かったらつまらないと思ってあきらめてほしい。
  • 日テレ=悪い会社というイメージが沸いた。
  • なぜお金を使ってまで視聴率をあげたいのかわからない。
  • 最悪!今まで結構視聴率を気にして見る番組を選んできたのでがっかりした。
  • そんなことまでして視聴率を気にするものなのかと思った。
  • 「視聴率さえ上がれば何をしてもいい」という考えがあるのが悲しかった。それよりも、いい番組を作って皆に支持してもらえばいいのに。
  • バカなプロデューサーがいると思った。これから、信用できなくなる。
  • 何も感じなかった。
  • 視聴率がTV局の利益につながるのだから、こういう事が起こるのは驚くようなことでもない。
  • テレビを作る人は、視聴者のことをまったく考えていないのだと思った。
  • スポンサーに対する詐欺だ。
  • こんなことをやる暇があるなら、おもしろい番組をつくれ!
  • 操作するのでは視聴率を測る意味がない。
  • そんなに視聴率を上げたいなら、ずるをしないで実力で勝負すればいいのに。

なぜこのような事が起きたと思いますか?

  • 会社とスポンサーの問題。「視聴率ランキング」の番組とかをやっているのを見て、いつかこういうこと(不正操作)が起きると思っていた。
  • スポンサーとの関係でいろいろあったのかなと思った。
  • 自分の番組をたくさんの人に見てもらいたくてこのような事件が起きたのではないかと思った。でも、これからはあまり見てもらえなくなるのでは。
  • 視聴率重視という会社の方針が、プロデューサーの重荷になったから。
  • 視聴率を測る機械を所有している家庭の数が限られているから。
  • 大人気ない人が増えたから。
  • お金がほしかったから。少しの数字でも莫大な額の違いが出るから。
  • 他の局との競争が激しいから。同じ局の中でも、よりたくさんの給料をもらうため。
  • プロデューサーの意思の問題。操作するためにお金を使うなら、その分を自分の番組につぎこんで、みんなが見てくれるような番組を作ればいいのに。

2004年度声明

テレビ局に対する総務省の行政指導に関する声明

2004年11月11日
BPO [放送倫理・番組向上機構]
放送と人権等権利に関する委員会委員長 飽 戸 弘
放送と青少年に関する委員会委員長 原 寿 雄
放送番組委員会委員長 木村尚三郎

放送倫理・番組向上機構[BPO]は、「放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情…(中略)…に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的」に設立された(BPO規約第3条)。BPOを構成する三つの委員会(放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会、放送番組委員会)は、この目的を果たすため真摯な活動を行ってきたが、6月22日に総務省が通達した厳重注意などの行政指導は、以下の理由により、放送の自律や放送界の第三者機関に対する信頼を危うくするおそれが極めて強いと判断せざるを得ない。

第一に、総務省(情報通信政策局長名)が厳重注意を行ったテレビ朝日の国会・不規則発言編集問題については、当事者である衆議院議員・藤井孝男氏の申立てに基づき、放送と人権等権利に関する委員会[BRC]が審理の結果、テレビ朝日が重大な過失によって藤井議員の名誉を侵害したことを認定し、同局に対し適切な措置を講じるよう勧告した。然るに、総務省はテレビ朝日に対し重ねて通達(厳重注意)を行い、その中でBRCの事実認定や判断を引用して自らの措置を正当化した。これは、テレビ朝日側からすれば二重の処分(制裁)を受けたことを意味するとともに、第三者機関としてのBRCの存在意義を甚だしく軽視するものである。

第二に、総務省はテレビ朝日と山形テレビに対し、放送番組の編集上求められる注意義務を怠り、それぞれ政治的公平に反する番組があったとして厳重注意をするとともに、再発防止に必要な措置を講ずるよう要請した。たしかに、放送法第3条の2第1項は、放送番組の編集に当たって、放送事業者に求められる事項について定めている。しかし、当該規定は、総務省の前身である郵政省自ら「精神的規定の域を出ないものと考える」としているところである(郵政省「放送関係法制に関する検討上の問題点とその分析」1964年)。注意を受けた番組にもそれぞれ問題がないわけではない。だが、政治報道は言論の自由と深く関わるものであるから、公権力がその可否を判断することは、慎重のうえにも慎重でなければならないと考える。放送番組における政治的公平の問題については、BPOでも研究課題となっているが、総務省においては慎重な姿勢をとられるよう強く要望する。

そもそもBPOは、放送を通じて市民の知る権利に奉仕するに当たり、国家機関その他の公権力による支配を受けることのないよう、放送への苦情に的確に対応し、その判断を独立した第三者委員会に委ねるため、放送界が自主的に設立した機関である。この民主的な組織が成功するか否かは、一に放送事業者の自覚と公権力の謙抑とにかかっていると言っても過言ではない。

以上、BPOを構成する三委員会は、それぞれ独自に審議を行った結果、改めて放送の自律性と、第三者機関の自主独立の重要性に鑑み、総務省の今回の行政指導に関し、ここに三委員長名で見解を明らかにすることとした。

以上

BPOの三委員長「声明」について

2004年11月11日
BPO[放送倫理・番組向上機構]
理事長 清 水 英 夫

BPO[放送倫理・番組向上機構]を構成する三つの委員会の委員長は、昨(2003)年12月11日、いわゆる視聴率不正操作事件に関し、初めてその「見解と提言」を発表した。放送をめぐる重大問題について、独立した第三者が、それぞれの委員会の論議を経て、その意見を公表することは、極めて重要な意味を持っていると考える。

前回の「見解と提言」については、放送業界において重く受け止められた。すなわち、民放連〔日本民間放送連盟〕は直ちに「視聴率等のあり方に関する調査研究会」を設け、本(2004)年5月その報告書が発表された。今回の「テレビ局に対する総務省の行政指導に関する声明」もまた、それぞれの委員会における慎重かつ徹底した論議に基づくものであり、総務省をはじめ各方面において真摯に受け止められるよう強く希望する。

声明は、2004年6月22日付で総務省が行った二つの種類の通達(厳重注意)に関するものである。その第一は、BRC[放送と人権等権利に関する委員会]が放送局に対し行った強い勧告に重ねて、総務省が厳重注意の通達を行ったことが、第三者機関としてのBRCの存在意義を甚だしく軽視するものだ、という趣旨のものである。また、その第二は、政治的公平に反するとして行った総務省の厳重注意に関するものであるが、放送法の規定は精神的(倫理的)規定とされていること、また政治報道は言論の自由と深く関係しているところから、公権力がその可否を判断することは極めて慎重でなければならない、とするものである。

これらの指摘は、放送の自律と第三者機関の自主独立にかかわるものであり、今後の放送行政に当たって、深く留意すべき問題点であると考える。

2007年度声明

ダイエット法を紹介したテレビ番組等に関わる声明

2007年1月下旬以降、納豆ダイエット法を紹介したテレビ番組の放送内容に関し、BPOに対しても視聴者からの苦情が多く寄せられた。これら放送番組の一連の問題の重大性とBPOの役割に鑑み、1月29日、清水英夫理事長の「声明」として、BPO加盟全局に対し「放送界全体としても強く反省自戒し、公権力の介入を招くことなく、放送への信頼回復等に一層努めるよう」要請した。
続いて、2月7日、放送番組委員会の有識者委員による声明を発表した。この声明では、「番組制作システムの問題」「放送従事者の教育システムの問題」「公権力が放送に介入することへの懸念」の3点を指摘し、放送事業者の自主・自律による今後の全容解明と効果的な再発防止に向けた取り組みを求めている。

BPO理事長声明
(ダイエット法を紹介したテレビ番組等に関わる声明)

平成19年1月29日

声 明

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕
理事長 清水 英夫

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕は、自主的かつ独立した立場から、正確な放送と放送倫理の高揚に資する ことを目的に第三者機関として設立された。
このBPOの使命と役割に鑑みて、放送番組に関する一連の不祥事に対しては、深刻な憂慮の念を禁じえない。特に最近、関西テレビが制作しネット放送された番組『発掘!あるある大事典』の実験データなどが捏造とされる問題については、当該局のみならずBPOに対しても、視聴者からの抗議が相次いでいる。
従前にも同様の事例があったが、いずれも放送局の姿勢や倫理が問われる内容であり、緊張感や責任感を著しく欠いたとの謗りを免れ難い。
近時、放送特にテレビの社会的影響力はますます増大している折から、関係者にはそれにふさわしい認識と対応が求められている。このような事態が繰り返されれば、放送に対する視聴者の信頼を失墜させ、ひいては放送の自由を危うくすることとなる。
今後放送界全体として、強く反省自戒し、公権力の介入を招くことなく、放送への信頼回復等に一層努めるよう切望する。

以上

BPOからの提言・声明・見解

2007年2月7日

声 明

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕
放送番組委員会(有識者委員)

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕の放送番組委員会(有識者委員)は、放送活動全般の質的向上を願って、放送の理念や倫理に関わる問題から取材・制作のあり方まで、第三者の立場から広く審議し、ときには具体的な事例に即して議論を重ねている。

そのような私たちにとって、関西テレビ制作の『発掘!あるある大事典Ⅱ』が起こしたデータ等の捏造問題は、ジャーナリズム産業の基本の放棄であり、視聴者の期待を裏切り、放送界全体の信頼性を損ない、ひいては言論・表現・報道の自由を危うくする出来事と言わざるを得ない。

これまでも放送界はしばしば深刻な不祥事を繰り返してきた。そのたびに放送局は陳謝し、再生や再発防止を誓ってきたが、不祥事はいっこうに収まらない。ひとつひとつの態様は異なるとはいえ、こうしたことが繰り返される背景には、放送界が全体として抱える構造的な問題がありはしないだろうか。

私たちは今回の問題についても、単に1テレビ局の、あるいは1制作会社や制作担当者の問題としてだけでなく、放送界全体が抱える構造的な問題としてとらえる視点が重要だと考えている。その観点に立って、さしあたって以下の3点を指摘し、放送事業者の自主・自律による、今後の全容解明と効果的な再発防止に向けた取り組みに期待したい。

番組制作システムの問題

現在の番組制作においては、分業化が進んでいる。ひとつの番組が制作会社をはじめとする外部協力によって制作されることが当たり前になり、何重もの下請け化によって、実際の番組制作へのコスト面のしわ寄せなども常態化している。

こうした分業構造は、広範囲にわたって、番組制作環境の悪化を招いている。外部の制作者は時間に追われて余裕もなく、時には他の仕事とかけ持ちし、十分な取材や調査が出来ないまま、番組作りが進んでいく。

また、この分業構造は、発注側のテレビ局の番組制作力を削ぐだけでなく、製造業でいう「品質管理」能力の低下をもたらしている。制作経験の少ないテレビ局のプロデューサーやディレクターが、外部制作番組の管理を行ない、納品される番組の完成度や正確性を判断することには無理な面がある。

このような番組制作システムのもとでは、一貫した、きめの細かい品質管理を行なうことが難しくなっているのではないかと私たちは危惧している。今回の事件についても、その原因を一部の関係者の不心得に帰すのではなく、すでに放送界に定着した番組制作システムの構造それ自体の問題としてとらえる視点が必要である。

放送従事者の教育システムの問題

言うまでもなく放送は、民主主義の根幹をなす言論・表現・報道の自由に立脚する事業のひとつであり、これに従事する者は、その自由を享受すると同時に、それにふさわしい見識と責任意識を持たなければならない。

しかし、事業が大規模になり、技術が複雑化し、番組が多様化し、視聴率競争が激化する慌ただしさのなかでは、見識や責任意識はしばしば等閑視されがちである。また見識や責任意識といっても、組織統治や法令遵守から、番組の企画・取材・編集、さらに取材対象との接し方や距離の取り方まで、それぞれの仕事に応じた具体性と専門性を有しなければ、たんなるお題目に終わってしまう。

各局も社員研修等はしているが、番組制作が外部協力によって行われている現状では、外部制作者の末端までにも、真に実効性のある教育システムが必要である。

また、将来的には、一定の経験を積んだ放送従事者が更に見識を深めるため、放送界が、豊かで専門性の高い教育制度作りに取り組むことを、私たちは期待したい。

公権力が放送に介入することへの懸念

私たちは、ここ1、2年、政府・総務省による放送界への関与・介入が強まっているという印象を持っている。NHKの国際放送に対する「命令放送」、民放の報道番組やスポーツ中継の不手際に関する「厳重注意」等々、頻繁に関与・介入が行なわれている。

今回の関西テレビの不祥事に関しても、総務省は「報告」を求めている。

これらは、いずれも放送法や電波法に基づくとされるが、本来、民主主義社会の根幹をなす言論・表現・報道の自由の重要性に鑑みれば、慎重の上にも慎重を期すべき事柄であり、行政の役割は、直接に指示したり、懲罰的な行政指導を行なうことではないと考える。

私たちは、健全で、魅力にあふれた放送が、民主主義社会をいきいきと成熟させるために欠かせないと考えている。今回の問題にせよ、これまでも相次いだ不祥事にせよ、その底流には、構造的な問題が横たわっていることを示しているが、その深部への切開が行なわれ、そこから再発防止のための具体的な手だてが講じられなければ、この国の民主主義の将来も危ういと、私たちは深く憂慮している。

放送倫理・番組向上機構 放送番組委員会(有識者委員)
委員長 天野 祐吉 委  員 上滝 徹也
副委員長 田中 早苗 委  員 里中満智子
委  員 石田佐恵子 委  員 清水 哲男
委  員 市川 森一 委  員 吉岡  忍

休会

休会 – 2012年9月

中高生モニターについて

中高生モニターについて

8月はBPO青少年委員会の「青少年へのおすすめ番組」を視聴してもらい、その感想を報告してもらった。8月の「青少年へのおすすめ番組」は全国の放送局から62番組が推薦された。
モニター報告は30人から寄せられた。なるべくそれぞれの地域の番組を視聴してくださいという依頼をしたが、結果的には全国ネットの番組を見ての報告が多くを占めた。関西テレビが制作するドラマ『GTO』に関しての意見が6件あり、「見ていてジーンときた」という一方で「学園ドラマでありながら、リアルな等身大な話でなかった」などの意見に分かれた。テレビ東京の『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』は4人から「戦争はきれいごとでは語れない」「戦争に対する理解が深まった」などの感想が寄せられた。NHKの『トキ誕生~36年ぶりの奇跡を支えた男たち~』も4人から、トキを育てる苦労を「ドラマチックにしすぎることなくしっかりと構成していた」「胸が熱くなる内容に心を打たれた」などの報告があった。各地の放送局では、広島テレビの『除染の島へ 故郷を追われた27年』や広島ホームテレビの『HOME Jステーション』の原爆投下を取り扱ったコーナーへの感想や、仙台放送の震災復興番組『ともに』、福島テレビの『きみこそみらい』にも感想が寄せられた。
前回からはじめた<自由記述>は、「いじめ」についての感想をお願いした。「いじめは犯罪だと思う」「相談できる人を作ることがいじめを乗り越える一番の薬だ」という意見とともに「いじめの根本をなくすのはテレビの役目ではない。いじめられたり悩んでいる子も元気になれるような番組を作ることだ」という指摘もあった。

【主な意見】

  • 「『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』(テレビ東京/テレビ北海道)は、主に第二次世界大戦時の日本、ドイツ、そして現在のリビアの特集でした。戦争中の日本の映像を見て、番組内でいわれていた”国民の熱狂が独裁者を作り、戦争へと導いた”という言葉の意味がよく分かりました。番組内で”ここまでいくと、国家による国民の洗脳だ”と言っていましたが、私もそのとおりだと思います。さて、”毒母”と呼ばれる、子どもに自分の(時にはまちがった)価値観を洗脳する(刷り込む)母親がいます。この言葉は精神科医の斎藤環さんが造った言葉です。でもそれは子育てをしていたら絶対起こることで、洗脳しない母親はネグレクトです。この毒母に対して中村うさぎさん(小説家、エッセイスト)は”虐待やネグレクトは許せないけれど、価値観を洗脳しない母親はいない。だから、自分で社会に出て新しい自分の価値観を手に入れる、それが自立ってことだと思う。いつまでも母親のせいにするな”と言っていました。私は”国家による洗脳”にもこれが当てはまると思います。だから、それに甘んじるのではなく、自分で調べて、見て、考えることが大切だと思います。私は、戦争のことも含めて、自分で悩んで手に入れた価値観をもった人間になりたいと思いました。」(北海道・中学3年女子)
  • 「私は『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』(テレビ東京)という番組を見ました。私はもともと国際情勢に興味があり、今、アサド政権のもとで行われているシリアの内紛などにも関心があります。私が思うこの番組の良い点は、池上彰さんの戦争についての解説がわかりやすかったという事です。まず日本とドイツについて学んで、それから今へとつなげています。また、アウシュビッツ強制収容所の様子や、リビア国民がカダフィ政権下の苦しみを語るシーンが映し出されたときは胸に熱い思いが込み上げてきました。」(東京・高校2年女子)
  • 「私は今回『地球アゴラwith you 空の旅支える若者たち』(NHK-BS1)を視聴しました。今回は旅客機にかかわる仕事が紹介されていました。旅客機というと、CAやパイロットなどが思い浮かびますが、番組では空の旅を支える”知られざる仕事”として、客室乗務員のスケジュール管理をする人・航路の作成をする人・エンジンを整備する人・各飛行機ごとの燃費を計算する人・お客様の声に耳を傾ける人・機内での設備を考える人などの方々が出演されていました。いつもは見えない、一つの旅客機を飛ばすのにどれだけの人の努力がかかっているかがよくわかり、とてもいい番組だったなと思いました。ただ、司会の男性が少し出演者の方に対して失礼な言動があったのでは、と感じました。」(神奈川・高校2年女子)
  • 「『トキ誕生~36年ぶりの奇跡を支えた男たち~』(NHK総合)を見た。この番組は36年ぶりのトキの野生ふ化を陰で支えていた3人の男性への密着などをもとに、この快挙の裏側にあった惜しみない努力をまとめたもので、たった47分のドキュメントだったが、その完成度の高さに驚いた。全く無駄のない構成と、考えさせられ胸が熱くなる内容に心を打たれた。この番組が放送された2日後、今回野生ふ化した内の3羽のひな鳥の母親であるトキ一羽が死んだというニュースが皮肉にも新聞に掲載されていた。この小さな記事から、私は様々な人物の顔が頭をよぎる。」(東京・高校2年男子)
  • 「『GTO』(テレビ静岡/関西テレビ)の第6話を見ました。全体的に安っぽい感じがしていると思いました。だから、僕はこのドラマを見て特に心を動かされたとか、学んだという感じにはなりませんでした。僕はこのドラマは第1話だけ見て、見るのをやめていましたが、設定などがとてもシンプルだったので、この回だけ見てもストーリーを理解することができました。そのような誰でも見ることができる感じは良い点だと思いました。学園モノのドラマでは、若手俳優がたくさん出るのは仕方ないし、その方が僕もよいと思います。でもその分、全体の演技力なども下がってしまうのではないかと思いました。また、『GTO』は前にも実写化されている作品だし、原作もあるので、いろいろなものと比較される作品だと思います。だからこそ、脚本や映像などで質を高めた方がいいのではないかと思いました。」(静岡・高校2年男子)
  • 「私が見た番組は『NNNドキュメント‘12 除染の島へ 故郷を追われた27年』(広島テレビ放送)と『HOME Jステーション』(広島ホームテレビ)の2つです。どちらも、内容は67年前の原爆投下の話です。1945年8月6日から67年が経ち、当時広島で被爆した方々もだんだん少なくなっているようです。番組を見て、原爆の恐ろしさや戦争の怖さを経験した被爆者が減ってきている今、若い人々に伝えていくためにもテレビの力は大きいと思いました。人間がこのような過ちを二度と起こさないためにも、実際に原爆が落とされた広島や長崎だけではなく、日本全国で平和を伝える番組を放送していかなければならないと感じました。」 (広島・中学2年女子)
  • 「『シンサイミライ学校 楽しく!真剣に!学ぼうBOSAI』(NHK Eテレ)を視聴しました。8月14日の”人間力”では、15分という短い放送時間の中で防災の方法を紹介している点が、端的でわかりやすかった。15日の”命を守る絆”では、宮城の子供たちの実経験を直接伝える方法は正確で、素直に受け入れることができる。16日の”まち発見”では、自分もときどき行く京セラドームが海のそばにあることに驚き、自分の知っている場所が取り上げられることで役に立つことがあった。17日の”ふるさとの未来”では、年に6回も防災訓練のある小学校を取り上げていた。小学生対象の番組というより、地域、学校関係者にもっと見てほしい。ただし、カタカナの番組名はわかりやすそうでわかりにくいです。」(大阪・高校1年女子)
  • 「僕は、8月5日に放送された『Team Earth』(静岡朝日テレビ)を見ました。5分間というとても短い番組でしたが、見所がたくさんありました。昭和30年代の里山の復元を目指している場所での自然体験で、自分も小学校の頃に戻って体験をしているようでした。普段なかなかできない川遊びでは、より自然を身近に感じることができたと思います。野菜の収穫では、自分が収穫した野菜を食べることによって、食べ物を大切に感じると思います。夏休みだからこそできる、自然体験だと感じました。年々減りつつある、森林やきれいな川。この運動が広がって、静岡の自然、日本の自然、そして世界の自然も守ることができるといいと思います。」(静岡・中学3年男子)
  • 「私は『ともに』(仙台放送)を視聴しました。初めてこの番組を見ました。震災からの復興についての番組でした。1時間の中で4つほどの内容を取り上げているので、たくさんのことを知ることができて、よいと思います。番組の終盤に被災地の様子を伝えるコーナーがあり、その映像にはいまだに残っているがれきなどが映っていました。被害を受けた方々は、とても暗い気持ちになり、震災時のことを思い出してしまうのではないでしょうか。がれきの映像を入れずに被災地の状況を伝えるのは難しいでしょうから、せめて編集の時にがれきが大きく映っているシーンはカットするなど、被災者の方々にもう少し配慮して流してもらえれば、もっと良くなるのではないかと思いました。以前のように震災当時の映像がなくなったのは良いことではないでしょうか。」 (宮城・中学1年女子)
  • 「『きみこそみらい』(福島テレビ)を見ました。10代限定の夏フェス”閃光ライオット”から本当にデビューする人がいる。それも福島市に住んでいるなんて驚きました。このイベントは『SCHOOL OF LOCK!』というラジオ番組(エフエム東京系)で募集していたものです。そんなラジオ番組から本当にデビューしてしまう人がいるなんて、このテレビを見るまで知らなかったので、驚いただけでなく応援したくなりました。まず、自分で作詞作曲していることに感動です。自分が生まれ育った福島のことを歌詞に入れ、福島を誇りに思っていることに感謝の気持ちでいっぱいになりました。」(福島・中学2年女子)

【委員の所感】

  • 多くのモニターが、ドキュメンタリーを見ながら登場した人が発した言葉の真の意味を深く理解しようとしたり、テレビが伝えたことからさらに一歩踏み込んで自分なりに考えたり解釈したりする視聴をしていることがよくわかり、リテラシーの高さに感心しました。
  • 夏休みのためか長編ドキュメンタリーを採り上げ、戦争や絶滅種保護・環境といったスケールの大きなテーマを自分に引き寄せて考えようとする意気込みにあふれる報告が多く、大変心強かった。自由記述欄の「テレビの役割はいじめをなくすことではなく、いじめられたり悩んでいる子を元気にすること。演じる側に優しさがあればいい」という意見は目が覚めるよう。こういう意見が子どもの方から出てきたことの意味を考えたい。
  • 地元局の番組を視聴している中高生が少なからずいたことを、心強く感じた。地域のことをよく知っている制作者がテーマを考え制作している番組を大切に育てていくことは、地元視聴者の大事な使命だと考える。東京から送られてくる番組中心の編成に疑問を感じているということだろう。放送局は今こそ、多様性や地域性を重視すべきだ。
  • 番組を批判的に見て鋭いコメントをしている人が数人いたが、番組制作者には、ぜひこれらのコメントに耳を傾けてほしい。

【今月のキラ★報告】 長野・高校1年女子

NEWS23クロススペシャル(8月5日・TBSテレビ)

今まで終戦の日に広島長崎の原爆の恐ろしさをテレビで耳にしても、なかなかその怖さを自分のこととして実感できなかった。今回、綾瀬はるかさんのリポートを見て、私の戦争に対する意識が少しかもしれないけれど変わってきた。
私と同じ年で原爆に遭遇してしまった龍智江子さん、本当はテレビ取材は嫌だったろうと思う。67年も前の忘れたいけれど忘れられない記憶を蘇らせてしまう1枚の写真には少女の悲しみが焼き付いている。焼け焦げてしまった母親の横で、父親が防空壕から瀕死の状態の向かいの子ども耐子さんを必死に助け出す姿を、どんな思いで見ていたのだろう。智江子さんは悲しみも何もなかったとおっしゃっていたが、現実のこととして受け入れがたかったのではないだろうか。T字型の防空壕でなぜ助かったのかアメリカ軍が調査して原爆でも安全なシェルターをつくったと言っていたが、何ともやりきれない気持ちにさせられた。あの惨状を見てアメリカ軍はなぜ間違ったことをしてしまったという気持ちにならなかったのだろう。ただ、そのアメリカ軍以上に、深い悲しみに包まれた被曝された女性たちを差別してきた日本人も同罪のように思う。戦争は本来の人間らしい優しさを奪い全てを狂わせてしまう。
世界のどこかでまだその過ちが繰り返されているのを止められるのは、龍さんや耐子さんのように実際に悲惨な戦争を経験された生の声だし、それを語り継ぐ報道の力もとても大切だと思った。

【委員会の推薦理由】

戦争体験者への取材番組について、取材を受けた人の気持ちに配慮する視点を持ちながらも、戦争体験者の生の声を語り継ぐことの必要性を指摘している点が高く評価されました。

【自由記述】

今回の<自由記述>は「いじめ」について、最近の番組で気になったことや、日ごろ感じていることについて書いてもらった。

  • ニュース番組やワイドショーでのいじめの取り上げ方は、事実をただ伝えるだけで、深い検証などをしている番組はなかなか見かけないと思いました。
  • いじめ問題はワイドショー的に扱わないでほしい。いじめ問題で視聴率をとろうなどと思わないでほしい。もっと地味に継続的にとりあげていってほしい。
  • 僕はいじめの根本をなくすのはテレビの役目ではないと思います。僕はテレビの役割はそんないじめられたりして悩んでいる子も、その番組を見ている時は元気になれるような番組を作ることだと思います。バラエティーやお笑いには、演じる側に優しさがあれば何の問題もないと思います。
  • いじめは立派な刑事事件だと思います。そのためにも、やはり大人が介入して、しっかり指導するべきだと思います。
  • いじめというのは、人と人の関係の問題である。それを警察がどうにかできるだろうか。周囲には、いじめられている友達を救いたくても救えない人がいる。それでも赤の他人である警察が救えるのだろうか。

【青少年へのおすすめ番組見学報告】

今回、8月の「青少年へのおすすめ番組」の中から、福岡放送制作の『めんたいキッズ放送局2012』(8月25日放送)の制作現場を福岡県在住の高校2年生女子の中高生モニターが見学し、青少年向けの番組はどうやって作られているのか、どんな苦労があるのか、番組制作の現場を見て何を感じたのか、報告してくれた。(『めんたいキッズ放送局2012』は、放送局が制作をサポートしながら4人の小学生が5分間の番組を制作し、その様子もあわせて放送した番組。今年で12回目になる。)

今回『めんたいキッズ放送局』の制作現場見学を通して、「様々な視点から番組が作られていること」を感じました。例えばテーマとなっていた太宰府天満宮を例に挙げても、通常は観光スポットや人気のお土産などが特集されている事が多いのですが、小学6年生の彼らは、どうして天満宮がここに建てられたのか、また地元の人も知らないような人目につかないトンネルの謎など、視聴者が知っていそうで知らない天満宮を取り上げていて、とても感心しました。
また、カメラワークやリポート、飲食コメント、ディレクター作業など初めての体験が多かったはずなのに、一人一人がきちんと役割を分担してどうしたら興味が湧く番組を作れるのかと考え、それぞれが様々な工夫をしていた様子が印象的でした。ナレーション作業の際もお互いにもっとこうした方がいい、ここはもっと元気にと全員でアドバイスをし、よりよい番組にしようという気持ちが伝わってきました。
番組制作に携わるスタッフの方にお話をうかがうと、「子どもの集中力を切らさないように、アドバイスや指摘を入れる時も言葉や言い方に注意している」とおっしゃっていました。実際私も子どもたちと一緒に行動しましたが、とても元気一杯で疲れ知らずでした。ロケの時は走り回って大変だったそうで、スタッフの方の力の大きさを感じました。
また、「夏休みに家族全員で見られる番組を目指している」というお話をうかがい、最近家族が揃って同じ番組を見るということが少なくなってきていると思うので、このような視点で作られている番組はとても貴重だと思います。
5分という限られた時間の中で、彼らの工夫や努力、そして番組に携わる多くのスタッフの方の力が沢山詰まったとても素晴らしい番組でした。
貴重な体験で、本当にありがとうございました。

「テレビ局に対する総務省の行政指導に関する声明」全文

2004年11月11日

テレビ局に対する総務省の行政指導に関する声明

BPO [放送倫理・番組向上機構]
放送と人権等権利に関する委員会委員長  飽 戸 弘
放送と青少年に関する委員会委員長  原 寿 雄
放送番組委員会委員長 木村尚三郎

放送倫理・番組向上機構[BPO]は、「放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情…(中略)…に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的」に設立された(BPO規約第3条)。BPOを構成する三つの委員会(放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会、放送番組委員会)は、この目的を果たすため真摯な活動を行ってきたが、6月22日に総務省が通達した厳重注意などの行政指導は、以下の理由により、放送の自律や放送界の第三者機関に対する信頼を危うくするおそれが極めて強いと判断せざるを得ない。

第一に、総務省(情報通信政策局長名)が厳重注意を行ったテレビ朝日の国会・不規則発言編集問題については、当事者である衆議院議員・藤井孝男氏の申立てに基づき、放送と人権等権利に関する委員会[BRC]が審理の結果、テレビ朝日が重大な過失によって藤井議員の名誉を侵害したことを認定し、同局に対し適切な措置を講じるよう勧告した。然るに、総務省はテレビ朝日に対し重ねて通達(厳重注意)を行い、その中でBRCの事実認定や判断を引用して自らの措置を正当化した。これは、テレビ朝日側からすれば二重の処分(制裁)を受けたことを意味するとともに、第三者機関としてのBRCの存在意義を甚だしく軽視するものである。

第二に、総務省はテレビ朝日と山形テレビに対し、放送番組の編集上求められる注意義務を怠り、それぞれ政治的公平に反する番組があったとして厳重注意をするとともに、再発防止に必要な措置を講ずるよう要請した。たしかに、放送法第3条の2第1項は、放送番組の編集に当たって、放送事業者に求められる事項について定めている。しかし、当該規定は、総務省の前身である郵政省自ら「精神的規定の域を出ないものと考える」としているところである(郵政省「放送関係法制に関する検討上の問題点とその分析」1964年)。注意を受けた番組にもそれぞれ問題がないわけではない。だが、政治報道は言論の自由と深く関わるものであるから、公権力がその可否を判断することは、慎重のうえにも慎重でなければならないと考える。放送番組における政治的公平の問題については、BPOでも研究課題となっているが、総務省においては慎重な姿勢をとられるよう強く要望する。

そもそもBPOは、放送を通じて市民の知る権利に奉仕するに当たり、国家機関その他の公権力による支配を受けることのないよう、放送への苦情に的確に対応し、その判断を独立した第三者委員会に委ねるため、放送界が自主的に設立した機関である。この民主的な組織が成功するか否かは、一に放送事業者の自覚と公権力の謙抑とにかかっていると言っても過言ではない。

以上、BPOを構成する三委員会は、それぞれ独自に審議を行った結果、改めて放送の自律性と、第三者機関の自主独立の重要性に鑑み、総務省の今回の行政指導に関し、ここに三委員長名で見解を明らかにすることとした。

以上

「BPOの三委員長『声明』について」(理事長コメント)

2004年11月11日

BPOの三委員長「声明」について

BPO[放送倫理・番組向上機構]を構成する三つの委員会の委員長は、昨(2003)年12月11日、いわゆる視聴率不正操作事件に関し、初めてその「見解と提言」を発表した。放送をめぐる重大問題について、独立した第三者が、それぞれの委員会の論議を経て、その意見を公表することは、極めて重要な意味を持っていると考える。

前回の「見解と提言」については、放送業界において重く受け止められた。すなわち、民放連〔日本民間放送連盟〕は直ちに「視聴率等のあり方に関する調査研究会」を設け、本(2004)年5月その報告書が発表された。今回の「テレビ局に対する総務省の行政指導に関する声明」もまた、それぞれの委員会における慎重かつ徹底した論議に基づくものであり、総務省をはじめ各方面において真摯に受け止められるよう強く希望する。

声明は、2004年6月22日付で総務省が行った二つの種類の通達(厳重注意)に関するものである。その第一は、BRC[放送と人権等権利に関する委員会]が放送局に対し行った強い勧告に重ねて、総務省が厳重注意の通達を行ったことが、第三者機関としてのBRCの存在意義を甚だしく軽視するものだ、という趣旨のものである。また、その第二は、政治的公平に反するとして行った総務省の厳重注意に関するものであるが、放送法の規定は精神的(倫理的)規定とされていること、また政治報道は言論の自由と深く関係しているところから、公権力がその可否を判断することは極めて慎重でなければならない、とするものである。

これらの指摘は、放送の自律と第三者機関の自主独立にかかわるものであり、今後の放送行政に当たって、深く留意すべき問題点であると考える。

BPO[放送倫理・番組向上機構]
理事長 清 水 英 夫

【参考】視聴率問題についての中学生アンケート結果

視聴率問題に関する三委員長の見解と提言

視聴率問題についての中学生アンケート結果

この問題を知っていましたか?(48人中)

事件の第一印象

  • なんでこんな事をしたのかなと思いました。こんな事をしてはいけないと思わなかったのか不思議です。
  • お金を払って視聴率を上げても、心から満足できないだろうなと思った。
  • なんでこんなことで騒ぐのだろうと思った。今までも普通にあった(不正操作が)と無意識のうちに思っていたから。
  • よく意味がわからなかった。ずるい人だと思った。
  • ひきょう。残念な気持ち。
  • 第一印象へぇーっ。視聴率が低かったらつまらないと思ってあきらめてほしい。
  • 日テレ=悪い会社というイメージが沸いた。
  • なぜお金を使ってまで視聴率をあげたいのかわからない。
  • 最悪!今まで結構視聴率を気にして見る番組を選んできたのでがっかりした。
  • そんなことまでして視聴率を気にするものなのかと思った。
  • 「視聴率さえ上がれば何をしてもいい」という考えがあるのが悲しかった。それよりも、いい番組を作って皆に支持してもらえばいいのに。
  • バカなプロデューサーがいると思った。これから、信用できなくなる。
  • 何も感じなかった。
  • 視聴率がTV局の利益につながるのだから、こういう事が起こるのは驚くようなことでもない。
  • テレビを作る人は、視聴者のことをまったく考えていないのだと思った。
  • スポンサーに対する詐欺だ。
  • こんなことをやる暇があるなら、おもしろい番組をつくれ!
  • 操作するのでは視聴率を測る意味がない。
  • そんなに視聴率を上げたいなら、ずるをしないで実力で勝負すればいいのに。

なぜこのような事が起きたと思いますか?

  • 会社とスポンサーの問題。「視聴率ランキング」の番組とかをやっているのを見て、いつかこういうこと(不正操作)が起きると思っていた。
  • スポンサーとの関係でいろいろあったのかなと思った。
  • 自分の番組をたくさんの人に見てもらいたくてこのような事件が起きたのではないかと思った。でも、これからはあまり見てもらえなくなるのでは。
  • 視聴率重視という会社の方針が、プロデューサーの重荷になったから。
  • 視聴率を測る機械を所有している家庭の数が限られているから。
  • 大人気ない人が増えたから。
  • お金がほしかったから。少しの数字でも莫大な額の違いが出るから。
  • 他の局との競争が激しいから。同じ局の中でも、よりたくさんの給料をもらうため。
  • プロデューサーの意思の問題。操作するためにお金を使うなら、その分を自分の番組につぎこんで、みんなが見てくれるような番組を作ればいいのに。

放送番組委員会[有識者委員] 声明 (2007年2月7日)

2007年2月7日

声 明

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕
放送番組委員会(有識者委員)

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕の放送番組委員会(有識者委員)は、放送活動全般の質的向上を願って、放送の理念や倫理に関わる問題から取材・制作のあり方まで、第三者の立場から広く審議し、ときには具体的な事例に即して議論を重ねている。

そのような私たちにとって、関西テレビ制作の『発掘!あるある大事典Ⅱ』が起こしたデータ等の捏造問題は、ジャーナリズム産業の基本の放棄であり、視聴者の期待を裏切り、放送界全体の信頼性を損ない、ひいては言論・表現・報道の自由を危うくする出来事と言わざるを得ない。

これまでも放送界はしばしば深刻な不祥事を繰り返してきた。そのたびに放送局は陳謝し、再生や再発防止を誓ってきたが、不祥事はいっこうに収まらない。ひとつひとつの態様は異なるとはいえ、こうしたことが繰り返される背景には、放送界が全体として抱える構造的な問題がありはしないだろうか。

私たちは今回の問題についても、単に1テレビ局の、あるいは1制作会社や制作担当者の問題としてだけでなく、放送界全体が抱える構造的な問題としてとらえる視点が重要だと考えている。その観点に立って、さしあたって以下の3点を指摘し、放送事業者の自主・自律による、今後の全容解明と効果的な再発防止に向けた取り組みに期待したい。

番組制作システムの問題

現在の番組制作においては、分業化が進んでいる。ひとつの番組が制作会社をはじめとする外部協力によって制作されることが当たり前になり、何重もの下請け化によって、実際の番組制作へのコスト面のしわ寄せなども常態化している。

こうした分業構造は、広範囲にわたって、番組制作環境の悪化を招いている。外部の制作者は時間に追われて余裕もなく、時には他の仕事とかけ持ちし、十分な取材や調査が出来ないまま、番組作りが進んでいく。

また、この分業構造は、発注側のテレビ局の番組制作力を削ぐだけでなく、製造業でいう「品質管理」能力の低下をもたらしている。制作経験の少ないテレビ局のプロデューサーやディレクターが、外部制作番組の管理を行ない、納品される番組の完成度や正確性を判断することには無理な面がある。

このような番組制作システムのもとでは、一貫した、きめの細かい品質管理を行なうことが難しくなっているのではないかと私たちは危惧している。今回の事件についても、その原因を一部の関係者の不心得に帰すのではなく、すでに放送界に定着した番組制作システムの構造それ自体の問題としてとらえる視点が必要である。

放送従事者の教育システムの問題

言うまでもなく放送は、民主主義の根幹をなす言論・表現・報道の自由に立脚する事業のひとつであり、これに従事する者は、その自由を享受すると同時に、それにふさわしい見識と責任意識を持たなければならない。

しかし、事業が大規模になり、技術が複雑化し、番組が多様化し、視聴率競争が激化する慌ただしさのなかでは、見識や責任意識はしばしば等閑視されがちである。また見識や責任意識といっても、組織統治や法令遵守から、番組の企画・取材・編集、さらに取材対象との接し方や距離の取り方まで、それぞれの仕事に応じた具体性と専門性を有しなければ、たんなるお題目に終わってしまう。

各局も社員研修等はしているが、番組制作が外部協力によって行われている現状では、外部制作者の末端までにも、真に実効性のある教育システムが必要である。

また、将来的には、一定の経験を積んだ放送従事者が更に見識を深めるため、放送界が、豊かで専門性の高い教育制度作りに取り組むことを、私たちは期待したい。

公権力が放送に介入することへの懸念

私たちは、ここ1、2年、政府・総務省による放送界への関与・介入が強まっているという印象を持っている。NHKの国際放送に対する「命令放送」、民放の報道番組やスポーツ中継の不手際に関する「厳重注意」等々、頻繁に関与・介入が行なわれている。

今回の関西テレビの不祥事に関しても、総務省は「報告」を求めている。

これらは、いずれも放送法や電波法に基づくとされるが、本来、民主主義社会の根幹をなす言論・表現・報道の自由の重要性に鑑みれば、慎重の上にも慎重を期すべき事柄であり、行政の役割は、直接に指示したり、懲罰的な行政指導を行なうことではないと考える。

私たちは、健全で、魅力にあふれた放送が、民主主義社会をいきいきと成熟させるために欠かせないと考えている。今回の問題にせよ、これまでも相次いだ不祥事にせよ、その底流には、構造的な問題が横たわっていることを示しているが、その深部への切開が行なわれ、そこから再発防止のための具体的な手だてが講じられなければ、この国の民主主義の将来も危ういと、私たちは深く憂慮している。

放送倫理・番組向上機構 放送番組委員会(有識者委員)
委員長 天野 祐吉 委  員 上滝 徹也
副委員長 田中 早苗 委  員 里中満智子
委  員 石田佐恵子 委  員 清水 哲男
委  員 市川 森一 委  員 吉岡  忍

「三委員長の見解と提言」を出すにあたって(理事長コメント)

「三委員長の見解と提言」 を出すにあたって

2003年12月11日

「三委員長の見解と提言」 を出すにあたって

BPO[放送倫理・番組向上機構]理事長  清 水 英 夫

BPOは今年7月の発足以来、三委員会(BRC、放送と青少年に関する委員会、放送番組委員会)の独自性と独立性を尊重してきた。同時に、それら委員会に共通する問題や、そのどこにも該当しない問題等の処理に関して、検討を続けてきた。

今回の視聴率問題に関する三委員長の見解と提言は、BPOのあり方に関する一つの方向を示したものと言えるであろう。この提言がまとめられる過程として、各委員会において活発な意見交換が行われた。そして、それら有識者の意見を基に、三委員長による検討がなされ、まとめられたのが今回の見解と提言である。

ただちにわかることは、今回の視聴率問題に関する三委員長の見解が極めて厳しいことである。その背景には、各委員会における委員各位のさまざまな厳しい意見が存在している。そして、それらの意見に共通しているのは、今回の事件が偶発的でもなく、また当該プロデューサー個人の問題でもないという認識である。

放送による人権侵害、低俗番組の横行、青少年に与える番組の悪影響など、BPOの主な関心事の背景には、視聴率至上主義や視聴率即メディア通貨と捉えがちな業界体質の存在があるのではないかと、多くの有識者委員は考えている。その事実を放送界は重く受けとめてほしい。

有識者委員の多くも、放送局経営における視聴率調査の存在理由や、視聴率を番組評価の一手段とすることには否定的ではない。しかし、視聴率を巡る業界の現状は、市民の常識に反し、あまりにも常軌を逸していたと考えざるを得ない。その意味で、今回の事件は放送のあり方を再考するうえで重要な契機にしなければならない。

三委員長は、次のような重要な提言を行っている。

  • 量的な視聴率調査だけでなく、番組の質を測定する視聴質調査の導入も検討すること。
  • 広告界も新しい評価基準づくりに向けて、積極的に協力してほしいこと。
  • 放送人のモラルを高め、自律を強める倫理研修の必要性。
  • 視聴者(市民)の番組に対する積極的な発言を期待する。
  • 新聞や雑誌が視聴率至上主義の増幅に加担しないでほしいこと。

放送を担う人々がこれらの提言の真意を理解され、健全な放送文化の実現と発展のため、総力をあげて取り組まれることを切に希望する。

BPOも、第三者機関としての役割を再認識し、視聴者の声に耳を傾けながら、放送の自律と放送文化の向上のために努力していく所存である。

「視聴率問題に関する三委員長の見解と提言」全文

視聴率問題に関する三委員長の見解と提言

2003年12月11日

視聴率問題に関する三委員長の見解と提言

BPO [放送倫理・番組向上機構]
放送と人権等権利に関する委員会委員長 飽 戸  弘
放送と青少年に関する委員会委員長 原  寿 雄
放送番組委員会委員長 木村 尚三郎

日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。

BPOは三つの委員会が視聴者と放送界の透明な回路となり、苦情や批判に対応してきたが、視聴率競争の現状については、かねて疑問視する声が強かった。限定的に利用されるべき視聴率の数字が広告料金の重要な基準として独り歩きし、放送人の良識を疑わせるような過激な視聴率競争をもたらしていることは否定できない。

性、暴力の過剰表現などによる”低俗番組”の横行も、報道やワイドショーなどで起きる人権侵害事件も、視聴率競争から生み出されているものが少なくない。「低視聴率でもよいから良質の番組を出したい」という広告主の要望に対して「局全体の視聴率が低くなるから」などと言って断わることがあるような現状には、広告主の中からも厳しい批判が表明されている。

たしかに視聴率は、視聴の量を測る指標としては、現在入手可能な唯一の客観的データである。しかし、番組の質の評価基準としては不十分であり、また、量の指標としても600サンプルでは±2~3%の誤差を伴っているのに1%の差で一喜一憂するなどは、適切な視聴率の使い方とは言えない。にもかかわらず、現実には視聴率至上主義に走り、番組制作を左右していると言っても過言ではない。今回の事件はその実態の反映と見ることができよう。

事件は、世論のメディア不信と公権力による法的規制が進む情勢のなかで起きている。放送の自由と放送文化の向上を願う放送人は、この機に自律を強め、視聴率問題の歪みを正して世論の信頼を取り戻さなければならない。同時に、放送の社会的使命を再確認し、生き生きとした創造活動によってテレビの可能性を追求し、社会の期待に応えてほしい。

この観点から当面、次の点について提言し、関係者の積極的な論議と具体的な対応を要望する。

  • 過大な視聴率依存を改めるためには、番組の質を測定する視聴質調査も併用して総合的に評価すべきである。NHKと民放各社がこれまで個別に進めてきた視聴質研究を発展させながら、放送界全体としての新たな番組評価基準づくりに向けた対策機関の設置が必要と考える。視聴率制度の再検討は放送の根幹に触れる構造改革と言えるものなので、この対策機関には、広告界、制作会社や専門家、視聴者・市民なども参加することが望ましい。
  • 広告界も新しい評価基準づくりに向けて、積極的な協力を望みたい。広告主・広告会社もまた、放送文化の質に大きな社会的責任を持ち、それを果たすことによって、視聴者・消費者の信頼を得ることができる。
  • 放送人の自律を強める倫理研修などの必要性も改めて強調したい。日本テレビの調査報告書によれば、当のプロデューサーは「視聴率さえ上げれば何をやってもいい、という感覚があった」と述べている。視聴率至上主義は放送現場の倫理観をここまで麻痺させている。また、制作会社との関係のなかでキックバックを生むような土壌があるという批判にどう応えるか。現状を放置したままでは制作現場の倫理強化は望めない。
  • 視聴者・市民には、番組に対する積極的な発言を期待したい。番組を批判、要望、激励することで、視聴者もテレビ改革に参加できる。視聴者も放送文化の担い手であることを訴えたい。
  • 新聞、雑誌の関係者には番組批評を強めてほしい。また、「視聴率ベスト10」などの報道は、視聴率至上主義を増幅する面のあることに留意し、現状の再検討を望みたい。

理事長声明 (2007年1月29日)

BPO理事長声明
(ダイエット法を紹介したテレビ番組等に関わる声明)

平成19年1月29日

声 明

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕
理事長 清水 英夫

放送倫理・番組向上機構〔BPO〕は、自主的かつ独立した立場から、正確な放送と放送倫理の高揚に資する ことを目的に第三者機関として設立された。

このBPOの使命と役割に鑑みて、放送番組に関する一連の不祥事に対しては、深刻な憂慮の念を禁じえない。特に最近、関西テレビが制作しネット放送された番組『発掘!あるある大事典Ⅱ』の実験データなどが捏造とされる問題については、当該局のみならずBPOに対しても、視聴者からの抗議が相次いでいる。
従前にも同様の事例があったが、いずれも放送局の姿勢や倫理が問われる内容であり、緊張感や責任感を著しく欠いたとの謗りを免れ難い。

近時、放送特にテレビの社会的影響力はますます増大している折から、関係者にはそれにふさわしい認識と対応が求められている。このような事態が繰り返されれば、放送に対する視聴者の信頼を失墜させ、ひいては放送の自由を危うくすることとなる。

今後放送界全体として、強く反省自戒し、公権力の介入を招くことなく、放送への信頼回復等に一層努めるよう切望する。

以上

2011年5月2日

理事会

「理事会」は、理事長と理事9名の計10名で構成されています。理事長は、放送事業者の役職員およびその経験者以外から理事会で選任されます。理事は、放送事業者の役職員以外から理事長が3名を選任し、日本放送協会(NHK)および日本民間放送連盟(民放連)が各3名を選任します。

BPO役員

[2012年6月現在]

役職 肩書き
理事長(非常勤) 飽戸 弘 (東京大学名誉教授)
専務理事(常勤) 岡本 伸行
理事・事務局長(常勤) 三好 晴海
理事(非常勤) 田中 珍彦 (東急文化村顧問)
理事(非常勤) 濱田 純一 (東京大学総長)
理事(非常勤) 藤久 ミネ (評論家)
理事(非常勤) 石田 研一 (日本放送協会理事)
理事(非常勤) 唐木田 信也 (日本放送協会考査室室長)
理事(非常勤) 武内 健二 (日本民間放送連盟放送基準審議会議長、九州朝日放送社長)
理事(非常勤) 木村 信哉 (日本民間放送連盟専務理事)
監事(非常勤) 藤川 英彦 (日本放送協会編成局計画管理部経理部長)
監事(非常勤) 山内  弘 (日本民間放送連盟事務局次長)

議事録 (PDFファイル)

2012年7月27日

2012年7月27日

2011年度BPO年次報告について

BPOの2011年度の活動を年次報告としてまとめました。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会[放送人権委員会]、放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]のBPO3委員会の活動状況を中心に、視聴者意見の推移、BPO全体の活動概要を取りまとめています

2012年7月25日

2012年7月25日

青少年委員会、新副委員長に加藤理委員

放送と青少年に関する委員会〔青少年委員会〕は、7月24日、境真理子副委員長の退任(2012年7月31日付)に伴い、委員長より加藤理委員が新副委員長に指名された。加藤委員は2012年8月1日付で、副委員長に就任する。

加藤新副委員長は1961年宮城県仙台市生まれの51歳。東京成徳大学子ども学部教授。早稲田大学大学院教育学専攻修了。
子どもの文化と子どもに関して歴史的に研究。日本子ども社会学会理事。2009年4月からBPO青少年委員会委員。主な著書に『「ちご」と「わらは」の生活史』(慶應義塾大学出版会)、『<めんこ>の文化史』(久山社)、『「北の国から」の父と子』(久山社)、『駄菓子屋・読み物と子どもの近代』(青弓社)、『消費社会と子どもの文化』(学文社・共編著)ほか。

2012年4月2日

2012年4月2日

放送人権委員会、新委員長に弁護士の三宅弘委員

放送人権委員会は4月1日、委員による委員長の互選を行い、三宅弘委員を第6代放送人権委員会委員長に選出し、三宅委員が同日委員長に就任した。
三宅新委員長は1953年生れの58歳。弁護士で獨協大学法科大学院特任教授。2005年第二東京弁護士会副会長、2006年日本弁護士連合会常務理事等を歴任し、現在、内閣府・公文書管理委員会委員。
2006年4月に放送人権委員会委員に就任し、2009年4月からは委員長代行を務めてきた。
なお、三宅委員長の下で最初の委員会となる4月17日の第182回委員会では、委員長により2人の委員長代行が指名されることになっている。

人権委・青少年委の新委員

【放送人権委員会新委員】

放送人権委員会では堀野委員長、樺山委員長代行、武田委員の退任に伴い3人が、4月1日から新しく委員に就任した。(略歴はこちら)

  • 市川 正司(いちかわ まさし) 弁護士
  • 奥 武則(おく たけのり) 法政大学社会学部教授
  • 林 香里(はやし かおり) 東京大学大学院情報学環教授

【放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)】

青少年委員会では軍司委員の退任に伴い、4月1日から2人が新しい委員に就任した。(略歴はこちら)

  • 川端 裕人(かわばた ひろと) 作家
  • 最相 葉月(さいしょう はづき) ノンフィクションライター

2012年2月17日

BPOの活動に関する視聴者対象調査 結果の概要

2012年2月17日

BPOでは、2011年10月、全国の15歳から79歳の視聴者1,200名を対象にしたアンケート調査を実施しました。
この調査の目的は、BPOの名称を初め活動の理念や内容が視聴者にどの程度知られているのか、また、視聴者はどの程度、放送に苦情や意見をもち、それは放送局などに伝えられているのかを把握することでした。
BPOはこの結果を踏まえ、広報の方法をはじめ今後の活動に生かすよう検討していくことにしています。
なお、本調査は株式会社日本リサーチセンターに依頼して実施いたしました。
お忙しい中、調査にご協力くださった視聴者の方々にお礼申し上げます。

主な結果の概要 (※少数点以下第一位は四捨五入)

1. BPOの認知度

  • BPOの名称は知っているのは全体の52%。約半数の人に知られているが、その3分の2は名称のみ。多少なりとも組織や活動内容も知っているのは全体の18%。
  • 知っている割合は、性別では男性の方が高く(男性56%、女性48%)、年齢層別では10代が低い(30%)。

2. 名称を見聞きした媒体(BPOの名称を知っている人のみ)

  • BPOの名称を知っている人の中で、名称を見聞きしたことのある媒体として多かったものは、「テレビのニュース番組や情報番組」(66%)、「テレビのCM」(35%)、「新聞」(28%)、「ニュースや情報番組以外のテレビ番組」(11%)。
  • 「テレビのCM」は、年齢層別には20代が多くて70代が少ない、「新聞」は、性別では男性の方が多く、年齢層別では60代・70代が多くて20代・30代が少ない、「ラジオの番組」は年齢層別では70代が多い、など、視聴者の基本的な属性による違いが見られた媒体もある。

3. BPOの組織や活動に関するイメージ(BPOの名称を知っている人のみ)

  • BPOの名称を知っている人の中で、BPOの設立趣旨通りのイメージを持っている割合は、「放送倫理に関する問題を第三者の立場で審理する」(51%)、「放送倫理上の問題について、放送局の自主的な改善を促している」(37%)、「メディアの言論と表現の自由を確保する立場で活動している」(18%)。
  • BPOの名称を知っている人の中で、通常の活動内容通りのイメージを持っている割合は、「視聴者の意見や苦情を放送局に伝えている」(18%)、「視聴者からの放送による人権侵害の申立てを無料で審理する」(9%)。
  • BPOの名称を知っている人の中で、事実とは異なるイメージを持っている割合は、「番組の放送中止や差し止めの権限を持っている」(9%)、「BPOの出す意見や見解には強制力があり、従わない放送局は処罰の対象となる」(7%)、「国の関連機関である」(4%)。
  • BPOの名称は知っている人でも、その中の30%は具体的なイメージを持っていない(「よくわからない」24%、無回答5%)。

4. 具体的な「意見」や「見解」に対する認知度(BPOの名称を知っている人のみ)

  • BPOの名称を知っている人の中で、BPOが「日本テレビ『真相報道バンキシャ!』裏金虚偽証言放送に関する勧告」を出したことを知っている割合は40%、「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を出したことについては9%。

5. 放送に対する不満・要望等の有無

  • テレビやラジオの番組に不満・要望等を感じることがある人の割合は全体の51%。
  • 年齢層別では、10代と20代はあまり不満や要望等を感じていないが(10代68%、20代60%が「不満・要望等なし」)、40代から60代は55%以上が不満や要望等を感じており、特に60代は63%と最も高い。

6. 不満や要望等の伝達経験(不満や要望等を感じている人のみ)

  • 放送に対して不満や要望等を感じることがある人の中で、これまでに、放送局を初めどこかにそれを伝達したことのある人は7%のみ。

7. 不満・要望等の伝達後の感想

  • 不満・要望等をどこかに伝達したことのある人(45人)の中で、伝達後に満足を感じた人は11%、不満を感じた人は42%で、47%が「どちらとも言えない」。

8. 不満や要望等を伝達しない理由(不満・要望等を感じていながらどこにも伝えていない人のみ)

  • 多かったのは、「時間や手間がかかるから」(複数回答方式で47%)、「伝えるほど深刻な内容ではなかったから」(同44%)、「伝えても効果が見込めそうもないから」(同39%)、「伝える方法がわからなかったから」(同30%)、「伝えることなど考えたこともなかったから」(同24%)、「自分が視聴しなければ済む問題だから」(同22%)。

2011年7月 4日

2011年7月4日

2011年度BPO年次報告について

BPOの2010年度の活動を年次報告としてまとめました。放送倫理検証委員会、放送人権委員会、青少年委員会の一年間の決定を含めた活動概要、視聴者から寄せられた意見の概要を掲載しています。

2011年5月20日

2011年5月20日

「BPO報告」2010年度活動特集号について

BPOでは、年度末に構成員である放送各社を対象に年次報告会を開催しています。2010年度の年次報告会は震災の影響で中止しました。年次報告会では、BPO3委員会委員長の講演が行われており、今回、講演に代わり、3委員長と飽戸理事長に2010年度を振り返っていただきました。

pdf 「BPO報告」2010年度活動特集号 [PDFファイル]

青少年へのテレビメディアの影響調査

“青少年へのテレビメディアの影響調査”

この調査の目的は、テレビを中心とするメディア接触が青少年の意識や行動に及ぼす影響を検討することにある。テレビは情報収集の手段として、また娯楽として、青少年の生活にとって身近なメディアとなっている。他方、青少年の問題行動の一因としてテレビの影響があるのではないかと懸念する意見もある。この点について、日本でもいくつか研究調査はなされてきたが、それらは、ある時期の青少年の意識や行動とテレビ視聴との関連(相関関係)を分析するにとどまっている。因果関係を分析するためには、青少年の成長を追跡し、時間的に先行する要因がその後の行動に影響を及ぼしているかを明らかにすることが欠かせない。本調査では小学5年生の子どもが中学2年生になるまでの4年間を年1回の調査で追跡し、テレビを中心としたメディア接触の影響を子どもの発達過程・生活空間の中で捉える。

調査内容

「今、テレビは子ども達にどう見られているか?
―小中学生36人インタビュー&アンケート調査」

◆全文PDF◆

「青少年へのテレビメディアの影響調査」(2000~2004年)(PDF)pdf

◆目次◆

  • はじめに~目次
  • 調査概要
  • 調査結果
  • 因果モデル

今、テレビは子ども達にどう見られているか?

“今、テレビは子ども達にどう見られているか?”

今回の調査の目的は、小学校高学年および中学生を対象に
1.子どもたちがテレビをどのような形で見ているか(テレビの視聴スタイル)
2.様々な情報メディアが普及する中で、彼らにとってテレビの重要性に変化はないのか(テレビの相対的重要性)
3.子どもたちはテレビの暴力シーンをどのように見ているか、またどのような影響を受けているか(暴力的シーンの評価、影響)
4.彼らにとってテレビは十分魅力のあるものなのか(テレビ番組の魅力)
5.情報番組等について、テレビをどの程度信頼しているのか(テレビ番組に対する信頼性)
6.演出上の「やらせ」について彼らがどう感じているのか(「やらせ」演出の認識)

等、一言で言えば「テレビと児童の具体的かかわり」について、インタビュー調査を中心に明らかにすることである。

調査内容

「今、テレビは子ども達にどう見られているか?
―小中学生36人インタビュー&アンケート調査」

◆全文PDF◆

「今、テレビは子ども達にどう見られているか? - 小中学生36人インタビュー&アンケート調査 – 」(2006年~2007年)(PDF)pdf

◆項目別PDF◆

  • 目次
  • 本報告における「ながら視聴」「並行視聴」「非集中視聴」等の用語定義
  • 調査結果の概要
  • 終章~けっきょく子どもたちにとってテレビとは何か(報告書全文)

シンポジウム

「”テレビは王様”の時代は終わるのか?
~小中学生36人インタビュー調査を受けて~」(2007年9月13日)

放送と青少年に関する委員会〔青少年委員会〕主催のシンポジウム「”テレビは王様”の時代は終わるのか? ~小中学生36人インタビュー調査を受けて~」を、下記の要領で開催しました。
今の子ども達は、どんなテレビ番組を、どのように見ているのか? 36人の小中学生に直接インタビューとア ンケートを実施。この調査報告を基に、テレビ離れが進むといわれる現状を多角的に分析し、広くテレビ番組の これからのあり方を考えました。

日 時 : 2007年9月13日(木)13時30分~16時30分(開場13時)
会 場 : 千代田放送会館(千代田区紀尾井町1-1)

【第1部――青少年委員会調査研究発表】

「今、テレビは子ども達にどう見られているのか?――小中学生36人インタビュー&アンケート調査」報告
■報告者:
橋元 良明(東京大学大学院教授、青少年委員会委員)

【第2部――パネルディスカッション】

「”テレビは王様”の時代は終わるのか?~小中学生36人インタビュー調査を受けて~」
■パネリスト:
横澤  彪(鎌倉女子大学児童学部教授、元フジテレビプロデューサー)
岡田 惠和(脚本家、代表作に『ちゅらさん』『バンビーノ!』など)
小川 善美((株)インデックス代表取締役社長)
藤田 真文(法政大学社会学部教授)
橋元 良明(東京大学大学院情報学環教授)
■司会:
小室広佐子(東京国際大学国際関係学部准教授)

主 催 : 放送倫理・番組向上機構[BPO] 放送と青少年に関する委員会

デジタルネイティブ

“デジタルネイティブ”

本調査の主な目的は「統計学的にある程度、青少年としての代表性が担保されるような形で、ランダム・サンプリングによる量的調査を実施し、現在(2008 年11 月)における青少年(16 歳から24 歳まで)のテレビ視聴実態および他の情報メディアの利用実態を把握すること」である。

調査内容

「”デジタルネイティブ”
はテレビをどう見ているか?~番組視聴実態300人調査」(2008~2009年)

◆項目別PDF◆

シンポジウム

「”デジタルネイティブ”がテレビを変える!」(2009年10月9日)

16歳から24歳までの”デジタルネイティブ”を対象に行ったテレビ視聴の実態調査を基に、多メディア時代の寵児ともいえる世代の実像を紹介。テレビ制作者やメディア研究者たちが、メディア接触の現実とその背景をそれぞれの視点から分析し、テレビの今とこれからの可能性について考えます。

日 時 : 2009年10月9日(金) 13時30分~16時30分(開場13時)
会 場 : 千代田放送会館2階ホール(千代田区紀尾井町1-1)

【開会挨拶・目次】

 pdfPDFはコチラ
開会挨拶

【第1部――調査研究発表】

 pdfPDFはコチラ
“デジタルネイティブ”はテレビをどう見ているか? ~番組視聴実態300人調査~
■報告者:
橋元良明(東京大学大学院教授・調査チームリーダー)

【第2部――パネルディスカッション】

  pdfPDFはコチラ
“デジタルネイティブ”がテレビを変える! ~テレビ近未来への提言~

■パネリスト:
今野 勉(演出家・テレビマンユニオン副会長)
たむら ようこ(放送作家)
荻上 チキ(評論家・メディアプランナー)
橋元 良明(東京大学大学院教授・調査チームリーダー)
汐見 稔幸(青少年委員会委員長・白梅学園大学学長)
■司 会:
小室広佐子(東京国際大学准教授・調査チームメンバー)

定 員: 120名(先着順)
主 催: 放送倫理・番組向上機構[BPO] 放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]
共 催: NHK 、(社)日本民間放送連盟

新時代テレビ

“新時代テレビ”

本調査は、ドラマやバラエティなど娯楽番組制作者の日頃の活動状況、視聴者意見との接触状況や視聴者像、番組制作にかける思いや心構え、テレビ放送の影響力や現状認識、将来展望などを探るために2011年5 月から6 月にかけて実施された。

調査内容

「”新時代テレビ”
~いま、ドラマ・バラエティ制作者666人は~」(2011年)

◆項目別PDF◆

シンポジウム

「”新時代テレビ”いま、制作者たちへ」(2012年2月10日)

デジタル化元年の2011年。多様なメディア環境のなか、東日本大震災は放送の役割を追考することにもなりました。そんな新たな時代に入った”テレビ”。
在京テレビ局のドラマ・バラエティ制作者666人の意識調査をもとに、制作者たちの実像と今後の”テレビ”のあり方について、テレビ制作者や批評家が提言します。

日 時 : 2012年2月10日(金) 13時30分~16時30分(開場13時)
会 場 : 全国都市会館2F大ホール(千代田区平河町2-4-2)
※シンポジウムの模様は Ustream(ユーストリーム)にて同時中継する。
(http://www.ustream.tv/user/BPO-Symposium)

【開会挨拶・目次】

pdfPDFはコチラ
開会挨拶

【第1部――調査研究発表】

 pdfPDFはコチラ
“新時代テレビ” ~いま、ドラマ・バラエティ制作者666人は~

■報告者:
萩原 滋 (青少年委員会委員・慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授)

【第2部――パネルディスカッション】

 pdfPDFはコチラ
“新時代テレビ” ~いま、制作者たちへ~

■パネリスト:
杉田 成道(演出家)
桧山 珠美(TVコラムニスト)
宇野 常寛(評論家)
汐見 稔幸(青少年委員会委員長・白梅学園大学学長)
■コーディネーター:
小田桐 誠(青少年委員会委員・ジャーナリスト)

定 員: 200名(先着順)
主 催: 放送倫理・番組向上機構[BPO] 放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]
共 催: NHK 、(社)日本民間放送連盟

提言

東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言

2011年9月22日 放送局:東海テレビ

情報番組『ぴーかんテレビ』で、「怪しいお米」「汚染されたお米」「セシウムさん」と不適切な表示のなされた字幕テロップが23秒間放送されたという事案。委員会は、この放送の背景には、他の放送局にとっても汲みとるべき点があるのではないかとして4項目からなる初めての「提言」をまとめ公表した。

2010年 12月 

北海道地区各局との意見交換会

毎年各地区で順次開かれている、放送人権委員とBPO加盟放送事業者との意見交換会が、北海道地区を対象に12月7日札幌で開かれた。
札幌では2003年10月以来7年ぶり2度目の開催で加盟9社から62人が出席、一方、委員会側からは堀野委員長をはじめ委員7人と事務局9人が出席し、「ジャーナリズムへの信頼向上のために~現場の困難をどう乗り越えるか」を全体テーマに約3時間にわたり意見を交わした。

◆前半◆

基調スピーチで堀野委員長は、委員会の判断任務のひとつである放送倫理上の問題に触れ、「放送倫理とは一種の規範であり、視聴者の意識や放送を提供する側の意識に根づいた見えない法律だ。放送倫理上の問題をどう判断するかは難しい作業だが、誰もが思うあるべき放送の姿や報道の旨を番組が実現しているか、視聴者と正面から向き合った緊張関係を放送から見出せるかが委員会の判断の基準だ」と説明した。
そのうえで、「キバを抜かれたジャーナリズムは無力だが、優しさを欠いたジャーナリズムは凶器と化す」という清水英夫氏の言葉を引用しつつ、「放送はもっと事実を突っ込み、視点がはっきりと分るものにしてほしい。一方で、被取材者や視聴者との緊張感を欠いて優しさを失くした放送は、凶器となって人権を侵害する。その両面を自覚して仕事をしてほしい」と要望した。
三宅委員長代行は、このほど発刊された『判断ガイド2010』で、放送倫理上の問題を考えるための目安として設定された「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」など5つの分類項目と、それらに該当する事案や判断内容について説明した。

◆後半◆

後半は、各局への事前アンケート等をもとに3つのテーマを設け、議論した。

(1)顔なしなど匿名化手法について
はじめに顔なしやモザイクなど匿名化手法の問題を取り上げた。局側から「簡単な交通事故の現場でも顔出しを断られる場合が多く、放送時間が迫ると仕方なく顔なしで撮ってしまう」、「サンマの不漁で融資相談が行われた際、水産加工会社の社長から顔だけは勘弁してくれと頼まれ、やむなくカットした」等の事例が相次いで報告された。一方で、「顔がないのはやらせではないかという視聴者の声も寄せられる」という報告もあった。
これを受け、2010年8月に通知・公表された「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、顔なし住民インタビューの問題点を指摘した委員から、「内部告発者の人権擁護やプライバシーの観点から顔を隠す必要がある場合は確かにある。しかし、成り行きで隠してしまう場合もあるのではないか。本当に顔なしの必要性や必然性があるケースなのかを真剣に議論してほしい。匿名への風潮や悪循環を断ち切る努力をしないと放送そのものが信憑性を失う。それは自業自得の道でもある」という意見が出された。
局側からさらに、「記者の若年化に伴い、”顔は個人情報でしょう”といって対象者と向き合う前に顔なしで撮って来る場合がある。土台の違う人にどう理解させるか苦労している」という声があがった。「若い記者は人権やプライバシーを当然と感じる世代で、それが取材を鈍らせている面がある」という意見も出た。
これに対し、別の委員は「それは人権への配慮というよりも単にクレームを避けたいだけではないのだろうか」と疑問を呈し、「個人情報の保護は万能ではない。事実報道の価値は間違いなくあり、すべてが匿名化したら民主主義社会は成り立たない。両方の価値があってこそバランスが取れるし、どちらが優先するかはケースバイケースだということをちゃんと考えてほしい」と力説した。

(2)報道対象者や一方当事者への取材
報道対象者や一方当事者への取材の問題では、前記「上田」事案で論点となった「犯罪被害者とその家族の名誉と生活の平穏への配慮」について、決定文の起草に当たった委員から説明した。
別の委員は「本件報道は、殺害された被害者にも非があったとする内容だったが、それを被害者側はどう受け止めただろうか、放送する側はやはり気にするべきだ。被害者側の気持ちを取材で聞いていれば、あるいは司法よりも深い真実追求が報道の場面でできたかもしれない」と述べ、報道対象者の心情を汲んだ丁寧な取材やアプローチの必要性を訴えた。

(3)謝罪・訂正のあり方
3番目のテーマ「謝罪・訂正のあり方」では、北海道で起きた轢き逃げ事件で容疑者の顔写真を取り違えて放送した局から、その経緯と謝罪対応について報告を受け、謝罪・訂正のあり方が論点となった2つの事案について委員から説明した。
「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案では、訂正放送の趣旨について、(1)視聴者に放送の誤りを知らせ、正しい事実を伝える、(2)視聴者に誤報があったことをお詫びする、(3)これらを通じ、当該放送によって被害を受けた当事者にお詫びの気持ちを伝える、(4)同時に、当事者が受けた被害について社会的に回復する効果を生む、という4項目が示されている。
起草担当委員は「謝罪・訂正放送が常にこの4条件を満たさなければならないということでは必ずしもないが、放送に際しての参考にしてほしい」と述べた。
また、「拉致被害者家族からの訴え」事案に関連して、起草担当委員から「局が謝罪すると決めたのであれば、謝罪の気持ちや意図がちゃんと伝わる放送をすべきだ」という指摘があった。

このあと、この1年以内に通知・公表された主な事案を各委員が解説した後、樺山委員長代行が次の通り会議を総括した。

  • BPOは放送局を監視し、指示する機関ではない。放送現場の実情を理解した上で、局と申立人との接点を見出すべく考えている。時間がかかりすぎるという声もあるが、委員会の立場と問題自体の難しさを理解してほしい。
  • 顔なしの件はすぐには結論が出ないが、むやみに顔を隠し、誰が発言しているのか分らないような放送は本来あるべきではない。現場での努力をお願いしたい。
  • 上田の事案で出た被害者側の心情への理解やいたわりについて、そういう倫理的な観点から考える必要を特に若い局員に指導してほしい

最後にBPO飽戸理事長が「放送局が自主的な改革・改善に取り組まないと、監督や規制強化の動きは強まる。それを跳ね除けるには改革を進め、視聴者の信頼を得ることがなにより重要だ」と訴え、意見交換会を終了した。

委員長談話

TBSテレビ『情報7days ニュースキャスター「二重行政の現場」』について
放送倫理検証委員会委員長談話

2009年7月17日

大阪府の府道と国道との交差点で、大阪府の清掃車が、清掃用のブラシを上げて国道は清掃しないようにして通行する映像が二重行政の象徴的なシーンとして放送された。しかし、これが通常の作業と異なり、TBSの依頼によるものだったことが判明、TBSも行き過ぎた取材を認め、2週間後にお詫び放送を行った。委員会は審議事案とはしなかったが、委員長談話を公表して、委員会の姿勢を明確にした。

放送倫理検証委員会委員長談話

全文pdfPDFはこちら

TBSテレビからの回答

全文pdfPDFはこちら

第187回 放送と人権等権利に関する委員会

第187回 – 2012年9月

無許可スナック摘発報道事案
肺がん治療薬イレッサ報道への申立て事案の審理…など

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案のヒアリングとヒアリング後の審理が行われ、本事案の「委員会決定」 (決定文)の起草作業に入ることが決まった。「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理が行われた。

議事の詳細

日時
2012年9月18日(火) 午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案のヒアリングと審理

本事案は、テレビ神奈川が本年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の逮捕を現場で取材し、4月11日夜の『tvkNEWS930』でニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等と申立てがあったもの。これに対しテレビ神奈川は、「通常の実名報道原則に基づいて放送した。申立人の基本的人権についても十分慎重に検討した」等と反論している。
今月の委員会では、申立人とテレビ神奈川の双方に対し、個別に事情を聞くヒアリングを行った。
申立人側は女性経営者ら2人が出席し、「放送だけでなく、フェイスブック等ネット上でも実名、自宅住所、顔のアップ、逮捕の瞬間や連行される模様までとらえたニュース映像が1か月以上もの間、再生可能な環境にあったため、地元でも様々な波紋を呼んだ。その結果、申立人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)で心療内科に通院したり、子供も含めた家族全員の生活に想像以上に深刻な影響を受けた」と訴えた。またこれをテレビ神奈川に抗議したところ、「(犯罪を犯したのだから)しょうがない」などと誠意のない対応だったと述べた。
一方、テレビ神奈川からは報道局の幹部ら5人が出席し、神奈川県警が年間150件以上の無許可営業の摘発を進める中で、「地元のローカル局として警鐘を鳴らすという意味からもニュース価値があると判断して報道した」と強調。顔のアップ映像を繰り返し使用したことについても、「特に映像をクローズアップしたわけではなく、むしろニュース内容を視聴者にきちんと伝えるため」等と説明した。ただ、ネット上にこのニュース映像が長期間再生可能な状態で放置されたことについては、「動画配信を始めた時点で、細かいところの確認を怠っていたという反省はある」と認めた。さらに申立人の抗議に対しては、「そのような暴力的な表現はしていない」と述べた。
ヒアリング後も審理を続けた結果、委員会は本事案の「委員会決定」(決定文)の起草作業に入ることを決め、10月上旬に起草委員会を開くことになった。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から放送倫理に抵触する内容により人権を侵害された等と申立てがあったもの。これに対しフジテレビは、番組に人権侵害も放送倫理に抵触する部分もないと反論している。
前回の委員会後に、申立人側から「反論書」が、被申立人側から「反論書」に対する「再答弁書」が提出され、双方からの書面がすべて出揃った。
この日の委員会では、まず、事務局が双方の主張で新たに付加された内容を説明した。その後、起草担当委員が、委員会として論点とする事項を整理したレジュメを配布し、考え方を説明した。

本事案で申立人は、申立人の発言を取り上げた部分に名誉とプライバシーの侵害があるとしている他、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する、正確性や公正性等に欠けた番組内容によっても人権を侵害されたと主張している。
委員からは、番組内容が放送倫理に抵触するとする申立人の主張が、申立人に対する人権侵害とどう関連しているのかや、委員会の判断の対象とする範囲等をめぐり、様々な意見が出された。

議論を受け、起草担当委員の間でさらに論点を整理し、次回はそれをもとに審理を続けることとなった。

「国家試験の元試験委員からの申立て」事案についての報告

本事案は8月の委員会で審理入りが決まったが、先行する事案の審理があり、今月は事務局より双方からの書面の提出状況について報告した。10月9日の委員会で実質審理を行うことにしている。(事案の概要は8月の議事概要、もしくは審理中の事案をご参照ください)

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・6件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 広島地区意見交換会を開催(9月14日)
    放送人権委員会委員と広島地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会が9月14日に広島市で開かれ、地元民放とNHKの計6社から52人、委員会から3人の委員と事務局が出席して、実名報道と匿名報道等をテーマに意見を交換した。(詳しくは意見交換会・シンポジウムの項をご参照ください)
  • 盛岡で東北地区意見交換会を開催(12月4日)
    放送人権委員会委員と東北地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会を12月4日に盛岡市で開くことが決まった。東北6県の民放各局とNHKに出席を呼びかけ、人権と放送倫理をめぐって意見を交わすほか、震災報道についても取り上げることにしている。東北地区での開催は2005年に仙台で開催して以来7年ぶり2回目となる。
  • 次回委員会は10月9日(火)に開かれることになった。

以上

視聴者意見について 28

question
ホームページはどのようなタイミングで更新しているのですか?
answer
HPの主な内容に変更や追加があった場合、たとえば、決定の公表、委員会の開催、委員の就任などです。できるだけ早く公開できるように努力しています。「トピックス」や「更新情報」でご案内しています。