第104回 放送と青少年に関する委員会

第104回 – 2009年9月

視聴者意見について

中学生モニターについて

9月29日に開催した今年度第5回青少年委員会(通算104回)では、7月16日~9月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、情報系2番組とバラエティー1番組を視聴したほか、子ども向けの1番組について審議した。中学生モニター報告の審議のほか、8月に開催された「中学生モニター会議」及び2009年度後期の中学生モニターの決定等について事務局から報告があった。

議事の詳細

日時
2009年9月29日(火) 午後4時30分~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

1.読売テレビ『情報ライブミヤネ屋』

「薬物の恐怖」を喚起するコーナー内で”あぶり”といわれる吸引方法を放送したことについて、「夏休みの子どもが見ている時に、興味を持たせる放送は問題」といった意見が寄せられ、番組を事前視聴の上審議し、委員からは以下の意見が出された。

<委員の主な意見>

  • できるだけ多様な視点からわかりやすく報道しようとの現場の意気込みについては理解できる。
  • 犯罪の種類によっては、手口を示すことで抑止効果があるケースもあるが、薬物の吸引方法を放送する意味はない。
  • どういう文脈で行われたかが大事。その怖さ、深刻さを示すために必要なシーンであれば問題はないが、唐突であれば興味本位と思われても仕方ない。
  • 事件のキーワードとなった”あぶり”について知らせることも報道の役割。

上記のように審議では意見が分かれた。委員会としては、放送局各社に改めて民放連放送基準67条「犯罪の手口を表現する時は、模倣の気持ちを起こさせないように注意する」及び69条「麻薬や覚せい剤などを使用する場面は控え目にし、魅力的に取り扱ってはならない」の趣旨を踏まえて番組制作にあたるよう、「BPO報告」及びホームページに記載することとした。

2.TBS『アッコにおまかせ!』

薬物事件で逮捕・起訴されたタレントの家族の顔写真が画面処理されずに放送されたことについて「子どもの人権を侵害する」といった意見が寄せられ、番組を事前視聴の上審議し、委員からは以下の意見が出された。

<委員の主な意見>

  • 電波の影響力を考えるとあってはならないことであり、家族に対する重大な人権侵害だ。
  • 番組制作に対するスタッフ全体の緊張感があるのか疑問。制作にあたっては、人権に対して極めて慎重であるべき。
  • 放送素材の作成の段階で二重三重のチェック体制があってしかるべきであり、その体制はどうなっていたのか。

以上の意見を踏まえ、委員会としては放送に至った経緯及び制作体制等について回答を求めることになった。上記番組の「局からの回答」については、次回委員会で審議する。

3.フジテレビ『はねるのトびら』

レギュラー出演者の2人のうちどちらが人気がないかを、選挙開票番組形式で放送したことについて、「公開いじめ」「子どもが真似する」等の批判意見が寄せられ、番組を事前視聴の上審議し、委員からは以下の意見が出された。

<委員の主な意見>

  • 特に青少年に悪い影響を与える内容ではないが、47対0という結末は笑うに笑えない部分があった。
  • 番組はある種のパロディー的な作りで、いじめ助長に結びつく内容ではなかった。
  • 最下位になったタレントがもう少しうまく受けてくれたら、視聴者の意見も違ったものになったのでは。

上記審議の結果、委員会として特に問題にする内容ではないと判断した。

4.テレビ朝日『仮面ライダーディケイド』

このシリーズ最終回の放送で、番組の終わりで新たな戦いが始まるが、「続きは12月公開の映画で」という字幕が流れて終わったことについて、「子どもに対する裏切りである」等の批判意見が寄せられたことについて審議し、委員からは以下の意見が出された。

<委員の主な意見>

  • 放送モラルの問題であり、視聴者の信頼を裏切る手法は、テレビの自殺行為とも言える。
  • 本編だと思って見ている子ども達にとって、それが映画の宣伝であり、劇場に足を運ばなければ見られないと分かった時の落胆は大きい。

以上の意見を踏まえ、委員会としては番組制作手法及び視聴者の意見への見解等について回答を求めることになった。上記番組の「局からの回答」については、次回委員会で審議する。

5.一連の薬物事犯報道について

一連の薬物事犯報道について、BPOに多くの意見が寄せられていること及び「青少年の薬物汚染」については、現代の深刻な社会問題であることに鑑み、次回以降の委員会で引き続き多角的に検討することとした。

中学生モニター報告

9月のモニター報告は、中学生モニターを半年間担当して、現在のテレビにどんな感想を持ったか、こんな注文を出したい、こんなところを変えてほしい・やめてほしい、将来こんな番組を作ってほしいなど、率直な意見を書いてもらった。その結果、2009年度前期の担当者の31人中30人から報告が寄せられた。
今回の特徴は、個別の番組についての意見もあったが、全体的に現在の放送に満足していない様子や、現状を変えてほしいという率直で鋭い意見や感想が多く寄せられ、読み応えのある内容になっていた。

【担当委員の所感】

委員会では、8月・9月の「中学生モニター報告」担当委員が、全体的な感想を述べた。 「9月で中学生モニター前期の半年間(1年間のモニターもいるが)が終わり、毎月、意見を送ってくださってありがとう。最初の頃は何となく散漫な意見が多かったが、次第に書くことやモニターという役割に慣れてきて、いろいろ率直な意見が出てくるようになって、おもしろく読ませていただいた」とねぎらいの言葉を述べたい。
特に、モニターを担当する以前と以後では、テレビの見方が変わった、意見を書くために集中してテレビを見るようになった、面白くないものは面白くない、クイズやバラエティー番組が増えて出演者だけで盛り上がっていてつまらないなど、多くのモニターがテレビを批判的に見る目を持つようになったことが印象的だった。
「私の意見が番組の改編に役立ったかも知れない」と書いてきたモニターがあったが、中学生の率直な声が制作者にしっかりと届いてほしいと考え、青少年委員も子どもたちの声がもっと番組制作に反映される方法はないか真剣に考えていきたい。
他の委員からは以下の意見が出された。

  • ひとりのモニターからの「言葉も音楽みたいなものだから、気持ちよく聴きたいので、乱暴で汚い言葉遣いをやめてほしい」との意見に感動した。中学生たちが真剣にテレビと向き合ってくれたことに感謝したい。
  • 奇をてらったり、自分だけが面白い、数字が取れると考えたりしている番組は、総じて制作者の自己満足にすぎない。中学生が考えていることの方がオーソドックスでまともなことなのだから、その感覚を失わないで欲しい。
  • 中学生モニターの声をもっと制作現場に反映させられるような工夫を、今後もいっそう続けていかなければならない。

【全体集計】

テレビの現状について数多く寄せられた意見は、クイズ番組やバラエティー番組が多すぎること、出演している芸能人たちだけで盛り上がって視聴者の気持ちを考えていないこと、言葉遣いが悪かったり下ネタが多すぎたり、うるさいことなどへの批判の声である。
更に、子どもたちに人気のあった『学校へ行こう!』などの視聴者参加型の番組が減ってしまったことに対する不満、人気グループの嵐が出演している番組について「改編されてから主旨が分からなくなった」という声、また「2世タレントにこびている」「食べ物を粗末にしないでほしい」「食事時などの時間帯を考えた内容や発言をしてほしい」という意見もあった。
ドラマ番組では「内容に現実感がない」「アニメなどの焼き直しが多くてつまらない」 という声や、「学校でテレビよりゲームの方が話題になることが多い」という意見もあった。また、15分間、枠を拡大した『ブザー・ビート』や『オルトロスの犬』の最終回に対しては、「CM明けの繰り返しが多い」「時間内に編集する努力をしてほしい」という注文も寄せられた。
報道番組については、放送倫理違反が指摘された『真相報道バンキシャ!』など安易な報道番組制作への批判、芸能人の薬物スキャンダル報道に見られた「情報番組という名ののぞき見主義への批判」や、通販番組が多すぎるので「放送を休止したら」という厳しい声も寄せられた。
次に、将来作ってほしい番組の要望では、『学校へ行こう!』のような中学生や高校生が主役の番組、『サプライズ』『ナニコレ珍百景』『鶴瓶の家族に乾杯』など各地の視聴者が参加できる番組、『世界一受けたい授業』や『飛び出せ!科学くん』などの勉強に役立つ番組などをもっと増やしてほしいという意見や、小・中学生向けのまじめな番組や家族で楽しめる番組、さらにスポーツ番組や人気漫画の映像化作品なども作ってほしいという要望が寄せられた。 また、6月のモニター報告で『週刊!健康カレンダー カラダのキモチ』が改編されてつまらなくなったと書いたが、そのモニター報告がテレビ局に通じたかどうか、再改編されてからは面白さを取り戻したという意見のほか、『パフォー!』や『今夜も生でさだまさし』などの番組をもっと早い時間に放送してほしいという声もあった。
ラジオ番組についても2人から意見が寄せられ、『安住紳一郎の日曜天国』などパーソナリティーとリスナーの関係が身近で、「聴いていて飽きない」「生きる糧になる」「テレビより参加しやすい」という率直な感想が寄せられた。
全体に共通している意見は、中学生が楽しいと思える番組が少ないので、ぜひ中学生や家族で楽しめる番組を企画制作してほしい、まじめな番組を増やしてほしいという強い要望である。そんな中で、NHKニュースが感情的でなく、偏ったコメントがないことなどを理由に、クラスの友人たちも見るようになっているという報告も寄せられた。
そして、中学生モニターを体験した感想として、「真剣にテレビと向き合った」「友人や家族と話し合うようになった」など、貴重な体験ができたという声が多く寄せられ、「中学生モニター」を経験したことがメディア・リテラシーを身につけるきっかけになったという声が印象的だった。
なお、2009年度後期(2009年10月~2010年3月)の中学生モニターの募集にあたり、全国から127人の応募があり、32人(男子15人、女子17人)の新しい中学生モニターが決定した。学年別では、1年生8人、2年生13人、3年生11人である。

第153回 放送と人権等権利に関する委員会

第153回 – 2009年9月

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「派遣法」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「割り箸」事案の審理では「委員会決定」案の内容について検討した。また、「拉致被害者家族からの訴え」事案については本格的な審理に向け、論点の整理を行った。このほか仲介・斡旋解決事案についての報告があった。

議事の詳細

日時
2009年 9月15日(火) 午後3時20分~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、申立人・被申立人からのヒアリング(事情聴取)を個々に行い、これを受けての4回目の審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと盛り込んだ』などの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで3回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などにより審理を続けて来たが、9月15日には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。
ヒアリングではまず申立人の3人が出席、「インタビューの切り貼りなどによる捏造」と「『ひっそりと盛り込んだ』などの表現で、元労働次官と経済学者の2人を個人攻撃した」という2点を中心に主張した。
一方、被申立人のテレビ朝日・朝日放送からは、番組プロデューサーやチーフディレクターら4人が出席した。そして「申立人ら多くの関係者の取材を通じ、多角的に検証し事実を基に放送したもので、インタビューの切り貼りという指摘も当たらず、事実の捏造などは行っていない。また「登録型」がいつの間にか派遣法に盛り込まれた様子を『ひっそりと』と表現したもので、申立人を個人攻撃しているものではなく、論評の範囲内と考える」と主張した。
委員会はヒアリングの後、最終判断の方向付けを協議、「委員会決定」案の作成作業に入ることを決めた。次回委員会ではこの「委員会決定」案について検討される見込み。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

9月1日の起草委員会でまとめられた「委員会決定」案が提示され、審理を行った結果、数カ所にわたって修正を加える必要があるとの結論に達し、再度、次回委員会で「委員会決定」修正案を基に審理を行うこととなった。
この申立ては、東京都在住の勤務医とその家族から、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は、2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。
申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」は既に提出されていたが、前回の委員会の後、「答弁書」に対する申立人側の「反論書」と、「反論書」に対する被申立人側の「再答弁書」が提出され、双方の主張が出揃った。
これを受け、この日の委員会では本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。
「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え 在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また、テレビ局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

8月の苦情概要

8月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・11件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 103件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

事務局から以下の報告が行われた。

  • BPOの各委員会が公表した「見解」や「勧告」の内容について、テレビ・ラジオ会員各社に理解を深めてもらい、日々の放送活動に生かしてもらうことを目的に、新たに「BPO事例研究会」がスタートすることになり、事務局より報告した。 11月26日に第1回が開かれる予定。
  • 次回委員会は10月20日(火)に開かれることになった。

以上

2009年8月に視聴者から寄せられた意見

2009年8月に視聴者から寄せられた意見

衆議院選挙関連報道についての意見と、芸能人の覚せい剤など薬物使用での逮捕報道に関する意見があった。タレントの薬物使用での逮捕報道については、「元アイドル歌手の報道がやりすぎである」「薬物使用を煽っているようだ」という意見が多かった。

衆議院選挙関連報道について、「選挙」というキーワード検索では227件が該当したが、自民党と民主党、あるいはその他の政党によって扱いが違いすぎるという指摘が多かった。「偏向」というキーワードで75件、「公平」では109件該当したが、公職選挙法違反になるのではという指摘も22件あった。

8月に電話・FAX・郵便・EメールでBPOに寄せられた意見は2,134件で、7月と比較し297件増加した。

【視聴者意見のアクセス内訳】

方法: Eメール63%,電話33%,FAX2%,手紙ほか2%
性別: 男性74%,女性22%,不明4%
世代: 30歳代32%,40歳代23%,20歳代20%,50歳代11%,60歳以上11%,10歳代3%

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は1,076件(53局)であった。
この他に、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、52件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 人権に関する審理・斡旋の要請・・・・・・・ 11件
    (個人または直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

8月の視聴者意見については、衆議院選挙関連報道についての意見と、芸能人の覚せい剤など薬物使用での逮捕報道に関する意見で二分した感がある。「選挙」というキーワード検索では227件が該当したが、自民党と民主党、あるいはその他の政党によって扱いが違いすぎるという指摘が多かった。「偏向」というキーワードで75件、「公平」では109件該当したが、公職選挙法違反になるのではという指摘も22件あった。また、選挙の開票速報に関する意見も多く、開票率0%での「当確」速報への意見が多くあった。
一方、タレントの薬物使用での逮捕報道については317件の意見が寄せられたが、「元アイドル歌手の報道がやりすぎである」「薬物使用を煽っているようだ」という意見が多かった。
また、歌手の子どもの写真を映像処理せずに放送した件についても30件の苦情意見が寄せられたが、今月は「人権」というキーワードには70件が該当した。
この他の報道では「裁判員裁判」についての意見が39件あり、特に裁判終了後の記者会見について意見が集中した。また、地上波テレビが党首討論をノーカット放送しなかったことや、インフルエンザ報道への意見も多く寄せられた。具体的な報道姿勢の是非を指摘した「不適切な報道」が114件。より広く「報道のあり方」を論じた意見が214件と、先月よりも増加している。キャスター・コメンテーターの発言への批判意見は相変わ
らず多く、「不適切な発言」検索で79件。「不適格な出演者」検索で89件該当した。
「明成皇后殺害事件」報道に関する意見が169件。チャリティーマラソンのゴールシーンへの意見が53件。チャリティー番組のあり方を問う意見が45件あった。この他、バラエティー番組での「いじめ」に関する意見や、番組宣伝と本編の内容が違うという苦情意見も多く寄せられた。
BPO関連では、「虚偽証言放送決定」「保育園行政代執行決定」についての意見が22件。その勧告を受けた番組の検証番組について26件の意見があった。放送局の視聴者・聴取者対応に関する意見は、今月は44件。ラジオに関する意見は57件。CMについての意見は47件と、いずれも先月より増加している。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は161件で、前月より約40件増加した。
今月は「低俗・モラル」に反するとの批判意見が突出して多く、芸能人の麻薬・覚せい剤問題関連や大型特番に対して集中的に寄せられた。また、バラエティー番組や情報番組の中で、逮捕されたタレントの家族の写真や名前が放送された件に対し、批判的な意見が27件寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 昨夜、民放局で「ニュース速報」が入りましたが、その内容に対して憤りを感じました。俳優が合成麻薬使用で逮捕というニュースでしたが、このような一芸能人が逮捕された事件を「速報」で伝える必要性はあるのでしょうか。本来は大きな自然災害や大事故、政局の大きな節目など、重要度が高く国民全体が早く知るべきニュースが速報されるべきであって、芸能人の麻薬使用での逮捕なんて、はっきり言ってどうでもいいニュースです。
  • 裁判員裁判について、詳しく放送しすぎである。裁判員の年齢、性別、服装や表情などは制度とは全く関係ない。裁判で扱う事件についても、詳細に説明する必要はない。放送が裁判に影響を与える懸念もある。視聴者が裁判に参加しているわけではないのだから、通常の裁判よりも詳しく報道する必要はない。「なぜ、裁判で被告に質問しなかったのか」など、裁判員にプレッシャーを与えるような報道は慎むべきである。制度を「盛り上げよう」とか言いながら、逆に制度の趣旨をねじ曲げるような報道は慎んだほうが良い。
  • 「裁判員裁判」後の記者会見の様子が放送されていた。裁判員が顔出しで出ていたが、「重要な個人のプライバシーは侵害しない」はずの裁判員制度において、個人を特定できてしまうこの記者会見は矛盾していると思う。また、それを放送する放送局も放送局だ。
  • 衆院選関連のテレビ報道がたけなわだが、どこの局も「自民党対民主党の対決」という見方にとらわれ過ぎていると思う。せっかくの機会なのだから、他の政党をはじめ無所属の候補者にもぜひ光を当て、彼らの主張を広く紹介してほしい。
  • 「マニフェスト」という言葉遣いが気になる。わざわざ横文字にする必要があるのか疑問に思う。「政権公約」や「政策公約」などの日本語で表示すればいいのではないか?
  • 「上司にしたくない人」のアンケート結果として、麻生太郎が第1位だったとの放送がありました。公選法に抵触するかどうかは別として、選挙期間中に公共の電波を使用して一候補者のイメージダウンを図ろうとするのは非常識であり問題ではないでしょうか。「言論の自由」「報道の自由」があるのは理解していますが、何を放送してもよいわけではありません。悪意を感じます。
  • 衆議院選挙で民主党の支持率が尻上がりにアップしていることを取り上げ、司会者が「国民はろくにマニフェストも読んでいないのに、流れに乗っかっているだけ。全体の流れに身を任せるのは危険だ」と発言し、他の出演者らもうなずいていた。しかし、国民は彼が言うほど不勉強ではない。一人一人がこれまで以上に関心を持ち、「政治」を自分に直結することとして捉えている。マニフェストも良く読んでいる。国民を愚弄するのもいい加減にして欲しい。
  • 通信社が行った「全国電話世論調査」の結果を基に、テレビ各局の選挙報道では一斉に各政党の予想獲得議席数を報じ始めました。特定の政党に極端に偏った数字が出ると、有権者の揺り戻し効果が起こるのは過去の例からも明らかですが、そもそも視聴者の心理に多大な影響を与えるテレビが、有権者の投票行動に影響を与える「獲得議席予想」を連日報道してよいのでしょうか。少なくとも選挙期間中は、有権者の投票行動に影響を与える獲得議席数の予想は自粛すべきです。まだ投票もしていないのに獲得議席の数字が出るのは、有権者として非常に違和感を覚えますし、メディアの傲慢さを感じます。
  • 先日起きた駿河湾地震で東名高速道路の一部が崩落した。崩落した現場の映像を撮るために、多くの取材陣からカメラアングルが良いと思われる実家の敷地を使わせてほしいという申し入れがあった。実家の茶畑に新芽が出始めた時期だったので新芽が傷つくのではないかという心配も多少はあったが、取材の重要性を考え快く許可した。結局、5日間各局の取材は続いた。しかし、取材が終わった時に「ご迷惑をおかけしました。ありがとうございました」と言って帰ったのは1社だけだった。他のメディアは知らないうちにいなくなっていた。取材陣が去ってから取材場所を見ると、タバコの吸殻やごみなどが落ちていたり、茶畑は踏み潰され新芽は傷ついていた。許可を出したのだから仕方がないのだが、放送局は放送ではもっともらしいことを言っているのだから、それを取材するスタッフにもモラルの向上やマナーの教育をするべきだと思う。
  • 選挙特番の中で、「当選」として開票速報を発表している。しかし、出口調査等、精度の高い調査をしているのは理解できるが、開票速報では「当選」ではなく、あくまで「当選確実」が正しい報道のあり方だと思う。当選・落選は選挙管理委員会が公表するものであり、放送局が決めるものではない。
  • 最近、女性アナウンサーの言葉の乱れが非常に気になる。例えば、「借入金」を「シャクニュウキン」と読んでいたのには驚いた。さらに、都道府県の知事や市町村長を「首長(くびちょう)」と呼ぶことが増えたが、放送でこんな日本語は有り得ないと思う。放送ではもっときれいな日本語を使ってほしい。
  • ニュース番組で犯人や被害者の現在の写真が入手できない場合、手っ取り早く、学校の卒業アルバムなどの写真が多用されています。中学や高校時代の写真まで使われることがあります。しかし、社会人になれば、数年でもかなり容姿も変わります。それなのに、10年以上も前の写真まで平然と使われているので、写真の人物が被害者なのか加害者なのか混乱してしまいます。「3年以上経過した卒業アルバム写真は使用禁止」などの規定を設けるべきです。

【番組全般、その他】

  • 都市型水害の映像を放送し、「半地下の家に水が溜まったら、ドアは開くのか」という実験をスタジオで行っていました。我が家がそういう構造のため、真剣に見ていました。ところが実験を担当した芸人が、ドア以外のところを開けようと何度もボケて、一向にドアを開けようとしませんでした。これには、真剣に見ていた私は本当に腹が立ちました。人命がかかっていることを検証することを、この芸人は一体どう考えているのでしょうか。最後には一応ドアを開けようとしましたが、そういう経緯があるので、本当にドアが開かないのか、それとも演出なのか、いまいち信用できないまま、モヤモヤした気持ちで見終わりました。こういう人命に関わるテーマをお笑いのネタと同じ感覚で番組を制作しているなら、こんなニュース番組はいりません。
  • 公園などに若者がたむろするのをやめさせるために「若い人にしか聞き取れない周波数の不快音」を流す試みが始まっているが、スタジオ内で実際にその 「音」を流し、出演者が聞こえるかどうかを試していた。すると、「音」が聞こえた者は「若いということが証明された」と大はしゃぎしていた。中には中年の出演者で「音」を聞き取れた者もいて、「若い証拠だ!」などと大いに盛り上がっていた。これではまるで「不快音」を利用して「若さの証明」をもらっているようなものだ。「若者を寄せ付けない」どころか、かえって番組を真似て「不快音」を試しに公園に行くことが若者の間で流行るのではないか?番組が率先して、それをそそのかしているように思えた。
  • 東京や広島の街中で、通りかかった若い女性に芸能人らの写真を見せて「抱かれるなら誰が良いか?」という質問をしていた。周りを多くの人達が行き交うようなところで、そうした破廉恥な質問をする神経が常識では理解できない。あまりに低俗である。
  • 民放局では広島平和記念式典を中継していない上に、言及すらしない。何か重要なニュースがあるならまだしも、芸能人のどうでもよい話題を流していた。出演者に至っては黙とうもしない。オバマ大統領の演説等で核廃絶の気運が高まっている中、この様な番組編成はいかがなものか。民放全局が、少なくとも黙とうする1分間を含めた前後合わせて5分程度の時間は中継を入れて、番組出演者を含めて全員で黙とうする程度のことはやっても良いのではなかろうか。
  • 男女コンビのお笑い芸人が出演し、その女性の「ダイエット企画」ということで、富士山に登っていた。所持品は500ミリリットルのペットボトル2本とタオル2本。女性の服装は豚の着ぐるみで、男性はスーツにネクタイだった。富士山は標高3000メートル以上もある高山なのに、あまりに山登りをバカにしているのではないか。登っている途中に、女性が「着ぐるみが暑い」と言って頭の部分を脱ぎ捨てていたが、当たり前だ。あんな格好では、登山する際に重要な「体温調節」が出来ないではないか。あんな放送をするから、山をナメてかかって登山し、その結果として遭難する者が出たりするのだ。
  • “女性”タレントが丸坊主をかけてダイエットをする企画があった。その番組宣伝の映像は、タレントが体重計に乗り、目標体重を切れず悲鳴を上げる様子と、その後に悲鳴と共にバリカンで頭を剃る映像のアップでした。ここまででも十分に「ダイエット失敗!」「彼女は番組で丸坊主に違いない!」という期待を持たせました。さらに、放送当日の昼の生番組に、わざわざ本人がカツラをつけて登場して「絶対とらないで!」などと演技して、丸坊主の「期待」を「確信」にかえさせました。しかし、夜の番組ではダイエット成功でした。番宣で丸刈りにしていた映像は番組のADのものでした。これも番組宣伝で視聴者をだますためのものだと思います。これは完全に「詐欺」です。視聴者を馬鹿にした放送はやめてもらいたい。
  • 狭い水槽に天敵同士であるタコとウツボとエビを入れて、プロレスのような解説を入れながら格闘技のショー扱いで紹介していた。とても残酷なシーンが、およそ5分間放送されていた。その後に、これとは別に「タコとカニの格闘」と題して格闘シーンを紹介していた。本来の自然の様子をとらえたシーンであったり、または闘牛のような伝統文化ならば納得出来るが、動物達の扱いがあまりにも安易すぎる。
  • BPOの勧告を受け局が謝罪したようだが、ちょっと待ってほしい。謝罪すれば許されるのか?捏造というのは、他の業界なら食品偽装であったり、政界なら虚偽献金のようなものだ。一般企業や政界は不祥事が起きればマスコミに徹底的に追及され、場合によっては倒産や辞任まで追い込まれる。ところがテレビ業界は「すみません。今後の番組作りに生かします」の一言で許されてしまう。どう見てもおかしいだろう。
  • 芸能人の薬物使用がなくなりませんが、タレントを使うテレビ局は何も対策を施さなくてよいのでしょうか。薬物撲滅に対し、テレビ局は貢献できないのでしょうか。オリンピックなどの競技大会では尿検査は当たり前になりました。野球、相撲も同様です。テレビ局でタレントを使う時に、尿検査を義務付け、拒否するタレントは出演不可能とするくらいの強い対応が必要ではないでしょうか。
  • 兵庫県に台風が直撃し、多大な被害に遭った。家の中の物は全て水浸しでだめになり、流されたゴミなどが堆積し、未だに片付けが終わらない。その中で、町のローカルテレビが繰り返し町中の家を訪れてインタビューし、被害状況、援助の状況を放送して町民に伝えている。地方のテレビ番組の作りは、低予算でやれることも限られており、構成も見栄えが劣るかも知れない。しかし、「こういう事実を淡々と映し続けて、どう考えるかは視聴者にまかせる」という番組があるべきではないか?ただ、現場のカメラに映し出される生の映像を送り続け、現場の様子を多くの人に知ってもらう。それこそがテレビの役目であり、今後、メディアとして残っていくために必要な役割ではないかと思う。
  • 司会者が客席に向かって「台風来ましたね!」と言うと、客席の人々が明るい声で「そうですね!」と返していた。台風被害で困っている人がたくさんいるというのに、こんな明るい調子で台風について放送されることに違和感を覚える。
  • 私は、現在、薬物中毒の患者に接する仕事をしている。女性タレントの覚せい剤関連報道について、司会者の興味本位な質問と、それにバカ正直に何でも答える元厚労省麻薬取締り担当官のやりとりに腹が立った。入手経路・薬物消失日数・具体的な「あぶり」「吸引」の方法を丁寧に繰り返し教えて何になるのか。夏休みに青少年が興味本位で使うことにつながらないか。浅はかすぎる。本来報道すべきは、薬物の怖さではないか。
  • テレビを見ていると、番組の最後に出演者や作者、撮影協力などを表示したテロップが非常に早い速度で、それも、通常では読むことができないくらいの速度で横方向に流れているのが見受けられます。この様なテロップを見ると、乗り物酔いのような状態になってしまうことがあります。通常では読めないような速度で流すことは、いかがなものでしょうか?何らかの基準を設けるべきだと考えます。
  • 「『スポーツ選手が流す涙』など、男性の涙は是か非か?」というコーナーで、野生動物を例に挙げて説明していた。動物園の飼育員の方が「飢えた野生ライオンが数日振りに獲物を捕った時、うれしさのあまり涙を流すことがある」と話していた。その際、背景には「雄ライオン」が餌の周りを歓喜のあまり歩き回る映像が流された。テーマが「男の涙」だったのでイメージで雄ライオンの画像を選んだのであろう。しかし、「ライオンはメスしか捕食をしない」というのは常識である。つまり飼育員の話はもともと「男の涙」とは無関係だったわけで、野生ライオンの生態を「男の涙」の例として使ったこと自体が無理だったと言える。しかし、テレビ局の社員が無知なのか、「雄ライオン」の映像を背景に使ってしまったのだ。このような間違ったことを放送されては困る。
  • テレビの画面には「間もなく登場!」だとか「このあとすぐ!」という文字がずっと出ている。競技の開始を待っていたが、結局、競技が始まったのは数時間後だった。「間もなく」や「このあとすぐ」で数時間も引っ張るのはどうかと思う。また「今夜決戦!」と銘打って、実際は朝の4時過ぎであった。これも「今夜」とは言えないと思う。このような表現には、ある程度の制限をつけてもよいのではないかと思う。
  • 各局が日曜日の早朝などに自局の検証番組を放送しているが、内容が物足りない。真剣に検証する姿勢がないのではないかと思う。また、視聴者から寄せられた意見に対して、テレビ局はもっと耳を傾け、真摯に受け止めるべきだ。
  • 日韓の歴史問題に関する検証として、今から114年前に韓国でおきた皇后暗殺事件について取り上げられていた。その内容は、事件関係者の謝罪と事件内容の検証だったが、事実関係の検証が一切なされていない上、歴史的裏付けも日本の専門家の意見はなく、韓国の専門家の意見だけが取り上げられていた。証言者はただ一人だけ、しかも残された証拠も後に本人が作ったもので、それが過去に確かに実在したかどうかの証明もない。そんな内容の番組だった。これは虚偽報道に当たるのではないだろうか。
  • 国の特別天然記念物の「オオサンショウウオ」を追いかけ回し、網で捕獲していた。「特別の許可を得ています」というテロップを入れて放送していたが、この放送は、どんな意図があるのだろうか?お笑い芸人やスタッフが川に踏み込み、興味本位でこのような暴挙を行うとはどういうことなのか。この番組を見た子どもや心ない人達が「オオサンショウウオ」を捕獲したり、いたずらをしに行くことを誘発するとしか思えない。天然記念物である生物をこんなふうに扱ってもよいという許可とは、いったい誰が出したものなのかを知りたい。社会の公器ともいえるテレビとは、こんなにも見識がないのか?
  • タレントの好き嫌いを当てるクイズで、答えが「こうや豆腐」だった。しかし、嫌いになった時の理由の表現が不適切だと思う。こうや豆腐を「しぼったぞうきん」とコメントし、出演者が指先でつまんで絞ってみせた。過去には「汗取りのスポンジ」という表現だったこともある。私は、「こうや豆腐」のメーカーの社員だが、食品を素手でつかみ、「汗取りのスポンジ」だとか「絞ったぞうきん」などと表現するのはひどすぎないか?これは、こうや豆腐のような加工品にとっては非常にネガティブな表現であり、影響も大きく、何よりも作り手を侮辱しているものであると思う。
  • テレビでチャリティー募金の場面が何度も映った。著名なタレントさんが一生懸命ボランティアとして握手をしたりして、視聴者の募金に感謝している場面だ。それを見て募金をしようと思い、娘と会場に行ったのだが、大行列ができていて3時間待ちだった。それでも「列に並んで募金をすれば有名タレントさんに会える」と信じて並んで募金を行った。ところが、テレビに映っていない場面では募金場所にはスタッフしかおらず、テレビに映っていた有名タレントは、ただの”客寄せ”であることに気づかされた。尊い募金という活動が絡んでいる以上、テレビ画面に映る場面と実際とが全然違うというのは「やらせ」以外の何ものでもないと思う。「募金に来られても、タレントさんに会えるとは限りません」とテレビ画面に断りを入れるとか、そうでなければ、テレビと同じようにタレントを常に立たせておくべきではないかと思う。
  • 毎年「チャリティーマラソン」を放送しているが、今年は126kmという距離だった。毎年距離が伸びているが、これは長過ぎる。こんな距離をたった一日で走り切れば、関節を痛めてしまうのは明らかだ。視聴者の感動を煽りたい気持ちは分かるが、やり過ぎだと思う。
  • 高校野球の中継で、勝ったチームのことばかりが放送され、負けたチームのことに関しては一切放送がありませんでした。しかし、勝ち負けに関係なく、出場校全てに取り上げられる権利があると思います。勝ったチームには次があります。せめて、負けたチームの想いを、私たちに伝えるような番組づくりをして下さい。
  • ゲストの女性が番組冒頭で「今日はバイクで来ました。この番組終了後にツーリングに出かけます」と言っていた。ところが、彼女はお土産として「お酒」を持ってきていて、番組中に出演者全員で飲んでいた。だが、彼女は冒頭で「番組終了後、ツーリングに行く」と言っていたではないか?スタジオでお酒を飲んだら”飲酒運転”になるのではないかと思い、局に電話をしたところ「お酒の酔いがさめてから行けば問題ない」という答えがあった。しかし、酔いがさめるさめないではなく、番組内で「ツーリングに行く」と言いながら酒を飲むことがおかしいのではないか?
  • 「芸能界の薬物汚染」を取り上げている最中、「現場のマンションに出入りする有名人」をピー音処理で暴露していました。しかし、放送上はピー音で消していても、スタジオにいる出演者や観客に聞こえているのは如何かと思います。これは放送倫理に抵触するのではないですか。
  • 先輩芸人が若手芸人の自宅へ”いきなり”押し掛けて行き、好き勝手なことをして泊らせてもらうという企画だ。しかし、そのやり方が強要・脅迫のようであり、一種のパワハラである。若手芸人に自宅へ連れて行かせる交渉の際は、バリカンを持って「髪の毛を刈らせるか家に連れていくか、どちらかにしろ」と強要し、嫌がっているのに本当に毛を刈ったりする。自宅に行っても飲み食いし放題であり、勝手に高額な商品を注文したりと、傍若無人の振る舞いをしている。事前に納得の上なのか分からないが、そうであっても行き過ぎた内容だと思う。
  • 富山県の立山から生中継していたが、タレントの服装が気になった。さすがに登山靴は履いていたが、上は薄着のカーディガンのようなものだった。先月、北海道大雪山系で多数の死者を出す遭難事故があったばかりである。いくら夏山でケーブルカーで行ける場所とはいえ、不用意な服装ではないか。軽装登山の危険性をもっと教えるべき時に、不適切だと思う。
  • 美容整形の特集だった。興味を持って見ていたのだが、ベストワンに選ばれた「顔の皮膚のたるみをリフトアップする方法」に疑問を感じた。「頭蓋骨に3ミリ程のチタンのボルトを固定し、頭皮に糸を通して引っ掛ける」というものだった。脳外科のスペシャリストが「安全で確実」と紹介していたが、交通事故に遭ったりして、緊急にMRI(核磁気共鳴画像法)を撮る必要が生じた時に困るのではないだろうか。番組ではそうした説明が一切なかったが、不親切だと思う。
  • 私は「発達障害」を患っている者です。「発達障害」という病気はなかなか周囲に理解されず、就職などに際して不当な差別を受けています。以前、殺人事件の報道の際に当事者が「発達障害者」であったと伝えられました。しかし、事件と障害との因果関係が証明されていないのにそのように報道されたため、我々にとって以前にも増して辛い状況になりました。皆、自分が発達障害者であることをひた隠すようになったのです。この状態を打ち破るためには、「『発達障害』とはどういう病気なのか」ということを放送で取り上げて頂き、世間の皆様に知って頂くのが一番だと思います。ぜひ各局で特集を組んで我々の病気について正しい認識を広めて下さい。
  • 「通販番組」ですが、内容が信用できないものが多いです。たとえばダイエットサプリで「飲むだけで10日で8キロやせた」とか「1ヵ月で13キロやせた人もいる」という商品を販売しています。また、「1週間に1度塗るだけで体臭を100%抑えるクリーム」や「紫外線による水虫治療器」などなどです。「個人差はありますが」と言えば、なんでもOKなのでしょうか。
  • 感動のドキュメンタリー番組だと思い最後まで見たら「健康飲料」の通信販売の番組だった。これでは感動の苦労話も嘘に見えてくる。私は、最後に落とし穴に落とされたような不愉快な気持ちになった。通販番組なら、最初から通販と分かるように画面に表示すべきだ。

【CM】

  • 政党のCMに疑問を感じている。30秒以上の長編CMがゴールデン・プライムの提供枠にまで進出している。テレビは本来政党の批判をするべき立場であるはずだ。そのテレビが逆に政党からお金をもらってCMを放送していては、その批判の説得力が欠けてしまう。政治的に中立・公平でなければならないテレビという観点からも疑問に思う。
  • 最近「時報を兼ねた政党のCM」が1時間ごとに放送されるので、聞いていてとても不快である。党の代表の肉声で「**党は皆様のために尽くします~云々。**党が10時ちょうどをお知らせします」という具合だ。一般人の生活のリズムの目安となる「時報」は、局のアナウンサーが知らせるべきであり、特定の政党がお知らせするなどもってのほかだ。
  • 生命保険のCMだが、大変心が痛む。ガンを克服した人の体験談を感動的に伝えようとしているが、世間には志半ばで克服できなかった家族もいる。その家族はこのCMが流れる度に、苦しみに苦しみ抜いた本人を思い出す。そして「なぜ、克服できたのが、私たちの家族ではなかったのだろう」と思ってしまう。テレビCMを見て、なんとも言えない気分になる。ここ数年、重病克服を感動的に扱うものが増えているが、いかがなものかと思う。「ドラマで描けるようなキレイなことだけではない」というのは、実際に体験した人間にしか分からない。そのようなことを、CMで軽く扱わないでいただきたい。

【BPOへの意見】

  • BPO放送倫理検証委員会が出した勧告には、「本件放送を放送した系列ネットワークと同等の規模において全国放送すべきである」とあるが、放送時間については一切触れられていない。検証番組を本編の通常放送時刻に放送するよう、BPOから勧告していただきたい。
  • 最近、「僕、ラジオです。青少年に良くない番組、放送してないですよね…」という呼びかけ広告を聞く。その最後に「BPO」と言うのだが、この「BPO」だけでは、何のことだか全く分からない。せめて、日本語で「放送倫理・番組向上機構」と言うことはできないだろうか?

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 元麻薬捜査の専門家を招いて、覚せい剤や麻薬について映像やボードを使って、種類・使い方・入手方法・値段など、普通の人はおよそ知らなくてもいいようなことを細かく解説していた。覚せい剤については危険性を伝えるだけで十分なのに、やりすぎではないか。まして、今は夏休みなので若い人もこの番組を見ていると思う。テレビが若者に与える影響を考えるべきだ。
  • 逮捕されたタレントのことを放送しすぎている。有名人が犯罪を起こすと、事件とは関係のない私生活のことをしつこく放送するが、今日の放送は本人を破滅に追い込むような内容だった。番組で取り上げるのなら「**が事件を起こしました」とタレント本人について伝え、残り半分は麻薬や覚せい剤の怖さなどを放送し、危機感を伝えてほしいと思う。今の放送は、ただ青少年に興味を与えているだけと感じる。
  • 芸能人の覚せい剤事件ばかり、いつまで放送を続けるのか。夏休みの今の時期、子どもたちもテレビを見る機会が多くなっている。「麻薬」の話題ばかり放送しないでほしい。もういい加減にしてほしい。
  • 放送時間内に、マラソンでランナーがゴールすることができなかった。テロップには「この後の番組で放送する」旨の告知があった。しかし、待てど暮らせど一向に放送されない。放送しないならば、そんなテロップを出さないで欲しい。子どもが信じて待っているのに可哀想だ。
  • 24時間マラソンを放送していたが、21時までの放送時間内にゴールできなかった。そのため「次の番組でゴールのライブ映像を流す」と言っていたが、結局1時間くらい後に、21時12分にゴールした時の録画映像を2分ほど流しただけだった。これは、視聴者の期待感を煽って次の番組の視聴率を稼いでいたことになる。今回走ったランナーには子どもたちのファンも多い。小さな心についたガッカリ感を思うと、いたたまれなくなってしまう。
  • 子ども向けの特撮番組で、最終回であるにもかかわらず物語の途中で終わり、結末は12月公開の劇場映画版に続くとのことだった。謎だったことは謎のままで終わってしまった。少なくとも一般視聴者が思い浮かべる「最終回」とは、かけ離れていたと言わざるを得ない。基本的には子ども番組なのに、番組自体が「嘘」をついたことになるのではないか。

【人権について】

  • 覚せい剤で逮捕されたタレントの話題で、一家の家族写真が公開されたが、小学生の長男の顔がモザイクなしで映された。これは、未成年者に対する重大な人権侵害だと思う。

【性的表現について】

  • 生放送の番組で、声変わりもしていないような年頃の少年が100人近く上半身裸になって、シャワーに濡れながらテレビに出ていた。児童ポルノ法があれだけ騒がれているのに何を考えているのか。前半は普通に歌っていたのに、後半、突然小学生や中学生の男子が上半身裸になって歌い踊って、本当に不愉快だった。
  • 番組(アニメ)自体は面白いと思うが、この時間帯は小学生の子どもも見る時間なので、親としては下ネタなどが多いと困る。そういう時は途中で切ってしまうが、「ラブホテル」とか「マスターベーション」という言葉を同じように言ってみたりするので、どう対応していいか困ってしまう。この時間帯に放送するのであれば、少し配慮願いたい。

【言葉について】

  • テレビでは「刺青」のかわりに「タトゥー」という英語を多用している。この言い方は、刺青という言葉と比較して、非常に軽く感じられる。そのため、若年層の人はかっこいい、ファッションの一部などと軽く考えるのではないか。その軽さの延長線上に、大麻・麻薬・覚せい剤などがあるのではないか。マスコミはその影響力の大きさを十分考慮し、表現に注意してもらいたい。
  • 最近、各局で万引きについて報道されているが、どうやら、万引きをする青少年には「ゲーム感覚」で万引きをする傾向があるようだ。となると、「万引き」という言葉ではいまいち罪の重さが伝わらないと思う。だから報道では「窃盗」とか「盗み」という言葉を使うようにした方がいい。「物を盗む行為はよくないことだ」と、青少年にしっかり伝わるようにすべきだ。

【非科学的な事柄について】

  • 血液型がA型とB型の一般人にリレー方式でインタビューをし、交互に相手側の気に入らない点を言い合うという内容で、互いの血液型に悪印象を与え合う酷いものであった。生放送ゆえの時間不足からか、スタジオの司会者や出演者からもほとんどフォローがなく、結果的にただ世間の偏見を強めたいがために企画されたかのような有様であった。BPOから「血液型別の偏見を助長する内容の放送は自重するように」という要望が出されていたはずだが、それをどう解釈したらあの内容になるのか非常に疑問だ。

【危険行為について】

  • 出演者とスタッフに対するクイズ企画だったが、クイズが不正解だった場合、一部のスタッフに対して「酒の一気飲み」を科していた。決して強制的ではなかったようだが、この番組は主に若年層を対象にしているだけに気になった。飲酒についての知識の乏しい若年層に対して一気飲みという行為を肯定し、しかも、罰ゲームとして助長するものである。社会の公器としての放送番組にとって不適切な演出であると考える。

【要望・提言】

  • ゲストコメンテーターが一連の芸能人の麻薬騒動について、「今、夏休みで子どもたちがテレビを見る機会も増えているのに、連日の報道の仕方には問題がある。マスコミはゴシップ的に取り上げるのではなく、『麻薬の恐ろしさ』を伝え、今後いかにして『麻薬から子どもたちを守るか』といった『対策』を放送していくべきだ」と発言していた。まさしくその通りだ。テレビで言い辛いであろうことをよくぞ言ったと思う。この番組だけではないが、マスコミ自らが今回の騒動の放送姿勢についてきちんと反省をするべきだ。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 6月に視聴者から寄せられた意見で、「子どもが見ている時間帯にパチンコのCMが多すぎる。パチンコ以外でも、競馬、宝くじもギャンブルである。ギャンブルを推奨するようなCMは放送すべきでない」とあるが、偏見だ。競馬はパチンコとは違う。競馬は乗馬と同じく人と動物が協力し合うスポーツでもある。馬に携わったことのない人の偏った価値観でものが言われている。

【CMについて】

  • パチンコのCMは一切禁止するべきだ。パチンコは賭博であり、未成年者ができないよう規制されている。テレビCMが禁止されても、問題がないのではないか。

第29回 放送倫理検証委員会

第29回 – 2009年9月

バラエティー番組の問題点について

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』 …など

第29回放送倫理検証委員会は9月11日に開催された。
前回、審議入りしたバラエティー番組の問題点に関して、担当委員が提出した決定文の原案について議論した。全体の構成や結論は、ほぼ了解点に達したが、若干の手直しが必要であるので、改訂案をまず担当委員が作成し、その改訂案について各委員の意見を聞いた上で決定文を完成させることにした。
『真相報道バンキシャ!』については、8月24日に日本テレビが放送した検証番組に対する意見交換を行った。問題点がいくつか指摘されたが、番組は「勧告」の内容に従って制作されていると認められるので、この検証番組の放送により委員会の「勧告」は履行されていると了承した。
女性を殺害したとされる容疑者が護送される航空機内で、客室乗務員の制止を聞かずに取材が行われた事案。審議には入らないが、さまざまな意見が出されたのでその要点を「BPO報告」とBPOホームページに明記し、関係各局に機内取材のあり方について検討を促すことにした。

議事の詳細

日時
2009年 9月11日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる放送倫理上の問題点については、7月17日に開催された臨時委員会で審議入りを決めた。そのときに議論した内容を骨子に、担当委員から決定文案が提出された。全体の構成や結論については、原則的に了解点に達したが、表現については全面的に改める必要があるとの意見が大半を占めた。引き続き担当委員が改訂案を作成し、更に各委員の意見を聞いた上で修正作業を行い、決定文が完成され次第速やかに通知・公表すべきであるという点で一致した。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組にはエスプリ、ユーモア、発想の大胆さ、面白さがある。形を変え、姿を変え、出演者を変えて、いろいろなアイデアを生みだして今日まで生き続け、しかもどんどん広がってきた。そのエネルギーを評価しなければいけない。
  • バラエティー番組の歴史的な経過を書いておくことが、すなわち「バラエティーの価値は新しいものを作り出すことにある」という基礎的定義になってくる。
  • 何も定義する必要はない。歴史的にはこのような形でバラエティー番組が展開されてきたが、その中で、今、問題になりうる要素は何かを考えたのか、ということが示せればそれでいい。
  • バラエティーが、例えば報道番組や教養番組と混ざり合う時に、バラエティー的な目的と、報道・教養的な目的とがどこかでぶつかる。その時にバラエティー的な目的を優先させて報道的な事実に対する扱い方を損なうと、問題が発生する。
  • 報道問題の軸は客観性や公正さだ。それに対して娯楽番組を作るときは表現の自由だ。「あなたたちがしっかりしてくれないと憲法21条が危ないですよ」といいたい。
  • 検討した番組資料から言えるのは、テレビ局の責任体制の空洞化と事後対応が全く機械的にしか行われていないこと、それから、視聴者や関係当事者による指摘があってはじめて問題が明らかになったこと-の3点だ。
  • バラエティー番組共通の問題として、かつての時代と比べてメディア環境が変わり、経済的な圧迫が強くなっているけれど、制作者はお金がないならないなりに努力しようとするはずだ。しかし現実は、知性とか感性とかエスプリの感覚が劣化しているように思われる。
  • 番組をつくる当事者自体が試みとして、何でも自由にやるというのは、番組向上の基本だ。バラエティー番組というのは非常にポジティブな価値があって、正にテレビの原点であるということはきちんと言うべきだ。

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』

日本テレビは、8月23日の『バンキシャ!』枠内後半の26分30秒間と、翌24日0時50分からの特別番組(38分間)で検証番組を放送した(検証結果の報告書の提出とホームページへの公表も実行されている)。各委員が事前に配付された検証番組を視聴した上で意見交換が行われた。その結果、「勧告」の内容を踏まえ、それに沿って構成されており、委員会はこの検証番組を「勧告」の履行として了承することにした。

<主な委員の意見>

  • 放送日が予定より1週間延びた理由と、ほぼ同様の内容を2回に分けて放送した理由は何だったのか。
  • いろいろな不祥事があると、責任者が並んで立って頭を下げて謝るが、あれは何なんだろう。検証番組の場合は、あの場面は要らない。
  • 勧告書は、テレビ的演出論についても言っているが、検証番組ではそれについてふれられていなかった。むしろそちらのほうが大事だと思う。
  • 社員と外部のディレクターの2人だけは顔を写さない映像にし、ほかの人たちは実名だった。あの違いは、視聴者に対してあの2人がすごくいけないことをしたかのような印象を与えてしまう。
  • こうなった原因はこれだ、そうしなければよかった、という反省はされている。しかし、なぜちゃんと取材をしなかったのか、なぜ上と下の間の、また現場と本社との間のコミュニケーションが上手くいかなかったか、が抜けているので検証とはいえない。
  • この「なぜ」の部分はヒアリングのときにも聞いたが、やはりきちんとした答えはない。取材不足になったのは情報提供者を保護しなければならない、の一点張りだ。
  • 放送の不祥事は放送でかえすべきだ。つまり検証番組を促進するという意味で最大限に評価したい。
  • いわゆる”検証番組”のパターンができてしまったという感じがする。みんなで頭を下げて、ここは本来やるべきことができませんでした、というふうに中身がなくなってどんどん形式化していくと思う。何か新聞の謝罪広告みたいだ。
  • 委員会の意見書を公表したときの記者会見時の映像が多すぎて、非常に違和感がある。何でそれに寄りかかってこの番組を作ったのだろうか。自分たちの言葉による検証番組とはいえない。
  • 一応、それなりに意思が表れているけど、何か「やりましたよ」というアリバイ作りみたいなものを感じた。例えば訂正放送について今後検討すると言うけれど、今回はあそこまで指摘されたのだから、「私たちはこのような訂正放送とすべきでした」といったことがあるのかなと思ったが、全くなかった。
  • 講義形式の研修などをやっても効果がないというのははっきりしているのに、どうしてああいうものしか思いつかないのだろうか。
  • 『バンキシャ!』のスタッフが全員集まって頭を下げるよりかは、あの30人、一人ひとりの生の声を流したほうがよかった。それでうまく構成していけばよいものができたと思う。
  • ともあれ、「勧告」に従って検証番組を制作し、それを放送した事実は高く評価するに値する。委員個々人の感想はいろいろあるだろうが、委員会としてはそのことをきちんと認める必要があるし、それで十分なのではないか。

容疑者が護送される航空機内における取材について

千葉で女性を殺害し、その娘を連れて逃亡した容疑者の男が沖縄で逮捕され、航空機で東京に護送される機内の模様がテレビ3社により取材、放送された。機内の取材は、機長の許可を受け、客室乗務員の指示に従って行うのが基本ルールである。ところがある局のニュースは、客室乗務員から「他のお客様の迷惑になるので、お席にお戻りください」と度重なる注意が行われたが、それを無視して取材が続行されたことが分かる内容の放送であった。この放送に対して、視聴者から多数の苦情が寄せられた。本事案に関しては当該3社から報告書を求め、それをもとに討議した。

<主な委員の意見>

  • ある報告書には「(客室乗務員から)口頭で言われただけで、機内アナウンスされたことはなく、同行する警察官やほかの乗客からも抗議や注意はなかった」と書かれている。これで取材側のエクスキューズになると思っているのだろうか。
  • 容疑者を取材している記者やカメラマンを単に非難するよりも、あの映像を見たときに機内でこんなことをしていいのかと、むしろそちらのほうに疑問を感じた。つまり、マナーの問題ではなく法律に触れる問題ではないのかということだ。そういう縛りがかからないかぎり、プロとしては取材するだろうが…
  • 客室乗務員に注意されても撮影を続行できるのは、そこまでしても報道する価値がある取材対象だという場合でなければ正当化されないと思う。
  • 客室乗務員がやめてくださいというような深刻な事態が起きていたのかどうかは、この映像からだけでは判断できない。それを判断したのは取材者であり、その姿勢をどう見るかだ。
  • 取材はしかたないとしても、その映像をあとでどう放送するかは、場合によっては人権問題にも関わってくると思う。今回の映像を見た感じでは、あれを流してはいけないというようなものではなかった。
  • 報道を呼び寄せたのは捜査側ではないのか。であるのならば、この場合モノを申すとすれば、放送局に言うべきなのか、警察に言うべきなのか、どちらなのか。
  • 客室乗務員の注意を無視する機内の映像も、その後の高速道路の追跡取材の生中継も、放送する側は重大事の貴重な映像であるかのように扱っているが、本当にそうなのか。

討議の結果、審議入りするまでの事案ではないが、各委員の意見を「BPO報告」とBPOのホームページに明記することにより、機内取材のあり方について各局に再検討を促すことにした。

以上