第165回 放送と人権等権利に関する委員会

第165回 – 2010年9月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の審理が行われ、番組で取り上げられた民事裁判の判決や教授への取材方法について、担当委員からの説明とそれに基づく議論が行われた。9月16日に行われた「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局より報告した。委員会終了後、在京地区各社との意見交換会が開かれた。(意見交換会の詳細はシンポジウム・意見交換会の項をご覧ください)

議事の詳細

日時
2010年 9月21日(火) 午後3時~5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
2回目の実質審理となった今回は、番組で取り上げられた民事裁判での地裁と高裁の判決について、症例登録票の扱いや患者に対する説明義務の有無などの争点と判決の解釈について、担当委員から説明が行われた。また取材担当の委員からは、教授への取材方法をめぐって問題点があったかどうか、報告が行われた。さらに「委員会決定」案の起草を行うことになった委員からは、全体的な観点から検討すべき問題点が指摘された。本事案の審理では、メディアの取材行為や医療裁判に関する的確な理解と判断が欠かせないため、このように委員が専門にかかわる分野について分担して問題点の整理を行う、これまでにない方法がとられた。
この日の委員会では、申立人、被申立人から詳しい事情を聞いたうえでさらに議論を深める必要があると判断され、次回委員会でヒアリングを行うことになった。

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告

9月16日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表の概要、および通知・公表を受けての各局の放送対応をまとめた資料を事務局より配付し、報告した。
(決定全文はホームページの「委員会決定」の項、第45号をご覧ください)
通知・公表の概要は以下の通りである。通知は、9月16日午後1時30分よりBPO会議室で、堀野委員長および起草委員を務めた坂井委員と田中委員が出席し、申立人、被申立人が同席する形で行われた。
堀野委員長はまず、「本件放送に名誉や肖像権等の権利侵害はなく、放送倫理違反に当たる点も認められない」とする見解を通知し、「決定の概要」を読み上げた。そのうえで、権利侵害がないと委員会が判断した理由を説明するとともに、「補助的映像であっても、重要なものとして扱う以上は、そこに映されている人たちの肖像や気持ちに事前に十分に配慮してほしかった」と、被申立人に対して要望を述べた。
通知の後、個別に意見や感想を聞いた。
申立人は委員会での審理にお礼を述べた後、「事実関係の認定に不満はない。しかし、それをどう判断するかについては加害者側と被害者側で溝があるというのが率直な感想だ。委員会は社会的に許容される範囲内と判断されたのだと理解した。ただ、11月の放送で、自分たちの活動理念と全く立場を異にする例と一緒に放送されたことは大いに不満である。また、委員会で指摘していただいたが、これだけ映像を使用しながら事前に何の連絡もなかったことは、公共放送としておかしいのではないか」などと述べた。
被申立人は、「事実関係については主張を認めてもらえてありがたく思う。今回の映像使用に関しては、提供映像であったため権利処理に軽率な点があったことは指摘されたとおりである。提供映像を使用する場合、報道だけでなく制作も含め教訓として活かしていきたい」などと述べた。
午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。26社52名が取材に訪れ、テレビカメラ6台が入った。
まず堀野委員長が決定の概要を説明した後、坂井委員から「委員会決定」の流れに沿って詳しく説明した。坂井委員は「企画の意図はよかったが、映像に用いられている人たちの考え方に事前にもっと思いをいたしていれば、申立てを防ぐことも可能だったかもしれない」とコメントした。
田中委員は「テレビで取り上げられる側の期待と公平・公正でありたいと思う局側とのスタンスにはギャップがあるものだが、肖像権処理に問題があって双方のやり取りが増え、複雑になった。全体としてはよい番組だった」と述べた。
記者との質疑応答では、申立人からTBS宛て2010年1月15日付けのFAX文書について質問があった。申立人による番組の企画提案であった旨を答えると、「申立てにある『善意をふみにじる行為』の中にこのことも含まれているのか」と質問が続いた。
坂井委員と堀野委員長が回答し、TBSがこの企画案を断ったことを契機に申立てが行われたこと、素材となる一般の人の期待と現実の番組との間の「ずれ」や、放送される側の期待と局側の考えの「ずれ」が申立ての背景にはあると思われるが、編集権はあくまでも局側にあると判断したこと、企画についての具体的な合意が双方にあれば別だがそれはなかったことなどを説明した。
「TBSはこの機能訓練士に取材をしたのか」という質問が出た。取材をしていない旨を答えると、「なぜ取材をしなかったのか」と重ねて質問があった。
堀野委員長は、「番組のテーマは障害を持つ少女がなぜ普通中学校に進学できないのかを問題提起することにあり、少女の機能獲得のプロセスや方法がメインストリームではないということだった。企画意図を考えると、委員会は機能訓練士を取材しなかったこと自体に問題があるとは判断しなかった。しかし、映像の使用に関連して事前に挨拶はするべきであったと考えた」などと答えた。

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・41件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 8月25日に開かれた総務省ICTフォーラムで、BPOの活動についてのヒアリングが行われた。当日のやり取りの概要を事務局より報告した。
  • 毎年開かれている放送人権委員と各地のBPO加盟放送事業者との意見交換会を、今年は12月7日に札幌で北海道地区の放送事業者を対象に開くことになり、事務局より報告した。
  • 次回委員会は10月19日(火)に開かれることになった。

以上

第115回 放送と青少年に関する委員会

第115回 – 2010年9月

TBS『リンカーン』制作担当者との意見交換

視聴者意見について …など

第115回青少年委員会は9月28日に開催され、7月委員会で審議したTBSのバラエティー番組『リンカーン』について、制作担当者と意見交換を行った。また7月16日から9月14日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に、バラエティー2番組について視聴し審議したほか、9月に寄せられた中高生モニター報告について審議した。

議事の詳細

日時
2010年9月28日(火) 午後4時30分~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

TBS『リンカーン』制作担当者との意見交換

7月委員会で当該番組に対する視聴者意見を受け審議したが、それを踏まえてバラエティー番組における安全対策や放送表現について、制作担当者と委員との率直な意見交換が行われた。委員からの意見・要望に応答しながら、局側から以下の概要の説明を受けた。

【安全対策について】

番組制作者にとって最も気をつかうところは安全対策であり、不慮の事故を回避するため、危険性があると思われる収録等については万全の対応をしている。収録に際しては社内横断的な委員会を開き、事前に複数の関係者による話し合いを行って、安全性の確認をすることにしている。当該番組についても委員会のほか、独自の「安全概要書」を作成し、スタッフ全員に配付し、その意識を共有している。また収録までに何回もシミュレーションを繰り返し安全性の確認を行っている。現場には医師を含め専門家を配置するなどの対応を行っている。

【放送表現について】

バラエティーには様々な表現形態があり、出演者が体を張ってゲームに挑戦するという内容もその一つと考えている。また、番組では大掛かりな仕掛けを使ったものだけではなく、仕掛けのほとんどないシンプルなお笑いも追求している。今回の放送で視聴者から”不快”と指摘された箇所については、放送後、社内で速やかに議論が行われた。放送前には毎回、プロデューサーを含め、複数のスタッフが視聴し、番組内容について意見を出し合い、再編集をするなどの作業を行っているが、当該放送については、不快に思うという視聴者意見等を受け、編集段階等で違う表現がありえたという反省が残る。
番組内容については前々回の議事概要を参照。

視聴者意見について

フジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』7月29日放送分について

“とんねるずを泊めよう”企画について「悪ふざけがすぎ、パワハラ的である」などの批判意見が視聴者から寄せられ、番組を視聴の上、審議した。委員会としては特段問題にすべき放送内容ではないとした上で、不快に感じる視聴者もいることに耳を傾け、それを払拭して、さらに面白くする演出方法があるのではないかという委員の意見があった。

テレビ東京『ピラメキーノG』9月10日放送分について

出演者が10代のモデルの頭に触れたことについて「痴漢的な行為で、セクハラにあたり子ども向け番組として不適切」などの批判意見が寄せられ、番組を視聴の上審議したが、委員会としては、不快感を抱かせるような放送内容ではなく問題はないとした。また、民放各局には、子どもを対象とした番組は少なく、この時間帯にこういう番組を編成するのはある種のチャレンジであり、大切にしたいという意見があった。

中高生モニターについて

9月~11月は「報道・情報・ドキュメンタリー番組」のジャンルを取り上げている。9月はその中から興味深く感じたり、関心を持ったりした「面白かった番組、好きな番組」についてレポートを書いてもらい、29人から報告が届いた。内訳は報道・情報系の番組に19人、ドキュメンタリー番組に12人から(複数回答あり)意見が寄せられた。

【モニターの主な意見】

報道・情報系の番組では『ズームイン!!SUPER』と『NEWS ZERO』にそれぞれ4人から好評の意見が寄せられた。『ズームイン!!SUPER』には「朝から元気を与えてくれる。飽きない内容、分かりやすい解説で見ていて楽しい。2人の司会者の息がとっても合っていて、わちゃわちゃした感じでなくていい」「司会者がはきはきしていて聞き取りやすく、画面の表示も分かりやすくていい。金曜日のニュース解説は分かりやすく、私にもよく内容が理解できとても勉強になる」「雰囲気が明るく、スタジオのセットもスッキリしていて朝の番組にふさわしい。政治や経済の話題には図表を出して要点を分かりやすく説明してくれるので、最近は政治に興味を持つようになった」。『NEWS ZERO』には「『今日の24時』というコーナーで、その日にあった出来事を時間ごとに分かりやすく取り上げてくれとても見やすい」「CGやアニメを使った解説を多用することで、話題の内容をイメージしやすく理解しやすい」「大きな事件や事故を取り上げるだけでなく、櫻井翔さんの起用が親しみやすく彼のレポートには共感が持てる」などの意見が寄せられた。
そのほか『みのもんたの朝ズバッ!』には「キャスターの意見が明確でいい」、『とくダネ!』には「司会者の解説は辛口だが、取り上げるジャンルが幅広く、時間配分もいい」、『情報ライブ ミヤネ屋』には「おしゃべりのテンポがよく雰囲気もいいし、押し付けがましくないのがいい」という意見があった。
ドキュメンタリー番組では『クローズアップ現代』に3人から意見が寄せられた。「夕食時に興味深いテーマが掘り下げられ毎日見ている」「身近な奨学金の話題から、ダークマター(暗黒物質)という未知の世界まで分かりやすく解説してくれていい」。また『カンブリア宮殿』には、「成功者は人生で一度は大きな賭けをして勝っている。人生を大きく左右させる賭けをするという決断力のある行動ができるなんてものすごくうらやましい」「成功した人物の成功譚を聞くと励みになる。自分も将来、成功者になる」という意見が2人から寄せられた。
そのほか『情熱大陸』には「ふだん接することのできない人物の”素の内面”に迫る密着取材の手法がすばらしい」、『NNNドキュメント』には「老人ホームを舞台にした高齢者の恋愛の話が印象深かった。ただ、放送時間帯が日曜深夜とは遅すぎる」という意見も寄せられた。
また、地域の情報番組『かんさい情報ネットten!』について「身近な話題を関西の芸能人をレポーターにして楽しく伝えていて、紹介された地域に一度行ってみたくなる」という声が寄せられ、ラジオ番組『RADIO DONUTS』には「私が情報番組に求めるものは、元気になれること、情報が分かりやすいこと。この番組では、2人のキャスターのテンポのいい掛け合いが心地よく、朝から元気になれる」という意見が寄せられた。

【委員の所感】

  • 報道・情報番組に求めているのは、一番に分かりやすさだということが読み取れる。確かに、ニュースや情報は分かりやすく、理解しやすいものでなければ意味がない。また、司会者の個人的な意見がはっきりしている方が好まれるのかなと思われる意見もあったが、そういう意見に接したとき、自分ならこう考えるという視点も持ってほしい。
  • ドキュメンタリー番組には、制作者の意図をよく読み取っているなと思われる意見が多く見られた。日曜深夜の『NNNドキュメント』に着目して、素直に自分の気持ちを表現している高校生の報告、人物の動向や生活を取材するだけでなく、その人の「心」や「内なる思い」に”密着”した番組『情熱大陸』を評価した声には感心させられた。
  • レポートを書く前に、情報番組・報道番組・ドキュメンタリー番組の違いを調べてレポートを書いてくれた中学生にも感激した。全体的にはドキュメンタリー番組に関心が高い一方、ニュース・報道に対する際立った意見が寄せられなかった点が惜しまれた。

「今月のキラ★報告」(新潟・高校2年男子)

報道・情報・ドキュメンタリー番組の中で、今年の2月28日に日本テレビで放映された『NNNドキュメント』が印象に残っています。この回のテーマは「老人ホームの恋」(制作:四国放送)でした。まだ17歳の僕に人生がどういうものかは分かりません。でも、この番組で「恋愛」がどういうものかが、分かった気がします。
この回は介護施設で生活する、おばあさんとおじいさんの2組のカップルがクローズアップされ放送されました。1組目は付き合い始めて間もなく、施設の方や娘や息子に反対されている2人のお話でした。もう1組は付き合い始めて10年も隣室で暮らすお2人の話。恋というものは偶然やタイミングなどが重なり合ってできるもの。それはいくつになっても素晴らしいもので、素敵なものである。
しかし、同じ利用者の人や家族、施設の人は白い目で見たり、嫌悪感を持ったりする人もいます。普通なら周囲から温かい目で見られたり、応援されたりします。この違いは一体なんなのでしょう?世間体を気にしすぎて、素敵なものに気付けていないのではないでしょうか。年をとっても恋愛には誰も口出しできないと思いながら見ていました。当の本人たちは何とも思ってないようで、幸せそうに笑顔でインタビューに答えていました。
大好きな者同士、ふたりで笑える。これ以上の幸せなんて見当たりません。恋愛というものは、いくつになっても幸せになれるもの、だと思いました。こんな素敵なドキュメンタリーが深夜に放送されたのが残念でなりません。みんなが見るような時間に放送したら大きな反響があったと思います。

【委員会の推薦理由】

老人ホームでの2組のカップルをクローズアップした番組を見て、10代の高校生が、自分で感じ取った恋の素晴らしさや、老人の恋を白い目で見たり、嫌悪感を持ったりすることに対する批判を率直に書いている点を高く評価しました。

2010年8月に視聴者から寄せられた意見

2010年8月に視聴者から寄せられた意見

大阪の母親による2児放置殺人という痛ましい事件に多くの意見が寄せられた。登山者の救出で出動したヘリコプターが墜落したが、取材で現場に向かったテレビ局カメラマンら2人も遭難し、取材に無理があったのではないかとの、厳しい批判意見があった。

8月に電話・FAX・郵便・でBPOに寄せられた意見は1,463件で、7月と比較して63件減少した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール62%、電話33%、 FAX3%、手紙ほか1%。
男女別では男性74%、女性22%、不明4%。
世代別では30歳代30%、40歳代27%、20歳代16%、50歳代14%、60歳以上8%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。8月の通知数は680件[35局]であった。このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、36件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 人権に関する審理・斡旋の要請・・・・・・・ 3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

8月の視聴者意見は1,463件と先月より63件少なかった。記録的な猛暑となった日本列島だが、事件事故も相次いだ。東京都内の民家で、生きているはずの高齢者の白骨遺体が見つかった。その後、全国各地で所在不明の高齢者の実態が明らかとなった。大阪の母親による2児放置殺人という痛ましい事件にも多くの意見が寄せられた。登山者の救出で出動したヘリコプターが墜落したが、取材で現場に向かったテレビ局カメラマンら2人も遭難し、取材に無理があったのではないかとの厳しい批判意見があった。
広島の平和記念式典に初めて国連の潘基文事務総長やルース米国大使が出席したが、潘事務総長の演説のところで、生中継を通常番組のドラマに切り替えたため、多くの抗議があった。民主党代表選挙は告示日直前まで混乱したが、菅首相、小沢前幹事長の一騎打ちとなった。報道が面白おかしく対決を煽っている、安易な支持率調査が多すぎるなどの批判意見があった。
バラエティー番組のゲーム収録中に芸人が3人も相次いで負傷したことで、テレビ局の安全管理上の問題指摘や、危険なことをやらせすぎだとの批判があった。このほか取材の仕方などについても、繁華街周辺でのテレビ取材クルーのわがもの顔のロケや、事件報道での成人加害者の母親への執拗な取材などにも厳しい苦情や批判が寄せられた。
番組出演者に関する意見は「不適切な発言」で53件、「不適格な出演者」で61件あった。
ラジオに関する意見は33件、CMに関する意見は53件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は102件で、前月より約20件減少した。
今月も、バラエティー番組を中心に低俗・モラルに反するとの意見が36件と最も多く寄せられた。美容整形を扱ったバラエティー番組に対しては、「子どもが安易に整形に走る」「ただの宣伝ではないか」などの意見が4件寄せられたが、全体的に分散傾向にある。以下、性的表現に関する意見11件、いじめに関する意見7件などが続いたが、これらでも特定の番組への意見の集中はみられなかった。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 杉並区に住んでいるとされる都内最高齢113歳の女性の存在が確認できないということで、79歳の娘さんにインタビューしているニュースを各局で放送している。芸能人でもない一般の方を、住まいも分かるような形で全国放送することは、娘さんの今後の生活に悪影響を与えるのではないかと心配している。また、区の職員が、一般家庭の内情をあのようにペラペラとテレビで話すことはいかがなものか。
  • 全国各地で高齢者の所在不明が問題となっている。各自治体が発表した100歳以上の所在不明者について報じていた。その際、女性キャスターは日本地図に置かれた丸印(印1個が所在不明者1人を表す)を指して「1個、2個、3個。○○県では3人が所在未確認です」と説明していた。人を示す印を数えるのに「1個、2個」は失礼だ。やはり「1人、2人」と言うものだ。
  • 「広島平和記念式典」を見た。今年は潘基文国連事務総長が初めて出席する歴史的な式典だ。ところが、潘事務総長のあいさつの前に放送が終了しドラマが始まった。私は潘事務総長がどのような表情で、どんなあいさつをするか生放送で見たかった。歴史的瞬間は全世界に生放送すべきだ。
  • 駅のホームで起きた転落死事件の報道について、ワイドショーは容疑者の母親にまで取材しているが、このような「罪は九族へ及ぶ」的な時代錯誤な報道は控えるべきではないか。未成年の起こした事件ならば監督責任が問われることもあるだろうが、成人の起こした事件で、その事件に何ら関わっていない両親を糾弾するような報道には疑問を感じる。
  • 埼玉県秩父市のヘリコプター墜落事故の取材で入山したテレビ局の記者とカメラマンが遭難した。報道自粛がかかっていたにもかかわらず、無理に取材を強行している。各社のニュースでは、「報道だから許される」というような表現があり、あまりに腹立たしい。また沢のぼりをバカにした装備なのに、まるで彼らが「不慮の事故」に遭ったような扱いをしている報道もある。
  • 本人の意思が不明確であっても家族の同意で臓器提供ができるようになった。移植手術により人命が助かるのはとても良いことだが、報道の仕方が冷静さを欠いており、「臓器提供」を崇高な行為として美化し過ぎているような気がしてならない。初の手術がこうも華々しく伝えられると、「提供したくない」という意思の存在自体が隅に追いやられる。それは危険なことだと思う。「提供する・しない」のそれぞれの意思の重みは等しいという認識が、改めて国民に浸透するよう報道してほしい。
  • 不同意堕胎罪で逮捕された医者の報道で、「イケメン」という言葉を使っているニュース番組が多かったが、犯罪者に対してなぜこのような言葉を使うのだろうか。例えば強姦容疑で捕まった男がいるとして、その男に対して「イケメン強姦魔」と報道されていたら、被害者はいい気がしないはずである。
  • ニュースで複数の人達を指して「○○ら」と表現することがあるが、この「ら」に違和感を覚えることが多い。「ら」はどちらかというとぞんざいに聞こえ、特にニュース原稿に使うと当事者を見下しているような印象を与える。私だけがそう感じているのかも知れないので念のため辞書で調べると、やはり多少「蔑み」を含む表現だということが分かった。報道においては犯罪容疑者などの例外を除き、複数の人達をまとめて表す際は「達」を使うようにすべきだ。
  • 人通りの多い公道で勝手にロケをしておきながら、通行人に「近づくな」といった指示を出すことは傲慢だと思う。特にお笑い芸人が「綺麗な女性を探す」という企画はひどすぎる。いきなり声をかけて髪や体に触り、失礼極まりない。それ以外の通行人に興味がない時は「カメラに近づくな」と指示することはおかしい。気を使うべきはテレビ局の方ではないのか。

【番組全般・その他】

  • 「見た目は汚いが美味しい店をまわる」というコーナーは気分が悪い。飲食店を探すのに「汚い」という言葉をつけて、お店の方にとって気分はよくないはずだ。内容も出演しているタレントたちが外見をみて、「きったね~な~」や「もしかしてあの店?信じられない」などの罵詈雑言だ。店内でもやりたい放題、メニューを見て注文するが、勝手に「こうしたら、もっとうまいぜ」と言い、それぞれが選んだ食事を混ぜてみたりと、見るに堪えない。
  • 室内ホッケーゲームのコーナーで、天井から大量の千羽鶴がばら撒かれ、床中が千羽鶴に覆い尽くされた。そのため、タレントが動くたびに床の千羽鶴は踏まれてしまっていた。8月9日は長崎の原爆投下の日である。この日長崎市では、「子ども達が折った千羽鶴を犠牲者に捧げ平和を祈る」という行事が行われている。その日に「同じ千羽鶴を踏みにじる」という行為を放送するとはどういうことか。一緒に見ていた私の両親は「情けない」と言って悔し涙を流していた。
  • お笑い芸人が収録中に骨折する事故が相次いでいる。今日3例目の負傷者が出た。このまま放っておくと、死亡事故などの重大事故が発生するかもしれない。かなり危険だと思えるゲームを罰ゲームのように強制し、無理をさせることから起きている。テレビ局で番組を作っている人間には常識というものがないのか。
  • ダイエットや減量を扱った番組ですが、食生活や摂取量が極端におかしい人にスポットを当てている事がよくある。バラエティー番組だから見た目のインパクトが欲しいのかもしれないが、わざわざそういう人を見つけて題材にする番組作りはどうかと思う。普通の食生活を送っている者としては、単に食事を変えただけでは劇的に痩せることはできない。サウナや岩盤浴を1回やっただけで減量できるわけがない。ダイエットに関する誤った認識を与えかねない。
  • テレビ番組は、太っていることは「間違い」と決めつけ、時には「罪悪」のように扱っています。毎日のように放送される「何ヵ月で何キロ痩せてきれいになった」という体験談は、「痩せていなければ美しくない」と言っているようなものです。その影響で、近所の人にお節介なアドバイスを受けることもあります。私は太りたくて太っているわけでなく、持病の薬の副作用です。痩せたくても痩せられない人の気持ちに配慮した番組作りをして下さい。
  • テレビをつけていると、昼間の時間は必ずどこかの局で韓国発のドラマ・歌・グルメが放送されている。いくら何でも多過ぎだ。特に韓国ドラマを際限なく輸入している現状を見ると、これまで何十年もかけて培われた日本ならではのテレビドラマがいともあっさり隅に追いやられたような印象さえ受ける。もしも番組の輸出入を「文化交流の一環」と位置づけるのであれば、日本からもテレビ番組をどんどん輸出すべきだ。受け入れる一方であれば、日本の放送文化は衰退するのではないだろうか。
  • 民放の女性アナウンサーは容姿も話し方もちゃらちゃらしていて、まるで芸能人と変わりない。女子アナの婚約・結婚の話題をまるで芸能トピックさながらに華々しく伝えることはおかしい。男性については、NHKの人気ベテランアナウンサーが脂の乗り切った時期にフリーになる例が後を絶たず、残念な気がする。野心家の男性アナウンサーにとって、NHKは思うような仕事が出来る環境ではないのだろうか。
  • 夏になると、テレビでも街中でも「浴衣」を身につけた老若男女を多く見かけます。夏の訪れを感じさせ、見ていてもほほえましいのですが、着付けがしっかりしていない状態を見ると情けなく思います。これはどの季節の、どの和装にも言えます。着こなしと所作はその人となりが表れるので、その芸能人やアナウンサーの魅力が損なわれないよう、しっかり着付けてあげるなりアドバイスしてほしい。
  • 最近、特に腹立たしいことが、出演者の言葉に効果音(爆発音やマシンガンの音)をかぶせて消していることだ。放送局が制作する番組はスタジオで観覧している人が主なのか、視聴者が主なのか分からない。編集の時点で効果音を入れているのだろうが、そのような編集をするならカットするべきではないだろうか。視聴者を蔑ろにしているようで腹立たしい。

【ラジオ】

  • 野球試合の延長が長すぎ、後続の番組がつぶれてしまいます。他社でも横並びで放送しているのに、試合終了まで中継する意味が分かりません。野球中継以外の番組を楽しみに待っているリスナーのことも考えていただきたい。
  • 「お色気大賞」のコーナーが苦痛でたまらない。私が聞きたいコーナーは「お色気大賞」の後に放送されるものだから、結局「お色気大賞」も聞いてしまうことになる。こんないやらしいコーナーはもうやめてほしい。

【CM】

  • 最近のCMはひどすぎる。「個人の感想です」という注意書きだけ付けて、怪しい個人ユーザーに企業の言いたい効能を代弁させているとしか思えない。自分達で効能を謳うとクレームが怖いのか、法にひっかかるのかは知らないが、CMを見て購入してしまうお年寄りの方もいるはずです。自分達は何のリスクも負わないやり方は、視聴者を騙そうとしているようにしか見えない。本当に自信がある商品ならば自分達で効能を謳えるはずだ。
  • カリスマ的ロックバンドの楽曲とお客さんの喜ぶ姿が映り、びっくりした。もしかして再結成かと思っていたら、そのバンドのライブの映像後に、某大手パチンコメーカーのマークが映り、パチンコのCMだとわかった。「パチンコ」の一言も出ない。女性向けに「ちょっと一息」「ちょっとの楽しみ」といった言葉を並べ、30代から50代くらいの女性3人が、ニコニコしながら散歩している様子が流れ、「女性にも楽しみを…」と言っている。姑息な手段でパチンコのCMを放送しないでほしい。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • 容姿の悪い女性を笑い物にし、番組を盛り上げるために不快ないじめエピソードを演出したうえ、視聴者に無責任に整形を推奨するバラエティー番組だ。美容業界と放送局の金儲け以外の何ものでもない。整形手術は希望する人間が自費でやるべきことだ。子どもや若者に悪影響だ。
  • 不快なキャラクターが出てきて生理的に受け付けられない。子ども向け番組なのにどぎつすぎる。夜のバラエティーではなく、朝の食事時間の放送で子どもが見ていることを配慮すべきだ。ブサイクな女性を笑う風潮を特に子ども向け番組で作ることはとても倫理に反している。
  • 出演者に刺青をした人がいた。テレビは不特定多数の人が見ており子どもも見ている。堂々と刺青をしている人間を出演させることはやめた方が良い。まだ世間のことが分からない少年少女が見ていたら、刺青をしていてもおかしくないと思わせてしまい、悪の道への一歩を安易に踏み出してしまう。どうしてもそのタレントを出演させたいなら、刺青が見えないようにして出演させるべきだ。
  • 家族団欒の時間帯に、変態行為を長時間にわたって放送していた。信じられない。お笑い芸人におもしろおかしく再現させていたが、冗談半分でマネをする人間が出るのを助長するだけで、青少年への影響は大きいと思う。われわれ大人が見ていても不愉快に感じる番組だった。

【性的表現に関する意見】

  • バラエティー番組で、タレントが性的な話題について10分程度語っていた。夏休みの21時台という時間帯では小中学生の視聴もあるはずで、現に我が家でも中学生が見ていたが、あまりの内容に親としてチャンネルを替えざるを得なかった。このような放送をこういう時間帯に流すことはテレビ局の見識を疑う。規制をかけるべきだと思う。
  • アイドルのプロモーションビデオが昼間に放送されていたが、下着姿で歌っている。小学生の子どもたちの目に偶然入ってしまい、親としてひどく憤慨している。下着姿である以上、深夜の放送にしてもらいたい。あまりにも非常識ではないか。
  • テレビにお色気番組は必要ない。今やネットでいくらでもアダルト動画が見られる時代だ。携帯電話や携帯ゲーム機の発達により、もはや保護者の目など届かない。大人が楽しむものとしてのお色気番組は今や崩壊しているも同然だ。

【いじめに関する意見】

  • お笑い芸人につらい課題を与えてクリアさせ、その状況を複数で確認するという内容だった。芸人にタバスコや唐辛子が多量に入った食べ物を食べさせ、苦痛にもだえる顔を楽しんだりして見るに耐えない内容だった。いじめを体験した私の子どもも「こんな番組見ないで、いじめられている芸人さんがかわいそう」と言っていた。
  • タレントたちがかくれんぼをする番組。見つけられた人が檻に入れられ、タランチュラを放り込む、大量の粉を噴射する、大量の泥水をかけるなどのおしおきを受けていた。それを檻の周りで見ている出演者達が大爆笑している。台本があるとしても、子ども達も見ている時間帯に悪質ないじめ方を教えているようなものだ。

【危険行為に関する意見】

  • ゴルフ場で何も知らない芸人を落とし穴に落とすという内容。何人も落としてそのリアクションを競っているような感じだった。恐らく落ちてもけがをしないような工夫がされているとは思うが、うちどころが悪くてということも考えられる。こんな危険なことをして笑っている出演者は大人として配慮が欠けている。見ていてとても気分が悪くなった。真似をする子もいるかもしれない。

【殺人シーンに関する意見】

  • 番組冒頭で、女子高生が街中で刺殺されるシーンがあった。いかなる設定にせよ、類似犯罪を助長するようなシーンを子どもが見る時間帯に放送するとはいかがなものか。ワイドショーやニュースでこの種の犯罪を取り上げ、被害者に同情し容疑者を憎むような報道姿勢は欺瞞としか言いようがない。各局の良識を望む。

【推奨番組に関する意見】

  • 第二次世界大戦に関するドキュメンタリーを見たが、とてもよくできた番組だと思う。今の若者は戦争を知らない者も多く大変嘆かわしい。「日本ってアメリカと戦争したんですか」「勝ったのですか、負けたのですか」と言う若者までいる。このような良質な番組は、終戦記念日あたりだけ放送するのではなく、普段から若者が見る時間に繰り返し放送すべきだ。

【編成に関する意見】

  • 深夜アニメであるにもかかわらず、小中学生の弟たちが毎週見ている。内容がとても良いので弟が楽しみにするのも分かるが、ゴールデンタイムに放送してはどうか。この番組を見るために夜更かししている子どもの視聴者も多数いると思われる。

【報道に関する意見】

  • 死刑の刑場を公開するというニュースがあったが、夏休み中のこの期間に報道しなくてもよいのではないか。大人の私でも非常にショックを受けたのだから、子どもが映像を見た時の衝撃は想像を絶する。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 「青少年に有害な番組やCMは放送を中止すべき」「不快なのでBPOから指摘してほしい」などの意見が多いが、このような意見をお持ちの方はどのような取り組みをしているのか。情報が溢れる現代ではメディアリテラシーが求められている。放送する側には、正確でより良い情報の提供や情操教育への貢献などが求められ、有害・悪質な内容は流さないという義務がある一方、視聴者にも、正確で安全な情報を選び取る義務があることも忘れてはならないだろう。
  • 「子どもに悪影響を与える」などと言うが、現代より放送の規制が緩かった時代を生きていた大人が何を言っているのか。そんなに今の大人は悪い人間ばかりなのか?問題はテレビではなく、それを受け取る側の心の持ちようだと思う。子どもに良くない内容だと思ったら、大人がしっかりと「駄目だよ」と言ってあげればいい。

【CMに関する意見CMに関する意見】

  • 携帯電話用のゲームのCM。泥棒をネタにしたゲームで「盗め、盗め」と訴えている。いくらゲームでも、盗みが楽しいことであるかのような宣伝はモラルが欠けているのではないか。ゲームの中だけなら良いが、現実でも盗みを楽しむようになる子どもが増えることになるのではないか。
  • 未成年者の飲酒防止の観点から、アルコール飲料のCMが野放しになっていることは問題だ。人気俳優やタレントを使用し、真っ昼間から「うまい」「最高」などと連呼させている。これでは未成年者に飲酒を勧めているようなものだ。

第41回 放送倫理検証委員会

第41回 – 2010年9月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』…など

第41回放送倫理検証委員会は9月10日に開催された。
まず、7月に行われた参議院選挙をめぐって、放送の公平・公正性に疑念が持たれた2つの報道番組と2つのバラエティー系情報番組について討議した。その結果、4番組をまとめて審議入りすることとし、当該局に対してヒアリングを実施することになった。
昨年11月にテレビ東京の報道番組『週刊ニュース新書』で、岡崎市がいわゆる貧困ビジネスに不正に関与していると報道した。岡崎市はそのような事実はないと反発し、両者間で話し合いが続けられていたが決着がつかず、岡崎市側から、議論を再開してほしいと要望があった。討議の結果、事実関係に争いがあるが、この事件についてどちらの言い分が正しいかを認定することは当委員会の役割ではないという結論となった。
TBSの『がっちりアカデミー!!』は、この4月にスタートした番組であるが、5カ月の間にお詫び、訂正放送が3回も繰り返されたのは、番組の制作・チェック体制に問題があるのではないかという意見が相次いだ。今後どのような再発防止策を実施するのかについて当該局に報告を求め、推移を見守ることにした。
TBSの情報生番組『ひるおび!』で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、政治家本人に確認しておらず、結局”なりすましツイッター”であることがわかった。同番組内で訂正されたが、取材の基本である事実確認を怠らないようBPO報告に記載して、注意を喚起することにした。
初めて開催する在阪局と検証委員会との意見交換会について、テーマや進行方法を検討した。
事務局からは、8月25日に行われた総務省のフォーラムについて報告があった。

議事の詳細

日時
2010 年 9月10 日(金) 午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、香山委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、視聴者から、以下の4つの番組は放送の公平・公正性に問題があるのではないかという意見が寄せられた。

  • 長野朝日放送『abnステーション』(6月22日放送)
  • 信越放送『SBCニュースワイド』(7月8日放送)
  • TBS『関口宏の東京フレンドパークII』(6月28日放送)
  • BSジャパン『絶景に感動! 思わず一句 初夏ぶらり旅』(7月11日放送)

上記4番組のうち、(1)と(2)はローカルニュース番組、(3)と(4)は情報バラエティー番組である。
このたびの参議院選挙比例代表には12の政党・政治団体から186人が立候補したが、長野県内で放送された(1)と(2)は、長野県に関係がある3つの政党の4人の候補者だけを取り上げ、その他の政党や候補者には言及しなかった点に問題がある。参議院比例代表選挙には制度上長野県という区切りを入れる余地がないので、ことさらに長野県関係者だけを取り出して放送することは、長野県内の有権者を、長野県関係の候補者に誘導する効果を否定できない以上、それだけで選挙の公正・公平性の問題が生じる。
一方、(3)は、選挙の公示期間中であるにもかかわらず、特定の改選議員の名をあげて所属政党を当てさせるクイズを出題した。
また、(4)は、あるタレント候補がリポーターを務めた3年前の旅番組を、投票日当日の夕方に再放送したという問題である。
選挙は、民主主義の根幹に関わる重大事であるが、その選挙をめぐって、公平・公正性に疑念が持たれる放送があったことは、仮にその原因が制度の理解不足や不注意であったとしても問題である。各局の放送基準でも、公平性について厳しく規定されている。委員会としては、以上の4番組を一括して審議入りし、当該局へのヒアリングを実施したうえで、「意見」を述べることにした。

【委員の主な意見】

  • 参院選の比例代表の非拘束名簿について、番組で選挙民に知らせたいというのは問題ない。でも、そのサンプルとして県連所属という区切りで県内の候補だけを取り上げると、ほかの候補者との関係でどうしたって公平性を害することになる。
  • 参議院の比例代表区には、県という区切りは何の意味も持たない。しかし、この2つのニュースでは、それが何か意味のある区切りであるかのように報道されていることが問題だ。
  • 選挙制度を当該局が正しく理解しているのかを議論する以前に、当該局側がいずれも放送の時点では、ルール違反をしたと思っていないことが問題ではないか。民放連やNHKの放送基準、いろいろな法的な規定について無頓着であるということは、放送の自由の上にあぐらをかいているんじゃないかと思われても仕方ない。
  • 信越放送のほうは投票日3日前の放送という問題があるが、中身を比べてみたら、4人の候補者間の公平という点では長野朝日放送のほうがはるかに問題が大きい。参議院の非拘束名簿のもとではありえない区切り方を放送局が勝手にやったことによって、ああいう放送が可能になったのだから。
  • これは氷山の一角で、ほかのローカル局でもあるかもしれないということを前提にすべきだ。とりあえず、俎上にあがっているニュースの2番組は選挙制度を理解しない結果として公平・公正性を害している。ほかにもあるかもしれないので、注意喚起のために取り上げざるをえない。
  • 2つのニュース番組については、選挙制度上認められない内容であったために、公正性を害したという倫理違反が考えられる。バラエティー系の2番組は、本来チェックされるべきものがチェックされないで素通りしているという、そういう不注意が問題だ。
  • 視聴者の、ある種リテラシーみたいなものを喚起するためにも、こういう放送はいけないのだと公表することには意味があるように思う。
  • 選挙の公平・公正性というのは民主主義の基本だから、それを最大限、尊重するような放送をしなければいけないのに、こういう放送がなされているのは、どこかが緩んでいるのではないか。メディアにはそういう責任がある。

貧困ビジネスに対する岡崎市の関与を批判したテレビ東京の『週刊ニュース新書』

昨年12月と今年の1月に、委員会で討議した事案。 昨年11月28日に放送された「”貧困”を食い物に……行政の闇」は、岡崎市と無料低額宿泊所の業者とが癒着して、生活保護を受けている入居者を苦しめていると伝えた。それに対して岡崎市が反論し、岡崎市とテレビ東京との間で解決に向けて話し合いが継続されていたので、委員会としては推移を見守ることにしたが、8月に話し合いが決裂。岡崎市から、検証委員会で議論を再開してほしいと要請が出された。
この事案では、果たして意図的な「誇張」や「ゆがめられた表現」があるのかについて、両者の主張に食い違いがある。そのどちらが正しいかという事実認定や裁定を行うことは、当委員会の任務ではない。両者の主張が平行線をたどる中で、この先委員会が議論を行っても意味がないとして、討議を終えることにした。

5カ月間で3回のお詫び放送をしたTBSの『がっちりアカデミー!!』

8月13日の放送の『がっちりアカデミー!!』のテーマは自己破産で、自己破産者は給料の4分の1が、1カ月間差し押さえられると誤った情報を流した。
翌週お詫び放送をしたが、その訂正自体が不正確で誤解を生むものだった。討議の結果、訂正放送もされているし、法律の専門家を監修者に加えるという対策もとられているので、この放送だけを審議案件とはしないことにした。
しかし、この番組は開始以来5カ月で事実関係においてミスが3回あり、3回お詫び放送をしている。過去の2回は、4月16日放送の「薬の説明書」と「お薬手帳」との取り違い、6月18日放送のテスト答案に関する編集ミスである。番組のチェック体制に問題があると判断せざるを得ず、対策の実施状況報告の提出を求めるとともに、委員の意見を詳しく載せて推移を見守ることにした。

【委員の主な意見】

  • 今回の放送の訂正放送自体にも事実誤認がある。自己破産が認められても、免責決定がなされなかったら、責任を免れることはできない。
  • 「裁判所が破産と言うと借金が棒引きになります」というコメントは誤りだ。破産の手続と免責の手続は全然違う手続だ。もっと慎重に制作すべきではないか。
  • 普通、お詫び訂正放送のこういう文章を作る時には、一応、法律の専門家のアドバイスを受けるべきではないのか。
  • お詫びと訂正で「出演者の発言にこうありましたけども、こう訂正します」とはっきり言わないと、どこがどう訂正なのか、これでは次の回しか見てない人には分からない。
  • これだけ続くと、ちょっと酷い。どこかが壊れたんじゃないかなと思ってしまう。金属疲労というレベルではなくて。
  • 多分、番組の作りの構造として、リサーチャーがいて法律事務所などの調査は全部その人たちがやり、まとめたペーパーはディレクターに渡す。出演者のコメントは構成作家が別に書く。こういった、寄せ集めて作っていく悪い面がこの番組には出ていて、リサーチャーがコメント原稿をチェックできる状況になく、最初の情報が人を経るごとに変わっていった。その結果が、今回の間違ったコメントになったと思われる。
  • 現場の感覚として、番組スタート以来何カ月間も監修者を付けずにやってきてしまったことが、一番の問題だと思う。この手の番組をやるのであれば、普通は最初に監修者を付けると思うが。
  • 不注意が原因、派生する問題が小さい、すぐに訂正した、という事案の場合、過去の例からすると、取り上げないという方に行くけれど、わずか5カ月で3回目だとそうもいかないか…
  • 日本の場合、法的な知識のレベルが、少数の専門家以外はガクッと低いということがある。いい加減な専門家に聞いて、そのいい加減な専門家の回答を理解できないまま勝手に誤解して放送するという問題だ。これはある意味で、根は深いのかもしれない。

“なりすましツイッター”を本物と誤報したTBSの『ひるおび!』

TBSの生の情報番組『ひるおび!』(9月6日放送)で、ある政治家がツイッターを始めたと放送したが、そのコーナー終了直後に社内からの指摘を受け、当該政治家の事務所に電話で聞いたところ誤報であることが判明した。番組では25分後にお詫びをした。有名人に成りすましたツイッターが横行している中、報道の原則である確認をせずに放送したことについて、注意喚起を求めることとした。

【委員の主な意見】

  • 元農水大臣の時の事案が生かされてない。局内で何の情報も伝わってないということは、この局には、BPOが何をやっても伝わらないのだと思ってしまう。
  • お詫びをする対象というのは、本来、視聴者であるはずなのに、そうではなくてその政治家に謝ったのではないかと受け取れる。
  • ブラックノートの時の回答書に、何か問題が起きた時には、かなりいろいろな人を集めて、仰々しい会議を開きますと書いてあった。それが実行されていれば、本当はセクションを超えて連絡が行われていなければいけないはずだ。
  • ツイッターには有名人のなりすましが多いので必ず確認が必要という基本常識がないことが問題。
    ケアレスミスが多すぎる。バラエティーでやったように、いつもトラッシュボックスがあって、その中からまたいろんなものをやるというシステムが必要かもしれない。
  • こういう情報番組でも、自分が直接取材で得た情報ではない、新聞記事とかを読んで番組を作ることがある。その手法が一般化してしまったので、取材源に当たるとか確認を取るという基本原則がなくなったのだと思う。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

意見交換会は10月22日(金)に大阪の讀賣テレビの大会議室で行うことに決まった。放送局、検証委員会がそれぞれ常日頃思っている疑問や要望などについての質疑応答を行う予定。また、そのための材料として放送局側から事前にアンケートを提出してもらい、それに基づいていくつかのテーマを設定することにした。

以上