第83回 放送と人権等権利に関する委員会

第083回 – 2003年12月

「山口県議選事前報道」の総括

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告…など

「山口県議選事前報道」の総括

12月12日に行われた申立人・被申立人双方に対する委員会決定の通知と記者会見の模様について事務局から説明があり、この中で、下関市在住の申立人宅に出向いて通知した調査役から次のような報告があった。 「決定を伝えた後、申立人は『委員会の皆さんがこぞって決定して頂いたので大切に承ります』と言っていたが、『当該局は、決定内容を放送するだけで回復措置は取らないのか』と問うなどだいぶ不満のようだった」

次に、テレビ山口から提供された「委員会決定」の主旨を伝える同局のニュースのVTRを視聴した。委員からは、「当該局の対応は”放送倫理上問題”と見出しに取るなど、かなりきちっとしている」「裁判所の判決ニュースなら放送されないケースもあるが、放送人権委員会決定はニュースなどで各局がその内容を放送する。これは重要なことだ」などの意見があった。

委員会は、3か月後に当該局から報告を求めるなど放送倫理に対する今後の取り組み方を見守ることにした。

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告

12月11日に行われた「視聴率問題」に関する三委員長・理事長による記者会見の模様について事務局から次のような報告があった。

「記者会見では、まず、青少年委員会の原寿雄委員長が『この視聴率操作事件を個人的な問題に終わらせずに、放送界の構造的な問題と捉え、これを契機に視聴率についての改善・改革への要求を起こしてもらいたい』と述べた。また飽戸委員長は『視聴率は本来の役割を越えて使われていて、それが視聴率競争や番組の劣悪化ひいては放送倫理の問題に繋がっている。視聴率の使い方が間違っている』と述べた。清水理事長は『BPO三委員会の21人の有識者委員が、視聴率についてどういう意見を持つかを踏まえて、三委員長による見解と提言という形で意見の集約が可能となった。各委員会のどこにも属さない重要な問題について今回初めてこういう形で具体化できた』と経緯を説明した。

また質疑に応えて『提言の相手は、広告界・代理店・制作会社・視聴者のほか新聞・雑誌など他メディアも含むなど多方面にわたっている』『視聴質については、各局・各番組で共通するものがあればそれが一番だ』『誤差を無視するなど視聴率の使い方が間違っている』などと三委員長が答えた」

この後、民放連が会長の諮問機関として設置した「視聴率等のあり方に関する調査研究会」について、委員として参加した飽戸委員長が12月15日の初会合の模様などを説明した。

検討案件

12月11日に自民党からBPO事務局にFAXで送られてきた2件の審理要請案件を事務局が説明、審理対象とするかどうか検討した。また、”ゴミ屋敷番組”に対する苦情申立人からの再要望についても検討した。

  • 「不規則発言を恣意的に編集」との申立について
    03年9月15日放送のテレビ番組で、同月20日の自民党総裁選挙に立候補した藤井孝男議員が97年2月の衆院予算委員会で不規則発言、いわゆるヤジを飛ばしている資料映像が使われたが、「恣意的な編集作業で『拉致問題に消極的』との印象を一般視聴者に与えるもので、悪質な選挙妨害であるとともに名誉も毀損された」と同議員が代理人弁護士を通じてBPO=放送倫理・番組向上機構に申し立ててきた。
    当該局は、10月6日の同番組の中で「誤った印象を視聴者に与える結果となり、お詫び申し上げます」という趣旨のコメントを放送したが、申立人側は「一方的な釈明放送で、承知できない」としている。
    本件を当該局に連絡したところ、局側からこれまでの交渉経緯概要と併せて当該VTRが事務局に寄せられ、委員会で当該部分を視聴した。
    この後、本事案を審理対象にするか否かについて検討した結果、申立人は公人とはいえ個人であること、また係争中ではないことなどから審理要請を断わる理由はないという意見が大勢を占め、この申立てを受理することとした。
    しかし、放送局側に話し合いの意向もあることから、双方の間で交渉が可能かどうかを見守り、次の委員会(04年1月20日開催予定)で審理入りについての最終結論を出すことになった。
  • 「政治的公正・公平に反する番組」との申立てについて
    申立ての内容は「03年11月4日のニュース番組で、『民主党菅政権の閣僚名簿』と民主党が選挙戦術として打ち出している『マニフェスト』について約30分間にわたって放送したが、これは放送法の”政治的に公平であること”や自社の番組基準に違反することは明らかだ。しかも当該放送は、選挙期間中に民主党一党だけのPRを行うものであり、申立人の権利を侵害している」というもの。
    委員会で検討した結果、本件申立ては自民党の安倍晋三幹事長名でなされ、”党”が主体であることがはっきりしていることから、放送人権委員会運営規則の「苦情申立人は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人」に該当せず、放送人権委員会の審理事案にはならないという結論に達し、審理対象外とすることとした。
    これを受けて、飽戸委員長は「本件申立てについては、BPOとして検討することになるだろう」と述べた。
  • 「”ゴミ屋敷番組”への対応に再要請」
    大阪の精神科医が、”ゴミ屋敷番組”には「人権侵害の疑いがある」と抗議していた問題で、放送人権委員会はこれまでの検討内容と考え方をまとめた文書を10月22日付で精神科医と当該局に送ったが、その後、同精神科医から11月20日付けで「意見と要望」という文書が送られてきたため、これについて検討した。この中で精神科医は、申立てを審理対象とするよう再度検討してほしいと要望する一方、放送人権委員会での審理対象を当該本人のみに限定しないよう提言している。
    委員会で検討した結果、10月22日付けの送付文書で述べた「苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならない」との結論が放送人権委員会の最終決定であることを再確認した。
    ただ、審理対象の基準についての提言については、本件も一つの契機になって運営規則の改正も視野に入れながら議論を始めようとしていることなどを事務局が精神科医に伝えることにした。

11月の苦情対応概要

BPOに寄せられた11月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔13件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

この中で、次の斡旋解決事案を報告した。

7月に大阪にある精神科の医療団体から事務局に寄せられた苦情で、その内容は「ドクター・ハラスメントを扱った報道番組に会員の精神科医が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるものだった」というもの。

医療団体と放送局側が話し合った結果、今後、精神科医療について懇談の場を設けることなどで合意した。

今年度6件目の斡旋解決である。

その他

12月11日に開かれたBPOの評議員会の模様を事務局が説明した。

また、次回の定例委員会を1月20日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上