第143回 放送と青少年に関する委員会

第143回 – 2013年3月

視聴者意見について
中高生モニターについて
2013年度青少年委員会の活動について

第143回青少年委員会は、3月17日(日)2012年度の中高生モニターを集めて番組に対する討論などが行われた「中高生モニター会議」に引き続いて7名の委員全員が出席して開催され、2月16日から3月10日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、3月に寄せられた中高生モニター報告について意見や感想を述べた。また、2013年度新「中高生モニター」31名について紹介するとともに、2013年度の委員会活動の概要について事務局から説明し、2012年度に引き続き、地方での意見交換会を開催することも了承された。

議事の詳細

日時
2013年3月17日(日) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より視聴者意見の概要の報告を受けたうえで討論した。今期、審議対象とする番組はなかったが、いくつかの番組については、次回委員会以降に討論することとした。

中高生モニターについて

3月の中高生モニターは、一年間「中高生モニター」を体験した感想を書いてもらい、31人から報告が寄せられた。
各モニターからは、この一年間を振り返り「文章を書くのは好きではないので、とても大変でした」「どこが面白いのか、つまらなかった番組と何が違うのかを考えながらテレビを見るようになった」「自分と同じ中高生がどのような番組を見てどのように感じているのかを知ることができて楽しかった」などの意見が寄せられた。
また、企画書作りでは在京キー局の制作担当者からいただいたコメントに対し、「将来テレビ局に入りバラエティーやドラマの企画を立てるお仕事に就きたいと考えているので、そのジャンルの企画がテーマの月は張り切って考えたし、いただいたコメントは大切に保管している」「自分が考えた企画書を見ていただいたことで、まるで自分がテレビ局で働いているような感覚を味わえた」「作る、表現するという仕事に対する興味が沸いてきた。将来はテレビに出る側か作る側になりたい」などの感想も寄せられた。
その他の感想として「ラジオは生活の一部、テレビは生活の刺激になっている」「テレビやラジオは非常に影響力があります。そのことを自覚して、その影響力を良い方向に向けていってほしい」「僕はテレビやラジオがほんとうに大好きです。これからも僕達を楽しませてください」などがあり、番組内容については「すぐに人を殴ったりするような番組は作らないでほしい」「現在放送されている番組には似通ったものが多い」「報道は中立であるべきだと思うのにどちらかの意見に偏っていることが多い」「放送局の人に伝えたいのは、人々は明るく笑えるものをテレビに求めているのです」など、放送局に考えてもらいたい要望も寄せられた。一方、「何気なく見ていたテレビ番組もたくさんの人々が、たくさんの時間をかけて作ったものだということを改めて思った」「面白い番組を作っている大人の人たちは"スゴイ"と改めて感じた。私たち若者も新しい時代を担えるよう頑張っていきたい」など、放送局へのエールもたくさん寄せられた。

【主な意見】

  • 「私は今までこういったリポートはやったことはなく、不安でした。ですが、書いているうちにだんだんと慣れてきて楽しいと思えるようになってきました。このモニターを通して感じたことは、今の中高生はテレビやラジオなどの放送に対し、痛みで笑いをとる企画のマンネリ化など、多くの不満を持っているということです。この1年間、番組に対して思ったことを好き勝手言ってしまってすみませんでした。やはり、面白い楽しい番組を作っている大人の人たちはスゴイと改めて感じましたし、私たち若者も新しい時代を担えるように頑張っていきたいです!!」(神奈川・中学1年女子)

  • 「僕はふだんからよくテレビを見たりラジオを聴いたりしていたのですが、時々不快になるようなときがあったので、それらを改善できればよいと思い、中高生モニターに応募しました。僕たちの意見や考えは、きちんと放送局や制作会社に伝わっているのでしょうか?中高生モニターのレポートは各局に送られているようですが、それらに書かれている内容は全ての制作者に知ってもらえているのでしょうか?この一年で色々な番組の良いところ、或いは悪いところをレポートに書いて送れたことは、自分の思いをぶつけられたようで、とてもすっきりしました。あとはこのレポートをBPOや放送局の数人が読むのでなく、できるだけたくさんのテレビやラジオの関係者に中高生の考えを知ってもらえば、全ての年代の視聴者が楽しめる番組ができると思っています。」(東京・中学3年男子)

  • 「一年間モニターをしたことで、テレビの見方が変わった。どこが面白いのか、つまらなかった番組と何が違うのかを考えながらテレビを見るようになったことです。そう思うと、出演者や番組のスタッフや編集している人が、視聴者が何を求めているかということを理解して番組を制作、人の血が通った番組が作られているんだと感じるようになった。そして、番組を作っている人の存在が見えてくるようになると、面白い番組とは、その制作者の考えている面白さと視聴者の面白さが一致している番組なのだと分かった。一方、制作者が視聴者の感覚を誤解した時に、視聴者がつまらないと思ったり、不愉快に思ったりする番組ができるのだと思う。」(北海道・中学3年女子)

  • 「最近のラジオはフリーな環境で雑談形式が増えてきていると思います。そのような番組は出演者が、まるで部屋で喋っているかのように自由にトークしているので、とても楽しく思えます。そのような形式をもっとテレビでも放送した方がよいと思いました。」(神奈川・中学3年女子)

  • 「テレビ局で番組制作に携わっている人に伝えたいことは、すぐ人を殴ったりするような番組は作らないでほしいということです。殴っている人は面白いのかもしれませんが、殴られている人のことを考えると、笑って見ることはできません。見ている人への影響をもっと真剣に考えて番組を作ってほしいと思います。僕はテレビやラジオがほんとうに大好きです。これからも面白い番組、楽しい番組、役に立つ番組、『へぇー』と考えさせられる番組、いろいろな番組を作って、僕たちを楽しませてください。よろしくお願いします。」(神奈川・中学2年男子)

  • 「最近NHKさんがテレビ放送を開始してちょうど60年ということで、昔放送した番組などを再放送していましたが、少ししか見られませんでしたが、なんとなく見ていて楽しかったです。現代の放送技術には全然かなわないのだけれど、なんとなくわくわくさせてくれる、見ている自分たちを引き込ませてくれる、そんな番組作りを感じることができました。こんなことを書くと生意気に思われるかもしれませんが、昔もそうだったのかもしれないのですが、今よりはスポンサーさんの考えや、視聴率…なんてことを考えないで番組が作られていたのではと考えてしまいます。誰もが見たくなる番組、聴きたくなるラジオが作られたら、もっと私たちのような子どもたちも、ニュースなどの情報番組を見るようなるのではないかと思います。今回中高生モニターをやったことで、作る、表現するという仕事に対する興味がますます湧いてきました。将来は、テレビに出る側か作る側になりたいなとも思っています。」(神奈川・中学1年女子)

  • 「学校ではテレビ番組よりネットの動画の方が話題に上ることが多いのですが、友達に『なぜテレビを見ずにネット動画を見るのか』と尋ねると『テレビが昔より面白くなくなったから…』『当たり前のことをちょっとひねって面白くした感じがいい』と言っていました。これらのことから、放送局の方々に伝えたいことは、日本全体が暗い今、人々は"明るく・笑えるもの"“ふだんの生活ではなかなか経験できないことを面白く見せること"をテレビに求めていることです。」(宮城・中学2年男子)

【委員の主な意見】

  • 一年間を振り返って、モニターを体験したことが有意義だったと思ってくれて嬉しかった。
  • 中高生の間で、ラジオが大きな位置を占めているのは、意外であり驚きだった。
  • 「僕たちの意見や考えはきちんと放送局や制作会社に伝わっているのでしょうか」という意見は、今年一年をまとめた思いを素直に書いてくれていると思った。
  • 「意味のない番組も大切だ」という意見があったが、そうだなあと思いながら読ませてもらった。
  • まとめとして、最後の一段落が皆同じ感想で、印象に残ったのは少なかった。
  • 中学1年生はテレビについて覚めているという印象を持った。
  • 「地方をないがしろにしている」という意見があったが、放送局の人には考えてもらいたいことだと思った。
  • 「人を喜ばせるのは簡単ではないが、人を悲しませるのはテレビ、ラジオにとって簡単なことだ」というのは鋭い言葉だと思った。

【今月のキラ★報告】(1) (福島・中学3年男子)

毎回送られてくる、他の県のモニターさんの意見を読んで、なるほど!とか、福島は放送局が少なく番組も少ないんだな…ということを感じました。最初はBPOが何のためにあるのか、また青少年委員会って何っ!?って思ってました。すごく堅苦しいものなんだろうなと思ったりもしました。でも、やっぱりモニターをやって良かったなと思います。
人間が作り上げるものだから、ミスだってあるし、しょうがない…と言われればそれまでですが、今のテレビやラジオの放送局は、まだまだ改善が必要であると思います。不適切な発言や内容がない番組にしていってほしいなと思います。ボタン一つ(?)で、日本全国に放映されるわけなので、責任の重さを確認してもらい、細心の注意をしてもらいたいと思います。
人を喜ばせるのは簡単ではないかも知れません。でも人を悲しませるのはテレビ、ラジオにとっては簡単なことです。誰もが「見て良かった…」と、そんな風に思える番組にしていってほしいです。
一年間本当にお世話になりました。ありがとうございました。

【今月のキラ★報告】(2) (静岡・高校2年男子)

今回モニターを体験して、今まではそれほどテレビのことを考えずにテレビを見ていたなあと思いました。今回の経験を通して、制作側の伝えたいことを考えることで、その番組から得るものが増えたこともありました。
中高生は生活のほとんどが「教えられる」という環境にあると思います。学校では教師に、家では親に、塾でも、町でも…。そのような環境で、やはり中高生がテレビに娯楽を中心に求めるのはごく自然なことだと思いました。私はテレビの基本は娯楽だと思っています。誰かを楽しませる、感動させる、心に影響を与える。それは、バラエティーが基本という訳でなく、報道でもどこかで見ている人の何かを動かさないと伝えたいものは与えられないと思います。それと意味のない番組も大切だと思っています。特に意味はないけどあれが面白かった、あの歌で楽しい気分になった。あのタレントを見ると元気が沸いた。それは十分に視聴者の心に何かを残したといえると思います。
テレビは時には私たちの先生であり、時には楽しませてくれる友人のような存在であってほしいと思います。そして、その両者も私たちには必要なのだということを、今回のモニター体験で分かったと思いました。
一年、さまざまなリポートを書くことでたくさんのことを考え、視野が広がりました。このような機会を与えてくださり本当にありがとうございました。

【委員会の推薦理由】
今月のキラ☆は2人の方を選定した。被災地福島県に住むモニターが「人を喜ばせるのは簡単ではないかもしれません。人を悲しませるのは、テレビ、ラジオにとっては簡単なことです」と述べていることは、マスコミが自覚すべきことを鋭く指摘したものとして高く評価された。
また、生活のあらゆる場面で教育される立場にいる中高生にとって、テレビ画面と向き合う時は、教育の客体としての立場から解放されて娯楽を楽しむ主体になるべきだと考えたモニターの意見は、中高生にとって娯楽としてのテレビの本質とはどのようなものかを指摘したことが高く評価された。

2013年度青少年委員会の活動について

2013年度新「中高生モニター」31名について紹介するとともに、2013年度の委員会活動の概要について事務局から説明し、2012年度に引き続き、地方での意見交換会を開催することも了承された。

◆中高生モニター会議
3月17日(日)正午から午後3時30分まで千代田放送会館7Fの会議室で、「2012年度中高生モニター会議」を開催した。出席者は中高生モニター29人(中学生20、高校生9)と7人の青少年委員全員、そして今回は長野放送制作部ディレクターの湯澤沙織氏にも参加してもらった。
はじめに、事前に視聴してもらった長野放送の番組『大きくなあれ~蓼科の高原学校・70日間の成長日記~』(平成24年日本民間放送連盟賞「青少年向け番組」最優秀)を題材に、意見交換を行った。まず、ディレクターの湯澤氏から、仕事の内容や番組制作の苦心・裏話を説明してもらった。その後、モニターたちとの話し合いになり、番組の感想やディレクターの仕事に関する質問もあり、中高生の放送制作の現場に対する興味を深める会合となった。
後半はモニターが5つのグループに別れ、「バラエティーはここが面白い!」をテーマに討論し、中高生たちの思い描くバラエティー番組論をまとめ、発表した。「バラエティーは楽しく見られるが、過度な罰ゲームはやめて欲しい」など、中高生の率直な意見が述べられた。
この会議の模様は、後日、冊子として発行する。

第142回 放送と青少年に関する委員会

第142回 – 2013年2月

東海テレビ『幸せの時間』についての審議

第142回青少年委員会は2月26日に開催され、審議対象となった東海テレビ『幸せの時間』に関する青少年委員会の要請に対する東海テレビの回答について審議し、委員長談話を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2013年2月26日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]第1会議室
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

東海テレビ『幸せの時間』についての審議

東海テレビ制作の昼の連続ドラマ『幸せの時間』(11月5日~12月28日、FNS系列全国放送)については、第141回委員会で審議し「委員会の受けとめ」を公表するとともに、再発防止に向けた東海テレビの社内議論を深めてもらいたい旨の「要請」を行い、今回、東海テレビから寄せられた「ご報告」について審議した。

◇『幸せの時間』に関する東海テレビへの要請

◎今後に向けて~東海テレビへの要請

  1. 青少年委員会が意見交換で提示した様々な意見を受けて、社内で行われた議論と検討の内容について詳しく報告してください。
  2. 今後、今回のような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、取りまとめた再発防止策について具体的にお示しください。
  3. 地上波の公共性に関する東海テレビの認識についてご説明ください。

以上の要請に基づいて東海テレビから提出された報告書について委員間で審議した結果、委員会が提起した問題点について社内でさまざまな議論・検討が行われたことから、委員会はこの回答を了承した。したがって、前回公表した「委員会の受けとめ」が、これまでの「委員会の考え」を色濃く反映したものであることから、今回は「委員長談話」を公表することで、『幸せの時間』の審議を終了することとした。

◇東海テレビ「ご報告」

全文はこちら(PDF)pdf

概要

今回の問題は、制作現場のみならず、社としてのチェック体制のあり方に改めるべき点があったと認識し、再発防止策を実行していくことで、同じような問題を繰り返さないよう努めてまいります。また、刻々と変化する社会状況に即し、地上波の公共性をより一層意識し、変化を敏感に捉え、視聴者の求める質の高い番組制作を心掛けます。

目次

  • はじめに
  • 回答要請1について
    • 全社的な議論や検討
    • 社としての総括
    • ドラマ制作現場を中心とした議論と検討
    • 本社制作部の意見
    • 社内議論のまとめ
  • 回答要請2について
    • 体制の改善
    • 勉強会や研修会
  • 回答要請3について
  • おわりに

【委員の主な意見】

  • 部門ごとに原因や今後の再発防止に向けてよく話し合われた様子がうかがわれる内容で、本報告を了としたい。
  • 委員会からの要請に真摯に対応したものと評価できると考えるので本報告書は了としたい。なお本件については、当該局の第三者機関であるオンブズ東海や番組審議会においても厳しい意見が出されている。今後も、これらの第三者機関を積極的に活用し、自律的な番組つくりを心がけてほしい。
  • やや既視感のある報告だと感ずるが、提出された回答に魂を吹き込んで、実効性のあるものにしていってほしい。

【委員長談話】

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2013年3月4日

東海テレビ『幸せの時間』に関する【委員長談話】

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会
委員長 汐見 稔幸

昨年の11月に始まった東海テレビ制作の連続ドラマ『幸せの時間』については、放送開始直後から、昼間の番組であるにもかかわらずその性的描写が過激であるとの批判が視聴者意見として多数寄せられました。
BPO青少年委員会では、子どもが視聴する可能性のある時間帯の放送であったこともあり、本番組を委員全員で視聴し、討論した結果、審議すべきであるとの判断にいたりました。そして、2013年1月の臨時委員会で東海テレビの制作責任者等関係者と意見交換を行いました。しかし、この意見交換会当日の局側の意見では、十分に納得のいく説明がされていないと判断せざるをえませんでした。そこで、その内容を「青少年委員会の受けとめ」という文書でBPO報告等に掲載し、東海テレビに対しては改めて「今後に向けて」とする要請を行いました。
この文書で私たちは3つのことについて改めて回答を要請しました。それは(1)青少年委員会で提示した委員会の意見を受けて、社内でどのような議論と検討が行われたかを示してほしい、(2)今後このような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、再発防止策を示してほしい、(3)地上波の公共性に対する局側の認識を示してほしい――この3点でした。それに対して、2月の委員会の直前に東海テレビから「ご報告」という文書が届きました。この文書を委員会で精査しましたが、報告では上記3点について誠実に回答されていますし、1月の意見交換の時よりも、問題の本質を把握しようとする姿勢と問題点の自覚、今後の再発防止策の提示、公共性の責務への自覚などの点で明らかな深化を示していると判断できるものでした。その点で、東海テレビ側の今回の対応を評価したいと考えます。
私たちが今回の事例で最も重視した論点は、テレビというメディアの持つ公共的責任ということでした。東海テレビの「報告」にも「制作現場に地上波の公共性についての認識が十分に共有されていなかったことは否めません」と書かれていますが、このことは今後、各局とも強く自覚していただきたいと思っています。
テレビ・ラジオの公共性ということばには、誰もが見、聴く可能性があることへの配慮が大事という意味あいがあることはもちろんですが、それ以上に大事なのは、テレビ・ラジオの番組内容が国民の教養形成に与える影響の大きさです。公共というのは、すべての人々に関わるということで、公共の責任とは"公共善"の実現への責任ということを意味します。誰にとってもそれが善であるというあり方を求める責任が公共責任で、その自覚が公共意識です。
テレビやラジオは、いまやネットの世界とともに、国民の教養形成の最重要のメディアです。教養とはcommon senseつまり人間に共通の感覚のことで、何にこそ感動し何にこそ怒るべきかという国民共通のセンスのことです。今回の『幸せの時間』のようなシーンが昼間堂々と流されることで、視聴率競争の激しい文脈の中では、これが標準パターンとして是認されていくということを、私たちは懸念しました。外国人は、これが日本人の教養だと認知していく可能性があることも含めて、こうした教養形成の問題に制作側がどれだけ自覚的であったのかということを問題にしたのです。番組の制作者側はそうした"公共善"の実現の仕事をしているという自覚をこれからも是非持っていただきたいというのが、今回の事例に対する委員会の基本的要望です。
その点について、東海テレビ側はきちんと対応すると明言しています。その姿勢を多としたのですが、これを現場の制作スタッフだけの問題ではなく、局全体の問題として取り組んでくださることを強く願っています。
また、今回の番組に対しては東海テレビに視聴者から多くの苦情が届いていること、番組審議会、そして局の第三者機関である「オンブズ東海」でも厳しい意見が出たと聞いています。今後、これらの機関を積極的・有機的に活用して、きちんと自律的な番組つくりを心がけてほしいと願っています。

以上

視聴者意見について

その他の視聴者意見について討論し、特段審議対象とすべき番組はなかったが、委員から以下の意見が出された。

  • 伝統芸である"ゴムパッチン"がすべていけないという結論を出す意図はない。ただし、出演者に恐怖感を与え、その様子を笑いの対象にするという設定には疑問を感ずる。こうした設定で番組が作られることが視聴者にどのような影響を与えるのか、十分な配慮を行いながら慎重に考えていくことが大切ではないか。

  • アニメの登場人物が喫煙するシーンについての視聴者意見が寄せられているが、未成年者の喫煙問題への影響を考えながら、これからも注視していくことが大切ではないか。

中高生モニター報告

2月は、見てみたい、作ってみたい「バラエティー・クイズ・音楽」番組の企画を書いてもらい、27人のモニターから企画案が寄せられた。内訳は、バラエティー企画8本、クイズ企画9本、音楽企画8本、その他2本で、各ジャンルとも平均的に集まった。
「最近は品のない笑いが多いので、江戸時代から続く日本の伝統芸能の落語」を取り上げた番組企画や、女性による女性のための情報バラエティー企画、「今は中高生を楽しませようとする番組がほとんどないので中学、高校、大学に特化したバラエティー番組を」、という企画もあった。
クイズ番組では、リモコンやツイッターを使って視聴者も番組に参加する企画や、早朝に小中高生向けのニュースクイズ番組、100問全部を正解しなければ賞金を獲得できない番組の企画などが寄せられた。
音楽企画では、「音楽が多様化したのにどの音楽番組を見ても同じ歌手ばかりで物足りないので、メディアへの露出の少ない歌手の特集番組」を作りたい、「売れっ子アーティストを詰め込みダラダラと放送している音楽番組と違った、まるで出演歌手のブログを見ているような」番組を作りたい、など現在の音楽番組に対する不満からの発想企画が目立った。

【委員の所感】

  • バラエティーの企画が思ったより少なかった。既成のものを逸脱したところまで想像をたくましくするのは難しいのかな、と思った。

  • 中高生にとって、彼らが楽しめる番組がないんだなという思いが伝わってきた。

  • 本当はもっと色々なバラエティーがあってもよいと思うが、新しい発想はあまりなかった。笑いを新しく企画するのは難しいことのようだ。

  • 中高生のニーズとして、自分たちも参加したいという思いがあるようだ。また一方で、テレビを一人で見る傾向が強くなっているなかで、家族以外の人と情報を分かち合いたい、共有したいという思いもあるようだ。新しいテレビ視聴の形かもしれない。

  • 落語番組の企画があったが、本当に落語を知らない人が多くなっているので、伝統的な芸能をちゃんと放送することが必要だと思った。

  • 音楽の世界が低調なのに、音楽企画が多いのに驚いた。普段音楽情報を取得しているであろうユーチューブでは得られない承認要求、認めてもらいたいという要求を、マスなメディアで満たしたい気持ちがあるのかもしれない。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

企画1.『music×presentation』(神奈川・中学1年女子)
放送時間:日曜10時30分~11時30分
出 演 者:毎回代わるアーティスト
内    容:タイトルの通り音楽をプレゼンする番組。
普段、色々な音楽があり、その中から好んで聞いているが、「色々な曲がありすぎで選べない・・・」「もっとマニアックな音楽が知りたい」といった人たちのための音楽家による音楽家からの音楽好きのための音楽番組。だけど、司会者やタレントが紹介するのではなくて、ミュージシャン=音楽家が期待する、注目する、または気に入っている好きな歌手(グループ)を紹介する。マニアックになりがちではあるが、それでこそ歌手(グループ)の面白さを知ることが出来て、音楽への関心も高まると思う。

企画2.『皆よ これが音楽だ』(宮城・中学2年男子)
放送時間:23時~24時
出 演 者:RADWIMPSなど普段メディアへの露出が少ないロックバンド・歌手。
内    容:音楽が様々な形となって日々進歩を続けています。しかし、音楽の幅が広がっているにも関わらず、メディアの露出が少ない歌手・バンドが増えてきているのも現状です。そのためか、どの音楽番組を見ても「またこの歌手か」と物足りない気がします。
そこで僕はメディアへの露出が少ない歌手を特集した番組を是非作ってほしいと思います。これらの歌手・バンドはメンバーが直接作詞作曲を担当していることが多く、僕も実際に震災のときや人間関係で悩んだときに何回も心を救われました。
歌手・バンドの皆さんには、何か自分たちのルールみたいなものがあり、番組への出演を控えたりしているのかもしれませんが、皆さんの歌が誰かの心を救うのだということを分かって、番組に出演してほしいです。
僕たちファンは「多くの人と様々な音楽を共有したい」「素晴らしい音楽を皆で分かち合いたい」と言う気持ちでいっぱいです。是非日本の音楽を広めましょう。

【NHKエンターテインメント番組部 元・デスクの感想】
『music×presentation』『皆よ、これが音楽だ』は、本格的な音楽好きに送る番組企画だと思いました。確かにどの音楽番組を見ても、新曲発表のタイミングにあわせて同じアーティストばかりが出ていたらつまらないですよね。もっといろいろなアーティストや曲を知りたい、というのはもっともだと思います。ただし、テレビはいろいろな趣向をもった人たちに、同時に、たくさんの人に見てもらうもの。これなら関心のない人でも見てもらえる、という「切り口」についても考えてみてください。

企画3.『True or False?』(大阪・高校2年男子)
放送時間: 土曜日23時~
出 演 者: MC 福澤朗 西尾由佳理 出演 芸能人クイズ王&各局クイズ番組王者
内    容:『True or False?』は〇×クイズだけの全く新しいクイズ番組です。1問正解すると1万円、100問正解すると100万円の賞金をプレーヤーが手に入れることができます。しかし、1問でも間違ってしまうとその時点で脱落してしまい、賞金は没収されてしまいます。
100問正解するのは、1/2の100乗=1/1267650600228229401496703205376という天文学的確率で大変難しいことなのです。〇×クイズという単純かつ明瞭なルールでありながら、一問も間違えることができないというドキドキハラハラしたクイズ番組です。

【テレビ東京 制作局CP制作チーム部長の感想】
中高生の皆が考えた企画書を見て気付かされたことがあります。皆よくテレビを見て、分析しているなと・・・確かに視聴者参加型クイズ番組は少ないし、タレントが画面上で単に騒いでいるクイズ番組が多すぎるかもしれない。画面上の芸能人のやりとりを見せられている事に飽きが来ているのであろう。
中高生が求めているのは、自らが楽しく参加できるクイズ番組。中でも『True or False?』はそれだけで企画になりそうなシンプルでいい企画。中高生の頭の柔らかさに感服した。

企画4.『寄席へ行こうよっ!!』(群馬・高校1年女子)
放送時間:19時~20時
出 演 者:落語家
内    容:先日『昭和元禄落語心中』(雲田はるこ/講談社)というマンガを読んで、とても落語に興味を持ちました。落語は江戸時代から続く日本の伝統芸能です。影響力の強いテレビによって、身近に落語を親しんでもらい後世に伝えることができるのではと考えました。内容としては、親しみやすいようにクイズを織り混ぜた形がいいと思います。毎日身近な出来事や季節に合わせて落語を取り上げます。最近は特に品のない笑いが多かったり、若手の出演が少なかったりします。この番組では若手にもたくさん出演していただいて、伝統ある笑いで視聴者を笑顔にできたらいいと思います。

企画5.バラエティー&クイズ『天は二物を与える』(長野・高校1年女子)
放送時間:毎週金曜20時~21時
出演者:司会 向井理、菊川怜
内 容:毎週一般参加者3名が頭脳、運動神経、料理分野で1位を争う。プラスそれぞれの人のキャラクターもポイントとする。たとえば頭脳では理数系問題と文系問題からそれぞれ5問程度出題。運動神経については基礎体力的な5課題に挑戦する。料理についてはおいしさや、見た目は他の番組で競う物がたくさんあるのでそこにカロリーなど栄養バランスのよいものかというポイントを加える。キャラクターについては容姿でなく人に愛される雰囲気を持っているかを競う。司会者を向井さんと菊川さんにしたのはもちろん"天から二物を与えられた"お二人だから。

企画6.『クイズでバッチリ!!最新ニュース』(滋賀・中学1年男子)
放送時間:朝6時50分~7時、(再放送)21時50分~22時(日曜日を除く)
出 演 者:マスコットキャラクター(人は使わず)
内    容:僕が毎朝見ているNHK教育『0655』をアレンジした番組。小中高校生向け、クイズ番組。内容は、最新ニュースがネタになった4択クイズ。簡単な解説付きで、社会、経済などのニュースの興味を持たせることが目的。
10分という短い時間で、学校に行く前に見ることができるが、内容について、詳しく知りたいことは、番組のホームページで紹介する。また、土曜日には月曜日から金曜日でした内容のテストを行い、点数化する。さらに、月末土曜日には1か月のまとめテストで、理解チェックや重要なところを知らせる。
身近にニュースに触れる番組が、週に一度ではなく、毎日継続して見られるよう企画できたらと思います。

【テレビ朝日 編成制作局制作1部ディレクター(『SmaSTATION!!』『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』担当)の感想】
落語や日本国憲法、校舎で流れた音楽など、個性豊かな企画が多く楽しく読ませていただきました。ジャンルとしては、芸人さんの企画が多いかなと勝手に予想していたのですが、意外にもクイズ番組が多く、今の中高生が知識欲旺盛であることに驚きました。その中でも『天は二物を与える』や『クイズでバッチリ!!最新ニュース』といった企画には、クイズ×トライアスロン、クイズ×最新ニュースといった掛け算の要素があり、面白い発想だと思いました。企画を伝える手段としてクイズという枠に縛られず、新しいタイプのゲームやロケ・解説の方法などを掛け算していけば、さらに魅力的な企画になると思います。

企画7.『みんなでクイズ』(東京・中学1年女子)
放送時間:(土)19時~(生放送)
出 演 者:週替わりのゲスト その時ブレイクしている人など
内    容:私が考えたのは視聴者参加型クイズです。これは生放送の番組でないと実現することはできません。今はテレビのリモコン1つで番組に関する様々なコンテンツを楽しむことができます。それを利用したものです。具体的には、例えばその日の番組ではあるタレントがゲストだとします。そしてクイズが10問用意されています。そのゲストがクイズに答えるというのは当たり前ですが、視聴者もリモコンから参加し、ゲストと視聴者全体の正解率の割合を競争して、ゲストが勝てば、ゲストに景品、視聴者側が勝てば抽選で景品などというシステムにすれば、視聴者も自分たちの参加によって番組が動いている、わずかではありますが番組作りに携わっているような感覚を得られるのではないかと思います。出演者だけのテンションだと視聴者がついていけないこともありますが、参加型にすることにより、しっかりついていけると思います。

企画8.『ザ スクール デイズ!!!』(東京・高校2年男子)
放送時間:木曜日 20時~21時
司  会:香取慎吾、川島海荷
出 演 者:平成ノブシコブシ、渡辺直美、18歳位の女優・俳優、尾木直樹、つるの剛士
内    容:中学・高校・大学にまつわる様々なおもしろ情報や勉強面や生活面のアドバイスを紹介したり、イベントを行う番組。たとえば、「うちの学校にある○○部!」のような形で日本各地にある珍しい部活の紹介、また「高校生ダンスバトル」などいろんなスポーツで、いくつかの学校の有志で対決する企画など。今は中高生を特に楽しませようとする番組がほとんどありません。今の中高生の間ではどんな流行があるのか、またどんな生活を中高生が送っておりどんな悩みをもっているのかなどを共有する場がテレビ番組に必要なのではないかと考えたためこの企画を考えました。

企画9.『ドラごっこ』(ドラマごっこの略)(静岡・高校2年男子)
放送時間:10時30分~11時
出 演 者:バナナマン
内    容:約50%ノンフィクション・ドラマ・バラエティー。毎回、主役となる芸人もしくはタレントが選ばれる。その芸人には「一日あるドラマの主役となってもらう」ということと、開始時間、場所だけが伝えられる。時間になるとドラマ撮影スタート。その日、カットがかかるまで1日間、その周りの人にはすべて台本が与えられていて、監督からの指示が受けられるようになっている。監督、脚本を務めるのも芸人やタレント。監督は、その日、車などから撮影の様子を見ながら指示を出し、物語が思い通りになるよう努める。撮影は一度始めたら、すべてとり終えるまでカットはかけられない。監督と主役の駆け引きによってどんな作品になるかが決まる。撮影の様子がそのまま作品となる。撮影中の監督の様子も流す。スタジオでは、バナナマンの2人と監督が作品を見て、コメントなどをする。ドッキリ×ドラマ×リアルで、主役のリアルな反応と予想できない物語を楽しむバラエティー番組。

【TBSテレビ 制作局バラエティ制作部プロデューサー(『ひみつの嵐ちゃん!』担当の感想)】
みなさんの企画の中で、「視聴者も自分たちの参加によって番組が動いている感覚を得られる」「今どんな流行があるのかを共有する場が必要」などのニュアンスの言葉が多くありました。きちんと視聴者像をイメージしながら考えられているなと感じつつ、これらの言葉の中に、視聴者のみなさんが今のテレビに求めている事のヒントが隠されているような気がします。様々な企画の中で、『ドラごっこ』という企画は切り口が興味深く、例えばどんな演者さんでやると楽しいのかな?どんな設定?撮り方は?とさらにその先の展開を期待させてくれる企画でした。
また、企画が何周もしている感のあるクイズというジャンルの中で『True or False?』にはある意味ハッとさせられました。「盛る」ことで企画を成立させようという考えになりがちなのとは逆に、「削ぐ」ことを追求したらこうなるのかと。
みなさんの発想の柔軟さ大変勉強になりました。

企画10.『GIRLS ONLY! (NO BOYS ALLOWED)』(東京・高校2年女子)
放送時間:深夜
出 演 者:ちょっとおしゃれで面白い女性タレント 例えば、はるな愛、ベッキー、菅野美穂、YOU、森三中、友近など(可愛いけど、あまりトークが面白くない女性はレギュラーとしては出さない)
内    容:コンセプト・・・10代後半~20代女子に人気の雑誌をテレビ化する事
・流行中の若者カルチャーを取材・・・ファッション、グルメ、雑貨に限らずイベント(バレンタイン、クリスマスなど)ごとに注目のニュートレンドを取材する
・ファッションレクチャー・・・人気のモデル・女優と一緒にショッピングして様々なファッション技を教えてもらう(例:脚痩せコーデ、着まわし術など)
・ガールズトーク・・・恋愛の思い出話、最近起こった出来事、理想の男性像など、女子どうしでしか話せない事をぶっちゃける
・簡単クッキング・・・簡単だけど本格的に見えるスイーツや男の子の胃袋をつかむような料理に料理が苦手なタレントが挑戦する
・自分磨き・・・ヘアアレンジ、ネイル、メイク、ダイエット法など女の子たちの自分磨きを応援する

【フジテレビ バラエティ制作センター(『ネプリーグ』担当プロデューサー)の感想】
『GIRLS ONLY!』このテーマ!私も長い間向き合っています!
雑誌は月に何冊も読んでいるのに、テレビにはそれを求めない層を魅了できる番組ができるのではないかと・・・。そこでぶつかる壁は、ファッション雑誌と言っても、20代~40代の年代別、同世代でもファッションのジャンルによって何種類もの雑誌があり、読者はそれぞれ自分の趣味に合ったものを選択している・・・。テレビ番組は、コアであってはいけません。より幅広い年代、幅広い趣味嗜好の人、女性だけでなく男性も見られる事が必要です。その為の発明ができるといいですね!期待しています!

【企画総評】

【日本テレビ 制作局長代理(バラエティ番組CP)の感想】
全体として、クイズ番組が多いが、仕組みや展開案が書かれていないのでよく分からない。既存の番組のコーナーを独立して一本の番組にしようというのは、単なる"パクリ"であって企画とはいえない。ましてや既存番組の拡大版では評価の仕様がない。マニアックすぎて「誰が見るの?」という企画も多い。MCの人選も平凡でつまらない。
全体的に言えることは、「テレビはそんなに簡単じゃない、素人のおもちゃでは決してない」という事です。

【自由記述】

ラジオ・テレビ放送に関して自由に書いてもらい19人から報告があった。

  • 僕たち、子どものためになりそうな番組が意外と変な時間帯に放送されている時があります。そういう番組を、土・日の昼間に再放送してほしいです。(静岡・中学1年男子)

  • 台風の時期や、大雪の時期にいつも思うのですが、首都圏で何かがあるとすぐ全国ニュースで大々的に取り上げるのをやめてほしいと感じます。地方の人達のことをあまりに考えてなさすぎるのではないかと感じます。(大分・中学3年男子)

  • 最近、そういえば震災についての番組が減ったなーと感じました。前に被災者の方々がおっしゃっていたのは、「震災は3月11日だけではない」ということでした。これからは視聴者に震災の事を新しい切り口から伝える番組が必要だと思います。(東京・高校2年女子)

  • 最近のテレビを見ていて感じるのは、テレビの前で2~3時間も座って見たいと思える番組がなくなってきていることや、Youtubeなどで一般の人が作っている映像のほうが面白いということだ。(神奈川・中学1年女子)

  • 毎朝、ラジオで『基礎英語』(NHK)を聞いています。英語の勉強や英検対策にも役に立っていると思っています。知らない人も多いので、もっと宣伝したらよいのにと思います。(滋賀・中学1年男子)

その他

  • 2013年度中高生モニター募集状況と、3月17日(日)に開催する中高生モニター会議について事務局から報告し、了承された。

  • "震災報道への配慮"を再要望。昨2012年3月2日に青少年委員会が公表した「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を、2013年3月4日に開催された2012年度「BPO年次報告会」で配り、汐見委員長から、震災映像等の使用に関して改めて配慮を呼びかけることとした。

第141回 放送と青少年に関する委員会

第141回 – 2013年1月

東海テレビ『幸せの時間』を審議。局との意見交換を基に要点を議論

第141回青少年委員会は1月22日に大阪で開催され、まず第140回委員会で実施した東海テレビ『幸せの時間』の制作者との意見交換について審議した。次いで、12月11日から1月15日までに寄せられた視聴者意見について討論した。また、1月に寄せられた中高生モニター報告について審議し、あわせて2013年3月17日に開催する「中高生モニター会議(案)」について担当委員と事務局から説明し了承された。
委員会終了後、午後3時から6時まで、大阪・朝日放送アネックス3階で、青少年委員会初のNHKを含む在阪準キーテレビ6局の制作担当者たちと青少年委員との意見交換会を開催した。

議事の詳細

日時
2013年1月22日(火)12時45分~14時45分
場所
朝日放送アネックス3階B会議室
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

※委員会終了後、青少年委員会として東京以外で初めての意見交換会を1月22日午後3時から大阪・朝日放送アネックス3階A会議室で開催した。

東海テレビ『幸せの時間』についての審議

青少年委員会は、1月18日に東海テレビの制作・編成責任者と行った『幸せの時間』に関する意見交換を受けて、下記のとおり「青少年委員会の受け止め」をBPO報告に掲載することとした。また、委員会は東海テレビに対し、改めて「今後に向けて」とする要請を行うことを決定した。

◆東海テレビとの意見交換を受けて、BPO青少年委員会の受けとめ

東海テレビは、平日午後1時半から2時のお昼のドラマ枠で約半世紀の経験とノウハウを蓄積し、そのクリエイティビティーに対しても多方面から高い評価を受けてきました。『幸せの時間』も一話たりとも見逃せない物語の展開で多くの視聴者を惹きつけたことは事実です。
ただ、性的シーンに対しては、その表現の過激さへの戸惑いや不快感、子どもが見る可能性があることへの困惑や怒りなどの視聴者意見が、東海テレビやBPOに数多く寄せられました。東海テレビからは、性的シーンは「これまでの延長線上」の演出であり、新たな性表現に挑戦するような意図はなかったとの説明がありましたが、性描写の許容範囲は社会環境に応じて時々刻々と変化していくものであることを考えれば、「これまでの延長線上」が必ずしも社会通念を逸脱しないことを保証するものにはならないでしょう。
では、何が問題であったのか。私たちはまず第一に、地上波のもつ公共性についての認識が制作現場で十分に共有されていなかったことが、今回の問題の根底に存在しているのではないかと考えます。課金システムによって視聴する映画やCS放送等の有料の放送と地上波放送とでは、メディアとしての特性に大きな差異が存在します。表現上の制約も自ずと異なり、映像表現として同列に判断することはできません。リアリティーを追求するという目的があったとしても、誰もが自由に視聴できる地上波放送であることに配慮したものでなくてはなりません。
東海テレビからは、個別のシーンではなく全体を視聴してから判断してほしいという要望が繰り返しなされましたが、全体のメッセージが正しければ、表現に多少の逸脱があってもいいと考えておられるのではないかと危惧します。たとえ『幸せの時間』という作品全体のテーマや文脈が理解されていたとしても、視聴者からは、個々の場面に関して受け入れがたいという意見が数多く存在していたことは明らかでしょう。
とはいえ、性表現には、どこまでが可能かと認定する明確な基準は存在しません。課金システムによって視聴する映画などの基準を地上波に適用することも適切ではありません。私たちが判断の手がかりとできるのは、「民放連放送基準」および、それに準拠して各社が定める「番組基準(放送基準)」、視聴者意見、さらにBPOや番組審議会を含む社内外のコンプライアンス組織の意見です。
東海テレビが組織した自主的な機関「オンブズ東海」では、昨年12月の委員会で『幸せの時間』が議題となり、「テレビは映倫のように18歳未満禁止やR指定などの制約が無いからこそ、自ら良識的な判断に基づき制約や節度を持つべき。昼の帯ドラマの性的表現に視聴者から多数の苦情が出ていることは重く受け止めなければならない」との意見が委員より出されています。こうした組織の意見は、十分に尊重されるべきでしょう。
一方、「民放連放送基準」およびそれに準拠して各社が定める「番組基準」が規定する性表現は、時代や社会状況、それに伴う価値観や倫理観の変化によっていかようにも解釈されうる幅をもっています。つまり、絶対的な基準ではありません。だからこそ、放送局は、放送・表現の自由を守るためにも、具体的な事例を積み重ねながら、その解釈と運用を自主的に検討し、社会に問う作業を続けていくことが求められるでしょう。
そこで、私たちは、東海テレビの地上波の公共性についての考え方を確認した上で、個々の性的シーンがなぜ放送可能と判断されたのかを問い、東海テレビの性的表現についての現在の判断基準がどこにあるのかを確認しようとしたわけですが、得られた回答は、物語の流れや演出上の必要性から採用を決めたというもので、個々のシーンが社会的な許容限度を踏み外していないかどうかとか、表現上にもっと工夫や配慮が必要かどうかといった議論が行われたかは定かではありませんでした。つまり、一貫して、制作者の立場からのみの判断であり、子どもを含む視聴者の受け止め方についての検討や、民放連放送基準や東海テレビの放送基準との照合といった、作品から一歩引いた客観的な視点からの確認作業がどのように行われたのかについては明確でなく、十分に得心できませんでした。
表現の自由を守ることが最大限に尊重されるべきであることは当然です。しかし、長年の経験や評価にあぐらをかき、昼のドラマの視聴者層にはこれぐらいはやっていいという思い込みや惰性がなかったといえるでしょうか。また、FNS系列午後帯の視聴率向上のためには、多少過激な性表現で話題になることも必要という認識がなかったといえるでしょうか。
表現の自由は、表現者の肩にかかっています。公共性の高い地上波の表現者が、確たる信念もなく、一定の基準を逸脱した表現を行うことは、地上波における表現の自由に自ら枷をはめ、ともすれば、視聴者を愚弄していると受けとめられる危険性があるということを自覚していただきたいと思います。
なお、第8回放送以降、視聴者意見やマスメディアの報道を受けて改編を行った経緯について十分な説明はありませんでしたが、放送局の自主・自律を保持するという意味で、当該局の判断を評価します。

◆今後に向けて~東海テレビへの要請

BPO青少年委員会の使命は、放送局と視聴者をつなぐ回路になりながら、放送局が自主自律的な判断を行うことを促すことです。今回の事案でも、青少年委員会との意見交換の中で出された様々な意見を参考にしながら、東海テレビが自律的な判断と総括を行うことを期待しています。そこで、以下の点について社内で十分に議論し、そこで得られた総括の内容を改めて報告していただくことを要請します。

  • 青少年委員会が意見交換で提示した様々な意見を受けて、社内で行われた議論と検討の内容について詳しく報告してください。
  • 今後、今回のような問題を繰り返さないために、どのような体制やシステムを構築するか、取りまとめた再発防止策について具体的にお示しください。
  • 地上波の公共性に関する東海テレビの認識についてご説明ください。
    以上について、社内で十分な議論を行った上で青少年委員会にその結果を、次回委員会が開催される2月26日までにお送りください。

視聴者意見について

担当委員および事務局よりその他の視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで討論し、審議対象とするべき番組はなかった。

中高生モニター報告

12月から2月までは「バラエティー・クイズ・音楽」番組のジャンルを取り上げ、1月は最近見た番組の中で、面白そうだと思って見たものの「期待外れだった」「面白くなかった」番組を選んで具体的な分析をまじえて書いてもらい、30人から報告があった。
新聞の番組欄を熟読して選んで見るので「期待外れは無かった」「僕はバラエティー番組を見るとたいてい面白いと思ってしまう」などの意見もあったが、21の番組について「面白くなかった」という報告が届いた。
年末に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しSP!!』(日本テレビ)には4人から意見が寄せられ、「面白かったが途中から時代設定が変わってしまったのが残念」「テレビで流すには下品なシーンがありもったいなかった」など、全体では好意的に受け取られているものの、一部に不満が残るという報告だった。
また、『史上空前!笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ2013』(TBSテレビ)も3人から意見が寄せられ「年々クオリティーが下がっている」「ほとんどの組み合わせが面白くなかった」などの厳しい意見とともに、「番組構成は面白いので、ネタ決めの時の雰囲気に気をつけて」など建設的な意見もあった。
特定の番組を挙げてはいないが、「とにかく時間が長すぎる」「痛みで笑いをとる番組は嫌いです」「全ての局が同じようなことをしている」「ドッキリの番組は面白くない」などの意見が寄せられている。
『NHK紅白歌合戦』には「演歌のバックダンサーに若手アイドルを使っているのに違和感を覚えた」という意見がある一方、年末年始の番組の中で「気になった」番組についてたずねた<自由記述>には9人が『NHK紅白歌合戦』について意見を寄せ、「アイドルばかりではなく古い時代のことを忘れないでほしい」という意見もあったが、おおむね好意的な報告だった。

【主な意見】

  • 「僕は新聞の番組欄などを熟読して、“これだっ”と思う番組を選んで見ているので、実はあまり期待外れだったり、面白くなかった番組というのはありません。それよりも、番組を作る人たちは、よくもこんなに面白い番組を作るなぁと思って見ていることの方が多いです。しかし、“またこの人か”とか“この企画はどこかで見た事があるなぁ”と思うことが少なくありません。年末年始の番組でいえば、どの番組を見ても司会者や出演者が同じ気がしました。」
    (神奈川・中学2年男子)
  • 「期待していたけれど、面白くなかった番組は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ)の大みそかに放送した「笑ってはいけない」シリーズです。昨年見た時には、この番組も面白いと感じたのですが、今年はテレビで流すには下品なシーンがあり、全体としては面白かったのにもったいないと思いました。大みそかは子どもも夜遅くまで起きて、家族だんらんという日だと思うので、家族みんなで楽しく見られる番組があればいいなと思いました。最近のバラエティー番組では、夜ごはんの時間帯にそぐわない番組が放送されていることが多いので、放送局の方にも考えてほしいなと思いました。」
    (神奈川・高校2年女子)
  • 「『史上空前!笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ2013』(TBSテレビ)は私にとって毎年見ている番組ですが、なんとなく毎年クオリティーが下がっているように感じます。“先輩後輩の年齢差コンビ”や、“異性コンビ”、“ネタをいつも書いている、書いていないコンビ”など、コンビを作る方法を変えてみるのも、面白くなるのではないかと思いました。また、今ではTBS本社での打ち合わせが主となり、お笑いの発表以外の笑いがなくなってしまいました。毎年一回のイベント番組だからこそ、力を入れて作ってほしいと思います。」
    (東京・中学3年女子)
  • 「僕は、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)という番組が好きではありません。この番組ではいろいろな企画がありますが、僕が嫌いなのは“お金”を使うものです。僕は痛みで笑いを取る番組は嫌いです。しかし、人のお金で笑いを取るような番組はもっと嫌いです。こんな罰ゲームのようなものでしか笑いをとれないようなら、芸人として失格でしょう。とても不快でなりません。」
    (東京・中学3年男子)
  • 「僕は“期待外れ”を通り越して“怒り”を覚える番組があります。それは、『世界は言葉でできている』(フジテレビ/関西テレビ)です。深夜に放送していた時の評判は聞いていて、“偉人の名言を超えた言葉を作る”というコンセプトがとても素敵に思えました。だから、ゴールデン枠に昇格したので見やすい時間に見られると、とても楽しみにしていました。それなのに、たったの5回で打ち切りになりました。フジテレビの社長さんは、“『世界は言葉でできている』のような番組でも、視聴率が取れるようにしなければならない。”と会見で言っていたはずではないのでしょうか!今回の打ち切り劇には非常にがっかりしています。」
    (大阪・高校2年男子)
  • 「前振りが長い番組は見ていて面白くないなと思います。これはバラエティー番組に多いですが、前振りで番組の面白いところをほとんど流してしまうと、結末が見えたりして、展開を読む楽しさもなくなってしまいます。もうひとつ、面白くないと思える番組はコマーシャルが多すぎる番組です。コマーシャルが多いと、内容がだんだん分からなくなるし、正直少しいらだってきます。ですから、そのような番組は見ていません。」
    (宮城・中学1年女子)
  • 「私は“ドッキリ番組”が面白いとは思えません。特に、人を怒らせようとしているドッキリ番組は嫌いです。カメラが回っていなかったらいじめになるのではという企画が、大嫌いです。怒ることは、物事を解決するための意思表示の一つだと思います。自分が怒っていると伝え、相手に反省を促したり、周りの人に事態を改善してもらおうと訴えかける行動です。それを笑うための対象物として見始めると、見る側と怒っている側に壁ができ、“怒っている”ことが無視されます。最近はテレビだけではなく、学校の中でも“悪ふざけ”(ドッキリ)を行い、行われた人が怒ると“なにマジになってんの”と笑われます。自分が“止めてくれ”という意思を訴えているのにそれが笑われるのはとても悲しいことです。私はドッキリを見ていると“優劣の意識”を感じます。“仕掛け”を知っている人は知らない人を同じ地平でみていなく、相手の怒りが届いていないのと同様にこちらの笑いも相手に届いていないという思いが感じられます。それはあまり気持ちの良いものではないので、私はドッキリ番組を見ません。」
    (北海道・中学3年女子)
  • 「私が最近見た番組の中で面白くないなと思った番組は『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ)と『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ)の2つです。どちらも実際にあった話を再現映像などのVTRとともに、MCとゲストのトークなどで進められる番組です。しかし、内容は“あれ?前どこか見たことあるような”とか“前回と似ているような…”と思うようなことがよくあります。そして、2つの番組の出演者以外の違いがはっきり分らず、とても似ているなと思います。」
    (広島・中学2年女子)
  • 「私は『NHK紅白歌合戦』の演出の一部に気になるところがありました。演歌歌手の方が歌っていらっしゃるときや、様々な場面でバックダンサーとして若手アイドルの方が踊っているのを見て、ちょっと出番が多すぎるのではないかと思います。いつ見ても画面に映っているような気がして、正直“またか”と思って少し嫌な気がしてしまいました。以前のようにバックダンサーの方はアーティストごとに変える方が良いのではないかと考えます。」
    (福岡・高校2年女子)

【委員の主な意見】

  • つまらない番組は見ないので、期待外れの番組は無いという意見は面白いと思った。
  • 「期待外れ」や「面白くない」番組をまとめるのは、中高生にとっては骨の折れる作業だったのかもしれない。
  • ネガティブ要素から入らなければならない意見表明は難しいと思うが、改善のまなざしを持って意見を出してくれるのは嬉しい。
  • 途中で打ち切られた番組に対し、期待外れを通り越して「怒り」を感じるという報告があったが、視聴者にとってどんなに悲しいことなのか放送局は知ってほしい。
  • 罰ゲームでしか笑いがとれないのは芸人失格という意見は、常々自分が思っていることを書いてくれて、嬉しかった。

【今月のキラ★報告】(東京・中学1年女子)

私が最近見て期待外れだった番組は、具体的にこの番組!とはいかないのですが、お正月の年始特番です。期待外れというより、もともとあまり期待はしていなかったのですが、つまらなかったです。毎年、元旦や2日くらいは朝からお笑い芸人やタレントが沢山出て、ゲームをしたり、罰ゲームのようなことをしたりと、本当に全ての局が同じようなことをしています。見ていても全然面白くないし、テレビ局の経費削減している様子が見て伝わってきてしまいました。そのため、BSやCSといったチャンネルばかり見ていました。
お正月は普段あまりテレビを見ない人も見る1つの大きなチャンスと言える気がします。また、新年を迎えた人々をテレビの影響力を上手に利用して更に盛り上げてほしいと思いました。私の考えとして、なぜ年始特番がつまらなかったかというと、ほとんどの番組が生放送であるうえに、きちんと進行や内容が用意されていないため、全体的にグダグダしてしまい、番組のテンションに視聴者側がいまいちついていけていなかったような気がします。
学校で、友達にも聞いてみたところ多くの人がつまらなかったといい、ドラマの再放送などを見ている方がよっぽど面白かったと言っていました。
新年の番組は影響力がとてもあると思うので、もっと視聴者にとってのメリットがあるようなきちんとした番組づくりをしてほしいと思います。

【委員会の推薦理由】

お正月は、普段テレビを見ることのない人たちも家で揃ってテレビを見るよい機会なのに、同じような内容のめりはりのない特番ばかりでつまらなかった、という放送局の人たちにとって耳の痛い中学1年生からの正直な批判の声が、私たち全員の心に強く響きました。

【主な自由記述】

  • 気になった番組は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しSP!!』(日本テレビ)です。今回は学校がテーマで、すごく面白そうだと思いました。実際に見て、すごく楽しかったので、また今年の年末も見てみたいです。
    (東京・中学2年女子)
  • 年末の『NHK紅白歌合戦』について、祖母や母が「今年の紅白は面白くない。アイドルグループなど若い人に人気がある人ばかりだし、昔とだいぶ変わってしまった」というようなことを言っていた。大晦日の定番である『紅白歌合戦』も、新しいものばかりに手を出すだけではなく古い時代のことを忘れてはいけないのでは、と思った。
    (東京・中学2年男子)
  • 大晦日の『NHK紅白歌合戦』は、今年はとても面白かったと思いました。演歌の枠を半分ほどにしたらしいですが、私など若い世代にとってはその点は見やすかったと思います。また、震災を意識したプログラムもいくつかあり、エールを送っている印象を受けました。
    (東京・高校2年男子)
  • 年末の番組はとにかく長すぎます。6時間番組とかたくさんありましたが、こんなに長かったらご飯食べながら見て、お風呂は12時以降…なんてことになってしまいます。途中で飽きてきたり目が疲れてしまいました。3時間番組として2週連続とかにしたら良いのではないでしょうか。
    (東京・中学3年男子)
  • 私は12月26日(水)に放送された『有吉反省会』(日本テレビ)が久しぶりに爆笑できるバラエティーだと思いました。芸人やアスリート、アイドルが今年一年の反省をするというものですが、暗いイメージは全くなく、司会が有吉さんということで、明るくて楽しい反省会になっていました。
    (神奈川・中学3年女子)

中高生モニター会議について

2013年3月17日に開催する「中高生モニター会議(案)」について担当委員と事務局から説明し、了承された。

※意見交換会(大阪)の概要

青少年委員会として東京以外で初めての意見交換会を1月22日午後3時から大阪・朝日放送アネックス3階A会議室で開催した。参加者は、NHKと在阪準キー局の毎日放送、朝日放送、テレビ大阪、関西テレビ、読売テレビの6局の番組制作者を中心に52人で、青少年委員7人とさまざまな意見交換を行った。
テーマは「大阪と東京の番組制作の違い」。まず、関西の人気番組『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の構成作家で、『永遠の0』などのベストセラー作品で知られる作家の百田尚樹氏が、「大阪の番組作りの秘密」と題する講演を行った。「大阪の局は東京に比べて予算が少ない分アイディアで勝負する」、「今のテレビに期待する役割として、バラバラになった家族を、テレビの力で再び茶の間にひき付けられないか」など、およそ30分にわたって経験談を披露してくれた。
その後、各委員が事前に視聴した各局制作の番組についてそれぞれの局の現場の制作者と意見交換を行った。続いて、番組が青少年に与える影響について、局側から「どんな反応があるのか手ごたえがなく、おそるおそるやっているのが実態である」とか、「自分には高一の娘がいるが、下ネタに関しては制作者として悩ましいところだ」などの意見が出た。汐見委員長は、「テレビは人間の行動の標準モデルを作る可能性を持っている。それが、テレビが持っている公共的な影響力だ」とテレビの持つ公共的側面を話し、「関西文化は庶民に対する優しさが根っこにあるのではないか。条件が非常に厳しい中で、熱い意思を持ってよい番組を作ろうとしている人たちがたくさんいることを改めて感じた」と3時間に及ぶ意見交換会を締めくくった。
今回のアンケート結果には、「もっと意見交換する時間が欲しかった」、「各委員からすると興味深いテーマかもしれないが、制作者にとっては日常身にしみている話で、深まりが無かった」、「各委員のスタンスの違いが現れていて興味深かった」、「BPOの委員について先入観のようなものが無くなった。共にテレビ番組について考える存在なのだと思えた」などの意見があった。取り上げるテーマや形式など、参加者から寄せられた意見を参考に、次回以降の意見交換会の開催につなげたい。

第140回 放送と青少年に関する委員会

第140回 – 2013年1月

東海テレビ『幸せの時間』の審議で、局の制作・編成責任者と意見交換

第140回青少年委員会は1月18日に開催され、審議対象となった東海テレビ『幸せの時間』の制作・編成責任者を招いて意見交換を行った。また、意見交換に先立って、民放連番組部の田嶋炎部長を招き、民放連の定める放送基準と民放の各放送局が定める番組基準(放送基準)の運用等についてレクチャーを受けた。

議事の詳細

日時
2013年1月18日(金)午後2時30分~5時
場所
放送倫理・番組向上機構(BPO)第1会議室
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員(欠席:渡邊委員)

東海テレビ『幸せの時間』について意見交換および審議

東海テレビ制作の昼の連続ドラマ『幸せの時間』(11月5日~12月28日、FNS系列全国放送)については、放送直後から「性的描写が過激」「子どもが見る可能性もある」との視聴者意見が多数寄せられ、第138回、第139回委員会で討論・審議した結果、1月18日臨時の委員会を開き、東海テレビの制作責任者や担当プロデューサー、編成責任者たち5人を招き番組の企画意図・制作方法・審査基準等について意見交換を行った。

◆東海テレビの説明

【番組の企画意図】 『幸せの時間』は現代社会における家族間、世代間のコミュニケーションで抱える問題を視聴者とともに考えていきたいという意図からスタートしました。原作は国友やすゆきさんの男性コミックですが、制作するにあたっては、このドラマの視聴者層である主婦に合わせまして、主人公を男性から女性に変更し、女性目線でストーリーを動かすことにいたしました。ストーリー展開上、登場する女性たちの心情や葛藤、そしてさまざまな愛の形を表現するにあたって性的な描写は伴っておりますが、それらは人間の欲望、嫉妬、孤独感といった心の揺れを表現するために必要と判断いたしました。またこのドラマでは、番組全体を通じて家族とは何か、絆とは何か、幸せとは何かを視聴者に問いかけることを最大のテーマにしております。そのため、ごく普通の家族がもしかすると抱えている秘密、あるいはごく身近で起こり得るかもしれない問題をリアルに表現することが不可欠であり、その一要素として性の描写も必要と考えました。ことさら好奇心を煽ったり、それ自体を強調して売り物にする意図では決してございません。そうならないよう登場人物のキャラクター設定から脚本作りに至るまで、3人のプロデューサーが脚本家と幾度も打ち合わせを行い、綿密な協議を重ねてきました。また、その上で演出家・出演者に番組、そして演出の意図を理解していただき、撮影に臨むなど細心の注意を払ってまいりました。私どもといたしましては、ドラマ全体のテーマをお伝えするため必要な表現であると考え、放送基準に準拠して制作してきたと考えております。
社内におけるチェック体制に関して申し上げますと、まず考査において台本上放送に適さないセリフ及び表現のチェックをし、性的描写、暴力シーンに関して演出上の注意喚起を行っております。そして実際の制作現場においては、全ての工程に局のプロデューサーが立ち会い、最終判断を下しております。完成後、放送素材とともに、仕上げ用DVDは、制作局、制作局長と東京制作部長、および編成局に納品、チェックされ、放送に至ります。今回の『幸せの時間』も同様な過程を経ております。以上が、番組の企画意図と放送に至るまでの経緯です。
【性的描写について】 『幸せの時間』は、ある家族の崩壊と再生を描くことによって、現代社会における家族の本質、夫婦の絆、親子関係などを浮き彫りにする作品です。したがって、家族構成も父、母、長男、長女といういわばモデルケースのような4人家族を設定し、念願のマイホーム購入と引っ越しという幸せの絶頂からのスタートを考えました。そして、家族崩壊のプロセスを描いていく上で、家族4人それぞれがやがて抱えていく問題として、浮気、不倫、援助交際、同棲、親子の断絶、金銭問題、嫁姑問題などを物語の中に織り込みました。これらの事象の一つ一つは各家庭単位では相違があるかとは思いますが、今の日本社会における家族の持つ問題となっているのではないかと考えます。固い絆で結ばれていると信じていた家族が、さまざまな事象によって崩壊していく様子や、抱える秘密や嘘に苦しむ心情など、描きたい問題にリアリティーを持たせてその本質を描くために、また視聴者には、映像という手段を用いて、より身近な問題としてとらえていただき、現実社会で起きていることであるという実感を持っていただきたく、登場人物それぞれにその設定上の性表現を行いました。またその表現方法と映像は、作品全体を総合的に見て、弊社の放送基準に則ったものであるとの認識の上で制作いたしました。
【視聴者意見を受けて改編】 ドラマの意図である家族の本質を描くため、またリアリティーを表現するために、制作・演出したものであっても、制作側の思いとは別の印象、感想を持たれた視聴者の方々の声や、厳しいご意見が放送直後から多く寄せられました。物語の展開がこのあとどうなっていくのかという興味や、視聴動機と同様に、その場面ごとに何を伝え、何を感じていただきたいのかが分かるように演出し、お伝えしていかなくては、ドラマを見続けていただけることができなくなります。制作意図やそのドラマで描きたいことが伝わらない状況になってしまうということは、プロデューサーとしては避けなければいけないと思い、制作局・編成局で協議をし、第8回の放送から改編を決めた次第です。

◆東海テレビと委員との意見交換概要

<論点1 地上波放送の公共性>
Q.しかるべき料金を支払って観る「映画」、「有料課金チャンネル」と、自宅にいて誰もが自由に無料で視聴できる「地上波放送」では、同じ放送とはいっても求められる公共性は異なりますが、東海テレビは地上波の公共性についてはどのように認識されていますか。
A.いつでも誰でも視聴ができる環境にある地上波の放送を制作するうえで、それに伴う責任を認識して番組制作に当たるのは当然の責務と考えています。

<論点2 性的表現と東海テレビの放送基準について>
Q.東海テレビが自主的に改編を行うまでの第1回から第7回放送分の本編と予告に採用された性的シーンについて、当該シーンはなぜ必要とされたのですか。当該シーンを採用するにあたりどのような議論が行われましたか。当該シーンを放送可能と判断した理由は何ですか。その際、民放連放送基準と自社の放送基準とを照らし合わせ、これらを放送可能と解釈した根拠は何ですか。
A.東海テレビは約50年間帯ドラマを制作してきましたが、その間描こうとしているのは一貫して人間の本質を突くドラマです。きれいごとばかりでなく、光と影を含めた人間の本質を描こうという姿勢は変わりません。その中で描かれるシーンは当然放送基準に沿ったものと認識していますし、トータルとして当然きちんとした作品を作ってきたつもりです。

Q.ドラマは「テーマ・全体像」「文脈・構成」「表現・演出」――の3要素で成立すると考えますが、たとえテーマや文脈が理解されたとしても表現に問題がある場合があります。民放連放送基準及び貴局の放送基準の第8章「表現上の配慮」(43,48項)や第11章「性表現」(73,75,76,78,79項)が規定するのはそのことで、今回は全体像ではなく個々の表現が問われているのではありませんか。
A. 一つ一つのシーンは、ドラマを作っていくうえでの必然性と必要性があり、ドラマ全体の流れの中で持つ意味合いが視聴者にどのように受け止められるかを判断して制作しました。従いまして、全体をご覧になっていただければ、個別のシーンも視聴者にご理解いただけるものと考えました。

Q.視聴者意見を受けて第8回以降に改編を行ったことについて、どのような理由から改編を判断されたのですか。具体的に、どのような改編が行われましたか。
A.基本的にはドラマ全体を見ていただきたい、リアルに描きたいという演出意図が私どもの本質ではありますが、それが届かないということであれば、性的表現も含めて全体の演出を考え直して修正をしました。具体的には、物語の展開上必要なセリフを残し、性表現も登場人物のアップ、上半身の映像を中心に編集をいたしました。

Q.制作に女性スタッフは関与しましたか。制作過程で女性スタッフとはどのような意見が交わされましたか。
A.総勢70名ほどのうち、15名程度が女性スタッフです。脚本が完成した段階で、出演者、制作プロデューサー、女性の演出家、衣装・メークなどの女性スタッフを交えて意見交換し、何度も協議を重ねて撮影に臨みました。

<論点3 放送時間帯について>
Q.午後1時半から2時という昼の時間帯において視聴者が過激と感じた性表現を含む番組を放送するにあたり、社内でどのような議論・検討が行われましたか。その際、青少年への配慮はありましたか。また、視聴者意見にあるように、「風邪などで学校を休む子ども」や「就学前の子ども」、また「試験期間中の中高生」が視聴する、あるいは「病院などの公共の場に設置されたテレビを通して子どもたちが目にする」可能性がありますが、こうした状況が起こりうることへの配慮はありましたか。
A.学生や子どもたちが長期の休みに入る夏休み、春休み等の時期については、番組のテーマに性的な描写や暴力的なシーンのないドラマを放送するよう年間のラインアップを決めております。確かに病気で休まれたりするお子さんがいることがあるかもしれませんが、この時間帯のキッズ・ティーン(4~19歳)までの構成比が5%という時間帯です。ただ、だからと言って配慮が必要ないとは考えていません。この時間帯だけでなく、24時間すべてで放送基準に照らし合わせ、青少年に対する配慮を念頭に番組作りを行うことが基本スタンスです。

<論点4 女子中学生の性的シーンについて>
Q.「女子中学生が成人男性に恋をして衣服を脱ぐようなシーン」をどのような認識をもって制作されましたか。改編後の第8話以降では修正等は行われたのですか。
A.原作者の意図をリアルに届けたいと思い演出をいたしましたが、そこに至る当人の心情を前後で綿密に描いて、制作放送しているつもりです。家族のさまざまな状況の中で、人を助けたいという当人の思いはきちんと描かれていると思います。しかし、視聴者からのご意見をいただく中で演出上行き過ぎない形で変更をさせていただきました。

Q.修正を行ったためにドラマのリアリティーが損なわれ、制作者の意図するドラマが視聴者に届けられなかったと考えますか。
A.私どもの演出表現の最初の部分でドラマの本質が視聴者に届けられなかったとすれば、未熟な演出であったときちんと受け止めたいと思います。視聴者の皆様にどのようにご覧いただけるかという点と、私どものクリエイティビティをどのように合致させていくかについては、視聴者の方の反応をきちんと受け止め、今後しっかり制作してまいりたいと思います。

意見交換終了後、各委員から感想が述べられ、今後の審議の進め方について協議し、次回141回委員会で改めて審議することとした。

◆当該番組に寄せられた主な視聴者意見

  • 昼間の時間帯に、このような性的シ-ンのあるドラマを放送する必要性があるのだろうか。大いに疑問に感じる。放送局の倫理観を疑う。
  • 日中に放送する必要性、相当性、合理性を欠いており、社会通念上著しく不適切である。したがって、今後の放送内容を社会通念上相当なものに是正すると同時に、放送局として放送内容のチェック体制を見直すべきである。
  • 昼間のテレビで、あそこまで性描写をしても問題がないのか。学校行事の関係で、子どもが早く帰宅する日もある。制作者サイドは、このドラマが子ども達の目に触れることをどのように考えているのか。
  • 大人のみが試聴できるチャンネルで放送するならともかく、地上波だ。もっと放送内容を自粛していただかないと困る。

◆民放連 田嶋番組部長による放送基準等に関する説明概要

田嶋部長からはまず、民放連の放送基準が定められた歴史的な経緯が説明され、民放連放送基準と各放送事業者の定める番組基準とは、誰からも強制されたものではなく、また公権力からの規則なども排して、放送表現の自由を保持するための自主的なルールであり、放送事業者と社員一人一人が自社の番組基準の位置づけと思想を理解し、社会の信頼を確保して番組制作に当たることが大前提であると述べられた。つぎに、児童・青少年に対する配慮については、放送基準の前文に「児童および青少年に与える影響に留意して番組相互の調和と放送時間に留意すること」が明記されていること、また1999年に加筆された第18条では「放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分配慮する。」と定められ、その解説文では特に暴力・性については放送時間帯に細心の注意が求められていることを強調していることが、説明された。

第139回 放送と青少年に関する委員会

第139回 – 2012年12月

東海テレビ『幸せの時間』について討論、審議対象に

第139回青少年委員会は12月17日に開催され、11月16日から12月11日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、12月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。また、2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会の詳細と、3月17日に開催する2012年度中高生モニター会議の進行案について担当委員と事務局から説明し了承された。

議事の詳細

日時
2012年12月17日(月) 午後4時30分~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

【東海テレビ『幸せの時間』審議対象に】

11月5日~12月28日まで放送の東海テレビ昼の連続ドラマ『幸せの時間』については、放送直後から「性的描写が過激である」「子どもが見る可能性もある」との視聴者意見が多数寄せられ、第138回委員会から継続して討論してきたが、今回の委員会で、民放連の定める放送基準に準拠して当該局が定めた番組基準などに照らし、審議対象にすることがふさわしいとの結論に達し、1月に臨時の委員会を開催して当該局の番組企画意図・制作方法・審査基準等について意見交換を行うことになった。

【その他の視聴者意見について】

担当委員および事務局よりその他の視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで討論し、審議対象とするべき番組はなかった。

【中高生モニター報告】

12月から2月までは「バラエティー・クイズ・音楽」番組のジャンルを取り上げ、12月は「好きな番組、面白い番組」についての報告が29人から届いた。
バラエティー番組は18番組について意見が寄せられ、そのうち『アメトーーク』(テレビ朝日)と『嵐にしやがれ』(日本テレビ)にそれぞれ2人から意見が寄せられた以外は、別々の番組に対する意見だった。まさにバラエティーに富んだ報告になっていた。
「悪ふざけではなく頭をフル回転させて笑いをとる『笑点』(日本テレビ)こそ本当のお笑いだ」、「最近のゴールデンに放映される痛みで笑いをとるような番組ではない『ワラッタメ天国』(フジテレビ)が純粋で面白い」など、最近のバラエティーについて冷静に見ている意見があった。
また『金曜日のスマたちへ』(TBSテレビ)など、出演者の魅力が大きいので好きだという報告もあった。『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)のように、10年以上前に制作された番組を再放送で見て「面白かった」と報告してきた例もあった。
音楽番組ではラジオを含め5番組について報告があり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に好感が持てるという報告が4人からあった。
クイズは4番組が取り上げられ「ご長寿クイズ番組『アタック25』(朝日放送)はアナウンサーに好感をおぼえる、出てみるのが夢だ」という意見があった。
<自由記述>は、最近の放送について思うことを自由に書いてもらった。ドラマやニュースに対する意見とともに、「地震で津波警報が出たときのNHKのアナウンサーの対応が良かった」という報告があった。

【主な意見】

  • 「僕が『いきなり!黄金伝説』(テレビ朝日系)を視聴し始めたきっかけは、ほかのバラエティーにはない奇想天外な企画が魅力的で面白いというのが理由です。様々なタレントさんが節約生活をおくる"1ヵ月1万円生活"や、よゐこの濱口優さんで有名な"0円無人島生活"、全国を周って美味しいグルメをランク付けして紹介する企画など、この番組にしかない企画が沢山あります。僕はこれらの多様で魅力的かつ視聴者の心をくすぶる企画があることにより、多くの視聴者の共感を生んでいるのではないかと思います。バラエティーに必要とされるのは"視聴者の心を刺激するドキドキ感を与えること"ではないでしょうか。そのことを見ている僕らに与えてくれる番組が増えてほしいと思います。」(宮城・中学2年男子)

  • 「僕の一番好きなバラエティーは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の特別番組『笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ)だ。毎年、大晦日に年越し放送されていて、僕は『紅白歌合戦』(NHK)よりも、こちらを楽しみにしている。僕はダウンタウン(特に松本人志さん)のコントが大好きなのだが、"どこが面白いか分らない"という人も多い。その理由を考えていて思い出したことが一つある。佐藤武光さんというプロの映画監督が、"本当に面白い映画は、お金のかかった大作ではなく小さな映画館で上映されているものだったりする。それは、作り手がやりたいように作れる映画には、個性的であくの強い面白さがある"と言っていた。このことは、バラエティーやお笑いにも当てはまると思った。ダウンタウンの笑いは恐らく、万人受けをねらったのもではなく、自分たちのセンスで自由に作っているように見える。だから、毒があって面白いと同時に好き嫌いもはっきり分かれるのだと思う。」(東京・中学2年男子)

  • 「僕が好きな番組は『笑点』(日本テレビ系)です。理由は、今どこのテレビ局でも放送している、芸能人のスキャンダルや、格付けや、悪ふざけで笑いを取るのではなくて、大喜利などで、頭をフル回転させて笑いを考えて、司会者の師匠の機嫌や、うけ具合で座布団が増えたり、減ったりするのが本当のお笑いの様に感じたからです。」(静岡・中学1年男子)

  • 「最近好きな番組、面白い番組は無いように感じます。これまでは、終わってしまった『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)や『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ)など自分が出演者の方々と一緒になってクイズに挑戦しているような感覚にさせてくれる番組が多かったと思いますが、最近の番組は見ている側の私たちが蚊帳の外のような感じがして仕方がありません。司会者も、さんまさんたけしさん、タモリさんといった方々が不動の地位を保持していましたが、なんとなくその方々も年とともにパワーがなくなってきたように感じますし、面白味が無くなってきていると思います。"テレビだけが娯楽ではなくなってきた"と私は感じています。」(神奈川・中学1年女子)

  • 「私はNHK教育の『Rの法則』(月~木曜・18時55分~)を毎回録画して視聴している。この番組は、中高生に関連した、効率的な学習法や生活全般の情報など中高生を交えて紹介するトークバラエティーで、内容やコーナーは多種多様であり、見どころが多く詰まった番組である。毎回違った内容が楽しめて、かつそれら全てが中高生にとって興味深く役に立つ内容なので、非常に身近に感じつつ実用的なものである。そこが大きな魅力である。勉強だけでなく、恋愛や音楽といった内容も取り入れているので、ぜひ多くの中高生にこの番組を楽しく見てもらい、自分と同世代の学生はいま何を考えてどんなことをしているのかなど興味を持ってもらいたい。」(東京・高校2年男子)

  • 「僕の好きな番組はBS朝日で放送中の『水曜どうでしょう Classic』(北海道テレビ放送)です。この番組は10年以上前に収録され、放送されたものの再放送なのですが、おもしろいです。出演者の大泉洋さんはこの当時は北海道のタレントさんでしたが、今では全国でも有名な俳優さんになっています。そんな人がこの番組ではムチャばかりさせられています。この番組では、一つの企画を何週かにかけて放送します。毎週続きが楽しみです。『水曜どうでしょう』は毎週放送していくのは難しくなったということで、番組は終了しています。ただ何年かに1度は新しい企画が放送されます。ぜひ続けていってほしいです。有名になった大泉洋さんですが、今後もディレクターに言われるがまま、ムチャをしてほしいです。」(京都・中学1年男子)

  • 「僕は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)が好きです。なぜなら、数ある音楽番組の中でも生放送でアーティストが歌うという番組は、年末の『FNS歌謡祭』(フジテレビ)などの大型番組を除いてほとんどこの番組しかないからです。また、歌う前のアーティストと司会のタモリさんや竹内由恵アナウンサーとのトークも見ることができ、ファンだけでなく少し興味を持っているという人にも、そのアーティストがどのような人なのか深く関心を持ってもらえると思います。」(大分・中学3年男子)

  • 「私のお気に入りの音楽番組はNHKFM『きらクラ!』(日曜・14時~)です。『きらクラ!』の"きら"は、お気楽の"きら"ということで、クラシックって難しいなと感じている方でも、気楽に楽しんで聴ける放送だと思います。司会はタレントふかわりょうさんと、チェリスト遠藤真理さんです。この放送は曲を聴き、お2人の会話を聴くというだけではなく、リスナーから投稿もできるので番組に参加できる楽しみもあります。曲の冒頭部分のほんの少しを聴いて曲名を当てるコーナーもあり、老若男女クラシックマニアもビギナーも、楽しみいっぱいの2時間です。」(福島・中学2年女子)

  • 「ご長寿クイズ番組『アタック25』(朝日放送)が一番好きです。この番組はクイズ番組という名のスポーツだと思います。クイズに答えるだけでなくオセロの頭脳も兼ね備えなければならず、まさに体育会系です。一番好きな理由は司会者と出題者の方です。故児玉清さんの素人回答者に対するさらりとした叱咤激励が見ていて好感が持てました。浦川泰幸アナウンサーがその後を見事に引き継いでおられて違和感なく見続けられます。加藤明子アナウンサーの声も透き通っていて、聞きやすく好感が持てます。この番組に死ぬまでに一度でも出てみることが夢です。」(大阪・高校1年女子)

【委員の主な意見】

  • 番組の作り手のことをよく理解しているなという報告があった。テレビを上手く活用して生活している中高生がいることに感心した。

  • 重なった番組の報告が少なかったのは、今の中高生が翌日クラスみんなで話題にするようなテレビ番組が少なくなってしまったのかも知れないと思った。

  • リポートを読んで、今の中高生は健全な笑いを求めているのに対し、今のバラエティーは違う方向を向いているのではないかと感じた。

  • 「見ている側が蚊帳の外」や「テレビだけが娯楽ではなくなってきた」というのは鋭い指摘で、ぜひテレビ局の人に知ってほしいと思った。

  • ラジオでクラシック音楽を楽しむという今の中高生の多彩さが頼もしいと思った。

  • 音楽番組で生のアーティストの演奏に感動しているのが新鮮だった。

【今月のキラ★報告】(東京・中学3年男子)

最近のバラエティーはあまり面白くないと思ってしまいます。同じ芸人、特にベテランの芸人が独占しているように感じます。もちろん、ベテランの芸人は面白いし、そうだからこそ芸能界に長くいられるのかもしれません。ここで僕が思うのは、ベテランと若手の差です。若手の人が一生懸命考えた芸で笑いを取れず(滑って)、周りから冷たい目線を浴びます。一方でベテランの人がちょっとしたことを言うと周りは大爆笑します。けれども、両者がやっていることで質が高く、面白いのは若手の方だと思うことが多くあります。最近『アメトーーク』(テレビ朝日)という番組で、5組の「もっとテレビに出たい芸人」が出演していました。僕は、チャンスがなくて注目されていないけれど面白い芸人や、若くて優秀な芸人がスポットライトを浴びることができる番組が欲しいと思います。
そこで、最近見て面白い番組が『ワラッタメ天国』(フジテレビ)です。日曜日の24時40分~25時10分に放映されるいわゆる深夜番組ですが、最近のゴールデンに放映されるような、痛みで笑いを取るような番組よりもずっと純粋で面白い番組です。そして、普段あまりテレビで見かけない芸人たちが必死に頑張っている姿に惹かれました。番組の趣旨は、"笑えて、しかもタメになる!"です。毎回、若手の芸人たちが、小中学校で勉強する科目の中から一つ具体的なテーマを決めて猛勉強し、その知識をネタに取り込んで"研究作品"として90秒という制限時間の中で演じるというもの。判定はどれだけ笑えたのかを"ワラ点"で、どれだけタメになったのかというのを"タメ点"で審査します。
ベテランの芸人がテレビを独占しているからといって、排除しようというのではありません。しかしこの番組のように、若手で面白い芸人が今後テレビで活躍できるきっかけになるような番組があると良いと思います。

【委員会の推薦理由】

「本質を突いている」「根本的な問題提起だ」。彼の報告に対して、複数の委員からそんな声が上がりました。最近のバラエティーがあまり面白くないと感じるのはなぜか、その理由をベテランと若手という既存のヒエラルキーに依存し、力の強い者が弱い者を叩いて笑いをとる構造がもたらすものだと指摘しているのです。「同じ芸をしたり、同じことを言ったりしても、人や雰囲気で必ずベテランの方が面白くなってしまう」。最初から負け戦を闘うことを余儀なくされている若手芸人を応援したい彼は、「痛みで笑いを取るような番組よりもずっと純粋で面白い番組」として、日曜深夜という高視聴率があまり期待できない時間に放送されている新番組に注目しています。必死に勉強して挑戦する。そんな若手芸人の姿に魅力を感じている中学生がいることをぜひとも現場の方々に知ってほしいと思います。

【自由記述】

  • 最近、テレビ番組の中で特に面白くないと思うのはドラマです。もっと、話題になるほどのインパクトを持った作品が見たいです。(東京・中学1年女子)

  • のチャンネルでも、ほぼ同じニュースを同じ順番でやっているのが気になります。もう少し、ニュースの時間をずらしたり、ここだけしかやっていないというような特別なニュース、小さなニュースを知りたいと思います。(滋賀・中学1年男子)

  • 12月7日に地震が起こったとき、NHKが中国語で避難指示を出したり、津波警報が出たときに、アナウンサーが強く「避難してください」と指示を出していて、東日本大震災から教訓を学び、生かそうとしている姿勢を見て、安心した。(北海道・中学3年女子)

  • 最近の傾向として、共演者いじりが度を過ぎている場合があると思う。(福岡・高校2年女子)

  • 最近の放送について思うことは、テレビが一番のメディアではなくなってきているのかな?ということです。テレビというメディアでしかできない面白いことを、よりやっていってほしいと思います。(静岡・高校2年男子)

  • 番組がいいところに来ると「続きはCMの後で・・・」というのが多すぎます。本当に見たい番組であれば、間にいくらCMが入ったとしても、必ず見るので、そういう番組の作り方はやめてほしいと思います。(神奈川・中学2年男子)

【意見交換会(大阪)について】

2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会の詳細について、担当委員と事務局から説明し了承された。

【中高生モニター会議について】

3月17日に開催する2012年度中高生モニター会議の進行案について、事務局から説明した。

第138回 放送と青少年に関する委員会

第138回 – 2012年11月

昼間のテレビドラマの性表現について
中高生モニターについて

第138回青少年委員会は11月27日に開催され、10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見について討論するとともに、11月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。また、2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。

議事の詳細

日時
2012年11月27日(火) 午後4時30分~6時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

【視聴者意見について】

「性表現が過激、子どもが見たらどうするのか」といった視聴者意見が多数寄せられた昼間のテレビドラマについて委員間で討論した。多岐にわたる議論が行われたが、再度論点を整理するため、委員会内にチームを立ち上げ、継続討論することとした。その他、担当委員および事務局より視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで討論し、審議対象とするべき番組はなかった。

【中高生モニター報告】

11月は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」の企画書を作ってもらい27人から報告が届いた。
「報道番組」と「情報番組」の境界が分りづらくなっている現状を反映し、中高生モニターの企画書でもその傾向が現れていて、「情報系報道番組」的な企画書が半数以上を占めた。中高生にも分りやすい番組作りを目指し、好感度の高いタレントを起用したり芸能ニュースを取り上げたりするなど工夫を凝らした企画が多かった。
はっきりと「ニュース」をタイトルに出している企画書は5本あり、中でもpodcastやfacebookを使った新しい形を提案しているのが目を引いた。
「ドキュメンタリー」には、これまでのような日本人目線の作り方ではなく"世界からの視点で"考えることを提案したり、これからの自身の将来を見据えた「職業」について、また「アメリカ大統領の一日」を追いかけたり、「人権を考える」などの企画書があった。
サッカー、スケート、剣道など、スポーツや、趣味の「俳句」を扱った企画もあった。

委員の所感

  • 世界の出来事をBSやCSで視聴できる今の状況を反映して、幅の広い企画があがってきている。

  • 企画書を読んでいて、情報番組と報道番組の境はもう意識されないのだなと、あきらめの境地になった。

  • ふだん政治に対して批評しているコメンテーターを、現役国会議員たちが批評する『私ならこうする!』という企画は逆転の発想で、たいそう面白く読んだ。

  • 「地下鉄サリン事件」の企画を読んで、もう事件の全体像を知らない世代が増えてきていて、すでに歴史になってしまっていることに「はっ」とさせられた。こういった番組が作られる必要性を感じた。

  • 「若者は世界がすべて理屈で割り切れると信じすぎている」という企画は、自分たちの世代では考えられなかった発想で、ネット等で訓練された新鮮な意見だった。

  • 若い人に日本や世界の問題点について考えてもらうという企画があったが、現代という時代をどう読み解くのかは、生きていくのに一番大切なテーマであり、教養とはそういうものだと思った。

  • ちょうど解散・総選挙の時期だが、選挙に対するテーマが一つも入っていないのが特徴だ。大人のやっている政治に対して微妙な感覚のずれがあって、魅力を感じていないのかもしれないという点が気になった。

  • 熟してはいないが、今は中高生にこんな発想があるんだということを丁寧に番組制作者に伝えてゆけば、良いヒントになるのではないか。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

◆企画1.『世界で一番権力を持つ人の一日~アメリカ合衆国大統領を追う~』  (神奈川・中学2年男子)

【ねらい】
僕は、11月6日に再選を決めたオバマ米大統領のドキュメンタリーを作りたいです。アメリカ合衆国の大統領は、いったいどんな一日を過ごしているのでしょうか。世界で一番権力を持っているともいえるアメリカ大統領の一日を追いかけます。何時に起きて、何を食べ、誰に会い、どんな仕事をしているのでしょうか。大統領の専用機は、いったいどんなふうになっているのでしょうか。「ホワイトハウス」と言えば、記者会見で見るところしか知りませんが、他にもたくさんの部屋があると思います。そもそも、大きさはどのくらいなのでしょうか。何人くらいの人が働いているのでしょうか。また、日本の総理大臣とアメリカの大統領について、選び方や役割など、その違いについてしっかりと伝えたいと思います。司会は、『報道ステーション』(テレビ朝日)でおなじみの古舘伊知郎さん。何人かの解説者にも出演してもらいます。例えば、『週刊こどもニュース』(NHK)に出演していた池上彰さんや、大学の教授などです。難しくなりがちなアメリカの政治の話を、小学校高学年の人にも分かるように説明してもらいます。
視聴対象は小学校高学年からです。小・中・高校生に興味を持って見てもらいたいので、午後7時から9時に放送します。

【フジテレビ 情報企画部プロデューサー(『新・週刊フジテレビ批評』担当)の感想】

みなさんの企画、私が皆さんの年頃に、こんなにキチンとした考え方を持って世の中を見つめていたかなあと思いながら、楽しく読ませていただきました。モノを作る上で大切なのは、「これが知りたい、伝えたい」という「思い」です。いずれの企画からも、その「思い」がストレートに伝わってきました。中でも、心に刺さったのは、『世界で一番権力を持つ人の一日』です。私はこの世界に入って、もうすぐ25年。経験から、「伝えたい」ことより、時として「できること」を先に考えてしまう傾向にあります。大統領の一日、朝から晩まで是非見てみたいです!常識に縛られない自由な発想と思いを大切にしてください。

【テレビ東京 報道局取材センター社会担当デスクの感想】

中高生に向けてもっとニュースを身近でわかりやすく伝えたい、という意欲にあふれた企画書がたくさんありました。裏を返せば、通常私たちが放送しているニュースでは中高生に興味を持ってもらうような伝え方ができていないのかなと感じました。また、『世界で一番権力を持つ人の一日』は素直に私も見てみたいと思いました。大統領の仕事の紹介にとどまらず、そこを入り口に現在アメリカが抱える問題へと内容を発展させていければ、番組として深みのある面白い企画になるのではないでしょうか。

◆企画2.『同情と尊敬』  (長野・中学2年女子)

放送時間帯:夜7:00~
視聴対象:中高生、大人

【ねらい】
人権についてのドキュメンタリー番組。主に、全国水平社を創立した西光万吉さんの話。明治維新後に出された解放令。それにより、今まで差別された人々はどう変わったか、差別は無くなったと思われたが、"同情"と名前を変えただけで実は続いていた。そんな中、水平社を創立した西光さんの思いなどを伝える番組。
視聴者へ伝えたいこと:私は最近、中学で人権の授業で全国水平社を学びすごく感銘を受けました。見えない差別と戦った人々のことを、より多くの人に知ってもらいたいのでこの番組を考えました。差別の現状を視聴者に伝えたいです。

【NHK 編成局副部長の感想】

部落差別に限らず、人間は弱いために、他人を低くみることで優位にたたないと生きていけないいきもののようです。全国水平社を創立した西光万吉についてのドキュメンタリー、とても大切な企画です。わたしも『その時歴史が動いた』(NHK)という番組で2008年4月に「人間は尊敬すべきものだ~全国水平社創立~」という番組をプロデュースし、夜10時に総合テレビで全国放送しました。ただし、西光が目指したのは「同情」ではありません。「尊敬」です。なぜ「同情」を得ることを嫌い「尊敬」を得ることを目指したのか、それをテーマにして、ドキュメンタリーを構成したら、心をうつ番組になると思います。がんばってください。

◆企画3.『世界からの視点で』  (東京・高校2年女子)

【ねらい】
世界にはさまざまな問題がありますが、最近よく思うのは、どうしてもそれらの問題について"日本人目線"でしか考えられないという事です。そこで、私が今回提案する番組では、初めにその1週間のうちに世界で起こった出来事などのニュースを報道します。次に、世界各国(10ヵ国くらい)の老若男女をゲストとして招いてその国の立場、その国の国民の意見などを教えてもらいます。日本人は一般に"内向き志向"といわれていて、「海外に出て行こう」「世界で活躍したい」という思いを持つ人は、依然として世界的にみるとその数は少ないと思います。こういった番組を作ることで、視聴者は国際問題により多くの関心を持ち、さらに中立的な考えを持つことができるので、ゆくゆくは世界に出て行こうと考える人も増えるのではないかと思います。

◆企画4.『無題』  (東京・高校1年男子)

【ねらい】
先日、父親から「読んでみろ」と、日経ビジネス10月号の『世界に誇る日本の商品100』という雑誌を渡されました。読んでみると世界で売れている百種の日本商品が紹介されていて、今、日本はダメだと外国と比較して嘆いている人が多い中、ひょっとするとそんな悲観論は間違っているのではないか、払拭できるのではないか、という可能性を感じその期待を強く抱きました。「へー!」と思える内容が満載でしたが、「へー!」って思える内容であることはドキュメンタリー番組には特に必要ですよね。そこで、僕は世界に通用している日本の文化や商品やサービスなどを紹介していくドキュメンタリー番組ができたら間違いなく興味深い内容になるだろうし、なにより元気のない今の日本に必要だと思います!

【テレビ朝日 報道局チーフプロデューサー(『人生の楽園』担当)の感想】

番組として実現できそうだと思ったのは、世界に誇る日本の商品を紹介するという企画です。視聴者に「へー!」と思わせたい、「日本はダメだ」という悲観論を払拭したい、という意図がはっきりしている点が、良いと思いました。ただ、どのような番組スタイルにするのか、どのように紹介していくのかなど、"見せ方"に新鮮なアイデアを提案してほしかったです。またタイトルがついていなかったのは、残念!魅力的なタイトルは、企画=番組の重要な要素です。

◆企画5.『いくぞJ1!松本山雅』  (長野・高校1年女子)

放送時間帯:平成24年11月11日(日)AM11:00~13:00
視聴対象:長野県内のプチ山雅ファンと予備軍
キャスター:中田英寿さん(は無理だと思うので)、松木安太郎さん、元川悦子さん(松本市出身スポーツライター)

【ねらい】
昨年、奇跡的とも言える後半戦の粘りでサッカーJ2に初参入した松本山雅FC。ホーム観客動員数はJ2の中ではJ1昇格を決めた甲府に次ぐ2位。順位も反町監督のすばらしい采配で1桁以内も夢ではない。私たち信州人にサッカーの魅力を教えてくれた監督はもちろん選手やサポーターをねぎらい、来年はJ1昇格できる力があることを全国へ発信できるような特番を、最終試合のキックオフ前に放映できるような企画にしたい。

◆企画6.『五・七・五!!』  (群馬・高校1年女子)

放送時間帯:19:00~20:00
視聴対象:10~20代
キャスターほか:ベッキー(司会)、道尾秀介(作家)、堺雅人(俳優)、MIWA(歌手)、宇多喜代子(俳人)

【ねらい】
私は小学4年生から俳句を作っています。俳句というと難しいとか松尾芭蕉といったイメージしか持たれません。この番組では普段なじみのない10代~20代の人にも興味をもってもらうため、高校生による俳句甲子園を取り上げ、また現代にも通じるような俳句を紹介してゆきます。大会だけでなく、普段の学校での活動の様子も紹介し、その中で俳句の作り方や季語といったことを視聴者の方に知ってもらいます。

◆企画7.『よくわかる!日刊15分ニュース』  (滋賀・中学1年男子)

放送時間帯:配信は、朝5時、夕方5時(pod castによる)

【ねらい】
僕は、誕生日プレゼントにiPod を買ってもらいました。そのiPodで聞くことができるpod castがとても気に入って、毎日色々な番組を聞いています。pod castは、好きな時間に好きな場所で聞くことができるので便利です。
今回の企画に際して、テレビ、ラジオ以外のものでもよいかなと思って、考えてみました。時間は15分間で、1日2回の配信。pod castには色々なジャンルのものがあるけれど、毎日配信されているニュースはNHKくらいで、とても長いニュースのときもあるのが難点。毎日短時間のニュースなら、聞きやすいし、中学生や高校生が日々のニュースに関心を持てることが一番のねらい。

【TBSテレビ 報道局編集部長の感想】

若い世代が満足できるニュース番組の提案がたくさんありました。また、人気タレントをMCに起用という提案も多く、テレビは見やすくなければということを実感しました。人気のある人からの情報発信に触れたいということなのかもしれません。たいへん参考になりますし、実現性が高い提案だと思います。「松本山雅」「俳句」などは、個人の趣向を強く反映させた提案で、レギュラーの番組の中でいかに多くの人に向けて制作できるかがカギになるのでしょう。「米大統領」「人権」など、ドキュメンタリーのカテゴリーに入るものは、是非、見たいテーマです。ただし、テレビは非常に多くの人がお客さんですから、作り手だけの関心に陥らないようにする、という姿勢が大切だと思います。また、「日本文化を紹介」、「世界からの視点」は、内と外、相反する方向からのアプローチですが、テレビが知らせきっていないテーマがまだまだたくさんあるのではと思いました。最後に、「iPod向けのニュース番組」。同様の試みは既に始まっています。若者には当たり前のニーズでしょうし、近未来のメディアを考えさせる提案でした。

◆企画8.『オウム地下鉄サリン事件について特集した情報番組』  (北海道・中学3年女子)

【ねらい】
次々とオウムの指名手配犯が捕まって話題になりましたが、サリン事件は17年前に起こりました。直接事件を知らない、覚えていない人が増えています。私も直接は事件を知りません。そこで、事件を知らない年代を対象にしたオウム地下鉄サリン事件の情報番組があればいいと思います。私たち「若者」は世界が全て理屈で割り切れると信じすぎていると思います。理屈に合わないことは起こるわけがないと、信じすぎている気がします。理屈にあわない、自分たちとは違う考え方をしている人たちがいること、何の恨みをかっていなくてもある日被害者にされることがあることを知るのは重要だと思います。

【日本テレビ 報道局プロデューサー(『news every.』担当)の感想】

デイリーの報道番組を制作していますと、フォーマットに固執して新しい表現方法の開発を忘れがちになります。今回、企画書等を拝見し学生の皆さんの「発想の斬新さ」「切り口の新鮮さ」に驚き大変刺激になりました。また、オウム事件など過去の大きな事案について、世代間の認識を議論する番組企画提案がありましたが、非常に興味深く実現出来ないか検討したいと思いました。

【自由記述】

「ぜひ見てみたい」「見て良かった」番組について書いてもらい、20人から報告があった。

  • 私は、日本テレビ11月3日(土)の『NEWS ZERO特別版 櫻井翔 世界を、取材する。』を見ました。映像の中にはふだん見るアメリカの様子とは相反するような、テントで生活する方々の姿がありました。私は、苦しい生活をおくっている人の最低限の願いが、大統領のもとに届いているのかと不安になりました。(東京・中学2年女子)

  • 見て良かった番組は、『探偵ナイトスクープ』(朝日放送)です。笑ってしまうような依頼でもその道のプロや学者さん、芸能人と一緒に解決します。笑いあり涙ありの番組なので大好きです。(大阪・高校1年女子)

  • 最近BS放送で、毎朝5時から『ワールドWave』(NHKBS)という番組を見ています。日本のニュース番組では知ることのできない世界の出来事を知ることができる他、英語の勉強にも役立っています。(東京・高校2年女子)

  • 友だちにすすめられて見た『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(フジテレビ)。タイトル通り「そんなこと、あるわけないよ」と思いながらも、ついつい引き込まれるように見てしまいました。(神奈川・中学2年男子)

  • 『クイズ!オーサカ理由学』(毎日放送)を見ました。ふだんから慣れ親しんだ"オーサカ"の謎の理由の答えがいっぱいあって、おもわず「へぇーっ」と言ってしまうばかりでした。(大阪・高校2年男子)

  • 『世界ナゼそこに?日本人 3時間スペシャル~知られざる波瀾万丈伝~』(テレビ東京)という番組はぜひ見たいです!(東京・高校1年男子)

  • 最近「見てよかった」と思う番組があまりないように感じます・・・。(大分・中学3年男子)

【2013年度青少年委員会活動について】

  • 2013年1月22日に大阪で開催するNHKを含む在阪準キーテレビ6局との意見交換会について事務局から概要を説明するとともに、2013年度中高生モニター募集の実施要項と、2013年度青少年委員会活動計画案についても了承された。

第137回 放送と青少年に関する委員会

第137回 – 2012年10月

2番組(『ポケモンスマッシュ!』『今日感テレビ』)について意見交換と審議

中高生モニターについて

前回の委員会で「審議対象」とした2番組と、10月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。また、9月16日から10月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、これからの委員会活動等について委員間で討論した。

議事の詳細

日時
2012年10月23日(火) 午後4時30分~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

2番組(『ポケモンスマッシュ!』『今日感テレビ』)について意見交換と審議

(1)テレビ東京『ポケモンスマッシュ!』7月22日放送について番組制作者との意見交換

視聴者からの「“ゴムパッチン”“洗濯バサミ”等による“罰ゲーム”は、人気の子ども番組だけに行うべきではない」という意見を受け、当該番組の制作責任者及び編成責任者と企画意図等について意見交換を行った。

◆テレビ東京意見概要

【企画内容について】
『ポケモンスマッシュ!』は、アニメ、映画、ゲーム、カードゲームなどのポケモンの様々なコンテンツに毎回アレンジを加え、その魅力や情報を面白おかしく伝えるとともに、子どもたちに笑ったり、ドキドキ、ワクワクしてもらったりすることで、元気や希望を与えていきたいというコンセプトで制作しています。今回、ご意見が寄せられた7月22日の放送はカードゲームを題材に取り上げて制作した回で、ちょうど新しいポケモンカードのシリーズが登場しましたので、改めてカードゲームのルールや魅力というものを、分かりやすく、面白おかしく、バラエティー番組として伝えていこうという企画でした。
ポケモンのカードゲームというのは、それぞれ2人が対戦するもので、山札に積んであるカードを引いて、ポケモンを引いたり、エネルギーのカードを引いたりして競います。ポケモンが技を繰り出すためにはエネルギーが必要で、エネルギーのカードをたくさん集めて技を出すのがポイントです。今回、そのカードゲームを実写にするに当たり、タレントさんたちにポケモンに扮してもらい、カードの代わりに“甘辛”のシュークリームを食べて、甘いクリームを食べるとエネルギーが蓄えられ、集めたエネルギーによって技を出して、相手のライフポイントを減らしてゼロにしたほうが勝ちというルールの対戦バトルを設定しました。
【“ゴムパッチン”について】
 ポケモンたちのなかにはドラゴンというタイプのポケモンがいて、そのドラゴンの技にドラゴンストリーム(りゅうのいぶき)があります。口から嵐のようなものをドラゴンが吐き出して、敵にダメージを与えるという技ですが、今回はその技で口からゴムを吐き出すのはどうかと考え、“ゴムパッチン”が登場するわけです。もちろん、子ども向け番組ということは、制作者一同強く意識しておりまして、子どもたちに楽しんでもらいたいというのが、一番大きなコンセプトでありますから、その技を放送したことによって悪影響を与えることがないか、不快な思いをさせたり、いじめや暴力を想起させたり誘発させたりする内容になっていないかということや、子どもたちが簡単に真似できる仕掛けかどうか、真似できる場合には危険性がないかという点についても常に意識を配って考えております。また収録前にはスタッフによるリハーサルで、実際にその技を使って危険性がないかどうかということに関しても、厳重なチェックを行いました。そのうえで、“ゴムパッチン”については危険性は認められず、内容としても“笑い”の表現として許容される範囲内の描写であるとの判断の元、収録・放送に至ったものです。
【テレビ東京の見解】
テレビ東京としては、“ゴムパッチン”をはじめ今回ご指摘いただいた表現が即、放送に不適切とまでは考えておりません。その表現がどのような意味を持ち、どんな印象を与えるのかは、その描かれ方や状況よってまったく変わってきますし、お笑いの演出法として否定されるものではないと思います。「揉めるから止めておこう」と制作者が短絡的に考えてしまうことを危惧します。
ただし今回、子ども番組であることを念頭に、表現にも充分注意のうえ制作したにもかかわらず、制作者の意図とは全く違う印象を持つ視聴者がいらしたことは事実として真摯に受け止めております。番組の説明に不足しているところはなかったか、表現に工夫の余地はなかったのかを検証するとともに、今後「視聴者がどう感じるか」により敏感な番組作りに努めてまいりたいと思います。
なお、2008年に“ゴムパッチン”が青少年委員会で取り上げられたことについて、社内の周知が足りなかったことは事実であり、その点につきましては改善してまいります。ただ、社内での情報共有、周知徹底は強化しており、放送内容の向上に真摯に取り組んでいる弊社の姿勢は是非ご理解いただければと思います。

【青少年委員の主な意見】

  • “ゴムパッチン”は、子ども番組に限らず一般番組でも、視聴者の視点から考えて配慮する必要があるのではないか。実際に子どもたちがこの番組を見て、楽しいとか面白いと思っているのかどうか、見る側の視点から発想することはできないだろうか。
  • いじめがクローズアップされている時期に、「ライフポイント」を削るゲームを人にやらせる、人がやっているということに、“なにかドキッとする”感覚をおぼえた。
  • “ふざけ”とか“遊び”として行うことの中で、される側が恐怖や苦痛を感じる、その構図を“笑い”として放送するのは、子どもには影響があるのではないだろうか。
  • “ゴムパッチン”や“ハリセン”といった古典的なゲームも楽しいが、時代に応じたクリエイティブ力を発揮してほしい。子どもたちに人気のアニメの企画なら、もっと子どもたちを惹き付ける楽しい遊びが生み出せるのではないか。
  • どういう方法で“笑い”をとっていくのか、時代の変化や日本の笑いのレベルをどうするか、ということを考えて、企画を考えていってほしい。

【委員会の考え】

番組の中で“ゴムパッチン”等はポケモンの攻撃技として使われたという制作者側の説明があったが、視聴者には“罰ゲーム”という印象を強く与えるものであったことは否定できない。
2008年に他の放送局の“ゴムパッチン”について委員会審議した事例では、ゴムを徐々に長くするなど“罰ゲーム”の反復がエスカレートしていったことに端を発したものであり、その経緯についての理解を当該放送局の制作者側に求めたい。どこまでが許容範囲かということについて明確な基準を設けることはできないが、“罰ゲーム”は、出演者の安全面に対する配慮だけではなく、それが視聴者にどう受け止められるかということにもっと想像力を働かせる必要がある。とりわけ子ども向けの番組においては、バラエティー番組で広く“罰ゲーム”とされているような装置や道具を安易に使用することにより慎重であることが望まれる。当該番組の制作の過程では、「いじめという印象を与えない」「簡単にマネをされない」「出演者の苦痛を強調しない」といった配慮はなされていたようだが、単なる模倣やいじめの可能性がないというだけではなく、「出演者が痛がる嫌がる様子を見て笑う、面白がる」といった演出手法がバラエティー番組の中で常態化し、そうした「笑いの構図」が一般化することに本委員会は危惧の念を抱いている。
これまでも本委員会は2000年に「バラエティー系番組に対する見解」、2004年に「『子ども向け番組』についての提言」、2007年に「『出演者の心身に加えられる暴力』に関する見解」を表明してきた。今回、番組の制作責任者との意見交換をしたこととあわせ、あらためてすべての放送局に、“ゴムパッチン”などの“罰ゲームのあり方”について自主的な検討を要請したい。

(2)RKB毎日放送『今日感テレビ』8月20日放送分の当該局からの回答

人気アイドルグループの5人の少女が芸能活動を辞めたことを伝えたコーナーで、5人の実名報道を行い、さらに、未確認の”ネット情報”を伝えたことに対する複数の視聴者意見を受けて、前回書面での回答を要請した件につき、当該局から以下の回答がありました。
※回答のお願いに関しては前回9月の議事概要を参照ください。

【RKB毎日放送からの回答】

(1)制作現場でのコミュニケーションのあり方について

  • 経緯と原因について
    ディレクターは放送前日にプロデューサーと打ち合わせし、「スポーツ紙報道の引用でいく」ことを決めましたが、その時点で、出所不明の噂話である“ネット情報”が拡散していることを知り、この情報が放送されてはならないと考えました。そこで出演者からこの件についての問いかけがある場合に備えて、台本上にそのネット情報を「参考まで」として記載し、男女リポーターとの打ち合わせでは、「飲酒・喫煙について問われたときは、『ネットで出てはいるが、噂ですからね』と、否定してください」と指示しました。
     芸能コーナー冒頭の「振り」を担当する男性リポーターはこれを正しく理解していましたが、話題を展開する担当の女性リポーターは正確に理解せず、その結果、放送してはならない情報が放送される結果を招きました。
  • 放送後の対応について
     放送の際、副調整室にいたディレクターは「行きすぎた」と感じましたが、リポーターの発言を止める、あるいは訂正するなどの対処を行いませんでした。またプロデューサーはじめ番組関係者のいずれも、放送中及び放送終了後の問題提起を行いませんでした。
     この問題を社として認識したのは翌21日朝です。問題を指摘する視聴者からのメールと当社の「ご意見フォーム」への書き込みを視聴者広報センターが開き、放送同録を視聴して指摘された点を確認しました。そこで報道制作センター、テレビ編成局と緊急に協議し、当日の『今日感テレビ』の冒頭で、番組キャスターによる謝罪と訂正を行いました。

(2)ネット情報の取り扱いについて

  • “ネット情報”との対峙
    今日、社会のあらゆる分野にインターネットが浸透し、キーワードを検索すれば直ちに候補が提示される“ネット情報”は際立って便利なツールとして、放送の現場でも取材に先立つリサーチなどで広く利用されています。
     しかし、“ネット情報”はすべてが同一の水準というわけではありません。そこに書き込まれた内容は、単なる噂から流言飛語、推測や誤解、誤報あるいは意図的な虚報まで存在します。その一方、自らの身分を明示し、責任ある立場で提示される情報もあり、個人が発信する内部告発など、直ちに信用することはできないにしても、極めて有用な情報につながる“種”も含まれています。したがって“ネット情報”すべてを排除することは難しい問題と考えます。
  • “ネット情報”の分別と検証
    当社が遵守・準用する系列キー局の「報道倫理ガイドライン2011」では、“ネット情報”について「インターネットの情報はまさに玉石混交である。誰が、どういう組織が発信しているのかを充分に把握した上で、鋭い選択眼をもって情報に接することが求められる」とされています。大切なことは、玉石混交の“ネット情報”をどう峻別し取捨選択するかです。それについては報道機関としての取材・検証・報道のプロセスが有効と考えられます。“ネット情報”についてはさまざまなルートから“裏”を取り、それらすべてを照合して事実確認して報道に至る手順を適用します。

(3)未成年者の報道について

  • 一般の未成年者の場合
     メディアの基本的姿勢は、実名報道にあると考えます。その中で少年事件報道は、例外的に匿名報道を適用すべきケースの一つと考えます。当社では遵守・準用している「報道倫理ガイドライン2011」に記載されている、少年法第61条の規定を尊重して、少年事件の容疑者の実名・写真は報道しません。また、今回の芸能報道はいわゆる少年事件ではありませんが、未成年者の「飲酒・喫煙」は法で禁じられている行為であり、今回のように「飲酒・喫煙」を疑わせる内容を放送する場合には、実名・写真は報道しないのが原則です。
  • 過去に芸能人であった未成年者の場合
     芸能人をはじめいわゆる有名人については、一般の人々では許されないプライバシーに関わる報道もある程度許容される、という考えに基づいて、スポーツ紙の芸能面、テレビの芸能コーナーなどは制作されています。有名人でなくなった場合の報道には、慎重な検討が必要であり、未成年者の場合はさらに格段の配慮が必要です。その上で今回のケースを考えれば、「突然グループを脱退した」という第一報については実名・写真は許容されるのではないでしょうか。もちろん時間が経過して高校生、中学生としての生活に戻った時点では、一般の未成年者同様にプライバシーは保護されるべきと考えます。
  • 明らかになった問題点
     今回は、(1)スタッフ間のコミュニケーションに齟齬があり、それによって(2)出所不明の“ネット情報”を放送し、その結果、(3)元芸能人である未成年者に、あたかも法に反する行為があったような印象を視聴者に与え、関係者の皆様を傷つける結果を生じました。また、番組関係者はその場での訂正、ないしその後の問題提起を行なわず、その認識に問題があることが明らかになりました。
  • 再発防止に向けて
     当社ではこれらの問題点を踏まえ、遵守・準用してきた系列キー局の「報道倫理ガイドライン2011」に加えて、当社独自の「RKB番組制作ガイドライン(指針)」を策定するとともに、報道制作センターに所属する番組制作担当6部への指導として、報道機関の有識者を招いた研修会を4回開催し(参加のべ160人)、下記を柱とした啓発を行いました。ガイドライン及び再発防止対策は、今後も継続して周知・徹底を図ってまいります。

(1)制作現場でのコミュニケーションのあり方について
 ●台本には、放送しない情報は原則として付加しない。
 ●放送に使用しない参考情報を共有する際は、「どこまで放送にのせるか」を明確にし、相互に確認する。「あうんの呼吸」は不可とする。
 ●プロデューサー・ディレクター・リポーターを問わず、番組関係者で番組の内容、進行に関する説明や台本などに疑問が生じた場合は、直ちに「どういう意図で、どの内容を、どう展開するのか」確認する。十分に理解しないまま、放送に臨むことは認めない。
(2)ネット情報の取り扱いについて
 ●出所不明の“ネット情報”は、事実確認できない限り放送には使用しない。「~という噂もネット上に流れています」という表現も不可とする。
(3)未成年者の報道について
 ●芸能人も含めて、未成年者に関する情報は特別な配慮を持って取り扱う。放送する内容・範囲は、番組プロデューサーの責任で決定する。
(4)問題発生時の対処について
 ●放送すべきでない情報が出たとき、また放送にふさわしくない表現や発言があったときは、直ちに訂正などの処置をとる。プロデューサー、ディレクターのみならず番組に関わる全員に責任がある事を認識する。

【青少年委員の主な意見】

  • 子どもの権利条約においても、子どものプライバシー・通信・名誉の保護を規定している。したがって、未成年者の飲酒や喫煙といったマイナスになる報道は、たとえ芸能人とはいえ、未成年であることを考慮して慎重になされるべきものと考える。つまり、未成年の芸能人の私生活に関する報道については、「未成年者」という特質を十分配慮して違法か違法でないかを考える以前の問題として謙仰的な態度が求められる。
  • 対象者が数日前まで芸能人であったという繊細な事情があるとはいえ、そもそも「未成年者の人権」ということへの配慮が制作者側に希薄だったのではないか。これは、RKB毎日放送だけの問題というよりは、この事案を契機としてテレビ局全体の問題として“未成年者の人権”について真剣に考えるべきではないだろうか。
  • 裏付けのない“ネット情報”を、あたかも事実であるかのようにテレビで報道することは、今後ますます重要な問題となる。

【委員会の考え】

当該放送局からの回答を得て第137回青少年委員会で審議の結果、(1)局の回答を基本的に了解する。しかし、未成年者の人権については番組制作の中で十分な配慮がなされることをRKB毎日放送に強く要望する。同時に、委員会としては、テレビ番組の中で子どもの人権への配慮がなされることを、すべての放送局の番組についても強い問題意識の下に見守り続けていくつもりである。(2)ネット情報や新聞情報を鵜呑みにしたテレビ報道が増大していることについて、委員会は強い危惧の念を抱いている。この問題について、RKB毎日放送は今後徹底した事実関係の検証と再発を防ぐ取り組みを行い、今後の番組制作に反映されることを求めたい。
 なお、(1)制作段階での情報共有の徹底、(2)確認の取れない“ネット情報”の安易な取り扱いと流用の排除、(3)未成年者の人権の尊重、という問題は今回の『今日感テレビ』だけの問題ではなく、すべての放送局が遵守するべき課題という認識を委員間で確認し、全放送局に強く注意を促したい。

【視聴者からの意見について】

担当委員及び事務局より、今月の視聴者意見の概要等について報告を受けた上で討論し、特段問題視する番組はなかった。

【中高生モニター報告】

10月は「最近一番関心のあるニュースは何ですか。それをどんな番組で視聴していますか。どんな司会者や内容なら見てみたいと思いますか」というテーマに、25人から報告が届いた。
一番関心の高かったニュースは「尖閣諸島や竹島問題」で、10人からリポートが寄せられた。「中国や韓国の良さを伝え、歩み寄るような報道をすることで冷静に領土問題を見つめられる」、「一部のメディアによる情報の偏りを避けるため色々な番組を視聴するように心がけている」という意見に代表されるように、冷静さを持って成り行きを見守っている様子がうかがわれた。
次に「山中教授のノーベル賞受賞」関連のニュースには9人から報告が寄せられた。「iPS細胞に関してほとんど知識はないが、明るいニュースだ」。また『とくダネ!』(フジテレビ)や『おはよう日本』(NHK)では「iPS細胞について分りやすく説明してくれた」という意見も届いている。その後の「虚偽が疑われるiPS細胞を使った治療」のニュースについては、テレビが不適切な報道をした時の対応について「謝罪で終わるのではなく、間違いを犯したことをもっと大々的に自ら報道すべきだ」という意見もあった。
今回最も多く報告が寄せられたのは『報道ステーション』(テレビ朝日)で5人、司会者として希望が一番多かったのは『学べるニュース』(テレビ朝日)の池上彰さんだった。

<自由記述>は、「ラジオはあなたにとってどんな存在ですか。気になる番組を教えてください」と聞いた。ラジオに接する機会はほとんど無いという意見も寄せられたが、一方で一番手軽な情報源としてニュースや音楽情報を得ていたり、災害時のラジオの重要性を認識しているという報もが届いた。

【主な意見】

  • 「夕方見るニュース番組が特に決まっているわけではありませんが、大体、『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日)を見ています。この時間の他のニュース番組と違ってエンタメニュースが少なく、メインキャスターをテレビ局のアナウンサーが担当しているので、この番組を選んでいます。これに関しては大変良いことだと思います。しかし、去年、小宮山厚生労働相(当時)がたばこ税の増税について発言したというニュースで、愛煙家の男性キャスターが意見していたことが、僕は気になりました。世間の意見が分かれる中で、本来ニュースを伝える役であるキャスターが、そのことに偏った意見を述べてもよいのでしょうか。視聴者がニュースにそれぞれ意見を持つことの妨げになってしまうのではないでしょうか。キャスターとコメンテーターの違いをはっきりしないといけないと僕は思いました。」
    (東京・中学2年男子)
  • 「私が最近関心のあるニュースは、やはりいじめについてです。大津での事件を発端に、様々ないじめや教育現場の実態が明らかになりました。しかし以前にもいじめ問題は叫ばれていました。事が大きくなってからメディアが伝えるのでは後の祭りです。その時限りではなく、深く突きつめ風化させないメディアであってほしいです。私はふだん聴いているのは、毎週月曜~木曜17:00~19:45にFM NACK5で放送されている『夕焼けシャトル』です。ピックアップしたニュースを専門家とともに解説しているコーナーはとても分りやすく、あらゆるニュースを深く取り扱っていて、とても充実した内容の番組です。」
    (群馬・高校2年女子)
  • 「私の興味があるのは、iPS細胞関連のニュースで、その中でも森口尚史氏が世界初のiPS細胞を使った治療を行った、という報告が嘘かもしれない、というニュースです。テレビ局は森口氏がiPS細胞を使った治療を行ったと言う報道は裏づけ調査の不十分な不適切なものだった、と謝罪しましたが、今度はしっかりと本当は何が起こっているのか、森口氏の主張していることとハーバード大学の主張の食い違いはどうして起こっているのか、を調べて報道してほしいと思いました。それがテレビの責任だと思います。」
    (札幌・中学3年女子)
  • 「私は最近iPS細胞の研究でノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授についてのニュースに興味があります。ちょうど学校の授業でもiPS細胞について学んだところだったので、より関心を持つことができました。しかし、険しい顔をした人が司会をやっているニュースや、真面目な雰囲気の番組でしか扱っていないことが残念です。せっかくiPS細胞の存在を知ってもらえる機会なので、ここは老若男女関係なく知ってもらえるように、明石家さんまさんや、池上彰さん、嵐の櫻井翔さん、くりぃむしちゅーの上田晋也さんなどのメジャーな人気司会者で、かつ、様々な年代の支持を受けている方が司会をすれば、多くの視聴者が見るため、よりiPS細胞を知ってもらえると思います。」
    (神奈川・中学3年女子)
  • 「僕にとって今関心があるのは、日中韓関係の急激な悪化にまつわるニュースです。僕はこのニュースをテレビの報道番組やニュースでも見ていますが、テレビだけでなくインターネットやラジオを通じて手に入れています。歴史的な認識や民族性などの違いが絡み合った、とても複雑な問題だけに、一部のメディアによる情報や見方に偏ってしまうことを避けるためにも、いろいろな番組を視聴するように心がけているつもりです。」
    (東京・高校1年男子)
  • 「私が最近一番興味のあるニュースは“日本と中国の関係性について”です。尖閣諸島の問題により、中国の日本に対する姿勢は明らかに以前とは違ったものになっています。私は、自分たちの国に今起こっていることを分かりやすく解説する番組があるといいと思います。たとえば司会者には中高生に人気のあるアイドルを採用して、解説者にはそのニュースに対応した各方面の専門家の方に協力してもらいます。最後にその日に学んだことをテスト形式にして、本当に理解しているかを確かめます。子どもだけでなく大人も楽しめるような番組だといいと思います。」
    (神奈川・高校2年女子)
  • 「私が一番関心を持っているのは、中国や韓国との領土問題をはじめとする外交についてです。最近、日本の外交問題が多く累積しており、お互いの国でそれぞれの見解を報道していますが、双方の国が互いに自分の主張を繰り返すだけで、歩み寄る努力がされているようには思えません。私は、多国間の報道を比べた上で、その国々の人を交えたり、意見を参考にしたりして、様々な観点からアプローチした番組があればいいなと思います。」
    (福岡・高校2年女子)
  • 「僕の将来の夢は宇宙飛行士になることなので、いつも宇宙に関するニュースに注目しています。特に今一番関心を持っているのは、アメリカのスペースX社の無人宇宙船「ドラゴン」がISSにドッキングしたことや、JAXAの油井宇宙飛行士が2015年にISSに長期滞在することが決定したことなどです。宇宙に関するニュース番組はNHKが一番充実していると思うので、テレビでは主にNHKから情報を得ていますが、より詳しく知りたい時は、新聞やインターネット(JAXAのホームページや、NASAのアプリケーション)も活用しています。」
    (東京・中学2年男子)
  • 「私が今一番関心のあるニュースはシリアの内戦です。きっかけはテレビではなく、英語の授業で読んだ英字新聞でした。その後、ジャーナリストの山本美香さんがシリアのアレッポで射殺されてしまったという悲しい出来事があり、ニュースは朝も夕方もそのことで持ちきりでした。そのニュースはとてもショッキングでしたが、いままであまり目を向けられることがなかった、海外の戦闘地域などで活動するジャーナリストの方々の苦労や勇気ある行動の数々が注目されるようになるいい機会ともなりました。しかし、私はどこかで冷めた気持ちでそのニュースばかりが取り上げられている様子を見ていました。日本のメディアは日本人が亡くなったらそれを重大ニュースにするが、シリアで何万人のシリア人が亡くなろうともそれをさほど大きく取り上げることはありません。それらの情報を一般的な日本人という主観によってのみ切り取るのではやはり偏りがでてしまうと思うので、バランスと報道番組としての役目をもっと考えた番組作りが必要なのではと最近思います。」 
    (東京・高校2年女子)

【委員の所感】

  • 今回のように外交・領土問題や、iPS細胞をテーマとする硬派なニュースの報告が多かったのは、モニターの皆さんの社会問題に対する関心の高さが感じられ嬉しかった。
  • ネットニュースの活用が当たり前になっていることを実感した。ネットリテラシーを身につけないと相当のリスクがあることをしっかり考えてほしい。
  • 領土問題でもバランスが取れて安心できるコメントが多く、さらにメディアに対しても深い掘り下げができているのを感じた。
  • 扇情的な報道にのせられないようにマスコミへの接し方を身につけている報告に感心した。
  • ラジオに言及している報告が多く、ラジオは決して廃れたメディアではないという意見はまさしくその通りで心強く思った。
  • 誤った報道をしてしまった場合、その放送局でなぜそうなったのかしっかり検証してほしいという意見には、全く同感だ。

【今月のキラ★報告】(東京・中学3年女子)

私は夏休みの宿題で新聞スクラップというものをしてから、尖閣諸島、竹島問題などの領土問題に敏感になり、先の見えない両国の話し合いに興味を持つようになりました。それらの情報は、夜の『報道ステーション』や新聞、yahoo!ニュースで得るようにしています。
 確かに尖閣、竹島問題は深刻で、日本にとっては緊迫感を緩められない大切な内容だと思います。また今はそのなかで最も真剣に向き合っていかなければならない時期なのだと思います。今の報道で、私たち中学生は少しずつ国際問題も理解し始めました。けれども、まだまだ小さい子たちの頭にはきっと「中国や韓国は良くない国だ」という印象しか持てないように感じます。
もちろん、正しい事を報道するのが、マスメディアの役目です。だから、不法侵入してくる船や、韓国大統領の急な竹島への上陸などは、きちんと国民に伝えるべきです。しかし、野田首相の発言や、国の動きなどの事実を伝え、それを受けた国民の感情は自由ですが、事実を伝えることと、それにかぶせるように反韓、反中のイメージを国民に植えつけるのは違うと思います。
深刻さ、真剣さを伝えつつも、われわれ日本人ではあるけれども、中国には深い歴史があり、素晴らしい世界遺産などもたくさんあることや、韓国も韓流ブームを日本に巻き起こし、日本に笑顔をもたらせていることなど、2つの国の良さを伝え、戦う姿勢、抗議する姿勢だけを見せるのではなく、歩み寄るような報道をすることで、国民感情も抑えられ、冷静に領土問題を見つめられると思います。
司会者は、誰、とは希望はしませんが、タレントが「深刻ですよねー」とか、うわべだけでこなすというよりは、実際に両国に足を運んだことがあり、良さも悪さも語れる専門家や、同じ俳優や女優などでも、現地の国に詳しい方を厳選して起用していただきたいです。
 また、アニメやドラマなどを利用して、様々な問題を取り上げるのもありだと思います。今人気の漫画を使ったり、ふだんのドラマの中で何気なくニュース性のある要素を取り入れたり、クイズ番組でも、漢字や雑学のクイズに交えて、今の社会情勢を取り入れたり、お笑いのNo1を決める番組などでも、テーマとして「今話題性のある政治的ニュースを取り入れること」などすれば、面白くなると思います。
 私たち子どもはテレビが好きです。そのテレビ好きを各局がどう上手く生かして、知っておくべき日本の今を、心に、頭に深く焼きつくように伝えるか……私自身も楽しみです。

【委員会の推薦理由】

彼女は尖閣諸島や竹島の問題に興味を持ちました。とてもデリケートな問題です。一読して、印象に残ったのは、報道機関は「事実を伝え」つつも、相手国の「良さを伝え、戦う姿勢、抗議する姿勢だけを見せるのではなく、歩み寄るような報道を」という部分です。
 これはとても大事だと思います。こと一国側からの言い分だけですと「相手国憎し」という感情が先立ちがちですが、そこで一歩引いた報道ができるかどうかが、その国の放送文化の成熟(いえ、文化一般の成熟といっていいかもしれません)と関係していると思うのです。「両国に足を運び良さも悪さも語れる専門家」「現地国に詳しい俳優・女優」を起用すべきですとか、様々な提案をしてくれています。報道の現場の人にぜひ読んでもらいたいと思います。

【主な自由記述】

  • 「ラジオは僕にとっては、時計です。平日の朝から夕方まで、KBSラジオがつきっぱなしです。大きな局は違うかもしれませんが、地方局は常連リスナーさんが、パーソナリティーさんに覚えてもらえるので、本当に楽しいです。」
    (京都・中学1年男子)
  • 「僕が毎日聴いている番組は、月曜から金曜まで毎日15分放送しているオーディオドラマ『青春アドベンチャー』(NHKFM)です。オーディオドラマのすごいところは、映像で表現できないことを音で表現できるところです。その声、音をどう受け取るかによって頭の中で出来上がるストーリーが違うので、一つの物語でも聴いている人の数だけストーリーがあるというのが、テレビドラマ、映画と違うところで、これは素敵なことだと思います。」
    (東京・中学3年男子)
  • 「東日本大震災で、停電してテレビが使えない僕たちに様々な情報を提供してくれたのはラジオでした。それから余震が続いた現地で、ラジオは欠かせない存在となりました。今では余震も、回数が少なくなり、ラジオの使用は震災前と変わらなくなりつつありますが、あれから、僕たちにとってラジオとは『いざという時の為に絶対に欠かせないスーパーサブ』となりました。」
    (宮城・中学2年男子)
  • 「私は学校の英語の授業でNHKの『基礎英語』をつかっているので、ラジオは割と身近な存在です。決してラジオは廃れた情報機関ではないと思います。天気予報、鉄道情報などまだまだ欠かせない情報網の1つだと思います。」
    (東京・中学3年女子)
  • 「僕にとってラジオとは、実際の利用という面では少し遠い存在にあります。最近はあまり聴く機会がないけれど、なくなってしまっては悲しいもので、イメージではとても身近にある存在です。」
    (静岡・高校2年男子)

【今後の青少年委員会活動について】

  • 2013年1月22日(火)、青少年委員会を大阪で開催するとともに、在阪準キー5局とNHK大阪放送局の制作担当者との意見交換会を開催することを決めた。
  • そのほか、次回の「調査・研究」チームの立ち上げ等について提案が出され、次回以降の委員会で議論することとした。

第136回 放送と青少年に関する委員会

第136回 – 2012年9月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて …など

第136回青少年委員会は、8月は休会したため、7月16日から9月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、9月に寄せられた中高生モニター報告と10月のテーマについて審議したほか、これからの委員会活動等について委員間で討論した。
また、委員会終了後、在京テレビキー局6社の連絡責任者と委員間で、青少年委員会活動などについて自由な意見交換を行った。

議事の詳細

日時
2012年9月25日(火) 午後4時~5時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より2ヵ月間の視聴者意見の概要等の報告を受けた結果、子ども向け番組と情報番組の2番組を委員全員が視聴して討論し、審議対象とすることとなった。また、視聴者意見の多かったバラエティー番組等についても委員間で討論した。

(1)テレビ東京『ポケモンスマッシュ!』(7月22日放送)について

“ゴムパッチン”や”洗濯バサミ”による”罰ゲーム”などは人気の子ども番組だけに行うべきではないという複数の視聴者意見を受けて委員間で討論した結果、”ゴムパッチン”については2008年度に注意喚起した経緯を踏まえて、「審議対象番組とする」という結論に達し、次回委員会に制作担当者の出席を要請して意見交換することとした。

(2)RKB毎日放送『今日感テレビ』(8月20日放送)について

人気アイドルグループの5人の少女が芸能活動を辞めたことを伝えたコーナーで、5人の実名報道を行い、さらに、未確認の”ネット情報”を伝えたことに対する複数の視聴者意見を受けて委員間で討論した結果、「審議対象番組とする」という結論に達し、次回の委員会までに以下の3点について、書面での回答を要請することとした。

  • 制作現場でのコミュニケーションのあり方について
    当初、出所が明らかでない”ネット情報”には言及しないとの確認がありながら、現場リポーターに伝わらなかったことについて、その経緯と今後の対応についてご説明ください。
  • ネット情報の取り扱いについて
    “ネット情報”の取り扱いについて(すべてをダメとするのか、伝え方に十分配慮して放送するのか)、貴社のガイドラインつくりの考え方を含めてお聞かせください。
  • 未成年者の報道について
    直前まで芸能人であった未成年者をどう報道していけばいいのか、実名・顔出しをすべてなしにするのかどうか、一般の未成年者を報道する場合と、過去に芸能人であった未成年者を報道するという特殊な場合と、双方について未成年者の人権に対する貴社のお考えをお聞かせください。

そのほか、視聴者意見の多かった番組について委員間で討論した。「明治の著名人たちを水着の女性たちに”抱かれたくないのは誰?”と質問した番組」については過剰に著名人を神聖視する必要はないのではないか、「外国から嫁いできた女性の依頼でセミを捕って食べた番組」については”食文化の差”の問題ではないか、との結論から、2番組については特段問題視しないこととした。

【視聴者意見の審議過程の変更について】

青少年委員会では視聴者意見に対する委員間の自由な議論の場として「討論」という段階を運用上設け、そこで審議対象とするかどうかの判断をすることとした。「討論」の段階で議論した案件については、その内容を当該放送事業者に伝えるとともに、その概要をBPO報告やホームページに掲載する。また、「討論」の過程では「良い番組」についても委員間で視聴・議論し、公表する。
「討論」の結果「審議」することとなった場合は、必要に応じて制作責任者との意見交換や文書回答などをふまえて委員間で議論し、青少年が視聴する番組の向上に資する”委員会の考え”をまとめる。「審議」のなかで交わされた各委員の発言やその結論については、当該放送事業者に伝えるとともに、BPO報告やホームページに掲載して公表し、放送事業者の自主的検討を要請する。また、「見解」などを公表することもある。

中高生モニターについて

9月は「ニュース・報道番組」を見て、中高生にとって分りやすい番組作りができているか、関心のあるテーマを取り上げているかなどを報告してもらい、30人から報告が寄せられた。
「ふだんから報道番組はほとんど見ない」、「いきなり難しい用語が当たり前のように出てきて分りやすい番組作りはできていない」という厳しい意見も見受けられた。
また、報道番組と情報番組の境界が分りづらくなってきているのか、もっとも多くの意見が寄せられた番組は『ZIP!』(日本テレビ)の7件だった。「ニュースの内容を分りやすく説明している」、「芸能ニュースが学校で話題になる」という一方、「ニュースがだんだんバラエティー番組に近づいている」という指摘もあった。
『報道ステーション』(テレビ朝日)には5件の意見が寄せられ、「世間で話題になっているニュースを分りやすく解説してくれる」という意見の一方、「中学1年の僕のレベルには難しすぎてついてゆけない」などの意見もあった。
NHKの『おはよう日本』や『ニュース7』については、「NHKは他の局と比べて真面目なイメージがある」、「情報が素直に届いて分りやすい」という意見とともに、「『週刊子どもニュース』はなぜなくなってしまったのだろうか」という意見もあった。
一方、地方局制作の『abnステーション』(長野朝日放送)、『VOICE』(毎日放送)、『スーパーニュースアンカー』(関西テレビ)には、好意的な報告が寄せられた。
また、ラジオの『JAM THE WORLD』(J-WAVE)を「無駄がない充実した内容だ」と推薦する意見もあった。報道番組にタレントを使うことについては、賛否両論の意見が寄せられた。
<自由記述>では、テレビに対して「面白い番組がなくなってきた」、「マンネリ化だ」、「テレビからの流行がなくなった」、「バラエティー番組で芸人同士の喧嘩は放送しないでほしい」など厳しい意見が集まる一方、ラジオに関しては「家ではラジオの話題で盛り上がることも結構ある」などの好意的な意見も寄せられた。

【主な意見】

  • 「ニュース番組・報道番組の中で関心のある番組は『ZIP!』と『めざましテレビ』(フジテレビ)だ。二つの番組の共通点は、ニュースの内容がよく伝わりやすいように映像を多く使ったり、分りやすく説明したりしている。一つのことについて簡単に意見を述べているため”この人はこう思っているんだ”と思ったりできるのがよい。しかし、他のニュース番組はパネルを使い分りやすく説明しているものの、難しい内容ですぐチャンネルを変えてしまう。今後ニュース番組を作るならそのようなことを意識して作っていくことがよいと思う。」(神奈川・中学1年女子)
  • 「私は毎朝ニュースを見てから学校に行くのが習慣となっています。普段は『ZIP!』を見ていますが、最近感じるのは、芸能ニュースが多いということです。もちろん、芸能情報が見たい視聴者もいると思いますが、最近はそれが多すぎます。私はニュースがだんだんバラエティー番組やワイドショー番組に近づいてしまっていると思います。学校では世界情勢について学ぶ授業があり、最近はシリアの内戦についてやっています。そこでは外国メディアを通して勉強しますが、クラスメイトも”日本のニュース番組は何でこういうことを教えてくれないのかな”と言っていました。」(東京・高校2年女子)
  • 「『報道ステーション』を時間が合えば見るけれど、僕のレベルには難しいし、最初から説明してくれないので、新聞や朝のニュースなどをよく知らないと”何の話だろう!?”とついて行けないことがあるので、さっと見て終わります。」(静岡・中学1年男子)
  • 「ニュースを見ていると、いきなり難しい用語が”当たり前”のように出てきます。僕の勉強不足もあるのかもしれませんが、難しい単語が出てきたら、キャスターさんにはもっと噛み砕いて伝えてほしいと思います。また、ニュースの背景にある様々な事件を解説する時間も割いてほしいと思います。最近は特に難しいニュースが頻発しているので特にそう思います。」(大阪・高校2年男子)
  • 「僕が”ニュース・報道番組”に求めるものは、その情報を見ている人に正確に詳しく伝えることです。だから、報道番組にドラマやバラエティー番組のような特別な企画性・独自性はあまり必要ないと思います。以前、小学生以下を対象とした『週刊子どもニュース』というものがあり、僕も小学生の時は少し見ていましたが、中学2年の今の僕には少し物足りない感じがします。しかし、新しく中高生向けの報道番組を作ってほしいとは思いません。なぜなら、大人向けに作られた一般の報道番組でも中高生になれば大体理解できるし、分らないことも大人に聞いたり自分で本・新聞などを使って調べることができるからです。また、自分のレベルに合わせた番組ではなく、少しレベルの高い番組を見たほうが、自分の成長にもつながると思います。」(東京・中学2年男子)
  • 「僕は『NEWS ZERO』(日本テレビ)をよく見ています。この番組は、寝る前に見るニュース番組としてぴったりです。また、中高生にニュース番組への関心を持ってもらおうと嵐の櫻井翔さん(月曜日)、モデルの桐谷美玲さん(火曜日)など、中高生から支持を集めるタレントを起用しています。この番組で良いなと思うところは、最初に一日の流れ”24H”、その後詳しいニュース、次に特集など、流れができているところです。例えば、早く寝たい時は”24H”だけをチェックして寝る、など様々な見方ができます。」(大分・中学3年男子)
  • 社会の変化がどんどん速くなっている時代に、どういう番組を若者が求めているかをつかむ回路を放送局はどれだけ持っているのか考えさせられた。
  • 「私は日頃からよく報道番組を見ていますが、ほとんどの番組がたいてい同じような内容を扱っています。私は、それぞれの番組がもっと工夫をしてほしいと思います。最近では報道番組が視聴率をあげるために、タレントを多く起用しています。そのこと自体は番組の知名度アップにもつながっていいと思うのですが、そのタレントがしっかりとニュースを理解していなかった、また出演しているだけでほとんど何もしゃべらないなど違和感が度々あります。あくまで、報道番組の役割は今起きているニュースを視聴者にいち早くそして分りやすく正確に伝えることであり、バラエティーとは違います。最近はその報道番組としての本当の意味合いが薄れてきてしまっているような気がします。」(東京・中学1年女子)
  • 「僕は報道番組などをほとんど見ません。平日はあまり時間がないし、どうせテレビを見るなら笑ったり、楽しい気持ちになれたりするバラエティーなどを見たいと思います。ニュースや報道というのは中高生にとっても、とても大切なことだけれど、自分の意思で見るようにならなければならないと思います。だから、テレビ局はニュースや時代の流れ、政治などに興味を持ってもらえるきっかけとなるような報道色のあるバラエティー番組作りに力をいれてほしいと思いました。」 (静岡・高校2年男子)
  • 「私は政治や社会問題の動きを知りたいから新聞を読む感覚でニュースを見ています。私はニュースは視聴者が普通の生活を送っていては知らないことを知り、判断するためのものだと思っています。”知る”ことよりも”判断する”ことのほうが最終目的なのです。ですからニュースは “知る”ことの手伝いをするだけでなく、”判断する”ことの手伝いもするために、頻繁にではなくてもいいので、1週間に一回ぐらい、なぜニュースになるくらいこの事件は大事なのか、ニュースの意味も知らせてほしいです。」(北海道・中学3年女子)
  • 「『VOICE』と、『スーパーニュースアンカー』をよく見ています。両番組の特集コーナーは、違法駐輪や就活、西成の現状など身近なテーマを取り上げ、両方の立場の意見も伝え、最後に今後の問題点や私たち一人一人が考える課題点を投げかけて締めくくります。私にも分りやすい映像で、ナレーターの方の声のトーンも聞きやすい点が好きです。」  (大阪・高校1年女子)
  • 「9月5日に発生した長野県上田市の浦里小学校火災に関する『abnステーション』の取り扱いについての感想を述べさせていただきます。このニュースは、大正13年に建設された浦里小学校が、『南極大陸』(TBSテレビ)などドラマや映画のロケ地として何度も使われたことで全国放送でも大きく取り扱われていました。しかしその報道内容の大半は、ロケ地として有名な浦里小学校が全焼、というものばかりでした。しかし、今回視聴した『abnステーション』では、さすが地元局だけあって興味本位にロケ地として有名な浦里小学校というフレーズは一切使われず、地元で大切にされ続け愛され続けた浦里小学校、という視点で取材をされていて胸が熱くなりました。元気にランドセルを背負って登校してきた小学生の後姿がとても明るかったけれど、これからのことを思うと何だか複雑な心境になりました。」 (長野・高校1年女子)

【委員の所感】

  • 火事のニュースで、全国ネットに比べて、ローカルでは地元の人たちの視点から報道していた点を評価しているが、素晴らしいと思った。
  • 報道番組と情報番組との違いを、見る側はそんなことに気をつけて見ていないということを、作る側は肝に銘じて作ってほしいと感じた。
  • 今回のリポートの中で、取材中シリアで銃撃されて死亡したジャーナリストの山本美香さんについての報道に、誰も触れていなかったのは残念だった。
  • 報道番組を分りやすくしてほしいが、芸能ニュースなどで面白くする必要はないという意見に同感である。
  • ニュースに興味のある人と、興味のない人と両極端という印象だったが、みなさんのリポートを読むと、一生懸命考えている若者がたくさんいることに安心した。
  • •報道番組と情報番組を区別することは難しいとは思うが、中高生にはもっと国内外のニュースに関心を持って番組を見てもらいたい。

【今月のキラ★報告】 (東京・高校1年男子)

僕は今回『報道ステーション』を見ました。全体的に見ていて分りにくかったのですが、それは番組が悪いというより、自分がニュースを深く掘り下げることなく過ごしているからだと思いました。それと同時に、例えば小学生の頃までよく見ていた『週刊子どもニュース』のような分りやすい番組があるといいと思います。なぜなくなってしまったのだろう、と今さらながら思いました。
僕が良いと思う番組はテレビではなくて、毎週月曜日から金曜日の午後8時から9時50分までJ-WAVEでオンエアされる『JAM THE WORLD』です。政治経済、国際的なニュース、そのほかありとあらゆるテーマなどの興味深い内容を取り上げていて無駄がほとんどない充実した内容で、そしてなにより何かをしながら情報を入手できるということが自分には合っています。そして聞くだけで、情報を手に入れるというより自分で調べたりするきっかけになっています。入浴中や勉強中によく聞いています。また、このラジオ番組のナビゲーターは、メディア側の責任というものを、よく自覚していると思います。
気になったことといえば、報道・情報・ドキュメンタリー番組とはいっても様々ですが、最近あるアイドルグループのメンバーがグループを卒業する、ということをかなり多くの報道番組が取り上げていたことです。これについてはけっこう失望しました。だれがどう思うかは勝手だし、クールジャパンとして評価する面もあるかもしれませんが、明らかにやりすぎ。僕には、なぜあれがトップニュースレベルになるのかが理解できなかった。逆にレディー・ガガが前回来日した時の虹色に染めた髪も、日本ではただの奇抜なレインボーヘアーなどと報道されていましたが、あれに込められたガガからのLGBTの人々に対して、決して開かれているとは言えない日本に対するメッセージだったことを理解している人は少ないと思います。また、それこそ報道するに値するものだったのではないかと思っています。興味深いテーマを扱えば視聴率が良いのかもしれません。しかし大切なのは大切なテーマを分かりやすい構成にする、という工夫です。
最後になってしまいましたが、中高生にも分りやすい番組となるとなかなか難しいものだと思います。なぜならニュースや時事問題に興味のある中高生とそうではない中高生というのは、きっとかなりの差があって、二極化していると勝手ながら予想しています。とりあえず、ニュースを手に入れる方法として、テレビ番組を見るだけではなくJ-WAVE『JAM THE WORLD』を”オススメ”したいです。

【委員会の推薦理由】

報道番組であるにもかかわらず、視聴率を考えて人々が興味を持ちそうなことがらを取り上げすぎる傾向が強いのではないか、という疑問を持ち、報道番組に求められるべきことは、大切なテーマを分りやすい構成にして伝えることではないか、と考えたことが高く評価された。

【自由記述】

  • 「最近のテレビはあまり見る気がしません。マンネリ化が感じられます。全ての番組において、もっと斬新さやインパクトを大事にしてもらいたいです。」
  • 「バラエティー番組などでよく見られる芸能人同士の喧嘩を放送するのをやめてほしい。面白いと思っているのかもしれないが、見ていて不愉快な気分になる。」
  • 「最近はtwitterやfacebookを活用した番組作りが増えていると思います。これからもっと増えていけばいいと思います。」
  • 「CMまたぎが多い気がします。本当におもしろい番組なら、話題の変わり目など区切りがいいところでCMを入れても、続けて見る人が多いはずだと思います。」
  • 「僕はラジオがすごくいいと思います。自分が知らなかったり興味がなかったりしたことでも、自然と耳に入ってきます。僕の家ではかなりの割合でラジオがかかっていて、ラジオの話題で盛り上がることも結構あります。」

2012年度青少年委員会活動について

8月から加藤新副委員長、4月から川端・最相新委員が就任したことから、NHKおよび在京テレビキー局6局の青少年委員会連絡責任者に出席してもらい、各委員との意見交換会を行った。冒頭、汐見委員長から青少年委員会の役割と、新たに委員会審議の運用に段階を設けることを説明した後、フリーディスカッションに入った。主な内容は、青少年へのおすすめ番組の選定方法の変更についての感想や教養系のドキュメンタリーも推薦してほしいこと、青少年や幼児向け番組が減少していることについての意見などが活発に交わされた。

休会

休会 – 2012年9月

中高生モニターについて

中高生モニターについて

8月はBPO青少年委員会の「青少年へのおすすめ番組」を視聴してもらい、その感想を報告してもらった。8月の「青少年へのおすすめ番組」は全国の放送局から62番組が推薦された。
モニター報告は30人から寄せられた。なるべくそれぞれの地域の番組を視聴してくださいという依頼をしたが、結果的には全国ネットの番組を見ての報告が多くを占めた。関西テレビが制作するドラマ『GTO』に関しての意見が6件あり、「見ていてジーンときた」という一方で「学園ドラマでありながら、リアルな等身大な話でなかった」などの意見に分かれた。テレビ東京の『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』は4人から「戦争はきれいごとでは語れない」「戦争に対する理解が深まった」などの感想が寄せられた。NHKの『トキ誕生~36年ぶりの奇跡を支えた男たち~』も4人から、トキを育てる苦労を「ドラマチックにしすぎることなくしっかりと構成していた」「胸が熱くなる内容に心を打たれた」などの報告があった。各地の放送局では、広島テレビの『除染の島へ 故郷を追われた27年』や広島ホームテレビの『HOME Jステーション』の原爆投下を取り扱ったコーナーへの感想や、仙台放送の震災復興番組『ともに』、福島テレビの『きみこそみらい』にも感想が寄せられた。
前回からはじめた<自由記述>は、「いじめ」についての感想をお願いした。「いじめは犯罪だと思う」「相談できる人を作ることがいじめを乗り越える一番の薬だ」という意見とともに「いじめの根本をなくすのはテレビの役目ではない。いじめられたり悩んでいる子も元気になれるような番組を作ることだ」という指摘もあった。

【主な意見】

  • 「『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』(テレビ東京/テレビ北海道)は、主に第二次世界大戦時の日本、ドイツ、そして現在のリビアの特集でした。戦争中の日本の映像を見て、番組内でいわれていた”国民の熱狂が独裁者を作り、戦争へと導いた”という言葉の意味がよく分かりました。番組内で”ここまでいくと、国家による国民の洗脳だ”と言っていましたが、私もそのとおりだと思います。さて、”毒母”と呼ばれる、子どもに自分の(時にはまちがった)価値観を洗脳する(刷り込む)母親がいます。この言葉は精神科医の斎藤環さんが造った言葉です。でもそれは子育てをしていたら絶対起こることで、洗脳しない母親はネグレクトです。この毒母に対して中村うさぎさん(小説家、エッセイスト)は”虐待やネグレクトは許せないけれど、価値観を洗脳しない母親はいない。だから、自分で社会に出て新しい自分の価値観を手に入れる、それが自立ってことだと思う。いつまでも母親のせいにするな”と言っていました。私は”国家による洗脳”にもこれが当てはまると思います。だから、それに甘んじるのではなく、自分で調べて、見て、考えることが大切だと思います。私は、戦争のことも含めて、自分で悩んで手に入れた価値観をもった人間になりたいと思いました。」(北海道・中学3年女子)
  • 「私は『池上彰の戦争を考えるSP~戦争を起こした独裁者と熱狂~』(テレビ東京)という番組を見ました。私はもともと国際情勢に興味があり、今、アサド政権のもとで行われているシリアの内紛などにも関心があります。私が思うこの番組の良い点は、池上彰さんの戦争についての解説がわかりやすかったという事です。まず日本とドイツについて学んで、それから今へとつなげています。また、アウシュビッツ強制収容所の様子や、リビア国民がカダフィ政権下の苦しみを語るシーンが映し出されたときは胸に熱い思いが込み上げてきました。」(東京・高校2年女子)
  • 「私は今回『地球アゴラwith you 空の旅支える若者たち』(NHK-BS1)を視聴しました。今回は旅客機にかかわる仕事が紹介されていました。旅客機というと、CAやパイロットなどが思い浮かびますが、番組では空の旅を支える”知られざる仕事”として、客室乗務員のスケジュール管理をする人・航路の作成をする人・エンジンを整備する人・各飛行機ごとの燃費を計算する人・お客様の声に耳を傾ける人・機内での設備を考える人などの方々が出演されていました。いつもは見えない、一つの旅客機を飛ばすのにどれだけの人の努力がかかっているかがよくわかり、とてもいい番組だったなと思いました。ただ、司会の男性が少し出演者の方に対して失礼な言動があったのでは、と感じました。」(神奈川・高校2年女子)
  • 「『トキ誕生~36年ぶりの奇跡を支えた男たち~』(NHK総合)を見た。この番組は36年ぶりのトキの野生ふ化を陰で支えていた3人の男性への密着などをもとに、この快挙の裏側にあった惜しみない努力をまとめたもので、たった47分のドキュメントだったが、その完成度の高さに驚いた。全く無駄のない構成と、考えさせられ胸が熱くなる内容に心を打たれた。この番組が放送された2日後、今回野生ふ化した内の3羽のひな鳥の母親であるトキ一羽が死んだというニュースが皮肉にも新聞に掲載されていた。この小さな記事から、私は様々な人物の顔が頭をよぎる。」(東京・高校2年男子)
  • 「『GTO』(テレビ静岡/関西テレビ)の第6話を見ました。全体的に安っぽい感じがしていると思いました。だから、僕はこのドラマを見て特に心を動かされたとか、学んだという感じにはなりませんでした。僕はこのドラマは第1話だけ見て、見るのをやめていましたが、設定などがとてもシンプルだったので、この回だけ見てもストーリーを理解することができました。そのような誰でも見ることができる感じは良い点だと思いました。学園モノのドラマでは、若手俳優がたくさん出るのは仕方ないし、その方が僕もよいと思います。でもその分、全体の演技力なども下がってしまうのではないかと思いました。また、『GTO』は前にも実写化されている作品だし、原作もあるので、いろいろなものと比較される作品だと思います。だからこそ、脚本や映像などで質を高めた方がいいのではないかと思いました。」(静岡・高校2年男子)
  • 「私が見た番組は『NNNドキュメント‘12 除染の島へ 故郷を追われた27年』(広島テレビ放送)と『HOME Jステーション』(広島ホームテレビ)の2つです。どちらも、内容は67年前の原爆投下の話です。1945年8月6日から67年が経ち、当時広島で被爆した方々もだんだん少なくなっているようです。番組を見て、原爆の恐ろしさや戦争の怖さを経験した被爆者が減ってきている今、若い人々に伝えていくためにもテレビの力は大きいと思いました。人間がこのような過ちを二度と起こさないためにも、実際に原爆が落とされた広島や長崎だけではなく、日本全国で平和を伝える番組を放送していかなければならないと感じました。」 (広島・中学2年女子)
  • 「『シンサイミライ学校 楽しく!真剣に!学ぼうBOSAI』(NHK Eテレ)を視聴しました。8月14日の”人間力”では、15分という短い放送時間の中で防災の方法を紹介している点が、端的でわかりやすかった。15日の”命を守る絆”では、宮城の子供たちの実経験を直接伝える方法は正確で、素直に受け入れることができる。16日の”まち発見”では、自分もときどき行く京セラドームが海のそばにあることに驚き、自分の知っている場所が取り上げられることで役に立つことがあった。17日の”ふるさとの未来”では、年に6回も防災訓練のある小学校を取り上げていた。小学生対象の番組というより、地域、学校関係者にもっと見てほしい。ただし、カタカナの番組名はわかりやすそうでわかりにくいです。」(大阪・高校1年女子)
  • 「僕は、8月5日に放送された『Team Earth』(静岡朝日テレビ)を見ました。5分間というとても短い番組でしたが、見所がたくさんありました。昭和30年代の里山の復元を目指している場所での自然体験で、自分も小学校の頃に戻って体験をしているようでした。普段なかなかできない川遊びでは、より自然を身近に感じることができたと思います。野菜の収穫では、自分が収穫した野菜を食べることによって、食べ物を大切に感じると思います。夏休みだからこそできる、自然体験だと感じました。年々減りつつある、森林やきれいな川。この運動が広がって、静岡の自然、日本の自然、そして世界の自然も守ることができるといいと思います。」(静岡・中学3年男子)
  • 「私は『ともに』(仙台放送)を視聴しました。初めてこの番組を見ました。震災からの復興についての番組でした。1時間の中で4つほどの内容を取り上げているので、たくさんのことを知ることができて、よいと思います。番組の終盤に被災地の様子を伝えるコーナーがあり、その映像にはいまだに残っているがれきなどが映っていました。被害を受けた方々は、とても暗い気持ちになり、震災時のことを思い出してしまうのではないでしょうか。がれきの映像を入れずに被災地の状況を伝えるのは難しいでしょうから、せめて編集の時にがれきが大きく映っているシーンはカットするなど、被災者の方々にもう少し配慮して流してもらえれば、もっと良くなるのではないかと思いました。以前のように震災当時の映像がなくなったのは良いことではないでしょうか。」 (宮城・中学1年女子)
  • 「『きみこそみらい』(福島テレビ)を見ました。10代限定の夏フェス”閃光ライオット”から本当にデビューする人がいる。それも福島市に住んでいるなんて驚きました。このイベントは『SCHOOL OF LOCK!』というラジオ番組(エフエム東京系)で募集していたものです。そんなラジオ番組から本当にデビューしてしまう人がいるなんて、このテレビを見るまで知らなかったので、驚いただけでなく応援したくなりました。まず、自分で作詞作曲していることに感動です。自分が生まれ育った福島のことを歌詞に入れ、福島を誇りに思っていることに感謝の気持ちでいっぱいになりました。」(福島・中学2年女子)

【委員の所感】

  • 多くのモニターが、ドキュメンタリーを見ながら登場した人が発した言葉の真の意味を深く理解しようとしたり、テレビが伝えたことからさらに一歩踏み込んで自分なりに考えたり解釈したりする視聴をしていることがよくわかり、リテラシーの高さに感心しました。
  • 夏休みのためか長編ドキュメンタリーを採り上げ、戦争や絶滅種保護・環境といったスケールの大きなテーマを自分に引き寄せて考えようとする意気込みにあふれる報告が多く、大変心強かった。自由記述欄の「テレビの役割はいじめをなくすことではなく、いじめられたり悩んでいる子を元気にすること。演じる側に優しさがあればいい」という意見は目が覚めるよう。こういう意見が子どもの方から出てきたことの意味を考えたい。
  • 地元局の番組を視聴している中高生が少なからずいたことを、心強く感じた。地域のことをよく知っている制作者がテーマを考え制作している番組を大切に育てていくことは、地元視聴者の大事な使命だと考える。東京から送られてくる番組中心の編成に疑問を感じているということだろう。放送局は今こそ、多様性や地域性を重視すべきだ。
  • 番組を批判的に見て鋭いコメントをしている人が数人いたが、番組制作者には、ぜひこれらのコメントに耳を傾けてほしい。

【今月のキラ★報告】 長野・高校1年女子

NEWS23クロススペシャル(8月5日・TBSテレビ)

今まで終戦の日に広島長崎の原爆の恐ろしさをテレビで耳にしても、なかなかその怖さを自分のこととして実感できなかった。今回、綾瀬はるかさんのリポートを見て、私の戦争に対する意識が少しかもしれないけれど変わってきた。
私と同じ年で原爆に遭遇してしまった龍智江子さん、本当はテレビ取材は嫌だったろうと思う。67年も前の忘れたいけれど忘れられない記憶を蘇らせてしまう1枚の写真には少女の悲しみが焼き付いている。焼け焦げてしまった母親の横で、父親が防空壕から瀕死の状態の向かいの子ども耐子さんを必死に助け出す姿を、どんな思いで見ていたのだろう。智江子さんは悲しみも何もなかったとおっしゃっていたが、現実のこととして受け入れがたかったのではないだろうか。T字型の防空壕でなぜ助かったのかアメリカ軍が調査して原爆でも安全なシェルターをつくったと言っていたが、何ともやりきれない気持ちにさせられた。あの惨状を見てアメリカ軍はなぜ間違ったことをしてしまったという気持ちにならなかったのだろう。ただ、そのアメリカ軍以上に、深い悲しみに包まれた被曝された女性たちを差別してきた日本人も同罪のように思う。戦争は本来の人間らしい優しさを奪い全てを狂わせてしまう。
世界のどこかでまだその過ちが繰り返されているのを止められるのは、龍さんや耐子さんのように実際に悲惨な戦争を経験された生の声だし、それを語り継ぐ報道の力もとても大切だと思った。

【委員会の推薦理由】

戦争体験者への取材番組について、取材を受けた人の気持ちに配慮する視点を持ちながらも、戦争体験者の生の声を語り継ぐことの必要性を指摘している点が高く評価されました。

【自由記述】

今回の<自由記述>は「いじめ」について、最近の番組で気になったことや、日ごろ感じていることについて書いてもらった。

  • ニュース番組やワイドショーでのいじめの取り上げ方は、事実をただ伝えるだけで、深い検証などをしている番組はなかなか見かけないと思いました。
  • いじめ問題はワイドショー的に扱わないでほしい。いじめ問題で視聴率をとろうなどと思わないでほしい。もっと地味に継続的にとりあげていってほしい。
  • 僕はいじめの根本をなくすのはテレビの役目ではないと思います。僕はテレビの役割はそんないじめられたりして悩んでいる子も、その番組を見ている時は元気になれるような番組を作ることだと思います。バラエティーやお笑いには、演じる側に優しさがあれば何の問題もないと思います。
  • いじめは立派な刑事事件だと思います。そのためにも、やはり大人が介入して、しっかり指導するべきだと思います。
  • いじめというのは、人と人の関係の問題である。それを警察がどうにかできるだろうか。周囲には、いじめられている友達を救いたくても救えない人がいる。それでも赤の他人である警察が救えるのだろうか。

【青少年へのおすすめ番組見学報告】

今回、8月の「青少年へのおすすめ番組」の中から、福岡放送制作の『めんたいキッズ放送局2012』(8月25日放送)の制作現場を福岡県在住の高校2年生女子の中高生モニターが見学し、青少年向けの番組はどうやって作られているのか、どんな苦労があるのか、番組制作の現場を見て何を感じたのか、報告してくれた。(『めんたいキッズ放送局2012』は、放送局が制作をサポートしながら4人の小学生が5分間の番組を制作し、その様子もあわせて放送した番組。今年で12回目になる。)

今回『めんたいキッズ放送局』の制作現場見学を通して、「様々な視点から番組が作られていること」を感じました。例えばテーマとなっていた太宰府天満宮を例に挙げても、通常は観光スポットや人気のお土産などが特集されている事が多いのですが、小学6年生の彼らは、どうして天満宮がここに建てられたのか、また地元の人も知らないような人目につかないトンネルの謎など、視聴者が知っていそうで知らない天満宮を取り上げていて、とても感心しました。
また、カメラワークやリポート、飲食コメント、ディレクター作業など初めての体験が多かったはずなのに、一人一人がきちんと役割を分担してどうしたら興味が湧く番組を作れるのかと考え、それぞれが様々な工夫をしていた様子が印象的でした。ナレーション作業の際もお互いにもっとこうした方がいい、ここはもっと元気にと全員でアドバイスをし、よりよい番組にしようという気持ちが伝わってきました。
番組制作に携わるスタッフの方にお話をうかがうと、「子どもの集中力を切らさないように、アドバイスや指摘を入れる時も言葉や言い方に注意している」とおっしゃっていました。実際私も子どもたちと一緒に行動しましたが、とても元気一杯で疲れ知らずでした。ロケの時は走り回って大変だったそうで、スタッフの方の力の大きさを感じました。
また、「夏休みに家族全員で見られる番組を目指している」というお話をうかがい、最近家族が揃って同じ番組を見るということが少なくなってきていると思うので、このような視点で作られている番組はとても貴重だと思います。
5分という限られた時間の中で、彼らの工夫や努力、そして番組に携わる多くのスタッフの方の力が沢山詰まったとても素晴らしい番組でした。
貴重な体験で、本当にありがとうございました。

第135回 放送と青少年に関する委員会

第135回 – 2012年7月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて

第135回青少年委員会は7月24日に開催され、6月16日から7月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、7月に寄せられた中高生モニター報告について審議したほか、今年度の委員会活動等について委員間で討議した。 また、境真理子副委員長の退任(2012年7月31日付)に伴い、委員長が加藤理委員を新副委員長に指名した。加藤委員は2012年8月1日付で副委員長に就任する。

議事の詳細

日時
2012年7月24日(火) 午後4時30分~6時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員、(欠席)川端委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けた結果、バラエティー2番組を委員全員が視聴して、審議した。審議対象とした理由は、強者が弱者をいじめたりさげすんだりするような番組が、いじめを許容する社会的風潮の醸成につながっているのではないか、という点を視野に入れて、広く議論するためである。また、報道取材に関する視聴者意見についても審議した。
前回委員会で議論した「子役の起用」については、NHKを含む在京キー局から子役起用の現状についての報告資料が寄せられ、今後、委員会で議論を重ねていくこととなった。

(1)TBSテレビ『タカトシの時間ですよ!』(7月4日放送)について
【視聴者からの主な意見】

  • 大津いじめ自殺事件が連日話題となっている最中に、いくらいじられキャラの芸人のお通夜でエピソードトークする内容だったが、あまりにも人の命を軽視したもので不愉快だった。(20代、女性)
  • まさに”葬式ごっこ”だった。いじめ問題で、以前取り沙汰されたこともまだ記憶に新しい。深夜の番組とはいえ、面白がって扱ってよいテーマではない。(30代、女性、埼玉)

【委員の主な意見】

  • 内容は、お笑いタレントをいじめているものではないが、”お葬式ごっこ”で笑いを求めるという企画には強い疑問を感じる。
  • 放送時間帯を含めて、何ら違和感を感じなかった。「死」は軽々しく笑いにできる問題ではないが、それを”ブラックな笑い”にできる社会こそ健全だと思う。
  • 大人が「死」を軽々しく扱っているからこのような企画が考えられたのではないかと思うが、子どもにも「死」が軽々しく受け止められないかと危惧する。
  • リアクション芸人を上手に取り上げていて大変よくできた番組だと思う。この芸人を知っている人ならば、この芸人をいじめているとは誰も思わないのではないか。視聴者には、この番組で出演者を貶めているかどうかを、よく見極めてほしい。
  • 大津のいじめ自殺事件については、当日の全国紙で取り上げられていたこともあり、番組の中身よりも編成の配慮が必要ではなかったか。

(2)フジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした。』(7月12日放送)について

【視聴者からの主な意見】

  • 「男気じゃんけん」はいじめを助長するようで非常に問題がある。特に、司会者の一人がほかの出演者の財布を抜き取って、それをゲスト俳優の持ち物に入れ、最初は「盗んだことを認めれば殴らない」と言っておきながら、無理やり盗んだと認めさせると、罰としてバットで殴っていた。こういう内容を見ると子どもが真似をする。(40代、女性、富山)
  • 分別ある大人が見れば、ふざけていると理解できるかもしれないが、小中学生など子どもが見て真似をすれば、それは”いじめ”以外の何物でもないのでは。(30代、男性、福岡)

これらの視聴者意見をもとに、委員間で審議した結果、特段問題視するものではないという意見が大勢を占め、各委員の意見をBPO報告とBPOホームページに掲載することとした。

【委員の主な意見】

  • 仲間うちだけで盛り上がって楽しんでいる番組で、面白いとは感じられない。
  • “男気”を売り物に、”ケツバット”をしたり、足蹴りしたりする行為が男気だとする演出は、ステレオタイプで工夫が足りないと思う。
  • いじめに対する想像力を社会が失っているという危惧の思いが深い。表現を規制したいとは全く考えないが、ただ、いじめられた経験のある子どもにとってはつらいものだという想像力を制作者が働かせることも大切だと思う。

(3)報道取材に関する視聴者意見について

【視聴者からの主な意見】

  • 小学校校長をしています。先週、うちの学校の1~2年生5、6人が、小学校前の路上で男性芸人に焼き芋をもらい、その様子をテレビカメラが撮影していました。そして子どもたちに「出演承諾書」を書かせていたそうです。低学年の子どもに「承諾書」を書かせること自体許せない行為です。その後、制作者側から、(1)子どもたちの映像は使わない、(2)子どもたちに承諾書を書かせたことへの謝罪などの返事をもらいましたが、気づかなければどのようになったのか心配です。(50代、女性、東京)
  • いじめ自殺事件のあった学校に通う子を持つ保護者です。連日の報道により、学校の周りに各局の取材陣が多く集まっています。報道陣が多く部活動に集中できなくなっています。取材するなとは言いませんが、もう少し節度ある形をとっていただくことはできないでしょうか。子どもに心理的影響が出ないか心配です。(40代、女性、滋賀)

【委員の主な意見】

  • まだこんな取材が行われていることに驚いた。子どもたちを取材撮影する場合には、保護者や学校の承諾が必要だと思う。それを子どもたちだけに承諾書を書かせてよしとする取材方法については改めるよう、放送局は徹底して指導する必要がある。
  • 事件の真相を伝えるために、子どもへのインタビューは絶対に慎むべきとは言わないが、子どもたちの人権と、日常生活に支障をきたさないよう十分配慮してほしい。
  • 今回、大津いじめ自殺事件をはじめ、各地でいじめによる事件・事故報道が続いている。青少年委員会では、2002年3月に「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」、2005年12月に「『児童殺傷事件等の報道』についての要望」を公表しており、各放送局に、児童・生徒へのインタビューには慎重を期すよう重ねて要望したい。

中高生モニターについて

7月は、「こんな番組が見たい・作ってみたい」という「ドラマ・アニメ番組」の企画をたててもらった。また、今回から<自由記述欄>を設け、直近に見た放送に関しての意見や感想を自由に書いてもらうことにした。
今回は31人からの報告があった。期末試験と重なったことや、「ドラマの制作ってなんとなく自分がイメージしていたよりもずっと難しいと感じた」という感想があったように、中高生モニターの苦労した様子がうかがえた。
ドラマの企画を考えた人が多く、アニメ企画は4本、原作のある作品の企画は10本だった。その内漫画の原作は3本にとどまった。
内容的には、同世代を主人公にした学園ものが目立ったが、警察もののオリジナルドラマ、東日本大震災を扱ったドラマの企画、人気番組を合体させる話など、ユニークな企画も集まった。

【委員の所感】

  • 改めて小学生から大学生までをターゲットにした番組が、あらゆるジャンルにわたってほとんど編成されていないのだと実感した。
  • 東京中心の番組作りや演出のパターン化への疑問・批判にも共感した。
  • 女子高のいじめを扱った企画がありリアルな感じがして面白かった。
  • 中学生や高校生は、テレビというものの中に自分が参画できてないという意識があって、自分たちのことをもっと取り上げてほしいと思っていると感じた。
  • 大震災を支える人の立場からドラマ化したいという企画は鋭いなあと思った。
  • 放送局側は、若者たちの感覚を、どれだけつかんで作っているのか気になった。
  • 社会の変化がどんどん速くなっている時代に、どういう番組を若者が求めているかをつかむ回路を放送局はどれだけ持っているのか考えさせられた。
  • 一生懸命オリジナルドラマを考えていて、楽しかっただろうなと思った。
  • 本当にあったら面白いなあというオリジナルが結構あってワクワクした。
  • 「キラキラネーム」のアイディアとか、「らくらくフォン」の話など、すごく面白い企画があった。
  • 大人のために子供が番組を作る「立場逆転」のアイディアは大変面白いと思った。

モニターの企画書に対する在京局の制作現場の方から届いたコメント

◆企画1.『NEXT×TARGET』 (東京・中学3年女子)

【ねらい】
現代の女子中高生の心の中を学園ドラマを通して描き、先生、保護者の意識を高めるとともに、生徒自身がこんなことに直面しても簡単に心折れない主人公Aのような人になって欲しいと思います。いじめによる自殺が増えている今、1vs6でも負けないAの演技で、精いっぱい勇気を全国の中高生に与えてほしいと思いました。

【内容】
時はクラス替えをしたばかりの春。女子校に通う中2のAは中1の頃から憧れていたBと同じクラスになり、新しい友達と7人グループでの中2生活が幕を開けた。その中には一番一緒にいたくて話をしたいBも。どうしたら仲良くなれるだろうか…ただただBの行動にAの胸は揺らぎ続け、日々を過ごしていた。3学期。グループの様子は一転。以前から上手くいっていなかったCとA。Cはとっかえひっかえターゲットを作り、仲間と共にその子を省く。そのターゲットはとうとうAにまわってきた。原因がわからずあたふたとするAに降りかかる、黒幕Cのメール・ブログの謎。平気な顔して部活で接してくるD、大丈夫だよ、とメールをくれるが学校ではしれーっとしているE(Eは一学期Cのターゲットになっていて悩みを聞いてあげたのに…)、親切な裏に何かを秘めるF…。本当にみんなCを信じているの??黙ってないで原因を教えて!!叫びたくなるA。先生もなかなか向き合おうとしない。Aはどうするっ!?このまま中3へもつれ込むのか!?クラス替えは?AとBはどうなる??それぞれの誕生日、夏休み、文化祭、運動会、バレンタイン…様々な行事を通して、複雑な気持ちのまま過ぎていく7人の1年を描いた青春ストーリー☆

◆企画2.『玄米せんせいの弁当箱』 (静岡・中学3年男子)

【ねらい】
人気コミック誌で連載された作品。「食べることは生きること」人生における食の重要性や相手のことを想って料理を作るなど、「食」について考える。視聴対象は、特に「両親が共働きで、一人でご飯を食べている人」「部活や塾などで帰りが遅い人」「一人暮らしをしている人」など。そういう人たちに、家族みんなでご飯を食べることの大切さを伝えるのが狙い。

【内容】
国木田大学農学部にやってきた一人の講師が、食べる喜びを学生たちに教える話。その講師は、大学構内に畑を作ったり、玉ねぎの皮を使った学食のメニューを提案したりする。学生たちとの授業を通して、食の大切さを視聴者に訴える。主役の玄米せんせい役は、草彅剛さん。

【フジテレビ編成部ドラマ・アニメ担当者の感想】

皆様の企画、大変楽しく拝読しました。多くに共通しているのが「好きが高じて」考えられている点です。私が制作者として最も大事に思うのは「なぜ、今、この話を見せたいか」です。例えば『NEXT×TARGET』や『玄米せんせいの弁当箱』は「今だからこそ伝えたい」という意図が明確です。しかし、いじめを題材にした「GTO」や「黒い女教師」が放送中です。あなたの作品の売りは何ですか。そこまで掘り下げて考えれば、より面白い企画が出てくると思いました。

◆企画3.『First Name』 (長野・中学2年女子)

【ねらい】
キラキラネームの人が大人になって自分の名前に悩むことが多いと思いました。だから、その名前に込めた両親の願いや素晴らしさに気づいて欲しいと思いました。

【内容】
このドラマの主人公(前田敦子さん)もキラキラネームで、悩んでいます。高校生ぐらい。自分の名前が嫌いで、過去に戻って違う名前で人生を送ってみることにします。主人公は「普通の名前になったからもっと人生が楽しくなるはず」と思っていましたが、キラキラネームだった時よりもつまらない人生になってしまいます。そんな時に、両親が自分の名前(キラキラネームの方)に込めた願いを知ります。主人公は自分の名前の素晴らしさに、改めて気づき、名前をもう一度過去に行ってもとのキラキラネームに戻します。そして、自分の名前が大好きになり幸せな人生を送っていく話です。

【日本テレビ制作局ドラマプロデューサーの感想】

興味深くユニークな内容で、読んでいて新鮮で楽しかったです。全体的な印象で言うと、「自分が好きな系統や原作をドラマとして見てみたい」という内容が大半だった気がします。しかし、その中でも、はっきりとテーマ性を持って「こう見てほしい」と書いていたものも沢山あり、それが非常に驚きでした。中学生や高校生の子達が、自分たちが想うことを吟味し、発信したいテーマを明確に据えて伝えようとしている。制作側の「目」をちゃんと持っているのだと。制作側も視聴者の「目」をちゃんと持たねばならないな、と改めて実感させられました。また、中高生ならではのワードも新鮮でした。読み方がわかりづらい今どきのオシャレな名前のことを「キラキラネーム」と言うのですね。

◆企画4.『ぼくのやり過ぎコンシェルジュ』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
*無意識に口に出したことが、そのまま現実になってしまうのは、良いことなのか悪いことなのか?*「つながる」ことの大切さと、「いつもつながっている」ことの怖さ。*ケータイ頼みでなく、自分で思いを伝えることの大切さを主人公が学んでゆく。

【内容】
ぼくはさえない高校2年生。小学生の時におばあちゃんからもらった通話とメールしか出来ない「らくらくホン」をいまだに使っている。仲間は、今はやりの「しゃべるケータイ」を使いこなしていて、うらやましくてしょうがない。そんなある日、ぼくのケータイが突然人格を持って動き始めた!好きな女の子を見て「かわいいなァ」とつぶやくと、その子に熱烈な告白メールを送りつけたり、「あれほしいなァ」とつぶやくと、勝手にネット通販で買ってしまったり。画面には変な男の顔が映っていて「僕はあなたのコンシェルジュです。何でも望みをかなえてあげましょう。」と言っている...ぼくの生活はいったいどうなるんだ!?コンシェルジュ役は堺雅人さん。『リーガル・ハイ』で演じたようなアクの強い役作りをしてもらいたい。

◆企画5.『Again World(アゲインワールド)』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
ちょっとした出来事や判断によって運命が大きく変わることや、自分の人生は誰でもない自分だけのオリジナルであることなどを考えさせる物語。大人が、10代や20代の悩みや思いに少しでも寄り添うことが出来たら良いと思います。

【内容】
日本は最先端の技術開発に成功し。世界最大の先進国として成り立っていた。そんな都内に住む高校生・秋山亮は、先月、恋人であった大平美星を亡くしたばかりであった。亮は美星を追って自殺を図り屋上から飛び降りる。しかし、目を開いた底は、「死」ではなく「生き地獄」であった。そこは現在の日本。しかし技術開発に失敗し外国の植民地として成り立っていた。そこから亮の冒険が始まる!!
☆この世界は、タイムスリップではなく、2つの世界が同時進行している設定です。

◆企画6.『平等ゲーム』 (神奈川・中学3年女子)

【ねらい・内容】
『平等ゲーム』とは、桂望実さんが書いた小説です。「鷹の島」という名の島は、「1600人、全員平等」の島で、仕事は抽選、住居はタダであり、究極のユートピアである。その島で生まれ育った主人公は、鷹の島が夢の社会であることを信じて疑わない。鷹の島に住みたい人は抽選で決めるのだが、主人公はその移住権を得た人の所へ訪問するという仕事をしていた。そして、本土(私達の社会)の人の話を聞いたり、本土で生活をしていくうちに「平等」というものが、そんなに良いものなのかを考えさせられる。そして、最後には、抽選で決まる人生ではなく、本土のように自分の努力や行動によって人生を切り開いてゆく決断をした。

【TBSテレビドラマ制作部プロデューサーの感想】

今回は、原作があるものにしろ、オリジナルのものにせよ、さすが中高生ならではの感性で、「今」をとらえた企画が多いと感じました。大人になって自分のキラキラネームに悩む主人公や、技術開発力で世界最大の先進国として成功している日本と、技術開発に失敗したあげく外国の植民地となっている日本がパラレルワールドになっている設定、ユートピアとたたえられる「全員が平等の島」の存在をきっかけに、主人公が平等とはそんなに良いものなのかを問うていく、などなど。中でも、仲間たちの「しゃべる携帯」がうらやましくてたまらない高校生の、通話とメールしかできない古い携帯が、ある日突然、主人公の「つぶやき」を勝手にメールして相手に伝えたり発注したりし始める、という設定は、今の情報社会の怖さにもつながる、広がりのあるおもしろい企画だと思いました。

◆企画7.『2人の間の壁』 (東京・中学1年女子)【ねらい】

ねらいは人のことを先入観で捉えたり、勝手に印象付けたりせずに、相手の内面性をじっくりとみてほしいというメッセージです。

【内容】
テーマとなるのは国際結婚です。主なストーリーとしては、日本人女性と韓国人男性のカップルがいます。2人は3年ほどの交際を経て、結婚という段階にまできました。2人はお互いをよく理解し、男性の方の職場が日本にあるため日本語も話せ、生活にはなんの不自由もありません。結婚したら、日本で生活すると話はまとまっています。2人は着々と結婚の話を進めていきましたが、彼女の両親は決して認めませんでした。彼女も結婚という現実的な話を進めていく中で文化の違いなどを感じ、一時関係はこじれてしまいます。しかし、彼女の両親も男性と共に時間を過ごすことで、先入観ではなく内面に目を向けていくことで彼の魅力に気が付いていきます。

◆企画8.『「三毛猫ホームズの推理」×「妖怪人間ベム」』 (神奈川・中学2年男子)

【ねらい・内容】
人気があった番組をコラボさせたら面白さが増すと考え、『三毛猫ホームズの推理』と『妖怪人間ベム』をコラボさせたドラマを作りたいと思いました。放送時間は土曜日21時です。土曜日の夜は家族みんなで見ることが出来るからです。視聴対象は小学校高学年からお年寄りまで、幅広い世代を対象とします。出演者には、「三毛猫」の片山義太郎(相葉雅紀)、片山ヒロシ(藤木直人)、片山晴美(大政絢)、「妖怪」のベム(亀梨和也)、ベラ(杏)、ベロ(鈴木福)。明るい義太郎と暗いベム。でも「誰かを助けたい」という思いを持つ部分は一緒だと思いました。この2人が一緒になることで、義太郎とベムが、実は同じ考えの持ち主だということをみんなに知って欲しいのです。

【テレビ東京ドラマ制作室プロデューサー(『鈴木先生』『モテキ』ほか担当)の感想】

まず第一に、ターゲットが明確で、見る人の立場に自分を置き換えて、きっちりと考えられた企画が多い印象を受けました。特に、私たちがとらわれがちな出演者のギャラや行政といったことを無視したキャスティングなどには、なるほどと思うところがある。また、中学校・高校で起きていることや、現代社会を生きている”当事者意識”を大切にしたオリジナル企画は、中高生が訴えたい熱いものを感じた。
全体的には、3.11の影響もあるのか、夢や希望のある”明るい話”の企画が多く、今、テレビに求められているものが、中高生が企画を考える過程で浮彫りになったのではないかと推察する。
『2人の間の壁』はテーマが明確で、『First Name』は視点が面白く、『「三毛猫ホームズの推理」×「妖怪人間ベム」』は、日テレさんに是非実現させて欲しい(笑)

【テレビ東京アニメ制作部長の感想】

今回アニメの企画がドラマに比べ極端に少なく、そもそも今の中高生にアニメはどのように受け入れられているのか、あれこれ考え込んでしまいました。この世代の心に強く響く作品を我々は提供できているのだろうか?放送時間帯についてはどうか?等々・・。自由記述欄に「千と千尋の神隠し」のテレビ放映を見た中学生のコメントがありましたが、小学生で見たときには気づかなかった視点の記述がとても興味深く、作品と視聴者との向き合い方は斯くありたいものだとしみじみ感じました。

◆企画9.『僕が見た東日本題震災』単発ドラマ (宮城・中学2年男子)

【ねらい・内容】
震災時の僕の先生たちの実際の話です。実際の苦労や苦悩を知って欲しいです。僕は小学6年生。卒業式の練習を終えた直後の揺れでした。僕は母の迎えが早かったので、引き渡しの1回目で下校しました。僕が通っていた小学校は宮城県で1番のマンモス校です。海から5km。海寄りの隣の小学校は仙台で一番大きな被害が出た小学校です。震災から2日後の13日になって友達の事が心配になったのと、情報が欲しくて小学校に行きました。小学校は凄かったです!体育館も全教室も校庭も全てが避難者でいっぱいで、お世話をしていたのは先生たちでした。「先生は自宅に帰られたのですか」と聞いたら「家族とは連絡を取っただけで帰っては居ません」とか「状況を見に帰ってすぐ戻ってきました」「着替えを取りに行っただけ」と言っていました。ほとんどの先生が学校で寝泊りをし、中にはあの日から帰っていない先生もいると聞き大変驚きました。先生たちも被災者です。僕ら家族と同様に辛さや不安がいっぱいだったはずなのに、いつでも笑顔で、見ず知らずの被災者の対応をしていた先生たちの忍耐力はすごいと感じました。日にちも場所も規模も大きく変わったけれど、僕たちをきちんと卒業式で送り出してもくれました。僕は感謝でいっぱいです。教職と言う職業にも魅力を抱き始めたのも震災での先生達からです。そんなに頑張っていたのにも関わらず今までメディアには被災者を支えていた側ではなく、被災者のほうが多く取り上げられていました。今回僕は被災者支援の素晴らしさを伝えたい、知って欲しいと思い、単発ドラマ・スペシャルドラマという形で提案させて頂きます。

【テレビ朝日編成制作局制作二部プロデューサーの感想】

“キラキラネーム”や東日本大震災、鉄道に国際結婚、いじめの問題など、多岐にわたるテーマを持つ企画があり、とても興味深く拝見しました。まだまだドラマとして取り上げるべきテーマが多くあるのだと改めて感じました。ただ、それをドラマに仕上げていくには、魅力的な主人公が必要です。見る人が心を寄せることのできる主人公、それは誰なのか。そして彼・彼女はどこに向かい、何を成し遂げるのか。そしてそれは見る人にどんな希望を与えるのか?…是非一度考えてみてください。それを見つけることができた時、そのテーマはドラマの企画として羽ばたけるのだと思います。そしていつか、その主人公と、あなたと共に一緒にドラマを作りましょう!楽しみにしています。

◆企画10.『フルスイング』 (東京・中学2年男子)

【ねらい】
とある中学校の野球部が、全国大会に行こうとする話。全国の野球少年たちに、野球のおもしろさをもっと知ってほしい。

【内容】
ドラマでありながら、ノンフィクションのように実際の野球部の練習を追いながら、勝ち進んでいくドラマを作る。よくある弱小野球部が考えられないような大勝を手にするのではなく、地道な努力と現在のインターネット社会の情報収集機能を使って、相手中学の情報を集めたり、転校生を入部させたりして、スパイ活動までする。感動を追及するのではなく、淡々とすぎていく中に、野球の面白さを見出したい。サッカーとの違いをとくに説きたい。

◆企画11.『ShortStory~立場逆転~』 (神奈川・中学1年女子)

【ねらい・内容】
この『ShortStory~立場逆転~』略してSSのコンセプトは「子供による大人のためのドラマ」です。普段「大人によるドラマ」をテレビで観ています。しかし今の子供に同じようなことをやらせてみると、また新たな発見がうまれるのではないでしょうか。ドラマは毎回1話で完結のショートストーリーです。脚本家、監督、演出家、カメラマンなど様々な仕事を募集して全国から選ばれた子供たちが分担された仕事をします。今はドラマ番組で視聴率の低迷で打ち切りになってしまう番組が多いです。そこで新世代にも活躍の場を広げていって、若い人たちの斬新なアイディアを取り入れて視聴者にも喜んでもらえる番組にしたらどうでしょうか?募集の対象年齢は小学生から高校生までがいいと思っています。

【NHKドラマ番組部チーフプロデューサー】

皆さんの気持ちがこもったドラマ・アニメの企画文、読ませていただきました。まず企画の幅の広さに驚きました。学園ものから時代劇、SF、恋愛ものからミステリまで、およそありとあらゆるジャンルのものがあり、中高生の皆さんの興味の幅の広さが伺えます。すべての企画に「面白いものが見たい!」という熱い気持ちが感じられて心強く思いましたが、その一方で「今のドラマはつまらない」という不満が端々に匂い、制作現場にいる者としては、もっともっと力を尽くさねばならないと痛感しました。

【自由記述欄】

今回から中高生モニター報告に<自由記述欄>を設け、直近に見た放送に関しての意見や感想を自由に書いてもらうこととした。主な意見・感想は、以下のとおり。

  • どの放送局も結局はやっていることが同じだ。もう少し工夫があっても良いのではないか。
  • ニュースなどの全国ネットの枠で、東京の視点だけではなく地方の視点も取り入れたほうが良いと思う。
  • 役者の役割が定まりすぎている気がする。役者の新しい可能性を見出すためにも意外な人選というのがもっと必要だと思う。
  • NHKで浅井忠を取り上げた番組を見たが、モノ作り、クリエーションにまつわる番組が大好きな僕にとっては地味ながら嬉しい番組だった。
  • 久しぶりにジブリ映画の『千と千尋の神隠し』をテレビで見たが、小学生の時は、ただ見ていただけだったが、今回は、人間の汚い所を出すと豚になったり、意志が強いと人の心も動かせるんだと、色々考えながら見られて楽しめた。

第134回 放送と青少年に関する委員会

第134回 – 2012年6月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて

第134回青少年委員会は6月26日に開催され、5月16日から6月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見と、6月に寄せられた中高生モニター報告について審議したほか、今年度の委員会活動等について委員間で討議した。

議事の詳細

日時
2012年6月26日(火) 午後4時30分~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員、(欠席)川端委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けた結果、審議対象とするべき番組はなかった。ただし、人気子役をナビゲーターに起用している映画番組について「大人向けの内容の映画もあるのに、10歳の子役に映画の内容を説明させるのは問題」という視聴者意見を受けて委員間で意見を交わし、子役を起用している番組の現状について調査し、次回以降の委員会で議論を重ねることとした。

中高生モニターについて

5月から7月までは、「ドラマ・アニメ番組」について報告してもらっている。6月は、最近見た「ドラマ・アニメ番組」の中から、面白そうと思って見たものの「期待はずれだった番組」「面白くなかった番組」を選び、何が良くなかったのか、どこがつまらなかったのかを報告してもらい、33人からリポートが届いた。「そもそも興味のないアニメやドラマは最初から見ない」という意見や、「視聴率が悪いからといって途中で打ち切りになるのは許せない」といった意見が特徴的だった。
具体的には、ドラマ・アニメそれぞれ9番組に対する報告が届いた。その中でドラマ『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ系列)には、「原作と違う」、「話がマンネリ化」、「意外性と人間ドラマがない」など、8人から意見が寄せられた。その他複数意見があったのは、ドラマでは『平清盛』(NHK)、『クレオパトラな女たち』(日本テレビ系列)、『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系列)、『パパドル』(TBS系列)、『ATARU』(TBS系列)、アニメでは『宇宙兄弟』(日本テレビ系列)だった。

【主な意見】

  • NHK『平清盛』を、歴史好きの僕としては見ておこうと、家族全員で最初から見はじめたけれども、4回位で、あまりにもわがままで、乱暴すぎる清盛を見るのが嫌になり、もっと歴史を動かす所を見たいと思い見るのをやめました。そうしたら、家族の皆も”これが現実の嫌な所、汚い所だと思うけど、見ていられないね”と、チャンネルを変えるようになりました。中学生にも理解できる内容にしてほしいです」(静岡・中学2年男子)
  • 「僕は何年か前から、NHKの連続テレビ小説を登校前に見ています。この4月から『梅ちゃん先生』になっても見ています。ただ、主人公の梅子が、おっとりしすぎているのと、ドラマの中で笑ってしまうところが少ないと思います。梅ちゃん先生は、頑張っているかもしれないけど、なんだか順調すぎる感じで、もっと挫折してもいいのかなと思います。なんか印象が薄いです。朝ドラは、大阪と東京で、交互で制作しているけど、僕は大阪制作の方が、面白いと思います。<疑問>男性の主人公は、なぜいないのでしょうか?」(京都・中学1年男子)
  • 「私が最近見てつまらなかったと感じたのは『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ)です。私は推理小説が好きで、それがドラマ化されるということで期待していました。しかし、回が進むにつれて、段々と話の展開がマンネリ化してきて、先が読めてしまうという感じでした。また、このドラマは有名な小説が原作です。私も思うのですが、友だちに聞いてもドラマ用に少しリメイクされしすぎで、原作と違うのが残念です。私の考えとしては、このドラマにもう少し原作にそった細やかな演出や雰囲気を出せば、ぐっと面白くなるのではないかと思いました。日本では、年々ドラマの視聴率が低下する傾向にありますが、それにも負けないような面白い作品を作ってもらいたいと思います」(東京・中学1年女子)
  • 「私が期待はずれだった番組は、『名探偵コナン』(日本テレビ系)です。毎週欠かさず見ていて、学校が終わった後の楽しみです。しかし、時々一つの事件に対して4~5週間かけて放送していることがあります。その度に”作者のネタが尽きたのかなぁ”と思います。しかも番組の30分中のほとんどが”先週と一緒やん”といった内容で、面白くありません」(大阪・高校1年女子)
  • 「僕が最近見た期待はずれだったドラマは、去年の秋から冬に放映された『南極大陸』でした。第1話は2時間の放送で、次回からの放送を期待させるような内容で、ストーリーの方向性はよく、TBSがいかに力を入れているのかが分かりました。主演を除くほかの俳優陣の演技力は素晴らしく、とても良かったと思います。気になったのは木村拓哉です。昭和時代の南極での物語であるのにもかかわらず他のキャラクターとは違い、髪の毛が整いすぎていたり、言葉遣いや格好が現代風であったりして、設定にそぐわないものでした。ほかのドラマで見たのと変わらない演技で、期待外れでした。また、クライマックスで南極に取り残された犬たちとの再会の場面で、犬たちが簡単に近寄ってくることはないように思います。震災後、被災地に取り残された犬たちの人間離れを見ているからです。このドラマで描かれたお話は、高倉健主演の映画を見たことのある人も多く、結末は有名です。結末の分かっているドラマを面白くつくるのは大変かもしれませんが、一番大事なのは出演者のセリフ、格好、演技力なので、そこを徹底してもらえればと思います」(東京・中学3年男子)
  • 「僕がこれまで生きてきて、”面白そうと思って見たが、面白くなかった…”という経験はありません。多分そのような結果に陥ってしまったのは、次のような事のためではないかと考えられます。その人の”番組を見分ける目”がない。正当ではない宣伝(過剰な宣伝など)。発端・クライマックスがない。アニメの場合、風景・表情の描写にリアリティーがない。BGMと番組の内容がマッチしていない。番組というものを放送する上で、どれ一つ欠けてもならないと思います」(福島・中学3年男子)
  • 「私はもともとアイドルが好きなので、どれだけ裏側を見られるだろう、どんな風に話が進むのだろうとわくわくして『パパドル』(TBS)の放送を待っていましたが、実際の放送を見てがっかりしました。まず、ドラマの展開が本当の芸能界よりも甘いのではないかと思いました。売り出し中のアイドルグループのセンターが電撃結婚なんて、そんなにやんわりと処分を受けるだけで済むはずがありません。グループの宣伝の為のドラマなんだなという印象を受けました。特定のファンしか興味を持てないと思います。本当の芸能界のことなんて私には分かりませんが、中途半端に真実と嘘の脚色が混ざっていて、完成度はいまひとつだったと思います」(福岡・高校2年女子)
  • 「僕はドラマを見るのをやめるとしたら、やはりどこかで見たことがあるようなものや、インパクトの少ないものは見るのをやめてしまうと思います。どこかで見たようなものをわざわざもう1度見たいとは僕は思いません。また、これは何かのパクリじゃないかと思い始めると、そのことが気になってしまい、見ていてストレスに思うことがあります。今回『ATARU』(TBS)を何回か見ましたが、僕は『SPEC』のパクリに見えて仕方なかったです。関係があるのは知っていても気になってしかたありませんでした。また、いつも同じパターンの繰り返しのものは続けて見たいとは思いません。あと、僕はサウンドトラックが地味なドラマなどはつまらないと思います。次回予告も、次も見たくなるように、次の回の一部をうまく見せ、見たときの驚きもとっておく。予告は短いけど大切なドラマやアニメの一部だと思います」(静岡・高校2年男子)
  • 「私が最近見て”期待はずれ”だった番組はTOKYOMXで放送している『アクセル・ワールド』というアニメです。私がこの番組の良くないと思うところは、専門用語がとても多く、”分かりづらい”ことです。原作のライトノベルを読めば多少は分かりますが、話の転換・進みぐあいが速く、”原作を読んでいる前提”のようになっています。また、専門用語には”カタカナ”が多く、長いためとても覚えづらいです。私は、この作品にもう少し説明を加えたらいいと思います。ストーリーはとても面白いので、もったいない気がします」(東京・中学2年女子)
  • 「私が最近見て面白くなかった番組は、幼稚園の頃から見ていた『プリキュア』だ。初代の『ふたりはプリキュア』よりも人数が多くなっている、いろいろ可愛いアクセサリーが増え、キャラクターも増えている。また変身シーンはバージョンアップしている。昔のほうが覚えやすかった。そのほかに、いつも見ていて疑問に思うことがある。プリキュアたちが変身している間に、敵は倒そうと思うことはないのか、というか、今なら倒せると思って倒すという行動をすればいいのにと思ってしまう。戦隊ものでも”へーんしん”とか言っている間に倒せば、敵の勝ちで終わってしまえばいいのではないかと思う」(神奈川・中学1年女子)
  • 「私が最近見て期待外れだった番組は『黄昏乙女×アムネジア』(TOKYOMX)です。学園内でおきる怪奇現象を解き明かすというストーリーにひかれ、アニメの1話を見ましたが、見ている途中でなんとなく展開が予想できてしまって、途中で見るのをやめてしまいました。アニメでもドラマのような話のものが多いので、アニメだけにしかできない、アニメならではのBGMや声優さんたちの表現力などをもっと主張してほしいなと思いました」(神奈川・高校2年女子)
  • 「僕は『クレオパトラな女たち』(日本テレビ)を見た。番組の視聴率が低下していたため8話で打ち切りになる、と言う情報を得ていたが、最終回での急激な話の展開にはまったくついて行くことができなかった。見終わった後に心残りがすごくあり、その展開・内容にとてもがっかりした。いくら視聴率が上がらなくても、見ているほうは毎回楽しみだから視聴しているのだと思う。なぜ打ち切りでがっかりしている視聴者を、もっとがっかりさせるのか。数少ない視聴者を捨てる感じでいいのか。もっと上手い話の運び方はなかったのか。さまざまな疑問が残る最終回だった。僕は視聴者が0%でない限り、見ている側をがっかりさせない、楽しませる事こそがテレビ局の使命だと思う」(宮城・中学2年男子)

【委員の所感】

  • 期待はずれだった番組の感想を書くのは難しいようだと、あらためて思った。
  • メディアの多様化のため、今の中高生たちはテレビにあまり期待していないのではないか。面白くなかったらすぐ見るのをやめるというテレビの視聴習慣が分かるような気がする。
  • 原作があったり、ジャニーズ系の出演者を集めたりするなど、やすきに流れている番組が多い、今のテレビの状況をよく見ている。
  • 途中で打ち切られたドラマがあるが、「視聴率が0%でない限り、見ている側をがっかりさせない、楽しませることこそがテレビ局の使命」という意見はよく理解できる。
  • 原作のある作品で、小説とテレビというメディアの違いを指摘しているのは素晴らしい。
  • 専門的なディテールをよく見ていて、観察力が優れているリポートには感心させられた。

「今月のキラ★報告」 北海道・中学3年女子

面白くない、というよりも期待はずれだった番組について書きます。それは『三毛猫ホームズの推理』です。
私は赤川次郎さんの本が好きで、よく読みます。ですから、三毛猫ホームズシリーズをドラマ化すると聞いて、とても期待していました。しかし、見てみると何か足りない気がして、何となく見るのをやめてしまいました。今回、モニターのテーマが発表されて、あらためて見てみましたが、やはり何か足りない気がしました。
上手く言えないのですが、足りないものは意外性と人間ドラマだと思います。正確に言えば、赤川次郎独特の意外性と人間ドラマです。普通のドラマとしての意外性とユーモアはありますが、赤川次郎独特のものがないから期待はずれだったんだと思います。
あらためて私が見たのは8回目と9回目です。ここから先はネタバレしてしまいますが、ドラマでは怪しい人がたくさんいて、一番怪しい人がいて、その人は犯人じゃないのかな…?と思ったところで、やっぱりその人が犯人だった、という流れでした。でも、小説だったら怪しい人がたくさんいて、一番怪しい人がいて、でもその人は犯人ではなく、本当に意外な、1ページ目にある登場人物表の後ろから3番目ぐらいの人物が犯人だったはずです。
赤川次郎の魅力の一つは、その唐突に見える犯人と、よく読み返すと発見する伏線です。その犯人の唐突さがドラマではいささか薄い気がします。
次に、人間ドラマです。これも赤川次郎の特徴です。ドロドロとした、数奇な運命によって、キャラクターの人間性が試されるような人間関係が展開されます。ミステリーというよりは明るくした横溝正史みたいなサスペンスものっぽい感じです。赤川次郎の作品の魅力の一つはそのドロドロとした関係の中で、キャラクターが性格の良さ、強さによって状況を打開、もしくは受け止めるので、読後感がものすごく良いところです。ドラマでは、ただのミステリーになっている気がします。
あと、赤川次郎の作品にはどうしようもない小悪党がでてきます。その愚かさとそいつに振り下ろされる笑える天罰、そういう特徴もないのは残念です。
つまり、ドラマでは赤川次郎の小説の独特な世界観が表現しきれていません。それが『三毛猫ホームズの推理』を私が期待はずれだと思った理由です。あと、個人的で感情的な意見ですが、ミステリードラマは週をまたぐべきではないと思います。

【委員会の推薦理由】

赤川次郎の小説をよく読みこんで特徴を捉えた上で、原作にはあるにもかかわらずテレビドラマに欠けている点を的確に表現している点が評価されました。

第133回 放送と青少年に関する委員会

第133回 – 2012年5月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて

第133回青少年委員会は5月22日に開催され、4月16日から5月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、5月に寄せられた中高生モニター報告および今年度の委員会活動等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年5月22日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで委員間で討議し、審議対象とするべき番組はなかった。また、前回、多数の批判的な意見が寄せられたことから委員全員で視聴したフジテレビの『ペケ×ポン』(4月6日放送)について各委員間で討議した結果、審議の対象とはしないことになった。

中高生モニターについて

5月から7月は「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。5月は、最近見たドラマもしくはアニメ番組の中から「好きな番組、面白い番組」について報告してもらった。
34人全員から報告があり、ドラマでは17番組について報告が寄せられた。複数の意見があった番組は『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ系列)、『リーガル・ハイ』(フジテレビ系列)、『パパドル!』(TBS系列)、『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系列)、『カエルの王女様』(フジテレビ系列)の5番組だった。そのほか海外ドラマが3作品、漫画が原作のドラマは1番組だった。
アニメでは10番組についての報告が寄せられ、複数の意見があったのは『宇宙兄弟』(日本テレビ系列)、『名探偵コナン』(日本テレビ系列)、『サザエさん』(フジテレビ系列)の3番組で、海外アニメは1番組だった。放送局別ではフジテレビ系列が9番組、NHKが6番組だった。

【主な意見】

  • 「僕が好きな番組は、『ドラえもん』(テレビ朝日)です。今の中学生・高校生にドラえもんというと、”小学生が見る番組”や”幼稚”などといわれます。しかし、僕はそうは思いません。なぜなら、『ドラえもん』には夢があるからです。『映画ドラえもん・のび太と奇跡の島~アニマルアドベンチャー~』の主題歌である福山雅治の『生きてる生きてく』や、オープニングテーマの『夢をかなえてドラえもん』など、夢について歌っている歌を多く使っています。また、あったらいいなと思わせるひみつ道具は、これからの未来を担う子どもたちの創造力を育てます」(静岡・中学3年男子)
  • 「僕が『ひつじのショーン』(Eテレ)が好きなのは、主人公のひつじが色々いたずらするのが面白くて、はまっています。調べたらイギリスのアニメということが分かりました。海外アニメなのですが、日本語吹き替えはありません。ほとんどセリフがなくて、音で表現されています。このアニメはきっとほかの国でも見たら、吹き替えなしで子どもは楽しめると思います。このアニメはストップモーションアニメで、コマドリして編集していますが、とてもリアルで素晴らしいと思いました。どんなに技術は進んでも、こんなアニメは続けてほしいです」 (京都・中学1年男子)
  • 「私が今一番お気に入りの番組は『梅ちゃん先生』(NHK)です。展開が単純で素直に面白い。掘北真希さんの演技も何となくスローテンポで学芸会っぽく見えてしまうかもしれないけれど、一生懸命演じられていて好感が持てる。ストーリー的には、私自身戦後の実態を想像することが難しいけれど、戦争の悲しさや恐ろしさ、苦しさなどは極力表には出さず、これからはこれ以上ひどいことはあり得ない、将来は明るいんだという希望に満ちた感じを意識的に伝えられているような気がする。『梅ちゃん先生』が生きた時代って、将来に希望が持てた”貧乏だってへっちゃらな”とっても夢に満ち溢れた時代だと思う。何でも物が溢れているのに将来不安な今って、私たちの力で何とかできるのだろうか」(長野・高校1年女子)
  • 「最新科学を用いた”鑑識”にスポットを当て、全米視聴率ナンバー1をキープしている『CSI:科学捜査班』。このドラマの日本での放送についていくつか気になることがあります。1つは、翻訳に関することです。新しい主人公、レイモンド・ラングストンを放送では”教授”とみんな敬語を使って呼んでいますが、実際の英語では”レイ”や”ラングストン”と呼ばれています。これは翻訳時の工夫の一つなのでしょう。しかし、”レイ”と呼ばれるほうが親しみを感じるのに対して、”教授”はいくら年上だとしても、敷居が高いような印象を受けます。日本とアメリカの文化の違いはとても難しいものがありますが、この作品では、”レイ”と呼び、敬語も使わないほうが良かったのではないかと僕は思いました。2つめは声優についてです。ラングストン役の銀河万丈氏の声は、とても見た目とマッチしているとは思うのですが、『CSI:NY』では、サブキャラクターとして刑事局の局長役をやっています。ちょっとした矛盾なのですが、少しだけ気になりました」(東京・中学3年男子)
  • 「私は、嵐の大野智さんが主演の『鍵のかかった部屋』(フジテレビ)が好きです。理由は3つあり、1つは大野さんが好きだからです。2つ目は、前回の嵐の松本潤さんの『ラッキーセブン』に続き、月9は月9でもちょっと雰囲気の違ったミステリー系のドラマで面白いからです。3つ目は、榎本径と弁護士の芹沢さんと青砥さん3人の関係やそれぞれのキャラクターがみんな個性的で楽しくて、それがドラマの中にもたくさん出ているからです。これからの登場人物たちの関係や、どんな事件を解決していくのかも気になります」(広島・中学2年女子)
  • 「ぼくの好きなアニメ番組は『サザエさん』(フジテレビ)です。毎週家族で見ています。毎週ほぼ欠かさず見ているので、これを見ると、明日から学校が始まるなと思うようになっています。この番組は、お父さんやお母さんが子どものころからあったと聞いて、今でも続いていてすごいなと思います。なかでも面白いところは、登場人物の年齢が変わらないので、いつのまにかカツオの年齢を自分が超えたときには、不思議な気分になりました。番組の最後には次回の予告とじゃんけんがありますが、これもまた家族で楽しんでいます。これからもずっと続いていってほしいアニメ番組だと思います」(滋賀・中学1年男子)
  • 「ぼくの好きなアニメ番組は『サザエさん』(フジテレビ)です。毎週家族で見ています。毎週ほぼ欠かさず見ているので、これを見ると、明日から学校が始まるなと思うようになっています。この番組は、お父さんやお母さんが子どものころからあったと聞いて、今でも続いていてすごいなと思います。なかでも面白いところは、登場人物の年齢が変わらないので、いつのまにかカツオの年齢を自分が超えたときには、不思議な気分になりました。番組の最後には次回の予告とじゃんけんがありますが、これもまた家族で楽しんでいます。これからもずっと続いていってほしいアニメ番組だと思います」(滋賀・中学1年男子)
  • 「私が今クール毎週見ているドラマは『パパドル!』(TBS)です。当初は、ただ今人気の役者を多く起用して視聴者の関心を誘う、いわゆる視聴率稼ぎのドラマかな!?と思いつつも見始めたのですが、今ではなぜだか毎週木曜日になると、テレビにひきつけられ、かじりつくように見ています。バラエティー番組とドラマを織り交ぜた構成になっているところも新鮮です。このドラマは、単にアイドルの私生活と結婚を混ぜ合わせた内容ではなく、芸能活動の奥、裏を知り、噂の怖さを感じることができます。私は今後の展開を楽しみにしていきたいです」(東京・中学3年女子)
  • 「私は『37歳で医者になった僕』(フジテレビ)を毎週欠かさず見ている。このドラマは、草彅剛演じる元サラリーマンで37歳の紺野祐太が、古い体質の残る大学病院で研修医として勤務していく中で理想を持っているがゆえに騒動を起こしながらも、病院をよりよく変えていこうと日々努力し続ける姿をリアルな視線で描いた物語である。私が思うこのドラマのキーワードは”再スタート”であると思う。いうまでもなく主人公自身サラリーマンを辞め、医師として自分の人生を再スタートさせた。また日本も東日本大震災後からの再スタートを真に願っている。そんな日本への応援メッセージとも感じ取れるこのドラマを私は最後まで見届けたい」(東京・高校2年男子)
  • 「僕が最近気にいっているのは、何といっても『宇宙兄弟』(日本テレビ)です。南波六太(むった)、日々人(ひびと)の兄弟が、”宇宙飛行士になって、月に行く”という同じ夢に向かって行くというストーリーが、なんだかワクワクします。僕には3歳年下の妹がいるのですが、六太や日々人のように、同じ夢を持てる兄か弟がいればなぁと思います」(神奈川・中学2年男子)
  • 「私は毎週土曜日、日本テレビでやっている『三毛猫ホームズの推理』が好きです。見ようとしたきっかけは、私の好きな相葉雅紀さんが出ているからでした。私は、そのドラマのオリジナルで、ホームズという猫がたびたび人間になり、主人公の推理を助けるという設定が好きです。また、その役がマツコ・デラックスさんであることも良いと思いました。主人公のキャスティングも素晴らしいと思いました。いつも頑張っているけど、上司には怒られてばかり。兄や妹にも呆れられてしまうが、犯人に感謝されてしまう主人公、義太郎は相葉さんしかできないと思いました」(神奈川・中学3年女子)
  • 「最近見たドラマで面白かったのは、『くろねこルーシー』(サンテレビ)です。地方局が共同で作っている”動物ドラマ”シリーズはずっと見ていました。誤解していた父のことをくろねこのルーとシーとの生活を通して見直しはじめ、嫌いであったはずの父と同じ”占い師”への道を歩み始めていくという物語で、ベタな感じがしているのですが、ほのぼのできる内容でした。このドラマは学生クリエーターと共同で制作しているということなので、このドラマに参加したクリエーターから、未来のテレビマンが現れるはずだと期待しています」(大阪・高校2年男子)

【委員の所感】

  • ドラマやアニメの報告は大変熱心に取り組んでくれています。報告を読んでいて、まだ見ていない番組も、見てみたくなりました。
  • 好きなことや面白いことになると、個性が出なくなってしまいますね。でも関心があることになると、ネット等で細かい点まで調べて見ているということが分かりました。
  • 海外番組で、出演者名の翻訳について詳しく調べ、文化の違いまで踏み込んだ報告があり、感心しました。
  • 長寿アニメでは、モニターのみなさんが僕らと同じ体験をしている事を知り、心にしみるものがありました。世代を超えた共通体験を持っていることが、面白いと思いました。
  • しっかりドラマを見ているなと感心しました。視聴率の面から一般の方と中高生の見方は違うのかなとも思いました。
  • 好きな番組について、なぜ好きなんだろうという所まで踏み込んで分析しているのは、素晴らしいです。

「今月のキラ★報告」東京・中学2年男子

僕はふだん「連続ドラマ」を見ることがほとんどない。今までに通してみたドラマは、2011年1月の『スクール!!』(フジテレビ)と、2011年10月の『南極大陸』(TBS)の2本だけだ。
『南極大陸』に出演していた堺雅人さんがとても印象に残ったので、今期堺雅人さんが出演している『リーガル・ハイ』(フジテレビ)を見てみたらすごく面白かったので毎週欠かさず見ている。
このドラマの舞台になっている法律事務所や、裁判・法律というものは、中学生の僕にとってはふだんなじみのないものだ。しかし、堺雅人さんが演じる古美門研介という弁護士のキャラクターが外見も中身も笑えるくらいに個性的で、「勝てるわけがないだろう」と思うような裁判でも無茶な主張を法律を使って無理やり正当化させて勝っていく様子が面白い。
古美門は、自分の感情や世間一般の考えに流されず、依頼者にとっての「正義」を法的に証明し勝訴する。「なるほどなぁ」と思う場面がたくさんある。
このドラマを見ていると、正義や真実はその人の立場や考えによって変わるものだ、という事に気付かされる。常識にとらわれず、多角的なものの見方が必要だと教えてくれる。

【委員会の推薦理由】

まず、ドラマのテーマや弁護士という職業を、一歩引いて冷静に俯瞰しているところが素晴らしいと思います。実際に弁護士をしている委員からは、「正義や真実は、その人の立場や考えによって変わるものだ」との指摘は、この職業の本質を突いているという話がありました。その作文力を含め、「今月のキラ★報告」とします。

第132回 放送と青少年に関する委員会

第132回 – 2012年4月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第132回青少年委員会は4月24日(火)に開催され、3月12日から4月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、4月に寄せられた中高生モニター報告等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年4月24日(火) 午後4時30分~6時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、川端委員(新)、最相委員(新)、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けた。そのなかでフジテレビで4月6日に放送された『ペケ×ポン』に多数の批判的な意見が寄せられたことから、委員全員で視聴することになった。

中高生モニターについて

2012年度の新しい「中高生モニター」34人に、東日本大震災から1周年の番組や、この1年間の震災関連の放送について、「感じたこと」「考えたこと」についてリポートしてもらった。今回は、34人全員から報告が届いた。
2012年3月2日に、青少年委員会では、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を出し、<震災関連番組内で、映像がもたらすストレスへの注意喚起を望みます>など、3点を各放送局にお願いした。それに対する各放送局の対応に関して、モニターから様々な意見が寄せられた。個々の番組に関する意見がある一方、震災報道全般に対する批判、賛同なども数多く寄せられた。

【主な意見】

  • 「NHKの『帰れない犬たち震災が奪った日常』を見た。犬と飼い主が離れ離れで生活していかなければならなくなった悲しみ、苛立ちがとっても重たく伝わってきた。いつも通りの日常が突然奪われてしまうって、本人たちでなければその悔しさはわからないのかもしれない。今回のドキュメントはあの大震災から間違いなく1年が過ぎたんだと実感させられる内容だった。私たちもこの大震災の意味を重く受け止め、他人事ではないという気持ちを何時までも持ち続けていかないといけない」。(長野・高校1年女子)
  • 「私が『東北地方太平洋沖地震』の報道を見て考えたことは、どこか”うそ臭い”ということです。私が知りたいことは、今、被災地がどういう状況なのかということです。でも、回りくどい報道ばかりで核心が隠されている気がします。もう一つ、”絆”という言葉を使いすぎだということです。”絆”という言葉は、近年使われ始めた比較的新しい言葉、という気がします。そういう言葉を、40代ぐらいのニュースキャスターが使っていたり、地元のおじさんが使っていたりすると、違和感があって、どんなに感動的な話でも、白々しく感じてしまいます。また、使いすぎ、というのも白々しさに拍車をかけています。地元のおじさんが、『ご近所との絆があったから…』、ナレーションが『そこには親子の絆がありました…』、コメンテーターが『やっぱり絆が…』とか言っていると、急にうそ臭くなって、『うざっ』と思ってしまいます」。(北海道・中学3年女子)
  • 「日本テレビの『復興テレビみんなのチカラ3.11』を見ました。僕等、高校生にとって震災に関するニュースは重々しく、なかなか見る機会も少ないのですが、この番組では被災地と向き合ってきたアーティスト達の様子がピックアップされていて、そのアーティストの中に僕の好きなYUIが含まれていたので興味があり、視聴しました。そこで普段はバラエティーなどしか見ない僕も、この震災に関する番組を見つけ、見たいと思いました。実際、目当てのアーティストが出るのはほんの少しでしたが、それでもこの番組は5時間近くもやっているので、結果として他のテーマも見ることになり、震災後のことについて知ることになりました」。(東京・高校2年男子)
  • 「去年、震災が発生してから、震災のニュースがテレビでたくさん伝えられていました。そのときに、あまりにひどい状況を見ることはストレスにもなるので、子どもはあまり見ないほうがよいと言われていると家の人から聞きました。確かに、津波で家や車や人が流れていくのを見るのは、とても怖いと思いました。でも、この一年間の映像を見て、少しずつ復興してきたことや、ボランティアとして働かれた人の様子を知ることができ、よかったです。ガレキは今後どう処理されていくのか、原発をどうするのかなどこれからも注意深くニュースに目を向けていく必要があると思います。ぼくは電車が好きなので、線路が流されていたり、電車が倒れていたり、東北新幹線の駅がとてもひどい状況になっているのを見たりして、とても心配でした。でも東北新幹線や一部の路線が復旧できて、機会があれば、自分の目でその様子を見てみたいと思いました」。(滋賀・中学1年男子)
  • 「ほとんどの番組が視聴率を取るがための企画をしているようにも感じる。確かに将来への記録という意味では大切なのかもしれないが、津波で家を流されたり、家族を失ったりした人にストレートに質問をしているのを見て、興味本位の報道をしているのではないかと感じてしまう。また、在京マスコミはふだんから”東京目線”の報道ばかりしていて、本当に被災者に寄り添った報道ができているのか疑問に感じる。そんな中でも特に震災関連報道が良かったと思うのは公共放送のNHKだ。地震が起きたらまずNHKを見るというのは日本人にとって”常識”と言っても過言ではないと思う。震災後の報道も民放と比較して良かったと感じ、視聴率を考えながら番組を作らねばならない民放との差を感じることができたと思う」。(大分・中学3年男子)
  • 「多くの報道番組の扱う『震災』に関する報道の内容が、表面的で危機感が被災地から離れている僕にとって感じられません。被災地に咲く桜、甲子園での選手宣誓、各国からの応援メッセージなどなど、そのような報道は被災者に勇気を届けることができると思うし、とても大切だけれど、問題は情報のバランスだと思います。特に恐いのが放射線やそれに関する報道量の少なさです。そんな中、特に僕がよかったと思う報道はJ-WAVEが3月28日にオンエアしたラジオ番組、『ジャム・ザ・ワールド』です。たった10分近いコーナーでありながら、原子力発電所の状況について、とても詳しい内容が話されていました。東日本大震災から1年に関する報道は、テレビよりラジオの方が全体的には優れていたのかなと思います」。(東京・高校1年男子)
  • 「震災の状況を伝えることは本当に大事なことだし、そのことは続けるべきことだと思います。しかし、どの報道もどの番組も同じようなことばかりやっていると思います。僕は2011年の夏休みに岩手県にボランティアに行きました。そのとき分かったことは、この地震のことは風化してはならない、忘れてはならないということです。なのに、インパクトがなく、どこも同じようなことばかりやっていて、風化するのは時間の問題だと思います。テレビはどこか遠慮のようなものをしているように思います。現地の伝えられることを全然伝えていないと思います。また、被災地に行って思ったことは、臭いや現地の人のことです。テレビでは臭い自体は伝えられませんが、臭いを直接伝えられなくても、本当の現状が伝わるような工夫がまだできるのではないだろうかと思いました。テレビは、ありのままをそのまま伝えることが大事だと思います。それを見て何を思うか、どう判断するかは国民のやるべきことだと思います。テレビは決して道徳的なものばかりである必要はないと思います」。(静岡・高校2年男子)
  • 「私が一つ印象に残っている番組があります。3月に放送されたフジテレビの番組です。昨年の震災以降、映像を見たり、音声を聞いたりして、心のストレスを負ってしまう子どもが急増したそうです。そこでこの番組は『ストレスを感じる場合は視聴をやめてください』とのテロップを流し、あえてリアリティーのある映像を流していました。私はそのような番組も必要だと思います。見るか見ないか自分でチョイスし、リアリティーのある映像を見て、自分で処理することで、現実を受け止められると思うからです」。(東京・中学1年女子)
  • 「ちょうど1年がたった3月11日は、テレビ欄を見るとどの番組も震災の特集が組まれており、テレビを見ていてこの1年を深く考えさせられました。そんな中思ったのは、津波の映像が放送されたことについてです。迫ってくる津波や津波に流されていく車や建物の映像を見て、私は胸が痛みました。しかし、その映像を被災者の方々が見たらどう思うでしょうか。1年を振り返るための特集とはいえ、津波の映像は放送すべきではなかったと思います。その映像によって家族を亡くした悲しみや流された恐怖が呼び起こされてしまったとしたら、そのテレビ番組はよくない放送であると思います」。(群馬・高校1年女子)
  • 「3月24日放送の『NHKスペシャル』では、地震、津波、原子力発電所の事故のため放射能汚染により、町民全員が避難することになっている福島県浪江町の1年間の様子が放送されました。実は私自身、現在自宅から離れ避難生活を送っています。今回の放送は、他人事としてではなく、自分自身のこととして、これからの生活を心配・不安になりながら、家族そろって見ました。今回の放送の中で青年部の方が『仲間と、浪江町焼きそばで盛り上げ、日本一の町にしたい』と言った言葉は力強くて、私も勇気付けられたし、応援したいと思いました。どんな辛い生活を送っていても、目標を失わないってことは素晴らしいと思います。原発事故についての放送は見れば不安になることが多いのだけれども、放送してもらうことで、この事故が日本中の方に忘れられないようになるので、これからも取り上げてほしいと思います」。(福島・中学2年女子)
  • 「私は、日本テレビの『ザ!鉄腕!DASH!!』を見ました。その番組は、東日本大震災から1年経った今でも砂浜に流れ着くゴミなどを、自主的に拾っている人に密着すると言う内容でした。私はこの番組を見て、人と人との想いの強さをすごく感じました。ゴミを拾う人たちはみんな他人だけど、『もう一度サーフィンをしたい!』『もう一度観光業を復活させたい!』と言う想いは、同じだと思いました。たった1人の行動から始まり、今ではたくさんの人達でゴミを拾うと言うことにとても感激しました。これから日本にどんな困難が降り注いでも、この心があればみんなで乗り切れると思いました」。(長野・中学2年女子)
  • 「3月24日の『NHKスペシャル~故郷か、移住か~原発避難者たちの決断』を見ました。この番組は、大震災において地震・津波の被害に遭い、原発事故による放射線漏れで深刻な影響を受けた福島県浪江町を取材する中で、この先故郷浪江町にもう一度戻って生活するか、安全な場所へ移住して生活するかで選択を迫られる住民や町長らの苦悩を描いている。この番組を通して、帰還か移住かという選択の間で揺れ動く住民たちの心がはっきり映し出されていた。原発避難区域の住民たちの故郷に対する複雑で深刻な思いが強く伝わってきた。この震災による影響がいま被災地にどのような問題をもたらしているのか、その問題が以前とどう変わってきているのか、今回の番組のようにひとつの問題に焦点を絞って定期的に放送してもらうことが、震災という出来事を風化させないために重要だと感じる。これからも、継続的にこのような震災報道を見ていきたいと思う」。(東京・高校2年男子)

【委員の所感】

  • 皆さんの意見を、非常に面白く読ませてもらいました。震災ですべてを無くしてしまう怖さをうまくリポートしていました。「絆」を連呼したり、感動ストーリーを作ってしまうテレビに、「うそくさい」と断じる意見に感心しました。
  • 中高生の知りたいことを、テレビは伝えていない事が分かりました。若者が報道番組を見るきっかけが、有名人なんだなと、新鮮に思えました。
  • 中学生でこんな文章が書けるのかと、感心しました。全体的に、テレビ局のうそっぽさをクールに見ている、と言う感想を持ちました。
  • 皆さん個性があって良かったです。初めから視聴率を取るための企画であったり、興味本位の報道ではないかなど、常にシビアな目線で報告してくれるタイプと、素直に自分の感受性を一般化するタイプの、大きく2つに分けられる気がしました。
  • テレビで報道されているものと、ネットの情報が同じ価値になっているなあと感じました。基本的に裏づけの有るテレビの情報と、責任のはっきりしないネット上の情報の違いを、どうやって分かってもらえるか少し心配になりました。
  • 映像のジレンマとして、あるストーリーに落とし込まなければならない制作者の状況を、「あんたたち分かっていないなあ」と、外から柔らかく突きつけられたような報告があり、元テレビ制作者として心に響きました。
  • この前まで小学生だった人が、ここまで書けるのかとびっくりしました。自分で被災地に行って自分で見聞きしたものと、テレビの伝えるものとの落差を感じたと言う報告に感心しました。

「今月のキラ★報告」 東京・高校2年女子

私は日本テレビの『復興テレビみんなのチカラ3.11』を見ました。この番組は3月11日に生放送されたものだったので、追悼式の様子や、被災された方のその時の心境をリアルタイムで知ることができました。
被災者の方がおっしゃっていた事でとても私の記憶に残ったものがあります。その方は福島第一原発近くに住んでいましたが、今は立ち入り警戒区域となっていて、故郷に帰ることができていません。ニュースキャスターが、「何が一番恋しいですか。」と聞いたところ、その方は「カムラヤのUFOパンです」と答えてから、そのパン屋さんのエピソードをたくさん話していました。本当はこんなことを思ってはいけないのですが、私は思わず「私たちはそのパン屋さんについてそんなに詳しく知りたいわけでもないのに…」と感じてしまいました。その後、カメラが警戒区域に入っていき、その、人のいない町の現状を撮っていきました。すると、そのパン屋さんの変わり果てた淋しい姿が写しだされ、被災者の方は涙ぐんでいました。その時私は、「私にとっては、もしかしたらどうでもいいようなことでも、その人にとっては何十年の思い出が詰まっているんだ」ということに気づきました。そして、これがもし自分の町で、私はもう後30年はそこに戻ることができないと言われていて、そんなときに「何が一番恋しいですか」と問われたら私もきっとその被災者の方と同じように、他の人から見たらどうでもいいようだけど自分にとっては日常だったことについて話すでしょう。
日常生活、親や友達の存在、学校など、当たり前すぎてそのありがたさが分からないものこそ、失ったときのショックが大きくなるのだと思いました。こういう事は、この番組を見ていなかったら知ることができなかったと思います。ここで、私は放送が私たちに教えてくれることの奥深さを知ることができました。
しかし、一方で去年、震災直後のニュースを見たところ、ニュースレポーターが被災者の方に「とても悲しいですね」と話しかけていましたが、被災者の方はうつろな目つきで下方を見、返事はしませんでした。私は、被災者の方なら誰だって同じ反応をするだろうと思いました。被災者の方の悲しみや苦しみは「とても悲しいですね」という言葉では到底適切に表現できません。技術が発展して、最初は文字だけの新聞、次に声のラジオ、そして声と姿によるテレビと、次々に情報伝達の手段が増えました。しかし、どんなに声で訴えても、どんなに表情や身振りで表しても、体験したことすべてを伝えるのは不可能です。
ここで、私は放送の限界というものを感じました。だからこそ、報道では体験をした方の立場になって、様々な工夫を凝らして物事を伝えていくべきだと思いました。そうすることによってだんだんと実体験と報道によって人々が得た情報の差を埋めていくことができ、また、そうすることが報道の使命であると私は思います。

【委員会の推薦理由】

震災報道を通して、報道では伝えきれない真実や感情があることに気がつき、その上でどのように報道していくべきかということに考えを及ぼしている点が高く評価されました。また、日常のことすぎてありがたさに気がついていないものを失った時のショックの大きさに気がつき、当たり前だと思っていることのありがたみを感じる感性も評価されました。