第217回 – 2015年2月
大阪府議事案のヒアリングと審理
佐村河内氏事案2件の審理…など
「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングを行い、申立人、被申立人から詳しく事情を聞き、そのうえで「委員会決定」案を検討した。また、佐村河内守氏から提出された申立て事案2件を審理した
議事の詳細
- 日時
- 2015年2月17日(火)午後3時00分~6時10分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.大阪府議事案(TBSラジオ)のヒアリングと審理
2.大喜利・バラエティー番組事案の審理
3.謝罪会見報道事案の審理
4.その他 - 出席者
-
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員
1.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案のヒアリングと審理
対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語られた。
これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」と申し立てた。
この日の委員会では、申立人、被申立人双方から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聴いた。
この中で申立人は、「キモイ」という表現を社会的影響の大きい公共の電波で流したことが問題としたうえで、「私は公人という立場なので一般的な批判は当然受け入れなければならないと思っているが、侮辱罪にあたる可能性がある表現まで受け入れられるかというと話は別だ」と述べた。また、番組により名誉感情を害され、社会的評価が低下したと主張するとともに、番組の放送以降、番組の影響と思われる嫌がらせの電話やメールが届いたと被害状況を訴えた。
さらに、中学生とLINEを巡るトラブルが起こったのは2013年10月であるにもかかわらず、2014年8月になって問題が報道された背景に、9月に予定されていた交野市長選を巡る政治的な陰謀があったと主張した。
一方被申立人のTBSラジオからは、コンプライアンス担当の取締役ら3人が出席し、まず、個別の発言だけを取り出して検討するのではなく、全体の文脈を見て判断してほしいとしたうえで、発言は人格攻撃ではなく、「申立人の不適切な行為に対しての論評という意識があるからこそ『キモイ』と言っても許される」と出演者が判断したもので、それは「TBSラジオの考え方に合致している」と述べた。
また、大阪府議という立場は、最も公人性が高いと考えられる国会議員と同等程度の非常に高い公人性を持ち、受忍の範囲は大きいと主張した。
市長選に絡む陰謀だとの申立人の主張に対しては、当該番組の放送段階では、申立人の記者会見等をもとに論評したもので、「本件とは関係がないと考える」と述べた。
その後、委員会ではヒアリングの結果を踏まえて審理した。前回委員会の議論を反映した「委員会決定」案について起草担当委員が説明、それをもとに各委員が意見を出してヒアリングで明らかになった点を盛り込むなどの修正を加えた。
今後、第2回起草委員会を開いてさらに修正した決定案をまとめ、次回委員会に諮ることになった。
2.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理
審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
前回の委員会後、申立人から反論書、被申立人のフジテレビから再答弁書が提出され所定の書面が出揃った。事務局が双方の主張を取りまとめた資料を配付し、新たな主張を中心に説明した。次回委員会では論点の整理に向けて審理を進める。
3.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理
審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
本件事案については、後から審理入りした上記「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案と並行して審理を進めることにしている。今月の委員会では「大喜利」事案とあわせ論点の整理やヒアリング等、次回委員会以降の審理の進め方を検討した。
4.その他
- 3月16日に開かれるBPO年次報告会について事務局から説明した。
- 次回委員会は3月17日に開かれる。
以上