2022年6月28日

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する『見解』をテーマにした「意見交換会」内容報告 & 事後アンケート調査結果報告

◆概要◆

青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を2022年6月28日、千代田放送会館2階ホールで開催しました。在京・在阪の放送局およびNHKには来場してもらい、全国の加盟社にはオンラインで同時配信しました。
放送局の参加社は、会場の在京・在阪局が12社39人、全国の加盟社のオンライン参加が105社で、アカウント数は230でした。
委員会からは榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員の8人全員が出席しました。

最初に榊原委員長から、「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。この『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーについての見解』を作成するにあたり、まとめ役をしてきました。この意見交換会では『見解』をまとめるに至るまでには様々な考え方があったことをお話ししたいと思います」と挨拶がありました。

続いて同じく榊原委員長から今回の『見解』の趣旨や、『見解』を出すに至った経緯などについて説明が、そして起草担当委員から補足説明がありました。

○榊原委員長
まずどのような経過でこの『見解』を公表したのかについて簡単にお話しします。
会場の皆さんの中には昨年11月に在京局の関係者を招いて開催した勉強会・意見交換会に参加された方もいらっしゃるでしょう。この時の意見交換会はまさに『見解』の議論の過程のひとつでした。実際にこのような『見解』になるかどうかまだ分からなかったのですが、こういうテーマを議論しようとなってもう1年近く経っていると思います。
どうしてそれが、私たちの委員会で検討する俎上に上がったかについて、簡単に経緯をお話しします。
まず、これは青少年委員会、あるいはBPO全体もそうなのですが、その性質に関わっている点があります。私たちは「視聴者からの意見」というモニターを行っています。視聴者から届く様々な意見がきっかけとなって、私たちははじめて活動を起こします。私たちは「視聴者からの意見」と離れたところで課題を見つけることは基本的にしません。「視聴者からの意見」の数や内容という一定の基準を作って、委員会の俎上に上げるプロセスをとっていて、全てが「視聴者からの意見」でスタートするのです。
BPOは民放連とNHKが、いわば、皆さんが作った第三者機関で、放送を見た誰もが意見を寄せることができます。BPOはその窓口です。
今回の『見解』に対してニュースやインターネット等で様々な意見や批判があるのは承知しています。しかし、その中の多くの方が誤解しています。BPOが検閲や規制をする機関であるかのような言い方をされ、それが一般の視聴者だけでなく、ニュース記事を書く記者の中にも全くの誤解を基に書いている方がいることはとても残念に思います。
BPOは政府の干渉から放送の自由を守るための仕組みとして、皆さんが作ったものであることを、ぜひ思い返してください。
それから、BPOは政府などの機関と違います。(その決定は)法律とも違います。今回公表した『見解』にも、法的あるいは道義的な規制力はありません。視聴者から寄せられた意見についてどう考えたらよいのかを、エビデンスに基づいて解釈して皆さんにお返しする役割であることを理解してください。
もうひとつの経緯として、BPOは今回とほぼ同じ内容の見解や意見をこれまでに3回出しています。青少年委員会からは2000年に「バラエティー系番組に対する見解」、2007年に「『出演者の心身に加えられる暴力』に関する見解」を、また放送倫理検証委員会から2009年に「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を出していて、決して今回が初めてではありません。
『見解』について事前に皆さんから寄せられた質問の中には「痛みの定義とは何か、ガイドラインを示せないか」という趣旨のもがありましたが、BPO青少年委員会の性質とは相容れないものです。私たちは基準やガイドラインを示したり、こうすべきだと言ったりするような委員会ではありません。この『見解』は、「視聴者からこんな意見が来ているが、これにはこういう意味があるのではないか、今後番組を制作するときにぜひ念頭に置いて制作していただきたい」という思いから作ったものです。
「規制をかけるのは何事か」という意見もありますが、私たちには規制をするような権限はありませんし、BPOはそういうために作られたのではないということは確認しておきたいと思います。
この後は『見解』の起草を担当した各委員から補足説明をしてもらった後、質疑応答に移りたいと思います。

○髙橋委員
私はおもに子どもの自殺問題に関して活動していて、いじめに関することと自殺に関することはリンクする部分があると考えています。2013年に「いじめ防止対策推進法」ができて以来、この10年でいじめに関する社会的な情勢がかなり変化してきました。そんな中、番組がいじめを助長することにならないかという視点は欠かせないと思っています。
加えて、今は子どもたちが動画を撮ってそれをSNSに投稿できる時代です。ちょっとしたドッキリの仕掛けであればまねできてしまい、それをSNSで拡散できる時代であると感じます。下手をするとYouTubeなどの投稿動画のほうが悪質な場合が多いです。(映像が) 子どもに与える影響が時代とともに変わってきていると思います。

○沢井委員
私たちは今回の『見解』を科学的なエビデンスに基づいたものにしようと考えました。テレビ放送は70年の歴史があり、番組が視聴者に与える影響についての研究は蓄積され、そのメタ分析から共通項が見出せます。映像で攻撃的な行為を見たり、それを周りが平然と見ている様子を視聴したりすることで、その模倣が生じることを報告する論文が多くあります。
今回の『見解』の新しい点は、痛み苦しんでいる人を傍観的に見ている、あるいはワイプの中で人の苦痛を笑いながら見ている番組が近年増えているという指摘です。「痛みがあってはいけないのか?」という議論もありますが、心理的・肉体的な苦痛を味わっている様子が演じられていたものだとしても、その様子を周辺が見て笑っているという、「潜在的な攻撃性が模倣される可能性」が、今回の問題点です。
「人を殴る場面がテレビ番組、例えばドラマなどにもあるのに、なぜそれについて言わないのか」との意見がありますが、フィクションという枠組みが明確なものは、5歳の子どもでも「ああ、こういう物語か」と分かります。今回は、痛みを受けた人を遠巻きに見て笑うという多重構造のバラエティーが問題ではないかと言っているのです。
『見解』の中で具体的な例を2つ挙げました。下着の例と、3メートルの深い落とし穴に6時間落としたままにしておく企画です。この2例にふだんの10倍の数の視聴者意見が来ました。私たちは視聴者が感じる不快をただ代弁するのではなくて、なぜそれを不快と思う人がいるのか、なぜここで共感性の問題を問わなくてはいけないのかということを、科学的なデータを基に説明する必要があると思いました。視聴者意見の代弁というより、それに対して解釈を加えながら説明する。そして、問題点を指摘し、もう少し違う視点で面白いものを開発できないかという提案の気持ちも込めて、この『見解』を書きました。

○緑川副委員長
私の仕事は弁護士ですが、弁護士の仕事は紛争が生じたときに生じた事実に法律や規範を適用して結論を導いていきます。ですから、何か問題が起こったときにはどうしても、法律はどうなっているのだろう、ルールはどうなっているのだろう、規範はどうなっているのだろうと考え始めて、そこに対して生じている事実がどのように当てはまるのかという思考で仕事をしています。
しかし青少年委員会で、テレビ放送が青少年にどういう影響を与えるのかを考えるときには、BPOの例えば放送人権委員会のように特定の表現が人権を侵害しているのか、放送倫理に違反しているのかというような思考方法とは違ってきます。そこには、これ以上やったら青少年に悪影響を与えると、私たちが当てはめられるようなきっちりとしたルールがあるわけではありません。やっていいルール、やってはいけないルールがあるわけではないのです。
私自身も子どものころは、「8時だヨ!全員集合」を毎週のお楽しみとして見ていた世代で、テレビで子どもによい影響を与えないと言われている番組を見ることが実際子どもにどのくらい影響を与えているのか、説得力のあることなのかと思っていたところがありました。
青少年委員会に入って、毎月届く視聴者意見を見ていると、誰かに痛みを与え、それを笑っているバラエティー番組に対する視聴者意見が毎月一定数、継続して来ていることが分かりました。番組制作者、また私たち第三者機関の委員は、青少年に対する影響というものが説得力のある科学的な根拠を持ったものなのかどうかを、きちんと考えなければ、調べなければ、確認しなければいけないと思うようになりました。
委員長からも「毎回こういう意見が来ている。一度考えてみたほうがよいのではないか」という示唆があり、青少年に対する影響、子どもに対する影響というのが科学的にどういうふうに研究されているのか、科学的な根拠を確認したいという意見も申し上げて、今回の検討が始まりました。発達心理学や小児科医という子どもについての専門家が多くいる中で、時間をかけて世界的な知見について説明を受けて今回の『見解』になりました。
私たちは、こういう研究があることをテレビ番組の制作者の方々とも共有をして、その中で今のこの時代、公共性を持っているテレビとしてこれからどう表現を工夫していくべきかを一緒に考えていきたいと捉えています。
BPOが『見解』などによって、結果的に番組制作者に不自由さをもたらしてしまうのではという意見もあります。青少年に影響があると思えば、この表現はやめておいたほうがよいのではという発想が出てきますが、表現の内容も方法も無限にある中で、今のこの時代や社会において工夫を凝らしていい番組を作っていくということを、私たちも一緒に考えていきたいと思っている次第です。

主な質疑応答の内容は以下のとおりです。

Q:痛みを伴うバラエティーに関して、痛みの判断基準はどこまでがOKでどこまでがNGなのでしょうか。制作者側の物差しになるようなガイドラインは作れないのでしょうか。

A:(榊原委員長)私たちは「ガイドラインを作成してここまではいいですよ」と判断するような立場ではありません。基本的には視聴者である青少年が「本人が苦痛を感じている」「すごく痛そうだ」と思うかどうかです。その痛みは演技である可能性もあると思います。しかし、それを見て「これはちょっとすごく痛そうだ」あるいは「苦痛だ」という「苦悩」、そういう表現が、私たちがここでいう「痛み」になります。
格闘技やドラマの中にも暴力シーンが出てきますが、流れの中、ルールの中でやっているのだということが予見できるものは、表面的に「痛い」と見えても今回対象としたものではありません。
それからもう一点。ただストレートに見るだけではなくて、スタジオにいる人たちがその場面を見て嘲笑している、楽しがっている。この2つのことが同時に見られるということが、私が(『見解』の中で)ミラーニューロンという脳科学の話を出しましたが、子どもたちの中で「これは何なんだろう」と、つまり人が苦しがっているとしか見えないのに、周りにいる人がこんなに笑っている。それをリアリティーショーとして見た場合、何度も何度も見る過程の中で、子どもたちの中には、例えば実生活で他人が苦しみを味わっていても、それを傍観するような姿勢につながる可能性があるということです。
ですから、判断基準というのは書かれたものはありません。表現、演出は皆さんの専門ですので、そこはきちんと見ていただいて、例えば「小学生ぐらいの子どもがこれを見たらどう思うだろうか」というように想像力を働かせて、皆さんの中で判断してもらいたいと思います。

Q:芸人が覚悟を持って臨む“お約束的な”痛みを伴う笑いは明るくおおらかな気持ちで見ることができますが、一方でいわゆるドッキリのように本人が予期せず痛みを受ける姿を笑うような番組には不快感を覚えます。これらをひとくくりにせず分類するような動きはありますか。

A:(榊原委員長)覚悟を持って、明るくおおらかな笑いの気持ちで見ることができるような演出・演技というのはたくさんあると思います。私たちが審議に入ったところで、社会的には大みそか恒例の人気番組に対して向けられたのではないかと言われました。私たちには青天の霹靂でした。今回の審議入りの際に、あの番組については視聴者から批判的な意見は来ていませんし、私たちもあの番組のことは全然対象に考えていませんでした。あの番組はある程度のルールの下で行われている、ゲームと言うと怒られますが、それは子どもにも分かります。小学生の間でもとても人気のある番組で、私たちは審議する段階でこの番組のことは対象として考えていなかったというのが事実です。

(沢井委員)分類してはどうかという点に関しましては、これは作り手の方が分類をなさってもよいのかなと思います。それなりの基準というものを、制作の方がそれぞれに企画の助けとしてお作りになればよいと思います。
拷問のような、「自分ではどうにもできない状態で苦しむもの」が、今までの視聴者の意見においては、非常に不快を持って受け取られる傾向にあります。
痛みがあっても、出演者が挑戦して、乗り越えていくとか、何かを獲得していくとか、メダルを取るとか…という場合では、視聴者は共感を持って見ますし、応援したくなります。例えば『SASUKE』の海外版『THE NINJA WARRIORS』は非常に人気があります。チャレンジする姿は痛そうで辛そうですが、罰ゲームはひとつもない番組です。ゴールまでたどり着けるか否かを競うだけで、ルールも明確です。苦しみがあってもそれが共感になるという構成で、国際的にも評価されている番組です。
日本のバラエティー番組は罰ゲームが多過ぎると思います。なぜこれほどまでに罰を与えなればいけないのか疑問です。輝かしい競争というものがあれば、そこで競い合う姿を見て、誰かを応援するということだけで、視聴者はハラハラドキドキしながらも面白いわけです。

Q:行為の見た目とは違い、被行為者が受ける痛みがほとんどないような場合も見た目が痛そうだからよろしくないという判断になるのでしょうか。お笑い芸人の突っ込みもその部類に入ると思いますが。

A:(榊原委員長)被行為者の受ける痛みがほとんどないような場合でも視聴者にはその場面からしか情報は入りません。特に年齢が小さい子どもには、そこに見えることが全てです。実際には痛みがなくても、明らかに痛みが起こっているように見える演出があった場合、さらにそれを周りの人たちが笑うような場面があった場合、子どもたちによい影響を与えないと思います。
お笑い芸人の突っ込みは、それが芸として成り立っている場合、文脈の中でやっているということが見る側にも明らかです。ひとつの芸として痛い思いをされて、それがまた受けるというような芸が確立している場合には、みんな「来るぞ」という感じで見るわけですから、それは見る側にとって先ほど言った大きな心の痛みにはならない。ただ、同じように2人でやっている場合でも全く予想のつかないところで本当にパンチを喰らわせてしまったときなどで、本当にそれが痛かった場合はリアルに見えると思いますし、この間の線引きだと思います。
お笑い芸人のよく確立された突っ込み芸について、私たちはこれが痛みを伴うことを笑うという対象になるとは最初から考えておりませんでした。

Q:関西には伝統芸能と言ってもよい吉本新喜劇があります。暴力シーンがたびたび出てきます。何かというと棒のようなものや灰皿やお盆で叩いたり、女性の芸人さんを壁に投げ飛ばしてぶつけて目が回るようなしぐさをする場面が頻繁にあります。関西では子どものころからなじみのある芸なので一定の理解をしてお約束事と受け止めますが、いかがでしょうか?

A:(榊原委員長)痛みを伴うことを笑いとするということに該当する番組はどういうものがどのくらいの数があるのかを、数年にわたって見ていますが、吉本新喜劇が視聴者意見で批判的なものとして寄せられたことはほとんどありません。見る方は分かっているのではないかと思います。上からたらいが落ちてきたりするのは芸の流れの中であることは、みんなから理解されていると思います。もちろん私たちも吉本新喜劇が該当するという考えは最初からありませんでした。

Q:先日、亡くなられた人気芸人の熱湯風呂やアツアツおでんのような芸は、痛みを伴うバラエティーの対象にならないと考えてよろしいのでしょうか。

A:(緑川副委員長)
ご本人の芸は有名ですし、今までの説明や質疑応答でもお話ししたとおり、今回の委員会の『見解』が対象にしているものでないことはご理解いただけたのではないかと思います。
今回の『見解』の4ページに、他人の心身の痛みを周囲の人が笑うことを視聴することの意味ということで、今回の『見解』の趣旨を特徴づけていることをご理解いただけるのではないかと思います。文脈があり、見ている人たちが気持ちよく笑える演芸とか芸とか技術とか、そういう域に達している笑いの中に痛みがあるということを問題にしているのではなく、そこを人が嫌がって避けようと思っていて、避けたいのに羽交い絞めにして痛みを与え、そのことをさらに周りで嘲笑していることが、科学的には子どもによい影響を与えないということがあるのではないかということを、一定程度考えて番組制作をしていくためのひとつの情報というか、そういうことがあるのだということを共有していきたいという趣旨で作った『見解』です。そういう観点から番組制作に役立てていただければと思います。

Q:痛みを伴うバラエティーというくくり自体が広過ぎるので、もう少しテーマを絞られたほうがよかったのではないかと思ったのですが…。

A ;  (榊原委員長)どういう名前(『見解』のタイトル)にしようかということは確かに話し合いました。今回はひとつの番組ではなくて、とてもたくさんの種類がある中で共通点がある批判というかコメントが多かったので、番組名を挙げるのではなくて全体的に扱おうということで、この名前に決めました。
昨年11月に在京局の皆さんと意見交換したときにも、「少し広過ぎるのではないか」という同様の意見が出ました。ただ、実際に議論をする中で、私たちの一番の骨子は本当に苦しんで苦痛に見えるところを周りで笑っているというところ、その中で例えば共感性の発達などによくないだろうということが、だんだんと焦点化されてきた経過がございます。誤解を呼ぶような可能性があったかなという点ではおっしゃるとおりだと思っています。

Q:今は、ものすごい多様性の世の中で、YouTubeもあれば漫画もある、映画もある、いろんなものがあり、子どもたちも同様にこの多様性の中で生きています。小学生と高校生だと考え方も違うと思いますし、実際に番組を子どもが見て、いじめといったところに本当にどれだけリンクしているのかというのが我々には分からないところがありますので、そういうことも教えてほしいと思いますが。

A:(髙橋委員)いじめに関することで報道等に関連するデータはないのですが、少なくとも惨事報道や自殺に関する報道に関しては、心理的な影響があるということが、今までの東日本大震災や9.11のテロのときの研究で分かっています。私自身もこのお笑いのことだけではなくて自死に関する報道に関しても、これは子どもたちにどういう影響があるのかを見ているところですが、バラエティーに限らず報道全般の問題だと思います。
今回この議題が上がったのは、BPOの側からではなく、視聴者からいろいろな意見が届いたからです。それを取り上げて、視聴者と番組制作者との間で私たちは調整をしながら、これをどういうふうに持っていったらよいかを一緒に考えていく立場だと思っています。この番組は駄目とかそういうことではなくて、みんなで一緒に考えていくというスタンスです。

(沢井委員)子どものいじめについてその影響がすぐに出るかどうかですが、放送番組を見てから3か月後かもしれないし、5年後かもしれません。攻撃的な番組ばかりを見ていた、罰ゲームばかり見ていたこと…等々が影響する可能性や因果関係をすぐに見ることは難しいです。
子どものSOSの電話の話し相手をしているボランティアによると、「テレビ番組の罰ゲームをまねした強烈ないじめを受け、死にたいと言ってきた小中学生が複数いる」とのことでした。なかなか表に出ない話ですが、ある程度の数があるだろうと予想されます。

Q:本日、お話しいただいたような痛みを伴うバラエティーの痛みの真意について、BPOから直接、記者や芸人さんに向けて発信していただけたらありがたいのですが…。

A:(榊原委員長)意見交換会という形で私たちの考えを正直に申し上げたのは、それを皆さんの中できちんと分かっていただければよいのではないかと思ったからです。私たちは、「いや、この番組は違う、これは違う」ということを申し上げるべき立場ではないと思っています。つまり、BPOがこう考えているということによって、私たちは皆さんに考えていただきたいということで、一般的な問題の投げかけをしたと思っています。
皆さんにはこの『見解』を作るときには大みそかの番組のことが頭になかったことも申し上げましたし、亡くなられた人気芸人の芸についての視聴者からの意見も来ていないことも申し上げましたので、皆さんにはもうそれが伝わっていると思います。その辺で皆さんの中で確信として持っていっていただくことで、言い方としては、「いや、この間そういう意見交換会があって、どうもBPOはそうじゃないみたいだ」など、これは皆さんの解釈で言っていただくことは自由だと思うのですが、私たちがこの番組は私たちにとってよろしい、よろしくないということを言う、そういう立場ではないということです。
この『見解』は一般の視聴者にも公表されていますが、主に民放とNHKという実際に番組を制作する側に読んでいただきたくて作ったのが本音です。皆さん、確信を持った上でこれならできるという形で自信を持って番組を作っていただきたいと思います。

(緑川副委員長)今の関連でこの『見解』を出した後で批判的な意見がBPOに届いたり、ネットで書かれていたという報告を受けています。私も拝見して気になった点として、青少年に悪影響を与えるという根拠を示していないという意見がありましたが、『見解』の全文をお読みいただければ、根拠を示していることがお分かりになると思ったことがあります。
また、例えば罰ゲームでも私たちは今回の『見解』で問題にしたような、人が困っているところを嘲笑してさらに困らせるみたいな、そういうところは本文を読んでいただければ理解してもらえると思って『見解』を作りました。しかし、題名の『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』というのは、幅広に解釈できるタイトルだったことをそのとき改めて思いました。タイトルが衝撃的に印象に残って、全文を確認されないまま今までやってきた、受け入れられてきたはずの芸もできなくなってしまうのではないかという批判につながったのではないかとも思いました。
もちろん今日おいでくださった皆さんは十分に理解していただいていると思いますが、テレビ局、制作をされている皆さんにはぜひ、現場の方々にも全文を、BPOのウェブサイトにも出ていますから、読んでいただきたいと思います。これをかいつまんで報道された部分だけを読むことでは、私たち委員会が伝えたかった真意や根拠としたエビデンスがあるというところまで、なかなか理解してもらえないことも誤解につながっているのかなと思います。批判的意見の中には、「根拠を示せ」というものが多くあったのですが、やはり批判をするときには原典に当たってから確認をした上でということも必要なのだろうなと改めて思いましたので、制作現場の方々には読んでいただきたいと思います。
これを読むことによって、罰ゲームは全部駄目なのかとか、芸の範疇だったら全部いいのかとか、そういう単純なことではなく、子どもに対して共感性の発達に影響を与えることがあるのを知っているのと知らないのとでは、どういう番組を作ろうかというとき、みんなで作り上げていくとき、ひとつの参考情報になるのではないかと思います。

Q:ドラマは流れや予見などストーリーがあるから影響はないが、バラエティーはそうではないから影響があると断じられているのがずっと腑に落ちません。バラエティーにも流れや予見はありますし、きちんと台本も書いています。構成も作っていますし、そもそもドッキリ番組はタイトルにドッキリと付いています。なので、視聴者もドッキリを見るつもりでドッキリを見ているので、なぜバラエティーだけそこを断じて悪い影響と言ってしまうのかが極めて腑に落ちません。また芸人がいろいろドッキリを仕掛けられたときに、それをワイプなどで嘲笑されていると書いてあります。お笑い芸人がドッキリを仕掛けられて全力でリアクションをして、それをワイプなどで笑われるという行為は、ばかにされているのではなくて、最大の賛辞であると思うのですが、いかがしょうか。お笑い芸人はそういうところで笑いを生み出して、それをスタジオのMCやゲストが笑うということが一番の喜びで、それを職業にされている方であって、ドラマの中で俳優さんが名演技をして、それを見てスタジオのみんなが泣くのと同様だと思います。そこだけなぜばかにして笑われると断じてしまうのかと思っていて、バラエティーのほうはこの『見解』を読む限りでは強めに批判されているような気がしてなりませんがいかがでしょうか。

A:(榊原委員長)とても線引きが難しいことを言っていらっしゃると思います。ドラマの中で暴力場面がある場合には、もちろん多少は物理的な痛みを感じると思うのですが、やはりドラマというのは作られた話であると思われているわけです。ところが、バラエティーの中でリアリティーショーとして、あるいはドッキリという名前がついていても、ドッキリということ自体は、全部作られたものであったとしても、暴力などを受ける人が知らないところでやるからドッキリは面白いわけです。ですから、先ほど言いましたように芸の一部になっていて、次にここでたらいが落ちてくるよ、ここでお湯の中に落ちるよというのは、もうストーリーがそこで見えるわけです。ドッキリといっても、ドッキリという言葉の中にこれはドッキリをかけられている人は知らないぞというようなリアリティーを作り出していっています。そこがドラマと違うところです。ドッキリとついているから、もちろん大人で見ている人は分かりますよ、ドッキリだから。けれども、実際それは(子どもにとっては)、ドッキリとついているということは、仕掛けられたほうの人は知らないのではないかなというようなリアリティーを作り出しているわけです。それが非常に今技術的にうまくなっていますので、私たちが見ても「おお、これは」というようなのがまさにリアリティーになっているわけです。そこがドラマの間との薄い点ですが、線引きです。
それからもうひとつ、私たちはもちろん芸人さんが命をかけている、あるいは芸としてやっているということは理解していますし、尊敬しています。しかし、私たちはそれを見た視聴者がどう思うかということが全てのスタートです。芸人の間で、芸人同士あるいは作り手との間で、きちんと分かっていること自体が分かっていても、できたものを見る人間、特に年齢の小さい人にとって、例えばすごく苦しそうに見えるような、それもドッキリを知らないところでされたのだと、こういう形になります。ですから、ドッキリはかけられる人が来ることが分かったら全然面白くない。あれはストーリー上知らないことになっていると。それをどんどん作り込みの中で本当にそれらしくしていくわけです。
小学生ぐらいの子どもはそのようなことについては見分けられない可能性があります。その辺のところの小さい線引きは難しいところですが、皆さんにも理解してもらいたいと思っています。

Q:見ているほうが苦痛に感じるか感じないかが重要だと言っていましたが、ドラマも一緒だと思います。なぜドラマだけはストーリーを知っているからこのシーンは影響がないと断言できるのか。ドラマも見たシーンが暴力的だったら、その全部のストーリーを知っているか知らないかにかかわらず影響は大きいと思います。なぜドラマは大丈夫でバラエティーはダメなのですか。

A:(榊原委員長)これは理解力によると思うのですが、ドラマというのは作られたお話だということはかなり小さい子どもでも分かります。しかし、ドッキリでリアリティーショーに作られているところになると、そこは子どもでは分からないと思います。そこで私たちはドラマとは少し分けています。
ただ、もう少し突っ込んで言いますと、この『見解』の中にも書いてありますが、暴力場面自体が小さい子どもにとっては別にリアリティーであろうとドラマであろうと格闘技であろうと、あまりよろしくないというデータは出ております。

Q:痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関してですが、これは痛みを伴うシーンを笑っているという構図を対象にしているということでよろしいですか。痛みを伴うシーンに対して笑うということに対する何か実験だとかデータはあるのかどうかを教えていただきたいのですが。

A:(榊原委員長)  『見解』4ページにございます。これは小さい子どもが共感性ということを発達させる過程にミラーニューロンというものが関係していて、ある他人が苦しい目に遭ったときに自分もそれと同じように感じる部分が脳にあります。その他人を、例えば慰めるとか止めるというところを見て共感性が発達するということが今、脳科学や発達心理学の中で言われています。生まれたばかりの人間の赤ん坊に共感性というのはないと言われています。それがやがて、どういう具合にして自分ではなくて他人が転んで痛くて泣いているところに助けに行ったりするのかということは、実はそういう周りの体験をたくさん見る中で共感性が発達するからだとされています。

Q:他人の心身の痛みを笑うというのと嘲笑するというのでは大分違うと思うのですが、その笑いが嘲笑であるかどうかというのを我々が判断していかねばならないのは非常に悩ましいです。判断基準を我々が考えていくということですと、今回の番組についてもこれは嘲笑ではないからOKだという判断が出る可能性もあるなと、制作者側としては思うのですが。

A:(榊原委員長)  番組の中では分からないのですが、嘲笑と笑いの差というのはやはり状況の中で作られます。他人が明らかに苦しんでいる、泣いているのを笑うのはどんな笑いであっても嘲笑になります。やはり文脈の中で言うしかないですね。痛いことを笑うというのが人間の本質にとって本当に楽しい、心が解放される笑いなのかということの、ある意味ではかなり哲学的な問いになると思いますが、嘲笑と笑いというのはそういうことで厳密に分けることはできないと思っています。

Q:今回対象にしているのは嘲笑であるということですよね。そのときの判断について、我々は日々視聴者からの意見に少数であっても考えねばならないというケースが出てくるのですが、我々の一番の悩みどころはそれを数で判断していいものなのかというところです。その辺はどうお考えでしょうか。

A:(榊原委員長)自由に意見が寄せられたものを数で判断するのは難しいですね。もちろんある期間にどのぐらい来ているかということで総体的な数、これはサンプリングと同じことになると思いますが、そういう意味ではある程度数が多いときと少ないとき、またある番組にたくさん来ているときというのはあります。私たちには常に一定のたくさんの意見が届くわけですから、それが増えていることはある程度、つまり数が反映されていると判断して、こういう議論をしているわけです。ひとつだけあったからそれをやるということはまず基本的にいたしません。ある番組について、ある一定の数が来たというのをまずスタート地点として議論することを私たちのルールにしています。

最後に副委員長と委員長から閉会の挨拶をいただきました。

○緑川副委員長
今日は、長時間にわたってご参加いただき、ありがとうございました。オンラインで視聴していただいた方々も本当にありがとうございました。
今日は私たちが公表したこの『見解』についての説明と、質問に対しての回答をいたしました。『見解』を公表したときに記者会見をすぐにできなかったことを指摘されましたが、今後の参考にさせていただきます。今日は委員のほうからもだいぶ踏み込んだお話をさせてもらい、様々な質問にご説明する機会を持てて本当によかったと思っています。
ずっとコロナがあって、なかなかこういう機会を持つことができなかったわけですが、「視聴者とテレビ局をつなげる回路」ということが青少年委員会の目的とされていますので、今後はできるだけこのような機会を設けてお話をさせていただきたいと改めて思いました。

○榊原委員長
皆さん、最後までいろいろなご意見、ご質問をいただきまして、ありがとうございました。
私たちの表現の仕方などによって誤解が生じたというところについては、今後考えていかねばならないと思っています。ただ、BPOの立ち位置というのを皆さんにしっかり、当事者として知っていただきたいと思います。視聴者から寄せられる意見の中には、私たちは規制する立場ではないのにもかかわらず、「もっと規制を」と要望される方がいます。それから、世の中には放送というものに対してBPOのような第三者機関ではないものを作るべきだという意見もあることは知っていただきたいと思います。
私たちは、より多くの視聴者が楽しんでもらえるテレビ番組を作るにはどうしたらよいかという点では、皆さんと同じ方向を向いているつもりです。今回の『見解』の私たちの発表の仕方というのが誤解を生じてしまったかもしれないということは真摯に受けとめ反省いたしますが、そういう気持ちで活動していることだけはご理解いただけたらと思います。皆さんそれぞれの局に帰られたら、今回の『見解』はBPOのウェブサイトにも掲載されていますので、特に制作に関わる方には「こういうのが載っているのでよく読んでほしい」ということと、今日いろいろお話ししたことを皆さんの中で解釈してもらって、こういう意味なのだということを局の皆さんに伝えていただいて、番組をよくすることに今後いっそう精進してもらえたらと思っています。
本日は最後までありがとうございました。

質疑応答を中心におよそ1時間半にわたって行われた意見交換会は、青少年委員会が公表した『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』について、あらためて理解を深めてもらうよい機会となりました。

【参考資料】
◇BPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー番組」に関する見解
(2022年4月15日)〈見解全文 PDF〉
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/youth/request/20220415_youth_kenkai.pdf

〇BPO青少年委員会「バラエティー系番組に対する見解」
(2000年11月29日) 
https://www.BPO.gr.jp/?p=5111

〇BPO青少年委員会「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解について
(2007年10月23日)
https://www.BPO.gr.jp/?p=5152

〇BPO放送倫理検証委員会「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」
(2009年11月17日)
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2009/07/dec/0.pdf

事後アンケート(概要)

  • (1)開催日時、開催形式について
    • ウェブ配信はありがたい。金曜日以外で、もう少し早い時間帯が参加しやすい。
    • 委員(壇上から)と参加者が対面形式だったため、対立しているように見えた。
    • バラエティーを制作する機会は少ないが、できれば対面で参加したかった。
  • (2)委員会の説明、意見交換について
    • 委員の説明は分かりやすく、「見解」の内容・背景を多角的に理解できた。
    • 委員に真摯に対応してもらい、考えを直接聞けたことは有意義だった。
    • BPOに対して「職員室の先生」のようなイメージを抱いていたが、闊達な意見交換が展開されていて、健全でいいことだと思った。
    • 子どもに悪影響を与えかねないという根拠のデータを詳しく聞きたかった。
    • 見解だけ読めば誤解を与えかねないものだった。公表前に(または公表時に)説明会や記者会見を開くべきだった。
    • 広がった誤解を解くためにも、今回の記録を残して各社で共有するべきだ。
    • 委員会が児童の脳の発達の視点で話していたのに対し、放送局側はプロとしての芸人の仕事への干渉という点で話をしていたため、双方の溝があまり埋まらなかったと感じた。痛みを伴う行為が一律にダメなわけではないとの回答を得られたことは、実りがあった。
    • もっと意見交換と質疑に時間を割いてほしかった。他社の意見を聞きたかった。
  • (3)気づいた点、要望、今後取り上げてほしいテーマ等
    • 定期的に委員の方々と意見交換できる場があればうれしい。
    • 委員会での議論のプロセスが分かるような意見交換会にしてもらえると有意義だと思う。
    • 今後見解を出すときは、誤解を生まないためにも会見を開いたほうがいい。
    • BPOは検閲機関ではなく放送局が自ら律するための機関であるという基本的な理解を含め、今回のような機会を継続して意見交換を重ねていく必要性を感じた。

以上

第174回 放送倫理検証委員会

第174回–2022年8月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議
9月に委員会決定を通知・公表へ

第174放送倫理検証委員会は8月22日にオンライン形式で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、了承が得られたため、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

議事の詳細

日時
2022年8月22日(月)午後5時~午後7時30分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から7月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。その結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

2. 7月に寄せられた視聴者意見を議論

7月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の銃撃事件を伝えたニュースや特別番組の内容、参院選特番でのコメンテーターと候補者とのやり取り、参院選候補者の出演した番組などについて、批判的な意見が寄せられたことを事務局が報告した。

以上

第307回放送と人権等権利に関する委員会

第307回 – 2022年8月

「少年法改正と実名報道」4月の少年法改正に伴う実名報道についての現状を共有…など

議事の詳細

日時
2022年8月16日(火)午後4時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」第1会議室(オンライン開催)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から所定の書面すべてが提出されたのを受けて、論点を整理し、ヒアリングのための質問項目を絞り込み、次回委員会でヒアリングすることを決めた。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3. 民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要を報告した。

4.「少年法改正と実名報道」

廣田智子委員から、2022年4月施行の少年法改正に伴う「特定少年」の実名報道解禁の現況が報告された。今後起こりうる放送での実名報道に対する人権侵害の申立てに備え、少年法改正の概要と4月以降の「特定少年」実名報道の実状、過去の少年刑事事件での実名報道に起因する名誉毀損案件の裁判例など、多岐にわたり詳細に伝えられた。

5. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、さまざまな観点から多数の意見が寄せられました。

2022年7月にBPOに寄せられた意見は2,743件で、先月から1,038件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール85%、 電話14%、 郵便・FAX計1%
男女別は男性37%、 女性18%で、世代別では30歳代25%、40歳代24%、50歳代20%、20歳代16%、60歳以上10%、 10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、7月の送付件数は1,431件、49事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から40件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、映像・音声の使い方、参院選への影響、政治家と宗教団体との関係の報じ方などさまざまな観点から多数の意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は55件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は139件で、前月から55件増加しました。
今月は「表現・演出」が54件、「報道・情報」が44件、「要望・提言」が10件、「いじめ・虐待」が6件と、続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 安倍元首相銃撃の瞬間の映像を流すのはやめてほしい。旗に隠れているだけでまさにその瞬間の映像だったのでゾッとした。配慮に欠ける。

  • 銃撃の瞬間はすなわち殺害の瞬間。映像が相当にショッキングで動悸がおさまらない。インターネットで流れているのは知っていて、あえて見ないようにしていたが、テレビで何の前触れもなく流されたら自衛できない。

  • 元首相の冥福を祈る気持ちは私も同じだが参院選の投票日は二日後に迫っている。夜まで安倍氏の経歴を紹介したり過去の映像を流したりすることは自民党を利することになる。選挙の「公平性」は決してないがしろにすべきではない。

  • 参院選の投票前日に元首相銃撃の特集を放送した。意図はどうあれ特定政党の宣伝になってしまう。公平を保つために放送は選挙終了後にすべきではなかったのか。

  • 元首銃撃事件に使用された自作の銃の構造を、CGなどを用いて詳しく解説していた。見た人がまねて銃を作ることができるほどの再現性だと感じた。こうした情報の取り扱いには十分に配慮すべき。

  • 元首相銃撃事件の容疑者の供述として「元首相が教団と関わりがあると思い込んで」などと、実際には関わりがなかったかのような内容が報道されているが、現実には元首相が教団の関連団体にビデオメッセージを送っていたことが分かっている。これに対し全国霊感商法対策弁護士連絡会は抗議している。「一方的な思い込みによる犯行」と受け取られるような報道は止めるべきだ。

  • 情報番組のMCが「宗教の問題とまったく関係がない元首相に刃が向いた」と発言した。「まったく関係がない」と断じるなら相応の根拠を示すべきだ。

  • 野党幹部が教団の名称変更の経緯などに疑義を呈したことについて、情報番組の出演者が「パフォーマンスっぽいと思ってしまう」。事実とかけ離れた発言で不適切。

  • ラジオでアニメ主題歌を特集したが、うち1曲は参院選に立候補している漫画家の代表作であるアニメのものだった。作品のタイトルを紹介すればすぐにその作者の名前が連想されるため、意図していなくても候補者の宣伝になると思う。選挙期間中にこのような曲を流すのは不適切だ。

  • 開票特番の出演者がある党首へのインタビューで個人的な恨みを晴らしているように感じた。

  • ある局のいくつもの報道・情報番組に出演しているコメンテーターを選挙期間中、出演させなかったということは、その局がこの人物を特定の政党の関係者とみなしている証だと思う。普段、この局はその人物の考えを放送しているということになるのではないか。

  • 情報番組でタレントが新型コロナ感染症について「死者がいる以上、相応の対応が必要という議論があるが、それはほかの病気も同じ」と述べた上で「もはやコロナは心の病気だと思っている」と発言した。私の家族は今、自宅療養中で激しい咳などの症状に苦しんでいる。家庭内で介助や感染対策をしている人たちに冷や水を浴びせるような許しがたい発言だ。また、この発言が感染者やその家族への偏見を呼び起こさないか不安。

【バラエティー・教養】

  • 流行の先端を行くような中高生が体を張って希少な川魚を探したり、山越えの自転車通学について行ったり、また歴史や生物に造詣の深い若者の興味深い話に耳を傾けたり。彼らの姿は「今どきの若者」に対するイメージを大きく改善してくれる。ターゲットにしていると思われる若者の視聴者がいろいろなことに関心を持つきっかけとなることを期待したい。

  • 飲食店でシカの肉の「表面をさっとゆがいたレアなもも刺し」を食べるシーンを紹介した。ジビエの生食は食中毒で死亡するリスクがある。番組は「生食は問題ない」という誤解を視聴者に与える。

  • 揚げパスタ1本を折らないように相手の喉に入れ、入れられる方はむせないように我慢するというゲーム。「マネするなよ」というメッセージはあったが、事故につながる危ないものだと感じた。出演者のケガが心配になる演出はありえないと思う。

  • バラエティー番組の「24時間プラスチックに触らず生活できるか!?」という企画で、マスクの不織布にプラスチックが含まれているという理由で、出演タレントが友人とカラオケを楽しむという閉鎖空間でもスカーフで代用させていた。この時期 タレントの安全のためにもマスクは着用させるべきだったのではないか。放送の際に「安全の観点から例外」とすればいいだけ。何が何でもダメというのは人権侵害ではないか。

  • 世界の「面白動画」を見せるという番組。AIやディープフェイクなどの怖さを教えている身として、「つくられた映像」が十分な検証なしに、あたかも真実であるかのように放送されるのは問題があると考える。今後、編集画像で様々なニュースやインタビューがつくられてしまわぬよう危機感を持った方がいい。

  • 「霊的な現象」や「霊能力」としてさまざまな現象を紹介していた。これらの存在を積極的に肯定していると受け取られる内容を、影響力の強いテレビで放送するのは問題ではないか。長年にわたり社会問題となっている霊感商法等を助長し、さらなる被害者を生む結果とならないか心配だ。特に青少年に与える影響は大きいと思う。

  • 私は自閉症や吃音(きつおん)を持つ子どもたちと関わっている。番組で吃音の芸人が「帰れ、と言われて何分で帰るか」というドッキリのターゲットになっていた。ビデオで芸人の言動を見ているスタジオの出演者が「変なやつ」と発言、ナレーションではこの芸人のことを「奇人」と表現していた。同じ症状がある子どもたちが見たらどう思うだろうか。病気を笑うような内容は放送しないでほしい。

  • 仕掛け人である人気の女性天気キャスターがターゲットの芸人に「自分はあなたのファン、一緒に写真を」と依頼するが、芸人が近づくと「近いんだよ!てめえ」などと大声でののしり始める。人が怒鳴られる様子を見て笑うという神経が考えられない。

  • 「47都道府県○○スポットを一挙公開」というので、自分の地元にもスポットライトが当たるのかと楽しみにして見たが、実際に取り上げられたのは10県程度で地元は登場せず。裏切られた気分だ。自分のワクワクを返してほしい。

  • ロケ現場を自由に使ってスケートボードの技を競う企画で、植え込みの縁を滑走する選択をした人が何度も挑戦し、植え込みの植物をひどく痛めていた。見ていてとても不快だし、まねをする子どもが出てくると考えるとゾッとする。

  • パーソナリティーが紹介する楽曲について繰り返し「ばかみたいな曲」と評し、また歌い手を貶(おとし)めるような発言をしていた。大変不快だった。

【ドラマ】

  • ドラマで、幼少期に父親から受けたDVのトラウマを克服させるという目的で、仲間が本人の了承を得てわざと長時間、小突き回し、罵詈雑言を浴びせて耐えさせるというシーンがあった。「トラウマやPTSDは根性で治る、本人の努力で克服できる」といった誤った認識を植え付ける描写であり、不適切だと感じた。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組内の子ども番組を模したコーナーで、男女がヤクザ系の言葉を入れた唄を歌っていて、出演者の子どもたちが怖がっていた。教育上の問題があると思う。

  • 幼児が「おつかい」を初めて体験する番組で、1歳8カ月の男の子が少し離れたお隣さんに回覧板を届ける内容を放送した。子どもの発達の個人差について不安を煽る内容であり、出演する子どもには年齢制限を設けてほしいと思った。

  • ドッキリを扱う番組で、銭湯の浴槽に電気を流して痛がる様子を放送したが、いじめに見える。浴槽から出るのを妨害する役の人もいて、完全にいじめだと思った。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 安倍元首相が銃撃された直後のニュースで、現場を見ていた高校生とみられる女性2人にインタビューしていたが、顔と制服がそのまま放送されていた。インタビューするのはよいが、顔と制服は隠すべきではないか。

  • 銃撃の様子を目撃し、インタビューに答えた高校生とみられる女性は今後、自責の感情に苛まれます。目撃者のPTSDはあとから遅れて発症します。目撃直後に無遠慮にマイクを向けるのは二次加害です。必要なのはメンタルケアです。

  • 安倍元首相の銃撃のニュース。子どもが学校から帰宅する時間なのに、銃声音が入った映像や元首相が倒れて出血している映像を流す必要がありますか。子どもたちが目にしてしまい、すぐにテレビを消しました。

【要望・提言】

  • 各局で夕方の時間帯に、連続殺人などのドラマが再放送されている。「再放送するな」とはいわないが、子どもたちが夏休みに入っているのだから、内容を考えて放送してほしい。殺人を扱ったドラマが子どもたちに悪影響を及ぼすのではないかと危惧している。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組に、吃音症を持った芸人が出演した。その症状を見て、笑いを誘うような表現があり、吃音症の当事者として不適切だと思った。当事者のほとんどが子どものころに吃音が原因でいじめに遭っており、今回の表現はそうしたいじめの状況を助長するものだと思う。

第248回 放送と青少年に関する委員会

第248回-2022年7月

視聴者からの意見について…など

2022年7月26日、第248回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催しました。
欠席の榊原洋一委員長をのぞく7人の委員が出席し、進行は緑川副委員長が代行しました。
6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見には、安倍元首相銃撃直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の顔出しでのインタビューで目撃情報を繰り返し放送したことについて、配慮が必要だったのではないか、などの意見がありました。
7月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たドラマについて」で、様々なジャンルのドラマに対する興味深い意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
最後に今後の予定について話し合い、8月の委員会は休会となりました。
次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

議事の詳細

日時
2022年7月26日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
安倍元首相が銃撃された直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の目撃情報についてのインタビューを顔出しで約1時間30分の間に計5回繰り返し放送したことに対して、「インタビューするのはよいが、(高校の)制服と顔は隠すべきではないか」「プライバシー保護のため、口元だけのアップやモザイク処理で顔を隠してあげてほしかった」「PTSDは遅れて発症します。目撃直後にマイクを向けるのは二次加害です」などの意見が寄せられました。
委員からは「とても正確に答えていて、この目撃情報によって何が起こったのか、だいぶ分かった」「本人や保護者の承諾を得るなどの配慮は必要だと考えるが、このインタビューに報道する価値があったことは間違いない。繰り返しの問題も評価は難しいが、事件の重大性や速報性を考えると、局の判断としてはやむを得なかっただろう」との意見がありました。
また、バラエティー番組の中の幼児向け番組を模したコーナーで、子どもたちの前でヤクザの風体をした男女の芸人が、番組スタッフ役の芸人に暴行する真似を見せ、高金利を表すことばを織り込んだ唄を披露したことに対し、「(出演者の)子どもの前で、暴力を振るったり借金の唄を歌ったりするのはいけないと思う」「その場にいた子どもたちが怖がっています。教育上、問題がある」などの意見が寄せられました。
委員からは「あそこに子どもを呼ぶ必要があったのか。大人(の芸人)に子どもの格好をさせてもよかったのではないか」「(劇団所属の子どもを使うという)舞台裏の事情はどうあれ、親の目からみればあまり良い演出とは思えない」などの意見が出されました。
同じバラエティー番組の別のコーナーで、揚げた細い棒状のパスタを、口を開けた芸人の喉に差し入れて、うまく飲み込むのを競わせていたことに対し、「(子どもが真似しないよう)注意の文言を入れても、常識的に考えて、やっていいネタではないと思います」という意見が寄せられました。
委員からは、「パスタを飲み込ませるのは危ないと思う」「危険な行為で、(それを見た)子どもが、許されることだと思ってしまう可能性がある」との意見がありました。
その他特に議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

7月のテーマは「最近見たドラマについて」でした。モニターからはさまざまなジャンルのドラマ、計22(テレビ21・ラジオ1)番組について報告がありました。
番組への感想では『ラジエーションハウス』(フジテレビ)に「これまで描かれていなかった職種に焦点をあてた斬新な医療ドラマだった」、『過保護のカホコ』(日本テレビ)に「世の中には計り知れない家族の形があると実感した」といった感想が寄せられました。
複数のモニターが取り上げた番組は、『鎌倉殿の13人』(NHK総合)、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)、『ナンバMG5』(フジテレビ)でした。
「自由記述」では、安倍元首相が銃撃された事件の報道について多くの意見が寄せられました。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『未来への10カウント』(テレビ朝日)
      部員一人一人が問題や悩みを抱えながらも精一杯生き抜く姿にとても感動しました。番組の中にあった「最初からあきらめてんじゃねえよ。自分で勝手に限界を作るな」というセリフは受験生の自分にとって、とても胸を打たれるものがありました。改めて一生懸命やることの大切さ、素晴らしさを教えてもらったドラマです。(高校3年・女子・茨城)

    • 『FMシアター』(NHK‐FM)
      ラジオドラマを聴くのは2回目だが、なかなか新鮮だった。テレビとは違い、出演者の息づかいや話すことば一つ一つの迫力が耳から伝わってきた。コロナ禍で浮かび上がった人間模様にスポットをあてた内容だったが、話に引き込まれる構成だった。ただ、途中から聴いた人や話の整理のためにナレーションを加えてほしいと思った。(高校1年・男子・東京)

    • 『ファイトソング』(TBSテレビ)
      登場する一人一人の人物像が愛おしく、個性豊かな中でバランスが取れているので見ていて居心地がよく、大好きでした。最終話では、番組のタイトルとオープニングで流れる曲に、ドラマのストーリーとのつながりがあってとても感動しました。(中学2年・女子・東京)

    • 『初恋の悪魔』(日本テレビ)
      科学捜査などの職業を主人公とするドラマはあったが、この番組は総務課職員たちを主人公にするなど斬新な発想が多くてとても面白かった。模型を作るシーンやイラストなどの演出も現実味があって良かった。(高校1・男子・埼玉)

    • 『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京)
      もともと原作のファンですが、主人公の名言はそのままで、その人間味が原作よりもリアルに映し出されていました。現実はこんなに単純で優しいものではないなと感じられる部分もありましたが、このドラマが描くようなもっと温かい言葉があふれる社会になるといいのにと思いました。終始すごく穏やかで幸せな気持ちで見られるドラマで、毎週の楽しみでした。(高2・女子・岩手)

    • 『過保護のカホコ』(日本テレビ)
      小学校6年生のときも視聴していましたが、見直すと感じることも見る部分も少し変化した気がします。以前は主人公の衣装や部屋の雑貨類までまねしていましたが、今は少し違うところに惹かれます。ドラマの中だけの話ではなく、世の中には計り知れない家族の形があるのだと実感しました。生まれてきた環境や家族のことで悩み苦しんでいる人がいると思うと、私にも何かできることがあるのではないかと考えるきっかけになりました。(高2・女子・千葉)

    • 『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)
      見ていてとても爽快で面白いです。最後には関係が悪くなっていた家族を仲直りさせるなど、感動できる部分もあっていいです。ドラマの途中には普段使えるような家事の知識を教えてくれる時間があり、内容が面白いだけでなく見ていてためになりました。また、続編を映画化ではなく舞台化するのも新しくて面白い取り組みだなと思いました。(高2・女子・広島)

    • 『再雇用警察官4』(テレビ東京)
      全体的にドキドキするシーンと見入ってしまうシーン、何も感情が湧いてこないシーンが周期的に構成されていてとても面白かったです。ストーリーの進め方が刑事ドラマでありがちな「真犯人は誰だ?」的なものではなく、出てきた人全員がつながっている点に爽快感を覚えました。終盤にかけて登場人物の感情がはっきりしていくのも印象的でした。(高1・男子・兵庫)

    • 『ラジエーションハウス』(フジテレビ)
      従来の医療ドラマで描かれることがなかった職種に焦点があてられたドラマで、斬新だった。放射線技師の職務内容だけでなく、病院内でのポジションや医師との関係性が興味深い。ふだんあまりフィーチャーされることがない職業について知ることができ、月9ドラマにふさわしいテーマだったと思う。(高3・女子・東京)

    • 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)
      戦や勢力争い、後継者争いなど話が入り組んでいる場面でも理解しやすい。時々コメディー要素もあって飽きずに見ることができる。出演者は多いが、一人一人に個性があって役名を覚えることができた。このドラマのおかげで鎌倉時代についてだけだが詳しくなり、北条義時についても詳しく知ることができた。(高1・女子・栃木)

    • 『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)
      原作の本を持っていたのでドラマと比べてみたところ、登場人物のセリフや展開の多くが原作そのままで、作品へのリスペクトが感じられました。視聴者の人気投票で作品をドラマ化したりレギュラー化やアニメ化をしたりして、この企画がもっと発展してほしいです。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『ナンバMG5』(フジテレビ)
      予告を見たときは「今の時代にヤンキーのドラマやって大丈夫なの?」とか「怖そうだな」などと思っていたが、いざ見てみると私が知っている昔のワルなヤンキーとは違い、とても明るく家族みんな仲がいい楽しそうなヤンキー一家で安心した。演技の面では、特攻服に金髪のヤンキー役と普通の高校生学ラン黒髪役を口調も含めてしっかり演じ分けていてすごいと思った。(高校3年・女子・神奈川)

    • 『私のエレガンス』(BSテレビ東京)
      ファッションアイテムの歴史やオシャレについての知識だけでなく、自己肯定感も引き上げてくれるような素敵なドラマでした。この半年ほど暗いニュースがテレビで流れることが多く、温かい気持ちになるほっこりしたドラマがもう少しゴールデンの時間帯に増えても良いように感じました。2時間の単発のドラマだと比較的視聴しやすいので、そういったものがもっと増えてもいいのかなと思います。(高2・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 番組やVTRに出てくる出演者の名前を紹介するテロップについて、ジェンダーレスなこの時代に、男性は青、女性はピンクというように色を分けるのはどうかと思いました。(中学2年・女子・東京)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、撃たれた瞬間の映像を何度も流したり、血を流して倒れている画像をずっと出したりするのはどうなのかと思いました。また、銃の作成方法をわざわざ解説することで模倣犯が出てきたらどうするのだろうと思いました。(高校2年・女子・広島)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、「銃声が鳴ります」などと視聴者が不快に感じないよう配慮していてすばらしいと思いました。(高校2年・男子・福岡)

    • 安倍元首相が銃撃された事件で、SNS上で出回っていた銃撃の瞬間の映像をテレビでも流していたことに疑問を感じた。コメンテーターが「ネットから離れることも自己防衛につながる」と言っていたが、こういう方が増えてほしいと思った。(中学3年・女子・千葉)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『笑わない数学』(NHK総合)
      素数の面白さ、不思議さを知ることができた。手計算で素数を見つけなければならなかったと思うとオイラーやガウスのすごさが分かる。私たちがふだん使っている数学の裏側を知ることは楽しい。同時に昔の数学者への感謝の気持ちも浮かんでくる。(高校1年・女子・栃木)

◆委員のコメント◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • モニターが大好きだというドラマについて「アクションはかっこよくて好きだが、血や傷口をあまり映さないほうが安心して見られる」という感想があった。今の若い人たちはテレビに刺激を求めるというより、安心して見たいというのが一つの思いなのだろうかと感じた。

    • モニターによって評価はやや分かれたが、いわゆるヤンキードラマを複数が取り上げていて根強い人気を感じた。バブル時代の話やノスタルジックな部分も描かれ、2000年代がピークだったコンテンツだが、一周回って今の若い人たちに新鮮に映っているのではないか。

  • 【自由記述について】

    • テロップの名前が男女で色分けされていることへの意見があった。視聴者意見にも性差別的な表現や女性蔑視に対する批判はあるが、中学生が少し違う角度からこのような違和感を指摘することに感心した。こうした見方はこれから若い人たちのふつうの感覚になっていくのだろうし、制作者にも知ってもらいたい。

    • 安倍元首相の銃撃事件の報道で、銃声音が流れることを事前に告知したことを評価する声があった。ドラマでは暴力シーンなどを演出の一部として楽しむ一方、ショッキングな報道に対して警戒する感性があるようで、こうした点は丁寧に考えていく必要があるのだろうと思った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 数学の奥深さを伝える番組に多くのモニターから感想が寄せられ、「大学教授ではなく芸人さんが解説するので身構えずリラックスして見られた」というコメントがあった。このようなジャンルでも説明上手な芸人さんが重要な役割を果たしているのだなと感じた。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。
また、8月の青少年委員会は休会になることを確認しました。次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

以上

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究」

青少年のメディア・リテラシー育成は放送局にとって、ますます重要な課題となっています。この調査研究は、青少年のメディア・リテラシー育成に関しての各放送局の取り組みについてアンケート調査と聞き取り調査を行い、その実態を明らかにするとともに今後の在り方を展望することを目的に2019年~2021年の3年間にわたり実施されました。

調査内容

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究
【WEB版PDF】pdf

◆目次◆

※WEB版は、掲載用に一部編集しています。

調査研究報告会

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

年次報告会に先立って3年間にわたり行った調査研究の結果を、中心となってまとめてきた中橋雄委員と飯田豊氏(立命館大学産業社会学部准教授)が説明しました。

pdf当日使用されたパワーポイントデータ(PDF)

日 時: 2022年3月16日(水) 午後1時45分~2時45分
場 所: 千代田放送会館(オンライン開催)

■報告者:
中橋 雄(なかはし ゆう)
【青少年委員会委員】
1975年生まれ。日本大学文理学部教育学科教授。関西大学大学院総合情報学研究科博士課程後期課程修了・博士(情報学)。株式会社博報堂、福山大学、独立行政法人メディア教育開発センター、武蔵大学に勤務した経歴をもつ。専門分野は、メディア・リテラシー論教育の情報化に関する実践研究、教育工学。著書に、『メディア・リテラシー論(単著)』『メディアプロデュースの世界(編著)』『映像メディアのつくり方(共著)』など。

飯田 豊(いいだ ゆたか)
1979年生まれ。広島県出身。立命館大学産業社会学部准教授。専門分野はメディア論、メディア技術史、文化社会学。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。メディアの技術的な成り立ちを踏まえて、これからのあり方を構想することに関心があり、歴史的な分析と実践的な活動の両方に取り組んでいる。著書に『テレビが見世物だったころ』、『メディア論の地層』、『新版 メディア論』(放送大学教材、共著)などがある。