2012年度 第49号

「国家試験の元試験委員からの申立て」に関する委員会決定

2013年3月29日 放送局:株式会社TBSテレビ

見解:番組表現等に要望(少数意見付記)
TBSテレビが2012年2月に放送した報道特集「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」で、国家資格である社会福祉士の試験委員会副委員長を務めた大学教授が、過去問題の解説集を出版するなど、国家試験の公平・公正性に疑念を招く行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申し立てたもの。

2013年3月29日 第49号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第49号

申立人
A
被申立人
株式会社TBSテレビ
苦情の対象となった番組
『報道特集』(毎週土曜日午後5時30分~6時50分)
放送日時
2012年2月25日(土)
特集「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」午後5時48分頃から23分30秒間

本決定の概要

本件放送は、2012年2月の「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」と題する報道番組である。そのなかで被申立人は、国家資格である社会福祉士の試験委員であり、試験委員会副委員長であった大学教授を取り上げ、試験の過去問題解説集を出版して、これを大学の講義で用いたことなどが、試験委員としてふさわしくない行為で、国家試験の公正・公平性に疑念を招いたと伝えた。
これに対し申立人は、本件放送が、国家試験の試験問題の漏えいや出題のヒントを与えていたかのような印象を与えるものであり、これにより名誉と信用を毀損されたとして救済を求め、また放送倫理上の問題を指摘した。

委員会は、本件放送が、平均的な一般視聴者にとって、申立人による「漏えい」等の事実を指摘する内容であったと認定することはできず、違法な名誉毀損・信用毀損には当たらないと判断した。社会福祉士国家試験の試験委員による出版等の行為について国家試験の公正・公平性に疑義を生じさせるおそれがあると指摘した本件放送の問題提起には、社会的意義が認められる。申立人に異論があるとしても、国家試験委員であり委員会副委員長という立場にある以上、国家試験にかかわる事項に関する限り、申立人は「公人」として放送によるそのような批判は受けざるを得ないものと考える。
また、本件放送が、申立人についてマイナスの印象を強調して伝えたことは否めないが、公人の職務に関する報道であったことを勘案すれば、これに対する批判的言論として許容される限度を逸脱したものとは認められず、結論として、放送倫理上問題があったとはいえないものと、委員会は判断した。
ただし委員会は、局においても本件放送における表現内容、表現手法等に反省点がないか、再度検討されるべきものと考えるので、本決定が指摘する各意見を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かすよう要望する。
なお、本件放送は申立人による「漏えい」や所属学生を具体的に有利に扱った事実を印象づけるものであって、放送倫理上問題があるとの、多数意見と結論を異にする少数意見が示された。

(決定の構成)

委員会決定は以下の構成をとっている。

I.事案の内容と経緯

  • 1.申立てに至る経緯
  • 2.放送内容の概要
  • 3.申立人の主張
  • 4.被申立人(放送局)の答弁
  • 5.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件放送の企画意図
  • 2.申立人の立場
  • 3.問題とされた申立人の行為
    • (1)著作の出版行為
    • (2)著作を用いた大学での講義
  • 4.申立人による「漏えい」の事実を摘示しているか
    • (1)番組が挙げた2つの実例について
    • (2)厚生労働省のプレスリリースの扱いについて
    • (3)「漏えい」の事実摘示には当たらないこと
  • 5.放送のその他の問題点
    • (1)申立人の映像の扱い方について
    • (2)大学学長選挙と報道の時期について

III.結論

  • 少数意見

IV.審理経過

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  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2012年度 第48号

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」に関する委員会決定

2013年3月28日 放送局:株式会社フジテレビジョン

見解:番組表現等に要望(少数意見付記)
フジテレビ『ニュースJAPAN』が2011年10月に2回にわたって放送した企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性が「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシーを侵害された」として、謝罪と放送内容の訂正を求め申し立てたもの。

2013年3月28日 第48号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第48号

申立人
X
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『ニュースJAPAN』
(月―木曜日 午後11時30分~11時55分、 金曜日 午後11時58分~午前0時23分)
放送日時
第1回 2011年10月5日(水)特集シリーズ「時代のカルテ」「イレッサの真実【前編】ガン新薬の副作用は薬害か?」(7分12秒)
第2回 2011年10月6日(木)特集シリーズ「時代のカルテ」「イレッサの真実【後編】承認から8年目の真実」(7分)

本決定の概要

本件放送は、抗がん剤イレッサをテーマにした報道番組である。申立人は、イレッサの副作用で亡くなった患者の父親であり、その後、訴訟や社会的活動でイレッサの副作用にかかわる問題を追及しているが、本件放送中での扱いによって、これまで自身が続けてきている活動を否定されかねない人権侵害があるとして、委員会に苦情の申立てを行った。
本件放送は、「イレッサの真実」というタイトルのもと、2011年10月に二夜連続で放送された。ちょうど同時期、イレッサの副作用を巡る製薬会社や国の責任を問う訴訟が係争中であり、番組放送後間もない時期に控訴審判決が出された。被申立人には、いわゆる薬害について熱心に追跡・報道してきた実績がある。
委員会は、本件放送に、法的な意味での名誉毀損・人格権侵害はなかったとともに、放送倫理上問題があるとまではいえないと結論する。しかしながら、申立人を含む番組中の登場人物の対比のさせ方やコメントの使い方などにおいて、視聴者の誤解を招きかねない点があるなど、放送の一部に配慮不足があったと認められる。申立人である取材対象者の思いを軽視して長年の信頼関係を喪失したことは、報道機関として重く受け止める必要がある。取材者・放送人にとって取材先との信頼関係を喪失するという重大な事態を招いたことにつき十分に反省し、事前の取材・企画意図の説明や番組の構成・表現等の問題について再度検討を加え、今後の番組作りに生かすことを強く要望する。
なお、本決定には、多数意見と結論を異にし、「放送倫理上問題がある」とする少数意見がある。

(決定の構成)

委員会決定は以下の構成をとっている。

I.事案の内容と経緯

  • 1.申立てに至る経緯
  • 2.放送内容の概要
  • 3.申立人の主張
  • 4.被申立人(放送局)の答弁

II.委員会の判断

  • はじめに~本件放送の構成と申立人の人権
  • 1.申立人の訴訟提起と東京地裁判決の伝え方
    • (1)東京地裁判決の引用の正確性
    • (2)T医師の東京地裁判決に対するコメント
    • (3)新薬の承認をめぐる研究者のコメント
    • (4)申立人とAさんの二人を対比的におくこと
  • 2.申立人のコメントの使用と人権侵害
    • (1)申立人のコメント使用の正確性
    • (2)申立人のコメント等の使用による人格権侵害の有無
  • 3.番組内容・構成における公平・公正

III.結論

  • 少数意見

IV.審理経過

全文PDFはこちらpdf

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

第143回 放送と青少年に関する委員会

第143回 – 2013年3月

視聴者意見について
中高生モニターについて
2013年度青少年委員会の活動について

第143回青少年委員会は、3月17日(日)2012年度の中高生モニターを集めて番組に対する討論などが行われた「中高生モニター会議」に引き続いて7名の委員全員が出席して開催され、2月16日から3月10日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、3月に寄せられた中高生モニター報告について意見や感想を述べた。また、2013年度新「中高生モニター」31名について紹介するとともに、2013年度の委員会活動の概要について事務局から説明し、2012年度に引き続き、地方での意見交換会を開催することも了承された。

議事の詳細

日時
2013年3月17日(日) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より視聴者意見の概要の報告を受けたうえで討論した。今期、審議対象とする番組はなかったが、いくつかの番組については、次回委員会以降に討論することとした。

中高生モニターについて

3月の中高生モニターは、一年間「中高生モニター」を体験した感想を書いてもらい、31人から報告が寄せられた。
各モニターからは、この一年間を振り返り「文章を書くのは好きではないので、とても大変でした」「どこが面白いのか、つまらなかった番組と何が違うのかを考えながらテレビを見るようになった」「自分と同じ中高生がどのような番組を見てどのように感じているのかを知ることができて楽しかった」などの意見が寄せられた。
また、企画書作りでは在京キー局の制作担当者からいただいたコメントに対し、「将来テレビ局に入りバラエティーやドラマの企画を立てるお仕事に就きたいと考えているので、そのジャンルの企画がテーマの月は張り切って考えたし、いただいたコメントは大切に保管している」「自分が考えた企画書を見ていただいたことで、まるで自分がテレビ局で働いているような感覚を味わえた」「作る、表現するという仕事に対する興味が沸いてきた。将来はテレビに出る側か作る側になりたい」などの感想も寄せられた。
その他の感想として「ラジオは生活の一部、テレビは生活の刺激になっている」「テレビやラジオは非常に影響力があります。そのことを自覚して、その影響力を良い方向に向けていってほしい」「僕はテレビやラジオがほんとうに大好きです。これからも僕達を楽しませてください」などがあり、番組内容については「すぐに人を殴ったりするような番組は作らないでほしい」「現在放送されている番組には似通ったものが多い」「報道は中立であるべきだと思うのにどちらかの意見に偏っていることが多い」「放送局の人に伝えたいのは、人々は明るく笑えるものをテレビに求めているのです」など、放送局に考えてもらいたい要望も寄せられた。一方、「何気なく見ていたテレビ番組もたくさんの人々が、たくさんの時間をかけて作ったものだということを改めて思った」「面白い番組を作っている大人の人たちは"スゴイ"と改めて感じた。私たち若者も新しい時代を担えるよう頑張っていきたい」など、放送局へのエールもたくさん寄せられた。

【主な意見】

  • 「私は今までこういったリポートはやったことはなく、不安でした。ですが、書いているうちにだんだんと慣れてきて楽しいと思えるようになってきました。このモニターを通して感じたことは、今の中高生はテレビやラジオなどの放送に対し、痛みで笑いをとる企画のマンネリ化など、多くの不満を持っているということです。この1年間、番組に対して思ったことを好き勝手言ってしまってすみませんでした。やはり、面白い楽しい番組を作っている大人の人たちはスゴイと改めて感じましたし、私たち若者も新しい時代を担えるように頑張っていきたいです!!」(神奈川・中学1年女子)

  • 「僕はふだんからよくテレビを見たりラジオを聴いたりしていたのですが、時々不快になるようなときがあったので、それらを改善できればよいと思い、中高生モニターに応募しました。僕たちの意見や考えは、きちんと放送局や制作会社に伝わっているのでしょうか?中高生モニターのレポートは各局に送られているようですが、それらに書かれている内容は全ての制作者に知ってもらえているのでしょうか?この一年で色々な番組の良いところ、或いは悪いところをレポートに書いて送れたことは、自分の思いをぶつけられたようで、とてもすっきりしました。あとはこのレポートをBPOや放送局の数人が読むのでなく、できるだけたくさんのテレビやラジオの関係者に中高生の考えを知ってもらえば、全ての年代の視聴者が楽しめる番組ができると思っています。」(東京・中学3年男子)

  • 「一年間モニターをしたことで、テレビの見方が変わった。どこが面白いのか、つまらなかった番組と何が違うのかを考えながらテレビを見るようになったことです。そう思うと、出演者や番組のスタッフや編集している人が、視聴者が何を求めているかということを理解して番組を制作、人の血が通った番組が作られているんだと感じるようになった。そして、番組を作っている人の存在が見えてくるようになると、面白い番組とは、その制作者の考えている面白さと視聴者の面白さが一致している番組なのだと分かった。一方、制作者が視聴者の感覚を誤解した時に、視聴者がつまらないと思ったり、不愉快に思ったりする番組ができるのだと思う。」(北海道・中学3年女子)

  • 「最近のラジオはフリーな環境で雑談形式が増えてきていると思います。そのような番組は出演者が、まるで部屋で喋っているかのように自由にトークしているので、とても楽しく思えます。そのような形式をもっとテレビでも放送した方がよいと思いました。」(神奈川・中学3年女子)

  • 「テレビ局で番組制作に携わっている人に伝えたいことは、すぐ人を殴ったりするような番組は作らないでほしいということです。殴っている人は面白いのかもしれませんが、殴られている人のことを考えると、笑って見ることはできません。見ている人への影響をもっと真剣に考えて番組を作ってほしいと思います。僕はテレビやラジオがほんとうに大好きです。これからも面白い番組、楽しい番組、役に立つ番組、『へぇー』と考えさせられる番組、いろいろな番組を作って、僕たちを楽しませてください。よろしくお願いします。」(神奈川・中学2年男子)

  • 「最近NHKさんがテレビ放送を開始してちょうど60年ということで、昔放送した番組などを再放送していましたが、少ししか見られませんでしたが、なんとなく見ていて楽しかったです。現代の放送技術には全然かなわないのだけれど、なんとなくわくわくさせてくれる、見ている自分たちを引き込ませてくれる、そんな番組作りを感じることができました。こんなことを書くと生意気に思われるかもしれませんが、昔もそうだったのかもしれないのですが、今よりはスポンサーさんの考えや、視聴率…なんてことを考えないで番組が作られていたのではと考えてしまいます。誰もが見たくなる番組、聴きたくなるラジオが作られたら、もっと私たちのような子どもたちも、ニュースなどの情報番組を見るようなるのではないかと思います。今回中高生モニターをやったことで、作る、表現するという仕事に対する興味がますます湧いてきました。将来は、テレビに出る側か作る側になりたいなとも思っています。」(神奈川・中学1年女子)

  • 「学校ではテレビ番組よりネットの動画の方が話題に上ることが多いのですが、友達に『なぜテレビを見ずにネット動画を見るのか』と尋ねると『テレビが昔より面白くなくなったから…』『当たり前のことをちょっとひねって面白くした感じがいい』と言っていました。これらのことから、放送局の方々に伝えたいことは、日本全体が暗い今、人々は"明るく・笑えるもの"“ふだんの生活ではなかなか経験できないことを面白く見せること"をテレビに求めていることです。」(宮城・中学2年男子)

【委員の主な意見】

  • 一年間を振り返って、モニターを体験したことが有意義だったと思ってくれて嬉しかった。
  • 中高生の間で、ラジオが大きな位置を占めているのは、意外であり驚きだった。
  • 「僕たちの意見や考えはきちんと放送局や制作会社に伝わっているのでしょうか」という意見は、今年一年をまとめた思いを素直に書いてくれていると思った。
  • 「意味のない番組も大切だ」という意見があったが、そうだなあと思いながら読ませてもらった。
  • まとめとして、最後の一段落が皆同じ感想で、印象に残ったのは少なかった。
  • 中学1年生はテレビについて覚めているという印象を持った。
  • 「地方をないがしろにしている」という意見があったが、放送局の人には考えてもらいたいことだと思った。
  • 「人を喜ばせるのは簡単ではないが、人を悲しませるのはテレビ、ラジオにとって簡単なことだ」というのは鋭い言葉だと思った。

【今月のキラ★報告】(1) (福島・中学3年男子)

毎回送られてくる、他の県のモニターさんの意見を読んで、なるほど!とか、福島は放送局が少なく番組も少ないんだな…ということを感じました。最初はBPOが何のためにあるのか、また青少年委員会って何っ!?って思ってました。すごく堅苦しいものなんだろうなと思ったりもしました。でも、やっぱりモニターをやって良かったなと思います。
人間が作り上げるものだから、ミスだってあるし、しょうがない…と言われればそれまでですが、今のテレビやラジオの放送局は、まだまだ改善が必要であると思います。不適切な発言や内容がない番組にしていってほしいなと思います。ボタン一つ(?)で、日本全国に放映されるわけなので、責任の重さを確認してもらい、細心の注意をしてもらいたいと思います。
人を喜ばせるのは簡単ではないかも知れません。でも人を悲しませるのはテレビ、ラジオにとっては簡単なことです。誰もが「見て良かった…」と、そんな風に思える番組にしていってほしいです。
一年間本当にお世話になりました。ありがとうございました。

【今月のキラ★報告】(2) (静岡・高校2年男子)

今回モニターを体験して、今まではそれほどテレビのことを考えずにテレビを見ていたなあと思いました。今回の経験を通して、制作側の伝えたいことを考えることで、その番組から得るものが増えたこともありました。
中高生は生活のほとんどが「教えられる」という環境にあると思います。学校では教師に、家では親に、塾でも、町でも…。そのような環境で、やはり中高生がテレビに娯楽を中心に求めるのはごく自然なことだと思いました。私はテレビの基本は娯楽だと思っています。誰かを楽しませる、感動させる、心に影響を与える。それは、バラエティーが基本という訳でなく、報道でもどこかで見ている人の何かを動かさないと伝えたいものは与えられないと思います。それと意味のない番組も大切だと思っています。特に意味はないけどあれが面白かった、あの歌で楽しい気分になった。あのタレントを見ると元気が沸いた。それは十分に視聴者の心に何かを残したといえると思います。
テレビは時には私たちの先生であり、時には楽しませてくれる友人のような存在であってほしいと思います。そして、その両者も私たちには必要なのだということを、今回のモニター体験で分かったと思いました。
一年、さまざまなリポートを書くことでたくさんのことを考え、視野が広がりました。このような機会を与えてくださり本当にありがとうございました。

【委員会の推薦理由】
今月のキラ☆は2人の方を選定した。被災地福島県に住むモニターが「人を喜ばせるのは簡単ではないかもしれません。人を悲しませるのは、テレビ、ラジオにとっては簡単なことです」と述べていることは、マスコミが自覚すべきことを鋭く指摘したものとして高く評価された。
また、生活のあらゆる場面で教育される立場にいる中高生にとって、テレビ画面と向き合う時は、教育の客体としての立場から解放されて娯楽を楽しむ主体になるべきだと考えたモニターの意見は、中高生にとって娯楽としてのテレビの本質とはどのようなものかを指摘したことが高く評価された。

2013年度青少年委員会の活動について

2013年度新「中高生モニター」31名について紹介するとともに、2013年度の委員会活動の概要について事務局から説明し、2012年度に引き続き、地方での意見交換会を開催することも了承された。

◆中高生モニター会議
3月17日(日)正午から午後3時30分まで千代田放送会館7Fの会議室で、「2012年度中高生モニター会議」を開催した。出席者は中高生モニター29人(中学生20、高校生9)と7人の青少年委員全員、そして今回は長野放送制作部ディレクターの湯澤沙織氏にも参加してもらった。
はじめに、事前に視聴してもらった長野放送の番組『大きくなあれ~蓼科の高原学校・70日間の成長日記~』(平成24年日本民間放送連盟賞「青少年向け番組」最優秀)を題材に、意見交換を行った。まず、ディレクターの湯澤氏から、仕事の内容や番組制作の苦心・裏話を説明してもらった。その後、モニターたちとの話し合いになり、番組の感想やディレクターの仕事に関する質問もあり、中高生の放送制作の現場に対する興味を深める会合となった。
後半はモニターが5つのグループに別れ、「バラエティーはここが面白い!」をテーマに討論し、中高生たちの思い描くバラエティー番組論をまとめ、発表した。「バラエティーは楽しく見られるが、過度な罰ゲームはやめて欲しい」など、中高生の率直な意見が述べられた。
この会議の模様は、後日、冊子として発行する。

第195回 放送と人権等権利に関する委員会

第195回 – 2013年3月

イレッサ報道事案の審理
国家試験事案の審理…など

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の「委員会決定」案を了承し、本事案の決定に関する通知・公表を3月28日に行うことになった。「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の「委員会決定」案を了承し、本事案の決定に関する通知・公表を3月29日に行うことになった。

議事の詳細

日時
2013(平成25)年3月19日(火)午後4時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員
オブザーバー出席:曽我部真裕氏(4月度就任新委員)

1.「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が2011年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性や正確性、公正さに欠けた報道により人権を侵害されたと申立てがあったもの。
この日の委員会では「委員会決定」の最終案を検討した。事務局が本文を読み上げながら内容を確認するとともに一部表現や字句の修正等を行い、決定案を了承した。
これにより、本事案の「委員会決定」に関する通知と公表は3月28日に行われることになった。なお、一部委員が、多数意見とは結論の異なる少数意見を書くことになった。

2.「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の審理

本事案は、TBSテレビが2012年2月25日に放送した『報道特集~「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」』で、国家資格である社会福祉士の試験委員だった大学教授が、過去問題の解説集を出版するなど国家試験の公平・公正性に疑念を招く行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申し立てたもの。
この日の委員会では「委員会決定」最終案を検討した。事務局が本文を読み上げながら内容の確認と一部字句の修正を行い、最終的に決定案を了承した。
これにより、本事案の「委員会決定」に関する通知と公表は3月29日に行われることになった。なお、一部委員が、多数意見とは結論の異なる少数意見を書くことになった。

3.審理要請案件~審理対象外と決定

原爆による放射線被曝の調査・研究機関からの申立てについて、審理対象外とすることを決定した。
申立ての対象となったのは在京テレビ局が2012年7月に放送した番組で、当該研究所の知られざる実態を初取材したとしてその活動について報道した。
番組では、原爆投下による放射線の人体への影響に関する世界的権威である研究所が、これまで内部被曝に関する取り組みを軽視してきたとし、福島第一原発の事故でも福島の人の不安に応えられず、内部被曝のデータが欠落している研究所に今後もリスクの解明ができるか疑問である等と伝えた。
この放送に対し研究所は、「研究所が内部被曝調査を実施して来なかったとの重大な事実誤認をもとにした構成であり、憤りを禁じえない」等と局に抗議、放送による名誉毀損を訴え、局に対し謝罪等を求めて委員会に申し立てた。
申立てに対し局は、「番組は、放射線調査において世界的な権威を持つ研究所でさえ、予期せぬ福島の被災者の、内部被曝への不安に応えられない現実と、その現実を生んだ背景を伝えたものである」とし、「極めて公的な性格と社会的意義や影響を有する事業内容・成果に対する報道」の是非については「公の言論の場で批判検討されるべき」と主張した。
委員会は、委員会運営規則第5条(1).6「団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる」に照らし、審理入りするかどうかについて慎重に検討した。
この結果、本件申立てに係る団体については、原爆被爆者に対する放射線の影響調査を重点として、放射線の人に及ぼす医学的影響およびこれによる疾病の調査研究等を行ってきたこと等、その沿革や研究内容、また、日米両政府が経費を分担して共同で管理運営していることなどから、その組織や活動に高い公共性を有し、かつ、一定程度の情報発信力も備えていると認められるとし、「委員会による救済の必要性が高いなど相当」とみなすことはできないとして審理対象外とすることを決定した。

4.大津いじめ事件報道への申立て事案の審理

本事案は、フジテレビが2012年7月5日と6日の『スーパーニュース』において、大津市でいじめを受けて自殺した中学生の両親が起した民事訴訟の口頭弁論を前に、原告側準備書面の内容を報道した際、加害者とされる少年の実名部分にモザイク処理の施されていない映像が放送され、少年の名前を読み取れる静止画像がインターネット上に流出したとして、少年と母親が放送によるプライバシーの侵害を訴え、局に謝罪等を求めて申し立てたもの。
この日の委員会では、双方から提出された文書・資料に基づく各々の主張内容と本事案の論点について、事務局がまとめた資料により説明した。
次回も審理を続行する。

5.大阪市長選関連報道への申立て事案の審理

本事案は、朝日放送が2012年2月6日に放送した『ABCニュース』(午前11時台)において、2011年11月の大阪市長選挙で市交通局の労働組合が、「現職市長の支援に協力しなければ不利益があると職員を脅すよう指示していた疑いが独自取材で明らかになった」と報道したことに対し、交通労組と組合員が名誉や信用を毀損されたとし、局に謝罪等を求めて連名で申し立てたもの。内部告発情報に基づくスクープ報道だったが、約1か月後、この情報は内部告発者自身による捏造であることが分かった。
この日の委員会では、双方から提出された文書・資料に基づく各々の主張内容と本事案の論点について、事務局がまとめた資料により説明した。
次回も審理を続行する。

6.テレビ神奈川より対応報告書

昨年11月、『無許可スナック摘発報道への申立て』事案で「勧告」を受けたテレビ神奈川より、「委員会決定」の通知を受けて後の対応と取り組みをまとめた報告書が2月26日付で提出された。
この日の委員会で基本的に了承されたものの、放送倫理の向上に向けた今後の取り組みとして記載された事項に関しては、その具体的な実施状況や成果について、委員会として今後さらに報告を要請することとなった。

7.その他

次回委員会は4月16日(火)に開かれることとなった。

以上

第69回 放送倫理検証委員会

第69回 – 2013年3月

「BPOへ、放送界へ。」 退任委員からのメッセージ

第69回放送倫理検証委員会は3月8日に開催された。
事務局からの報告事項について意見交換を行ったほか、2月の視聴者意見の概要や、3月4日に開催されたBPOの年次報告会等について説明が行われた。
また、委員会の最後に、今回をもって退任する5人の委員からのメッセージが述べられた。

議事の詳細

日時
2013(平成25)年3月8日(金)午後5時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者意見2月分について

出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

■退任委員からのメッセージ

  • 吉岡 忍委員長代行 (2007年5月 委員会発足時から)
    いろいろ不祥事はあったが放送業界がダメだという印象は持っていない。問題を起こした各局からの報告は的確なものだったし、第三者機関である委員会と放送局とのオープンな検証のしくみは、世界的に見ても例がない貴重なものだと思う。心残りは、世論全体から厳しい指弾を浴びた番組を検証委員会だけは擁護する意見書を書きたいという夢が実現しなかったことだ。

  • 石井彦壽委員 (2007年5月 委員会発足時から)
    委員会での毎回の激しい議論は、異業種格闘技のような緊張感があった。いろいろな思い出があるが、例えば「光市母子殺害事件の差戻控訴審」の事案では、
    メディアは、司法制度や弁護人の役割に関する理解が乏しいのではないかと思われた。一般論として、捜査機関がリークした情報に基づいて番組が作られ、推定無罪の原則が守られていない。放送関係者の皆さんには、司法制度のしくみをもっと勉強してほしいと思う。長かったが充実の6年間だった。

  • 重松 清委員 (2010年4月から)
    良きにつけ悪しきにつけ「組織」であるテレビの世界の難しさ、さらにその難しさに向き合うべき個人のスキルや常識が揺らいで来ていることを痛感した3年間だった。だが、これからもテレビの可能性を信じていたい。決して萎縮することのないつくり手たちのボトムアップによる「組織」がつくるテレビの表現を、これからは視聴者として期待したいと思う。

  • 立花 隆委員 (2007年5月 委員会発足時から)
    初めの頃は議論も面白かったが、テレビの世界がだんだん質的に低下して、委員会で取り上げる事案もどんどん小粒になってきたように思う。テレビだけでなくメディア全体が、これまでそれなりに果たしてきた社会を支えるという機能を失っており、健全なメディアのない社会がどうなるかという大きな実験がこれからますます進行するのではないか。

  • 服部孝章委員 (2007年5月 委員会発足時から)
    「あるある問題」を経てこの委員会ができた時、放送業界も少しは変わるのではないか、活気づいてくれるのではないかと期待したが、現在はそれ以前に戻っているという感じがする。相当ひどいことになっているというのが実感で、これからは、ニュース以外、テレビをほとんど見なくなるのではないかとさえ思う。

 次回の第70回放送倫理検証委員会は、小出五郎(科学ジャーナリスト)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、渋谷秀樹(立教大学大学院教授)、升味佐江子(弁護士)、森まゆみ(作家)の5人の新委員を迎えて、4月12日に開催される予定である。

以上

2013年2月

東北地区各局との意見交換会

放送人権委員会は、2月20日に盛岡で東北地区の放送事業者との意見交換会を開催した。三宅委員長ら委員8人(1人欠席)と東北6県の民放とNHKの計22社48人が出席し、3時間20分余議論した。前半では震災報道と原発事故報道を取り上げ、まもなく2年目を迎える現在の取材・放送の取組みや問題点について岩手と福島の4局の報告をもとに意見交換をした。後半は過去の「委員会決定」をふまえ、事件・事故の報道で顔なしインタビューやモザイク映像を多用する「風潮」などについて議論した。
概要は以下のとおりである。

震災報道と原発事故報道・現在の取組みと課題

岩手、福島の4局の報告をもとに意見交換をおこなった。

【報告】IBC岩手放送 報道局報道部長 眞下卓也 「全社体制で被災者を支援」

私たちは地震発生の直後から「ふるさとは負けない」というキャッチフレーズを掲げてキャペーンを展開してきました。テレビ、ラジオはもちろん、Webですとか街頭での活動、いろんな形で広げていきました。それをまとめた映像をご覧いただきたいと思います。
(DVD視聴 約8分)
震災発生から2年近く経過し、沿岸のスタッフといろいろ話をする中で、一番課題として出てきているのが仮設住宅の取材です。岩手県内では応急仮設住宅というのは319か所ありまして、そこで1万2600世帯、2万9000人ほどの方々が生活をしています。
その仮設住宅の取材をする際に、カメラの前に出てこられる方とそうでない方たちが少しずつはっきり分かれてきているというんです。仮設住宅の中から出てこられない方たちが今何を考えて、何を望んでいるのか、非常に分かりづらくなっている、見えにくくなっています。 一方で、無理にと言うか、説得して取材をお願いすると、思い出したくないような記憶を呼び起こしてしまって、本当に嫌な思いをさせたりするんじゃないかとスタッフは本当に恐れていて、なかなか強気に出られない、難しい場面が増えてきていると言っています。カメラを担いで入ること自体、住んでいる方々にプレッシャーを与えてしまうのではないか思っています。そうした仮設住宅に暮らしている方々の思いとか、現状をどう伝えるかというのは1つの課題になっています。
それから、これは震災が発生してまもなくの頃から言われていますが、被災地と被災地の外の温度差というものです。岩手でも沿岸部と内陸部で温度差があると思いますね。現地の被災した方たちは「私たちの暮らしはどうなるんだろう」という現実のところを伝えて欲しいと思っているのに対して、外から取材にくる人たちは悲しみだとか前向きな気持だとか、そういうところにポイントが行って、知りたい情報ではないものが流れてきている。バランスよくという言い方はちょっとどうか分かりませんけれども、双方の思いがちゃんと伝わるようにと放送を出しています。そのひとつの例として、陸前高田の一本松の話をよく会社の中でします。津波に耐えた奇蹟の一本松というのは、非常に東京の注目度が高いですね。何回もニュースにもなっていますが、地元の記者たちは「あの一本松が地元の人たちにとってどれぐらいプラスになっているのか。それにお金をかけるぐらいだったら、もっと別な使い道はあるんじゃないのか」ということを常々言っています。非常に冷めた目で見ている部分もある、そういうような現実もあります。
私たちは、前に踏み出している方たち、走り出している人たちにスポットを当てがちですが、そうではない方たちもまだまだ数多くいらっしゃいますし、そうした方たちの思いを伝えていくのが地元局の役割だというふうに思っています。時間の経過とともに、このまま忘れられてしまうのではないかという不安を被災地の方たちは非常に持っていると聞きます。地元のメディアとして今後も被災者の方たちの声をしっかりと受け止めて、息の長い報道を続けていきたいと思っております。

【報告】NHK盛岡放送局 放送部副部長 渡辺健策「被災者に寄り添う震災・復興報道」

私は震災の時は報道局にいまして、すぐ福島の応援に出て福島と東京を1週間ずつ往復するような毎日が続き、その年の6月の異動で盛岡に着任しました。震災後のまだがれきも片づいていなかったような混乱の頃と、震災2年を前にしている最近では大きく状況が変わってきていると感じています。被災者の方々の状況もさることながら、われわれ取材者の置かれた状況、取材のアプローチも変わらざるをえないような、そんな変化を肌で感じています。
何かと言いますと、震災直後の頃はどの社もそうでしたでしょうが、待っていても次々といろいろ動きがあって毎日ニュースを出すのがフル回転でやっても追いつかないぐらいでした。それが、だんだん半年、1年、1年半と経つにつれて、いわば目に見える動きが減ってきて、今でもそれなりにはたくさんあるんですけれども、ネタをどう掘り起こすのかが大きな課題になっていると思います。目に見えない潜在化したような課題や問題をどう掘り起こしていくか、問われていると思います。 
例えば仮設住宅に住む人たちが、なぜ本来の自分の家を建てることができないのか、高台移転の計画があってもなかなか実現しないのはなぜか、一つ一つの地区ごとにやっぱり個別の課題があります。それは多くの場合切れ味鋭く全国ニュースにすぐになるような分かりやすい問題ではないんですけれども、一つ一つの地区が抱える課題はそれぞれの人たちにとっては最も深刻で重要な問題であり、それを伝えていくことが地域の被災地の人々のために役立つ放送だと考えています。
受け手の方々の反応も気になっています。初めの頃はローカルニュースの90%以上、95%ぐらい震災のニュースばかりで、殺人のような事件が起きてもよほどのことがない限りボツにするというような状況がしばらく続いていました。だんだんと視聴者の反応として「いつまで震災のニュースばっかりやっているんだ」という声がかなり目立ってくるようになりました。その後、かなり意識的に震災関連ニュースとそうではない内陸の一般ニュースの比率をちょっとずつ変えていきまして、今は五分五分ぐらいになっていると思いますけれども、受け手の側のニーズということを考えても、震災あるいは復興の報道をどう出していったらいいのか日々考えさせられています。
NHK盛岡放送局では震災後の5月から『被災者の証言~あの日あの時』の放送を始め、今まで320人ぐらいの方の証言をご紹介しています。3月11日に一般の方々がどんな生死の境をさまようような体験をしたのか、あるいはすぐ隣にいた人が亡くなって自分がぎりぎり助かったというような、そんなさまざまな体験からどんな教訓を学び、それを糧にどう変わりつつあるのかという証言のインタビューシリーズをお伝えしています。これも最近悩ましいのは、取材を受けてくださる方の中に「もう早く震災を忘れたい」という方もやっぱり大勢いて、特に九死に一生を得たような方の中には「その現場に行って語ることすらも恐ろしい」という方もいます。そういう方に無理をお願いすることはできないので、可能な方に限ってお願いしていますけれども、中には「辛いことだけれども、これを伝えていくことの大切さを考えて、今まで他の場では語らなかったことをきょうは語りましょう」というような方もいらっしゃって、そういう方々の思いを伝えるためにもこのコーナーは続けていかなければと思っています。その後、コーナー自体を福島、仙台、青森などNHK各局とも連携して全国放送のミニ番組で放送したり、あるいはWebにアップするような形に変えていったりしています。
もうひとつ最近感じているのが、取材拒否あるいはクレームが非常に多くなっていることです。被災地あるいは被災者全般に言えることなのかもしれませんけれども、先行きの見えない閉塞感の中で精神的に追い詰められているような方も大勢いるように見受けられます。例えば、催物で主催者の許可を受けて取材に入って、参加している方にちょっと感想を聞こうとカメラとマイクを向けようとしたところ、急に怒りだして「いったいなぜここにカメラが入っているんだ」というようなことを言われます。通常よりも更にもう一段きめ細かく取材の趣旨を説明したり、いろんな配慮をしながらやっていかないと難しい状況にあるのかなと感じています。 
最近、全国各局から応援に来た記者たちが自分の局に帰ってから、自分たちの地域でどんな防災対策をやっているか、何が課題になっているのか、そんな原稿をかなり多く出している、被災地で知りえた教訓を自分の局の取材に生かしていることを知りました。この被災地で学んだ教訓をどう全国や世界の防災対策に生かしていくか、われわれメディアとして伝えていかなければならないと思うようになりました。
(以上の報告を受けて、内陸部からは震災以外のニュースを求める声が強いというわゆる“温度差”と、津波映像の扱いをめぐって意見を交換した)

沿岸部と内陸部の"温度差"をどう考えるか

  • 仙台の中心部は経済的にも戻って逆に復興需要もあったりして、デスクにはそういうニュースをなるべく取り上げていこうという思いがあると思います。ただ被災地でニュースを見ていて現地の感覚からいくと、被災地のニュースの比重が明らかに落ちている、被災地の人たちにとっては、もう忘れられているという辛さではないかと思うんです。やはりどこまで気を配れるかじゃないかなとは思います。日々の業務の中での震災報道は、今は多分どこの社もいっぱいいっぱいなんですね。やはり課題を検証するにしても、マンパワー的にも減ってきているので、ある程度絞り込んでそれを継続させていくということではないかと思います。

  • 震災発生後、少し時間が経過すると、内陸の視聴者からは被災地のネタの中でも悲惨なニュース、大変だというニュースではなくて、頑張っている、あるいは復興の槌音が聞こえているというニュースを見たいという声も寄せられました。また、例えば「がれきの処理が始まりました」というニュースを流しても、それは一番最初ということでニュースにしているので、他のところは全然動いてないということもあるわけです。地元で取材している記者としては、現実を伝えていないのではないかと。そうしたことが、意識のズレを大きくしてしまった面があるかもしれません。

津波映像について

  • 必要なところに使うのはもちろんいい、ただし映像がないから、あるいはここへ津波の映像を入れれば何とかなるかなというのはだめだと。あの映像を見て非常に辛い思いをする人がいるだろうという想定です。ドキュメンタリーにしても、本当に津波の映像をそこで流す必要があるのかと非常に考えます。いろいろ考えてはみるんですけども、なかなか結論は出ないですけれど、相当の配慮は必要だとは思います。

  • 津波の映像に関しては、あくまでケースバイケースです。特に震災の教訓とか検証、私どもは毎週証言を映像で伝えたりしていますが、例えば津波というのはどういうものなのか、最初はちょろちょろ流れているぐらいの川でいきなりそれが濁流となって襲ってくる、こういうのはやはり映像でないと伝わらない、教訓として残せないという部分は明確にあると思います。その一方で、震災から1年ぐらいたって津波の映像を流したとき複数の被災者の方からこう言われました「自分たちの町がどういう津波に襲われて、どういう被害を受けたのかを初めて見た」と。被災地の人たちはテレビをそもそも3か月、長い人だと半年ぐらいほとんどまともに見ていなかったのです。少数派かもしれませんが。

  • 私は明治の大津波で浜辺に累々と横たわる遺体の写真を見て、その時初めて被害の大きさを実感しました。その時は岩手だけで2万人の方が亡くなっています。今回の津波の映像は、時を経て時代を積み重ねて後世に伝え防災にどう役立てるのかという観点でも大事にしなければならないと思っています。とりわけ各社の報道現場を見ると、震災後かなりの方々が転勤、異動をされていて、津波映像、資料などが今後どう使われて行くか不安があります。我々が報道現場からいなくなっても次の世代、またその次の世代が有効に活用出来るように整備しなければいけないと思っています。

  • 当社に契約カメラマンがいるんですが、彼が撮った津波の映像が非常に迫力があって、相当危険な取材をさせているんじゃないかという声までちょうだいしました。実は、事前に綿密ないろんな訓練、シミュレーションをして、あらかじめ想定してあった避難経路を確保しながら撮影した映像でした。あまりに迫力があるものですから、被災者や視聴者の方からフラッシュバックが起きるのでやめてくれ、そんなの流すなら『ドラえもん』を流してくれ、というふうな苦情がたくさん来ました。それ以来、必要最小限使わなければいけないという場合は事前に「今から流す映像は非常に刺激的なのでご注意ください」というテロップを流しています。

  • 山田委員
    今回の震災では、社で撮られたもの以外に数多くの持ち込み映像、写真があると思います。しかし、それらのなかにはきちんと肖像権処理をしていないものや、撮影者すら分からないものも少なくないと思います。だけど、それらは非常に貴重な歴史的記録なわけです。だからこそ是非、報道機関の経験とノウハウでスクリーニングをかけ、アーカイブや日々の報道の中で活用していただきたいと期待をしています。

  • 田中委員
    津波映像は防災の観点や教訓という意味で放送していただく場合であれば、使用目的を明確にした上で、やっぱり流して頂くことを視聴者は期待していると思います。先ほどの目に見える動きが減って来たという中で、被災地の皆さんが今考えていること、心の中で思っていることがこれから必要な情報になるので、是非このエリアから発信していただくことが非常に有効だし、それによって他の地域の人たちの気持ちや対応が変わったり出来るんじゃないかと感じたところです。ネットにはもう何でもあると言われていますが、すごく大事なことは私たちは言わないですし、一番大事なことは表に出ていなかったりする、そういう情報を集められるのは、やっぱり地域のテレビ、ラジオですので本当に期待したいと感じました。

【報告】 ラジオ福島 編成局専任局長 大和田新「原発事故さえなかったら」

私は震災以降ずっとアナウンサーとして現場に行き、活動をして来ました。特にこの1年間の取材の中で一番多かった言葉が「原発事故さえなかったら」です。私たちの人生に「たら、れば」はないんですが、これほど多く福島県民が今「原発事故さえなかったら」と苦しんでいることをお伝えしたいと思います。
まず福島県は原発事故により、現在12万人がふるさとを追われ、5万5000人が県外に避難しています。そのうち1万5000人が子どもたちで、北海道から沖縄まで避難しています。昨日現在ですが、福島県内の死者・行方不明は3113人、内訳は行方不明211人、地震・津波による直接死が1600人、いわゆる関連死が1300人となっています。この関連死が福島県の場合は特に多い現状は皆さんお分かりと思います。これはまさに無理な避難、そこから来る運動不足、ストレス、高血圧、糖尿病の悪化、認知症などが進んで、いわゆる持病がかなり悪化しています。一番深刻なのは、将来このままだとふるさとに戻れないという不安から自殺する人が非常に多い現状です。
福島県は今健康管理調査を行っています。これはアンケート調査ですが、私が取材して思うのは、国や県がやるべきことは調査ではなく内部被曝などの検査だと思っております。そして、将来もし甲状腺がんが出たら、福島県の子どもたちに関しては100%国が医療費を持つべきだと私は思って福島県選出の国会議員たちにも呼びかけ、何とか議員立法をしてほしいという呼びかけをしています。
非常に問題になっているのが子どもたちのPTSDです。昨年12月7日に宮城県沖で津波警報が出る大きな地震がありました。あの時に取材したんですが、浜、沿岸の幼稚園、小学校、中学校はかなりパニックの状態で、泣き叫んでいる子どもたちがおりました。PTSDは余震が来ると2011年3月11日午後2時46分に戻るんです。もっと深刻なのは沿岸部の小学校の女の子たちが言うことです「放射能を浴びてるから、私たち赤ちゃん産めないんだよね」。これはもうまさに人間差別につながっているというふうに思っております。現在のこの低放射線量で、子どもが産めないとか結婚出来ないとか、がんになるなんていうことはあり得ないんですが、子どもたちがそういうふうに言うということは、何が必要かと言うとやっぱり教育と医療だというふうに私は考えています。 
2011年3月に相次いで福島第一原発が爆発したとき、原発から20キロ圏内は自衛隊も警察もご遺体の捜索をやめて撤退しました。ちょうど20キロの南相馬市原町区萱浜のAさんは、津波でご両親と8歳のお嬢さんと3歳の息子さんの家族4人を亡くしています。お父さんと息子さんの遺体はまだ見つかっておりません。自衛隊、警察が全部撤退した後、遺体の捜索をしたのはAさんを中心とした10人の消防団です。4月20日に自衛隊が入って来るまで毎日自分たちの家族の捜索を行い、1か月に40人のご遺体を見つけたそうです。
これがご自宅の写真です。海岸から1キロです。周りの家は土台しか残らなかったのですが、奇跡的に残りました。Aさんはマスコミが大嫌いでしたが、確か7回目にお会いしてようやくインタビューをさせていただきました。
(ラジオで放送したインタビュー音声 約3分)
震災から2年経って1万人いたら1万人の思いがそれぞれ違うんだということを私たちは確認して、その思いをちゃんと伝えて行かなければいけない、十把一絡げでは被災地、被災者というものを語って行けないと思っております。
大熊町から雪深い会津若松に避難している、ある中学生の作文をちょっとご紹介させて頂きたいと思います。
(作文朗読 省略)
昨年の3月1日、福島県で一斉に県立高校の卒業式が行われました。富岡高校は警戒区域にあるため100キロ離れた福島市飯坂町で卒業式が行われました。答辞を述べた生徒会長は神奈川県からサッカー留学で来ていたBさんでした。原発事故があった時、神奈川の家族は彼女に戻って来るように必死に説得しましたが、彼女は富岡高校で卒業することを選びました。答辞でこう言いました。
「人間のコントロール出来ない科学技術の発達によって、私たちは大切なふるさとを、母校を失ってしまった。しかし天を恨まず、自らの力で、自らの運命を切り開いて行きます」。これからも地元のラジオ局として、被災地、被災者に寄り添いながら福島の現状を発信して行きたいと思います。

【報告】福島テレビ 報道局報道部長 鈴木延弘「信頼される原発事故報道を目ざして」

今回の原発事故に関しては初めての経験で、どこまで取材するのかぶち当たりました。我々は事件事故が起きたらとにかく現場へ行けというのが普通で、今回も浜通りの津波の被災地に取材班を何班も出しました。その時私たちの本社には線量計が5本ありましたが、これを持って行けとも言いませんでしたし、そういう事故が起きるということも、もちろん考えなかったので、丸腰で出したという経緯がありました。
それから少し経って、どうも原発がだめだといった時に本社に線量計が5本しかありませんので、フジテレビ系列からかき集めて持たせるという話になりました。必要な線量計が揃うのに10日ぐらいかかったので、それまではちょっと取材に行くのは危ないだろうということで、避難指示が原発の20キロ圏内に出ていたので余裕を取って40キロぐらいまでにしようと。系列で話をしてそういう取材をしようということになりました。
そうなると、20キロから40キロまでは普通に人が生活しているところでしたので、何で取材に来ないんだと。電話取材をして様子を聞いたりしていましたが、避難所でも何でテレビの人たちは被災地に入らないんだと結構詰め寄られたりしました。そうした最初の部分で、初めての経験であったので安全面を考えた結果、現場に行けないというか行かないという選択が、何かマスコミというか私どものテレビ報道が信頼されない原因の一つになったのかなというふうに思いました。私たちはもちろん現場で取材するということと、後は本筋を知っているネタ元を作っておくことが求められますが、残念ながら東京電力にネタ元はありませんでしたし、政府にもありませんでした。
汚染されたわらを食べた牛が流通したという問題は、一方でその牛肉を販売した店名を発表することで回収を促したいというものでした。僕たちは食中毒の報道で原因者がその店だったら放送しますし、もちろん映像付きの方が理解を助けるため、店の映像を出そうとなるんですけども、今回同じ手法で店の映像を放送したところ、「我々も被害者なのに何でやるんだ」と店からクレームが来ました。人権上の配慮が足りなかったのかなということで、店の方にお詫びをしたという経緯があります。
除染の問題については、いわゆる災害の復旧作業というのは基本的には公共工事、公のものなので、事前の断りなんかしないで取材に行くのが普通だと思いますが、例えば自分の家が汚染された、庭が汚染されたというのは極めて高度なプライバシーだというような考え方もあって、取材に行くと必ず何で取材に来たんだというようなことを言われます。取材の主旨を説明すると、分かりましたと言う方と、いやいや私のプライバシーだと言う方とがいまして、これもケースバイケースと言うか、現場できちんと説明をしなきゃいけない、今までと違うなと感じています。
それから、放射線の問題については皆さん非常に勉強をされている、ネットにもたくさんの情報が出ていていろいろな考えをお持ちです。そんな中で、テレビとしてこの問題でどんな情報を出して行けるか非常に苦慮しています。ある学者はこう考えているけども、それが本当に正しいのか良く分からない。昔から私たちは専門家が言うことは正しいだろうというスタンスで取材し、放送してきましたが、専門家にもいろいろな考え方があるということを短い放送時間の中でどのぐらい表現するのか、正解がない難しい問題だなと思っています。
それから当社の報道部員だと今は2年間で4ミリシーベルトぐらい積算で行っている、多い人でそのぐらいだったと思いますが、最初の10日間ぐらいは線量計がなかったので、その時はもう少し強い放射線を浴びているはずなので、もうちょっと行っているだろうと思います。みんな取材に行きたい、例えば第一原発に入りたいというようなことを言うんですけども、許容できる線量は各人ばらばらだと思いますし、どうやって線量をうまく分担しながら、この先何十年と取材を続けて行くかは、多分報道部だけでは解決しないので全社的に考えなければいけない問題だと思っています。
先日、福島第一原発の構内を視察する機会があって現場を見て来ました。そこで2年経ってもなかなか収束作業が進まないという現状を見た時に、原発事故の責任は国とか東電とかいろいろ言われていますけども、私は大人全員の責任なんだろうなと改めて思いました。その責任をどうやって果たして行くかという中で、私たちマスコミの責任というものも、事故への準備がまったく出来ていなかったというところからすればで、かなり反省をして伝えて行く必要があるというふうに思いました。
(この報告にあった、汚染された牛肉を販売した店の映像使用について委員に考えを聞いた。そのあと、被ばくをめぐる視聴者の様々な考えにどう対処しているか福島の放送局に尋ねた)

放射性物質で汚染された牛肉を販売した店の映像使用について

  • 山田委員
    ちょっと言葉は悪くて適切じゃないかもしれませんが、嫌われても伝える義務が報道機関にはあると思っています。それは、報道するには報道する側にそれなりの覚悟を持つ必要があるということではないでしょうか。私としては、まずは目の前に起こっている問題から目を背けることなく、逃げずに報道するということがまず原則であって、その中で風評被害等、報道したことによって生じる影響を考えてどこまで配慮を示すのかということかと思います。ちょっと厳しい言い方になるかと思いますが、配慮を示したばっかりに、どういう問題なのか十分に伝わらない報道をしてしまったのでは、結果的には報道機関の役割が損なわれるのだろうと思っています。

  • 坂井委員長代行
    もともと県がお肉屋さんを公表しているんですよね、放射性物質が検出された肉がこういうお店で販売されたと。汚染されたものは食べない方がいいから当然のことで、店が放射性物質で汚染されたものを売って、そのお店が気の毒だから報道しないという話にはならないと思います。公共性がある話で、市民が食べるべきでないものを食べないようにするために報道する価値があると判断をするのであれば、きちんと話をして納得してもらう努力はするべきだけれども、納得してくれなかったから報道しませんというのでは、報道の責任を果たしたことにならない。段取りをちゃんとして必要な範囲で放送したのであれば、やるべきことをやったということになるのではないかと思います

被ばくをめぐる考え方の違いへの対応

  • 多分一番違いが大きかったのは、自主避難される方と避難されない方ですね。警戒区域の場合はしょうがないんですけども、例えば福島市とか郡山市は原発から60キロ離れていますが、比較的線量が高い。そうすると自主的に避難する小さなお子さんがいるお母さんと、残っているお母さんと2つに分かれています。そういう中で避難されている方に軸足を持って行くと、避難してない方からは当然なぜそれを報道するかという話がございます。ですから、なるべく機会を均等にするというか、一方でこういう事実もありますけども、こういう方もいらっしゃいますよとバランスを取るやり方しかなかったと思います。
    あと、第一原発が今どうなっているのかきちっときめ細かく伝える。政府情報を垂れ流しした反省の意味もあるんですけども、たまたま今ですと、大臣クラスが視察で原発構内に入るケースがあります。視察の情報ではなく、記者がついて行って、発表ではなくて自分が見たもの感じたものを伝える、そういう視点も大事かなと思っています。

  • 当初はインターネットで流されている危機感とか、あおるような情報、そういったものにあまり耳を傾けないで自分たちの報道姿勢を貫くような形でいました。その後はネットの声などもある程度意識して、国が発表するから、東電が発表するから、それを鵜呑みにしてそのまま流すというのではなくて、地元の自治体の考え、一般住民の考え、またネットの中の意見とか、いろいろな立場を考えて報道しているということでしょうか。

【スピーチ】 大石委員「福島を撮って」

私は2011年の5月上旬から福島、宮城の方を取材しました。福島は風評を入れて四重苦ですが、原発となると、放射性物質は目に見えないですので、写真でどう撮るかはかなり厳しいと思いながらカメラを肩に歩き回りました。やっとつい最近、「福島 FUKUSHIMA 土と生きる」という写真集にまとめることができました。写真は音もなく動きもないだけに、想像力で補っていただきたいです。ご覧いただきます。
これは言うまでもなく荒れた田んぼです。土が原点。要するに農民ですから、自分の故郷、大地、田畑が汚染されたら何にもならない。「自分の原点が奪われた」と言って大声で泣く男性です。
仮設住宅ではなく借り上げ住宅に移ったおじいさん、おばあさんと孫2人です。「田畑に毎日出ていると、いい意味の緊張感もあるけれども、ここにいると何もできない、なんだか人間でなくなったような気持ちになってくる。孫がこうしていつも一緒にいてくれるということ、これまでも一緒に住んでいたけれども、今は狭いところですぐ近くにいてくれるからせめてもかな」と自分を慰めていました。
(写真説明 中略)
この人は川内村の農民で、線量が高いために、コメは作れないことになっている。けれど彼は、先祖代々からの田を荒すわけにはいかないと、合鴨農法でコメを作りましたが、「2011年に収穫した1トンは国によって埋めさせられた。去年は2トンの収穫があったが埋めた」と。こうした農民の魂というか、誇りというか、そういうものを私たち消費者もきちんと受け止めなければならないという思いを強く受けながらこの写真を撮りました。
福島には今年IAEAが調査に来ます。チェルノブイリではIAEAが90年ごろですが、「問題ない」と宣言したために、長いこと世界の目が集まらなかったという経緯があります。IAEAが、甲状腺がんとかいろいろ認めたのは8年ぐらい経ってからですね。福島でIAEAがどういう調査結果を出すのかわかりませんが、私たち、とりわけ報道をする人たちは、しっかりと見逃さないでいただきたいと思います。
学者の中にも、100ミリシーベルトでも大丈夫だと言って福島で問題になった例もあるし、2ミリシーベルトでも危ないと言っている人もいます。いろいろな問題が福島の原発の被ばくに関してはあります。丹念に時間をかけて伝えていただければ、視聴者でもある私もとても有難いです。

事件報道における実名と映像の扱い、人権への配慮

休憩をはさんで後半に入り、表題に関係する2事案の骨子の説明に続いて会場からの発言を受けて意見交換に入った。

「委員会決定」の骨子の説明(省略)
三宅委員長  第31号「エステ店医師法違反事件報道」
奥委員長代行 第47号「無許可スナック摘発報道への申立て」

(骨子を説明するなかで、三宅委員長と奥代行は以下の発言をした)

  • 三宅委員長
    決して、首なし映像をお勧めしているわけでございません。できる限りちゃんと首から上も付けていただいた映像にしていただかないと、テレビが率先して首なし映像でシェアされていきますと、日本社会全体が匿名社会になっていって、人と人との交流がそこで途切れてしまう。人間はやはり人と人との交流の中生きていく、成長していくという点からすると、できる限り全体像を伝えて、お互いの交流ができるようにするというのが本来のあり方だと思っております。

  • 奥委員長代行
    実名や顔がちゃんとある報道をしていただきたいという基本ですけども、ただし、行き過ぎるケースとして名誉棄損やプライバシーや肖像権の侵害とならないけども、放送倫理上さらに煮詰めていただくべきところがあるという、非常にきめ細かい判断が要求されてくると思いますけども、これをまた参考に取材で活かしていただければと思うところでございます。

  • (出席者から、映像の使用に関して2つの問題提起があった)

  • 車のナンバーなどのモザイク処理について

  • モザイクの件で、私たちは交通事故の現場に行って車のナンバーにモザイクをかけて放送するということはしないんですけども、最近なんでモザイクをかけないんだという苦情がかなり来るんですね。それに対しては、ナンバーから車の所有者が特定されることがないので、モザイクをかけないと説明するんですけども、あまりにも苦情が来ます。報道以外の番組を見ていると、かなりそういうモザイクがたくさん使われていて、そもそももう世の中モザイクがないとだめみたいな風潮になっているのかなと憂慮していますし、説明に苦慮しているという現実があります。
  • 事件事故の際の顔なしインタビューについて
  • 速報性が求められるというところも原因としてあるのかもしれません。事故現場、火事現場、とにかくすぐ撮って帰らなきゃいけないというところで、顔出しでしゃべってくれる人を捜し出せないという時間的な束縛もあるのかもしれませんが、顔が出ないならインタビューに答えてもいいという人がとても多い。特に事件があって周りに住む人とか、昨日まで一緒に普通に平和に暮らしていた隣人が事件を起こした場合、その人はどんな人だったかとかいう証言とか、特に顔を出すのはだめ、声だけならという方がほんとに多い。

  • 小山委員
    車のナンバーにモザイクをかける必要がないという理由は、警察でない限りナンバー照合することができないわけだからということだと思います。ただ、一般人にはわからなくても、その当事者の周辺の人間に分かる可能性というのはあるわけですね。そうした場合、プライバシー侵害になるという可能性がないわけではありません。『石に泳ぐ魚』というモデル小説の裁判で、原告になったのは普通の女性で、著名人でもなんでもない。ただ、あの小説を通じて分かる人には誰だかわかる。ちょっとなかなか難しいところかなという印象を持ちました。いずれにせよ、ナンバーが見えたから違法とか放送倫理違反ということではなく、放送内容自体に問題がある場合に、ナンバーを通じて特定個人のプライバシー等に対する侵害や、放送倫理違反が生じうる、ということです。
    それから顔なしという話ですけども、この前のグアムの殺人事件では、加害者に近い同級生とかみんな顔を出してインタビューに応じていますよね。文化の違いなのか、日本独自の変な慣習みたいものが形成されてしまったのかという感じもしますが、やはりできるだけ顔を出してもらうように努力するというのが基本だと思います。
    それからもう1つ、顔なしでもいいからとにかく映像を撮ったほうがいいのか、扱ったらいいのかどうかというところも1つ考えるべきことではないかとも思います。場合によってはそれを使わないという、そういった判断もありうるのかな。

  • 奥委員長代行
    お二人の発言は、基本的に同じことだと思うんですね。要するに風潮です。その風潮というのを作り出したのはたぶんマスコミ自身なんだろうと思うんです。しかし、よくない風潮はどこかで止めて、元に戻していかなければいけない。私はBBCのテレビを見る時期がありましたが、ほとんどちゃんと顔を出してインタビューに答えていますね、日本に帰って来てすごく違和感を持った。これは確かに日本社会の特質というか、人前に出てしゃべったりするのを嫌がるというか、恥ずかしいというか、顔がわからなければいいなという、たぶんそういうメンタリティがあると思うんですけれども、だから、速報性とかそういう時はしょうがないでしょうが、ちょっとじっくり取材できる時は顔を出してもいいという人を一生懸命探し出して話を聞く、そういうふうな地道な努力をして、こうした風潮を少しおしとどめていくという、そういうことが必要なんじゃないかと思います。

  • 林委員
    私からちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば火事とか犯罪、要するに事件報道のあり方そのものを見直すことはできないのでしょうか。これまで、日本のマスコミは、どんな事件でもとにかく現場へ行く。被害者や加害者の写真を撮る。こうした反射的とも言える行動が、美徳のように考えられてきたような気がします。だから、長い報道の歴史で、「メディアに顔が出る」ことに、積極的かつ主体的に社会的意味づけをしてきたのはメディア側です。したがいまして、私は日本の人が顔を出さないのを、日本人論的な部分で解釈して終わってしまうということにはちょっと賛成できないんですね。
    今まで、現場のみなさんは、「顔出し、実名」で誰かにインタビューし、細かい報道をしていくこと自体が、ジャーナリズムの本質だと理解してきたと思うんです。それだから、ニュースの時間も、それがもっともやりやすい「事件事故報道」が多くなり、取材のリソースもそこに投下されてきた。しかし、そういう報道のあり方自体を見直して、ニュースの価値の基準を少し動かすことができないのかと。今回のこの場でも、東日本大震災の記憶の風化をどうやって食い止めていけばいいかという根源的問題を語りながら、他方で市井の事件報道のあり方をどうするか、という実践的問いがある。この二つの落差をどう埋めるのかなと思います。もしかしたら、東北のテレビ局は、震災によって、たとえば、ちょっと実名報道や顔出しの基準も変わったんじゃないか。さらに、報道の社会的意義の考え方にも変更があったのではないか。そんな期待があるのですが。
    つまり、現場の方は事件報道に対して、顔出す、出さない以上の問題として、事件報道そのものを減らす決断ができるのかどうか、そこがちょっと知りたいんですね。「この事件は、大した社会的意義がないから、今日はやめておこう。」って、そういう話ってありなんじゃないかなって思うのですけども、現場ではなぜそういうことができないのか、と思うことがしばしばあります。

  • 山田委員
    最近の事例で言うと誤報がありました。PC捜査の誤認逮捕の問題、あるいは尼崎の連続変死事件の顔写真問題、誤報ととらえるかどうかは皆さん、各社で違うかもしれませんが、例えば尼崎の場合にはいくつかのテレビ局はお詫び放送をしました。けれども、PCの別件逮捕の報道に関して私の知る限りお詫び謝罪放送をした放送局はありません。要するに、警察発表で逮捕されたのだったら、もう顔写真、実名報道が当たり前で、間違えても何の責任もないというのが現在の放送局、もっと言うならば日本の報道界の慣習であり実態だと思います。
    あるいは、今回のアルジェリアの人質事件でヤフーのユーザーアンケートでは、7割は実名の公表に反対なわけです。実名報道が当たり前で、当然容疑者もそうだし、被害者も例外ではないという考え方は、もうすんなりとは受け入れられないという状況になっていることを、テレビ局はじめ報道機関はもっと自覚した方がよいと思います。ちょっと面倒かもしれませんが、実名報道の意義をきちんと丁寧に説明する時期に来ているのだろうなと思っています。それからすると、さらに一歩進めて「警察発表イコール報道」ということ自体も、一度、議論してみる必要があると思います。もう少しち密な基準作りというか、毎日の日々の取材あるいは報道の仕方の検討ということを、みなさんのなかでしてみていただけませんか。

  • 坂井委員
    小山委員がお話しになった『石に泳ぐ魚』裁判の原告側の代理人をやっていた立場から、ちょっと補足をさせてもらいます。
    決定的に違うのは、あれは小説だと柳美里さんが自分で規定しています。どのようにでも創作できるフィクションだから原告とつながりがないと言っているのに、原告とつながることを書いてしまっている。報道について刑法230条の2が名誉毀損の違法性阻却を定めるのは、事実を脚色せずにそのまま書かないと報道の意味がないという前提がある。そのうえで公共性があり、公益目的があり、真実だったらいいよとなっている、社会的価値が低下しても。だから、小説と報道とはちょっとステージが違うということがまずある。それから、あの小説では極めてセンシティブな個人情報が書かれていたので、車のナンバーとは性質がだいぶ違うんですね。プライバシーに関わるかもしれないけれども、情報の質が違う。
    例えば、交通事故でナンバーをそのまま流しました、でも本当にそれが必要あるでしょうかというチェックは必要です。ふつう分からないといっても、場合によってはプライバシー侵害になるケースがあるかもしれない。しかし北海道の雪の中で50台の高速道路の事故が起きたという時に全部ナンバー消していいんだろうか。これは事実として報道する価値が高いんだ、ナンバーは付けて走るものだということでいったら、それはもうある意味放棄しているということだって言えるわけですよね、例えばですけど。そういう個別の判断をしていかないといけない。
    あと、顔出しは嫌だと言うんだったら、じゃあ結構ですという選択だってあっていいと思うんです。取材、報道する側が、この事実を報道する価値がこれだけある、そして信用性を得るためにもちゃんと顔を出して言ってもらわないと困るということを言っていかないと。言っていけるのは報道する側の人しかいないと思うんです。

【三宅委員長の締め括りのことば】

私自身が、原発事故で避難している人たちに人権があったのだろうか、なぜ裁判所が今までの数々の原発訴訟の中でチェックできなかったのかという問題を考えなければいけないという立場にあります。こういうときに、放送メディアとしては、現場のリアリティある映像、音声を念頭に震災に対応できなかった原発の責任論みたいなのを考えないといけないだろうと思うので、ぜひそういう映像と音声を流していただく役割というものの大切さを持ち続けて、繰り返しいろいろな角度から伝えていただきたいと思います。
それから、実名報道のところで言いますと、報道機関の役割としては国民の知る権利に奉仕するという基本的な立場に立ちつつも、実名報道をした場合の弊害がどういうものかということを具体的に考えながら、できる限り開示をするという方向付けをはっきりしていただきたい。今の通常国会で多分まず最初に出てくるのが社会保障と税の共通番号制度の法案で、医療データと税金の情報は全部政府が握るけれども、当該個人についての重要な個人情報は、政府機関からはほとんど出ない。例えて言えば、匿名化社会で、いわば監獄の中心に政府があって、いろんなデータを持っているけど、周りに収監されている囚人は互いに知り合うことができない、そういう全方向型監視社会になってくるんじゃないかと、危険を感じています。ぜひ匿名化社会になるような映像を流し続けるのではなくて、絶えずチェックするというような視点で取材、放送していただくのが基本的なスタンス、報道機関のあり方ではないかなと思っております。

以上

2013年2月に視聴者から寄せられた意見

2013年2月に視聴者から寄せられた意見

遠隔操作ウイルス事件の「猫カフェ」の容疑者映像が隠し撮りであり、容疑段階での報道のあり方を問う意見。視聴者の電話投票で温泉宿の一位を選ぶ番組で、投票結果が公表されず不自然という意見など。

2013年2月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,149件で、先月と比較して219件減少。
意見のアクセス方法の割合は、メール71%、電話24%、FAX2%、手紙ほか3%。
男女別は男性68%、女性28%、不明4%で、世代別では30歳代32%、40歳代25%、20歳代19%、50歳代13%、60歳以上9%、10歳代2%の順になっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。2月の通知数は400件【37局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、17件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

2月の視聴者意見は1,149件と先月より219件減った。
グアム無差別殺傷事件の空港での取材殺到についてメディアスクラムではないかといった批判的な意見が寄せられた。遠隔操作ウイルス事件の容疑者逮捕の報道では、「猫カフェ」で戯れる容疑者の映像撮影は、事前に隠し撮りされたもので、人権侵害ではないかといった声や、容疑段階での報道のあり方に疑問を投げかける意見もあった。
バラエティー番組では、温泉宿の人気ナンバーワンを視聴者の電話投票で決めるという番組で、投票の内容も公開されず、結果に不自然さが残るといった不満があった。
少女アイドルが丸坊主になって泣く映像や、グラビアアイドルの女性がテレビでもてはやされていることにも多くの視聴者からの意見があった。
ラジオに関する意見は28件、CMについては36件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は90件で、前月より12件増加した。
今月は「性的表現に関する意見」が20件、次いで「表現・演出に関する意見」が12件、「低俗、モラルに反する意見」が11件と続いた。
「性的表現に関する意見」では、最近人気のセクシーさを売りにしたグラビアアイドルについて、コメントや格好、態度が過激だとして、子どもが見る番組への出演を控えてほしいとの意見が複数寄せられている。また、東海テレビ放送のドラマ『幸せの時間』について、青少年委員会で審議入りしたことに関する意見が寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • グアム無差別殺傷事件の遺族への取材について。成田空港ターミナルで遺族へのカメラのフラッシュ、ビデオ撮りが凄かった。俗にいう「メディアスクラム」ではないだろうか。まるで、被疑者か容疑者のようだ。どうして代表取材で済まないのか。テレビだと二局ないし三局で済むし、新聞とも歩調を合わせて自重してもらいたい。遺族の立場に立って考える"アタマ"はないのか。

  • グアム無差別殺傷事件の報道は、どの局もやりすぎだ。事件現場の映像や写真を繰り返し流し、憶測にもとづくコメントをしたり、野次馬が撮った写真や映像音声の提供を求めたりしている。私は被害者となってしまった方々とは何のつながりもないが、遺族がこれを目にしたらどう思うかと胸が痛くなる。報道は慎重に扱ってほしい。

  • グアム無差別殺傷事件のリポートで、犠牲になられた方の自宅が映されていた。その映像の中に、玄関のガラス部分から内部を映した映像があった。ブーツが乱雑に散らかった映像。今回のリポートでそんな映像が必要だろうか。勝手に映されてご家族はどのように思うだろうか。盗撮と一緒ではないのか。本当に不愉快だった。

  • 遠隔操作ウイルス事件で、容疑者の男とされる人物が「猫カフェ」で遊ぶ映像をニュースで流していた。それは隠し撮りされたと思われる映像だった。容疑者として逮捕されたのが10日、この映像は少なくとも逮捕の数日前に撮影されたものだ。テレビ局がこのように一般人を隠し撮りすることが許されるならば、報道の自由といいつつ一般人の生活を付回し調査することも可能といえるのか。この映像が何時どのような経緯で撮影されたのか。なぜそのようなことが可能だったのか。

  • 遠隔操作ウイルス事件で容疑者逮捕のニュース。逮捕されたとたんに、それ以前の画像がこれでもかと各局で流されているが、人権侵害ではないのか。本人は否認しているし、あくまで容疑者なので推定無罪だ。逮捕情報が、マスコミに事前に流れていたという情報漏えいの疑いさえ感じる。起訴されて被告となっても推定無罪だ。きちんと法律を理解し人権を守る報道姿勢をもってほしい。報道するためには何をしてもいいという感覚は、恐ろしい。

  • 現段階では「容疑者」であり、真犯人かどうか未確定であるにもかかわらず、卒業文集を晒したり、行きつけのお店の店員に「気持ち悪い客」と言わせたりと、個人の人権を無視した報道をしているが、いかがなものか。過去にいじめられていたから性格が歪んで今回の事件を起こしたかのように説明するアナウンサーもおかしい。テレビの持つ影響力の大きさと、報道のあり方について考えていただきたい。

  • 各局のニュース番組でAKBのメンバーの丸坊主謝罪のニュースを報道していた。事件や事故を起こしたのならまだしも、週刊誌に色恋沙汰で記事が載ったことに対してのタレントの謝罪会見を、ニュース番組でニュースとして取り上げる必要があるのか。まったく呆れる。

  • AKBのことが連日のようにニュースになっている。最近は内容が過激になってきた。児童に胸を隠させた写真集だったり、泣いて丸刈り動画だったり。特に丸刈りする動画はユーチューブにあげられており、世界の人が目にする。ナチスのユダヤ人への迫害を連想する人もいて不快に思うだろう。知名度を上げるためのパフォーマンスの一つだと思うが、やりすぎだ。AKBは違法すれすれの問題を起こして話題性をアピールしているだけで、不快でしかない。

  • 「警察密着24時」のような番組は、風景にボカシが入り過ぎていて、見ていて何が何だかわからない。個人情報やプライバシーへの配慮なのだろうが、いくらなんでも過剰すぎる。表札やナンバープレートのように個人が特定できるものを修正することはまだ理解できるが、公共の場所は誰もが目にするわけだから修正する意味がわからない。そこまでしなければ放送できないのなら、最初から放送しない方が良いのではないか。

  • ツイッターの意見が表示される、いわば「今時」の構成。多くの人の考えを知ることができる反面、くだらないつぶやきも多い。たとえば天気コーナーで気象予報士の髪型や服装にいちいちコメントする輩がいる。「○○さん(気象予報士)、元気ですか?」「床屋行きましたか?」そんなことはどうでもいいではないか。一部だろうが、程度の低さにあきれることがしばしばある。以前「偏った情報ばかりが表示される」という指摘があった。情報が偏ることは問題だろうが、逆に、ニュースの本筋に関係ないようなどうでもいいような低レベルのつぶやきはカットしてもいいと思う。

  • ニュース解説番組や情報番組で、大きなパネルやモニターを目隠しの状態からめくっていく手法がとられるが、めくる度、モニターが変化する度に一々「デデン」や「シュイーン」の効果音が付く。何枚も連続してめくる時も「デデン」「デデン」「デデン」と耳障りで、見ることが苦痛だ。

【番組全般・その他】

  • 全国の温泉宿を紹介し、視聴者の電話投票で一位を選ぶという番組だったが、不自然な点が多かった。電話投票の内容が全く公開されない。集計すらも発表されない、すごく不親切な終わり方だった。1位だけではなく、せめて上位ベスト3位までは数字を示して発表してほしかった。エンディングの粗末さと、視聴者の気持ちを踏みにじった番組制作に落胆した。電話をかけて投票した側の気持ちを大切にしていない、視聴者の気持ちを無視した構成だった。生放送ということだったが、本当に生放送だったのか?電話投票は結果にきちんと反映されていたのか?テレビを見ていた視聴者側からは全く分からず、不本意な結果に、憤りと不信感を覚えた。

  • 依存症や摂食障害など、何かに病んでいる人を見せ物にしている悪質な番組だ。見ていて気分が悪いし、社会に悪影響だ。この間の放送では整形依存症の女性を出演させて見せ物にしていた。病んでいる人たちには医療機関の診療が必要であって、タレントが何か忠告しても意味がない。番組のテーマは「女性」などと謳っているが、何故、整形手術や依存症などの暗いことばかりなのか。そういう下衆な企画で視聴者の関心を引き、視聴率を稼ごうとするやり方が不快だ。

  • 「身体中から爪が生えた女子大生」という内容を番組予告に取り上げていた。その宣伝の映像は作り物、再現だとは思うが、身体からたくさんの白いイボのようなものが生えた映像だった。とても気持ち悪く、不快だった。宣伝を見た瞬間から全身に鳥肌が立ち、嘔吐感に襲われた。放送されている番組を見たくないのなら、その時間他の番組を見れば良いが、番組予告の宣伝では否応なく見てしまう。とても腹立たしい。

  • 容姿に対する差別発言を平然とする人は、テレビやラジオに出さない方がいい。性別・学歴・職業・障がいの有無、そして容姿などの"差別"を助長するのは放送による影響が大きい。海外では、特に人種差別の発言や態度について、放送で物議を醸したり、改善したりしている。視聴者の心に潤いを与えるのも、深い傷を負わせるのも、放送だという自覚を、制作スタッフと出演者が持った方がいい。

  • 体罰問題などをニュースで伝えている。その一方、バラエティー番組などで普通に罰ゲームなどをしている。苦いお茶を飲ませたり、ケツバットをしたりと体罰を普通にやっている。また、芸人が出る番組などでは芸を見せるのでもなく、上の人間が逆らえない後輩に、無理やり買い物をさせるなどしている様子を企画し、放送している。パワハラであり、いじめにつながる体罰だと思う。メディアはニュースで体罰禁止などと言いながら、一方ではパワハラや体罰に類似する行為を放送している。おかしくないか。

  • 生活保護の不正受給、詐欺オークションなどにかかわっていた芸能人がいまだにテレビに出ていることが不愉快だ。所属事務所が大きいから守られているのか知らないが、どうであれ悪いことをしたのならきちんと何らかの制裁を受けさせるべきだ。覚せい剤を使用した芸能人も短期間で復帰するなど、とにかく芸能界は甘すぎる。

  • 人気の商品を比較して順位をつける番組。普段から企業タイアップが過剰に盛り込まれ、本末転倒が目に余る。今回はタイアップ企業のCMに出演しているタレントを使うなど、一線を越えた演出が目立った。これで当該企業から何らかの金銭授受があった場合、倫理だけではなく、放送法にも抵触する可能性が高い。

  • 「エッチなお姉さん」などと、いやらしさを売りにしている女性がテレビでもてはやされている。この番組でも、胸元の大きく開いた衣装を身にまとい、いやらしい目線を投げかける映像が何度も流れていた。時間的に、子どもの目に触れる可能性もある。昼間の番組で、このようなタレントを取り上げることはやめて頂きたい。

【ラジオ】

  • 我が家は惣菜店を営んでおり、一日中ラジオを流している。この日は夕方の番組で、二人の出演者の会話がひどかった。「ストリップ劇場」の話題で盛り上がり、その大半が女性についての過激トークだった。当時、店は買い物客で賑わっていたが、あまりの内容に一瞬店内が凍りついた。深夜放送ならいざ知らず、夕方の番組の内容として相応しくない。

  • リポーターが市中の商店などから中継するコーナーで、いつも同じような商店ばかりから中継している。極端な例では、特定の同じ商店が月に2~3回以上取り上げられるケースもある。同じ商店ばかりからの中継では、その商店の広告的な中継の利用と思われてしまう。様々な業態や業種の商店から中継したほうが、より旬の情報を伝えられ、取者の役に立つのではないか。

【CM】

  • テレビ、ラジオを問わずローカル局ではほとんど無制限にパチンコCMを流している。パチンコは依存性の高いギャンブルであり、親のパチンコ中、車内で子どもが死亡する事故が後を絶たない。タバコや酒のCMでは、「健康を損なう恐れがある」「二十歳未満の飲酒は禁止」などの警告が出るが、パチンコに関しては何の注意告知もない。せめて「子どもを巻き込むな」とか「お金の使いすぎに注意」などの警告を出してほしい。

  • 大げさに食べる音を強調したCMは何とかならないか。イギリス人の友人が「ぞっとする」と顔をしかめ、耳をふさいでいる。日本以外の国で音を立てて食べることは厳禁だ。日本でも蕎麦以外は厳禁である。日本の恥だし、下品極まりない。

青少年に関する意見

【性的表現に関する意見】

  • バラエティー番組で、グラビアアイドルが肌を露出した衣装で、卑猥なことを連想させるようないやらしい発言をしていた。他の出演者もかなり調子に乗っていた。この番組は、わが家の小学生の子どもも楽しみにしている。今後こういった内容はやめてもらいたい。

  • 最近人気のセクシータレントのコメントやパフォーマンス、出演ビデオの映像などが、子どものいる朝の情報番組の芸能コーナーで放送されている。子どもには絶対目に触れさせたくないので、時間帯をわきまえてほしい。

【表現・演出に関する意見】

  • 「先輩格の芸人が年下の芸人に無理やり高価な買い物をさせる」というコーナーがある。威嚇し、強制的に何かをさせるというのは法律違反であるし、子どもたちが真似ていじめにつながる心配もある。この企画をすぐにやめさせてほしい。

【低俗、モラルに反する意見】

  • 「ひな壇に飾られたひな人形を的にして、扇を投げつけて倒す」というゲームをしていた。紙で模したものとはいえ、おひなさまを飾っている家庭が多い時期でもあり、小さな子どもが真似をしないか心配だ。

【喫煙・飲酒に関する意見】

  • アニメの中で喫煙シーンが出てくるが、子どもの教育上良くないので、やめたほうがいいと思う。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 番組内容が「いじめにつながる」との意見が多数寄せられているが、本当にいじめにつながるのか。最近の未成年者はテレビだけが全てで、テレビだけから全ての情報を得ていると思っているのか。小学校高学年にもなれば物事の分別はできると思う。わかっている子なら、テレビでやっていたからと言い訳をしても、実際に傷害事件は起こさない。「子どもが孫が・・・」と、それを盾にしないでほしい。

【委員会に関する意見】

  • 『幸せの時間』の性的表現に関して苦情が多いという話を聞いた。確かに過激ではあるが、一方でこれを取り除いてしまってはドラマの面白みの一端を削ぐと思う。視聴者は、必ずしもあの映像を見て性的興奮をしているわけではないし、昼の時間は子どもが見る可能性も低い。一方で、ドラマの開始時や新聞予告に性的な表現に関する注意や、そういった表現もあることを暗に読み取れる表現をしていたから良いのではないか。

  • 『幸せの時間』は多くの批判が寄せられているが、本編の放送以外の宣伝でも、どぎつい場面をつなげて編集していた。目を覆いたくなるような宣伝だった。子どもが学校から帰宅している時間帯などにも、頻繁にこの宣伝が流れていた。ドラマ本編はもちろん、ドラマの宣伝についても節度を求めてほしい。

2013年3月4日

2013年度BPO新委員発表

2012年度BPO年次報告会(於:千代田放送会館)において、2013年度4月からBPOの新委員になられる皆さんと、ご退任の委員を発表しました。

新しく委員になられる皆さん(50音順)

【放送倫理検証委員会】(5名)


小出五郎

小出五郎(こいでごろう)氏 科学ジャーナリスト
1964年NHK入局。NHK特集「核戦争後の地球」で芸術祭大賞。NHK解説委員(科学技術全般)~2006年。日本科学技術ジャーナリスト会議会長~2009年。

斎藤貴男

斎藤貴男(さいとうたかお)氏 ジャーナリスト
英国バーミンガム大学大学院終了。「日本工業新聞」「週刊文春」などの記者を経て現職。
「梶原一騎伝」「消費税のからくり」等著書多数。『「東京電力」研究 排除の系譜』で第3回「いける本」大賞(2012年度)。

渋谷秀樹

渋谷秀樹(しぶたにひでき)氏 立教大学大学院法務研究科教授
憲法学専攻。旧司法試験考査委員~2010年。日本公法学会理2010年~。「憲法への招待」「日本国憲法の論じ方」等の著作。

升味佐江子

升味佐江子(ますみさえこ)氏 弁護士
1986年 第二東京弁護士会所属。公益社団法人精神発達障害指導教育協会理事。司法修習委員会委員 ~1995年。親子の紛争、地域の環境行政事件、巻き込まれた刑事事件など普通の人が直面した事件一般。自由人権協会理事。

森まゆみ

森まゆみ(もりまゆみ)氏 作家
地域雑誌「谷中・根津・千駄木」創刊・編集人~2009。「鴎外の坂」で芸術選奨文部大臣新人賞(1998年)。『「即興詩人」のイタリア』でJTB紀行文学大賞(2003年)。「千駄木の漱石」「震災日記」など著書多数。

 

【放送人権委員会】(1名)

曽我部 真裕

曽我部真裕(そがべまさひろ)氏 京都大学大学院法学研究科准教授
憲法、情報法が専攻。パリ第2大学、パリ政治学院、リール第2大学で客員研究員、客員教授を務める。「反論権と表現の自由」などの著作。

【青少年委員会】

 なし

ご退任される委員の皆さん

【放送倫理検証委員会】

  • 吉岡忍 委員長代行
  • 石井彦壽 委員
  • 重松清 委員
  • 立花隆 委員
  • 服部孝章 委員

【放送人権委員会】

  • 山田健太 委員

【青少年委員会】

  • なし

* BPO各委員会の委員は、放送事業者の役職員以外の有識者7名からなる評議員会により、選出されます。

2013年3月4日

東海テレビ『幸せの時間』に関する【委員長談話】

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2013年3月4日
放送倫理・番組向上機構【BPO】
放送と青少年に関する委員会
委員長 汐見 稔幸

昨年の11月に始まった東海テレビ制作の連続ドラマ『幸せの時間』については、放送開始直後から、昼間の番組であるにもかかわらずその性的描写が過激であるとの批判が視聴者意見として多数寄せられました。
BPO青少年委員会では、子どもが視聴する可能性のある時間帯の放送であったこともあり、本番組を委員全員で視聴し、討論した結果、審議すべきであるとの判断にいたりました。そして、2013年1月の臨時委員会で東海テレビの制作責任者等関係者と意見交換を行いました。しかし、この意見交換会当日の局側の意見では、十分に納得のいく説明がされていないと判断せざるをえませんでした。そこで、その内容を「青少年委員会の受けとめ」という文書でBPO報告等に掲載し、東海テレビに対しては改めて「今後に向けて」とする要請を行いました。
この文書で私たちは3つのことについて改めて回答を要請しました。それは(1)青少年委員会で提示した委員会の意見を受けて、社内でどのような議論と検討が行われたかを示してほしい、(2)今後このような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、再発防止策を示してほしい、(3)地上波の公共性に対する局側の認識を示してほしい――この3点でした。それに対して、2月の委員会の直前に東海テレビから「ご報告」という文書が届きました。この文書を委員会で精査しましたが、報告では上記3点について誠実に回答されていますし、1月の意見交換の時よりも、問題の本質を把握しようとする姿勢と問題点の自覚、今後の再発防止策の提示、公共性の責務への自覚などの点で明らかな深化を示していると判断できるものでした。その点で、東海テレビ側の今回の対応を評価したいと考えます。
私たちが今回の事例で最も重視した論点は、テレビというメディアの持つ公共的責任ということでした。東海テレビの「報告」にも「制作現場に地上波の公共性についての認識が十分に共有されていなかったことは否めません」と書かれていますが、このことは今後、各局とも強く自覚していただきたいと思っています。
テレビ・ラジオの公共性ということばには、誰もが見、聴く可能性があることへの配慮が大事という意味あいがあることはもちろんですが、それ以上に大事なのは、テレビ・ラジオの番組内容が国民の教養形成に与える影響の大きさです。公共というのは、すべての人々に関わるということで、公共の責任とは"公共善"の実現への責任ということを意味します。誰にとってもそれが善であるというあり方を求める責任が公共責任で、その自覚が公共意識です。
テレビやラジオは、いまやネットの世界とともに、国民の教養形成の最重要のメディアです。教養とはcommon senseつまり人間に共通の感覚のことで、何にこそ感動し何にこそ怒るべきかという国民共通のセンスのことです。今回の『幸せの時間』のようなシーンが昼間堂々と流されることで、視聴率競争の激しい文脈の中では、これが標準パターンとして是認されていくということを、私たちは懸念しました。外国人は、これが日本人の教養だと認知していく可能性があることも含めて、こうした教養形成の問題に制作側がどれだけ自覚的であったのかということを問題にしたのです。番組の制作者側はそうした"公共善"の実現の仕事をしているという自覚をこれからも是非持っていただきたいというのが、今回の事例に対する委員会の基本的要望です。
その点について、東海テレビ側はきちんと対応すると明言しています。その姿勢を多としたのですが、これを現場の制作スタッフだけの問題ではなく、局全体の問題として取り組んでくださることを強く願っています。
また、今回の番組に対しては東海テレビに視聴者から多くの苦情が届いていること、番組審議会、そして局の第三者機関である「オンブズ東海」でも厳しい意見が出たと聞いています。今後、これらの機関を積極的・有機的に活用して、きちんと自律的な番組つくりを心がけてほしいと願っています。

以上

第142回 放送と青少年に関する委員会

第142回 – 2013年2月

東海テレビ『幸せの時間』についての審議

第142回青少年委員会は2月26日に開催され、審議対象となった東海テレビ『幸せの時間』に関する青少年委員会の要請に対する東海テレビの回答について審議し、委員長談話を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2013年2月26日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

東海テレビ『幸せの時間』についての審議

東海テレビ制作の昼の連続ドラマ『幸せの時間』(11月5日~12月28日、FNS系列全国放送)については、第141回委員会で審議し「委員会の受けとめ」を公表するとともに、再発防止に向けた東海テレビの社内議論を深めてもらいたい旨の「要請」を行い、今回、東海テレビから寄せられた「ご報告」について審議した。

◇『幸せの時間』に関する東海テレビへの要請

◎今後に向けて~東海テレビへの要請

  1. 青少年委員会が意見交換で提示した様々な意見を受けて、社内で行われた議論と検討の内容について詳しく報告してください。
  2. 今後、今回のような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、取りまとめた再発防止策について具体的にお示しください。
  3. 地上波の公共性に関する東海テレビの認識についてご説明ください。

以上の要請に基づいて東海テレビから提出された報告書について委員間で審議した結果、委員会が提起した問題点について社内でさまざまな議論・検討が行われたことから、委員会はこの回答を了承した。したがって、前回公表した「委員会の受けとめ」が、これまでの「委員会の考え」を色濃く反映したものであることから、今回は「委員長談話」を公表することで、『幸せの時間』の審議を終了することとした。

◇東海テレビ「ご報告」

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概要

今回の問題は、制作現場のみならず、社としてのチェック体制のあり方に改めるべき点があったと認識し、再発防止策を実行していくことで、同じような問題を繰り返さないよう努めてまいります。また、刻々と変化する社会状況に即し、地上波の公共性をより一層意識し、変化を敏感に捉え、視聴者の求める質の高い番組制作を心掛けます。

目次

  • はじめに
  • 回答要請1について
    • 全社的な議論や検討
    • 社としての総括
    • ドラマ制作現場を中心とした議論と検討
    • 本社制作部の意見
    • 社内議論のまとめ
  • 回答要請2について
    • 体制の改善
    • 勉強会や研修会
  • 回答要請3について
  • おわりに

【委員の主な意見】

  • 部門ごとに原因や今後の再発防止に向けてよく話し合われた様子がうかがわれる内容で、本報告を了としたい。
  • 委員会からの要請に真摯に対応したものと評価できると考えるので本報告書は了としたい。なお本件については、当該局の第三者機関であるオンブズ東海や番組審議会においても厳しい意見が出されている。今後も、これらの第三者機関を積極的に活用し、自律的な番組つくりを心がけてほしい。
  • やや既視感のある報告だと感ずるが、提出された回答に魂を吹き込んで、実効性のあるものにしていってほしい。

【委員長談話】

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2013年3月4日

東海テレビ『幸せの時間』に関する【委員長談話】

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会
委員長 汐見 稔幸

昨年の11月に始まった東海テレビ制作の連続ドラマ『幸せの時間』については、放送開始直後から、昼間の番組であるにもかかわらずその性的描写が過激であるとの批判が視聴者意見として多数寄せられました。
BPO青少年委員会では、子どもが視聴する可能性のある時間帯の放送であったこともあり、本番組を委員全員で視聴し、討論した結果、審議すべきであるとの判断にいたりました。そして、2013年1月の臨時委員会で東海テレビの制作責任者等関係者と意見交換を行いました。しかし、この意見交換会当日の局側の意見では、十分に納得のいく説明がされていないと判断せざるをえませんでした。そこで、その内容を「青少年委員会の受けとめ」という文書でBPO報告等に掲載し、東海テレビに対しては改めて「今後に向けて」とする要請を行いました。
この文書で私たちは3つのことについて改めて回答を要請しました。それは(1)青少年委員会で提示した委員会の意見を受けて、社内でどのような議論と検討が行われたかを示してほしい、(2)今後このような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、再発防止策を示してほしい、(3)地上波の公共性に対する局側の認識を示してほしい――この3点でした。それに対して、2月の委員会の直前に東海テレビから「ご報告」という文書が届きました。この文書を委員会で精査しましたが、報告では上記3点について誠実に回答されていますし、1月の意見交換の時よりも、問題の本質を把握しようとする姿勢と問題点の自覚、今後の再発防止策の提示、公共性の責務への自覚などの点で明らかな深化を示していると判断できるものでした。その点で、東海テレビ側の今回の対応を評価したいと考えます。
私たちが今回の事例で最も重視した論点は、テレビというメディアの持つ公共的責任ということでした。東海テレビの「報告」にも「制作現場に地上波の公共性についての認識が十分に共有されていなかったことは否めません」と書かれていますが、このことは今後、各局とも強く自覚していただきたいと思っています。
テレビ・ラジオの公共性ということばには、誰もが見、聴く可能性があることへの配慮が大事という意味あいがあることはもちろんですが、それ以上に大事なのは、テレビ・ラジオの番組内容が国民の教養形成に与える影響の大きさです。公共というのは、すべての人々に関わるということで、公共の責任とは"公共善"の実現への責任ということを意味します。誰にとってもそれが善であるというあり方を求める責任が公共責任で、その自覚が公共意識です。
テレビやラジオは、いまやネットの世界とともに、国民の教養形成の最重要のメディアです。教養とはcommon senseつまり人間に共通の感覚のことで、何にこそ感動し何にこそ怒るべきかという国民共通のセンスのことです。今回の『幸せの時間』のようなシーンが昼間堂々と流されることで、視聴率競争の激しい文脈の中では、これが標準パターンとして是認されていくということを、私たちは懸念しました。外国人は、これが日本人の教養だと認知していく可能性があることも含めて、こうした教養形成の問題に制作側がどれだけ自覚的であったのかということを問題にしたのです。番組の制作者側はそうした"公共善"の実現の仕事をしているという自覚をこれからも是非持っていただきたいというのが、今回の事例に対する委員会の基本的要望です。
その点について、東海テレビ側はきちんと対応すると明言しています。その姿勢を多としたのですが、これを現場の制作スタッフだけの問題ではなく、局全体の問題として取り組んでくださることを強く願っています。
また、今回の番組に対しては東海テレビに視聴者から多くの苦情が届いていること、番組審議会、そして局の第三者機関である「オンブズ東海」でも厳しい意見が出たと聞いています。今後、これらの機関を積極的・有機的に活用して、きちんと自律的な番組つくりを心がけてほしいと願っています。

以上

視聴者意見について

その他の視聴者意見について討論し、特段審議対象とすべき番組はなかったが、委員から以下の意見が出された。

  • 伝統芸である"ゴムパッチン"がすべていけないという結論を出す意図はない。ただし、出演者に恐怖感を与え、その様子を笑いの対象にするという設定には疑問を感ずる。こうした設定で番組が作られることが視聴者にどのような影響を与えるのか、十分な配慮を行いながら慎重に考えていくことが大切ではないか。

  • アニメの登場人物が喫煙するシーンについての視聴者意見が寄せられているが、未成年者の喫煙問題への影響を考えながら、これからも注視していくことが大切ではないか。

中高生モニター報告

2月は、見てみたい、作ってみたい「バラエティー・クイズ・音楽」番組の企画を書いてもらい、27人のモニターから企画案が寄せられた。内訳は、バラエティー企画8本、クイズ企画9本、音楽企画8本、その他2本で、各ジャンルとも平均的に集まった。
「最近は品のない笑いが多いので、江戸時代から続く日本の伝統芸能の落語」を取り上げた番組企画や、女性による女性のための情報バラエティー企画、「今は中高生を楽しませようとする番組がほとんどないので中学、高校、大学に特化したバラエティー番組を」、という企画もあった。
クイズ番組では、リモコンやツイッターを使って視聴者も番組に参加する企画や、早朝に小中高生向けのニュースクイズ番組、100問全部を正解しなければ賞金を獲得できない番組の企画などが寄せられた。
音楽企画では、「音楽が多様化したのにどの音楽番組を見ても同じ歌手ばかりで物足りないので、メディアへの露出の少ない歌手の特集番組」を作りたい、「売れっ子アーティストを詰め込みダラダラと放送している音楽番組と違った、まるで出演歌手のブログを見ているような」番組を作りたい、など現在の音楽番組に対する不満からの発想企画が目立った。

【委員の所感】

  • バラエティーの企画が思ったより少なかった。既成のものを逸脱したところまで想像をたくましくするのは難しいのかな、と思った。

  • 中高生にとって、彼らが楽しめる番組がないんだなという思いが伝わってきた。

  • 本当はもっと色々なバラエティーがあってもよいと思うが、新しい発想はあまりなかった。笑いを新しく企画するのは難しいことのようだ。

  • 中高生のニーズとして、自分たちも参加したいという思いがあるようだ。また一方で、テレビを一人で見る傾向が強くなっているなかで、家族以外の人と情報を分かち合いたい、共有したいという思いもあるようだ。新しいテレビ視聴の形かもしれない。

  • 落語番組の企画があったが、本当に落語を知らない人が多くなっているので、伝統的な芸能をちゃんと放送することが必要だと思った。

  • 音楽の世界が低調なのに、音楽企画が多いのに驚いた。普段音楽情報を取得しているであろうユーチューブでは得られない承認要求、認めてもらいたいという要求を、マスなメディアで満たしたい気持ちがあるのかもしれない。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

企画1.『music×presentation』(神奈川・中学1年女子)
放送時間:日曜10時30分~11時30分
出 演 者:毎回代わるアーティスト
内    容:タイトルの通り音楽をプレゼンする番組。
普段、色々な音楽があり、その中から好んで聞いているが、「色々な曲がありすぎで選べない・・・」「もっとマニアックな音楽が知りたい」といった人たちのための音楽家による音楽家からの音楽好きのための音楽番組。だけど、司会者やタレントが紹介するのではなくて、ミュージシャン=音楽家が期待する、注目する、または気に入っている好きな歌手(グループ)を紹介する。マニアックになりがちではあるが、それでこそ歌手(グループ)の面白さを知ることが出来て、音楽への関心も高まると思う。

企画2.『皆よ これが音楽だ』(宮城・中学2年男子)
放送時間:23時~24時
出 演 者:RADWIMPSなど普段メディアへの露出が少ないロックバンド・歌手。
内    容:音楽が様々な形となって日々進歩を続けています。しかし、音楽の幅が広がっているにも関わらず、メディアの露出が少ない歌手・バンドが増えてきているのも現状です。そのためか、どの音楽番組を見ても「またこの歌手か」と物足りない気がします。
そこで僕はメディアへの露出が少ない歌手を特集した番組を是非作ってほしいと思います。これらの歌手・バンドはメンバーが直接作詞作曲を担当していることが多く、僕も実際に震災のときや人間関係で悩んだときに何回も心を救われました。
歌手・バンドの皆さんには、何か自分たちのルールみたいなものがあり、番組への出演を控えたりしているのかもしれませんが、皆さんの歌が誰かの心を救うのだということを分かって、番組に出演してほしいです。
僕たちファンは「多くの人と様々な音楽を共有したい」「素晴らしい音楽を皆で分かち合いたい」と言う気持ちでいっぱいです。是非日本の音楽を広めましょう。

【NHKエンターテインメント番組部 元・デスクの感想】
『music×presentation』『皆よ、これが音楽だ』は、本格的な音楽好きに送る番組企画だと思いました。確かにどの音楽番組を見ても、新曲発表のタイミングにあわせて同じアーティストばかりが出ていたらつまらないですよね。もっといろいろなアーティストや曲を知りたい、というのはもっともだと思います。ただし、テレビはいろいろな趣向をもった人たちに、同時に、たくさんの人に見てもらうもの。これなら関心のない人でも見てもらえる、という「切り口」についても考えてみてください。

企画3.『True or False?』(大阪・高校2年男子)
放送時間: 土曜日23時~
出 演 者: MC 福澤朗 西尾由佳理 出演 芸能人クイズ王&各局クイズ番組王者
内    容:『True or False?』は〇×クイズだけの全く新しいクイズ番組です。1問正解すると1万円、100問正解すると100万円の賞金をプレーヤーが手に入れることができます。しかし、1問でも間違ってしまうとその時点で脱落してしまい、賞金は没収されてしまいます。
100問正解するのは、1/2の100乗=1/1267650600228229401496703205376という天文学的確率で大変難しいことなのです。〇×クイズという単純かつ明瞭なルールでありながら、一問も間違えることができないというドキドキハラハラしたクイズ番組です。

【テレビ東京 制作局CP制作チーム部長の感想】
中高生の皆が考えた企画書を見て気付かされたことがあります。皆よくテレビを見て、分析しているなと・・・確かに視聴者参加型クイズ番組は少ないし、タレントが画面上で単に騒いでいるクイズ番組が多すぎるかもしれない。画面上の芸能人のやりとりを見せられている事に飽きが来ているのであろう。
中高生が求めているのは、自らが楽しく参加できるクイズ番組。中でも『True or False?』はそれだけで企画になりそうなシンプルでいい企画。中高生の頭の柔らかさに感服した。

企画4.『寄席へ行こうよっ!!』(群馬・高校1年女子)
放送時間:19時~20時
出 演 者:落語家
内    容:先日『昭和元禄落語心中』(雲田はるこ/講談社)というマンガを読んで、とても落語に興味を持ちました。落語は江戸時代から続く日本の伝統芸能です。影響力の強いテレビによって、身近に落語を親しんでもらい後世に伝えることができるのではと考えました。内容としては、親しみやすいようにクイズを織り混ぜた形がいいと思います。毎日身近な出来事や季節に合わせて落語を取り上げます。最近は特に品のない笑いが多かったり、若手の出演が少なかったりします。この番組では若手にもたくさん出演していただいて、伝統ある笑いで視聴者を笑顔にできたらいいと思います。

企画5.バラエティー&クイズ『天は二物を与える』(長野・高校1年女子)
放送時間:毎週金曜20時~21時
出演者:司会 向井理、菊川怜
内 容:毎週一般参加者3名が頭脳、運動神経、料理分野で1位を争う。プラスそれぞれの人のキャラクターもポイントとする。たとえば頭脳では理数系問題と文系問題からそれぞれ5問程度出題。運動神経については基礎体力的な5課題に挑戦する。料理についてはおいしさや、見た目は他の番組で競う物がたくさんあるのでそこにカロリーなど栄養バランスのよいものかというポイントを加える。キャラクターについては容姿でなく人に愛される雰囲気を持っているかを競う。司会者を向井さんと菊川さんにしたのはもちろん"天から二物を与えられた"お二人だから。

企画6.『クイズでバッチリ!!最新ニュース』(滋賀・中学1年男子)
放送時間:朝6時50分~7時、(再放送)21時50分~22時(日曜日を除く)
出 演 者:マスコットキャラクター(人は使わず)
内    容:僕が毎朝見ているNHK教育『0655』をアレンジした番組。小中高校生向け、クイズ番組。内容は、最新ニュースがネタになった4択クイズ。簡単な解説付きで、社会、経済などのニュースの興味を持たせることが目的。
10分という短い時間で、学校に行く前に見ることができるが、内容について、詳しく知りたいことは、番組のホームページで紹介する。また、土曜日には月曜日から金曜日でした内容のテストを行い、点数化する。さらに、月末土曜日には1か月のまとめテストで、理解チェックや重要なところを知らせる。
身近にニュースに触れる番組が、週に一度ではなく、毎日継続して見られるよう企画できたらと思います。

【テレビ朝日 編成制作局制作1部ディレクター(『SmaSTATION!!』『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』担当)の感想】
落語や日本国憲法、校舎で流れた音楽など、個性豊かな企画が多く楽しく読ませていただきました。ジャンルとしては、芸人さんの企画が多いかなと勝手に予想していたのですが、意外にもクイズ番組が多く、今の中高生が知識欲旺盛であることに驚きました。その中でも『天は二物を与える』や『クイズでバッチリ!!最新ニュース』といった企画には、クイズ×トライアスロン、クイズ×最新ニュースといった掛け算の要素があり、面白い発想だと思いました。企画を伝える手段としてクイズという枠に縛られず、新しいタイプのゲームやロケ・解説の方法などを掛け算していけば、さらに魅力的な企画になると思います。

企画7.『みんなでクイズ』(東京・中学1年女子)
放送時間:(土)19時~(生放送)
出 演 者:週替わりのゲスト その時ブレイクしている人など
内    容:私が考えたのは視聴者参加型クイズです。これは生放送の番組でないと実現することはできません。今はテレビのリモコン1つで番組に関する様々なコンテンツを楽しむことができます。それを利用したものです。具体的には、例えばその日の番組ではあるタレントがゲストだとします。そしてクイズが10問用意されています。そのゲストがクイズに答えるというのは当たり前ですが、視聴者もリモコンから参加し、ゲストと視聴者全体の正解率の割合を競争して、ゲストが勝てば、ゲストに景品、視聴者側が勝てば抽選で景品などというシステムにすれば、視聴者も自分たちの参加によって番組が動いている、わずかではありますが番組作りに携わっているような感覚を得られるのではないかと思います。出演者だけのテンションだと視聴者がついていけないこともありますが、参加型にすることにより、しっかりついていけると思います。

企画8.『ザ スクール デイズ!!!』(東京・高校2年男子)
放送時間:木曜日 20時~21時
司  会:香取慎吾、川島海荷
出 演 者:平成ノブシコブシ、渡辺直美、18歳位の女優・俳優、尾木直樹、つるの剛士
内    容:中学・高校・大学にまつわる様々なおもしろ情報や勉強面や生活面のアドバイスを紹介したり、イベントを行う番組。たとえば、「うちの学校にある○○部!」のような形で日本各地にある珍しい部活の紹介、また「高校生ダンスバトル」などいろんなスポーツで、いくつかの学校の有志で対決する企画など。今は中高生を特に楽しませようとする番組がほとんどありません。今の中高生の間ではどんな流行があるのか、またどんな生活を中高生が送っておりどんな悩みをもっているのかなどを共有する場がテレビ番組に必要なのではないかと考えたためこの企画を考えました。

企画9.『ドラごっこ』(ドラマごっこの略)(静岡・高校2年男子)
放送時間:10時30分~11時
出 演 者:バナナマン
内    容:約50%ノンフィクション・ドラマ・バラエティー。毎回、主役となる芸人もしくはタレントが選ばれる。その芸人には「一日あるドラマの主役となってもらう」ということと、開始時間、場所だけが伝えられる。時間になるとドラマ撮影スタート。その日、カットがかかるまで1日間、その周りの人にはすべて台本が与えられていて、監督からの指示が受けられるようになっている。監督、脚本を務めるのも芸人やタレント。監督は、その日、車などから撮影の様子を見ながら指示を出し、物語が思い通りになるよう努める。撮影は一度始めたら、すべてとり終えるまでカットはかけられない。監督と主役の駆け引きによってどんな作品になるかが決まる。撮影の様子がそのまま作品となる。撮影中の監督の様子も流す。スタジオでは、バナナマンの2人と監督が作品を見て、コメントなどをする。ドッキリ×ドラマ×リアルで、主役のリアルな反応と予想できない物語を楽しむバラエティー番組。

【TBSテレビ 制作局バラエティ制作部プロデューサー(『ひみつの嵐ちゃん!』担当の感想)】
みなさんの企画の中で、「視聴者も自分たちの参加によって番組が動いている感覚を得られる」「今どんな流行があるのかを共有する場が必要」などのニュアンスの言葉が多くありました。きちんと視聴者像をイメージしながら考えられているなと感じつつ、これらの言葉の中に、視聴者のみなさんが今のテレビに求めている事のヒントが隠されているような気がします。様々な企画の中で、『ドラごっこ』という企画は切り口が興味深く、例えばどんな演者さんでやると楽しいのかな?どんな設定?撮り方は?とさらにその先の展開を期待させてくれる企画でした。
また、企画が何周もしている感のあるクイズというジャンルの中で『True or False?』にはある意味ハッとさせられました。「盛る」ことで企画を成立させようという考えになりがちなのとは逆に、「削ぐ」ことを追求したらこうなるのかと。
みなさんの発想の柔軟さ大変勉強になりました。

企画10.『GIRLS ONLY! (NO BOYS ALLOWED)』(東京・高校2年女子)
放送時間:深夜
出 演 者:ちょっとおしゃれで面白い女性タレント 例えば、はるな愛、ベッキー、菅野美穂、YOU、森三中、友近など(可愛いけど、あまりトークが面白くない女性はレギュラーとしては出さない)
内    容:コンセプト・・・10代後半~20代女子に人気の雑誌をテレビ化する事
・流行中の若者カルチャーを取材・・・ファッション、グルメ、雑貨に限らずイベント(バレンタイン、クリスマスなど)ごとに注目のニュートレンドを取材する
・ファッションレクチャー・・・人気のモデル・女優と一緒にショッピングして様々なファッション技を教えてもらう(例:脚痩せコーデ、着まわし術など)
・ガールズトーク・・・恋愛の思い出話、最近起こった出来事、理想の男性像など、女子どうしでしか話せない事をぶっちゃける
・簡単クッキング・・・簡単だけど本格的に見えるスイーツや男の子の胃袋をつかむような料理に料理が苦手なタレントが挑戦する
・自分磨き・・・ヘアアレンジ、ネイル、メイク、ダイエット法など女の子たちの自分磨きを応援する

【フジテレビ バラエティ制作センター(『ネプリーグ』担当プロデューサー)の感想】
『GIRLS ONLY!』このテーマ!私も長い間向き合っています!
雑誌は月に何冊も読んでいるのに、テレビにはそれを求めない層を魅了できる番組ができるのではないかと・・・。そこでぶつかる壁は、ファッション雑誌と言っても、20代~40代の年代別、同世代でもファッションのジャンルによって何種類もの雑誌があり、読者はそれぞれ自分の趣味に合ったものを選択している・・・。テレビ番組は、コアであってはいけません。より幅広い年代、幅広い趣味嗜好の人、女性だけでなく男性も見られる事が必要です。その為の発明ができるといいですね!期待しています!

【企画総評】

【日本テレビ 制作局長代理(バラエティ番組CP)の感想】
全体として、クイズ番組が多いが、仕組みや展開案が書かれていないのでよく分からない。既存の番組のコーナーを独立して一本の番組にしようというのは、単なる"パクリ"であって企画とはいえない。ましてや既存番組の拡大版では評価の仕様がない。マニアックすぎて「誰が見るの?」という企画も多い。MCの人選も平凡でつまらない。
全体的に言えることは、「テレビはそんなに簡単じゃない、素人のおもちゃでは決してない」という事です。

【自由記述】

ラジオ・テレビ放送に関して自由に書いてもらい19人から報告があった。

  • 僕たち、子どものためになりそうな番組が意外と変な時間帯に放送されている時があります。そういう番組を、土・日の昼間に再放送してほしいです。(静岡・中学1年男子)

  • 台風の時期や、大雪の時期にいつも思うのですが、首都圏で何かがあるとすぐ全国ニュースで大々的に取り上げるのをやめてほしいと感じます。地方の人達のことをあまりに考えてなさすぎるのではないかと感じます。(大分・中学3年男子)

  • 最近、そういえば震災についての番組が減ったなーと感じました。前に被災者の方々がおっしゃっていたのは、「震災は3月11日だけではない」ということでした。これからは視聴者に震災の事を新しい切り口から伝える番組が必要だと思います。(東京・高校2年女子)

  • 最近のテレビを見ていて感じるのは、テレビの前で2~3時間も座って見たいと思える番組がなくなってきていることや、Youtubeなどで一般の人が作っている映像のほうが面白いということだ。(神奈川・中学1年女子)

  • 毎朝、ラジオで『基礎英語』(NHK)を聞いています。英語の勉強や英検対策にも役に立っていると思っています。知らない人も多いので、もっと宣伝したらよいのにと思います。(滋賀・中学1年男子)

その他

  • 2013年度中高生モニター募集状況と、3月17日(日)に開催する中高生モニター会議について事務局から報告し、了承された。

  • "震災報道への配慮"を再要望。昨2012年3月2日に青少年委員会が公表した「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を、2013年3月4日に開催された2012年度「BPO年次報告会」で配り、汐見委員長から、震災映像等の使用に関して改めて配慮を呼びかけることとした。

第68回 放送倫理検証委員会

第68回 – 2013年2月

アルジェリア人質事件実名報道について

議事の詳細

日時
2013(平成25)年2月8日(金)午後5時~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者意見1月分について
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、吉岡委員長代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、服部委員、水島委員

第68回放送倫理検証委員会は2月8日に開催されたが、討議対象となる事案がなかったため、BPOには数多くの視聴者・読者意見が寄せられたアルジェリア人質事件(1月16日発生)でのテロ犠牲者の実名報道について意見交換を行った。
視聴者意見の多くは「政府や日揮が氏名の公表を差し控えている段階から、メディアが独自の判断で報道したこと」に対する批判であった。
ここでは、
(1) 事故、災害における犠牲者実名報道は一般的にどうあるべきなのか。
(2) 今回の事件では、日揮が犠牲者の氏名を公表しないという強い姿勢を見せ、それに政府が一定の時期まで同調したが、そういう場合に実名報道はどうあるべきなのか。
(3) 遺族に取材が殺到してメディアスクラムが発生するという問題にどう対処すべきなのか。
という3つのレベルの異なる問題点が提起されていると考えられる。
視聴者意見を参考にしながら委員が様々な観点から報道の役割について自由に考えを述べ合った。ジャーナリズムが、その本来の役割をきちんと果たしているかどうかという観点から具体的な状況に応じた実名報道の是非を考えるべきではないか、という趣旨の意見で一致をみた。

【委員の主な意見】

  • ジャーナリズムの役割を果たすうえで、実名報道が認められる場面は当然ある。日揮の社員があそこでどんな仕事をしていて、どういう理由でテロの対象になって、どんな経緯で不幸な結果になったのかということを追究する中で、「この人は」という記事が実名で報じられることは必要なことだ。しかし、亡くなった方の尊厳といいながら、それを星を見るのが好きでしたというような私生活のお涙頂戴のレベルで報じるのでは、遺族感情を尊重すべきだという意見に対抗できないだろう。
  • 遺族取材も大事だが、真相究明には不可欠なはずの生存者への取材やインタビューがほとんど出ていない。今回のように日揮や政府が実名を公表せず取材が困難な場合、今後どう対応していくのか。
  • 実名報道したことによって、社会の関心度は上がったのは事実で、それがなければ数字で済まされてしまう可能性はあった。しかし上がった関心が、企業戦士をたたえる方向に陳腐化されて終わってしまい、アラブの春からフランスのマリ軍事介入に至る複雑な事件の背景を考える契機にはならなかった。
  • 一方ネットには、ジャーナリズムが「お涙頂戴の物語を売るために名前をさらしているだけでないか」という強い不信感がある。さらに進んで、「政府が実名を出さないと言っているのに勝手に明かしてけしからん」という意見が大勢を占めている。メディアスクラムが起こって遺族が迷惑したことも、遺族感情を尊重して実名報道を控えるべきだという意見に重みを与えている。各社が横並びで取材するためにメディアスクラムが起こり、報じられている内容がパターン化されたお涙頂戴物語であることで、結局商品を売るために遺族を利用しているだけじゃないかという見方をメディアがされ、政府の方針に従うべきだという批判になっているのであり、この危機的状況をメディアが自己認識しているのかどうかが問題ではないか。
  • メディアの報道内容には細かいクレームをつけるのにネットの情報を無防備に肯定する人々がいるのは、彼らがメディアを、市民の意識や情報をコントロールするひとつの権力だとみなしているからではないか。メディアは事実に肉薄して、伝えるべき情報を責任と矜持を持って伝えてほしい。
  • 遺族感情を大切にする側からは、メディアは信用できず、政府は信用できるということになってしまっている。政府が何のために情報操作をするのかが分かるように見せるのがジャーナリズムの役割なのに、その役割を果たしていないから、ジャーナリズムが信頼されなくなっている。
  • 実名報道と、メディアスクラムとか過熱取材の弊害の問題は、別個の問題として考えるべきである。重大事件での実名報道は事件の全貌をリアリティをもって伝える上で必要だか、被害者・遺族が公表を希望しないときは、プライバシーと公共性の比較衡量の問題になろう。
  • いつ報道するのが適切かという時間の問題もある。
  • ジャーナリズムは権力でもなければ視聴者そのものでもないところにポジションがある。どちらの側からも批判されうるものだという認識が視聴者・読者に希薄になっていることが視聴者意見からうかがえる。

以上