第47回 放送倫理検証委員会

第47回 – 2011年3月

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』…など

3月11日に開催予定だった第47回放送倫理検証委員会は、東日本大震災のため、31日に延期して開催された。
一括審議となったテレビ東京『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』事案、毎日放送『イチハチ』のホテル買収事案及びニューヨーク不動産事案の3つについては、意見書の構成やターゲットについて、ヒアリングを踏まえて議論をおこなった。次回の委員会までに意見書の草案を担当委員が作成し、それを基に審議することになった。
日本テレビのニュース番組『news every.サタデー』で、最新のペットビジネスとしてペットサロンとペット保険を紹介したが、客として登場した2人の女性は、ともに運営会社の社員だった。
この事案については、取材・制作にあたったディレクターや上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施したが、その概要が担当委員から報告された。この中では、ディレクターと上司との間にさまざまな認識の乖離があったことが指摘され、なぜミスが防げなかったのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は生かされているのか等について意見交換が行われた。次回の委員会には、意見書の原案が提出される。
政治的公平性に問題があるのではないかが問題となったBS11の『”自”論対論~参議院発~』については、前回から討議を継続して番組編成全体で公平性に配慮しているという局の主張を検証した。この番組は、司会者、出演者ともに一政党のみで、その政党の広報番組と区別できないという偏りがある点に問題があるとして審議入りすることになった。
TBSがボクシングのタイトルマッチを中継録画で放送した際、直前のニュース番組『Nスタ』で、既にKOで決着がついていたにもかかわらず、あたかも結果が出ていないかのように伝えたことを不当な演出として問題にするべきかを討議した。確かに、視聴者に誤った印象を与えるが、ニュースではなく一種の番組宣伝であり、あえて審議するほどの重大性はないうえに、局も自発的に改善策を示してしているので取り上げないことにした。

事実確認に問題があったテレビ東京の情報バラエティー番組『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』及び毎日放送のバラエティー番組『イチハチ』

酵素飲料を飲むことでダイエットに成功したと番組で紹介した女性が、その飲料を販売する社長であったことが判明したテレビ東京の「月曜プレミア」と、15億円でホテルを購入しようとする富豪女性に密着した取材は、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の「イチハチ」が、すでに審議入りしていた。
これに加え、毎日放送の同じ「イチハチ」で、ニューヨークに23件もの不動産を持つ女性が紹介されたが、当該局が「女性の所有であることが証あったことだった。また、世代間ギャップの指摘明できず、事実と異なる放送をした可能性が高い」と公表した案件について、前記2つの事案と通底する問題があるとして、前回委員会で一括して審議入りした。
これを受けて毎日放送のニューヨーク事案について、制作スタッフらからのヒアリングが行われ、その結果が担当委員から報告された。
その上で、情報バラエティー番組における事実関係や情報の取り扱いについて議論が展開されたが、制作サイドの事実に対する認識や判断の甘さ、拡大解釈が、内部で精査されることなく安直に番組つくりがなされていく実態や、事案発覚後も、プロデューサークラスと現場ディレクタークラスとの間で、何が問題であったかの認識に温度差があることも浮かび上がってきた。
委員会では、これまで様々な形で発信してきた委員会の思いが、なかなか現場の制作スタッフに伝わっていないのではないだろうかという懸念を踏まえて、如何にしたら伝わるのか、意見書のスタイルを含めて模索し、担当委員の間で原案を作ることとした。

ペットショップの取材対象者が不適切であった日本テレビの報道番組『news every.サタデー』

1月8日に放送されたこのニュース番組は、右肩上がりの状況が続いているというペットビジネスを取り上げ、ペットサロンとペット保険の2人の女性客を紹介した。ところが2人は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったことが判明し、前回の委員会で審議入りした事案。
担当委員は、2人の女性客が社員だと知りながら取材・放送したディレクターをはじめ、上司のデスク・部長など9人に対してヒアリングを実施した。そこで浮き彫りになったのは、取材方法や職場のコミュニケーション状況などについて、ディレクターと上司の間にさまざまな認識の乖離がもあった。
委員の間からは、報道の使命や責任について十分な社内教育が行われているのか、ミスを防げなかった組織的な原因はどこにあるのか、一昨年の「バンキシャ」問題の教訓は本当に現場に生かされているのだろうか、などの意見が出された。次回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出される。

【委員の主な意見】

  • 上司は部下に目配りをして対話の場も設けていると考えているのに、部下のほうは自分が理解されず評価もされていないと思っている。この状況は、当該局だけの問題だとは思えないし、報道現場だけに起きている問題だとも思えない。そこに根の深さを感じる。
  • ニュースを伝えるという報道の使命や役割は、同じような情報を扱うバラエティー番組と比べて、はるかに重いものだ。報道モラルの低下を言うのは簡単だが、どんな社内教育や指導が行われているのか、
  • 「バンキシャ」の誤報問題のあと、さまざまな再発防止策が打ち出され、社内の研修なども充実させたという。ところがこのディレクターは研修会の参加記録は残っているのに、本人には参加した記憶がないということだ。教訓が本当に生かされているのかどうかの検証も必要ではないか。

政治的公平性が問題になったBS11の討論番組『”自”論対論』

視聴者から、政治的公平性に問題があるのではないかとの指摘があったBS11の政治討論番組
『”自”論対論~参議院発~』(全11回)は、司会者もゲストも、全ての出演者がひとつの政党所属の議員だけで構成されている。当該局からは、番組編成全体で政治的公平性を保つようバランスをとっているとの説明書が提出された。
8番組35放送分のDVDの提出を受け、全体として本当に配慮されているかの検証を行ったが、一政党に偏して11回の放送を行ったという問題性は明らかであり、審議入りをして、なぜそのような企画が採用されたのか、その際他の政党に対する公平性の確保についてはどのように実現するつもりであったのかなどを調査することを決めた。

【委員の主な意見】

  • 司会者が「われわれ自民党は」という発言をしている。明らかに放送法の第一条「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」に反している。
  • 放送法と憲法の関係には、微妙な問題が存在している。表現の自由と大きくかかわることなので慎重に議論すべきだ。
  • スポンサーが明示されていないことは大きな問題だ。
  • まるで、政党の持ち込み番組ではないか。
  • アメリカでは不偏不党の枠が取り払われている。それをどう考えるべきか。
  • 放送局として、編成権や主体性の放棄につながるのではないか。
  • 放送局の自律は、MC(司会者)やキャスターの存在に託されるのではないか。
  • 反対意見があればお寄せ下さいというテロップ表示を流せば、一方に偏すると言うことを避けたと見なせるのではないか。
  • 不毛な機械的公平性議論は避ける必要はある。

終了しているボクシングの試合を試合前のように伝えたTBS『Nスタ』スポーツコーナー

夕方の報道番組『Nスタ』(2月1日放送)のスポーツコーナー『こちら運動部』で、直後に当該局が放送するボクシング世界タイトルマッチを前に、試合の見所などを、スタジオと会場で事前に収録したVTRで放送した。しかし、実際には、試合はこの放送の30分近く前に結果が出ており、視聴者に誤解を与えかねない放送になった。
当該局からの報告書では、放送までの経緯が説明され、更に社内での議論の結果、今回の放送は生で進行している番組の中では視聴者に誤解を与えた表現であり、避けるべきだったと結論している。また今後の対応について、生番組における、競技が終了しているスポーツ番組の告知については、番組宣伝コーナーを設けるなどが示された。
委員会ではこの放送を番組宣伝と考えるかどうか、意図的に誤解させるメッセージがあったのではないかなどの意見が出されたが、事案の重さと、当該局の認識の仕方、今後の対応への姿勢から審議入りしないことに決定した。

【委員の主な意見】

  • 嘘をついたわけでもないし、ある意味番組宣伝として捉えれば、どうなんだろう。お金をかけて独占放送権を買っているわけだから。
  • スポーツ中継を種明かしして、これはディレイですといわれて結果がわかっているものを見ても面白くない。
  • 次から番組宣伝をしますということが明示されていれば問題はない。
  • 意図的に誤解させるメッセージがあったことは否定できない。しかし大きな問題ではないということもできる。
  • 過剰な臨場感を期待させるために、余計な勇み足をしている。
  • 報道のニュースの枠内であったということが問題だ。

「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」を受けて当該4局から報告書

2010年12月2日に行われた標記事案の委員会決定を受けて、当該4局はそれぞれの対応と取り組み状況をまとめた報告書を、当委員会に提出した。
この日の委員会において4局の取り組みが検討され了承された。
4局の報告はこちら。

以上

2011年2月に視聴者から寄せられた意見

2011年2月に視聴者から寄せられた意見

ニュージーランドの地震で、救出された被災者へのインタビューのあり方や、災害時の行き過ぎた報道などについて多くの意見が寄せられた。大相撲野球賭博事件の捜査の過程で八百長問題が明るみに出た。相次ぐ不祥事に春場所の中止が決まったが、改革の道はいぜん見えない。テレビ界と大相撲の関係を批判する意見もあった。

2月にEメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1807件で、1月と比較して386件増加した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール73%、電話24%、FAX1%、手紙ほか2%。
男女別では男性70%、女性27%、不明3%。
世代別では30歳代33%、40歳代24%、20歳代20%、50歳代10%、60歳以上8%、10歳代5%。

視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。2月の通知数は868件[34社]であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、30件を会員社に送信している。

意見概要

人権等に関する苦情

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・ 15件
    (個人又は直接の関係人からの要請)

番組全般にわたる意見

2月の視聴者意見は1807件と先月より386件増えた。取材の仕方、報道のあり方を問う意見が多かった。
ニュージーランドの地震は死者不明が220人を超える大惨事となった。被害の大きかったクライストチャーチには日本からの語学留学生らが滞在しており、28人が不明となった。救出された人も大怪我を負った。視聴者からは、救出された被災者へのインタビューのあり方や、災害時の行き過ぎた報道などについて多くの意見が寄せられた。目黒区の夫婦殺傷事件では、福島県の容疑者の自宅前から生中継し、家屋や家族の使う乗用車などを映し出したため、報道は何をやっても許されるのかと批判が多かった。
大相撲野球賭博事件の捜査の過程で八百長問題が明るみに出た。相次ぐ不祥事に春場所の中止が決まったが、改革の道はいぜん見えない。テレビ界と大相撲の関係を批判する意見もあった。プロ野球では、ひとりの新人投手ばかりを追いかけすぎだ。スター扱いするのは本人のためにもよくないとの声が多かった。
携帯サイトで視聴者3万人の投票が集まらなければ番組を打ち切るというスポンサー企画に抗議が集まった。アイドルの窮地を材料に、むりやり有料サイトに誘導しようという悪徳商法のようなものだとの非難が多かった。
7月の完全地デジ化のお知らせ表示について、すでにデジタル化しているテレビにまで表示を入れるのは不愉快だという声が多かった。
ラジオについての意見は37件、CMについては34件あった。

青少年に関する意見

放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は151件で、前月より約30件減少した。今月は、低俗・モラルに反するとの意見が53件、次いで性的表現に関する意見が30件、視聴者意見への反論・同意が22件、いじめに関する意見が14件と続いた。低俗・モラルについては、人気アイドルが出演する深夜のバラエティー番組に対し、「番組スポンサーの運営する有料携帯サイトに誘導する仕組みになっており、ファン心理に付け込んだ悪質な内容だ」といった批判意見が寄せられた。性的表現については、番組を特定していない全般的なものも含め、主にアニメに対し「アダルト向けとしか思えない内容のものが放送されている。深夜だから何を放送してもよいわけではない」などの意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • ニュージーランドの地震で被災者にインタビューしていた。救助されて間もない女性にインタビューするのもどうかと思うが、その女性と同じ階にいたと思われる被災者の生死の経過を話していた。直後に彼女が泣き出したことは無理もない。なぜこんなにデリカシーのない報道が出来るのか。いい加減にしてほしい。思い上がらないでほしい。
  • ニュージーランドの地震取材だが、日本人記者の非常識な行動が目に余る。病院に侵入したり、被災者の気持ちも考えずにマイクを向けたりする様子を見るたびに、非常に嫌な気分になる。日本人の安否情報が気にかかるが、現地の方や他の国の方も被災された。全ての方が、同じようにショックを受けている状況に、もっと気を配るべきではないか。
  • 大学入試で、ヤフーのサイトに試験問題が送られて解答があったという事件を扱っていたが、まるで、こうすればできると、ノウハウをテレビで教えているようなものだった。腕時計型の携帯メールが読めるものはさぞ売れたであろう。取り上げ方が同じで、低俗さを嘆きたくなる。
  • 目黒区夫婦殺傷事件の報道で、福島県の容疑者宅前から中継していた。社会的に関心の高い事件かもしれないが、容疑者は家族と同居している。モザイク等の画像処理もなく、場所を特定できる中継画像だった。家族が使用している車や、ナンバープレートにもモザイクは入っていなかった。報道は何をやっても良いのか。加害者の家族にも人権がある。
  • ある国会議員が「こういう発言をした」という内容の報道が目立つ。発言したなら名を出して良いのではないか。本当に発言したかどうかわからないような報道は意味があるのか。報道とは真実であることが重要で、発言者の真意が正確に伝わらなければ誤解を招く。報道は真実を伝えることに専念してほしい。現在の報道は煽りたてる内容が目立ちすぎる。
  • なぜニュースの時間に韓国人アイドルグループの解散騒動をあんなに大量に放送するのか。ワイドショーや芸能コーナーならまだしも昼や夕方のニュース番組で、さも重要な話題であるかのように放送する必要があるのか、理解できない。
  • 大相撲の八百長が明らかになったが、NHKはそれを知りながら放送を続けてきたのではないか。そうだとすると、「スポーツ」とは名ばかりの虚偽放送をし、視聴者を欺いてきたことになる。受信料を払う視聴者としては許せない。
  • 相撲の八百長問題は、これまでにも盛んに週刊誌などで報じられていたのに、テレビはろくに調べもせず、八百長をシロと断じていた。また、テレビと角界の「癒着」も疑われていた事実もある。それなのに八百長メールが発覚した途端、偉そうに八百長を論じる資格はテレビにあるのか。
  • 新人野球選手の話題ばかりでうんざりだ。まだデビューもしていないのにスター扱いで、いかにも人気があるようにあつかう番組の持ち上げ方が異常すぎる。移動するたびにその選手を追いかけ、その選手とファンの話題ばかりだ。選手本人も練習に集中出来ずに気の毒だし、チームメイトの選手たちも迷惑していると思う。
  • 「憲法改正」がテーマだったが、出演者全員が改正論者だった。「憲法問題」は意見が分かれるはずなのに、全員一致で「改正しよう」とはおかしい。出演者が偏りすぎていることの表れだ。こうした問題がテーマの場合には、出来るだけ多くの意見を取り上げることが求められているはずだ。この番組は過去にも同様のことを繰り返しており、関西では悪い意味で有名だ。今回の放送内容も民放連の放送基準を逸脱していると思う。

【番組全般・その他】

  • スポンサーである携帯コンテンツにアクセスし、有料の投票で3万票いくかどうかで番組の存続を決めるという企画に、強い不快感を覚える。有料投票という形で番組と有料コンテンツをここまでリンクさせることはどうかと思う。このままエスカレートしていったら、民放が有料放送のお試し無料視聴という媒体になってしまう。そこまでいったら、公共性なんかどこにもない。どこかで線を引いて、ルールや基準を作らないといけないと思う。テレビ局やプロダクションがどんな言い訳をしようが、こんなやり方はおかしい。
  • 「中国人はすぐに謝らない」を検証するとしていた。中国人のうち一人は、すぐに中国語で謝罪の言葉を発していたにもかかわらず、謝らなかったとして放送していた。その後番組HPにはお詫びの記事が出たが、文字が小さすぎてよく見えない。これでお詫びのつもりなのかと疑問が残る。中国人の実態はこれだと、はじめから意図的に制作したとしか思えないが、番組側は「翻訳と編集の連携ミス」の一点張りだ。公共の放送としての自覚が感じられない。
  • 女装した男性が若手漫才師のシャツを脱がし、胸を触っている映像が堂々と放送された。家族で食事をしながら見る時間帯に、こういう映像を放送するのは許しがたい。同性愛者の方や女装する方を差別しているわけではないが、こういう映像が最近他の番組でも多すぎる。この番組自体は色々な国に行ってその国で珍しい物を食べたり、色々な体験をしたりで、とても楽しみにしている番組だけに残念だ。
  • 色々な世代に「どんな種類の鍋が好きか」というアンケートをとり、それを出演者が当てるというコーナーがあった。どの年代でも一位がキムチ鍋だった。会場も出演者も「ウソッ」という感じでざわついていた。私の知る限り、お年寄りや子供はキムチ鍋を好まない。50代や60代でも一位がキムチ鍋なんてあり得ない。どこからアンケートをとったのか、どこの場所でとったのか、何も説明がない。
  • バラエティー番組や情報番組で街頭調査をよく実施しているが、調査場所が「都内」に偏っており、人数も100人程度など、参考にならない少人数であることが多い。それを街頭調査の結果として放送するのは無理がある。特に地方の視聴者にとっては全く参考にならない。全国ネットの番組でこのようないい加減な情報を流すのはやめるべきだ。
  • コマーシャルを自動的にスキップするビデオデッキの販売を中止させた記事を見た。確かに、コマーシャルにより民放が成り立っていることは承知しているが、現在どのように放送されているのか理解した上でのことなのか疑問に感じる。実際の番組よりもコマーシャルが多いと感じる番組構成。必ずといっていいほど、コマーシャルの直後は、コマーシャルに入る直前のシーンをもう一度見せられる。以前よりもコマーシャルの回数、提供会社の数は増えている。番組の内容はくだらない。
  • 電子番組表が組み込まれているブルーレイレコーダーで番組を予約するのだが、複数の番組を合体しているせいで、電子番組表の区切りがない。何時から見たい番組がはじまり、終わるのかをわからなくして放送している。あきらかに自分の局の番組を連続してひとつの番組としてレコーダーに予約させようという魂胆だ。
  • 番組の冒頭、隅に地デジに関するテロップが入る。地デジで視聴している場合にも、なぜ「地デジの準備が済んでいるか」と入れるのか理解に苦しむ。地デジ対応テレビをいわば強引に買わせたのに、どこまで宣伝すれば気が済むのか、放送局は何を考えているのか。アナログ放送で流せば済む話だろう。
  • 「2011年地デジ化」によって、テレビの放送をラジオで聞くことができなくなる。テレビを見ることのできない寝たきりの高齢者や障害者にとっては、ラジオでテレビの音を聞くことが唯一の楽しみである。彼らはテレビが地デジ化することは知っていても、ラジオで聞けなくなることを知らない人が大半だ。高齢者とのかかわりの中でこの事を説明すると驚かれることが多い。”地デジ化の後、テレビの音声をラジオで聞くことができなくなる”ことについて、もっと広く告知してもらいたい。

【ラジオ】

  • 歌手などのパーソナリティーが飲酒しながら番組を進行することがよくある。「ほろ酔い加減でリラックスした雰囲気を」という狙いはわからなくもないが、酒を飲みリラックスして番組を楽しむのはリスナーのほうであって、パーソナリティーではないはずだ。まるで立場があべこべだ。最近目立つ飲酒しながらの番組進行には強い抵抗を覚える。

【CM】

  • 携帯ゲームのCMで、電車内で携帯ゲームをやっている場面がある。携帯電話を触らないことが電車内のマナーであるはずなのに、触っていることは倫理的にどうなのか。

青少年に関する意見

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組内で、番組存続アンケートを携帯サイトで行うという企画があった。番組内では明示されていないが、投票するために有料の会員登録が必要というのは問題だ。このような商法は放送倫理的に問題ないのか。また、この番組はアイドル番組であり、視聴者は未成年、もしかすると中高生が多いかもしれない。ファン心理につけこんだあからさまな集金システムは、テレビ番組として倫理規定を逸脱しているのではないか。
  • 深夜アニメだが、同番組サイトには可愛いらしい少女のイラストなどが載っている。これを見る限り、実際の放送での残酷かつ刺激的なシーンなどを思い浮かべる人はいないと思う。放送ではサイトとの落差が大きく、エロチック、グロテスクな表現が多い。「放送するな」とまでは言わないが、せめて番組冒頭で刺激的な表現に関する注意書きなどを表示するべきだ。
  • スポーツ情報番組。休日の午後という時間帯でありながら、ミニスカートをはいた女性の脚などを映す演出はいかがわしく問題だ。このような番組を制作している放送局並びにスタッフの意識に問題があると感じる。子どもが自由に見ることのできる地上波で、しかも昼間に許されるべき性質のものではないと考える。

【性的表現に関する意見】

  • 小学生の子どもとアニメ番組を見ていたところ、番組の最後で突然女の子が脱ぐシーンがあった。子どもに「何であの人は裸になるの?」と聞かれ困った。子どもは深い意味まではわからない半面、興味を持ってしまった可能性もある。極力変な番組は見せないようにしているが、突然のことには対処できないし、子どもが視聴する時間帯に好ましくないものを放送する必要性も感じない。むやみに女性を裸にさせること自体、女性軽視だ。
  • アニメで無理に裸を出すことはやめてほしい。子どもが見てショックを受けたようだ。「そんなもの見せるな」という方もいるが、現状では規制が機能していないので無理な話だ。忙しいのにわざわざ親がどういうアニメなのかを調べる時間はない。せめて見せたくない人向けに成人指定マークなどを付けることが最低限のマナーでありモラルだと思う。
  • 女性の出演者の服装で、胸元やミニスカートから下着が見えそうだったりすることは子どもの教育上よろしくない。何度言っても改善されない。このような人たちは、子ども達がテレビを見る時間帯には出演させるべきではない。

【いじめに関する意見】

  • バラエティー番組で、お笑いタレントが後輩の芸人を外に連れ出し、高級時計店や洋服店に入っていずれも100万円以上の高価な商品を無理やり購入させるコーナーがあった。見ていてとても不愉快だった。子どもが真似をして、不要なものを無理に買わせるいじめに走らないか心配だ。
  • 異常な行動の人物を描き出すバラエティー番組のコーナーで、実在の特定の苗字を用いている。これはその名前の人にとって非常に不快である。私の名前も番組で使われているものと同じで、子どもが学校でいじめられていた。学校や教育委員会にも報告したところ、我が家だけのことではないらしい。テレビ局に抗議の電話をしたが、応対者はまともに対応しなかった。

【報道に関する意見】

  • ニュージーランドの地震被災者に対する取材を規制すべきだ。被災でショックを受けたばかりの子どもに当時のことを思い出させたり、怪我をした子どもに感想を求めたりするなど、こうした取材は暴力だ。旅行先の外国の地で守ってくれる大人がいない子どもたちを守るために、情けないことだが規制が必要だ。

【編成に関する意見】

  • お笑い芸人の出演時間帯について。子ども達が男女問わず、タレントのネタを真似しており不適切だ。寝転がって両足を開く動作のネタなどは、とても子ども、特に女の子に良い影響とは言えない。どうか出演時間を子どもの目に触れない時間帯に規制してほしい。青少年育成に影響があると思う。

【マナーに関する意見】

  • 情報番組などで、コメントをする際に腕を組んでいるジャーナリストや評論家などを多く見かける。人としてマナー違反で恥ずかしいことだと思う。こうした態度を見せるのは子どもの教育上もよくないのではないか。

【犯罪助長に関する意見】

  • 海外で起きた誘拐事件の内容を実際の映像などをまじえ放送していたバラエティー番組だが、内容は誘拐から身を守る方法を紹介するというより、誘拐方法などを細かく伝えるだけだった。防犯に関しても商品の宣伝しか行っていない。倫理的に大変問題のある内容であった。犯罪を助長するような内容を公共の電波で放送してよいのか。

【推奨番組に関する意見】

  • 深夜アニメだが、ファンタジックな作品世界ながら人間関係や社会の暗部をうまく描写していて秀逸だ。表現については凄惨な部分もあるが、作品が主張する考え方を表現するために必要ならば許容されるべきではないか。番組表現への批判のみを指摘し、青少年に悪影響という理由で優れた作品を深夜でしか放送できないことこそ、青少年の健全な育成を阻害すると思う。

【視聴者意見への反論・同意】

  • アニメやバラエティー番組の性的や暴力的な描写、パチンコCMへの苦情が多い。これらの番組などが不快ならば、「子どもが見る時間帯に放送するな」と言う前に、テレビを切ることだってできるはず。テレビなど、四六時中つけていなければならない規則はない。不快ならば受け手側で遮断してもよい。視聴者が減れば番組制作者やCMを出す企業の態度も変わるだろうし、悪質な番組やCMなど自然と淘汰されるはずだ。
  • BPOへの視聴者意見を読むと、あまりにも「子どものため」という言葉が多く唖然とする。私にも子どもがいるが、アニメやバラエティー番組を見ても悪影響を受けたとは思えない。「親子の会話」「子どもと共に考え親も成長する」という根本が欠けている親の責任を差し置き、テレビのせいにしている。責任転嫁もここまできたかと情けなく思う。

【CMに関する意見】

  • 最近、不況のせいかパチンコ関係のCMが目に余る。子どもが見ている時間帯に、パチンコ関係のCMが連続的に放送されていることに違和感を感じないのか。アニメとパチンコのコラボレーションなども見受けられるが、頻繁に放送されると子どもへの刷り込み効果が一切ないとは言い切れないと思う。

休会

休会 – 2011年3月

休会

3月29日に予定されていた第121回青少年委員会は、東日本大震災の影響により中止した。また、3月20日に予定されていた中高生モニター会議も同様に中止した。

中高生モニターについて

3月は、1年間中高生モニターを体験して「今のテレビやラジオについて思ったこと、感じたこと」について29人から率直な感想が寄せられた。モニターの中には、「東日本大震災」で被災されたり、”帰宅難民”として一晩学校などで過ごされたりした方の体験談もあった。

【モニターの主な意見】

今回、寄せられたモニター報告には3つの特徴があった。1つは、他のモニターの意見を読んで、「テレビの見方にはさまざまあるのだと感じて勉強になった」というもの。
「1年間、モニターをして本当によかったと思います。テレビを見たりラジオを聴いたりするときも、一視聴者としてではなく、モニターとして見るようになりました。毎月のモニターリポートでは、自分の書いたリポートについて取り上げていただいたり、自分と同じ意見の人がいたりすること、また、自分とは異なる角度から見ている人のリポートなどを知ることができ、よかったと思います」。
「今まで何気なく見ていたアニメ、ドラマ、ニュース等が、もっともっと深く考えて見るようになりました。単純につまらないと思っていても、それを作るスタッフも、何十人、何百人といて、大変だったんだと思うようになりました。でも、視聴率のみで判断されるのは、どうかと思います。20%でも何となく見ているだけよりも、10%でも面白く見ている方が良いのでは?これからは、私たちがテレビ番組をジャッジすることになりますね」。
「最初はリポートを書くのが大変だったけれど、慣れてくると楽しかったです。毎回、自分が『これは面白い!』と感じたものが、他の人にしたらつまらなかったり、ましてや怒りまでも覚えたりする人がいることに驚きました。たった1つの番組でも、いろんな意見や、真逆な意見があることを知り、大変勉強になりました。また、プロの方に企画を見てもらえるなんて、夢のような事も経験できました。ふだんテレビ番組は食事など何かをしながら見たりして、どちらかというと時間をつぶすものという感じでしたが、モニター活動をしてみて、受ける一方の姿勢から、番組内容を吟味し作り手の想いについて深く考えるようになりました」。
「毎月のテーマの中で最も頭を抱えたのは、企画書作りであった。自由に番組を作れるというのは楽しくて仕方なかったが、幅広い年代の人に面白く見てもらえる番組を作るのはかなりの時間と努力と想像力が必要だった。番組制作者の苦労が少し分かったような気がした。毎月選ばれる『キラ★報告』のようなリポートを作ろうと、自分も目指してがんばったが、結局最後まで『キラ★』に選ばれずに終わってしまったことが心残りだ。しかし、こうやってリポートを作り続けることで国語の成績が上がったことは嬉しいことだった」。
「私は中学時代からドラマやアニメ、本などのオリジナル企画書を趣味で書いていて、20冊以上になっています。中には”パクリ”もありますが、こういうドラマを作りたい、こういうアニメを作りたい、こういうバラエティーを作りたいと考え、暇なときに書いていたら、もう20冊以上です。モニターを通して改めて表現の難しさや、いかに同年代の人が考えているのかなども分かってきました。今のテレビは、いかに視聴率を取るかの争いです。ですので中身がつまらないものになっていると感じます。”空振り”番組ばかりです。どうか、家族みんなで楽しめる良い番組を作っていってください」。
「私がモニターに応募する時に書いた番組は『めちゃ×2イケてるッ!』でした。書いた理由は、”めちゃイケらしさ”を追求するスタッフさん、キャストの皆さんが素晴らしいと思ったからです。いつも放送ギリギリのネタをする『めちゃイケ!』ですが、私は、”やらない”めちゃイケよりも、”やる”めちゃイケが好きなんです。これからも『めちゃイケ!』は教育委員会とかBPOもあまり気にせずに、”めちゃイケらしく”番組を作り続けてほしいと思います」。
「今まではテレビやラジオ放送をただ何となく見たり聴いたりしていましたが、モニターをさせていただいて自分から積極的にそこから何か情報や教養を得ようとする姿勢に変わっていったように思います。放送局に望むことは、視聴者に事実を正しく伝えてほしいということです。そして決して不快感を与えないでほしい。『この放送を見て聴いて良かった!』と思えるような番組を作っていただきたいです」。

もう1つの特徴は、「不快だと感じたことなどがあまり変わっていない」、「自分たちの意見がテレビ局に本当に届いているのか疑問」というもの。
「中高生モニターを体験させていただき、本当に貴重な経験をさせていただいたことを感謝しています。しかしながら、率直なことを言えばこのモニター報告で、僕たち中高生から指摘されたことが何にも生かされていないと感じました。毎月送られてくるリポートのまとめの委員の感想には、『意欲がよく読み取れました』や『想像力をたくましくして本物を見つけ出してほしい』などと書かれていますが、そのようなことだけでは具体的に何が変わるのか。また、僕たちの考えた番組企画をテレビ局の方に感想をいただいた中に、『中高生の率直な感想の鋭さに驚いた。改めてその指摘を生かせるようにしたい』という内容があったが、具体的に何がどんなことに生かされたのかが分からない」。
「とにかく中高生モニターをしてみて、コマーシャルが多すぎる…と思いました。部活・勉強の合い間に、モニターとしてテレビを見よう!となった時に、コマーシャルばかりだと嫌気が差して『今夜は見るのをやめておこう』と思うことが多々ありました。不況のあおり(?)なのか分かりませんが、どんどん番組にCMをはさむのではなく、フィギュアスケートの壁にあるようなスポンサー広告のように、動画じゃなくてもずっと貼っておくなど、方法はあると思うので、改善すべきだと思います!」。
「今のテレビは何かどの番組も同じ雰囲気になっている気がします。バラエティーでは、司会が島田紳助さんに独占され、大物タレントがゲストとして番組に出演すると、その人がうまくなくても、うまいみたいに持ち上げなければいけないという暗黙の了解があるように感じました。しかも紳助さんは自分がプロデュースしたグループを、他局の番組でも出させたり、自分がかわいがっているタレントを自分がMCの番組のレギュラーとしてたくさん登用したり…。若手でもっと面白い人がいるのではないでしょうか?こういうのをやめてほしいと思います。そうしないと、今のテレビ業界が進化しないと思います」。
「今のテレビやラジオは視聴率や聴取率のためだったら何でもやっていいという風潮だと思います。見ていると、『そんなことをして意味があるのか?』『危ないことをするんだな』と思っています。心の底から笑ったり、感動したりするというテレビ番組が少なくなっています。作り手の情熱が欠けているからでしょうか。この1年、中高生モニターをしたことは、僕のこれからのテレビを見るうえでの財産になります。放送局の皆さん、より良い番組をこれからも作り続けてください」。
「自分は意志疎通が下手で、自分の本当の思いを文章にうまくまとめることができず大変な時もありましたが、皆さんに感謝します。今のテレビやラジオについて思ったことは、アナウンサーは芸能人ではありません。勘違いしてチャラチャラしている方が多い。放送局に伝えたいことは、視聴者の声をしっかりと受け止めてほしい。視聴者センターのサービス向上をしてほしい」。
「最近、学校でテレビの話題で問題視されるのは『政治』についてです。テレビは政治と国民をつなぐにあたってかなり大きな役割を果たしており、同時にかなり大きな影響力を持っています。与党と野党の”あげあし取り”が続き、重要な国事がおざなりにされつつある今、テレビ業界まで与野党の”あげあし取り”を面白がってしまっては、国民の政治不信を煽るだけで、現在政治が行われる上で重要なことは何なのかを国民が考えることなく、ただ与党の支持率が下降して解散して…を繰り返すだけだと思います。私は現在の日本は政治家も国民も政治を甘く考えすぎていると思います。テレビはその他のメディアがそのような負の風潮に流されることなく、適切な報道をしていってほしいと思います」。
「新聞に載っていたモニター募集の広告を母に見せられ、『大嫌いなテレビとやらに文句言ってやろう!』と応募し、選ばれたのはいいですが…。最後にもの申します。ひとりだけ、番組を見ていてどうしても不快に感じる芸能人がいます。島田紳助氏です。彼は番組をあまりに自分のものにしすぎているように見えます。そして特定の芸能人を贔屓しているのが見え見えなのです。あれでは視聴者はあまり楽しめないのではないかと思います。ある雑誌のインタビューで、放送作家の鮫肌文殊氏が言っていました。バブル崩壊後、”オモシロイこと”だけを追求していればそれで良かったノリは現場から完全に消えた。ニッポンのTVバラエティーは『見ていてとてもためになる明日役に立つ雑学番組』だらけになっている、と。私もその通りだと思います。時代ごとに視聴者のニーズは変わりますが、いつの時代も変わらない、普遍的なおもしろさ、楽しさが、テレビにあると信じたいです」。

さらにもう一つ、今回の大震災に関する意見も数多く寄せられた。
「先日発生した東日本大震災で、メディアの大切さを改めて感じました。CMが消え、全ての時間において地震に関する詳しい情報を知ることができました。テレビというものは私の中では近年、『人々を楽しませるもの』『人々を喜ばせるもの』だと断定していましたが、今回の地震で改めて『人々に正しい情報を与えるもの』のあり方を感じました」。
「私は高校で放送部に所属しています。一年間BPOのモニターをさせていただいて、更に放送というものに対して深く興味を持つようになりました。この度の東日本大震災のことを、西日本に住む私も、放送という伝達手段のおかげでタイムリーに知ることができました。ただ、ヘリコプターからの映像を見た時、『どうして早く助けにいってあげないの!?』という焦燥感を感じました。浸水して孤立した病院の屋上で『SOS』や『食料』とビニールテープらしきもので記し、白い布を振って助けを求めておられた職員の姿を、報道ヘリのカメラが捉えていました。放送を見た救助隊の方がきっと救助に向かって下さるに違いないと、私は祈りました」。
「11日の地震のとき僕は生徒会の仕事で学校にいたため”帰宅難民”として、約300人の生徒と一緒に学校で1泊しました。非常用の水や乾パンをもらい、椅子をつなげて眠ろうとしましたが、余震や携帯が何度も鳴り響き一睡もすることができませんでした。そして次の日、テレビで運転再開の報道があった後、1時間も時間をつぶしてから向かったのに駅は人であふれていたので、とても驚きました。テレビの地デジ化の最大の売りは、データ放送のはずです。もっと、きちんとした列車の運行状況を、テレビがリアルタイムでできたら、混乱を防げたと僕は強く思いました」。
「私は地震の時、学校にいました。学校では直ちに全員グラウンドに避難しました。震度5の揺れも、避難も人生初めてなのでパニックになりました。地震の影響で電車もストップしてしまったので、2時間近く歩いて家まで帰り、停電していたのでラジオを聴き、初めて東日本でのM8.8の地震だったのかと気づきました。そこからは約15時間という長い停電が続き、夜も本当に真っ暗で、ラジオという存在は唯一の情報を得ることができる貴重な存在でした。長い夜をずっとラジオの地震速報に耳を傾け、乗り越えました。停電になったからこそ気づけた『情報』という存在のありがたさ。今、こうしていつもの生活を送れるのは、テレビ、ラジオなどの情報網があるからかもしれません」。
「ラジオについては東日本大震災で大いに役立っているのではないでしょうか?毎朝ラジオを聴いていた僕はラジオへの抵抗もないので、夜間の余震や停電など心細い時、大変役に立っています。テレビが『映像で被災地の現状を発信している』のに対し、ラジオが『声でリスナーの気持ちを代弁している』ということを感じ、ラジオはそれによってリスナーの「自分は1人じゃない」意識を高めてくれたのではないか、とも思いました」。

【委員の所感】

  • 皆さんが届けてくれる毎月のリポートは、まるで隣の若い友人が語りかけてくるようでした。「自分とは違う意見があることを発見できた」「新しい見方を教えられた」「同じ番組でも異なる感想があり参考になった」「考えながらテレビを見るようになった」「放送の問題を深く考えるようになった」。これらの意見は、皆さんがいかに注意深く賢明に放送番組と接してきたかを物語ります。皆さんの声に放送の明日を見ることができました。
  • 今回の大震災は、日本史にはもちろん世界史にも刻まれるでしょう。その影響が、日本だけではなく、世界に広がっているからです。複数の原子炉が大きな事故に見舞われるのは世界で初めてのことです。NHK・民放各局の放送は、そのことに出来る限りの想像力を働かせているだろうか、と思いつつラジオを聴きテレビを視聴しています。ケータイやツイッターなどのソーシャルメディアがなかったら、情報の受発信はどうなっていただろうかとも考えています。モニターの皆さんも、そのことに思いをいたしながらテレビやラジオに接していただければ幸いです。
  • 中高生モニターのみなさん、一年間お疲れさまでした。1000年に一度といわれる大震災報道を連日みなさんも目にしていることと思います。歴史的な大震災を中高生のみなさんがどのように感じ、どのように行動し、どのように考えていくのか。1年間のモニター体験を生かしながら、ぜひ報道のあり方やテレビが持つ力についてさまざまな角度からテレビをご覧ください。みなさんの柔軟な思考と感性に希望を託したいと思います。
  • 一年間ご苦労さまでした。私が皆さんに最後のメッセージとして贈りたいのは、政府の発表と、原子力安全・保安院(経済産業省)、そして東京電力の発表をどう見るか、ということです。基本的には、官房長官は「安全だ、安全だ」と言いながら、事態はここまで深刻になってきました。保安院、東京電力も「わからない」とか「大丈夫だ」と言いながら事態をここまでこじらせてしまっています。私の情報源の人たちは、3月11日、12日の時点で、現在の事態を予測していました。「原子力がキチンとわかる人なら、こうなることは最初からわかっている筈です」と口をそろえます。その意味は、今回のような、国家、あるいは地域、そして人間が滅亡するかどうかという時に、権力側の嘘、まやかし、メディアのいい加減さ、権力への迎合などをどう判断するか。それを若いうちから、皆さんに養っていただきたいと思っているからです。みなさんの若い感性と柔軟な頭脳に期待します。
  • 皆さんが1年間本当に真剣にモニター報告に取り組んでくださったということがとてもよく分かりました。たくさんの人が、それまでのダラダラ視聴から意識的な視聴に変わったと書いてくださいました。毎月文章にするのは大変だったことでしょう。私は企画書を作成するのは大変だろうと思っていたのですが、大変だったけれど面白かったと書いてくださった方が多く、とても意外でした。「企画書作成」企画が当たったということですね!!「大変だけど面白い」というのは、とってもいいですね。みなさんの意見が番組に反映されていないという厳しい意見をくださった方もいましたが、私も同感です。私たち青少年委員も、中高生モニターの意見が番組に反映されるように、智恵を出し合っているところです。でも何事も一気に成果は現われません。続けていくことが重要だと思っています。皆さんも1年間のモニター経験を生かして、違うところでも「番組に物申す」姿勢を続けて下さい。

2011年度中高生モニターについて

2月25日から募集を開始した、「2011年度中高生モニター」には全国から197人の応募があり、その中から中学生22人、高校生12人の合計34人を選び、4月からの1年間モニターリポートを送ってもらう。4月のテーマは、「東日本大震災」報道について、率直な意見や感想を書いてもらうこととした。