第230回放送と人権等権利に関する委員会

第230回 – 2016年2月

自転車事故企画事案のヒアリングと審理、
ストーカー事件再現ドラマ、ストーカー事件映像両事案の通知・公表の報告、
謝罪会見報道事案の対応報告、STAP細胞報道事案、世田谷一家殺害事件特番事案の審理…など

自転車事故企画事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。ストーカー事件再現ドラマとストーカー事件映像の2事案の通知・公表について、事務局が概要を報告した。謝罪会見報道事案でTBSテレビから提出された対応報告を了承した。STAP細胞報道事案、世田谷一家殺害事件特番事案を審理した。

議事の詳細

日時
2016年2月16日(火)午後3時~9時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員、林委員

1.「自転車事故企画に対する申立て」事案のヒアリングと審理

審理対象は、フジテレビが2015年2月17日にバラティー番組『カスぺ!「あなたの知るかもしれない世界6」』で放送した「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」という企画コーナー。同コーナーでは、母親が自転車にはねられ死亡した申立人のインタビューに続いて、「事実のみを集めたリアルストーリー」として14歳の息子が自転車事故で小学生にけがをさせた家族を描いた再現ドラマが放送された。ドラマは、この家族は示談交渉で1500万円の賠償金を払ったが、実はけがをした小学生は「当たり屋」だったという結末になっている。
この放送について申立人は、当たり屋がドラマのメインとして登場することについて事前の説明が全くなく、申立人に関して「実際に裁判で賠償金をせしめていることだし、どうせ高額な賠償金目当てで文句を言い続けているのだから、その点で当たり屋と似たようなものだ」との誤解を視聴者に与えかねないとして名誉と信用の侵害を訴え、放送内容の訂正報道や謝罪等を求めている。
今月の委員会では、申立人と被申立人のフジテレビからヒアリングを行った。
申立人は代理人の弁護士とともに出席し、「自転車事故の被害の深刻さを訴えたいという説明を受けて出演したが、茶化す番組の冒頭に使われ、たいへん悔しく思っている。番組で母が当たり屋だと明確に言われたわけではないが、私のブログにはお金をもらっているだろうみたいな、罵詈雑言のような形のコメントが来たりして嫌な思いをした。事前に当たり屋のドラマだという一言の説明もなく、お笑いで終わるような番組とは一切聞いていなかった。聞いていれば、もちろん取材はお断りした。ドラマの内容は荒唐無稽としか言いようがない」等と述べた。
フジテレビからは制作担当者ら6人が出席し、「申立人のお母様の事故とドラマの事故の内容は明らかに異なり、番組上も分断されているので、視聴者が申立人は高額な賠償金目当ての当たり屋同様の存在であるという印象を持つことはなく、名誉を毀損したとは考えていない。申立人のインタビューは自転車事故の悲惨さを訴えるために取材したもので、ドラマとは別の部分で使用することから、ドラマに当たり屋が登場することは説明していない。ドラマの内容は取材や資料をもとに蓋然性が高いと判断して再構成したもので、申立人が主張するような虚偽放送ではない」等と述べた。
ヒアリング後の審理で、次回委員会に向けて担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の通知・公表の報告

3.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の通知・公表の報告

両事案に関する「委員会決定」の通知・公表が2月15日に行われ、その概要を事務局から報告し、当該局のフジテレビが決定の内容を伝える番組の同録DVDを視聴した。

4.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の対応報告

2015年11月17日に通知・公表された本件「委員会決定」に対し、TBSテレビから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が2016年2月15日付で提出され、委員会はこの報告を了承した。
なお、本件の委員会勧告に基づいて局が行った放送対応に関し、当該番組でエンドロールの後一旦CMが放送されてからアナウンサーによるコメントの読み上げがなされた点について、多数の委員から、放送対応のタイミングについてより工夫がなされることが好ましかったとの意見が述べられた。
また、2月1日にTBSテレビにおいて本決定に関して坂井委員長と担当の曽我部、林の両委員が出席して研修会が開かれたことを事務局が報告した。当日は140人余が出席し、2時間15分にわたって質疑応答や意見交換が行われた。

5.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では、改めて起草担当委員が提出した論点・質問項目案に沿って各委員が意見を述べた。次回委員会ではさらに審理を進める予定。

6.「世田谷一家殺害事件特番への申立て」事案の審理

対象となったのは、テレビ朝日が2014年12月28日に放送した年末特番『世紀の瞬間&未解決事件 日本の事件スペシャル「世田谷一家殺害事件」』。番組では、FBI(米連邦捜査局)の元捜査官(プロファイラー)マーク・サファリック氏が2000年12月に発生したいわゆる「世田谷一家殺害事件」の犯人像を探るため、被害者遺族の入江杏氏らと面談した模様等を放送した。入江氏は殺害された宮澤みきおさんの妻泰子さんの実姉で、事件当時隣に住んでいた。番組で元捜査官は、「当時20代半ばの日本人、宮澤家の顔見知り、メンタル面で問題を抱えている、強い怨恨を抱いている人物」との犯人像を導き出した。
この放送を受けて入江氏は、テレビ朝日に対し、演出上の問題点などについて抗議。放送法第9条に基づく訂正放送・謝罪等を求めたが、テレビ朝日は「放送法による訂正放送、謝罪はできない」と拒否した。このため入江氏は、委員会に申立書を提出。「テレビ的な技法(プーという規制音、ナレーション、画面右上枠テロップなど)を駆使した過剰な演出、恣意的な編集並びにテレビ欄の番組宣伝によって、あたかも申立人が元FBI捜査官の犯人像の見立てに賛同したかの如き放送により、申立人の名誉、自己決定権等の権利侵害が行われた」として、放送による訂正、謝罪並びに責任ある者からの謝罪を求めた。
これに対しテレビ朝日は、サファリック氏の怨恨説を否定する申立人の発言をそのまま放送しており、申立人がサファリック氏の「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したように見えるという申立人側の指摘は当たらないと反論。申立人が指摘するような「恣意的な編集」や「過剰な演出」はないと認識しており、「放送法第9条による訂正・謝罪の必要はないと考えている」と主張している。
前回委員会で審理入りが決まったのを受けて、テレビ朝日から申立書に対する答弁書が提出された。今回の委員会では事務局が双方の主張をまとめた資料を配付して説明した。

7.その他

  • 2月3日に福岡で開かれた地区別意見交換会(九州・沖縄地区)について、事務局から概要を報告し、その模様を伝える地元局の番組の同録DVDを視聴した。意見交換会には、同地区29局、83人が出席し、約3時間30分にわたって活発な意見交換が行われた。
  • 次回委員会は年3月15日に開かれる。

以上

2015年11月

TBSテレビ系列・北信越4局と「意見交換会」を開催

放送人権委員会は2015年11月24日、石川県金沢市内でTBSテレビ系列の北信越4局を対象に意見交換会を開催した。局側から報道・制作を中心に20人、オブザーバーとしてTBSテレビから1人が参加、委員会からは、坂井眞委員長、林香里委員、二関辰郎委員が出席した。
系列別の意見交換会は、2015年2月に高松で行われた「日本テレビ系列・四国4局」に続いて2回目。
今回の意見交換会では、まず委員会が2015年上半期に通知・公表した「散骨場計画報道への申立て」と「大阪府議からの申立て」の2事案の委員会決定を取り上げ、坂井委員長が委員会の判断のポイント等について説明と解説を行った。参加者からは、「散骨場計画報道」事案で「熱海記者会による申立人との合意と報道の自由の問題」について付言したことに関し、「社会性の高い案件だっただけに、記者会として、もっと交渉すべき余地はあったのではないか」等の意見が述べられた。
続いて、2014年6月に公表した「顔なしインタビュー等についての要望 ~最近の委員会決定をふまえての委員長談話~」について、林委員がこの談話を出すに至った背景や、実際のニュース番組をモニター、分析したうえで数か月にわたって委員会で議論したなどと説明した。
これに関連して参加者から「東京だと市民インタビューは赤の他人だが、ローカルだと匿名の市民じゃなくて実名の市民になってしまう。見ている人は『あの人知ってる』となる」「交通事故などで被害者が匿名を希望するケースが増えている」等の事例が報告された。
また、テレビで放送されたニュースがネット上で蔓延してしまう問題に関連して、坂井委員長から「最近、グーグルなどの検索について、検索結果で上位にヒットすることが現実には大きな影響があるため、それについてポータルサイトがしかるべき対応をすべきであるという法的判断がくだされた例がある。そうした判断が徐々に広がる可能性はある」との解説があった。
意見交換会の事後アンケートでは、「自分たちの取材の在り方、取材対象との向き合い方を見直し、考える良い機会になった」「系列間だからこその失敗談や苦慮している課題を聞くことができた」「委員長をはじめ、委員の方とも直接会って、いわゆる『顔が見えた』ことでBPOを身近な存在として感じられ有意義な会だった」等の感想が寄せられた。

以上

第101回 放送倫理検証委員会

第101回–2016年2月

NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見への対応報告書を了承
委員会運営規則の一部見直し説明会開催と改正案の修正を了承…など

第101回放送倫理検証委員会は2月12日に開催された。
委員会が昨年11月に出したNHK総合の『クローズアップ現代』「"出家詐欺”報道に関する意見」について、当該局から提出された対応報告書を了承し、公表することとした。
委員会運営規則の一部改正案について、加盟社から寄せられた意見を検討し、今後の対応について協議した。その結果、要望の多かった加盟社への説明会を開催すること、意見を参考にして改正案を修正することを了承した。

議事の詳細

日時
2016年2月12日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、香山委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺”報道に関する意見への対応報告書を了承

昨年11月6日に委員会が通知公表した、NHK総合の『クローズアップ現代』"出家詐欺”報道に関する意見(委員会決定第23号)への対応報告書が、2月上旬、当該局から委員会に提出された。
報告書には、再発防止に向けて、各地の放送局で17回の勉強会を実施したこと、検証委員会の担当委員を招いて研修会を開催したこと、委員会決定を踏まえた「放送ガイドライン」の増補版を作成したことなどが記されている。そして、「事実に基づき正確に報道するという原点を再確認しながら信頼される番組づくりにあたっていきます。」と結ばれている。
委員会では、匿名取材に関して導入した「チェックシート」が形骸化したり、「チェックシート」の記入が自己目的化したりすることのないよう検証し続けてほしいなどの意見が交わされ、この対応報告書を了承して公表することとした。

2.委員会運営規則の一部見直し  説明会開催と改正案の修正を了承

加盟社に呼びかけていた、運営規則の一部改正案についての意見募集は1月下旬に締め切られ、加盟208社のうち、異論なしも含めて、31社から意見が寄せられた。改正案の内容は、審議や審理に入る前にその適否を議論している「討議」という手続きと、審議の際にも原則的に行っているヒアリングを、運営規則に明文化するというもので、委員会運営の現状に合わせる必要最小限の改正提案になっている。
委員会では、今後の対応について協議した結果、「説明会などの場で、もっと詳しく説明してほしい」との要望が約20社からあったのを受けて、全加盟社を対象に開催する2月24日の事例研究会の終了後、説明会を実施することになった。説明会には、事務局の担当者のほか、川端委員長と升味委員長代行も出席する。
また、意見の中には、「討議の位置づけを明確にしてほしい」とか、「討議段階でもヒアリングが可能と解釈できるのではないか」などの指摘もあった。委員会の現状に適合させるための必要最小限の見直しという、改正の趣旨をより明確にし、加盟社の誤解を払拭するために、そうした意見を参考にして、改正案を一部修正することになった。説明会では、この修正した改正案についても説明する。
こうした状況を踏まえて、今回の委員会で予定されていた改正案の議決は、次回に見送ることになった。

以上

2015年度 第58号

「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」に関する委員会決定

2016年2月15日 放送局:フジテレビ

勧告:人権侵害(補足意見付記)
フジテレビは2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』で地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内いじめ行為を取り上げた。番組では、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、放送された食品工場は自分の職場で、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとされ名誉を毀損されたと申し立てた事案。放送人権委員会は審理の結果、2月15日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として本件放送には人権侵害があったとの判断を示した。

【決定の概要】

本件は、フジテレビがバラエティー番組『ニュースな晩餐会』(2015年3月8日の放送)で、「ストーカー事件」の被害の問題について、その一例を伝える目的で放送し、職場の同僚の間で行われたつきまとい行為やこれに関連する社内いじめを取り上げたものである。この中で、役者による事件の再現映像と、申立人の職場の人物のインタビュー映像や隠し撮り映像、申立人自身の会話の隠し録音などが随所に織り込まれた映像が放送された。
申立人は、この放送について、申立人を社内いじめの「首謀者」、「中心人物」とし、つきまとい行為を指示したとする事実無根の放送を行ったものであるとし、この放送によって名誉を著しく毀損されたとして委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には申立人の名誉を毀損する人権侵害があったと言わざるをえないと判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、関係者の映像等にボカシを入れ音声を加工したこと、役者による再現には「イメージ」とのテロップを付し、「被害者の証言に基づいて一部再構成しています」とのテロップも付したことから、フジテレビは、本件放送が特定の人物や事件について報道するものではないとしている。しかし、現実にあった事件の関係者本人の映像や音声を随所に織り込み、再現の部分も含めて一連の事件として放送している以上、視聴者は、現実に起きた特定の事件を放送しているものと受け止める。
本件放送には一定のボカシがかけられるなどしているものの、職場の駐車場の映像や、申立人の職場関係者に関する情報が含まれていること、取材協力者でもあった事件関係者らが、本件放送が行われることを予め職場などで話して回ることも十分予想できる状況下であったことなどから、本件放送内容は、職場の同僚にとって、登場人物が申立人であると同定できるものであった。
以上を前提とすると、本件放送は、申立人を社内いじめの「首謀者」、「中心人物」とし、実行者に「ストーカー行為をさせ」ていたなどと指摘するものであることになるが、これらの点が真実であるとはおよそ認められず、真実と信じたことに相当性もない。したがって、本件放送は、申立人の名誉を毀損するものであった。
フジテレビは、本件放送が基本的には現実の事件を再現するものとして視聴者に受け止められるにもかかわらず、「被害者の証言に基づいて一部再構成しています」等のテロップを付したことなどから、本件放送が現実の事件の真実から離れても問題はないと安易に思い込み、取材においても一方当事者への取材のみに依拠して職場内での事件の背景や実態を正確に把握する努力を怠り、真実とは認めがたい申立人に関する事実を放送して申立人の名誉を毀損してしまうこととなった。
したがって、委員会は、フジテレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために、人権と放送倫理にいっそう配慮するよう勧告する。

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2016年2月15日 第58号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第58号

申立人
食品工場契約社員 A氏
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『ニュースな晩餐会』(日曜日 午後7時58分~8時54分)
放送日時
2015年3月8日(日)午後7時58分から約27分間

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件放送と現実の事件の関係
  • 2.本件放送の登場人物と申立人の同定可能性
    • (1)本件放送内容と申立人の同定可能性
    • (2)フジテレビの反論について
  • 3.本件放送の内容と申立人の名誉の毀損
  • 4.本件放送の公共性・公益性
  • 5.申立人に関する放送内容の真実性
  • 6.申立人に関する事実を真実と信じたことの相当性
  • 7.小括
  • 8.放送倫理上の問題

III.結論

  • 補足意見

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2016年2月15日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、午後1時からBPO会議室で行われ、坂井委員長と起草を担当した市川委員長代行、紙谷委員が出席し、申立人本人と、被申立人のフジテレビからは編成統括責任者ら4人が出席した。午後3時から千代田放送会館2階ホールで、坂井委員長、市川委員長代行、紙谷委員が出席して記者会見を行い、2事案の委員会決定を公表した。報道関係者は21社41人が出席し、テレビカメラ3台(うち1台は民放代表カメラ)が入った。

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2016年5月17日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

2016年2月15日に通知・公表された「委員会決定第58号」ならびに「委員会決定第59号」に対し、フジテレビジョンから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が5月13日付で提出され、委員会は、この報告を了承した。

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2015年度 第59号

「ストーカー事件映像に対する申立て」に関する委員会決定

2016年2月15日 放送局:フジテレビ

見解:放送倫理上問題あり
フジテレビは、2015年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』で地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内いじめ行為を取り上げた。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、映像のボカシが薄く、会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなので自分と特定されてしまう、として人権侵害を申し立てた事案。委員会は人権侵害があったとは認められないが、放送倫理上問題があるとの判断を示した。

【決定の概要】

本件は、フジテレビがバラエティー番組『ニュースな晩餐会』(2015年3月8日の放送)で、「ストーカー事件」の被害の問題について、その一例を伝える目的で放送し、職場の同僚の間で行われたつきまとい行為やこれに関連する社内いじめを取り上げたものである。この中で、役者による事件の再現映像と、申立人の職場の人物のインタビュー映像や申立人が隠し撮りされた映像、同僚同士の会話の隠し録音などが随所に織り込まれた映像が放送された。
申立人は、この放送で「ストーカー行為を行った人物」として取り扱われ、そのことが職場に広く知れ渡ってしまい、また、放送内容も事実と大きく異なっていたために、本件放送によって名誉を毀損されるなどの人権侵害を受けたとして委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には、申立人の名誉を毀損する等の人権侵害があるとはいえないが、放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は、以下のとおりである。
フジテレビは、関係者の映像等にボカシを入れ音声を加工したこと、役者による再現には「イメージ」とのテロップや、「被害者の証言に基づいて一部再構成しています」とのテロップを付したことから、本件放送が特定の人物や事件について報道するものではないとしているが、現実にあった事件の関係者の映像や音声を随所に織り込み、再現の部分も含めて一連の事件として放送している以上、視聴者は、現実に起きた特定の事件を放送しているものと受け止める。
本件放送では、一定のボカシがかかっているとはいえ、職場の駐車場の映像や、申立人の職場関係者に関する情報が含まれていること、放送当日、取材協力者でもあった「ストーカー事件」の被害者らが、本件放送が行われることを予め職場などで話して回ることも十分予想できる状況下であったことなどから、職場の同僚には本件放送の登場人物が申立人であると同定できる。
とはいえ、本件放送は、公共の利害に関する事実を、公益をはかる目的で放送したものであり、申立人が行っていたことに関する基本的事実関係については真実であると認められるので、申立人に対する名誉毀損等の人権侵害があるとはいえない。
しかし、フジテレビは、本件放送が基本的には現実の事件を再現するものとして視聴者に受け止められるにもかかわらず、「被害者の証言に基づいて一部再構成しています」などのテロップを付したことなどによって本件放送が現実の事件の真実から離れても問題はないと安易に思い込み、真実に迫るための最善の努力を怠り、取材においても一方当事者からの取材のみに依拠して、職場内での処遇の不満や紛争という事件の背景や実態を正確に把握する努力を怠った。また、このような取材、放送の在り方は、申立人の名誉やプライバシーへの配慮を欠くものであった。さらに、フジテレビは、本件放送に対する申立人らの苦情に真摯に向き合わなかった。これらの点で、本件放送と放送後のフジテレビの対応には放送倫理上の問題がある。
したがって、委員会は、フジテレビに対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために、人権と放送倫理にいっそう配慮するよう要望する。

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2016年2月15日 第59号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第59号

申立人
食品工場社員 B氏
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『ニュースな晩餐会』(日曜日 午後7時58分~8時54分)
放送日時
2015年3月8日(日)午後7時58分から約27分間

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件放送と現実の事件の関係
  • 2.本件放送の登場人物と申立人の同定可能性
    • (1)本件放送内容と申立人の同定可能性
    • (2)フジテレビの反論について
  • 3.本件放送の内容と申立人の名誉の毀損
  • 4.本件放送の公共性・公益性
  • 5.申立人に関する放送内容の真実性など
  • 6.放送倫理上の問題
    • (1)事実を事実として伝える必要性
    • (2)関係者の名誉やプライバシーに配慮する必要性
    • (3)小括~本件放送内容にかかわる放送倫理上の問題
    • (4)放送後の対応の問題

III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2016年2月15日 決定の通知と公表の記者会見

前事案に引き続き午後2時から、本件の通知を行い、申立人と、フジテレビ側からは編成担当者ら4人が出席した。 午後3時から千代田放送会館2階ホールで、坂井委員長、市川委員長代行、紙谷委員が出席して記者会見を行い、2事案の委員会決定を公表した。報道関係者は21社41人が出席し、テレビカメラ3台(うち1台は民放代表カメラ)が入った。

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2016年5月17日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

2016年2月15日に通知・公表された「委員会決定第58号」ならびに「委員会決定第59号」に対し、フジテレビジョンから局としての対応と取り組みをまとめた報告書が5月13日付で提出され、委員会は、この報告を了承した。

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2016年1月に視聴者から寄せられた意見

2016年1月に視聴者から寄せられた意見

大臣の金銭授受スキャンダルの報道は偏向しているなど、さまざまな意見。人気アイドルグループの解散騒動で謝罪コメントを放送した番組に対し、パワハラみたいだという意見。人気女性タレントとバンドボーカルの不倫問題に関し、出演を自粛すべきといった意見など。

2016年1月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は4,847件で、先月と比較して3,645件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール87%、電話11%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性39%、女性60%、不明1%で、世代別では30歳代33%、40歳代32%、20歳代15%、50歳代13%、60歳以上5%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は3,732件【50局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

金銭授受スキャンダルで大臣が辞任することになったが、この「政治とカネ」を取り扱った番組に対して、偏向しているなど様々な意見が寄せられた。
バス転落の痛ましい事故があったが、まだ原因がはっきりしていないのに、断定的に報じるのは如何なものかなどといった意見が寄せられた。
人気アイドルグループの解散騒動で、謝罪コメントを放送した番組に対して、パワハラみたいだったという意見や、それを扱った情報番組に対しては、ツイッターに寄せられた意見と放送内容はだいぶニュアンスが違うのではないのか、といった批判などが多く寄せられた。
人気女性タレントとバンドボーカルの不倫問題に関し、 番組の出演を自粛するべきだといった意見や、SNSの個人的なやり取りを紹介するのは如何なものかといった意見が寄せられた。
ラジオに関する意見は45件、CMについては45件あった。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は129件で、前月から10件増加した。
今月は、「表現・演出」が22件と最も多く、次に「いじめ・虐待」「その他」がともに20件、「性的表現」が14件と続いた。
「表現・演出」については、人気アイドルグループが自身の解散騒動について報告したシーンに対して、「強制的に言わされているように感じ、見せしめのようだ。子どもが視聴している時間帯にはふさわしくない」との意見が多数寄せられた。
「いじめ・虐待」については、いわゆる"どっきり番組"についての意見が目立った。「性的表現」では、深夜帯に放送されたアニメでの自慰行為に関するシーンについて、複数の意見があった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 大臣の金銭授受スキャンダルの報道に公平さがない。コメンテーター各氏が、週刊誌情報の真偽を確かめもせず、思いつきで政権への打撃を述べている。大臣は「確かめて1週間以内に説明する」と言っているので、それを待って論評すべきだ。或いは自ら調べ、責任ある発言をすべきだ。

  • 大臣辞任のニュースで、擁護する意見が多かった。主に擁護していたのは2人のコメンテーターだったが、ともに家族が政権党の議員だったり、関係者だ。一方に偏向している意見だと感じた。キャスティングも含め、恣意的な意図を感じた。

  • 大臣の賄賂疑惑をきちんと伝えているのはよかったと思うが、「TPPをまとめた人だから残念」などと、TPP合意の功績をたたえるものが多かった。しかし、関税が相当下げられ、日本の農業・畜産業にはダメージになることが予想される。このような懸念もあるのに、「賄賂はもらったかもしれないが、TPPを成功させた」という安直なストーリーで報道するのは如何なものか。

  • 軽井沢でバス転落の痛ましい事故があった。その際、亡くなられた方の個人的な投稿動画やプライベートな話を紹介していた。亡くなった方のプライベートな情報、卒業アルバム等、報道する必要があるのだろうか。亡くなった方には個人情報の保護は無用であるため、報道するということなのか。いたずらに亡くなった方の悲しみを煽ることで、バス会社を被告として糾弾する世論を作りたいのか。事件・事故で亡くなられた方やその友人・家族を含めたプライベートの報道が本当に必要であるのか、ぜひ議論をしていただきたい。

  • 長野のバス事故に関してコメンテーターが、亡くなった運転手さんに対して「こんな運転がヘタなものに運転させるから事故がおきた」と断言していたが、まだ原因が判明していないのだから発言は慎重でなければいけない。

  • 長野でバス会社を経営しているものだ。軽井沢で発生したバス事故について、コメンテーターが「バス協会に入っていないバス会社は安全運転が出来ない」と言った。協会に加入するのは任意で、全てのバス会社が加入するものではない。運輸に関する情報はバス協会に入っていればバス協会から、協会に入っていなければ運輸局から直接もらえる。加入しなくても安全にはきちんと対応出来ている。バス協会に加入していないことが悪いような発言は慎んでもらいたい。

  • 長野スキーツアーバス転落事故についての報道の中で、事故の原因はある政権でのバス規制緩和だと断定し、映像も流していた。しかし、バス規制緩和は違う政権で行われたものだ。まちがった情報だと思うが、訂正しないのは如何なものか。

  • 各政党などの代表の他、一般人の方々が出演者していた。その中で建築板金業の人物が「いまの政権の方がまだましかな」と発言した。ところで、彼は一般人ではなく区議会議員だったことをインターネットで知った。さらに彼は番組ディレクターと知り合いだという。議員であることを隠して出演させることは、如何なものか。

  • 川で17歳の男性の遺体が見つかった事件で、同僚ら4人に殺人容疑で逮捕状が請求されたという速報が放送された。この中で、被害者の少年の顔が映った写真と氏名が報じられた。少年を含む加害者の写真や氏名が明らかにされないのに、被害者のプライバシーが曝されるのは如何なものか。こうした事件報道の際に被害者の情報が保護されないことはおかしい。

  • 関東地方で大雪が降ったニュースを朝から延々と全国放送しているが、国民のすべてがその情報を必要としているわけではない。交通機関の乱れも関東のローカル番組で放送するだけでよい。九州に住む我々は全く関係がないことだ。東京中心のニュース報道には辟易する。

【番組全般・その他】

  • 人気アイドルグループが、解散騒動に関して番組で釈明や謝罪をしていたが、違和感を覚えた。謝罪するべきは、騒動を起こした事務所サイドであって、アイドルグループではない。事務所によるパワハラ、公開イジメのようだった。移籍問題は大人の事情によるものだ。夢を与えるはずのタレントの、あのような姿は見たくなかった。テレビ局に対して、どれだけの圧力があったか知らないが、放送する必要などなかったのではないか。弱い者いじめの構図をまざまざと見せつけられたようで、不愉快だった。

  • 番組公式ツイッターで、アイドルグループの会見に対する感想を募集していた。番組で取り上げられたツイートは、会見に対して肯定的な意見がほとんどで、私がサイトで実際に見た多くのツイートの印象とは真逆だった。これは情報操作ではないか。報道番組であるにもかかわらず、虚偽の印象を作り上げ、それをあたかも真実であるように視聴者に伝えているということはどうなのだろうか。

  • アイドルグループの解散報道について、街頭インタビューの様子を流した。みなさん口々に解散しなくて良かった、存続になって良かったという内容ばかりだった。ネットでは逆の意見や、謝罪するべきことなのかなど、4人を心配する声、1人を非難する声など、様々な声が挙げられている。どちらかというと良かったという意見は少なかった。偏った意見、感想だけを放送しているのではないのか。

  • アイドルグループの話題が大部分で、報道番組の役割を果たしていない。この騒動で、スポーツ新聞の記事を引用しすぎである。「憶測記事」が多いにもかかわらず、番組として記事の裏付けもせず、記事を読むだけの放送は問題がある。以前からあったことだが、今回は度を越している。これを機にスポーツ新聞の引用には歯止めがかけられるべきだ。

  • メンバーが心境を話すどころか、公共の電波で事務所に対して謝罪させられていただけだった。企業による公開パワハラであり、電波の私物化だ。罪を犯したわけでもないのに、黒いスーツと黒のネクタイだった。葬儀を思わせる衣装と演出も陰湿だった。自分の心からの謝罪ではなく、言わされていることは画面から伝わってくる。放送すべきではなかった。

  • 不倫騒動を起こした後も何食わぬ顔で出演している。影響力の強いタレントが不倫という行為をしておきながら、テレビに出演しているということは如何なものか。不倫をしても許されると解釈してしまう人々が出てしまうのではないか。ましてや子どもも見ている番組だ。

  • 不倫をしていて、離婚届を「卒論」などと揶揄する女性タレントを出演させないでほしい。人の家庭を壊しておいて平気で笑っている姿を見ることが不快でならない。以前は好感度の高いタレントだったのかもしれないが、主婦の立場からすると、筆舌しがたいほどの不快な存在だ。

  • 女性タレントの男性ミュージシャンとの不倫の話題を取り上げた。その際2人のLINEでのやり取りを詳細に伝えていた。不倫はいけないことではあるが、LINEでの個人的なやり取りを公にしたことはやり過ぎではないのか。

  • 女性タレントとバンドボーカルの不倫を取り上げていたが、トップで扱うようなことではない。出演者は不自然なまでに不倫を擁護し、二人を知る人にも取材していて「彼は不倫していても良い曲を作る人」などと持ち上げる始末だった。不倫という不道徳な行為を、ニュースを取り扱う番組で軽く話題にし、ふざけ半分で放送することに納得がいかない。

  • 人気女性タレントの不倫に関する報道だが、不倫は社会的に許されることではない。しかし、マスコミが騒ぎ立てることではなく、当事者間で解決されるべきことだ。不倫報道よりも、もっと報道すべきことがあるのではないか。

  • 男性タレントが司会をしているが、2年間ほど異常なほど発言が少なく奇妙に感じていた。番組プロデューサーとの酒席での「確執」により発言がカットされていたとのことだが、もしそれが本当ならば、視聴者に対してもそうであるが、タレントにとっても大変失礼ではないのか。番組に私情を持ち込み、発言を大幅カットするなど、立派なパワハラだ。

  • 芸人のネタが、障害者をバカにしたような内容だった。私のように障害者と関わりあっている者から見たら、とてもバカにしているかのようだった。この時間帯は様々な家族が見るわけで、悪意がなくやったとしても、このようなネタは避けてほしい。

  • またしても食べ物を粗末にする番組を正月特番で放送していた。日々の食生活にさえ窮する家庭が増えている時に、このような不謹慎な番組を放送することは、間違っている。

  • 海外に寿司やラーメンのマズイ店があり、日本人が正すという内容だった。日本人のプロが新人として潜入し、店の実態を暴いた後で正体を現すという流れだった。分かりやすい勧善懲悪モノだが、海外で独自発展した文化を悪者扱いし、取材協力してくれた店の人を騙すやり方は、気持ち悪かった。また、その海外の店を完全な悪者にするためか、紹介された店の内容があまりにもひど過ぎるものだった。自分たちで都合のいいように仕立て上げ、それを真実として放送するのは如何なものか。

  • 東日本大震災といえば、東北地方を中心とした津波や原発による被害が印象的だ。おそらく、5年目の3月11日もそういった報道が中心になるのではないか。当時静岡県に住んでいた中学生の私にとって印象的だったのは、ACジャパンのCMだった。そればかり延々と流れる様子を見て、本当に非常事態だと思い知った。今でも、あのCMを見ると震災のことを思い出す。もちろんあのCMを不快に思う人もいるかもしれない。当時のCMを11日に合わせてもう一度放送していただくことはできないだろうか。あの時のことを風化させたくない。

  • "客引き"の特集をしていた。その中で、タレントが「こういうことを楽しんだ」といった趣旨の発言をしていた。また違うタレントは「この子たちは良い子ですよ」と擁護していた。とんでもない話だ。彼らは"ヤクザ"という反社会勢力の下部組織の人間だ。家出少女たちを、最初はキャバクラやガールズバーへ、そして徐々に風俗の社会へと引きずり込んでいく。テレビでタレントがこのような発言をすれば、何も知らない未成年が食い物にされる。

  • 猫にとって有害なチョコレート、ナッツ類、乳製品を与えている動画が、何の注意喚起もなく放送されていた。ユーチューブの動画等の抜粋も含まれているが、専門家による動画上の問題点の精査もなく、このような放送がされていることに失望した。メディアの影響力の大きさを考えれば、このような動画は「知らなかった」では済まされない。もしも「動画がかわいかったから」と、視聴者が真似をすれば、ある種の無自覚での動物虐待にもつながりかねない。番組制作者は自身のメディアの影響力をもっとよく理解し、内容に責任を持つべきだ。

  • 毎年楽しみにしている番組だが、実況が選手やチームメイトのプライベートな話題を、やたら美談や感動的なものとして話していた。選手ならまだしもチームメイトのことなど、そこまで話す必要があるのか。視聴者は選手の一生懸命に走る姿が見たいのであって、テレビ局側が美談と感動に持っていきたいことが見え見えだった。

  • 刑務所から出所してきた男性が更生するという内容の中で、出所後1か月で警備員になったとあった。警備業法からすると、違和感を覚えるのだが、如何なものか。

  • 夫婦生活のストレスを発散する突破法として、妻が夫に賞味期限切れの食品を繰り返し食べさせる、という実体験が紹介された。物によっては重篤な体調不良を引き起こす可能性もある。突破法として紹介しているため、真似をする人がいるかもしれない。

  • 外国人の若い女の子がヒッチハイクで日本縦断をする企画だった。私が居住している市で、個人の家で泊めてもらえる人を探したが、5時間も声掛けしてダメだったという内容だった。人情だけで日本を回れるかという企画のようだが、これではまるで私の居住区の人間は非情なように思われてしまう。最後に宿泊を許可した人は、写真家として活躍している方ということだが、事前に打ち合わせ済みだったようにも思える。各自事情がある。簡単に泊めてと言われても泊められない。しかも収録日は駅前で祭りがあり、各地からたくさん人が来ていた。素性がわからない人を泊めろというのは無理がある。

  • 「チ○コ」「う○こ」という名前の人を探すとのコーナーに対して、不快感を覚えた。まずコーナー自体が人の名前をおちょくるような取り上げ方をしているし、実際にいた方への配慮も何もない。スタジオにいたタレントのコメント自体も明らかに侮辱しているようにしか見えなかった。

  • コーナーで不倫を扱っていたが、その際に「女性の4人のうち1人が不倫をしたことがある」としていた。どこの調査結果かも明らかにしていないので分からないし、現実はそんなことは存在していないと思う。さも事実のような言い方をしていて疑問に感じた。そして一般の独身女性の不倫経験談を流していたが、社会的倫理感が著しく欠如していると思った。

  • 大相撲の大関が優勝するかもしれないという報道をする際、「数年ぶりの日本人力士優勝なるか!?」と報道することは、他の力士の方々、今まで努力して優勝された多くの力士の方々への、人種差別的表現ではないのか。

  • ひったくり犯の似顔絵をターゲットが書くというドッキリで、女性の鞄をひったくるシーンが4、5回あった。ひったくりは犯罪なのに、そのシーンを何回も流し、スタジオのタレントが爆笑していた。違和感と不快感を覚えた。またこのロケは一般道から見える場所で行われていたので、ひったくり(ドッキリ)を見た一般人が、本当の事件だと思い警察に通報する可能性もある。こういったドッキリは今後一切やめてもらいたい。

【ラジオ】

  • 警視庁の方が電話出演し、マイナンバー詐欺の事例を紹介していた。その中で、「国や地方公共団体の職員が年金、保険の状況を電話で尋ねることはないので、かかってきたら警察専用ダイヤルに電話するように」と発言していた。私は地方公共団体からの委託で国民健康保険や、住民税、国民年金などの未納者に対する電話督励業務に従事している。最近、電話先で要件を伝えても「詐欺ではないか」と取り合ってもらえないことが多く、困るケースが増えている。犯罪の抑止が重要であることは当然だが、正当に業務として電話を使っている人たちもいるのだということをきちんと周知していただきたい。

  • 今年からメッセージを投稿する際に住所・氏名その他連絡先を記載していることが投稿を採用する際の判断基準になると、番組パーソナリティーが言っていた。そして、一度投稿するとそれら情報を(番組側で)記録するとも言っていたのだが、聴取者の投稿により個人情報を収集し、データベースを作成するような行為とも思われ、問題があるのではないか。個人情報を収集しながら利用目的も明らかにされておらず、疑問である。

  • 以前からずっと気になっているのだが、ラジオショッピングが胡散臭過ぎる。問題が大きくなる前に一度確認していただきたい。映像のないラジオを良いことに、目で見なければ確認しようのないことを連発し、商品を紹介する。例えば、どこのだれかも分からない人の名前を出し「数週間で数キロやせた」と言うと、有名DJが「えーっ、それはすごいですね」と言ったり、「商品の紹介者が自身も使用している」と言うと、またも有名DJが、「以前と比べてすごいやせましたよね」などと言う。好き放題、適当なことを言っているようだ。

【CM】

  • トラックのCMだが、このCMはトラックドライバーの自分にとっては素晴らしいと思う。確かに内容は自社製トラックのCMではあるが、そこにはトラックドライバーに対する応援メッセージも含まれている。何かと世間から悪者扱いされがちなトラックに対するイメージを払拭させる内容だ。また、トラックドライバーは「底辺職」「免許さえあればバカでもなれる」等の偏見をされがちな職業だが、実際に日本の物流を支えているはトラックであり、自社製品のPRの中にも、このような形でトラックの重要性・必要性を伝えてもらえることはありがたい。

  • 子どもに大人気のアニメで、ゲームも多数あり、宣伝をすることは構わないが、携帯ゲームのCMは疑問だ。女性が肌を露出したり、胸元もギリギリ露出したりしているのは如何なものか。性的興味を触発するCMでいいのか。子どものことも考えて制作してほしい。

  • ソーシャルゲームのCMは、卑猥なことを連想させるような表現でとても不快だ。表現として問題はないのか。高校生の男女が図書館のようなところで向き合って男子が耳打ちぎみに「ねぇ、女子も〇〇るってほんと?」、女子が「〇〇ってたとしても言うわけないでしょ」などというバージョンなど、オナニーや性的なことを連想させるような表現で、このCMが流れる度に不快感を覚える。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • スポーツを取り上げたバラエティー番組で、プロ野球選手がタレントに土下座していた。ゲームに負けたチームがゲームを続けてもらうために土下座をしたのだが、そのような行為が必要なのだろうか。とても不愉快なシーンであり、子どもたちにも悪い影響を与えると思う。

【「いじめ、虐待」に関する意見】

  • 自身が経験した面白い話を披露するバラエティー番組で、タレントが自分の元マネージャーの滑舌の悪さや吃音を笑いのネタにしていた。これらは生まれついての身体的な問題の場合が多く、本人にとっては深刻な問題である。それをタレントが面白おかしく話すのは、こうした問題を抱える人たちを馬鹿にしているのと同じだ。また、子どもが真似をして悪質ないじめにつながることも考えられる。

  • いわゆる"どっきり番組"で、タレントが暴力団の宴会に呼ばれるという設定があったが、当該タレントは恐怖で汗だらけになっていた。まるでいじめのようである。子どもたちはこの程度のことならやっていいと思ってしまう。こうした番組のあり方を考え直してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、新婚のタレントが有名占い師に占ってもらうシーンがあったが、占い師が「セックス」と連呼していた。子どもも見ている時間帯の番組であり、家族で視聴していたので、とても不快だった。

  • 深夜帯のアニメ番組で、自慰行為をしようとしたところを兄弟に見られ、からかわれるというシーンがあった。深夜帯ではあるが、もう少し青少年の視聴にも配慮してはどうか。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 多くの情報番組で"荒れた成人式"を取り上げていたが、壇上で暴れたり、常識外れの格好をしたりしている成人はほんの一部に過ぎない。テレビで取り上げるから真似する人が出てきてしまうのだ。青少年への影響を考えた上で取り上げてほしい。

【「犯罪の助長」に関する意見】

  • お笑いタレント数人で複数のチームを作り、車で移動しながら、与えられた課題をクリアしていくバラエティー番組で、敵チームの移動を妨害するためにETCカードを抜いたり、タイヤを外したりしていた。こうした行為は犯罪になりかねない。お正月の子どもも見ているような時間帯に放送する内容ではない。

【「危険行為」に関する意見】

  • お笑いタレントがラグビー日本代表である五郎丸選手のプレースキックのポーズを真似て、無防備のタレントの背後から肛門に指を突き刺していたが、大変危険な行為だ。子どもたちが真似しかねないし、当該ラグビー選手にも失礼だ。

第177回 放送と青少年に関する委員会

第177回–2016年1月26日

視聴者意見を中心に意見交換…など

2016年1月26日に第177回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。6人の委員が出席しました。まず、12月16日から1月15日までに寄せられた視聴者意見を中心に意見を交わしました。そのほか、1月の中高生モニター報告、今後の予定について話し合いました。
次回は2月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2016年1月26日(火) 午後4時30分~午後6時40分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

  • 「深夜に生放送されたテレビ番組に子どもが電話で出演していたが、違和感を覚える」という視聴者意見について、委員からは「深夜帯における児童の視聴や番組への参加に関しては、法律的な問題というよりも、視聴環境や家庭環境の問題でもあるので、保護者側にも配慮をお願いしたいところだ」という意見がありました。
    〔参考〕「青少年と放送」問題への対応について 日本民間放送連盟 放送基準審議会(1999年6月17日)
    5.放送時間帯の配慮 (抜粋)なお、21時以降および休日の児童および青少年の視聴については、その保護者の方々にも一定の責任を担うことをお願いしたい。

  • 「大晦日恒例のバラエティー番組は、不適切な内容や暴力的内容の度が過ぎている」という視聴者意見について、委員からは「今回の放送内容には、特に問題は感じなかった。子どもたちの場合、内なる攻撃的エネルギーがテレビを見ることで代りに消化されスカッとした感情を抱くようになることもある。もちろん程度問題だが、大人の理解も必要だ」という意見がありました。

  • 「滑舌の悪さや吃音を笑いのネタにしていた。これらは生まれついての身体的な問題の場合が多い。そのような人たちをバカにしているように感じた」という視聴者意見について、委員からは「身体的な問題を揶揄してはいけない。苦しんでいる人たちへの配慮がほしかった」という意見がありました。

中高生モニター報告について

1月の中高生モニターは、「年末年始番組を見た感想」というテーマで書いてもらい26人から報告がありました。
ただ漫然と進行する内容を批判する意見が寄せられました。「年末年始は、とにかくダラダラ進むバラエティー番組が多いのが気になる。いつものお笑い芸人さんがどのチャンネルにも出ていて魅力的な番組が少なかった」(神奈川・中学1年女子)。
定番の特別番組に対する厳しい意見もありました。『アメトーーク!! 5時間SP』(テレビ朝日)…「毎年同じような企画をやっていて、飽きる。好評な企画以外は別の企画にするべき」(石川・中学1年男子)。「運動神経の悪い芸人を笑う企画は、所詮、人の能力の欠如を笑っているだけで、あまりレベルの高い笑いではないと思う。全体的に、今回は期待よりも面白くなかった」(新潟・高校2年女子)。『絶対に笑ってはいけない名探偵24時!』(日本テレビ)…「鬼ごっこの終わり方や内容が毎年ほとんど同じなので別のパターンも考えてほしい。有名人への扱いが少しひどいと思う。罰もきつすぎるのがあるので考えた方がいいと思う。放送時間も日付が変わるまでには終わってほしい」(千葉・中学1年男子)。
『紅白歌合戦』(NHK)にも批判がありました。「歌手のジャンルが偏り過ぎ、トリの2人の歌手の選考にも疑問があった。1年の締めくくりという大晦日でここまで面白みのない番組を見るのは非常に残念だった」(千葉・中学3年女子)。「歌の時にステージの上にとにかく人が多すぎる。騒がしいし目がチカチカする。細川たかしさんの演歌の時のバックダンサーの踊りがふざけすぎている、と祖母が怒っていた」(福岡・中学2年女子)。
一方で、丁寧に作られた企画には賛辞が寄せられました。『2015伝言SJCみやぎ年末スペシャル!』(東日本放送)…「番組を通じて改めて2015年の宮城県の出来事を思い出した。視聴者から寄せられた大切な人への温かいメッセージの紹介もとても良かった。震災から5年、皆明るい未来に向けて進み続けており、仙台市も、うみの森水族館や地下鉄東西線を作り震災前に等しい観光客を呼び込もうとしていることを知った」(宮城・中学3年女子)。『坊ちゃん』(フジテレビ)…「長い小説を的確に解釈して簡潔にまとめて、セリフやセットも忠実に再現できる番組制作者の腕には驚かされた」(山梨・高校2年男子)。『赤めだか』(TBSテレビ)…「昭和の温かみのある雰囲気と平成に通ずる人間の本質の愛しさを感じる作品だった。ストーリーも面白かったが配役も絶妙で最後の最後まで楽しめた」(神奈川・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】モニターの意見の中に、報告を書く経験を積み重ねるうちに、テレビ番組を違った角度や離れた位置から見ることができるようになった、という内容を読み、とても嬉しく思った。中高生で自主的にそういう意識が持てるのは素晴らしい。

  • (埼玉・中学2年女子)中高生モニターになり、テレビを見る時、視聴者目線で見るのと、制作側であるテレビ局側から見てみるのと、双方からの意識を持って見ることを心がけると、気づいたことがたくさんあった。

  • (千葉・中学3年女子)私は、『箱根駅伝』(日本テレビ)の中継をずっと見ていた。改めてよく解説を聞いていると解説者の「プロ魂」のようなものを感じた。普段は面白いかどうかで評価していたが、番組制作に携わっている人を考えると、違う視点からテレビを見るのも面白いかもしれないと思った。

●【委員の感想】今の中高生が『紅白歌合戦』(NHK)に多くの期待を抱いて見ているということが意外だった。ただし、批判意見と改善提案は、それぞれ実に多様な意見が出され、番組の見方や期待する内容のばらつきを感じた。

  • (鹿児島・中学3年女子)さすがと思える貫禄の番組セットだったが、出場歌手の選考に疑問を持った。仮の出演者一覧を公開して、視聴者に票をいれてもらうのはどうか。

  • (東京・中学3年男子)紅白を録画しながら、ザッピングしていろいろな番組を見ていた。すべての年代が共通して楽しめるものが少なく、見たいところだけ見るようになってしまう。いっそのこと前半は子どもから若者向け、後半はシニア向けとバッサリ分けて2部構成にしてしまってはどうだろうか。

●【委員の感想】放送に携わる人たちが持たなければならない倫理観を厳しく追及している報告があった。

  • (愛知・高校2年男子)テレビ局のアナウンサーが逮捕された報道を目にした。特に報道番組など公正が求められ内容を信頼している番組の出演者が罪を犯すのは非常に残念というより、まるで人間不信に陥りそうな恐ろしい感覚になった。

●【委員の感想】意欲的な企画の番組を見て大変優れた感想を述べたモニターがいた。

  • (岩手・高校2年女子)『新春テレビ放談2016』(NHK) 。1年間に放送された中で面白かった番組をジャンル別にランキングし、そのヒットの理由などをパネリストが分析するという番組。NHKで主に民放の番組を取り上げ討論している様子は不思議で少し違和感があった。しかしテレビよりも魅力的なものが増えてきた中で存在を保つには何か新味やインパクトが必要で、規制で固められている現代ではなかなか難しい。批判や違和感があってもすぐに規制に走るのではなく、長期的に見守ったり、見る番組の選択を視聴者に任せたりすることも必要だ。

●【委員の感想】東日本大震災の被災者の中にはとてもテレビ番組を笑って楽しめない心境の人々もまだ多くいる。中高生がそういう人々の思いを推し量り洞察の深い報告を書いている。被災地の中高生の心の中を慮り我々も心に留めておかねばならない。

  • (宮城・中学3年女子)『2015伝言SJCみやぎ年末スペシャル!』(東日本放送)。出演した日本の女性レゲエ歌手lecca(レッカ)の仙台三桜高校の学生に対する思いや歌声に感動した。この番組で、県下の復興の最新の様子がとてもよく分かって、仙台市の新設された地下鉄にも是非とも乗りたくなった。宮城県の住民への温かい応援メッセージが一杯のこの番組が2016年にも放送されることを期待している。

今後の予定について

  • 3月13日(日)にテレビ朝日の協力を得て開催する中高生モニター会議について企画案が事務局から提出され、内容の検討を行いました。

  • 来年度の中高生モニター約30人の募集が始まった報告が事務局からありました。来年度は中学1年生から高校3年生までに募集の枠を広げました。募集の締切りは2月19日(金)です。

その他

  • 来年度の青少年委員会の日程や意見交換会開催について話し合いました。