第81回 放送と人権等権利に関する委員会

第081回 – 2003年10月

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

斡旋事案等について…など

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

被申立人のテレビ山口から、報道制作局報道部長と業務局編成業務部長の二人がヒアリングに出席した。冒頭、テレビ山口側は「選挙報道ということで公益性もあり、まじめに選挙を捉えて報道したつもりだ。そうした姿勢で取り組んだという点をご理解いただきたい」と述べ、ヒアリングに入った。

主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 「いずれも落選」というスーパーは申立人にとっては厳しい表現だ。このスーパーを出す必要があったのか。

A: 普段からコメント内容はできるだけスーパーで補足している。その際、文字数は極力短く、見てすぐわかるようにという観点から「当選に至らず」ではなく「落選」を選んだ。

Q: 告示直前の時期ということで、マイナスの影響を及ぼすという可能性は考えなかったか。

A: マイナスの可能性は考えなかった。

Q: 最後に写真が出て、「落選」とのスーパーがかかると何らかの制作意図があるように感じるがどうか。

A: 意図はない。最多立候補と紹介したのでその結果も伝えるのが当然と考えた。

Q: 「当選に至らなかった」と「落選」の意味は同じと捉えていたのか。

A: 社会通念上は同じと捉えていた。

Q: 青い矢印をつけて「落選」という強調の仕方はどうか。

A: 絶対必要とは思わないが、私どもが通常採っている表現手法だ。

Q: 撮影した写真の使用目的について十分説明したかどうか。

A: 個別の番組名までは説明していないが、「選挙報道に使うため撮影させてください」とお願いした。

Q: 番組の最後にこの話題を持ってきたのは、制作者として視聴者を楽しませたいとの思いがあったのではないか。

A: 視聴者を楽しませるなら別の作り方をした。この企画は純粋にデータを提供したいというものだった。

(ヒアリング所要時間は約50分、被申立人側が退席した後、審理を続行)

10月3日に開かれた起草委員会の検討概要を飽戸委員長が報告し、起草委員が検討内容を説明した。

起草委員会の検討内容やヒアリングの結果などについて、各委員が意見を述べ合うなど1時間半にわたって本事案を審理し、次回委員会までに詰めの作業を行うことになった。

斡旋事案等について

事務局から、対応した3事案について報告があり検討した。

  • 「息子の学校生活が取材報道され不登校に」との苦情を検討
    高校生の母親から寄せられた案件について事務局から説明があった。内容は、「息子の学校生活などが放送され、その影響で不登校になった」というもの。当該局の対応を含めて検討した結果、委員会として、息子さんへの影響も十分考慮しながら解決を目指して、双方に働きかけていくことになった。
  • 「”ドクハラ”報道に精神科医から斡旋の申し入れ」を検討
    精神科診療所団体の幹部から、「ドクター・ハラスメントに関する報道番組で、会員の医師が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるもので納得できない。今後このような問題が再発しないよう、放送人権委員会に、当該局との話し合いを斡旋してほしい」との申し入れがあった。検討した結果、委員会は斡旋に入ることに問題はないと判断し、当該局に「苦情連絡票」を送付し、対応を求めることにした。
  • “ゴミ屋敷”番組に関する送付文書を決定
    精神科医が、ゴミをため込んだ家の住人にゴミを片付けるよう働きかける番組に対して「人権侵害の疑いがある」と抗議していた標記案件については、前回の委員会で検討した結果、これまでの委員会の検討内容と考え方をまとめた文書を苦情申立人と当該局双方に送付することにしたが、その文案を了承し、委員長名で出す事にした。
    送付文書の概要は、まず結論として「委員会は、苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならないと最終的に決定した」ことを伝えた上で、「精神科医の問題提起は、放送と人権、特に精神障害の可能性のある人々への人権侵害の問題に示唆を与えるもの」として重く受け止め、「精神障害の可能性のある人々を笑い者にしていないかという点についても慎重に検討した」。また「放送人権委員会としては、苦情申立ての間口を広げようとしたが、この案件によってそこまではいかなかった」というもの。

9月の苦情概要

BPOに寄せられた9月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔17件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・4件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

札幌・意見交換会について

10月24日に札幌で開かれる「放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会」の詳細等について事務局から説明があった。

放送人権委員会からは飽戸委員長ら5名の委員が、また、地元放送局からは8局35人が参加する予定で、地元局の報道現場などから寄せられた具体的なテーマについて意見を交換することになっている。

その他

最後に、次回の定例委員会を11月18日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上