第168回 放送と人権等権利に関する委員会

第168回 – 2010年12月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理した。原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることとなった。2件の審理要請案件について審議した結果、いずれも審理対象外との結論となった。

議事の詳細

日時
2010年12 月21 日(火) 午後3時 ~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月14日の起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。
まず決定の対象となる範囲を整理した後、過去の裁判等を取り上げて申立人の実名や映像を出したことが申立人の人格権に触れるかどうか、申立人への直撃取材や収録したインタビュー素材の扱い方に問題はなかったかどうか、さらに裁判についてのコメントなどに偏った点がなかったかどうかなど、本事案の主な論点について決定内容を詳細に検討した。
この結果、起草委員が原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることになった。

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定

  • 鹿児島県阿久根前市長らからの人権侵害の訴え

    申立人らは、2010年8月29日に放送された在京テレビ局の報道番組において、当時阿久根市長であった竹原申立人が市長の立場で行った専決処分について、リポーターから「専決処分が極めて例外的なこと」「これは明らかに違法です」との発言がなされたことは、重大な人権侵害にあたるとして、局に対して謝罪と訂正を求めた。しかし、話し合いはつかず、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会では、双方から提出された文書等をもとに審議した結果、「放送倫理・番組向上機構の目的や当委員会の任務に鑑み、市長による専決処分という公職者による公権力の行使そのものを対象とした放送部分についての苦情は、委員会が審理対象として取り扱うべき苦情に含まれない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

  • 県知事選立候補予定者からの公平・公正に関する訴え

    沖縄県知事選挙の立候補予定者であった申立人は、沖縄のテレビ局が2010年11月1日に放送した「沖縄県知事選公開討論会」において、同じく立候補予定者であった他の2名を討論者として招き、申立人を招かなかったことについて、申立人を他の2名の立候補予定者と同様に番組に出演させなかったことは、選挙の公正さを害する不公平な取扱いであったとして、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会は、当該局に対して局側の見解提出を要請し、双方から出された文書・資料等をもとに審議した。
    この結果、「当該局が3名の立候補予定者の中から公開討論に招く立候補予定者を絞り込んだ基準そのものは不合理とは認められず、かつ、基準へのあてはめが平等を欠いたことをうかがわせる事情も格別見当たらない。したがって、本件申立ては、『名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関する』苦情(委員会運営規則第5条1項)には当たらず、かつ、委員会が『公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者』(同条2項)からの申立てとして取り扱うべきものとも判断されない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・23件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月7日に札幌で開かれた放送人権委員と北海道地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について、事務局がまとめた資料を配布し報告するとともに、会の模様を放送した地元テレビ局の番組同録DVDを視聴した。
    札幌での開催は2003年10月以来7年ぶり2回目で、加盟9社から62人、一方、委員会側からは委員7人と事務局が出席し、「ジャーナリズムへの信頼向上のために~現場の困難をどう乗り越えるか」を全体テーマに、約3時間にわたってやり取りを交わした。
    また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
    堀野委員長は基調スピーチで、「キバを抜かれたジャーナリズムは無力だが、優しさを欠いたジャーナリズムは凶器と化す」という清水英夫氏の言葉を引用しつつ、「放送はもっと事実を突っ込んでほしい。一方で、視聴者や被取材者との緊張感を欠いて優しさを失くした放送は凶器と化して人権を侵害する。その両面を自覚して仕事をしてほしい」と要望した。
    個別テーマの議論では、特に顔なしやモザイクなど匿名化手法の問題で、各局から顔出しでのインタビューが難しくなっている現状が次々と報告された。記者の若年化に伴い、”顔は個人情報でしょう”といって、対象者と向き合う前に顔を切って撮影して来てしまうという悩みも聞かれた。
    これに対して委員からは「内部告発者の人権擁護やプライバシーの観点から顔を隠す必要がある場合はある。しかし、なんとなく成り行きで隠してしまう場合もあるのではないか。本当に顔なしの必要性や必然性があるケースなのか真剣に議論してほしい」という要望や、「個人情報の保護は万能ではない。事実報道の価値は間違いなくあり、すべてが匿名化したら民主主義社会は成り立たない。両方の価値があってこそバランスが取れるし、どちらが優先するかはケースバイケースだということをちゃんと考えてほしい」とする意見が出された。
  • 今後のICT(情報通信)分野における国民の権利保障のあり方について検討してきた総務省ICTフォーラムの最終会合が12月14日に開かれ、報告書が採択された。そのBPOに関連する事項について事務局より報告した。
  • 次回委員会は2011年1月18日(火)に開かれることになった。

以上

第118回 放送と青少年に関する委員会

第118回 – 2010年12月

視聴者意見について

中高生モニターについて …など

第118回青少年委員会は12月21日に開催され、11月16日から12月13日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、12月に寄せられた中高生モニター報告及び来年度の活動計画等についての審議が行われた。

議事の詳細

日時
2010年12月21日(火) 午後4時30分~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員及び事務局より、視聴者意見の概要等について報告を受けた上で、今月は審議の対象となる番組はなかった。

中高生モニターについて

12月~2月は「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。12月はその中から「好きな番組、面白い番組」を選んで、どこが面白かったのか、どんな設定や構成、俳優や声優に好感が持てたかなどについてその理由を書いてもらい、31人から報告が届いた。

【主なモニター意見】

ドラマについての報告を寄せてくれたモニターは21人(男子13人、女子8人・重複あり)、アニメについては12人(男子6人、女子6人・重複あり)だった。
ドラマ部門で報告の多かった番組は、NHKの大河ドラマ『龍馬伝』が4人、スペシャルドラマ『坂の上の雲』に2人、テレビ朝日の『ナサケの女~国税局査察官~』に3人、『相棒』に2人、日本テレビの『Q10』(キュート)に2人、TBSの『花より男子』シリーズと『SPEC~警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿~』に各2人から、感動した、俳優たちの演技が素晴らしい、ストーリー展開に意外性があって好きだ、という意見などが寄せられた。
『龍馬伝』については、「1年間見続けて面白い、素晴らしい作品で、一話一話が大きな曲の一曲みたいでした。少し煙っぽいところなどが幕末という時代を表しているようで、実際に江戸時代に生きているような”リアル”を感じました。福山雅治さんの龍馬、香川照之さんの岩崎弥太郎、他の役者さんたちの演技もあの時代の人々のように伝わってきました」。
香川照之さんについては『龍馬伝』のほか、「明治から日露戦争までを描いたスペシャルドラマ『坂の上の雲』が好きです。秋山好古・真之兄弟の活躍や、正岡子規の闘病生活を中心に組み立てられています。子規役の香川照之さんの演技に魅力を感じます。本当の子規が病と闘っているように見えました。このドラマで私たちは明治時代の各国の情勢や日本国の出来事、時代を生きた人々の考えを知るといった歴史を体感できました」。
「私はテレビ朝日系の『相棒』『ナサケの女~国税局査察官~』のように人気俳優のドラマや、『その男、副署長』『おみやさん』など少し渋いものまで、展開を予測してみたり、当たらなかったりしても素直に楽しめるから好きです。何故かと聞かれると、視聴者を引き寄せる魅力があるからだと思います」
「『ナサケの女』が好きです。このドラマは1話完結で見やすく、内容もよくまとまっています。なかでも主人公の松平松子(米倉涼子)が周囲の目を気にしないで次々に”ホシ”に近づき、意地でも”金”のありかを探す執念深さは”サイコー(最高)”です。ドラマ同様、本物の国税局の皆さんにも松子さんのようにバンバン”ホシ”を挙げてほしいです」。
「先日最終回を迎えた『Q10(キュート)』(日本テレビ)は、佐藤健さんと前田敦子さんの学園ドラマなのですが、前田さん演じる「Q10」はロボットなので、最初は本当に驚きました。話し方も行動もすべてロボットなのです」「普通の学園モノや恋愛モノではないところが『Q10』の良いところです。恋や家族、友情など、さまざまな思いの果てにある決断に、共感や感動を覚えました。もう終わってしまいましたが、また見たいと思えるドラマでした」。
「私の好きなドラマは、『花より男子(だんご)』(TBS系列)シリーズです。笑いあり涙ありなのに、つい”キュン”としてしまうようなストーリーが大好きです。大ヒットコミックの実写化が決まってそのキャストを見たとき、井上真央ちゃんや松本潤さんを知っている人は少なかったと思います。ところが実際にドラマになってみると、ストーリーが面白いのはもちろんですが、びっくりするくらいキャストがキャラクターにマッチしていました。あまり知られていなかった俳優の中から、役にぴったりのキャストを選び出すことができたこのドラマの制作者は、とても優秀だったと思わざるをえません。ぜひ何度でも見たいです!!」。
また、このような報告も寄せられた。「僕は平日に再放送されている『水戸黄門』が好きです。この番組は、受験生のころ早めの夕飯を食べながら毎日見るのが日課でした。”必ず最後に正義は勝つ!”というストーリー展開は、見ていて安心でき、受験で不安な気持ちで一杯だった僕を”頑張ればきっと合格できる!”と勇気づけてくれました。主題歌の『人生楽ありゃ、苦もあるさ~』は思わず口ずさんでしまうフレーズです。ただ残念なことは、現在の『水戸黄門』は、助さん(里見浩太朗さん)が黄門様に出世していて違和感があり、現在の放送はあまり好きではありません」。
アニメ部門では、『銀魂』シリーズに3人、『AngelBeats!』に2人、『NARUTO』や『鋼の錬金術師』に各1人、好意的な意見が寄せられた。さらに幼いころに『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』を見てアニメが好きになり、今でもアニメ番組を見ていると回答してきたモニターもいた。
「『銀魂』は、現在は『よりぬき銀魂さん』として放送されている番組ですが、この番組の面白いところは、歴史上に出てくる人物の名前をまねした人たちがふざけているところです。例えば、坂本龍馬(さかもとりょうま)を坂本竜馬(さかもとたつま)としてあったり、新撰組局長の近藤勇(こんどういさみ)が近藤勲(こんどういさお)になっていたりして面白いです。そうした設定は、歴史上の人物を間違えて覚えてしまうとか言われていますが、歴史上の人物を知るいい機会だし、アニメで楽しみながら勉強もできてよい番組だと思いました」「『銀魂』は、ダラダラしていたり、いきなり戦いになったりしてメリハリがあり目が離せません。戦いというと血がたくさん出て怖いイメージがありますが、敵が死ぬときもパァーっと光が放たれる感じで、その敵も最後幸せに亡くなったという設定だったので、健全なアニメだなぁと思いました」。
「『ドラえもん』は、約30年放送が続いているので、知らない人はほとんどいないと思います。それから、声優・スタッフが変わり、内容が子どもっぽく感じているかもしれません。しかし、若返ったことによって、全体的に優しくなったという印象を受けました。また、のび太がドラえもんに何とかしてくれと頼むことはアニメの中でよくありますが、道具や人ばかりには頼っていてはいけないというドラえもん。のび太とドラえもんの日常生活から得られるものはたくさんあると思います。『クレヨンしんちゃん』も参考になるアニメだと思います。下ネタが多く下品だ、子どもが親を馬鹿にするのは許せない、などと批判する人は今でも少なくないと思います。確かに、しんのすけが言う言葉は親を馬鹿にしているように聞こえるかもしれませんが、そこから得られる知識はたくさんあると思います。しんのすけは園児の元気の象徴、まとめて言ってしまえば野原一家は、現代の家族の象徴だと思っています」。

【委員の所感】

  • 中高生の視聴経験はひとりひとり個別のものだが、「ドラマ・アニメ」に対しては好き嫌いが比較的はっきりしており、文章が生き生きとしていて映像が見えてくるようだった。また、このジャンルは感情に訴える力があり、番組を見て深く考えるきっかけにするなど、上手に生活に取り入れている様子もうかがえた。
  • 学習塾に通うため、食事をしながら『水戸黄門』(再放送)を楽しく見ているが、現在放送されているシリーズでは、かつて助さん役だった俳優が「黄門様」に昇格して出ていることに違和感があるという意見には、感心させられた。
  • 『クレヨンしんちゃん』について、下品だというような大人の声に対して、子どものころから見ていて楽しい、決して下品ではなく子どものしつけにも役立っているのでは、という中高生たちの分析や考え方は、一考に価するものだと思う。
  • 『銀魂』シリーズは、戦いなどメリハリのある展開で目が離せないアニメで、戦闘シーンも光を発するなど残酷でないところもいい、という子どもたちの見方(目線)と、大人たちの見解が異なっていたり、歴史の勉強にも役立っていたりするんだよという声には、耳を傾けるべきものがある。

「今月のキラ★報告」(愛知・中学3年女子)

私はアニメが大好きなので12月の課題は私の得意分野です。好きなアニメはたくさんありますが、『AngelBeats!』について書きす。私がこのアニメに出会ったのは、去年、中学2年のときでした。中2のとき私はクラスの何もかもが嫌いで「友だちってなんだろう」「自分なんていなければいいのにな」って思う時期がありました。
アニメ好きな私は、神谷浩史さん、花澤香菜さんなどの声優が目的でこのアニメを見始めました。「死んだ世界で、天使と戦う?!」何のこっちゃ、イミが分からない。見始めの印象はそこそこでした。しかし回を重ねるごとに、命の重み、仲間がいる意味、仲間の大切さ、人生ってすごいんだな、っていうことを教えてくれました。
キャラクターの一人に「岩沢まさみさん」という人物がいます。その子は死んだ世界でバンドを組んでいます。バンドで演奏する曲は岩沢さん自身の作詞・作曲で、その歌はすごいものばかりです。曲の一つの歌詞に「泣いている君こそ、正しいんだよ」という歌詞があります。それは岩沢さんが死ぬ前に思ったこと、感じたことを素直にそのまま歌詞にしています。そんな素直な歌詞だから、私の心に響きます。「世界を悩んでいる自分がちっぽけなような…」そんな気分になります。今でもくじけそうになったらこのアニメを見たりします。
私は『AngelBeats!』が大好きです。愛しています!!

【委員会の推薦理由】

主人公であるアニメ・キャラクターの姿が目に浮かんでくるような、番組の魅力が生き生きと伝わってくる、感性豊かなレポートでした。日常のアニメ番組から希望を見出すことの素晴らしさや感動を、自分の言葉で素直に表現したところが高く評価されました。

11月のテーマ「報道・情報・ドキュメンタリー番組」企画に対して、在京局の制作現場の方から届いたコメント(今回は、3人の方が1つの企画について意見を寄せた)。

企画1.『ダイジョウブ!ニッポン』 (山口・高校1年女子)

司会者・出演者:親近感が持てるような西田敏行さんや中川翔子さん、大泉洋さんやAKB48のメンバー等で、コメンテーターは現役の文部科学省や国土交通省などの方で、難しいことでしょうけれども現状を答えて下さる方々。

【番組の内容】

毎週土曜日の17時か18時くらいから30分間程度で、家族みんなが集う時間帯に『ダイジョウブ!ニッポン』という情報番組があったら…と考えました。直近の一週間の外交・事件・事故・政治・経済について小学生や政治経済に興味のない若者や主婦でも簡単に分かるような、アニメや立体模型を使った解説で、楽しく広い世代の人が見ることのできる内容がいいと思います。
今は教育・就職・税金・年金・老後…いろいろな問題が多すぎて先行きが見えず、これからニッポンはどうなっていくのだろうと日本中の人々が不安に思っているのではないでしょうか。
そんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような、見終わった後に爽快感・安心感を覚えるような内容になったらいいと思います。ニッポンに生まれて育って良かった、これからもニッポンを好きであり続けよう、皆で助け合って暮らしやすいニッポンにして行こうと感じられるような気持ちにさせてくれるような番組を期待します。

【日本テレビ報道局 『 newsevery. 』 チーフプロデューサーの感想】

『ダイジョウブ!ニッポン』わかりやすくて、広い世代に関心を持って戴き、親近感が持てる「情報番組」というのは、まさに私たちが制作したいと思っている番組です。特に、「わかりやすさ」はいま、ニュース・情報番組に求められているキーワードです。私たちはニュース番組を作るときに「中学生はわかるかな?」「両親は理解するだろうか?」と、日々問いかけながら、悪戦苦闘しています。この番組の企画者は、その点を鋭くついています。
キャスティングでも、多くの人が挙げた「池上彰さん」ではなく、西田敏行さんや、中川翔子さん、大泉洋さん。センスが光ります。
しかし、一番素晴らしいのは、不安が多い日本の閉塞状況の中で「爽快感・安心感」を得られるような番組にしたい。「皆で助け合って暮らしやすいニッポンにしていこう」という気持ちになる番組にしたい。と、「希望ある企画書」になっていることです。
私たちも、この点は参考にして、報道したいと反省させられました。

【TBS報道局 『報道特集』 プロデューサーの感想】

『ダイジョウブ!ニッポン』思わず、うなってしまった。私たちと同じ問題意識が提示されているからだ。今の日本は本当に元気がない。何十社受けても内定がもらえない。技術力を誇っていた日本の代表企業が韓国や中国の企業に追い抜かれる。失われた20年の間に、気がついてみれば日本はさまざまな分野で落ち込んでしまった。
その原因のひとつに日本人の内向き志向が挙げられている。留学なんて面倒、アフガニスタンで何が起こっていようと無関係、興味は自分の周囲50メートル、そして厳しい現実への諦め。こんな状況にテレビは何ができるのか、まさにそんな問題意識から私たちの報道番組では年末に『内向きニッポン。今そこにある危機』(仮題)といったスペシャル・バージョンを考えている。
「見終わった後に爽快感・安心感を覚えるような内容」という提案だが、まずは起きている現実に向き合うことから始めたい。「問題先送り」ばかりの政治家たちを反面教師として…。

【テレビ朝日報道局 『報道発ドキュメンタリ宣言』 プロデューサー 『朝まで生テレビ』 チーフプロデューサーの感想】

『ダイジョウブ!ニッポン』なにより番組タイトルが良いですね。暗いニュースが毎日繰り返し流れるなかで、「モヤモヤを吹き飛ばしてくれるような」番組を作りたいという姿勢がひしひしと伝わってきました。タイトルって、番組を作るうえでとっても大事なもので、僕らが新しい番組を立ち上げるときも、最初の段階で大勢のスタッフが何十個も案を持ち寄り「ああでもない、こうでもない」と話し合って決めています。いわば「番組の表紙」で、成功のカギを握る大きなポイントなんです。
内容面の「皆で助け合って暮らしやすいニッポンにして行こう」というコンセプトも前向きで良いと思います。あとはどうやって「ダイジョウブ」な思いを視聴者に伝えるか…具体的なプランを煮詰めていくと、より本格的になってくると思います。

企画2.タイトル 『9時ちょっと前NEWS』 (山形・中学2年女子)

【番組の内容】

午後8時55分からやる番組で、9時までの5分間です。9時から始まるドラマの前のニュースだと、天気予報など見ていてあまり面白くないものです。そのドラマの前に時間に、みんなが見てくれるような面白い番組をすることで、ドラマの視聴率にもつながると考えました。
「今日のNEWS」その日に起こったニュースを、政治、経済、社会などさまざまなジャンルのものを1分間でまとめて話します。次に、その中でも目立ったものを1つ選び、図などを使って2分半くらいで解説します。そのとき、内容、原因、結論、プラス(+)というように、4つの観点から見ていきます。プラスとは、その問題についてもう一つ、豆知識みたいなものです。
月・水はスポーツ、火・木はエンターテインメント、金曜日は1週間のまとめをやります。金曜のまとめとは、その週をにぎわせた全ジャンルのニュースを1位、2位、3位とまとめて発表します。順位は投票で決められるようにします(データ放送やインターネットと連携して)。最後に天気予報(普通に)、明日は何の日?(例えば、ポッキーの日などのように)をやって終わります。
5分間しかないため、ワサワサするかも知れないけれど、敢えて静かな感じの女性アナウンサーにしてもらう。ニュースは、たくさんの解説、分かりやすい解説があった方が分かり、見たいと思います。今までになかったような番組を作り、興味を広げることで、ニュースが広まっていくと思います。

【フジテレビ情報制作局情報制作センター『とくダネ!』チーフプロデューサーの感想】

『9時ちょっと前NEWS』企画提案を読ませて頂いて、純粋にこのような番組があったら見てみたいなと思いました。実際、今でもほとんどの局では毎日午後8時55分付近に5分程のニュース枠がありますが、いずれもストレートニュースです。
この企画書では、気になるニュース&解説からプラスの豆知識、天気予報そして明日は何の日、と、情報エッセンスが濃縮され、またそれを静かな女子アナが展開する…という一つの情報番組の世界観になっています。
番組作りで、まず重要なのは、放送する「時間帯」と、「視聴者層」です。この企画は、夜、家でくつろいでテレビを見ている比較的幅広い年齢層の人たちに対して、無理のない長さで「押さえておきたいニュース情報」を見せてくれる…という狙い・目的がはっきりしています。
特に、翌日の準備もあり、夜10時、11時の本格的なニュース番組ゾーンまで待てないという人たちにはとても「お得な」存在にもなります。
また、重要なのは「番組タイトル」です。『9時ちょっと前NEWS』というネーミングは、一見してどのような番組なのかわかり、肩の力を抜いて見ようと思わせる「遊び心」もあります。

企画総評

【NHK報道局プロデューサーの感想】

今回、印象に残ったのは、中高生の皆さんの「自分たちの意見を伝えたい」という思いの強さです。タレントではなく、自分たちのような”素人の学生”を登場させようという提案がたくさんありました。社会の矛盾や課題を”自分たちの問題”として考えたい、そんな意気込みにあふれており、意識の高さを感じました。また、リアルなものを見たい、伝えたいという思いも強く感じました。修学旅行など、自分たちの日常を題材にした提案が多かったのもそのためだと思います。どちらも番組作りの上で大切なことであり、中高生の番組を見る目の確かさ、厳しさを痛感しました。1本1本の提案からは、中高生が今の番組に満足していない現状が感じられ、制作者として、反省させられることも多かったです。

【テレビ東京報道局 『カンブリア宮殿』 プロデューサー】

身近な情報源としてのテレビ―その変わらぬ存在感を、皆さんのレポートを通して感じました。大人気の池上彰さんやお笑い芸人を、作りたい番組の出演者として挙げる人がとても多かったからです。
中学2年生が書いてくれた、ある番組の感想が心に残りました。「世界的に見れば小さな国だけれど、一人一人が違う暮らしを送っているなんてすごいなぁ」「全ての人たちに会える訳ではなく、死ぬまで知らない人生がたくさんあるのだなと思うと少し寂しくなります」。そして彼女が提案してくれたのは、素人が作るドキュメンタリー番組。いっそ、作り手は全員中学2年生にしたら!?若い感性や社会への問題意識で作り上げる番組、見てみたいです。テレビは社会の隅々のことを伝える「窓」ですから。ミニ枠で放送というアイデアも、実現性が高い気がして素敵だと思いました。私も皆さんの様々な思いに応えるような「社会の窓」としての番組作りに、挑戦していきます。

その他の審議内容

東京キー局及び地方局との交流等を含め、来年度の委員会の活動計画等が提案され、次回委員会以降引き続き協議することとなった。
また、事務局より、総務省「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」の終了を受け、同報告書の概要の説明を行った。

2010年11月に視聴者から寄せられた意見

2010年11月に視聴者から寄せられた意見

尖閣ビデオ流出問題や北朝鮮による韓国延坪島砲撃など国内外の重要ニュースが相次いだ。衝突事件のビデオがインターネット上に流出し、数日後、海上保安庁職員が漏えいさせたことを名乗り出た件では、職員の行動に賛否両論あった。報道のありかたについても、「センセーショナルに扱いすぎる」「英雄視することはまずい」など様々な意見が寄せられた。

11月に電話・FAX・郵便・EメールでBPOに寄せられた意見は1,064件で、10月と比較して395件減少した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール64%、電話32%、FAX2%、手紙ほか2%。
男女別では男性69%、女性28%、不明3%。
世代別では30歳代31%、40歳代25%、20歳代20%、50歳代12%、60歳以上9%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。11月の通知数は398件[34社]であった。
このほか放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、36件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・ 1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

11月の視聴者意見は1,064件と先月より395件少なかった。
尖閣ビデオ流出問題や北朝鮮による韓国延坪島砲撃など国内外の重要ニュースが相次いだ。国会での補正予算案審議をめぐる菅内閣の行き詰まり感など、政治・報道に関する意見や批判が多かった。衝突事件のビデオがインターネット上に流出し、数日後、海上保安庁職員が漏えいさせたことを名乗り出た件では、職員の行動に賛否両論あった。報道のありかたについても、「センセーショナルに扱いすぎる」「英雄視することはまずい」など様々な意見が100件近く寄せられた。国会は補正予算案の審議がすすめられたが、小沢氏招致問題や柳田法務大臣の失言による辞任、さらには仙谷官房長官らの参院での問責決議案可決などもあり、各種世論調査で菅内閣の支持率が大きく下がった。
耳かき店員ら2人殺害事件の裁判員裁判の報道では、裁判員に心理的影響を与えかねない発言があったなどの批判や、被害者の生前の映像を何度もテレビで出すのは好ましくないとの意見があった。
人気俳優の夫人が自殺した件で、テレビの取材陣が執拗に追いかけ回してインタビューしようというのはあまりにも不謹慎だという苦情意見が多かった。このほか占い師のやらせ疑惑や、「太った女性特集」「魔女」「セレブ」などという女性を貶める言葉や過剰な演出などにも批判があった。
ラジオに関する意見は41件、CMに関する意見は49件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は107件で、前月より約30件減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が20件、性的表現に関する意見が19件と並び、次いで残虐シーンに関する意見が10件、いじめに関する意見が9件と続いた。「低俗・モラルに反する」および
「性的表現」については、いずれもバラエティーとアニメに対する批判的な意見が目立った。残虐シーンについては、夜9時放送の単発ドラマの番組宣伝スポットに対し、死体描写などが残虐で子どもの視聴する時間に相応しくないとの意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 中国漁船衝突事件のビデオ流出問題だが、国民の感情は別にして、ユーチューブに流出したこと自体は違法だと思う。それをそのままテレビで放送することも違法取材ではないか。「既にネットでオープンになっている」ということは関係ないと思う。いずれにしても今回の告発がネットであるということは、現在の新聞・テレビへの国民の不信感を表していると感じる。テレビ報道のありかたを真剣に考えるべきではないか。
  • 衝突の映像を漏えいさせた者を「英雄視」するような報道が目立つ。こうした姿勢は非常に危険である。政府決定が気に入らなければ、あるいは国民が望んでいれば、政府の決定を無視し、覆すような行動をとっても許されるべきだという報道だ。政府の対応が気に入らないことと、公務員が政府の決定に従わないこととはまったく別次元の話だ。「国民の後押しがあれば政府決定を待たずに行動したり、無視したりしてもかまわない」といったメッセージを公務員に与えてはいけない。
  • 尖閣ビデオ流出事件の報道で、各局とも共通して「国民の知る権利」に応えてくれたとして、流出させた行為を評価していた。しかし、それを言うならなぜ放送局はビデオ非公開について、理由を明かすよう政治家に迫らなかったのか。自分たちは何もせず、海上保安庁の一職員の行為を正当化するのはおかしい。
  • 尖閣ビデオ流出で海保職員が名乗り出たが、まだ容疑者の段階なのに、住まいに捜査員がなだれ込むように入り、カメラは家の中まで映していた。まだ犯人ではないし罪を問われているわけでもない。もし罪に問われない場合はどうやって責任をとるのか。視聴率をとるための過剰な報道だと思う。
  • マスコミがこぞって世論調査を実施し、それを材料に政府批判を行っている。「小沢招致」「尖閣」「北朝鮮砲撃」などの世論調査結果を民意だと取り上げ、政府を批判している。国民の最大の関心事は、国民生活の安定だ。マスコミ権力が、偏向した世論調査で民意をねじ曲げ、国政を混乱させている。
  • ワイドショーなどの情報番組で、世論をミスリードするような危うい報道が多い。例えば「政策に関する街頭アンケート」を実施しているが、この結果はあまり信用できない。通行人がわざわざ立ち止まってアンケートに応じるのは、もともと政治に不満があるからだ。逆に現政権に特に不満がないなら、立ち止まったりしないだろう。つまり、アンケートから得られる結果など大体予測できるものだ。回答者数が高々50人程度であることも合わせると、「街頭アンケート」をまるで世論調査結果のように大げさに扱うことは危険だ。
  • 耳かき店店員殺害事件の裁判で、「無期懲役は納得できない」という遺族の主張を報道していた。裁判員が下した「無期懲役」は、議論を尽くした上でのもの。遺族に対する一連の取材を過度に報道することで、裁判員を傷つけることになるのではないか。視聴者に一方的な印象を与えたように思う。裁判員裁判の報道について慎重を期すようお願いしたい。
  • 耳かき店の店員殺人事件について、被害者の生前のビデオを何度も流して視聴者の悲しみを煽ることはやめてほしい。許しがたい殺人事件であり、痛ましいことであるのに、何の必要があって生前の映像を流すのか。どの事件や事故の報道にも言えることだが、見ている側としてはいたたまれない気持ちになる。遺族の気持ちを考えているのか。
  • 各局とも松平健さんの妻が亡くなったことについて報道していた。松平健さんに「奥様が亡くなられたことについてどう思われますか」「もうご対面なさったのですか」などとインタビューしていたが、彼の立場に立ってみればこのインタビューがどれほど下品なものかわかるだろう。家族を亡くした人の気持ちなど、わざわざ聞く必要はない。
  • 民放各局で、「トラブルで重傷を負った市川海老蔵」の父・市川團十郎の緊急会見をこぞって放送している。32歳の大人が飲酒して殴られただけの事件だ。わざわざ父親が出て来て記者会見をする必要もなければ、テレビ局が騒ぐ必要もない。
  • 他人の不幸は蜜の味。日本のメディア、特にテレビでは、政治、芸能、スポーツあらゆる分野の根底に、この”他人の不幸は蜜の味”的な考え方があるのではないか。何か不祥事や揉め事が起こると、水を得た魚のように追いかけ回し、コメンテーターなどは専門分野でないにもかかわらず、「世論では」や「世間では」といかにも大衆の意見として自説を披露している。きちんと精査して公平性を担保した情報を流してほしい。

【番組全般・その他】

  • 開始時刻を定時ではなく、5分ほど早めてある番組がある。これが非常に不便だ。例えば7時台はこの局、8時台は別の局のこの番組などと、局をまたいで「予約」しようとすると、たった数分オーバーラップしているだけで、「すでに予約されている番組があるので予約を取り消しますか」などと拒否されてしまう。せっかくデジタル放送で便利になったのに、視聴者の利便性をまったく無視しており、時代に逆行している。これは一つの放送局だけでは解決できない問題だと思う。是非、放送界全体で話し合って解決していただきたい。
  • 完全地デジ化に向けて、視聴者は高額のテレビを買わされている。しかし、地デジになって情報量が増え高画質になったのに、放送される番組はお粗末なバラエティー番組ばかりだ。いくら高画質になっても、お笑い芸人や不細工タレントばかりが出演しているのでは意味がない。視聴者に高額の出費を強要したのなら、それに見合う番組作りをすべきだ。
  • 話し方がとても「早口」になっている。昔のアナウンサーは、男女とも美しく話す方が多く、そのような発声、発話技術を持つ方だけが、アナウンサーになれるものだと思っていた。ところが、最近の番組では、ニュースからバラエティー、スポーツ解説などに至るまで、ひどい早口で、滑舌も悪く、言葉を聞き取れないことが多い。文法的に間違えている日本語や文脈に沿わない日本語の使い方も多く、日本語がこのまま衰退していくのかと思うと残念だ。正しい日本語で落ち着いて話してほしい。
  • バレーボールや野球など、スポーツ番組を延長する場合があるが、デジタル放送になったので延長部分はサブチャンネルで放送するべきだ。そのためのデジタル放送だと思う。バレーボールでいろいろと延長があり、録画などに苦労した。
  • ニュースなどでよく耳にするが「イノシシやクマが畑などを荒らすので困る」という。しかしよく考えてもらいたい。動物たちが山から降りてくるのは、我々人間たちが勝手に動物たちの住み家を壊しているからではないのか。クマたちだって、できれば山を降りたくはないはずだ。彼らも食べていかないといけない。それなのに、勝手な人間は「クマだ!イノシシだ!」と大騒ぎした挙句、殺している。少しは動物たちのことを考えてほしい。

【ラジオ】

  • 私は緑内障で片目が見えないのでラジオが貴重な情報源になっている。最近、私が聞いている放送では「近畿地方イコール関西」という意味で使われることが多く、「『逢坂の関』より西を関西」とする本来の意味とは違うと思い放送局に電話をした。すると電話口に出た担当者に「そんなことどうでもいいのだ」と非常に失礼な態度で怒鳴りつけられた。これほどまでに横柄な態度をとることが許されて良いのか。非常に腹立たしい。
  • 夕方の早い時間からエロをテーマに放送している。卑猥な内容を連呼していて聴くに堪えない。許せないことは「おっぱい検定」といって、女性の胸のサイズを延々と話していた。女性をモノ扱いされているようで大変不快だった。放送局に苦情を入れようと思ったが、個人情報を登録しないと意見を送れない。

【CM】

  • 本編が始まった後で、スポンサー名を画面中央に表示し、同時に提供クレジットも流している。時間にして17秒ほどだが、その間もドラマは進行する。スポンサー名のアナウンスに隠れて、せりふが非常に聞き取りにくい。ストーリーそのものへの影響は小さいのかも知れないが、しっかり見たい人には大変迷惑だ。他の番組でも本編の間、画面の隅に予告編やCMなどを表示することがよくあるが、この番組の場合は明らかに行き過ぎだ。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組で、ある芸人が「小学生にお金を渡して少年誌を買いに行かせる」と話していた。知らない大人に話しかけられても無視するように子どもに教育しているのに、「お金をあげるから」と言われていうことを聞いてしまう話をされると教育上困る。芸人だから面白く話すことはよくあるだろうが、子どもの好奇心をいたずらに煽ることはいかがなものか。
  • 子ども向け番組で、おませな小中学生のファッション事情として高価なブーツなどの派手なファッションを紹介していた。これを見た地方の子どもが「東京の女の子はこんなにかわいい格好をしている。私もそうなりたい」と思い、過度に高価なものを欲しがっては困る。このようなくだらない企画はやめてほしい。

【性的表現に関する意見】

  • 深夜のアニメで、過激な性描写が多く見られる。原作は18禁アダルトゲームのようだが、今後のストーリー展開では主人公が実の妹と恋愛関係になる近親相姦の話のようだ。このような番組を放送するのは問題ではないか。
  • 夕方のアニメ番組だが、放送時間上内容を再考すべきだ。不必要なキスシーンや性的表現に結び付けるような内容が多々あり、子どもが見る時間に放送するのはいかがなものか。同局の過去の同時間帯の作品は人気の高い物が多いが、どれも性的表現が含まれている。このような状況はあまり良いとは思えない。放送局は問題を軽視しているのではないか。

【残虐シーンに関する意見】

  • これから放送されるドラマの番組宣伝を見た。バットを振り回す殺人シーンや無抵抗な人間を殴るシーンなど、暴力的な場面が強調されており不愉快だ。子どもが帰って来る時間帯にも流されているので悪影響も懸念される。番組と違い、番組宣伝はいつ放送されるかわからないので避けようがない。過激なシーンを放送するのであれば、深夜の時間帯にするなど考慮するべきだ。

【いじめに関する意見】

  • 芸人が大勢でその場にいないタレントの悪口をクイズにして笑うという内容で、気分が悪くなった。番組に関係のない人を勝手に巻き込み、しかも馬鹿にするのは許せない。いじめ以外の何ものでもない。子どもに「いじめをするな」と言いながら、大人が平気で人の悪口を言っていじめる。これでは世の中からいじめがなくなるわけがない。
  • お年寄りの言動を笑い物にするバラエティー番組。面白くも何ともなくただ不快だ。他には面白い企画もあるので大変残念である。同局は別の番組でも同様にお年寄りにクイズを出し、的外れな回答を笑い物にしている。人を傷つけても笑いさえ取れればそれでいいのか。子どもはこういう内容を見て人をいじめることを覚えるのだろう。

【動物に関する意見 】

  • ペットランキングの紹介コーナーで、モモンガが威嚇する姿がかわいいということでわざと何度も脅して威嚇させていた。その他にも、安易に珍しいペットをすすめており大変憤りを感じた。子どもにも悪影響だ。動物のことを扱うなら、出演者は動物に関してもっと勉強するべきではないか。見ていて本当に動物が可哀想だった。
  • バラエティー番組で、生き物を殺したり食べたりするなど非常に凄惨な内容だった。うつぼを槍で突き刺しゲラゲラ笑っている場面で、私の娘は「かわいそうだ」と泣き怯えていた。魚などを獲っては「とったどー!」等と満足げに話しているが、もっと生き物を大事に扱うべきではないか。テレビ局にとっては視聴率アップが狙いなのだろうが、視聴者の立場に立った内容で番組を制作してほしい。

【報道に関する意見 】

  • 自殺報道、特に子どもの自殺に関する報道はやめるべきだ。自殺が多くなっているのは、報道によって連鎖が発生しているからだと思う。放送局は受け手に何を期待しているのか。報じるのであれば、少なくとも全国放送ではなくローカルで十分である。報道は自殺を誘発しかねないこととその責任を自覚すべきである。

【推奨番組に関する意見】

  • アメリカの同性愛事情について取り上げていた。私も同性愛者だが、世界の状況を知る機会があまりないのでこのような番組はありがたい。番組中に「君たちは一人じゃない」という言葉が出てきた。同性愛者は自分が周りと違うと気付いた時から誰にも相談できずにいることが多いため、このような言葉は救いになる。「性に関する番組=青少年に不適切」ではなく、悩んでいる人に対して情報発信することも大事だ。

【言葉に関する意見】

  • 平仮名を漢字に直すクイズで、問題は「うちゅう人」だった。回答者が「宇宙人」と答え、書き順は違っていたが正解とされた。小学生の子どもから「書き順が違うのにどうして正解なのか」と問われ説明に困った。ちょうど学校で漢字の書き順を習っているところだ。細かいことだが、こういう点は補足コメントを入れるなどして配慮してほしい。

【危険行為に関する意見】

  • タレントが足の指の間にダーツを落とすという危険行為をしており、それを見た他のタレントは「すごい」とほめたたえていた。その後、家で子どもが真似しようとしてびっくりして止めた。何気なくつけていた番組だったので今後は見ないよう気をつけるが、多くの人が見る時間帯に放送されている以上、このような内容は困る。笑いは何でもありではない。お笑いは好きなので、今後こういうことがないよう注意していただきたい。

【視聴者意見への反論・同意】

  • 「子どもに悪影響」という意見が目につくが、自分たちも子ども時代があったはず。昔はもっときわどい描写が蔓延していたが、そうした番組を見て大人になり、犯罪者にもなっていない方々が意見を述べているのではないか。もっと自分や周りの子どもたちを信じてほしい。それでも心配ならば、子どもの見るテレビ番組をきちんと管理し、家族団らんの時はテレビをつけないなどの努力をしたらいかがか。
  • 何か事件があるたびにメディアを有害とする風潮が目立つが、昔のテレビは現在では放送できないものが多かった。「子どもに悪影響だからやめろ」といった意見により放送内容が変わることがあるが、子どもに影響があるならその番組を見せないという判断はできないのだろうか。子どもが見た時は、「これは悪いことだ。普通の人は真似してはいけない」と注意した方が子どもの判断の教育にもなる。

【CMに関する意見】

  • 「ゲームが無料」と謳っているSNSのサイトのCMが多い。実際に性被害や詐欺、騙しなども起きており、実質的には出会い系サイトだ。知らない人同士の連絡についてCMで注意を促している訳でもない。CMで紹介しているゲームの内容も、恋愛ゲームやタレントを起用しての関係のない話などで、見ていて不愉快極まりない。こういったCMをかなりの回数放送していること自体が問題だ。

第44回 放送倫理検証委員会

第44回 – 2010年12月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第44回放送倫理検証委員会は12月10日に開催された。12月2日に通知公表が行われた参議院選挙事案については、報道された新聞記事やテレビ番組を見た上で意見交換を行った。
女性誌が付録につけたバッグ関連の取材で、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について、当該局のプロジェクトチームが社員研修用に作成した報告書が新たに提出されたので討議した。委員の間では評価できる内容だという意見が多かったので、当該局に対してその報告書を公表する意思があるかどうかを確認した上で、今後の対応を決めることにした。
8人の若い富豪女性の富豪振りを紹介するバラエティー番組。ホテルを買収しようと折衝する女性が紹介されたが、視聴者からそのホテルを宣伝するための作り話ではないかなどの指摘があった。誤解を与えるような取材方法や事実関係について継続して討議することにした。
テレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(11月8日放送)で、酵素飲料を飲むことによりダイエットに成功した女性が紹介されたが、その女性はその飲料を販売する会社の社長であったことが判明した事案。当該局で内部調査が行われており、次の委員会までに詳細な報告書が提出される予定なので、討議は次回に持ち越すこととした。

議事の詳細

日時
2010年12月10日(金) 午後5時~8時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、是枝委員 立花委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

さきの参議院選挙(7月11日投票)に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた4番組の事案は、12月2日に当該4局に対して委員会決定を通知し、続いて記者発表を行った。担当委員からそれに関する報告があり、続いて報道された新聞記事とテレビ番組を視聴した上で意見交換を行った。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

女性誌が付録につけるバッグがブレイクしていることに関する街頭インタビューなどで、制作スタッフが仕込んだ女性を、偶然に街で見つけたかのようにして放送したフジテレビの『Mr.サンデー』(8月8日と9月26日放送、10月17日お詫び放送)。当該局の「再発防止プロジェクトチーム」が、本事案の問題点を詳細に検証し、社内の制作セクションに向けて作成した報告書が新たに提出された。委員からはこの報告書は評価でき、委員会がこれを公表することによって、全放送局にわたり再発防止が期待できるのではないか、という意見が出された。

【委員の主な意見】

  • 今回の社内向け報告書は、他の番組を含めてすべての現場で徹底的に議論しようという姿勢が貫かれているところは評価できる。
  • この報告書は事実経緯がよく調べられ、問題点も指摘されている。今後、このような事案が発生した局は、この報告書をお手本にすべきだ、という事例として公表できないだろうか。
  • これまで提出された報告書は、監視体制を強めますというワンパターンだったのに比べれば、今回のものは委員会が言い続けている現場で討論することによりスタッフの自覚を促すというやり方に近い。そういう意味で評価できる。
  • 「事実をありのまま伝える」という基本的な取材姿勢が欠けていた点に問題がある。報告書によると取材者は「(街で見つけた)15人に(あらかじめ用意した)3人を足したのは何故か」と漠然と思っているだけだ。報告書では、なぜ肝心のその分析をしなかったのだろうか。
  • (放送基準解説書の)情報系番組において虚偽が許されないという箇所に該当するし、演出過剰であるということは指摘できる。
  • 制作スタッフの中に、これはおかしいと思った人が複数いながら、積極的に止める手段はとらず、見逃してしまう結果となった。何故そうなったのか、構造上の問題があるのではないか。
  • この社内向け報告書は、担当ディレクターがきちんとした倫理意識を持っていなかったからだと、個人の資質のせいにしているが、むしろそこが問題ではないか。

委員会は当該局に対して、委員会による報告書の公開を打診し、その結果次第で今後どのように討論を続けるかを決めることにした。

ホテルの購入話は虚偽ではないかと問われたバラエティー番組

「世間の常識から外れたセレブな女性のお買い物」というテーマで、8人の若い女性が2週にわたって紹介された。それについて、視聴者から内容に疑問があると、複数の意見が寄せられた。
そのうちの1人で、以前宿泊したホテルが気に入ったので、そのホテルを買収したいという女性に密着。番組では、ホテル側との折衝シーンが流され、あたかも買収話が進んでいるかのように構成されているが、視聴者から、買収話はウソであり宣伝のための話題つくりではないかとの指摘があった。さらに、放送後、買収話が進んでいると信じた利用客からホテルに対して問い合わせが相次いだ。
ホテル側は売却の意思がないことや取材に協力したことなどをブログに載せて対応した。また、そのセレブ女性の周辺関係者が、ホテルのオーナーの肉親であることが明らかになった。
取材方法や事実関係を精査するために、討議を継続することにした。

【委員の主な意見】

  • 放送人の自主・自律性の問題であり、取材・制作の過程できちんとした倫理に基づいて制作していたのか疑問がある。
  • 放送前に、そのセレブ女性が所属する事務所から、制作会社のプロデューサーには、「売却の話はなさそうだ」という情報が伝わっていたが、その情報が局の担当者には伝わっていない。そこも問題だ。
  • バラエティー番組であったとしても、「事実」を扱う場合は、それをねじ曲げないように最大限の配慮が必要だ。

出演者が不適切であったテレビ東京の情報バラエティー番組
  『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』

11月8日放送の『月曜プレミア!』で、野菜や果物を発酵させた酵素飲料を飲み、断食と組み合わせたダイエットを体験して、減量や美容の増進に成功したという女性が紹介された。ところが放送後に、この女性はその酵素飲料の販売会社の社長だったことが判明し、当該局は取材時の確認作業に不手際があったことを認めた。
事案の概要を記した経緯書が委員会に提出されたが、事実関係についての詳細な内部調査が進められている最中であり、詳しい報告書を待つことにした。
新たな討議事案も含めて、バラエティー番組でも事実を扱う場合は、正確な情報に基づいて制作されなければならないのに、肝心の情報の確認や取材の方法に共通した問題があるという指摘が委員の間から相次いだ。当該局からの詳細な報告書の提出を求めるなどした上で、次回の委員会で討議を継続することにした。

以上