第76回 – 2007年2月
『紅白歌合戦』に関するNHK回答を基に意見交換
日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』について審議 …など
『紅白歌合戦』に関するNHK回答を基に意見交換
『NHK紅白歌合戦』については、前回委員会で審議し、NHKに対し下記の回答を文書で求め、NHKから2月9日付の回答を受け取った。今委員会では同回答を基に、NHK制作局長の日向英実氏を交え、意見交換をした
〔NHKへの回答のお願い〕
平成19年1月25日
- 今回のパフォーマンスは貴局の<新放送ガイドライン>にある「常に品位と節度を心がけ、視聴者に不快感や苦痛を与える内容、場面は避ける。とりわけ、青少年に及ぼす影響については、慎重な配慮が求められる。」という部分に抵触していないか。
- 今回のパフォーマンスに関して、出演者側から知らされていなかったと発表されているが、チェック体制はどのようになっているのか。
- 視聴者意見にもあるが、生放送であっても、カメラワーク等で表現の工夫ができなかったのか。
〔NHKからの回答〕
平成19年2月9日
BPO放送と青少年に関する委員会
委員長 本田 和子 様
日本放送協会
視聴者意見への回答
- 今回のパフォーマンスは、NHKの紅白歌合戦という舞台にふさわしくない残念なパフォーマンスでした。視聴者のみなさまの期待を損ねてしまい、申し訳なく思っています。番組基準に照らして明確に反するとまでは言えないものの、品位と節度の観点から反省すべき点があり、そうしたことを踏まえて、番組制作にあたるよう指導してまいります。
- 紅白歌合戦のような大がかりな番組では、最終的なカメラリハーサルが極めて重要であり、今回も前日のカメラリハーサルで、本番と同じ衣装、進行で行われるとの認識のもとで、確認作業を進めました。その場で、問題になったボディスーツになることはなく、また、「OZMA」側からも、何も聞かされませんでした。
「OZMA」は、これまでも、たびたびNHKの番組に出演しており、紅白歌合戦の1週間前に放送した歌番組でも、同じ曲を歌いましたが、問題になるような衣装ではありませんでした。NHKでは、放送にふさわしい衣装について、理解してもらっていると考えていました。
こうしたことから、リハーサル通りの衣装で本番も行われると信じていました。1月9日に事務所側から受けた説明では、30日のカメラリハーサルのあとで、よりインパクトを高めるため、ボディスーツの着用を決め、そのことをNHK側に説明をしなかったということでした。
なお、「DJ OZMA」のブログには、担当プロデューサーに対して、「ちゃんと言わなきゃいけないことがあったよね?」と書いてありますが、これについては、「OZMA」側には、舞台での早変わりなどの「イリュージョン」の演出を行うことを本番まで秘密にしておきたいという意向があり、NHKの担当者も承知していました。しかし、チーフ・プロデューサーまで伝わらず、12月19日の曲目発表の場で、チーフ・プロデューサーがイリュージョンを行うことを説明してしまいました。所属の事務所の社長の話では、イリュージョン演出がNHK側から最初に漏れたことに対する不満が「OZMA」側にあり、ブログの内容はこれを指しているということです。
こうした経緯を含め出演者との信頼関係が十分でなかった点を反省しています。また、前日のカメラリハーサルで、本番での衣装について、明確な念押しをしなかった詰めの甘さも反省点と考えています。 - 紅白歌合戦では、大がかりな演出や細かなカメラ割りが複雑に絡み合い、ひとつ手順がずれると、全体が大きく混乱するおそれがあったため、とっさに的確な判断ができませんでした。生放送中に、万が一の不測の事態が起きた場合にどう対応するかについては、これまでも指導してきましたが、今後さらにカメラアングルやサイズを工夫することで避けられるようなマニュアルを考えてまいります。
意見交換の内容は次のとおり(▼はNHKの説明)。
【「国内番組基準」ならびに「新放送ガイドライン」について】
▽今回のパフォーマンスが番組基準にある卑わいなことば、動作に当たらないという認識だが、裸に見えるボディースーツを見て不快で卑わいと感じた人がいるのに卑わいではないという考え方はおかしい。
▽OZMA自身の衣装も卑わいな感じがした。不快か不快でないかは受け手の問題なので、ある一定数の視聴者が不快と感じ電話してきたことは、やはり不快な念を与えたと判断すべきではないか。
▼今回のパフォーマンスについては、『紅白歌合戦』としては相応しくなかったが、「国内番組基準」の”卑わいなことばや動作による表現はしない””人心に不快の念を起こさせるような表現をしない”には当たらない、と考えている。不快の念を感じる人もいれば、感じない人もいる。そうした中で、感じた人がいるというだけで、「国内番組基準」に違反すると決めることは、難しいと思う。表現の自由については、厳格に対応したい。
▽番組の途中で「裸ではなく、ボディースーツを着ています」と釈明していたが、ボディースーツだったらいいのか。
▽NHKの「新放送ガイドライン」には、”常に品位と節度を心がけ”と明記しているが、今回のパフォーマンスが違反には当たらないと考えているのには疑問を感じる。
▼「新放送ガイドライン」は「国内番組基準」を遂行するための行動指針である。放送に至るまでのプロセスについては問題がなく、ガイドラインに抵触しているとは考えていない。しかし、生放送の対応の仕方については課題が残されたと思っている。
【カメラワークや演出について】
▽生番組ではハプニングが起こることはあり得るのに、不測の事態に対処できなかったという制作体制には驚きだ。
▼出演者も多く、メインボーカルが宙釣りのうえ動き回っていたため、衣装を映さないようにして顔のアップだけにすることや、ボディースーツを着ていることがわかったのでロングの客席中心の映像にするという判断に至らなかったため、回避の方法が取れなかった。
▽視聴率を上げるため自分たちの手に負えない演出をしたのに、カメラワークが複雑だったなどと言い訳にしている。
▽今回のような生番組でのハプニングや不測の事態の時にどう対処するかは現場の制作者の感性にかかってくるので、技術の指導だけではなく、日ごろからテレビの表現についての感性を磨くことが必要だ。
▼本番まで公表しないとしていたイリュージョンについて、曲目発表の際に言ってしまったため、OZMA側がもっとインパクトのあるパフォーマンスを考えるようになったと思われる。本番の衣装については、双方が明示的な確認をしていなかったことに原因がある。出演者とのパフォーマンスの確認や生放送における回避の仕方について、今後検討していく必要がある。
【公共放送について】
▽最近の民放テレビは、性的露出度が多くなっている状況だが、公共放送であるNHKは民放とは違う”らしさ”を出してこそ存在意義があるのだからNHKでなければできない番組を作ってほしい。
▽公共性のあるテレビは、送り手の意図だけではなく、受け取った側がどう見るかということにもっと気を使う必要がある。
▼もし紅白をこの先、例えば5年くらい続けるとしたら、どんな番組が相応しいのか議論していきたいと考えている。
日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』について審議
次に、日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』をビデオ視聴のうえ審議、委員からは次のような意見があった。
- 少年が犯罪を起こす第3話では、少年法に守られているかのような作りに疑問を感じた。全体的に”死”を冗談のように扱っている。
- かつてあった時代劇の番組をパロディ化して現代版に作っているようだが、時代劇のほうは一種のテレビ文化を築いたのに、その良さがゆがめられたようで残念だ。
- ドラマとして娯楽のレベルを超えている。レイプシーンなども残虐で、青少年に配慮する放送時間は午後5時から9時までとなっているが、現状では子どもたちも見ている時間帯なので放送には配慮が必要だった。
- ドラマとして作り方が安易に感じるが、企画意図、制作期間などを知りたい。
- 作り方に趣味の悪さがあるが、それほど青少年へ悪影響があるとは思えない。
以上の審議の結果、委員会として当該局に対し、企画意図や制作内容などについて質問し回答を求めることとした。
また、青少年委員会に寄せられている視聴者意見のバラエティー番組といじめとの関連に対する意見について、「バラエティー番組といじめの関連は実証できないが、テレビは子どもにとって重要な情報提供メディアなので、バラエティーの罰ゲームなどが子どもの発達成長権を侵さないようにするため青少年委員会として問題提起していく必要があるのではないか」「テレビが子どもの発達、成長に影響があるという実証が明確に出ていればいいが、大人の娯楽を楽しむ権利との関係を考えると難しい」「本や映画は大人向け、子ども向けと区分けすることができるが、テレビの放送時間帯は切り分けができないのではないか」「民放連では、5時から9時までの時間帯での放送は青少年に配慮するということになっているが、現在の子どもたちの生活スタイルを考えると午後11時までとしてもいい」といった発言があり、今後も委員会で続けて議論することとなった。
中学生モニターについて
2月は16人から、24件の報告が(一人で複数件の報告有)寄せられた。分野別ではドラマが10件と多く、バラエティーと情報番組が5件ずつ、そしてドキュメンタリーが2件、ニュースと番組宣伝について1件ずつだった。
局別ではフジテレビが7件、TBS6件、日本テレビ5件、NHK3件、テレビ朝日2件、テレビ東京1件となっている。
- ドラマでは、先月に引き続き『花より男子2』と『拝啓、父上様』は好評で「前より面白くなった、終わらないで欲しい」、「背景にも役者にもこだわっていて、毎週毎週神楽坂に引き込まれるようだ。親と見ても楽しめる」という意見があった。『李香蘭』にも1件、「見ていて楽しい場面も多かったけれど、時々残酷な戦争のシーンがあった。戦争というのはそういうものなのだと改めて思った」という意見が寄せられた。『華麗なる一族』には2件、「とてもスケールが大きく1クールではもったいない程よい」と好評だが、「髪型は今風で服装もお洒落すぎ、特に”全然大丈夫ですよ”というセリフにはびっくりした」という注文もあった。『和田アキ子殺人事件』にも2件、「笑える場面が多々あり、すごく面白かったが、全部を本格的にドラマ化した方が、現実に戻されなくて良かった」「単なる番宣と思える場面が多くすこし期待はずれだった」などの注文だった。
- バラエティー番組にはすべて1件ずつで、『行列のできる法律相談所』には「勢いがあり見ていて面白いがトークのときに下ネタが多すぎる」、『IQサプリ』には「大好きな番組の一つだが最近のIQは問題が限られてきている」、『リンカーン』にも「内容はとてもいいなーと思ったんですが、罰ゲームが何かを爆発させるというもので危険」など、ほとんどが賛否を併記する意見だった。
- 情報番組にも意見は1件ずつで、慢画家・浦沢直樹さん出演の『プロフェッショナル』は「浦沢さんは楽ばかりしてヒットを出したんじゃないということが強く印象に残った」、『世界一受けたい授業』も「理科が一番楽しく毎回実験には驚かされる」と、好評だった。また『日本アカデミー賞授賞式』には「途中音声が全く入らないというトラブルが起きた。トラブルは仕方ないが、その後の対応をもっと誠意をもって行うべきだ」という注文が寄せられた。
- このほか「プロジェリア」という早期老化症をもつ少女を扱った『サイエンスミステリー』には「明日からの自分の生き方をもっと濃くするためにもっと1日を大切にしようと思った」という感想が寄せられた。また『NEWS ZERO』も「毎日キャスターが変わり興味がわく。特に月曜日は1枚の写真から事件を説明していてあまりNEWSに興味がない私達の歳でも気楽に見られていい」と好評だった。
2月27日に開かれた青少年委員会での委員の意見を列挙する。
- 『世界一受けたい授業』『プロフェショナル』など知的好奇心を満たす番組に結構関心を持っている。番組制作者も中学生がしっかり番組を見ていることを認識してほしい。
- 『IQサプリ』で文字の色が赤くチカチカするという指摘があった、注意深く見ている。
- 『風林火山』での歌舞伎役者の発声が他の人と異なり気になるという指摘や、『華麗なる一族』での昭和が舞台なのに「「全然大丈夫ですよ」という言葉使いに驚いたという指摘は鋭い。
- 『日本アカデミー賞』の音声中断後の対応がまずいという指摘はもっともだ。
- 『あるある…』の事件の影響で、大化の改新を扱った『NHKスペシャル』で偉い先生がしゃべっても嘘っぽく感じた、という意見があった。今の時期だからこういう意識を持って、メディアリテラシーを勉強するのも悪くはないかもしれない。
調査・研究活動について
橋元委員から、2月24日に全6回、36人のインタビュー調査を終了した。これから事前アンケートとインタビュー調査をまとめ、今年の夏ごろを目途に報告書を出す予定である。また、併せて報告会の開催も考えている、との報告があった。