第115回 放送倫理検証委員会

第115回–2017年5月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』について審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングの要請をしていたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして先月審議入りしたTBSテレビの情報番組「白熱ライブ ビビット」について、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。また、5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが担当委員から報告された。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、追加の報告書とお詫び放送のDVDをもとに意見交換した結果、必要な是正策は取られたものと評価できるとして、討議を終了することになった。

議事の詳細

日時
2017年5月12日(金)午後5時00分~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、反対派が「救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない”持ち込み番組”であるため、委員会は、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、ヒアリングへの協力を制作会社に直接求めていたが、制作会社から放送局に対応を任せている旨の返答があったため、5月初旬、委員会からの質問事項を文書にとりまとめ、改めて当該局経由で制作会社にヒアリングへの協力を求めた。
委員会では、担当委員から質問項目について詳しい説明があり、さらに、「前例にとらわれずに番組の内容とその裏付けを検証する必要がある」「当該番組のスタッフだけでなく関係者や専門家に協力を求めたことがある。その事例も参考にすべきではないか」など、今後の審議の進め方についても議論が交わされた。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また取材ディレクターが男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
4月の委員会で、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りした。
委員会では、同じ男性を取り上げた先行番組が当該局に2つ、他局に2つあったため、それらの番組を視聴したうえで意見交換を行った。一部の番組では暗視カメラやドローンによる撮影が行われており、「一つ違法行為があれば、その人たちは犯罪者のようなものだからプライバシーの侵害をやっても構わないという意識があるのではないか」といった問題点も指摘されたが、議論の結果、審議は当該番組に絞って行われることになった。
また、「ジャーナリズムとは、強い者の側から"迷惑者"を見る視点ではないはず」「これを機にジャーナリズムは社会的弱者にどう向き合ったらよいか考えるべきではないか」などの論点も提示された。
さらに、担当委員からは5月中に予定されている当該局に対するヒアリングのポイントなどが報告された。

3. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送の『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は番組制作担当者があらかじめ依頼して客に紛してもらった店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
4月の委員会では、このお詫び放送やホームページの記載では何が問題だったのか視聴者に全く伝わらないなどと、事後対応に対して厳しい意見が相次ぎ、その後の対応を見たいとして討議を継続した。
委員会は、当該局がその後2回にわたって放送したお詫び放送とホームページの内容から、情報バラエティー番組であり問題も大きなものとは言えず、十分な是正策が自主的・自律的に取られたと評価できるとして、討議を終了することになった。

[委員の主な意見]

  • その後のお詫び放送やホームページ記載の内容で、何をしてしまったのかが、ようやく視聴者に伝わった。
  • どうしてこういうお詫び放送を、最初からできなかったのだろうか。
  • 情報バラエティー番組であっても、従業員に客に扮するよう依頼することはやってはいけないのは当然で、そのことは明確にしておきたい。
  • お詫び放送を見ると、番組審議会で委員たちが問題点を厳しく指摘していた。番組審議会が機能して自律機能が発揮されたいい例だといえる。

以上

第247回放送と人権等権利に関する委員会

第247回 – 2017年5月

都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、STAP細胞報道事案の対応報告、沖縄基地反対運動特集事案の審理入り決定など

都知事関連報道事案および浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」案をそれぞれ議論し、またSTAP細胞報道事案について、NHKから提出された対応報告を検討した。さらに沖縄基地反対運動特集事案を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2017年5月16日(火)午後4時~9時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会後、起草委員会が開かれて「委員会決定」文が起草され、今月の委員会では担当委員の説明を受けて決定文案の結論部分を中心に審理した。次回委員会でさらに検討を重ねることになった。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、「静岡県浜松市の浜名湖で切断された遺体が見つかった事件で、捜査本部は関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べています」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
申立人は、「私の自宅、つまり私と特定できる映像と、断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立する」等と述べている。
これに対しテレビ静岡は、「本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べている。
委員会では、5月9日の第1回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」案を審理した。その結果、第2回起草委員会を開催して修正案を検討し、次回委員会に提出することになった。

3.「STAP細胞報道に対する申立て」 NHKの対応報告

本事案で「勧告」として「名誉毀損の人権侵害が認められる」との決定を受けたNHKから、対応報告(5月9日付)が委員会に提出された。
報告内容について意見が出され、次回委員会でさらに検討のうえ対応を決めることになった。

4.審理要請案件:「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティー番組『ニュース女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャーナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるトークを展開し、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この特集に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が、「事実と異なる虚偽情報」と在日韓国人である同氏に対する「人種差別発言」により名誉を毀損された等とする抗議文(1月20日付)を同局に送付した。
その後辛氏は1月27日付で申立書を委員会に提出。「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が虚偽のものであることが明らか」としたうえで、番組内では、「のりこえねっと」の団体名を挙げるとともに申立人について、あたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また申立人が外国人であることがことさら強調され、不法な行為をする「韓国人」の一部であるかのような人種差別を扇動するものであり、申立人の「名誉を毀損する内容である」と訴え、TOKYO MXに対し同番組での訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果報告、再発防止策の公表と実行、人権、差別問題に関する社内研修の確立等を求めた。
また申立書は、「虚偽を事実であるかのように放送したこと」「まともに取材していないこと」「極めて偏向した内容であること」という放送内容は、「もはや放送倫理云々のレベルですらなく、明確に放送法4条各号違反である」と主張した。
さらに1月9日の放送については、改めて申立人もしくは「のりこえねっと」に取材することなく、前週放送の「虚偽報道を糊塗するような放送がなされた」としている。
申立人とTOKYO MXは、委員会事務局の要請に応じて代理人同士が話し合いによる解決を模索したが、不調に終わり、申立人側から4月12日、改めて委員会の審理を要望する意思が事務局に伝えられた。
これを受けて同局は4月27日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出。その中で、「本番組は、沖縄県東村高江区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題において、これまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明し、放送内容は「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
同局は、申立人が「黒幕」として「テロリスト」に資金を供与しているかのような情報を番組が摘示したと主張していることについて、「申立人が具体的に本件番組のどの表現を捉えてこのような主張をしているのか、不明であると言わざるを得ない。当社としては、本件放送はそのような内容を含むものではないと考えている」と述べ、また「申立人が問題視している『テロリスト』等の表現は、高江でヘリパッドの建設反対運動には、一部強硬な手段がとられていることを伝える中で比喩として用いられているものであり、申立人について述べたものではないため、本件申立ての争点である申立人の名誉毀損の成否とは直接の関係がないといえる」と主張した。
このほかTOKYO MXは、申立人が放送内容が事実に反すると主張している点について、「当社として調査、確認した結果、本件番組内で使用された映像・画像の出典根拠は明確であり、本件番組内で伝えられた事象は、番組スタッフによる取材、各新聞社等による記事等の合理的根拠に基づく説明であって、本件放送に係る事実関係において、捏造や虚偽があったとは認められない」と反論した。
TOKYO MXによると、本件番組は自社制作番組とは異なり、番組分類上スポンサー側で制作を行い、電波料も別途支払われる持込番組に該当するため、クレジットが、「製作著作 DHCシアター」となっているが、「当社は、放送枠を販売する形式ではあるが、放送責任が当社にあることは承知している」と述べている。
なお、本番組については、BPO放送倫理検証委員会が2月10日の委員会で審議入りを決定している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

5.その他

  • 在京キー局との意見交換会を7月18日(火)に開催することになり、事務局から概要を説明して了承された。当日予定される委員会に先立って開催する。
  • 委員会が今年度中に予定している東北地区加盟社との意見交換会について、今秋仙台で開催することを決めた。
  • 次回委員会は6月20日に開かれる。

以上

2017年5月16日

「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は5月16日の第247回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティー番組『ニュース女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャーナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるトークを展開し、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この特集に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が、「事実と異なる虚偽情報」と在日韓国人である同氏に対する「人種差別発言」により名誉を毀損された等とする抗議文(1月20日付)を同局に送付した。
その後辛氏は1月27日付で申立書を委員会に提出。「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が虚偽のものであることが明らか」としたうえで、番組内では、「のりこえねっと」の団体名を挙げるとともに申立人について、あたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また申立人が外国人であることがことさら強調され、不法な行為をする「韓国人」の一部であるかのような人種差別を扇動するものであり、申立人の「名誉を毀損する内容である」と訴え、TOKYO MXに対し同番組での訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果報告、再発防止策の公表と実行、人権、差別問題に関する社内研修の確立等を求めた。
また申立書は、「虚偽を事実であるかのように放送したこと」、「まともに取材していないこと」、「極めて偏向した内容であること」という放送内容は、「もはや放送倫理云々のレベルですらなく、明確に放送法4条各号違反である」と主張した。
さらに1月9日の放送については、改めて申立人もしくは「のりこえねっと」に取材することなく、前週放送の「虚偽報道を糊塗するような放送がなされた」としている。
申立人とTOKYO MXは、委員会事務局の要請に応じて代理人同士が話し合いによる解決を模索したが、不調に終わり、申立人側から4月12日、改めて委員会の審理を要望する意思が事務局に伝えられた。
これを受けて同局は4月27日、本件申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出。その中で、「本番組は、沖縄県東村高江区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題において、これまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明し、放送内容は「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
同局は、申立人が「黒幕」として「テロリスト」に資金を供与しているかのような情報を番組が摘示したと主張していることについて、「申立人が具体的に本件番組のどの表現を捉えてこのような主張をしているのか、不明であると言わざるを得ない。当社としては、本件放送はそのような内容を含むものではないと考えている」と述べ、また「申立人が問題視している『テロリスト』等の表現は、高江でヘリパッドの建設反対運動には、一部強硬な手段がとられていることを伝える中で比喩として用いられているものであり、申立人について述べたものではないため、本件申立ての争点である申立人の名誉毀損の成否とは直接の関係がないといえる」と主張した。
このほかTOKYO MXは、申立人が放送内容が事実に反すると主張している点について、「当社として調査、確認した結果、本件番組内で使用された映像・画像の出典根拠は明確であり、本件番組内で伝えられた事象は、番組スタッフによる取材、各新聞社等による記事等の合理的根拠に基づく説明であって、本件放送に係る事実関係において、捏造や虚偽があったとは認められない」と反論した。
TOKYO MXによると、本件番組は自社制作番組とは異なり、番組分類上スポンサー側で制作を行い、電波料も別途支払われる持込番組に該当するため、クレジットが、「製作著作 DHCシアター」となっているが、「当社は、放送枠を販売する形式ではあるが、放送責任が当社にあることは承知している」と述べている。
尚、本番組については、BPO放送倫理検証委員会が2月10日の委員会で審議入りを決定している。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2017年4月に視聴者から寄せられた意見

2017年4月に視聴者から寄せられた意見

千葉県の小3女児殺害事件について、各局の情報番組における取材のあり方への意見や、北朝鮮を取り巻く緊迫した海外情勢を伝えた報道番組への意見など。

2017年4月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,456件で、先月と比較して645件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール72%、電話26%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性70%、女性29%、不明1%で、世代別では30歳代25%、40歳代25%、50歳代18%、20歳代17%、60歳以上12%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。4月の通知数は715件【56局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

千葉県で起こった小学3年生女児殺害事件について、各局の情報番組における取材のあり方への意見が多く寄せられた。また、北朝鮮を取り巻く緊迫した海外情勢を伝えた報道番組への意見。そのほか、スポーツシーズンを迎え、プロ野球や海外ゴルフなどの中継番組に関する意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は69件、CMについては48件あった。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は90件で、前月から67件減少した。
今月は「表現・演出」が30件と最も多く、次に「低俗、モラルに反する」が14件、「いじめ・虐待」が11件、「性的表現」が8件と続いた。
「表現・演出」では、バラエティー番組で皮膚の病気の人、美容整形に失敗した人を扱った海外企画について複数の意見が寄せられた。「低俗・モラルに反する」では、全裸でお盆だけを使って股間を隠す男性芸人の出演についての意見が目立った。「いじめ・虐待」では、バラエティー番組でのローションを塗って階段を駆け上がる企画について意見が寄せられた。「性的表現」では、深夜に放送したアニメ番組の内容について複数の意見が寄せられた。「暴力・殺人・残虐」では、ドラマでの暴力的表現について意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 住宅の床下から女性が遺体で発見されたという事件の報道で、近所の人達が取材に応じて、かなり具体的なことを答えていた。「行方不明になった頃、金づちの音が聞こえた」「業者が出入りしていた」などである。これらは事件の核心部分に当たる重要事項かもしれず、警察が捜査の参考にすべきものだ。住民がテレビ局の取材に応じて、軽々しく話してしまったようだが、取材者として「大事なことなので警察にも伝えたほうがいい」と助言したのだろうか。素人ながら、とても気になった。

  • 千葉県の小3女児殺害事件を取り上げていたが、容疑者が以前に勤務していたという会社から入手したとされる「勤務状態評価表」なるものが、テレビ画面に映し出されていた。個人情報保護法の基本原則からすれば、企業が、外部に開示されることが許されないものを提供することは違反だと思う。それに対して、個人情報を慎重に取り扱うべきマスコミが、スクープを優先させるためにテレビで流すのは、個人情報保護法を軽視している。正義の名を借りた、行き過ぎた報道には疑問を感じる。

  • 各局とも「北朝鮮から、いつミサイルが飛んできてもおかしくない」「日本のどこが狙われるか」など、ここ数日、戦争がすぐにでも始まりそうな報道が続いている。空母カール・ビンソンをめぐる錯綜した情報は、国民の不安を煽ることになる。備えは必要であるが、ことは国際問題、戦争にも発展しかねない問題だ。落ち着いて報道してもらいたい。

  • 以前、緊急事態を想定した国民保護訓練に参加したことがある。その訓練で再認識したことは、テレビやラジオ、携帯電話などからの情報の入手が貴重であるということだ。訓練後のアンケートで、国民保護サイレンの存在を知らず、聞いたこともないと答えた人が全体の約4割いた。また、防災行政無線の音量が小さくて聞こえにくかったと答えた人は、全体の約半数に上った。平素より、各種の警報や退避に関する放送を行い、分かりやすく国民に周知することに努めてほしい。

【番組全般・その他】

  • アメリカで開かれたゴルフトーナメント中継を見た。ボールが落ちた位置や事実関係など実況に誤りが多く、名勝負に水を差した。実況では「間違いなく天国の先輩が背中を押してくれました」などの私見も多く、聞き苦しかった。「間違いなく」というのは妄想的な表現だし、そんな私見を挟む前に優勝者をほめるべきだろう。苦難の末につかんだ優勝を、オカルトや都市伝説みたいな話に矮小化すべきではない。中継の終わり方も最悪だった。優勝者の表情を伝えることなく、突然中断。メジャーな大会なのだから時間には余裕を持ってほしかった。

  • 私は、朝の番組の「花見に迷惑撮影者が殺到」というコーナーのロケの日に、現場でSLを撮影していたが、置いていた三脚が、線路に近いということで撤去させられた。そのことは自分が悪いと思うが、その後、番組撮影隊の一人がビデオカメラを片手にやって来て、「もう1回ここで撮影チャレンジしちゃいます?」と、笑いながらこちらを煽るようなことを数回言って来た。その他にも、私と同じようなカメラマンに話しかけていたが、同じように煽っているのではないかと思った。注意して引き留めるなら納得するが、ネタになるからと相手を煽って、事件でも起こしてほしいのではないかと、不信感を持った。

  • 千葉県の小3女児殺害事件で、芸能リポーターが被害女児の同級生女児にインタビューしていた。まだ、同級生が学校関係者に殺されたという、生々しいショックが癒えない時期にもかかわらず、亡くなった同級生についてのインタビューをしている。言語表現や思考の幼い低学年児童に話をさせる様子は、放送に都合が良い言葉を児童から引き出すための誘導尋問に思え、番組の過大演出や、他局番組とのスクープ合戦に子どもを利用していて憤りを覚えた。このことにより、取材を受けた児童が、今後いじめを受けるおそれや、心の傷となるかもしれないことなどを考えれば、大人の勝手な都合を重視した、配慮に欠けた行為だと思う。

  • 「ある男性が連日連夜、隣家の住人を大声で罵倒」というご近所トラブルを取り上げていた。男性はいったん逮捕されたが数ヵ月後に釈放され、番組ディレクターの取材に応じて、これまでの隣家とのいきさつなどを語った。その際、ディレクターの「理由はどうであれ、罵倒するのは良くない。もうやめてくださいね」の言葉にも素直に応じていた。ところが、彼はまた同じトラブルを起こして再度逮捕される。その際、証拠映像を撮るよう隣家にアドバイスし、実際にカメラを設置したのは番組スタッフである。ディレクターが「もうやめて」と諭していた言葉と矛盾する。再びトラブルがあることを期待しての番組作りだったのか。見終わって疑問だけが残った。

  • 昼の番組の「ジャーナリスト10人と報道の自由を語る」というテーマは、とても魅力的だった。しかし、出演したジャーナリストが全員保守系で、政権寄りの人達だった。そのため、活発な意見が飛び交い論戦が展開されるということもなく、皆で同じ方向を向いて気勢を上げることに終始した。せっかくのテーマとコンセプトが生かされず残念だ。出演者を選ぶ際、同数とまではいかなくとも、せめて一人か二人、リベラル系の人達を加えるべきだ。

  • 各局とも夕方や午後11時台に、似たようなニュース・情報番組を放送している。取り上げる内容も時間帯もほぼ一緒で、チャンネルを替えても変わりばえがしない。最近、テレビそのものを見たくないと思うことが増えた。ネットが普及し、安易に情報を得ることのできる現代、このような思いを抱く人間はほかにもいるのではないか。

  • 夜11時代の番組は、報道番組でありながらアットホームな雰囲気があり、軽すぎず見やすい。お硬い報道番組の中にこのような番組が一つぐらいあってもよいと思う。特に、ツイッターで集めた意見をリアルタイムで放送するのはユニークだ。ただ、取り上げられるツイートには、政治的・思想的な偏りが見られるもの、内容が薄いものや低俗なものもある。偏りがあることは報道番組として致命的だと思う。寄せられたツイートの意見の比率が忠実であれば良いが、ツイッター上で確認するかぎり、賛成意見が多い場合でも、表示されるツイートは反対意見のほうが多い、といったことがある。最近では、関西の学園の件で、民進党議員との関係性を指摘するツイートが相当数あったにもかかわらず、一つも取り上げられなかった。取り組み自体は、ニュースを見るだけでは得られない、多種多様な意見を知ることができる面白いものだと思うので、一層ブラッシュアップして今後も続けてほしい。

  • プレゼント応募をしようとしたら、どこかの会社へ登録しないと応募できない仕組みだった。いろいろと登録したくないのであきらめたが、本来であれば、番組中に説明するのが一番よいと思う。せっかく番組を最後まで見て、さあ応募というところで、登録が必要だとは、時間を無駄にしてしまった。それなら「プレゼントには登録が必要です」と番組中に知らせるべきだ。登録しなければ応募できないと分かっていたら、やめる人も多数いるから、あえてそれは伏せていると容易に推測できる。こういった手法がよくとられているので、どうにかしてほしい。

【ラジオ】

  • 午後3時台だったと思うが、FMで"ピンクリボンフェスタ"を伝える特集番組を放送していた。私は、乳がんを経験して現在もつらい状況にあるため、この番組に元気をもらえるかと大いに期待していた。ところが、聞き始めると、ゲストの女性芸人とパーソナリティーの間で酒談議になり、乳がんとは無関係な能天気な話ばかりが続いた。"ピンクリボン"をうたう番組に似つかわしくない成り行きに失望し、悲しい気持ちになり途中でラジオを消した。番組の趣旨は一体どうなってしまったのだろう。

【CM】

  • 清涼飲料水のCMで、トランペットを演奏している後ろから友人がぶつかってくる描写が、危険だからと放送が打ち切りになったというニュースを見た。確かに危険だが、最近はインターネット上で問題視されたからと、たやすく打ち切りや内容変更になる事例がよく見受けられる。打ち切りまではいかなくとも、クレームを気にするあまり「CM上の演出です」「このあとスタッフが美味しく頂きました」などといった興ざめなテロップを表示させざるを得ないこともある。番組やCM制作には莫大な費用がかかる。クレームを恐れ、打ち切りや内容変更を考えるのは、昨今の番組がつまらなくなっている理由にもつながっていると思う。負けずと毅然とした態度で制作をお願いしたい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、体の一部から木のようなものが生えてくる病気にかかった人の映像を紹介していた。いずれもモザイク処理されていなかった。番宣でもこの映像が使われていて子どもが見てショックを受け、トラウマになったようだ。"見世物小屋"のような感じがして不愉快だ。

  • バラエティー番組で、複数回の美容整形手術に失敗した女性の画像が"どアップ"で映し出された。瞬間的に出たのでテレビを消して回避する余裕すらなかった。私もとても気持ち悪くなり吐き気がしたのだが、何よりも3歳の娘も直視してしまい、それから怖がって泣きじゃくっている。

  • バラエティー番組で、女性タレントが、氷の張る湖に入れられるなど体を張った遊びをやらされていて気の毒だ。一歩間違えれば心臓麻痺などの事故を起こしかねない。また、男性の芸人が、張られたロープの上を高速で突っ走るペットボトルをお尻で止めるゲームをやらされていた。大きな衝撃を受けたはずだ。これらの場面を見た子ども達が影響を受けて、友達に対して似たようなことをやらせる可能性もある。

  • バラエティー番組で女子中高生が、援助交際をしている実態を話しているが「みんなやっているから」と男性タレントが連呼している。来日外国人が見たらどう思うか、日本の子どもは全員売春婦だと認識する構図となっている。みんなやっている訳がなく、「みんな」という表現は不適切だ。

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • 素っ裸にお盆一枚で局部を隠す裸芸をしているが、公共の電波を使って裸芸は問題がないのか。子どもの教育にも悪影響があると考えるので今後、テレビに出演させないでほしい。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で、ローションを塗って階段を駆け上がるゲームは、とても危険だと感じた。転んで打ちどころが悪ければ下半身不随や骨折など大けがをする。学校で、子ども達が真似をしないか心配だ。人を蹴落とすシーンもあり、いじめを誘発しかねない。番組にもモラルと配慮を求めたい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 深夜のアニメ番組について、極めてわいせつな内容だった。アニメ作品のため、子どもが間違えて見てしまう可能性がある。この番組に限らず、あまりに性的に過激な内容のアニメ番組の放送は、テレビ局、制作者に考えを改めてもらい、控えてもらいたい。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • スペシャルドラマで、殺人・暴力・自殺のシーンがリアルに出てくる。小学生・中学生も見ている時間帯であり、なぜこのような番組を放送して良いのか、倫理はどのようになっているのか、理解できない。なぜこのように暴力だけを放送するのだろうか。まるで殺人を助長しているようだ。

  • 何故、サスペンスや殺人ドラマの宣伝は人が殺されるシーンになるのか。サスペンスや殺人ドラマを放送するのはいいが、宣伝の内容を考えてほしい。人が刺される、飛び降りて血を流して死ぬシーンを子どもが見ている。

第191回 放送と青少年に関する委員会

第191回–2017年4月25日

「中高生モニターに関する小委員会」について…など

2017年4月25日、第191回青少年委員会をBPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず3月16日から4月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。そのあと、4月の中高生モニター報告や今後の予定について話し合いました。
また、委員会に先立って4月5日に「中高生モニターに関する小委員会」を、4月10日に「調査研究に関する小委員会」を開催し、その報告をもとにそれぞれの課題について意見を交わしました。
次回は5月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2017年4月25日(火) 午後4時30分~午後7時00分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

「千葉・小3女児殺害事件の報道で同級生へのインタビューが子どもへの配慮に欠けていた。PTSDの発症要因にもなりうる」という視聴者意見に対して、委員からは、同級生へのインタビューは顔を映さないことやボカシ処理などで映像的な配慮がなされていたので問題はなかった、という意見が出されました。また「森友学園問題に関する報道で幼稚園児をあざけるような扱いがあった。園児の心を思うと胸が痛む」という視聴者意見に対しては、「幼稚園児を直接取材するようなケースは見当たらなかったが、園児の扱いには細心の注意が必要である。またメディアスクラム(集団的過熱取材)がなかったのかも気になった」という意見が出されました。現段階ではいずれもこれ以上話し合う必要はないとなりました。

中高生モニター報告について

2017年度は、全国から男女17人ずつ(中学生17人、高校生17人)の合計34人にモニターを依頼しました。4月のテーマは「好きなテレビ・ラジオ番組の感想」と「あなたの視聴・聴取行動を教えてください」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。34人全員から報告がありました。
「好きなテレビ・ラジオ番組の感想」では、ラジオ番組に3人、テレビ番組では、バラエティー番組に11人、報道・情報番組に9人、ドキュメンタリー番組に4人、スポーツ中継と音楽番組にそれぞれ1人ずつから報告がありました。
複数の意見が寄せられたのは『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)と『ミライ☆モンスター』(フジテレビ)にそれぞれ2人から、『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ)には、自由記述も含めると5人から報告がありました。
「視聴・聴取行動を教えてください」には27人から報告がありました。
「テレビやラジオの番組を視聴・聴取・録画するとき、番組の情報をどこで得ていますか?」(選択肢あり・複数回答)という質問の答えは「インターネット」(15人)と「友人の口コミ」(15人)が同数最多でした。その他、回答が多かった項目は、「新聞のラジオテレビ欄」(14人)、「家族の勧め」(14人)という結果でした。また、自分が見る番組の録画視聴動向についての設問では、「1. 全く録画しない」「2. 時々録画している」「3. ほとんど録画視聴である」の3つの選択肢を提示しました。(2)の「時々録画」(17人)と、(3)の「ほとんど録画視聴」(8人)を併せると90%を超えるモニターが録画視聴を利用していることが分かりました。最後は、リアルタイムで視聴するときにFacebookやtwitterなどのSNSに感想を投稿したり他者の意見を閲覧したりする「ソーシャルビューイング」についての設問です。モニター全体の33%(9人)、高校生だけを見ると50%(7人)がソーシャルビューイングをしたことがあると回答しました。「視聴して感じたことを誰かとディベートしたくなる」「多様な意見を知りたい」「自分と似ている考えの人をみつけて共感したい」「友人たちと番組の感想を楽しく言い合う」など、インターネット上でのつながりを活用している様子がうかがえます。
「自由記述」では、「深夜のアニメには確かにグロテスクな描写もあるが、ストーリーの奥に隠されているメッセージを読み取ろうと考えながら見ている。過度に制限をかけすぎないでほしい」という声や、「ニュースの悲劇的な映像を見るたびに報道の大切さを感じる。報道されなければ知ることもできずその事実は私にとって存在しないも同然」と報道の本質を問いかける意見がありました。
「青少年へのおすすめ番組について」は、『所さん お届けモノです!』(毎日放送)と『#ジューダイ』(NHKEテレ)に、それぞれ2人から感想が寄せられました。

問1.テレビやラジオの番組を視聴・聴取・録画するとき、番組の情報をどこで得ていますか? (複数回答)

 
中学生
高校生
全体

1.新聞のテレビラジオ欄

9
5
14

2.インターネット

7
8
15

3.友人の口コミ

9
6
15

4.FacebookやtwitterなどのSNS

3
6
9

5.家族の勧め

10
4
14

6.その他

3
2
5

問2.あなたはテレビを録画視聴することはありますか?

 
中学生
高校生
全体

1.自分が見る番組については全く録画していない

1
1
2

2.自分が見る番組は時々録画している

9
8
17

3.自分が見る番組のほとんどは録画視聴である

3
5
8
13
14
27

問3.リアルタイムで視聴するとき、FacebookやTwitterなどのSNSに感想を投稿したり、他人の意見を閲覧したりするいわゆる「ソーシャルビューイング」をすることはありますか?

 
中学生
高校生
全体

1.ソーシャルビューイングをしたことがない

11
7
18

2.ソーシャルビューイングをしたことがある

2
7
9
13
14
27

◆委員の感想◆

  • 【好きなテレビ・ラジオ番組の感想】について

    • 『ミライ☆モンスター』(フジテレビ)、『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)についてのリポートが複数名からあった。子どもたちにとって、同世代の活躍を見ることが刺激的なのだと思った。

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(FM東京)や『らじらー!』(NHKラジオ第1)などラジオについて触れている人がいた。若者のラジオ離れが進んでいると言われるが、リポートにあるような今の若い人たちの感性をすくいあげる番組もあることを、もっと知ってほしい。

    • 深夜のアニメ番組を挙げて、「グロテスクな表現もあるけれど、ストーリーの奥にあるメッセージを読み取ろうとしている。だから過度に制限をかけないでほしい」というリポートがあった。制限をかけている人がいるということを意識したうえで、色々と考えているのだろう。

    • これまで報道や番組は、社会的なある種のコモンセンスを前提として放送されてきたが、中高生たちはそのコモンセンスを共有していない場合が多い。しかし、18歳で選挙権を与えられて判断を迫られる世代でもあって、一方だけの主張を放送されることに違和感があるのではないだろうか。どちらの主張も一度、全て聞いてみたいと思う指向性が強くなってきていると感じる。制作する側にとっては、大変なことではあるが、色々な意見をバランスよく伝えていかないと若い人たちが判断しづらいという時代になってきているのかもしれない。

  • 【視聴・聴取行動】について

    • 今回も、ソーシャルビューイングをしている人たちが一定程度いることが確認できた。やはり中高生にとって、テレビは誰かと見るもので、感想を分かち合いたいと思っていることが見えてきた。

    • かつてテレビは、ずっとスイッチが入っていて、流れている番組を見ていたが、ほとんどの人が録画を活用し、コンテンツを集中して見ているようだ。自分が今まで考えてきたテレビの枠組みというものを考え直させられるような気がしている。

    • ソーシャルビューイングをする理由で「多様な価値観の意見を聞くことができる」という意見のある一方で「自分と同じ意見に共感したい」という対局の意見もあった。元々は、多様な意見を聞くことができ、様々な主張ができることがSNSの利点と言われていたが、多様意見を求めるというニーズに応える一方で、他を切り捨てて自分の好きな意見だけ知りたいという思いも増幅させているのかもしれない。

  • 【自由記述】について

    • 北朝鮮のミサイル問題を取り上げた人が複数いた。日々、報道されている国際的な問題などへの中高生の関心の高さがうかがえる。

    • 「遠い地域の内戦や紛争に今まであまり関心が持てなかったが、中学生になって報道の大切さを感じ、もっと知りたいと思うようになった」と知ることの大切さを伝えるリポートを読んで、テレビに「真実の報道」を期待しているということがわかる。

  • 【青少年へのおすすめ番組】について

    • 地元の番組についての報告が多く見られ、ローカル放送にも興味を持っていることが分かった。

    • 『所さん お届けモノです!』(毎日放送)について「猫がかわいく描かれている番組を見て、触りたくなるぐらい引き込まれた」と高く評価している報告があった。ぜひ番組制作者に伝えたいと思うようなコメントを自分なりの表現でしてくれているいい感想だと思った。

◆モニターからの報告◆

  • 【好きなテレビ・ラジオ番組の感想】について

    • 今まで見てきた番組の中で『世界の果てまでイッテQ!』(北日本放送・日本テレビ)が一番好きです。タレントが世界のあちこちに行き、体をはって生きものや食べ物、文化や生活習慣などを紹介してくれます。イモトさんの登山に挑戦する姿には感動し、勇気をもらっています。(富山・中学1年・女子)

    • 『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ) 家族揃ってみていました。本当は同じ時間に放送されている『精霊の守り人』が見たかったけど、妹が楽しみにしていたので仕方なくチャンネルを譲りました。でも、見ているうちに何だか元気をもらえ、ファンになってしまいました。5歳の弟も「面白い」と言っていたので、5歳児でも面白いと感じるドラマはすごいと思いました。ドラマを作るとき、どうすれば家族みんなが楽しむことができるのか。どんなことをヒントに制作しているのか興味がわきました。(千葉・中学2年・女子)

    • 『ニュース シブ5時』(NHK総合) 季節や時期に合ったニュースや情報を、中学生の私にも分かりやすく解説してくれるので、家にいるときはよく見ます。難しい言葉をあまり使わなくて、分かりやすい良い番組だと思います。(滋賀・中学2年・女子)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビ) 毎回必ず見ています。ちょうど私と同じくらいの年代の子たちが努力しているのを見て「私もがんばらなくちゃ。」と思います。夢を追いかける中で大きな壁にぶつかったり、なかなか花開かなかったり、そんな困難に立ち向かっていく姿を見ていると、勇気、やる気をもらえます。(東京・中学2年・女子)

    • 私はラジオをよく聴きます。何か他のことをしながら聴くことができるのがラジオの魅力だと思います。(山口・中学2年・女子)

    • 『ひよっこ』(NHK総合) 茨城県民なので、とても親近感があり毎日楽しみにしています。しかしながらあまりにもなまりが強すぎて気になっています。それでも、茨城が世の中に広まって、「いいところだな」と思ってもらえる機会が増えてうれしく思っています。(茨城・高校1年・女子)

    • 『ワールドスポーツMLB』(NHKBS1) 大リーグ中継の多くは2か国語なので、現地の言葉を聞くと「ベースボール」という感じがしてとても好きです。そんな大リーグ中継をもっと面白くしてくれるのがこの番組です。(長野・高校1年・男子)

    • 『大科学実験』(NHKEテレ) 普段何気なく目にしている現象を、スケールを大きくして、失敗を交えながらコストと時間と労力をかけて実験するところが面白いです。映像に迫力があって、次回も見るのが楽しみです。(兵庫・高校2年・女子)

    • 『ザ!世界仰天ニュース』(長崎国際テレビ・日本テレビ) 今回は、皮膚の一部が変異して硬くなり飛び出してくるツリーマンと言われる男性が取り上げられていました。食事中に見たくないと家族に言われました。たまに手術映像や奇病の特集のときにチャンネルを変えたいと言われます。病気の人に失礼だと思います。テレビで伝えられ多くの人に知ってもらうことが、理解につながると思うので、番組の内容には共感できます。(長崎・高校2年・男子)

    • 『とんねるずのみなさんのおかげでした』(テレビ愛媛・フジテレビ) この日の企画は「全落」でした。自分が好きな企画のひとつで、毎回楽しみにしています。いろんな人が落とされて、たまにハラハラするときもありますが、見ていてとても楽しいです。これからも続いてほしい企画です。(愛媛・高校2年・男子)

    • 『ミライ☆モンスター』(フジテレビ) 今までのスポーツ系ではなく、数学をテーマにしていてよかった。これまではスポーツばかりでスポ魂!っていう感じが嫌いだったが、今回はとても面白く見られた。このままルービックキューブ界とかマジック界とかにも放送内容を膨らませると知的な好奇心が刺激される面白い番組になると思う。また同世代が主役の番組なので、青少年にとっては見ていて「自分を責めたくなる気持ち」と「発奮する気持ち」の両方を湧き立たせる良い刺激となる番組なのではないだろうか。(東京・高校2年・男子)

  • 【自由記述】

    • 僕はアニメ番組を見ることが多いです。深夜に放送しているアニメ番組も録画視聴します。中学1年生には不適切だと大人は思うかもしれません。確かにグロテスクな描写もありますが、ストーリーの奥に隠されている友情や勇気や希望などメッセージを読み取ろうと考えながら見ているつもりです。過度に制限をかけすぎないことを願います。(神奈川・中学1年・男子)

    • 私はバラエティー番組をよく観ています。番組の中でVTRが流れているとき、出演者の顔を映すワイプを観るのが、とても好きなのです。なので「ワイプをもっと大きくしてほしいなぁ」と思います。前室での話とか、ウラ話とかも好きなのでどんどん話してほしいです!!(鹿児島・中学2年・女子)

    • 番組とは関係ないのですが、最近 テレビに出る人が同じ顔になってきたなぁと感じています。ボトックス?とか ヒアルロン酸?とかなのかなぁ??少し前は40代、50代の女優さんがされていたみたいですが、最近では20代のタレントさんや渋さが売りの男優さんもやっているみたいで みんな同じ丸顔でツヤツヤのほっぺで 個性がなくなってしまっているような気がします。ドラマやCMの設定で、お嫁さんと姑さんとか、新人OLとベテラン上司とかの設定も、どちらの女優さんも同じくらいの年齢に見えてしまって、少し違和感を持ってしまいます。(鹿児島・中学2年・女子)

    • 遠い地域の内戦や紛争、事件に今まであまり関心が持てませんでした。わざわざ危険な紛争地に向かうジャーナリストがいることが不思議でした。しかし中学生になり、報道することの大切さを感じ、もっと知りたいと思いました。報道されなければそれらは知ることなく、その事実は私にとって存在しないも同然です。報道することで存在が世界に知られ初めて救援策が取られたりすることを知りました。遠い地域の紛争は私の足元の生活とつながっていることを実感し、知ることの大切さ、(仮に編集された映像だとしても)報道することの必要性を感じています。(千葉・中学2年・女子)

    • 最近気になるのが「番宣」。ドラマに出演する俳優たちが、クイズ番組や情報番組にでてきて、興ざめしてしまう。「なんでこの人がゲストにいるのかな」と思うと必ず番宣になり、ときには、不愉快な気持になってしまう。(東京・中学2年・男子)

    • たまに音楽を聴くときしかラジオは聞きません。そして今ではいろんなスマホのアプリがあり、好きな曲を自分で選んで好きなだけ聞けるので、正直ラジオは不便に感じます。(東京・高校1年・女子)

    • 最近のニュースを見ていると、コメンテーターと言われる人たちがいることがほとんど当たり前になってきているが、コメントの質が落ちていて悪口にしか聞こえないときがある。(静岡・高校2年・男子)

    • テレビやラジオが誰でもどこでも視聴できるようになり「個別化」が進んでいる現代では、個人と個人をつなぐ番組が求められていると思います。私の家ではクイズ番組になると家族みんなで発言しあい、とてもにぎやかに家族の絆が深まっていると考えます。家族の会話を増やすような番組がもっと増えてほしいと思います。(青森・高校2年・女子)

    • 最近の高校生はラジオをあまり聴いていないように感じます。ラジオはスマホで簡単に聴くこともできるのに、なぜどんどんすたれているのでしょうか。少なからず疑問に思います。(愛知・高校2年・女子)

    • 朝のニュースと同じ時間帯に高校生・大学生向けにニュースの背景や意図の解説を交えたニュースをやっていると、年齢を問わず朝にある程度時間のある人に人気が出るのではと思った。(東京・高校2年・男子)

    • 北朝鮮の核実験やミサイル問題を多くの番組で取り上げていました。事態の緊張感が高まる中、ネットやSNSには情報源もわからない様々な情報が溢れており、信頼できる新聞とテレビの報道の重要性を実感しました。しかし、多くの人が観る情報番組で視聴者の不安を煽るような内容や笑いのネタのように扱っていると感じられるものもありました。いかに視聴者をパニックにさせずに、あらゆる備えるべき可能性を伝えるかが問われていると感じました。(東京・高校3年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『所さん お届けモノです!』(毎日放送) を見て、僕は猫アレルギーで猫と触れ合うことはできないけれど、猫がとてもかわいく触りたくなるぐらい番組に引き込まれました。猫が苦手な僕でも猫が欲しくなりました。(岐阜・中学2年・男子)

    • 『#ジューダイ』(NHKEテレ) 普段ぺえさんがテレビに出演している姿を見ていると、少しおちゃらけた印象を受けます。今回はそんなぺえさんがお悩み相談室を開くという内容でしたが、恋の悩みや進路についての相談にしっかりと回答をしていて、正直驚きました。むしろ、彼(彼女?)にしか相談できないというジューダイの方々もたくさんいるのでしょう。この放送では、そんな十代の人とぺえさんの関わりを知ることができた気がしました。少し残念だったのは、ぺえさんが目立ち過ぎて、十代の人たちにしっかりスポットライトを当てられていなかったことです。(東京・中学2年・男子)

    • 『ぷらナビ+』(鹿児島放送) 鹿児島の情報をいろいろと知ることができるし「出演者の皆さんが仲が良いんだろうなぁ」という感じが伝わるような番組で 私は好きです。『ぷらナビ+』だけに限らず 鹿児島の番組は鹿児島市のお店を紹介するものが多いと思います。鹿児島は独特な形をしていて私の住む大隅半島から鹿児島市に行くにはフェリーを使う事が多いのですが、これだと時間もお金もかかってしまって、そんなにしょっちゅう行けるものではありません。大隅半島では数十年前に鉄道も廃止されているので、移動手段は車だけなので、大隅半島のおすすめスポットも、もっと紹介してもらいたいなぁと思います。(鹿児島・中学2年・女子)

◇「中高生モニターに関する小委員会」について◇

中高生モニター制度の点検のため4月5日に「中高生モニターに関する小委員会」を開催しました。メンバーは最相副委員長、稲増委員、中橋委員の3人で、中高生モニターと委員との関わりをより密にしていきたいという委員会の希望を踏まえ、今後の制度運用のあり方について議論し、いくつかの具体策を委員会に提案し了承されました。
また、これまで3月に行っていた「中高生モニター会議」を今年度は夏休みにあたる7月下旬に開催することを委員会に提案し了承されました。

調査研究について

調査研究の具体的な推進のため4月10日に「調査研究に関する小委員会」を開催しました。メンバーは菅原委員、中橋委員の2人で、調査実施までのスケジュールと調査内容についていくつかの案を検討、大筋の方向を委員会に提案し了承されました。

今後の予定について

  • 6月30日に行う意見交換会(山陰地区)の参加委員の確定と意見交換会の内容について、話し合いを行いました。

第114回 放送倫理検証委員会

第114回–2017年4月

不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』審議入りなど

今年度、新たに神田委員が就任し、今回から出席した。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りした東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、制作会社にヒアリングへの協力を要請していたが、制作会社としては対応を放送局に任せている旨の回答だったため、委員会として改めてTOKYO MXに対して制作会社のヒアリング実現への協力を求めていくことになった。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、この問題に対する民放連の対応を中心に意見交換をした結果、当該局の当初の対応には大きな問題があったが、その後、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。
NHK総合テレビ『ガッテン!』「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」で、糖尿病治療や予防に睡眠薬が有効であるかのような表現があり、また睡眠の長さの重要性を示す実験を睡眠の深さを示すデルタパワーに関連させる不適切な表現があったとしてお詫びした事案。委員会は追加報告書をもとに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。
多摩川の河川敷で生活している男性の放送に際し、不適切な表現や取材手法があったとTBSテレビが謝罪した情報番組『白熱ライブ ビビット』に関して、当該局からこれまでの6回のシリーズについても報告書が提出され、意見交換を行った。その結果、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。
カラオケ店の撮影の際に、従業員に客に扮してもらいインタビューした北海道文化放送の情報バラエティー番組『北海道からはじ〇TV』について、報告書をもとに意見交換をした結果、当該局のその後の是正策を見た上で決定したいとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。これに対し、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。
委員会は、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実についての裏付けは必要であり、「持ち込み番組」についての放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、第112回委員会で審議入りすることを決め、先月、担当委員が当該局の編成や考査、営業の担当者5人にヒアリングを実施し、番組を編成した経緯や放送前の考査の実態などを調査した。
委員会では、この番組は放送局が制作に関与しない 「持ち込み番組」であるため、番組を制作したスタッフにも話を聞いてさらに検証をする必要があるとして、制作会社に対してもヒアリングの協力を求めていたが、制作会社からその対応についてはTOKYO MXに任せている旨の返答があったため、当該局に対して、制作会社のヒアリングが実施できるよう引き続き協力を求めていくことになった。
また、今後の審議の進め方について担当委員から説明があり、論点等についても意見交換した。

2. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果があるという内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の当該局の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、当該局はこの番組がタイアップで制作されたものでないと訂正していた。
また、当該局からは先月、この問題を受け作成した「番組制作の指針」に関する追加報告書が提出され、制作過程の適正化と視聴者に疑念、不信感を抱かれないための制作上の留意点、番組と広告の識別のための留意点などが記されていた。
委員会では、今回新たに提出された、「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」を策定した民放連の対応策をもとに、意見交換をした。
委員会の議論では、「この放送がステルスマーケティングということはできないにしても、ステマ的な広告の横行に警鐘を鳴らす必要はあるのではないか」といった意見や、「今回の問題に対し、民放連も相当スピード感のある対応をとった。ステルスマーケティングの問題は、それほど重大なことである」など意見が出た。
その結果、当該局、民放連とも自主自律という意味では実効のある対応策が取られたのではないかとして、今回で討議を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

3. 糖尿病治療に睡眠薬を直接使えるかのような表現があったとお詫びしたNHK総合テレビ『ガッテン!』を討議

NHK総合テレビの生活情報番組『ガッテン!』(2月22日放送)で「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題して、”睡眠を改善することで血糖値が下がる”という最新研究を紹介し、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」と伝えた。また、紹介した睡眠薬の説明に「副作用の心配がなくなっている」という表現があった。また、睡眠の長さが血糖値の改善に関係があるという実験について、睡眠の深さを示すデルタパワーも関連しているような不適切な表現もあった。
これに対し、放送後、視聴者、医療関係者などから「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」「健康保険では認められていない適応外処方の推奨に他ならない」などの批判が寄せられた。NHKは番組ホームページと3月1日の放送で、睡眠薬の説明が不十分だったり行き過ぎた表現があったりしたため、誤解を与え混乱を招いたことをお詫びし、誤った情報や不適切な表現を訂正した。
当該局から提出された報告書は、問題の原因として、「医学分野にある程度の専門知識があるメンバーだけで番組の制作が進められたため、睡眠薬のリスクを十分にチェックする姿勢が欠けていたこと」や「謎かけやキーワードが視聴者に届きやすいことを重視するあまり、無理な構成になったこと」などを挙げている。
委員会には、当該局からこの番組の過去の放送についての追加報告書が提出された。それによれば、これまでの同番組の放送で、不適切だという指摘を受けた例はなかったということであった。
委員会は、追加報告書などをもとにさらに意見交換をした結果、当該局による迅速且つ的確なお詫び放送により、懸念された問題について、自主的・自律的な是正策が取られたことから、審議の対象とはしないが、一層の注意喚起を促す意見が出たことを議事概要に掲載することとして討議を終えることにした。

[委員の主な意見]

  • まずい方向に進んだら『あるある大事典』のようになりかねない案件だったと思う。今回、いいお灸をすえられたと思って、今後はしっかりやって欲しい。
  • この種の番組ではキャッチーにしようとするとき危険が大きい。『ガッテン!』は特に影響力が大きい番組なので、細心の注意が必要だろう。
  • やはり、自分たちは医療情報に詳しいというスタッフのおごりが一番の要因だったのではないか。
  • この番組に対する日本睡眠学会の批判は極めて適切なものだったが、その批判に的確に応えるお詫びの放送がなされたことによって、問題は解消しているのではないか。
  • 報告書に書かれた再発防止策を実効のあるものにすべく、その継続的な実施を期待したい。

4. 不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を討議(審議入り)

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
問題の放送は「多摩川リバーサイドヒルズ族」と名づけられたシリーズの7回目で、第1回の2015年9月から第6回の2016年5月まで、名物企画として継続的に放送されてきた。
委員会には、当該局から過去の6回分の放送に関する追加報告書が提出されたが、「シリーズ当初から多摩川の河川敷で暮らす人たちを『迷惑モノ』として扱っていて、社会的弱者に対する姿勢は問題だ」「これまで6回の放送で取り立てて批判がなかったから問題ないと思っていたというのは、かなり深刻だ」といった意見などが出されるなど、問題点を指摘する意見が相次いだ。
その結果、当該局の事後の対応と問題点の把握は的確だったが、男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • ホームレスの人たちを「迷惑モノ」としてとらえて、冷笑している。
  • 取材した対象者を、別の人の発言を引用して「人間の皮を被った化け物」と表現しているが、なぜ「人間の皮を被った化け物」なのか、番組内容からも報告書からもまったくわからない。
  • シリーズの中にはホームレスに寄り添っている回もあるのに、どうして7回目で、当該局も不適切だと認める放送になってしまったのか。
  • 自分たちは安全なところにいながら、社会的弱者に厳しいテレビ局の姿勢は問題だ。
  • これまでの6回の放送に対して取り立てて批判がなく、番組としてはホームレスの人間性が描けているという認識を持っていた、という趣旨が報告書に書かれているが、外からの批判がなく視聴率が良かったとしても、社内から異論があってしかるべき番組だろう。

5. カラオケ店従業員に客に扮してもらい出演させた北海道文化放送『北海道からはじ○TV』を討議

北海道文化放送は3月12日に放送した『北海道からはじ〇TV』で、歌わなくても映像が楽しめるというカラオケ店の使い方を紹介した際、客としてインタビューに応じた人が実は店の従業員だったとして、3月27日に「不適切な演出があった」と、放送とホームページでお詫びした。
委員会では当該局から提出された報告書をもとに意見交換し、お詫び放送やホームページの記載では、何が問題だったのか視聴者にまったく伝わらないと、事後の対応に対して厳しい意見が相次いだ。
その結果、当該局の是正策など今後の対応を見たいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • お詫び放送やホームページ記載の内容では、なにについてお詫びしているのか、視聴者にはまったく分からない。
  • いまだにこんな「お詫び」の内容でいいと思っている放送局があるのか。放送局からカラオケ店に依頼して、従業員に客に扮してもらったと、きちんというべきだ。
  • 放送後、インタビューした社員が「おかしい」と言ったために、事実経過が明らかになったことは評価できる。

以上