第88回 放送倫理検証委員会

第88回–2014年12月

佐村河内守氏が"別人に作曲依頼"を審理

川内原発報道で事実誤認と不適切な編集
テレビ朝日の『報道ステーション』を審議…など

第88回放送倫理検証委員会は12月12日に開催された。
"全聾の作曲家"と多くの番組で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案について、委員会決定の内容や方向性をめぐって意見交換が行われた。次回は、担当委員から委員会決定の原案が示される予定である。
テレビ朝日の『報道ステーション』が放送した九州電力川内原子力発電所に関するニュースに、事実誤認と不適切な編集があった事案については、担当委員から委員会決定の原案が提出された。意見交換の結果をふまえて、次回までに修正案を作成し、意見の集約をめざすこととなった。

議事の詳細

日時
2014年12月12日(金)午後5時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、小町谷委員長代行、是枝委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、藤田委員、升味委員、森委員

1.「全聾の作曲家」と称していた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案を審理

全聾でありながら『交響曲第1番HIROSHIMA』などを作曲したとして、多くのドキュメンタリー番組等で紹介されていた佐村河内守氏が、実は別人に作曲を依頼していたことが発覚した事案について、これまでの調査をもとに、委員会決定に盛り込む内容や方向性をめぐって意見交換が行われた。
とりわけ、審理の対象となった番組のすべてが佐村河内氏を「全聾の作曲家」であると信じ、制作されたことについてどう考えるのか、ドキュメンタリーの制作手法として何が問題だったのか、番組が視聴者に与えた誤解の大きさと障害者や被災者を虚偽の放送に巻き込んだことも踏まえると、問題発覚後の各局の対応は十分であったのか、などの論点については、長時間にわたる議論が交わされた。
その結果、これらの議論を踏まえて、次回委員会までに担当委員が委員会決定(見解)の原案を作成し、さらに議論を深めることになった。

2.川内原発をめぐる原子力規制委員会の報道に事実誤認と不適切な編集があったテレビ朝日の『報道ステーション』を審議

テレビ朝日の『報道ステーション』で、原子力規制委員会が九州電力川内原発について新規制基準に適合していると正式に認めたニュースを伝えた際に、事実誤認や不適切な編集があった事案について、担当委員から、前回までの議論を踏まえた委員会決定(意見)の原案が提出された。
原案では、問題となった事実誤認や不適切な編集がなされた経緯や原因などに加えて、背後に潜む問題点などが指摘されたが、不適切な編集が行われた原因をどうとらえるべきなのかなどを含め、質疑や意見交換が行われた。
その結果、これらの意見をもとに担当委員が修正案を作成し、次回委員会で意見の集約をめざすことになった。

以上

第215回放送と人権等権利に関する委員会

第215回 – 2014年12月

散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
大阪府議事案2件の審理
審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」の通知・公表を1月に行うことになった。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を続け、「大阪府議からの申立て」事案2件の審理を始めた。また「大喜利・バラエティー番組への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決めた。

議事の詳細

日時
2014年12月16日(火)午後3時~6時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、決定案は一部表現、字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。
「委員会決定」の通知・公表は2015年1月に行われることになった。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会までに、申立人とTBSテレビからそれぞれの主張や反論等を記した所定の書面が提出された。委員会では、事務局がそれらを取りまとめた資料を配付し、本件事案の論点の整理に向けて審理した。

3.「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)事案の審理

日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』で、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げた際、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことについて、山本府議がこの発言は侮辱罪にあたるとして「番組内での謝罪、訂正」を求めて放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張と日本テレビ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。

4.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理

対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』で、お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークでの発言。このトークでは、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯や、それに関連してテリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言したことに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申し立てた一連の事態について語られた。これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張とTBSラジオ&コミュニケーションズ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。

5.審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビジョンが2014年5月24日に放送した大喜利・バラエティー番組『IPPONグランプリ』。番組では冒頭、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出し、出演したお笑い芸人たちが次々に回答する模様を放送した。
この放送に対し、かつて「全聾の作曲家」として話題を呼び、その後楽曲が別人による代作だったことを認めて謝罪した佐村河内守氏が11月4日付で申立書を委員会に提出。お笑い芸人から、申立人の身体的特徴や生理的特徴(聴覚障害)および音楽的才能を揶揄する回答が出され、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として、一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らか」として、当該番組内での謝罪を求めた。
また申立書は「本件番組の内容は、一個人への侮辱にとどまらず、現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる。特に、本件番組が申立人の心情はもちろんのこと、同じく聴覚その他の障害を背負って生活している多くの人々の心情をも踏みにじることになるのであり、非常に悪質である」と訴えた。
これに対しフジテレビは11月28日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、本件出題が申立人を想定したものであることを認めたうえで、「大喜利という回答者の知的な発想力を求めるコーナーの1つの出題として取り扱うこと自体が申立人を侮辱し、名誉感情を著しく侵害することなどあり得ない」と主張。また、「自らの楽曲として(髪型を含めた独自の装いを演出して)公表しながら、実際には第三者の創作による部分が極めて大きいものであったことに関して申立人が社会的に批判されることは、やむを得ないことであり、且つ、表現行為として許容(保障)されるべきである」と述べている。
さらに同局は、「児童・青少年への影響を問題視するのであれば、障害の程度を過剰に演出し、なおかつ、別人の作曲であるにもかかわらず自分自身の作曲として公表していたことこそ問題視されるべきである」と、申立人の主張に反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

6.その他

  • 次回委員会は2015年1月20日に開かれる。

以上

2014年11月19日

放送倫理検証委員会 大阪で「意見交換会」を開催

放送倫理検証委員会は、近畿地区の放送局との意見交換会を11月19日に大阪市内で4年ぶりに開催した。今回の意見交換会には、大阪のテレビ各局を中心に、9局から84人が参加した。また委員会側からは小町谷育子委員長代行、渋谷秀樹委員、鈴木嘉一委員が出席した。予定を超える3時間20分にわたって、活発な意見交換が行われた。
概要は以下のとおりである。

意見交換会の前半は、委員会の事例をふまえた2つのテーマで進められた。
1つ目のテーマは衆議院の解散直前という時期にぴたりとはまった「政治や選挙での公平・公正性について」である。まず渋谷委員が、昨年度委員会が公表した決定第17号「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」に触れながら、問題提起を行った。渋谷委員は、まず「政治的な公平性」について、憲法学者としては、放送法で規定するのは表現の自由の観点から問題だとしながらも、放送の影響力の大きさを考えれば、放送局による自主的な規制が必要だろうと述べた。選挙に関しては、特に公平性が重要であり、特定の政党や政治家に偏って、視聴者の判断に歪みを生じさせるような取り上げ方は問題だと指摘した。そして衆議院の総選挙が間近だが、なるべく多様で豊富な情報を伝えるとともに、公平・公正性も心がけた報道に努めてほしいと要望した。
これに対して、参加者からは、「番組出演者の立候補が噂になり、制作スタッフが確認して否定された場合でも、出演を控えてもらうべきか、判断に悩むケースも多い」「事実上一騎打ちの首長選挙で、その2人の候補者だけで討論番組をやることに、問題はないか」など、具体的な意見や質問が相次いだ。委員側からは「各局が、いろいろな情報を集めたうえで、自律的に判断してほしい」(渋谷委員)、「問題になっても、自信を持って局側の考えを説明できるようにして対応すれば、あまり恐れる必要はないのではないか」(小町谷代行)などの意見が出された。また「仮に橋下大阪市長が立候補して記者会見があった場合に、情報番組で長時間生中継するようなことは、公平性からどう考えるべきか」との質問に対して、渋谷委員は「ニュース性があるにしても、だらだらと一人の会見だけを中継することは、個人的な意見としては問題だと思う。編集である程度コンパクトにまとめ、政治家の過剰な宣伝にならないように目配りをして、放送局の品格を示してほしい」との意見を述べた。
2つ目のテーマは、今年6月に放送人権委員会の委員長談話が公表されて話題を呼んだ「顔なしインタビューの是非について」である。小町谷代行は、まず「検証委員会では、総括的にではなく個別の事案ごとに判断している」と説明したうえで、委員会決定第16号の「インタビュー映像偽装」と第19号の「弁護士の"ニセ被害者"紹介」の2つの意見書で、この問題について委員会がどのような指摘をしたのかを具体的に解説した。
続いて、子どもたちの学校生活を題材にしながらボカシやモザイクを全く使わない75分のドキュメンタリー番組『みんなの学校』で、昨年度の芸術祭大賞などを受賞した関西テレビの真鍋俊永ディレクターから、問題提起を含めた報告があり、番組の一部が会場で視聴された。この番組で、なぜボカシなどをかけずに放送できたかについて、真鍋ディレクターは、個人的にもそういう表現をしたいという思いが強かったことと、ドキュメンタリー番組のため交渉する時間もあったことをあげ、映りたくない子どもは外す工夫をしたことなども説明した。その一方で、放送時間が迫っているニュースなどでは、顔なしの放送がやむを得ないという判断もありうるし、取材・放送にあたる一人ひとりが、きちんと考えながらやっていくしかないのではないかと述べた。
参加者からは、「モザイクなどをかける時には、誰にわからないようにするためなのかを考えて、かけ方にも工夫が必要だが、最近はあまり考えられていないと思う。もう少し時間をかけて、ニュースの場合でもどうすべきかなどを議論すべきではないだろうか」「最近の事件で、同じ取材対象者なのに、局によって顔なしと顔出しの場合があった。取材記者の対象者への接し方に違いがあるのか、あるいは、記者の力量や信頼感などにかかわる問題もあるのかと心配している」「モザイクをかけないで放送した際、配慮不足だというような批判を受けたケースもある。そのような社会的風潮があることも知ってほしい」など、様々な観点から多くの意見や疑問が出された。
これに対して委員側からは、「テレビは映像の力で事実を伝えていると思うが、モザイクをかけるとその力を弱めてしまう。どうしても必要なケースに限定していかないと、放送への信頼感を失っていくのではないか」(渋谷委員)、「ドキュメンタリーとニュース・情報番組では、対象者との信頼関係などで当然違いがあると思う。ドキュメンタリーでは、顔出しの映像にこそインパクトがあり、モザイクをかけると訴える力は弱くなる。放送が目指すべきなのは、やはり顔出しの方向だろう」(鈴木委員)、「ボカシが多いのは、日本のテレビの特徴で、外国のニュースではほとんどないと思う。個人的な意見だが、ボカシを入れるか否かの判断としては、報道内容の重大性と、モザイクをかけないと起きうる取材対象者の被害の可能性を、個別に考えていくしかないのではないか。事件の話を近所の人に聞く場合でも、最近は顔なしインタビューが多いが、そこまでする必要があるのだろうか」(小町谷代行)などの意見が述べられた。

意見交換会の後半は、「BPO放送倫理検証委員会が無(の)うなる日は来(く)んの?」と大阪弁のタイトルのもとで、検証委員会と放送局の関係などについて幅広い意見が交わされた。
最初に、当日急きょ欠席となった川端委員長からのメッセージが小町谷代行によって代読された。この中で川端委員長は、7年半の委員会の活動を振り返りながら、テレビ局が意識すべき課題を2つあげた。一つは「事実に謙虚に向き合う姿勢の大切さ」で、客観的事実を重視し、裏取りをしっかりとすることが、正しい報道には欠かせないとした。もう一つは、「テレビの制作体制には、もっと自分の頭で考える時間的ゆとりと、人員を適切に配置する経済的なゆとりが必要だ」として、制作現場で働く人たちが、仕事にもっと夢と情熱を持てるような処遇をするという方向で改善しなければ、同じ過ちが繰り返されるのではないかと危惧していると指摘した。そして「委員会は、これからも事案に即した意見を第三者として述べることにより、権力の介入を防いで表現の自由を守り抜きたいと思う」との決意を述べた。
続いて、鈴木委員が、長年にわたり取材者として外部から見てきた体験をもとに、BPOと放送局の関係について、「逆説的な問いかけ」として3つの視点から問題提起を行った。
まず、BPOは総務省の代行機関ではなく放送局に自主・自律を促す団体であるはずなのに、まるで江戸時代の「お白洲」のごとく、放送局が過剰に反応しているところはないかとして、「BPOはお白洲なのか?」と問いかけた。2点目は「BPOの決定は、水戸黄門の印籠なのか?」として、BPOの3つの委員会が出す様々な判断や決定を、放送局は「お達し」のように上意下達的に受け止めていないか、個人レベルでも異論や反論があまり見られないのではないかと述べた。そして3点目として、検証委員会では、同様な過ちが何度も繰り返されることへのもどかしさがあることに触れ、「『モグラ叩き』をどうやって断ち切るか?」と投げかけた。
参加者からは「放送局にとっては、やはり『お白洲』であり、『水戸黄門の印籠』というのが実感だ」「審議入りしなくても、BPOで取り上げられるだけでかなりのプレッシャーを感じるのは事実だ。『お白洲』かどうかは別にして、局にとってBPOは良い意味での抑止力になっている一方で、プレッシャーを感じる存在だ」「スタッフの採用や異動がある中で、放送倫理の水準を維持していくためには、社内での定期的、自主的なメンテナンスが必要であり、大変なエネルギーと努力が必要なことを実感している」などの意見や感想が相次いだ。また、「委員会決定が出ると、現実的にはシステム整備をして、規制を掛けていくことになる。本来は制作者のセンスを磨くことが重要だとわかってはいるが、なかなか難しい。なにが近道なのだろうか」との質問に対して、鈴木委員は「結論から言えば、近道はないと思う。先輩や同僚たちが、日常的な仕事の中などで失敗例などを伝えていくことによって、血肉化するのではないだろうか」と答えた。
このほか、「検証委員会ができて総務省の行政処分が極端に減り、権力からの防波堤として機能していることは評価すべきと感じてはいるが、一方で委員会の審議入りや委員会決定が公表されることによって、一種の行政処分に等しい罰を受ける感じもある」「委員会決定で、放送基準の適用の仕方には問題があると思う。法律とは違って、放送基準は目指すべきものであり、曖昧でもある。曖昧な放送基準をそのまま適用することは、委員の方たちが目指すところと反して、表現の自由に萎縮的な効果が働くのではないか」などの意見も出された。
これに対し、渋谷委員は「放送基準が曖昧だとの指摘があったが、放送基準はBPOが作ったものではない。委員会決定は、放送局自らが作った放送基準にも照らして書いているが、委員会での議論では、放送基準に拘束されることなく、放送がどうあるべきかを考えながら展開されている。萎縮効果があるというが、委員会は7年半で20余りの番組しか審議・審理していない。委員会は抑制的で、明らかに放送倫理に抵触する事案だけを取り上げているつもりだ。」と反論した。小町谷代行も「お白洲というと、あまり言い分を聞いてもらえないというイメージがあると思うが、私たちは対象番組については、制作現場の実際の担当者に、どういう思いやねらいで作ったのかなどを長時間、徹底的にヒアリングしている。それは、現場とかけ離れた意見を書けば、自主・自律のために設立された機関としての信頼性を欠いてしまうとの思いが、活動の指針にあるからだ。明らかに放送倫理上問題がある事案しか取り上げていないし、意見を述べていないはずだ。実は、委員会に報告される事案は、もっとたくさんあるが、それらはほとんど公表していない。そういう意味でも萎縮する必要性はないのではないか」と指摘した。その上で「検証委員会が無くなる日は来るのかというテーマについて言えば、2つのシナリオがあると思う。一つは、総務省が独自の機関を作って、委員会が解散せざるを得なくなる場合で、もう一つは検証委員会で扱うべき事案がなくなって、閑古鳥が鳴く状態になる場合だと思う。後者であってほしいし、そういう日が必ず来ると信じている」と述べた。
会場からは、「検証委員会は、世間や役所などと放送局との間で、ジャッジしてくれるところであり、今後も必要だと思う」「放送法上では問題になる番組であっても、それが国民のためになっている時には、検証委員会が一緒に権力に立ち向かってくれると信じている」などの意見も出され、予定時間を超過して活発に意見が交わされた。
最後に出席した各委員から感想が述べられ、小町谷代行は「とても率直な意見交換ができて、少し熱くなってしまったが、率直な意見を言ってもらわないとこちらも率直な思いを返せない面もある。きょうのような意見交換会が、今後も続くことを願っている」と締めくくった。

参加者から終了後寄せられた意見や感想の一部を、以下に紹介する。

  • 制作現場にいると、実態がよくわからないまま(知ろうとしないまま)、BPOというその絶対的な存在に、正直畏怖しか感じていませんでした。委員の皆さんが率直に話されるのを聞いてようやく、リアルな感情をもった、生身の人間の委員が運営されているのだと知ることができました。現場で四苦八苦している私たちと同様、委員の方々が局側の質問に、ときには悩みながら答えてくださっている様子を拝見し、番組制作においてはそもそも100%の答えというものがないのだ、ということをあらためて痛感しました。

  • 日々コンプライアンスの壁を意識して闘っている番組制作者の私にとって、BPOはその壁の先に待ち受ける"お白洲"以外の何物でもなかったため、今回は「お白洲の中を見学させてもらおう」という好奇心で臨みました。感想を一言で申しますと、私が持っていた"BPOはあちら側の人たち"(=言わば敵)という印象は偏見でした。BPOの生い立ちに興味を持ったこともなかったため、そもそも権力の介入を防ぎ、放送業界の自主自律を守るための団体であるという認識が、恥ずかしながら私には欠けていたのです(知識としては何となく知っていましたが)。しかし、委員の方々と顔の見えるディスカッションを経験して、"こちら側"の立場に立ち、我々の味方になって頂ける人たちであるという基本スタンスを確認することができました。委員長代行がおっしゃったように、確かに過去の審理・審議の一覧を見ると「誰が見てもこれは問題がある」というものばかりですし、「BPOができてから総務省の行政指導が激減した」という事実も全く知りませんでしたので、委員の方々がこちらの声を十分理解した上で、我々と共に闘って頂けているのであれば、こんなに心強いことはないと認識を新たにした次第です。

  • 放送局が望んでいる「放送局とBPOとの間の距離」と、委員が望んでいるそれとが、ちょっとかけ離れているのではないかと感じました。渋谷委員から「(何かの案件で、局の人から)僕らは正しいと思っていると言ってくれればいいのに、と感じたこともあった」との発言があったかと思います。委員は「もっと近づきたい」と思い、対して局の人間は「距離を置いておきたい。できれば接触したくない」みたいな…、本来あるべき距離感に相当の乖離があるという印象を持ちました。その意味で「お白洲」ということばの響きは象徴的でした。

  • BPOの方々と話をする機会というのは、正直やや億劫でもあり、ある意味貴重な場でもありました。私にとってBPOは、ふだんからあそこだけの世話にはなりたくない…そういう存在でしたので、委員や調査役はどんな顔をしているのか、どんな見解を持っているのか、そんな好奇心を胸に、できるだけ具体的な話になればいいなと思って参加しました。
    その意味でもっと突っ込んだ話をしたかったのは、仮に橋下市長が衆院選の立候補会見をした場合、「生中継」で伝えることをどう考えるかという議論です。もう少し時間を割くべきではなかったか、と思いました。自分たちは日々、制作現場で薄氷を踏む思いで、葛藤しながら放送しています。その一人としては全体にやや質疑応答=意見交換が踏み込み不足だったのではと感じられました。質問の中には、切実感があまりないようなものがあったことも付け加えておきます。

  • 特に質疑応答で、意見書の行間がみえ、よかったです。委員の皆さんの「意見交換会だから」と腹を割って話された内容には血の通ったものを感じました。やや気色ばまれた場面もありましたが、そうさせた局側の質問がよかったのかもしれません。私自身は、以前、社で講習会をやっていただきましたし、できるだけ意見書は読むようにしていますので、BPOの考え方は理解できてきているような気がします。しかし、局側にはBPOを司法機関、もっといえば敵対相手のように思っている人が意外と多い、と感じました。渋谷委員の「放送基準はあなたたちの作られたものですよ」という発言に、はっとした人も多いはずです。とはいえ、参加者の一人がいっていた「取り上げられた制作者はかなりダメージを受ける」という発言には、当事者ならではの生々しさがありました。取り上げられた局が敵対相手と思ってしまう気持ちは、想像はつきます。残念ですが、簡単に理解しあえる関係性ではないのかも、と思いました。しかし仮にそうであっても、愛のある厳しい指摘は、まだ放送業界には必要に違いありません。一大事には一緒に総務省に立ち向かってくれる存在、であってくれることを願います。

以上

2014年12月16日

「大喜利・バラエティー番組への申立て」審理入り決定

放送人権委員会は12月16日の第215回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビジョンが2014年5月24日に放送した大喜利・バラエティー番組『IPPONグランプリ』。番組では冒頭、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出し、出演したお笑い芸人たちが次々に回答する模様を放送した。
この放送に対し、かつて「全聾の作曲家」として話題を呼び、その後楽曲が別人による代作だったことを認めて謝罪した佐村河内守氏が11月4日付で申立書を委員会に提出。お笑い芸人から、申立人の身体的特徴や生理的特徴(聴覚障害)および音楽的才能を揶揄する回答が出され、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として、一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らか」として、当該番組内での謝罪を求めた。
また申立書は「本件番組の内容は、一個人への侮辱にとどまらず、現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる。特に、本件番組が申立人の心情はもちろんのこと、同じく聴覚その他の障害を背負って生活している多くの人々の心情をも踏みにじることになるのであり、非常に悪質である」と訴えた。
これに対しフジテレビは11月28日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、本件出題が申立人を想定したものであることを認めたうえで、「大喜利という回答者の知的な発想力を求めるコーナーの1つの出題として取り扱うこと自体が申立人を侮辱し、名誉感情を著しく侵害することなどあり得ない」と主張。また、「自らの楽曲として(髪型を含めた独自の装いを演出して)公表しながら、実際には第三者の創作による部分が極めて大きいものであったことに関して申立人が社会的に批判されることは、やむを得ないことであり、且つ、表現行為として許容(保障)されるべきである」と述べている。
さらに同局は、「児童・青少年への影響を問題視するのであれば、障害の程度を過剰に演出し、なおかつ、別人の作曲であるにもかかわらず自分自身の作曲として公表していたことこそ問題視されるべきである」と、申立人の主張に反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

2014年11月に視聴者から寄せられた意見

2014年11月に視聴者から寄せられた意見

突然の解散・総選挙に政権批判ばかりなのは如何なものかなどの意見。夫の毒殺容疑の女性を集団で執拗に追い回す取材は横暴ではないかといった声。練習中に他の選手と激突した著名なスケート選手の演技を称賛するかのような放送に対し批判の声など。

2014年11月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,121件で、先月と比較して140件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール74%、電話23%、FAX2%、手紙ほか1%。
男女別は男性66%、女性31%、不明3%で、世代別では30歳代33%、40歳代27%、20歳代15%、50歳代14%、60歳以上8%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。11月の通知数は527件【30局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、18件を会員社に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

突然の解散・総選挙が発表され、政局が風雲急を告げたが、政権を批判するばかりなのは如何なものかなどといった意見が寄せられた。
青酸カリによる夫の毒殺容疑の女性を、集団で執拗に追い回す取材に対し、余りにも横暴ではないかといった声が寄せられた。
著名なスケート選手が練習中に他の選手と激突するという痛ましい事故があったが、本番で演技したことを賞賛するかのような放送に対し、批判の声が寄せられた。
大物芸能人の晩年の闘病を描いたノンフィクションを下敷きにした番組に対して、余りにも事実と違う、一方的な再現ドラマではないかといった意見が多数寄せられた。
ラジオに関する意見は30件、CMについては50件あった。

青少年に関する意見

11月中に青少年委員会に寄せられた意見は82件で、前月から32件減少した。
今月は、「表現・演出」に関する意見が22件と最も多かった。次に「いじめ・虐待」が9件、「編成」「性的表現」「暴力・殺人・残虐シーン」がそれぞれ7件と続いた。「その他」は9件あった。
「表現・演出」については、バラエティー番組の出演者がゲストの楽屋に入り込んで私物を損壊した行為について、「青少年が悪ふざけの範囲として許される行為だと思いかねない」など、複数の意見が寄せられた。
また、バラエティー番組のコーナー内で、子どもがタレントや自身の母親を叩いたことについて、「暴力的で不快だ」「子どもをたしなめるべきだ」などの意見が寄せられた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 安倍首相が北京での会見で「解散は何ら決めていない」と発言したにもかかわらず、テロップでは「もう解散は止まらない」「政権与党が無駄な税金を使おうとしている。国民は怒るべきだ」と解散ムードを煽り、政権に対するイメージを少しでも悪くしようとしている。中立な報道をしなければならないテレビ局がこういう煽り方をすることは如何なものか。

  • 衆議院の解散が強まったことを受け、「年末の忙しい時期に冗談じゃない」「多額の費用をかけてやる必要があるのか」などと批判一辺倒だ。解散は意味があって総理が決断するもので、その判断は国民・有権者が下せばいい。選挙は国民の意思を示す大切な機会だ。

  • 前政権の時は散々政権のまずさを強調した報道があった。しかし今回の解散・総選挙の報道では総選挙に至る経緯を話題にしているだけだ。アベノミクスが失敗に終わったことは言うまでもない話だが、この点についてあまり話題にしない。放送局は現政権の権力をチェックする気があるのだろうか。国民は2年間の安倍政権で何が達成されたのかを知りたい。拉致、原発、広島の土砂災害の復興等々期待していたことは何も出来ていない。民主党政権の時に追及したように現政権の失態を非難するべきだ。

  • 選挙結果の報道でいつも違和感を覚えることがある。投票の締め切りが夜8時に終了すると、開票率0%の状態ですぐ「当選確実」と言い出す。出口調査の結果というが、本来は誰に投票したかは言いたくないはずだ。それを無理やりに聞きだし、選挙結果に利用することはおかしい。視聴者は深夜まで開票の結果を一喜一憂しながら見守っている。さらに付け加えたいことは過去に「当選確実」が間違いだったことがあった。そのような間違い起こさないためにも、開票途中の「当選確実」は不要である。

  • 福島の原発事故は災害ではなく人災だ。今もなお、東日本大震災による原発事故の放射能に脅え、帰宅できずにいる被災者がいることを忘れてはならない。それにもかかわらず、原発に携わった人間の責任を追及する番組は未だに放送されていない。二度と同じ過ちを起こさないよう、責任を徹底追及する番組を作るべきだ。

  • 閣僚の公選法違反や政治資金疑惑などを話題にする際、それらの追及のために国会の審議に遅れが生じ、重要法案が店ざらしになっているかのような論調が目立つ。しかしある野党議員の指摘によると、百十数時間の国会審議のうち、不祥事追及に割いた時間は数時間とのことだ。そもそもこれらは、「公選法違反問題」である。閣僚の資質が問われているのである。スキャンダルで野党が国政の足を引っ張っているかのような報道は、どうみても公正・中立でない。逆に閣僚の答弁こそ、不誠実で無駄な時間稼ぎをしている。政権のネガティブな面をなぜ伝えないのか。

  • "夫毒殺"容疑の妻を十数人で逮捕前に取り囲み、傘をどけながら強引に取材を行っていた。同じ質問を繰り返し行いながら、許可なく写真を撮り続けていた。あまりにも居丈高なモラルに欠けた取材に、不快な思いをした。

  • 各局とも「ハロウィンに渋谷交差点で騒ぐ若者達」の様子を報道していた。仮装とはいうものの、なかにはメークで、ゾンビになりきっている者もいた。アップに映し出された顔は、気持ちが悪かった。警察への届けも出さずに、大人数で勝手に道路を占拠することは違法行為でもある。テレビが「盛り上がっていますね」と面白おかしく取り上げることで、このような行為が正当化されてしまう。

  • 番組の意図に沿った意見のみを恣意的に拾うことは新聞の投稿欄も同様だとこれまで容認してきたが、最近は視聴者の公平な意見を取り入れているとは到底言い難い、スタッフの職権濫用が目に余る。毎回多くの投稿が来ているのにもかかわらず、一部の投稿が連日、採用されるということは統計的にも異常だ。常連らしき投稿者が採用されないことの不平を番組タグ付きでツイッター上でつぶやくと、異常なまでの反応の早さでの該当者のつぶやきが採用される。何千と投稿が来ている中で、このような不自然な事例は何度も確認している。明らかにスタッフによる番組の私物化だ。

  • 大阪の雑居ビルで女性を刺したということで、無職の男が殺人未遂で現行犯逮捕されたことを伝えていた。容疑者は6年前、女子高生殺害事件で起訴されたが、無罪が確定している。しかし番組のなかで、執拗にそのことを取り上げ、あげくにアナウンサーが死んだ女子高生の母親のコメントを読み上げる始末だった。誘導報道そのものの伝え方に、唖然とした。

  • 日中首脳会談の開催決定の紹介の後、中国人民への街頭インタビューと、中国の外相の記者会見の様子のみを報じていた。この報道姿勢に疑問を感じる。まず、日本国民の声を拾わなかったのはなぜか。また、日本側の政治学者の分析を紹介しなかったのはなぜだろうか。番組で紹介された中国政府の態度に、「日本が望んだから会談してやった」というよう印象を持った。日本側の様子が紹介されないことで、相対的に中国政府側の態度が強調される感じになっている。日本側の態度を一切報じず、中国側の態度に傾倒した報道姿勢は、「公正性」に著しく欠けるものではないか。

  • 国民の生活に直結する法案について、最近では"消費税増税"を取り上げることが多い。しかし出演者に偏りがあり、公平な議論がされていない。例えばある人物は番組に頻繁に出演して持論を展開しているが、彼は証券会社関連の人間である。つまり発言は証券会社の視点に立ったものであり、一般国民の生活には当てはまらない。しかも番組内では、誰も反論をすることがない。放送する以上、色々な意見を持つ人間を出演者として選び、公平な番組作りをするべきだ。

  • 沖縄県知事選の結果を受けて、県民の街頭インタビューを放送したが、選挙の争点だった基地移設に「反対」する意見のみだった。これでは県民がみな、辺野古移設に反対であるような印象を受ける。移設推進派の人の「賛成」意見もあったはずだ。賛否両方の意見を放送しないことは、世論誘導につながる。

  • テレビの出演者は政治に関して無責任な批判をする。今回の増税も「国民の生活が」と言い、先送りすれば「財政が」と言う。また「こんな忙しい時に解散」「税金の無駄」と解散も批判する。マスコミは政治に関して無責任な批判は慎むべきだ。政治報道のあり方を変えてほしい。

  • 長野県で震度6弱の大きな地震が起きた。しかし、その直後に地震速報の放送を開始した局は、2局だけだった。他のテレビ局は、番組を変えずに字幕速報だけだった。正直、ショックだった。震度6強の地震が起こっているのに、テレビ局の対応が悲しかった。東北大震災があってまだ3年半だ。それなのに、この反応の鈍さ。自分は福島在住だが、震災直後、やはりテレビでは地元の情報が得られなかった。当然、テレビはキー局が中心だから、地元の放送が流せなかったのだ。民放キー局は所詮、東京以外の災害は対岸の火事なのかもしれないが、キー局として、放送メディアとして、やるべきことはやってほしい。

  • 韓国人による対馬の仏像窃盗事件に対する司会者の言い分があまりにも不愉快だった。仏教の「執着を断つ」という話を絡めて、まるで盗まれた日本側が、お金の為に他人のものを平気で盗む犯罪者を許せと言っているようにも聞こえた。法治国家としてあり得ない考え方であり、唖然とした。

【番組全般・その他】

  • 脳震盪が疑われる状況で競技を行ったスケート選手は、他の競技であれば継続を停止させられたかもしれない。傍目には感動的かもしれないが、出場を強行したことは決して美談にはできない。今後の競技生命にすら影響が出かねない。中継も完全に感情移入してしまい、正常な判断ができていないように見えた。この状況が如何に重大であり、慎重に対処しなければならないかをしっかり伝えていただきたかった。いたずらに視聴者に「感動」を植え付け、今後似たような状況で、より重大な事故が起きるかも知れない。

  • 著名作家のノンフィクション作品が、事実であるかの如く感動の純愛ものとして放送された。しかしその放送は視聴者に誤解を与え、故人をはじめ、マネージャーや故人の親、娘を冒涜する内容だった。著書は、未亡人の証言のみに基づいて書かれており、事実と大きく異なっているらしい。未亡人以外の証言はほとんどない。こういった作品をさも事実であるかのように放送することは、著しく倫理を欠いているのではないのか。

  • ノンフィクション本に基づいての再現ドラマだった。私は関西在住で、彼の大ファンだったので楽しみに見た。番組が終わり、あまりにも美談で綴られた再現ドラマに、家族一同釈然とせず腑に落ちない気持ちになったが、壮絶な癌の闘病生活に涙せずにはいられなかった。しかし、この本は虚偽に塗り固められた取材によるものだといわれ始めている。真偽は今のところ定かでないが、仮に番組が虚偽の物語をノンフィクションと偽り放送したため、沢山の方が本を買ったとなると、責任問題になるのではないのか。

  • 急死した歌手の闘病生活と妻との出会い等を放送していましたが、虚偽の内容が多く、視聴者に誤解を与える内容だった。メモも、本人の筆跡ではない可能性が高く、またこの放送で紹介された著書はノンフィクションと語られていましたが、後日、ノンフィクションでないと分かりました。番組を信じて本を購入した方も多く、私も放送翌日に本を購入してしまいました。人を騙すような番組内容は問題ではないでしょうか。

  • "出稼ぎおじさん"という内容だった。福島から出てきているタクシードライバーのおじさんが「月に一度福島に帰るのが楽しみだ」ということでついて行った。家で家族との会話がないことを出演者一同が笑い、バカにする始末だった。たしかに「しゃべると家族で泣いてしまうのだろう」というフォローがあったが、見ていて腹立たしかった。未だに被災県から出稼ぎに来ている人がたくさんいるのに、何を考えているのか。

  • レギュラー出演者が、「アダルトビデオのナンパものが今は好きだが、数年後は痴漢ものに好みが変わっているだろう」と発言していた。痴漢は犯罪だ。苦しんでいる被害者がたくさんいる。冗談で口にすることではない。そういった種類のビデオが規制されない理由は知らないが、バラエティーのテレビ番組で取り上げる話ではない。犯罪に対する意識が低い。毎週楽しく見ていたが、がっかりした。

  • 一つのテーマについて専門家からじっくりと深い話を聞けるので、勉強になる。こういう骨太の番組は地上波にはない。男性司会者にバランス感覚があり、安定感と権力側に対しても厳しく切り込んでいく迫力がある。話を聞き出すことも上手い。ノートをとるぐらい価値がある哲学的な話が聞けたり、昭和天皇実録を特集した回では、戦争時の緊張感など、歴史が目の前に迫ってくるような心持ちがした。こういう良質な番組が制作できるところにこそ、BSの可能性がある。

  • ドラマの中で、実在する高校の名前を出して、"バカな学校"だと烙印を押した。在校生、卒業生、各関係者の思いを考えれば、いかに失礼なことであるかわかるはずだ。二度と同じ過ちを犯さぬよう、番組担当者に猛省を求める。

  • 実際に起きた殺人事件を取り上げてクイズにした。事件を再現ドラマにし、複数の容疑者から犯人を推理させる問題であった。しかし惨殺された被害者の家族や容疑者とされた人のことを考えると、クイズのネタにするようなものではない。

  • 水泳の選手が韓国の記者のカメラを盗んだとする事件を取り上げていた。彼が「やっていない」と言ったことに対し、出演者の精神科医が、「仮にやっていないなら、やったことの重大さにパニックになり、やっていないと信じたい思いから、やっていないと言っているのではないのか。そういった事は精神病のひとつの症例としてある」といったような説明した。「そのことが今回の事件に当てはまるということではないですよね」とフォローがあったことは救われるが、精神科医の発言は選手の人格を否定し、個人を攻撃するものなのではないのか。

  • 今回の女性タレントはマスコミが一丸となってバッシングし、大問題になったのに、それよりも長期的に不倫をしていた大物タレントには誰もバッシングしなかったことはおかしい。人によって態度を変えている。大概の人は不倫でテレビに出られなくなるのに、相手が芸能界で力があるからといって同じことをしても、「女遊びは芸の肥やし」で済まされるのは不公平ではないか。相手によって発言を変えるコメンテーターも情けない。弱いものいじめと変わりない。

  • 日本女性に乱暴なナンパを進めるとんでもない外人に対して「そんなやつは他にも沢山いる」という発言に怒りを感じた。確かに女性を軽視する人もたくさんいるが、それを安易に認めるとは何事か。女性の人権や名誉のため署名を集めている人にも大変失礼で、男性に暴力的なことをされた経験の方は恐怖すら感じる。海外で遊んでくる男の人たちと混同することもおかしい話だ。

  • 「呪い代行業者」について特集していた。代行会社という詐欺を行っている会社を追及するのかと思いきや、実際に呪いの代行を行っている人を登場させ、呪いが実際にあるのかどうなのか、討論するという内容だった。呪いは宗教とは違うが、信じるか信じないかは人それぞれであり、「あなたが知らない間に呪われているかもしれない」と不安を煽る番組を放送することはいかがなものか。

  • 小馬鹿にしたような内容が本当に不快だ。始まった頃はここまではなかった。特にMCの男性タレントへの執拗な、見ようによっては「いじめ」とも取れるいじり方は度を越えている。何故そこまでするのか理解できない。深夜帯のテレビの楽しみな番組の一つだったのに残念だ。初心に返って、番組の作り方を今一度考えてほしい。

  • 「セクシーな写真集に恥ずかしがる犬」というのを紹介していたが、たしかにセクシーな写真集を見せると前足で顔を隠し、恥ずかしがっているように見える。しかし、写真集を見せるときに、犬を抱いている飼主が後ろから意図的に息を吹いている様子が分かる。つまり、息を嫌がった犬が前足で頭を触る行動を、番組では"恥ずかしがる"としているのだ。もはや演出の範疇を超えている。

  • "高額宝くじに当選した人はどんな人?"というテーマがあり、実際に当選した人を取材するコーナーがあった。一軒家に住む高齢の男性だった。その時の取材の仕方に問題がある。一軒家のチャイムを鳴らすところから始まって、外観はモザイクなどの加工処理もなく、そのままだった。玄関から本人が出てきたので、そこの住人だということがわかった。最近では高齢の方を狙った詐欺が多発している。家の外観がそのまま放送されることで不利益になることもあり得る。一度、映像が流れればずっとそれを記憶する人もいるかもしれない。そういったことに配慮していないことが不思議だった。

  • 多くの番組で市民権を得たかのごとく、あたりまえにワイプが入るが、目障りだ。スタジオの芸能人の物欲しそうな顔や、つまらないリアクションなどはどうでもいい。「見たくなければ見なければいい」というかも知れないが、ひどいときは、画面の大事な部分にくだらない小画面がかぶってしまう。「ワイプ芸人」なる輩も存在するようで、いかに小画面で面白いリアクションをするか腐心しているとも聞く。あの「ワイプ」には作り手の良心が全く感じられない。「dボタン」で消せるようにしてほしい。

  • 女性作家と人気のゆるキャラが出るので見た。出演者の過去の仕事の経歴や内容が分かるおもしろい対談で、楽しかった。ゆったりとした進行で出演者と寛いでいるところがよい。これからも、内容の質のよい対談のテレビやラジオの番組を残してほしい。

  • 防犯についての番組だった。カギ番号から合鍵を作る事ができることを世間に知らしめる必要があるのか。紹介していた業者は「本人確認が出来なければ製作しない」と言っていたが、だから安心ではなく、放送することが問題だ。更にもっとひどいことは、U字のドアロックを開ける方法を、モザイクもなく放送した。このような内容を見て、まねる悪い人物がきっと出る。世の中に犯罪者を増やすつもりなのか。本当に見ていて不愉快になった。

【ラジオ】

  • 私は視覚障害者なので、「大相撲九州場所」をラジオで聞いている。音声だけでは、力士の大きさなどがわからないので、力士一人一人の年令や出身地、身長体重を言葉で紹介してほしい。

  • 円形脱毛症で悩む若手芸人の髪を抜く「いじめ」だった。本人が嫌がるのに強引に髪の毛を抜き、その場にいる人は「笑い」として処理しようとしていた。これは学校や社会で行われる「いじめ」の構図そのものだ。円形脱毛症はストレスや悩みが原因という見方があり、深刻な症状を抱える人も少なからずいる。デリケートに扱うべき話題だ。

  • 毎年、リスナーを集めて寺でお祭りを開催し、その様子を公開生放送している。私もお祭りに参加していたのだが、多くのリスナーを前に、落語家に袴と下着を脱がせて、お尻を出させていた。観客の前でお尻を見せる行為は、やられた人はもちろん、観客にも失礼だ。

【CM】

  • ラーメンのCMを見て家族で驚いた。面白さや怖がる度合いは、個人差があるのかもしれないが、こういった類のCMを放送する意図が分からない。実際に我が家の子どもも、大泣きして大変だった。CMの後で流れるメロディーを覚えていて「あれ、もうやだ!」「食べるとああなっちゃう」と言っている。

  • CMの途中で、「緊急地震情報」の一部と同じ音声が流れている。気をひかせようとしているのだと思うが、とんでもないことだ。「緊急地震情報」に類似した音声を流すことは、国民の安全のために絶対禁止するべきだ。

  • ゲーム会社のCMだが、レイプを連想させる内容だ。性犯罪を誘発するのではないか。このような内容が、青少年が視聴する時間帯に何回も放送されている。日本のマスメディアは青少年の健全な育成を考慮しているのだろうか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組の出演者がゲストの楽屋に入り込み、ゲストの私物をハサミで切ったり、壊したりするシーンを放送していたが、そのような演出が許される時代ではない。使えるものを壊すような場面を子どもに見せたくないし、まねをしても困る。

  • 深夜のアニメ番組の表現規制が厳しいと感じている。少年剣士を主人公としたアニメなのに、斬られた箇所さえ分からず、違和感がある。幼い子どもが視聴する時間帯ではないし、原作の読者層から考えても善悪の判断がつく視聴者層であると思われる。不要・過剰な表現規制は作品の質の低下を招くので、やめてほしい。

【「いじめ」に関する意見】

  • バラエティー番組で、芸能人がそれぞれ自慢のオートバイを持ち寄る企画があったが、そのうちの1人のオートバイだけを他の出演者が馬鹿にしていた。また、スタッフがオートバイにわざと照明機器をぶつけたり、出演者がフェルトペンで落書きしていた。このような行為を学校で行えば「いじめ」になるのに、面白いこととして放送する考えが理解できない。

【「暴力」に関する意見】

  • バラエティー番組のコーナーをスタジオで観覧していた子どもが、ハリセンでタレントや自身の母親を叩いて暴れるシーンがあり、不愉快な思いをした。仮に演出であれば、そのような企画は許されるべきではないし、子どもが自ら暴れたのであれば、そもそも放送するようなシーンではない。

【「その他」】

  • 子どもに人気の高いアニメ番組に出てくる、猫の妖怪のキャラクター設定について懸念がある。当該キャラクターはチョコレート菓子が好きという設定だが、本物の猫にとってチョコレートは毒物である。子どもたちが「猫はチョコレートが好き」という誤った情報を基に、本物の猫にチョコレートを与えてしまうと猫の体調に重大な悪影響を与えることになってしまうので、注意を促すべきだ。

第164回 放送と青少年に関する委員会

第164回–2014年11月25日

「深夜番組とは言え"限度"を超えている」と意見があった音楽バラエティー番組は継続討論に…など

第164回青少年委員会を、11月25日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見から、2案件について討論しました。その他、11月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告、当日委員会後開催の在京放送局との意見交換会・勉強会、2015年2月の山梨での意見交換会などについて話し合いました。
次回は12月16日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2014年11月25日(火) 午後2時00分~午後4時00分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員

視聴者意見について

  • 「ゴキブリの交尾の模様をAV俳優に演じさせた映像を流していた。深夜の放送ではあるが下品この上ない」などの視聴者意見があった近畿圏で深夜に放送されたローカル番組について、委員が3回分の放送を視聴した上で討論しました。委員からは、「深夜枠でのチャレンジングな企画だろうが、AV俳優を使った映像など、切り口が上品さに欠けている」「下ネタ、わい談が多く品がない。制作者は自社の番組基準を意識しながらギリギリの線で作っているのだろうが、少しも面白いとは感じなかった」「番組基準ギリギリの線で作れば見てくれると誤解しているのではないか」という意見がありました。また「性的な表現については見る側の主観的要素がかなり関わってくる。判断の難しいところだ」「視聴者からの反応はそれほど多くなかった。視聴者は時間帯を考えて見ているのではないか」「意図的に裸を見せているのではないので嫌悪感はなかった」「深夜帯の性的表現については委員会のテーマとして考える必要があるが、この番組そのものを特に取り上げる必要はない」などの意見が出て、結局審議入りしないことにしました。しかし「過剰な表現によってテレビの信頼性が損なわれてしまうことを危惧する」という意見があったことを付け加えることにしました。

  • 「若手男性芸人が裸で抱き合ったりわいせつな行為を繰り返していた。深夜番組とはいえ"限度"を超えている」などの視聴者意見があった関東圏の独立局などで深夜に放送している音楽バラエティー番組について、委員が2回分の放送を視聴した上で討論しました。委員からは「男同士の悪ふざけで、特に何も感じなかった」という意見もありましたが、「こういった映像を流して何が面白いのだろうか。番組の意図が分からない」「男同士でかなり不快な行為を行っている。別の部屋では女性二人がモニターで修正のない映像を見ている。ある種のセクハラではないか。悪ふざけの範囲を超えていて許容できない」「ロックな音楽バラエティーと称していて、異色な音楽番組で面白いと思って見ていたが"ロックな入浴"はロックがなめられている気がして残念だ」「映像表現が下劣、下品だ。別の部屋で見ている女性の反応を見て楽しむというのはハラスメント的要素がある」などの意見があり、"ロックな入浴"の残り2回分とそれ以外の放送分も視聴した上で、次回も引き続き討論することにしました。

中高生モニター報告について

11月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組(ドラマ・アニメ)の感想」というテーマで書いてもらいました。今回は22人から報告がありました。
いくつかの人気のドラマ番組に対して、意見が集中して寄せられました。まず、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)「非常に面白いドラマであるが、同時に訴えかけてくるメッセージに影響される人が多いので、視聴率が高いのだろうなと思った」(東京・中学3年男子)、「このドラマの主人公は、自ら厳しい環境で経験を積んだことによって個の力を手に入れたと思うので、僕も何事にも主体的に取り組んで経験を積んでいきたいと思います」(沖縄・中学2年男子)など、自分自身の生き方と比べて考えさせられるという意見が多く見られました。『ごめんね青春!』(TBSテレビ)については、「毎回とても元気をもらっています。面白いだけでなく、感動シーンも多くあり、自分の生活や考え方を見直すことがあります。このように、明日も頑張ろう!と思えるドラマがもっと増えたら良いのになと思います」(宮崎・高校2年女子)、「脚本の宮藤さんは三島市出身ではないのに地元でしか知らないことも、よく調べあげていて、すごいと思います。これからも、テレビは、地方を舞台にした魅力ある内容のドラマを作り、その地方について教えてほしいです」(神奈川・高校1年女子)など、中高生に強い人気があることが分かります。『相棒』(テレビ朝日)に関しては「今回のseason13は、前のseason12よりパワーアップしてさらに面白くなりました。これからも楽しい『相棒』に期待しています」(宮城・中学2年男子)、「この番組を再放送することが多いが、昔のもの、season1とかいい話ばっかりだ。最近の話でなく昔のものも再放送してほしい」(愛媛・高校2年男子)などの意見が寄せられました。
アニメ番組に関しては強く支持する意見が複数ありました。『七つの大罪』(毎日放送)「このアニメは、映像が他のアニメと違い独特な世界観を出しています。一度見ただけでとても印象に残ります。また、次週も見させる工夫をうまく考えていて、自分もその作戦にまんまと引っかかっていると思うと悔しいです」(東京・高校2年男子)。『団地ともお』(NHK)「ともおたちがやること、話すことに共感できます。視聴者がその番組に共感できることは良いと思います。また、主役のともおは、小さい命も大切にする人で、考えさせられるアニメです」(神奈川・中学1年男子)。『寄生獣 セイの格率』(日本テレビ)「原作漫画と差があるのでは、と心配でしたが、いざ見てみるとあまり違和感はなく、自分は人なのか化け物なのかといった主人公の苦悩が丹念に描かれていてとても面白いです。特に規制表現も入らず、見ていてとても引き込まれます。物語は中盤に入ったころなので、今後の展開が楽しみです」(東京・中学3年男子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】中高生は、自分の好きなコミックがテレビでどう展開され、演出されるか強く期待と興味を持っているようだ。

  • (広島・中学2年女子)『ワンピース』(フジテレビ/テレビ新広島)アニメになるとコミックより、動きや会話が分かりやすくなる。主人公が常に仲間と一緒に協力して強い敵を倒していったり、生きていくのに苦しまない人間はいないということもよく表現できていて良いと思った。
  • (岡山・高校1年女子)『きょうは会社休みます。』(日本テレビ/西日本放送)漫画ファンにとっては実写化されたドラマの内容がどれだけ原作と変わっているか、誰がどの役をしているのかは本当に大切なところだ。このドラマの人気が出るのも、キャストや演出が良いからだと思う。

●【委員の感想】テレビ番組に関して、評論家さながら、鋭い視点を持って評価している報告があった。

  • (東京・高校2年女子)『世にも奇妙な物語’14秋の特別編』(フジテレビ)今回のドラマはどれも斬新かつ印象的で、ラストまで目が離せなかった。まず、5本のオムニバスドラマ+5本の超短編という構成が良い。間延び感が全くなかった。超短編には数分ながらスパイスの効いたアイディアが光っていた。また、結末もハッピーエンドとバッドエンドが半々だったため、視聴者側に判断が委ねられ、おしつけがましくなく良かった。

●【委員の感想】本編と予告の内容の乖離に疑問を述べたモニターがいた。

  • (青森・中学1年女子)次回予告はどのドラマもうまく作られていますが、実際に番組を見ると映像や音声が異なっていることがあります。それはやって良いことなのですか?期待と異なりがっかりしてしまいます。

●【委員の感想】身構えず、のんびり楽しく安心してドラマを見たい、また学校での話題作りとしてドラマを見ている、という意見が散見した。

  • (滋賀・中学1年女子)『ごめんね青春!』(TBSテレビ/毎日放送)中学生にとっては、理想郷のような学園生活が描かれていて、いつも学校ではその話で盛り上がっています。金持ちとか、不登校の子がいない、ごくごく普通な生徒の話で気軽に見られます。閉塞感が漂うこともないので、良いと思います。
  • (東京・中学2年女子)『今日は会社休みます。』(日本テレビ)主人公が30代ということで私たちより年上ですが、多くの胸キュンシーンがあり、友達と毎回盛り上がります。『素敵な選TAXI』(関西テレビ/フジテレビ)も、1話完結で毎回スッキリして終わるので見やすいです。現実ではありえないストーリーが多いのですが、夢を見させてくれるところが良と思います。

●【委員の感想】自由記述欄を読むと、中高生はスタジオセットなど番組演出の細かい点をいろいろよく見ているなと感心した。

  • (佐賀・中学1年女子)番組でVTRが流れているときに、小さい画面で出演者の顔が出てくるのが嫌だなと思います。わざとらしく驚いたり、無理に笑ったり、映された瞬間作った顔になるので、嫌な気持になります。気になってVTRに集中できません。
  • (宮崎・高校2年女子)最近少し気になるのが、バラエティーなどのスタジオがカラフルすぎて見ていて目が疲れるということです。例えば『VS嵐』(フジテレビ/テレビ宮崎)はとても好きな番組なのですが、見続けられません。両親も目が疲れると言います。若者以外の視聴者がバラエティー離れをしないよう、是非スタジオの雰囲気について考えてほしいです。

調査・研究について

  • 「中高生の生活とテレビに関する調査(仮)」について、中高生のアンケート調査の集計作業が終了し、担当の萩原委員から鋭意分析作業を進めているとの報告がありました。

在京局担当者との「意見交換会・勉強会」について

今後の予定について

  • 2015年2月の山梨での意見交換会の準備状況が事務局から報告されました。
  • 北陸地方で放送されている青少年向け番組の視察に小田桐委員が行くことに関して、準備状況が事務局から報告されました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」から、山梨放送制作『おいでよ!あおぞら共和国』、岩手朝日テレビ制作『ある母親の決意~震災の教訓を後世に~』、新潟テレビ21制作『UX報道スペシャル 中越地震から10年 ともに未来へ』を加藤副委員長が視聴し、各局へ感想を送ったとの報告がありました。

◆在京局担当者との「意見交換会・勉強会」概要◆

青少年委員会は11月25日、「報道における青少年の扱いについて」をテーマに、在京テレビ各局(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MXテレビ)との「意見交換会・勉強会」を千代田放送会館で開催しました。各局からは、報道・情報番組の担当者など23人、青少年委員会からは汐見委員長ら7人の委員全員が参加し、論議が交わされました。また、高木光太郎・青山学院大学社会情報学部教授をお招きし、ご講演いただきました。
司会役は渡邊委員が務め、まず、事件関係者である青少年にインタビューする際に留意している点などについて、各局から説明がありました。各局からは、「原則として、中学生以下の場合は保護者の了解を必要条件としている。それ以上の未成年者についても必要な配慮をしている」「近年、SNSが社会に浸透していることなどから、取材する側、される側の想像を超えて情報が拡散することもあり得るので、さらなる配慮をしている」「青少年が被害者や目撃者である場合は、事件の全体像などを視聴者に伝えるために必要不可欠な場合のみ行うこととしている」などの発言がありました。
続いて、高木光太郎・青山学院大学社会情報学部教授から、「子どもへのインタビューをめぐって~法心理学の視点~」と題する講演がありました。高木教授からは、刑事事件裁判での供述の信用性を心理学的に評価してきた立場から、「十分な知識がない人が子どもに話を聞いた場合、子どもの記憶が変わってしまうことがあることから、イギリスでは全警察官が子どもから適切に話を聞くための訓練を受けている」「小さい子どもは、自分の記憶、伝聞情報、空想を明確に区別していないと言われており、思い込みや大人の意見への迎合性が強いため、聴き取りに際しては一定の技法を用いることが重要である」など、子どもから話を聞くための技法や事例などについて説明がありました。また、「スピーディーかつ的確に子どもを取材する方法について、各局の現場における研究を進めてほしい」との提言がありました。
その後の意見交換では、各局から、青少年へのインタビュー取材に細心の注意を持って臨むのは当然のこととしたうえで、「青少年が事件・事故の被害にあった際、当該被害者の人物をよく知る同級生などにインタビューを行うことがあるが、具体的な事件・事故の輪郭について視聴者に関心を持ってもらうための1つの材料と考えて実施している」「青少年への取材に限らず、少しでも多くの事実を集め、客観的に判断して報道することが基本姿勢である」などの考えが示されました。そのうえで、「取材時以上に、テレビで放送する際の影響は大きいので、その段階でもあらためて、当該インタビュー映像の使用について検討する必要があろう」「記者やデスクとの意思疎通を日常的に図っておきたい」「記者などへの事前教育を行ったうえで、取材をしっかりさせたい」など、青少年への配慮についての意識をより高めていきたい旨の発言もありました。
一方、委員からは、被取材者の年齢を考慮したPTSDへのさらなる配慮や、取材後のケアの充実を求める意見がありました。
汐見委員長からは、「取材する側には視聴者に事実を伝える義務があるが、一方で取材される側にも様々な権利がある。真実の追及に取材は不可欠だが、取材される側の論理も念頭に置いて行うことが、ますます求められていることを認識してほしい。また、高木教授の講演を聞いて、取材する側には一定のスキルが必要だと実感した。今回の意見交換会・勉強会が、放送局の若い人たちへの教育を行う上でのきっかけとなってくれれば幸いだ。これからも放送局と青少年委員会が議論しながら、より良い放送のあり方を探っていきたい」との、まとめの言葉があり、2時間30分にわたる会合を終了しました。