第215回 – 2014年12月
散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
大阪府議事案2件の審理
審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」審理入り決定…など
「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」の通知・公表を1月に行うことになった。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を続け、「大阪府議からの申立て」事案2件の審理を始めた。また「大喜利・バラエティー番組への申立て」を審理要請案件として検討し、審理入りを決めた。
1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理
静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、第2回起草委員会での検討を経た「委員会決定」の修正案が示された。審理の結果、決定案は一部表現、字句を修正したうえで大筋で了承され、委員長一任となった。
「委員会決定」の通知・公表は2015年1月に行われることになった。
2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理
審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。
この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。TBSテレビは「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。
今月の委員会までに、申立人とTBSテレビからそれぞれの主張や反論等を記した所定の書面が提出された。委員会では、事務局がそれらを取りまとめた資料を配付し、本件事案の論点の整理に向けて審理した。
3.「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)事案の審理
日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』で、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げた際、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことについて、山本府議がこの発言は侮辱罪にあたるとして「番組内での謝罪、訂正」を求めて放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張と日本テレビ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。
4.「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)事案の審理
対象となったのは、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』で、お笑いタレント「おぎやはぎ」によるオープニングトークでの発言。このトークでは、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯や、それに関連してテリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言したことに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申し立てた一連の事態について語られた。これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として放送人権委員会に申し立てたもの。
この日の委員会では、申立人側の主張とTBSラジオ&コミュニケーションズ側の反論を確認、論点を整理した。
次回委員会でさらに審理を続ける。
5.審理要請案件:「大喜利・バラエティー番組への申立て」
~審理入り決定
上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビジョンが2014年5月24日に放送した大喜利・バラエティー番組『IPPONグランプリ』。番組では冒頭、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出し、出演したお笑い芸人たちが次々に回答する模様を放送した。
この放送に対し、かつて「全聾の作曲家」として話題を呼び、その後楽曲が別人による代作だったことを認めて謝罪した佐村河内守氏が11月4日付で申立書を委員会に提出。お笑い芸人から、申立人の身体的特徴や生理的特徴(聴覚障害)および音楽的才能を揶揄する回答が出され、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として、一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らか」として、当該番組内での謝罪を求めた。
また申立書は「本件番組の内容は、一個人への侮辱にとどまらず、現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる。特に、本件番組が申立人の心情はもちろんのこと、同じく聴覚その他の障害を背負って生活している多くの人々の心情をも踏みにじることになるのであり、非常に悪質である」と訴えた。
これに対しフジテレビは11月28日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、本件出題が申立人を想定したものであることを認めたうえで、「大喜利という回答者の知的な発想力を求めるコーナーの1つの出題として取り扱うこと自体が申立人を侮辱し、名誉感情を著しく侵害することなどあり得ない」と主張。また、「自らの楽曲として(髪型を含めた独自の装いを演出して)公表しながら、実際には第三者の創作による部分が極めて大きいものであったことに関して申立人が社会的に批判されることは、やむを得ないことであり、且つ、表現行為として許容(保障)されるべきである」と述べている。
さらに同局は、「児童・青少年への影響を問題視するのであれば、障害の程度を過剰に演出し、なおかつ、別人の作曲であるにもかかわらず自分自身の作曲として公表していたことこそ問題視されるべきである」と、申立人の主張に反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。
6.その他
以上