第250回放送と人権等権利に関する委員会

第250回 – 2017年9月

浜名湖切断遺体事件報道事案の通知・公表の報告、沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」の通知・公表が8月8日に行われ、事務局が概要を報告した。また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年9月19日(火)午後4時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(見解:要望あり)の通知・公表が8月8日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局のテレビ静岡が放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
今月の委員会では、ヒアリングに向けて起草担当委員がまとめた論点と質問項目案について検討した。その結果、次回委員会で申立人、被申立人双方にヒアリングを実施し、詳しい事情を聴くことを決めた。

3.その他

委員会が本年度中に予定している東北地区加盟社との意見交換会を11月28日(火)に仙台で開催することになり、その概要を事務局が説明した。

以上

第118回 放送倫理検証委員会

第118回–2017年9月

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議 委員会決定を10月上旬にも通知・公表へ
インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話など

インターネット上の情報・映像の真偽を確認しないまま事実でない放送をした、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』、および同局の情報番組『ノンストップ!』について、これまで2回にわたり委員会での討議が行われたが、その議論を受けて川端委員長から「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題された委員長談話の文案が委員会に示され、テレビの番組制作におけるネット情報利用の問題点について広く注意喚起するため、BPOのホームページなどで公表することになった。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、委員会が独自に行っていた沖縄の現地調査などについて担当委員から詳細な報告があった。さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。委員会での意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、一部手直ししたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について議論が交わされた。7月に放送されたこの番組では、間違われた人の映像だけでなくインタビューも使われるなど、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えと質が異なり、制作体制に問題があるのではないかといった厳しい意見が相次いだ。
同じ『とくダネ!』では、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送して謝罪した。この件も合わせて議論した結果、同じ番組で立て続けにミスが起きたことをどう考えるかなど、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を継続することになった。

1. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。また、同局の情報番組『ノンストップ!』は6月6日、人気アイス特集で「ガリガリ君」を紹介した。この中で「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像の真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
このふたつの事案について、委員会で2回にわたり討議が行われた結果、間違った情報を放送された側は、そのことを問題にしておらず、また間違った内容それ自体は大きな問題とはいえない上に、当該放送局によって適切なお詫びと訂正や再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、前回委員会で「委員長コメント」により改めて注意を喚起することになった。しかし、今回、同じような問題が他の局でも起こりうることを鑑み、インターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するための、より詳細な「委員長談話」が出されることになった。
委員長談話では、インターネット上の情報の利用にあたってはその真贋を見極めて使うというリテラシーが必要だとしたうえで、すくなくとも制作現場の担当者が、その情報自体について疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力を持たなければならないが、まず、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせず注意し考える習慣を身につけることだ、と指摘している。また、放送局は、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築を行うべきだとしている。この委員長談話の末尾には参考資料として、2011年に公表された「若きテレビ制作者への手紙」が再掲されている。

2. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」、「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、検証を深める必要があるとして担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。この調査結果についての詳しい説明が担当委員から行われ、疑問点については再確認を行うことになった。
さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。

3. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。そして、委員会の考えや今後の番組制作への期待をどのような表現で伝えればよいか、詰めの議論が交わされた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

4. 医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する放送の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を伝えた。しかし翌日、この男性は逮捕された容疑者とは別の一般の方だったと訂正し、謝罪した。
この番組ついて、委員会では「男性の映像だけでなくインタビューも使っていて、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えとは質が異なる」、「間違って放送された男性の顔は逮捕された容疑者の顔とはまったく異なり、理解できないミスだ」、「容疑者の写真を出すことの是非の議論にも影響しかねない」、「時間的、人員的な制作体制に問題があるのではないか」といった厳しい意見が相次いだ。その結果、同じ『とくダネ!』で8月にも、京都府議会議員をめぐる放送で事実確認ができていない部分があったと謝罪したことから、なぜミスが頻発しているかなどについて報告を求めて討議を継続することになった。

5. 京都府議会議員のトラブルの特集で、事実確認ができていない部分があったと謝罪したフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、8月28日の放送で京都府議会議員の夫婦間トラブルをめぐる問題を扱った。しかし翌日の放送で、府議が「書類送検された」、また妻が「ストーカー登録された」と放送した点は、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
この放送について、委員会では「夫婦間のドメスティック・バイオレンスとストーカーでは問題が違うのに、一緒にしているのではないか」、「府議は放送の翌日に書類送検されていて、容疑者の映像を取り違えた7月の放送とは質の異なる事案ではないか」、「刑事事件の処分はセンシティブな情報であり、もっとも慎重な確認が必要なはずだ」といった意見が出された。フジテレビではインターネット上の情報にたよってミスが続いたため、番組制作について委員長談話が出されるという事態となったばかりなのに、1か月の間に同じ番組で、かつ慎重さが求められる刑事事件の放送でミスが相次いだことを軽く考えるべきではないとして、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を続けることになった。

以上

「青少年のメディア利用に関する調査」についてのお知らせ

「青少年のメディア利用に関する調査」についてのお知らせ

青少年委員会では、青少年が視聴する放送番組の向上のため、メディアに囲まれた環境で育つ現代の青少年の日常的なメディア利用行動の実態を把握し、テレビ放送やテレビ番組に対する意見や態度、意識形成との関連を検討することを目的に、「青少年のメディア利用に関する調査」を実施します。
(一般社団法人新情報センター調査の概要へのリンクはこちら)

全国にお住まいの2,000人の青少年(平成11年4月2日~平成17年4月1日に出生の方)と、その保護者の皆さまに、ご協力をお願いしています。
調査は、「郵送調査法」(郵便でお送りした調査票に記入してご返送いただく方式)で実施しています。調査票がお手元に届きましたら、ご記入のうえ同封の返信用封筒に入れて、平成29年10月2日(月)までにご投函ください。

本調査は、放送倫理・番組向上機構[BPO]がお茶の水女子大学に委託して行っているもので、同大学の研究倫理委員会の審査を経て実施しています。
また、調査の実施(対象者選出、調査票の発送や回収、集計作業など)は、世論調査や学術調査の専門機関である一般社団法人 新情報センター(http://www.sjc.or.jp/)が担当しております。

* 調査票(青少年用・保護者用)と日記票をご回答くださった方には、お礼として1,000円の図書カードを11月上旬にお送りします *

【調査全般に関する問い合わせ先】
一般社団法人 新情報センター
電 話:03-3473-5231(受付時間:平日9~12時,13~17時)
担 当:安藤、結城

【記入方法に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 人間発達教育科学研究所
電 話:03-5978-5539

以上

「青少年のメディア利用に関する調査」調査概要pdf

委員長談話

インターネット上の情報にたよった番組制作について

2017年9月8日 放送局:フジテレビ

放送倫理検証委員会
委員長 川端和治

 最近フジテレビの2番組で、インターネット上の情報・画像に依拠して番組を制作した結果、事実ではない発言を事実として辛口のコメントを加えたり、実在しない商品を紹介するという事案が発生した。いずれも事実ではない放送であるから放送倫理違反があることは明らかであるが、インターネット上のもっともらしい情報を真実と信じてしまったという不注意からの過誤であり、誤った内容は、過去に何度か引退表明と撤回を繰り返したことが広く知られているアニメ映画監督についての事実ではない引退宣言集と、珍しい味が売り物のアイスの実在しない味のパッケージ画像であるから、それ自体はそれほど重大とは言えない。その上、虚偽の発言集を放送された本人のプロダクションや実在しない商品を発売したと報じられた会社は、この過ちを問題としておらず、また番組を制作したフジテレビは、直ちに訂正と謝罪の放送を行い、過ちが発生した経過と原因を検証した上で、再発防止策を講じている。委員会はこれらの点を考慮して、審議の対象とはしなかった。しかし、この2つの事案は、番組制作にあたり、まずインターネット上の情報を利用することが広く行われている現状で、十分な裏付け取材なしにそれを利用することがあれば、同じ問題が他の局でも発生する可能性があることを示したものと言える。かつて委員会が公表した「情報バラエティー2番組3事案に関する意見」(委員会決定第12号)は、インターネットで探し出した出演者の話の裏付け取材をしないまま、それを事実と思い込んで制作された番組についての事案である。今回の事案は、専らインターネット上の情報だけにたよって番組を制作したという点でそれと異なっているが、それだけに一層、インターネット上の情報を利用するときのリスクを明確に示していると言える。そこで、番組制作にあたってインターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するために、委員長として談話を発表することにした。
 まずはじめに、この2つの事案を他局での研修の際に事例として参照できるようやや詳しく内容を紹介した上で、どのような対策を講じるべきなのかについて考えることとしたい。

1. 宮崎駿氏の事実でない引退発言集の放送

 2017年5月28日、フジテレビは情報バラエティー番組『ワイドナショー』で、宮崎駿氏の引退宣言撤回をとりあげた。宮崎氏がこれまでに何度も引退宣言しては撤回しているとして、1986年公開の「天空の城ラピュタ」から2013年公開の「風立ちぬ」まで、7本の作品制作後の引退宣言を一覧できるフリップを使い、引退表明と撤回を繰り返したことについてコメンテーターが辛口のコメントを加えた。ところが放送直後に、これはネットで流布している「嘘ネタ」であり、本人の発言ではないとの指摘があり、フジテレビも「宮崎氏本人の発言ではなかった」として訂正・謝罪した。
 放送に至った経緯は、フジテレビの委員会に対する報告書によれば次のとおりである。

 この引退発言集のフリップは、インターネット上の記事から担当アシスタントディレクター(以下「担当AD」)が作成したものであった。その後、このフリップの内容を、担当ディレクター、総合演出、チーフプロデューサー、コンプライアンスプロデューサー(以下「コンプラP」)、出演者担当プロデューサー(以下「出演者担当P」)が確認し、インターネット上の情報のみで構成されていることを認識した。その上で、宮崎氏が引退発言を何度か繰り返したことは本人も認めていること、フリップに記載された発言内容はネット上に多数出ていること、宮崎氏が引退宣言を撤回して新作長編アニメの制作を始めたというニュースの一部であることから、発言内容の真偽に些少の違いがあってもニュースそのものの正当性に大きく関わる問題ではないと判断した。ただ情報が誤っていた場合の対策として、当初「宮崎駿 引退宣言集」となっていたフリップのタイトルを「宮崎駿 引退宣言!?」に改め、「放送上の表現として真実とは断定していない、ということを提示するという」対応をした。また総合演出、出演者担当Pは、最終的な放送の可否の判断をコンプラPに委ねた。コンプラPは、時間的な制約があってより確度の高い情報源を見つけ出すことが困難であり、インターネット上の情報であることだけを理由にこのニュースをカットして再作業することにより納品期限に遅れ、生送出することになるのは避けたいと考えて、そのまま放送することを決定した。

 以上のフジテレビの報告書を読んで真っ先に疑問になるのは、意識されていた問題点が、情報源がインターネット上のみにあり、それでは信用性に問題があるという事だけであったことである。そのために、より信用できる紙媒体と紐付いているものをインターネットで探そうとしたが時間切れになったというのである。しかし、これだけ多数の人間が関わっていながら、「人生で最高に引退したい気分」「100年に一度の決意」「ここ数年で最高の辞めどき」「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」という発言が並べられているのを見て、これは引退発言としてはどれもおかしいと思わなかったのだろうか。まして、発言者は、職人肌の生真面目な仕事ぶりで知られるあの宮崎氏なのである。
 実は、ネットで流布している宮崎氏の引退宣言集は、2013年9月1日にA氏がツイッターで
 86年ラピュタ「人生で最高に引退したい気分」
 92年紅の豚「86年を上回る引退の意思」
 97年もののけ姫「100年に1度の引退の決意」
 04年ハウル「ここ数年で最高の辞めどき」
 13年風立ちぬ「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」
と、つぶやいたのが拡散したものである。
 これは、当時、毎年それまでにない出来であるかのようなキャッチコピーをつけて売り出すことで評判になっていたボジョレー・ヌーヴォーの宣伝文句をもじってA氏が創作したもので、宮崎氏の実際の発言とは全く関係がないものであった。そのことがはっきり判るのは2013年の引退宣言が「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」とされていることである。宮崎氏は、2013年の「風立ちぬ」の公開後、引退声明を公表し同時に長時間の記者会見を行っており、そのいずれもがインターネットで容易に確認できるが、そのなかのどこにもこのような発言はない。あるのは加齢による衰えから長編アニメの制作はやめざるをえないという意思表示であり、この発言集にあるような祝祭的な気分はうかがえない。そもそもフジテレビのこのニュースは、宮崎氏の引退撤回と新作長編アニメ始動を報じるもので、番組の中で2013年の引退記者会見での発言も紹介しているのだから、まず、そのときの引退声明と記者会見の内容をきちんと確認していなければならなかったはずである。そうしていれば、フリップにある2013年の引退声明が明らかに事実に反していることに気づいたと思われる。
 また、フジテレビのフリップは、1992年「紅の豚」公開時の引退表明を「アニメはもうおしまい」としており、A氏のツイッター発言とは異なる。フジテレビの報告書によれば、これはニュース情報サイトであるビジネスジャーナル上の記事に依拠するもので、事実この記事では「紅の豚」のあと「やりたいことはやった、アニメはもうおしまい」という発言があったと記載されている。しかしこの記事は、「2ちゃんねるやツイッター上では『引退詐欺』の常習犯だとして、次のような"コピペ"が出回っている」として、つまりそれ自体として信用性が保証されていないという前提で、一連の引退発言を紹介しているのであり、しかも、その発言のどれひとつとしてA氏の発言集に一致するものはない。フリップを作成した担当ADは、二組の異なる事実がネットに出回っていることを認識したはずで、こういう場合、そのどちらが信用できるのか、あるいはどちらも信用できないのかが判明するまでは放送できないと判断するのが常識的だろう。ところがフジテレビのフリップは、「紅の豚」の際の発言はビジネスジャーナルの記事を採用し、また「もののけ姫」の際の発言については、A氏の「100年に1度の引退の決意」とビジネスジャーナルの「これを最後に引退」という記事を足して2で割って「100年に1度の決意。これを最後に引退」という発言があったとし、その他の発言は、A氏の発言集を使っている。これでは、情報の信憑性についていったいどんな根拠で判断をしたのかと問われても仕方がないだろう。なお2008年の「崖の上のポニョ」の後の「引退宣言」はA氏の発言集にはなく、フジテレビの報告書は、出所をNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』としているので、密着ドキュメントの撮影中の発言と思われる。
 さらに問題なのは、フジテレビの報告書を読む限り、放送前に誤りが判明する契機になったと思われる上記のような疑問に、放送後に検証を行った際にもまったく気づいていないと思われることである。フジテレビの報告書によれば、この番組の制作を行った第二制作センター内では、委員会が2011年に発表した 「若きテレビ制作者への手紙」を参考にしてネット上の情報のみに基づいて放送することを禁止するルールを作り、周知徹底してきたということであり、そのためこのルールがあることを知りながら、番組の放送を優先したというコンプライアンス違反を専ら問題にすることになったようである。
 しかし、そもそも「若きテレビ制作者への手紙」は、ネット情報のみに基づいて放送することを禁止するものではない。ここで委員会が述べたのは、インターネット上に出ている情報には不確かなものが多いから、たとえバラエティー番組でも情報を見せるときにはウラ取りをしなくてはいけない、インターネットにあふれかえる情報の中から正しい情報を選り分けるのは大変だが、そこを「いいかげん」にやってしまうとテレビ番組が誤った情報を「拡散」してしまいかねないので、慎重にいかなければならない、というアドバイスなのである。
 たしかに禁止してしまえば、インターネット上の情報のみに基づく放送であることから起こりうる間違いは根絶されるだろう。しかし、インターネット情報の検索が欠かせない手段になっている今日の社会で、このような禁止をしても、今回の番組制作のように、それは必ず侵犯され、誤りを引き起こすだろう。必要なのは禁止ではなく、正しい情報を選り分けるための能力の涵養であり、おかしいのではないかと疑問を持つ感性を身につけることなのではないか。そして疑問が残るときには放送しないという判断が許される番組制作の体制を構築することだろう。それをどうやって実現するのかを問わない限り、同様の問題が繰り返されることになるだけであろう。

2. 実在しないアイスのパッケージ画像の放送

 2017年6月6日、フジテレビは情報番組『ノンストップ!』で、B乳業の「ガリガリ君」を紹介した際、季節限定商品として「火星ヤシ」味のアイスの商品画像を使用したが、これは実在しない商品のパッケージ画像を何者かが作ってネットに掲載したものであった。
 放送に至った経緯は、フジテレビが当委員会に提出した報告書によれば次のとおりである。

 『ノンストップ!』は「人気アイス特集」の放送をすることを決め、そのなかでB乳業の「ガリガリ君」も紹介することにして、工場の内部映像、CM動画の提供を受けたが、ディレクターが、「ガリガリ君」の期間限定商品のパッケージ画像はネット上から取るよう指示されたものと誤認し、また編集オペレーターから画像が足りないと指摘されたため、アイス関連のまとめサイトから「火星ヤシ」味を含むパッケージ画像をダウンロードし画像オペレーターに渡した。放送時間が迫っていたため、画像の真贋の確認までには気が回らなかった。火曜日担当のプロデューサー、映像加工が適切かどうかのチェックを担当するプロデューサーがVTRをチェックしたが、映像処理が適切に行われているのかについてのチェックに意識が集中し、権利者からの許諾の確認や、画像の真贋については確認しなかった。

 この事案の最大の問題は、誰も「火星ヤシ」味のアイスという商品の実在性に疑問を持たなかったことだろう。確かに「ガリガリ君」は、ナポリタン味など、アイスとしては普通考えられない味の商品を発売してきたことで知られているが、いずれも実在する食品の味であって、実在しないことが明らかな食品の味のアイスではない。もし仮にB乳業が実在しない食品の味のするアイスを本当に発売することにしたのであれば、それ自体がニュースであり、どんな味のするアイスなのかを番組で特別に紹介するくらいの価値のある出来事であろう。当然B乳業に取材することになったはずである。ところが制作に関与した人々の念頭にあったのは、放送日までに商品パッケージ映像の数をそろえるという事だけであり、その商品自体には関心が無かったために「火星ヤシ」味という、誰が聞いてもあり得ない商品を実在するかのように紹介してしまったものと思われる。
 フジテレビの報告書によれば、この番組を制作した情報制作局は「確認もせずにネットの画像を使うのは、落ちているものを拾って食べるのと同じこと」という強烈な言葉でネット情報を鵜呑みにする危険性を研修しているということだが、この番組を制作したディレクターは、インターネットにアップされた画像を使う場合本人の許諾を取る必要があることや事実関係を確認する必要があることなどの、インターネット取材のリテラシーを一応身につけていたが実践できなかったという。
 フジテレビは、再発防止策として、インターネットから動画や画像をダウンロードしたり、情報を引用したりする場合は、当該画像・映像の真実性は確認できているのか、当該画像・映像は引用・報道利用にあたるのか、あるいは著作権者からの許諾があるのかについてプロデューサーなどのチェックを受けることを徹底するというルールを作ったということだが、放送までに厳しい時間の制約のある現場で、このルールが実効性を持ちうるのかは疑問が残る。まさにこの事案が示しているように、真実性に疑いをもってない人々にとっては、チェックを受けることは、単なる形式であり余計な負担としてしか意識されないであろうからである。

3. 番組制作時のインターネット情報利用について考えるべきこと

 番組の制作にあたりインターネット上の情報を検索して利用すること自体は、現在の社会では避けることが出来ない。それなしでは仕事が非効率的になって進まないからである。問題は、虚偽の情報が、悪意でそれを広めようとしている人だけでなく、罪のないジョークやネタとして掲載され、面白いと思われれば直ちに拡散されるというインターネット上の情報の特質にある。誰も情報の拡散やそれを利用して加工した情報の発信にあたって真実性のチェックをしていないので、インターネットは、貴重な情報に容易にアクセスできるきわめて有用な場であると同時に、一見もっともらしくても真実性の保証のない情報があふれる場でもあるのである。
 従ってインターネット上の情報の利用にあたっては、その真贋を見極めて使うというリテラシーが必要となる。
 まずなすべきは、そのサイトあるいは発信者が信用できるかどうかというチェックであり、そのためには相当な知識と経験が必要となる。しかし信用できそうに見えるサイトや発信者であっても、真実性についてどれだけ吟味しているかは不明なのであり、この点で、全国紙の記事が校閲の専門家によってチェックされているなど、活字メディアの記事が程度の差はあれ、校閲担当者によるチェックを受けているのとは全く異なる。
 そうなると裏付け取材が必要となるが、インターネット上の情報は容易に拡散されるという特質があるから、いくら同じような情報が他のサイトにあっても、その数は真実性の保証とはならない。従って裏付けはインターネット以外の場で行わなければ確実ではないということになる。しかしそれには時間と手間がかかるので、テレビ番組の制作のように時間の制約がある場合には、なかなか実行できないであろう。現に、このフジテレビの事案でも「納品期限」が優先されてしまっている。
 この事案が示したように、いくら包括的な禁止条項を並べても、それが制作現場の実情に合わなければ実行されないのだから、まず必要なのは、制作現場の担当者が、その情報自体について、疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力ではないだろうか。その疑問が持てれば、追加取材をしたり、社内の専門家に問い合わせをするだろうし、その余裕のないときには、このままでは放送できないという判断ができるようになるだろう。しかし、このレベルの能力といえども一朝一夕で身につくものではない。第一歩として始めるべきなのは、制作する番組について、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせずに注意し考えるという習慣を身につけることであり、疑問が生じたときは疑いが解消するまで放送するべきではないという声をあげる強さを一人ひとりが持つことだろう。放送局が行うべきなのは、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築であろう。
 放送倫理検証委員会は、その発足直後に公表した最初の見解で「番組は、もっとちゃんと作るべきだ」という委員の発言を、委員会の総意として記載している。この見解が出された10年後に、また同じ事をコメントしなければならないというのはまことに残念である。もっと制作現場の一人ひとりが、番組制作者としての誇りと矜恃をもって仕事をして欲しいと思う。
 委員会は、「若きテレビ制作者への手紙」で「必要なのは、やはり『強さ』ではないだろうか。時間に追われていても情報を慎重に扱う強さ、出演者に対する礼儀正しい強さ、自分の仕事に最後まで責任を持つ強さ……。それを支えるのは、きみの番組を楽しみに待っている全国の視聴者なのだ」と書いた。6年前の手紙だが、現在のテレビ制作の現場にもまだ必要な手紙であろう。この談話の末尾に再掲することにしたので、ぜひ各局の研修で役立てて欲しい。

以上

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委員長談話全文(PDF)pdf

2017年8月に視聴者から寄せられた意見

2017年8月に視聴者から寄せられた意見

終戦記念日前後に放送された戦争関連番組や、夏休み恒例のチャリティー番組への意見。民放各局のワイドショーなどで、女性議員や人気芸人の不倫を扱った番組への批判など。

2017年8月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は2,034件で、先月と比較して913件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール76%、電話22%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性67%、女性32%、不明1%で、世代別では40歳代25%、30歳代23%、50歳代19%、20歳代17%、60歳以上12%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は1,902件【51局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、22件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

太平洋戦争から70年以上たつが、終戦記念日前後に放送された戦争関連番組への意見が多く寄せられた。また、夏休み恒例のチャリティー番組への意見や、民放各局のワイドショーなどで、女性議員や人気芸人の不倫を扱った番組への批判が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は54件、CMについては48件あった。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は203件で、前月から30件減少した。
今月は「表現・演出」が43件と最も多く、次に「いじめ・虐待」が37件、「性的表現」が15件、「報道・情報」が14件と続いた。
「表現・演出」では、バラエティー番組でタレントが人に水を投げつける演出について意見が寄せられた。「いじめ・虐待」では、スペシャル番組で遠泳に挑む小学生と指導する先生を追ったドキュメント企画について意見が寄せられた。「性的表現」では、高校生を主人公とした連続ドラマについて意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 北朝鮮がミサイルを発射し、全国瞬時警報システム「Jアラ-ト」が東北地方中心に作動した。テレビでは、「〇〇県には地下がない。4分では逃げられない」など、できないことばかりを取り上げ、まるで政府の責任のような放送ばかりしているが、そもそも北朝鮮が一方的にやっていることに、どうして日本の対応ばかり批判しているのか。逃げられないではなく、どう身を守るかを伝えるのがメディアの仕事ではないか。公開されている政府広報についても詳しく説明せず、一般人の「どうすればいいのかわからない」というインタビューばかり流し、自分達も一緒に「わからない、わからない」と言うだけなら、報道など必要ない。もしミサイルが着弾したとしても、真上から落ちない限り、破片から身を守ったり、体を隠したり、家の中の行動で助かる可能性はあるはずだ。そのためのJアラートのはずが、役に立たないものとして伝えるのは如何なものか。

  • 不倫疑惑で盗撮されたプライベート写真を、本人の了解なしにテレビで公開する基準はあるのか。犯罪と確定できない時点でも、公務員なら公務外でもOK、元アイドルならOKなのか。盗撮は犯罪ではないのか。誰でも見ることができるテレビでの発信と、ネットや雑誌とでは影響が違うと思う。

  • 騒音をめぐるご近所トラブルについて、各局が大きく報道している。一般にこの種のトラブルは、双方の言葉の行き違いや、感情のもつれが原因になることが多い。当事者双方に事情を聞かなければ真実に近づけない。しかし多くのマスコミは、周囲に住む人達の主張を流し、一方的な立場から報じているようにも感じる。問題の発端は、風鈴の音色に対する苦情だという。通常、風鈴の音色は風情のあるもので、これに苦情を言うのはどういう状況だったのか、どの程度の音色だったのか、どういう言い方をしたのか、一方で、苦情を受けた側は、嫌がらせをされたと誤解したのではないのか。双方の事情を包括的に報じるべきだ。単なる興味本位の「変わった人の変わった行動」という報道では何の解決にもならない。

  • 「元女子マラソン日本代表選手を、化粧品などの万引容疑で逮捕」のニュースを各局で伝えていたが、これは、大々的に全国に顔と名前を出して報道するべきものなのか。万引きは犯罪で悪いことだが、大金を横領したわけでもなく、人を傷つけたわけでもない。もっと報道すべきニュースはたくさんあるだろう。テレビ局の社員が、女性に違法薬物をかけて、自身も薬物を使用していたニュースでは、顔や名前は出さない。どこが公平な報道か。

  • コンビニ3店舗で同一犯による強盗・強盗未遂事件があった。実害があったのは1件目だけで、3件目の私の経営する店では実害は無かった。朝になって、在阪の民放各局が私の店舗に取材に来た。その際、「従業員が映されるのを嫌がっている」と抗議したが、カメラを回し続けられた。経営者の立場としては、「強盗に狙われる店」というイメージが先行し、新たな従業員獲得が難しくなることに頭を抱えている。「映されたくない」とこちらが言っているにも関わらず、それを無視されたことに強い憤りを覚える。

  • 7月の視聴者意見にあった「重要なニュースそっちのけで芸能関係の話題ばかり報じている、朝の番組は硬派なものだけで十分」という主張に私も同感である。こういう芸能ニュースの大半は、一般の視聴者にはどうでもいい話であり、重要なニュースを後回しにしてまで放送する必要はない。「硬派な番組ばかりでは、若い人が見てくれない」という話もあるようだが、テレビ局側の都合のいい言い訳でしかない。ニュースサイトや新聞は、必要な記事を選んで読むことができるが、テレビではその選択ができない。芸能ニュースを優先して放送する姿勢こそが、若者のテレビ離れを助長する結果につながっているのではないだろうか。

【番組全般・その他】

  • 朝の番組で、沖縄県の離島、竹富島の小さな診療所が、大量に訪れる観光客の診療に困惑しているという話題を取り上げていた。軽症で緊急性がないにも関わらず、小さなケガで診療所を訪れる観光客。しかし島に医師は1人だけ。島民が受診できない状況が続いているという。こういう問題は、実際に島の声を聞かないとわからないが、取材班は現地に行き、医療関係者、診療所を訪れた観光客、困惑する島民、入島制限も考えるという島の声など、多角的に丹念に取材していた。ネット情報をまとめたような企画が多い中、こうしてきちんと取材することが大切だ。小さな島の診療所の問題だが、自分勝手な患者が増えている都会でも共通する課題だ。これからもこうした良質の取材をした番組が増えてくことを願う。

  • 昼の番組で、今まで散々芸能人や政治家などの不倫を激しく批判し、人格まで否定していた司会者やコメンテーターが、ある芸人の不倫は擁護するようなことを言いだしていた。不倫が悪いのではなく、その人物が好きか嫌いかで判断しているようにしか見えない。前回「女性議員がホテルに一緒に入ればアウト」と言っていたのに、芸人が何度もホテルに一緒に入っても「証拠がない」などと、真逆のことを言うのを聞いて本当に呆れた。これは、女性の不倫は許せないが、男性で芸人だったら良いというようにもとれる。公平なコメントができないのであれば、扱うべき問題ではない。

  • 朝のニュースのお天気コーナーで、気象予報士が、チャリティー番組の長距離マラソンを完走した芸人を意識したように天気を伝えていた。面白おかしくやってくれる分には構わないのだが、なぜ今日やったのか。昨年、死者行方不明者も出した台風10号から今日で丸1年。各地で慰霊式典も行われているような日だ。おまけに現在、台風15号も発生し、進路によっては日本を直撃するかもしれない状況。それに9月1日は防災の日。今週はおチャラけているような場合ではないはずだ。気象予報士なら、せめて自然災害に対してだけは意識を高く持ってほしいものだ。本当にモノマネをやる必要があったのか意味がわからない。

  • 報道番組で、カメラが富士河口湖町にある焼き肉店の中に入って行った。店長はインタビューに、「上タン、上カルビ、上ロース、あとはハラミ、ビールは1、2杯飲んだかな」と答えていた。記者から「支払いはどうしたのか?」と聞かれると、「支払いは総理の個人のカード、○○カードでゴールドですね」、そう話す店長。たとえ店長が詳しく語ったとしても、放送して良いものと悪いものについては区別がつくはずだ。

  • 終戦直後の樺太に関する番組を見た。ソ連との戦闘が始まった経緯がうやむやに説明され、よくわからなかった。本当に本人が言ったかどうかわからない証言、民間人の視点だけで進められ、違和感を持った。およそ40万人の樺太の人々は、どのように生き残ったのかの説明がない。これだけ生き残るには、軍の協力が考えられるはずであるのに、その点には触れない。ソ連側の責任についても何ら追及しなかった。どうして起きたのかを明らかにすると言いつつ、中身は不明確な資料や視点の限られた証言ばかりで、何も真相が分からない感傷的で偏った番組になってしまっていた。

  • 731部隊の番組は、ハバロフスク裁判の証人をもとに制作しているが、事実に反している。同裁判は、1949年に行われたソ連の主張を宣伝するためのプロパガンダ裁判である。つまり、戦後すぐではなく、戦後4年間、ソ連の言うことを聞かなければ命の保証さえされない、人権無視状態の人々が洗脳を受けた上で、ソ連から強要された自白をもとに作られたものである。命の危険にさらされ、洗脳された日本の抑留者の証言は、ほぼソ連の主張そのものであることは様々な事例で明らかになっている。番組はその事実を詳しく述べるべきである。731部隊については、米国国立公文書館が公開した、米情報機関の対日機密文書で「結局、戦争犯罪と言えることは全く存在しなかった」ことについて、何ら言及しないのも、事実を隠蔽するものだ。極めて意図を持って制作された偏向番組である。

  • 731部隊の番組を見た。非常に綿密に資料を集め、肉声で、当時実験に関わった医学者などの証言を紹介している点に非常に感心した。事件の経緯や資料の乏しさから「捏造ではないか」といった一部の層の意見を見事に覆す資料を提示し、部隊の残虐さ、非人道的行為を改めて見直す貴重な番組だった。これからもこういった誤った風潮や思想、歴史修正から世論を喚起し、戦争の悲惨さ、惨たらしさを次世代に伝える番組を制作してもらえるよう、心から願う。

  • あさま山荘事件や金大中事件など、昭和の大事件を特集した番組を見た。どの時代においても、国家や国民の安全が脅かされる事件や事故は起きてしまう。しかし、こういった出来事は時代が進むにつれて風化し、知らない若者達も増えてくる。何らかの形で伝え続けていくことが大切だ。それにより今の私達が学ぶべきことも出てくる。このような番組はこれからも放送してもらいたい。

  • 私は、発達支援センターで就学前の障害児の子ども達の支援をしている。長時間のチャリティー番組を見ても感動しない。障害者の方々が頑張っている姿を見て「自分も頑張らなきゃ」「自分は幸せなんだ」と思わせる番組そのものが、社会に悪影響を与えているのではないかと思ってしまう。自分より不幸な人を見せて感動させることがとても多いと感じる。障害者が頑張っているところを見て何が面白いのか。頑張っているのは健常者も障害者も同じだ。障害者は特別ではなく、普通に生きているだけなのではないか。街中や電車の中で障害者を見ると「怖い、変な人」と思ってしまう人が多いと思う。それは障害を理解している人が少なく、外見や自分の想像だけで判断しているからだと思う。そんな人たちを少しでもなくしたい。誰もが見るテレビでそのようなことを伝えていってほしい。チャリティー番組以外で障害者が出演できる番組、感動より笑いを与えてくれる、そんな暖かい番組が増えればいいなと思う。障害者の方々が生きやすい社会を作りたいと思う。

【ラジオ】

  • 地方局のFMを聞いている。在京局の番組を模倣した番組だ。基になった番組との関連性もなく、特に尊敬の意も感じられない。そのまま模倣というのは、ラジオ業界やリスナーへの冒涜ではないだろうか。高校生をターゲットに絞り、番組でよく呼びかけているが、年齢対象外のリスナーにとっては違和感というか疎外感が残る。実際、中学生が「中学生でもいいですか」などと気を使ったメールを送ったりしていて、不憫。また、平日昼の時間帯も、こだわりの感じられないJ-POPばかりがかかるようになってしまった。元々、落ち着いた選曲や雰囲気を得意とし、深い音楽知識を知ることができるFM局だったが、ここ1、2年で雰囲気の変化が加速してしまった。先人の積み上げてきたものが崩れつつあるように思う。開局時から聞いていて、音楽をより好きになるきっかけを与えてくれた局なだけに、残念としかいいようがない。

【CM】

  • 自動車メーカーのCMで「ぶつからない車」などと安全性の高さをアピールしているが、障害物や駐車車両に向かって、車をフルアクセルで急発進させるなどのパフォーマンスまでする必要性があるのか疑問である。演出とはいえ、このような手法は「安全装置付きの乗用車=絶対に事故を起こさない」と誤解されかねず、無謀運転を助長することにもなりかねない。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組でタレントが「水ビンタ」を行っている。子どもがまねをしたら失明する可能性がある。危険だ。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • スペシャル番組で、遠泳に挑戦する小学生が指導者に厳しい言葉を浴びせられたり、体罰ともとらえられる指導を受けていた。このような子どもに恐怖を植え付けるような危険な指導が当然のごとく行われていることにぞっとした。放送局は、これを美談に仕上げている。

【「性的表現」に関する意見】

  • 高校生が主人公の連続ドラマなので、高校生も見ているが、性行為、性風俗店、暴力行為などのシーンが多く出てくる。このような番組を公共の電波で、子どもが見る時間帯に放送することに憤りを覚える。

【「人権」に関する意見】

  • スペシャル番組で、育ての母親が幼い子どもに自分は本当の母親ではないと顔出しで告白していた。将来がある子どもの立場を考えて制作してほしかった。制作サイドは子どもの人権について理解していないのでしょうか。

【「低俗、モラルに反する」との意見】

  • バラエティー番組でお笑い芸人が将棋を指すシーンで、女性のスカートをめくっていた。子どもが見ている時間帯の番組であり、モラルに反する。度が過ぎていて教育上よくない。

2017年8月8日

「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」通知・公表の概要

[通知]
8月8日(火)午後1時からBPO会議室で坂井眞委員長と、起草担当の奥武則委員長代行と城戸真亜子委員が出席して委員会決定の通知を行った。申立人と、被申立人のテレビ静岡は報道の責任者ら4人が出席した。
坂井委員長が決定文に沿って説明し、「委員会は、『関係先』、『関係者』、『捜索』という表現が適切だったかどうかを含めて、本件放送が伝えた事実の重要部分の真実性ないしは相当性を検討し、真実性ないしは相当性が認められると判断した。したがって、本件放送は申立人への名誉毀損に当たらない。申立人は、本件放送で流れる布団や枕が映った申立人宅の映像などが申立人のプライバシーを侵害していると主張する。しかし、これらの映像で映された対象自体は他者に知られることを欲しない個人に関する情報や私生活上の事柄とまではいえないから、プライバシー侵害は認められない。委員会は、本件放送に放送倫理上の問題があったとまでは判断しない。だが、捜査活動の全体状況に考慮して、申立人宅の映像の使い方をより抑制的にしたとすれば、あるいは申立人の被害感情はこれほど強いものにならず、精神的打撃も少なかったのではないか。本事案は、たとえ実名や本人を特定する内容を直接含むものでなくとも、テレビニュース、とりわけ犯罪に係るニュースが当事者に大きな打撃を与える場合があることを教えてくれたものといえる。本決定の当該部分を参考にして、今回、自局のニュースが委員会の審理対象になったことを契機に、人権にいっそう配慮した報道活動を行うための議論を社内的に深めることをテレビ静岡に要望する」と述べた。
奥委員長代行は、「起草に当たった者だ。委員長の説明を聞いて、申立人は『自分がいろいろ訴えたことは全く認められていない』と考え、テレビ静岡は『よかった、よかった』と考えているかもしれないが、決定文全体をしっかり読んでいただきたい。決して、片方が勝って、片方が負けたという判断ではないことを、ぜひ読み取っていただきたい。被申立人について言えば、犯罪報道は入口で独自の情報を持って取材を開始し、展開する。そういう場面で、ある種の禁欲的な放送の仕方というのは実際問題として、報道現場にいるとなかなか難しいのは私も分からないわけではないが、これからは人権ということをしっかり考えていく必要があると思う。申立人について言えば、名誉毀損などの人権侵害は認められなかったわけだが、放送倫理の観点では主張のかなりの部分は酌みこまれていると思っていただければいいと思う」と述べた。
城戸委員は、「普段、私たちは視聴者として何気なくニュースに接しているが、犯罪に関わるニュースで使われる『関係先』という言葉について、私たちはどういう印象を受けるのか。あるいは、当事者であった場合、『関係先』として自分の家の映像が流されたらどういう感情を抱くのだろうか、ということを改めて考えさせられた事案だったと思う。他社にはない独自の取材映像があった場合、やはりそれを織り込んでいきたいという気持ちも分かる。ただ、刻一刻と状況は変化していく。そういう時にその都度、見極めて判断して、使用する映像などを精査することも求められる。毎日の仕事として、より敏感に繊細に判断していくことが求められる大変な仕事だということを改めて感じた」と述べた。
通知を受けた申立人は、「自分の主張が認められていないという部分で不満が残る。報道から約1年経ち、自分は犯罪を何ひとつ犯していないのに、車を購入しただけで仕事を辞め、周りからの信頼も失って、今も病院に通っている。自宅を特定されたくないため、数十万円かけて一部改装もした。踏んだり蹴ったりの1年だった。今も仕事が再開できない状態だ。この結論に達したときには、どこに憤りを持っていけばいいのか、それが今の率直な感想と言うか、まとめきれない状況だ」と述べた。
テレビ静岡は、「弊社の報道について、長い時間審理をしていただき、ありがとうございました。決定内容については本当にしっかり受け止めたい。第三者の目からご覧になって指摘された放送倫理上の要望点については、真摯に受け止めて、社内でしっかり共有して、今後の取材、報道活動に生かしていきたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして、委員会決定を公表した。23社47人が取材した。テレビの映像取材はTBSテレビがキー局を代表して行った。
まず、坂井委員長が要望ありの「見解」となった委員会決定について説明し、起草担当の奥委員長代行と城戸委員が補足説明を行った。
その後、質疑応答を行った。概要は以下のとおりである。

(質問)
決定文の14ページ、撮影場所について、私道につき立ち入り禁止の表示もない、捜査員は私有地への立ち入りについて注意喚起したわけではないと書かれているが、例えば、その場所に私道につき立ち入り禁止、もしくは申立人が私道だから撮影はだめだというようなことを言っていたら判断は変わるのか。
(坂井委員長)
これはこのケースについての判断ということがまず1つある。この現場は通常の宅地の道路で、誰の立ち入りも原則として拒否するものではないという前提になっていると思う。普通に通行する人から見たら、入ってはいけないと分からないわけで、この部分はまさにそういう普通の道路としか見えないところだった。登記が私道になっているからといって、立ち入りは違法だということはなかなか言えない。法律的に言うと、「推定的承諾がある」ということになるので、問題なしというケースだ。
次に、一般論としてどうかというと、14ページに書いてあるように、塀や柵などで囲まれ、一見して私有地と分かる場所、ないしは、道路ではあるが門があって家の一部分である、入ってはいけないよという前提が示されていたら、そこは原則入ってはだめで、法律上は住居侵入の問題が出てくる。報道だからと言って、公共性があり、公益目的があるからと言って、私有地に勝手に入っていいということは原則ない。それは皆さん、普段の取材でも気にしておられると思う。
その中間的なケースがあるかもしれない。道路であるが、小さな札があって、ここから先は私有地だと書いてあったらどうなのかというようなケース。それは、その場その場の、どういう状況かによって判断されると思う。少なくともここに書いてあるように、明確に立ち入りが禁止されていたり、囲っているところであれば、報道であっても勝手に入って行くのはだめだと私は考える。個人的な意見になるが。

(質問)
通知した時の申立人の反応を教えていただきたい。
(坂井委員長)
人権侵害だという主張が認められていない部分で不満が残るということだった。我々としては、人権侵害ありともしていないし、放送倫理上問題ありともしていないが、要望ありにしたという説明をしたが、全体として不満は残ると。自分は犯罪を何ひとつ犯していないし、単に車を購入しただけで、この報道によって、仕事を辞めざるを得なくなって、周囲の人からの信頼も失って、病院に通っているような状況だと。家を一部改装したり、踏んだり蹴ったりの1年だった。いまだに仕事も再開できないと。そういう状況で、こういう決定が出て、どこに憤りを持っていったらいいのか、という反応だった。

(質問)
12ページの「名誉毀損についての結論」の部分、「『関係先の捜索』という表現における『捜索』については真実性を認めることはできない」というのはどういう意味か。もう少し説明してほしい。
(坂井委員長)
端的に言うと、申立人宅にあった車を押収したということに争いはない。しかし、申立人宅、住宅を捜索したと放送したことについては、そのような事実は認められない、真実性立証はできていないということだ。真実性立証ができている、ないしは争いがないのは、車が押収されたという点に限られ、住宅の捜索については真実性は立証できていないということだ。

(質問)
14ページなどに、「捜査活動の全体状況に考慮して、申立人宅の映像の使い方をより抑制的にしたとすれば」と書いてあるが、具体的にはその映像を使わない以外に、抑制的に放送する仕方とはどういったことが考えられるか。
(坂井委員長)
1つは映像の問題だ。13ページから書いてあるが、取材過程で浜名湖事件の捜査の中心は申立人宅ではなくて浜松市の2か所だということがだんだん分かってきて、放送内容もそのように変わってきているのに、申立人宅の映像をここまで繰り返し放送する必要はなかったのではないかということだ。16ページから25ページに4回の放送概要が書いてあるので確認していただきたい。4回目のニュースでは、申立人に関する新たな映像がダメ押し的に加わっている。
もう1つ、これは決定文に書いていないことだが申し上げる。当日、取材過程でだんだん分かっていなかったことが分かってくる、だんだん変わってきた部分があると思う。その時に、バラバラ殺人事件の「関係先」、「関係者」という言葉は、本当にそういう使い方をしなければいけないのだろうかということだ。「関係先」、「関係者」という言葉は多義的であり、浜名湖事件の被疑者であると言っているわけでもない。しかし、申立人が、浜名湖事件という凄惨な事件の「関係先」、「関係者」であるというように報道されて、それが申立人のことだと視聴者に分かった時に大きなダメージを受ける場合もある。このケースもそうだと思う。であるとすれば、たとえば言葉の使い方にも配慮の余地があるのではないかと私は思う。そこまでは決定文に書き込んでいないが、その辺も配慮できるのではないでしょうかということが、今回の要望につながっていくところだ。
通知を受けた時の申立人の発言、この放送で自分はこんな酷いことになってしまったということの原因は、私が想像するに、「関係先」、「関係者」という言い方で、自分に関する映像が出てしまったということが大きいのではないかと思う。そこは1つ、大きなポイントだと個人的には思っている。
(奥委員長代行)
今の質問は、「より抑制的に」という表現がちょっと持って回ったような表現だと、要するにどうしたら良かったのかということだと思う。実はどういう表現をするか、いろいろ考えた。「関係先」、「関係者」という表現、「関係者」は直接申立人を指しているとは言えないかもしれないが、「関係先」としては出てくる。その日の捜査は、全体状況を見ていくと、委員長が言ったように、浜松市の2か所が中心だったということもあり、申立人については全然触れないということもできる、ニュースの全体構造からすれば。車を1台押収しているのは間違いないので、その映像だけを使うということもありだと思う。ただ、現実的に取材、報道している立場になって考えてみると、特ダネ映像を撮ったわけで、それを全部やめるというわけにはいかないだろうというようなことを全体的に考慮して、「より抑制的に」という表現をした。どういう形で抑制すればいいのか、それはテレビ局の方々に考えていただきたいという問題提起だ。
(坂井委員長)
1つ補足する。通知の後に、まず、申立人と被申立人同席の場で感想や意見等をいただく。その後、申立人と被申立人、それぞれ個別に意見をいただいている。その個別の意見交換の場で、私から申立人に、「関係先」、「関係者」と表現をされたことについてどう考えるか、どんな表現であればよかったのかと聞いた。1つの重要なポイントであると思ったので聞いた。これは皆さんにお話してもいいと思うので、お話する。申立人としては、断定的でなく、ないしは、直接の関わりはないことが分かるような形であればよかったのかもしれないと言っていた。その場で質問して、その場で答えているので、あくまでそのレベルのやり取りではあるが。局側は、「関係先」、「関係者」は断定的でもなく、直接性があると言っているわけでもないと主張しているが、申立人の周りの反応からすると、そうとは言えない反応になっているのでこういう答えになったのかなと思う。

(質問)
「被疑者の関係先」とかであれば、よかったのか。「関係先」よりも「もっと抑制的な」表現というのがよく分からない。
(坂井委員長)
奥代行が言ったように、この段階で正確に把握できている事実は、申立人宅から車1台を押収したということ以上ではないわけだ。だから、それがバラバラ殺人事件に関わるかのような印象を与えない表現をすればいい。「被疑者と関わりのある」と言ってしまうと、共犯、共犯というのは法律用語で、平たく言えば仲間かと思われる可能性もあるので同じような問題が生じると思う。
逆に、そこまで言う必要が本当にあるのかということが、先ほど奥代行が言ったことで、車1台が押収されたと放送していれば真実性もあるわけで、という話になるのかもしれない。ただ、そこは、我々がこういうやり方でやりなさいと言う立場ではないので、そこを工夫していただきたいというレベル以上のことは言えない。

(質問)
軽自動車が押収されて、その映像を使って報道されたことに、なぜ申立てたのか疑問に思っていたが、20ページ、22ページ辺りの放送概要を見て、なるほどと思った。申立人宅の映像に、殺されたのは出町さんで、殺人事件と断定したというコメントが付き、そこに「関係先の捜索」というスーパーが表示されると、非常にミックスされて、誤解されるような作りになったということだと分かった。
城戸委員が、映像を撮っても、使う、使わないかを考えてほしいというようなことを言ったが、誤解のないような作り方をしろということでよいのか。映像を使うことについては、特に否定的ではないということか。
(城戸委員)
1つは、テロップとの関係もある。生放送で、レポートする方がちょっと言いよどんだ時に、タイミングがずれて、あのテロップもずれて出てしまった。「死体損壊・遺棄事件として捜査本部設置」というテロップがずれて、申立人宅の映像に出てしまった。私が先ほど申し上げたことは、最初の段階で、まだ捜査の全体像がつかめてない段階で、十数人の捜査員がある家に行って車を押収したという事実はあったが、時間を追うごとに少しずつ見えてきて、申立人宅はそれほど捜索もされていないようだと分かってきた段階で、その個人宅の枕とかの映像をまだ使っているというようなところは精査すべきだったのではないかということだ。

(質問)
つまり、夕方のニュースの段階と、昼のニュースの段階では明らかに違うということか。たとえば、夕方のニュースであれば、押収される軽自動車という映像にとどめて、殺されたのは誰かというコメントに申立人宅の映像は使わない、それが抑制された使い方ではないかという理解でよいか。
(城戸委員)
申立人宅の映像は、この段階で、より抑制的に扱うべきではなかったかということだ。
(坂井委員長)
今のところは重要なポイントだと思う。昼のニュースは大変シンプルになっている。19ページ、申立人宅の映像に「関係先の捜索」というスーパー、「関係先」かどうかという議論は別にあり得るが、この使い方と、20ページや22ページの使い方は明らかに違っている。むしろ、城戸委員が言った流れとは逆になっている。捜査の中心は浜松市の2か所だと分かってきたのに、申立人宅の映像が、被害者が誰で、腹部を刺されたことが死因だというコメントのところで出てきて、スーパーで「関係先の捜索」と出てきてしまう。その辺の組み合わせで印象はまったく違う。25ページ、押収される軽自動車の映像には、事件と結びつく証拠がないかどうか調べている、出町さんはなぜ殺害されたのかというコメントがのっている。逆になってしまっている。このことは決定文にも若干書いてある。

以上