第77回 – 2007年3月
日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』に関する回答を基に審議
中学生モニターについて …など
日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』に関する回答を基に審議
『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』については、前回委員会で審議し、日本テレビに対し下記の文書で回答を求め、今委員会では同社からの回答を基に審議した。
〔日本テレビへの回答のお願い〕
平成19年3月2日
- 当該番組の企画意図はどのようなものか?
- 準備期間はどれくらいあったのか。また、脚本・演出等のスタッフ構成はどのようになっていたのか?
- 制作前、また放送後に貴局内で議論はあったのか?
〔日本テレビからの回答〕
平成19年3月15日
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会 委員長
本田 和子 様
日本テレビ放送網株式会社
コンプライアンス推進室長
3月2日付け「視聴者からの意見に対する回答のお願い」に対して以下の通り回答申し上げます。
いつの世にも「悪意」持ちながらも、法律の枠から逃れている存在があります。
その被害者は市井の人であり、涙しながら生きる立場の人々に偏ります。
そこで本ドラマは「悪を行使するものはいつか裁きを受ける」とのメッセージを伝えることを意図し立案されました。
同時に、ジャンルをこえた企画立案・制作への挑戦、それを促す社としての試みでもありました。
企画立案から制作に至る期間やスタッフの構成などは、通常のドラマ制作と特段変わりはありません。
制作するに当たっては、当時「いじめ・自殺」が相次いだこともあり、放送前に社内の関係各所と相談を行いました。
しかしながら、放送後視聴者の皆様からいただいたご意見の中には厳しいものもあり、制作者の意図が視聴者の皆様に十分伝えきれなかったとするならば遺憾なことであります。
スタッフ一同今後も視聴者の皆様のご意見を活かしながらより良い番組作りにまい進する所存です。
以上
各委員の意見は次のとおり。
【企画等について】
- 領域横断的な挑戦として、ドラマの枠を解体していくことも必要だし意味があるが、視聴者から安易な作り方と見られたということは、挑戦は失敗だったのではないか。
- ジャンルを越えたために、かえってドラマとして違和感があったのではないか。ただ挑戦は否定すべきでなく、あまり厳しく批判してこういった試みを潰すことはしたくない。
【制作期間、脚本・演出等について】
- 通常の予算と時間をかけてあの内容だとしたら、ますます問題は深刻ではないか。企画、シナリオ、演出のレベルも低いと感じた。これからのテレビ文化が心配だ。
- 放送局に入社しても、ドラマ作りの経験が浅いまま制作に携わることがあるため、安易な漫画からのドラマ化や質の低さに繋がっていくのではないか。
【人材育成について】
- 最近の放送局では、オールラウンドの社員を育成する傾向が強く、番組に対する意欲や情熱を持った”制作の職人”のタイプが少なくなっているのではないか。経営者は質の高い番組を作れるような人材育成の仕組みを考えてほしい。
- 現在は、番組を外部の制作会社が作ることが多いので、放送局の社員だけでなく、その周囲の制作集団を含め人材の育成が必要だ。
- 優秀な人材を育て、良い番組を作ろうとしても、視聴率が優先されている現実が変わらないと、番組の質の向上は望み薄ではないか。
以上の審議の結果、個別の番組の評価より、テレビ界全体の制作体制が問題ではないか、ということになった。
次に、視聴者意見の審議では、バラエティー番組で女性芸人の顔が変形するほどシリコンゴムで巻いていたことについて、「いじめを助長する」といった視聴者意見が寄せられ、委員からも「番組を見ていたが、子どもがまねをしたら事故になりかねないと感じた」「どの程度に危険なものか番組を視聴したい」といった発言があったため、当該局にVTR提供の依頼し、次回委員会で審議をすることとなった。
また、日本テレビの回答と視聴者意見の両方の審議を受け、委員から「番組の質とかテレビの品性についての考え方を番組制作者と共有するのが難しくなっている現状の中で、青少年委員会が視聴者の意見を基に審議するだけでなく、委員会として何ができるのかを考えるべきだ」という問題提起があり、意見交換を行った。
各委員の意見は、次のとおり。
- 視聴者意見を基に、子どもに対して危険だからというメッセージを出すことはできるが、テレビ文化の底上げが必要だということを発信するのも青少年委員会の役割ではないか。
- 現在は、”問題がある”と視聴者から指摘されても、委員会と局の代表だけで話し合い、直接制作者には伝わっていないのではないか。視聴者意見に対しも、制作者自身で説明できるような場を設けることができるといい。
- 少数でもテレビを見て不快だったとか、傷ついたといった意見を尊重し、委員会で取り上げることがBPOの役割ではないか。
- 視聴者から同じ様な意見が繰り返し寄せられるということを放送局に伝え、番組のどこに問題があるのかを認識してもらうことも委員会としての役目だ。
以上の意見交換の結果、青少年委員会のあり方については、今後も議論していくこととなった。
中学生モニターについて
3月は23人から、36件報告(一人で複数件の報告有)が寄せられた。分野別では、最終回を迎えた番組が多いためかドラマが19件と圧倒的だった。そしてバラエティーは9件、情報番組が4件、ニュース全般について2件、その他も2件だった。
局別ではTBSが12件、フジテレビが8件、日本テレビ5件、テレビ朝日3件、NHK2件、テレビ東京が1件だった。
- ドラマでは『花より男子2』に7件も意見が寄せられた。「ヒロインはヒーローのことを思い続け、相手を信じていくところは、とても前向きで”私も頑張らないと”という気持ちになれました」、「ドラマがマンガの内容を微妙にアレンジしてあったのも、すごく楽しかったと思いました」、「この番組が終わってしまい本当に寂しいです。どんどん続いていくと面白いと思いますし、また特別番組とか、どんな形でもいいので続きが見たいです」など、いずれも好評だった。
ドラマで2件意見があったのは3番組で、『華麗なる一族』は「自宅で無料で映画を見ることができたという満足感があった。僕がこの番組を採点すると100点だと思う」、『ヒミツの花園』も「今までにないような番組だと思います。兄弟1人ひとりの性格の違いを分かりやすく、現実的というか、身近な感じで描写していて良い」などと好評だった。また『ハケンの品格』には「今までで一番自分が引き込まれたドラマでした」という意見と、「他人が傷つくような事を少し言っているところを何度か見ました。今は言葉の暴力”いじめ”などがあるので、あまり良くないとも思いました」という批判意見があった。
火曜ドラマゴールド『私の頭のなかの消しゴム』には、「悲しかった。若くてもかかってしまう、恐ろしい病気があることがわかった。そういう人がいると気付かせてくれるドラマがもっと増えるといいです」という意見が、また『風林火山』には「原作を読んだが、あまりにも違いすぎると思う。制作者には、話の中の人々の性格をきちんととらえて、その上で無理なカムフラージュなんてしないで、面白い大河ドラマをこれからも作って欲しい」という注文が寄せられた。 - バラエティーはすべて1件ずつで、今月は好評意見が多かった。『TVチャンピオン』には「生活に役立つ情報なども多く、学ぶ事もできる上に私達の身近なことを良く取り上げているので世代を問わず楽しめる」、『芸能人格付けバトル』には、「今まで見たことがないようなクイズ形式で新鮮な感じがしました」などだった。
ただ『リンカーン』には「ある特定の世代しか対象になっていない。企画は面白いと思うのですがもっと幅広い年代に対して、ということがあればもっと良いのではないかと思います」という注文が、『伊東家の食卓』には「小さい時からずっとやっていた番組だったので、終わるなんて思っていませんでした。なにかこういう役にたつ番組はみんなやらせっぽく感じてしまします。『あるある』のせいでこの番組が終わったのではないかと思ってしまいました」という感想が寄せられた。 - 情報系番組では『日本の、これから いじめ、どうすればなくせますか』に、「中学生の発言が向くテーマに差しかかってからはその発言を多くできるよう優先するなどして欲しい。FAX以外にもケータイのメールなどで意見を言えるようになれば、若い世代の人でも参加できるようになるはずです」、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』にも、「なんか報道がオーバーな気がします。もっと、安心して見られる番組にして欲しいです」という注文が寄せられた。
また『泣いた! 笑った! 反省ザル太郎・次郎20年の奮闘記』には「スペシャルドラマの前にそれを楽しめるように情報番組を組む。このやり方は、決して悪くありません」という感想があった。 - このほか、タミフル報道について「どうしておかしくなるのか、”大人が近くで見ている”という対策だけしか本当にないのか」伝えて欲しい、また「東京都知事選」に関連して「一人の候補を取り上げるなら同等に他の立候補者を取り上げるべきだ。また選挙は何故大切なのか、投票する権利がどれだけうらやましく・すばらしく・大切なものかを、CMなどでどの世代にも分かりやすく伝えて欲しい」という注文があった。
モニター報告に関して、各委員の発言は次のとおり。
- 『日本の、これから』の意見は、当事者である中学生の立場からの不満が伝えられている。制作者も受け止めてほしい。
- タミフルの報道への意見はもっともで、タミフルの危険性について視聴者の疑問に答えていないと思う。
- 『風林火山』への批判は、良く調べて書いている。「墨攻」の内容をストーリーに加えているのではないかという指摘は興味深い。
- 「10時過ぎの放送のほうが塾から帰って見られる」という意見や、『花より男子2』についての「リアルではないけど嘘っぽくないから面白い」という考えは、今の中学生の生活や感受性がわかる。
- 中学生の意見は、内容をきちんとふまえた番組批評になっている。また最初の頃に比べると番組を見る目が肥えてきており、モニター報告としても進歩していると思う。
4月から中学生モニターは、全国から公募した30人の新メンバーに交代する。
調査・研究活動について
橋元委員から「小中学生はテレビをどう見ているか?―36人インタビュー調査」について、次のとおり調査企画チーム(第12回会合)の報告があった。
- 36人のインタビューを終了し、今年夏の発表に向け、調査企画チームで報告書のまとめ方について検討している。
- 従来の報告書とは違うまとめ方を検討しており、内容については専門家だけでなく、番組制作者がインパクトを受けるようなものを目指している。
- 前回行った「青少年へのテレビメディアの影響調査」を再分析して盛り込むことも考えている。
委員からは「今回の調査で、視聴率がいいからといって、本当に集中して見られているかわからないということが浮かび出せればと期待している」「番組内容を評価するものが作れないか」「委員会が核となって評価機構を立ち上げ、番組の評価だけではなく、評価を通じて番組がはらむ問題性を制作者に伝えていくことができればいい」「委員会の調査・研究として番組評価の調査を考えてはどうか」といった意見が述べられた。
『NHK紅白歌合戦』については、前回委員会で審議し、NHKに対し下記の回答を文書で求め、NHKから2月9日付の回答を受け取った。今委員会では同回答を基に、NHK制作局長の日向英実氏を交え、意見交換をした。