第133回 放送と青少年に関する委員会

第133回 – 2012年5月

視聴者からの意見について

中高生モニターについて

第133回青少年委員会は5月22日に開催され、4月16日から5月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、5月に寄せられた中高生モニター報告および今年度の委員会活動等について審議した。

議事の詳細

日時
2012年5月22日(火) 午後4時30分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

担当委員および事務局より今月の視聴者意見の概要等の報告を受けたうえで委員間で討議し、審議対象とするべき番組はなかった。また、前回、多数の批判的な意見が寄せられたことから委員全員で視聴したフジテレビの『ペケ×ポン』(4月6日放送)について各委員間で討議した結果、審議の対象とはしないことになった。

中高生モニターについて

5月から7月は「ドラマ・アニメ番組」のジャンルを取り上げている。5月は、最近見たドラマもしくはアニメ番組の中から「好きな番組、面白い番組」について報告してもらった。
34人全員から報告があり、ドラマでは17番組について報告が寄せられた。複数の意見があった番組は『三毛猫ホームズの推理』(日本テレビ系列)、『リーガル・ハイ』(フジテレビ系列)、『パパドル!』(TBS系列)、『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系列)、『カエルの王女様』(フジテレビ系列)の5番組だった。そのほか海外ドラマが3作品、漫画が原作のドラマは1番組だった。
アニメでは10番組についての報告が寄せられ、複数の意見があったのは『宇宙兄弟』(日本テレビ系列)、『名探偵コナン』(日本テレビ系列)、『サザエさん』(フジテレビ系列)の3番組で、海外アニメは1番組だった。放送局別ではフジテレビ系列が9番組、NHKが6番組だった。

【主な意見】

  • 「僕が好きな番組は、『ドラえもん』(テレビ朝日)です。今の中学生・高校生にドラえもんというと、”小学生が見る番組”や”幼稚”などといわれます。しかし、僕はそうは思いません。なぜなら、『ドラえもん』には夢があるからです。『映画ドラえもん・のび太と奇跡の島~アニマルアドベンチャー~』の主題歌である福山雅治の『生きてる生きてく』や、オープニングテーマの『夢をかなえてドラえもん』など、夢について歌っている歌を多く使っています。また、あったらいいなと思わせるひみつ道具は、これからの未来を担う子どもたちの創造力を育てます」(静岡・中学3年男子)
  • 「僕が『ひつじのショーン』(Eテレ)が好きなのは、主人公のひつじが色々いたずらするのが面白くて、はまっています。調べたらイギリスのアニメということが分かりました。海外アニメなのですが、日本語吹き替えはありません。ほとんどセリフがなくて、音で表現されています。このアニメはきっとほかの国でも見たら、吹き替えなしで子どもは楽しめると思います。このアニメはストップモーションアニメで、コマドリして編集していますが、とてもリアルで素晴らしいと思いました。どんなに技術は進んでも、こんなアニメは続けてほしいです」 (京都・中学1年男子)
  • 「私が今一番お気に入りの番組は『梅ちゃん先生』(NHK)です。展開が単純で素直に面白い。掘北真希さんの演技も何となくスローテンポで学芸会っぽく見えてしまうかもしれないけれど、一生懸命演じられていて好感が持てる。ストーリー的には、私自身戦後の実態を想像することが難しいけれど、戦争の悲しさや恐ろしさ、苦しさなどは極力表には出さず、これからはこれ以上ひどいことはあり得ない、将来は明るいんだという希望に満ちた感じを意識的に伝えられているような気がする。『梅ちゃん先生』が生きた時代って、将来に希望が持てた”貧乏だってへっちゃらな”とっても夢に満ち溢れた時代だと思う。何でも物が溢れているのに将来不安な今って、私たちの力で何とかできるのだろうか」(長野・高校1年女子)
  • 「最新科学を用いた”鑑識”にスポットを当て、全米視聴率ナンバー1をキープしている『CSI:科学捜査班』。このドラマの日本での放送についていくつか気になることがあります。1つは、翻訳に関することです。新しい主人公、レイモンド・ラングストンを放送では”教授”とみんな敬語を使って呼んでいますが、実際の英語では”レイ”や”ラングストン”と呼ばれています。これは翻訳時の工夫の一つなのでしょう。しかし、”レイ”と呼ばれるほうが親しみを感じるのに対して、”教授”はいくら年上だとしても、敷居が高いような印象を受けます。日本とアメリカの文化の違いはとても難しいものがありますが、この作品では、”レイ”と呼び、敬語も使わないほうが良かったのではないかと僕は思いました。2つめは声優についてです。ラングストン役の銀河万丈氏の声は、とても見た目とマッチしているとは思うのですが、『CSI:NY』では、サブキャラクターとして刑事局の局長役をやっています。ちょっとした矛盾なのですが、少しだけ気になりました」(東京・中学3年男子)
  • 「私は、嵐の大野智さんが主演の『鍵のかかった部屋』(フジテレビ)が好きです。理由は3つあり、1つは大野さんが好きだからです。2つ目は、前回の嵐の松本潤さんの『ラッキーセブン』に続き、月9は月9でもちょっと雰囲気の違ったミステリー系のドラマで面白いからです。3つ目は、榎本径と弁護士の芹沢さんと青砥さん3人の関係やそれぞれのキャラクターがみんな個性的で楽しくて、それがドラマの中にもたくさん出ているからです。これからの登場人物たちの関係や、どんな事件を解決していくのかも気になります」(広島・中学2年女子)
  • 「ぼくの好きなアニメ番組は『サザエさん』(フジテレビ)です。毎週家族で見ています。毎週ほぼ欠かさず見ているので、これを見ると、明日から学校が始まるなと思うようになっています。この番組は、お父さんやお母さんが子どものころからあったと聞いて、今でも続いていてすごいなと思います。なかでも面白いところは、登場人物の年齢が変わらないので、いつのまにかカツオの年齢を自分が超えたときには、不思議な気分になりました。番組の最後には次回の予告とじゃんけんがありますが、これもまた家族で楽しんでいます。これからもずっと続いていってほしいアニメ番組だと思います」(滋賀・中学1年男子)
  • 「ぼくの好きなアニメ番組は『サザエさん』(フジテレビ)です。毎週家族で見ています。毎週ほぼ欠かさず見ているので、これを見ると、明日から学校が始まるなと思うようになっています。この番組は、お父さんやお母さんが子どものころからあったと聞いて、今でも続いていてすごいなと思います。なかでも面白いところは、登場人物の年齢が変わらないので、いつのまにかカツオの年齢を自分が超えたときには、不思議な気分になりました。番組の最後には次回の予告とじゃんけんがありますが、これもまた家族で楽しんでいます。これからもずっと続いていってほしいアニメ番組だと思います」(滋賀・中学1年男子)
  • 「私が今クール毎週見ているドラマは『パパドル!』(TBS)です。当初は、ただ今人気の役者を多く起用して視聴者の関心を誘う、いわゆる視聴率稼ぎのドラマかな!?と思いつつも見始めたのですが、今ではなぜだか毎週木曜日になると、テレビにひきつけられ、かじりつくように見ています。バラエティー番組とドラマを織り交ぜた構成になっているところも新鮮です。このドラマは、単にアイドルの私生活と結婚を混ぜ合わせた内容ではなく、芸能活動の奥、裏を知り、噂の怖さを感じることができます。私は今後の展開を楽しみにしていきたいです」(東京・中学3年女子)
  • 「私は『37歳で医者になった僕』(フジテレビ)を毎週欠かさず見ている。このドラマは、草彅剛演じる元サラリーマンで37歳の紺野祐太が、古い体質の残る大学病院で研修医として勤務していく中で理想を持っているがゆえに騒動を起こしながらも、病院をよりよく変えていこうと日々努力し続ける姿をリアルな視線で描いた物語である。私が思うこのドラマのキーワードは”再スタート”であると思う。いうまでもなく主人公自身サラリーマンを辞め、医師として自分の人生を再スタートさせた。また日本も東日本大震災後からの再スタートを真に願っている。そんな日本への応援メッセージとも感じ取れるこのドラマを私は最後まで見届けたい」(東京・高校2年男子)
  • 「僕が最近気にいっているのは、何といっても『宇宙兄弟』(日本テレビ)です。南波六太(むった)、日々人(ひびと)の兄弟が、”宇宙飛行士になって、月に行く”という同じ夢に向かって行くというストーリーが、なんだかワクワクします。僕には3歳年下の妹がいるのですが、六太や日々人のように、同じ夢を持てる兄か弟がいればなぁと思います」(神奈川・中学2年男子)
  • 「私は毎週土曜日、日本テレビでやっている『三毛猫ホームズの推理』が好きです。見ようとしたきっかけは、私の好きな相葉雅紀さんが出ているからでした。私は、そのドラマのオリジナルで、ホームズという猫がたびたび人間になり、主人公の推理を助けるという設定が好きです。また、その役がマツコ・デラックスさんであることも良いと思いました。主人公のキャスティングも素晴らしいと思いました。いつも頑張っているけど、上司には怒られてばかり。兄や妹にも呆れられてしまうが、犯人に感謝されてしまう主人公、義太郎は相葉さんしかできないと思いました」(神奈川・中学3年女子)
  • 「最近見たドラマで面白かったのは、『くろねこルーシー』(サンテレビ)です。地方局が共同で作っている”動物ドラマ”シリーズはずっと見ていました。誤解していた父のことをくろねこのルーとシーとの生活を通して見直しはじめ、嫌いであったはずの父と同じ”占い師”への道を歩み始めていくという物語で、ベタな感じがしているのですが、ほのぼのできる内容でした。このドラマは学生クリエーターと共同で制作しているということなので、このドラマに参加したクリエーターから、未来のテレビマンが現れるはずだと期待しています」(大阪・高校2年男子)

【委員の所感】

  • ドラマやアニメの報告は大変熱心に取り組んでくれています。報告を読んでいて、まだ見ていない番組も、見てみたくなりました。
  • 好きなことや面白いことになると、個性が出なくなってしまいますね。でも関心があることになると、ネット等で細かい点まで調べて見ているということが分かりました。
  • 海外番組で、出演者名の翻訳について詳しく調べ、文化の違いまで踏み込んだ報告があり、感心しました。
  • 長寿アニメでは、モニターのみなさんが僕らと同じ体験をしている事を知り、心にしみるものがありました。世代を超えた共通体験を持っていることが、面白いと思いました。
  • しっかりドラマを見ているなと感心しました。視聴率の面から一般の方と中高生の見方は違うのかなとも思いました。
  • 好きな番組について、なぜ好きなんだろうという所まで踏み込んで分析しているのは、素晴らしいです。

「今月のキラ★報告」東京・中学2年男子

僕はふだん「連続ドラマ」を見ることがほとんどない。今までに通してみたドラマは、2011年1月の『スクール!!』(フジテレビ)と、2011年10月の『南極大陸』(TBS)の2本だけだ。
『南極大陸』に出演していた堺雅人さんがとても印象に残ったので、今期堺雅人さんが出演している『リーガル・ハイ』(フジテレビ)を見てみたらすごく面白かったので毎週欠かさず見ている。
このドラマの舞台になっている法律事務所や、裁判・法律というものは、中学生の僕にとってはふだんなじみのないものだ。しかし、堺雅人さんが演じる古美門研介という弁護士のキャラクターが外見も中身も笑えるくらいに個性的で、「勝てるわけがないだろう」と思うような裁判でも無茶な主張を法律を使って無理やり正当化させて勝っていく様子が面白い。
古美門は、自分の感情や世間一般の考えに流されず、依頼者にとっての「正義」を法的に証明し勝訴する。「なるほどなぁ」と思う場面がたくさんある。
このドラマを見ていると、正義や真実はその人の立場や考えによって変わるものだ、という事に気付かされる。常識にとらわれず、多角的なものの見方が必要だと教えてくれる。

【委員会の推薦理由】

まず、ドラマのテーマや弁護士という職業を、一歩引いて冷静に俯瞰しているところが素晴らしいと思います。実際に弁護士をしている委員からは、「正義や真実は、その人の立場や考えによって変わるものだ」との指摘は、この職業の本質を突いているという話がありました。その作文力を含め、「今月のキラ★報告」とします。

2012年4月に視聴者から寄せられた意見

2012年4月に視聴者から寄せられた意見

報道姿勢、取材方法についての意見が多数、被害者や加害者の家族らへの無神経なインタビューを批判するものや、取材時のマナーの悪さを指摘する意見があった。バラエティー番組では、大御所タレントが代役の司会者を罵倒しいじめる内容に不快を訴える意見など。

2012年4月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,430件で、先月と比較して239件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール74%、電話23%、FAX2%、手紙ほか1%。 男女別は男性66%、女性30%、不明4%で、世代別では30歳代31%、40歳代23%、20歳代21%、50歳代12%、60歳以上8%、10歳代5% の順となっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。4月の通知数は581件【34局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、25件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

4月の視聴者意見は1,430件と先月より239件増えた。
前年4月とくらべて同水準の件数である。
各地で交通事故が相次いだ。いずれも多数の死傷者が出る悲惨なもので、事故の特異さなどから視聴者の関心も高かった。報道姿勢、取材のやり方などについての意見が多く、被害者や加害者の家族らへの無神経なインタビューを批判するものや、取材時のマナーの悪さを指摘する意見があった。
花見のニュースに津波の映像を出してしまった映像の取り違えには、「緊張感が足りない!」との厳しい批判があった。
大飯原発再開問題や小沢元代表の無罪判決などの報道についても、キャスターや出演者の発言に不注意なものがあるとの指摘があった。
春の改編をめぐる長時間の特番は、テレビ局の都合だけを優先し、視聴者を無視しているとの声が強かった。
バラエティー番組では、大御所タレントが代役の司会者を罵倒し、いじめる内容に不快を訴える意見や、お笑い芸人たちの内輪話や下ネタにピー音を入れてごまかす手法に批判が多かった。
これまでもよく言われているが、本編とCMの音量が違いすぎて視聴に困難をもたらすとの意見があった。
ラジオに関しては32件。CMに関する意見は66件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は160件で、前月より36件減少した。これは、前月はアイドルグループのメンバーがお菓子を口移しで渡すCMへの意見が多かったことによる。
今月は、表現・演出に関する意見が76件、次いで視聴者意見に対する反論・同意が20件、同じく低俗・モラルに反する意見が20件と続いた。
視聴者意見への反論・同意では、テレビ番組やCMの内容への批判の前に、親が子どもにきちんと教育することが必要ではないか、という主旨の意見が複数寄せられている。
また、深夜帯からゴールデンタイムに放送時間を移したバラエティー番組の内容が時間帯に相応しくないなど、子どもが視聴する時間帯に関する意見や、深夜アニメについて配慮を求める意見が見受けられる。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 京都府亀岡市で、18歳の少年の無免許運転の自動車が登校途中の子どもの列につっこみ10人が死傷した。死亡した妊婦の夫を大勢の記者がとり囲んでインタビューしていたが、目を覆いたくなった。こういう無神経な取材はやめてほしい。被害者や遺族がどれだけ悲しく悔しいか、聞かなくてもわかる。視聴者もそんなわかりきった映像やコメントを求めてはいない。ただでさえ事件に巻き込まれて苦しんでいるのに、さらに苦しめるようなことをなぜするのか。第二の加害者になっていることをもっと自覚するべきだ。
  • 関越高速道バス事故に関するディレクターの取材姿勢が不適切だと感じた。事故を起こした会社の社長が取材陣の前で時間を割いて取材に応じたのに、その後車に押し掛け、更には会社社長が被害者に会うために訪れた病院内にまで入り込んで廊下で「何か一言コメントを」と付きまとうことは、良識ある大人の行動とは思えない。取材方法に問題があると思う。
  • 最近の報道は行き過ぎではないか。加害者の家族、親族の家まで押し掛け、あたかも正義の味方然として詰問する。加害者は当然責められるべき、罰せられるべきだが、果たして家族、親族をそのように晒し者にして、テレビ局は何が満足なのだろう。いくら加害者の家族、親族とはいえ、それは常軌を逸した行動だ。声を変え、モザイクを入れれば何をしても良いと考えているのであれば、それは報道の思い上がりであり、傲慢さの表れだ。自分たちの行動が、恥ずかしくないのか。
  • 京都・祇園の交通事故の報道で、「加害者がてんかん持ちであった」と繰り返し強調されている。事故原因もはっきりしないのに、そこだけが一人歩きしており、結果的にてんかん症への偏見を生んでいる。テレビのニュースは瞬時にネットにアップされることが多い上、テレビと違って長く残ることもある。事故発生直後の「てんかん原因説」も、1度ネットに出てしまうと広まるのは簡単だが、削除するのは不可能に近い。こうしたネットの特性にも配慮して、テレビで流す情報は慎重に選んでもらいたい。
  • 花見のニュースで、「たくさんの人でにぎわいました」というコメントとともに”津波に町が襲われる映像”が流れた。中継と津波の録画映像を間違えるわけはないだろう。悪意で遊んでいた「セシウムさん」と同じではないのか。テレビ局には緊張感が感じられない。「セシウムさん」で再発防止策は立てられていないのか。映像を間違えた経緯を説明してほしい。
  • 「車で自転車を追い回す」事件の報道で、オリジナルではなく、音声が編集された動画サイト上の映像をテレビ局が使用した。視聴者はマスコミに対し、正しい情報を伝えてほしいと思っている。事件のドラマ性を高めるために動画の音声を切り貼りする必要はないし、バラエティーのような効果音を足す必要もない。事件の善悪は視聴者が判断するので、伝える側で意図的な工作をしないよう徹底するべきだ。テレビ局は「既に編集されていた動画を誤って使用した」と説明したが、「既に編集されていた動画」が放送日よりも前にネット上に本当に存在したのかどうか、BPOで確認して頂きたい。ここ数年、テレビ局があまりにも無責任な放送をしていて不快に思う。
  • 最近各局で”首都圏直下型地震”を取り上げる番組が多くなった。しかし今もなお、東日本大震災による福島原発事故の放射能に脅え、帰宅できずにいる被災者がいることを忘れてはならない。福島原発による被害は災害ではなく人災だ。それにもかかわらず、原発に携わった人間の責任を追及する番組は未だに放送されていない。二度と同じ過ちを起こさないよう、その責任を徹底追及する番組を作るべきだ。
  • 北朝鮮からミサイルが発射された。まだ政府の正式な発表はないが、情報が錯綜している中で、司会者が「なんか拍子抜けですね」と発言していた。発射数分で墜落もしくは空中分解らしいが、その「拍子抜け」は何に対する拍子抜けなのか。日本領空内や本土に飛来しなかったから拍子抜けと聞こえる。沖縄に飛来しPAC3が発射されることを期待していたのか?不謹慎極まりない。
  • 民放番組の天気予報コーナーで、最近「ステルス雷雨」「爆弾雨」「ゲリラ豪雨」といった新しい表現がよく使われている。いずれも戦争に関連した言葉で、単なる受け狙いの奇抜な表現に過ぎない。気象庁に確かめても、「正式にはそのような表現はない」と言われた。気象予報士の仕事は、正確な天気予報を提供することに尽きる。大衆向けの新奇な言い方ばかりに気を取られているようでは困る。

【番組全般・その他】

  • お笑いタレントがテレビを席巻している、というより侵食している。どのチャンネルをつけてもお笑いタレントの姿が飛び込んでくる。しかも低俗でくだらない。人の失敗や欠点を嘲笑したり、自分たちの身内話で盛り上がったり、視聴者はすっかり蚊帳の外である。低俗番組だけではない。俳優や司会者、コメンテーター、リポーター等にもお笑いタレントが進出していて、もはやお笑いタレントの出ていない番組の方が珍しいくらいだ。
  • 最近のバラエティー番組は人をけなして笑いをとるような手法ばかりで、不愉快極まりない。「ブス」「デブ」「馬鹿」などと言って内輪で大笑いしているのを見ていると気分が悪い。人を不愉快にさせることが最近のお笑い芸人というものなのか。お笑い芸人がシモネタや具体的な人物名を発した時などに、音声を加工して放送しているが、そこまでしなければならない内容なら放送しないでほしい。
  • 「嫌いな人物」や「付き合った人物」などを話す時に、ピーという音が入ることに腹が立つ。そもそも視聴者に内容が伝わらないのにその場の盛り上がりだけを見せるという手法が卑怯だ。ピー音を入れるなら最初からそんな話題をするべきでない。言いたいなら堂々と言うべきだ。守られることを前提に悪口を言うなんて卑怯なバラエティーは不愉快だ。ピー音が当たり前のテレビの傲慢さに腹が立つ。情報が伝わらない内容を平気で放送する志の低さにあきれる。
  • 何かを紹介する時や正解を表示する時に、画面をモザイクなどで隠して、CMに切り替わるパターンが横行している。あたかもカッコイイかのように取り扱われている。もっと視聴者にやさしい番組編成をしてほしい。モザイクをかけなくても、チャンネルは替えない。
  • フィギュアースケートなどを見ていると、画面に映っている選手たちの演技の映像が、「今の演技」なのか、「以前の演技(参考VTR)」なのかが、画面のどこにも記されていないので、とても戸惑う。「今回の演技だ」と思って見ていたのに、演技の最後に「さあ先日の演技を見て頂きました」というアナウンスが入ったりするから、ガッカリする。視聴率対策でわざと分かりにくくしているのだろうが、「今の演技」か「以前の演技」かをはっきり明示しないことは怠慢であり、姑息だ。
  • 料理の値段を当てるコーナーで、MCの代役として出演した兄に対するゲストの大御所タレントの態度がひどかった。登場していきなり「熊本に帰れ」と罵倒、その後も何か話すと罵倒し、喋らずにいれば「何か喋れ」と言う。間に「あたしの一日の稼ぎはお前の年収だ」などの暴言。それが笑いになっていればいいが、兄も委縮してしまった。他の共演者も大御所タレントに媚びて兄を嘲笑していた。まさにイジメの構図だ。このように大御所タレントとそれに媚びる連中との集団で一人を執拗にからかう構図は大変不愉快だ。これが演出だとすればスタッフの神経を疑う。
  • アイドルを壊れたイスに座らせて尻もちをつかせていた。お笑い芸人を押さえつけて鼻の穴に金具をつけて引っ張ったり、大きな真空パックに入れて空気を抜いたりしていた。スタジオの人間が大笑いしていたが、私は気分が悪くなってチャンネルを替えた。「危険なので真似をしないでください」「呼吸できるように、安全対策をしています」とテロップが入るが、番組自体が安全対策を行っているかどうかより、それを見て短絡的に真似をしたりする人間が事故を引き起こしかねないのであれば、そういった行為は慎むべきである。
  • 最強のドリル(矛)と最強の金属(盾)の対決が名物だが、地味なものづくりの技術に光を当てる企画で素晴しい。日本の製造業の高い技術は長年培われたもので、経済成長を支えてきた。コスト面では有利な新興国には、まだ追い越されていない技術が多く、その多くを地味な中堅企業や町工場が継承し発展させている。一方で、大企業はコスト重視で日本の技術を軽視し海外移転をはかり、若い世代はものづくりの現場に興味を持たなくなっている現象もある。日本のものづくりの力を維持するにはこういう番組がもっとあって良いはずだ。
  • 毎日、女子アナが「食事」をしているが、アナウンサーが生放送中に朝食をすることは、モラルの欠如としか言いようがない。視聴者は女子アナの女子会や、身内だけで面白おかしく騒いでいる場面を見たいと思わない。報道と情報が知りたいだけだ。早朝から騒ぐだけのバラエティー番組なら放送してほしくない。報道のあり方、伝え方を真剣に考えて頂きたい。

【ラジオ】

  • 以前はテレビを見ていたが、本編とCMの音量の違いに我慢ができず、テレビをやめてラジオに転向した。ところがラジオもやはりCMの音量が大きく、その度にボリュームを絞らなければならない。スポンサーの意向もあってそうした演出をするのかも知れないが、リスナーすなわち消費者の立場から言えば、それこそ逆効果だ。印象的なCMが適切な音量で流れた時に、リスナーは思わず耳を傾ける。
  • DJの反社会的な暴言や行き過ぎた性的表現、番組内でのイジメを公認する表現があり、とても不愉快だ。こうしたラジオ番組が日本において当たり前のように公共電波で放送されていることに疑問を感じる。放送倫理観に問題がある。

【CM】

  • 食べ物のCMにもかかわらず、そのスナック菓子をお尻のあたりに巻きつけ、そのお菓子はむき出しのままお尻をくねくね回すことは、下品だし、見ているこっちが恥ずかしい。子どもに見せたくないし、真似されたら困る。ふざけたCMづくりで、食べ物を粗末にしている。

青少年に関する意見

【視聴者意見への反論・同意】

  • 最近は何かと批判的な意見が多いようだが、テレビの番組内容やCMの内容の前に、きちんと教育していないことが問題ではないか。時代の流れはあるだろうが、昔はもっと卑猥な表現や危険な行為の映像は多数存在した。しかし家庭のあり方がしっかりとしていれば何の問題も起きなかった。しかし現代は人に対する痛みや、やってはいけない行為を親が教えず、何かあれば「テレビが悪い」「ゲームが悪い」等、疑問に思う点もある。テレビ等で多大な影響が考えられる映像が流れた場合、まずは親が子どもに対し教えるべきだ。意見している方の中には、昭和のバラエティーを笑って見ていた方も多くいるはずだ。意見者に、子どもの頃、昭和のバラエティーを見て悪影響を受け問題を起こしたのかと聞きたい。
  • 「子どもが真似するからテレビで放送するな」「子どもに悪影響だから放送するな」というような意見が多いが、必ずしもそのテレビを見たからといって子どもに真似や悪影響を与えるものだろうか。それは親の育て方次第ではないか。私にも1歳の子がいるが、テレビは自由に見せるつもりだ。その代わり、いけないことはきちんと「いけない」と教える。親が子どもの教育をきちんとすれば真似や悪影響は与えないと思う。何でもかんでもテレビのせいにするものではない。
  • 深夜の番組やアニメの内容が卑猥・猟奇的だなどという指摘は違うと思う。そういった内容だからこそ昼間ではなく深夜に放送しているのではないだろうか。夜中にテレビをつけるなら、それなりに理解しているはずだ。ただ、そういった番組の番宣では、あえてそういったシーンを選んでいるのではないかと疑うこともある。番宣やCMはどんな番組を見ていても目に入ってしまうのだから、もう少し考えてほしい。

【表現・演出に関する意見】

  • 元ヤンキーの芸能人、力士などが過去の振舞を反省するという体裁をとっているが、実際には、やくざに一目おかれた自慢話など、悪事を面白おかしく紹介する内容となっている。本人にとっては過ぎ去った話であっても、被害を受けた人、あるいは現在も暴走族などの迷惑を被っている人々にとっては、笑って聞き流せることではない。また、青少年には決して薦められる話ではないので、このような扱い方をする番組は倫理上問題があると考えられる。オムニバスドラマの中の一話についてだが、フィクションとはいえ教師が生徒の靴をヒールで踏みつける場面や、子ども二人のうち片方を施設、片方を親が育て7歳のときに審査をし、優秀なほうを選び、選ばれなかったほうはトラックに積まれて運ばれ、最後は夢落ちで終わるというもので、あまりにもひどすぎる。とても不快に思った。虐待や親のスパルタ教育等も現実にあるので、少なからず影響されると思う。最近、アニメやドラマなどを含め殺人シーンなど不適切と思われる表現のある番組についての意見が増加傾向にある。私自身もそのようなシーンは苦手だ。ストーリーの特性上やむを得ない部分もあると思うが、見ていて良い気分にはなれない。遺体に関しては演出方法の工夫をしたり、放送時間に関しては特に未成年者に配慮するなどの工夫が必要と思われる。

【低俗・モラルに反する意見】

  • 3月まで深夜の時間帯に放送していたものを、子どもが見られる時間帯に移動したにもかかわらず、コントの中身が全く変わっていない。下品でいやらしい。男性芸人が股間を押さえて「痛てて」を連発し、男性が男性を背後から抱き締めワイシャツのボタンを引きちぎって胸毛を露出させる。男性2人の何とも言えない、情事に酔ったようないやらしい表情もあった。こんな下品でいやらしいコントをゴールデンタイムに流すことはやめてほしい。ゴールデンタイムに移した責任をもう少し自覚し、放送内容を変更するなど、もう少しきちんと考えてほしい。

【編成に関する意見】

  • 年齢制限のある映画をテレビで放送することはよくない。放送された映画はPG12だが、12歳未満が見てしまった可能性がある。
  • 深夜アニメに視聴制限がないことに疑問を感じる。今回見たアニメは、武器商人をテーマに傭兵出身の子どもも銃を持ち、人を撃ち殺すシーンがある。原作の漫画は大手出版社から出版されているので、おそらく掲載雑誌も小学生が自由に買えるし、深夜アニメを録画して見ることも可能。原作漫画もアニメも年齢制限に関するルールが曖昧。ゲームや映画には年齢制限があるのに、深夜アニメは暴力的でも性的表現が多くてもそういう規制が全くない。この作品に限らず深夜アニメ等に関して、各局とも野放しになっているようで驚く。テレビ局にも視聴者年齢制限のルールが必要ではないのか。

第183回 放送と人権等権利に関する委員会

第183回 – 2012年5月

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定
放送倫理上の問題に関する判断…など

審理要請案件について審議し、審理入りを決定した。来月から実質審理に入る。放送倫理上の問題に関する判断について議論し、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化すること等を決定した。

議事の詳細

日時
2012年5月15日(火) 午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定

ストローなど身近な素材で作られた作品を紹介したフジテレビの番組で、作品の取り扱いや演出、出演者の発言によって人権を侵害されたという申立てがあり、審理を開始することが決まった。
番組は『情報プレゼンター とくダネ!』。本年1月9日(祝)放送の「ブーム発掘!エピソード・ゼロ② 身近なモノが…知られざる街の芸術家編」と題した企画で、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4種類の作品と作者による制作の様子などを紹介した。
申立人は、ストローを素材にした作品(ストローアート)の作家。申立書によると、数本のストローで作り小瓶に活けた組作品の椰子を1本ずつに崩し、本来飲み物に挿すためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と訴えている。
放送後、メールでフジテレビと交渉を続けてきたが、フジ側から提示された謝罪放送の文案に承諾しかねるとし、やり取りを重ねても話が通じないとして4月3日、申立てに至った。視聴者への謝罪とイメージの回復、及び申立人への謝罪などを求めている。
これに対して、フジテレビは、「申立てに関する経緯および見解」の中で、「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている。演出方法を事前に明確に伝えなかったという落ち度も認め、放送でのお詫び案を5回示して誠意をもって対応してきたつもりだが、理解を得られていない」、「現在に至るまで十分なコミュニケーションは取れていないが、実質的な話し合いに向けてメールでやり取りしている最中との認識でおり、引き続き誠心誠意話し合いを続けたいと考えている」としている。
委員会では、双方から提出された書面及び資料をもとに審議した結果、本件申立ては審理の対象となる苦情に該当し、かつ双方の話し合いは相容れない状況になっていると判断でき、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理に入ることを決定した。
次回委員会から実質審理に入る。

放送倫理上の問題に関する判断

前回に引き続いて、放送倫理上の問題に関する判断のグラデーションについて意見を交わした。
委員会は当初は、「放送倫理上問題あり」で統一されていたが、近年、個別事案ごとの性格の違いを踏まえた判断の微妙な差異を示すため、「重大な放送倫理違反」、「放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」というキメの細かなグラデーションを設けてきた経緯がある。しかし、昨年行われた放送局への聞き取り調査では、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくい等の声が出された。こうした指摘を受け、申立人と放送局の双方にとってより分かりやすく理解しやすい決定とするため、本年2月以降、判断のグラデーションをよりシンプルにする方向で検討を重ねてきた。
この日の委員会では、グラデーションの見直し案について事務局から説明し、これを受けて詰めの議論を行った。この結果、従前の決定等をふまえつつ、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化することで最終的に意見がまとまった。表現については、放送倫理の内容が法規範とは異なり必ずしも確定的なものではないこと、放送倫理については放送局が定めた自主的倫理規範に反しているかどうかを判断の拠り所としていること、さらに放送倫理上の問題点を違反事例に限定することなくより広く具体的に捉えられるとの観点から、「違反」ではなく「問題あり」に統一することとした。これに伴い、わかりやすさという観点から、「重大な放送倫理違反」も「放送倫理上重大な問題あり」に修正されることとなった。
委員会決定における判断は下表の通りとなり、以後の事案から適用される。

「勧 告」 人権侵害
放送倫理上重大な問題あり
「見 解」 放送倫理上問題あり
要望
問題なし

なお、決定における判断内容をより簡単に把握してもらうため、決定文の表題に「勧告」もしくは「見解」という表示を付け加えることになった。「勧告」と「見解」の区別についてはさらに細かな区別も検討したが、わかりやすさという観点から従前のとおりとした。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月19日(火)に開かれることになった。

以上

第60回 放送倫理検証委員会

第60回 – 2012年5月

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

取材対象を十分確認せず誤映像を放送した熊本放送の『夕方いちばん』

第60回放送倫理検証委員会は5月11日に開催された。
日本テレビの報道番組『news every.』(4月25日放送)の特集企画の中で、最近利用者が急増している「宅配の水」(ボトルドウォーター)について取り上げたが、利用客として登場した女性は、宅配水メーカーの経営者の親族(会長の娘、社長の妹)だったことが判明、当該局はお詫び放送をして謝罪した。
同じ番組で、1年余り前に「ペットビジネス」の運営会社の社員を一般利用者として紹介した事案では、委員会は放送倫理違反として意見書を公表したが(委員会決定第10号)、類似の問題が同一番組で繰り返された原因を検証するため、この事案も審議入りすることになった。
熊本放送の県域情報番組『夕方いちばん』のニュース枠で、洋服加工工場で起きた作業員の死亡事故を伝えた際、別の工場の映像が誤って放送された。誤報の原因は、警察の正式な発表前にインターネット検索で見つけた誤った情報が、取材者の一方的な思い込みや不十分な確認作業で最後まで訂正されなかったためで、当該局は5回の訂正・謝罪放送をして、誤報の被害者の納得を得た。被害は回復され、放送後に十分な原因調査を行い改善策も示しているとして、討議を終えた。
番宣や番組内で、芸能ニュースで話題となっている占い師が出演するかのように表示したが、実際には別の占い師が出演したバラエティー番組に対し、騙されたと批判する視聴者意見が多数寄せられた事案が事務局から報告された。当該局から報告書を求め、次回の委員会で討議を行うことになった。
また、「東海テレビ放送『ぴーかんテレビ』問題に関する提言」について、新たに名古屋地区の放送局から対応報告があった旨、事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2012年5月11日(金) 午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、吉岡委員長代行、石井委員、是枝委員、重松委員、立花委員、服部委員、水島委員

“不適切な取材対象者”が繰り返された日本テレビの報道番組『news every.』

『news every.』は4月25日放送の特集企画で、原発事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を検証した。その中で、最近「宅配の水」として利用者が急増している専用サーバーを使用するボトルドウォーターについても取り上げ、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶという女性を、一般利用者として詳しく紹介した。ところがこの女性は、宅配水メーカーの親族(会長の三女で社長の妹)だったことが、当該局やBPOに寄せられた視聴者意見から判明し、当該局は1週間後に「お詫び放送」をして視聴者に謝罪した。
2011年1月8日に放送された『news every.サタデー』で、新しいペットビジネスとしてペットのマッサージサロンやペット保険を取り上げた際にも、一般利用客として紹介した2人の女性が、運営会社の従業員だったことが発覚した。委員会は、報道番組で従業員を一般利用者として紹介することは、事実を正確に伝えておらずまた公正性をそこなうという意見書を公表(委員会決定第10号2011年5月31日)していた。
当該局は、この事案のあと、「企業・ユーザー取材ガイドライン」を新たに作成して、取材対象企業の関係者をユーザーとして扱わないことや対象企業に安易にユーザーの紹介を依頼しないことなどを定めていた。しかし、当該局の説明によると、今回の特集企画の取材・制作担当者の中で、出演者の女性が対象企業の関係者かどうかに気を配ったり確認したりした者は、誰もいなかったという。
委員会は、「ペットビジネス」事案を教訓に作られた「企業・ユーザー取材ガイドライン」がどこまで浸透・機能していたのか、再発を防止するための社内研修はどのように行われていたのかなど、類似の問題が繰り返された原因や背景をきちんと検証する必要があるとして、審議入りすることを決めた。

【委員の主な意見】

  • のど元過ぎればではないけれど、たった1年でみんな忘れ去られてしまうのだろうか。1年前、いろいろ議論を重ねて作った意見書が何の役にも立たなかったのだとすれば、それは問題ではないか。
  • 前の事案と比較して最大の相違点は、ペットビジネスのディレクターは承知の上で故意にやったのだが、今回の取材者は親族だと知らなかったと言っていること。制作過程の問題を軽重で言えば、今回はやや軽い。
  • 結果的に企業に近い人が広告的な活動をするのを防げなかったという点では同じではないか。今回のほうが、より経営者に近い人物だし、商品の大写し映像も多く、より広告的だったとも言える。
  • 再発防止の切り札だったはずの「ガイドライン」が、なぜ全く役に立たなかったのか。実際に使われていたのか。今回の取材・制作関係者から徹底してヒアリングをすることが必要だろう。
  • 今回の取材・制作担当者は、報道番組の経験や実績が豊富な中堅以上の人たちだったということだが、中堅やベテランになるほど、ガイドラインはあっても気にとめず、自分の経験ややり方で仕事を進めるのではないか。
  • 社内の研修はどうしても若手社員や若手の社外スタッフ中心になりがちで、中堅クラスや管理職は漏れていたのではないか。実効性の高い研修がきちんと行われていたかどうかだ。

取材対象を十分確認せず誤映像を放送した熊本放送の『夕方いちばん』

熊本放送の県域情報番組『夕方いちばん』のニュース枠で、今年2月24日、熊本市内の洋服加工工場で起きた作業員の死亡事故を伝えた際に、誤って別の工場の映像を放送した。この2つの工場は、業務内容が同じ、会社名まで酷似しており、工場の所在地も町名・字名まで同一で番地だけが異なっていた。
事故の一報連絡を受けたニュースデスクが、断片的な情報をもとにインターネットで検索した結果、別の工場のほうを事故が起きた工場と思い込んで、カメラマンに撮影を指示した。カメラマンはなんら変わった様子が見られない工場に不審を抱き、デスクに問い合わせたが、デスクは思い込みから間違いないと答え、カメラマンは工場側にコンタクトを取らずに撮影をした。その後、警察から正式な発表があったが、確認取材が不十分で、誰も誤映像であることに気づかなかった。
当該局は、間違えられた工場の苦情を受けて、5回の訂正・謝罪放送をして被害者の納得を得たほか、総務省に放送法に基づく訂正放送の報告を行った。委員会は、報道の根幹にかかわるミスではあるが、間違って映像を放送された工場の名誉回復は訂正・謝罪放送で果たされており、また放送局は放送後に十分な原因調査を行い具体的な改善策も示しているとして、審議入りしなかった。

以上