第223回放送と人権等権利に関する委員会

第223回 – 2015年8月

出家詐欺事案のヒアリングと審理、
佐村河内氏事案2件の審理、ストーカー事件2事案の審理、
STAP細胞事案の審理入り決定…など

出家詐欺事案のヒアリングを行い、申立人と被申立人から詳しく事情を聞いた。佐村河内守氏が申し立てた2事案の「委員会決定」案を引き続き検討し、また同じ番組を対象にしたストーカー事件関連2事案を審理した。審理要請案件2件を検討し、STAP細胞報道事案の審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2015年8月18日(火)午後3時~10時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
曽我部委員、中島委員、二関委員 (林委員は欠席)

1.「出家詐欺報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

審理の対象はNHKが2014年5月14日の報道番組『クローズアップ現代』で放送した特集「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」。番組は、多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る「出家詐欺」の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で出家を斡旋する「ブローカー」として紹介された男性が「申立人はブローカーではなく、ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない。申立人をよく知る人物からは映像中のブローカーが申立人であると簡単に特定できてしまうものであった」として、番組による人権侵害、名誉・信用の毀損を訴える申立書を委員会に提出した。
この日の委員会では、申立人と被申立人双方からヒアリングを行った。
申立人は代理人弁護士とともに出席した。申立人は「ブローカーを演じてくれと頼まれたのでやった。ドキュメントではなく、再現映像・資料映像だと思った。軽い気持ちでやった。まして、関西ローカルの番組だと聞いたので。それが、全国放送された。手振り、言い回し、高音になる喋り方などで4、5回会った人なら私だと断定できる」。その結果、仕事を辞めざるを得なくなった等述べた。
被申立人のNHKからは当時の番組担当者ら5人が出席した。NHK側は「インタビューをしてブローカーで間違いないと確信した。話の内容で裏付けをとったという認識だ。覆面インタビューをする際は、必ず本人に安心感を持ってもらうためにモニターを見てもらっている。毎回。とりわけ今回は犯罪すれすれ、犯罪なので、服も着替えてもらうなど、プライバシー保護には最高レベルまで十分配慮した」等述べた。
ヒアリング後も審理を行い、担当委員が「委員会決定」文の起草作業に入ることになった。その上で、次回委員会でさらに審理を進める。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷も生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会には第2回起草委員会を経て修正された「委員会決定」案が提出された。結論部分を中心に審理したが、ほぼ内容がまとまり、記述等についてさらに検討することになった。

3.「大喜利・バラエティー番組への申立て」事案の審理

審理の対象はフジテレビが2014年5月24日に放送した大喜利形式のバラエティー番組『IPPONグランプリ』で、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出してお笑い芸人たちが回答する模様を放送した。
申立書で佐村河内守氏は、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らかである」とし、さらに「現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる」としている。
これに対し、フジテレビは答弁書で「本件番組は、社会的に非難されるべき行為をした申立人を大喜利の形式で正当に批判したものであり、不当に申立人の名誉感情を侵害するものでなく、いじめを容認・助長するおそれがあるとして児童青少年の人格形成に有害なものではない」と主張している。
今月の委員会では第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」案を審理した。大きな修正等はなく、今後細部について検討することになった。

4.「ストーカー事件再現ドラマへの申立て」事案の審理

対象となったのは、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。
番組では、地方都市の食品工場を舞台にしたストーカー事件とその背景にあったとされる社内イジメ行為を取り上げ、ストーカー事件の被害者とのインタビューを中心に、取材協力者から提供された映像や再現ドラマを合わせて編集したVTRを放送し、スタジオトークを展開した。
この放送に対し、ある地方都市の食品工場で働く契約社員の女性が、再現ドラマでは自分が社内イジメの"首謀者"とされ、ストーカー行為をさせていたとみられる放送内容で、名誉を毀損されたとして、謝罪・訂正と名誉の回復を求めた。
これに対しフジテレビは、「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、事実を再構成して伝える番組」としたうえで、「登場人物、地名等、固有名詞はすべて仮名で、被害者の取材映像及び取材協力者から提供された加害者らの映像にはマスキング・音声加工を施した。放送したことによって人物が特定されて第三者に認識されるものではない。従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送の必要はない」と主張している。
今月の委員会では、論点の整理と質問項目の精査が行われ、各委員からさまざまな意見が述べられた。次回委員会でヒアリングを行うことを決定した。

5.「ストーカー事件映像に対する申立て」事案の審理

対象となったのは前事案と同じ、フジテレビが本年3月8日に放送したバラエティー番組『ニュースな晩餐会』。この番組に対し、取材協力者から提供された映像でストーカー行為をしたとされた男性が、「放送上は全て仮名になっていたが会社の人間が見れば分かると思われ、また車もボカシが薄く、自分が乗用している車種であることが容易に分かる内容だった。会社には40歳前後で中年太りなのは自分しかいなく自分と特定されてしまう」として、番組による人権侵害を訴え、「放送前に、従業員にストーキングしている人物が自分であるということを広められ、退職せざるを得なくなった」と主張した。
これに対しフジテレビは「本件番組は、特定の人物や事件について報道するものではなく、ストーカー被害という問題についてあくまでも一例を伝えるという目的で、事実を再構成して伝える番組であり、場所や被写体の撮影されている映像にはマスキングを施し、取材した音声データなどについては音声を変更し、場所・個人の名前・職業内容などを変更したナレーションやテロップとする」など、人物が特定されて第三者に認識されるものではなく、「従って、本件番組の放送により特定の人物の名誉が毀損された事実はなく、訂正放送等の必要はない」と主張。また、申立人の退職の原因について、「本件番組及びその放送自体ではなく、本件番組で申立人所属の会社のことが放送される旨会社の内外で流布されたこと、及び申立人も自認していると推察されるストーキング行為自体が起因している」と反論している。
今月の委員会では、事務局が申立人の「反論書」とフジテレビ側から提出された「再答弁書」を基に双方の主張を整理して説明、各委員からは論点整理に向けてさまざまな意見が述べられた。

6.審理要請案件:「STAP細胞報道に対する申立て」

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」で、番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏、笹井芳樹氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は、本年7月10日付で番組による人権侵害、プライバシー侵害等を訴える申立書を委員会に提出。その中で本件番組がタイトルで「不正」と表現し、「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と訴え、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
また申立書は、本件放送では論文に多数の画像やグラフが掲載されているが、「何らの科学的説明もないまま、『7割以上の不正』があったとする強いイメージを視聴者に与える番組構成は、強い意図をもって申立人らを断罪した」と主張。さらに番組が申立人の実験ノートの内容を放送したことについて、「本人に無断でその内容を放送した行為は、明白な著作権侵害行為であり、刑事罰にも該当する」と述べている。
このほか申立書は、(1)「申立人と共著者である笹井氏との間で交わされた電子メールの内容が、両者の同意もなく、完全に無断で公開されたことは完全にプライバシーの侵害であり、また、通信の秘密に対する侵害行為」、(2)申立人の理研からの帰途、番組取材班が「違法な暴力取材」を強行して申立人を負傷させた、(3)本件番組放送直後、論文共著者の笹井氏が自殺した。本件番組と自殺との関係性は不明だが、本件番組が引き金になったのではないかという報道もある。「本件番組による申立人らへの人権侵害を推定させる大きな重要事実と考える」――などと指摘、番組が「人権侵害の限りを尽くしたもの」と主張している。
これに対しNHKは8月5日委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「本件番組は、申立人がES細胞を盗み出したなどと一切断定していない」としたうえで、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と反論した。
また、理研の「研究論文に関する調査委員会」はその調査報告書の中で、「小保方氏が細胞増殖曲線実験とDNAメチル化解析において、データのねつ造という不正行為を行ったことを認定した」と端的に述べており、「このように、STAP論文における不正の存在は所与の事実であって、本件番組のタイトルを『調査報告 STAP細胞 不正の深層』とすることに、何らの問題もないと考える」としている。
NHKはさらに、「実際に、7割以上の画像やグラフについて専門家が疑義や不自然な点があると指摘した事実を紹介したに過ぎず、NHKの恣意的な評価が含まれている訳でもない」と指摘。申立人の実験ノートの内容を放送したことについては、「申立人が、実際にどのように実験を行っていたのかを記した実験ノートの内容は、本件番組において紹介することが極めて重要なものであり、著作権法41条に基づき、適法な行為と考える」と主張している。
そのうえでNHKは、(1)申立人と笹井氏の間の電子メールは、笹井氏が、申立人に対し、画像やグラフの作成に関して具体的な指示を出していたことを裏付けるものであり、申立人の実験ノートと同様に、本件番組において紹介することが極めて重要なもので、「違法なプライバシーの侵害にはあたらない」、(2)今回の申立人に対する直接取材は、報道機関として、可能な限り当事者を取材すべきとの考えから行ったもの。また取材場所も、パブリックスペースにおいてコメントを求めたものであり、直接取材を行ったこと自体は問題がなかったと考えている、(3)申立人が指摘するとおり、本件番組と笹井氏の自殺の関係は不明であり、本件の審理において考慮されるものではないと考える――などとして、本件番組は、「申立人の人権を不当に侵害するものではない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

7.審理要請案件:「自転車事故企画に対する申立て」

自転車事故を取り扱った番組に対する申立書について、委員会運営規則に照らして審理事案とする要件を満たしているかどうか検討した。次回委員会で改めて申立書の取り扱いを検討する。

8.その他

  • 次回委員会は9月15日に開かれる。
  • 増加する事案の審理の迅速化を図るため、10月13日に臨時の委員会を開くことになった。これにより10月は20日の定例委員会と合わせ開催が2回となる。

以上

2015年8月18日

「STAP細胞報道に対する申立て」審理入り決定

放送人権委員会は8月18日の第223回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」で、番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏、笹井芳樹氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は、本年7月10日付で番組による人権侵害、プライバシー侵害等を訴える申立書を委員会に提出。その中で本件番組がタイトルで「不正」と表現し、「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と訴え、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
また申立書は、本件放送では論文に多数の画像やグラフが掲載されているが、「何らの科学的説明もないまま、『7割以上の不正』があったとする強いイメージを視聴者に与える番組構成は、強い意図をもって申立人らを断罪した」と主張。さらに番組が申立人の実験ノートの内容を放送したことについて、「本人に無断でその内容を放送した行為は、明白な著作権侵害行為であり、刑事罰にも該当する」と述べている。
このほか申立書は、(1)「申立人と共著者である笹井氏との間で交わされた電子メールの内容が、両者の同意もなく、完全に無断で公開されたことは完全にプライバシーの侵害であり、また、通信の秘密に対する侵害行為」、(2)申立人の理研からの帰途、番組取材班が「違法な暴力取材」を強行して申立人を負傷させた、(3)本件番組放送直後、論文共著者の笹井氏が自殺した。本件番組と自殺との関係性は不明だが、本件番組が引き金になったのではないかという報道もある。「本件番組による申立人らへの人権侵害を推定させる大きな重要事実と考える」――などと指摘、番組が「人権侵害の限りを尽くしたもの」と主張している。
これに対しNHKは8月5日委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「本件番組は、申立人がES細胞を盗み出したなどと一切断定していない」としたうえで、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と反論した。
また、理研の「研究論文に関する調査委員会」はその調査報告書の中で、「小保方氏が細胞増殖曲線実験とDNAメチル化解析において、データのねつ造という不正行為を行ったことを認定した」と端的に述べており、「このように、STAP論文における不正の存在は所与の事実であって、本件番組のタイトルを『調査報告 STAP細胞 不正の深層』とすることに、何らの問題もないと考える」としている。
NHKはさらに、「実際に、7割以上の画像やグラフについて専門家が疑義や不自然な点があると指摘した事実を紹介したに過ぎず、NHKの恣意的な評価が含まれている訳でもない」と指摘。申立人の実験ノートの内容を放送したことについては、「申立人が、実際にどのように実験を行っていたのかを記した実験ノートの内容は、本件番組において紹介することが極めて重要なものであり、著作権法41条に基づき、適法な行為と考える」と主張している。
そのうえでNHKは、(1)申立人と笹井氏の間の電子メールは、笹井氏が、申立人に対し、画像やグラフの作成に関して具体的な指示を出していたことを裏付けるものであり、申立人の実験ノートと同様に、本件番組において紹介することが極めて重要なもので、「違法なプライバシーの侵害にはあたらない」、(2)今回の申立人に対する直接取材は、報道機関として、可能な限り当事者を取材すべきとの考えから行ったもの。また取材場所も、パブリックスペースにおいてコメントを求めたものであり、直接取材を行ったこと自体は問題がなかったと考えている、(3)申立人が指摘するとおり、本件番組と笹井氏の自殺の関係は不明であり、本件の審理において考慮されるものではないと考える――などとして、本件番組は、「申立人の人権を不当に侵害するものではない」と述べている。

委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2015年7月28日

在京局担当者との「意見交換会・勉強会」概要

◆概要◆

青少年委員会は7月28日、「インターネット情報の取り扱いについて」をテーマに、在京テレビ各社(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MXテレビ)との「意見交換会・勉強会」を千代田放送会館で開催しました。各放送局からは、BPO連絡責任者、編成、報道、情報番組担当者など14人、青少年委員会からは汐見委員長ら7人の委員全員が参加しました。
司会役は川端委員が務め、(1)インターネット上の映像使用、(2)インターネット情報の検証体制、(3)インターネット情報の利用ルール、(4)青少年(保護者)への警鐘(メディアリテラシー)のあり方などについて、16時30分から18時30分まで、各放送局の現状報告を中心に活発な意見交換を行いました。青少年委員会では今回の会合での議論を踏まえ、論点を整理したうえで、11月を目途にあらためて、在京テレビ各局とインターネット情報の取り扱いなどに関する意見交換会・勉強会を実施する予定です。

【意見交換の概要】
●=委員、○=放送局出席者

  • ○ インターネット上の情報もその他の情報も裏付けをとるのは当然であり、その点での違いはない。情報量は多いが、あくまでも一つの情報源である。
  • ● 子ども達にとってテレビは信頼度が高いメディアのひとつである。インターネット上の情報がテレビに流れることで、その情報自体の信用度も大きく高まる。そういった面も念頭に情報の取り扱いには注意してほしい。
  • ○ インターネット上の情報の真贋を見極めるのは非常に難しい。偽の動画を作成して、わざとテレビ局を騙そうとするようなケースもあるので、放送での使用に際しては慎重に判断している。
  • ○ 映像に加工された痕跡がないかなど、技術的な面でのチェックも実施している。
  • ● 番組のコンテンツをインターネット上の情報に依存する傾向が強まっていると感じる。どのような取り扱いをしていけばいいのか、考えていく必要があろう。
  • ○ インターネット上の映像を使用する背景には、戦場の最前線など、通常では取材できないような事実を伝えたいとの思いがある。映像や情報の検証は当然行うが、伝えるべきと情報・映像だと判断した際には、検証しきれない場合でも出所を明らかにしたうえで放送することもある。
  • ● インターネット上は刺激的で面白い映像に溢れている。この宝の山をどう使うべきか、何に注意すべきかについて、今後も検討していきたい。
  • ○ 玉石混交のインターネット上の情報をしっかりと検証することで放送の信頼性を担保したいと考えており、日々、努力している。詳細な基準はあえて設けず、個々のケースに即して責任者が判断している。
  • ○ バラエティー番組においては、著作権上の問題が生じる可能性があるので、インターネット上の映像などを直接使用することはない。
  • ○ 報道においては情報の信憑性を徹底的に確認しつつ、公共性を勘案のうえ報道目的で引用するケースも当然ある。番組ジャンルによってインターネット上の情報との関わりかたも異なる。
  • ○ 画像や映像を報道引用する際には、写っている人の気持ちも考慮し、ケースバイケースで判断している。
  • ○ 動画投稿サイトの映像などを使用する際で検証しきれない場合などは、動画投稿サイトのクレジットを出し、「○○と言われている映像」などの形で紹介することもあり得る。通信社からの配信映像などについても同様の扱いをすることがある。
  • ○ インターネット上の情報を取り扱った企画において、大所高所から番組内でネットリテラシーについて述べることが必ずしも必要だとは思えない。
  • ● テレビはネットリテラシーを広めることができるひとつのインフラではあるが、学校や親の責任も当然あり、テレビだけが責任を持っているとは考えていない。ただテレビでネット情報を扱う場合にはバランスが必要だと思う。自らの情報をインターネット上にアップする子どもがいる現状などを伝える一方で、本人が予測できないような影響が広がる可能性があることなどにも触れる部分があってくれればと思う。
  • ○ インターネットへの関わり方は刻々と変化してきており、動画サイトの紹介をすることによって、その状況を知らない親世代などへの一種の警鐘になるとも考えている。
  • ● 現状を紹介する意義については理解できるが、刺激的な映像を繰り返し使用するケースも散見する。テレビの公共性を踏まえたうえで、番組コンセプトと映像のバランスを取ることが重要であろう。
  • ○ 事件・事故の発生直後などにおいては、どんな良識的な視聴者であっても、実態を見たいとの欲求から、"強い"映像を求める傾向があり、それに迎合し過ぎるどんどん"強い"映像になってしまう。しかし、抑制し過ぎると他局に見劣りしてしまい、視聴率にも敏感に反映してしまう面もあるので悩ましい。
  • ○ 日本の視聴者は良心的で、震災報道における遺体映像などの残忍な映像は望まない。諸外国の報道ではたくさんの遺体映像が使われていたが、日本ではほとんど使われていない。一方、若者などがインターネット上にアップするような映像は、残虐な映像とは少し違い、その時点で視聴者が見たいと思ってしまうような映像が多い。それをどこまで抑制するかという点が問われているのだろう。

【汐見委員長まとめ】
最後に、汐見委員長から出席者に謝辞が述べられるとともに、「各放送局とも難しい課題を抱えつつも、テレビの使命を全うすべく努力している姿が伝わってきた。情報技術や社会の変化はとても速いが、それに対応しながら視聴者にリアルな形で情報を伝えている。真実性や放送すべき価値がある情報なのかを吟味する経験を重ねることで、各放送局で共有すべき留意点などがより明確になっていくことを期待したい。今後も折に触れて、放送局とBPO委員が知恵を出し合えるような機会を設けたい」との感想があり、意見交換会を終えました。

以上

2015年7月3日

意見交換会(松山)概要

◆概要◆

青少年委員会は、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての機能」を果たす役割を担っています。その活動の一環として、在松山放送局の皆様との相互理解を深め、番組向上に役立てることを目的に、7月3日に愛媛朝日テレビ役員会議室で「意見交換会」を開催しました。四国地区では初めての開催であり、15時から18時まで、活発な意見交換が行われました。
BPOからは、汐見稔幸・青少年委員会委員長(白梅学園大学学長)、川端裕人・同委員(作家)、緑川由香・同委員(弁護士)と三好晴海・専務理事が参加しました。放送局側の参加者は、NHK、南海放送、テレビ愛媛、あいテレビ、愛媛朝日テレビ、FM愛媛の各連絡責任者、制作・報道・情報番組関係者など27人です。
川端委員の司会進行により、会合ではまず、三好専務理事が「BPO発足の経緯と役割」、事務局が「青少年委員会の役割」などについて説明しました。参加者からは、昨今の放送局やBPOに対する与党の発言などについて懸念する声があがり、更なる"自律"に向けて、放送界全体が気を引き締めていくことの重要性について委員との意見が一致しました。また、放送局側から「BPOで取り上げられることになった時点で、当該番組に問題があることが確定したかのような印象が世間に生じてしまっている」との指摘があり、事務局から「青少年委員会での議論には段階を設けており、放送局名や番組名の公表は段階に応じて慎重に行っている。また、放送前や実際には視聴していないにも関わらず意見が寄せられるケースがあることなども踏まえ、丁寧な対応および広報を心掛けている」との説明がありました。
その後、(1)地域における番組制作の課題と克服、(2)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮、(3)ネット情報の取り扱いについて、(4)メディアリテラシーの取り組みなどについて意見交換しました。

【意見交換の概要】
●=委員、○=放送局出席者

(1)地域における番組制作の課題と克服について

  • ● 県内放送局の現状を教えてほしい。
  • ○ 地域情報を取り上げる番組に各局が力を入れてきており、それぞれの局の視点で地域の魅力を掘り下げているところだ。
  • ○ 「地域の人が見る地域放送」「全国の人が見る地域放送」「地域の人が見る全国放送」のバランスが難しい。青少年向け番組については、「地域の人が見る全国放送」のニーズが高いと感じているが、そうなるとローカル局制作の範疇を超えるため、積極的な番組制作が難しい。
  • ○ 青少年は近くの学校や県内で起こっていることなど身近な情報を知りたいと思っていると思う。当社はラジオ社で自主制作番組の比率が比較的高いので、愛媛の10代にターゲットを絞った番組を制作できる環境にあり、特性を活かした番組編成を行っている。

(2)子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮について

  • ○ 社会環境の変化に沿って、子どもに配慮すべき時間帯が拡大しているとの思いがあるが、委員会ではどのように考えているのか。
  • ● 以前に比べ、青少年の間でもタイムシフト視聴が浸透してきているとの認識がある。深夜帯だから過激な表現が許されるといった単純な状況ではなくなってきているのではないか。一方、時間帯によって表現の許容度が大きく異なる制度を運用している国もあるので、そういった制度も研究したうえで、放送局の人たちと共に、日本に適した考え方を模索していきたいとの思いもある。
  • ○ ラジオはテレビに比べ、パーソナリティーの考えや思いがそのまま発信されていく傾向が強い。それが良さでもあるがリスクも大きいため、パーソナリティーを含めたスタッフが、日頃から放送が青少年に与える影響を考えていく必要があろう。
  • ○ 最近ではニュース番組であっても、青少年に人気のあるタレントを起用するなど、青少年の視聴も念頭に置いた作りになっており、事件報道でも露骨な表現や直接的な表現は避けるなどの配慮をしている。
  • ○ ラジオ番組に対する青少年関連の視聴者意見にはどのようなものがあるのか。
  • ● パーソナリティーによる過激な発言や性的な発言についての意見が一定程度寄せられている。また、未成年と思われる聴取者の性的体験談を放送したことなどについての意見もあった。これらの意見はほとんどが親世代からのものである。一方、BPOの中高生モニターからはラジオ独特のローカルな企画などについて好意的な意見が寄せられている。
  • ○ ラジオでの性的な発言が直接的な表現になってきている印象がある。かつてはもっとイメージに訴える表現が多かったと思う。最近の聴取者はインターネット情報などの直接的で過激な表現に慣れてきていることから、こうした聴取者に合わせてラジオでの表現も過激になりがちなので留意している。
  • ○ 性的な事件の被害状況などのディテールをどこまで表現するかが難しい。狭いエリアを対象にした放送であり、被害者が特定されてしまうおそれが都会に比べて高い。報道によって被害者やその家族などが傷つく可能性がないかについて悩むことは多い。
  • ○ 被害者映像の取り扱いが悩ましい。テレビメディアの特性上、映像をいかに入手するかという問題が出てくる。卒業アルバムや写真シールなど、色々な形で被害者映像を入手するが、映り方によっては被害者の人物像に予断を与えかねないので気を付けている。
  • ○ 親子で罪を犯した場合が難しい。成人である親の名前を実名で出すと、子どもの匿名性が維持出来なくなるといったケースも考えられる。
  • ○ 海外の少年刑務所で更正プログラムを受けている少年達のドキュメンタリーを作った際に考えさせられた。同プログラムを受けている少年達は、社会復帰間近の模範囚で、厳しい訓練を受けて立ち直ろうとしていることに誇りを持っていた。日本の少年法に則り、モザイクをかけて放送する旨を少年たちに伝えたところ、「また悪者扱いか」と大変失望された。顔を出すことで当該少年に不利益があるとは思えないし、親権者も顔出しを望んでいた。色々な考え方があるかと思うが、難しい問題だ。
  • ● 日本の少年院を退院して社会復帰した人を取り上げた番組で、本人の強い意思があったことから、放送局内での様々な議論や周辺情報の確認を経て、顔出しで放送したとの報告があった。放送後も特に問題は生じていないとのことなので、適切な判断だったのではないかと思う。しかし、マスメディアで放送される影響は、本人が考えている以上に広がる可能性がある。放送だけではなく、週刊誌やインターネットなど、他のメディアにも波及しかねない。社会復帰後の生活を保護しようという視点から、個別に慎重な判断をしていくことが重要ではないか。

(3)ネット情報の取り扱いについて

  • ● インターネット上の情報をどう取り扱うかが、放送局共通の新たな課題として浮き上がってきている。ガイドラインや放送局内での共通理解の有無、あるいは現状を教えてほしい。
  • ○ インターネットに特化した対応マニュアルやガイドラインはない。インターネットはあくまでも情報を得るためのツールのひとつであり、他のルートから得た情報と同様、情報の真贋確認などを慎重に行っている。
  • ○ SNSを含めたインターネット上の情報を鵜呑みにして放送することは絶対にない。取材に進むにあたっての入口に過ぎない。
  • ○ キー局を中心にSNSと放送の融合を加速させる動きが進んでいる。SNSやインターネット上の情報は、裏取りも含めて、より慎重な取り扱いが求められている。
  • ○ 視聴者からの投稿動画を広く募集する動きも進んでいるが、当該動画の真贋をどこまで見極められるのか不安だ。大きな交通事故や天変地異などの映像が投稿されると、すぐに飛びつきたくなるが、投稿した方への詳細な取材や行政・司法機関への確認などを行ってはじめて情報の信頼性が担保されることを頭に入れておかねばならない。
  • ○ 事故情報など、速報性が求められる場合もある。そういった場合には情報の確認をしつつも、情報の出所を明らかにしたうえで一次情報を放送することもあり得る。
  • ○ 映像については著作権がクリアされているかどうか分からないので、必ず実際に情報提供者と連絡を取り、確認した上で使っている。
  • ○ 生放送でSNSを利用した番組へのコメントや意見募集を行う際には、大人数でスクリーニングしている。SNSを利用することで双方向性が高まり、番組が豊かになり、生放送らしさも出てくるので今後も活用したいと考えているが、非常に手間がかかるし、注意が必要な手法でもある。
  • ● インターネット上で流行していることや人気のサイトを紹介する際には、青少年への影響にも配慮してほしい。
  • ● インターネット上の過激な映像を紹介する企画が散見するが、そういった映像の中には、仮に放送局自身が取材・撮影していたら放送しなかったと思われるようなシーンであっても、「インターネット上ではこんな過激映像が流れています」という形で放送しているものがあると感じる。

【まとめ】
最後に、汐見委員長から出席者に謝辞が述べられるとともに、「新たなメディアが急速に発達しているが、それに対応した新しい倫理基準や法律が用意されているわけではないので、その都度考えていく必要がある。悩ましい問題だからこそ率直な意見交換が大事だ。その意味で、今回の意見交換会は非常に有意義だったと思う。また、意見交換会に先立ち、各放送局の番組を視聴したが、地元の素晴らしいものを再発見し、それをきっかけに若い人が自分たちの足元をもっと豊かにしていくサポートになるような、広い意味での"街づくり"をしているように感じた。番組を通じて若者たちが小さな夢を育めるような、新しい情報環境をぜひ作っていただきたい」との感想があり、意見交換会を終えました。

以上

2015年7月に視聴者から寄せられた意見

2015年7月に視聴者から寄せられた意見

国会での安全保障関連法案の審議について、国会中継をほとんどしていないとか、一方的な意見を紹介してばかりいるなど、様々な意見。岩手県の中2児童の自殺を扱った放送に対し、憶測で学校関係者を批判したりするのは如何なものかといった意見など。

2015年7月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,502件で、先月と比較して831件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール71%、電話27%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性74%、女性24%、不明2%で、世代別では30歳代29%、40歳代27%、50歳代17%、20歳代14%、60歳以上11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。7月の通知数は675件【43局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

安全保障関連法案が衆議院で可決されたが、国会中継を殆どしていないとか、一方的な意見を紹介してばかりいるなど、様々な意見が多数寄せられた。
議員らのマスコミ圧力発言をめぐり、番組で政治的な誘導はするべきではないなどといった声が寄せられた。
岩手県の中2児童の自殺を扱った放送に対し、まだ事実関係が明らかになっていないのに、憶測で学校関係者を批判したりするのは如何なものかといった意見などがあった。
恒例の夏の長時間番組の高級車を面白がって破壊する企画などに、いじめにつながるなどといった批判が寄せられた。
女性タレントの出産シーンを扱った番組に対し、視聴率狙いのあざとい演出ではないのかといった、批判が寄せられた。
ラジオに関する意見は35件、CMについては35件あった。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は97件で、前月から18件減少した。
今月は、「性的表現」に関する意見が19件と最も多く、次に「いじめ・虐待」「表現・演出」がそれぞれ15件、「暴力・殺人・残虐シーン」が12件と続いた。
「性的表現」については、複数のアニメ番組について意見が寄せられている。「いじめ・虐待」については、じゃんけんに勝った人が他の参加者の分も含めて商品を購入するバラエティー番組の企画について、複数の意見があった。
「表現・演出」については、男性タレントが女性タレントの手をなめたシーンや、高級車を傷つける演出についての意見が目立った。「暴力・殺人・残虐シーン」については、お笑いタレントが番組内企画の参加者である子どもの頭を叩いたことについて複数の意見が寄せられている。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 「安保法案」が採決された。日本国民の理解が得られているとは言い難い状況の中、「国会中継」もあまりなければ、特別番組も殆ど作られていない。鉄道事故や殺人事件をウンザリするほど騒いでいるにもかかわらず、なぜもっと取り上げないのか。国民として嘆かわしい。報道のあり方を今一度考えて頂きたい。

  • 国会で重要な法案の審議が行なわれているのに、「国会中継」が放送されないことが多い。放送局に理由を尋ねたところ、「重要案件が審議される場合に放送する、という内規に従って編成で決めている」という答えだった。だが、現在審議されている安全保障関連などの審議は、「国民が知るべき重要な案件」だ。「重要でない」と判断したのであれば、一般常識からみてもおかしい。

  • 「安保法案」の委員会採決が行われた7月15日、採決の場面だけを生中継したが、それに至る締めくくり質疑を中継しなかった。国民的関心の深い重要法案の質疑を中継しないことは失格だ。高校野球やワールドカップでは、ほとんどの試合を完全中継しているのに、国会中継をおろそかにする姿勢はどうかしている。

  • 安保関連法案のニュースにおいて「強行採決」と非難しているが、単なるマスコミの勝手な考えではないのか。衆議院で政権党が多数を占めている状況は国民の投票によるものだ。「強行採決」とプラカードを挙げて非難した野党であるが、その党が与党時代には度々「強行採決」を行っていた。

  • 安保関連法案に反対する番組内容が圧倒的に多い。しかも戦争法案だとして、同法案が悪法であるかのような決めつけをしている。ニュースを見ていても反対のデモばかりで、公平性から逸脱しているものが多い。国民の多数が反対しているかの錯覚に陥ってくる。法案を強行に通すことに対する批判と、法案に対する偏見を助長することとは別問題である。反対行動を無批判に報道するよりも、国家の安全についての対案を出すことすらできない野党に対する批判に、時間を割くべきではなかろうか。

  • 集団的自衛権について私は反対の立場だ。この日、総理が出演していたが、「総理緊急出演」となっているのに、スタジオには集団的自衛権の説明をするために、家の模型が用意してあった。模型の家を使い、火事が起きたと設定し、集団的自衛権の比較をしていた。火事と戦争は、まったく別物だ。違和感を覚えた。

  • 安全保障関連法案について様々な意見はあるだろうが、今のメディアの報道は分かりづらいうえに偏っている。法案が可決されれば戦争になると言わんばかりだ。国防は学問で割り切れるものではない。どのような状態になれば日本は平和にやっていけるのか、報道するべきではないのか。

  • 安保関連法案について、テレビはおおむね批判的に伝えている。しかし法案成立によって、長い目で見ると国益に繋がることもある。特に日本の周辺にひしめく各国をけん制するという点だ。私も戦争には反対だが、戦争に巻き込まれず自国を守るために必要な法かも知れないと思うようになった。「戦争反対」を叫ぶ人たちにもこのことは考えてもらいたい。そのため、法案成立によって起きるであろう、メリット・デメリットをしっかりと視聴者に伝えてほしい。

  • 勉強会でマスコミ圧力発言があった。明らかに暴言であり、政権への批判を許さないという、一種の言論弾圧である。しかも、その議員は国会内で公式にも発言している。あまりにも問題があると言わざるを得ない。アナウンサーが議員の自宅に事情を聴きに行っていた。やりすぎだという声が出そうだが、私はむしろ敬意を表したい。こういう民主主義を危機におとしいれる国会議員について事情を聴かない理由はないではないか。

  • 「マスコミを懲らしめる」という発言があったことへの特集において、表現の自由を脅かされるとして、政権への痛烈な批判をしていた。憲法の表現の自由を言っているが、マスコミに関わる自分たちの権利や立場を守るための愚痴に他ならない。また、選挙の時に投票しないようにととれる発言があったが、政治的な意見を刷り込むようなことは情報操作である。

  • 岩手中2いじめ自殺のニュースを取り上げていた。今回の自殺の原因であるいじめた生徒に対し批判をせず、学校側、担任、教育委員会を責めるような放送だったが、そのようなことをしても一向にいじめはなくならいない。今は担任や周囲の生徒に聞き取りをしている最中で、事実がわからないまま推測で発言してほしくない。

  • 中2のいじめによる自殺をめぐり学校長が会見したが、なぜか映像を加工していた。ちなみに他局の放送では学校長の顔を隠すことはなかった。被害者はすでに亡くなっていて、実名で報道されている。何のための配慮なのか。映像の加工は最小限にとどめるべきで、会見した中学校の校長の顔を隠す理由はまったくない。

  • 新幹線「のぞみ」車内で起きた自殺事件で、コメンテーターは「新幹線も空港のように手荷物検査を実施すべき」と述べていたが、現在の新幹線は観光や出張だけでなく、通勤や通学でも日常的に使われている。駅に1時間前に到着すればという意見は、現実的でない。軽々しく手荷物検査という発言をしてほしくない。

  • 新幹線の車内で焼身自殺を試みた男の事件を、あたかもテロ行為に結びつけ、国や鉄道会社のテロ対策やセキュリティチェックの甘さを指摘したり、東京オリンピックまでのテロ対策と結びつけて視聴者の不安を煽っていた。新幹線の件は想定外の出来事で、テロ対策を報じる前に、もっと犯人を糾弾するべきではないのか。

  • 国会議員の1票の格差是正について、テレビなどで取り上げられている。都道府県の人口の差を比較して格差が大きいから是正しなければならないという捉え方をしている。しかし、人口の比率に応じたものだけでいいのだろうか。大都市圏は人口が多いのだから、それに見合った国会議員の数を出さなければならないということであろうが、地方は人口こそ少ないが、広大な県土をかかえて、インフラの維持整備、過疎地の生活に困窮している高齢者対策など、大都市にない大きな問題を抱えている。単に人口の多寡だけで国会議員の数を調整するということが、正しいのだろうか。

  • 「新国立競技場の費用があれば、5歳児までの保育料が無料にできる」と報じたが、競技場は簡易なものであっても必ず作らなくてはならない。また、2520億円すべてを別の費用に充てることはできない。5歳児までの費用の無料化は何年できるのか。単年度で終わりなのか。計算の根拠が示されていなかった。何年も使用する競技場と単年度の無料化の金額と比較するのは無理がある。思いつきの発言は控えていただきたい。

  • 新国立競技場の建設費が予定を大きく超えた問題を取り上げた各局の番組で、出演者たちは、デザインコンペで審査委員長を務めた建築家にも責任があるかのように発言していた。しかしながら、コンペ段階では設計図はないので、詳細の見積もりはできない。建設費は、選定案の決定以降の基本設計・実施設計を行う中で、構造や材料を検討しながら予算に合うように調整していく。コンペのシステムを知る専門家不在の中で番組を進行し、出演者たちが無責任に批判するのは如何なものか。

  • 川内原発の再稼働について、「避難計画の見直し」という表現があった。その表現は国民の不安をごまかしている。福島の原発事故でも分かるように、一時避難では済まない場合がある。事故が起きれば故郷に戻れない。国民を欺くような表現は看過できない。重要なことは移住計画の見直しだ。新たな視点で再稼働を考え、真実を偽りなく報道してもらいたい。

  • エレベーター事故を報じる際、犬のリードが挟まって犬が苦しむ場面が放送された。リードや紐ではエレベーターの安全装置が作動しないことを伝えたいことは分かるが、犬が苦しんでいる場面を、2例も放送する必要はない。イラストだけでよかったはずだ。

【番組全般・その他】

  • 1日中芸人がバカ騒ぎしているだけで見るに堪えなかった。芸人の高級車を壊して、周りで笑っている企画など、いじめ以外の何ものでもない。一般人がその車を購入するためにどれだけ汗水流して働かないといけないのか。それを壊して面白がるなど、最悪だ。

  • "バンジージャンプギネス挑戦!"という企画で、女芸人が何回もバンジージャンプをしていた。命に関わるかもしれないことを、無理やり本人に「やります」と言わせていた。これはパワーハラスメントだ。体に悪い影響が少なからず出るということは分かっているはずなのに、無謀な挑戦をさせるということはとても不快だった。

  • 女芸人の出産シーンが放送された。当人の頭に小型カメラ付きのヘルメットをかぶせ、様子を撮影する。これだけでも度が過ぎた演出だ。出産は子を産むための命がけの行為だ。流産や死産などもあり得る。番組内のネタとして放送して許されることではない。面白ければ何でも良いと考えて制作しているのだろうか。

  • 先天性の病気を治療中の女の子の顔が映ったが、私の子どもと同じ病気だった。個人差はあるものの、病気を治すには年数がかかる。我が娘は多少良くなったとはいえ、まだ治療途中であり、健常児とはやはり違いがある。番組の放送後に学校でいじめられるのではと思うと心配だ。このような病気を扱う際には、実際に苦しんでいる患者がいることも考慮して番組を作って頂きたい。

  • スポーツの国際試合をキー局が独占放送するケースがある。このため秋田県では見ることができない。福井県なども同様だ。青森県は他系列が見られないと思う。このように系列局がない県では独占放送が見られないことがあり、情報の格差を感じる。独占放送をするなら、ホームページ上でライブ放送するべきだ。

  • 芸能人が馬鹿みたいにお金を使いまくる様子を放送することは、一般人にとっては屈辱以外の何ものでもない。怒りがこみ上げるだけだ。貧困から新幹線で自分に火をつけて自殺する事件が世間の耳目を集めている今日この頃、こんなことが許されるのか。

  • 道行く若い女性の方々を捕まえては調理の下手さをあげつらい、スタジオで嘲笑するという下品さがあまりにもひどい。また、コーナー内で調理したものは、どうしているのか。食べ物を無駄にしているようにしか思えない。「スタッフが美味しくいただきました」というテロップも出てこないので、廃棄しているのだろうか。

  • バラエティーや情報番組で、「絶品グルメ」「B級グルメ」「下町グルメ」というように「グルメ」を「美味しい料理」であるかのような意味で使っている。「グルメ」は「食通」という意味だ。間違った使い方をひろめないでほしい。

  • カリスマパン職人が、自分で作ったバケットをバットにして野球をしていた。途中そのバケットが折れて下に落ちた。食べ物をおもちゃにし、粗末にする行為は許せない。

  • 番組によく前科者のタレントや元IT企業の社長などが出演しているが、犯罪者を美化することはやめるべきだ。彼らのしたことは重罪であり、決して許されない。なぜ当然のように出したり特集したりするのか。ほかの出演者たちも一緒になって笑っているが、視聴者を馬鹿にするのもいい加減にするべきだ。

  • 毎回意味もなく男性芸人を無理矢理脱がせたり、馬乗りになったりしている。今回も、お笑い芸人が、同じ芸人のズボンと下着を脱がせ、お尻を露出させていた。嫌がっているにもかかわらず、股間を見せようとしていた。不快であり、そうした演出が必要なのか理解できない。

  • 来日した中国人観光客によるいわゆる「爆買い」の取材の中で、リポーターが観光客に「財布の中身を見せてください」とお願いした挙句、財布の中身を映しながらはしゃいでいた。あまりのさもしさと情けなさにチャンネルを替えた。日本人が海外へ旅行に行ったときに、同じことをされたらどう思うだろうか。中国人観光客のマナーの悪さを批判する内容も過去にあったが、これでは目くそ鼻くその類だろう。海外から日本にやって来てくれた方々に、2度とこんな恥ずかしい取材はしないでほしい。

  • 最近はゲイやオネエなどのタレントが多く出演している。同性愛者の差別は良くないとはいえ、彼らは同性・異性問わずに共演者の体を触ったり、直接的な言動が多い。そういったタレントが深夜の番組を複数も抱えていて、不快極まりない。

  • 男性芸人らが海パン姿で押し相撲のようなことをした。押し出されると背後の熱湯風呂に転落するという仕掛けだ。出演者は何度も落ちてはその度に「あちち!」と悲鳴を上げていた。どうしてこのようないじめまがいの企画を放送するのか。今、学校でのいじめに起因する事件が問題になっているというのに、まるで無関係であるかのような姿勢に強く憤りを覚える。

  • ほぼ毎回、発展途上国のスラム街の危険な部分に"敢えて"踏み込んでいる。今回は、リポーターがジャマイカのスラム街に行き、マリファナや麻薬の密売人のところに行って麻薬を買ったり、拳銃の密売人に拳銃を見せてもらったりしていた。麻薬、拳銃、どれも犯罪だ。公共の電波を使って、このような放送をしても良いのか。

  • かつてテレビで心霊とかUFOをよくやっていたが、その後、出鱈目であることが証明された。それ以来、いかがわしい内容の放送は一切やらないようになった。しかし、久々に科学的根拠が全くなく、ほぼやらせに近いような番組を放送していた。昨今のテレビの低視聴率が、影響しているのだろうか。

  • 「4大都市激突」と題して、大阪、横浜、名古屋、福岡の各都市の特徴を比較していた。スタジオの出演者や街頭インタビューに答えた人が各都市に対し、「汚い」「うざい」「何もない」などと、終始悪口を言い合っていた。その他にも各都市の食文化を取り上げ、「食べたくない」「舌が馬鹿」などと、侮辱する場面も目立った。バラエティーだからといって何を言っても良いわけではない。

  • バラエティー番組が面白くない。放送倫理・人権などに慎重になりすぎている。以前は、バラエティー番組が楽しみだった。でも今は、見た時間がムダに感じる。もっとテレビで心の底から笑いたい。高齢の方々の意見のみならず、若者の意見なども取り入れてもらいたい。

  • 出演者だけが楽しんでいるという印象を受けた。視聴者を無視した番組だ。出演者にはギャラが支払われる上に、賞金も獲得というゲームを、わざわざテレビ番組にして放送する意図がわからない。芸能人の賞金を賭けたゲームを見せられても何も楽しくもない。

  • 「シニア世代の最新・恋愛事情」を取り上げた。その際、婚活パーティーで知り合った女性にストーカーをした男性や、優しくされた喫茶店の若い女性の店員にメッセ―ジやプレゼントを贈り、気持ち悪がられた男性の話が紹介された。その時、高齢者を「じじい」と言ったり、パソコンができる男性に対し「ネットじじい」と言っていた。高齢男性を侮辱するにもほどがある。

【ラジオ】

  • 10歳代の学生をメインターゲットにしている番組だが、パーソナリティーが逆電と称してリスナーへ電話をかけているコーナーがある。しかし、22時以降の時間帯に10歳代のリスナーを出演させることは如何なものか。ギャラは発生していないようだが、道徳的に不適切だと感じる。

  • 番組の至る所に通販の宣伝が入ることにうんざりしている。ラジオを聴いているのか通販番組を聴いているのかわからないくらいだ。大げさな宣伝とアナウンサーが「私も使っている」というアピールがしつこくて嫌になる。

  • ラップコーナーで投稿作品に"おつぼね"に対するラップがあった。最近の流行ではおばさんを「bba(ばばあ)」と表す。今回の投稿者作品の一つは悪口だ。悪口のようなラップを聴いて気分が悪くなった。ラッパーがそれをテーマに作ることは自由だが、それを放送局で流したり、巷で売る行為は如何なものか。

【CM】

  • 食品CMでの「ズルズル」「ジュルジュル」とすすり食べる音や、「クチャクチャ」という下品なそしゃく音、それに合わせて飲料CMの「ゴクゴク」と強調された耳触りな音など、生理的に不愉快だ。最近は特にそのような下品な表現を多用したCMがとても多い。話題になればいいのだろうか。

  • アニメ番組の途中で流れる「スクラッチ」宝くじのCMが気になる。最近の宝くじCMは高額当選金がもらえる可能性を訴えるものが多いが、人気アニメのキャラクターを使用したCMは、子どもの射幸心を煽ろうとしていると感じる。宝くじは子どもにも購入可能だ。宝くじ販売者は、子ども向けアニメキャラを使ったCMを作るべきではない。

青少年に関する意見

【「性的表現」に関する意見】

  • 深夜のアニメ番組で、音声加工はしてあるものの、性器の俗称を想像させるせりふや、性行為を意味するしぐさが使われていた。子どもでも想像がつくような露骨な表現であり、度が過ぎている。
  • 子ども向けアニメ番組のエンディングシーンで、アニメキャラクターの少女たちが水着姿でポーズをとったり、肩ひもが片方だけの格好になっていたりする。子ども向けアニメでこのようなシーンが必要なのだろうか。子どもを持つ親としては違和感がある。子どもを狙った犯罪も多い中、配慮に欠けているのではないか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • じゃんけんで勝った人が他の参加者の分も含めて商品を購入する企画があるが、無理に購入を押し付けているように見える。まるでいじめのようだし、子どもが真似しそうで怖い。
  • 子どものいじめが深刻な問題となっているが、お笑い番組でもそのようなシーンを見かけることがある。例えば大物タレントによる若手タレントへの理不尽な要求や罰ゲームなどだ。彼らは大人同士なので、度を越さないよう打ち合わせているのだとは思うが、それを知らない子どもたちは「テレビでやっていることだから大丈夫だ」と真似する心配がある。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 男性お笑いタレントが、嫌がる若い女性タレントの手を無理やりつかんでなめるシーンがあった。面白くもなんともなく、ただ気持ち悪いだけだ。なめられている女性タレントも不快感を表しており、犯罪現場を見せられている気分になった。子どもに人気のある番組なので、演出にはもう少し気を使ってほしい。
  • 高級車を面白がって破壊するシーンがあった。メーカー名やエンブレムも隠しておらず、自動車メーカーや他の自動車オーナーに失礼だ。このような行為を子どもが真似したらどうするのか。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 若手お笑いタレントに他のお笑いタレントがドロップキックをしていた。このような危険なツッコミは一切禁止にしてほしい。

【「危険行為」に関する意見】

  • 深夜のバラエティー番組で、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくという企画があった。番組では「本気・真剣勝負」とうたっており、怪我することがないようトリックが用意されていたとしても、視聴者には分からない。子どもが真似したり、いじめに発展したりすることが想像される。
  • 生き物を取り上げるバラエティー番組で、カニなどのハサミを持つ生物に女性スタッフの指を挟ませて、その挟む力を測定していた。子どもが多く見る番組であり、子どもタレントも出演していた。挟む力は他の方法で測定できる。一定の配慮はあったが、あのような危険な実験をする必要があったのか疑問だ。

第172回 放送と青少年に関する委員会

第172回–2015年7月28日

紙袋10個に1つだけ五寸釘 手のひらで押しつぶす"ロシアンルーレット"の深夜番組について討論…など

7月28日に第172回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、6月16日から7月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、7月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会の前に、在京7局の関係者14人と"インターネット情報の取り扱いについて"をテーマに意見交換会・勉強会を開催しました。【概要はこちら】
8月の委員会は休会とし、次回は9月29日に定例委員会と福岡地区の放送局との意見交換会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年7月28日(火) 午後6時30分~午後8時40分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●「"ロシアンルーレット"と称して、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくという企画でした。番組は"本気・真剣勝負"とうたっており、もし失敗しても怪我をすることのないようトリックが用意されていたとしても、視聴者には分かりません。小中高生などが真似したり、いじめに発展したりすることが想像される内容です。次回予告によれば、更に過激度を増し、釘をナイフに換えて挑戦するとのことでした」との視聴者意見があった男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について2週分を視聴した上で討論しました。なお2週目では「予定していた内容とは変更してお送りしております」のスーパーが入りナイフでの挑戦は無く、「先週は種も仕掛けもある純粋なマジック」との説明が有りました。委員からは次のような意見が出ました。

  • 見る人が見れば仕掛けがあることは想像つくが、1週目の番組内では一切説明がなかった。真に受けた子どもたちもいたのではないか。

  • なぜマジックであることの説明を1週目の番組内でしなかったのだろう。

  • 「次週はナイフで挑戦」と予告していながら、次の週は内容を変更して放送していた。その理由が知りたい。

  • ゲーム自体に大きな危険性をはらんでいる。この番組を見て真似をしたり、いじめの手段に使われたりするかもしれないことを制作者はどれだけ意識していたのだろうか。

討論の結果、当該放送局に資料の提出をお願いすることとし、次回の委員会で引き続き討論することにしました。

中高生モニター報告について

7月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組の感想(バラエティー・クイズ・音楽)」というテーマで書いてもらいました。今回は24人から報告がありました。
人気の音楽番組に対して複数の意見が集まりました。『ミュージックステーション』(テレビ朝日)…「何十年と続いている番組だけあって、学校でも話題に上がることが多く、毎週楽しみにしているのは私だけではないはずだ。この番組は毎回生放送という強みもある」(岩手・高校2年女子)。「私自身、また、家族や友人も毎週楽しみにしています。音楽は人の気持ちを動かす素晴らしいものだと思います。これからも、舞台演出などを含めて視聴者がより臨場感を楽しめる音楽番組の制作を楽しみにしています」(山梨・高校2年男子)。『THE MUSIC DAY』(日本テレビ)…「見ていてとても楽しく、家族と一緒に歌ったり、踊ったりのパーティー状態にまでなりました。この番組では、データ放送によってできるゲームやスタンプラリー、番組内のクイズなど盛りだくさんで、視聴者が飽きないよう工夫されていました」(兵庫・中学1年女子)。
バラエティー番組に関しても熱い支持が寄せられました。『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)…「この番組は様々なジャンルをまんべんなく紹介し、VTRやその後のトークも、短かすぎず長すぎずの丁度いい長さでバランスがいい番組だと思います。トークの内容も毎回笑い転げるほど面白く今までの番組で一番笑った番組です」(滋賀・高校2年女子)。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)…「この番組は芸能人が様々な企画で無茶ぶりをする番組です。特に私は森三中の<温泉同好会>のコーナーが好きです。体当たりする内容が、最近のスタジオでしゃべってばっかりの企画より面白いです。この番組はいわゆる"寝技"が得意で、中味を考えている人がすごいと思います」(富山・中学1年男子)。
一方で批判も寄せられました。「バラエティー番組では今年度に入ってから雑学番組が乱立している感じがします。『林先生が驚く初耳学』(毎日放送)、『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』(テレビ朝日)、『この差って何ですか?』(TBSテレビ)など。ゴールデンの時間帯のものはあたりさわりのないテーマが多くなってしまい、興味を引くような中身にはなりえません」(東京・中学3年男子)。
自由記述欄は、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」というテーマを設定しました。「視聴者が参加できる番組がもっと増えてほしいと思います。いつも決まった芸能人だけでなく視聴者自身が参加できる方法として、データ放送だけでなく番組に直接参加し、みんなで番組を作り上げていくことができるといいと思います」(岐阜・高校2年男子)。「最近よく視聴率が高かった、低かったと報道していますが、そこまでして視聴率にこだわる必要があるのか疑問に感じます。大事なのは番組の内容ではないでしょうか」(滋賀・高校2年女子)。「NHKの朝ドラが『あまちゃん』以来、僕たちのような中高生にも人気です。でも最近気になるのは民放各局が"朝ドラ役者"に頼りすぎることです。朝ドラの放送が終わるとすぐにバラエティーやドラマにひっぱりだこになります。話題性だけでなく、もっと中身にこだわった民放ならではのテレビ番組を期待しています」(東京・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】バラエティー番組の"いじり"の行き過ぎを憂慮する意見が複数寄せられた。

  • (兵庫・中学1年女子)最近、リアクション芸人などの"いじり"がきつい。ドッキリなどの企画では命に危険がある場合もあり「これはやりすぎだろ」と思ったことも多々あった。
  • (千葉・中学2年女子)テレビを見ていて、先輩芸人が後輩芸人に対して明らかに嫌っている態度をしているのが見られました。裏ではあるかもしれませんが、それを表に出すのはどうかと思いました。
  • (愛知・高校2年男子)『笑点』(日本テレビ/中京テレビ)大喜利の中でメンバーを中傷する発言や公平ではない評価が行われたりするのが、ある意味この番組の良さで、見ている方にも"愛のあるイジメ"であることが伝わってくるのだけれど、初めて見る人には不快感を持たせるのかもしれない。ネタとして扱った後の事後処理やフォローをきちんとしてほしい。それが番組の印象向上につながると思うし子どもも気持ちよく見られるはずだ。

●【委員の感想】家族みんなで見られる番組を支持している意見が散見した。

  • (神奈川・中学2年男子)『水曜歌謡祭』(フジテレビ)昔活躍していたアーティストと現役アーティストとの融合が素晴らしい。平成生まれの私には昭和の歌が大変興味深く、歌詞のギャップも刺激がある。老若男女、家族で見たい番組だ。
  • (埼玉・中学2年女子)『ミュージックステーション』(テレビ朝日)最新の曲だけでなくいろんなテーマで昔の曲も紹介するので、母が私に曲を説明してくれたり、懐かしそうに口ずさんだりして会話が弾む。年齢が違う家族で見ても、全員が楽しめるのでいつも家族で見ている。

●【委員の感想】自由記述欄で、制作現場では当たり前に行われていることに問題意識をもつモニターがいた。

  • (鹿児島・中学3年女子)ワイドショーで同じ内容を何度も放送し過ぎるのはどうかと思う。同じ映像、同じナレーション、同じテロップ。どの局でも、どの番組でも似たような内容だと飽きてしまうので、同じニュースでも違う映像にするなどの工夫をしてほしい。
  • (神奈川・高校1年女子)今度始まるドラマの『デスノート』(日本テレビ)で登場人物の設定が原作と全く違うと聞いてとても不思議に思った。この番組は前に映画化されて、とても人気があったので、何でまたドラマ化するのかと疑問を抱いていたが、設定まで変えてしまうのは間違っていると思う。

●【委員の感想】人気番組を強く支持しながら一方で問題点を鋭く指摘している報告があった。

  • (愛知・高校1年男子)『月曜から夜ふかし』(日本テレビ/中京テレビ)番組内の面白い"いじり"が癖になります。しかし、同じ人を何度も出演させて(スタジオだけでなく、VTR内やロケ場面などで)しまうことが多々あり、やめてほしいと思う。飽きがくるし一種の思考停止だ、とも思うからだ。もっと考えたキャスティングが必要だと思う。

調査研究について

  • 調査担当の菅原委員の提案を基に、今後の調査について話し合いました。

今後の予定について

  • 9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、「子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮」「インターネット情報の取り扱いについて」などを中心テーマに話し合うことにしました。
  • 10月30日に立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)で開催する高校生と青少年委員会委員と放送局の三者による意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。この意見交換会は、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。

その他

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催した意見交換会について、報告がありました。【概要はこちら】

第95回 放送倫理検証委員会

第95回–2015年7月

"出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議。

韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議。次回も継続…など

第95回放送倫理検証委員会は7月10日に開催された。
放送倫理違反の疑いが濃いとして、審議入りしたNHK総合の『クローズアップ現代』の出家詐欺報道とその基になった『かんさい熱視線』について、追加ヒアリングの結果が報告され、論点整理を行った。
日韓問題を扱ったフジテレビの情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』で、韓国での街頭インタビューの翻訳テロップと吹き替え音声が一部間違っていたことが分かり、後日ホームページなどでお詫びした。委員会は、当該局の報告をもとに討議した結果、さらなる確認や検討が必要だとして、討議を継続することを決めた。
フジテレビの情報番組『とくダネ!』が放送したNPO法人の特集企画をめぐって、放送局とNPO法人の主張が対立している問題を討議した結果、委員会が放送倫理上の観点から取り上げるのは適切ではなく、当事者間で解決を図るべきであるとして、審議の対象とはしないことにした。
テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』で使われた大阪都構想のニュース映像が政治的公平性を欠くと自民党から抗議があり、当該局はホームページでお詫びした。委員会は、当該局の報告書が途中経過の報告であったことから、最終的な報告の提出を求めることとし、討議を継続することになった。

1."出家詐欺"の報道に「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』他を審議

NHK総合の『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)では、出家して僧侶となり法名を授けられると、家庭裁判所の許可を受けて戸籍の名を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
この中の"出家詐欺"を斡旋する「ブローカー」と客の「多重債務者」が相談している場面について、「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではなく、演技指導によるやらせ取材だった」などと主張。これに対して当該局は、「意図的または故意に、架空の場面を作り上げたり演技をさせたりして、事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はなかったが、放送ガイドラインを逸脱する『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」とする報告書を公表した。
この2番組の取材・制作にあたった記者やディレクターなどのヒアリングは既に実施されていたが、担当委員による追加のヒアリングが継続して行われ、今委員会でその内容が報告された。
そして、相談場面の取材・制作の手法に問題はなかったのか、「過剰な演出」などと結論付けた当該局の判断は妥当なものと言えるのか、などの問題点について意見交換が行われた。その結果、論点はほぼ整理され、意見書の骨格もおおむね固まったとして、次回委員会までに担当委員が意見書の原案を作成することになった。

2.韓国での街頭インタビューの翻訳が一部間違っていたフジテレビの日韓問題番組『池上彰 緊急スペシャル!』を討議

フジテレビは、日韓問題を扱った約2時間の情報番組『金曜プレミアム 池上彰 緊急スペシャル!』を6月5日に放送した。その中で、韓国人男女2人の約10秒間の街頭インタビューについて、映像から聞き取れる原語とは異なる内容の翻訳テロップと吹き替え音声で紹介されていたことが視聴者からの指摘で判明し、当該局はホームページなどでお詫びした。
委員会への報告書によると、インタビュー映像は通訳によって翻訳され、タイムコードと日本語が書かれた翻訳シートが作られて、担当ディレクターが、そのシートをもとに編集作業を進めた。その際、女性インタビューについては、タイムコードの入力を誤って、別の部分の映像が抜き出されたため、使用予定の翻訳テロップが映像の内容と異なるものとなり、男性インタビューについては、長めに抜き出した映像を短縮する再編集時にミスが重なり、映像と翻訳テロップがずれて合わなくなってしまった、としている。
そのうえ、スタジオ収録や事前の試写などのチェックの際に、翻訳の適切さについての確認をしていなかったため、字幕テロップと吹き替え音声が、映像の発言と異なっていることに誰も気付かず放送に至ったという。報告書には、今後は制作の最終段階の翻訳チェックを基本とするなどの対応策も記載されている。
委員会の討議では、「詳細な分かりやすい報告書で、間違った経緯はよく理解できたが、視聴者への説明責任が十分に果たされているとは言えない」「放送された翻訳部分が、実際の取材テープに本当にあったのかという視聴者の疑問を解消する必要がある」など、さまざまな意見が交わされた。そして、この事案は、さらに確認や検討が必要な点もあるとして、次回の委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 編集上の単純なミスが積み重なった経緯は報告書でよくわかったが、日韓問題のような重いテーマなのに、実際の編集が始まって放送前のチェックまでの間、通訳が全く立ち会っていないというのが信じられない。最終段階でチェックしていれば、起こりえないことではないのか。
  • 経費や時間の制約もあり、こうした事前収録の番組で、通訳が最終チェックに立ち会うことは、ほとんどないのではないか。
  • 番組の制作委託を受けた制作会社の編集やチェック作業の杜撰さは否めないが、当該局のチェック機能の甘さも指摘しなければならないだろう。
  • 当該局は迅速な社内調査をして、詳細な原因分析や的確な対応策をまとめた報告書になっていると思う。この報告書どおりの経緯であれば、改めて審議してヒアリングする必要はないのではないか。
  • 委員会への報告書は確かに分かりやすく、ミスをした原因や背景もきちんと分析されているが、ホームページや広報番組では、十分な説明がされていない。視聴者への説明責任が果たされているとはいえないだろう。
  • 視聴者から寄せられた意見では、放送された翻訳の内容が、取材テープの中に本当にあったのかという疑問が非常に多い。これを解消するためには、何らかの情報開示がもっと必要なのではないか。

3.エコキャップ問題の特集で、取材先のNPO法人から放送倫理上の問題を指摘されたフジテレビの情報番組『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、ワクチン代を寄付するために使うとうたってペットボトルのふたの回収活動をしているNPO法人エコキャップ推進協会が実はワクチン代を寄付していないと、新聞報道で指摘された問題について、「直撃御免 消えたワクチン代の行方」と題した特集企画を4月23日に放送した。
6月中旬になって法人側は、この企画は恣意的な編集をした「虚偽放送」で、放送倫理上の問題があるとして、記者会見で指摘・公表した。法人側は、番組側から「一部のリサイクル業者によるペットボトルのふたの横流し疑惑の追及」という趣旨で取材依頼があったので取材に協力したが、放送ではその問題には一切触れずに、取材した映像を使って法人の「経費問題」だけを伝えており、恣意的な編集による「虚偽放送」だと主張している。
これに対して当該局は、当初から法人側に対して、「経費問題」も含めた取材意図をきちんと伝えていて、「ひっかけ取材」や「恣意的な編集」はないと反論している。
委員会では、両者の資料をもとに討議した結果、この事案は「ひっかけ取材」と言えるかどうかが最大の争点となっているが、どちらの言い分が正しいかを委員会が判断するのは容易ではないうえ、取材意図を事前にどこまで取材先に伝えるかについて、委員会がこの事案で放送倫理上の基準を打ち出すのは、適切とは言えないとの結論になった。そして、問題の解決に向けては、当事者間の話し合いにゆだねるべきだとして議論を終え、審議の対象とはしないことを決めた。

[委員の主な意見]

  • 法人側は、放送直後に局側に抗議したものの、その後は局側とまったく接触もないまま、今回の公表に至っているようだ。双方が、どうしてもっと率直な話し合いをしなかったのだろうか?
  • 放送では、「疑惑の渦中の協会理事長を直撃」と文字スーパーなどで再三強調しているが、法人側の経費が多額なことを指摘するだけで、具体的にどういう疑惑があるのかの説明は十分とは言えないのではないか。「消えたワクチン代の行方」が不明確な放送内容には、不満が残る。
  • 法人側の経費が多すぎる理由を理事長に確認するインタビューは放送されているので、「虚偽放送」とまでは言えないだろう。
  • 取材の拙さは気になるが、この事案で、委員会が放送倫理上の問題として議論すべきなのは、取材意図を事前にどこまで取材先に伝えるべきかという点に絞られそうな気がする。丁寧に説明するに越したことはないが、テーマによっては、取材意図をつまびらかにできない取材もあるだろう。委員会として、そうした点にまで踏み込んだ基準を打ち出すのは難しいし、特にこの事案でそれを行うのは適切とは言えないのではないか。

4.既得権益問題をめぐる映像使用について政党から抗議を受けたテレビ大阪の情報番組『たかじんNOマネーBLACK』を討議

テレビ大阪のバラエティー番組『たかじんNOマネーBLACK』(5月30日放送)で、「FOOL JAPAN 世界から見たダメダメ日本」と題し、4人の在日外国人ゲストが日本に対して疑問に感じていることを指摘した。
その中の「日本人は怠け者で既得権益を守りすぎる」というパートで、「たとえ社会の発展や活性化につながるものでも」とのナレーション部分にTシャツ姿で街頭演説をする橋下大阪市長の映像を約4秒間、「既得権益のために政治が利用されてしまっているのが今の日本の姿」とのナレーション部分にスーツ姿で街頭演説をする自民党大阪市会議員団幹事長の映像を約6秒間、使用した。
自民党側の抗議を受けて、当該局は「一部誤解を招きかねない、配慮を欠いた表現がありました」と自社ホームページにお詫び文を掲載するとともに、自民党側に謝罪した。一方、自民党側からは議員団幹事長名で、委員会あてに「政治的公平性を欠く映像使用」だとする文書が届いた。
当該局の報告書によると、放送前のチェック段階で、大阪都構想の演説映像の使用に問題はないかという指摘はあったとのことだが、修正までには至らなかったという。また、再発防止策の策定などに向けて、社内の議論は継続中ということだった。委員会は、当該局に対して、最終的な報告書の提出を次回委員会までに求めることにして、討議を継続した。

[委員の主な意見]

  • ゲストの在日外国人が大阪都構想については何も言及していないのに、そのニュース映像を使用したのは制作者の配慮が足りず、編集上問題があるのではないか。
  • ホームページに掲載されたお詫び文は説明不足で、視聴者や関係者に何を謝っているのかよく分からない。
  • この問題について、社内では今も議論を継続しているとのことなので、完成した報告書を見たうえで、改めて検討したい。

5.委員会運営規則の改定について検討

現在委員会は、審議や審理に入る前に、その適否を討議している。しかし討議の手続きは慣例で運用されているため、その手続き規程を設けるなど、現在の委員会運営規則を改定するべきではないか、との意見があり、委員会で検討したところ、その方向で事務局側が検討を進めることとなった。

以上