第117回 放送倫理検証委員会

第117回–2017年7月

ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、特集を取材・制作した制作会社に追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたところ、その回答が文書で寄せられた。担当委員から今回の回答のポイントについて説明があり、委員会が行うべき検証や調査の具体案など、今後の審議の進め方について引き続き議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から意見書原案が提出された。意見交換の結果、担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。
真偽を確認せずに誤ったネット情報を放送した、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』について討議が行われた。その結果、ふたつの番組を審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

議事の詳細

日時
2017年7月14日(金)午後5時00分~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、TOKYO MXを通じて、特集を取材・制作した制作会社に質問事項を添えた文書でヒアリングへの協力を求めている。最初の質問事項に対しては文書で回答があったので、これについていくつかの追加の質問項目を送り、再度ヒアリングへの協力を求めたが、その回答が文書で寄せられた。担当委員からは今回の回答のポイントについて説明があり、あわせて今後どのような検証や調査を行うかについても具体案に沿って意見交換が行われた。そして、それらの検証や調査も踏まえ、担当委員が次回委員会までに意見書の原案を作成することになった。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』で1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、委員会は4月、審議入りを決めた。
TBSテレビには、5月に関係者ヒアリングを実施した後、取材ディレクターがホームレス男性に依頼した具体的な内容や状況、別の男性への取材内容や流れを確認する追加質問を行っていたが、その回答について報告があった。その上で、担当委員から、同番組の制作体制や放送にいたった経緯、問題の原因・背景を踏まえた意見書の原案が提出された。委員会では、意見書の構成やどのような点にポイントを置くかなどについて意見交換が行われ、それらの議論をもとに担当委員が意見書の修正案を作成し、次回委員会で意見の集約を目指すことになった。

3. ネット情報を誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』『ノンストップ!』を討議

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。
また、同局の情報番組『ノンストップ!』は、6月6日、人気アイス特集のコーナーで「ガリガリ君」を紹介した。この中で季節限定商品の1つとして、「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像を真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
ふたつの事案に対し、委員会では「ほかの局の番組制作現場でも同じ状況があるのではないか」、「根が深い問題で今後も同様の事案が頻発するおそれがある」などの意見があがった。また、「番組制作のためのリサーチがネットからスタートする現状では、リサーチする人がどういうネットリテラシーを持つべきかを改めて考える必要がある」、「2011年に公表した『若きテレビ制作者への手紙』の中の『便利の落とし穴にはまらないで』で、番組制作のためのネット利用についての注意喚起をしたにもかかわらず、指摘したことがそのまま起きている」という指摘もあった。
討議の結果、ふたつの番組は、放送倫理違反があると認められるものの、間違った内容それ自体は大きな問題とはいえず、当該放送局によって適切なお詫びや再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、「委員長コメント」を出し注意喚起を行うことになった。

以上

第249回放送と人権等権利に関する委員会

第249回 – 2017年7月

都知事関連報道事案の通知・公表の報告、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、沖縄基地反対運動特集事案の審理…など

都知事関連報道事案の「委員会決定」の通知・公表が7月4日行われ、事務局が概要を報告した。浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」の再修正案を検討し、了承された。また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。

議事の詳細

日時
2017年7月18日(火)午後4時~8時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の通知・公表の報告

本件事案の「委員会決定」(見解:要望あり)の通知・公表が7月4日に行われた。事務局がその概要を報告し、当該局のフジテレビが放送した決定を伝える番組の同録DVDを視聴した。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

今月の委員会では、前回の委員会後に修正された「委員会決定」案が提示され了承された。
その結果、8月上旬に「委員会決定」を通知・公表することになった。

3.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
前回の委員会後、被申立人から「再答弁書」が提出され、所定の書面が出揃った。今月の委員会では、事務局が双方のこれまでの主張をまとめた資料を説明、それを基に委員が意見を交わした。今後、論点を整理するため起草担当委員が集まって協議することとなった。

4.その他

  • 7月27日(木)に開催される第14回BPO事例研究会について改めて事務局から説明した。当委員会からは、「事件報道に対する地方公務員からの申立て」と「STAP細胞報道に対する申立て」の2事案を取り上げる予定で、坂井眞委員長、市川正司委員長代行、曽我部真裕委員が出席する。
  • 8月は休会とし、次回委員会は9月19日に開かれる。

以上

2017年7月4日

「都知事関連報道に対する申立て」通知・公表の概要

[通知]
通知は午後1時から、坂井眞委員長と、事案を担当した二関辰郎委員、紙谷雅子委員が出席して行われた。申立人の舛添雅美氏は代理人の弁護士とともに出席し、被申立人のフジテレビからは番組担当者ら6人が出席した。
坂井委員長が決定文に沿って説明し、結論について「子どもに対する肖像権侵害は成立しない。また、雅美氏に関する本件場面の放送は放送倫理上の問題として検討するのが妥当であり、その検討結果として、意図的に不合理な編集がされたわけではなく放送倫理上の問題があるとまではいえないと判断した。ただ、雅美さんは実際には事務所家賃の問題ではなく子どもの撮影に対して抗議をしていたに過ぎなかったという部分がある。取材方法については、取材依頼を事前にすべきであったのにしなかった。被取材者からの言葉に正面から対応しなかったということは、取材・撮影される側が抱く心情や不安に対する配慮、特に本件では子どものことを気にかける親の心情や不安に対する配慮が足りなかったと考える。委員会は、フジテレビに対し、本件場面を放送したことを正当化する主張に固執せず、本決定の趣旨を真摯に受け止め、上記に指摘された点に留意し、今後の番組制作に生かすよう要望する」と述べた。
続いて、紙谷委員が説明し「社会的な評価が下がったという、その基礎となる事実を指摘していないのではないかという観点から、名誉毀損の成立は無理だろうと、ある意味ちょっと技術的な判断を示している。申立人が抗議している場面は、子どもの撮影のことでやり取りがあったというようなことが、仮に説明されていたならば、家賃の質問に怒っているという誤解は生じなかったのではないか。その辺について、ちょっと工夫の余地があったのではないか。レベルの高い日本のテレビ局ということで私たちは期待しているので、もうちょっと配慮があり得たのではないかということになる。子どもが映されることについて、懸念は分かるという委員もいたが、政治家が子どもをダシに取って、『いや、ここからはオフリミット』というふうに取材させないということが起こるのも困る事態ではないかということも議論した。やはり家族が出てくる場面というのは、公人・私人、区別として大変難しいだろうと。映り込みという説明をしているが、簡単に線が引ける問題ではないということは私たちも認識している」と述べた。
二関委員は、曽我部真裕委員と連名で書いた少数意見について説明し、「委員会決定(多数意見)は放送倫理上問題がないとした上で要望を述べているが、少数意見は、雅美氏による抗議を放送した部分につき放送倫理上問題があるのではないかという立場を取っている。多数意見は、申立人のイメージダウンにつながる誤解を視聴者に与えるということをフジテレビは理解できたのではなかろうかと指摘しつつも、理由を4つほど挙げて、そういった事情もあるから放送倫理上問題ないという結論にした構造になっていると思われる。少数意見は、4つの事情をいずれもフジテレビに特に有利な事情と位置付けるのは適当ではないという立場で、例えば、ここでは一つ目についてのみ説明すると、多数意見は映像の順序を入れ替えたり途中でカットしていないという言い方をしているが、本件場面を切り取ったこと自体、そこだけを流すこと自体が不自然な編集であったと評価している。そういったことから、放送倫理上問題があると考える立場が少数意見」と述べた。
決定を受けた申立人は「私に関わる名誉毀損よりも、子どもの撮影に関する主張を何としても認めていただきたいと考えていた。極めて遺憾としか言いようがない。撮影とか取材という名目のもとに、平然と子どもの人権侵害が行われることに強い危惧を感じる」と述べた。
一方、フジテレビは「真摯に受け止めたいと思っている。我々は我々なりの思いで、取材し放送したことは確かだが、第三者の目からご覧になって指摘された点に関しては、真摯に受け止めざるを得ないと思っている」と述べた。

[公表]
午後2時25分から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして決定を公表した。23社51人が取材した。
まず、坂井委員長が判断部分を中心に、「要望あり」の見解となった決定を説明した。続いて、紙谷委員が補足的な説明を行い、二関委員は曽我部委員と連名で書いた少数意見について説明した。

続いて、質疑応答を行った。概要は以下のとおりである。

(質問)
舛添さん側の反応は?

(坂井委員長)
結論については極めて遺憾だというご意見だが、ポイントは、自分としては子どもの撮影の問題に重点があったというご主張だった。委員会決定と少数意見は、雅美さんの「いくらなんでも失礼です」と言う発言をめぐって分かれたが、そこについて遺憾というよりも、子どもが勝手に撮影されてしまう問題をきちんと取り上げてもらいたかった、子どもの人権が侵害されているという気持ちが強かったということがまず一点。委員会決定で認定した撮影状況については、当時現場におられたわけで、自分が認識しているものとはちょっと違うと思うというご意見もあった。
子どもの映像の関係で言うと、映像素材は放送目的以外には出せないというのは、これはもう原則で当然だと思うが、申立人は、撮られた側からしたら、それは見せてもらっても当然じゃないかというお考えをお持ちのようだった。それについて、私の方から「映像素材は原則として放送目的以外には使用しない」という一般的な説明はしたが、ちょっと不満があるということだった。

(質問)
申立人は具体的にどのようにおっしゃっていたのか、また被申立人はこの結果についてどう受け止めていたのか?

(坂井委員長)
「遺憾」の意味は多義的で、私が解説して正確に言えるかどうか分からないが、納得のいかない部分があるということだろうと理解している。1番のポイントは、子どもの撮影に関して問題があると認めてもらいたかったと言っておられたと、私は理解している。
フジテレビのほうは、決定の内容は真摯に受け止めますと、要望の点についてだと思うが、真摯に受け止めますと。局としてはいろいろ考えてちゃんとやったつもりだけれども、ご指摘があるので、それを真摯に受け止めますと、おっしゃっておられた。

(質問)
フジテレビにどういうことを要望したのか、簡潔に教えていただきたい。

(坂井委員長)
実際は雅美さんが子どもの撮影に抗議しているのに、事務所家賃の質問に対してキレてしまったような印象を与えていると、委員会は判断をしている。それについてはやはり問題がありますね。あえて本件場面を放送するのであれば、視聴者に誤解を与えない工夫をすべきではなかったのでしょうかと。例えば、雅美氏が怒っているのは子どもの撮影に関してであったと分かるようなナレーションを付加するなり、実はこの前に子どもの話がありましたよ、ということが分かるようにしていただければ、こういう誤解は生じなかったのではないか、それが1点。
次に、取材方法の適切性がある。まず、取材依頼なしでの取材、これは一般的にアポなし取材を否定しているわけではないが、本件に関しては、こんな早朝に取材に行くのであれば、子どもが出てくることが想定できるのだったら、しかも公共性の高い取材内容だとおっしゃっているわけだから、正面から事前に取材申し込みをしたらよかったのではないでしょうかと。それから、雅美さんは子どもの撮影のことをすごく気にしておられる。結局それが1番問題だった言っておられる。ディレクターが「お話を伺ってもいいですか」と言ったら、「失礼ですよ。子どもなんですよ。やめてください」と反応をしているのに、それに正面から答えないで、続けて家賃収入の件を聞いてしまう。そうすると、被取材者の質問に正面から対応しなかった部分は問題があるんじゃないかと。実際にカメラが焦点を当てていないとしても、長男が撮影されていると雅美さんが不安に感じたことは、撮影対応から考えれば理解できないではない。番組クルーは撮影される側が抱く心情や不安に対する配慮が足りなかった、不安にちゃんと答えていなかったのではないかということに関して要望している。

(質問)
私も早朝とか深夜の取材の経験があるが、やっぱり聞かなきゃいけないことはある。丁寧に説明し、お子さんを取材しているわけではありませんと説明したい気持ちはあるが、けんもほろろに、ワッとやられると、それを工夫しろと言われても、現実的にはなかなか難しいのではないか。

(坂井委員長)
そういうシチュエーションはあるだろうと私も思う。ご質問は、被取材者に対応していると、それで答えが拒絶されたりする時もあるから、そう簡単じゃないという趣旨だと思う。でも、これはお子さんが登校する時間帯に取材に行っているわけで、正当な話なだから、ちゃんと正面から取材依頼をしておけば、子どもが出てきて撮られたという話にはならなかったのではないかという文脈で考えている。取材依頼をしたらよかったのではないかと考えたということですね。

(質問)
お子さんを映しているわけじゃありませんと、説明しなかった、できなかった点が問題だと言っているわけではないということか。

(坂井委員長)
申立人が、最初から子どもの撮影をすごく気にしていて、「失礼ですよ。子どもなんですよ」ということを言っている時に、それに答えていない。例えば「お子さん撮るつもりはもちろんありません」、「カメラを一旦止めますから」というような対応は一切なくて、お子さんのことに対しては答えない。そのことで、雅美さんが、ますます「いくら何でも失礼です」と言ったように見える、そこの問題は、取材依頼とはちょっと別の問題としてあると思う。

(質問)
でも、取材者に対してこちらの取材姿勢を説明する時間があったら、聞くべきことを聞きたいと思う。

(坂井委員長)
お気持ちは理解するが、お子さんが登校している時に、お母さんが怒ったら、そこはやっぱり配慮したほうがいいんじゃないかと思う。

(質問)
理想論としてはそうかもしれないが、実際には現場でそんな余裕はないかと思う。あまり言い過ぎて、要するに取材を萎縮させてはいけない。

(坂井委員長)
萎縮させてはいけないが、委員会として言うべきことは言わないといけないこともある。そういうご質問がよく出るが、よく考えていただきたいのは、本件に関しては、勧告でもなく、見解の中の「放送倫理上問題あり」でもなく、あくまで「要望」として述べているというところを見てもらいたい。

(質問)
結果的に断られるか否かは別として、取材依頼を試みることは通常の取材手続きとして重要かつ基本的なことであると。なおさら正面から取材申し込みをすべきであった、と書かれているが、取材者たちは何とかコメントを取ろう、何とか肉声を取りたいと、ありとあらゆることを総合的に判断して取材に出ていると思う。別のケースによっては、相手の状況を鑑みて、気を付けながらも夜討ち朝駆けもありだという理解でいいのか。

(坂井委員長)
そういう理解でいい。以前の国家試験委員の事案(委員会決定49号)の時にはそういうことは言っていないので、それはケースバイケースだと。今回はお子さんが絡んでしまったケースなので、そういうやり方がよかったんじゃないかと。
これは委員長の立場を離れるが、私の弁護士としての活動でいきなり取材が来ることはもちろんあるし、事務所の前でメディアの方が待っていることも経験している。一般論として事前に取材依頼をしないとダメだということを言ったという趣旨ではない。

(質問)
フジテレビに対して、「正当化する主張に固執せず」という表現があるが、これがあえて入っているのは何か意味があるのか。

(坂井委員長)
決定文でフジテレビの主張をカギ括弧で引用しているが、この放送の正当性をかなり主張されている。それについて、結論として放送倫理上問題ありとはしていないけれども、要望する点があるので、そこも考えてねと、そういう文脈の記載です。

(質問)
私も事件取材が長く、疑惑の渦中の人に対して取材依頼するが、だいたい断られる。そういった場合には、家から出てくるところにぶら下がったり、突撃インタビューとかするが、それも拒否される。一度取材依頼をしているから、ちょっと無理やりインタビューしようという考えもあるが、そういったときに時にあまり取材の配慮が足りないと言われると、ちょっと現場が萎縮してしまうのではないか。

(坂井委員長)
それは全然そういうことではなくて、これは子どもの話が絡んでいるのでこうなっている。申立人が政治資金規正法に絡む会社の代表として取材依頼を受けた時に、拒否をしたと、例えばですね。それで、拒否されても、これは聞くべき事項だから取材に行く、当然だと私も思う。取材拒否されても、聞くべき事項だから聞くのは大いに当然でしょという話ですね。

(質問)
本件の場合、取材依頼をしていなかったというのは若干問題があるんじゃないかと思うが、もし取材依頼をして拒否された場合でも、こういうやり取りは普通あると思う、子どもが出てきた時にどうしても行かざるを得ない、そういう状況もあると思う。

(坂井委員長)
例えば、子どもと一緒にしか出てこないという人がいるかもしれない。そういう時に、子どもがいるから取材できないという話だったら、それは間違っていると思う。われわれも子どもの映り込みについては肖像権侵害ではないと判断している。相当の範囲で映り込むのはやむを得ない、だから肖像権侵害もないし、放送倫理上の問題があるとも言っていない、でもここは気を使ってよ、というレベルの話です。

以上

2017年6月に視聴者から寄せられた意見

2017年6月に視聴者から寄せられた意見

フリーアナウンサーが闘病の末亡くなったが、その過熱した、遺族への配慮を欠く報道のあり方への批判。また、痴漢問題を扱った情報番組への意見や、日本人選手が活躍した卓球の世界選手権の中継について、試合開始時間等の番組編成への意見など。

2017年6月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,844件で、先月と比較して368件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール75%、電話23%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性70%、女性29%、不明1%で、世代別では30歳代28%、40歳代25%、50歳代19%、20歳代16%、60歳以上10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該放送局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。6月の通知数は885件【48局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

フリーアナウンサーが闘病の末亡くなったが、その過熱した、遺族への配慮を欠く報道のあり方への批判が多く寄せられた。また、痴漢問題を扱った情報番組への意見や、日本人選手が活躍した卓球の世界選手権の中継について、試合開始時間等の番組編成への意見が多く寄せられた。
ラジオに関する意見は49件、CMについては30件あった。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は166件で、前月から43件増加した。
今月は「低俗・モラルに反する」が28件と最も多く、次に「性的表現」と「表現・演出」がそれぞれ25件、「報道・情報」が24件と続いた。
「低俗・モラルに反する」では、全裸でお盆だけを使って股間を隠す男性芸人の出演について意見が寄せられた。「性的表現」では、バラエティー番組で中学生棋士の連勝を取り上げた際のお笑いタレントの発言について意見が寄せられた。「報道・情報」では、スポーツセンターで男子中学生が女児を投げ落とした事件の報道について意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • フリーアナウンサーの逝去に関し、夫の歌舞伎役者の記者会見があった。何項目にもわたり、執拗に質問を繰り返す様子が報道された。悲しみにくれる家族の気持ちを察し、なぜ早めに切り上げてあげないのか。今聞かなければならないことだろうか。家族の気持ちは十分察しがつくではないか。涙ながらに語る夫の姿を報道した、それだけでいいのではないか。今一度、報道のあり方を見つめ直してもらいたい。全てを事細かにすることが、報道の使命ではないはずだ。

  • フリーアナウンサーの逝去以降、テレビ各局で、朝からそのニュースが報じられているが、どの局も同じ時間帯に報道され、天気予報が確認できず困った。私が住む地域は早朝から雨が降り、農作業をしている関係もあり、天気予報を確認したいが、どの局も天気予報をやっておらず、朝7時40分あたりから一斉に天気予報が始まった。雨の場合、交通手段も変わるうえ、その日の作業予定の問題もあるので、天気予報の時間帯を各局でずらしてもらうわけにいかないだろうか。確かにこの件は気の毒だとは思うが、各局揃って同じ時間帯に報道するほどの内容だとは思えない。

  • 14時半から歌舞伎役者の会見が行われ、生放送していた。また、16時半からは、文部科学省の前事務次官の会見の予定があった。歌舞伎役者の会見は十分に放送されたので、前事務次官の会見の方も最後まで見られるだろうと思っていたが、10分ほどで歌舞伎役者の中継録画に切り変わった。急で不自然な切り替えであり、何か政府からの圧力でもあったのかと疑問を感じざるを得なかった。前事務次官の記者会見会場には各局のテレビクルーがきていたのに、放送しないのはおかしい。不自然だ。何か釈然としない。

  • 昨今の政治に関する報道に、著しい偏りがあるように感じる。テレビ局や後ろにいる新聞社の思惑によって、視聴者を誘導するような行為が横行しすぎている。本来、報道とは真実を伝えることが大事なはずだが、最近では、局側の意向に沿う専門家と呼ばれるような人間や、ジャーナリストをずらっと並べて、一方的な見解を視聴者に押し付けている。現在のテレビの報道は、週刊誌と同レベルの質の低いものになっている。マスコミ全体がもっと中立性をもって報道するべきだと思う。報道の自由という言葉を勘違いしてはいないか。

  • 元放送局社員から暴行を受けたと訴える女性が、実名と顔出しで会見を開いた。しかしその後、どこの局もパタッと報道しなくなった。女性が性被害をここまで訴えるということは、相当な覚悟が必要だったであろう。マスコミはきちんと追及するべきだ。

  • テレビで「痴漢」の問題が出るときに、「冤罪」がセットで出てくるのが気になる。ニュースでも「痴漢だと誤解されたら」といった特集が多く、あたかも痴漢騒動のほとんどが冤罪であるような扱いだ。女性も冤罪の可能性は考えるし、ある程度確信を持ってから勇気を振り絞って声を上げるので、そうそう冤罪が起こるとは思えない。実際、痴漢被害はすごく多い。「痴漢」でネット検索すると、痴漢を訴える女性を責める言葉が山のように出てくる。それは、テレビが痴漢=冤罪というイメージを強調しているのも一因ではないか。

  • 東名高速道路で、観光バスと中央分離帯を飛び越えた乗用車の事故があったが、一命をとりとめた運転手が入院した病室でインタビューを受けていた。鼻に管があり、点滴の姿も痛々しい運転手に対して、マイクやカメラを向ける姿勢は疑問だ。ある番組では「家族と本人の許可を得て」などと、あたり前のように言っていたが、放送局への抗議を減らすための言い訳にしか聞こえなかった。許可を取ろうとなんだろうと、痛々しい姿の運転手に対して、この時点で取材すること自体が非常識だと思わないのだろうか。命は助かったのだから、コメントは後日でもいいはず。回復を待たず、しかも病院にまで乗り込む必要がどこにあるのか。人の気持ちを考えた報道を肝に銘じてほしい。

  • 新潟県三条市の寺で火事があった。野次馬が警察の制止を振り切り、寺の境内に入り込み、ひどい者は墓石に登るなどして、スマホで火事の動画を撮影していた。結果、その動画がNHKのニュースで使われたのを皮切りに、民放各局のニュースで流れていた。モラルの無い撮影に唖然としたことは言うまでもない。しかし本当に問題なのは、このように撮影された動画をテレビ局が使用したこと。「危険を冒してでも自分の動画がテレビで放送されるならば撮影しよう」という行為の助長につながりかねない。誰でもスマホで簡単に動画を撮れる時代だ。良い面もあるが、今回のようなケースもあることを、放送局の人達に認識してもらいたい。

  • フィリピンで300人からの死者が出て、外務省も渡航注意情報を出しているというのに、なぜテレビは報道しないのか。ロンドンよりよほど近いのに、欧米とアジアで人命の重さを秤にかけているのか。外国の交通事故みたいな、国民生活にほとんど関係ないものなどを放送し、日本に火の粉が掛かるかもしれない重要事項を報道しない。「テレビはくだらん」と視聴者が離れるのは当然と思う。

【番組全般・その他】

  • 日曜日の番組で、茨城県取手市の中学生自殺について、女性タレントの加害者を過剰に庇うような発言に問題があった。被害者は亡くなっているのに、それを気にも留めずに、加害者の今後だけを心配しているように聞こえた。そもそも、いじめによって被害者を自殺に追い込んでいるのだから、加害者もその責めを負うべきではないか。きちんと罪を償ったうえで、今後の心配をするのであればそれはわかるが、責めを受けないまま、それを擁護するのはおかしい。

  • 自民党女性議員の音声データについて。私は現在、上司からのパワハラで心療内科に通院中だ。起きたばかりの無防備な精神状態のところに、いきなり怒声が大音量で繰り返し流れ、非常に驚いた。今も動悸と身体の震えが止まらない。ニュースの内容を考えると、音声データを流したほうが視聴者には分かりやすいし、いきなりのほうが興味も惹く。番組制作側の意図は理解できるが、視聴者に与える影響力を考えれば、慎重に取り扱ってほしいと願うのはわがままだろうか。議員の怒声はパワハラの記憶をフラッシュバックさせる。音声データは今後も各局から流れることだろう。私個人は、しばらくテレビは見ることができない。いつまた、あの怒声が流れるかわからないので。

  • 東海地方の番組で、「日本一バラエティー豊かなえびせん料理」ということで、私の住む町が取り上げられていた。えびせんべいをみそ汁に入れたり、醤油をつけて焼いたえびせんべいをご飯にのせて"海鮮丼"にしたり、すき焼きにえびせんべいを入れて"海鮮すき焼き"にしたりして、あたかも町の人がそのようにして食べていると紹介していたが、住民の一人として「そんな事実はない」と断言できる。番組に出演した町の人達も、この内容に不満の声が多かった。町をバカにされ非常に不愉快だ。何故このような間違った情報を流したのか調査してもらいたい。

  • 世界卓球と全仏テニスをセットで放送していた。具体的な放送予定を曖昧な表現で一切案内しなかったので、視聴者は、延々とチャンネルを合わせたまま待っていなければならなかった。また、卓球とテニスという異質なスポーツを組み合わせたことにより、卓球を見たい人はテニスを、テニスを見たい人は卓球を見ながら待たなければならない。さらに、長い時間待ったあげく、期待していた試合はライブではなく、VTRで試合途中からの放送となり、しかも、結果のスコアは事前にテロップで知らされてしまい、とても残念だった。

  • 私の父は目が見えないので、"テレビを聴くこと"が好きだ。最近はニュースを見ていてもバラエティーを見ていても父には理解できないものばかり。字幕はたくさん見かけるが、外国語のときはなるべく通訳したものを放送してほしい。副音声を選べばいいと言われそうだが、視覚障害者のための副音声はあまりに少なく、ほんの一部の番組でしか行われていない。見えなくても、番組を楽しみたい気持ちは私達と一緒なので、少しでも改善してもらえると嬉しい。

【ラジオ】

  • FMを聞いているが、今月いっぱいで午後のシネマコーナーが終了する。とても良質なコーナーなので残念だ。その週に公開される映画を紹介するのだが、紹介の前に必ず、リスナーに一週間前に出したお題の回答を読み上げる。通常のラジオ番組では、お題の回答はEメールやハガキなどで読まれるが、このコーナーは掲示板での書き込みで回答する。リスナー同士のコミュニケーションもできて、とても画期的なコーナーだった。

【CM】

  • ホラー映画のCMは流すのをやめてほしい。4歳の娘が毎回怖がる。突然始まるので、チャンネルを替えるにも間に合わない。

青少年に関する意見

【「低俗・モラルに反する」との意見】

  • バラエティー番組に全裸で股間をお盆で隠す芸人が出演しているが、不愉快だ。最近、お盆以外のもので隠したり、際どいポースを取ったりと、エスカレートしている。大人のモラルの欠如は、子ども達の心へ良い影響を与えない。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、中学生棋士の連勝の話題を取り上げた際、お笑いタレントが「彼が童貞でなくなったら変わると思う」と発言した。プロの棋士に対してあまりに侮辱的な発言だと思う。大人が、少年に対し性的発言をする行為は、立派なセクハラではないか。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、女性国会議員の元秘書に対する暴言・暴行の問題について面白おかしく取り上げ、笑いにしている。ふざけ過ぎる内容を元にいじめを行う子どももいると思う。取り上げるからには真剣に報道してほしい。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 広島県のスポーツセンターで男子中学生が2階から女児を投げ落とした事件のニュースで「加害者は特別支援学級に通っていた」と伝えているが、「特別支援学級」を特別視することにつながり、差別感を生む。また、小さい町で、加害者が特定されてしまう。加害者がまだ中学生であることに、報道する側の配慮が感じられない。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で茨城県の中学生いじめ自殺事件について、スタジオの女性タレントが「加害者の生徒が、罪悪感を一生背負っていかなければならないと思うと心配だ」などと発言した。被害者側の気持ちはまるで無視するような発言だ。このような加害者のみに配慮し、一切の責任は問うべきではないという考え方が、世の中に浸透することの悪影響を懸念する。

【「視聴者意見への反論・同意」】

  • 全裸の芸が批判の的になっているようだ。その理由として「わいせつだ」や「教育上問題だ」などが挙げられているが、それほど目くじらを立てるほどのものだろうか。彼の芸を見てもわいせつな感じはない。また、子どもたちが真似をするとも思えない。

第193回 放送と青少年に関する委員会

第193回-2017年6月27日

視聴者からの意見について…など

2017年6月27日、第193回青少年委員会をBPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席し、まず5月16日から6月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
視聴者意見に関しては、広島県のスポーツセンターで男子中学生が2階から女児を投げ落とした、として逮捕された事件で、加害者の男子生徒が特別支援学級に通っていたと報じられたことについて、一人の委員から、少年法が禁じている容疑者を推知させる情報になる懸念を指摘するとともに、特別支援学級に通っていたことと事件との関連が分からない時点でそれを報じることは慎重にしたほうがいい、という意見が出されました。
そのあと、6月の中高生モニター報告に続いて、7月25日に開催する中高生モニター会議の企画を担当委員らが報告し了承されました。調査研究については、前回委員会で大筋了承された調査票の最終版が委員会に提出され、内容が確定しました。
次回は7月25日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2017年6月27日(火) 午後4時30分~午後7時00分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員

視聴者からの意見について

午前の情報バラエティー番組で、中学生棋士の連勝の話題を取り上げた際、スタジオのお笑いタレントが「彼が童貞でなくなった時、絶対に変わると思う」という内容の発言をしたことに対し、「朝から中学生に対して、下品なセクハラを放送するのは信じられない」「大人が少年に対し性的発言をする行為は、立派なセクハラだ」という視聴者意見が多数寄せられました。これに関し委員からは、「発言者本人もこういう言い方は言葉が悪いかもしれないが、という趣旨の断りをした上での発言であり、性的発言、セクハラという印象はなかった」「言葉狩りに近くなるようなことはする必要がない」などの意見が出されました。
広島県のスポーツセンターで男子中学生が女児を2階から投げ落とした事件を伝える際、一部の報道番組で「少年が特別支援学級に通っていた」と伝えたことに対し、「特別支援学級を特別視することにつながり、差別感を生む」「容易に加害者の少年が特定されてしまう」などの視聴者意見が寄せられました。
これに関し委員からは、「少年法で推知報道は禁じられているが、特別支援学級に通っていると報じることにより、人口が少ない町で人物特定につながるのではないかと懸念される」「特別支援学級に通っていることと事件との因果関係が客観的に分からない状況で、そのような加害者の付随情報を出すことは相当慎重にしたほうがいい」などの意見が出されました。現段階ではいずれもこれ以上話し合う必要はない、となりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした6月のテーマは、「最近見たドラマ・アニメ番組の感想」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で33人から報告がありました。
「ドラマ・アニメ番組の感想」では、ドラマについて17人、アニメについては16人から報告がありました。最多の4人のモニターが報告を寄せた番組は、『ドラえもん』(テレビ朝日)でした。
「自由記述」には、「ニュースなどで取り上げられる同世代の活躍ぶりをうれしく思う。彼らの今後に注目したい」という意見や「ほかの中高生モニターの意見を読み、共感した」という報告がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、「ピコ太郎」をプロデュースした芸人・古坂大魔王とジャーナリストの田原総一朗が出演した『SWITCHインタビュー 達人達』(NHKEテレ)に、4人から報告がありました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマ・アニメ番組の感想】について

    • 『僕のヒーローアカデミア』(日本テレビ)を見て、ヒーローの特性・資質の考察をした報告に「ヒーローとしての資質とは、たとえそれが自分にとって不利益になるとしても、人の為になりふり構わず立ち向かっていくことなのだと感じた」とあった。きちんとした考察に感心した。

    • 『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』(ともにフジテレビ)について、「展開が支離滅裂である」「現実離れした話が多く、おかしなことが多い」というリポートがあった。このモニターの判断基準は「論理破綻がないか」「倫理的であるか」「現実と比べてどうか」ということであり、そこに沿わないものは批判されてしまうのだと思う。いろんな感想、いろんな見方があっていいが、フィクションを楽しむ魅力にも気付いてほしい。

    • 『サザエさん』(フジテレビ)の『タラちゃん空気を読む』という話を見て、「空気を読む」ことについて考えたというモニターがいた。「サザエさんはただ日常を描くだけでなく日常に隠れている言葉の不思議について考える機会を与えてくれる」と報告している。また『サザエさん』を好きな理由として「多様性があること」だと述べ、「三世代構成の家族であったり、近所の人たちや様々な立場の人たちの意見を知ることができる。時代錯誤と言われることもあるが、時代に合わないと言ってはねのけるのではなく、現代とは違うスタイルであるからこそ私たちは受け入れるべき。」と書かれている。とても深い考察だと思った。

    • 『ひよっこ』(NHK総合)を見て、「人生は一度きりだけど、ドラマを通じて時を越え、空間を越え、主人公の人生を生きることができる」とドラマの魅力を伝える報告があった。テレビを見て、分析的に批評することに積極的だと感じさせるリポートだった。

  • 【自由記述】について

    • 高校野球の話題で「特定の選手ばかりを取り上げる」ことにより、かえって「その選手が苦手になったり嫌いになったりする人が出てしまうのではないか」という指摘には、同世代だからこその意見で「なるほど」と思った。

  • 【青少年へのおすすめ番組】について

    • 『SWITCHインタビュー 達人達』(NHKEテレ)の「古坂大魔王対田原総一朗」の回は、私の周りでも話題になった番組だったが、中高生も興味を持つ番組だということに少し驚いた。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマ・アニメ番組の感想】について

    • 『僕のヒーローアカデミア』(日本テレビ) ヒーローとしての資質とは、たとえそれが自分にとって不利益になるとしても、人の為になりふり構わず立ち向かっていくことなのだと感じました。僕はアメコミと言われるヒーローものの映画も好きなのですが、このアニメ番組は少し雰囲気が似ています。自由と個性が認められる中で、真のヒーローに成長していく主人公をこれからも見たいです。(神奈川・中学1年・男子)

    • 『あなたのことはそれほど』(TBSテレビ) ネットニュースで視聴率が上昇していると知りました。不倫ドラマが主婦層に人気なのは、自分が出来ないことをテレビの画面を通して疑似体験し、自分と重ねられることにあると思います。女子高生に学園の恋愛ドラマなどキュンキュンするのが人気なのは、それが現実世界では体験できない世界を映しているからだと思います。不倫を内容とするドラマは不倫を助長させる、不倫に一種の憧れを持たせてしまう、などの懸念がされていることを聞きましたが、それは心配に至らないと思います。主婦層は現実世界から少し離れて夢を見られるような世界を画面越しに望んでいるのだと思います。(埼玉・高校1年・女子)

    • 『サザエさん』(フジテレビ) 「タラちゃん空気を読む」というお話を見て「空気を読む」ということについて考えさせられました。『サザエさん』は、ただ日常を描くだけでなく日常に隠れている言葉の不思議について考える機会を与えてくれます。それが私が『サザエさん』を好きな理由のひとつです。二つ目は、多様性があるところです。最近(主人公一家が)三世代構成というところが「時代錯誤だ」と言われたり視聴率が低迷しているというニュースを見ましたが、現代と違うスタイルであるからこそ、私たちはそれを受け入れるべきだと思います。時代に合わないと言ってはねのけるのではなく、だからこそ積極的に取り入れた方が良いと思います。(青森・高校2年・女子)

    • 『ひよっこ』(NHK総合) 今の私と同い年であるみね子が力強く自立して生き抜く姿には、応援する気持ちとともに背筋を正される思いがします。みね子達の時代の苦労も笑顔に変えて力強く生きる人々の姿が、私たちにたくさんの反省と勇気を与えてくれます。また時代を越えて変わってしまったもの、変わらないものが心に響きます。他人を思いやる心、誰かのために努力する幸せ、親への尊敬と感謝、他人とまっすぐ向き合う姿勢、どれも今の私には足りないと感じます。ドラマは、いろいろな人生を少しずつ経験できるのが魅力だと思います。人生は一回きりだけど、ドラマを通じて時を越え、空間を越え、主人公の人生を生きることができるからです。(東京・高校3年・女子)

  • 【自由記述】

    • 今期のドラマでは 『小さな巨人』(南日本放送/TBSテレビ)が 、セリフがいちいちカメラ目線だったりしてカメラの撮り方が面白いです。見ている人が喋りかけられているような感じで、迫力があります!『CRISIS(クライシス) 公安機動捜査隊特捜班』(鹿児島テレビ/関西テレビ)は 逆にカメラをカットしないで撮影していて こちらも面白いです。(鹿児島・中学2年・女子)

    • 家族で必ず見ているアニメは『名探偵コナン』(鹿児島讀賣テレビ/讀賣テレビ)です。毎週 ドキドキしながら見ています。コナンではよく、昔のアニメを普通に再放送していますが、昔の物の方が映像が生々しくて怖かったりして面白いです。(鹿児島・中学2年・女子)

    • 『サタデーらじらー!』(NHKラジオ第1)8時台が放送100回目を迎えました。100回もの放送ができたこの番組はすごいなと思いました。時に親身に、そして面白く、私は大好きです。(山口・中学2年・女子)

    • 高校野球の話題で、ある選手の取り上げ方に違和感を覚えることがあります。ニュースを見ているとその選手は確かに優秀な成績を挙げていますが、そのチームの他の選手も活躍している場面があるのに、放送ではほとんどその選手だけが取り上げられていました。注目するのはいいのですが、やりすぎると「またか」となり、その選手が苦手、または嫌いになる人が出てしまうのではないかと思いました。(愛媛・高校2年・男子)

    • 他のモニターの意見を読み、「朝のニュースと同じ時間帯に、若者向けにニュースの背景や意図の解説を交えたニュースをやると、年齢を問わず朝にある程度時間がある人に人気が出るのでは」という意見に共感しました。朝の情報番組は学校でも話題になるので、議論のタネを蒔き、問題提起をすることは若者の意識を喚起する機会となると思います。(東京・高校3年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『SWITCHインタビュー 達人達』(NHKEテレ) 一時期一世を風靡したピコ太郎に、こんな下積み時代があったとは知らなかった。田原総一朗×古坂大魔王という意外な組み合わせでの「音楽とお笑い」についての議論では、田原が古坂大魔王の「かっこいい音楽」と「かっこ悪いことをするお笑い」の定義を聞き出していて興味深かった。(東京・中学2年・男子)

    • 『ライオンのグータッチ』(関西テレビ/フジテレビ) バトミントンをしていた男の子は、出された宿題をしっかりこなし、2回目の練習で成長していたのがすごいなと思いました。努力すればできるようになると改めて思いました。でも、MCの人たちのコメントが当たり前のことしかなかったのが残念でした。(滋賀・中学2年・女子)

    • 『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ愛知/テレビ東京) 出川さんの面白さとまわりの人のやさしさが伝わって、見るのが楽しいです。この番組を見ていると、見ているこっちの元気が充電される、そんな気がします。(愛知・高校2年・女子)

    • 『SWITCHインタビュー 達人達』(NHKEテレ) ジャーナリストの田原総一朗さんと古坂大魔王の対談は本当に面白く、学ぶことが多くありました。「世の中には中立は無いのだから自分の立場は明解にしていい」「欠席裁判はしない。批判は面前でする」「ドキュメンタリーは相撲と同じ。土俵を徹底的につくり、あとは本番。本番に手を加えたらそれはやらせ」などの言葉が印象的でした。「一分間でも世界の人々の笑顔をつくることで平和に貢献したい」という古坂さんの言葉も胸に響きました。(東京・高校3年・女子)

◇中高生モニター会議について◇

7月25日に開催予定の中高生モニター会議について、会の流れや議論するテーマなどを担当委員らが説明し了承されました。

調査研究について

前回委員会で大筋了承された「青少年のメディア利用に関する調査票」の最終版が委員会に提出され、若干の修正について担当委員から説明があり、内容が確定しました。今後、9月の調査実施に向けて諸手続きを進めることとなりました。

今後の予定について

  • 今後の日程を次のとおり確認しました。6月30日、松江市にて意見交換会(山陰地区)。10月24日、静岡市にて意見交換会(静岡地区)。

2017年5月30日

在京局と意見交換会

放送倫理検証委員会が2月に公表した決定第25号「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」に関連して、委員会と在京局との意見交換会が、5月30日に東京・千代田放送会館で開催された。民放6局とNHKの計7局とオブザーバー参加の民放連から合わせて20人、委員会側からは川端和治委員長、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員が出席した。
概要は以下のとおり。

冒頭、川端委員長が、「選挙に関する報道と評論を放送するのは、有権者に投票する際の判断材料を提供するためだ。正しい情報に基づいた選択が行われなければ、民主主義は正しく機能しない。量的な公平性を守っているだけでは、有権者は必要な情報を得られず、投票率も下がってしまう。法律では、虚偽でない限り、そして選挙運動にならない限り、選挙に関する報道と評論の自由が保障されているのだから、候補者や政党の主張を単に横並びに伝えるのではなく、ファクトチェックをして、有権者に有用な情報を伝えるのはメディアの重要な役割であり、そこで働くジャーナリストの使命だ」と、意見書を公表した目的について総括的に解説した。続いて斎藤委員が、「去年の参議院選挙の放送では、何が争点なのかを提示する放送局の機能が弱くなっているように思った。政党が言っていることをそのまま流すならば、放送局側に能力は必要ない。選挙のあと、『改憲勢力が3分の2になった』と各局が報じたのに、選挙前・中は『争点は改憲勢力の議席数だ』という放送はほとんど見られなかったように思う」と述べたうえで、「こういう時こそ原点に戻って、表現の自由は何のためにあるのか自問自答しながら仕事を進めていくべきだと、自戒を込めて考えている」と、同じジャーナリストとして参加者へのメッセージを伝えた。渋谷委員は「放送局は政治に関する多様な情報を市民に伝えるべきなのに、萎縮と忖度によって先細りになっているのではないか」と、視聴者としての感想を述べたうえで、専門の憲法学の立場から、去年の参議員選挙と東京都知事選挙の放送の具体例に触れながら「政見・経歴放送に量的公平性は求められているが、それ以外の選挙に関する報道と評論は自由なのだから、その自由を最大限にいかして、国民に必要だと放送局が考える情報を自律的かつ重点的に放送すべきだ」と話した。藤田委員は「公職選挙法は151条の5で選挙運動放送を禁止しているが、それ以外の放送は禁止していない。それなのに放送局は公職選挙法を『べからず集』だと誤解しているのではないか」と指摘した。そして、「候補者が実現できない政策を掲げて立候補した場合、『それは不可能だ』と放送局が指摘することは許される。都知事選挙の際に各放送局に方針を尋ねたところ、自主的にそれぞれの考え方に基づいて放送していることがわかったので、その方向で豊富な情報を提供することが重要だ」と、政治学の研究に触れながら述べた。

続いて意見交換に移り、放送局側から「議席数に応じて紹介する時間に差をつけると、苦情に対処しやすいという面はあるが、工夫して伝えないと視聴者に見てもらえないと感じている」「この意見書の趣旨を踏まえて、勇気をもって作るマインドが社内に出てきた」といった意見が出された。さらに『質的公平性』とは具体的に何なのかという点に関して、質問や議論が続いた。この中で川端委員長は「質的公平性とは定義できるものではなく、いろいろな事例が出てくるたびに放送局が考えなくてはいけない。これは伝えるべきだと放送局が判断したときは、それを積極的に伝えてもらっていい。それが質的公平性を害することにはならない」と、また藤田委員は「同じ基準で各政党や候補者に聞くことが質的公平性であり、その規準はそれぞれの放送局が考えるべきことだ」と答えた。また複数の候補者がスタジオで討論する形式の番組は公職選挙法に抵触しないかという質問に対して、川端委員長は「司会者が論点を設定して議論をしっかりコントロールするのであれば、抵触しない」と述べた。かつて政権交代選挙で子ども手当が話題になった際に、その実現可能性を十分に伝えられなかったという放送局側の自戒に対しては、川端委員長は「夢のような政策が実現できないと確信を持って言えるのであれば伝えるべきだった」と、また渋谷委員は「政策の実現可能性については、事実に基づいてぜひ問題点を指摘してほしい。国民にとって何が大切な情報か、各局が判断して伝えることが大切だ」と答えた。斎藤委員は「この意見書で励まされたという放送局の感想があったが、それだけで意見書を出した意味はあったと思う」と述べ、藤田委員は目前に迫った都議会議員選挙について「意見書でも指摘したが、公平性に配慮するあまり、放送量が減ることが一番いけない」と指摘した。このあと、今起きている築地市場の移転や加計学園の問題、さらにかつての郵政選挙の報道のあり方などについても質疑が交わされ、最後に川端委員長が「放送局はその都度、自主的・自律的に考えて、メディアの持つ表現の自由の権利を国民のために使うという決意で臨んでほしい」と述べて、意見交換会を締めくくった。

終了後、参加者からは、「放送局の能力とスタンスが問われると感じた」「選挙報道は日々の報道の延長であるとの思いを新たにした」「BPOの委員がどのような温度感で発言しているのか、直接確認しながら会話をする機会があったことは貴重だった」などの感想とともに、「質的公平性の定義、基準が示されなかったのは残念で、多くの事例を挙げてほしかった」「『候補者討論会』についてBPOの委員の方々の意見はよくわかったが、放送局としては、公職選挙法違反と言われかねないことはリスクが高いと感じている」といった意見も寄せられた。

以上

第248回放送と人権等権利に関する委員会

第248回 – 2017年6月

都知事関連報道事案の審理、浜名湖切断遺体事件報道事案の審理、沖縄基地反対運動特集事案の審理、STAP細胞報道事案の対応報告、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の対応報告など

都知事関連報道事案の「委員会決定」案を検討のうえ了承し、浜名湖切断遺体事件報道事案の「委員会決定」案を引き続き議論、また沖縄基地反対運動特集事案を審理した。STAP細胞報道事案について、NHKから提出された対応報告を引き続き検討し、事件報道に対する地方公務員からの申立て事案で、テレビ熊本、熊本県民テレビから提出された対応報告を了承した。

議事の詳細

日時
2017年6月20日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「都知事関連報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、フジテレビが2016年5月22日(日)に放送した情報番組『Mr.サンデー』。番組では、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金流用疑惑に関連して、舛添氏の政治団体から夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃が支払われていた問題を取り上げ、早朝に取材クルーを舛添氏の自宅を兼ねた事務所前に派遣し、雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様等を放送した。
申立書によると、未成年の長男と長女は、1メートル位の至近距離からの執拗な撮影行為によって衝撃を受け、これがトラウマになって家を出て登校するたびに恐怖を感じ、また雅美氏はこうした撮影行為に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、家賃に対する質問に答えたかのように都合よく編集して放送され視聴者を欺くものだったとしている。雅美氏と2人の子供は人権侵害を訴え、番組内での謝罪などをフジテレビに求めている。
これに対してフジテレビは委員会に提出した答弁書において、長男と長女を取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っておらず、放送した雅美氏の発言は、ディレクターが家賃について質問した以降のやり取りを恣意性を排除するためにノーカットで使用したとしている。さらに雅美氏は政治資金の使い道について説明責任がある当事者で、雅美氏を取材することは公共性・公益性が極めて高いとしている。
前回の委員会後開かれた第2回起草委員会で修正された「委員会決定」文が、今月の委員会に提案され了承された。その結果、7月4日に「委員会決定」を通知・公表することになった。

2.「浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、テレビ静岡が2016年7月14日に放送したニュースで、「静岡県浜松市の浜名湖で切断された遺体が見つかった事件で、捜査本部は関係先の捜索を進めて、複数の車を押収し、事件との関連を調べています」等と放送した。この放送に対し、同県在住の男性が「殺人事件に関わったかのように伝えられ名誉や信頼を傷つけられた」と申し立てた。
申立人は、「私の自宅、つまり私と特定できる映像と、断定した『関係者』『関係先』とのテロップを用いて視聴者に残忍な事件の関係者との印象を与えた。実際、この放送による被害が目に見える形で発生しており、名誉毀損は十分に成立する」等と述べている。
これに対しテレビ静岡は、「本件放送は社会に大きな不安を与えてきた重大事件について、客観的な事実に基づいて、捜査の進展をいち早く知らせる目的をもって行ったものであり、申立人の人権の侵害や名誉・信頼の毀損にはあたらないものと考えている」等と述べている。
今月の委員会では、6月7日の第2回起草委員会を経て委員会に提出された「委員会決定」修正案を審理し、次回委員会でさらに検討を重ねることになった。

3.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」事案の審理

対象となった番組は、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が本年1月2日と9日に放送した情報バラエティ―番組『ニュ―ス女子』。2日の番組では、沖縄県東村高江地区の米軍ヘリパッド建設反対運動を特集し、「軍事ジャ―ナリスト」が現地で取材したVTRを放送するとともに、スタジオで出演者によるト―クを展開、翌週9日の同番組の冒頭、この特集に対するネット上の反響等について出演者が議論した。
この放送に対し、番組内で取り上げられた人権団体「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉氏が申立書を委員会に提出、「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」とした上で、申立人についてあたかも「テロリストの黒幕」等として基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示し、また、申立人が、外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容であると訴え、TOKYO MXに対し訂正放送と謝罪、第三者機関による検証と報道番組での結果公表等を求めた。
これを受けて同局は、申立てに関する「経緯と見解」書面を委員会に提出した。その中で「本番組は沖縄県東村高江地区のヘリパッド建設反対運動が、過激な活動によって地元の住民の生活に大きな支障を生じさせている現状等、沖縄基地問題においてこれまで他のメディアで紹介されることが少なかった『声』を現地に赴いて取材し、伝えるという意図で企画されたものであると承知している」と放送の趣旨を説明。放送内容は、「申立人が主張する内容を摘示するものでも、申立人の社会的評価を低下させるものでなく、申立人が主張する名誉毀損は成立しないものと考える」と反論した。
前回委員会で審理入りが決定したのを受けて、今回の委員会から実質審理に入った。申立人、被申立人よりその後提出された書面について事務局が報告し、委員から発言があった。

4.「STAP細胞報道に対する申立て」 NHKの対応報告

2017年2月10日に通知・公表された委員会決定第62号に対し、NHKから提出された報告「STAP細胞報道に関する勧告を受けて」(5月9日付)を、前回の委員会に引き続いて検討した。
その結果、同報告に関する委員会の考えを「意見」として取りまとめ、これを付して報告を公表することになった(局の報告と委員会の意見はこちらから)。

5.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案の対応報告

2017年3月10日に通知・公表された委員会決定第63号に対して、テレビ熊本から6月9日付で提出された「対応と取り組み」報告について事務局より報告があり、委員会としてこれを了承した。

6.「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(熊本県民テレビ) 事案の対応報告

2017年3月10日に通知・公表された委員会決定第64号に対して、熊本県民テレビから6月9日付で提出された「対応と取り組み」報告について事務局より報告があり、委員会としてこれを了承した。

7.その他

  • 委員会が7月18日(火)に開催する在京キー局との意見交換会について、事務局が議題、進行等を説明して了承された。当日予定される委員会に先立って開催する。
  • 7月27日(木)に開催される第14回BPO事例研究会について事務局から説明した。当委員会からは、「STAP細胞報道に対する申立て」、「事件報道に対する地方公務員からの申立て」の2事案を取り上げる予定。
  • 次回委員会は7月18日に開かれる。

以上