◆概要◆
2024年8月1日、新型コロナの影響で5年ぶりに対面でのモニター会議を開催しました。今回は高校生モニターのみの参加でしたが、モニター会議は委員との交流の場であると同時に自分たちの意見を委員や放送局に直接伝える機会であり、またテレビ局内の見学や意見交換会を通じてメディアリテラシーを涵養(かんよう)する貴重な場でもあります。今後のより有意義なモニター活動に繋げていってもらえればと思います。
当日は、今年度の高校生モニター12名と、BPOからは榊原洋一青少年委員会委員長、吉永みち子副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員の5人が日本テレビに集まりました。オリエンテーションを終えたモニターと委員ら参加者は、日本テレビ社屋内の社員食堂でランチを済ませた後、同社の報道フロアとニューススタジオおよびバラエティー番組のスタジオを、同社の社員の説明を聞きながら見学しました。ウッチャンナンチャンの南原清隆さん他が生出演する『ヒルナンデス!』のエンディングをスタジオ内で見ることができ、興味津々といった様子でした。
続いて高校生モニターと番組制作者との意見交換が行われました。今回は日本テレビの『月曜から夜ふかし』の矢野尚子チーフプロデューサー、沢田健介プロデューサー、徐真然プロデューサーと、進行役の菅谷大介アナウンサーにご参加いただき、同番組のミッションや裏話などの興味深い話を聞いた後、質疑応答で盛り上がりました。
後半には高校生モニターと青少年委員会委員との意見交換が行われました。それぞれの自己紹介のあと、「今のテレビと昔のテレビ、どちらが面白いかについて」「放送局にどうしても伝えたいこと」などについて意見交換しました。
本日参加してくれた高校生モニターたちは様々な視点からしっかりとした意見を述べ、高校生としてはとてもハイレベルなモニターたちでした。今後の毎月のBPOへのモニター報告に引き続き期待したいと思います。
第1部 日本テレビ『月曜から夜ふかし』制作者との意見交換会
①制作者 自己紹介
〇矢野尚子チーフプロデューサー(以下、矢野CP)
「この番組は、いま社会で起きていることを、報道以上に奥深くお伝えできる番組だと思っています。私は元々報道志望で日本テレビに入ったんですが、報道局には行けず『ザ!世界仰天ニュース』や『はじめてのおつかい』などいろいろな番組を制作していました。途中から10年間報道の仕事もしたあと、バラエティーに帰ってきてこの番組の担当になりました。報道的視点も織り交ぜながらいい番組ができたらなと思ってやっていますが、報道番組や情報番組などでインタビューしていた人たちとは違う人たちが、『月曜から夜ふかし』には出てきます。「世の中にはこういう人もいるんだな」「いろいろな方の生きざまを見ることができて、そして皆さんすごく楽しく人生を力強く生きているな」ということをお届けできる仕事はとてもやりがいがあるし、視聴者に見てもらって楽しんでいただけたり何か考えるきっかけにしていただけたりしたら、すごくうれしいと思っています。」
○沢田健介プロデューサー(以下、沢田P)
「2011年に日本テレビに入って、今14年目です。生まれは茨城の田舎だったのでテレビがエンターテインメントの全てで、こういう派手なところで働けたらいいなと思ってテレビ業界に入りました。番組を作りたくて入社しましたが、最初は営業に配属されてCM枠をスポンサーに売る仕事を6年間やって、その後バラエティーに異動してきました。『月曜から夜ふかし』を担当して5~6年経ちますが、マツコ・デラックスさんに「おまえはどんな生き方をしてんだ」と、いじられる生活をずっとやっています。マツコさんはテレビで見るのと同じ温度で僕ら制作スタッフにも分け隔てなく話してくれる方で、そんな人と一緒に仕事ができるのは楽しいなと思っています。『月曜から夜ふかし』にはミッションがあると思っていて、「この番組だけはきれいごとを言わないでおこう」と心に決めて、番組独自の角度で物事を切り取っています。番組内では言っていませんが、どんなマイノリティーでも平等に扱おう、ちょっと社会が触れづらい人やわざわざ取り上げないと思われるような人も積極的に取り上げていこう、自分たちの周りにいないようなタイプの人も取り上げていこうと。マイノリティーだからどうとかじゃなくて、どんな人も楽しく生きているということをこの番組は絶対伝えていこう、そこは強い気持ちを持ってやっています。」
〇徐真然プロデューサー(以下、徐P)
「中国・上海出身で2016年に日本に来て、令和元年に日本テレビに入社しました。中国の医大を卒業して研修医として働いていましたが、『月曜から夜ふかし』が好き過ぎて、海を越えて文化を超えてここに座ることになりました。中国にいたときの日本のイメージは「わびさび」とか「桜がめちゃくちゃきれい」とかしかなかったのですが、『月曜から夜ふかし』を見るとみんなトイレにも行きますし、酒をがんがん飲んでいます。日本人にもそういう人がいるんだ、とちょっと安心しました。『月曜から夜ふかし』は人間の素性とか、国籍なき人間性が表れていますので、すごく素敵な番組でぜひ参加したいという思いでいました。」
②番組の紹介、制作の体制について
(徐P) 『月曜から夜ふかし』はご当地番組です。「方言の問題」や「山手線の駅の中で一番降りたことが少ない駅はどれか」などの企画があります。また時期に合わせた「街録」も定番企画になっていて、春はお花見や上京した人へのインタビュー、夏は海辺ニュース、秋は食欲の秋でグルメなどがテーマです。“桐谷さん”など名物素人企画もあります。私の企画では、なぜ『月曜から夜ふかし』が中国人にそんなにウケるのかや、中国の“やばい人”も紹介したいと考えています。
『月曜から夜ふかし』の新しい企画からオンエアまでの流れですが、まず全体会議でディレクター、プロデューサー、リサーチャー、作家が企画を出します。そこで「面白いですね、やりましょう!」となったらロケに入ります。1回のオンエアに関わるスタッフの構成ですが、ディレクター・LDが15~20人、プロデューサーが5~6人います。演出が2人、総合演出が1人です。そこに音効、カメラマン、美術などたくさんの方の力が合わさり、1回のオンエアに関わる潜在的なスタッフは100人ぐらいです。1回のオンエアには大体3つVTRがあって、2つは街録で1つは地方ロケです。『月曜から夜ふかし』の街録は打率が低くてすごくしんどいです。10人声をかけた中で1人ぐらいしか答えてくれませんし、また10人答えてくれたうち1~2人しかオンエアされないときもあります。1回のオンエアで声をかけている人の数は1,000人ぐらいいます。ネット上で「『夜ふかし』本当にラッキーですね。毎回奇跡が起こるんですね」という言葉を見ますが、ラッキーではなく、本当にこつこつ数で勝負しています。つぎに、ロケの素材を編集ソフトで編集する作業は、業界用語でオフラインと呼びます。オフラインでは素材を編集して、そこから“唇”とかテロップ入れ、美術調整などをしてVTRを仕上げて、収録に臨みます。収録は基本的にオンエアの1週間前ですが、収録後に足りない分があれば追撮で人に声をかけて…という作業を繰り返しています。オンエアは月曜日ですが、”ミックス“と呼ばれる作業はオンエア前の金曜日です。ミックスではナレーションなどを最終的にチェックし、その他の微調整も行います。ここまでが一連の作業です。
③他の番組ではやらない『月曜から夜ふかし』ならではの特徴、番組のミッションについて
~VTR視聴~ コーナー企画「視聴者のお悩みを聞いてみた件」
運転免許試験に全然受からない長野県在住の男性(20)に取材。仮免で18回、本免で11回落ちているこの男性から「番組で応援してほしい」とメール投稿があり、その勉強の様子や得意な絵について放送したもの。
(沢田P) これは視聴者投稿企画だったのですが、ディレクターは取材で本人に会ったときに「もしかしたら障害のある人なのかもしれない」と気づきました。そこで一度立ち止まったわけです。試験に落ち続けることに障害の影響も少しはあるかもしれないことを考えると番組では扱えないかもねと、いろいろと議論をしていました。でも、とにかく御本人が番組に出たいと言っていて、そして親御さんも是非この挑戦を番組で取り上げてほしいと言っていると。それを聞いたときにハッとしました。何を僕らは手前で立ち止まっていたのか。何かいけないことでもあるかのような議論をしてしまったけど、そんなのって全く必要なかった。単純に、彼の個性的な才能とか、勉強を一生懸命頑張れる彼の才能に焦点を当てて番組で取り上げようと決めました。こういうことをやれる番組ってそんなに多くはなくて、「マイノリティーだから何だっていうんだ」「みんな違ってみんないいよね」と心に決めている番組だからこそできたことだと思います。この放送で傷ついた人は誰もいないし、彼の様子を見たらむしろ勇気をもらうというか、自分も明日頑張ろうって思える。これが『月曜から夜ふかし』の一番大事にしていることが表れたVTRだと思います。
もう一つ例があります。番組では美容整形も扱っていますが、実はこのジャンルはテレビで扱いにくいと言われています。「美容整形できれいになりました、悩みが解決しました」というと全員が成功すると思われてしまうんですが、二重手術で失明する可能性などいろいろなリスクを抱えているからです。でも弊社の考査部のメンバーと協議をしながら、どうすれば美容整形の良さと怖さが両方伝わって、しかもエンターテインメントとして面白くできるかみたいなことを考え尽くして、番組にずっと協力してくれている“フェフ姉さん”の「韓国の歩き方」という形で放送しました。リスクもエンターテインメントにして詳しく説明するなど、普通では扱いにくいジャンルを『月曜から夜ふかし』で放送できた良い例だと思っています。
④モニターからの質問
Q.(高校3年・女子・熊本) 徐さんへの質問です。日本テレビに入社するのはすごく難しかったと思うし、希望する部署にもなかなか配属されないと思うんですけど、どういう経緯で『月曜から夜ふかし』に携わることになったのですか。
A.(徐P) 当時は日本語も上手ではなかったので、入社面接で内定をもらうために「中国とのビジネスで日本テレビに貢献できます!」と言って内定をいただきました。入社後は研修がたくさんあるのですが、どこに行っても「私、『夜ふかし』が好きです!『夜ふかし』がやりたくて、海を越えて日本に来ました!分かりますよね?『夜ふかし』です!!!」と。『月曜から夜ふかし』は結構大変な番組で、新卒や1年目で配属されることは結構珍しいのですが、私の勢いと本音を見せて、そのまま配属されました。
Q.(高校2年・女子・青森) TikTokやYouTubeショートなどのSNSに番組の“切り取り動画”が無断転載されています。デメリットだけじゃなくて、勝手に宣伝してくれるメリットもあると思いますが、どう考えていますか。
A.(沢田P) SNSで違法に転載されることによって、コンテンツを作った人や出演した人に本来配分されるべきお金が配分されていないことが、僕がプロデューサーとして唯一申し訳なく思い、またモヤモヤしているところです。正直、制作したものはできるだけ多くの人に触れてほしいなと思っていますが、頑張って作った人や出演してくれた人に、たくさん見てもらったことを還元したいと思っています。
(矢野CP) 出演者は「『夜ふかし』なら良いですよ」と言ってくださっていますが、思わぬ形でずっと流れ続けてしまうと、勇気を持って出演したのに不本意なことになってしまいます。私たちもとても心を痛めているし、プラットフォームの方々にもその責任を感じてほしいと思っています。
Q.(高校2年・男子・神奈川) インタビューの難しさと大変さを感じましたが、テロップやマツコさんのリアクションなどでその人の特徴的な部分を面白がることは、本人に許可を得ているのですか。
A.(沢田P) すばらしい質問ですね。番組の放送枠が深夜から夜10時の全国ネットの枠に移動したことによって、見る人が格段に増えました。番組の影響力が上がるとなったときに一番気にしたのは「放送によって悲しい思いをする人がいないこと」です。そこで番組としてやり始めたのは、マツコさんや村上信五さんのリアクション、演出的なテロップやナレーションを編集で入れたら、必ず取材をした方にその内容を相談して、了承いただけたものだけ放送するということです。番組制作スタッフの労力はとても大きいですが、そこまで丁寧にやって放送しています。もちろん「それはさすがにやめてください」と言われることもあります。でもその積み重ねをしているから何とかここまでやってこられている。「悲しい思いをする人がいないこと」を大事にしているので、そうやって番組を作っています。
Q.(高校3年・女子・奈良) いつも中国のコーナーがとても面白いなと思っています。アメリカや他の国でも、とても個性豊かに自由に生きている人がいるので、いろんな国でもロケをされたらいいなと思っています。
A.(徐P) ありがとうございます!次の企画書の中に一番でかいフォントで書きます!
(沢田P) 番組の放送後、中国でびっくりするほどたくさん見られているんです。違法な方法ではあるので、もろ手を挙げて良いとは言えないですが、すごい反響なんです。こういった日本のバラエティーという独自の文化が海外でヒットしてほしいという気持ちは強くあって、その足がかりになれる番組だなとも思っています。ドラマや映画などといったストックコンテンツは海外に出ていきやすいですが、こういったバラエティー番組が海外でヒットする例はあまりないので、今いろいろと考えているところです。
Q.(高校3年・女子・熊本) 私自身、中学生のときに比べてテレビを視聴する回数が減りました。近年“テレビ離れ”という言葉をよく耳にしますが、ここ10年ほどで番組制作に対する思いや視点の変化はありましたか。
A.(沢田P) それは毎日、本当に考えています。2011年に入社したときと比べても、1回の放送に対しての視聴者のリアクションがすごく少なくなってきていて、毎日とても寂しい思いをしています。非常に残念だし何とかしなきゃいけないけど、どうしようもないみたいな思いもあって。こうなってしまった理由は幾らでもありますが、自分たちで何とかしなきゃいけないと、本当にいろんな手を尽くしています。
(徐P) 最近の視聴率は実際にとても低い数値ですが、実は、中国からは日本のコンテンツはそう見えてはいない。日本のコンテンツは国際的な舞台で戦うときに依然として強いんです。クリエイティブな人がたくさんいて、それでも地上波でそんなに膨大な利益を出していないのはすごく残念だと思うし、これからはビジネスモデルを変えていくべきだと思っています。ぜひ楽しみにしてほしいです。
(矢野CP) テレビにしかできないことって絶対あって、報道や災害時の放送、YouTubeでは難しい規模のドキュメンタリー、あとはとにかく面白いものを100人がかりで作るとか。テレビにしかできないものをしっかりと作れば、それは必ず届くと信じています。これからも何が求められるかを考え抜いて、多くの方に「たまにはいいよね」と思ってもらって、そして“たまに”が重なって「何か見ちゃうよね」となるような、視聴者に近いメディアでいられるといいなと思っています。
Q.(高校3年・女子・熊本) さきほど、徐さんがおっしゃっていた「ビジネスモデル」が気になっていますが、今の時点で具体的な展望はありますか。
A.(徐P) 社内にはいろいろな部署がありますが、現状ではまだ、そこで働いている皆さんと何をどこまでできるのか、できないとしたら理由は何なのか、を探っている段階です。
(沢田P) テレビって1億2,000万人に同時に届けられるメディアとしての広告価値があったんですが、それに代わるようなビジネスモデルを今テレビ局は持っていなくて、それをみんなで必死に探しています。例えば映画や、テレビ発のオーディション番組で新しいスターとともに利益をつくっていくなど、多角的に仕掛けていって、どれが未来の基軸になるかを探っているような段階です。
Q.(高校1年・男子・長崎) 単純な質問ですが、番組のネタって切れたりすることありますか。
A.(徐P) もちろん非常にあります。ご当地問題ももう12年もやっていて何もないし、心理テストももうないし。「街行く人のお豆腐グルメ」といった変化球も視野に入れたりしています。
(沢田P) 一番時間をかけているのはそこで、「来週何を放送しよう」「再来週は何を放送しよう」って日々考えています。毎週ネタをつくっています。テレビマンがほかの仕事の人たちと違って一番長けているのは“発想”という部分かもしれません。
⑤委員長から
(榊原委員長) とても印象的だったのは、やはり人手とお金とアイデアのかけ方がSNSとは全然違うというところです。是非アイデアをどんどん出して、中国だけでなく世界中の人がお金を払って見るようなコンテンツを制作してほしいと思いました。
(菅谷アナウンサー) 『月曜から夜ふかし』は非常に人気がありまして、オリンピックのウラでも高視聴率を獲得していて、単純計算にして600万人ぐらいが見ています。東京ドームで1試合野球をやると5万人が見ますが、120試合やってようやく600万人、その数の人が1時間のうちに一斉に見るということです。そんな状況だからこそ、誰もが楽しめる、誰もが傷つかない番組を考えなければいけないのだというところが、今日の3人の話だったと思います。本日はありがとうございました。
第2部 BPO青少年委員と高校生モニターとの意見交換会
【テーマ1】 今のテレビと昔のテレビ、どっちが面白い?
中高生モニターの毎月の報告の中には「前の番組の方が…」「昔の番組は…」という言葉がよく出てきます。“今”と“昔”で、どちらのテレビの方が面白いと感じているのでしょうか?高校生モニター12人と委員5人に挙手してもらうと…以下の結果となりました。
「今のテレビの方が面白い」…5人、「昔のテレビの方が面白い」…12人
「今のテレビの方が面白い」と思う人の意見
- (高校2年・男子・神奈川)まず前提として、動画で簡単に自分の見たいものを見ることができる今と、僕が生まれる前のテレビしかなかった昔とでは、面白さの感じ方が違うと思います。それでも、昔よりも出演者の体のことや権利を考えて改善を重ねた結果が、今のテレビだと思っています。最近、学校ぐるみだとか、僕たちの身近なところで撮影する番組が増えてきたので、そういうところで僕は今のテレビが面白いなと感じています。
- (高校2年・女子・愛媛)昔の番組の再放送と比べると、今の番組の方が全然安心して見られます。さきほど話が出た体についての権利もそうですが、私は争い系や戦争系があまり好きではないので、今の番組の方が安心できるし面白いなと感じます。
- (榊原委員長) 今の方が断然良いですよ。昔のテレビは14インチが一番オーソドックスだったし、モノクロしかないし、23時になるとテストパターン(試験電波放送)になって番組が終わってしまった。またチャンネル数も少なかった。昭和30年代はそんなもんでした。比べるどころじゃなく、質、量ともに今の番組の方が面白いです。
- (高校1年・男子・兵庫) SNSやYouTubeが台頭してきたあと、テレビは良い影響も悪い影響も受けているとは思うんですけれど、良い番組が増えたのかなと思っています。例えばオーディション番組は昔あまりなかったなと思うし、SNSでアイドルグループが普及した影響かなと思うので、そういった番組は良い影響を受けていると思います。
「昔のテレビの方が面白い」と思う人の意見
- (高校3年・女子・奈良) 昔と言っても十数年前、『宝探しアドベンチャー 謎解きバトルTORE!』(日本テレビ)という番組がありましたが、とにかくセットがすごかったイメージがあります。タイムリミットまでにクイズを解かないと壁に挟まれるとか、球を穴の中に入れられないとミイラにされるとか、今考えてみるとあのときの大規模セットはやっぱりテレビにしかできなかったのかなと思います。今の番組は街頭インタビューとかが多くて、そういうのはYouTuberや一般人も最近出ている良いマイクでできますが、あの大規模セットはすごく良かったなと思います。
- (高校1年・男子・長崎) 僕は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ)がなくなったのが一番寂しかったです。あんな大規模番組が年末にあるのはとても楽しみだったのになくなってしまったから、昔の番組の方が面白かったと思います。
- (高校2年・女子・青森) やっぱり年越しは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』を見ながら、年を越したタイミングを分からないまま時計見たら「あ、もう年越しているわ」みたいな、そういう年越しが好きでした。笑ったら本当に叩かれるので、やっぱりコンプライアンスとか時代には合っていないのかもしれないけれど、笑いのレベルは高かったのでもう一回見たいなという気持ちはあります。
- (佐々木委員) 僕は学園モノ(ドラマ)が大好きでした。『これが青春だ』(日本テレビ)とか『青春とはなんだ』(日本テレビ)など、熱血教師の番組があった。それを見て「じゃ、今日は遊ぶか!」みたいに真似をする先生もいて、そういう型破りな先生が大好きで、だから私は学校へ行くのが楽しかったんです。今はそういう番組がなくつまらないかな。陰湿ないじめとかスクールカーストといったテーマが多くて、暗くなっているようにも思います。最近でいうと『ドラゴン桜』(TBSテレビ)のような番組がいっぱいあれば、全国の中高生ももっと頑張れるんじゃないかなと思っています。
- (高校1年・女子・岐阜) 昔のドラマでは『GTO』(関西テレビ放送)は笑えるところや面白いところが多いです。今のドラマも面白いですが、今ではあまり感じられないことが『GTO』では感じられて面白いです。例えば校内の喫煙シーンがあったりして、何かちょっと不思議な感じがします。
- (高校3年・女子・栃木) 最近ゴールデンに放送されているバラエティー番組『それSnow Manにやらせてください』(TBSテレビ)について。昔、Paravi(動画配信サービス)で配信されていた頃はメンバーが体を張るような地方ロケが多かったんですが、最近はスタジオのダンス対決とかでちょっと軽く済ませている感じがあって。昔みたいな大規模ロケや、地域の人との交流が増えればいいと思います。
- (飯田委員) 年越し番組の話がありましたが、僕も個人的には、昔の方がよかったとは思います。若い頃は、大みそかに『絶対に笑ってはいけないシリーズ』を友達の家で見ていましたが、番組自体の面白さの水準は別にして、家族や友人みんなで盛り上がれるという経験がなくなってきたのは確かです。あるいは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の放送翌日、学校に行く電車の中で友達と番組の話題になることが普通でしたが、今はそういう経験があまりないというのが、昔と大きく違うところですね。
- (吉永副委員長) 私はテレビがない時代、ラジオしかなかった時代を知っています。テレビが初めて「家に来た」とき、すべての情報がテレビから得られるようになったという強烈な印象が残っています。それからしばらく、テレビがすごい試行錯誤をして面白い番組を手探りでたくさん作っていった、そのバイタリティーや面白さを感じていました。もう一つは自由度。昔は本当に不適切極まりないものが平気で放送されていて、『8時だョ!全員集合』(TBSテレビ)にもPTAが毎回文句を言っていましたが、それでもみんな「あれが面白いんだよね」と逆らって見ていたわけです。昔のテレビの方が圧倒的に自由度は高かった。また出演者についても、30年前は何を言っても構わないという「表現の自由」に傾いていた感じがしますが、今は「これを言ったらまずいんじゃないですか」というのがどうしても先にきます。“思いやりの社会”ではしかたないですが、コンテンツの幅がすごく狭くなっている印象です。昔の番組の方がエネルギッシュでした。
昔の“面白さ”と今の“面白さ”、これからの番組で両立できると思いますか?
- (高校2年・男子・神奈川) 大規模な番組は当然お金がかかるし、視聴率が取れないと元が取れないと思うんですが、そのためにはもう少しテレビの方に興味関心が向けられなければならないと思います。SNS利用者が自由に発言できる今だからこそ、テレビという大勢の人に発信するメディアの自由度が低くなっているんだと思います。最近だと『新しいカギ』(フジテレビ)は本当に見ていて面白くて、「学校かくれんぼ」の企画も大掛かりかつ安全なものだし、こういった番組が増えたらいいんじゃないかと思います。
- (高校3年・女子・熊本) 視聴者が求めるものと番組が提供したいもののバランスが大切なのかなと思いました。例えば『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)は世界中に出ていくのをコンセプトにした番組なのにコロナの時期はそれを批判されて、国内の企画で従来の番組らしさを追求するのはとても大変だったと思います。でもこの番組に限らずどの番組も、世間の声を受け止めようとし過ぎて臆病になっている感じにもなっていて。世間の声を受け止めてこそ視聴率につながるのかもしれないけれども、あまり受け止め過ぎて本来できていたことができなくなっているんじゃないかなと思います。コンプライアンスとか気にしすぎずに、もう少し踏み込んだことしてもいいんじゃないかと思います。
- (高校1年・男子・長崎) SNS上だけで有名な人、例えば大掛かりなことをする有名なYouTuberをテレビに出したら、SNSとテレビがどちらも良い関係で発展できるのではないかと思います。
- (高校3年・女子・奈良) 放送メディアって災害やニュースを伝えるのも大きな役目だと思うんですが、大切な娯楽でもあると思っています。例えば『月曜から夜ふかし』を仕事や学校終わりに見て明日からまた頑張るとか、そういう人がたくさんいると思うんです。例えば20~40代が昔見ていた番組、テレビが娯楽だった時代の番組を再放送やアレンジ放送をして、親子で「昔はこういう番組があったんだよ」という話ができたら、家族団らんにもなって楽しいかなと思います。
- (池田委員) 様々な視点から意見を出してくれてありがたいです。多くの人が挙げてくれた放送とネットとの連動は大きな課題で模索が続いているところです。SNSやYouTubeをたくさん見ているデジタルネイティブ世代のみなさんから、どんどんアイデアを出してほしいと思っています。
【テーマ2】 放送局にどうしても伝えたいことは?
放送局に対して、こう改善してほしい、こうあってほしい、こう変わってほしいなど、どうしても伝えたいことについて高校生モニターに意見を述べてもらいました。
- (高校1年・男子・長崎) 最近アニメを見始めたんですが、アニメでは1期・2期があるにも関わらず、テレビでは2期からしか見られないことがあります。テレビでも1期から放送してほしいです。
- (高校2年・男子・神奈川) インターネットの記事で、番組の収録中に出演者がケガをしたことや、番組への批判が出演者に直接寄せられていることを最近見ました。出演者が自殺してしまったケースも以前あったと記憶しているので、踏み込んだ番組は面白いかもしれないですが出演者への影響も考え続けてほしいです。
- (高校3年・女子・熊本) 13年前に放送された『家政婦のミタ』(日本テレビ)がとても印象に残っています。リアルタイムで見たときは小さかったのでシリアスな場面にヒヤヒヤしたけれど、最近配信サービスアプリで視聴したときには家族や人としての在り方を考えさせられる番組だと思いました。インターネットで調べて「今の時代にそぐわない」という意見や「暴力的なシーンが多いから地上波では再放送できない」という情報も見ましたが、私のように良いと思っている人に向けた再放送も検討してほしいです。例えば深夜帯にひっそり再放送するなど、何か手を打っていただければなと思います。
- (高校3年・女子・奈良) まずは食事の時間帯にグロテスクな映像を流さないでほしいです。例えば『世界の果てまでイッテQ!』で急に蛇やカエルが出てきますが、個人的にカエルが苦手なのでワンクッション欲しいなと思います。また私は国際情勢に興味があるんですけれども、昔から続いているパレスチナ問題などでも今は情報がどんどんアップデートされているので、今起きている複雑な国際情勢を簡単に解説してくれる番組を作ってほしいです。
- (高校2年・男子・山口) 先日、東京都知事選挙がありました。過去最多の56人が立候補しているのをテレビがどのように報道しているのか見ていましたが、本当は56人を平等に報道するべきところを、人気のある4人がピックアップされていてそれ以外には見向きもしない。テレビとしてあまりよくないところが出ていたなとは感じました。テレビで報道されずYouTubeで配信していた人が1~2万票獲得していて、SNSもテレビに負けない強いネットワークなんだとすごく感じました。
- (BPO事務局長) 選挙というのは誰でも立候補できますし、公職選挙法に基づく“政見放送”では、放送を希望した51人の主張がそのまま放送されました。メディアの役割は、都政を担う可能性のある人の人となりや政策を、限られた時間の中でできるだけ分かりやすく伝えることだと思います。そうすると候補は絞らざるを得ません。一方で、今回の選挙についてはメディアに多くの意見が寄せられましたし、メディアはそこから多くを学ばなければなりません。モニターの皆さんにもどんどん意見を出していただきたいし、そうして出していただいた意見が、テレビの選挙報道を変えていくと思います。
- (池田委員) 選挙報道について法律の面でお話をすると、放送法では“政治的な公平”が求められています。「公平に放送してください」と法律は謳っています。ただそのときの公平が何を意味するかというと、量の公平ではなくて質の公平なんです。量の公平というと、例えば56人の候補者に全員同じ時間ずつ話をさせろということ。しかし質の公平については、各放送局それぞれの判断に任されています。主な候補者として4人選ぶか6人選ぶか、何をどう議論するのか、ピックアップして何かを語らせるのかは各放送局で考えて判断することなんです。“政治的な公平”とは、質的公平だということを補足しておきますね。
- (司会・BPO事務局) 選挙報道について、事務局長は放送局の記者の立場で、そして池田委員は弁護士の立場で話してくれましたが、SNSも含めて多くの情報に触れている高校生の皆さんはまた違った感想を持ったかもしれません。「不思議だな」「なぜだろう」と感じたことが、今後の放送を変えるべき“種”になるかもしれないので、これからもいろんな人の話を聞きながら放送に関する考えを深め、私たちに伝えてください。
【本日のまとめ】
(吉永副委員長) この5年間、新型コロナの影響でモニターの皆さんとリアルで対面することがなかったので、今回実現できたとことを大変うれしく思います。「百聞は一見にしかず」と言いますが、放送の現場を実際に見て、これだけ多くの人が必死に放送を作り上げていることを知った後では、また少しテレビとの距離感が変わってくるのかなと思います。『NHK紅白歌合戦』の視聴率が80%で日本国民のほぼ全部が『紅白』を見ていたような“テレビの時代”から、今は視聴率10%取れたら御の字という世界に変わってきて、それが本当に私たちにとって幸せなのかどうかという検証はすごく大事だと思います。ちなみに私は元々新聞業界にいましたが、今は新聞を読んでいない若い人たちがたくさんいて、先日も毎日新聞が富山県内での配送を休止するとの報道にびっくりました。配送していた部数を聞いたら840部だったということですが、他県もそんなに変わらないそうです。新聞業界も危機に瀕しています。新聞社にも社会部もあれば外信部もあるし、紙面には政治面も家庭面も健康面もある。でも総合的に私たちにきちんとした情報を届けてくれる新聞も、あしたの運命はどうなるか分からないよう状況になっています。話は戻って、総合的に情報を伝えるテレビもまた、通信との関わりの中でどうしても厳しい状況になっています。NHKは人口が減れば当然予算も減ります。民間放送においても、企業は「10%しかテレビを見ていないならば、通信の方に広告を出します」という話になりますよね。大きなお金をかけてたくさんの人を使って素晴らしくクオリティーの高い番組を提供したいという気持ちがあっても、物理的に不可能になってしまうということが、これから先あり得るのです。このような状況で、今まで持っていたパワーをどう維持するのかが、放送の世界にとって大きな試練になっていくと思います。皆さんがこれから生きていくうえで、しっかりした情報をたくさん得るということはとても大切です。今の状況がこれから長い人生を生きる皆さんにとって本当に幸せなのか、どうしたら自分たちのきちんと知る権利を確保して間違った判断をしないようにできるのか、を是非考えていってください。このモニターをしてくださったご縁もありますので、これからも放送について、厳しくも温かい愛情のある目線でレポートを送っていただければなと思います。
(榊原委員長) “自由”で“平等”であるということは、“みんな同じということではない”ということです。みなさんが一番見たい番組もそれぞれ違うわけで、「ドラマが見たい」「“ガキ使”が見たい」という欲求が全部満たされるかというと、放送業界のキャパシティーとして時間も人も足りないのが現状です。一方で、現在SNSが流行っているとはいえ、先ほど『月曜から夜ふかし』は毎週600万人が視聴しているという話がありましたが、公共的に情報を流すものとしては現在でもテレビが圧倒的に強いですし、1つの放送局でもそれだけの影響力があります。この影響力というのは、先ほど言った自由や平等、報道の自由やあるいはいろいろな情報を得る権利などに関わった人びとが、鋭意努力した結果だと思うのです。みんなそれぞれ見たいものは違いますが、どのようにバランスをとっていくのかということが重要です。BPOは若い世代の意見を各放送局に届け、ウェブサイトにも載せています。みんながある程度満足し、大きな不満がなく争いもなく、情報を自由に見ることができ、発信する方にも自由度がある。そういう放送を保障していく活動をしていかなくてはいけないと思っています。またモニターの皆さんも、テレビやラジオのモニターではありますが、実際にはこういう大きな国や集団の在り方みたいなものを、ここで垣間見ることができるのかなと思っています。私が若い頃、情報はテレビの報道から入ってくることが多かったのですが、今はインターネットやSNSとどう折り合いをつけていくかという時代です。モニターの皆さんに若い世代を代表して意見を言っていただくことは、現在の番組作りだけでなく、将来成人して社会の構成員になったときにどういった考えを持つかにおいて大変重要です。皆さん個人にとっても、重要な経験になると私は信じています。今日は遠いところからも来ていただいて、本当にありがとうございました。
モニターへの事後アンケートより
【日本テレビ社内見学 について】
- 『ヒルナンデス!』の生放送中にスタジオに入ったときは、裏で働いている人の多さに驚いた。番組の裏の部分(特にカメラや照明など)を見ることができたことや、自分が興味のあったニュース番組の席に座れたことは、とても良い経験になった。(高校1年・男子・兵庫)
- まさか生放送中のスタジオに入れるなんて思ってもいなかった。『ヒルナンデス!』のスタジオでは出演者の声が小さくあまり聞こえなかった。音声さんは重要だと身をもって感じた。伊藤遼アナウンサーが、私たちが後ろを通るときに「こんにちは」と言ってくれた。めちゃめちゃ好きになった。(高校2年・女子・青森)
【日本テレビ『月曜から夜ふかし』制作者との意見交換会 について】
- コンプライアンスが厳しい令和にこの番組が生き残った理由は、相手の気持ちをよく理解することだと分かりました。これは自分にも必要なことで、相手の気持ちを分かっていなければ相手を傷つけてしまう可能性があるので、大切にしていかなければならないと思いました。(高校2年・男子・山口)
- プロデューサーが一人で一つの番組を担当するものだと思っていましたが、他の方も含めて100人以上という多くの方が携わっており、驚きました。本当に努力の結晶でできている番組だと思います。私の将来の夢の一つに「番組プロデューサー」があります。私はみんなで一つのものを作ることが大好きです。テレビ局で働くこともいいなと思いました。改めて番組プロデューサーという仕事も人々を笑顔にできてすてきだなと感じました。(高校1年・女子・岐阜)
【青少年委員との意見交換会 について】
- 同世代のモニターからの意見はとても興味深いもので、とても良い刺激になった。“今のテレビ”と“昔のテレビ”の比較では、人によって異なる“面白さ”や“安全・倫理”といったものに対する見解を聞くことができた。自分は「今のテレビの方が面白い」と言ったが、「『ガキ使』が面白かった」「昔のテレビは面白いが過激である」といった意見には納得できた。また、そこに対する委員の先生方の意見が的確で、それぞれの方々が持つ肩書からくる深いものでもあり、テレビに対して一段と興味を持った。(高校1年・男子・兵庫)
- 話し合うことでテレビにとって大切な部分にはなったのではないかなと思います。特に大きな何かが動くという訳でもないけれど、テレビの本質を再認識することができたんじゃないかなと改めて感じました。(高校2年・女子・愛媛)