第77回 放送と青少年に関する委員会

第77回 – 2007年3月

日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』に関する回答を基に審議

中学生モニターについて …など

日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』に関する回答を基に審議

『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』については、前回委員会で審議し、日本テレビに対し下記の文書で回答を求め、今委員会では同社からの回答を基に審議した。

〔日本テレビへの回答のお願い〕

平成19年3月2日

  • 当該番組の企画意図はどのようなものか?
  • 準備期間はどれくらいあったのか。また、脚本・演出等のスタッフ構成はどのようになっていたのか?
  • 制作前、また放送後に貴局内で議論はあったのか?

〔日本テレビからの回答〕

平成19年3月15日

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会 委員長
本田  和子 様

日本テレビ放送網株式会社
コンプライアンス推進室長

3月2日付け「視聴者からの意見に対する回答のお願い」に対して以下の通り回答申し上げます。
いつの世にも「悪意」持ちながらも、法律の枠から逃れている存在があります。
その被害者は市井の人であり、涙しながら生きる立場の人々に偏ります。
そこで本ドラマは「悪を行使するものはいつか裁きを受ける」とのメッセージを伝えることを意図し立案されました。
同時に、ジャンルをこえた企画立案・制作への挑戦、それを促す社としての試みでもありました。
企画立案から制作に至る期間やスタッフの構成などは、通常のドラマ制作と特段変わりはありません。
制作するに当たっては、当時「いじめ・自殺」が相次いだこともあり、放送前に社内の関係各所と相談を行いました。
しかしながら、放送後視聴者の皆様からいただいたご意見の中には厳しいものもあり、制作者の意図が視聴者の皆様に十分伝えきれなかったとするならば遺憾なことであります。
スタッフ一同今後も視聴者の皆様のご意見を活かしながらより良い番組作りにまい進する所存です。
以上

各委員の意見は次のとおり。

【企画等について】

  • 領域横断的な挑戦として、ドラマの枠を解体していくことも必要だし意味があるが、視聴者から安易な作り方と見られたということは、挑戦は失敗だったのではないか。
  • ジャンルを越えたために、かえってドラマとして違和感があったのではないか。ただ挑戦は否定すべきでなく、あまり厳しく批判してこういった試みを潰すことはしたくない。

【制作期間、脚本・演出等について】

  • 通常の予算と時間をかけてあの内容だとしたら、ますます問題は深刻ではないか。企画、シナリオ、演出のレベルも低いと感じた。これからのテレビ文化が心配だ。
  • 放送局に入社しても、ドラマ作りの経験が浅いまま制作に携わることがあるため、安易な漫画からのドラマ化や質の低さに繋がっていくのではないか。

【人材育成について】

  • 最近の放送局では、オールラウンドの社員を育成する傾向が強く、番組に対する意欲や情熱を持った”制作の職人”のタイプが少なくなっているのではないか。経営者は質の高い番組を作れるような人材育成の仕組みを考えてほしい。
  • 現在は、番組を外部の制作会社が作ることが多いので、放送局の社員だけでなく、その周囲の制作集団を含め人材の育成が必要だ。
  • 優秀な人材を育て、良い番組を作ろうとしても、視聴率が優先されている現実が変わらないと、番組の質の向上は望み薄ではないか。

以上の審議の結果、個別の番組の評価より、テレビ界全体の制作体制が問題ではないか、ということになった。

次に、視聴者意見の審議では、バラエティー番組で女性芸人の顔が変形するほどシリコンゴムで巻いていたことについて、「いじめを助長する」といった視聴者意見が寄せられ、委員からも「番組を見ていたが、子どもがまねをしたら事故になりかねないと感じた」「どの程度に危険なものか番組を視聴したい」といった発言があったため、当該局にVTR提供の依頼し、次回委員会で審議をすることとなった。

また、日本テレビの回答と視聴者意見の両方の審議を受け、委員から「番組の質とかテレビの品性についての考え方を番組制作者と共有するのが難しくなっている現状の中で、青少年委員会が視聴者の意見を基に審議するだけでなく、委員会として何ができるのかを考えるべきだ」という問題提起があり、意見交換を行った。

各委員の意見は、次のとおり。

  • 視聴者意見を基に、子どもに対して危険だからというメッセージを出すことはできるが、テレビ文化の底上げが必要だということを発信するのも青少年委員会の役割ではないか。
  • 現在は、”問題がある”と視聴者から指摘されても、委員会と局の代表だけで話し合い、直接制作者には伝わっていないのではないか。視聴者意見に対しも、制作者自身で説明できるような場を設けることができるといい。
  • 少数でもテレビを見て不快だったとか、傷ついたといった意見を尊重し、委員会で取り上げることがBPOの役割ではないか。
  • 視聴者から同じ様な意見が繰り返し寄せられるということを放送局に伝え、番組のどこに問題があるのかを認識してもらうことも委員会としての役目だ。

以上の意見交換の結果、青少年委員会のあり方については、今後も議論していくこととなった。

中学生モニターについて

3月は23人から、36件報告(一人で複数件の報告有)が寄せられた。分野別では、最終回を迎えた番組が多いためかドラマが19件と圧倒的だった。そしてバラエティーは9件、情報番組が4件、ニュース全般について2件、その他も2件だった。

局別ではTBSが12件、フジテレビが8件、日本テレビ5件、テレビ朝日3件、NHK2件、テレビ東京が1件だった。

  • ドラマでは『花より男子2』に7件も意見が寄せられた。「ヒロインはヒーローのことを思い続け、相手を信じていくところは、とても前向きで”私も頑張らないと”という気持ちになれました」、「ドラマがマンガの内容を微妙にアレンジしてあったのも、すごく楽しかったと思いました」、「この番組が終わってしまい本当に寂しいです。どんどん続いていくと面白いと思いますし、また特別番組とか、どんな形でもいいので続きが見たいです」など、いずれも好評だった。
    ドラマで2件意見があったのは3番組で、『華麗なる一族』は「自宅で無料で映画を見ることができたという満足感があった。僕がこの番組を採点すると100点だと思う」、『ヒミツの花園』も「今までにないような番組だと思います。兄弟1人ひとりの性格の違いを分かりやすく、現実的というか、身近な感じで描写していて良い」などと好評だった。また『ハケンの品格』には「今までで一番自分が引き込まれたドラマでした」という意見と、「他人が傷つくような事を少し言っているところを何度か見ました。今は言葉の暴力”いじめ”などがあるので、あまり良くないとも思いました」という批判意見があった。
    火曜ドラマゴールド『私の頭のなかの消しゴム』には、「悲しかった。若くてもかかってしまう、恐ろしい病気があることがわかった。そういう人がいると気付かせてくれるドラマがもっと増えるといいです」という意見が、また『風林火山』には「原作を読んだが、あまりにも違いすぎると思う。制作者には、話の中の人々の性格をきちんととらえて、その上で無理なカムフラージュなんてしないで、面白い大河ドラマをこれからも作って欲しい」という注文が寄せられた。
  • バラエティーはすべて1件ずつで、今月は好評意見が多かった。『TVチャンピオン』には「生活に役立つ情報なども多く、学ぶ事もできる上に私達の身近なことを良く取り上げているので世代を問わず楽しめる」、『芸能人格付けバトル』には、「今まで見たことがないようなクイズ形式で新鮮な感じがしました」などだった。
    ただ『リンカーン』には「ある特定の世代しか対象になっていない。企画は面白いと思うのですがもっと幅広い年代に対して、ということがあればもっと良いのではないかと思います」という注文が、『伊東家の食卓』には「小さい時からずっとやっていた番組だったので、終わるなんて思っていませんでした。なにかこういう役にたつ番組はみんなやらせっぽく感じてしまします。『あるある』のせいでこの番組が終わったのではないかと思ってしまいました」という感想が寄せられた。
  • 情報系番組では『日本の、これから いじめ、どうすればなくせますか』に、「中学生の発言が向くテーマに差しかかってからはその発言を多くできるよう優先するなどして欲しい。FAX以外にもケータイのメールなどで意見を言えるようになれば、若い世代の人でも参加できるようになるはずです」、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』にも、「なんか報道がオーバーな気がします。もっと、安心して見られる番組にして欲しいです」という注文が寄せられた。
    また『泣いた! 笑った! 反省ザル太郎・次郎20年の奮闘記』には「スペシャルドラマの前にそれを楽しめるように情報番組を組む。このやり方は、決して悪くありません」という感想があった。
  • このほか、タミフル報道について「どうしておかしくなるのか、”大人が近くで見ている”という対策だけしか本当にないのか」伝えて欲しい、また「東京都知事選」に関連して「一人の候補を取り上げるなら同等に他の立候補者を取り上げるべきだ。また選挙は何故大切なのか、投票する権利がどれだけうらやましく・すばらしく・大切なものかを、CMなどでどの世代にも分かりやすく伝えて欲しい」という注文があった。

モニター報告に関して、各委員の発言は次のとおり。

  • 『日本の、これから』の意見は、当事者である中学生の立場からの不満が伝えられている。制作者も受け止めてほしい。
  • タミフルの報道への意見はもっともで、タミフルの危険性について視聴者の疑問に答えていないと思う。
  • 『風林火山』への批判は、良く調べて書いている。「墨攻」の内容をストーリーに加えているのではないかという指摘は興味深い。
  • 「10時過ぎの放送のほうが塾から帰って見られる」という意見や、『花より男子2』についての「リアルではないけど嘘っぽくないから面白い」という考えは、今の中学生の生活や感受性がわかる。
  • 中学生の意見は、内容をきちんとふまえた番組批評になっている。また最初の頃に比べると番組を見る目が肥えてきており、モニター報告としても進歩していると思う。

4月から中学生モニターは、全国から公募した30人の新メンバーに交代する。

調査・研究活動について

橋元委員から「小中学生はテレビをどう見ているか?―36人インタビュー調査」について、次のとおり調査企画チーム(第12回会合)の報告があった。

  • 36人のインタビューを終了し、今年夏の発表に向け、調査企画チームで報告書のまとめ方について検討している。
  • 従来の報告書とは違うまとめ方を検討しており、内容については専門家だけでなく、番組制作者がインパクトを受けるようなものを目指している。
  • 前回行った「青少年へのテレビメディアの影響調査」を再分析して盛り込むことも考えている。

委員からは「今回の調査で、視聴率がいいからといって、本当に集中して見られているかわからないということが浮かび出せればと期待している」「番組内容を評価するものが作れないか」「委員会が核となって評価機構を立ち上げ、番組の評価だけではなく、評価を通じて番組がはらむ問題性を制作者に伝えていくことができればいい」「委員会の調査・研究として番組評価の調査を考えてはどうか」といった意見が述べられた。

『NHK紅白歌合戦』については、前回委員会で審議し、NHKに対し下記の回答を文書で求め、NHKから2月9日付の回答を受け取った。今委員会では同回答を基に、NHK制作局長の日向英実氏を交え、意見交換をした。

第76回 放送と青少年に関する委員会

第76回 – 2007年2月

『紅白歌合戦』に関するNHK回答を基に意見交換

日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』について審議 …など

『紅白歌合戦』に関するNHK回答を基に意見交換

『NHK紅白歌合戦』については、前回委員会で審議し、NHKに対し下記の回答を文書で求め、NHKから2月9日付の回答を受け取った。今委員会では同回答を基に、NHK制作局長の日向英実氏を交え、意見交換をした

〔NHKへの回答のお願い〕

平成19年1月25日

  • 今回のパフォーマンスは貴局の<新放送ガイドライン>にある「常に品位と節度を心がけ、視聴者に不快感や苦痛を与える内容、場面は避ける。とりわけ、青少年に及ぼす影響については、慎重な配慮が求められる。」という部分に抵触していないか。
  • 今回のパフォーマンスに関して、出演者側から知らされていなかったと発表されているが、チェック体制はどのようになっているのか。
  • 視聴者意見にもあるが、生放送であっても、カメラワーク等で表現の工夫ができなかったのか。

〔NHKからの回答〕

平成19年2月9日

BPO放送と青少年に関する委員会
委員長 本田 和子 様

日本放送協会

視聴者意見への回答

  • 今回のパフォーマンスは、NHKの紅白歌合戦という舞台にふさわしくない残念なパフォーマンスでした。視聴者のみなさまの期待を損ねてしまい、申し訳なく思っています。番組基準に照らして明確に反するとまでは言えないものの、品位と節度の観点から反省すべき点があり、そうしたことを踏まえて、番組制作にあたるよう指導してまいります。
  • 紅白歌合戦のような大がかりな番組では、最終的なカメラリハーサルが極めて重要であり、今回も前日のカメラリハーサルで、本番と同じ衣装、進行で行われるとの認識のもとで、確認作業を進めました。その場で、問題になったボディスーツになることはなく、また、「OZMA」側からも、何も聞かされませんでした。
    「OZMA」は、これまでも、たびたびNHKの番組に出演しており、紅白歌合戦の1週間前に放送した歌番組でも、同じ曲を歌いましたが、問題になるような衣装ではありませんでした。NHKでは、放送にふさわしい衣装について、理解してもらっていると考えていました。
    こうしたことから、リハーサル通りの衣装で本番も行われると信じていました。1月9日に事務所側から受けた説明では、30日のカメラリハーサルのあとで、よりインパクトを高めるため、ボディスーツの着用を決め、そのことをNHK側に説明をしなかったということでした。
    なお、「DJ OZMA」のブログには、担当プロデューサーに対して、「ちゃんと言わなきゃいけないことがあったよね?」と書いてありますが、これについては、「OZMA」側には、舞台での早変わりなどの「イリュージョン」の演出を行うことを本番まで秘密にしておきたいという意向があり、NHKの担当者も承知していました。しかし、チーフ・プロデューサーまで伝わらず、12月19日の曲目発表の場で、チーフ・プロデューサーがイリュージョンを行うことを説明してしまいました。所属の事務所の社長の話では、イリュージョン演出がNHK側から最初に漏れたことに対する不満が「OZMA」側にあり、ブログの内容はこれを指しているということです。
    こうした経緯を含め出演者との信頼関係が十分でなかった点を反省しています。また、前日のカメラリハーサルで、本番での衣装について、明確な念押しをしなかった詰めの甘さも反省点と考えています。
  • 紅白歌合戦では、大がかりな演出や細かなカメラ割りが複雑に絡み合い、ひとつ手順がずれると、全体が大きく混乱するおそれがあったため、とっさに的確な判断ができませんでした。生放送中に、万が一の不測の事態が起きた場合にどう対応するかについては、これまでも指導してきましたが、今後さらにカメラアングルやサイズを工夫することで避けられるようなマニュアルを考えてまいります。

意見交換の内容は次のとおり(▼はNHKの説明)。

【「国内番組基準」ならびに「新放送ガイドライン」について】

▽今回のパフォーマンスが番組基準にある卑わいなことば、動作に当たらないという認識だが、裸に見えるボディースーツを見て不快で卑わいと感じた人がいるのに卑わいではないという考え方はおかしい。
▽OZMA自身の衣装も卑わいな感じがした。不快か不快でないかは受け手の問題なので、ある一定数の視聴者が不快と感じ電話してきたことは、やはり不快な念を与えたと判断すべきではないか。
▼今回のパフォーマンスについては、『紅白歌合戦』としては相応しくなかったが、「国内番組基準」の”卑わいなことばや動作による表現はしない””人心に不快の念を起こさせるような表現をしない”には当たらない、と考えている。不快の念を感じる人もいれば、感じない人もいる。そうした中で、感じた人がいるというだけで、「国内番組基準」に違反すると決めることは、難しいと思う。表現の自由については、厳格に対応したい。
▽番組の途中で「裸ではなく、ボディースーツを着ています」と釈明していたが、ボディースーツだったらいいのか。
▽NHKの「新放送ガイドライン」には、”常に品位と節度を心がけ”と明記しているが、今回のパフォーマンスが違反には当たらないと考えているのには疑問を感じる。
▼「新放送ガイドライン」は「国内番組基準」を遂行するための行動指針である。放送に至るまでのプロセスについては問題がなく、ガイドラインに抵触しているとは考えていない。しかし、生放送の対応の仕方については課題が残されたと思っている。

【カメラワークや演出について】

▽生番組ではハプニングが起こることはあり得るのに、不測の事態に対処できなかったという制作体制には驚きだ。
▼出演者も多く、メインボーカルが宙釣りのうえ動き回っていたため、衣装を映さないようにして顔のアップだけにすることや、ボディースーツを着ていることがわかったのでロングの客席中心の映像にするという判断に至らなかったため、回避の方法が取れなかった。
▽視聴率を上げるため自分たちの手に負えない演出をしたのに、カメラワークが複雑だったなどと言い訳にしている。
▽今回のような生番組でのハプニングや不測の事態の時にどう対処するかは現場の制作者の感性にかかってくるので、技術の指導だけではなく、日ごろからテレビの表現についての感性を磨くことが必要だ。
▼本番まで公表しないとしていたイリュージョンについて、曲目発表の際に言ってしまったため、OZMA側がもっとインパクトのあるパフォーマンスを考えるようになったと思われる。本番の衣装については、双方が明示的な確認をしていなかったことに原因がある。出演者とのパフォーマンスの確認や生放送における回避の仕方について、今後検討していく必要がある。

【公共放送について】

▽最近の民放テレビは、性的露出度が多くなっている状況だが、公共放送であるNHKは民放とは違う”らしさ”を出してこそ存在意義があるのだからNHKでなければできない番組を作ってほしい。
▽公共性のあるテレビは、送り手の意図だけではなく、受け取った側がどう見るかということにもっと気を使う必要がある。
▼もし紅白をこの先、例えば5年くらい続けるとしたら、どんな番組が相応しいのか議論していきたいと考えている。

日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』について審議

次に、日本テレビ『火曜ドラマゴールド・甦った闇の死置人』をビデオ視聴のうえ審議、委員からは次のような意見があった。

  • 少年が犯罪を起こす第3話では、少年法に守られているかのような作りに疑問を感じた。全体的に”死”を冗談のように扱っている。
  • かつてあった時代劇の番組をパロディ化して現代版に作っているようだが、時代劇のほうは一種のテレビ文化を築いたのに、その良さがゆがめられたようで残念だ。
  • ドラマとして娯楽のレベルを超えている。レイプシーンなども残虐で、青少年に配慮する放送時間は午後5時から9時までとなっているが、現状では子どもたちも見ている時間帯なので放送には配慮が必要だった。
  • ドラマとして作り方が安易に感じるが、企画意図、制作期間などを知りたい。
  • 作り方に趣味の悪さがあるが、それほど青少年へ悪影響があるとは思えない。

以上の審議の結果、委員会として当該局に対し、企画意図や制作内容などについて質問し回答を求めることとした。

また、青少年委員会に寄せられている視聴者意見のバラエティー番組といじめとの関連に対する意見について、「バラエティー番組といじめの関連は実証できないが、テレビは子どもにとって重要な情報提供メディアなので、バラエティーの罰ゲームなどが子どもの発達成長権を侵さないようにするため青少年委員会として問題提起していく必要があるのではないか」「テレビが子どもの発達、成長に影響があるという実証が明確に出ていればいいが、大人の娯楽を楽しむ権利との関係を考えると難しい」「本や映画は大人向け、子ども向けと区分けすることができるが、テレビの放送時間帯は切り分けができないのではないか」「民放連では、5時から9時までの時間帯での放送は青少年に配慮するということになっているが、現在の子どもたちの生活スタイルを考えると午後11時までとしてもいい」といった発言があり、今後も委員会で続けて議論することとなった。

中学生モニターについて

2月は16人から、24件の報告が(一人で複数件の報告有)寄せられた。分野別ではドラマが10件と多く、バラエティーと情報番組が5件ずつ、そしてドキュメンタリーが2件、ニュースと番組宣伝について1件ずつだった。

局別ではフジテレビが7件、TBS6件、日本テレビ5件、NHK3件、テレビ朝日2件、テレビ東京1件となっている。

  • ドラマでは、先月に引き続き『花より男子2』と『拝啓、父上様』は好評で「前より面白くなった、終わらないで欲しい」、「背景にも役者にもこだわっていて、毎週毎週神楽坂に引き込まれるようだ。親と見ても楽しめる」という意見があった。『李香蘭』にも1件、「見ていて楽しい場面も多かったけれど、時々残酷な戦争のシーンがあった。戦争というのはそういうものなのだと改めて思った」という意見が寄せられた。『華麗なる一族』には2件、「とてもスケールが大きく1クールではもったいない程よい」と好評だが、「髪型は今風で服装もお洒落すぎ、特に”全然大丈夫ですよ”というセリフにはびっくりした」という注文もあった。『和田アキ子殺人事件』にも2件、「笑える場面が多々あり、すごく面白かったが、全部を本格的にドラマ化した方が、現実に戻されなくて良かった」「単なる番宣と思える場面が多くすこし期待はずれだった」などの注文だった。
  • バラエティー番組にはすべて1件ずつで、『行列のできる法律相談所』には「勢いがあり見ていて面白いがトークのときに下ネタが多すぎる」、『IQサプリ』には「大好きな番組の一つだが最近のIQは問題が限られてきている」、『リンカーン』にも「内容はとてもいいなーと思ったんですが、罰ゲームが何かを爆発させるというもので危険」など、ほとんどが賛否を併記する意見だった。
  • 情報番組にも意見は1件ずつで、慢画家・浦沢直樹さん出演の『プロフェッショナル』は「浦沢さんは楽ばかりしてヒットを出したんじゃないということが強く印象に残った」、『世界一受けたい授業』も「理科が一番楽しく毎回実験には驚かされる」と、好評だった。また『日本アカデミー賞授賞式』には「途中音声が全く入らないというトラブルが起きた。トラブルは仕方ないが、その後の対応をもっと誠意をもって行うべきだ」という注文が寄せられた。
  • このほか「プロジェリア」という早期老化症をもつ少女を扱った『サイエンスミステリー』には「明日からの自分の生き方をもっと濃くするためにもっと1日を大切にしようと思った」という感想が寄せられた。また『NEWS ZERO』も「毎日キャスターが変わり興味がわく。特に月曜日は1枚の写真から事件を説明していてあまりNEWSに興味がない私達の歳でも気楽に見られていい」と好評だった。

2月27日に開かれた青少年委員会での委員の意見を列挙する。

  • 『世界一受けたい授業』『プロフェショナル』など知的好奇心を満たす番組に結構関心を持っている。番組制作者も中学生がしっかり番組を見ていることを認識してほしい。
  • 『IQサプリ』で文字の色が赤くチカチカするという指摘があった、注意深く見ている。
  • 『風林火山』での歌舞伎役者の発声が他の人と異なり気になるという指摘や、『華麗なる一族』での昭和が舞台なのに「「全然大丈夫ですよ」という言葉使いに驚いたという指摘は鋭い。
  • 『日本アカデミー賞』の音声中断後の対応がまずいという指摘はもっともだ。
  • 『あるある…』の事件の影響で、大化の改新を扱った『NHKスペシャル』で偉い先生がしゃべっても嘘っぽく感じた、という意見があった。今の時期だからこういう意識を持って、メディアリテラシーを勉強するのも悪くはないかもしれない。

調査・研究活動について

橋元委員から、2月24日に全6回、36人のインタビュー調査を終了した。これから事前アンケートとインタビュー調査をまとめ、今年の夏ごろを目途に報告書を出す予定である。また、併せて報告会の開催も考えている、との報告があった。

第75回 放送と青少年に関する委員会

第75回 – 2007年1月

『紅白歌合戦』関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

『紅白歌合戦』関する視聴者意見について審議

はじめに、年末恒例の『NHK紅白歌合戦』で、男性歌手の衣装や女性ダンサーの裸に見えるボディースーツについて視聴者から「卑猥で子どもや女性への配慮がなく、とても不快だった」「公共放送としての品位にかける」「放送局は知らなかったというが、あまりにも無責任ではないか」といった批判的な意見が多数寄せられ、これを基に審議した。

各委員の意見は次のとおりである。

  • 年末恒例の子どもからお年寄まで家族揃って見る番組だからこそ、視聴者は期待を裏切られたと感じるのではないか。局側は話題づくり、視聴率が取れることを狙ってやっているとしか思えない。知らなかったという対応は無責任に感じる。
  • 国民的な番組と言われているにしては、演出が卑猥な感じがする。衣装については事前の打ち合わせで分かっているはずなので、演出側の冒険がすぎたのではないか。
  • 番組の途中で局のアナウンサーが、「裸ではなく、ボディースーツです」と弁解のような謝罪をしていたが、裸でさえなければ良かったのか。対応の仕方に問題がある。
  • この歌手は、こういったパフォーマンスを常套的にやっているので、局側も分かっていたはずだから演出には気をつけるべきだった。NHKでやったからこそ視聴者に与えたインパクトは大きい。
  • NHKは、公共放送であるから、公共性を強く意識する必要がある。こういった国民的な番組で、大多数の視聴者が不快に思ったことを、重く受け止めるべきだ。
  • 歌番組の演出には、現場の勢いも必要だが、やはり出演者との信頼関係をきちんとつくっておくべきだ。会長会見で謝罪はしていたが、遅すぎたし言い訳に聞こえたのはいかがなものか。

以上の審議の結果、視聴者からの厳しい指摘や青少年への影響を考え、委員会としては当該局に対し、事実経過の説明を文書で求めることを決定した。

次に、法律的に犯人を罰することが難しい事件の被害者のため、恨みを晴らすというオムニバスドラマについて、「些細な理由で人を殺し、遺族が犯人の死刑を依頼する。あまりに人の死を軽く扱っている」「人を殺して恨みを晴らすという考えはおかしい」「レイプや殺人の描写、子供の虐待シーンはあまりにも残酷すぎる」といった意見が寄せられ、委員会では当該局にビデオ提供を依頼し、それを視聴のうえ、次回委員会で審議することとなった。

また、友達と同じ会社の携帯電話を使っていない女子高生が”お金がかかるから電話しないでいい”と謝っている携帯電話のCMについて、視聴者から「いじめを助長する」「同じ携帯を持ってない子は仲間外れになって仕方ないといわんばかりだ」「仲間外れにしていじめを連想させる」といった意見が寄せられ、委員からは「”いじめにつながる”と言っているのは、若い視聴者が多いようだが、いじめに対して若い人が敏感になっているのではないか」「このCMが問題と言うより、みんながいじめに対してナーバスになりすぎていて、それがいじめを抑止する方向に進んでいない」といった発言があった。

中学生モニターについて

1月のレポートはやや少なく、19人から30件(一人で複数件の報告有)が寄せられた。分野別ではドラマとバラエティー・音楽がそれぞれ13件、11件と多く、他には情報番組が4件、ニュースと教養番組が1件ずつだった。

局別ではフジテレビが10件、日本テレビ8件、NHK5件、TBS4件、テレビ朝日と朝日放送が1件ずつだった。

複数意見が寄せられた番組を中心に紹介する。

  • ドラマでは『花より男子2』が4件。一般視聴者からは「暴力や乱暴な言葉づかいがひどい」という批判があったが、中学生の意見はその点は心配しながらも「去年のものとはスケールが違い内容が濃くてあっという間に時間がすぎる」「支えてくれる人がいることはどんなに幸せな事かがわかる」などといずれも好評だった。また『佐賀のがばいばあちゃん』には「貧乏もへっちゃら、自分の信念を曲げない生き方はミラクルだ」「これからも世間で話題になった本をドラマ化してほしい」など、『拝啓、父上様』にも「都市化と老舗、父を知らぬ主人公などの主題を大きな物語に作り上げている」「ゆっくりした時間が流れていて好き」など、概ね好評な意見が2件ずつ寄せられた。
  • バラエティー・音楽では、『紅白歌合戦』に「ボディースーツの時に妹が目をそらしていた。来年はみんなで見られるものにしてほしい」「問題は誰にも言わずに本番にああいうことをやったこと」など3件。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』には2件、「内容は面白くて良かったが罰ゲームが厳し過ぎた」という意見が寄せられた。
  • その他、いじめを特集した『SMAP×SMAP』には「今いじめられている人や、それを解決した人の話を丁寧に取り扱いとても考えさせられたが、中学生が大勢出席している割に意見が少なく物足りなかった」という注文が、また、いじめなどの報道に関して、事件が起こった時だけでなくじっくり話し合ったり(『ジェネジャン』)振り返って報道する事(『スーパーモーニング』)の大切さを訴える意見もあった。

モニターのレポートに関して、各委員の発言は次のとおり。

  • 『花より男子2』の意見でも感じるが、中学生は番組を深くしっかり見ているのが分かる。大変良い事だと思う。
  • 『佐賀のがばいばあちゃん』が好評だったが、ああいうドラマを見るのは興味深い。
  • 『のだめカンタービレ』で、マンガがテレビになって音楽がついて物語が盛り上がったという意見があった。次にマンガを読む時にその音楽が浮かぶだろう、心に残る番組だったのだと思う。
  • 原作がマンガのドラマが多すぎるという意見もあった。テレビの作家も育ってほしい。
  • いじめの問題を、シリーズでやるなど継続的に取り上げることは、中学生の言うとおり大切だと思う。
  • 『SMAP×SMAP』で中学生の意見が少なく物足りないという指摘があったが、イギリスの番組と比べると日本は有名人に頼りすぎていると思う。

中学生フォーラムについて

12月26日に行われた「中学生フォーラム」について総括をした。各委員の感想は次のとおり。

  • 中学生がハキハキしゃべり、内容・テーマ設定も良かった。
  • 中学生の物怖じしない発言には感心した。制作者の”バラエティーお風呂論”に対し”お風呂なら効能が必要で、入って気分が悪くなるのは困る”と切り返したのはすごかった。またテレビと携帯を比較するのは時代遅れという発言も良かった。
  • インタビュー調査の中間報告は、フォーラムの話し合いとうまくかみ合った。
  • 並び方が横一列で、手を上げたのに指されないなど悪条件はあったが、中学生はがんばった。
  • 中学生と制作者が直接話すという事には今回も意義を感じた。

「中学生フォーラム」の内容をまとめた冊子は3月に発行予定。またNHK教育テレビ『土曜フォーラム』(70分番組)で、2月17日(土)夜11時30分から全国放送する。

調査・研究活動について

橋元委員から、インタビュー調査も残りあと2回となり、これで36人のインタビューが完了する。その後、事前アンケートとインタビュー調査をまとめ、報告書の作成にとりかかる、との報告があった。

第74回 放送と青少年に関する委員会

第74回 – 2006年12月

青少年に関する視聴者意見について審議

調査・研究活動について …など

12月12日に開催した今年度第8回青少年委員会(通算74回)では、11月21日~12月4日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見を基に審議したほか、調査・研究活動や中学生フォーラムならびに2007年度の委員会活動について検討した。

議事の詳細

日時
2006年12月12日(火)
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」(千代田放送会館7階)
議題
出席者

青少年に関する視聴者意見について審議

今回も、いじめによる自殺報道について、視聴者から報道のあり方に関する意見が寄せられ、これを基に審議した。

各委員の意見は次のとおりである。

  • 新聞では自殺防止のメッセージを掲載したりしているが、放送もいじめによる自殺者を悲劇の主人公のように扱うのではなく、自殺をさせないための報道を考えてほしい。
  • 最近では、事件の再現や状況を放送する時に、情緒的なBGMを入れたりすることがよくあるが、もう少し冷静に報道することが望ましい。
  • 報道姿勢とは別に、放送技術の発達で編集なども簡単にできるので、過剰に情に訴えるなど報道の方法も変わってきているのではないか。
  • いじめ自殺だけではなく、飲酒運転事故もそうだが、もう少し客観的に報道できないものか。一つの問題だけ集中的に報道していては、長続きしないのではないか。事件・事故によっては静かに長く報道していかなくてはならないものもあるので、報道するテーマをより分けて取り上げることも必要だ。
  • 民放連がWHOの「自殺予防―メディア関係者向け手引き―」を民放各社に送付し、自殺報道については十分留意するよう要請したことが効果あったのか、このところの報道は多少あらたまった感じがする。

次に、同じく報道のあり方について視聴者から「事故死した子どもの写真を自分のHPに無断掲載し、訴えられている教諭を取り上げた番組で、前任の小学校の生徒に水着などの写真を見せ、”これは君の写真だよね”と直接取材をしていたが、事件を知らないかもしれない子どもの心に、傷を残したと思わないのか」といった意見が寄せられた件について、委員からは「やりすぎではないか、子どもへの取材は慎重に考えるべきではないか」「事実を知らないかもしれない子どもにわざわざ写真を見せて知らせることはない」といった意見が述べられた。

そのほか、中学生の妊娠をテーマに取り上げたドラマについて、委員から「番組が終了した段階で、なぜこのような企画の番組を作ったのか聞きたい」「子どもたちが妊娠・出産について考えるきっかけになったのではないか」「この局は以前も視聴者から問題だと言われたドラマを放送していたが、今回も話題づくりとしか思えない」といった発言があった。

調査・研究活動について

橋元委員から、第4回インタビュー調査の報告があった。また、12月26日開催の中学生フォーラムで発表するインタビュー調査の中間報告について、説明があった。

主な報告内容は次のとおり。

  • 長時間視聴の子どもだからといって、テレビが一番大切なわけではない。
  • 10年前の調査と比べ、子どもにとって一番大切なメディアは、テレビから携帯電話になりつつある。
  • 今の子どもは、ほかの情報メディアを利用しつつ、”ながら”でテレビを見ている。

中学生フォーラムについて

事務局からフォーラムについて、下記のとおり説明があった。

  • 司会は、昨年同様タレントの麻木久仁子氏に依頼した。
  • 今回は、4月からの中学生モニターが主役で、モニターからのレポートを中心に番組制作者との話し合いを進めていく。
  • モニターからのレポートを集計し、関心が高い番組ベスト10や評価する番組・しない番組ベスト10などの番組評価を基に意見交換を行う。

2007年度委員会活動について

来年度の委員会開催日、中学生モニターの公募、中学生フォーラムの開催、インタビュー調査の結果報告などについて検討した。また、視聴者意見を基に委員会が出している「要望」や「回答要請」の取り扱いについて、意見交換した。

(注)今年度は、テレビ界全体の問題とし「少女を性的対象視する番組に関する要望」をNHK、民放全社に、放送前の個別番組に対し「自粛のお願い」を当該局に出している。

主な意見は次のとおり。

  • 今年度は放送前の番組に対し当該局に「自粛のお願い」を出したが、今後もこういったかたちで出していってもいいのではないか。
  • 放送界全体の問題については「要望」として出す必要もあるので、ケースバイケースで「要望」または「回答要請」として出していけばいいと思う。
  • 「要望」というかたちで出すと局側は厳しく考えてしまう。委員会は検閲機関ではないので受け取る側が萎縮しないような体裁や用語を考えていく必要がある。
  • 局側は「回答要請」についても重く受け止めているのではないか。局側の考え方を知るためには、報告のようなかたちで説明を求めればいい。もっと局側と委員会との意見のやりとりができる方法を考えるべきだ。
  • 委員会として問題点を指摘することも必要だが、表現者の意欲をそぐようなことだけは避けたい。

以上の結果、視聴者意見の取り扱いについては、委員会で合意したうえで、放送局との間でより頻繁に意見の交換を行い、対応していくこととした。

中学生モニターについて

◆12月の報告

12月のレポートは23人から、37件(一人で複数件の報告有)寄せられた。分野別では今月もドラマが断然多く16件、バラエティーと情報・討論番組が5件ずつ。スポーツが4件。アニメが2件、映画とドキュメンタリーが1件ずつだった。

報告が多かったドラマから紹介する。

  • 『14才の母』への意見は5件。これまでは共感の意見が大半だったが、やや風向きが変わった。共感する意見は「最近は”いじめ”などの理由から、自ら命を絶とうとしてしまう子供が多いので、もっと命の大切さを主張するようなドラマを作ればよい」という1件。他は「命の大切さを教えてくれる」という点には共感しても、「話の展開が速すぎたりゆっくりすぎたりしてついてゆくことができない」、また「14才という年齢でしてはいけない行為だと訴えてもいい」というものだった。さらに「世界を見ると、暴力により強制的に”10代の母”にならされている人もいるのに、そのことを考えないで遊び心でこのような番組を作っている。番組を作っている人の考えが伝わってこない」という注文もあった。

    また「中学生フォーラム」(12月26日開催、後述)の事前打ち合わせ会で『14才の母』について話し合ったのをきっかけに、『家族善哉』という、主人公が16歳で妊娠出産したお昼の連続ドラマを取りあげ、中絶の現状なども調べ、自分に引き寄せて考えを述べた男子の報告も寄せられた。「一番大切なのはそういう(妊娠させるような)行為を軽々しくしないということ。中途半端な”生きること”に対する教育しかされていないことが、原因なのではないかと思った。この番組をみて”生きること”などについて知らないことが分かってきた」という内容だった。

    『のだめカンタービレ』には4件。「最近どんどん面白くなってきて、次回も早く見たい」など好評が2件、他は「最初はのだめの発言やリアクションが笑える内容で楽しかったが、中盤からどんどん真面目な話になった」「初めに漫画を読んでとてもよいイメージがあったのに、演奏を聴いてがっかりしました」という意見だった。

    『僕の歩く道』は、「このドラマを見た後は気持ちがすごくおだやかになれる」、「これからもメッセージ性の強い上質なドラマをつくってほしい」などと2件とも内容は好評だった。しかし「放送の次の日学校でふざけてセリフを真似している人がいる」という影響への心配と、「ドラマ内のCMに同じ俳優が出演すると興ざめする」という注文が添えられていた。

    さらに土曜深夜の『地獄少女』について、「地獄通信というサイトに地獄に流したい人の名前を書きこむと、相手を地獄に流してくれるという話ですが、ネット上に同名のサイトがある。テレビの影響がこのような形で現れてしまうのはイヤだなと思いました」という報告も寄せられた。

  • その他の分野で2件意見が寄せられたのは『世界バレー』について。「受験生ですが、日本選手が一生懸命最後まで戦っている姿に感動し、自分も頑張ろうと励まされました」などといずれも好評だった。
  • バラエティー・情報番組では、『熱血!平成教育学院』は「見ている人を熱中させる問題を選んでいる」、『クイズ!ヘキサゴン?』は「少し人を馬鹿にして笑うところに疑問も感じるが、許容範囲なのでよ」、『ぷっすま』は「むちゃなところもあるが、叩いたりせず口で勝負していて品がある」、『世界まる見え!テレビ特捜部』は「毎週驚かせてくれて楽しみ」、『金曜かきこみTV』は「意見を掲示板に書き込め、大人が自分達の意見をもとに話し合ってくれて、とても親しみが持てる」等、各番組とも概ね好評だった。ただ『IQサプリ』に「小中学生向けにもうちょっと簡単な問題を出して欲しい」という注文があった。
  • 先月はたくさん寄せられた”いじめ”に関するレポートは1件で、『感動特番!みのもんた動物に聞いてみよう』について、「この番組のテーマが、生きることだったり、いじめだったりした所が驚きで、番組からもその内容がしっかり伝わってきた」という意見だった。

中学生フォーラム開催

第6回の中学生フォ-ラムは、12月26日に千代田区平河町のルポール麹町で「中学生モニター 今、テレビに言いたいこと」をテーマに開催された。中学生モニター24人(前・後期合わせ)と、在京民放キー5局とNHKの番組制作者が集まり、麻木久仁子さんの司会で話し合いが進められた。 まずこれまでの中学生モニターの報告をもとに、関心が高い番組と評価が高い番組のベスト10を紹介。そして関心も評価も一番高かった『14才の母』についてと”いじめ”にまつわる問題を中心にすえ、活発な議論が繰り広げられた。

休憩後、青少年委員会橋元委員の「小中学生はテレビをどう見ているか?」という調査・研究の中間報告をもとに、熱心に見る番組・テレビと携帯どちらが大切か・これからのテレビのあり方などについて、意見交換が行われた。

このフォーラムの内容は、在京民放各局の検証番組で放送される他、NHK教育テレビ『土曜フォーラム』(2月17日夜11時30分からの予定)で全国放送される。また内容をまとめた冊子を、3月中に発行する予定。

第73回 放送と青少年に関する委員会

第73回 – 2006年11月

いじめによる青少年の自殺報道について

青少年に関する視聴者意見について審議 …など

いじめによる青少年の自殺報道について

鈴木秀美委員から「いじめによる子どもの自殺の連鎖が起こっている。今後、このような状況が続くのであれば、子どもに影響をおよぼすと考えられるので、自殺報道について青少年委員会で検討すべきではないか」との問題提起があり、いじめによる自殺報道のあり方について審議した。

各委員の意見は次のとおり。

  • いじめによる自殺報道で自殺の連鎖が起こっていると指摘されているが、以前はいじめによる自殺なのかどうかの真相究明がなかなか難しいときもあった。遺族側からすれば、いじめによる自殺だったと報道することで学校側がいじめ自殺を認めたりすることは大きな価値がある。また、その事実が報道されることの意義も大きい。
  • センセーショナルな取り上げ方が自殺の連鎖を生むのではないか。いじめ問題も自殺が起きるとそこだけに報道が集中しているようなので、日ごろから地道に取材し、きちんと検証して報道することが大切だ。
  • 自殺報道によって、さらに自殺者が増えるということは、すでに統計的に証明されている。だからといって報道をするなというわけにはいかないので、難しい問題だ。
  • 報道の仕方が問題ではないか。WHOの「自殺予防―メディア関係者向け手引き―」には自殺の報道について、いくつかの留意点が書かれているが、報道をするなとは言っていない。ただ、報道の現場の人は、いじめ自殺のような報道については、最低限こういった手引きがあることを知ってほしいと感じた。
  • いじめ自殺の報道については、メディア側が短絡的に犯人探しをしているようで、学校側に対し結論を迫っている報道が目についた。
  • 今回のいじめ自殺報道を考えると、いじめられた側の最後の抵抗として”自殺”が大きく報道されたため、自殺の連鎖が起きたのではないか。日本では、いじめた側を死をもって懲らしめるというメンタリティーが強いため、いじめ自殺の経緯を報道するだけでなく、そこの部分が強調されたことが問題だったのではないか。
  • いじめ自殺報道の難しさはあるが、メディアとしては、子どもたちが自殺しないですむ方法も考え報道してほしい。客観的にニュースを流すのではなく、例えば、いじめ相談電話のテロップを出すとか、たった一言でもいいから子どもたちを救える放送をしてほしい。
  • 福岡中2男子自殺の報道では、学校側の対応の悪さがあったかも知れないが、メディアが正義の味方のように学校を糾弾している報道があったので、少し行きすぎではないかと感じたし、あのような報道では自殺の連鎖は食い止められない。
  • 相変わらず自殺した子どもの友だちに取材したりしていたが、青少年委員会が出した『「児童殺傷事件等の報道」についての要望』が生きていないのは残念だ。

以上の審議の結果、いじめによる自殺報道の行き過ぎを指摘する意見もあったが、委員会での議論を議事録に掲載することに留め、委員会として要望を出すには至らなかった。

青少年に関する視聴者意見について審議

今回は、いじめによる自殺報道について、視聴者から報道のあり方に関する数多くの意見が寄せられた。各委員の意見は前述のとおりである。

また、先月同様、中学生が妊娠して子どもを産むというドラマについて「不適切な番組」「倫理観の欠如」といった意見が寄せたれたが、委員からは「中学生モニターの意見からも、子どもたちは冷静に受け止めているようで、番組が悪影響を与えているとはあまり感じられない」といった発言があった。

そのほか、青少年委員会が10月26日に公表した「少女を性的対象視する番組に関する要望」について、視聴者から「バラエティーが面白くなくなった」「子どものチャンスを奪うような一方的な解決をしないで」といった批判や「要望を評価する」といった賛否両論の意見が寄せられた。委員からは改めて「子どもがダンスで表現することに対しダメだと言っているのではない。子どもが性的対象になることについて、日本は国際的に見て甘いと感じる。テレビでは厳しくするのが当然ではないか」との意見が出された。

中学生モニターについて

11月のレポートは24人から、39件(一人で複数件の報告有)寄せられた。分野別ではドラマが断然多く19件で、『14才の母』に7件、『のだめカンタービレ』に4件意見が寄せられた。バラエティー・音楽が9件、情報・ドキュメント・ニュースについてが7件、そして映画・アニメとスポーツが2件ずつだった。まず2本のドラマの意見から紹介する。

  • 『14才の母』への意見は7件と倍増し、男子からも1件意見が寄せられた。男子の意見を含めほとんどが「第1話から見ているが、題名とは違ってずっしりと重みのある内容で命とは何かと問いかける。”私はこの子に会いたいの”と、お腹をおさえながら訴えかける姿には感動し、涙があふれてきた」などと、14才での妊娠という事をひとまず受け止めた上で、主人公やドラマの内容に共感している。しかし1件「皆この番組を興味本位で見ているのは確かです。だから、大部分の中学生は、”生きてゆくために必要なことを伝えてくれる”なんて、思っていないと思います。本当に、そういうことをTV局側は伝えたいのならば、こんなに美しいドラマにしてはいけない」という番組批判があった。
    『のだめカンタービレ』の4件は、「のだめの行動が面白くキャスティングも意外性がある」とすべて好評で、「面白い漫画はたくさんあるから、もっとたくさんの漫画が広まって、もっと楽しいテレビドラマが増えてほしい」という意見もあった。
  • 今月ほかに目立ったのは、いじめや自殺に関する意見が分野を越えて6件あったこと。ニュース報道の分野で、「今マスコミがいじめを扱うのにあたって必要なのは自殺の連鎖をくいとめることだと思う。謝ったり言い訳している校長の姿なんてどうでもいい。それよりも”あなたは本当に大切な存在なのだ”、”君が死んだら悲しむ人がいる”などのメッセージを放送する方がとても重要なことだと思う」という意見など2件。『ETVワイド いじめを考えよう』には「いじめられる原因やいじめるきっかけが全然わからないので、中途半端な印象でした」という注文が、またバラエティーの分野でも『リンカーン』のフレンドリーダウンタウンのコーナーについて「ダウンタウンの二人から何度もビンタなどをされる。見ていても気持ちよくないし、学校では友達が後輩に向かってこの企画のようにビンタをするなどの真似をしている。そんな”いじめ”を助長するようなことはテレビで極力やってほしくない。自分はこの番組自体は好きだし、この企画に参加しているダウンタウンも好きなので、この企画だけは本当にやめてほしい」という注文が寄せられた。

委員会での委員の発言を紹介する。

  • 『14才の母』は、ドラマとして主人公を美化しすぎの感があるが、中学生たちは「生命の大切さ」を描くところに共感している。中学生なりに考え、番組に向き合っているのだと思う。
  • 『のだめカンタービレ』は、リアルなものしか素直に受け入れない子どもの気持ちをつかみ、うまく作っている。メリハリがあり面白い。最近はマンガの世界に良い人材がいる、テレビの世界も作家の育成にもっと力を入れてほしい。
  • 北朝鮮の核実験報道が「北朝鮮を責めるばかりで、他の核保有国に触れないのはおかしい」という意見はまっとうで、一部の番組ではやっていたが、確かに北朝鮮を非難するアメリカなど他の核保有国の過去の問題や現実も紹介すれば、北朝鮮の問題もより鮮明になる。
  • 『めざましテレビ』のバラエティー化が目立つという指摘も的を射ている。ニュースを子どもたちにわかりやすくきちんと伝える努力を忘れないでほしい。
  • 自殺報道についての「”あなたは本当に大切な存在なのだ”、”君が死んだら悲しむ人がいる”などのメッセージを放送する方がとても重要なことだと思う」という意見は適切だ。

調査・研究活動について

橋元良明委員から、調査企画チーム(第10回会合)の概要と11月19日の本調査(第3回)について、下記のとおり報告があった。

  • 3回の本調査で、全体の半分の18人にインタビューを行った。当初から予想していたが、アンケート調査では平均値が出るが、インタビュー調査では個別の内容しか出てこないので、傾向を出すことが難しい。今後、どうまとめていくかが課題である。
  • インタビューを行って感じたのは、暴力シーンや性的シーンに対し批判的に見ていない子どもがほとんどだった。また、スポーツ番組やドラマは熱心に見ているが、ニュースや報道番組はチラチラ見が多い。
  • 受験をするかしないかでライフスタイルが違ってくるので、それによってテレビの見方も変わってくるようだ。
  • 12月26日開催の中学生フォーラムで、現在までのインタビュー調査の中間的な報告を発表する。

第72回 放送と青少年に関する委員会

第72回 – 2006年10月

少女を性的対象視する番組に関する要望 (案) について

青少年に関する視聴者意見について審議 …など

少女を性的対象視する番組に関する要望 (案) について

前回委員会で申し合わせたとおり、本田委員長、大日向委員、山田委員が起草委員となり「要望」(案) を作成。それを基に審議した。

なお、審議するにあたり本田委員長から、「委員会では、視聴者からの厳しい意見を踏まえ、今年6月から審議を重ね、要望を出すこととなったが、委員会としての議論をさらに深めるため、次の2点についても各委員からの意見を求めたい」と発言があった。

1.要望は児童の人権、福祉の観点から「児童の権利条約」の趣旨に基づき作成したが、権利条約の中には、”児童が意見を表明する権利が確保されている(児童の意見表明権)”ということが盛り込まれている。権利条約の一つの主張からみると、好ましくない番組であっても子どもが出たいと希望するなら子どもの自主的な意見として尊重すべきではないかと考えられるので、これについてどう対処するか。

各委員の意見は次のとおり。

  • 児童の意見表明権は、本来、子どもの意見を理解し、年齢によっては大人がそれをサポートすることであって、子どもが希望することでも場合によっては大人の判断で止めさせることもできるというものであるから、今回の要望は、この趣旨に反するものではないと考えられる。
  • 表明権の趣旨は、子どもの話に耳を傾けるべきであるということで、子どもの意見をすべて通すというものではない。特に放送という公共の場を考えると、当てはまらないのではないか。
  • 「放送基準」には”児童としてふさわしくないことはさせない”と明記してあるので、それに照らし合わせておかしいと思う番組については、意見表明権を認めなくてもいいのではないか。

2.要望にはタイトルを含め、一般的な概念として使われている「少女」と法律用語の「児童」という言葉が混在しているが、統一すべきかどうか。

各委員の意見は次のとおり。

  • 視聴者意見には、少女ばかりではなく、小さい男の子の裸に対する批判もあるし、男の子が性的対象になる恐れもあるので、児童で統一してはどうか。
  • 男の子の裸は意図して放送しているのではないものが多いが、少女の場合は、明らかに幼いエロティシズムを狙っていると思われるので、ここははっきりと法律の部分は「児童」、放送の問題点の指摘については「少女」と分けて使用するべきではないか。

以上の審議の結果、?については、今回の要望は児童の人権、福祉を守るものであって、児童の意見表明権を侵すことにはならない、?については、法律的な部分は「児童」、問題点の指摘部分には「少女」を使用することで一致し、原案に若干の修正を加え、了承した。その後、10月26日に「要望」を公表し、NHK、民放各社に送付した。

「要望」の全文はこちら。

青少年に関する視聴者意見について審議

10月から始まった”中学生の女子が妊娠し、母親になる”という新ドラマについて視聴者から、「多感な年齢の子どもたちへの影響が心配だ」 「中学生が子どもを生んで育てるというと、ドラマとしては美しいが現実は違う」といった先月と同様の批判的な意見が多く寄せられ、委員からは、次のような意見が出された。

  • “中学生の妊娠は非現実的だ” といった意見があるが、そうは思わない。頻繁に起こっているわけではないが、あり得ない話ではないと思う。万引きシーンがあったが、ドラマとして必然性があったのではないか。
  • ドラマのテーマは”命の尊さ”となっているが、14歳の中学生が中絶しないで生むことを生命の尊重としているとすれば、すこし短絡的ではないか。
  • 視聴者からは批判的な意見が多いが、中学生モニターの意見をみると冷静に受け止めているようなので、今後、どういう展開になるのか注視していきたい。

次に、健康に関する情報番組で、ゲストの医師が「ADHD(注意欠陥多動性障害)は、食事の仕方によって発症し、キレ易くなったり犯罪者になる恐れがある」と発言したことに対し、視聴者から、「医学的に間違っている」「ADHDへの偏見を助長し、人権侵害だ」といった意見が寄せられた。委員からは、次のような意見が述べられた。

  • 病気の当事者や保護者にとっては深刻な問題なので、医師の発言を求める時は、1人の意見だけではなく、幅広い意見を求めることも必要ではないか。
  • 情報番組などで、科学的に原因も分からず結果が出ていない事象を取り上げるときには、細心の注意を払うべきだ。
  • 食生活のあり方や健康に関する番組が増えているが、病気予防や健康管理について前向きに喚起するものならばいいが、視聴者に偏見や不安を植え付けるような取りあげ方にならないよう注意してほしい。

このほか、放送局の対応に関する視聴者意見について、委員からは「意見・抗議の内容によっては、フォロー、フィードバックするなど、対応の整備も考えてもらいたい」と発言があった。

中学生モニターについて

多くのメンバーが代わった後期モニターの初レポートだったが、18人から26件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。分野別に分けると新番組が始まったドラマが最も多く12件、バラエティー・音楽が8件、情報・ドキュメント・ニュースが5件、そしてスポーツが1件だった。今月複数意見が寄せられたのは『14才の母』が3件、『僕の歩く道』が2件だった。

  • 『14才の母』の3件は全部女子からだが、「視聴者の方の反論とかもあったと思うけど、私はこの番組はそんなに変なシーンもないし、きちんと生きていくために必要なことを伝えてくれてるんじゃないか、と思いました」と刺激的なテーマにもかかわらず違和感なく受け止めており、「大人と少年・少女の気持ちを半分ずつ伝えていて丁度いい」などとすべて好評だった。ただし「新聞の番組欄を見ただけでもとても家族と一緒に見られそうもありませんでした」という女子の意見もあった。
  • 『僕の歩く道』も、「私は病気の話のドラマはあまり好きじゃありませんが、このドラマはなぜか好きになりました。幼なじみでいつも助けてくれる人がいて、いい人達に支えられていると思いました」、「僕はドラマをあまり見ないのですが、このドラマは毎週見たいと思いました」と好評だった。
  • 『のだめカンタービレ』は漫画からのドラマ化だが「楽しみにしていましたが、劇中の音楽全てがクラシック音楽でとても満足した」と、企画・演出とも好評だった。『Dr.コトー診療所』『世にも奇妙な物語』の連続企画や『名探偵コナンSP』『喰いタンSP』のスペシャル企画には好意的だったが、『電車男DX』には「本来の”真実の恋”というのがうすれてしまった」と注文意見が寄せられた。
  • バラエティーの分野では、『筋肉バトル!!スポーツマンNO.1決定戦』は「次の朝、学校でこの番組はとても話題になりました」と好評だったが、『嵐の宿題くん』には「大物司会者を抜いて若手だけで番組を進行すべきだ」、『志村けんのバカ殿様』には「下品で、食べ物を無駄にしていて、見るにたえなかった」、『クイズ$ミリオネア』には「一般人の時より芸能人の問題の方が、簡単な気がする」、『行列のできる法律相談所』には「子どもも見ることが多い時間帯なのだから、司会者の言葉遣いや話す内容にも気を配って欲しい」などの批判意見が寄せられた。
  • 情報・ドキュメント・ニュースの分野では、NHKスペシャル『プラネットアース第6集』が、「スタジオの出演者にコストをかけるより、その部分を番組の質にかけるこのような番組をふやしてほしい」、『イマイが暴く!架空請求スペシャル』も、「悪徳業者が負けているような気がしてとても気分がよくなりました」と好評だった。また北朝鮮の核実験を取り上げる多くの番組の姿勢に対して、「核開発はやってはいけないことかもしれないが、北朝鮮をせめるばかりで核兵器を持っている他の6つの国のことに触れないのはおかしい」と疑問を投げかける意見が寄せられた。

委員会での委員の発言も『14才の母』に集中した。

  • 中学生モニターの女子3人は番組を抵抗なく受け止めている。番組を冷静に見ており、素直な感想だと感じる。
  • 母親の出産に立会い「生命誕生の感動的な場を体験した」女子モニターがいた。「妊娠するという命について深く考えた作品で、様々な余韻を残すような深い作品であってほしい」という意見は説得力がある。
  • 「番組欄を見ただけで家族では見られないと思い、見るのを止めた」という女子の意見もあったが、やはり親としては子どもと一緒に見るのも話し合うのも恥ずかしい。
  • 中学生の妊娠は『3年B組金八先生』にもあったが、むつかしいテーマだと思う。中学校で性教育がしづらくなる傾向があるが、性教育の必要性は高まっている。この番組が、家庭や学校で性について考えるきっかけになればよいのだが…。

なお、第6回の「中学生フォーラム」に関連し、在京テレビ6局に出演者の推薦を要請したことを事務局から報告。また現在実行中の小・中学生のテレビ視聴インタビュー調査の途中経過を橋元委員がフォーラムの中で紹介し、問題提起をする事が決まった。

調査・研究活動について

橋元委員から、調査企画チーム(第9回会合)の概要と10月21日から始まった本調査(第1回)について、下記のとおり報告があった。

  • 第9回会合では、21日の本調査に向け、インタビュー項目の最終的なチェックを行った。
  • 第1回本調査では、6人の対象者にそれぞれ1時間20分ほどの時間をかけインタビューをした。
  • 6人を調査しただけでも、多様なテレビの見方が出てきたので、対象者の個性を生かしたサンプルをつくり深く分析したい。
  • 調査からは、テレビ視聴時間と携帯電話との関係が顕著に出てくるのではないかと感じた。

第71回 放送と青少年に関する委員会

第71回 – 2006年9月

日本テレビ『ウタワラ』の「チビっ子エロかわダンス選手権」について

低年齢層の子どもたちを性的対象とする番組への要望について …など

日本テレビ『ウタワラ』の「チビっ子エロかわダンス選手権」について

前回委員会では、放送前であったため、委員がビデオを視聴したうえで審議に入り、次のとおり意見が出された。

  • 親が娘の性を商品化としていることに対して、自覚が足りないのではないか。国際的に見て幼い少女の性的被害が問題になっている時に、公共の電波を使ってあのような映像を流すことは問題だと思う。
  • 最近、子どもを使ったダンス選手権といった番組がよくあるが、テレビ局側は子どもを利用して視聴率を取っているという構図が全般的に見られる。
  • 学芸会的な微笑ましいダンスを混ぜることで、全体的な雰囲気を緩和しようとする意図は感じられるが、中にはショックを受けたものもある。局としてテレビの公共性をどう考えているのかと改めて思った。
  • 10年位前はエロという言葉がテレビ番組に堂々と出てくること自体ありえなかった。エロという言葉を子どもに使ったり、日常のなかに平気で飛び交っていることに違和感があり、嘆かわしく思う。
  • 性的な事件との因果関係を見つけることは難しいが、ある特定の人にとっては、幼い少女に性的な欲求を抱くこともあるのではないか。また、子どもが成長している時に、早くからエロティシズムを喚起して何のメリットがあるのかと感じた。
  • 児童ポルノ禁止法や児童の権利に関する条約の議定書は、”子どもを性の対象として扱うことは、子どもが被害者になることだ”ということが前提になっている。そのことがあまり理解されていない。子ども本人は勿論のこと、親がいいといっても子どもの人権から見ると親も加害者になる。放送局は子どもにとって最善の利益を考えてほしい。

なお、今委員会で審議した内容については、当該局に文書で報告した。

低年齢層の子どもたちを性的対象とする番組への要望について

上記の『ウタワラ』での審議を踏まえ、前回委員会で申し合わせたとおり、最近のテレビ番組全般に見られる性的対象の低年齢化傾向について、個別番組に対してではなくテレビ界全体の問題として考え、青少年委員会として要望を出すこととした。

要望書の作成にあたっては、本田委員長、大日向委員、山田委員が起草委員となり、次回委員会で更に検討・審議することとした。

山口県徳山高専女子学生殺害事件の実名報道について

山口県で起きた徳山高専女子学生殺害事件の実名報道に関しては、死亡した容疑者少年の実名・顔写真を放送したことに対して、「死亡したのなら少年法の適用外になるのか」「すでに自殺している少年の名前や顔をさらす必要があるのか」など、視聴者から意見が寄せられ、またマスコミ界全体でも様々な議論がなされている。青少年委員会でも、今後の少年犯罪報道のあり方について考えるため、NHKと民放テレビキー5局に対し、同事件報道についての対応への回答を求め、それを基に少年法の規定や今回の報道について議論した。

【各局からの回答要旨】

・ 実名報道をした局

  • 日本テレビ:少年が死亡した時点で少年法の趣旨である「少年の更生の機会」は自動的に失われると判断した。本事件が重要事件であること、あと数カ月で20歳を迎えるなども総合的に考慮した。
  • テレビ朝日:容疑者少年が死亡したことによって、少年法の基本的な目的である「保護」「更正」の機会が失われたことや、事件の重大性などを考慮した。

・ 匿名報道をした局

  • NHK:逃走中とはいっても新たな事件が引き起こされるおそれが低いことなどの事情を総合的に判断した。
  • TBS:少年法の精神を尊重した。少年事件容疑者の実名報道に関して系列各局とともに、今年2月以来社内議論を重ねていたが、死刑判決が確定しても罪を犯した時に少年であったものについては、匿名を守るという判断をし、今事件もこの考え方を準用した。
  • フジテレビ:事件の性質、経過を考えると実名に切り替える理由はなく、放送の公共性・公益性を総合的に判断した。
  • テレビ東京:容疑者の少年が死亡したことによって罪は「確定」できない。少年法の趣旨を尊重した。

委員の意見は次のとおり。

  • 少年法第61条での例外を一切認めないのか、例外を認めるのかで判断が大きく分かれる。法律的に見て、表現の自由から考えると例外はあり得るが、それは、加害者が逃走中で次の事件を起こす可能性があると思われる場合である。今回のように加害者の少年が死亡した場合、少年法にある匿名が少年の更正・保護のためと考えれば、禁止する理由そのものがないので、実名報道するか、しないかはメディアの判断となったと考えられる。ただ、少年法には罰則がなく、例外も明記されていないので、今後、少年法そのものを検討する必要があるのではないか。
  • 逃走中で次の犯罪を起こす危険性があるとか、銃を持っているとか、などの場合を考えると例外を認めるかどうかの議論をする必要がある。ただ、少年法第61条の立法趣旨から見て、死亡したら規定が外れるということではないと思う。そういうことなら犯罪事実が確定後に、少年刑務所で死亡した場合も報道していいことになるわけで、それでは少年法の趣旨が損なわれる。死亡後でも少年法の趣旨を生かすことは、その少年だけでなく罪を犯した少年たち全員の更正を願うことが一つと、1人の人間の成長過程において少年時代の過ちは問わないという意味がある。
  • 今回の報道を考えれば、実名報道をしたメディアにやった者勝ちみたいな論理があったのではないか。この問題について普段から論議を高めていろいろなケースを考えながら報道したのであればいいのだが、報道する時点で考えたのだとすれば非常に危ういのではないか。
  • 局によっては、以前から検討会を設け、家裁の調停官や少年事件に詳しい弁護士などの意見を参考に、社内での議論を経て、局としての考え方をまとめたと報告がある。こういった姿勢には好感が持てるが、国民の知る権利だからといって実名報道したことには疑問を感じる。
  • テレビの中で1社でも実名報道すれば分かってしまうので、報道機関で協議はできないものだろうか。
  • 最近ではテレビが匿名にしても、インターネット上で名前や写真が流されることがあるのだから、テレビが少年法を遵守していてもかえって偽善と思われる恐れがあるのではないか。ネット上でいい加減な情報が流れるのだったら、マスコミが実名などの正確な情報を流すほうがいいという意見もある。
  • テレビとインターネットとの境界線が崩れてきているように思う。建前かもしれないが、テレビの持つ公共性から、あえて出さない情報があってもいい。
  • これを機会に民放連、各局で議論してほしいが、なにもかも細かくガイドラインを作ればいいというものではないので、そのあたりも検討することが望ましい。

青少年に関する視聴者意見について審議

プロボクシング世界対戦中継関連で、「亀田選手の横暴な態度や暴言を公共の電波にのせて放送していいのか」「八百長のような判定の試合は放送すべきではない」「暴力団との関係があるのではないか」といった視聴者からの批判が多く寄せられ、委員からは次のような意見が出された。

  • ボクシングファンから見ると批判したくなると思うが、多くの人がその批判に乗って反応しているのではないか。一過性の批判だと思う
  • 所詮、ボクシングもプロレスと同じショーの世界だからテレビ局も演出としてやっているのではないか。言葉遣いは本人の問題だ。
  • ボクシングはプロレスとは違うので、あのような放送ではスポーツとしての価値を落とすのではないか。視聴率稼ぎみたいな作り方をすると、ソフトとしての評価も下がりテレビ離れが加速することになる。

このほか、10月から始まる新ドラマで中学生が母親になる番組について、「義務教育中の14歳で母親になることを肯定するようなドラマは放送すべきでない」「”命の尊さを問う”と言っているが刺激的な事象をドラマにすることは倫理的に許されない」などの視聴者意見が寄せられ、委員からは、「今後、注視していきたい」との発言があった。

中学生モニターについて

今月は25人から、29件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。ドラマが最も多く11件、バラエティーが9件、情報・ドキュメント・ニュースが7件、そしてスポーツが2件だった。今月、意見が複数寄せられた番組はドラマ分野だけで、『僕たちの戦争』が3件で『マイボス・マイヒーロー』が2件だった。今回は最終回が多かったドラマを中心に内容を紹介する。

  • 『僕たちの戦争』は「現代と戦時中の青年がタイムスリップする設定がおもしろく、戦時中の青年が現在の渋谷の街に来て、”仲間はこんな未来を作るために死んでいったのか”と語る言葉に感銘した」など3件とも好評だった。
  • 『マイボス・マイヒーロー』には継続的に意見が寄せられたが、「途中から見始めたがおもしろくてはまってしまった。できれば再放送をしてほしい」、「とても新しい青春ドラマだなぁと思いました。見ていて脚本がよいのかなと思いました」と2件とも好評だった。
  • 『誰よりもママを愛す』は「本当に心が暖かくなったドラマです。私も将来、あんな家族をつくってみたいです」、『純情きらり』も「つらい事も悲しい事も、すべて音楽で乗り越えてきた桜子。私に再び音楽の楽しさを教えてくれたこのドラマが、私のお気に入りです」といずれも好評だった。『夏の冒険ミステリー カクレカラクリ』は「このような番組は見る側もいろいろ考えながら見ていることができるのでおもしろいし、楽しい」と好評。また『タイヨウのうた』には「病気なのに元気に、そして恋もして、夢に向かう…みたいな病気の話は本当に病気の人にとってイヤなんじゃないかと思います」という注文が寄せられた。
  • その他の分野では、『NYテロ5年目の真実』に「テロは何の意味もなく人を殺し、さらに戦争までも起こすということです。私たちはこのことを後世に伝えていかなければいけないと思いました」と共感する意見が寄せられた。
  • ニュースでは、紀子さま出産報道に関して「同じことを繰り返し一日中やっている」という注文が2件、自民党の総裁選挙についても「候補者は3人いるが、マスコミはそのうちの1人のことしか報道をあまりしていない」という注文が寄せられた。
  • 司会者にまつわる番組への批判が2件あった。『芸恋リアル』には「ゴールデンにあっていいのかと思うほど下品な番組だと思う。司会者はいつもおもしろがって下世話な質問ばかりをするし、傷つく芸能人がいるだろうランキングも平気でやっている」という意見、『アッコにおまかせ!』には「司会者女性の言動(未成年がお酒を飲むときは親がついていればいいと思っていたという発言など)や、メインになった企画には閉口するものが多い。やっぱりテレビは常識に添って作ってください」という注文が寄せられた。

委員会で出された青少年委員の意見を紹介する。

  • 『世界まる見え!テレビ特捜部』に「最初の30~40分ぐらいは全くCMがないのに、それをすぎるとCMが極端に多くなります」という意見が、『アンテナ22 密着!24時間テレビふたりの絆で激走100キロメートル』でも「感動的なエンディングの部分に下品な次回予告CMが入り腹がたった」という意見があった。中学生モニター会議でも話題になったが、CMについて関心が高いのでこれからも継続的に見つめていきたい。
  • 紀子さま出産報道に対する意見には同感。ニュースがバラエティー化しているところに問題がある。ニュースはもっと簡潔で分かりやすくていい。
  • 中学生モニターの指摘通り、トーク番組で議論にならない番組が多い。議論の仕方を習う場が学校にもどこにもないのが問題だろう。
  • 概してドラマについては中に入り込んで感動して意見を書いているが、バラエティーはちょっと引いた感じで見ていて、面白い時には余り触れず、気になるところがあると書いてくるような気がする。2つの分野の番組の見方が違う理由を知りたいと思う。

なお、第6回の中学生フォーラムを、12月25日(月)に千代田放送会館で開催することが決まり、中学生モニターが、テレビの現状とこれからについて、東京キー局の番組制作者に対して問題を投げかけ、話し合うことなどをメインに実施を図ることとした。

調査・研究活動について

橋元委員から、調査企画チーム(第7、8回会合)の概要について、下記のとおり報告があった。

  • 調査企画チームはこれまでに8回会合を重ね、活発な議論をしてきた。8月には6人の小・中学生に面接調査のプリテストを行い、それを基に本調査での事前アンケートや面接調査の質問項目を再検討した。
  • プリテストで分かったことは、今の子どもたちは昔ほど友達とテレビを話題にはしていない。それがなぜなのか、ほかのメディアに興味があるからか、あるいはテレビがつまらなくなったのか、といったことも詳しく調査したい。
  • 本調査では、子どもたちのテレビの見方について、どういうスタンスで、どのくらいの熱心さで、誰と見ているか、などを詳しくインタビューする。
  • 本調査は、10月から来年2月までの間に、1回6人ずつ、計6回で36人を面接する。

休会

休会 – 2006年8月

中学生モニターについて

中学生モニターについて

今月は26人から、38件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。今回はドラマ12件、バラエティー・音楽とスポーツが8件ずつ、情報・ドキュメント・ニュースが7件、そしてアニメが2件、CMが1件だった。今月はスポーツが多く、また今月数多く放送された戦争関連番組についての意見がジャンルを越えて6件あったのが目立った。

  • ドラマでは、『マイボス・マイヒーロー』についてが3件。「芯から明るいドラマで何も考えず笑っていられる」「今までとは少し違う感じのドラマで新鮮」と好評意見が2件で、「ヤクザは嫌いです。だからケンカしているところがいやです。小さい子どもには悪いものなのかもしれません」という注文が1件。『誰よりもママを愛す』には「ほっとするような家族ドラマはとてもよい」と好評意見が2件、『ダンドリ』には「ダンス部の女子が頑張っている姿が印象的」という好評意見と「本当はもっと厳しくて辛い世界なのに、ぜんぜん甘い」という注文が1件ずつだった。
    また『火垂るの墓』を見たモニターから、「この時期には毎年多くの戦争ドラマやニュースをやっているが、身近なテレビで戦争の真実を知り、その恐ろしさを改めて感じることが、今の時代の私達にもできる大切なこと」という感想が寄せられた。
  • スポーツでは、プロボクシング亀田選手の世界王座決定戦について、「視聴率を狙い、試合が始まる前に引き伸ばしすぎ」という批判意見が3件。『女子バレーボールワールドグランプリ』にも「ゲストKAT-TUNの髪形や服装がそぐわない」、「パチンコのCMが不愉快」などの注文が2件あった。また高校野球には「一生懸命なプレーは見ていると熱くなる」と好評意見が2件寄せられた。
  • バラエティーでは、「スタジオのゲストが多すぎ、一度に何人もが一緒にしゃべり、何を言っているか分からなくなる」という注文が、『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中』に対して2件。また『ズバリ言うわよ!』2周年記念スペシャルには「暴力のところを特集する意図が分からない」、『ミュージックステーション』にも「1曲1曲終わるごとにすぐコマーシャルが入る」などと批判意見が寄せられた。
    また『天才!志村動物園』は「温かみがある番組で親近感がわく」、『月光音楽団』は「女優さんがバラエティー番組で見せる素顔は、意外なところとか、予想どおりのところとかあっておもしろい」、『24時間テレビ』は「障害がある人との交流が多くて良かった」などと好評であった。
  • 情報・ドキュメント・ニュースでは、小泉首相の靖国参拝報道に関する意見が2件あり、「ニュースの歴史の解説を聞き、韓国の人がデモをする背景がわかった」というのと「靖国参拝は、いいか悪いかは別にして、マスコミ報道が過激。ヘリコプターまで使う必要はない」というものだった。
    また、戦争を特集した『週刊こどもニュース』『日本の、これから』『報道2001』などについて、「実際の戦時中の映像を映し、どれだけ恐ろしいかがよくわかる」「いろいろ考えさせられた、こういう番組をもっと若い人が見るべきだ」などの意見が寄せられ、内容を真剣に受け止めていることがうかがえた。

第70回 放送と青少年に関する委員会

第70回 – 2006年7月

青少年に関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

青少年に関する視聴者意見について審議

前回委員会で視聴者から批判のあった3番組について、各委員が事前に番組のビデオを視聴したうえで審議に入り、下記のとおり委員から意見が出された。

1.TBS 『リンカーン』

<視聴者からの意見>

「4歳女児の目の前で父親を意味もなく殴り、自室を詮索して性的趣味を妻に暴露して驚愕させるバラエティーをやっていたが、女児のことを思うと児童虐待だ」

  • 女児の父親は芸人であるが、芸人同士のプライベートをバラエティーのネタにするのはどうか。芸人が裸に近い格好をしてテレビに出ることも問題だ。
  • 子どもにとって父親への暴力を見せられるより、裸姿の男性に対するショックのほうが大きかったのではないか。泣かなかった少女を見ているとそれだけに与えた影響が大きいと感じた。
  • テレビに子どもを出すことに対し、親の同意があるなしにかかわらず、子どもが不利益をこうむる問題については、青少年委員会としてチェックしていく必要がある。
  • 低俗な笑いの中に子どもを巻き込み、それを放送することは子どもへの暴力と同じだ。
  • 青少年への影響もあるが、芸人の芸人いじめのようでお笑い文化の質が落ちている。

2.日本テレビ 『ラジかるッ』

<視聴者からの意見>

「”小学生のFカップグラビアアイドル”と紹介していたが、少女の性を売り物にしている」

  • “Fカップ”という表現自体、12歳の少女を性の対象としているし、こういったものを公共のテレビの場で取り上げることは児童ポルノ禁止法からみて国際的に問題だ。
  • “顔は子どもで体は大人”といったアンバランスなところがいいという取り上げ方は、性の対象としている。また司会の女性に対し「○○さんはその逆で、顔は大人だけど体は子ども」と言っていたが、こういった発言はセクハラと受け取れる。
  • 少女のグラビアアイドルを取り上げることが日常化すれば、子どもの性の商品化を日本が容認していくことに歯止めが利かなくなる。

3.テレビ朝日 『ミュージックステーション』

<視聴者からの意見>

「女子高生のような制服を着た女の子たちが出演していたが、品性に欠ける振り付けがあって非常に不快だった」

  • 出演している少女たちの個々の名前と年齢を出すことは、少女たちを性的対象としているように受けとられかねない。
  • 下着が見えるような振り付けより、少女たちのなかに年齢の低い子がいることのほうが問題だ。
  • Fカップといった表現や下着が見えるような振り付けで性的興味を煽っている。児童ポルノ禁止法の主旨、子どもの人権からみて日本は遅れている。

なお、上記審議の後、最近のテレビで低年齢層の子どもたちを性的興味の対象にするような番組が見受けられることについて、児童ポルノ禁止法の精神からもこの状況に歯止めをかけるため、今後、個々の番組に対してではなく、テレビ界全体の問題として検討し、なんらかのかたちで青少年委員会として姿勢を示すことを申し合わせた。

今回の視聴者意見でも風俗嬢を扱った報道系情報番組に「少女たちに売春を手っ取り早い小遣い稼ぎ方法として認識させる報道をしている」といった意見が多く寄せられた。委員からは「この番組の取り上げ方も、少女たちが安易に性を商品化することになりかねない」といった意見が述べられた。

次に、秋田・小1男児殺害事件や奈良・高校生放火殺人事件などの事件報道について「容疑者の生い立ちや卒業アルバムなど事件に直接かかわりのない報道は人権侵害だ。興味本位の報道は避けるべきだ」といった視聴者意見に対し、委員から次のような意見が出された。

  • 加害者の人となりや事件の背景を知らせるために文集や卒業アルバムなどを出しているのだろうが、子どものころを取り上げるときには、ある程度の配慮が必要ではないか。
  • 被害者、加害者にかかわらず、報道の中で女性を扱うときに名字ではなく名前を使っていることがあるが、男性側の視点で報道しているような印象を受ける。報道ではきちんと名字を使ってほしい。
  • 一つの事件をワイドショー的に長時間取り上げ、何度も何度も放送すると、視聴者にあたかも重要な事件と思わせることになり危険だ。
  • 容疑者でもないうちからメディアが一斉に取り上げることは、ある種の偏見や冤罪などの人権侵害を生むきっかけになるのではないか。

このほか、お昼のバラティー番組で、司会の女性歌手が未成年者の飲酒を容認した発言に対し「公共の電波を使って未成年者の飲酒を容認するような発言は問題だ」といった視聴者からの批判が多く寄せられ、委員からは「お酒もタバコも未成年者保護のために禁止するものである。文化とか家庭の価値観のなかでは許されているところがあるかもしれないが、公共の場で容認するようなことを言うべきではなかった」との意見が述べられた。

最後に、日本テレビ『ウタワラ』の「チビっ子エロかわダンス選手権」については、今回委員会では放送前のため審議せず、番組を視聴したうえで、次回委員会で審議することとなった。

中学生モニターについて

今月は27人から、47件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。今回は「中学生モニター会議」(7月27日実施)と連動するため、「テレビのこんなところがいや」というテーマを立て報告してもらった。このテーマに沿った意見は31件。内訳はニュースについて9件、バラエティーとドラマについて5件ずつ、情報系番組について4件、テレビ全般とCMについて3件ずつ、ミニ番組と歌番組について各1件であった。その他特定の番組に対する感想や意見が16件あった。

  • ニュースでは、何かが起きるとそればかりをやりすぎる、繰り返しも多く、取材も過剰、という意見が4件。放火犯が芸能人に似ているからと過剰に報道するなどニュースも視聴率至上主義だという意見と、事件が発生して1週間もたつとその事件を取り上げず無責任だという意見が2件ずつあった。
  • バラエティーでは、暴言や脅迫的発言そして失敗したらなぐるなどいじめ的な行為が多い、という意見が3件。その他、下品すぎる、プライベートを持ち込むな、などの意見があった。
  • ドラマでは、リメークや同じような題材のものが多い、という意見が2件。芸人が出演し、良いシーンを壊している、という意見が1件。
  • 情報系番組では、出演者が同時にしゃべり、大人の議論とは思えない。スタジオに不必要な芸人やタレントが多い、などの意見が寄せられた。
  • テレビ全般では、高齢化社会にデジタル化は不必要、セットに懲りすぎて無駄なお金を使いすぎる、など。
  • CMについては、「先が見たいタイミングで入れるのは姑息」など長さやタイミングを考えてほしいという意見だった。

その他特定番組への感想では、2件意見があったのは2番組。『マイボス・マイヒーロー』については、学園ドラマだが新鮮な感じがする、といずれも好評。『26時間テレビ』には、とても面白く特に「ブスかわ」のコーナーが印象に残ったという意見と、生放送の割には緊急オーディションなど大げさな企画が目立ったという注文が寄せられた。

委員からは次のような意見が出された。

  • テレビのいやなところを書いてもらった今回も、もっともだと感じる意見が多い。
    特に『はねるのトびら』の中で、ドイツに行きジーコの真似をしたり裸になって歩いたりして下品だという意見や、「ワイドショーなどの情報番組で、小学生でも思うような事ばかりを口にしているタレントが目立つ。タレントの必要はない」という意見には共感する。
  • ニュース番組に関する意見で、事件発生後1週間もたつとその事件を取り上げなくなるというのが2件あった。報道では、その後をきちんと追うべきだ。
  • アメリカでの心臓移植を扱った番組についての、「単に成功例を紹介するだけでなく、ドキュメンタリーなのだから事実に即してもっと素のままを放送してほしい」という意見も説得力がある。
  • NHKスペシャルの「恐竜」の番組。面白く見たが、中学生モニターの「昔にあったことにしてはやや断定的な感じがした」という意見には同感。

なお、「中学生モニター会議」は、7月27日(木)に12人のメンバーが参加し、千代田放送会館で開かれた。7月のモニター報告をもとに「テレビのここがいや」というテーマで青少年委員会委員と活発な意見交換が行われた。バラエティー番組やクイズ・トーク番組などの問題点、CMやニュースの問題についてなど、テレビのあり方について話し合いが進められた。会議内容をまとめた冊子を9月に発行予定。

調査・研究活動について

橋元委員から、調査企画チーム(第4~6回会合)の概要について、下記のとおり報告があった。

  • 今回の調査では量的調査のアンケートは行わない予定だが、「青少年へのテレビメディアの影響調査」のデータを再分析して、前回調査で触れられていない部分を検証することも考えている。
  • 今回は質的調査が主で、具体的には30人以上の子どもに対し時間をかけた深層面接を行う。
  • 放送局に対しインパクトある提言が出せるような根拠を集積するため、インタビューを活用したい。
  • 本調査を実施する前に、テレビを長時間見る子、テレビをあまり見ない子を合わせた6人に対し、本調査と同じ個別面接のかたちでプリテストを行う。
  • 7月27日の中学生モニター会議終了後に、モニターの中学生に対しテレビ視聴についてのグループインタビューを行い、プリテストでの参考にする。

第69回 放送と青少年に関する委員会

第69回 – 2006年6月

青少年に関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

青少年に関する視聴者意見について審議

視聴者から寄せられた意見を基に審議に入った。

最初に、日本テレビ放送網『ウタワラ』の新企画「チビっ子エロかわダンス選手権」の募集内容について、「タイトルに”エロかわ”と付いているからには、児童に際どい格好をさせて躍らせることは明白。近年、小学生を対する性犯罪が増えているのに犯罪を助長しかねない」「エロかわいい幼女をHPで募集しているが、これだけ幼女を狙った性犯罪が頻発しているにもかかわらず一般募集するのは、さらに犯罪者を煽ろうとしているとしか思えない」といった意見が視聴者から寄せられたことに対し、委員からは次のような意見が出された。

  • 新企画の募集内容を見ると、”エロかわいい”をキャッチフレーズにしている女性シンガーをまねてダンスをさせるようだが、大人の女性はともかく、小学生以下の子に露出度の高い過激な格好でダンスコンテストをするとすれば問題ではないか。
  • 少女が持っているエロティシズムにそそられる大人もいるので、子どもがエロチックな対象になるようなことはテレビで放送すべきではない。
  • 国際的に児童ポルノに対し厳しくなっている状況の中で、この企画はそれに反する方向にいっているようだ。
  • 最近では”エロかわいい”のエロをかわいい意味の強調語として使っているようだが、流行っているからといって子どもに使ってほしくない。

以上、審議の結果、青少年委員会として同社に対し、『放送前であるが募集の内容を見ると、この企画が放送された場合、放送基準21条の「児童を出演させる場合には、児童としてふさわしくないことはさせない」に抵触してくるのではないかという懸念が委員から出された。児童が興味本位に扱われることの無いよう、十分な配慮をお願いしたい』旨の文書を送付した。

次に、今回もバラエティー番組に対し、「低俗だ」「いじめにつながる」といった視聴者意見が多く寄せられた。その中で、”罰ゲーム”として鼻栓をした状態で氷の張った水の中に突き落としたり、ビンタや蹴りを入れるなどについて、視聴者から「いじめや暴力を是認する」「子どもへの影響が心配だ」「危険なことだ」といった批判が寄せられたことに対し、委員からは次のような意見があった。

  • 子どもへの影響もあるが、かなり危険なことをやっているので、一歩間違えば事故でも起きかねない。危険なことを見せることでしか笑いをとることができないのかと思ってしまう。
  • 笑いにはある種、危険すれすれで笑いをとるという伝統があるようだが、だからといって限度を超える危険なことはやるべきではない。
  • “罰ゲーム”が、バラエティーでは、”いじめ”と受け取れる内容になってきた。今後この種のバラエティーには注視していきたい。

また、夜の時間帯で放送していたサスペンスドラマなどの再放送の時間帯について、視聴者から「サスペンスドラマの再放送が昼間にされているが、子どもも見る時間帯なので、やめてほしい」「再放送とはいえ、子どもが見ている時間帯に性を刺激する番組を放送すべきではない」といった意見に対し、次のような意見が述べられた。

  • 生々しい殺人シーンのあるサスペンスドラマなどは、もともと大人向けに作られているわけだから、昼間の子どもが見られる時間帯に放送するのは考えるべきだ。
  • 午後5時から9時までは子どもに配慮するとなっているために、その時間帯を外しているからいいというものではない。
  • 再放送すること自体は視聴者にとっていい試みだが、再放送する番組と時間帯については検討すべきところがある。

なお、視聴者意見の中で、(1)東京放送の『リンカーン』で、4歳女児の目の前で父親を意味もなく殴り、自室を詮索して性的趣味を妻に暴露して驚愕させるバラエティーをやっていたが、女児のことを思うと児童虐待だ、(2)日本テレビ放送網の『ラジかるッ』で、”小学生のFカップグラビアアイドル”と紹介していたが、少女の性を売り物にしている、(3)テレビ朝日の『ミュージックステーション』で、女子高生のような制服を着た女の子たちが出演していたが、品性に欠ける振り付けがあって非常に不快だった、との批判について、委員会としては番組を見ない前に審議はできないということになり、当該局にビデオ提供を依頼し、各委員がビデオ視聴のうえ、次回委員会で審議することとなった。

中学生モニターについて

今月は28人から、37件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。報告テーマは、前回のモニター報告後6月中旬までに見た番組についての感想・批判・期待することなど。

今回は、ドラマとバラエティー以外の分野(情報・教養・ドキュメントほか)の報告が目立ち、特に『世界がもし100人の村だったら4』への意見が5件、サッカー・ワールドカップに関する意見は6件寄せられた。全体件数も19件と半数以上を占めた。ドラマについての意見は8件、バラエティーについては10件であった。

  • 『世界がもし100人の村だったら4』への意見は、世界の子ども達の厳しい現実を知ることができ涙があふれて止まらなかったなどと、いずれも好評だった。そして「テレビの前で可愛そうというだけで何もできない自分をはがゆく思う」「テレビ局にビデオを学校に配布してもらい総合学習の時間にみんなで勉強したい」「あらためて学校へ行ける大切さや家族といられるありがたさを感じる」など一歩踏み込み自分に引き付けた感想が述べられた。
  • ワールドカップに関しては3夜連続して放送されたNHKスペシャルのスーパースター特集に2件。1件は何気なく見ている技の素晴らしさを再認識できたという意見、もう1件はサッカーに詳しい人が興味を持つ有名選手を数多く取り上げてほしかったという注文だった。『ニッポン チャ×3』の1件は対戦国の選手の名前を笑ったり、特定の選手の性格を馬鹿にしたりして不愉快だったという注文だった。また、中継放送に対しては解説をもっと丁寧に、CMが多すぎるなどという注文が寄せられた。
  • ドラマでは『クロサギ』に、詐欺師が主人公という世界にとまどいながらも楽しみにしているという意見が2件。また『ディロン~運命の犬~』に「久々にこんな心温まるドラマを見た」、『トップキャスター』には「主人公に良いところと駄目なところがあるからこそ魅かれる」、『ブスの瞳に恋してる』には「美男美女が主人公でなく新鮮な目で見られる」と、好評意見が寄せられた。
  • バラエティーでは、『エンタの神様』に「好きで見ているが、同じようなネタをやる芸人が多すぎる」などの注文が2件。そして好評意見は『トリビアの泉』と『水10!ココリコミラクルタイプ』、そして『ココリコ・ミリオン家族』にも「かくれんぼをする家族のアイデアが面白い」と、計3件寄せられた。また不必要な芸能人が出演しているという注文が『行列のできる法律相談所』『週刊人物ライブ スタメン』『ニッポン チャ×3』に、『いきなり黄金伝説』には「食べ物を粗末にしている」という注文が寄せられた。

委員会では委員から次のような発言がなされた。

  • 『世界がもし100人の村だったら4』の報告で学校教育と連動できればという意見があったが、大切なことなので実現してほしい。
  • 不必要なタレントが出ているという注文が、複数の番組に寄せられているが同感。サッカー中継でもタレントの必要性を感じない。
  • 『クロサギ』の感想が面白い。中学生には正義感があり、主人公の詐欺師にシンパシーを持とうとして悩んでいる。
  • 「お互いが言い合っていて何を言っているか分からない」という『たけしのTVタックル』への意見や、「食べ物を無駄にしている」という『いきなり黄金伝説』への意見は、まともな感想で大人が見過ごしている気がする。
  • 米山豪憲君の事件で報道の過剰を注文している意見があるが、確かに最近の情報系番組では何を伝えるかではなくどう印象付けるかに重点を置いているように思える。話し方まで演出過剰で声色まで普通じゃない。

7月の中学生モニター報告は、テーマを「テレビのこういうところはいや、こういうことはやめて欲しい」と設定し、意見を送ってもらうことに決定。7月27日(木)に開催する中学生モニター会議は、このモニター報告をもとに意見交換をし、会議内容をまとめた冊子を発行する。

調査・研究活動について

橋元委員から、調査企画チーム(第3回会合)の概要について、下記のとおり報告があった。

  • 個別の深層インタビューをする方向で進めているが、対象者のライフヒストリーやテレビの見方の背景についても併せて調査する。
  • 個別インタビューとは別に、視聴者から寄せられた意見の中で、問題になった番組についてグループインタビューを行うことも検討したい。
  • テレビを長時間見る子だけではなく、テレビをあまり見ない子も調査する。
  • 調査結果だけを公表するのではなく、テレビ局に対してなんらかのメッセージを出したい。最終的には、出版物にすることを考えている。
  • 調査を開始する前のプリテストとして、7月27日開催の中学生モニター会議で、現在のモニターを対象にグループインタビューを行うこととした。

第68回 放送と青少年に関する委員会

第68回 – 2006年5月

青少年に関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

青少年に関する視聴者意見について審議

視聴者から寄せられた意見を基に審議に入った。

冒頭、委員から中津川女子中学生殺害事件の報道について、「亡くなった中学生の友人が泣いているにも関わらず、執拗にインタビューをして、多感な時期の中学生に心の傷を深める取材を平気で行っている、との視聴者からの意見があるが、これが本当ならば”またか”と言わざるを得ない」と発言があった。この視聴者からの意見に関して事務局が放送した当該局に確認をしたところ、「取材は系列局が行ったが、放送する際にはモザイクをかけて生徒の顔は映していない。報道の公益性からみて妥当ではないかと考えている」との説明があった旨を報告した。委員からは「モザイクをかけさえすれば”配慮していることになる”と考えているのではないか」と意見が述べられた。

次に、脳をテーマにした情報番組で「脳の部品が…」と人間を物扱いにし、命の尊厳が損なわれ軽んじられていたとの視聴者からの意見について、次のような意見が出された。

  • 最先端の科学情報を取り上げるときは、視聴者に分かりやすく放送するのはメディアの責任だが、情報を発信していくうえでどのような人間観になるのかを考えながら作っていく必要がある。
  • 臓器移植のニュースでも、人間をパーツの集合体のように扱っているが、一つの命の存在を解体しているような報道をする傾向があることを把握しておく必要がある。
  • “脳”をキーワードにすることがはやりのようだが、脳の仕組みを取り上げるにしても、特に子どもの問題として”キレる子ども”といった極端な切り口だけで番組を作っているのではないか。
  • 最先端科学を知りたいという問題意識とは別に、一般視聴者の番組ニーズとしては、脳科学の一部分を見て”うちの子はおかしいのでは”と思ってしまうような番組が視聴率を取れるので、作り手も落としどころがわかっている。個々の番組というより方向として大きな問題である。

また、番組の中で男児の裸を映したシーンや幼児番組のコーナーで、下着姿でパジャマに着替えさせることについて、児童ポルノとの関連を危惧する視聴者からの意見に対して次のような意見があった。

  • 視聴者から、小さな子どもの裸であっても問題だという意見がきているということは、児童ポルノについて日本人の感覚も変わってきているので、テレビ局もその辺を意識して作ったほうがいい。
  • 日本には小さい子どもの裸姿を普通に”かわいい”と受け入れる文化がある。こういった表現すべてが児童ポルノの要因になるから問題だと制限が加えられるようになるのはおかしいが、こころに止めておく必要はある。
  • 児童買春、児童ポルノ禁止法ができるまでは、日本は児童ポルノの発信国として世界一だった。その背景には子どもの裸はかわいいと温かく見る庶民文化があるが、欧米先進国においてはそれが悪用されたときには児童ポルノ禁止的な目線で、たとえ子どもであっても性器は出すべきでないという規制の高さがある。国際水準を維持する観点からすると日本の庶民感覚だからいいというわけにはいかない。

このほか、「ニュース番組の中で、ゲームソフトをアルミ箔で包むと万引きの時セキュリティーが作動しないと放送していたが、万引きの手口を教えるようなものだ」との視聴者からの抗議について、委員から「最近の万引きが悪質化していることを報道したのだろうが、テレビで放送するとやり方を広めることになる」「かえってマネをするのではないか」との意見があった。

また、深夜帯に放送されるアニメには、セックス描写や女性の下着姿など肌の露出するものが多いとの批判に対して、委員からは「子どもが見る時間帯ではないから放送していいというものではない。今後、注視していく必要がある」との意見が述べられた。

中学生モニターについて

今月は36人から、51件(一人で複数件の報告有)意見が寄せられた。報告テーマは、前回のモニター報告後5月中旬までに見た番組についての感想・批判・期待することなど。

報告の全体概要は、ドラマとバラエティーが同数で14件、その他情報・教養・ドキュメント等が23件である。2件以上意見が寄せられた番組について紹介する。

  • ドラマでは『クロサギ』に4件で、主人公の詐欺師が詐欺師をだますというストーリーが新鮮という意見が2件、主人公を演じる山下智久の演技をほめる意見が1件、『野ブタ。をプロデュース』の主役2人を系統の違うドラマで使ったため原作の不思議な面白さが十分伝わらないという注文意見が1件。また『純情きらり』の3件、『ギャルサー』の2件はおおむね好評だった。
  • バラエティーでは、一番多く3件意見が寄せられたのは『エンタの神様』。1件は下ネタが少なくテロップが入っていて分かりやすいという賛同意見。2件はたまに驚くほどつまらない芸人が出演する・全然芸をしない女性2人組は見たくない、という注文だった。また『平成教育委員会』のスペシャル番組に2件。今回は出演者が豪華だし問題を一緒に考えられるのが良い。特別授業(正解するとおいしい物が食べられる)も皆が本気で頑張るので面白いと好評だった。
  • その他の分野では、『ぴーかんバディ』で紹介され問題になったダイエットについて科学検証をしてから放送するべきだ等、注文が2件。『日本人の好きな100人の偉人』にも、様々な人物の知らない素顔が分かったという好評意見とスタジオでのゲストの話がほとんど無駄だったという注文意見の2件が寄せられた。

委員からは次のような意見が出された

  • 一般視聴者から『ギャルサー』について青少年への悪影響が心配だという意見が寄せられているが、中学生たちは「ギャルは他人のことを平気で傷つけることばかりやる、でもどんな人たちよりも、友だちのことは大切にするし仲間を裏切ったりしない」というように冷静に番組を見ている。中学生の意見があると偏りなく考えられる。
  • 『日本人が好きな100人の偉人』の報告が2通あり、『NHKスペシャル』や『人間ドキュメント』の報告もあった。いろいろな番組を見ている事がわかり、番組の担当者が読めば随分励まされるだろう。
  • 『もののけ姫』を最初に見てから3年後に見直したら中身が良く分かったという意見があった。再放送をする意味はこんな所にもあるのだろう。

さらに中学生モニターの報告のうち、委員が共感して取り上げた意見を列挙する。

  • 『笑いの金メダル』で芸人が危険でくだらないことをやるのは、やめた方が良い。
  • 『世界一受けたい授業』でスタジオにいる芸能人が多すぎる。ボケッと聞いているアイドルに出演料を払うくらいなら実験などをより豪華にし、お金をかけて欲しい。
  • 『クイズ ミリオネア』の出場者は有名人が多いが、一般人が出場し賞金をもらったほうが喜びが大きいのではないか。
  • 『クレヨンしんちゃん』は、親が子どもに見せたくないアニメランキング1位で、『ドラえもん』が、子どもに夢をあたえるアニメランキング1位だそうだが、のび太は、自立しようともせずに、ピンチのときはドラえもんにすがりついてしまう。そういうのび太を毎回あまやかし、楽をさせるばかりの番組はよくないと思う。『クレヨンしんちゃん』は、確かに下品なところもあるが、実際にありそうな家庭で家のローンに苦しんだりする両親の苦労が面白おかしく描かれている。親子で楽しく見てほしい。
  • 世界卓球の放送で、福原愛ばかり注目しすぎている。第2の福原愛まで登場させているのにはあきれる。
  • 「人を殺したあと首を切った」というニュースが、進展がなくても何日も同じ様に報道されていた。もっと伝えることが他にないのか。
  • 離婚についての番組で、どうすれば妻が夫と有利に別れられるかという説明があり不快だった。テレビの影響力の大きさを真剣に考えて欲しい。

以上のような意見をもとに委員会審議を進める一環として、中学生モニター会議を夏休みに入ってすぐの7月27日(木)に開催することに決定した。

調査・研究活動について

前回の委員会で、橋元・是永両委員が中心となって調査に関する具体案を企画することが決まり、これを受け調査企画チームが設置された。橋元委員から同チームの概要について下記のとおり報告があった。

◎調査企画チーム等について

  • 橋元委員、是永委員のほか、4人の協力メンバーで構成。
  • すでに2回会合を開き、テレビの影響調査などの先行調査を基に検討した。
  • テレビの影響に関しては、アンケートのような量的な調査をしても明確な影響関係を見出すことは難しい。別なかたちの調査をしたい。
  • 調査方法は、グループインタビューまたは個別インタビュー(深層面接)を考えている。
  • 調査対象は、小学校高学年から中学生を中心に実施したい。
  • 調査意図や調査の具体的方法については今後さらに検討を重ねるが、ほかの委員からの意見も参考に進めて行く。

上記の報告を受け、委員から次のような意見が出された。

  • 調査の対象としてヘビービュアーの子どもも必要だが、テレビをあまり見ない子どもたちの調査もしてはどうか。
  • 暴力シーンやセックスシーンについては、子どもの捉え方、大人の捉え方が違うので対比できるものが必要ではないか。
  • インタビュー方式を採用するには、対象者と長く接触して研究することが望ましい。中学生モニターと連動していくことも考えられる。
  • テレビは子どもに役に立っているのか、貢献しているのかも知りたい。60年代のテレビはかなり子どもにとって強い意味合いを持っていた。

第67回 放送と青少年に関する委員会

第67回 – 2006年4月

青少年に関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

青少年に関する視聴者意見について審議

審議に入る前に、前回の委員会で調査対象になった2つの番組について、事務局から次のとおり報告があった。「合コンから個人恋愛に発展させる4月からの新番組に、中学生への出演依頼が来た」との教師から抗議があった番組を視聴した結果、中学生は出演せず、今どきの高校生の男女交際を取り上げたものであった。

また、「番組の中で、小学生がキャバクラ嬢と風俗店に同伴出勤した」と視聴者から指摘のあった番組については、当該局に事実確認をした結果、「小学生とキャバクラ嬢が中華料理屋で食事をした映像に風俗店が映し出された。この4月からは時間帯が変更になったため小学生は出演しない」との説明があった。これに対して委員からは、「小学生が出ている意味がわからない」「安易に子どもを連れてきて番組を活性化させるということならばやめたほうがいい」などの意見が述べられた。

この後、視聴者からの意見を基に審議に入った。

はじめに、”秋葉原”を特集に取り上げた夕方のニュース番組について、「オタク=犯罪者予備軍という捉え方をしている」「子どもが見ている時間帯なのに、女性記者にアダルト系ゲームの取材をさせた」などの視聴者意見が数多く寄せられているが、委員からは主に次のような意見が出された。

  • ニュース番組で、若者が新しいことにのめり込む現象を取り上げるとき、”オタク”という言葉に封じ込めて、それがあまり好ましくないと決めつけた見方が偏見と受け取られている。
  • 意見の中で、最近は青少年犯罪が減少しているにも関わらず、オタクと青少年の犯罪を結びつけるような扱いは偏見だということだが、青少年犯罪に関する数値が放送中にきちんと出されているのかどうかが基準になるかと思う。ニュースで取り上げるときは、客観的なデータを示すことで方向付けることが可能になるのではないか。
  • ニュースに関連して、メディアではネーミング(例えば”オタク”とか”投げ捨て男”のように)をつけて報道するが、言葉で象徴するのではなく、もっと普通に説明して放送することが望ましい。
  • ニュースのテーマの取り上げ方が安易な設定になっていて、社会的な問題提起よりはセンセーショナルなもの、物珍しさや特定の地域に限定されているのではないか。作り方もフォーマット化されていて、目配りが足りない。
  • 最近のテレビニュースはネタがないのか、同じものが集中的に取り上げられている。
  • 夕方の時間帯でアダルト系ゲームなどをニュースとして扱うときは、子どもも見る時間帯であることを配慮してほしい。
  • 今回、ニュースの中で偏見と受け取られかねない取り上げ方やアダルト系のテーマの扱いについて問題になったが、ニュースの扱いについてはこれだけではないので、今後積み重なっていった段階で対応していくことでいいのではないか。
  • ニュースで最近の社会現象を取り上げることは問題ないが、子どもが見ている時間帯での表現の仕方などについても、事件報道での子どもへのインタビューの配慮と同じように、青少年委員会として考えていくべきではないか。

さらに、消費者金融CMやパチンコCMに対する批判も増えてきていることについて、次のような意見があった。

  • 消費者金融CMは青少年が見て、いかにも簡単にお金が借りられるものと思ってしまうのが問題だ。
  • パチンコCMには規制はないが、パチンコ自体は18歳以下には禁止となっているので、子どもが見る時間帯での放送は考えるべきではないか。
  • たばこCMに関しては、世界的に見て厳しい規制がされている。パチンコなどのギャンブルCMは、場合によっては家庭崩壊にも繋がるおそれがある。「未成年のパチンコ遊戯は禁止されています」というような、マイナスイメージのテロップを必ず入れることを義務付けるのが、時代の趨勢としてあってしかるべきではないか。
  • CMの意見には、ゲームソフトCMに対する批判もあるが、ゲームソフト業界の自主規制で、低年齢層には購入禁止となっているゲームソフトについては、パチンコCMと同様に、放送時間帯には配慮するようテレビ界も良識を持って対応してほしい。

このほか、「タレントを氷水に浸けるのはいじめだ」という視聴者意見に対し、委員から「以前から問題にされているのに、相変わらず”イジメ的”なバラエティーがある。なくしてほしい」「芸人が芸人をいじめるパターンは、中学生モニターでも面白いという意見は出ていない」「自分たちだけで楽しんでいるのでは」との意見が述べられた。また、他の委員から、4月から始まったドラマのタイトルについて、「視聴者からも”ブス”というタイトルは差別的という意見があるが、今は使わないのが普通の認識としてあるので、今後、視聴者からの意見を注目していきたい」との意見があった。

中学生モニターについて

今月からの新規公募モニター24人中の23人、1月から報告を送ってもらっているテストモニター9人の計32人から寄せられた意見について審議した。報告テーマは、1月から4月中旬までに見た番組についての感想・批判・期待することなど。委員からは次のような意見が出された。

  • 中学生モニターの意見はとてもしっかりしていて上質な意見が多い。バラエティーでも芸人の自己満足的なトークに批判的であり大変まともな感じがする。
  • とにかくまじめで一生懸命にテレビを見て書いてくれている点は感激するくらいだ。
  • これだけの文章を書けるのだから質が高いメンバーが多いのは間違いないだろうが、感じ方は普通の中学生と共通していると思う。
  • この委員会では、放送局のバラエティー担当者と話を続けてきたが、是非中学生モニターにバラエティーをどう思っているか意見を聞きたい。
  • 10代・20代のテレビ視聴率は低下している。バラエティーを若い人がどのくらい見ているか知りたい。(次回の委員会までに、いくつかのバラエティー番組について視聴者層を調べ、報告することにした。)
  • ドキュメンタリー系番組についての意見もかなりあった。中学生のドキュメンタリーへのニーズは多いのではないかと思う。
  • こうした意見を一過性のものとして見るだけでなくデータとして蓄積しておき、調査・研究につなげるための分析手法を考えたい。

中学生モニター報告の4月分は、ドラマについての意見が一番多く21件(1人で複数件の報告有)。バラエティーについて17件、その他11件となっている。全体としては好きな番組の感想や推奨する意見が多く、7割程を占めた。

ドラマでは『少しは恩返しができたかな』に、一番多く3件の意見が寄せられた。「人間のとにかく生きようという力が伝わった」、「実話だということもあり、親近感が湧いた」、また「曲(上を向いて歩こう)の使い方が素晴らしく、1曲で人間の喜怒哀楽をリアルに伝えてくれた」などといずれも好評だった。また意見が2件寄せられたのは『クロサギ』『たくさんの愛をありがとう』『西遊記』であった。『西遊記』には、沙悟浄が孫悟空に言う台詞で「天国にいけないぞ」というのがあったが、仏教の世界の話なので”天国”ではなく”極楽浄土”のはずだ、一行の中心に一番偉い三蔵法師でなく孫悟空がいるのはおかしいなど「脚本がいい加減だったのではないか」という注文があった。他に『白夜行』について、「原作を読んでいたが、あまりにもはしょっている、6カ月間のドラマにしてほしかった」、『妻は多重人格者』にも「お金をたくさん借りたことにより家族に不幸が訪れるという話だったので、スポンサーを金融業者が担当するのはあまりいいこととは思いませんでした」などの注文があった。

バラエティーでは、一番多く3件意見が寄せられたのは『愛のエプロン』。うち「世界ではご飯を食べられない子どもがいるのに、タレントが下手な料理を作って番組のネタにしているのはもったいない」などの注文が2件。「家族そろって楽しめるので多くの人たちに見て欲しい」という推薦意見が1件だった。意見が2件寄せられたのは『あいのり』と『笑っていいとも!春の祭典SP』。『あいのり』への意見では、「今後も現在の時間帯で30分間の放送を続け質が落ちないように、ただ特殊な人ばかりを出演メンバーに選ばないで」という希望が伝えられた。他に主な注文としては、『笑いの金メダル』に、ネタが少ない・芸人だけ楽しめばいいみたいになっている。『エンタの神様』には、たまに驚くほどつまらない芸人が出ているなどがあった。

その他の分野で2件意見が寄せられたのは『その時歴史が動いた』。「誰も知らないような事が出てくるので、みんなで見ていて楽しい」などと好評だった。

中学生モニターの意見は、一般視聴者意見同様、関係各放送局に送付することになった。

今後の調査・研究活動について

青少年委員会の今後の調査・研究について、過去のテレビの研究成果などの資料を基に委員から次のような意見が出された。

  • テレビの影響調査に関する資料を見ても、データを求めて因果関係を鮮明にするという発想は不毛なのか、それともまだ可能性があるのかよくわからない。
  • 研究者から考えても、不毛というより結果的にいろいろな要因が絡み合っているのが目に見えている。現在は、メディア状況が複雑化しているので、はっきりした因果関係は見出せないと思う。
  • テレビの影響関係を調べるよりはメディアリテラシーの問題をテーマにするのはどうか。
  • 中学生モニター意見のような自由回答を基に、統一した視点をもって見てもらい基準を作っていくことも考えられる。
  • 番組の良し悪しを主観的に判断しているので基準がほしい。
  • テレビを見る前と見た後の感想や見始めるきっかけについてなど、テレビ視聴の周辺も調査できるといままでとは違うものが掴めるのではないか。

以上の意見を踏まえ、今後、調査・研究を具体的にするため、橋元委員、是永委員が中心となってたたき台を作って進めていくこととした。