2008年度 第36号 放送局対応

第36号 高裁判決報道の公平・公正問題

【委員会決定を受けてのNHKの対応】

標記事案の委員会決定(6月10日)を受けて、NHKは9月3日放送人権委員会宛に「委員会決定に対するNHKの対応について」という文書を提出した。

NHKの報告は以下の通り

平成20年9月3日
BPO・放送と人権等権利に関する委員会御中

日本放送協会

「公平・公正に係る申し立てについての委員会決定」に対するNHKの対応について

平成20年6月10日、貴委員会は、平成19年1月29日の「ニュースウオッチ9」でのETV番組をめぐる控訴審判決報道について、「公平・公正を欠き、放送倫理違反があった」との判断を示しました。この決定に対するNHKの対応などに

ついて報告します。

NHKは、審理の中で「公平か公平でないかの判断は微妙な問題であり、より慎重に行われるべきだ」と繰り返し主張してきました。その理由は、決定で、公平・公正な裁判報道はこうあるべきだとの

一般的な枠組みが万一示された場合、今後の報道への影響が大きいとの危惧からです。
その点、今回の放送倫理違反という結論は、報道一般に適用されるものではなく、報道機関自身が当事者となっている民事事件に関する

裁判報道という非常に特殊なケースに限定したものとなっています。NHKとしては、この決定を真摯に受け止めています。

(1)勧告後のNHKの対応
NHKでは、決定を受け、「今回の決定を真摯に受け止めて、さら

に放送倫理の向上に努め、公共放送に対する期待に応えていきます」とのコメントを発表しました。
また当日午後7時からの「ニュース7」と9時からの「ニュースウオッチ9」で決定内容を放送し、その中で、申立人の記者会

見についても紹介しました。またラジオ第一放送でも、午後7時からの「NHKきょうのニュース」と午後10時からの「NHKジャーナル」で決定を伝えました。

 なお、2日後の6月12日に出された最高裁判決の報道にあた

っては、公平・公正に十分に配慮しました。また一般の裁判報道の際にも、決定の趣旨をいかしていくよう対応しています。

(2)社内周知のための対応
放送現場への周知については、翌日の6月11日に、全国の

報道現場に、決定内容を記した報道局長名の文書を配布し、決定趣旨を周知するとともに、日々の取材・報道に際して、改めて公平・公正の原則を再確認するよう指示しました。
さらに放送関係の部局長で作る放送倫理委員

会(6月23日)、及び現場の担当者で作る放送倫理連絡会(6月27日)で、今回の決定について説明し、報道以外の関係者にも周知を図りました。
今後、職員の研修などの場でも今回の決定の趣旨を徹底していきたいと考えて

います。

以上報告します。

以上

2008年度 第37号 放送局対応

第37号 群馬・行政書士会幹部不起訴報道

【委員会決定を受けてのエフエム群馬の対応】

エフエム群馬の報告は以下の通り

平成20年9月25日
放送と人権等権利に関する委員会
委員長 竹田 稔 殿

株式会社エフエム群馬
代表取締役社長 小林洋右

「委員会決定」の取組状況について(ご報告)

拝啓 貴委員会のご清栄を衷心よりお慶び申し上げます。
弊社の「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」の審理に際して、貴委員会には多大なご面倒をおかけし、改めてお詫び申し上げます。

弊社は、貴委員会

決定「放送倫理違反」見解を真摯に受け止め、全社をあげて改善策を推進しております。今回のご報告は、既にご報告した委員会決定直後の措置を含め、弊社のこれまでの改善策全体についてまとめたものです。

弊社

の改善策は、(1)「放送倫理違反」見解を受けたことの公開、(2)申立人との関係改善、(3)社内統制と社員教育の改善、の三点について行いました。
このうち、(3)社員教育改善のため、弊社の「報道・編集ハンドブック」を

策定しましたので、添付させていただきました。
このハンドブックについて、9月中に全社員と番組出演者等を対象にした研修会を開き、日常業務の改善に役立てる所存です。なお、本報告書は、委員会決定があった平成20年

7月1日を起点に時系列でまとめさせていただきました。

ご査収いただき、行き届かない事柄についてご指導をいただければ幸甚です。

敬具

■7/1(火)

放送と人権等委員会が委員会決定 「放送倫理違反」見解を公表

17:00~30 地元記者会見で発表 於:県政記者クラブ
小林社長・大崎報道渉外担当部長が説明

18:03~04 夕方番組、ニュースコー

ナーで報道
委員会決定の概略

19:55~20:00 通常番組を休止し、特別枠で報道
委員会決定の詳細
弊社が真摯に受け止める旨のコメント
申立人のコメント

20:55~21:00 通常番組を

休止し、特別枠で報道
内容は上記と同じ

■7/2(水)

9:10~50 社内説明会実施

社長より在局社員に「放送倫理違反」の説明
不在者に説明骨子をメールで配信

午前~午後 関係各所へ報告

広告代理店へ説明文書を発送
JFN、エフエ

ム東京へ電話とメールで報告
ホームページ「お知らせ欄」に掲載、以後1週間
委員会決定の全文書(個人名をカット)
当社が真摯に受け止める旨のコメント
申立人のコメント
申立人に挨拶訪問

社長と報道渉外担当部長が挨拶に訪問、懇談
申立人は友好的に応対してくれた

■7/7(月)

午後 申立人と県行政書士会幹部4人が弊社に挨拶訪問
会長、常務理事、事務局長、申立人

■7/8(火)

放送番組審議会に報告
顧問弁護士に委員会決定内容を説明.

■7/15(火)

社長が上京、BPO事務局を訪問、経過を報告

■7/28(月)

「報道・編集ハンドブック」作成を開始
社長指導で報道部が作業

■7/29(火)

関係者3名の社内処分「文書による厳重注意」

■9/5(金)

人事異動内示 9月22日発令予定

■9/8(月)

「報道・編集ハンドブック」完成
常務会で決定、社内LANで掲示

■9/11(木)

代理店会議開催
「放送倫理違反」の概略説明
本報告書を作成

■9/16(火)

総務部長がBPO事務局を訪問
本報告書を提出

■9/19(金)

9月定例取締役会開催
「放送倫理違反」の概略説明

■9/24(水)

「報道・編集ハンドブック」の全社研修会を実施
社員・番組出演者・業務委託者、計36名参加

以上

2008年度 第39号 放送局対応

第39号 徳島・土地改良区横領事件報道

【委員会決定を受けてのテレビ朝日の対応】

テレビ朝日の報告は以下の通り

2009年6月29日
放送倫理・番組向上機構 御中

株式会社 テレビ朝日

委員会決定後の対応と取り組みについて

当社番組「報道ステーション」の「徳島・土地改良区横領事件報道」事案について、2009年3月30日の放送倫理・番組向上機構 放送と人権等権利に関する委員会による委員会決定を受けて、当社は以下の対応と取り組みを行って

おりますので、ご報告いたします。

  • 委員会決定後の対応について
    3月30日の委員会決定を受けて、当社広報部は当日「委員会の勧告を真摯に受けとめ、放送倫理や人権に十分配慮をしてまいります」というコメントを発表しました。委員会決定の内容につい

    ては、当社のコメントも交えて、当日夕方の「スーパーJチャンネル」と、委員会決定の当該番組である「報道ステーション」および翌日朝の「やじうまプラス」内「ANNニュース」で全国向けに放送したほか、4月5日の番組「はい

    !テレビ朝日です」の中で放送しました。社内においては、委員会決定の当日以降、局長会をはじめ社内常設の番組審査や放送倫理にかかわる会議などで委員会決定の内容を報告しました。また、報道局においては局内の会議で詳

    細な報告を行いました。4月14日には、顧問弁護士も交えて委員会決定について詳細に分析・検討する会議を開き、対応策の策定などの方針を確認しました。申立人には、4月16日に報道担当取締役が面会し、委員会決定の趣旨に沿

    って、今後番組を編集・放送していく方針を説明したところ、申立人はそれを了承されました。社員の処分は4月21日付で行い、「裏づけ取材など不十分なまま放送にいたり、結果、放送倫理違反があったとしてBPOから勧告を受け

    たことに対して」として、報道ステーション担当部長ら番組の担当者5名を減給1カ月、また「その管理監督責任を問う」として、報道局長と報道局ニュース情報センター長を譴責としました。当社放送番組審議会においては、4月17

    日の第499回審議会で社長が委員会決定について報告しました。5月15日の第500回審議会では「報道情報系番組の『取材』のあり方、『情報』の取り扱いと放送倫理、人権の問題について」というテーマで審議が行われました。この

    中では、委員から「ぜひ取材に関してはしっかりとやってもらいたい」「情報という危険なものの扱い方の伝承がなされているか。デスククラスが心をひきしめていかないといけない事態だ」などの意見が出されました。

    らに、6月4日の第76回テレビ朝日系列24社放送番組審議会委員代表者会議(大阪市で開催)においても前述のテーマで議論が行われました。出席委員からは「番組制作の現場で、経験の少ないスタッフによる放送倫理観が欠落して

    いたことや、それを監督する立場の責任者のチェック機能が十分でなかったのが取材不足の原因ではないか」「ジャーナリストとして勉強する機会がどこまで保証されているのだろうか。余裕がない現場が危ない状況を生んでいると

    思う」「テレビの映像と音声は一瞬にして消えるが、影響力が大きいだけに間違いを起こさないように謙虚であるべき」「取材を慎重に行い、事実の確認をきちんと行うことが重要だ。さらに事実を報道したとしても、視聴者がど

    のような印象を持ったかが重要となる」などの意見が出されました。

  • 再発防止に向けた取り組みについて
    「報道ステーション」では、番組の責任者が全スタッフを集めて、委員会決定の内容と、取材の経緯や表現方法などを説明しました。委員会決定で指摘された問題点を重く受け止めて

    、検証報道に必要な十分な裏付け取材を今後も怠ることなく徹底的に実施するよう注意喚起を促すとともに、様々な意見交換を実施しました。また、幹部デスクとも委員会決定後に協議を重ね、放送人権委員会で審理されることに

    なった問題点を再度整理し、今後は放送項目についてチームリーダーを決め、素材の確認をはじめナレーション原稿や表現方法など全体的な点検作業を徹底的に実施していく方針を確認しました。
    報道局に、放送倫理の一層

    の徹底および危機管理情報の共有を図り、問題発生の事前防止に向けた施策を機動的に立案し、実施するための会議「報道局・危機管理プロジェクト」を設置しました。この会議では、まず「徳島・土地改良区横領事件報道」につ

    いて、このような放送に至った原因の究明や、再発防止に向けた業務の改善方法などについて検討を行いました。
    5月14日には当社に、放送人権委員会委員長代行で今回の委員会決定のとりまとめを担当した三宅弘弁護士を

    招いて、委員会決定の内容や問題点等について2時間以上にわたって説明を受ける研修会を実施しました。社員・社外スタッフなど約80人が参加し、番組スタッフなどから出された質問や疑問について三宅委員長代行から回答をいた

    だき、委員会決定についての理解を深めるとともに、問題意識を持つことの重要性を再認識しました。

  • 番組における具体的な改善策
    1)検証報道を実施する際の裏付け取材の徹底。
    検証報道に限らず、ニュース報道の根幹は十分な裏付け取材が必要なことは言うまでもありません。確認作業は一人では行わず、必ず複

    数人で一つ一つ疑問点を解消していきながら、十分な裏付け取材ができているか、最終的な確認作業をデスクと必ず行うことを徹底します。
    2)安易で短絡的・拙速な報道の防止。
    十分な裏付け取材ができなかった場

    合や、コンセプトが明確になっていない場合などは、拙速な報道を避けて当日の放送を見送るという決断をするよう努めます。
    3)チームリーダーを決め確認作業を実施。
    現在のニュース編成は、一つの項目に対して複

    数のディレクターが取材や原稿、編集などを分担して作業を実施するため、全体を統括する責任者はいるものの、細部まで完璧に把握できていないこともありました。これを改めて、チームリーダーを項目ごとに配置して責任体制

    を明確にし、取材や編集などすべての過程において確認作業に当たらせることにします。
    4)チェック体制の強化と節目ごとに確認作業を実施。
    チームリーダーは1次的な確認作業を行いますが、進捗状況も含めて担当

    のデスクやプロデューサーがチームリーダーとともに節目節目で取材や編集など進捗状況をチェックして確認作業を行います。また、ナレーションでの表現方法なども含めて、適切かどうか確認を進めることとします。
    5)定

    期的な勉強会と研修を実施し、再発防止を推進。
    他番組や他局で起きたことも含めて、当該報道に関連した講師や人物を招いて勉強会や研修会を開催し、スタッフの意識を常に高めるように努めます。

以上、放送と人権等権利に関する委員会による委員会決定についての当社の対応と取り組みをご報告申し上げました。

以上

2008年度 第39号

徳島・土地改良区横領事件報道

委員会決定 第39号 – 2009年3月30日 放送局:テレビ朝日

勧告:重大な放送倫理違反(補足意見・少数意見付記)
徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた2007年7月のテレビ朝日『報道ステーション』をめぐって、全国土地改良事業団体連合会会長の野中広務氏が作為的な構成の報道内容により、名誉と信用を毀損されたとして訴えた事案。

2009年3月30日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第39号

申立人
野中 広務
被申立人
株式会社 テレビ朝日
対象番組
『報道ステーション』
「『土地改良区と補助金』6億円着服・・・60歳女の裏側」
放送日時
2008年7月23日(水)
午後9時54分~11時10分内 約7分

Ⅰ 申立てに至る経緯

  • 1 苦情の対象となった番組
  • 2 申立ての経緯

Ⅱ 申立人の申立ての要旨

  • 1 名誉・信用の侵害
  • 2 肖像権の侵害
  • 3 放送局に要求すること

Ⅲ 被申立人の答弁の要旨

  • 1 名誉・信用の侵害について
  • 2 肖像権について
  • 3 放送局への要求について

Ⅳ 委員会の判断

  • 1 名誉権の侵害について
  • 2 信用の毀損について
  • 3 肖像権の侵害について
  • 4 放送倫理違反について
  • 5 結論と措置

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2009年6月29日【委員会決定を受けてのテレビ朝日の取組み】

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2008年度 第38号

広島県知事選裏金疑惑報道

委員会決定 第38号 – 2008年12月3日 放送局:中国放送

見解:ホームページでの当該報道の文字情報は放送と同視せず(意見付記)
1997年の広島県知事選挙において当時の知事の後援会組織等から裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送のニュース番組で実名を報道された元県議会議員3名が、「事実無根の報道により大きな被害を受けた」として名誉権の侵害を訴えた事案。

2008年12月3日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第38号

申立人
A
B
C
被申立人
株式会社中国放送(RCC)
対象番組
『イブニングニュース広島』内
「特集 藤田県政の闇 知事選裏金疑惑」
放送日時
① 2006年11月30日放送 標題「メモの現職県議8人が判明」
② 2007年 2月20日放送 標題「メモの現職県議、残る2人も判明」
③ 2007年 2月28日放送 標題「藤田知事の元秘書が供述『宮本県
議に30万円渡した』~疑惑の現職県議は11人」
④ 2007年 4月10日放送 標題「県議会選挙ドキュメント~あの人
たちは何を語った?~」

Ⅰ.申立てに至る経緯

  • (1)苦情の対象となった番組
  • (2)申立ての経緯

Ⅱ.申立人の申立ての要旨

  • (1)名誉権の侵害について
  • (2)被った不利益
  • (3)放送局への要求

Ⅲ.被申立人の答弁の要旨

  • (1)名誉権の侵害について
  • (2)交渉の経過について
  • (3)インターネットでの報道について

Ⅳ.委員会の判断

  • (1)第1の申立てについて
  • (2)第2の申立てについて
  • (3)結論

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2008年度 第37号

群馬・行政書士会幹部不起訴報道

委員会決定 第37号 – 2008年7月1日 放送局:エフエム群馬

見解:放送倫理違反
申立人は2006年7月に暴行容疑で書類送検されたが、その後不起訴処分になった。エフエム群馬は2007年12月に県議会で取り上げられたこの問題を伝えたが、申立人は「何の取材も受けないまま真実でない放送をされ、名誉を傷つけられた」と申し立てた。

2008年7月1日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第37号

申立人
A
被申立人
エフエム群馬
対象番組
エフエム群馬 夕方のニュース
放送日時
2007年12月12日
午後6時07分頃
1分10秒

申立てに至る経緯

民放ラジオ局であるエフエム群馬は、夕方の定時ニュースの一項目として、「群馬県行政書士会の総務部長が会員に暴行を加えてケガを負わせたとして、傷害の疑いで前橋地方検察庁に書類送検されていたことが分かりました」で始まり、同行政書士会の会員が県議会に総務部長らの処分を行うように陳情し、放送当日の県議会総務常任委員会で取りあげられたこと、総務部長は書類送検されて不起訴処分となっていること、また県では検察で不起訴処分になっていることから処分は行わないとしたことなどを伝えた(以下、「本件放送」という)。

本件放送に対し、申立人である総務部長は、事実関係が異なるうえ、自分になんらの取材をしないまま一方的な報道をされ、名誉を傷つけられたとして、2008年1月、エフエム群馬に対し、放送法4条に基づく訂正放送と謝罪を求めた。
これに対し、エフエム群馬は、本件放送は県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであって、重要事項についての事実確認を行った上で報道しており、真実でない事項の放送はしておらず、訂正放送などに応じることはできないと反論した。その後、双方の直接の交渉はなされないまま、2008年2月、申立人から当委員会に対し「申立書」が提出され、3月の委員会で審理入りを決定した。

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人の申立ての要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁の要旨
  • IV. 委員会の判断

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2008年9月25日【委員会決定を受けてのエフエム群馬の対応】

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2008年度 第36号

高裁判決報道の公平・公正問題

委員会決定 第36号 – 2008年6月10日 放送局:NHK

見解:放送倫理違反
「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが申し立てた事案。NHKは2007年1月の『ニュースウオッチ9』において、申立人らとNHKが争ったETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』に関する高裁判決を伝えたが、申立人は「当事者としてのNHKの言い分」と「報道機関としての報道」を峻別せずに報道したことは公平原則に照らして到底許されるものではない、また公平原則を逸脱した部分は正確な報道を行うという放送倫理に違反すると申し立てた。

2008年6月10日 委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第36号

申立人
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
被申立人
 NHK
対象番組
NHK制作の報道番組「ニュースウオッチ9」
放送日時
2007年1月29日
NHK総合テレビ 午後9時00分~

申立てに至る経緯

2001年にNHKが、教育テレビで放送した「戦争をどう裁くか」というシリーズの番組をめぐって、取材を受けた民間の団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが「事前の説明と異なる不本意な番組を放送された」として訴えていた裁判で、NHKは、2007年1月29日、東京高等裁判所でなされた判決について、その概要やこれに関連する事項について、次のとおり放送した。
「東京高等裁判所の南敏文裁判長は『番組編集の自由は、憲法上、尊重すべき権利で、不当に制限されてはならないが、今回の番組は、取材を受けた団体への事前の説明とかけ離れたものになって、期待と信頼に反した。放送前に十分な説明もしていなかった』と指摘しました。そして『NHKの当時の幹部が、国会議員から一般論として公正・中立にと言われたことなどを、必要以上に重く受け止め、その考えを推し量って、番組を編集し直すよう指示したもので、編集権を乱用した責任は重い』と判断し、NHKに200万円の賠償を命じました。」と判決内容を紹介したあと、「判決についてNHKは『不当な判決であり、直ちに上告した。判決は、番組編集の自由を極度に制約するもので、到底受け入れられない』としています。」と被申立人自身の見解を紹介し、「今日の判決の中で、東京高等裁判所は、この番組をめぐって、朝日新聞が政治家の圧力で改変されたと報道したことについて、『国会議員が具体的に番組に介入したとは認められない』と述べました。」とのコメントの後に、朝日新聞で被申立人に圧力をかけたと指摘された本人である安倍晋三内閣総理大臣と中川昭一政務調査会長(いずれも本件放送当時。以下同じ。)の、政治的圧力をかけた事実はなかったことがはっきりした旨のコメントを放送した。
この放送に対して、申立人らは、「上記ニュース内容は『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道している。このことは、公平原則に照らして到底許されるものではない。また、公平原則を逸脱した部分は、正確な報道を行うという放送倫理にも違反している」として2007年4月、被申立人に対して抗議・要求書を送付し訂正放送と謝罪を求めた。
これに対し被申立人は、「この報道は、前半部分で、当日の判決の内容とNHKのコメントを伝えた上で、後半部分で、この判決に関連して一昨年1月の朝日新聞の記事をめぐる朝日新聞社と自民党との問題について、安倍氏と中川氏のコメントを交えて伝えたもので、何ら問題はないと考える」と反論し、訂正放送・謝罪には応じられない旨回答した。
その後、双方の直接の交渉はなされないまま、2008年1月、申立人らから本委員会に対して「申立書」が提出され、本委員会は、2月の委員会で審理入りを決定した。
なお、政治家の介入があったか否かの点に関する高裁判決の内容は、次のとおりである。
「一審原告らは、政治家等が本件番組に対して直接指示をし介入したと主張するが、上記面談の際、政治家が一般論として述べた以上に本件番組に関して具体的な話や示唆をしたことまでは、証人松尾及び証人野島の各証言によってもこれを認めるに足りず、他に認めるに足りる証拠はない。」
(注:証人松尾・・・NHK 放送総局長     松尾 武 氏)
(注:証人野島・・・NHK 総合企画室担当局長 野島直樹 氏)

(いずれも2001年当時)

目次

  • Ⅰ. 申立てに至る経緯
  • Ⅱ. 申立人らの申立ての要旨
  • Ⅲ. 被申立人の答弁の要旨
  • IV. 委員会の判断

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2008年9月3日【委員会決定を受けてのNHKの対応】

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