鹿児島県で、初めての意見交換会を開催
BPO・放送人権委員会は1月30日(木)、鹿児島県では初めてとなる意見交換会を開催した。昨年度の広島県に続いての県単位での開催であったが、在鹿児島6局から52名が参加した。委員会側からは三宅弘委員長、奥武則委員長代行、小山剛委員が出席、最近の「委員会決定」を議題に、人権や放送倫理について意見を交わした。午後7時30分からの開始であったが、予定の午後9時を大幅に越えて、9時30分頃まで熱心な議論が行われた。
主な内容は以下のとおりです。
◆三宅委員長 冒頭の基調報告◆
私も今年8年目の委員を務めさせていただいておりますが、ちょうど委員になった頃は個人情報保護法ができて、個人名の取材は非常に難しくなったという頃で、もともとは情報公開法の制定にずっと意欲的に取り組んできたのですが、情報公開とプライバシーの保護という観点から、高度情報通信社会における個人情報の保護というところも自分なりに政府の委員会等で意見を言うような立場になっておりました。
ちょうど今、出たので申しますと、人権擁護法案と個人情報保護法と、それから青少年条例、この三つのトリプルで表現の自由が侵される危機的状況にあるというような時代状況がずっとありました。BPOが自主自律の組織として、監督権限の行使を受けることなく、放送の倫理のあり方、それから私どもの委員会では特に名誉・プライバシーと表現の自由の調整を行うということで、様々な申し立てを踏まえて、判断を行っているということです。
特に、放送倫理検証委員会ができたちょうどその頃に、私どもの委員会でも放送倫理の中で、公平性とか公正性というものをどういうふうに扱うのか、というところまで判断の範囲を広げるということが、ちょうど2007年、委員になって途中にそういうことがありました。まあ、それ以外の放送倫理について判断ガイドの中で、放送倫理というものを具体的にどう判断するのかということについて、NHKと民放連の放送、報道の指針とか、それから放送倫理基本綱領よりいくつかの範疇をかかげるようにして、今までの決定の中から、いくつかの倫理のあり方というものを、この委員会として考えております。それが、また、きめ細かい放送倫理の判断をしなければいけない事案が出ておりまして、今日取り上げる事案もそのようなものが多々あります。
今日はそういう踏み込んだところのお話しをさせていただきたいと思います。
特に昨年の暮れに秘密保護法が制定され、あの法律は中央省庁のものにとどまらず、特定有害活動とか、テロリズムの関係ではどうしてもああいう法律が欲しいということで、非常に熱心だったということがあります。
ですから、法律によって、特定秘密と指定されたものは、当局にも秘密があるということになりますので、取材をされる時にそういうものに触れうるということになると、個人情報保護法に輪をかけて非常に取材がしにくくなるというようなこともあると思います。自主的、自律的な私どもとともに、そういう権力的介入を受けないような働きかけというものもお考えいただく、きっかけにしていただければと思います。
簡単ですが、冒頭の基調のご挨拶とさせていただきます。
◆決定50号「大津いじめ事件報道に対する申立て」について◆
フジテレビの当該ニュースの同録DVDを視聴したあと、起草担当の委員が決定のポイント等の説明を行い、意見交換に入った。
奥委員長代行:決定文は、皆さんのお手元にあると思います。これを読んでいただければもちろんわかるのですけれども、読んでない方は、いまのDVDをご覧になっても、一体このニュースのどこが問題なのというふうに思われたのではないでしょうか。委員会は結論的には、本件放送は人権への適切な配慮を欠き放送倫理上問題があるという見解を出しました。
ポイントは大きく言って二つあると思います。一つはテレビの映像です。いじめの加害者とされた少年の名前が実名で入っているんですね。それにモザイクや黒塗りをしないで放送している。それがインターネットに流れて、だんだん広まっていった。
もう一つはテレビ局の責任を、人権上の問題、あるいは放送倫理上の問題としてどういうふうに問えるかということです。
このニュースを普通の視聴形態で見ている限り名前は判読できません。全然わからない。結局、委員会の判断としては、テレビの映像それ自体を通常の視聴形態で見ていたら、名前を判読できない。判読できない以上、この少年に対する人権侵害、あるいはプライバシーの問題というのは生じないというふうに、まず入り口では判断したわけですね。
それを録画して静止画として切り取ったものがインターネットに流れたわけですね。それについてどう考えたらいいのかという問題があります。これが非常に難しい判断を迫られた問題だと思います。テレビの画像を録画して、それを静止画にしてインターネットに流すということは今、技術的にはごく簡単なことですね。私でもできます。できますが、それは著作権法上について言えば、違法な行為です。ですけれども、今、テレビのデジタル化、録画機器の性能の高度化、インターネットの普及状況といった、いろいろな問題を考えると、こういうことを全然頭に入れないでニュースを放送するということについて言うと、人権上、適切な配慮を欠いたのではないか、そこにやはり放送倫理上の問題を指摘せざるを得ないという結論に至ったわけですね。
ミスであることは明らかで、現場で誰が悪かったのかとか、そういう問題はもちろん局の中で究明する必要があると思います。しかし、結論的に我々が考えたのは、個々の誰がどうしたこうしたというよりも、要するに放送局全体の人権感覚と言いますか、いじめ事件ということで非常に全国的にも大きな問題になり、訴訟にもなっていて、少年法の問題というのもあるわけです。極めてセンシティブな問題ですから、個人名とか、個人情報とか、そういうものよりさらに一層気をつけなければいけない。にもかかわらず、こういう形で出てしまったというのは、放送現場全体において、人権感覚が希薄だった。しっかり考えていなかったのではないかと、そういうふうに指摘して、結論的に人権上の適切な配慮を欠いて、放送倫理上問題ありますよと、そういう見解に達したということです。
補足的に少し言っておきますと、謝罪放送をしたわけですね。人権上、配慮に欠いたものがありましたという内容です。その謝罪放送をしたことによって、いわば個人名がインターネット上でどんどん拡散する契機になった、バッシングが過熱したと、申立人は主張しております。その辺についてどう考えるか。謝罪放送のあり方という問題も、実は少し論点としてはあるんですけども、それについては、自分のところのニュースで人権上の問題が発生したということがわかった時点で、やはり速やかにお詫び放送をするというのは、放送局としては適切なあり方で、問題はなかったというふうに委員会は考えました。
◆参加者からの主な発言◆
□いかに意識を高めるか
自分たちがニュースを日々作っていく中でもいろいろ複雑になっていくと、やはりどうしてもそこにミスが発生する可能性はどんどん高くなってくる。一人の人間がやっているならまだしっかりコントロールできるのかもしれませんが、テレビの仕事は複数の人間が携わるので、できるだけシンプルに素材を一つにしていく。問題のあるものは途中でカットするか、もう使わない、使えないようにすることが必要じゃないかなと思います。
あとは、スタッフの意識というか、結局、記者だけではなくカメラマン、編集マン、もしかしたら、そのアシスタントまで例えば気付けば止まったかもしれないという場合もあるので、いかにしてその辺りの意識を高めていくかが、私たちの課題だと思います。これはもう日々呼びかけていくしかないのかなと思っています。BPOで出していただいているこのような資料等をできるだけみんなの目に触れるところに置いたり、会議等で説明をして共有するように今、務めているところです。
□裁判資料への感覚の薄れ
裁判資料への感覚が、普段取材する中で薄れているなというのは確かにあって、特に、先ほどのような自殺、特に少年の問題の時に、映像が作りにくいニュースの時に、何をその映像の中に入れ込むか。安易にその書面の接写とかに走ってしまうこともあり得るかなと個人的には思ったんですね。本当にこのカットが必要なのかというところもスタッフ間で共有しつつ、考えながら編集を進めていかないといけないと思いました。
奥委員長代行:我々が考えている今回の事案の最大のポイントは、要するにテレビがデジタル化し、録画機能が高度化して、なおかつインターネットの利用が広がっているという状況の中で、テレビのニュースを作る側がどれだけ注意しなければいけないのかという、その点なんですね。
決定文の中ではこういう状況だからこそ、作る側には一層研ぎ澄まされた人権感覚が必要ですよ、と指摘しました。なんか、研ぎ澄まされた人権感覚なんていう言葉を使うとすごく堅苦しいんですけども、想像力の働かせ方の問題だというふうに私は思っているんです。そういうことが明らかになった事案だと。ここがこの事案の最大のポイントだろうと私は思っています。
それから、スタッフの意識の問題とか、いろんな人が関わるから、やっぱりどうしても難しくなってしまうという話がありました。当該局には個人情報などが含まれる素材については取材担当者が注意を喚起するようになっていたそうです。局内では「イエロー」と呼んでいたとのことですが、この事案では入口の問題として担当者が「イエロー」とするのを失念したということがありました。しかし、問題はそういう個人の失念ということではなく、それをみんなが最後まで気がつかないで放送しちゃったというところにあるんであって、そこにさっき言った、新しい形の想像力を発揮した人権感覚を持ってほしいというのがこの決定の趣旨ですね。
◆参加者からの主な質問◆
□どこまで責任があるか
自局のサイトに事件等を上げた時には3日間で消そうという基準は持っているんですけど、ただ、それをネットに張り付けられた時にはいつまで経っても残ってしまう。テレビ局のニュースがずっとそういう形でネットに残った場合に、どこまで責任を問われるものなのか。
三宅委員長:このケースでも、複製権の侵害と言うことで、著作権法の問題を、どこまで責任を負うのかということで、第三者がコピーをとってネットに出したというところ以上は違法行為ですから、違法行為に加担したという責任までは問われないだろうということは、我々、判断しました。ただ、そういうふうに流れていく映像ですから、中学校のところはマスキングでどこの中学かわかりません。それから、中学の校庭辺りの映像は、かなりぼかしが入っているので、どこかわからない。あの辺はかなりきっちり丁寧にぼかしを入れているので、放送のレベルでの匿名性、ぼかし方は非常に良くできていると思う。
しかも、通常の見方でどこにあったかわからない。だから、映像のモザイクがかかった素材と元の素材の管理というところの問題ですけど、取材としてはできる限り正確な取材をちゃんとやってほしいというのが倫理上の問題であります。マスキングのかけ方とか、ぼかしの仕方というのはかなり思い切って徹底していただかないと、それがどんどん流れていくことになるので、複製権の侵害までは責任を負いませんよと言っても、それがどんどん行くと、訴える立場としてはやっぱり訴えたい立場になってきますから、訴訟に載せられる余地はやっぱりあると思います。取材は正確に、それからぼかしは思い切ってやらないと、特に少年事件ですので、元のデータと、モザイク処理をきっちりやったデータと、少なくともこの2本がはっきり区別して管理されて、それがうまく管理上、誰が見てもわかるような形にしていくというのが、本件から学ぶ大事なところじゃないかなという気がしています。
◆決定51号「大阪市長選関連報道への申立て」について◆
朝日放送の当該ニュースの同録DVDを視聴したあと、委員長と起草担当の委員がポイントを説明した。
三宅委員長:私からは概要の説明ということにします。まず冒頭では、職員を脅すように指示していた疑い、しかも脅迫か、ということで、疑いとしてはあるのですが、全体の論調がですね、紹介カードの回収リストに今後不利益になることを本人に伝えるとの指示が書き込まれていましたと。
それから一番我々がこれを取り上げないといけない、大阪交通労組って大きい組合ですけども、個々人の組合員に対する名誉棄損とか侮辱ということもありうるということで、団体としての申立も受けたのは、やくざと言っていいくらいの団体だと思っていますという、この「やくざと言っていい」ここが、我々が取り上げる一番のきっかけになった部分です。
それから裏付けをしたらですね、リストには交通局職員の3割にあたる1867人が並び、管理職もいます、非組合員のコード番号も記されている。このあたりは一応裏付け取材をすれば、こういうのが入っているんだから組合員のデータじゃないでしょという話が出て来る。
取り上げること自体に問題があるじゃないかと局側からは言われましたけれども、この点については、私どもも大きな団体のものを取り上げなかったこともありますけれども、今回は取り上げて、そういう決め打ちの報道にならないように、疑いであれば疑いとして表現するということと、裏付け取材を、できる限り努力をする。そこがうまくできてればもう少し違った放送内容になったのではないかというところが、ここで検討すべき内容だと考えております。
小山委員:これは非常に単純な事案です。画面でおわかりのように、二つのカードというか、二つの紙が出て来てきます。最初に出て来た平松市長の顔写真が写ったこの知人紹介カード、これは本物で、これについてはもうすでに過去に報道されているということです。今回はその知人紹介カードの回収リストというものが新たに明らかになったということで、その回収リストというのはボカシが入っていましたけど、職員番号と氏名が並んで、その下に強迫的な文言があるという。これが独自の取材で見つかったということです。しかし、これが完全なねつ造だということがあとで発覚したということです。
あの放送を見た人はどういう印象を持つかですけども、回収リストについては、これは本物だという前提で報道していたと思うんですね。その上で、実は内部告発者があの回収リストをねつ造した人だったんですけども、その内部告発者の「やくざと言っていいくらいの団体」とか、あるいは大阪市議の「恫喝」といった発言を重ねた番組になっています。
では、紹介カードの回収リストを、なんで本物だと信じてしまったのか、要するに内部告発者の言ったことを信じてしまったのかですが、これまでも当該局はこの内部告発者からの情報を報道していましたが、それがすべて真実だった。ですから今回も真実だろうと思い込んでしまった。
それからもう一つ、市議会議員が動いていることについて過度の信頼を置いてしまったのではないかと思います。この決定文に「市政調査権」と書いてありますが、これは局側が答弁書で出してきた言葉です。ただ今回の「市政調査権」はなんの意味もない、いわゆる百条委員会とはまったく関係のない、市議会議員個人の調査にすぎません。それを、ある程度権威がある情報源だとしてのっかってしまったようです。
結局、労組のほうに取材に行ったのかということですが、取材の努力はしたけども、取材は間に合わなかったということです。具体的にはニュースの直前に記者が組合事務所を訪ねたけれども、そのときは組合側の担当者が不在で対応していただけなかった。放送後、改めて委員長に取材を申し込んで、夕方のニュースでは報道していると。最大限取材努力をしたと言っていますけども、結局、委員会を納得させるものではなかったということです。
最後に1点だけ。この後も、当該局は回収リストについて続報を行っています。それで、リストがねつ造だとわかったのが3月下旬でして、3月26日に、これがねつ造だったという報道をしているんですが、大阪市はこのリストがねつ造だったと発表しましたという、単に淡々と事実を述べているだけで、先ほどの2月6日の報道を例えば引用して、それを訂正するわけでもないし、当時者に対して、謝罪するわけでもない。そのような内容でした。
◆参加者からの主な発言◆
□裏付け取材について
やっぱり労働組合に間違いなくその裏付けと言いますか、コメントを求めて、それから出すのが基本的なこと。もしうちでも気をつけなきゃいけないというのは、こういった疑惑の段階で、「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」といったコメントを使う部分ですね。どうしても我々は、インタビューで引き出したコメントの中で見出しになると言いますか、センセーショナルなコメントを選びがちですから、まだあくまでも疑惑の段階でこういった強い表現をあえて使う必要があるのか。その辺が、こういったインタビューでのコメントを選ぶ中で犯してしまいがちだと感じました。
小山委員:要するに100パーセント裏がとれない限りは報道するなと言っているわけではなくて、報道のやり方というところもあるんですね。相手方が否定している以上は、相手方の否定についてそれなりに配慮した構成あるいは言葉遣いの番組にすることもあり得ると思います。ご覧いただいた番組についても、結局取材ができなかったら一切報道しちゃいけないというわけではなくて、あの報道はないでしょというところが非常に強いですね。
それからもう1つ、あの回収リストについての情報は他の在阪局もつかんではいたみたいですけれど、局によっては事前に労組に取材に行って、これはうちは全然関係ないと否定されて、それで一旦、ボツにしたところもある。他の局でもこれはちょっと踏み切れない、で、逆にあのようなテレビが出てしまったので、あっ、やられたと思った局もあったようです。ですから、「回収リスト」情報はあの局だけが独占的に入手したわけではなくて、あの局だけが食いついてしまったと。それはやはりこの内部告発者とのそれまでの関係などもあったし、よく言えばあのテーマについて一生懸命やってきたので、逆に食いついてしまったのかなというところのようです。
三宅委員長:この決定文の結論の2段落目に「いかに報道することが重要であるとしても、裏付け取材の必要性、その他の放送倫理上の要請を軽視してよいことにはならない」とありますが、その次の「また、疑惑を報道するのであれば、取材努力を尽くした上で、あくまでも疑惑の段階であることが明確になるようにすべきである」と。したがって、内部告発報道とか目撃証人報道についても事実が確定的でないとしたら、疑惑の段階だということがはっきりするようにというシグナルですね。スクープというのと、もう事実がそれで固まったかのように走っちゃったところの問題があるので、疑惑は疑惑としてこういう疑惑がありますってことを淡々と述べ、裏付けが仮にとれなくても、おそらく報道はしたと思いますが、もうちょっと違う報道の仕方があったのではないかと思います。
◆モザイク映像や匿名インタビューについて◆
三宅委員長:今、私どもで、顔なしインタビューについてどういうふうに考えるかということを委員会の中でも議論しております。まだ確定的ではありませんが、いろいろ調査すると、各局で原則顔ありインタビュー取材をするようにということで、例外として顔なしインタビューすることができる場合についてはかなり検討されて、その基準がよくできているっていうことがだいぶわかってきました。ただ実際の運用として、それができているかどうかっていうところの問題。それから海外の通信社の基準を見ると、例外として顔なしインタビューするにあたっては理由を付記するようにという指導もされています。この辺は日本ではまだそこまで徹底しているような基準にはなってないような感じがあります。
先ほど言いましたように事実の正確性とか客観性とかですね、真実に迫る努力、放送倫理上ですね、そういう基準を示しているんですが、そういう観点からすると原則として顔ありインタビューというのが本来なされるべきです。しかし実際は安易に顔なしインタビューがなされているのではないかということで、私どもとしても今ですね、調査をしてもらおうという段階であります。
知る権利に奉仕する取材、報道の自由という観点からは、取材においてはやっぱり原則、顔ありインタビューをしていただきたいというのが私どもの立場でございます。ただ実際にはですね、先ほどの大津いじめ事案にあったように、放送時に、特にデジタル化した時代の放送を無断で二次利用するという現状においては、例外的な顔なしインタビューを放送する要件がきっちり確立され、運用される必要があるだろうと考えております。特に名誉、プライバシーの保護のためにはぼかしとかモザイク処理は十分に行う必要があります。
先ほどの話にもつながりますが、取材源の秘匿は絶対必要だということもあります。それから客観性や真実性の担保の努力という点ではできる限り顔ありインタビューを原則とする。ただし放送の段階ではぼかしの処理をしないといけないというケースも出て来ると思います。今日、先ほど見ていただいた大津いじめの事件報道で、瞬間的に名前が出たところは問題になりましたけども、それ以外のぼかしの仕方はかなりきっちりできていたんじゃないかなということで、それとの比較の観点からも、放送倫理上、問題があるんじゃないかということを考えた次第です。
いずれいろんな研究会で、また取り上げることにはなるかと思いますけども、そのあたり、撮影をする、取材をする、その時点の問題と、放送するときの処理の仕方というところを少し分けて考える必要が出て来ているのではないかということを思っています。まだ委員会では審議、検討している段階ですので、ある程度まとまったところで委員長談話のような形で出したいなとは思っています。特に現場で、ぼかしをしなきゃいけないんじゃないかってことで、取材の時点で、安易に妥協しないような取材をしていただきたいとの希望を持っています。
◆各局の現状◆
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平成23年にハンドブックを作り、その中でモザイクあるいは顔なしのインタビュー等について、一応規定しております。取材・放送については、実名報道が原則というところを明記しまして、モザイク・ぼかし等については例外措置であると謳っております。安易に使うことは避けましょうと呼びかけをしております。
最近の傾向として、一般の方も実際の放送を見て、インタビューで顔が出ないケースが多いと思われてか、取材対象者のほうが顔を出さなければ取材、インタビューに応じるというケースが増えているように見受けられます。難しいのが共同取材、共同インタビューみたいに事件現場等で、どうしても1社がもう顔なしでいいですというふうに応じてしまうと、それに従わざるを得ないというケースもあると思います。そのあたりはある程度、各社さん、たぶん方向性は一緒だとは思うんですが、足並みがそろえばいいなと思っています。
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自社でそうした規定は作っておりません。系列キー局で作っている放送ハンドブック、記者ハンドブック、また民放連から配られる倫理手帳とか、そういったものを基準にしながらケースバイケースで対応しているところです。
弊社も基本的には顔出しインタビューの方向ということで指示していますが、最近、事件・事故、火災等の現場等で、一般の方の意識として、インタビューっていうのは顔出さずに受けられるものみたいな、あるいは顔出しを非常に嫌がるという、昔と比べて取材がしにくい。現場から、なんで顔出して撮ってこないんだと言ったときに、本当にもうなかなか承諾してくれる人が少ないですよと、安易に走っているつもりはありませんと言われます。実際、現場でなかなか撮れるのが少なくなっていると記者から聞きます。
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独自のマニュアルはありません。キー局のガイドラインを参考にしながら、その事案ごとに対応を協議しているというのが実態です。やはり実名報道、顔がちゃんとあって、きちんと誰が証言をしているか、インタビューをしているかがわかるような形で撮るのがベストだと、普段から現場の記者には伝えています。モザイクが多いと視聴者から不信感を持たれかねないので、非常にモザイク報道が増えていることに対して危惧を覚えています。
◆三宅委員長から締め括りのあいさつ◆
長時間意見交換ができて、大変私どもも有意義な時間を過ごせたと思っております。最近の例、冒頭少しコメントさせていただきましたが、放送倫理の問題として、非常に難しい判断を迫られる、なおかつ新しいそのメディアが置かれている状況、二次的被害と放送される側からいえばそういう形ですし、こちらとしては意図していない被害をあたえかねないという状況もあります。
最近は、ニュースが一旦放送されると、各局のホームページ上で何度も見られるような状況にもなっておりますので、一回性の放送ではないという状況を自ら局側も作っている様子が伺えます。新しい時代状況に応じて、放送倫理のあり方をきめ細かく考えていく時期にきているのではないかなと思っています。
ただ、最後のモザイク処理の関係でいいますと、見ていると、やはり顔なしインタビューが多いです。真実に迫る正確な報道という点で取材される人との信頼関係を構築していただいて、正確に顔あり報道をしていただきたい。単に放送だけにとどまらず、個人情報保護法とか、秘密保護法とか、非常にメディアを取り巻く状況、表現の自由を取り巻く状況が厳しくなっている折に、安易な状況に流されると放送自体が匿名化社会に拍車をかけるということにもなりかねません。その辺に、私どもも気をつけながら、皆さんとともにできる限りいい放送するように心掛ける、そういう私どもの立場というものも考えながら議論をしていきたいと思っております。
今後ともまたこういう機会をできるかぎり作って頂いて、いい放送になり、且つ権力からの介入を受けないで、自律して放送業界がやっていけることを目指していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもご苦労さまでした。