第132回 放送と青少年に関する委員会

第132回 – 2012年4月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第132回青少年委員会は4月24日(火)に開催され、3月12日から4月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、4月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年4月24日(火) 午後4時30分~6時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、川端委員(新)、最相委員(新)、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けた。そのなかでフジテレビで4月6日に放送された『ペケ×ポン』に多数の批判的な意見が寄せられたことから、委員全員で視聴することになった。

中高生モニターについて

2012年度の新しい「中高生モニター」34人に、東日本大震災から1周年の番組や、この1年間の震災関連の放送について、「感じたこと」「考えたこと」についてリポートしてもらった。今回は、34人全員から報告が届いた。
2012年3月2日に、青少年委員会では、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を出し、<震災関連番組内で、映像がもたらすストレスへの注意喚起を望みます>など、3点を各放送局にお願いした。それに対する各放送局の対応に関して、モニターから様々な意見が寄せられた。個々の番組に関する意見がある一方、震災報道全般に対する批判、賛同なども数多く寄せられた。

【主な意見】

  • 「NHKの『帰れない犬たち震災が奪った日常』を見た。犬と飼い主が離れ離れで生活していかなければならなくなった悲しみ、苛立ちがとっても重たく伝わってきた。いつも通りの日常が突然奪われてしまうって、本人たちでなければその悔しさはわからないのかもしれない。今回のドキュメントはあの大震災から間違いなく1年が過ぎたんだと実感させられる内容だった。私たちもこの大震災の意味を重く受け止め、他人事ではないという気持ちを何時までも持ち続けていかないといけない」。(長野・高校1年女子)
  • 「私が『東北地方太平洋沖地震』の報道を見て考えたことは、どこか”うそ臭い”ということです。私が知りたいことは、今、被災地がどういう状況なのかということです。でも、回りくどい報道ばかりで核心が隠されている気がします。もう一つ、”絆”という言葉を使いすぎだということです。”絆”という言葉は、近年使われ始めた比較的新しい言葉、という気がします。そういう言葉を、40代ぐらいのニュースキャスターが使っていたり、地元のおじさんが使っていたりすると、違和感があって、どんなに感動的な話でも、白々しく感じてしまいます。また、使いすぎ、というのも白々しさに拍車をかけています。地元のおじさんが、『ご近所との絆があったから…』、ナレーションが『そこには親子の絆がありました…』、コメンテーターが『やっぱり絆が…』とか言っていると、急にうそ臭くなって、『うざっ』と思ってしまいます」。(北海道・中学3年女子)
  • 「日本テレビの『復興テレビみんなのチカラ3.11』を見ました。僕等、高校生にとって震災に関するニュースは重々しく、なかなか見る機会も少ないのですが、この番組では被災地と向き合ってきたアーティスト達の様子がピックアップされていて、そのアーティストの中に僕の好きなYUIが含まれていたので興味があり、視聴しました。そこで普段はバラエティーなどしか見ない僕も、この震災に関する番組を見つけ、見たいと思いました。実際、目当てのアーティストが出るのはほんの少しでしたが、それでもこの番組は5時間近くもやっているので、結果として他のテーマも見ることになり、震災後のことについて知ることになりました」。(東京・高校2年男子)
  • 「去年、震災が発生してから、震災のニュースがテレビでたくさん伝えられていました。そのときに、あまりにひどい状況を見ることはストレスにもなるので、子どもはあまり見ないほうがよいと言われていると家の人から聞きました。確かに、津波で家や車や人が流れていくのを見るのは、とても怖いと思いました。でも、この一年間の映像を見て、少しずつ復興してきたことや、ボランティアとして働かれた人の様子を知ることができ、よかったです。ガレキは今後どう処理されていくのか、原発をどうするのかなどこれからも注意深くニュースに目を向けていく必要があると思います。ぼくは電車が好きなので、線路が流されていたり、電車が倒れていたり、東北新幹線の駅がとてもひどい状況になっているのを見たりして、とても心配でした。でも東北新幹線や一部の路線が復旧できて、機会があれば、自分の目でその様子を見てみたいと思いました」。(滋賀・中学1年男子)
  • 「ほとんどの番組が視聴率を取るがための企画をしているようにも感じる。確かに将来への記録という意味では大切なのかもしれないが、津波で家を流されたり、家族を失ったりした人にストレートに質問をしているのを見て、興味本位の報道をしているのではないかと感じてしまう。また、在京マスコミはふだんから”東京目線”の報道ばかりしていて、本当に被災者に寄り添った報道ができているのか疑問に感じる。そんな中でも特に震災関連報道が良かったと思うのは公共放送のNHKだ。地震が起きたらまずNHKを見るというのは日本人にとって”常識”と言っても過言ではないと思う。震災後の報道も民放と比較して良かったと感じ、視聴率を考えながら番組を作らねばならない民放との差を感じることができたと思う」。(大分・中学3年男子)
  • 「多くの報道番組の扱う『震災』に関する報道の内容が、表面的で危機感が被災地から離れている僕にとって感じられません。被災地に咲く桜、甲子園での選手宣誓、各国からの応援メッセージなどなど、そのような報道は被災者に勇気を届けることができると思うし、とても大切だけれど、問題は情報のバランスだと思います。特に恐いのが放射線やそれに関する報道量の少なさです。そんな中、特に僕がよかったと思う報道はJ-WAVEが3月28日にオンエアしたラジオ番組、『ジャム・ザ・ワールド』です。たった10分近いコーナーでありながら、原子力発電所の状況について、とても詳しい内容が話されていました。東日本大震災から1年に関する報道は、テレビよりラジオの方が全体的には優れていたのかなと思います」。(東京・高校1年男子)
  • 「震災の状況を伝えることは本当に大事なことだし、そのことは続けるべきことだと思います。しかし、どの報道もどの番組も同じようなことばかりやっていると思います。僕は2011年の夏休みに岩手県にボランティアに行きました。そのとき分かったことは、この地震のことは風化してはならない、忘れてはならないということです。なのに、インパクトがなく、どこも同じようなことばかりやっていて、風化するのは時間の問題だと思います。テレビはどこか遠慮のようなものをしているように思います。現地の伝えられることを全然伝えていないと思います。また、被災地に行って思ったことは、臭いや現地の人のことです。テレビでは臭い自体は伝えられませんが、臭いを直接伝えられなくても、本当の現状が伝わるような工夫がまだできるのではないだろうかと思いました。テレビは、ありのままをそのまま伝えることが大事だと思います。それを見て何を思うか、どう判断するかは国民のやるべきことだと思います。テレビは決して道徳的なものばかりである必要はないと思います」。(静岡・高校2年男子)
  • 「私が一つ印象に残っている番組があります。3月に放送されたフジテレビの番組です。昨年の震災以降、映像を見たり、音声を聞いたりして、心のストレスを負ってしまう子どもが急増したそうです。そこでこの番組は『ストレスを感じる場合は視聴をやめてください』とのテロップを流し、あえてリアリティーのある映像を流していました。私はそのような番組も必要だと思います。見るか見ないか自分でチョイスし、リアリティーのある映像を見て、自分で処理することで、現実を受け止められると思うからです」。(東京・中学1年女子)
  • 「ちょうど1年がたった3月11日は、テレビ欄を見るとどの番組も震災の特集が組まれており、テレビを見ていてこの1年を深く考えさせられました。そんな中思ったのは、津波の映像が放送されたことについてです。迫ってくる津波や津波に流されていく車や建物の映像を見て、私は胸が痛みました。しかし、その映像を被災者の方々が見たらどう思うでしょうか。1年を振り返るための特集とはいえ、津波の映像は放送すべきではなかったと思います。その映像によって家族を亡くした悲しみや流された恐怖が呼び起こされてしまったとしたら、そのテレビ番組はよくない放送であると思います」。(群馬・高校1年女子)
  • 「3月24日放送の『NHKスペシャル』では、地震、津波、原子力発電所の事故のため放射能汚染により、町民全員が避難することになっている福島県浪江町の1年間の様子が放送されました。実は私自身、現在自宅から離れ避難生活を送っています。今回の放送は、他人事としてではなく、自分自身のこととして、これからの生活を心配・不安になりながら、家族そろって見ました。今回の放送の中で青年部の方が『仲間と、浪江町焼きそばで盛り上げ、日本一の町にしたい』と言った言葉は力強くて、私も勇気付けられたし、応援したいと思いました。どんな辛い生活を送っていても、目標を失わないってことは素晴らしいと思います。原発事故についての放送は見れば不安になることが多いのだけれども、放送してもらうことで、この事故が日本中の方に忘れられないようになるので、これからも取り上げてほしいと思います」。(福島・中学2年女子)
  • 「私は、日本テレビの『ザ!鉄腕!DASH!!』を見ました。その番組は、東日本大震災から1年経った今でも砂浜に流れ着くゴミなどを、自主的に拾っている人に密着すると言う内容でした。私はこの番組を見て、人と人との想いの強さをすごく感じました。ゴミを拾う人たちはみんな他人だけど、『もう一度サーフィンをしたい!』『もう一度観光業を復活させたい!』と言う想いは、同じだと思いました。たった1人の行動から始まり、今ではたくさんの人達でゴミを拾うと言うことにとても感激しました。これから日本にどんな困難が降り注いでも、この心があればみんなで乗り切れると思いました」。(長野・中学2年女子)
  • 「3月24日の『NHKスペシャル~故郷か、移住か~原発避難者たちの決断』を見ました。この番組は、大震災において地震・津波の被害に遭い、原発事故による放射線漏れで深刻な影響を受けた福島県浪江町を取材する中で、この先故郷浪江町にもう一度戻って生活するか、安全な場所へ移住して生活するかで選択を迫られる住民や町長らの苦悩を描いている。この番組を通して、帰還か移住かという選択の間で揺れ動く住民たちの心がはっきり映し出されていた。原発避難区域の住民たちの故郷に対する複雑で深刻な思いが強く伝わってきた。この震災による影響がいま被災地にどのような問題をもたらしているのか、その問題が以前とどう変わってきているのか、今回の番組のようにひとつの問題に焦点を絞って定期的に放送してもらうことが、震災という出来事を風化させないために重要だと感じる。これからも、継続的にこのような震災報道を見ていきたいと思う」。(東京・高校2年男子)

【委員の所感】

  • 皆さんの意見を、非常に面白く読ませてもらいました。震災ですべてを無くしてしまう怖さをうまくリポートしていました。「絆」を連呼したり、感動ストーリーを作ってしまうテレビに、「うそくさい」と断じる意見に感心しました。
  • 中高生の知りたいことを、テレビは伝えていない事が分かりました。若者が報道番組を見るきっかけが、有名人なんだなと、新鮮に思えました。
  • 中学生でこんな文章が書けるのかと、感心しました。全体的に、テレビ局のうそっぽさをクールに見ている、と言う感想を持ちました。
  • 皆さん個性があって良かったです。初めから視聴率を取るための企画であったり、興味本位の報道ではないかなど、常にシビアな目線で報告してくれるタイプと、素直に自分の感受性を一般化するタイプの、大きく2つに分けられる気がしました。
  • テレビで報道されているものと、ネットの情報が同じ価値になっているなあと感じました。基本的に裏づけの有るテレビの情報と、責任のはっきりしないネット上の情報の違いを、どうやって分かってもらえるか少し心配になりました。
  • 映像のジレンマとして、あるストーリーに落とし込まなければならない制作者の状況を、「あんたたち分かっていないなあ」と、外から柔らかく突きつけられたような報告があり、元テレビ制作者として心に響きました。
  • この前まで小学生だった人が、ここまで書けるのかとびっくりしました。自分で被災地に行って自分で見聞きしたものと、テレビの伝えるものとの落差を感じたと言う報告に感心しました。

「今月のキラ★報告」 東京・高校2年女子

私は日本テレビの『復興テレビみんなのチカラ3.11』を見ました。この番組は3月11日に生放送されたものだったので、追悼式の様子や、被災された方のその時の心境をリアルタイムで知ることができました。
被災者の方がおっしゃっていた事でとても私の記憶に残ったものがあります。その方は福島第一原発近くに住んでいましたが、今は立ち入り警戒区域となっていて、故郷に帰ることができていません。ニュースキャスターが、「何が一番恋しいですか。」と聞いたところ、その方は「カムラヤのUFOパンです」と答えてから、そのパン屋さんのエピソードをたくさん話していました。本当はこんなことを思ってはいけないのですが、私は思わず「私たちはそのパン屋さんについてそんなに詳しく知りたいわけでもないのに…」と感じてしまいました。その後、カメラが警戒区域に入っていき、その、人のいない町の現状を撮っていきました。すると、そのパン屋さんの変わり果てた淋しい姿が写しだされ、被災者の方は涙ぐんでいました。その時私は、「私にとっては、もしかしたらどうでもいいようなことでも、その人にとっては何十年の思い出が詰まっているんだ」ということに気づきました。そして、これがもし自分の町で、私はもう後30年はそこに戻ることができないと言われていて、そんなときに「何が一番恋しいですか」と問われたら私もきっとその被災者の方と同じように、他の人から見たらどうでもいいようだけど自分にとっては日常だったことについて話すでしょう。
日常生活、親や友達の存在、学校など、当たり前すぎてそのありがたさが分からないものこそ、失ったときのショックが大きくなるのだと思いました。こういう事は、この番組を見ていなかったら知ることができなかったと思います。ここで、私は放送が私たちに教えてくれることの奥深さを知ることができました。
しかし、一方で去年、震災直後のニュースを見たところ、ニュースレポーターが被災者の方に「とても悲しいですね」と話しかけていましたが、被災者の方はうつろな目つきで下方を見、返事はしませんでした。私は、被災者の方なら誰だって同じ反応をするだろうと思いました。被災者の方の悲しみや苦しみは「とても悲しいですね」という言葉では到底適切に表現できません。技術が発展して、最初は文字だけの新聞、次に声のラジオ、そして声と姿によるテレビと、次々に情報伝達の手段が増えました。しかし、どんなに声で訴えても、どんなに表情や身振りで表しても、体験したことすべてを伝えるのは不可能です。
ここで、私は放送の限界というものを感じました。だからこそ、報道では体験をした方の立場になって、様々な工夫を凝らして物事を伝えていくべきだと思いました。そうすることによってだんだんと実体験と報道によって人々が得た情報の差を埋めていくことができ、また、そうすることが報道の使命であると私は思います。

【委員会の推薦理由】

震災報道を通して、報道では伝えきれない真実や感情があることに気がつき、その上でどのように報道していくべきかということに考えを及ぼしている点が高く評価されました。また、日常のことすぎてありがたさに気がついていないものを失った時のショックの大きさに気がつき、当たり前だと思っていることのありがたみを感じる感性も評価されました。

2012年3月に視聴者から寄せられた意見

2012年3月に視聴者から寄せられた意見

東日本大震災から1年が経過し、各放送局が特別番組を報道したことへの反響、意見が多かった。CMでは女性アイドルグループが飴を口移しでリレーしていく製菓会社のCMに、「不衛生」だとの強い批判が多数あった。

2012年3月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,191件で、2月と比較して93件増加した。
意見のアクセス方法の割合はメール66%、電話30%、FAX2%、手紙ほか2%。性別は男性66%、女性29%、不明5%。年代は30歳代33%、40歳代20%、20歳代22%、50歳代12%、60歳以上8%、10歳代5%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は388件【31局】であった。

このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、31件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

3月の視聴者意見は1,191件と先月より93件増えた。
これにより2011年度の視聴者意見の総数は前年度より1,211件減少し、1万9,208件となった。
東日本大震災から1年が経過し、各放送局が特別番組を報道したことへの反響、意見が多かった。津波被害の映像など、被災者に過剰な心的負担を与えかねないとして映像の使用に注意が払われたが、それでも被災者からは「もう見たくない」という声が、少なからず寄せられた。取材対象地域も被害の大きかった一部地域にかぎられ、表面的なショーアップが不愉快だとの声や、被災地で苦労を重ねる人々の現状を、もっときめこまかに報道してほしいとの意見もあった。
番組制作上の安全管理の問題では、疑惑が指摘されたら、過去の番組でも調査しなおすべきだなど、放送局への不信の声も多かった。
ワイドショーなどで、女性タレントの引きこもりが話題となったが、本人や同居する”自称占い師”への取材のあり方をめぐって、「やりすぎ」「非常識」だとの批判が多かった。
放送上の問題では、春の改編特番が長時間すぎることや、肝心のところでCMになる「CMまたぎ」に対する反発が強かった。
CMでは女性アイドルグループが飴を口移しでリレーしていく製菓会社のCMに、「不衛生」だとの強い批判が多かった。
ラジオに関しては30件。CMに関する意見は190件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は196件で、前月より86件増加した。
今月は、CMに関する意見が116件、次いで低俗・モラルに反するとの意見が17件、表現・演出に関する意見が16件と続いた。
CMに関する意見が突出した数となったが、これはアイドルグループのメンバーがお菓子を口移しで渡すシーンへの嫌悪感を示す意見がほとんどであった。低俗・モラルに反する意見では、子どもが見る時間帯への配慮を求める意見が寄せられた。表現・演出に関する意見では、バラエティー番組の中で、座ろうとする人の椅子を引いて転ばせる場面について危険だとする意見が複数寄せられた。その他、津波映像の取り扱いに関する意見も複数寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 震災1年の特別番組が各局で放送された。有名人が被災地に出向いたり、バラエティー番組でも被災者に私物をあげたりしている。それらは放送局の自己満足であり、私はただの偽善行為だと思う。どの番組も被害が大きかったことで有名になってしまった市町村から中継する。限られた地域の方のみがイベントに参加でき、買い物もろくにできないような本当に支援の必要な山奥の小さな村や集落、身体の不自由な方、お年寄りの方々は参加すらできないし、見向きもされない。お笑い芸人が大挙して押し寄せイベントを行うくらいなら瓦礫撤去でもしたほうが多くの方々のためになるはずだ。
  • 各局とも終日震災特集を組んでいた。しかしどの番組も、震災の物凄さをあらためて強調することにこだわり過ぎている。津波によるショッキングな映像をまるでショーのように繰り返し流されるのは被災地住民として耐えられない。節目の日の放送なのに、「これからの展望」というもっとも大切な視点がなおざりになっていたことが残念だった。
  • 被災地での卒業式の模様を報道していた。子どもが無事に卒業した家庭なら嬉しいことだろうが、私のように妻や子供3人を津波にさらわれた者としては辛すぎる。そういう場面を自粛してほしい。何かというと直ぐ東北の震災地域を意識してか、その地域だけがピックアップされた報道が目立つ。被災地が他地域から差別化されたようにさえ感じる。
  • 震災をエンターテイメントとして扱っている。災害としてありのまま報道することは理解できるが、民放がしていることは芸能人を多数使い、泣いていたり、叫んでいたりする映像を垂れ流している。災害を警告するというより過剰に煽って、全局で自分のところが大きな災害に見えるだろうと競争しているように見える。番組宣伝を連発で流す必要もないのに、どの局も競うように惨い映像を使って宣伝している。モラルがない。
  • ドキュメンタリー、ニュースなどでも「震災1年」と題して、集中的に被災地のものものしい映像が目立つ。日本は地震国であり、大きな被害をもたらす災害が起こり得ること、また原子力発電の事故により甚大な被害が起こることを伝えきれなかったこと、津波の警報が適切でなかったこと等、報道のあり方が問われているのに、「震災1年だ」と興味本位のものものしい映像を流すことは倫理に反している。
  • 津波のショッキングな映像が放送された。私は被災者だが、もう見たくない。衝撃的な映像を使うことは、制作者の自己満足としか思えない。誰のための放送なのか。被災者の気持ちを考えたことがあるのか。
  • 芸能人や会社社長をしている人たちが、自宅や私物を見せている番組があるが、どれも高級品だし、靴やバックなどの小物類を数十個も持っている人もいる。その使っていない物や見せびらかしている品物を売って、被災地の支援にまわせないものかと不快に思う。被災地では今でも仮設住宅で暮らし、地方に移り住んだとしても、震災前の生活に経済的にも精神的にも戻れない人たちが居ることを、本当にわかっているのだろうか。
  • 「東日本大震災」から一年、ことあるごとに日赤を通じて義援金を送ってきたが、義援金が被災者に届かない報道が相次いだ。最近はその報道もなくなり、義援金がどうなったか気になる。特に有効に使われた情報を知りたい。お金の問題ではなく、気持ちが届いたかを具体的に知りたい。義援金を募った放送局には報告する義務があると思う。芸能人の洗脳騒動や幼稚なバラエティー番組はもうたくさん。義援金の使われ方の番組を放送すべきだ。
  • 震災について、被災地の妊婦が腕時計型の線量計をつけていることや、番組スタッフがチェルノブイリまで取材に行っていたことなど、私の知らなかった事実をたくさん放送していた。スタッフの「政治家なんかに任せてはおけない」という気持ちを感じ取れる、とても興味深い内容だった。
  • お笑いコンビ・オセロの中島知子さんについて、民放は連日報道している。いずれの報道も、カルトや洗脳の危険を煽り、おためごかしに粉飾しているが、全くの欺瞞だ。自宅に張り付いて出入りを監視し、昼夜を問わず実家に押しかけて居座っている。無関係の芸能人の葬儀の場にまで押しかけて、中島さんの件についてコメントを求めるなど、もはやメディアによる迷惑行為と人権蹂躙だ。カルトや洗脳の危険についての啓蒙は、まず民放のあらゆる番組が占いやオカルト、風水や手相、超能力や疑似科学などに関する情報の垂れ流しをやめることから始めるべきだ。

【番組全般・その他】

  • 芸人を並べただけのつまらない番組ばかりで、見たいものがない。あのような番組ばかりでは馬鹿になる。スポーツもろくに放送しないし、時代劇もついになくなった。そういう番組は有料放送で見なさいということらしい。しかしそう言われても、見たいチャンネルを選んでいちいち契約するのは、私のような年齢の者には大変面倒くさい。せっかく地上波があるのだから、そちらの内容を充実させ、無料でいろいろな種類の番組を楽しめるようにしてほしい。
  • 最近、オネエといわれるタレントが男性タレントに抱きつきキスをねだる行為が、バラエティー番組でよく見受けられる。小学生が見るような時間帯にも多く見られ、保護者としてはとても不快だ。セクシャルは多種多様だし、犯罪でない限り尊重されるべきだが、男性タレントが女性タレントにしたら、訴えられるようなことを、笑えるからという理由で公共の電波で放送するべきではない。
  • 改編期のスペシャル番組を見たが、「CMまたぎ」はもちろんのこと、各編を1部ずつ完了させず、別のエピソードでつなぎ、また本編に戻るという込み入った手法で構成していた。内容を引っ張り、視聴率を稼ごうという狙いだろうが、視聴者は不自然な演出に翻弄され、番組を楽しむ余裕もなくただ疲れた。通常の1時間番組であればまだしも、4時間半にわたる放送だったので、うんざりした。
  • 「続きはCMの後で」という、いわゆる「CMまたぎの手法」が増えているが、見ていてイライラする。制作者は、視聴者の思いをどこまで理解しているのだろうか。視聴率だけが目的の番組作りは、放送局の傲慢以外の何ものでもない。視聴者目線に立って”番組作りそのもの”について考え直してもらいたい。
  • 妻がBSの通販番組を見て「包丁セット」を購入した。「すごく良く切れる」「素人でもプロ並みの切れ味」等の謳い文句で、出演者が大げさに紹介していた。しかし手元に届いた商品はあまりにお粗末で、とても使えるような代物ではなかったので消費者センターに訴えた。この番組に限らず、通販番組での”誇大な謳い文句”や大袈裟なリアクションは迷惑だ。通販番組として放送する以上、テレビ局にも責任はある。
  • 最近の番組で疑問と不快に思うことは、アナウンサーやキャスターの「原稿読みの間違いの多さ」と「原稿の見すぎ」だ。たとえば、商品の名前、価格や人物名の読み違いと文字違い。最近のアナウンサー・キャスターは原稿読みの教育や事前読みなどしていないのか。謝罪しておしまいでは、「プロ意識」がなさ過ぎる。報道・情報の「信頼性」がなくなる。今一度「アナウンサー」としての職業意識を持って伝えてほしい。

【CM】

  • アイドルの宣伝にしか見えず何を伝えたいのかわからないCMや、うるさいだけのCM、内容をかいつまんだ番組のCMが多くてうんざりしている。気持ちよく印象に残るCMが少ない。CMを見て、逆に商品の購買意欲が薄れたりする。
  • AKB48が口移しでキスをしてお菓子を食べる「ぷっちょ」のCM。こんな品位の欠けるCMはやめてほしい。食べ物を口移しでリレーすることは不衛生だし、気持ちが悪い。オタクだかファンだかを喜ばせるようなことがしたいのか不明だが、このグループはPVで10代の女の子を含む子が下着になって抱き合ったり、「私と赤ちゃん作らない?」というCMをしたり、非常に不快である。CMをいちいち情報番組で取り上げるので、見たくなくてもくだらない情報が入ってくる。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 夫婦の性生活(セックスレス)などについてのテーマが挙げられていた。この時間帯は家族や子どもが見るのに、いかがわしい内容の番組を放送することはどうだろうか。私はその時、両親と一緒にみていたがとても気まずく感じた。さらに、セックスレス解消のためといった対策なども紹介までされていた。もう少し配慮をしてほしい。
  • バラエティー番組に子役を出し過ぎだ。場違いな番組に、多数出演している。最初はかわいいと思ったが、これだけ見せられるとうんざりする。子役にはドラマの中で、子どもらしさを表現させるべきだ。
  • 大人と子どもが意見を言うという内容のラジオ番組に、23時から14歳の少女が生電話で出演していたが、これはおかしくないのか。23時に14歳の子どもが起きていることに違和感がある。
  • 新人俳優賞の表彰式に5歳の子役を出演させインタビューをしていた。あきらかに労働基準法違反ではないか。「生放送」として21時からスタートしているので、5歳の子は21時過ぎに出演していることになる。もし録画ならば「生放送」と記していることは嘘である。いずれにしても、問題ではないのか。

【表現・演出に関する意見】

  • 東日本大震災1周年を前にして、BPOの青少年委員会からも津波映像の取り扱いについての要請が行われ、放送では画像が出る前に注釈やコメントがあり良かったと思う。ただ、中には有名人が歓迎されている画像等を多く使い、番組や出演者を自画自賛しているような番組もあった。また、津波被害の大きかった所や福島県内の特定の場所しかクローズアップされていなかったように思う。
  • アイドルグループが、座ろうとしている人の椅子を引いて転ばせるというドッキリをしていた。テロップで「真似しないでください」と但し書きはしていたが、児童や考えの浅い人々がマネをした場合、損傷がひどいと腰椎損傷により下半身不随などの重大な後遺症を伴う。その場が面白ければいいという考えではなく、笑えるドッキリを企画していただきたい。

【性的表現に関する意見】

  • 出演者が「大人のおもちゃ」を買ってきて、使用方法まで説明していた。子どもから「これは何?」と聞かれて返事に困った。夕方5時に放送する内容ではない。生放送をいいことにやりたい放題だ。

【要望・提案】

  • 私は仙台市に住んでいる。3月2日付で「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」がBPOから出されたにもかかわらず、震災1周年関連番組のスポットとして、津波が押し寄せてくる映像が繰り返し流されている。番組は自分の意思で見る、見ないが選択できるが、スポットは突然予告なく出てくるので、いやでも津波映像を見てしまう。被災者の心情を理解せず、津波の映像を垂れ流すこれらの放送局に、津波映像を使用したスポットを即時に中止するよう再度要請していただきたい。

【差別・偏見に関する意見】

  • 「授業参観に来てほしくない人」をランキング形式で紹介していた。候補である芸能人数名の写真を小学生に見せて投票させていたが、人を外見で判断することは人権の侵害になる。子どもにこんなことをさせるべきではない。

【殺人シーンに関する意見】

  • 「猟奇的な殺人事件」などを扱うドラマが午後3時台から再放送されているが、この時間帯は学校から帰って来た子ども達が、偶然見てしまう可能性もある。この時間帯の再放送はやめてもらいたい。

【いじめに関する意見】

  • 男子グループがクラスメイトの男の子に盗みを強要し、それに失敗すると学校の屋上で制服のズボンと下着を脱がして携帯カメラで股下を撮影し、次盗んでこなかったら画像を流出させるという、性的いじめが放送されていた。これは、ふざけ遊びのレベルではなく「犯罪」だ。正直見ていて気分が悪くなった。「命」をテーマにしていたそうだが、模倣した犯行が起きたらどうするつもりなのか。

【人権に関する意見】

  • 芸人が知人宅を訪問してお風呂を借りるロケ番組だった。芸人数名が満員状態で風呂に入るシーンがあり、直後「このあと、あの人が珍入」というナレーションとテロップが出てきて、その家庭の11歳、6歳、4歳の三兄弟が登場した。お風呂場面とはいえ子どもを素っ裸で参加させ、全裸の状態を撮影することは児童ポルノに相当するのではないか。長男は恥ずかしがっていたように見えた。満員状態の風呂へ子どもが自主的に裸になって参加したとは思えない。明るく照らされた取材現場で素っ裸の状態をカメラに収めることは子どもの心を傷付ける。今回は子どものお尻の部分は修正なしで映り、股間は象のマークで修正されていた。このような修正は不十分だ。「珍入」というテロップは、男性器を強調しているようでセクハラ的で大変不快。登場する子どもが人権侵害を受けるような番組であってはならない。

【CMに関する意見】

  • アイドルグループがお菓子を口移ししていくCMは、子どもが真似をしそうだ。口腔内細菌も怖いし、同性愛を助長するようにも思える。子ども向けのお菓子のCMなのに、いかがなものか。子どもの視点だと食べ物で遊んでいるとも取れる。とにかく汚いのでやめてもらいたい。
  • お菓子が主体というより、アイドル同士の「口移し」場面を強調しているようにも感じ取れ、CM自体に意味が無いようにも思われる。CMやテレビ番組は、子どもたちや社会に大きな影響力がある。教育上好ましくないので、このCMを直ちに放送中止にするべきだ。
  • アニメを2歳の子どもと見ていたら、女の子同士が口移しでお菓子をリレーするというCMが流れ、とても不愉快な気分になった。子どもも、何のためにこの女の子たちはキスをするのかと気持ち悪がり、親としても説明に困ってしまった。せめて子どもの目に触れぬよう、アニメの合間に流すことだけでもやめてもらいたい。
  • アイドルの女の子同士がお菓子を口移しするCMを見て、保育園児の子どもが、お菓子の代わりに消しゴムをくわえてキスをする真似をしたが、間違えて飲み込まないかと心配した。
  • パチンコのCMをなぜ流せるのか。競馬や競輪、競艇などの公営ギャンブルとは別物で、パチンコは違法な営業をしているところだ。違法でも収益が多いからCMを流せるのか。不快だ。18禁でもある。なぜそのテロップも入らないのか理解できない。子どもが見ている時間帯に流れていることが多いし、教育上良くない。人間を駄目にする団体のCMはやめてほしい。
  • 女優が階段の手すりを勢いよく滑るCMは危険だ。滑り台のように簡単に滑れるものなのかと、子どもが真似をする危険性がある。すぐに放送を中止すべきだ。

第182回 放送と人権等権利に関する委員会

第182回 – 2012年4月

委員長代行の指名
放送倫理上の判断…など

三宅委員長の下で初の委員会となり、奥委員と坂井委員の2人が委員長代行に指名された。引き続き報道機関による資料用撮影が行われ、撮影終了後、放送倫理上の判断について議論した。

議事の詳細

日時
2012年4月17日(火) 午後3時40分~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

委員長代行の指名

4月1日に就任した三宅委員長の下での初の委員会では、冒頭、新委員長による委員長代行の指名が行われた。委員長代行は、「委員長を補佐し、委員長を欠くときまたは委員長に事故あるときは、その職務を代行する」存在で、「委員長により2人が指名」されることになっている。(BPO規約第30条)
三宅委員長は奥武則委員と坂井眞委員を指名し、2人もこれを受諾した。奥委員は毎日新聞論説副委員長を経て、現在、法政大学社会学部教授。坂井委員は弁護士で、日弁連人権と報道に関する特別部会部会長を務めている。
三宅委員長は「法律家の観点から坂井委員を、またジャーナリズム論の観点から奥委員を指名した」と述べた。
引き続き報道機関による資料用撮影が行われ、テレビ・新聞各社から9社が取材に訪れ、テレビカメラ6台が入った。

放送倫理上の判断

今月の委員会では、まず事務局から、放送局への聞き取り調査を受けて2月と3月の委員会で行われた放送倫理をめぐる議論の了解事項について報告した。即ち、放送人権委員会が人権に関係する放送倫理上の問題を扱うことは、放送によって人権を侵害された人の救済を目的とする第三者委員会の務めであり、BPO規約等で定められた当然の使命であること、放送倫理上の問題を判断する基準としては、民放連とNHKで作った「放送倫理基本綱領」や民放連の「放送基準」、NHKの「国内番組基準」、さらには各放送局が独自に作成した番組基準等のガイドラインがあり、できるだけこれらを引用しながら問題の所在を明確に伝えるよう努力すること、ただし、必ずしもすべてのケースで既存のガイドラインを引用して判断するとは限らないこと等が確認された。
またこれまでの決定では「人権侵害を来たしかねない重大な放送倫理違反」等の表現がしばしば使われてきたが、「人権侵害」がより深刻であるとは限らず、「放送倫理違反」が重い場合もあり得るので、決定文の中できちんと表現すること、さらに判断のグラデーションについてはなるべくシンプルにしていくことも確認された。
関連してこの日の委員会では、「放送倫理違反」や「放送倫理上問題あり」、また「勧告」や「見解」等、判断のグラデーションやカテゴリーをどう整理していくのかについて、事務局から問題点等が説明された。
さらに、放送倫理検証委員会が公表している14件の決定の中で、「放送倫理」が具体的にどのように言及されてきたかについても事務局から報告した。
この後、議論に移り、委員会の決定文は申立人や放送局に理解してもらうため、できるだけシンプルにし噛み砕いて伝えるべきだとする意見や、放送倫理基本綱領等の条文だけを示しても余り意味はなく、委員会判断の実質的な理由づけをこれまで以上に具体的に示していく必要があるといった意見が出された。
また「放送倫理」という言葉の使い方や判断のグラデーションが、放送倫理検証委員会とは必ずしも一致しない点については、両委員会の目的や性格の違いから、その整合性に腐心するよりもむしろ、広報活動等を通じて理解を促進するよう努めるべきだという意見が出された。
こうした点を踏まえ、次回委員会では、判断のグラデーションのシンプル化に向けさらに議論を深めることになった。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 委員会は7月にフジテレビを訪問し、番組作りの現場を視察・見学するとともにスタッフと意見交換することになった。2月のNHK訪問に続くもの。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は5月15日(火)に開かれることになった。

以上

第59回 放送倫理検証委員会

第59回 – 2012年4月

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

平成24年度地方局との意見交換会の計画

第59回放送倫理検証委員会は4月13日に開催された。
NHK松山放送局の県域ニュース番組『おはようえひめ』で2月16日、ニュースと関係のない不適切な架空字幕が放送された事案について、NHKから新たに提出された回答書をもとに2度目の討議を行ったが、審議入りしないことになった。
ただ、他局でも類似したミスが起きており、委員長コメントをBPO報告の議事概要に付け加えることにした。
また、事務局から平成24年度の地方局との意見交換会の実施に関しての説明を行った。

議事の詳細

日時
2012年4月13日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、立花委員、服部委員

NHK松山放送局『おはようえひめ』不適切テロップの送出

2月16日、NHK松山放送局の朝のニュース番組『おはようえひめ』で「しまなみ海道」関連のニュースを放送中に、「窃盗の疑い 愛媛大学教授逮捕」という、ニュースと関係のないタイトル字幕が2秒間放送され、訂正とお詫びが翌朝までに3度放送された事案。
委員会の再質問に対し、NHKから事故原因の詳細な説明と再発防止の具体策があらためて提出された。回答書では、契約スタッフが作成した練習用字幕が消去されずに電子台本に残った経緯、最初のおわびでは字幕のような事実がないことを確認する時間がなかったために「関係のない字幕が表示されました。失礼いたしました」とお断りするのが精一杯であったこと、契約スタッフの監督責任体制に不備があったので改めること、今後は固有名詞を使わない例文の用意など練習マニュアルを見直すことにより同種の事案の再発防止を図ること、放送中の緊急回避操作を確認したことなどが示された。
討議の結果、事実に反する字幕の放送による被害は迅速な訂正により回復されているし、提示された再発防止策は適切で同類のミスは防げるであろうとの判断から審議入りしないことにした。ただ、不適切字幕が出ないような対策が「ぴーかんテレビ問題」以後もとられていなかったことは問題であり、さらに電子台本については予期せぬ事態に対応する方法が技術的に複雑な点を危惧する意見が出た。

【委員の主な意見】

  • 不適切字幕の防止策として練習用には固有名詞を入れないというのだから、この類の事故は防げると思う。
  • 字幕の事実関係の有無をすぐには確認できなかったためとりあえずのお断りを入れ、確認ができた後に名前を挙げられた大学の名誉についてお詫びをしたのだから、これでいい。
  • ネクスト画面にでた字幕を急遽削除すると画面上は消えたように見えるが、実際には削除されなかったというのは、レアケースとはいえ不親切なシステムだ。
  • 2種類ある字幕系統の仕組みを完全に把握しておかないと削除方法もわからないということか。
  • システム設計に問題はないか。普段使わない回避操作をとっさにやれというのは無理ではないか。
  • 事故が頻発するのは問題だが、技術は複雑化しており、絶対間違いのない放送を求めるのは過剰な負担をかける気がする。

また、委員会では、バーチャルスタジオを使った他局の番組で最近、間違った映像が出てしまった事例についても意見が交わされた。昨今はコンピューター技術が番組制作に深く関わっており、誤字幕、誤映像等のミスが生じた場合の対応を再点検する必要があるのではないかという意見があがった。「ぴーかんテレビ問題」を契機に委員会として「提言」をおこなって注意喚起をしたにもかかわらず、同種のミスが散見されるので、委員長コメントを出すことにした。

■委員長コメント

最近、電子台本とかバーチャルスタジオとかネット上の動画の利用といった放送技術がさらに進化し、またより広く利用されるようになったことに関連して、誤って放送局が意図しなかった不適切な結果を招いてしまった事案が、委員会で討議の対象となったり報告されたりした。進展を続ける放送技術に、放送をする人間側が十分に対応できていないのではないかと思われる現象が見られるのである。
もとより当委員会は、放送倫理の向上という大きな目的のために設けられた機関であり、単なる技術上の問題に起因する放送事故について意見を述べる立場にはないが、東海テレビの『ぴーかんテレビ』における不適切なテロップの放送問題のように、誤って放送されてしまった内容によっては、視聴者の誤解など重大な放送倫理問題を招来する場合もある。
番組制作に使用される技術やシステムは、人間は必ず誤りを犯すということを前提に、たとえ誤りがあってもそれが重大な結果には直結しないような仕組みが用意され、運用されていなければならないはずである。今、起こっている問題は軽微であるが、このままでは将来重大な事故が発生するおそれがあるのではないかと憂慮されるので、委員会としてあらためて注意喚起しておきたい。

平成24年度地方局との意見交換会の計画

これまで地方局と委員会との意見交換会は、一昨年大阪で、また昨年には福岡で、それぞれ近隣の県の放送局も参加する形で行われ、参加局からは、「なかなか接する機会がない委員から生の話が聴けて有意義だった」と概して好評であった。こうした機会を多く設けてほしいという放送局の要望を受けての計画案として、

  • 過去2回の例と同様に一定の地区で多くの局に参加を募る形式
  • (1) の形式にテーマごとの分科会を設け、二部構成にする
  • 都道府県単位で、各放送局に参加を募る形式
  • 系列のブロック単位で行う形式

など、放送局の意向に沿った様々なパターンを検討していることが説明された。

以上