第217回放送と人権等権利に関する委員会

第217回 – 2015年2月

大阪府議事案のヒアリングと審理
佐村河内氏事案2件の審理…など

「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞き、そのうえで「委員会決定」案を検討した。また、佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した

議事の詳細

日時
2015年2月17日(火)午後3時00分~6時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングと審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」と申し立てた。
この日の委員会では、申立人、被申立人双方から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
この中で申立人は、「キモイ」という表現を社会的影響の大きい公共の電波で流したことが問題としたうえで、「私は公人という立場なので一般的な批判は当然受け入れなければならないと思っているが、侮辱罪にあたる可能性がある表現まで受け入れられるかというと話は別だ」と述べた。また、番組により名誉感情を害され、社会的評価が低下したと主張するとともに、番組の放送以降、番組の影響と思われる嫌がらせの電話やメールが届いたと被害状況を訴えた。
さらに、中学生とLINEを巡るトラブルが起こったのは2013年10月であるにもかかわらず、2014年8月になって問題が報道された背景に、9月に予定されていた交野市長選を巡る政治的な陰謀があったと主張した。
一方被申立人のTBSラジオからは、コンプライアンス担当の取締役ら3人が出席し、まず、個別の発言だけを取り出して検討するのではなく、全体の文脈を見て判断してほしいとしたうえで、発言は人格攻撃ではなく、「申立人の不適切な行為に対しての論評という意識があるからこそ『キモイ』と言っても許される」と出演者が判断したもので、それは「TBSラジオの考え方に合致している」と述べた。
また、大阪府議という立場は、最も公人性が高いと考えられる国会議員と同等程度の非常に高い公人性を持ち、受忍の範囲は大きいと主張した。
市長選に絡む陰謀だとの申立人の主張に対しては、当該番組の放送段階では、申立人の記者会見等をもとに論評したもので、「本件とは関係がないと考える」と述べた。
その後、委員会ではヒアリングの結果を踏まえて審理した。前回委員会の議論を反映した「委員会決定」案について起草担当委員が説明、それをもとに各委員が意見を出してヒアリングで明らかになった点を盛り込むなどの修正を加えた。
今後、第2回起草委員会を開いてさらに修正した決定案をまとめ、次回委員会に諮ることになった。

2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
前回の委員会後、申立人から反論書、被申立人のフジテレビから再答弁書が提出され所定の書面が出揃った。事務局が双方の主張を取りまとめた資料を配付し、新たな主張を中心に説明した。次回委員会では論点の整理に向けて審理を進める。

3.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
本件事案については、後から審理入りした上記「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案と並行して審理を進めることにしている。今月の委員会では「大喜利」事案とあわせ論点の整理やヒアリング等、次回委員会以降の審理の進め方を検討した。

4.その他

  • 3月16日に開かれるBPO年次報告会について事務局から説明した。
  • 次回委員会は3月17日に開かれる。

以上

第90回 放送倫理検証委員会

第90回–2015年2月

佐村河内守氏が"別人に作曲依頼"を審理
「委員会決定」を3月上旬にも通知・公表へ…など

第90回放送倫理検証委員会は2月13日に開催された。
2月9日に意見を通知・公表したテレビ朝日の『報道ステーション』「川内原発報道」事案について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、若干の意見交換を行った。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案については、委員会決定の修正案が担当委員から提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、表現の一部手直しをして、3月上旬にも当該5局に通知・公表をすることになった。

議事の詳細

日時
2015年2月13日(金)午後5時~7時30分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、藤田委員、升味委員

1.テレビ朝日の『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見を通知・公表

テレビ朝日の『報道ステーション』(2014年9月10日放送)で、原子力規制委員会が九州電力川内原発の新規制基準適合を認める審査書を正式決定したニュースを放送した際、田中委員長の記者会見の報道に事実誤認と不適切な編集があった事案。
2月9日、当該局に対して、委員会決定第21号の意見を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当日のテレビニュースや当該番組での報道を視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容が報告され、意見交換が行われた。

2.「全聾の作曲家」と称していた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案を審理

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案について、委員会決定(見解)の修正案が、担当委員から提出された。
△各局が佐村河内氏の虚偽を信じて放送したことに問題はなかったか
△問題発覚後の各局の対応は十分であったか
という2つの大きな論点のうち、2点目を中心に幅広く意見が交わされ、大筋で了解が得られた。このため、担当委員がこれらの意見を踏まえた手直しと表現の修正を行ったうえで委員会決定とすることになった。3月上旬にも当該5局への通知と公表の記者会見が行われる見通しである。

以上

2015年2月9日

テレビ朝日『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月9日午後1時15分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、鈴木嘉一委員、藤田真文委員の3人が出席し、当該局のテレビ朝日からは常務取締役ら3人が出席した。
まず川端委員長が「『報道ステーション』のこのニュースの問題意識はジャーナリズムとして正当なものだったが、残念なことに2点について、放送倫理違反があると判断した」と指摘したうえで、問題発覚後の訂正・お詫び放送については、高く評価していることを伝えた。鈴木委員は、今回のテレビ朝日の再発防止策が具体的かつ実践的で、評価していると述べるとともに、委員会決定の末尾に書かれている「視聴者の信頼を回復する道は、前に進むことによって開かれる」を、委員会からのメッセージとして受け止めてほしいと要望した。また、藤田委員は「残念だったのは、ミスに関する情報共有のコミュニケーションが、当日の報道局内でうまくいかなかったことだ。ミスがあったら、その情報を共有して、適切・迅速に対処するという環境作りに配慮してほしい」と述べた。
これに対してテレビ朝日側は「意見書の指摘を真摯に受け止め、今後の再発防止に役立てたい」と述べたうえで、今後は、報道局内のすべての番組で、正確で、公平・公正な報道を徹底するように努めていきたいと述べた。
このあと、午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には29社61人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介したうえで、「この放送自体は、国民の最大の関心事のひとつである、原発の安全基準が適切なものかどうかを追究しようという、報道機関としての役割をきちんと果たしたニュースだったと評価している。それだけに、このような会見内容の取り違えや、不用意な編集のような過ちはしてほしくなかったというのが、正直な思いだ」と述べた。
続いて鈴木委員は「テレビ朝日は『報道ステーション』での再発防止策を、報道局内の他の番組に一律に適用するのではなく、番組ごとに検証して対応を検討している。真摯な取り組みとして評価している。」と述べた。
また、藤田委員は「映像の取り違えについて、放送中に気付いたにもかかわらず、情報が共有されずに対応が遅れたことは残念だ。迅速かつ適切な対応をとることが報道番組の信頼性を担保するうえで必要だということを教訓にしてほしい」と述べた。またメディア間の相互批判や、社会からの批判は、メディアの社会的責任を果たすうえで重要だが、批判の言葉が非常に軽く取り扱われている感じがする。今回の事案でも、ネット上で「捏造」という言葉で語られたりしたが、「捏造」と「誤報」「単純ミス」が混同されて、批判の文脈にのせられることがある。この事案は、誤報や単純ミスはあったが、なかったことをあったかのように報道する「捏造」にはあたらないと認識している。メディア相互で検証する場合には、誤りの程度や根拠を明確にしながら、批判すべきだと感じたなどと述べた。
記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:「空白の3時間」によって、放送まで残り3時間の時点で着手したとなっているが、作業時間として3時間は短かすぎて、原因のひとつになったと考えているのか?
    A:その後、多くの人が作業を分担し、ビデオも前半と後半に分けて編集しないと間に合わなかったことなどから考えると、意図した放送をするためには、相当切羽詰まった状況だったと言えるだろう。ただし、この状況でミスしたことが、どうしてもやむを得なかったとは言えないので、放送倫理違反と判断せざるを得なかった。(川端委員長)

  • Q:放送での間違いについて、田中委員長が火山の基準についても似たような発言をしているので、一般論として成り立つのではないかというやり取りがあったと記載されているが、似たような発言は本当にあったのか、また一般論として成り立つという点について、委員会はどう考えたのか?
    A:会見の中で、それに近い発言もなくはないので、活字の場合なら要約したということで成り立つかもしれないが、田中委員長の音生かしで使用した発言は、明らかに違うところなので、どうみても間違いである。一般論として成り立つのではないかということも「苦しい言い訳」だと、委員会は判断した。(鈴木委員)
    A:田中委員長はその後の質疑で、火山の審査基準の見直しの可能性についても回答している。先ほど、ありもしないことを報じた「捏造」ではないと述べたのはその点で、全体的な認識としては誤りではないといえる。しかしVTRで切り取って使用した部分は、火山の基準に関する部分ではなく、間違いなので、放送倫理違反と考えた。(藤田委員)

  • Q:意見書では複合的な要因のように書かれているが、これをやっておけば、今回の問題は避けられたのではないかというような、分岐点やポイントがあったのか?
    A:B記者は放送を見た瞬間に問題に気付いているので、彼にもっときちんとビデオ部分も見てもらっていれば、間違いは避けられたのではないかと思う。(川端委員長)
    A:プロデューサーやニュースデスクが、記者会見ではあまり新しい話は出ないだろうと思って、注意を払っていなかったことが問題だったと思う。B記者や、文字起こしをしたディレクターたちに確認するなどして、会見の内容に注意を払っていれば、火山の問題に質疑が集中したことは把握できただろう。もっと早くチームを立ち上げられれば、VTR編集がこのような追い込みになることはなかったので、分岐点はそこだったかもしれないと思う。(鈴木委員)
    A:文字起こしや編集を別々の人間がおこなうなど、役割分担が複雑なので、意見書では図で説明している。報道番組の現場では、時間に間に合わせるために、必然的に起こることなのかもしれないが、このような過度な分業体制は、チームワークの良さでもあるのだろうが、かえってあだになってしまったといえる。ミスはいつでもおこりうると考えると、いくつかのチェック体制をとりながら、例えば文字起こしを担当し、編集に立ち会うディレクターが一貫して同じパートを受け持つことが必要だったのではないか。そのような現場判断の部分が、ミスのひとつの要因ではなかったかと思う。(藤田委員)

以上

2015年1月に視聴者から寄せられた意見

2015年1月に視聴者から寄せられた意見

イスラム過激派組織「イスラム国」による、日本人人質事件で、政府の対応や報道のあり方に対し、賛否両論の意見多数。年末年始の番組に対して、最近は良質なバラエティー番組が少なく、下品な内容の長時間番組ばかりだといった批判など。

2015年1月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,695件で、先月と比較して498件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール74%、電話24%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性73%、女性24%、不明3%で、世代別では30歳代26%、40歳代26%、20歳代17%、50歳代16%、60歳以上12%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は892件【38局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

イスラム過激派組織「イスラム国」による、日本人人質事件が発生したが、政府の対応や報道のあり方に対し賛否両論、様々な意見が多数寄せられた。
フランスのテロ事件で、倒れた警官らしき人物が再度発砲されるシーンを過剰に使用した放送に対し、報道倫理を問う声があった。
年末年始の番組に対して、最近は良質なバラエティー番組が少なく、下品な内容の長時間番組ばかりだといった批判などが寄せられた。
ラジオに関する意見は43件、CMについては62件あった。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は152件で、前月から77件増加した。
今月は、1月8日に"深夜帯番組の性的表現"に関する「委員長コメント」を公表したことなどから、BPOに関する意見が33件と最も多かった。次に「性的表現」が21件、「表現・演出」「暴力・殺人・残虐シーン」がそれぞれ15件、「いじめ・虐待」が12件と続いた。
「委員長コメント」ついては、「公共の電波での性的表現は慎重に行うべきであり、各放送局に議論を求めたことを評価する」などの意見があった一方、「少数の意見に過敏に反応しすぎている」などの否定的な意見も寄せられた。
「性的表現」については、アイドルグループが出演する深夜帯の番組で「へそ美人ランキング」を行ったことや、お笑いコンビが行うコントについての意見が複数寄せられた。
「表現・演出」については、怪奇現象を取り上げる番組の映像表現が過激すぎるとの意見が目立った。また、当該番組の番組宣伝の放送時間帯についても配慮を求める声があった。
「暴力・殺人・残虐シーン」については、子ども向けのアニメ番組で主人公が暴力を受けるシーンや、深夜帯のドラマでの暴力シーンについての意見がそれぞれ複数寄せられている。
「いじめ・虐待」については、年末のバラエティー番組での罰ゲームについての意見が多かった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 「イスラム国」による日本人人質事件のニュースで持ちきりだが、騒ぎ過ぎは何の利益にもならない。それどころか犯人の思うつぼだ。特に、「首相の対テロ支援発言が我々を身代金要求に駆り立てた」などとする犯人側の理不尽な言い分を鵜呑みにして、「首相の発言が彼らを刺激した」などと安易に伝えるのは愚かなことだ。軽率な報道をすればするほど、日本政府の足を引っ張ることにもなる。人質の解放に向けて難局が待ち受けているのだから、報道の仕方を改めるべきだ。

  • イスラム過激派組織「イスラム国」は、2人の日本人を拘束し、殺害を予告する映像をインターネットに公開した。番組ではそのことを取り上げ、何故日本人をターゲットにしたのかを分析した。周辺諸国に2億ドルの支援を首相が表明したことが「誤解された」というものだった。しかし私は、支援表明が「宣戦布告」と彼らに捉えられたと考える。2人の日本人解放に2億ドルを要求しているのも、支援の金額と合致している。日本からの周辺各国への支援が戦費にならないとも限らない。「誤解された」とする番組のとらえ方は政府を擁護するものではないのか。

  • 「イスラム国」の日本人人質の報道ですが、人質を座らせ声明を出している動画を見てしまい、不快な気持ちになった。なぜモザイクもかけず、放送で何度も垂れ流すのか。それこそテロリストの思う壺だ。見たい人だけユーチューブなどで見ればいい。テレビでは最小限にしてほしい。

  • 「イスラム国」による日本人の人質問題について、冒頭で声明を高らかに読み上げ、日本人がテロのターゲットになったという過度に恐怖を増長させる報道だった。恐怖の扇動をして何がしたいのか。彼らのような犯罪者は、こうしてメディアが大騒ぎし、自分達を恐れ、力の誇示をするのも目的の一つだと思う。日本のメディアは呆れるほどそれに乗っかり、大騒ぎしている。このような問題は、事実経過を淡々と伝えるだけでいい。

  • 各局がこぞって「イスラム国・日本人2人の身代金要求事件」を取り上げている。しかし正直なところ、複雑な中東情勢は理解が難しい。番組により、事件への見方が違うため余計混乱する。このような事件が起きた原因や背景等を公平・公正に説明する番組を作って頂きたい。

  • どこのニュースにもイスラム武装集団を「イスラム国」と呼んでいるが、「イスラム国」という武装組織を国として認める形になってしまうのではないのか。また「イスラム」という名称が「悪」であるかのような印象を植えつけることにもなるので、「ISIL」と呼ぶべきだ。いずれにしても、既成事実となる前にすみやかに呼称を変えるべきだ。

  • 「イスラム国」に拘束されている2人の日本人の話題を取り上げているが、「政府は2人の解放のために一生懸命やっている」というだけで、詳細は報道されていない。何をどのようにしているのか、裏付けや根拠もない報道ばかりで嫌気がさす。さらに首相の2億ドルの支援についても内訳すら発表しない。国民が知らないうちに首相が支援を表明しただけである。調べもしないでただ流すだけでは意見が深まらない。報道のあり方を今一度考えてほしい。

  • 「イスラム国」に人質の件について、各局の報道を見ていると「人質になってかわいそう」と言っているように思える。例えば海外に観光旅行に行き、理不尽にも拉致されたりするのであれば"かわいそう"とも思えるが、戦地に行くということはある程度のリスクは覚悟していたはずだ。人質となったことは自己責任でもあるのではないか。そのような人に身代金を支払うとなったら、当然、国民の納める税金で賄われるのだろう。今回のような行動には十分注意を払うべきだということも併せて報道するべきではないか。

  • フランス・パリで起こった新聞社へのテロ行為を報道していた。テロリストが既に倒れた警官に対し至近距離から頭部への銃撃を行ったシーンを、繰り返し放送した。ボカシの有無は関係ない。フランスはもちろん、他の国の放送局でも、この部分については、過激な映像につき放送を自粛している。すでに銃撃され倒れている段階で必要十分だ。頭部への銃撃まで放送する意味はどこにあるのか。

  • 仏週刊紙が過去に掲載した風刺画数点を手にした番組スタッフが日本にいるイスラム教徒に感想を聞く様子が放送されていた。過激派ではなくても、ムハンマドの風刺画を目にすることは一般的なイスラム教徒にとってもいい気持ちはしない。私はイスラム教徒であるが見ていて不愉快だった。なぜムスリムが偶像崇拝を禁止しているのか等といった宗教的背景を全く理解していない、非常識極まりない行為である。

  • イスラム過激派組織はイスラム教の預言者の権威を利用して権力をふるい、人の自由や命を奪うなど残酷なことをしている。それに対し風刺画であれ、批判できないということになれば誰もおかしいと思ったことを批判できなくなってしまう。マスコミは毅然としてほしい。

  • 「イギリスで高級車を積んだ大型貨物船が座礁」のニュースを伝えていた。この中で、コメンテーターが「だいたい岸壁には左舷付けするので、岸壁にいる時には左側に(船体を)固定している。ですから左側のロープが外れた後に右側に傾いている」と説明していた。しかし、自動車専用船は基本的に船体の右側を岸壁につける構造になっており、彼の解説は全く違っている。正しく説明するべきだ。

  • 各局で「アベノミクス」について報道しているが、どの政策のことを言っているのかよく分からない。3つの政策が掲げられているのだが、どの政策について、この言葉を使っているのか。「アベノクミス」という言葉を安易に多用することは無責任ではないだろうか。具体的な政策を言うべきであって、一つの言葉でくくるべきではない。

  • 大韓航空の前副社長が機内でのナッツの提供の仕方に問題があったとして、接客責任者を降機させ離陸を遅らせた事件で、テレビのテロップに「ナッツ姫」という表示があった。離陸を遅らせたことは言語道断だが、表現が不適切だ。

  • 昔は地震や大事故、天皇崩御などの重大な事柄のときしかニュース速報として報道されなかった。音が鳴ると、今すぐ知らなくてはならない何かが起こったに違いないとテレビに注目したものだ。しかし最近は、地方議員の当落やアイドルの離婚などどうでもいいニュース速報が流れ、うんざりする。音が鳴っても、どうせクダラナイことだろうと見向きもしなくなってきた。重大なこと以外での速報は、やめるべきだ。

  • 異物混入で特集を組んでいたが、なぜそんなに特定の企業ばかり特集するのか。異物混入というテーマで行うのであれば、様々な会社の比較や現状もしっかり放送してほしい。その企業の異物混入だけを取り上げても何の解決にもならない。また一方的なクレームだけを取り上げていて大丈夫なのか。相手がクレーマーだったら、テレビ局はどうするのか。

  • 特定秘密保護法についてコメンテーターの全員が「知る権利が損なわれる」「急ぎすぎだ」などと批判に終始していた。具体的にどの案件が知る権利にそぐわないのか、急ぎすぎなのかの説明がない。批判のための批判にしか聞こえない。具体的にきちんと示すべきだ。

  • 防災訓練のニュースで映像と共に緊急地震速報の通報音を流していた。実際の緊急地震速報と同等の音量レベルで流されていたため、ニュース画面を見ていない人や、見ていてもそれがニュースの音声なのか実際の通報音なのか、判別ができない状況になっていた。震度6以上を経験した人にはまさに恐怖を感じる音だ。通報音のボリュームを落としたり、通報音とともに「これは防災訓練です」というナレーションを流すなどして、実際の緊急地震速報ではない旨を強調する工夫が必要ではないのか。

  • 若い女性の殺害事件のニュースを見た。その中で、被害者女性が元交際相手に送った手紙の原本を読み上げていた。家族などに許可は貰っているとは思うし、元交際相手が情報提供したものを放送しただけなのかもしれないが、自分が好きな人に向けて書いたラブレターを公開されることは、亡くなったとはいえ屈辱的だと思う。死んだ人には個人情報はないのだろうか。

【番組全般・その他】

  • 恒例の年末のスペシャル番組だった。肛門に空気を入れる行為、股間の押しつけなど相変わらず下品で醜悪だった。もっと言えば公然わいせつに該当するのではないか。視聴率ということのみが最優先されている。

  • 大晦日に放送された民放各局の番組は、どの局も似たり寄ったりの長いだけのバラエティー番組で、これでは視聴者が離れるのも無理はない。民放各局に危機感はないのか。年が明けて1月1日の深夜、某民放局では人気討論番組の新年特番を組んでいた。昨年の総選挙についてその必要性があったのかなどについて熱い討論が繰り広げられていた。実に興味深い内容だった。大晦日の夜だからこそ、日本の行く末について考え、検証する番組を民放局は組むべきだ。

  • 正月番組で司会者がゲストの男性タレントと執拗に卑猥な話題を繰り返していた。主に男性器に関する下品な話題で、ゴールデンタイムとしてもお正月番組としても相応しくない最低の下ネタだった。幼い子ども達も起きている可能性の高い「お正月」に、このような深夜番組レベルの品性下劣な話題を公然と放送するということがあってよいのか。

  • 最近は家族向けの正月番組が少なくてさびしい。私が子どもだったころは、クイズ番組や良質のバラエティー番組が揃っていて、一日中見ても飽きなかった。今はテレビ局も手抜きをしているのか、駅伝やサッカーなどスポーツ中継に頼りきりのように見える。正月くらいは、家族みんなで笑える楽しい番組を放送してもらいたい。

  • 正月に大食いスペシャル番組を見たが、あまりに馬鹿げていて怒りが込み上げてきた。世界には飢餓で苦しむ人や病気で食べられない人が何億人といる。大食いを競うことは「食」に対する冒涜であり、弱者への思いやりがない行為である。このような番組を企画立案するテレビ局の神経を疑ってしまう。

  • バラエティー番組でタレントとプロ野球選手が野球のゲームをやっていたが、その際、試合延長を土下座でお願いする場面があった。昨今、巷ではクレーマーが店員などに土下座を強要する事件が増えている。もしかしたらこのような番組の影響が大きいのではないのか。土下座の頭の下げ方に対する嫌らしい文句といい、見ていて不愉快だった。

  • 不倫行為で世間を騒がせた女性タレントを起用していた。謝罪したからどんな番組に出るのも自由なのかもしれないが、家族で楽しむバラエティー番組に出演させることは、慎むべきではないのか。こうした番組のせいで不倫や離婚を面白がるような風潮が蔓延すると、両親が離婚した子ども達は一体どういう気持ちになるだろうか。

  • 雪山のリゾート地で落とし穴を作ってどっきりを仕掛けていた。以前、テレビ番組を真似して若い妻が夫を落とし穴に落とし、結局夫婦ともに亡くなるという痛ましい事故を思い出した。番組では専門家監修のもとにやっているのかもしれないが、素人が真似をしてまたあの事故のようなことになるかもしれない。

  • 連続幼女行方不明事件を取り上げていたが、"超能力"という科学的根拠のない内容だった。今後の捜査に影響を与えかねない内容で、不適切極まりない。この番組は報道番組なのか、娯楽番組なのか。仮に超能力捜査が有効な場合があるにしても、視聴者に誤解を与え、事件解決を遅らせることになりかねない。その場合、テレビ局としてどう責任を取るのか。関係者が了解の上とはいえ、幼女の事件を取り上げる姿勢としては納得がいかない。

  • セクハラまがいのドッキリコーナーにおいて、ふだんなら接触しないが、今回の3人の女優だけは触ってもよいというシーンがあった。「美女にはダメだが、彼女らは美女ではないから許される」といったニュアンスの理由だった。まさにこの理屈で痴漢は被害を訴えにくそうな相手を狙うことがあるのを知らないのだろうか。当然美女でなければ痴漢行為が許されるなどということはない。いくらバラエティーとはいえ、犯罪を助長するような演出で笑いを取ろうとすることは度が過ぎている。

  • 海外でぼったくりに遭うことを検証していたが、ぼったくりだと分かっていて誘いにのり、相手の言われるまま金額を払ってしまうことは、被害者を増やしてしまうのではないのか。本来ならば、海外でぼったくり被害に遭わないように注意してほしいという趣旨で取り上げるべきだ。ぼったくりしていると分かっていて金額を払ってしまう行為は、日本人なら騙せる、いくらでも払うと思わせてしまう。もう少し番組の作り方を考えてほしい。

  • タレントが水中ウォークをする際に空気の供給を遮るシーンがあった。実際は演出なのかもしれないが、危ないように見えた。悪ふざけが過ぎている。ダイビング等にかかわる者として、安全性を軽視する行為には著しい不快感を覚えた。

  • オタク文化を取り上げた番組だったが、丁寧な作りでとても良かった。昨今はオタクに対する偏見を煽るような放送が横行しているが、この番組は色々な生活を送る人たちの様子等を紹介したり、ルール順守の姿勢で楽しみの場を守ることなどが伝わって、素晴らしかった。

  • チャーハンの中にチェーンみたいなものが入っているシーンがある。テロップで「あり得ない混入」と出ており、昨今の混入事件を連想させる不快なシーンだった。混入事件は被害当事者にはトラウマになるほどだ。食べるという当たり前のことが、純粋に楽しめなくなる。事件や事故をおもしろおかしく茶化す演出は如何なものか。

  • 若者たちの恋愛観という話題の中で、「リア充」という言葉が飛び交っていた。若者には当たり前の言葉かもしれないが、50代の私には、何のことか全くわからない。同世代、あるいは上の世代の方の中には、他にも私のような感想を持った人間がいたのではないか。若者言葉には、せめてテロップできちんと説明をしていただきたい。

  • ドラマのなかで女性社員が多くの男性の前で全裸にさせられ謝罪するシーンがあった。ひどすぎて見ていることが辛く、気分が悪くなった。セクハラ描写が明らかに度を越している。このシーンを見た女性はほぼ間違いなく不快に感じるだろう。先進国諸国では、絶対に許されないドラマだ。不快な思いをした全ての女性へ謝罪していただきたい。

  • 深夜アニメだが、その内容に唖然とした。少女が軍艦に変身し、実際に戦闘行為を行うシーンがあり強い嫌悪感を覚えた。社会では「戦争」という言葉にぴりぴりしており、アニメというジャンルを考慮したとしても、不謹慎な番組内容に憤りを覚える。

  • "コンビニで芸能人がいたら気づくか"という内容だった。一般人が店内にいる芸能人になかなか気づかないため、タレントの1人が、おもむろにレジカウンターにあったおにぎりを掴み、隠れて食べ始めた。スーパーやコンビニで「実況Live」と称して、楊枝を混入したり、万引きする映像をユーチューブで流す事件が起きたのは、こうした番組のせいではないのか。

  • バラエティー番組でもシリアスな番組でもタレントが「土下座」をする映像を多々見かけるが、軽々に放送するべきではない。私も以前土下座しろと脅かされたことがあるが、どんなに嫌だったことか。まして写真まで取られネットに張られるなど、とんでもない。土下座謝罪は、遊びの番組でも見ていて不愉快だ。やめてもらいたい。

  • 芸能人のカラオケ番組だと思っていたが、心に染みる歌声が聞こえてきて感動した。舞台で仲良くなった2人だそうだか、ハーモニーは完璧で心がこもっていて、歌の素晴らしさを感じた。また2人の歌声を聞きたい。これからの番組作りに期待している。

  • 淫行騒動から復帰した芸人を取り上げていた。被害者が見たら嫌な記憶が蘇るのではないのか。女性に対しての配慮が足りない。いくら年月をかけて復帰するといわれても、如何なものか。

【ラジオ】

  • BPOで深夜番組の内容を指摘したことは大変良かったと思う。しかし、ラジオはもっとひどい。トーク番組が多くなり、友人と話している場合と同じ感覚で話している。日本中に流れている感覚はなく、当たり前に話している。ラジオの深夜番組を毎日のように聞いているが、野放し状態だ。ラジオ番組についても議論してほしい。

  • 現役の女子中学生や高校生が毎週金曜日に出演する番組だが、出演者たちのきわどい水着を着たDVDがビデオ会社から発売されているのを知った。さらに番組とタイアップしてライブイベントまでしていると聞く。私の友人は番組と連動しているので安心して自分の子どもにイベントに行くことを許可したようだが、DVDの内容に驚いている。

  • ラジオ離れを懸念する放送局が多いが、同じ投稿者のハガキや便りばかり読むのではなく、老若男女問わずに様々な人のネタや便りを読むべきではないのか。常連投稿者のお陰で成り立つ番組もあり、排除しろとは思わないが、あまりにも同じ人たちのネタで固まりつつあり、聴いていて苦痛だ。

【CM】

  • 「たった短期間でこの身体」と謳うダイエットジムのCMだが、誇大広告ではないか。同じ期間、同じことをやってもどのくらい痩せられるかどうかは人それぞれ異なるし、短期間で簡単に痩せられるなら、世の中肥満の人はいないだろう。また太っている人をないがしろにしていないか。

  • シャンプーのCMで、著名な外国のサッカー選手が出演している。彼の身体に刺青があるが、思春期の子どもが起きている時間帯に見せていいものではない。試合で一瞬見える刺青とは訳が違う。

青少年に関する意見

【BPOに関する意見】

  • 私は深夜だからこそ許される表現もあると考えている。ある程度の性的表現が含まれる番組は深夜に帰宅するサラリーマンの数少ない娯楽であり、番組を楽しんでいる視聴者は苦情を言うことはない。少数の苦情を基に表現を規制する方向で議論すべきではない。

  • 私の幼い頃は、親と一緒に性的なシーンを視聴する中で恥じらいの気持ちなどを覚えた。限度はあると思うが、性的なシーンがあれば見なければいいし、親が注意すればいいことだ。BPOの委員長コメントを受けて、各局が放送内容を規制する方向に進まないことを望む。

  • 放送番組での性的表現は不快である。公共の電波での性的表現は慎重に行うべきであり、青少年委員会が各放送局に議論を求めたことを評価する。

【「性的表現」に関する意見】

  • アイドルグループが出演する深夜帯の番組で、同グループメンバーの「へそ美人ランキング」を行っていた。いくら深夜帯だからといって、未成年のアイドルに大人向けDVDのようなインタビューをするのはいかがなものか。

  • 子どもにも人気が高い、お笑いコンビのコントのネタを子どもが演じていた。このネタは男性用性玩具を取り上げたものであり、子どもに演じさせるべきではない。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 怪奇現象を取り上げるバラエティー番組の番組宣伝の映像と効果音があまりにも怖くて、子どもがショックを受けていた。突然、心霊映像が現れ、防ぎようがなかった。配慮が足りないのではないか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 子ども向けのアニメ番組で、主人公がカードゲームの相手役に殴られたり蹴られたりするシーンがあった。審判役からの注意もなく、ゲーム中なら何をやってもいいとの間違ったメッセージを子どもに送ったことになったのではないか。

  • 深夜帯の学園ものドラマでの暴力描写が過激すぎる。青少年に人気のアイドルグループが多数出演しているので、深夜帯とはいえ、多くの青少年が視聴していると思われる。青少年に悪影響があるのではないか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 年末のバラエティー番組で、おしおきと称して暴力と体罰を正当化し、それを"笑い"として放送していた。青少年に極めて高い人気を誇る番組内で暴力を容認しているのは問題だ。

【「動物」に関する意見】

  • ドラマの中で、引っ越しをすることになり、犬を飼えなくなった子どもが、なつく子犬をわざと叩くシーンがあった。動物虐待ともいえる行為を、あそこまでリアルに表現する必要があったのだろうか。一緒に見ていた子どもはショックで泣き出してしまった。

第21号

テレビ朝日『報道ステーション』「川内原発報道」 に関する意見

2015年2月9日 放送局:テレビ朝日

テレビ朝日の『報道ステーション』(2014年9月10日放送)で、原子力規制委員会が九州電力川内原発の新規制基準適合を正式決定したニュースを放送した際、規制委員会・田中委員長の記者会見の報道内容に事実誤認と不適切な編集があった事案。
委員会は、問題の放送にいたった経緯や原因などを検証した結果、担当ディレクターらの「故意」や「恣意的・作為的な編集」は確認されず、過失であったとしながらも、事実誤認と不適切な編集のいずれも、客観性や正確性を欠き、放送倫理に違反すると判断した。
その上で、「この事案で萎縮することなく、失敗から学んだ教訓を血肉化して、今後の報道に当たってほしい。視聴者の信頼を回復する道は、前へ進むことによって開かれる」と結んでいる。

2015年2月9日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2月9日午後1時15分から千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。
また、午後2時から記者会見を開き、決定内容を公表した。会見には29社61人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
詳細はこちら。

2015年5月8日【委員会決定を受けてのテレビ朝日の対応】

標記事案の委員会決定(2015年2月9日)を受けて、当該のテレビ朝日は、対応と取り組み状況をまとめた報告書を当委員会に提出した。
5月8日に開催された委員会において、報告書の内容が検討され、了承された。

テレビ朝日の対応

全文pdf

目 次

  • 1.委員会決定の放送対応
  • 2.委員会決定内容の周知徹底
  • 3.放送番組審議会への報告
  • 4.委員会決定前の取り組み
  • 5.委員会決定後の取り組み
  • 6.終わりに

第166回 放送と青少年に関する委員会

第166回–2015年1月27日

"休日夕方のアニメで、刺激的なシーン"全委員が視聴した上で討論…など

第166回青少年委員会を、1月27日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。2014年12月1日から2015年1月15日までに寄せられた視聴者意見について話し合い、1案件について討論しました。その他、1月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告、2015年2月の山梨での意見交換会などについて話し合いました。
次回は2月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年1月27日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

  • 「休日夕方のアニメで、若い女の子が全裸になったり下着を見せたりする刺激的なシーンがあった。子どもたちに悪影響を及ぼすので自重してほしい」などの視聴者意見があったアニメ番組について、全委員が当該番組を視聴した上で討論しました。委員からは「”午後5時から9時に放送する番組について、とりわけ児童の視聴に十分配慮する”必要がある。どうしてあのようなシーンが必要なのだろうか。性的なことを簡単に入れ込んでしまう最近の風潮に抵抗を感じる。時間帯や視聴者の年齢を考えた時、制作者はもっと慎重であってほしい」「ライトノベルや漫画を、時間帯を考えずにアニメ化すると視聴者から意見が来るということだろう」などの意見が出ましたが、「視聴者からの意見ほど刺激的とは思えなかった」という意見が多数を占め、審議入りしないことにしました。

中高生モニター報告について

1月の中高生モニターは、「年末年始番組を見た感想」というテーマで書いてもらいました。今回は25人から報告がありました。
人気番組に意見が集中しました。『紅白歌合戦』(NHK)。「いつもと違い歌をどんどん歌ってくれるのが嬉しくて楽しかったです。子どもから大人まで楽しめるのがこの番組だと思うので、今年の大みそかも期待しています」(岡山・高校1年女子)。「巨大なセットや大きなバックスクリーンを使った演出は、紅白ならではのビッグスケールで歌を何十倍にも楽しめました。また、どの歌手がどのあたりに出るかがあらかじめ分かっていたのも、他の音楽番組と違った良さでした」(東京・中学2年女子)。「今年はウイスパー~アニメ『妖怪ウオッチ』(テレビ東京)のキャラクター~なども出てきてすごくおもしろかったです。小さい子どもも歌ばかりではなく飽きずに見られて良いと思います。2015年も今まで以上に笑えて年越しができるようにお願いします」(滋賀・中学1年女子)。
『絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!』(日本テレビ)。「毎年違うテーマで飽きることはありません。とにかくおもしろいです。この番組を是非毎年やってほしいです」(神奈川・中学1年男子)。「年末はいつもこの番組を見ています。クラスの友だちも殆どがこの番組を見ていて、よく話題にします。この番組はいろんな芸能人が頑張っていておもしろいです」(広島・中学2年女子)。
大型ドキュメンタリー番組を視聴したモニターもいました。『戦後70年 ニッポンの肖像 プロローグ 私たちはどう生きてきたか』(NHK)。「戦後70年といっても、私たち中高生はまだそのうちの20年弱しか生きておらず、残りの50年は見聞し想像するしかない。私自身、平和な生活を享受する中で”戦争”“戦後”に思いを馳せることは容易ではなく日本が歩んできた道を確認したいと思っていた。この番組はその願望を見事にかなえてくれた」(東京・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】人気のバラエティー番組への熱い賛辞がある一方で正反対の厳しい意見もあり、感慨深く読んだ。

  • (福岡・高校1年男子)『絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!』(日本テレビ/福岡放送)。この番組は私にとっては『紅白歌合戦』よりも好きであり、これを見なければ年を越せないぐらいこの番組はおもしろいです。
  • (愛媛・高校2年男子)年末年始、だらだらと放送している番組が多い。例えば『絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!』(日本テレビ/南海放送)。年を越してまで放送する必要があるのかと思う。
  • (愛知・高校2年女子)『絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!』(日本テレビ/中京テレビ)。BPOの審議にかけられても、年々危なく下品になっていくのは反対です。しかし、そういうことをしていかないとテレビ業界に残っていけないのかと思うと、複雑な気持ちです。危なくなく、下品にならないけれど、心から笑える番組を作ってほしいです。

●【委員の感想】最近の番組は企画の自由度が減っているのか新しいものを生み出そうという制作意欲が感じられないという報告には同感する。

  • (埼玉・中学3年男子)『相棒』(テレビ朝日)のように何度も同じものを再放送されると飽きてしまい、本放送にも影響してしまいます。「新鮮味ある番組」「見たことのない種の番組」を見てみたい。放送局のスタッフならそれに応えることができるはずです!
  • (宮城・高校1年女子)過去の番組のリメイクが多く見受けられ、それがマンネリ化や、視聴者離れを加速させている大きな要因の一つだ。過去の栄光にしがみつくよりも、新しいものを作る努力が今のテレビ局に必要とされていると思う。

●【委員の感想】自分の弱点を笑いにする芸人さんの潔さを褒めているモニターがいた。

  • (佐賀・中学1年女子)『アメトーーク!』(テレビ朝日/九州朝日放送)。”運動神経悪い芸人”のコーナーがとてもおもしろかったです。久しぶりに家族全員で笑いました。人の欠点を笑ってはいけないけれど、一生懸命だし、自分の欠点を笑いにできることがすごいなあと思いました。

●【委員の感想】地方局制作の深夜番組を熱心に視聴し、褒めている感想が印象に残った。

  • (佐賀・中学1年女子)『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』(福岡放送)という深夜の番組があります。「一日限りの高校生」という企画は、ひきこもりで不登校になった若い男の人が高校生にあこがれて、一日だけ高校生を体験する内容でした。普通のことが経験できなかった気持ちが伝わり泣けました。みんなに見てほしいなと思いました。

調査研究について

  • 「中高生の生活とテレビに関する調査」について、3月16日の年次報告会に先立ち、報告会を行うことなどが話し合われました。

今後の予定について

  • 2月13日に、汐見委員長、加藤副委員長、最相委員が参加して、山梨県甲府市で地元放送局と意見交換会を開催することについて事務局から報告がありました。
  • 2月6日に、小田桐委員が石川テレビ制作の青少年向け番組『8ッピーLiveいしかわキッズ!』視察に行くことに関しての報告がありました。
  • 2月5日に、加藤副委員長が講師派遣でテレビ埼玉に行くことについて報告がありました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」から、北海道テレビ制作『帰れぬ故郷』、サンテレビ制作『神戸在住』を加藤副委員長が視聴し、感想を送ったとの報告がありました。