第324回

第324回 – 2024年2月

「判断ガイド2024」について…など

議事の詳細

日時
2024年2月20日(火) 午後4時 ~ 午後6時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.委員会における審理の進め方について

放送人権委員会の審理の進め方について、運営規則などに改善すべき点がないか検討した。

3.「判断ガイド2024」について

事務局から完成した「判断ガイド2024」について説明した。今回の改訂からBPOウェブサイト上で公開されることも報告した。
「判断ガイド2024」はこちら

4.その他

2024年度の委員会開催日程を確認した。

以上

2023年11月

青少年委員会 金沢地区放送局との意見交換会 概要

青少年委員会は毎年、全国各地でさまざまな形で意見交換会を開催しています。今回は金沢地区の放送局とBPOとの親交を深め、番組向上に役立てることを目的に2023年11月22日午後2時から5時まで、金沢市で意見交換をしました。
BPOからは青少年委員会の榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、吉永みち子委員の6人が参加しました。放送局からはNHK(金沢放送局)、MRO北陸放送、石川テレビ放送、テレビ金沢、北陸朝日放送、エフエム石川の各BPO連絡責任者、編成、制作、報道番組担当者など計15人が参加しました。

《「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解の解説》

BPO青少年委員会が2022年4月に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について榊原委員長が解説しました。

〇榊原委員長
痛みを伴うことを笑いの対象とすること、キーワードとしては「痛み」と「笑い」です。
嘲笑は笑いではありません。嘲笑というのは例えば人が痛い目に遭っているときにワッと笑うことですが、笑いの質として違いがあります。本当に楽しく笑うと頭の中に幸せホルモンが出て、ストレスを解消する働きがあるといいます。しかし、他人が苦しんでいるのを見て、あるいは痛がっているのを見て笑うのは、本当の笑いなのだろうかという観点から考えています。
人は、例えば「苦しんでいる人を何とかしたいな」という気持ちや共感的な力、共感性というのを持っています。医学的に言いますと、その共感性というのは脳の中で他人が苦しんでいるときに何とかしてあげたいという気持ちが自然に湧いてくる能力です。その能力が生まれたばかりの赤ちゃんにはどうもないらしい。(赤ちゃんが)経験を通じて他人に対して共感するのだろうということが脳科学で分かってきています。そのときのキーワードに「ミラーニューロン」があります。ミラーニューロン、鏡の神経ということですが、他人が苦しんでいるのを見ていると、自分も、自分が苦しんだときや、自分がそういう目に遭ったときに感じるのと同じ神経がそれで活性化するということが分かっています。
赤ちゃんの模倣、赤ちゃんがまねをするというのは今から30年ぐらい前に見つかった現象ですが、赤ちゃんが他人の顔を見ていると自分がそれと同じ顔をしたと思われるところが、たとえ経験がなくても、活性化する脳の部分があるということが分かったのです。これがミラーニューロンです。
人間の場合、赤ちゃんでも大人でもそうですが、他人が泣いているところを見ると自分が泣いたときに活動する脳の部分が活動します。それを何度も繰り返して、今度は他人が困っている人を助ける、痛がっている人を助けるのを見ていると、自分も誰かが泣きやむとほっとします。このような他人の行動を鏡に映してやるようなことを繰り返す。その経験を繰り返すことで共感性が出てくると言われています。
これにはきちんとした科学的論文があります。他人の感情をミラーリングする。つまり他人の感情や行動を見ることによって、自分自身がそれと同じ体験をすることができる。このことが、人間が社会性や共感性を持つための一番根本にあるのだということが分かってきました。そのときに脳のどの部分が活性化するか、どこがミラーニューロンか、ということが明らかになってきて、研究が進んでいます。
テレビの場面では、かなりリアリティーを感じる演出になっていますから、本当に痛い場合があって、痛そうにしているのをスタジオで司会者らがそれを笑っているというのを見ることになります。辛い目に遭っている人がいるのに、何か笑っているではないか、ということを1回や2回ではなく何度も繰り返し見ることは、子どもが共感性を発達させることによくないのではないかという事実があったのです。それを基にこの見解を出しました。
他人の苦痛の表情を見ると、自分のミラーニューロン系が、自分が苦痛を感じたときと同じような活動をします。そして苦痛を感じている人を誰かが助けるのを見ると、自分の苦痛のミラーニューロン系が収まり、助ける行動で自分がいい気持ちになります。すると、教えなくても、助けた方がよいのだということがわかり、子どもがそういう場面を見ることで、共感性が育ってくると言われています。
この回路が反対に、他人が苦痛を感じているときに、それを嘲笑する、笑うというのを見ていると、働かないわけです。自分は苦痛を感じているけれど、スタジオの司会者らが結構笑っている、楽しそうにしているというのを見ると、その回路がうまく働かないことが起こるのではないかということです。
私たちはテレビを制作する方に、特に小さい子どもには、このような形で共感性を獲得していく過程があるということを知ってもらって、その知識を番組づくりに活用していただきたいと願って、この見解を出しました。
最後に、笑いにはいろいろな種類があります。「smile」や「laugh」などとてもポジティブな笑いや、嘲笑という英語だと「ridicule」とか「scorn」という言い方をしますが、これは似たような笑いと言いながら意味は違います。(番組制作者は)「みんなに笑いを届けているから」といいますが、ちょっと待ってくださいと。大人はある程度違いが分かりますが、笑いの種類によっては、特に小さい子どもや青少年の立場をじっくりと考えてほしいという気持ちでこの見解を出した次第です。

〇参加者
分かりやすいご説明をありがとうございます。僕らも「smile」と嘲笑の違いというのがなかなか分からないというところがあります。いま聞きながら笑いが定型化している、どこかそこに今の嘲笑と笑いの違いがあるのかなということに気づきました。
委員長が解説されたように(笑いが)パターン化されて、ばらまかれ、それを子どもが何回も見るというところに、テレビの持つ責任というものが出てくるのだろうと思いながら聞かせてもらいました。

《【テーマ1】子ども(小中学生)の『いじめ・自殺』報道について》

まず、地元局の代表社による、ニュース映像を用いた問題提起がありました。それを受けて髙橋委員から「いじめ、自殺報道について」説明があったのち、意見交換しました。

〇代表社の問題提起
石川県内の事例で、2年前にいじめの自殺がありました。金沢の近隣都市で、当時中学1年生の女子生徒がいじめによって自殺したケースです。各局とも、ニュースとして放送しています。弊社の初報のニュース、夕方のオンエアをご覧ください。<映像上映①>

〇髙橋委員
「子どものいじめと自殺の報道について」ということでお話させていただきます。私は全国で子どもたちのSOSの出し方教室や自殺で親を亡くした子どもたちを中心としたグリーフケアをしています。
いじめの認知率の推移について、2022年度のデータが先月(2023年10月)出されました。1,000人当たりの子どもに対してどれぐらいの認知率があるかという推移ですが、上昇しています。初めはいじめという認識がなかったものが、いじめと認識されるようになったことで増えているということもありますが、いずれにしても減ってはいないという状況です。
いじめの認知件数は低年齢ほど多いのですが、自殺の数は年齢が上がるほど多くて、これは逆相関の状況にあります。いじめが多いから自殺が多いというわけではないという状況です。子どもの自殺というのは全然減っておらず横ばい状態です。
問題は自殺の動機についてです。実は子どもの自殺は半数以上が原因不詳となっています。これは遺書が残っていないので分からないということです。遺書が残っているもので警察庁が分析した資料によると、小学校の男女とも原因の1位は家族のしつけ・叱責です。中学生は、男子が学業不振、家族のしつけ・叱責で、女子は親子関係の不和が1位になっており、本当は家庭の中の問題というのが中学生・小学生の自殺の原因の上位を占めています。いじめ問題は社会的な問題ですが、家庭内の問題というのは社会的な問題とは捉えられず、報道されにくいということがあります。子どもの自殺、イコールいじめ案件だけというイメージは、間違ったイメージであることは確かです。
ここで用語の使い分けをしておきます。自殺という言葉と自死という言葉をよく使われると思いますが、自殺対策基本法の中で、自殺対策は自殺対策ですが、遺族支援に関しては自死遺族という言葉を使っています。自殺遺族という言葉ではなくて自死遺族という言葉を使います。
自殺の報道の影響というのがあって、大きく報道されればされるほど自殺率が上がる。そして、その記事が手に入りやすい地域ほど自殺率が上がるということが分かっています。その影響は若年者層ほど大きく出ます。そして後追い自殺、その人のことを思って後を追って亡くなる自殺だけではなくて、いわゆる群発自殺と言われるような誘発、もともといろいろとメンタルに問題を抱えていたり悩み事があったりした子どもたちが、それに触発されて自殺することが起きます。これを「ウェルテル効果」と呼んでいます。

WHO(世界保健機関)は自殺報道でしてはならないことを提言という形で提示しています。提言のため拘束力がないので、あとは「報道の自由」と「報道する側の倫理観」みたいなものとの折り合いになると思います。
具体的には… ▼遺体や遺書の写真を掲載したり、自殺の方法を詳しく紹介したり、原因を単純化したりする報道はやめること。例えば、いじめで自殺した、先生に叱られて自殺したということです。▼自殺を美化したりセンセーショナルに報道したり、宗教的・文化的な固定概念を当てはめたりすることはやめる。例えば日本人は自殺が多いとか、キリスト教徒はどうだとか、そういう報道はやめるということ。▼自殺そのものを非難してはならない。これは自殺に対する偏見を助長するからであって、すごく難しいことですが、自死で亡くなった方に対する尊厳は保ちつつ、そしてその自死に対して批判はしない。でも自殺を美化しないということです。
これらがなかなか守られていない国が日本と韓国です。韓国も若いアイドルの自殺が多いのですが、やはりその後に若者が影響を受けることがあって、ここのところはしっかりと報道機関がその都度、考えていかなければならないところだと思います。

逆にやるべきことは何かというと、どこに支援を求めるか正しい情報を提供することをWHOがまず言っています。最近はニュースの最後に相談窓口の電話番号を紹介し、「困った人はこちらに連絡しましょう」と報道されるようになっていますが、私が懸念しているのは「最後にあれをつけたら中身はいいだろう」という感じがすることです。免罪符的に最後に相談窓口を紹介する傾向が見られるかなと、すごく懸念しています。
本当は身近な人に相談してほしいのです。いのちの電話やチャイルドラインは知らない人が応対するので、できれば身近な人に相談を、と考えています。
あとは自殺したことの報道だけではなく、自殺と自殺対策に対しての啓発報道をより多くしてほしいのと、日常生活のストレス対処法や、自殺の希死念慮【事務局注:「消えてなくなりたい」「楽になりたい」などの思考や観念を指す】の対処法などを報道してもらえるとよいと思います。自殺から救われるような報道をしてもらえると、幾らか生きづらい人たちが死なずに済むような道を選べるのかなと、思います。地域に根差したマスコミがいかに地域の資源を紹介するかということが非常に大事だと思っていますので、テレビ・ラジオ含めてそういう報道をしてもらえるとありがたいです。
著名人の自殺を報道する際は特に注意してほしいことがあります。改善されてきていますが、自殺の手段を報道することがあったり、「自宅で亡くなりました」や「クローゼットで見つかりました」という報道をしたりしているので、そこは気をつけてもらいたいところです。また自殺によって遺された家族や友人にインタビューするときには、非常に慎重にしなければなりません。意外と抜け落ちがちですが、メディアの関係者自身がその報道をすることや取材をすることによって、すごく心理的な影響を受けて傷つく体験をしているという観点も忘れてはならないと思います。報道する側にもケアが必要です。

子どもの自殺の原因をいじめだと、一つに絞りがちですが、実際は八方塞がりになってしまった子どもが自殺しています。部活動でうまくいかない子どもが、自宅でも家族関係がうまくいかない、勉強もうまくいかない、友達にもいじめられる、こういう八方塞がりになってしまったときに自殺のリスクが上がります。だから、いじめがあったとしても親に話せるとか、それでも何か夢があるなど、少し逃げ道があるといいのですが、それがなくて幾つか自殺の要因が重なると、リスクが上がってしまいます。
いじめの場合だと、自殺の原因を作った側の子どもに、今度は自殺のリスクが上がってしまうという観点も持っておかなければいけません。いじめ自殺の場合、ずっと裁判が続くことがありますので、加害者とされた子どもや、その加害に少し加担したと思われる子どもたち、それを傍観していた子どもたちも含めて、長い間、傷つく体験を何度も何度もしているという感じがしています。
子どもがいて、学校や地域があって、そこで私は子どもに対して自殺予防教育やSOSの出し方教室というのをやっています。教えているのは「本当に身近な大人に相談してちょうだい」ということです。「あなたたちのことを守りたいと思っている大人がいるから」と伝えています。受け止めてくれる人がいて、社会や地域にどんな資源があるかということを子どもたちがきちんと知っていることが大事だなと思います。
そういう意味では、これをきちんと地元のマスメディアが報じることがすごく大事です。この地域ではどういうことがあって、こういう子どもたちが救われているとか、こういうふうに生きづらさからリカバリーした子どもがいるなど、そういう報道がたくさんあるといいなと思っています。

<意見交換>

〇参加者
自殺の原因について、テレビだといじめということがクローズアップされてしまうのですが、家族(関係による原因)のほうが多いとの話がありましたので、「なるほどな」と思いながら聞いていました。
いじめがあった場合に私たちもいのちの電話という表示をします。いろいろ事情があって、例えば身近な人に相談してくださいといっても自殺の場合はなかなか遺族に取材するというわけにもいかなくて、教育委員会や警察など情報が限られる中で、なかなか詳しい情報は分からないところがあります。放送を通じてできることとできないことがどうしてもあるので、放送でできることはどういうことなのかなと思いながら聞いておりました。

〇髙橋委員
ありがとうございます。

〇代表社の参加者
さきほど見ていただいた映像は、いじめによって教育委員会が動いたということが主なニュースで、自殺といじめ、どちらの社会性が大きいと考えたかというと、いじめの社会性が大きいだろうということで取り上げたものです。たぶん各社のローカルニュースでも、去年1年間で1回も自殺単体でニュースにはしていないのではないかと思います。社会問題化して教育委員会が動いたとか、いじめが原因ということで捜査があったとか、そういう形ではあり得ますが、自殺単体をニュースに取り上げるということはローカルではまずないと思います。

〇吉永委員
子どもの自殺というのは私にしてみると本来驚愕の事件です。小学生・中学生が命を絶つということ自体が、何か社会に対する大きな警鐘を鳴らす一つの行動であって、これを誘発をするからという理由で報じないというのはどうなんだろうと疑問に思います。では、そのときにどう報じたらいいのかというと、特にいじめの場合はやはり学校側や教育委員会の側が隠蔽するという傾向が強いわけで、そこを時間が経ってからではなく、うまく取材をしていくことが大事で、取材しなければならない事案だと思います。ただそれをどのタイミングで出していくのかということには、すごく頭を使わなければいけないところかなと思います。
髙橋委員に質問があって、今の子どもの自殺の数がどんどん増えていることにびっくりしたのですが、これは既遂ですね。その背後に未遂の子どもがどれだけいるだろうかと思うと、社会問題としてもすごく迫ってくる重大な案件かなと思ったのですが。

〇髙橋委員
未遂に関しては推定値ですけれども、既遂の10倍はいると言われています。「死にたい、死にたい」と言っている子どもが増えているのが現実で、チャイルドラインやいのちの電話でも増えています。国はLINE相談窓口などを拡充させていますが、スクールカウンセラーの配置の増員というのをなかなか実行してくれません。目の前にいる人に相談できるような人の配置というのを早くしなければならないと思います。私が「スクールカウンセラーの配置を」と言っているのは、精神科(のカウンセリング)につなげてほしいと思うお子さんほど親御さん(保護者)にその理解がなかったり、お金や時間がなくて精神科に連れていけなかったり、自分が虐待しているからカウンセリングにはつなげたくないという親御さんがいたりするからです。

〇代表社の参加者
さきほど上映したVTRの中でも、「自宅で」という表現を使いました。今思えばそれが自宅であろうがどこであろうが、伝えるべき情報なのかということは、お話を聞いていて反省しました。
私たち報道の立場として、格好いい言葉で言えば真実を突き止めたいという、そういう思いが一方にあって、子どものいじめに関する自殺に関しては、割とぼかすところはぼかして報道しなければいけない。知っている情報もこれは精査して出さなければいけないという、そんなことを今、改めて思ったところです。
さきほども、地元に根差した身近な相談窓口など、そういったものを積極的に報道してほしいというお話がありましたし、それは大変勉強になりました。大きな公の全国レベルのところを紹介して、取りあえずアリバイづくりではありませんが、それをつけ加えればいいだろうと、そんな思いもあったように思いました。そこは地域のローカル放送局だからこそできる、そういう紹介や報道の仕方というのは改めて考えなければいけないと思いました。
この問題に関しては、例えば警察が絡む事件報道などとはまた違うスタンスで報道に臨まなければいけないということを感じました。
全国各地の自殺報道を見ていて、最初から学校名が出るケースもありますが、今回の場合は市の教育委員会は学校名を公表しませんでした。人口は5万人を超える自治体ですが、中学校は2つしかありません。市の教育委員会が学校名を伏せている中で、出すべきなのか、出さないほうがいいのか、迷いがありました。(メディア各社でも校名を)出している社と出していない社が分かれていて、弊社は途中から出すことになりました。自治体によって、教育委員会側の最初の公表の仕方がばらばらなので、いざこういう問題に自分たちが直面すると、どう対応すべきなのかという判断は、なかなかつかないのが現状です。

〇参加者
今の件で弊社は逆の対応、あくまで中学校名は出さないという対応を取りました。いまだにその報道の方針です。理由としては、遺族側には出してほしいという話がありますが、それは遺族側の思いであって、報道のデスクの間で話し合ったのは、同じ中学校の同級生たちが、もしここで名前が急に出てきて報道されたらどう思うかということです。そして、弊社は出さないという結論になりましたが、難しいですね。どこかの局は出していない、どこかの局は出している。新聞もおそらく、出している、出していないという対応が分かれた事例です。均一に線を引いてやれるものではないので難しいな、という感じをずっと持っています。

〇参加者
このニュースに関して私は当時、現場の記者をしていて、映像上映した局がやられた放送の内容と全く同じような形で放送しました。あのときは教育委員会から情報がどんどん出てきて、それを積み重ねてニュースにすると、まさに全く同じ形になりました。私たちも「自宅で」という形で方法について報道しましたが、今改めてそれを見ると、これはやったら駄目だったのではないかということを痛感しました。
当時の私には自殺を誘発するという意識が多少ありましたが、積み重なる情報を出していいかどうか、現場の記者としては事実が取れたというので(原稿に)書きました。それを一歩引いた目線で出すべきかどうかというのを本当に慎重に判断すべきだったと改めて思います。

〇榊原委員長
ありがとうございます。これを金太郎あめのように同じようにやるというのもまた変な話で、報道の自由と、(視聴者の)知る権利、それとそのことが及ぼす影響のバランスの中で、局によって(判断に)差があることは、決して悪いことではないと思います。みんなが悩んでいらっしゃることは、日本の放送をやっている方の良識がいろいろな判断の中に反映しているということだと思います。ほかにはどうでしょうか。

〇参加者
何でこのいじめ問題について報道するかというと、いじめそのものは問題ですが、その中で学校がどう対応したかという大人の問題があったと思っています。このいじめ問題について今年(2023年)、第三者委員会が入っていろいろと調べましたが、第三者委員会と学校側との認識不足というのが結構ありました。大人はどう対応したのか、学校はきちんと認識してしっかり対応したのかというところを検証するのが報道なのかなと思いました。

〇飯田委員
さきほど学校名を出す、出さないという議論になりましたが、今やテレビが報じなかったら子どもたちが知り得ないということでは必ずしもないと思います。自殺の状況次第ではSNSを介して子どもたちの目に触れたり、学校名も公になったりすることもあるでしょう。場合によっては、ネットでどれだけ情報が流通しているのかということも加味しながら、必要に応じて青少年に呼びかけていくということも、公共的ないし公益的なテレビ・ラジオの役割なのではないかと思っています。メディアの環境全体でWHO提言のうち、何を報じて何を報じないでおくべきか、というバランスを取っていくという視点が、これからますます重要になってくると考えます。

〇榊原委員長
髙橋委員の意見を聞きたいのですが、今テレビでやらなくても、SNSなどで、地元の人が「この子がいじめっ子だ」みたいに出たりするようです。そういう世の中になっていますが、何かございますか。

〇髙橋委員
問題は幾つかあります。まず子どもの自殺が起きたときに原因追求にフォーカスが当てられがちですが、原因となった人たちのケアというのも実は必要なのです。それは、いじめがあれば、(いじめた側の)子どもたちがそうですし、それに気づけなかった、あるいは対処できなかった教師たちもそうです。本当に教師人生が覆るほど傷ついているし、深い悲しみの中にいます。まず、そういう人たちをケアすることも大事なのですが、そこのケアはポンと飛ばされて、原因追求になるわけですね。
原因探しや犯人捜しを突き詰めると、再発防止になるかというと、再発防止に直結しないことも結構あります。再発防止というのは、やはりいじめがなくなるようなことを、長期的に考えていかねばなりませんが、「誰々さんがいじめをした」ことを追求するのが再発防止になるわけではありません。その仕組み自体を考えていかなければならないのであって、それ以上もう誰も傷つかないというのが本来の遺族支援というか、自殺が起きた後に私たちがやるべきことなのです。しかし、報道によって傷つく人がたくさんいる、それでまた自殺が相次ぐということになれば、これは自殺予防や、自殺が起きた後の報道としてあるべき姿ではないと私は思っています。
もう一つ。SNSでデマが回るということがあり、さまざまなうわさ話というのがSNSで回りやすい。その中で、テレビやラジオの報道がファクトであるということが大事だと思います。テレビとラジオはきちんとファクトを検証して、報道しているということです。
そこに軸足を持っていないと、例えば周辺の人にインタビューして、「そうらしいですよ」のような声を放送してしまうと、ただのうわさを流すことにしかなりません。何を共有すべきなのか、何のためにこの情報が必要なのかを考えて、ファクトを流していくことを軸足にしてほしい。
私自身、今皆さんとこうやって意見交換して、ここにジレンマを感じるとか、悩むとか、そこを一緒に考えながら、よりよい報道をしていただくことだと思います。みんなが悩む、そして今までの当たり前だったことに対して、疑問を持つということが大事なのかなと改めて思いました。

〇参加者
髙橋委員が話したネット(SNS)ということには、危機感を持っています。例えば、我々はWHOのガイドラインを見ていますし、それに沿って各社やっていると思いますし、沿っていなくても念頭にはあるわけです。
ただ、報道の配慮はできるけれども、なかなかそのケアを考えるところは、我々の仕事ではなくなってしまうのかなと思います。我々は伝えるのが仕事かなと思います。
我々はWHOのガイドラインに沿って名前も出しませんし、中学校の名前も配慮して出さないこともあります。でも一方でネットでは子どもの顔の写真が出ます、名前も出ます、どんないじめ、どんな死に方ということが出るときもあります。実際、加害者側も出てくるという中で、ネットでは「テレビ、ラジオ、新聞というのは、事実を隠しているのではないか」と言われていることもよくあるのです。
こちらがガイドラインに沿っていることで、「テレビは何か隠している」というように思われて、要するに、テレビは選択した事実しか流していないと言われてしまう。別に隠しているわけではないのですが、その辺の怖さというのを今、現場として感じています。
我々はまだ実名報道というのを守っていて、それは事実を担保するために、実名というのは必要だろうということをやっていますが、ネット時代では本当にテレビ報道は真実を伝えているのかと言われてしまう。伝えられているのですが、ネットを経験した人たちから見ると、信頼されないのではないかという、そういう思いがあります。

〇榊原委員長
この辺は、ネット情報に対するリテラシーを国民がどう持つかというところで、かなり変わってくるわけです。例えばSNSで炎上する場合、それのインフルエンサーになっている人というのは、1~2%しかいなくて、ほかの人がそれに雷同しているだけだという事実があるわけですね。それに対して、皆さんが悩みながら報道しているというのは、少なくとも複数の目が入って、どうしようか悩んだ上で出しているのです。だから、ファクトの度合いといいますか、その辺について、国民がだんだん気づくということが今後進めば、SNSの情報と、こういう複数の目が入った放送の間の差みたいなものを、みんなが分かってくると思います。
局によって対応が多少違うというあたりで悩みながらいくというのが、私が聞いていると、むしろ健全といいますか、もう絶対これだというよりは、いろいろ考えて悩んで、多少その差が出るということが重要なのかなと思いました。

《【テーマ2】子どもを対象とするカメラ取材の状況と問題について》

別の代表社によって、カメラ取材映像の紹介を交えながらの問題提起があり、その後、意見交換に移りました。

〇代表社の問題提起
5~6年ぐらい前からでしょうか、学校内で、子どもをテレビのニュースで撮影しようとする際、以前より撮影がしづらくなっています。学校側の要望で、主に子どもの顔の撮影ができませんと言われます。もともとは保護者にそういう要望があって、撮影しづらくなっています。もう一つは、制服や体操服の胸元の名札に名字があって、それが映像に映り込むのを避けるよう学校側から要望されるケースが出てきています。
実際に映像を見ていただきます。<映像上映②>

まずは、2学期の小学校のスタートのニュースです。金沢市の近隣の小学校で取材をしましたが、学校側から顔撮影がNGとありました。しかし、虐待を受けていて、親から逃げているような子どもではなく、親(保護者)の意向でNGですと。広いカットで登校風景を撮影して放送するのはいいですよと学校側から言われました。登校のときは後ろ打ち(子どもたちの背後から撮影)にしたり、広い映像にしたりしました。要は子どもの表情がない(撮影できない)のです。20数年前には、普通に登校して来る風景の中で、子ども同士が楽しく一緒に「久しぶりに会ったね」というような表情をアップで撮って、ごく普通に放送していました。社会的な条件がいろいろと重なって、撮影や放送しづらくなったなと、感じます。
もう一つ紹介します。こちらは対策編に近いところがあります。学校の中でのカメラ取材のとき、胸元にある名札の映り込みについて、感覚としては5~6年前から結構言われるようになりました。子どもの顔と胸元の名札が同じサイズの中に、例えばワンショットの中にあって、顔と名前が一致する映像を見た学校側や保護者から、「何々小学校の○○さんが付きまといに遭うのではないか」という指摘です。住宅地図でも使えば、校区内の○○という名字は、探そうと思えば探せるわけです。こういうことを懸念する学校があります。これは石川県に限らず、隣の福井県でも同じようなことを言われました。
教育委員会から指示があるわけではなく、校長や教頭クラスの管理職の判断でそういう懸念が出されているようです。いつもはうまく名札が見えないような角度にするなどして、かわしていますが、場合によっては学校側と話し合って「(名札部分に)白いテープを貼りましょうか」という提案も、それは少し行き過ぎかなと思いますが、提案することもあります。

ローカル番組に、6年前から始まった子どものクラブ活動を紹介するコーナーがあって、そこである対策をしました。よく見ると子どもたちの胸元に、番組のマスコットをマークにした缶バッジがあります。クラブ活動でかなり動きが激しいところで、もし胸元に名札があると、映像として隠したり、角度を変えて見えなくしたりは相当難しいのですが、胸元に缶バッチをつけることで、名札が隠れて見えません。このコーナーを始めたころから、名札が見えないような対策をしてきましたが、ちょうど2年前から、この缶バッチを作って、つけてもらうことを対策にしています。番組に親しみを持ってもらえるというのも併せて、いわば一石二鳥でやっています。
いずれの場合も、学校側の奥には保護者がいます。保護者と学校側の要望について映像面でどう配慮するのか、先方との話し合いはもちろん、局内でのさまざまな対策、やり方を考えないと、子どもたちの元気のよい姿が放送しづらくなっているという報告でした。

<意見交換>

〇榊原委員長
名札が映されると、何が困るのでしょうか。個人が同定されると困るということだと思いますが、どうして学校の校長らは、そういう判断をするのかという疑問です。

〇参加者
私は小学校で保護者会(の役員)をやっていたので、よく聞いた話ですが、保護者の中に子どもがテレビに映ることをよくないと思っている人は結構います。毎年、春になると多くの学校では、「テレビに映っていいですか」や「校内で作る広報誌にお子さんの顔が写ってもいいですか」という回答用紙がきて、保護者がそれにオーケーかどうかを書きこみます。広報誌にも写りたくないという保護者がいます。広報誌(の印刷)を、白黒だったのをカラー化しようとしたら、「カラーだとよりリアルになるので白黒のままであってほしい。その広報誌がどこかに回ったときに、自分の子どもが誘拐されるかもしれない。不審者につけられるかもしれない」と本気で思っている保護者が多くいます。そういう保護者の声を受けて、すごく慎重になっている学校があります。まったくおおらかな学校ももちろんありますが、厳しい保護者がいるところは、学校側も厳しくなっているなという印象があります。
もう一つ。学校取材のとき、うちの子は映してほしくないという保護者が言う子どもを、その場から外して、大丈夫な子どもだけで撮影できるようにしたことがありました。外された子どもはそんな事情を理解していないので、なぜ自分だけがその場にいられないのかと半泣きになってしまいました。みんなと一緒にインタビューに答えたいのに、先生から「あなたは駄目よ」と言われ半泣きになっている。こんな現状はよろしくないなと実感した記憶があります。
子どもを狙った事件などが増えれば増えるほど、保護者は昔と比べてものすごくデリケートになっているなというのを実感します。だから、その懸念も無視できず、なるべく大丈夫な範囲内で撮影することと、あとは本当に子どもの顔が分からないと駄目なのか、必要性も考えるようにしています。子どもが映らなくてもいいものもあれば、入学式や卒業式に子どもたちの顔は映さないでくれと言われたら、何のために取材に行っているのか分からなくなることもあって、大丈夫な学校に相談を持ちかけたことはあります。

〇榊原委員長
このような状況を薄々は想像していたのですが、校長としては、なるべく問題を起こしたくないし、別に取材に来てくれなくてもいいと考えれば、そうなると思います。どうでしょう、法律的には何かあるのですか。肖像権というのはどうなるのですか、ここに弁護士の先生(緑川副委員長)もいらっしゃいますが。

〇緑川副委員長
(取材対象が)子どもだから、(親権を持つ)保護者の意見があるという話で、そこで難しくなっていることはありますが、基本的には子どもだけの問題ではなく、例えば大人だったとしても、インタビューをしたときに顔を映していいですか、名前を出していいですか、嫌ですと言われたときに出せるかどうかということと、同じようなことなのかなと思って聞いていました。
例えばプライバシーの問題になったときには、そこはプライバシーの利益と、報道する利益の利益衡量ということで、最終的には判断されていくわけです。そうすると、そこで子どもの顔や名前を出すと、それは嫌だと言われても、出して報道するだけの利益があるのかどうかは、その都度考えながら進めることが必要になっていると思います。
特に子どもの誘拐というと、あまり一般的ではないのではないかと思いますが、絶対ないかというと、そうではないことではあります。より問題とされるのは、DVや虐待で支援措置を受けている、それで通っている学校を伏せたい、そのことすら言えないけれども、伏せたいということしか言えない事情がある子どもも今は、結構いると思います。学校側が、確認できない状況のまま映してしまうという可能性があることを気にするというのも、現実問題としてあるでしょう。報道する側は、そういう可能性があるかもしれないということを考えながら、どこまで報道するか検討していくということだと思います。
私が子どもの頃はテレビに出るということは特別なことで、そこで出たくないとか、名前を隠すというのはあまり考えられない時代でしたが、今は個人情報保護法も浸透してきて、どちらかというと「匿名社会を私たちは選んできている」、そういう方向に社会全体が向かっていて、私自身もそういう状況を受け入れていると思えるようになってきています。やはり昔とは違う社会状況というのを前提にしながら、個別、具体的に判断していかなければいけないと思います。
はじめに申し上げた利益衡量というのは、そのときの社会状況を前提にしたところでの利益衡量になりますから、「昔はこうだったのに」と言っても、そこは利益衡量の衡量材料にはなりません。今すこし行き過ぎているのではないか、そこまででなくてもよいのではないかというところで、さらにもう一歩進めて、どうしていくのがよいのかを提案しながら報道を考えていくといいのかなと思いました。
個人的には、入学式の放送では、後ろから映したとしても、別にもうよいのではないかな、前から映さなくても、後ろから入学式の状況を映しても、そのときの様子は報道できるかもしれないと思います。名札の問題をうまく調整していた放送局のやり方は、今の社会状況や、そのときの学校の状況を考えたときには、一つの方法かなと思いました。

〇参加者
僕の取材経験も全く同じで、学校側に「後ろから絶対撮ってくれ」や、インタビューもひどいのは「顔を切ってくれ(顔を映さないでくれ)」みたいな話になって、それは校長や教頭の判断ですから、おおらかな学校もいくつかあるので、そちらにお願いしていくようになります。
小学校の入学式の様子を後ろから撮ってもニュースは成立するのではないかと、お話がありましたが、成立はするでしょうけれども、そこに何のニュース価値があるのかなと思っています。ニュースにしたときは、やはり子どもの喜んでいる顔こそが、僕らはニュースの価値であって、入学式があったということ自体がニュースではないと思っています。もしどこの学校も(子どもの顔を)撮れないのであれば、たぶん取材に行かないのではないか。だからどうしても子どもの笑顔が撮りたい、そこにニュース価値があると、僕は思います。

〇参加者
さきほどDV被害から保護された子どもたちという話がありましたが、僕が聞いたところでは、たとえ顔が映らなくても、その子の持っている持ち物が映るだけでも、その子が特定されるということで、危ない事例があったようです。弊社では、顔を映さないだけではなく、その子の持ち物なども映らないように気をつけることがカメラマンの申し合わせにあるようです。だから、単純に「プライバシーで」というだけではなく、DVや虐待から逃げている母親の息子や娘という状況が、最近すごく多いということを感じています。

《関連の問題提起「子どもが映った放送番組素材のネット配信について」》

〇榊原委員長
次は、関連する事例として、子どもが映った放送番組や素材のネット配信についての問題提起があります。どうぞお願いいたします。

〇参加者から問題提起
古い話ですが2012年に、石川県内の都市にある公園で、屋外のスポーツテストをしていた高校生が、集団で熱中症の症状が出て病院に搬送されました。その一報を受けて記者とカメラマンが取材に行き、当時の状況を女子生徒にインタビューをして放送しました。
その取材内容が東京キー局にも送られ、全国向け放送ではなく、関東ローカルで放送されました。当時はまだネット配信という概念はあまりなかったのですが、放送した内容が、第三者に切り取られて、インターネットにアップされてしまいました。それをきっかけにして、その女子生徒の容姿に対する誹謗中傷が発生して、その生徒がすごく精神的な負担を受けてしまいました。
取材時の状況としては、未成年者のインタビューの際は、できるだけ保護者の同意を得るということでしたので、そこに迎えに来ていた保護者の了解を得た上でのインタビューでした。しかし、保護者としては石川県内だけの放送という認識だったので、そういう事態を受けてお怒りになってしまい、弊社としてはあちこちに削除を依頼する事態になりました。それで大部分は消えたということも含めて、納得してもらいましたが、その当時から弊社では、ネット上のいわゆるニュース映像として子どもの映像が配信されることについて、かなりシビアな対応になりました。つい最近までですが、18歳未満の子どもについては、インタビューも含めて、基本的に配信していませんでした。
だから、さきほどの入学式のニュースなども基本的には配信しないという流れで、2~3年前まではやっていましたが、最近の状況を踏まえて、「明るいニュースで承諾が取れればアップしましょう」となりました。明るいニュース以外の、事件・事故関係の子どもの映像が載ったものについては「ネット配信はなるべく控えましょう」という内規で動いているという状況です。
ただ、それも弊社だけの話であって、同じ系列の他局は全く意識していないというところですし、東京キー局ももちろんそういう意識をしていないということです。子どもが映った映像の場合、地上波だけでなく、ネットにも出されたときの対応について、特に削除が厳しいネットの状況については、頭を悩ませているところがあります。

<意見交換>

〇榊原委員長
確かに放送局のほうからネットに使えるような形で出すと、そこに責任が生じると思いますが、今はそうではなく、ただ普通に放送したものをまた録画してネットに、何の許可もなしで拡散されるという状況になっていると思います。ほかの放送局、あるいは委員から、今の問題についていかがでしょうか。

〇参加者
配信を前提とした報道というよりも、ややPRも兼ねた取材というときに、保護者全員の許諾、何なら誓約書みたいなものを取ったケースがありました。
とくに今、気をつけているのはプールの取材です。プールは女子児童であれば水着、男子児童であれば上半身は裸の場合が多いと思います。キー局から「男子であっても、胸元が見えるようなものは映さないでほしい。今はデジタルタトゥーなどという事例もあって、気をつけてほしい」と言われましたが、プールに入ると子どもは、はしゃいでジャンプしたりするのです。結果的にどうしても胸元が映ってしまう。男子なので気にしない人のほうが多いのですが、大人になったときにこれを見たらどうかとか、これを見て今いろいろな方がいますので、(性加害などの)標的になるというケースも考えられなくないということで、20~30人はいましたが、全員の保護者に、許可を取ってくれということになりました。配信前提のものでしたので、要は全世界に見えるような状態になります。プール教室にお願いして、保護者全員に一筆書いていただきました。これは数年前ですが、今年(2023年)も似たようなことがありました。そこまで苦労して撮るべきなのかな、というぐらいになっているのが実感です。そこまでやっています。

〇代表社の参加者
今、配信の話でありましたが、弊社もローカル番組の配信を始めました。取材先には放送もデジタル配信もありますよと、言うようにはしていますが、どこまで言えるかという問題があります。承諾書の話になってくると、さきほどのお話のように、20人の承諾書を取ることを前例にすると、取材よりも承諾にかかる手間のほうが多くなって、取材するほうが音を上げてしまいます。非常にバランスが難しいし、どこまでそれをやっていくのか、それをルールにすると現場取材が難しくなってしまうと思います。
さきほど参加者が、やはり子どもの表情が一番のニュースだとおっしゃり、確かにそのとおりで、我々も後ろから映すことがいいとは全然思っていません。けれども、学校の外での行動であれば映像取材は構いませんが、学校の児童・生徒が映るとなると学校の意向を聞かざるを得ない。そこが今のネックなのかなと思います。
あと、水着の話が出ていましたが、若い女性記者と話していたら、海開きかな、海で若いお子さんが楽しそうにはしゃいでいる映像を撮ろうと思ったのだそうです。しかし、こういう昨今の問題があって、それは問題かなという自主規制のような形で取材する側が遠慮してしまったということで、それはあまりよくないなと思いながら今お話を聞いておりました。

《【テーマ3】フリートーク》

参加者に、日常の取材活動などを通じて関心を持っているテーマについて、自由に問題提起してもらいました。

(1)「性的少数者である青少年の取材の留意点などについて」

〇参加者の問題提起
実はまだ取材できていないのですが、取材を試みているのは、LGBTQ(性的少数者)の高校生の男子で、学校で男女共用の服装を作ろうという運動をしています。本人は取材にオーケーで、両親もオーケーという状態ですが、ディレクターは取材をして放送するときに、本人と両親は了解しているけれども、実名を出していいのか、仮名みたいな感じで出せばいいのかと結構悩んでいます。LGBTQに関することが、この2~3年で急に話題になってきたので、僕らも過去にあまり事例がありません。ディレクターに対してどう指導していいのか、なかなか思い悩むところがあります。未成年のLGBTQの方に対して取材するときの留意点とか、どうしたらいいのかという事例があれば教えてほしいというところです。

〇髙橋委員
匿名にすることで偏見を助長する可能性もあるのではないでしょうか。偏見とのバランスはすごく難しいなと思っていて、LGBTQだから仮名にしなければならないのか、名前を伏せなければならないのかという議論にもなるので、基本的には本人の同意(に従うべき)なのかなと思います。

〇榊原委員長
私たちは、こうすべきだとか、これが正しいということを言う委員会ではなく、このようにしたらいいのかなと一緒に考えていこうという委員会です。さて、どうしたらいいのかなということですが。

〇吉永委員
ディレクターの方が悩んでいるポイントはどこですか。

〇参加者
悩んでいるというより、もし実名を出したときに、本人はいいと言うけれども、予期せずに(SNSなどが)炎上したらどうしようということです。過剰(な懸念)といえば過剰なのですが、そういう懸念をしているようです。

〇吉永委員
確かにLGBTQの状況は今すごく変わってきていて、日本では過渡期にあるのではないかと思います。この高校生は、匿名の社会の中で実名を出していいと言っているわけで、彼は孤独な戦いをしているわけではなくて、彼の周辺には理解者がいるでしょうし、そこで一緒にやろうという友人が何人かいるのですよね。その姿勢を尊重していかないと世の中が変わっていかないような気がします。
それでも、「何かがあったら」と考えていくと、もう結局やらないほうがいいという話にどうしてもなってしまう。学校がどのくらいの理解を示しているのか、学内的にもどのぐらいの理解がされているのか、どのくらい一緒にやろうという人がいるのか、という校内の雰囲気などをしっかりと総合的に判断した上で、本人の希望に沿うのか、本人を説得して匿名にさせるのか仮名にさせるのかという話になると思います。本人が(実名でと)言っているときに、逆に仮名にしろというのはなかなか難しいことではないか、という気がします。

〇参加者
LGBTQの方の取材の難しさということでは、弊社のディレクターも少し迷っているところがあります。取材しているのはLGBTQの小学生の子どもですが、その子は、小学校低学年で自分の性別に違和感を覚えているようです。本人は何となくそれを自覚しているという状況で、取材を申し込んで話を聞くことができました。本人は何となく取材に前向き、ただ保護者が「成長過程で心が変わるかもしれないので」ということで、取材に少し戸惑っていらっしゃいます。ディレクターとしては保護者が戸惑っている状況なので、さらに踏み込んだ取材をしていいのか、というところで足踏みしている状況です。
性的マイノリティーの人は成人したあと、小さい頃からすごく違和感を覚えていたと語る人が多いと思います。メディアとして、現時点でそういうふうに感じている子どもがいることを報道するのは重要なことだろうと思う反面、保護者の思いとそこを報道するかどうかで葛藤するという部分があります。子どもは成長とともにいろいろと学んで心は変わっていくと思いますが、そういう中で、この性的マイノリティーと自覚している子どもにどこまで接近して取材をしていいのか、また、取材のときにどんなことを配慮するべきなのかというところをすごく迷っている状況が、弊社にもあります。

〇榊原委員長
今のは、一番最先端の問題です。いろいろ摩擦があるようなことについては、ある程度勇気を持って出していく、きちんとした見識を自分たちでまとめて出していく、ということが世の中を変えていくのでしょう。SNSがある、あるいはネットがあると言いながら、こういう放送がとても大きな社会的な影響力を持っているというのも事実だと思います。換言すると、世論を意図的に操作するわけではありませんが、出していくということはある程度勇気を伴います。勇気が要りますが、(社会的に)必要なことだと思っています。

〇沢井委員
ネガティブなことは駄目なのかというと決してそうではなくて、むしろネガティブと思われる事柄に今後社会、環境を変えていくために大事な、今つらいけれどもこれをどうにかしたいという子どもなり保護者なりの意見があると思います。
私が子ども番組を監修するときにいつも考えるのは、国連の「子どもの権利条約」と、その条約の内容を日本の法律として初めて取り入れて、今年(2023年)4月に施行された「こども基本法」です。有名なのが子どもの意見表明権です。子どもにも意見を表明する権利があることと、子どもも社会的な活動に参加することができる、意見を言うだけではなくて、大人と一緒でもいいから、何か社会的活動に参加することができるということです。だからLGBTQの子どもの場合でも、社会をもっと住みやすく、生きづらくないように変えたいという願いを保護者と共に持っているでしょうし、その仲間にもあるでしょう。そういう潮流をメディアは誇張することもなく、「でも、そういう人たちがいますよ」ということは出すべきだと思います。
保護者が戸惑っていらっしゃるのは確かでして、例えば4歳とか5歳、6歳の子どもでは、そこで発達の過程で変化して、あれに顔出ししなければよかったと後で悔やむことがあってはいけないという心配だと思います。ただ、メディアというのは現在の出来事だけではなく、今がどのように積み重なって変わり、歴史となっていったかということを、映像として残すというミッションもあると思います。そうすると縦断的にずっと追っていく場合は、最初は顔出しではなく5歳の何とかちゃんはLGBTQの傾向があって、こういうことを悩んでいますということをずっと追っていく。私の感覚だと10歳を超えたぐらいのときにはもう本気で、そこである程度その子の人生を決めることがもう起きているように思います。10歳か11歳ぐらいのとき、小学校高学年ぐらいのときに、自分はもう意見をきちんと言いたい、顔を出して言いたい、私ではなく僕でいたいというようなことも言いますので、もちろん保護者とも話し合って、私は(放送に)出してもよいのではないかと思います。縦断的に追っていって、ある程度伏せていたことをだんだん開示して、最終的にそれは長編ドキュメンタリーになるかもしれない。それはそれで意味のあることだし、歴史的な映像になると思います。
所詮子どもなのだから、と保護し過ぎてもいけないし、隠すということも一つの偏見を生むことになるので、本当に小さいときは少し保護的であるけれども、それを撮った上で、その子どもの人生ということでドキュメンタリーにする。本当によい番組になるのではないかと思いますし、そういうことがあっていいのではないかと感じます。私は子どもの意見表明というのは顔を出すもので、表情が大事、映像のテレビですから、それはぜひできるだけ顔は撮ってほしいと思います。

(2)「ルッキズムへの配慮について」

〇参加者の問題提起
ルッキズムという言葉ですが、最近その言葉が社会問題として注目されているので取り上げさせてもらいました。見た目で人を判断したり、容姿を理由に差別したりするという意味ですが、実際に放送の中でも少しずつ関わってきます。人を見栄えで評価するのはすごくよくないことで、例えば言葉にすると不細工など、そういった言葉を使ったら駄目なのはもう当たり前の話ですが、逆にイケメンや美女など、人がよい意味で表現してきたものが青少年にとってどんな影響を及ぼすのかとか、成長に対して問題になったりするのかというのが、気になっています。放送の中で今後さらに厳しくなっていくのかなと思います。今後どうやって向き合っていくべきなのかということを、聞いてみたいです。

〇榊原委員長
本当に難しい問題、なかなか言葉というのは、非常にいろいろな意味合いがあるので、ネガティブなことだけじゃなくポジティブなことでもやっぱり言えないと。 
とても難しくなってきている時期なのでしょうが、その辺について何かご意見ございますか。

〇吉永委員
今は「美人アナ」と言っても駄目なんですよね。だからそういうのはちょっと過激な反応。20年近く前、2005年に「人は見た目が9割」(竹内一郎 著 新潮社刊)という本が出ました。そのことで何も問題もなく、みんな結構読んでいたような気がします。見た目が9割と言われたら、それこそ究極のルッキズムだよね。でも当時は、それを笑って違うんじゃないのという人と、そうだよなという人がいて成り立っていた世の中でした。今はものすごく変わったんだなという気がします。
かつてのおおらかさというか、それが全くなくなってしまって、ただネットで容姿をバッシングするというのは、本当に卑劣なやり方だよね。私たちがそれを避けるために、全部やめていってしまうと、逆にそれを認めたことになりはしないかという、非常に複雑な屈服感というか、そういうのがありますね。

〇髙橋委員
ルッキズムの問題は、例えば肥満の人がいたときにそれをいじるなど、そっちだと思います。日本はそういうことに関して、いじる文化は結構あって、それはおおらかといったらおおらかなのかもしれないけれども、アメリカだと、そういうことをやったら結構批判されますね。体型のことをいじるという、そこなのかなと。いいのよりも悪いほうです。

〇吉永委員
それは人によってだから。私は別にデブと言われても、全然傷つかないですけれども、やっぱり傷つく人だっているし、そういう人には言ってはいけないというように、人を見てそう判断をしていくとか、関係性の中で発する言葉を選んでいくというようなことが全くなくなってきているのかなと思います。

〇榊原委員長
関係性の中でというか、文脈の中でどういう意味で言ったかというのはもちろん重要で、「アホとちゃう」と言われたって、大阪の人は何もそれは普通の言葉で言っているわけです。それは「おまえはアホだ」「ばかですね」というのと違うので、その辺の文脈のこともきっちり捉えて、言葉狩りで萎縮することではないだろうと思っています。言葉狩りというのはやる気になれば幾らでもやれますので、文脈としてそういう意味ではないことを、矜持を持って伝えるということが必要になるのかなと思います。

(2)「ラジオ局(FM放送)の立場から」

〇榊原委員長
青少年委員会が委嘱している中高生モニター制度の中高生に、ラジオ番組について尋ねたところ、いろいろな意見があって、とても好評でした。好評というのは2つあって、そういうお題を出すと、「ラジオをほとんど聴いたことがない。初めて聴いた」という人が多い。これは今のラジオの状況かもしれませんが、逆に結構多くの中高生モニターが、「ラジオだとしゃべっている言葉がすごくそばにいて、言葉の持つ雰囲気や、その人の気持ちが身近に感じられる」ということをとてもよかったと言っていました。それから、ラジオを聴くようになったという人もいます。ラジオの持つ意味はいろいろあると思いますが、さきほどから議論にしている、例えば顔を出さないとか、視覚的な情報に対するNGに対して、逆にラジオは乗り越えられる可能性があるということも、今思いました。

〇ラジオ局からの参加者
委員長がお話しいただいた中で、若者がラジオを初めて聴いたというお話がありましたが、私は数年前にあるキャンペーンのため、局の前で鉛筆を配ったのです。そのときに小学校2年生の女の子が学校帰りに赤いランドセルを背負って、「私にもちょうだい」と言うので、「もちろんどうぞ」とあげるとき、聴かないだろうなと思いながら、「ラジオって聴く?」って聞いたのです。そうしたら、「ラジオって何?」と逆に返されました。これは思った以上のショックでした。それくらい家にラジオがないということになるのだと思います。あるのは車の中や、あるいは防災のラジオは持っていても、逃げるときのかばんの中に入れておくのが日常の風景ということなのでしょう。
それから、(中高生モニターが)ラジオを身近に感じるというお話もありましたが、私は前から言っているのは、例えばテレビだと今はあまり言いませんけれども、「お茶の間の皆さん」という言い方がよくありますが、ラジオの場合は「ラジオの前のあなた」なのです。つまり1対1として放送するということが多いのです。そういうこともあって、身近に感じてもらえるのかなと思っています。そういう意味では心に届くこともあるのかなというように思います。
一番初めに委員長から嘲笑は笑いではないというお話がありました。では、いじるということと、いじめ、嘲笑みたいなものの違いの境はどこなのだろうと思っていましたが、それは、地域によっても違うだろうし、人によっても違うだろうし、文脈によっても違うだろうというお話があったので、「なるほどな」と思いました。境というものはここだと区切れないものだと思いました。私も「はげ」と言われても何とも思いません。むしろおいしいと思います。もう自分で言っているのですが。ただ、テレビで、若い女の人に結婚相手についてインタビューをしたときに、はげとデブは嫌だと、全然知らない女性が言ったのです。それに関してはちょっとショック、そういうところですね。
それからテレビの方々は、映像に対しての大変なご苦労とご配慮をされているんだなと思いました。児童の胸にキャラクターの缶バッジをつけることは、ラジオにはとてもないジレンマです。
ネットの話も多くありましたが、放送で倫理を保つことはもちろん必要です。ただこれがネットのニュースの波にのまれるということも最近はあるなと思っています。委員長からファクトの度合いが国民的に広まることが望ましいというお話がありましたし、ペンは剣より強しという言葉があるというお話もされました。このペンをもう全国民が既に持っているんじゃないかと思ったりもしました。
そんなところから最近は、メディアたたきとか、むしろメディアのほうが遅いし薄いしなどの批判で、メディアが弱くなっていく倫理を保っていることが、結局メディアは駄目だという風潮がネットの中ではあるように感じています。ありがとうございました。

〇榊原委員長
時間がちょうど来ましたので、ここで意見交換会を終わりたいと思います。

事後アンケート 概要

意見交換会終了後、参加者全員にアンケートの協力を依頼し、9割以上に当たる14人から回答を得ました。その概要を紹介します。

  • ▼「『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー』に関する見解の解説」について
    • 「見解」が発表された時に一度読んではいたが、改めて「苦しんでいる人を助けずに嘲笑する」ことが「子どもの中に芽生えた共感性の発達を阻害する可能性があることは否めない」ことをテレビ局側は肝に銘じる必要があると感じた。
    • ローカル局では該当するようなコンテンツを制作する機会は少ないものの、番組編成という点では当事者であるため、見解の意図や番組制作のこれからについて関心があった。直接解説をお聞きし、専門的な見解について理解することができた。一方で、地上波放送のふり幅が小さくなる懸念も感じられ、低年齢層の接触率が高まっているネット上やゲーム等の激しいコンテンツに加速度的に意識が向き、なんらかの影響があるのではないかとも思った。
    • 「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出は、それを視聴する青少年の共感性の発達、人間観に影響を与えるという科学的な指摘はとても腑に落ちる部分がありました。弊社の番組でも、出演者どうしの信頼関係の中で「いじる」という展開も過去にありましたが、テレビで放送する際は「関係性」などまったくない状態ですので、常に「他人の心身の痛みを嘲笑する」という表現がないか、しっかり意識しておくことが重要だと感じました。
  • ▼ (テーマ1)「子ども(小中学生)の『いじめ・自殺』報道」の意見交換について
    • 学校や教育委員会の一方的な説明に基づく報道は避けなければならないと思いますが、なかなか家族の声にまでたどりつけず、学校側の言い分を批評するにとどまっているように思います。自殺に関する報道について、詳細を伝えることが周囲に影響を与えることにつながるということを再認識しました。何を伝えるのかを常に考えながら報道していくことが大事なのだと実感しました。
    • とかく自殺の件数に目を奪われがちだが、その陰では未遂者が10倍にも上るという数字の多さに驚いた。いじめに関する自殺については、1つの原因だけではなく家庭内の事情などいくつかの要素が重なることで、最終的に死を選んでしまうという複雑な状況も学びになった。また、相談を受け付ける支援団体のニュース内での告知に関しても、全国規模の団体を紹介するよりも、より地域に身近なところで活動する団体を紹介することが、ローカル局として意義があることも学んだ。今後はこうした地域の支援団体を、映像を通して企画などで広く周知する取材も必要だと感じた。
    • 「被害者やその家族の保護」という観点はもちろんですが、「加害の子どもの保護も必要」という委員の意見に同意します。更に加えるなら無関係でありながら「同じ学校」や「同学年」というだけで疑いの目が向けられる被害もあり得ると感じます。SNSが発達した現代では報道の一部が切り取られて拡散することもありますが、表現の自由や報道の自由を外部から不当に制限されることのないよう自主・自律で配慮する必要があると思いました。
  • ▼ (テーマ2) 「子どもを対象とするカメラ取材の状況と問題」の意見交換について
    • 時代や環境の変化に伴って、子どもの取材は大変、難しくなっているのは事実です。ただ、子どもたちの主張も大事にしてあげたい、とも思います。何を取材して、どう報道したいのか、学校や保護者に伝わるような工夫をし続けるしかないのかな、と思います。
    • テレビが与える影響は大きいので、それにより青少年が傷ついてしまうことはあってはならないことだと思います。ただ、後方からの取材、顔を映さない取材が必要な部分ももちろんありますが、そういった撮影方法が増えていくことで、あれもこれも「子どもの取材は顔を映さない」が当たり前になっても、せっかくの表情やその場の空気が伝わらないように思います。私たち報道する側は、すべてにおいて引いてしまうのではなく、その都度、学校等に何を報道したいか説明し、お互い理解した上で臨んでいきたいと感じました。
    • 実名報道を原則に長年報道でカメラマンとして働いてきたので、個人情報保護法で「匿名社会を選択した」という委員の発言は重く受け止めた。ただ、そんな状況でも実名による将来への記録、実名報道による災害時の安否情報発信もあるという委員の発言もあり現場を指揮する身としては励みになった。各社とも実名匿名の判断をかなり悩みながら取材している状況も聞くことが出来て有益な意見交換になった。
  • ▼ (テーマ3) 「フリートーク」での意見交換について
    • LGBTQやルッキズムなど新たな社会のうねりにどの社も直面していることがよく理解できた。
    • LGBTQの青少年の取材については、本人・両親が了解しているのなら実名で報道しても問題ないという委員からの意見が参考になった。「本人・両親は、LGBTQのことをよく思わない人もいると分かった上で、取材や実名報道を了承している。もし周りからの摩擦があったとしても彼らは覚悟の上で意見を表明しようとしている」と委員が意見を述べていた。私もその意見はその通りと感じ、今後の報道にも参考にさせていただきます。
    • 青少年のLGBTQについての意見交換の中で、子どもの意見表明権についてご意見をいただきました。今後の成長に影響を与えるのではないかと悩むことも大事かもしれませんが、その年齢にしか感じられないことがあり、本人の意思があれば、そこに耳を傾けることも大事なのかもしれないと感じました。
  • ▼ そのほかの意見・感想、BPOや青少年委員会への要望など
    • 対面式での意見交換会が有意義であることはもちろんだが、web形式での意見交換会との併用にすれば、もっと大勢が参加できて良いのではないかと思った。
    • 学校での子どもの匿名取材について、委員には意外だったという印象を受けました。匿名性が進み過ぎたと感じることもあり、今後同じような機会があれば匿名の是非を考えることも意見交換のテーマとして取り上げていただければと思います。
    • 各局同じような悩みを抱えていることを実感し、勉強もさせてもらった大変有意義な意見交換会でした。報道する側には当たり前のことであっても、視聴者の考えや思いと離れていることもあるかと思います。こうした機会に、改めて「何のための報道なのか」を考えることができ、大変良かったです。

以上

2024年1月26日

関西ラジオ局意見交換会を開催

放送倫理検証委員会は2024年1月26日、関西に拠点を置くラジオ局との意見交換会をMBS本社で開催、12局31人が参加した。委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、毛利透委員の6人が出席した。ラジオ局との意見交換会は2023年3月の東海地区に続く2回目。

開会にあたり小町谷委員長は、近年、ラジオの放送内容を問題視する聴取者意見が連続していることに触れ「現場で起きている問題を共有し、放送倫理を一緒に考えていきたい」と話した。自由で寛容なメディアであるラジオで今、何が起きているのか。委員会が抱いた危機感を共有し、ラジオ現場の声に耳をかたむけていきたいという意見交換会の目的を説明した。

ゲストの問題発言の対応「過激トークとの向き合い方」

まずは、ゲストから問題発言が出た時にどう対応していくのか。実際の放送事例をもとに問題点の整理や質疑へ。報告者はMBSラジオ。ニュース解説の中で、北朝鮮ミサイル実験に対する日本の対応について、ゲスト評論家が朝鮮学校の存在をからめた発言をし、関西の人権団体から抗議をうけた。その後、番組内で「朝鮮学校の児童、生徒に対して、配慮の足りない表現がありました」というお詫びコメントを放送。加えて、朝鮮学校の授業を見学するなどして理解を深めていったことを報告した。MBSラジオの番組審議会からは「マスメディアはいったんマイノリティの側にたって考える姿勢が重要」との指摘をうけ、報告者は「現在の朝鮮学校や民族教育に関する知見や知識について、在阪メディアとして決定的に不足していた」との認識を示し「スタッフ、出演者それぞれが感度を高めていくことを一歩ずつ積み重ねるしかない」と総括した。
委員から放送時のアナウンサーの対応への疑問が呈されたところ、参加者から「問題発言があっても、大物ゲストだとアナウンサーの立場は弱い。(発言を)いさめたあと関係がギスギスする。番組の今後のことを考えてしまう」といった現場からの悩みも伝えられた。岸本委員長代行は「年長の人、感度のいい人をつけておいて、アナウンサー任せにしない」といった組織的な対応についての提案がなされた。

あらためて政治的公平性を問いかける「ラジオの現場から」

続いての報告はラジオ大阪で、2023年1月に放送された番組「大阪を前へ!」「兵庫を前へ!」について。内容は特定の政党の議員や立候補予定者をゲストに招き、本人のプロフィールや活動の紹介、友人や支援者による人柄紹介といったもので、一定のフォーマットに沿った15分と30分の番組が計15本放送され、特定政党の議員、関係者計18人が出演した。会場では初回1月12日の放送(6分)が流された。放送後にBPOに視聴者意見として「特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」といった内容が寄せられ、BPOは「政治的公平性についての認識に問題がある」として討議入りを決めた。
このテーマについて弁護士の井桁委員が個人的な意見も交えて、法的・放送倫理的な問題点をレクチャー。冒頭「(この放送が)車の中で流れたらちょっとびっくりするだろうなと思った」と最初に放送を聞いた時の衝撃を語り、「政治的公平性」と「事前運動」の二つの側面からの問題点を指摘していった。まず事前運動については公職選挙法の規律をもとにし、「公示日(告示日)から〇日/〇ヵ月前ならセーフ」といった限定はない」との前提を示し、公示日(告示日)が近づくほど事前運動の可能性が高まっていくと話した。ただし、「選挙に関して放送設備を使うのは、政見放送と経歴放送以外は禁止」として、公選法が放送局に対して「選挙と距離をおくよう厳しく規制している」と言明。こうしたことを踏まえたうえで今回の放送は「事前運動の対象となるような放送だった」と指摘した。
一方、政治的公平性については「量的公平性」ではなく「質的公平性」の重要性を強調。少数意見の尊重、潜在する社会問題の発掘やアジェンダの提示があれば質的公平性は担保されると説明した。加えて「選挙報道で決して委縮してほしくない。みなさまにはアジェンダ設定という重要な役割がある」ことを強調した。

参加者からは、議員がDJの番組や立候補予定者になり得るゲスト出演についての報告があり、小町谷委員長は「いろんな視点を提示しているかどうかが重要になる」と答えた。一方、大石委員はラジオでは「セグメント化(集団)したターゲットを絞った、ある種の甘えがある」と指摘。「特定の視聴者が聴いてくれればいい」という姿勢とは一線を画して「信頼性を獲得し続けてほしい」と話した。

これからも、ともに悩み考える機会を

最後にBPO神田真介事務局長が「BPOではいろんな角度から議論し、悩みながら模索している。これからも現場のみなさんとこういう形で悩みを共有しながら、何ができるだろうか、どうすればいいだろうってことを考える機会を設けていきたい」と結んだ。

以上

第192回

第192回–2024年2月

関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

第192回放送倫理検証委員会は、2月9日に千代田放送会館で開催された。
1月に大阪市で実施した関西地区ラジオ局意見交換会の模様などが、参加した委員から報告された。
次に1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。
最後に自主報告された関西テレビのバラエティー番組の内容について議論され、討議入りして引き続き対応を検討することになった。

議事の詳細

日時
2024年2月9日(金)午後5時~午後7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 関西地区ラジオ局との意見交換会の報告

1月26日に大阪市北区のMBSを会場に意見交換会を開催し、関西地区(大阪、兵庫、京都、滋賀、和歌山)のラジオ局12局から31人が参加した。
出席した委員からは「和やかな雰囲気の中で率直な意見が聞けた」「実際に放送素材を聴いて、みんなで話そうという機運が盛り上がった」という感想や「クライアントが強く出てきた時に、具体的にどうしようかという悩みを抱えている放送局がいくつかあることを知った」といった報告などがあった。
意見交換会の詳細はこちら

2. 1月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

ドラマの脚本をめぐり制作側と見解の違いが生じていたことを明かしたあと自殺したことを受けて、視聴者からさまざまな意見が多数寄せられたことが報告され、議論した。この他、バラエティー番組で沖縄出身のタレントに対して模擬記者会見を行い、方言を使ったら負けというゲームをしたことについて、視聴者からかつて沖縄で行われた、方言を禁止し標準語を話すように教育した同化政策を想起させる、という意見が寄せられたことなどが報告された。

3. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

関西テレビが2023年11月3日に放送したバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』の中で、関西人1万人が選ぶ(ある食品の)おいしい外食チェーン店のランキングを発表した際に、外食チェーン店1店の名前を除外していたことが分かり、11月24日の同番組内で訂正をした。当該放送局からはアンケート結果の順位を変えた経緯や再発防止への取り組みなどについての報告書や、番組審議会で厳しい意見を受けた議事録などが提出された。これを受けて委員会では「根本的なところで視聴者に向き合う、もしくは放送倫理に向き合うことから逃げているのでは」などの当該放送局の対応に疑念を抱く意見が出され、討議入りして問題点を整理した上、議論を継続していくことを決めた。

以上

2024年1月に視聴者から寄せられた意見

2024年1月に視聴者から寄せられた意見

テレビドラマの原作者が指摘した制作上のトラブルについて放送局は説明すべきではないのか、沖縄出身のタレントに方言を禁じる企画は不幸な歴史を想起させるのでよくない、といった意見が寄せられました。

2024年1月にBPOに寄せられた意見数は2,410 件で先月から 576 件増加しました。
意見のアクセス方法は、メール 88.8% 電話 10.2% 郵便・FAX計 1.0%
男女別(任意回答)は、男性35.2% 女性20.9 % で、世代別では 30歳代 25.5% 40歳代 25.0% 50歳代 21.0% 20歳代 12.9% 60歳代 8.6% 70歳以上 3.3% 10歳代 1.7%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、1月の送付件数は1,308件、54事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から21件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

テレビドラマの原作者が指摘した制作上のトラブルについて放送局は説明すべきではないのか、沖縄出身のタレントに方言を禁じる企画は不幸な歴史を想起させるのでよくない、といった意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は30件、CMについては11件でした。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は77件で、前月から3件増加しました。
今月は「表現・演出」が28件と最も多く、次いで「要望・提言」が26件、「言葉」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 能登半島地震の際に強い口調で避難を呼びかけたアナウンスは切羽詰まった緊迫感が伝わった(富山県で視聴)。

  • 強い口調で避難を呼びかけたアナウンスによって命を守る重要さが強く伝わったが、80歳代の母親は「呼びかけで怖くなり、動けなくなってしまうのではないか」と感じたという。世代による受け止め方の違いも考えてほしい(被災地以外で視聴)。

  • 能登半島地震後に起きた輪島市の大規模火災について、火元が1か所であったことを示した上で、延焼を招いたさまざまな要因を検証していた。その際、火元周辺の精細な衛星写真が示されたが、関係者への誹謗中傷などを生む恐れがあるのではないか。

  • 女性に性的行為を強要したと週刊誌で報じられた男性芸能人が所属する事務所は、主要株主が在京、在阪の民放キー局だ。この事案は客観的かつ第三者的な観点から報道されているのだろうか。

  • ドラマの原作者である漫画家が急死した件のニュース。放送局がトラブルの一方当事者であることがうかがわれる状況で、自社の見解のみを報じることは公平性を欠いていないか。
    (以下、上記の件について)

     情報番組で扱っていたが、漫画家サイドの出演者がおらず、テレビ局の事情を
     くむような発言が目立ち、一方的だと感じた。

     複数の漫画家から「原作と乖離した改変が嫌だと思いつつも、多くの人に
     届けたいので受け入れざるを得ない」という声が聞かれる。原作の重要な部分の
     改変がテレビ局側の論理において正当化されることがまかり通っているのなら
     是正すべきだ。

     テレビ局はドラマの原作者の「許諾をいただけた」というが、原作者は局側に
     示した条件が守られなかったと発信している。局側には視聴者に説明する責任が
     あるのではないだろうか。

  • 特定少年に対する死刑判決のニュース速報をテレビで見た瞬間の、母親と未成年の兄弟の様子をモザイク入りで報道していた。家族への死刑判決というセンシティブな状況で、未成年者を撮影するのは児童の人権への配慮が足りないと思った。

  • 横断中の歩行者がトラックにひかれて死亡した事故のニュース。過失運転致死の疑いで逮捕された運転手の顔を鮮明に捉えた映像が放送された。「原因を調べる」という段階で、運転手の将来を考えると残念。

  • 飲酒運転取り締まりの特集で、飲食店から出てきてフラフラしている男性を警察がマークし、乗車後しばらく運転させてから検挙していた。もしこの男性が事故などを起こしたらどうするのか。警察の手法に不信感を禁じ得ない。テレビ局は何も疑問を持たなかったのか。

  • 改造車の取り締まりで警察から注意を受けた。その際に撮影され、警察の記録用かと思っていたが、放送を見てテレビ番組の取材だったと知った。私の顔やナンバーはボカされていたが、車の特徴からネット上で特定され、脅迫的な不穏な書き込みなどがある。物理的な被害こそないが不安だ。

  • 朝の情報番組で地元出身のお笑い芸人がまじめに現役高校生の相談に乗るコーナーがすばらしい。学校教育でも、個人個人に向き合う時間を少しずつでも増やして、さまざまな問題の解決につなげてほしいと感じる。

  • 朝の情報番組で「速報」として、ハリウッドに手形足形が刻まれることが決まっていた日本人ミュージシャンが、その完成お披露目のセレモニーに出席したという情報が伝えられた。緊急性がなく本来の速報という意味や言葉の重みが薄らいでしまうと思う。

  • 全国で唯一、女性議員が半数を占める地方議会のエピソードとして、子育て支援の制度変更が取り上げられた。ある住民が新人女性議員に要望を伝えたところ、2週間後には区議会で女性区長が実施を表明、1か月後には新制度が施行されたと紹介されていたが、実際には複数の議員が何年も活動して実現したこと。事実と違う。

  • プロ野球選手の移籍に関して、地元ローカル局が結論だけではなく経緯について取材した内容も併せて報じた結果、ルールをまげた球団の動きが明らかになった。賞賛に値する報道だと思う。

【教養・バラエティー】

  • 漫才で人力車引きが客に対して「重い」と不平を言う場面で「デブ」「兄ちゃん、糖尿病か?」。(糖尿病を理解せず)患者を著しくおとしめる発言だ。

  • バラエティー番組で「最先端の虫歯治療」というテーマでレーザーを紹介した際、出演した歯科医が「健康保険は使えない」と説明していたが、実際には保険治療が認められている。視聴者に誤解を与える。

  • お笑い芸人が商店街を訪ね歩く企画で、1人が「光を浴びて健康になる」という43万円の装置をその場で現金で購入する様子をビデオで紹介し、スタジオにもその装置を出してトークしていた。視聴者に迷信への入り口を与えかねないと思う。

  • 「世界のまぬけな犯罪」として、店に入ってきて机の飲み物を勝手に飲んで出て行く男性の様子を捉えた監視カメラ映像が紹介された。「めちゃめちゃキモい」などと笑っていたが、飲みたいという衝動をすぐに行動に移す、勝手に「問題がない」と判断する、うつむき加減などの傾向が見られる。自閉症など障害がある可能性も考慮してほしい。

  • 沖縄出身の俳優に沖縄の方言で話しかけ、つられて方言で答えたら「アウト」という企画。皇民化政策や「方言札」を思い起こさせ、沖縄の歴史を踏まえると安易に笑いにしてはならない内容だと思う。

  • 3年ほど前、70歳代の母親がゴールデン帯の番組で紹介された体操を試し、翌朝、背骨に痛みを感じた。受診したところ背骨の損傷が見つかり、現在も身体的な不自由さが残っている。

  • ノンフィクション番組で、食費を節約するために20時以降に半額になるのを待ってスーパーで買い物をしている家族を取材。半額シールがまだ貼られていない商品を手にした取材対象者が店員に「(シールを)貼ってください」という要請し、店員が応じていた。近所の店なので私も同様に店員に頼んだところ「一度かごに入れた商品には貼れない。テレビ局には番組の演出であることが分かるようにテロップなどで説明するよう要請していたが、実行されなかった」とのこと。やらせにならないのか。

  • 「テレビ局の警備員に聞いた感じの悪い芸能人」だというタレントのエピソードを紹介した上で、スタジオ出演者にその名前を示して驚く様子を放送し、視聴者には「清楚(せいそ)系女性タレント」というテロップだけが表示された。無用の憶測を呼び、無関係のタレントへの誹謗中傷につながらないか。

  • 地震の被災者のことを思えば、この時期に大食い対決を見せられることには抵抗がある。被災地が落ち着きを取り戻してから再開してはどうか。

  • タレントが街中の飲食店の外観などから「過去にテレビの取材を受けたことがあるか」推測してから店主に確認、「取材なし」が連続して見つかるまで続けるという企画。タレントが店頭で「取材なし」を大声で喜んだりしていたが、店側がどう思うか考えてほしい。テレビなら構わないというおごりがないか。

【その他】

  • 自然災害の時に全局が同じ内容の報道になってしまうのは仕方がないのだろうか。視聴者が選択して見られるよう、サブチャンネルを活用するなど方法がないだろうか。

  • 大きな災害に直面している状況でバラエティー番組を放送する意味はあるのか。各局の報道姿勢に疑問を感じる。

  • タレントがさまざまな街を歩く番組を視聴したが、放送時間の半分以上が番組表の記載内容とは異なる通販番組だった。

【ラジオ】

  • 「男性だけのコスプレ撮影会」の特集。これまでコスプレに対して持っていた「性的」などあまり良くないイメージが変わった。コスプレイヤーたちが持ち込むエアガンの安全対策を担当する専門家への取材などもあり、リサーチや構成、取材したパーソナリティーの質問などもよかった。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 平日昼のバラエティー番組で、ゲストの男性芸人が笑いを取るため、司会の芸人や着ぐるみマスコットに飛び掛かって倒し暴行した。子どもが真似したら困るので、こうした演出には配慮がほしい。

  • ローカル情報番組のバイク・ツーリング企画で、出演者らが道の駅でじゃんけんをして、負けたら軽食の代金を払わせ、負けた当人は食べられなかった。少額とはいえ、公共の放送で賭け事を堂々とやることが理解できない。

【「要望・提言」】

  • 宗教問題を正面から取り上げた教養番組で、進行役のタレントが、大手芸能事務所のアイドルグループのファンをカルト宗教の信者になぞらえるコメントをした。大好きなグループを楽しそうに応援する私の娘も信者扱いなのか。こうした見解には閉口してしまう。

  • 能登半島地震が発生して津波情報を放送してくれたのはよいが、画面を子どもや外国人にもわかりやすく、ユニバーサルデザインにして表現してほしいと思った。

【「言葉」に関する意見】

  • 報道番組のニュースでアナウンサーが、原稿にある「YouTuber(ユーチューバー)」という単語をそのまま読んでいたが、これは正式な職業名とは言えない。わかりやすく「動画配信者」と報じるべきではないだろうか。

【「マナー・服装」に関する意見】

  • バラエティー番組の出演者に、食べ方が汚い芸能人が目立つ。とくに、スパゲティを食べるときに音を立てる芸人がいる。マナーに反する行為だし、子どもが真似するおそれがある。

第264回

第264回-2024年1月23日

中高生モニターからのリポートについて… など

2024年1月23日、第264回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、12月後半から1月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
1月の中高生モニターリポートのテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2024年1月23日(火) 午後4時00分~午後6時00分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

12月後半から1月前半までの1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
若手漫才師が出場するコンテスト番組で、あるコンビが頭髪の薄い人を揶揄する言葉を連発したことについて批判的な視聴者意見が寄せられました。担当委員は「ルッキズム批判という形での意見がしばしば集まってくる。特定の番組を対象としなくても、(青少年委員会で)何らかの話し合いが必要になる可能性が出てくるかもしれない」と指摘しました。
宗教に関する問題を正面から取り上げた教養番組のなかで、進行役のタレントが芸能事務所所属のアイドルグループのファンをカルト宗教の信者になぞらえる発言をしたことを批判する意見がありました。別の委員は「意図的にカルト集団だと決めつけたわけではないだろう」という見方を示しました。
このほかに議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

1月のテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」で、モニターからは合わせて14番組への報告がありました。複数のモニターが挙げたのは『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)と『芸能人格付けチェック!2024お正月スペシャル』(朝日放送テレビ)でした。そのほかにも年末年始の番組は長尺のものが多くありましたが、リアルタイム視聴をしているモニターが数多くいたのが特徴的でした。
「青少年へのおすすめ番組」では『大河ドラマ「光る君へ」』(NHK総合)に10人から、『サザエさん』(フジテレビ)に4人から、『クイズ!国民一斉調査』(日本テレビ)に3人から、『歴史デリバリー「源氏物語はなぜ1000年も読み継がれたのか?」』(NHK Eテレ)に2人から、それぞれ報告がありました。

◆モニター報告より◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)
    • 母や祖母は、ブラックビスケッツとポケットビスケッツの約20年ぶりの特別出演を懐かしそうに見ていて、私と姉にとっても今はあまりない新鮮さがとても面白かったです。司会の浜辺美波さんと橋本環奈さんが、番組の展開に合わせて衣装を替えていてとても可愛かったです!また口パクで歌っているアイドルが多いと感じました。(中学1年・女子・千葉)
    • 毎年さまざまなジャンルのアーティストが出演していて偏りがなく、いろいろな世代が楽しめるのはとても良いと思った。二次元のアイドルがCGで登場していて、しっかり最近の流行に合わせてきているのは新鮮で面白かった。(中学2年・女子・愛知)
    • ディズニー100周年メドレーでは、たくさんの出演者が全員で「小さな世界」を歌っていてとても感動した。最近はウクライナでの戦争などあまり良いニュースがなかったけれど、こんな風にみんなが仲良くなれたらいいなと思った。(中学2年・女子・福井)
    • クラスメートの多くが見ていて様々なアーティストが出演しているので、お互いの好きなアーティストについて知り、話す機会になりました。他では見られないアイドルグループのダンスコラボやアーティストのコラボが見られて、とても嬉しかったです。(高校1年・女子・茨城)
    • 紅白は毎年見ていて、旧大手芸能事務所のタレント好きの私としては「一組も出場しないのでつまらないのでは?」と思っていたが、いざ見てみると若者中心の最新曲が多かったので、あっという間に番組が終わってしまうくらい楽しくのめりこみました。(高校2年・男子・山形)
    • 今年は一部のアーティストの出場が取りやめになり、K-POPやドミノ、けん玉などの演出が増えたように感じました。あまりの多さに「この人は誰」「このアーティストはじめて見た」など家族で話題となり、若者向けに偏りすぎだと思いました。(高校2年・男子・山形)
    • 出場アーティストが発表されるだけで色んな声が飛び交う、唯一無二の番組だと思います。今回の視聴率は、例によって過去最低を更新したらしいのですが、個人的には、もう視聴率という尺度で測るのにはどの番組に対しても違うのではないのかと思います。(高校3年・男子・神奈川)
  • 『逃走中~お台場リベンジャーズ~』(フジテレビ)
    今回の放送に限らず、生存者の表示が「女性はピンク、男性は青」なのはジェンダーの視点から「どうかな?」と思いました。また、芸人同士で侮辱するような悪口を言う人がいて、そういう芸風があるのはわかるけれど、人を傷つけない笑いが見たいと思いました。一年に数回しかやらない特番なので毎回見ています。今年も年越しの“生”逃走中を放送してほしいです。(中学1年・女子・島根)
  • 『豪華お年玉満載!金バク!新春SP 2024』(岡山放送)
    視聴者はお年玉企画として楽しみ、芸人は痛めつけられず、取り上げられた店にとってもPRになるという、まさにWin×Winが成立した番組だと思う。香川や岡山に行く予定がない配信視聴者もお菓子の抽選に応募できて、本来あるべきバラエティー番組を見ることができてとても良かった。一方で店によって放送される尺がバラバラ過ぎて公平性に欠けていたと思う。(中学2年・男子・埼玉)
  • 『NHKスペシャル「2024私たちの選択 -AI×専門家による“6つの選択”-」』(NHK総合)
    おおよその年代だけでなく年や月までとても詳細に未来が予測されていること、また最近になって身近になってきたAIが未来まで計算してしまうことに、とても驚いた。しかしAIが学習する情報には人間の意図が混じりやすく、AIが予測する「必然」では考えられない判断が生じたときには予測の方向性が大きく変わることも視聴者に説明しなければ、結論だけを押し付けていることになると思う。(中学2年・男子・東京)
  • 『月曜から夜ふかし元日SP』(日本テレビ)
    全体を通してすごくおもしろい番組だった。インタビューをうけている人たちも面白いのだが、スタッフさんの淡々としたインタビューや返し、ナレーションやMCの突っ込みなども含めて、色々な要素が掛け合わさって面白くなっているのだと思った。(中学2年・女子・東京)
  • 『ゴールデンラヴィット!』(TBSテレビ)
    (月)~(金)のメンバーが全員出ていて、わちゃわちゃ感がすごく増して楽しかったです。「もっとも忘れられないラヴィット!」のコーナーでは、家族で「なつかしいね」「これおもしろかったね」など話してすごく盛り上がりました。(中学2年・女子・栃木)
  • 『ドリーム東西ネタ合戦2024』(TBSテレビ)
    毎年放送していて、私や家族はこの番組を見ると「正月が来たな」と感じるし、普段お笑いやバラエティー番組を見ないので、時間のある正月にスペシャル番組として見ることができるのは良いことだと思った。(中学3年・女子・滋賀)
  • 『はじめてのおつかい 新春小さな大冒険3時間スペシャル』(日本テレビ)
    全国各地の子どもたちが挑戦する姿はとてもほほえましく、新春から心が温かくなった。子どもが5歳前後でひやひやする場面が多かったが、画面の中でも番組スタッフがかけ回っていて万全の対策をとっているのが分かるので、その体制を崩さないでほしい。一発撮りでスタッフの労力は計り知れないが、とても良い番組なのでこれからも放送し続けてほしい。(中学3年・女子・広島)
  • 『芸能人格付けチェック!2024お正月スペシャル』(朝日放送テレビ)
    • リアルタイムで視聴することが多く、視聴者としてスマホで参加できたり、家族や親せきと一緒に見ながら予想できたりするのが楽しいです。いつもテレビで見ている芸能人が成功するとすごいと思うし、外すと親近感がわきます。(中学3年・女子・福岡)
    • 視聴者に答えを先に知らせてから芸能人のチェックの様子を見られるものや、芸能人のチェックを見終わってから一緒にドキドキしながら結果発表を見るものがあり、ずっと同じ流れではないため飽きずに見ることができた。(高校1年・女子・北海道)
  • 『ウルトラマンDASH 2024冬SP』(日本テレビ)
    毎年楽しみにしている番組で、トップアスリートがさまざまなミッションに挑戦し「こんなこともできるのか」と驚かせてくれます。アスリートの底力が見られて、時間内に達成できるのかというドキドキ感もあって楽しめます。(高校1年・男子・群馬)
  • 『輝く!日本レコード大賞』(TBSテレビ)
    予想していたアーティストが大賞を獲って嬉しかったです。新人賞は、知っている人が誰もいなくてびっくりしました。(高校1年・女子・京都)
  • 『映画「Dr.コトー診療所」』(フジテレビ)
    ストーリーの中に災害の話も含まれていたが、つい2日前に能登半島で大きな地震が起こったこともあり他人ごとには思えなかった。実際に映画を見終えた後、震災が起こった際にどのように対応するか家族で話し合いをした。テレビやラジオを見聞きすることで楽しむと同時に対策のきっかけになるのかもしれないと感じた。(高校2年・女子・東京)
  • 『WBC2023 ザ・ファイナル』(TBSテレビ)
    有名なプレーを見せるだけでなく、なぜそれが行われたのか、裏で何が起こっていたのかなどを掘り下げて特集していたのでとても興味を引かれた。また、音楽番組やお笑い番組だとどうしても家族の好きなジャンルにばらつきがあるが、野球は選手や球団のファンじゃなかったとしても試合を見るだけで惹き付けられるので、家族全員で盛り上がりながらテレビを見ることが出来た。(高校2年・女子・愛知)
  • 『笑って年越し!THE笑晦日』(日本テレビ)
    昔のドラマやバラエティー番組の映像を振り返るコーナーでは、当時を知る母は楽しんでいましたが、私にはおもしろさが分からなかったです。『エンタの神様』(日本テレビ)は数年前に見ていた時はおもしろかったのですが、時代も変わり、番組の構成が地味でネタ以前につまらない印象でした。もっと明るく芸人のネタで笑うことができたらよかったと思います。(高校3年・女子・北海道)
  • 『夢対決2024 とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日)
    長く放送されてきたので、出演するアスリートは「この番組に出たかった」と言っていて楽しんでいることが伝わり、視聴者側も楽しくみることができます。毎回実施される「リアル野球盤」が一番おもしろく、球種を決めているときに見せる現役野球選手の楽しそうな顔は、こんな一面もあるんだと思わせてくれます。(高校3年・女子・京都)

【自由記述】

  • 年末年始の特番で「これは見たい!」と思わせる番組が少なかったと感じます。もっとはじけた、テレビにしかできない特別な番組が見たいです。(高校1年・男子・群馬)
  • 最近は二次元アイドルがはやっていて、私の周りにも好きな人が多くいる。二次元アイドルの特集番組がもっと見たい。(中学2年・女子・愛知)
  • わたしの周りには漫画原作のアニメを視聴している人が多いが、アニメ化で画風が少し変わったり、実写化で自分のイメージと異なったりするのがいやだという意見が多い。漫画が人気だからといって、必ずしもアニメや実写版も人気になるとは限らないなと思った。(中学2年・女子・東京)
  • 1月1日に起きた能登半島の地震で、アナウンサー(特にNHK)が人を不安にさせるような声量や声色で放送していたので、さすがプロだなと思った。(中学3年・女子・広島)
  • 元日に起きた地震で、福井県の自宅で被災した。テレビをつけるとどの番組でも一心に危険を伝えてくれていて、怖かったけれど少し安心した。お正月で制作に長い時間を費やした番組もあっただろうに、地震のことを伝えるために全て延期や中止にして、ずっと「逃げてください」と繰り返してくれていたことが何よりうれしかった。命よりも大切なものはないと全員が思うことで、今回の地震のときの放送は成り立っていたと思う。日本はとてもいい国だと思った。(中学2年・女子・福井)
  • 「見逃し配信があるので、テレビをリアルで見ることができなくてもいいのでは」と主張してきましたが、能登半島で大きな地震が起こったあと、被害状況をリアルタイムで伝えるのをみて、テレビは必要だと改めて思いました。緊急ニュースとして国民すべてに知ってもらうには、映像で流されるとすごく伝わります。テレビの威力はすごいと思わざるを得ませんでした。(高校3年・女子・京都)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『大河ドラマ「光る君へ」』(NHK総合)
    • 平安時代が歴史で一番好きなので放送を楽しみにしていました。紫式部が勉強を楽しんでいたので、私も楽しめるようにしたいと思いました。お母さんが藤原家に殺されてとても悲しかったです。平安時代にある理不尽は今の時代も残っているので無くなって欲しいです。(中学3年・女子・福岡)
    • 日本史が好きなので、昔の京都の街並みや貴族の暮らしを学べてとても面白かった。貴族はみんな広い寝殿造りの家で暮らしているのかと思っていたが、庶民と似たような暮らしをしている貴族がいたことをこのドラマで知り驚いた。大河ドラマでは当時の暮らしや歴史の流れを学ぶことができるため、歴史の勉強の一環として見ている。(高校1年・女子・北海道)
    • 平安時代らしい優美な曲調と映像が使われたオープニングで、話が始まる前からすごくワクワクさせられた。ストーリーも、主人公の父がなかなか官職に就けない原因を、父が大納言に宛てて書いた賢ぶって他の人をけなす稚拙な文章によって察させるところなど、登場人物の特徴を動作や振る舞いでしっかり表されているのがいいなと思った。ただ新しい登場人物が登場したときナレーションでさらっと名前を言っているだけだったので聞き逃してしまい人の名前がうまく把握しきれなかった。一瞬名前を文字で出すだけでも充分記憶に残りやすいと思うので初登場のひとには映像に名前を書き出して欲しいと感じた。(高校2年・女子・愛知)
  • 『歴史デリバリー「源氏物語はなぜ1000年も読み継がれたのか?」』(NHK Eテレ)
    • 劇や絵を使用して解説していたので、分かりやすかった。今年放送される大河ドラマにも関連しているので関心を持てた。(中学2年・女子・愛知)
    • 江戸時代では庶民に読み継がれたように説明がありましたが、平安時代から日本語が変化をしているなら各時代で源氏物語が本当に読めたのか、読めたとしてもほんの一握りの者だけだったのではないかと疑問に思いました。(高校3年・女子・京都)
  • 『サザエさん』(フジテレビ)
    • 「カツオとワカメとタラちゃんの中で誰が一番好きか」と家族で話題になりました。父はワカメちゃんだと言っていて、今回の放送でもお父さん思いで優しい一面が見えて人気があるのだと思います。(中学1年・女子・千葉)
    • 保育園に通っていた頃によく見ていて、久しぶりに見てとても面白かったです。私が一番好きなのは、カツオが他人の家にボールを入れてしまい、その家の人に怒られているシーンです。(高校1年・女子・京都)
  • 『クイズ!国民一斉調査』(日本テレビ)
    • 家族と予想しながら見て、とても楽しかったし面白かったです。クイズの内容が身近で誰でも楽しく見られると思いました。(高校1年・女子・茨城)
    • 自分の感覚がどれだけ世間とずれているのかを知ることができました。%でクイズを答える問題があったりして、とてもユニークで面白いなと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
  • 『第57回HBC少年少女合唱団定期演奏会』(北海道放送)
    同世代が演奏している姿を見て、自分も一つ秀でたものを見つけて育んでいきたいと改めて思いました。朝の時間帯に「音楽」や「芸術」などの教養を身につけるきっかけとなる番組があることは、学生にも大人にも良い影響を与えると思います。(高校3年・女子・北海道)

◆委員のコメント◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『芸能人格付けチェック!2024お正月スペシャル』(朝日放送テレビ)を視聴した高校1年生から「ドラマ番組にスピンオフ作品があるように、バラエティー番組でも撮影の裏側やアフタートークなどのコーナーを作って放送やYouTubeなどで見られるようにしたら、そこから番組を知って見てもらえるかもしれない」と提案があった。スタッフや制作体制、番組制作の舞台裏を知りたいという欲求は、若い視聴者の間では強いと実感している。
  • 今月報告があった22人のうち、17人がリアルタイム視聴をしていたことは、今まであまりなかったように思う。正月休みだったことも、家族で一緒に番組を視聴したり番組に関する話をしたりするきっかけになったのだろう。

【自由記述について】

  • 『輝く!日本レコード大賞』(TBSテレビ)を視聴した高校2年生の報告に「毎年見ていますが私の知らないアーティストが多数いるので、選曲基準が知りたいです。また一般人投票で決めれば老若男女の意見が反映されるのではないかと思います」という一文があったが、若年層がこう感じるのは自然かなと思う。昨今のアイドルのオーディション番組などは審査基準が明確で視聴者が投票できたり、『M-1グランプリ』(朝日放送テレビ)では審査員はいるものの点数が可視化されているなど、評価基準がはっきりしているのが一般的。そういった番組と比較すると、『輝く!日本レコード大賞』の選曲基準の分からなさは奇妙に映るのだろう。アワードとオーディションの違いではあるが、若年層にはぴんとこないのだろうと思う。

今後の予定について

次回は2月27日(火)に定例委員会を開催します。 

以上