第218回 – 2015年3月
佐村河内氏事案2件の審理
大阪府議事案の審理…など
佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した。また「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案を審理し、「委員会決定」案を了承して通知・公表を4月に行うことを決めた。
議事の詳細
- 日時
- 2015年3月17日(火)午後4時00分~6時55分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.謝罪会見報道事案の審理
2.大喜利・バラエティー番組事案の審理
3.大阪府議事案(TBSラジオ)の審理
4.その他 - 出席者
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三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員
1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理
審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では、申立人の聴覚障害と診断書について、その経緯や局側の取材と本件放送での伝え方、申立人の主張等を整理した事務局資料を配付した。また、これらの点が、放送倫理検証委員会が3月6日に公表した「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」でも論じられているため、関連部分の記述内容を参照した。
2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理
審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、論点の取りまとめに向けて担当委員が原案を作成し、本件放送の公共性・公益性等をめぐって議論した。
3.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理
対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通信アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として申し立てたもの。
この日の委員会では、第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、一部表現、字句を修正したうえで最終的に了承され、「委員会決定」の通知・公表を2015年4月に行うことを決めた。
4.その他
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2月24日に委員会が高松で開いた系列別意見交換会について、事務局から報告した。
(詳細はこちら) -
「散骨場計画報道への申立て」事案の委員会決定について当該局の静岡放送(SBS)で3月3日に研修会が開かれ、その概要を事務局が報告した。研修会には委員会から三宅弘委員長と起草担当の坂井眞委員長代行、大石芳野委員の3人、同社からは報道・編成・制作など社員・スタッフら93人が出席した。3委員が同事案に関する「委員会決定」や委員長談話「顔なしインタビュー等についての要望」について説明し、参加者から質問を受けるなど、約2時間15分にわたって意見を交わした。
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2015年度「放送人権委員会」活動計画(案)が事務局から提示され、了承された。
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三宅弘委員長、大石芳野委員、小山剛委員、田中里沙委員の4委員が3月末で任期満了となり、退任することになった。三宅委員長は委員、委員長代行時代を含め3期9年、大石、小山、田中の各委員は2期6年それぞれ務めた。
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4月から委員に就任する紙谷雅子(学習院大学法学部教授)、城戸真亜子(洋画家)、中島徹(早稲田大学大学院法務研究科教授)、二関辰郎(弁護士)の4氏について、専務理事から経歴等の説明があった。
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次回委員会は4月21日に開かれる。
以上