第218回放送と人権等権利に関する委員会

第218回 – 2015年3月

佐村河内氏事案2件の審理
大阪府議事案の審理…など

佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した。また「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案を審理し、「委員会決定」案を了承して通知・公表を4月に行うことを決めた。

議事の詳細

日時
2015年3月17日(火)午後4時00分~6時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では、申立人の聴覚障害と診断書について、その経緯や局側の取材と本件放送での伝え方、申立人の主張等を整理した事務局資料を配付した。また、これらの点が、放送倫理検証委員会が3月6日に公表した「"全聾の天才作曲家"5局7番組に関する見解」でも論じられているため、関連部分の記述内容を参照した。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では、論点の取りまとめに向けて担当委員が原案を作成し、本件放送の公共性・公益性等をめぐって議論した。

3.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通信アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として申し立てたもの。
この日の委員会では、第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、一部表現、字句を修正したうえで最終的に了承され、「委員会決定」の通知・公表を2015年4月に行うことを決めた。

4.その他

  • 2月24日に委員会が高松で開いた系列別意見交換会について、事務局から報告した。
    (詳細はこちら)

  • 「散骨場計画報道への申立て」事案の委員会決定について当該局の静岡放送(SBS)で3月3日に研修会が開かれ、その概要を事務局が報告した。研修会には委員会から三宅弘委員長と起草担当の坂井眞委員長代行、大石芳野委員の3人、同社からは報道・編成・制作など社員・スタッフら93人が出席した。3委員が同事案に関する「委員会決定」や委員長談話「顔なしインタビュー等についての要望」について説明し、参加者から質問を受けるなど、約2時間15分にわたって意見を交わした。

  • 2015年度「放送人権委員会」活動計画(案)が事務局から提示され、了承された。

  • 三宅弘委員長、大石芳野委員、小山剛委員、田中里沙委員の4委員が3月末で任期満了となり、退任することになった。三宅委員長は委員、委員長代行時代を含め3期9年、大石、小山、田中の各委員は2期6年それぞれ務めた。

  • 4月から委員に就任する紙谷雅子(学習院大学法学部教授)、城戸真亜子(洋画家)、中島徹(早稲田大学大学院法務研究科教授)、二関辰郎(弁護士)の4氏について、専務理事から経歴等の説明があった。

  • 次回委員会は4月21日に開かれる。

以上

第217回放送と人権等権利に関する委員会

第217回 – 2015年2月

大阪府議事案のヒアリングと審理
佐村河内氏事案2件の審理…など

「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞き、そのうえで「委員会決定」案を検討した。また、佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した

議事の詳細

日時
2015年2月17日(火)午後3時00分~6時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングと審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」と申し立てた。
この日の委員会では、申立人、被申立人双方から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
この中で申立人は、「キモイ」という表現を社会的影響の大きい公共の電波で流したことが問題としたうえで、「私は公人という立場なので一般的な批判は当然受け入れなければならないと思っているが、侮辱罪にあたる可能性がある表現まで受け入れられるかというと話は別だ」と述べた。また、番組により名誉感情を害され、社会的評価が低下したと主張するとともに、番組の放送以降、番組の影響と思われる嫌がらせの電話やメールが届いたと被害状況を訴えた。
さらに、中学生とLINEを巡るトラブルが起こったのは2013年10月であるにもかかわらず、2014年8月になって問題が報道された背景に、9月に予定されていた交野市長選を巡る政治的な陰謀があったと主張した。
一方被申立人のTBSラジオからは、コンプライアンス担当の取締役ら3人が出席し、まず、個別の発言だけを取り出して検討するのではなく、全体の文脈を見て判断してほしいとしたうえで、発言は人格攻撃ではなく、「申立人の不適切な行為に対しての論評という意識があるからこそ『キモイ』と言っても許される」と出演者が判断したもので、それは「TBSラジオの考え方に合致している」と述べた。
また、大阪府議という立場は、最も公人性が高いと考えられる国会議員と同等程度の非常に高い公人性を持ち、受忍の範囲は大きいと主張した。
市長選に絡む陰謀だとの申立人の主張に対しては、当該番組の放送段階では、申立人の記者会見等をもとに論評したもので、「本件とは関係がないと考える」と述べた。
その後、委員会ではヒアリングの結果を踏まえて審理した。前回委員会の議論を反映した「委員会決定」案について起草担当委員が説明、それをもとに各委員が意見を出してヒアリングで明らかになった点を盛り込むなどの修正を加えた。
今後、第2回起草委員会を開いてさらに修正した決定案をまとめ、次回委員会に諮ることになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
前回の委員会後、申立人から反論書、被申立人のフジテレビから再答弁書が提出され所定の書面が出揃った。事務局が双方の主張を取りまとめた資料を配付し、新たな主張を中心に説明した。次回委員会では論点の整理に向けて審理を進める。

3.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
本件事案については、後から審理入りした上記「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案と並行して審理を進めることにしている。今月の委員会では「大喜利」事案とあわせ論点の整理やヒアリング等、次回委員会以降の審理の進め方を検討した。

4.その他

  • 3月16日に開かれるBPO年次報告会について事務局から説明した。
  • 次回委員会は3月17日に開かれる。

以上

第216回放送と人権等権利に関する委員会

第216回 – 2015年1月

散骨場計画報道事案の通知・公表の報告
大阪府議事案2件の審理
大喜利・バラエティー番組への申立て事案の審理…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の通知・公表について事務局から報告した。「大阪府議からの申立て」事案2件のうち、日本テレビに対する申立ては、前日取下げ書が提出されたため、以後審理しないことを決め、TBSラジオ&コミュニケーションズに対する申立ての審理を継続した。このほか、佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した

議事の詳細

日時
2015年1月20日(火)午後3時30分~5時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、林委員 (田中委員は欠席)

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の通知・公表の報告

1月16日に行われた本事案に関する「委員会決定」の通知・公表について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。また、当該局である静岡放送が決定について報じた番組の同録DVDを視聴した。【詳細はこちら

2.「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)事案の審理

対象となったのは、日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』で、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を取り上げた特集企画。この中で、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことについて、山本府議がこの発言は侮辱罪にあたるとして「番組内での謝罪、訂正」を求めて放送人権委員会に申し立てたもの。
今回委員会前日の2015年1月19日に、山本府議から委員会宛てに申立て取下げ書が提出されたため、この日の委員会ではその書面を確認し、この事案については以後、審理しないことを決めた。
委員会は11月の委員会で審理入りを決定し、双方から提出された書面等をもとに審理を続けていた。

3.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として申し立てたもの。
この日の委員会では、第1回起草委員会を経てまとめられた「委員会決定」案が提出され、起草担当委員が説明したうえで、意見を交わした。また、ヒアリングに向けて起草委員が作成した論点と質問事項案について検討した。
次回委員会で申立人、被申立人双方にヒアリングを実施する。

4.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

本件事案は前回12月の委員会で審理入りが決まり、その後被申立人のフジテレビから答弁書が提出された。
審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では事務局が双方の主張を取りまとめた資料を説明し、議論を交わした。次回委員会では、申立人の「反論書」、被申立人の「再答弁書」の提出を受けて審理を進める予定。

5.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会では今後の審理の進め方等について、同じ佐村河内氏が申し立てた上記「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理を勘案しながら検討した。

6.その他

  • 1月15日に行った東海テレビ放送への講師派遣について、事務局から報告した。
  • 次回委員会は2月17日に開かれる。

以上

第215回放送と人権等権利に関する委員会

第215回 – 2014年12月

散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
大阪府議事案2件の審理
審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」の通知・公表を1月に行うことになった。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を続け、「大阪府議からの申立て」事案2件の審理を始めた。また「大喜利・バラエティー番組への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2014年12月16日(火)午後3時~6時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、決定案は一部表現、字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。
「委員会決定」の通知・公表は2015年1月に行われることになった。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会までに、申立人とTBSテレビからそれぞれの主張や反論等を記した所定の書面が提出された。委員会では、事務局がそれらを取りまとめた資料を配付し、本件事案の論点の整理に向けて審理した。

3.「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)事案の審理

日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』で、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げた際、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことについて、山本府議がこの発言は侮辱罪にあたるとして「番組内での謝罪、訂正」を求めて放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張と日本テレビ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。

4.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』で、お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークでの発言。このトークでは、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯や、それに関連してテリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言したことに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申し立てた一連の事態について語られた。これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張とTBSラジオ&コミュニケーションズ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。

5.審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビジョンが2014年5月24日に放送した大喜利・バラエティー番組『IPPONグランプリ』。番組では冒頭、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出し、出演したお笑い芸人たちが次々に回答する模様を放送した。
この放送に対し、かつて「全聾の作曲家」として話題を呼び、その後楽曲が別人による代作だったことを認めて謝罪した佐村河内守氏が11月4日付で申立書を委員会に提出。お笑い芸人から、申立人の身体的特徴や生理的特徴(聴覚障害)および音楽的才能を揶揄する回答が出され、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として、一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らか」として、当該番組内での謝罪を求めた。
また申立書は「本件番組の内容は、一個人への侮辱にとどまらず、現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる。特に、本件番組が申立人の心情はもちろんのこと、同じく聴覚その他の障害を背負って生活している多くの人々の心情をも踏みにじることになるのであり、非常に悪質である」と訴えた。
これに対しフジテレビは11月28日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、本件出題が申立人を想定したものであることを認めたうえで、「大喜利という回答者の知的な発想力を求めるコーナーの1つの出題として取り扱うこと自体が申立人を侮辱し、名誉感情を著しく侵害することなどあり得ない」と主張。また、「自らの楽曲として(髪型を含めた独自の装いを演出して)公表しながら、実際には第三者の創作による部分が極めて大きいものであったことに関して申立人が社会的に批判されることは、やむを得ないことであり、且つ、表現行為として許容(保障)されるべきである」と述べている。
さらに同局は、「児童・青少年への影響を問題視するのであれば、障害の程度を過剰に演出し、なおかつ、別人の作曲であるにもかかわらず自分自身の作曲として公表していたことこそ問題視されるべきである」と、申立人の主張に反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

6.その他

  • 次回委員会は2015年1月20日に開かれる。

以上

第214回放送と人権等権利に関する委員会

第214回 – 2014年11月

散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
「大阪府議からの申立て」2件審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」案の検討に入った。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を始めた。「大阪府議からの申立て」2件を審理要請案件として検討し、いずれも審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年11月18日(火)午後4時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、双方からの書面やヒアリングの結果をもとに起草された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて担当委員が説明し、各委員が意見を述べた。結論の方向性を確認しつつ記述等を議論したが、次回委員会で修正案を審理することになった。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
前回の委員会で審理入りが決まり、今月の委員会から審理を始めた。TBSテレビは委員会に提出した答弁書で「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。委員会では、事務局が放送内容の概要や申立人が指摘する問題点を説明し意見を交わした。

3.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』。番組は、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げ、山本府議本人のインタビューを含め、大阪府交野市の地元関係者らを取材し、それをまとめたVTRを放送するとともに、スタジオでコメンテーターが山本府議の言動についてコメントした。
この放送について山本府議は翌12日に日本テレビに対し、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことが人権侵害にあたると抗議し、番組内で謝罪、訂正するよう求めたが、日本テレビはこれを拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出し、テリー伊藤氏の発言は「侮辱罪」にあたると訴え、改めて同氏による番組内での発言撤回と謝罪を求めた。申立書では、テリー伊藤氏のコメントにより、twitterやブログに多数の「キモイ」を含む誹謗中傷が寄せられ、精神的な負担が生じたほか、連日多数の電話が寄せられ、府議としての活動に支障が生じたと主張している。
これに対し日本テレビは11月5日に委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「元々山本府議に対して『キモい』と感じたのは中学生であり、そう感じさせた一連の行為を山本府議本人も不適切だと自認している中で、今回のテリー伊藤氏のコメントが侮辱罪にあたるという山本府議の主張には正直、当惑せざるを得ない」と述べた。また「当該コメントは視聴者に対して、公職にある山本府議の行為には大変、問題があり、中学生の気持ちはよくわかるという論評をなげかけたにすぎず、報道内容の公共性、報道目的の公益性に鑑みれば当然、違法性はない」と主張。さらに、「『スッキリ!!』の放送以前にすでに山本議員の不適切な行為は、テレビ・新聞各社で広く報道されており、本番組の放送が主たる原因となって、山本府議の社会的な名誉が低下したことはない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

4.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。番組では、お笑いタレント「おぎやはぎ」の矢作兼氏と小木博明氏がオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになり、その経緯が多くのメディアにより伝えられる中で、テリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言、それに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申立てた一連の事態について、矢作氏が小木氏に説明するという形でトークが展開された。
この放送について山本府議は9月8日、TBSラジオに対し「キモイという発言に侮辱されたと感じた」として番組内での謝罪を求めたが、同社は「社会事象についてのコメント」として、拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出、その中で「思いついたことはキモイだね。完全に」、「キモイと思ったもんはキモイでいいんでしょ」等の発言は、「全人格を否定し、侮辱罪にあたる可能性が高く、精神的な苦痛を味わった」と訴えている。また、「インターネット上に『キモイ』という中傷の文言が溢れ、信用やイメージを著しく損なった」と主張している。
これに対しTBSラジオ&コミュ二ケーションズは11月10日、「経緯と見解」書面を委員会に提出、この中で「今回の放送は、大阪府議という公人である山本議員の行為及び、それに付随した一連の社会事象へのコメントが主眼であり、小木氏の『キモイ』という発言は、あくまで山本議員の不適切な行為に向けられている。同議員の人格に向けられたものではないし、ましてや全人格を否定する個人攻撃ではまったくありえない」として、侮辱罪にはあたらないと主張している。
同社はさらに、「公人の名誉権が過度に強調されることは、民主主義の基盤を揺るがすことにもつながりかねないという視点からも、今回の放送について謝罪放送やその他の方法による謝罪を行うことはできない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

5.その他

  • 委員会が今年度予定している系列単位の意見交換会を、2015年2月24日に、高松で開催することを決めた。対象は日本テレビ系列の在四国4局。

  • 次回委員会は12月16日に開かれる。

以上

第213回放送と人権等権利に関する委員会

第213回 – 2014年10月

散骨場計画報道事案のヒアリングと審理
「謝罪会見報道に対する申立て」審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞いた。「謝罪会見報道に対する申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年10月21日(火)午後4時~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案のヒアリングと審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、申立人、被申立人から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聞いた。
この中で申立人は、「顔なし」映像を記者会見の条件とした理由として、人口3万7,000人の熱海市で住民2千7,8百人の反対署名が集まっており、「私の顔が出ていれば、狭い田舎町で更なる事件に発展する可能性もある」と指摘。また、「このような行為は故意に行われたと思わざるを得ない」とも述べ、具体的被害として「テレビで大々的に出てしまい、熱海の町では相当な騒ぎになっている。熱海を騒がしている散骨業者と知れ渡ってしまい、よく話しかけてくれた住民たちも目をそむける。町に食事に出ることもできない。そういう状態は今も続いている」などと訴えた。
被申立人は、編成、報道の責任者や番組担当者ら5人が出席し、「約束に反して顔出ししてしまったことは、担当者の不注意・失念によるもので、故意によるものでは決してない。放送時間に追われる中でモザイクをかけ忘れるというミスであり、最終チェックも十分に行われなかった。取材相手との信義を果たせなかったことを深く反省している。業者社長にはお詫びの申し上げようもない」としたうえで、「二度とこのようなことのないように、再発防止策をすでに取っており、社内での研修会なども行っている」と述べた。
ヒアリング後も審理を行い、担当委員が「委員会決定」文の起草作業に入ることになった。その上で、次回委員会でさらに審理を進める。

2.審理要請案件:「謝罪会見報道に対する申立て」~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、TBSテレビが2014年3月9日に放送した情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。番組は、かつて「全聾の作曲家」として知られていた佐村河内守氏が楽曲の代作問題について謝罪する記者会見を取材し、その模様をまとめたVTRを放送するとともに、出演者によるスタジオトークを生放送で展開した。
この放送に対し、佐村河内氏は8月26日付で申立書を委員会に提出し、番組は「申立人の聴力に関して事実に反する放送を行ったものであり、それにより、申立人が聴覚障害者であるかのように装って記者会見に臨んだとの印象を与えたもので、申立人の名誉を著しく侵害するものであると共に、申立人と同程度の聴覚障害のハンディキャップを持つ者に対しても、社会生活上深刻な悪影響を与えた報道であった」と訴えた。申立書はまた、番組が特定の映像を意図的にカットして「悪意ある編集」を行い、「事実そのものを捻じ曲げて放送した上で、申立人の名誉権を侵害したことになり、本件は極めて重大かつ悪質な人権侵害」と主張している。
これに対してTBSテレビは9月30日付で委員会に提出した「見解」書面の中で、「当番組の放送内容は、放送された時点における重大な社会的関心事で、聴覚障害者に対する誤解や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評」と放送の趣旨を説明。その上で「謝罪会見の綿密な取材と、診断書についての専門家の見解の上で制作しており、『悪意ある編集』などによって申立人に聴覚障害がないと断定したものでもない」として、申立人の名誉を傷付ける放送ではないと主張している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

3.その他

  • 10月7日に名古屋で開かれた地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。

  • 次回委員会は11月18日に開かれる。

以上

第212回放送と人権等権利に関する委員会

第212回 – 2014年9月

散骨場計画報道への申立て
放送人権委員会 判断ガイド2014…など

「散骨場計画報道への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決定した。
刊行された「放送人権委員会 判断ガイド2014」が配布され、その特徴や活用方法等について意見交換した。

議事の詳細

日時
2014年9月16日(火)午後4時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.審理要請案件:散骨場計画報道への申立て

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、静岡放送(SBS)が本年6月11日に放送したローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』。番組は、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について、民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。
この放送に対し社長は、記者会見は熱海記者会との間で個人名と顔の映像は露出しない条件で応じたとして、熱海記者会の幹事に抗議した。一方、静岡放送は同社長に電話して「会ってお詫びしたい」と伝えたが、社長は話し合いには応じられない姿勢を示した。
その後社長は6月17日、本件放送による人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求める申立書を委員会に提出した。申立書はまた、顔出し映像の放送は担当記者による「故意だと思われる」と主張している。
これに対し静岡放送は8月20日に委員会に提出した「経緯と見解」書面で、同社長と熱海記者会との間に「顔と個人名の露出は避ける」という約束があったことを認めたうえで、「故意によるものではなく、担当者の不注意・失念によるもの。業者社長にはお詫びの申し上げようもありません」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

2.『放送人権委員会 判断ガイド2014』について

この春から編集作業を進めてきた『放送人権委員会 判断ガイド2014』が刊行され、委員会で配られた。監修にあたった委員からは「使いやすさ、見やすさの観点から、構成や見出し、表現をいろいろ工夫した。各局で活用して欲しい」、「最近、BPOの決定を論評する論文なども見られ、研究者の資料としても使える」等の発言があった。
『判断ガイド』は各局に送付したほか、地方での意見交換会等でも活用し放送倫理の向上に役立てることにしている。(『判断ガイド』の内容、頒布については別掲を参照)

3.その他

  • 9月4日に札幌で開かれた意見交換会について事務局から報告するとともに、その模様を伝える地元局のニュース番組の同録DVDを視聴した。

  • 10月7日に名古屋で開催する地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から議題、議事進行等概要を説明した。

  • 次回委員会は10月21日に開かれる。

以上

第211回放送と人権等権利に関する委員会

第211回 – 2014年7月

デモ行進報道への申立て
放送人権委員会 判断ガイド2014…など

「デモ行進報道への申立て」を審理要請案件として検討し、審理対象外と判断した。
2014年度中に刊行予定の「放送人権委員会 判断ガイド2014」について、編集方針等をめぐり各委員がさらに意見を交わした。

議事の詳細

日時
2014年7月15日(火)午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、林委員 (田中委員は欠席)

1.審理要請案件: デモ行進報道への申立て

デモ行進をめぐる報道に対し市民団体代表から提出された申立書について、審理要請案件として検討し、以下のとおり審理対象外と判断した。
申立ての対象となったのは、A社が2014年3月に放送したローカルニュース番組。申立ては、申立人が会長を務める市民団体が2月に行われたデモ行進について、主催でも共催団体でもないにもかかわらず、あたかもこの市民団体がデモ行進を主催したかのように本番組で報道され、団体会員らの名誉を著しく傷つけたなどとして、番組内での訂正と謝罪等を求めた。また番組はそのデモ行進の中で「ヘイトスピーチ」を行ったと、事実に反する報道をして、会員に対する著しい人権侵害になっていると主張した。
これに対し局側は、委員会に提出した「経緯と局の見解」書面の中で、「本件放送はヘイトスピーチという社会問題を幅広く視聴者に理解してもらう材料を提供するという専ら公益を図る目的で企画・放送したもの」と説明。同社の取材活動は正当に行われ、「本件放送は名誉毀損または人権侵害の余地はない」と述べた。
この日の委員会では、本件申立ての審理入りの可否について、委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準に照らして、慎重に検討した。
申立ては、申立人の個人名で提出されている。しかしながら、番組では申立人個人を具体的に取り上げておらず、同個人の名誉等人権侵害に関わる内容は含まれていない。また、申立ての中でも、本件放送が同団体の「会員の名誉を著しく傷つけた」等と書かれており、本件申立ては、団体の会長として、団体を代表して提出されたと受け取ることができる。
委員会は、放送により権利の侵害を受けた個人からの苦情申立てを原則としている。団体からの苦情申立てについては、例外的に「団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるとき」は取り扱うことができることになっている。
同団体のウェブページによると、この団体は明確な会則のもと、1万4,500人余りの会員を擁し、さらに相当程度の情報発信力も備えているものと認められる。こうした団体としての規模、組織、社会的性格等に鑑み、上記運営規則に照らして、本件申立ては、委員会が例外的に救済する必要性が高い事案とは認められないとの判断に至った。
このため委員会では、本件申立てについては、委員会の審理対象外と判断した。

委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)1.(6)において、「苦情を申し立てることができる者は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする。ただし、団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。」と定めています。

2.『放送人権委員会 判断ガイド2014』について

2014年度中に刊行予定の『放送人権委員会 判断ガイド2014』について、事務局からゲラが配布され、それを基に目次、全体の構成、デザイン・レイアウト、各項目の内容・表現等について各委員がさらに意見を述べた。

3.その他

判断のグラデーションについて、放送人権委員会は、従前「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくいという声があったため、2012年5月の第183回委員会において、放送倫理に関する判断を「放送倫理上問題あり」、「放送倫理上重大な問題あり」に一本化し、判断のグラデーションを表にして公表した。また、BPOホームページにおいては、この表にグラデーションの説明を加えたものを掲載してきた。
この日の委員会で検討の結果、これらグラデーションの表記を以下のとおり統一することを決めた。

「勧告」 人権侵害(名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害等)
放送倫理上重大な問題あり
「見解」 放送倫理上問題あり
「見解」 要望(放送表現、放送後の対応等について局に要望)
問題なし
  • 10月7日に名古屋で開催予定の地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から主な議題等概要を説明した。

  • 8月の委員会は休会とし、次回委員会は9月16日に開かれる。

以上

第210回放送と人権等権利に関する委員会

第210回 – 2014年6月

放送人権委員会判断ガイド2014…など

2014年度に刊行予定の『放送人権委員会判断ガイド2014』について、編集方針等をめぐり各委員が意見を交わした。

議事の詳細

日時
2014年6月17日(火)午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.『放送人権委員会判断ガイド2014』について

2014年度に刊行予定の『放送人権委員会判断ガイド2014』について、事務局が編集作業の進捗状況を報告した。そのうえで、目次、全体の構成、掲載する判例、各項目の内容・表現等について各委員が意見を交換した。

2.その他

・次回委員会は7月15日に開かれる。

以上

第209回放送と人権等権利に関する委員会

第209回 – 2014年5月

宗教団体会員事案の対応報告
児童養護施設関連ドラマ…など

宗教団体会員事案でテレビ東京から提出された対応報告を検討した。児童養護施設関連ドラマに対する申立書を審理要請案件として改めて検討し、審理対象外と判断した。顔なしインタビュー等について「委員長談話」を公表することを決め、文面をほぼ確定した。

議事の詳細

日時
2014年5月20日(火)午後4時~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「宗教団体会員からの申立て」事案の対応報告

2014年1月21日に通知・公表された「委員会決定 第52号」に対し、テレビ東京から局としての対応と取り組みをまとめた報告書が4月18日付で提出され、この日の委員会で検討された。
委員会では、「題材に高い公共性・公益性があるとしても、放送内容によっては放送倫理上問題ありとされることを認識してほしい」との意見なども述べられた。
(テレビ東京の「委員会決定に対する対応と取り組み」はこちらから

2.審理要請案件:児童養護施設関連ドラマ

児童養護施設を舞台にしたドラマに対する申立書について、審理要請案件として改めて検討し、委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準に照らして、審理対象外と判断した。
申立ての対象とされた放送は、A社の連続ドラマ第1話で、申立てはある病院の院長によるもの。番組中の児童養護施設入所中の子どもに対するあだ名の設定や同施設長が子どもたちをペットショップの犬と同等とみなすような発言等が、児童養護施設入所中の子ども、里子ないし同施設職員の名誉を傷つけるとの理由から、本番組の内容変更及びドラマ制作の経過についての説明を求めたもの。
当委員会は、本件申立ての審理入りの可否について慎重に検討したが、次のとおり、本件申立ては、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準の各要件に該当しないものとして、審理対象外とすることとした。

  • (1)まず、運営規則第5条1.(1)は、「名誉、信用・プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関するものを原則とする。」と規定している。
    この点について、本件申立ては、本番組の問題部分が、児童養護施設入所中の子ども、里子ないし同施設職員の名誉を侵害すると述べているが、個別具体的な子ども、里子ないし施設職員個人の特定がなされていないために、当該特定の対象者についての個別具体的な名誉侵害の有無を判断することができない。

  • (2)また、運営規則第5条1.(2)は、「公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者からの書面による申立てがあった場合は、委員会の判断で取り扱うことができる。」と規定している。
    この点に関して、本件申立ては、本番組の問題部分によって、児童養護施設の子どもが学校等で非人格的なあだ名等で呼称され、からかわれることを心配するとしており、本番組の問題部分に公平・公正を欠くために、これらの子どもが著しい不利益を被る旨、述べているものとも捉えられる。
    しかしながら、上記と同様、本件申立てにおいては、個別具体的な子どもが特定できず、著しい不利益の内容も明らかでないため、当委員会がその裁量で取り扱うべき事案であるか否かを判断することができない。

  • (3)さらに、運営規則第5条1.(6)は、「苦情を申し立てることができる者は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする。」と規定している。
    この点に関して、申立人は、申立人が理事長・院長を務める病院の名誉その他の権利侵害等を、本件申立てによって主張するものではなく、児童養護施設入所中の子ども等の名誉等を問題とするものであるとの見解を明らかにしている。
    しかしながら、児童養護施設入所中の子ども等の特定がなされていないこととも相まって、当委員会は、当事者と第三者である申立人との直接の利害関係を認定することはできなかった。

以上のとおり、当委員会は、本件申立てについて、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準の各要件に該当しないものとして本件申立てを審理対象外とした。

【委員会コメント】

放送倫理・番組向上機構[BPO]規約第4条2.は、「放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会および放送と青少年に関する委員会において、同一の放送番組を取り扱う場合、互いに連携して、必要な措置を講ずる」と規定している。この規定をふまえて、当委員会としても、これまで検討を重ねてきたので、下記のとおりコメントする。

現代社会の事象に対して問題提起する番組を制作することは、放送の自由の行使として、極めて意義のあることです。その一方で、青少年委員会委員長コメント("子どもが主人公のドラマ"に関する「委員長コメント」 2014年4月8日付)が指摘するとおり、そのような「番組内容の場合、その引き起こす社会的波紋に対する事前の配慮は、通常にも増して行う必要があったのではないか」という点において、今後さらに検証されるべきものであると考えます。
この点については、当該局自身「貴協議会から事前に児童養護施設を取り巻く環境などの実情を詳細に伺い、表現上留意すべき点などをより慎重に確認しておく必要があったと認識しております」(全国児童養護施設協議会に対する回答書 2014年2月4日付)と述べ、ドラマ制作の準備段階に問題があったことを認めています。
当委員会は、上記のような事項は単に当該局だけでなく、すべての放送局において共有され、今後十分に配慮されるべき点であると考えます。
当委員会は、苦情の取り扱いにおいて名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関するものを原則とし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者からの書面による申立てをも取り扱うことができるものではありますが、フィクションであるドラマの場合に、これらの取り扱い基準に該当することは、一般には容易なことではありません。しかし、社会的意義あるドラマが引き起こす波紋に対する事前の配慮は、人権侵害や放送倫理上の問題を生じさせないためにも必要であると考えるので、以上のとおりコメントするものです。

3.顔なしインタビュー・モザイク等の在り方について

報道・情報番組における顔なしインタビューやモザイク処理の在り方について、年初来続けてきた議論をふまえた「委員長談話」の修正案が提出され、各委員が意見を述べた。その結果、文面をほぼ確定して委員長一任を取り付け、「顔なしインタビュー等についての要望~最近の委員会決定をふまえての委員長談話~」を近日中に公表することになった。

「顏なしインタビュー等についての要望~最近の委員会決定をふまえての委員長談話~」
2014年6月9日 公表

4.その他

  • 2014年度の意見交換会の日程について、調整の結果、県単位の意見交換会を9月4日に札幌で、地区別意見交換会(中部地区)を10月7日に名古屋で開催することになった。

  • 年度中に刊行予定の『判断ガイド2014』について、事務局から構成案が示され、各委員が意見を述べた。

  • 次回委員会は6月17日に開かれる。

以上

第208回放送と人権等権利に関する委員会

第208回 – 2014年4月

審理要請案件:児童養護施設関連ドラマ
匿名インタビュー、モザイク処理の在り方…など

児童養護施設関連ドラマに対する申立書を審理要請案件として委員会に諮り、審理要件を満たしているかどうかなどを引き続き検討した。匿名インタビューやモザイク処理について、「委員長談話」案を検討した。

議事の詳細

日時
2014年4月15日(火)午後4時~6時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.審理要請案件:児童養護施設関連ドラマ

児童養護施設を舞台にした連続ドラマに対する申立書を審理要請案件として委員会に諮り、委員会運営規則に照らして審理対象とする要件を満たしているかどうかなどを改めて詳細に検討した。次回委員会で、審理入りするかどうか結論を出す予定。

2.「匿名インタビュー、モザイク処理の在り方」について

報道・情報番組における匿名インタビューやモザイク処理について、「大津いじめ事件報道に対する申立て」事案と「宗教団体会員からの申立て」事案の両委員会決定を踏まえて「委員長談話」を公表することを決定し、委員長から出された原案や修正案について各委員が意見を述べた。
次回委員会で議論を継続する。

3.その他

  • 2014年度事業計画のうち、意見交換会の日程等について事務局から説明した。また、年度内に刊行予定の『判断ガイド2014』についても事務局から概要を説明した。

  • 次回委員会は5月20日に開かれる。

以上